(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィマスク及び係るフォトリソグラフィマスクを備えたフォトリソグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/70 20120101AFI20240903BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240903BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03F1/70
G03F7/20 501
B81B3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502627
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 CA2022050491
(87)【国際公開番号】W WO2023004493
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524021109
【氏名又は名称】テクノロジーズ デジソー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボードリー,リチャード
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
3C081
【Fターム(参考)】
2H195BB01
2H195BB27
2H195BB36
2H195BC05
2H195BC09
2H195BC26
2H197BA11
2H197CB16
2H197CC05
2H197CC16
2H197DB07
2H197HA03
3C081AA13
3C081BA27
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA53
3C081BA54
3C081BA55
3C081BA58
3C081EA07
(57)【要約】
プレート(15)または空フレームマトリクスを備えるフォトリソグラフィマスク(10)であって、前記プレート(15)または空フレームマトリクスが表面にマイクロピクセル(20)のアレイを備え、各マイクロピクセル(20)は、前記マイクロピクセル(20)のアレイでパターンを生成できるように、オンボードマイクロコントローラ(25)を使用して独立して制御可能である、フォトリソグラフィマスク(10)が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート(15)または空フレームマトリクスを備えるフォトリソグラフィマスク(10)であって、前記プレート(15)または空フレームマトリクスが表面にマイクロピクセル(20)のアレイを備え、各マイクロピクセル(20)は、前記マイクロピクセル(20)のアレイでパターンを生成できるように、オンボードマイクロコントローラ(25)を使用して独立して制御可能である、フォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項2】
フォトリソグラフィマスク(10)であって、
プレート(15)と、
前記プレート(15)上に取り付けたマイクロピクセル(20)のアレイと、
前記プレート上に取り付けたオンボードマイクロコントローラ(25)であって、前記オンボードマイクロコントローラ(25)は、前記マイクロピクセル(20)のアレイに動作可能に接続される、オンボードマイクロコントローラと、を備え、
各マイクロピクセル(20)は、前記マイクロピクセル(20)のアレイでパターンを生成できるように、前記オンボードマイクロコントローラ(25)を使用して独立して制御可能である、フォトリソグラフマスク(10)。
【請求項3】
前記マイクロコントローラ(25)は、露光中に光信号を感知し、信号を前記マイクロコントローラに送信して前記露光が行われているか否かを報知する前記露光が行われているか否かを報知する露光センサ(45)に動作可能に接続されている、請求項1または2に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項4】
通信システム(60)の通信ポート(70)と通信するように構成された通信ポート(40)をさらに備え、前記通信システム(60)は、一連のコマンドおよび生成される前記パターンを前記オンボードマイクロコントローラ(25)に送信するように構成されたマスタコントローラ(65)を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項5】
前記マスタコントローラ(65)は、前記一連のコマンドに従って前記フォトリソグラフィマスク(10)の動作をフォトリソグラフィシステムの動作に同期させるように構成されている、請求項4に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項6】
前記フォトリソグラフィマスク(10)は、従来のフォトリソグラフィシステムにて使用できるように寸法設定されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項7】
各マイクロピクセル(20)は、ファブリペロー干渉計を画定する第1のフィルム(115)及び第2のフィルム(120)を備え、前記第1のフィルム(115)および前記第2のフィルム(120)は、前記プレート(15)よりも高い屈折率を有し、かつ、前記第1のフィルム(115)及び前記第2のフィルム(120)間の距離は、前記干渉計を介した透過を調節可能なように調整可能である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項8】
各ファブリペロー干渉計は、静電駆動と反発ヒンジとを組み合わせて使用して変更可能である、請求項7に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項9】
各マイクロピクセル(20)は、駆動されると横方向に移動する駆動可能な不透明なシャッターである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項10】
各マイクロピクセル(20)は、駆動されると面外回転をする駆動可能な不透明なシャッターである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項11】
各マイクロピクセル(20)は、MEMSで駆動可能である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項12】
各マイクロピクセル(20)は、静電駆動、圧電駆動、磁気駆動、空気圧駆動、またはバイメタル熱膨張駆動を利用して駆動可能である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項13】
各マイクロピクセル(20)は、長方形の形状を有し、かつ、各マイクロピクセルの長さおよび幅のそれぞれは、少なくとも約5nm、少なくとも約50nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約2ミクロン、または少なくとも約2.5ミクロンであり、且つ/または最大約500ミクロン、最大約100ミクロン、最大約50ミクロン、最大約20ミクロン、最大約10ミクロン、または最大約5ミクロンである、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項14】
前記マイクロピクセルは、同一の長さ及び幅を有し、もって、各マイクロピクセルがほぼ正方形の形状を有する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項15】
各マイクロピクセルは、約5nm×5nm乃至約500ミクロン×500ミクロンの間の寸法を有する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項16】
各マイクロピクセルは、1μm×1μm、2.5μm×2.5μm、または5μm×5μmの寸法を有する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項17】
前記アレイにおけるのマイクロピクセルの全ては、同一の寸法を有する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項18】
前記マイクロピクセルは、前記アレイ中のその他のマイクロピクセルと異なる及び/または同一の寸法を有する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項19】
前記マイクロピクセル(20)のアレイを用いて固有の識別パターンを生成することが可能である、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項20】
前記固有の識別パターンは、2Dマトリクス(165)を備える、請求項19に記載のフォトリソグラフィマスク(10)。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載のフォトリソグラフィマスクを備える、フォトリソグラフィシステム。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィマスクを使用して生成した固有の識別パターンを備える、ダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィマスクおよび係るフォトリソグラフィマスクを備えたフォトリソグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィの分野では、従来、フォトリソグラフィマスクは、一部が不透明フィルム(多くの場合クロム)で被覆されるプレート状の透明な材料(ガラスが通例)によって形成されるのが一般的である。この不透明フィルムは、光がマスク上の一定の領域のみを透過するように、マスク上の所定の領域で光を遮断する。透過した光は、次いで所望の媒体(基板上のフィルムの形にした感光性レジストが通例)に集光され、該媒体を変化させる。フォトリソグラフィプロセスは、マスク上のパターン(ガラスプレート上の不透明フィルムによって形成)により形成された画像を基板上の変化させたい感光性フィルムに転写することを目的としている。この転写は、一組の光学レンズを介して、または単にマスクを感光性フィルムを備えた基板に物理的に接触または近接させることによって行われる。次いで、感光性フィルムは、感光性フィルムの露光領域(ポジ型レジストの場合)または非露光領域(ネガ型レジストの場合)を溶解するプロセスによって現像される。これにより、基板の所望の領域(フォトリソグラフィマスクのイメージ)にのみフィルムが残こる。次いで、フィルムのない状態で残された基板領域は、後続のプロセスで変化可能となる。これは微細製造または半導体製造の基本的な概念である。ただし、このプロセスは他の製造プロセスにも利用可能である。したがって、フォトリソグラフィとは、パターンをフォトリソグラフィマスクから所望の基板上に印刷することである。次いで、このプロセスはデバイスの各領域を変化させることで、完全なマイクロデバイスを製造するために、異なるマスクを用いて繰り返し行われる。
【0003】
固有のパターン毎に固有のフォトリソグラフィ マスクが要求される。これは、新しいパターン毎に新しいマスクを作成する必要がある従来のフォトリソグラフィプロセスの主な欠点である。
【0004】
図1は、従来のフォトリソグラフィシステムの一例を示している。光路2をたどる光を生成する光源1は、レンズ3を介してフォトリソグラフィマスク4上に集光される。画像はフォトリソグラフィ マスク4の透明領域から生成され、次いで光学列5内の一連のレンズを通過進行する。このステップにおいて、画像の倍率が変更可能である。画像は、次いで光学列の出口で基板6の表面に投影される。基板6は、その表面に感光性フィルム(感光性フォトレジスト)が設けられる。感光性レジストの露光領域が変化する。後続のステップでフィルムを現像して、転写したパターンが現出可能となる。アライメントステージ7では、基板6の位置合わせを可能として、基板6上の所望の部位にパターンを転写することが可能となる。各露光の前に移動が行われる。光源1とアライメントステージ7は、フォトリソグラフィ装置コントローラ8で制御される。場合によっては、光学列を装置内に設けずに、画像を基板6に直接転写することもある。このような場合には、マスクを基板6に近接配置する。
【0005】
図2は、不透明フィルム11と透明領域12とを有するプレート9を備える従来のフォトリソグラフィマスクの一例を示す。アライメントマーク13は、パターンを基板6上に既に存在する既存のパターンに位置合わせするための特徴を提供するため、または後続のリソグラフィステップでの位置合わせを助けるマークを基板6上に残すために存在し得るものである。パターンが転写される領域は、参照符号14が付された点線を使用して示されている。
【0006】
一部のリソグラフィー技術は、マスクを使用せず、代わりに走査ビームまたはパルスビームを使用してレジストの所望の領域に変化を加える。ビームとしては、光子(光)、電子、またはイオンのビームを使用することが可能である。この技術は、一般にはマスクレスリソグラフィと呼ばれる。これらの技術では、ピクセルのパターン座標を含むデジタル化されたファイルは、中間ステップなしで(たとえばステンシルを使用せずに)レジスト上にパターンを直接書き込む方法を提供する。これにより、パターンは、一度に1つのピクセルずつレジスト内に生成することしかできない。
【0007】
現在のマスクレス リソグラフィプロセスでは、同じパターンを繰り返すためには一連のパルスを繰り返す必要があり、且つ、毎回デジタルファイルを物理的パターンに変換する必要がある。
【0008】
印刷(インクジェット印刷など)も、パターン座標を含むデジタルファイルを基板6上のパターンに直接転写できる方法である。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、プレートまたは空フレームマトリクスを備えるフォトリソグラフィマスクであって、前記プレートまたは空フレームマトリクスが表面にマイクロピクセルのアレイを備え、各マイクロピクセルは、前記マイクロピクセルのアレイでパターンを生成できるように、オンボードマイクロコントローラを使用して独立して制御可能である、フォトリソグラフィマスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来技術で使用される従来のフォトリソグラフィマスクを備える従来のフォトリソグラフィシステムの概略図である。
【0011】
【
図2】従来技術で使用される従来のフォトリソグラフィマスクの平面図である。
【0012】
【
図3】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクの平面図である。
【0013】
【
図4】
図3の点線で囲まれた領域の拡大平面図である。
【0014】
【
図5】通信システムおよび
図3のフォトリソグラフィマスクの概略図である。
【0015】
【
図6】
図3のフォトリソグラフィマスクを備えるフォトリソグラフィシステムの概略図である。
【0016】
【
図7】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクに使用できるマイクロシャッターの一例の側断面図であり、「オフ」位置にあるシャッターを示す。
【0017】
【
図8】
図7のマイクロシャッターの側断面図であり、「オン」位置にあるシャッターを示す。
【0018】
【
図9】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクに使用できるマイクロシャッターの別の例の側断面図であり、「オフ」位置にあるシャッターを示す。
【0019】
【
図10】
図9のマイクロシャッターの側断面図であり、「オン」位置にあるシャッターを示す。
【0020】
【
図11】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクに使用できるマイクロシャッターのさらに別の例の側断面図であり、「オフ」位置にあるシャッターを示す。
【0021】
【
図12】
図11のマイクロシャッターの側断面図であり、「オン」位置にあるシャッターを示す。
【0022】
【
図13】本発明の一実施形態によるマイクロシャッターのアレイの平面図である。
【0023】
【
図14】
図13に示すマイクロシャッターのアレイの1つのピクセルを示す断面図である。
【0024】
【0025】
【
図16】非アクティブ(オフ)位置にある
図14のピクセルの拡大断面図である。
【0026】
【
図17】アクティブ(オン)位置にある
図14のピクセルの拡大断面図である。
【0027】
【
図18】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクに使用できるマイクロシャッターの一例の平面図である。
【0028】
【0029】
【
図20】本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクによって生成される識別パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
・フォトリソグラフィマスク
本発明の第1の態様では、フォトリソグラフィマスクが提供される。本発明者らは、フォトリソグラフィマスク上のデジタル制御される駆動可能なマイクロシャッターのアレイを使用することによって、必要に応じてパターンを生成できることを発見した。実際、実施形態では、このデジタルフォトリソグラフィマスクは、少ない設置ステップを踏めば、従来のフォトリソグラフィ装置において従来のフォトリソグラフィマスクの代わりに、また同じ方法で代替的に使用することが可能である。実施形態では、本発明のデジタル適応型フォトリソグラフィマスクは、フォトリソグラフィ装置の操作者が必要に応じて所望のデジタルパターンを生成することを可能にするオンボード電子機器を備える。
【0031】
本発明のマスクは、従来のフォトリソグラフィマスクと同様のサイズのプレートを備えることが可能であり、これは、該マスクが従来のマスクの代わりに使用することが可能であり、かつ、基板上にパターンの画像を再現するという同じ目的に使用可能であることを意味する。しかしながら、本発明のフォトリソグラフィマスクのプレートは、マイクロピクセルのアレイが設けられた領域を備えている。各マイクロピクセルは、マイクロシャッターで構成され、該マイクロシャッターは、マスクを介した光の透過または非透過をなすように設定可能である(または部分的な透明レベルに設定可能である)。マイクロシャッターの駆動は、プレート上のオンボードマイクロコントローラによって制御可能である。したがって、前記アレイ全体のシャッターが所定の方法でオンまたはオフに設定されると、パターンの所望の画像が生成される。すなわち、ピクセルのオンまたはオフの状態の設定を組み合わせることで、さまざまなパターンを生成することが可能となる。
【0032】
オンボードマイクロコントローラは、主制御システム(マスタコントローラ)と通信可能とされ、該マスタコントローラは、どのパターンを設定するか、該パターンをいつ設定するかに関する情報を通信する。マスタコントローラは、本発明のフォトリソグラフィ装置の動作とデジタルフォトリソグラフィマスクの動作との同期を可能にする。具体的には、マスタコントローラは、一連のコマンド(これらのコマンドは、どのマイクロシャッターをいつ作動させるかを含む)に従って、フォトリソグラフィマスクの動作(マイクロシャッターの駆動等)をフォトリソグラフィシシステムの動作(整列ステージの制御等)に同期させることを可能にする。
【0033】
本発明のデジタル適応型フォトリソグラフィマスクは、フォトリソグラフィ露光を検出するセンサをさらに含み得、あるいは、その代わりに、オンボードマイクロコントローラに信号を送信して、露光が行われていることをフォトリソグラフィマスクに報知するように構成することも可能である。事前にプログラムされた動作計画に応じて、マイクロコントローラは、マイクロシャッターアレイを次のパターンに合わせて変更するかまたは変更しない。
【0034】
以下でより詳細に説明するように、マイクロシャッターは、同様の屈折率(動作光の波長に対して空気よりも高い屈折率)のフィルムに面した高屈折率の可動膜で構成可能であり、その場合、駆動機構は、前記2枚の屈折フィルム間の距離を変化させて、光学キャビティの透明性と反射率を変更する。最大透過設定は、前記マイクロシャッターがオン状態にある時に対応し、最小透過設定は、前記マクロシャッターがオフ状態にある時に対応する。中間の設定は、中間の光強度のピクセルで画像パターン上に結像する場合に利用可能である。或いは、露光時間中の総光線量を変化させるように、オン/オフデジタル信号を所定の周波数とデューティサイクルで所望のピクセルへ送信することが可能である。これは、中間設定を生成する別の方法である。
【0035】
まず
図3を参照して、全体として参照符号10で示すフォトリソグラフィマスクについて説明する。上述したように、本発明の実施形態は、フォトリソグラフィマスクであって、該マスク上のパターン形成が電子的に制御されて、該マスクを通過するよう向けられた光を局所的に遮断するか、または遮断しないように構成されたフォトリソグラフィマスクに関する。
【0036】
好ましい実施形態では、フォトリソグラフィマスクは、既存のフォトリソグラフィ装置において従来のフォトリソグラフィマスクの代わりに使用できるような寸法設定される。従来のフォトリソグラフィマスクと比較して、代わりに、マスク上のパターンが転写される領域にピクセルのマトリクスが設けられ、該ピクセルのマトリクスは、それぞれ必要に応じて「透明」または「不透明」に設定可能である。あるいは、透明度レベルが前記ピクセルの最小透明度レベルと最大透明度レベルの間の範囲で必要に応じて調整可能となっている。
【0037】
好ましい実施形態では、
図3に示すフォトリソグラフィマスク10の如く、フォトリソグラフィマスク10は透明プレート15を含み、さらに以下を含む、すなわち、フォトリソグラフィマスク10は、
?活性化されたピクセル(またはシャッター)20のマトリクスを備えた領域であって、該活性化されたピクセルの各々が必要に応じて独立して「透明」または「不透明」に設定可能であり、それによりマイクロシャッター20のアレイが画定される領域と、
?所望のパターンを生成する適切なマイクロシャッターを設定するために、どのピクセルを透明にするかまたは不透明にするかに関する情報を転送するオンボードマイクロコントローラ25であって、前記マイクロシャッター20のアレイは、前記オンボードマイクロコントローラ25によって制御され、且つ、各マイクロシャッターピクセルは、マイクロコントローラ信号によって透明または不透明に設定され(また、フォトリソグラフィプロセスで使用される光の波長に対応して各シャッターは透明または不透明に設定可能であることも理解すべきものである)、実施形態においては、マイクロコントローラ25は、マイクロプロセッサと、パターン座標を有するファイルを含むデジタルメモリとを備え、前記マイクロシャッターは、微小電気機械システム(MEMS)で構成することが可能である、オンボードマイクロコントローラ25と、
?バッテリ35であって、駆動および論理制御を可能にする電力を供給するバッテリ35と、
?通信ポート40であって、フォトリソグラフィ装置の操作者またはマスタコントローラ(フォトリソグラフィ装置およびデジタルフォトリソグラフィマスク10を制御する)から情報を受け取ることが可能であり、所望の時間に適切なピクセルを起動して、所望のパターンを所望の時間に生成することを可能する通信ポート40と、
?光検出器であって、露光時間と設定時間に対応して前記マスク10の同期に役立つことが可能な光検出器とを、更に含む。
【0038】
これから、上記構成要素の各々についてより詳細に説明する。
【0039】
前記プレート15は、好ましくは、従来のフォトリソグラフィマスクのプレートと同様の寸法を有することで、使用者は、フォトリソグラフィマスク10(本発明の一実施形態に係る)を従来のマスクと同じ位置に且つ同じ方法で設置及び位置合わせすることが可能となる。当業者には理解される事であるが、前記プレート15は、対象となる光の波長(フォトリソグラフィプロセスにおいて感光性レジストを変化させるために使用される波長)に対して透明な材料、好ましくはガラスまたは石英で形成することが可能である。
【0040】
上述したように、
図3のフォトリソグラフィマスク10は、駆動されたマイクロシャッタ-20のアレイをさらに備え、各マイクロシャッター20は、前記アレイの各マイクロピクセルを介した光の透過または非透過を可能にして、所望のパターンを生成する。
【0041】
図3のフォトリソグラフィマスク10は、前記マイクロシャッター20のアレイに動作可能に接続されるオンボードマイクロコントローラ25(マイクロプロセッサおよびデジタルメモリを備えたマイクロコンピュータを含み得る)をさらに備える。前記オンボードマイクロコントローラ25は、電力が供給されるためにバッテリ35にも接続される。前記マイクロコントローラ25は、マスタコントローラ65(
図5に示す)と通信するために通信ポート40にも動作可能に接続される。前記マイクロコントローラ25は、フォトリソグラフィ露光がいつ行われるかを感知する露光センサ45にも動作可能に接続されている。前記マイクロコントローラ25は、フォトリソグラフィシーケンスの所望の実行時間に各ピクセル毎に駆動信号を設定する。
【0042】
本発明の実施形態によるフォトリソグラフィマスク10は、マイクロコントローラ25の存在により、コンピュータで制御可能である。微小電気機械システム(MEMS)は、駆動された微小部品がマイクロシャッター(非駆動時には不透明なピクセルとなり、駆動時には透明なピクセルとなることが可能であり、または、その逆も可能である)を構成するように、フォトリソグラフィマスク10に実装されてもよく、前記マイクロシャッターは、前記マイクロコントローラ25によって制御されて、必要に応じて透明になるかまたは不透明のままとなって入射光を処理する。不透明なパターンは、コンピュータによってデジタル制御され、1枚のマスクだけで多数の異なるパターンを形成することが可能となる。実施形態において、これは、1枚のフォトリソグラフィマスクが1つのパターンのみを生成する従来のフォトリソグラフィ技術に勝る利点である。
【0043】
上記したように、
図3のフォトリソグラフィマスク10は、通信ポート40を更に備え、該通信ポート40は、マスタコントローラの通信ポートにリンクするように構成されるが、それについては以下でより詳細に説明する。
【0044】
上記したように、好ましい実施形態では、また、例えば
図3に例示的に示すように、前記フォトリソグラフィマスク10は、さらに、露光センサ45を備え、該露光センサ45は、フォトリソグラフィ露光の発生を感知し、該フォトリソグラフィ露光の発生を知らせる信号を前記マイクロコントローラ25へ送信する。或いは、露光センサが存在しない場合、前記マスタコントローラは、いつ前記露光が起きるかまたは起きないかを前記オンボードマイクロコントローラ25へ報知する。
【0045】
図3のフォトリソグラフィマスク10は、前記プレート上に不透明フィルム50を備えており、該不透明フィルム50が、位置合わせの目的で形成した透明パターン(不透明フィルムが設けられていない前記プレート上の透明領域であって、位置合わせマーク55と呼ばれる、
図4においてより明確に示されている)を画定する。この不透明フィルム50は、駆動されることなく、同一基板上で多くのフォトリソグラフィプロセスの(従来の位置合わせマークの場合と同じ方法での)位置合わせを可能にしている。
【0046】
図3のフォトリソグラフィマスク10は、例えば、通信システム60および
図3のフォトリソグラフィマスク10の概略図である
図5に例示的に示すように、通信システム60と通信できるように構成されている。
図5の通信システム60は、マスタコントローラ65を備え、該マスタコントローラ65が露光されるパターンとともに、一連のコマンドを前記オンボードマイクロコントローラ25に送信する。前記マスタコントローラ65は、独自の通信ポート70を使用して、この情報を前記オンボード通信ポート40に送信するか、または、前記オンボードマイクロコントローラ25から情報を受信し、一連のステップを適切に実行するようにしても良い。
【0047】
明確には、前記通信システム60の前記通信ポート70は、前記マスタコントローラ65にリンクされており、一方、前記フォトリソグラフィマスク10の前記通信ポート40は、前記オンボードマイクロコントローラ25にリンクされている。これらの通信ポートは、前記マスタコントローラ65と前記オンボードマイクロコントローラ25と の間で情報を送信する。前記通信ポート40、70は、伝送路を介して、または無線で前記情報を送信することが可能である。任意選択的に、他のセンサやデータに関する情報を前記コントローラに送信する、他の装置にリンクした他の通信ポートが設けられてもよい。
【0048】
例えば
図5に示すように、前記マスタコントローラ65は、前記デジタルフォトリソグラフィマスク10および前記フォトリソグラフィ装置に情報を送信する。このコンピュータコントローラ65は、前記パターンファイルを前記デジタルフォトリソグラフィマスク10に送信するとともに、各パターンをいつ設定するかの情報を前記装置の動作に同期して送信することが可能である。また、前記コンピュータコントローラ65は、フォトリソグラフィ装置コントローラ75を制御して、フォトリソグラフィシーケンスをどのように且ついつ実行するかについての情報を送信する。
【0049】
図6は、
図3のフォトリソグラフィマスク10および
図5の通信システム60を備えたフォトリソグラフィシステム80の概略図である。前記フォトリソグラフィマスク10および前記通信システム60とは別に、前記システム内で使用される他の機器(例えば、光路87を備えた光源85、レンズ90、光学列100、ウェハ105、および位置合わせステージ110)は、当業者の理解するところではあるが、従来のフォトリソグラフィ装置において使用されるものとすることが可能である。
【0050】
図7および
図8は、前記フォトリソグラフィマスク10(本発明の実施形態による)で使用される前記マイクロシャッター20が、ファブリペロー干渉計(または任意の他のタイプの光キャビティ)を使用して動作可能となる様を示す。具体的には、前記マスクは、ファブリペロー干渉を利用するフォトリソグラフィプロセスに関連する放射線に対して透明または不透明になるように変化可能な複数の材料フィルムを備えてもよい。当業者の理解する所であるが、他のタイプの光キャビティも使用可能である。
【0051】
光(あるいは、むしろ、光子電磁波112)は、前記透明プレート15を通過して、前記プレート15よりも高い屈折率を有するフィルム115に到達する。前記光は、該フィルム115およびエアギャップを通過して、第2の高屈折率フィルム120まで進行する。前記フィルム115、前記エアギャップ、および前記フィルム120は一体となってファブリペロー干渉計を構成する。前記第2のフィルム120は、MEMS装置(図示せず)によって駆動されるか、または該MEMS装置の一部を構成し、該MEMS装置は、前記2枚の高屈折率フィルム115、120の間の距離(a)を変更することによって前記ファブリペロー干渉計の寸法を変更可能とされる。前記第2のフィルム120の駆動で、前記ファブリペロー干渉計を介した光の透過が最小になる場合(透過光130が弱め合いまたは無効化干渉を受けるため、すなわちφ=πとなるため)には、「オフ」状態(不透明モード)が達成され、該「オフ」状態では、前記光がほとんど反射されて前記プレートに戻される(反射光は参照符号125で示す)。あるいは、前記の駆動で、前記ファブリペロー干渉計を介した光の透過が最大になるようにすることが可能である。この結果、「オン」状態(駆動モード)となり、該「オン」状態では、前記光の大部分が前記ファブリペロー干渉計を透過する(前記透過光130は強め合う干渉を受けており、すなわちφ≒2πとなる)。当然のことながら、φ が正確に2πに等しくならない場合でも、光は依然として透過し、当業者であれば理解の及ぶところであるが、強め合い干渉は、φ=2πのときに最高となり、弱め合い干渉は、φ=πのときに発生し、前記強め合い干渉と前記弱め合い干渉との間では異なるレベルの透過率が発生する。本発明の前記マスクの代替的な実施形態では、ピクセルの透明度レベルは、最小透明度レベルと最大透明度レベルとの間の範囲内の設定値に必要に応じて調整することができる。
【0052】
明確には、前記ファブリペロー干渉計は、二重反射光ビームを単純屈折ビームと相互作用させ、弱め合い干渉によって当該波長での光の透過を妨げることが可能となる。これを
図7に示す。露光ピクセルの条件を「オフ」に設定する。前記ファブリペロー干渉計では、光路を変更して、弱め合い干渉が発生しないように条件を変更できるため、透過の妨げがなくなる。位相差が強め合い干渉が発生するほどである場合、透過が最大になる。これにより、露光するピクセルの条件が「オン」に設定される(
図8に図示)。前記ファブリペロー干渉計を構成する膜を機械的に移動させることで光路の変更が可能である。或いは、該干渉計内の屈折率を変更することによっても光路の変更が可能である。たとえば、液晶または電気光学材料を使用することで光路の変更が可能となる。一般的なファブリペロー可変干渉計デバイスでは、ほとんどの光透過が最小、最大、またはその最小及び最大の範囲の任意の中間点になるように、該干渉計をさまざまな寸法に設定することが可能である。この「グレースケール制御」は必要に応じて変更できるため、上記の如き寸法設定は、従来のフォトリソグラフィプロセスに勝る本発明のマスクの利点となり得る。
【0053】
前記第2のフィルム120を駆動するには、前記フィルムがシリコンフレームによって平に保持されるMEMS駆動可能なピクセルを使用することが可能である。このフレームは、剛性と、前記第1の屈折フィルムの周りの同様の導電性フレームに引き付けられる平行電極として使用される導電性とを提供する。前記第2のフィルムのフレームに接続されたシリコン ヒンジは、前記2つのフィルムを離間させる反発力を提供する。このように、前記2つの電極間の電圧を変化させて当該2つの電極間の引力電界を制御することにより、前記距離を制御することが可能となる。
【0054】
或いは、前記デジタル適応型フォトリソグラフィ マスクでは、MEMS駆動可能な遮光ピクセルを使用することが可能であり、該MEMS駆動可能な遮光ピクセルでは、不透明フィルムを窓を閉じるまたは開放するように設定して、対象の放射線を通過させる。
図9乃至12は、マイクロシャッター25の代替例を2つ図示しており、前記マスクは、透明材料15と、不透明材料50とを備えている。1つの選択肢は、駆動可能な不透明シャッター25であり、該シャッター25は、駆動されると、横方向に移動する(
図9及び
図10に図示)。別の選択肢は、駆動可能な不透明シャッター25であり、該シャッター25は、駆動されると、面外回転をする(
図11および
図12に図示)。マイクロシャッターで構成するピクセル状の要素は、数ナノメートルから数百ミクロン間の寸法とすることが可能である。
【0055】
好ましい実施形態では、長方形のマイクロシャッターの場合、各マイクロシャッターの長さおよび幅のそれぞれは、少なくとも約5nm、少なくとも約50nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約2ミクロン、または少なくとも約2.5ミクロンであり、または最大約500ミクロン、最大約100ミクロン、最大約50ミクロン、最大約20ミクロン、最大約10ミクロン、または最大約5ミクロンである。
【0056】
より好ましい実施形態では、前記マイクロシャッターは同じ長さと幅を有する(すなわち、各マイクロシャッターがほぼ正方形である)。さらにより好ましい実施形態では、各マイクロシャッターの寸法は、約5nm×5nmと約500ミクロン×500ミクロンとの間の寸法であり、さらにより好ましくは1μm×1μm、2.5μm×2.5μm、または5μm×5μmである。
【0057】
実施形態では、前記アレイにおけるすべてのマイクロシャッターが同じ寸法である。代替の実施形態では、前記マイクロシャッターは、前記アレイにおける他のマクロシャッターと異なる寸法および/または同じ寸法とすることが可能である。
【0058】
前記マイクロシャッターにより、(シャッターが変位するにつれて)光子の透過または遮断が可能となる。たとえば、各マイクロシャッターをMEMSシリコン構造で構成すると、該MEMSシリコン構造により、ヒンジで保持されたスラブが静電コームにより制御電極側へ引き寄せられるか否かに応じてその光路を変更することが可能となる。静電界が存在しない場合には、ヒンジバネ力で平衡位置で前記シャッターを離間するようにする(例えば、
図13乃至
図19を参照、以下でより詳細に定義される)。
図13乃至
図19の例では、静電MEMS駆動が利用される。或いは、圧電駆動、磁気駆動、空気圧駆動、またはバイメタル熱膨張駆動を利用して当該駆動を行うことも可能である。
【0059】
図3に示す前記フォトリソグラフィマスク10は、光子(光ビーム)を使用するフォトリソグラフィシステムに実装するように設計されたフォトリソグラフィマスクであることは注目に値する。
【0060】
実施形態では、上記で定義したように、本発明の前記デジタルマスクは、透過に使用される2Dマトリクスである。或いは、同じ原理を反射で使用するように設計されたフォトリソグラフィマスクに使用することも可能である。このような設計では、各ピクセルは必要に応じて光を反射するまたは反射しないように設計されている。
【0061】
・フォトリソグラフィマスクを備えるフォトリソグラフィシステム
本発明の第2の態様では、上記の如く定義したマスクと、上記の如く定義した通信システムと、を備えるシステムを提供する。
【0062】
実施形態では、前記システムは、
図6に図示するとおりである。しかし、当業者が理解するところであれば、任意のフォトリソグラフィシステムが本発明の前記マスクとともに使用することが可能であり、その場合には、前記マスク及び前記通信システムが前記任意のシステムに対して機能するように適切に調整されていることが必要である。
【0063】
例えば、
図13乃至
図19に示される実施形態を製造するためには、前記マイクロシャッターアレイを標準的なフォトリソグラフィマスク上に、陽極結合、金属サーモ圧縮、共晶結合、接着フィルム結合、またはその他の任意の適切な結合方法等の恒久的な方法(
図13及び
図14に図示)で結合可能である。次いで、電子素子135(前記オンボードマイクロコントローラ25、前記バッテリ35、前記通信ポート40、および前記露光センサ45を含む)は、前記フォトリソグラフィマスク上に、導電性ペースト印刷、電子チップ配置および金属リフローを使用する等の恒久的な方法(
図13及び
図14に図示)で結合可能である。これにより、デジタル適応型フォトリソグラフィマスクが完成する。
図15は、前記マイクロシャッターの拡大図であって、ピクセルがファブリペローキャビティの光透過が最小限とされた状態である「オフ」状態にあることを示す。この場合には、頂部電極と底部電極とが同じ電圧にあり、前記ファブリペロー干渉計の2つの屈折層間の距離が機械的平衡の位置にある(距離は、たとえば、エッチングされた犠牲層の厚さによって画定される)。前述したように、
図13は、本発明の一実施形態によるマイクロシャッターアレイの平面図であり、
図14は、
図13の前記マイクロシャッターアレイ中の1つのピクセルの断面図である。
【0064】
図16は、非アクティブ(オフ)位置にある
図14のピクセルの拡大断面図である。
図17は、アクティブ(オン)位置にある
図14のピクセルの拡大断面図である。この例では、静電駆動と反発ヒンジを組み合わせて使用することで、光学キャビティ(この場合はファブリペロー干渉計)が変化される。
【0065】
図18は、本発明の一実施形態に係る前記フォトリソグラフィマスクに使用可能なマイクロシャッターの一例の平面図である。具体的には、
図18は、前記駆動可能なマイクロシャッターのアンカーポイント140と、ヒンジ145と、前記膜120と、支持フレーム150と、電極155(
図19に示す)とを備える実施可能なMEMS設計の平面図である。明確には前記支持フレーム150は、導電性を持ち、例えば、シリコンまたは炭化ケイ素で形成することが可能であり、
図7および
図8の説明時に言及したシリコンフレームとよく似た膜を保持するフレームである。この支持フレーム150は、前記フォトリソグラフィマスク全体の説明時に言及した前記プレートまたは空のフレームマトリックスと同じではない。
【0066】
図19は、
図18のマイクロシャッターの側断面図である。具体的には、
図19は、前記電極155を示し、該電極155は、電場を利用して前記支持フレーム150を引き付けるとともに、前記膜120を該電極155に近接させることが可能である。
【0067】
・利点
実施形態では、前述の利点に加えて、本発明の前記フォトリソグラフィマスクおよび本発明のシステムは、以下の利点中の1以上の利点をもたらすことが可能である。
【0068】
実施形態では、本発明の前記フォトリソグラフィマスクは、レイアウト変更毎に新しい物理的マスクを製造する必要がなくなるため、開発時間を大幅に短縮することが可能である。
【0069】
実施形態において、本発明の別の利点は、従来のフォトリソグラフィ装置(標準的な従来のフォトリソグラフィマスクを使用可能な装置)とともに使用可能なことである。これらの従来のマスクを本発明の前記フォトリソグラフィマスクに置き換えれば、必要に応じて所望のパターンが生成可能となる。このようにして、パターンのレイアウトが必要に応じて変更可能であるとともに、1つのデバイスから別のデバイスに合わせて変更することが可能となる。これは、プロセス調整と設計調整が必要なデバイス開発において重要な点となる。当然のことながら、前記プレートは、本発明の前記マスクが、標準的なフォトリソグラフィマスクと共に使用されるフォトリソグラフィ装置も含めて任意のフォトリソグラフィ装置と共に使用しても機能可能な寸法に設定することが可能である。追加のオンボード電子機器による体積増加は、標準的なフォトリソグラフィマスクを扱うときに使用される通路間隙に収まるように十分に小さい増加に収める必要がある。
【0070】
前記フォトリソグラフィマスクは、わずかな変更を加えて、或いは、まったく変更を加えずに、既存のフォトリソグラフィシステムの標準マスクの代わりに使用できるため、既存のフォトリソグラフィシステムをデジタルフォトリソグラフィプロセスに組み込むべく変換するための安価な解決策となり得る。
【0071】
本発明の前記マスクの1つの利点は、固定ステンシルの代わりに適応型ステンシルを創出可能な点である。
【0072】
前述したように、光子、電子、またはイオンを使用する間欠走査ビームを使用してリソグラフィーを実施する他の従来技術も存在する。前記ビームの走査及び前記ビームのパルス化は、異なる技術を使用して制御される。これらの技術(すなわちマスクなしリソグラフィー)には、リソグラフィープロセスを介して所望のパターン転写を実行するために物理的マスクの製造を必要としないという共通点がある。これらの技術には、基板上で一度に1つのピクセルを変化させるという共通点もある。したがって、スループット及び解像度は、スキャン速度及びパルス化制御により決定される。
【0073】
実施形態において、本発明の前記フォトリソグラフィマスクは、パターンを一度に設定するという利点を有し、大量のビームに露光されると、前記パターンの前記フォトリソグラフィが前記マスクの領域にわたって一斉に一度に実行される。これにより、所望のピクセルが全て連続的ではなく同時に変化するこの同じパターンの露光は、同じパターンを生成するために何度も繰り返すことが可能である。これにより、一般的なマスクなしリソグラフィ ープロセス用の直列製造(一度に1つのピクセルを変化させる)と比較して、並列製造に対応してスループットを大きくすることが可能となる(同じパターンを広い領域で連続して繰り返すことが可能であるため)。これが意味することは、実施形態において、本発明の前記マスクは、デジタルファイルを使用可能なステンシルに変換するステップが一度だけ行われる場合に、同じパターンの繰り返しを可能にするということである。これは従来のフォトリソグラフィに類似しているが、適合型ステンシルを作成できるという利点をもたらす。
【0074】
さらに、マスクなしフォトリソグラフィ、電子リソグラフィー、およびイオンビームリソグラフィー技術は、特殊な専用装置を必要とし、場合によっては基板の特別な準備および後処理を必要とするが、本発明の前記マスクは、従来のフォトリソグラフィ手順への均一な組み込みが可能なように設計可能である。
【0075】
本発明の前記マスクを使用すると、レジストの表面全体を1回の操作ステップで変化させることが可能となる。
【0076】
実施形態において、本発明の前記マスクの利点は、該マスクでは、同じ材料、化学物質、そして最も重要なことは、装置を使用できるため、標準的な従来のフォトリソグラフィ手順に対する変更をほとんどまたは全く必要としない、デジタル制御されたフォトリソグラフィプロセスが可能となることである。微細製造プロセスの開発にあたって、これは財政面で大きな利点をもたらすこととなる、すなわち、新しいプロセスは、多くのバージョンのフォトリソグラフィ マスクを使用して繰り返しを何度も行うことが必要となるのが典型的であり、これが大幅なコスト増大と、多大な時間消費とを、もたらす可能性があるためである。
【0077】
実施形態において、既存のマスクなしリソグラフィーに対する別の利点は、本発明の前記マスクが、同じシステムにおける標準的なフォトリソグラフィと同じ位置合わせパターン、同じ位置合わせマーク、および同じ位置合わせ方法を使用することである。したがって、本発明の前記マスクを既存の微細製造プロセスにて実装することの方が、新たな位置合わせプロセスを実施することよりも容易である。また、本発明の前記マスクは、従来のフォトリソグラフィツールと同等の配置精度(オーバーレイ)を備えている。
【0078】
前述したように、本発明の前記マスクの前記プレートは、ガラス(または処理光子に対して透明な他の材料)で形成することが可能であり、標準フォトリソグラフィマスクと同様に、該プレートの特定領域に不透明フィルムを備えることが可能であり、該特定の領域に位置合わせマークがパターンとして形成される。これらの位置合わせマークは、標準フォトリソグラフィ マスクと同様に、前記マスクのレイアウトの位置合わせに使用される。しかしながら、標準フォトリソグラフィマスクが該マスクの領域上で恒久的な不透明なパターンを使用する場合、本発明の前記マスクを使用すれば、前記各ピクセルは、要求に応じて透明または不透明となるように制御することが可能である。透明度または不透明度の活性化は、どのピクセルを活性化するか否かを設定するオンボードコンピュータによって制御可能である。
【0079】
本発明の実施形態では、不透明度対透明度レベルを、制御された方法でピクセル毎に設定することが可能である。実施形態では、オンボードマイクロコントローラは、プレートに固定され、且つ、マイクロプロセッサおよびデジタルメモリを備える。好ましい実施形態では、本発明の前記フォトリソグラフィマスクは、光子ビームを検出するビームセンサと、通信システムと通信するための通信ポート(ケーブルまたは無線)とを備える。通信システムは、どのパターンをいつ印刷するかという情報を転送する。ビームセンサは、露光毎に前記ビームを検出する。通信された命令がそのようであれば、各露光間のパターンの切り替えが可能となる。命令の他の例は、パターン「B」が「Y」回露出される前に、パターン「A」が「X」回露出される、などとすることができる。実施形態では、通信システムは、プログラム可能であって、前記命令を前記デジタル制御マスクに適時に通信するインタフェースとして機能するなマスタコントローラ(
図5に示するとともに、上記で説明した)をさらに備える。
【0080】
本発明は、UVまたは可視光技術を利用するフォトリソグラフィ装置で使用するように設計および構成されるのが好適である。
【0081】
前記フォトリソグラフィプロセスは微細製造に使用可能であるが、ロールツーロールフォトリソグラフィにも使用可能である。
【0082】
本発明の前記フォトリソグラフィマスクは、前記所望のパターンを生成するために2回目または3回目の露光を必要とするようにしても良いが、この場合スループットに影響を与えるが、これは、新しいマスクの製造に必要な時間(数日から数週間)と比較すると、特に、従来のマスクを使用する現在のフォトリソグラフィプロセスでは複数の露光が使用される場合があることを考慮すれば、些細な問題である。従来のフォトリソグラフィマスクを使用しての複数の露光では、マスクの交換と長い段取り時間が必要となり、実施形態では、本発明の前記マスクはマスクの変更を必要とせず、段取り時間が最短となる。
【0083】
従来のフォトリソグラフィを使用する場合は、各露光は、同一であり(同じステンシルから)、別の識別を提供することができないのが典型的である。本発明の前記フォトリソグラフィマスクを使用して、各ダイ上に固有の識別パターン(例えば、バーコードまたは識別文字)を生成することができ、それにより、各複製(または複製のグループ)を互いに区別できるようにすることが可能となる。明確には、さまざまな複製が同じ識別パターンを備えることが可能(一つの識別パターンを使用して複製のグループを識別可能にしたい場合)であり、または、各複製が固有の識別パターンを備えることが可能(各複製が他の複製から区別可能となることを望む場合)である。識別パターンの追加は、例えば、フォトリソグラフィステップに続く追加の露光ステップを追加することによって行うことが可能であり、該追加の露光ステップは、前記固有の識別パターンを追加するために使用される。或いは、前記識別パターンの追加は、同じ露光ステップ内で行うことができ、その場合、前記識別パターン用に保持したピクセルを各露光ステップで且つ各個別のダイ毎に変化させるようにして実行可能である。
【0084】
図20は、本発明の一実施形態によるフォトリソグラフィマスクによって生成される識別パターンの一例を示す。
図20に示すように、基準構造160は、前記識別パターンを特定するために使用でき、
図20では、それは2D識別バーコードを表す2Dマトリックス165である。
図20では、2Dマトリクス165上の各点は、前記フォトリソグラフィマスクのどのピクセルを駆動するのかに応じて、現出(オン)または非現出(オフ)かのいずれかとなる。
【0085】
特許請求の範囲は、実施例に記載の前記好適な実施形態によって限定されるべきものではなく、前記全体としての記載と一致する最も広範囲の解釈が与えられるべきものである。
【0086】
・定義
本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」、「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0087】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0088】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。範囲内の値のすべてのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0089】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0090】
本明細書で記載される任意のおよびすべての例、または例示的な用語(例えば、「~等」)の使用は、単に本発明をよりよく明示することを意図しており、別段の記載がない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0091】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であるものとして示していると解釈されるべきではない。
【0092】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。実施形態では、「約」は、適格な数値のプラスまたはマイナス10%またはプラスまたはマイナス5%を意味するものとして良い。
【0093】
別途明示されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。
【国際調査報告】