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  • 特表-モメロチニブ併用療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】モメロチニブ併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K45/00
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K31/4545
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/4985
A61P43/00 121
A61K31/4439
A61K31/4725
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508616
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022074645
(87)【国際公開番号】W WO2023019095
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,432
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591002957
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン、ウィリアム、ストラウス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086BC37
4C086BC50
4C086BC73
4C086CB05
4C086CB22
4C086CB27
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB11
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、炎症性疾患または障害を治療する方法に関する。前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および1つ以上の抗炎症剤を前記対象に投与すること、ならびに炎症性疾患または障害の治療に使用するための組合せ、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患または障害を治療する方法であって、
それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および
1つ以上の抗炎症剤を前記対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の抗炎症剤がBETタンパク質阻害剤であり、任意に、前記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤であり、任意に、前記IKK阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記IKK阻害剤がB1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤であり、任意に、前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤がIRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAY1834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性疾患または障害を治療することが、前記炎症性疾患または障害の1つ以上の症状を少なくとも改善することを含み、任意に、前記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または前記1つ以上の抗炎症剤のみによる単剤療法と比較して増加する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記投与することにより前記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR1/SMADシグナル伝達の調節がもたらされる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が慢性炎症性疾患、自己免疫疾患または癌を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
癌を治療する方法であって、
それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および
1つ以上の抗炎症剤を前記対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の抗炎症剤がBETタンパク質阻害剤であり、任意に、前記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤であり、任意に、前記IKK阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記IKK阻害剤が、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項19】
前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、IRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤であり、任意に、前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAYl834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌を治療することが1つ以上の症状を少なくとも改善することを含み、任意に、前記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または前記1つ以上の抗炎症剤のみによる単独療法と比較して増加する、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が骨髄線維症を有し、任意に、前記抗炎症剤がCPI-0610である、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記投与することにより前記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR1/SMADシグナル伝達の調節がもたらされる、請求項12~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.はじめに
骨髄線維症(MF)は、JAK-STAT経路の構成的活性化によって引き起こされる進行性の骨髄増殖性新生物である。JAK-STATの活性化は進行性の骨髄線維化を引き起こし、局所的および全身的な炎症を誘発し、最終的に貧血、体質的症状、および脾腫という3つの疾患の特徴をもたらす。
【0002】
さらに、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および肝細胞癌などの悪性腫瘍においてもSTAT活性化の証拠がある。慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、および急性リンパ性白血病(ALL)を含む多くの造血器悪性腫瘍において、Tel、Ber、およびPCMIへのJAK2融合を伴う染色体転座が報告されている。このことから、多発性骨髄腫を含む癌;前立腺癌、乳癌、および肺癌;ホジキンリンパ腫;CML;AML;CEL;MDS;ALL;B細胞性慢性リンパ性白血病;転移性黒色腫;神経膠腫;ならびに、肝癌などの増殖亢進性疾患に対するJAK阻害剤による治療が適応となる。
【0003】
タンパク質のブロモドメインおよびエクストラターミナル(BET)ファミリーは、ヒト癌において転写の脆弱性を示す。BETタンパク質を標的とする低分子は、がんを促進する遺伝子の転写を抑制し、多くの悪性疾患において抗がん作用を示す。JAK2阻害剤を含むキナーゼ阻害剤もまた、BETブロモドメインを阻害する可能性がある(Martinら,ACS Chem. Biol. 2013;8(11):2360-5;Ciceriら,Nat. Chem. Biol. 2014;10(4):305-12;Dittmannら,ACS Chem. Biol. 2014;9(2):495-502;Emberら,ACS Chem. Biol. 2014;9(5):1160-71)。BETタンパク質に対するJAK2阻害剤の効果は、上記阻害剤の有効性に寄与している可能性がある。
【0004】
JAK-STAT経路およびACVRl/SMADシグナル伝達の低分子阻害剤は、臓器移植を含む免疫・炎症性疾患;癌および骨髄増殖性疾患を含む増殖亢進性疾患;ウイルス性疾患;代謝性疾患;ならびに、血管性疾患などのキナーゼ関連疾患の治療に有用であろう。
【0005】
JAK-STAT経路の低分子阻害薬がMFにおいて開発されており、現在承認されている治療薬としてはルキソリチニブ(JAK1およびJAK2)およびフェドラチニブ(JAK2)の2種類がある。これらの薬剤は、脾腫や体質的な症状に対して有効であるが、骨髄抑制作用があるため臨床的有用性は限定的である。さらに、JAK阻害剤はMFの根治薬ではないため、有効なJAK阻害剤併用療法を同定することへの関心が高まっている。
【0006】
モメロチニブ(MMB)は、JAK1、JAK2、およびJAKiクラスの中でもユニークなACVR1に対する強力なナノモル阻害剤である。この差別化されたプロフィールは、鉄ホメオスタシスおよび赤血球産生を回復させ、赤血球輸血を削減または排除するなど、一連の貧血改善効果をもたらす。MMBはまた、血小板数を改善または維持することも示している。このような骨髄抑制の軽減および良好な安全性プロファイルにより、ルキソリチニブと臨床的に同等の脾臓および症状改善効果を伴う、最大用量に近い持続的な投与が可能となる。
【0007】
2.発明の概要
本明細書において開示されるものは、対象における炎症性疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および1つ以上の追加の抗炎症剤を上記対象に投与することを含む、方法である。
【0008】
本明細書において開示されるものは、対象における癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および1つ以上の追加の抗炎症剤を、上記対象に投与することを含む、方法である。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記1つ以上の追加の抗炎症剤は、NF-κB活性を調節する薬剤である。NF-κB活性を調節する薬剤は、細胞におけるNF-κB経路の阻害剤であり得る。NF-κB活性を調節する薬剤は、NF-κBのアンタゴニストであり得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記1つ以上の抗炎症剤は、BETタンパク質阻害剤、例えば、BRD4阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記BETタンパク質阻害剤は、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、INCB054329、INCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される。いくつかの実施形態において、上記BETタンパク質阻害剤は、CPI-0610である。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記1つ以上の抗炎症剤は、IKKタンパク質阻害剤、例えば、IKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記IKK阻害剤は、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記1つ以上の抗炎症剤は、IRAKおよび/またはTLR阻害剤、例えば、IRAKl阻害剤またはIRAK4阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤は、BAY1834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記1つ以上の抗炎症剤は、タンパク質または低分子剤である。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記炎症性疾患または障害を治療する方法は、少なくとも疾患または障害の1つ以上の症状を改善することを含み、例えば、1つ以上の症状の改善は、モメロチニブ(MMB)による単剤療法または1つ以上の抗炎症剤単独による単剤療法と比較して増加する。
【0015】
いくつかの実施形態において、治療の方法は、対象の細胞において、NF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATシグナル伝達およびACVRl/SMADシグナル伝達の調節をもたらす。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、または癌を有する。いくつかの実施形態において、対象は、慢性炎症性疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、癌を有する。いくつかの実施形態において、対象は、骨髄線維症を有する。
【0017】
本明細書に開示されるものは、対象における骨髄線維症を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、およびCPI-0610を上記対象に投与することを含む、方法である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記MMBまたはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態において、上記MMBまたはその薬学的に許容される塩は、毎日または毎週投与される。いくつかの実施形態において、上記MMBまたはその薬学的に許容される塩は、断続的に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の方法において使用するための、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の追加の抗炎症剤との組み合わせに関する。すなわち、本開示は、被験体における炎症性疾患または障害の治療に使用するための、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の追加の抗炎症剤との組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、対象における炎症性疾患または障害の治療のための医薬の製造における、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の追加の抗炎症剤との組み合わせの使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、シグナル伝達経路レポーター活性に対する試験に供された化合物の効果を示すオーバーレイグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
3.説明
特許請求の範囲および明細書で使用される用語は、特に指定がない限り、以下のように定義される。
【0022】
「改善」という用語は、疾患状態、例えば、関節炎疾患状態の治療において、予防、重症度、または進行の軽減、寛解、または治癒を含む、任意の治療上有益な結果を指す。
【0023】
本明細書で使用する「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび非ヒトの両方を含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、イヌ科動物、ウシ、ウマ、およびブタを含むが、これらに限定されない。
【0024】
「対象」という用語は、ヒトおよびヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽、魚、甲殻類など)を含むがこれらに限定されない、あらゆる動物を広く指す。
【0025】
「有効量」という用語は、有益または所望の結果をもたらすのに十分な組成物の量を指す。有効量は、1つ以上の投与、適用または用量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定することを意図していない。
【0026】
「治療有効量」とは、疾患の症状を改善するのに有効な量をいう。治療有効量とは、予防を治療とみなすことができるため、「予防有効量」であることもある。
【0027】
「投与」および「投与する」という用語は、薬物、プロドラッグ、もしくはその他の薬剤、または治療処置(例えば、ペプチド)を、対象、in vivo、in vitro、またはex vivoの細胞、組織、および臓器に投与する行為を指す。人体への例示的な投与経路は、脳または脊髄のクモ膜下の空間(髄腔内)、目(点眼)、口(経口)、皮膚(局所または経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬または舌)、耳、直腸、膣、注射(例.静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)などである。
【0028】
「治療」という用語は、有益なまたは意図された臨床結果を得るためのアプローチを意味する。上記有益なまたは意図された臨床結果には、症状の緩和、疾患の重症度の軽減、疾患または状態の根本的な原因の阻害、進行していない状態での疾患の安定化、疾患の進行の遅延、および/または疾患状態の改善または緩和が含まれ得る。
【0029】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、対象に投与された場合に、有害反応、例えば、毒性反応、アレルギー反応、または免疫学的反応を実質的に生じない組成物を指す。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の参照語を含むことに留意されなければならない。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法によって治療される対象は、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖亢進性疾患を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法によって治療される対象は、癌および/または骨髄増殖性疾患を有する。癌および骨髄増殖性疾患の非限定的な例は、細胞増殖性疾患状態含み、これは以下を含むが、これらに限定されるものではない:心臓:肉腫(血管肉腫,線維肉腫,横紋筋肉腫,脂肪肉腫),粘液腫,横紋筋肉腫,線維腫,脂肪腫,奇形腫;:気管支原性がん(扁平上皮がん,未分化小細胞がん,未分化大細胞がん,アデノがん),肺胞(細気管支)がん,気管支腺腫,肉腫,リンパ腫,軟骨腫性霰粒腫,類内皮腫;消化器:食道(扁平上皮がん,腺がん,平滑筋肉腫,リンパ腫),胃(がん,リンパ腫,平滑筋肉腫),膵臓(管状腺がん,インスリノーマ,グルカゴノーマ,ガストリノーマ,カルチノイド腫瘍,脂肪腫),小腸(腺がん,リンパ腫,カルチノイド腫瘍,カルポジ肉腫,平滑筋腫,血管腫,脂肪腫,神経線維腫,線維腫),大腸(腺がん,管状腺腫,絨毛腺腫,過誤腫,平滑筋腫);泌尿生殖器:腎臓(腺がん,ウィルム腫瘍腎芽細胞腫,リンパ腫,白血病),膀胱および尿道(扁平上皮がん,移行細胞がん,腺がん),前立腺(腺がん,精巣(セミノーマ,奇形腫,胚性がん,奇形がん,絨毛がん,肉腫,間質細胞がん,線維腫,線維腺腫,腺腫様腫瘍,脂肪腫);肝臓:肝腫(肝細胞がん),胆管がん,肝芽腫,血管肉腫,肝細胞腺腫,血管腫;:骨原性肉腫(骨肉腫),線維肉腫,悪性線維性組織球腫,軟骨肉腫,ユーイング肉腫,悪性リンパ腫(細網肉腫),多発性骨髄腫,悪性巨細胞腫脊索腫,骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫),良性軟骨腫,軟骨芽細胞腫,軟骨線維腫,骨様骨腫および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫,血管腫,肉芽腫,黄色腫,変形性骨炎),髄膜(髄膜腫,髄膜肉腫,神経膠腫症),脳(星細胞腫,髄芽腫,神経膠腫,上衣腫,松果体腫,多形膠芽腫,乏突起膠腫,シュワンノーマ,網膜芽細胞腫,先天性腫瘍),脊髄神経線維腫,髄膜腫,神経膠腫,肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜がん),子宮頸部(子宮頸がん,前腫瘍性子宮頸部異形成),卵巣(卵巣がん漿液性嚢胞腺がん,粘液性嚢胞腺がん,分類不能がん,顆粒膜-頭蓋細胞腫瘍,セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍,異形成腫,悪性奇形腫),外陰部(扁平上皮がん,上皮内がん,腺がん,線維肉腫,黒色腫),膣(明細胞がん,扁平上皮がん,ボトリオイド肉腫胚性横紋筋肉腫),卵管(がん);血液:血液(急性および慢性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病,慢性リンパ性白血病,多発性骨髄腫,骨髄異形成症候群),ホジキン病,非ホジキンリンパ腫悪性リンパ腫;皮膚:悪性黒色腫,基底細胞癌,扁平上皮癌,カルポジ肉腫,ほくろ形成不全性母斑,脂肪腫,血管腫,皮膚線維腫,ケロイド,乾癬;副腎:神経芽腫;および,ベラ型多血症(PV),原発性骨髄線維症(MF),血小板血症,本態性血小板血症(ET),特発性骨髄線維症(IMF)とも呼ばれるアグノニー性骨髄異形成(AMM),慢性骨髄性白血病(CML),全身性肥満細胞症(SM),慢性好中球性白血病(CNL),骨髄異形成症候群(MDS),および全身性肥満細胞症(SMCD)のような骨髄増殖性疾患
【0032】
NF-κB(nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells)は、DNAの転写、サイトカインの産生、および細胞の生存を制御するタンパク質複合体である。NF-κBは、感染に対する免疫反応を制御する役割を担っている。NF-κBの不適切な制御は、例えば、癌、炎症性疾患、および自己免疫疾患に関連している。
【0033】
NF-κBの転写活性は、いくつかの異なる経路によって制御されている。その一つは、炎症性サイトカインによって誘導されるカノニカル経路である。カノニカルNF-κB経路の関与は、IκBキナーゼ(IKK)複合体の活性化に収束するシグナル伝達カスケードを引き起こす。IKK複合体は、キナーゼサブユニットであるIKKαおよびIKKβ、ならびに制御サブユニットであるIKKγ(NEMO、NF-κB essential modifierとしても知られる)によって形成される。
【0034】
インターロイキン-I受容体関連キナーゼ(IRAK1、IRAK2、IRAK3[IRAK-M]、およびIRAK4)は、toll様受容体(TLR)およびインターロイキン-Iシグナル伝達経路に関与するセリン-スレオニンキナーゼであり、これらを介して自然免疫および炎症を制御している。
【0035】
BRD4などのBET(ブロモドメインおよびエクストラ-ターミナルドメイン)タンパク質ファミリーのメンバーの阻害は、中でも、NF-κB依存性のプロモーターおよびスーパーエンハンサーの調節に関与している。
【0036】
BET阻害剤の有効性は、前立腺、乳房、結腸、腸、膵臓、肝臓、および脳の腫瘍を含む前臨床固形腫瘍モデルでも示されている(Sahaiら,2016;7(33):53997-54009)。いくつかの場合には、腫瘍の特定のサブセットがBET阻害剤に対して例外的な感受性を示す(Rathertら,2015;525(7570):543-547)。
【0037】
抗炎症剤
本明細書に記載の抗炎症剤のいずれも、モメロチニブと併用して対象方法に利用することができる。いくつかの実施形態において、上記抗炎症剤は、NF-κB調節剤、すなわち、NF-κB調節経路の活性または機能を調節する薬剤である。NF-κB調節剤は、NF-KBタンパク質複合体と直接相互作用する薬剤、または、例えば、NF-κB調節経路のキナーゼ標的の活性を阻害することによって(例えば、本明細書に記載されるように)、細胞内のNF-κBの活性を間接的に調節する薬剤であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、目的のNF-κB調節剤は、IRAK標的(例えば、IRAK1)、IKK標的(例えば、IKK-β)、および/またはBETタンパク質(例えば、BRD4)に対する阻害活性の結果である抗NFKB活性を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記抗炎症剤はBETタンパク質阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記BETタンパク質阻害剤は、BRD4阻害剤である。関心のあるBETタンパク質阻害剤は、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、INCB054329.INCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブを含むが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記抗炎症剤は、IKKタンパク質阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記IKKタンパク質阻害剤は、IKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である。関心のあるIKKタンパク質阻害剤は、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541を含むが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記抗炎症剤は、IRAKおよび/またはTLR阻害剤である。いくつかの実施形態において、上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤は、IRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤である。関心のあるIRAKおよび/またはTLR阻害剤は、BAY1834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブを含むが、これらに限定されない。
【化1A】
【化1B】
【化1C】
【化1D】
【化1E】
【化1F】
【化1G】
【0042】
モメロチニブ(MMB)
一態様において、本開示は、化合物モメロチニブ(MMB)の使用方法を提供する。MMBは、CYT387と呼ばれることもある。化合物MMBは、化学名:N-(シアノメチル)-4-(2-(4-モルホリノフェニルアミノ)ピリミジン-4-イル)ベンズアミドによっても同定される。MMBの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物および/または多形体を含む塩は、本明細書に開示される主題の方法において使用を見出すことができる。
【0043】
MMBは、国際特許出願番号PCT/US2015/035316および国際特許公開番号WO2008/109943に開示されている化合物であり、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。当業者であれば、MMBを合成するために使用できる方法を国際特許公開番号WO2008/109943に見つけることができるだろう。
【0044】
表1はMMB化合物の構造を示す。
【表1】
【0045】
いくつかの場合においては、MMBの薬学的に許容される塩が利用される。いくつかの場合において、主題の方法において使用が見出されるMMB塩は、塩酸塩である。ある場合において、上記MMB塩は二塩酸塩である。いくつかの場合においては、上記MMB塩は一塩酸塩である。いくつかの場合においては、上記MMB塩は一水和物などの水和物である。
【0046】
「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用によって形成される。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供される。溶媒が水の場合、溶媒和物は水和物と呼ばれる。MMBまたはMMB塩の水和物もまた、主題の方法で使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記MMB塩はMMB二塩酸塩一水和物である。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記MMB塩はMMB二塩酸塩無水物である。
【0049】
いくつかの実施形態において、投与される上記MMBまたはMMB塩の組成物は、多形形態、例えば、米国特許第9,469,613号に記載されている多形形態で存在し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
ある場合には、本開示のMMBは、重水素原子(D)で置換された1からn個の水素原子を有し得る。ここで、nは化合物中の水素原子の数である。このような重水素化MMB化合物は、代謝に対する耐性を増加させる可能性があり、したがって、哺乳動物に投与された場合に本明細書に記載の化合物の半減期を増加させるのに有用であり得る。例えば、Foster,“Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism”,Trends Pharmacol. Sci.,5(12):524-527(1984)を参照のこと。
【0051】
投与
特定の患者に対する具体的な投与量レベルおよび投与回数は様々であり、採用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用時間、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与様式および投与時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、特定の病態の重症度、および治療中の宿主を含む様々な要因に依存することが理解されよう。
【0052】
また、本明細書に開示される方法には、有効量のMMBを投与し、第二の有効量のさらなる治療薬を共投与する併用療法が含まれる。さらなる治療法としては、炎症に関連する疾患や病態の治療に有用な抗炎症剤を追加投与することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施態様では、追加薬剤はNF-kB調節剤である。「有効量」または「治療有効量」という用語は、例えば、本明細書に記載されるような疾患の症状を改善するのに有効な量を指す。
【0053】
共投与は、MMBおよびさらなる治療が同時に与えられる方法、MMBおよびさらなる治療が順次与えられる方法、ならびにMMBおよびさらなる治療のいずれか一方または両方が間欠的または連続的に与えられる方法、あるいは同時、順次、間欠的および/または連続的の任意の組み合わせを包含する。当業者であれば、間欠的な投与は必ずしも逐次的な投与と同じではないことを認識するであろう。さらに、当業者は、間欠的な投与は、最初の薬剤が再び投与される前に、別の薬剤の投与による最初の薬剤の投与の中断を含むので、間欠的な投与はまた、いくつかの局面において逐次的な投与を包含することを理解する。さらに、当業者は、連続投与が、静脈点滴または栄養チューブなどを含む多くの経路によって達成され得ることも理解するであろう。
【0054】
さらに、より一般的な方法として、「共投与」という用語は、MMBの個別投与と被験体へのさらなる治療の個別投与とが、任意の時間枠の間に重複するあらゆる方法を包含する。一態様において、MMBおよびさらなる治療は、異なるスケジュールで投与される。
【0055】
いくつかの態様において、本開示は、MMBおよび/またはさらなる処置のいずれか一方、または両方、またはそれらの任意の組み合わせが、静脈内、皮下、皮膚、経口、筋肉内、および腹腔内からなる群より選択される経路によって投与される方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、MMBおよび/またはさらなる処置のいずれか一方、または両方、またはそれらの任意の組み合わせが静脈内投与される方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、MMBおよび/またはさらなる処置のいずれか一方、または両方、またはそれらの任意の組み合わせが経口投与される方法を提供する。
【0056】
当業者は、本開示の単位用量形態が、同じまたは異なる物理的形態、すなわち、カプセルまたは錠剤を介した経口投与および/または経静脈(i.v.)注入を介した液体投与などで投与され得ることを理解する。さらに、各投与のための単位用量形態は、特定の投与経路によって異なり得る。MMBおよびさらなる治療のいずれか一方、または両方について、いくつかの様々な剤形が存在し得る。異なる病状は異なる投与経路を正当化しうるため、本明細書に記載されるMMBとさらなる治療法の組み合わせの同じ成分は、組成および物理的形態が全く同じであっても、病状を緩和するために異なる方法で、おそらくは異なる時間に投与する必要がある場合がある。例えば、特に嘔吐を伴う持続的な吐き気などの状態では、経口剤形を使用することが困難な場合があり、そのような場合には、別の単位用量形態、おそらくは以前またはその後に使用した他の剤形と同一のものを、代わりにまたは同様に吸入、頬、舌下、または坐薬の経路で投与する必要がある場合がある。化学的安定性や薬物動態のような様々な要因に問題がある可能性があるため、特定の剤形は、MMBとさらなる治療との特定の組み合わせのための要件である可能性がある。
【0057】
いくつかの態様において、MMBおよび/または追加薬剤の有効量は、最大耐用量(MTD)以下、最高非重篤毒性量(HNSTD)以下、または無有害作用量(NOAEL)以下である。
【0058】
一般に、本開示の化合物は、同様の効用を果たす薬剤について認められている投与様式のいずれかにより、治療上有効な量で投与される。本技術の化合物、すなわち有効成分の実際の量は、治療すべき疾患の重症度、被験体の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力、投与経路および投与形態、ならびに当業者に周知の他の要因などの多数の要因に依存する。薬剤は少なくとも1日に1回、好ましくは1日に1回または2回投与することができる。
【0059】
このような薬剤の有効量は、最も効果的で便利な投与経路や最も適切な製剤と同様に、日常的な実験によって容易に決定することができる。様々な製剤や薬物送達システムが当技術分野で利用可能である。例えば、Gennaro,A.R.編集(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.を参照のこと。
【0060】
治療有効量は、当技術分野で周知の様々な技法を用いて初期に推定することができる。動物実験で使用される初期用量は、細胞培養アッセイで確立された有効濃度に基づくことができる。ヒト対象に適切な用量範囲は、例えば、動物試験および細胞培養アッセイから得られたデータを用いて決定することができる。
【実施例
【0061】
実施例1
モメロチニブは、併用療法に適した薬理学的プロフィールを持つ、非骨髄抑制性の分化型JAK阻害剤である。
【0062】
材料
【0063】
NF-kBレポーター-HEK293細胞株(BPS Bioscience #60650);MEM培地(Hyclone #SH30024.01);ウシ胎児血清(Life Technologies #10082147);非必須アミノ酸(Corning 25-025-Cl);ピルビン酸Na(Hyclone #SH30239.01);Pen-strep(Hyclone #SV30010);Hygromycin B(Invitrogen/Thermo-Fisher #10687010);IKK-16 dihydrochloride-NF-kB inhibitor(Sigma SML1138);TNFa(R&D Systems 210-TA);ONE-Step luciferase assay system(BPS Bioscience #60690)。試験化合物は表2に記載した供給源から入手した。
【0064】
【表2】
【0065】
*参照化合物
【0066】
方法
【0067】
細胞培養。細胞は10%FBS、1%非必須アミノ酸、1mMピルビン酸Na、1% Pen-strep、および50μg/mLハイグロマイシンBを添加したMEM培地で培養した。
【0068】
アッセイ条件
【0069】
NF-kBルシフェラーゼレポーターアッセイを行うために、NF-kBレポーター-HEK293細胞を60μLのアッセイ培地(ハイグロマイシンBを含まない増殖培地)中の白色透明底96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり30,000個播種した。細胞を37℃、5% COで5時間培養し、接着させた。ハイグロマイシンBを含まないアッセイ培地で化合物の連続希釈液を調製した。30μLの希釈化合物をその日の終わりに処理ウェルに加えた。対照ウェルには、化合物を含まない同濃度のDMSOを加えた30μLのアッセイ培地を加えた。バックグラウンド発光を測定するために、DMSOを添加した100μLのアッセイ培地を無細胞の対照ウェルに添加した。細胞は37℃、5% COで一晩インキュベートした。
【0070】
翌日、アッセイ培地で希釈したヒトTNFaを10μLウェルに添加した(最終[TNFa]=10ng/mL)。10μLのアッセイ培地を、刺激されていない対照ウェルに添加した。細胞を37℃、5% COで5~6時間インキュベートした。処理後、細胞を溶解し、ONE-Stepルシフェラーゼアッセイシステムを用いてルシフェラーゼアッセイを行った:1ウェルあたり100μLのOne-Stepルシフェラーゼ試薬を加え、室温で~30分間揺らした。発光をルミノメーター(BioTek SynergyTM 2 マイクロプレートリーダー)を用いて測定した。
【0071】
結果
【0072】
【表3】
【0073】
細胞データは、MMBがルシフェラーゼアッセイにおいてNF-κBシグナル伝達をダウンレギュレートすることを示している(一方、並行して実施したルキソリチニブ(RUX)はダウンレギュレートしなかった)。この実験は、NF-κBシグナル伝達に対するMMBの効果を、NF-κBシグナル伝達に対する上表のJAK阻害剤の効果と比較するために行った。
【0074】
結論:これらの新規データは、MMBがJAK1、JAK2、およびACVR1の阻害活性に加えて、ユニークなNF-κB活性を有することを示唆している。

本開示の実施形態:
1.炎症性疾患または障害を治療する方法であって、以下を含む方法:
それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与する工程;および
1つ以上の抗炎症剤を上記対象に投与する工程。
2.上記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、実施形態1の方法。
3.上記1つ以上の公園町剤がBETタンパク質阻害剤である、実施形態1または2の方法。
4.上記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、実施形態3の方法。
5.上記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、実施形態3または4の方法。
6.上記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤である、実施形態1または2の方法。
7.上記IKK阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、実施形態6の方法。
8.上記IKK阻害剤が、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、実施形態6または7の方法。
9.上記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤である、実施形態1または2の方法。
10.上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤がIRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤である、実施形態9の方法。
11.上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAYl834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、実施形態9または10の方法。
12.上記1つ以上の抗炎症剤がタンパク質または低分子薬剤である、実施形態2の方法。
13.上記炎症性疾患または障害を治療することが上記疾患または障害の1つ以上の症状を少なくとも改善することを含む、実施形態1~12のいずれか一の方法。
14.上記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または上記1つ以上の抗炎症剤のみによる単剤療法と比較して増加する、実施形態13の方法。
15.上記投与することにより上記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR1/SMADシグナル伝達の調節がもたらされる、実施形態1~14のいずれか一の方法。
16.上記対象が慢性炎症性疾患、自己免疫疾患または癌を有する、実施形態1~15のいずれか一の方法。
17.上記MMBまたはその薬学的に許容される塩が経口投与される、実施形態1~16のいずれか一の方法。
18.上記対象がヒトである、実施形態1~17のいずれか一の方法。
19.癌を治療する方法であって、
それを必要とする対象に、治療有効量のモメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を投与すること、および
1つ以上の抗炎症剤を上記対象に投与すること
を含む、方法。
20.上記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、実施形態19の方法。
21.上記1つ以上の抗炎症剤がBETタンパク質阻害剤である、実施形態19または20の方法。
22.上記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、実施形態21の方法。
23.上記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、実施形態21または22の方法。
24.上記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤である、実施形態19または20の方法。
25.上記IKK阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、実施形態24の方法。
26.上記IKK阻害剤が、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、実施形態24または25の方法。
27.上記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤である、実施形態19または20の方法。
28.上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤がIRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤である、実施形態27の方法。
29.上記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAY1834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、実施形態27または28の方法。
30.上記1つ以上の抗炎症剤がタンパク質または低分子薬剤である、実施形態20の方法。
31.癌を治療することが1つ以上の症状を少なくとも改善することを含む、19~30の実施形態のいずれか一の方法。
32.上記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または上記1つ以上の抗炎症剤のみによる単剤療法と比較して増加する、実施形態31の方法。
33.上記患者が骨髄線維症である、実施形態19~32のいずれか一の方法。
34.上記抗炎症剤がCPI-0610である、実施形態33の方法。
35.上記投与することにより上記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR/SMADシグナル伝達の調節がもたらされる、実施形態19~34のいずれか一の方法。
36.上記MMBまたはその薬学的に許容される塩が経口投与される、実施形態19~35のいずれか一の方法。
37.上記対象がヒトである、実施形態19~36のいずれか一の方法。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の抗炎症剤と併用して対象における炎症性疾患または障害を治療するための
メロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を含んでなる組成物
【請求項2】
前記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記1つ以上の抗炎症剤がBETタンパク質阻害剤であり、任意に、前記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、請求項3に記載の組成物
【請求項5】
前記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤であり、任意に、前記IKKタンパク質阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項6】
前記IKKタンパク質阻害剤がB1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、請求項に記載の組成物
【請求項7】
前記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤であり、任意に、前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤がIRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項8】
前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAY1834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、請求項7に記載の組成物
【請求項9】
前記炎症性疾患または障害を治療することが、前記炎症性疾患または障害の1つ以上の症状を少なくとも改善することを含み、任意に、前記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または前記1つ以上の抗炎症剤のみによる単剤療法と比較して増加する、請求項1または2に記載の組成物
【請求項10】
記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR1/SMADシグナル伝達の調節もたらすための、請求項1または2に記載の組成物
【請求項11】
前記対象が慢性炎症性疾患、自己免疫疾患または癌を有する、請求項1または2に記載の組成物
【請求項12】
1つ以上の抗炎症剤と併用して対象における癌を治療するための
メロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩を含んでなる組成物
【請求項13】
前記1つ以上の抗炎症剤がNF-κB活性を調節する薬剤である、請求項12に記載の組成物
【請求項14】
前記1つ以上の抗炎症剤がBETタンパク質阻害剤であり、任意に、前記BETタンパク質阻害剤がBRD4阻害剤である、請求項12または13に記載の組成物
【請求項15】
前記BETタンパク質阻害剤が、GSK2820151、GSK525762、GS-5829、RO6870810(IV)、BAY1238097、CC-90010、BMS-986158、1NCB054329、1NCB057643、ODM-207、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、ABBV-075、PLX51107、BI894999、OTX015/MK8628、ZEN003694、RVX-000222、CPI-0610、アパベタロン、およびフェドラチニブから選択される、請求項14に記載の組成物
【請求項16】
前記1つ以上の抗炎症剤がIKKタンパク質阻害剤であり、任意に、前記IKKタンパク質阻害剤がIKKα、IKKβ、および/またはIKKε阻害剤である、請求項12または13に記載の組成物
【請求項17】
前記IKKタンパク質阻害剤が、B1605906、MLN120B、PHA-408、LY2409881、PS-1145、およびBMS-345541から選択される、請求項16に記載の組成物
【請求項18】
前記1つ以上の抗炎症剤がIRAKおよび/またはTLR阻害剤である、請求項12または13に記載の組成物
【請求項19】
前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、IRAK1阻害剤またはIRAK4阻害剤であり、任意に、前記IRAKおよび/またはTLR阻害剤が、BAYl834845、CA-4948、PF-06650833、およびパクリチニブから選択される、請求項18に記載の組成物
【請求項20】
癌を治療することが1つ以上の症状を少なくとも改善することを含み、任意に、前記1つ以上の症状の改善がモメロチニブ(MMB)による単剤療法または前記1つ以上の抗炎症剤のみによる単独療法と比較して増加する、請求項12または13に記載の組成物
【請求項21】
前記対象が骨髄線維症を有し、任意に、前記1つ以上の抗炎症剤がCPI-0610である、請求項12または13に記載の組成物
【請求項22】
記対象の細胞においてNF-KB経路活性の低下ならびにJAK-STATおよびACVR1/SMADシグナル伝達の調節もたら、請求項12または13に記載の組成物
【請求項23】
炎症性疾患または障害を治療するための、
モメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の抗炎症剤とを含んでなる、組成物。
【請求項24】
癌を治療するための、
モメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の抗炎症剤とを含んでなる、組成物。
【請求項25】
モメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と併用して対象における炎症性疾患または障害を治療するための、
1つ以上の抗炎症剤を含んでなる、組成物。
【請求項26】
モメロチニブ(MMB)またはその薬学的に許容される塩と併用して対象における癌を治療するための、
1つ以上の抗炎症剤を含んでなる、組成物。
【国際調査報告】