(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】組換え抗ヒトCD25抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240903BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240903BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
G01N33/574 A
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508587
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2022111165
(87)【国際公開番号】W WO2023016455
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110907431.6
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524053281
【氏名又は名称】南京▲諾▼艾新生物技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊 新▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲タオ▼
(72)【発明者】
【氏名】仲 ▲カイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲倩▼卉
(72)【発明者】
【氏名】叶 懿
(72)【発明者】
【氏名】李 醒
(72)【発明者】
【氏名】潘 紅
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗ヒトCD25抗体分子又はその抗原結合断片。既存の抗CD25抗体と比較して、提供される抗体は非IL-2阻害性であり、Tregを排除し得るだけでなく、腫瘍微小環境を是正し、Teffの割合及び殺傷能力を高めることができる。さらに、固形腫瘍及び血液腫瘍を治療するための薬剤の調製における抗体分子又は抗原結合断片の使用が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体分子又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)が、以下のCDRの組合せ:
(1)配列番号63、64及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(2)配列番号63、64及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(3)配列番号63、66及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号86、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(4)配列番号63、66及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号87、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(5)配列番号63、67及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び88にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(6)配列番号63、67及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び88にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(7)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号89、90及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(8)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号92、90及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(9)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号92、93及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(10)配列番号63、72及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(11)配列番号63、72及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(12)配列番号73、74及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(13)配列番号73、74及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(14)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び96にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(15)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び97にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(16)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び98にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(17)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号99、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(18)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号99、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(19)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(20)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(21)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、103及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、並びに、
(22)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、103及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
からなる群から選択される重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む、抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体分子又はその抗原結合断片がCD25に対する抗体分子又はその抗原結合断片であり、
好ましくは、前記CD25がヒトCD25である、請求項1に記載の抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記重鎖可変領域が、配列番号1~25のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又は配列番号1~25のいずれか1つに示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号26~62のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又は配列番号26~62のいずれか1つに示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体分子又はその抗原結合断片に含まれる前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、以下の組合せ:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号26に示されるアミノ酸配列、又は配列番号26に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(6)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(7)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(8)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号30に示されるアミノ酸配列、又は配列番号30に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(9)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号31に示されるアミノ酸配列、又は配列番号31に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(10)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号31に示されるアミノ酸配列、又は配列番号31に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(11)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号32に示されるアミノ酸配列、又は配列番号32に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(12)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号32に示されるアミノ酸配列、又は配列番号32に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(13)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号33に示されるアミノ酸配列、又は配列番号33に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(14)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号33に示されるアミノ酸配列、又は配列番号33に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(15)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号34に示されるアミノ酸配列、又は配列番号34に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(16)配列番号7に示されるアミノ酸配列、又は配列番号7に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号35に示されるアミノ酸配列、又は配列番号35に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(17)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号36に示されるアミノ酸配列、又は配列番号36に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(18)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号36に示されるアミノ酸配列、又は配列番号36に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(19)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又は配列番号37に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(20)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又は配列番号37に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(21)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号38に示されるアミノ酸配列、又は配列番号38に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(22)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号38に示されるアミノ酸配列、又は配列番号38に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(23)配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号39に示されるアミノ酸配列、又は配列番号39に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(24)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号40に示されるアミノ酸配列、又は配列番号40に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(25)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号40に示されるアミノ酸配列、又は配列番号40に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(26)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号41に示されるアミノ酸配列、又は配列番号41に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(27)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号41に示されるアミノ酸配列、又は配列番号41に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(28)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号42に示されるアミノ酸配列、又は配列番号42に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(29)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号42に示されるアミノ酸配列、又は配列番号42に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(30)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号43に示されるアミノ酸配列、又は配列番号43に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(31)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号43に示されるアミノ酸配列、又は配列番号43に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(32)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は配列番号13に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号44に示されるアミノ酸配列、又は配列番号44に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(33)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号45に示されるアミノ酸配列、又は配列番号45に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(34)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号45に示されるアミノ酸配列、又は配列番号45に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(35)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は配列番号46に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(36)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は配列番号46に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(37)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は配列番号47に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(38)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は配列番号47に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(39)配列番号16に示されるアミノ酸配列、又は配列番号16に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号48に示されるアミノ酸配列、又は配列番号48に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(40)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号49に示されるアミノ酸配列、又は配列番号49に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(41)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号49に示されるアミノ酸配列、又は配列番号49に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(42)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号50に示されるアミノ酸配列、又は配列番号50に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(43)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号50に示されるアミノ酸配列、又は配列番号50に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(44)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号51に示されるアミノ酸配列、又は配列番号51に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(45)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号51に示されるアミノ酸配列、又は配列番号51に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(46)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号52に示されるアミノ酸配列、又は配列番号52に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(47)配列番号19に示されるアミノ酸配列、又は配列番号19に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号53に示されるアミノ酸配列、又は配列番号53に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(48)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号54に示されるアミノ酸配列、又は配列番号54に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(49)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号54に示されるアミノ酸配列、又は配列番号54に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(50)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号55に示されるアミノ酸配列、又は配列番号55に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(51)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号55に示されるアミノ酸配列、又は配列番号55に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(52)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号56に示されるアミノ酸配列、又は配列番号56に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(53)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号56に示されるアミノ酸配列、又は配列番号56に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(54)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号57に示されるアミノ酸配列、又は配列番号57に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(55)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号57に示されるアミノ酸配列、又は配列番号57に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(56)配列番号22に示されるアミノ酸配列、又は配列番号22に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号58に示されるアミノ酸配列、又は配列番号58に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(57)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(58)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(59)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(60)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(61)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(62)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(63)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(64)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(65)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(66)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(67)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、並びに、
(68)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体分子が、ネズミ抗体、キメラ抗体、又は完全若しくは部分的ヒト化抗体であり、前記抗原結合断片が、前記抗体分子のハーフ抗体、又はscFv、dsFv、(dsFv)
2、Fab、Fab’、F(ab’)
2若しくはFv断片であり、
好ましくは、前記抗体分子がモノクローナル抗体又は一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記抗体分子又はその抗原結合断片が、ヒト又はネズミ定常領域、好ましくはヒト又はネズミ重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含み、好ましくは、前記抗体分子又はその抗原結合断片が重鎖及び軽鎖を含み、
より好ましくは、前記抗体分子又はその抗原結合断片が、IgG、IgA、IgM、IgD若しくはIgEの重鎖定常領域、及び/又はκ型若しくはλ型の軽鎖定常領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体分子が、モノクローナル抗体、好ましくはキメラ又はヒト化モノクローナル抗体であり、
好ましくは、前記抗体分子の重鎖定常領域が、配列番号104に示されるアミノ酸配列、又は配列番号104に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記抗体分子の軽鎖定常領域が、配列番号105に示されるアミノ酸配列、又は配列番号105に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記少なくとも75%の同一性が、75%以上の任意のパーセント同一性、例えば少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は更に99%の同一性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体分子又はその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子又はその抗原結合断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸分子及び/又は請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞、又は請求項7に記載の核酸分子及び/又は請求項8に記載のベクターで形質転換若しくはトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、及び/又は請求項9に記載の宿主細胞を含む、組成物であって、
好ましくは、該組成物が医薬組成物であり、任意に薬学的に許容可能な担体、補助剤又は賦形剤を含む、組成物。
【請求項11】
固形腫瘍又は血液腫瘍を予防、治療及び/又は改善するための医薬品の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、及び/又は請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
疾患を予防、治療及び/又は改善する方法であって、その必要がある被験体に、治療有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、及び/又は請求項10に記載の組成物、並びに任意に更なる薬剤又は手段を投与することを含み、
好ましくは、前記疾患が固形腫瘍又は血液腫瘍であり、
好ましくは、前記被験体が哺乳動物であり、好ましくは、前記被験体がヒトである、方法。
【請求項13】
疾患を検出又は診断する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、及び/又は請求項10に記載の組成物を、被験体からの試料に接触させることを含み、
好ましくは、前記疾患が固形腫瘍又は血液腫瘍であり、
好ましくは、前記被験体が哺乳動物であり、好ましくは、前記被験体がヒトである、方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはその抗原結合断片、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、及び/又は請求項10に記載の組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2021年8月9日に出願された中国特許出願第202110907431.6号に対する優先権及びその利益を主張し、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、抗体医薬の分野に属し、特にヒトCD25に対する抗体、及び医薬品を調製する際のその抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌免疫療法は、腫瘍細胞を制御及び殺傷するために、体の免疫系の力を結集させて腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を強化することである。しかしながら、悪性腫瘍(特に固形腫瘍)は、腫瘍細胞自体によって及び腫瘍微小環境内の構成要素によって媒介される様々なメカニズムを通じて免疫監視を逃れることがある。この場合、制御性T細胞(Treg)集団とエフェクターT細胞(Teff)集団との間の複雑な相互作用が腫瘍特異的免疫応答の結果をどのように決定するのか考慮する必要がある。腫瘍特異的免疫応答において、Tregは、末梢性免疫寛容の確立及び維持を促進し、免疫ホメオスタシスの媒介において重要な役割を果たし得る。しかしながら、癌の場合、それらの影響はより複雑であり、Tregによる腫瘍浸潤に起因するTeff細胞とTreg細胞との不均衡(すなわち、Teff/Treg比の不均衡)が重要な要因であると一般に認識されている(非特許文献1)。
【0004】
癌細胞は自己抗原及び腫瘍関連抗原の両方を発現するため、エフェクター細胞の応答を抑制しようとするTregの存在が、腫瘍の進行に寄与する可能性がある。確立された腫瘍へのTregの浸潤は、効果的な抗腫瘍応答及び癌全般の治療に対する主な障害の1つを象徴するものである。抑制メカニズムを使用するTregは、抗腫瘍応答の誘導又は増強に依存する現行の治療法、特に免疫療法の限界又は更には失敗に大きく寄与すると考えられる(非特許文献2)。腫瘍免疫療法の成功に対する主要な障害の1つであるTregの腫瘍浸潤は、幾つかの予後不良のヒト癌にも関連している(非特許文献3)。Treg細胞は、ネズミモデルにおける腫瘍の早期確立及び進行に寄与しており、Treg細胞が存在しない場合には腫瘍の進行が遅延する。ヒトでは、Treg細胞による高い腫瘍浸潤、そしてより重要なことに、Treg細胞に対するエフェクターT(Teff)細胞の比率が低いことが、複数の固形癌の思わしくない結果に関連する。逆に、高いTeff/Treg細胞比は、ヒト及びマウスの両方において免疫療法に対する好適な応答に関連する。今日まで、殆どの研究は、Treg細胞を枯渇又は機能調節のいずれかによる対象にすることが、特に他の免疫調節の介入、例えばワクチン及びチェックポイント阻害剤と組み合わせた場合に、有意な治療効果をもたらし得るという概念を支持している(非特許文献4)。
【0005】
したがって、Treg細胞への選択的干渉のための適切な標的を定義することは、効果的な治療法の開発における重要なステップである。この点に関して、CD25が標的として提案された。CD25はインターロイキン-2高親和性受容体α鎖(IL-2Rα)としても知られており、Treg細胞のマスター制御因子である転写因子フォークヘッドボックスP3(FoxP3)が発見される前に、Treg細胞を同定及び単離するために使用された最初の表面マーカーであった。CD25は、Treg細胞の枯渇を媒介する最も広範に研究された標的でもある。CD25はTreg細胞で構成的に発現し、ナイーブTeff細胞では存在しないが、in vitro研究で観察されたように、Teff細胞の活性化時に一過性のアップレギュレーションが記載されている。長年市販されているバシリキシマブ及びダクリズマブは、IL-2がCD25に結合するのを阻害する抗ヒトCD25抗体である。バシリキシマブは、移植片対宿主病用に現在承認されているマウス-ヒトキメラCD25抗体であり、ダクリズマブは、多発性硬化症の治療用に承認されているヒト化CD25抗体である。他の幾つかの抗CD25抗体(例えば、7D4、2E4、MA251、7G7B6等)は、CD25に結合するが、IL-2のCD25への結合を阻害しない。
【0006】
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)効果を有するCD25標的化抗体は、腫瘍微小環境内のTregを効果的に枯渇させ、Teff/Treg比を調節し得る。さらに、CD25はIL-2の受容体のαサブユニットであり、IL-2はTeff応答に関する重要なサイトカインである。したがって、CD25を標的とする抗体は、一方では腫瘍微小環境内のTregを効果的に枯渇させることができ、他方ではCD25を介したIL-2シグナル伝達を阻害しないため、Treg細胞を機械的に除去することができるだけでなく、IL-2によってTeff細胞を刺激し得ることで、強力な抗腫瘍効果も発揮することができる。
【0007】
したがって、非IL-2ブロッキング性である抗CD25抗体の開発は、腫瘍微小環境を是正し、免疫系を促進させて癌細胞を枯渇させるのに役立ち、現時点で癌患者の治療にとって重要な臨床的意義を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nat Rev Cancer 2014, 14(11): 722-35.
【非特許文献2】Anticancer Res 2012, 32(3): 997-1003.
【非特許文献3】Shang B et al, 2015, Sci Rep. 5: 15179
【非特許文献4】Immunity 2017, 46(4): 577-586.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決されるべき技術的問題は、ハイブリドーマスクリーニング、ヒト化、組換え及び他の技法を通じて、非IL-2ブロッキング性である新たな抗CD25抗体を得ることである。
【0010】
上記技術的問題のため、本発明の目的は、既存の抗CD25抗体と比較して非IL-2ブロッキング性であるため、Tregを枯渇させることによりTeffの割合を増加させ得るだけでなく、IL-2がTeff細胞を刺激することを可能にし、それによって、Teff細胞の殺傷能力を高め、腫瘍微小環境を是正し得る、抗CD25抗体分子又はその抗原結合断片を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示において記載される抗体の「断片」は、抗体の多様な機能的又は活性断片、例えばその抗原結合部分、例えばFab、F(ab’)2、又はscFvを含む。
【0012】
本開示において記載される「少なくとも75%の同一性」は、75%以上の任意のパーセント同一性、例えば少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は更に99%の同一性である。
【0013】
一つの態様において、本開示は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体分子又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)が、以下のCDRの組合せ:
(1)配列番号63、64及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(2)配列番号63、64及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(3)配列番号63、66及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号86、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(4)配列番号63、66及び65にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号87、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(5)配列番号63、67及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び88にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(6)配列番号63、67及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び88にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(7)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号89、90及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(8)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号92、90及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(9)配列番号69、70及び71にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号92、93及び91にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(10)配列番号63、72及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(11)配列番号63、72及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(12)配列番号73、74及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号82、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(13)配列番号73、74及び68にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号85、83及び84にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(14)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び96にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(15)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び97にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(16)配列番号75、76及び77にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号94、95及び98にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(17)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号99、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(18)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号99、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(19)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(20)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、100及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
(21)配列番号78、79及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、103及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、並びに、
(22)配列番号78、81及び80にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3、及び配列番号102、103及び101にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、
からなる群から選択される重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む、抗体分子又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
本開示において提供される抗体分子又はその抗原結合断片は、CD25に対する抗体分子又はその抗原結合断片である。好ましくは、CD25はヒトCD25である。
【0015】
本開示において提供される抗体分子又はその抗原結合断片では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方が、上記のCDR及びその間のフレームワーク領域(FR)を含み、それらのドメインは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のように配置される。本開示により提供される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列によれば、そこに含まれる重鎖CDR及び軽鎖CDRのアミノ酸配列は通例、当業者によって決定することができる。例えば、本開示の特定の実施の形態によれば、可変領域アミノ酸配列中のCDRは、Kabat、IMGT、ABM及びChothia番号付けスキームを使用して決定することができる。当該技術分野において知られる他の方法によって決定される、得られた重鎖CDR及び軽鎖CDR並びにそれらの組合せも本開示の範囲に含まれる。
【0016】
好ましくは、重鎖可変領域が、配列番号1~25のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又は配列番号1~25のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号26~62のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、又は配列番号26~62のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
さらに好ましくは、抗体分子又はその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、以下の組合せ:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号26に示されるアミノ酸配列、又は配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(6)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(7)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(8)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号30に示されるアミノ酸配列、又は配列番号30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(9)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号31に示されるアミノ酸配列、又は配列番号31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(10)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号31に示されるアミノ酸配列、又は配列番号31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(11)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号32に示されるアミノ酸配列、又は配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(12)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号32に示されるアミノ酸配列、又は配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(13)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号33に示されるアミノ酸配列、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(14)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号33に示されるアミノ酸配列、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(15)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号34に示されるアミノ酸配列、又は配列番号34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(16)配列番号7に示されるアミノ酸配列、又は配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号35に示されるアミノ酸配列、又は配列番号35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(17)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号36に示されるアミノ酸配列、又は配列番号36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(18)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号36に示されるアミノ酸配列、又は配列番号36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(19)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又は配列番号37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(20)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又は配列番号37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(21)配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号38に示されるアミノ酸配列、又は配列番号38に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(22)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号38に示されるアミノ酸配列、又は配列番号38に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(23)配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号39に示されるアミノ酸配列、又は配列番号39に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(24)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号40に示されるアミノ酸配列、又は配列番号40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(25)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号40に示されるアミノ酸配列、又は配列番号40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(26)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号41に示されるアミノ酸配列、又は配列番号41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(27)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号41に示されるアミノ酸配列、又は配列番号41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(28)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号42に示されるアミノ酸配列、又は配列番号42に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(29)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号42に示されるアミノ酸配列、又は配列番号42に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(30)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号43に示されるアミノ酸配列、又は配列番号43に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(31)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号43に示されるアミノ酸配列、又は配列番号43に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(32)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号44に示されるアミノ酸配列、又は配列番号44に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(33)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号45に示されるアミノ酸配列、又は配列番号45に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(34)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号45に示されるアミノ酸配列、又は配列番号45に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(35)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は配列番号46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(36)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は配列番号46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(37)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は配列番号47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(38)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号47に示されるアミノ酸配列、又は配列番号47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(39)配列番号16に示されるアミノ酸配列、又は配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号48に示されるアミノ酸配列、又は配列番号48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(40)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号49に示されるアミノ酸配列、又は配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(41)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号49に示されるアミノ酸配列、又は配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(42)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号50に示されるアミノ酸配列、又は配列番号50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(43)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号50に示されるアミノ酸配列、又は配列番号50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(44)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号51に示されるアミノ酸配列、又は配列番号51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(45)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号51に示されるアミノ酸配列、又は配列番号51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(46)配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号52に示されるアミノ酸配列、又は配列番号52に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(47)配列番号19に示されるアミノ酸配列、又は配列番号19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号53に示されるアミノ酸配列、又は配列番号53に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(48)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号54に示されるアミノ酸配列、又は配列番号54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(49)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号54に示されるアミノ酸配列、又は配列番号54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(50)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号55に示されるアミノ酸配列、又は配列番号55に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(51)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号55に示されるアミノ酸配列、又は配列番号55に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(52)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号56に示されるアミノ酸配列、又は配列番号56に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(53)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号56に示されるアミノ酸配列、又は配列番号56に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(54)配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号57に示されるアミノ酸配列、又は配列番号57に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(55)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号57に示されるアミノ酸配列、又は配列番号57に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(56)配列番号22に示されるアミノ酸配列、又は配列番号22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号58に示されるアミノ酸配列、又は配列番号58に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(57)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(58)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(59)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号59に示されるアミノ酸配列、又は配列番号59に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(60)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(61)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(62)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号60に示されるアミノ酸配列、又は配列番号60に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(63)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(64)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(65)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列、又は配列番号61に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(66)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(67)配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、並びに、
(68)配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号62に示されるアミノ酸配列、又は配列番号62に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本開示による抗CD25抗体又はその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に関して、「少なくとも75%の同一性」に起因して最大25%の相違が、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域中の任意のフレームワーク領域中に存在し得る。相違は、任意の位置におけるアミノ酸欠失、付加又は置換から生じるものであってもよく、置換は保存的置換又は非保存的置換であってもよい。
【0019】
本開示において提供される抗体分子は、ネズミ抗体、キメラ抗体、又は完全若しくは部分的ヒト化抗体であり、抗原結合断片は、抗体分子のハーフ抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(ジスルフィド安定化Fv断片)2((dsFv)2)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片若しくは可変断片(Fv)である。好ましくは、抗体分子はモノクローナル抗体又は一本鎖抗体である。好ましくは、抗体分子又はその抗原結合断片は、ヒト又はネズミ定常領域、好ましくはヒト又はネズミ重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含む。好ましくは、抗体分子又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含む。より好ましくは、抗体分子又はその抗原結合断片は、IgG、IgA、IgM、IgD若しくはIgEの重鎖定常領域、及び/又はκ型若しくはλ型の軽鎖定常領域を含む。好ましくは、抗体分子又はその抗原結合断片は、ヒトIgG1若しくはIgG4サブタイプのものである重鎖定常領域を含み、ヒトカッパ(κ)サブタイプのものである軽鎖定常領域を含む。概して、本開示において提供される抗体分子は、モノクローナル抗体、好ましくはキメラ又はヒト化モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体分子は、ジスルフィド結合を介して連結する2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む。
【0020】
本開示の特定の一実施の形態によれば、抗体分子の重鎖定常領域は、配列番号104に示されるアミノ酸配列、又は配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗体分子の軽鎖定常領域は、配列番号105に示されるアミノ酸配列、又は配列番号105に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
別の態様において、本開示は、本開示による抗体分子又はその抗原結合断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0022】
更に別の態様において、本開示は、本開示による核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、真核発現ベクター、原核発現ベクター、人工染色体、ファージベクター等であり得る。
【0023】
本発明のベクター又は核酸分子は、抗体保存又は発現等のため、宿主細胞を形質転換若しくはトランスフェクションするか、又は任意の方法で宿主細胞に進入するために使用され得る。したがって、更なる態様において、本開示は、本発明による核酸分子及び/又はベクターを含む宿主細胞、又は本開示による核酸分子及び/又はベクターで形質転換若しくはトランスフェクションされた宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核又は真核細胞、例えば細菌又は昆虫、真菌、植物又は動物細胞であり得る。
【0024】
なお更なる態様において、本開示は、本開示による抗体分子若しくはその抗原結合断片、本開示による核酸分子、本開示によるベクター、及び/又は本開示による宿主細胞を含む組成物を提供する。好ましくは、組成物は医薬組成物であり、任意に薬学的に許容可能な担体、補助剤又は賦形剤を含む。
【0025】
更なる態様において、本開示は、固形腫瘍又は血液腫瘍(hematological tumor)を予防、治療及び/又は改善するための医薬品の製造における、本開示による抗体分子若しくはその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又は組成物の使用を更に提供する。
【0026】
さらに、本開示は、疾患を予防、治療及び/又は改善する方法であって、その必要がある被験体に、治療有効量の本開示による抗体分子若しくはその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又は組成物、並びに任意に更なる薬剤又は手段を投与することを含む、方法を更に提供する。好ましくは、疾患は固形腫瘍又は血液腫瘍である。更に好ましくは、被験体は哺乳動物であり、好ましくは、被験体はヒトである。
【0027】
本開示はまた、疾患を検出又は診断する方法であって、本開示による抗体分子若しくはその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又は組成物を、被験体からの試料に接触させることを含む、方法を提供する。好ましくは、疾患は固形腫瘍又は血液腫瘍である。更に好ましくは、被験体は哺乳動物であり、好ましくは、被験体はヒトである。
【0028】
さらに、本開示は、本開示による抗体分子若しくはその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又は組成物を含むキットを更に提供する。キットは、例えば上記の疾患を検出又は診断する方法において、検出又は診断のために使用され得る。
【0029】
本開示はCD25に対する新たな抗体を提供し、該抗体は高い親和性でヒトCD25に結合し得る。また、該抗体は、非IL-2ブロッキング抗体として、Tregを枯渇させることによりTeffの割合を増加させるだけでなく、IL-2がTeff細胞を刺激することを可能にし、それによって、Teff細胞の殺傷能力を高め、腫瘍微小環境を是正し得る。したがって、該抗体は重要な臨床的意義を有する。
【0030】
本発明の実施形態は、添付の図に関連して以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】ヒトCD25へのIL2の結合に対するキメラ抗体の阻害活性を示す図である。
【
図1B】ヒトCD25へのIL2の結合に対するキメラ抗体の阻害活性を示す図である。
【
図2A】CHO-K1/hCD25に対するキメラ抗体の結合活性を示す図である。
【
図2B】CHO-K1/hCD25に対するキメラ抗体の結合活性を示す図である。
【
図2C】CHO-K1/hCD25に対するキメラ抗体の結合活性を示す図である。
【
図2D】CHO-K1/hCD25に対するキメラ抗体の結合活性を示す図である。
【
図3】Tregに対するキメラ抗体のin vitro殺傷活性を示す図である。
【
図4】IL2によって刺激されたTreg細胞におけるSTAT5リン酸化に対するキメラ抗体のin vitro阻害活性を示す図である。
【
図5】IL2によって刺激されたTreg細胞におけるSTAT5リン酸化に対するヒト化抗体のin vitro阻害活性を示す図である。
【
図6】Tregに対するヒト化抗体のin vitro殺傷活性を示す図である。
【
図7】野生型マウスにおけるヒト化抗体の薬物動態プロファイルを示す図である。
【
図8】MC38大腸癌細胞を移植したヒト化マウスである動物モデルにおけるヒト化抗体の有効性を示す図である。
【
図9A】PDに関連するMC38大腸癌細胞を移植したヒト化マウスである動物モデルにおけるヒト化抗体の有効性を示す図である。データは、平均±SEMとして示し、PBSと比較してDunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって分析した(
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【
図9B】PDに関連するMC38大腸癌細胞を移植したヒト化マウスである動物モデルにおけるヒト化抗体の有効性を示す図である。データは、平均±SEMとして示し、PBSと比較してDunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって分析した(
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【
図9C】PDに関連するMC38大腸癌細胞を移植したヒト化マウスである動物モデルにおけるヒト化抗体の有効性を示す図である。データは、平均±SEMとして示し、PBSと比較してDunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって分析した(
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、特定の実施例に関連して以下に例示される。これらの実施例は、本発明の単なる例示であり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定しないことが当業者には理解されるであろう。
【0033】
以下の実施例における実験法は、別に明記しない限り、全て慣用的なものである。以下の実施例で使用される原材料及び試薬は、別に明記しない限り、全て市販の入手可能な製品である。
【0034】
本開示において記載される「抗体686」又は「686」は、中国特許出願公開第112020514号に提示されるaCD25-a-686を指し、aCD25-a-686の配列は当該文献の
図1に示されている。
【実施例】
【0035】
実施例1:ネズミ抗体のスクリーニング及び同定
1.1:動物免疫
CHO-K1細胞を使用して、C末端に6-ヒスチジンタグを融合させたヒトCD25(NP_000408.1)(Met1-Cys213)を発現させた。従来の免疫プログラムに従って、フロイントアジュバントで4匹のBALB/cマウスを免疫化した。各々2匹のマウスを含む2つのバッチのマウスで免疫化を行い、バッチ間は2週間とした。各バッチのマウスを4回免疫化し、ヒトCD25-hisを使用したELISAによって試験し、いずれのマウスも1:1000を上回る血清力価を有する場合に最終的に免疫化しているとし、3日~4日後に脾臓を収集した。
【0036】
1.2:B細胞のパンニング及び培養
正式な実験を行う2日前に、4枚の10cmディッシュ(Corning、カタログ番号430167)内に培養培地を使用してフィーダー細胞をプレーティングした。正式な実験の1日前に、10000細胞/ウェル及び100μL/ウェルで40枚の96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3599)中にフィーダー細胞をプレーティングした。その間に、それらの免疫化マウスから採取したB細胞を、コーティングされた抗原ヒトCD25-hisでパンニングし、その後、得られたB細胞を、上記のフィーダー細胞でコーティングされた96ウェルプレート内にプレーティングした。細胞を37℃、5%CO2でおよそ10日間~14日間培養し、ウェル中のB細胞培養上清を、ELISA及びセルベースアッセイを介するスクリーニングのために収集した。
【0037】
1.3:ネズミ抗体を含有する上清のスクリーニング
ヒトCD25-hisに結合するネズミ抗体のELISAスクリーニング:
上記の免疫原ヒトCD25-hisをコーティング緩衝液で1μg/mLに希釈し、ELISAプレート内に50μL/ウェルで添加し、4℃で一晩コーティングした。翌日、コーティングしたプレートを取り、PBSTで3回洗浄し、次いでブロッキング緩衝液を使用して室温で1時間インキュベーションした。続いて、プレートを再びPBSTで3回洗浄し、明らかなクローンが形成されたウェル中のB細胞培養上清をELISAプレート内に添加し、室温で1時間インキュベーションした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでヤギ抗マウス二次抗体(1:10000)を、プレート内に50μL/ウェルで添加し、続いてこれを室温で1時間インキュベーションした。プレートをPBSTで3回洗浄し、TMBを50μL/ウェルで添加し、暗所で10分間発色させた。その後、2M硫酸を100μL/ウェルで添加して、反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取った。ネガティブコントロールのものより10倍高いOD値をポジティブの判断基準として使用し、ポジティブのクローンをB細胞中の抗体のシーケンシングのために採取した。
【0038】
実施例2:B細胞中の抗体のシーケンシング
キット中の指示に従って、PureLink(商標)RNAミニキットを使用してB細胞クローンからmRNAを抽出し、サブパッケージングし、-80℃で保存した。抽出されたmRNAをテンプレートとして使用し、キット中の指示に従って、PrimeScript(商標)II第一鎖cDNA合成キットを使用して、cDNAに逆転写し、次いでこれをサブパッケージングし、-80℃で保存した。
【0039】
Ex Taq酵素及び適切なプライマーを使用し、テンプレートとして上記cDNAを用いてVH配列及びVL配列を増幅し、次いで、シーケンシングのため、pMD18Tベクター内に連結した。シーケンシングの際、VH配列及びVL配列はそれぞれ、hIgG1(配列番号104)及びhKappa(配列番号105)定常領域のN末端に構築されていた。
【0040】
実施例3:キメラ抗体の組換え発現及び活性の検出
3.1:キメラ抗体の組換え発現
同じクローン由来の軽鎖及び重鎖を対でCHO-K1細胞に同時トランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、10μg/mL MSXを圧スクリーニングのために添加した。細胞密度及び生存度を回復した後、細胞を流加培養(Feed-batch)発現のために接種し、発現が完了したら上清を遠心分離して、プロテインAによって精製した。BCA法によって抗体濃度を決定した後、得られた抗体を定量的スクリーニングのために使用した。
【0041】
キメラ抗体は、キメラ抗体の軽鎖及び重鎖(H+L)の由来元である細胞クローン番号にちなんで名付けた。例えば、キメラ抗体「2046-2H1L1」は、2046-2と番号付けられた細胞クローン由来のキメラ抗体を表し、その重鎖は2046-2H1であり、その軽鎖は2046-2L1である。
【0042】
3.2:ヒトCD25に対するキメラ抗体の結合活性の検出
ヒトCD25-hisをコーティング緩衝液で1μg/mLに希釈し、96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加し、4℃で一晩コーティングした。翌日、コーティングしたプレートを取り、PBSTで3回洗浄し、次いでブロッキング緩衝液を使用して室温で1時間インキュベーションした。続いて、プレートを再びPBSTで3回洗浄した。100ng/mLから出発して、各キメラ抗体を3倍に希釈して、合計8つの濃度の段階希釈物を得て、次いでこれを96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加した。プレートを室温で1時間インキュベーションし、PBSTで3回洗浄し、次いで、ヤギ抗ヒト二次抗体(1:10000)を50μL/ウェルで96ウェルプレート内に添加し、続いてこれを室温で1時間インキュベーションした。次いで、プレートをPBSTで3回洗浄し、TMBを50μL/ウェルで96ウェルプレート内に添加し、暗所で10分間発色させた。その後、2M硫酸を100μL/ウェルで添加して、反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取った。結果を表1に示す。表1から分かるように、得られたキメラ抗体はヒトCD25に対する結合活性を有し、これは686のものに匹敵する。
【0043】
【0044】
3.3:ヒトCD25へのIL2の結合に対するキメラ抗体の阻害活性の検出
ヒトCD25-hisタンパク質をコーティング緩衝液で1μg/mLに希釈し、96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加し、冷蔵庫内、4℃で一晩コーティングした。コーティングしたプレートをPBSTで3回洗浄し、次いで、ブロッキング緩衝液をプレート内に100μL/ウェルで添加した後、室温で1時間インキュベーションし、続いてプレートを再びPBSTで3回洗浄した。ビオチン-IL2(下記方法で調製した:スルホ-NHS-LC-LC-ビオチン及びIL2分子をモル比10:1で均一に混合し、次いで室温で30分間反応させ、得られた標識化溶液をPBS中で限外濾過にかけ、過剰な標識剤を除去し、次いで小包装して、超低温冷蔵庫内で凍結保存した)を150ng/mLに希釈溶液(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20)で希釈し、各キメラ抗体を、開始濃度10μg/mLとなるように希釈溶液で希釈し、次いで3倍に希釈して、合計8つの濃度の段階希釈物を得た。希釈したビオチン-IL2及び各希釈したキメラ抗体を1:1の比率で混合し、次いで混合物を96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加し、続いて室温で1時間インキュベーションした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでHRP結合ストレプトアビジン(1:10000)を50μL/ウェルで添加し、プレートを室温で1時間インキュベーションした。96ウェルプレートを再びPBSTで3回洗浄し、TMBを50μL/ウェルで添加し、暗所で10分間発色させた。その後、2M硫酸を100μL/ウェルで添加して、反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取った。結果を
図1に示す。
図1から分かるように、686(中国特許出願公開第112020514号)と同様に、得られたキメラ抗体は全て、非IL2ブロッキング抗体である。
【0045】
3.4:CHO-K1/hCD25に対するキメラ抗体の結合活性の検出
適切な量のCHO-K1/hCD25細胞を収集し、1500rpmで5分間遠心分離し、PBSで2回洗浄した。次いで細胞を2.5×10
6細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁し、100μlを96ウェルV底プレートの各ウェルに添加した。20μg/mLから出発して、各キメラ抗体を3倍に希釈して、合計8つの濃度の段階希釈物を得て、次いでこれを96ウェルプレート内の細胞に100μL/ウェルで添加した。抗体及び細胞を十分に混合すると、得られた混合物には、それぞれ最終濃度10μg/mL、3.33μg/mL、1.11μg/mL、0.37μg/mL、0.12μg/mL、0.041μg/mL、0.014μg/mL、及び0.0046μg/mLで抗体が含まれる。一次抗体を含まないウェルをネガティブコントロールとして設定した。4℃での60分間のインキュベーション後、インキュベーションした細胞懸濁液を遠心分離し、PBSで2回洗浄し(200μl/ウェル)、次いで細胞を200μl/ウェルのPBSで再懸濁した。FITC標識化ロバ抗ヒト二次抗体(Jackson、カタログ番号709-095-098)を5μg/mlで細胞に添加し、十分に混合し、4℃で60分間インキュベーションした。次いでインキュベーションした細胞懸濁液を遠心分離し、PBSで2回洗浄し、細胞を再び200μl/ウェルのPBSで再懸濁した。フローサイトメーターを使用して検出を行い、結果を表2及び
図2に示す。表2及び
図2から分かるように、8つのキメラ抗体では、抗体2046-24H2L1、2046-111H2L1、2047-3H8L2及び2047-10H1L2が、CHO-K1/hCD25に対する結合活性を有し、これは686のものよりも明らかに高く、それらの4つのキメラ抗体が686よりも優れたhCD25結合活性を有することが示された。
【0046】
【0047】
3.5:キメラ抗体の親和性の検出
BIAcore計器X100を使用して、キメラ抗体とヒトCD25-hisとの間の相互作用を測定する実験を行った。実験は全てHBS-EP(1×)緩衝液中、25℃で操作した。抗ヒスチジン抗体をアミノカップリング法によってCM5チップの表面に固定化し、次いで濃度1μg/mlのヒトCD25-hisを充填し、60秒間捕捉した。50nMから出発して、抗CD25抗体を含有する各溶液を2倍に希釈して、合計6つの濃度の段階希釈物を得た。希釈物を注入し、会合を180秒間モニターし、解離を600秒間モニターした。pH1.5のグリシン溶液を注入することによってチップを再生させた。1:1結合モデルを使用して動態データを分析した。具体的な結果を表3に示す。表3から分かるように、キメラ抗体2046-18H1L1、2046-111H2L1、2047-3H8L2等は686よりも明らかに高い親和性を有する。
【0048】
【0049】
3.6:in vitroでTreg細胞を殺傷する際のキメラ抗体の活性
CD4
+CD25
+Treg細胞をヒトPBMCから単離した。キメラ抗体を96ウェルプレート内で希釈し、384ウェル白色/透明底細胞培養プレート(Corning、カタログ番号3765)内に20μl/ウェルで添加し、次いでこれを37℃、5%CO
2に置いた。ADCCエフェクター細胞(jurkat/CD16a/NFAT-luc細胞)を計数し、適切な量の細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、次いで培養培地内で再懸濁して、2.4×10
6細胞/mlの密度を得た。密度4×10
5細胞/mlのTreg細胞の懸濁液を、密度2.4×10
6細胞/mlのADCCエフェクター細胞の懸濁液と体積比1:1で混合した結果、得られた懸濁液中、Treg細胞の密度は2×10
5細胞/ml、ADCCエフェクター細胞の密度は1.2×10
6細胞/mlとなった。細胞(E:T=6:1)を384ウェル白色/透明細胞培養プレートに20μl/ウェルで添加し、これに抗体を添加し、37℃、5%CO
2で一晩(22時間~24時間)インキュベーションした。インキュベーション後、Bio-Lite Luciferase Assay Systemをプレート内に40μl/ウェルで添加し、マイクロプレートリーダーにおいて化学発光値を検出した。具体的な結果を表4及び
図3に示す。表4及び
図3から分かるように、キメラ抗体2046-2H1L1、2046-36H2L1、2046-61H1L2、2046-18H1L1、2046-24H2L1、2046-111H2L1、2047-10H1L2等は、in vitroでTregを殺傷する際に686よりも明らかに優れた活性を有する。
【0050】
【0051】
3.7:in vitroでIL2によって刺激されたTreg細胞においてSTAT5リン酸化を阻害する際のキメラ抗体の活性
CD4
+CD25
+Treg細胞をヒトPBMCから単離し、1.5mlのEPチューブ内で培養した。抗CD25抗体(ダクリズマブをネガティブコントロールとして使用し、686をポジティブコントロールとして使用した)をRPMI-1640+10%FBSで希釈して、10μg/mlの濃度を得た。抗体をEPチューブに200μl/チューブで添加し、30分間インキュベーションした。次いでチューブ内の上清を遠心分離によって除去し、10ng/mlの濃度のIL-2 200μlを各チューブに添加し、次いでこれを37℃で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、チューブを事前に準備した氷浴上に置いて、反応を停止させ、その間に、予冷のために遠心分離機を4℃に設定した。次いでチューブ内のCD4
+CD25
+Treg細胞を300×g、4℃で5分間遠心分離し、その上清を廃棄した。その後、細胞を氷上で予冷したPBS+3%FBSで1回洗浄し、1.5%パラホルムアルデヒド(4℃で予冷し、これを100μl/チューブで細胞に添加した)で20分間固定した。その後、900μlのPBS+3%FBSを加えて細胞を洗浄し、次いで遠心分離し、上清を廃棄した。次に、-20℃で一晩予冷した氷冷メタノールを100μl/チューブでチューブに添加し、次いでこれを氷上に置いて5分間透過処理を行った。次いで、900μlのPBS+3%FBSを加えて、固定及び透過処理したCD4
+CD25
+Treg細胞を洗浄し、次いで300×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。再び500μlのPBS+3%FBSを加えて細胞を1回洗浄し、次いで300×gで5分間遠心分離した。その後、細胞を100μlのPBS中に再懸濁し、Alexa Fluor647マウス抗Stat5(pY694)抗体を細胞に5μl/チューブで添加した。細胞及び抗体を十分に混合し、暗所、室温で30分~1時間インキュベーションした。上清を遠心分離によって除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁した。次いでオンマシン検出を行った。結果を
図4に示す。
図4から分かるように、686と同様に、得られたキメラ抗体は全て非IL2ブロッキング抗体である。
【0052】
3.8:マウス及びカニクイザルCD25に対するキメラ抗体のin vitro交差反応性
マウスCD25-his(UniProtKB-P01590、Met1-Lys213)及びカニクイザルCD25-his(NCBI-H6WS54、Met1-Arg213)をコーティング緩衝液で1μg/mLに希釈し、96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加し、4℃で一晩コーティングした。翌日、コーティングしたプレートを取り、PBSTで3回洗浄し、次いでブロッキング緩衝液を使用して室温で1時間インキュベーションし、次いで再びPBSTで3回洗浄した。100ng/mLから出発して、各キメラ抗体を3倍に希釈して、合計8つの濃度の段階希釈物を得て、次いでこれを96ウェルプレート内に50μL/ウェルで添加した。プレートを室温で1時間インキュベーションし、PBSTで3回洗浄し、次いで、ヤギ抗ヒト二次抗体(1:10000)を50μL/ウェルで96ウェルプレート内に添加し、続いてこれを室温で1時間インキュベーションした。次いで、96ウェルプレートをPBSTで3回洗浄し、TMBを50μL/ウェルで添加し、暗所で10分間発色させた。その後、2M硫酸を100μL/ウェルで添加して、反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取った。結果を表5に示す。表5から分かるように、得られたキメラ抗体は、カニクイザルCD25に対する交差反応性を有するが、マウスCD25に対する交差反応性は有しない。
【0053】
【0054】
実施例4:キメラ抗体のヒト化
8つのキメラ抗体2046-2H1L1、2046-36H2L1、2046-61H1L2、2046-18H1L1、2046-24H2L1、2046-111H2L1、2047-3H8L2、及び2047-10H1L2をヒト化設計用に選択した。
【0055】
8つのキメラ抗体の重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を、IMGTデータベース中のblast検索によってヒト生殖系列配列と比較した。重複遺伝子、及び非対称形成システインを含むものをヒト生殖系列遺伝子から除去した。最もマッチしたフレームワーク及びCDR領域を有する残りのものの中のヒト生殖系列遺伝子を選択し、それらのフレームワーク領域をヒトアクセプターフレームワークとして使用した。IGHJ/IGJK生殖系列遺伝子の配列類似性に基づいてFR-4を選択した。8つのキメラ抗体2046-2H1L1、2046-36H2L1、2046-61H1L2、2046-18H1L1、2046-24H2L1、2046-111H2L1、2047-3H8L2、及び2047-10H1L2について得られるヒト化配列をそれぞれ表6~表13に示し、HZ0型はCDRのみを移植したものを表し、HZ1型は導入された逆突然変異(複数の場合もある)を有し、HZ2型及び更なる型は配列中に存在するPTM部位で試みられた突然変異(複数の場合もある)を有し、それぞれのCDR(改良Chothia/AbMによって定義される)を下線で示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実施例5:ヒト化抗体の組換え発現
配列番号104に示されるような重鎖定常領域及び配列番号105に示されるような軽鎖定常領域を使用して、軽鎖及び重鎖を構築し、CHO-K1細胞内に対で同時トランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、10μg/mL MSXを圧スクリーニングのために添加した。細胞密度及び生存性を回復した後、細胞を流加培養発現のために接種し、発現が完了したら上清を遠心分離して、プロテインAによって精製した。BCA法によって抗体濃度を決定した後、得られた抗体を定量的スクリーニングのために使用した。
【0065】
ヒト化抗体、並びにこのヒト化抗体に含まれる対の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を、表14~表21に示す。「ix」が末尾に付け加えられた名称を有する抗体は、それに応じたキメラ抗体である。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
実施例6:ヒト化抗体の親和性の検出
BIAcore計器X100を使用して、ヒト化抗体とヒトCD25-hisとの間の相互作用を測定する実験を行った。実験は全てHBS-EP(1×)緩衝液中、25℃で操作した。抗ヒスチジン抗体をアミノカップリング法によってCM5チップの表面に固定化し、次いで濃度1μg/mlのヒトCD25-hisを充填し、60秒間捕捉した。50nMから出発して、抗CD25抗体を含有する各溶液を2倍に希釈して、合計6つの濃度の段階希釈物を得た。希釈物を注入し、会合を180秒間モニターし、解離を600秒間モニターした。pH1.5のグリシン溶液を注入することによってチップを再生させた。1:1結合モデルを使用して動態データを分析した。具体的な結果を表22に示す。
【0075】
【0076】
実施例7:IL2によって刺激されたTreg細胞においてSTAT5リン酸化をin vitroで阻害する際のヒト化抗体の活性
CD4
+CD25
+Treg細胞をヒトPBMCから単離し、1.5mlのEPチューブ内で培養した。抗CD25抗体(ダクリズマブをネガティブコントロールとして使用し、686をポジティブコントロールとして使用した)をRPMI-1640+10%FBSで希釈して、10μg/mlの濃度を得た。抗体をEPチューブに200μl/チューブで添加し、30分間インキュベーションした。次いでチューブ内の上清を遠心分離によって除去し、10ng/mlの濃度のIL-2 200μlを各チューブに添加し、次いでこれを37℃で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、チューブを事前に準備した氷浴上に置いて、反応を停止させ、その間に、予冷のために遠心分離機を4℃に設定した。次いでチューブ内のCD4
+CD25
+Treg細胞を300×g、4℃で5分間遠心分離し、その上清を廃棄した。その後、細胞を氷上で予冷したPBS+3%FBSで1回洗浄し、1.5%パラホルムアルデヒド(4℃で予冷し、これを100μl/チューブで細胞に添加した)で20分間固定した。その後、900μlのPBS+3%FBSを加えて細胞を洗浄し、次いで遠心分離し、上清を廃棄した。次に、-20℃で一晩予冷した氷冷メタノールを100μl/チューブでチューブに添加し、次いでこれを氷上に置いて5分間透過処理を行った。次いで、900μlのPBS+3%FBSを加えて、固定及び透過処理したCD4
+CD25
+Treg細胞を洗浄し、次いで300×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。再び500μlのPBS+3%FBSを加えて細胞を1回洗浄し、次いで300×gで5分間遠心分離した。その後、細胞を100μlのPBS中に再懸濁し、Alexa Fluor647マウス抗Stat5(pY694)抗体を細胞に5μl/チューブで添加した。細胞及び抗体を十分に混合し、暗所、室温で30分~1時間インキュベーションした。上清を遠心分離によって除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁した。次いでオンマシン検出を行った。結果を
図5に示す。
図5から分かるように、686と同様に、得られたヒト化抗体は全て非IL2ブロッキング抗体である。
【0077】
実施例8:Treg細胞をin vitroで殺傷する際のヒト化抗体の活性
CD4
+CD25
+Treg細胞をヒトPBMCから単離した。ヒト化抗体を96ウェルプレート内で希釈し、384ウェル白色/透明底細胞培養プレート(Corning、カタログ番号3765)内に20μl/ウェルで添加し、次いでこれを37℃、5%CO
2に置いた。ADCCエフェクター細胞(jurkat/CD16a/NFAT-luc細胞)を計数し、適切な量の細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、次いで培養培地内で再懸濁して、2.4×10
6細胞/mlの密度を得た。密度4×10
5細胞/mlのTreg細胞の懸濁液を、密度2.4×10
6細胞/mlのADCCエフェクター細胞の懸濁液と体積比1:1で混合した結果、得られた懸濁液中、Treg細胞の密度は2×10
5細胞/ml、ADCCエフェクター細胞の密度は1.2×10
6細胞/mlとなった。細胞(E:T=6:1)を384ウェル白色/透明細胞培養プレートに20μl/ウェルで添加し、これに抗体を添加し、37℃、5%CO
2で一晩(22時間~24時間)インキュベーションした。インキュベーション後、Bio-Lite Luciferase Assay Systemをプレート内に40μl/ウェルで添加し、マイクロプレートリーダーにおいて化学発光値を検出した。具体的な結果を表23及び
図6に示す。分かるように、ヒト化抗体2046-18H1L1-m2は、in vitroでのTregの殺傷において686よりも明らかに優れた活性を有し、これは686のものよりも1.85倍高かった。
【0078】
【0079】
実施例9:野生型マウスにおけるヒト化抗体の薬物動態学
順応期間後、30匹のマウスを、各5匹のマウスの6つの群にランダムに分けた。グループ分けに従ってマウスに腹腔内投与し、投与時間を記録した。各群のマウスの血液を、投与前(0時間)、並びに投与の4時間後、8時間後、24時間後(1日後)、72時間後(3日後)、120時間後(5日後)、168時間後(7日後)、240時間後(10日後)、288時間後(12日後)、及び336時間後(14日後)にサンプリングし、血清を収集して-60℃~-80℃で保存した。
【0080】
マウスにおけるPK研究のための血液薬剤濃度を以下のように検出した。
(1)コーティング。ヒトCD25-hisをPBS(pH7.2~pH7.4)で1μg/mLに希釈し、96ウェルELISAプレートに50μL/ウェルで添加し、次いでフィルムで密封した。プレートを2℃~8℃で15時間~20時間置き、次いでPBST(0.05%(v/v)Tween-20(pH7.2~pH7.4)を含む)で3回洗浄した。
(2)ブロッキング及び乾燥。プレートを、200μL/ウェルのN502で、室温で1時間~2時間ブロッキングした。ブロッキング緩衝液を吸い取った後、プレートを25℃で1時間超、インキュベーター中で乾燥させ、次いで、直ちに使用するか、又はフィルムで密封し、2℃~8℃で保存した。
(3)標準曲線のプロット及び品質管理に使用される標準の調製。マウス血漿(EDTA-K)を使用して、抗体試料を1000ng/mLに希釈した後、15ng/mLまで、2倍勾配希釈した(1000ng/mLを含めて7つの濃度)。加えて、標準曲線をプロットするために使用されたものと同じ抗体試料を、それぞれ1000ng/mL、100ng/mL及び20ng/mLの濃度まで定量的に希釈することで、これらの希釈物を品質管理(QC)として使用した。
(4)検出される試料の調製。異なる血液サンプリング時点の試料を得て、標準曲線をプロットするために使用される濃度範囲内の濃度にマウス血漿で希釈した。
(5)標準、品質管理及び試料の希釈。標準、品質管理及び試料を0.1%カゼイン(PBSで調製、pH6.2)で10倍希釈(例えば10μLを90μLで希釈)し、乾燥したプレートに50μL/ウェルで添加し、試料あたり2つの複製物を作製した。プレートをフィルムで密封し、室温で2時間インキュベーションし、次いでPBST(0.05%(v/v)Tween-20(pH7.2~pH7.4))で3回洗浄した。
(6)二次抗体とのインキュベーション。ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPを10%ヤギ血清で50000倍希釈し、プレートに50μL/ウェルで添加し、次いでこれを密封し、室温で1時間インキュベーションした。その後、プレートをPBST(0.05%(v/v)Tween-20(pH7.2~pH7.4))で3回洗浄した。
(7)発色。室温に温めておいたTMBを50μL/ウェルでプレートに添加して、暗所で20分間発色させた。
(8)反応停止及びOD値の読み取り。2M硫酸を100μL/ウェルでプレート内に添加し、次いで軽く叩いて硫酸を均一に混合した。650nmを参照として、450nmで測定されたOD読み取り値を使用して、試験した各試料の濃度を計算した。
【0081】
実験結果は、6つの抗体が150時間より長い半減期を有することを示した。具体的な結果を
図7に示す。
【0082】
実施例10:MC38大腸癌細胞を移植したB-hIL2RAヒト化マウスである動物モデルにおけるヒト化抗体の有効性試験
10.1:腫瘍阻害の分析
PBS中に再懸濁させたMC38細胞を、B-hIL2RAヒト化マウス(Biocytogen)の右脇腹領域に、5×10
5細胞/0.1mL、マウス1匹当たり0.1mLの濃度で皮下接種した。平均腫瘍体積が150±50mm
3に達したら、腫瘍体積及びマウスの体重に基づき適切なマウスを選択し、各群に6匹のマウスを含む6つの実験群に均等に分配した。投与はグループ分け当日より開始した(5mg/kg、週1回、計3回腹腔内注射した)。グループ分けの後、ノギスを使用して腫瘍体積を週に2回測定し、マウスを安楽死させる前にも測定した。各腫瘍の長径及び短径を測定し、腫瘍体積=0.5×長径×短径
2により腫瘍体積を算出した。結果から、対照群と比較して、2046-18H1L1-m2を投与した群及び686を投与した群が最も優れた阻害効果を示し、腫瘍増殖阻害率が80%を超え、これに続いて2046-111H1L1-m2及び2046-36H1L1を投与した群ではいずれも腫瘍増殖阻害率がおよそ70%となることが示された。具体的な結果を
図8に示す。
【0083】
10.2:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の分析
グループ分けの21日後、マウスの腫瘍内にリンパ球浸潤が観察された。TILを分析するために腫瘍を採取し、結果を
図9に示す(図中、mはマウスを意味する)。対照群(PBS)と比較して、2046-18H1L1-m2を投与した群、2046-111H1L1-m2を投与した群、2046-36H1L1を投与した群、686を投与した群、及び2047-10H2L2を投与した群は全て、明らかに少ないTregを示した。これは抗体がTregを枯渇させるメカニズムと一致するものである。更なる分析により、2046-18H1L1-m2を投与した群及び2046-111H1L1-m2を投与した群におけるTreg数の減少がより顕著であったことが示された。さらに、対照群と比較して、2046-18H1L1-m2を投与した群、2046-111H1L1-m2を投与した群、2046-36H1L1を投与した群、686を投与した群、及び2047-10H2L2を投与した群はいずれも、CD8
+Teff及びグランザイムB
+CD8
+Teffの数の一定の増加を示し、これによってこれらの非IL2ブロッキング性抗CD25抗体が、Tregを枯渇させることに加えて、腫瘍微小環境を是正し、またTeffの割合及び殺傷能力を高めることができることが示された。
【0084】
本発明の実施形態に関する以上の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で本発明に種々の変更及び修正を加えることができ、これは添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】