(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ポストバイオティクス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20240903BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240903BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240903BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240903BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240903BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20240903BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P1/04
A61P1/12
A61P35/00
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
C12N1/20 A
A23L33/00
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508412
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073085
(87)【国際公開番号】W WO2023021141
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ベニヤコーブ, ジャリル
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME11
4B065AA21X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
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4B065BD50
4B065CA41
4C076AA30
4C076AA36
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4C087AA01
4C087AA02
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4C087CA10
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA73
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、ビフィズス菌増殖促進因子としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。本発明はまた、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。本発明はまた、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによる胃腸疾患の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィズス菌増殖促進因子としての、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)培養上清の使用。
【請求項2】
対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項3】
対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによる胃腸疾患の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択され、好ましくは、前記ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である、請求項1に記載の使用、又は請求項2若しくは請求項3に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む、培養培地においてビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られる又は得ることができ、好ましくは、
(i)前記培養培地が、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含み、
(ii)前記培養培地が、約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含み、
(iii)前記培養培地が、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含み、かつ、
(iv)前記培養培地が、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む、
請求項1若しくは請求項4のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項6】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスを、定常期に達するまで培養すること及び/又は嫌気性条件下で培養することによって得られる又は得ることができる、請求項1、請求項4、若しくは請求項5のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項7】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、パスチャライズ及び/又は乾燥され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、請求項1若しくは請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項6のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項8】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、経口投与される、請求項1若しくは請求項4~請求項7のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項7のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項9】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、サプリメント又は栄養組成物の形態であり、好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、カプセル又はタブレットの形態である、請求項1若しくは請求項4~請求項8のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、
(i)全糖濃度の減少を有し、好ましくは、全糖濃度が少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少している、
(ii)全酸濃度の増加を有し、好ましくは、全酸濃度が、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加している、及び/又は、
(iii)全アミノ酸濃度の減少を有し、好ましくは、全アミノ酸濃度が少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%減少している、
請求項1若しくは請求項4~請求項9のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項9のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項11】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、(i)約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、若しくは約0.5重量%以下の全糖、(ii)約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、若しくは約2重量%以上の全酸、及び/又は、(iii)約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、若しくは約0.6重量%以下の全アミノ酸、
を含む、請求項1若しくは請求項4~請求項10のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項10のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項12】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用され、より好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用される、請求項1若しくは請求項4~請求項11のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~請求項11のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項13】
前記対象が、胃腸疾患を有する若しくは胃腸疾患のリスクがあり、並びに/又は前記対象が、前記対象の胃腸管及び/若しくは糞便中に低存在量のビフィズス菌を有する、請求項2~請求項12のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項14】
前記胃腸疾患が、抗菌薬関連下痢、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、及び壊死性腸炎から選択される、請求項2~請求項13のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項15】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であって、噴霧乾燥されている、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項16】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントであって、好ましくは、前記サプリメントがカプセル又はタブレットの形態である、サプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストバイオティクス、及びビフィズス菌増殖促進因子としてのそれらの使用に関する。本発明はまた、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することにより胃腸疾患を治療又は予防する際のポストバイオティクスの使用に関する。
【0002】
[背景技術]
ビフィズス菌は、哺乳動物の胃腸管微生物叢を構成する細菌の主要な属の1つである。ビフィズス菌は、新生児の腸における初期の微生物コロニー形成菌であり、新生児の生理機能の発達において重要な役割を果たす(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。更に、ビフィズス菌の組成及び機能の変化は、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、及び過敏性腸症候群を含むいくつかの胃腸疾患に関連している(Tojo,R.,et al.,2014.World journal of gastroenterology:WJG,20(41),p.15163)。
【0003】
健康な腸機能を維持するための予防医学における、ビフィズス菌株を含むプロバイオティクスの使用は、充分に実証されており、かつ胃腸障害の治療剤として提案されている。数多くの研究が、プレバイオティクス(例えば、イヌリン、アラビノキシラン、ガラクトオリゴ糖、及びフラクトオリゴ糖)が微生物叢内のビフィズス菌の存在を増進する能力を実証している(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。
【0004】
しかしながら、ビフィズス菌の増殖を増強する既存の解決策にはいくつかの欠点がある。プロバイオティクスは生菌のままである必要があることが、適用を制限している。カプセルのサイズだと、原材料の投与量が典型的にはグラム範囲未満にまで制限されるので、プレバイオティクスが利益をもたらすためには概して数グラムの用量が必要であることは、プレバイオティクスをサプリメントにあまり好適でないものにし得る。
【0005】
したがって、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することができる代替の試薬及び組成物が求められている。
【0006】
[発明の概要]
ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティス(また、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)又はB.ラクティス(B.lactis)としても知られている)の培養上清は、驚くべきことにビフィズス菌の増殖を増強し、驚くべきビフィズス菌増殖促進効果を示すことが見出されている。驚くべきことに、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(Bifidobacterium lactis supernatant)は、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)の培養上清よりも有意に大きい程度までビフィズス菌の増殖を増強することが見出された。
【0007】
純粋な、ビフィドバクテリウム・ラクティスの液体培養上清による、ビフィズス菌増殖促進効果は、培養上清を粉末にする際に有利に維持された。ビフィドバクテリウム・ラクティスと、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末との組合せもまた、有意なビフィズス菌増殖促進効果を示した。粉末形態は貯蔵に対して安定であり、サプリメントに好適である。
【0008】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清のビフィズス菌増殖促進因子としての使用を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによる胃腸疾患の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0012】
任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明で使用してもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である。
【0013】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを好適な培養培地で培養することによって得てもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、(i)約1重量%~約6重量%、若しくは約2重量%~約4重量%の糖、(ii)約1重量%~約10重量%、若しくは約1重量%~約6重量%、若しくは約2重量%~約4重量%の酵母エキス、(iii)約0重量%~約0.5重量%、若しくは約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び/又は、(iv)約0重量%~約1重量%、若しくは約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、糖は、グルコース、デキストロース、及び/又はグルコースシロップである。いくつかの実施形態では、pHは、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHに制御される。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な条件下で培養してもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、定常期に達するまで培養される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、嫌気性条件下で培養される。
【0014】
任意の好適な処理工程を使用して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得てもよい。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物からビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の全て又は実質的に全てを除去することによって得てもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、パスチャライズされる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択される担体材料と共に噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、アカシアゴムと共に噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料は、総固形分比約1:3~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され、好ましくは総固形分比は、約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)である。
【0016】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与に好適な形態である。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、サプリメント又は栄養組成物の形態である。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、カプセル又はタブレットの形態である。
【0017】
培養の間、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養培地中の栄養素(例えば、糖及びアミノ酸)を消費し、様々な可溶性因子(例えば、有機酸及び他の代謝産物)で培養培地を富化する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)全糖濃度の減少、(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、(iii)全アミノ酸濃度の低下を有する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、(i)全糖濃度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%減少しており、(ii)全酸濃度は、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%増加しており、及び/又は、(iii)培地中の全アミノ酸濃度は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、若しくは少なくとも約0.3重量%低下している。
【0018】
いくつかの実施形態では、パスチャライズの前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約1×107~約1×109cfu/mLの生細胞数を有する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、若しくは約0.5重量%以下の全糖、(ii)約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、若しくは約2重量%以上の全酸、及び/又は、(iii)約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、若しくは約0.6重量%以下の全アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHを有し、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約6.2のpHを有する。
【0019】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の他の好適な試薬又は組成物と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである。
【0020】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.アドレセンティス(B.adolescentis)群、B.ビフィダム(B.bifidum)群、B.ロンガム(B.longum)群、及びB.シュードロンガム(B.pseudolongum)群から選択される、ビフィドバクテリウムの1つ以上の系統発生群の増殖を増強し得る。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.ロンガム、B.アニマリス(B.animalis)、B.アドレセンティス、B.ビフィダム、B.カテヌラツム(B.catenulatum)、B.シュードカテヌラツム(B.pseudocatenulatum)、B.ブレーベ(B.breve)、B.シュードロンガム、B.ガリクム(B.gallicum)、B.アンギュラツム(B.angulatum)、及びB.フィーカレ(B.faecale)から選択される1つ以上のビフィドバクテリウム種の増殖を増強し得る。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、かかる培養上清を必要とする任意の対象へ投与されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、胃腸疾患を有する又は胃腸疾患のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、対象の胃腸管及び/又は糞便中に低存在量のビフィドバクテリウムを有し、好ましくは対象は、対象の胃腸管及び/又は糞便中に、他の微生物叢と比較して低存在量のビフィドバクテリウムを有する。
【0022】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を使用して、胃腸疾患、肥満、アレルギー、又はRA(regressive autism)を含む、腸内のビフィドバクテリウムの数の減少と関連した障害を治療又は予防してもよい。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を使用して、任意の好適な胃腸疾患を治療又は予防してもよい。いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、胃疾患又は腸疾患であり、好ましくは腸疾患である。いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、及び壊死性腸炎から選択される。いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、及び過敏性腸症候群(IBS)から選択される。いくつかの実施形態では、IBDは、クローン病(Crohn’s disease:CD)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)、又は回腸嚢炎である。
【0023】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを提供する。サプリメントは、カプセル又はタブレットの形態であってもよい。
【0024】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む栄養組成物を提供する。
【0025】
サプリメント又は栄養組成物中に存在するビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本発明にかかる任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であってもよい。
【0026】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の他の好適な試薬又は組成物と組み合わせて存在させてもよい。いくつかの実施形態では、サプリメント又は栄養組成物は、1種以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスを含み、好ましくはサプリメント又は栄養組成物は、1種以上のプロバイオティクスを含む。いくつかの実施形態では、サプリメント又は栄養組成物は、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスを含み、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである。
【0027】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む。
【0028】
本方法は、好ましくは、(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程を更に含み、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。
【0029】
本発明の方法によって製造されるビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本発明にかかる任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であり得る。
【0030】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程と、
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る工程と、
を含む。
【0031】
工程は任意の好適な手段によって実行されてよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末をカプセル内包して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むカプセルを得る。
【0032】
本発明の方法によって製造されるサプリメントは、本発明にかかる任意のサプリメントであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清のビフィズス菌増殖促進効果(絶対効果) 3名のドナー(A~C)の腸内微生物群を用いた、ブランクのインキュベーション、並びに熱処理B.ラクティス培養上清(SUP_BL)及び熱処理L.ラムノサス(L.rhamnosus)上清(SUP_LR)の添加時のインキュベーションにおける、開始時並びに24時間後及び48時間後のビフィズス菌の絶対存在量。エラーバーは3連の標準偏差を示す。
【
図2】ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清のビフィズス菌増殖促進効果(ブランクと比較しての変化) 3名のドナー(A~C)の腸内微生物群を用いた、ブランク群と処理群(熱処理B.ラクティス培養上清、SUP_BL;熱処理L.ラムノサス上清、SUP_LR)との間の、開始時並びに24時間後及び48時間後のビフィズス菌のlog絶対存在量における差異。(A)ドナーごと。(B)3名のドナーの平均。エラーバーは3名のドナーの標準偏差を示す。
【
図3】ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末のビフィズス菌増殖促進効果(絶対効果) 3名のドナー(A~C)の腸内微生物群を用いた、ブランクのインキュベーション、並びにB.ラクティスプロバイオティクス(BL)若しくは熱処理B.ラクティス培養上清粉末(SUP)の添加時のインキュベーション、又はB.ラクティスプロバイオティクスと熱処理B.ラクティス培養上清粉末(BL及びSUP)との組合せの添加時のインキュベーションにおける、開始時並びに24時間後及び48時間後のビフィズス菌の絶対存在量。エラーバーは3連の標準偏差を示す。
【
図4】ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末のビフィズス菌増殖促進効果(ブランクと比較しての変化) 3名のドナー(A~C)の腸内微生物群を用いた、ブランク群と処理群(B.ラクティスプロバイオティクス、BL;熱処理B.ラクティス培養上清粉末、SUP;B.ラクティスプロバイオティクスと熱処理B.ラクティス培養上清粉末との組み合わせ、BL&SUP)との間の、開始時並びに24時間後及び48時間後のビフィズス菌のlog絶対存在量における差異。(A)ドナーごと。(B)3人のドナーの平均。エラーバーは3名のドナーの標準偏差を示す。
【0034】
[発明を実施するための形態]
次に、本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な実施例により記載する。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことについて留意する必要がある。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含有している(containing)」、又は「含有する(contains)」と同義であり、すべてを含む、すなわちオープンエンドなものであり、かつ追加の、列挙されていない構成、要素、又は工程を除外しない。用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」はまた、用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0037】
数値範囲は、その範囲を画定する数を含む。本明細書で使用するとき、用語「約」は、およそ、ほぼ、概ね、又はその付近、を意味する。用語「約」が数値又は範囲と共に使用される場合、その値又は範囲は、記載された数値(複数可)の上方及び下方の境界を拡大することによって、その値又は範囲を修正する。一般に、用語「約」及び「ほぼ」は、本明細書では、規定された値(複数可)を10%超える及び下回る数値(複数可)を調整するために使用される。
【0038】
本明細書で論じられる刊行物は、単に本出願の出願日より前にそれらが開示されていたがために提供されている。本明細書において引用されるいかなる文献も、これらの刊行物が本明細書に添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成するものであると認めるものとして解釈されるべきではない。
【0039】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができる。当業者は、開示される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を組み合わせることができることを理解されたい。
【0040】
本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0042】
本明細書で使用するとき、「培養上清(supernatant)」とは、細胞が培養されていた馴化(spent)培養培地又は部分的に馴化された培養培地を指し得る。典型的には、全ての細胞又は実質的に全ての細胞は、培養終了時に培養培地から除去される。例えば、培養上清は、(a)培養培地で細胞を培養して、発酵物を得る工程と、(b)発酵物から全ての細胞又は実質的に全ての細胞を除去して、培養上清を得る工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、「ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清」は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養物に由来する培養上清を指し得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から全て又は実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。
【0044】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ポストバイオティクス(postbiotic)と称され得る。本明細書で使用するとき、「ポストバイオティクス」とは、酵素、ペプチド、テイコ酸、ペプチドグリカン由来のムロペプチド、多糖類、細胞表面タンパク質、及び有機酸などの、生菌によって分泌される、又は細菌溶解後に放出される可溶性因子(生成物又は代謝副産物)を指し得る(例えば、Aguilar-Toala,J.E.,et al.,2018.Trends in Food Science & Technology,75,pp.105-114を参照されたい)。
【0045】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、又はそれからなるポストバイオティクスを提供する。
【0046】
ビフィドバクテリウム・ラクティス株
ビフィドバクテリウム・ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスとしてもまた知られる、NCBI:txid302911)は、ヒトの大腸内に見られるビフィドバクテリウム属の、グラム陽性、嫌気性、棒状細菌である。ビフィドバクテリウム・アニマリス及びビフィドバクテリウム・ラクティスは、2つの異なる種として以前は記載されていた。現在は、両方とも、亜種であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種アニマリス及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスを含む、B.アニマリスと見なされている(Masco,L.,et al,2004.International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,54(4),pp.1137-1143)。
【0047】
任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明に使用してもよい。例えば、プロバイオティクス効果を有すると知られている任意のビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明に使用してもよい。かかるビフィドバクテリウム・ラクティス株は当業者に周知である。
【0048】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択され得る。
【0049】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、当業者に知られている任意のB.アニマリス亜種ラクティスに対して少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、当業者に知られている任意のB.アニマリス亜種ラクティスに対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。公的に利用可能な少なくとも103のゲノムアセンブリがある。
【0050】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12(受託番号CP004053)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1(受託番号CP003039)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140(受託番号CP001606)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9(受託番号CP001892)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04(受託番号CP001515)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07(受託番号NC_017867)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420(受託番号NC_017866)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12(受託番号CP001853)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011(受託番号CP001213)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019(受託番号CP031154)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、又はビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010と、少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。
【0051】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12(受託番号CP004053)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1(受託番号CP003039)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140(受託番号CP001606)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9(受託番号CP001892)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04(受託番号CP001515)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07(受託番号NC_017867)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420(受託番号NC_017866)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12(受託番号CP001853)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011(受託番号CP001213)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019(受託番号CP031154)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、又はビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010と、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。
【0052】
NCC 2818ともまた呼称されるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446を、2005年6月7日にCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM),Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,F-75724 PARIS Cedex 15,Franceに寄託し、寄託番号1-3446を得た。
【0053】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である。
【0055】
培養上清の調製
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な方法によって調製され得る。例えば、細菌上清の調製は、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722に記載されている。
【0056】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。
【0057】
好適な培養条件及び処理工程は当業者にはよく知られている。例示的な培養条件及び処理工程を本明細書に記載する。
【0058】
培養培地
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを培養培地で培養することによって得てもよい又は得られ得る。
【0059】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な培養培地で培養され得る。好適な培養培地は当業者によく知られている。例えば、Marsaux,B.,et al.,2020.Nutrients,12(8),p.2268には、デキストロース2.8%、酵母由来アミノ酸3%、及びビタミンCからなるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446の好適な培養培地が記載されている。
【0060】
好適には、培養培地は、MRSブロスなどの市販の培地であり得る。MRSブロスは、乳酸菌の大量増殖のための非選択的培地であり、約2%のグルコース、約0.4%の酵母エキス、及び約0.1%のポリソルベートを含んでもよく、かつ約6.2のpHを有してもよい。
【0061】
培養培地は、糖、酵母エキス、ビタミンC、及び/又はポリソルベートを含んでよい。好適には、培養培地は、糖及び酵母エキスを含んでよい。好適には、培養培地は、糖、酵母エキス、及びビタミンCを含んでよい。好適には、培養培地は、糖、酵母エキス、ビタミンC、及びポリソルベートを含んでよい。
【0062】
好適な糖は当業者に知られており、グルコース、デキストロース、及び/又はグルコースシロップが挙げられる。好適には、培養培地は、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含んでよい。
【0063】
酵母エキスとは、自己消化酵母の水溶性部分である。好適には、培養培地は、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含んでよい。
【0064】
ビタミンC(アスコルビン酸塩又はアスコルビン酸としてもまた知られる)の好適な供給源は当業者に周知である。例えば、アスコルビン酸ナトリウムは、アスコルビン酸の数多くのミネラル塩のうちの1つである。好適には、培養培地は、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含んでよい。
【0065】
好適なポリソルベートは当業者に周知であり、例えば、ポリソルベート80が挙げられる。好適には、培養培地は、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含んでよい。
【0066】
好適には、培養物は、ミネラル(例えば、硫酸マンガン)及び/又はペプトン(例えば、酵母ペプトン)などの任意の他の好適な構成成分を含んでよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約1重量%~約6重量%の糖、約1重量%~約6重量%の酵母エキス、約0重量%~約0.5重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び約0重量%~約1重量%のポリソルベートを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約2重量%~約4重量%の糖、約2重量%~約4重量%の酵母エキス、約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む。
【0069】
好適なpHは当業者に周知であり、任意の好適な手段によって調整され得る。好適には、培養培地は、約7未満のpH、例えば、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHなどを有し得る。
【0070】
培養条件
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な条件下において培養してもよい。好適な培養条件は当業者に知られている。例えば、Marsaux,B.,et al.,2020.Nutrients,12(8),p.2268には、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446を37℃でインキュベートしたことが記載されている。
【0071】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを嫌気性条件下で培養することによって得てもよい又は得られ得る。
【0072】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対数増殖期後期又は定常期に達するまでビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られてもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、定常期に達するまでビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られてもよい又は得られ得る。
【0073】
細菌の培養において認識される段階は当業者に公知であり、「誘導期」、「対数増殖期」、「定常期」、及び「死滅」期が挙げられる。「誘導期」とは、生細菌細胞の数の増加がない時期である。「対数増殖期」とは、生細菌細胞の数が指数関数的に増加する時期である。「対数増殖期後期」とは、対数増殖期の後半、例えば、対数増殖期全体の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を指し得る。「定常期」とは、生細菌細胞の数が一定のままである時期である。「死滅期」とは、生細菌細胞の数が減少する時期である。
【0074】
培養フェーズは、当業者に公知の任意の好適な方法により決定され得る。例えば、定常期の開始は、追加の酸が生成されず、かつ所望のpHを維持するための塩基の添加がもはや必要とされない時点として決定され得る。あるいは、培養フェーズは、培養培地中の細菌濃度と相関する600nmでの光学密度に基づいて決定され得る。
【0075】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約35℃~約40℃、又は約37℃で培養することによって得てもよい又は得られ得る。温度は当業者に公知の任意の好適な方法によって制御されてもよい。
【0076】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、pH制御して培養することによって得てもよい又は得られ得る。pHは、当業者に公知の任意の好適な方法によって、例えば塩基添加を用いることによって制御され得る。好適には、pHは、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHに制御され得る。好適には、pHは6.0のpHに制御され得る。
【0077】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、撹拌しながら及び/又はヘッド・スペース・ガス法(head space gassing)で培養することによって得てもよい又は得られ得る。撹拌及び/又はヘッド・スペース・ガス法は、当業者に公知の任意の好適な方法によって、例えば、二酸化炭素によるヘッド・スペース・ガス法によって実施され得る。
【0078】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約37℃にて、約pH6でpH制御し、撹拌しながら、及び/又は二酸化炭素でヘッド・スペース・ガス法により培養することによって得てもよい又は得られ得る。
【0079】
発酵物の処理
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物からビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の全て又は実質的に全てを除去することによって得てもよい又は得られ得る。
【0080】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、当業者に公知の任意の好適な方法によって除去され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離又は濾過によって除去され得る。
【0081】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去され得る。好適な遠心分離条件は当業者によく知られており、例えば、約4000~約12000gで約10分間にわたる遠心分離である。
【0082】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、濾過によって除去され得る。好適な濾過条件は当業者によく知られており、例えば、約0.2μmの孔径を用いて全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する、又は約0.3μm~約0.5μmの孔径を用いて実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する、膜濾過である。
【0083】
本明細書で使用する場合、「実質的に全て」とは、大部分のビフィドバクテリウム・ラクティス細胞、例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%を意味し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の「実質的に全て」を除去することは、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%が除去されることを意味し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、一部のビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、上清中に留まる(例えば、除去後に)。例えば、不活性化の前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約1×106~約1×1010cfu/mLの生細胞数、又は約1×107~約1×109cfu/mLの生細胞数を有し得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、残存しているビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、熱不活性化される。ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を熱不活性化する好適な方法は当業者によく知られている。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清はパスチャライズされてもよい。好適なパスチャライズ条件は当業者によく知られている。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約70℃~約100℃の温度で約10~約30秒間、約70℃~約100℃で約10~約15秒間、又は約80℃~約100℃で約10秒間パスチャライズされ得る。
【0086】
いくつかの他の実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、無細胞上清であり得る(すなわち、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の100%が除去される)。無細胞上清は、培養上清を1つ以上のフィルタに通して、全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去することによって得てもよい。好適な濾過条件は当業者によく知られている。例えば、0.22μm又は0.4μmの孔径のフィルタを使用して、全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去してもよく、又は0.5μm~2.0μmの孔径のフィルタを使用して、実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去してもよい。
【0087】
培養上清の乾燥
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、乾燥させてもよい。乾燥形態のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得ることは、長期貯蔵にとってより好適であり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、当業者に公知の任意の好適な方法によって乾燥させてもよい。例えば、培養上清は、噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させてもよい。誤解を避けるために、用語「培養上清」とは、乾燥した培養上清、例えば固体(例えば、粉末)形態)の培養上清を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥される。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を噴霧乾燥するための好適な方法は当業者によく知られていることであろう(例えば、Santos,D.,et al.,2018.Biomaterials Physics and Chemistry-New Edition.InTech Open、Spray Drying:An Overviewを参照されたい)。誤解を避けるために、用語「培養上清」とは、噴霧乾燥した培養上清を含む。
【0089】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、担体材料と共に噴霧乾燥され得る。好適な担体材料は当業者によく知られている。例えば、担体材料は、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択され得る。いくつかの実施形態では、担体材料は、アカシアゴムである。
【0090】
任意の好適な量の担体材料が使用され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料は、総固形分比約1:5~約5:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:3~約3:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:2~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:1.5~約1.5:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され得る。
【0091】
培養上清の形態
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な形態で提供され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、固体(例えば、粉末)、液体、又はゼラチン状の形態であり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与又は経腸投与に好適な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与に好適な形態で提供される。
【0092】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、固体(例えば、粉末)形態で提供される。固体(例えば、粉末)の形態であるビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供することは、サプリメント(例えば、タブレットの形態又はカプセルの形態)としての摂取により好適であり得る。
【0093】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、サプリメント又は栄養組成物の形態で提供され得る。
【0094】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを提供する。
【0095】
「サプリメント」又は「ダイエタリーサプリメント」とは、個体の栄養を補完するために使用されてもよい(典型的にはそのように使用されるものの、ダイエタリーサプリメントはまた、摂取を意図している任意の種類の組成物に添加されてもよい)。サプリメントは任意の好適な様式で調製してもよい。
【0096】
サプリメントは、例えば、タブレット、カプセル、トローチ、又は液体の形態であり得る。いくつかの実施形態では、サプリメントは、カプセル又はタブレットの形態である。
【0097】
サプリメントは、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル内包剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、及びゲル形成剤を更に含有してもよい。かかるサプリメントはまた、従来の医薬品添加物及び補助剤、賦形剤、及び希釈剤を含有してもよく、これには、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、風味剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、サプリメントには、経口又は非経口投与に好適な有機又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。サプリメントは単位用量の形態で提供され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、サプリメントは、ペットサプリメントである。「ペットサプリメント」とは、ペットを意図したサプリメントを指し得る。ペットとは、イヌ、ネコ、鳥、魚、げっ歯類、例えばマウス、ラット、及びモルモットなど、ウサギから選択される動物であり得る。
【0099】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む栄養組成物を提供する。
【0100】
本発明によれば、「栄養組成物」とは、対象に栄養を与える組成物を意味する。栄養組成物は任意の好適な様式で調製してもよい。
【0101】
栄養組成物は、投与(例えば、経口投与又は静脈内投与)に好適であるものであれば特に限定されない。好適な栄養組成物の例としては、食料品、飲料、薬用基剤(drug bases)、及び動物飼料が挙げられる。
【0102】
本発明による栄養組成物は、経腸栄養組成物であってもよい。「経腸栄養組成物」とは、投与に胃腸管が関与する食料品である。
【0103】
栄養組成物は乳児に好適であり得る。例えば、栄養組成物は、乳児用フォーミュラ、ベビーフード、乳児用シリアル組成物、又は強化剤であってもよい。好適には、栄養組成物は、乳児用フォーミュラ又は強化剤であってもよい。
【0104】
好適には、栄養組成物は、医薬組成物であってもよい。医薬製剤の形態は特に限定されず、例えば、タブレット剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤などが挙げられる。経口投与用の医薬担体として広く用いられている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、希釈剤、界面活性剤などの添加剤が使用されてもよい。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、β-ラクトースなど、コーン甘味料、天然ガム及びガム、例えばアカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、栄養組成物は、動物用飼料、例えばペットフード製品(特に、ドライペットフード製品)である。用語「ペットフード製品」とは、ペットによる摂取を意図した栄養製剤を指し得る。いくつかの実施形態では、栄養組成物は、イヌ用食品製品又はネコ用食品製品である。いくつかの実施形態では、栄養組成物は、獣医学用組成物である。
【0106】
培養上清組成物
上記のように、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)ビフィドバクテリウム・ラクティスを培養培地で培養する工程を含む方法により得てもよい又は得られ得る。培養の間、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培地中の栄養素(例えば、糖及びアミノ酸)を消費し、様々な可溶性因子(例えば、有機酸及び他の代謝産物)で培地を富化する。
【0107】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清中のビフィドバクテリウム・ラクティス由来代謝産物は、多様な物理化学的特性及び機能的特性を有し得るものであり、当業者に公知の任意の好適な方法によって分析することができる。例えば、好適な方法には、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、分光光度法、NMR分光法、及びFTIR分光法が含まれる(例えば、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722を参照されたい)。
【0108】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)全糖濃度の減少、(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、(iii)全アミノ酸濃度の低下を有し得る。
【0109】
本明細書で使用するとき、用語「全糖」とは、例えばグルコース及びフルクトースを含む、任意の糖を指し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全糖濃度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%低下し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全糖濃度は、約50%~約100%、又は約80%~約100%低下し得る。
【0110】
本明細書で使用するとき、用語「全酸」とは、例えば、酢酸、乳酸、及びギ酸を含む、任意の有機酸(すなわち、アミノ酸を除外)を指し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全酸濃度は、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加し得る。例えば、全糖の濃度が1重量%減少した場合、全酸の濃度は、少なくとも約0.7重量%、少なくとも約0.8重量%、又は少なくとも約0.9重量%増加し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全酸濃度は、全糖の濃度減少の約70%~約90%増加し得る。
【0111】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全アミノ酸濃度は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも0.4重量%、又は少なくとも0.5重量%減少し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全アミノ酸濃度は、約0.1重量%~約0.5重量%減少し得る。
【0112】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約2重量%~約18重量%、約2重量%~約10重量%、約3重量%~約9重量%、約4重量%~約8重量%、約5重量%~約7重量%、又は約6重量%の総固形分含有量を有し得る。
【0113】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下の全糖を含み得る。いくつかの実施形態では、培養上清は、0.3重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の全糖を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約5重量%、約0重量%~約2重量%、約0重量%~約1重量%、約0重量%~約0.5重量%、又は約0重量%~約0.3重量%の全糖を含み得る。
【0114】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%以上の全酸を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約3重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約2重量%~約2.5重量%、又は約2重量%の全酸を含み得る。
【0115】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%~約6重量%、約1重量%~約3重量%、又は約1.5重量%~約2.5重量%の灰分を含み得る。
【0116】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.4重量%以下、又は約0.2重量%以下の全アミノ酸を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.2重量%~約3.5重量%、約0.4重量%~約2重量%、約0.6重量%~約1重量%、約0.7重量%~約0.9重量%、又は約0.8重量%の全アミノ酸を含み得る。
【0117】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約5重量%以下の全糖と、約0.5重量%以上の全酸と、約3.5重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0118】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約2重量%以下の全糖と、約1重量%以上の全酸と、約2重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0119】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約1重量%以下の全糖と、約1.5重量%以上の全酸と、約1重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0120】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%以下の全糖と、約2重量%以上の全酸と、約0.8重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0121】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約5重量%の全糖と、約0.5重量%~約5重量%の全酸と、約0.2重量%~約3.5重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0122】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約2重量%の全糖と、約1重量%~約3重量%の全酸と、約0.4重量%~約2重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0123】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約1重量%の全糖と、約1.5重量%~約2.5重量%の全酸と、約0.6重量%~約1重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0124】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約0.3重量%の全糖と、約2重量%の全酸と、約0.8重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0125】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、
(i)約0.3重量%未満のグルコース、
(ii)約0.3重量%未満のフルクトース、
(iii)約0重量%~約0.5重量%のクエン酸、
(iv)約0.6重量%~約0.9重量%の乳酸、
(v)約0.1重量%~約0.3重量%のギ酸、
(vi)約1.2重量%~約1.4重量%の酢酸、及び/又は
(vii)約0.2重量%の全窒素、
を含み得る。
【0126】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.3重量%未満のグルコース及び約0.3重量%未満のフルクトースを含む、約0重量%~約2重量%の全糖と、約0重量%~約0.5重量%のクエン酸、約0.6重量%~約0.9重量%の乳酸、約0.1重量%~約0.3重量%のギ酸、及び約1.2重量%~約1.4重量%の酢酸を含む、約1.5重量%~約2.5重量%の全酸と、約0.2重量%の全窒素を含む、約0.6重量%~約1重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0127】
プロバイオティクス、プレバイオティクス、及びシンバイオティクスの組合せ
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される。プロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清とを、任意の好適な用量で組み合わせてもよい。
【0128】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清と、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスとの組合せを含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清と、1つ以上のプロバイオティクスとの組合せを含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。
【0130】
用語「プロバイオティクス」とは、適切な量で投与された場合に対象へ健康上の利益を与える、生きた微生物を含有する構成成分を指し得る(例えば、Hill,C.,et al.,2014.Nature reviews Gastroenterology & hepatology,11(8),p.506を参照されたい)。
【0131】
好適には、プロバイオティクスは、市販のプロバイオティクス株及び/又は健康上の利益を有することが示されている株を含み得る(例えば、Fijan,S.,2014.International journal of environmental research and public health,11(5),pp.4745-4767を参照されたい)。いくつかの実施形態では、プロバイオティクスは、エシェリキア属(Escherichia)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)(2020年3月時点での定義)、バチルス属(Bacillus)、及び/又はエンテロコッカス属(Enterococcus)を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、プロバイオティクスは、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスである。任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株が使用されてよく、例えば、プロバイオティクス効果を有することが知られている任意のビフィドバクテリウム・ラクティス株が使用され得る。かかるビフィドバクテリウム・ラクティス株は当業者によく知られており、上記「ビフィドバクテリウム・ラクティス株」と題したセクションで説明した。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するのと同じビフィドバクテリウム・ラクティスであってもよく、又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するのと同じビフィドバクテリウム・ラクティスである。
【0133】
用語「プレバイオティクス」とは、1つ以上の微生物分類群の好ましい増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって対象に利益をもたらす、難消化性の構成成分を指し得る。例示的なプレバイオティクスとしては、ヒトミルクオリゴ糖が挙げられる。例示的なプレバイオティックスオリゴ糖としては、ガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide:GOS)、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide:FOS)、2’-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオ-テトラオース、及びイヌリンが挙げられる。
【0134】
用語「シンバイオティクス」とは、プロバイオティクス及びプレバイオティクスの両方を含有する構成成分を指し得る(例えば、Swanson,K.S.,et al.,2020.Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology,17(11),pp.687-701を参照されたい)。
【0135】
ビフィズス菌増殖促進因子としての使用
上記のように、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィズス菌の増殖を増強し、ビフィズス菌増殖促進効果を示すことが、驚くべきことに見出されている。驚くべきことに、ビフィドバクテリウム・ラクティスの培養上清は、ラクトバチルス・ラムノサスの培養上清よりも有意に大きい程度までビフィズス菌の増殖を増強することが見出された。
【0136】
一態様では、本発明は、ビフィズス菌増殖促進因子としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。本明細書で使用する場合、「ビフィズス菌増殖促進因子(bifidogenic factors)」(「ビフィダス菌因子」としてもまた知られる)は、生成物、又はヒト及び/若しくは動物の胃腸管のいずれかにおいてビフィズス菌の増殖を特異的に増強する試薬(agents)又は組成物である。いくつかの実施形態では、ビフィズス菌増殖促進因子としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用は、対象の胃腸管におけるビフィドバクテリウムの増殖を増強する。
【0137】
別の態様では、本発明は、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0138】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、通常、ヒト及び/又は動物の胃腸管に豊富に存在する、1つ以上のビフィズス菌の増殖を増強し得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、通常、ヒトの胃腸管に豊富に存在する、1つ以上のビフィズス菌の増殖を増強する(例えば、Turroni,F.,et al.,2009.The ISME journal,3(6),pp.745-751 and Turroni,F.,et al.,2012.PloS one,7(5),p.e36957を参照されたい)。
【0139】
例えばビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.アドレセンティス群、B.ビフィダム群、B.ロンガム群、及びB.シュードロンガム群から選択される、ビフィドバクテリウムの1つ以上の系統発生群の増殖を増強し得る。
【0140】
例えばビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.ロンガム、B.アニマリス、B.アドレセンティス、B.ビフィダム、B.カテヌラツム、B.シュードカテヌラツム、B.ブレーベ、B.シュードロンガム、B.ガリクム、B.アンギュラツム、及びB.フィーカレから選択される1つ以上のビフィドバクテリウム種の増殖を増強し得る(例えば、Riviere,A.,et al.,2016.Frontiers in microbiology,7,p.979を参照されたい)。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.ロンガム、B.ブレーベ、及びB.ビフィダム(典型的には、乳児において最も豊富に存在する種、例えば、Arboleya,S.,et al.,2016.Frontiers in microbiology,7,p.1204を参照されたい)、並びに/又はB.カテヌラツム、B.アドレセンティス、及びB.ロンガム(典型的には成人において最も豊富に存在する種、例えばArboleya,S.,et al.,2016.Frontiers in microbiology,7,p.1204を参照されたい)の増殖を増強し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.ロンガムの増殖を増強し得る。
【0141】
投与経路
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、当業者に公知の任意の好適な方法によって投与され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、経口投与及び/又は経腸投与によって投与され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、経口投与される。
【0142】
対象
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は対象へ投与してもよく、ここで、対象は哺乳動物である。好適には、対象は、ヒト又はペット、例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、若しくはモルモット)、又はウサギなどである。好ましくは、対象は、ヒト対象である。
【0143】
対象は任意の年齢であってもよい。例えば、対象は児童又は成人であり得る。用語「児童」は、18歳未満の対象を指し得る。用語「成人」は、18歳以上の対象を指し得る。いくつかの実施形態では、対象は、児童である。いくつかの実施形態では、対象は、成人である。
【0144】
いくつかの実施形態では、対象は、乳児、幼児、又は小児である。用語「乳児」は、約0歳~約1歳の対象を指し得る。用語「幼児」は、約1歳~約3歳の対象を指し得る。用語「小児」は、約3歳~約5歳の対象を指し得る。いくつかの実施形態では、乳児、幼児、又は小児は、早産児、幼児、又は小児である。「早産児」又は「低出生体重児(premature)」、幼児、又は小児とは、満期で生まれなかった乳児、幼児、又は小児を意味する(例えば、在胎36週までに出生)。いくつかの実施形態では、乳児、幼児、又は小児は、帝王切開によって誕生した、又は経膣分娩された。
【0145】
対象は、胃腸管内に低存在量のビフィドバクテリウムを有し得る又はビフィドバクテリウムが低存在量であるリスクがあり得る。胃腸におけるビフィズス菌の存在量は、当業者に公知の任意の方法によって測定され得る(例えばTang,Q.,et al.,2020.Frontiers in cellular and infection microbiology,10,p.151に記載されている任意の方法)。
【0146】
胃腸管試料は、糞便試料、内視鏡試料(例えば、生検試料、管腔ブラシ(luminal brush)試料、レーザ捕捉顕微解剖試料)、吸引された腸液試料、外科手術試料から、又はインビボモデル若しくはインテリジェントカプセルによって得てもよい又は得られ得る。好適には、胃腸管試料は、糞便試料から得てもよい又は得られ得る。糞便試料は自然に採取され、非侵襲的であり、かつ繰り返しサンプリングすることができる。
【0147】
ビフィズス菌の存在量は、任意の好適な方法によって試料から測定され得る。例えば、ビフィズス菌の存在量は、シーケンシング法(例えば、次世代シーケンシング(next-generation sequencing:NGS)法)、PCRに基づく方法、半定量的検出法、循環温度キャピラリー電気泳動(cycling temperature capillary electrophoresis)、免疫学に基づく方法、細胞に基づく方法、又はこれらの任意の組合せによって、試料から得てもよい又は得られ得る。
【0148】
対象は、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を有し得る又はかかる障害のリスクがあり得る。かかる障害は、Riviere,A.,et al.,2016.Frontiers in microbiology,7,p.979に記載されており、胃腸疾患、肥満、アレルギー、及びRAを含み得る。
【0149】
対象は、胃腸疾患を有し得る、又は胃腸疾患のリスクがあり得る。かかる胃腸疾患は、「胃腸疾患を治療及び/又は予防する方法」と題されたセクションでより詳細に記載されている。いくつかの実施形態では、対象は、抗菌薬関連下痢症を有し得る、又は抗菌薬関連下痢症のリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヘリコバクター・ピロリ感染症を有し得る、又はピロリ菌感染のリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、IBDを有し得る、又はIBDのリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、IBSを有し得る、又はIBSのリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎を有し得る、又はこれらのリスクがあり得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、対象は、肥満を有し得る、又は肥満のリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、アレルギーを有し得る、又はアレルギーのリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、RAを有し得る又はRAのリスクがあり得る。
【0151】
疾患を治療又は予防する方法
ビフィドバクテリウム属は、ヒト胃腸管に存在する共生細菌の主な属のうちの1つであり、その存在は、いくつかの研究において健康上の利益に関連している(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。
【0152】
一態様では、本発明は、医薬品として使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を投与することを含む治療の方法を提供する。
【0153】
一態様では、本発明は、医薬品として使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。
【0154】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによって、疾患を予防又は治療し得る。
【0155】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を使用して、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を治療又は予防してもよい(例えば、Riviere,A.,et al.,2016.Frontiers in microbiology, 7, p.979を参照されたい)。
【0156】
一態様では、本発明は、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を治療及び/又は予防するための医薬品を製造するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与する工程を含む、対象の腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0157】
一態様では、本発明は、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を治療及び/又は予防するための医薬品を製造するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与する工程を含む、対象の腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0158】
好適には、対象の腸内のビフィドバクテリウムの数の減少と関連した障害は、胃腸疾患、肥満、アレルギー性疾患、及びRAから選択され得る。
【0159】
胃腸の健康を促進及び/又は維持する方法
上記のように、健康な腸機能を維持するための予防医学におけるビフィズス菌株を含むプロバイオティクスの使用は、十分に文書で報告されている(Tojo,R.,et al.,2014.World journal of gastroenterology:WJG,20(41),p.15163)。ビフィズス菌などのプロバイオティクス株の増殖を増強するポストバイオティクスは、胃腸の健康に対して同様の効果を有するものと予想され得る。
【0160】
一態様では、本発明は、胃腸の健康の促進及び/又は維持において使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、胃腸の健康を促進及び/又は維持するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象の胃腸の健康を促進及び/又は維持する方法を提供する。
【0161】
一態様では、本発明は、胃腸の健康を促進及び/又は維持するのに使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、胃腸の健康を促進及び/又は維持するための医薬品を製造するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象の胃腸の健康を促進及び/又は維持する方法を提供する。
【0162】
一態様では、本発明は、胃腸の健康を促進及び/又は維持する際のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、胃腸の健康を促進及び/又は維持する際のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物の使用を提供する。
【0163】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによって、胃腸の健康を促進又は維持し得る。
【0164】
胃腸疾患を治療及び/又は予防する方法
ビフィズス菌の摂取からヒトの健康に生じる有益な効果は、胃腸疾患の予防及び治療と関連している(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.、Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。ビフィズス菌の増殖を増強するポストバイオティクスは、同様の効果を有することが期待できる。
【0165】
一態様では、本発明は、胃腸疾患の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、胃腸疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象の胃腸疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0166】
一態様では、本発明は、胃腸疾患を治療及び/又は予防するのに使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、胃腸疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における胃腸疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0167】
本明細書で使用するとき、「胃腸疾患」(「GI疾患」又は「GI病(GI illness)」としてもまた知られる)は、食道、胃、小腸、大腸、及び直腸を含む胃腸管に関与する疾患を指し得る。いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、胃疾患又は腸疾患である。
【0168】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、胃疾患である。「胃疾患」は、胃に影響を及ぼす疾患を指し得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、腸疾患である。「腸疾患」は、小腸(十二指腸、空腸、及び回腸を含む)又は大腸(盲腸、結腸、及び直腸を含む)に影響を及ぼす疾患を指し得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、及び壊死性腸炎から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、及び過敏性腸症候群(IBS)から選択される。
【0172】
抗菌薬関連下痢症
抗菌薬使用に関する一般的な合併症に、胃腸疾患の発症がある。この合併症は軽度の下痢から偽膜性大腸炎にまで及ぶ。抗菌薬関連下痢症は、典型的には、抗生物質を服用している患者の5~35%で起こり、具体的な抗生物質の種類、宿主の健康状態、及び病原体への曝露に応じて様々である。抗菌薬関連下痢症の病因は、正常な微生物相が乱され(disruption)、病原体の過剰増殖又は代謝不均衡がもたらされることにより介在され得る(McFarland,L.V.,2008.Future Microbiology,3(5),p.563)。
【0173】
いくつかのビフィズス菌株の中でもB.ブレーベ、B.インファンティス(B.infantis)、及びB.ロンガムを含有するプロバイオティクス混合物は、抗菌薬関連下痢症の発生率を低下させる能力を示した(Selinger,C.P.,et al.,2013.Journal of Hospital Infection,84(2),pp.159-165)。
【0174】
一態様では、本発明は、抗菌薬関連下痢症の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、抗菌薬関連下痢症を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象における抗菌薬関連下痢症を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0175】
一態様では、本発明は、抗菌薬関連下痢症の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、抗菌薬関連下痢症を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における抗菌薬関連下痢症を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0176】
ヘリコバクター・ピロリ感染症
ヘリコバクター・ピロリは、胃の上皮内層に感染するグラム陰性の微好気性細菌である。ヘリコバクター・ピロリは、慢性胃炎の主な原因であり、胃がん及び消化性潰瘍疾患の主な病因物質である。最近の世界的なシステマティック・レビューでは、世界人口の半分以上がヘリコバクター・ピロリに感染していると推定された(Hooi,J.K.,et al.,2017.Gastroenterology,153(2),pp.420-429)。
【0177】
いくつかのビフィズス菌株の中でもB.ブレーベ、B.インファンティス、及びB.ロンガムを含有するプロバイオティクス混合物の10日間投与後の成人におけるヘリコバクター・ピロリ除菌率は、32.5%であると報告されている(Boltin,D.,2016.Best Practice & Research Clinical Gastroenterology,30(1),pp.99-109)。更に、かかるプロバイオティクス混合物は、胃潰瘍の治癒を促進させることが示されている(Dharmani,P.,et al.,2013.PLoS One,8(3),p.e58671)。
【0178】
一態様では、本発明は、ヘリコバクター・ピロリ感染症の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、ヘリコバクター・ピロリ感染を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象におけるヘリコバクター・ピロリ感染を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0179】
一態様では、本発明は、ヘリコバクター・ピロリ感染症を治療及び/又は予防するのに使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ヘリコバクター・ピロリ感染症を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、対象におけるヘリコバクター・ピロリ感染症を治療及び/又は予防する方法であって、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、方法を提供する。
【0180】
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)は、結腸及び小腸の一群の炎症状態である。例示的なIBDとしては、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び回腸嚢炎が挙げられる。ディスバイオシス(すなわち、異常な微生物叢組成)と、腸内微生物生態系の複雑性の低下とは、IBD患者における共通の特徴であることが示唆されている(Manichanh,C.,et al.,2012.Nature reviews Gastroenterology & hepatology,9(10),pp.599-608を参照されたい)。
【0181】
IBDでは、いくつかのビフィズス菌株の中でもB.ブレーベ、B.インファンティス、及びB.ロンガムを含有するプロバイオティクス混合物は、成人のUC症状を軽減すること(Tursi,A.,et al.,2010.The American journal of gastroenterology,105(10),p.2218)、及び児童における疾患を寛解すること(Miele,E.,et al.,2009.American Journal of Gastroenterology,104(2),pp.437-443)ができた。
【0182】
一態様では、本発明は、IBDの治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、IBDを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象におけるIBDを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0183】
一態様では、本発明は、IBDを治療及び/又は予防するのに使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、IBDを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるIBDを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0184】
いくつかの実施形態では、IBDは、クローン病、潰瘍性大腸炎、又は回腸嚢炎である。
【0185】
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、慢性及び再発性の腹痛及び排便習慣の変化を特徴とする機能性腸障害である(Chey,W.D.,et al.,2015.Jama,313(9),pp.949-958)。エビデンスの総体(body of evidence)が増えてきており、IBSの特徴としてディスバイオシスが示されている(Rodino-Janeiro,B.K.,et al.,2018.Advances in therapy,35(3),pp.289-310)。
【0186】
いくつかのビフィズス菌株の中でもB.ブレーベ、B.インファンティス、及びB.ロンガムを含有するプロバイオティクス混合物を6週間にわたり投与することで、IBS症状の軽減、及び児童の生活の質の改善が得られた(Guandalini,S.,et al.,2010.Journal of pediatric gastroenterology and nutrition,51(1),pp.24-30))。
【0187】
一態様では、本発明は、IBSの治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、IBSを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象におけるIBSを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0188】
一態様では、本発明は、IBSを治療及び/又は予防するのに使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、IBSを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるIBSを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0189】
その他の胃腸疾患
乳糖不耐症は、ラクトースを消化する能力の低下によって引き起こされる一般的な状態である。乳糖不耐症の症状を改善するためにビフィズス菌の投与が使用されてきた(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。
【0190】
感染性下痢症(胃腸炎としてもまた知られる)は、感染によって引き起こされる胃腸管の炎症である。胃腸炎は、通常、ウイルス(例えば、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、及びコロナウイルス)によって引き起こされるが、しかしながら、細菌(例えば、C.ジェウニ(C.jeuni)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、C.ディフィシル(C.difficile)、及び黄色ブドウ球菌(S.aureus))、寄生生物(例えば、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia))、並びに真菌もまた、胃腸炎を引き起こし得る。ビフィドバクテリウム・ラクティスの生菌が、健康な児童における急性下痢症に対していくらかの保護効果を有するというエビデンスが存在する(Chouraqui,J.P.,et al.,2004.Journal of pediatric gastroenterology and nutrition,38(3),pp.288-292)。
【0191】
結腸直腸がん患者において、微生物叢の組成は、発がん性病変の発生に有利な因子のうち1つであることが知られている。プロバイオティクスは、結腸直腸がんにおける微生物叢を調節するために使用されている(Hidalgo-Cantabrana,C.,et al.,2017.Microbiology spectrum,5(3),pp.5-3)。
【0192】
細胞傷害性療法及び放射線療法を受けている患者は、腸内微生物叢の顕著な変化、例えば、ビフィドバクテリウムの減少を示す。これらの変化は化学療法誘発性下痢の発症に寄与し得る(Touchefeu,Y.,et al.,2014.Alimentary pharmacology & therapeutics,40(5),pp.409-421)。
【0193】
壊死性腸炎(Necrotizing enterocolitis:NEC)は、未熟児が罹患する腸疾患である。ビフィズス菌によるプロバイオティクス補充は、未熟児新生児集団におけるNECの発生率及び重症度の両方を減少させることができることが示されている(Bin-Nun,A.,et al.,2005.The Journal of pediatrics,147(2),pp.192-196)。
【0194】
一態様では、本発明は、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与する工程を含む、対象における乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0195】
一態様では、本発明は、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎を治療及び/又は予防するための医薬品を製造するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与する工程を含む、対象における乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、又は壊死性腸炎を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0196】
製造方法
本発明のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、当該技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製してもよい。例えば、細菌上清の調製は、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722に記載されている。
【0197】
例示的な培養条件及び処理工程は、上記で「培養上清の調製」と題したセクションで説明しており、本発明にかかる製造方法は、かかるセクションに記載されている工程のいずれかを含み得る。
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程であって、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される、工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む。
【0198】
本方法は任意の他の好適な処理工程を含んでもよい。好ましい実施形態では、本方法は、(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程を更に含む。
【0199】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本明細書に記載の任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であり得る。
【0200】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程であって、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される、工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程と、
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を処理して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を含むサプリメントを得る工程と、
を含む。
【0201】
本方法は任意の他の好適な処理工程を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、工程(e)は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、サプリメントを得る工程を含む。例えば、いくつかの実施形態では、工程(e)は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末をカプセル内包して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むカプセルを得る工程を含む。
【0202】
サプリメントは、本明細書に記載の任意のサプリメントであり得る。
【0203】
例示的な培養条件及び処理工程は、上記「培養上清の調製」と題したセクションで説明しており、本発明にかかる製造方法は、かかるセクションに記載されている工程のいずれかを含み得る。
【0204】
[実施例]
次に、実施例により本発明を更に説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのに役立てるために提供することを意味するものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0205】
実施例1 B.ラクティス及びL.ラムノサスの培養上清のビフィズス菌増殖促進効果の比較
培養上清の生成
B.ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446)及びL.ラムノサス(ラクチカゼイバチルス・ラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)CGMCC 1.3724)の培養上清を、実験室規模で生成した。
【0206】
いずれの株も、最初に一晩培養物としてボトル中で増殖させて、発酵工程に充分な接種材料を生成した。発酵工程は、pH制御、撹拌、及び定常期に達するまでのヘッド・スペース・ガス法により、37℃で、発酵槽中で1.6Lスケールにて実施した。B.ラクティスの嫌気性条件(二酸化炭素ヘッドスペース)を採用し、pHを6.0に制御し、培地には、酵母エキス、アスコルビン酸ナトリウム、及びグルコースシロップを含有させた。L.ラムノサスのエア・ヘッドスペースを使用した場合では、pHを5.5に制御し、培地には、酵母エキス/ペプトン、硫酸マンガン、フルクトース、及びグルコースを含有させた。任意選択的に、ポリソルベート80を培地に添加することができるが、但し、この添加は2つの株の増殖に影響を及ぼさない。
【0207】
定常期に達した後、発酵物を遠心分離して大部分の細菌細胞を除去し、培養上清を直接分析するか(例えば、細胞数について)、又は後で更に分析するために凍結するかのいずれかを行った。分析結果を表1に概説する。
【0208】
【0209】
胃腸管のインビトロモデルで培養上清を試験する前に、培養上清を80℃で10秒間熱処理して、残存している生細胞を不活性化させた。
【0210】
短期の結腸インキュベーション
成人腸内微生物叢に対する2つの異なる培養上清の影響の可能性を評価するために、結腸のインビトロモデルを採用した。短期のバッチでの実験は、ヒト微生物生態系の連続シミュレータ(SHIME(登録商標))の単純化されたシミュレーションを表す。このモデルは20年以上使用されており、これまでにインビボパラメータで検証されている。短期の結腸インキュベーションアッセイは、典型的には、選択されたドナーから得られた細菌接種材料を用いた健康な成人の近位大腸を表す模擬条件下において、選択された用量の試験化合物(複数可)を結腸発酵させることから構成される。
【0211】
新たに調製したヒト糞便試料を、結腸モデルの接種のための微生物群落の供給源として使用した。異なる3名の健常ドナー(ドナーA、ドナーB、ドナーC)から糞便接種材料を得た。短期の結腸インキュベーションの開始時に、試験製品を、結腸内に存在する基本栄養(例えば、ムチンなどの宿主由来グリカン)を含有する糖枯渇栄養培地へ添加した。B.ラクティス培養上清の用量は、70mLのインキュベーション当たり7.29mLとし、L.ラムノサス培養上清の用量は、70mLのインキュベーション当たり4.49mL/70mLとした。2つの培養上清の直接比較を容易にするために、全固形分添加量が同様となるよう用量を標準化した。細菌群のバックグラウンド活性を評価するために、糖を枯渇させた栄養培地のみを含有するブランクもまた含めた。この手順は、結腸微生物叢の代謝プロファイル及び細菌群組成プロファイルに対する被検原材料の特異的効果を評価することを可能にした。インキュベーションは、37℃で、振盪(90rpm)及び嫌気性条件下で48時間行った。生物学的なばらつきを考慮して、全ての試験を3回行った。
【0212】
微生物群組成の変化(qPCR)
qPCRは、可変領域及び保存領域からなる16S rRNA遺伝子を標的とする。9つの可変領域(V1~V9)は、進化速度が保存領域よりもはるかに速いことを特徴とする。これらの可変遺伝子領域は、典型的には、細菌の異なる分類群を区別するために使用される。この研究では、ビフィズス菌のための選択的プライマーを使用することで、微生物生態系内のこの目的の分類学的群を直接的に標的とした定量を可能にした。この技術は細菌の培養能(の欠如)に依存しないので、この方法で生成されたデータは、微生物群に対する処理の定量的効果について信頼できる知見を提供する。
【0213】
ビフィズス菌は、高濃度の乳酸塩及び酢酸塩を生成することができる有益な糖分解細菌と見なされている。乳酸塩は、抗菌特性を有するのみならず、(酢酸と共に)その他の細菌との一連の栄養相互作用(trophic interactions)の要因ともなり、下流の代謝産物の産生をもたらすことから、重要な代謝産物である。
【0214】
いずれの培養上清においても、糖は、発酵中にB.ラクティス又はL.ラムノサスによって本質的に枯渇しており(表1の培養上清中の糖濃度も参照されたい)、使用可能な炭素源がないことに起因していずれの株も増殖及び酸の生成が停止していた(定常期)。したがって、これらの糖が枯渇した培養上清を結腸モデルへと供給したときに、L.ラムノサス培養上清よりもB.ラクティス培養上清について更に顕著なビフィズス菌の増加を見出すことは非常に驚くべきことであった(
図1及び
図2)。
【0215】
図1は、24時間のインキュベーション後に全ての菌株及び全てのドナーについてビフィズス菌が増加し、次いで、48時間ではわずかに減少することを示す。ビフィズス菌の増加は、最初の24時間のインキュベーション中の増殖を示す。増加は、ブランクよりも培養上清の方がはるかに顕著である。ブランクのインキュベーションと比較したビフィズス菌の増加の差異を
図2に示す。B.ラクティス培養上清は、3名のドナー全てについてビフィズス菌の増加を誘導する点において、L.ラムノサス培養上清より明らかに優れている。ブランクと比較しての差異は48時間の時点で同じレベルのままである。
【0216】
ビフィズス菌の増加は、培養上清による、増殖効果、ひいては驚くべきビフィズス菌増殖促進効果を示す。B.ラクティス培養上清によるこのビフィズス菌増殖促進効果は、全てのドナーについてL.ラムノサス培養上清よりも優れていた。
【0217】
実施例2 B.ラクティス培養上清、B.ラクティスプロバイオティクス、及び両方の組み合わせの、ビフィズス菌増殖促進効果についての比較
培養上清粉末の生成
B.ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446)の培養上清を、パイロットプラント規模で生成した(8000Lの主発酵)。主発酵のための接種材料は、1200Lのスタータ発酵にてパイロットプラント規模で生成した。主発酵工程は、pH制御(pH6.0)、撹拌、及び定常期に達するまでのヘッド・スペース・ガス法(二酸化炭素)を用いて、37℃で実施した。培地は、酵母エキス、アスコルビン酸ナトリウム、及びデキストロースを含有していた。定常期に達した後、発酵物を連続遠心分離機で遠心分離して、細菌細胞の大部分を除去した。続いて、培養上清を、プレート熱交換器で99℃にて10秒間パスチャライズして、残存している生細胞を不活性化させた後、キャニスタへ充填して凍結させた。
【0218】
液体の培養上清を、例えばサプリメントに使用することができる粉末へと変換するために、乾燥方法を開発した。噴霧乾燥は、この技術が大容量に好適であり、エネルギー効率がよく、容易に利用可能であるため、好ましい技術として選択した。噴霧乾燥実験のために、卓上型ビュッヒ噴霧乾燥機を使用した。粘着性を低下させ、物理的安定性を改善する担体材料を試験した。これらの試験では、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム(アラビアガム)、デンプン、及びイヌリンが好適な食品用担体材料として特定された。担体を、総固形分比1:3及び総固形分比1:1(担体:培養上清乾燥固形分)で培養上清溶液へ添加した。全体として、1:1の比は、1:3の比と比較して粘着性の挙動がより少なかった。
【0219】
生成された全ての粉末のうち、1:1の比のアカシアゴムを含む培養上清粉末を、インビトロでの結腸シミュレーション研究に選択した。
【0220】
短期の結腸インキュベーション
プロバイオティクスのB.ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446)を含む又は含まない培養上清粉末の成人腸内微生物叢に対する影響の可能性を評価するために、実施例1のような結腸のインビトロモデルを採用した。
【0221】
新たに調製したヒト糞便試料を、結腸モデルの接種のための微生物群の供給源として使用した。異なる3名の健常ドナー(ドナーA、ドナーB、ドナーC;実施例1とは同じでない)から糞便接種材料を得た。短期の結腸インキュベーションの開始時に、試験製品を、結腸内に存在する基本栄養(例えば、ムチンなどの宿主由来グリカン)を含有する糖枯渇栄養培地へ添加した。B.ラクティス培養上清粉末の用量は3.6g/Lとし、B.ラクティスプロバイオティクス培養粉末の用量は1.4E+08cfu/mLとした。2つの原材料を個別に組み合わせて使用した。細菌群のバックグラウンド活性を評価するために、糖を枯渇させた栄養培地のみを含有するブランクもまた含めた。この手順は、結腸微生物叢の代謝プロファイル及び細菌群組成プロファイルに対する被検原材料の特異的効果を評価することを可能にした。インキュベーションは、37℃で、振盪(90rpm)及び嫌気性条件下で48時間行った。生物学的なばらつきを考慮して、全ての試験を3回行った。
【0222】
微生物群組成の変化(qPCR)
実施例1と同様に、ビフィズス菌の選択的qPCRを行い、処置によって3名のドナーの糞便微生物群に誘導された変化を分析した。
【0223】
図3は、24時間のインキュベーション後に全ての菌株及び全てのドナーについてビフィズス菌が増加し、次いで、48時間ではわずかに減少することを示す。増加は、ブランクよりも処置の方がはるかに顕著である。ブランクのインキュベーションと比較したビフィズス菌の増加の差異を
図4に示す。培養上清粉末を用いて得られたビフィズス菌の増加は、1.4E+08cfu/mLのB.ラクティスプロバイオティクスの添加によるものに相当し、すなわち、培養上清粉末は、プロバイオティクス生菌の添加と同等のビフィズス菌増殖促進効果を有した。したがって、純粋な、B.ラクティスの液体培養上清のビフィズス菌増殖促進効果(実施例1)は、培養上清を粉末にする際に維持された。ビフィズス菌の最も強力な増加は、培養上清粉末とB.ラクティスプロバイオティクスとの組み合わせで達成され、この組み合わせは相乗効果を示した。
【0224】
実施形態
本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、以下の付番したパラグラフ(段落)を参照して説明する。
1.ビフィズス菌増殖促進因子としての、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用。
2.対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
3.対象の胃腸管におけるビフィズス菌の増殖を増強することによる胃腸疾患の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
4.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択される、段落1に記載の使用、又は段落2若しくは段落3に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
5.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである、段落1若しくは段落4に記載の使用、又は段落2~段落4のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
6.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である、段落1、段落4、若しくは段落5のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落5のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
7.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む、培養培地においてビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られる又は得ることができる、段落1若しくは段落4~段落6のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落6のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
8.
(i)培養培地が、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含み、
(ii)培養培地が、約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含み、
(iii)培養培地が、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含み、かつ、
(iv)培養培地が、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む、
段落7に記載の使用、又は段落7に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
9.糖が、グルコース、デキストロース、及び/又はグルコースシロップである、段落7若しくは段落8に記載の使用、又は段落7若しくは段落8に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
10.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHで培養することによって、得られる又は得ることができる、段落7~段落9のいずれか一段落に記載の使用、又は段落7~段落9に記載のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
11.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスを、定常期に達するまで培養することによって得られる又は得ることができる、段落1、若しくは段落4~段落10のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落10のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
12.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスを嫌気性条件下で培養することによって得られる又は得ることができる、段落1若しくは段落4~段落11のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落11のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
13.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去することによって得られる又は得ることができる、段落1若しくは段落4~12のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落12のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
14.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、パスチャライズされている、段落1若しくは段落4~段落13のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落13のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
15.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、乾燥されている、段落1若しくは段落4~段落14のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落14のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
16.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥により乾燥されている、段落15に記載の使用、又は段落15に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
17.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択される担体材料と共に噴霧乾燥され、好ましくは当該ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、アカシアゴムと共に噴霧乾燥される、段落16に記載の使用、又は段落16に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
18.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料が、総固形分比約1:3~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され、好ましくは総固形分比が、約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)である、段落17に記載の使用、又は段落17に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
19.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、経口投与される、段落1若しくは段落4~段落18のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落18のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
20.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、サプリメント又は栄養組成物の形態である、段落1若しくは段落4~段落19のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落19のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
21.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、カプセル又はタブレットの形態である、段落1若しくは段落4~段落20のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落20のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
22.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、
(i)全糖濃度の減少、
(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、
(iii)全アミノ酸濃度の減少、
を有する、段落1若しくは段落4~段落21のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落21のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
23.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全糖の濃度が、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少している、段落22に記載の使用、又は段落22に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
24.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全酸濃度が、全糖濃度の減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加している、段落22若しくは段落23に記載の使用、又は段落22若しくは段落23に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
25.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全アミノ酸濃度が、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%減少している、段落22~段落24のいずれか一段落に記載の使用、又は段落22~段落24のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
26.パスチャライズの前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約1×107~約1×109cfu/mLの生細胞数を有する、段落1若しくは段落4~段落25のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落25のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
27.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下の全糖を含む、段落1若しくは段落4~段落26のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落26のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
28.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2重量%以上の全酸を含む、段落1若しくは段落4~段落27のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落27のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
29.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、又は約0.6重量%以下の全アミノ酸を含む、段落1若しくは段落4~段落28のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落28のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
30.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHを有し、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約6.2のpHを有する、段落1若しくは段落4~段落29のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落29のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
31.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される、段落1若しくは段落4~段落30のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落30のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
32.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用される、段落31に記載の使用、又は段落31に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
33.プロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスが、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである、段落32に記載の使用、又は段落32に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
34.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、B.アドレセンティス群、B.ビフィダム群、B.ロンガム群、及びB.シュードロンガム群から選択されるビフィズス菌の1つ以上の系統発生群の増殖を増強する、段落1若しくは段落4~段落33のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落33のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
35.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、B.ロンガム、B.アニマリス、B.アドレセンティス、B.ビフィダム、B.カテヌラツム、B.シュードカテヌラツム、B.ブレーベ、B.シュードロンガム、B.ガリクム、B.アンギュラツム、及びB.フィーカレから選択される、1つ以上のビフィズス菌種の増殖を増強する、段落1若しくは段落4~段落34のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落34のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
36.対象が、哺乳動物であり、好ましくは対象が、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、又はウサギであり、より好ましくは対象が、ヒトである、段落1若しくは段落4~段落35のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落35のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
37.対象が、胃腸疾患、肥満、アレルギー性疾患、又はRAなどの、腸内のビフィズス菌の数の減少と関連した障害を有する又はかかる障害のリスクがある、段落2~段落36のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
38.対象が、胃腸疾患を有する又は胃腸疾患のリスクがある、段落2~段落37のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
39.対象が、対象の胃腸管及び/又は糞便中に低存在量のビフィズス菌を有し、好ましくは対象が、他の微生物叢と比較して、対象の胃腸管及び/又は糞便中に低存在量のビフィズス菌を有する、段落2~段落38のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
40.胃腸疾患が、胃疾患又は腸疾患であり、好ましくは腸疾患である、段落2~段落39のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
41.胃腸疾患が、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、乳糖不耐症、感染性下痢症、結腸直腸がん、化学療法誘発性下痢症、及び壊死性腸炎から選択される、段落2~段落40のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
42.胃腸疾患が、抗菌薬関連下痢症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、炎症性腸疾患(IBD)、及び過敏性腸症候群(IBS)から選択される、段落2~段落41のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
43.IBDが、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、又は回腸嚢炎である、段落41又は段落42のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
44.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥されている、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
45.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落4項~段落15項又は段落17~段落30のいずれか一段落に従って定義されるとおりである、段落44に記載のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
45.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントであって、好ましくは当該サプリメントが、カプセル又はタブレットの形態である、サプリメント。
46.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、栄養組成物。
47.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落4~段落19又は段落22~段落30のいずれか一段落に記載のとおりである、段落45に記載のサプリメント、又は段落46に記載の栄養組成物。
48.サプリメント又は栄養組成物が、1種以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスを含み、好ましくはサプリメント又は栄養組成物が、1種以上のプロバイオティクスを含む、段落45若しくは段落47に記載のサプリメント、又は段落46若しくは段落47に記載の栄養組成物。
49.サプリメント又は栄養組成物が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスを含み、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスが、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである、段落45、段落47、若しくは段落48のいずれか一段落に記載のサプリメント、又は段落46~段落48のいずれか一段落に記載の栄養組成物。
50.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法であって、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む、方法。
51.方法が、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程(d)を更に含み、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、段落50に記載の方法。
52.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落44又は段落45に記載のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清である、段落50又は段落51に記載の方法。
53.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを製造する方法であって、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程であって、任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、工程、並びに
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る工程、
を含む、方法。
54.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、段落53に記載の方法。
【国際調査報告】