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特表2024-532792流体サンプルの複数の区分けされた部分を評価するための閉鎖型マイクロ流体カートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】流体サンプルの複数の区分けされた部分を評価するための閉鎖型マイクロ流体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240903BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508609
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022039851
(87)【国際公開番号】W WO2023018728
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,453
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523467142
【氏名又は名称】コアグロー・メディカル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Coagulo Medical Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ガリット エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,レオニード
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058EB11
(57)【要約】
本発明は、閉鎖系として作動するマイクロ流体カートリッジに関する。
本明細書に記載されるマイクロ流体カートリッジは、流体サンプル(例えば、血液サンプルなど)の複数の区分けされた部分を独立して評価することを可能にする。
特定の実施形態では、各区分けされた部分は所定の体積を有している。
本発明はまた、単一のカートリッジを使用して、流体サンプルの複数の区分けされた部分を同時に評価する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体カートリッジであって、
流体サンプルを受け入れるように構成された入口と、
前記入口に上流側端部が接続された3つ以上のチャネルと
を有しており、
前記チャネルの少なくとも2つは、試験チャネルであり、各試験チャネルは計量チャンバと試験チャンバとを有しており、
前記チャネルの少なくとも1つは、廃棄物チャンバを有する廃棄物チャネルであり、
前記マイクロ流体カートリッジは、流体サンプルが前記入口で受け取られると、空気が前記チャネルから放出され得ないような、閉鎖系である、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項2】
各試験チャネルは、試薬チャンバをさらに有する、
請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項3】
前記マイクロ流体カートリッジは、2対以上の電極センサをさらに有している、
請求項1又は2に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項4】
各対の電極センサは、前記流体サンプルの電気的特性を測定するように配置されている、
請求項3に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項5】
前記マイクロ流体カートリッジは、2つ以上の流体位置センサをさらに有している、
請求項1又は2に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項6】
各流体位置センサは、一対の電極センサである、
請求項5に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項7】
各流体位置センサは、前記試験チャネルの1つにおける流体サンプルの量を検出するように構成されている、
請求項5又は6に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項8】
前記マイクロ流体カートリッジは、少なくとも5つの試験チャネルを有する、
請求項1~7の何れか1つに記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の前記マイクロ流体カートリッジの前記入口に前記流体サンプルを挿入することを有する、流体サンプルの評価方法。
【請求項10】
前記流体サンプルを、前記試験チャネルに分割されている少なくとも2つの部分と、前記廃棄物チャネルに分割されている少なくとも1つの部分とを有する、3つ以上の部分に、前記流体サンプルが分割されるように、前記流体サンプルを、上流側端部で前記入口に接続されている3つ以上の前記チャネル、に分割することを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試験チャネルの1つに分割された各部分を特定の体積に計量することをさらに有しており、前記計量が各試験チャネルの前記計量チャンバで行われる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試験チャネルに分割された全ての部分が同じ体積に計量される、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、流体サンプルの複数の区分けされた部分を評価するための装置、システム、及び方法に関する。本明細書に記載された装置、システム、及び方法は、例えば、血液サンプルの凝固評価など、生物学的流体サンプルを評価するための医療診断を含む、さまざまな用途に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
診断及び他の用途にマイクロ流体を使用することは、ますます一般的になってきている。現在のほとんどのマイクロ流体カートリッジは開放系(開放型システム)であり、カートリッジの内部内容物と、シリンジなど、外部環境又は自動読み取り装置の一部との間にオープンな連絡(コミュニケーション)がある。これらのシステムの中には、出口又は入口ポートの近くに配置された専用フィルタの使用を通してなど、外側の環境又は読取装置の部品への又はこれからの汚染の可能性を最小化するように状態付けられているものもある。しかしながら、これらのシステムのいずれも汚染のリスクを排除するものではない。特に、エアロゾル化すると有害になる可能性のある生物学的サンプル又は環境サンプルを扱うとき、汚染は危険になり得る。さらに、フィルタを備えた開放系は、気相流体サンプルの評価には適していない。なぜなら、そのようなサンプル中のガスは、フィルタの細孔を通って逃げる可能性があるからである。同様に、流体の流れを制御するためにバルブを使用するシステムでは、そのようなバルブは「液密」であるが「気密」ではないので、そのようなバルブから空気が逃げる可能性がある。他のカートリッジは、カートリッジ内の内圧を低減するために、閉鎖されずに開放された廃棄物チャンバ又は他のチャンバ(例えば、通気された廃棄物チャンバ)を含む場合もある。例えば、Miyazaki他著,Processes 8:1360(2020)、Ahrberg他著,Lab Chip 16:3866-84(2016)、Al-Faqueri他著,Sensors 15:4658-76(2015)を参照のこと。このようなカートリッジの廃棄物チャンバは、外部環境への出口及び開口部として機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当技術分野では、(例えば、危険な病原体又は他の危険な薬剤を単回使用の検査用カートリッジ内に包含する(封じ込める)ために)サンプルが挿入されると閉鎖系(閉鎖型システム)になる装置に対する危急の必要性がある。また、単一の流体サンプルの複数の部分が単一の装置を用いて独立して同時に評価され得るように、流体サンプルの複数の区分けされた部分を評価するための装置、システム、及び方法に対する必要性も当技術分野には存在している。装置内の定置特徴を使用して、流体サンプルを複数の区分けされた部分に分割することを許容し(例えば、マイクロ流体チャネルの形状を使用して)、各部分を他の部分とは独立して1つ以上の試薬に露出させる(曝露する)ことを許容する(例えば、部分間のクロストーク(掛け合い応答)を回避し、サンプルのある部分から他の部分への任意の化学的又は物理的反応又はきっかけの伝播を回避するため)、コストが低減され及び/又は複雑さが低減された装置についての特別な必要性が存在する。本発明はこれらの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、流体サンプルを評価するための装置、システム、及び方法を提供する。この装置は、例えば、被験者の凝固状態及び/又は表現型を評価するために、血液サンプルの生体外評価に使用できる。この装置はまた、流体サンプル中の1つ以上の分析物を検出するのに使用することもできる。例示的な装置は、複数のチャネルを有するマイクロ流体カートリッジを有しており、複数のチャネルの各チャネルは、複数のチャネルの第1端部(これは上流端部と称される場合もある)に接続された共通の入口を通してサンプルの一部を受け入れるように構成されており、複数のチャネルの各チャネルは、チャネルの下流チャンバ(又は一連のチャンバなど)に通じている。下流チャンバは、計量チャンバ又は廃棄物チャンバであってもよい。計量チャンバのそれぞれの下流には、何等か計測が行われ及び/又は何等かの他の分析が起こる、他のチャンバ(又は一連のチャンバなど)であってもよい。分析が起こるチャンバ(又はウェルなど)は、本明細書では、試験チャンバ、検知チャンバ、測定チャンバ、試験ウェル、検知ウェルなどと称される。各試験チャンバの下流には、空気ばね又は他の閉鎖チャンバがある。前述のチャンバは、本明細書でさらに説明されるように、様々な形状及び長さのチャネル経路によって接続されてもよい。
【0005】
本発明の実施形態はまた、流体サンプルを評価するための装置を提供し、この装置は、複数のチャネルを有するマイクロ流体カートリッジを有しており、このカートリッジは、(チャネルのそれぞれが入口に接続するように)複数のチャネルの第1端部に接続された共通の入口を通して流体サンプルを受け入れ、複数のチャネルは、流体サンプルが少なくとも3つのチャネルに分割されるように、少なくとも3つのチャネルを有する。幾つかの実施形態では、チャネルの少なくとも2つはそれぞれ、所定の目標体積(例えば、計量された体積)を有し、さらなる実施形態では、所定の目標体積は、そのような各チャネルの形状によって規定される。特定の実施形態において、少なくとも2つのチャネルのそれぞれは、少なくとも2つのチャネルのそれぞれにある流体サンプルが1つ以上の計量チャンバを満たすように、計量チャンバを有する。幾つかの側面において、このようなチャネルの各々における計量チャンバの充填は、本明細書で説明されるように、チャネルのそれぞれのサイズ及び形状によって引き起こされる圧力差に基づく。複数のチャネルのうちの少なくとも1つは、その下流端に廃棄物チャンバを有している。
【0006】
本発明の装置、システム、及び方法の実施形態において、カートリッジはマイクロ流体カートリッジ、チップ、又は他の装置であってもよく、複数のチャネルはマイクロ流体チャネルであってもよい。幾つかの実施形態では、本方法は、約1mL未満、約500μL未満、約100μL未満、又は約50μL未満、又は約5μL未満の流体サンプル(例えば、幾つかの実施形態では、約1滴の新鮮な全血又はクエン酸ナトリウムで抗凝固処理された全血で十分である)を要求する装置を使用して実施され得る。幾つかの実施形態では、チャネル幅、チャネル高さ、又はその両方は、10mm未満、6mm未満、又は2mm未満であってもよい。幾つかの実施形態では、単一のチャネルは、チャネルの長さに沿った様々な寸法(例えば、幅、高さ、半径など)を有してもよく(例えば、チャネルの経路に沿った特定の領域が他の領域よりも幅広であり又は大きな半径を有する)、さらに、1つ以上のチャネルは、他のチャネルとは異なる寸法を有してもよい。チャネル(及び各チャネルの長さに沿ったチャンバ及び他の領域)は、例えば、等辺多角形(例えば、六角形)、非対称多角形(例えば、様々な辺の長さを有する6角形)、又は直線チャネル(例えば、長方形又は円筒形のチャネル)など、様々な形状であってもよい。さらに、どのような形状を使用する場合でも、2つの面が交差する角及び縁は丸められてもよい(例えば、チャネルを通る流体の流れを促進するため)。特定の実施形態では、様々な異なるチャネル形状を使用することが望ましくてもよい。実施形態によっては、複数のチャネルのうちの1つ以上のチャネル(例えば、全てのチャネル)が同じ体積を有していてもよいし、又はチャネルごとに体積が異なっていてもよい。同様に、複数のチャネルの1つ以上が複数の機能領域(例えば、計量チャンバ、試薬チャンバ、混合チャンバ、検知チャンバなど)を有する実施形態では、直列に接続されたこのような領域は全て同じ体積を有してもよく、又は領域ごとに体積が異なっていてもよい(例えば、好ましい実施形態では、計量チャンバは約3μLの体積を有してもよく、試薬チャンバは約1μLの体積を有してもよく、検知チャンバは約2μLの体積を有してもよい)。さらに、チャネルを形成する材料(したがって、例えば、チャネルの内面に並ぶ材料)は、1つ以上のチャネルにわたって同じであってもよく、チャネルごとに異なってもよい。チャネル同士の相対位置も、実施形態によって異なってもよい。例えば、チャネルはすべて同一基板内に形成され、同一平面上に配置されてもよく、チャネルは全て同一基板内に形成されてもよいが、異なる(例えば、平行な)平面上に位置してもよく、チャネルは複数の基板に形成され(例えば、幾つかの実施形態では、材料を積層することによって)、単一平面上に配置されてもよく、又はチャネルは複数の基板に形成され、異なる平面上に配置されてもよい(例えば、基板の1つの平面内に形成された幾つかのチャネルと、他の平面上に配置された他のチャネルとを備えた多平面カートリッジのように、1つ以上の平面上のチャネルの壁の少なくとも1つが、層状材料、例えば感圧接着剤などの第2基板で構成されている)。
【0007】
本発明の装置、システム、及び方法の様々な実施形態において、カートリッジは、センサ(例えば、電極センサ)を含んでもよい。幾つかの実施形態では、センサを収容する装置の部分は、1つ以上のチャネルの1つ以上の壁を形成してもよい。代替的に、特定の実施形態では、1つ以上のチャネルの1つ以上の壁が、例えば、1つ以上の露出(暴露)した電極トレースを有する多層PCB(プリント回路基板)など、センサ自体から作られてもよく。露出した電極トレースを有する多層PCBが使用される実施形態では、露出した電極トレースは、センサとして作用してもよく、又は、例えば、統合されたヒータユニット又は冷却ユニットとして機能するなど、他の目的を果たしてもよい。センサは、露出した電気トレース(例えば、インピーダンス測定用の一対の電極、インターディジット電極など)であってもよく、PCBに取り付けられた他のタイプのセンサ(例えば、フォトダイオード、カメラレンズ、分光光度計、フォトニックセンサ、ピエゾセンサなど)であってもよい。PCBが使用される幾つかの実施形態では、PCBは刺激剤(例えば、光源など)と受信機(フォトダイオードなど)とを含んでもよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、カートリッジは複数のセンサを含んでもよく、センサは同じタイプ(例えば、インピーダンスなどの電気特性を測定する電極センサ)又は様々なタイプである。例えば、カートリッジは、一方の面に一方のタイプのセンサを、他方の面に異なるタイプのセンサを有してもよく、何れのセンサについても、センサは、上述したように、PCBの一部であってもよく又はPCBに取り付けられてもよい。特定の実施形態では、多層カートリッジは、層としてPCBを有してもよく、PCBは1つ以上のセンサを有しており、カートリッジは、1つ以上の他の層内又は他の層上に追加のセンサをさらに有してもよい。センサ層は、カートリッジの最下層であり、カートリッジの最上層であるPCBと通信する、PCBなど、複数の個別又は接続されたPCBから作ることができ、そのような通信は、光源及びフォトダイオードなどを介して達成されてもよく、PCBは、チャネル内の流体サンプルの一部の活性及び/又は特性を(例えば、信号を傍受することによって)測定するように配置されている。幾つかの実施形態では、2つのPCBは互いに整列してチャネルを形成できるが、各PCBは異なる測定を行ってもよい(例えば、一方のPCBは電気インピーダンスを測定するセンサを有し、第2PCBは、機械学習、人工知能など、光学測定を行うセンサを有する)。特定の側面では、2つのPCBは、各PCBはセンサを有しているが、互いに独立して、同じチャネル内で(チャネルの同じ場所、又は同じチャネルの異なる領域で)異なる特性を測定でき、又は、異なるチャネル及び/又はカートリッジの異なる部分内で異なる特性を測定してもよい(例えば、2つのPCBの使用を介して、各PCBはセンサを有しているが、電気インピーダンスがカートリッジの一方側の1つのチャネルで測定され得、光学検知がカートリッジの他方側の他のチャネルで実行され得る)。
【0009】
幾つかの実施形態では、PCBは、例えば、流体サンプルの特性を測定して試験を実行するためのセンサとして、又は流体の位置を検知するための(例えば、流体位置センサとして)電極を有してもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、本明細書で説明されるカートリッジは、流体位置センサを有してもよい。流体位置センサは、例えば電極を使用する電気インピーダンスに基づくものであってもよく(前述の通り)、又はPCBに取り付けられた他の部品で作られたものであってもよい。様々な実施形態において、流体位置センサは、例えば、カートリッジ内の流体移動及び/又は流体移動の精密な制御を保証するように、カートリッジを作動させる外部構成要素に能動的フィードバックを提供してもよい。例えば、図に説明される実施形態に図示されるこのような特徴は、単一のカートリッジデザインが、粘度が異なる様々なタイプの流体サンプル(例えば、ヘマトクリットの異なる血液サンプル、尿、唾液など)の試験に適することを可能にするので、特に有利である。したがって、幾つかの実施形態では、流体位置センサは、外部制御システムにフィードバックを提供してもよく、このようなセンサ及びフィードバックは、カートリッジ内の流体の位置を検出し、流体の流れに適切な調整を行い(特定の実施形態では、例えば、最低限必要な充填量が達成されたことを確認する)又は流体の動きを(様々な実施形態において、例えば、流体位置センサから受信した入力に応答して、特定の量の圧力を加えることによって)制御するのに使用されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、流体位置センサ(一対の電極センサであってもよく、又は光、超音波、無線周波数、吸光度などを測定する他のセンサであってもよい)は、計量チャンバの充填量を検出するのに使用され、計量チャンバの充填量が特定のレベルに達すると、アクチュエータに加えられる速度又は圧力が、チャネルにまだ分割されていない流体サンプルの残りが計量チャンバを有するチャネルの代わりに廃棄物チャンバを有するチャネルに移動するように、変更される(例えば、低減される)。
【0011】
さらに、マイクロ流体カートリッジが血液サンプルの評価に使用される幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、サンプル中のヘマトクリットを測定するセンサを有してもよい。ヘマトクリット情報は、サンプルの粘度を評価するのに使用され得る。ヘマトクリットを測定し、そのようなヘマトクリット情報を外部の制御システムに提供するセンサは、センサのフィードバックを介して流体の動きを制御し調整するのに使用され得る。
【0012】
特定の実施形態では、カートリッジの特定領域における試験条件を最適化するために、特定の特徴及び/又は材料を選択することが有益であってもよい。例えば、特定の積層材料が選択されてもよく(例えば、光学センサを使った測定を容易にするように、層全体又は光学窓を作るためのいずれかのために、ガラス)、特定のコーティングが適用されてもよく(例えば、表面トポロジを変化させる)、特定の処理が使用されてもよい(例えば、表面を親水性又は疎水性にするなどの化学薬品、又は生物学的物質によりカートリッジの領域を処理する)できる。
【0013】
同様に、カートリッジ本体及び/又はカートリッジ層の材料は、カートリッジ内で実施される試験のタイプにとっても最も適している流体力学を促進するように選択されてもよい(例えば、ポリカーボネートなどのプラスチックはガラスよりも疎水性が高く、特定のタイプの分析にはガラスよりも適している場合がある)。使用される材料は、カートリッジ内の流体の粘度又は流体の位置が流体の動きに影響を与え得るのと同様に、流体の動き及びシステム内の圧力に影響を与える可能性がある(例えば、流体が大きなチャンバの中位にあるかどうか、又は比較的狭い抵抗器の中にあるかどうか)。例えば、チャネルの表面を裏打ちする、より疎水性の高い材料は、特に毛細管現象が起こりうるような十分に低い圧力下にシステムがあるときに、毛細管現象を抑制するのに役立ち、正確な計量を向上させ得る。さらに、カートリッジの一部の領域では、本明細書でさらに説明されるように、犠牲流体の保持を容易にする材料によりチャネルの表面を裏打ちすることが望ましくてもよい。
【0014】
本発明はまた、単一使用の使い捨てカートリッジとして有用なマイクロ流体カートリッジを提供する。他の実施形態では、カートリッジは再使用可能なカートリッジであってもよく、再使用前にカートリッジを洗浄することを容易にする特徴を有してもよい。上述したように、本明細書で説明されるカートリッジは、単一の材料製であってもよく又は複数の材料製であってもよい。
【0015】
幾つかの実施形態では、複数のチャネルは、基板に複数の方法(例えば、射出成形、機械加工、レーザーエッチング、積層など)の1つ又は任意の組合せによって形成されるが、この基板は様々な材料(例えば、アクリル、ポリカーボネート、液晶ポリマなど)の1つ以上の材料製であり得る。いくつかの実施形態では、カートリッジは1次基板と1つ以上の層をと有する。例えば、特定の実施形態では、基板自体において、複数の流路が片側(例えば、流路の上側)で開口するように、複数の流路が1次基板に形成されてもよく、1つ以上のカバー層が1次基板に取り付けられて、基板に成形された流路を完全に取り囲んでチャネルを形成してもよい。様々な実施形態が「チャネル」を参照して説明されるが、他の用語(例えば、レーン、区画、隔壁など)が、互いに物理的に分離され、幾つかの実施形態では互いに同じ形状を有する、空間を説明できる。
【0016】
本発明の装置、システム、及び方法の特定の実施形態では、カートリッジは、複数のチャネルの第1端部に接続された共通の入口を有する。幾つかの実施形態では、共通の入口はカートリッジの唯一の開口部である。他の実施形態では、カートリッジは、共通の入口に加えて、1つ以上の他の開口部を有してもよい。例えば、カートリッジは共通の入口と通気口とを有してもよい。カートリッジがいくつの開口部を有するかにかかわらず、サンプル入力後であってカートリッジ内の複数のチャネルを通る流体サンプルの移動が実行される前に、各開口部が閉じられることが、このような実施形態の本質的な特徴である。例えば、通気口(存在する場合)は、流体サンプルで濡れるとき孔が閉じるように膨張する多孔質膜を有してもよい。
【0017】
幾つかの実施形態では、カートリッジは内部の可動部を有しなくてもよい。例えば、カートリッジはベローズを有してもよく、ベローズは、内部圧力、ひいては流体の動きを制御する方法として、ベローズに含まれる空気の体積をカートリッジ内に押し込むように、外部の構成要素によって作動させられてもよい。
【0018】
幾つかの側面では、カートリッジは単一の可動部を有してもよく、この可動部がシステムを加圧して、流体サンプルを複数のチャネルを通して移動させる。カートリッジは、例えば、プランジャを備えた一体型のシリンジを含んでもよく、このような実施形態では、外部アクチュエータがプランジャを動かし、システム内の圧力を制御してもよい。これらの実施形態の全てにおいて、外部の構成要素は、流体を前方又は後方に移動させるために(例えば、流体を混合する目的のために、流体を試験チャンバ内の特定の位置に移動させるなど)、システムを選択的に加圧又は減圧できる。
【0019】
本発明の装置、システム、及び方法の実施形態では、複数のチャネルのそれぞれの形状は、空気ばね及び抵抗領域を組み込んでもよい。
【0020】
本発明の装置、システム、及び方法の様々な実施形態において、カートリッジは、能動的制御要素(例えば、本明細書に説明されるアクチュエータ以外)、バルブ、通気孔、及び疎水性膜を欠いていてもよい。
【0021】
特定の実施形態では、システムの閉鎖を可能にするために、内部(すなわち、カートリッジ内に含まれる)制御エレメントが使用されてもよく、このような要素には、例えば、流体サンプルと接触すると孔が閉じるように膨張する多孔質膜が含まれる。
【0022】
本発明の装置、システム、及び方法の実施形態では、カートリッジは、流体サンプルの前進及び後退(流体サンプルと試薬との混合のためなど)を使用してもよい。他の実施形態では、流体の流れは一方向であってもよい。
【0023】
流体又は流体サンプルは、限定されないが、体液のサンプル(例えば、血液、血漿、唾液、尿、脳脊髄液(CSF)、腹膜液、胸水(胸膜液を含む)、又は心嚢液)、体内ガスのサンプル(例えば、呼気からのサンプル)、化学サンプル及び/又は環境サンプル(液体形態又は気体形態の化学物質のサンプルを含むが、これに限定されない)、水サンプル、又は空気サンプルを含んでもよい。
【0024】
本明細書で使用される「血液サンプル」とは、反対の説明がない限り、全血サンプル又は血漿サンプルを参照する。血漿という用語には、多血小板血漿(PRP)及び貧血小板結晶(PPP)の両方が含まれる。本明細書に説明される装置、システム、及び方法の何れにおいても、血液サンプルは全血サンプル又は血漿サンプルであり得る。全血を使用することは、患者のベッドサイドで実施されるような特定の用途には特に有用であり得る。
【0025】
一部の実施形態では、流体サンプルは気体であり、システムを加圧し、サンプルを、チャネルを通して下流に移動させるために使用される媒体は、別の気体又は空気であり得、幾つかの実施形態では液体であってもよい。システムを加圧するために使用される媒体は、サンプルとの反応性及びサンプルへの透過性を最小化にするように選択されてもよい。空気以外の媒体が使用される実施形態では、この媒体を保持し、カートリッジ試験の開始時又はアクチュエータの始動と共に(例えば、ベローズ又はシリンジポンプの作動開始と共に)例えば、穿孔針又は他の部品により媒体を放出する、容器(例えばパウチなど)があってもよい。
【0026】
用語「チャンバ」及びその変形は、本明細書では用語「ウェル」及びその変形と共に同義に使用され、非限定的な用語である。このようなチャンバは、マイクロチャネルの経路に沿って配置されている。幾つかの実施形態では、チャンバは、その特定の位置におけるチャネルの形状が変化せず、チャンバの前後のチャネルの形状と同じであるとしても、チャネル内の特定の位置を参照してもよい。他の実施形態では、チャネルの形状は、例えば、チャネルの体積がチャンバの位置で増加するように、チャンバで変化してもよい。さらに、様々な実施形態が「測定チャンバ」、「検知チャンバ」、又は「試験チャンバ」を参照して説明されているが、他の用語(例えば、試験ウェル、感知ウェルなど)が、何らかの測定又は分析が行われるチャネル(又はカートリッジの他の領域)の領域を説明することもできる。
【0027】
用語「閉鎖系」及びその変形は、一般に、デッドエンド(行き止まりの)システムであるカートリッジを参照する。
【0028】
閉鎖系は、圧力勾配を使用して、さまざまな時点で特定の場所に背圧を生じさせて、流体の流れを制御する。本明細書で使用される場合、特に断りのない限り、文字を含む図中の番号付けされた特徴への参照(例えば、140a)は、その特定の英数字の特徴のみを参照し、文字を含まない特徴への言及(例えば、140)は、そのような番号付けされた特徴(例えば、140a、140b、140cなど)全てを参照することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、閉鎖型カートリッジの空気ばねデザインの基礎となる動作原理を図示している。
図2図2は、図1に図示された作動原理を複数チャネルマイクロ流体カートリッジに拡張しており、チャネルは上流端で共通の入口に接続されている。
図3図3は、閉鎖型マイクロ流体空気ばねカートリッジのようなハーゲン・ポアズイユシステムの時間依存流体流れをモデル化している。
図4A図4A~4Eは、カートリッジ加圧の様々な進行状態における流体の流れを図示している。図4Aは、状態0における流体の流れを図示している。
図4B図4A~4Eは、カートリッジ加圧の様々な進行状態における流体の流れを図示している。図4Bは、状態1における流体の流れを図示している。
図4C図4A~4Eは、カートリッジ加圧の様々な進行状態における流体の流れを図示している。図4Cは、状態2における流体の流れを図示している。
図4D図4A~4Eは、カートリッジ加圧の様々な進行状態における流体の流れを図示している。図4Dは、状態3における流体の流れを図示している。
図4E図4A~4Eは、カートリッジ加圧の様々な進行状態における流体の流れを図示している。図4Eは、状態4における流体の流れを図示している。
図5A図5A及び図5Bはそれぞれ、空気ばねカートリッジシステムの一実施形態を図示している。
図5B図5A及び図5Bはそれぞれ、空気ばねカートリッジシステムの一実施形態を図示している。
図6A図6Aは、9つの試験チャンバと3つの破棄物チャンバとを有する空気ばねカートリッジシステムの一実施形態を図示している。
図6B図6Bは、計量チャンバ(130)と試験チャンバ(140)との間に追加の経路(例えば、追加チャンバ、又は一連の追加チャンバ)及び/又は抵抗的特徴を含むチャネル(図6Aに図示される実施形態のチャネルaなど)の一部を図示している。
図7図7は、本明細書で説明されるカートリッジの実施形態の幾つかに対応するシステムを図示している(図10A図10B、及び図11)。
図8図8は、単一のマイクロ流体チャネル(例えば、図10A図10Bに示されるカートリッジの単一チャネル)における特定の特徴が多層マイクロ流体カートリッジ内にどのように配置されているかを示している。
図9図9は、カートリッジの9つのチャネルのそれぞれが複数の電極対を有する実施形態を示している(各電極対はドットの対として示されている)。特定のチャネルでは、2つの電極対は、流体の流れを制御する能動的要素の作動を制御するのに使用されるフィードバック機構の一部である。さらに、他の電極対(9つのチャネルの中央の点の対として示されている)が、複数のチャネルに分割される前に流体サンプルが存在する共通のチャネル内又はその近傍に配置されており、この電極対は、センサとして機能してもよく、流体の流れを制御するのに使用されるフィードバック機構の一部として使用されてもよい。
図10A図10Aは、図7に概略的に図示されたシステムを採用する多層マイクロ流体カートリッジの上面図と底面図を提供する。
図10B図10Bは、図8及び図10Aに図示されているカートリッジの実施形態と同じ様々な層を示している。
図11図11は、図7に概略的に図示されているシステムを採用するマイクロ流体カートリッジの一実施形態の上面図を示している。
図12A図12A-12Bは、流体サンプルが挿入された使用中のカートリッジの実施形態を示している。図12Aは、使用中のカートリッジを示す画像を提供しており、流体サンプルは、画像化を容易にするために染料と混合された水である。
図12B図12A-12Bは、流体サンプルが挿入された使用中のカートリッジの実施形態を示している。図12Bは、流体サンプルがクエン化全血である場合の使用中のカートリッジを示す画像を提供している。
図13A図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。異なる色の染料がチャンバにスポットされ(斑点を付ける)、各チャンバは1色又は2色(赤、黄、又は赤と黄)を受け取り(図13A)、乾燥させることを許容する(図13B)。
図13B図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。異なる色の染料がチャンバにスポットされ(斑点を付ける)、各チャンバは1色又は2色(赤、黄、又は赤と黄)を受け取り(図13A)、乾燥させることを許容する(図13B)。
図13C図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。図13Cに示されるように、水の流体サンプルは、組み立てられたカートリッジに導入され且つ押し込まれたが、流体サンプル部分の完全な分離があり、チャネル間の色の混合はない。
図13D図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。図13Dは、乾燥スポットされた染料が、混合チャンバ内の流体サンプル内で染料が均一に分布した状態で、混合チャンバの流体サンプルのアリコートとどのように混合するかを示している。
図13E図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。図13E及び13Fは、水の流体アリコート(乾燥スポットされた赤及び/又は黄色の染料と混合した後)が(青色染料で乾燥スポットされた)試験チャンバに入ったときの画像を示しており、試験チャンバでは、青色染料が一様に流体サンプルに分散し混合していないことから、このカートリッジの実施形態では、図13Dに示される混合が、サンプルとドライスポットされた染料との完全な混合を達成するために必要であることを実証している。
図13F図13A~13Fは、試薬の混合を示し、流体サンプルの区分けされた部分が、カートリッジ内のそれぞれのチャネルを流れるときに、どのように互いに隔離されたままであるかを示している。図13E及び13Fは、水の流体アリコート(乾燥スポットされた赤及び/又は黄色の染料と混合した後)が(青色染料で乾燥スポットされた)試験チャンバに入ったときの画像を示しており、試験チャンバでは、青色染料が一様に流体サンプルに分散し混合していないことから、このカートリッジの実施形態では、図13Dに示される混合が、サンプルとドライスポットされた染料との完全な混合を達成するために必要であることを実証している。
図14図14は、閉鎖型カートリッジシステムにおける流体サンプルの犠牲的保持を示しており、このような犠牲的流体保持は、特定の実施形態において、流体サンプルの蒸発に順応するのに使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読めば、当業者であればより容易に理解できるであろう。別個の実施形態の文脈で上述及び後述される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態を形成するために組み合わせられてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、その下位の組合せを形成するように組み合わせられてもよい。さらに、本明細書で説明される本発明の図面及び具体的な実施形態は、例示のために例示されたものであり、説明及び図面は説明のためのみであり、具体的な実施形態は本発明の限定を画定することを意図したものではないことが明示的に理解される。
【0031】
本発明は、流体サンプルの分析に使用する自己完結型マイクロ流体カートリッジを提供する。開示された実施形態の主な特徴は、単一のカートリッジを使用して、流体サンプルの複数の区分けされた部分の独立した評価を可能にすることである。より具体的には、本明細書に説明されたマイクロ流体カートリッジは、カートリッジに挿入された流体サンプルの流れを制御するために、平行化された空気ばねデザインを定置特徴に組み合わせており、このようなカートリッジは、カートリッジの外部にある単一の能動的要素(例えば、シリンジ、プランジャ、ベローズ、ポンプなどを操作するアクチュエータ)のみを使用して、閉鎖系を通る流体サンプルの動作の制御を提供する。カートリッジの外部の能動的要素は、任意の追加バルブ又は他の制御要素の必要性なく、空気と流体サンプルを、閉鎖型マイクロ流体カートリッジを通して押す。
【0032】
後述するように、本明細書で説明する閉鎖型カートリッジシステムには、空気の2つの区画があり、空気の一方の区画は流体サンプルの上流にあり、空気の他方の区画は流体サンプルの下流にある。上流側の空気は、流体サンプル部分とその下流側の空気を押すために使用され、その結果、チャネルを通る下流側への流体サンプルの動作が生じる。この工程により、上流側の空気、流体サンプル、及び下流側の空気を保持する体積が小さくなるため、圧縮され、圧力が上昇する。
【0033】
本明細書で説明するマイクロ流体カートリッジは、圧力勾配と背圧に依拠して、様々な時点における所望のマイクロ流体チャネル(1つ以上のチャンバで構成される場合もある)への及びそこを通る流体の流れを制御する、デッドエンドシステム(流路が閉じており、通気孔などの開口部がない)である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の装置、システム、及び方法は、空気リザーバ、空気ばね、及び計量チャンバを使用して、これらの圧力勾配及び背圧を達成する。幾つかの側面では、圧力勾配と背圧により、マイクロ流体カートリッジを通る一方向の流体流れが保証される。さらに、幾つかの実施形態では、抵抗器(例えば、テスラバルブ、蛇行する流体流路など)を使用して、流体サンプルの逆流を制御及び/又は防止してもよい。
【0034】
本明細書に記載された装置、システム、及び方法は、以下の特徴を提供するという点で、既存のマイクロ流体カートリッジと比較して多くの利点を提供しており、
a.流体サンプルの各部分を、既知の体積(本明細書では、アリコート体積又は計量体積と称される)に計量することができ、その結果、チャネルのそれぞれ及びチャネルの各チャンバ(例えば、試薬チャンバ、試験チャンバ)に包含された流体サンプルの体積が既知の体積になり、
b.チャネルのそれぞれ(したがって、チャネルの各チャンバ(例えば、試験チャンバ、並びに廃棄物チャンバ))に包含される流体サンプルの各部分は、他のチャネル(及び、他のチャネルに沿った任意のチャンバ)に包含されている流体サンプルの他の全ての部分から区分けされており、
c.
カートリッジは閉鎖系として作動し、その内容物が外側の環境に露出されることはない。
【0035】
幾つかの実施形態では、流体サンプルの各部分を異なる条件に露出させること(例えば、異なる試薬に、又は異なる濃度の試薬又は複数の試薬に当該部分を露出させること)が望ましい実施形態など、各部分が既知の体積であることを保証することが必須である(例えば、それによって、追加する試薬の濃度が知られ且つ制御され得る)。したがって、本明細書に記載されたカートリッジは、既知の体積の部分を達成するために流体サンプルの一部を計量することを提供する(流体サンプルの一部は、いったん目標体積に計量されると、アリコートと呼ばれる)。チャネルにわたる目標体積(計測体積とも呼ばれる)は、すべてのチャネルで同じであってもよく、又はチャネルにわたって異なってもよい。計量される流体サンプルの部分に加えて、流体サンプルの1つ以上の他の部分は計量されなくてもよく、廃棄物チャンバを有するチャネル(例えば、図7のチャネル120j、120k、120l)に受け入れられてもよい。また、チャネルの1つにおける(例えば、チャネルのチャンバの1つにおける)化学反応又は物理反応が、任意の他のチャネルにおいて(例えば、他のチャネルのチャンバにおいて)生じる可能性のある化学反応又は物理反応に影響を与えないことを保証することも重要である。
【0036】
幾つかの実施形態、特に危険性及び/又は感染性の流体サンプルが分析される実施形態では、カートリッジ内にサンプルを包含して、サンプルを挿入する人及び/又は分析を実行する人の安全を確保するとともに、分析及びカートリッジの使用後に(流体サンプルを包含している)カートリッジを安全に廃棄することを可能にする、閉鎖系を有することが望ましい。
【0037】
本発明の実施形態は、挿入された流体サンプルの動きを制御するために制御された方法で変位させられる流体の体積(空気又は液体であり得る)を包含する閉鎖系として作動するマイクロ流体カートリッジを提供する。本明細書に記載の閉鎖型カートリッジは、カートリッジのチャネルを通る流体サンプルの動きを制御するために、単一のアクチュエータに依拠してもよいが、流体サンプルの動きを制御する他の機構が採用されてもよい。単一の閉鎖型アクチュエータ(プランジャ、ベローズなど)に依拠するカートリッジに関して、このようなカートリッジは、他の能動的な制御要素又はバルブ、通気孔、疎水性膜などを要求することなく、流体サンプルの挿入と流れを制御するための追加要素を要求する他の装置に比べて、低コストで製造できる。このコスト節減は、例えば、ポイントオブケア(診療現場)又は家庭での分析(例えば、ポイントオブケア診断)、又は、検査が、野外で使用される可能性が高い場合(例えば、水質検査)、過酷な条件(例えば、戦場、無重力など)、又は他の必要な地点(例えば、海外の遠隔地での感染症検査)にとって、大きな利益となる。単一の閉鎖型アクチュエータを使用することにより、カートリッジの作動に必要な部品が少なくなるため、組立が容易になり、カートリッジの製造性が促進される可能性もある。同様に、単一の閉鎖型アクチュエータを使用することにより、特に、そのようなカートリッジが診断機器として使用される場合、カートリッジの堅牢性を増大させる可能性がある(例えば、カートリッジはより少ない可動部品及び/又は壊れやすい部品を有してもよい)。
【0038】
幾つかの実施形態では、閉鎖系を有するカートリッジを使用することにより、カートリッジの外部、例えばカートリッジから測定値を取得する分析装置において、複雑な流体管理(例えば、洗浄などの分析後の手順)に対する必要性を不要にすることもできる。
【0039】
作動原理
本発明は、一般に、流体サンプルの分析、例えば流体サンプルの物理的特性及び/又は化学的特性を評価するのに、有用である閉鎖型空気ばねマイクロ流体カートリッジに関する。
【0040】
閉鎖型マイクロ流体カートリッジの作動は、理想気体の法則を参照することによって説明することができ、この理想気体の法則は、圧力(P)、体積(V)、温度(T)、及び気体の量(n)に対する気体の挙動を記述するものであり、以下のとおりである。
PV=nRT
ここでRは理想気体定数である。
閉鎖型マイクロ流体カートリッジが適切に機能するためには、カートリッジの内側の遠位空気が、試験工程の間に放出されない状態を維持しなければならない(換言すれば、(流体サンプルの挿入時に、流体サンプルの下流側に捕捉されることになる空気である)遠位空気が使用時に閉鎖型カートリッジから解放されてはならない)。幾つかの実施形態では、n、T、及びRが試験工程にわたって一定に保たれており、工程にわたってどの瞬間においても、PとVとの間には直接的且つ比例的な関係が存在するであろう。Tが一定に保たれていない他の実施形態では、システムは、アクチュエータにフィードバックを提供し、-例えば、1つ以上のチャネルの様々な位置に配置された電極センサを介して、このようなセンサは、チャネル内(例えば、チャネルの特定のチャンバ内)の流体の量を判定し-、アクチュエータを有するフィードバック機構を介して、アクチュエータがシステム内の圧力変化を補償できる(例えば、より多く又はより少なく押しことによって、及び/又はより速く又はより遅く押しことによって)。幾つかの実施形態では、流体サンプルの粘度も、圧力変化及びアクチュエータへのシステムのフィードバックに役割を果たしてもよい。したがって、カートリッジのフィードバックループ(例えば、図9参照)により、システムはこのような変化するものに順応することを可能にする。
【0041】
空気ばねシステムの作動を説明するため、以下の説明では、単一のチャネルを通る流体の動きに焦点を当てる。このような単一チャネルの例では、流体サンプルは、マイクロ流体チャネルの第1端部においてマイクロ流体カートリッジに導入され、流体サンプルは、システムの第2端部(すなわち、チャネルの下流側における遠位端)において閉鎖されているチャネルを通って移動する。チャネルは、流体の流れのための任意の連続的な経路であり、一連の接続された流体の流路を有してもよく、例えば、チャネルは比較的狭く、その後、チャンバに向かって広がり、その後、チャネルは再び狭くなり、チャネルはその経路に沿った複数のチャンバを有してもよい。本明細書に記載されている様々な実施形態において、遠位空気が放出されない限り、チャネルがどれほど長いかは重要ではない。このような条件により、カートリッジの内側の空気の初期量は、既知量であるが、空気が流体サンプルによってカートリッジの内側に捕捉されるので、いったん流体サンプルが導入されると又はその後の試験中の任意の時点においても変化せず、試験が進行する際にカートリッジに残されて、空気は、流体サンプルによって一端に捕捉され、チャネルの閉塞した遠位端によって他端に捕捉される。温度が一定に保持される幾つかの実施形態では、工程の開始時(t=0)における流体サンプルの遠位に捕捉された空気の圧力と体積は、プロセスの後の任意の時点(t=x、x>0)における流体サンプルの位置を予測し、制御するために使用することができ、以下のとおりである。
=P
=P/P
例えば、圧力Pを増加させることによって、体積Vは比例して減少する。この原理は、空気ばねの作動の基礎となる原理であるが、図1に図示されている。
【0042】
幾つかの場合では、流体サンプルの物理的特性(例えば、サンプルの粘度)が、例えば、温度変化又はサンプル中で起こる反応の結果として、試験中に変化する可能性がある。温度の変化は粘度に影響を及ぼし、次に、特に、血液などの非ニュートン挙動を呈する流体の場合、流体サンプルの流れの速度に影響を及ぼすことがある。さらに、非ニュートン流体の場合、流体サンプルの粘度は、寸法が変化するチャネルの経路に沿ってサンプルが動くにつれて、変化する場合があり、それによってサンプルを異なるせん断に露出させる。さらに、幾つかの試験条件又はサンプル中の反応も、チャネル内の圧力に影響を及ぼす可能性がある。例えば、温度が上昇すると、チャネル内の流体サンプルの一部の蒸発に至り、及び/又は流体の膨張に至る(流体がより多くの体積を占める場合)。幾つかの場合では、サンプルの圧縮性が、加圧されたチャネルを通るサンプルの動きに影響を及ぼす場合がある。複数のサンプルのタイプ及び条件に適した堅牢な閉鎖系を構築するために、流体位置センサがカートリッジ内に含められてもよく、カートリッジは、カートリッジ内のサンプルの動きを制御するための能動的フィードバック機構を含んでもよい。そのような場合、流体位置センサは、能動的フィードバックループを提供する補償機構と通信することができ、システムは、位置センサから取得される流体サンプルの位置に関する情報に基づいて加圧又は減圧され、加圧及び減圧は、サンプルが所望の時間にチャネル内の所望の位置に到達し、所望の時間、そのような所望の位置を維持するように、サンプルの動きを制御する。位置センサが関与する能動的フィードバックループは、チャネルの加圧又は減圧をもたらし、チャネルを通る及びチャネル内の流体サンプルの適切な制御を提供する。
【0043】
単一のチャネルについて上述した工程を複数のチャネルに適用して、単一の空気源を用いてマイクロ流体カートリッジの複数のチャネルを通して流体サンプルを送ることができる。例えば、図2は、マイクロ流体カートリッジが、複数のチャネルの第1端部に接続された共通の入口を通して流体サンプルを受け取ってもよい態様を示している。共通の入口のサンプルは、その後、複数のチャネルに分割されて、特定のチャネルは流体サンプルのアリコートを包含し、各アリコートはそれぞれのチャネルを有しており、各アリコートは所定の体積を有しているが、他のチャネルは如何なる余分な流体サンプルを受け入れる。アリコートの体積は同じでもよいし、又は異なっていてもよい。例えば、アリコートの体積が異なる実施形態では、このような異なるアリコート体積は、異なる計量ウェル形状を使用することによって、及び/又は、流体サンプルの異なる量を異なる計量ウェルに導くようにチャネル内の抵抗領域を操作することによって達成され得る。
【0044】
さらに、任意の瞬間において、任意のチャネルに関して、チャネル内の流体サンプルのアリコートの位置は、アリコートの遠位(すなわち、アリコートの下流側)の空気の体積によって決定されてもよい。チャネル内のアリコートの位置を決定するために遠位空気の体積(これはアリコートの下流側の空気である)を使用することは、チャネルの形状及びその他の変化するもの(例えば、流体サンプルの粘度)とは独立したアリコート位置の決定方法を提供する。アリコート位置を決定し、さらにアリコートの位置をチャネル内で調整するために空気ばねデザインを使用する、方法は、従来のマイクロ流体デザインを超える幾つかの利点を提供する。例えば、カートリッジの内側に捕捉された遠位空気の体積が十分に大きい場合(システム内の圧力が、流体サンプルが比較的容易に動くことができるように十分に低く、それによって流体サンプル部分の動きに対する向上した制御が提供される場合)、そうでなければチャネル抵抗を異ならせて、したがって不正確な試験結果が結果として生じる、チャネル間又はチャネルにわたった小さな変動が、システムの空気ばねの作動を使用することによって順応させられ得る。本明細書に記載の空気ばねシステムは、例えば、(同一のチャネル形状が望まれる場合に)非同一チャネル形状をもたらす可能性のある製造上の欠陥を許容できる。他の利点は、空気ばねシステムを使用することが、物理的性質(例えば、粘度)が異なる流体サンプルを含む、異なるサンプルタイプにカートリッジを適するようにさせることである。ヘマトクリットの異なる血液サンプルは、粘度が異なるためにマイクロ流体カートリッジを通って異なるように動くので、異なるサンプルタイプの広い範囲にわたる適合性は、例えば、血液診断に重要である。
【0045】
したがって、従来のシステムとは異なり、本明細書で説明する空気ばねシステムは、広範囲の流体特性(広範囲の粘度、密度、圧縮性など)に順応できる。例えば、同じ条件下では、粘度の高い流体の方が、粘度の低い流体よりも、カートリッジ内の所定の目的地(例えば、試験チャンバ)に到達するのに時間がかかる場合がある。空気ばねシステムは、チャネル内の流体サンプルの位置及び/又は遠位空気の体積に基づいてチャネル内の加圧を調整することによって、このような粘度の違い、及び流体の動きの速度の違いに順応でき、したがって、本明細書に記載のカートリッジは、物理的特性が大きく異なる流体サンプル(例えば、血液対唾液)に使用され得る。同様に、単一の流体サンプルに関して、サンプルの個々のアリコートは、(例えば、本明細書で説明されるように、各アリコートがカートリッジ内で異なる条件、例えば、異なる試薬を有するチャネルに露出することにより)カートリッジ内にある間に異なる物理的特性を獲得する可能性があり、空気ばねシステムは、遠位空気の体積に基づいてカートリッジ内の各アリコートの位置の独立した調整を可能にし、上述の加圧/減圧特徴を使用することによって、個々のアリコートのこのような異なる物理的特性に順応できる。
【0046】
図3は、本明細書で説明する空気ばねマイクロ流体カートリッジの実施形態のようなハーガンポアズイユシステムにおける時間依存の流れを示している。適切な計量、ひいては試験に使用されるチャネルのそれぞれの既知且つ決定可能な体積を保証するために、圧力差(P)、体積流量(Q)、及び流体の流れに対する抵抗(μ)の間の関係は、次式で与えられる。
ΔP=8μLQ/πr
ここで、rは円筒形マイクロチャネルの断面の半径である。幾つかの実施形態は、抵抗(R)は、マイクロチャネルの高さ(h)、幅(w)、長さ(L)と同様に、μに関連しており、以下の通りである。
R=12μL/h
マイクロ流体カートリッジの複数のチャネルにわたって一貫した測定を行い、ひいては正確な分析を保証するためには、計量ステップが最初に実行されて、各チャネルが特定の既知の体積を有する流体サンプルのアリコートを包含することを保証する。幾つかの実施形態では、この計量ステップはさらに、計量の下流の流体サンプルの各アリコートが試薬(又は複数の試薬)の既知の濃度に露出させられることを保証する。圧力をかけることによって、流体サンプルは各チャネルに流れ込み、各チャネルを通過する。さらに、チャネルの形状が流れに対する抵抗を与えることもあり、このような抵抗は、チャネルの特定の領域に局在することもある。このような抵抗は背圧を生じさせ、このような背圧は圧力差(図3のP1とP2の差)に寄与する可能性がある。このような背圧は、チャネル内の流体の流れを遅くする方法として機能し得る。したがって、カートリッジのチャネルに特定のチャネル寸法(チャネル断面及び/又はチャネル長さなど)を選択することは、チャネルを通る流体の動きの速度をさらに制御する方法である。流れは継続し、圧力差があれば流体は下流に動き続ける(例えば、図3参照)。
【0047】
図4A~4Eは、単一のマイクロ流体カートリッジの3つのチャネルにおける、時間依存性の状態での流体の配置と近位空気及び遠位空気を図示する概略図である。図4Aは、流体サンプルが共通の入口に挿入されたときであって、サンプルが3つのチャネルに分割する前且つ計量が行われる前の、カートリッジを図示している。特に、図4Aは、状態0(t=0)にあるカートリッジを図示しており、ここでは、カートリッジの内側の全ての圧力は平衡状態にあり、圧力差はない。その後、理想気体の法則にしたがって、分割と流体の流れが続いて成し遂げられ、圧力を加えてP1を増大させる。例えば、図4Bは、状態1(t=1)における同じカートリッジを示しており、ここでは、流体サンプルは、空気ばねを使用して、既知又は所定の位置まで押される。図4Bはさらに、3つの閉鎖型マイクロ流体チャネルでの流体サンプルによって捕捉された空気を示しており、この空気は、各チャネルの流体サンプル部分の遠位(下流)にあり、体積V1、V2、及びV3に関連付けられている。チャネルのそれぞれにおけるV1、V2、及びV3に関連付けられた圧力は、圧力P1に等しいが、P2につながるチャネルには圧力差がある(すなわち、P1≠P2)。時間の経過とともに(入口に圧力がかかると)、圧力P1は圧力P2より大きくなり、流体サンプルはP2に関連付けられたチャンバに動く。明らかに、マイクロ流体カートリッジに挿入される流体サンプルの総体積(例えば、図5Aの入口100を介して)は、検査に使用されるチャネルのそれぞれにわたる全ての計量されたアリコートの合計(例えば、図4BのV1、V2、及びV3に関連付けられたチャネル、図5Aのチャンバ130a及び130bに関連付けられたチャネル)よりも大きくなければならない。図4Cは、圧力が所定の状態(状態2、t=2で指定)まで上昇し、3つのチャネルのそれぞれを所望の流体体積で満たすカートリッジを図示している。その後、3つのチャネルのそれぞれにおける流体の体積が増加し、その結果、3つのチャネルのそれぞれにおける空気が圧縮され、V1、V2、及びV3がそれぞれ減少し、追加の流体が、所望の流体の体積が達成されるまで、各チャネルに入ることが可能とされる。流体が動いていないときの任意の瞬間において、遠位体積V1、V2、又はV3に関連付けられた各チャネル内の圧力は、圧力P1及び圧力P2と同じである(システムが圧力平衡に向かって送るため)。P1が上昇してP2より大きくなると(P1はV1、V2、及びV3のそれぞれに関連付けられた圧力と同じである)、流体サンプルはP2に関連付けられたチャンバに排出される。各チャネル内の所望の計量された流体の体積が達成され、余分な流体サンプルがP2に関連付けられたチャンバ内に存在することになった後に、P1に関連付けられた空気、及び流体サンプルのアリコートの上流側(流体の近位側)にある空気は、V1、V2、及びV3に関連付けられたチャネルに向かって押され、V1、V2、又はV3に関連付けられたチャネルのそれぞれのアリコートの隔離を確実にして、工程のこの時点(t=x、x>2)は、図4Dに示されている。空気は、各アリコートが測定位置及び/又は検知位置に到達するまで、アリコートを、チャネルを通して押し出し続ける(図4E参照)。
【0048】
本明細書に記載の装置、システム、及び方法は、とりわけ、哺乳類(例えば、ヒト患者などのヒト、並びにヒト以外の哺乳類)、爬虫類、鳥類、及び魚類を含む、任意の個体からのサンプルに適用でき、研究及び獣医学に有用であり得る。個体は、例えば成熟したもの(例えば成人)、未熟なもの(例えば小児、乳児、新生児、又は未熟児)であり得る。本明細書に記載される、装置、システム、及び方法は、環境サンプルにも使用され得る(例えば、水サンプル中の分析物の存在を試験するため)。
【0049】
本明細書に記載される、装置、システム、及び方法は、診断及び/又は予後診断に使用され得る。例えば、本明細書に記載される、装置、システム、及び方法は、閉鎖系で患者サンプルの多重化検査を可能にする。このような検査は、たとえば感染性出血性疾患(例えば、デングウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルスなど)の場合に特に有用であり、疾患特異的カートリッジは、出血性合併症の可能性の診断及び予測の両方に使用され得る。
【0050】
本明細書に記載される、装置、システム、及び方法は、限定されるものではないが、病院内を含め、患者の治療をガイドするのに使用され得る。例えば、医師は、チャネル間の相互干渉(クロストーク)なしに、分注した流体サンプルの多重化された独立した検査を可能にするマルチチャネルマイクロ流体カートリッジを使用して(例えば、図7、10A-Bのカートリッジ実施形態を参照)、例えば、抗凝固療法を必要とする患者が適切な生理学的応答を引き出すように適切な用量の抗凝固剤を投与されていることを確かにするために、米国出願第16/046,816号(US2019/0111431として公開)及び米国出願第17/195,615号に記載されている分析を実施できる。
【0051】
本明細書に記載される、装置、システム、及び方法も同様に、病的な出血又は凝固をもたらす疾患又は病気(例えば、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされるCOVID-19、血友病など)の、限定されるものではないが、治療(例えば、薬物)の臨床的及び前臨床的評価を含む、管理に使用され得る。
【0052】
開示される、装置、システム、及び方法は、研究及び発見にも使用できる。例えば、本明細書に記載される、装置、システム、及び方法は、基礎的な創薬、疾患や病気の病態生理の理解、新規化合物及び生物製剤の前臨床評価、及び実験的治療の有害事象及び標的外効果のモニタリングにとって有用である。
【0053】
実施例
図5A、5B、6A、6B、及び7には、空気ばねシステムを有する閉鎖型マイクロ流体カートリッジの様々な実施形態が示されている。
【0054】
図5Aの概略図は、基本的な閉鎖型カートリッジシステムを図示しており、このシステムは、複数のチャネル(120)を有しており、複数のチャネル(120a、120b、及び120j)の各チャネルは、共通のチャネル110を介して共通の入口100に第1端部で接続されており、複数のチャネルの各チャネルは、その第2端部に向かって、別個のチャンバ又は一連のチャンバ(例えば、130a、130b、160a)を有している。幾つかの実施形態では、チャネルのそれぞれの別個のチャンバは、計量チャンバ130又は廃棄物チャンバ160であってもよい。
【0055】
このようなデザインを採用したカートリッジでは、流体サンプルは共通の入口100から導入される(例えば、挿入される)。アクチュエータ(図5Aには図示されず)の作動時に(例えば、図10Bの特徴700、図11の特徴900を参照)、流体サンプルの上流側の空気が押され、サンプルがマイクロ流体チャネル110に沿って動いた後に、チャネル120a、120b、及び120jに分かれる。各マイクロ流体チャネル120a、120b、及び120jは、そのチャネル内の流体の流れの速度を制御する少なくとも1つの抵抗要素(それぞれ121a、121b、及び121j)を含んでおり、したがって、そのチャネル内のチャンバ(例えば、チャンバ130a、130b、及び廃棄物チャンバ160a)のそれぞれへの流体の流れの速度を制御する。いくつかの側面において、そのような抵抗的特徴は、例えば、マイクロ流体チャネルの幾何学的設定(例えば、チャネルのアスペクト比の変化、又はチャネル体積を減少させるチャネル形状の他の変化など)を含んでもよい。幾つかの実施形態では、抵抗的特徴(例えば、121j)は、チャネルとは物理的に別個であってもよいが、そうである必要はない(例えば、121jによって付与される抵抗は、例えば、チャネル120jの形状を介して達成されてもよく、その場合、抵抗的特徴はチャネルとは別個ではないだろう)。幾つかの実施形態では、チャネル110は3つ以上のマイクロ流体チャネルに分かれてもよい(例えば、図6A、7、10A参照)。
【0056】
本明細書に記載される、装置、システム、及び方法の様々な実施形態において、流体サンプルの一部は、流体サンプルが複数のチャネルにわたて分割された後に計量され、その結果、計量された部分が等しい流体体積を有してもよい(流体サンプルの計量された体積は、アリコートとも呼ばれる)。一例では、121aの抵抗は121bの抵抗と等しく、130aと130bは、同量の流体サンプルを同速度で受け入れる計量チャンバとして機能する。幾つかの実施形態において、チャネル(例えば、110)が3つ以上のマイクロ流体チャネルに分岐する場合、図5Aに図示される2つの計量チャンバよりも多くの計量チャンバが存在し得ることが理解されるべきである(例えば、図6A、7、10A参照)。例えば、図6A、7、10Aのマイクロ流体カートリッジはそれぞれ、9つの計量チャンバ(130a-130i)を示している。一般的に、テストに使用される各チャネルには、計量チャンバとなる領域が含まれる。
【0057】
図5Aに示されるカートリッジ実施形態では、計量チャンバ130の下流に、試験チャンバ140(これは、検知チャンバ又は測定チャンバとも称される)がある。このような実施形態では、各試験チャンバ140a及び140bは、センサ(例えば、電極センサ)を含んでもよく、及び/又は何らかの他の測定方法(例えば、光学的検出)を促進してもよい。センサはチャネルに含まれてもよく、チャネルの外側に存在してもよい。本明細書に記載されるように、センサは、例えば、電気インピーダンスの測定、電気体積の測定、電気抵抗の測定、流量の評価(例えば、流体サンプル中に存在するビーズの流量を評価する)、流速の測定、圧力の測定、粘弾性の測定、蛍光検出(例えば、蛍光フィブリノゲンを使用する)、濁度の測定、赤外光検出、赤外分光法、音響センサを用いた検出、フォトニックセンサを用いた検出、フローサイトメトリ、及び視覚検出の方法(例えば、視覚的血栓検出)を含む、流体サンプルの特性を測定できる、又はそうでなければ他の方法で測定できる任意の構成要素を含んでもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、1つ以上の試験チャンバ140はまた、試薬(例えば、複数の試薬を含む)を含んでもよい。試薬には、凝固因子、カルシウム、蛍光発生基質又は発色基質、凝固活性化剤(例えば、ガラス、セライト、リン脂質、カオリンなど)、電気化学試薬(例えば、トロンビン生成用など)、及び血小板活性化剤(例えば、アデノシンリン酸、コラーゲン、リストセチン、エピネフリンなど)が含まれてもよい。
【0059】
図6Bに示されるように、幾つかの実施形態では、計量チャンバ130(例えば、130a)と試験チャンバ140(例えば、140a)との間に、試験に使用されるチャネルのそれぞれのチャンバ(又は一連のチャンバ)が存在する。そのような実施形態では、これらの追加チャンバの少なくとも1つは、1つ以上の試薬を含んでもよい。
【0060】
各試験チャンバ(又はウェルなど)140(例えば、140a)は、チャンバ(又は一連のチャンバ)210(例えば、210a)を介して遠位空気ばね150(例えば、150a)に接続する。各空気ばねは、所定の体積を有する閉じたウェルであり、これと廃棄物チャンバ(160)とが流体の動きを制御する。本明細書に記載されるカートリッジ実施形態のデザインでは、空気ばねの体積を増加させることができ、このような体積の増加は、システムの圧力(アリコートが試験チャンバ内の最終目的地にあるときのシステムの圧力を含む)を低下させる。代替的に、空気ばねの体積を減少させることもでき、このような体積の減少は、システムの圧力(アリコートが試験チャンバの最終目的地にあるときのシステムの圧力を含む)を増大させる。同様に、各廃棄物チャンバ(160)の体積を増加させ又は減少させることは、どれだけの圧力がカートリッジと空気ばねシステム内にあるかに影響を与える。
【0061】
様々な側面において、カートリッジは、2つ以上の計量チャンバ130a及び130b、及び/又は1つ以上の廃棄物チャンバ160aを有してもよい。このようなカートリッジの例示的な実施形態が、一例として図6A及び7に示されている。閉鎖型空気ばねシステムを有するカートリッジの実施形態は、図5Aに図示されておらず(例えば、図6A、7を参照)、及び/又は本明細書に記載される特定の実施形態では示されていない、特徴を含んでもよいことが当業者には理解されるべきである。
【0062】
幾つかの実施形態では、流体サンプルを複数の連続したステップで分割することが望ましくてもよい。例えば、連続的又はモジュール的な分割は、複数のチャネルにわたる計量時間及び/又は流体充填を向上させてもよい。このような向上は、流体サンプルが多数の部分に分割される実施形態では重要であってもよい。幾つかの実施形態では、流体サンプルは3つの別々の部分に分割され、それぞれの部分はそれ自身のチャネルに移動し、3つの別々の部分のそれぞれは、その後、3つ以上の計量チャンバと1つ以上の廃棄物チャンバにわたって分割される。
【0063】
特定の側面において、図5Aに示される実施形態は、図5Bに示される領域113の特徴など、追加の特徴を含んでもよい。このような実施形態では、入口100はリザーバ111に接続し、抵抗器112は流体サンプルの逆流を制御及び/又は防止する。リザーバ111は、例えば、流体サンプルを複数の計量チャンバと1つ以上の廃棄物チャンバに分割する前に、追加の計量領域として機能してもよい。幾つかの実施形態では、抵抗的特徴112は、例えば、テスラバルブ、蛇行するマイクロ流体経路、及び/又は多孔質膜を有してもよい。幾つかの実施形態では、複数の抵抗要素(例えば、並列又は直列の複数の抵抗領域)を組み合わせることが望ましくてもよい。さらに、幾つかの実施形態では、チャネル内のチャンバのそれぞれを接続する経路(例えば、200を介して130から140へ、210を介して140から150へ)もまた、抵抗的特徴201及び/又は211を含んでもよい(例えば、図5B参照)。幾つかの態様では、流体の流れに対する抵抗は、チャネル自体とは別に、個別の対応する抵抗器が存在しないように、チャンバ(例えば、200、210(特定の領域のみを含む)間の経路の1つ以上の形状(形状及び/又はその形状の寸法を含む)を介して達成されてもよい。
【0064】
本明細書に記載されるカートリッジの特定の実施形態では、流体サンプルは、少なくとも12個のチャネルであり、各チャネルが流体サンプルのアリコートを包含している少なくとも9つのチャネル(120a-i)と、3つの廃棄物チャネル(120j-l)とに分割されてもよく、例えば、図6Aに図示される実施形態を参照されたい。流体サンプルは、一度に少なくとも12個のチャネルに分割されてもよく、又は流体サンプルが最初に12個未満の部分に分割され、その後に分割が続いてもよい(例えば、流体サンプルは2回、3回、4回など分割してもよい)。例えば、図6Aの実施形態では、共通の入口100は、共通のチャネル110を介してマイクロ流体チャネル120a-lに直接に接続する(例えば、図5Aを比較)。図10Aの実施形態のような他の実施形態では、流体サンプルは3つのチャネルに分岐し、そのような各チャネルは、計量チャンバ130の前方(上流)でさらに3つのチャネル(120aと表示されたチャネルを参照)に分岐する。
【0065】
様々な実施形態において、流体サンプルは、分割する前に、第1流体リザーバ111及び/又は抵抗器112に流れてもよい(例えば、図5B、7参照)。図6Bに示されているように、幾つかの実施形態では、カートリッジ内のチャネルの1つ以上は、計量チャンバ(130)と試験チャンバ(140)との間に、追加の経路(例えば、追加のチャンバ、又は一連の追加のチャンバ)及び/又は抵抗的特徴をさらに含んでもよい。幾つかの側面において、マイクロ流体チャネルのそれぞれ(各チャネルの経路に沿った1つ以上の位置、例えば120、200、210)は、抵抗要素を含んでもよいが、必ずしも含まなくてもよい。図7は、チャネル経路に沿った様々な位置における抵抗要素を有する実施形態の概略図を提供する。
【0066】
カートリッジが、計量チャンバ(130)と試験チャンバ(140)との間に追加チャンバ及び/又は抵抗的特徴を有する特定の実施形態では、カートリッジ(例えば、図7に図示されるカートリッジ)のチャネルのそれぞれにおける計量チャンバ(130)及び試験チャンバ(140)との間の追加チャンバ及び/又は抵抗的特徴のそれぞれは、特定の目的を果たしてもよく、又は特定の機能を提供してもよい。例えば、上述したように、計量チャンバ(130)と試験チャンバ(140)との間にある1つ以上のチャンバは、1つ以上の試薬を含んでもよい。
【0067】
特定の実施形態(例えば、図6B、7に示される実施形態)では、閉鎖型マイクロ流体カートリッジ、及びその中のチャネルに含まれる様々なチャンバ及び特徴は、
a.流体サンプルを分析用の複数のチャネル(例えば120a-i)と少なくとも1つの廃棄物チャネル(例えば120j)に分割し、
b.分析用チャネル(例えば、120a-i)のそれぞれにおける流体サンプルの各部分を隔離し、それによって、廃棄物チャネル(例えば、120j-l)のそれぞれにおける、したがって廃棄物チャンバ(160a-c)のそれぞれにおける、流体サンプルの部分から、そのような部分を分離し、
c.分析用チャネル(例えば、120a)のそれぞれの流体サンプルの部分のそれぞれを、他の分析用チャネル(例えば、120b-i)のそれぞれの流体サンプルの他の部分のそれぞれから分離し、
d.分析用チャネルの(チャンバ130a-iなどの)それぞれの流体サンプルの部分を計量し、これにより、計量の下流側のチャンバ(例えば、試薬チャンバ、試験チャンバ(又はウェルなど))内の各部分が、既知の体積である(チャネルにわたるこのような体積は、互いに等しくてもよく又は等しくなくてもよい)ことを確かにし、
e.既知の体積の部分(アリコートと称される)のそれぞれを1つ以上の試薬に導入し(300により図示されるチャンバ内など)、
f.流体サンプルの各アリコートを1つ以上の試薬と混合し(チャンバ310内など)、及び
g.流体サンプルの各アリコートの1つ以上の物理的及び/又は化学的特性を測定し又はそうでなければ分析し(チャンバ140内など)、1つ以上の試薬に反応した各アリコートの反応を評価することを可能にする、
ように企図されている。
図6B及び図7は、このようなカートリッジを示しており、該カートリッジは、例えば血液凝固を検出し及び/又は評価するのに使用されてもよい。
【0068】
幾つかの実施形態では、カートリッジは、複数の積層された層を有してもよく、カートリッジのチャネル及び/又はチャンバは、異なる材料製であってもよく及び/又は異なる平面に沿って存在してもよい。図8はそのような一例を示しており、図7のマイクロ流体チャネルの1つの経路に沿ったチャンバ(例えば、120a、130a、300a、310a、140a、及び150aを有するチャネル)は、三次元的に成形され、位置決めされており、そのような形状及び位置決めが様々な機能を実現している(例えば、上述した項目aからg)。好ましい実施形態では、試薬チャンバと混合チャンバは、試薬チャンバ300が1.10μLまでの流体サンプルのアリコートを収容してもよく、混合チャンバ310が2.55μLまでの流体サンプルのアリコートを収容してもよく、それらを接続するチャネル経路400が0.85μLまでの流体サンプルのアリコートを収容するように、互いに対して並びにそれらを接続するチャネルに対して大きさに形成され及び位置決めされている。幾つかの実施形態では、混合チャンバ(及び混合チャンバ内の流体サンプルアリコートの体積)の体積は、試薬チャンバ(及び試薬チャンバ内の流体サンプルアリコートの体積)の体積よりも5倍まで大きくてもよく、又は1.5倍小さくてもよい。様々な側面において、試薬チャンバ内の流体サンプルアリコートの体積と混合チャンバ内の流体サンプルアリコートの体積との比は、例えば、1つ以上の試薬の含水挙動、流体サンプルの特性、及び/又は試薬チャンバの内表面の特性(例えば、疎水性、親水性、パターン化など)に依存してもよい。
【0069】
特定の実施形態では、図8に図示されている構成は、試薬チャンバで行われ、その後、試験チャンバ140に接続されているより大きな体積の混合チャンバ310で混合されるパワー洗浄の工程を通じて、1つ以上の試薬が流体サンプルのアリコートと完全に混合されることを保証する。
【0070】
幾つかの実施形態では、混合が続くパワー洗浄(高圧洗浄)のこの工程は、例えば、1つ以上の試薬がマイクロ流体カートリッジ上又はマイクロ流体カートリッジ内に乾燥スポットされた場合に特に望ましくてもよい。パワー洗浄の効果が図13C-13Fに示されている。
【0071】
図13Aは、異なる色の染料による液滴のスポッティングを示し、図13Bは、同じ液滴をいったん乾燥させ(「乾燥スポット」)、頂部に配置されるポリカーボネートのシール層で覆い、チャネルを完全に形成した状態を示す。異なる色の染料が試薬チャンバに乾燥スポットされ、各試薬チャンバには赤色及び/又は黄色の染料が(異なる濃度で)包含されている。試験チャンバには青い染料のスポットが包含されている。図13Aでは見えないが、混合チャンバ内には染料スポットはない。図13C及び13Dは、カートリッジ内のマイクロ流体チャネルを水が流れているときの画像を示している。図13Cは、水が流れて乾燥した着色スポット(赤及び/又は黄色の乾燥染料)を溶液に取り込む際の、試薬チャンバ内の色勾配を示しており、乾燥した染料は、凝固アゴニストなどの試薬の例を示すために使用されている。図13D(これは、混合チャンバ内の水中に染料が均一に溶解していることを示す)に示されるように、各流体サンプルアリコートがマイクロチャネルの混合チャンバ内にあるとき、カラー染料は流体サンプルと完全に混合する(この実証では水である)。染料を用いたこの実証はまた、流体が並行して流れる9つのチャネル間で混色又はブリードオーバー(漏れ)がないこと、換言すれば、チャネル間に相互干渉がなく、したがって複数のアリコートを同時に試験できることを示している。図13E及び13Fは、赤色及び/又は黄色の染料が混合された各水アリコートが、青色染料を含む各マイクロチャネルの試験チャンバにさらに下流に押し込まれたときのカートリッジの画像を示している。
【0072】
図13A-13Fは2つの重要なコンセプトを示しており、1)各マイクロチャネル内の試薬(赤及び/又は黄色の染料)を表すために使用された染料色は、試薬を有するアリコートが試験チャンバに到達する時間までに流体サンプルアリコートと完全に混合され(図13D参照)、2)試験チャンバに直接に乾燥スポットされた試薬(この図では青いスポットで表されている)は、各試験チャンバ内の青色の勾配(図13E、13Fを参照)によって見られるように、各マイクロチャネル内の流体サンプルアリコートと完全には混合されない。図13Eは試験チャンバを示しており、各試験チャンバは青色染料の色勾配を有している。試薬を表す赤色染料が入った試薬チャンバのあるマイクロチャネルでは、赤色染料が試験チャンバ内の青色スポットと完全に混合した場合、試験チャンバ全体の色は紫色になるはずであるが、そうならなかった。同様に、試薬を表す黄色の染料が入った試薬チャンバのあるマイクロチャネルでは、試験チャンバの青いスポットが流体サンプルと完全に混合した場合、試験チャンバ全体の色は緑色(試薬チャンバの試薬による黄色と試験チャンバの試薬による青色の組み合わせ)になるはずであるが、そうならなかった(図13Fも参照)。その代わりに、試験チャンバの比較的小さな部分のみが緑色になり、試験チャンバの大部分は試薬チャンバによる染料の色を保っていた。この図から、試薬チャンバでのパワー洗浄に続いて、混合チャンバでの混合を行うことにより、アリコートが試験チャンバに到達するときまでに、アリコートと試薬がよく混合されることを提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、カートリッジ(図10Bの60など)は、ずらりと並んだ構成要素を有してもよい。例えば、カートリッジは、プランジャ601、フィルタプラグ608、サポートリング605、及びセプタム602を含んでもよい、カートリッジ本体600を有してもよい。カートリッジは、第1感圧接着剤(PSA)層606、第2PSA層607、及びプリント回路基板800をさらに有してもよい。PSA層606及び607、並びにプリント回路基板800は、さらに、互いに及びカートリッジ本体600と位置合わせされてもよく、互いに及びカートリッジ本体600に付着又は接着されてもよい(例えば、ヒートシール、熱溶着、レーザー溶着など)。第1PSA層606及び第2PSA層607は、片面接着剤又は両面接着剤のいずれかを有してもよい。幾つかの実施形態では、バックシール604もまた、マイクロ流体チャネルを形成するためにカートリッジ本体600の底部に接着されてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態では、流体サンプルの挿入後、カートリッジ内の空気を押しことによって、流体サンプルがマイクロ流体カートリッジを通して動かされる。空気は、一体化されたプランジャ601を介して押され得る(例えば、図10B参照)。例えば、アクチュエータがプランジャ601を押してもよく、その結果、プランジャ601が一体型シリンジ700の全長(又は長さの一部)を移動し、特定の瞬間にカートリッジ内の所望の位置に流体サンプルを動かす。幾つかの実施形態では、カートリッジは、代替的に、カートリッジを通して流体サンプルを動かすように作動するベローズ900を含む、部分901が備え付けられてもよい(例えば、図11を参照)。
【0075】
各種素材(アクリル、ポリカーボネート、ガラス、シリコンなど)及び製造方法が、カートリッジ本体600を作成するために使用され得る。例えば、既存の製造方法(例えば、射出成形、機械加工、レーザーエッチング、積層(光アブレーション及び/又は犠牲層の有無にかかわらず、前述の任意の組み合わせを含んでもよい))の、1つ又は組み合わせが使用されてもよい。幾つかの実施形態では、使用される試験及び試験条件(例えば、使用する試薬、温度など)は、カートリッジ本体を製造するのに使用する材料の選択に情報を提供する。
【0076】
様々な側面において、カートリッジは、1層以上のPSAを有してもよい。幾つかの実施形態では、PSA層によって、カートリッジの層(及び異なる平面)間に流体接続を形成することを可能にしてもよい(そのような場合、特定の開口パターンを有するPSA層を使用できる)。PSA層は大量生産が可能であり、商業用レーザーカッタで切断できる。希望する開口部の解像度によっては、少量生産が市販のレーザーカッタでも可能である。さらに、開口部のパターン及び形状(又はジオメトリ)に応じて、PSA層を打ち抜いて、所望のパターン及び/又はジオメトリを作成できる。
【0077】
カートリッジが、図10Bの実施形態に示されるPCB800などのプリント回路基板(PCB)を有する実施形態では、そのようなPCBは、硬く又は可撓性であってもよく、又は、そのような層の1つ以上が可撓性であり、他の層が硬い、層を有してもよい。例示的な実施形態では、Kapton製(登録商標)の可撓性プリント基板が硬くされた層(リジッドPCBなど)に貼り付けられる(例えば、付着、レーザー溶着など)。幾つかの実施形態では、可撓性PCBにより蛍光測定を可能とする。PCB800はまた、電子機器内にヒータ要素を含んでもよい。例えば、ヒータ要素を含めることが、凝固試験又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験にとって望ましくてもよい。1つ以上の温度センサ及び/又はヒータ要素がPCBに組み込まれて、カートリッジの1つ以上の特定の領域、例えば流体サンプルを含むカートリッジの領域にわたって、望ましい温度を達成し及び/又は維持できる。幾つかの実施形態では、各試験チャンバは、独自の温度センサ及び/又はヒータ要素を有してもよい。さらなる実施形態では、個々の温度センサ及び/又はヒータ要素をカートリッジの個々の領域に局在化させることによって、各アリコートを異なる温度に露出させること及び/又は各チャネルの異なる部分に異なる温度を適用すること、が可能になる。温度測定はまた、フィードバック温度制御システム用の試験ユニットによって使用されてもよい。
【0078】
閉鎖系を有するカートリッジは、流体サンプルのアリコートのそれぞれが区分けされており、本明細書に記載されているように、複数の試験(例えば、アリコートのそれぞれにおける凝固を評価するため)を同時に行うために使用されてもよい。凝固試験を含む実施形態において、このような試験は、活性化凝固時間、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、希釈トロンビン時間、又はトロンビン時間、を評価することを含んでもよい。このような試験は、凝固因子活性分析、発色分析(例えば、抗Xa因子活性を評価するため)、蛍光ベースの分析(例えば、蛍光フィブリノゲンベースの分析)、電気化学ベースの分析(例えば、トロンビン生成)、及び米国出願第16/046,816号(US2019/0111431として発行された)及び米国出願第17/195,615号に開示された機能分析の何れか(これらのそれぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、を含んでもよい。
【0079】
幾つかの実施形態では、例えば、1つ以上の電解質(例えば、グルコース又は乳酸など)及び/又はバイオマーカ(遺伝子バイオマーカ又はタンパク質バイオマーカ)の測定のために、流体サンプルアリコートの電気化学的性が評価され得る。このような分析は、特殊な試薬の追加、電極コーティングの使用、及び/又は電極の機能化によって達成できる。
【0080】
幾つかの実施形態では、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)が、1つ以上のバイオマーカ及び/又は抗体の検出及び定量化などのために、マイクロチャネル内で実施され得る。ELISAは、(例えば、抗体で、ナノ金又はマイクロ金粒子で、及び/又はカーボンナノチューブで、直接に)機能化されていてもよく又は機能化されていなくてもよい電極を使用して実行することができ、又は凝集、蛍光、磁気ビーズ、発色法、試験チャンバ内外のセンサ、又はそれらの任意の組み合わせを用いて実施されてもよい。
【0081】
各アリコートが単一のマイクロチャネルを通って動くように、流体サンプルアリコートのそれぞれを分離することは、いくつかの実施形態において、凝集測定、アデノシン三リン酸(ATP)生成(例えば、ルシフェラーゼ測定を介して)、血小板付着(例えば、画像、又は機械的センサ及び/又は電気的センサを使用して)、及び/又は血小板数(例えば、画像及び/又は他のセンサを介して)を含む、複数の血小板活性化及び阻害試験を実施するために単一のカートリッジを使用することを可能にする。さらなる実施形態では、凝固試験及び血小板試験の両方が単一のカートリッジを使用して行うことができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、PCRを行うことができる-例えば、温度サイクリング又は等温反応を用いた従来のPCR、又はクラスター化された規則に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)を用いたものなどの新しいPCR法である。
【0083】
上述したような試験の何れかを実施するため、又はそうでなければ所望される試験を実施するために、様々なタイプのセンサが試験チャンバに組み込まれてもよい。このようなセンサは、例えば、病原体、毒素、揮発性有機化合物(VOC)、又はその他の有害な化学物質又は生物学的物質を検出するために使用できるガスセンサを含む。一部の実施形態では、このようなセンサを使用して、試験チャンバ内の流体サンプルの化学組成を評価してもよい。他の実施形態では、上述したように電極センサを含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、カートリッジは、試験チャンバ内のサンプルアリコートを評価するために使用されるセンサに加えて、センサを有してもよい。このような追加センサは、試験チャンバ内ではない流体経路に沿ったポイントに配置されてもよい(例えば、追加センサが試験チャンバの上流に配置されてもよい)。さらに、追加のセンサが、チャネルの内側又はチャネルの外側に配置されてもよい。例えば、図10Aのマイクロ流体装置では、図9に示されるように、血液サンプル中のヘマトクリット量を評価するために使用され得る電極対が含められてもよい。
【0084】
幾つかの実施形態では、カートリッジの製造に使用される材料は、チャネル内の流体サンプルアリコートの光学的測定及び撮像を可能にするために、透明であってもよい。例えば、多層カートリッジでは、1つ以上の層が透明であってもよく、又はそうでなければ光学的な測定又は撮像を可能としてもよい。このような光学的測定又は撮像は、試験チャンバでない場所も含む、チャネルの1つ以上の場所で行うことができる。さらに、このようなカートリッジは、サンプルアリコートの電気的特性(例えば、電気インピーダンス)を測定するための電極センサを有してもよく又は有さなくてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、試験は、1つ以上のサンプルアリコートを様々な時間に複数の試薬に露出させること(例えば、最初に一方の試薬にアリコートを露出させ、続いて他の試薬にアリコートを露出させることによって)を要求する場合があり、また、流体サンプルアリコートの加熱及び/又は冷却を要求する場合がある。例えば、凝固検査は、流体サンプルを含むカートリッジを37℃に加熱することを要求する場合があり、さらなる実施形態では、試験は、生理学的条件に近づけるために、カートリッジ及び/又は流体サンプルの一部を患者の体温まで加熱することを要求する場合がある。
【0086】
様々な実施形態において、特に、試験工程が複数の連続的な露出条件を含んでおり及び/又は完了するのに5分(例えば、60分まで)より長くかかる可能性がある場合、閉鎖型マイクロ流体カートリッジのマイクロチャネルが、試験中のカートリッジ内のサンプルの蒸発を補償するために、その表面(本明細書では犠牲的流体保持として説明される)にある程度の流体の保持を促進することが望ましい場合がある(例えば、流体サンプルアリコートが試験チャンバまで移動した後でさえも、マイクロチャネルの内壁に沿う流体サンプル(濃い染料で着色されている)を示す、図14を参照)。幾つかの場合において、流体サンプルに接触する空気(又は他の気体)(近位側又は上流側、遠位側又は下流側)、及びカートリッジ内の温度を考慮すると、システムが平衡に達するまで、各マイクロチャネル内で流体サンプルの蒸発が起こる可能性がある。マイクロ液滴又はナノ液滴を試験に使用する装置では、サンプルの蒸発が問題になり得る。一般的に、これらのシステムは、装置内の特定のポイントに「犠牲」液滴を組み入れており、その目的は、サンプルではなく、そのような「犠牲」液滴が蒸発し、その結果、サンプルが一定の体積で液体状態に維持されることである。本発明の特定の実施形態では、図14に示されるように、カートリッジ構成要素を組み立てる際に使用される材料は、流体サンプルと接触するその表面が、各マイクロ流体チャネル(又は、少なくとも、試験に使用され、試験チャンバを有する、チャネル)の特定の経路に沿って、一定量の流体サンプルの保持を促進するように、選択され又は処理されてもよい。例えば、流体サンプルが試験チャンバ内にあるときの流体サンプルの露出表面積(流体サンプルが試験チャンバ内にあるときに空気又は他の気体と接触する流体サンプルの面積)が、マイクロチャネルの壁に沿った犠牲流体保持の露出表面積よりも小さい場合、犠牲流体は、平衡化されたシステムに向かって優先的に蒸発し、流体サンプルの蒸発は最小限に抑えられ、したがって試験チャンバのサンプル量への影響は最小限に抑えられる。チャネル表面は、犠牲流体の保持を促進するために(例えば、親水性コーティングで)コーティングされてもよい。特定の実施形態では、マイクロ流体チャネルの壁を形成するためにPSA層を使用することによって、犠牲流体の保持を促進するチャネル表面を提供でき、例えば、ポリカーボネート製のPSA層の場合、流体サンプルはチャネルを通過する際にPSAに捕まり易く、その結果、犠牲流体が保持される。この犠牲流体は、チャネルの側面を裏打ちするPSAに沿って広がり、試験チャンバ内のサンプルが2つの側面(上流側と下流側、これらの側面の表面積はさらにチャネル形状で制御され得る)のみ空気(又は、他のガス)に露出されるため、試験チャンバ内のサンプルの露出表面積に比べて、犠牲流体がカートリッジ内の空気(又は、他のガス)に露出される表面積が大きくなる。
【0087】
本発明は、その特定の実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、例えば添付の特許請求の範囲によって包含されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細において様々な変更がなされてもよいことが、当業者には本開示に照らして理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14
【国際調査報告】