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特表2024-532695圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート
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  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図1
  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図2A
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  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図3
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  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図5A
  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図5B
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  • 特表-圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】圧電微細構造体を備えるアクティブ圧電シート
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240903BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R17/00
H04R17/00 330H
H04R3/00 330
H04R3/00 320
H04R17/00 330L
H04R17/00 332A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506554
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022035909
(87)【国際公開番号】W WO2023022801
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,399
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/508,133
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジンチ
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ジェフリー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ブロヴィック,ウラジーミル
【テーマコード(参考)】
5D004
5D019
5D220
【Fターム(参考)】
5D004AA06
5D004BB01
5D004BB02
5D004BB03
5D004BB04
5D004DD01
5D004DD02
5D004FF01
5D019BB19
5D019BB25
5D019FF01
5D220AA12
5D220AA16
5D220AA47
5D220AB06
5D220BA06
5D220BA21
5D220BC05
(57)【要約】
アクティブ音響システムは、フィルム内にエンボス加工された圧電微細構造体のアレイを有する、薄膜シートを含む。各圧電微細構造体は、スピーカおよび/またはマイクロフォンとして作用し得る。制御回路は、圧電微細構造体を個別にアドレス指定して、個別の電圧信号を各圧電微細構造体に供給するか、または個別の電圧信号を各圧電微細構造体から受け取るように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電微細構造体のアレイを含む圧電基板であって、各圧電微細構造体が、少なくとも2つの端子を有する、圧電基板と、
各圧電微細構造体のうちの少なくとも1つの端子に結合された出力端子を有する制御回路であって、前記圧電微細構造体のアレイ内の1つまたは複数の圧電微細構造体をアドレス指定して、前記圧電微細構造体に1つまたは複数の電圧信号を供給し、前記圧電微細構造体のアレイ内の前記圧電微細構造体を制御するように構成されている、制御回路と
を備える、アクティブ音響システム。
【請求項2】
前記基板の片側に配置された保護層をさらに備え、前記保護層は、スルーホールのアレイを含み、前記スルーホールのアレイ内の各スルーホールは、前記圧電微細構造体のアレイのうちの圧電微細構造体の上に位置している、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項3】
前記基板は、前記圧電微細構造体を形成する突起部を備える、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項4】
前記突起部のうちの少なくとも1つは、ドーム形である、請求項3に記載のアクティブ音響システム。
【請求項5】
前記突起部のうちの少なくとも1つは、凹表面を有する、請求項3に記載のアクティブ音響システム。
【請求項6】
前記基板の片側に配置されたカプセル化層を備える、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項7】
前記制御回路は、前記圧電微細構造体のうちの少なく1つにAC電圧を駆動して、前記圧電微細構造体に音響サウンドを生成させるように構成されている、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項8】
前記音響サウンドは超音波である、請求項7に記載のアクティブ音響システム。
【請求項9】
前記制御回路は、前記圧電微細構造体のうちの少なくとも1つから電圧信号を受信して、外部環境における音響源からの音響サウンドを検出するように構成されている、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項10】
前記制御回路は、前記音響源の場所を検出するのにビームフォーミング技術を使用するように構成されている、請求項9に記載のアクティブ音響システム。
【請求項11】
前記基板は可撓性である、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項12】
前記基板は剛性がある、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項13】
前記基板は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、圧電ポリマー、圧電複合材料、圧電セラミック、および/または圧電単結晶材料で形成される、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項14】
前記圧電基板は、各々が1つまたは複数の圧電微細構造体に結合されている、2つ以上の導電性トレースを備える、請求項1に記載のアクティブ音響システム。
【請求項15】
前記制御回路は、前記導電性トレースのうちの少なくとも2つをアクティブ化することによって、個々の圧電微細構造体をアドレス指定するように構成されている、請求項14に記載のアクティブ音響システム。
【請求項16】
前記制御回路は、前記導電性トレースのうちの少なくとも2つをアクティブ化することによって、圧電微細構造体のブロックをアドレス指定するように構成されている、請求項15に記載のアクティブ音響システム。
【請求項17】
圧電微細構造体のアレイを有する基板であって、各圧電微細構造体が、ドライバ回路に結合するための少なくとも1つの電気端子を有する、基板と、
前記基板の片側に配置された保護層であって、スルーホールのアレイを備え、前記スルーホールアレイ内の各スルーホールは、前記圧電微細構造体のアレイのうちの圧電微細構造体の上に位置している、保護層と
を備える、アクティブ音響面。
【請求項18】
前記基板は、前記圧電微細構造体を形成する突起部を備える、請求項17に記載のアクティブ音響面。
【請求項19】
前記突起部のうちの少なくとも1つは、ドーム形である、請求項18に記載のアクティブ音響面。
【請求項20】
前記突起部のうちの少なくとも1つは、凹表面を有する、請求項18に記載のアクティブ音響面。
【請求項21】
前記基板の片側に配置されたカプセル化層を備える、請求項18に記載のアクティブ音響面。
【請求項22】
少なくとも1つの圧電微細構造体が、前記ドライバ回路に結合され、前記ドライバ回路は、前記圧電微細構造体のうちの少なくとも1つに交流電圧を駆動して、前記圧電微細構造体に音響サウンドを生成させ、および/または前記圧電微細構造体から電圧信号を受信して、前記圧電微細構造体によって検出された音響サウンドを表すように構成されている、請求項17に記載のアクティブ音響面。
【請求項23】
前記基板は可撓性である、請求項17に記載のアクティブ音響面。
【請求項24】
前記基板には剛性がある、請求項17に記載のアクティブ音響面。
【請求項25】
前記基板は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、圧電ポリマー、圧電複合材料、圧電セラミック、および/または圧電単結晶材料で形成されている、請求項17に記載のアクティブ音響面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、音響面(acoustic surface)に関し、より具体的には、アクティブ圧電素子(active piezoelectric elements)アレイを備える音響面に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]モノのインターネット(Internet-Of-Things)の普及と人気により、音響トランスデューサに対する需要が急速に高まるとともに、それに対する要件も厳しくなっている。その用途は、もはや単純なサウンドの生成およびセンシング、または距離測定に限定されるものではなく、サウンドがセンシングと通信の重要な媒体として作用し得る、産業オートメーション、人工知能、ロボット工学、スマートホーム、高度道路交通(intelligent transportation)、家電製品、および生体医用工学などの用途で使用され始めている。例えば、従来のシナリオでは、フリー・フィールド・アクティブ・ノイズ・キャンセリングやパーソナル・エンターテイメントへの関心の高まりにより、ビームフォーミングや指向性サウンド生成を実現するための適応アルゴリズムと協調したスピーカやマイクロフォンのアレイに対する需要が生じており、これは現在の市販のラウドスピーカやステレオオーディオシステムでは手の届かないものである。
【発明の概要】
【0003】
[0003]トランスデューサアレイを備えた音響的にアクティブな薄膜は、市販のラウドスピーカでは達成できない利点と機能を提供する。例えば、部屋の壁に実装されたアクティブな音響面は、費用対効果の高い方法でサラウンド・サウンド・オーディオ・システムを作り出すことができる。さらに、音響面上の多数のトランスデューサは、外部電気接続を介してラウドスピーカのブロックにグループ化できる。その寸法が音楽のピッチのそれぞれの波長(またはそれらが生成しているオーディオの周波数)と同等またはより大きい場合、サウンド生成の指向性は、他の人の邪魔をすることなく個人的なエンターテイメントを実現する可能性がある。同じ概念は、オフィス、車両、航空機など、他の公共シナリオにも広がる。
【0004】
[0004]また、壁やその他の表面に形成されたマイクロフォンやスピーカは、異なる部屋にいる家族間のデバイスフリーのコミュニケーションを可能にしたり、実質的に家の中のどこにいても、スマート家電やロボットの便利な音声制御を可能にしたりできる。家のドアや外壁に装着された音響面は、ホームセキュリティシステムに貢献するために使用してもよい。訪問者は、その音声パターンをホームセキュリティシステムのライブラリと比較することによって、友人として、または見知らぬ人として認識することができる。ノイズの場所は、ビームフォーミング技術を使用して識別することができる。音響面上のトランスデューサアレイを使用して、移動物体を検出することができる。
【0005】
[0005]音響フィルムは、アクティブノイズキャンセリング、機械の危険や誤動作の音響検出、ローカライズドスピーカシステム、またはその他のオフィスや産業用途にも使用できる。
【0006】
[0006]したがって、多様な音響トランスデューサのアレイを統合した多機能音響フィルムは、これらのシナリオにおける要求に応え得る。これらのフィルムが、大面積で、透明で、紙のように薄く、可撓性で、丈夫なフィルムとして設計される場合には、それらのフィルムをさまざまな物体の表面に目立たないように装着して、それらの物体を音響的にアクティブにすることができる。
【0007】
[0007]1台または複数台のコンピュータのシステムは、動作に際してシステムに特定の動作またはアクションを実行させる、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せをシステムにインストールすることによって、そのアクションを実行するように構成することができる。1つまたは複数のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると、装置に特定の動作またはアクションを実行させる命令を含めることによって、そのアクションを実行するように構成することができる。
【0008】
[0008]1つの一般的な態様は、圧電微細構造体のアレイを含んでもよい圧電基板であって、各圧電微細構造体が少なくとも2つの端子を有する、圧電基板と、各圧電微細構造体の少なくとも1つの端子に結合された出力端子を有する、制御回路であって、圧電微細構造体のアレイ内の1つまたは複数の圧電微細構造体をアドレス指定して、圧電微細構造体に1つまたは複数の電圧信号を供給し、圧電微細構造体のアレイ内の圧電微細構造体を制御するように構成されている、制御回路とを有するシステムを含む。この態様の他の実施形態は、それぞれが方法のアクションを実行するように構成された、対応するコンピュータシステム、装置、および1つまたは複数のコンピュータ記憶デバイスに記録されたコンピュータプログラムを含む。
【0009】
[0009]実現例は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。アクティブ音響システムは、基板の片側に配置された保護層を含んでもよい。保護層は、スルーホールのアレイを含んでもよく、スルーホールのアレイ内の各スルーホールは、圧電微細構造体のアレイのうちの圧電微細構造体の上に位置する。基板は、圧電微細構造体を形成する突起部を含んでもよい。突起部のうちの少なくとも1つは、ドーム形である。突起部のうちの少なくとも1つは、凹表面を有する。アクティブ音響システムは、基板の片側に配置されたカプセル化層(encapsulation layer)を含んでもよい。制御回路は、圧電微細構造体のうちの少なくとも1つに交流電圧を駆動して、圧電微細構造体に音響サウンドを生成させるように構成される。音響サウンドは超音波である。制御回路は、圧電微細構造体のうちの少なくとも1つから電圧信号を受信して、外部環境における音響ソースからの音響サウンドを検出するように構成される。制御回路は、ビームフォーミング技術を使用して音響ソースの位置を検出するように構成される。基板は可撓性である。基板は剛性がある。基板は、ポリフッ化ビニリデン(pvdf)、圧電ポリマー、圧電複合材料、圧電セラミック、および/または圧電単結晶材料で形成される。圧電基板は、各々が1つまたは複数の圧電微細構造体に結合されている、2つ以上の導電性トレースを含んでもよい。制御回路は、導電性トレースのうちの少なくとも2つをアクティブ化することによって、個々の圧電微細構造体をアドレス指定するように構成される。制御回路は、導電性トレースのうちの少なくとも2つをアクティブ化することによって、圧電微細構造体のブロックをアドレス指定するように構成される。記載された技術の実現例は、ハードウェア、方法もしくはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0010】
[0010]別の一般的な態様は、アクティブ音響面を含む。アクティブ音響面は、また、各圧電微細構造体がドライバ回路に結合するための少なくとも1つの電気端子を有する、圧電微細構造体のアレイを有する、基板と、基板の片側に配置された保護層とを含み、保護層は、スルーホールのアレイを含んでもよく、スルーホールのアレイ内の各スルーホールは、圧電微細構造体のアレイのうちの圧電微細構造体の上に位置している。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、およびそれぞれが方法のアクションを実行するように構成されて、1つまたは複数のコンピュータ記憶デバイスに記録される、コンピュータプログラムを含んでもよい。
【0011】
[0011]実現例は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。アクティブ音響面は、圧電微細構造体を形成する突起部を含んでもよい。突起部のうちの少なくとも1つは、ドーム形である。突起部のうちの少なくとも1つは、凹表面を有する。アクティブ音響面は、基板の片側に配置されたカプセル化層を含む。少なくとも1つの圧電微細構造体がドライバ回路に結合され、ドライバ回路は、圧電微細構造体のうちの少なくとも1つに交流電圧を駆動して、圧電微細構造体に音響サウンドを生成させ、および/または圧電微細構造体から電圧信号を受信して、圧電微細構造体によって検出された音響サウンドを表すように構成されている。基板は可撓性である。基板は剛性がある。基板は、ポリフッ化ビニリデン(pvdf)、圧電ポリマー、圧電複合材料、圧電セラミック、および/または圧電単結晶材料から形成される。記載された技術の実現例は、ハードウェア、方法もしくはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0012】
[0012]前述の特徴は、以下の図面の説明からより完全に理解され得る。図面は、開示された技術の説明および理解に役立つ。すべての可能な実施形態を図解し、説明することは、しばしば非現実的であるか、または不可能であるため、提供される図は、1つまたは複数の例示的な実施形態を描写する。したがって、図は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。図中の同様の数字は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]多数の音響アクティブシートを有する音響システムの図である。
図2A】[0014]音響アクティブシートの断面図である。
図2B】[0015]装着対象物に装着された音響アクティブシートの上から見た図である。
図2C】[0016]電子トレースを含む音響アクティブシートの上面図である。
図2D】[0017]図2Cの音響アクティブシートの一部の拡大図である。
図2E】[0018]図2Dの音響アクティブシートの一部の断面図である。
図3】[0019]圧電微細構造体ドームの形状を示す一連の図である。
図4】[0020]音響アクティブシートを製造するための工程のフロー図である。
図5A】[0021]音響アクティブシートを製造するのに使用するためのモールド体に製造されたシリコンウェハの断面図である。
図5B】[0022]音響アクティブシートの製造に使用されるモールド体の上から見た図である。
図6】[0023]真空チャンバに結合された、図5Aのモールド体の断面図である。
図7】[0024]図4の工程から形成された音響アクティブシートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0025]図1は、1枚または複数枚の音響シート102を含む、音響システム100である。音響シート102は、それぞれ、(スピーカのように)音波を生成するために、または(マイクロフォンのように)音波を受信するために使用することができる、アクティブ圧電微細構造体104のアレイを有する。これらの圧電構造体は、以下で論じるように、シート材料における隆起表面としてもよい。
【0015】
[0026]この実施例では、システム100は、制御回路106に結合された、3枚の音響シート102、108、および110を含む。制御回路は、シートに電気信号を送り、シートから電気信号を受け取ることができる。実施形態では、制御回路106は、各シート内の個々の圧電微細構造体104をアドレス指定し、各シートに電気信号を供給すること、および/または、圧電微細構造体104のブロックをアドレス指定し、ブロック内の圧電微細構造体に電気信号を供給することができる。
【0016】
[0027]実施形態では、シート102は、制御回路106の電気出力端子に結合された少なくとも1つの電気端子を含む。制御回路は、端子からシートに電圧信号(例えば、AC電圧信号)を駆動することができる。電圧信号は、圧電構造体104のうちの1つまたは複数を撓ませる。AC電圧信号の場合、圧電構造体が振動し、これによって、周囲の空気中に音響波が発生する。駆動電圧の周波数に応じて、結果として生じる音響波は、超低周波、超音波、または人間の可聴範囲内である可能性がある。
【0017】
[0028]追加的または代替的に、シートは、制御回路106の電気入力端子に結合されてもよい。この場合、周囲の空気中の音響波が圧電構造体104を振動させる可能性がある。この振動により、圧電構造体が電圧信号を生成し、これは制御回路106によって検出され得る。音響波を電圧信号に変換することにより、システム100は、音響ソース(例えば、ソース112)からの外部環境における音響信号を検出できるマイクロフォンとして作用し得る。
【0018】
[0029]実施形態では、システム100は、シート102、108、および110と制御回路106との間に結合された増幅およびフィルタリング回路(図示せず)を含み、シートと制御回路106との間の電気信号を増幅、フィルタリング、および整形する。また、システム100は、制御回路106がシート内の個別の圧電微細構造体またはそのブロックにアドレス指定することを可能にするために結合されたマルチプレクシング回路も含み得る。
【0019】
[0030]図1に示すように、システムは、複数のシート102、108、110を含んでもよい。シート102と同様に、シート108および110も、制御回路106(または別の制御回路)に電気的に結合されてもよい。各シートは、独立した音響ソースまたはマイクロフォンとして作用し得る。これは、シートをスピーカとして使用する場合に特定の場所に音響サウンドを生成したり、シートをマイクロフォンとして使用する場合に音響ソースの位置を特定したりするなど、音響ビームフォーミングに役立つ。例えば、各シートは、ビームフォーミングを使用して音響サウンドを特定の場所に向けるか、または音響ソースの位置を検出するシステムにおいて、個々のスピーカまたはマイクロフォンとして使用することができる。圧電微細構造体は(以下で論じるように)個々にアドレス指定可能であるので、個々の圧電構造体(またはシート内の圧電構造体のブロック)は、音響サウンドをある場所に向けたり、音響ソースの位置を検出したりできるビームフォーミングアレイ内の個々のスピーカまたはマイクロフォンとして使用することができる。
【0020】
[0031]シートは、シートをスピーカとして使用して音響サウンド(超音速の場合がある)を生成し、シートをマイクロフォンとして使用して、環境内の対象物からシートに跳ね返る音響サウンドのエコーを収集することにより、エコーロケーション(echolocation)にも使用できる。
【0021】
[0032]実施形態では、圧電微細構造体104の一部または全部が、制御回路106に個別に結合され、かつ、制御回路106によって個別にアドレス指定可能であってもよい。これにより、制御回路106は、圧電微細構造体に電圧信号を駆動するか、または圧電微細構造体から電圧信号を受信することによって、圧電微細構造体をアクティブ化することができる。実施形態では、圧電微細構造体104は、導電性トレース、および/または、制御回路106が各圧電微細構造体104に個々の信号をアドレス指定して送信することを可能にする、マルチプレクサ回路へのグリッドに結合されてもよい。
【0022】
[0033]図2Aを参照すると、シート102の断面は、シート102の基層を形成する基板202(例えば、圧電基板)を示す。基板202は、ポリマーなどの可撓性のプラスチック材料、または剛性のあるセラミック、ガラス、または単結晶材料から形成され得る。一実施形態では、基板202は、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)などの圧電ポリマーまたはPVDFコポリマーを含むか、またはそれらから形成され得る。別の実施形態では、基板202は、圧電セラミックスまたは単結晶材料、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸鉛を含み得る。基板202はまた、ポリマー中に埋め込まれた単結晶および/またはセラミックの圧電ナノ粒子を含んでもよく、これは、基板202にさらなる可撓性を与えることができる。
【0023】
[0034]シート102には、複数の圧電微細構造体が形成されている。これらの圧電構造体104は、感知/作動素子として作用する、シート102の小さな突起部である。例えば、圧電構造体104のうちの1つを横切って交流電圧が印加されると、圧電微細構造体は、電圧に応答して周期的に膨張、収縮する。この例では、圧電微細構造体104は半球形状である。ただし、他の形状を用いてもよい。
【0024】
[0035]シート102はまた、シート102の片側に位置する保護層204を含んでもよい。実施形態では、保護層204は、各圧電構造体104の上方に位置するスルーホール207を含む。保護層204は、圧電構造体104が物理的に損傷を受けるのを防ぐバリアを提供することによって、圧電微細構造体104を保護する。したがって、実施形態では、保護層204の厚さは、圧電微細構造体104の高さよりも大きくてもよい。
【0025】
[0036]保護層204のスルーホール207は、圧電構造体104が環境中の空気にアクセスすることを可能にし、その結果、それらは空気中の音波を検出または生成することができる。実施形態では、保護層は、圧電構造体の一部または全部に結合されて、制御回路106への電気的接続をもたらすことのできる、配線を含んでもよい。保護層は、基板の表面に堆積されるか、または積層された有孔可撓性フィルムであってもよい。実施形態では、保護層は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンなどのプラスチックフィルムで形成される。
【0026】
[0037]シート102はまた、基板層202の片側に位置するカプセル化層206を含んでもよい。カプセル化層206は、プラスチックフィルムで形成することもできる。実施形態では、カプセル化層206は、圧電微細構造体104が自由に振動することを可能にするために、孔/空洞のアレイで穿孔されていてもよい。この実施例では、穿孔処理は、穿孔で形成されるギャップが圧電微細構造体104に隣接するように、圧電微細構造体104に合わせて実行されればよい。
【0027】
[0038]シート102は、対象物208の表面に設置して、装着してもよい。実施形態では、シート102は、シート102を装着対象物208に接着する粘着性バッキング層(adhesive backing layer)を含んでもよい。他の実施形態では、別個の接着剤を使用するか、またはシート102を締結具によって装着対象物208に装着することができる。装着対象物は、シート102を受け入れることができる表面を有する任意の物体とすることができる。シート102は可撓性であり得るので、壁の表面のような平坦な表面、コーヒー・マグの外面のような曲面、またはシート102を収容することができる任意の他の表面に接着することができる。粘着性バッキングを用いる場合、装着対象物208の表面が平滑であれば好ましい場合がある。
【0028】
[0039]実施形態では、シート102の全体の厚さは1mm以下であってもよい。他の実施形態では、基板202の厚さは1mm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、基板202の厚さは、25ミクロン以下であってもよい。
【0029】
[0040]図2Bは、シート102および装着対象物208の上から見た図である。図示のように、シートは、その表面に形成された圧電微細構造体104のアレイを有する。微細構造体は、図示のように、行および列に、またはシート102の表面に沿った任意の規則的または不規則なパターンに配設されてもよい。実施形態では、圧電構造体の面積は、シート102の総面積の25%以上であってもよい。シート102の面積質量密度は、0.06グラム/cm未満であってもよい。シート102の総面積は、多平方メートルにすることができる。実施形態では、圧電微細構造体の半径は、約100ミクロン未満から約3cm超までの範囲であり得る。シート102の質量密度は、約0.0001g/cm未満から約1g/cm超まで変化し得る。シート102の面積は、約100平方ミクロン未満から多平方メートル超まで変化し得る。
【0030】
[0041]図2Cを参照すると、音響アクティブシート210は、シート102と同一または類似であってもよく、圧電微細構造体104と同一または類似であり得る圧電微細構造体220のアレイを含んでもよい。実施形態では、シート210は、個々の圧電微細構造体220への電気的接続を提供することができる電気トレース212a~o、214a~o、216a~o、218a~oも含んでもよい。電気トレースは、例えば、シート210の表面に堆積された銅またはアルミニウムなどの導電性材料で形成されてもよい。
【0031】
[0042]この実施例では、電気トレース212a~o、214a~o、216a~o、218a~oは、電気トレース216a~o、218a~oが水平に、電気トレース212a~o、214a~oが垂直に配設される、グリッドパターンに配設してもよい。このグリッドパターンでは、各圧電微細構造体が、1つの垂直トレースと1つの水平トレースで重ね合わされている。例えば、圧電微細構造体220aは、垂直トレース216aおよび水平トレース214nによって重ね合わされている。したがって、圧電微細構造体220aは、トレース216aおよび214n上に電圧信号(例えばAC信号)を駆動することによってアクティブ化させることができる。同様に、例えばマイクロフォンとして使用される場合、圧電微細構造体220aによって生成された電圧信号は、トレース216aおよび214nを横切る電圧を測定することによって検出することができる。
【0032】
[0043]図2Cに示されるように、水平トレース216a~oは、圧電微細構造体220のアレイの縁部を越えて左に延び、水平トレース218a~oは、圧電微細構造体のアレイの端部を超えて右に延びる。これらの延長部は、マルチプレクサ回路またはプロセッサ(例えば、制御回路106)などの外部回路に接続することができる端子として作用する。同様に、垂直トレース212a~oはアレイを超えて頂部に延び、垂直トレース214a~oはアレイを超えて底部に延びる。水平トレースと同様に、垂直トレースの延長は、マルチプレクサやプロセッサなどの外部回路に接続することもできる。接続されると、外部回路を使用して、トレースに電気信号を駆動して圧電微細構造体にサウンドを発生させたり、圧電微細構造体を変形または振動させる外部刺激に応答して、トレースから電気信号を受信したりできる。これらのトレースは、圧電微細構造体を外部回路で個別にアドレス指定することを可能にする。
【0033】
[0044]さらに、または別の方法で、外部回路は複数のトレースに信号を駆動したり、複数のトレースから同時に信号を受信したりして、複数の圧電構造体をアクティブ化することができる。例えば、圧電微細構造体のアレイのブロック(すなわち部分アレイ)を、アレイの残りの部分が非アクティブのままであるときに、一度にアクティブ化することができる。同様に、アレイの残りの部分が非アクティブのままである間に、行または列をアクティブにすることができる。一般に、アレイから任意に選択された圧電微細構造体のグループは、選択された圧電微細構造体に結合されたトレースに信号を駆動する(またはトレースからの信号を受信する)ことによって、制御回路106によって同時にアクティブ化することができる。当業者は、トレース212a~o、214a~o、216a~o、218a~oの端子延長部は、制御回路106などの外部回路に結合され得る限り、異なる物理的配設で構築することができる(例えば、端子延長部は、すべて圧電微細構造体のアレイの片側にあり得る)ことを認識するであろう。
【0034】
[0045]図2Dは、図2Cに示すシート210の部分222の拡大図である。この実施例に示されるように、トレース212a~o、214a~o、216a~o、218a~oは、圧電微細構造体の直径とほぼ同じ幅(例えば、幅224)を有していてもよい。他の実施形態では、トレースの幅224は、微細構造体の直径よりも小さくても大きくてもよい。
【0035】
[0046]図2Eは、シート210の(図2Dの線225から見た)断面である。シート210は、導電性トレースの層の間に挟まれている。図示されているように、トレースの一部は、シート210の頂部表面上に位置してもよく、一部は、シート210の底部表面上に位置してもよい。具体的には、この実施例では、水平トレース216aは、シート210の頂部表面上に位置し、ページを横切って左から右に延びている。導電性トレース214n、212o、および214oは、シート210の底部表面に位置し、ページの内外に延びている。水平トレース216aは、圧電微細構造体220a、220b、および220cの頂部表面と電気的に接触する。トレース214n、212o、および214oは、それぞれ圧電微細構造体220a、220b、および220cの底部表面と電気的に接触する。
【0036】
[0047]これらのトレースを使用して、制御回路106は、個々の圧電微細構造体をアドレス指定し、アクティブ化することができる。トレース216aからトレース214nにAC電圧を印加すると、例えば、圧電微細構造体220aを横切るAC電圧信号が生じる。圧電微細構造体220bによって検出される音響サウンドは、圧電微細構造体220bによって生成される、トレース216aおよび212oを横切る電圧信号をサンプリングすることによって収集することができる。アレイ内の任意の圧電微細構造体(または圧電微細構造体のグループ)は、シート210上の適切な導電性トレースに電圧信号を印加するか、または導電性トレースからの電圧信号を読み取ることによって、アドレス指定およびアクティブ化することができる。
【0037】
[0048]図3は、シート102(または210)上に圧電微細構造体104を形成するときに使用することができる、異なる形状を有する圧電微細構造体の実施例を提示する。これらの形状のそれぞれは、異なる音色(timbre)の音響サウンドを生成してもよい。また、異なる形状は、圧電微細構造体の固有共振周波数を変化させる可能性があり、その結果、異なる周波数または周波数範囲における微細構造体の音響性能が向上する可能性がある。圧電微細構造体の可能な形状としては、それらに限定はされないが、半球形ドーム302、ピラミッドまたは切頭台(frustrum)304、柱306、および円錐308が挙げられる。また、凹表面を有する凹形状314も用いることができる。形状の一部または全部は、ドーム310に示されるように、圧電微細構造体における孔312を含んでもよい。これらの孔は、構造体のばね定数を減少させ、圧電微細構造体を効果的に変形および曲がりやすくし、圧電微細構造体に印加された電圧信号または空気中の音波振動に応答して、より大きな振動をもたらすことができる。孔312は、図3に示されるように、微細構造体の基部に位置してもよいし、または、構造剛性を低下させることができる、微細構造体上または微細構造体の近くの任意の他の場所に位置してもよい。
【0038】
[0049]微細構造体の直径316は、1mm以下であってもよい。実施形態において、微細構造体の直径は、約700マイクロメートル未満から数センチメートル超であってもよい。
【0039】
<製造>
[0050]図4図5A、および図5Bを参照すると、圧電微細構造体を有するアクティブな音響シートを製造するためのプロセス400の一例がフローチャートとして示されている。プロセス400は、隆起した微細構造体を有するシートをエンボス加工するために使用される、制御された真空に基づいてもよい。ボックス402では、微細加工によって、圧電微細構造体のモールド体として使用される有孔シリコンウェハが用意される。有孔シリコンウェハ502の一例が図5Aに示されている。マスクフィルム層504には、硬質フィルム(例えば、厚さ100nmのアルミニウム(Al)フィルム)を用いてもよく、これは、熱蒸着プロセスによってシリコンウェハ502上に堆積させてもよい。次いで、フォトレジスト層506(例えば、AZ4620フォトレジスト材料の層)を、マスクフィルム層504の上に配置してもよい。その後、フォトレジスト層は、露光前に焼き付けられてもよい。
【0040】
[0051]次いで、圧電微細構造体の位置、形状およびサイズを画定するスルーホールアレイパターンが、フォトレジスト層506上に投影されてもよい。露光後、フォトレジスト層506が現像され、必要に応じて、再度焼成される。フォトレジスト層506が処理された状態で、次に、マスクフィルム層504がエッチングされ、ハードマスク層がパターニングされる。その後、シリコンウェハ502は、バッキングウェハ(図示せず)に装着されてもよい。フォトレジスト層506は、除去されるか、または追加のマスク層として維持されてもよい。
【0041】
[0052]一旦装着されると、マスクフィルム層504およびフォトレジスト層506が所定の位置に置かれた状態で、シリコンウェハ502が(例えば、深堀り反応性イオンエッチングプロセスを用いて)エッチングされ、シリコンウェハ502内にスルーホールのアレイが形成される。フォトレジスト層506は、エッチング前に除去されない場合には、次いで剥ぎ取られる。その結果は、図5Bに示されるように、スルーホールをもつ有孔シリコンウェハモールド体502’である。このプロセスにより、スルーホールのサイズと形状を正確に画定できる。実施形態では、スルーホールの半径は、約350マイクロメートルであってもよい。
【0042】
[0053]実施形態では、モールド体を強化するために、スルーホールアレイを有するいくつかの有孔シリコンウェハモールド502’を用意し、位置合わせさせ、使用のために一体的に積層させてもよい。他の実施形態では、穿孔された厚い金属板を、エンボス加工のための金型として用いてもよい。代替的に、多孔質で剛性のある厚板(例えば、ガラス、アクリル等)を、エンボス加工工程中のシリコンウェハモールド体502’の曲がりを最小化するか、または排除するために、構造的バッキングプレートとして使用することもできる。
【0043】
[0054]ここで図4および図6を参照すると、一旦シリコンウェハモールド体502’が準備されると、それは、真空密封チャンバ(例えば、図6の例に示されるようなガラス漏斗601)に接着される(ボックス404)。真空密封チャンバ602を、チャンバ602内の真空圧およびタイミングを正確に制御できる真空ポンプ605に接続し、それによって、シリコンウェハモールド体502’の穿孔606を介して真空圧を制御してもよい。
【0044】
[0055]圧電フィルムをエンボス加工し、圧電微細構造体を作成するために、圧電フィルム604は、空気に開放された有孔シリコンウェハモールド体502’の側面に接着される(ボックス406)。チャンバ602内の真空圧は、シリコンウェハモールド体502’内の穿孔606の位置でフィルム604をエンボス加工し(ボックス408)、このようにして、フィルム604内にドームを作成する。
【0045】
[0056]実施形態では、次いで、フィルム604は、応力を緩和して真空圧が除去された後、圧電微細構造体のドームプロフィールを維持するのを助けるために、反復焼きなまし(アニーリング)プロセスを使用して焼きなまし(アニーリング)される(ボックス410)。例えば、エンボス加工されたフィルム604が接着されたシリコンウェハモールド体502’をホットプレートで加熱し、フィルムを焼きなましする。次いで、シリコンウェハモールド体502’およびフィルム604は、真空が維持されている間に、室温まで冷却されてもよい。このような焼きなましおよび冷却処理を1回または複数回繰り返して、エンボス加工を完了することができる。次に、エンボス加工された圧電フィルム604は、シリコンウェハモールド体502’から取り外される(ボックス412)。このプロセスによって、図7に示されるように、圧電微細構造体のアレイを有するエンボス加工された圧電フィルム702が得られる。
【0046】
[0057]エンボス加工された圧電微細構造の高さは、エンボス加工中の真空圧に依存する。真空レベルが高いほど、変形が大きくなり、ドームが高くなる。実施形態では、真空圧を調整して、半径が350マイクロメートル、および高さが約20マイクロメートルの圧電微細構造体を作成し得る。
【0047】
[0058]604の厚さを薄くすることで、サウンド生成の感度を高めることができる。その結果、厚さが数ミクロンの圧電フィルム604が好ましい場合がある。機械的摩耗および/または日常の人間の取り扱いによる衝撃によって引き起こされる損傷からドームを保護するために、上述したように、穿孔された保護層(例えば、図2の層204)が作製され、フィルム604上に積層される。保護層204の厚さは、機械的摩耗および/または衝撃からの保護を提供するために、ドームの高さよりも大きくてもよい。
【0048】
[0059]保護層204上のスルーホールは、例えば、ラスタリングモードのCOレーザカッターによって切断されてもよい。次いで、これらのアクティブな微細構造体が、保護層によって妨げられることなく振動できるように、圧電微細構造体104に対してスルーホールを位置合わせしてもよい。
【0049】
[0060]上述したように、実施形態では、カプセル化層206は、保護層204と同一であってもよく、圧電フィルムの他方の面に接着されてもよい。圧電微細構造体に対して位置合わせされたカプセル化層204内のスルーホールは、孤立したバックキャビティ(back cavity)を作り出ししてもよい。これらのバックキャビティの容積は、ドーム振動によって引き起こされるキャビティの容積変化が無視できる程度に十分に大きくしてもよい。このようにして、キャビティ内の圧力を大気圧に近づけて、ドームの振動を妨げないようにすることができる。
【0050】
[0061]当業者は、上述されて、図4図7に示された製造プロセスが例示的なプロセスであることを認識するであろう。1つまたは複数の圧電微細構造体のアレイを有するシートを製造するために、他のプロセスを採用してもよい。
【0051】
[0062]保護しようとする概念、システム、装置、構造、および技術の種々の実施形態が、関連する図面を参照して上述された。記載された概念、システム、装置、構造、および技術の範囲から逸脱することなく、代替的な実施形態を考案することができる。種々の接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が、説明および図面において要素を記述するのに使用され得ることに留意されたい。これらの接続および/または位置関係は、別途指定がない限り、直接的または間接的である可能性があり、記載された概念、システム、デバイス、構造、および技術は、この点に関して限定的であることを意図していない。したがって、エンティティの結合は直接的または間接的な結合のいずれかを指すことができ、エンティティ間の位置関係は直接的または間接的な位置関係であり得る。
【0052】
[0063]間接的な位置関係の一例として、要素「B」の上に要素「A」を位置づけることは、要素「A」および「B」の関連する特性および機能性が中間要素によって実質的に変化しない限り、1つまたは複数の中間要素(例えば、要素「C」)が要素「A」と要素「B」の間にある状況を含み得る。
【0053】
[0064]また、以下の定義および略語は、特許請求の範囲および明細書の解釈に使用されるものとする。「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、もしくは「含有する(containing)」、またはその他の変形は、非排他的な包含を範囲に含めることを意図している。例えば、要素のリストを含む装置、方法、組成物、混合物または物品は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない要素、またはそのような装置、方法、組成物、混合物、または物品に固有の他の要素を含むことができる。
【0054】
[0065]さらに、「例示的(exemplary)」という用語は、「例(example)、事例(instance)、または例証(illustration)として役立つ」ことを意味する。「例示的」として記載された任意の実施形態または設計は、必ずしも他の実施形態または設計よりも好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち、1、2、3、4などを示す。「複数」という用語は、1より大きい任意の整数を示す。「接続」という用語は、間接的な「接続」および直接的な「接続」を含むことができる。
【0055】
[0066]本明細書における「実施形態」、「一つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的実施形態」、「実施例」、「事例」、「態様」等への言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含むことができることを示すが、すべての実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含んでいても、いなくてもよい。また、このような語句は、必ずしも同一の実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が実施形態に関連して記載される場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態におけるそのような特徴、構造、または特性に影響を与える可能性がある。
【0056】
[0067]「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、およびこれらの用語の派生語を含むが、これらに限定されない、相対的または位置的な用語は、図面の図において向き付けられているように、記載された構造および方法と関係する。「上に重なる(overlying)」、「頂上に(atop)」、「上に(on top)」、「上に位置する(positioned on)」、または「頂上に位置する(positioned atop)」という用語は、第1の要素、例えば、第1の構造が、第2の構造などの第2の要素上に存在し、ここで、界面構造などの介在要素が、第1の要素と第2の要素との間に存在し得ることを意味する。「直接接触」という用語は、第1の要素、例えば、第1の構造、および、第2の構造のような第2の要素とが、いかなる中間要素もなしに接続されることを意味する。
【0057】
[0068]クレーム要素を変更するためのクレームにおける「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の他のクレーム要素に対する優先権、優先順位、または順序、あるいは方法の行為が実行される時間的順序を暗示するものではなく、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素を同じ名前(ただし、序数項の使用のため)を持つ別の要素と区別するための単にラベルとして使用される。
【0058】
[0069]「およそ」および「約」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、さらにいくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するために使用され得る。「およそ」および「約」という用語は、目標値を含み得る。「実質的に等しい」という用語は、いくつかの実施形態において互いに±20%以内、いくつかの実施形態において互いに±10%以内、いくつかの実施形態において互いの±5%以内、さらにいくつかの実施形態において互いに±2%以内にある値を指すために使用され得る。
【0059】
[0070]「実質的に」という用語は、いくつかの実施形態において比較尺度の±20%以内、いくつかの実施形態において±10%以内、いくつかの実施形態において±5%以内、さらにいくつかの実施形態において±2%以内にある値を指すために使用され得る。例えば、第2の方向に対して「実質的に」垂直である第1の方向とは、ある実施形態において第2の方向と90°の角度を作ることの±20%以内、いくつかの実施形態において第2の方向と90°の角度を作ることの±10%以内、いくつかの実施形態において第2の方向と90°の角度を作ることの±5%以内、さらにに、いくつかの実施形態において第2の方向と90°の角度を作ることの±2%以内である、第1の方向を指すことができる。
【0060】
[0071]開示された主題は、その応用において、以下の説明に記載されるか、または図面に図示される、構造の詳細、およびコンポーネントの配設に限定されるものではない。開示された主題は、他の実施形態が可能であり、さまざまな方法で実践および実行が可能である。
【0061】
[0072]また、本特許で用いられている表現や用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなすべきではない。そのように、本開示が基づく概念は、本開示の主題のいくつかの目的を遂行するためのその他の構造、方法、およびシステムの設計の基礎として、容易に利用され得る。したがって、特許請求の範囲は、開示された主題の精神および範囲から逸脱しない限り、そのような同等の解釈を含むとみなされるべきである。
【0062】
[0073]開示された主題は、前述の例示的な実施形態において説明され、図解されてきたが、本開示は、例示としてのみなされた。したがって、開示された主題の実現例の詳細における多数の変更は、開示された主題の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0063】
[0074]したがって、本特許の範囲は、記載された実現例に限定されるべきではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ制限されるべきである。この特許で引用されているすべての刊行物および参考文献は、その全体が参照により明示的に組み込まれている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】