(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】能動/受動冷却システム
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240903BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240903BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20240903BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240903BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F25B1/00 399Y
F25B1/00 396S
F28D15/02 E
F28D15/02 R
F25B39/02 M
H05K7/20 Q
G06F1/20 A
G06F1/20 C
G06F1/20 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506195
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022038815
(87)【国際公開番号】W WO2023014594
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512033006
【氏名又は名称】マンターズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】MUNTERS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】バウチャー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニューウォルド,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ダンナヴァント,ブライアン キース
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディネイジ,ポール エー
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA09
5E322AB10
5E322BA05
5E322BB03
5E322BB05
5E322DA01
5E322DA02
5E322DA04
5E322DB02
5E322DB07
5E322DB12
5E322EA05
5E322EA11
5E322FA01
(57)【要約】
冷却組立体は一次冷却媒体を収容する蒸発器、受動凝縮器、熱交換器、及び一次冷却媒体の前記蒸発器内への流れを制御する流れ制御弁を備える。二次冷却媒体が該熱交換器に提供されると、前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と該熱交換器の間に位置するどんな弁も操作することなく、気相にある前記一次冷却媒体は前記受動凝縮器によって受け取られるから該熱交換器へ切り替わる。前記蒸発器と前記熱交換器の間及び前記蒸発器と前記受動凝縮器の間の前記一次冷却媒体の流路内に前記一次冷却媒体を循環するポンプ無しで、前記一次冷却媒体は前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と前記熱交換器の間を自然循環及び重力により循環する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システムであって、
一次冷却媒体を収容する蒸発器であって、処理流体を受け取り、前記処理流体を受け取ると前記一次冷却媒体の相を液体から気体へ変えるように構成された蒸発器と、
外面を有し前記蒸発器に流体的に結合された受動凝縮器であって、気流が前記外面を横切って流されるように構成され、前記気流が前記外面を横切って流れる時、(1)気相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、(2)熱を前記一次冷却媒体から移送し、(3)前記一次冷却媒体の相を気体から液体へ変え、(4)液相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給するように構成された受動凝縮器と、
前記蒸発器に流体的に結合され二次冷却媒体が選択的に提供されるように構成された熱交換器であって、
(a)前記二次冷却媒体が該熱交換器に提供されると、前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と該熱交換器の間に位置するどんな弁も操作することなく、気相にある前記一次冷却媒体の少なくとも一部は前記受動凝縮器によって受け取られるから該熱交換器へ切り替わり、該熱交換器は(1)気相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、(2)前記一次冷却媒体から熱を移送し、(3)前記一次冷却媒体の相を気体から液体へ変化させ、(4)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給するように構成され、
(b)前記二次冷却媒体が該熱交換器に提供されないと、該熱交換器は前記液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給しない、熱交換器と、
前記熱交換器と前記蒸発器の間の流路及び前記受動凝縮器と前記蒸発器の間の流路に配置され、複数の開位置を有し液相にある前記一次冷却媒体の前記蒸発器内への流れを制御するように構成された流れ制御弁と
を備え、
前記蒸発器と前記熱交換器の間及び前記蒸発器と前記受動凝縮器の間の前記一次冷却媒体の流路内に前記一次冷却媒体を循環するポンプ無しで、前記一次冷却媒体は前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と前記熱交換器の間を自然循環及び重力により循環する、冷却システム。
【請求項2】
前記流れ制御弁の位置を前記複数の開位置の間で切替制御するように構成された制御器を更に備える請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記蒸発器内の熱吸収量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項4】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記処理流体が前記蒸発器を通って流れる時に前記処理流体によって放出された熱量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項5】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記受動凝縮器によって放出された熱量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項6】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記気流が前記受動凝縮器を通って流れる時に前記気流によって吸収された熱量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項7】
前記二次冷却媒体が前記熱交換器に提供されると、前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記熱交換器によって放出された熱量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項8】
前記二次冷却媒体が前記熱交換器に提供されると、前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記二次冷却媒体が前記熱交換器を通って流れる時に前記二次冷却媒体によって吸収された熱量に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項9】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記蒸発器を出る気相の前記一次冷却媒体の過熱度に基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項10】
前記制御器は前記流れ制御弁の位置を前記二次冷却媒体が前記熱交換器に提供されているか否かに基づいて制御するように構成される、請求項2記載の冷却システム。
【請求項11】
前記処理流体は空気である、請求項1記載の冷却システム。
【請求項12】
前記処理流体は液体である、請求項1記載の冷却システム。
【請求項13】
誘電体によって冷却される少なくとも1つの電子部品と、
請求項1記載の冷却システムであって、前記誘電体を冷却する冷却システムとを備える電子システム。
【請求項14】
前記処理流体は前記誘電体である、請求項13記載の電子システム。
【請求項15】
前記二次冷却媒体は圧縮機及び膨張弁を含む直接膨張冷却システムの冷媒である、請求項1記載の冷却システム。
【請求項16】
前記二次冷却媒体は冷水である、請求項1記載の冷却システム。
【請求項17】
前記二次冷却媒体が前記熱交換器に提供されると、前記一次冷却媒体の一部は前記受動凝縮器及び前記熱交換器両方によって受け取られ、(1)前記一次冷却媒体から熱を移送し、(2)前記一次冷却媒体の相を気体から液体に変え、(3)液相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、請求項1記載の冷却システム。
【請求項18】
処理流体を冷却する方法であって、
処理流体を蒸発器を通して流し熱を前記処理流体から前記蒸発器内の一次冷却媒体に移送し前記一次冷却媒体を液相から気相に変えるステップと、
熱交換器及び受動凝縮器のうち少なくとも1つを選択的に使用して、前記熱交換器及び前記受動凝縮器のうち前記少なくとも1つを冷却することで前記一次冷却媒体を気相から液相に変えるステップであって、前記熱交換器及び前記受動凝縮器のそれぞれは前記蒸発器に結合され気相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する、ステップと、
前記蒸発器内の液体レベルを制御するステップと、
前記一次冷却媒体を前記蒸発器と前記熱交換器及び前記受動凝縮器のうち前記少なくとも1つとの間で自然循環により循環させるステップと
を含み、
前記蒸発器と前記受動凝縮器を結合するどんな弁も前記蒸発器と前記熱交換器を結合するどんな弁も操作することなく、前記熱交換器の冷却を開始することで前記熱交換器が選択される、方法。
【請求項19】
前記熱交換器を冷却することは、二次冷却媒体を使用して前記一次冷却媒体の相を気体から液体に変えることを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記受動凝縮器を冷却することは、気流を前記受動凝縮器を横切って流すことを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記蒸発器と前記受動凝縮器を結合するどんな弁も前記蒸発器と前記熱交換器を結合するどんな弁も操作することなく、前記熱交換器の冷却を停止することで前記受動凝縮器が選択される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記熱交換器の冷却により前記熱交換器が選択されると、前記受動凝縮器も使用して前記一次冷却媒体を気相から液相に変えるステップを更に含む請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記処理流体は液体である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記蒸発器内の液体レベルを制御する前記ステップは、前記熱交換器と前記蒸発器の間の流路と前記受動凝縮器と前記蒸発器の間の流路に位置する流れ制御弁を複数の開位置のうち1つに設定することを含む、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムとそれを制御するシステム及び方法に関する。特に本発明は、能動モードと受動モード両方を有する冷却システムに関する。特に適切な用途は、例えばデータセンター冷却システムである。
【背景技術】
【0002】
データセンターはしばしば稼働するために多量のエネルギーを必要とする。データセンター内のサーバーは多量の熱を発生させ、冷却を必要とする。データセンターのエネルギー使用を減らすために、より効率的な冷却システムが望まれている。
【0003】
ヒートパイプ及び熱サイフォンはより高温の蒸発器部からより低温の凝縮器部へエネルギーを密閉冷媒体の蒸発及び凝縮により移送する装置である。凝縮器部から蒸発器部への冷媒の移送は重力か又は毛管力によって生じる。ヒートパイプはデータセンター冷却において間接節約装置として使用されてきた。これらの設備では、データセンターからの暖気は、例えばヒートパイプの蒸発器部を通って再循環され、密閉冷媒がデータセンターからの熱で気化されデータセンター空気を冷却する。より冷たい周囲空気がヒートパイプの凝縮器部に吹き付けられ、冷媒蒸気が凝縮されデータセンター熱が排出される。幾つかの用途では、周囲空気はヒートパイプの凝縮器部を通過する前に先ず蒸発冷却器で断熱冷却されてより低温の熱吸収を生じさせる。別の構成では、周囲空気がヒートパイプの凝縮器部の表面を横切って通過するのと同時にヒートパイプの凝縮器部に水を噴霧してもよく、周囲湿球温度に近い熱吸収温度を生じさせる。
【0004】
これらの設備では、ヒートパイプ及び熱サイフォンは周囲温度条件によって制限され、周囲温度が高い時、十分な熱排出を提供しないことがある。この制限への1つの解決策は、直接膨張(DX)冷却システム(能動モード)などの機械式冷却システムを取り込み熱サイフォンと同様に動作する疑似受動モードを有するポンプ付き冷媒システムである。これらのシステムは凝縮器から蒸発器へ液体冷媒を移動させるポンプを含む。ポンプを使用することで、蒸発器及び凝縮器圧力降下並びに重力効果と無関係に冷媒の流れを制御できる。この手法は、ポンプがかなりの量の熱エネルギーを移送するのに少量の動力を必要とするだけなので疑似受動である。ポンプ付き冷媒システムでは、ポンプを止めることができ、弁を操作することで圧縮機及び膨張弁がシステム冷媒流れ内に一体化されうり、このシステムが直接膨張冷却システムとして働くのを許す。
【0005】
直接膨張システムにおけるシステム設計制約は、一般的にシステムの複数の並列蒸発器及び凝縮器回路を通る均一な冷媒流を提供するためにシステムの蒸発器及び凝縮器部において小さな圧力降下を要求する。システムが疑似受動モードで動作時にポンプが冷媒液を循環させるよう要求するのはこれらの圧力降下のためである。冷媒回路は圧縮機システムを含むので、冷媒塊も潤滑のために油を含む必要がある。ポンプ付き冷媒システムには冷媒速度のための最良実施(所謂「油管理」)などの様々な設計及び稼働制約があり、これらは油がシステムの様々な長さの配管内で留まらず圧縮機(油が必要)に確実に戻ることを保証する。これらの油管理制約は、ポンプ稼働モードの流路及び流量がDXモードに必要な規則と一致しないことがあるので、ポンプ稼働モード(疑似受動モード)で動作時に問題となる。システム内の適切な動作のための冷媒塊はまた、例えば使用可能な過熱及び過冷レベル並びにコイル溢れレベルが異なるので、ポンプ稼働モード時とDXモード時で全く異なることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、エネルギー使用を更に低減した冷却システムが望まれ、受動又は疑似受動モードにおいて油管理を必要としない冷却システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は一次冷却媒体を収容する蒸発器、受動凝縮器、及び熱交換器を備える冷却システムに関する。蒸発器は処理流体を受け取り、前記処理流体を受け取ると前記一次冷却媒体の相を液体から気体へ変えるように構成される。前記受動凝縮器は外面を有し前記蒸発器に流体的に結合される。前記受動凝縮器は気流が前記外面を横切って流されるように構成される。前記受動凝縮器は前記気流が前記外面を横切って流れる時、(1)気相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、(2)熱を前記一次冷却媒体から移送し、(3)前記一次冷却媒体の相を気体から液体へ変え、(4)液相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給するように構成される。熱交換器は前記蒸発器に流体的に結合され二次冷却媒体が選択的に提供されるように構成される。前記二次冷却媒体が該熱交換器に提供されると、前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と該熱交換器の間に位置するどんな弁も操作することなく、気相にある前記一次冷却媒体は前記受動凝縮器によって受け取られるから該熱交換器へ切り替わる。該熱交換器は(1)気相にある前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、(2)前記一次冷却媒体から熱を移送し、(3)前記一次冷却媒体の相を気体から液体へ変化させ、(4)液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給するように構成される。該熱交換器が前記二次冷却媒体を受け取っていない時、該熱交換器は前記液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給しない。前記蒸発器と前記熱交換器の間及び前記蒸発器と前記受動凝縮器の間の前記一次冷却媒体の流路内に前記一次冷却媒体を循環するポンプ無しで、前記一次冷却媒体は前記蒸発器と前記受動凝縮器の間及び前記蒸発器と前記熱交換器の間を自然循環及び重力により循環する。
【0008】
別の態様では、本発明は処理流体を冷却する方法に関する。この方法は処理流体を蒸発器を通して流し熱を前記処理流体から前記蒸発器内の一次冷却媒体に移送し前記一次冷却媒体を液相から気相に変えるステップと、熱交換器及び受動凝縮器のうち1つを選択的に使用して、前記一次冷却媒体を気相から液相に変えるステップとを含む。前記熱交換器及び前記受動凝縮器のそれぞれは前記蒸発器に結合され気相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器から受け取り、液相の前記一次冷却媒体を前記蒸発器に供給する。この方法はまた、前記一次冷却媒体を前記蒸発器と前記熱交換器及び前記受動凝縮器のうち少なくとも1つとの間で自然循環により循環させるステップも含む。前記蒸発器と前記受動凝縮器を結合するどんな弁も前記蒸発器と前記熱交換器を結合するどんな弁も操作することなく、前記熱交換器及び前記受動凝縮器のうち前記1つが選択される。
【0009】
本発明のこれら及び他の態様、目的、特徴、及び利点が、添付図面と共に読まれるべき例示の実施形態の下記の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る冷却システムを使用するデータセンターの立面図である。
【
図2】
図1に示した冷却システムの
図1の線2‐2に沿った断面図である。
【
図3】本発明の好適な実施形態に係る受動モードで動作する気流冷却組立体の概略図である。
【
図4】能動モードで動作する
図3に示す気流冷却組立体の概略図である。
【
図5A】
図3に示す気流冷却組立体で使用されうるマイクロチャネル冷却コイルを示す。
【
図5B】
図5Aに示したマイクロチャネル冷却コイルのマイクロチャネルの
図5Aの線5B‐5Bに沿った断面図である。
【
図6】受動モードで動作する
図3に示す気流冷却組立体の複数のループを有する冷却システムの概略図である。
【
図7】気流冷却組立体ループの1つが能動モードで動作する
図6に示す冷却システムの概略図である。
【
図8】全ての気流冷却組立体ループが能動モードで動作する
図6に示す冷却システムの概略図である。
【
図9】
図4に示す冷却システムを動作させる方法を描くフローチャートである。
【
図10】本発明の好適な実施形態に係る冷却組立体の空気処理ユニットの概略図である。
【
図11】
図10に示す空気処理ユニットと共に使用される凝縮ユニットの概略図である。
【
図12】本発明の好適な実施形態に係る冷却組立体の概略図である。
【
図13A】
図12に示す冷却組立体と共に使用する単一相浸漬冷却システムによって冷却されるサーバーラックの例である。
【
図13B】
図12に示す冷却組立体と共に使用する2相浸漬冷却システムによって冷却されるサーバーラックの例である。
【
図14】本発明の好適な第2実施形態に係る受動モードで動作する気流冷却組立体の概略図である。
【
図15】能動モードで動作する
図14に示す気流冷却組立体の概略図である。
【
図16】第2実施形態に係る受動モードで動作する気流冷却組立体の別の構成の概略図である。
【
図17】能動モードで動作する
図16に示す気流冷却組立体の概略図である。
【
図18】
図16に示す気流冷却組立体の別の構成の概略図である。
【
図19】
図14及び15に示す気流冷却組立体のループと
図18に示す気流冷却組立体のループとを有する冷却システムの概略図である。
【
図20】疑似受動モードで動作する別の冷却システムの概略図である。
【
図21】能動モードで動作する
図20に示す冷却システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の好適な実施形態に係る冷却システム110を有するデータセンター100を示す。
図2は
図1の線2-2に沿った冷却システム110の断面図である。冷却システム110はデータセンター100に関連して示され説明されるが、冷却システム110はこの用途に限定されず、他の適切な空気冷却用途で使用されてもよい。サーバーなどの電子装置は複数のラック102に搭載され、データセンター100内にこれらのラック102は複数の列に配列され、列間に通路104、106を形成する。一方の通路104は冷たい通路で、他方の通路106は熱い通路である。冷却システムからの冷たい供給空気112は冷たい通路104内に導かれる。次に供給空気112は冷たい通路104からラックを通って熱い通路106に入る。空気がラック102を通過する時、電子装置から熱を引き出して冷却し、熱い空気が熱い通路106に入る。この空気は次に熱い還気114として冷却システム110に戻される。供給空気ファン116はデータセンター100から還気114を引き込み、還気114を冷却システム110を通し(そこで冷却される)、冷却された還気114を供給空気112としてデータセンター100に戻すために使用される。還気114がその中を流れ冷却され供給空気112として戻される冷却システム110の部分は、本書において内部空気処理部132と呼ばれる。
【0012】
冷却システム110は少なくとも1つの気流冷却組立体を使用して還気114を冷却する。下記の実施形態に記載された気流冷却組立体は、気流冷却組立体ループ又はループとも呼ばれることがある。
図3及び4は本発明の第1実施形態に係る気流冷却組立体200を示す。気流冷却組立体200は2つのモード、受動モードと能動モードを有する。受動モードは節約モードとも呼ばれることがある。
図3は受動モード時の気流冷却組立体200の概略図であり、
図4は能動モード時の気流冷却組立体200の概略図である。気流冷却組立体200は使用可能な大気無料冷却シンクが十分な熱排出を提供するのに十分な低温でない時に能動冷却を提供する能力を持つ熱サイフォンの効率性を取り入れる。これは2つの別の凝縮器214、216をループ200内に含むことで実現され、うち1つ(凝縮器214)は受動モードで使用され、他方(凝縮器216)は能動モードで使用される。
【0013】
気流冷却組立体200は一次冷却媒体202を一次冷却剤ループ210を通して循環させる。一次冷却媒体202が自然循環及び重力により一次冷却剤ループ210を通って循環し、ポンプも圧縮器も必要ない。一次冷却媒体202は液体から気体に相変化する任意の適切な冷媒であってよい。下記で更に説明するように、一次冷却剤ループ210はどんな動く部品も必要でない。その結果、一次冷却媒体202として適切な冷媒の入手可能範囲が、例えば直接膨張(DX)冷却システムに比べて大きく拡がり、適切な冷媒は水などの自然冷媒を含む。
【0014】
一次冷却剤ループ210は蒸発器212を含み、一次冷却媒体202は蒸発器212内に収容される。この実施形態では、蒸発器212はコイルであり、好ましくはワンパス溢れコイルである。例えば下記で更に説明するようなマイクロチャネルコイル又はフィン付き管コイルを含む任意の適切なコイルが使用されてよい。受動モードと能動モード両方で、還気114は供給空気ファン116により蒸発器212の外面上を流れる。熱い還気114は蒸発器212の外面を横切って通過する時に蒸発器212内の一次冷却媒体202を蒸発させる。一次冷却媒体202の液相204から気相又は蒸気相206への相変化は還気114を冷却し、冷たい供給空気112としてデータセンター100へ戻されるのを許す。蒸気206は次に蒸気管222を通って2つの凝縮器214、216のうち1つへ上昇する。
【0015】
図3に示した受動モードでは、蒸気206は一次冷却剤ループ210内の受動凝縮器214へ進む。蒸発器212と同様、この実施形態の受動凝縮器214はコイル、好ましくはワンパスコイルであり、例えば下記で更に説明するようなマイクロチャネルコイル又は管コイル(フィン付きとフィンなし両方)を含む任意の適切なコイルが使用されてよい。除熱空気118は除熱ファン120(
図1及び2参照)によって受動凝縮器214の外面を横切って引かれる。この実施形態では、除熱空気118は冷却システム110を囲む屋外環境から引き込まれた外気である。除熱空気118が受動凝縮器214を横切って通過する時、受動凝縮器214に収容された一次冷却媒体202の熱は除熱空気118に放出され、蒸気206を液体204に凝縮させる。次に重力により液相204にある一次冷却媒体202は液体冷媒路224を流れ下り、蒸発器212に戻る。除熱空気118は除熱ファン120によって屋外へ排出される。
【0016】
外気状態が還気114を供給空気112とって所望の状態(例えば、温度)に冷却するのに十分でない時、気流冷却組立体200は
図4に示す能動モードで動作してもよい。能動モードでは、一次冷却媒体202の蒸気206は能動凝縮器216において凝縮される。この実施形態では、能動凝縮器216は熱交換器(HX)とも呼ばれることがある。能動凝縮器216では、一次冷却媒体202から二次冷却システム230の二次冷却媒体208へ熱が移送される。二次冷却媒体208は、例えば冷却された水又は直接膨張冷却システムで使用される蒸気変化冷媒を含む任意の適切な冷却剤媒体であってよい。能動凝縮器216は、例えば平板熱交換器、同軸熱交換器、又は管形熱交換器を含む任意の適切な熱交換器であってよい。一次冷却媒体202の熱が二次冷却媒体208に排出されると、一次冷却媒体202は蒸気206から液体204に凝縮する。次に受動凝縮器214と同様、重力により液相204にある一次冷却媒体202は液体冷媒路224を流れ下り、蒸発器212に戻る。
【0017】
この実施形態では、二次冷却システム230は通常の冷媒サイクルを使用する直接膨張(DX)冷却システム230であり、二次冷却媒体208はそのようなシステムで使用される任意の適切な冷媒である。直接膨張冷却システム230は凝縮器234で冷却される前に冷媒208の圧力と温度を上げる圧縮器232を含む。この実施形態では、直接膨張冷却システム230の凝縮器234も除熱空気118(
図1及び2参照)によって冷却されてよい。冷媒208は次に膨張弁236を通り、能動凝縮器216に流れ込む前にその圧力と温度が低下する。
【0018】
能動モードにおいても、気流冷却組立体200は一次冷却剤ループ210内にポンプも油も圧縮器も必要なく動作する。気流冷却組立体200はモードを切り替える弁さえなしに動作する。一次冷却媒体202の蒸気206は2つの凝縮器214、216のうちより冷たい方へ自然に進み、凝縮する。従って、二次冷却システム230を作動させ能動凝縮器216を冷却することで、気流冷却組立体200は自動的に受動モードから能動モードに切り替わり(能動凝縮器216内の温度が受動凝縮器214内より低いと仮定すると)、二次冷却システム230を停止させることで、ループ200は受動モードに戻る。下記に説明するように、制御器240は二次冷却システム230を作動させ停止させるのに使用されてよい。動く部品がないことに起因する気流冷却組立体200の別の利点は油が必要でないことであり、油を一次ループ210内を循環し続けさせるのに通常必要な冷媒速度範囲外で一次冷却媒体202が流れるのを許す。
【0019】
気流冷却組立体200の凝縮器214、216が
図3及び4に並列に示されているが、凝縮器214、216はまた、能動又は受動凝縮器214、216のうち1つの出口が他方の凝縮器214、216の入口の上流となりそこに流れ込むように直列に配置されてもよい。一次冷却剤ループ210はまた、各凝縮器214、216後にトラップ218及び/又は逆止め弁220を含んでもよい。トラップ218及び逆止め弁220は現在特定のモードで動作していない凝縮器214、216を通る一次冷却媒体202の逆流を防ぐ。他の適切な弁又は方法が逆流を防ぐのに使用されてもよい。このような弁又はトラップは任意選択であり、トラップ218及び逆止め弁220を含め、本システムの圧力降下を増大させ、従って一次ループ210内の一次冷却媒体202の自然循環流を妨げうる。
【0020】
排気路226は各凝縮器214、216のトラップ218の後に位置し凝縮器214、216の入口に接続されてよい。これらの排気路226は一次冷却媒体202の液体204に含まれた任意の気体がループの蒸気側へ逃げるのを許し、重力による蒸発器212への液体流を助ける。
【0021】
蒸発器212内で一次冷却媒体202の蒸発時に形成される泡は、蒸発器212の通路内を上昇する時、液体を含んでいることがある。含まれた液体の帰還路228は蒸発器212の出口に位置し蒸発器212の入口ヘッダーに接続されてよく、この含まれた液体が蒸発器212内の沸騰流路と逆に流れる必要なく、蒸発器入口ヘッダーに戻るのを許す。
【0022】
本実施形態の気流冷却組立体200は重力の支援により自然循環で動作するので、蒸発器212は両凝縮器214、216より低い高さに配置され、凝縮された一次冷却媒体202(液体204)を蒸発器212へ戻すのを重力が支援するのを許す。一次冷却媒体202を蒸発器212の全長に亘って液相204に維持することが望ましい。従って、蒸発器上方の凝縮器214、216の高さは、好ましくは液相204の一次冷却媒体202から蒸発器212の圧力降下に打ち勝つのに十分な圧力水頭を提供するのに十分高い。蒸発器212は同じ水平面にある蒸発器212の液体及び蒸気ヘッダーと同じ高さであってよいが、蒸発器212はまた、好ましくは水平から角度α傾斜して、蒸気排出を容易にするために蒸発器212の蒸気ヘッダーが液体ヘッダーより高くてよい。受動凝縮器214はまた、好ましくは水平から角度β傾斜して、重力による復水流を容易にするために受動凝縮器214の液体ヘッダーが蒸気ヘッダーより低くてよい。受動凝縮器の傾斜角度βは詰りのない排水路を提供し受動凝縮器214内の一次冷却媒体202の逆流を無くすのに十分であるのが好ましい。
【0023】
上述したように、蒸発器212及び受動凝縮器214はマイクロチャネルコイルであってもよい。
図5Aは本実施形態の蒸発器212及び受動凝縮器214として使用されてもよいマイクロチャネルコイル300を示す。マイクロチャネルコイル300を使用することは、例えばマイクロチャネルコイル300の大きな内部表面面積は熱伝達を助けるを含む複数の利点を有する。また、マイクロチャネルコイル300は一次冷却剤ループ210において必要な一次冷却媒体202の量を、例えばフィン付き管コイルに比べて大幅に低減する。一次冷却媒体202量のこの低減は、コスト低減とある冷媒を使用時に潜在的な温室効果ガス放出源の低減とを含む複数の理由で有益である。マイクロチャネルコイル300は液体側302及び蒸気側304を有する。
図5Aに示すように、マイクロチャネルコイル300が蒸発器212として使用される時、一次冷却媒体202の流れは液体側302から蒸気側304(左から右)であり、マイクロチャネルコイル300が受動凝縮器214として使用される時、その流れは反対(右から左)である。
【0024】
マイクロチャネルコイル300は複数のマイクロチャネル押し出し品330によって接続された液体ヘッダー310及び蒸気ヘッダー320を有する。マイクロチャネル押し出し品の
図5Aの線5B‐5Bに沿った断面が
図5Bに示されている。マイクロチャネル押し出し品330は外面332を有し複数のマイクロチャネル334、336を含む。気流がマイクロチャネル押し出し品330の外面332を横切って
図5Bに示すA方向(
図5Aの紙面に垂直)に流される。一次冷却媒体202はマイクロチャネル334、336を通って流れる。各マイクロチャネル押し出し品330はマイクロチャネル押し出し品330間に配置されたアルミニウムフィン340に機械的に鑞付けされ熱伝達を促進する。
【0025】
液体ヘッダー310は液体ヘッダー310を液体冷媒路224に接続する液体接続管312を含む。同様に、蒸気ヘッダー320も蒸気ヘッダー320を蒸気管222に接続する少なくとも1つの蒸気接続管322を含む。マイクロチャネルコイルが蒸発器212として使用されると、複数の蒸気接続管322を有することが有益でありうる。この実施形態では、3つの蒸気接続管322が示されている。複数の蒸気接続管322を使用することは蒸気ヘッダー320内の蒸気の背圧を低減し一次冷却剤ループ210内の自然循環流を促進する。複数の蒸気接続管322が蒸発器212に使用される場合、対応する数の蒸気接続管322が受動凝縮器214及び能動凝縮器216両方に使用されてもよく、複数の蒸気管222が蒸気接続管322に接続される。蒸気管222及び蒸気接続管322について別の考察は大直径管を使用し蒸気の背圧を低減し一次冷却剤ループ210内の自然循環流を促進することである。例えば、R410aが一次冷却媒体202として使用される場合、蒸気管222は蒸気相206の一次冷却媒体202の速度が好ましくは1000fpm(約304.8mpm)未満、より好ましくは600fpm(約182.9mpm)未満であることを許す大きさに作られてもよい。これらのヘッダー設計特徴はマイクロチャネルコイルに限定されず、フィン付き管コイルを含む他の蒸発器及び凝縮器にも当てはまりうる。
【0026】
上述したように、本発明の冷却システム110は複数の気流冷却組立体200ループ200を含んでもよい。例えば、
図1及び2に示された冷却システム110は4つの気流冷却組立体ループ200を有する。複数のループの下記の説明において、
図3及び4を参照して上記で説明したのと同じ符号が使用され、文字を符号の後ろに付けて異なるループを示す。例えば、文字「a」が第1気流冷却組立体ループ200aの部品に付けられ、文字「b」が第2気流冷却組立体ループ200bの部品に付けられるなどである。
【0027】
一対の蒸発器212a、212bが別の対の蒸発器212c、212dと還気114気流に対して並列に配置される。各対の蒸発器212a、212b、212c、212dは直列に配置される。第1対では、還気114はこの対の第2蒸発器212bを横切って流れる前に第1蒸発器212aを横切って流れる。同様に、第2対では、還気114はこの対の第2蒸発器212dを横切って流れる前に第1蒸発器212cを横切って流れる。対応する受動凝縮器214a、214b、214c、214dは同様に対(第1対214a、214bと第2対214c、214d)で第1対は第2対と並列に配置され、各対内の凝縮器は直列に配置される。第1対では、除熱空気118はこの対の第2凝縮器214bを横切って流れる前に第1凝縮器214aを横切って流れ、第2対では、この対の第2凝縮器212dを横切って流れる前に第1凝縮器214cを横切って流れる。
【0028】
図1及び2に示された冷却システム110の1つの構成では、冷却システム110は32フィート(約975cm)長(
図1)、10フィート2インチ(約310cm)幅(
図2)の設置面積を持ち、除熱ファン120を除く全高さは12フィート8インチ(約376cm)である。この例では、88平方フィート(約8.175m
2)のコイル面積(蒸発器212)が冷却処理に利用可能である。蒸発器212を通る500fpm(約152.4mpm)の公称速度で、44000scfm(1245.9標準立方メートル/分)で348kWの設計流が可能であり、107kW/mの周囲ワット容量となる。蒸発器212のコイル長さは容易に拡張され、気流と従って冷却システム110の容量を更に増加させ(幅を増加させずに)、更により大きな周囲ワット容量を可能にしうる。冷却システム110は2つの部分、内部空気処理部132と凝縮ユニット134に分けられてもよい。
図1及び2に示すように、蒸発器212a、212b、212c、212d及び供給空気ファン116は内部空気処理部132内に位置する。二次システム230及び除熱空気ファン120を含む気流冷却組立体200の残りの部品は凝縮ユニット134内に位置する。
図1において、凝縮ユニット134は内部空気処理部132に隣接して示されているが、例えばデータセンター100(例えば、ラック102を収容する建物)の屋根上を含む任意の適切な位置にありうる。
【0029】
複数の気流冷却組立体ループ200の任意の数の適切な構成が使用されてもよい。例えば、
図6は複数の気流冷却組立体ループ200を有する冷却システム110の別の構成の概略図である。
図6に示す構成では、冷却システム110は4つの気流冷却組立体ループ200を有する。各ループ200の蒸発器212e、212f、212g、212hは還気114に対して直列に配置されるが、上述したように蒸発器212e、212f、212g、212hは並列に配置されてもよい。還気は先ず第1ループの蒸発器212eを横切って流れ、次に第2ループの蒸発器212f、第3ループの蒸発器212g、及び第4ループの蒸発器212hをこの順に横切って流れる。
図6に示す構成では、全4つの受動凝縮器214e、214f、214g、214hが除熱空気118に対して並列に配置されるが、上述したように受動凝縮器214e、214f、214g、214hも直列に配置されてもよい。二次冷却システム230(この実施形態では直接膨張冷却システム)の各凝縮器234e、234f、234g、234hは除熱空気118に対して対応するループの受動凝縮器214e、214f、214g、214hと直列に配置される。
【0030】
一般に、各気流冷却組立体ループ200の内部温度は等温であるが、4つの気流冷却組立体ループ200のそれぞれは異なる温度及び圧力で動作する。第1ループの蒸発器212eに入る空気が最も温かい(還気114の初期温度)ので第1ループ内の一次冷却媒体202の温度は最も温かい。蒸発器212f、212g、212hに入る空気はその前のループによる冷却のゆえにその前のループの空気より冷たくなる。外気温度が各気流冷却組立体ループ200の温度より低い時、一次冷却媒体内のエネルギーは受動モードにおいて還気114から除熱空気118に移送されうり、全4つのループは
図6に示すように受動モードで動作する。
【0031】
各ループは選択的に受動モードか又は能動モードで動作しうる。
図7は冷却システム110の第4ループが能動モードで他の3つのループが受動モードで動作することを示し、
図8は4つのループ全てが能動モードで動作することを示す。制御器240が冷却システム110を動作させるのに使用されてよい。この実施形態では、制御器240は下記で更に説明する様々な機能を実行するためのプロセッサ242と様々なデータを記憶するためのメモリ244とを備えるマイクロプロセッサベース制御器である。制御器240はCPUとも呼ばれてよい。1つの実施形態では、冷却システム110の制御はメモリ244に記憶されプロセッサ242により実行される命令列として実現される。
【0032】
制御器240は温度センサー(TS)122に通信可能に結合される。この実施形態では、温度センサー122は供給空気112の温度を監視するのに使用され、温度センサー122が供給空気112の温度を送信し制御器240が受信するのを許す。ループセンサー250も、各気流冷却組立体ループ200の様々なパラメータを測定するのに使用されてもよい。例えば、ループセンサー250は各ループ内の一次冷却媒体202の温度及び圧力を温度センサー(TS)252及び圧力センサー(PS)254を使って測定してもよい。好ましくは、温度センサー252及び圧力センサー254は液体冷媒路224内に位置し一次冷却媒体202の液体204相の温度及び圧力を監視する。
【0033】
制御器240はまた、冷却システム110の他の部品に通信可能に結合され、それらの部品も制御するのに使用されてよい。例えば、供給空気ファン116及び除熱空気ファン120は制御器240に通信可能に結合され、制御器240は還気114及び除熱空気118を蒸発器212e、212f、212g、212h及び凝縮器214e、214f、214g、214hそれぞれを横切って流すのに使用され、気流を増加又は減少させてよい。制御器240はまた、各ループの二次冷却システム230e、230f、230g、230hに通信可能に結合され、二次冷却システム230e、230f、230g、230hをオン又はオフする(作動又は停止させる)のに使用されてよい。
【0034】
図9は
図6及び7に示す冷却システム110が制御される仕方の一例を示すフローチャートである。ステップS405で、制御器240は還気114を蒸発器212e、212f、212g、212hを横切って流す。ステップS410で供給空気温度センサー122は供給空気112の温度を測定するのに使用され、制御器240は供給空気112の温度を受信する。制御器240は次にステップS415で供給空気112の測定された温度を設定点と比較する。設定点は任意の適切な方法又は装置を使って制御器240に提供されてよい。例えば、制御器240はユーザーが供給空気112の所望の温度をそれを介して提供できるユーザーインターフェースに通信可能に結合されてもよく、制御器240は供給空気112の所望の温度を受信し設定点として使用できる。供給空気112の温度が設定点に等しい(又は設定点の適切な作動範囲内である)と、制御器240はステップS405に戻り供給空気112の温度の監視を続ける。
【0035】
供給空気112の温度が冷た過ぎる(設定点の温度又は作動範囲未満である)と、ステップS420で制御器240はループ200の何れかが能動モードで動作しているか調べる。制御器240は、例えば制御器がループの二次冷却システム230を作動又は停止させる時、そのループのモードをメモリ244に記憶してもよい。制御器240は次にメモリ244に問い合わせてどんなループのモードも決定してよい。制御器240は除熱空気118の流量(例えば、動作している除熱ファン120の速度及び数)などの他の適切なパラメータをメモリ244に記憶してもよく、例えば制御器240はこれらのパラメータを同様に調べ変更してもよい。ステップS420で制御器240がどのループ200も能動モードでないと判断すると、制御器240はステップS425で除熱空気118の気流を減らしステップS405へ戻り供給空気112の温度を監視し続ける。ステップS425(又は上述した任意の他のステップ)で冷却システム110に何か変更がされると、制御器240は供給空気112の温度の監視を遅らせて、その変更が供給空気112の温度に影響するのを許す。
【0036】
制御器240がステップS420で少なくとも1つのループ200が能動モードにあると判断すると、制御器240はステップS430でそれらのうち1つのループ200の二次冷却システム230を停止させる。例えば、
図7に示すように、第4ループが能動モードで動作している。この構成で供給空気の温度が冷た過ぎると、制御器240は第4ループの二次冷却システム230hを停止させ、第4ループを
図6に示すように受動モードに戻す。好ましくは、制御器240は還気114に対して最も上流に蒸発器212を有し能動モードで動作するループの二次冷却システム230を停止させる。制御器240は次にステップS405に戻り供給空気112の温度を監視し続ける。
【0037】
供給空気112の温度が熱過ぎる(設定点の温度又は作動範囲を超える)と、制御器240は先ずステップS435で除熱空気118の気流を増加させうるか調べる。除熱空気118の気流を増加させうる(除熱空気118の気流が最大でない)なら、制御器240はステップS440で除熱空気118の気流を増加させステップS405に戻る。制御器240は、例えば除熱空気ファン120の速度を増加させることを含む任意の適切な手段により除熱空気118の気流を増加させてもよい。除熱空気118の気流を増加させられない(除熱空気118の気流が最大である)なら、制御器240はステップS445で全てのループ200が能動モードであるか調べる。
図8に示すように全てのループ200が能動モードであるなら、冷却システム110は最大冷却容量で動作しており、制御器240はステップS405に戻る。少なくとも1つのループが受動モードにあるなら、制御器240はステップS450でそれらのうち1つのループ200の二次冷却システム230を作動させる。例えば、
図6に示すように全てのループが受動モードで動作しているなら、制御器240は1つのループ200の二次冷却システム230、例えば第4ループの二次冷却システム230hを作動させる。好ましくは、制御器240は還気114に対して最も下流に蒸発器212を有し受動モードで動作するループの二次冷却システム230を作動させる。制御器240は次にステップS405に戻り供給空気112の温度を監視し続ける。
【0038】
データセンター冷却システムの場合、節約モード(本実施形態では受動モード)で65%以上の効率を有することがしばしば望ましい。受動モードでは、冷媒は一次冷却剤ループ210内の全ての位置で実質的に同じ圧力であり、内部温度は等温である。エネルギー平衡要件に基づいて、受動凝縮器214及び蒸発器212熱伝達制約が同じ(凝縮器214及び蒸発器212の外面を横切る等気流と凝縮器214及び蒸発器212の外面の等表面特性)ならば、冷媒は蒸発器212及び受動凝縮器214入口の平均に等しい温度であり、非理想世界では、単一ループ200の正味効率は50%未満であろう。しかし、蒸発器サイズに依り、50%超の熱交換効率が、凝縮器214及び蒸発器212の外面を横切る不平衡気流で達成可能である。
【0039】
一次冷却剤ループ210内の流れと逆の気流を持つ複数のループ200を使用して、各ループの効率は付加的効果を有し、単一ループ効率を超える効率が達成されうる。例えば、それぞれ50%の効率を有する2つのループ200が使用され、除熱空気118が第1ループを通り次に第2ループを通って直列に流れ、還気114が逆方向に流れる(第2ループを通り次に第1ループを通る)ならば、70%を超える効率が達成されうる。しかし、単一ループ200の効率が39%に低下する場合、2つではなく3つのループ200を逆流内に配置し70%を超える正味効率を達成できる。上記計算はカ氏70°(約21.1℃)の温度を持ち流量10000cfm(283立方メートル/分)の除熱空気118と、カ氏100°(約37.8℃)の温度を持ち流量5000cfm(141.5立方メートル/分)の還気114を使用した。
【0040】
下記の例(事例1~6)は単一ループ200の効率を評価するために構成された。これらの評価の結果が下記の表1に示されている。下記の事例は不平衡気流を使用し、除熱ファン120は蒸発器212を横切る還気114の公称500fpm(約152.4mpm)面速度に基づいて除熱空気118と還気114の少なくとも2:1気流比を提供するように選択された。しかし、下記の実験事例では、蒸発器212を横切る全気流が5000scfm(141.5標準立方メートル/分)で受動凝縮器214を横切る全気流が11000scfm(311.3標準立方メートル/分)である時、2.2:1に近い気流比を達成した。受動凝縮器214を横切る面速度は500fpm(約152.4mpm)であった。
【0041】
第1事例(事例1)はフィン付き管(FT)コイルを蒸発器212及び受動凝縮器214両方に使用した。蒸発器212のコイルは溢れ2列ワンパスコイルであり、受動凝縮器214のコイルは3列ワンパスコイルであった。両方のコイルが半インチ(約1.27cm)管を典型的な管配置で使用し1インチ(2.54cm)当たり10フィンを有していた。各コイルは5フィート(30.48cm)の長さであった。蒸発器212及び受動凝縮器214両方が水平に対して15度の角度で装着され、重力により蒸気排出及び復水流を容易にした。受動凝縮器214はその下端が蒸発器212の上部放出口の2フィート(60.96cm)上方になるよう装着された。冷媒流を妨げ得られる性能に影響しないように、コイル間の蒸気路及び液体路を液体冷媒路224に1.125インチ(約2.86cm)管を、蒸気管222に2.125管を使って大きなサイズにした。R410aを冷媒として使用した。
【0042】
第2事例(事例2)は第1事例と同じであったが、フィン付き管コイルの代りに溢れマイクロチャネルコイル(MC)を蒸発器212として使用した。マイクロチャネルコイルを使用することは、マイクロチャネルコイルの内部容積は半インチ管コイルに比べて大幅に(47%超)低減されたので必要な冷媒量を大幅に低減した。各マイクロチャネル押し出し品330は38mmの幅を有し28個のマイクロチャネル334、336を有していた。26個のマイクロチャネル334のそれぞれの幅は0.92mmで外側の2つのマイクロチャネル336(
図5B参照)は半径0.55mmで丸みを帯び全体幅は0.94mmであった。マイクロチャネル押し出し品330は1.8mmの全体高さを有し0.35mmの外壁厚みtを有していた。マイクロチャネル334を分ける内壁厚みは0.40mmであった。67個のマイクロチャネル押し出し品330が使用され、それぞれ1.57mの長さを有していた。22.2mmの外径を持つ単一液体接続管312を使用し、25mmの外径を持つ単一蒸気接続管322を使用した。
【0043】
第3事例(事例3)は第2事例と同じであったが、フィン付き管コイルの代りにマイクロチャネルコイル(MC)を受動凝縮器214として使用した。受動凝縮器214用のマイクロチャネルコイルは蒸発器212用のマイクロチャネルコイル(事例2で説明した)と同様に設計されたが、受動凝縮器214は100個のマイクロチャネル押し出し品330(それぞれ1.57mの長さを持つ)を使用した。
【0044】
第4事例(事例4)は第3事例と同じであったが、マイクロチャネルコイルの代りに3つの蒸気管222及び蒸気接続管322(MC Mod)を使用した。事例3及び4のループ200の構成はまた、蒸発器212と受動凝縮器214の間のより高い温度差(それぞれ事例5及び6)で評価された。事例5及び6の蒸発器212と受動凝縮器214の間の温度差を事例3及び4に対して還気114の温度をカ氏20°~25°増加させることで増加させた。下記の表1は各事例の結果を示し、表中「蒸発器」は蒸発器212を、「凝縮器」は受動凝縮器214を指す。
【0045】
【0046】
上記の表1で事例1と事例2を比較して分かるように、蒸発器212においてフィン付き管コイルの代りにマイクロチャネルコイルを使用することは、最も重要な違いを性能にもたらし、熱交換効率を34%から57%に増加させる。受動凝縮器214をマイクロチャネルコイルに変更することは、通常条件において性能結果にほとんど影響がなかった(事例2と事例3を比較)。蒸発器212及び受動凝縮器214を追加の蒸気接続管322を有するように変更すると、通常条件において3%効率増加が得られた(事例3と事例4を比較)。蒸発器212と受動凝縮器214の間の温度差を増加させると、効率は低下した(事例3及び4と事例5及び6をそれぞれ比較)が、複数の蒸気接続管322を有することで、効率低下は減少し総パワー伝達はほぼ50kWに大幅に増加した。
【0047】
R410aの特性及び既知の熱伝達率を使って、一次冷却媒体202の質量流量が蒸気及び液体の特定の熱に基づいて計算されてもよい。マイクロチャネル蒸発器212の場合、熱流束の限界は20kWの範囲内であった。R410aの液体と蒸気の間のエンタルピー差を使って、387kg/hrの質量流量及び5.88m3/hrの流量が計算される。単一の7/8インチ(約2.22cm)管の内径を適用すると、気体速度は4.2m/sである。2つの追加の蒸気接続管をコイルに加えることは、容量を50kWに増加させ、3.1m/sの速度が得られる。それで実用目的のために、R410aを使用時、配管接続は好ましくは約4m/s未満の最大速度のための大きさに作られる。マイクロチャネル押し出し品330内の蒸気流量は50kWの熱交換率の場合、2.1m/sである。大きさは他の冷媒に対してその密度及び粘度に基づいて異なるが、実験により決定されうる。
【0048】
平板熱交換器が事例1~6のそれぞれで能動凝縮器216として使用された。能動凝縮器216は受動凝縮器214と並列に配置され、冷水が二次冷却媒体208として使用された。能動モードでは、効率データと最大パワーデータは空気対空気データによく似ており、マイクロチャネル蒸発器212のフィン付き管蒸発器212に対する優位性と蒸気輸送用マイクロチャネルへの余分のヘッダー接続の追加後の総容量の増加とを確証した。
【0049】
別の冷却システム110が
図10及び11に示されている。
図10及び11に示された冷却システム110の特徴及び部品は
図1~9で上述したのと類似している。上述したのと同じ部品及び類似の部品を示すのに同じ符号が
図10及び11で使用され、これらの部品の詳細な説明は下記の記述から省略される。
図10は内部空気処理部132を示し、
図11は本実施形態の冷却システム110の凝縮ユニット134を示す。
【0050】
図1に示した冷却システム110と同様、
図10及び11に示された冷却システム110は複数の蒸発器212、この実施形態では4つの蒸発器212i、212jであって、2つの第1蒸発器212iと2つの第1蒸発器212jを含む。第1蒸発器212iは還気114に対して互いに並列に配置され、第1共通蒸気管262及び第1共通液体冷媒路266両方に接続される。同様に、第2蒸発器212jは還気114に対して互いに並列に配置され、第2共通蒸気管264及び第2共通液体冷媒路268両方に接続される。第1共通液体冷媒路266及び第2共通液体冷媒路268は上述した蒸気管222及び液体冷媒路224にそれぞれ類似する。各第1蒸発器212iは第2蒸発器212jの1つと還気114に対して直列に配置される。還気114は第1蒸発器212iを横切って流れた後、第2蒸発器212jを横切って流れる。
【0051】
図11に示す凝縮ユニット134は4つの回路、第1回路(回路1)、第2回路(回路2)、第3回路(回路3)、及び第4回路(回路4)を含む。これらの回路のそれぞれの下記の記述において、
図3及び4を参照して上述したのと同じ符号が使用され、異なる回路を示すために参照文字を符号の後ろに付ける。参照文字c1は第1回路の部品に付けられる。参照文字c2は第2回路の部品に付けられる。参照文字c3は第3回路の部品に付けられる。参照文字c4は第4回路の部品に付けられる。しかし、部品の説明がこれらの回路のどれにも共通である場合、特定の回路を指す参照文字は省略される。凝縮ユニット134は4つの回路を持つとして本書で説明されるが、任意の適切な数の回路が使用されてもよい。また、これら4つの回路のそれぞれの特定の部品(例えば、受動凝縮器214と能動凝縮器216)を説明するが、これらの部品の様々な配置は本発明の範囲内であることが熟考されている。
【0052】
また、第1、第2、及び第3回路のそれぞれにおいて、2つの受動凝縮器214は第1蒸発器212i(第1熱サイフォンループ200iの一部)と関連し、2つの受動凝縮器214jは第2蒸発器212j(第2熱サイフォンループ200jの一部)と関連する。これらの凝縮器214も、iか又はjが符号の後ろに付けられその受動凝縮器214がどのループに位置するかを示す。例えば、214ic1は第1回路内の2つの受動凝縮器214(第1熱サイフォンループ200iの一部)の1つを示すのに使用される。
【0053】
図11に示すように、第1蒸発器212iは6つの受動凝縮器214iに並列に接続される。6つの受動凝縮器214iのうち2つが第1、第2、及び第3回路のそれぞれに位置する。第1熱サイフォンループ200iは6つの受動凝縮器214iに並列に接続された1つの能動凝縮器216c4を含む。第1熱サイフォンループ200iの能動凝縮器234c4は第4回路内に位置する。この実施形態では、第4回路は能動凝縮器216c4と対応する二次冷却システム230c4を含むが、どんな受動凝縮器214も含まない。除熱空気ファン120c4は除熱空気118を二次冷却システム230c4の凝縮器234c4の外面を横切って流すように構成される。
【0054】
第2蒸発器212jも6つの受動凝縮器214jに並列に接続される。6つの受動凝縮器214jの2つは第1、第2、及び第3回路のそれぞれに位置する。第2熱サイフォンループ200jは3つの能動凝縮器216jを含む。3つの能動凝縮器216jc1、216jc2、216jc3はそれぞれ第1、第2、及び第3回路に位置する。従って、4つの回路のそれぞれは二次冷却システム230を含む。この実施形態では、各二次冷却システム230c1、230c2、230c3、230c4は互いに並列に接続された2つの凝縮器234を含む。他の実施形態では、第2熱サイフォンループ200jの受動凝縮器214jを通過する前に除熱空気118を冷却するのに予冷器124(
図12参照)が使用されてもよい。このような場合、第2熱サイフォンループ200j内の能動凝縮器216jc1、216jc2、216jc3を省略することが可能である場合がある。
【0055】
第1、第2、及び第3回路のそれぞれの配置は互いに類似する。第1回路の下記説明は第2及び第3回路に等しく当てはまる。第1回路内の凝縮器214ic1、214jc1、234c1は2組、第1凝縮器セット272c1及び第2凝縮器セット274c1として配置される。第1凝縮器セット272c1及び第2凝縮器セット274c1は除熱空気118の気流に対して互いに並列に配置される。第1凝縮器セット272c1及び第2凝縮器セット274c1のそれぞれは第2熱サイフォンループ200jの受動凝縮器214jc1、第1熱サイフォンループ200iの受動凝縮器214ic1、及び二次冷却システム230の凝縮器234c1のそれぞれの1つを含む。凝縮器214jc1、214ic1、234c1は除熱空気118の気流に対して直列に配置される。除熱空気118は第1回路の除熱空気ファン120c1によって各凝縮器を通って次のように引き込まれる。除熱空気118は凝縮ユニット134を囲む屋外環境から引き込まれた外気であり、第2熱サイフォンループ200jの受動凝縮器214jc1を先ず通過する。次に除熱空気118は第1熱サイフォンループ200iの受動凝縮器214ic1を通過する。次に、除熱空気118は二次冷却システム230の凝縮器234c1を通過した後、除熱ファン120によって外へ排気される。各除熱空気ファン120は独立に調節可能又は少なくとも異なる回路間で調節可能である。
【0056】
第1回路内の凝縮器214jc1、214ic1、234c1のこの配置は逆流構成を可能にする。第2熱サイフォンループ200j内の一次冷却媒体202は第1熱サイフォンループ200i内の一次冷却媒体202より冷たい。従って、最も冷たい除熱空気118は最も冷たい凝縮器214jc1を先ず通過し、第2熱サイフォンループ200jの受動凝縮器214jc1によって加熱された後、除熱空気118は第1熱サイフォンループ200iのより温かい受動凝縮器214ic1を通過する。
【0057】
図10及び11に示された冷却システム110は上述した冷却システム110と同様、能動モードと受動モードを切り替えるために第1熱サイフォンループ200i及び第2熱サイフォンループ200j内の弁を使用しない。代りに、二次冷却システム230を作動させ能動凝縮器216を冷却することで、一次冷却媒体202の蒸気206は自然により冷たい能動凝縮器216に進み凝縮し、気流冷却組立体200は熱力学力により受動モードから能動モードに移行する。
【0058】
図10及び11に示された冷却システム110は上述した冷却システム110と同様に、例えば
図9を参照して説明されたプロセスを使用して制御されてよい。供給空気112の温度を設定点へ制御してよい(ステップS415参照)。先ず、供給空気112の温度が設定点を超えていると、冷却システム110を制御するのに使用される制御器240は、例えば除熱ファン120のファン速度を増加させることで除熱空気118の流量を増加させる(ステップS440参照)。供給空気112の温度が設定点未満なら、制御器240は除熱空気118の流量を減少させる(例えば除熱ファン120のファン速度を減少させる)(ステップS425参照)。
【0059】
供給空気112の温度が設定点を超えていて、除熱空気118の流量が最大であるなら、制御器240は二次冷却システム230を作動させる(ステップS450参照)。
図10及び11に示された冷却システム110では、制御器240は供給空気112の温度を設定点に維持するのに必要に応じて各回路の二次冷却システム230を作動させてよい。それらの回路の二次冷却システム230を異なる順序で作動させてよいが、1つの手法は必要に応じて第1回路、次に第2回路、次に第3回路、次に第4回路の順に連続的にこれらの二次冷却システム230を作動させることである。従って、この実施形態では、第2熱サイフォンループ200jの二次冷却システム230を第1熱サイフォンループ200iの二次冷却システム230c4の前に作動させてよい。供給空気112の温度が設定点未満なら、制御器240は、例えばそれらの回路を作動させるのと反対の順に二次冷却システム230を停止させてよい(ステップS430参照)。
【0060】
供給空気112の温度が設定点未満であり、全ての二次冷却システム230(能動冷却モード)がオフで除熱ファン120のファン速度が最小なら、制御器240は供給空気112の温度を設定点に維持するのに必要に応じて除熱ファン120を停止する。除熱ファン120が1つを除いて全てオフである場合、制御器240は第1熱サイフォンループ200iと第2熱サイフォンループ200jのうち1つだけを動作させてもよい。これは停止されたループ(例えば、第2熱サイフォンループ200jでありうる)の流れ制御弁276(下記で更に説明する)を閉じることで達成されうる。
【0061】
能動凝縮器216の幾つか又は全てが動作していて、従ってシステムが能動モードで動作している時でも、本発明者らは能動モードであっても下記の表2の試験結果が示すように幾らかの節約(受動凝縮器214における一次冷却媒体202の冷却)があることを予期せずに見つけた。表2は蒸発器212に亘る公称熱負荷350kWの試験の結果を示す。第1熱サイフォンループ200iと第2熱サイフォンループ200jのうち少なくとも1つの回路は能動モードで下記表に示す条件で動作している。試験は様々な外気(除熱空気118)温度に対して行われ、能動凝縮器216及び受動凝縮器214両方からの熱放出が測定された。回路の能動モードは外気温度に基づいてオン/オフされたが、最も高い外気温度において全ての二次冷却システム230は動作していた。
【0062】
【0063】
上記表2では、熱放出が下記の式(1)を使って計算された。
【0064】
【0065】
式(1)では、Vは凝縮器又は蒸発器を横切る空気(例えば、供給空気112)の実立方フィート/分で表された量であり、TIは凝縮器又は蒸発器に入る空気(例えば、還気114)のカ氏温度、TOは凝縮器又は蒸発器を離れる空気(例えば、供給空気112)のカ氏温度、faは高度に基づく係数である。高度係数faは下記の式(2)を使って計算されてよい。Aは高度(単位はフィート)である。
【0066】
【0067】
弁はモードを切り替えるのに使用されないが、弁は冷却システム110を調節するのに使用されうる。この実施形態では、流れ制御弁276が第1共通液体冷媒路266及び第2共通液体冷媒路268内の各蒸発器212の入口に配置される。任意の適切な弁が流れ制御弁276として使用されてよいが、この実施形態では、流れ制御弁276はステップモーターによって操作される球形弁である。ここで、流れ制御弁276は流れ制御弁276のプラグ又はディスクを通過する流れの連続調整を可能にし、プラグ又はディスクはステップモーターによって操作される。流れ制御弁276は閉じた位置と異なる開口面積を持つ複数の開いた位置を有する。従って、複数の開いた位置はその位置の開口面積に基づいて異なる量の液相204の一次冷却媒体202が流れ制御弁276を通って流れるのを許す。
【0068】
流れ制御弁276は蒸発器212内の液体レベル(液相204の一次冷却媒体202の量)を正確に制御し蒸発器212を出る蒸気206の所望の温度を維持するのに使用される。発明者らは、流れ制御弁276を使用することで、一次冷却媒体202が広範囲の熱負荷及び外気条件において自然循環及び重力により第1熱サイフォンループ200iと第2熱サイフォンループ200jを通って効率的に循環することを発見した。流れ制御弁276は過剰な液体204が蒸発器212に入る(例えば、蒸発器212を溢れさせる)(蒸気206が蒸発器212から流れ出るのを妨げうる)のを防ぐために使用されうる。また、流れ制御弁276は少な過ぎる液体204が蒸発器212に入る(例えば、蒸発器212を干上がらせる)(凝縮器214、216における効果的で効率的な凝縮を妨げうる)のを防ぐために使用されうる。このような考察及び流れ制御弁276の使用は、内部空気処理部132及び凝縮ユニット134が分離している場合、より距離が大きいとより多くの一次冷却媒体202が必要であり溢れなどの上記問題を更に悪化させるので、特に有益である。
【0069】
様々な手法が流れ制御弁276の位置、従って蒸発器212に流れ込む液体204の量を設定するのに使用されてよい。例えば、流れ制御弁276の位置は蒸発器212内の熱吸収、還気114/供給空気112の熱放出、凝縮器214、216内の熱放出、除熱空気118による熱吸収、又は蒸気206の過熱度に基づきうる。上述したように、制御器240は様々なセンサー、例えば第1熱サイフォンループ200iと第2熱サイフォンループ200j内に位置するループセンサー250(例えば、温度センサー252及び圧力センサー254)又は供給空気112、還気114、及び除熱空気118の温度を監視するのに使用される温度センサーに通信可能に結合される。これらのセンサーの出力(制御器への入力)を使って、制御器240は流れ制御弁276の適切な位置を決定し流れ制御弁276のステップモーターを適切に駆動できる。
【0070】
流れ制御弁276を蒸発器212内の熱吸収に基づいて制御する時、熱吸収を蒸発器212に亘る温度上昇に基づいて算出してよい。温度上昇を求める1つの方法は蒸発器212の入口(又は蒸発器212の底の別の適切な位置)における一次冷却媒体202の温度と蒸発器212の出口(又は蒸発器212の上部の別の適切な位置)における一次冷却媒体202の温度とを測定することである。温度上昇を求める別の方法は蒸発器212の底3分の1(蒸発器212の入口に最も近い3分の1)を離れる供給空気112の温度と蒸発器212の上3分の1(蒸発器212の出口に最も近い3分の1)を離れる供給空気112の温度とを測定することである。温度上昇は測定された温度の差を取りその差を設定点と比較することで判断されうる。差が設定点より低いと、制御器240はステップモーターを制御して流れ制御弁276を閉じる方向に動かし蒸発器212に入る液体204の流れを減らす。温度が設定点より高いと、制御器240はステップモーターを制御して流れ制御弁276を開く方向に動かし蒸発器212に入る液体204の流れを増加させる。
【0071】
流れ制御弁276を制御する別の方法は還気114/供給空気112によって放出された熱を測定することである。流れ制御弁276を還気114/供給空気112の熱放出に基づいて制御する時、蒸発器212に達する前と蒸発器212を通過した後に温度センサーを使って還気114の温度を測定してよい。次に制御器240はその熱サイフォンループ(例えば、第1熱サイフォンループ200i又は第2熱サイフォンループ200j)内の熱放出量を測定された温度と還気114/供給空気112の流量に基づいて計算するのに使用されてよい。次に制御器240は熱サイフォンループ200i、200j内で吸収された熱量の関数としての熱サイフォンループ200i、200j内の流れ制御弁276の位置を曲線又は参照表に基づいて設定する。様々な曲線又は値、例えば各回路が能動モードで動作している場合の曲線が様々な動作モードに対して使用されうる。
【0072】
流れ制御弁276を凝縮器214、216内の熱放出に基づいて制御する場合、熱放出は各凝縮器214、216に亘る温度降下に基づいて算出されてよい。上述した温度上昇の測定と同様、温度降下を求める1つの方法は凝縮器214、216の入口(又は凝縮器214、216の上部の別の適切な位置)における一次冷却媒体202の温度と凝縮器214、216の出口(又は凝縮器214、216の底の別の適切な位置)における一次冷却媒体202の温度とを測定することである。温度降下を求める別の方法は凝縮器214、216の上3分の1(凝縮器214、216の入口に最も近い3分の1)を離れる除熱空気118の温度と凝縮器214、216の底3分の1(凝縮器214、216の出口に最も近い3分の1)を離れる除熱空気118の温度とを測定することである。温度降下は測定された温度の差を取ることで判断される。各凝縮器214、216の温度降下は熱サイフォンループ(例えば、第1熱サイフォンループ200i又は第2熱サイフォンループ200j)内の凝縮器214、216によって放出された熱の総量を計算するのに使用されてよく、制御器240は次に熱サイフォンループ200i、200j内の熱放出量の関数としての熱サイフォンループ200i、200j内の流れ制御弁276の位置を曲線又は参照表に基づいて設定する。上述したように、様々な曲線又は値、例えば各回路が能動モードで動作している場合の曲線が様々な動作モードに対して使用されうる。このような場合、流れ制御弁276は上述したように、より開き熱放出がより多いか又はより閉じ熱放出がより少なくなるように調節されうる。或いは、制御器240を使って熱放出を計算する代わりに、温度降下は曲線又は参照表のベースとして直接使用されてもよい。
【0073】
凝縮ユニット134によって放出された熱量を求める別の方法は除熱空気118によって吸収された熱を測定することである。流れ制御弁276を除熱空気118による熱吸収に基づいて制御する場合、除熱空気118の温度を凝縮器214、216、234に達する前と凝縮器214、216、234を通過した後に温度センサーを使って測定してもよい。次に制御器240はその熱サイフォンループ(例えば、第1熱サイフォンループ200i又は第2熱サイフォンループ200j)内の吸収量を除熱空気118の測定された温度と流量に基づいて計算するのに使用されてよく、次に制御器240は熱サイフォンループ200i、200j内で吸収された熱量の関数としての熱サイフォンループ200i、200j内の流れ制御弁276の位置を曲線又は参照表に基づいて設定する(凝縮器214、216内の熱放出に基づいて流れ制御弁276を制御するために上述したやり方と同様に)。
【0074】
流れ制御弁276を過熱された蒸気206の所定の値(設定点)に基づいて制御する場合、流れ制御弁276は開けられて蒸発器212内へのより多くの凝縮液体204を許しうり、それにより蒸気206の過熱温度がその設定点を超えると蒸気206の過熱温度を低下させる。同様に、蒸気206の過熱温度がその設定点未満に低下すると、流れ制御弁276は閉じられ、蒸発器212内への凝縮液体204の流れを低減でき、蒸気206の過熱温度を上昇させる。温度センサー252及び圧力センサー254などのループセンサー250は蒸発器212の出口に位置してよい。このようなセンサー250はまた、蒸発器212自体又は凝縮器214、216に繋がる蒸気路内に適切に位置してよい。次に制御器240は過熱を温度及び圧力測定値に基づいて計算し設定点(例えば、所定/所望のレベル)と比較する。次に制御器240は流れ制御弁276を上述のように調節する。これらの制御方法のいずれでも、調節は測定又は計算された値が設定点を横切ると直ぐには行われないことがあり、代りに、制御器240は設定点を超える上閾温度(又は閾値)及び設定点未満の下閾温度(又は閾値)を横切った時に流れ制御弁276を調節してもよい。本発明は設定点に基づいて制御されると説明したが、当業者はこれらの動作帯がこのような説明に含まれることを理解するであろう。
【0075】
本書に記載の冷却システム110のどれとも同様に、蒸発器212を横切って気流(還気114)を駆動している供給空気ファン116の速度を変えてもよい。供給空気ファン116は
図10に示すように蒸発器212の下流(還気114/供給空気112の流れの方向に)にあってもよい。或いは、供給空気ファン116は蒸発器212の上流であってもよく(
図1に示すように)、供給空気ファン116は還気ファンとも呼ばれうる。一例では、還気114/供給空気112の気流はデータセンター100の要求によって駆動されてよい。データセンター100は本書で建物管理システム(BMS)と呼ばれる制御器(不図示)(冷却システム110用の制御器240とは別の)を有してもよい。BMSはデータセンター100内の必要に基づいて供給空気ファン116の速度がどれ位であるべきかを決定する。このような必要はデータセンター間で異なる。BMSは供給ファン速度信号を冷却システム110の制御器240に送信してよく、制御器240はBMSからの信号に合致するように供給空気ファン116(例えば、稼働している供給空気ファン116の速度及び数)を調整してもよい。
【0076】
冷却システム110内の供給空気ファン116を制御する別の方法は、例えばBMS信号がない場合、供給空気ファン116を還気114の温度用の還気温度設定点へ制御することである。制御器240は、供給空気ファン116の速度(又は稼働している供給空気ファン116の数)を調整して還気114の温度を還気温度設定点に維持することで、還気114/供給空気112の流量を調整できる。還気114の温度が還気温度設定点を超えているなら、供給空気ファン116の速度(又は数)を増加させる。還気114の温度が還気温度設定点未満であるなら、供給空気ファン116の速度(又は数)を減少させる。
【0077】
本書に記載された冷却システム110によって冷却される流体は処理流体と呼ばれてもよい。上記実施形態では、冷却システム110によって冷却される処理流体142は空気である。上記説明では、空気(処理流体142)は電子装置を含むラック102を横切って流れ過熱された後、蒸発器212を横切って流れ(還気114)冷却される。しかし、本書に記載された冷却システム110は空気を冷却することに限定されず、任意の適切な流体を冷却するのに使用されてよい。処理流体142は、例えば水、水・グリコール混合液、及び非導電流体(誘電体)などの液体を含んでもよい。
【0078】
処理流体142が空気である上記実施形態では、蒸発器212は適切にもマイクロチャネル又はフィン付き管コイルであった。処理流体142が蒸気(気体)でなく液体である場合、例えば平板熱交換器、同軸熱交換器、又は管形熱交換器を含む他の適切な蒸発器212が使用されてもよい。
図12は蒸発器212が液体である処理流体142を冷却するように適切に設計された冷却システム110を示す。処理流体142は処理流体ループ140内をポンプ144によって循環させられる。この実施形態は処理流体ループ140内に直列に位置する第1蒸発器212k及び第2蒸発器212lを含む。処理流体142はラック102内のサーバー103などの熱負荷によって加熱される(
図13A及び13B参照)。処理流体142は次に第1蒸発器212k及び第2蒸発器212lによって冷却された後、サーバー103を冷却するために戻される。
【0079】
この実施形態では、第2蒸発器212lは受動凝縮器214(受動凝縮器214l)と能動凝縮器216(能動凝縮器216l)両方に流体的に接続され
図3及び4で説明したループ200と同様に動作する。第1蒸発器212kは、受動凝縮器214lと二次冷却システム230の凝縮器234の間の除熱空気118の気流方向に対して受動凝縮器214lの下流に位置する受動凝縮器214(受動凝縮器214k)に流体的に接続される。上記実施形態と同様に、第1蒸発器212kも、受動凝縮器214k及び能動凝縮器216(能動凝縮器216k)両方に流体的に接続され
図3及び4で説明したループ200と同様に動作する。この実施形態の凝縮ユニット134はまた、除熱空気118を凝縮器214、234のいずれかを通過する前に予冷する断熱予冷器124を含んでもよい。例えば米国Munters社が製造するMunters FA6(商標)蒸発加湿器/冷却器を含む任意の適切な断熱予冷器124が使用されてよい。
【0080】
上記のように、処理流体142はデータセンター100のラック102内のサーバー103などの熱負荷によって加熱されてよい。
図12に示された冷却システム110はサーバー103用の浸漬冷却システムと共に使用するのに適切でありうる。
図13A及び13Bは浸漬冷却システムで使用されるラック102の例を示す。
図13Aでは、サーバー103は誘電体146に浸漬される。サーバー103は誘電体146を加熱するが、誘電体146は液体(単一相)のままである。加熱された誘電体146は処理流体142として処理流体ループ140内を循環させられ冷却されラック102に戻ってサーバー103を更に冷却する。
【0081】
図13Bでも、サーバー103は誘電体146に浸漬される。この場合、誘電体146はサーバー103を2相冷却で冷却する。サーバー103は誘電体146を加熱し、誘電体146は蒸気(気体)に相変化する。誘電体蒸気はラック102の上部に上昇する。ラック102の上部はコイル148を含む。適切な処理流体142はコイル148を通り誘電体146を凝縮させる。別の実施形態では、別の流体を使用することなく蒸気相にある誘電体146が処理流体142として第2蒸発器212l及び第1蒸発器212kによって直接冷却されてよい。
【0082】
上記実施形態では、サーバー103は第1蒸発器212k及び第2蒸発器212lから物理的に離され、処理流体ループ140はサーバー103又は他の情報技術(IT)機器から熱を移送するのに使用される。しかし、本書に記載された発明はそれに限定されず、蒸発器212は、循環する液体(誘電体流体、水、又は他の流体)がIT機器から2相熱サイフォンループに必須の冷媒へ熱を移送する任意の液体‐冷媒間熱交換器であってもよい。他のこのような適切な蒸発器212は、例えばサーバー103又はIT部品に一体化されその中の部品及び/又はチップから熱を直接吸収する冷却板、又は浸漬冷却システムに直接一体化された複数の管状表面を含む。
【0083】
気流冷却組立体ループ500の第2の好適な実施形態が
図14及び15に示されている。この実施形態では、蒸発器512及び受動凝縮器514がヒートパイプとして働く一体熱交換器510に組み込まれる。蒸発器512は一体熱交換器510の下部であり、蒸発器部512とも呼ばれる。同様に、受動凝縮器514は一体熱交換器510の上部であり、凝縮器部とも呼ばれうる。第1実施形態と同様に、フィン付き管コイル又はマイクロチャネルコイルを含む任意の適切な熱交換器が使用されてよい。この実施形態では、一体熱交換器510は管516が2つの固定ヘッダー、上部ヘッダー522と底部ヘッダー524を接続する管516を有するフィン付き管コイルとして示されている。下記に説明するように、重力も冷却処理において役割を果たし、その結果、管516は好ましくは直立してより好ましくは垂直に配置される。
【0084】
受動モードで動作する気流冷却組立体500が
図14に示されている。熱い還気114は一体熱交換器510の蒸発器部512を横切って流れる。管516内に収容された一次冷却媒体202は液相204から気相206に変化し還気114から熱を引き出し、その結果、還気114を冷却する。一次冷却媒体202が蒸発すると、蒸気206は管516内を熱交換器の凝縮器部514へ上昇する。受動モードでは、除熱空気118は凝縮器部514を横切って流れる。熱は一次冷却媒体202から除熱空気118へ放出され、一次冷却媒体を気相206から液相204へ凝縮させる。次に一次冷却媒体202の液体204は管516の側面を伝わり落ち重力の助けで蒸発器部512へ戻る。
【0085】
能動モードで動作する気流冷却組立体ループ500が
図15に示されている。第1実施形態の気流冷却組立体200と同様に、気流冷却組立体500の蒸発器512も第2凝縮器、能動熱交換器凝縮器216に接続される。蒸気管526は一体熱交換器510の上部ヘッダー522を能動凝縮器216に接続する。一次冷却媒体202の蒸気206は蒸気管526を通って能動凝縮器216へ進む。第1実施形態におけるように、熱は一次冷却媒体202から二次冷却システム230の二次冷却媒体208へ能動凝縮器において放出され、一次冷却媒体202を蒸気206から液体204へ相変化させる。凝縮液体204は次に重力の助けにより液体冷媒路528を通って底部ヘッダー524へ進み、再循環冷媒流を確立する。
【0086】
第1実施形態と同様に、この実施形態の気流冷却組立体500もポンプ、油、圧縮機、又はモードを切り替える弁さえも必要なく動作する。二次冷却システム230を作動させ能動凝縮器216を冷却することで、一次冷却媒体202の蒸気206はより冷たい能動凝縮器216へ自然に進み凝縮し、気流冷却組立体500は自動的に受動モードから能動モードに切り替わる。また、温度センサー122、252に通信可能に結合されうる制御器240はこの実施形態の気流冷却組立体500を制御するのに使用されてよい。
【0087】
上述したように、一体熱交換器510用に使用されているフィン付き管コイルの代りに、マイクロチャネルコイルが使用されてもよい。しかし、マイクロチャネル押し出し品の小さいチャネル内で凝縮液体と蒸発気体が互いに反対に流れるので、利用可能な総熱流束はヒートパイプ動作だけに依存する受動モードにおいて制限されることがある。
図16及び17は第2受動凝縮器530(第3凝縮器)を含む第2実施形態の別の構成を示す。この実施形態では、第3凝縮器530は除熱空気118に対して一体熱交換器510の凝縮器部514と直列に配置されたマイクロチャネルコイルである。好ましくは、第3凝縮器530は一体熱交換器の凝縮器部514の上流側に配置される。第3凝縮器530は蒸気ヘッダー532と液体ヘッダー534を有する。第3凝縮器の蒸気ヘッダー532は一体熱交換器510の上部ヘッダー522に蒸気管526によって接続される。
【0088】
受動モード(
図16に示す)では、一次冷却媒体202の蒸気206は蒸気管526を通り第3熱交換器内へ流れ、そこで一次冷却媒体202の凝縮の大部分が発生する。第1実施形態の受動凝縮器214と同様に、除熱空気118は第3凝縮器530の外面を横切って流れ、第3凝縮器530内に収容された一次冷却媒体202の熱は除熱空気118へ放出され蒸気206を液体204へ凝縮させる。一次冷却媒体202の液体204は次に重力の助けにより再循環冷媒流として液体冷媒路528を通って底部ヘッダー524へ進む。
【0089】
能動モード(
図17に示す)では、蒸気206はより冷たい能動凝縮器216へ自然に流れ上記のように凝縮し、能動モードでは第3凝縮器530を通る一次冷却媒体202のもしあれば最少の流れが存在する。第1実施形態と同様に、液体冷媒路528内に蒸気トラップ(不図示)及び/又は逆止め弁220を含み特定のモードで現在動作していない凝縮器216、530を通る一次冷却媒体202の逆流を防ぐことが有益でありうる。
【0090】
第2受動凝縮器530はまた、
図18に示す能動凝縮器216のない構成において使用されてもよい。この構成は受動モードだけを有するが、蒸発器512はなお2つの凝縮器、一体熱交換器510の凝縮器部514と第2受動凝縮器530に接続される。第1実施形態の気流冷却組立体200と同様に、冷却システム110は複数の第2実施形態の気流冷却組立体500を含んでもよい。例えば、冷却システム110は
図19に示すように2つのループ500a、500bを含む。第1ループ500aは
図18に示す能動凝縮器216のない構成に類似し、第2ループ500bは
図14及び15に示す構成に類似するが、一体熱交換器510bとしてマイクロチャネルコイルを有する。この構成では、2つの蒸発器512a、512bは還気114に対して直列に配置される。第2ループ500bの一体熱交換器510b(能動凝縮器216を有する)は第1ループ500aの一体熱交換器510aの上流に位置する。
【0091】
2つの気流冷却組立体ループ600、第1気流冷却組立体ループ600a及び第2気流冷却組立体ループ600bを有する別の冷却システム110が
図20及び21に示されているが、単一ループを含む任意の数のループが使用されてもよい。上記説明と同様に、文字が符号の後ろに付けられその部品が位置するループを示す。この冷却システム110では、還気114は還気114に対して並列に配置された2つの冷却コイル612a、612bを横切って流れるが、冷却コイル612a、612bも並列に配置されてもよい。還気114が冷却コイル612を横切って流れる時、熱は還気114から一次冷却剤ループ610内の一次冷却媒体602へ伝達され、一次冷却媒体602を加熱する。例えば水又は水・グリコール混合液を含む任意の適切な一次冷却媒体602が使用されてよい。
【0092】
一次冷却媒体602によって吸収された熱は次に節約モードにある第2コイル614か又は能動モードの熱交換器616において放出される。一次冷却媒体602は一次冷却剤ループ610を通って第2コイル614か又は熱交換器616へポンプによって循環される。誘導弁620は送り出された一次冷却媒体602を第2コイル614か又は熱交換器616へモードに依って選択的に導く。
【0093】
図20は節約モードにある冷却システム110を示す。節約モードは外気温度が還気114から熱を吸収した後の一次冷却媒体602の温度(例えば、一次冷却剤ループ610内の冷却コイル612後の位置で測定された)未満の時に、上記実施形態で説明した受動モードと同様に使用される。上記実施形態と同様に、節約モード又は能動モードを何時使用するかを決めるのに所定の温度差が設定されてよい。節約モードでは、誘導弁620は一次冷却媒体602を冷却コイル612から第2コイル614へ導き一次冷却媒体602を冷却する。除熱空気118は除熱ファン120によって第2コイル614の外面を横切って流される。一次冷却媒体602の熱は次に一次冷却媒体602から放出され除熱空気118によって吸収される。一次冷却媒体602は次に冷却コイル612に戻る。冷却コイル612及び第2コイル614は、例えばフィン付き管コイル又はマイクロチャネルコイルを含む任意の適切なコイルであってよい。膨張タンク622はポンプ618の上流で冷却コイル612の後に位置してもよい。
【0094】
図21は能動モードにある冷却システム110を示す。上述した能動モードと同様に、この実施形態の能動モードは、外気温度が還気114から熱を吸収した後の一次冷却媒体602の温度を超えている又は所定の温度差内である時に使用される。能動モードでは、誘導弁620は一次冷却媒体602を冷却コイル612から熱交換器616へ導き一次冷却媒体602を冷却する。一次冷却媒体602の熱は次に一次冷却媒体602から放出され二次冷却システム230の二次冷却媒体208によって吸収される。上記実施形態で説明したように、二次冷却システム230は直接膨張冷却システムを含む任意の適切な冷却システムであってよい。一次冷却媒体602は次に冷却コイル612に戻る。
【0095】
本発明を特定の代表的な実施形態で説明したが、多くの追加の部分変更及び変形は、本開示から当業者には明らかであろう。従って、具体的に記載した以外のやり方で本発明が実施されてもよいことは理解されるべきである。従って、本発明の代表的な実施形態は全ての点で例示であり限定でないと考えられるべきであり、本発明の範囲は上述した記載ではなく本出願の請求項及びそれらの等価物により決定されるべきである。
【符号の説明】
【0096】
100 データセンター
102 ラック
104、106 通路
110 冷却システム
112 供給空気
114 還気
116 供給空気ファン
118 除熱空気
120 除熱空気ファン
200 気流冷却組立体
202 一次冷却媒体
204 液体/液相
206 蒸気/気相
208 二次冷却媒体
210 一次冷却剤ループ
212 蒸発器
214 受動凝縮器
216 能動凝縮器
218 トラップ
220 逆止め弁
222 蒸気管
224 液体冷媒路
226 排気路
228 液体帰還路
230 二次冷却システム
232 圧縮器
234 凝縮器
236 膨張弁
240 制御器
300 マイクロチャネルコイル
310 液体ヘッダー
320 蒸気ヘッダー
330 マイクロチャネル押し出し品
332 外面
334、336 マイクロチャネル
340 アルミニウムフィン
【国際調査報告】