(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)材料
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20240903BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20240903BHJP
H05H 1/30 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
C01G25/00
H05H1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505371
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022037867
(87)【国際公開番号】W WO2023009380
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,リチャード ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ロベル,グレゴリー エム.
【テーマコード(参考)】
2G084
4G048
【Fターム(参考)】
2G084CC14
2G084HH05
2G084HH20
2G084HH28
2G084HH36
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
(57)【要約】
本明細書において、リチウムイオン電池に用いるための、小さい粒径及び高い密度を有する酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)などの酸化リチウム材料を製造するための材料及び方法が開示される。いくつかの実施形態は、炭酸リチウム及びLa2Zr2O7を含む多相材料を形成し、その後、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること、に関する。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱されて、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を含む固体電解質材料が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質材料の製造方法であって、前記方法は、
炭酸リチウムを含む多相材料を、前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、前記炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること、及び
前記酸化リチウムを、前記酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を含む前記固体電解質材料を形成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記多相材料の平均粒径が、約20nm~約1000nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多相材料の平均粒径が、約300nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多相材料が、ランタン(La)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多相材料が、ジルコニウム(Zr)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多相材料が、ランタン(La)及びジルコニウム(Zr)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多相材料が、酸化ランタンジルコニウムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多相材料が、La
2Zr
2O
7をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記LLZOが、1又は複数のドーパントをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1又は複数のドーパントが、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、又はホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記LLZOが、LaAlO
3又はLa
2(Li
0.5Al
0.5)O
4のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多相材料が、LiAlLaO
2、Li
2ZrO
3、ZrO
2、LaAlO
3、Li
2Zr
2O
7、La
2O
3、La
2(Li
0.5Al
0.5)O
4、LiLaO
2、Li
5AlO
4、La
2O
2CO
3、又はLi
aZr
bO
cのうちの少なくとも1つをさらに含み、ここで、1≦a≦8、1≦b≦2、及び1≦c≦7である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固体電解質材料が、1又は複数のドーパントをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1又は複数のドーパントが、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、又はホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記固体電解質材料の平均粒径が、約20nm~約1000nmである、請求項1に記
載の方法。
【請求項16】
前記固体電解質材料の平均粒径が、約300nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも50重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも75重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも99重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記多相材料の加熱及び前記酸化リチウムの加熱の合計時間が、約2時間~約20時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記多相材料が、約1時間~約10時間にわたって加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化リチウムが、約1時間~約10時間にわたって加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記固体電解質材料から薄膜を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が、前記多相材料の加熱時に過酸化リチウムを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化リチウムが、600℃を超える温度で加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化リチウムが、640℃を超える温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化リチウムが、酸素含有雰囲気中で加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記酸化リチウムが、水素ガスの非存在下で加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記方法の過程で生じるリチウム損失の量が、3重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記多相材料を、
1又は複数のフィードストック材料をマイクロ波生成プラズマ中に投入して、前記多相材料を形成すること、及び
前記多相材料を回収すること、
を含むマイクロ波プラズマプロセスを用いて形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子の製造方法であって、前記方法は、
炭酸リチウム及びLa
2Zr
2O
7を含む多相材料を、前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、前記炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること、及び
前記酸化リチウムを、前記酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成すること、
を含む、方法。
【請求項33】
前記多相材料の平均粒径が、約20nm~約1000nmである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記多相材料の平均粒径が、約300nmである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記LLZOが、1又は複数のドーパントをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記1又は複数のドーパントが、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、及びホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記LLZOが、LaAlO
3又はLa
2(Li
0.5Al
0.5)O
4のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記多相材料が、LiAlLaO
2、Li
2ZrO
3、ZrO
2、LaAlO
3、La
2O
3、La
2(Li
0.5Al
0.5)O
4、LiLaO
2、Li
5AlO
4、La
2O
2CO
3、又はLi
aZr
bO
cのうちの少なくとも1つをさらに含み、ここで、1≦a≦8、1≦b≦2、及び1≦c≦7である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記LLZOの平均粒径が、約20nm~約1000nmである、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記LLZOの平均粒径が、約300nmである、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも50重量%である、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも75重量%である、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも90重量%である、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
分解して酸化リチウムを形成する前記炭酸リチウムの部分が、前記多相材料中の前記炭酸リチウムの少なくとも99重量%である、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記多相材料の加熱及び前記酸化リチウムの加熱の合計時間が、約2時間~約20時間である、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記多相材料が、約1時間~約10時間にわたって加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記酸化リチウムが、約1時間~約10時間にわたって加熱される、請求項32に記載
の方法。
【請求項48】
前記LLZO粒子から薄膜を形成することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が、前記多相材料の加熱時に過酸化リチウムを形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項50】
前記酸化リチウムが、600℃を超える温度で加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項51】
前記酸化リチウムが、640℃を超える温度に加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
前記酸化リチウムが、酸素含有雰囲気中で加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項53】
前記酸化リチウムが、水素ガスの非存在下で加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項54】
前記方法の過程で生じるリチウム損失の量が、3重量%未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項55】
前記多相材料を、
1又は複数のフィードストック材料をマイクロ波生成プラズマ中に投入して、前記多相材料を形成すること、及び
前記多相材料を回収すること、
を含むマイクロ波プラズマプロセスを用いて形成することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項56】
多相材料の製造方法であって、前記方法は、
ランタン及びジルコニウムを含むフィードストックを調製すること、
前記フィードストックを、マイクロ波プラズマトーチ、前記マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又は前記マイクロ波プラズマトーチの排出ガス中に導入すること、並びに
前記マイクロ波プラズマトーチ、前記マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又は前記マイクロ波プラズマトーチの排出ガス中で前記フィードストックを加熱して、炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンを含む前記多相材料を形成すること、
を含む、方法。
【請求項57】
前記多相材料が、アルミン酸ランタン、酸化リチウムアルミニウム、及び二酸化ジランタン炭酸塩のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記多相材料が、前記多相材料の単一粒子中に前記炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンの相を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記多相材料を、前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、前記炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記酸化リチウムを、前記酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
多相材料であって、前記多相材料の単一粒子中に炭酸リチウム及びジルコン酸ランタン
を含む、多相材料。
【請求項62】
前記多相材料が、
ランタン及びジルコニウムを含むフィードストックを調製すること、
前記フィードストックを、マイクロ波プラズマトーチ、前記マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又は前記マイクロ波プラズマトーチの排出ガス中に導入すること、並びに
前記マイクロ波プラズマトーチ、前記マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又は前記マイクロ波プラズマトーチの排出ガス中で前記フィードストックを加熱して前記多相材料を形成すること、
を含む方法によって形成される、請求項61に記載の多相材料。
【請求項63】
前記方法が、前記多相材料を、前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、前記炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱することをさらに含む、請求項62に記載の多相材料。
【請求項64】
前記方法が、前記酸化リチウムを、前記酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成することをさらに含む、請求項63に記載の多相材料。
【請求項65】
アルミン酸ランタン、酸化リチウムアルミニウム、及び二酸化ジランタン炭酸塩のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項61に記載の多相材料。
【請求項66】
前記多相材料の単一粒子中に炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンの相を含む、請求項61に記載の多相材料。
【請求項67】
酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)材料であって、
炭酸リチウム及びLa
2Zr
2O
7を含む多相材料を、前記炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、前記炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること、及び
前記酸化リチウムを、前記酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成すること、
を含む方法によって形成される、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の参照による援用
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年7月30日に出願された米国仮特許出願第63/203,810号及び2021年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/273,833号の優先権の利益を主張するものであり、その各々の全開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、いくつかの実施形態において、ドープ及び未ドープ酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)材料を含む酸化リチウムの製造、並びに製造方法全般に関する。
【背景技術】
【0003】
記述
リチウムイオン電池では、酸化リチウムコバルトが、従来からカソード材料として用いられている。しかし、多くの代替材料系が開発され、用いられてきた。一般的に、リチウム及び酸素は、材料系の必須部分である。多くの場合、コバルトは、ニッケル及びマンガンなどの他の金属元素で完全に又は部分的に置き換えられ得る。このため、ほとんどのリチウムイオン電池は、リチウム金属酸化物電池と言うことができる。
【0004】
リチウム金属酸化物は、固体粉末として製造される。粉末の微細構造、形態、粒径、並びに考え得る汚染の程度及び種類が、リチウムイオン電池のカソードとして用いるのに適する材料として粉末を選択する際に決定的な役割を果たす。これらの特性は、電池の電気化学的特性に影響を与える。特に、エネルギー密度が非常に重要である。例えば、エネルギー密度は、電動車両が走行できる距離に影響を与え得るものであり、上述の微細構造パラメータによる影響を受ける。
【0005】
したがって、リチウム金属酸化物材料の微細構造は、精密に調節される必要がある。リチウム金属酸化物は、酸化リチウム及び他の金属の酸化物の混合結晶である。これらの混合結晶は、従来、個々の酸化物の混合物を、ある特定の雰囲気条件下、典型的には800~1000℃である高い温度で熱処理することによって形成される。そして個々の酸化物は、混合物に様々な原材料を添加することによって提供される。出発原材料は、多くの場合、リチウム及び他のそれぞれの金属元素の水酸化物又は炭酸塩である。これらの出発原材料の熱処理により、高温で水(H2O)又は二酸化炭素(CO2)が放出される。残った酸化物は、その後、さらなる処理によって一緒に混合結晶となる。一般に、材料の製造プロセスでは、第一工程で同じ元素のそれぞれの水酸化物又は炭酸塩から様々な酸化物が抽出され、続いて第二工程で、これらの酸化物から所望される混合結晶が製造される。
【0006】
2つの固体が一緒に反応して第三の固体を形成し、ガスが放出される第一工程は、か焼と称される。第二工程は、焼結又は固体拡散と称される。か焼は、反応の開始に必要とされる温度及び出発材料が利用可能となった時点で、ほとんど時間に関係なく生ずる。しかし、多くの場合、か焼は高温で行われるため、プロセス中に材料の粒径が望ましくなく大きくなってしまう。さらに、プロセス中に発生するガスの影響により、緻密な膜のための酸化リチウム材料を実現することは難しい。
【0007】
したがって、粒径が小さく高密度の酸化リチウム材料を製造するための新規な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、固体電解質材料の製造方法に関し、この方法は、炭酸リチウムを含む多相材料を、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること;及び酸化リチウムを、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を含む固体電解質材料を形成すること、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、多相材料の平均粒径は、約20nm~約1000nmである。いくつかの実施形態では、多相材料の平均粒径は、約300nmである。
【0010】
いくつかの実施形態では、多相材料は、ランタン(La)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、ジルコニウム(Zr)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、ランタン(La)及びジルコニウム(Zr)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、酸化ランタンジルコニウムをさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、La2Zr2O7をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、LLZOは、1又は複数のドーパントをさらに含む。いくつかの実施形態では、1又は複数のドーパントは、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、又はホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、LLZOは、LaAlO3又はLa2(Li0.5Al0.5)O4のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、多相材料は、LiAlLaO2、Li2ZrO3、ZrO2、LaAlO3、Li2Zr2O7、La2O3、La2(Li0.5Al0.5)O4、LiLaO2、Li5AlO4、La2O2CO3、又はLiaZrbOcのうちの少なくとも1つをさらに含み、ここで、1≦a≦8、1≦b≦2、及び1≦c≦7である。
【0013】
いくつかの実施形態では、固体電解質材料は、1又は複数のドーパントをさらに含む。いくつかの実施形態では、1又は複数のドーパントは、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、又はホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、固体電解質材料の平均粒径は、約20nm~約1000nmである。いくつかの実施形態では、固体電解質材料の平均粒径は、約300nmである。
【0015】
いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも50重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも75重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも90重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも99重量%である。
【0016】
いくつかの実施形態では、多相材料の加熱及び酸化リチウムの加熱の合計時間は、約2時間~約20時間である。いくつかの実施形態では、多相材料は、約1時間~約10時間にわたって加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、約1時間~約10時間にわたって加熱される。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、固体電解質材料から薄膜を形成することをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、炭酸リチウムの少なくとも一部分は、多相材料の加熱時に過酸化リチウムを形成する。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、600℃を超える温度で加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、640℃を超える温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、酸素含有雰囲気中で加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、水素ガスの非存在下で加熱される。いくつかの実施形態では、方法の過程で生じるリチウム損失の量は、3重量%未満である。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、1又は複数のフィードストック材料をマイクロ波生成プラズマ中に投入して多相材料を形成すること、及び多相材料を回収すること、を含むマイクロ波プラズマプロセスを用いて多相材料を形成することをさらに含む。
【0020】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子の製造方法に関し、この方法は、炭酸リチウム及びLa2Zr2O7を含む多相材料を、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること;及び酸化リチウムを、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成すること、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、多相材料の平均粒径は、約20nm~約1000nmである。いくつかの実施形態では、多相材料の平均粒径は、約300nmである。
【0022】
いくつかの実施形態では、LLZOは、1又は複数のドーパントをさらに含む。いくつかの実施形態では、1又は複数のドーパントは、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、及びホウ素(B)のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、LLZOは、LaAlO3又はLa2(Li0.5Al0.5)O4のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、多相材料は、LiAlLaO2、Li2ZrO3、ZrO2、LaAlO3、La2O3、La2(Li0.5Al0.5)O4、LiLaO2、Li5AlO4、La2O2CO3、又はLiaZrbOcのうちの少なくとも1つをさらに含み、ここで、1≦a≦8、1≦b≦2、及び1≦c≦7である。
【0024】
いくつかの実施形態では、LLZOの平均粒径は、約20nm~約1000nmである。いくつかの実施形態では、LLZOの平均粒径は、約300nmである。
【0025】
いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも50重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも75重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも90重量%である。いくつかの実施形態では、分解して酸化リチウムを形成する炭酸リチウムの部分は、多相材料中の炭酸リチウムの少なくとも99重量%である。
【0026】
いくつかの実施形態では、多相材料の加熱及び酸化リチウムの加熱の合計時間は、約2時間~約20時間である。いくつかの実施形態では、多相材料は、約1時間~約10時間にわたって加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、約1時間~約10時間にわたって加熱される。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、LLZO粒子から薄膜を形成することをさらに含む
。いくつかの実施形態では、炭酸リチウムの少なくとも一部分は、多相材料の加熱時に過酸化リチウムを形成する。
【0028】
いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、600℃を超える温度で加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、640℃を超える温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、酸素含有雰囲気中で加熱される。いくつかの実施形態では、酸化リチウムは、水素ガスの非存在下で加熱される。いくつかの実施形態では、方法の過程で生じるリチウム損失の量は、3重量%未満である。
【0029】
いくつかの実施形態では、方法は、1又は複数のフィードストック材料をマイクロ波生成プラズマ中に投入して多相材料を形成すること、及び多相材料を回収すること、を含むマイクロ波プラズマプロセスを用いて多相材料を形成することをさらに含む。
【0030】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、多相材料の製造方法に関し、この方法は、ランタン及びジルコニウムを含むフィードストックを調製すること、フィードストックを、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又はマイクロ波プラズマトーチの排出ガス中に導入すること;並びにマイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又はマイクロ波プラズマトーチの排出ガス中でフィードストックを加熱して、炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンを含む多相材料を形成すること、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、多相材料は、アルミン酸ランタン、酸化リチウムアルミニウム、及び二酸化ジランタン炭酸塩(dilanthanum dioxide carbonate)のうちの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、多相材料の単一粒子中に炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンの相を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、多相材料を、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、酸化リチウムを、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成することをさらに含む。
【0033】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、多相材料の単一粒子中に炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンを含む多相材料に関する。
【0034】
いくつかの実施形態では、多相材料は、ランタン及びジルコニウムを含むフィードストックを調製すること、フィードストックを、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又はマイクロ波プラズマトーチの排出ガス中に導入すること、並びにマイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又はマイクロ波プラズマトーチの排出ガス中でフィードストックを加熱して多相材料を形成すること、を含む方法によって形成される。いくつかの実施形態では、方法は、多相材料を、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、酸化リチウムを、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成することをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、多相材料は、アルミン酸ランタン、酸化リチウムアルミニウム、及び二酸化ジランタン炭酸塩のうちの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施形態では、多相材料は、多相材料の単一粒子中に炭酸リチウム及びジルコン酸ランタンの
相を含む。本明細書におけるいくつかの実施形態は、炭酸リチウム及びLa2Zr2O7を含む多相材料を、炭酸リチウムの少なくとも一部分が分解して酸化リチウムを形成するように、水素ガスの存在下、炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱すること、及び酸化リチウムを、酸化リチウムを結晶化させるのに充分な温度まで加熱して酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)粒子を形成すること、を含む方法によって形成される酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)材料に関する。
【0036】
例としての実施形態を例示するために図面を提供するが、図面は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書で述べるシステム及び方法のより良好な理解は、添付の図面と合わせて以下の記述を参照することで得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に従う、材料の製造に用いることができる例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。
【
図2A】
図2A~
図2Bは、側部フィードホッパーを含む例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。
【
図2B】
図2A~
図2Bは、側部フィードホッパーを含む例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。
【
図3A】
図3Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、マイクロ波プラズマプロセスを介して製造された多相出発材料の電子顕微鏡写真である。
【
図3B】
図3Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、X線回折を介して行われる、マイクロ波プラズマプロセスを介して製造された多相出発材料の相同定である。
【
図4A】
図4A~
図4Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、水素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。
【
図4B】
図4A~
図4Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、水素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。
【
図4C】
図4Cは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、X線回折を介して行われる、水素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の相同定である。
【
図5A】
図5A~
図5Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、水素ガス及び酸素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。
【
図5B】
図5A~
図5Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、水素ガス及び酸素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。
【
図5C】
図5Cは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、X線回折を介して行われる、水素及び酸素の存在下でか焼されたLLZO材料の相同定である。
【
図6】
図6は、本明細書におけるいくつかの実施形態に従うLLZO材料の化学量論的特性、粒径、及び相をまとめた表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ある特定の好ましい実施形態及び例を以下で開示するが、本発明の主題は、具体的に開示される実施形態を超えて、他の別の選択肢としての実施形態及び/又は使用に、並びにそれらの改変及び均等物にまで拡張される。したがって、本明細書に添付の請求項の範囲は、以下で述べる特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書で開示されるいずれの方法又はプロセスにおいても、方法又はプロセスの実行又は操作は、適切ないかなる順序で行われてもよく、開示されるいかなる特定の順序にも必ずしも限定されない。様々な操作が、ある特定の実施形態を理解する手助けとなり得るように、複数の個別の操作として順に記載される場合があるが、記載の順番は、これらの操作が順番に依存することを示唆するものと解釈されるべきではない。加えて、本明細書に記載される構造、システム、及び/又はデバイスは、一体化されたコンポーネントとして、又は別々のコンポーネントとして具体化され得る。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実
施形態のある特定の態様及び利点が記載される。そのような態様又は利点のすべてが、必ずしもいずれかの特定の実施形態によって実現されるわけではない。したがって、例えば、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を実現又は最適化するものであるが、本明細書でやはり教示又は示唆され得る他の態様又は利点を必ずしも実現しない方法で、様々な実施形態が実施される場合がある。
【0039】
次に、本明細書で開示されるデバイス及び方法の構造、機能、製造、並びに使用の原理の全体としての理解を提供するために、ある特定の例示的実施形態について述べる。これらの実施形態の1又は複数の例を、添付の図面に示す。当業者であれば、本明細書で具体的に記載され、添付の図面に示されるデバイス及び方法が、限定されない例示的な実施形態であること、及び本発明の範囲が請求項によってのみ定められることは理解される。1つの例示的な実施形態と合わせて示される又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような改変及び変更は、本発明の技術の範囲内に含まれることを意図している。
【0040】
固体電池セルのためのイオン伝導性セラミックの有望な種類は、酸化リチウムランタンジルコニウム(LLZO)をベースとするものである。これらの材料は、最大10-3S/cmの室温イオン伝導度を有し、非常に優れた電気化学的安定性を有する。本開示の実施形態は、セパレータ、電極、アノード、及び/又はカソードなど、固体電池に組み込むことができる。これらのコンポーネントは、本明細書において有利に開示される、粒径、粒径分布、及び高化学純度材料に対する厳密な制御による恩恵を受けることができる。
【0041】
本明細書において、リチウムイオン電池に用いるための、小さい粒径及び高い密度を有するLLZOなどの酸化リチウム材料を製造するための材料及び方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書における実施形態に従う方法は、出発材料が、酸素が存在する又は存在しない状態で、水素ガスの存在下で加熱されるか焼プロセスを含み得る。いくつかの実施形態では、出発材料は、マイクロ波プラズマプロセスを用いて合成されてよく、これにより、約20nm~約1000nmの平均粒径を有する炭酸リチウムと金属酸化物とを含む多相出発材料が製造され得る。いくつかの実施形態では、多相出発材料は、約20nm、約40nm、約60nm、約80nm、約100nm、約120nm、約140nm、約160nm、約180nm、約200nm、約220nm、約240nm、約260nm、約280nm、約300nm、約320nm、約340nm、約360nm、約380nm、約400nm、約420nm、約440nm、約460nm、約480nm、約500nm、約520nm、約540nm、約560nm、約580nm、約600nm、約620nm、約640nm、約660nm、約680nm、約700nm、約720nm、約740nm、約760nm、約780nm、約800nm、約820nm、約840nm、約860nm、約880nm、約900nm、約920nm、約940nm、約960nm、約980nm、約1000nm、又は上述の値の間のいずれかの値である平均粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、多相材料(例:炭酸リチウム/La2Zr2O7多相材料)のか焼中に、多相材料の炭酸リチウムが分解して酸化リチウムを形成し得る。いくつかの実施形態では、水素ガスの存在によって、炭酸リチウムの融点未満の温度での多相材料のか焼が可能となる。いくつかの実施形態では、プラズマ処理により、他の製造方法によっては得ることのできない特有の出発多相材料が製造され得る。特に、プラズマ処理により、単一粒子内に炭酸塩と酸化物との混合物を含む材料が製造され得る。他の製造方法を用いて得られた材料は、その代わりに、炭酸リチウム及び酸化物の別々の粒子を呈することになる。熱処理の過程で、混合相粒子を含むプラズマ処理された多相材料は、望ましいことには、別々の相の粒子から構成される材料よりも少ない焼結/成長でLLZOに形成される。いくつかの実施形態では、焼結及び成長の減少は、最終的なLLZO材料における利点である。
【0042】
いくつかの実施形態では、炭酸リチウムの少なくとも一部分は、出発多相材料が炭酸リチウムの融点未満の温度で加熱され得るか焼プロセスを介して、酸化リチウムに変換され得る。例えば、いくつかの実施形態では、炭酸リチウムの50重量%超、60重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超、99重量%超、又は99重量%超が、水素ガスの存在下での炭酸リチウムの加熱の過程で酸化リチウムに変換され得る。いくつかの実施形態では、炭酸リチウムの少なくとも一部分が酸化リチウムに変換された後、プロセスの温度をより高い温度に、場合によっては炭酸リチウムの融点を超えて(例:723℃超)上昇させて、酸化リチウム及び金属酸化物を急速に結晶化させ、緻密なLLZO粒子を成長させてもよい。いくつかの実施形態では、緻密なLLZO薄膜が形成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスで用いられるか焼温度は、水素ガスの存在により、従来のか焼プロセスよりも著しく低くてよい。このように温度を低下させることは、エネルギー使用量の低減及びリチウム損失の低減による製造コストの低下、並びにか焼段階の過程における焼結の減少に起因する製造された材料の品質向上を含む様々な有益な効果を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、マイクロ波プラズマによる方法及び装置を用いて、炭酸リチウム及び1又は複数の金属酸化物を含む多相材料の非常に小さい粒子を含む材料が製造され得る。この材料が直接焼結されると、主としてLLZO材料が形成され得る。しかし、焼結中に炭酸塩によって発生されるガスのために、LLZOの緻密な膜を実現することは困難である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により、鋳造及び焼結時にガスをほとんど発生させず、細孔を容易に閉じて完全に緻密となる材料が製造され得る。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態では、材料を鋳造して膜とする前に、出発材料の炭酸リチウムを分解して酸化物とするために、間げき熱処理(interstitial heat treatment)工程(すなわち、か焼)が用いられ得る。いくつかの実施形態では、粒子が良好に鋳造され、容易に一緒に焼結して膜となるように、この工程の間、粒子を小さく維持することが極めて重要であり得る。この分解に対して標準的な条件(例:O2又はN2雰囲気中700℃)を用いた場合、粒子の著しい焼結が生じ、それによって、多くの粒子が一緒に融合して、粒子が約200nmから約1.5umまで成長し得る。したがって、いくつかの実施形態では、熱処理は、この成長及び焼結を防止するために、炭酸リチウムの融点未満の温度で出発材料を加熱することを含む。一般に、炭酸リチウムは、その融点未満では分解しない。しかし、いくつかの実施形態では、熱処理が水素ガスの存在下で行われる場合、炭酸リチウムは、600℃という低い温度、又は水素ガスの濃度によってはさらに低い温度であっても、ほとんど粒子成長することなく酸化リチウムに分解し得ることが見出された。例えば、炭酸リチウムは、窒素雰囲気中、3%のH2を用いると、620℃の温度で分解し得る。その結果、いくつかの実施形態では、得られる材料は、緻密な膜に良好に鋳造するのに充分に小さい粒径となり得る。いくつかの実施形態では、材料は、より低いか焼温度で、従来のプロセスと比較してより少ないリチウム損失及びより少ない結晶粒成長を伴い、より低いコストで実現可能である緻密な膜を形成することが可能であり得る。
【0045】
LLZO材料のための典型的なプロセスでは、グリーン状態での材料の充填不良、粒子同士の接触不良、粒子サイズが大きいことに起因する低い焼結推進力、及び粒子の他の粒子との連携不良という結果となる。グリーン状態とは、形成後であるが焼結前の粒子として定義することができる。LLZO粉末がミリング及び/又は噴霧熱分解を介して製造された場合、欠陥のないセパレータの急速な完全緻密焼結(full density sintering)は起こらない可能性がある。例えば、このような方法で製造されたLLZOを用いて製造されたセパレータ膜は、残留多孔性及び大きい結晶粒径分布を有する可能性があり、その結果、早期に損傷を生じ得る。
【0046】
より優れたLLZOは、マイクロ波プラズマ処理などのプラズマ処理によって製造された出発材料を用いて製造することができる。プラズマ処理によって製造された出発材料を用いて処理されたLLZOは、狭い粒径分布(例えば、20nm~1000nm)、所望される化学量論、及び様々な結晶構造を有する球形粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における出発材料を用いて製造されたLLZOは、微細な粒径を有することができ、それは、焼結中に材料を緻密化するより大きい推進力を呈し、それによって、従来のように製造されたLLZO材料と比較して、より短い焼結時間及びより低い温度が促進される。狭い粒径分布及び球形形態によって、高い充填率を可能とすることができ、それによって焼結速度が上がる。さらに、狭い粒径分布及び球形形態は、焼結で除去することのできない安定な細孔の発生を低減することができる。安定細孔の低減は、材料の最終品質の向上に繋がり得る。狭い粒径分布はまた、制御された結晶粒成長にも繋げることができ、これによって、過度に大きい結晶粒及び広い結晶粒径分布を生ずる異常成長が防止される。
【0047】
プラズマ処理
いくつかの実施形態では、か焼のための出発材料を製造するために用いられるフィードストックは、リチウム、ランタン、ジルコニウム、タンタル、及びアルミニウムの硝酸塩及び酢酸塩などの該当する元素の金属塩であり得る。これらの塩は、所望の化学量論が得られるように、適正な割合で溶解及び混合され得る。いくつかの実施形態では、金属塩の混合物が用いられ得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、ランタン、リチウム、及びアルミニウムの硝酸塩が、ジルコニウムの酢酸塩と混合されて、溶液フィードストックが製造され、所望の化学量論が得られ得る。いくつかの実施形態では、塩中のリチウムの割合を増加させるために、硝酸リチウムではなく水酸化リチウムが用いられ得る。いくつかの実施形態では、か焼材料のための出発材料を製造するために用いられる他のフィードストックは、分散媒と混合され及び担体溶液中に混合されて、分散体、懸濁液、スラリー、又は同様の混合物が製造される、20~1000nmの範囲内の粒径のリチウム非含有セラミック粉末粒子であり得る。担体溶液は、水、アルコール、又は他の非極性溶媒であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、炭酸リチウムが担体溶液中に部分的に溶解され、水及びTriton Xなどの分散媒中で混合された化学量論比の酸化ランタン、酸化ジルコニウム、及び酸化アルミニウムと混合されて、安定な懸濁液が形成され得る。いくつかの実施形態では、分散体又はスラリーは、可溶性金属塩と混合されたセラミック酸化物粉末の組み合わせを含有し得る。硝酸リチウム及び硝酸ランタンが、水中で酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムと混合されて、スラリーが形成され得る。
【0050】
溶液前駆体は、リチウム、ランタン、ジルコニウム、及びアルミニウムなどのドーパントの目的の金属塩を、化学量論的割合で水などの溶媒中に溶解することによって、又は分散体の場合は、粉末を担体溶液中に分散させることによって形成され得る。各塩の量は、製造されるべきLLZO材料の所望の最終化学量論が得られるように計算され得る。ドーパントの場合、式の化学量論は、状況に応じて調節され得る。いくつかの実施形態では、アルミニウムは、LLZO構造中のリチウムの位置を取る。いくつかの実施形態では、リチウム又はランタンは、処理の過程で気化する可能性があり、そのことが最終製品中の金属の収率を低下させ得る。気化する金属を補うために、金属塩の量が増加され得る。
【0051】
図1は、本開示の実施形態に従う、材料の製造に用いることができる例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。上記で考察されるように、フィード材料9、10は、導入ゾーン3でマイクロ波プラズマトーチ2に導入することができ、トーチは、マイクロ波生成プラズマ11を維持している。1つの例としての実施形態では、同伴ガス流及びシース流(
下向き矢印)が、入口部5から注入されて、マイクロ波放射線源1を介してのプラズマ11の点火の前に、プラズマトーチ2内の流動条件が作り出され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、同伴流及びシース流は共に、軸対称の層流であるが、一方他の実施形態では、これらのガス流は渦流である。フィード材料9は、軸線方向にマイクロ波プラズマトーチ2中に導入され、そこで、材料をプラズマホットゾーン6に向かって指向するガス流によって同伴される。上記で考察されるように、ガス流は、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの周期律表の希ガスの列のものから成ってよい。マイクロ波生成プラズマ内において、フィード材料は、材料を球状化する目的で、溶融される。入口部5を用いて、粒子9、10を軸線12に沿ってプラズマ11に向かって同伴し、加速するためのプロセスガスが導入され得る。まず、粒子9は、プラズマトーチ内の環状ギャップを通して作り出されるコア層状ガス流(上側の矢印のセット)を用いた同伴によって加速される。誘電体トーチの内壁に層流のシースを提供してプラズマ11からの熱放射に起因する溶融からそれを保護するために、第二の層流(下側の矢印のセット)が、第二の環状ギャップを通して作り出されてもよい。例示的な実施形態では、層流は、粒子9、10を、軸線12にできる限り近い経路に沿ってプラズマ11に向かって指向し、プラズマ内の実質的に均一な温度に粒子を曝露する。
【0053】
いくつかの実施形態では、プラズマ接着(plasma attachment)が発生し得るプラズマトーチ2の内壁に粒子10が到達することを防止するのに適する流動条件が存在する。粒子9、10は、ガス流によってマイクロ波プラズマ11に向かって誘導され、そこで各々が均質な熱処理を受ける。粒子パラメータだけでなく、マイクロ波生成プラズマの様々なパラメータも、所望される結果を実現するために調節され得る。これらのパラメータとしては、マイクロ波電力、フィード材料粒径、フィード材料投入速度、ガス流量、プラズマ温度、滞留時間、及び冷却速度が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、冷却又は急冷速度は、プラズマ11を出た後、10+3℃/秒以上である。上記で考察されるように、この特定の実施形態では、ガス流は層流であるが、別の選択肢としての実施形態では、フィード材料をプラズマに向かって指向するために、渦流又は乱流が用いられてもよい。
【0054】
図2A~
図2Bは、
図1の実施形態に示される上部フィードホッパーではなく、側部フィードホッパーを含み、したがって下流への供給を可能とする例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。したがって、この実行においては、フィードストックは、マイクロ波プラズマトーチの「プルーム」又は「排出ガス」中で処理するために、マイクロ波プラズマトーチアプリケータの後に注入される。したがって、マイクロ波プラズマトーチのプラズマは、プラズマトーチの出口端部で作動して、フィードストックの下流でのフィードを可能としており、これは、
図1に関して考察される上部フィード(又は上流フィード)とは反対である。この下流フィードは、ホットゾーンが、ホットゾーンライナーの壁上でのいかなる材料の堆積からも無期限に保護されることから、トーチの寿命を有利には延長することができる。さらに、温度レベル及び滞留時間の精密な標的化により、粉末の最適な溶融に適する温度でプラズマプルームを下流で作動させることも可能となる。例えば、マイクロ波粉末、ガス流量、及びプラズマプルームを含有する急冷容器中の圧力を用いて、プルームの長さを調整可能である。
【0055】
一般に、下流球状化法は、2つの主要なハードウェア構成を用いて安定なプラズマプルームを確立することができ、それらは、米国特許出願公開第2018/0297122号に記載のものなどの環状流型トーチ(annular torch)、又は米国特許第8748785(B2)号及び米国特許第9932673(B2)号に記載の渦流型トーチ(swirl torches)である。プラズマトーチの出口部でプラズマプルームと密接結合したフィードシステムが用いられて、プロセスの均質性を保持するために粉末は
軸対称に供給される。
【0056】
他のフィード構成としては、プラズマプルームを取り囲む1又は複数の個別のフィードノズルが挙げられ得る。フィードストック粉末は、ある地点でいかなる方向からプラズマ内に入ってもよく、プラズマの周囲360°のいかなる方向からプラズマ内のその地点に供給されてもよい。フィードストック粉末は、粒子の充分な溶融のために特定の温度が測定され、滞留時間が推計されたプラズマプルーム長さ方向に沿った特定の位置でプラズマに入ってもよい。溶融した粒子は、プラズマから密閉チャンバへと排出され、そこで急冷された後、回収される。
【0057】
フィード材料314は、マイクロ波プラズマトーチ302の中に導入され得る。ホッパー306は、フィード材料314をマイクロ波プラズマトーチ302、プルーム、又は排出ガス中に供給するまでフィード材料314を保存するために用いられ得る。フィード材料314は、プラズマトーチ302の長手方向に対していかなる角度で注入されてもよい。5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55度である。いくつかの実施形態では、フィードストックは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55度よりも大きい角度で注入されてもよい。いくつかの実施形態では、フィードストックは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55度よりも小さい角度で注入されてもよい。別の選択肢としての実施形態では、フィードストックは、プラズマトーチの長手方向軸線に沿って注入され得る。
【0058】
マイクロ波放射線は、導波管304を通してプラズマトーチに送られ得る。フィード材料314は、プラズマチャンバ310に供給され、プラズマトーチ302によって生成されたプラズマと接触する。プラズマ、プラズマプルーム、又はプラズマ排出ガスと接触すると、フィード材料は溶融する。依然としてプラズマチャンバ310中に存在する間に、フィード材料314は、冷却され、固化されて、その後容器312に回収される。別の選択肢として、フィード材料314は、依然として溶融相にある間にプラズマチャンバ310から排出されて、プラズマチャンバの外で冷却、固化されてもよい。いくつかの実施形態では、急冷チャンバが用いられてもよく、それは、陽圧を用いても又は用いなくてもよい。
図1とは別に記載したが、
図2A及び
図2Bの実施形態は、
図1の実施形態に類似の特徴及び条件を用いることは理解される。
【0059】
各液滴がマイクロ波プラズマトーチによって作られたプラズマホットゾーン内で加熱されるに従って、溶媒が蒸発して溶質が析出し、熱分解が起こり得る。酸素プラズマ下での熱分解は、リチウム、ランタン、ジルコニウム、並びにドーパント選択対象のM1及びM2から構成される酸化物化合物を生成し得る。プラズマガスは酸素であってよいが、別の選択肢として、最小酸素濃度1%での最大3つまでのガスのブレンドであってもよい。いくつかの実施形態では、最大3つまでのガスのうちの1つはアルゴンである。
【0060】
球状化
いくつかの実施形態では、プラズマ処理によって実現される最終粒子は、球形又は球状であってよく、これらの用語は互換的に用いることができる。有利なことには、開示される異なるフィードストックの各々に関連する重要かつ特定の開示内容を用いることにより、フィードストックのすべてを球状粉末に変換することができる。
【0061】
本開示の実施形態は、実質的に球形若しくは球状である粒子、又は顕著な球状化を受けた粒子を製造することに関する。いくつかの実施形態では、球形、球状、又は球状化粒子は、ある特定の閾値より大きい球形度を有する粒子を意味する。粒子の球形度は、以下の式を用いて、粒子の体積と一致する体積Vを有する球の表面積A
s,idealを計算し、
【数1】
続いて、その理想化された表面積を、測定された粒子の表面積A
s,actualと比較することによって算出することができる。
【数2】
【0062】
いくつかの実施形態では、粒子は、0.5超、0.6超、0.7超、0.75超、0.8超、0.9超、0.91超、0.95超、又は0.99超(又は約0.5超、約0.6超、約0.7超、約0.75超、約0.8超、約0.91超、約0.95超、若しくは約0.99超)の球形度(本明細書において球形度指数とも称される)を有し得る。いくつかの実施形態では、粒子は、0.75以上又は0.91以上(又は約0.75以上若しくは約0.91以上)の球形度を有し得る。いくつかの実施形態では、粒子は、0.5未満、0.6未満、0.7未満、0.75未満、0.8未満、0.9未満、0.91未満、0.95未満、又は0.99未満(又は約0.5未満、約0.6未満、約0.7未満、約0.75未満、約0.8未満、約0.91未満、約0.95未満、若しくは約0.99未満)の球形度を有し得る。いくつかの実施形態では、粒子は、上述の球形度値のいずれか又はそれを超える球形度を有する場合、球形、球状、又は球状化されていると見なされ、いくつかの好ましい実施形態では、粒子は、その球形度が約0.75以上又は約0.91以上である場合、球形であると見なされる。
【0063】
いくつかの実施形態では、所与の粉末内の全粒子のメジアン球形度は、0.5超、0.6超、0.7超、0.75超、0.8超、0.9超、0.91超、0.95超、又は0.99超(又は約0.5超、約0.6超、約0.7超、約0.75超、約0.8超、約0.91超、約0.95超、若しくは約0.99超)であり得る。いくつかの実施形態では、所与の粉末内の全粒子のメジアン球形度は、0.5未満、0.6未満、0.7未満、0.75未満、0.8未満、0.9未満、0.91未満、0.95未満、又は0.99未満(又は約0.5未満、約0.6未満、約0.7未満、約0.75未満、約0.8未満、約0.91未満、約0.95未満、若しくは約0.99未満)であり得る。いくつかの実施形態では、粉末は、所与の粉末について測定された粒子のすべて又は閾値割合(以下の比率のいずれかによって記載される通り)が、上述の球形度値のいずれか以上のメジアン球形度を有する場合に、球状化されていると見なされ、いくつかの好ましい実施形態では、粉末は、粒子のすべて又は閾値割合が、約0.75以上又は約0.91以上のメジアン球形度を有する場合に、球状化されていると見なされる。
【0064】
いくつかの実施形態では、上述したものなどの所与の球形度閾値を超え得る粉末内の粒子の比率は、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、又は99%超(又は約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、若しくは約99%超)であり得る。いくつかの実施形態では、上述したものなどの所与の球形度閾値を超え得る粉末内の粒子の比率は、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、95%未満、又は99%未満(又は約50%未満、約60%未満、約70%未満、約80%未満、約90%未満、約95%未満、又は約99%未満)であり得る。
【0065】
粒径分布及び球形度は、SEM、光学顕微鏡、動的光散乱、レーザー回折、画像解析ソフトウェアを用いた手作業での寸法測定、例えば、同一の材料部分又は試料の少なくとも3つの画像にわたっての画像あたり約15~30の測定値、及び他のいずれかの技術など、適切ないかなる公知技術によって特定されてもよい。
【0066】
例
図3Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、マイクロ波プラズマプロセスを介して製造された多相出発材料の電子顕微鏡写真である。いくつかの実施形態では、上述のプロセスを用いて、非常に小さい粒子を有し、単一粒子内に炭酸塩と酸化物との混合物を含む球形多相出発材料が合成され得る。
【0067】
図3Bは、本明細書におけるいくつかの実施形態に従う、X線回折を介して行われる、マイクロ波プラズマプロセスを介して製造された多相出発材料の相同定である。
図3Bに示されるように、いくつかの実施形態では、少なくともジルコン酸ランタン、炭酸リチウム、アルミン酸ランタン、酸化リチウムアルミニウム、及び二酸化ジランタン炭酸塩の相が単一粒子内に存在する多相材料が形成され得る。
【0068】
図4A~
図4Bは、水素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。上述したように、プラズマ処理された多相出発材料を用い、これが水素の存在下でか焼され、続いて結晶化されて形成される高品質のLLZO材料が製造され得る。特に、本明細書に記載の方法に従って形成されたLLZO材料は、狭い粒径分布(例えば、20nm~1000nm)、所望される化学量論、及び様々な結晶構造を有する球形粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における出発材料を用いて製造されたLLZOは、微細な粒径を有することができ、それは、焼結中に材料を緻密化するより大きい推進力を呈し、それによって、従来のように製造されたLLZO材料と比較して、より短い焼結時間及びより低い温度が促進される。狭い粒径分布及び球形形態によって、高い充填率を可能とすることができ、それによって焼結速度が上がる。
【0069】
図4Cは、X線回折を介して行われる、水素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の相同定である。示されるように、本明細書に記載の方法を用いて製造されたLLZO材料は、様々な相を含み得るが、一般に、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%である。少なくとも約95重量%、又は少なくとも約99重量%のLLZOであり、他の相としては、ランタン、ジルコン酸塩、酸化ランタンアルミニウム、酸化ランタンリチウムアルミニウム、及び非常に少量の酸化ランタン炭酸塩が挙げられる。
【0070】
図5A~
図5Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従う、水素ガス及び酸素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の電子顕微鏡写真である。
図5Cは、X線回折を介して行われる、水素ガス及び酸素ガスの存在下でか焼されたLLZO材料の相同定である。いくつかの実施形態では、立方晶LLZOは、水素ガス及び酸素ガスの存在下でのプラズマ処理多相材料のか焼を用いて形成され得る。LLZO材料の他の相は、ジルコン酸ランタン、アルミン酸ランタン、及び酸化ジルコニウムを含み得る。
【0071】
図6は、本明細書におけるいくつかの実施形態に従うLLZO材料の化学量論的特性、粒径、及び相をまとめた表を示す。
【0072】
追加の実施形態
上記明細書において、本発明を、その具体的実施形態を参照しながら記載してきた。しかし、本発明のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更がそれに成されてもよいことは明らかであろう。本明細書及び図面は、したがって、限定的な意
味ではなく例示的な意味であると見なされるべきである。
【0073】
実際、本発明を、ある特定の実施形態及び例の文脈で開示してきたが、当業者であれば、本発明が、具体的に開示される実施形態を超えて、本発明の他の別の選択肢としての実施形態及び/又は使用、並びにその明らかな改変及び均等物にまで拡張されることは理解される。加えて、本発明の実施形態のいくつかの変型例を示し、詳細に記載してきたが、本発明の範囲内である他の改変は、当業者であれば本開示に基づいて容易に明らかであろう。実施形態の具体的な特徴及び態様の様々な組み合わせ又はサブ組み合わせが成されてよく、依然として本発明の範囲内に含まれることも企図される。開示される実施形態の様々な特徴及び態様が、開示される本発明の実施形態の様々なモードを形成するために、互いに組み合わされてよく又は置き換えられてもよいことは理解されたい。本明細書で開示されるいずれの方法も、記載される順番で行われる必要はない。したがって、本明細書で開示される本発明の範囲は、上記で述べた特定の実施形態によって限定されるべきではないことを意図している。
【0074】
本開示のシステム及び方法が、各々、いくつかの革新的態様を有し、それらのいずれの1つも、単独で、本明細書で開示される望ましい属性の原因である又はそのために必要とされるというものではないことは理解される。上記で述べる様々な特徴及びプロセスは、互いに対して独立して用いられてよく、又は様々に組み合わされてもよい。すべての考え得る組み合わせ及びサブ組み合わせは、本開示の範囲内に含まれることを意図している。
【0075】
本明細書において別々の実施形態の文脈で記載されるある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実行されてもよい。反対に、単一の実施形態の文脈で記載される様々な特徴はまた、複数の実施形態において別々に又は適切ないずれかのサブ組み合わせで実行されてもよい。さらに、特徴は、ある特定の組み合わせで作用するとして上記で記載される場合があり、最初はそのように請求されることさえあり得るが、請求される組み合わせからの1又は複数の特徴は、場合によっては、その組み合わせから削除される場合もあり、請求される組み合わせは、サブ組み合わせ又はサブ組み合わせの変型例に関する場合もある。いかなる単一の特徴又は一群の特徴も、あらゆる実施形態に対して必須でも不可欠でもない。
【0076】
数ある中でも「可能である(can)」、「あり得る(could)」、「あり得る(might)」、「あり得る(may)」、「例えば」など、本明細書で用いられる条件語は、特に断りのない限り又は用いられる文脈内においてそれ以外で理解されない限り、ある特定の実施形態がある特定の特徴、要素、及び/又は工程を含む一方、他の実施形態はそれらを含まないということを伝えることを一般に意図するものであることも理解される。したがって、そのような条件語は、一般に、特徴、要素、及び/若しくは工程が1若しくは複数の実施形態において何らかの方法で必要とされること、又は、1若しくは複数の実施形態が、著者の考え若しくは暗示あり又はなしで、これらの特徴、要素、及び/若しくは工程が、いずれかの特定の実施形態において含まれる又は実施されるべきであるかどうかを決定するためのロジックを必然的に含むこと、を示唆することを意図するものではない。「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」などの用語は、同義であり、包括的で非限定的に用いられ、追加の要素、特徴、実行、操作などを除外しない。加えて、「又は」の用語は、包括的な意味で用いられ(排他的な意味ではなく)、そのため、例えば要素のリストを接続するために用いられる場合、用語「又は」は、そのリスト中の要素の1つ、一部、又はすべてを意味する。加えて、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、本出願及び添付の請求項で用いられる場合、特に断りのない限り、「1又は複数の」又は「少なくとも1つの」を意味するものと解釈されたい。同様に、操作が特定の順番で図面中に示され得るが、望ましい結果を実現するために、そのような操作は
、示される特定の順番で又は逐次的順番で実施される必要はないこと、又は図示されるすべての操作が実施される必要もないことは認識されたい。さらに、図面は、フローチャートの形態で、1つ以上の例としてのプロセスを模式的に示し得る。しかし、示されていない他の操作が、模式的に示されている例としての方法及びプロセスに組み込まれてもよい。例えば、1又は複数の追加の操作は、示される操作のいずれかに対してその前に、その後に、同時に、又はその間に行われてもよい。加えて、操作は、他の実施形態において再配列又は並べ替えが成されてもよい。ある特定の状況では、マルチタスキング及び並列処理が有利であり得る。さらに、上記で述べる実施形態における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とするとして理解されるべきではなく、記載したプログラムコンポーネント及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に一体化されてもよいこと、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよいことは理解されるべきである。加えて、他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。いくつかの場合では、請求項に記載の手段は、異なる順番で実施されてよく、それでも望ましい結果が実現され得る。
【0077】
さらに、本明細書で述べる方法及びデバイスは、様々な改変及び別の選択肢としての形態が可能であり得るが、その具体例は、図面に示されており、本明細書において詳細に記載される。しかし、本発明は、開示される特定の形態又は方法に限定されるべきではなく、逆に、本発明は、記載した様々な実行及び添付の請求項の趣旨並びに範囲に含まれるすべての改変、均等物、及び代替物を包含するべきであることは理解されたい。さらに、ある実行又は実施形態と関連するいずれの特定の特徴、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素などの本明細書における開示内容も、本明細書で示される他のすべての実行又は実施形態で用いられ得る。本明細書で開示されるいずれの方法も、記載される順番で行われる必要はない。本明細書で開示される方法は、実行者によって取られるある特定の手段を含み得るが、方法はまた、明示的又は暗示的のいずれかによる、これらの手段の何らかの第三者の指示も含み得る。本明細書で開示される範囲はまた、あらゆる重なり合い、サブ範囲、及びこれらの組み合わせを包含する。「までの」、「少なくとも」、「超の」、「未満の」、「間の」などの言語は、記載の数値を含む。「約」又は「およそ」などの用語が前に付与された数値は、記載の数値を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例:状況下で合理的にできる限り正確に、例えば、±5%、±10%、±15%など)。例えば、「約3.5mm」は、「3.5mm」を含む。「実質的に」などの用語が前に付与された句は、記載の句を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例:状況下でできる限り合理的に)。例えば、「実質的に一定」は、「一定」を含む。他の記載がない限り、すべての測定は、温度及び圧力を含む標準条件でのものである。
【0078】
本明細書で用いられる場合、項目のリストのうちの「少なくとも1つ」に言及する句は、単一のメンバーを含むこれらの項目のいずれの組み合わせも意味する。例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、並びにA、B、及びCを包含することを意図している。「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」の句などの接続的言語は、特に別途記載のない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのうちの少なくとも1つであってよいことを伝えるために一般に用いられる文脈で理解される。したがって、そのような接続的言語は、一般的には、ある特定の実施形態が、少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、及び少なくとも1つのZの各々が存在することを必要とすることを示唆することを意図するものではない。本明細書で提供される見出しは、存在する場合、単なる便宜上のものであり、本明細書で開示されるデバイス及び方法の範囲又は意味に必ずしも影響を与えない。
【0079】
したがって、請求項は、本明細書で示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本開示内容、本明細書で開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【国際調査報告】