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特表2024-532787持続的な免疫応答を誘導するためのリン酸化タウペプチドを含むリポソーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】持続的な免疫応答を誘導するためのリン酸化タウペプチドを含むリポソーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20240903BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K38/10
A61P37/06
A61K9/127
A61K39/39
A61K48/00
A61K31/7024
A61K31/7125
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61P25/28
C07K14/47
C12N15/117 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508568
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022074902
(87)【国際公開番号】W WO2023019241
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/260,227
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,541
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/267,975
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513022966
【氏名又は名称】エーシー イミューン エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ムース,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ガルパーン,ウェンディ
(72)【発明者】
【氏名】テュニス,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ステウカース,レンナルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC07
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA20
4C084BA23
4C084BA33
4C084CA18
4C084CA26
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA16
4C084ZB09
4C084ZC75
4C085AA06
4C085AA38
4C085BB11
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF13
4C085FF14
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZB09
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
(57)【要約】
リン酸化タウに対する持続的な免疫応答をヒトにおいて誘導するための方法が記載される。方法は、toll様受容体4アゴニストと、ヘルパーT細胞エピトープと、脂質化CpGオリゴヌクレオチドと、リポソームの表面に提示されているタウホスホペプチドとを含む有効量のリポソームを対象に投与して、それによって持続的な免疫応答を得ることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する抗体応答を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の、配列番号28のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルリピドAを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号13~配列番号17、配列番号23~配列番号26、および配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するCpGオリゴヌクレオチド
とを含む有効量のリポソームを前記対象に投与することを含み、
前記タウホスホペプチドが前記リポソームの表面に提示され、
前記抗体応答が、前記ヒト対象への前記有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間持続する、方法。
【請求項2】
前記有効量のリポソームが、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の前記タウホスホペプチドと、
(2)1用量当たり100μg~585μgの量の前記toll様受容体4アゴニストと、
(3)1用量当たり75μg~550μgの量の前記ヘルパーT細胞エピトープと、
(4)1用量当たり150μg~900μgの量の前記CpGオリゴヌクレオチド
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり300μg、900μgまたは1800μgの前記タウホスホペプチドを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量のリポソームが皮下投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量のリポソームが筋肉内投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記CpGオリゴヌクレオチドが、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、前記CpGオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの親油基と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結している、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タウホスホペプチドが配列番号28のアミノ酸配列からなり、前記toll様受容体4アゴニストがモノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含み、前記ヘルパーT細胞エピトープが配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を含み、前記リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される少なくとも1つの脂質をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体応答が前記pタウを対象にする特異的IgG抗体応答を含み、好ましくは前記特異的IgG抗体応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも50、60、70、80、90、100倍またはそれ以上の高さの抗pタウIgG力価を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体応答が、特異的IgM抗体応答の、前記pタウを対象にする特異的IgG抗体応答へのクラススイッチを誘導する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体応答が、前記pタウを非リン酸化タウタンパク質よりも選好的に認識するIgG免疫応答を含み、好ましくは前記抗pタウIgG力価と前記抗タウIgG力価との比が少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体応答が、濃縮対らせん状細線維(ePHF)に対するIgG免疫応答を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記IgG免疫応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ以上の高さの抗ePHF IgG力価を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗ePHF IgGが、前記有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間またはそれ以上にわたって病理的なePHFタウに対する結合アビディティの増加を有し、好ましくは前記抗ePHF IgGが少なくとも0.3、0.4、0.5、0.6、または0.7のアビディティ指数を有する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記有効量のリポソームの初回投与の4~12週間後、例えば8週間後に第2の用量の前記有効量のリポソームを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体応答、好ましくは前記抗ePHF IgG力価が、第2の用量の前記有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第2の用量の前記有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量のリポソームの初回投与の20~28週間後、例えば24週間後に第3の用量の前記有効量のリポソームを前記対象に投与することをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体応答、好ましくは前記抗ePHF IgG力価が、第3の用量の前記有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第3の用量の前記有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有効量のリポソームの初回投与の44~52週間後、例えば48週間後に第4の用量の前記有効量のリポソームを前記対象に投与することをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体応答、好ましくは前記抗ePHF IgG力価が、第4の用量の前記有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第4の用量の前記有効量のリポソームの投与によって少なくとも2週間で測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する持続的な免疫応答を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、
i.有効量のリポソームを含むプライミングワクチンを前記対象に筋肉内投与すること、および
ii.前記プライミングワクチンの投与の6~10週間後に前記有効量のリポソームを含む第1のブースターワクチンを前記対象に筋肉内投与すること
を含み、
前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約20週間持続し、
前記リポソームが、
(1)配列番号28のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドであって、前記リポソームの表面に存在する前記タウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルリピドAを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号23、24、25、および26からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するCpGオリゴヌクレオチド
とを含み、
前記有効量のリポソームが、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の前記タウホスホペプチドと、
(2)1用量当たり100μg~585μgの量の前記toll様受容体4アゴニストと、
(3)1用量当たり85μg~525μgの量の前記ヘルパーT細胞エピトープと、
(4)1用量当たり150μg~900μgの量の前記CpGオリゴヌクレオチド
とを含む、方法。
【請求項21】
前記ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号39、40、41、42、および43からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号13、14、15、16、17、および44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
脂質化CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を有し、前記CpGオリゴヌクレオチドが少なくとも1つのコレステロールとリンカーを介して共有結合により連結している、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のブースターワクチンが前記プライミングワクチンの投与の8週間後に投与され、前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約24週間持続する、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記プライミングワクチンの投与の22~26週間後に前記有効量のリポソームを含む第2のブースターワクチンを前記対象に筋肉内投与することをさらに含み、前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約36週間持続する、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のブースターワクチンが前記プライミングワクチンの投与の24週間後に投与され、前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約48週間持続する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プライミングワクチンの投与の45~50週間後に前記有効量のリポソームを含む第3のブースターワクチンを前記対象に筋肉内投与することをさらに含み、前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約60週間持続する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3のブースターワクチンが前記プライミングワクチンの投与の48週間後に投与され、前記持続的な免疫応答が前記プライミングワクチンの投与後に少なくとも約72週間持続する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記有効量のリポソームが、1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記持続的な免疫応答が、前記pタウを非リン酸化タウタンパク質よりも選好的に認識するIgG免疫応答を含み、好ましくは前記抗pタウIgG力価と前記抗タウIgG力価との比が少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70である、請求項20から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記持続的な免疫応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ以上の高さの抗ePHF IgG力価を有する濃縮対らせん状細線維(ePHF)に対するIgG免疫応答を含む、請求項20から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象がタウの凝集体の排除を必要とする、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、前臨床期アルツハイマー病、軽度から中等度のアルツハイマー病または早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)のようなアルツハイマー病の防止または処置を必要とする、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月12日に出願された米国仮特許出願第63/260,227号、2021年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/263,541号、および2022年2月14日に出願された米国仮特許出願第63/267,975号のそれぞれの優先権を主張する国際出願であり、これらのそれぞれの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子配列表の参照
電子配列表(SequenceListing_7WO1.xml;サイズ:42,600バイト;および作成日:2022年7月8日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は医学の分野におけるものである。本発明は詳細には、リン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する持続的な抗体応答を、アルツハイマー病等のタウオパチーを防止または処置することを必要とする対象において誘導するための、リン酸化タウペプチドを含有するリポソームに関する。
【0004】
背景
アルツハイマー病(AD)は、世界中で推定4400万人が患う進行性衰弱性神経変性疾患である(Alzheimers.net)。現在商業化されているAD療法は、臨床症状に作用することを目的としているが、疾患の根底にある発病過程(疾患修飾効果)を標的としていない。残念なことに、現在の療法は最小限度で有効であるに過ぎず、したがって追加の防止および治療措置を開発して試験する緊急の必要性が存在する。
【0005】
アルツハイマー病に特徴的な病態は、著しく凝集したアミロイドベータタンパク質を含む細胞外プラークの蓄積、および過剰リン酸化タウタンパク質の細胞内「濃縮体(tangle)」または凝集である。これらのタンパク質の蓄積を引き起こす分子事象は特徴付けが不十分である。アミロイドに関しては、アミロイド前駆体タンパク質の異常な切断がアミノ酸1~42を含む易凝集性断片の蓄積を引き起こすと仮定されている。タウに関しては、キナーゼ、ホスファターゼ、またはその両方の調節不全がタウの異常なリン酸化を引き起こすと仮定されている。タウは、過剰リン酸化すると、微小管と効果的に結合してそれを安定化させる能力を喪失し、代わりに影響を受けたニューロンの細胞質に蓄積する。未結合過剰リン酸化タウは、初めにオリゴマー、次いでより高次の凝集体を形成するようであり、これらの存在は、それらが形成されるニューロンの機能に、おそらくは正常な軸索輸送の中断を介して、負の影響を及ぼすと考えられる。
【0006】
先進諸国では、アルツハイマー病または他の認知症性タウオパチーと診断された個体は、一般的にコリンエステラーゼ阻害薬(例えばAricept(登録商標))またはメマンチン(例えばNamenda(商標))を用いて処置される。これらの薬物は、適度に良好な忍容性を示すが、非常にわずかな有効性を有する。例えば、Aricept(登録商標)は、処置された個体のうちのおよそ50%において、症状の悪化を6~12か月遅延させる。残りの処置は、非薬理的であり、患者の認知能力が低下する一方で患者が日々の課題をより処理できるようにすることに焦点を当てている。
【0007】
アルツハイマー病における病理的なタウを標的とするように設計された活性ペプチドワクチンであるAADvac1の24か月間の二重盲検並行群間ランダム化第2相多施設プラセボ対照研究であるADAMANT(EudraCT 2015-000630-30)の結果が最近発表された(Novak et al., Nature Aging vol 1: 521-534, 2021)。AADvac1は、N末端システインを介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とカップリングしたタウ配列のアミノ酸294~305に由来する合成ペプチドを含有する。軽度AD認知症の患者に対して、研究期間中に1用量当たり40μgのAADvac1が11回投与された。このワクチンは高レベルのIgG抗体を誘導したが、研究サンプル全体に対する認知および機能の検査では有意な効果は見出されなかった(同上)。
【0008】
ヒトp-タウ396/404に基づく合成ペプチドを使用したワクチンであるACI-35は、P301L変異を保有するマウスの運動能力を改善し、生存期間を延長させることが示された(Theunis et al., PLOS ONE. 2013. 8(8): e72301)。第1b相研究では、ACI-35は忍容性が良好であり、抗体応答を誘発したが、ブースター応答可能性は限定的であった。
【0009】
アルツハイマー病等のニューロン変性疾患に対する安全かつ効果的な処置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、リポソームの表面に提示されているリン酸化タウペプチドを含む改良されたリポソームワクチンの臨床研究からの知見に基づく。ワクチンはpタウに対する持続的な抗体応答等の強力で持続的な免疫応答を誘導し、抗体応答はブースターショットによってブースト可能であった。
【0011】
したがって、全般的な一態様では、本発明は、リン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する抗体応答を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、
(1)1用量当たり25~750nmole、例えば300μg~1800μgの量の、配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルリピドAを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号13~配列番号17、配列番号23~配列番号26、および配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するCpGオリゴヌクレオチド
とを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含み、
タウホスホペプチドがリポソームの表面に提示され、
抗体応答が、ヒト対象への有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間、例えば少なくとも6、7、8、9、10週間持続する、方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、有効量のリポソームは、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の配列番号28のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドと、
(2)1用量当たり100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストと、
(3)1用量当たり75μg~550μgの量のヘルパーT細胞エピトープと、
(4)1用量当たり100μg~1000μgの量のCpGオリゴヌクレオチド
とを含む。
【0013】
一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、CpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの親油基と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結している。
【0014】
一部の実施形態では、タウホスホペプチドは、1用量当たり約25nmole~約750nmole、例えば1用量当たり約29.7nmole~約742.5nmole、好ましくは約90nmole~約715nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約712.8nmole、または1用量当たり約90nmole~約535nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約534.6nmole、または1用量当たり約90nmole~約275nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約267.3nmoleの量で投与される。ある特定の実施形態では、タウホスホペプチドは、配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、好ましくは配列番号28のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、テトラパルミトイル化タウホスホペプチドは、1用量当たり29.7nmole~742.5nmoleに対応する1用量当たり100μg~2500μg、好ましくは1用量当たり89.1nmole~712.8nmoleに対応する1用量当たり300μg~2400μg、例えば1用量当たり89.1nmole、267.3nmole、534.6nmoleまたは712.8nmoleに対応する1用量当たり300μg、900μg、1800μgまたは2400μgの量が投与される。
【0015】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~900μg、好ましくは100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストを含む。ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~900μg、好ましくは100μg~585μgの量のtoll様受容体アゴニストであるモノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~625μg、好ましくは75μg~550μg、例えば75μg~450μgの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~625μg、好ましくは75μg~450μgの量の、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープを含む。ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約2nmole~約110nmole、例えば1用量当たり約4.02nmole~約100.44nmole、または1用量当たり約4nmole~約75nmole、例えば1用量当たり約4.02nmole~約72.32nmole、または1用量当たり約10nmole~約105nmole、例えば1用量当たり約12.06nmole~約100.44nmole、または1用量当たり約70~約105nmole、例えば1用量当たり約72.32nmole~約100.44nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約3nmole~約105nmole、好ましくは1用量当たり約10nmole~約105nmole、例えば1用量当たり約12.06nmole~約100.44nmoleの量の、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープを含む。一実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり2~5nmole、例えば1用量当たり2、3、4、もしくは5nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり約3.82、3.92、4.02、もしくは4.12nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。別の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり10~15nmole、例えば1用量当たり10、11、12、13、14、もしくは15nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり11.86、11.96、12.06、12.16nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。別の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり70~75nmole、例えば1用量当たり70、71、72、73、74もしくは75nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり72.02、72.12、72.22、72.32、72.42nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。さらに別の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり98~103nmole、例えば1用量当たり98、99、100、101、102、もしくは103nmole、またはそれらの間の任意の値、例えば1用量当たり100.24、100.34、100.44、100.54、もしくは100.64nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープを含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μg、好ましくは100μg~1000μg、例えば150μg~800μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μg、好ましくは150μg~800μgの量の、配列番号18のヌクレオチド配列からなるCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、リポソームは皮下投与される。
【0019】
ある特定の実施形態では、リポソームは筋肉内投与される。
【0020】
ある特定の実施形態では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される1つまたは複数の脂質をさらに含む。
【0021】
ある特定の実施形態では、リポソームは、
(1)配列番号28のアミノ酸配列を有するタウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号39のアミノ酸配列を含むヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18のヌクレオチド配列を含む脂質化CpGオリゴヌクレオチドと、
(5)1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される少なくとも1つの脂質
とを含む。
【0022】
本出願の実施形態において、抗体応答は、pタウを対象にする特異的IgG抗体応答を含む。好ましくは、特異的IgG抗体応答は、プラセボ対照のものよりも少なくとも50、60、70、80、90、100倍またはそれ以上の高さの抗pタウIgG力価を有する。
【0023】
本出願の別の実施形態では、抗体応答は、pタウを対象にする特異的IgM抗体応答、および特異的IgM抗体応答のpタウを対象にする特異的IgG抗体応答へのクラススイッチを含む。
【0024】
本出願のさらに別の実施形態では、抗体応答は、pタウを非リン酸化タウタンパク質よりも選好的に認識するIgG抗体応答を含む。好ましくは、抗pタウIgG力価と抗タウIgG力価との比は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65もしくは70、またはそれ以上である。
【0025】
本出願の別の実施形態では、抗体応答は、濃縮対らせん状細線維(ePHF)に対するIgG抗体応答を含む。好ましくは、IgG抗体応答は、プラセボ対照のものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ以上の高さの抗ePHF IgG力価を有する。より好ましくは、抗ePHF IgGは、有効量のリポソームの初回投与の後またはブースティング投与の後に、ブースティング投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも6週間にわたって病理的なePHFタウに対する結合アビディティの増加を有し、好ましくは抗ePHF IgGは少なくとも0.3、0.4、0.5、0.6、または0.7のアビディティ指数を有する。
【0026】
本出願の実施形態において、抗体応答は、ブースター投与によってブーストされ得る。
【0027】
一実施形態では、本出願の方法は、有効量のリポソームの初回投与の4~12週間後、例えば8週間後に第2の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む。抗体応答は、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合にブーストされる。好ましくは、抗体応答は、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上ブーストされる。
【0028】
別の実施形態では、本出願の方法は、有効量のリポソームの初回投与の20~28週間後、例えば24週間後に第3の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む。抗体応答は、第3の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合にブーストされ、好ましくは抗体応答は、第3の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する。
【0029】
さらに別の実施形態では、本出願の方法は、有効量のリポソームの初回投与の44~52週間後、例えば48週間後に第4の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む。抗体応答は、第4の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後にブーストされ、好ましくは抗体応答は、第4の用量の有効量のリポソームの投与によって少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する。
【0030】
ある特定の実施形態では、ヒト対象はタウの凝集体の排除を必要とする。ある特定の実施形態では、対象は、アルツハイマー病、例えば、前臨床期アルツハイマー病、早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病の防止または処置を必要とする。他の実施形態では、対象は、脳においてアミロイド陽性であるが、顕著な認知障害をまだ示していない。
【0031】
本発明はまた、免疫応答、例えばホスホ-タウタンパク質(pタウ)に対する抗体応答を、それを必要とするヒト対象において誘導することにおける使用のためのワクチン組合せ体であって、本発明の実施形態のプライミングワクチンおよびブースターワクチンを含み、免疫応答が、ヒト対象へのプライミングワクチンの投与の後に少なくとも10週間、例えば少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50週間またはそれ以上持続する、ワクチン組合せ体にも関する。
【0032】
本発明のさらなる態様、特色、および利点は、本発明の以下の詳細な説明および特許請求の範囲を読むことでより良好に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
前述の概要、および本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む場合、より良好に理解されるだろう。本発明は図面に示される正確な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【0034】
図1】第1b/2a相研究(NCT04445831)におけるコホート1(ACI-35.030またはプラセボ)のための研究デザインの概観である。
図2】0週目、8週目、および24週目にプラセボまたは300μgもしくは900μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗pタウIgG力価の幾何平均を示す。
図3】0週目、8週目、および24週目にプラセボまたは300μgもしくは900μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗タウ(非リン酸化)IgG力価の幾何平均を示す。
図4】0週目、8週目、および24週目にプラセボまたは300μgもしくは900μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗ePHF IgG力価の幾何平均を示す。
図5】プラセボまたは300μg、900μgもしくは1800μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗タウ(非リン酸化)IgG力価の幾何平均を示す。
図6】プラセボまたは300μg、900μgもしくは1800μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗pタウIgG力価の幾何平均を示す。
図7】プラセボまたは300μg、900μgもしくは1800μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者における抗ePHF IgG力価の幾何平均を示す。
図8】(図8Aおよび8B)0週目、8週目、および24週目にプラセボまたは900μgの用量のACI-35.030を用いて処置された早期アルツハイマー病を有する患者において誘導された抗体のエピトープ認識プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
様々な刊行物、論文、および特許が背景技術および本明細書全体にわたって引用または記載されるが、これらの参考文献のそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等に関する考察は、本発明のための文脈を提供することを目的とする。そのような考察は、開示または特許請求されるいかなる発明に関しても、これらの事項のいずれかまたは全てが先行技術の一部を形成することを承認するものではない。
【0036】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。その他の場合、本明細書で使用するある特定の用語は本明細書に記載される意味を有する。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上別段の指示が明確にない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0038】
別段の記述がない限り、本明細書に記載されるあらゆる数値、例えば濃度または濃度範囲は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は典型的には示された値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈上別段の指示が明確にない限り、全ての可能な部分範囲、すなわち、そのような範囲内の整数およびその値の小数部を含むその範囲内の全ての個々の数値を明白に含む。
【0039】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者は、単に慣例的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するかまたは確かめることができるだろう。そのような均等物は本発明によって包含されると意図される。
【0040】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、もしくは「含有する(containing)」という用語、またはそれらの任意の他の変化形は、述べられた整数または整数群を含むがいかなる他の整数も整数群も除外するものではないということを含意すると理解することができ、非排他的または非限定的であると意図される。例えば、リストの要素を含む組成物、混合物、工程、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていないかまたはそのような組成物、混合物、工程、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、反対のことが明示的に述べられていない限り、「または」は、排他的なまたはではなく、非排他的なまたはを指す。例えば、条件AまたはBは、以下:Aが真である(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽である(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、およびAとBの両方が真である(または存在する)のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0041】
好ましい発明の構成成分の寸法または特徴に言及する場合に本明細書で使用する「約」、「およそ」、「全般的に」、「実質的に」という用語、および同様の用語が、記載された寸法/特徴は、当業者によって理解され得るように、厳密な境界でもパラメータでもなく、機能的に同じであるかまたは類似するそこからのわずかな変動を除外しないことを示すということもまた理解されるべきである。少なくとも、数値パラメータを含むような指示対象は、当技術分野で受け入れられている数学的および工業的原理(例えば、丸め、測定または他の系統誤差、製作公差等)を使用する、最下位桁を変えることのない変動を含み得る。
【0042】
本発明は、研究ワクチンと関連する可能性が幾分またはかなりあると考えられる脳炎等の重度有害事象を誘発せずに、抗リン酸化タウ抗体を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、リポソームの表面に提示されているタウホスホペプチドとtoll様受容体4アゴニストとを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、「抗リン酸化タウ抗体」という用語は、タウのアミノ酸配列の1つまたは複数の位置のアミノ酸残基がリン酸化されているタウに結合する抗体を指す。リン酸化されるアミノ酸残基は例えば、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、またはチロシン(Tyr)であり得る。抗リン酸化タウ抗体が結合するリン酸化タウの部位は好ましくは、アルツハイマー病等の神経変性疾患において特異的にリン酸化される部位である。抗リン酸化タウ抗体が結合するリン酸化タウの部位の例としては、例えば、Tyr18、Ser199、Ser202、Thr205、Thr212、Ser214、Ser396、Ser404、Ser409、Ser422、Thr427が挙げられる。本出願全体にわたって使用する場合、アミノ酸位は、アミノ酸配列がGenBank受託番号NP_005901.2に表されるヒト微小管関連タンパク質タウアイソフォーム2の配列を参照して得られる。
【0044】
投与時に抗リン酸化タウ抗体を誘導することができるかどうかは、対象由来の生体試料(例えば、血液、血漿、血清、PBMC、尿、唾液、糞便、CSF、またはリンパ液)を、医薬組成物において投与された免疫原性タウペプチドを対象とする抗体、例えばIgGまたはIgM抗体の存在に関して試験することによって決定することができる(例えばHarlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照のこと)。例えば、免疫原を提供する組成物の投与に応答して産生される抗体の力価は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、他のELISAに基づくアッセイ(例えば、MSD-Meso Scale Discovery)、ドットブロット、SDS-PAGEゲル、ELISPOT、または抗体依存性細胞貪食(ADCP)アッセイによって測定することができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「有害事象」(AE)という用語は、医薬製剤が投与された患者における、処置との因果関係を必ずしも有しないあらゆる好ましくない医療上の出来事を指す。本発明の実施形態において、AEは以下の定義を使用する、重症度が増加する3段階の尺度により評価される:軽度(グレード1)、対象によって容易に耐えられ、最小の不快感を引き起こし、日常活動を妨害しないAEを指す;中等度(グレード2)、正常な日常活動を妨害するほど十分に不快であり、介入が必要となる場合があるAEを指す;重度(グレード3)、正常な日常活動を妨げ、処置または他の介入が通例必要であるAEを指す。重篤なAE(SAE)とは、以下の転帰のいずれかをもたらす任意の用量において生じるいかなるAEであってもよい:事象ではなく転帰である死亡;事象の発現時点で患者が死亡のリスクにさらされているある事象を指す、生命を脅かすもの;生命を脅かすものは、仮により重度であった場合に死亡を引き起こした可能性がある事象を指さない;治療のための入院、すなわち、計画外の一晩の入院、または現行の入院の延長;正常な生活機能を遂行する能力の、永続的もしくは顕著な機能不全または実質的な破壊;先天異常/先天性欠損;患者を危険にさらすおそれがあるか、または上に列挙した他の転帰のうちの1つを防止するための医学的もしくは外科的介入を必要とし得る重要な医学的事象(研究者によって判断される)(例えば、アレルギー性気管支痙攣のための緊急治療室もしくは自宅での集中処置、または入院に至らない血液疾患もしくは痙攣)。入院とは、病院への公式な受け入れである。入院または入院の延長は、AEが重篤となる基準を構成するが、それ自体はSAEとは見なされない。AEの非存在下では、入院または入院の延長は、参加している研究者によってSAEとして報告されるべきではない。これは、以下の状況において当てはまり得る:入院もしくは入院の延長がプロトコルによって必要とされる手順に必要である;または入院もしくは入院の延長が、中央施設が従う慣例的な手順(例えば外科処置後のステント除去)の一部である。このことは、研究ファイルに記録されるべきである。研究中に悪化しなかった既存の状態の待機的処置のための入院は、AEとは見なされない。
【0046】
入院中に生じる合併症はAEである。合併症が入院を延長させるか、または他のSAE基準のいずれかを満たす場合、その事象はSAEである。
【0047】
本明細書で使用する場合、「脳炎」という用語は、感染性および非感染性の原因に起因し得る脳の炎症を指す。本明細書で使用する場合、「髄膜脳炎」という用語は、脳髄膜および脳の感染症または炎症によって特徴付けられる状態を指す。脳炎または髄膜脳炎の診断は、本開示を考慮すると、当業者に公知の技法によって、例えば、臨床的、神経学的、および精神医学的検査、血液およびCSF試料採取を含む生体試料採取、MRI走査法、ならびに脳波記録法(EEG)によって決定することができる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「リポソーム」という用語は全般的に、高脂質含量を有する材料、例えば、リン脂質、コレステロールから作製される脂質小胞を指す。これらの小胞の脂質は全般的に脂質二重層の形態に組織化される。脂質二重層は全般的に、多重ラメラ脂質小胞(MLV)を形成する脂質二重層の複数のタマネギ様の骨組みの間に散在しているかまたは中心部の無定形な空洞内に含有される容量を封入する。中心部の無定形な空洞を有する脂質小胞は、単ラメラ脂質小胞、すなわち、空洞を囲む単一の外縁の二重層を有する脂質小胞である。大単ラメラ小胞(LUV)は全般的に、100nm~数マイクロメートル、例えば100~200nmまたはそれ以上の直径を有し、小単ラメラ脂質小胞(SUV)は全般的に、100nm未満、例えば20~100nm、典型的には15~30nmの直径を有する。
【0049】
本明細書で使用する場合、微小管関連タンパク質タウ、MAPT、神経原線維濃縮体タンパク質、対らせん状細線維-タウ、PHF-タウ、MAPTL、MTBT1としても公知である「タウ」または「タウタンパク質」という用語は、複数のアイソフォームを有する豊富に存在する中枢および末梢神経系タンパク質を指す。ヒト中枢神経系(CNS)では、352~441アミノ酸長のサイズの範囲の6種類の主要なタウアイソフォームが選択的スプライシングのために存在する(Hanger et al., Trends Mol Med. 15:112-9, 2009)。タウの例としては、これらに限定されないが、CNSにおけるタウアイソフォーム、例えば4つの反復配列と2つの挿入断片とを有する、微小管関連タンパク質タウアイソフォーム2とも命名される441アミノ酸の最も長いタウアイソフォーム(4R2N)、例えばアミノ酸配列がGenBank受託番号NP_005901.2に表されるヒトタウアイソフォーム2が挙げられる。タウの他の例としては、3つの反復配列を有し、挿入断片を有しない、微小管関連タンパク質タウアイソフォーム4とも命名される352アミノ酸の長さの最も短い(胎児型)アイソフォーム(3R0N)、例えばアミノ酸配列がGenBank受託番号NP_058525.1に表されるヒトタウアイソフォーム4が挙げられる。タウの例としてはまた、300の追加の残基(エクソン4a)を含有する、末梢神経に発現する「大型タウ」アイソフォームが挙げられる。Friedhoff et al., Biochimica et Biophysica Acta 1502 (2000) 122-132。タウの例としては、6762ヌクレオチドの長さのmRNA転写物(NM_016835.4)によってコードされる758アミノ酸の長さのタンパク質であるヒト大型タウ、またはそのアイソフォームが挙げられる。例示されるヒト大型タウのアミノ酸配列はGenBank受託番号NP_058519.3に表される。本明細書で使用する場合、「タウ」という用語には、ヒト以外の種、例えば、カニクイザル(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)、リーサスザル、またはチンパンジー(Pan troglodytes)(チンパンジー)由来のタウの相同体が含まれる。本明細書で使用する場合、「タウ」という用語には、全長野生型タウの変異、例えば点変異、断片、挿入、欠失、およびスプライスバリアントを含むタンパク質が含まれる。「タウ」という用語にはまた、タウアミノ酸配列の翻訳後修飾が包含される。翻訳後修飾としては、これに限定されないが、リン酸化が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結した、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関連する天然に存在する構造バリアント、およびその天然に存在しない合成アナログを指す。この用語は、任意のサイズ、構造、または機能のペプチドを指す。典型的には、ペプチドは少なくとも3アミノ酸の長さである。ペプチドは、天然に存在するペプチド、組換えペプチド、もしくは合成ペプチド、またはそれらの任意の組合せであり得る。合成ペプチドは、例えば全自動ポリペプチド合成装置を使用して合成することができる。タウペプチドの例としては、約5~約30アミノ酸長、好ましくは約10~約25アミノ酸長、より好ましくは約16~約21アミノ酸長のタウタンパク質の任意のペプチドが挙げられる。本開示では、ペプチドは、リン酸残基が「p」で示される標準的な3または1文字アミノ酸略記法を使用してN末端からC末端へと列挙される。本発明に有用なタウペプチドの例としては、これらに限定されないが、配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列を含むタウペプチド、または配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%同一のアミノ酸配列を有するタウペプチドが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ホスホペプチド」または「ホスホエピトープ」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基においてリン酸化されているペプチドを指す。タウホスホペプチドの例としては、1つまたは複数のリン酸化アミノ酸残基を含む任意のタウペプチドが挙げられる。
【0052】
本発明のタウペプチドは、固相ペプチド合成法または組換え発現系によって合成することができる。自動ペプチド合成装置は数多くの供給業者、例えばApplied Biosystems(Foster City、Calif.)から市販されている。組換え発現系としては、細菌、例えば大腸菌(E. coli)、酵母、昆虫細胞、または哺乳動物細胞を挙げることができる。組換え発現の手順は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (C.S.H.P. Press, NY 2d ed., 1989)によって記載されている。
【0053】
特定の実施形態において、リポソームは1つまたは複数のタウペプチドを含む。特定の実施形態において、リポソーム中のタウペプチドは同じであっても異なっていてもよい。本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なタウペプチドも本発明に使用することができる。特定の実施形態において、1つまたは複数のタウペプチドは、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、1つまたは複数のタウペプチドは、配列番号1~12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%同一のアミノ酸配列を含み、いずれのアミノ酸残基もリン酸化されていないか、または1つもしくは複数のアミノ酸残基がリン酸化されている。
【0054】
特定の実施形態において、1つまたは複数のタウペプチドはタウホスホペプチドである。特定の実施形態において、1つまたは複数のタウホスホペプチドは、配列番号1~3もしくは5~12のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号1~3もしくは5~12のうちの1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%同一のアミノ酸配列を含み、1つまたは複数の示されたアミノ酸残基はリン酸化されている。好ましくは、タウホスホペプチドは、配列番号1~3のうちの1つのアミノ酸配列を含む。タウペプチドは、C末端がアミド化されていてもよい。
【0055】
本出願の実施形態において、タウペプチドはリポソームの表面に提示されている。タウペプチド、好ましくは、タウホスホペプチドは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用してリポソームの表面に提示され得る。例えば、それらの内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,647,631号および同第9,687,447号、ならびに国際特許出願第PCT/US18/57286号における関連する開示を参照のこと。特定の実施形態において、ホスホペプチドを含む1つまたは複数のタウペプチドは、タウペプチドをリポソームの表面に提示させる1つまたは複数の修飾、例えばパルミトイル化またはドデシル修飾をさらに含む。追加のアミノ酸残基、例えば、Lys、Cys、または場合によりSerもしくはThrは、タウペプチドに付加されて修飾を容易にすることができる。脂質アンカーの位置がペプチド配列の異なる立体構造を誘導することが報告された(Hickman et al., J. Biol. Chem. vol. 286, No. 16, pp. 13966-13976, April 22, 2011)。理論に拘束されることを望むものではないが、疎水性部分を両末端に付加することは、タウペプチドの病理的なベータシート立体構造を増大し得ると考えられる。したがって、1つまたは複数のタウペプチドは、両末端に疎水性部分をさらに含む。修飾タウペプチドは、C末端がアミド化されていてもよい。好ましくは、リポソームの表面に提示されているタウペプチドは、配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38のうちの1つのアミノ酸配列からなる。
【0056】
本発明に有用なタウリポソームの例としては、これらに限定されないが、米国特許第8,647,631号および同第9,687,447号、ならびに国際特許出願第PCT/US18/57286号に記載されているタウリポソームが挙げられ、それぞれの開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、対象において所望の生物学的または医学的応答を誘発する有効成分または構成成分の量を指す。特定の有効用量の選択は、処置または防止される疾患、関係している症状、患者の体重、患者の免疫状況、および当業者によって公知の他の因子を含むいくつかの因子の考慮に基づいて、当業者によって(例えば臨床試験を介して)決定することができる。製剤に用いられる正確な用量は、投与方法、投与経路、標的部位、患者の生理状態、投与される他の医薬、および疾患の重症度にも依存し得、実施者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。例えば、タウホスホペプチドの有効量は、アジュバントもまた投与されるか否かにも依存し、アジュバントの非存在下ではより高い投薬量が必要とされる。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から外挿することができる。
【0058】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、脳炎等の重度有害事象を誘発せずに抗リン酸化タウ抗体のレベルを増加させるのに十分な量のタウホスホペプチドを含む。特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり約25nmole~約750nmole、例えば1用量当たり約29.7nmole~約742.5nmole、好ましくは1用量当たり約90nmole~約715nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約712.8nmole、または1用量当たり約90nmole~約535nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約534.6nmole、または1用量当たり約90nmole~約275nmole、例えば1用量当たり約89.1nmole~約267.3nmoleの量のタウホスホペプチドを含む。投与されるタウホスホペプチドの量は、重量で表すこともできる。例えば、1用量当たり29.7nmoleは1用量当たり100μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり742.5nmoleは1用量当たり2500μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり89.1nmoleは1用量当たり300μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり712.8nmoleは1用量当たり2400μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応し、1用量当たり534.6nmoleは1用量当たり1800μgの配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドに対応する。テトラパルミトイル化タウホスホペプチドは、タウホスホペプチドのリポソームの表面への提示を可能にする4本の脂質鎖を有する。300、900、1800μgの用量の配列番号28のアミノ酸配列からなるテトラパルミトイル化タウホスホペプチドは、それぞれ169、508、1016μgの、いずれの脂質鎖も有しない対応する「裸の」ペプチドに対応する。
【0059】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり約25nmole~約750nmoleの量のタウホスホペプチド、例えば1用量当たり約25nmole、約30nmole、約35nmole、約40nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約60nmole、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmole、約85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、約125nmole、約150nmole、約175nmole、約200nmole、約225nmole、約250nmole、約275nmole、約300nmole、約325nmole、約350nmole、約375nmole、約400nmole、約425nmole、約450nmole、約475nmole、約500nmole、約525nmole、約550nmole、約575nmole、約600nmole、約625nmole、約650nmole、約675nmole、約700nmole、約725nmole、約750nmoleの配列番号1~3または5~12のうちの1つのアミノ酸配列を含むタウホスホペプチドを含む。好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38のうちの1つのアミノ酸配列からなる。より好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号28のアミノ酸配列からなる。
【0060】
本出願の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり100μg~2500μg、300μg~2400μg、300μg~1800μg、または300μg~900μg、例えば1用量当たり100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μg、1100μg、1200μg、1300μg、1400μg、1500μg、1600μg、1700μg、1800μg、1900μg、2000μg、2100μg、2200μg、2300μg、2400μg、または2500μgの量のテトラパルミトイル化タウホスホペプチドを含む。
【0061】
本出願の実施形態において、タウホスホペプチドはリポソームの表面に提示されている。本出願の実施形態において、タウホスホペプチドは配列番号1~3または5~12のうちの1つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38のうちの1つのアミノ酸配列からなる。より好ましくは、タウホスホペプチドは配列番号28のアミノ酸配列からなる。
【0062】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg~900μg、好ましくは100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストをさらに含む。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり30μg、50μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、330μg、360μg、390μg、420μg、450μg、480μg、500μg、520μg、540μg、560μg、580μg、600μg、700μg、800μg、または900μgの量のtoll様受容体4アゴニストを含むことができる。
【0063】
本出願の実施形態において、toll様受容体4は3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)を含む。
【0064】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg~625μg、好ましくは、75μg~550μg、例えば75μg~450μg、80μg~540μg、82.5μg~535μg、85μg~530μg、87.5μg~525μg、または90μg~520μgのヘルパーT細胞エピトープをさらに含む。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり25μg、50μg、70μg、72.5μg、75μg、77.5μg、80μg、82.5μg、85μg、87.5μg、90μg、100μg、125μg、150μg、175μg、200μg、225μg、250μg、275μg、300μg、325μg、350μg、375μg、400μg、425μg、450μg、475μg、500μg、525μg、550μg、575μg、600μg、または625μgの量のヘルパーT細胞エピトープを含むことができる。
【0065】
本出願の他の実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり約3nmole~約105nmole、例えば1用量当たり約4nmole、約5nmole、約6nmole、約7nmole、約8nmole、約9nmole、約10nmole、約15nmole、約20nmole、約25nmole、約30nmole、約35nmole、約40nmole、約45nmole、約50nmole、約55nmole、約60nmole、約65nmole、約70nmole、約75nmole、約80nmole、約85nmole、約90nmole、約95nmole、約100nmole、または約105nmoleの量のヘルパーT細胞エピトープをさらに含む。
【0066】
本出願の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号14のアミノ酸配列からなるT46ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号15のアミノ酸配列からなるT48ヘルパーT細胞エピトープ、配列番号16のアミノ酸配列からなるT51ヘルパーT細胞エピトープ、または配列番号17のアミノ酸配列からなるT52ヘルパーT細胞エピトープであり、好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号13のアミノ酸配列からなるT50ヘルパーT細胞エピトープである。
【0067】
ある特定の実施形態では、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg~1250μg、好ましくは100μg~1000μg、例えば150μg~800μg、150~900μg、125μg~950μg、または150μg~850μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドをさらに含む。例えば、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1000μg、1050μg、1100μg、1200μg、または1250μgの量の脂質化CpGオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0068】
本出願の実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号18~22のうちの1つのヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌクレオチドであり、好ましくは、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号18のヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌクレオチドである。本出願の実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、ポリエチレングリコール(PEG)を含むリンカーを介してコレステロールと共有結合により連結している、配列番号18のヌクレオチド配列を含むCpGオリゴヌクレオチドである。
【0069】
実施形態において、有効量のリポソームは、1用量当たり50μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1000μg、1050μg、1100μg、1200μg、または1250μgの、コレステロールとPEGリンカーを介して共有結合により連結しているCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0070】
本明細書で使用する場合、「持続的な免疫応答」または「持続可能な免疫応答」は、有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間持続する免疫応答を指す。本出願の実施形態において、「持続的な免疫応答」は、少なくとも6週間、少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも36週間、少なくとも48週間、少なくとも60週間、少なくとも72週間またはそれ以上持続する持続的な抗体応答であり、抗体応答は、抗リン酸化タウIgG、抗リン酸化タウIgM、または抗ePHFの存在によって特徴付けることができる。抗リン酸化タウIgG、抗リン酸化タウIgMおよび抗ePHFは、本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の任意の方法によって検出および測定することができる。
【0071】
本明細書で使用する場合、「持続する抗体応答」は、有効量のリポソームの初回投与後の特定の期間中、規定の閾値レベルに等しいかまたはそれよりも高いレベルで維持される抗体応答を指し、規定の閾値レベルは、有効量のリポソームの初回投与の前に測定されたベースラインレベルよりも高い。一部の実施形態では、ベースラインレベルは、初回投与前の抗体力価の平均測定レベルに基づいて決定され、好ましくは2回の測定が行われる。一実施形態では、抗体応答は、pタウを対象にする特異的IgG抗体応答を含み、規定の閾値レベルは、ベースラインレベルの少なくとも1.5倍またはそれ以上、例えば、ベースラインレベルの少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0倍またはそれ以上である。別の実施形態では、抗体応答は、ePHFに対するIgG免疫応答を含み、規定の閾値レベルは、ベースラインレベルの少なくとも2.0倍またはそれ以上、例えば、ベースラインレベル少なくとも2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5倍またはそれ以上である。
【0072】
特定の実施形態において、ヒト対象は、神経変性疾患、障害、または状態の処置を必要とする。
【0073】
本明細書で使用する場合、「神経変性疾患、障害、または状態」には、本開示を考慮すると、当業者に公知のあらゆる神経変性疾患、障害、または状態が含まれる。神経変性疾患、障害、または状態の例としては、神経原線維病変の形成によって引き起こされるかまたはそれと関連する神経変性疾患または障害、例えばタウオパチーと称されるタウ関連疾患、障害、または状態が挙げられる。特定の実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、外傷性脳損傷、筋萎縮性側索硬化症、グアム島のパーキンソン認知症複合、神経原線維濃縮体を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、レビー認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症(Dementia Lewy Amyotrophic Lateral sclerosis)、石灰化を伴うびまん性神経原線維濃縮体、前頭側頭型認知症、好ましくは第17染色体と連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、前頭側頭葉型認知症、ハラーホルデン・スパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、濃縮体型認知症(Tangle only dementia)、脳炎後パーキンソン症候群、筋強直性ジストロフィー、慢性外傷性脳症(CTE)、原発性年齢関連タウオパチー(PART)、脳血管症、またはレビー小体型認知症(LBD)を含むがこれらに限定されない、タウとアミロイド病理との共存を示す任意の疾患または障害が挙げられる。特定の実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態は、アルツハイマー病または別のタウオパチーである。好ましい実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態は、アルツハイマー病である。
【0074】
アルツハイマー病の臨床経過は、認知および機能障害の進行パターンにより複数の段階に分けることができる。段階は、例えばNIA-AA研究枠組みを含む当技術分野で公知の評価尺度を使用して定義することができる。例えば、それぞれの内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Dubois et al., Alzheimer's & Dementia 12 (2016) 292-323、Dubois et al., Lancet Neurol 2014; 13: 614-29、Jack et al., Alzheimer's & Dementia 14 (2018) 535-562を参照のこと。
【0075】
好ましい実施形態において、神経変性疾患、障害、または状態は、早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病である。
【0076】
一部の実施形態では、処置を必要とする対象は、脳においてアミロイド陽性であるが、顕著な認知障害をまだ示していない。脳におけるアミロイド沈着は、当技術分野で公知の方法、例えば、PET走査、免疫沈降質量分析、または他の方法を使用して検出することができる。
【0077】
本明細書で使用する場合、「toll様受容体」または「TLR」という用語は、自然免疫応答において重要な役割を果たすパターン認識受容体(PRR)タンパク質のクラスを指す。TLRは、宿主分子と区別することができる、微生物病原体、例えば、細菌、真菌、寄生虫、およびウイルス由来の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。TLRは、典型的には二量体として機能し、抗原提示樹状細胞および貪食マクロファージを含む自然免疫応答に関与する細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。少なくとも10のヒトTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR10、ならびに少なくとも12のマウスTLRファミリーメンバー、すなわちTLR1~TLR9およびTLR11~TLR13が存在し、これらは認識する抗原の種類の点で異なる。例えば、TLR4は、多くのグラム陰性菌に存在する構成成分であるリポ多糖(LPS)、ならびにウイルスタンパク質、多糖、および内在性タンパク質、例えば、低密度リポタンパク質、ベータデフェンシン、および熱ショックタンパク質を認識し、TLR9は、原核ゲノムにおいては豊富に存在するが脊椎動物ゲノムにおいては希少である非メチル化シトシン-リン酸-グアニン(CpG)一本鎖または二本鎖ジヌクレオチドによって活性化するヌクレオチド感知性TLRである。TLRの活性化は一連のシグナル伝達事象を引き起こし、I型インターフェロン(IFN)、炎症性サイトカイン、およびケモカインの産生、ならびに免疫応答の誘導をもたらす。最終的に、この炎症は獲得免疫系も活性化させ、次いで侵入病原体および感染細胞の排除をもたらす。
【0078】
本明細書で使用する場合、「アゴニスト」という用語は、1つまたは複数のTLRに結合し、受容体媒介性応答を誘導する分子を指す。例えば、アゴニストは、受容体の活性を誘導するか、賦活化するか、上昇させるか、活性化させるか、容易にするか、増強するか、または上方調節することができる。そのような活性は「アゴニスト活性」と称される。例えば、TLR4またはTLR9アゴニストは、結合した受容体を介して細胞シグナル伝達を活性化または増加させることができる。アゴニストとしては、これらに限定されないが、核酸、低分子、タンパク質、炭水化物、脂質、または受容体と結合もしくは相互作用する任意の他の分子が挙げられる。アゴニストは天然受容体リガンドの活性を模倣することができる。アゴニストは、配列、立体構造、電荷、またはアゴニストが受容体によって認識されることが可能となるような他の特徴に関して、これらの天然受容体リガンドと一致し得る。この認識は、天然受容体リガンドが存在する場合と同様に細胞がアゴニストの存在に反応するように、生理学的および/または生化学的変化を細胞内に生じ得る。特定の実施形態において、toll様受容体アゴニストは、toll様受容体4アゴニストおよびtoll様受容体9アゴニストのうちの少なくとも一方である。
【0079】
本明細書で使用する場合、「誘導する」および「賦活化する」という用語ならびにそれらの変化形は、細胞活性の任意の測定可能な上昇を指す。免疫応答の誘導としては、例えば、免疫細胞の集団の活性化、増殖、もしくは成熟、サイトカインの産生を増加させること、および/または免疫機能の増加の別の指標を挙げることができる。ある特定の実施形態では、免疫応答の誘導としては、B細胞の増殖を高めること、抗原特異的抗体を産生させること、抗原特異的T細胞の増殖を高めること、樹状細胞抗原提示を向上すること、ならびに/またはある特定のサイトカイン、ケモカイン、および共刺激マーカーの発現を増加させることを挙げることができる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「toll様受容体4アゴニスト」という用語は、TLR4のアゴニストとして作用する任意の化合物を指す。本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なtoll様受容体4アゴニストも本発明に使用することができる。本発明に有用なtoll様受容体4リガンドの例としては、モノホスホリルリピドA(MPLA)を含むがこれに限定されないTLR4アゴニストが挙げられる。本明細書で使用する場合、「モノホスホリルリピドA」または「MPLA」という用語は、内毒素であるグラム陰性菌リポ多糖(LPS)の生物学的に活性な部分であるリピドAの修飾形態を指す。MPLAは、LPSよりも毒性が低いが、免疫賦活活性を維持する。ワクチンアジュバントとして、MPLAは、ワクチン抗原に対する細胞性応答と液性応答の両方を賦活化する。MPLAの例としては、これらに限定されないが、3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA、モノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシル(合成)(3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)とも称される)、モノホスホリル3-脱アシルリピドA、およびそれらの構造的に関連する変種が挙げられる。本発明に有用なMPLAは、当技術分野で公知の方法を使用するか、または商業的供給源から取得することができ、例えば、Avanti Polar Lipids(Alabaster、Alabama、USA)製の3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)、PHAD(登録商標)、PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標)、または様々な商業的供給源からのMPL(商標)である。特定の実施形態において、toll様受容体4アゴニストはMPLAである。特定の実施形態において、タウホスホペプチドとtoll様受容体4アゴニストとを含むリポソームは、大半または全てのHLA DR(ヒト白血球抗原-抗原D関連)分子と結合することができるヘルパーT細胞エピトープも含む。ヘルパーT細胞エピトープは次いで、CD4T細胞を活性化させることができ、不可欠な成熟および生存シグナルをタウ特異的B細胞に提供する。タウリポソームは、リポソームがプライムおよび/またはブーストにおいて使用される同種または異種免疫化スキームにおいて、pタウ抗原に対する高品質抗体を生成するために使用することができる。
【0081】
本明細書で使用する場合、「ヘルパーT細胞エピトープ」という用語は、ヘルパーT細胞による認識が可能であるエピトープを含むポリペプチドを指す。ヘルパーT細胞エピトープの例としては、これらに限定されないが、破傷風トキソイド(例えば、それぞれT2およびT30とも命名されるP2およびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、コレラ毒素B、ジフテリアトキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)主要外膜タンパク質、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)スポロゾイト周囲T、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)CS抗原、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)トリオースリン酸イソメラーゼ、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ペルツサリア・トラキタリナ(Pertusaria trachythallina)、大腸菌(Escherichia coli)TraT、ならびにインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)が挙げられる。
【0082】
本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なヘルパーT細胞エピトープも本発明に使用することができる。特定の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは配列番号23~配列番号26からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、リンカー、例えば1つまたは複数のアミノ酸、例えば、Val(V)、Ala(A)、Arg(R)、Gly(G)、Ser(S)、Lys(K)を含むペプチドリンカーを介して一緒に融合した、配列番号23~配列番号26のアミノ酸配列のうちの2つ以上を含む。リンカーの長さは変えることができ、好ましくは1~5アミノ酸である。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは、VVR、GS、RR、RKからなる群から選択される1つまたは複数のリンカーを介して一緒に融合した、配列番号23~配列番号26のアミノ酸配列のうちの3つ以上を含む。ヘルパーT細胞エピトープは、そのC末端がアミド化されていてもよい。
【0083】
本出願の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープは、リポソーム表面に組み込む、例えば共有結合した疎水性部分によって固定することができ、ここで前記疎水性部分は、特に少なくとも3個の炭素原子、特に少なくとも4個の炭素原子、特に少なくとも6個の炭素原子、特に少なくとも8個の炭素原子、特に少なくとも12個の炭素原子、特に少なくとも16個の炭素原子の炭素骨格を有する、アルキル基、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質、特にアルキル基または脂肪酸である。本発明の一実施形態では、疎水性部分はパルミチン酸である。あるいは、ヘルパーT細胞エピトープはリポソームに封入することができる。特定の実施形態において、ヘルパーT細胞エピトープはリポソームに封入される。
【0084】
本開示を考慮すると、ヘルパーT細胞エピトープは、リポソームにおける所望の位置のために当技術分野で公知の方法を使用して修飾することができる。特定の実施形態において、本発明に有用なヘルパーT細胞エピトープは配列番号39~配列番号44のうちの1つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、ヘルパーT細胞エピトープは配列番号13~配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0085】
特定の実施形態において、タウホスホペプチドとtoll様受容体4アゴニストとを含むリポソームは、toll様受容体9アゴニストも含む。本明細書で使用する場合、「toll様受容体9アゴニスト」という用語は、TLR9のアゴニストとして作用する任意の化合物を指す。本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なtoll様受容体9アゴニストも本発明に使用することができる。本発明に有用なtoll様受容体9リガンドの例としては、CpGオリゴヌクレオチドを含むがこれに限定されないTLR9アゴニストが挙げられる。
【0086】
本明細書で使用する場合、「CpGオリゴヌクレオチド」、「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」、または「CpG ODN」という用語は、少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを指す。本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴデオキシヌクレオチド」または「ODN」とは、複数の連結したヌクレオチド単位から形成されるポリヌクレオチドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、現存する核酸源から取得することができるか、または合成法によって生産することができる。本明細書で使用する場合、「CpGモチーフ」という用語は、リン酸結合またはホスホジエステル骨格または他のヌクレオチド間連結によって連結した非メチル化シトシン-リン酸-グアニン(CpG)ジヌクレオチド(すなわち、シトシン(C)の次にグアニン(G)が続く)を含有するヌクレオチド配列を指す。
【0087】
特定の実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは脂質化、すなわち脂質部分とコンジュゲート(共有結合により連結)している。
【0088】
本明細書で使用する場合、「脂質部分」とは、親油性構造を含有する部分を指す。脂質部分、例えば、アルキル基、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質、特にコレステロール等のステロールまたは脂肪酸は、高度に親水性の分子、例えば核酸に結合する場合、血漿タンパク結合、および結果として親水性分子の循環半減期を実質的に向上させることができる。加えて、ある特定の血漿タンパク質、例えばリポタンパク質に結合することは、対応するリポタンパク質受容体(例えば、LDL受容体、HDL受容体、またはスカベンジャー受容体SR-B1)を発現する特定の組織への取込みを増加させることが示されている。特に、ホスホペプチドおよび/またはCpGオリゴヌクレオチドとコンジュゲートした脂質部分は、前記ペプチドおよび/またはオリゴヌクレオチドをリポソームの膜に疎水性部分を介して固定することを可能にする。
【0089】
特定の実施形態において、本開示を考慮すると、CpGオリゴヌクレオチドはいかなる好適なヌクレオチド間連結も含むことができる。
【0090】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド間連結」という用語は、2つのヌクレオチドをそれらの糖を介してつなぐ、隣接するヌクレオシド間のリン原子および荷電または中性基からなる化学的連結を指す。ヌクレオチド間連結の例としては、ホスホジエステル(po)、ホスホロチオエート(ps)、ホスホロジチオエート(ps2)、メチルホスホネート(mp)、およびメチルホスホロチオエート(rp)が挙げられる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、およびメチルホスホロチオエートは安定化ヌクレオチド間連結であり、ホスホジエステルは天然に存在するヌクレオチド間連結である。オリゴヌクレオチドホスホロチオエートは典型的にはRpおよびSpホスホロチオエート連結の無作為なラセミ混合物として合成される。
【0091】
本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適なCpGオリゴヌクレオチドも本発明に使用することができる。そのようなCpGオリゴヌクレオチドの例としては、これらに限定されないが、CpG2006(CpG7909としても公知)(配列番号18)、CpG1018(配列番号19)、CpG2395(配列番号20)、CpG2216(配列番号21)、またはCpG2336(配列番号22)が挙げられる。
【0092】
CpGオリゴヌクレオチドは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用して脂質化することができる。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドはコレステロール分子と共有結合により直接連結する。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドの3’末端はコレステロール分子とリン酸結合によって、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結する。一部の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドの5’末端はコレステロール分子とリン酸結合によって、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結する。他の親油性部分もまたCpGオリゴヌクレオチドの5’または3’末端と共有結合により連結することができる。例えば、CpGオリゴヌクレオチドは、リポソーム由来のリン脂質と同じ長さの脂質アンカー、例えば1本のパルミチン酸鎖(カップリングのために活性化させたPal-OHもしくは類似体を使用する)、または2つのパルミチン酸(例えば、カップリングのために活性化させた1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)もしくは類似体を使用する)と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結することができる。例えば、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,741,297号における関連する開示を参照のこと。PEGの長さは変えることができ、例えば1~5PEG単位である。
【0093】
他のリンカーもまた、CpGオリゴヌクレオチドを親油性部分(例えばコレステロール分子)に共有結合により接続するために使用することができ、その例としては、これに限定されないが、3~12個の炭素を有するアルキルスペーサーが挙げられる。オリゴヌクレオチド化学と適合性の短いリンカーはアミノジオールとして必要である。ある実施形態では、リンカーは共有結合に使用されない。例えば、その関連する開示が参照によって本明細書に組み込まれる、Ries et al., "Convenient synthesis and application of versatile nucleic acid lipid membrane anchors in the assembly and fusion of liposomes," Org. Biomol. Chem., 2015, 13, 9673を参照のこと。
【0094】
特定の実施形態において、本発明に有用な脂質化CpGオリゴヌクレオチドは配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含み、ヌクレオチド配列は少なくとも1つのコレステロールとリンカーを介して共有結合により連結している。好ましい実施形態において、脂質化CpGオリゴヌクレオチドは、配列番号18のヌクレオチド配列を含み、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、コレステロールと共有結合により連結している。いかなる好適なリンカーも、CpGオリゴヌクレオチドをコレステロール分子と共有結合により連結するために使用することができる。好ましくは、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0095】
特定の実施形態において、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される1つまたは複数の脂質をさらに含む。
【0096】
特定の実施形態において、リポソームは緩衝液をさらに含む。本開示を考慮すると、当業者に公知のいかなる好適な緩衝液も本発明に使用することができる。一実施形態では、リポソームはリン酸緩衝食塩水を含む。特定の実施形態において、緩衝液はヒスチジンおよびスクロースを含む。
【0097】
本発明に使用される例示的なリポソームは、タウテトラパルミトイル化ホスホペプチド(pタウペプチドT3、配列番号28)であって、該タウペプチドの各末端の2つのパルミチン酸を介してリポソームの表面に提示されている、タウテトラパルミトイル化ホスホペプチド;コレステロール分子を介してリポソーム膜に組み込まれている脂質化CpG(アジュバントCpG7909(CpG2006)、配列番号18)を含むTLR-9リガンドであって、コレステロール分子がCpGとPEGリンカーを介して共有結合により連結している、TLR-9リガンド;膜に組み込まれているTLR-4リガンド(モノホスホリルリピドA(例えば3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)));封入されたヘルパーT細胞エピトープ(PAN-DR結合部位T50、配列番号13);ならびにリポソームの脂質構成成分としての1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-コリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)]ナトリウム塩(DMPG)、およびコレステロールを含む。
【0098】
本発明のリポソームは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。リポソームの各構成成分の最適な比は、本開示を考慮すると、当業者に公知の技法によって決定することができる。
【0099】
リポソームは、予防および/または治療処置に好適な手段によって投与することができる。好ましい実施形態において、リポソームは皮下または筋肉内注射によって投与される。筋肉内注射は最も典型的には腕または脚の筋肉に対して実施される。
【0100】
全般的な一態様では、本発明は、治療有効量のリポソームを薬学的に許容される賦形剤および/または担体と一緒に含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される賦形剤および/または担体は当技術分野で周知である(Remington's Pharmaceutical Science (15th ed.), Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1980を参照のこと)。医薬組成物の好ましい製法は、所期の投与方法および治療用途に依存する。組成物は、動物またはヒト投与のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤は、組合せ体の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。加えて、医薬組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性、および非免疫原性安定剤等を含んでもよい。担体、賦形剤、または希釈剤の特徴は特定の用途のための投与経路に依存し得ることが理解されるだろう。
【0101】
ワクチンの標的抗原は脳に位置しており、脳は血液脳関門(BBB)と呼ばれる特殊な細胞構造によって循環から隔てられている。BBBは物質の循環から脳への移行を制限する。このことは毒素、微生物等の中枢神経系への進入を防止する。BBBはまた、免疫メディエーター(例えば抗体)の、脳を囲む間質液および脳脊髄液への効率的な進入を妨げるという潜在的により望ましくない効果を有する。
【0102】
体循環に存在する抗体のうちのおよそ0.1%がBBBを越えて脳に進入する。これは、CNS抗原を標的とするワクチンによって誘導される全身力価が、脳において有効となる最小有効力価よりも少なくとも1000倍大きくなければならないことを示唆する。有効性をもたらすために必要となる血清中の抗体の最小力価は容易には明らかでない。加えて、免疫応答の量だけでなく質(例えばアビディティ)も、CNS障害、例えば神経変性疾患、障害、または状態を標的とする安全かつ効果的な免疫療法のために考慮しなければならない。
【0103】
抗体のアビディティは、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法を使用してアビディティ指数によって測定することができる。特定の抗原に対する抗体の力価は、コーティングされた抗原の2つの異なる濃度で測定される:一方は全ての抗体が抗原に結合することができる飽和濃度であり、もう一方は非常に高い結合能を有する抗体のみが抗原に結合することができる低濃度である。本明細書で使用する場合、「アビディティ指数」は、抗原の低密度コーティングおよび高密度コーティングで測定される抗体力価のレベルの比を指す。例えば、抗原、例えばePHFまたはpタウに対する抗体のアビディティを、1回の免疫化の後もしくは複数の免疫化の後に複数の異なる時点で測定して、アビディティ(アビディティ指数によって測定した場合)が経時的に増加するか否かを評価することができる。本明細書で使用する場合、抗原に対する「アビディティの増加」または「結合アビディティの増加」を有する抗体は、処置または免疫化の過程において経時的に、抗原に対するアビディティ指数の増加を有する抗体を指す。アビディティの増加は、抗体の親和性成熟の可能性があることを示唆する。
【0104】
したがって、特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、対象において所望の免疫応答を達成するために1種または複数種の好適なアジュバントをさらに含む。好適なアジュバントは、リポソームの投与の前、後、または同時に投与することができる。好ましいアジュバントは、応答の質的な形式に影響を及ぼす免疫原の立体構造変化を引き起こさずに、免疫原に対する固有の応答を増大させる。アジュバントの例は、アルミニウム塩(アラム)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムである。そのようなアジュバントは、他の特異的免疫賦活剤、例えば、MPLA類(3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、モノホスホリルヘキサアシルリピドA 3-脱アシル合成(3D-(6-acyl)PHAD(登録商標)、PHAD(商標)、PHAD(登録商標)-504、3D-PHAD(登録商標))リピドA)、ポリマーもしくはモノマーアミノ酸、例えばポリグルタミン酸もしくはポリリジンと共にまたはこれらを伴わずに使用することができる。そのようなアジュバントは、他の特異的免疫賦活剤、例えば、ムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-isoglu-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)Theramide(商標))、もしくは他の細菌細胞壁構成成分と共にまたはこれらを伴わずに使用することができる。水中油型エマルションとしては、マイクロ流動化装置を使用してマイクロメートル未満の粒子に製剤化される、5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85を含有する(任意選択で、様々な量のMTP-PEを含有する)MF59(国際公開第90/14837号パンフレットを参照のこと);マイクロメートル未満のエマルションにマイクロ流動化されるかまたはより大きな粒径のエマルションを生成するためにボルテックスされる、10%スクアレン、0.4%Tween80、5%pluronicブロックポリマーL121、およびthr-MDPを含有するSAF;ならびにRibi(商標)アジュバントシステム(RAS)(Ribi ImmunoChem、Hamilton、Mont.)0.2%Tween80、および、モノホスホリルリピドA(MPL(商標))、トレハロースジミコール酸(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL(商標)+CWS(Detox(商標))からなる群から選択される1つまたは複数の細菌細胞壁構成成分が挙げられる。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、ならびにサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL-1、IL-2、およびIL-12)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0105】
本明細書で使用する場合、「組合せにおいて」という用語は、対象への2種以上の療法の投与の文脈では、1種類よりも多い療法の使用を指す。「組合せにおいて」という用語の使用は、療法が対象に投与される順番を制限しない。例えば、第1の療法(例えば本明細書に記載される組成物)は、第2の療法の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時、または後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に対象に投与することができる。本発明の一部の実施形態では、本発明の医薬組成物を、アルツハイマー病に関与するアミロイドまたはアミロイド様タンパク質、例えばアミロイドβタンパク質に関連する一群の疾患および障害であるタウオパチーおよび/またはアミロイドーシスの医薬に使用される生物学的に活性な物質、例えば、既知の化合物と組み合わせて使用することができる。他の生物学的に活性な化合物には、神経伝達促進剤、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン系精神安定剤、アセチルコリン合成、貯蔵または放出促進剤、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-Aまたは-B阻害剤、N-メチル-0-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、およびセロトニン作動性受容体アンタゴニストが含まれ得る。特に、他の生物学的に活性な化合物は、酸化ストレスに抗する化合物、抗アポトーシス性化合物、金属キレート剤、DNA修復の阻害剤、例えばピレンゼピンおよび代謝産物、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホン酸(1,3PDS)、セクレターゼ活性化剤、およびv-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、β-シートブレーカー、抗炎症分子、またはコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、例えばタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミン、ならびに他の薬剤および栄養補助剤からなる群から、本発明の治療用ワクチン、ならびに任意選択で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に選択することができる。さらなる実施形態では、他の生物学的に活性な化合物は、ナイアシンまたはメマンチンを、本発明のリポソーム、ならびに任意選択で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に含むことができる。本発明のさらに別の実施形態では、他の化合物は、幻覚、妄想、思考障害(顕著な思考散乱、脱線、脱線思考によって現れる)、および奇異または混乱した行動、ならびに快感喪失、情動の平板化、感情鈍麻、および引きこもりを含む、陽性または陰性の精神病症状を処置する「非定型抗精神病薬」、例えば、クロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾールまたはオランザピンを、本発明のリポソームと共に含むことができる。本発明の医薬組成物と組み合わせて好適に使用することができる他の化合物は、例えば、国際公開第2004/058258号パンフレットに記載されており(特に16頁および17頁を参照)、これには治療薬標的(36~39頁)、アルカンスルホン酸およびアルカノール硫酸(39~51頁)、コリンエステラーゼ阻害剤(51~56頁)、NMDA受容体アンタゴニスト(56~58頁)、エストロゲン(58~59頁)、非ステロイド性抗炎症薬(60~61頁)、抗酸化剤(61~62頁)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)アゴニスト(63~67頁)、コレステロール低下剤(68~75頁);アミロイド阻害剤(75~77頁)、アミロイド形成阻害剤(77~78頁)、金属キレート剤(78~79頁)、抗精神薬および抗うつ薬(80~82頁)、栄養補助剤(83~89頁)、ならびに脳内での生物学的に活性な物質の利用能を増加させる化合物(89~93頁を参照)およびプロドラッグ(93頁および94頁)が含まれ、この文書は参照により本明細書に組み込まれるが、特に上に示した頁で言及されている化合物を挙げている。
【0106】
投与のタイミングは、1日に1回から1年に1回、10年に1回まで大きく変えることができる。典型的なレジメンは、免疫化と、その後の時間間隔、例えば1~24週間の間隔を空けたブースター注射とからなる。別のレジメンは、免疫化と、その後の1、2、4、6、8、10、および12か月後のブースター注射とからなる。別のレジメンは、生涯にわたる2か月ごとの注射を伴う。あるいは、ブースター注射は、免疫応答のモニタリングによって適応となる場合、不定期であってもよい。
【0107】
プライミングおよびブースティング投与に関するレジメンが投与後に測定される免疫応答に基づいて調整できることは当業者によって容易に理解される。例えば、ブースティング組成物は全般的に、プライミング組成物の投与の数週間もしくは数か月後、例えば、約1週間、もしくは2週間、もしくは3週間、もしくは4週間、もしくは8週間、もしくは16週間、もしくは20週間、もしくは24週間、もしくは28週間、もしくは32週間、もしくは36週間、もしくは40週間、もしくは44週間、もしくは48週間、もしくは52週間、もしくは56週間、もしくは60週間、もしくは64週間、もしくは68週間、もしくは72週間、もしくは76週間、またはプライミング組成物の投与の1~2年後に投与される。
【0108】
特定の態様において、1回または複数回の追加免疫が投与され得る。それぞれのプライミングおよびブースティング組成物における抗原は、いかに多くのブースティング組成物が用いられるとしても、同一である必要はなく、共通の抗原決定基を有するかまたは互いに実質的に類似するべきである。
【0109】
当業者には公知であるように、免疫原性、ブースト可能性および持続可能性は、ワクチンの有効性にとって重要な考慮事項である。本明細書に記載される有効量のリポソームの投与は、pタウに対する強力な抗体応答を、それを必要とする患者、例えば、アルツハイマー病(例えば、軽度から中等度のアルツハイマー病または早期アルツハイマー病)またはアルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)を処置することを必要とする患者において誘導することができることが、本発明において発見された。抗体応答は持続可能であり、例えば、リポソームの初回投与の後に少なくとも6週間持続する。抗体応答はまた、1回または複数回の後続のブースティング投与によって、ブーストもされる。本明細書で使用する場合、抗体応答の文脈における「ブーストされる」は、後続投与の投与の少なくとも2週間後に測定した場合に、後続の投与の後に維持または強化される抗体応答を指す。例えば、後続投与の2週間後に測定した場合の抗体力価が後続投与の前の抗体力価と比較して増加している場合には、抗体応答は、後続投与によって「ブーストされる」。
【0110】
本発明の医薬組成物は、本開示を考慮すると、当技術分野で公知の方法に従って製剤化することができる。組成物における各構成成分の最適な比は、本開示を考慮すると、当業者に公知の技法によって決定することができる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のある実施形態に従った医薬組成物の投与を介したタウペプチドの投与は、能動免疫応答、例えばタウペプチドおよびタウの病理形態に対する抗体応答を対象において誘導し、それにより、関連するタウ凝集体の排除を容易にし、タウ病態関連行動の進行を緩慢にし、および/または根底にあるタウオパチーを処置する。
【0112】
タウはヒト「自己」タンパク質である。このことは、原則として、タウに特異的な受容体を保有する全てのリンパ球が発達中に取り除かれる(中枢性免疫寛容)か、または末梢性免疫寛容機構によって不応性となるはずだったことを意味する。この問題は、自己または「変化した自己」タンパク質(例えば腫瘍抗原)に対するワクチンの開発における大きな障害であることが判明している。抗原(自己または感染性)に対する高品質抗体を生成することは、抗体を産生するBリンパ球だけでなく、CD4T「ヘルパー」リンパ球の作用も必要とする。CD4T細胞は極めて重要な生存および成熟シグナルをBリンパ球に提供し、CD4T細胞欠損動物は大いに免疫抑制される。CD4T細胞はまた免疫寛容機構の影響を受けやすく、強力な抗自己(例えば抗タウ)抗体応答を引き起こすことにおけるさらなる障害は、タウ反応性CD4T細胞がまた、ヒト/動物レパートリーにおいて希少であるかまたは存在しない可能性が高いことである。
【0113】
本発明のこの態様においては、免疫応答は、タウペプチドを対象にする有益な液性(抗体媒介性)応答、およびT細胞エピトープまたは免疫原性担体を対象にする細胞性(抗原特異的T細胞またはその分泌産物によって媒介される)応答の発生を伴う。
【0114】
本明細書で使用する場合、タウ病態関連行動表現型としては、限定されないが、認知障害、早期人格変化および脱抑制、感情鈍麻、無為、無言症、失行、保続、常同運動/行動、口唇傾向、解体、連続した課題を計画または整理する能力の欠如、利己的行動/冷淡、反社会的特徴、共感の欠如、一貫性の欠如、頻繁な錯誤的誤りを含むが理解力は比較的保たれている失文法的発言、理解力障害および喚語障害、緩徐進行性歩行不安定、後方突進、すくみ、頻回転倒、非レボドパ応答性体軸性固縮、核上性注視麻痺、矩形波眼球運動、緩徐な垂直性衝動性眼球運動、仮性球麻痺、四肢失行、ジストニア、皮質性感覚消失、ならびに振戦が挙げられる。
【0115】
本発明の方法を実行する場合、本発明の特定の実施形態において、本発明の免疫原性ペプチドまたは抗体を投与する前にアルツハイマー病もしくは他のタウオパチーを有しているかもしくは有しているリスクがある対象、タウ凝集体を脳に有している対象、または濃縮体関連行動表現型を呈している対象を選択することが好ましい。処置可能な対象としては、疾患のリスクがあるが症状を示していない個体、および症状を現在示している患者が挙げられる。アルツハイマー病の場合、事実上全ての人がアルツハイマー病に罹患するリスクがある。したがって、本方法は、対象患者のリスクに関するいかなる評価も必要とせずに、一般集団に予防的に投与することができる。本方法は、アルツハイマー病の公知の遺伝的リスクを有する個体にとって、本疾患の防止または処置のためにとりわけ有用である。そのような個体としては、該疾患を経験している親族を有する個体、および遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーの分析によってリスクが決定される個体が挙げられる。好ましい実施形態では、対象は、アルツハイマー病、好ましくは早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病の処置を必要とする。別の好ましい実施形態では、対象は、アルツハイマー病、好ましくは、前臨床期アルツハイマー病、早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)、軽度アルツハイマー病、または軽度から中等度のアルツハイマー病の防止を必要とする。前臨床期アルツハイマー病は、早期アルツハイマー病の前の病期である。
【0116】
無症候性患者では、処置は任意の年齢(例えば、10、20、30歳)で開始することができる。しかしながら、通例、患者が40、50、60、または70歳に達するまでは処置を開始する必要はない。処置は典型的にはある期間にわたり複数の投薬量を伴う。処置は、抗体、または治療剤に対する活性化T細胞もしくはB細胞応答をアッセイすることによって経時的にモニタリングすることができる。応答が低下する場合、ブースター投薬量が適応となる。
【0117】
予防用途では、タウペプチドを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病もしくは他のタウオパチーに罹患しやすいかまたはそうでなければそれらのリスクがある患者に、疾患の生化学的、組織学的、および/または行動学的症状、その合併症、ならびに疾患の発生中に現れる病理学的中間表現型を含む疾患の、リスクを取り除くもしくは低下させるか、重症度を軽減するか、または発症を遅延させるのに十分な量投与される。治療用途では、タウペプチドを含有する医薬組成物は、そのような疾患の疑いがあるか、またはすでに罹患している患者に、疾患の合併症および疾患の発生における病理学的中間表現型を含む疾患の症状(生化学的、組織学的、および/または行動学的)を治療するか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量投与される。
【0118】
組成物は、所望される場合、有効成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有することができるキット、容器、または分注装置において提供することができる。キットは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチック箔を含むことができる。キット、容器、または分注装置には投与のための説明書を添付することができる。
【0119】
実施形態
本発明はまた、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0120】
実施形態1.免疫応答、例えばリン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する抗体応答を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の、配列番号27~配列番号29および配列番号31~配列番号38のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルリピドAを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号13~配列番号17、配列番号23~配列番号26、および配列番号39~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するCpGオリゴヌクレオチド
とを含む有効量のリポソームを対象に投与することを含み、
タウホスホペプチドがリポソームの表面に提示され、
抗体応答が、ヒト対象への有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間持続する、方法。
【0121】
実施形態2:有効量のリポソームが、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量の、配列番号28のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドと、
(2)1用量当たり100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストと、
(3)1用量当たり75μg~450μgの量のヘルパーT細胞エピトープと、
(4)1用量当たり150μg~800μgの量のCpGオリゴヌクレオチド
とを含む、実施形態1に記載の方法。
【0122】
実施形態3.有効量のリポソームが、1用量当たり300μg、900μgまたは1800μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0123】
実施形態3a.有効量のリポソームが、1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0124】
実施形態3b.有効量のリポソームが、1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0125】
実施形態3c.有効量のリポソームが、1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0126】
実施形態4.有効量のリポソームが皮下投与される、実施形態1~3cのいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態5.有効量のリポソームが筋肉内投与される、実施形態1~3cのいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態6.CpGオリゴヌクレオチドが、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有し、CpGオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの親油基と、任意選択でPEGリンカーを介して、共有結合により連結している、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態7.タウホスホペプチドが配列番号28のアミノ酸配列からなり、toll様受容体4アゴニストがモノホスホリルヘキサアシルリピドA、3-脱アシルを含み、ヘルパーT細胞エピトープが配列番号39のアミノ酸配列を含み、CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を含み、リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-3’-rac-グリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群から選択される少なくとも1つの脂質をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態8.抗体応答が病理的なタウタンパク質に対するコンフォメーション特異性を有し、それがヒト対象への有効量のリポソームの初回投与後に経時的に増加し、好ましくは抗体応答がpタウを対象にする特異的IgG抗体応答を含み、好ましくは特異的IgG抗体応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも50、60、70、80、90、100倍またはそれ以上の高さの抗pタウIgG力価を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態9.抗体応答が、特異的IgM抗体応答の、pタウを対象にする特異的IgG抗体応答へのクラススイッチを、記憶形成の指標を伴って誘導する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態10.抗体応答が、pタウを非リン酸化タウタンパク質よりも選好的に認識するIgG免疫応答を含み、好ましくは抗pタウIgG力価と抗タウIgG力価との比が少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態10a.pタウに対するIgG免疫応答が経時的に維持される、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態10b.非リン酸化タウタンパク質に対するIgG免疫応答が経時的に低下する、実施形態1~10aのいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態11.抗体応答が、濃縮対らせん状細線維(ePHF)に対するIgG免疫応答を含む、実施形態1~10bのいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態12.IgG免疫応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ以上の高さの抗ePHF IgG力価を有する、実施形態11に記載の方法。
【0137】
実施形態12a.IgG免疫応答が、ePHFへの結合に対するより強い選好性に向かって成熟し、同時に非リン酸化タウに対する抗体力価を低下させる、実施形態11または12に記載の方法。
【0138】
実施形態12b.IgG免疫応答が、非リン酸化タウに対するIgG力価よりも、ePHFに対してより高いIgG力価を有する、実施形態11または12に記載の方法。
【0139】
実施形態13.抗ePHF IgGが、有効量のリポソームの初回投与の後に少なくとも6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間またはそれ以上にわたって病理的なePHFタウに対する結合アビディティの増加を有し、好ましくは抗ePHF IgGが少なくとも0.3、0.4、0.5、0.6、または0.7のアビディティ指数を有する、実施形態11、12、12aまたは12bに記載の方法。
【0140】
実施形態14.有効量のリポソームの初回投与の4~12週間後、例えば8週間後に第2の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態14a.有効量のリポソームが、初回投与および第2の用量のそれぞれについて1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量が初回投与の8週間後に対象に投与される、実施形態14に記載の方法。
【0142】
実施形態14b.有効量のリポソームが、初回投与および第2の用量のそれぞれについて1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量が初回投与の8週間後に対象に投与される、実施形態14に記載の方法。
【0143】
実施形態14c.有効量のリポソームが、初回投与および第2の用量のそれぞれについて1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量が初回投与の8週間後に対象に投与される、実施形態14に記載の方法。
【0144】
実施形態15.pタウに対するIgG免疫応答を含む抗体応答が、第2の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、実施形態14~14cのいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態15a.抗ePHF IgG応答が、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に、第2の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされる、実施形態15に記載の方法。
【0146】
実施形態16.有効量のリポソームの初回投与の20~28週間後、例えば24週間後に第3の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む、実施形態14~15aのいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態16a.有効量のリポソームが、初回投与、第2の用量および第3の用量のそれぞれについて1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量および第3の用量が初回投与のそれぞれ8週間後および24週間後に対象に投与される、実施形態16に記載の方法。
【0148】
実施形態16b.有効量のリポソームが、初回投与、第2の用量および第3の用量のそれぞれについて1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量および第3の用量が初回投与のそれぞれ8週間後および24週間後に対象に投与される、実施形態16に記載の方法。
【0149】
実施形態16c.有効量のリポソームが、初回投与、第2の用量および第3の用量のそれぞれについて1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含み、第2の用量および第3の用量が初回投与のそれぞれ8週間後および24週間後に対象に投与される、実施形態16に記載の方法。
【0150】
実施形態17.pタウに対するIgG免疫応答を含む抗体応答が、第3の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第3の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、実施形態16~16cのいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態17a.抗ePHF IgG応答が、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に、第3の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされる、実施形態17に記載の方法。
【0152】
実施形態18.有効量のリポソームの初回投与の44~52週間後、例えば48週間後に第4の用量の有効量のリポソームを対象に投与することをさらに含む、実施形態16~17aのいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態18a.有効量のリポソームが、初回投与、第2、第3および第4の用量のそれぞれについて1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含み、第2、第3および第4の用量が初回投与のそれぞれ8週間後、24週間後および48週間後に対象に投与される、実施形態18に記載の方法。
【0154】
実施形態18b.有効量のリポソームが、初回投与、第2、第3および第4の用量のそれぞれについて1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含み、第2、第3および第4の用量が初回投与のそれぞれ8週間後、24週間後および48週間後に対象に投与される、実施形態18に記載の方法。
【0155】
実施形態18c.有効量のリポソームが、初回投与、第2、第3および第4の用量のそれぞれについて1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含み、第2、第3および第4の用量が初回投与のそれぞれ8週間後、24週間後および48週間後に対象に投与される、実施形態18に記載の方法。
【0156】
実施形態19.pタウに対するIgG免疫応答を含む抗体応答が、第4の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされ、好ましくは抗体応答が、第4の用量の有効量のリポソームの投与によって少なくとも2週間で測定した場合に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増加する、実施形態18に記載の方法。
【0157】
実施形態19a.抗ePHF IgG応答が、第2の用量の有効量のリポソームの投与の少なくとも2週間後に測定した場合に、第4の用量の有効量のリポソームの投与後にブーストされる、実施形態19に記載の方法。
【0158】
実施形態20.リン酸化タウタンパク質(pタウ)に対する持続的な免疫応答を、それを必要とするヒト対象において誘導する方法であって、
i.有効量のリポソームを含むプライミングワクチンを対象に筋肉内投与すること、および
ii.プライミングワクチンの投与の6~10週間後に有効量のリポソームを含む第1のブースターワクチンを対象に筋肉内投与すること
を含み、
持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約20週間持続し、
リポソームが、
(1)配列番号28のアミノ酸配列からなるタウホスホペプチドであって、リポソームの表面に提示されるタウホスホペプチドと、
(2)モノホスホリルリピドAを含むtoll様受容体4アゴニストと、
(3)配列番号23、24、25、および26からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヘルパーT細胞エピトープと、
(4)配列番号18~配列番号22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するCpGオリゴヌクレオチド
とを含み、
有効量のリポソームが、
(1)1用量当たり300μg~1800μgの量のタウホスホペプチドと、
(2)1用量当たり100μg~585μgの量のtoll様受容体4アゴニストと、
(3)1用量当たり75μg~550μg、例えば1用量当たり75μg~450μg、80μg~540μg、82.5μg~535μg、85μg~530μg、87.5μg~525μg、または90μg~520μgの量のヘルパーT細胞エピトープと、
(4)1用量当たり100μg~1000μg、例えば150~800μg、125μg~950μg、150μg~900μg、または150μg~850μgの量のCpGオリゴヌクレオチド
とを含む、方法。
【0159】
実施形態20a.ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号39、40、41、42、および43からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態20に記載の方法。
【0160】
実施形態20b.ヘルパーT細胞エピトープが、配列番号13、14、15、16、17、および44からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態20に記載の方法。
【0161】
実施形態20c.脂質化CpGオリゴヌクレオチドが配列番号18のヌクレオチド配列を有し、CpGオリゴヌクレオチドが少なくとも1つのコレステロールとリンカーを介して共有結合により連結している、実施形態20~20bのいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態20d.第1のブースターワクチンがプライミングワクチンの投与の8週間後に投与され、持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約24週間持続する、実施形態20~20cのいずれか1つに記載の方法。
【0163】
実施形態20e.プライミングワクチンの投与の22~26週間後に有効量のリポソームを含む第2のブースターワクチンを対象に筋肉内投与することをさらに含み、持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約36週間持続する、実施形態20~20dのいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態20f.第2のブースターワクチンがプライミングワクチンの投与の24週間後に投与され、持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約48週間持続する、実施形態20eに記載の方法。
【0165】
実施形態20g.プライミングワクチンの投与の45~50週間後に有効量のリポソームを含む第3のブースターワクチンを対象に筋肉内投与することをさらに含み、持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約60週間持続する、実施形態20eまたは20fに記載の方法。
【0166】
実施形態20h.第3のブースターワクチンがプライミングワクチンの投与の48週間後に投与され、持続的な免疫応答がプライミングワクチンの投与後に少なくとも約72週間持続する、実施形態20gに記載の方法。
【0167】
実施形態20i.有効量のリポソームが、1用量当たり300μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態20~20hのいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施形態20j.有効量のリポソームが、1用量当たり900μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態20~20hのいずれか1つに記載の方法。
【0169】
実施形態20k.有効量のリポソームが、1用量当たり1800μgのタウホスホペプチドを含む、実施形態20~20hのいずれか1つに記載の方法。
【0170】
実施形態20k1.有効量のリポソームが、1用量当たり80μg~540μgのヘルパーT細胞エピトープと、1用量当たり125μg~950μgのCpGオリゴヌクレオチドとを含む、実施形態20i~20kのいずれか1つに記載の方法。
【0171】
実施形態20k2.有効量のリポソームが、1用量当たり82.5μg~535μgのヘルパーT細胞エピトープと、1用量当たり125μg~950μgのCpGオリゴヌクレオチドとを含む、実施形態20i~20kのいずれか1つに記載の方法。
【0172】
実施形態20k3.有効量のリポソームが、1用量当たり87.5μg~525μgのヘルパーT細胞エピトープと、1用量当たり150μg~900μgのCpGオリゴヌクレオチドとを含む、実施形態20i~20kのいずれか1つに記載の方法。
【0173】
実施形態20k4.有効量のリポソームが、1用量当たり85μg~530μgのヘルパーT細胞エピトープと、1用量当たり150μg~900μgのCpGオリゴヌクレオチドとを含む、実施形態20i~20kのいずれか1つに記載の方法。
【0174】
実施形態20l.持続的な免疫応答が、pタウを非リン酸化タウタンパク質よりも選好的に認識するIgG免疫応答を含み、好ましくは抗pタウIgG力価と抗タウIgG力価との比が少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70である、実施形態20~20k4のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
実施形態20m.持続的な免疫応答が、プラセボ対照のものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ以上の高さの抗ePHF IgG力価を有する濃縮対らせん状細線維(ePHF)に対するIgG免疫応答を含む、実施形態20~20lのいずれか1つに記載の方法。
【0176】
実施形態21.対象がタウの凝集体の排除を必要とする、実施形態1~20mのいずれか1つに記載の方法。
【0177】
実施形態22.対象が、アルツハイマー病、例えば、前臨床期アルツハイマー病、軽度から中等度のアルツハイマー病または早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)の処置を必要とする、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施形態23.対象が、アルツハイマー病、例えば、前臨床期アルツハイマー病、軽度から中等度のアルツハイマー病または早期アルツハイマー病、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)の防止を必要とする、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態24.免疫応答が、リン酸化Ser396を含むエピトープに特異的に結合する抗リン酸化タウ抗体を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
実施形態25.エピトープがリン酸化Ser404をさらに含む、実施形態24に記載の方法。
【実施例
【0181】
以下の本発明の実施例は本発明の本質をさらに例証するためのものである。以下の実施例は本発明を限定せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって決定されるべきであることが理解されるべきである。
【0182】
以下の実施例において使用される実験方法は、別段の指示がない限り、全て常法である。以下の実施形態において使用される試薬は、別段の指示がない限り、全て通常の試薬供給業者から購入されている。
【0183】
以下の全ての実施例では、ACI-35.030とは、配列番号28のアミノ酸配列を有するリン酸化タウペプチド、MPLA(3D-(6-acyl)PHAD(登録商標))、DMPC、DMPG、コレステロール、配列番号13のヘルパーT細胞エピトープ、コレステロール基とPEGリンカーを介して共有結合により連結しているCpG2006オリゴヌクレオチド、および緩衝液を含有する本発明の実施形態のリポソーム製剤であり、ACI-35とは、配列番号28のアミノ酸配列を有するリン酸化タウペプチド、MPLA、DMPC、DMPG、コレステロール、および緩衝液を含有する本発明の実施形態のリポソーム製剤である。
【0184】
[実施例1]
ヒトにおけるACI-35.030の安全性および有効性に関する臨床研究
ACI-35.030ワクチン(ACI-35.030)の安全性、忍容性、および免疫原性を、欧州の早期AD(ADに起因する軽度認知障害(MCI)または軽度AD)を有する患者において行った第1b/2a相多施設二重盲検無作為化プラセボ対照臨床研究において評価する(ACI-35-1802研究)。また、clinicaltrials.govにおける研究番号NCT04445831も参照のこと。研究のデザインの概要を図1に示す。
【0185】
目的:早期AD(例えばADに起因する軽度認知障害(MCIまたは軽度AD)を有する患者における最大3種の投薬量でのACI-35.030を、早期ADを有する患者における安全性および忍容性、ならびに抗ホスホ-タウ抗体(例えば、抗pタウおよびePHFタウに結合するもの)の血清への誘導を含むタウタンパク質の異常形態に対する抗体応答の誘導に関して、74週の時間枠で評価すること。
【0186】
副次的目的:74週の時間枠で、例えばタウに対するIgG力価およびpタウとタウとに対するIgM力価の血清への誘導を評価することによって研究ワクチンの免疫原性をさらに評価すること、ならびに免疫化によって誘発される抗体のアビディティを評価すること。
【0187】
探索的目的:それぞれ74週の時間枠で、ADの進行に関する推定バイオマーカー、例えば総タウおよびpタウタンパク質の血中および/またはCSF中濃度に対する研究ワクチンの効果を探索すること;血中のT細胞の活性化に対する研究ワクチンの効果を探索すること;血中炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ、およびTNF-α)に対する研究ワクチンの効果を探索すること;行動、認知的および機能的活動に対する研究ワクチンの効果を探索すること。
【0188】
方法:3つのサブコホートのそれぞれは、48週間にわたって続く(0、8、24および48週目に用量投与)、プラセボ、または組成物におけるpタウペプチドT3の量(300μg、900μgまたは1800μgのテトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3、配列番号28)によって言及される種々の投薬量のACI-35.030と、その後の24週間の追跡期間とを受ける患者からなる。
【0189】
41名の患者が3つのサブコホートに無作為化され、各サブコホートにおいてACI-35.030またはプラセボのいずれかを受けた(実薬/プラセボ比は3:1)。用量を筋肉内投与した。
【0190】
安全性評価は、各投薬直後およびその48~72時間後に電話によって全ての研究患者に関して実施した/実施する。各サブコホートでは、最初の4名の患者の1回目の投薬は、前の患者の48~72時間での安全性評価を実施して、現場の研究責任者によって研究ワクチンと関連がある臨床的に関連のある安全性問題が存在しないことを確認してから実施した/実施する。
【0191】
全ての処置患者は、処置期間の終了後に24週間の追跡期間を有する。この期間中、患者は、最終投与の19週間後の1回目の追跡来院と、追跡期間の終了時(最終投与の26週間後)の最終来院とをするように求められる。患者の安全性は、独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)による安全性データの定期的な検討によって研究全体にわたってモニタリングする。
【0192】
中間分析を以下の通りに実行した/実行する:
【0193】
第1の中間分析は、コホート1の全てのサブコホートにおいて、それらの各々のサブコホートにおける全ての対象が4回目の来院(10週目)を完了してから、すなわち2回目の注射の2週間後に行った。目的は、この時点までのACI-35.030に関する安全性、忍容性、および免疫原性データを検討することであった。
【0194】
第2の中間分析は、サブコホート1.1、1.2、および1.3において、それらの各々のサブコホートにおける全ての対象が6回目の来院(26週目)を完了してから、すなわち、3回目の注射の2週間後に行った/行う。目的は、コホート1を延長して、免疫原性、安全性および忍容性の点で最も好ましいプロファイルを提示する用量での追加の安全性/忍容性データを収集する可能性について決定することである。
【0195】
第3の中間分析は、処置期間の終了時(すなわち4回目の注射の2週間後)に実施した。目的は、該当する場合はサブコホート拡大の患者のデータを含む、この時点までの安全性/忍容性および免疫原性データを検討することである。バイオマーカー結果は、支持的な探索データとして含めることができる。結果を、他のコホートに関してその後に取得された結果と比較して、さらなる臨床開発のための最良の戦略を全ての研究コホートから選択する。
【0196】
第4の中間分析は、追跡期間の終了時、すなわち全てのコホート1患者が11回目の来院(74週目)を完了してから実施した/実施する。目的は、第4の中間分析と同じであり、その後、結果を全てのコホートにわたって比較する。
【0197】
研究集団は、NIA-AA基準に従った軽度ADまたはADに起因するMCIの診断を有する50~75歳(男性および女性)である。
【0198】
選択基準は以下の通りである:
1.50から75歳までの男性または女性。
2.NIA-AA基準に従ったADに起因する軽度認知障害(MCI)または軽度AD、かつ0.5または1の臨床認知症評価尺度(CDR)総合スコア。
3.22以上のミニメンタルステート検査(MMSE)スコア。
4.AD病態に関するNIA-AA2018基準と矛盾しないスクリーニング時のCSFアミロイドベータ42(Aβ42)およびリン酸化タウのレベル。CSF Aβ42レベルに関して境界である症例では、アミロイド陽性を決定するのに役立つ他の結果、例えばAβ42/Aβ40比、および症例ごとの陽性アミロイドPET走査または陽性CSF Aβ42レベルの病歴を考慮してもよい。スクリーニング前3か月以内に実施したCSF試料採取の結果は、それらがアミロイド病理の存在と矛盾せず、かつ対応するCSF試料を検査のために研究に使用することができるという条件で、症例ごとに許容される。
5.ベースライン前の少なくとも3か月間に、販売されているADのためのいかなる処置も受けていないか、または安定用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬および/もしくはメマンチンを受けている患者。
6.服薬遵守を保証し、臨床評価を支援し、安全性問題を報告する信頼できる情報提供者または介護者によって介護されている患者。
7.女性は閉経後少なくとも1年経過していなければならない、および/または外科的に不妊となっていなければならない。出産の可能性があるかまたは閉経後ではない女性は、スクリーニング時に陰性の妊娠検査結果を有し、かつスクリーニング来院から参加の終了まで高度に効果的な避妊方法を使用する意思を有していなければならない。尿妊娠再検査を処置期間の全体にわたって実施して、対象が研究ワクチンを受け続けることができるかどうかを決定する。出産の可能性があるパートナーを有する男性患者は、研究中適切な避妊措置を使用する意思を有していなければならない。
8.研究者の見解において、書面によるインフォームドコンセントを理解して同意することができる患者。
9.患者および情報提供者または介護者は、研究の言語のうちの1つが流暢であり、腰椎穿刺を含む全ての研究手順に従うことができなければならない。
【0199】
除外基準は以下の通りである:
1.患者がプラセボのみを用いて処置され、プラセボ製剤がいかなる特異的免疫応答も誘導すると予期されないという文書化された証拠が存在する場合を除く、能動免疫化を使用したADおよび/または神経障害に関する以前の臨床試験への参加。
2.対象がプラセボのみを用いて処置され、プラセボがいかなる特異的免疫応答も誘導すると予期されないという文書化された証拠が存在する場合を除く、任意の受動的免疫化を使用したADおよび/または神経障害に関する以前の臨床試験へのスクリーニング前過去6か月(または被験抗体の5半減期のうち長い方)以内の参加。
3.BACE-1阻害薬を含む任意の低分子薬を使用したADおよび/または神経障害に関する以前の臨床試験へのスクリーニング前過去3か月以内の参加。
4.実験的または承認された医薬または療法を使用する任意の他の臨床試験への同時参加。
5.自己免疫疾患の臨床症状を有しない患者における少なくとも1/160の希釈度での陽性抗核抗体(ANA)力価の存在。
6.自己免疫疾患、または自己免疫疾患の存在と矛盾しない臨床症状の現在または過去の病歴。
7.スクリーニング前に3か月を超えて一時的に処方されている場合を除く、免疫抑制薬または全身性ステロイドの使用を含むがこれに限定されない免疫抑制。
8.以前のワクチンおよび/または医薬に対する重度のアレルギー反応を含むがこれに限定されない重度のアレルギー反応(例えばアナフィラキシー)の病歴。
9.臨床的に有意な低血糖エピソードの前歴。
10.精神障害の診断・統計マニュアルV(DSM-V)基準に従って現在満たされているかまたは過去5年以内に満たされていた薬物またはアルコール乱用または依存。
11.研究処置の安全性および忍容性の評価、ならびに/または全研究来院予定の遵守を妨害する可能性が高い任意の臨床的に有意な医学的状態。
12.患者における、免疫系に影響を与える可能性が高い、および/または研究ワクチンの免疫化可能性を潜在的に損なうと予期される任意の臨床的に有意な医学的状態(例えば獲得または自然免疫抑制障害の任意の病歴)。
13.ヒドララジン、プロカインアミド、キニジン、イソニアジド、TNF阻害薬、ミノサイクリンのスクリーニング直前12か月以内の使用。
14.安定用量の場合を除く、スクリーニング前の少なくとも3か月間のジルチアゼムの使用。
15.コロンビア自殺重症度評価尺度を使用して、対象が自殺念慮質問4もしくは5に「はい」と回答するかまたは過去12か月以内の自殺行動に「はい」と回答することとして定義される、顕しい自殺のリスク。
16.ADと関連があると考えられるもの以外の併発している精神または神経性障害(例えば、意識喪失を伴う頭部損傷、症候性脳卒中、パーキンソン病、重度の頸動脈閉塞性疾患、TIA)。
17.非制御型てんかん発作の病歴または存在。てんかん発作の病歴の場合、てんかん発作は、その発生がベースライン前2年以内に存在しないように良好に制御されていなければならない。抗てんかん薬の使用は、スクリーニング前の少なくとも3か月間安定用量である場合に容認される。
18.スクリーニング前過去10年以内の髄膜脳炎の病歴。
19.出血性および/または非出血性脳卒中の病歴を有する患者。
20.末梢神経障害の存在または病歴。
21.CNS関与の可能性を有する炎症性神経障害の病歴。
22.患者の症状を引き起こし得るADと矛盾する代替病態の構造的証拠を示すスクリーニングMRI走査。1cm未満の直径の良性髄膜腫、3つ以上のラクナ梗塞もしくは直径1cm超のただ1つの梗塞、または脳表ヘモジデリン沈着症の任意の単一の領域以外の空間占有性病変の証拠、あるいは10mm以上の以前の大出血の証拠。T2MRIにおける微小出血は、部位にかかわらず最大で10まで認められる。
23.MRI検査を、MRI研究が禁忌である金属インプラントおよび/または重度の閉所恐怖症を含むがこれらに限定されない何らかの理由のために行うことができない。
24.顕著な聴力もしくは視力障害、またはプロトコルに従うことおよびアウトカム測定を実施することを妨げることに関連すると研究者によって判断される他の問題。
25.スクリーニング前3か月以内の臨床的に有意な感染症または大きな外科手術。研究への参加中に行われることが予想される計画された外科処置は、スクリーニング時に医療監視者によって検討および承認されなければならない。
26.インフルエンザワクチンを含む、ベースライン前過去2週間以内に投与された任意のワクチン。
27.スクリーニング時のECGにおける臨床的に有意な不整脈または他の臨床的に有意な異常。
28.ベースライン前1年以内の心筋梗塞、不安定狭心症、または重大な冠動脈疾患。
29.処置された扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、および表皮内黒色腫、または完全に除去され、治療されたと考えられる非浸潤性前立腺癌もしくは非浸潤性乳癌以外の癌の病歴を過去5年以内に有する患者。
30.現場の研究者の見解における、血液学的パラメータ、肝機能検査、および他の生化学的測定に関する、臨床的に有意と判断される正常値からの臨床的に有意な逸脱。
31.スクリーニング時の血清検査によって確認した場合に妊娠しているか、または妊娠を計画しているかまたは授乳中の女性対象。
32.毎日100mg未満の用量のアスピリンを除く任意の抗凝固薬または抗血小板薬を受けている患者(予定されているかまたは予定されていない腰椎穿刺中の出血のリスクを避けるため)。
33.不眠症の処置のための安定低用量の場合を除く、抗精神病薬を受けている患者。
34.スクリーニング前30日の間に血液もしくは血液製剤を提供したか、または研究に参加している間に血液を提供することを計画している患者。
35.スクリーニング時の活性梅毒と矛盾しない陽性のVDRL(性病研究所)。
36.スクリーニング時に陽性のHIV検査結果を有する患者。
37.スクリーニング時に検査によって測定した場合に活性Bおよび/またはC型肝炎を有する患者。
38.正常の上限の1.5倍超のクレアチニン、異常な甲状腺機能検査結果、または血清B12もしくは葉酸レベルの臨床的に有意な低下を有する患者(注:甲状腺補充剤の全ての経口用量、B12、または葉酸は、スクリーニング前の少なくとも3か月間安定でなければならない)。
【0200】
患者背景:
研究は進行中である。サブコホート1.1および1.2に関する患者背景(2021年9月末日のカットオフ時点)を表1にまとめる。
【0201】
【表1】
【0202】
結果/結論:
以下の主要評価項目を評価した/評価する:
安全性および忍容性-有害事象、即時および遅延型反応原性(例えばアナフィラキシー、疼痛、発赤、免疫複合体疾患、腫脹、発熱を含む局所および全身性反応原性);忍容性の総合評価;自殺念慮(C-SSRS);行動(NPI);安全性を評価するための認知および機能評価(RBANS、CDR-SB);バイタルサイン;MRI画像診断;心電図;血液および尿における慣例的な血液学および生化学評価;血液における抗DNA抗体を含む自己免疫抗体の評価;血中およびCSF中の炎症性マーカー。
免疫応答-血清中の抗pタウIgG力価(幾何平均、ベースラインからの変化、応答者率、ピーク、および曲線下面積)。
【0203】
以下の副次的評価項目を評価した/評価する:
免疫応答-血清中の抗タウIgG、抗pタウIgM、抗ePHF IgGおよび抗タウIgM力価(幾何平均、ベースラインからの変化、応答者率、ピークおよび曲線下面積)、アビディティ検査によるIgG応答プロファイルの決定。
【0204】
以下の探索的評価項目を評価した/評価する:
血中および/またはCSF中のバイオマーカー力価のベースラインからの変化(例えば総タウおよびpタウタンパク質)、血中のT細胞活性化レベルのベースラインからの変化、血中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1B、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ、およびTNF-α)力価のベースラインからの変化、自殺念慮(C-SSRS)、行動(NPI)、認知的および機能的活動(RBANS、CDR-SB)スコアのベースラインからの変化。
【0205】
研究は進行中である。表2に示すように、3つのサブコホートが、300μg、900μgまたは1800μgのテトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3(配列番号28)という投薬量レベルのACI-35.030、およびプラセボを受けた。
【0206】
【表2】
【0207】
2022年6月20日のカットオフ日時点での安全性および忍容性の中間結果から、ACI-35.030について安全性または忍容性の問題は同定されなかったことが示された。コホート1のサブコホート1.1、1.2および1.3において、有害事象に起因する中止はなかった。さらに、これまでに検討された患者において、MRIで報告されたCNS炎症または他の顕著な変化を呈した者はなかった。
【0208】
300μg、900μgまたは1800μgのテトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3(配列番号28)の初回投与後、対象の100%の血清中で、ACI-35.030の投与の2週間後に抗pタウ特異的IgG力価のベースラインに比しての増加が観察された。この抗pタウIgG応答は、実薬で処置された全ての早期AD対象において非pタウペプチドよりもpタウに対する選好性を示し、抗体応答は、ACI-35.030の追加投与の2週間後に測定した抗pタウ特異的IgG力価の増加および/または抗ePHF IgG力価の増加によって示されるように、ACI-35.030の追加投与によってブーストされた。抗体応答はプラセボを受けた対象では観察されなかったが、ただし、プラセボを受けたサブコホート1.2の1名の対象で67週目の研究処置期間後にIgMおよびIgG抗pタウ力価の1回の限定的な上昇が認められ、その応答は応答者を定義するために設定された閾値に近かった。
【0209】
ヒトにおけるACI-35.030の抗pタウIgG応答
表2の3つのサブコホートにおいてACI-35.030ワクチンによって誘導されたリン酸化タウペプチド(pタウ)を対象にする特異的IgG抗体応答を、MSDによって測定した。
【0210】
表3は、サブコホート1.1における、テトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3の投薬量レベルが300μgのACI-35.030(ACI-35.030 300μg)またはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgG力価および応答者率(ITT集団)を示す。
【0211】
【表3-1】
【0212】
【表3-2】
【0213】
サブコホート1.2における、テトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3の投薬量レベルが900μgのACI-35.030(ACI-35.030 900μg)またはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgG力価および応答者率(ITT集団)を、表4にまとめる。
【0214】
【表4-1】
【0215】
【表4-2】
【0216】
サブコホート1.3における、テトラパルミトイル化ホスホペプチドpタウペプチドT3の投薬量レベルが1800μgのACI-35.030(ACI-35.030 1800μg)またはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgG力価および応答者率(ITT集団)を、表5にまとめる。
【0217】
【表5-1】
【0218】
【表5-2】
【0219】
表3、4および5、ならびに図2および6における結果によって示されるように、300μg、900μgおよび1800μg用量レベルのそれぞれのACI-35.030を用いた免疫化により、配列番号28のアミノ酸配列を有するT3.5ペプチドを対象にする抗pタウIgG応答が誘導された。300μg用量レベルのACI-35.030を用いて処置された全ての対象は、2週目から10週目まで応答者であり、そのうち66.7%が36週目にも応答者であったが、このサブコホートにおける対象8名のうち7名には、Covid-19パンデミックが理由で24週目の事前の注射が行われなかった。研究の盲検解除の可能性を避けるために、サブコホート1における36週目以降の応答者の百分率は当面は報告されない。900μg用量レベルのACI-35.030を用いて処置された全ての対象は、2週目から74週目までの間の全ての時点で応答者であったが、プラセボを受けた1名の対象では、応答者を定義するために設定した閾値(ベースラインの1.81倍)よりもわずかに高い限定的な抗pタウIgG応答(ベースラインの1.9倍)が、67週目(処置期間の後)に生じた。1800μg用量レベルのACI-35.030を用いて処置された全ての対象は、2週目から50週目までの間の全ての時点で応答者であったが、プラセボを受けた対象では42週目までに抗pタウIgG応答が生じなかった。
【0220】
300μgまたは900μgのいずれかのACI-35.030を用いて処置された対象では、ワクチン接種の2週間後という早い時点から高い応答者率が観察された。全体として、初回のワクチン接種後および全てのワクチン接種の後に、高い応答者率が観察された。900μg用量のACI-35.030では、2週目から74週目までのいずれの研究時点で分析した場合にもリン酸化タウに対する応答者率は100%であった。900μg用量のACI-35.030による病理的なePHFに対する応答者率は、2週目から48週目までの間の処置期間中のいずれの時点でも66.7%から100%の範囲であり、50週目から74週目までの処置期間後のいずれの時点でも50%から100%の範囲であった。その上、300μgまたは900μgのいずれかのACI-35.030を用いて処置された患者では、IgMからIgGへの急速なクラススイッチが観察された。それぞれ300μg、900μgまたは1800μgのACI-35.030を用いて処置されたサブコホート1.1、1.2および1.3に関する全体的な応答率の概要を表6に示す。
【0221】
【表6】
【0222】
一般に、300および900μgの両方の用量レベルでの8、24または48週目の各追加免疫化は、10、26および50週目の追加免疫化の投与の2週間後にそれぞれ測定した抗pタウ特異的IgG力価の増加によって示されるように、抗pタウIgG応答のブースティングをもたらした(図2および6)。1800μg用量レベルを用いた8、24、および48週目の追加免疫化も、10、26および50週目の追加免疫化の投与の2週間後に測定した抗pタウ特異的IgG力価の増加によって示されるように、抗pタウIgG応答のブースティングをもたらした(図4および7)。
【0223】
ヒトにおけるACI-35.030の抗pタウIgM応答
表2の3つのサブコホートにおいてACI-35.030ワクチンによって誘導されたリン酸化タウペプチドを対象にする特異的IgM抗体応答を、MSDによって測定した。サブコホート1.1におけるACI-35.030 300μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgM力価および応答者率(ITT集団)を、表7に示す。
【0224】
【表7-1】
【0225】
【表7-2】
【0226】
サブコホート1.2における、ACI-35.030 900μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgM力価および応答者率(ITT集団)を、表8に示す。
【0227】
【表8-1】
【0228】
【表8-2】
【0229】
サブコホート1.3における、ACI-35.030 1800μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗pタウIgM力価および応答者率(ITT集団)を、表9に示す。
【0230】
【表9-1】
【0231】
【表9-2】
【0232】
表7から9までの結果によって示されるように、300μg、900μgおよび1800μg用量のそれぞれのACI-35.030を用いた早期AD対象の免疫化により、配列番号28のアミノ酸配列を有するT3.5ペプチドを対象にする抗pタウIgM応答が10週目までに誘導された。ACI-35.030を用いて処置された全ての対象は応答者であったが、プラセボを用いて処置された対象では、応答者を定義するために設定した閾値よりもわずかに高い限定的な抗pタウIgM応答が認められた67週目(処置期間の後)の1名の対象を除いて抗pタウIgM応答は生じなかった。以上を総合すると、8週目までの抗pタウIgM応答の低下、および2週目以降に測定された抗pタウIgG抗体応答は、ACI-35.030がIgMからIgGへのクラススイッチを誘導したことを示唆する。
【0233】
タウ(非pタウ)に対するものを上回るpタウに対する特異性
様々な投薬量のACI-35.030またはプラセボによって経時的に誘導された非リン酸化タウに対するIgG力価(抗タウIgG力価)については、図3および5を参照のこと。表2の3つのサブコホートにおいてACI-35.030を用いた免疫化によって誘導されたIgG抗体応答の、タウへのものを上回るpタウへの結合に対する特異性(ここでタウに対する応答は非pタウに対する応答を表す)を、抗pタウIgG/抗タウIgG応答の比として経時的に測定した。サブコホート1.1における、ACI-35.030 300μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗タウIgG力価および応答者率(ITT集団)を、表10に示す。
【0234】
【表10-1】
【0235】
【表10-2】
【0236】
サブコホート1.2における、ACI-35.030 900μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗タウIgG力価および応答者率(ITT集団)を、表11に示す。
【0237】
【表11-1】
【0238】
【表11-2】
【0239】
サブコホート1.3における、ACI-35.030 1800μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗タウIgG力価および応答者率(ITT集団)を、表12に示す。
【0240】
【表12-1】
【0241】
【表12-2】
【0242】
【表12-3】
【0243】
サブコホート1における、ACI-35.030 300μgを用いた免疫化の後の抗pタウIgG/抗タウIgG力価の比(ITT集団)を、表13に示す。
【0244】
【表13】
【0245】
表14は、サブコホート1.2における、ACI-35.030 900μgを用いた免疫化の後の抗pタウIgG/抗タウIgG力価の比(ITT集団)を示す。
【0246】
【表14】
【0247】
表15は、サブコホート1.3における、ACI-35.030 1800μgを用いた免疫化の後の抗pタウIgG/抗タウIgG力価の比(ITT集団)を示す。
【0248】
【表15】
【0249】
表13から15までの結果によって示されるように、300μg、900μgおよび1800μg用量のそれぞれのACI-35.030を用いた免疫化により、pタウペプチドを非pタウペプチドよりも選好的に認識するIgG抗体応答が誘導され、この選好性は経時的に持続した。
【0250】
ヒトAD脳に由来する病理的なpタウ(濃縮対らせん状細線維-ePHF)の認識
表2の3つのサブコホートにおいてACI-35.030を用いた免疫化によって誘導されたIgGポリクローナル抗体が、ヒトAD脳に由来するePHFに結合する能力を、MSDによって経時的に測定した。表16は、サブコホート1.1における、ACI-35.030 300μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗ePHF IgG力価および応答者率(ITT集団)を示す。
【0251】
【表16-1】
【0252】
【表16-2】
【0253】
表17は、サブコホート1.2における、ACI-35.030 900μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗ePHF IgG力価および応答者率(ITT集団)を示す。
【0254】
【表17-1】
【0255】
【表17-2】
【0256】
表18は、サブコホート1.3における、ACI-35.030 1800μgまたはプラセボのいずれかを用いた免疫化の後の抗ePHF IgG力価および応答者率(ITT集団)を示す。
【0257】
【表18-1】
【0258】
【表18-2】
【0259】
表16から18まで、ならびに図4および図7の結果から、300μg、900μgおよび1800μg用量のそれぞれのACI-35.030を用いた免疫化により、ヒトAD脳に由来する病理的なePHFタウを認識するIgG抗体応答が誘導され得ることが示された。さらに、抗ePHF IgG力価はブースト可能であった。抗ePHF IgG力価の幾何平均は各免疫化の2週間後に増加した。ACI-35.030 300μgを用いて処置された対象におけるIgG抗ePHFに関する応答者率は、それぞれ2週目に66.7%、8および10週目に83.3%、ならびに36週目に33.3%であったが、このサブコホートにおける対象8名のうち7名には、Covid-19パンデミックが理由で24週目の事前の注射が行われなかった。研究の盲検解除の可能性を避けるために、このサブコホートにおける36週目以降の応答者の百分率は現時点では報告されない。ACI-35.030 900μgを用いて処置された対象における抗ePHF IgGに関する応答者率は、それぞれ2、10および26週目に100%、8および24週目に66.7%、36および48週目に83.3%、ならびに50週目に100%であった。実薬で処置された同じ2名の対象は、これらの2つの時点(8および24週目)では非応答者であり、一方、2、10および26週目(例えば、それぞれ0、8および24週目に行われた注射の2週間後)には応答者であったと考えられる。ACI-35.030 1800μgを用いて処置された対象におけるIgG抗ePHF IgGに関する応答者率は、2、8および10週目にそれぞれ66.7%、33.3%および83.3%であり、続いて24週目に50%、26週目に66.7%、および50週目に80%であった。
【0260】
ヒトAD脳に由来する病理的なpタウ(濃縮対らせん状細線維-ePHF)に対するアビディティ
サブコホート1.1、サブコホート1.2、およびサブコホート1.3においてACI-35.030を用いた免疫化によって誘導されたIgG抗体応答が、ヒトAD脳に由来するePHFに結合する能力を、ePHFのプレート上への低密度および高密度コーティングの両方を使用するMSDによって経時的に測定した。抗体濃度を、低密度コーティング(結合能の非常に高い抗体のみが結合し得る)および高密度コーティング(全ての抗体が結合し得る)で測定する。アビディティ指数は、低/高密度コーティングでの抗体濃度の比によって算出される。表19は、サブコホート1.1における、ACI-35.030を300μgで用いた免疫化の後のePHFに対するアビディティ指数を示す。
【0261】
【表19】
【0262】
表20は、サブコホート1.2における、ACI-35.030を900μgで用いた免疫化の後のePHFに対するアビディティ指数を示す。
【0263】
【表20】
【0264】
表21は、サブコホート1.3における、ACI-35.030を1800μgで用いた免疫化の後のePHFに対するアビディティ指数を示す。
【0265】
【表21】
【0266】
表19、20、および21の結果から、ほとんどの患者では、300μg、900および1800μg用量のそれぞれのACI-35.030を用いた免疫化により、2週目から10週目までの間に結合アビディティの増加を示すIgG免疫応答が誘導されたことが示された。
【0267】
現在までのところ、予備的な結果から、例えば、ACI-35.030は、タウの病理的な種(ホスホ-タウおよびePHF)に向けて高度で特異的でかつ持続的な抗体応答を誘導することが示され、これには低用量と中用量の間での明らかな用量応答と、IgMからIgGへの免疫グロブリンのクラススイッチの証拠が伴っていた。個々の応答者率は高くかつ一貫しており、特に抗pタウおよびePHF抗体についてそうであった。ACI-35.030の投与は、データ分析の時点では研究ワクチンに関するいかなる特定の安全性の懸念も引き起こさないように思われ、このことはACI-35.030の好ましい安全性および忍容性プロファイルの裏付けを提供し、ACI-35.030は免疫化された患者においてベースライン値を上回る持続的な抗体応答を誘導することができた。経時的には、このデータは、IgG応答が、より病理的な種であるePHFへの結合に対するより強い選好性に向けて成熟し、同時に病理的でない非リン酸化タウに対する抗体力価を低下させることを実証している。予備的な結果は、有効なAD疾患修飾処置として、ならびにADの潜在的な防止のための手法としての、このワクチンのさらなる開発を裏付けるものである。
【0268】
[実施例2]
ACI-35.030を用いたワクチン接種は、幅広いエピトープカバー範囲を有する比較的均一な抗体応答を誘導する
病理的なpタウに対する幅広さおよび選択性について抗体応答をさらにプロファイリングするために、ヒト対象の血清に対してエピトープマッピングを行った。ヒト対象においてリポソームワクチンによって誘導される抗体のエピトープ認識プロファイルを決定するための研究を行った。第1/2相臨床試験において、7名のアルツハイマー病(AD)患者に対して、0、8、24、および48週目に、1用量当たり900ugの酢酸テトラパルミトイル化リン酸化タウペプチドT3(配列番号28)を有するリポソームワクチンまたはプラセボ(サブコホート1.2)を用いた筋肉内免疫化を行った。抗体のエピトープ認識プロファイルを、第1の免疫化の前(V1、0週目)および第3の免疫化の後(V6、26週目)に、1アミノ酸のシフトを有し、ホスホ-タウペプチドT3.30(配列番号45)の全配列ならびに非リン酸化タウペプチドT3.56(配列番号46)の対応する配列をカバーするN末端ビオチン化8-merペプチドのライブラリーを使用するエピトープマッピングELISAによって決定した。加えて、完全長ホスホ-タウペプチドT3.30(およびタウペプチドT3.56、ならびに別のN末端ビオチン化ホスホ-タウペプチドT3.85(配列番号47)および対応する非リン酸化タウペプチドT3.86(配列番号48)(追加のC末端アミノ酸を有する)への抗体の結合も決定した。
【0269】
データは処置前減算光学密度(O.D.)値として表現され、これは各ペプチドおよび各患者について、第3の免疫化の後(V6、26週目)に得られたO.D.から初回免疫化の前(V1、0週目)に得られたものを減算して得られる。減算の後に負の値となる場合は0.000とした。
【0270】
表22および23は、ホスホ-ペプチドT3.30およびT3.85ならびに非ホスホ-ペプチドT3.56およびT3.86をカバー範囲とする短い8-mer重複ペプチドに関するエピトープマッピングELISAによって決定された、ACI-35.030を用いたワクチン接種によって誘導された抗体のエピトープ認識プロファイルを示す。
【0271】
【表22】
【0272】
【表23】
【0273】
表22および図8Aは、2名のAD患者が、26週目の3回の免疫化の後にホスホ-タウペプチドT3.30およびT3.85の配列またはその内部の配列に対していかなるIgG抗体も本質的に産生しなかった(患者#1および#2)のに対して、他の5名のAD患者では、ホスホ-タウペプチドT3.30およびT3.85の配列またはその内部の配列に対するIgG抗体が生じ、ホスホ-タウペプチドT3.30およびT3.85の配列への結合が全体的に同程度であったことを示す。8-merペプチドに関して得られたO.D.値は、3回の免疫化の後に誘導されたIgG抗体が、396位のリン酸化セリンを含む、ホスホ-タウペプチドT3.30(配列番号45)およびT3.85(配列番号47)の配列のN末端部分に主として結合したことを示す。404位のリン酸化セリンを含む、ホスホ-タウペプチドT3.30(配列番号45)およびT3.85(配列番号47)の配列のC末端部分に対しては、全体的により低い結合が観察された。
【0274】
表23および図8Bは、2名のAD患者が、26週目に非リン酸化タウペプチドT3.56およびT3.86の配列に対していかなるIgG抗体も本質的に産生しなかったことを示す(患者#1および#2)。4名のAD患者では、非リン酸化タウペプチドT3.56およびT3.86の配列またはその内部の配列を弱く認識するIgG抗体が生じ、その結合はC末端8-merペプチド(タウ401~408)の結合と関連するように思われた。1名のAD患者(患者#3)は、非リン酸化タウペプチドT3.56およびT3.86の配列またはその内部の配列に対するIgG抗体を産生し、その結合は配列のN末端部分に主に関連するように思われる。
【0275】
ACI-35.030については、対象のIgG応答は比較的均一であり、結合が検査したpタウ配列にわたって生じたことからみて幅広いエピトープカバー範囲を示し、重要なこととして、ペプチド配列の末端に対する実質的な特異性も、非リン酸化配列に対する実質的な結合も伴わなかった。
【0276】
【化1-1】
【0277】
【化1-2】
【0278】
【化1-3】
【0279】
【化1-4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】