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特表2024-532715組み立てられた構造におけるシステム識別のためのControlled Blocked Force加振器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】組み立てられた構造におけるシステム識別のためのControlled Blocked Force加振器
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G01M7/02 H
G01M7/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506949
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022071510
(87)【国際公開番号】W WO2023012089
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】17/396,412
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンディ ムーアハウス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュトゥアム
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ウィーン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヤンコニス
(57)【要約】
システム応答関数をインサイチュで決定する方法及びシステム。1つの例示的な方法は、Controlled Blocked Force加振器を較正用受振構造に結合することを含む。方法はまた、Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件の下で動作させて、較正用受振構造において振動を誘起させることと、較正用受振構造の応答データを測定することとを含む。方法はさらに、較正用受振構造の応答データに基づいて、Blocked Forceを決定することを含む。方法はまた、Controlled Blocked Force加振器をターゲット受振構造に結合することを含む。方法はさらに、Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件の下で動作させて、ターゲット受振構造において振動を誘起させることと、ターゲット受振構造の応答データを測定することとを含む。方法はまた、ターゲット受振構造の応答データをBlocked Forceに関連付けることにより、システム応答関数を決定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム応答関数を決定する方法であって、
Controlled Blocked Force加振器を較正用受振構造に結合することと、
前記Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させることと、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記較正用受振構造の応答データを測定することと、
前記較正用受振構造の応答データに基づいて、Blocked Forceのセットを決定することと、
前記Controlled Blocked Force加振器をターゲット受振構造に結合することと、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることと、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記ターゲット受振構造の応答データを測定することと、
前記ターゲット受振構造の応答データを前記Blocked Forceのセットに関連付けることにより、システム応答関数のセットを決定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、さらに、
前記Controlled Blocked Force加振器を動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることと、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記動作条件のセットの下で動作させながら、前記ターゲット受振構造の第2の応答データを測定することと、
前記システム応答関数のセット及び前記ターゲット受振構造の第2の応答データに基づいて、実稼働力のセットを決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、さらに、
前記システム応答関数のセット及び前記実稼働Blocked Forceのセットに基づいて、伝達経路解析モデルを決定すること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記較正用受振構造の応答データは、前記較正用受振構造の少なくとも1つのポイントのインサイチュ経路入力データを含み、
前記較正用受振構造の応答データに基づいて前記Blocked Forceのセットを決定することは、前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記較正用受振構造の前記少なくとも1つのポイントを通る前記インサイチュ経路入力データに応じて、前記較正用受振構造に作用する構造荷重及び音響荷重を特徴付ける少なくとも1つのパラメトリック荷重モデルを識別することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記較正用受振構造と前記ターゲット受振構造とは、同等の構造である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記較正用受振構造と前記ターゲット受振構造とは、異なる構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記較正用受振構造は、剛体の受振器であり、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記較正用受振構造の応答データを測定することは、結合界面において前記Controlled Blocked Force加振器と前記較正用受振構造との間に配置されたロードセルのセットを使用して、前記Blocked Forceのセットを測定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記Controlled Blocked Force加振器は、前記較正用受振構造に弾性的に取り付けられており、
前記較正用受振構造の応答データは、1つ又は複数の自由速度測定値を含み、
前記較正用受振構造の応答データに基づいて前記Blocked Forceのセットを決定することは、前記1つ又は複数の自由速度測定値及び結合界面における所定のシステム応答関数に基づいて、前記Blocked Forceのセットを決定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させることは、前記Controlled Blocked Force加振器に含まれる1つ又は複数の組込み型振動発生機構を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させることを含み、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることは、前記1つ又は複数の組込み型振動発生機構を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、さらに、前記Controlled Blocked Force加振器に1つ又は複数の外部振動発生機構を適用することを含み、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させることは、前記1つ又は複数の外部振動発生機構を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させることを含み、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることは、前記1つ又は複数の外部振動発生機構を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
システム応答関数を決定するシステムであって、
Controlled Blocked Force加振器と、
較正用受振構造と、
ターゲット受振構造と
を備え、前記システムは、
前記Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記較正用受振構造において振動を誘起させ、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記較正用受振構造の応答データを測定し、
前記較正用受振構造の応答データに基づいて、Blocked Forceのセットを決定し、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させて、前記ターゲット受振構造において振動を誘起させ、
前記Controlled Blocked Force加振器を前記制御された動作条件のセットの下で動作させながら、前記ターゲット受振構造の応答データを測定し、
前記ターゲット受振構造の応答データを前記Blocked Forceのセットに関連付けることにより、システム応答関数のセットを決定する、
ように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
例えば、乗用車などの車両から掃除機又は他の様々な製品に至るまで、多くの製品において優れた騒音・振動・ハーシュネス(“NVH”)品質を達成するために、完全に組み立てられた構造における構造伝播雑音の診断及び予測を実行するための様々な工学技術又はツールが使用されている。伝達経路解析(“TPA”)は、その一例である。TPAのメリットの1つは、複雑な構造を個別の加振源(荷重)及び伝達経路に分解できることである。このように分解することにより、雑音源及び振動源をランク付けしたり、誘起された振動の接続受振器への伝達を調べたり、その他の解析を容易に行うことができる。その結果として、TPAは、特に自動車産業において広く使用されているNVH工学ツールである。
【0002】
しかし、TPAには限界がある。古典的なTPAは、周波数応答関数(“FRF”)などのシステム応答関数(SRF)を測定するために発生源を取り外した後に、アセンブリの動作測定のために再装着する必要がある、固有の労働集約的な逆解析手法のため、適用に時間がかかる。加えて、発生源と受振器との切り離しは、TPAモデルに誤差を引き起こす可能性がある。古典的なTPAは、振動する構成要素を接触力によって特徴付けているため、振動する構成要素からのデータは、取得される発生源-受振器アセンブリに対してのみ有効である。車両から離れて構成要素を開発する場合、この情報は限られた用途にしか使用できない。
【0003】
近年、in-situ blocked force法が、構造伝播音の発生源の独立した特性評価のための有望な手法として浮上してきた。発生源-受振器界面におけるBlocked Forceを間接的に測定するために行列反転を用いるin-situ blocked force手法は、古典的なTPAで使用される逆力合成に類似している。しかし、大きい相違点は、すべての測定がインサイチュ(in-situ)にて行われることである。これにより、動作測定とFRF測定との不整合の原因となり得る面倒な切り離し段階が不要となる。In-situ TPA(“iTPA”)手法は、信頼性にほとんど影響を与えることなく、従来のTPAよりも約50%高速に適用できることが判明している。Blocked Forceの不変特性により、インサイチュで測定された発生源データは、異なるアセンブリ間で伝達可能である。このため、同様の条件の下で動作させられる発生源を異なるアセンブリ(例えばベンチ及び車両)において比較したり、ある設備(例えばベンチ)によるBlocked Forceを採用して、異なる発生源-受振器の組合せ(例えば車両)による振動又は放射音を予測したりすることができる。後者の適用は、仮想音響プロトタイピング(“VAP”)として知られている。自動車VAPに関連する最近の研究は、電動パワーステアリング(“EPS”)システムなどの自動車メカトロニクスシステムによって誘起された雑音を予測し、可聴化することを目的としている。他の研究分野においては、透過度に基づくTPA法のために、In-Situ Blocked Forceを使用することに焦点を当てている。
【0004】
In-situ blocked force TPA手法の欠点の1つは、時間のかかるシステム識別及び診断ステップを伴うことであり、TPAを標準的な工学ツールとして日常的に使用することは困難である。例えば、iTPAを実行して、EPSによるステアリング操作によって誘起された雑音が乗用車の室内音全体に与える寄与分を定量化する場合、詳細レベルにもよるが、最大で1週間かかる。(手動で)左/右のステアリング操作を実行して実稼働データを収集することは数分で済むが、前述のすべてのTPA手法で必要とされる複雑な自動車アセンブリに必要とされるシステム識別ステップは、時間効率の良い方法によって実行することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
本開示は、複雑な技術的構造においても、正確かつ時間効率の良い方法により多入力多出力(“MIMO”)システムの識別(すなわち、同時に行われるすべての物理的に関連する伝達経路の識別)及び診断を容易にするControlled Blocked Force加振器システム及び方法を提供する。本明細書において前述した例を参照すると、開示されるシステム及び方法を使用して、ステアリング操作によって誘起されたEPS雑音を診断することによって、本質的に振動源全体を制御可能な多DOF(「自由度」)のBlocked Forceシェーカに変換することにより、乗用車においてiTPAを実行する総時間をわずか数分に短縮することができる。このように、Blocked Forceの不変性を利用することによって、以下においてより詳細に説明するような利益が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、(以下においてより詳細に説明する)システム応答関数をインサイチュで決定する方法を提供する。方法は、Controlled Blocked Force加振器を較正用受振構造に結合することを含む。方法はまた、Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件のセットの下で動作させて、較正用受振構造からの応答データ(例えば動的反力(例えばBlocked Force)及び振動応答(例えば、変位、加速度など))を発生させることを含む。いくつかの実施態様においては、方法は、Controlled Blocked Force加振器を制御された動作条件のセットの下で動作させながら、較正用受振構造の応答データを測定することをさらに含む。方法はまた、較正用受振構造の応答データ(例えば、直接的に測定されたもの、又は、例えば行列反転手順を使用して間接的に測定されたもの)に基づいて、Blocked Forceのセットを決定することを含む。方法はさらに、Controlled Blocked Force加振器をターゲット受振構造に結合することを含む。方法はまた、Controlled Blocked Force加振器を同等の制御された動作条件のセットの下で動作させて、ターゲット受振構造において振動を誘起させることを含む。方法はまた、Controlled Blocked Force加振器を同等の制御された動作条件のセットの下で動作させながら、ターゲット受振構造の応答データを測定することを含む。方法はまた、ターゲット受振構造の応答データを較正測定中に使用されたBlocked Forceのセットに関連付けることにより、システム応答関数のセットを決定することを含む。
【0007】
同様の参照番号が別個の図面の全体を通して同一の要素又は機能的に類似した要素を指し示す添付の図面は、以下の詳細な説明と共に本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成し、実施態様をさらに説明し、その実施態様の様々な基本方式及び利点を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定するための、較正用アセンブリを含むシステムの一例のブロック図である。
図1B】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定するための、ターゲットアセンブリを含むシステムの一例のブロック図である。
図2】いくつかの実施態様による、電気モータを制御することによってBlocked Forceを発生させる、図1A及び図1Bのシステムにおいて使用され得る電子コントローラの形態をした制御機構の一例のブロック図である。
図3】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定する方法のフロー図である。
図4A】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定するための正逆的な方法の一例のステップのブロック図である。
図4B】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定するための正逆的な方法の一例のステップのブロック図である。
図4C】いくつかの実施態様による、システム応答関数をインサイチュで決定するための正逆的な方法の一例のステップのブロック図である。
図5A】人工加振を使用した予測伝達関数と測定伝達関数の一例のグラフである。
図5B】実稼働加振を使用した予測伝達関数と測定伝達関数の一例のグラフである。
図5C】完全に組み立てられたテスト構造の図である。
図6】いくつかの実施態様による、電動パワーステアリングシステムにおいてMIMOシステムの識別をインサイチュで行う方法の一例のフロー図である。
【0009】
システム及び方法の構成要素は、本明細書の説明の利益を有する当業者にとって容易に理解される詳細によって本開示を不明瞭にしないように、実施態様を理解することに関係する特定の詳細のみを示す従来の記号によって適宜図面に表されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
システム応答関数(“SRF”)は、コロケーション又はノンコロケーションのいずれかの自由度(“DOF”)で物理システムに作用する少なくとも1つの入力信号(例えば、力又はモーメントなどの動的荷重)に対して、少なくとも1つの出力信号(例えば、振動、音圧、又は、他のタイプの応答)によって応答する物理システムの感度の数学的な記述(例えば、実験から導出された理論モデル)である。システム応答関数は、時間領域、周波数領域、モード領域、状態空間領域、又は、物理領域で表すことができる。周波数領域のシステム応答関数は、例えば周波数応答関数(“FRF”)であり、時間領域のシステム応答関数はフィルタ(例えば数学的フィルタ)として機能する。システム応答関数は、入力ポイントと応答ポイントとの間で測定することができる。これは、応答に対する荷重(Blocked Load)の伝達を数学的に表現することができる。
【0011】
システム応答関数の測定は、以下においてより詳細に説明するように、インサイチュで行うことができる。システム応答関数は、透過度、すなわち、同一の物理量で共に表されるシステム入力信号と対応する出力信号との数学的関係として表すことができる。透過度タイプのシステム応答関数の例は、力(Blocked Force)の透過度、加速度/速度の透過度、及び、等価な周波数応答関数の数学的関係(例えば、基礎となる信号及び/又は周波数応答関数データが得られる加速度/移動度/インピーダンス比)によって表される透過度である。システム応答関数の性質は、アセンブリの伝播特性の構造的な記述、音響的な記述、振動音響的な記述、又は、他の記述(例えば、油圧(流体)圧力など)を含み得る。同一のアセンブリで測定されるシステム応答関数は、同様のタイプであることもそうでないこともある。例えば、異なる伝播/伝達経路は、システムの様々な応答自由度において、異なる領域において、同一の(例えば、FRFタイプのSRF)又は異なる(例えば、透過度タイプのSRF)入力/出力量の比率として又はこれらの組合せとして、異なる量によって表現することができる。
【0012】
図1A及び図1Bは、システム応答関数をインサイチュで決定するシステム100の例のブロック図である。図1A及び図1Bに示されるシステム100は、Controlled Blocked Force加振器105及び制御機構110を含む。制御機構110は、制御された力及び/又は振動を誘起させるように構成される1つ又は複数のデバイスを表す。図1Aに示されるControlled Blocked Force加振器105は、結合界面117Aにおいて較正用受振構造115に結合されて、較正用アセンブリ120を形成している。図1Bに示されるControlled Blocked Force加振器105は、結合界面117Bにおいてターゲット受振構造125に結合されて、ターゲットアセンブリ130を形成している。いくつかの実施態様においては、Controlled Blocked Force加振器105は、分離可能な構成要素である。以下においてより詳細に説明するように、Controlled Blocked Force加振器105は、制御機構110を介して制御可能な振動源である。いくつかの実施態様においては、Controlled Blocked Force加振器105は、1つ又は複数の組込み型振動発生機構を含む。組込み型振動発生機構の例としては、電気モータ、電気モータを備える構成要素群(例えば、機械的歯車に接続された電気モータ)、及び、再現可能な振動を発生させる他の制御可能なデバイス(例えば、ポンプ、制御可能なバルブ、インジェクタ、コンプレッサ、燃焼機械、制動システムなど)が挙げられる。代替的に又は付加的に、Controlled Blocked Force加振器105は、1つ又は複数の外部振動発生機構を含む。外部振動発生機構は、結合界面117Aにおいて再現可能な(等価な)振動場を形成するために、Controlled Blocked Force加振器105の構造に設置された任意のタイプの装置を含み得る。このような装置は、較正用アセンブリ120又はターゲットアセンブリ130の、特に結合界面117Bにおける構造的な動的特性を変化させない。少なくともこの理由から、制御された振動を引き起こすための外部振動発生機構として具現化されるほとんどの装置は、概して、テストされる物理システムに対して比較的軽量かつ小型である。これらの要件を一般的に満たすような計測器の例としては、小型の振動加振器、いわゆる「ミニシェーカ」(電気力学的又は電磁気学的原理)、及び、衝撃ハンマが挙げられる。加えて、組込み型振動発生機構として上述したデバイスと同様/同一に作用する任意のタイプの装置が、制御可能であって、かつ、Controlled Blocked Force加振器105の構造に取り付け可能/適用可能である限り、外部振動制御機構(換言すれば、制御機構110の事例)の目的を果たすことができるが、定義上、実際の物理的発生源の一部ではない。物理的構造に十分に加振するために、Controlled Blocked Force加振器105は、少なくとも1つの位置、通常は複数の異なる位置で加振される。いくつかの実施態様においては、このことは、同一の加振デバイスを使用して異なる位置において連続的に加振することによって達成されるが、デバイスは、各加振の後に新しい位置に移動させられる。他の実施態様においては、このことは、固定された複数の位置で同等の又は異なるタイプの複数の振動デバイスを構造に装着し、これらの外部デバイスを連続的又は同時に動作させることによって達成される。
【0013】
Controlled Blocked Force加振器105は、制御機構110を介して制御可能な振動源である。その動作状態により、Controlled Blocked Force加振器105は、較正用受振構造115及びターゲット受振構造125において振動を誘起させる。例えば、図1Aにおいては、Controlled Blocked Force加振器105は、界面(v)において振動V [1]、界面(r)において振動V [1]、界面(a)において構造伝播音p [1]を引き起こす。さらなる例として、図1Bにおいては、Controlled Blocked Force加振器105は、界面(v)において振動V [2]、界面(r)において振動V [2]、界面(a)において構造伝播音p [2]を引き起こす。Controlled Blocked Force加振器105の発生源メカニズムは未知であり、Controlled Blocked Force加振器105をBlocked Force(f)によって結合界面117Bにおいて特徴付ける必要がある。Controlled Blocked Force加振器105に固有のBlocked Forceとアセンブリ応答(v)及び(p)との関係は、それぞれ構造的(Y)及び振動音響的(H)なアセンブリのシステム応答関数(SRF)として表される。本明細書においては、“Blocked Force”なる用語は、“Blocked Load”なる用語と互換的に使用されることを理解されたい。加えて、“Blocked Load”なる用語は、物理的又は数学的にブロックされた又は制限された境界条件の下で発生源(例えば1つ又は複数の力の発生源)が適用する荷重を指す。
【0014】
較正用受振構造115及びターゲット受振構造125は、受動的な受振器の例である。較正用受振構造115及びターゲット受振構造125の内部には、能動的な振動発生機構が存在しない。いくつかの実施態様においては、較正用受振構造115及び/又はターゲット受振構造125は、Controlled Blocked Force加振器105、テストベンチ、又は、基礎構造(例えば建物)以外の、組み立てられた機械(例えば装置)の他の部分を含み得る。
【0015】
図2は、制御機構110の一例のブロック図である。図2には、制御機構110が電子コントローラ200を含む特定の実施形態が示されている。図2に示されている電子コントローラ200は、電子プロセッサ205(例えば、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、ASIC、SoC、又は、他の電子コントローラ)、メモリ210、及び、入出力インタフェース215を含む。センサ220が、いくつかの実施態様においては、電子コントローラ200に接続される。いくつかの実施態様においては、バイブレータ又はシェーカ/モータ230が電子コントローラ200に接続される。いくつかの実施態様においては、電子コントローラ200は、ユーザインタフェース225及びバス230を含む。バス230は、例えばメモリ210を含む、電子コントローラ200の様々な構成要素を電子プロセッサ205に接続する。メモリ210は、読み取り専用メモリ(“ROM”)、ランダムアクセスメモリ(“RAM”)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(“EEPROM”)、他の非一過性のコンピュータ可読媒体、又は、これらの組合せを含む。電子プロセッサ205は、いくつかの実施態様においては、メモリ210からプログラム命令及びデータを取り出し、特に、本明細書において説明する方法を実行するための命令を実行するように構成される。代替的に又は付加的に、メモリ210は、電子プロセッサ205に含まれる。入出力インタフェース215は、電子コントローラ200の内部の構成要素と、システム100の他の構成要素及びシステム100の外部の構成要素との間で情報を伝達するための回路及び他の機構を含む。入出力インタフェース215は、ワイヤ、ファイバ、ワイヤレス、又は、これらの組合せによって信号を送受信するように構成される。信号としては、例えば、制御信号、情報、データ、シリアルデータ、データパケット、アナログ信号、又は、これらの組合せを挙げることができる。例えば、電子コントローラ200は、入出力インタフェース215によって、Controlled Blocked Force加振器105の振動発生機構に制御信号を送信することができ、これにより、振動発生機構を制御された動作条件のセットの下で動作させる。センサ220は、較正用アセンブリ120及びターゲットアセンブリ130の、例えば、応答、振動、音響などを検出及び測定するように構成される。例えば、いくつかの実施態様においては、センサ220は、Controlled Blocked Force加振器105と較正用受振構造115との間に配置されたロードセルのセットを含む。ロードセルはまた、結合部117A/Bとは異なる界面における「制御された加振」を監視するために、後処理システムの間に又は後処理システムの一部として組み込むことができる。このため、センサは、結合界面117A/Bではなく、発生源自体に配置することもできる。
【0016】
一例においては、ユーザインタフェース225は、例えば、1つ又は複数の入力機構(例えば、タッチスクリーン、キーパッド、ボタン、ノブなど)、1つ又は複数の出力機構(例えば、ディスプレイ、スピーカなど)、又は、これらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、ユーザインタフェース225は、電子プロセッサ205によって実行されたソフトウェアアプリケーションによって生成された視覚的出力を表示する接触検知インタフェース(例えば、タッチスクリーンディスプレイ)を含む。視覚的出力としては、例えば、グラフィカルインジケータ、光、色、テキスト、画像、グラフィカルユーザインタフェース(“GUI”)、これらの組合せなどが挙げられる。
【0017】
他の場合には、電子コントローラ200以外の制御機構を使用して、制御された状態を実施できることに留意すべきである。例えば、モータに印加される電圧を制御するアナログ制御システムを使用することができる。例えば、モータに接続された電源をオン/オフするためにスイッチを使用することができる。その他の制御機構については、本明細書の他の箇所で説明する。
【0018】
システム100は、発生源を特性評価するステップ及びシステムを識別するステップからなる2段階の手順により、システム応答関数(例えば、構造的及び振動音響的な周波数応答関数)のインサイチュでの決定を実行するように構成される。発生源を特性評価するステップにおいては、システム100は、特殊なテストリグ(例えば、Blocked Forceを直接的に測定するための完全に剛体の受振器、若しくは、自由速度を測定するための弾性的に取り付けられた受振器)、又は、(例えば、in-situ blocked force法若しくはハイブリッド法を使用する)任意の発生源-受振器設備のいずれかにおいて測定された結合界面117AにおけるBlocked Forceを用いて、Controlled Blocked Force加振器105の発生源強度を特徴付ける。いくつかの実施形態においては、発生源のすべての関連する動作状態を考慮するために、複数のBlocked Forceのセットが決定される。提示された例においては、システム識別ステップは、Blocked Forceの不変性を利用する。Controlled Blocked Force加振器105は、較正用アセンブリ120又はターゲットアセンブリ130の振動及び/又は音圧応答を測定しながら、発生源を特性評価するステップと同等の制御された動作条件の下で動作させられる。Controlled Blocked Force加振器105の発生源-受振器界面におけるBlocked Forceの出力が、発生源を特性評価するステップから既知であるため、アセンブリのシステム応答関数は、Blocked Forceの入力に対するアセンブリの応答の比率として計算することができる。これにより、Controlled Blocked Force加振器105は、任意のアセンブリにおいて多入力多出力(“MIMO”)システムの識別を実行することができる。MIMOシステムの識別は、例えば、伝達経路解析(“TPA”)、仮想音響プロトタイピング(“VAP”)などの予測手法など、上述したものを含むシステム診断技術の重要な部分である。
【0019】
図3は、システム応答関数をインサイチュで決定する方法300の一例のフロー図である。図3に示されている方法300は、較正測定部分305及びシステム識別測定部分310を含む。較正測定部分305の目的は、Controlled Blocked Force加振器105が制御され十分に再現可能な条件の下で動作させられるときに、Controlled Blocked Force加振器105の発生源出力強度(すなわち、活動)を較正用アセンブリ120又はテスト環境とは無関係に、そのすべての結合自由度(結合界面117Aによる結合DOF)において特徴付けることである。較正測定部分305は、ブロック315において、Controlled Blocked Force加振器105を較正用受振構造115に結合することを含む。ブロック320において、Controlled Blocked Force加振器105は、制御された動作条件のセットの下で動作させられて、較正用受振構造115において振動を誘起させる。ブロック325において、Controlled Blocked Force加振器105が制御された動作条件のセットの下で動作させられている間、較正用受振構造115の応答データが測定される。例えば、一実施態様においては、制御機構110に接続されたセンサ220の1つ又は複数が、較正用受振構造115の応答データを測定することができる。ブロック330において、Blocked Forceのセットが、較正用受振構造115の応答データに基づいて決定される。決定されたBlocked Forceのセットは、Controlled Blocked Force加振器105の出力強度を、セットアップとは無関係に、その定義された接触自由度において記述するために十分である。以下においてより詳細に説明するように、Controlled Blocked Force加振器105の(受振器に)依存しない特性評価は、任意の(ターゲット)アセンブリにおけるシステム識別を実行するためにシステム識別測定部分310において使用される。
【0020】
ブロック325における測定とブロック330におけるBlocked Forceの決定とは、異なる方法により達成することができる。いくつかの実施態様においては、較正用受振構造115は、剛体の受振器であり、Blocked Forceは、Controlled Blocked Force加振器105と較正用受振構造115との間、すなわち、結合界面117Aの力の流れにロードセルのセットを挿入することによって直接的に測定される。代替的に又は付加的に、Controlled Blocked Force加振器105は、較正用受振構造115に弾性的に取り付けられ、自由速度は(ISO 9611に従って)結合界面117Aにおいて測定される。後続の変換ステップは、Controlled Blocked Force加振器105の接触自由度における構造的な動的特性を示す何らかのタイプのシステム応答関数(すなわち、所定のシステム応答関数のセット)を利用する。代替的に又は付加的に、Blocked Forceは、Controlled Blocked Force加振器105を(ISO/CD 21955に従って)特別に設計された較正用受振構造で動作させることによって発生した動力の転置を用いて決定される。代替的に又は付加的に、Blocked Forceは、(例えば、ISO 20270:2019に規定されるような)in-situ blocked force法を使用して間接的に測定される。
【0021】
方法300のシステム識別測定部分310においては、Controlled Blocked Force加振器105は、その固有のBlocked Loadと等価な振動をすべての既存の結合DOFによってターゲット受振構造125において誘起させる較正された(多DOF)振動加振器として使用される。図3に示されるシステム識別測定部分310は、ブロック335において、Controlled Blocked Force加振器105をターゲット受振構造125に結合することを含む。いくつかの実施態様においては、較正用受振構造115とターゲット受振構造125とは、同様の構造である。例えば、上述のin-situ blocked force法を採用する場合、較正用受振構造115とターゲット受振構造125とは、同様の構造であるものとしてよい。ブロック340において、Controlled Blocked Force加振器105は、ターゲット受振構造125において振動を誘起させる制御された動作条件のセットの下で動作している。ブロック340において使用される制御された動作条件のセットは、ブロック320において使用された制御された動作条件のセットと同一であり又はその代表的なものであることに留意されたい。ブロック345において、Controlled Blocked Force加振器105が制御された動作条件のセットの下で動作している間、ターゲット受振構造125の応答データが測定される。例えば、制御機構110に接続されたセンサ220の1つ又は複数が、ターゲット受振構造125の応答データを測定することができる。ブロック350において、システム応答関数のセットが、ターゲット受振構造125の応答データをBlocked Forceのセットに関連付けることによって決定される。例えば、シェーカを採用するシステム応答関数の測定においては、システム応答関数は、少なくとも1つのシステム出力信号(例えば、振動又は音響応答)を駆動入力信号(例えば、振動加振器を利用して誘起された動力)に関連付けることから得られる。
【0022】
本明細書において説明するシステム及び方法の少なくともいくつかは、すべての既存の結合DOF(入力DOF)及びすべての既存の出力DOFについてシステム応答関数を並列に決定する。(較正測定部分305で実行される)(受振器)に依存しない特性評価により、Controlled Blocked Force加振器105は、制御可能かつ再現可能な同様の又は代表的な条件の下で動作させられた場合、同様の(仮想的な)固有のBlocked Loadをターゲット受振構造125に及ぼす。これにより、(較正用受振構造115とターゲット受振構造125とが同一の場合に)本質的に同等の振動場又は(較正用受振構造115とターゲット受振構造125とが異なる場合に)等価の振動場が形成される。少なくともこの理由から、従来のシステム応答関数の測定で必要とされる入力測定は、ターゲット受振構造125において制御された十分に再現可能な同等の動作状態で測定された出力信号を、較正測定部分305において得られた対応するBlocked Forceのセットに(数学的に)関連付けることによって代替される。換言すれば、従来のシステム識別方法は、適用された動的な入力信号を物理的なターゲットアセンブリにおいて測定することを必要とする。前述のように、本明細書において説明するシステム及び方法の少なくともいくつかは、適用された動的な入力信号を測定する必要がない。
【0023】
決定されたシステム応答関数は、様々な後続の(又は並列の)システム診断アプリケーションに使用することができる。例えば、いくつかの実施態様においては、システム100はさらに、インサイチュでのシステム診断(例えば任意のTPA)を実行するように構成されている。システム診断は、振動又は音響が役割を果たす可能性があり、かつ、開示されるシステム及び方法を利用して直接的に又は間接的に得られるデータが関与する、物理システム又は物理システムのモデルの振動及び/又は音響伝達経路に関連するデータを特性評価及び/又は解析するための方法として定義される。システム診断のために、Controlled Blocked Force加振器105は、ターゲット受振構造125に結合されて、物理的発生源の意図された使用を示す振動場を発生させている間に動作させられる。例えば、Controlled Blocked Force加振器105は、動作条件のセットの下で動作させられて、ターゲット受振構造125において振動を誘起させる。応答データ(「第2の応答データ」の例)が、Controlled Blocked Force加振器105を動作条件のセットの下で動作させながら、ターゲット受振構造125について測定される。いくつかの実施態様においては、後処理システム(例えば、解析ソフトウェア(例えば、MATLABソフトウェア)を実行するコンピュータ)は、次いで、システム応答関数のセット及びターゲット受振構造125の第2の応答データに基づいて、実稼働力のセットを決定することができる。代替的に又は付加的に、後処理システムは、システム応答関数のセット及び実稼働力のセットに基づいて、伝達経路解析モデルを決定することができる。代替的に又は付加的に、後処理システムは、システム応答関数のセットを使用して、ターゲットアセンブリ130における構造的なシステム応答、音響的なシステム応答又は他のタイプのシステム応答を決定することができる(例えばオンボード検証)。代替的に又は付加的に、後処理システムは、(例えば、予測/モデル精度の向上、仮想ツインの検証若しくは設計、寿命にわたる反復測定研究における摩耗及び損傷事象の評価、又は、任意のタイプのモデルに基づく状態監視のために)システム応答関数のセットを使用して、数値データ、解析データ及び実験データの更新をモデル化することができる。代替的に又は付加的に、後処理システム110は、(例えば、少なくとも1つの数学的方法又は数値的方法を使用して構成要素を交換することにより、同様の又は異なる物理システム、数学システム又は数値システムにおいて構造の動的特性を調整又は設計するために)システム応答関数のセットを利用して、任意のタイプの動的なサブ構造化(結合/切り離し)を実行することができる。代替的に又は付加的に、後処理システムは、Controlled Blocked Force加振器105を使用して異なる又は同一のアセンブリにおける測定から得られたデータを含む、任意の他の診断タスク又は予測タスクを実行することができる。
【0024】
いくつかの実施態様においては、移動式計測器が使用される既存の(伝統的な)システム識別方法(例えば、FRF又はモード試験に使用される方法)と比較して、すべての結合DOFと任意の数の(任意に配置された)出力DOFとの間のシステム応答関数のセットを並列に測定することができる。計測器の再配置が必要なため、(i)ターゲットアセンブリへのセンサ/加振器の接続(例えば、局所的な質量荷重、硬化、減衰など)と、(ii)加振と応答DOFとの不整合と、(iii)実験者によってもたらされた誤差(例えば、DOF又は方向の混同)及び/又は衝撃ハンマ/シェーカを用いるスキルの不足と、に関連するエラーが発生する可能性がある。
【0025】
いくつかの実施態様においては、Controlled Blocked Force加振器105は、特にControlled Blocked Force加振器105とターゲット受振構造125とが接続される結合界面117Bにおいて、追加の計測器を必要とすることなく、その意図された用途のために意図されたようにターゲット受振構造125に結合されたままである。インサイチュ設備により、システム識別測定部分310は、(所与の用途に対して)理想的な境界条件の下で、全く完全な界面の記述で行われることが保証される。このことは、関心のある加振周波数の範囲内で、実在するすべての界面モードが、識別されたシステム応答関数において暗黙的に考慮されることを意味し、したがって、物理システムのより正確なシステムモデルを提供する。
【0026】
いくつかの実施態様においては、識別されたシステム応答関数が、同一の設備における後続のシステム診断に使用される場合、システム応答関数と追加的に必要とされる実稼働データとに互換性があり、例えばTPA中に計算されるような部分経路の寄与分が、他の既存の方法を用いるよりも正確に予測される。
【0027】
いくつかの実施態様においては、測定時間は、システム識別測定部分310の間、最小限に短縮される。いくつかの実施態様においては、物理的な伝達経路の高レベルの詳細を提供する完全な車両モデルを導出するためには、所望のターゲット位置(例えば、車両内の運転者の耳)に配置された単一の応答測定デバイス(例えばマイクロフォン又は加速度計)で十分である。
【0028】
いくつかの実施態様においては、同一の(直接の)加振機構(すなわち、Controlled Blocked Force加振器105)を使用して、異なるタイプのシステム応答関数(例えば、構造的な感度関数、振動音響的な感度関数、及び/又は、他の感度関数)が測定される。計測器のコスト、必要なスキル、データの一貫性、全体的な労力と時間を大幅に削減することができ、正逆的な測定が全く必要とされない。
【0029】
いくつかの実施態様においては、Controlled Blocked Force加振器105に応じて、ターゲットアセンブリ130内のシステム識別測定部分310及び/又はシステム診断部分の一部を、部分的又は完全に自動化することができ、そのため、再現性が高くなり、訓練を受けていない実験者によって使用することができる。
【0030】
較正測定部分305を行うためにin-situ blocked force法が使用されるいくつかの実施態様においては、較正用アセンブリ120は、結合界面117Aへのアクセス可能性が保証されるように特別に設計することができ、又は、システム入力及び出力のDOFを、較正測定部分305及びシステム識別測定部分310の計測/測定に好都合な方法により選択することができる。
【0031】
いくつかの実施態様においては、一度較正されたControlled Blocked Force加振器105は、同一の又は複数の異なるターゲットアセンブリにおいて複数回使用することができる。測定の時間及び労力の大幅な節約に加えて、この実施態様は、測定/加振器の一貫性を保証することに関して重要であり、したがって、未較正の又は異なる装置による実験誤差を低減する。異なる装置の使用に関連する相対誤差、及び/又は、異なる装置及び/又は方法を使用して得られたデータの組合せによる誤差が低減される。
【0032】
上で開示された手法は、下部構造(発生源及び受振器)を単に逆にすることによって、相互に適用することもできる。図4A乃至図4Cに描かれているように、正逆的な方法は、3つの後続ステップ(ステップ405、ステップ410、ステップ415)を含む。図4Aにおいて、受振器420は、結合界面427において第1の発生源425に結合されて、第1のアセンブリ430を形成する。図4Aに示されているステップ405は、例えばシェーカなどの外部の制御可能な振動発生機構435を含むBlocked Force加振器436としての受振器420(すなわち、受動的な下部構造)の特性評価を含む。例えば、受振器側の振動制御機構(例えば、組込み型機構又は人工加振のための外部印加源)が、Blocked Force(f)によって結合界面427において受振器420を特徴付けるために使用される。十分なBlocked Forceデータを得るために、受振器420(又はControlled Blocked Force加振器435)は、制御可能かつ再現可能な条件の下で動作させられる。受振器420の受動的な特性により、能動的な動作状態は、受振器側で自然に発生する/組込み型の振動源又は人工加振(装着されたハンマ又は電気力学的シェーカによる加振など)によって達成することができる。しかし、加振機構は、Controlled Blocked Force加振器435の物理的なアセンブリの一部であるものとしてもよく、そうでなくてもよいが、受振器420の動的な構造特性を変更することなくControlled Blocked Force加振器435の複数の異なる動作状態を達成するために必要とされる。図4B及び図4Cにおいて、受振器420は、結合界面427において第2の発生源440に結合されて、第2のアセンブリ445を形成する。図4Bに示されるステップ410においては、(ステップ405による)Controlled Blocked Force加振器435の動作状態が、較正された受振器420と第2の発生源440との間に同一の(又は同等の)Blocked Forceを発生させるために繰り返される。両ステップは、第2のアセンブリ445の結合界面427における感度関数を決定するために使用される。能動的な受振器420に固有のBlocked Forceと、結合界面427におけるアセンブリ応答(v)との関係は、構造的(Y)なアセンブリ感度関数として表される。ステップ415において、先に識別された感度関数は、これらのデータを組み合わせるための少なくとも1つの数学的方法を使用して、結合界面427における単純な応答測定により、下部構造440の実際の発生源活動を特性評価するために利用される。
【0033】
図5Aは、完全に組み立てられたテスト構造における人工加振を使用した予測伝達関数と測定伝達関数の一例のグラフである。図5Bは、完全に組み立てられたテスト構造における実稼働加振を使用した予測伝達関数と測定伝達関数の一例のグラフである。図5Cには、完全に組み立てられたテスト構造500の例が示されている。完全に組み立てられたテスト構造500は、鉄骨ビーム510に接続されたモータ505を含む。鉄骨ビーム510はアルミニウムプレート515に接続される。アルミニウムブロックは、結合界面520を提供する。アルミニウムプレート515は、アルミニウムボックス525に接続される。完全に組み立てられたテスト構造500はマイクロフォン530も含む。
【0034】
図5A及び図5Bに示されるデータに関して、図には、x軸に周波数、y軸に予測伝達関数及び測定伝達関数の振幅が示されている。いくつかの実施形態においては、予測伝達関数及び測定伝達関数の振幅(Pa/N)は、マイクロフォン530を介して測定された、単位加振(1ニュートン)に対する音圧応答(Pa)によって表される。データは、テスト構造、例えば、物理的な発生源構造が鉄骨ビームである場合のテスト構造500、例えば、鉄骨ビーム510から収集される。図5Aのデータは、外部の振動発生制御機構を使用して生成された。図5Bのデータは、組込み型の振動発生制御機構を使用して生成された。図5Aのグラフにおいては、人工衝撃加振が発生源構造のランダムなポイントに加えられる。図5Bのグラフにおいては、モータ505のような電気DCモータを介して発生源に実稼働加振が加えられる。図5Aの外部の振動発生制御機構及び/又は図5Bの振動発生制御機構によって発生した振動は、アセンブリを通って伝播し、アセンブリから放出される。放出された受振器側の音圧(すなわち、音圧応答)が、図5A及び図5Bに表されている。振動音響的な周波数応答関数は、衝撃ハンマテストを基準として使用して測定される。予測された周波数応答関数は、本明細書において説明するBlocked Force制御加振法を使用して決定される。図5A及び図5Bの双方において、Controlled Blocked Force加振器として発生源構造を使用することにより、数キロヘルツの範囲内で優れた周波数応答関数の品質が達成される。
【0035】
本明細書において開示しているシステム及び方法は、制御可能な振動源のBlocked Force(又はBlocked Forceから導出可能な量又はBlocked Forceに変換可能な量)を使用して、複雑な多入力多出力システムにおける高速かつ信頼性の高いインサイチュでの識別及び/又は診断を提供する。(例えば、較正測定部分305を使用して決定された)最初の較正測定の後、多DOF振動制御加振器として任意の制御可能な振動源を本質的に使用することができ、大きい商業的利点が得られる。MIMOシステムの識別は、システム診断に使用される広範な伝達経路解析技術、構成要素レベル、サブシステムレベル及びシステムレベルでの独立した発生源の特性評価、並びに、同一の又は異なる発生源-受振器設備における音及び振動の予測に使用される仮想音響プロトタイピングなど、多くの産業用途において使用される。提案されるBlocked Force制御加振手法の潜在的な用途は、電動パワーステアリング(EPS)システムにおける望ましい雑音・振動・ハーシュネス特性の開発を支援することである。図6には、開示のBlocked Force制御加振手法を用いてMIMOシステムの識別をインサイチュで行うための方法と、高速のインサイチュ伝達経路解析(「高速iTPA」)、構成要素に基づく発生源の特性評価、及び、仮想音響プロトタイピングを実行するための関連する産業用途とが示されている。TPAの文脈でControlled Blocked Force加振器を使用することは、時間的な利点が大きいため、「高速iTPA」と称される。
【0036】
前述の明細書においては、特定の実施態様について説明してきた。しかし、当業者であれば、以下に記載する特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることが理解されよう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で捉えられるべきものであり、こうした修正のすべてが本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0037】
文脈から別段の指示がない限り、利益、利点、課題に対する解決手段及びこれらの利益、利点又は解決手段を生じさせ又はより顕著にする可能性のある任意の要素は、いずれか又はすべての請求項の重要かつ必要な又は不可欠の特徴又は要素として解釈されるものではない。本発明は、本出願の係属中になされた任意の補正を含む添付の特許請求の範囲及び記載されたその請求項のすべての等価物によってのみ定義される。
【0038】
文脈から別段の指示がない限り、本文書においては、第1の、第2の、上部の、下部の、などの関係を表す用語は、ある実体又は行為を他の実体又は行為から区別するためにのみ使用され、こうした実体間又は行為間の実際のこうした関係又は順序を必ずしも要求又は暗示するものではない。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」又はその他の変形は、非排他的な含意を包含することを意図しており、要素のリストを備える、有する、含む、含有するプロセス、方法、物品又は装置は当該要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない他の要素又はこうしたプロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の要素を含むことがある。「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」に付随する要素は、さらなる制約がない限り、要素を備える、有する、含む、含有するプロセス、方法、物品又は装置における追加の同一の要素の存在を排除しない。用語「1つの(a, an)」は、本明細書において明示的に別段の記載がない限り、1つ又は複数と定義される。本明細書において使用する「結合される(coupled)」なる用語は、必ずしも直接的にではなく、また必ずしも機械的にではないが接続されると定義される。ある方法により「構成される(configured)」デバイス又は構造は、少なくともその方法により構成されるが、列挙されていない方法によっても構成可能である。
【0039】
要約書は、読者が技術的な開示の性質を迅速に把握できるようにするために提供されるものである。これは、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないとの認識の上で提出される。加えて、前述の詳細な説明においては、本開示を合理化する目的で、様々な実施形態において様々な特徴がグループ化されていることが理解される。ここで開示している方法は、特許請求される実施形態が各請求項に明示的に記載されている以上の特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるものではない。むしろ、以下の特許請求の範囲に反映されているように、発明の主題は、開示されている1つの実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の特許請求の範囲は、各請求項が別個に特許請求された主題としてそれ自体で成り立つ状態で詳細な説明に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】