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特表2024-532791モジュール式多層マイクロ流体カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】モジュール式多層マイクロ流体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240903BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20240903BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240903BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
G01N35/08 A
B81B1/00
B81C3/00
G01N37/00 101
C12M1/34 A
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508607
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022039842
(87)【国際公開番号】W WO2023018723
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,448
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523467142
【氏名又は名称】コアグロー・メディカル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Coagulo Medical Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ガリット エイチ
(72)【発明者】
【氏名】スロカム,アレクサンダー エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス,フォルカーズ イー
【テーマコード(参考)】
2G058
3C081
4B029
【Fターム(参考)】
2G058CC08
2G058CC17
2G058CC18
2G058CC19
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA11
3C081BA21
3C081BA23
3C081BA33
3C081CA05
3C081CA32
3C081CA38
3C081DA10
3C081EA27
3C081EA39
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB10
(57)【要約】
本発明は、一般に、カートリッジの層の精密な位置合わせを提供するように組立時に使用できる位置合わせ特徴を有する多層マイクロ流体カートリッジに関する。このようなカートリッジは、例えば医療診断に使用するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース構造と層とを有するカートリッジであって、前記層が前記ベース構造に接着又は付着されており、
前記ベース構造及び前記層のそれぞれは3つのスロットを有しており、前記ベース構造の前記3つのスロットは、前記層の前記3つのスロットと、同じ大きさであり、同じ平面方位(X、Y)及び角度方位を有しており、その結果、前記ベース構造の3つのスロットと前記層の3つのスロットとの位置合わせが、前記ベース構造と前記層との平面方位及び回転方位での位置合わせをもたらす、カートリッジ。
【請求項2】
1つ以上の追加層をさらに有しており、前記1つ以上の追加層のそれぞれが、前記ベース構造の前記3つのスロット及び前記層の前記3つのスロットと、同じ大きさを有し且つ同じ平面方位(X,Y)及び角度方位を有する、3つのスロットを有しており、その結果、前記1つ以上の追加層のそれぞれの前記3つのスロットと前記ベース構造の前記3つのスロットとの位置合わせが、前記ベース構造、前記層、及び前記1つ以上の追加層の平面方位及び回転方位での位置合わせをもたらす、
請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記ベース構造の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第1仮想三角形の頂点の1つに配置され、各スロットの長手方向軸が前記前記第1仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされている状態で、それらの中心が前記第1仮想三角形上に在るように前記ベース構造に位置決めされており、
前記層の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第2仮想三角形の頂点の1つに配置され、各スロットの長手方向軸が前記第2仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされている状態で、それらの中心が前記第2仮想三角形上に在るように前記層に位置決めされており、
前記第1仮想三角形の含まれる角度の前記角二等分線が前記第1仮想三角形内の第1点で交差しており、前記第2三角形の含まれる角度の角二等分線が前記第2仮想三角形内の第2点で交差している、
請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記第1仮想三角形内にある前記第1点の位置は、前記第2仮想三角形内にある前記第2点の位置と位置合わせされている、
請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
ベース構造と1つ以上の層とを有するカートリッジであって、
前記ベース構造は3つのスロットを有しており、前記1つ以上の層はそれぞれ3つのスロットを有しており、前記全てのスロットは同じ大きさ、同じ平面方位(X、Y)及び角度方位を有しており、
前記ベース構造の前記3つのスロットと前記1つ以上の層のそれぞれの前記3つのスロットとの位置合わせが、前記ベース構造の特徴と前記1つ以上の層の特徴との平面的及び回転的位置合わせをもたらすように、前記ベース構造の前記3つのスロットは前記ベース構造に位置決めされており、前記1つ以上の層のそれぞれの前記3つのスロットは各層に位置決めされている、カートリッジ。
【請求項6】
ベース構造、第1層、及び1つ以上の追加層を有する、マイクロ流体カートリッジであって、前記第1層がベース構造に付着又は接着されており、
前記ベース構造は3つのスロットを有しており、前記第1層は3つのスロットを有しており、前記1つ以上の追加層のそれぞれは3つのスロットを有しており、全てのスロットは同じサイズを有しており、
前記第1層の3つのスロットは、前記ベース構造の3つのスロットと同じ平面方位(X、Y)及び角度方位を有し、且つ、前記ベース構造の3つのスロットとの位置合わせが前記第1層と前記ベース構造との平面的及び回転的位置合わせをもたらすように、前記第1層に配置されており、
前記1つ以上の追加層のそれぞれの前記3つのスロットは、前記ベース構造の3つのスロットと同じ平面方位(X、Y)及び角度方位を有し、且つ、前記ベース構造の3つのスロットとの位置合わせが、1つ以上の追加層のそれぞれと前記ベース構造との平面的及び角度的位置合わせをもたらすように、前記1つ以上の追加層のそれぞれに配置されている、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項7】
前記ベース構造の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第1仮想三角形の頂点の1つに配置され、各スロットの長手方向軸が前記第1仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされた状態で、それらの中心が前記第1仮想三角形上に在るように前記ベース構造に位置決めされており、
前記第1層の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第2仮想三角形の頂点の1つにあり、各スロットの長手方向軸が前記第2仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされた状態で、前記第2仮想三角形上に在るように前記第1層に位置決めされており、
前記第1仮想三角形の含まれる角度の前記角二等分線は、前記第1仮想三角形内にある第1点で交差し、前記第2三角形の含まれる角度の前記角二等分線は、前記第2仮想三角形内にある第2点で交差する、
請求項6に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項8】
前記第1仮想三角形内にある前記第1点の位置は、前記第2仮想三角形内にある前記第2点の位置と位置合わせされている、
請求項7に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項9】
前記層は接着剤層である、
請求項1~4の何れか1つに記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記第1層が接着剤層である、
請求項6~8の何れか1つに記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項11】
請求項9に記載の前記カートリッジを組み立てる方法であって、
真空チャックから外側に突出する3本のピンを有する前記真空チャック上に前記接着剤層を載置すること、ここで、前記接着剤層の3つのスロットが前記真空チャックの前記ピンをスライドし、
前記真空チャックを垂直動作スライド上に載置すること、その結果、前記真空チャック上に載置された前記接着剤層が下向きに面しており、
前記ベース構造が浮動するように、前記ベース構造を空気軸受上に載置すること、ここで、前記空気軸受チャック及び真空チェックは互いに平行且つ互いに面するように位置決めされ、
前記真空チャックの3つのピンが前記ベース構造の3つのスロットに入るように前記真空チャックを下降させて、前記真空チャックを前記接着剤層が前記ベース構造に接触するまで下降させ続けること、及び
前記真空チャックを介して前記接着剤層に圧力を加えること
を含む方法。
【請求項12】
前記真空チャック上の前記3つのピンのそれぞれの長さは、前記ベース構造内の前記3つのスロットの深さよりも小さい、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記真空チャック上の前記3本のピンはテーパー状である、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記空気軸受チャックは、エッジ位置合わせ特徴に対する前記ベース構造の位置合わせを可能にする、前記エッジ位置合わせ特徴を有している、
請求項11~13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記接着剤層がカバーを有しており、前記接着剤層を前記真空チャックに配置した後であって前記真空チャックを下降させる前に、前記接着剤層から前記カバーを取り外すことをさらに有している、
請求項11~14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
ベース構造と、前記ベース構造に付着される接着剤層とを有するマイクロ流体カートリッジを組み立てる方法であって、
真空チャックから外側に突出する3つのピンを有する真空チャックに、3つのスロットを有する接着剤層を載置すること、ここで、前記接着剤層の3つのスロットが前記真空チャックの前記ピンをスライドし、
前記真空チャックを垂直動作スライド上に載置すること、その結果、前記接着剤層が下方に面しており、
3つのスロットを有するベース構造を、ベース構造が浮動するように空気軸受上に載置すること、ここで、前記空気軸受チャック及び真空チェックは互いに平行且つ互いに面するように位置決めされ、
前記真空チャックの3つのピンが前記ベース構造の3つのスロットに挿入されるように前記真空チャックを下降させて、前記接着剤層が前記ベース構造に接触するまで前記真空チャックを下降させ続けること、及び
前記真空チャックを介して前記接着剤層に圧力を加えること
を有する方法。
【請求項17】
前記ベース構造の前記3つのスロットと前記接着剤層の前記3つのスロットは同じ大きさであり、
前記ベース構造の前記3つのスロットは、前記接着剤層の前記3つのスロットと同じ平面方位(X、Y)及び回転方位を有しており、且つ、前記ベース構造の前記3つのスロットと前記接着剤層の前記3つのスロットとの位置合わせが、前記ベース構造の特徴と前記接着剤層の特徴との平面的及び回転的位置合わせをもたらすように、前記ベース構造の前記3つのスロットは前記ベース構造に位置決めされており、前記接着剤層の前記3つのスロットは前記接着剤層に位置決めされている、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ベース構造の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第1仮想三角形の頂点の1つ上に配置され、各スロットの長手方向軸が前記第1仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされた状態で、それらの中心が前記第1仮想三角形上に在るように前記ベース構造に位置決めされており、
前記接着剤層の前記3つのスロットは、各スロットの中心が第2仮想三角形の頂点の1つ上に配置され、各スロットの長手方向軸が前記第2仮想三角形の含まれる角度の角二等分線の1つと位置合わせされた状態で、それらの中心が前記第2仮想三角形上に在るように前記接着剤層に位置決めされており、
前記第1仮想三角形の含まれる角度の角二等分線は、前記第1仮想三角形内にある第1点で交差し、前記第2三角形の含まれる角度の角二等分線は、第2仮想三角形内にある第2点で交差する、
請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1仮想三角形内にある前記第1点の位置は、前記第2仮想三角形内にある前記第2点の位置と位置合わせされている、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール式多層マイクロ流体カートリッジに関する。より具体的には、本発明は、一体化された位置合わせ(アライメント)特徴を有するモジュール式多層マイクロ流体カートリッジ、及びその組み立て方法に関する。カートリッジは、例えば血液サンプルの凝固を評価するためなどを含む、体液サンプルを評価するための医療診断に使用されてもよい。本明細書で説明される装置及び方法は、他のさまざまな用途にも使用され得る。
【背景技術】
【0002】
モジュール式医療診断用カートリッジは、1つ以上の成形流体流路を含むコア要素と、1つ以上のカバー層とをしばしば含んでおり、1つ以上のカバー層は、コア要素に取り付けられて、流路を完全に取り囲み、1つ以上のチャネルを形成する。このようなカートリッジでは、1つ以上の層とコア要素との間及びこれらにわたる位置合わせは、従来の製造技術で達成される可能性がある。しかしながら、チャネルのサイズが小さくなり且つ複雑さが増すにつれて、例えば、チャネルがカートリッジに組み込まれた特定の特徴(例えば、電子センサ)と重複し及び/又は位置合わせをしなければならない場合、コア要素に対する層の正確な位置合わせがますます重要になる。
【0003】
モジュール式多層マイクロ流体カートリッジの製造と組み立てに関する課題は、例えば電子回路基板(プリント回路基板など)などの他の多層精密装置には必ずしも存在しない。プリント回路基板(PCB)は多くの場合、複数層を有しており、各層は、画定された機能を有しており、複数層に塗布されており複数層間の表面全体を覆う接着剤によって多層「ブック」に一緒に結合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、材料の複数シート(又は層)を一緒に接着するために、シートはしばしば、接着されるシートの直交する直線辺が配置される2つの直交する基準辺を提供することによって位置合わせされる。接着剤は多くの場合シートタイプで、冷やせば、粘着性がなく、表面を横切って自由に滑る。合成角で保持されて振動が加えられる場合、シートは整列して製本可能な「ブック」を形成する。その後、圧力と熱が加えられて、接着剤を流動させて、表面同士を接着させることができる。しかしながら、可撓性でもある非常に薄いシートで関して、接着剤が粘着性の場合に関して、シートが全く平らでなく隆起した幾つかの領域を有する場合に隆起した領域が接触して早期に接着する可能性があり、その結果、しわが接着されたシートの間の短絡を発生させる可能性があり及び/又は特徴の位置ずれに至る可能性があるので、別の方法が必要とされる。
【0005】
多層の「ブック」がいったん組み立てられて硬化すれば、シート間の接続が行われて、装置の全体の機能が作り出される。シート間のこれらの接続は、スルーホールを残す心配なく、メッキを貫通するビアを穿孔することによって行われる。
【0006】
材料のシートを含むコンポーネント間の位置合わせは、Slocum,A.著“運動学的連結:設計原理及び適用の検討”,Int. J. of Machine Tools and Manufacture(2009),doi:10.1016/j.ijmachtools.2009.10.006を参照することによって説明され、本明細書に引用される参照を含む。
【0007】
正確な診断に使用されるモジュール式多層カートリッジの製造及び組み立ては、このような従来の工程に依存することはできない。例えば、接着剤が流路(例えばチャネル)に流れ込む懸念がある。さらに、層間の接続穴は、積層工程の後として容易に開けることができない。
【0008】
したがって、例えば正確な診断に使用するのに適したマイクロ流体カートリッジ、及びそのようなカートリッジを組み立てる技術に対する必要性が当技術分野には存在する。特に、カートリッジの層が精密かつ正確に位置合わせさせられた、多層マイクロ流体カートリッジが必要とされている。本発明はこのような必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載された装置と方法は、モジュール式多層マイクロ流体カートリッジの位置合わせ特徴と、そのようなカートリッジの組み立てに関する方法を提供する。
【0010】
本発明の実施形態は、ベース構造と、1つ以上の層を有する多層カートリッジを提供し、1つ以上の層のうちの第1層はベース構造に接着又は付着されており、後続する各層は、前の層に接着又は付着されており、ベース構造、及び1つ以上の層の各々は、ベース構造と1つ以上の層との間及びこれらにわたる位置合わせを可能にするように配向された3つのスロットを有する位置合わせ特徴を有している。特に、ベース構造上の3つのスロットと、1つ以上の層のそれぞれ上の3つのスロットは、ベース構造のスロットが1つ以上の層のスロットと(例えば、X、Y平面において、及び表面に対する法線を中心とする回転に関して)正確に位置合わせできるように、同じサイズ、位置、及び角度配向を有して、1つ以上の層のそれぞれが精密な平面様式で付着されることを保証し、さらに正確な運動学的拘束を提供する。組立治具は、その位置が、ベース構造上及び1つ以上の層のそれぞれ上の、位置合わせ特徴の位置(例えば、ベース構造上の3つのスロットの図心と、1つ以上の層のそれぞれ上の3つのスロットの図心と)と整列するピン(例えば、3つの丸ピン)を有してもよく、それによって、組立治具が、1つ以上の層のそれぞれを組立治具及びそのピンに対して位置決めして平坦に保持することができ、且つ、組立治具のピンがベース構造のスロットに係合(連結)して、1つ以上の層のそれぞれがベース構造を有する組立体の一部に平面的に正確に接触させられることを可能とてもよい。ベース構造及び1つ以上の層のそれぞれについて、3つのスロットは、組立治具上の3つの丸ピンと係合しており、それによって、3つのスロットの中心が、三角形の含まれる角度の角二等分線が層状要素間で所望される最大の位置合わせ精度の領域にある点で交わる、仮想三角形上に位置し、スロットの中心が三角形の頂点上に位置し、それらの長手方向軸が三角形の頂点の対応する角二等分線と位置合わせされている(図7参照)。本明細書で説明される実施形態では、ベース構造はそれ自体が層であり、他の層(例えば、接着剤層、プリント回路基板など)は追加層であり、すべての層は、層が配置される組立冶具から出る3つのピンを使用することによって、互いに対して精密に位置決めされ得、組立冶具から出るピンが互いに対して正確に位置決めされていなくても、層は互いに対して正確に配置される。本明細書において、「コア要素」及び「ベース構造」という用語は、文脈から別段明らかでない限り、互換的に使用される。例示的な実施形態において、カートリッジ本体600は、このようなベース構造を有している(例えば、図1A及び3参照)。
【0011】
様々な実施形態において、本明細書に説明される組立工程は、ベース構造を含むカートリッジ組立体の部分に複数の層を付着又は接着するために繰り返されてもよい。これらの実施形態の幾つかでは、同じカートリッジ上又は同じカートリッジ内の異なる点を中心とした複数の層の位置合わせを可能にするように、複数の位置合わせ機能が存在してもよい。
【0012】
本発明は、本明細書に記載されるように、これら及びその他の重要な側面に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、カートリッジの一実施形態の前面の等角図を示している。
図1B図1Bは、カートリッジの一実施形態の後面の等角図を示している。
図2A図2Aは、マイクロ流体チャネルが一体成形されたカートリッジのベース構造の上面図を示している。
図2B図2Bは、マイクロ流体フローシステムの概略図を示している。
図3図3は、カートリッジの一実施形態の分解図を示している。
図4図4は、カートリッジの一実施形態の主要領域を示している。
図5図5は、カートリッジが設置された器具の2つの丸い位置決めピン(301a及び301b)に対して位置合わせするカートリッジを示している。
図6A図6Aは、2本の丸い位置決めピンに対するカートリッジの運動学的位置合わせを図示している。
図6B図6Bは、カートリッジのV字状領域上の丸い位置決めピンの拡大図を示している。
図6C図6Cは、カートリッジの平坦領域上の丸い位置決めピンの拡大図を示している。
図7図7は、3つのスロット(600z)を示しており、スロットの中心を頂点とする仮想三角形の角二等分線に沿ったスロットの位置合わせを図示している。
図8図8は、ベース構造と多層カートリッジの1つ以上の層の、運動学的位置合わせ用の3つの丸いピン(961d)を有する組立治具(真空治具であってもよい)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読めば、当業者によってより容易に理解されるであろう。別個の実施形態の文脈で上述及び後述する本発明の特定の特徴は、単一の実施形態を形成するために組み合わせることもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、その下位組合せを形成するように組み合わせられてもよい。加えて、本明細書で説明される本発明の図面及び具体的な実施形態は、例示のために示されており、説明及び図面は説明のためのみであり、具体的な実施形態は本発明の限定を画定することを意図したものではないことが明示的に理解される。
【0015】
図1A及び図1Bに示されるように、本明細書で説明されるカートリッジ実施形態は、流体サンプルを評価するために使用され得る自己密閉型マイクロ流体システムである。例えば、カートリッジ組立体60は、一連の血液検査を実行するために使用されてもよい。カートリッジ組立体60は、カートリッジのベース構造を有しており、ベース構造に成形され得るチャネル及びリザーバを含む、カートリッジ本体600を有しており、組立中、成形された流体流れ領域(例えば、図2Aを参照)の開放側は、カバー層で蓋されて、閉鎖チャネル及びリザーバを形成する。図2Bは、流体フローシステムの概要を示している。カートリッジの1つの基本的な機能は、サンプル挿入口600iを介して流体サンプル(例えば、血液)を受け入れることであり、このサンプル挿入口は、カートリッジの外部にサンプルがないことを確実にするのを助けるためにキャップ603によって覆われ得る(例えば、図3を参照)。幾つかの実施形態では、サンプル挿入口600iは、例えばシリンジによって貫通されてもよい入口領域隔壁602を有しており、この隔壁は、サンプル挿入装置(例えばシリンジ)がサンプル挿入口600iから引き抜かれると自己密封する。カートリッジに挿入されると、サンプルはポート84(図2A参照)を介して流体チャネルに入る。特定の実施形態では、サンプル挿入口600i(又は他の入口領域)が(例えば、入口領域隔壁602を介して)サンプルの流出及び/又は逆流を防止することが特に重要であってもよく、例えば、閉鎖されたマイクロ流体カートリッジ内のサンプルの封じ込めは、潜在的に感染性のサンプルを試験するために特に望ましくてもよい。幾つかの実施形態では、サンプルがマイクロ流体リザーバ内にあり、最小流体量が確認されると、駆動圧が発生して、流体サンプルをマイクロ流体リザーバから複数の流体流路(チャネル又はレーンとも呼ばれる)に移動させ、これら複数の流体流路のそれぞれはその流路に沿った1つ以上のチャンバ(ウエルとも呼ばれる)を有してもよい。幾つかの実施形態では、カートリッジが複数のチャネルを有してもよく、少なくともいくつかのチャネルはそれぞれ、直列に接続されたチャンバを有する。特定の実施形態では、各チャネルは異なる分析用の試薬を含んでもよく、他の実施形態では、幾つかのチャネル又はすべてのチャネルは同じ分析用の同じ試薬を含んでもよい。特定の実施形態では、チャネルは同じ試薬を含んでもよいが、濃度が異なる場合がある(例えば、3つのチャネルがXa因子を含むが、Xa因子の濃度はチャネルによって異なる場合がある)。各チャネルは、検出チャンバ又はウエルに至ってもよく、余分なサンプルは90などの1つ以上の廃棄物容器に受け入れられてもよい。
【0016】
図2Aは、カートリッジ組立体60の例示的なベース構造を示しており、その流体フローは図2Bに概略的に表されている。好ましい実施形態では、圧力源は、加圧チャンバ、例えばプランジャ80(ピストン、栓など)を、複数のマイクロ流体チャネルを含む領域にチャネル82によって接続されている、カートリッジ60の中空円筒構造81(シリンダ81とも呼ばれる)に押し込む装置(図示せず)によって生成される。加圧チャンバ(例えばシリンダ81)は、気体、流体、又はその両方を含んでもよい。幾つかの実施形態では、ピストン/シリンダ配置の代わりにベローズなど、圧力を印加するための代替部品を使用してもよい。圧力源の作動(例えば、シリンダ内へのピストンの動き)は、マイクロ流体システム内に所望の圧力と流量を供給するように制御される。
【0017】
カートリッジ組立体60は、様々な部品を有してもよい。幾つかの実施形態では、図3の実施形態に示されるように、カートリッジ本体600は、シリンダ81内のプランジャ80、フィルタプラグ608、支持リング605、及びサンプル挿入口600iを含んでいる。幾つかの実施形態では、カートリッジ組立体は、より少ない又は追加の要素を有してもよく、例えば、層606用の支持リング605が一体成形されたスポーク又はメサに置き換えられてもよい。図4にさらに示されるように、カートリッジ組立体60は、加圧チャンバ81、主流体本体62、及びハンドル領域63の、少なくとも3つの主領域を含んでもよい。
【0018】
特定の実施形態では、第1感圧接着剤(PSA)層606、第2PSA層607、及び回路基板800がそれぞれ、カートリッジ本体600に運動学的に位置合わせされ、(例えば、接着剤、レーザ溶接又は超音波溶接、ヒートシールなどによって)他の構成層の少なくとも1つに付着又は接着される(例えば、図3及び図4を参照)。第1PSA層606及び第2PSA層607のそれぞれは、片側の接着剤又は両側の接着剤を有してもよい。バックシール層604(本明細書ではバッキングプレート604とも呼ばれる)もまた、カートリッジ本体600の底部に接着されて、カートリッジ本体600内の1つ以上の流路を取り囲んで、チャネルを形成してもよい。サンプル挿入口600iは、所定位置に押し付けられており取り付けられたままにされ得るように、エラストマ材料製であり得る取り外し可能なキャップ603により閉じられてもよい。代替的に、キャップ603は、ネジ式接続又はルアーロック接続によって取り付けられ得る。
【0019】
カートリッジ本体600は、マイクロ流体用の医療グレードのプラスチック(例えば、ポリカーボネートプラスチック)の精密射出成形によって作成され得る。幾つかの実施形態では、特に、非常に微細な特徴が所望される場合、カートリッジ本体は、非常に微細な特徴を形成する能力で知られる液晶ポリマーを用いて射出成形されてもよい。射出成形で作成され得る最小の特徴の幾つかは、概略、幅が約40マイクロメートル、公差がプラスマイナス5マイクロメートルである。例えば、幅40マイクロメートルのチャネルの深さは、通常、概略、約10から約20マイクロメートルである。幅が約100マイクロメートルまで増大するにつれて、特徴の製造が容易になり、それ故、金型のコストが低減されてもよい。概略、約200マイクロメートルの大きさの成形された特徴の場合、公差は概略、約5%であってもよい。ビア(垂直チャネルを形成する要素の開口部であって、カートリッジシステムのZ軸に沿った流体の移送を可能とする)は通常、射出成形金型内でドロップピンを使って作成され、このような開口部のために、シール層が要求されてもよい(示される実施形態では、例えば、604は600の裏側をシールするように接着されてもよく、回路基板層800はカートリッジを表側上でシールするのに使用されてもよい)。現在の製造技術では、約3度のテーパーを有する直径約0.5mmのドロップピンを可能とする。
【0020】
PSA606及び607の層(フィルムの形態であってもよい)が、流体接続、及び追加ビア、及びフロー特徴(例:流体論理用リザーバ)を作るようにカートリッジに追加され得る。PSAの層は、商業用のレーザ切断又はスタンピング(例えばダイカッティング)によって大量生産され得る。所望の解像度に依存して、既製のレーザ切断機でも少量生産が可能である。例えば、40WのCOレーザ彫刻機(例えば、OMTech laser K40モデル)は、約1500DPIの解像度を有しており、これは約16.9μmの最小特徴サイズに変換する。幾つかのユニット(例えば、OMTechの50Wアップグレードユニット)は、約4500DPIで利用可能であり、これは約5.6μmのピッチに変換する。特徴に所望されるパターン及び容積に応じて、PSA材料は、所望の形状を有するPSA層にダイカットされてもよい。
【0021】
各PSA層は、その表面に接着剤を有してもよい。幾つかの実施形態では、カバーシートを剥がすことによって、例えば3M 1513両面接着剤テープのように接着剤が露出されてもよい。薄い接着剤層(例えば接着フィルム)が正確かつ精密に配置されることを確かにすること、大きな課題がある。例えば、PSA層は一般的に薄く、順応性があるので、容易に変形する。さらに、PSA層の位置合わせがずれていると、特徴(例えばビア)が揃わないことがある。PSA層を使用する1つの利点は、それ自体が、特定の化学組成製であってもよい1つ以上の一体化された接着剤層を有してもよいことであり、接着剤によっては、PSA層の他のカートリッジ要素への接着が、ほとんど又は全く熱を加えることなく達成される可能性があり、PSA層がマイクロ流体チャネルにたるみ及び/又は流れ込む可能性が低くなる。幾つかの実施形態では、例えば、試験試薬がPSA層でシールされるべきマイクロ流体チャネル内に(例えば、チャネルのチャンバ内)に予め堆積されている場合、高熱を必要としない接着剤を有するPSA層を使用することで、タンパク質などの試薬が(例えば、より高い温度を適用した結果として)変性しないことを確実にする可能性がある。
【0022】
図3は、カートリッジ本体600の前面600fに面する接着剤層を有するPSA層606を図示している。図4に図示される例示的な実施形態では、背面層604は、PSA層606よりも厚く、幾つかの可能性のある方法(例えば、接着剤を用いて、圧力、熱、超音波溶接など)の何れかを用いて、カートリッジ本体600の後面600rに接着又は付着させられてもよい。特定の実施形態では、背面層604は透明であり、背面600rが擦られた(例えば、不透明にされる)接着領域を有する場合、それらの領域において、透明な背面層を通るレーザ溶接が容易になる。同様に、付着又は接着されるべき層の1つが不透明な色である場合、例えばカートリッジ本体600が黒色であり背面層604が透明である場合も、レーザ溶接が使用されてもよい。
【0023】
PCB層800は、リジットであり得又は可撓性であり得、又はそれ自体が、可撓性であえる1つ以上の層と、リジットである他の層とを有してもよい。例示的な実施形態では、Kapton(登録商標)製の可撓性PCBがリジッド化された層(リジッドPCBなど)に貼り付けられてもよい(例えば、付着され、レーザ溶着されるなど)。さらに、PCB層800は、カートリッジ60の流体領域を分析するためのカートリッジの要素との通信を確立するために、カートリッジの他の要素と電気的に接触するために使用され得る少なくとも1組の接触パッド800a(図5参照)を有してもよい。例えば、マイクロ流体特徴に面する回路基板上のインピーダンス検出回路は、電圧が印加されたときに試薬と混合された血液サンプルのインピーダンスを測定してもよい(例えば、凝固、疾患などを検出するため)。幾つかの実施形態では、リジッドPCBは一般的な材料製であってもよく(例えば、FR-4、他のエポキシガラス積層板など)、その使用は、低コスト、製造の容易さ、及び/又は材料特性(例えば、高温耐性)のために望ましくてもよい。他の実施形態では、カートリッジ用に意図された試験(例えば、エポキシガラス積層板製のPCBが干渉する可能性のある蛍光ベースの分析)に基づき、Kapton(登録商標)で作られたPCBなどの可撓性PCBの使用が好ましくてもよい。特定の実施形態では、例えば、紙-フェノール(例えば、FR-3紙-エポキシ)、ポリエチレン(PET)、ポリエーテルサルホン(PES)など製のリジッドPCBはまた、特定の試験(例えば、特定の蛍光ベースの試験)を実施することを可能としてもよい。様々な実施形態において、流体検査領域内の流体を特定の温度に維持することが望ましい場合がある。それ故、特定の実施形態では、PCB層800は、例えば、約20℃の低い温度、及び/又は約45℃の高い温度などの特定の温度又は温度範囲を達成及び維持できる、加熱又は他の温度制御要素(例えば、電子機器の層内)を含んでもよい。例えば、サンプルにおける凝固を評価するのに使用されるカートリッジの場合、温度は約37℃であり得る。単一又は複数の温度センサ及び/又はコントローラ回路は、温度を監視し、及び流体領域の全てにわたって又は特定の流体領域(反応が起こる及び/又は測定が行われる領域など)にわたって望ましい温度を達成及び/又は維持するように、PCB層800に含められ得る。温度測定はまた、特定のフィードバック温度制御システム用の検査ユニットによって使用されることもある。
【0024】
さらに、ある側面では、温度が約65℃より高く上昇すると、最小限の構造的支持により、1つ以上のPSA層が剥離しやすくなってもよい。それ故、技術及び/又は材料(上記のような)の何れか1つ又は任意の組み合わせによって、特定の温度作動範囲(例えば、65℃を超えない温度)に調整し及び/又は維持することが望ましくてもよい。さらに、PSAの剥離に対する保護を促進する(例えば、特定の接着特性を有するPSA層が使用されてもよい)、又はこの懸念をなくす(例えば、PSAの代わりにレーザ溶接又は超音波溶接が使用されてもよい)、技術が採用されてもよく、特定の材料が使用されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、カートリッジの非流体流領域は、特に、カートリッジがウエル領域を有する多数のマイクロ流体チャネルを有する1つ以上の精密成形部品を有する場合、全て(例えば、プラスチックで)充填されなくてもよく、さもなければ、カートリッジは、撓む可能性があるホットスポットに悩まされる可能性があり、及び/又は所望の精度の損失につながる可能性がある。環状領域605aの場合がそうであり、幾つかの実施形態では、中空のままにしなければならない。しかしながら、そのような実施形態では、PSA層606及び607が領域605aに落ち込み、層を接続するビア内の流体圧力、及び/又は中空環状領域605aにわたる流体圧力によって、付着又は接着されていたにもかかわらず、層の1つ以上が分離する可能性がある。それ故、支持リング605は環状領域に挿入されて、バックアップ構造として作用してもよい。他の実施形態では、中空環状領域を作るベース構造に放射状スポークを含めることができ、このスポークは、PSA層の下方であって放射状のマイクロ流体構造が配置される間に位置する。さらに他の実施形態では、領域をオーバーモールドプロセスによって追加材料で充填することによって、中空環状領域に支持を与えてもよく、これにより平坦な表面仕上げを達成できる。
【0026】
幾つかの実施形態では、カートリッジは1つ以上の廃棄物容器を有している。特定の実施形態では、廃棄物容器は容積が固定された廃棄物容器である。例えば、幾つかの実施形態では、90などの廃棄物容器の容積は、カートリッジに導入される流体の容積よりも大きくてもよく、それによって、流体がカートリッジから出ない閉鎖系を構成してもよい。このような閉鎖系を有することは、例えば、潜在的に伝染性のあるサンプル及び/又は有害な薬剤を使用する場合に特に望ましくてもよい。このような実施形態では、廃棄物容器内の圧力は、廃棄物容器の容積に対する導入される流体の容積の比率に比例して上昇する場合がある。さらに、流体が導入されるにつれて、圧力が上昇し、例えばアクチュエータ(例えば、流体を駆動するため)、及び層間に必要とされる接着力又は付着力(例えば、流体を所望のチャネル内に収容するため)に対する要求を増大させる可能性がある。
【0027】
本発明の付加的な実施形態では、廃棄物容器の大きさは動的に変化してもよく、その結果、一定の圧力で廃棄物を受け入れてもよい。例えば、円筒形容積81w(図示せず)がカートリッジ60の入力シリンダ81とは反対側に配置されてもよく、カートリッジを外部的に対称に見せることができる。特定のそのような実施形態では、シリンダ81wは、外向きに作動可能なピストンプラグでシールされてもよく、それによって動的な廃棄物量受容器を提供してもよい。例えば、廃棄物がシリンダに入り、シリンダ容積を満たすと、シリンダの開放端付近でピストンを作動させることができ、その時点でピストンプラグが移動するロッドによって押される。加えて、廃棄シリンダのピストンは、入力容積のピストンがそのシリンダに移動すると、廃棄容積のピストンがその開放端に向かって移動するように、内側端付近に配置され得る。他の実施形態では、廃棄容積は、廃棄容積を受け入れるように膨張するベローズである。
【0028】
カートリッジ(例えば、カートリッジ組立体60)が機械に挿入されて、カートリッジを作動させて、カートリッジ内の評価対象の流体に関するデータを収集するとき、カートリッジを機械に正確に位置合わせすることは重要である。それ故、カートリッジ組立体60の前端部は、V字形領域600a及び平坦領域600bからなる運動学的(正確な拘束)領域を有してもよく、これらの領域は、例えば、図5及び図6A-6Cに示されるように、カートリッジを受け入れるように企図された器具に配置される2つの位置決めピン301a及び301bに対して、基準ジオメトリで3点接触をなす。位置決めピンは、非常に低コストのために大量に製造され、部品の位置合わせ及び部品間のせん断を防ぐための「ピン留め」に使用される。カートリッジ組立体60を2つの位置決めピン301a及び301bに向かって予圧することにより、カートリッジが受け入れ器具に対して精密に位置決めされ、この受け入れ器具は、カートリッジ上の対応する(PCB層800の)接触パッド800aと嵌合するプロービング電気接点を有してもよく、それにより、接触パッド800aが、カートリッジが配置される受け入れ器具に対して精密に位置合わせされる。2つの位置決めピンがV領域と平坦領域とに係合することにより、精度は概略約10ミクロンから約100ミクロンになってもよく、これは接触パッド800aを受け入れ器具の電気接点に位置合わせするのに十分である。様々な実施形態において、PCB層800上の電気接触ピンは、約600μmの幅を有する接触パッドを有するPCBに対して約1mmピッチを有してもよい。特定の実施形態では、PCBは16~48個の電気接点ピンを有する場合がある。
【0029】
本明細書で説明される多層マイクロ流体カートリッジの組み立てに関して、層間の正確かつ精密な位置合わせを達成するために、位置合わせスロットと位置合わせピンとが使用される。特定の実施形態では、層は概略約0.2mmのマイクロ流体特徴を有してもよく、それ故、層間(例えば、ベース構造と次の追加層との間、及び後続する各層の間)の位置合わせは、カートリッジが意図したように機能する(例えば、層間の位置合わせは約40ミクロン以内の精度が要求されてもよい)ことを可能とするように十分に正確でなければならない。このような正確な位置合わせは、エッジの精度が不十分であるため、及びエッジに対する内部特徴の位置の精度が不十分であるため、組立冶具に対する従来のエッジ接触位置合わせによっては容易に達成され得ない。例えば、成形部品の外縁は、内部の精密特徴から離れており、内部の精密形状よりも厚いことが多いため、収縮により誘引される寸法誤差が生じる。さらに、穴の中にピンを使用し、又は穴及びスロットの中にピンを使用する、従来の位置合わせ技術は、部品を過度に拘束し又は拘束が不足することが多く、その結果、組立品質に問題が生じる。対照的に、本明細書で説明されるように、スロットは運動学的結合点として使用される。
【0030】
本明細書の実施形態に記載されるように、層(例えば、ベース構造、PSA層、PCB層など)間の正確且つ精密な位置合わせを確かにするために、厳密拘束法が使用される。この方法は、3つの運動学的位置合わせスロットが含まれており、それによって、小さなマイクロ流体特徴に対する運動学的位置合わせスロットの相対位置が厳密な精密位置合わせに在る。スロットにフィットするピンの周囲の隙間空間のみが不良位置合わせエラーの原因になるが、スロットの幅は高精度に作ることができ、ピンはさらに高精度に研磨できるので、層間の精密な位置合わせが概略5ミクロンから10ミクロンのレベルで達成され得る。
【0031】
このように、3つのスロットに係合する3つのピン(例えば、スロット600z内のピン961d)は、ピンの中心自体がスロットの図心と正確に一致していなくても、スロットがピンに係合する層の位置を一意に画定できる。幾つかの実施形態では、ピンはカートリッジのベース構造に配置され、他の実施形態では、ピンは組立治具から出る。
【0032】
例えば、幾つかの実施形態では、ピンの中心が層内のスロットの理想的な中心(図心)に位置するように、ピンは組立治具から出ているが、しかしながら、ピンの中心の位置がスロット内で約0.5mmもずれていても、各層のスロットはピン上の層に固有の位置を見出だす。また、各層のスロットがその層のマイクロ流体特徴に対して精密に配置される一方で、ピンが各層のスロットを通過している状態で1つ以上の層を1つ以上の層に積み重ねることによって、層(及び層の特徴)が互いに対して精密かつ正確に位置合わせされることを依然として確かにする。本明細書に説明されるように、3つのスロットと位置合わせピンを使用することで、層間及び層にわたる位置精度と正確性を保ったまま、多くの層が積層されてもよい。配置の精度は、スロットの成形工程の精度によってのみ制限される。層の精密な積層は、層の特徴の精密な位置合わせのために重要であり、また、層同士の十分な接着又は付着を確かにするためにも重要であり得る。
【0033】
例示的な実施形態では、カートリッジ本体600上に積層される層は、図7に示されるように、三角形状に配置された3つのスロット600a、600b、及び600cを用いて位置合わせされる。様々な実施形態において、1つ以上の層の要素(例えば、ベース構造を有するカートリッジ本体600、及び1つ以上の他の層のそれぞれ)のそれぞれは、同一の大きさの3つのスロットを有しており、3つのスロットはさらに、層間及び層にわたって位置合わせされるべき重要な特徴に関して、各層において同一に配置され及び同一に配向される。3つのスロットは、組立治具上の3つのピンに係合してもよく、それによって、3つのスロットの中心は、三角形の含まれる角度の角二等分線が要素(例えば、サンプルの検出又は試験が起こるウエルを含む要素)間で所望される最大の位置合わせ精度の領域にある点で交差仮想三角形上に位置しており、スロットの中心は、三角形の頂点上に位置し、それらの長手方向軸は、三角形の頂点の対応する角二等分線に位置合わせされる。この点は、実質的に、層の回転の瞬間的な中心であり、検出領域の近くに位置すれば、回転誤差の位置誤差への増幅が最小化される。各層は、カートリッジの全体構造に対して同一の位置と向きに配置される同一のスロットを有しており、それによってスロットがすべて位置合わせされたときに各層上の全てのマイクロ流体特徴が正確かつ精密に位置合わせされる。組み立ての間、ピンが各スロットに入ってもよく、各ピンがスロットの一方の長辺又は他方の長辺に接触してもよい。このような接触により、3つのピンと各層の3つのスロットとの間に3つの接触点があり、各ピンは挿入されるスロットの側面に接触する。このように、3つの固有の接触点があるため、1つの層と3つのピンのとの間、したがって各層の間に、3つの自由度(X、Y(平面的)、層の表面平面に対する法線を中心とする回転)が画定される。特定の実施形態では、スロットの幅がピンの直径よりも最小限に広い幅であることが重要であり、幅は、選択された製造プロセスにより達成可能な製造公差によって規定される。スロットの幅がピンの直径よりどれだけ広いかは、層間の位置合わせ精度の限界となる。しかしながら、この公差は全体的な公差(例えば、層内のスロットの位置)というよりもむしろ局所的な公差(例えば、スロット幅の公差)であるため、十分なスロット幅精度を達成できる。幾つかの実施形態では、スロットの幅はピンの直径より約20ミクロン幅広であってもよい。LCP成形を採用する実施形態では、スロット幅は10ミクロンと小さてもよく、ピンは約5ミクロンの精度でスロットに挿入されてもよい。
【0034】
この組み立て方法は、さまざまな形態をとってもよい。例えば、図8に示されるように、幾つかの実施形態では、カートリッジの1つ以上の層(例えば、PSA層606及び607)上のスロットを使用して、1つ以上の層のそれぞれを、層上のスロットの中心であろうものに公称で位置する3つの位置合わせピン961dを有する治具961eに位置合わせできる。位置合わせピンは、精密に研磨された位置決めピンであってもよい。治具961eは、ベース961bと順応性材料961cとを有してもよく、層同士を押し付けるのを助けてもよい。順応性材料961cは、約20A~約70Aの範囲のデュロメータ硬度を有してもよく、幾つかの実施形態では、ベース961b及び/又は順応性材料961cが多孔質であることが好ましくてもよい(例えば、ベースは黒鉛材料又はセラミック材料を有してもよく、順応性材料は連続気泡フォームを有してもよい)。層は、スロットが3本のピンにわたって進む状態で配置される。この時点で、真空が使用される場合、層を平坦に保つよう負圧がオンにされ得る。層が接着剤にわたってカバーシートを有する場合、カバーシートは層を歪ませることなく取り除かれてもよく、接着剤が露出した層はその後スロットがピンにわたって配置された他の層と位置合わせされてもよく、薄い接着剤の背面層が表面に押し付けられるときにしばしば発生する、接着剤のバブルが形成される危険性なしに、層が一緒に押し付けられてもよい。幾つかの側面において、コンプライアント順応性層961cはまた高さ(Z軸)の特徴を有してもよく、例えば、そのような特徴は、関心のある特定の領域において層に加えられる圧力を調節するのに役立ってもよい。層のデザインにもよるが、幾つかの実施形態では、接着又は付着を向上させるために、特定の領域が他の領域よりも大きな圧力の適用を要求してもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、組立治具961e上に保持された層に付着又は接着される次の層要素は、同様の治具(図示されていないが、本明細書では治具961rと称される)の表面上に配置され、この治具はまた、層がいったんピンにわたって配置されると層が真空によって所定の位置に保持されることを可能にする、多孔質材料を有してもよい。このような真空治具961rの表面は後退可能なガイドピンを備えた3つのスロットを有してもよく、スロットとピンは、層上の3つのスロットの位置に一致するように表面上に配置される。層が真空治具の表面上に配置され、その位置が後退可能なピンを介して固定されると、層を所定の位置に保持するように真空がオンにされてもよくピンはその後引き込められてもよい。次に、治具961rが治具961eの上に運ばれ、そこで961eのピンが層のスロット(及び治具961r)に係合し、組立治具(及びそれが保持する層)を治具961r上の層に位置合わせさせる。次に、治具961rは、層が約0.5mmの接触範囲内になるまで下方に移動し、961rに層を保持する真空が圧力に変化し、961rに保持された層を組立治具961e上の層に吹き付ける。961rが下方に動き続けると、順応性層961cが圧縮されることにより2つの層の間に接着圧力が生じる。
【0036】
代替的に、幾つかの実施形態では、治具961eは、チャック961eから突出する長さがカートリッジ本体600内の運動学的位置合わせスロットの深さの約半分未満であるテーパー状の端部を有する3つの位置合わせピンを有するマスター真空チャックとして機能してもよい。第2真空チャック961e’(図示せず)もまた、チャック961e’から突出する長さがカートリッジ本体600の運動学的位置合わせスロットの深さの約半分未満である3つのピンを有している。その後、カートリッジ本体600はチャック961e’に配置されて真空によって保持される。カートリッジ本体600に付着又は接着される層は、マスターチャック961eに配置される。例えば、PSA層の位置合わせスロットがチャックの位置合わせピンに係合した状態で、PSA層(例えば、PSA層606)がチャック961eに配置され、真空がオンにされてPSA層を平坦に保持する。PSA層上の接着剤が覆われている場合、接着剤のそのようなカバーは取り除かれる。(カートリッジ本体600を保持する)チャック961e’は、ロボット組立システムでしばしば使用されるリモートセンターコンプライアンス(RCP)装置などにより迎合的に保持され、チャック961eの3つのテーパー端ピンがカートリッジ本体600の3つのスロットに係合するようにマスターチャック961eに下され、そこでは、ロボットの不正確さによるチャック間の位置ずれは、カートリッジ本体のスロットに係合するマスターチャック961eによって変位させられるまでRCPユニットによって順応される。いったん初期の係合がなされると、チャック961e’の真空は吹き付けるように反転させることができ、カートリッジ本体600は、マスターチャック961eによって保持されたPSA層上に精密に落下する。ロボットアームは、チャック961e’を取り外し、順応性のある平坦面により圧力を加えて、カートリッジ本体をPSA層に付着させる。この組立体は次にチャック961e’に戻さるよう輸送され、新しい層がマスターチャック961eに配置され、この工程が繰り返され得る。
【0037】
上記の組立モードでは、比較的厚い(例えば約1mm)バッキングプレート604がカートリッジ本体600の許容可能な位置に(例えば、手動、ロボットなどで)配置され得る。所望される場合、バッキングプレート604もスロットを有してもよく、組立治具961eが用いて600と604とを位置合わせさせ且つ接着させるために使用されてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、カートリッジ本体600は、そのバッキングプレートが所定位置にある状態で、多孔質チャック961e’’(図示せず、空気圧又は真空を加えることができる)上にエアホッケーのパックのように浮くことができる。組立工程のそのような実施形態では、PSA層606は、そのスロットがマスター組立治具(例えば、961e)のピンにわたって摺動する状態で配置されており、そのようなピンはテーパー状であってもよい。このようなマスター組立治具が真空を有する実施形態では、真空がオンにされ、層606の接着剤上の任意のカバーが取り除かれる。さらに、スロットを有するベースプレート(バッキングプレート604を備えたカートリッジ本体600である)は、チャック961e上に配置され(真空を採用してもよい)、ベースプレートはカートリッジ本体の位置合わせスロットの幅の半分未満である警報横行隙間を有する領域内で自由に浮く。チャック961e’’にはピンは必要とされない。フォームなどの柔らかい径方向ばねも、カートリッジのベースプレートを公称に位置させるために使用されてもよい。チャック961e’’は、層606が下向きになった状態で、垂直移動スライド又は組立ロボット上に保持された組立治具961e(この実施形態では、空気圧又は真空に制御可能に接続された真空チャックである)と平行である。961eが下降すると、961e上のピンは、テーパー端部を有してもよいが、カートリッジ本体600のスロットに係合し、ベースプレートは、半径方向の制約によって公称に配置されるため、961eは、961e上のピンがカートリッジ本体のスロットを貫通する位置まで容易に移動する。動作は、PSA層606がカートリッジ本体600の前面600fに接触するまで下方に継続し、継続する力により圧力が生じるので、PSA層はカートリッジ本体に付着する。真空が圧力に変わり、組立治具961eが持ち上げられ、PSA層606がカートリッジ本体の面600fに付着したままになる。この工程が繰り返されて、さらなる層を追加してもよい。
【0039】
例えば、PSA層607も同様に、治具961e上に配置されて、真空引きされる。任意の接着剤層カバーシートが取り除かれ、上記の工程が繰り返され、今度は層607が層606に付着される。最後に、PCB層800が961e上に配置され、真空がPCB層を保持するようにオンにされる。607の第2面上の任意の接着剤カバーは取り除かれ、再び、組立体604、600、606、及び607が空気軸受チャック上で浮いているので、組立治具961eに保持されたPCB層が下降するとき、組立治具961eのピンは、その接着又は付着した層を有するカートリッジ本体のスロットに係合し、そのスロットは、上記の行程により、空気軸受フロート特徴により抵抗なくすべて精密に位置合わせされる。下方への動作が継続すると、PCB層800が層607上の接着剤に精密に押し付けられ、その結果、圧力がPCB層を組立体に付着させる。特定の実施形態では、それ故、この工程はカートリッジを完成させてもよく、他の実施形態では、組立工程が繰り返されて、追加の層を組立体に接着又は付着させてもよい。
【0040】
一般に、チャック面間の平行度は約0.1mmより大きいはずであるので、単純な圧入プレスの使用は組み立てに好ましくない。垂直動作は、転動要素リニアガイド軸受けを使用してプラテンを閉じた構造ループと平行に保つ精密プレスで最もよく達成され、それによって力が適用されたときに、不均一な圧力を生じさせるプレスのフレームの座屈動作がない。代替的に、このレベルまで位置合わせが保証され得ないロボットシステムが使用される場合、RCP装置がチャック間の角度浮動を可能とするのに使用される
【0041】
上述した方法及びシステムは例示にって提示されたものであり、例示は本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。さらに、上記の説明における方法ステップの順序又は提示は、特定の順序が明示的に要求される、又はそうでなければ文脈から明らかな場合を除き、記載されたステップを実行するこの順序を要求することを意図していない。したがって、本発明は、その特定の実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、例えば添付の特許請求の範囲に包含される例示に関して、本発明の範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることが、当業者には本開示に照らして理解されるであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【国際調査報告】