(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】濾過による水からのウイルス除去
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20240903BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240903BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240903BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240903BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J2/00 B
B01J20/26 H
C02F1/28 A
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507043
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071890
(87)【国際公開番号】W WO2023012251
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021120424.0
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521075206
【氏名又は名称】インストラクション・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】instrAction GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl-Friedrich-Gauss-Ring 5,69124 Heidelberg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルンクフィール,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4D624
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB07
4D624BA17
4D624BB01
4D624BB08
4D624BC01
4D624CA04
4G004BA00
4G066AC14C
4G066AC17C
4G066AC27B
4G066AC31C
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA25
4G066BA38
4G066CA20
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA21
4G066FA26
4G066FA34
4G066FA36
4G066FA40
(57)【要約】
【要約】
本発明は、本発明に係る方法を使用して生成可能な抗ウイルス粒子の生成方法、及び、その粒子自体に関する。本発明に係る粒子は、水からウイルスを除去するために使用されるだけでなく、水から生物学的汚染物質を除去するためにも、溶液から金属含有イオンを結合するためにも使用される。本発明は、本発明に係る粒子を含むフィルターカートリッジにも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス性粒子を生成するための方法であって、
(a)ポリアミン、架橋剤、及び、粒子の形態の無機担体材料又は有機担体材料を含む水性懸濁液を、前記無機担体材料又は前記有機担体材料をポリアミンによってコーティングするために、混合器内において10℃以下の温度にて調製するステップと、
(b)コーティングされた前記無機担体材料又はコーティングされた前記有機担体材料の前記ポリアミンを架橋すると同時に水を除去するステップと、
(c)架橋された前記ポリアミンをプロトン化するステップであって、それによって抗ウイルス粒子を取得する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)及びb)が少なくとも1回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋が撹拌反応器内で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミンが脱塩された状態又は脱塩されていない状態で使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機担体材料が多孔質である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機担体材料が、pH10を超える水性アルカリ性条件において溶解可能な材料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の後かつステップ(c)の前に、pH10を超える条件にて前記無機担体材料を溶解するステップであって、それによって、前記無機担体材料の逆細孔構造を有する、架橋されたポリアミンの粒子を取得するステップをさらに含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機担体材料が、ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、ポリメタクリレート、又は、強イオン交換体若しくは弱イオン交換体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリアミンがポリビニルアミンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)の後に、架橋された前記ポリアミンの側鎖基が誘導体化される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって取得可能又は調製される、抗ウイルス粒子。
【請求項12】
前記ポリアミンが少なくとも部分的にプロトン化されている、請求項11に記載の抗ウイルス粒子。
【請求項13】
前記粒子の100%乾燥粒子から開始する水中での最大膨潤率が300%である、請求項10~12のいずれか1項に記載の抗ウイルス粒子。
【請求項14】
乾燥嵩密度が0.25g/mL~0.8g/mLの範囲内である、請求項11~13のいずれか1項に記載の抗ウイルス粒子。
【請求項15】
汚染水を抗ウイルス粒子と接触させることによって水からウイルスを除去するための、請求項11~14のいずれか1項に記載の、又は、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって調製された、抗ウイルス粒子の使用。
【請求項16】
細菌、雑菌、酵母又は真菌が除去されることをさらに含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記汚染水の接触が、pH6~9の範囲で行われる、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
請求項11~14のいずれか1項に記載の、又は、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって調製された若しくは取得可能な、抗ウイルス粒子を含む、フィルターカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明に係る方法を使用して生成可能な抗ウイルス粒子の生成方法、及び、その粒子自体に関する。本発明に係る粒子は、水からウイルスを除去するために使用されるだけでなく、水から生物学的汚染物質を除去するためにも、溶液から金属含有イオンを結合するためにも使用される。本発明は、本発明に係る粒子を含むフィルターカートリッジにも関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水の生物学的汚染は、特に世界の温暖な地域において、よく知られた重大な問題である。自然災害の後でも、井戸が細菌や雑菌、そしてウイルスで汚染されている。飲料水中の重金属もまた、問題であり続けている。
【0003】
特にウイルスはサイズが小さいため、物理的に除去することが困難である。代わりの手段として、塩素化、オゾン処理、UV照射、膜濾過等が挙げられる。これらの処理は、時には非常にエネルギー集約的(高圧)かつ費用がかかったり、化学薬品の使用が必要であったり、例えば顕著な塩素味に起因する水質等、他の点における水質が低下したりすることがあるがある。塩素を除去するには、水を沸騰させるか、活性炭で濾過する必要がある場合がある。さらに、例えば膜濾過等のいくつかの技術では、処理中に水の大部分が失われるため、低い収率しか得られない。
【0004】
技術水準における浄水システムとしては、例えば軟化システムや、洗浄モジュールを有する又は有さないウォーターディスペンサー等があるが、これらは常に細菌に汚染されている疑いがあり、慎重に洗浄しなければならない。水を塩素処理せずに生物学的浄化レベルを使用している水泳プールは、暖かい季節にはウイルスや細菌の汚染に悩まされることがよくある。温水タンクのある家庭では、リステリア菌の汚染を抑制するために、温水タンクを常に所定の高温より高い温度に保つ必要がある。閉じた水の回路を備えるシステムでは、水質を維持するために、例えば工業用冷却水回路等における消毒処理もまた必要となる。
【0005】
飲料水からの不要な金属イオンの除去、特に、重金属イオンの除去もまた、この文脈において重要である。
【0006】
国際公開第2017/089523号及び国際公開第2016/030021号は、水から金属イオン及び重金属イオンを除去するための吸着剤、及び、そのような吸着剤の製造プロセスを開示している。しかしながら、これらの文献に開示されている材料は、わずかな殺生物効果しか有さず、抗ウイルス効果を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、生物学的汚染物質や重金属に加えて、ウイルスもまた飲料水から安全に除去することが可能な改良された吸着剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下のステップを含む抗ウイルス粒子を生成するための方法によって解決された。
(a)ポリアミン、架橋剤、及び、粒子の形態の無機担体材料又は有機担体材料を含む水性懸濁液を、前記無機担体材料又は前記有機担体材料をポリアミンによってコーティングするために、混合器内において10℃以下の温度にて調製するステップ、
(b)コーティングされた前記無機担体材料又はコーティングされた前記有機担体材料の前記ポリアミンを架橋すると同時に水を除去するステップ、及び、
(c)架橋された前記ポリアミンをプロトン化するステップであって、それによって抗ウイルス粒子を取得する、ステップ。
【0009】
ステップ(a)及び(b)は、少なくとも1回繰り返され得る。このことは、高濃度のアミノ基が必要な場合に重要になり得、ここで高濃度とは、例えば600μmol/gを超える濃度である。
【0010】
驚くべきことに、このプロセスは、一方では、従来技術と比較して複雑でない吸着剤の生成方法を提供し得ることが判明した。さらに、このようにして生成された吸着剤はバイオフィルムを形成する傾向がなく、細菌(bacteria)及び雑菌(germs)に対して非常に高い殺生物効果を示し、プロトン化に起因してウイルスに対しても非常に高い効果を示す。プロトン化に起因して、ウイルスに対する有効性の向上は驚くべきものであった。細菌及び雑菌に対する効果もまた高められていた。
【0011】
本発明によれば、コーティング及び架橋は、好ましくは撹拌反応器内で、例えばレーディゲミキサー内で行われる。このことは、既に部分的に架橋されているポリマーの細孔内においてかつ非臨界水中において架橋が容易に行われ得るため、懸濁液中における架橋よりも利点がある。ステップ(b)の温度は、ステップ(a)のコーティングとは対照的に高くなる。ステップ(a)では、好ましくは10℃以下の温度が選択される。ステップ(b)では、好ましくは、概ね主として多孔質の担体材料の細孔内において架橋が起こると同時に、溶媒である水が架橋中に除去され、それによって、ステップ(a)及びその結果としてステップ(b)を同じ装置内において繰り返すことができる。ステップ(a)及び(b)は、所望のコーティング度及びアミノの密度が達成されるまで繰り返され得る。コーティングは1回だけ行うことが好ましい。しかしながら、コーティング及び架橋を少なくとも2回行うことも可能であり、コーティング及び架橋を3回、4回又はそれ以上の回数行うことも可能である。最も好ましいのは、1回である。好ましくは、コーティング及び架橋の終了時、すなわちステップ(c)の前に、温度を約60℃まで約1時間上昇させて維持する。
【0012】
特に好ましくは、ステップ(c)の前に、吸着剤が後架橋される。好ましくは、このことはエピクロロヒドリン及びジアミノエチレンを用いて、80~90℃、好ましくは85℃の温度にて、試薬を交互に添加することによって行われる。
【0013】
ステップ(c)において、ポリアミンのアミノ基は、pH7未満、好ましくは6未満、最も好ましくは5.5未満でプロトン化される。プロトン化されたアミノ基は、ウイルスのエンベロープ及び細菌のエンベロープと接触して、そのエンベロープを破壊すると推測される。
【0014】
本発明のさらなる実施形態によれば、ポリアミンは脱塩されていない状態で使用される。重合によって入手可能なポリビニルホルムアミドを苛性ソーダで加水分解し、続いて塩酸で鈍化すると、塩化ナトリウム及びギ酸ナトリウムが形成される。ポリマー溶液の脱塩は膜濾過によって行われ、塩が膜層を通過している間に、ポリマーは保持される。膜濾過は、灰化残留物に基づく塩の含有量が初期重量の1%未満(ポリマー含有量の1%未満)になるまで継続される。
【0015】
上記は脱塩されていない又は部分的に脱塩されたポリマーについて言及したものであり、続いて、脱塩されたポリマーについて言及する。
【0016】
これにより、追加の精製ステップが省かれる。ステップa)の後に追加の洗浄ステップが必要になることがあるが、脱塩されていないポリマーを使用すると、コーティングポリマー(例えば、PVA(ポリビニルアミン))の生成コストを大幅に削減できる。これにより、プロセス全体がより経済的になる。
【0017】
コーティング中(ステップ(a))に10℃以下の低温にて、架橋剤を有機ポリマー、好ましくはポリアミンの懸濁液へと同時に添加することによって、ヒドロゲルがゆっくりと担体の細孔内に直接形成されて、ポリマーが直接固定化される。脱塩されていないポリマーが使用される場合、加水分解中に形成された塩は、単に水のみで洗浄され得る。さらに、例えば又は好ましくはエピクロロヒドリン及びジアミノエチレンによるコーティング中における予備架橋の結果として生じる後続の架橋は、水性懸濁液中において行うことができ、従来技術の場合のように流動床内で行う必要はない。これにより、プロセスが大幅に簡素化される。エピクロロヒドリンが使用される際に、水性懸濁液中にて架橋を行うことには、未反応のエピクロロヒドリンが単に水酸化ナトリウム溶液のみで加水分解され、それによって無害になる又は無害な物質(グリセロール)へと変換されるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
有機担体材料
有機担体材料は、好ましくはポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、ポリメタクリレート、又は、強イオン交換体若しくは弱イオン交換体である。
【0020】
さらなる実施形態によれば、有機担体ポリマーは、その外表面のみがポリマーでコーティングされた強陽イオン交換体又は弱陽イオン交換体である。強陽イオン交換体としては、スルホン酸基を有する有機ポリマーが挙げられる。弱陽イオン交換体としては、カルボン酸基を有するポリマーが挙げられる。
【0021】
今日まで、いわゆるMetCap(登録商標)粒子が、シリカゲルをベースとした溶液又は担体を必要としない溶液から細菌を除去できること(DE102017007273.6)のみが知られていた。生成及び活性の証明は、DE102017007273.6に開示されている。この文献には、(テンプレートとしての)シリカゲル粒子の脱塩されていないポリマーでのコーティング及び続く無機担体の溶解、並びに、該シリカゲル粒子の抗菌活性が記載されている。
【0022】
ポリスチレンなどの有機担体をベースとする粒子については、対応する活性はこれまで知られていない。驚くべきことに、この活性は、新しいプロセスを使用して生成されたポリスチレンベースの樹脂にて発見された。ポリスチレンは通常、顕著なバイオフィルムを形成する傾向があり、ウイルス又は細菌を除去しないため、この観測は驚くべきことである。さらに、これまで使用されてきた担体とは対照的に、ポリスチレンは極めて親油性が高く、したがって、これまで使用されてきた担体とは全く異なる性質を有している。
【0023】
ポリスチレンベースの樹脂を使用する製造プロセスの単純化は、ポリマー加水分解物の脱塩と、他のプロセス修正、特に、担体ポリマーのポリマー溶液への添加及び乾燥に関連する他のプロセス修正とを省略することによって達成される。
【0024】
驚くべきことに、MetCap(登録商標)及びBacCap(登録商標)樹脂は、ポリマー溶液を事前に脱塩することなく、多孔質ポリスチレン粒子上に固定化することによって生成可能である。これまでの研究では、ポリマーの多孔質支持体上への析出又は固定化の速度が、ポリマー加水分解物の塩の含有量に明確に依存していることが判明していたため、このことはさらに驚くべきことである。
【0025】
コーティングプロセスを調整することによって(例えば、複数回のコーティング、レーディゲプラウシェアミキサー内での乾燥、新たな洗浄戦略の導入によって)、ポリマー加水分解物の脱塩といった複雑かつコストのかかるプロセスステップを、生成物の性能が制限されることを受け入れる必要なく省略することができる。
【0026】
要約すると、製造プロセスを変更すること、特に、膜濾過による脱塩を削減すること、及び、有機担体材料への拡張を行えば、決定的な利点が得られると言える。
【0027】
ポリマー含有量は、重合中のバッチ計算によって決定される。著者らが驚いたことに、レーディゲ真空パドル乾燥機内におけるエチレングリコールジグリシジルエーテルでのコーティング及び予備架橋は、塩を含有しないポリビニルアミンポリマー溶液でのコーティング及び予備架橋と同じように機能する。含有されている塩は、後架橋のための懸濁液の調製中に、部分的に溶解される。水酸化ナトリウム溶液によって担体のシリカゲルを溶解した後、架橋された純粋な有機テンプレート材料から全ての塩(ケイ酸塩、ギ酸塩、塩化物等)が洗い流される。この方法で得られたBacCap(登録商標)T又はMetCap(登録商標)T材料は、脱塩されたPVAポリマーによるプロセスを使用して生成された吸収体樹脂と同じ特性を備えている。これは、本プロセスにおける第1の改良点であり、文献データによっても裏付けられていた従来の仮定では、ポリマー溶液中における高濃度の塩の体積要件が、その空間要件のみに起因して、粒子がポリマーによって効果的かつ完全に充填されることを妨げるというものであったため、非常に驚くべきことである。
【0028】
第2の方法では、市販の強イオン交換体又は弱イオン交換体を、抗ウイルス性及び抗菌性のPVAポリマーシェルでコーティングすることに関する。
【0029】
市販のイオン交換体、特にここで使用される陽イオン交換体は、一般的に、ポリマー担体(ポリスチレン、アクリレートなど)に共有結合された酸基を有している。該酸基は、弱イオン交換体ではカルボン酸又はカルボン酸塩であり、強イオン交換体ではスルホン酸又はスルホン酸塩である。いずれのタイプも、飲料水を軟水にする際に使用される。
【0030】
これらのイオン交換体に対して抗ウイルス性及び抗菌性を提供すると同時にその軟化能力を大幅に低下させないためには、容量を担う酸基の大部分が位置する粒子の細孔内における酸基を修飾することなく、粒子の外部コーティングのみを行うことが求められる。
【0031】
この目標は、そのサイズ及び流体力学的半径が原因となってイオン交換粒子の細孔に浸透し得ない、適切なポリマーを使用することによって達成される。市販のイオン交換体の細孔サイズは、20nm~100nmの範囲である。これらの細孔には、10,000~20,000g/molのサイズのポリマーはアクセス不可能である。
【0032】
この手順では、好ましい実施形態では、粒子の半径で測定される粒子の外側2~25%のみがコーティングされる。より好ましくは、粒子の半径で測定される粒子の外側2~10%のみがコーティングされる。最も好ましくは、その半径で測定される粒子の外側2~5%のみがコーティングされる。
【0033】
このようにして、イオン交換可能な基の大部分は、水を軟化させるために利用可能であり続ける。
【0034】
適切なサイズの脱塩されていないポリマーもこの目的に使用され得るが、このことは必須の要件ではない。脱塩されていないポリマーの使用と同様に、脱塩されたポリマーでのコーティングもまた可能である。
【0035】
ポリビニルアミドのアミド基を水酸化ナトリウム溶液で加水分解し、続いて塩酸で鈍化した後、ポリマーは、ギ酸ナトリウム及び食塩の形態で約15~25重量%の塩を含んでいる。脱塩されていないポリマーの場合、水溶液中のポリマー含有量は9~13重量%に相当する。
【0036】
従来のプロセスでは、塩は逆浸透によって労力を費やして除去され、ポリマーは、塩の含有量が2.5重量%未満で使用されていた。この新たなプロセスは、この複雑かつ費用のかかる脱塩ステップの省略を可能にする。したがって、新しい方法では、好ましくは、塩の含有量が2.5~15重量%の部分的に脱塩されたポリマーを使用する。より好ましくは、塩の含有量が10~15重量%の部分的に脱塩されたポリマーを使用する。最も好ましくは、塩の含有量が15~25重量%の脱塩されていないポリマーを使用する。
【0037】
無機担体材料
粒子形態の無機担体材料は、マクロ多孔質、メソ多孔質又は非多孔質の担体材料であり、好ましくは、メソ多孔質又はマクロ多孔質の担体材料である。多孔質支持体材料の平均細孔径は、好ましくは6nm~400nmの範囲であり、より好ましくは8~300nmの範囲であり、最も好ましくは10~150nmの範囲である。工業用途には、100~3000nmの粒径範囲もまた好ましい。さらに、多孔質支持体材料は、いずれも場合も多孔質担体材料の総体積に基づいて、30体積%~90体積%の範囲、より好ましくは40~80体積%の範囲、最も好ましくは60~70体積%の範囲の細孔容積を有することが好ましい。多孔質担体材料の平均細孔径及び細孔容積は、DIN 66133に準拠した水銀による細孔充填法を使用して決定され得る。
【0038】
さらなる実施形態では、無機担体材料は非多孔質であり、すなわち、その細孔サイズが4nm未満の範囲にある。
【0039】
多孔質無機材料は、好ましくはpH10を超える、より好ましくはpH11を超える、最も好ましくはpH12を超えるアルカリ性水性条件にて溶解可能なものである。
【0040】
さらなる実施形態によれば、好ましい多孔質の無機担体材料は、pH10を超える条件にて溶解される。これにより、多孔質ヒドロゲルの作成が可能になり、この多孔質ヒドロゲルによって、金属イオン及び生物学的汚染物質に対するアクセスしやすさ及び能力が向上する。無機担体材料の溶解は、好ましくは、ステップ(c)のプロトン化の前に行われる。
【0041】
換言すれば、無機担体材料を溶解して架橋されたポリマーから多孔質粒子を得るステップは、上述した水性アルカリ性条件にて行われる。多孔質無機材料は、好ましくは、二酸化ケイ素又はシリカゲルをベースとするもの又はそれらにより構成されるものである。
【0042】
ステップ(b)の後、ステップ(c)の前に無機担体材料を除去することは、無機担体材料が、ステップ(b)後に得られる多孔質無機担体材料と適用されたポリアミンとの複合粒子から除去されることを意味する。無機担体材料を溶解して架橋されたポリマーから多孔質粒子を得るステップは、好ましくはpH10を超える、より好ましくはpH11を超える、さらにより好ましくはpH12を超えるアルカリ水溶液中にて行われる。ここで用いられる塩基としては、好ましくはアルカリ金属水酸化物、より好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、さらに好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、溶液の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも10重量%であり、さらにより好ましくは25重量%である。本発明に係る方法のステップ(c)では、ステップ(b)から得られた粒子を、対応するアルカリ水溶液と数時間接触させる。続いて、溶解された無機担体材料を、無機担体材料がもはや生成物中に実質的に含まれなくなるほど長時間、架橋されたポリマーの多孔質粒子から水で洗浄する。このことは、本発明に従って架橋されたポリマーから生成された多孔質粒子が、例えば金属の結合材料として使用される場合、この多孔質粒子が有機材料のみで構成されるため、金属を保持又は回収しつつ多孔質粒子を完全に又は残留物なく燃焼させ得るという利点を有する。
【0043】
多孔質無機支持材料は、好ましくは5μm~2000μmの範囲、より好ましくは10μm~1000μmの範囲の平均粒径を有する粒子状材料である。粒子の形状としては、球体状(kugelformig)(球面状(spharisch))、棒状、レンズ状、ドーナツ状又は楕円状であり得、さらには不定形であってもよいが、球面状の粒子が好ましい。
【0044】
コーティング及び架橋
ステップ(a)で使用されるポリアミンの割合は、いずれの場合もポリアミンを含まない多孔質の無機又は有機担体材料の重量に基づいて、5重量%~50重量%の範囲であり、より好ましくは10~45重量%の範囲、さらにより好ましくは20~40重量%の範囲である。
【0045】
本発明に係る方法のステップ(a)における粒子形態の担体材料へのポリアミンの付与は、含浸法又は細孔充填法などの様々な方法によって実施可能であり、細孔充填法が好ましい。細孔充填法は、従来の含浸プロセスに対して、より多くの総量の溶解ポリマーを1ステップで多孔質無機担体材料に付与可能であり、それによって結合容量が増加すると共に、従来のプロセスが単純化されるという利点を有する。
【0046】
ステップ(a)の考えられる全てのプロセスにおいて、ポリマーは溶媒に溶解される必要がある。ステップ(a)において付与されるポリマーのために使用される溶媒は、好ましくは、ポリマーが溶解可能なものである。多孔質無機支持体材料へと付与するためのポリマーの濃度は、好ましくは5g/L~200g/Lの範囲、より好ましくは10g/L~180g/Lの範囲、最も好ましくは30~160g/Lの範囲である。
【0047】
細孔充填法は、一般的に、付与されるポリマーを含有する溶液が、多孔質担体材料の細孔の総容積に相当する量で多孔質無機担体材料に付与される、特別なコーティングプロセスであると理解される。多孔質無機担体材料の細孔の総容積[V]は、多孔質無機担体材料の溶媒吸収容量(CTE)によって決定することができる。また、相対細孔容積[容積%]も決定され得る。いずれの場合にも、この相対細孔容積は担体材料の自由にアクセス可能の細孔の容積であり、これは溶媒吸収能力によってのみ決定され得る。溶媒吸収能力とは、乾燥吸着剤(好ましくは、固定相)1グラムの細孔空間を完全に満たすのに必要な溶媒の容積を示す。ここで溶媒として、純水又は水性媒体と、ジメチルホルムアミド等の極性の高い有機溶媒との両方が使用可能である。吸着剤が湿っている間に体積が増加すると(膨潤すると)、使用された溶媒の量が自動的に記録される。CTEを測定するには、正確に秤量した量の多孔質無機担体材料を、過剰のよく湿潤する溶媒で湿らせ、遠心分離機内で回転させることによって中間粒子の体積から過剰な溶媒を除去する。吸着剤の細孔内の溶媒は、毛細管力により細孔内に残る。保持された溶媒の質量は秤量により決定され、溶媒の密度を使用して容積に換算される。吸着剤のCTEは、乾燥吸着剤1グラムあたりの体積(mL/g)として報告される。
【0048】
ステップ(b)における架橋中に、40℃~100℃の範囲、より好ましくは50℃~90℃の範囲、最も好ましくは50℃~75℃の範囲の温度にて材料を乾燥させることによって、溶媒が除去される。この乾燥は、特に0.01~1barの範囲の圧力にて、より好ましくは0.01~0.5barの範囲の圧力にて行われる。
【0049】
本発明に係る方法のステップ(b)における無機又は有機担体材料の細孔又はアクセス可能な表面におけるポリアミンの架橋は、好ましくは、ポリアミンの架橋度が、ポリアミンの架橋性基の総数に基づいて少なくとも10%となるように行われる。この架橋度は、所望の架橋剤の量に対応して調整され得る。架橋剤の100mol%が反応して架橋を形成すると仮定する。これは、MAS-NMR分光法や、使用されたポリマーの量に対する架橋剤の量の定量決定等の分析方法によって検証可能である。本発明によれば、この方法が好ましい。しかしながら、架橋度は、例えば、検量線を使用したC-O-C又はOH振動に関するIR分光法によっても決定され得る。いずれの方法も、当業者にとって標準的な分析手方法である。最大架橋度は、好ましくは60%、より好ましくは50%、最も好ましくは40%である。架橋度が指定の上限値を超えると、ポリアミンコーティングは、柔軟性が不十分になる。架橋度が特定の下限値を下回ると、架橋ポリアミンから得られる多孔質粒子は、例えば、クロマトグラフィー相の粒子として、又は、より高い圧力がかかる浄水カートリッジ内において使用するには十分な剛性を示さなくなる。架橋ポリアミンから得られる多孔質粒子を抗菌又は抗ウイルス吸収性樹脂の材料として直接使用する場合、ポリアミンの架橋度は、好ましくは少なくとも20%である。
【0050】
架橋に使用される架橋剤は、好ましくは2つ又は3つ以上の官能基を有し、それらの官能基とポリアミンとの結合によって架橋が起こる。ステップ(b)で適用されるポリアミンを架橋するために使用される架橋剤は、好ましくは、ジカルボン酸、トリカルボン酸、尿素、ビスエポキシド又はトリスエポキシド、ジイソシアネート又はトリイソシアネート、ジハロアルキル又はトリハロアルキル及びハロエポキシドからなる群から選択され、ここで、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)、1,12-ビス-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド)-デカンジカルボン酸及びエピクロロヒドリン等のジカルボン酸、ビスエポキシド及びハロゲンエポキシドが好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,12-ビス-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド)-デカンジカルボン酸及びエピクロロヒドリンがより好ましい。本発明の一実施形態では、架橋剤は、好ましくは原子数3~20の長さを有する直鎖状分子である。
【0051】
ステップ(a)で使用されるポリアミンは、好ましくは、繰り返し単位当たり1つのアミノ基を有する。繰り返し単位は、ポリマー鎖に沿って周期的な間隔で繰り返されるポリマーの最小単位である。ポリアミンは、好ましくは、第一級及び/又は第二級アミノ基を有するポリマーである。このポリアミンは、同じ繰り返し単位で構成されるポリマーであり得るが、好ましくは単純なアルケンモノマー、又は、ビニルピロリドン等の極性の不活性モノマーをコモノマーとして有するコポリマーであってもよい。
【0052】
ポリアミンの例は以下の通りである:任意のポリアルキルアミン、例えば、ポリビニルアミン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミン及びポリリシン等。これらの中で、ポリアルキルアミンが好ましく、ポリビニルアミン及びポリアリルアミンがさらに好ましく、ポリビニルアミンが特に好ましい。
【0053】
本発明に係る方法のステップ(a)で使用されるポリアミンの好ましい分子量は、好ましくは5,000~50,000g/モルの範囲であり、この範囲は、特に示されたポリビニルアミンに該当する。
【0054】
さらに、架橋ポリアミンは、ステップ(b)の後、その側鎖において誘導体化され得る。好ましくは、有機残基は、ポリマーに結合している。この残基は、脂肪族基や芳香族基等の考えられる任意の残基であり、また、ヘテロ原子を含んでいてもよい。これらの基は、アニオン性又はカチオン性ラジカル、又は、プロトン化可能な若しくは脱プロトン化可能なラジカルでも置換され得る。本発明の方法により得られる架橋多孔質ポリアミンを溶液からの金属の結合に使用する場合、ポリマーの側鎖を誘導体化する基は、ルイス塩基の性質を有する基である。ルイス塩基の性質を有する有機残基は、特に、結合される金属と錯結合を形成する残基を意味すると理解される。ルイス塩基を有する有機残基は、例えば、N、O、P、As又はS等の自由電子対を備えたヘテロ原子を有する有機残基である。
【0055】
ポリマーの誘導体化のために好ましい有機残基は、以下に示すリガンドである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0056】
特に好ましいものとして、リガンドPVA、すなわち、PVAのアミノ基、EtSr、NTA、EtSH、MeSH、EDTA及びiNic、又は、それらの組み合わせが挙げられる。例えば、PVAと、EtSr、NTA又はEtSHとの組み合わせが特に好ましい。
【0057】
特に好ましくは、本発明に係る方法におけるポリマーとしてポリビニルアミンが使用され、その理由として、ポリビニルアミンのアミノ基自体がルイス塩基を表し、求核基としての特性によって求電子中心を有する分子へと容易にも結合可能であることが挙げられる。ルイス塩基性は第二級アミンの形成によって失われないため、好ましくは、第二級アミンが形成されるがアミドが形成されないカップリング反応が使用される。
【0058】
本発明はまた、本発明に係る上記の方法によって取得可能又は調製された、架橋されたポリマーからなる抗ウイルス粒子にも関する。この文脈では、本発明に係る方法によって調製された粒子は、乾燥粒子に100%の値が適用されると仮定して、水中での最大膨潤率が300%であることが好ましい。
換言すれば、本発明に係る粒子は、水中において体積が最大3倍まで増加され得る。
【0059】
本出願のさらなる対象は、架橋されたポリアミンからなる抗ウイルス粒子であり、これらの粒子もまた、乾燥粒子の百分率が100%であると仮定して、最大膨潤率が300%である。換言すれば、本発明に係るこれらの多孔質粒子もまた、水中において膨潤する際に最大3倍までの体積増加を有し得る。
【0060】
しかしながら、本発明に係る方法によって生成される抗ウイルス粒子、又は、本発明に係る抗ウイルス粒子は、水中での最大膨潤率が、より好ましくは250%、さらにより好ましくは200%、最も好ましくは150%未満であり、そうでない場合、少なくともクロマトグラフィー用途や加圧された飲料水カートリッジ内では、得られる粒子の剛性が十分に高くない。
【0061】
本発明に係る方法によって製造される殺生物性(抗ウイルス性及び抗菌性)粒子は、好ましくは架橋されたポリアミンから生成される。このポリアミン又は該ポリアミンで構成される多孔質粒子は、滴定により決定されるアミノ基濃度が、好ましくは少なくとも300μmol/mL、より好ましくは少なくとも600μmol/mL、さらにより好ましくは少なくとも1000μmol/mLである。滴定によって決定されるアミノ基の濃度は、本出願の実施例パートに示される分析方法に従う4-トルエンスルホン酸を用いた破過測定によって得られる濃度を意味すると理解される。
【0062】
本発明に従って生成された粒子は、好ましくは0.25g/mL~0.8g/mL、さらにより好ましくは0.3g/mL~0.7g/mLの範囲の乾燥嵩密度を有する。換言すれば、多孔質粒子は、全体として非常に軽い粒子であり、このことは得られる高い空隙率によって確保される。粒子の多孔性が高く軽量であるにもかかわらず、粒子は比較的高い機械的強度又は剛性を有しており、圧力下での樹脂としての用途にも使用可能である。
【0063】
本発明に従って製造される粒子の平均細孔径は、逆サイズ排除クロマトグラフィーによって決定され、好ましくは1nm~100nmの範囲、より好ましくは2nm~80nmの範囲である。
【0064】
一実施形態によれば、本発明に従って生成される抗ウイルス粒子は、溶解された多孔質無機担体材料の形状と類似した形状を有する粒子であることが好ましいが、本発明に係る粒子は、それらの材料を備えている溶解された多孔質無機担体材料の細孔系を実質的に反映するという条件において、すなわち、理想的な粒子の場合において、それらは溶解された多孔質無機担体材料の形状と類似した形状を有する。すなわち、本発明に係る方法のステップ(b)における理想的な細孔充填の場合には、それらは使用される多孔質無機担体材料の逆細孔像である。本発明に係る多孔質粒子は、実質的に球形状であることが好ましい。それらの平均粒径は、好ましくは5μm~1000μmの範囲、より好ましくは100~500μmの範囲である。
【0065】
さらに、一実施形態によれば、架橋されたポリマーからなる本発明の粒子は、実質的に架橋されたポリマーで構成されていることを特徴とする。この場合において「実質的に」とは、例えば、無機担体材料の不可避の残留物のみが依然として多孔質粒子中に存在し得ることを意味するが、その割合は、好ましくは2000ppm未満、さらにより好ましくは1000ppm未満、最も好ましくは500ppm未満である。換言すれば、架橋されたポリマーからなる本発明に係る多孔質粒子は、無機担体材料の材料等の無機材料が実質的に含まれていないことが好ましい。このことは、本発明に係る方法のステップ(c)に関連して、無機担体材料がもはや生成物中に実質的に含まれないと述べられた際にも、上記の意味を示す。
【0066】
本発明のさらなる実施形態は、ウイルス及び生物学的汚染物質を除去するための、及び、溶液、特に水から金属イオンを分離するための、本発明に係る粒子又は本発明に従って生成された粒子の使用に関する。ここで、本発明に係る粒子又は本発明に従って生成された粒子は、好ましくは、水からウイルス及び生物学的汚染物質を除去すること、又は、溶液から金属含有イオンを分離することを可能にする、濾過プロセス又は固相抽出において使用される。本発明に係る材料は、例えば、撹拌タンク又は流動床用途において単純な方法で使用可能であり、この場合、材料は生物学的に汚染された金属含有溶液へと単に添加されて、所定の時間撹拌される。
【0067】
本発明はまた、本発明に係る粒子を含有する、例えば飲料水を処理するためのフィルターカートリッジにも関する。フィルターカートリッジは、好ましくは、処理される飲料水がカートリッジを通過して該カートリッジ内部の本発明に係る粒子と接触し、それによって生物学的汚染物質及びウイルスが除去され、金属含有イオンが水から除去されるような形状とされる。
【0068】
フィルターカートリッジは、微量汚染物質を除去するための追加の物質を含有し得る。この目的のために、好ましくは活性炭が使用される。種々異なる材料が、フィルターカートリッジ内の別々の領域に配置されてもよく、2つの材料の混合物内に配置されてもよい。フィルターカートリッジはまた、本発明に係る方法を使用して生成された(誘導体化された又は誘導化されていない)複数の異なる材料を含んでいてもよい。
【0069】
フィルターカートリッジは、考えられる全てのサイズに設計され得る。例えば、フィルターカートリッジは、家庭内における毎日の飲料水の必要量にとって十分なサイズに設計され得る。フィルターカートリッジはまた、複数の家庭における飲料水の必要量、例えば、1日あたり5リットル以上の必要量をカバーできるサイズであってもよい。
【0070】
フィルターカートリッジは、例えば、直線の流れを有する円筒の形状や、放射状の流れを有する中空円筒の形状を有し得る。
【実施例】
【0071】
次に、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらは単なる例示としてみなされるべきである。
【0072】
実施例1
1712gの湿った担体材料イオン交換体Lewatit S1567(架橋されたポリスチレンをベースとした、スルホン酸基を有する単分散陽イオン交換体、Lanxess)を、Lodige社製のプラウシェアミキサーVT5内へと直接搬送した。次に、イオン交換体を、80℃で60分間乾燥させた。水分の損失は、乾燥させたイオン交換体の重量を秤量することによって決定した。380gの水が除去された。乾燥機内における生成物の温度を、10℃に設定した。ミキサーは、毎分180回転にて運転した。ミキシングドラム内の生成物の温度が10℃に達した後、10℃まで冷却した350mLのコーティング溶液350mLを添加した。この溶液について、225gの脱塩されていないポリビニルアミン溶液のロット:PC18007(ポリマー含有量10%)と、1gのエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)[2224-15-9]とを秤量して容器内へと導入し、総量が350mlに達するまで脱イオン水を添加した。この混合物を、10分以内にミキサーへと添加し、10℃で1時間混合した。次に、ポリマー吸着質を80℃、50mbarの減圧下にて2時間架橋させた。続いて、ポリマーでコーティングされたイオン交換体を、室温まで冷却した。
【0073】
その後、粒子を適切なヌッチェフィルターへと移し、以下の溶媒(BV=総容積(Bettvolumen))で洗浄した:3BV 0.1MNaOH、3BV 脱イオン水、6BV 0.1MNaOH、3BV 水、3BV 0.2MHCl、6BV 脱イオン水。生成物は、水で湿った粒子として得られた。
【0074】
実施例2
3LのLanxess社製Lewatit S8227(架橋されたアクリレートをベースとした、カルボキシレート基を有するマクロ多孔質の弱酸性陽イオン交換樹脂)を、多孔度3のフリット上で15Lの脱イオン水により洗浄した。次に、2270gの湿ったイオン交換体を秤量して、Lodige社製のVT5真空パドル乾燥機へと導入した。このイオン交換体を、ジャケット温度80℃、圧力30mbar、速度57rpmにて2時間乾燥させた。乾燥後、915gの乾燥イオン交換体を、VT5真空パドル乾燥機へと注ぎ戻した。ジャケット温度を4℃に設定して、生成物の温度が20℃未満である場合は、600mlの脱イオン水を、180rpmの速度で運転されるミキサー内へと、蠕動ポンプを使用して15分以内に圧送した。コーティングのために、227gのポリビニルアミン溶液のロット:PC18007(ポリマー含量10%)と、227gの脱イオン水とを秤量して容器内へと導入した。架橋剤として、9.20gのエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)[2224-15-9]を秤量して別の容器内へと導入した。この架橋剤をポリマー溶液へと添加して、激しく混合した。続いて、この混合物を、蠕動ポンプを使用して5分以内にレーディゲミキサーへと圧送した。このミキサーの速度を240rpmに設定すると共に、ジャケット温度を4℃のままとした。添加の後、240rpmにて15分間混合を続けた。次に、乾燥機のジャケット温度を80℃に設定すると共に、速度を120rpmまで低下させた。続いて、粒子を再び室温まで冷却した後、適切なヌッチェフィルターへと移して、以下の溶媒で洗浄した:3BV 0.1MNaOH、3BV 脱イオン水、6BV 0.1MNaOH、3BV 水、3BV 0.2MHCl、6BV 脱イオン水。生成物は、水で湿った粒子として得られた。
【0075】
実施例3
500gの吸水能力1.35ml/gを備えた担体材料スルホン化ポリスチレンPRC15035(平均細孔径450Å、平均粒子径500μm)を、Lodige社製のプラウシェアミキサーVT5内へと直接吸引した。乾燥機内における生成物の温度を、10℃に設定した。ミキサーは、毎分180回転にて運転した。ミキシングドラム内の生成物の温度が10℃に達した後、225gの脱塩されていないポリビニルアミン溶液のロット:PC16012(ポリマー含有量12%)と、20gのエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)CAS-No.[2224-15-9]と、430gの脱イオン水とを秤量して容器内へと導入した。この混合物を、10分以内にミキサーへと添加し、10℃で1時間混合した。次に、ポリマー吸着質を65℃にて架橋させた。続いて、生成物を室温まで冷却した。その後、粒子を適切なヌッチェフィルターへと移し、以下の溶媒で洗浄した:3BV 0.1MNaOH、3BV 脱イオン水、6BV 0.1MNaOH、3BV 水、3BV 0.2MHCl、6BV 脱イオン水。1297gの生成物が、水で湿った粒子として得られた。陰イオン容量(AIK):471μmol/g。
【0076】
実施例4
粒径100μmの架橋されたポリマーの多孔質粒子の製造手順(バッチ:BV18007):1.高分子吸着質の製造:750gの担体材料シリカゲル(AGC Si-Tech Co. M.S Gel D-200-100 ロット:164M00711)を、Lodige社製のプラウシェアミキサーVT5内へと直接供給した。この生成物の温度を、10℃に設定した。ミキサーは、毎分180回転にて運転した。ミキシングドラム内の生成物の温度が10℃に達した後、10℃まで冷却された1125gの非脱イオンポリビニルアミン溶液のロット:PC18007(ポリマー含有量10%)を秤量して容器内へと導入して、23.2gのエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)CAS-No.[2224-15-9]と混合した。この混合物を、10分以内にミキサーへと添加し、10℃で1時間混合した。次に、ポリマー吸着質を80℃、50mbarにて乾燥させた(約2時間)。続いて、コーティングされたシリカゲルを10℃まで冷却した。第2のコーティングでは、10℃まで冷却された750gのポリマー溶液PC18007(ポリマー含量10%)を秤量して容器内へと導入して、15gのエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)CAS-No.[2224-15-9]と混合した。このポリマー溶液を、5分以内に混合ドラム内へと充填した。ポリマー吸着質を、10℃にて30分間混合した。続いて、レーディゲミキサー内の温度、再び65℃まで1時間にわたって上昇させた。このポリマー吸着質を、3Lの脱イオン水と混合した。この懸濁液を、架橋のために使用した。水中に懸濁されているコーティングされたシリカゲルを、自動温度制御を備えた10リットルのガラス反応器へと移した。この懸濁液を撹拌し、80℃に加熱した。次に、317gのエピクロロヒドリンCAS-No.[106-89-8]を、反応器内の温度が85℃を超えないように、20分以内に添加した。続いて、211gの1,2-ジアミノエタン[107-15-3]を、20分以内に滴加した。その後、317gのエピクロロヒドリンCAS-No.[106-89-8]を20分以内に添加し、続いて、さらに211gの1,2-ジアミノエタンCASno.[107-15-3]を添加した。最後に、317gのエピクロロヒドリンCAS-No.[106-89-8]を添加して、反応物を85℃にて1時間撹拌した。続いて、反応混合物を25℃まで冷却し、1500mlの50%NaOHを添加して、反応混合物を12時間撹拌した。その後、粒子を適切なヌッチェフィルターへと移し、以下の溶媒で洗浄した:3BV 0.1MNaOH、3BV 脱イオン水、6BV 0.1MNaOH、3BV 水、3BV 0.2MHCl、6BV 脱イオン水。
【0077】
生成物は、湿ったフィルターケーキとして得られた。
【0078】
実施例5
いずれの場合も、樹脂の水性懸濁液を、架橋されたポリビニルアミン(外側のみコーティングされたBV16037、BV16084、BV18002及びBV18009)から生成した。
【0079】
続いて、アデノウイルスの懸濁液を添加して、室温にて所定の期間にわたって振とうした。
【0080】
試験結果を
図1に示す:調査範囲全体の排水からは、ウイルスは検出されなかった。このことは、ウイルスが飲料水に相当する濃度において完全に除去されたことを意味する。
【0081】
図1に見られるように、使用した樹脂のウイルス量は、3時間以内にゼロ又はゼロ付近まで低下している。
【0082】
これにより、本願にて特許請求される樹脂、すなわち、架橋されたポリアミン及びコーティングされたポリスチレンの抗ウイルス効果を証明された。
【0083】
実施例6
アデノウイルスの懸濁液を、実施例6の樹脂が充填されたカラムを通過させて濾過した。樹脂床を通過した後に、それ以上のウイルスが検出できなくなった。
【0084】
したがって、本発明に係る抗ウイルス粒子の使用により、単純な濾過ステップによってウイルスを飲料水から除去することが可能になる。
【0085】
これにより、従来知られていた方法に対して、以下の利点が得られる。
-ウイルス(細菌も)を結合/死滅させることにより完全に除去する。
-化学添加物の添加がない
-重力操作が可能である
-エネルギー消費がほとんど又は全くない
-ポンプ又はUV照射が不要である
-使用された水に基づく収率が100%である
-塩酸/苛性ソーダでの洗浄によって樹脂の化学再生が可能である
-出願人からの他の樹脂を適切に添加することにより細菌、ウイルス及び重金属が同時に除去される
-安価な使い捨て(Single-Use)材料の使用が可能である
【国際調査報告】