(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】バッテリーの抵抗を推定する方法およびその方法を提供するバッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20240903BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240903BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20240903BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240903BHJP
【FI】
G01R31/389
H02J7/00 Q
G01R27/02 R
G01R31/367
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507921
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2022017453
(87)【国際公開番号】W WO2023085730
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155537
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ス・イ
【テーマコード(参考)】
2G028
2G216
5G503
【Fターム(参考)】
2G028BE04
2G028CG02
2G216BA51
5G503AA01
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
本発明は、バッテリーの抵抗を推定する方法およびその方法を提供するバッテリーシステムに関し、本発明のバッテリーシステムは、内部抵抗値が既知である新規バッテリーパックおよび内部抵抗値の推定が必要なターゲットバッテリーパックを含むバッテリーと、1)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの並列連結時に流れる第1補償電流の電流値、2)前記新規バッテリーパックの新規抵抗値、および3)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの第1パック電圧差値に対応する第2補償電流の電流値、第1基準抵抗値、および第2基準抵抗値に基づいて、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定するマスターBMS(Battery Management System)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部抵抗値が既知である新規バッテリーパックおよび内部抵抗値の推定が必要なターゲットバッテリーパックを含むバッテリーと、
1)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの並列連結時に流れる第1補償電流の電流値、2)前記新規バッテリーパックの新規抵抗値、および3)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの第1パック電圧差値に対応する第2補償電流の電流値、第1基準抵抗値、および第2基準抵抗値に基づいて、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定するマスターBMS(Battery Management System)と
を含む、バッテリーシステム。
【請求項2】
前記第2補償電流は、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値を有する第1基準バッテリーパックおよび第2基準バッテリーパックが並列連結される時に流れる補償電流であり、
前記第1基準抵抗値は、前記第1基準バッテリーパックの内部抵抗値であり、
前記第2基準抵抗値は、前記第2基準バッテリーパックの内部抵抗値である、請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項3】
複数の第2パック電圧差値のそれぞれに対応する1)第2補償電流の電流値、および2)第1基準抵抗値および第2基準抵抗値がマッピングされて記録されたルックアップテーブル(Look-Up Table)が保存されるメモリをさらに含む、請求項1または2に記載のバッテリーシステム。
【請求項4】
前記マスターBMSは、
前記複数の第2パック電圧差値のうち、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値を有する第2パック電圧差値を選択し、
前記第2パック電圧差値にマッピングされた前記第2補償電流の電流値、前記第1基準抵抗値、および前記第2基準抵抗値を抽出して、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する、請求項3に記載のバッテリーシステム。
【請求項5】
前記マスターBMSは、
前記第1補償電流(I
m)の電流値、前記新規抵抗値(R
new)、前記第2補償電流(I
d)の電流値、前記第1基準抵抗(R
ref_1)値、および前記第2基準抵抗(R
ref_2)値を下記式(1)に代入して、前記ターゲット抵抗(R
old_t)値を推定する、請求項2に記載のバッテリーシステム。
【数1】
【請求項6】
前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックのそれぞれは、
複数のバッテリーセルを含むバッテリーモジュールと、前記バッテリーモジュールの両端電圧であるパック電圧を測定する電圧センサーと、前記バッテリーモジュール内に流れるパック電流を測定する電流センサーと、オン動作で前記バッテリーモジュールを前記バッテリーシステムに並列連結するパックスイッチと、前記マスターBMSと通信して前記電圧センサーおよび前記電流センサーの測定結果を伝送し、前記パックスイッチのスイッチング動作を制御する制御信号を受信するスレーブBMSとを含む、請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項7】
前記マスターBMSは、
前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結される前に測定された前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値と、前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結された後に測定された前記第1補償電流の電流値とを受信し、
前記第1パック電圧値および前記第2パック電圧値の差値である前記第1パック電圧差値を計算する、請求項6に記載のバッテリーシステム。
【請求項8】
内部抵抗値が既知である新規バッテリーパックおよび内部抵抗値の推定が必要な複数の既存バッテリーパックを含むバッテリーシステムで、ターゲットバッテリーパックの内部抵抗値を推定する方法であって、
前記複数の既存バッテリーパックのうち、所定の基準により前記ターゲットバッテリーパックを選定する段階と、
前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとを並列連結する段階と、
並列連結された前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの間に流れる第1補償電流の電流値、前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値、および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値を受信する段階と、
1)前記第1補償電流の電流値、2)前記新規バッテリーパックの新規抵抗値、および3)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの第1パック電圧差値に対応する第2補償電流の電流値、第1基準抵抗値、および第2基準抵抗値に基づいて、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階とを含む、バッテリー抵抗推定方法。
【請求項9】
前記第2補償電流は、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値を有する第1基準バッテリーパックおよび第2基準バッテリーパックが並列連結される時に流れる補償電流であり、
前記第1基準抵抗値は、前記第1基準バッテリーパックの内部抵抗値であり、
前記第2基準抵抗値は、前記第2基準バッテリーパックの内部抵抗値である、請求項8に記載のバッテリー抵抗推定方法。
【請求項10】
前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階は、
前記第1パック電圧値および前記第2パック電圧値の差値である前記第1パック電圧差値を計算する段階と、
前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値に対応する前記第2補償電流の電流値、前記第1基準抵抗値、および前記第2基準抵抗値をルックアップテーブルから抽出する段階とを含む、請求項9に記載のバッテリー抵抗推定方法。
【請求項11】
前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階は、
前記ルックアップテーブルから抽出する段階の後に、
前記第1補償電流(I
m)の電流値、前記新規抵抗値(R
new)、前記第2補償電流(I
d)の電流値、前記第1基準抵抗(R
ref_1)値、および前記第2基準抵抗(R
ref_2)値を下記式(1)に代入して、前記ターゲット抵抗(R
old_t)値を推定する、請求項10に記載のバッテリー抵抗推定方法。
【数2】
【請求項12】
前記受信する段階は、
前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結される前に測定された前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値と、前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結された後に測定された前記第1補償電流の電流値とを受信する、請求項8に記載のバッテリー抵抗推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2021年11月12日付韓国特許出願第10-2021-0155537号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、バッテリーの抵抗を推定する方法およびその方法を提供するバッテリーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
反復的な充電と放電が可能なバッテリーが化石エネルギーの代替手段として脚光を浴びている。バッテリーは、携帯電話、ビデオカメラ、電動工具のような伝統的なハンドヘルドデバイスに主に使用された。しかし、最近は電気で駆動される自動車(EV、HEV、PHEV)、大容量の電力貯蔵装置(ESS)、無停電電源装置(UPS)などへその応用分野が漸次に増加する傾向にある。
【0004】
バッテリーの場合、容量が減少すると抵抗が増加し、それによって熱で消失する電気エネルギーが増加する。したがって、バッテリーの容量が臨界値以下に減少するとバッテリーの性能が顕著に低下し、発熱量が増加して点検または交換が必要となる。
【0005】
一方、並列連結された複数のバッテリーパック(Battery Pack)を含むバッテリーシステム(A)で、複数のバッテリーパックのうち、性能が低下した一部のバッテリーパックを交換する場合、既搭載されて所定期間使用されたバッテリーパック(以下、Old Battery Pack)と新たに搭載されたバッテリーパック(New Battery Pack)との間の劣化程度(SOH:State Of Health)が異なることがある。
【0006】
この場合、既存バッテリーパック(Old Battery Pack)がどれくらい劣化したのかを正確に分かってこそ、新たに搭載された新規バッテリーパック(New Battery Pack)と既存バッテリーパックを効率的に使用するための運営戦略などを計画することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、バッテリーパックの劣化程度を示す要因(factor)のうちの一つである内部抵抗(DCIR:Direct Current Internal Resistance)を推定するバッテリーの抵抗を推定する方法およびその方法を提供するバッテリーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一特徴によるバッテリーシステムは、内部抵抗値が既知である新規バッテリーパックおよび内部抵抗値の推定が必要なターゲットバッテリーパックを含むバッテリー、そして1)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの並列連結時に流れる第1補償電流の電流値、2)前記新規バッテリーパックの新規抵抗値、および3)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの第1パック電圧差値に対応する第2補償電流の電流値、第1基準抵抗値、および第2基準抵抗値に基づいて、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定するマスターBMS(Battery Management System)を含む。
【0009】
前記第2補償電流は、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値を有する第1基準バッテリーパックおよび第2基準バッテリーパックが並列連結される時に流れる補償電流であり、前記第1基準抵抗は、前記第1基準バッテリーパックの内部抵抗であり、前記第2基準抵抗は、前記第2基準バッテリーパックの内部抵抗であり得る。
【0010】
前記バッテリーシステムは、複数の第2パック電圧差値のそれぞれに対応する1)第2補償電流の電流値、および2)第1基準抵抗値および第2基準抵抗値がマッピングされて記録されたルックアップテーブル(Look-Up Table)が保存されるメモリをさらに含むことができる。
【0011】
前記マスターBMSは、前記複数の第2パック電圧差値のうち、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値を有する第2パック電圧差値を選択し、前記第2パック電圧差値にマッピングされた前記第2補償電流の電流値、前記第1基準抵抗値、および前記第2基準抵抗値を抽出して、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定することができる。
【0012】
前記マスターBMSは、前記第1補償電流(I
m)の電流値、前記新規抵抗値(R
new)、前記第2補償電流(I
d)の電流値、前記第1基準抵抗(R
ref_1)値、および前記第2基準抵抗(R
ref_2)値を下記式(1)に代入して、前記ターゲット抵抗(R
old_t)値を推定する、バッテリーシステム。
【数1】
【0013】
前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックのそれぞれは、複数のバッテリーセルを含むバッテリーモジュールと、前記バッテリーモジュールの両端電圧であるパック電圧を測定する電圧センサーと、前記バッテリーモジュール内に流れるパック電流を測定する電流センサーと、オン動作で前記バッテリーモジュールを前記バッテリーシステムに並列連結するパックスイッチと、前記マスターBMSと通信して前記電圧センサーおよび前記電流センサの測定結果を伝送し、前記パックスイッチのスイッチング動作を制御する制御信号を受信するスレーブBMSとを含むことができる。
【0014】
前記マスターBMSは、前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結される前に測定された前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値と、新規バッテリーパックおよびターゲットバッテリーパックが並列連結された後に測定された前記第1補償電流の電流値とを受信し、前記第1パック電圧値および前記第2パック電圧値の差値である前記第1パック電圧差値を計算することができる。
【0015】
本発明の他の特徴によるバッテリー抵抗推定方法として、内部抵抗値が既知である新規バッテリーパックおよび内部抵抗値の推定が必要な複数の既存バッテリーパックを含むバッテリーシステムで、ターゲットバッテリーパックの内部抵抗値を推定する方法であって、前記複数の既存バッテリーパックのうち、所定の基準により前記ターゲットバッテリーパックを選定する段階、前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとを並列連結する段階、並列連結された前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの間に流れる第1補償電流の電流値、前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値、および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値を受信する段階、そして1)前記第1補償電流の電流値、2)前記新規バッテリーパックの新規抵抗値、および3)前記新規バッテリーパックと前記ターゲットバッテリーパックとの第1パック電圧差値に対応する第2補償電流の電流値、第1基準抵抗値、および第2基準抵抗値に基づいて、前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階を含む。
【0016】
前記第2補償電流は、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値を有する第1基準バッテリーパックおよび第2基準バッテリーパックが並列連結される時に流れる補償電流であり、前記第1基準抵抗は、前記第1基準バッテリーパックの内部抵抗であり、前記第2基準抵抗は、前記第2基準バッテリーパックの内部抵抗である、バッテリー抵抗推定方法。
【0017】
前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階は、前記第1パック電圧値および前記第2パック電圧値の差値である前記第1パック電圧差値を計算する段階、そして、前記第1パック電圧差値と同一の電圧値である第2パック電圧差値に対応する前記第2補償電流の電流値、前記第1基準抵抗値、および前記第2基準抵抗値をルックアップテーブルから抽出する段階を含むことができる。
【0018】
前記ターゲットバッテリーパックのターゲット抵抗値を推定する段階は、前記ルックアップテーブルから抽出する段階の後に、前記第1補償電流(I
m)の電流値、前記新規抵抗値(R
new)、前記第2補償電流(I
d)の電流値、前記第1基準抵抗(R
ref_1)値、および前記第2基準抵抗(R
ref_2)値を下記式(1)に代入して、前記ターゲット抵抗(R
old_t)値を推定することができる。
【数2】
【0019】
前記受信する段階は、前記新規バッテリーパックおよび前記ターゲットバッテリーパックが並列連結される前に測定された前記新規バッテリーパックの第1パック電圧値および前記ターゲットバッテリーパックの第2パック電圧値と、新規バッテリーパックおよびターゲットバッテリーパックが並列連結された後に測定された前記第1補償電流の電流値とを受信することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、バッテリーシステム(A)で既搭載されて所定期間使用された既存バッテリーパック(Old Battery Pack)を脱去しなくても簡単な方法で既存バッテリーパックの内部抵抗(DCIR)を推定することができる。
【0021】
本発明は、既存バッテリーパック(Old Battery Pack)が複数個である場合にも、既存バッテリーパックのそれぞれの内部抵抗(DCIR)を精度高く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態によりバッテリーの抵抗を推定するバッテリーシステム(A)を説明する図面である。
【
図2】
図1のバッテリーパックの構成を詳細に説明する図面である。
【
図3】複数のバッテリーパックのうち、新規バッテリーパックと既存バッテリーパックのうちの一つとを並列連結して既存バッテリーパックの内部抵抗を測定する方法を説明するための概念図である。
【
図4】複数のバッテリーパックのうち、新規バッテリーパックと既存バッテリーパックのうちの一つとを並列連結して既存バッテリーパックの内部抵抗を測定する方法を説明するための概念図である。
【
図5】複数のバッテリーパックのうち、新規バッテリーパックと既存バッテリーパックのうちの一つとを並列連結して既存バッテリーパックの内部抵抗を測定する方法を説明するための概念図である。
【
図6】一実施形態によりバッテリーの抵抗を推定する方法を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して本明細書に開示された実施形態を詳細に説明するが、同一または類似の構成要素には同一または類似の図面符号を付与し、これについての重複説明は省略する。以下の説明で使用される構成要素に対する接尾辞「モジュール」および/または「部」は、明細書作成の容易さだけを考慮して付与されたり混用されるものであって、それ自体で互いに区別される意味または役割を有するものではない。また、本明細書に開示された実施形態を説明するに当たり、関連した公知技術に対する具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を不明確にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、添付した図面は、本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、添付した図面により本明細書に開示された技術的な思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0024】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素を説明することに使用され得るが、前記構成要素は前記用語により限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか、または「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されているか、または接続されていることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか、または「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。
【0026】
本出願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0027】
図1は一実施形態によりバッテリーの抵抗を推定するバッテリーシステム(A)を説明する図面であり、
図2は
図1のバッテリーパックの構成を詳細に説明する図面であり、
図3乃至
図5は複数のバッテリーパックのうち、新規バッテリーパックと既存バッテリーパックのうちの一つとを並列連結して既存バッテリーパックの内部抵抗を測定する方法を説明するための概念図である。
【0028】
図1を参照すれば、バッテリーシステム(A)は、バッテリー10、リレー20、そしてマスターBMS(Master Battery Management System、以下、マスターBMSと称する)30を含む。
【0029】
バッテリー10は、複数のバッテリーパック1-Nそして、複数のバッテリーパック1-Nのそれぞれをバッテリーシステム(A)に並列連結する複数のパックスイッチSW1-SWNを含む。以下、複数のバッテリーパック1-Nのうち、特定のバッテリーパックを指示する時、図面符号「j」を利用し、当該バッテリーパックjに含まれているバッテリーモジュール、電圧センサー、スレーブBMS、およびパックスイッチのそれぞれは図面符号「j1」、「j3」、「j5」、「PSWj」を利用する。また、複数のパックスイッチSW1-SWNのうち、特定のバッテリーパックjをバッテリーシステム(A)に並列連結する特定のパックスイッチを指示する時、図面符号「SWj」を利用する。
【0030】
図2を参照すれば、バッテリーパックjは、バッテリーモジュール100j、電圧センサー200j、電流センサー300j、スレーブBMS400j、そしてパックスイッチSWjを含むことができる。
図1で、バッテリーパックjは、パックスイッチSWjを含まないものと示されているが、これに限定されず、任意のバッテリーパックjに対応するパックスイッチSWjは当該バッテリーパックjに含まれるものと説明することができる。
【0031】
バッテリーモジュール100jは、直列および/または並列連結された複数のバッテリーセルを含むことができる。ある実施形態で、バッテリーセルは充電可能な二次電池であり得る。
図2には、直列連結された3個のバッテリーセルCell1-Cell3を含むバッテリーモジュール100jが示されているが、これに限定されるのではない。バッテリーモジュール100jは、多様な数のバッテリーセルを含むことができる。
【0032】
電圧センサー200jは、バッテリーモジュール100jと並列連結されている。電圧センサー200jは、バッテリーモジュール100jの両端電圧であるパック電圧Vjを測定し、測定結果をスレーブBMS400jを通じてマスターBMS30に伝送することができる。
【0033】
電流センサー300jは、バッテリーモジュール100jと直列連結されている。電流センサー300jは、バッテリーモジュール100jに流れるパック電流Ijを測定し、測定結果をスレーブBMS400jを通じてマスターBMS30に伝送することができる。
【0034】
スレーブBMS400jは、マスターBMS30と通信して、バッテリーセルに関する多様な情報、パック電圧Vjおよびパック電流Ijに関する情報を含むデータを伝送し、各種命令を受信することができる。例えば、スレーブBMS400jは、パックスイッチSWjのスイッチング(オン/オフ)動作を制御する制御信号を受信することができる。
【0035】
リレー20は、バッテリーシステム(A)と外部装置(B)を電気的に連結または分離することができる。具体的に、リレー20がバッテリーシステム(A)と外部装置(B)を電気的に連結すれば、バッテリー10は外部装置(B)の電力で充電されたり、外部装置(B)に電力を供給することができる。外部装置(B)は、バッテリー10が充電される充電モードでは充電器、バッテリー10が放電される放電モードでは負荷(例えば、車両モータなど)であり得る。
【0036】
一実施形態により、
図3乃至
図5で、マスターBMS30がバッテリーパックjの内部抵抗(DCIR:Direct Current Internal Resistance)を推定する間に、リレー20はオフされ得る。そうすると、マスターBMS30は、外部装置(B)の影響を受けずに、バッテリーパックjの内部抵抗(DCIR)を精度高く推定することができる。
【0037】
マスターBMS30は、上位制御器(図示せず)と通信して新規バッテリーパック(New Battery Pack)がバッテリーシステム(A)に搭載されることを指示するメッセージを受信すると、複数の既存バッテリーパック(Old Battery Pack)のうち、内部抵抗(DCIR)の推定が必要なターゲットバッテリーパックを選定することができる。
【0038】
図1を参照すれば、マスターBMS30は、複数の第2パック電圧差値のそれぞれに対応する複数の第2補償電流の電流値および基準抵抗値がマッピングされて記録されたルックアップテーブル(Look-Up Table)が保存されるメモリ31を含むことができる。例えば、ルックアップテーブルは以下で説明する表1のような形態でメモリ31に保存され得る。
【0039】
図3乃至
図5を参照すれば、例えば、第1バッテリーパック1が交換された新規バッテリーパック(New Battery Pack)であり、第2乃至第4バッテリーパック2-4は既存バッテリーパック(Old Battery Pack)であると仮定する。新規バッテリーパックは、使用していないバッテリーパックであって、内部抵抗値が既知であるバッテリーパックであり得る。既存バッテリーパックは、バッテリーシステム(A)に既搭載されて所定期間使用されたバッテリーパックであって、内部抵抗値が既知でないバッテリーパックであり得る。
【0040】
一実施形態により、マスターBMS30は、複数の既存バッテリーパックである第2乃至第4バッテリーパック2-4のうち、内部抵抗値を推定するターゲットバッテリーパックを所定の基準により選定することができる。マスターBMS30は、ターゲットバッテリーパックと新規バッテリーパックとが並列連結されようにそれぞれのパックスイッチSWjをターンオンすることができる。マスターBMS30は、ターゲットバッテリーパックと新規バッテリーパックのそれぞれのパック電圧Vjおよび並列連結されたターゲットバッテリーパックと新規バッテリーパックとの間に流れる補償電流(Im)の電流値に基づいてターゲットバッテリーパックの内部抵抗(DCIR)を推定することができる。より詳細な内容は、以下、
図3乃至
図6と共に説明する。
【0041】
図6は一実施形態によりバッテリーの抵抗を推定する方法を説明する図面である。
【0042】
以下、
図1乃至
図6を参照して、バッテリー抵抗推定方法およびその方法を提供するバッテリーシステムを説明する。
【0043】
図6を参照すれば、まず、マスターBMS30は、上位制御器(図示せず)と通信して新規バッテリーパック(New Battery Pack)がバッテリーシステム(A)に搭載されることを指示するメッセージを受信すると、既存バッテリーパック(Old Battery Pack)に対する内部抵抗(DCIR)推定ロジックを行う(S100)。
【0044】
以下の説明のために、
図3乃至
図5を参照すれば、第1バッテリーパック1が交換された新規バッテリーパック(New Battery Pack)であり、第2乃至第4バッテリーパック2-4は既存バッテリーパック(Old Battery Pack)であると仮定する。しかし、これに限定されるのではなく、バッテリー10は多様な個数の既存バッテリーパックおよび新規バッテリーパックを含むことができる。
【0045】
次に、マスターBMS30は、複数の既存バッテリーパック2-4のうち、所定の基準によりターゲットバッテリーパックを選定する(S200)。
【0046】
例えば、第2乃至第4バッテリーパック2-4のそれぞれの内部抵抗(DCIR)値が必要であれば、マスターBMS30は、第2バッテリーパック2、第3バッテリーパック3、第4バッテリーパック4の順に、ターゲットバッテリーパックを選定することができる。しかし、これに限定されるのではなく、マスターBMS30は、第2乃至第4バッテリーパック2-4をランダムにターゲットバッテリーパックとして選定するなど多様な基準を適用することができる。
【0047】
次に、マスターBMS30は、新規バッテリーパック1およびターゲットバッテリーパックjを並列連結する(S300)。
【0048】
例えば、
図3を参照すれば、マスターBMS30は、新規バッテリーである第1バッテリーパック1の第1パックスイッチSW1およびターゲットバッテリーパックである第2バッテリーパック2の第2パックスイッチSW2をターンオンして、第1バッテリーパック1および第2バッテリーパック2を並列連結することができる。
【0049】
他の例として、第2バッテリーパック2に対する内部抵抗(DCIR)推定が完了されると(以下で説明する段階S500)、次のターゲットバッテリーパックである第3バッテリーパック3と新規バッテリーである第1バッテリーパック1とを並列連結することができる。
図4を参照すれば、マスターBMS30は、第1パックスイッチSW1および第3パックスイッチSW3をターンオンして、第1バッテリーパック1および第3バッテリーパック3を並列連結することができる。
【0050】
また他の例として、第3バッテリーパック3に対する内部抵抗(DCIR)推定が完了されると(以下で説明する段階S500)、次のターゲットバッテリーパックである第4バッテリーパック4と新規バッテリーである第1バッテリーパック1とを並列連結することができる。
図5を参照すれば、マスターBMS30は、第1パックスイッチSW1および第4パックスイッチSW4をターンオンして、第1バッテリーパック1および第4バッテリーパック4を並列連結することができる。
【0051】
次に、マスターBMS30は、新規バッテリーパック(New Battery Pack)およびターゲットバッテリーパック(Target Battery Pack)のそれぞれから、パック電流値およびパック電圧値を受信する(S400)。
【0052】
図3を参照すれば、マスターBMS30は、第1バッテリーパック1から第1パック電流(I1)値および第1パック電圧(V1)値を受信する。また、マスターBMS30は、第2バッテリーパック2から第2パック電流(I2)値および第2パック電圧(V2)値を受信する。この時、第1パック電流(I1)は、並列連結された第1バッテリーパック1と第2バッテリーパック2との間に流れる第1補償電流(Im)である。また、第2パック電流(I2)も並列連結された第1バッテリーパック1と第2バッテリーパック2との間に流れる第1補償電流(Im)である。つまり、第1補償電流(Im)が第1バッテリーパック1で測定されると第1パック電流(I1)であり、第1パック電流(I1)が第2バッテリーパック2で測定されると第2パック電流(I2)であり得る。
【0053】
また、第1パック電圧(V1)および第2パック電圧(V2)は、第1バッテリーパック1と第2バッテリーパック2とが並列連結される前に測定されたパック電圧であり得る。第1バッテリーパック1と第2バッテリーパック2とが並列連結されると、第1パック電圧差値(ΔVs)により第1補償電流(Im)が流れるようになる。そうすると、セルフバランシング効果により、第1バッテリーパック1および第2バッテリーパック2のそれぞれのパック電圧の電圧値は同一になり得る。
【0054】
次に、マスターBMS30は、第1補償電流(Im)の電流値、第2補償電流(Id)の電流値、新規抵抗(Rnew)の抵抗値、第1基準抵抗(Rref_1)の抵抗値、および第2基準抵抗(Rref_2)の抵抗値に基づいて、ターゲットバッテリーパックの内部抵抗(DCIR)であるターゲット抵抗(Rold_t)の抵抗値を推定する(S500)。
【0055】
補償電流は、バッテリーパック間の電圧差により発生する電流であり、並列連結されたバッテリーパック間の電圧値を合わせるために流れる電流である。一実施形態により、第1補償電流(Im)は並列連結された新規バッテリーパックおよびターゲットバッテリーパックの間に流れる補償電流である。第2補償電流(Id)は、新規バッテリーパックとターゲットバッテリーパックの第1パック電圧差値(ΔVs)と同一の電圧値である第2パック電圧差値(ΔVd)を有する第1および第2基準バッテリーパック(First and Second Standard Battery Pack)の間に流れる補償電流である。
【0056】
段階S500で、まず、マスターBMS30は、第1パック電圧差値(ΔVs=|V1-V2|)を計算する。例えば、
図3で、マスターBMS30は、第1バッテリーパック1の第1パック電圧(V1)と第2バッテリーパック2の第2パック電圧(V2)との差値である第1パック電圧差値(ΔVs)を計算することができる。この時、第1パック電圧差値(ΔVs)は20Vであると仮定する。
【0057】
段階S500で、マスターBMS30は、第1パック電圧差値(ΔVs=20V)と同一の電圧値である第2パック電圧差値(ΔVd=20V)に対応する第2補償電流(Id)の電流値(例えば、5A)、第1基準抵抗(Rref_1)の抵抗値(2Ω)、および第2基準抵抗(Rref_2)の抵抗値(2Ω)をルックアップテーブル(Look-Up Table)から抽出することができる。
【0058】
第1パック電圧差値(ΔVs)は、新規バッテリーパックおよびターゲットバッテリーパックのパック電圧の差値であり得る。第2パック電圧差値(ΔVd)は、第1基準バッテリーパック(First Standard Battery Pack)および第2基準バッテリーパック(Second Standard Battery Pack)のパック電圧の差値であり得る。
【0059】
下記表1は、第2パック電圧の差値(ΔVd)に対応する、第2補償電流(Idiff)の電流値、そして第1基準抵抗(Rref_1)の抵抗値、および第2基準抵抗(Rref_2)の抵抗値がマッピングされて記録されたルックアップテーブル(Look-Up Table)の一例示である。
【0060】
【0061】
段階S500で、マスターBMS30は、第1補償電流(Im)の電流値、第2補償電流(I
diff)の電流値、新規抵抗(Rnew)の抵抗値、第1基準抵抗(R
ref_1)の抵抗値、および第2基準抵抗(Rref_2)の抵抗値を下記式(1)に代入して、ターゲット抵抗(Rold_t)の抵抗値を計算または推定することができる。
【数3】
【0062】
具体的に、前記式(1)は、下記式(2)と下記式(3)が同一であるということを前提に導き出され得る。つまり、下記式(2)は、第1パック電圧差値(ΔVs=20V)に関する式であり、下記式(3)は、第2パック電圧差値(ΔVd=20V)に関する式である。
【数4】
【0063】
前記式(2)で、第1パック電圧差値(ΔVs)は、第1補償電流(Im)および並列連結されたバッテリーパックの合成内部抵抗(Rold_t+Rnew)の掛けを示す。この時、第1補償電流(Im)の電流値は、バッテリーパックで測定された電流値であり、新規抵抗(Rnew)の抵抗値は、既に知られた抵抗値であり得る。
【数5】
【0064】
前記式(3)で、第2パック電圧差値(ΔVd)は、第2補償電流(Id)および並列連結されたバッテリーパックの合成内部抵抗(Rref_1+Rref_2)の掛けを示す。この時、第2補償電流(Id)の電流値、第1基準抵抗(Rref_1)の抵抗値、および第2基準抵抗(Rref_2)の抵抗値は、ルックアップテーブル(Look-Up Table)を通じて分かる値であり得る。
【0065】
また、前記式で、新規バッテリーパック、第1基準バッテリーパック、および第2基準バッテリーパックの全てが性能が同一であり、使用されていない新規バッテリーパックである場合、それぞれのバッテリーパックの内部抵抗(DCIR)値は同一であり得る。この場合、前記式(1)は下記式(4)のように整理され得る。
【数6】
【0066】
例えば、第1補償電流(Im)の電流値が2A、第2補償電流(Id)の電流値が5A、新規抵抗(Rnew)、第1基準抵抗(Rref_1)、および第2基準抵抗(Rref_2)のそれぞれの抵抗値が2Ωであると仮定する。そうすると、マスターBMS30は、ターゲット抵抗(Rold_t)の抵抗値を8Ωと推定することができる。
【0067】
次に、マスターBMS30は、内部抵抗値の推定が必要な既存バッテリーパックが存在するか否かを判断する(S600)。
【0068】
次に、判断結果、存在すると(S600、Yes)、前述したS200から繰り返す。例えば、第2バッテリーパック2をターゲットバッテリーパックとして選定して、第2バッテリーパック2の内部抵抗(DCIR)の抵抗値の推定が完了されると、マスターBMS30は、第3バッテリーパック3をターゲットバッテリーパックとして選定することができる。また、第3バッテリーパック3の内部抵抗(DCIR)の抵抗値の推定が完了されると、マスターBMS30は、第4バッテリーパック4をターゲットバッテリーパックとして選定することができる。
【0069】
次に、判断結果、存在しないと(S600、No)、マスターBMS30は、内部抵抗値の推定ロジックを終了する。
【0070】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるのではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者が多様に変形および改良した形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0071】
1-N バッテリーパック
10 バッテリー
20 リレー
30 マスターBMS
31 メモリ
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】