(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】癌を治療するための抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240903BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20240903BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240903BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240903BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240903BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20240903BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240903BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240903BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240903BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/46
C07K14/55
C07K14/54
A61K47/68
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K38/20
A61P43/00 107
A61K35/12
A61K31/519
A61K31/5025
A61K31/505
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
A61K38/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506734
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 IL2022050849
(87)【国際公開番号】W WO2023012802
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502379147
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミット イド
(72)【発明者】
【氏名】ボーンスタイン-オーヴィッツ チャムタル
(72)【発明者】
【氏名】ヤリン アダム
(72)【発明者】
【氏名】モーシェ アディ
(72)【発明者】
【氏名】バーボーイ オーレン
(72)【発明者】
【氏名】ワイナー アッサーフ
(72)【発明者】
【氏名】カッツェンエレンボーゲン ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイティン ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】シェバン ファディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084AA22
4C084AA23
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA19
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB072
4C084ZB221
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086CB05
4C086CB06
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA05
4C087NA13
4C087ZB22
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
TREM2及びGpnmbに対する抗体が提供される。また、抗体を含む組成物及びその使用方法も提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体2(TREM2)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片であって、前記抗原認識ドメインが、
23A10A10
32F9E8
38C11H11
49A12D7
58B2A7
60A4F5
60H4A3
61B11C9
80E3H11
83E10B12
54H2C1
54H2C1B
23A10B10
23A10B11
38C11C10
60A4E10
60H4G2
80E3C7
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む、抗体またはその断片。
【請求項2】
前記TREM2が、ヒトTREM2である、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
前記抗原認識ドメインが、抗体54H2Cの相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
前記抗原認識ドメインが、抗体80E3C7の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
骨髄由来マクロファージのTREM2を阻害し、in vitroで活性化マクロファージを発生させ得る、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
膜貫通糖タンパク質NMB(Gpnmb)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片であって、前記抗原認識ドメインが、
g1-g2
g2-b6
g3-g2
g4-b4
g5-g2
g8-g2
g9-b4
b1-b2
b8-b8
b10-b9
b11-g2
b12-y8
b13-b7
b15-b7
b17-b17
b18-b19
b2-b2
b20-b21
b21-y8
b22-b23
b24-b26
b25-b26
y3-y22
y4-y3
y5-y5
y9-y6
y12-b4
y20-y19
y23-y20
y25-y21
y27-y22
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む、抗体またはその断片。
【請求項7】
前記Gpnmbが、ヒトGpnmbである、請求項6に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
CD4 T細胞を活性化可能な、請求項6に記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
少なくとも一方のアームに請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識ドメインを含む、二重特異性抗体。
【請求項10】
一方のアームに請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体を含み、もう一方のアームに請求項6~8のいずれか一項に記載の抗体を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
エフェクター機能が無効であるかまたはエフェクター機能を有さない、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体または二重特異性抗体。
【請求項12】
IgG1である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体または二重特異性抗体。
【請求項13】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)として製剤化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項14】
炎症性サイトカインとともに製剤化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項15】
前記炎症性サイトカインに接合されてコンジュゲートを形成する、請求項14に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項16】
前記炎症性サイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、及びGM-CSFからなる群から選択される、請求項14~15のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項17】
コンジュゲートが、IL-2を含む、請求項16に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項18】
前記コンジュゲートが、配列番号496と配列番号498または配列番号497と配列番号499に示されるものである、請求項15に記載の抗体もしくはその断片または二重特異性抗体。
【請求項19】
キメラ抗原受容体(CAR)を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体の断片。
【請求項20】
配列番号500に示されるものである、請求項19に記載の抗体の断片。
【請求項21】
請求項19または20に記載の抗体の断片を発現する、細胞。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片を含む、製品。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片もしくは二重特異性抗体または細胞と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させる方法であって、有効量の請求項1~5及び9~21のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片もしくは二重特異性抗体または細胞をミエロイド細胞と接触させることを含み、それによりミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させる、方法。
【請求項25】
CD4 T細胞を活性化する方法であって、有効量の請求項8に記載の抗体またはその断片をCD4 T細胞と接触させることを含み、それにより前記CD4 T細胞を活性化する、方法。
【請求項26】
TREM2を発現するミエロイド細胞を死滅させる方法であって、有効量の請求項21に記載の細胞を、TREM2発現ミエロイド細胞を含む細胞集団と接触させることを含み、それにより前記TREM2を発現するミエロイド細胞を死滅させる、方法。
【請求項27】
前記接触が、in vivoで行われる、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記接触が、ex vivoで行われる、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量の請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体、抗体断片、それらの組み合わせ、もしくは二重特異性抗体、または細胞を前記対象に投与することを含み、それにより前記癌を治療する、方法。
【請求項30】
癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、
(a)請求項24に記載の方法に従ってミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させ、前記ミエロイド細胞が前記対象に由来するものである、工程と、続いて、
(b)前記ミエロイド細胞を前記対象に移植して、それにより前記癌を治療する工程と
を含む、方法。
【請求項31】
癌の治療における使用のための、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体、その断片、二重特異性抗体、または細胞。
【請求項32】
前記癌が、固形癌である、請求項28もしくは29に記載の方法、または請求項31に記載の使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項33】
前記固形癌が、肺癌、肝癌、卵巣癌、胃癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項32に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項34】
前記肺癌が、非小細胞肺癌である、請求項33に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項35】
前記肺癌が、小細胞肺癌である、請求項33に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項36】
前記肝癌が、肝細胞癌である、請求項33に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項37】
治療有効量のチェックポイント阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項38】
治療有効量のブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【請求項39】
前記ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤が、イブルチニブ、アカラブルチニブ、及びスペブルチニブからなる群から選択される、請求項38に記載の方法、または使用のための抗体、その断片、二重特異性抗体、もしくは細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:
本出願は、2021年8月5日に出願されたイスラエル国特許出願第285416号の優先権を主張するものであり、当該出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の記載
本出願の出願と同時に提出された、649,124バイトで構成される2022年8月4日作成の93064.xmlという名称のファイルは、参照により本明細書に援用される。
【0003】
発明の分野及び背景
本発明は、そのいくつかの実施形態では、ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることにより癌を治療する方法に関し、より詳細には、限定されるものではないが、固形癌に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫機能に不可欠な決定因子の多くは、従来の表面マーカーによって正確に特徴付けることができず、これらのシグナルの内部処理及び統合がどのように免疫の活性化、抑制、及び炎症へと転換されるのかは不明である。骨髄由来抑制細胞(MDSC)は、腫瘍微小環境(TME)内でエフェクターT細胞に対する抑制環境を促進し、腫瘍増殖及び免疫機能不全に加担することが公知である。MDSCは、広範囲のヒト疾患及び癌種における治療結果に重大な影響を及ぼしているにもかかわらず、その正確な機能的役割及び分子の正体はとらえどころがなく、不明確である。MDSCは、従来の表面マーカーに基づく分類方式には適合せず、広範なミエロイド表面マーカー、種々の細胞アッセイ、及びアルギナーゼ1(Arg1)を発現する免疫抑制性代謝経路の発現を含む代謝特性を使用して分類される。この重要かつ不均一なミエロイド細胞群を、それらの抑制性代謝能に基づいて徹底的に分子的に理解することは、それらの分子マーカー、経路、及び活性の同定につながり、最終的にはより効果的なバイオマーカー及び標的免疫療法につながる可能性がある。
【0005】
背景技術には以下が含まれる:
Kim et al., Cancers (Basel).2019 Sep;11(9): 1315、
国際公開第2017/058866号パンフレット、
米国特許出願公開第20180043014号明細書、及び
Katzenelenbogen et al., Aμg 20;182(4):872-885.e19.doi: 10.1016/j.cell.2020.06.032. Epub 2020 Aμg 11。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体2(TREM2)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片が提供され、前記抗原認識ドメインは、
23A10A10
32F9E8
38C11H11
49A12D7
58B2A7
60A4F5
60H4A3
61B11C9
80E3H11
83E10B12
54H2C1
54H2C1B
23A10B10
23A10B11
38C11C10
60A4E10
60H4G2
80E3C7
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TREM2は、ヒトTREM2である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗原認識ドメインは、抗体54H2Cの相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗原認識ドメインは、抗体80E3C7の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体またはその断片は、骨髄由来マクロファージのTREM2を阻害し、in vitroで活性化マクロファージを発生させ得る。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、膜貫通糖タンパク質NMB(Gpnmb)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片が提供され、抗原認識ドメインは、
g1-g2
g2-b6
g3-g2
g4-b4
g5-g2
g8-g2
g9-b4
b1-b2
b8-b8
b10-b9
b11-g2
b12-y8
b13-b7
b15-b7
b17-b17
b18-b19
b2-b2
b20-b21
b21-y8
b22-b23
b24-b26
b25-b26
y3-y22
y4-y3
y5-y5
y9-y6
y12-b4
y20-y19
y23-y20
y25-y21
y27-y22
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Gpnmbは、ヒトGpnmbである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体またはその断片は、CD4 T細胞を活性化することができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Gpnmbは、ヒトGpnmbである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、CD4 T細胞を活性化可能である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、少なくとも一方のアームに本願に記載の抗原認識ドメインを含む二重特異性抗体が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体またはその断片は、一方のアームにTREM2の抗体を含み、もう一方のアームに抗体Gpnmbを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エフェクター機能が無効であるかまたはエフェクター機能を有さない。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、IgG1である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体薬物コンジュゲート(ADC)として製剤化される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性サイトカインとともに製剤化される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性サイトカインに接合されてコンジュゲートを形成する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、及びGM-CSFからなる群から選択される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コンジュゲートは、IL-2を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コンジュゲートは、配列番号496と配列番号498、または配列番号497と配列番号499に示されるものである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体(CAR)を形成する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、配列番号500に示されるものである。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本願に記載の抗体の断片を発現する細胞が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本願に記載の抗体または抗体断片を含む製品が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本願に記載の抗体もしくは抗体断片もしくは二重特異性抗体または細胞と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させる方法が提供され、本方法は、有効量の本願に記載の抗体もしくは抗体断片もしくは二重特異性抗体または細胞とミエロイド細胞を接触させて、それによりミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、CD4 T細胞を活性化する方法が提供され、本方法は、有効量の請求項8に記載の抗体またはその断片とCD4 T細胞を接触させて、それによりCD4 T細胞を活性化することを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TREM2を発現するミエロイド細胞を死滅させる方法が提供され、本方法は、有効量の本願に記載の細胞とTREM2発現ミエロイド細胞を接触させることを含む、細胞集団を接触させること、によりTREM2を発現するミエロイド細胞を死滅させることを含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、接触させることは、in vivoで行われる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、接触させることは、ex vivoで行われる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、本方法は、有効量の本願に記載の抗体、抗体断片、それらの組み合わせ、もしくは二重特異性抗体、または細胞を対象に投与して、それにより癌を治療することを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、本方法は、
(a)本願に記載の方法に従ってミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることであって、ミエロイド細胞が対象に由来するものである、低減させること、及びその後、
(b)ミエロイド細胞を対象に移植して、それにより癌を治療すること、を含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の治療における使用のための、本願に記載の抗体、その断片、二重特異性抗体、または細胞が提供される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、癌は、固形癌である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、肺癌、肝癌、卵巣癌、胃癌、及び乳癌からなる群から選択される固形癌が提供される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺癌は、非小細胞肺癌である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺癌は、小細胞肺癌である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肝癌は、肝細胞癌である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法または使用は、治療有効量のチェックポイント阻害剤をさらに含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療有効量のブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤をさらに含む。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤は、イブルチニブ、アカラブルチニブ、及びスペブルチニブからなる群から選択される。
【0047】
別段に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願に記載されるものと類似または同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法及び/または材料が以下に記載される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、必ずしも限定することを意図したものではない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書において添付図面を参照して単なる例として説明される。これより、図面を詳細に具体的に参照するが、示される詳細事項は、例としてのものであり、かつ本発明の実施形態を説明的に論じる目的のものであることが強調される。この点に関して、説明を図面と併せて読むことにより、本発明の実施形態がどのように実践され得るかが当業者には明らかになる。
【0049】
図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、ヒトTREM2に対するハイブリドーマ由来モノクローナル抗体のSDS-PAGE分析を示す。二次抗体:ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcg断片特異的(min X ヒト、ウシ、ウマ血清タンパク質)。
【
図2】
図2は、7種の抗hTREM2抗体の結合感度試験におけるHEK293上清ELISAのOD値を示す。
【
図3】
図3は、ビオチンコンジュゲート抗hTREM2抗体で染色し、続いてAPC-ストレプトアビジンでインキュベートした野性型293HEK細胞(WT)及びhTREM2発現HEK293細胞(hTREM2)のフローサイトメーター分析を示す。
【
図4】
図4のA~Bは、リード抗体の同定を示す。TREM2ノックアウト(KO)マウス及びhTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウスのマウス骨髄細胞を、30ng/mLのhM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-25)の存在下で7日間培養し、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)を生成した。BMDMを、ビオチンコンジュゲート抗hTREM2リーダー抗体(83E10B12、54H2C1、80E3C7、またはIgG対照)で染色し、続いてAPC-ストレプトアビジンでインキュベートした。A.代表的なヒストグラムは、IgG対照に対する83E10B12、54H2C1、80E3C7の染色を示している。B.TREM2 KO BMDMまたはhTREM2 BMDMに対する、IgG対照、83E10B12、54H2C1、及び80E3C7のフローサイトメトリー強度。
【
図5】
図5は、83E10B12抗hTREM2タンパク質、54H2C1抗hTREM2タンパク質、80E3C7抗hTREM2タンパク質のSPR分析を示す。
【
図6】
図6のA~Bは、83E10B12抗hTREM2抗体、54H2C1抗hTREM2抗体、80E3C7抗hTREM2抗体による、野性型(WT)293HEK細胞及びhTREM2過剰発現(OE)TREM2 293HEK細胞(A)、ならびにhTREM2 BMDMまたはKO BMDM(B)のウエスタンブロット分析を示す。二次抗体:ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的(min X ヒト、ウシ、ウマ血清タンパク質)(Jackson ImmunoResearch社、115-035-071)。
【
図7】
図7は、83E10B12抗hTREM2抗体、54H2C1抗hTREM2抗体、80E3C7抗hTREM2抗体を用いた、TREM2 KO BMDM及びhTREM2 BMDMの免疫組織化学分析を示す。細胞を冷メタノールで固定し、PBSで洗浄して、抗hTREM2抗体で染色した。二次抗体:Alexa Fluor 647-AffiniPure F(ab’)2断片ロバ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch社、715-606)。
【
図8】
図8のA~Cは、mAb 54H2C1及びmAb 80E3C7がBMDM培養物においてhTREM2活性を遮断することを示す。(A)TREM2 KO骨髄細胞及びhTREM2骨髄細胞のBMDM培養物の単一細胞マップ。(B)BMDM分化中の2、3、4、5、6、7日目の単一細胞マップ上のhTREM2(シアン)マウスまたはTREM2-KO(赤)マウス由来の細胞を強調表示する密度プロット。(c)野性型細胞またはTREM2-KO細胞由来のBMDM培養物の7日目のTREM2+GPNMB+マクロファージ及びTREM2-マクロファージの定量、ならびに2日目のmAb 54H2C1、mAb 80E3C7、またはIgG対照で処理した野性型細胞に関する定量。
【
図9】
図9は、MCA-205誘発腫瘍を担持するヒト化TREM2マウスにおけるビオチンコンジュゲートhTREM2抗体の浸透のELISA分析を示す。
【
図10】
図10のA~Bは、hGPNMBタンパク質がCD4 T細胞活性化を抑制することを示す。CFSE染色したヒトCD4 T細胞を、活性化及び増殖のために、プレコーティングした抗CD3抗体、抗CD2抗体、及び抗CD28抗体中で3日間インキュベートした。フローサイトメトリーによるCFSE強度測定、ELISA(Biolegend社、BLG-430104)によるIFNg分泌測定から複製数を算出した。
【
図11】
図11は、示した抗体濃度でヒトM2マクロファージを染色するE3C7抗体(黄色)及びIgG対照(灰色)の平均蛍光強度(MFI)曲線である。ビオチン化抗体を使用し、続いてPE-ストレプトアビジンを結合させた。
【
図12】
図12のA~Bは、マクロファージ極性化に対するE3C7の効果を示す。ヒトCD14+単球を健常ドナー3名の末梢血から精製し、hM-CSFを5日間投与することによりマクロファージに分化させ、続いてIL-4投与により「M2」マクロファージに極性化させた。抗TREM2抗体であるE3C7 Abを、アッセイの3日目及び5日目に培養物に添加した。(A)qPCR及び(B)ELISAを、IL4による処理の24時間後に実施した。
【
図13】
図13のA~Cは、mAb E3C7が培養中のヒトマクロファージの分化におけるhTREM2活性を遮断することを示す。(A)IL-4サイトカインの存在下または不在下、及び抗TREM2抗体/IgG対照抗体を含むまたは含まない、ヒトin vitro分化マクロファージの単一細胞マップ。(B)単一細胞マップ上のM-CSF(ピンク)試料またはM-CSF+IL-4(青)試料の細胞を強調表示した密度プロット。(C)単一細胞マップ上の抗TREM2(ピンク)試料、IgG対照(緑)試料、または抗体なし(青)試料の細胞を強調表示した密度プロット。
【
図14】
図14は、mAb E3C7が培養中のヒトマクロファージの分化におけるhTREM2活性を遮断することを示す。ドットプロットの視覚化は、抗TREM2 mAb、IgG対照のいずれかで処理したかまたは抗体処理なしの、2つの分化条件:M-SCF分化マクロファージ、M-CSF+IL4分化マクロファージにおける、差次的に発現された遺伝子の発現を示している。
【
図15】
図15のA~Bは、抗体E3C7がマウス腫瘍微小環境(TME)をリモデリングすることを示す。(A)IgG対照と比較した、E3C7処理マウスにおけるI型インターフェロンシグナル伝達が高いTAMのパーセンテージ。(B)IgG対照と比較した、E3C7処理マウスにおける機能不全CD8 T細胞(PD1+LAG3+)のパーセンテージ。
【
図16】
図16は、E3C7処理マウスの腫瘍関連マクロファージにおける差次的遺伝子発現を示すボルケーノプロットである。プロットは、E3C7で処理したTMEマクロファージとIgG対照で処理したTMEマクロファージにおいて差次的に発現された遺伝子を示している。
【
図17A】
図17A及び
図17Bは、抗TREM2抗体E3C7及び炎症性サイトカイン(IL2、IL-15)が相乗してマクロファージの炎症誘発性表現型を上昇させることを示す。(A)抗TREM2、GM-CSF、IL12、IL15、IL2、または抗TREM2とサイトカインのうちの1つとの組み合わせで処理した後の遺伝子発現分析。(B)抗TREM2及びIL-2/IL-15サイトカインで処理した後のM2マクロファージサイトカイン分泌分析。
【
図18】
図18のA~Bは、抗TREM2抗体E3C7及び炎症性サイトカイン(IL2、IL-15)が、相乗してM2マクロファージの炎症誘発性表現型を増加させ、結果としてM2マクロファージによるCD8 T細胞活性化の抑制を解除することを示す。(A)活性化及び増殖のためにプレコーティングした抗CD3及びCD28抗体中で、細胞追跡色素CFSEで染色したヒトCD8 T細胞を抗TREM2抗体及びIL2/IL-15サイトカインで処理したM2マクロファージと3日間共培養した。フローサイトメトリーによるCFSE強度測定により算出した増殖性細胞のパーセンテージ。(B)活性化及び増殖のためにプレコーティングした抗CD3及びCD28抗体中、IL-2/IL-15サイトカインの存在下で、CFSEで染色したヒトCD8 T細胞をM2マクロファージと3日間共培養した。フローサイトメトリーによるCFSE強度測定により算出した増殖性細胞のパーセンテージ。
【
図19】
図19のA~Dは、抗hTREM2-サイトカイン融合体の結合を示すグラフである。プレートを組換えhTREM2(2μg/ml)でコーティングし、様々な濃度の組換え抗体を用いた直接ELISAアッセイに使用した。あるいは、hM2細胞上清を、可溶性TREM2タンパク質結合アッセイ(サンドイッチElisa)に使用した。異なる二次抗体を使用した。A、C:抗ヒトIgG、B、D:抗hIL2(BLG-500302)。
【
図20】
図20のA~Bは、本発明の実施形態による抗hTrem-IL2 Ab及びそのIL-2との融合体が、培養中のhCD8+/CD4+細胞を活性化することを示す。hCD8/CD4+細胞を、活性化させてまたはさせずに、抗体(10μg/ml)または組換えタンパク質(100ng/ml)とともに培養した。A.4日目の増殖CD8+細胞のパーセンテージ。B.24時間時点及び4日目のIFNgの分泌(pg/ml)。
【
図21】
図21は、培地中のIFNg濃度により決定した、異なる共培養条件下でのIFNg放出を示す。Holm-Sidakの多重比較検定(条件毎に16回反復)を使用して統計学的有意性検定を行った。
【
図22-1】
図22のA~Fは、TREM2 CAR-T細胞の活性を示すグラフである。(A)TREM2+HEK293と共培養したTREM2-CAR T細胞のIFN-γ ELISAアッセイ。(B)TREM2+HEK293と共培養したTREM2-CAR T細胞によるTREM2+HEK293の活性化及び死滅に関するフローサイトメトリー分析。(C)TREM2-CAR T細胞及びモックCAR T細胞と24時間共培養した後のヒトTAM様細胞のフローサイトメトリーのFSC-SSCゲーティング。(D)ヒトTAM様細胞と共培養したTREM2-CAR T細胞のIFN-γ ELISAアッセイ。(E)ヒトTAM様細胞と共培養したTREM2-CAR T細胞のTREM2-CAR T細胞の活性化及び死滅に関するフローサイトメトリー分析。(F)ヒト化TREM2マウス、TREM2koマウス、及びwtマウス由来のBMDM及びBMDCと共培養したTREM2-CAR T細胞のIFN-γ ELISAアッセイ。
【
図23】
図23は、本発明のいくつかの実施形態によるTREM2キメラ抗原受容体の概略図である。
【
図24】
図24は、本発明のいくつかの実施形態の抗TREM2-IL2融合体の概略図及び配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明のいくつかの実施形態は、ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることにより癌を治療する方法に関し、より詳細には、限定されるものではないが固形癌に関する。
【0052】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるまたは実施例によって例証される詳細にその適用が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または種々の方法で実践もしくは実行することができる。
【0053】
本発明者らは、Arg1+ミエロイド細胞の直接標的化を使用して、腫瘍微小環境内の抑制性代謝回路を分析した。本発明者らは、腫瘍内のArg1+TREM2+細胞の2つの別個の集団である、腫瘍関連マクロファージ集団と、規定の表面マーカー(例えばGpnmb)及びシグナル伝達(低酸素を含む)により特徴付けられる独特のMreg集団とを同定した。本発明者らは、CD8 T細胞に対するArg1+TAM集団及びMreg集団の抑制性活性を実証した。本発明の知見により、TREM2が抑制性ミエロイド細胞のマーカー及び潜在的な調節因子であることが同定された。マウスにおけるTREM2の遺伝的除去により、機能不全CD8+T細胞の減少ならびにNK細胞及び細胞傷害性T細胞の増加を含めた腫瘍に対する免疫反応性の増加とともに、Mreg集団の劇的な減少がもたらされた。結果から、癌を治療するために、Mreg集団を特異的に標的とすることが腫瘍関連マクロファージ集団を標的とすることよりも有益であることが示唆される。
【0054】
よって、本発明者らは、癌を治療するために、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体2(TREM2)及び膜貫通糖タンパク質NMB(Gpnmb)を共標的化することにより制御性ミエロイド細胞集団(Mreg)を調節することを既に提案してきた。本発明者らは、目下、かかる共標的化に使用することができるTREM2及びGpnmbに対する抗体を同定している。
【0055】
抗TREM2抗体は、スクリーニングされた抗体の存在下で骨髄由来マクロファージが活性化されてM1プロファイルを獲得する、独特なスクリーニングアッセイを用いることによりスクリーニングされた。この活性化は、TREM2遮断(機能喪失)の直接的結果であり、以下の実施例の項に開示されるように、TREM2ノックアウト表現型を模倣する。他方、抗Gpnmb結合剤は、CD4 T細胞の活性化を抑制するMregを阻害する能力、及びそれによりCD4 T細胞を活性化する能力に基づいて選択される。
【0056】
CD4 T細胞及びマクロファージを活性化する能力により、本発明の抗体は臨床における使用、特に癌の治療における使用に有益となる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態の抗TREM2抗体の機能的特徴付けにより、高親和性認識(低ナノモルからピコモルの範囲)と、免疫抑制性マクロファージを炎症誘発性単球様細胞へとリプログラムする能力により立証されるミエロイド細胞におけるTREM2機能の阻害とが示された。単細胞RNAseqの比較分析により、抗体で処理されリプログラムされたBMDMのトランスクリプトームパターンとTREM2-/-マウス由来のトランスクリプトームパターンがほぼ同一であることが明らかとなった。本発明のいくつかの実施形態の抗TREM2抗体は、腫瘍担持ヒト化マウスにおいて腫瘍増殖を減弱させ、I型IFN遺伝子の差次的増加により立証されるように腫瘍マクロファージをリプログラムする。抗TREM2抗体と炎症性サイトカインとの組み合わせ、または抗TREM2抗体と炎症性サイトカインとの接合は、ミエロイドリプログラミング及びT細胞活性化を相乗的に増強させることが示された。加えて、本発明のいくつかの実施形態の抗体を使用して生成されたTREM2-CAR T細胞は、効果的な細胞傷害性応答を開始し、かつヒトTREM2発現ミエロイド細胞及び免疫抑制性マクロファージを枯渇させることができる。TREM2-CAR T細胞の観察された効果は、ミエロイドに焦点を当てた癌免疫療法の開発に向けた重要なマイルストーンである。
【0058】
したがって、本発明の一態様によれば、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体2(TREM2)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片が提供され、前記抗原認識ドメインは、
23A10A10
32F9E8
38C11H11
49A12D7
58B2A7
60A4F5
60H4A3
61B11C9
80E3H11
83E10B12
54H2C1
54H2C1B
23A10B10
23A10B11
38C11C10
60A4E10
60H4G2
80E3C7
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0059】
TREM2は、マクロファージ、樹状細胞、破骨細胞、ミクログリア、単球、皮膚のランゲルハンス細胞、及びクッパー細胞を限定することなく含むミエロイド系統細胞上で主に発現される、免疫グロブリン様受容体である。いくつかの実施形態では、TREM2は、DAP12と受容体-シグナル伝達複合体を形成する。いくつかの実施形態では、TREM2は、DAP12(ITAMドメインアダプタータンパク質)を通じてリン酸化及びシグナル伝達を行う。いくつかの実施形態では、TREM2シグナル伝達は、PI3Kの下流の活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、TREM2シグナル伝達は、脾臓チロシンキナーゼ(stk)の下流のリン酸化をもたらす。
【0060】
本開示のTREM2タンパク質は、ヒトTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号Q9NZC2)、マウスTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号Q99NH8)、ラットTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号D3ZZ89)、アカゲザルTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号F6QVF2)、ウシTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号Q05B59)、ウマTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号F7D6L0)、ブタTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号H2EZZ3)、及びイヌTREM2タンパク質(Uniprotアクセッション番号E2RP46)を含むがこれらに限定されない、哺乳動物TREM2タンパク質を限定することなく含む。
【0061】
例示的なヒトTREM2アミノ酸配列は、配列番号1として後に示す。
【0062】
いくつかの実施形態では、ヒトTREM2は、シグナルペプチドを含むプレタンパク質である。いくつかの実施形態では、ヒトTREM2は、成熟タンパク質である。いくつかの実施形態では、成熟TREM2タンパク質は、シグナルペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、成熟TREM2タンパク質は,細胞上で発現される。いくつかの実施形態では、TREM2は、ヒトTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基1~18に位置するシグナルペプチド、ヒトTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基29~112に位置する細胞外免疫グロブリン様可変型(IgV)ドメイン、ヒトTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基113~174に位置する追加の細胞外配列、ヒトTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基175~195に位置する膜貫通ドメイン、及びヒトTREM2(配列番号1)のアミノ酸残基196~230に位置する細胞内ドメインを含有する。具体的な実施形態によれば、TREM2は、ヒトTREM2である。
【0063】
具体的な実施形態によれば、抗原認識ドメインは、抗体54H2Cの相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0064】
具体的な実施形態によれば、抗原認識ドメインは、抗体80E3C7(「E3C7」とも称される)の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0065】
具体的な実施形態によれば、抗体または抗体断片は、in vitroで骨髄由来マクロファージにおいてTREM2を阻害して活性化マクロファージを生じさせることができ、これはTREM2ノックアウトに典型的である。
【0066】
換言すれば、抗体または抗体断片または二重特異性抗体は、TREM2に対する阻害性抗体である。これは、インキュベーション後の表現型がTREM2ノックアウト細胞と類似していることから説明され得る(実施例の項を参照されたい)。
【0067】
具体的には、本発明者らは、骨髄由来マクロファージ(BMDM)が多量のTREM2を発現することを見出した。本発明のいくつかの実施形態の抗体は、TREM2-BMDMにも結合する。
【0068】
BMDMは、IL-10及びTGF-βなどの抑制性サイトカインを高レベルで産生することが公知である。BMDMの抗体が経時的成熟経過に及ぼす効果は、単一細胞RNA配列を使用して決定され得る。効果は活性化後2~7日で見ることができる。その効果は、典型的にはM1表現型の獲得である。したがって、以下の実施例の項に見ることができるように、野性型hTREM2 BM細胞は、7日目にGpnmb、Lpl、Anxa1、Mmp12、Adam8、Lgals1、Lgals3、Spp1、及びLilrb4aの高発現を伴うM2表現型を示す一方で、TREM2-KO BM遺伝子型の細胞は、Selenop、Ms4a4a、Fcgr2b、Ms4a7、及びLyz2を含む活性化M1表現型を呈した(
図8のA~B)。TREM2に対する拮抗活性を有する抗体をスクリーニングするために、培養2日目及び5日目に、M-CSF及び抗hTREM2抗体またはIgGアイソタイプとともにhTREM2マウス骨髄細胞を培地に培養する。単一細胞RNA-seqを使用して、各条件でのM2表現型(TREM2+Gpnmb+)とM1表現型(TREM2-)の間の細胞分布について、7日目の細胞を特徴付け、かつ定量する。
【0069】
図8のCに見ることができるように、TREM2-KO細胞の70%超がM1表現型に達し、10%未満がM2表現型を示したのとは対照的に、hTREM2細胞は、40%がM2表現型を示し、わずか24%がM1表現型を示した。培養物にIgGアイソタイプmAbを添加すると、M1/M2比は著しく変化せず、未処理培養物と類似した結果が示されたが、抗hTREM2 mAb 54H2C1または80E3C7を添加すると、M2表現型のパーセンテージがそれぞれ12%及び16%へと劇的に低減し、M1表現型は69%及び63%に増加し(
図8のC)、TREM2-KO細胞と極めて類似した成熟経過が示された。
【0070】
本明細書で使用される場合、「M1マクロファージ」は、Selenop、Ms4a4a、Fcgr2b、Ms4a7、及びLyz2を発現するマクロファージである。
【0071】
本明細書で使用される場合、「M2マクロファージ」は、Gpnmb、Lpl、Anxa1、Mmp12、Adam8、Lgals1、Lgals3、Spp1、及びLilrb4aを発現するマクロファージである。
【0072】
追加的または代替的態様によれば、膜貫通糖タンパク質NMB(Gpnmb)に結合可能な抗原認識ドメインを含む抗体またはその断片が提供され、前記抗原認識ドメインは、
g1-g2
g2-b6
g3-g2
g4-b4
g5-g2
g8-g2
g9-b4
b1-b2
b8-b8
b10-b9
b11-g2
b12-y8
b13-b7
b15-b7
b17-b17
b18-b19
b2-b2
b20-b21
b21-y8
b22-b23
b24-b26
b25-b26
y3-y22
y4-y3
y5-y5
y9-y6
y12-b4
y20-y19
y23-y20
y25-y21
y27-y22
からなる群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)であるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3または重鎖及び軽鎖を含む。
【0073】
以下の表A及びBには、各抗体の配列の配列番号が列挙されている。各抗体は、個々の実施形態と見なされるべきである。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
膜貫通糖タンパク質NMB(GPNMB)は、ヒトではGPNMB遺伝子によってコードされるIA型細胞表面糖タンパク質である。ヒトにおいて、この遺伝子については560及び572アミノ酸アイソフォームをコードする2つの転写バリアントが特徴付けられている。470aa長の断片は、マウスの免疫に使用される細胞外ドメインである。GPNMBのマウス及びラットのオルソログは、それぞれDC-HIL及びオステオアクチビンとして知られている。例示的なGPNMBは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する。
【0087】
具体的な実施形態によれば、Gpnmbは、ヒトGpnmb(配列番号2)である。
【0088】
具体的な実施形態によれば、抗体、その断片、または二重特異性抗体は、CD4 T細胞を活性化することができる。
【0089】
CD4+T細胞の活性化は、T細胞上のT細胞受容体及び共刺激分子(CD28またはICOSなど)が、APC上の主要組織適合性複合体(MHCII)ペプチド及び共刺激分子によって同時に係合されることを通じて起こる。効果的な免疫応答の産生には両方とも必要であり、共刺激の不在下では、T細胞受容体シグナル伝達が単独でアネルギーをもたらす。共刺激分子の下流のシグナル伝達経路は、通常、PI3K経路に関与し、PI3K経路は、形質膜においてPIP3を生成し、PKC-θの活性化及び最終的なIL-2産生に不可欠であるPDK1などのシグナル伝達分子を含有するPHドメインを動員する。最適なCD8+T細胞応答は、CD4+シグナル伝達に依存する。CD4+細胞は、ナイーブCD8 T細胞の初期抗原活性化、及び急性感染後のメモリーCD8+T細胞の維持に有用である。したがって、CD4+T細胞の活性化は、CD8+T細胞の作用に有益であり得る。
【0090】
具体的な実施形態によれば、抗体は、TREM2に結合することができ、かつ好ましくはマクロファージの活性化により立証されるようにTREM2の活性を阻害することができる限り、VH鎖及び/またはVL鎖のCDRと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む上記表Aの抗体のいずれかのホモログである。
【0091】
具体的な実施形態によれば、抗体は、Gpnmbに結合することができ、かつ好ましくはCD4 T細胞の活性化により立証されるようにGpnmbの活性を阻害することができる限り、VH鎖及び/またはVL鎖のCDRと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む上記表Bの抗体のいずれかのホモログである。
【0092】
本明細書で使用される場合、2つの核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」には、アラインメントされたときに同じである2つの配列内の残基への言及が含まれる。タンパク質に関して配列同一性のパーセンテージが使用される場合、同一ではない残基位置は、多くの場合、保存的アミノ酸置換により異なることが認識されており、保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基が類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換されるため分子の機能的特性が変化しない。保存的置換で配列が異なる場合、配列同一性パーセントは、置換の保存的性質を補正するために上方に調整され得る。かかる保存的置換により異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると見なされる。この調整を行うための手段は、当業者には周知である。典型的には、これには保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコア付けすることが伴うため、配列同一性のパーセンテージが増加する。したがって、例えば、同一のアミノ酸にスコアが付与され、非保存的置換にスコア0が付与される場合、保存的置換には0との間のスコアが付与される。保存的置換のスコア付けは、例えば、Henikoff S and Henikoff JG. [Amino acid substitution matrices from protein blocks. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 992, 89(22): 095-9]のアルゴリズムに従って算出される。
【0093】
同一性(例えば相同性パーセント)は、デフォルトパラメータを使用するなどして、例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBlastNまたはBlastPソフトウェアを含む任意の相同性比較ソフトウェアを使用して決定され得る。
【0094】
「少なくとも90%の同一性」に言及する場合、特許請求された発明は、少なくとも9%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98%、または00%の同一性も指し、各々が異なる実施形態を表す。
【0095】
具体的な実施形態によれば、同一性のレベルは、本願に記載のとおりに決定されるように、配列全体(本願に記載のVH鎖及び/またはVL鎖のいずれか)にわたって少なくとも90%である。
【0096】
具体的な実施形態によれば、同一性のレベルは、本願に記載の表AまたはBの抗体のCDR配列の少なくとも1つ(または少なくとも2、3、4または5つ)にわたって、少なくとも90%、9%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%である。
【0097】
ヒト抗体の例示的なCDR配列ならびに完全な軽鎖及び重鎖は、上記の表AまたはBに提供されている。
【0098】
本発明において使用される「抗体」という用語は、インタクト分子、ならびにそれらの機能的断片、例えば、抗原のエピトープに対するFab、F(ab’)2、Fv、または単一ドメイン分子、例えばVH及びVLを含む。これらの機能的抗体断片は次のとおりに定義される:(1)抗体分子の一価の抗原結合断片を含有する断片であり、抗体全体を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖及び1本の重鎖の一部分を生じさせることにより産生され得るFab、(2)抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元させ、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部分を生じさせることにより得ることができる抗体分子の断片であるFab’、1抗体分子あたり2つのFab’断片が得られる、(3)抗体全体を酵素ペプシンで処理し、後続の還元を行わずに得ることができる抗体の断片である(Fab’)2、F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によって互いに保持された2つのFab’断片の二量体である、(4)2本の鎖として発現される軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作された断片として定義されるFv、(5)遺伝的に融合された一本鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結されている、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作された分子である一本鎖抗体(「SCA」)、ならびに(6)単一ドメイン抗体は、抗原に対する十分な親和性を示す単一のVHドメインまたはVLドメインで構成される。
【0099】
特定の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0100】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、ならびにそれらの断片を産生させる方法は、当該技術分野で周知である(例えば、参照により本明細書に援用されるHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988及び以下の実施例の項を参照されたい)。
【0101】
本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質加水分解によって、または断片をコードするDNAのE. coliもしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物もしくは他のタンパク質発現系)での発現によって調製され得る。抗体断片は、従来の方法による抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、F(ab’)2と表される5S断片を提供するために、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって産生され得る。この断片は、3.5SのFab’一価断片を産生するために、チオール還元剤、及び任意選択的に、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基のブロッキング基を使用してさらに切断され得る。あるいは、ペプシンを使用した酵素的切断により、2つの一価Fab’断片及び1つのFc断片が直接産生される。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書及び同第4,331,647号明細書ならびにその中に含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は、その全体が参照により本明細書に援用される。Porter, R. R.[Biochem. J. 73: 119-126 (1959)]も参照されたい。インタクト抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、重鎖を分離して一価の軽鎖-重鎖断片を形成すること、断片をさらに切断すること、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技法が使用され得る。
【0102】
Fv断片は、VH鎖とVL鎖との会合で構成される。Inbar et al.[Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659-62 (19720]に記載されているように、この会合は非共有結合性であり得る。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結され得るか、またはグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続されたVH鎖及びVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVHドメイン及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することにより調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、その後発現ベクターはE. coliなどの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖を合成する。sFvを産生させるための方法は、例えば、Whitlow and Filpula, Methods 2: 97-105 (1991)、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)、Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77 (1993)、及び全体が参照により本明細書に援用される米国特許第4,946,778号明細書によって記載されている。
【0103】
抗体断片の別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得ることができる。かかる遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。例えば、Larrick and Fry[Methods, 2: 106-10 (1991)]を参照されたい。
【0104】
非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2もしくは抗体の他の抗原結合部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)を形成する残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988)、及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0105】
非ヒト抗体をヒト化させるための方法は、当該技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしばインポート残基と称され、典型的にはインポート可変ドメインから採られる。ヒト化は、基本的に、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより、Winter及び共同研究者らの方法[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)]に従って実施され得る。したがって、かかるヒト化抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも大幅に小さいものが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基がげっ歯類抗体の近似部位由来の残基によって置換された、ヒト抗体である。
【0106】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で公知の種々の技法を使用して産生され得る[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)、Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]。Cole et al.及びBoerner et al.の技法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985)及びBoerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されたマウスに導入することにより作製され得る。曝露させると、ヒト抗体の産生が観察され、これは遺伝子の再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーを含めてあらゆる点でヒトにおいて見られるものとよく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,661,016号明細書、及び以下の科学刊行物:Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992)、Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994)、Morrison, Nature 368 812-13 (1994)、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996)、及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13, 65-93 (1995)に記載されている。
【0107】
一実施形態によれば、抗体は、単一特異性抗体である。
【0108】
一実施形態によれば、抗体は、2つの異なる抗原であるTREM2及びGpnmbを認識する二重特異性抗体、多バリアント(multivariant)抗体、またはキメラ抗体である。
【0109】
本発明の「二重特異性抗体」は、抗体が2つの異なる抗原に特異的に結合するように、2つの異なる抗原結合部位を有する。かかる抗体は、2つの異なる抗原基を認識する2つの別々の抗体もしくは抗体断片の一部を組み合わせることにより、または2つの特異性を含むように単一の抗体分子を修飾することにより生成され得る(上で詳細に論じたとおり)。
【0110】
一実施形態によれば、二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有するハイブリッド抗体である。
【0111】
一実施形態によれば、二重特異性抗体は、抗体の構造ループ領域(例えば、重鎖のCH3領域)に抗原認識ドメインを含む。したがって、二重特異性抗体は、「Fcab」と呼ばれる抗体のFc領域を含む抗体断片を含み得る。かかる抗体断片は、典型的には抗体のCH2-CH3ドメインを含む。Fcabは、抗体の構造ループ領域、すなわち重鎖のCH3領域に少なくとも1つの修飾を含むように操作されている。かかる抗体断片は、例えば次のとおりに生成され得る:少なくとも1つの構造ループ領域(例えばFc領域)を含む抗体をコードする核酸を提供し、少なくとも1つの構造ループ領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基を修飾し、修飾核酸を発現系に移入し、修飾抗体を発現させ、発現された修飾抗体をエピトープと接触させ、修飾抗体がエピトープに結合するか否かを決定する。例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,045,528号明細書及び同第9,133,274号明細書を参照されたい。
【0112】
より高い結合価(すなわち、3つ以上の抗原に結合する能力)を有する抗体も調製することができ、それらは多重特異性抗体と称される。
【0113】
具体的な実施形態によれば、二重特異性抗体は、その少なくとも一方のアームに、上記の抗体のいずれか1つの抗原認識ドメイン、または具体的には表AもしくはBの抗体のCDR中のものを含む。
【0114】
具体的な実施形態によれば、抗体は、その一方のアームに抗TREM2抗体を含み、もう一方のアームに抗Gpmnb抗体を含む。
【0115】
具体的な実施形態によれば、抗体は、その一方のアームに本願に記載の抗TREM2抗体を含み、もう一方のアームに本願に記載の抗Gpmnb抗体を含む。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態の多重特異性抗体を産生させるために、当該技術分野で周知のとおり、本発明の部分をFc領域、例えばCH3ドメイン(kabatに準拠)において修飾することができる。かかる修飾により、多重特異性抗体が重鎖を介して確実に正しくアセンブリされる。
【0117】
したがって、一方の重鎖のCH3ドメインが改変され、その結果、多重特異性抗体内における他方の重鎖のCH3ドメインの元の界面に接する一方の重鎖のCH3ドメインの元の界面内で、アミノ酸残基が、側鎖体積がより大きいアミノ酸残基で置き換えられることにより一方の重鎖のCH3ドメインの界面内に突起が生成され、この突起が他方の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞内に位置することができ、かつ他方の重鎖のCH3ドメインが改変され、その結果、三価の二重特異性抗体内における第1のCH3ドメインの元の界面に接する第2のCH3ドメインの元の界面内で、アミノ酸残基が、側鎖体積がより小さいアミノ酸残基で置き換えられることにより第2のCH3ドメインの界面内に空洞が生成され、その中に第1のCH3ドメインの界面内の突起が位置することができる(Genentech社による「knobs-into-holes」アプローチとしても知られている)。
【0118】
具体的な実施形態によれば、側鎖体積がより大きいアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0119】
具体的な実施形態によれば、側鎖体積がより小さいアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)からなる群から選択される。
【0120】
具体的な実施形態によれば、両方のCH3ドメインは、両方のCH3ドメイン間にジスルフィド架橋が形成され得るように、各CH3ドメインの対応する位置にアミノ酸としてシステイン(C)を導入することによりさらに改変される。
【0121】
具体的な実施形態では、二重特異性は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異を含む。CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋も、例えば「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C変異、「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C変異またはS354C変異を導入することにより、使用することができる(Merchant, A. M., et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681)。したがって、別の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2つのCH3ドメインのうちの他方にE356C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含むか、または二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C変異、T366W変異を含み、2つのCH3ドメインのうちの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含む(一方のCH3ドメイン内の追加のY349C変異と他方のCH3ドメイン内の追加のE356C変異またはS354C変異とが鎖間ジスルフィド架橋を形成している)(付番は常にKabatのEUインデックスに準拠する)。但し、EP1870459A1に記載されている他のknobs-in-holes技術も、代替的にまたは追加的に使用され得る。二重特異性抗体の具体例は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のR409D変異、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のD399K変異、E357K変異である(付番は常にKabatのEUインデックスに準拠する)。
【0122】
別の実施形態では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S変異、L368A変異、Y407V変異を含み、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D変異、K370E変異、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K変異、E357K変異をさらに含む。
【0123】
別の実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C変異、T366W変異、2つのCH3ドメインのうちの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含むか、または二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C変異、T366W変異、2つのCH3ドメインのうちの他方にS354C変異、T366S変異、L368A変異、Y407V変異を含み、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D変異、K370E変異、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K変異、E357K変異をさらに含む。
【0124】
具体的な実施形態によれば、第1のmAb(例えば抗TREM2)にY349C/T366S/L368A/Y407V変異、第2のmAb(例えば抗Gpnmb)にS354C/T366Wが導入される(Merchant et al.,1998、Ridgway et al., 1996)。
【0125】
代替的にまたは加えて、正しい重鎖-軽鎖対形成のために、部分の少なくとも1つをCrossMab形式(CH1-CLスワッピング)で発現させることができる。
【0126】
CrossMab技術の基礎は、正しい鎖会合を可能にする二重特異性IgG抗体の一方のアーム内での抗体ドメインのクロスオーバーであり、他方、重鎖の正しいヘテロ二量体化は、上記のknob-into-hole技術または電荷相互作用によって達成され得る。これは、Fab断片内の異なるドメインを交換することにより達成され得る。Fab断片内のFabドメイン(CrossMabFab形式における)、または可変VH-VLドメインのみ(CrossMabVH-VL形式)、または定常CH1-CLドメイン(CrossMabCH1-CL形式)のいずれかが、この目的のために交換され得る。実際、CrossMabCH1-CL形式の場合、それぞれの元の軽鎖及び新規のVL-CH1軽鎖は、それぞれの元の重鎖及びVH-CL含有重鎖との望ましくない相互作用を生じさせず、理論上、副産物は形成され得ない。対照的に、CrossMabFabフォーマットの場合、非機能性一価抗体(MoAb)及び非機能性Fab断片が形成される可能性がある。これらの副産物はクロマトグラフィー技法によって除去され得る。CrossMabVH-VLフォーマットの場合、ベンス-ジョーンズタンパク質で知られているVL-CH1/VL-CLドメインの会合による望ましくない副産物が、VL-CH1含有重鎖と元の未修飾VL-CL軽鎖との間に発生し得る。野生型抗体フレームワーク内の既存の保存された電荷対に基づいて、反発する電荷対を野生型非交差Fab断片の定常CH1及びCLドメインに導入することで、CrossMabVH-VL+/-形式におけるこのベンス-ジョーンズ様副産物の形成を克服することができる。CrossMab技術のさらなる詳細は、Klein et al. Methods 154, 1 February 2019, Pages 21-31cに見出すことができる。
【0127】
あるいは、本願に記載の多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体は、当該技術分野で公知の方法を使用して部分を接合(conjugate)することにより調製され得る。例えば、多重特異性抗体の各部分を別々に生成し、次いで互いに接合させることができる。多様なカップリング剤または架橋剤が共有結合性接合に使用され得る。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686、Liu, M A et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:8648を参照されたい)。他の方法には、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132、Brennan et al. (1985) Science 229:81-83)、及びGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375)に記載されているものが含まれる。好ましい接合剤は、SATA及びスルホ-SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(イリノイ州、ロックフォード)から入手可能である。
【0128】
代替的にまたは加えて、多重特異性抗体の各部分の接合は、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して行われ得る。具体的な実施形態では、ヒンジ領域は、接合前に、奇数の、好ましくは1つのスルフヒドリル残基を含有するように修飾される。
【0129】
本発明の一態様によれば、抗体を産生させる方法が提供され、本方法は、(a)本願に記載の抗体をコードする異種ポリヌクレオチドを宿主細胞内で発現させること、及び任意選択的に、(b)宿主細胞から抗体を回収すること、を含む。
【0130】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の抗体をコードするポリヌクレオチドは、使用される発現系に従って選択される発現構築物にクローニングされる。例示的なポリヌクレオチド配列は、配列番号6~23、42~59、186~216、248~278に示されている。
【0131】
多様な原核細胞または真核細胞が、本発明のいくつかの実施形態の抗体を発現させるための宿主発現系として使用され得る。これらには、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物、コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))に感染した植物細胞系またはコード配列を含有するTiプラスミドなどの組換えプラスミド発現ベクターで形質転換された植物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物発現系も、本発明のいくつかの実施形態の抗体の発現に使用され得る。
【0132】
哺乳動物発現ベクターの例には、Invitrogen社から入手可能であるpcDNA3、pcDNA3.(+/-)、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT、pNMT4、pNMT8、Promega社から入手可能であるpCI、Strategene社から入手可能であるpMbac、pPbac、pBK-RSV、及びpBK-CMV、Clontech社から入手可能であるpTRES、ならびにそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施形態によれば、使用されるベクターは、軽鎖及び重鎖についてそれぞれpFUSE2-CLIg-mk、pFUSE2-CHIg-mG1である。具体的な実施形態によれば、抗体は、Expi293F細胞内で一過性に発現される。
【0133】
レトロウイルスなどの真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含有する発現ベクターも使用され得る。SV40ベクターには、pSVT7及びpMT2が含まれる。ウシパピローマウイルス由来のベクターには、pBV-MTHAが含まれ、エプスタインバーウイルス由来のベクターには、pHEBO及びp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO0/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0134】
細菌構築物の例には、E. coli発現ベクターのpETシリーズが含まれる[Studier et al. (990) Methods in Enzymol. 85:60-89]。
【0135】
酵母においては、米国特許出願公開第5,932,447号明細書に開示されているように、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含有する多数のベクターが使用され得る。あるいは、酵母染色体への外来DNA配列の組み込みを促進するベクターも使用され得る。
【0136】
植物発現ベクターが使用される場合、コード配列の発現は、多数のプロモーターによって駆動され得る。例えば、CaMVの35S RNAプロモーター及び9S RNAプロモーターなどのウイルスプロモーター[Brisson et al. (984) Nature 30:5-54]またはTMVに対するコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al. (987) EMBO J. 6:307-3]が使用され得る。あるいは、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモーター[Coruzzi et al. (984) EMBO J. 3:-680及びBrogli et al., (984) Science 224:838-843]または熱ショックプロモーター、例えば大豆hsp7.5-Eもしくはhsp7.3-B[Gurley et al. (986) Mol. Cell. Biol. 6:559-565]が使用され得る。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、及び当業者に周知の他の技法を使用して植物細胞に導入され得る。例えば、Weissbach & Weissbach, 988, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp 42-463を参照されたい。
【0137】
当該技術分野で周知であり、以降にさらに説明される昆虫及び哺乳動物宿主細胞系などの他の発現系も、本発明のいくつかの実施形態によって使用され得る。
【0138】
抗体は、in vivo系、例えば哺乳動物、例えばヤギ、ウサギなどにおいても産生され得ることが理解されよう。
【0139】
組換え抗体の回収は、適切な(培養)時間の後に行われる。「抗体を回収する」という語句は、抗体を含有する発酵培地全体を回収することを指し、分離または精製の追加的工程を含意する必要はない。上記にもかかわらず、本発明のいくつかの実施形態の抗体は、限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、及び差次的可溶化などの多様な標準的タンパク質精製技法を使用して精製され得る。
【0140】
抗体が得られたら、上記のように活性についてそれらを試験することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、本願に記載の抗体は、エフェクター機能を媒介する能力を改善するための修飾を含む。かかる修飾は、当該技術分野で公知であり、アフコシル化、または活性化受容体に対する(主にADCCの場合はFCGR3a、CDCの場合はC1qに対する)Fcの親和性の操作を含む。米国特許第10,428,143号明細書の表Bには、エフェクター機能操作について文献中に報告されている種々の設計が要約されている。
【0142】
アミノ酸配列を改変することなく、Fcグリコシル化部位(EU付番でのAsn297)にフコースをほとんどまたは全く含まない抗体を産生させる方法は、当該技術分野で周知である。GlymaX(登録商標)技術(ProBioGen AG社)は、フコース生合成の細胞経路を逸らす酵素の遺伝子を、抗体産生に使用される細胞に導入することに基づくものである。これにより、抗体産生細胞によるN結合型抗体の炭水化物部への糖「フコース」の付加が防止される(von Horsten et al. (2010) Glycobiology. 2010 December;20 (12): 1607-18)。フコシル化レベルが低下した抗体を得るための別のアプローチは、抗体産生用の細胞株を抗体のフコシル化レベルを低下させる能力に基づいて選択することを教示している米国特許第8,409,572号明細書に見出すことができる。抗体は、完全にアフコシル化することができ(検出可能なフコースを抗体が含有しないことを意味する)、または部分的にアフコシル化することができ、これは、単離された抗体が、哺乳動物発現系によって産生される類似の抗体で通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満、または5%未満を含有することを意味する。
【0143】
別の具体的な実施形態によれば、抗体は、エフェクター機能が無効であるまたはエフェクター機能を有さない、Fcドメインを有する。ヒト抗体のIgG1アイソフォームは、ADCC活性またはCDC活性をほとんどまたは全く有さないことが当該技術分野で公知である。
【0144】
但し、他のアイソタイプ、例えば、IgG2、IgG3、またはIgG4も企図される。
【0145】
抗体は、可溶性であっても不溶性であってもよい。
【0146】
不溶性抗体は、粒子(合成もしくは非合成、例えばリポソーム)または細胞(例えば、抗体が典型的にはscFv断片としてキメラ抗原受容体(CAR)の一部である、CAR-T細胞)の一部であり得る。
【0147】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体配列は、キメラ抗原受容体(CAR)を開発するために使用され得る。CARは、標的細胞(例えば、TREM2を発現するミエロイド細胞)の認識及び死滅を推進する、免疫細胞上に発現される膜貫通受容体である。CARは、典型的には3つの基本部を含む。これらには、外部ドメイン(認識ドメインとしても知られる)、膜貫通ドメイン、及び細胞内(シグナル伝達)ドメインが含まれる。外部ドメインは、標的細胞上の細胞抗原への結合を推進し、一方細胞内ドメインは、典型的には結合した標的細胞の死滅を促進するための細胞シグナル伝達機能を含む。さらに、それらは、本願に記載の抗体可変ドメインまたはそれらの断片のうちの1つ以上を有する細胞外ドメインを有し得る。本発明のCARは、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部も含む。CARは、抗体、抗体可変ドメイン、及び/または抗体CDRの1つ以上のセグメントを含むように設計することができ、その結果、かかるCARが免疫エフェクター細胞上で発現されるとき、免疫エフェクター細胞は、CARの抗体の一部分によって認識される任意の細胞に結合し、それを除去する。
【0148】
CARの特徴には、モノクローナル抗体の抗原結合特性を活用して、MHC非拘束性に、選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性をリダイレクトする能力が含まれる。MHC非拘束性の抗原認識により、抗原プロセシングとは独立して抗原を認識する能力がCAR発現T細胞に付与されるため、腫瘍回避の主な機構がすり抜けられる。さらにCARは、T細胞内で発現される場合、有利なことに、内因性T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖と二量体化しない。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態によれば、腫瘍を標的とするように操作されたCARは、TREM2に対する特異性を有する。いくつかの実施形態では、これらのCARの外部ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインまたはその断片を含み得る。いくつかの実施形態では、CARは、T細胞内で発現され、「CAR操作T細胞」または「CAR-T」と称される場合がある。CAR-Tは、1つ以上の抗体可変ドメインを有するCAR外部ドメインを用いて操作され得る。
【0150】
したがって、本開示のいくつかの実施形態では、本発明の抗体配列は、キメラ抗原受容体(CAR)を開発するために使用され得る。いくつかの実施形態では、CARは、TREM2を発現するミエロイド細胞などの標的細胞の認識及び死滅を、(例えば、TREM2発現HEK293細胞、ヒト化TREM2骨髄由来マクロファージ(BMDM)、ヒト単球由来マクロファージ(hMac)系列について例証されているように)推進する、免疫細胞上に発現される膜貫通受容体である。
【0151】
本発明のCARを発現する免疫細胞(例えば
図23を参照されたい)は、実施例に記載されているような周知の技法によって生成され得る。本発明のCARを発現する免疫細胞は、TREM2発現ミエロイド細胞を死滅させるのに使用され得る。したがって、本発明は、TREM2発現ミエロイド細胞を死滅させる方法であって、TREM2発現ミエロイド細胞を含む細胞集団を、本発明のCARを含む免疫細胞、好ましくはT細胞と接触させることを含み、TREM2発現ミエロイド細胞が死滅する、方法を包含する。
【0152】
一実施形態では、接触させることは、ex vivoまたはin vitroで行われる。
【0153】
したがって、例えば、免疫エフェクター細胞をそれを必要とする対象から回収した後、開示されたCARを発現するように細胞を遺伝子操作することができる。その後、遺伝子操作細胞を対象へと注入し戻すことができる。
【0154】
開示されたCAR修飾免疫エフェクター細胞は、単独で、あるいは希釈剤及び/またはIL-2、IL-15、IL-21、もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の構成成分と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで使用または投与され得る。これらの構成成分は、タンパク質構成要素として添加され得るか、または例えば開示されたサイトカインを発現するようにCAR修飾免疫エフェクター細胞を遺伝子操作することにより、CAR修飾免疫エフェクター細胞によって発現され得る。
【0155】
医薬組成物は、本願に記載のCAR修飾免疫エフェクター細胞を、1種以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含み得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、開示された方法で使用するための組成物は、静脈内投与用に製剤化される。医薬組成物は、TREM2発現ミエロイド細胞を死滅させるのに適切な任意の方法で投与され得る。投与の量及び頻度は、患者の状態及び患者の疾患の重症度などの要因により決定されるが、適切な投与量は臨床試験により決定される場合がある。
【0157】
種々の実施形態では、治療量のCAR修飾免疫エフェクター細胞が患者に投与される。「治療量」は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、及び患者(対象)の状態の個体差を考慮して医師により決定され得る。本願に記載のT細胞を含む医薬組成物は、104~109細胞/kg体重、例えば105~106細胞/kg体重の投与量(これらの範囲内の全ての整数値を含む)で投与され得る。T細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与され得る。細胞は、免疫療法において一般に知られている注入技法を使用することにより投与され得る(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。特定の患者に対する最適な投与量及び治療レジームは、疾患の徴候について患者をモニタリングし、それに応じて治療を調整することにより医学分野の当業者によって容易に決定され得る。必要な場合に抗体の細胞傷害活性または治療活性を増加させることも、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の概念の使用などにより達成することができる。かかる構成において、抗体は、その毒性を増加させるかまたは抗体を検出可能にするために使用され得る異種エフェクター部分へと付着される。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)治療用途のために開発され得る。ADCは、1つ以上のカーゴ(例えば治療剤)が、[例えば、直接またはリンカー(例えば、切断可能リンカーまたは非切断型リンカー)を介して]付着した抗体である。ADCは、1つ以上の標的細胞または標的組織への治療剤(例えば、薬物または細胞傷害性剤)の送達に有用である(Panowski, S. et al., 204. mAbs 6:, 34-45)。場合によっては、ADCは、標的細胞上の表面抗原に結合するように設計され得る。結合すると、抗体-抗原複合体全体が内部移行され、細胞リソソームへと誘導され得る。次いで、ADCが分解され、結合されたカーゴが放出され得る。
【0159】
治療剤は、小分子薬、タンパク質性薬剤(例えば、サイトカインまたはケモカイン、例えば腫瘍壊死因子(TNF)またはIL12)、核酸剤、放射性同位体、及び炭水化物などであり得る。これらは、細胞傷害性剤、例えば化学療法薬として機能し得る。
【0160】
具体的な実施形態によれば、治療剤は、腫瘍に対する抗ウイルス免疫応答を誘発するためのウイルス抗原をコードする核酸配列(例えば、DNAまたはRNA、例えばmRNA)である。ウイルス抗原の例には、CMV抗原、EBV抗原、コロナウイルス抗原などが含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止する、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。
【0162】
カーゴが細胞傷害性剤である場合、標的細胞は死滅するかまたはそうでなければ無力化される。細胞傷害性剤には、細胞骨格阻害剤[例えば、チューブリン重合阻害剤及びキネシンスピンドルタンパク質(KSP)阻害剤]、DNA損傷剤(例えば、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、及びピロロベンゾジアゼピン二量体、例えばタリリン及びテシリン)、トポイソメラーゼ阻害剤[例えば、7-エチル-0-ヒドロキシカンプトテシン(SN-38)及びエキサテカン誘導体DXdなどのカンプトテシン化合物または誘導体]、転写阻害剤(例えば、アマニチンなどのRNAポリメラーゼ阻害剤)、ならびにキナーゼ阻害剤[例えば、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤またはマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤]が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0163】
チューブリン重合阻害剤には、メイタンシン(例えば、エムタンシン[DM]及びラブタンシン[DM4])、アウリスタチン、ツブリシン、ならびにビンカアルカロイドまたはそれらの誘導体が含まれ得るが、これらに限定されない。例示的なアウリスタチンには、アウリスタチンE(ドラスタチン-0の誘導体としても知られる)、アウリスタチンEB(AEB)、アウリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンF、及びドラスタチンが含まれる。例示的なツブリシン化合物には、天然に存在するツブリシンA、B、C、D、E、F、G、H、I、U、及びV、ならびにプレツブリシンD(PTb-D43)及びN4-デスアセトキシツブリシンH(Tbl)などのツブリシン類似体が含まれる。例示的なビンカアルカロイドには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びナベルビン(ビノレルビン)が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤には、アウリスタチン誘導体[例えば、-アミノプロパン-2-イル-アウリスタチンF、アウリスタチンF-ヒドロキシプロピルアミド、アウリスタチンF-プロピルアミド、アウリスタチンFフェニレンジアミン(AFP)];ツブリシン誘導体;ビンカアルカロイド誘導体[例えば、N-(3-ヒドロキシプロピル)ビンデシン(HPV)]、ならびに米国特許第8,524,24号明細書、同8,685,383号明細書、同8,808,9号明細書、及び同9,254,339号明細書、米国特許出願公開第205034008号明細書、同第2060220696号明細書、及び同第2060022829号明細書に記載されているもののいずれか(その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)が含まれ得る。
【0164】
この用語は、放射性同位体(例えば、211At、131I、125I、32P、35S、及び177Luを含むLuの放射性同位体、86Y、90Y、111In、177Lu、225Ac、212Bi、213Bi、66Ga、67Ga、68Ga、64Cu、67Cu、71As、72As、76As、77As、65Zn、48V、203Pb、209Pb、212Pb、166Ho、149Pm、153Sm、201Tl、188Re、186Re、及び99mTc)、核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片、抗生物質、治療用RNA分子(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、リボザイム、RNAデコイ、アプタマー)、DNAザイム、ならびに細菌、真菌、植物、または動物由来の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素、例えば、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、リシン毒素A、アブリン、ゲロニン、サポリン、コレラ毒素A、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、及びアルファ-サルシン(それらの断片及び/またはバリアントを含む)も含むことを意図している。
【0165】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、抗体と治療剤とを接続する1つ以上のポリマー担体をさらに含み得る(例えば、抗体-ポリマー-薬物コンジュゲート)。本明細書で使用される場合、「ポリマー担体」という用語は、1つ以上の治療剤及び/または抗体へと共有結合的に付着され得るポリマーまたは修飾ポリマーを指す。ポリマー担体は、治療剤に追加の接合部位を提供し、薬物対抗体比を増加させ、ADCの治療効果を増強させ得る。いくつかの実施形態では、本発明で使用されるポリマー担体は、水溶性及び/または生分解性であり得る。かかるポリマー担体には、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、ポリ(α-アミノ酸)[例えば、ポリ(L-リジン)、ポリ(L-グルタミン酸)、及びポリ((N-ヒドロキシアルキル)グルタミン)]、炭水化物ポリマー[例えば、デキストリン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、及びポリシアル酸]、糖多糖類(glycopolysaccharides)(例えば、セルロース、アミロース、デキストラン、レバン、フコイダン、カラギナン(carraginan)、イヌリン、ペクチン、アミロペクチン、グリコーゲン、及びリキセナン(lixenan)などのホモ多糖;またはアガロース、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、アルギン酸、及びヘパリンなどのホモ多糖)、糖脂質、複合糖質、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸)、ポリケタール、及びポリアセタール[例えば、米国特許第5,8,50号明細書、同第5,863,990号明細書、及び同第5,958,398号明細書(その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている、PHFまたはFLEXIMER(登録商標)としても知られるポリ(1-ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)]ならびにそれらの誘導体、デンドリマー、コポリマー、及び混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、ポリマー担体には、ポリアセタール/ポリケタールのコポリマー(例えばPHF)、及び親水性ポリマー、例えば、ポリアクリレート、ポリビニルポリマー、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリペプチド、ならびにそれらの誘導体が含まれ得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、治療剤は、本発明の抗体へと直接またはリンカーを介して付着(例えば、共有結合)される。いくつかの実施形態では、治療剤はポリマー担体へと直接またはリンカーを介して付着され、ポリマー担体は抗体へと直接またはリンカーを介して付着される。いくつかの実施形態では、リンカーは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジグリコール酸、酒石酸、グルタミン酸、フマル酸、またはアスパラギン酸の部分(アミド、イミド、またはそれらの各々の環状イミド誘導体、及び各々が任意選択的に置換されているものを含む)を含み得る。例示的なリンカーには、米国特許第8,524,24号明細書、同第8,685,383号明細書、同第8,808,9号明細書、同第9,254,339号明細書、及び/または同第9,555,2号明細書(これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されているいずれかのものが含まれ得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能リンカーであり得る。切断可能リンカーは、ある特定の条件下(pH、温度の変化、もしくは還元など)で分解されて、または酵素(例えば、プロテアーゼ及びグルクロニダーゼ)によって切断されて、ADCから治療剤が放出され得る。かかるリンカーは、エステル結合、アミド結合、またはジスルフィド結合などの不安定な結合を含み得る。非限定的な切断可能リンカーには、pH感受性リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニットアミド、チオエーテル、オルトエステル、アセタール、またはケタール);還元感受性リンカー[例えば、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)及びN-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン、または2,5-ジオキソピロリジン--イル4-(-(ピリジン-2-イルジスルファニル)エチル)ベンゾアート(SMPT)];光感受性リンカー;ならびに酵素的に切断可能なリンカー[例えば、バリン-シトルリン、バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル(vc-PAB)、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)などのペプチドリンカー、グルクロニド-MABCなどのグルクロニダーゼにより切断可能なリンカー、またはエステラーゼにより切断可能なリンカー]が含まれ得る。
【0168】
他の実施形態では、リンカーは、非切断型リンカーであり得る。非切断型リンカーは、切断可能リンカーと比較してADCの血漿安定性を増加させ得る。例示的な非切断型リンカーの例には、マレイミドアルカン及びマレイミドシクロヘキサン(MCC)が含まれる。
【0169】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して調製され得る。例えば、治療剤は、抗体上の官能基と反応可能な官能基を含有するように修飾され得る。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、2つの官能基を反応させてコンジュゲートを形成させることにより調製され得る。場合によっては、ポリマー担体は、異なる化学的条件下で治療剤上の官能基及び抗体上の官能基と反応可能な官能基を含有するように修飾され得る。抗体、ポリマー担体、及び治療剤は、連続的化学反応を通じて抗体-ポリマー-薬物コンジュゲートを形成するように連結され得る。抗体への接合には、接合部位としてリジン残基またはシステイン残基が用いられ得る。いくつかの実施形態では、抗体は、追加のリジン残基またはシステイン残基を有するように操作され得る。かかるアプローチは、抗体構造(例えば、鎖間ジスルフィド結合)の破壊を回避し、かつ抗体の安定性及び/または活性を維持することができる。
【0170】
代替的にまたは加えて、抗体の治療有効性を増加させるために種々の薬剤が使用され得る。例えば、抗体を、TNFファミリーまたはIL12の炎症性サイトカインなどの炎症性サイトカイン、例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-2、IL-11、IL-21、G-CSF、GM-CSF、及び/またはTNFαと組み合わせるなどである。
【0171】
具体的な実施形態によれば、サイトカインは、抗体に接合される。
【0172】
具体的な実施形態によれば、接合は、共有結合性である。
【0173】
具体的な実施形態によれば、コンジュゲートは、抗体がサイトカインに(本願に記載のとおり、リンカーの有無を問わず、その上流または下流に)翻訳融合されたキメラタンパク質である。
【0174】
具体的な実施形態によれば、サイトカインは、IL-2である。
【0175】
具体的な実施形態によれば、コンジュゲートは、配列番号496及び498または497及び499にに示されるものである。
【0176】
具体的な実施形態によれば、サイトカインは、IL-15である。
【0177】
本発明は、本発明の抗体を用いてミエロイドリプログラミングを増強させる使用及び方法を包含する。
【0178】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗体及びサイトカイン、例えば、TNFファミリー、IL-21、IL-12、IL-15、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-2、IL-11、G-CSF、GM-CSF、及び/またはTNFαから選択されるサイトカインとTREM2発現細胞集団を接触させることを含む、ミエロイドリプログラミングを増強させる方法を包含する。本方法は、TREM2発現細胞集団のミエロイドリプログラミングを増強させ得る。実施例において詳述されるように、本方法は、抗体とサイトカインとの相乗効果をもたらし得る。
【0179】
本発明の抗体がサイトカイン、例えば、TNFファミリー、IL-12、IL-15、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-2、IL-11、IL-21、G-CSF、GM-CSF、及び/またはTNFから選択されるサイトカインに翻訳融合されたキメラタンパク質は、実施例に記載されているような周知の技法により生成され得る。キメラタンパク質は、ミエロイドリプログラミングを増強させるために使用され得る。一実施形態では、本発明は、本発明のキメラタンパク質とTREM2発現細胞集団を接触させることを含む、ミエロイドリプログラミングを増強させる方法を包含する。実施例において詳述されるように、本方法は、キメラタンパク質の相乗効果をもたらし得る。
【0180】
本発明のいくつかの実施形態の抗体は、免疫調節活性を備えている。
【0181】
したがって、本発明の一態様によれば、ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させる方法が提供され、本方法は、有効量の本願に記載の抗体または抗体断片または二重特異性抗体とミエロイド細胞を接触させて、それによりミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることを含む。
【0182】
別の態様によれば、CD4 T細胞を活性化する方法が提供され、本方法は、有効量の抗体またはその断片とCD4 T細胞を接触させて、それによりCD4 T細胞を活性化することを含む。
【0183】
一実施形態によれば、接触させることは、in vivoで行われる。
【0184】
別の実施形態によれば、接触させることは、ex vivoで行われる。
【0185】
本明細書で使用される「ミエロイド細胞」という用語は、共通ミエロイド前駆細胞(CMP)から生じる細胞を指す。一実施形態では、ミエロイド細胞は、骨髄芽球及びその娘型(例えば、好塩基球、好中球、好酸球、単球、及びマクロファージ)の系統から生じる細胞である。ミエロイド細胞のサブグループの1つは、免疫抑制因子ミエロイド細胞である。
【0186】
具体的な実施形態によれば、ミエロイド細胞は、本発明のいくつかの実施形態の抗体(TREM2に対する)とインキュベートされるとM1表現型を獲得するM2マクロファージである。
【0187】
言及したように、抗体を、前記ミエロイド細胞の特異的な部分集団(TREM2とGpnmbの両方を発現するもの)の量及び/または活性を低減させるために、対象のミエロイド細胞と接触させる。
【0188】
一実施形態では、接触させることは、in vivoで実行される。
【0189】
別の実施形態では、接触させることは、ex vivoで実行される。すなわち、ミエロイド細胞を対象から取り出し、その後薬剤と接触させる。
【0190】
ミエロイド細胞は、典型的には骨髄生検により対象から取り出される。Plerixafor(登録商標)及びG-CSFなどの動員剤が、細胞を末梢へと動員するために使用され得る。
【0191】
本発明のこの態様の抗体は、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体2(TREM2)と膜貫通糖タンパク質NMB(Gpnmb)の両方を発現するマクロファージの活性を特異的に増加させる。
【0192】
一実施形態では、抗体は、両方のマーカーを発現する細胞の活性を、マーカーの一方のみを発現する細胞(すなわち、TREM2のみを発現しGpnmbを発現しない細胞、またはその逆)と比較して少なくとも2倍増強させる(活性化マクロファージ)。別の実施形態では、抗体は、両方のマーカーを発現する細胞の活性を、マーカーの一方のみを発現する細胞(すなわち、TREM2のみを発現しGpnmbを発現しない細胞、またはその逆)と比較して少なくとも5倍増強させる。別の実施形態では、抗体は、両方のマーカーを発現する細胞の活性を、マーカーの一方のみを発現する細胞(すなわち、TREM2のみを発現しGpnmbを発現しない細胞、またはその逆)と比較して少なくとも10倍増強させる。
【0193】
本願に記載の方法は、ミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させるために使用されることから、本発明者らは、本方法を癌の治療に使用することができると考えている。
【0194】
したがって、本発明の別の態様によれば、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、本方法は、有効量の本願に記載の抗体、抗体断片、それらの組み合わせ(抗TREM2及び抗Gpnmb)、または二重特異性抗体を対象に投与して、それにより癌を治療することを含む。
【0195】
別の態様によれば、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、本方法は、
(a)上記の方法に従ってミエロイド細胞の免疫抑制活性を低減させることであって、ミエロイド細胞が対象に由来するものである、低減させること、及びその後、
(b)ミエロイド細胞を対象に移植して、それにより癌を治療すること、を含む。
【0196】
本明細書で使用される場合、「低減させること」は、抗体の存在下で、対照(陰性、例えば未処理細胞)試料と比較して免疫抑制活性が少なくとも10%、20%、30%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、2倍、3倍、5倍、10倍低いことを指す。
【0197】
本明細書で使用される場合、「対象」は、癌と診断された哺乳動物、例えばヒトを指す。
【0198】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には無制御な悪性細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すかまたは説明する。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態に従って分析及び治療することができる癌の例には、消化管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌(colorectal carcinoma)、結腸直腸癌(colorectal cancer)、結腸直腸腺腫、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型;結腸直腸癌(colorectal cancer)、遺伝性非ポリポーシス7型、小腸癌及び/または大腸癌、食道癌、食道癌を合併する掌蹠角化症(tylosis with esophageal cancer)、胃癌、膵癌、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜癌、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺癌、前立腺腺癌、腎癌(例えば、ウィルムス腫瘍2型または1型)、肝癌(例えば、肝芽腫、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、肝細胞癌(hepatocellular cancer))、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、トロホブラスト腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣未熟奇形腫、子宮腫瘍、上皮性卵巣腫瘍、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌、漿液性卵巣癌、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌(cervical carcinoma)、子宮頸癌(uterine cervix carcinoma)、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、乳癌(breast carcinoma)(例えば、乳管癌、浸潤性乳管内乳癌、散発性;乳癌(breast cancer)、乳癌への易罹患性、4型乳癌、乳癌-1、乳癌-3;乳癌-卵巣癌)、扁平上皮癌(例えば、頭頸部におけるもの)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺リンパ腫)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌、脳悪性腫瘍(腫瘍)、他の種々の癌腫(例えば、気管支原性大細胞癌、乳管癌、Ehrlich-Lettre腹水癌、類表皮癌、大細胞癌、ルイス肺癌、髄様癌、粘表皮癌、燕麦細胞癌、小細胞癌、紡錘細胞癌、有棘細胞癌、移行上皮癌、未分化癌、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽腫、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド、リンパ芽球)、線維肉腫、巨細胞腫、グリア腫瘍、神経膠芽腫(例えば、多形神経膠芽腫、星状細胞腫)、神経膠腫肝細胞癌(glioma hepatoma)、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロミエローマ、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、副腎腫、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋肉腫、リンパ肉腫、黒色腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽腫、神経組織グリア腫瘍、神経組織神経細胞腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨軟骨腫、オステオミエローマ(osteomyeloma)、骨肉腫(例えば、ユーイング骨肉腫)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(浸潤性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、組織球性細胞肉腫、Jensen肉腫、骨原性肉腫、細網肉腫)、シュワン腫、皮下腫瘍、奇形癌(例えば、多能性奇形癌)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫及び毛包上皮腫、胃癌、線維肉腫、多形神経膠芽腫;多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、脂肪肉腫、リンチ癌ファミリー症候群II、男性胚細胞腫瘍、肥満細胞白血病、甲状腺髄様、多発性髄膜腫、内分泌腫瘍性粘液肉腫、家族性非クロム親和性傍神経節腫、毛母腫、乳頭状、家族性及び散発性、家族性ラブドイド素因症候群、ラブドイド腫瘍、軟部組織肉腫、ならびに神経膠芽腫を合併するターコット症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0200】
具体的な実施形態によれば、癌は、黒色腫である。
【0201】
具体的な実施形態によれば、癌は、固形腫瘍(肺癌、肝癌、卵巣癌、胃癌、及び乳癌)である。
【0202】
具体的な実施形態によれば、癌は、原発腫瘍である。
【0203】
具体的な実施形態によれば、癌は、転移性である。
【0204】
具体的な実施形態によれば、癌は、続発性腫瘍である。
【0205】
具体的な実施形態によれば、肺癌は、非小細胞肺癌である。
【0206】
具体的な実施形態によれば、肺癌は、小細胞肺癌である。
【0207】
具体的な実施形態によれば、肝癌は、肝細胞癌である。
【0208】
本発明の別の態様によれば、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、本方法は、治療有効量の
(i)TREM2の活性を下方制御する第1の抗原認識ドメイン、及び
(ii)Gpnmbの活性を特異的に下方制御する第2の抗原認識ドメインを対象に投与して、それにより癌を治療することを含む。
【0209】
一実施形態によれば、第1の抗原認識ドメインは、ミエロイド細胞上で発現されるTREM2に特異的に結合する。別の実施形態によれば、第2の抗原認識ドメインは、Gpnmbに特異的に結合する。「特異的に結合する(specifically bind(s))」または「特異的に結合する(bind(s) specifically)」という語句は、結合分子に言及する場合、TREM2またはGpnmbなどの標的分子に対して、排他的または優勢的に、中程度のまたは高度の結合親和性を有する結合分子を指す。「特異的に結合する」という語句は、タンパク質及び他の生物製剤の不均一な集団の存在下で標的タンパク質(TREM2またはGpnmbなど)の存在を決定する結合反応を指す。したがって、定められたアッセイ条件下では、指定された結合分子は特定の標的タンパク質(例えば、TREM2またはGpnmb)に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の構成成分には意味のある量で結合しない。かかる条件下で標的タンパク質に特異的に結合するには、特定の標的タンパク質に対する特異性で選択された結合分子が必要となる場合がある。多様なアッセイ形式が、特定の標的タンパク質と特異的に反応する結合分子を選択するために使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、Biacore、及びウエスタンブロットが、TREM2またはGpnmbに特異的に結合する結合分子を同定するために使用され得る。典型的には、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10倍超である。結合分子が抗体であると仮定すると、「特異的に結合する」という語句は、タンパク質及び他の生物製剤の不均一な集団における抗原(TREM2またはGpnmbなど)の存在を決定する結合反応を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する薬剤は、少なくとも約1×10-6~1×10-7、もしくは約1×10-8~1×10-9M、もしくは約1×10-10~1×10-11以上の解離定数(KD)で抗原に結合する、及び/または所定の抗原もしくは近縁抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合の結合親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍大きい親和性で所定の抗原(例えば、TREM2もしくはGpnmbの抗原)に結合する。
【0210】
特定の実施形態によれば、TREM2の量及び/または活性を減少させる抗原認識ドメインは、本明細書において拮抗抗体とも称される阻害剤抗体である。
【0211】
具体的な実施形態によれば、選択された抗体の親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイにより決定されるように10-8M~10-14Mの範囲にある(実施例の項に記載の条件を参照されたい)。
【0212】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-14Mである。
【0213】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-13Mである。
【0214】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-12Mである。
【0215】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-11Mである。
【0216】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-10Mである。
【0217】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-8M~10-19Mである。
【0218】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-9M~10-14Mである。
【0219】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-9M~10-13Mである。
【0220】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-9M~10-12Mである。
【0221】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-9M~10-11Mである。
【0222】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-9M~10-10Mである。
【0223】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-10M~10-13Mである。
【0224】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-10M~10-12Mである。
【0225】
いくつかの実施形態によれば、親和性範囲は、10-10M~10-11Mである。
【0226】
親和性は、多様な技法を使用して決定され、その一例はアフィニティーELISAアッセイである。種々の実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(登録商標)ベースのアッセイ)により決定される。この方法論を使用すると、会合速度定数(ka)及び解離速度定数(kd)が測定され得る。次いで、速度論的速度定数の比(kd/ka)から平衡解離定数(KD(M))が算出され得る。いくつかの実施形態では、親和性は、Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol. 373:52-60, 2008に記載されているような結合平衡除外法(KinExA)などの速度論的方法により決定される。KinExAアッセイを使用すると、平衡解離定数(KD(M))及び会合速度定数(ka(M’V1))が測定され得る。解離速度定数(kd)は、これらの値から算出され得る(KD×ka)。他の実施形態では、親和性は、Kumaraswamy et al., Methods Mol. Biol., Vol. 1278:165-82, 2015に記載されておりOctet(登録商標)システム(Pall ForteBio社)に採用されているものなどのバイオレイヤー干渉法により決定される。速度論的定数(ka及びkd)ならびに親和性定数(KD)は、バイオレイヤー干渉法を使用してリアルタイムで算出され得る。いくつかの実施形態では、本願に記載の抗原結合タンパク質は、ヒトTREM2及びヒトGpnmbに対するkd(解離速度定数)により測定される約10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、もしくはそれより低い結合親和力(値が低いほど高い結合親和力を示す)、ならびに/またはヒトTREM2及びヒトGpnmbに対するKD(平衡解離定数)により測定される約10-8M、約10-9M、約10-10M、約10-11M、もしくはそれより低い結合親和性(値が低いほど高い結合親和性を示す)などの望ましい特徴を示す。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、約1pM~約100nMのKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、100nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。他の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、50nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。さらに他の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、25nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。特定の一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、10nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。別の特定の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、5nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。別の特定の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、25℃でバイオレイヤー干渉法により測定した場合に、1nM未満のKDでヒトTREM2及びヒトGpnmbに特異的に結合する。
【0227】
本発明の抗体は、それ自体で、または好適な担体もしくは賦形剤と混合された医薬組成物で対象に投与され得ることが理解されよう。
【0228】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本願に記載の活性成分のうちの1つ以上と、生理学的に好適な担体及び賦形剤などの他の化学構成成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0229】
本明細書において、「活性成分」という用語は、生物学的効果を司る本発明の抗体(例えば、一の抗体(the antibody))を指す。
【0230】
以下において、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に著しい刺激を生じさせず、かつ投与された化合物の生物学的活性及び特性を妨げない担体または希釈剤を指す。これらの語句にはアジュバントが含まれる。
【0231】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には、非限定的に、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類及び種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0232】
薬物の製剤化及び投与のための技法は、参照により本明細書に援用される“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見出すことができる。
【0233】
好適な投与経路には、例えば、経口、直腸、神経外科的戦略(例えば、脳内注射、線条体内注入、もしくは脳室内注入、脊髄内、硬膜外)、経粘膜、腸管、または非経口送達(筋肉内、皮下、及び髄内注射、ならびにくも膜下腔内、直接脳室内、心臓内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0234】
あるいは、例えば患者の組織領域(例えば、脂肪組織)に医薬組成物を直接注射することにより、医薬組成物を全身的ではなく局所的な方法で投与することができる。
【0235】
好ましい実施形態によれば、抗体は、対象の脳へと投与されない。
【0236】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセス、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥のプロセスによって製造され得る。
【0237】
したがって、本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性成分を薬学的に使用可能な調製物に加工することを容易にする、賦形剤及び助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0238】
注射の場合、医薬組成物の活性成分は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化され得る。経粘膜投与の場合、透過すべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野で一般に公知である。
【0239】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。かかる担体により、患者による経口摂取用に医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能になる。経口使用のための薬理学的調製物は、錠剤または糖衣錠芯を得るために、固体賦形剤を使用し、得られた混合物を任意選択的に粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖類などの充填剤、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボメチルセルロースナトリウム(sodium carbomethylcellulose)などのセルロース調製物、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加することができる。
【0240】
糖衣錠芯には好適なコーティングが施される。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒または溶媒混合物を任意選択的に含有し得る、濃縮糖溶液が使用され得る。識別のために、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または顔料が錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0241】
経口使用され得る医薬調製物には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤製の密封軟カプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と混合された、及び任意選択的に安定剤と混合された活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用の全ての製剤は、選択された投与経路に好適な投与量であるべきである。
【0242】
頬側投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジなどの形態をとり得る。
【0243】
経鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための活性成分は、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、または二酸化炭素を使用して、加圧パックまたはネブライザーから提供されるエアロゾルスプレーの形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることにより決定され得る。ディスペンサーで使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチン製)は、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含んで製剤化され得る。
【0244】
本願に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化され得る。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、または防腐剤を任意選択的に添加した複数回用量容器で提供され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンであり得、かつ懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤などの製剤化剤を含有し得る。
【0245】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、活性成分の懸濁液は、適切な油性または水ベースの注射懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチル、トリグリセリド、もしくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。
【0246】
任意選択的に、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤または活性成分の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。
【0247】
あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水ベースの溶液で構成するための粉末形態であり得る。
【0248】
本発明の医薬組成物はまた、例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または停留浣腸などの直腸用組成物に製剤化され得る。
【0249】
本発明の文脈における使用に好適な医薬組成物には、意図された目的(例えば、脂肪細胞の数もしくはサイズの低減、または内臓脂肪量の減少)を達成するのに有効な量で活性成分が含有されている組成物が含まれる。
【0250】
治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を踏まえると、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0251】
本発明の方法で使用される任意の調製物について、治療有効量または治療有効用量は、最初にin vitroアッセイ及び細胞培養アッセイから推定され得る。例えば、用量は、所望の濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて処方され得る。かかる情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。
【0252】
本願に記載の活性成分の毒性及び治療有効性は、細胞培養または実験動物において、in vitroでの標準的な薬学的手順により決定され得る。これらのin vitroアッセイ及び細胞培養アッセイならびに動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量範囲を策定する際に使用され得る。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動し得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る。(例えば、Fingl, et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1を参照されたい。)
【0253】
投与量及び投与間隔は、脂肪細胞の数もしくはサイズを減少させるのに、または内臓脂肪を減少させるのに十分な活性成分の組織レベル(最小有効濃度、MEC)がもたらされるように個々に調整され得る。MECは調製物ごとに変動するが、in vitroデータから推定され得る。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴及び投与経路に依存する。血漿中濃度を決定するために検出アッセイが使用され得る。
【0254】
治療される状態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回または複数回の投与であり得、治療の過程は、数日から数週間、または治癒がもたらされるかもしくは病態の軽減が達成されるまで続く。
【0255】
投与される組成物の量は、当然ながら、治療される対象、苦痛の重症度、投与方法、処方医の判断などに依存する。
【0256】
本発明の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与に関する説明書が添付されている場合がある。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関により定められた形式の、容器に関連する通知に適合していてもよく、この通知は、ヒトへの投与または獣医学的投与に関する組成物の形態が当該機関により承認されていることを表している。かかる通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルのもの、または承認された製品添付文書のものであり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、上でさらに詳述したように、調製され、適切な容器に入れられ、適応となる状態の治療に関するラベルを貼り付けられ得る。
【0257】
本発明者らは、追加の化学療法剤を、(TREM2/Gpnmb発現細胞を標的とする上記の抗体と組み合わせて)対象に投与することを企図している。かかる薬剤は、癌の治療のために上記の抗体と相乗的に作用し得る。
【0258】
治療は、化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン療法、免疫調節薬、操作免疫細胞療法(例えばCAR-T)、及び当該技術分野で周知の他の治療レジメン(例えば、手術、細胞移植、例えば造血幹細胞移植)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の抗癌治療と組み合わせられ得る。
【0259】
本発明の化学療法剤は、シタラビン(シトシンアラビノシド、Ara-C、Cytosar-U)、アスプリン(asprin)、スリンダク、クルクミン、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロール-エタミン(mechlor-ethamine)、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びセムスチン(メチル-CCNU));チレンイミン(thylenimines)/メチルメラミン(例えば、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホラミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン));スルホン酸アルキル(例えばブスルファン);トリアジン(例えばダカルバジン(DTIC))を含む);葉酸類似体(例えば、メトトレキセート及びトリメトレキセート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2ジフルオロデオキシシチジン)、プリン類似体(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2’-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA))を含む、代謝拮抗剤;抗有糸分裂薬(例えばパクリタキセル)、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビンを含む)、タキソテール、エストラムスチン、及びリン酸エストラムスチンを含む、天然産物;エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド);抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、及びアクチノマイシン);酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)、サイトカイン(例えば、インターフェロン(IFN)-ガンマ、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、及びGM-CSF)、抗血管形成因子(例えば、アンジオスタチン及びエンドスタチン)、血管新生因子の受容体の可溶性形態などのFGFまたはVEGFの阻害剤(可溶性VGF/VEGF受容体を含む)、白金配位錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、置換尿素(例えばヒドロキシウレア)、Nメチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬(例えば、ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド);プレドニゾン及び同等物、デキサメタゾン、及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質ステロイド拮抗剤を含む、ホルモン及び拮抗剤;プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール);エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール同等物);抗エストロゲン薬(例えばタモキシフェン);プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/同等物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、及びロイプロリド);非ステロイド性抗アンドロゲン薬(例えばフルタミド);キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、メチル化阻害剤、プロテアソーム阻害剤、モノクローナル抗体、酸化剤、抗酸化剤、テロメラーゼ阻害剤、BH3模倣物、ユビキチンリガーゼ阻害剤、stat阻害剤、及び受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(GleevacまたはGlivacとして市販されている)及びTarvecaとして現在市販されているエルロチニブ(EGF受容体阻害剤));ならびに抗ウイルス薬(例えば、リン酸オセルタミビル、アムホテリシンB、及びパリビズマブ)であり得るがこれらに限定されない。
【0260】
いくつかの実施形態では、本発明の化学療法剤は、シタラビン(シトシンアラビノシド、Ara-C、Cytosar-U)、キザルチニブ(AC220)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、レスタウルチニブ(CEP-701)、ミドスタウリン(PKC412)、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、プロカルバジン、ペントスタチン、(2’デオキシコホルマイシン)、エトポシド、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パクリタキセル、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、全トランスレチノイン酸、三酸化ヒ素、インターフェロン-アルファ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン、メシル酸イマチニブ、Cytosar-U)、メルファラン、ブスルファン(Myleran(登録商標))、チオテパ、ブレオマイシン、白金(シスプラチン)、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、5-アザシチジン、クラドリビン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、6-チオグアニン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0261】
具体的な実施形態によれば、治療は、以下に記載されるような免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされる。
【0262】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害」は、癌免疫療法を指す。この療法は、腫瘍が免疫系による攻撃から自身を保護するために使用することができる、免疫系の作用を刺激または阻害する免疫系の主要な調節因子である免疫チェックポイントを標的とする。チェックポイント療法は、阻害性チェックポイントを遮断し、刺激機能を活性化して、それにより免疫系機能を回復することができる。現在承認されているチェックポイント阻害剤は、分子CTLA4、PD-1、及びPD-L1を標的とする。PD-1は、膜貫通プログラム細胞死1タンパク質(PDCD1及びCD279とも呼ばれる)であり、PD-L1(PD-1リガンド1またはCD274)と相互作用する。
【0263】
免疫チェックポイント阻害剤の例には、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム死1(PD-1)またはそのリガンド、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、B7ホモログ3(B7-H3)、B7ホモログ4(B7-H4)、インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼ(IDO)、アデノシンA2a受容体、ニューリチン、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有タンパク質3(TIM-3)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、CD27、CD28、CD40、CD244(2B4)、CD160、GARP、OX40、CD137(4-1BB)、CD25、VISTA、BTLA、TNFR25、CD57、CCR2、CCRS、CCR6、CD39、CD73、CD4、CD18、CD49b、CD1d、CDS、CD21、TIMI、CD19、CD20、CD23、CD24、CD38、CD93、IgM、B220(CD45R)、CD317、CD11b、Ly6G、ICAM-1、FAP、PDGFR、ポドプラニン、ならびにTIGITの免疫チェックポイント阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0264】
臨床的に承認されている免疫チェックポイント阻害剤の例には、イピリムマブ(抗CTLA-4)、ニボリムマブ(Nivolimumab)(抗PD-1)、及びペンブロリズマブ(抗PD1)が含まれるが、これらに限定されない。
【0265】
別の実施形態によれば、治療は、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害剤(例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、またはスペブルチニブ)と組み合わされる。
【0266】
本発明者らはまた、TREM2とGpnmbの両方を発現するミエロイド細胞の存在に基づいて治療タイプを選択することも企図している。
【0267】
したがって、本発明のなお別の態様によれば、対象における癌を治療する方法であって、
(a)対象の試料においてTREM2とGpnmbの両方を発現するミエロイド細胞の存在を分析すること、及び
(b)前記ミエロイド細胞の量が所定量を超える場合、本願に記載のTREM2及び/もしくはGpnmbを標的とする治療有効量の抗体で対象を治療すること、または、前記細胞の量が所定量を下回る場合、TREM2及び/もしくはGpnmbを標的とする前記抗体以外の治療有効量の化学療法剤で対象を治療すること、
を含む方法が提供される。
【0268】
遺伝子発現プロファイルを決定する方法は、RNAレベルまたはタンパク質レベルで実施され得る。
【0269】
以下は、単一細胞レベルで複数の遺伝子の発現を分析するために使用することができる方法のより詳細な説明である。
【0270】
RNAを分析及び/または定量する方法
ノーザンブロット分析:この方法は、RNAの混合物における特定のRNAの検出を伴う。RNA試料を、塩基対間の水素結合を防止する薬剤(例えば、ホルムアルデヒド)で処理することにより変性させ、折り畳まれていない直線状の立体構造を全てのRNA分子が確実に有しているようにする。次いで、個々のRNA分子を、ゲル電気泳動によりサイズに応じて分離し、変性RNAが付着するニトロセルロースまたはナイロンベースの膜に転写する。次いで、標識DNAプローブに膜を曝露させる。プローブは、放射性同位体または酵素連結ヌクレオチドを使用して標識することができる。検出には、オートラジオグラフィー、比色反応、または化学発光を使用することができる。この方法により、特定のRNA分子の量の定量と、電気泳動中のゲル内の移動距離を示す膜上の相対位置によるその正体の決定の両方が可能になる。
【0271】
RT-PCR分析:この方法は、比較的稀なRNA分子のPCR増幅を使用する。最初に、RNA分子を細胞から精製し、逆転写酵素(MMLV-RTなど)及びプライマー、例えば、オリゴdT、ランダムヘキサマー、または遺伝子特異的プライマーを使用して相補的DNA(cDNA)に変換する。次いで、遺伝子特異的プライマー及びTaq DNAポリメラーゼを適用することにより、PCR機中でPCR増幅反応を実行する。当業者は、特異的RNA分子を検出するのに好適である遺伝子特異的プライマーの長さ及び配列ならびにPCR条件(すなわち、アニーリング温度、サイクル数など)を選択することができる。PCRサイクル数を調整し、増幅産物を既知の対照と比較することにより、半定量的RT-PCR反応を用いることができることが理解されよう。
【0272】
RNA in situハイブリダイゼーション染色:この方法では、DNAプローブまたはRNAプローブを、細胞中に存在するRNA分子に付着させる。一般に、細胞構造を保存し、かつRNA分子の分解を防止するために、細胞を、まず顕微鏡スライドに固定して、次いで標識プローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液に供する。ハイブリダイゼーション緩衝液には、プローブの非特異的結合を回避しながら、DNAプローブまたはRNAプローブがその標的mRNA分子とin situで特異的にハイブリダイゼーションすることを可能にするホルムアミド及び塩(例えば、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウム)などの試薬が含まれる。当業者は、特異的プローブ及び細胞のタイプに対し、ハイブリダイゼーション条件(すなわち、温度、塩及びホルムアミドの濃度など)を調整することができる。ハイブリダイゼーション後、未結合のプローブを洗い流し、結合したプローブを公知の方法を使用して検出する。例えば、放射標識プローブを使用する場合、放射標識プローブを使用して生成されたシグナルを明らかにする写真乳剤にスライドを供する、プローブを酵素で標識した場合、比色反応の形成のために酵素特異的基質を添加する、プローブを蛍光標識を使用して標識する場合、蛍光顕微鏡を使用して結合したプローブを明らかにする、プローブをタグ(例えば、ジゴキシゲニン、ビオチンなど)を使用して標識する場合、結合したプローブを、公知の方法を使用して検出することができるタグ特異的抗体との相互作用後に検出することができる。
【0273】
In situ RT-PCR染色:この方法は、Nuovo GJ, et al.[Intracellular localization of polymerase chain reaction (PCR)-amplified hepatitis C cDNA. Am J Surg Pathol. 1993, 17: 683-90]及びKomminoth P, et al.[Evaluation of methods for hepatitis C virus detection in archival liver biopsies. Comparison of histology, immunohistochemistry, in situ hybridization, reverse transcriptase polymerase chain reaction (RT-PCR) and in situ RT-PCR. Pathol Res Pract. 1994, 190: 1017-25]に記載されている。簡潔に述べると、標識ヌクレオチドをPCR反応に組み込むことにより、固定細胞上でRT-PCR反応を実施する。Arcturus Engineering社(カリフォルニア州、マウンテンビュー)から入手可能なレーザーキャプチャーマイクロダイセクションPixCell I LCMシステムなどの特異的in situ RT-PCR装置を使用して、反応を実行する。
【0274】
単一細胞トランスクリプトーム分析
この方法は、単一細胞のトランスクリプトームのシーケンシングに依拠する。一実施形態では、異なる細胞に由来するRNAを個々にタグ付けすることで各リードの細胞識別性を保持しながら単一のライブラリを作成することが可能になる、ハイスループット法を使用する。この方法は、多数の手法で実行することができる。例えば、内容が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第20100203597号明細書及び米国特許出願公開第20180100201号明細書を参照されたい。
【0275】
単一細胞トランスクリプトーム分析を実行するための1つの特定の方法を、以下に要約する。
【0276】
典型的には、細胞を、各ウェルに1つの細胞のみが存在するようにウェルに等分する。細胞及び核膜を破壊して細胞のRNAをシーケンシング反応に利用できるようにする薬剤で、細胞を処理する。
【0277】
一実施形態によれば、RNAは、以下のin vitro転写増幅プロトコルを使用して増幅される。
【0278】
(工程1)RNAから一本鎖DNA分子の合成を可能にする条件下で、末端3’末端にポリdT配列、末端5’末端にT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、かつポリdT配列とRNAポリメラーゼプロモーター配列との間に位置するバーコード配列を含むオリゴヌクレオチドと、単一細胞のRNAを接触させる。ここで、バーコード配列は、細胞バーコード及び分子識別子を含む。
【0279】
本実施形態のポリdTオリゴヌクレオチドは、シーケンシングに必要なアダプター配列を任意選択的に含み得る(例えば、
図5を参照されたい)。
【0280】
RNAポリメラーゼプロモーター配列は、当該技術分野で公知であり、例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、例えば、SCGATTGAGGCCGGTAATACGACTCACTATAGGGGC(配列番号3)を含む。
【0281】
好ましくは、ポリdT配列は、少なくとも5ヌクレオチドを含む。別の実施形態によれば、ポリdT配列は、約5~50ヌクレオチド、より好ましくは約5~25ヌクレオチド、さらにより好ましくは約12~14ヌクレオチドである。
【0282】
バーコード配列は、多数の試料が単一の反応にプールされる場合、マルチプレックス反応中に有用である。バーコード配列は、特定の分子、試料、またはライブラリを識別するために使用され得る。バーコード配列は、ポリdT配列の5’末端及びT7 RNAポリメラーゼ配列の3’に付着されている。バーコード配列は、3~400ヌクレオチド、より好ましくは3~200ヌクレオチド、さらにより好ましくは3~100ヌクレオチドであり得る。したがって、バーコード配列は、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、または10ヌクレオチドであり得る。
【0283】
一実施形態では、バーコード配列は、細胞タイプまたは細胞源(例えば患者)を識別するために使用される。
【0284】
分子識別子は、方法の定量精度を低減させる増幅バイアスを補正するのに有用である。分子識別子は、4~20個の塩基で構成される。分子識別子は、試料の各RNA分子が独自の配列を有する分子識別子で類別(標識)されるような長さである。
【0285】
プライマー(例えば、ポリdTプライマー)をRNA試料にアニーリングさせた後、RNA依存性DNAポリメラーゼを使用した逆転写によってRNA-DNAハイブリッドを合成することができる。本発明の方法及び組成物における使用に好適なRNA依存性DNAポリメラーゼには、逆転写酵素(RT)が含まれる。RTは当該技術分野で周知である。RTの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MLV)逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)逆転写酵素、ラウス肉腫ウイルス(RSV)逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、ラウス関連ウイルス(RAV)逆転写酵素、及び骨髄芽球症関連ウイルス(MAV)逆転写酵素、または他のトリ肉腫白血病ウイルス(ASLV)逆転写酵素、ならびにそれらに由来する修飾RTが含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第7,056,716号明細書を参照されたい。トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV-RT)及びモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV-RT)に由来する逆転写酵素などの多くの逆転写酵素は、複数の活性(例えば、ポリメラーゼ活性及びリボヌクレアーゼ活性)を含み、二本鎖cDNA分子の形成において機能し得る。しかしながら、いくつかの例では、RNアーゼH活性を欠如しているか、またはRNアーゼH活性が実質的に低減したRTを用いることが好ましい。
【0286】
RNアーゼH活性を欠くRTは当該技術分野で公知であり、これには野生型逆転写酵素の変異を含み、その変異によってRNアーゼH活性が消失しているものが含まれる。RNアーゼH活性が低減したRTの例は、米国特許出願公開第20100203597号明細書に記載されている。これらの場合、E. coliから単離されたものなどの他の供給源からのRNアーゼHの添加を、一本鎖cDNAの形成に用いることができる。異なる非変異型RTの組み合わせ、異なる変異型RTの組み合わせ、及び1つ以上の非変異型RTと1つ以上の変異型RTとの組み合わせを含む、RTの組み合わせも企図される。
【0287】
好適な酵素の例には、Agilent社のAffinityScriptまたはInvitrogen社のSuperscript IIIが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、逆転写酵素は、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)活性を欠いている。
【0288】
逆転写反応に必要な追加の構成成分には、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)、ならびに任意選択的にジチオスレイトール(DTT)及びMnCl2などの還元剤が含まれる。
【0289】
合成されるcDNAを精製することができるように、ポリdTオリゴヌクレオチドを固体支持体(例えばビーズ)に付着させることができる。
【0290】
アニーリングの温度及びタイミングは、プライマーが鋳型にアニーリングすると予想される効率と、許容されるミスマッチの程度の両方により決定される。
【0291】
アニーリング温度は、通常、最適な効率及び特異性がもたらされるように選択され、一般に約50℃~約80℃、通常では約55℃~約70℃、より通常では約60℃~約68℃の範囲である。アニーリング条件は、一般に約15秒~約30分、通常では約30秒~約5分の範囲の期間で維持される。
【0292】
(工程2):cDNAが生成されると、そのcDNAを、(本明細書で上記したものと同じ方法を使用して)他の単一細胞から生成されたcDNAからプールすることができる。
【0293】
過剰なプライマーを除去するために、エキソヌクレアーゼIなどの酵素で試料を任意選択的に処理することができる。例えば常磁性微粒子の使用を含む、一本鎖DNAを精製する他の選択肢も企図される。これは、試料のプール後またはその前に実行することができる。
【0294】
(工程3):第2鎖の合成。
cDNAの第2鎖の合成は、ヌクレオチド三リン酸及びDNAポリメラーゼの存在下で試料をインキュベートすることにより行うことができる。RNアーゼH(RNA鎖を除去するため)などの追加の酵素及び緩衝液を含む、この工程用の市販のキットが利用可能である。この反応は、任意選択的にDNAリガーゼの存在下で実施することができる。第2鎖の合成に続いて、例えば常磁性微粒子の使用を含む、当該技術分野で公知の方法を使用して産物を精製することができる。
【0295】
(工程4):cDNAの第2鎖の合成に続いて、対応するRNAポリメラーゼとインキュベートすることによりRNAを合成することができる。T7 High Yield RNAポリメラーゼIVTキット(New England Biolabs社)などの市販のキットを使用することができる。
【0296】
(工程5):増幅したRNAを断片化する前に、DNアーゼ酵素を使用してDNAを除去することができる。断片化の前にRNAを精製してもよい。RNAの断片化は、当該技術分野で公知のように実行することができる。Ambion断片化キットなどの断片化キットが市販されている。
【0297】
(工程6):増幅しかつ断片化したRNAの3’末端をここで標識する。このために、一本鎖DNA(ssDNA)をRNAに本質的にライゲーションするリガーゼ反応を実施する。増幅しかつ断片化したRNAを標識する他の方法は、米国特許出願公開第20170137806号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。一本鎖DNAは5’末端に遊離リン酸を有しており、任意選択的に、頭部と尾部のライゲーションを防止するために3’末端にブロッキング部分を有する。ブロッキング部分の例には、C3スペーサーまたはビオチン部分が含まれる。典型的には、ssDNAは、10~50ヌクレオチド長であり、より好ましくは15~25ヌクレオチドである。
【0298】
(工程7):次いで、先行工程で使用したプライマーに相補的なプライマーを使用して逆転写を実施する。次いで、
図5に図示するように、ネステッドPCR反応を通じてライブラリを完成させ、増幅することができる。
【0299】
(工程8):増幅
本発明のアダプターポリヌクレオチドを一本鎖DNAにライゲーションしたら(すなわち、一本鎖DNAの伸長に続いて)、増幅反応を実施することができる。
【0300】
(工程9):シーケンシング
配列決定のための方法は、当業者には一般に公知である。好ましいシーケンシング方法は、次世代シーケンシング法または並列ハイスループットシーケンシング法、例えば、超並列シグネチャシーケンシング(MPSS)である。想定されるシーケンス方法の例は、パイロシーケンシング、特に、例えばRoche 454 Genome Sequencerに基づく454パイロシーケンシングである。この方法は、油溶液中の水滴内のDNAを増幅するものであり、各液滴は、単一のプライマーでコーティングされたビーズに付着した単一のDNA鋳型を含有しており、この鋳型は後にクローン性コロニーを形成する。パイロシーケンシングでは、ルシフェラーゼを使用して、新生DNAに付加された個々のヌクレオチドを検出するための光を生成し、集約したデータを使用してシーケンスリードアウトを生成する。さらに別の想定される例は、例えば可逆的ダイターミネーターに基づくIllumina Genome Analyzer技術を使用することによる、IlluminaまたはSolexaシーケンシングである。典型的には、局所的なクローン性コロニーが形成されるように、DNA分子をスライド上のプライマーに付着させて増幅させる。その後、一度に1種類のヌクレオチドを付加することができ、取り込まれなかったヌクレオチドを洗い流す。その後、蛍光標識ヌクレオチドの画像を撮影することができ、色素をDNAから化学的に除去して、次のサイクルが行えるようになる。さらに別の例は、ライゲーションによるシーケンシングを用いるApplied Biosystems社のSOLiD技術の使用である。この方法は、シーケンシングされた位置に従って標識された、固定長の全ての可能なオリゴヌクレオチドのプールの使用に基づくものである。かかるオリゴヌクレオチドをアニーリングし、ライゲーションする。その後、一致する配列に対するDNAリガーゼによる優先的なライゲーションによって、典型的には、その位置のヌクレオチドに関する情報を知らせるシグナルが得られる。DNAは典型的にはエマルジョンPCRによって増幅されるため、各々が同じDNA分子のコピーのみを含有する得られたビーズをスライドガラス上に配置することで、Illuminaシーケンシングに匹敵する量及び長さの配列を得ることができる。さらなる方法は、アレイに繋留されたポリTオリゴマーにより断片を捕捉する、Helicos社のHeliscope技術に基づくものである。各シーケンシングサイクルにおいて、ポリメラーゼ及び単一の蛍光標識ヌクレオチドを添加し、アレイを画像化する。その後、蛍光タグを除去し、このサイクルを繰り返す。本発明の方法に包含されるシーケンシング技法のさらなる例は、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ナノポアの使用によるシーケンシング、顕微鏡ベースのシーケンシング技法、マイクロ流体サンガーシーケンシング、またはマイクロチップベースのシーケンシング方法である。本発明はまた、これらの技法のさらなる進展、例えば、配列決定の精度の、または生物のゲノム配列決定に必要な時間などのさらなる改善も想定している。
【0301】
一実施形態によれば、シーケンシング方法は、ディープシーケンシングを含む。
【0302】
本明細書で使用される場合、「ディープシーケンシング」という用語は、標的配列が1回の試験で複数回読み取られるシーケンシング方法を指す。1回のディープシーケンシングのランは、同じ標的配列に対して行われかつ各々が独立したシーケンスリードアウトを生成する、多数のシーケンシング反応で構成されている。
【0303】
マイクロ流体工学に依拠する方法も、単一細胞トランスクリプトーム分析を実行するために使用可能であることが理解されよう。
【0304】
したがって、ハイスループットで個々の細胞から核酸を単離し、溶解させ、バーコードを付し、かつ調製するために、分子バーコーディングとエマルジョンベースのマイクロ流体工学との組み合わせを使用することができる。マイクロ流体デバイス(例えば、ポリジメチルシロキサンで製作されたもの)、サブナノリットルの逆エマルジョン液滴。これらの液滴を、バーコード付き捕捉ビーズと核酸を共カプセル化するために使用する。例えば、各ビーズには独自のバーコードを付しているため、各液滴及びその内容物を区別することができる。核酸は、例えば、単一細胞、一対の細胞、細胞溶解物、または溶液に由来するものなど、当該技術分野で公知の任意の供給源に由来し得る。細胞は、液滴中にカプセル化される際に溶解される。単一細胞及びバーコード付きビーズをポアソン統計を用いてこれらの液滴にロードするには、約10,000個~100,000個の細胞にバーコードを付すために100,000個~1,000万個のかかるビーズが必要である。この点に関して、単一細胞シーケンシングライブラリが存在し得、これには、独自のバーコードが付けられた1つのmRNA捕捉マイクロビーズを、直径75~125μmのエマルジョン液滴中の単一細胞と一体化させること、細胞を溶解させ、そのRNAをRNA捕捉マイクロビーズ上へのハイブリダイゼーションによって捕捉できるようにすること、エマルジョン液滴の内側または外側のいずれかで逆転写を実施して、細胞のmRNAを、mRNA捕捉マイクロビーズに共有結合的に連結した第1鎖cDNAに変換すること、全ての細胞からのcDNA付着マイクロビーズをプールすること、ならびに本明細書で上記したように、単一の複合RNA-Seqライブラリを調製及びシーケンシングすること、が含まれ得る。この点に関して、Macosko et al., 2015, "Highly Parallel Genome-wide Expression Profiling of Individual Cells Using Nanoliter Droplets" Cell 161, 1202-1214、2016年3月17日に国際公開第2016/040476号パンフレットとして公開された国際特許出願第PCT/US2015/049178号の明細書、Klein et al., 2015, "Droplet Barcoding for Single-Cell Transcriptomics Applied to Embryonic Stem Cells" Cell 161, 1187-1201、Zheng, et al., 2016, "Haplotyping germline and cancer genomes with high-throμghput linked-read sequencing" Nature Biotechnology 34, 303-311、及び国際公開第2014210353号パンフレットを参照されたい。これら各々の全ての内容及び開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0305】
タンパク質の発現及び/または活性を検出する方法
本発明のいくつかの実施形態の培養物の細胞内で発現されるタンパク質の発現及び/または活性レベルは、当該技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。
【0306】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA):この方法は、タンパク質基質を含有する試料(例えば、固定細胞またはタンパク質性溶液)をマイクロタイタープレートのウェルなどの表面に固定することを伴う。酵素とカップリングした基質特異的抗体を適用し、基質に結合させる。次いで、抗体とカップリングした酵素を用いた比色反応により、抗体の存在を検出及び定量する。この方法で一般的に用いられる酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが含まれる。十分に較正され、かつ応答の線形範囲内にある場合、試料中に存在する基質の量は、生じた色の量に比例する。一般に、定量精度を改善するために基質標準物質が用いられる。
【0307】
ウエスタンブロット:この方法は、アクリルアミドゲルによって基質を他のタンパク質から分離し、続いて基質を膜(例えば、ナイロンまたはPVDF)に転写することを伴う。次いで、基質の存在を、その基質に特異的な抗体によって検出し、次にその抗体を抗体結合試薬によって検出する。抗体結合試薬は、例えばプロテインAまたは他の抗体であり得る。抗体結合試薬は、上記のとおり放射標識してもよく、または酵素に連結させてもよい。検出は、オートラジオグラフィー、比色反応、または化学発光によるものであってよい。この方法により、基質の量の定量と、電気泳動中のアクリルアミドゲル内の移動距離を示す膜上の相対位置によるその正体の決定の両方が可能になる。
【0308】
ラジオイムノアッセイ(RIA):1つのバージョンでは、この方法は、アガロースビーズなどの沈殿可能な担体に固定化した特異的抗体及び放射標識した抗体結合タンパク質(例えば、I125で標識したプロテインA)を用いて、所望のタンパク質(すなわち基質)を沈殿させることを伴う。沈殿したペレット内のカウント数は基質の量に比例する。
【0309】
RIAの代替バージョンでは、標識基質及び非標識の抗体結合タンパク質を用いる。未知量の基質を含有する試料を様々な量で添加する。標識基質からの沈殿カウントの減少は、添加した試料中の基質の量に比例する。
【0310】
蛍光活性化細胞選別(FACS):この方法は、基質特異的抗体による細胞内の基質のin situ検出を伴う。基質特異的抗体をフルオロフォアに連結させる。各細胞が光線を通過する際に放射される光の波長を読み取る細胞選別機によって検出する。この方法では、2つ以上の抗体を同時に用いることができる。
【0311】
免疫組織化学的分析:この方法は、基質特異的抗体による固定細胞内の基質のin situ検出を伴う。基質特異的抗体は、酵素に連結させてもよく、またはフルオロフォアに連結させてもよい。顕微鏡法及び主観的評価または自動評価によって検出を行う。酵素連結抗体を用いる場合、比色反応が必要になる場合がある。免疫組織化学の後に、例えばヘマトキシリン染色またはギムザ染色を使用した細胞核の対比染色が行われることが多いことが理解されよう。
【0312】
in situ活性アッセイ:この方法によると、活性酵素を含有する細胞上に発色基質を適用し、基質が分解されて光学顕微鏡または蛍光顕微鏡により可視化される発色産物を生じる反応を酵素が触媒する。
【0313】
in vitro活性アッセイ:これらの方法では、細胞から抽出したタンパク質混合物において特定の酵素の活性を測定する。活性は、比色法を使用して分光光度計ウェルで測定することができ、または非変性アクリルアミドゲル(すなわち活性ゲル)で測定することもできる。電気泳動後、基質と比色試薬とを含有する溶液にゲルを浸漬する。得られた染色バンドは、目的タンパク質の酵素活性に対応する。十分に較正され、かつ応答の線形範囲内にある場合、試料中に存在する酵素の量は、生じた色の量に比例する。一般に、定量精度を改善するために酵素標準物質が用いられる。
【0314】
具体的な実施形態によれば、遺伝子発現は、トランスクリプトーム分析により決定される。
【0315】
具体的な実施形態によれば、遺伝子発現は、上記のとおり単一細胞トランスクリプトーム分析により決定される。
【0316】
したがって、特定のレベルの細胞、例えば、由来する試料のミエロイド細胞の5%超、10%超が観察されると、対象をこれらの細胞を標的とする療法の候補者と見なすことができる。この特色のミエロイド細胞の数が不十分であることが観察された場合、対象はこの療法の候補者とは見なされない。
【0317】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0318】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」という用語、及びそれらの活用形は、「含むがこれらに限定されない」を意味する。
【0319】
「からなる」という用語は、「を含み、かつこれらに限定される」を意味する。
【0320】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法、または構造が追加の成分、工程、及び/または一部を含み得るが、それは追加の成分、工程、及び/または一部が、特許請求された組成物、方法、または構造の根本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限られることを意味する。
【0321】
明確にするために別々の実施形態の文脈で記載される本発明のある特定の要件はまた、単一の実施形態中に組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の種々の要件はまた、別々に、または任意の好適な副次的組み合わせで、または本発明の任意の他の記載される実施形態において好適なものとして、提供され得る。種々の実施形態の文脈で記載されるある特定の要件は、実施形態がそれらの要素なしでは作用しない場合を除いて、それらの実施形態の不可欠な要件とは見なされない。
【0322】
上に記述され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的支持が見出される。
【0323】
実施例
これより、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を上記の説明とともに非限定的な形で例示するものである。
【0324】
一般に、本明細書で使用する命名法及び本発明で利用する実験手順には、分子的技法、生化学的技法、微生物学的技法、及び組換えDNA技法が含まれる。かかる技法は、文献中に十分に説明されている。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)、"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、以下:米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、"Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition、"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)に記載されている方法論を参照されたく、利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広く記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)、“Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984)、"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)、"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press、"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)を参照されたい。これらは全て、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように参照により援用される。他の一般的な参照文献は、本明細書全体にわたり提供される。その中の手順は、当該技術分野で周知であると考えられており、読者の利便性のために提供される。その中に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0325】
材料及び方法
抗ヒトTREM2モノクローナル抗体の産生
5匹のBalB/Cマウス及び5匹のSJLマウスを、Hisタグに融合したヒトTREM2の細胞外ドメインからなる組換えタンパク質(配列番号4、MEPLRLLILLFVTELSGAHNTTVFQGVAGQSLQVSCPYDSMKHWGRRKAWCRQLGEKGPCQRVVSTHNLWLLSFLRRWNGSTAITDDTLGGTLTITLRNLQPHDAGLYQCQSLHGSEADTLRKVLVEVLADPLDHRDAGDLWFPGESESFEDAHVEHSISRSLLEGEIPFPPTSHHHHHH)で免疫した。マウスの脾臓を採取し、Sp2/0ミエローマ細胞と融合させた。Ab産生クローンをELISAによって選択し、hTREM2が安定的にトランスフェクトされた293HEK細胞に対してスクリーニングした。
【0326】
直接ELISA
96ウェルELISAマイクロプレートを、pH7.4のPBSで希釈した0.5μg/mL、100μl/ウェルのHisタグ付きhTREM2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを0.05% Tween20のPBS溶液で3回すすぎ、室温(RT)で1時間、1% BSAのPBS溶液でブロッキングし、再度すすいだ。プレートを抗hTREM2抗体(100μl/ウェル)とともに、示した濃度にてRTで2時間インキュベートした。プレートをすすぎ、ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcg断片特異的(min X ヒト、ウシ、ウマ血清タンパク質、Jackson ImmunoResearch社)とともにRTで20分間インキュベートした。プレートをすすぎ、TMB試薬(TM4500、Scytek社)とともにRTで20分間インキュベートし、続いて停止溶液として2Nの硫酸(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2種の波長(450nm及び570nm)でODを測定した。
【0327】
上清Elisa
野性型293HEK細胞またはhTREM2を過剰発現する293HEK細胞を24時間培養した(10cmプレート中に300万個の細胞)。上清を回収し、900gで5分間遠心分離して濾過した(0.45μm)。96ウェルELISAマイクロプレートを、PBSで希釈した0.2μg/ウェルの抗ヒトTREM2抗体(AF1828、R&D社)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを0.05% Tween20のPBS溶液で3回すすぎ、室温(RT)で1時間、1% BSAのPBS溶液でブロッキングし、再度すすいだ。プレートを、細胞培養上清(100μl/ウェル)とともにRTで2時間インキュベートし、再度すすいだ。プレートを、0.1μgのビオチン化抗hTREM2抗体とともにRTで2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをすすぎ、ストレプトアビジン-HRP(DY998、R&D社)とともにRTで20分間インキュベートした。プレートをすすぎ、TMB試薬(TM4500、Scytek社)とともにRTで20分間インキュベートし、続いて停止溶液として2Nの硫酸(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2種の波長(450nm及び570nm)でODを測定した。
【0328】
細胞ベースELISA
野性型293HEK細胞またはhTREM2を過剰発現する293HEK細胞を、ポリLリジンでコーティングした96組織培養プレートに播種し、MMP阻害剤GM-6001(25μM、Enzo社)の存在下で48時間培養した。細胞をPBSで3回洗浄し、RTで2時間ブロッキングした(5% FBS、1% BSAのPBS溶液)。細胞を1% BSAのPBS溶液で洗浄し、0.1μg(または示した量)のビオチン化抗hTREM2抗体とともにRTで4時間インキュベートした。インキュベーション後、ストレプトアビジン-HRP(DY998、R&D社)とともに細胞をRTで20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、TMB試薬(TM4500、Scytek社)とともにRTで30分間インキュベートし、続いて停止溶液として2Nの硫酸(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2種の波長(450nm及び570nm)でODを測定した。EZ-Link(商標)スルホ-NHS-LC-ビオチン化キット(Thermo Fisher Scientific社)を製造業者の指示に従って使用して、抗体のビオチン化を行った。
【0329】
TREM2検出のためのウエスタンブロット(SDS PAGE)
細胞を氷冷PBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(cOmplete(商標)、Roche社)を補充した冷低張溶解緩衝液(0.01M Tris、pH7、1mM EDTA、1mM EGTA)に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。細胞を液体窒素中で急速冷凍し、解凍して、4℃、16,000gで45分間遠心分離した。ペレットをSTE溶解緩衝液(150mM NaCl、50mM Tris-HCl pH7.6、2mM EDTA、1%Triton X-100)に再懸濁させ、氷上で20分間インキュベートして、4℃、16,000gで30分間遠心分離した。上清を回収し、BCAタンパク質アッセイを使用してタンパク質濃度を測定した。タンパク質(50μg)を12% Bis-Trisゲルで分離し、ニトロセルロース膜(Thermo Fisher Scientific社)に転写した。TBS-Tweenで希釈した3% BSAを用いて、室温で1時間膜をブロッキングした。膜を抗hTREM2抗体(1μg/ml)とともに4℃で一晩インキュベートした。二次抗体として、ペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgGを使用した(Jackson ImmunoResearch社、115-035-071)。SignalFire Elite ECL試薬(Cell Signaling Technology社)を使用して、結合した抗体を視覚化した。
【0330】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)の分化
TREM2ノックアウト(KO)マウス及びhTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウスのマウス骨髄細胞を、30ng/mLのhM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-25)の存在下で7日間培養し、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)を生成した。
【0331】
フローサイトメトリー分析
TREM2 KO BMDM及びhTREM2 BMDMをMACS緩衝液(PBS pH7.2、0.5% BSA、及び2mM EDTA)で洗浄し、ビオチンコンジュゲート抗hTREM2抗体(10μg/mL)で染色し、続いてMACS緩衝液で洗浄し、APC-ストレプトアビジン(Biolegend社、405207)でインキュベートして、次いでフローサイトメーター(LSRII、BD社)によって分析した。
【0332】
表面プラズモン共鳴(SPR)分析
シリーズS センサーチップCM5(Cytiva社)を備えたBIAcore T200機器で実行したSPRによって、親和性測定値を得た。hTREM2-Hisタンパク質をチップに捕捉し、抗hTREM2抗体を分析物として使用した。定常状態の親和性結合を使用してセンソグラム(Sensogram)をフィッティングさせ、平衡解離定数(KD)値を得た。
【0333】
免疫蛍光分析
TREM2 KO BMDM及びhTREM2 BMDMを、ポリLリジンでコーティングしたカバースリップ上に播種し、24時間培養した。細胞をPBSで2回洗浄し、冷メタノールで固定し、洗浄して、5% FBSのPBS溶液で1時間ブロッキングした。細胞を抗hTREM2抗体(2μg/ml)とともに4℃で一晩インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、続いて二次抗体染色(Alexa Fluor 647-AffiniPure F(ab’)2断片ロバ抗マウスIgG(H+L)、Jackson ImmunoResearch社、715-606)及びDAPIを行った。
【0334】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)分化撹乱アッセイ
マウス骨髄細胞を、示したようにマクロファージに分化させ、一方、培養2日目及び5日目に抗hTREM2抗体を培養培地に添加した(10μg/mL)。
【0335】
ビオチンコンジュゲートhTREM2抗体の浸透のELISA分析
MCA-205細胞を洗浄し、PBSに再懸濁させ、皮下注射した(100μl PBS中に50万細胞/マウス)。マウスの側腹部を事前に剃毛し、皮下(s.c)注射した。9日目に、マウスをビオチンコンジュゲート抗hTREM2抗体(70μg/マウス)で腹腔内(i.p.)処理し、24時間後に屠殺した。ELISA分析用に、示した器官を採取して、cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充したRIPA溶解緩衝液で均質化することにより全タンパク質を抽出した。試料を氷上に20分間放置し、4℃、13,000×gで20分間遠心分離した。上清を回収し、BCA法を使用してタンパク質濃度を決定した。100μgのタンパク質を、プレコーティング及びブロッキング(1% BSAのPBS溶液)したhTREM2タンパク質上にロードし、続いて5回洗浄して、HRP-ストレプトアビジンを結合させた。プレートをすすぎ、TMB試薬(TM4500、Scytek社)とともにRTで20分間インキュベートし、続いて停止溶液として2Nの硫酸(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2種の波長(450nm及び570nm)でODを測定した。
【0336】
抗ヒトGPNMBモノクローナル抗体の産生
5匹のC57BL/6Jマウスを、Hisタグに融合したヒトGPNMBの細胞外ドメインからなる組換えタンパク質(配列番号5、MECLYYFLGFLLLAARLPLDAAKRFHDVLGNERPSAYMREHNQLNGWSSDENDWNEKLYPVWKRGDMRWKNSWKGGRVQAVLTSDSPALVGSNITFAVNLIFPRCQKEDANGNIVYEKNCRNEAGLSADPYVYNWTAWSEDSDGENGTGQSHHNVFPDGKPFPHHPGWRRWNFIYVFHTLGQYFQKLGRCSVRVSVNTANVTLGPQLMEVTVYRRHGRAYVPIAQVKDVYVVTDQIPVFVTMFQKNDRNSSDETFLKDLPIMFDVLIHDPSHFLNYSTINYKWSFGDNTGLFVSTNHTVNHTYVLNGTFSLNLTVKAAAPGPCPPPPPPPRPSKPTPSLATTLKSYDSNTPGPAGDNPLELSRIPDENCQINRYGHFQATITIVEGILEVNIIQMTDVLMPVPWPESSLIDFVVTCQGSIPTEVCTIISDPTCEITQNTVCSPVDVDEMCLLTVRRTFNGSGTYCVNLTLGDDTSLALTSTLISVPDRDPASPLRMANHHHHHH)で免疫した。マウスの脾臓を採取し、フローサイトメトリーによってGPNMB結合について単一B細胞を分析し、BCRシーケンシング用に選別した。抗体産生のために、生産性を有するBCRをOG527(IgG)及びOG528(Igk)にクローニングした。
【0337】
抗ヒトGPNMBモノクローナル抗体の結合スクリーニング
抗ヒトGPNMB抗体を、hGPNMB発現293HEK及びヒト末梢血由来マクロファージとの結合について、直接ELISA及びフローサイトメトリーによりスクリーニングする。
【0338】
抗ヒトGPNMBモノクローナル抗体の機能スクリーニング
フィコール分離によってヒト白血球を末梢血から抽出した。CD4マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-045-101)を使用してCD4 T細胞を単離した。プレコーティングした抗CD3、抗CD28、及び抗CD2抗体(Miltenyi Biotec社、130-091-441)中で、CD4細胞を組換えhGPNMBタンパク質とともに1~3日間インキュベートした。フローサイトメトリーを使用したCFSE染色により複製数を測定した。ELISA(Biolegend社、BLG-430104)によりIFNg分泌を測定した。抗hGPNMB抗体のCD4 T細胞活性化抑制能試験を、T細胞インキュベーション中に10μg/mLの抗体を添加することにより実施する。
【0339】
ヒト単球由来マクロファージ(hMDM)及びヒト単球由来樹状細胞(hMDC)の分化
CD14+単離キット(Miltenyi Biotech社 #130-050201)を使用して、CD14+細胞をヒト血液から単離した。細胞を30ng/mLのhM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-25)の存在下で5日間培養し、続いて20ng/mLのIL4を投与してM2マクロファージを生成した。hMDCを生成するために、細胞を30ng/mLのhGM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-03)の存在下で7日間培養した。
【0340】
hMDMの刺激
初代hMDMを上記のとおりに生成した。10μg/mLの抗TREM2及び/または20ng/mLのIL2もしくはIL15サイトカインを、3日目、5日目、及び6日目に培養物に添加した。
【0341】
遺伝子発現分析
遺伝子発現分析用に、細胞をPBSで2回洗浄し、続いて細胞を溶解し、製造業者の指示に従ってDynabeads mRNA DIRECT精製キット(Thermo Fisher社、61012)によりRNAを精製した。SuperScript IIIキット(Thermo Fisher社、18080044)を製造業者の指示に従って使用してcDNAを生成した。
【0342】
qPCR分析を、サイバーグリーン(LightCycler 480 SYBR Green、Roche社、04-887-352)試薬及び以下のプライマー(表C)を用いて行った。
【0343】
【0344】
サイトカイン分泌分析
M2極性化プロセスの24時間後にマクロファージ上清で行ったサイトカイン分泌分析。上清を1:20に希釈し、CBAヒト炎症性サイトカインキット(BD551811)を製造業者の指示に従って用いてサイトカイン値の測定を行った。
【0345】
ヒトT細胞及びhMDMの単離、活性化、及び共培養
初代hMDMを前述のとおりに生成した。CD14+細胞の選択後、マクロファージ分化の間、CD14-を凍結した。6日後、細胞を解凍し、ヒトCD8マイクロビーズ(Miltenyi Bitec社、130-045-201)によってCD8 T細胞を選択した。CD8 T細胞を、増殖追跡色素(65-0842-85、Thermo Fisher社)で染色し、抗CD3(10μg/mL、OKT、BLG-317326)及び抗CD28(2μg/mL、BLG-302934)でプレコーティングしたプレート上に播種した。分化させ処理したM2マクロファージを、1:3(マクロファージ:T細胞)の比で共培養物に添加した。4日後、細胞の増殖速度をフローサイトメトリーにより分析した。
【0346】
組換え抗体結合アッセイ
直接Elisaを前述のとおりに実施した。簡潔に述べると、組換えヒトTREM2(2μg/ml)でElisaプレートをコーティングした。ブロッキング後、プレートを様々な濃度の組換え抗体とともにインキュベートした。抗体の検出には、次の二次抗体を使用した:抗ヒトIgG-HRP(709-035-149、Jackson ImmunoResearch社)、ヒトIL2(BLG-500302、BioLegend社)、続いて抗ラットIgG-HRP(ab97057、Abcam社)。上清Elisaを前述のとおりに実施した。抗TREM2抗体AF1828(R&D社)を捕捉抗体として使用し、続いてブロッキングし、hMDMの上清とともにインキュベートした。抗TREM2組換え抗体を検出抗体として使用し、続いて二次抗体による検出を行った(抗ヒトIgG-HRP(709-035-149、Jackson ImmunoResearch社)、ヒトIL2(BLG-500302、BioLegend社)、続いて抗ラットIgG-HRP(ab97057、Abcam社))。
【0347】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)の分化及び処理
hTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウス(雌、12週齢)のマウス骨髄細胞を、大腿骨及び脛骨から抽出し、30ng/mLのhM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-25)の存在下で96ウェル非組織培養用プレートに播種して(100μlのC10培地中に20K個の細胞)、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)を生成した。2日目に、30ng/mLのhM-CSF(対照)または30ng/mLのhM-CSF+10μg/mlの様々な抗体(recE3C7(組換え抗ヒトTREM2)、E3C7(抗ヒトTREM2)、recE3C7-ロング-IL2、recE3C7-ショート-IL2、もしくはIgG(アイソタイプ対照))を供給した100μlのC10培地と、培地を交換した(表1を参照されたい)。5日目に、20ng/mlのマウスIL-4(Peprotech社、214-14)の添加を全ての条件に加えて、2日目の手順を繰り返した。7日目に、培地を吸引し、細胞を200μlのPBS(-/-)で1回洗浄し、44K個の活性化汎T細胞を、無添加C10培地100μl中の異なる条件のBMDMに添加した。
【0348】
マウスT細胞の単離及び活性化
Miltenyi社(カタログ番号130-095-130)マウス汎T細胞単離キットを使用して、WTマウスの脾臓(雌、12週齢)からT細胞を単離した。単離したT細胞を、U字型96ウェル組織培養プレート(0.5μg/ウェルの抗マウスCD3(BLG-100340)でプレコーティング済み)中で培養した(2μg/mlの抗マウスCD28(BLG-102116)を供給した200μlのC10培地中に3×105細胞)。細胞を24時間培養し続けた。対照として、3×105細胞のナイーブT細胞を、CD3コーティングをせず、かつ培地にCD28を添加せずに、同じプレート内の異なるウェルで培養した。細胞を24時間培養し続けた。
【0349】
T細胞とBMDMの共培養
T細胞活性化から1日後、活性化T細胞及びナイーブT細胞をピペットでウェルから取り出し、15mlチューブに別々に移した。細胞を400gで5分間遠心分離し、次いで100μlあたり44K個の細胞の濃度でC10培地に再懸濁させた。PBS(-/-)で洗浄したBMDMのウェル(100μl容量中に44K個の細胞)に、活性化T細胞を添加した。活性化T細胞/ナイーブT細胞のみの対照として、活性化T細胞及びナイーブT細胞をU字型96ウェル組織培養プレートに播種した(C10 100μlあたり44K個の細胞)。42時間後、IFNg放出を測定するために全てのウェルから上清を回収した。
【0350】
マウスインターフェロンガンマ分泌測定
マウスIFN-γ(BGL-430804、Biolegend社)及びヒトIFN-γ(BLG-430115、Biolegend社)用のELISA MAX Deluxe Setを使用して、インターフェロンガンマ(IFNg)濃度を測定した。96ウェルELISAマイクロプレートを、PBSで希釈した0.2μg/ウェルの抗マウスIFN-γ抗体でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを0.05% Tween-20のPBS溶液で3回すすぎ、室温(RT)で1時間、1% BSAのPBSようえ気でブロッキングし、再度すすいだ。コーティングしたプレートを、細胞培養上清(100μl/ウェル)とともにRTで2時間インキュベートし、再度すすいだ。プレートを、0.1μgのビオチン化抗マウスIFN-γ抗体とともにRTで2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをすすぎ、ストレプトアビジン-HRPとともにRTで20分間インキュベートした。プレートをすすぎ、溶液F基質(solution F substrate)とともにRTで10分間インキュベートし、続いて停止溶液として2Nの硫酸(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2種の波長(450nm及び570nm)でODを測定した。
【0351】
抗ヒトTREM2 CAR T細胞の設計及びクローニング
抗ヒトTREM2 CAR T細胞の設計のために、抗ヒトTREM2抗体#80E3C7の認識ドメインの配列で、MSGV-1D3-28Z All ITAMs intact(Addgene社 #107226)内の対応するドメインを置き換えた。TREM2 CAR構築物の可変領域配列全体とT2A-BFPとを含むgblockを発注し、制限酵素NcoI(NEB社 #R3193S)及びSalI(NEB社 #R3138S)を使用してMSGV-1D3-28Zにクローニングした。
【0352】
抗ヒトTREM2 CAR T細胞の産生
6ウェルプレートまたは10cmプレートで70~80%コンフルエントに増殖させたレトロウイルスパッケージングPLAT-E細胞をトランスフェクトすることにより、レトロウイルス粒子を産生させた。トランスフェクションの5時間前に、ペニシリン及びストレプトマイシンを含まない補充DMEMをPLAT-E細胞に提供した。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000(ThermoFisher社 #11668027)を製造業者の指示の下で使用して実施し、レトロウイルスパッケージングベクターPcl-Eco(Addgene社 #12371)及びレトロウイルスCAR T発現プラスミドを含めた。トランスフェクションの5~13時間後に培地を交換した。48時間後、蛍光顕微鏡を使用してトランスフェクション効率を調査した。レトロウイルス粒子を含有する培地をトランスフェクションの48~72時間後に回収した。T細胞を、マウス汎T細胞単離キットII(Miltenyi Biotech社 #130-095-130)を使用して、8~12週齢の雌WTマウスの脾臓から単離した。細胞を、250ng/ウェルの抗CD3e(ThermoFisher社 #16-0031-82)でコーティングした24組織培養プレート上で、100U/mlのrIL2及び2μg/mlの抗CD28(Biolegend社 #102102)を補充したRPMI培地でインキュベートした。レトロウイルス粒子をRetroNectin(Takara Bio社 #T100A)でコーティングした24ウェル非組織培養用プレートに添加し、32℃、2000gで2時間遠心分離することにより、T細胞へのレトロウイルス形質導入を実施した。T細胞をウイルススープ(viral soup)の上部に添加し、続いて400gで10分間遠心分離した。細胞を2~5日間さらに増殖させ、十分な細胞数に到達させた。
【0353】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)及び骨髄由来樹状細胞(BMDC)の分化
WTマウス、TREM2ノックアウト(KO)マウス、及びhTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウスのマウス骨髄細胞を、30ng/mLのhM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-25)の存在下で7日間培養し、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)を生成した。骨髄由来樹状細胞(BMDC)を生成するために、細胞を30ng/mLのhGM-CSFサイトカイン(Peprotech社、300-03)の存在下で7日間培養した。
【0354】
TREM2 CAR T細胞の共培養
TREM2 CAR T細胞を、野性型293HEKまたはhTREM2過剰発現293HEK、CD14+由来のhM2及びhDC、ならびにWTマウス、TREM2ノックアウト(KO)マウス、またはhTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウス由来のBMDMまたはBMDCと1:1の比で共培養した。BFP発現T細胞を、T細胞応答のac対照(ac control)として使用した。全ての細胞を、ポリLリジンでコーティングした96組織培養プレートに播種し、24時間培養した。IFN-γ ELISA用に上清を採り、フローサイトメトリーを使用したさらなる分析のために細胞を採った。
【0355】
ヒトインターフェロンガンマ分泌測定
ELISA MAX Deluxe Set Mouse IFN-γ(Biolegend社 #430804)を使用してELISAを行った。96ウェルELISAマイクロプレートを、PBSで希釈した0.2μg/ウェルの抗マウスIFN-γ抗体でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBS中の0.05% tween20で3回すすぎ、室温(RT)で1時間、PBS中の1%BSAでブロッキングし、再度すすいだ。プレートを、細胞培養上清(100μl/ウェル)とともにRTで2時間インキュベートし、再度すすいだ。プレートを、0.1μgのビオチン化抗マウスIFN-γ抗体とともにRTで2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをすすぎ、ストレプトアビジン-HRPとともにRTで20分間インキュベートした。プレートをすすぎ、TMB試薬とともにRTで20分間インキュベートし、続いてStop Solution 2N Sulfuric Acid(DY994、R&D社)を添加した。ELISAプレートリーダーを使用して、2波長(450nm及び570nm)でODを測定した。
【0356】
フローサイトメトリー分析-CART分析
マウスT細胞を回収し、MACS緩衝液(PBS pH7.2、0.5%BSA、及び2mM EDTA)で洗浄し、PE/Cy7コンジュゲート抗CD8a抗体、PEコンジュゲート抗CD25抗体、APC/Cy7コンジュゲート抗CD107抗体、APCコンジュゲート抗CD279(PD1)抗体で染色し、続いてMACS緩衝液で洗浄し、次いでフローサイトメーター(Symphony S6 BD社)によって分析した。
【実施例1】
【0357】
モノクローナル抗TREM2結合のスクリーニング
本発明者らは、マウス抗ヒトTREM2(hTREM2)モノクローナル抗体を産生させ、精製し(上記を参照されたい)、これらのmAbのhTREM2に対する感度及び特異性結合についてスクリーニングした。スクリーニングは、最初にTREM2組換えタンパク質の結合を測定し(表2、
図5)、加えてhTREM2発現293HEK細胞に対するmAb結合能をWTと比較することにより実行した(表3、
図2~
図3、
図6のA~B)。骨髄由来マクロファージ(BMDM)が多量のTREM2を発現することが見出された。本発明者らは、ヒトTREM2(hTREM2)トランスジェニックマウスから骨髄細胞を抽出し、それらを骨髄由来マクロファージ(BMDM)の分化に使用した。hTREM2 BMDMを抗体の追加の結合スクリーニングに使用した(
図4のA~B、
図6のA~Bから
図7)。
【0358】
表1
ヒトTREM2タンパク質に対する18種のハイブリドーマ由来モノクローナル抗体の要件の概要。
純度はSDS-PAGEにより測定する。エンドトキシンの量(EU/mg)はLALアッセイにより測定する。力価は直接ELISAにより測定し、表題の値(title value)はS/B(シグナル/ブランク)が≧2.1である最高希釈である。
【0359】
【0360】
表2
ヒトTREM2タンパク質に対する18種のハイブリドーマ由来モノクローナル抗体の直接ELISA分析
コーティング抗原:His-TREM2、PBS中0.5μg/mL、pH7.4、100μl/ウェル。
抗体ストック濃度:1mg/mL
二次抗体:Peroxidase-AffiniPure Goat anti Mouse IgG、Fcg断片特異的(min X ヒト、ウシ、ウマ血清タンパク質)
力価はS/B(シグナル/ブランク)が≧2.1である最高希釈である。
【0361】
【0362】
表3-293HEK細胞をhTREM2遺伝子に安定的に感染させ、続いてピューロマイシン選択を行った。
A.細胞培養上清(Sup)を、直接ELISAによる18種のハイブリドーマ由来モノクローナル抗体の可溶性TREM2タンパク質結合能試験に使用した。
B.細胞を96ウェルプレートに捕捉し、18種のハイブリドーマ由来モノクローナル抗体の細胞ベースのELISAに使用した。
陽性細胞(hTREM2発現HEK293)及び陰性細胞(野性型HEK293)のOD値を表に示す。
【0363】
【実施例2】
【0364】
モノクローナル抗TREM2拮抗剤のスクリーニング
TREM2の機能喪失がいくつかのマウス同系腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖の低減を示したため、本発明者らは、抗TREM2モノクローナル抗体の遮断活性を効果的にスクリーニングするためのアッセイを設計した。骨髄由来マクロファージ(BMDM)は、IL-10及びTGF-βなどの抑制性サイトカインを高レベルで産生することが公知である(Wang, BMC Immunology 2013 14:6)。TREM2がBMDM細胞の成熟及び抑制機能において役割を果たしているか否かを決定するために、本発明者らは、TREM2ノックアウト(KO)マウス及びhTREM2トランスジェニック(hTREM2)マウスの大腿骨及び脛骨由来の骨髄細胞をM-SCFの存在下で7日間培養し(方法)、単一細胞RNA-seqを使用して経時的成熟経過を特徴付けた。各時点/遺伝子型からの細胞のクラスタリング分析及び2d投影により、5日目に始まり7日目に最大の表現型を示す、TREM2-KO遺伝子型とhTREM2の経過との間で相違している明確な成熟経過が示された。野性型hTREM2 BM細胞は、7日目にGpnmb、Lpl、Anxa1、Mmp12、Adam8、Lgals1、Lgals3、Spp1、及びLilrb4aの高発現を伴うM2表現型を示す一方で、TREM2-KO BM遺伝子型は、Selenop、Ms4a4a、Fcgr2b、Ms4a7、及びLyz2を含む活性化M1表現型を呈した(
図8のA~B)。TREM2に対する拮抗活性を有する抗体をスクリーニングするために、本発明者らは、hTREM2マウス骨髄細胞をM-CSFとともに培養し、培養2日目及び5日目に抗hTREM2抗体またはIgGアイソタイプを培地に添加した(10μg/mL)。単一細胞RNA-seqを使用して、7日目に細胞を特徴付け、各条件でのM2表現型(TREM2+Gpnmb+)とM1表現型(TREM2-)の間の細胞分布を特徴付けた。TREM2-KO細胞の70%超がM1表現型に達し、10%未満がM2表現型を示したのとは対照的に、hTREM2細胞は、40%がM2表現型を示し、わずか24%がM1表現型を示した。培養物にIgGアイソタイプmAbを添加すると、M1/M2比は著しく変化せず、未処理培養物と類似した結果が示されたが、抗hTREM2 mAb 54H2C1または80E3C7を添加すると、M2表現型のパーセンテージがそれぞれ12%及び16%へと劇的に低減し、M1表現型は69%及び63%に増加し(
図8のC)、TREM2-KO細胞と極めて類似した成熟経過が示された。
【0365】
in vivoの腫瘍関連マクロファージ及びMregに対する抗hTREM2 mAbの結合特異性を定量するために、本発明者らは、MCA-205誘発腫瘍を担持するヒト化TREM2マウスにおいて、ビオチンコンジュゲート抗hTREM2である54H2C1、80E3C7、及び83E10B12 mAbのELISA分析を実施した。mAb 54H2C1、80E3C7について、本発明者らは、LN、肝臓、腎臓、肺、心臓、脳、及び脾臓と比較して、腫瘍TMEにおけるmAb濃度が2倍超濃縮されていることを検出した。mAb 80E3C7は、大部分が肝臓及び腎臓に集中していた(
図9~
図10のA~Bを参照されたい)。
【実施例3】
【0366】
本発明のいくつかの実施形態の抗TREM2抗体は、ヒト単球由来マクロファージをリプログラムする
ヒトミエロイド細胞における拮抗剤TREM2 Ab E3C7の効果を調査するために、健常ドナー3名の血液から精製したCD14+単球を5日間、ヒトM-CSFの存在下でマクロファージに分化させた。得られた単球由来マクロファージ(MDM)を「M2」活性化サイトカインIL4で24時間刺激し、TAM様細胞へのMDM極性化を生じさせた。それらTAM様細胞の細胞表面へのTREM2 Abの抗体結合のフローサイトメトリー分析により、TREM2の発現を調査した(
図11)。細胞培養物を3日目からTREM2 Abまたは同等のIgG対照で処理し、続いて単球からTAMへの経過マーカー(qPCR)及びタンパク質分泌(ELISA)を分析した。
【0367】
3つの主要なカテゴリ:(a)I型インターフェロン活性-IFI6(インターフェロンアルファ誘導性タンパク質6)、(b)炎症誘発性ケモカインIL-8及びCCL23、(c)炎症時に活発に放出され、白血球動員を刺激し、サイトカイン分泌を誘導することにより重大な役割を果たす、S100カルシウム結合タンパク質A8及びA9(S100A8及びS100A9)から、代表的な遺伝子を選択した。
図12のA~Bに示すように、E3C7による細胞培養物の処理により、試験したドナー3名中3名でCCL23、IFI6、S100A8、及びS100A9の発現(A)、ならびにIL8の分泌上昇(B)が誘導された。
【0368】
結果から、拮抗剤TREM2 AbがMDM分化に干渉し、免疫抑制性TAMを炎症誘発性単球様細胞(本明細書では「M1様マクロファージ」とも称される)にリプログラムすることが実証される。
【0369】
抗TREM2 mAbで処理した単球由来マクロファージに対する抗TREM2 mAbの効果をさらに特徴付けるために、2つの分化条件(M-CSFのみまたはM-CSF+IL4)及び3つの処理(抗TREM2 E3C7、IgG対照、またはmAbなし)による単一細胞RNAシーケンシングを使用してMDM培養をプロファイリングした。6つの条件からの細胞の2d投影により、特異的なIL-4効果及び特異的な抗TREM2効果が示された(
図13のA~C)。抗TREM2 mAbで処理した細胞では、S100A8、CCL8、CCL23、及び他の炎症誘発性遺伝子の発現増加が観察され、より免疫活性の高いM1様マクロファージへの強力なリプログラミングが示された(
図14)。
【実施例4】
【0370】
抗TREM2抗体は腫瘍増殖を減弱させ、腫瘍マクロファージをリプログラムする
TREM2遮断がin vivoでマクロファージをリプログラムするか否かを試験するために、腫瘍担持マウス(MCA205同系モデル)を抗TREM2抗体(E3C7)またはIgG対照で処理した。500K個のMCA-205細胞を、ヒト化TREM2マウスに皮下注射し、6日目及び9日目にマウスを抗TREM2抗体またはIgG対照で処理し、10日目に腫瘍を採取し、scRNA-seqを使用してCD45+陽性細胞をシーケンシングした。抗TREM2(E3C7)で処理したマウスは、対照と比較してI型インターフェロンTAMの割合の増加を示し、一方でCD8機能不全T細胞(高PDCD1及びLAG3)は、E3C7処理動物において対照と比較して低減した(
図15のA~B)。IgG対照と比較したE3C7処理の腫瘍マクロファージの差次的遺伝子発現分析により、Ccl7、Ccl2、Ccl6、及びCcl12ケモカインに加えて、Ifit1、Ifit2、Irf7などのI型IFN遺伝子の増加が明らかとなった(
図16)。
【実施例5】
【0371】
抗TREM2抗体のサイトカインコンジュゲーションはミエロイドリプログラミング及びT細胞活性化を増強させる
抗hTREM2抗体と炎症性サイトカインの相乗効果を調査するために、分化中にヒト単球由来マクロファージ(hMDM)を抗TREM2抗体、ヒトIL2(200-02-50、PeproTech社)、ヒトIL15(200-15-50、peproTech社)、ヒトGM-CSF(PeproTech社、AF-315-03-1000)、ヒトIL12(R&D社、10018-IL)、または抗TREM2とサイトカインのうちの1つとの組み合わせのいずれかで処理した(
図17のA~B)。遺伝子発現分析(
図17のA)は、単球遺伝子(S100A9、S100A8)及び炎症関連遺伝子(CCL23、IFI6、CCL18)が抗TREM2処理後に上昇し、抗TREM2とIL2またはIL15との組み合わせによる処理後に増加したことを示している。加えて、炎症性サイトカイン(
図17のB)の分泌は、抗TREM2またはサイトカインの投与後に上昇し、抗TREM2とIL2またはIL15との組み合わせによる処理後に増加した。
【0372】
図18のA~Bにおける増殖性T細胞のパーセンテージの上昇によって見ることができるように、抗TREM2で処理したhMDMは、T細胞抑制能の低減を示す。さらに、この低減は、M2マクロファージまたはT細胞-マクロファージ共培養系のいずれかにIL2またはIL15サイトカインを添加した後に増殖させる。
【0373】
組換え抗ヒトTREM2抗体を、ヒトIL2サイトカインに接合させずにまたは接合させてのいずれかで生成した(
図24の表は2つのバージョンを示しており、1つはショートリンカーを有し、もう1つはロングリンカーを有しており、それぞれ配列番号496及び498または配列番号497及び499である)。
【0374】
TREM2に対する生成した抗体の結合特性を試験した(
図19のA~D)。コンジュゲート抗体は、組換え抗hTREM2抗体と同様に、組換えTREM2(
図19のA)及び可溶性TREM2(
図19のD)の両方に結合することが示された。生成した分子上のサイトカインの存在を確認するために、hTREM2に結合した抗体上でhIL2を検出した(BLG-500302、BioLegend社、
図19のB及びE)。
【0375】
次に、初代ヒトCD8+細胞及びCD4+細胞を活性化する能力について、コンジュゲート抗体を試験した(
図20のA~B)。細胞を、活性化させてまたはさせずに、抗体(10μg/ml)の存在下でまたは組換えタンパク質(100ng/ml)とともに培養した。
【0376】
増殖CD8+細胞のパーセンテージは、組換えIL2による刺激と同様に、IL2コンジュゲート抗体によって上昇することが見出された(
図20のA)。これは、活性化CD8+細胞と非活性化CD8+細胞の両方に当てはまった。組換え非コンジュゲート抗hTREM2による刺激は、増殖に影響を及ぼさなかった。IL2コンジュゲート抗体は、組換えIL2による刺激と同様に、シミュレーションの24時間後及び4日後に抗TREM2抗体と比較してCD8+細胞によるIFN-g分泌を刺激した(
図20のB)。同様に、IL2コンジュゲート抗体は、24時間時点で抗TREM2抗体と比較してCD4+細胞によるIFN-g分泌を刺激した(
図20のB)。
【0377】
TREM2発現マクロファージにIL2サイトカインを送達して所望の活性を発揮する(T細胞応答を強化する)抗体の能力を検証するために、次のとおりにin vitro実験を実施した。ヒト化TREM2マウスから骨髄由来マクロファージ(BMDM)を単離した。2つの時点で、これらの細胞を抗ヒトTREM2抗体(ヒトIL2に接合したものと接合していないものの両方)で処理し、次いで様々な処理を行ったBMDMがT細胞応答を抑制/活性化する能力を試験した。
【0378】
IL-4で刺激した骨髄由来マクロファージは、免疫抑制性表現型(M2状態)を有するため、T細胞応答を阻害する。T細胞によるIFNg放出は、T細胞の活性及び応答の直接的指標であり、T細胞はIFNgを放出するほど活性化されており、逆もまた同様である。したがって、本結果は、未処理BMDMと共培養した活性化T細胞が、活性化T細胞のみの対照と比較して実際により阻害されたことを示している。さらに、抗ヒトTREM2(recE3C7とE3C7の両方)で処理したBMDMは、未処理対照ほど、次いでアイソタイプIgG対照ほどT細胞を阻害せず、IgGアイソタイプ対照は同じ効果を生じさせなかった(
図21)。さらに、結果から、コンジュゲート抗TREM2-IL2処理(ヒトIL2のショート型及びロング型の両方)が、recE3C7 BMDMと共培養した活性化T細胞と比較した場合、T細胞応答を4.2~5倍高く強化したことが示された(
図21)。
【実施例6】
【0379】
TREM2 CAR-T細胞による腫瘍関連マクロファージ(TAM)の標的化
TREM2発現ミエロイド細胞を認識し枯渇させることを目的としたCART細胞を産生させた。この設定では、80E3C7モノクローナルAbの高親和性(低ナノモルからピコモルの範囲)認識ドメインを使用した。結果から、TREM2-CAR T細胞が、効果的な細胞傷害性応答を開始し、かつヒトTREM2発現ミエロイド細胞及び免疫抑制性マクロファージを枯渇させることができることが実証された。
【0380】
最初に、TREM2-CAR T細胞がTREM2を認識することを検証するために、TREM2発現細胞株を使用した。TREM2-CAR T細胞を、TREM2を過剰発現するHEK293と1:1の比で共培養した(
図22のA~B)。陽性対照として、活性化TREM2-CAR TをCD3/CD28ビーズとともに使用し、またCD19-CAR培養物をA20細胞株とともに使用した。さらに、モックCARを形質導入したT細胞(BFP T細胞)及びTREM2発現のないHEK293を使用した。24時間後にIFN-γ ELISAを実施したところ、TREM2を過剰発現するHEK293と共培養した場合にCAR-TREM2 T細胞の劇的なIFN-γ分泌が示された。CD19-CAR T細胞及びビーズ活性化にのみ一致する有意な増加を示す活性化(CD25及びPD1)及び死滅(CD107)に関するマーカーを用いたフローサイトメトリーを使用して、結果を検証した。HEK293との非特異的応答は観察されなかった。これらの結果から、TREM2に対するCAR-TREM2 T細胞の応答が非常に特異的かつ強力であることが示された。
【0381】
この知見をヒト環境で検証するために、CD14+単球をヒト血液から精製し、細胞を1週間にわたりTAM様細胞及び樹状細胞に分化させた。TREM2-CAR T細胞を、両方の産物及び未分化ヒトCD14+とともに1:1の比で培養した(
図22のC~E)。陽性対照として、活性化TREM2-CAR T細胞をCD3/CD28ビーズとともに使用し、またHEK293 TREM2+とともに培養した。先と同様に、モックCARを形質導入したT細胞(BFP T細胞)を陰性対照として使用した。
図22のCに示すように、24時間後、TREM2-CAR T細胞とともに培養したヒトTAM様細胞を呈する全てのマクロファージが完全に一掃されたことが観察されたが、モックT細胞は何らの応答も示さなかった。IFNg ELISA及びフローサイトメトリー分析を上記のとおりに再度実施した。本結果は、ヒト環境においても、ヒトTAM様細胞を枯渇させる際のTREM2-CAR T細胞の特異性及び細胞傷害性能が高いことを示す。
【0382】
TREM2-CAR T細胞の特異性及び効力をさらに検証するために、ヒト化TREM2マウス、TREM2
KOマウス、及びwtマウスの骨髄由来細胞から分化させたBMDM及びBMDC(
図12のF)を比較した。上記と同様の実験設定を使用した。本結果から、TREM2-CAR T細胞をヒト化TREM2マウス由来の分化細胞とともに培養した場合のみ、有意に強力な殺傷応答が示された。
【0383】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替例、修正例、及び変形例が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広範な範囲内に入る全てのかかる代替例、修正例、及び変形例が包含されることが意図される。
【0384】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書に援用されることが具体的かつ個々に示されているのと同程度まで、その全体が参照により本明細書に援用される。加えて、本出願における任意の参照文献の引用または特定は、かかる参照文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されてはならない。セクション見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0385】
加えて、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【配列表】
【国際調査報告】