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特表2024-532689ヒドロキシエチルでキャップされたカチオン性ペプトイドを含む組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ヒドロキシエチルでキャップされたカチオン性ペプトイドを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/12 20060101AFI20240903BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/44 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240903BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07C237/12 CSP
C12N15/33
C12N15/40
C12N15/50
C12N15/44
C12N15/88 Z
A61P35/00
A61P37/04
A61P31/12
A61K47/18
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/713
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506203
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022039505
(87)【国際公開番号】W WO2023014931
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,275
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/234,190
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2029057
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521126302
【氏名又は名称】ナットクラッカー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッキンレイ、コリン、ジェイムス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA13
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE41
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB331
4C084ZB332
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BN10
4H006BU32
4H006BV21
4H006BV22
(57)【要約】
本開示は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを含む送達ビヒクル組成物、及び送達ビヒクルと核酸などのポリアニオン性化合物との複合体を提供する。本開示は、ポリアニオン性化合物(例えば、核酸)を細胞に送達するためなどの、送達ビヒクル組成物及び複合体を作製及び使用する方法を更に提供する。本開示はまた、本開示の送達ビヒクル複合体を用いて免疫応答を誘発する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
nが、1、2、3、4、5、又は6であり、
が、H、C1~3アルキル、又はヒドロキシエチルであり、
各Rが、独立して、C8~24アルキル又はC8~24アルケニルである)の構造を有する化合物。
【請求項2】
nが、3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが、4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、Hである、請求項1~3に記載の化合物。
【請求項5】
が、エチル又はヒドロキシエチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
各Rが、独立して、C8~18アルキル又はC8~18アルケニルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
各Rが、独立して、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
各Rが、独立して、
【化3】
からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
各Rが、独立して、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
各Rが、独立して、
【化5】
である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
【化6】
からなる群から選択される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
構造:
【化7】
を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13に記載の塩を含む、送達ビヒクル組成物。
【請求項15】
前記組成物が、リン脂質、ステロール、及びPEG化脂質のうちの1つ以上を更に含む、請求項14に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項16】
前記組成物が、リン脂質、ステロール、及びPEG化脂質を含む、請求項14に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項17】
前記組成物が、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13に記載の塩、並びにリン脂質、ステロール、及びPEG化脂質から本質的になる、請求項14に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項18】
前記式(I)の化合物又は塩が、約30モル%~約60モル%の量で存在する、請求項14~17のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項19】
前記式(I)の化合物又は塩が、約35モル%~約55モル%の量で存在する、請求項18に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項20】
前記式(I)の化合物又は塩が、約30モル%~約45モル%の量で存在する、請求項18に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項21】
前記式(I)の化合物又は塩が、約35モル%~約39モル%の量で存在する、請求項18又は19に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項22】
前記式(I)の化合物又は塩が、約39モル%~約52モル%の量で存在する、請求項18又は19に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項23】
前記式(I)の化合物又は塩が、約30モル%~約35モル%の量で存在する、請求項20に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項24】
前記式(I)の化合物又は塩が、約40モル%~約45モル%の量で存在する、請求項22に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項25】
前記式(I)の化合物又は塩が、約42モル%~約49モル%の量で存在する、請求項22に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項26】
前記式(I)の化合物又は塩が、約50モル%~約52モル%の量で存在する、請求項22に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項27】
前記組成物が、約30モル%~約60モル%の式(I)の前記化合物と、約3モル%~約20モル%の前記リン脂質と、約25モル%~約60モル%の前記ステロールと、約1モル%~約5モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項28】
前記組成物が、約35モル%~約55モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約5モル%~約15モル%の前記リン脂質と、約30モル%~約55モル%の前記ステロールと、約1モル%~約3モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項27に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項29】
前記組成物が、約38モル%~約52モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約9モル%~約12モル%の前記リン脂質と、約35モル%~約50モル%の前記ステロールと、約1モル%~約2モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項28に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項30】
前記組成物が、約30モル%~約49モル%の式(I)の前記化合物と、約5モル%~約15モル%の前記リン脂質と、約30モル%~約55モル%の前記ステロールと、約1モル%~約3モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項31】
前記組成物が、約35モル%~約49モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約7モル%~約12モル%の前記リン脂質と、約35モル%~約50モル%の前記ステロールと、約1モル%~約2モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項30に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項32】
前記組成物が、約30モル%~約45モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約7モル%~約12モル%の前記リン脂質と、約40モル%~約55モル%の前記ステロールと、約1モル%~約3モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項30に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項33】
前記組成物が、約30モル%~約35モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約7モル%~約12モル%の前記リン脂質と、約50モル%~約55モル%の前記ステロールと、約2モル%~約3モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項30に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項34】
前記組成物が、約40モル%~約45モル%の式(I)の前記化合物又は前記塩と、約7モル%~約12モル%の前記リン脂質と、約40モル%~約45モル%の前記ステロールと、約1モル%~約2モル%の前記PEG化脂質と、を含む、請求項30に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項35】
前記リン脂質が、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16LysoPC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15~34のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項36】
前記リン脂質が、DOPE、DSPC、又はそれらの組み合わせである、請求項35に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項37】
前記リン脂質が、DSPCである、請求項36に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項38】
前記ステロールが、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15~37のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項39】
ステロールが、コレステロールである、請求項38に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項40】
前記PEG化脂質が、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、PEG修飾ステロール、及びPEG修飾リン脂質からなる群から選択される、請求項15~39のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項41】
前記PEG修飾脂質が、PEG修飾コレステロール、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}、N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}、PEG修飾DMPE(DMPE-PEG)、PEG修飾DSPE(DSPE-PEG)、PEG修飾DPPE(DPPE-PEG)、PEG修飾DOPE(DOPE-PEG)、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DMG-PEG)、ジステアロイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、ジパルミトイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、ジオレオイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DOG-PEG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項42】
前記PEG修飾脂質が、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール2000(DMG-PEG2000)である、請求項41に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項43】
約38.2モル%の
【化8】
約11.8モル%のDSPC、約48.2モル%のコレステロール、及び約1.9モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項44】
約42.6モル%の
【化9】
約10.9モル%のDSPC、約44.7モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項45】
約48.2モル%の
【化10】
約9.9モル%のDSPC、約40.4モル%のコレステロール、及び約1.6モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項46】
約51.3モル%の
【化11】
約9.3モル%のDSPC、約38モル%のコレステロール、及び約1.5モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項47】
約44.4モル%の
【化12】
約10.6モル%のDSPC、約43.3モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項48】
約44.4モル%の
【化13】
約10.6モル%のDSPC、約43.4モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項49】
約33.1モル%の
【化14】
約10.6モル%のDSPC、約53.8モル%のコレステロール、及び約2.5モル%のDMG-PEG2000、を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物。
【請求項50】
請求項14~49のいずれか一項に記載の送達ビヒクル組成物、及びポリアニオン化合物を含む、送達ビヒクル複合体。
【請求項51】
式(I)の前記化合物又はその塩が、前記ポリアニオン化合物と複合体を形成している、請求項50に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項52】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約5:1~約25:1の質量比で存在する、請求項51に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項53】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約7:1~約20:1の質量比で存在する、請求項52に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項54】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約10:1~約17:1の質量比で存在する、請求項53に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項55】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約19:1の質量比で存在する、請求項53に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項56】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約20:1の質量比で存在する、請求項53に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項57】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約10:1の質量比で存在する、請求項54に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項58】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約12:1の質量比で存在する、請求項54に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項59】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約13:1の質量比で存在する、請求項54に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項60】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約15:1の質量比で存在する、請求項54に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項61】
式(I)の前記化合物又は前記塩と、前記ポリアニオン性化合物とが、約17:1の質量比で存在する、請求項54に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項62】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約2:1~約10:1の質量比で存在する、請求項50~61のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項63】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約2:1~約4:1の質量比で存在する、請求項62に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項64】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約2:1~約3:1の質量比で存在する、請求項62に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項65】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約4:1の質量比で存在する、請求項63に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項66】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約2.7:1の質量比で存在する、請求項64に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項67】
前記ステロールと、前記ポリアニオン性化合物とが、約5:1~約8:1の質量比で存在する、請求項50~66のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項68】
前記ステロールと、前記ポリアニオン性化合物とが、約5:1~約6:1の質量比で存在する、請求項50~67のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項69】
前記ステロールと、前記ポリアニオン性化合物とが、約5.4:1の質量比で存在する、請求項68に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項70】
前記ステロールと、前記ポリアニオン性化合物とが、約8.1:1の質量比で存在する、請求項67に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項71】
前記ステロールと、前記ポリアニオン性化合物とが、約6.7:1の質量比で存在する、請求項67に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項72】
前記PEG化脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約0.5:1~約2.5:1の質量比で存在する、請求項50~71のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項73】
前記PEG化脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約1:1~約2:1の質量比で存在する、請求項72に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項74】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約2.1:1の質量比で存在する、請求項72に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項75】
前記リン脂質と、前記ポリアニオン性化合物とが、約1.4:1の質量比で存在する、請求項73に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項76】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約10:1の質量比を有する
【化15】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~54、57、63、64、66~69、71~73、及び75のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項77】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約12:1の質量比を有する
【化16】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、5.4:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~54、58、62~64、66~69、72、73、及び75のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項78】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約15:1の質量比を有する
【化17】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、5.4:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~54、60、62~64、66~69、72、73、及び75のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項79】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約17:1の質量比を有する
【化18】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、5.4:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~54、61~64、66~69、72、73、及び75のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項80】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約13:1の質量比を有する
【化19】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、5.4:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~54、59、62~64、66~69、72、73、及び75のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項81】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約19:1の質量比を有する
【化20】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約4:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、約8.1:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.1:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~55、62、63、65、67~69、及び72~74のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項82】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約9.7:1の質量比を有する
【化21】
前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.7:1の質量比を有するDSPC、前記ポリアニオン性化合物に対して、約6.7:1の質量比を有するコレステロール、及び前記ポリアニオン性化合物に対して、約2.1:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む、請求項50~53、57、62~64、66~68、及び71~74のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項83】
前記複合体が、約50nm~約200nmの粒径及び/又は約0.25未満の多分散指数(PDI)を示す、請求項50~82のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項84】
前記複合体が、約60nm~約100nmの粒径を示す、請求項83に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項85】
前記複合体が、約60nm~約90nmの粒径を示す、請求項84に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項86】
前記複合体が、約105nm~約200nmの粒径を示す、請求項83に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項87】
前記送達ビヒクル複合体が、約155nm~約195nmの粒径を示す、請求項86に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項88】
前記ポリアニオン性化合物の少なくとも80%が、4℃で48日間の保存後に保持されるか、若しくは前記送達ビヒクル複合体が、4℃で48日間の保存後に、その元のサイズの少なくとも80%を保持するか、又はその両方である、請求項50~87のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項89】
前記ポリアニオン性化合物が、少なくとも1つの核酸を含む、請求項50~88のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項90】
前記少なくとも1つの核酸が、RNA、DNA、又はそれらの組み合わせを含む、請求項89に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項91】
前記少なくとも1つの核酸が、RNAを含む、請求項90に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項92】
前記RNAが、ペプチド、タンパク質、又は前述のものの機能的断片をコードするmRNAである、請求項91に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項93】
前記mRNAが、ウイルスペプチド、ウイルスタンパク質、又は前述のもののいずれかの機能的断片をコードする、請求項92に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項94】
前記mRNAが、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質又はその機能的断片をコードする、請求項93に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項95】
前記mRNAが、HPV E6タンパク質及び/若しくはHPV E7タンパク質、又は前述のものの機能的断片をコードする、請求項94に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項96】
前記mRNAが、ウイルススパイクタンパク質又はその機能的断片をコードする、請求項95に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項97】
前記mRNAが、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質又はその機能的断片をコードする、請求項96に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項98】
前記mRNAが、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)又はその機能的断片をコードする、請求項97に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項99】
SARS-CoVスパイク(S)タンパク質をコードするmRNA及びインフルエンザ血球凝集素(HA)をコードするmRNA、又は前記の機能的断片を含む、請求項98に記載の送達ビヒクル複合体。
【請求項100】
請求項50~99のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項101】
腫瘍内(IT)又は筋肉内(IM)組成物としての、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項102】
免疫応答の誘導を必要とする対象におけるその誘導の方法であって、有効量の請求項70~79のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体、又は請求項100若しくは101に記載の医薬製剤を前記対象に投与し、それによって前記対象において免疫応答を誘導することを含む、方法。
【請求項103】
ウイルス感染症の治療を必要とする対象におけるその治療の方法であって、有効量の請求項92~101のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体、又は請求項100若しくは101のいずれかに記載の医薬製剤を前記対象に投与し、それによって前記対象においてウイルス感染症を治療することを含む、方法。
【請求項104】
癌の治療を必要とする対象におけるその治療の方法であって、有効量の請求項92~101のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体、又は請求項100若しくは101のいずれかに記載の医薬製剤を前記対象に投与し、それによって前記対象において前記癌を治療することを含む、方法。
【請求項105】
前記癌が、子宮頸癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、前立腺癌、肺癌、又はそれらの組み合わせである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記投与が、筋肉内送達、腫瘍内送達、静脈内送達、腹腔内送達、又は皮下送達による、請求項102~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法であって、前記細胞を、請求項50~99のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体、又は請求項100若しくは101に記載の医薬組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項108】
前記細胞が、筋細胞、腫瘍細胞、又はそれらの組み合わせである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記ポリアニオン性化合物が、ペプチド、タンパク質、又は前述のいずれかの断片をコードするmRNAであり、前記細胞は、前記送達ビヒクル複合体に接触させた後に、前記ペプチド、前記タンパク質、又は前記断片を発現する、請求項107又は108に記載の方法。
【請求項110】
式(I)の前記化合物又は前記塩を、前記ポリアニオン性化合物に接触させることを含む、請求項50~99のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体を形成する方法。
【請求項111】
式(I)の前記化合物又は前記塩を含む溶液を、前記ポリアニオン性化合物を含む溶液と混合することを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
請求項92~101のいずれか一項に記載の送達ビヒクル複合体、又は請求項100若しくは101のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、ワクチン。
【請求項113】
癌の治療に使用するための、請求項112に記載のワクチン。
【請求項114】
患者における癌を治療又は予防する方法であって、請求項112に記載のワクチンを、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項115】
前記癌が、子宮頸癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、前立腺癌、肺癌、又はそれらの組み合わせである、請求項113に記載の使用のためのワクチン又は請求項114に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連技術の説明)
治療用核酸、例えば、mRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子活性化RNA(saRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、及び免疫刺激核酸は、遺伝子レベルでの疾患の予防及び治療に非常に有望である。しかし、核酸は、典型的には、血液中での急速な分解、腎クリアランス、不十分な細胞取り込み、及び非効率的なエンドソーム脱出を受ける。したがって、核酸が治療的に有用であるために、核酸を細胞核又はサイトゾルに送達するための安全かつ有効な系が必要とされる。オリゴヌクレオチドなどのポリアニオン性化合物の細胞送達及びインビボでの送達のための従来の方法には、ウイルスベクター、カチオン性脂質ナノ粒子(LNP)、及びポリカチオン性ポリマーが挙げられる。これらの送達系は、例えば、不十分な安定性、迅速なクリアランス、不十分な毒性、免疫応答に関する懸念、及びそれらのポリアニオン性カーゴの最適以下の発現などの制限によって悩まされ得る。
【発明の概要】
【0002】
核酸を細胞に送達するための安定で、安全で、有効な系が必要とされている。したがって、本開示は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを含む送達ビヒクル組成物、及び送達ビヒクル組成物と例えば核酸などのポリアニオン性化合物との複合体に関する。本開示は更に、例えばmRNAなどのポリアニオン性化合物の細胞内送達のための送達ビヒクル組成物及び複合体を作製及び使用する方法、並びに本開示の複合体を用いて免疫応答を誘発する方法に関する。
【0003】
一態様では、本開示は、式(I):
【0004】
【化1】
の構造を有する化合物を提供し、式中、nは、1、2、3、4、5、又は6であり、Rは、H、C1~3アルキル、又はヒドロキシエチルであり、各Rは、独立して、C8~24アルキル又はC8~24アルケニルである。場合によっては、nは、3である。様々な場合では、nは、4である。いくつかの実装形態では、RはHである。場合によっては、Rはエチル又はヒドロキシエチルである。様々な場合では、Rは独立して、C8~18アルキル又はC8~18アルケニルである。いくつかの実装形態では、各Rは、
【0005】
【化2】
からなる群から選択される。様々な場合では、各Rは、独立して、
【0006】
【化3】
からなる群から選択される。いくつかの実装形態では、Rは、独立して、
【0007】
【化4】
からなる群から選択される。様々な実装形態では、各Rは、
【0008】
【化5】
である。場合によっては、式(I)の化合物は、
【0009】
【化6】
からなる群から選択される構造を有する。様々な場合では、式(I)の化合物は、構造:
【0010】
【化7】
を有する。式(I)の化合物の、薬学的に許容される塩が、本明細書に更に開示される。
【0011】
本開示の別の一態様は、本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む送達ビヒクル組成物を提供する。いくつかの実装形態では、組成物は、リン脂質、ステロール、及びPEG化脂質のうちの1つ以上を更に含む。いくつかの実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約30モル%~約60モル%の量で存在する。いくつかの実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約35モル%~約55モル%の量で存在する。様々な実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約30モル%~約45モル%の量で存在する。様々な実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約35モル%~約39モル%の量で存在する。場合によっては、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約39モル%~約52モル%の量で存在する。様々な実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約30モル%~約35モル%の量で存在する。様々な実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、送達ビヒクル組成物中に、約40モル%~約45モル%の量で存在する。様々な場合では、式(I)の化合物又は塩は、約42モル%~約49モル%の量で存在する。いくつかの実装形態では、式(I)の化合物又は塩は、約50モル%~約52モル%の量で存在する。
【0012】
様々な実装形態では、組成物は、リン脂質、ステロール、及びPEG化脂質を含む。場合によっては、組成物は、本明細書に開示される化合物又はその塩、リン脂質、ステロール、及びPEG化脂質から本質的になる。場合によっては、組成物は、約30モル%~約60モル%の式(I)の化合物、約3モル%~約20モル%のリン脂質、約25モル%~約60モル%のステロール、及び約1モル%~約5モル%のPEG化脂質を含む。様々な場合では、当該組成物は、約35モル%~約55モル%の式(I)の化合物又は塩、約5モル%~約15モル%のリン脂質、約30モル%~約55モル%のステロール、及び約1モル%~約3モル%のPEG化脂質を含む。いくつかの実装形態では、当該組成物は、約38モル%~約52モル%の式(I)の化合物又は塩、約9モル%~約12モル%のリン脂質、約35モル%~約50モル%のステロール、及び約1モル%~約2モル%のPEG化脂質を含む。様々な実装形態では、組成物は、約30モル%~約49モル%の式(I)の化合物、約5モル%~約15モル%のリン脂質、約30モル%~約55モル%のステロール、及び約1モル%~約3モル%のPEG化脂質を含む。場合によっては、組成物は、約35モル%~約49モル%の式(I)の化合物又は塩、約7モル%~約12モル%のリン脂質、約35モル%~約50モル%のステロール、及び約1モル%~約2モル%のPEG化脂質を含む。場合によっては、組成物は、約30モル%~約45モル%の式(I)の化合物又は塩、約7モル%~約12モル%のリン脂質、約40モル%~約55モル%のステロール、及び約1モル%~約3モル%のPEG化脂質を含む。場合によっては、組成物は、約30モル%~約35モル%の式(I)の化合物又は塩、約7モル%~約12モル%のリン脂質、約50モル%~約55モル%のステロール、及び約2モル%~約3モル%のPEG化脂質を含む。場合によっては、組成物は、約40モル%~約45モル%の式(I)の化合物又は塩、約7モル%~約12モル%のリン脂質、約40モル%~約45モル%のステロール、及び約1モル%~約2モル%のPEG化脂質を含む。場合によっては、リン脂質は、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16LysoPC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。場合によっては、リン脂質は、DOPE、DSPC、又はそれらの組み合わせである。様々な場合では、リン脂質は、DSPCである。いくつかの実装形態では、ステロールは、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。場合によっては、ステロールは、コレステロールである。いくつかの実装形態では、PEG化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、PEG修飾ステロール、及びPEG修飾リン脂質からなる群から選択される。様々な実装形態では、PEG修飾脂質は、PEG修飾コレステロール、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}、N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}、PEG修飾DMPE(DMPE-PEG)、PEG修飾DSPE(DSPE-PEG)、PEG修飾DPPE(DPPE-PEG)、PEG修飾DOPE(DOPE-PEG)、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DMG-PEG)、ジステアロイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、ジパルミトイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、ジオレオイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DOG-PEG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。場合によっては、PEG修飾脂質は、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール2000(DMG-PEG2000)である。様々な場合では、当該組成物は、約38.2モル%の化合物140、約11.8モル%のDSPC、約48.2モル%のコレステロール、及び約1.9モル%のDMG-PEG2000を含む。いくつかの実装形態では、組成物は、約42.6モル%の化合物140、約10.9モル%のDSPC、約44.7モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む。いくつかの実装形態では、組成物は、約48.2モル%の化合物140、約9.9モル%のDSPC、約40.4モル%のコレステロール、及び約1.6モル%のDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、組成物は、約51.3モル%の化合物140、約9.3モル%のDSPC、約38モル%のコレステロール、及び約1.5モル%のDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、組成物は、約44.4モル%の化合物140、約10.6モル%のDSPC、約43.3モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、組成物は、約44.4モル%の化合物140、約10.6モル%のDSPC、約43.4モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、組成物は、約33.1モル%の化合物140、約10.6モル%のDSPC、約53.8モル%のコレステロール、及び約2.5モル%のDMG-PEG2000を含む。
【0013】
本明細書に更に開示されるのは、本明細書に記載の送達ビヒクル組成物と、ポリアニオン性化合物とを含む、送達ビヒクル複合体である。場合によっては、式(I)の化合物又はその塩は、ポリアニオン性化合物と複合体を形成している。様々な場合では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約5:1~約25:1の質量比で存在する。いくつかの実装形態では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約7:1~約20:1の質量比で存在する。様々な場合では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約10:1~約17:1の質量比で存在する。場合によっては、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約19:1の質量比で存在する。場合によっては、式(I)の化合物又は、塩及びポリアニオン性化合物は、約20:1の質量比で存在する。場合によっては、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約10:1の質量比で存在する。様々な場合では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約12:1の質量比で存在する。式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約13:1の質量比で存在する。いくつかの実装形態では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約15:1の質量比で存在する。様々な実装形態では、式(I)の化合物又は塩、及びポリアニオン性化合物は、約17:1の質量比で存在する。場合によっては、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約2:1~約10:1の質量比で存在する。場合によっては、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約2:1~約4:1の質量比で存在する。様々な場合では、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約2:1~約3:1の質量比で存在する。様々な場合では、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約4.0:1の質量比で存在する。様々な場合では、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約2.7:1の質量比で存在する。いくつかの実装形態では、ステロール及びポリアニオン性化合物は、約5:1~約8:1の質量比で存在する。いくつかの実装形態では、ステロール及びポリアニオン性化合物は、約5:1~約6:1の質量比で存在する。様々な実装形態では、ステロール及びポリアニオン化合物は、約5.4:1の質量比で存在する。場合によっては、ステロール及びポリアニオン性化合物は、約8.1:1の質量比で存在する。場合によっては、ステロール及びポリアニオン性化合物は、約6.7:1の質量比で存在する。場合によっては、PEG化脂質及びポリアニオン性化合物は、約0.5:1~約2.5:1の質量比で存在する。様々な場合では、PEG化脂質及びポリアニオン性化合物は、約1:1~約2:1の質量比で存在する。場合によっては、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約2.1:1の質量比で存在する。場合によっては、リン脂質及びポリアニオン性化合物は、約1.4:1の質量比で存在する。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約10:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約12:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。場合によっては、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約15:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、及びポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、並びにポリアニオン性化合物に対して約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約17:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約13:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約1.4:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約19:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約4.0:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約5.4:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約2.1:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、ポリアニオン性化合物に対して約9.7:1の質量比を有する化合物140、ポリアニオン性化合物に対して約2.7:1の質量比を有するDSPC、ポリアニオン性化合物に対して約6.7:1の質量比を有するコレステロール、及びポリアニオン性化合物に対して約2.1:1の質量比を有するDMG-PEG2000を含む。
【0014】
場合によっては、複合体は、約50nm~約200nmの粒径及び/又は0.25未満の多分散指数(PDI)を示す。様々な場合では、複合体は、約60nm~約100nmの粒径を示す。いくつかの実装形態では、複合体は、約60nm~約90nmの粒径を示す。様々な実装形態では、複合体は、約105nm~約200nmの粒径を示す。様々な場合では、複合体は、約150nm~約200nmの粒径を示す。場合によっては、送達ビヒクル複合体は、約105nm~約200nmの粒径を示す。場合によっては、送達ビヒクル複合体は、約40nm~約115nm、又は約55nm~約95nm、又は約70~約80nm、又は約75nmの粒径を示す。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、約135nm~約225nm、又は約155nm~約195nm、又は約170~約180nm、又は約175nmの粒径を示す。様々な場合では、ポリアニオン性化合物の少なくとも80%が、4℃で48日間の保存後に保持されるか、又は送達ビヒクル複合体が、4℃で48日間の保存後に、その元のサイズの少なくとも80%を保持するか、又はその両方である。
【0015】
場合によっては、ポリアニオン性化合物は、少なくとも1つの核酸を含む。様々な場合では、少なくとも1つの核酸は、RNA、DNA、又はそれらの組み合わせを含む。様々な場合では、少なくとも1つの核酸は、RNAを含む。いくつかの実装形態では、RNAは、ペプチド、タンパク質、又は前述の機能的断片をコードするmRNAである。様々な実装形態では、mRNAは、ウイルスペプチド、ウイルスタンパク質、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、mRNAは、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質又はその機能的断片をコードする。様々な場合では、mRNAは、HPV E6タンパク質及び/若しくはHPV E7タンパク質、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、HPVタンパク質は、HPVサブタイプHPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、及び/又は68に由来する。様々な場合では、HPVタンパク質は、HPVサブタイプHPV16及び/又はHPV18に由来する。場合によっては、mRNAは、ウイルススパイクタンパク質又はその機能的断片をコードする。様々な場合では、mRNAは、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、RNAは、SARS関連コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルス0C43(HCoV-0C43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、又はヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63))をコードする。場合によっては、mRNAは、インフルエンザ血球凝集素(HA)、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。いくつかの実装形態では、インフルエンザAウイルスは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、及びH16からなる群から選択されるサブタイプのHAを有する。様々な実装形態では、インフルエンザサブタイプは、HA株H1、H2、H3、又はH5である。様々な場合では、1つのmRNAは、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質をコードし、1つのmRNAは、インフルエンザ血球凝集素(HA)、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。
【0016】
本開示の送達ビヒクル複合体と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が、本明細書に更に開示される。場合によっては、医薬組成物は、腫瘍内(IT)又は筋肉内(IM)組成物である。
【0017】
また本明細書に開示されるのは、免疫応答の誘導を必要とする対象におけるその誘導の方法であって、有効量の本明細書に記載の送達ビヒクル複合体又は送達ビヒクル複合体を含む医薬製剤を対象に投与し、それによって対象において免疫応答を誘導することを含む方法である。本明細書に更に開示されるのは、ウイルス感染の治療を必要とする対象におけるその治療の方法であって、対象に有効量の本明細書に記載の送達ビヒクル複合体又は送達ビヒクル複合体を含む医薬製剤を投与し、それによって対象におけるウイルス感染を治療することを含む方法である。また本明細書に開示されるのは、癌の治療を必要とする対象におけるその治療の方法であって、有効量の本明細書に記載の送達ビヒクル複合体又は送達ビヒクル複合体を含む医薬製剤を対象に投与し、それによって対象における癌を治療することを含む方法である。場合によっては、癌は、子宮頸癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、前立腺癌、肺癌、又はそれらの組み合わせである。様々な場合では、投与は、筋肉内、腫瘍内、静脈内、腹腔内、又は皮下送達による。
【0018】
また、本明細書に開示されるのは、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法であって、細胞を、本明細書に記載の送達ビヒクル複合体又は送達ビヒクル複合体を含む医薬製剤に接触させることを含む方法である。場合によっては、細胞は、筋細胞、腫瘍細胞、又はそれらの組み合わせである。場合によっては、ポリアニオン性化合物は、ペプチド、タンパク質、又は前述のいずれかの断片をコードするmRNAであり、細胞は、送達ビヒクル複合体と接触させた後に、ペプチド、タンパク質、又は断片を発現する。
【0019】
また本明細書に開示されるのは、式(I)の化合物又は塩を、ポリアニオン性化合物に接触させることを含む、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体を形成する方法である。場合によっては、本方法は、式(I)の化合物又は塩を含む溶液を、ポリアニオン性化合物を含む溶液と混合することを含む。
【0020】
また本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体又は本明細書に開示される医薬組成物を含むワクチンである。癌の治療における使用のための、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体又は本明細書に開示される医薬組成物を含むワクチンも開示される。患者における癌を治療又は予防する方法であって、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体又は本明細書に開示される医薬組成物を患者に投与することを含む方法も開示される。様々な場合では、癌は、子宮頸癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、前立腺癌、肺癌、又はそれらの組み合わせである。
【0021】
前述の概念及び実装形態、並びに以下でより詳細に説明する追加の概念及び実装形態のすべての組み合わせは、本明細書で開示する本発明の主題の一部であると企図され、本明細書で説明する利益を達成するために任意の適切な組み合わせで使用され得ることを諒解されたい。具体的には、本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると企図される。
【0022】
更なる態様及び利点は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することから、当業者に明らかになるであろう。本明細書に開示される化合物及び方法は、様々な形態での実装が可能であるが、以下の説明は、特定の実装形態を含むが、それは、あくまでも、本開示が例示的であり、本開示を本明細書に記載される特定の実装形態に限定することを意図しないという理解の下で行われている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】10:1(製剤F2、表3を参照)、12:1(製剤F6/12、表3を参照)、15:1(製剤F6/15、表3を参照)、17:1(製剤F6/17、表3を参照)、及び17:1(全スケーリング)(wt:wt)の質量比で、ホタルルシフェラーゼをコードするRNA(「Fluc mRNA」)と複合体化したカチオン性成分として化合物140を含む、送達ビヒクル複合体の粒径を示す。カチオン性成分の量が増加した送達ビヒクル複合体は、その結果、より小さい粒径をもたらした。「全スケーリング」条件では、送達ビヒクル組成物の成分のすべて(例えば、DSPC、コレステロール、DMG-PEG2000)を増加させて、DV-140-F6/17複合体の17:1比に一致させた。
図1B】10:1(F2、表3参照)、12:1(F6/12、表3参照)、15:1(F6/15、表3参照)、17:1(F6/17、表3参照)、20:1、及び25:1(wt:wt)の質量比で、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)をコードするRNAと複合体化したカチオン性成分として化合物140を含む、送達ビヒクル複合体の封入パーセントを示す。カチオン性成分の量が増加した複合体は、より高い封入率をもたらした。
図2】4℃で17日間及び48日間保存した後の、DV-140-F2及びF6製剤(DV-140-F6/17)の粒径を示す。
図3A】Fluc mRNAと複合体化したDV-140-F2及びDV-112-F2の複合体を、24時間のインビボ時点にわたって-20℃、4℃、25℃、及び37℃の温度に供した後、及び凍結/融解サイクル(3×4℃/25℃)にわたって供した後に得られた、粒径(図3A)を示す。DV-140-F2は、すべての実験において、DV-112-F2よりも良好な安定性を示した。
図3B】Fluc mRNAと複合体化したDV-140-F2及びDV-112-F2の複合体を、24時間のインビボ時点にわたって-20℃、4℃、25℃、及び37℃の温度に供した後、及び凍結/融解サイクル(3×4℃/25℃)にわたって供した後に得られた、多分散指数(図3B)を示す。DV-140-F2は、すべての実験において、DV-112-F2よりも良好な安定性を示した。
図4】F2製剤又はF6製剤(F6/17、表2、3、及び4を参照のこと)のいずれかにおいて、Fluc mRNAと複合体化したカチオン性成分として化合物140、146、151、152、160、161、又は162を含む送達ビヒクル複合体で(筋肉内注射(「IM」)を介して)処置したC57Bl/6マウスにおける、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)のインビボでの発現を示す。データは、本開示の送達ビヒクル複合体が、インビボで、強いFluc発現を示すことを実証する。
図5】10:1(製剤F2)、12:1(製剤F6/12)、15:1(製剤F6/15)、17:1(製剤F6/17)、及び17:1の質量比でFluc mRNAと複合体化された化合物140を含む送達ビヒクル複合体で処置(IM)されたC57Bl/6マウスにおけるホタルルシフェラーゼ(Fluc)のインビボ発現を示し、すべてスケーリングされている。本開示の送達ビヒクル複合体は、高いルシフェラーゼ発現を示す。
図6】ヒドロキシエチルキャップを有さないカチオン性ペプトイドを含む送達ビヒクル複合体と比較した、Fluc mRNAと複合体化したDV-140-F2で処置したC57Bl/6マウスにおけるホタルルシフェラーゼ(Fluc)のインビボ発現を示す構造については表5を参照のこと。データは、本開示の送達ビヒクル複合体が、ヒドロキシエチルキャップを有するカチオン性ペプトイドを含まない同様の送達ビヒクル複合体よりも性能が優れていることを実証する。
図7】Fluc mRNAと複合体化したDV-140-F2、並びに他の示された送達ビヒクル複合体表5を参照のことで腫瘍内(「IT」)処置したC57Bl/6マウスにおけるFluc mRNAのインビボ発現を示す。データは、本開示の送達ビヒクル複合体が、腫瘍内注射を介して強いFluc発現を誘発することを実証する。
図8A】E16及び/又はE18由来のHPV E6及び/又はHPV E7をコードするmRNA(「HPV E6/E7 RNA」)と複合体化したDV-140-F2(IM)で処置したC57Bl/6マウスにおいて惹起された細胞性免疫応答を示すグラフである。DV-140-F2/HPV E6/E7複合体は、ヒドロキシエチルキャップを有さないカチオン性成分を含む送達ビヒクル複合体と比較して、強い細胞応答を誘発した(表5を参照のこと)。
図8B】HPV E6/E7 RNAを含むDV-140-F2(IMを介して)で処置したC57Bl/6マウスにおいて誘発された体液性免疫応答を示すグラフである。DV-140-F2複合体は、ヒドロキシルキャップを有さないカチオン性成分を含む送達ビヒクル複合体と比較して、強いIgGr応答を誘発した(表5を参照のこと)。
図9A】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す。DV-140-F2/COVID複合体は、血清(図9A)及び肺(図9B)において、スパイク特異的抗体の産生を誘発し、中和抗体も誘導した(図9C)。
図9B】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す。DV-140-F2/COVID複合体は、血清(図9A)及び肺(図9B)において、スパイク特異的抗体の産生を誘発し、中和抗体も誘導した(図9C)。
図9C】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す。DV-140-F2/COVID複合体は、血清(図9A)及び肺(図9B)において、スパイク特異的抗体の産生を誘発し、中和抗体も誘導した(図9C)。
図10A】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10B-1】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10B-2】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10C-1】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10C-2】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10C-3】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10D-1】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10D-2】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図10D-3】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で(IMを介して)処置したBalb/cマウスにおいて誘発された免疫応答を示す図である。部位特異的免疫応答を、脾細胞(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B-1及び図10B-2)において評価した。DV-140-F2/COVID複合体は、血清中の、スパイク特異的T細胞性応答抗体の産生を誘発した(CD8:図10C-1、図10C-2、図10C-3;CD4:10D-1、図10D-2、図10D-3)。
図11A】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で処置(IM)した、Balb/cマウスにおいて誘発された免疫応答(図11A)が、mRNA-1273で処置されたマウスにおいて報告された反応(図11B)と同様であったことを示す図である。
図11B】COVID RNAの構築物と複合体化したDV-140-F2で処置(IM)した、Balb/cマウスにおいて誘発された免疫応答(図11A)が、mRNA-1273で処置されたマウスにおいて報告された反応(図11B)と同様であったことを示す図である。
図12A-1】flu血球凝集素(HA)をコードするRNA(Flu Ha RNA)と複合体化したDV-140-F2が、Flu HA特異的な体液応答(図12A-1及び図12A-2)及び細胞性応答(図12B-1及び図12B-2)を誘導したことを示し、かつスパイク蛋白及びFlu HAの両方を標的とする混合ワクチンが、同様の、スパイク特異的であって、かつFlu HAにも特異的な免疫応答(図12A-1、図12A-1、図12B-1、図12B-2)を誘導したことを示す図である。
図12A-2】flu血球凝集素(HA)をコードするRNA(Flu Ha RNA)と複合体化したDV-140-F2が、Flu HA特異的な体液応答(図12A-1及び図12A-2)及び細胞性応答(図12B-1及び図12B-2)を誘導したことを示し、かつスパイク蛋白及びFlu HAの両方を標的とする混合ワクチンが、同様の、スパイク特異的であって、かつFlu HAにも特異的な免疫応答(図12A-1、図12A-1、図12B-1、図12B-2)を誘導したことを示す図である。
図12B-1】flu血球凝集素(HA)をコードするRNA(Flu Ha RNA)と複合体化したDV-140-F2が、Flu HA特異的な体液応答(図12A-1及び図12A-2)及び細胞性応答(図12B-1及び図12B-2)を誘導したことを示し、かつスパイク蛋白及びFlu HAの両方を標的とする混合ワクチンが、同様の、スパイク特異的であって、かつFlu HAにも特異的な免疫応答(図12A-1、図12A-1、図12B-1、図12B-2)を誘導したことを示す図である。
図12B-2】flu血球凝集素(HA)をコードするRNA(Flu Ha RNA)と複合体化したDV-140-F2が、Flu HA特異的な体液応答(図12A-1及び図12A-2)及び細胞性応答(図12B-1及び図12B-2)を誘導したことを示し、かつスパイク蛋白及びFlu HAの両方を標的とする混合ワクチンが、同様の、スパイク特異的であって、かつFlu HAにも特異的な免疫応答(図12A-1、図12A-1、図12B-1、図12B-2)を誘導したことを示す図である。
図13A】様々な送達ビヒクルを含むワクチン製剤で、SARS-CoV-2に対して免疫されたマウスにおける、スパイク特異的免疫グロブリン応答の比較を示すチャートである。送達ビヒクル140-F6.3は、35日目に、市販の製剤SM-102及びALC-0315と同等の性能を発揮した。
図13B】様々な送達ビヒクルを含むワクチン製剤で、SARS-CoV-2に対して免疫されたマウスにおける、スパイク特異的T細胞性応答の比較を示すチャートである。送達ビヒクル140-F6.3は、市販の製剤SM-102及びALC-0315と同等に性能を発揮した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書では、いくつかの例において、例えば、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを含む、ヒドロキシエチルでキャップされたカチオン性ペプトイドを含む送達ビヒクル組成物が開示される。本開示の送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物のヒドロキシエチルでキャップされた、第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドと核酸などのポリアニオン性化合物との間に、静電相互作用を形成して、送達ビヒクル複合体を形成することができ、その送達ビヒクル複合体においては、ポリアニオン性化合物が、複合体のカーゴとして機能する。送達ビヒクル複合体は、核酸(例えば、mRNA)などのポリアニオン性化合物を細胞に送達するのに有用である。ポリアニオン性カーゴとしてmRNAを含む、本開示の送達ビヒクル複合体は、予想外に、インビトロ及びインビボの両方で優れたmRNA発現を示す。送達ビヒクル複合体のmRNAが、例えば、ウイルス抗原をコードする場合、送達ビヒクル複合体は、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答をインビボで誘発し得るので、ワクチンとして機能する。本明細書に開示される送達ビヒクル複合体は、それらが安定であり、良好な忍容性及び低い毒性を示すという点で、更に有利である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ペプトイド」とは、ペプチド骨格の1つ以上の窒素原子が、側鎖によって置換されている、ペプチド模倣化合物をいう。本明細書中で使用される場合、「脂質化ペプトイド」又は「リピトイド」は、窒素原子上の側鎖の1つ以上が脂質を含むペプトイドをいう。本明細書で使用される場合、「ポリアニオン性」とは、少なくとも2つの負電荷を有する化合物(例えば、核酸)をいう。
【0026】
送達ビヒクル組成物
本開示のいくつかの例示的な送達ビヒクル組成物は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを1つ以上含む。これらの正に荷電したペプトイドは、ポリアニオン性化合物(例えば、核酸)と会合して、送達ビヒクル複合体を形成し得る。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は:例えばリン脂質などの、アニオン性又は両性イオン性成分の1つ以上と、例えばステロールなどの中性脂質と、PEG化脂質などの遮蔽脂質と、を更に含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、アニオン性又は両性イオン性成分(例えば、リン脂質)、中性脂質(例えば、ステロール)、及び遮蔽脂質(例えば、PEG化脂質)を更に含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド、アニオン性又は両性イオン性成分(例えば、リン脂質)、中性脂質(例えば、ステロール)、及び遮蔽脂質(例えば、PEG化脂質)から本質的になる。
【0027】
ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド成分
本開示の送達ビヒクル組成物は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(「カチオン性成分」、「イオン性脂質」と呼ばれることもある)を含む。いくつかの実装形態では、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドは、式(I)の化合物:
【0028】
【化8】
(式中、nは、1、2、3、4、5又は6であり、Rは、H、C1~3アルキル、又はC2~3ヒドロキシアルキルであり、各Rは、独立して、C8~24アルキル又はC8~24アルケニルである。本明細書で使用される場合、「アルキル」は、1~30個の炭素原子、例えば、1~4個(例えば、1、2、3、又は4個)の炭素原子を含有する、直鎖及び分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。Cという用語は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、Cアルキルは、3個の炭素原子を有するアルキル基を指す。C1~4アルキルは、全範囲(すなわち、1~4個の炭素原子)、並びにすべてのサブグループ(例えば、1~2、1~3、2~3、2~4、1、2、3、及び4個の炭素原子)を包含する数の炭素原子を有するアルキル基を指す。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(2-メチルプロピル)、及びt-ブチル(1,1-ジメチルエチル)が挙げられる。別段示されない限り、アルキル基は、非置換アルキル基又は置換アルキル基であり得る。本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシル基によって置換されている、本明細書で定義されるアルキル基を指す。例えば、「Cヒドロキシアルキル」又は「ヒドロキシエチル」は、構造:
【0029】
【化9】
を有する。本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、二重結合を有し、2~30個の炭素原子、例えば、2~4個の炭素原子(例えば、1、2、3、又は4個)を含有する、直鎖及び分岐鎖炭化水素基を指す。Cという用語は、アルケニル基が、「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、Cアルケニルは、3個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。C~Cアルケニルは、全範囲(すなわち、2~4個の炭素原子)、並びにすべてのサブグループ(例えば、2~3、2~4、2、3、及び4個の炭素原子)を包含する炭素原子数を有するアルケニル基を指す。アルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、及びブテニルが挙げられる。別段示されない限り、アルケニル基は、非置換アルケニル基又は置換アルケニル基であり得る。
【0030】
いくつかの実装形態では、nは、2~5である。様々な実装形態では、nは、3~4である。いくつかの実装形態では、nは、1である。様々な実装形態では、nは、2である。場合によっては、nは、3である。様々な場合では、nは、4である。いくつかの実装形態では、nは、5である。様々な実装形態では、nは、6である。
【0031】
いくつかの実装形態では、Rは、Hである。様々な実装形態では、Rは、C1~3アルキルである。場合によっては、Rは、メチル又はエチルである。いくつかの実装形態では、Rは、エチルである。様々な実装形態では、Rは、C2~3ヒドロキシアルキルである。場合によっては、Rは、
【0032】
【化10】
(ヒドロキシエチル)である。様々な場合では、Rは、エチル又はヒドロキシエチルである。
【0033】
いくつかの実装形態では、各Rは、独立して、C8~18アルキル又はC8~18アルケニルである。様々な実装形態では、各Rは独立して、C8~16アルキル又はC10~18アルケニルである。場合によっては、各Rは、独立して、C10~12アルキル又はC10~18アルケニルである。いくつかの実装形態では、各Rは、独立して、C8~18アルキル、C8~16アルキル、C8~14アルキル、又はC8~12アルキルである。様々な実装形態では、各Rは、独立して、
【0034】
【化11】
からなる群から選択される。場合によっては、各Rは、独立して、
【0035】
【化12】
からなる群から選択される。様々な場合では、各Rは、独立して、
【0036】
【化13】
からなる群から選択される。いくつかの実装形態では、各Rは、独立して、
【0037】
【化14】
である。
【0038】
いくつかの実装形態では、nは、4であり、RはHであり、各Rは、
【0039】
【化15】
である。
【0040】
企図される式(I)の化合物としては、表1に列挙される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
【表1-1】
【0042】
【表1-2】
【0043】
いくつかの実装形態では、式(I)の化合物は、化合物140である。
【0044】
本開示の化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名によって本明細書において定義される。化合物が化学構造及び化学名の両方によって言及され、化学構造及び化学名が矛盾する場合、化学構造が化合物が何であるかを決定するものとする。
【0045】
別段示されない限り、本明細書に描かれる構造はまた、構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、シス-トランス、配座異性体、及び回転異性体)形態を含むことが意図されている。例えば、各不斉中心についてのR配置及びS配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)配座異性体は、異性体の1つのみが具体的に示されていない限り、本開示に含まれる。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体並びに鏡像異性体、ジアステレオマー異性体、シス/トランス異性体、配座異性体、及び回転異性体、を混合した混合物は、本開示の範囲内である。場合によっては、本明細書に開示される化合物は、立体異性体である。「立体異性体」は、1つ以上の立体中心のキラリティが異なる化合物を指す。立体異性体としては、エナンチオマー及びジアステレオマーが挙げられる。本明細書に開示される化合物は、単一の立体異性体として、又は立体異性体の混合物として存在し得る。本明細書に示される化合物の立体化学は、別段記載されない限り、絶対的ではなく相対的な立体化学を示す。本明細書に示されるように、単一の立体異性体、単一のジアステレオマー、又は単一のエナンチオマーは、少なくとも50%を超える示された立体異性体、ジアステレオマー、又はエナンチオマーであり、場合によっては、少なくとも90%又は95%の、示された立体異性体、ジアステレオマー、又はエナンチオマーである化合物を指す。
【0046】
本明細書に記載の化合物は、遊離形態で存在することができるか、又は適切な場合、薬学的に許容される塩として存在することができる。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の副作用(例えば、毒性、刺激、アレルギー応答など)を伴わずに、ヒト及び下等動物の組織に接触させて使用するために適切であり、そして合理的な利益/リスク比に見合う、化合物の塩をいう。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩としては、適切な無機及び有機の酸及び塩基に由来するものが挙げられる。これらの塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間に、インサイチュで調製され得る。薬学的に受容可能な非毒性酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸)若しくは有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、又はマロン酸)を用いて、又は、例えばイオン交換のような、当該分野で使用される他の方法を使用することによって、形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、カンホレート、カンファースルホネート、シトレート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、グルコネート、グルタメート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3-フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピカレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、p-トルエンスルホネート、ウンデカノエート、バレレートの塩などが挙げられる。カルボン酸又は他の酸性官能基を含有する化合物の塩は、適切な塩基と反応させることによって調製することができる。このような塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、N(C1~4アルキル)塩、及び有機塩基の塩、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、プロカイン、ジベンジルピペリジン、デヒドロアビエチルアミン、N,N’-ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、コリジン、キニーネ、キノリン、及び塩基性アミノ酸、例えばリジン及びアルギニンの塩が含まれるが、これらに限定されない。本開示はまた、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性又は油溶性又は分散性生成物は、このような四級化によって得ることができる。代表的なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。更なる薬学的に許容可能な塩としては、適切な場合、対イオン(例えば、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネート及びアリールスルホネート)を使用して形成される、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0047】
実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約25モル%~約70モル%の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。単位「モル%」又は「モル率」は、送達ビヒクル組成物の特定の成分のモル数を、送達ビヒクル組成物中のすべての成分の総モル数で割り、100%を掛けたものを指す。ポリアニオン性カーゴは、送達ビヒクル組成物の総モル数の一部として計算されない。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約30モル%~約60モル%、又は約35モル%~約55モル%、又は約30モル%~約45モル%、又は約35モル%~約40モル%、又は約45モル%~約60モル%、又は約50モル%~約55モル%、又は約38モル%~約52モル%、又は約38モル%、又は約52モル%の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約50モル%未満の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを含み、例えば、約49モル%未満、約48モル%未満、約47モル%未満、約46モル%未満、約45モル%未満、約44モル%未満、約43モル%未満、約42モル%未満、約41モル%未満、約40モル%未満、約39モル%未満、約38モル%未満、約37モル%未満、約36モル%未満、約35モル%未満、約34モル%未満、約33モル%未満、約32モル%未満、約31モル%未満、約30モル%未満;かつ約20モル%超、約21モル%超、約22モル%超、約23モル%超、約24モル%超、約25モル%超、約26モル%超、約27モル%超、約28モル%超、約29モル%超、約30モル%超、約31モル%超、約33モル%超、約34モル%超、約35モル%超、約36モル%超、約38モル%超、約39モル%超、約40モル%超、約41モル%超、約42モル%超、約43モル%超、又は約44モル%超の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドなどを含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約50モル%未満、例えば、約49モル%未満、約48モル%未満、約47モル%未満、約46モル%未満、約45モル%未満、約44モル%未満、約43モル%未満、約42モル%未満、約41モル%未満、約40モル%未満、約39モル%未満、約38モル%未満、約37モル%未満、約36モル%未満、約35モル%未満、約34モル%未満、約33モル%未満、約32モル%未満、約31モル%未満、約30モル%未満;かつ約20モル%超、約21モル%超、約22モル%超、約23モル%超、約24モル%超、約25モル%超、約26モル%超、約27モル%超、約28モル%超、約29モル%超、約30モル%超、約31モル%超、約33モル%超、約34モル%超、約35モル%超、約36モル%超、約38モル%超、約39モル%超、約40モル%超の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドなどを含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約30モル%~約49.5モル%、又は約30モル%~約45モル%、又は約30モル%~約35モル%、又は約40モル%~約45モル%、又は約35モル%~約49モル%、又は約36モル%~約48モル%、又は約38モル%~約45モル%、又は約38モル%~約42モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約30モル%~約49.5モル%又は約35モル%~約49モル%又は約36モル%~約48モル%又は約38モル%~約45モル%又は約38モル%~約42モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約30モル%~約35モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約40モル%~約45モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約35モル%~約39モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。様々な場合では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約39モル%~約52モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約42モル%~約49モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約50モル%~約52モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、約39モル%、約40モル%、約41モル%、約42モル%、約43モル%、約44モル%、又は約45モル%のヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)を含む。
【0048】
アニオン性/双性イオン性成分
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、アニオン性又は双性イオン性である成分(「アニオン性/双性イオン性成分」)を更に含む。アニオン性/双性イオン性成分は、カーゴの比に影響を及ぼすことなく、かつ/又はエンドソームにおける低pHでのプロトン化を介した粒子若しくは送達ビヒクルエンドソーム脱出に寄与することなく、送達ビヒクル組成物から形成される粒子若しくは送達ビヒクル複合体のゼータ電位を緩衝することができる。双性イオン性成分は、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド及びポリアニオン性カーゴ化合物の両方と相互作用することによって、粒子を緊密に保持する更なる機能を果たすことができる。アニオン性成分はまた、粒子又は送達ビヒクルのコア-シェル構造の形成を可能にし得るが、ここで、最初に正味の正のゼータ電位粒子が作製され(例えば、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドとカーゴとを正の+/-電荷比で混合することによって)、次いでこれがアニオン性成分でコーティングされる。これらの負に荷電した多成分系粒子は、正に荷電したものよりも細網内皮系(RES)クリアランスを良好に回避する。
【0049】
送達ビヒクル組成物の適切なアニオン性及び双性イオン性成分の例は、国際特許出願公開第2020/069442号及び国際特許出願公開第2020/069445号に記載されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実装形態では、双性イオン性成分は、1つ以上のリン脂質を含む。リン脂質は、溶液中の複合体に更なる安定化を提供することができ、かつ、それらの両親媒性特性及び細胞膜を破壊する能力によって、細胞のエンドサイトーシスを促進することができる。
【0050】
いくつかの実装形態では、1つ以上のリン脂質は、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16LysoPC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。場合によっては、リン脂質は、DSPC、DOPE、又はそれらの組み合わせである。様々な実装形態では、リン脂質はDSPCである。様々な場合では、リン脂質は、DOPEである。
【0051】
実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約1モル%~約40モル%のリン脂質(例えば、DSPC又はDOPE)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約3モル%~約30モル%、又は約5モル%~約15モル%、又は約5モル%~約10モル%、又は約10モル%~約15モル%、又は約9モル%~約12モル%、又は約7モル%~約11モル%、又は約7モル%~約12モル%、又は約10モル%~約14モル%、又は約9モル%、又は約12モル%のリン脂質(例えば、DSPC又はDOPE)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約10モル%~約11モル%のリン脂質(例えば、DSPC又はDOPE)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約10.0モル%、約10.1モル%、約10.2モル%、約10.3モル%、約10.4モル%、約10.5モル%、約10.6モル%、約10.7モル%、約10.8モル%、約10.9モル%、又は約11.0モル%のリン脂質(例えば、DSPC又はDOPE)を含む。
【0052】
中性脂質成分
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、中性脂質である成分(「中性脂質成分」)を更に含む。中性脂質成分は、多成分送達系のインビボでのクリアランスを促進するために、分解又は加水分解するように設計することができる。意図される中性脂質成分としては、例えば、天然に存在する脂質、及びペプトイドのN位に脂質部分を含む脂質化ペプトイドが挙げられる。脂質化ペトイド(petoid)の更なる例は、国際特許出願公開第2020/069442号及び国際特許出願公開第2020/069445号に記載されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
場合によっては、送達ビヒクル組成物の中性脂質成分は、1つ以上のステロールを含む。いくつかの実装形態では、1つ以上のステロールは、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。場合によっては、ステロールはコレステロールを含む。実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約10モル%~約80モル%のステロール(例えば、コレステロール)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約20モル%~約70モル%、又は約25モル%~約60モル%、又は約30モル%~約55モル%、又は約35モル%~約50モル%、又は約25モル%~約45モル%、又は約40モル%~約60モル%、又は約30モル%~約40モル%、又は約45モル%~約55モル%、又は約35モル%、又は約50モル%のステロール(例えば、コレステロール)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約40モル%~約55モル%、又は約40モル%~約45モル%、又は約50モル%~約55モル%のステロール(例えば、コレステロール)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約40モル%、約41モル%、約42モル%、約43モル%、約44モル%、約45モル%、約46モル%、約47モル%、約48モル%、約49モル%、約50モル%、約51モル%、約52モル%、約53モル%、約54モル%、又は約55モル%のステロール(例えば、コレステロール)を含む。
【0054】
遮蔽成分
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、遮蔽成分を更に含む。遮蔽成分は、立体障壁として機能することによって粒子又は送達ビヒクルのインビボでの安定性を増加させ、その結果、循環半減期を改善することができる。好適な遮蔽成分の例は、国際特許出願公開第2020/069442号及び国際特許出願公開第2020/069445号に記載されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、1つ以上のPEG化脂質を含む。本明細書中で使用される場合、「PEG化脂質」は、ポリエチレングリコール部分に共有結合した、任意の脂質又は脂質様化合物を含む。PEG化脂質に好適な脂質部分としては、例えば、非置換であっても置換され得る分岐鎖若しくは直鎖脂肪族部分、又は非置換であっても置換され得る脂肪酸、ステロール、及びイソプレノイドを含む天然脂質化合物に由来する部分を挙げることができる。
【0056】
いくつかの実装形態では、脂質部分は、約6~約50個の炭素原子又は約10~約50個の炭素原子を有する、分岐鎖又は直鎖脂肪族部分を含み得る。脂肪族部分は、いくつかの実装形態では、1つ以上のヘテロ原子、及び/又は1つ以上の二重又は三重結合(すなわち、飽和又は一価若しくは多価不飽和)を含むことができる。場合によっては、脂質部分は、脂肪族の直鎖又は分岐鎖部分を含み得、各疎水性のテールは独立して、約8~約30個の炭素原子又は約6~約30個の炭素原子を有し、脂肪族部分は、非置換又は置換され得る。様々な実装形態では、脂質部分は、例えば、脂肪酸及び脂肪アルコールに由来する脂肪族炭素鎖を含み得る。いくつかの実装形態では、各脂質部分は、独立して、C~C24アルキル又はC~C24アルケニルであり、ここで、C~C24アルケニルは、場合によっては、一価不飽和又は多価不飽和であり得る。
【0057】
本開示の実装形態において使用される天然脂質部分は、例えば、リン脂質、グリセリド(例えば、ジグリセリド又はトリグリセリドなど)、グリコシルグリセリド、スフィンゴ脂質、セラミド、並びに飽和及び不飽和ステロール、イソプレノイド、並びに他の同様の天然脂質に由来し得る。
【0058】
他の適切な脂質部分としては、任意選択的に置換されたアリール又はアリールアルキル部分などの親油性芳香族基を挙げることができ、それらとしては例えば、ナフタレニル又はエチルベンジル、又はエステル官能基を含む脂質、例えばステロールエステル及びワックスエステルが挙げられる。
【0059】
いくつかの実装形態では、1つ以上のPEG化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実装形態では、PEG化脂質は、PEG修飾ステロールを含む。様々な実装形態では、PEG化脂質は、PEG修飾コレステロールを含む。いくつかの実装形態では、PEG化脂質は、PEG就職セラミド脂質である。場合によっては、PEG修飾セラミンは、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}及びN-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0060】
いくつかの実装形態では、PEG化脂質は、PEG修飾リン脂質であり、そのリン脂質は、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16LysoPC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。様々な実装形態では、リン脂質はDOPEである。
【0061】
いくつかの実装形態では、1つ以上のPEG化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールを含む。いくつかの実装形態では、PEG化脂質は、PEG修飾DMPE(DMPE-PEG)、PEG修飾DSPE(DSPE-PEG)、PEG修飾DPPE(DPPE-PEG)、及びPEG修飾DOPE(DOPE-PEG)からなる群から選択されるPEG修飾ホスファチジルエタノールである。
【0062】
様々な実装形態では、PEG化脂質は、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DMG-PEG)、ジステアロイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、ジパルミトイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、及びジオレオイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DOG-PEG)からなる群から選択される。いくつかの実装形態では、PEG脂質は、DMG-PEGである。
【0063】
前述のPEG化脂質におけるPEG鎖の分子量は、送達ビヒクル組成物の特性を最適化するために、所望のように調整することができる。いくつかの実装形態では、PEG鎖は、350~6000g/モル、1,000~5000g/モル、又は2000~5000g/モル、又は約1,000~3000g/モル、又は約1500~4000g/モルの分子量を有する。場合によっては、PEG脂質のPEG鎖は約350g/モル、500g/モル、600g/モル、750g/モル、1,000g/モル、2,000g/モル、3,000g/モル、5,000g/モル、又は10,000g/モルの分子量を有する。いくつかの実装形態では、PEG化脂質のPEG鎖は約500g/モル、750g/モル、1,000g/モル、2,000g/モル又は5,000g/モルの分子量を有する。PEG鎖は、分岐鎖状又は直鎖状であり得る。場合によっては、PEG化脂質は、ジミリストイルグルセロール-ポリエチレングリコール2000(DMG-PEG2000)である。
【0064】
実装形態では、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約1モル%~約5モル%のPEG化脂質(例えば、DMG-PEG2000)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約1モル%~約3モル%、又は約1モル%~約2モル%、又は約2モル%~約5モル%、又は約0.5モル%~約1.5モル%、又は約1.5モル%~約2.5モル%、又は約1.5モル%~約2.0モル%、又は約2.0モル%~約2.5モル%、又は約1モル%、又は約1.5モル%、又は約2モル%、又は約2.5モル%、又は約3モル%、又は約3.5モル%、又は約4モル%、又は約5モル%のPEG化脂質(例えば、DMG-PEG2000)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約1モル%~約3モル%、又は約1モル%~約2モル%、又は約2モル%~約5モル%、又は約0.5モル%~約1.5モル%、又は約1.5モル%~約2.5モル%、又は約1モル%、又は約1.5モル%、又は約2モル%、又は約2.5モル%、又は約3モル%、又は約3.5モル%、又は約4モル%、又は約5モル%のPEG化脂質(例えば、DMG-PEG2000)を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物中の成分の総モル数に基づいて、約1.5モル%、1.6モル%、1.7モル%、1.8モル%、1.9モル%、2.0モル%、2.1モル%、2.2モル%、2.3モル%、2.4モル%、又は約2.5モル%のPEG化脂質(例えば、DMG-PEG2000)を含む。
【0065】
代表的な実施例
非限定的な送達ビヒクルの組み合わせを以下に記載する。先に記載したように、単位「モル%」又は「モル率」は、送達ビヒクル組成物の特定の成分のモル数を、送達ビヒクル組成物中の全成分の総モル数で割り、100%を掛けたものを指す。
【0066】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、少なくとも99モル%のカチオン性成分及び約1モル%未満の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F1A)。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、約20モル%未満のカチオン性成分、約5モル%未満の遮蔽成分、及び約75モル%を超える、アニオン性/双性イオン性成分と中性脂質成分との混合物を含む(例えば、表2の式F2A及び式F4A)。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、約30~約45モル%のカチオン性成分、約50~約70モル%の、アニオン性/双性イオン性成分と中性脂質成分との混合物、及び約1.5~約4.5モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F3A及び式F5A)。様々な場合では、送達ビヒクル組成物は、約15~約35モル%のカチオン性成分、約60~約80モル%の、アニオン性/双性イオン性成分と中性脂質成分との混合物、及び約1.5~約3.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2の式F2A及び式F3A)。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約15~約35モル%のカチオン性成分、約10~約20モル%のアニオン性/双性イオン性成分、約50~約65モル%の中性脂質成分、及び約1.5~約3.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F2A及び式F3A)。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約10~約20モル%のカチオン性成分、約75~約89モル%の脂質成分、及び約1~約5モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2の式F4A)。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、約40~約50モル%のカチオン性成分、約50~約59モル%のアニオン性/双性イオン性成分、及び約1~約5モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F5A)。様々な場合では、送達ビヒクル組成物は、約30~約50モル%のカチオン性成分、約50~約70モル%の中性脂質成分、及び約1~約5モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F6A)。様々な場合では、送達ビヒクル組成物は、約40~約45モル%のカチオン性成分、約50~約60モル%の、アニオン性/双性イオン性成分と中性脂質成分との混合物、及び約1.5~約2.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2の式F6.1及び式F6.2)。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約40~約45モル%のカチオン性成分、約10~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分、約40~約45モル%の中性脂質成分、及び約1.5~約2.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2中の式F6.1及び式F6.2)。様々な場合では、送達ビヒクル組成物は、約30~約35モル%のカチオン性成分、約60~約70モル%の、アニオン性/双性イオン性成分と中性脂質成分との混合物、及び約2.0~約3.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2の式F6.3)。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30~約35モル%のカチオン性成分、約10~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分、約50~約55モル%の中性脂質成分、及び約2.0~約3.0モル%の遮蔽成分を含む(例えば、表2の式F6.3)。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。
【0067】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約60モル%(例えば、約35モル%~約39モル%、又は約39モル%~約52モル%、又は約42モル%~約49モル%、又は約50モル%~約52モル%)のカチオン性成分と、約3モル%~約20モル%のアニオン性/双性イオン性成分と;約25モル%~約60モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約5モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約35~約55モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約30モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約38~約52モル%のカチオン性成分と、約9~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約35モル%~約50モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約2モル%の遮蔽成分と、を含む。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約49モル%の式(I)の化合物と、約5モル%~約15モル%のリン脂質と、約30モル%~約55モル%のステロールと、約1モル%~約3モル%のPEG化脂質と、を含む。場合によっては、組成物は、約35モル%~約49モル%の式(I)の化合物又は塩と、約7モル%~約12モル%のリン脂質と、約35モル%~約50モル%のステロールと、約1モル%~約2モル%のPEG化脂質と、を含む。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。
【0068】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約45モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約40モル%~約60モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約5モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約35モル%~約40モル%のカチオン性成分と、約8モル%~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約45モル%~約50モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約38.2モル%のカチオン性成分と、約11.8モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約48.2モル%の中性脂質化合物と、約1.9モル%の遮蔽成分(「製剤F2」)と、を含む。カチオン性成分は、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、以下の表2に示される製剤F2を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約38.2モル%の化合物140、約11.8モル%のDSPC、約48.2モル%のコレステロール、及び約1.9モル%のDMG-PEG-2000を含む(「DV-140-F2」)。
【0069】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約45~約55モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約35モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約5モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約48モル%~約52モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約38モル%~約42モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約51.3モル%のカチオン性成分と、約9.3モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約38.0モル%の中性脂質化合物と、約1.5モル%の遮蔽成分(「F6/17型」)と、を含む。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、以下の表2に示される製剤F6/17を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約51.3モル%の化合物140、約9.3モル%のDSPC、約38.0モル%のコレステロール、及び約1.5モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6/17」)。
【0070】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約49モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約30モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約48モル%~約52モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約38モル%~約42モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約42.6モル%のカチオン性成分と、約10.0モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約44.7モル%の中性脂質化合物と、約1.7モル%の成分と、を含む。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、以下の表2に示される製剤F6/12又は製剤F6/15を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約42.6モル%の化合物140、約10.9モル%のDSPC、約44.7モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6/12」)。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約48.1モル%の化合物140、約9.9モル%のDSPC、約40.4モル%のコレステロール、及び約1.6モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6/15」)。
【0071】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約40モル%~約49モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約30モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約42モル%~約46モル%のカチオン性成分と、約7モル%~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約41モル%~約45モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約2モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約44.4モル%のカチオン性成分と、約10.6モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約43.3モル%の中性脂質化合物と、約1.7モル%の成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約44.4モル%のカチオン性成分と、約10.6モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約43.4モル%の中性脂質化合物と、約1.7モル%の成分と、を含む。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、以下の表2に示されるF6.1又はF6.2を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約44.4モル%の化合物140、約10.6モル%のDSPC、約43.3モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6.1」)。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約44.4モル%の化合物140、約10.6モル%のDSPC、約43.4モル%のコレステロール、及び約1.7モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6.2」)。
【0072】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約39モル%のカチオン性成分と、約5モル%~約15モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約30モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約1モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約30モル%~約35モル%のカチオン性成分と、約7モル%~約12モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約50モル%~約55モル%の中性脂質化合物と、約2モル%~約3モル%の遮蔽成分と、を含む。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約33.1モル%のカチオン性成分と、約10.5モル%のアニオン性/双性イオン性成分と、約53.8モル%の中性脂質化合物と、約2.5モル%の成分と、を含む。カチオン性成分は、例えば、式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、及び162などの表1に列挙される化合物)の任意のものなどの、本明細書に記載される任意のカチオン性成分であり得る。いくつかの実装形態では、カチオン性化合物は、化合物140である。アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書に記載される任意のアニオン性/双性イオン性成分(例えば、リン脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DSPC又はDOPEである。中性脂質成分は、本明細書に記載される任意の中性脂質(例えば、ステロール)であり得る。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。遮蔽成分は、本明細書に記載される任意の遮蔽成分(例えば、PEG化脂質)であり得る。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、以下の表2に示されるF6.3を含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、約33.1モル%の化合物140、約10.5モル%のDSPC、約53.8モル%のコレステロール、及び約2.5モル%のDMG-PEG2000を含む(「DV-140-F6.1」)。
【0073】
カチオン性成分としての化合物140(モル%によって特徴付けられる)に基づく、本開示の送達ビヒクル組成物の非限定的な例は、以下の表2に見出すことができる。
【0074】
【表2】
【0075】
場合によっては、送達ビヒクル組成物は、F6.1、F6.2、又はF6.3である。場合によっては、送達ビヒクル組成物は、F1A、F2A、F3A、F4A、F5A、F6A、F1、F2、F3、F4、F5、F6/12、F6/15、又はF6/17である。
【0076】
送達ビヒクル複合体(DV)
本明細書に開示される送達ビヒクル組成物は、送達ビヒクル組成物のカチオン性成分とポリアニオン性化合物との間の静電相互作用を介して、1つ以上のポリアニオン性化合物(例えば、核酸)と複合体を形成することができる。したがって、送達ビヒクル複合体とは、本明細書に開示される送達ビヒクル組成物と、ポリアニオン性化合物とを含む、混合物を指す。複合体は、場合によっては、多量のカーゴ封入を可能にし、安定であり、インビボでの優れた効率及び耐容性を示す。したがって、送達ビヒクル複合体は、その中に封入されたポリアニオン性カーゴを標的細胞に輸送するための送達ビヒクルとして有用である。追加的又は大体的に、送達ビヒクル複合体は、非アニオン性カーゴを含むことができる。したがって、本開示の別の一態様は、(1)本明細書で前述した送達ビヒクル組成物、及び(2)ポリアニオン性化合物(又はカーゴ)、を含む送達ビヒクル複合体に関する。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、1つのポリアニオン性化合物(例えば、1つのRNA)と複合体を形成する。様々な実装形態では、送達ビヒクル組成物は、2つの異なるポリアニオン化合物(例えば、2つの異なるRNA又はRNA及びDNA)と複合体を形成する。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物は、3つ以上の異なるポリアニオン性化合物(例えば、3、4、又は5つの異なるRNA)と複合体化する。場合によっては、多成分送達ビヒクル系は、DNA及びRNA(例えば、抗原性RNA及びアジュバントDNA、例えばCpG)から選択される1つ以上の核酸と複合体を形成する。
【0077】
本明細書に記載の送達ビヒクル複合体は、複合体中のカーゴ(例えば、ポリアニオン性化合物)に対する送達ビヒクル組成物の成分の1つの相対質量比によって特徴付けることができる。送達ビヒクル複合体中の成分の質量比は、複合体を調製する際に使用される各成分のストック溶液の既知の濃度及び容量に基づいて、容易に計算され得る。更に、非アニオン性カーゴが送達ビヒクル複合体中に存在する場合、質量比は、全カーゴに対する送達ビヒクル成分の相対量を、カチオン対アニオンの比率(これは、非アニオン性材料を考慮に入れていない)よりも正確に表すことができる。具体的には、成分の質量比は、系中のこの特定の成分の質量の系中の「カーゴ」の質量に対する比率を指す。「カーゴ」は、系中に存在する全ポリアニオン化合物(複数可)を指し得る。一例では、ポリアニオン性化合物(複数可)は、核酸(複数可)を指し得る。一例では、ポリアニオン性化合物は、少なくとも1つのタンパク質をコードするmRNAを指す。
【0078】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約0.5:1~約20:1、約0.5:1~約10:1、約0.5:1~約5:1、約1:1~約20:1、約1:1~約10:1、約1:1~約5:1、約2:1~約20:1、約2:1~約10:1、又は約2:1~約5:1の質量比を有する。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約2:1~約5:1の質量比を有する。また更に他の実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約3:1の質量比を有する。他の実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約19:1の質量比を有する。他の実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約20:1の質量比を有する。他の実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約13:1の質量比を有する。他の実装形態では、送達ビヒクル複合体のカチオン性成分及びポリアニオン性化合物は、約10:1の質量比を有する。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物、例えば、表1に列挙される化合物(例えば、化合物140)であり得る。
【0079】
送達ビヒクル複合体が、ポリアニオン性化合物又はカーゴとして核酸を含む特定の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約0.5:1~約20:1、又は約0.5:1~約10:1、又は約0.5:1~約5:1、又は約1:1~約20:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約5:1、又は約2:1~約20:1、又は約2:1~約10:1、又は約2:1~約5:1である。特定の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約2:1~約5:1である。また更に他の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は約3:1である。他の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約19:1である。他の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約20:1である。他の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約13:1である。他の実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約10:1である。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物、例えば、表1に列挙される化合物(例えば、化合物140)であり得る。
【0080】
いくつかの実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約5:1~約25:1、又は約7:1~約20:1、又は約10:1~約17:1、又は約9.5:1~約10.5:1、又は約11:1~約17:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約20:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約19:1である。いくつかの実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約17:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約15:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約13:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約12:1である。様々な実装形態では、カチオン性成分と核酸との質量比は、約10:1である。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、表1に列挙される化合物などの、本明細書において先に記載される式(I)の化合物であり得る。様々な実装形態では、カチオン性成分は、化合物140である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。
【0081】
場合によっては、アニオン性/双性イオン性成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約2:1~約10:1、又は約2:1~約3:1、又は約2:1~約4:1、又は約5:1~約10:1である。場合によっては、アニオン性/双性イオン性成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約2:1~約10:1、又は約2:1~約3:1、又は約5:1~約10:1である。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約4:1である。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約2.7:1である。いくつかの実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、本明細書で前述したように、リン脂質であり得る。様々な実装形態では、アニオン性/双性イオン性成分は、DOPE、DSPC、又はそれらの組み合わせである。場合によっては、アニオン性/双性イオン性成分はDSPCである。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。
【0082】
場合によっては、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約5:1~約8:1、又は約4:1~約7:1、又は約5:1~約6:1、又は約1:1~約5:1である。場合によっては、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約4:1~約7:1、又は約5:1~約6:1、又は約1:1~約5:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約5.4:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約8.1:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約6.7:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分は、本明細書で前述したステロールであり得る。様々な実装形態では、中性脂質成分は、コレステロールである。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。
【0083】
場合によっては、遮蔽成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約0.5:1~約2.5:1、又は約1:1~約2:1、又は約2:1~約3:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約2.1:1である。いくつかの実装形態では、中性脂質成分とポリアニオン性化合物との質量比は、約1.4:1である。いくつかの実装形態では、遮蔽成分は、本明細書で前述したように、PEG化脂質であり得る。様々な実装形態では、遮蔽成分は、DMG-PEG2000である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。
【0084】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約10:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約5.4:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約1.4:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「製剤F2」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性化合物は、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約10:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F2」)。
【0085】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約17:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約5.4:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約1.4:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「製剤F6/17」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分はコレステロールであり、遮蔽成分はPEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約17:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6/17」)。
【0086】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約12:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約5.4:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約1.4:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「製剤F6/12」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約12:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6/12」)。
【0087】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約15:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約5.4:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約1.4:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「製剤F6/15」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約15:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6/15」)。
【0088】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約13:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約5.4:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約1.4:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「F6.1」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約13:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6.1」)。
【0089】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約19:1の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約4.0:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約8.1:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.1:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「F6.2」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約19:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約4.0:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約8.1:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約2.1の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6.2」)。
【0090】
いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、約9.7の質量比のカチオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.7:1の質量比のアニオン性/双性イオン性成分及びポリアニオン性カーゴと、約6.7:1の質量比の中性脂質成分及びポリアニオン性カーゴと、約2.1:1の質量比の遮蔽成分及びポリアニオン性カーゴと、を含む(「F6.3」)。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物であり、アニオン性/双性イオン性成分は、リン脂質であり、中性脂質成分は、コレステロールであり、遮蔽成分は、PEG化脂質である。いくつかの実装形態では、ポリアニオン性カーゴは、RNAなどの核酸である。様々な実装形態では、送達ビヒクル複合体は、核酸に対して約9.7:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約6.7:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約2.1の質量比のDMG-PEG2000と、を含む(「DV-140-F6.3」)。
【0091】
更に他の実装形態では、送達ビヒクル複合体中に存在するポリアニオン性カーゴの量は、1つ以上のポリアニオン性カーゴ化合物に対する、送達ビヒクル組成物(例えば、ヒドロキシエチルでキャップされた脂質化カチオン性ペプトイド、リン脂質、コレステロール、及び/又は遮蔽成分を合わせた全体)の質量比によって特徴付けられ得る。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル組成物対1つ以上のポリアニオン性カーゴ化合物の質量比は、約0.5:1~約20:1、約0.5:1~約10:1、約0.5:1~約5:1、約1:1~約20:1、約1:1~約10:1、約1:1~約5:1、約2:1~約20:1、約2:1~約10:1、又は約2:1~約5:1である。特定の実装形態では、送達ビヒクル組成物対1つ以上のポリアニオン性カーゴ化合物の質量比は、約5:1~約8:1又は約6:1~約7:1である。
【0092】
いくつかの実装形態では、本明細書に記載される送達ビヒクル複合体は、核酸カーゴ上のアニオン性リン酸基の数に対する、送達ビヒクル組成物のカチオン性成分上のカチオン性基の数の比によって特徴付けられ得る。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性成分及び核酸を、約0.5:1~約20:1、約0.5:1~約10:1、約0.5:1~約5:1、約1:1~約20:1、約1:1~約10:1、約1:1~約5:1、約2:1~約20:1、約2:1~約10:1、又は約2:1~約5:1、又は約3:1~約8:1、又は約3:1~約7:1、又は約3:1~約4:1、又は約4:1~約5:1、又は約6:1~約7:1、又は約7:1~約8:1の、カチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性成分及び核酸を、約0.5:1~約20:1、約0.5:1~約10:1、約0.5:1~約5:1、約1:1~約20:1、約1:1~約10:1、約1:1~約5:1、約2:1~約20:1、約2:1~約10:1、又は約2:1~約5:1、又は約3:1~約7:1、又は約3:1~約4:1、又は約6:1~約7:1の、カチオン対アニオンの電荷比で含む。特定の実施態様では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性成分及び核酸を、約2:1~約5:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。また更に他の実施態様では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約3:1の、カチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約3.7:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約6.4:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約4.8:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約7.2:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、カチオン性化合物及び核酸を、約3.6:1のカチオン対アニオンの電荷比で含む。いくつかの実装形態では、カチオン性成分は、式(I)の化合物、例えば、表1に列挙される化合物などである。例えば、式(I)の化合物は、化合物140であり得る。
【0093】
質量比及び電荷比によって特徴付けられる、送達ビヒクル組成物の非限定的な例は、以下の表3に見出すことができる。
【0094】
【表3】
【0095】
送達ビヒクル複合体の特徴付け
本明細書中に開示される送達ビヒクル複合体は、種々の異なるパラメータ(例えば、粒径、多分散性指数、及びカーゴの封入パーセント)によって特徴付けられ得る。一実施態様では、送達ビヒクル複合体はナノ粒子に類似しており、送達ビヒクル組成物によって封入されている少なくとも1種のポリアニオン化合物(以下で更に説明する)を含む。一実施態様では、そのような複合体は、少なくとも1つのmRNAを封入する送達ビヒクル組成物を含むmRNAナノ粒子である。
【0096】
いくつかの実装形態では、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体は、300nm未満、又は275nm未満、又は250nm未満、又は225nm未満、又は200nm未満、又は175nm未満、又は150nm未満、又は125nm未満、又は100nm未満、又は90nm未満、又は80nm未満、又は70nm未満、又は60nm未満、又は50nm未満、又は40nm未満の、平均直径を有し得る。いくつかの実装形態では、本明細書に開示される送達ビヒクル複合体は、直径約40nm~約200nm、又は約50nm~約175nm、又は約50nm~約200nm、又は約60nm~約150nm、又は約60nm~約100nm、又は約60nm~約90nm、又は約70nm~約125nm、又は約80nm~約100nm、又は約70nm~約90nm、又は約75nm~約95nm、又は約80nm~約110nm、又は約90nm~約125nm、又は約70nm~約90nmのサイズの範囲であり得る。別の一実施態様では、複合体は、直径が約100nm超、例えば、約105nm~約250nm、約110nm~約220nm、約150nm~約200nm、約110nm~約200nmのサイズを有し得る。一実施態様では、複合体は、直径約105nm~約200nmのサイズを有し得る。場合によっては、送達ビヒクル複合体は、約40nm~約115nm、又は約55nm~約95nm、又は約70~約80nm、又は約75nmの粒径を示す。様々な場合では、送達ビヒクル複合体は、約135nm~約225nm、又は約155nm~約195nm、又は約170~約180nm、又は約175nmの粒径を示す。場合によっては、粒径は、複合体を調製するために使用される方法(例えば、マイクロ流体デバイスを介して、又は手によって)に依存する。粒径/直径は、動的光散乱法(DLS)によって決定することができ、実施例4に記載されている。
【0097】
いくつかの実装形態では、本開示の送達ビヒクル複合体は、約0.3、0.25、0.2、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、又は0.10未満の、多分散性指数(PDI)を示す。
【0098】
いくつかの実装形態では、核酸(例えば、RNA)カーゴの少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%が、送達ビヒクル複合体中に完全に封入される。送達ビヒクル複合体内に封入されたmRNAの割合は、実施例4に記載されるように、改変RiboGreenアッセイを使用して決定され得る。
【0099】
以下の表4は、本開示の例示的な組成物の特徴付けデータを提供する。送達ビヒクル複合体の命名法は、カチオン性成分として使用される式(I)の化合物(例えば、化合物140、146、151、152、160、161、又は162)、並びに表2及び3からの製剤(「製剤」)名(例えば、製剤F2又は製剤F6(例えば、F6/12、F6/15、F6/17)を指す。例えば、DV-140-F6/17は、核酸に対して約17:1の質量比の化合物140と、核酸に対して約2.7:1の質量比のDSPCと、核酸に対して約5.4:1の質量比のコレステロールと、核酸に対して約1.4の質量比のDMG-PEG2000と、を含む送達ビヒクル複合体を指す。表4、図1A及び図1Bに示されるように、本開示の送達ビヒクル複合体は、核酸カーゴの高い封入性を可能にする小さい単分散粒子の形成を有利に可能にする。
【0100】
以下の表5は、カチオン性成分が式(I)の化合物ではない比較組成物についての構造データを提供する。MC3は、市販のカチオン性脂質DLIN-MC3-DMAを指す。
【0101】
【表4】
【0102】
【表5-1】
【0103】
【表5-2】
【0104】
【表5-3】
【0105】
本開示の送達ビヒクル複合体は、良好な保存安定性を示す。例えば、DV-140-F2及びDV-140-F6/17はそれぞれ、4℃で17日間又は48日間保存した場合でも、粒径又は封入性において変化を示さなかった。図2を参照されたい。別の一例として、DV-140-F2は、24時間のインビボ時点にわたって-20℃、4℃、25℃、及び37~40℃で保存した場合、DV-112-F2よりも優れた安定性を示し、凍結/解凍サイクル(3回)に曝露した場合にも、DV-112-F2よりも良好な安定性を示した。図3A及び図3Bを参照されたい。したがって、いくつかの実装形態では、本開示の送達ビヒクル複合体は、4℃~10℃で少なくとも10日間、例えば少なくとも20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、又はそれ以上保存した後に、ポリアニオン性化合物の少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%を保持する。一実施態様では、複合体は、4℃で48日間、前述のレベルのポリアニオン化合物fを保持する。更に、場合によっては、本開示の送達ビヒクル複合体は、4℃で少なくとも10日間、例えば、少なくとも20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、又はそれ以上保存した後に、それらの元のサイズの少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%を保持する。一実施態様では、送達ビヒクル複合体は、4℃又は48日間の保存後に前述のサイズを保持する。
【0106】
本明細書に開示される送達ビヒクル複合体はまた、全身毒性又は有害事象を伴わずに、高用量及び低用量で十分に許容されることが判明している。実施例5を参照されたい。
【0107】
他の送達ビヒクル複合体成分
本明細書中に記載される送達ビヒクル複合体は、特定の用途のために複合体を微調整するための、更なる成分を含み得る。成分の例としては、限定されるものではないが、エンドソーム脱出を促進するものが挙げられ得るが、その具体例には、緩衝アミン又はポリアミン、含窒素複素環基及び/又は含窒素ヘテロアリール基、例えば、イミダゾール類、ピロール類、ピリジン類、ピリミジン類等、マレイン酸誘導体、又は膜溶解性ペプチドが挙げられる。
【0108】
送達ビヒクル複合体はまた、任意で、系の表面上に部分を含み得る。標的化部分は、ペプチド、抗体模倣物、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、又は脂質であり得る。標的化部分の非限定的な例としては、例えば、ソマトスタチン、オクトレオチド、LHRH、EGFR結合ペプチド、RGD含有ペプチドなどの、ペプチド、例えば、フィブロネクチンドメインなどのタンパク質足場、アプチド若しくは二座ペプチド、単一ドメイン抗体、安定なscFv、又は二重特異性T細胞エンゲージャー、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体若しくはその断片)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、又は脂質が挙げられる。標的化部分は、RNA若しくはDNA又は人工核酸のいずれかであるアプタマー;小分子;例えば、マンノース、ガラクトース、アラビノースなどの、炭水化物;例えば、アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、カルニチン、イノシトール、ピリドキサール、リポ酸、葉酸(葉酸塩)、リボフラビン、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンA、E、及びKなどの、ビタミン;細胞表面受容体に結合するタンパク質又はペプチド、例えば、トロンボスポンジン、腫瘍壊死因子(TNF)、アネキシンV、インターフェロン、サイトカイン、トランスフェリン、GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)に対する受容体、又は血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び上皮成長因子(EGF)などの増殖因子に対する受容体などであり得る。
【0109】
送達ビヒクル複合体はまた、任意選択的に、送達ビヒクル複合体に組み込まれた小分子薬物又は他の生物製剤を含み得る。非限定的な例としては、血液脳関門を破壊するか、又は細胞取り込みを増強する薬物;細胞内輸送又はエンドソーム脱出に影響を及ぼす薬物;又は送達ビヒクル複合体がワクチンとして使用される場合に、抗原提示に影響を及ぼす免疫調節物質である薬物を組み込むことが挙げられる。
【0110】
ポリアニオン性化合物
本開示の送達ビヒクル複合体は、細胞などのインビボの標的に、複合体によって送達され得る、1つ以上のポリアニオン化合物(ポリアニオンカーゴ)を含み得る。ポリアニオン性化合物は、静電相互作用を介して送達ビヒクル複合体のカチオン性成分(例えば、化合物140などの式(I)の化合物)と複合体化することができる。
【0111】
いくつかの実装形態では、ポリアニオン性化合物は、核酸を含む。核酸は、本明細書で使用される場合、天然に存在する核酸(例えば、DNA、RNA、及び/又はそれらのハイブリッド)と、天然に存在しない核酸とを含む。非天然アミノ酸の非限定的な例は、非天然骨格、ホスホロチオエートなどの修飾骨格結合、非天然若しくは修飾塩基、並びに/又は非天然及び修飾末端を含むものである。例示的な核酸としては、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子活性化RNA(saRNA)、ペプチド核酸(PNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、及び免疫刺激核酸が挙げられる。
【0112】
いくつかの実装形態では、ポリアニオン性化合物は、RNAを含む。RNAは、化学的に修飾された又は修飾されていないRNA、一本鎖又は二本鎖RNA、コード又は非コードRNA、mRNA、オリゴリボヌクレオチド、ウイルスRNA、レトロウイルスRNA、自己複製(レプリコン)RNA(srRNA)、tRNA、rRNA、免疫刺激性RNA、マイクロRNA、siRNA、核内低分子RNA(snRNA)、小ヘアピン(sh)RNAリボスイッチ、RNAアプタマー、RNAデコイ、アンチセンスRNA、リボザイム、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実装形態では、核酸カーゴは、修飾mRNA、自己増幅RNA、及び環状RNAを含むが、これらに限定されないRNAである。いくつかの実装形態では、RNAは、コードRNAを含む。
【0113】
RNAは、リボ核酸の通常の略語である。これは、核酸分子、すなわちヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは通常、アデノシン一リン酸(AMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、グアノシン一リン酸(GMP)及びシチジン一リン酸(CMP)モノマー又はそれらの類似体であり、これらはいわゆる骨格に沿って互いに連結されている。骨格は、第1の糖(すなわち、リボース)と、第2の隣接するモノマーのリン酸部分との間の、ホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の順序、すなわち、糖/リン酸骨格に連結された塩基の順序は、RNA配列と呼ばれる。通常、RNAは、例えば細胞内での、DNA配列の転写によって得ることができる。真核細胞では、転写は典型的には核又はミトコンドリア内で行われる。インビボでは、DNAの転写によって、通常、いわゆる未成熟RNA(pre-mRNA、前駆体mRNA、又はヘテロ核RNAとも呼ばれる)が生じるが、通常は処理を行って、mRNAと略されるいわゆるメッセンジャーRNAにしなければならない。例えば真核生物における未成熟RNAの処理は、スプライシング、5’-キャッピング、ポリアデニル化、核又はミトコンドリアからの輸送などの、様々な異なる転写後修飾を含む。これらのプロセスの合計は、RNAの成熟とも呼ばれる。成熟メッセンジャーRNAは、通常、特定のペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得るヌクレオチド配列を提供する。典型的には、成熟mRNAは、5’-キャップ、任意選択的に5’-UTR、オープンリーディングフレーム、任意選択的に3’UTR、及びポリ(A)テールを含む。
【0114】
メッセンジャーRNAに加えて、転写及び/又は翻訳の調節、並びに免疫刺激に関与し得る、いくつかの非コード型のRNAが存在する。本開示内で、「RNA」という用語は、ウイルスRNA、レトロウイルスRNA及びレプリコンRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、環状RNA(circRNA)、リボザイム、アプタマー、リボスイッチ、免疫刺激/免疫刺激性RNA、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びPiwi相互作用RNA(piRNA)などの、当技術分野で公知の任意のタイプの一本鎖(ssRNA)又は二本鎖RNA(dsRNA)分子を更に包含する。
【0115】
5’-CAP構造:5’-CAPは、典型的には、mRNA分子の5’末端に付加された修飾ヌクレオチド(CAP類似体)、特にグアニンヌクレオチドである。特定の実装形態では、5’-CAPは、5’-5’-三リン酸結合(m7GpppNとも呼ばれる)を使用して付加される。5’-CAP構造の更なる例としては、グリセリル、逆位デオキシ脱塩基残基(部分)、4’,5’メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆位ヌクレオチド部分、3’-3’-逆位脱塩基部分、3’-2’-逆位ヌクレオチド部分、3’-2’-逆位脱塩基部分、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホルアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、3’-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又は架橋若しくは非架橋メチルホスホネート部分が挙げられる。これらの修飾5’-CAP構造は、本開示の文脈において、本開示のRNA配列を修飾するために使用され得る。本開示の文脈において使用され得る更なる修飾5’-CAP構造は、CAP1(m7GpppNの隣接ヌクレオチドのリボースの更なるメチル化)、CAP2(m7GpppNの下流の2番目ヌクレオチドのリボースの更なるメチル化)、CAP3(m7GpppNの下流の3番目ヌクレオチドのリボースの更なるメチル化)、CAP4(m7GpppNの下流の4番目ヌクレオチドのリボースの更なるメチル化)、ARCA(抗逆CAP類似体)、修飾ARCA(例えば、ホスホチオエート修飾ARCA)、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、及び2-アジド-グアノシンである。
【0116】
本開示の文脈において、5’キャップ構造はまた、キャップ類似体を使用して化学的RNA合成又はRNAのインビトロでの転写(共転写キャッピング)において形成され得る、又はキャップ構造は、キャッピング酵素(例えば、市販のキャッピングキット)を使用してインビトロで形成され得る。
【0117】
キャップ類似体は、RNA分子の5’末端に組み込まれた場合に、翻訳若しくは局在化を促進し、かつ/又はRNA分子の分解を防止するという点で、キャップ機能性を有する非重合性ジヌクレオチドを指す。非重合性とは、キャップ類似体が5’三リン酸を有さず、したがって鋳型依存性RNAポリメラーゼによって3’方向に伸長することができないため、キャップ類似体が5’末端のみに組み込まれることを意味する。
【0118】
キャップ類似体としては、m7GpppG、m7GpppA、m7GpppC;非メチル化キャップ類似体(例えば、GpppG);ジメチル化キャップ類似体(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャップ類似体(例えば、m227GpppG)、ジメチル化対称キャップ類似体(例えば、m7Gpppm7G)、又は抗逆キャップ類似体(例えば、ARCA;m7,2’OmeGpppG、m7,2’dGpppG、m7,3’OmeGpppG、m7,3’dGpppG及びそれらの四リン酸誘導体)からなる群から選択される化学構造が挙げられるが、これらに限定されない。N-(4-クロロフェノキシエチル)置換ジヌクレオチドキャップ類似体の合成が最近説明されている。
【0119】
「3’-ポリ(A)テール」又は「ポリ(A)配列」とも呼ばれるポリ(A)テールは、典型的には、mRNAの3’末端に付加された、最大約400アデノシンヌクレオチド、例えば、約25~約400、約50~約400、約50~約300、約50~約250、又は約60~約250アデノシンヌクレオチドの、アデノシンヌクレオチドの長いホモポリマー配列である。本開示の特定の実装形態では、mRNA又はsrRNAのポリ(A)テールは、RNAのインビトロでの転写によってDNA鋳型から誘導される。あるいは、ポリ(A)配列はまた、DNA前駆体から必ずしも転写されることなく、化学合成の一般的な方法によって、インビトロで得られ得る。更に、ポリ(A)配列又はポリ(A)テールは、RNAの酵素的ポリアデニル化によって生成され得る。
【0120】
安定化された核酸は、典型的には、インビボでの分解(例えば、エクソヌクレアーゼ若しくはエンドヌクレアーゼによる分解)及び/又は、エクスビボでの分解(例えば、組成物投与前の製造プロセスによる分解、例えば、投与される組成物の調製の過程における分解)に対する耐性を増加させる修飾を示す。RNAの安定化は、例えば、5’-CAP構造、ポリ(A)テール、又は任意の他のUTR修飾を提供することによって達成することができる。安定化は、骨格修飾(例えば、ホスホロチオエートなどの合成骨格の使用)又は核酸のG/C含量若しくはC含量の修正によっても達成することができる。核酸を安定化するため、又はそうでなければ核酸の機能を改善するために、様々な他の方法が当技術分野において公知であり、本開示の文脈で考えられる。したがって、組織における安定性及び/若しくはクリアランス、受容体取り込み及び/若しくは動態、細胞アクセス、翻訳機構への関与、RNA半減期、翻訳効率、免疫回避、免疫誘導(ワクチンの場合)、タンパク質産生能、分泌効率(適用可能な場合)、循環へのアクセス可能性、タンパク質半減期、並びに/又は細胞の状態、機能及び/若しくは活性の調節のうちの、1つ以上を改善するように設計されたポリヌクレオチドが本明細書において提供される。
【0121】
5’-UTRは、典型的には、RNAの特定のセクションであると理解される。それは、mRNAのオープンリーディングフレームの5’側に位置する。srRNAの場合、オープンリーディングフレームはウイルス非構造タンパク質をコードするが、目的の配列はウイルスRNAのサブゲノム断片中にコードされる。したがって、5’-UTRは、nsP1オープンリーディングフレームの上流にある。更に、srRNAのサブゲノムRNAは、5’-UTRを有する。したがって、目的のタンパク質をコードする目的の配列を含有するサブゲノムRNAは、5’-UTRを含有する。典型的には、5’-UTRは、転写開始部位から始まり、オープンリーディングフレームの開始コドンの1ヌクレオチド前で終わる。5’-UTRは、遺伝子発現を制御するためのエレメント(調節エレメントとも呼ばれる)を含み得る。このような調節エレメントは、例えば、リボソーム結合部位又は5’-末端オリゴピリミジントラクトであり得る。5’-UTRは、例えば、5’-CAPの付加によって転写後修飾され得る。本開示の文脈において、5’-UTRは、5’-CAPと開始コドンとの間に位置する成熟mRNA又はsrRNAの配列に対応する。一実施態様では、5’-UTRは、5’-CAPの3’側に位置するヌクレオチドから、特定の実施態様では5’-CAPのすぐ3’側に位置するヌクレオチドから、タンパク質コード領域の開始コドンの5’側に位置するヌクレオチドまで、場合によってはタンパク質コード領域の開始コドンのすぐ5’側に位置するヌクレオチドまで延びる配列に対応する。成熟mRNA又はsrRNAの5’-CAPのすぐ3’側に位置するヌクレオチドは、典型的には、転写開始部位に対応する。「~に対応する」という用語は、5’-UTR配列が、5’-UTR配列を定義するために使用されるmRNA配列などのRNA配列、又はそのようなRNA配列に対応するDNA配列であり得ることを意味する。本開示の文脈において、「NYESO1遺伝子の5’-UTR」などの「遺伝子の5’-UTR」という用語は、この遺伝子に由来する成熟mRNA、すなわち、遺伝子の転写及び未成熟mRNAの成熟によって得られるmRNAの5’-UTRに対応する配列である。「遺伝子の5’-UTR」という用語は、5’-UTRのDNA配列及びRNA配列を包含する。
【0122】
一般に、「3’-UTR」という用語は、オープンリーディングフレームの3’(すなわち、「下流」)に位置し、タンパク質に翻訳されない核酸分子の一部を指す。典型的には、3’-UTRは、タンパク質コード領域(オープンリーディングフレーム(ORF)又はコード配列(CDS))と、mRNAのポリ(A)配列との間に位置するRNAの一部である。本開示の文脈において、3’-UTRという用語は、RNAが転写される鋳型においてコードされないが、成熟中に転写後に付加されるエレメント、例えばポリ(A)配列も含み得る。RNAの3’-UTRは、アミノ酸配列には翻訳されない。
【0123】
srRNAに関して、3’-UTR配列は、一般にウイルスゲノムRNAによってコードされ、ウイルスゲノムRNAは、遺伝子発現プロセス中にそれぞれのmRNAに転写される。ゲノム配列は、最初に未成熟mRNAに転写される。次いで、未成熟mRNAは、成熟プロセスにおいて、成熟mRNAへと更にプロセシングされる。この成熟プロセスは、5’キャッピングを含む。本開示の文脈において、3’-UTRは、成熟mRNA又はsrRNA(及びsrRNAサブゲノムRNA)の配列に対応し、これは、タンパク質コード領域の終止コドン、好ましくは目的の配列のタンパク質コード領域の終止コドンのすぐ3’側と、mRNAのポリ(A)配列との間に位置する。「~に対応する」という用語は、3’-UTR配列が、3’-UTR配列を定義するために使用されるmRNA配列などのRNA配列、又はそのようなRNA配列に対応するDNA配列であり得ることを意味する。本開示の文脈において、「遺伝子の3’-UTR」という用語は、この遺伝子に由来する成熟mRNA、すなわち、遺伝子の転写及び未成熟mRNAの成熟によって得られるmRNAの3’-UTRに対応する配列である。「遺伝子の3’-UTR」という用語は、3’-UTRのDNA配列及びRNA配列(センス鎖及びアンチセンス鎖の両方、並びに成熟及び未成熟の両方)を包含する。
【0124】
本開示の特定の実施によれば、本明細書の送達ビヒクル複合体において使用するためのRNAは、ペプチド(例えば、ポリペプチド)、又はタンパク質、又は前述のものの機能的断片をコードする少なくとも1つの領域を含むRNAを含む。本明細書中で使用される場合、「機能的断片」とは、免疫応答を誘導する能力を保持するペプチド(例えば、ポリペプチド)又はタンパク質の断片をいう。一実施態様では、コードRNAは、mRNA、ウイルスRNA、レトロウイルスRNA、及び自己複製RNAからなる群から選択される。いくつかの実装形態では、RNAは、ウイルスペプチド(例えば、ウイルスポリペプチド)、ウイルスタンパク質、又は前述のものの機能的断片をコードする。様々な場合では、RNAは、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、RNAは、HPV E6タンパク質(又はその変異体)、HPV E7タンパク質(又はその変異体)、それらの組み合わせ、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、HPVタンパク質は、HPVサブタイプHPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、及び/又は68に由来する。様々な場合では、HPVタンパク質は、HPVサブタイプHPV16及び/又は18に由来する。場合によっては、RNAは、ウイルススパイクタンパク質又はその機能的断片をコードする。場合によっては、RNAは、SARS関連コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルス0C43(HCoV-0C43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、及び/又はヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63))をコードする。様々な実装形態では、RNAは、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。場合によっては、RNAは、インフルエンザタンパク質、その変異体、又は前述のいずれかの機能的断片をコードする。様々な実装形態では、RNAは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)又はその機能的断片をコードする。いくつかの実装形態では、インフルエンザAウイルスは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、及びH16からなる群から選択されるサブタイプのHAを有する。様々な実装形態では、インフルエンザサブタイプは、HA株H1、H2、H3、又はH5である。いくつかの実装形態では、RNAは、前述の組み合わせをコードする。
【0125】
送達ビヒクル複合体のRNAがコードし得る企図されるウイルスとしては、インフルエンザA型及びB型、ポリオウイルス、アデノウイルス、狂犬病ウイルス、ウシパラインフルエンザ3、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型及び単純ヘルペスウイルス2型、ヒトパピローマウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、カポジ肉腫ウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6、ヒトヘルペスウイルス-7、ヒトヘルペスウイルス-8、マカシンαヘルペスウイルス1、イヌヘルペスウイルス、ウマαヘルペスウイルス1、ウシαヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス2、単純ヘルペスウイルス、ガンマヘルペスウイルス、七面鳥アルファヘルペスウイルス1、エボラウイルス、マールブルグウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、ジカウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、チクングニアウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、キサヌール森林病ウイルス、アルフルマ病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、ルベオラウイルス、風疹ウイルス、ヒトパルボウイルスB19、バリオラウイルス、アルファウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、アレナウイルス科ウイルス、ブニヤウイルス科ウイルス、フィロウイルス科ウイルス、フラビウイルス科ウイルス、パラミクソウイルス科ウイルス、トガウイルス科ウイルス、フラビウイルス科ウイルス、コロラドダニ熱ウイルス(コルチウイルス)、コクサッキーウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス又はコロナウイルス(例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoV、HCoV NL63、HKU1、229E、及びOC43)、ヒトパピローマウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、黄熱、デング熱、日本脳炎、西ナイルウイルス、ジカウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、チクングニアウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎、キサヌール森林病、アルフルマ病、オムスク出血熱、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、ルベオラウイルス、風疹ウイルス、ヒトパルボウイルスB19、ヒトヘルペスウイルス6型、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、カポジ肉腫ウイルス、ヒトヘルペスウイルス7型、ヒトヘルペスウイルス8型、マカシンαヘルペスウイルス1型、イヌヘルペスウイルス、ウマαヘルペスウイルス1型、ウシαヘルペスウイルス1型、ヒトヘルペスウイルス2型、単純ヘルペスウイルス、ガンマヘルペスウイルス科、ガチョウαヘルペスウイルス1、バリオラ、アルファウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、パラミクソウイルス科、又はトガウイルス科、フラビウイルス属(例えば、ジカウイルス)、コロラドダニ熱ウイルス(コルチウイルス)、コクサッキーウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスA、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスコロナウイルス、バリセロウイルス、アデノ関連ウイルス、愛知ウイルス、オーストラリアコウモリリスウイルス、BKポリオーマウイルス、バンナウイルス、バーマー森林ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ブニヤウイルスラクロス、ブニヤウイルスカツノウサギセルコピテクス・ヘルペスウイルス、チャンディプラウイルス、チクングニアウイルス、コサウイルスA、カウポックスウイルス、コクサッキーウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、デングウイルス、ドーリウイルス、ドゥグベウイルス、ドゥベンヘージウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エボラウイルス、エコーウイルス、脳心筋炎ウイルス、ヨーロッパコウモリライサウイルス、GBウイルスC/G型肝炎ウイルス、ハンタンウイルス、ヘンドラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、馬痘ウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトアストロウイルス、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトエンテロウイルス68、70、ヒトパピローマウイルス1、ヒトパピローマウイルス2、ヒトパピローマウイルス16、18、ヒトパラインフルエンザ、ヒトパルボウイルスB19、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、ヒトライノウイルス、ヒトSARSコロナウイルス、ヒトスパーマレトロウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルス、ヒトトロウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、イスファハンウイルス、JCポリオーマウイルス、日本脳炎ウイルス、ジュニンアレナウイルス、KIポリオーマウイルス、クンジンウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ランガットウイルス、ラッサウイルス、ロードスデールウイルス、ルーピング病ウイルス、リンパ球性絨毛膜炎ウイルス、マチュポウイルス、マヤロウイルス、MERSコロナウイルス、麻疹ウイルス、メンゴ脳心筋炎ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス、モコラウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サル痘ウイルス、ムンプスウイルス、マレーバレー脳炎ウイルス、ニューヨークウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、オニョンニョンウイルス、オルフウイルス、オロプシュウイルス、ピチンデウイルス、ポリオウイルス、プンタトロフレボウイルス、プウマラウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロサウイルスA、ロスリバーウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、風疹ウイルス、サギヤマウイルス、サリウイルスA、サンドフライ熱シシリアンウイルス、サッポロウイルス、SARSコロナウイルス2、セムリキ森林ウイルス、ソウルウイルス、シミアンフォームウイルス、シミアンウイルス5、シンドビスウイルス、サウサンプトンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介パウアッサンウイルス、トルクテノウイルス、トスカーナウイルス、ウクニエミウイルス、ワクチニアウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、バリオラウイルスベネズエラウマ脳炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、WUポリオマウイルス、西ナイルウイルス、ヤーバサル腫瘍ウイルス、ヤーバ様疾患ウイルス、黄熱ウイルス、ジカウイルス、ウシヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、アデノウイルス科、ウシアデノウイルスBAdV-9=ヒトアデノウイルスC、アネロウイルス科(候補)、トルクテノウイルスTTV、ボルナウイルス科、ボルナ病ウイルスBDV、ブニヤウイルス科、アイノウイルス、キャッシュバレーウイルスCVV、クリミアコンゴ出血熱ウイルスCCHF、ハンタンウイルスHTNV、ジェームズタウンキャニオンウイルスJCV、ラクロスウイルスLACV、プウマラウイルス、リフトバレー熱ウイルスRVFV、カリシウイルス科、ノロウイルス、サンミゲルアシカウイルスSMSV-5、サーコウイルス科、ウシサーコウイルスBCV=豚サーコウイルス2型の進化株PCV-2、コロナウイルス科、ウシコロナウイルスBCoV-1、ウシトロウイルスBtoV、フラビウイルス科、ウシウイルス性下痢症ウイルスBVDV、日本脳炎ウイルスJEV、キャサヌール森林病ウイルスKFDV、跳躍病ウイルス、マレーバレー脳炎ウイルスMVE、セントルイス脳炎ウイルスSLEV、ダニ媒介脳炎ウイルスTBEV、ヴェセルスブロン-ウイルス、西ナイルウイルス(Kunjinを含む)、ヘパウイルス科、E型肝炎ウイルスHEV、ヘルペスウイルス科、ウシヘルペスウイルスBHV-4、ウマヘルペスウイルスEHV-1、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルスIBR=BHV-1、疑似狂犬病ウイルスPRV、オルソミクソウイルス科、ドーリウイルス、インフルエンザAウイルス、トゴトウイルスTHOV、パピローマウイルス科、ウシ乳頭腫ウイルスBPV、パラミクソウイルス科、ウシパラインフルエンザウイルスBPIV3、ウシ呼吸器合胞体ウイルスBRSV、ペスト・デ・ペティ・ルミナンウイルスPPRV、リンデルペストウイルスRPV、パルボウイルス科、ウシアデノ随伴ウイルスBAAV、ウシホコウイルスBHoV、ピコルナウイルス科、ウシエンテロウイルスBEV-1、BEV-2、ウシコブウイルスBKV-1 U-1株、脳筋心筋炎ウイルスEMC、口蹄疫ウイルスFMDV、セネカバレーウイルスSVV、ポリオマウイルス科、ウシポリオマウイルスBPyV、ポックスウイルス科、アラカツバウイルス、ウシ丘疹性口内炎ウイルスBPSV、カンタガロウイルス、牛痘ウイルス、偽牛痘ウイルスPCPV、ワクシニアウイルス、レオウイルス科、バンナウイルスBAV、青舌ウイルスBTV、疫出血症ウイルスEHDV、遼寧ウイルスLNV、レオウイルス、ロタウイルス、レトロウイルス科、ウシフォーミーウイルスBFV、ウシ白血病ウイルスBLV、ラブドウイルス科、ウシ儚熱ウイルスBEFV、狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイルスVSV、トガウイルス科、東部ウマ脳炎ウイルスEEEV、ゲタウイルス、ロス川ウイルスRRV、シンドビスウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスVEE、アネロウイルス科(提案されている科)、トルクテノウイルスTTV、ブニヤウイルス科、クリミアコンゴ出血熱ウイルスCCHF、ハンタンウイルスHTNV、ジェームズタウンキャニオンウイルスJCV、ラクロスウイルスLCV、カリシウイルス科、ノロウイルス、サンミゲルアシカウイルスSMSV-5、サポウイルス、サルコウイルス科、豚サーコウイルスPCV-1 & PCV-2、コロナウイルス科、ウシコロナウイルスBCoV-1、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS、伝染性胃腸炎ウイルスTGEV、フィロウイルス科、エボラレストンウイルス、フラビウイルス科、ウシウイルス性下痢症ウイルスBVDV、デングウイルス、イルヘウスウイルス、日本脳炎ウイルスJEV、舞踏病ウイルス、マレーバレー脳炎ウイルスMVE、ポワッサンウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルスTBEV、ヴェセルスブロン-ウイルス、ウエストナイルウイルスWNV(Kunjinを含む)、ヘパウイルス科、E型肝炎ウイルスHEV、ヘルペスウイルス科、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルスIBR=BHV-1、豚サイトメガロウイルスPCMV(B.Potts私信)、疑似狂犬病ウイルスPRV、オルソミクソウイルス科、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)、豚インフルエンザウイルス(H1N1、H1N2)、パラミクソウイルス科、ウシパラインフルエンザウイルスBPIV3、メナングルウイルスMENV、ニパウイルスNiV、反芻家畜ペストウイルスPPRV、リンデルペストウイルスRPV、ティオマンウイルスTIOV、パルボウイルス科、豚ホコウイルスPHoV、豚パルボウイルスPPV、ピコルナウイルス科、脳心筋炎ウイルスEMC、口蹄疫ウイルスFMDV、豚エンテロウイルスPEV-9 PEV-10、セネカバレーウイルスSVV、豚水胞病ウイルスSVDV、レオウイルス科、バンナウイルスBAV、レオウイルス、ロタウイルス、レトロウイルス科、豚内在性レトロウイルスPERV、ラブドウイルス科、狂犬病ウイルス、水胞性口内炎ウイルスVSV、トガウイルス科、東部ウマ脳炎ウイルスEEEV、ゲタウイルス、ロス川ウイルスRRV、ベネズエラウマ脳脊髄炎VEEが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実装形態では、RNAは、アデノウイルス、アルファウイルス、カリシウイルス(例えば、カリシウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルス、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルス、フラビウイルス、肝炎ウイルス(AE)、ヘルペスウイルス、感染性腹膜炎ウイルス、白血病ウイルス、マールブルグウイルス、オルソミクソウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ペスチウイルス、ピコルナウイルス(例えば、ポリオウイルス)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)、狂犬病ウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、及びロタウイルスをコードする。特定の実装形態では、RNAは、SARS-CoV-2、HPV(例えば、HPV16及び/又はHPV18由来のE6及び/又はE7)、又はインフルエンザ(例えば、インフルエンザ赤血球凝集素(HA))をコードする。
【0127】
いくつかの実装形態では、2つ以上の特定の核酸を一緒に組み合わせた送達は、治療用途に特に有用であり得る。例えば、いくつかの実装形態では、1つ以上のポリアニオン性カーゴ化合物は、CRISPR配列としてのsgRNA(シングルガイドRNA)と、Cas9をコードするmRNAとの組み合わせを含む。なお更なる実装形態では、核酸はまた、CRISPR/Cas9リボ核タンパク質複合体などのタンパク質と複合体化され得る。場合によっては、多成分送達ビヒクル系は、DNA及びRNA(例えば、抗原性RNA及びアジュバントDNA、例えばCpG)から選択される1つ以上の核酸と複合体を形成する。
【0128】
ポリヌクレオチド合成
所定の配列のポリヌクレオチドを作製する方法が周知である。固相合成法は、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドの両方について公知である(DNAを合成する周知の方法はまた、RNAを合成するために有用である)。ポリリボヌクレオチドは、酵素的に調製することもできる。天然に存在しない核酸塩基も、同様にポリヌクレオチドに組み込むことができる。
【0129】
RNAを作製するための当技術分野において公知の任意の方法が、RNAを作製するために本明細書において企図される。RNAを作製するための例示的な方法としては、化学合成及びインビトロでの転写が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
特定の実装形態では、本明細書の方法において使用するためのRNAは、化学的に合成される。定義された化学構造を有するオリゴヌクレオチドの比較的短い断片の化学合成は、任意の所望の配列の特注のオリゴヌクレオチドへの、迅速かつ安価なアクセスを提供する。酵素は、DNA及びRNAを5’から3’への方向にのみ合成するが、化学オリゴヌクレオチド合成はこの制限を有さないものの、反対方向、すなわち3’から5’への方向に実施されることが最も多い。特定の実装形態では、このプロセスは、ホスホラミダイト法、及び保護されたヌクレオシド(A、C、G、及びU)、又は化学的に修飾されたヌクレオシドに由来するホスホラミダイト構築ブロックを使用する固相合成として実装される。
【0131】
いくつかの実装形態では、修飾は、修飾核酸中、又は1つ以上の個々のヌクレオシド若しくはヌクレオチド中に含まれる。例えば、ヌクレオシドに対する修飾は、核酸塩基、糖、及び/又はヌクレオシド間結合に対する1つ以上の修飾を含んでもよい。少なくとも1つの修飾を有するいくつかの実装形態では、ポリヌクレオチドは、プソイドウリジン-α-チオ-MP、1-メチル-プソイドウリジン-α-チオ-MP、1-エチル-プソイドウリジン-MP、1-プロピル-プソイドウリジン-MP、1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-プソイドウリジン-MP、2-アミノ-アデニン-MP、キサントシン-MP、5-ブロモ-シチジン-MP、5-アミノアリル-シチジン-MP、又は2-アミノプリン-リボシド-MPの、核酸塩基、糖、及びヌクレオシド間結合を含有する骨格部分を含む。
【0132】
少なくとも1つの修飾を有する他の実装形態では、ポリヌクレオチドは、プソイドウリジン-α-チオ-MP、1-メチル-プソイドウリジン-α-チオ-MP、又は5-ブロモ-シチジン-MPの、核酸塩基、糖、及びヌクレオシド間結合を含有する骨格部分を含む。本開示における使用のために企図されるヌクレオシド及びヌクレオチド修飾は、当技術分野において公知である。
【0133】
所望のオリゴヌクレオチドを得るために、構築ブロックは、完全に自動化されたプロセスにおいて、生成物の配列によって必要とされる順序で、固相上の成長するオリゴヌクレオチド鎖に連続的にカップリングされる。鎖の組み立てが完了すると、生成物は固相から溶液に放出され、脱保護され、回収される。合成されるオリゴヌクレオチドの長さと共にエラーの数が増加するので、副反応の発生が、合成オリゴヌクレオチドの長さに実際的な限界(約200ヌクレオチド残基まで)を設定する。生成物は、しばしばHPLCによって単離され、所望のオリゴヌクレオチドが高純度で得られる。
【0134】
特定の実装形態では、RNAは、インビトロ転写を用いて作製される。「RNAインビトロ転写」又は「インビトロ転写」という用語は、RNAが無細胞系(インビトロ)で合成されるプロセスに関する。DNA、特にプラスミドDNAは、RNA転写物の生成のための鋳型として使用される。RNAは、適切なDNA鋳型のDNA依存性インビトロ転写によって得られ得るが、これは、特定の実装形態では、線状化プラスミドDNA鋳型である。インビトロ転写を制御するためのプロモータは、任意のDNA依存性RNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。DNA依存性RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。インビトロRNA転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にインビトロ転写されるそれぞれのRNAに対応するcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクター、例えばプラスミドDNAに導入することによって得ることができる。本開示の一実施態様では、DNA鋳型は、インビトロで転写される前に、適切な制限酵素で線状化される。cDNAは、mRNAの逆転写又は化学合成によって得ることができる。更に、インビトロRNA合成のためのDNA鋳型は、遺伝子合成によって得ることもできる。
【0135】
インビトロ転写のための方法は、当該分野で公知である。本方法で使用される試薬は、典型的には以下を含む:1)例えばバクテリオファージコードRNAポリメラーゼなどの、そのそれぞれのRNAポリメラーゼに対して高い結合親和性を有する、プロモータ配列を有する線状化DNA鋳型;2)4つの塩基(アデニン、シトシン、グアニン、及びウラシル)に対する、リボヌクレオシド三リン酸(NTP);3)場合によっては、上で定義したキャップ類似体(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(m7G));4)線状化DNA鋳型内のプロモータ配列に結合することができるDNA依存性RNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3、又はSP6 RNAポリメラーゼ);5)任意選択で、任意の混入リボヌクレアーゼ(RNase)を不活性化するためのRNase阻害剤;6)任意選択で、転写を阻害し得るピロリン酸を分解するためのピロホスファターゼ;7)ポリメラーゼの補因子として、Mg2+イオンを供給するMgCl;8)適切なpH値を維持するための緩衝液であって、抗酸化剤(例えば、DTT)、及び/又はスペルミジンなどのポリアミンを最適濃度で含有することもできる緩衝液。
【0136】
送達ビヒクル複合体を作製する方法
送達ビヒクル複合体の成分は、それらの物理的、化学的、及び生物学的特性を調節するための様々な物理的及び/又は化学的方法によって調製することができる。これらは、水又は水混和性有機溶媒中の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドと、水又は水性緩衝液中の所望のポリアニオン性カーゴ化合物(例えば、オリゴヌクレオチド又は核酸)とを、素早く組み合わせることを含み得る。これらの方法は、ピペッティングによる成分の単純な混合、又は例えば、T-ミキサ、ボルテックスミキサ、若しくは他のカオス混合構造を伴うものなどの、マイクロ流体混合プロセスを含むことができる。いくつかの実装形態では、多成分送達系は、マイクロ流体プラットフォーム上で調製される。
【0137】
本明細書中に記載される送達ビヒクル複合体を調製するための特定のプロセス条件は、複合体の所望の物理的特性を提供するために適宜調整又は選択され得ることが理解されるべきである。例えば、最終組成物に影響を及ぼし得る送達系複合体の成分を混合するためのパラメータは、混合の順序、混合の温度、混合スピード/レート、流量、混合構造の物理的寸法、出発溶液の濃度、成分のモル比、及び使用される溶媒を含み得るが、これらに限定されない。
【0138】
送達ビヒクル複合体の製剤化は、多くの方法で達成することができる。場合によっては、すべての成分は、核酸カーゴの添加の前に予め混合され得るが、その結果、送達粒子全体にわたる成分の均一な分布をもたらし得る。
【0139】
他の場合には、成分を順次添加して、コア-シェル型構造を生成することができる。例えば、カチオン性成分を最初に添加して粒子縮合を開始し、続いて脂質成分を添加して粒子表面を標的細胞と会合させ、続いて遮蔽成分を添加して粒子凝集を防止することができる。例えば、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを、核酸カーゴと予備混合してコア構造を形成することができる。次いで、脂肪成分(例えば、リン脂質及びコレステロールを含む脂肪成分)を添加して、細胞/エンドソーム膜結合性に影響を与えることができる。遮蔽成分は主に多成分送達系の外側で有用であるので、この成分を最後に導入することができ、その結果、それは系の内部構造を破壊せず、むしろそれが形成された後に系のコーティングを提供する。
【0140】
複合体及び組成物中の更なる成分(例えば、ポリマー、界面活性剤、標的化部分、及び/又は賦形剤の更なる成分)は、核酸カーゴの主成分、カチオン性成分、脂質成分、及び遮蔽成分が合わせられる前、その間、又はその後に、残りの成分と混合され、組み合わせられ得る。
【0141】
したがって、式(I)の化合物又は塩をポリアニオン性化合物と接触させることを含む、本明細書で開示される送達ビヒクル複合体を形成する方法も、本明細書で提供される。いくつかの実装形態では、本方法は、式(I)の化合物又は塩を含む溶液を、ポリアニオン性化合物を含む溶液と混合することを含む。
【0142】
医薬製剤及び投与様式
本開示の送達ビヒクル複合体、及び有効量の1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物も、本明細書で提供される。「有効量」は、「治療有効量」及び「予防有効量」を含む。「治療有効量」という用語は、対象における疾患又は状態を治療及び/又は改善するのに有効な量を指す。「予防有効量」という用語は、対象における疾患又は状態を予防する、及び/又は実質的にその可能性を低減するのに有効な量を指す。本明細書中で使用される場合、「患者」及び「対象」という用語は、交換可能に使用され得るが、動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、及びヒツジ(すなわち、非ヒト動物)並びにヒト)を意味する。特定の患者又は対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)である。「患者」及び「対象」という用語は、男性(雄)及び女性(雌)を含む。本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、意図される投与形態に関して適切に選択され、従来の薬務と一致する、医薬品有効成分(API)以外の任意の薬学的に許容される添加剤、担体、希釈剤、アジュバント、又は他の成分を意味する。
【0143】
本開示の複合体は、治療有効量で、対象又は患者に投与することができる。複合体は、単独で、又は薬学的に許容される組成物若しくは製剤の一部として投与することができる。更に、複合体は、例えばボーラス注射によって一度に、複数回に分けて投与することができ、又はある時間にわたって実質的に均一に送達することができる。化合物の用量は、経時的に変化し得るということにも留意されたい。
【0144】
本明細書に開示される送達ビヒクル複合体及び他の薬学的に活性な化合物は、所望であれば、任意の適切な経路によって、例えば、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、若しくは皮下)、脳槽内、膣内、腹腔内、膀胱内、又は口腔、吸入、若しくは鼻腔スプレーとして、対象又は患者に投与することができる。投与は、全身的効果を提供するためであり得る(例えば、経腸的又は腸管外投与)。薬学的に活性な薬剤を投与するために当業者によって使用され得るすべての方法が企図される。
【0145】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、及び滅菌注射用溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には、必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0146】
これらの組成物はまた、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの、アジュバントを含有し得る。微生物汚染は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)を添加することによって防止され得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことも望ましい場合がある。注射用医薬組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0147】
医薬組成物は、無菌注射剤、水性懸濁液、又は油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、上述した適切な分散又は湿潤剤と懸濁化剤とを用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。使用され得る受容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンガー溶液、及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。更に、無菌の不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発油が使用され得る。更に、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。
【0148】
非経口投与のための組成物は、滅菌媒体中で投与される。使用されるビヒクル及び製剤中の薬物濃度に依存して、非経口製剤は、溶解した薬物を含有する懸濁液又は溶液のいずれかであり得る。例えば、局所麻酔剤、保存剤、及び緩衝剤などの、アジュバントを非経口組成物に添加することもできる。
【0149】
本開示の組成物がワクチンとして使用される場合、それは1つ以上の免疫アジュバントを含み得る。本明細書で使用される場合、「免疫アジュバント」という用語は、免疫原(例えば、ネオ抗原)とコンジュゲートして使用された場合に免疫応答を加速、延長、増強又は改変するように作用する化合物又は化合物の混合物を指す。アジュバントは、宿主に単独で投与される場合、非免疫原性であり得るが、別の抗原と共同して投与される場合、その抗原に対する宿主の免疫応答を増強する。具体的には、「アジュバント」及び「免疫学的アジュバント」という用語は、本開示において互換的に使用される。免疫応答の持続期間のアジュバント媒介性増強及び/又は延長は、以下の1つ以上を含むがこれらに限定されない、当該分野で公知の任意の方法によって評価され得る:(i)アジュバント/抗原の組み合わせによる免疫化に応答して産生される抗体の数が、抗原単独による免疫化に応答して産生される抗体の数に対して増加すること、(ii)抗原又はアジュバントを認識するT細胞の数が、増加すること、及び(iii)1つ以上のサイトカインのレベルが増加すること。アジュバントは、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムを含むがこれらに限定されない、アルミニウム系アジュバント;サポニン、例えばステロイドサポニン及びトリテルペノイドサポニン;細菌フラジェリン、及び例えば、GM-CSFなどのいくつかのサイトカインであり得る。アジュバントの選択は、抗原、ワクチン、及び投与経路に依存し得る。
【0150】
いくつかの実装形態では、アジュバントは、自然免疫を調節するか、又は輸送及び提示を容易にすることによって、ワクチン抗原に対する適応免疫応答を改善する。アジュバントは、樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)に、直接的又は間接的に作用する。アジュバントは、Toll様受容体(TLR)のリガンドであってもよく、DCに直接影響を及ぼして、適応免疫の強度、効力、速度、持続時間、バイアス、幅、及び範囲を変化させ得る。他の例において、アジュバントは、炎症促進性経路を介してシグナル伝達し、免疫細胞浸潤、抗原提示、及びエフェクター細胞成熟を促進し得る。このクラスのアジュバントには、無機塩、油エマルジョン、ナノ粒子、及び高分子電解質が含まれ、複雑な不均一構造を示すコロイド及び分子集合体を含む。一例において、組成物は、アジュバントとしてピドチモドを更に含む。別の一例において、組成物は、アジュバントとしてCpGを更に含む。
【0151】
本開示の化合物は、約0.1~約3000mg/日の範囲内の投与量レベルで対象又は患者に投与することができる。約70kgの体重を有する正常な成人については、体重1キログラム当たり約0.01~約100mgの範囲内の投与量が典型的には十分である。使用される特定の投薬量及び投薬量範囲は、対象又は患者の要件、治療される状態又は疾患の重症度、及び投与される化合物の薬理学的活性を含むいくつかの因子に潜在的に依存し得る。特定の対象又は患者に対する用量範囲及び最適用量の決定は、当業者の範囲内である。
【0152】
使用方法
本明細書に開示される送達ビヒクル複合体は、複合体(又はカーゴ)のポリアニオン化合物を細胞に送達するために使用することができる。したがって、核酸(例えば、RNA)などのポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法であって、細胞を本明細書に開示される送達ビヒクル複合体又は医薬組成物と接触させることを含む方法が、本明細書に開示される。いくつかの実装形態では、細胞をインビトロで接触させることができる。細胞がインビトロで接触されるいくつかの実装形態では、細胞はHeLa細胞である。細胞がインビボで接触される他の実装形態では、本開示の多成分送達系は、哺乳動物である対象に投与される。哺乳動物である対象としては、ヒト又はマウスの対象が挙げられ得るが、これらに限定されない。細胞をエクスビボで接触させる更に他の実施態様では、細胞は、ヒト又はマウスである対象から得られる。場合によっては、細胞は、腫瘍細胞である。場合によっては、細胞は、筋細胞である。
【0153】
いくつかの実装形態では、1つ以上のポリアニオン性カーゴ化合物が、治療用途のために送達され得る。非限定的な治療用途としては、癌、感染症、自己免疫障害、及び神経障害が挙げられる。特定の実装形態では、多成分送達系及びポリアニオン性カーゴ化合物を含む複合体が、ワクチンとして使用される。遺伝的ワクチン接種、又は核酸分子(例えば、RNA)の患者への投与、及びそれに続くコードされた遺伝情報の転写及び/又は翻訳は、遺伝性遺伝子疾患だけでなく、自己免疫疾患、感染症、癌性又は腫瘍関連疾患、並びに炎症性疾患の治療及び/又は予防にも有用である。遺伝子ワクチン接種は、コロナウイルスの治療又は予防に有用である。これらの実体の大部分のワクチン標的は、コロナウイルスのスパイク(S)タンパク質であるが、これは、ウイルスの外側を覆い、宿主細胞への侵入に関与する高度にグリコシル化された三量体クラスI融合タンパク質である。SARS-CoV-2のSタンパク質は、SARS-CoV-1と高い構造的相同性を共有し、S1ドメイン、S2ドメイン、及び受容体結合ドメイン(RBD)を含む、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介した宿主細胞へのウイルス侵入に不可欠ないくつかのサブユニットを含有する。したがって、Sタンパク質及びそのサブユニット、並びにこれらのドメイン内の接近可能なペプチド配列は、魅力的なワクチン抗原標的である。更に、癌細胞は抗原を発現し、疾患の発症によって証明されるように、腫瘍は一般的に宿主によって容易に認識及び排除されないので、遺伝子ワクチン接種は癌の治療において特に有用である。
【0154】
ワクチン。本開示の送達ビヒクル複合体は、ワクチンとしても有用であり、ポリアニオン性化合物は、免疫原、抗原、又はネオ抗原をコードし得るRNAである。宿主の免疫系は、病原性微生物に対する防御応答を迅速かつ特異的に開始するための手段、及び悪性腫瘍の拒絶に寄与するための手段を提供する。免疫応答は、一般に、抗原に特異的な抗体が分化したBリンパ球によって産生される体液性応答、及び種々のタイプのTリンパ球が、種々のメカニズムによって抗原を排除する細胞媒介性応答を含むと、これまで説明されてきた。例えば、特異的抗原を認識することができるCD4(CD4+とも呼ばれる)ヘルパーT細胞は、サイトカインなどの可溶性メディエータを放出して、免疫系の更なる細胞を動員して免疫応答に関与させることによって応答し得る。CD8(CD8+とも呼ばれる)細胞傷害性T細胞はまた、特異的抗原を認識することができ、かつ抗原を有する細胞又は粒子に結合して破壊又は損傷し得る。特に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を含む細胞媒介性免疫応答は、腫瘍細胞及び微生物(例えば、ウイルス、細菌、又は寄生生物)に感染した細胞の排除に重要であり得る。本開示の送達ビヒクル複合体は、複合体のポリアニオン性化合物のうちの1つ以上が、ウイルスペプチド(例えば、ウイルスポリペプチド)、ウイルスタンパク質、又は前述のものの機能的断片をコードする場合、免疫応答を誘導することが判明している。例えば、HPV E6/E7(例えば、HPV16及び/又はHPV18由来)癌遺伝子、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質の構築物、及び/又はインフルエンザ赤血球凝集素(HA)をコードするmRNAと複合体化されたDV-140-F2又はDV-140-F6/17のいずれかを含む送達ビヒクル複合体は、強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発した。例えば、実施例8~9及び図8~12を参照のこと。
【0155】
したがって、本開示は、免疫応答の誘導を必要とする対象におけるその誘導のための方法であって、有効量の本開示の送達ビヒクル複合体(例えば、抗原性組成物として製剤化されたもの)を対象に投与することを含む方法を含む。また本明細書には、ウイルス感染の治療を必要とする対象におけるその治療の方法であって、有効量の本開示の送達ビヒクル複合体を、対象に投与することを含む方法も開示される。いくつかの実装形態では、投与は、筋肉内、腫瘍内、静脈内、腹腔内、又は皮下送達による。
【0156】
様々な実装形態では、本開示の送達ビヒクル複合体(例えば、組成物、医薬製剤、又は抗原性組成物として製剤化されたもの)を対象に投与することで、送達ビヒクル複合体を投与されなかった対象において産生される抗体(例えば、中和抗体)の量と比較して、対象において産生されるウイルス抗原に対する抗体の量の増加をもたらし得る。いくつかの実装形態では、増加は、2倍増加、5倍増加、10倍増加、50倍増加、100倍増加、200倍増加、500倍増加、700倍増加、又は1000倍の増加である。
【0157】
本開示の方法によって惹起される免疫応答は、一般に、抗体応答、好ましくは中和抗体応答、T細胞及びB細胞の成熟及び記憶、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体細胞媒介性食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、並びにCD4+、CD8+などのT細胞媒介性応答を含む。本明細書に開示される、ウイルス抗原をコードするRNAを含む送達ビヒクル複合体によって生成される免疫応答は、本明細書に記載されるように、ウイルス感染を認識し、好ましくは改善及び/又は中和する、免疫応答を生成する。抗原性組成物の投与(免疫化又はワクチン接種)後の抗体応答を評価するための方法は、当技術分野において公知であり、かつ/又は本明細書に説明されている。いくつかの実装形態では、免疫応答は、T細胞媒介性応答(例えば、増殖応答又はサイトカイン応答などの、ペプチド特異的応答)を含む。いくつかの実装形態では、免疫応答は、B細胞応答及びT細胞応答の両方を含む。抗原性組成物は、筋肉内注射、腫瘍内注射、皮下注射、皮内投与、及び例えば、経口又は鼻腔内などの、粘膜投与などのいくつかの適切な方法で投与することができる。更なる投与様式としては、静脈内、腹腔内、鼻腔内投与、膣内、直腸内、及び経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。免疫化された対象における異なる投与経路の組み合わせ、例えば、筋肉内投与及び鼻腔内投与を同時に行うこともまた、本開示によって企図される。
【0158】
癌。様々な癌(例えば、子宮頸癌)を、本開示の送達ビヒクル複合体によって送達されるポリアニオン性カーゴ化合物で治療することができる。実施例8に示されるように、HPV E6/E7(HPV16及び/又はHPV18由来のもの)をコードするmRNAと複合体化したDV-140-F2は、強い細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両方を誘発し、本開示の送達ビヒクル複合体が、癌を治療する能力を有することを示す。本明細書中で使用される場合、「癌」という用語は、周辺組織に侵入し、そして新しい身体部位に転移する傾向がある未分化細胞の増殖によって特徴付けられる、任意の種々の悪性新生物をいい、そしてまた、このような悪性新生物増殖によって特徴付けられる病理学的状態をいう。癌は、腫瘍又は血液悪性腫瘍であり得るが、その例として、限定されないが、すべてのタイプのリンパ腫/白血病、癌腫及び肉腫、例えば、肛門、膀胱、胆管、骨、脳、乳房、子宮頸部、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、頭頸部、肝臓、腎臓、喉頭、肺、縦隔(胸部)、口、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚、小腸、胃、骨髄、尾骨、睾丸、甲状腺、及び子宮に見出される、癌又は腫瘍が挙げられる。
【0159】
非限定的な例として、治療され得る癌腫としては、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、腺肉腫、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、退形成性星細胞腫、血管肉腫、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫)、胆管癌、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星細胞腫、非浸潤性乳管癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮肉腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、卵管癌、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド癌、消化管間質腫瘍、一般、胚細胞腫瘍、多形膠芽腫、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、炎症性乳癌、腸癌、肝内胆管癌、浸潤性/浸潤性乳癌、膵島細胞癌、顎癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、髄膜下転移、白血病、口唇癌、脂肪肉腫、肝癌、非浸潤性小葉癌、低悪性度星細胞腫、肺癌、リンパ節癌、リンパ腫、男性乳癌、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、間葉系軟骨肉腫、間葉系、中皮腫、転移性乳癌、転移性黒色腫、転移性扁平上皮頸部癌、混合グリオーマ、口腔癌、粘液性癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、鼻腔癌、上咽頭癌、頸部癌、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、麦粒腫、眼癌、眼黒色腫、乏突起膠腫、口腔癌、口腔癌、中咽頭癌,骨原性肉腫,骨肉腫,卵巣癌,卵巣上皮癌,卵巣胚細胞腫瘍,卵巣原発腹膜癌,卵巣性索間質腫瘍,パジェット病,膵臓癌,乳頭癌,副鼻腔癌,副甲状腺癌,骨盤癌,陰茎癌,末梢神経癌、腹膜癌、咽頭癌、褐色細胞腫、小球性星細胞腫、松果体腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体癌、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、骨肉腫、肉腫、軟部組織癌、子宮肉腫、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部肉腫、脊髄癌、脊柱癌、脊髄癌、脊髄腫瘍、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫)、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫/胸腺癌、甲状腺癌、舌癌、扁桃癌、移行細胞癌、移行細胞癌、三重陰性乳癌、尿管癌、尿管癌、尿道癌、子宮腺癌、子宮体癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌が挙げられ得る。
【0160】
いくつかの実装形態では、本開示の送達ビヒクル複合体は、子宮頸癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、前立腺癌、及び肺癌からなる群から選択される癌を治療するために使用される。いくつかの実装形態では、送達ビヒクル複合体は、子宮頸癌を治療するために使用することができる。
【0161】
感染症。いくつかの実装形態では、本開示の送達ビヒクル複合体は、微生物感染、例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、又は寄生虫感染などの、感染性疾患を治療するために使用される。感染性疾患の非限定的な例としては、肝炎(HBV感染又はHCV感染など)、RSV、インフルエンザ、アデノウイルス、ライノウイルス、又は他のウイルス感染が挙げられる。
【0162】
自己免疫疾患。様々な自己免疫疾患及び自己免疫関連疾患を、本開示の送達ビヒクル複合体で治療することができる。本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」という用語は、身体が、それ自体の組織を攻撃する抗体を産生する疾患を指す。非限定的な例として、自己免疫疾病は、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、アガマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全症、自己免疫性内耳症(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性じんま疹、軸索・神経性神経障害、バロ病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群**、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型リオグロブリン血症、脱髄性神経炎、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デービック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維筋痛症**、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた)、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-ションレイン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節性リポ蛋白、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎症候群、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、苔癬性硬化症、苔癬性結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス(SLE)、ライム病(慢性)、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、ムーレン潰瘍、ミュシャ・ハーバーマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック病)、好中球減少症、眼球瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回文性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌性小児自己免疫性神経精神疾患)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンベルグ症候群、パーソンネージ・ターナー症候群、末梢扁平上皮炎、天疱瘡、末梢神経障害、脳脊髄周囲炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型・II型・III型自己免疫性多発性関節炎症候群、リューマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、純赤血球無形成症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子・精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感神経性眼症、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化性結合組織病(UCTD)、ぶどう膜炎、血管炎、小水疱性皮膚症、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症(現在は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれている)であり得る。
【0163】
神経学的疾患。様々な神経疾患が、本開示の送達ビヒクル系で治療され得る。非限定的な例として、神経疾患は、透明帯欠損症、酸性リパーゼ病、酸性マルターゼ欠乏症、後天性てんかん様失語症、急性播種性脳脊髄炎、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、胼胝形成不全、無神経症、アイカルディ症候群、アイカルディ-グティエール症候群障害、AIDS-神経学的合併症、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、無脳症、動脈瘤、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質症候群、失語症、失行症、くも膜嚢腫、くも膜炎、アーノルド-キアリ奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群、運動失調症、脊髄拡張症、運動失調症及び小脳変性症又は脊髄小脳変性症、心房細動及び脳卒中、注意欠陥多動性障害、自閉スペクトラム症、自律神経機能障害、中隔弛緩の欠如、酸性リパーゼ病、酸性マルターゼ欠乏症、後天性てんかん様失語症、急性散在性脳脊髄炎、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、副腎白質ジストロフィー、脳梁欠損症、失認、アイカルディ症候群、アイカルディ-痛風性症候群障害、AIDS-神経学的合併症、アレキサンダー病、アルパース病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アディー瞳孔、アディー症候群、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質抗体症候群、失語症、アプラ、くも膜嚢胞、くも膜炎、アーノルド-キリ奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群、運動失調、毛細血管拡張性運動失調症、運動失調及び小脳又は脊髄小脳変性症、心房性細動及び脳卒中、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害、自律神経失調症、背部痛、バース症候群、バッテン病、ベッカー筋緊張症、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼けいれん、良性巣状筋萎縮症、良性頭蓋内圧亢進症、ベルンハルト-ロート症候群、ビンスワンガー病、眼瞼けいれん、ブロッホ-ザルツバーガー症候群、腕神経叢出生時損傷、腕神経叢損傷、ブラッドベリー-エグルストン症候群、脳及び脊髄腫瘍、脳動脈瘤、脳損傷、ブラウン-セカール症候群、球脊髄性筋萎縮症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う脳常染色体優性動脈症(CADASIL)、カナヴァン病、手根管症候群、カウザルギー、海綿腫、海綿状血管腫、海綿状奇形、中心性頸髄症候群、中枢性頚髄症候群、中枢性疼痛症候群、中枢性橋髄融解症、頭部障害、セラミダーゼ欠損症、小脳変性症、小脳低形成、脳動脈瘤脳動脈硬化症、脳萎縮症、脳性脚気、脳空洞奇形、脳巨人症、脳低酸素症、脳性麻痺、脳-眼-顔-骨格症候群(COFS)、シャルコー・マリー・トゥース病、キアリ奇形、コレステロールエステル貯蔵症、舞踏病、コレオアカントサイトーシス、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性起立性不耐症、慢性疼痛、コケイン症候群II型、コフィン・ローリー症候群、巨頭症、昏睡状態、複雑性局所疼痛症候群、先天性顔面神経麻痺、先天性ミオパチー、先天性血管空洞奇形、皮質基底細胞変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋縫合症、クリー脳炎、クロイツフェルト-ヤコブ病、累積外傷障害、クッシング症候群、サイトメガロース性封入体症、サイトメガロウイルス感染症、ダンシングアイズ-ダンシングフット症候群、ダンディ-ウォーカー症候群、ドーソン病、デ・モルシエ症候群、デジェリン-クランプケ麻痺、認知症、認知症-多発性不全麻痺、認知症-意味性、皮質下認知症、レビー小体型認知症、歯状小脳失調症、歯管萎縮症、皮膚筋炎、発達性運動障害、デービック症候群、糖尿病性神経障害、びまん性硬化症、ドラベ症候群、自律神経失調症、書字障害、失読症、嚥下障害、失行症、脊髄小脳筋運動障害、進行性脊髄小脳運動障害、ジストニア、早期小児てんかん性脳症、空洞症候群、脳炎、嗜眠性脳炎、脳脊髄症、脳症、脳症(家族性小児)、脳三叉神経血管腫症、てんかん、てんかん性片麻痺、エルプ麻痺、エルプ-デュシェンヌ及びデジェリーヌ-クルンプケ麻痺、本態性振戦、伸展性脊髄融解症、ファブリー病、Fahr症候群、失神、家族性自律神経失調症、家族性血管腫、家族性特発性基底核石灰化症、家族性周期性麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー病、熱性けいれん、線維筋異形成、フィッシャー症候群、フロッピーインファント症候群、下垂足、フリードライヒ失調症、前頭側頭型認知症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー病、巨大軸索性神経障害、巨大細胞動脈炎、巨大細胞封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽神経痛、グリコーゲン貯蔵症、ギラン・バレー症候群、ハレルヴォルデン-シュパッツ病、頭部外傷、頭痛、連続性半頭症、半顔面けいれん、間欠性片麻痺、遺伝性神経障害、遺伝性痙性対麻痺、多発性神経萎縮性遺伝病、帯状疱疹、耳性帯状疱疹、平山症候群、ホームズ-アディー症候群、ホロ脳症、HTLV-1関連脊髄症、ヒューズ症候群、ハンチントン病、水頭症、水頭症-正常圧水頭症、水脊髄症、副腎皮質刺激ホルモン分泌過多症、過眠症、過緊張症、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、ピグメンティ失禁、小児低身長症、小児神経軸索性ジストロフィー、小児フィタン酸貯蔵症、小児レフスム病、小児けいれん、炎症性ミオパチー、小児麻痺、腸リポジストロフィー、頭蓋内嚢胞、頭蓋内圧亢進症、アイザック症候群、ジュベール症候群、カーンズ-セイル症候群、ケネディ病、キンズボーン症候群、クライン-レヴィン症候群、クリッペル-フェイル症候群、クリッペル-トレノネー症候群(KTS)、クリューバー-ビュシー症候群、コルサコフ健忘症状症候群、クラッベ病、クーゲルベルク-ウェランダー病、クル、ランバート-イートン筋無力症候群、ランダウ-クレフナー症候群、外側大腿皮膚神経陥入症、外側髄質症候群、学習障害、リー病、レノックス-ガストー症候群、レッシュ-ナイハン症候群、ロイコジストロフィー、レビン-クリッチリー症候群、レビー小体型認知症、脂質貯蔵症、リポイド蛋白症、裂頭症、ロックイン症候群、ルー・ゲーリッグ病、ループス-神経学的後遺症、ライム病-神経学的合併症、マチャド-ヨーゼフ病、黄斑脳症、巨大無脳症、メルカーソン-ローゼンタール症候群、髄膜炎、髄膜炎及び脳炎、メンケス病、感覚鈍麻、メタクロマチック白質ジストロフィー、小頭症、片頭痛、ミラーフィッシャー症候群、小脳卒中、ミトコンドリアミオパチー、メビウス症候群、単髄性筋萎縮症、運動ニューロン疾患、もやもや病、ムコ脂質症、ムコ多糖症、多発性梗塞性認知症、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、筋無力症-先天性、重症筋無力症、ミエリン破砕性びまん性硬化症、ミオクローヌス、ミオパチー、ミオパチー-先天性、ミオパチー-細胞毒性、ミオトニア、先天性ミオトニア、ナルコレプシー、神経赤血球症、脳鉄蓄積を伴う神経変性、神経線維腫症、神経遮断薬悪性症候群、エイズの神経学的合併症、ライム病の神経学的合併症、サイトメガロウイルス感染の神経学的結果、ポンペ病の神経学的症状、ループスの神経学的後遺症、視神経脊髄炎、神経筋強直症、神経セロイドリポフスチン症、神経細胞移行障害、ニューロパチー-遺伝性、神経サルコイドーシス、神経梅毒、神経毒性、海綿状母斑、ニーマン-ピック病、オサリヴァン-マクラウド症候群、後頭神経痛、大田原症候群、錐体外路小脳萎縮症、眼球クローヌスミオクローヌス、起立性低血圧、使いすぎ症候群、疼痛-慢性、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、腫瘍随伴症候群、感覚鈍麻、パーキンソン病、発作性コレオアテトーシス、発作性頭重症、パリー-ロンバーグ、ペリザエウス-メルツバッハー病、ペーナ・ショケールII症候群、神経周囲嚢胞、周期性麻痺、末梢神経障害、脳室周囲白質軟化症、持続性植物状態、広汎性発達障害、フィタン酸貯蔵症、ピック病、挟まれた神経、梨状筋症候群、下垂体腫瘍、多発性筋炎、ポンペ病、ポレンセファリー、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛、感染後脳脊髄炎、姿勢低血圧、姿勢起立性頻脈症候群、姿勢頻脈症候群、原発性歯列萎縮症、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、進行性疾患、進行性半側顔面萎縮症、進行性運動失調症、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上性麻痺、プロソパグノジア、疑似トーチ症候群、偽トキソプラズマ症症候群、偽性頭蓋内圧亢進症、心因性運動、ラムジーハント症候群I、ラムジーハント症候群II、ラスムッセン脳炎、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、レフサム病、レフサム病-小児、反復性運動障害、反復性ストレス傷害、レストレスレッグス症候群、レトロウイルス関連脊髄症、レット症候群、ライ症候群、リウマチ性脳炎、ライリーデイ症候群、仙骨神経根嚢胞、舞踏病、唾液腺疾患、サンドホフ病、シルダー病、統合失調症、ザイテルベルガー病、発作障害、意味性認知症、セプト-オプティック異形成、乳児期重症ミオクロニーてんかん(SMEI)、揺さぶられっ子症候群、帯状疱疹、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群、睡眠症候群、ソトス症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄梗塞、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー症候群、スティッフパーソン症候群、線条体変性症、脳卒中、スタージ・ウェーバー症候群、亜急性硬化性全脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、短時間持続型片側性神経型(SUNCT)頭痛、嚥下障害、シデナム舞踏病、同調症、梅毒性脊髄硬化症、水脊髄空洞症、脊髄空洞症、全身性エリテマトーデス、背部タブ、遅発性ジスキネジア、タルロフ嚢胞、テイ-サックス病、側頭動脈炎、脊髄繋留症候群、トムセン筋強直症、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、チック・ドゥールー、トッド麻痺、トゥレット症候群、一過性脳虚血発作、伝達性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性対麻痺、トロイヤー症候群、結節性硬化症、血管勃起性腫瘍、中枢及び末梢神経系の血管炎症候群、フォン-エコーノモ病、フォンヒッペル-リンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、ウエスト症候群、むち打ち症、ウィップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X-連鎖性脊髄及び球脊髄性筋萎縮症。
【0164】
人体に対して実施される方法の特許付与を禁止する管轄区域においては、ヒト対象又は患者への組成物の「投与」の意味は、ヒト対象又は患者が、任意の技術(例えば、経口、吸入、局所適用、注射、挿入など)によって自己投与する規制物質を処方することに限定されるものとする。特許可能な主題を定義する法律又は規則と一致する最も広い妥当な解釈が意図される。人体に対して実施される方法の特許付与を禁止しない管轄区域では、組成物の「投与」は、人体に対して実施される方法及び前述の活動の両方を含む。
【実施例
【0165】
以下の実施例は、例示のために提供され、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0166】
実施例1-第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドの一般的合成
本明細書に開示される第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを合成するための一般的なプロトコルは、国際特許出願公開第2020/069442号及び国際特許出願公開第2020/069445号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。以下の実施例は、第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドの合成のための一般的プロトコルを説明する。
【0167】
すべてのポリマーは、ブロモ酢酸及び第一級アミンを用いて合成した。Fmoc-Rinkアミド樹脂を固体支持体として使用した。樹脂上のFmoc基を、20%(v/v)ピペリジン-ジメチルホルムアミド(DMF)で脱保護した。次いで、アミノ樹脂をブロモ酢酸でアミド化した。アミド化に続いて、第一級アミンで臭化物を求核置換することにより、α-炭素のアミノ化を行った。2つの工程を連続的に繰り返して、所望のカチオン性ペプチド配列を生成した。
【0168】
すべての反応及び洗浄は、特に別段示されない限り室温で行った。樹脂の洗浄とは、洗浄溶媒(通常、DMF又はジメチルスルホキシド(DMSO))を樹脂に添加し、均一なスラリーが得られるように樹脂を撹拌し、続いて樹脂から溶媒を完全に排出させることを指す。樹脂が乾燥しているように見えるまで、反応容器のフリット底を通して真空濾過することによって溶媒を除去した。すべての合成において、樹脂スラリーを、フリット容器の底を通してアルゴンを泡立たせることによって撹拌した。
【0169】
最初の樹脂脱保護。フリット反応容器にFmoc-Rinkアミド樹脂を充填した。DMFを樹脂に添加し、この溶液を撹拌して樹脂を膨潤させた。次いで、DMFを排出させた。DMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加し、樹脂を撹拌し、樹脂を排出することによって、Fmoc基を除去した。DMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加し、15分間撹拌し、次いで排液した。次いで、樹脂をDMFで6回洗浄した。
【0170】
アシル化/アミド化。次いで、DMF中のブロモ酢酸を樹脂に添加し、続いてDMF中のN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を添加することによって、脱ブロック化アミンをアシル化した。この溶液を室温で30分間撹拌し、次いで排液した。この工程を2回繰り返した。次いで、樹脂をDMFで2回、DMSOで1回洗浄した。これが、完了した反応サイクル1回分であった。
【0171】
求核置換/アミノ化。アシル化樹脂を、所望の第一級又は第二級アミンで処理して、α-炭素上の臭素脱離基で求核置換を行った。所望のペプチド配列が得られるまで、このアシル化/置換サイクルを繰り返した。
【0172】
樹脂からのペプチド切断。乾燥した樹脂を、テフロン被覆マイクロ撹拌棒を含むガラスシンチレーションバイアルに入れ、水中95%のトリフルオロ酢酸(TFA)を添加した。溶液を20分間撹拌し、次いでポリエチレンフリットを取り付けた固相抽出(SPE)カラムを通して、ポリプロピレンコニカル遠心分離管中に濾過した。樹脂を、1mLの95%TFAで洗浄した。次いで、合わせた濾液を、1:1のアセトニトリル:水によって3回凍結乾燥させた。凍結乾燥したペプチドを、水中5%のアセトニトリル中に、5mMの濃度になるように再溶解させた。
【0173】
精製及び特徴付け。再溶解させた粗ペプチドを、分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、LC-MS分析によって特徴付けた。
【0174】
実施例2-ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドの合成
実施例1に記載のサブモノマー法により、ブロモ酢酸及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、ヒドロキシエチルでキャップ化脂質化ペプトイドを合成した。ポリスチレン担持MBHA Fmoc保護Rinkアミド(200mgの代表スケール、0.64mmol/gローディング、Protein Technologies社製)樹脂を固体支持体として使用した。ブロモアセチル化のために、樹脂を0.8Mのブロモ酢酸及び0.8MのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)の1:1混合物と、15分間にわたり組み合わせた。アミン置換を、DMF中のアミンの1M溶液を用いて、45分間行った。合成後、粗ペプトイドを、95:2.5:2.5の比率の、トリフルオロ酢酸(TFA):水:トリイソプロピルシランの混合物5mLを使用して、室温で40分間樹脂から切断した。樹脂を濾過により除去し、濾液を真空遠心分離機を用いて濃縮させた。粗ペプトイドを、C4カラム及び60~95%ACN/H2O+0.1%TFAの勾配を使用する逆相フラッシュクロマトグラフィー(Biotage Selekt)によって、更に精製した。得られた精製物の識別と純度についてのアッセイを行った。その際、Waters Acquity UPLCシステムに、Acquity Diode Array UV検出器と、Waters SQD2質量分析計とを装着し、5~95%勾配のWaters Acquity UPLC Peptide BEH C4カラムを用いた。選択されたペプトイドを、Waters 2489 UV/可視検出器を備えた分取Waters Prep150LCシステムによって、Waters XBridge BEH300 Prep C4カラムを、0.1%TFAを含む水中40~85%アセトニトリル勾配を用いて、30分間にわたって更に精製した。
【0175】
実施例3-送達ビヒクル複合体の合成
合成。ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化ペプトイドを、核酸などのポリアニオン化合物と組み合わせて、送達ビヒクル複合体を形成する。この送達ビヒクル複合体は、治療及び/又は予防目的で、インビトロ又はインビボで評価することができるものである。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、アミノ-脂質化ペプトイドのカチオン性部分(複数可)は、主に静電相互作用を介して、ポリアニオン性カーゴ(例えば、核酸カーゴ)の、負に荷電したホスホジエステル骨格に結合し、混合コアセルベート複合体を形成する。ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化ペプトイド上の脂質鎖どうしの間の疎水性相互作用は、微粒子形成を安定化し、膜会合を補助するように作用し得る。
【0176】
送達ビヒクル複合体は、それらの物理的、化学的、及び生物学的特性を調節するために、当技術分野で公知の任意の物理的及び/又は化学的方法によって調製することができる。これらの方法は、典型的には、水中又は水混和性有機溶媒中の、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化ペプトイドと、水中又は水性緩衝液中のオリゴヌクレオチドとを、迅速に組み合わせることを伴う。これらの方法は、ピペッティングによる成分の単純な混合、又はT-ミキサ、ボルテックスミキサ、若しくは他のカオス混合構造を含むものなどのマイクロ流体混合プロセスを含むことができる。
【0177】
標準的な製剤では、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化ペプトイド及び更なる脂質が無水エタノール中に10mg/mLの濃度で溶解されて、その結果、室温で安定な溶液が得られる。いくつかの実装形態では、溶液は、-20℃で保存される。核酸カーゴを、1~2mg/mLの最終濃度になるように、DNase又はRNaseを含まない水に溶解させる。これらの溶液は、-20℃又は-78℃で長期間保存することができる。
【0178】
本明細書に開示される送達ビヒクル組成物を調製するために、ヒドロキシエチルでキャップされた第三級アミノ脂質化ペプトイド及び更なる脂質成分を、必要とされる質量比でエタノール相中で最初に予め混合する。核酸カーゴを、エタノール及び酸性緩衝液(10mMのリン酸塩/クエン酸塩、pH5.0)で希釈する。エタノール相及び水相を3:1の体積比で混合し、次いで直ちに1:1の体積比となるようにPBSで希釈して、0.1μg/uLの最終mRNA濃度を得た。前述の方法によって調製される、非限定的な例示的送達ビヒクル組成物としては、上記の表2に列挙される組成物(例えば、組成物F2、F6/17、F6/12、及びF6/15)が挙げられる。
【0179】
送達ビヒクル組成物を、ポリアニオン性化合物、例えば、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)、COVID-19スパイクタンパク、その機能的断片、及び/又はその変異体をコードするRNA、及びE6/E7癌遺伝子(例えば、HPV16、HPV18由来、その機能的断片、及び/又はその変異体)と、表3に示す比率で組み合わせて、送達ビヒクル複合体を形成し、この送達ビヒクル複合体を、治療及び/又は予防目的で、インビトロ又はインビボで評価した。表3中のw/wは、示された成分の、mRNAに対する質量比である。
【0180】
実施例4-粒子の特徴付け
得られた送達ビヒクル複合体を、動的光散乱法(DLS)によって評価して、送達ビヒクル複合体内の、体積平均粒径/直径(nm)及びサイズ多分散性指数(PDI)を決定した。
【0181】
粒径。粒径及びサイズ分布は、Wyatt社製DynaPro(登録商標)Plate Reader IIIを用いて測定した。一般に、製剤化した試料を100μLのPBSで、2ng/uLに希釈した。データは、相関関数のキュムラントフィットの流体力学的直径(nm単位)、及びその測定値の多分散性として報告される。カチオン性成分の量が増加した複合体は、結果としてより小さい粒径をもたらした。図1Aを参照のこと。
【0182】
封入パーセント。Fluc mRNAを含有する送達ビヒクル複合体内に封入されたmRNAの割合を、改良型RiboGreenアッセイを使用して決定した。一般に、製剤化されたmRNA試料を、Triton-Xを含む又は含まないTris-EDTA緩衝液で、500ng/mLに希釈した。RiboGreen(Invitrogen社製)を、200倍希釈で添加し、プレートを5分間インキュベートした。蛍光をEx.840nm/Em.520nmで測定し、封入されたmRNAを、非溶解粒子対溶解粒子の蛍光の比をとることによって計算した。カチオン性成分の量を増やした複合体は、結果としてより高い封入化をもたらした。図1Bを参照のこと。
【0183】
粒子安定性。送達ビヒクル複合体を4℃で保存し、17日後及び48日後に、得られた粒子の粒径及び封入パーセントを決定した。複合体は、テストされた保存期間にわたって、粒径も封入率も有意に変化することはなかった。図2を参照のこと。
【0184】
それぞれFluc mRNAと複合体化させたDV-140-F2及びDV-112-F2を、-20℃、4℃、25℃、及び37~40℃で保存し、複合体の粒径(図3A)及び多分散性(図3B)を、24時間のインビボ時点後、並びに凍結/融解サイクル(3回、4℃/25℃)にわたって評価した。DV-140-F2は、この実施例におけるすべての実験において、DV-112-F2よりも良好な安定性を示した。
【0185】
更なる実施例では、複合体DV-140-F2、DV-140-F6/17、及びDV-112-F2を、5℃の保存温度に供し、以下の表6の条件に従って、経時的に粒径及び封入率についてモニターした。
【0186】
【表6】
毎月モニタリング、試料は0.22μmのフィルターを通して濾過した。
+毎週モニタリング、試料は濾過しない。
#試料は、0.22μmのフィルターを通して濾過した。
【0187】
実施例5-毒物学研究
ポリアニオン性成分としてmRNAを有する複合体DV-140-F2を、以下の表7に示すパラメータに従って、0.1mg/kg及び0.3mg/kgの用量で、筋肉内注射によってラットに投与した。
【0188】
【表7】
【0189】
Sprague Dawleyラットモデルにおける、組織病理学、肉眼で見ての臓器評価、剖検、血液学、臨床化学、サイトカイン分析、体重、臨床観察、及び食物消費に対するDV-140-F2の効果を、当該分野で周知の方法を使用して評価した(データは示さず)。結果を以下の表8に示す。
【0190】
【表8】
【0191】
Fluc mRNAと複合体化したDV-140-F2は、全身毒性又は有害事象を伴わずに、高用量及び低用量で十分に許容された。
【0192】
実施例6-送達ビヒクル複合体の有効性-インビトロでのホタルルシフェラーゼ発現
本明細書に開示される送達ビヒクル組成物と、ホタルルシフェラーゼをコードするmRNA(Fluc mRNA)とを含む複合体の有効性を、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)レポータ遺伝子を培養細胞に送達するそれらの能力に基づいて、インビトロで評価した。代表的な実験では、送達ビヒクル組成物をFluc mRNAと組み合わせ、得られた粒子を、培養したHEK-293細胞に50ng/ウェルの用量で添加した(総体積は、150μL)。得られたルシフェラーゼ発現を、処理の6時間後及び18時間後に発光プレートリーダーによって測定した。本開示の送達ビヒクル(例えば、DV-140-F2)は、高いルシフェラーゼ発現を示す。
【0193】
実施例7-インビボでのルシフェラーゼ発現
一般的な方法。すべての研究の前に、動物(例えば、マウス及び/又はラット)を使用前に最低3日間順応させた。動物を、温度及び湿度が制御された室内で、12時間の光サイクルで維持した。健康チェックと、食物及び水のチェックとを毎日行った。
【0194】
注射は、注射部位に応じて26~30ゲージ針を使用して、皮下(50~200μL)、腹腔内(最大1000μL)、静脈内(50~200μL)、筋肉内(50μL)、又は腫瘍内(50μL)に行った。動物は、すべての注射/移植についてイソフルラン麻酔下にあった。
【0195】
画像撮影のために、動物を麻酔下に置き、D-ルシフェリン(15mg/mL)を体重1g当たり10μLの用量で腹腔内に注射し、カメラチャンバに入れ、最大で30分間撮影した。基質注射の15分後に、画像化を行った。
【0196】
静脈内投与。本明細書に開示される送達ビヒクル複合体は、Balb/cマウスへの、Fluc mRNAのインビボでの複数の投与経路による投与に有効であった。一般に、送達系複合体を0.5mg/kgの用量で尾静脈注射により投与し、得られた生物発光を6時間後に定量した。処置動物を屠殺し、目的の器官を解剖し、そして得られた生物発光を別々に定量することによって、器官特異的生物発光量を測定した。
【0197】
局所投与。IV投与に加えて、本明細書に記載の送達ビヒクル複合体はまた、腫瘍内(IT)、皮下(SC)、又は筋肉内(IM)の投与経路によるmRNAの局所投与にも有効である。これらの実施例について、mRNAを、腫瘍内投与については0.1mpk、又は皮下及び筋肉内投与については0.01mpkの用量で投与し、得られた生物発光量を6時間後に測定した。
【0198】
本開示の送達ビヒクル複合体は、筋肉内注射を介して投与された場合(図4図5、及び図6を参照)及び腫瘍内注射を介して投与された場合(図7を参照)に、高いルシフェラーゼ発現を示す。
【0199】
実施例8-子宮頸癌のためのRNAベースのワクチン
癌に対するRNAベースのワクチンとして作用する、本開示の送達ビヒクル複合体の有効性を評価した。
【0200】
細胞性応答。疾患モデルにおける本明細書に記載の送達ビヒクル複合体の有効性を、オボアルブミン(OVA)又はHPV E6/E7癌遺伝子(HPV16及び/又はHPV18由来)のいずれかをコードするmRNAを代表的なペプトイドと共に製剤化し、このワクチンをC57Bl/6マウスに投与することによって評価した。ワクチン候補を2回投与し、試験から0日目にプライムを投与し、7日目にブーストを投与した。14日目に、蛍光MHC-I四量体コンジュゲート(MBL International社製)を用いて、末梢血中及び脾臓中の抗原特異的CD8+T細胞のレベルを測定することによって、特徴付けられたエピトープに対して得られた免疫応答を決定した。DV-140-F2複合体は、試験された他の複合体と比較して強い細胞応答を誘発した。図8Aを参照のこと。
【0201】
体液性応答。ワクチン候補に対する体液性応答を、E7-IgG ELISAによって評価した。簡潔に述べると、MaxiSorp ELISAプレート(Thermo Scientific)を、1μg/mLのE7-hisタンパク質(Abcam)を用いて、4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを洗浄し、10%のFBSでブロッキングした。血漿試料をブロッキング緩衝液(10%FCS)で、1:5の希釈率で希釈し、5つの10倍希釈物をプレートに加えた。サンプルをプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。検出は、ブロッキング緩衝液中1:1000のロバ抗マウスIgG-HRP(Jackson Immunology社製)を1時間使用し、次いで、HRP基質で検出し、450nmで読み取った。DV-140-F2複合体は、試験された他の複合体と比較して、強いIgGr応答を誘発した。図8Bを参照のこと。
【0202】
実施例9-COVID-19のためのRNAベースのワクチン
DV-140-F2を、COVID-19スパイクタンパク(SARS-CoVスパイク(S)タンパク)をコードするRNAと複合体化し、その免疫応答を評価した。全長スパイクタンパク質の構築物を含むDV-140-F2は、スパイクタンパク質に対して強い体液性応答及び細胞性応答を示した。更に、スパイク特異的抗体が、血清中及び肺中で検出され、スパイク特異的CD4及びCD8 T細胞が、IFNγ、TNFα、及びIL2を産生した。DV-140-F2複合体によって誘導される体液性応答及び細胞性応答の範囲は、MRNA-1273で処置されたマウスにおいて示される応答と同様である。更に、スパイクタンパク質とflu血球凝集素(HA)のRNAとの組み合わせは、flu HA及びスパイクタンパク質の両方に対する応答を誘導した。
【0203】
スパイク特異的中和抗体の誘導。Balb/cマウス(n=8)を、0日目及び21日目に、異なる全長スパイク構築物(構築物#1、構築物#2、及び構築物#3)のCOVID RNAと複合体化した1μgのDV-140-F2を、筋肉内投与して免疫化した。なお、このCOVID RNAは、南アフリカ変異型及びイギリス変異型、基準全長スパイク、又はスクランブル由来のいくつかの突然変異を含むものである。水中油型スクアレンエマルジョン(Invivogen社製Addavax)中の組換えスパイクタンパク質(10μg)も、対照として含めた。血清及び気管支肺胞上皮洗浄液を、50日目に回収した。血清(図9A)及び肺(図9B)中のスパイク特異的抗体を、コーティングのためのスパイクの受容体結合ドメイン(RBD)領域及び抗マウスIgG二次抗体を使用して、ELISAによって評価した。吸光度を、OD450で測定した。カットオフとしてバックグラウンドの平均+バックグラウンドウェルの5×stdを使用して、血清について終点力価を計算した。血清中の中和抗体価を、GenScript社からのSARS-CoV2サロゲートウイルス中和試験を使用して、取扱説明書に従って1:100の希釈率で評価した(図9C)。DV-140-F2及びCOVID RNAを含む複合体は、スパイク特異的中和抗体を誘導した。スパイク特異的抗体は、血清において、かつ肺において検出することができる。
【0204】
スパイク特異的細胞性免疫応答の誘導。Balb/cマウス(n=8)を、0日目及び21日目に、異なる全長スパイク構築物(構築物#1、構築物#2、及び構築物#3)のCOVID RNAと複合体化した1μgのDV-140-F2を、筋肉内投与して免疫化した。なお、このCOVID RNAは、南アフリカ変異型及びイギリス変異型、基準全長スパイク、又はスクランブル由来のいくつかの突然変異を含むものである。水中油型スクアレンエマルジョン(Invivogen社製Addavax)中の組換えスパイクタンパク質(10μg)も、対照として含めた。脾臓を50日目に回収し、処理して単一の細胞懸濁液とした。IFNg ELISpot(図10A)並びにIFNγ、TNFα、及びIL2についての細胞内サイトカイン染色(図10B)によって、全長スパイクについての重複ペプチドライブラリーを使用して脾細胞におけるスパイク特異的免疫応答を評価した。図10Cも参照のこと。DV-140-F2及びCOVID RNAを含む複合体は、スパイク特異的T細胞性応答を誘導した。
【0205】
MRNA-1273及び本開示のワクチンによって誘導されたスパイク特異的力価の比較。Balb/cマウス(n=32)を、0日目及び21日目に、全長スパイク構築物(構築物#1、構築物#2、及び構築物#3)のRNAと複合体化した1μgのDV-140-F2で、筋肉内投与して免疫化した。なお、このCOVID RNAは、南アフリカ変異型及びイギリス変異型、又はスクランブルRNA対照由来のいくつかの突然変異を含むものである。50日目に血清を採取した。血清中のスパイク特異的抗体を、コーティングのためのスパイクの受容体結合ドメイン(RBD)領域及び抗マウスIgG二次抗体を使用して、ELISAによって評価した。カットオフとしてバックグラウンドの平均+バックグラウンドウェルの5×stdを使用して、血清について終点力価を計算した。平均+/-幾何標準偏差を示す。図11Aを参照。DV-140-F2及びCOVID RNAを含む複合物は、マウスにおいて、様々なレベルのスパイク特異的抗体を誘導したが、これは、同様のレジメンでMRNA-1273で処置されたマウスにおいて報告された応答の範囲内である。図11B(Corbett,et al,Nature 586 567-571(2020)からの図)を参照のこと。なお、上記は、スパイク特異的抗体が、MRNA-1273を用いた1回又は2回の投与後にBalb/cマウスにおいて誘導したものである。
【0206】
インフルエンザとの混合ワクチン。Balb/cマウス(n=8)を、0日目及び21日目に、全長スパイク、flu血球凝集素(HA)のRNAと複合体化された、又はスクランブルされたRNAと複合体化された1μgのDV-140-F2を筋肉内投与することで免疫化した。血清(図12A)及び脾臓(図12B)を50日目に採取した。体液性免疫応答:血清中のスパイク特異的(青色)及びflu HA特異的(緑色)抗体をELISAによって評価した。カットオフとしてバックグラウンドの平均+バックグラウンドウェルの5×stdを使用して、血清について終点力価を計算した。図12Aを参照のこと。細胞性免疫応答:免疫応答を、全長スパイク(青色)、flu HAタンパク質(緑色)又は培地単独(unstim、黄色)についての重複ペプチドライブラリーを使用して、細胞内サイトカイン染色によって脾細胞において評価した。図12Bを参照のこと。flu HAを標的とする本開示のワクチンは、flu HA特異的な、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を誘導する。スパイク及びflu HAの両方を標的とする混合ワクチンは、スパイク又はflu HAのいずれかを単独で標的とするいずれかのワクチンと同様のスパイク及びflu HA特異的免疫応答を誘導する。
【0207】
実施例10-COVID-19についてのRNAベースのワクチンにおける送達ビヒクルの比較
様々な送達ビヒクル(MC3、市販のビヒクルSM-102及びALC-0315、DV-140-F6.1、DV-140-F6.3、並びに対照としてのPBS)を、COVID-19スパイクタンパク(SARS-CoVスパイク(S)タンパク)をコードするRNAと複合体化し、それらの免疫応答を評価した。全長スパイクタンパク質の構築物を含むDV-140-F6.1及びDV-140-F6.3は、スパイクタンパク質に対して強い体液性応答及び細胞性応答を示した。DV-140-F6.3複合体によって誘導される、体液性応答の範囲及び細胞性応答の範囲は、市販のモデルナのビヒクルで処置したマウス及びファイザー社製のビヒクルで処置したマウスにおいて示される応答と同様である。
【0208】
スパイク特異的中和抗体の誘導。Balb/cマウス(n=8)を、0日目及び21日目に、異なる全長スパイク構築物(構築物#1、構築物#2、及び構築物#3)のCOVID RNAと複合体化した1μgの送達ビヒクル(MC3、モデルナ社製の市販のビヒクル及びファイザー社製の市販のビヒクル、DV-140-F6.1、及びDV-140-F6.3)を、筋肉内投与して免疫化した。なお、このCOVID RNAは、南アフリカ変異型及びイギリス変異型、基準全長スパイク、又はスクランブル由来のいくつかの突然変異を含むものである。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の組換えスパイクタンパク質(10μg)も対照として含めた。血清及び気管支肺胞上皮洗浄液を、35日目に回収した。血清中のスパイク特異的抗体(図13A)を、コーティングのためのスパイクの受容体結合ドメイン(RBD)領域及び抗マウスIgG二次抗体を使用して、ELISAによって評価した。吸光度を、OD450で測定した。カットオフとしてバックグラウンドの平均+バックグラウンドウェルの5×stdを使用して、血清について終点力価を計算した。血清中の中和抗体価を、GenScript社からのSARS-CoV2サロゲートウイルス中和試験を使用して、取扱説明書に従って1:100の希釈率で評価した。DV-140-F6.1及びCOVID RNAを含む複合体と、DV-140-F6.3及びCOVID RNAを含む複合体とは、スパイク特異的中和抗体を誘導した。スパイク特異的抗体は、血清において、かつ肺において検出することができる。
【0209】
スパイク特異的細胞性免疫応答の誘導。Balb/cマウス(n=8)を、0日目及び21日目に、異なる全長スパイク構築物(構築物#1、構築物#2、及び構築物#3)のCOVID RNAと複合体化した1μgの送達ビヒクル(MC3、モデルナ社製の市販のビヒクル及びファイザー社製の市販のビヒクル、DV-140-F6.1、及びDV-140-F6.3)を、筋肉内投与して免疫化した。なお、このCOVID RNAは、南アフリカ変異型及びイギリス変異型、基準全長スパイク、又はスクランブル由来のいくつかの突然変異を含むものである。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の組換えスパイクタンパク質(10μg)も対照として含めた。脾臓を50日目に回収し、処理して単一の細胞懸濁液とした。スパイク特異的免疫応答を、全長スパイクについての重複ペプチドライブラリーを使用し、IFNg ELISpotによって脾細胞において評価した(図13B)。DV-140-F6.1及びCOVID RNAを含む複合体と、DV-140-F6.3及びCOVID RNAを含む複合体とは、スパイク特異的T細胞性応答を誘導し、DV-140-F6.3及びCOVID RNAを含む複合体は、MC3よりも高く、市販のモデルナ社製ビヒクル及びファイザー社製ビヒクルに匹敵する応答を誘導した。
【0210】
実施例10-有効性及び毒性研究
化合物140は、マウスによる有効性研究及びラットによる毒性研究において、十分に許容されるということが判明した。簡単に説明すると、Sprague-Dawleyラット(n=8)を、0.03若しくは0.3mg/kgのDV-140-F2又はPBSビヒクル中で製剤化した対照のmRNAで処置した。注射を13日間にわたって4回行い、後肢に筋肉内投与した。初回投与及び最終投与の6時間後、並びに最終投与の2週間後に、血液検査のために全血を採取し、臨床化学検査及びサイトカイン分析のために血清を採取した。更に、2匹の動物を、最終投与の6時間後及び最終投与の2週間後に屠殺し、肉眼による剖検を行った。組織サンプルを保持し、選択した臓器にて組織病理学検査を行った。
【0211】
【表9】
【0212】
前述の概念及び実装形態、並びに以下でより詳細に説明する追加の概念及び実装形態のすべての組み合わせは、本明細書で開示する本発明の主題の一部であると企図され、本明細書で説明する利益を達成するために、任意の適切な組み合わせで使用され得るということを諒解されたい。具体的には、本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると企図される。前述の説明は、理解を明確にするためだけに与えられており、本開示の範囲内の修正が当業者には明らかであり得るので、不必要な限定がそれから理解されるべきではない。
【0213】
本明細書全体を通して使用される「実質的に」、「およそ」、及び「約」という用語は、プロセスにおける変化などによる小さな変動を記載し計算に入れるために使用される。例えば、それらは、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
【0214】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む/備える(comprise、なおcomprises、comprisingなどの変形も同様」という用語は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を排除することを意味するものではないと理解される。
【0215】
本明細書全体を通して、組成物が成分又は材料を含むものとして記載されている場合、組成物は、別段記載されない限り、列挙された成分又は材料の任意の組み合わせから本質的になるか、又はそれらからなることもできるということが企図される。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載されている場合、その方法はまた、別段の記載がない限り、列挙されたステップの任意の組み合わせから本質的になり得るか、又はそれらからなり得ることが企図される。本明細書に例示的に開示された開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又はステップが存在しない下で、適切に実施され得る。
【0216】
本明細書に開示される方法及びその個々のステップの実施は、手動で、及び/又は電子機器の助けを借りて、若しくは電子機器によって提供される自動化を用いて行うことができる。特定の実装形態を参照し参照して説明されてきたが、当業者は、方法に関連付けられた行為を実行する他の方法が使用され得るということを容易に諒解されよう。例えば、様々なステップの順序は、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、様々なステップの順序を変更することができる。加えて、個々のステップのうちのいくつかは、組み合わせられる、省略される、又は追加のステップに更に細分されることができる。
【0217】
本明細書中で引用されるすべての特許、刊行物及び参考文献は、参照により、本明細書中に完全に援用される。本開示と、組み込まれた特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B-1】
図10B-2】
図10C-1】
図10C-2】
図10C-3】
図10D-1】
図10D-2】
図10D-3】
図11A
図11B
図12A-1】
図12A-2】
図12B-1】
図12B-2】
図13A
図13B
【国際調査報告】