(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】転動中の空気入りタイヤに加わる荷重を確認する方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240903BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506708
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 FR2022051540
(87)【国際公開番号】W WO2023012430
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ニュイッテン シモン
(72)【発明者】
【氏名】アルフ ドニ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン ドニ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA05
3D131LA06
3D131LA21
(57)【要約】
空気入りタイヤに加わる荷重を確認するための方法が開示され、本方法は、
センサをタイヤに固定して、クラウンの法線に関して加速度を発生させるステップと、
転動する間に、加速度の振幅を含む時間信号SigTDR(101)を取得するステップ(201)と、
信号SigTDRの少なくとも1つの部分と関係する速度W
referenceを決定するステップ(202)と、
W
referenceの二乗に比例する関数Fである変数によって、信号SigTDRの当該部分を正規化するステップ(203)と、
信号SigTDRの当該部分を角度的にリサンプリングするステップ(204)と、
角度的にリサンプリングされた正規化信号SigTDRに基づいて、閾値Aを用いてエネルギ密度Sを、又はスペクトル解析によってスペクトル変数βを、規定するステップ(205)と、
変形Def%をS又はβの関数Gとして特定するステップ(206)と、
Def%の関数Hによって荷重Zを特定するステップ(207)と、
を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転速度Wで転動する状態の空気入り取付け組立体を構成するようにホイールに取り付けられる場合にタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法であって、前記タイヤケーシングは、地面と接触して固有回転軸の周りに回転するクラウンを有し、
少なくとも1つのセンサを前記タイヤケーシングの前記クラウンに固定して、前記タイヤケーシング内の前記センサに加えられた、前記クラウンに垂直な方向の加速度に敏感な少なくとも1つの出力信号を生成するステップと、
転動する間に、前記少なくとも1つの出力信号の振幅を少なくとも含む少なくとも1つの第1時間信号Sigを取得するステップと、
1回を超えるホイール回転数N
TDRに亘って前記第1信号を区切って、ホイール回転信号Sig
TDRを構成するステップと、
前記ホイール回転信号Sig
TDRの少なくとも1つの部分と関係する少なくとも1つの基準速度W
referenceを決定するステップと、
1回以上のホイール回転数N
TDRに亘って、前記基準速度W
referenceの二乗に比例する関数Fである変数によって、前記ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分を正規化するステップと、
前記ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分を角度的にリサンプリングするステップと、
前記少なくとも1つの角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRから閾値Aを用いて少なくとも1つの第1エネルギ密度Sを、或いは角度ピッチが固定されている場合には、前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分のスペクトル信号spect(Sig)に由来する少なくとも1つのスペクトル変数を、規定するステップと、
前記タイヤケーシングの変形Def%を、前記少なくとも1つの第1エネルギ密度S又は前記少なくとも1つのスペクトル変数の関数Gとして特定するステップと、
少なくとも前記タイヤケーシングの変形Def%を変数として含む全単射関数Hを用いて、前記取付け組立体に加わる荷重Zを規定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記基準速度W
referenceを決定するステップは、以下の数式に従って、前記第1信号Sigから、又は前記第1信号Sigと同期した信号から、前記タイヤケーシング内の前記センサに関する前記固有回転軸周りの2つの方位角位置を分離する持続時間に対する角度変化の比率を確立することを含み、
[数式1]
ここでαは角度位置であり、tは前記角度位置と関係する時間的横座標である、請求項1に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項3】
前記角度ピッチは18度未満であり、好ましくは6度未満、非常に好ましくは3度未満である、請求項1又は2に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項4】
前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分からのデータを、前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分の少なくとも1つの副部分に亘って集約するステップを含み、前記角度的にリサンプリング正規化されたホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分の前記副部分が、角度的にリサンプリングされ正規化されたホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分となる、請求項1から3のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項5】
前記ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分の前記副部分は、前記ホイール回転の整数倍である、請求項1から4のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項6】
前記タイヤケーシングの角度位置に関して前記第1信号Sigを同期させた後、前記正規化ステップの前に、地球重力の影響を考慮するために前記第1信号Sigに対して補正Corrが行われる、請求項1から5のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項7】
前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分をフィルタ処理するステップを含む、請求項1から6のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項8】
前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分のスペクトル信号spect(Sig)から前記少なくとも1つのスペクトル変数を取得するステップは、前記スペクトル信号spect(Sig)の少なくとも1つのスペクトルブロックに亘って、好ましくは前記スペクトル信号spect(Sig)の第1の正スペクトルブロックに亘って、前記少なくとも1つのスペクトル変数を特定するステップを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの特定されるスペクトル変数は、最大値、中央値、平均値、前記第1ブロックの通過帯域、前記第1ブロックの曲線下面積、中央値の周波数、平均値の周波数、最大値の周波数を含むグループに包含される、請求項8に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項10】
前記閾値Aを用いて、前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分から前記少なくとも1つのエネルギ密度Sを取得するステップは、前記角度的リサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分が前記閾値Aよりも大きい場合に第1エネルギ密度S
+を規定するステップ、又は前記角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRの前記少なくとも1つの部分が前記閾値A以下である場合に第2エネルギ密度S
-を規定するステップを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項11】
前記閾値は0.5と0.9との間にある、請求項10に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項12】
前記関数Gは線形関数である、請求項1から11のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項13】
前記関数Hは、以下の数式によるアフィン関数又はべき関数であり、
[数式10a]
又は
[数式10b]
ここで(A,B)又は(X,Y)は、前記取付け組立体に関するパラメータである、請求項1から12のいずれかに記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項14】
前記取付け組立体を空気圧Pまで膨らませた場合、前記パラメータA又はXは少なくとも前記空気圧Pに依存し、好ましくは、前記パラメータA又はXは、以下の数式による前記タイヤ圧Pのアフィン関数であり、
[数式11a]
[数式11b]
ここで(a
1,a
2)又は(x
1,x
2)は、前記取付け組立体に関する係数である、請求項12項に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【請求項15】
前記取付け組立体を前記空気圧Pまで膨らませた場合、前記パラメータB又はYは少なくとも前記空気圧Pに依存し、好ましくは、前記パラメータB又はYは、以下の数式による前記タイヤ圧Pのアフィン関数であり、
[数式12a]
又は
[数式12b]
ここで(b
1,b
2)又は(y
1,y
2)は、前記取付け組立体に関する係数である、請求項13又は14に記載のタイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上走行車両の取付け組立体に加わる静荷重を決定するために、転動中に取付け組立体に搭載された測定手段によって供給される測定信号の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
取付け組立体に搭載されたセンサを用いて取付け組立体の物理的変数を測定する、結合された取付け組立体における最近の発展は、取付け組立体の状態の決定をもたらし、ひいては、取付け組立体の状態の監視に関連したサービスの開発に扉を開くものである。取付け組立体の空気圧又はこの取付け組立体の温度など、測定される一般的な変数は、取付け組立体の回転中に僅かに変化するだけであるため、ランダムな粗さの表面上で取付け組立体の回転によって発生する測定ノイズに対してあまり敏感ではないが、より微細な変数は、取付け組立体の回転に関連した物理現象に対して非常に敏感である。さらに、取付け組立体は、静荷重又は空気圧などの外力を受ける。荷重などの他の力は常時、特に静止している間に加わる。これらの加わる力は、測定することになる微細な変数に影響を与える可能性がある。最後に、新たなサービスでは、タイヤケーシングの静荷重などの測定信号から有用な情報を得る前に、直接測定された物理的変数のクリーニングが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下の本発明の目的の1つは、タイヤケーシングに対する静荷重について、スカラ値を得ることを目指して、特定の物理現象の擾乱を取り除いた測定値だけを得るために、センサによって生成された測定信号の擾乱の問題を解決することである。
【0004】
本発明をより良く理解するために、周方向S、軸方向A、半径方向Rとは、タイヤケーシングの固有回転軸に関する回転基準系に対して規定される方向である。半径方向Rは、固有回転軸から垂直に離れるように延びる方向である。軸方向Aは、固有回転軸に平行な方向である。最後に、周方向Sは、予め規定された半径方向及び軸方向と正三面体を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、タイヤケーシングに加わる荷重を確認する方法に関する。タイヤケーシングは、回転速度Wで転動状態の取付け組立体を構成するように、ホイールに取り付けられる。タイヤケーシングは、地面と接触し、固有回転軸の周りに回転するクラウンを有する。本方法は、
-少なくとも1つのセンサをタイヤケーシングのクラウンに固定して、タイヤケーシング内の上記センサに加えられた、クラウンに垂直な方向の加速度に敏感な少なくとも1つの出力信号を生成するステップと、
-転動する間に、少なくとも1つの出力信号の少なくとも振幅を含む少なくとも1つの第1時間信号Sigを取得するステップと、
-1回以上のホイール回転数NTDRに亘って第1信号を区切って、ホイール回転信号SigTDRを構成するステップと、
-ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分と関係する少なくとも1つの基準速度Wreferenceを決定するステップと、
-1回以上のホイール回転数NTDRに亘って、基準速度Wreferenceの二乗に比例する関数Fである変数によって、ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分を正規化するステップと、
-ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分を角度的にリサンプリングするステップと、
-少なくとも1つの角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRから閾値Aを用いて少なくとも1つの第1エネルギ密度Sを、或いは角度ピッチが固定されている場合には、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分のスペクトル信号spect(Sig)に由来する少なくとも1つのスペクトル変数を、規定するステップと、
-タイヤケーシングの変形Def%を、少なくとも1つの第1エネルギ密度S又は少なくとも1つのスペクトル変数の関数Gとして特定するステップと、
-少なくともタイヤケーシングの変形Def%を変数として含む全単射関数Hを用いて、取付け組立体に加わる荷重Zを規定するステップと、
を含む。
【0006】
センサから受け取った信号は、特定の条件下で取付け組立体が転動する間におけるクラウンに垂直な方向のセンサ加速度の時間的振幅である。従って、取得された信号は、タイヤケーシングに関するホイール回転の一部に亘る振幅の変動を表すが、これには、センサを取り付けたタイヤケーシングの当該部分による接地面の横断と関係するものだけでなく、ホイール回転の他の特定ゾーンと関係するもの、例えば、逆向き撓みの影響を受けやすい接地面に対向する角度セクタに対応するもの、又は回転軸に対して接地面から90度に位置する角度セクタに対応するものも含まれる可能性がある。これら全てのゾーンにおいて、加速度センサの感度に応じて、加速度測定式センサの動きの変動が出力信号上で観察される可能性がある。
【0007】
この最初に取得された信号は、この第1信号上で特定される、或いは別信号などの別情報源から得られる、又は取付け組立体の外部にあるシステムによる変数の出力から得られる可能性のある基準速度と関係している。この基準速度は、必然的に第1信号の当該部分と同じ時間枠と関係する。この基準速度は、基準速度を変数とする関数Fを用いて第1信号の振幅を正規化する役割を果たす。この関数Fは二乗べき関数である。センサ信号は、基準速度に対するセンサ信号振幅の依存性がタイヤケーシング変形の寄生信号として認識される場合には、この依存性の関数として正規化される。こうして、第1正規化信号は、この基準速度に依存しなくなる。例えば、この基準速度は、取付け組立体の回転速度とすること、又は取付け組立体の移動方向における取付け組立体の並進速度とすることができる。結果として、第1信号は、取付け組立体の回転に関連した基準速度とは無関係に使用することができる。
【0008】
本方法はまた、転動状態におけるタイヤケーシングの固有回転に対するセンサ信号の周期性を利用する目的で、多数回のホイール回転に亘って第1信号Sigを区切るステップを含む。しかしながら、このステップでは、ホイール回転数が整数であることは必須ではなく、このホイール回転数が少なくとも1より大きくさえあれば、実際のホイール回転数に亘って信号を区切ることができる。好ましくは、複数回のホイール回転が使用される。
【0009】
本方法はまた、第1信号又はホイール回転信号の角度リサンプリングを含み、これは正規化ステップの前又は後に行うことができる。このステップにより、取付け組立体の1又は2以上の角度基準に対して時間信号を同期させることによって、時間信号を空間信号に変換することができる。この角度基準は、まず第1に、ホイール回転の個々の方位角に対するセンサの特定の応答によって、第1信号から取得することができる。しかしながら、この角度基準は、第1信号と共通タイマを共有するセンサの別信号から取得することもできる。この共有タイマ又は信号の同期は、2つのセンサが同じデバイスからのものである場合、又は当該信号が共通デバイスに送信される場合には、当然のことである。この角度リサンプリングにより、ホイール回転に対して周期的な空間信号の生成が自然に可能となる。このため、完全に角度的に周期的な信号を生成するには、設定された角度区分に亘って信号を補間すれば十分である。しかし、取付け組立体が可変速度での移動を受けることになる場合でも、このリサンプリングによって角度的に周期的な信号を生成することができる。角度リサンプリングによって一定の角度ピッチを備えた出力信号を生成することは、本方法にとって必須ではない。
【0010】
第1の選択肢では、ホイール回転信号の振幅レベルを閾値Aと比較するだけで、エネルギ密度Sを規定することができる。閾値A(例えば、単に単位値でもよい)に対するホイール回転信号の振幅は、ホイール回転信号から、変形エネルギ密度対の成分、1つは正で1つは負(S+,S-)を生成することができる。従って、本方法は、タイヤケーシングの変形エネルギ密度を規定し、閾値Aに対するその位置に応じて2つの部分集合間で配分するだけである。これらは、実行が簡単で、リソースをほとんど消費しない演算である。
【0011】
第2の選択肢では、本方法は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号の当該部分からスペクトル解析を実行するステップを含む。これは、初期信号の当該部分が一定の角度ピッチで規定されるのを保証するのに有用であり、これはセンサ信号の規則的な空間離散化を保証する。必要に応じて、角度リサンプリングのステップは、角度ピッチが一定となることを保証して、良質のスペクトル解析を可能し、これには、一定の角度ピッチで信号を再規定するために測定点の補間方法を必要とする場合がある。次に、本方法は、前のステップから得られたスペクトル信号と関係するスペクトル変数又は複数のスペクトル変数を規定するステップを含む。
【0012】
どちらの選択肢を用いても、本方法は、タイヤケーシングの変形を、計算されたエネルギ密度か又は少なくとも1つのスペクトル変数の関数として決定する。従って、第1の選択肢では、変形は、タイヤケーシングの1回の物理的なホイール回転に亘って正規化された変形エネルギを表す。その結果として、転動状態で荷重を受けるタイヤケーシングの変形と関係するエネルギ変数が特定される。第2の選択肢では、変形は、静荷重を受ける転動状態のタイヤケーシングの不変量であるスカラ又はベクトルの形で表現される。
【0013】
当然ながら、タイヤケーシング変形Def%を決定するためには、1回のホイール回転が必要である。しかしながら、結果を平均化できるように、ホイール回転数は少なくとも5回、又はさらに10回とすることが好ましく、これにより、タイヤケーシングが転動している車道上の障害物など、信号内のあらゆる予測できない現象を克服することが可能となる。従って、工業用モードでは、これにより本方法の精度が向上する。
【0014】
最後に、どの選択肢を選択したとしても、本方法は、タイヤケーシング変形Def%に依存する関数Hを用いて、取付け組立体に加わる静荷重Zを決定するステップを含み、それ自体は、選択された選択肢に応じて異なるように表現される。結果として、タイヤケーシング変形Def%の表現空間が異なるため、関数Hはタイヤケーシング変形Def%の表現空間の選択に関連し、表現空間は選択された選択肢に関連する。
【0015】
有利には、基準速度Wreferenceを決定するステップは、以下の数式に従って、ホイール回転信号SigTDRから、又は第1信号SigTDRと同期した信号から、タイヤケーシング内のセンサに関する固有回転軸周りの2つの方位角位置を分離する持続時間に対する角度変化の比率を確立することを含み、
[数式1]
Wreference=Δ(α)/Δ(t)
ここでαは角度位置であり、tは角度位置と関係する時間的横座標である。
【0016】
基準速度がタイヤケーシングの回転角速度に対応する場合、この基準速度は、2つの既知の位置間における信号の角度変化に亘って計算される。好ましくは、この基準速度は、ホイール1回転未満の信号持続時間に亘って評価され、これにより、基準速度の迅速な規定と、センサと関係する電子デバイスにおける第1信号の一部分に関する正規化ステップの実行とが可能になる。さらにまた、これによって、タイヤケーシングが可変角速度で移動する場合に、より良い精度で第1信号の当該部分を角度的にリサンプリングすることが可能となる。実際、ホイール回転のレベルでは、角速度の変動は、自動車用タイヤでは2メートル、トラック用タイヤでは3メートルに及ぶ場合のある展開長(development)を備えたタイヤに関して、必然的に小さくなる。この長さに亘ってタイヤケーシングに加わる加速度又は減速度は、現行車両の駆動システム及び制動システムでは当然小さい。当然ながら、ホイール回転中に生じる角速度の微小変動、例えば接地面を通過する前後、又は地面に横棒があるといった地面上移動の不連続性に遭遇した場合などを考慮するために、より細かい方位角の設定でホイール回転中の角速度の変動を統合することは十分に可能である。その場合、ホイール回転中の基準速度に関するこの精度によって、信号をより正確に正規化するだけでなく、角度リサンプリングステップ中に第1信号の測定点に関する角度位置の角度精度を向上させることも可能となり、ホイール回転中に最小変動を感知するために望まれる精度が向上する。
【0017】
特定の実施形態によれば、タイヤケーシングの方位角位置は、接地面への進入、接地面からの退出、又は接地面の中心位置、或いはホイール回転信号SigTDRと同期した信号からのいずれかの規定された角度位置に対応する、ホイール回転信号SigTDRから検出可能な角度位置を含むグループに包含される。
【0018】
これらは加速度センサからの信号に影響を与える方位角位置であり、特定の角度位置に対応する。従って、これらの位置は、センサからの信号上で特定することが容易である。さらに、それらの方位角基準を割り当てることも容易である。実際、接地面の中心位置は、地面の法線に対して0度又は180度の方位角位置に対応する。接地面への進入点及び退出点から接地面の長さを決定すれば、接地面が形成する角度は、接地面の長さとタイヤケーシングの1回転又は360度の展開長との比率として確立することができる。地面に対する法線の両側に接地面が形成するセクタは、均等に分割される。当然ながら、第1信号以外の信号を利用することで、角度エンコーダのように、ホイール1回転よりも細かい角度セクタ化も可能である。
【0019】
有利には、角度ピッチは18度未満である。
【0020】
従って、測定点の内の1つが接地面に位置することを保証できる。結果として、少なくともこのサンプリング点と最近接点との間に加速度変化が観察されることになり、第1信号における接地面への進入点及び退出点を決定することができる。
【0021】
極めて有利には、角度ピッチは6度未満、好ましくは3度未満である。
【0022】
より細かい角度ピッチを使用することにより、接地面内で複数の測定点を感知することが可能となる。このように細かく観察することにより、ここでは必ずしも規則的でない点の空間離散化を回避することで、本方法の精度を向上させることができる。また、多数の点により、センサの一貫しない測定に起因する擾乱のないことが保証される。
【0023】
好ましい実施形態によれば、本方法は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分からのデータを、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分の少なくとも1つの副部分に亘って集約するステップを含み、正規化されたホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分の副部分が、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分となる。
【0024】
好ましくは、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分の副部分は、ホイール回転の整数倍であり、非常に好ましくは1回のホイール回転である。
【0025】
このステップにより、ホイール回転の変動を考慮したホイール回転信号の識別が可能になり、本方法の最後の2ステップ、すなわち第1エネルギ密度S又は信号のスペクトル解析後のスペクトル変数を特定するために使用されるステップで処理されることになるベクトルのサイズを縮小することができる。この目的を達成するために、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号の副部分は、ホイール回転に対する信号の固有の周期性を利用するために、ホイール1回転の整数倍である。この周期性は、良質のスペクトル解析にとって好ましい。
【0026】
好ましい実施形態によれば、データ集約ステップは、デシル間隔に亘る平均値、中央値、デシルの選択又は間隔、補間の方法、加重平均又は非加重平均、タイヤ変形のパラメトリックモデルの最適化を含むグループに包含される方法のうちの1つを含む。
【0027】
集約の目的は、生の測定データの集合を解明するために、第1信号の新たな角度分布に対して実行する手段を設定することである。集約ステップは、観察されるタイヤケーシング変形に応じてオペレータが選択した角度ピッチの測定点に関して、バランスのとれた信号を提供することを意図するものである。この目的を達成するためには、タイヤ変形のパラメトリックモデルを最適化する方法が理想的であり、それは、このパラメトリックモデルが理論的であって、適用する測定チェーン全体に関連した測定ノイズを考慮しない可能性があるからである。集約ステップからの出力信号は、記録された測定点集合との分散が最小となる、パラメトリックモデルの理論的な出力である。
【0028】
有利には、タイヤケーシングの角度位置に関して第1信号Sigを同期させた後、正規化段階の前に、地球重力の影響を考慮するために第1信号Sigに対して補正Corrが行われる。
【0029】
加速度信号の欠点は、それが地球重力とほぼ平行な方向に向いている場合に、地球重力に敏感となることである。タイヤケーシングの場合、センサはタイヤケーシングに回転的に連動している。その結果、センサが半径方向に向いている場合、センサ信号の振幅は、ホイール回転中に地球重力の影響を受ける。これは、地球重力に連動した振幅の正弦関数の形で信号に反映され、センサの向きが重力ベクトルと揃っている時、すなわち地面に対して実質的に垂直な時に、180度だけ離れたタイヤケーシングの方位角にノードを有する。逆に、センサの向きが地面と平行な時、つまり、180度だけ互いに離れて、重力ベクトルから概ね±90度の位置にある2つの方位角位置に対応する場合には、センサ信号は地球重力の影響を受けない。加速度信号のこの寄生成分を除去するために、重力ベクトルの方向に対応する、地面に対する鉛直位置と第1センサ信号を同期させることにより、信号の振幅を対応する正弦関数と結び付ける必要がある。
【0030】
特定の実施形態によれば、本方法は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分をフィルタ処理するステップを含む。
【0031】
次のステップで処理されることになる、角度的にリサンプリングされた正規化信号には、高周波干渉が残存する可能性がある。例えば、選択肢1、つまり閾値Aを用いてエネルギ密度Sを規定するステップの場合、信号のフィルタ処理により、起こり得る誤差を最小限に抑えることでステップが簡略化されることになる。
【0032】
第2の好ましい実施形態によれば、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分のスペクトル信号spect(Sig)から少なくとも1つのスペクトル変数を取得するステップは、スペクトル信号spect(Sig)の少なくとも1つのスペクトルブロックに亘って、好ましくはスペクトル信号spect(Sig)の第1の正スペクトルブロックに亘って、少なくとも1つのスペクトル変数を特定するステップを含む。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの特定されるスペクトル変数は、最大値、中央値、平均値、第1ブロックの通過帯域、第1ブロックの曲線下面積、中央値の周波数、平均値の周波数、最大値の周波数を含むグループに包含される。
【0034】
第1の好ましい実施形態によれば、閾値Aを用いて、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分から少なくとも1つのエネルギ密度Sを取得するステップは、角度的リサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分が閾値Aよりも大きい場合に第1エネルギ密度S+を規定するステップ、又は角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの少なくとも1つの部分が閾値A以下である場合に第2エネルギ密度S-を規定するステップを含む。
【0035】
好ましくは、この比率は0.5と0.9との間にある
【0036】
閾値Aの目的は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの離散化された点をエネルギ密度S+とS-の間に分配することである。データ集約ステップ又はフィルタ処理ステップがない場合のように、信号が多くのノイズを伝送する場合、この点分布はこの干渉に影響される可能性がある。閾値Aの目的は、測定信号に関連したこの不完全性を補正することである。閾値Aの値は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの品質関数である。本方法が任意のステップを採用し、道路の粗さが小さい場合には、範囲の上部にある値が好ましいことになる。
【0037】
非常に好ましくは、正のエネルギ密度S
+及び負のエネルギ密度S
-の規定は、以下の数式によって得られる。
[数式2a]
[数式2b]
【0038】
ここでuは、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの横座標値である。
【0039】
これは、初歩的な数学演算及び論理演算を用いて、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号から得られた離散化信号から、各エネルギ密度のスカラ値を得る簡単な方法である。これらの演算は、センサに関連した電子デバイス内で行うことができる。
【0040】
有利には、関数Gは線形関数である。
【0041】
第1の選択肢の場合、関数Gは、以下の数式によるスペクトル密度Sの線形関数である。
【0042】
[数式3a]
【0043】
G(X)=X/N’TdR
【0044】
従って、これは、S+又はS-に適用される、タイヤケーシング変形に関する初歩的な数式である。必然的に、S-は、タイヤの展開長の質点から計算されるエネルギ密度に対応しており、タイヤの展開長は、時間Tの正確な瞬間において接地面又はそのごく近傍に質点を含む。具体的には、これらの点は接地面を通過する時に絶対加速度がゼロに近いため、必然的に閾値Aを下回る。デフォルトでは、エネルギ密度S+は、タイヤの展開長に関する他の点、特に接地面外側の点のエネルギ密度に対応する。それは、荷重Zを受けたタイヤケーシングの変形と関係のある不変量が存在することを明示している。S+だけを用いる事例では、接地面外側の変動はそれほど顕著ではないため、高度な空間離散化は必要ない。この利点は、センサに接続された電子デバイスの必要なサンプリング周波数を低減すること、或いは高速回転時のタイヤケーシング変形に関する正確な情報の取得が可能となることである。
【0045】
しかしながら、関数Gは、以下の数式によるスペクトル密度S+及びS-の線形関数である:
[数式3b]
G(X,Y)=(X+Y)/(2*N’TdR)
【0046】
その場合、タイヤの変形エネルギは、タイヤの全展開長に亘って合計する必要がある。測定の不確かさを確実に最小限に抑えるために、クラウンに垂直な加速度を測定するために測定点の集合を利用してタイヤケーシング変形を決定するようにし、これにより、高周波数を用いる解析と比べてエネルギ消費が低減される。
【0047】
第1の選択肢の場合、本出願人は、スペクトル信号spect(Sig)の第1の正周波数ブロックを検討することが、タイヤケーシング変形を適切な品質で決定するのに妥当なこの第1ブロックと関係する1又は2以上の変数を特定するのに十分であることを見出して驚いた。タイヤケーシング変形に最も敏感な変数は、用意したリストに明記されている。これらは、計算リソースをほとんど必要としないスペクトル信号の標準的な変数であり、本方法にとって好都合である。さらに、これらの変数は主にタイヤケーシング変形に敏感で、二次的な変数にはあまり敏感ではない。結果として、これらの変数は、例えば、静荷重などのタイヤケーシング全体に対する全体的な力によって生じる変形といった、タイヤケーシングの全体としての一般的な変形に対して理想的に好適である。
【0048】
この場合、関数Gは高度なものである必要はなく、本出願人は、1又は2以上のスペクトル変数の線形関数Gにより、静荷重の変動を受けるタイヤケーシングの様々な使用条件に応じたタイヤケーシングの変形を適切に決定できることを見出した。
【0049】
好ましい実施形態によれば、関数Hは、以下の数式を用いるアフィン関数又はべき関数である:
[数式10a]
又は、
[数式10b]
ここで(A,B)又は(X,Y)は、取付け組立体に関するパラメータである。
【0050】
通常の又は特殊な使用条件の下で、取付け組立体に加わる荷重Zを評価することが目的であるかどうかに応じて、関数Hにはどちらか一方の数式を用いる必要がある。実際、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機構)の規則を適用するタイヤケーシングの従来の使用分野では、単純なアフィン関数が、タイヤケーシング変形Def%の関数として荷重Zの変化を正しく記述する。その結果として、取付け組立体、特にタイヤケーシングに関する知識によって、取付け組立体に加わる荷重Zを確実に特定することができる。しかしながら、例えば非常に低い又は高い荷重Zなど、特定用途のためにタイヤケーシング変形の関数として荷重をモデル化する範囲を拡張することを意図する場合には、べき乗型の表現がより適している。しかしながら、一般的な使用領域では、どちらの関数でも非常に類似した結果が得られ、10%以下、好ましくは5%以下の所望の精度に対しては十分である。
【0051】
好ましい実施形態によれば、取付け組立体を空気圧Pまで膨らませた場合、パラメータA又はXは少なくとも空気圧Pに依存し、好ましくは、パラメータA又はXは、以下の数式によるタイヤ圧Pのアフィン関数であり、
[数式11a]
[数式11b]
ここで(a
1,a
2)又は(x
1,x
2)は、取付け組立体に関する係数である。
【0052】
非常に好ましい実施形態によれば、取付け組立体を空気圧Pまで膨らませた場合、パラメータB又はYは少なくとも空気圧Pに依存し、好ましくは、パラメータB又はYは、以下の数式によるタイヤ圧Pのアフィン関数であり、
[数式12a]
又は、
[数式12b]
ここで(b
1,b
2)又は(y
1,y
2)は、取付け組立体に関する係数である。
【0053】
ほとんどのタイヤケーシングは、ホイールに取り付けてから、タイヤケーシングのタイプによって異なる空気圧Pまで膨らませる。この空気圧Pは、取付け組立体、特にタイヤケーシングの機械的挙動に影響を及ぼす。結果的に、タイヤケーシングの変形はこの変数に影響される。その場合、この影響を係数A又はXに対して考慮する必要がある。これは、パラメータAの空気圧Pへの依存性を最も簡単に表現したもので、特にETRTOの規則に従うタイヤケーシングの従来の使用分野においては、実際的なものである。
【0054】
関数Hのこれら第2のパラメータB又はYの空気圧Pに対する依存性は、タイヤケーシング変形Def%の関数としての関数Hの勾配変化に類似している。この勾配変化は、第1のパラメータA又はXによって記述される空気圧Pにおけるタイヤケーシングの剛性の変化ほど明らかではない。しかしながら、空気圧Pに伴うこれら第2のパラメータB又はYの変化が、取付け組立体、ひいてはタイヤケーシングに加わる荷重Zの推定精度を高める。
【0055】
このように、関数Hが空気圧Pに完全に依存するアフィン関数の場合には、取付け組立体に加わる荷重Zを推定するために、最大で4つのパラメータa1、a2、b1及びb2を特定する必要がある。もちろん、ホイールが変更された場合には、正確な推定値を与えるためにパラメータセットを再調整する必要がある。このパラメータセットは、デジタルシミュレーションによる特性評価を通して、又は実験的試験によって、或いはそれら2つの組み合わせによって特定することもできる。
【0056】
本発明は、単に非限定的な実施例にとして、全ての事例において同じ参照番号が同一の部品を表す添付図面に関連する以下の説明を読むことでより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図3】ホイール回転信号の角度リサンプリングを示す。
【
図4】リサンプリングされた正規化ホイール回転転信号の実例を示す。
【
図5】ホイール回転信号の副部分に亘ってデータを集約した後の最終信号の実例を示す。
【
図6a】角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号からのエネルギ密度Sの評価の実例である。
【
図6b】ホイール回転のスペクトル信号spect(Sig)の実例である。
【
図7】転動状態の取付け組立体に加わる荷重Zの推定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明による方法の概略を示す。センサを取り付けたタイヤケーシングの転動中に加速度センサの振幅出力の時間的取得201によって得られた第1信号Sigから、取付け組立体に加わる荷重を表すスカラを最終的に得るために、様々な可能な経路を辿って複数のステップを実行する。
【0059】
第1の経路は、ステップ201の出力の時間信号から、その取付け組立体構成でのタイヤケーシング、すなわちリムに取り付けられたタイヤケーシングの基準速度Wreferenceを決定するステップ202を含む。ここで、第1信号Sig101は、或る一定のホイール回転数(正確には12)に亘ってすでに区切られている。結果的に、第1信号Sig101は、ホイール回転信号SigTDRと一致する。この基準速度は,タイヤケーシングの回転軸周りの固有回転に関連した角速度とすることができるが、タイヤケーシングの進行方向における単位長さ当たりの並進速度とすることもできる。この値は、ホイール回転信号SigTDRから決定することができるが、第1信号、ひいてはホイール回転信号SigTDRと時間的に同期した別の信号から決定することもできる。
【0060】
次に、ホイール回転信号SigTDRは、ステップ202で取得された変数Wreferenceの関数Fによって、ステップ201の結果として生じる第1信号から正規化される(203)。この関数は二乗べき関数である。このステップ203の後、時間的記述でのタイヤケーシングの動きについて正規化された信号が得られる。
【0061】
次に、正規化された信号は、ステップ204を通して、ホイール回転に対して角度的に周期的な信号を見つけ出すために、角度的にリサンプリングする必要がある。次に、このステップ204の後、結果は、数回のホイール回転に亘って正規化され、角度的にリサンプリングされた信号となる。
【0062】
第2の経路は、ステップ201の結果として生じるホイール回転信号SigTDRでもある第1信号Sigから、第1信号の形態を用いてこの第1信号を同期させることによって、又は別の信号を第1信号と時間的に同期させることによって、第1信号Sigを角度的にリサンプリングするステップを含む。この別信号は、別のセンサに由来する、又は3次元加速度計の周方向加速度など、同じセンサの別トラックに由来する。第1信号のこの角度リサンプリングにより、ステップ204の終わりにはホイール回転に対して周期的な信号がもたらされる。
【0063】
別の時間信号を用いてこの角度信号を同期させた後、第1信号と同期した別の時間信号から基準速度が決定される。好ましくは、これは、ステップ204で第1信号を角度的にリサンプリングするために使用されたのと同じ別の信号である。結果として、ステップ202の終わりには基準速度Wreferenceが特定される。
【0064】
その場合、基準速度により、基準速度変数の関数を用いて、ステップ204からの角度的にリサンプリングされた信号を正規化することが可能となる。これにより、ステップ203の終わりには、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRが与えられる。
【0065】
随意的に、どちらの経路をとるとしても、第1の経路上のステップ204又は第2の経路上のステップ203の結果として生じる、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRからのデータが集約される。ステップ208におけるこのデータ集約は、角度的にリサンプリングされた正規化信号がその性質上、ホイール回転に対して周期的であるため、ホイール回転の倍数である入力信号の副部分について実行される。
【0066】
代わりに、第1信号101が、地球重力の影響を受ける加速度計信号のように既知の物理現象によって汚染されている場合、物理現象によって発生する寄生ノイズを抑えるために、この物理現象に対して第1信号の補正を実行することが(必須ではないが)有用な場合がある。この補正は、ステップ201とステップ204の間にあるいずれかのステップで、但し、必ずデータ集約ステップ205の前に行うことができ、これにより、タイヤケーシングの変形に関する信号の品質を向上させることができる。補正が正規化ステップの後に行われる場合、補正誤差を持ち込まないように補正も正規化する必要がある。
【0067】
次に第1の選択肢では、本方法は、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号からタイヤケーシング変形に関するエネルギ密度を特定するステップ205を含む。これは、正のエネルギ密度S+又は負のエネルギ密度S-を通して、ホイール回転の一部分に対してだけ実行してもよいが、少なくとも1回の完全なホイール回転を行うことが好ましく、これにより、当該両変数を提供することができる。角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRの上にホイール回転数NTDRを記録することも忘れてはならない。この信号が1回のホイール回転で区切られる場合、エネルギ密度の特定は信号の品質と関連しており、データ集約の任意ステップを使用することが正当化される。しかしながら、この信号が多数のホイール回転に亘って区切られる場合、信号には、エネルギ密度の値を僅かに変更することになるホイール回転の付加的な端数が含まれる可能性がある。この場合、接地面の中心から180度に位置する方位角位置からホイールの回転を計数することが好ましい。ホイール回転の付加的な端数は、正のエネルギ密度S+についての補完点を提供することになり、それらの点間でのエネルギ密度変動は、負のエネルギ密度S-に大きな影響を与える接地面への進入及び退出フェーズよりも小さい。
【0068】
第2の選択肢によれば、経路に応じてステップ204又は203で正規化されリサンプリングされたホイール回転信号に対してスペクトル解析205が実行され、この信号はホイール回転に対して周期的である。角度ピッチが規則的でない場合、測定点は、信号に亘って規則的な間隔で配置された理論点の上に補間すべきである。場合により、角度ピッチが固定された信号を供給するデータ集約ステップ207の後に、スペクトル解析ステップ205が実行される。ステップ205の結果として生じるスペクトル信号を解析して、好ましくは第1の正スペクトルブロックから抽出される、1又は2以上のスペクトル変数を抽出する。
【0069】
次に、本方法は、静荷重Def%下での転動状態におけるタイヤケーシング変形を特定するステップ206を備える。これは、関数Gを用いてステップ205で評価されたエネルギ密度(複数可)S+、S-を使用するか、或いは角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号SigTDRのスペクトル信号spect(Sig)から評価された1又は2以上のスペクトル変数を使用することによって達成される。このスペクトル変数(複数可)が関数Gを与えることになり、次に、この関数Gが、外力を受ける転動状態におけるタイヤケーシング変形の不変量として、ベクトル、好ましくはスカラを提供することになる。
【0070】
最後に、ステップ207において、本方法は、荷重Zとタイヤケーシング変形Def%を関連付ける関数Hを用いて、取付け組立体に加わる荷重Zを決定する。エネルギ密度S+を用いて変形Def%が評価される場合のように、タイヤケーシング変形が、単なる接地面の通過よりも遥かに大きい可能性のある測定信号の応答に基づいて評価されるという事実により、非常に小さいホイール回転信号SigTdRの空間離散化でもって、この変形に関する精度を得ることができる。これは、エネルギとメモリ容量の点でそれほど集約的でなく、荷重Zの決定をTMS(タイヤ監視センサ)などのタイヤケーシングに搭載された測定デバイスで行うことを可能にする。接地面の大きさを特定することが目的ではないので、本方法の空間離散化は、先行技術ほど細かくする必要はない。
【0071】
図2から4は、
図1の概略に記載した第2の経路を用いる方法を説明するものである。タイヤケーシングのインナライナに取り付けられた、タイヤケーシングのクラウンに固定された加速度計について説明する。ここで、タイヤケーシングは、ミシュラン製CrossClimateで、サイズが265/65R17、自動車に取り付けた場合に静荷重が800daNである。取付け組立体は3barまで膨らませた。測定は、タイヤマーキングに従った標準的な速度及び荷重の条件下で、様々な粗さのアスファルト周回路を車両が走行している間に行った。取付け組立体は車両のフロントアクスルに設置した。測定は主に直進走行状態で実施した。
【0072】
図2は、3200Hzの信号取得周波数で取得された時間信号101を示しており、信号の非常に細かい離散化が可能である。その結果として、これには転動中のタイヤケーシングのクラウンにおける加速度の変動が全て記録されている。ホイール回転信号Sig
TDRを構成するために、この信号を12回のホイール回転に亘って区切った。
【0073】
図2の記録は車両の加速フェーズで行われ、加速度信号の振幅の増加がこれを反映している。ここでのセンサは、タイヤケーシングのクラウンに対して半径方向に取り付けられた1軸加速度センサである。データは、加速度計に電気的に接続された電子デバイスと、車両に配置された第2の無線周波数デバイスとの間での無線通信によって送信された。この特定の事例では、測定値の後処理は車両内で行われた。しかしながら、センサに接続され、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサを備え、本方法に必要とされる初歩的な数学演算を実行するのに十分なメモリスペースにつながれた第1の電子デバイスでこれらを実行することは十分に可能である。
【0074】
ここで、最初のステップは、回転角速度を基準速度として採用し、基準速度を決定することを含む。このために、第1時間信号101をホイール回転の基準方位角位置と同期させる必要がある。この目的のため、第1信号101は、規則的な非常に強い振幅の低下111、112を示し、これは加速度計を載せた角度セクタの接地面通過を反映している。当然ながら、低下111、112に関するこれらの下り勾配及び上り勾配は、それぞれ接地面への進入及び退出を表す。接地面の中心は、接地面の進入と退出を隔てる区間の中央である。この中心を方位角の0度位置に割り当て、これが方位角基準となる。例えば次の信号低下112で第2の角度基準を採用することにより、360度のホイール回転と、このホイール回転と関係する時間間隔とに関して、信号101が決定される。基準速度Wreferenceは、接地面の2つの中心間の角度変化と、これら2つの方位角位置を隔てる時間間隔との比率として規定される。この基準速度Wreferenceは、接触領域のこれら2つの中心間に位置する信号の部分に割り当てられる。当然ながら、時間信号101の2つの隣接しない低下111、115を考慮して、第2の基準速度Wreferenceを決定し、2つの低下111、115の間に位置する信号101の部分に第2の速度を割り当てることができる。
【0075】
図3は、時間信号101を角度的にリサンプリングするステップの結果を示している。このように、すぐ前のステップで実行された時間信号の各低下に対して接地面の中心を決定することを使用して、360度を超えるホイール回転と時間信号を同期させることは容易である。その場合、離散化された測定点は、ホイール回転に関して線形に分布する。このステップで角度位置決め誤差が生じたとしても、例えばデータ集約ステップ中に実行される線形補間により、結果が平滑化され、角度位置決め誤差が最小化されることになる。より洗練されたやり方では、ホイール回転ごとに基準速度が評価される。連続する回転の基準速度を考慮することで、進展する角速度をホイール回転に割り当てることが可能である。例えば、連続する3つの回転に亘って基準速度を決定した場合、中央のホイール回転に対して、先行する回転の基準速度に2を重み付けし、現在の回転の基準速度に1を重み付けした重心速度である、第1四半期のホイール回転に関する第1基準速度を割り当てることが可能である。次の四半期は、現在の回転の基準速度に2を重み付けし、先行する回転の基準速度に1を重み付けした重心速度が基準速度となる。第3四半期のホイール回転は、現在の回転の基準速度に2を重み付けし、次の回転の基準速度に1を重み付けした重心速度が基準速度となる。最後に、最終四半期のホイール回転は、現在の回転の基準速度に1を重み付けし、次の回転の基準速度に2を重み付けした重心速度が基準速度となる。離散化された測定点は全て、現在の回転の基準速度に対する各四半期回転の基準速度の比率に比例して、各四半期ホイール回転に分布する。これらの点を平滑化する他の方法を適用することもできる。ここでは、変化しやすい転動速度のため、点の空間離散化は規則的ではない。ホイール回転に関する所与の角度分布に亘って測定点を補間する方法を適用することによって、信号102の点についてこの離散化を規則的にすることが十分に可能である。その場合、規則的な角度ピッチを持つ角度的にリサンプリングされた信号102が得られる。
図3は、測定点を任意に離散化させた、ホイール回転に対して周期的である角度的にリサンプリングされた信号102を示している。
【0076】
図4は、点の補間なしで第1の角度的にリサンプリングされた信号102を正規化するステップの結果を示す。このように、角度的にリサンプリングされたホイール回転信号のホイール回転に対する周期性を使用すると、ホイール回転に亘って、又は
図4に示すようにホイール回転の倍数(ここでは12車輪回転)に亘って角度信号を分解することが容易である。正規化ステップは、ホイール回転の各部分と関係する基準速度の二乗べき関数で信号の振幅を割ることを含む。例えば第1信号処理ステップ101の間に基準速度を決定した。基準速度はここでは角速度である。曲線103及び103bisについて観察される結果は、正規化信号の振幅が各ホイール回転で類似しているということである。異なる速度、異なる道路で行われた様々なホイール回転の間には振幅の強い変動はもはや見られない。また、信号は、単位値を中心としている。次に、360度の整数倍である同じ角度間隔長さに亘って、ホイール回転セグメントが重ね合わされ、ここでは灰色曲線で示されるような曲線束103を形成する。これは、ホイール回転間の測定値の広がりを考慮したもので、ここでは信号が地球重力に関して補正されていないという事実から強調されている。しかしながら、ローパスフィルタを適用すると、特定の寄生ノイズが除去されるので、より滑らかな黒色曲線103bisが得られる。これにより、信号103bisは、ホイール回転間に僅かな変動を伴ってホイール回転に対して周期的であることが分かる。信号102のこの正規化の終わりには、角度的にリサンプリングされた正規化信号103が得られる。
図4は、曲線103bisに適用されたフィルタによって確認されるように、単位値を中心とする角度的にリサンプリングされた正規化信号103を示す。
【0077】
図5は、前のステップからの信号103のデータを集約するステップの結果であり、これは任意のステップである。ここでは、曲線束104を形成する灰色曲線で示すように、各ホイール回転のセグメントは、360度の同じ角度間隔長さに亘る重ね合わせである。これは、各ホイール回転間の測定値の広がりを考慮したもので、信号が地球重力に関して補正されていないという事実から強調されている。しかしながら、加速度計がここでは地球重力に敏感であるため、正規化ステップの前に各ホイール回転に地球重力の補正を適用すれば、デシル間隔(decile interval)に亘って平均化する方法によるデータ集約は、ホイール回転に関して非常に安定した曲線104bisを決定する。これにより、外力、特にこの場合は静荷重を受けたタイヤケーシングの変形に関する信号が得られる。この信号104bisは、どのような粗さの地面でも、可変速度で転動状態にあるタイヤケーシングの測定値を代表するものである。この曲線は、リムに取り付けられた状態で静荷重下の転動状態にあるタイヤケーシングの不変量である。
【0078】
図6Aは、1回のホイール回転に対応する、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号Sig
TDRについて、正のエネルギ密度S
+及び負のエネルギ密度S
-の計算を説明するための図である。当然のことながら、角度的にリサンプリングされた正規化車輪回転信号Sig
TDRが複数のホイール回転に亘って区切られている場合でも、方法は全く同じである。
【0079】
ここでは単位値として閾値Aを決定する。この閾値は実線11で示してある。実際には、実際の信号として0.7に等しい値を採用するのが好ましい。信号に干渉が多い場合は、0.5又は0.6に等しい値を選択することができる。しかしながら、概ね滑らかな路面で得られた信号の場合は、0.8又は0.9程度の値を使用することができる。この閾値Aの値は、本方法の全ステップに対して設定する必要がある。
【0080】
正のエネルギ密度S+又は負のエネルギ密度S-は、ホイール回転信号10と連続曲線11で表される単位値との差の絶対値の合計として計算される。必然的に、領域S+で画定される面積は、領域S-で画定される面積に等しい。
【0081】
これらのエネルギ密度Sの推定から、転動状態で静荷重を受けるタイヤケーシングの変形Def%を決定することは容易である。
【0082】
図6bは、角度ピッチを0.1度に固定し、12回のホイール回転に亘って区切られた、角度的にリサンプリングされた正規化ホイール回転信号のスペクトルを示している。高周波数の現象を抑えるために、第1の経路のステップ203又は第2の経路のステップ204から得られた信号を、まず、ホイール回転の30分の1のローパスフィルタを用いてフィルタ処理した。
【0083】
次に、フィルタ処理された信号、すなわち、ここではステップ208の集約ステップからの信号を、フーリエ変換を用いてスペクトル解析した後に、制限された周波数帯域に亘ってフーリエ変換の振幅を表す曲線105を得た。この曲線は様々なスペクトルブロックを示し、その内の最初のブロックが大きな振幅を持つ。しかしながら、次に続く各ブロックはそれ自体無視できるものではない。
【0084】
このスペクトル応答105から複数のスペクトル変数を得ることが可能である。この場合、最初のブロックに注目するが、解析は次に続くブロックでも行うことができる。
【0085】
本方法の感度を考慮するため、
図6bには、異なる静荷重及び異なる空気圧に対する、同じ取付け組立体に固定された同じセンサのスペクトル応答に対応する第2の点線曲線106を示し、ここでは取付け組立体は、車両のフロントアクスルとリアアクスルとの間で入れ替えられている。このように、タイヤケーシングの2つの変数、空気圧と静荷重に対するその機械的応答は必然的に異なる。しかしながら、スペクトル応答は、連続したブロック形状の応答によって形状の点で類似性を示しており、ブロックの幅及び高さは、タイヤケーシングに加わる外力の関数である。
【0086】
このことから、第1ブロックの解析は、タイヤケーシングに加わる外力の弱い変動に対しては十分ではない可能性があるが、このような外力の変動に伴うタイヤケーシングの変形を決定するのに十分な識別力を有することが分かる。
【0087】
最大値、中央値、平均値、通過帯域、第1ブロックと関係する曲線より下の面積など、スペクトル変数は全て、タイヤケーシングの変形を識別するための判定基準となり得る。しかし、中央値の周波数、平均値の周波数、及び最大値の周波数はまた、タイヤケーシングの変形における二次的な判定基準であり、依然として識別力はあるが遥かに弱い原動力を示す。
【0088】
次に,ベクトル又はスカラの形態の1又は2以上のスペクトル変数の関数を用いて、タイヤケーシング変形値Def%を割り当てることができる。好ましくは、第1ブロックの最大値105bis及び106bisがタイヤケーシング変形の非常に良好な指標であることが見出され、これにより、第1ブロックの最大値のアフィン関数を通してタイヤケーシング変形を決定することができる。しかしながら、二次的なスペクトルブロックに関連した他のスペクトル変数も考慮すれば、タイヤケーシング変形の決定は、より洗練されたものとなる可能性がある。
【0089】
図7は、回転速度Wで転動状態にある取付け組立体に加わる荷重Zの推定値を示す図である。ここでは、2つの異なるケーシングを使用した。第1のタイヤケーシングE1は、22.5インチのプレートホイールに取り付けた、摩耗レベルD1のミシュラン製X Multiway Tシリーズの385/55R22.5重量積載物車両用タイヤケーシングである。第2のタイヤケーシングE2は、摩耗レベルD2のミシュラン製X Multiway 3D XDEシリーズの315/80R22.5である。各ケーシングには、インナライナ上のクラウンにおいて、突出した彫刻(sculpture)要素の高さに、すなわち縦溝とは異なる高さに位置決めされた1軸加速度計を備える車載電子デバイスが装備されている。加速度計の取得周波数は1200Hzである。
【0090】
各タイヤケーシングは,空気圧Pを7barから9barまで1bar刻みで変化させながら、移動速度を約20、40及び60km/hと変化させる一連の転動シナリオを経験する。この事例ではホイールバルブに取り付けられたTPMSに組み込まれた圧力センサを用いて、圧力を転動中に測定する。最後に、取付け組立体に加わる荷重Zは、1トン刻みで2000kgから5000kgの間で変化する。
【0091】
各タイヤケーシングに関する関数Hのアフィン関数の4つの係数(a1,a2,b1,b2)は、デジタルシミュレーションを用いて事前に決定した。実際、これは厳密にETRTOの規則で推奨された使用領域であるため、関数Hのアフィン表現を優先する必要がある。
【0092】
転動シナリオの半分は一定の回転速度で実施し、残りの半分は、±15%の目標速度付近で可変回転速度にて実施した。
【0093】
図7は、関数Hの係数で与えられる応答に対応する連続直線を示しており、これらの係数は、この事例では空気圧Pと、タイヤケーシングを含む取付け組立体とに依存する。また、目標転動速度に応じて異なる形状の記号が記してあり、速度20km/hは菱形、速度40km/hは円形、そして速度60km/hは十字形である。
【0094】
曲線1001は、空気圧7barのタイヤケーシングE1を備える取付け組立体に対応する。曲線1002は、空気圧8barのタイヤケーシングE2を備える取付け組立体に対応する。最後に、曲線1003は、タイヤケーシングが空気圧9barのE1である取付け組立体に対応している。
【0095】
移動速度及び空気圧に関係なく、荷重Zの推定値と真の付加荷重との間には比較的良好な相関関係が見られる。さらに、タイヤケーシングの性質に依存して、荷重のアフィン表現は、取付け組立体に関するこの範囲の使用条件における試験に対して現実的である。
【0096】
タイヤケーシングの性質、付加される荷重、使用される空気圧、及びタイヤの摩耗に関係なく、同様に良好な結果が得られる。
【国際調査報告】