(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物分野
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240903BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506729
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2021113465
(87)【国際公開番号】W WO2023019504
(87)【国際公開日】2023-02-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】グォ、チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ハングァン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP034
4J002CP042
4J002CP043
4J002CP141
4J002DE109
4J002DE149
4J002DF017
4J002DF018
4J002EX036
4J002FA087
4J002FA088
4J002FA089
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD019
4J002GQ00
(57)【要約】
組成物は、(A)硬化性シリコーン組成物であって、(a1)30~400ミリパスカル*秒の範囲の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、(a2)水素化ケイ素官能性架橋剤と、(a3)ヒドロシリル化触媒と、を含み、架橋剤からの水素化ケイ素官能性対ビニル官能性のモル比が0.5:1~1:1の範囲にある、硬化性シリコーン組成物と、(B)アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含むフィラー処理剤と、(C)熱伝導性フィラー混合物であって、(c1)40~55重量%の窒化アルミニウムフィラーであって、(c1-a)15~41重量%の、100マイクロメートル以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子と、(c1-b)20~80マイクロメートルのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子とのブレンドを含有する、窒化アルミニウムフィラーと、(c2)1~5マイクロメートルのD50粒径を有する球状酸化アルミニウム粒子と、(c3)10~20重量%の、0.1~0.5マイクロメートルのD50粒径を有する不規則酸化亜鉛粒子と、を含む熱伝導性フィラー混合物と、を含有し、熱伝導性フィラー混合物の総量が、94~97重量%であり、重量%値は、特に明記しない限り、熱伝導性組成物の重量に対するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性組成物であって、
(A)硬化性シリコーン組成物であって、
(a1)30~400ミリパスカル*秒の範囲の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、
(a2)水素化ケイ素官能性架橋剤と、
(a3)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
前記架橋剤からの水素化ケイ素官能性対ビニル官能性のモル比が0.5:1~1:1の範囲にある、硬化性シリコーン組成物と、
(B)アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含むフィラー処理剤と、
(C)熱伝導性フィラー混合物であって、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、
(c1)40重量パーセント~55重量パーセントの窒化アルミニウムフィラーであって、
(c1-a)15重量パーセント~41重量パーセントの、100マイクロメートル以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子と、
(c1-b)20~80マイクロメートルのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子とのブレンドを含む、窒化アルミニウムフィラーと、
(c2)1~5マイクロメートルのD50粒径を有する球状酸化アルミニウム粒子と、
(c3)10重量パーセント~20重量パーセントの、0.1~0.5マイクロメートルのD50粒径を有する不規則酸化亜鉛粒子と、を含む、熱伝導性フィラー混合物と、を含み、
前記熱伝導性フィラー混合物の総量が、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、94重量パーセント~97重量パーセントである、熱伝導性組成物。
【請求項2】
20~80マイクロメートルのD50粒径を有する前記球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)が、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、10重量パーセント~39重量パーセントの濃度で存在する、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記ブレンド中の球状窒化アルミニウム粒子が、前記窒化アルミニウム粒子(c1-a)と(c1-b)との前記ブレンドの総重量に基づいて、60重量パーセント超~100重量パーセントの総濃度にある、請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー混合物(C)が、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~1重量パーセント未満の窒化ホウ素フィラーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)が、120マイクロメートル以上のD50粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
100マイクロメートル以上のD50粒径を有する前記球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)が、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、30重量パーセント~38重量パーセントの濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記窒化アルミニウムフィラー(c1)が、前記熱伝導性組成物の重量に基づいて、45重量パーセント~55重量パーセントの濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
前記水素化ケイ素官能性架橋剤が、(II)、(III)、又はこれらの組み合わせから選択される化学構造を有する1つ以上のポリシロキサンを含み、
【化1】
【化2】
式中、下付き文字xは10~100の範囲の値を有し、下付き文字yは3~30の範囲の値を有し、下付き文字zは3~100の範囲の値を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
前記アルキルトリアルコキシシランが、C
6~C
12アルキルトリメトキシシランから選択され、前記モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンが、平均化学構造(IV)を有し、
【化3】
式中、下付き文字aが、20~150の範囲の値を有し、R’が、C
1~C
12アルキル基である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
別の材料上に請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を含む、物品。
【請求項11】
前記熱伝導性組成物が、電子デバイスの発熱構成要素と、前記電子デバイスの熱シンク、冷却プレート、及び金属カバーのうちの1つ以上との間にあり、それらと熱接触している、請求項10に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウムフィラーを含有する熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【0002】
序論
電子デバイスの小型化及び強力化により、業界では、そのようなデバイスで発生した熱を放散するのに有用な熱伝導性材料に対する需要が増加している。例えば、電気通信産業では、5Gネットワークへの世代交代を経験しており、小型の高度に集積化された電気デバイスを必要とされており、必要な電力が倍増している(600ワットから1200ワット)。小型のデバイスにおける高電力によって発生した熱を効率的に放散しなければ、デバイスが損傷してしまう。熱伝導性界面材料は、多くの場合、発熱構成要素と放熱構成要素とを熱的に結合させるために電子機器に使用される。結合された構成要素間で熱を効率的に伝達するために、熱伝導性組成物は、望ましくは、ASTM法D5470-06に従って測定した場合に、少なくとも9.0ワット/メートル*ケルビン(W/m*K)の熱伝導率を有する。同時に、電子デバイスが小型化するにつれて、迅速な製造プロセス中に適切な構成要素に熱伝導性組成物を正確かつ精密に適用することがより重要になる。その点に関して、熱伝導性材料は、本明細書で以下に記載される手順を使用して、標準的な30立方センチメートルEFDシリンジパッケージを用いて0.62メガパスカル(90ポンド/平方インチ)の圧力で測定した場合に、60グラム/分(g/分)超の押出速度(extrusion rate、ER)を有することが望ましい。
【0003】
熱伝導性材料においてそのような熱伝導率及び押出速度を同時に達成することは困難である。熱伝導性フィラーの量を増加させると、熱伝導率を増加させることができるが、粘度も増加し、押出速度が阻害されるため、分配性能及び使用適性が損なわれる。例えば、60g/分超のERを有する窒化アルミニウムフィラーを含有する従来の熱伝導性組成物は、典型的には、9.0W/m*Kの熱伝導率を達成することができない。5重量パーセント以上の濃度で高熱伝導性フィラーである窒化ホウ素を更に添加すると、熱伝導率を9.0W/m*K以上に増加することができるが、得られる熱伝導性組成物は、高すぎる粘土を有して、60g/分超のERを達成することができないか、又は粉末状のペーストにさえなる。
【0004】
60g/分超のER及び少なくとも9.0W/m*Kの熱伝導率を同時に達成し得る熱伝導性組成物を特定する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、60g/分超の押出速度及び少なくとも9.0W/m*Kの熱伝導率を同時に達成する熱伝導性組成物を提供する。更に、熱伝導性組成物は反応性であり、硬化して硬化熱伝導性材料になり得る。本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン、フィラー処理剤、及び特定の熱伝導性フィラー混合物の新規の組み合わせを含む。熱伝導性フィラー混合物は、特定の粒径及び/又は形状を有する窒化アルミニウムフィラーと、1~5マイクロメートル(μm)のD50粒径を有する球状酸化アルミニウム粒子と、0.1~0.5μmのD50粒径を有する不規則形状酸化亜鉛粒子との特定のブレンドを含む。熱伝導性組成物は、例えば、電子デバイスの構成要素間の熱伝導性界面材料として有用である。
【0006】
第1の態様では、本発明は、熱伝導性組成物であって、
(A)硬化性シリコーン組成物であって、
(a1)30~400ミリパスカル*秒の範囲の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、
(a2)水素化ケイ素官能性架橋剤と、
(a3)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
架橋剤からの水素化ケイ素官能性対ビニル官能性のモル比が0.5:1~1:1の範囲にある、硬化性シリコーン組成物と、
(B)アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含むフィラー処理剤と、
(C)熱伝導性フィラー混合物であって、熱伝導性組成物の重量に基づいて、
(c1)40重量パーセント~55重量パーセントの窒化アルミニウムフィラーであって、
(c1-a)15重量パーセント~41重量パーセントの、100マイクロメートル以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子と、
(c1-b)20~80マイクロメートルのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子とのブレンドを含む、窒化アルミニウムフィラーと、
(c2)1~5マイクロメートルのD50粒径を有する球状酸化アルミニウム粒子と、
(c3)10重量パーセント~20重量パーセントの、0.1~0.5マイクロメートルのD50粒径を有する不規則形状酸化亜鉛粒子と、を含む、熱伝導性フィラー混合物と、を含み、
熱伝導性フィラー混合物の総量が、熱伝導性組成物の重量に基づいて、94重量パーセント~97重量パーセントである、熱伝導性組成物である。重量パーセント値は、特に明記しない限り、熱伝導性組成物の重量に対するものである。
【0007】
第2の態様では、本発明は、別の材料上に第1の態様の熱伝導性組成物を含む物品である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含有する。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTM国際方法を指し、ISOは、国際標準化機構を指す。
【0009】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0010】
「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0011】
ポリシロキサンの「粘度」は、特に明記しない限り、25摂氏温度(℃)でガラス毛細管キャノン-フェンスケ型粘度計を使用してASTM D445-21によって決定される。
【0012】
標準1H、13C、及び29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析により、ポリシロキサンの化学構造を決定する。
【0013】
レーザ回折粒径分析器(CILAS920粒径分析器又はBeckman Coulter LS 13 320 SW)を使用することによって、フィラー粒子の平均粒径を体積メジアン粒径(D50)として決定する。「D」は、フィラー粒子の直径を表し、D50は、この直径を上回るフィラー粒子の体積の半分と、この直径を下回るフィラー粒子の体積の半分とで体積分布を分割するマイクロメートル(μm)単位のサイズである。例えば、D50=5μmである場合、粒子の体積の50%が5μmより小さいことを意味する。
【0014】
特に明記しない限り、全ての熱伝導率値は、LonGwinモデルLW9389TIM熱抵抗及び伝導率測定装置(「TC-LonGwin」とも示される)を使用して、ASTM D5470-06に従って決定される。
【0015】
本発明の熱伝導性組成物は、それ自体が(a1)ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサン(polydimethylpolysiloxane、PDMS)、(a2)水素化ケイ素(SiH)官能性架橋剤、及び(a3)ヒドロシリル化触媒を含む硬化性シリコーン組成物を含む。ビニルジメチルシロキシ末端PDMS及びSiH官能性架橋剤の相対濃度は、架橋剤からのSiH官能性対ビニル官能性のモル比が0.5:1~1:1の範囲内にあり、0.5:1以上、0.6:1以上、0.7:1以上、0.8:1以上、更には0.9:1以上であり得るのと同時に1:1以下であり、0.9:1以下、0.8:1以下、0.7:1以下、又は更には0.6:1以下であり得るようなものである。
【0016】
本発明において有用なビニルジメチルシロキシ末端PDMS(a1)は、30ミリパスカル*秒(mPa*s)以上、45mPa*s以上、60mPa*s以上、90mPa*s以上、100mPa*s以上、120mPa*s以上、140mPa*s以上、160mPa*s以上、更には180mPa*s以上の粘度を有し、同時に400mPa*s以下、300mPa*s以下、200mPa*s以下、180mPa*s以下、160mPa*s以下、140mPa*s以下、120mPa*s以下、100mPa*s以下、80mPa*s以下、又は更には60mPa*s以下の粘度を有する。粘度が高すぎると、熱伝導性組成物の粘度が高すぎて、所望の押出速度が得られない。粘度が低すぎる場合、熱伝導性組成物は、シリコーン移行又はブリード問題を有するリスクがあり、硬化後の機械的特性が悪くなり、崩壊しやすくなる。
【0017】
本発明において有用なビニルジメチルシロキシ末端PDMSは、以下の化学構造(I)を有することができ、
【化1】
式中、「Vi」はビニル基(-CH=CH
2)を指し、nはジメチルシロキサン単位の平均数を指し、ビニルジメチルシロキシ末端PDMSの重合度(degree of polymerization、DP)である。ビニルジメチルシロキシ末端PDMSの所望の粘度を達成するようにnを選択する。典型的には、nは、25以上の値であり、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、更には90以上であり得るのと同時に、典型的には、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、又は更には50以下である。
【0018】
望ましくは、ビニルジメチルシロキシ末端PDMSは、0.4重量%~2.4重量%のビニル官能性(すなわち、ビニル基)を含み、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、更には1.25重量%以上であり得るのと同時に、一般に、2.4重量%以下、2.2重量%以下、2重量%以下、1.6重量%以下、1.55重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、又は更には1.3重量%以下である。ビニル官能性の濃度は、27*2/Mwによって計算することができ、式中、Mwは、ビニルジメチルシロキシ末端PDMSの分子量である。ビニルジメチルシロキシ末端PDMSのMwは、標準1H、13C、及び29Si核磁気共鳴(NMR)分析によって特性評価されるその化学構造によって決定され得る。
【0019】
好適なジビニルPDMS材料は、米国特許第5883215(A)号に教示されているように、停止のためのビニル末端ブロッカを用いたシクロシロキサンの開環重合によって作製することができる。市販されている好適なジビニルPDMSとしては、GelestからDMS-V21の名称で入手可能なポリシロキサンが挙げられる。
【0020】
本発明において有用なSiH官能性架橋剤(a2)は、SiH官能性を含有するポリシロキサンであり得る。望ましくは、SiH官能性架橋剤は、1分子当たり2つ以上、更には3つ以上のSiH官能性を含有する。好ましくは、SiH官能性架橋剤は、SiH官能性架橋剤の重量に基づいて、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上のSiHとしての水素原子(H)の濃度(すなわち、ケイ素結合水素原子の濃度)を有し、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、更には0.9重量%以上であり得るのと同時に、一般に、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、又は更には0.3重量%以下である。ケイ素結合水素原子の含有量は、NMR分析によって決定され得る。
【0021】
SiH官能性架橋剤は、望ましくは、(II)、(III)、又はこれらの組み合わせから選択される化学構造を有する1つ以上のポリシロキサンを含むことができ、
【化2】
【化3】
式中、下付き文字xは、10~100の範囲の値を有し、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、更には80以上であり得るのと同時に、一般に、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、又は更には20以下であり、
下付き文字yは、3~30の範囲の値を有し、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、更には25以上であり得るのと同時に、一般に、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、又は更には4以下であり、下付き文字zは、3~100の範囲の値を有し、3以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、更には80以上であり得るのと同時に、一般に、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下であり、5以下、又は更には4以下であり得る。
【0022】
好適な市販のSiH官能性架橋剤としては、全てGelestから入手可能なHMS-071、HMS-301及びDMS-H11の名称で入手可能なものが挙げられる。
【0023】
本発明において有用なヒドロシリル化触媒(a3)は、任意のヒドロシリル化触媒であり得る。ヒドロシリル化触媒は、Speier触媒(H2PtCl6)及び/又はKarstedt’s触媒(ジビニル含有ジシロキサンから誘導され、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体又は1,3-ジエテニル-1,1,3,3テトラメチルジシロキサン白金錯体としても識別される有機白金化合物)などの白金系触媒を含み得る。ヒドロシリル化触媒は、カプセル化(典型的には、フェニル樹脂中で)又は非カプセル化であり得る。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号及び米国特許第3,220,972号に記載されている。ヒドロシリル化触媒は、典型的には、熱伝導性組成物の重量に基づいて、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、又は更には0.05重量%以上の濃度で存在し、同時に、一般に、0.10重量%以下、0.09重量%以下、0.08重量%以下、0.07重量%以下、又は更には0.06重量%以下である。
【0024】
本発明の熱伝導性組成物はまた、1つ以上のフィラー処理剤を含む。フィラー処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン(B1)、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサン(B2)、又は(B1)と(B2)との混合物を含む。
【0025】
アルキルトリアルコキシシランは、アルキルトリメトキシシランであり得る。アルキルトリアルコキシシランは、6~20個の炭素の(C6~C20)アルキルトリメトキシシランであってよく、C6~C12アルキルトリメトキシシランであってよく、好ましくはC8~C12アルキルトリメトキシシランであってよく、n-デシルトリメトキシシランであってよい。好適なアルキルトリアルコキシシランとしては、n-デシルトリメトキシシランが挙げられ、Dow,Inc.からDOWSIL(商標)Z-6210シラン(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)として、又はGelestからSID2670.0の名称で入手可能である。
【0026】
好適なモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの例は、化学構造(IV)を有し、
【化4】
式中、下付き文字aは、20~150の範囲の値を有し、20以上、30以上、40以上、50以上、60若しくは30多い、70以上、80以上、又は更には90以上であり得るのと同時に、典型的には、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、又は更には30以下である。R’はアルキル基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を含有し(C
1~C
12)、最も好ましくはメチルである。望ましくは、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、モノ-トリメトキシ末端ジメチルポリシロキサンである。
【0027】
好適なモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、米国特許出願公開第2006/0100336号の教示に従って合成することができる。望ましくは、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、典型的には、熱伝導性組成物の重量に基づいて、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、更には1.6重量%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には、3.0重量%以下、2.9重量%以下、2.8重量%以下、2.7重量%以下、2.6重量%以下、2.5重量%以下、2.4重量%以下、2.3重量%以下、2.2重量%以下、2.1重量%以下、2.0重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、又は更には1.7重量%以下の濃度で存在する。同時に、又は代替的に、アルキルトリアルコキシシランは、熱伝導性組成物の重量に基づいて、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、又は更には0.4重量%以上の濃度で存在し得るのと同時に、典型的には、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、又は更には0.2重量%以下の濃度で存在する。
【0028】
本発明の熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラー混合物(C)を更に含む。熱伝導性フィラー混合物(C)は、熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラーの全てを含有する。熱伝導性フィラーとは、熱伝導性組成物を通る熱伝導を促進する微粒子を指す。
【0029】
本発明において有用な熱伝導性フィラー混合物は、2つの異なる窒化アルミニウムフィラー(c1-a)と(c1-b)とのブレンドを含む窒化アルミニウムフィラー(c1)を含む。
【0030】
(c1-a)窒化アルミニウムフィラーは、100μm以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子である。「球状」形状の粒子は、1.0+/-0.2のアスペクト比を有する粒子を指す。走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像化を使用し、少なくとも10個の粒子の最長寸法(長軸)と最短寸法(短軸)との平均比を取ることで、粒子のアスペクト比を決定する。
【0031】
球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)は、100μm以上のD50粒径を有し、100μm超、105μm以上、110μm以上、115μm以上、又は更には120μm以上であり得る。球状窒化アルミニウムフィラー(c1-a)は、200μm以下、190μm以下、180μm以下、175μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、又は更には120μm以下のD50粒径を有し得る。球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、15重量%~41重量%の濃度で存在し得、15重量%以上、16重量%以上、17重量%以上、18重量%以上、19重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、24重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、又は更には32重量%以上であり得るのと同時に、典型的には、41重量%以下、40重量%以下、39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36.5重量%以下、又は更には36重量%以下、好ましくは30重量%~38重量%の中心化で存在する。
【0032】
(c1-b)窒化アルミニウムフィラーは、20~80μmのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子である。「不規則な」形状の粒子は、1.0+/-0.2以外のアスペクト比を有し、SEM画像化によって明らかな少なくとも3つの面を有する(2つの面を有する「板」から粒子を区別する)。球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)は、20μm以上、22μm以上、25μm以上、28μm以上、30μm以上、32μm以上、35μm以上、38μm以上、又は更には40μm以上のD50粒径を有し、同時に80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、又は更には45μm以下のD50粒径を有する。望ましくは、球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)は、50μm~80μmのD50粒径を有する。窒化アルミニウム粒子(c1-b)は、球状窒化アルミニウム粒子、不規則形状窒化アルミニウム粒子、又はこれらの混合物であり得る。球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、10重量%~39重量%の濃度で存在し得、10重量%以上、10.5重量%以上、11重量%以上、11.5重量%以上、12重量%以上、12.5重量%以上、13重量%以上、13.5重量%以上、14重量%以上、又は更には14.5重量%以上であり得るのと同時に、典型的には、39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、29重量%以下、28重量%以下、25重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、又は更には19重量%以下の濃度で存在する。望ましくは、球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、14重量%~20重量%の濃度で存在する。
【0033】
好ましくは、窒化アルミニウム粒子のブレンドは、30%~38%の100μm以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)と、14%~20%の50μm~80μmのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)との混合物である。代替的に、窒化アルミニウム粒子のブレンドは、30%~38%の100μm以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子(c1-a)と14%~20%の20μm~40μmのD50粒径を有する球状又は不規則形状窒化アルミニウム粒子(c1-b)との混合物であり得る。
【0034】
このブレンドからの窒化アルミニウムフィラー(c1)の濃度は、望ましくは(c1-a)と(c1-b)との合計として、より望ましくは熱伝導性組成物中の任意の及び全ての窒化アルミニウムフィラーの合計として、熱伝導性組成物の重量に基づいて、40重量%~55重量%であり、40重量%以上、41重量%以上、42重量%以上、43重量%以上、44重量%以上、45重量%以上、46重量%以上、47重量%以上、48重量%以上、49重量%以上、又は更には50重量%以上であり得るのと同時に、一般に、55重量%以下、54重量%以下、53重量%以下、52重量%以下、又は更には51重量%以下であり、45重量%~55重量%であり得る。
【0035】
このブレンド中の球状窒化アルミニウム粒子は、典型的には、ブレンドの総重量(すなわち、窒化アルミニウム粒子(c1-a)と(c1-b)との総重量)に基づいて、60重量%超、例えば、61重量%以上、62重量%以上、64重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、68重量%以上、70重量%以上、71重量%以上、73重量%以上、75重量%以上、76重量%以上、78重量%以上、又は更には80重量%以上の濃度で存在し、同時に100重量%以下の濃度で存在し得、例えば、98重量%以下、95重量%以下、92重量%以下、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、又は更には82重量%以下であり得る。望ましくは、20μm以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子は、熱伝導性組成物中の20μm以上のD50粒径を有する窒化アルミニウムフィラーの総重量に基づいて、本明細書に記載されるのと同じ濃度である。同時に、又は代替的に、30μm以上のD50粒径を有する球状窒化アルミニウム粒子は、熱伝導性組成物中の30μm以上のD50粒径を有する窒化アルミニウムフィラーの総重量に基づいて、本明細書に記載されるのと同じ濃度である。
【0036】
本発明の熱伝導性組成物は、上記の窒化アルミニウム粒子(c1-a)と(c1-b)とのこの特定のブレンドに加えて追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)を有し得るか、又は熱伝導性組成物は、上記の(c1-a)と(c1-b)とのこの特定のブレンドに加えて追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)を含まないことができる。
【0037】
本発明において有用な熱伝導性フィラー混合物は、球状酸化アルミニウム粒子(c2)を更に含む。球状酸化アルミニウム粒子(c2)は、1μm以上のD50粒径を有し、1.2μm以上、1.5μm以上、1.8μm以上、又は更には2μm以上であり得るのと同時に、典型的には、5μm以下、4.8μm以下、4.5μm以下、4.2μm以下、4μm以下、3.8μm以下、3.5μm以下、3.2μm以下、3μm以下、2.8μm以下、又は更には2.5μm以下のD50粒径を有する。球状酸化アルミニウム粒子(c2)は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、27重量%以上、28重量%以上、29重量%以上、又は更には30重量%以上の中心化で存在し得るのと同時に、一般に、41重量%以下、40重量%以下、39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36重量%以下、35重量%以下、33重量%以下、32重量%以下、又は更には31重量%以下の濃度で存在する。
【0038】
本発明において有用な熱伝導性フィラー混合物は、不規則形状酸化亜鉛粒子(c3)を更に含む。不規則形状酸化亜鉛粒子は、0.1μm~0.5μmのD50粒径を有し、0.1μm以上、0.11μm以上、又は更には0.12μm以上であり得るのと同時に、典型的には、0.5μm以下、0.45μm以下、0.4μm以下、0.35μm以下、0.3μm以下、0.25μm以下、0.2μm以下、又は更には0.15μm以下のD50粒径を有する。不規則形状酸化亜鉛粒子(c3)は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、10重量%~20重量%の濃度で存在し得、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、又は更には14重量%以上であり得るのと同時に、典型的には、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、又は更には14.5重量%以下の濃度で存在する。
【0039】
熱伝導性フィラー混合物は、言及されたものに加えて1つ以上の追加の熱伝導性フィラー(c4)を含み得るか、又は言及されたもの(例えば、(c1-a)、(c1-b)、(c2)、及び(c3))以外の追加の熱伝導性フィラーを含まないことができる。追加の熱伝導性フィラーとしては、上記の(c1-a)、(c1-b)、(c2)、及び(c3)以外の金属窒化物及び金属酸化物、例えば、追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物が挙げられ得る。
【0040】
本発明において有用な追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)は、20μm未満、例えば、18μm以下、15μm以下、12μm以下、10μm以下、8μm以下、又は更には5μm以下のD50粒径を有し得るのと同時に、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、3μm以上、又は更には4μm以上のD50粒径を有し得る。追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)の濃度は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~10重量%、例えば、8重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、又は更には2重量%以下であり得るのと同時に、典型的には、0.5重量%以上、1重量%以下、又は更には1.5重量%以上である。
【0041】
本発明において有用な窒化ホウ素フィラーは、典型的には、20μm超、例えば、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、又は更には110μm以上のD50粒径を有し、同時に、200μm以下、175μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、又は更には125μm以下のD50粒径を有する。窒化ホウ素フィラーは、熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~5重量%、例えば、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.1重量%未満、2.0重量%未満、1.6重量%未満、1.5重量%未満、1.2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、又は更にはゼロの量で存在し得、ゼロ~1重量%未満であり得る。
【0042】
本発明において有用な酸化マグネシウムフィラーは、典型的には、50μm以上、60μm以上、70μm以上、90μm以上、又は更には120μm以上のD50粒径を有し、同時に、150μm以下、140μm以下、又は更には130μm以下のD50粒径を有し得る。酸化マグネシウムフィラーは、熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~20重量%、例えば、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、又は更には10重量%以下の量で存在し得る。
【0043】
追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物を含むか又はこれらからなる追加の熱伝導性フィラー(c4)の総濃度は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~20重量%、例えば、20重量%、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は更には11重量%以下であり得る。
【0044】
熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラー混合物は、望ましくは、窒化アルミニウムフィラー(c1-a)及び(c1-b)、球状酸化アルミニウム粒子(c2)、並びに不規則形状酸化亜鉛(c3)からなる。熱伝導性フィラー混合物(及び熱伝導性組成物全体)は、酸化マグネシウムフィラー、窒化ホウ素フィラー、追加の窒化アルミニウム粒子(c1-c)、又は任意のこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0045】
熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラー混合物の濃度は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、94重量%以上、94.2重量%以上、94.5重量%以上、94.8重量%以上、95重量%以上、95.1重量%以上、95.2重量%以上、95.3重量%以上、95.4重量%以上、95.5重量%以上、95.6重量%以上、又は更には95.7重量%以上であるのと同時に、一般に、97重量%以下、96.9重量%以下、96.8重量%以下、96.7重量%以下、96.6重量%以下、96.5重量%以下、96.4重量%以下、96.3重量%以下、96.2重量%以下、96.1重量%以下、又は更には96重量%以下である。
【0046】
本発明の熱伝導性組成物は、組成物中のケイ素結合水素原子とビニル基との反応速度を、抑制剤を除いた同じ組成物の反応速度と比較して、変更するのに有用な1つ以上の抑制剤(ヒドロシリル化反応抑制剤)を含み得るか、又はこれらを含まなくてもよい。好適な抑制剤の例は、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、3-フェニル-l-ブチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、及びメチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランなどのアセチレン系化合物;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエン-イン化合物;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール;ヒドラジン系化合物;ホスフィン系化合物;メルカプタン系化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのメチルビニルシクロシロキサンを含むシクロアルケニルシロキサン;又はこれらの組み合わせを含む1つ以上の更なるステップにかけることができる。抑制剤は、熱伝導性組成物の重量に基づいて、ゼロ~0.3重量%の量で存在し得、0.0001重量%以上、0.001重量%以上、0.002重量%以上、0.005重量%以上、又は更には0.01重量%以上であり得るのと同時に、一般に、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、又は更には0.03重量%以下である。
【0047】
本発明の熱伝導性組成物は、以下の追加の構成成分:熱安定剤及び/又は顔料(銅フタロシアニン粉末など)、チキソトロピー剤、ヒュームドシリカ(好ましくは、表面処理された)、並びにスペーサ添加剤(ガラスビーズなど)のうちのいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを更に含み得るか、又はこれらを含まなくてもよい。これらの追加の構成成分の総濃度は、ゼロ~2重量%の範囲にあり得、ゼロ以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、又は更には0.5重量%以上であり得るのと同時に、典型的には、2重量%以下であり、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、又は更には0.6重量%以下であり得る。
【0048】
本発明の熱伝導性組成物は、60g/分超の押出速度を達成する。本明細書において、標準的な30立方センチメートルのEFDシリンジパッケージを用いて0.62メガパスカル(90ポンド/平方インチ)の圧力で押出速度を決定する(更なる詳細は、以下の押出速度特性評価で提供される)。熱助成(thermally conducive)組成物は、65g/分以上、68g/分以上、70g/分以上、72g/分以上、75g/分以上、78g/分以上、又は更には80g/分以上の押出速度を有し得る。ERは、押出適性、粘度、分配適性、及び使用適性の尺度として有用な特性であり、例えば、熱伝導性組成物を電子構成要素又は熱シンクなどの別の材料上に適用するために容易に分配できるようにする。同時に、本発明の熱伝導性組成物は、LonGwin Model LW 9389 TIM熱抵抗及び伝導率測定装置を使用してASTM D5470-06に従って測定した場合に、少なくとも9.0W/m*Kの熱伝導率を提供する。そのような高い熱伝導率を有し、容易に不要になることにより、熱伝導性組成物は熱界面材料(thermal interface material、TIM)として特に有用になる。TIMは、デバイスの2つの物品又は構成要素を熱的に結合するために使用される。例えば、TIMは、特に電子機器において、発熱デバイスを熱シンク、冷却プレート、金属カバー又は他の放熱構成要素と熱的に結合するのに有用である。そのような用途では、熱伝導性組成物は、少なくとも2つの構成要素、典型的には発熱デバイスと、熱シンク、冷却プレート、金属カバー又は他の放熱構成要素のうちの少なくとも1つとの間に存在し、それらと熱接触している。
【実施例】
【0049】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において記載するが、特に指定しない限り、全ての重量パーセントは、熱伝導性組成物の重量に対するものであり、フィラーの全ての粒径は、D50粒径である。表1は、本明細書で以下に記載される試料の熱伝導性組成物に使用するための材料を示す。注:「Vi」はビニル基を指す。「Me」は、メチル基を指す。SYL-OFF及びDOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【表1】
*ポリシロキサンの粘度をASTM D445-21によって測定した。「TCフィラー」は、熱伝導性フィラーを指す。「破砕された」粒子は、1つ以上の鋭利で角張った破砕面を有する粒子であり、本明細書において破砕された粒子は、不規則形状粒子をも指す。
【0050】
IE1~11及びCE1~16試料
試料の配合を表2及び3に示し、各成分の量をグラム(g)で報告する。
【0051】
FlackTek Inc.(South Carolina,USA)からのSpeedMixer(商標)DAC 400 FVZミキサーを使用して構成成分を一緒に混合することによって、試料を調製した。SpeedMixerのカップに、Viポリマー、架橋剤、処理剤、並びにC2及びC3 TCフィラーを添加する。1000回転/分(RPM)で20秒間、次いで1500RPMで20秒間混合する。添加し、C1 TCフィラーの半分を更に添加し、1000回転/分(revolutions per minute、RPM)で20秒間、次いで1500RPMで20秒間混合した。残りのC1 TCフィラーを添加し、続いて存在する場合にはC4-1 TCフィラーを添加し。同様に混合した。カップ内の得られた組成物を掻き取って、確実に混合し、次いで抑制剤E-1、顔料F-1、及び触媒D-1を添加し、同様に混合して、熱伝導性組成物試料を得た。得た熱伝導性組成物試料を、以下の試験方法に従って、押出速度及び熱伝導率について評価した。
【0052】
押出速度特性評価
Nordson EFD分注装置を使用して、試料の押出速度(「ER」)を測定する。試料材料を、2.54ミリメートル(millimeter、mm)の開口部を有する30立方センチメートルのシリンジ(Nordson CompanyからのEFDシリンジ)にパッケージングする。シリンジに0.62MPaの圧力を加えることによって、開口部を通して試料を分注する。1分後に押出された試料の質量(グラム)は、押出速度(グラム/分)に相当する。本発明の目的は、60g/分超、好ましくは65g/分以上、より好ましくは70g/分以上、更により好ましくは75g/分以上の押出速度を達成することである。
【0053】
特に、いくつかの試料は、押出できなかった粉末状ペーストであったため、0のERを有すると報告されている(熱伝導率は測定されなかった)。
【0054】
熱伝導率特性評価
LonGwin Science and Technology Corporation、TaiwanからのLonGwin Model LW 9389 TIM熱抵抗及び伝導率測定装置を使用して、ASTM D5470-06に従って熱伝導率(「thermal conductivity、TC」)を決定する。本発明の目的は、少なくとも9.0ワット/メートル*ケルビン(W/m*K)の熱伝導率(「TC-LonGwin」とも示される)を達成することである。
【0055】
熱伝導性組成物試料(未硬化試料)を、80℃で12分間動作させたときに、ガード付き中央ホットプレートとコールドプレートとの間に適用した。275.8キロパスカル(40ポンド/平方インチ)の圧力を適用して、試料をプレートと接触させたままに維持した。熱インピーダンスを、異なるボンドライン厚さ(bond-line thickness、BLT)(0.5mm/1.0mm/2.0mm)で測定した。線形方程式を熱インピーダンス対BLTに当てはめることによって、バルク熱伝導率(「K」として示される)をK=10/傾きによって計算し、表2及び3において「TC-LonGwin」として報告した。
【0056】
表2に示されるように、実施例1~11の試料は全て、60g/分超えのER及び9.0W/m*K超えのTCの両方の要件を達成した。特に、実施例1~10は、75g/分以上の更により高いERを示した。
【0057】
対照的に、表3に示す試料は、TC及びER要件の少なくとも1つを達成することができなかった。
【0058】
特定の粒径を有する少なくとも2種類のAlN粒子の組み合わせの代わりに、AlN粒子(D50=80μm)及び球状MgO(D50=60μm)の組み合わせを使用したCE1試料は、9.0W/m*K未満のTCを提供した。
【0059】
TCフィラーとして、AlN粒子(D50=80μm)、不規則AlN粒子(D50=60μm)、不規則形状Al2O3粒子(D50=2μm)、及び球状Al2O3粒子(D50=10μm)の組み合わせを使用したCE2試料は、押出されることができない粉末状のペーストであった。
【0060】
AlN粒子(D50=80μm)、異なる粒径の球状Al2O3粒子(それぞれ2μm及び0.3μm)を使用したCE3試料は、9.0W/m*K未満のTCを与えた。
【0061】
100μm以上のD50を有する球状AlN粒子の代わりに、不規則AlN粒子(D50=70μm)を有する球状AlN粒子(D50=80μm)を含むCE4試料は、低いER及びより低いTCの両方を提供した。
【0062】
TCフィラーとして球状AlN粒子(D50=80μm)、球状MgO粒子(D50=120)、及び異なる粒径の球状Al2O3粒子(それぞれD50=2μm及び0.3μm)を含むCE5試料は、低ER及び低TCの両方を提供した。
【0063】
実施例2と比較して、2μmのD50を有する球状Al2O3粒子を不規則形状Al2O3粒子で置き換えること(CE6試料)、不規則ZnO粒子(D50=0.2μm)を球状若しくは不規則形状Al2O3で置き換えること(CE7及びCE8試料)、又は120μmのD50を有する球状AlNを、100μmのD50を有する不規則形状AlNで置き換えること(CE9)は全て、より低いERをもたらした。
【0064】
80μmのD50を有する1種類のAlN粒子のみを含むCE10は、2.1%のBN粒子を添加しても、9.0W/m*K超えのTCのTC要件を依然として満たすことができなかった。
【0065】
2つの異なる粒径を有するAlN粒子の混合物を含むが、それぞれ45重量%及び10重量%の濃度でAlN粒子が100μm以上のD50粒径を有するCE11及びCE14の試料は両方とも、ER及びTCの要件のうちの少なくとも1つを満たすことができなかった。
【0066】
CE12及びCE13試料は、40%未満のAlNフィラーの総濃度が望ましくない低いTCを提供し、AlNフィラー>55重量%の総含有量が低いERをもたらしたことを実証している。
【0067】
1種類のみのAlNフィラー、すなわち、20μmのD50を有する不規則形状AlN粒子を含むCE15試料は、押出されることができない粉末状ペーストであった。AlNフィラーとして100μmのD50を有する球状AlN粒子のみを含むCE16試料は、60g/分未満のERを提供した。
【表2】
注:この表2及び以下の表3において、
「SiH/Vi比」は、架橋剤からのSiH官能性対ビニル官能性のモル比を指す。
「球状大AlN重量%」は、試料中の全ての構成成分の総重量に対するD50≧100μmを有する球状AlNフィラー重量%を指す。「小AlN重量%」は、試料中の全ての構成成分の総重量に対する20~80μmのD50を有するAlNフィラーの重量%を指す。
「ER」及び「TC-LonGwin」(「TC」でもある)を、上記の試験方法に従って測定した。
「TC-ホットディスク」は、ISO 22007-2に従って、ホットディスクを使用することによって測定された熱伝導率を指す。硬化試料の熱伝導率を、3.189mmカプトンセンサー(モデル5465)を備えたホットディスクTPS 2500 S機材によって測定した。25mm×25mm×8mmの寸法を有する熱伝導性組成物試料を120℃で60分間硬化させることによって、硬化試料を調製した。
【表3】
【国際調査報告】