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特表2024-532754アルカン及びアルキル芳香族炭化水素の脱水素プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】アルカン及びアルキル芳香族炭化水素の脱水素プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/333 20060101AFI20240903BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20240903BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240903BHJP
   C07C 2/76 20060101ALN20240903BHJP
   C07C 15/04 20060101ALN20240903BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C07C5/333
C07C11/06
B01J23/42 Z
C07C2/76
C07C15/04
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508102
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022037683
(87)【国際公開番号】W WO2023018527
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,939
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/328,935
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】ディアス ウルティア クリスティアン エー
(72)【発明者】
【氏名】バオ シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】キュヒラー キース エイチ
(72)【発明者】
【氏名】マドゥスカル サウラブ エス
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ アルン ケイ
(72)【発明者】
【氏名】クレイ ラッセル ティー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169BA01B
4G169BA06B
4G169BA20B
4G169BB04B
4G169BC22B
4G169BC75B
4G169CC05
4G169DA08
4G169EA01X
4G169EC21X
4G169EC30
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB63
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AC12
4H006BA11
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA60
4H006BA81
4H006BA84
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC32
4H006BD31
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD84
4H039CA21
4H039CC10
(57)【要約】
炭化水素が脱水素触媒粒子と接触されて、コークス化触媒粒子及び脱水素炭化水素を含み得る流出物を生成し得る。流出物から、コークス化触媒粒子に富む第1ストリームと、脱水素炭化水素に富み、かつ同伴触媒粒子を含有する第2ストリームとが分離され得る。第2ストリームは、第1クエンチ媒体と接触されて冷却ストリームを生成し得る。冷却ストリームは、クエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触され得る。脱水素炭化水素を含む気体ストリームと、第1クエンチ媒体ストリームと、第2クエンチ媒体及び同伴触媒粒子を含むスラリーストリームとが塔から分離され得る。第1クエンチ媒体は再循環され得る。同伴触媒粒子はスラリーから分離されて回収第2クエンチ媒体及び回収同伴触媒粒子を与え得る。回収第2クエンチ媒体は再循環され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素のアップグレードプロセスであって、
(I)炭化水素含有フィードを変換ゾーン内で流動脱水素触媒粒子と接触させて前記炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含む変換流出物を生成するステップと、
(II)前記変換流出物から、前記コークス化触媒粒子に富み、かつ前記1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム及び前記1種以上の脱水素炭化水素に富み、かつ同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームを分離するステップと、
(III)前記第2ストリームを第1クエンチ媒体と接触させて冷却第2ストリームを生成するステップと、
(IV)前記冷却第2ストリームをクエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触させるステップと、
(V)前記1種以上の脱水素炭化水素を含む気体ストリームと、凝縮第1クエンチ媒体ストリームと、液相の前記第2クエンチ媒体の少なくとも一部及び前記同伴コークス化触媒粒子を含むスラリーストリームとを前記クエンチ塔から回収するステップと、
(VI)前記凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部をステップ(III)に再循環させるステップと、
(VII)前記スラリーストリームから前記同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を分離して、回収第2クエンチ媒体ストリーム及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与えるステップと、
(VIII)前記回収第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部をステップ(IV)に再循環させるステップと
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
さらに、
(IX)前記第1ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部及び前記回収同伴触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤及び場合により燃料と接触させて、前記コークスと、存在する場合、前記燃料との少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含む燃焼流出物を生成するステップと、
(X)燃焼ガスストリーム及び再生触媒粒子ストリームを分離するステップと、
(XI)追加量の前記炭化水素含有フィードを、前記再生触媒粒子ストリームからの流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子及び追加の1種以上の脱水素炭化水素を含む追加の変換流出物を生成するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記脱水素触媒粒子が担体上に配置された第8~10族元素を含み、前記プロセスが、
(XII)前記回収同伴触媒粒子ストリームの少なくとも一部を金属再生利用施設に運搬するステップと、
(XIII)前記回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子から前記第8~10族元素の少なくとも一部を回収するステップと
をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(XIV)前記スラリーストリームをステップ(VII)の前に冷却して冷却スラリーストリームを生成するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記変換流出物がさらにベンゼンを含み、前記プロセスが、
(XV)ベンゼン生成物ストリームを前記クエンチ塔から取り出すステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1クエンチ媒体が、前記クエンチ塔から取り出された前記ベンゼン生成物ストリームの少なくとも一部を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上のサイクロン内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上のサイクロンの少なくとも1つのプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、一次分離装置及び前記一次分離装置の下流にあって前記一次分離装置と流体連絡している二次分離装置内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記二次分離装置のプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上の気固分離器内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上の気固分離器及び前記クエンチ塔と流体連絡している移送ライン内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1クエンチ媒体が、前記第2ストリームとの接触時に液相中にあり、前記第1クエンチ媒体が、前記第2ストリームと接触した後に気相中にある、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1クエンチ媒体が、ベンゼン、水、若しくは<580℃の標準沸点を有する多環芳香族炭化水素、又はその混合物を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2クエンチ媒体が、ベンゼン、水、若しくは<580℃の標準沸点を有する多環芳香族炭化水素、又はその混合物を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2クエンチ媒体が、前記第1クエンチ媒体の標準沸点より高い標準沸点を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記クエンチ塔内の下部ゾーンが、前記スラリーストリームのインベントリを含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップ(VII)において、前記同伴コークス化触媒粒子が、1つ以上のフィルターによって前記スラリーストリームから分離される、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第1クエンチ媒体が液体炭化水素を含み、前記冷却第2ストリーム中のいずれもの非固体成分が完全に気相中にある、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1クエンチ媒体が、前記炭化水素含有フィードの脱水素中に形成される芳香族炭化水素を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第2クエンチ媒体が、前記炭化水素含有フィードの脱水素中に形成されない芳香族炭化水素を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2クエンチ媒体が、前記クエンチ塔内で前記冷却第2ストリームと向流的に接触する、請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記変換流出物が≧620℃の温度であり、前記冷却第2ストリームが≧500℃かつ<620℃の温度である、請求項1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%の第8~10族元素と、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%のPtと、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、前記担体は少なくとも0.5wt%の第2族元素を含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記脱水素触媒粒子が、10μm~500μmの範囲のメジアン粒径と、100又は250mLのメスシリンダーの代わりに10、25、又は50mLのメスシリンダーを用いて修正したASTM D7481-18に従って測定して、0.3g/cm3~2g/cm3の範囲の見掛けゆるみ嵩密度とを有する、請求項1~22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記脱水素触媒粒子が、ゲルダートA又はゲルダートB分類の要件を満たす、請求項1~23のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することにより両開示内容全体を本明細書に援用する出願日2021年8月11日を有する米国仮出願第63/231,939号、及び出願日2022年4月8日を有する米国仮出願第63/328,935号に対する優先権及びそれらの利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、1種以上のアルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素の脱水素プロセスに関する。さらに詳細には、本開示は、1種以上のアルカン及び/又は1種以上のアルキル芳香族炭化水素を流動触媒粒子の存在下で脱水素して、1種以上のオレフィンを含む流出物を生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素フィードの脱水素は、種々の商品生産物の生産(建設、包装等)用のオレフィンスレートを提供する。特に、プロパンの脱水素はプロピレンを生成し、これはポリプロピレンの生産に重要な中間体である。炭化水素フィードが反応器に導入され、炭化水素フィードの脱水素を可能にする高温で流動脱水素触媒粒子と接触されて変換流出物を生成する。脱水素プロセスは、1つ以上のサイクロンを用いて触媒粒子を回収するようにデザインされる。しかしながら、収集されない触媒粒子は、反応器に戻って再循環されるか又は金属再生利用等のために回収される必要があり得る。
変換流出物からの触媒粒子の分離を改善するための1つの方法は、変換流出物が通されるサイクロンの数を増やすことである。しかしながら、変換流出物の組成に関しては2以上のサイクロン段階の利用は、高温での変換流出物の滞留時間を増やし、生成物及び未反応炭化水素フィード成分はさらなる熱反応を受ける可能性があり、所望生成物の収率を下げるので望ましくない。他方で、不十分な分離も、気体生成物ストリームに残されたいずれの触媒粒子も生成物ストリームがクエンチされるときに逆脱水素を引き起こす可能性があり、下流で低温にて回収された大量の触媒は、反応温度まで再加熱されなければならない触媒量増加のためプロセスにより多くの熱を投入する必要があるので望ましくない。
従って、アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素を脱水素して変換流出物を生成し、変換流出物から触媒粒子を回収するための改善されたプロセスが必要である。本開示は、この必要性及び他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0004】
要約
アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素のアップグレードプロセスを提供する。一部の実施形態では、炭化水素のアップグレードプロセスは、(I)炭化水素含有フィードを変換ゾーン内で流動脱水素触媒粒子と接触させて炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含み得る変換流出物を生成するステップを含み得る。プロセスは、(II)変換流出物から、コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム及び1種以上の脱水素炭化水素に富み、かつ同伴コークス化触媒粒子を含有する第2ストリームを分離するステップをも含み得る。プロセスは、(III)第2ストリームを第1クエンチ媒体と接触させて冷却第2ストリームを生成するステップをも含み得る。プロセスは、(IV)冷却第2ストリームをクエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触させるステップをも含み得る。プロセスは、(V)1種以上の脱水素炭化水素を含み得る気体ストリームと、凝縮第1クエンチ媒体ストリームと、液相の第2クエンチ媒体の少なくとも一部及び同伴コークス化触媒粒子を含み得るスラリーストリームとをクエンチ塔から回収するステップをも含み得る。プロセスは、(VI)凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部をステップ(III)に再循環させるステップをも含み得る。プロセスは、(VII)スラリーストリームから同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を分離して、回収第2クエンチ媒体ストリーム及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与えるステップをも含み得る。プロセスは、(VIII)回収第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部をステップ(IV)に再循環させるステップをも含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】1つ以上の記載実施形態に従って、炭化水素含有フィードを脱水素するための、反応器又は変換ゾーン、再生器又は燃焼ゾーン、及びクエンチ塔を含むシステムを示す。
図2】1つ以上の記載実施形態に従って、炭化水素含有フィードを脱水素するための、反応器又は変換ゾーン、再生器又は燃焼ゾーン、及びクエンチ塔を含む別のシステムを示す。
図3】触媒組成物がプロパン脱水素に対して60サイクル超にわたって安定していたこと示す。
図4】触媒組成物8が、204サイクルにわたって性能を維持したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
以下、本発明の種々の具体的実施形態、バージョン及び実施例について、請求項に係る発明を理解するという目的で本明細書で採択する好ましい実施形態及び定義を含めて記述する。下記詳細な説明は具体的な好ましい実施形態を与えるが、当業者ならこれらの実施形態は単なる例示であり、本発明は他の方法で実施できることを理解するであろう。侵害を判断するという目的で、本発明の範囲は、いずれの1つ以上の添付請求項をも指し、列挙されているものに等価であるそれらの等価物、要素又は制限が含まれる。「発明」へのいずれの言及も、請求項によって定義される本発明の必ずしも全てではないが、1つ以上を意味し得る。
本開示では、少なくとも1つの「ステップ」を含むようにプロセスを記述する。各ステップは、プロセスにおいて1回又は連続若しくは不連続様式で複数回行われ得る動作又は操作であることを理解すべきである。特段の記載がない限り又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、プロセスの複数のステップは、場合によっては1つ以上の他のステップとの重なりの有無にかかわらず、又はいずれの他の順序でも、記載どおりの順序で連続して行なってよい。さらに、1以上又は全てのステップさえ、材料の同一又は異なるバッチに関して同時に行ってよい。例えば、連続プロセスにおいて、プロセスの最初に供給されたばかりの原材料に関してプロセスの第1ステップを行いながら、第1ステップのより早い時点でプロセスに供給された原材料の処理の結果生じた中間材料に対して同時に第2ステップを行ってよい。好ましくは、記載した順序でステップを行う。
【0007】
別段の指示がない限り、本開示において量を指示する全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。また、本明細書及び特許請求の範囲で使用する正確な数値は特定の実施形態を構成するものと理解すべきである。実施例のデータの正確さを保証するよう努力した。しかしながら、いずれの測定データも本質的に、測定を行うために利用する技術及び/又は機器の限界のため、ある一定レベルの誤差を含有することを理解すべきである。
本明細書では一連の上限数値及び一連の下限数値を用いて特定の実施形態及び特徴を記述する。別段の指示がない限り、任意の2つの値の組み合わせ、例えば、任意の下限値と任意の上限値の組み合わせ、任意の2つの下限値の組み合わせ、及び/又は任意の2つの上限値の組み合わせを含む範囲が企図されることを理解すべきである。
本明細書で用いる不定冠詞「a」又は「an」は、特段の記載がないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、「少なくとも1つ」を意味する。従って、「a reactor」又は「a conversion zone」を使用する実施形態には、特段の記載がない限り又は文脈が明白に1つのみの反応器若しくは変換ゾーンを使用すると指示していない限り、1、2、又は3つ以上の反応器又は変換ゾーンを使用する実施形態が含まれる。
本明細書で使用する用語「上方(up)」と「下方(down)」、「上向き」と「下向き」、「上部(upper)」と「下部(lower)」、「上向きに」と「下向きに」、「上」と「下」、及び他の同様の用語は、互いに相対的な位置を指し、同一用語を用いる装置及び方法は種々の角度又は定位で等しく有効であり得るので、特定の空間的定位を表す意図ではない。
【0008】
用語「炭化水素」は、(i)水素原子と炭素原子から成る任意の化合物又は(ii)(i)の2種以上の該化合物の任意の混合物を意味する。用語「Cn炭化水素」(nは正の整数である)は、(i)その分子中に炭素原子を総数nで含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2種以上の該炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。従って、C2炭化水素はエタン、エチレン、アセチレン、又はこれらの化合物の少なくとも2種の任意の比率の混合物であり得る。「Cm~Cn炭化水素」又は「Cm-Cn炭化水素」(m及びnは正の整数であり、かつm<n)は、Cm、Cm+1、Cm+2、...、Cn-1、Cn炭化水素のいずれか、又はこれらの2種以上の任意の混合物を意味する。従って、「C2~C3炭化水素」又は「C2-C3炭化水素」は、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、プロピン、プロパジエン、シクロプロパンのいずれか、及びこれらの2種以上の該成分間の任意の比率の任意の混合物であり得る。「飽和C2-C3炭化水素」は、エタン、プロパン、シクロプロパン、又はこれらの2種以上の任意の比率の任意の混合物であり得る。「Cn+炭化水素」は、(i)その分子中に少なくともnの総数で炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2種以上の該炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。「Cn-炭化水素」は、(i)その分子中に最大nの総数で炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2種以上の該炭化水素の任意の混合物を意味する。「Cm炭化水素ストリーム」は、本質的にCm炭化水素から成る炭化水素ストリームを意味する。「Cm-Cn炭化水素ストリーム」は、本質的にCm-Cn炭化水素から成る炭化水素ストリームを意味する。
【0009】
本開示の目的では、元素の命名法は、Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 16th Ed., John Wiley & Sons, Inc., (2016), Appendix Vに提供されている元素周期表のバージョン(新表記法下)に準拠する。例えば、第8族元素はFeを含み、第9族元素はCoを含み、第10族元素はNiを含む。本明細書で使用する用語「半金属」は、下記元素:B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びAtを指す。本開示では、所与の元素が存在すると示すとき、特段の記載がない限り又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、それは元素状態で又はその任意の化合物として存在し得る。
用語「アルカン」は、飽和炭化水素を意味する。用語「環状アルカン」は、その分子構造中に環状炭素環を含む飽和炭化水素を意味する。アルカンは、直鎖、分岐、又は環状であり得る。
用語「芳香族」は、当該技術分野において承認されている範囲に従って理解すべきであり、アルキル置換及び非置換の単核及び多核化合物を包含する。
装置、例えば、変換ゾーンから得られる出ていくストリームに関して、「Xリッチ(X-rich)」又は「Xに富む(rich in X)」のような表現で使用されるとき、用語「rich」は、該ストリームが取り出される同装置に供給されたフィード材料中におけるより高い濃度で材料Xを含むことを意味する。装置、例えば、変換ゾーンから得られる出ていくストリームに関して、「Xリーン(X-lean)」又は「Xが少ない(lean in X)」のような表現で使用されるとき、用語「lean」は、該ストリームが取り出される同装置に供給されたフィード材料中におけるより低い濃度で材料Xを含むことを意味する。
【0010】
用語「混合金属酸化物」は、酸素原子及び少なくとも2種の異なる金属原子を含み、それらが原子スケールで混ざり合っている組成物を指す。例えば、「混合Mg/Al金属酸化物」は、原子スケールで混ざり合ったO、Mg、及びAl原子を有し、実質的に、下記一般式を有するMg/Alハイドロタルサイトをか焼することによって得られる組成物と同一である。
【化1】
式中、Aは、負電荷nの対アニオンであり、xは、>0から<1までの範囲であり、mは、≧0である。一緒に混ざり合ったnmサイズのMgO粒子及びnmサイズのAl2O3粒子から成る材料は、Mg原子とAl原子が原子スケールで混ざり合っているのではなく、nmスケールで混ざり合っているので、混合金属酸化物でない。
【0011】
用語「選択性」は、触媒反応における特定化合物の生成率(炭素モル基準で)を指す。例として、「アルカン炭化水素変換反応は、オレフィン炭化水素に対して100%の選択性を有する」という表現は、該反応で変換されるアルカン炭化水素の100%(炭素モル基準)がオレフィン炭化水素に変換されることを意味する。特定反応体に関して使用されるとき、用語「転化率」は反応に消費される反応体の量を意味する。例えば、特定反応体がプロパンであるとき、100%転化率は、反応にプロパンの100%が消費されることを意味する。収率(炭素モル基準)は、転化率×選択性である。
用語「プレナム」は、反応器又は分離器の、熱い生成物ストリームを反応器又は分離器から出口に運ぶ管又はダクト間の流体連絡を促進する領域を意味する。反応器又は分離器が複数のプレナム、例えば、第1プレナム及び第2プレナムを有することがあり、用語プレナムは、特に断りのない限り、複数のプレナムのいずれをも指す。
用語「スラリー」は、スラリーの質量に基づいて20wt%までの量で微粉又は固体を含有するいずれの液体ストリームをも意味する。用語「スラッジ」は、スラリーの質量に基づいて>20wt%から40wt%までの範囲で微粉又は固体を含有するいずれの液体ストリームをも意味する。用語「ケーク」は、スラリーの質量に基づいて>40wt%の量で微粉又は固体を含有するいずれの液体ストリームをも意味する。
【0012】
概要
炭化水素含有フィードが任意の適切な変換ゾーン内で流動脱水素触媒粒子と接触されて炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含み得る変換流出物を生成し得る。一部の実施形態では、1種以上の脱水素炭化水素は、エチレン、プロピレン、1種以上のブテン、1種以上のペンテン、若しくはその任意の混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、変換流出物は、ベンゼンをも含み得る。脱水素触媒粒子は、担体上に配置された1種以上の第8~10族元素、例えば、Ptを含み得る。
変換流出物から、コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリームと、1種以上の脱水素炭化水素に富み、同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームとが分離されるか又は別の方法で得られる。一部の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、1つ以上の分離装置又は気固分離器内で変換流出物から分離され得る。一部の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、1つ以上のサイクロンによって変換流出物から分離され得る。一部の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、一次分離装置及び一次分離装置の下流にあって一次分離装置と流体連絡している二次分離装置、例えば一次サイクロン及び二次サイクロン内で変換流出物から分離され得る。一部の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、一次分離装置内で変換流出物から分離され得る。一部の実施形態では、複数の一次分離装置が並列に配置され得る。一部の実施形態では、複数の二次分離装置が並列に配置され得る。一部の実施形態では、複数の一次分離装置が並列に配置され、複数の二次分離装置が並列に配置され、並列に配置された複数の二次分離装置は、並列に配置された複数の一次分離装置の下流に配置され得る。
【0013】
第2ストリームは、第1クエンチ媒体と接触されて冷却第2ストリームを生成し得る。例えば、分離装置又は気固分離器がサイクロンであるとき、第2ストリームは、サイクロンのプレナム又は該プレナムと流体連絡している移送ライン内で第1クエンチ媒体と接触されて冷却第2ストリームを生成し得る。冷却第2ストリームは、クエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触され得る。1種以上の脱水素炭化水素を含み、同伴コークス化触媒粒子が実質的にないか又は全くない気体ストリームが、クエンチ塔からオーバーヘッドとして回収され得る。凝縮第1クエンチ媒体ストリームが、クエンチ塔からサイドドローとして回収され、凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部が再循環されて追加量の第2ストリームと接触して追加量の冷却第2ストリームを生成し得る。第2クエンチ媒体の少なくとも一部及び同伴コークス化触媒粒子を含み得るスラリーストリームが、クエンチ塔から下部ストリームとして回収され得る。一部の実施形態では、クエンチ塔内の下部ゾーンが、スラリーストリームのインベントリ(inventory)を含有することがあり、結果として、クエンチ塔から回収されるスラリーストリームはこのインベントリから取り出され得る。一部の実施形態では、第2ストリームは、第2ストリームが一次分離装置を出た直後又は第2ストリームが二次分離装置に入る直前に第1クエンチ媒体と接触されて冷却第2ストリームを生成し得る。冷却第2ストリームは、その後クエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触される前に1つ以上の二次分離装置に入り得る。
【0014】
同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部がスラリーから分離されて、いずれの同伴コークス化触媒粒子も少ないか又は含まない回収第2クエンチ媒体及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与え得る。一部の実施形態では、回収第2クエンチ媒体の少なくとも一部がクエンチ塔に再循環されてクエンチ塔内で追加量の冷却第2ストリームと接触し得る。
一部の実施形態では、本明細書で開示する触媒粒子は、追加量の炭化水素含有フィードとの再接触前の追加還元ステップを受けた後に改善された活性及び選択性を示し得る。さらに、還元後触媒粒子は、炭化水素含有フィードの存在下で10分以上にわたって改善された活性及び選択性を維持し得る。従って、一部の実施形態ではプロセスは場合により再生触媒粒子の少なくとも一部を還元ガスと接触させて再生還元触媒粒子を生成するステップを含み得る。この実施形態では、追加量の炭化水素含有フィードは、再生還元触媒粒子の少なくとも一部と接触されて追加の変換流出物を生成し得る。他の実施形態では、プロセスは、再生触媒粒子の少なくとも一部及び再生還元触媒粒子の少なくとも一部を追加量の炭化水素含有フィードと接触させて追加の変換流出物を生成するステップを含み得る。さらに他の実施形態では、プロセスは、再生触媒粒子の少なくとも一部、再生還元触媒粒子の少なくとも一部、及び/又は新しい若しくは補充触媒粒子と接触させて追加の変換流出物を生成するステップを含み得る。
【0015】
炭化水素脱水素プロセス
炭化水素含有フィードは、いずれもの適切な変換ゾーン内で脱水素触媒粒子と接触されて炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含み得る変換流出物を生成することができる。炭化水素含有フィードは、限定するものではないが、1種以上のアルカン、例えば、C2-C16直鎖若しくは分岐アルカン及び/又はC4-C16環状アルカン、及び/又は1種以上のアルキル芳香族炭化水素、例えば、C8-C16アルキル芳香族炭化水素であるか或いはこれらを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子は、流動床反応器で一般的に利用される連続式プロセス内に配置された変換ゾーン内で接触され得る。一部の実施形態では、変換ゾーンはライザー反応器内に配置され得る。他の実施形態では、変換ゾーンはダウナー反応器内に配置され得る。さらに他の実施形態では、変換ゾーンはボルテックス反応器内に配置され得る。他の実施形態では、変換ゾーンは反応器内に配置され、その中に流動脱水素触媒粒子が炭化水素含有フィードとの接触中に相対的に高密度の乱流流動床を形成できるようにし得る。相対的に高密度の乱流流動床は、バブリング及び乱流床の遷移間の臨界速度と表される遷移速度より大きいが、ライザー反応器内におけるように脱水素触媒粒子が運ばれる速い流動化又は空気輸送レジメを画定する輸送速度未満であるガス空塔速度における流動床を指す。他の実施形態では、変換ゾーンは、高速流動又は乱流床として作動する下部セクションと、平均触媒流及び平均ガス流が同時に上向きであるライザーとして作動する上部セクションとを含む脱水素反応器と共に配置され得る。
【0016】
いずれの数の反応器も直列及び/又は並列に操作され得る。いずれの2つ以上のタイプの反応器も互いに組み合わせて使用可能である。2つ以上の反応器が使用される場合、反応器は、同一条件及び/又異なる条件で操作され、同一炭化水素含有フィード又は異なる炭化水素含有フィードを受け取り得る。2つ以上の反応器が使用される場合、反応器は相互に直列、並列、又はその組み合わせで配置され得る。一部の実施形態では、適切な反応器は、限定するものではないが、高ガス速度ライザー反応器、高ガス速度ダウナー反応器、ボルテックス反応器、相対的に高密度の流動触媒床を第1端部若しくは下端部に有し、かつ第2端部若しくは上端部に位置するライザー内に相対的に低密度の流動触媒を有する反応器、並行して及び/若しくは順次に操作され、相互に同一条件若しくは異なる条件で作動する複数のライザー反応器及び/若しくはダウナー反応器、又はその組み合わせであるか或いはこれらを含み得る。
【0017】
一部の実施形態では、脱水素触媒粒子は、空気作用によって反応システムを通って移動され得る。例えば、キャリア流体又は輸送流体によって、変換ゾーンに供給され、燃焼ゾーンに供給され、2つ以上の場所をつなぐ導管を通って輸送される等である。輸送流体は、限定するものではないが、希釈剤、気体形態の1種以上の反応体、すなわち、1種以上のC2-C16アルカン、1種以上のC8-C16アルキル芳香族炭化水素、1種以上の脱水素炭化水素、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。適切な輸送流体は、限定するものではないが、分子窒素、及び揮発性炭化水素、例えばメタン、エタン、及び/又はプロパン等、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等であるか又はこれらを含み得る。輸送流体の量は、脱水素触媒粒子を流動状態に維持し、脱水素触媒粒子をある場所、例えば、燃焼ゾーンから第2の場所、例えば変換ゾーンまで輸送するのに十分な量であり得る。一部の実施形態では、脱水素触媒粒子と輸送流体の質量比は5、10、15、又は20から50、60、80、90、又は100までの範囲であり得る。輸送流体に適した注入点は、燃焼ゾーンと変換ゾーンのような任意の2つのゾーン又は他の場所をつなぐ任意の1つ以上の移送ラインに沿って複数点に形成され得る。
【0018】
炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子は、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、620℃、630℃、640℃、650℃、660℃、670℃、680℃、690℃、又は700℃から725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、825℃、850℃、875℃、又は900℃までの範囲の温度で接触され得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子は、少なくとも620℃、少なくとも630℃、少なくとも640℃、少なくとも650℃、少なくとも660℃、少なくとも670℃、少なくとも680℃、少なくとも690℃、又は少なくとも700℃から725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、825℃、850℃、875℃、又は900℃までの温度で接触され得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、変換ゾーンに導入され、その中で脱水素触媒粒子と≦5時間、≦4時間、又は≦3時間、≦1時間、≦0.5時間、≦0.1時間、≦3分、≦1分、≦30秒、又は≦0.1秒の時間にわたって接触され得る。他の実施形態では、炭化水素含有フィードは、変換ゾーンに導入され、その中で脱水素触媒粒子と0.1秒、1秒、1.5秒、2秒、又は3秒から5秒、10秒、20秒、30秒、45秒、1分、1.5分、2分、2.5分、又は3分までの時間にわたって接触され得る。一部の実施形態では、変換ゾーン内の脱水素触媒粒子の平均滞留時間は≦7分、≦6分、≦5分、≦4分≦3分、≦2分、≦1.5分、≦1分、≦45秒、≦30秒、≦20秒、≦15秒、≦10秒、≦7秒、≦5秒、≦3秒、≦2秒、又は≦1秒であり得る。一部の実施形態では、変換ゾーン内の脱水素触媒粒子の平均滞留時間は、変換ゾーン内の気体成分、例えば、炭化水素含有フィード及びそれから得られた変換流出物の平均滞留時間より長いことがある。
炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子は、少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧下で接触され得る。この炭化水素分圧は、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子の接触中の炭化水素分圧は、20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa、200kPa、300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧から1,500kPa絶対圧、2,500kPa絶対圧、4,000kPa絶対圧、5,000kPa絶対圧、7,000kPa絶対圧、8,500kPa絶対圧、又は10,000kPa絶対圧までの範囲であり得る。この炭化水素分圧は、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。
【0019】
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィードの総体積に基づいて、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%、少なくとも95vol%、又は少なくとも99vol%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。炭化水素含有フィードと脱水素触媒粒子は、少なくとも20kPa絶対圧、少なくとも50kPa絶対圧、少なくとも70kPa絶対圧、少なくとも100kPa絶対圧、少なくとも150kPa絶対圧、又は少なくとも250kPa絶対圧から300kPa絶対圧、400kPa絶対圧、500kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンの圧力下で接触され得る。
炭化水素含有フィードは、変換ゾーン内で脱水素プロセスを行うのに有効ないずれもの質量毎時空間速度(WHSV)で脱水素触媒粒子と接触され得る。一部の実施形態では、WHSVは、0.1時間-1、0.2時間-1、0.4時間-1、0.8時間-1、2時間-1、4時間-1、又は8時間-1から16時間-1、32時間-1、64時間-1、又は100時間-1までであり得る。一部の実施形態では、脱水素触媒粒子といずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の合計量の比は、質量対質量基準で1、3、5、10、15、20、25、30、又は40から50、60、70、80、90、100、110、125、又は150までの範囲であり得る。
【0020】
一部の実施形態では、変換ゾーン内の流動脱水素触媒粒子の少なくとも一部が除去され、脱水素触媒粒子が加熱され得る熱投入装置に供給され、加熱触媒粒子は変換ゾーンに戻って供給され得る。変換ゾーン内で起こる反応が吸熱性なので、流動脱水素触媒粒子の一部を除去して、炭化水素含有フィードといくらか接触した後に温度をさらに上げることは有益であり得る。熱は、電気ヒーター、又は間接的に触媒粒子を加熱するために典型的に使用される任意の他の適切なヒーターによって供給されるいずれの適切な伝熱媒体からも間接的に伝達され得る。別の実施形態では、変換ゾーン内に熱が直接加えられ得る。
コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム及び1種以上の脱水素炭化水素に富み、同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームは、変換流出物から任意の適切な装置によって分離され得るか又は他の方法で得られる。一部の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、変換流出物から1つ以上の固体・気体衝突捕集(solid-gas impingement)分離器、例えば、1つ以上のサイクロン分離器によって得ることができる。一部の実施形態では、サイクロン分離器は、正圧と負圧の両配置を含む2段階若しくは「連結」配置であるか又はこれを含み得る。一部の実施形態では、適切なサイクロン分離器は、米国特許第4,502,947号;第4,985,136号;及び第5,248,411号に開示されたものを含み得る。他の実施形態では、第1ストリーム及び第2ストリームは、コークス化触媒粒子の大半を重力によって一方向に流し、気体成分を他の方向に流すことができる「T」型導管を介して変換流出物から得られる。
【0021】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリームは、変換流出物中の>95%、>96%、>97%、>98%、又は>99%、>99.9%、>99.99%、>99.999%の脱水素触媒粒子を含み得る。その結果、一部の実施形態では、1種以上の脱水素炭化水素に富み、同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームは、>0.001%、>0.005%、>0.01%、>0.05%、>0.1%、>0.5%、>1%、又は>1.5%から3%、4%、又は5%までの、変換流出物中の脱水素触媒粒子を含み得る。
第2ストリームは第1クエンチ媒体と接触されて冷却第2ストリームを生成し得る。例えば、分離装置又は気固分離器がサイクロンであるとき、第2ストリームは、サイクロンのプレナム内で第1クエンチ媒体と接触され得る。複数のサイクロンが直列で使用されるとき、第2ストリームは、複数サイクロンの最後のサイクロンと流体連絡しているプレナム内で接触され得る。他の実施形態では、第2ストリームは、分離装置又は気固分離器及びクエンチ塔の出口と流体連絡している移送ライン内で接触され得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体は、第2ストリームとの接触時に気相、液相、又は気相・液相混合物中にあり得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体は、第2ストリームとの接触時に液相中にあり、第2ストリームと接触した後は完全に気相中にあり得る。
【0022】
一部の実施形態では、第2ストリームは、第1クエンチ媒体との最初の接触時に≧600℃、≧620℃、≧630℃、≧640℃、≧650℃、≧660℃、≧670℃、≧680℃、又は≧700℃の温度であり得る。一部の実施形態では、冷却第2ストリームは、第1クエンチ媒体と接触する前の第2ストリームの温度より少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも60℃、80℃、又は少なくとも100℃低い温度であり得る。一部の実施形態では、冷却第2ストリームは、500℃、515℃、530℃、550℃、又は560℃から575℃、590℃、600℃、610℃、又は620℃までの範囲の温度であり得る。一部の実施形態では、冷却第2ストリームは、≧500℃又は≧550℃から<620℃までの温度であり得る。
冷却第2ストリームは、クエンチ塔内に配置された接触ゾーン内で第2クエンチ媒体と接触され得る。一部の実施形態では、第2クエンチ媒体は、クエンチ塔内で向流的に冷却第2ストリームと接触され得る。例えば、冷却第2ストリームは、クエンチ塔に第2クエンチ媒体より下に導入され、クエンチ塔内で上向きに流れ、第2クエンチ媒体は、クエンチ塔内で下向きに流れ得る。一部の実施形態では、第2クエンチ媒体は、クエンチ塔に1つ以上のノズルによって導入され得る。
【0023】
1種以上の脱水素炭化水素を含み、同伴コークス化触媒粒子が実質的にないか又は全くない気体ストリームがクエンチ塔からのオーバーヘッドとして回収され得る。一部の実施形態では、クエンチ塔の上端部又はゾーンにおけるこの気体ストリームの速度は十分に遅く、コークス化触媒粒子がその中にもはや同伴され続けられず、結果として同伴触媒粒子の少なくとも大半を下方に落下させ、第2クエンチ媒体に同伴されるようにし得る。一部の実施形態では、同伴コークス化触媒粒子が実質的にない気体ストリームは、<0.001wt%、<0.01wt%、<0.1wt%、<1wt%、又は<10wt%のいくらかの同伴コークス化触媒粒子を含み得る。一部の実施形態では、気体ストリームは、50℃、100℃、又は150℃から200℃、250℃、又は300℃までの範囲の温度であり得る。
凝縮第1クエンチ媒体ストリームがクエンチ塔からのサイドドローとして回収され、この凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部が再循環されて追加量の第2ストリームと接触し得る。一部の実施形態では、凝縮第1クエンチ媒体ストリームは、50℃、60℃、又は70℃から80℃、100℃、又は120℃までの範囲の温度であり得る。
【0024】
第2クエンチ媒体と同伴コークス化触媒粒子との少なくとも一部を含み得るスラリーストリームがクエンチ塔からの下部ストリームとして回収され得る。一部の実施形態では、クエンチ塔内の下部ゾーンがスラリーストリームのインベントリを含有し得る。その結果、クエンチ塔から回収されるスラリーストリームはこのインベントリから取り出され得る。スラリーストリームは、クエンチ塔から回収されるときに150℃、200℃、又は250℃から300℃、400℃、又は500℃までの範囲の温度であり得る。
一部の実施形態では、クエンチ塔は、冷却第2ストリームの気体ストリーム、第1クエンチ媒体ストリーム、及びスラリーストリームへの分離を促進し得る1つ以上の内部構造物を含み得る。例となる内部構造物としては、限定するものではないが、トレイ、グリッド、パッキング、又はその任意の組み合わせが挙げられる。例となるトレイとしては、限定するものではないが、固定弁トレイ、ジェットタブトレイ、シーブトレイ、デュアルフロートレイ、バッフルトレイ、角鉄トレイ、ドローオフトレイ(draw off tray)、シェドデック(shed deck)トレイ、ディスクトレイ、ドーナツトレイ(donut tray)、サイドバイサイドスプラッシュトレイ(side by side-splash tray)、又はその任意の組み合わせが挙げられる。適切な固定弁トレイ、シーブトレイ、デュアルフロートレイ、及びグリッドとしては、Distillation Design, Henry Z. Kister, McGraw-Hill Inc., 1992, 262~265ページ及び464~466ページに記載のものが挙げられる。適切なジェットタブトレイとしては、国際公開第WO2011/014345号に記載のものが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書で開示するクエンチ塔は、一次分別器としても知られ、或いは一次分別器と呼ばれることもある。
【0025】
一部の実施形態では、クエンチ塔内のプロセス条件が、同伴コークス化触媒粒子がクエンチ塔からのオーバーヘッドとして回収される気体ストリーム中に留まり得るような条件である場合、気体ストリームは、さらなるプロセスを受け得る。一部の実施形態では、クエンチ塔からのオーバーヘッドとして回収される気体ストリームがいからかでも同伴コークス化触媒粒子を含む場合、気体ストリームは、さらに1つ以上の静電式集塵器、1つ以上のフィルター、1つ以上のスクリーン、1つ以上の膜、湿式気体スクラバー、吸収捕捉剤との接触、1つ以上の追加のクエンチ塔、1つ以上のエレクトロサイクロン、1つ以上のヒドロサイクロン、1つ以上の遠心分離機、1つ以上のプレート若しくはコーン、又はその任意の組み合わせによって分離されて、気体ストリームから同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を除去し得る。
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードが水を含み及び/又は脱水素反応中に水が生成され、結果として変換流出物が水を含有する場合、水ストリームがクエンチ塔からの第2サイドドローとしてクエンチ塔から回収され得る。該実施形態では、水ストリームはプロセスから除去され、水ストリームの一部がクエンチ塔の上部セクションに再循環されて、クエンチ塔内で変換流出物からの同伴コークス化触媒微粉、第1クエンチ媒体、及び第2クエンチ媒体、又はその組み合わせの分離をさらに促進し得る。一部の実施形態では、水ストリームは気化され、炭化水素用コフィード(co-feed)として変換ゾーンの入口に再循環され得る。
【0026】
第1クエンチ媒体及び第2クエンチ媒体は、独立に、限定するものではないが、1種以上の芳香族炭化水素、水、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、芳香族炭化水素は、ベンゼン、1種以上の一置換ベンゼン、1種以上の二置換ベンゼン、1種以上の多置換ベンゼン、及び/若しくは<580℃の標準沸点を有する1種以上の多環芳香族炭化水素であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、多環芳香族炭化水素は、<580℃、<550℃、<500℃、<400℃、<300℃、<200℃、又は<100℃の標準沸点を有し得る。適切な芳香族炭化水素は、限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、クメン、エチルベンゼン、キシレン、メチルエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルナフタレン、A-100溶媒混合物、A-150溶媒混合物、A-200溶媒混合物、A-250溶媒混合物、中間留出物、超低硫黄ディーゼル、重質軽油、若しくはその任意の混合物であるか又はこれらを含み得る。
一部の実施形態では、第2クエンチ媒体は、低表面張力、高熱安定性、及び低毒性を有し得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体は、限定するものではないが、ベンゼンであるか又はベンゼンを含み得、第2クエンチ媒体は、限定するものではないが、A-100溶媒混合物、A-150溶媒混合物、A-200溶媒混合物、A-250溶媒混合物、中間留出物、超低硫黄ディーゼル、重質軽油、若しくはその任意の混合物であるか又はこれらを含み得る。
【0027】
一部の実施形態では、第1クエンチ媒体の組成及び第2クエンチ媒体の組成は同一又は異なり得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体及び第2クエンチ媒体の組成は、同一である1種以上の成分及び異なる1種以上の成分を含み、結果として第1クエンチ媒体及び第2クエンチ媒体の組成の一部は同一であり、第1クエンチ媒体及び第2クエンチ媒体の組成の一部は異なり得る。一部の実施形態では、第2クエンチ媒体は、第1クエンチ媒体の標準沸点より高い標準沸点を有し得る。一部の実施形態では、第2クエンチ媒体は、第1クエンチ媒体の標準沸点より低い標準沸点を有し得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体はベンゼンであるか又はベンゼンを含み得、第2クエンチ媒体は1種以上の多環芳香族炭化水素を含み得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体は使用されないこともある。
一部の実施形態では、第1クエンチ媒体と第2ストリームの質量比は、0.01、0.05、又は0.08から0.1、0.2、又は0.3までの範囲であり得る。一部の実施形態では、第2クエンチ媒体と冷却第2ストリームの質量比は、0.01、0.1、又は0.3から0.5、1、2、又は5までの範囲であり得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体と第2クエンチ媒体の質量比は0.002、0.02、又は0.2から1、5、又は10までの範囲であり得る。
【0028】
同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部がスラリーから分離されて、いずれの同伴コークス化触媒粒子も少ないか又はない回収第2クエンチ媒体及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与え得る。一部の実施形態では、回収第2クエンチ媒体の少なくとも一部がクエンチ塔に再循環されて、その中で追加量の冷却第2ストリームと接触し得る。
一部の実施形態では、同伴コークス化触媒粒子は、1つ以上の液固分離装置によってスラリーから分離され得る。適切な液固分離装置は、限定するものではないが、1つ以上のフィルター、1つ以上の膜、1つ以上のスクリーン若しくはストレーナー、1つ以上のセパレータードラム、1つ以上の遠心分離機、1つ以上の沈降タンク、若しくはその任意の組み合わせであるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、2つ以上の液固分離装置が並行して使用され得る。結果として少なくとも1つの第1液固分離装置が濾過モードで操作されながら、少なくとも1つの第2液固分離装置が逆洗モードで操作されて、分離装置から収集コークス化触媒粒子を除去し得る。濾過モード及び逆洗モードは周期的に交替され得る。一部の実施形態では、2つ以上のフィルターを用いてスラリーから同伴コークス化触媒粒子を分離するとき、逆洗モードは、フィルターから分離されたコークス化触媒粒子を除去するために逆流方向の逆洗モードである少なくとも1つのフィルターを通る少なくとも1つの圧縮ガスパルスを含み得る。一部の実施形態では、触媒再生ステップから回収された燃焼ガスが、燃焼ガス中のいずれもの同伴触媒粒子を除去するための任意的ステップの有無にかかわらず、フィルターを逆洗するためのガスとして使用され得る。一部の実施形態では、液体ストリームが、フィルターを逆洗するために使用され得る。一部の実施形態では、同伴コークス化触媒粒子をスラリーから回収するための適切なプロセスは、米国特許第7,375,143号で開示されたプロセスを含み得る。
【0029】
一部の実施形態では、回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部が金属再生利用施設に運搬され得る。該実施形態では、回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中のコークス化触媒粒子から第8~10族元素(複数可)の少なくとも一部が回収され得る。一部の実施形態では、金属再生利用施設に運搬されるコークス化触媒粒子の少なくとも一部は、スラッジ又はケークの形態で施設に運搬され得る。一部の実施形態では、スラッジ又はケーク中の液体は、第2クエンチ媒体の少なくとも一部を含み得る。他の実施形態では、同伴コークス化触媒粒子は、第2クエンチ媒体から実質的に分離され、流動粒子の形態で運搬され得る。さらに他の実施形態では、同伴コークス化触媒粒子は、第2クエンチ媒体から実質的に分離され、別の液体媒体と混合されて、金属再生利用施設に運搬され得る別のスラリー、スラッジ又はケークを形成し得る。回収された第8~10族元素(複数可)は、新しい触媒粒子を製造するために再利用され、精製され、例えば、商品として販売されるか、又は何らかの他の所望目的で使用され得る。
一部の実施形態では、いずれの適切なプロセス又はプロセスの組み合わせによってもコークス化触媒粒子から第8~10族元素(複数可)の少なくとも一部が回収され得る。第8~10族元素(複数可)の少なくとも一部を再生利用するための適切なプロセスとしては、限定するものではないが、米国特許第7,033,480号;米国特許出願公開第2004/0219082号;英国特許出願公開第GB829972A号;中国特許第CN101760627号;及び/又は中国特許公開第CN104831071A号に記載のものが挙げられる。
【0030】
第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部及び、場合により、回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部は、燃焼ゾーン内で1種以上の酸化剤及び、場合により、1種以上の炭化水素燃料と接触されて、コークス及び、存在する場合、燃料の少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含み得る燃焼流出物を生成し得る。
酸化剤は、限定するものではないが、分子酸素、オゾン、二酸化炭素、水蒸気、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子上のコークスの100%燃焼に必要な量を超える量の酸化剤を用いて、触媒粒子からのコークス除去率を高めることができ、結果として、コークス除去に必要な時間を短縮することができ、所与の時間内に生成されるアップグレードされた生成物の収率増加につながり得る。任意的燃料は、限定するものではないが、分子水素、メタン、エタン、プロパン、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。任意的燃料は、不活性ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、メタン、又はその混合物と混合され得る。
【0031】
コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料は、互いに500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、又は800℃から900℃、950℃、1,000℃、1,050℃、又は1,100℃までの範囲の温度で接触されて再生触媒粒子を生成し得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料は、互いに500℃~1,100℃、600℃~1,100℃、600℃~1,000℃、650℃~950℃、700℃~900℃、又は750℃~850℃の範囲の温度で接触されて再生触媒粒子を生成し得る。コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料は、互いに20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、70kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa絶対圧、又は200kPa絶対圧から300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの範囲の酸化剤分圧下で接触され得る。
コークス化触媒粒子及び酸化剤、及び存在する場合、燃料は、互いに15秒、30秒、1分、2分、又は5分から10分、20分、30分、40分、50分、又は60分までの範囲の時間にわたって接触され得る。例えば、コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料は、互いに2秒から50分、55分、又は60分までの範囲の時間にわたって接触され得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料は、触媒粒子上に配置されたいずれものコークスの≧50wt%、≧75wt%、又は≧90wt%又は>99%を除去するのに十分な時間にわたって接触され得る。
【0032】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料が互いに接触する時間は、触媒粒子が炭化水素含有フィードと接触して変換流出物を生成する時間より長いことがある。例えば、コークス化触媒粒子及び酸化剤及び、存在する場合、燃料が互いに接触する時間は、触媒粒子が炭化水素含有フィードと接触して変換流出物を生成する時間より少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも300%、少なくとも500%、少なくとも1,000%、少なくとも10,000%、少なくとも30,000%、少なくとも50,000%、少なくとも75,000%、少なくとも100,000%、少なくとも250,000%、少なくとも500,000%、少なくとも750,000%、少なくとも1,000,000%、少なくとも1,250,000%、少なくとも1,500,000%、少なくとも1,800,000%、少なくとも2,500,000%、少なくとも3,500,000%、又は4,140,000%長い可能性がある。
理論によって束縛されること望むものではないが、コークス化触媒粒子中の担体上に配置された第8~10族元素、例えば、Ptの少なくとも一部は、炭化水素含有フィードとの接触前の触媒粒子中の担体上に配置された第8~10族元素に比べて凝集され得ると考えられる。コークス化触媒粒子上のコークスの少なくとも一部の燃焼中に、第8~10族元素の少なくとも一部が、担体の周囲に再分散され得ると考えられる。いずれもの凝集された第8~10族元素の少なくとも一部の再分散は、多サイクルにわたって触媒粒子の活性を高め、その選択性を改善することができる。
【0033】
一部の実施形態では、再生触媒粒子中の第8~10族元素、例えば、Ptの少なくとも一部は、炭化水素含有フィードと接触した触媒粒子中の第8~10族元素と比べて及びコークス化触媒粒子中の第8~10族元素と比べて高い酸化状態であり得る。結果として、上述したように、一部の実施形態ではプロセスは場合により再生触媒粒子の少なくとも一部を還元ガスと接触させて再生還元触媒粒子を生成するステップを含みる。適切な還元ガス(還元剤)は、限定するものではないが、分子水素、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、水蒸気、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、還元剤は、不活性ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、又はその混合物と混合され得る。該実施形態では、再生還元触媒粒子中の第8~10族元素の少なくとも一部は、再生触媒粒子中の第8~10族元素と比べて低い酸化状態、例えば、元素状態に還元され得る。この実施形態では、追加量の炭化水素含有フィードは、再生触媒粒子の少なくとも一部及び/又は再生還元触媒粒子の少なくとも一部と接触され得る。
【0034】
一部の実施形態では、再生触媒粒子及び還元ガスは、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、620℃、650℃、又は670℃から720℃、750℃、800℃、又は900℃までの範囲の温度で接触され得る。再生触媒粒子及び還元ガスは、1秒、5秒、10秒、20秒、30秒、又は1分から10分、30分、又は60分までの範囲の時間にわたって接触され得る。再生触媒粒子及び還元ガスは、20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、70kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa絶対圧、又は200kPa絶対圧から300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの範囲の還元剤分圧で接触され得る。
一部の実施形態では、炭化水素含有燃料が燃焼ゾーンに導入される場合、触媒は、炭化水素燃料の非存在下での触媒粒子上に配置されたコークスの燃焼に比べてさらに失活されるようになる可能性がある。該実施形態では、再生触媒粒子は、乾燥空気浸漬を受けてさらに完全に触媒粒子を再生し、その活性を改善し得る。例えば、再生触媒粒子は、<5モル%、<3モル%、<1モル%、<0.5モル%、又は<0.1モル%のH2Oを含む酸化的ガスと、620℃、650℃、675℃、700℃、又は750℃から775℃、800℃、850℃、900℃、950℃、又は1,000℃までの範囲の温度で少なくとも30秒、少なくとも1分、又は少なくとも5分の時間にわたって接触されて、再生触媒粒子をさらに完全に還元することができる。一部の実施形態では、再生触媒粒子と、<5モル%のH2Oを含む酸化的ガスとが互いに≦2時間、≦1時間、≦30分、≦10分、≦5分、≦1分、≦30秒、≦10秒、≦5秒、又は≦1秒の持続時間にわたって接触されて酸化前駆体触媒を生成し得る。再生触媒粒子が<5モル%のH2Oを含む酸化的ガスと接触され、かつ還元ガスとも接触されて再生還元触媒粒子を生成する場合、酸化的ガスとの接触は、還元ガスとの接触前に起こり得る。
驚いたことにかつ予想外に、任意的炭化水素燃料の存在下で生成された再生触媒を5モル%以下のH2Oを含む酸化的ガスと接触させると再生触媒の活性及び/又は選択性を顕著に改善できることが判明した。理論によって束縛されることを望むものではないが、酸化的ガス中に存在するか又は燃焼生成物として生成されるH2Oは、第8~10族元素、例えば、Ptの再分散の有効性、ひいては再生触媒の有効性を有意に減じる可能性があるとが考えられる。
【0035】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子に富む第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の第1部分が、触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給され、第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の第2部分が直接変換ゾーンに戻って再循環され得る。一部の実施形態では、プロセスが再生と還元を両方含む場合、コークス化触媒粒子に富む第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の第1部分が、触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給され、コークス化触媒粒子の第2部分が還元ゾーンに供給され得る。他の実施形態では、プロセスが再生と還元を両方含む場合、コークス化触媒粒子に富む第1粒子ストリーム中のコークス化触媒粒子の第1部分が、触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給され、コークス化触媒粒子の第2部分が直接変換ゾーンに戻って再循環され、かつコークス化触媒粒子の第3部分が還元ゾーンに供給され得る。これらの実施形態のいずれにおいても、継続的又は間欠的に、コークス化触媒粒子の一部、再生触媒粒子の一部、及び/又は再生還元触媒粒子の少なくとも一部がプロセスから除去され、新しいか又は補充(make-up)触媒粒子がプロセスに導入され得る。触媒粒子の除去は、触媒粒子が分解して小さくなり、不活化してきて、及び/又は望ましくない転化率で炭化水素含有フィードを変換し始めるにつれて行われ得る。一部の実施形態では、いずれもの除去された触媒粒子の少なくとも一部が金属再生利用施設に運搬され、そこで金属が回収され得る。
【0036】
コークス化触媒粒子の少なくとも一部、再生触媒粒子の少なくとも一部、再生還元触媒粒子の少なくとも一部、新しいか若しくは補充触媒粒子、又はその混合物が変換ゾーン内で追加量の炭化水素含有フィードと接触されて追加の変換流出物を生成し得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードと触媒粒子の接触から追加量の炭化水素含有フィードと、再生触媒粒子及び/又は再生還元触媒粒子の少なくとも一部、及び場合により新しいか又は補充触媒粒子との接触までのサイクル時間は、≦5時間、≦4時間、≦3時間、≦2時間、又は≦70分、例えば、1分~70分又は5分~45分であり得る。
一部の実施形態では、1種以上の追加フィード、例えば、1種以上のストリッピング流体が利用されて、いずれもの同伴気体成分の少なくとも一部を触媒粒子から除去し得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子は、酸化剤との接触前にストリッピング流体と接触されて、いずれものアップグレードされた同伴炭化水素及び/又は分子水素、及び/又は他の気体成分の少なくとも一部を除去し得る。同様に、再生触媒粒子及び/又は再生還元触媒粒子がストリッピングガスと接触されて、それらからいずれもの同伴燃焼ガス又は還元ガスの少なくとも一部を除去し得る。一部の実施形態では、ストリッピングガスは、脱水素、燃焼、及び/又は還元条件下で不活性であり得る。適切なストリッピング流体は、限定するものではないが、分子窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、メタン、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。ストリッピングガスは、コークス化触媒粒子、再生触媒粒子、及び/又は再生還元触媒粒子と、触媒粒子1立方メートル当たり約0.1m3~10m3のストリッピングガスの体積比で接触され得る。
【0037】
上述したように、第1サイクルは、触媒粒子が炭化水素含有フィードと接触すると始まり、その後少なくとも酸化剤と接触して再生触媒粒子を生成するか又は少なくとも酸化剤及び任意的還元ガスと接触して再生還元触媒粒子を生成し、第1サイクルは再生触媒粒子又は再生還元触媒粒子が追加量の炭化水素含有フィードと接触すると終わる。例えば、コークス化触媒粒子から残留炭化水素をストリップするためにいくらかの掃引流体が利用される場合、該流体が利用される時間は、サイクル時間に含まれることになる。
一実施形態では、ライザー構造が装備されることがあり、この構造では、ライザー内で炭化水素含有フィードが希釈ガスと混合され、加熱流動触媒粒子と接触され得る。希釈ガスは、限定するものではないが、分子窒素、メタン、水蒸気、分子水素、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。混合ガスは、ライザーを通って対流によって移動されるか又は他の方法で流動触媒粒子を運びながら、該混合物がライザーを通って流れるにつれて接触及び反応して、1種以上の脱水素炭化水素及びコークス化触媒粒子を含む変換流出物を生成することができる。炭化水素含有フィード及び流動触媒粒子の滞留時間は、炭化水素含有フィードの1種以上の脱水素炭化水素への望ましい転化率を達成するのに十分であり得る。製作及び寸法を含め、ライザーの具体的デザインは、少なくとも部分的に、意図した化学によって決まり得るが、典型的に平均ガス組成下で4.5m/秒を超える速度を必要とし得る。
炭化水素含有フィードの脱水素の実施に適したシステムとしては、米国特許第3,888,762号;第7,102,050号;第7,195,741号;第7,122,160号;及び第8,653,317号;米国特許出願公開第2004/0082824号;第2008/0194891号;及び国際公開第WO2001/85872号;第WO2004/029178号;及び第WO2005/077867号で開示された流動反応器等の技術上周知のシステムが挙げられる。
【0038】
脱水素触媒粒子
脱水素触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.001wt%、0.002wt%、0.003wt%、0.004wt%、0.005wt%、0.006wt%、0.007wt%、0.008wt%、0.009wt%、0.01wt%、0.015wt%、0.02wt%、0.025wt%、0.03wt%、0.035wt%、0.04wt%、0.045wt%、0.05wt%、0.055wt%、0.06wt%、0.065wt%、0.07wt%、0.075wt%、0.08wt%、0.085wt%、0.09wt%、0.095wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、又は6wt%までの、担体上に配置された第8~10族元素、例えば、Ptを含み得る。一部の実施形態では、触媒粒子は、担体の質量に基づいて、≦5.5wt%、≦4.5wt%、≦3.5wt%、≦2.5wt%、≦1.5wt%、≦1wt%、≦0.9wt%、≦0.8wt%、≦0.7wt%、≦0.6wt%、≦0.5wt%、≦0.4wt%、≦0.3wt%、≦0.2wt%、≦0.15wt%、≦0.1wt%、≦0.09wt%、≦0.08wt%、≦0.07wt%、≦0.06wt%、≦0.05wt%、≦0.04wt%、≦0.03wt%、≦0.02wt%、≦0.01wt%、≦0.009wt%、≦0.008wt%、≦0.007wt%、≦0.006wt%、≦0.005wt%、≦0.004wt%、≦0.003wt%、又は≦0.002wt%の、担体上に配置された第8~10族元素、例えば、Ptを含み得る。一部の実施形態では、触媒粒子は、担体の質量に基づいて、>0.001、>0.003wt%、>0.005wt%、>0.007、>0.009wt%、>0.01wt%、>0.02wt%、>0.04wt%、>0.06wt%、>0.08wt%、>0.1wt%、>0.13wt%、>0.15wt%、>0.17wt%、>0.2wt%、>0.2wt%、>0.23、>0.25wt%、>0.27wt%、又は>0.3wt%かつ<0.5wt%、<1wt%、<2wt%、<3wt%、<4wt%、<5wt%、又は<6wt%の、担体上に配置された第8~10族元素を含み得る。一部の実施形態では、第8~10族元素は、限定するものではないが、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Os、Ir、Pt、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、第8~10族元素はPtであるか又はPtを含み得る。
一部の実施形態では、触媒粒子は場合により2種以上の第8~10族元素、例えば、PtとNi及び/又はPdとを含み得る。2種以上の第8~10族元素が担体上に配置される場合、触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.001wt%、0.002wt%、0.003wt%、0.004wt%、0.005wt%、0.006wt%、0.007wt%、0.008wt%、0.009wt%、0.01wt%、0.015wt%、0.02wt%、0.025wt%、0.03wt%、0.035wt%、0.04wt%、0.045wt%、0.05wt%、0.055wt%、0.06wt%、0.065wt%、0.07wt%、0.08wt%、0.085wt%、0.09wt%、0.095wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、又は6wt%までの、担体上に配置された全ての第8~10族元素の合計量を含み得る。一部の実施形態では、炭化水素フィードの1以上の脱水素を引き起こす能力があり得る、触媒粒子の活性成分は第8~10族元素(複数可)を含み得る。
【0039】
一部の実施形態では、触媒粒子は、担体の質量に基づいて、10wt%までの、担体上に配置されたプロモーターを含み得る。プロモーターは、限定するものではないが、Sn、Ga、Zn、Ge、In、Re、Ag、Au、Cu、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、プロモーターは、Snであるか又はSnを含み得る。一部の実施形態では、プロモーターは、Pt及び/又は、存在する場合、Ni及び/又はPdと関連し得る。例えば、担体上に配置されたプロモーター及びPtが、担体上に分散され得るPt-プロモータークラスターを形成し得る。プロモーターは、所与のアップグレードされた炭化水素のために触媒粒子の選択性/活性/寿命を改善することができる。一部の実施形態では、プロモーターは、炭化水素含有フィードがプロパンを含むときに触媒粒子のプロピレン選択性を改善することができる。触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.01wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から3wt%、5wt%、7wt%、又は10wt%までの量でプロモーターを含み得る。
一部の実施形態では、触媒粒子は、場合により担体の質量に基づいて5wt%までの量で担体上に配置された1種以上のアルカリ金属元素を含み得る。アルカリ金属元素は、存在する場合、限定するものではないが、Li、Na、K、Rb、Cs、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、アルカリ金属元素は、K及び/又はCsであるか又はこれらを含み得る。少なくとも一部の実施形態では、アルカリ金属元素は、K及び/又はCsであるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、アルカリ金属元素は、存在する場合、所与のアップグレードされた炭化水素のために触媒粒子の選択性を改善することができる。触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.01wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から2wt%、3wt%、4wt%、又は5wt%の量でアルカリ金属元素を含み得る。
【0040】
担体は、限定するものではないが、1種以上の第2族元素、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、第2族元素はその元素形態で存在し得る。他の実施形態では、第2族元素は化合物の形態で存在し得る。例えば、第2族元素は、酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、ハラート(halate)、硫酸塩、硫化物、ホウ酸塩、窒化物、炭化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、メタリン酸塩、セレン化物、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、亜クロム酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、又はケイ化物として存在し得る。一部の実施形態では、第2族元素を含み得るいずれもの2種以上の化合物の混合物が異なる形態で存在し得る。例えば、第1化合物が酸化物であり、第2化合物がアルミン酸塩であり得る。この場合、第1化合物及び第2化合物は、相互に同一又は異なる第2族元素を含み得る。
担体は、担体の質量に基づいて、≧0.5wt%、≧1wt%、≧2wt%、≧3wt%、≧4wt%、≧5wt%、≧6wt%、≧7wt%、≧8wt%、≧9wt%、≧10wt%、≧11wt%、≧12wt%、≧13wt%、≧14wt%、≧15wt%、≧16wt%、≧17wt%、≧18wt%、≧19wt%、≧20wt%、≧21wt%、≧22wt%、≧23wt%、≧24wt%、≧25wt%、≧26wt%、≧27wt%、≧28wt%、≧29wt%、≧30wt%、≧35wt%、≧40wt%、≧45wt%、≧50wt%、≧55wt%、≧60wt%、≧65wt%、≧70wt%、≧75wt%、≧80wt%、≧85、又は≧90wt%の第2族元素を含み得る。一部の実施形態では、担体は、第2族元素を0.5wt%、1wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、5wt%、7wt%、10wt%、11wt%、13wt%、15wt%、17wt%、19wt%、21wt%、23wt%、又は25wt%から30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%、又は92.34wt%までの範囲で含み得る。一部の実施形態では、存在する第2族元素と第8~10族元素(複数可)のモル比は、0.24、0.5、1、10、50、100、300、450、600、800、1,000、1,200、1,500、1,700、又は2,000から3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、9,500、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、又は900,000までの範囲であり得る。
【0041】
一部の実施形態では、担体は、第2族元素及びAlを含み、かつ原子スケールで混ざり合ったO、Mg、及びAl原子を有する混合第2族元素/Al金属酸化物の形態であり得る。一部の実施形態では、担体は、酸化物の形態又はnmスケールで混ざり合っている可能性のある第2族元素とAl2O3の1つ以上の酸化物の形態の第2族元素及びAlであるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、担体は、第2族元素の酸化物、例えば、MgO、及びnmスケールで混ざり合ったAl2O3であるか又はこれらを含み得る。
一部の実施形態では、担体は、混合第2族元素/Al金属酸化物の形態の第1量の第2族元素とAl及び第2族元素の酸化物の形態の第2量の第2族元素であるか又はこれらを含み得る。該実施形態では、混合第2族元素/Al金属酸化物と第2族元素の酸化物はnmスケールで混ざり合っている可能性があり、混合第2族元素/Al金属酸化物中の第2族元素とAlは、原子スケールで混ざり合っている可能性がある。
他の実施形態では、担体は、混合第2族元素/Al金属酸化物の形態の第1量の第2族元素と第1量のAl、第2族元素の酸化物の形態の第2量の第2族元素、及びAl2O3の形態の第2量のAlであるか又はこれらを含み得る。該実施形態では、混合第2族元素/Al金属酸化物、第2族元素の酸化物、及びAl2O3は、nmスケールで混ざり合っている可能性があり、混合第2族元素/Al金属酸化物中の第2族元素とAlは、原子スケールで混ざり合っている可能性がある。
一部の実施形態では、担体が第2族元素及びAlを含むとき、担体中の第2族元素とAlの質量比は、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.5、0.7、又は1から3、6、12.5、25、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1,000までの範囲であり得る。一部の実施形態では、担体がAlを含むとき、担体は、担体の質量に基づいて、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、2.1wt%、2.3wt%、2.5wt%、2.7wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、又は11wt%から15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、40wt%、45wt%、又は50wt%までの範囲でAlを含み得る。
【0042】
一部の実施形態では、担体は、限定するものではないが、下記化合物:MgwAl2O3+w(wは正数である);CaxAl2O3+x(xは正数である);SryAl2O3+y(yは正数である);BazAl2O3+z(zは正数である);BeO;MgO;CaO;BaO;SrO;BeCO3;MgCO3;CaCO3;SrCO3、BaCO3;CaZrO3;Ca7ZrAl6O18;CaTiO3;Ca7Al6O18;Ca7HfAl6O18;BaCeO3;1種以上のクロム酸マグネシウム、1種以上のタングステン酸マグネシウム、1種以上のモリブデン酸マグネシウム、その組み合わせ、及びその混合物の1種以上であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、第2族元素はMgを含み、第2族元素の少なくとも一部は、MgOの形態又はMgOを含む混合酸化物の形態にあり得る。一部の実施形態では、担体は、限定するものではないが、MgO-Al2O3混合金属酸化物であるか又はこれを含み得る。一部の実施形態では、担体がMgO-Al2O3混合金属酸化物であるとき、担体は、20、10、5、2、1から0.5、0.1、又は0.01までに等しいMgとAlのモル比を有し得る。
MgwAl2O3+w(wは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.5、1、2、3、4、又は5から6、7、8、9、又は10までの範囲のMgとAlのモル比を有し得る。一部の実施形態では、MgwAl2O3+wは、MgAl2O4、Mg2Al2O5、又はその混合物を含み得る。CaxAl2O3+x(xは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、1:12、1:4、1:2、2:3、5:6、1:1、12:14、又は1.5:1の範囲のCaとAlのモル比を有し得る。一部の実施形態では、CaxAl2O3+xは、アルミン酸三カルシウム、七アルミン酸十二カルシウム、アルミン酸一カルシウム、二アルミン酸一カルシウム、六アルミン酸一カルシウム、アルミン酸二カルシウム、三アルミン酸五カルシウム、三アルミン酸四カルシウム、又はその任意の混合物を含み得る。SryAl2O3+y(yは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.05、0.3、又は0.6から0.9、1.5、又は3までの範囲のSrとAlのモル比を有し得る。BazAl2O3+z(zは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.05、0.3、又は0.6から0.9、1.5、又は3までの範囲のBaとAlのモル比を有し得る。
【0043】
一部の実施形態では、担体は、限定するものではないが、第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/若しくは少なくとも1種の半金属元素並びに/又はその少なくとも1種の混合物をも含み得る。この少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素はLi、Na、K、Rb、Cs、Sn、Cu、Au、Ag、又はGaでない。担体が、第2族及び第10族以外の族から選択される金属元素及び/又は半金属元素(少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素はLi、Na、K、Rb、Cs、Sn、Cu、Au、Ag、又はGaでない)を含む化合物をも含む場合、化合物は、担体中に、酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、ハラート、硫酸塩、硫化物、ホウ酸塩、窒化物、炭化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、メタリン酸塩、セレン化物、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、亜クロム酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、又はケイ化物として存在し得る。一部の実施形態では、第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/若しくは少なくとも1種の半金属元素並びに/又はその少なくとも1種の化合物(少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素はLi、Na、K、Rb、Cs、Sn、Cu、Au、Ag、又はGaでない)は、限定するものではないが、1種以上の希土類元素、すなわち、原子数21、39、又は57~71を有する元素であるか又はこれらを含み得る。
【0044】
担体が、第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/若しくは少なくとも1種の半金属元素並びに/又はその少なくとも1種の化合物(少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素はLi、Na、K、Rb、Cs、Sn、Cu、Au、Ag、又はGaでない)を含む場合、第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素は、一部の実施形態では、バインダーとして機能することができ、「バインダー」と呼ばれることがある。第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/若しくは少なくとも1種の半金属元素並びに/又はその少なくとも1種の化合物(少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素はLi、Na、K、Rb、Cs、Sn、Cu、Au、Ag、又はGaでない)か否かにかかわらず、説明を明瞭かつ簡単にするため、本明細書では第2族及び第10族以外の族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/又は少なくとも1種の半金属元素を以後「バインダー」と記述する。文献では、本明細書で「バインダー」と呼ぶ化合物は、フィラー、マトリックス、添加剤等と呼ばれることもあるこが知られている。一部の実施形態では、担体は、担体の質量に基づいて0.01wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%又は40wt%から50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、又は90wt%までの範囲でバインダーを含み得る。
一部の実施形態では、バインダーを含む適切な化合物は、限定するものではないが、下記化合物:B2O3、AlBO3、Al2O3、SiO2、ZrO2、TiO2、SiC、Si3N4、アルミノケイ酸塩、アルミノケイ酸亜鉛、ZnO、VO、V2O3、VO2、V2O5、GasOt、InuOv、Mn2O3、Mn3O4、MnO、1種以上の酸化モリブデン、1種以上の酸化タングステン、1種以上のゼオライト(s、t、u、及びvは正数である)並びにその混合物及び組み合わせの1種以上であるか又はこれらを含み得る。
【0045】
触媒粒子は、1μm、5μm、10μm、20μm、40μm、又は60μmから80μm、100μm、115μm、130μm、150μm、200μm、300μmから400、又は500μmまでの範囲のメジアン粒径を有し得る。触媒粒子は、100又は250mLのメスシリンダーの代わりに10、25、又は50mLのメスシリンダーを用いて修正したASTM D7481-18に従って測定して、0.3g/cm3、0.4g/cm3、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、0.8g/cm3、0.9g/cm3、又は1g/cm3から1.1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、又は2g/cm3までの範囲の見掛けゆるみ嵩密度を有し得る。一部の実施形態では、触媒粒子は、ASTM D5757-11(2017)に従って測定して、≦5wt%、≦4wt%、≦3wt%、≦2wt%、≦1wt%、≦0.7wt%、≦0.5wt%、≦0.4wt%、≦0.3wt%、≦0.2wt%、≦0.1wt%、≦0.07wt%、又は≦0.05wt%の1時間後摩損度を有し得る。粒子の形態は、粒子が流動床反応器内で動くのに適するように大部分は球状である。一部の実施形態では、触媒粒子は、流動可能固体のゲルダートA又はゲルダートB定義と一致するサイズ及び密度を有し得る。
一部の実施形態では、触媒粒子は0.1m2/g、1m2/g、10m2/g、又は100m2/gから500m2/g、800m2/g、1,000m2/g、又は1,500m2/gまでの範囲の表面積を有し得る。触媒粒子の表面積は、4時間350℃で粉末を脱気した後にMicromeritics 3flex機器で窒素の吸着-脱着(液体窒素の温度、77K)を利用するブルナウアー‐エメット‐テラー(BET)法に従って測定可能である。この方法に関するさらなる情報は、例えば、“Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density,” S. Lowell et al., Springer, 2004で見つることができる。
【0046】
担体の調製は、いずれの既知のプロセスによっても達成可能である。説明の単純さ及び容易さのため、マグネシウムとアルミニウムの混合酸化物(Mg(Al)O又はMgO/Al2O3)担体を含む適切な担体の調製をより詳細に述べる。触媒合成技術は周知であり、下記説明は、例示目的のためであり、担体又は触媒粒子の合成を限定するものとみなすべきでない。一部の実施形態では、MgO/Al2O3混合酸化物担体を作製するため、Mg及びAl前駆体、例えばMg(NO3)2及びAl(NO3)3を一緒に混合、例えば、ボールミル粉砕した後にか焼して担体を生成し得る。別の実施形態では、2つの前駆体をH2Oに溶かし、乾固(場合により熱を加えて)するまで撹拌した後にか焼して担体を生成し得る。別の実施形態では、2つの前駆体をH2Oに溶かした後に塩基及び炭酸塩、例えば、NaOH/Na2CO3を添加してハイドロタルサイトを生成した後にか焼して担体を生成し得る。別の実施形態では、市販のMgO及びAl2O3を混合し、ボールミル粉砕して担体を生成し得る。別の実施形態では、Mg(NO3)2前駆体をH2Oに溶かし、この溶液を既存担体、例えば、Al2O3担体上に含浸させ、乾燥させ、か焼して担体を生成し得る。別の実施形態では、Mg(NO3)2由来のMgをイオン吸着によって既存Al2O3担体上に積載した後に液固分離し、乾燥させ、か焼して担体を生成し得る。理論によって束縛されることを望むものではないが、上記方法及び/又は他の方法のいずれか1つによって生成される担体は、(i)nmスケールで一緒に混ざり合ったMg及びAl、(ii)混合Mg/Al金属酸化物の形態のMg及びAl、又は(iii)(i)と(ii)の組み合わせを含み得る。
【0047】
第8~10族金属及びいずれものプロモーター及び/又はいずれものアルカリ金属元素は、混合酸化物担体上にいずれの既知の技術によっても積載され得る。例えば、1種以上の第8~10族元素前駆体、例えば、クロロ白金酸、硝酸テトラアンミン白金、及び/又は水酸化テトラアンミン白金、1種以上のプロモーター前駆体(使用する場合)、例えば、SnCl4及び/又はAgNO3等の塩及び1種以上のアルカリ金属元素前駆体(使用する場合)、例えば、KNO3、KCl、及び/又はNaClは水に溶解され得る。この溶液は担体上に含浸された後に乾燥、か焼され得る。一部の実施形態では、第8~10族元素前駆体並びに場合によりプロモーター前駆体及び/又はアルカリ金属元素前駆体は担体上に同時に、或いは乾燥及び/又はか焼ステップによって隔てられた順序で別々に積載され得る。他の実施形態では、第8~10族元素並びに、場合によりプロモーター及び/又はアルカリ金属元素は、担体上に化学蒸着によって積載され得る。この場合、前駆体は気化され、担体上に蓄積された後にか焼され得る。他の実施形態では、第8~10族元素前駆体並びに、場合により、プロモーター前駆体及び/又はアルカリ金属前駆体は、イオン吸着後の液固分離、乾燥及びか焼によって担体上に積載され得る。場合により、触媒粒子はワンポット合成法を利用して合成されることもある。この方法では、担体の前駆体、第8~10族金属活性相及びプロモーターが全て一緒に、合成を助けるためのいずれかの他の添加剤の有無にかかわらず、湿式又は乾式で混合された後に乾燥及びか焼される。
【0048】
一部の実施形態では、触媒粒子は、周知の噴霧乾燥プロセスによってゲルダートA又はB型粒子に処方され得る。典型的に、20μm、40μm、又は50μmから80μm、90μm、又は100μmまでの範囲の平均断面積を有する噴霧乾燥触媒粒子がFCC型流動床反応器に使用される。噴霧乾燥触媒粒子を作製するため、担体、第8~10族元素、並びにいずれもの追加成分、例えば、プロモーター及び/又はアルカリ金属が、スラリーにされ、そのスラリー中にバインダー/添加剤が含まれ、その後噴霧乾燥及びか焼され得る。或いは、処方担体に第8~10族元素、並びにいずれもの追加成分、例えば、プロモーター及び/又はアルカリ金属が添加されて処方触媒粒子を生成し得る。
本明細書で開示する触媒粒子を調製するために使用できる適切なプロセスとしては、米国特許第4,788,371号;第4,962,265号;第5,922,925号;第8,653,317号;欧州特許第EP0098622号;Journal of Catalysis 94 (1985), pp. 547-557;及び/又はApplied Catalysis 54 (1989), pp. 79-90に記載のプロセスが挙げられる。
【0049】
炭化水素含有フィード
C2-C16アルカンは、限定するものではないが、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、2,2,3-トリメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、n-プロピルシクロペンタン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。例えば、炭化水素含有フィードは、脱水素されてプロピレンを生成し得るプロパン、及び/又は脱水素されてイソブチレンを生成し得るイソブタンを含み得る。別の例では、炭化水素含有フィードは、触媒粒子との接触時に気相中にあり得る液化石油ガス(LPガス)を含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィード中の炭化水素は、実質的に単一アルカン、例えばプロパンで構成され得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中の全ての炭化水素の総質量に基づいて、≧50モル%、≧75モル%、≧95モル%、≧98モル%、又は≧99モル%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィードの総体積に基づいて、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%、少なくとも95vol%、少なくとも97vol%、又は少なくとも99vol%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。
C8-C16アルキル芳香族炭化水素は、限定するものではないが、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、1種以上のエチルトルエン、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中の全ての炭化水素の総質量に基づいて、≧50モル%、≧75モル%、≧95モル%、≧98モル%、又は≧99モル%の単一C8-C16アルキル芳香族炭化水素、例えば、エチルベンゼンを含み得る。一部の実施形態では、エチルベンゼンが脱水素されてスチレンを生成し得る。従って、一部の実施形態では、本明細書で開示するプロセスは、プロパン脱水素、ブタン脱水素、イソブタン脱水素、ペンタン脱水素、シクロペンタジエンへのペンタン脱水素環化、ナフサ改質、エチルベンゼン脱水素、エチルトルエン脱水素等を含み得る。
【0050】
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは1種以上の希釈ガスで希釈され得る。適切な希釈剤は、限定するものではないが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、二酸化炭素、メタン、分子水素、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。炭化水素含有フィードが希釈剤を含む場合、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%、0.5vol%、1vol%、又は2vol%から3vol%、8vol%、16vol%、又は32vol%までの希釈剤を含み得る。希釈剤が分子水素を含むとき、分子水素といずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の合計量のモル比は、0.1、0.3、0.5、0.7、又は1から2、3、4、5、6、7、8、9、又は10までの範囲であり得る。一部の実施形態では、希釈剤が使用される場合、希釈剤は炭化水素含有フィードと混合され、及び/又は希釈剤を変換ゾーンに供給することに割り当てられた1つ以上の入口を経て個別フィードとして変換ゾーンに導入されるか又は他の方法で供給され得る。同様に、この炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィードを変換ゾーンに供給することに割り当てられた1つ以上の入口を経て変換ゾーンに導入されることもある。
【0051】
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは、いずれの水又は水蒸気も実質的にない、すなわち、例えば、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、<0.1vol%の水又は水蒸気しかない可能性がある。他の実施形態では、炭化水素含有フィードは水蒸気を含み得る。例えば、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%、0.3vol%、0.5vol%、0.7vol%、1vol%、3vol%、又は5vol%から10vol%、15vol%、20vol%、25vol%、30vol%、35vol%、40vol%、45vol%、又は50vol%までの水又は水蒸気を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、≦50vol%、≦45vol%、≦40vol%、≦35vol%、≦30vol%、≦25vol%、≦20vol%、又は≦15vol%の水又は水蒸気を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有フィードは、炭化水素含有フィード中のいずれものC2-C16アルカン及びいずれものC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、少なくとも1vol%、少なくとも3vol%、少なくとも5vol%、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、又は少なくとも30vol%の水又は水蒸気を含み得る。希釈剤と同様に、水又は水蒸気が変換ゾーンに供給される場合、水又は水蒸気は、変換ゾーンに炭化水素含有フィードの成分として又は水蒸気を変換ゾーンに導入することに割り当てられた1つ以上の個別入口を経て供給され得る。
【0052】
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは硫黄を含み得る。例えば、炭化水素含有フィードは、0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、又は80ppmから100ppm、150ppm、200ppm、300ppm、400ppm、又は500ppmまでの範囲の硫黄を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有フィードは、1ppm~10ppm、10ppm~20ppm、20ppm~50ppm、50ppm~100ppm、又は100ppm~500ppmの範囲の硫黄を含み得る。硫黄は、炭化水素含有フィード中に存在する場合、限定するものではないが、H2S、ジメチルジスルフィド、1種以上のメルカプタンとして、若しくはその任意の混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、硫黄は、個別フィードとして、希釈剤を用いる場合はその成分として、及び/又は水蒸気を用いる場合はその成分として変換ゾーンに導入され得る。
炭化水素含有フィードは、分子酸素が実質的にないか又は全くない可能性がある。一部の実施形態では、炭化水素含有フィードは≦5モル%、≦3モル%、又は≦1モル%の分子酸素(O2)を含み得る。実質的に分子酸素がない炭化水素含有フィードを供給すると、さもなくば炭化水素含有フィード中のアルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部を消費することになる酸化的カップリング反応を実質的に阻止すると考えられる。
【0053】
脱水素炭化水素の回収及び使用
変換流出物は、少なくとも1種のオレフィン、水、未反応炭化水素、未反応分子水素等を含み得る。オレフィン(複数可)は、いずれの従来のプロセスによっても、例えば、1つ以上の従来のプロセスによって、回収され得るか又は他の方法で得られる。1つの該プロセスは、流出物を冷却して、存在し得るいずれもの水及びいずれもの重質炭化水素の少なくとも一部を凝縮し、オレフィン及びいずれもの未反応アルカン又はアルキル芳香族炭化水素を主に気相中に残すステップを含み得る。次に1つ以上のセパレータードラム内でオレフィン及び未反応アルカン又はアルキル芳香族炭化水素が反応生成物から除去され得る。例えば、1つ以上のスプリッターを用いて未反応炭化水素含有フィードから脱水素生成物を分離することができる。
一部の実施形態では、回収オレフィン、例えば、プロピレンは、ポリマーの製造に使用可能であり、例えば、回収プロピレンは、重合されて、回収プロピレン由来のセグメント又は単位を有するポリマー、例えばポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー等を生成し得る。回収イソブテンは、例えば、含酸素化合物、例えばメチルtert-ブチルエーテル、燃料添加剤、例えばジイソブテン、合成エラストマーポリマー、例えばブチルゴム等の1種以上の製造に使用可能である。
【0054】
代表的実施形態
図1は、1つ以上の実施形態に従って、ライン101の炭化水素含有フィードを脱水素するためのシステムを示し、反応器又は変換ゾーン103、再生器又は燃焼ゾーン104、酸素浸漬ゾーン137、還元ゾーン139及びクエンチ塔113を含む。炭化水素含有フィードがライン101を経て変換ゾーン103に、例えば、ライザー反応器の下端部又はダウナー反応器の上端部に導入され得る。一部の実施形態では、ライン101の炭化水素含有フィードは水蒸気を含み得る。再生還元触媒粒子がライン102を経て還元ゾーン139から変換ゾーン103に運ばれ得る。炭化水素含有フィードは、変換ゾーン103内で再生還元触媒粒子と接触されて炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子、1種以上の脱水素炭化水素、未反応炭化水素含有フィード、水蒸気、ベンゼン、又はその任意の混合物を含み得る変換流出物をライン105経由で生成し得る。
【0055】
変換流出物は、ライン105を経て1つ以上の分離装置106、例えば、1つ以上のサイクロンに導入され得る。分離装置106は、変換流出物を、コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム107と、1種以上の脱水素炭化水素に富み、同伴コークス化触媒粒子を含む、ライン109を通る第2ストリームとに分離することができる。
第1ストリームは、ライン107を経て燃焼ゾーン104に再循環され得る。一部の実施形態では、ライン107の第1ストリームは、同伴気体成分、例えば1種以上の脱水素炭化水素、未反応炭化水素含有フィード、水蒸気、又はその混合物を含み得る。該実施形態では、ライン107の第1ストリーム中の気体成分の少なくとも一部は、第1ストリームが燃焼ゾーン104に導入される前にストリップされ得る。酸化剤及び場合により燃料がライン108を経て燃焼ゾーン104に導入され、第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部と接触して、コークス及び、存在する場合、燃料の少なくとも一部の燃焼を引き起こして、再生触媒粒子及び燃焼ガスを含む燃焼流出物を生成し得る。コークス及び、存在する場合、燃料の燃焼は熱を生じさせて、コークス化触媒粒子からのコークスを燃やし、使用済み触媒粒子上の第8~10族元素(複数可)を再分散させ、再生触媒粒子に熱を加えることができる。
【0056】
燃焼流出物は、ライン131を経て回収され、1つ以上の分離装置132、例えば、1つ以上のサイクロンに入って、燃焼流出物中のいずれもの触媒粒子の大半及び少量の同伴燃焼ガスを含有するストリーム134と、燃焼ガスの大半及び、たとえあったとしても、少量の同伴触媒粒子を含有する燃焼ガスストリーム133とに分離され得る。一部の実施形態では、1つ以上の分離装置132は、ライン131の燃焼流出物からの高い固体回収効率を達成するため及び燃焼ガスストリーム133中の同伴触媒粒子の量を減らすために3段階以上のサイクロンを含み得る。ストリーム134は、酸素浸漬ゾーン137に送られ得る。相対的に乾いた酸化剤ガスストリーム136が酸素浸漬ゾーン137に供給されて、触媒を完全に再生することができる。ゾーン137に入った後、いずれもの未反応乾燥酸化剤ガスストリームは、完全再生触媒粒子を同伴し、ストリーム135としてゾーン137を出ることができる。ストリーム135は分離装置132に入り、固体ストリームと気体ストリームに分割され得る。完全再生触媒粒子に富む固体ストリームは、ストリーム134に合流してゾーン137に戻り得る。未反応乾燥酸化剤ガスに富む気体ストリームは、ストリーム133に合流し得る。完全再生触媒粒子はゾーン137からストリーム138として離れて還元ゾーン139に入り得る。還元ガスストリーム140もゾーン139に供給され得る。再生還元触媒粒子はライン102経由で還元ゾーン139を出て変換ゾーン103に入り得る。未反応還元ガスが還元ゾーンをストリーム141として去り得る。燃焼ガスストリーム133が少しでも同伴触媒粒子を含む場合、該触媒粒子は、フィルター、静電式集塵器、湿式ガススクラバー等によって除去され得る。変換ゾーン及び燃焼ゾーン103及び104上の分離装置106及び132並びに/又は分離装置106及び132の操作条件は、それぞれ、第2ストリーム109からとライン133の燃焼ガスストリームからの同伴触媒収集の困難レベルに応じて、第2ストリーム109又は燃焼ガスストリーム133のどちらかにより多いか又は少ない量の同伴触媒粒子を送り込むように調整され得る。
【0057】
第2ストリーム109はプレナム110に入り得る。プレナム110内で、ストリーム109は第1クエンチ媒体ストリーム111と混合されて、ライン112の冷却第2ストリームを生成し得る。一部の実施形態では、ライン109の第2ストリームの温度は>620℃であり得る。
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードの脱水素中にベンゼンが生成され、ベンゼンは冷却第2ストリーム中に存在し得る。一部の実施形態では、ベンゼンがライン111の第1クエンチとして使用され得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体ストリームは、プレナム110内で第2ストリームと接触するときに液相中にあり得る。一部の実施形態では、プレナム110内での第2ストリーム109とライン111の第1クエンチ媒体ストリームの接触が、≦620℃、≦610℃、≦600℃、≦590℃、又は≦580℃の温度を有する冷却第2ストリームをもたらし得る。一部の実施形態では、冷却第2ストリームは、≧550℃かつ≦620℃又は≦600℃の範囲の温度であり得る。ライン109の第2ストリームの温度を600℃未満に下げると、気体成分の望ましくない熱反応を少なくするか又は停止することができる。
【0058】
冷却第2ストリームはライン112を経て、クエンチ塔113内に配置された気液接触ゾーン114に導入され得る。ゾーン114に入る前に、ライン112経由の冷却第2ストリームは、熱回収のため1つ以上の熱交換器に通されることもある。気液接触ゾーン114内で冷却第2ストリームは、ライン115を経てクエンチ塔113に導入される触媒粒子リーン第2クエンチ媒体ストリームと接触し得る。ライン115の第2クエンチ媒体ストリームは下向きに、ライン112の冷却第2ストリームに対向する気液接触ゾーン114の中へ噴霧されて、冷却第2ストリームと第2クエンチ媒体ストリームとの間の良好な接触を確実にし得る。気液接触ゾーン114内では冷却第2ストリーム112中の大半の触媒微粉及び熱が第2クエンチ媒体ストリーム115に移されて、液相の第2クエンチの少なくとも一部及び同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を含み得るスラリーを生成し得る。
一部の実施形態では、ストリーム115の第2クエンチ媒体は、第1クエンチ媒体111より高い標準沸点を有し得る。例えば、第2クエンチ媒体ストリーム115の標準沸点は、150℃~580℃であり得る。
【0059】
スラリーは、ライン116を経てクエンチ塔113から回収され得る。一部の実施形態では、スラリーは、クエンチ塔113の下部に蓄積して液体リザーバー117を形成し得る。一部の実施形態では、ライン129経由の補充ストリームが、ライン116のスラリーと混合され、ブレンドされ、組み合わされるか又は他の方法で接触されて、ライン118の混合ストリームを生成し得る。ライン116のスラリーストリーム又はライン118の混合ストリームは、1つ以上の熱交換器119で冷却されてライン120を経て冷却スラリーストリームを生成し得る。ライン120経由の冷却スラリーストリームの少なくとも一部が固液分離装置121に導入され、その結果、ライン115経由で微粉リーン第2クエンチ媒体ストリームが回収され、ライン122経由で微粉リッチ第2クエンチ媒体ストリームが回収され得る。固液分離装置121の一例はフィルターである。
一部の実施形態では、ライン122の微粉リッチ第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部がライン123を経て燃焼ゾーン104に導入され得る。ライン123の微粉リッチ第2クエンチ媒体ストリーム中の残留炭化水素は、燃焼ゾーン104で燃焼して熱を発生させ得る。ライン123の微粉リッチ第2クエンチ媒体ストリームに含有される触媒粒子は、燃焼ゾーン104内で再生され得る。
一部の実施形態では、ライン122の微粉リッチ第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部は、金属再生利用施設124に運搬され、そこで第8~10族元素(複数可)が再生利用され得る。
【0060】
一部の実施形態では、クエンチ塔113内の気液接触ゾーン114の上方の位置で、第2クエンチ媒体より低い標準沸点を有する第1クエンチ媒体は、クエンチ塔からライン132経由で取り出され、1つ以上の熱交換器126によって冷却され、第1の部分又は量がクエンチ塔113に戻って再循環され得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体はアルカン脱水素の生成物の1つ、ベンゼンであり得るので、冷却第1クエンチ媒体の第2の部分又は量が取り出されて生成物ストリーム125を形成し得る。一部の実施形態では、冷却第1クエンチ媒体の第3の部分又は量がプレナム110にライン111を経て第1クエンチ媒体ストリームとして再循環され得る。
クエンチ塔113のゾーン114の上方の位置で、クエンチ塔113内に存在するいずれもの水の少なくとも一部がクエンチ塔からライン133を経て取り出され、1つ以上の熱交換器127によって冷却され、この冷却水の少なくとも一部がクエンチ塔113に戻って再循環され得る。冷却水の一部分又は量がライン128経由で取り出され、送られて廃水処理され得る。
クエンチ塔113から出るオーバーヘッド生成物ストリーム130は本質的にコークス化触媒粒子がなく、その後さらに冷却され、圧縮され、さらなる生成物回収のために送られ得る。一部の実施形態では、ライン130のオーバーヘッド生成物ストリームは1つ以上の気固分離器に通されて、存在する場合はいずれもの同伴触媒粒子の少なくとも一部を除去し得る。
【0061】
図2は、1つ以上の実施形態に従って、ライン201の炭化水素含有フィードを脱水素するための別のシステムを示し、このシステムは、反応器又は変換ゾーン203、再生器又は燃焼ゾーン204、酸素浸漬ゾーン237、還元ゾーン240、及びクエンチ塔213を含む。炭化水素含有フィードは、ライン201を経て変換ゾーン203に、例えば、ライザー反応器の下端部又はダウナー反応器の上端部に導入され得る。一部の実施形態では、ライン201の炭化水素含有フィードは水蒸気を含み得る。再生還元触媒粒子がライン202を経て還元ゾーン240から変換ゾーン203に運ばれ得る。炭化水素含有フィードは、変換ゾーン203内で再生還元触媒粒子と接触されて炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、1種以上の脱水素炭化水素、未反応炭化水素含有フィード、水蒸気、ベンゼン、又はその任意の混合物を含み得る変換流出物をライン205経由で生成し得る。
変換流出物はライン205を経て1つ以上の分離装置206、例えば、1つ以上のサイクロンに導入され得る。分離装置206は、変換流出物を、コークス化触媒粒子に富み、かつ1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム207と、1種以上の脱水素炭化水素に富み、同伴コークス化触媒粒子を含むライン209経由の第2ストリームとに分離し得る。
【0062】
第1ストリームは、ライン207を経て燃焼ゾーン204に再循環され得る。一部の実施形態では、ライン207の第1ストリームは、同伴気体成分、例えば1種以上の脱水素炭化水素、未反応炭化水素含有フィード、水蒸気、又はその混合物を含み得る。該実施形態では、ライン207の第1ストリームが燃焼ゾーン204に導入される前に第1ストリーム中の気体成分の少なくとも一部がストリップされ得る。酸化剤及び場合により燃料がライン208を経て燃焼ゾーン204に導入され、第1ストリーム中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部と接触してコークス、及び、存在する場合、燃料の少なくとも一部の燃焼を引き起こして、再生触媒粒子及び燃焼ガスを含む燃焼流出物を生成し得る。コークス及び、存在する場合は燃料の燃焼は熱を生じさせて、コークス化触媒粒子からのコークスを燃やし、使用済み触媒粒子上の第8~10族元素(複数可)を再分散させ、再生触媒粒子に熱を加えることができる。
【0063】
燃焼流出物は、ライン233を経て回収され、1つ以上の分離装置234、例えば、1つ以上のサイクロンに入って、燃焼流出物に同伴されたいずれもの触媒粒子の大半及び少量の同伴燃焼ガスを含有するストリーム236と、燃焼ガスの大半及び、たとえあったとしても少量の同伴触媒粒子を含有する燃焼ガスストリーム235とに分離され得る。一部の実施形態では、1つ以上の分離装置234は、ライン233の燃焼流出物からの高い固体回収効率を達成するため及び燃焼ガスストリーム235中の同伴触媒粒子の量を減らすために3段階以上のサイクロンを含み得る。
ストリーム236は酸素浸漬ゾーン237に送られ得る。相対的に乾燥した酸化剤ガスストリーム239が酸素浸漬ゾーン237に供給されて触媒を完全に再生し得る。ゾーン237に入った後、いずれもの未反応乾燥酸化剤ガスストリームは、完全再生触媒粒子を同伴し、ゾーン237をストリーム238として出ることができる。ストリーム238は、分離装置234に入って、固体ストリームと気体ストリームに分割され得る。完全再生触媒粒子に富む固体ストリームはストリーム236に合流し、ゾーン237に戻り得る。未反応乾燥酸化剤ガスに富む気体ストリームはストリーム235に合流し得る。完全再生触媒粒子はゾーン237からストリーム241として離れて、還元ゾーン240に入り得る。還元ガスストリーム242もゾーン240に供給され得る。再生還元触媒粒子は、ライン202を経て還元ゾーン240を出て変換ゾーン203に入り得る。いずれもの未反応還元ガスは、ストリーム243として還元ゾーンから離れ得る。
【0064】
一部の実施形態では、燃焼ガスストリーム235がいくらかでも同伴触媒粒子を含む場合、フィルター、静電式集塵器、湿式ガススクラバー等に通され得る。変換ゾーン及び燃焼ゾーン203及び204上の分離装置206及び234は、それぞれ、ライン209の第2ストリームからとライン235の燃焼ガスストリームからの同伴触媒収集の困難レベルに応じて、第2ストリーム209又は燃焼ガスストリーム233のどちらかにより多いか又は少ない量の同伴触媒粒子を送り込むように調整され得る。
第2ストリーム209はプレナム210に入り得る。プレナム210内で、ストリーム209は、第1クエンチ媒体ストリーム211と混合されて、ライン212の冷却第2ストリームを生成し得る。一部の実施形態では、ライン209の第2ストリームの温度は>620℃であり得る。
【0065】
一部の実施形態では、炭化水素含有フィードの脱水素中にベンゼンが生成されることがあり、ベンゼンは冷却第2ストリーム中に存在し得る。一部の実施形態では、ベンゼンがライン211の第1クエンチ媒体として使用され得る。一部の実施形態では、第1クエンチ媒体ストリームは、プレナム210内での第2ストリームとの接触時に液相中にあり得る。一部の実施形態では、プレナム210内での第2ストリーム209とライン211の第1クエンチ媒体ストリームの接触は、≦620℃、≦610℃、≦600℃、≦590℃、又は≦580℃の温度を有する冷却第2ストリームをもたらし得る。一部の実施形態では、冷却第2ストリームは、≧550℃かつ≦620℃又は≦600℃の範囲の温度であり得る。ライン209の第2ストリームの温度を600℃未満に下げると、気体成分の望ましくない熱反応を減らすか又は停止させ得る。
冷却第2ストリームはライン212を経て、クエンチ塔213内に配置された気液接触ゾーン214に導入され得る。ゾーン214に入る前に、ライン212経由の冷却第2ストリームは、熱回収のため1つ以上の熱交換器の中を移動することもある。気液接触ゾーン214内で、冷却第2ストリームは、クエンチ塔213にライン215経由で導入された触媒粒子リーン第2クエンチ媒体ストリームと接触し得る。ライン215の第2クエンチ媒体ストリームは下向きに、ライン212の冷却第2ストリームに対向する気液接触ゾーン214の中へ噴霧されて、冷却第2ストリームと第2クエンチ媒体ストリームとの間の良好な接触を確実にし得る。気液接触ゾーン214内では、冷却第2ストリーム212中の大半の触媒微粉及び熱が第2クエンチ媒体ストリーム215に移されて、液相の第1クエンチ媒体と第2クエンチ媒体及びコークス化触媒粒子の少なくとも一部を含み得るスラリーを生成し得る。
【0066】
スラリーは、ライン216を経てクエンチ塔213から回収され得る。一部の実施形態では、スラリーは、クエンチ塔213の下部に蓄積して液体リザーバー217を形成し得る。液体リザーバーは、炭化水素含有フィードに反応体として添加され得る未反応水をも含み得る。ライン216のスラリーストリームは分離装置218に導入されて、コークス化触媒粒子を含む水ストリームをライン219経由で、及びコークス化触媒粒子を含むクエンチ媒体ストリームをライン226経由でもたらし得る。
水ストリームはライン219を経て分離装置220に導入されて、コークス化触媒粒子含有水ストリームをライン222経由で、コークス化触媒粒子が少ない水ストリームをライン221経由でもたらし得る。一部の実施形態では、分離装置220は液固フィルターであり得る。廃水ストリームはライン221経由で廃水処理施設に送られ得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子含有水ストリームの少なくとも一部がライン222経由で金属再生利用施設224に運ばれ、ライン228経由で燃焼ゾーン204に運ばれ、又はその組み合わせであり得る。
クエンチ媒体ストリームはライン226経由で1つ以上の熱交換器227に導入されて、ライン229経由で冷却クエンチ媒体ストリームを生成し得る。冷却クエンチ媒体ストリームはライン229を経て1つ以上の固液分離装置230に導入されて、コークス化触媒粒子が少ないクエンチ媒体ストリームをライン215経由で、コークス化触媒粒子に富むクエンチ媒体ストリームをライン231経由でもたらし得る。一部の実施形態では、固液分離装置230は液固フィルターであり得る。
【0067】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子に富むクエンチ媒体ストリームの少なくとも一部は、ライン231経由で金属再生利用施設224に運ばれ、ライン223経由で燃焼ゾーン204に運ばれ、又はその組み合わせであり得る。コークス化触媒粒子に富むクエンチ媒体ストリームの少なくとも一部がライン223経由で燃焼ゾーン204に運ばれる場合、その中の残留炭化水素は変換ゾーン204内で燃焼して熱を生じさせ、コークス化触媒粒子はその中で再生され得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子が少ないクエンチ媒体ストリームの第1の部分はライン215経由でクエンチ塔213に第2クエンチ媒体として再循環され、コークス化触媒粒子が少ないクエンチ媒体ストリームの第2の部分はライン215経由で第1クエンチ媒体としてライン211を経てプレナム210に再循環され、かつ場合により、ライン215のコークス化触媒粒子が少ないクエンチ媒体ストリームの第3の部分はライン225を経て生成物として回収され得る。
クエンチ塔213から出るオーバーヘッド生成物ストリーム232は本質的にコークス化触媒粒子がなく、その後さらに冷却され、圧縮され、さらなる生成物回収のために送られ得る。一部の実施形態では、オーバーヘッド生成物ストリームはライン232経由で1つ以上の気固分離器に通されて、存在する場合はいずれもの同伴触媒粒子の少なくとも一部を除去し得る。
【実施例
【0068】
実施例
上記考察を下記非限定例を参照してさらに説明することができる。
触媒組成物1:CATAPAL(登録商標)D擬ベーマイト(Sasol)(47g)と、70wt%のMgO及び30wt%のAl2O3を含有するか焼Mg-Alハイドロタルサイト(PURALOX(登録商標)MG70)(44g)とを脱イオン水(524ml)中で混合してスラリーを調製することによって調製した。スラリーを製粉し、Buchi B-290ミニスプレードライヤーで噴霧乾燥させて噴霧乾燥粒子を生成した。噴霧乾燥粒子を空気中550℃で4時間か焼して、名目上50wt%のPURALOX(登録商標)MG70と、CATAPAL(登録商標)Dに由来する50wt%のAl2O3とを含有するか焼担体粒子を生成した。か焼担体粒子に、塩化スズ(IV)五水和物、クロロ白金酸六水和物、及び脱イオン水を含む水溶液をインシピエントウェットネス含浸を利用して含浸させた。この含浸材料を空気中800℃で12時間か焼して、50:50のMG70:CATAPAL(登録商標)D上に名目上0.3wt%のPt及び1.5wt%のSnを含有する触媒組成物を生成した。
【0069】
触媒組成物2:40wt%のアルミニウムクロロヒドロール溶液(ACH)(85g)及びか焼Mg-Alハイドロタルサイト(PURALOX(登録商標)MG70)(88g)を脱イオン水(596ml)中で混合してスラリーを調製することによって調製した。スラリーを製粉し、Buchi B-290ミニスプレードライヤーで噴霧乾燥させて噴霧乾燥粒子を生成した。噴霧乾燥粒子を空気中550℃で4時間か焼して、名目上80wt%のPURALOX(登録商標)MG70と、ACHに由来する20wt%のAl2O3とを含有するか焼担体粒子を生成した。か焼担体粒子に、塩化スズ(IV)五水和物、クロロ白金酸六水和物、及び脱イオン水を含む水溶液をインシピエントウェットネス含浸を利用して含浸させた。この含浸材料を空気中800℃で12時間か焼して、80:20のMG70:ACH上に名目上0.3wt%のPt及び1.5wt%のSnを含有する触媒組成物を生成した。
【0070】
触媒組成物3~16は下記手順に従って調製した。各触媒組成物のため、80wt%のMgO及び20wt%のAl2O3を含有し、かつ150m2/gの表面積を有する混合Mg/Al金属酸化物であるPURALOX(登録商標)MG80/150(3グラム)(Sasol)を空気下550℃で3時間か焼して担体を形成した。触媒組成物(Acros Organics)作製のために使用時には適量の塩化スズ(IV)五水和物及び/又は触媒組成物(Sigma Aldrich)作製のために使用時には適量のクロロ白金酸と、1.8mlの脱イオン水とを含有する溶液を小型ガラスバイアル中で調製した。各触媒組成物のため、か焼PURALOX(登録商標)MG80/150担体(2.3グラム)に対応溶液を含浸させた。この含浸材料を密閉容器内で室温(RT)にて24時間平衡にさせ、110℃で6時間乾燥させ、800℃で12時間か焼した。表1は、担体の質量に基づいた各組成物の名目上のPt及びSn含量を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
上記触媒組成物1及び2を使用する実施例
固定床実験を約100kPa絶対圧で行った。ガスクロマトグラフ(GC)を用いて反応器流出物の組成を測定した。次に反応器流出物中の各成分の濃度を用いてC3H6の収率及び選択性を計算した。これらの実施例で報告したC3H6の収率及び選択性は炭素モル基準で計算した。
各実施例では、0.3gの触媒Mcatを適量の石英希釈剤と混合し、石英反応器に充填した。希釈剤の量は、触媒床(触媒+希釈剤)が石英反応器の等温ゾーンと重なり、触媒床が作動中に大部分は等温になるように決めた。石英チップ/ロッドで反応器のデッドボリュームを満たした。
反応器流出物中の各成分の濃度を用いてC3H6の収率及び選択性を計算した。trxnの開始時及びtrxnの終了時のC3H6の収率及び選択性をそれぞれYini、Yend、Sini、及びSendと表し、百分率として下表に報告する。
【0073】
実施例1及び2のプロセスステップは以下のとおりだった。
1.システムに不活性ガスを流した。
2.不活性ガスを反応ゾーン内に流しながら、酸素含有ガス(Ogas)を流速(Fregen)で反応ゾーンのバイパス内に流した。反応ゾーンを再生温度Tregenに加熱した。
3.次に酸素含有ガスを反応ゾーン内に特定時間(tregen)にわたって流して触媒を再生した。tregen後、酸素含有ガス流量を維持しながら反応ゾーン内の温度をTregenから還元温度(Tred)に変えた。
4.システムに不活性ガスを流した。
5.反応ゾーン内に不活性ガスを流しながら、H2含有ガス(Hgas)を流速(Fred)で反応ゾーンのバイパス内に特定時間にわたって流した。この後にH2含有ガスをTredの反応ゾーン内に特定時間(tred)にわたって流した。
6.システムに不活性ガスを流した。このプロセス中に、反応ゾーンの温度をTredから655℃の反応温度に変えた。
7.反応ゾーン内に不活性ガスを流しながら、81vol%のC3H8、9vol%の不活性(Ar又はKr)及び10vol%の水蒸気を含む炭化水素含有(HCgas)フィードを流速(Frxn)で反応ゾーンのバイパス内に特定時間にわたって流した。次に炭化水素含有フィードを655℃の反応ゾーン内に10分間流した。フィードを反応ゾーンのバイパスから反応ゾーンに切り替えたらすぐに反応流出物のGCサンプリングを開始した。
上記プロセスステップを安定性能が得られるまで周期的に繰り返した。表2は、触媒1と触媒2が両方ともプロパン脱水素に対して活性/選択的だったことを示す。図3は、流通時間の関数としてCモル%のプロピレン選択性及びCモル%のプロピレン収率を示すグラフであり、触媒2がプロパン脱水素に対して60サイクルにわたって安定していたことを実証する。
【0074】
【表2】
【0075】
上記触媒組成物3~16を使用する実施例
触媒組成物3~16を用いて固定床実験を約100kPa絶対圧で行った。ガスクロマトグラフ(GC)を用いて反応器流出物の組成を測定した。次に反応器流出物中の各成分の濃度を用いてC3H6の収率及び選択性を計算した。これらの実施例で報告したC3H6の収率及び選択性は炭素モル基準で計算した。
各実施例では、0.3gの触媒組成物を適量の石英希釈剤と混合し、石英反応器に充填した。希釈剤の量は、触媒床(触媒+希釈剤)が石英反応器の等温ゾーンと重なり、触媒床が作動中に大部分は等温になるように決めた。石英チップ/ロッドで反応器のデッドボリュームを満たした。
trxnの開始時及びtrxnの終了時のC3H6の収率及び選択性をそれぞれYini、Yend、Sini、及びSendと表し、触媒組成物3~10について表3及び4に百分率として報告する。
【0076】
触媒組成物3~10についてのプロセスステップは以下のとおりだった。
1.システムに不活性ガスを流した。
2.不活性ガスを反応ゾーンに通しながら、乾燥空気を83.9sccmの流速で反応ゾーンのバイパスに通した。反応ゾーンを800℃の再生温度に加熱した。
3.次に乾燥空気を83.9sccmの流速で反応ゾーンに10分間通して触媒を再生した。
4.システムに不活性ガスを流した。
5.不活性ガスを反応ゾーンに通しながら、10vol%のH2及び90vol%のArを含むH2含有ガスを46.6sccmの流速で反応ゾーンのバイパスに特定時間にわたって通した。この後にH2含有ガスを800℃の反応ゾーン内に3秒間流した。
6.システムに不活性ガスを流した。このプロセス中に、反応ゾーンの温度を800℃から670℃の反応温度に変えた。
7.不活性ガスを反応ゾーンに通しながら、81vol%のC3H8、9vol%の不活性ガス(Ar又はKr)及び10vol%の水蒸気を含む炭化水素含有(HCgas)フィードを35.2sccmの流速で反応ゾーンのバイパスに特定時間にわたって通した。次に炭化水素含有フィードを670℃の反応ゾーンに10分間通した。フィードを反応ゾーンのバイパスから反応ゾーンに切り替えたらすぐに反応流出物のGCサンプリングを開始した。
上記プロセスステップを安定性能が得られるまで周期的に繰り返した。表3及び4は、わずか0.025wt%のPt及び1wt%のSnを含有する触媒組成物8が、0.4wt%のPt及び1wt%のSnを含有する触媒3と比較して同様の収率と同様の選択性の両方を有したことを示し、これは驚くべきかつ予想外だった。如何なるPtをも含まない触媒10は、認識できるプロピレン収率を示さなかった。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
触媒3~10に関して上述した同プロセスステップ1~7を用いて触媒11~16をも試験した。表5は、担体の質量に基づいて0.1wt%のPtを含む触媒組成物に最適のプロピレン収率のためにはSnのレベルが低過ぎても高過ぎてもいけないことを示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表6は、担体の質量に基づいて0.0125wt%のPtを含む触媒組成物に最適のプロピレン収率のためにはSnのレベルが高過ぎても低過ぎてもいけないことを示す。
【0082】
【表6】
【0083】
ステップ7で35.2sccmに代えて17.6sccmの流速を用いたことを除き、触媒3~10に関して上述した同プロセスステップ1~7を用いて、わずか0.025wt%のPtと1wt%のSnを含有する触媒組成物8を寿命試験にも供した。図4は、触媒組成物8が、204サイクルにわたって性能を維持したことを示す(x軸は時間であり、y軸はC3H6の収率及びC3H6に対する選択性で、両方とも炭素モル%である)。
【0084】
種々の用語を上記で定義した。請求項に用いられる用語が上記で定義されていない限りでは、少なくとも1つの刊行物又は発行された特許に反映されたように当業者がその用語に与えた最も広い定義を与えるべきである。さらに、本出願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、参照することにより該開示が本出願と矛盾しない程度まで完全に援用され、かつ該援用が許容される全ての権限のために援用される。
前述の説明は、本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の基本範囲を逸脱することなく本発明の他のさらなる実施形態を考案することが可能であり、本発明の範囲は、下記特許請求の範囲によって決められる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素のアップグレードプロセスであって、
(I)炭化水素含有フィードを変換ゾーン内で流動脱水素触媒粒子と接触させて前記炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含む変換流出物を生成するステップと、
(II)前記変換流出物から、前記コークス化触媒粒子に富み、かつ前記1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム及び前記1種以上の脱水素炭化水素に富み、かつ同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームを分離するステップと、
(III)前記第2ストリームを第1クエンチ媒体と接触させて冷却第2ストリームを生成するステップと、
(IV)前記冷却第2ストリームをクエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触させるステップと、
(V)前記1種以上の脱水素炭化水素を含む気体ストリームと、凝縮第1クエンチ媒体ストリームと、液相の前記第2クエンチ媒体の少なくとも一部及び前記同伴コークス化触媒粒子を含むスラリーストリームとを前記クエンチ塔から回収するステップと、
(VI)前記凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部をステップ(III)に再循環させるステップと、
(VII)前記スラリーストリームから前記同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を分離して、回収第2クエンチ媒体ストリーム及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与えるステップと、
(VIII)前記回収第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部をステップ(IV)に再循環させるステップと
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
さらに、
(IX)前記第1ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部及び前記回収同伴触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤及び場合により燃料と接触させて、前記コークスと、存在する場合、前記燃料との少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含む燃焼流出物を生成するステップと、
(X)燃焼ガスストリーム及び再生触媒粒子ストリームを分離するステップと、
(XI)追加量の前記炭化水素含有フィードを、前記再生触媒粒子ストリームからの流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子及び追加の1種以上の脱水素炭化水素を含む追加の変換流出物を生成するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記脱水素触媒粒子が担体上に配置された第8~10族元素を含み、前記プロセスが、
(XII)前記回収同伴触媒粒子ストリームの少なくとも一部を金属再生利用施設に運搬するステップと、
(XIII)前記回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子から前記第8~10族元素の少なくとも一部を回収するステップと
をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記変換流出物がさらにベンゼンを含み、前記プロセスが、
(XV)ベンゼン生成物ストリームを前記クエンチ塔から取り出すステップをさらに含み、前記第1クエンチ媒体が、前記クエンチ塔から取り出された前記ベンゼン生成物ストリームの少なくとも一部を含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上のサイクロン内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上のサイクロンの少なくとも1つのプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、一次分離装置及び前記一次分離装置の下流にあって前記一次分離装置と流体連絡している二次分離装置内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記二次分離装置のプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上の気固分離器内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上の気固分離器及び前記クエンチ塔と流体連絡している移送ライン内で前記第1クエンチ媒体と接触される、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1クエンチ媒体及び/又は前記第2クエンチ媒体が、ベンゼン、水、若しくは<580℃の標準沸点を有する多環芳香族炭化水素、又はその混合物を含む、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2クエンチ媒体が、前記第1クエンチ媒体の標準沸点より高い標準沸点を有する、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1クエンチ媒体が液体炭化水素を含み、前記冷却第2ストリーム中のいずれもの非固体成分が完全に気相中にある、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項11】
前記変換流出物が≧620℃の温度であり、前記冷却第2ストリームが≧500℃かつ<620℃の温度である、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項12】
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%の第8~10族元素と、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項13】
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%のPtと、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、前記担体は少なくとも0.5wt%の第2族元素を含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
前記脱水素触媒粒子が、10μm~500μmの範囲のメジアン粒径と、100又は250mLのメスシリンダーの代わりに10、25、又は50mLのメスシリンダーを用いて修正したASTM D7481-18に従って測定して、0.3g/cm3~2g/cm3の範囲の見掛けゆるみ嵩密度とを有する、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
前記脱水素触媒粒子が、ゲルダートA又はゲルダートB分類の要件を満たす、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
種々の用語を上記で定義した。請求項に用いられる用語が上記で定義されていない限りでは、少なくとも1つの刊行物又は発行された特許に反映されたように当業者がその用語に与えた最も広い定義を与えるべきである。さらに、本出願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、参照することにより該開示が本出願と矛盾しない程度まで完全に援用され、かつ該援用が許容される全ての権限のために援用される。
前述の説明は、本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の基本範囲を逸脱することなく本発明の他のさらなる実施形態を考案することが可能であり、本発明の範囲は、下記特許請求の範囲によって決められる。
本開示は以下の実施形態を含む。
<実施形態1>
炭化水素のアップグレードプロセスであって、
(I)炭化水素含有フィードを変換ゾーン内で流動脱水素触媒粒子と接触させて前記炭化水素含有フィードの少なくとも一部の脱水素を引き起こして、コークス化触媒粒子及び1種以上の脱水素炭化水素を含む変換流出物を生成するステップと、
(II)前記変換流出物から、前記コークス化触媒粒子に富み、かつ前記1種以上の脱水素炭化水素が少ない第1ストリーム及び前記1種以上の脱水素炭化水素に富み、かつ同伴コークス化触媒粒子を含む第2ストリームを分離するステップと、
(III)前記第2ストリームを第1クエンチ媒体と接触させて冷却第2ストリームを生成するステップと、
(IV)前記冷却第2ストリームをクエンチ塔内で第2クエンチ媒体と接触させるステップと、
(V)前記1種以上の脱水素炭化水素を含む気体ストリームと、凝縮第1クエンチ媒体ストリームと、液相に前記第2クエンチ媒体の少なくとも一部及び前記同伴コークス化触媒粒子を含むスラリーストリームとを前記クエンチ塔から回収するステップと、
(VI)前記凝縮第1クエンチ媒体の少なくとも一部をステップ(III)に再循環させるステップと、
(VII)前記スラリーストリームから前記同伴コークス化触媒粒子の少なくとも一部を分離して、回収第2クエンチ媒体ストリーム及び回収同伴コークス化触媒粒子ストリームを与えるステップと、
(VIII)前記回収第2クエンチ媒体ストリームの少なくとも一部をステップ(IV)に再循環させるステップと
を含む、前記プロセス。
<実施形態2>
さらに、
(IX)前記第1ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部及び前記回収同伴触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤及び場合により燃料と接触させて、前記コークスと、存在する場合、前記燃料との少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含む燃焼流出物を生成するステップと、
(X)燃焼ガスストリーム及び再生触媒粒子ストリームを分離するステップと、
(XI)追加量の前記炭化水素含有フィードを、前記再生触媒粒子ストリームからの流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子及び追加の1種以上の脱水素炭化水素を含む追加の変換流出物を生成するステップと
を含む、実施形態1に記載のプロセス。
<実施形態3>
前記脱水素触媒粒子が担体上に配置された第8~10族元素を含み、前記プロセスが、
(XII)前記回収同伴触媒粒子ストリームの少なくとも一部を金属再生利用施設に運搬するステップと、
(XIII)前記回収同伴コークス化触媒粒子ストリーム中の前記コークス化触媒粒子から前記第8~10族元素の少なくとも一部を回収するステップと
をさらに含む、実施形態1又は実施形態2に記載のプロセス。
<実施形態4>
(XIV)前記スラリーストリームをステップ(VII)の前に冷却して冷却スラリーストリームを生成するステップをさらに含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態5>
前記変換流出物がさらにベンゼンを含み、前記プロセスが、
(XV)ベンゼン生成物ストリームを前記クエンチ塔から取り出すステップをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態6>
前記第1クエンチ媒体が、前記クエンチ塔から取り出された前記ベンゼン生成物ストリームの少なくとも一部を含む、実施形態5に記載のプロセス。
<実施形態7>
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上のサイクロン内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上のサイクロンの少なくとも1つのプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、実施形態1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態8>
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、一次分離装置及び前記一次分離装置の下流にあって前記一次分離装置と流体連絡している二次分離装置内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記二次分離装置のプレナム内で前記第1クエンチ媒体と接触される、実施形態1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態9>
前記第1ストリーム及び前記第2ストリームが、1つ以上の気固分離器内で前記変換流出物から分離され、前記第2ストリームが、前記1つ以上の気固分離器及び前記クエンチ塔と流体連絡している移送ライン内で前記第1クエンチ媒体と接触される、実施形態1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態10>
前記第1クエンチ媒体が、前記第2ストリームとの接触時に液相中にあり、前記第1クエンチ媒体が、前記第2ストリームと接触した後に気相中にある、実施形態1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態11>
前記第1クエンチ媒体が、ベンゼン、水、若しくは<580℃の標準沸点を有する多環芳香族炭化水素、又はその混合物を含む、実施形態1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態12>
前記第2クエンチ媒体が、ベンゼン、水、若しくは<580℃の標準沸点を有する多環芳香族炭化水素、又はその混合物を含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態13>
前記第2クエンチ媒体が、前記第1クエンチ媒体の標準沸点より高い標準沸点を有する、実施形態1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態14>
前記クエンチ塔内の下部ゾーンが、前記スラリーストリームのインベントリを含有する、実施形態1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態15>
ステップ(VII)において、前記同伴コークス化触媒粒子が、1つ以上のフィルターによって前記スラリーストリームから分離される、実施形態1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態16>
前記第1クエンチ媒体が液体炭化水素を含み、前記冷却第2ストリーム中のいずれもの非固体成分が完全に気相中にある、実施形態1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態17>
前記第1クエンチ媒体が、前記炭化水素含有フィードの脱水素中に形成される芳香族炭化水素を含む、実施形態1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態18>
前記第2クエンチ媒体が、前記炭化水素含有フィードの脱水素中に形成されない芳香族炭化水素を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態19>
前記第2クエンチ媒体が、前記クエンチ塔内で前記冷却第2ストリームと向流的に接触する、実施形態1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態20>
前記変換流出物が≧620℃の温度であり、前記冷却第2ストリームが≧500℃かつ<620℃の温度である、実施形態1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態21>
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%の第8~10族元素と、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、実施形態1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態22>
前記脱水素触媒粒子が、担体上に配置された0.001wt%~6wt%のPtと、場合によりSn、Cu、Au、Ag、Ga、その組み合わせ、又はその混合物を含む10wt%までのプロモーターとを含み、前記担体は少なくとも0.5wt%の第2族元素を含み、全ての質量パーセント値は前記担体の質量に基づいている、実施形態1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態23>
前記脱水素触媒粒子が、10μm~500μmの範囲のメジアン粒径と、100又は250mLのメスシリンダーの代わりに10、25、又は50mLのメスシリンダーを用いて修正したASTM D7481-18に従って測定して、0.3g/cm 3 ~2g/cm 3 の範囲の見掛けゆるみ嵩密度とを有する、実施形態1~22のいずれか1項に記載のプロセス。
<実施形態24>
前記脱水素触媒粒子が、ゲルダートA又はゲルダートB分類の要件を満たす、実施形態1~23のいずれか1項に記載のプロセス。
【国際調査報告】