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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】セルロース繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/83 20060101AFI20240903BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240903BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240903BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240903BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240903BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALN20240903BHJP
【FI】
D06M11/83
A61L15/28 100
A61L15/22 310
A61L15/24 100
A61L15/26 100
A61L15/18 100
A61K9/70 401
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/32
B82Y40/00
B82Y5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508449
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 GB2022051982
(87)【国際公開番号】W WO2023017240
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】2111503.5
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511128354
【氏名又は名称】スペシャリティー ファイバーズ アンド マテリアルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Speciality Fibres and Materials Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】グレアム ケトルウェル
(72)【発明者】
【氏名】ガレス ウィン-ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ キング
(72)【発明者】
【氏名】サイモン マーティン フィネガン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4L031
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD21
4C076DD29A
4C076EE03A
4C076EE09A
4C076EE13A
4C076EE23A
4C076EE24A
4C076EE26A
4C076EE30A
4C076EE31A
4C076EE36A
4C076EE38A
4C076FF70
4C081AA02
4C081BA14
4C081CA021
4C081CA081
4C081CA101
4C081CA161
4C081CA181
4C081CA231
4C081CD011
4C081CD021
4C081CD031
4C081CD041
4C081CD091
4C081CF131
4C081CG07
4C081CG08
4C081DA04
4C081EA06
4L031AA02
4L031AA12
4L031AB01
4L031AB31
4L031AB34
4L031BA04
4L031BA05
4L031BA33
4L031DA12
4L031DA13
(57)【要約】
本開示は、第1のアルカリ水溶液をポリマー水溶液と混合してアルカリポリマー水溶液を形成するステップと、金属塩の水溶液と混合してポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を形成するステップとを含む、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を生成する方法を提供する。金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維を生成するさらなる方法は、繊維を膨潤させ、繊維をポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液と混合することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を生成する方法であって、
(a)第1のアルカリ水溶液をポリマー水溶液と混合してアルカリポリマー水溶液を形成するステップと、
(b)前記アルカリポリマー水溶液を金属塩の水溶液と混合して、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を形成するステップと、
を含む、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を生成する方法。
【請求項2】
前記第1のアルカリ水溶液は、I族水酸化物、I族炭酸塩、I族重炭酸塩、水酸化テトラアルキルアンモニウム、またはそれらの混合物を含み、好ましくは、前記第1の水溶液は、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属塩は、銀、銅、亜鉛、セレン、金、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ガリウム、鉄、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含み、好ましくは、前記金属は、銀である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記金属塩は、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、またはそれらの混合物であり、好ましくは、前記金属塩は、硝酸塩である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ペクチン、アルブミン、ゼラチン、カラギーナン、ガム、セルロースまたはその誘導体、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリマーは、ポリ(N-ビニルピロリドン)である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーは、20~80kg/molの重量平均分子量(M)を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーは、ポリ(N-ビニルピロリドン)であり、前記ポリマーは、30~40kg/molの重量平均分子量(M)を有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、任意の追加の還元剤の非存在下で得ることが可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)において、前記混合は、20~120℃、好ましくは60~100℃の温度で行われる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能である、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子の平均直径は、2~50nm、好ましくは3~12nmである、請求項10に記載のポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液。
【請求項12】
前記金属ナノ粒子は、平均厚さ40~100nmのポリマーコーティングを有する、請求項10または11に記載のポリマーコーティング金属ナノ粒子の溶液。
【請求項13】
金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維を生成する方法であって、
(i)セルロース繊維を第2のアルカリ水溶液中で膨潤させて膨潤セルロース繊維を形成するステップと、
(ii)前記膨潤セルロース繊維を前記第2のアルカリ水溶液から取り出すステップと、
(iii)前記繊維に前記金属ナノ粒子を含浸させるために、前記膨潤セルロース繊維をポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液と混合するステップと、
(iv)前記含浸されたセルロース繊維を前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液から分離するステップと、
(v)必要に応じて、前記含浸されたセルロース繊維を洗浄するステップと、
(vi)必要に応じて、前記含浸されたセルロース繊維を洗浄するステップと、
を含み、
前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能であるか、または請求項10から12のいずれか一項に記載のものである、金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維を製造する方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法に従って前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を調製するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(vi)において、前記含浸されたセルロース繊維が乾燥される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(v)の前に、前記繊維に前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子を含浸させるために、含浸セルロース繊維をポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液と混合するステップと、前記含浸されたセルロース繊維を前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液から分離するステップと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(iii)において、前記ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、10~30℃、好ましくは15~25℃の温度に維持される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のアルカリ水溶液は、I族水酸化物、I族炭酸塩、I族重炭酸塩、水酸化テトラアルキルアンモニウム、またはそれらの混合物を含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(i)は、前記セルロース繊維を前記第2のアルカリ溶液中で20~120℃、好ましくは60~100℃の温度でインキュベートすることを含む、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)は、前記膨潤セルロース繊維を前記第2のアルカリ水溶液から取り出した後に洗浄することを含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記金属ナノ粒子は、外側繊維表面と内側繊維細孔表面との両方に位置する、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記含浸されたセルロース繊維は、7未満のpHを有する、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記セルロース繊維中の前記金属収率は、10~25%である、請求項13から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能である、金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維。
【請求項25】
少なくとも1.5%w/w(前記金属の重量および前記金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の総重量に基づく)、好ましくは少なくとも6%w/w(前記金属の重量および前記金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の総重量に基づく)の金属含有量で金属ナノ粒子が含浸された、請求項24に記載のセルロース繊維。
【請求項26】
前記金属ナノ粒子の平均径は、2~50nm、好ましくは10~25nmである、請求項24または25のいずれか一項に記載のセルロース繊維。
【請求項27】
請求項24から26のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維と少なくとも1つの他の種類の繊維とのブレンドを含む吸収性材料。
【請求項28】
前記少なくとも1つの他の種類の繊維は、
アルギン酸塩、セルロースおよび変性セルロース、変性キトサン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、デンプン、ポリアクリレートもしくはそのコポリマー、ポリエチレンオキシドもしくはポリアクリルアミド、またはそれらの混合物に基づくゲル化繊維、および/または、
ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、セルロース、熱可塑性複合繊維、ガラス繊維、またはそれらの混合物に基づく非ゲル化繊維である、請求項27に記載の吸収性材料。
【請求項29】
前記少なくとも1つの他のタイプの繊維は、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびリヨセルを含む、請求項28に記載の吸収性材料。
【請求項30】
0.1~10%w/wの金属(ブレンド繊維の総重量に基づく)、好ましくは0.5~5%w/wの金属(ブレンド繊維の総重量に基づく)を含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の吸収性材料。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか一項に記載の吸収性材料を備える吸収性物品。
【請求項32】
前記吸収性物品は、創傷治療用包帯である、請求項31に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子を生成し、それらをセルロース繊維に含浸させる方法に関する。本発明はさらに、それによって製造される繊維、ならびにその繊維を含む材料および布地に関する。
【背景技術】
【0002】
高度な創傷治療用包帯の成分として有用な繊維、特にセルロースまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースエチルスルホネート(CES)およびそれらの塩などのセルロース誘導体に基づく繊維は当技術分野で既知である。例えば、市販の包帯AQUACEL(登録商標)(米国ニュージャージー州スキルマン、ConvaTec Inc.によって販売)は、カルボキシメチルセルロースに基づく。市販の包帯DURAFIBER(登録商標)(英国、ハル、Smith and Nephewによって販売)は、セルロース繊維(TENCEL(登録商標))とCES繊維の混合物から作られる。
【0003】
銀、銅、亜鉛、水銀などの金属は抗菌特性があることで知られている。抗生物質耐性菌の発生も一因となって、特に創傷用包帯における抗菌剤としての金属銀の使用に新たな関心が高まっている。金属銀は、このような耐性菌に対して有効であることが証明されている広域抗生物質である。現在の研究では、金属銀はその作用機序によって、細菌耐性の発現を許さないことが示唆されている。本出願人による国際公開2015/040435号には、金属ナノ粒子を含浸させたセルロース繊維を調製する方法が記載されている。
【0004】
現在市場で入手可能な創傷用包帯には、主に銀がイオンの形、つまり塩または他の化合物として含まれている。しかし、創傷用環境の水性性質における銀塩または化合物の溶解性によって、これらの包帯の抗菌特性は短命である可能性があり、包帯からほぼ瞬時に完全に放出されることにつながる。創傷への銀イオンの急速な放出は、細菌だけでなく宿主細胞にも毒性作用を引き起こす可能性がある。一部の銀塩は、傷の周囲の皮膚を刺激し得、長時間接触すると局所的な銀塩、つまり皮膚の永続的な灰青色の汚れを引き起こすことが報告されている。概して、銀塩は光に非常に敏感であり、急速かつ広範な変色(茶色または黒色に変わる)を示し、魅力的とは言えない視覚的特性をもたらす。
【0005】
上記の問題を解決しようとする既存の試みにおける1つの問題は、スケーラビリティの問題である。一部のプロセスは繊維の小規模生産には効果的であるが、一部のプロセスをスケールアップすると効率の低下とコストの増加を引き起こす。本発明の目的は、上記の問題の少なくともいくつかを軽減することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を生成する方法が提供される。この方法は、第1のアルカリ水溶液をポリマー水溶液と混合して、アルカリポリマー水溶液を形成することを含み得る。この方法は、アルカリポリマー水溶液を金属塩の水溶液と混合して、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を形成することを含み得る。
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「金属ナノ粒子」は、100nm以下の平均(すなわち、算術平均)直径を有する元素金属の粒子を意味する。
【0008】
第1のアルカリ水溶液は、I族水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)、I族炭酸塩(例えば、NaCOまたはKCO)、I族重炭酸塩(例えば、NaHCOまたはKHCO)、水酸化テトラアルキルアンモニウム(例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム)、またはそれらの混合物を含み得る。好ましい一連の実施形態では、第1の水溶液は、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む。
【0009】
金属塩は、銀、銅、亜鉛、セレン、金、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ガリウム、鉄、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含み、好ましい一連の実施形態では、金属は銀である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【0010】
金属塩は、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、またはそれらの混合物であり得る。好ましい一連の実施形態では、金属塩は硝酸塩である。好ましい一連の実施形態では、金属塩は硝酸銀である。
【0011】
ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ペクチン、アルブミン、ゼラチン、カラギーナン、ゴム、セルロースまたはその誘導体、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。例えば、ガムはキサンタン、グアー、アラビア、アカシアなどであり得る。例えば、セルロース誘導体はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどであり得る。一連の好ましい実施形態において、ポリマーはポリ(N-ビニルピロリドン)である。ポリ(N-ビニルピロリドン)は、ポビドン、ポリビドン、またはPVPとしても知られている。
【0012】
ポリマーは、8~360kg/mol、または20~80kg/molの重量平均分子量(M)を有し得る。ポリマーは、10、15、20、25、30、32、34、36、38または40kg/molを超えるMを有し得る。ポリマーは、360、300、250、200、150、100、80、70、60、50、45、40、38、36、34、32または30kg/mol未満のMを有し得る。一連の実施形態において、ポリマーは、25~45kg/mol、30~40kg/mol、32~38、または34~36k/molの重量平均分子量(M)を有し得る。
【0013】
例えば、一連の実施形態では、ポリマーは、ポリ(N-ビニルピロリドン)であり、ポリマーは、30~40kg/molの重量平均分子量(M)を有する。
【0014】
一連の実施形態において、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、追加の還元剤の非存在下で得ることが可能である。
【0015】
ステップ(b)において、混合は20℃~120℃の温度で実行され得る。例えば、温度は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100または110であり得る。温度は、110℃未満、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃または30℃であり得る。好ましい一連の実施形態では、温度は60℃から100℃である。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、上記および本明細書に記載の方法によって得ることが可能であるポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液が提供される。
【0017】
ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、2~50nmの平均直径を有する金属ナノ粒子を含み得る。好ましい一連の実施形態では、平均直径は3~12nm、必要に応じて4~11nm、5~10、5~9、または6~8nmであり得る。メジアン径は、2~10nm、任意に3~9、3~8、または4~7nmであり得る。溶液内のナノ粒子直径の範囲は、4を超える、または場合によって4.5を超える標準偏差を有し得る。
【0018】
ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、20nmを超える、25nmを超える、30nmを超える、35nmを超える、または40nmを超える直径を有する金属ナノ粒子を含み得る。ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、25nmを超える直径を有するナノ粒子を5%未満含み得る。必要に応じて、溶液は、25nmを超える直径を有するナノ粒子を0.1%、0.25%、0.5%、0.75%、または1%から含み得る。いくつかの実施形態では、溶液は、25nmを超える直径を有するナノ粒子を5%未満、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%または1%含み得る。
【0019】
ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、平均厚さ40~100nmのポリマーコーティングを有する金属ナノ粒子を含み得る。必要に応じて、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子は、50~90nm、55~85nm、60~80nm、または65~75nmの平均厚さを有するポリマーコーティングを有し得る。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維を生成する方法が提供される。本方法は、(i)第2のアルカリ水溶液中でセルロース繊維を膨潤させて、膨潤したセルロース繊維を形成することを含み得る。本方法は、(ii)第2のアルカリ水溶液から膨潤したセルロース繊維を取り出すことを含み得る。本方法は、(iii)繊維に金属ナノ粒子を含浸させるために、膨潤したセルロース繊維をポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液と混合することを含み得る。本方法は、(iv)ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液から含浸されたセルロース繊維を分離するステップを含み得る。本方法は、(v)含浸されたセルロース繊維を場合によって洗浄することを含み得る。本方法は、(vi)場合によって、含浸されたセルロース繊維を乾燥させることを含み得る。ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、上記および本明細書に記載の方法によって得ることが可能である。
【0021】
この方法は、上記および本明細書に記載の方法に従ってポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液を調製することを含み得る。
【0022】
一連の実施形態では、含浸されたセルロース繊維は、ステップ(vi)で乾燥される。
【0023】
本方法は、ステップ(v)の前に、繊維にポリマーコーティングされた金属ナノ粒子を含浸させるために、含浸セルロース繊維をポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液と混合するステップを含み得る。本方法は、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液から含浸されたセルロース繊維を分離することを含み得る。
【0024】
一連の実施形態では、ステップ(iii)において、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子の溶液は、10~30℃の温度に保たれる。必要に応じて、温度は、15~25℃であり得る。
【0025】
第2のアルカリ水溶液は、I族水酸化物、I族炭酸塩、I族重炭酸塩、水酸化テトラアルキルアンモニウム、またはそれらの混合物を含み得る。
【0026】
一連の実施形態では、ステップ(i)は、セルロース繊維を第2のアルカリ溶液中で20~120℃の温度でインキュベートするステップを含む。必要に応じて、温度は30、40、50、60、70、または80℃~110、100、または95℃であり得る。一連の実施形態では、温度は80~100℃である。
【0027】
一連の実施形態では、ステップ(ii)は、膨潤したセルロース繊維を第2のアルカリ水溶液から取り出した後、洗浄するステップを含む。
【0028】
一連の実施形態では、金属ナノ粒子は外側繊維表面と内側繊維細孔表面との両方に位置する。
【0029】
一連の実施形態では、含浸セルロース繊維は、7未満のpHを有する。必要に応じて、含浸セルロース繊維は、6未満または5未満のpHを有し得る。
【0030】
一連の実施形態では、セルロース繊維中の金属収率は10~25%である。金属収率は、繊維に取り込まれるナノ粒子溶液内の金属の割合である。金属収率は、繊維内の金属含有量を実験的に導き出し、それをナノ粒子溶液の形成に使用された金属の量で割ることによって計算され得る。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、上記および本明細書に記載の方法によって得ることが可能である金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維が提供される。
【0032】
セルロース繊維は、少なくとも1.5%w/wの金属含有量で金属ナノ粒子が含浸され得る。金属含有量は、繊維内の金属の重量および金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の総重量に基づき得る。必要に応じて、金属含有量は少なくとも6%w/wであり得る。
【0033】
セルロース繊維は、金属ナノ粒子の平均直径が2~50nm、好ましくは10~25nmとなるように構成され得る。一連の実施形態では、平均直径は3~12nm、必要に応じて4~11nm、5~10、5~9、または6~8nmであり得る。メジアン径は、2~10nm、任意に3~9、3~8、または4~7nmであり得る。溶液内のナノ粒子直径の範囲は、4を超える、または必要に応じて4.5を超える標準偏差を有し得る。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載の金属ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維と、少なくとも1つの他の種類の繊維とのブレンドを含む吸収性材料が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他のタイプの繊維は、アルギン酸塩、セルロースおよび変性セルロース、変性キトサン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、デンプン、ポリアクリレートまたはそのコポリマー、ポリエチレンオキシドまたはポリアクリルアミド、またはそれらの混合物に基づくゲル化繊維、および/またはポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、セルロース、熱可塑性複合繊維、ガラス繊維、またはそれらの混合物に基づく非ゲル化繊維である。一連の実施形態では、少なくとも1つの他の種類の繊維は、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびリヨセルを含む。
【0036】
吸収性材料は、0.1~10%w/wの金属(ブレンドされた繊維の総重量に基づく)を備え得る。必要に応じて、吸収性材料は、0.1~9、0.2~8、0.3~7、0.4~6または0.5~5%w/wの金属(ブレンド繊維の総重量に基づく)を備え得る。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、上記および本明細書に記載の吸収性材料を含む吸収性物品が提供される。吸収性物品は、創傷治療用包帯であり得る。
【0038】
次に、本発明の実施形態を、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】浸漬時間に対する繊維の銀含有量を示すグラフである。
図2】繊維サンプル内のナノ粒子のサイズ分布を示す頻度の表である。
【実施例
【0040】
(実施例1-銀ナノ粒子)
(1a-銀ナノ粒子の合成)
6つの別々のナノ粒子溶液A~Fを下記のように調製した。
1. 1459gの脱イオン(DI)水を3Lビーカーなどの第1の容器に入れた。第1の容器を表1の温度に設定した水浴に入れた。
2. 表1による625gのポリビニルピロリドン(PVP)を混合しながらビーカーに徐々に添加して、PVP溶液を形成した。
3. 第2の容器中で、0.86モルの水酸化ナトリウムおよび0.20モルの炭酸ナトリウムを1096gのDI水に溶解して、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウム溶液を形成した。第2の容器をも水浴に入れた。
4. 第3の容器では、0.93モルのAgNOを371gのDI水に添加することによって硝酸銀溶液を調製した。第3の容器をも水浴に入れた。
5. 第1、第2、および第3の容器を全て、水浴の温度に達するまで水浴内に維持した。
6. 第1、第2および第3の容器が下記の表1に示す温度に達すると、第2の容器の水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウム溶液を第1の容器のPVP溶液に添加して中間溶液を形成した。
7. 続いて、硝酸銀溶液を中間溶液にゆっくりと添加し、穏やかに撹拌した。硝酸銀溶液を全て添加した後、反応を一定に穏やかに撹拌しながら20分間続けて、銀ナノ粒子溶液A~Fを得た。
8. 溶液A~F中の銀ナノ粒子は、PVPによって形成されたポリマーシェルを含むコーティングを有する。
【0041】
【表1】
【0042】
(1b-銀ナノ粒子の特性)
銀ナノ粒子溶液A~E、および市販の銀ナノ粒子*(PVP AgPURE(商標、RASAG提供))を、ImageJ Fijiソフトウェアを使用して走査型透過電子顕微鏡(STEM)によって分析し、銀コアおよびPVPコーティングのサイズを決定した。平均値を下記の表2に示す。
【0043】
銀ナノ粒子溶液A~E、および市販の銀ナノ粒子*(PVP AgPURE(商標))を試験して、最小殺菌濃度(MBC)を決定した。MBCは、最初に寒天プレートに播種された細菌の99.9%を殺菌するのに必要な最低濃度であり、アッセイおよび殺菌剤の連続希釈によって決定される。通常、MBCは、最小発育阻止濃度の4倍未満の場合、化合物は殺菌性があるとみなされる。黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対してMBCを測定し、その結果を下記の表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例2-セルロース繊維の膨潤)
(2a-繊維の膨潤)
膨潤したセルロース繊維を次のように生成した。
1. 352.8gのDI水を容器に添加した。
2. 続いて、57.6gの47%NaOH溶液を容器に添加した。
3. 続いて、39.8gのNaCOを容器に添加して、第1のアルカリ溶液を形成した。
4. 30gのセルロース繊維(リヨセル)を容器内の第1のアルカリ溶液に添加した。セルロース繊維とアルカリ溶液とを含有する容器を90℃の水浴中に入れ、セルロース繊維を膨潤させた。
5. 繊維を第1のアルカリ溶液中で30分間膨潤させた。
6. 30分後、膨潤した繊維を第1のアルカリ溶液から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去し、次いで500gのDI水で洗浄した。
7. 洗浄した繊維をDI水から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去し、洗浄され膨潤したセルロース繊維を得た。
【0046】
(2b-変性繊維膨潤)
膨潤したセルロース繊維は、次のように生成された。
1. 352.8gのDI水を容器に添加した。
2. 続いて、57.6gの47%NaOH溶液を容器に添加して、第2のアルカリ溶液を形成した。
3. 30gのセルロース繊維(リヨセル)を容器内の第2のアルカリ溶液に添加して、繊維を膨潤させた。
4. 繊維を室温で30分間、第2のアルカリ溶液中で膨潤させた。
5. 30分後、膨潤した繊維を第1のアルカリ溶液から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去し、次いで500gのDI水で洗浄した。
6. 洗浄された繊維をDI水から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去し、洗浄され膨潤したセルロース繊維を得た。
【0047】
(実施例3-銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維)
(3a-強化された繊維処理プロセス)
銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の4つの実施例(繊維1~4)を下記のように調製した。
1. 実施例1の方法に従って生成した銀ナノ粒子溶液1000mlを、表3に従って容器に入れた。
2. 続いて、実施例2aの方法に従って生成された、洗浄された、膨潤された、乾燥されていない60gのセルロース繊維を容器に添加した。
3. 銀ナノ粒子溶液および繊維を含有する容器を90℃で2.5時間加熱し、銀ナノ粒子含浸繊維を形成した。
4. 2.5時間後、含浸繊維を容器から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去した。含浸された繊維を新しい容器に入れた。
5. 別の容器で、40gのクエン酸一水和物を860gのDI水に溶解することによってクエン酸溶液を形成した。
6. 含浸繊維が入っている容器にクエン酸溶液を添加した。クエン酸溶液と含浸繊維を90℃で30分間加熱した。
7. 30分後、繊維を容器から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去した。
8. 次に繊維を新しい容器に入れ、900gのDI水で2回洗浄した。洗浄後、繊維を容器から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去した。最後に繊維を450gのアセトンで洗浄し、次いで60℃のオーブンで乾燥させて繊維1~4を形成した。
【0048】
【表3】
【0049】
(3b-浸漬繊維処理プロセス)
銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の3つの実施例(繊維5~7)を下記のように調製した。
1. 実施例1の方法に従って生成した銀ナノ粒子溶液800mlを、表4に従って容器に入れた。
2. 続いて、実施例2aの方法に従って生成した、洗浄し、膨潤させ、乾燥させたセルロース繊維60gを容器に添加した。
3. 繊維を銀ナノ粒子溶液の入った容器内に室温で2分間放置し、含浸繊維を形成した。
4. 含浸された繊維を容器から取り出し、圧搾して過剰な液体を除去した。過剰な液体を、銀ナノ粒子溶液が入っている容器に戻した。
5. 圧搾した繊維を90℃のオーブンで20分間乾燥させた。
6. 乾燥させて含浸させた繊維を銀ナノ粒子溶液の入った容器に戻し、室温でさらに2分間放置することによって、浸漬プロセスを繰り返した。
7. 含浸された繊維を銀ナノ粒子溶液から取り出し、新しい容器に入れた。
8. 次に、含浸した繊維を500gのDI水で2回洗浄した。洗浄後、繊維を容器から取り出し、圧搾して液体を除去した。最後に繊維を450gのアセトンおよび4gのTween(商標)20(Sigma Aldrich)で洗浄した。
9. 続いて、洗浄した繊維を60℃のオーブンで乾燥させて繊維5~7を形成した。
【0050】
【表4】
【0051】
(3c-変性繊維膨潤を利用した浸漬繊維処理プロセス)
銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の3つの実施例(繊維8~10)を下記のように調製した。
【0052】
使用した膨潤したセルロース繊維を実施例2bの方法に従って生成したことを除いて、実施例3bのプロセスを繰り返した。使用したナノ粒子溶液は、下記の表5に示すものであった。このプロセスによって、繊維8~10が形成された。
【0053】
【表5】
【0054】
(3d-非膨潤繊維を使用した浸漬繊維処理プロセス)
銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維の3つの実施例(繊維11~13)を下記のように調製した。
1. 実施例1の方法に従って生成した銀ナノ粒子溶液800mlを、表6に従って容器に入れた。
2. 続いて、事前に膨潤していないセルロース繊維(リヨセル)60gを容器に添加した。
3. 繊維を銀ナノ粒子溶液の入った容器内に室温で2分間放置し、含浸繊維を形成した。
4. 含浸された繊維を容器から取り出し、圧搾して液体を除去した。過剰な液体を、銀ナノ粒子溶液が入っている容器に戻した。
5. 圧搾した繊維を90℃のオーブンで20分間乾燥させた。
6. 乾燥させて含浸させた繊維を銀ナノ粒子溶液の入った容器に戻し、室温でさらに2分間放置することによって、浸漬プロセスを繰り返した。
7. 含浸された繊維を銀ナノ粒子溶液から取り出し、新しい容器に入れた。
8. 次に、含浸した繊維を500gのDI水で2回洗浄した。洗浄後、繊維を容器から取り出し、圧搾して液体を除去した。最後に繊維を450gのアセトンと4gのTween(商標)20(Sigma Aldrich)で洗浄した。
9. 続いて、洗浄した繊維を60℃のオーブンで乾燥させて繊維11~13を形成した。
【0055】
【表6】
【0056】
上記のプロセスを下記の表7にまとめる。
【0057】
【表7】
【0058】
(実施例4-粒子サイズの測定)
繊維1~13内に含浸した銀ナノ粒子のサイズを下記のように測定し、結果を表8に示す。
1. 繊維1のサンプルをエポキシ樹脂と混合した。エポキシ樹脂は、アラルダイトCY212にドデセニルコハク酸無水物(DDSA)と1mlあたり1滴のベンジルジメチルアミン(BDMA)とを添加して形成した。
2. その後、繊維とエポキシ樹脂との混合物を60℃のオーブンで36~72時間硬化させて、樹脂包埋繊維を形成した。
3. ダイヤモンドナイフを備えたライカUC6ウルトラミクロトームを使用して85~90nmで樹脂包埋繊維を切断することによって、樹脂包埋繊維のサンプルを採取した。サンプルを200メッシュでコーティングされた銅グリッド上に置いた。サンプルを80Kvの動作電圧でFEI Tenai TEMで観察し、Gatan Digital Micrographソフトウェアを使用して画像を記録した。PVPコーティング内の銀ナノ粒子コアの直径は、ImageJ Fijiソフトウェアを使用して測定された。
4. このプロセスを繊維2~13の各々に対して繰り返した。
【0059】
【表8】
【0060】
(実施例5-銀含有量の測定)
繊維1~13の銀含有量を下記のように測定し、結果を下記の表9に示す。
1. 繊維1のサンプルを容器に入れた。
2. 硝酸溶液を容器に添加して繊維内の銀を溶解し、銀溶液を形成した。
3. 硫酸第二鉄ミョウバン指示薬を使用して、銀溶液をチオシアン酸カリウムに対して滴定した。硫酸第二鉄ミョウバン指示薬が赤褐色になった時点で滴定を終了した。
4. 次に、次の式を使用して、滴定から決定された銀の重量を繊維の開始重量で割って計算することによって、使用したチオシアン酸カリウムの量から銀含有量を計算した。
【0061】
【数1】
【0062】
決定された銀含有量を下記の表9に示す。
【0063】
【表9】
【0064】
(実施例6-浸漬時間)
浸漬時間の影響を下記のように調査し、結果を下記の表10に示す。
1. 膨潤したセルロース繊維を上記実施例2bの方法に従って調製した。
2. 次いで、実施例3bに記載の方法に従い、ナノ粒子溶液Aを使用して、膨潤したセルロース繊維に銀ナノ粒子を含浸させた。
3. 実施例3bの方法は、浸漬時間を変えることによって変更された。浸漬時間は、膨潤したセルロース繊維がナノ粒子溶液中に、すなわち実施例3bのステップ3および6において保持された時間の合計である。
4. 表10に従って浸漬時間を変化させて、このプロセスを繰り返した。
5. 繊維の銀含有量を記録し、表10および図1に示す。
【0065】
【表10】
【0066】
(実施例7-銀ナノ粒子を含有するゲル形成布地の製造)
銀ナノ粒子を含有するゲル形成布地を下記の方法に従って調製した。
1. 繊維5をおおよそ50mmの短い長さに切断した。
2. 膨潤していないかまたは銀ナノ粒子が含浸されていない追加のリヨセル繊維を、同じおおよそ50mmの長さに切断した。
3. ゲル形成カルボキシメチルセルロース(CMC)繊維(SFM Limited)のサンプルも、おおよそ50mmの長さに切断した。
4. 次いで、切断された繊維5、リヨセル繊維、およびCMC繊維を、標準的な不織布カーディング装置を使用してブレンドした。6.4%の銀含有量を有する14gの繊維5を、60gのCMC繊維および26gのリヨセル繊維とブレンドして、60%w/wのゲル化繊維および40%w/wの非ゲル化繊維5を備える繊維のブレンドを達成した。
5. 次いで、ブレンドされた繊維をニードルボンドして、200gsmの銀含有量18mg/100cmを有する銀ナノ粒子含有ゲル形成布地を形成した。
【0067】
上記のプロセスを使用して、銀含有繊維(つまり繊維5)と銀を含有しない繊維(つまり非含浸リヨセル繊維とCMC繊維)との比および/または銀含有繊維の銀含有量を調整することによって、異なる銀含有量を有する一連の布地を生成し得る。例えば、3.2%の銀含有量を有する銀ナノ粒子含浸繊維を使用する仮定の例では、これは、47gの銀ナノ粒子含浸繊維、60gのCMC繊維、および3gのリヨセル繊維を含し得る。したがって、繊維は、ゲル化繊維と非ゲル化繊維との50:50%w/wの比でブレンドされる。カーディングして120gsmの布地にニードルボンディングするとき、布地全体の銀含有量は18mg/100cmになる。
【0068】
布地の厚さ/密度は通常、単位面積あたりの重量、通常は平方メートルあたりのグラム数(gsm)に従って測定される。銀ナノ粒子含有ゲル形成布地の布地の厚さおよび/または密度は、当業者に公知の方法で繊維設備の動作パラメータを調整することによって調整され得る。例えば、カードに送り込まれる繊維の重量、巻き取りベルトおよびクロスフォルダーの速度は全て、所望の出力を変更するために変えられ得る。2つの実施例では、銀ナノ粒子含有ゲル形成布地を120gsm(布地14)および200gsm(布地15)で調製した。
【0069】
(実施例8-不織布からの銀の放出)
実施例7に記載のプロセスで生成された布地によって放出される銀の量を調査し、市販の銀含有布地と比較した。結果を下記の表11に示す。
1. 50mlの蒸留水を100mlフラスコに添加した。
2. 布地14の25cmサンプルを蒸留水の入ったフラスコに添加した。蒸発を防ぐためにフラスコに蓋をし、40rpmで撹拌しながら37℃でインキュベートした。
3. 5分後、1.0mlの液体をフラスコから取り出した。1.0mlの新鮮な蒸留水をフラスコに添加した。
4. フラスコから取り出した1mlの液体を試験して、誘導結合プラズマ発光分光法 (ICP-OES)によって液体中の銀濃度を測定した。
5. ステップ3および4を10分、30分、1時間、5時間後に繰り返し、銀濃度を表11に記録した。
6. 上記のステップ1~5を布地15および比較布地16および17に対して繰り返した。
【0070】
【表11】
【0071】
Aquacel(商標)Ag Extraは、Convatec(商標)(Reading、UK)によって供給される、イオン性銀を含むカルボキシメチルセルロース布地である。 Kerracel(商標)Agは、3M(米国ミネソタ州セントポール)が供給する銀酸塩を含むカルボキシメチルセルロース包帯である。
【0072】
(実施例9-布地の抗菌効果の測定)
銀ナノ粒子を含有するゲル形成布地の抗菌特性を下記に示すように調査した。
1. 繊維5の代わりに繊維8を使用したことを除いて、実施例7の方法に従って、銀ナノ粒子を含有する6つのゲル形成布地を調製した。
2. 下記の表12に示すように、6つの布地を異なる布地重量で生成した。布地の銀含有量は、リヨセル繊維およびCMC繊維と比較して繊維8の相対比率を変化させて布地18~23を形成することによって達成された。
3. 布地18~23の各々の抗菌特性を、次の修正されたAATCC-100試験方法を使用して評価した。
各布地18~23の17.6cmの試験サンプルをガンマ線照射を使用して滅菌した。続いて、滅菌した試験サンプルの各々を、当業者に既知であるような模擬創傷液で飽和させた。飽和した各試験サンプルを37℃で4日間インキュベートし、その後1x0-6cfu(コロニー形成単位)の細菌を播種した。次いで、播種された布地を、密封されたジャー内で静かに24時間インキュベートした。24時間後、生菌を回収し、計数し、対数減少を計算した。
【0073】
【表12】
【0074】
(実施例10-ナノ粒子の分子量と最小殺菌濃度の関係)
ナノ粒子溶液の最小殺菌濃度を次のように調査した。
1. 下記の表13に従って4つの銀ナノ粒子溶液を調製した。使用したPVPが表13から選択され、水浴温度が90℃に設定されたことを除いて、方法は実施例1に記載されたものと同じであり、ナノ粒子溶液AおよびG~Iを生成した。
【0075】
【表13】
【0076】
銀ナノ粒子溶液AおよびG~Iの最小殺菌濃度(MBC)を決定し、下記の表14に示した。
【0077】
【表14】
【0078】
ナノ粒子溶液A(10,200ppm)およびG(11,960ppm)は、溶液中に最大濃度の銀ナノ粒子を生成した。ナノ粒子溶液の分析を、Analytic Jena Speccord 205分光光度計を使用して実行した。UV-VIS分析は、最大ラムダ(最高の吸光度に対応する波長)、凝集比(最大ラムダでの吸光度の強度を約500nmでの吸光度の強度で割ったもの)、およびナノ粒子の濃度を取得することからなる。ナノ粒子溶液Gは最大の銀ナノ粒子、λmax=418nmを有した。ナノ粒子溶液Aは、凝集比(400~410nmでのλmax吸光度と500nmでの吸光度との比)によって証明されるように、凝集した銀ナノ粒子の量が最も低かった。ナノ粒子溶液Iは最小殺菌濃度が最も低くなる(黄色ブドウ球菌に対して0.15ppm、大腸菌に対して0.58ppm)。特定の理論に過度に束縛されることを望むものではないが、プロセスの効率を最大化し、銀の浪費を回避するには、高いナノ粒子濃度を有することが望ましい。ナノ粒子の抗菌効果を最大化するには、低い最小殺菌濃度が望ましい。凝集粒子はより小さな個々のナノ粒子よりも単位質量当たりの表面積が小さく、これによって抗菌性能が向上すると理解されているため、高い凝集率(個々の粒子と比較して凝集粒子の量が少ない)が望ましい。
【0079】
(実施例11-臭気制御)
銀ナノ粒子を含有するゲル形成布地の臭気制御能力を次のように調査した。
【0080】
銀ナノ粒子を含有するゲル形成布地(布地24)を、繊維5の代わりに繊維8を使用したことを除いて、実施例7の方法に従って調製した。次いで、布地24を、表15に示す4つの市販の包帯と比較した。
【0081】
試験を、SMTL試験法TM-283に従って、Surgical Materials Testing Laboratory(英国、カーディフ)によって実施した。使用される方法は次のとおりである。
1. 表15による布地の試験サンプルをステンレス鋼板のくぼみの上に置き、Perspex(商標)ドームで覆った。シリンジドライバーに取り付けられた50mlシリンジに2%ジエチルアミン溶液を充填した。
2. 次いで、2%ジエチルアミン溶液を、30ml/hourの注入速度に設定されたシリンジドライバーを介してくぼみを通して試験サンプル上に注入した。
3. ガス分析計が15ppmのジエチルアミン濃度を検出するのに要した時間を記録した。
4. 包帯に塗布された試験溶液の量を計算した。
5. 試験を、3回繰り返し実行した。
【0082】
【表15】
【0083】
(実施例12-乾燥)
銀ナノ粒子含有繊維の製造における乾燥ステップの重要性を下記のように調査した。
1. 繊維8の2つのサンプルを次のように調製した。
2. 繊維8の第1の250gのサンプルを上記実施例3cに従って調製し、それに応じてスケールアップした。浸漬プロセス中の乾燥ステップは全て、乾燥中の繊維の他の8つのバッチを保持するオーブン内で実行した。したがって、オーブン内の雰囲気は相対湿度が高く(例えば25%以上)、繊維8aを形成した。
3. 繊維8の第2の250gサンプルを上記実施例3cに従って調製し、それに応じてスケールアップした。浸漬プロセス中の乾燥ステップを全てオーブン内で実行し、抽出ファンを使用して湿気がオーブンから直ちに除去され、繊維8bが形成された。
4. 第1の布地が繊維8aを使用し、第2の布地が繊維8bを使用したことを除いて、銀ナノ粒子を含む2つのゲル形成布地を実施例7に従って生成した。
5. 2つの布地の抗菌効果を実施例9の方法に従って測定し、結果を表16に記録した。
【0084】
【表16】
【0085】
(実施例13-国際公開第2015/040435号との比較)
1. 繊維8の第1のサンプルを実施例3cの方法に従って調製した。
2. 繊維の第2のサンプルを、国際公開第2015/040435号(比較繊維29)に記載されている実施例1.1aの方法に従って調製した。比較繊維29は、銀ナノ粒子が含浸されたセルロース繊維である。
3. 繊維8および比較繊維29の銀含有量を、実施例5に記載の方法に従って測定した。
4. 次いで、銀の収率を物質収支に基づいて計算した。銀収率は、繊維中に存在する銀の収率を、繊維を形成するために使用される硝酸銀中に存在する銀の総質量で割ったものであり、百分率で表される。銀収率100%は、硝酸銀内の全ての銀が銀ナノ粒子として繊維に取り込まれたことを示す。銀の収率は、表17に示す範囲を生成する繊維8の複数の繰り返しサンプルにわたって計算された。
【0086】
【表17】
【0087】
繊維8(繊維8a~c)および比較繊維29のさらに3つのサンプルを試験して、繊維サンプル内の銀ナノ粒子のサイズ分布を調査した。試験は、STEMおよびImageJ Fijiソフトウェアを使用して実行され、観察されたナノ粒子を測定し、各サイズの粒子の総数がカウントされ、図2の度数表にプロットされた。値は、カウントされたナノ粒子の総数に対するパーセンテージとして示される。下記に表18に示すように、データの平均を計算した。
【0088】
【表18】
【0089】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、繊維8a~cのナノ粒子は、2~10nmで密に集合しており観察された最大のナノ粒子は23nmであった比較繊維29のナノ粒子よりも均質性が低ことを理解されたい。対照的に、平均ナノ粒子直径は繊維8a~cにおいてより大きいことが観察され、ナノ粒子の大部分は3nm~12nmの範囲にあり、最大直径50nmまでの粒子は少数であった。繊維8a~cの標準偏差は、比較繊維29の標準偏差よりも大きく、ナノ粒子サイズのより広い広がりを示した。均質性の低下およびより大きなナノ粒子の存在が、既存の繊維と比較して繊維8の効果が長期間持続することに寄与していると考えられる。
【0090】
(実施例14-細胞毒性)
布地24のサンプルを、ゲル化繊維と非ゲル化繊維との比が60:40である繊維8を使用して、実施例10の方法に従って調製した。非ゲル化繊維部分内の銀含有繊維の割合を、銀含有量が18mg/100cmの布地を達成するように選択した。布地24の細胞毒性を、ISO10993-5の方法に従ってNAMSAによって試験した。
【0091】
既存の銀含有布地に対して試験を繰り返した。比較布地29は、本出願人によって生成された、イオン性銀を含有するアルギン酸カルシウム材料である。
【0092】
【表19】
【0093】
布地24の細胞生存率は比較布地よりも高く、インビトロ細胞毒性が低いことを示した。
図1
図2
【国際調査報告】