(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】重水素化化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 413/12 20060101AFI20240903BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240903BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240903BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240903BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240903BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07D413/12 CSP
A61P43/00 111
A61P3/10
A61P9/12
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P13/12
A61K31/422
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508768
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2022111089
(87)【国際公開番号】W WO2023016440
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/112521
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/106648
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524055218
【氏名又は名称】アレバンド ファーマシューティカルズ(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,チューシャン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ジン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC69
4C086GA04
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
式(I)に従う化合物、それを含む医薬組成物、およびその使用が本明細書で開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23は互いに独立してHまたはDであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個または23個はDである。)
【請求項2】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下または23個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
R
6、R
7、R
8およびR
9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
R
6、R
7、R
8およびR
9のうちの1個以下、2個以下、3個以下または4個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
R
6またはR
7のうちの1個または2個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
R
8またはR
9のうちの1個または2個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項3または4に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項5に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項6に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下または5個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項10または11に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のすべてがDであり、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項14】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下または9個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項16】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R
6、R
7、R
8およびR
9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項17】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R
8およびR
9のうちの少なくとも1個または2個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
R
1およびR
5のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R
8およびR
9のうちの少なくとも1個または2個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項14または15に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
R
12、R
13およびR
14のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項21】
R
12、R
13およびR
14のうちの1個以下、2個以下または3個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項22】
R
12およびR
13のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R
14がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項23】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項20または21に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項24】
R
16、R
17およびR
18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項25】
R
16、R
17およびR
18のうちの1個以下、2個以下または3個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項26】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項24または25に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項27】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
16、R
17およびR
18のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項28】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
16、R
17およびR
18のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下または12個以下がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項29】
R
8およびR
9のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R
16、R
17およびR
18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項30】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R
16、R
17およびR
18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項31】
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
19、R
20、R
21、R
22およびR
23のすべてがHである、請求項27または28に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項32】
式(Ia)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【化2】
(式中、R
6’、R
7’、R
8’およびR
9’は互いに独立してHまたはDであり、R
6’、R
7’、R
8’およびR
9’のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個はDである。)
【請求項33】
R
6’、R
7’、R
8’およびR
9’のうちの1個以下、2個以下、3個以下または4個以下がDである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項34】
R
8’およびR
9’のうちの少なくとも1個または2個がDである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項35】
R
6’およびR
7’のうちの少なくとも1個または2個がDである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項36】
R
8’およびR
9’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R
6’およびR
7’の両方がHである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項37】
R
8’およびR
9’の両方がDである場合、R
6’およびR
7’の両方がHである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項38】
R
6’およびR
7’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R
8’およびR
9’の両方がHである、請求項32に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項39】
下記から選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩。
【化3】
【請求項40】
重水素濃縮が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である、請求項1~39のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項41】
重水素濃縮が99.9%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下または90%以下である、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、ならびに薬学的に許容可能な担体および/またはアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項43】
PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法における使用のための、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストであって、前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニスト。
【請求項44】
対象におけるPPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法であって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストを前記対象に投与することを含み、前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、方法。
【請求項45】
PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/予防のための医薬の製造におけるPPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストの使用であって、前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、使用。
【請求項46】
前記疾患が糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、または糖尿病性ネフロパシーである、請求項43~45のいずれか一項に記載の使用および/または方法。
【請求項47】
前記疾患が腎損傷である、請求項43~45のいずれか一項に記載の使用および/または方法。
【請求項48】
前記腎損傷が尿管閉塞により引き起こされる、請求項47に記載の使用および/または方法。
【請求項49】
前記腎損傷が片側尿管閉塞により引き起こされる、請求項47に記載の使用および/または方法。
【請求項50】
前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化アレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である、請求項43~45のいずれか一項に記載の使用および/または方法。
【請求項51】
前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項43~45のいずれか一項に記載の使用および/または方法。
【請求項52】
PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を調節する方法であって、前記アゴニストを重水素化することを含む、方法。
【請求項53】
PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を改善する方法であって、前記アゴニストを重水素化することを含む、方法。
【請求項54】
前記アゴニストのPPARαの特異的アゴニスト活性が改善される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記アゴニストのPPARγの特異的アゴニスト活性が改善される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項56】
前記アゴニストのHのうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個が重水素化される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項57】
前記アゴニストのHのうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下が重水素化される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項58】
前記PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストがアレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である、請求項52または53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体的に、医薬品の分野および障害を処置する方法に関する。より詳細には、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストであり、疾患、例えば糖尿病、脂質異常症、もしくは糖尿病性ネフロパシーの処置および/または予防に有用な新規化合物が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、患者がインスリンの作用に対して適切に応答する能力を部分的に失ったために、患者の血中のグルコースレベルを制御する能力が損なわれている疾患である。先進国におけるすべての糖尿病患者の80~90%を悩ます、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)と呼ばれることの多いII型糖尿病(T2D)では、膵臓のランゲルハンス島はまだインスリンを生成する。しかしながら、標的器官、主に筋肉、肝臓および脂肪組織がインスリン刺激に対する深刻な耐性を示し、身体は、非生理学的に高いレベルのインスリンを生成することにより釣り合いを取る。しかしながら、疾患の後期には、膵臓の疲労によりインスリン分泌は低下する。更に、T2Dは代謝性心血管系の疾患症候群である。T2Dと関連する併存疾患は、インスリン耐性、脂質異常症、高血圧、内皮機能不全および炎症性アテローム性動脈硬化症を含む。
【0003】
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)は、遺伝子発現を制御するリガンド活性化転写因子である、核ホルモン受容体スーパーファミリーの一員である。その様々なサブタイプが同定され、クローンが作られている。これらはPPARα、PPARβ(PPARδとしても知られる)、およびPPARγを含む。少なくとも2つのPPARγの主要なアイソフォームが存在する。PPARγ1はほとんどの組織で普遍的に発現されるが、より長鎖のアイソフォームであるPPARγ2は、ほとんど脂肪細胞においてのみ見られる。これに対し、PPARαは肝臓、腎臓および心臓において主に発現される。PPARは、グルコースホメオスタシスおよび脂質ホメオスタシス、細胞分化、炎症反応ならびに心血管系事象を含む様々な身体反応を制御する。臨床薬開発にとって、PPARαの脂質代謝制御活性とPPARγのインスリン感受性制御活性を組み合わせて特異的PPAR-α/γデュアルアゴニストを開発し、血糖を制御して心血管系症状を改善することは極めて重要である。
【0004】
PPAR-α/γデュアルアゴニストとしては、アレグリタザールが比較的バランスの取れたPPAR-α/γ活性を有する。アレグリタザールは、空腹時および食後の血糖レベル、インスリン感受性および血中脂質パラメーターを効果的に改善することができる。しかしながら、アレグリタザールの第3相臨床試験の結果は、アレグリタザールは血糖レベルおよび血中脂質レベルを効果的に低減できるが、ある程度の心不全のリスクももたらすため、対応する心血管系の利益は生まないことを示した。同時に、副作用、例えば骨折リスクも臨床試験において見られ、これらの副作用は、PPARγの活性化により引き起こされることが知られている(Lincoff AM,et al.JAMA.2014;311(15):1515-1525)。従って、適切な選択的PPAR-α/γデュアルアゴニストを開発して安全性および患者への有益性を改善することが必要である。
【0005】
本開示は、アレグリタザールを重水素化することにより、一連のPPARαおよびPPARγの新規デュアルアゴニストをもたらす。これらの化合物は、アレグリタザールとは異なり、PPAR-α/γ選択性を有する。これらの化合物のうちのいくつかは、より強力なPPARα活性を有することができ、従って、ある程度のPPARγ活性を維持しながら、インビトロの転写およびインビボの脂質低下においてより良いPPARα活性を示すことができる。従って、それらは、血中脂質および血糖のレベルの制御においてやはり良い治療効果を有すことができ、一方でPPARγ活性により引き起こされる副作用、例えば体重増加および心不全のリスクを低減することができる。アレグリタザールと比べて、これらの化合物は、メタボリックシンドロームを罹患する患者にとってより妥当なリスクベネフィット比を有することができ、良好な臨床応用の可能性を有することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、重水素化アレグリタザール、それを含む医薬組成物、およびその使用を提供する。
【0007】
1つの態様において、本開示は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0008】
【0009】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23は互いに独立してHまたはDであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個または23個はDである。)
【0010】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下または23個以下がDである。
【0011】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである。
【0012】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの1個以下、2個以下、3個以下または4個以下がDである。
【0013】
ある実施形態では、R6またはR7のうちの1個または2個がDである。
【0014】
ある実施形態では、R8またはR9のうちの1個または2個がDである。
【0015】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0016】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0017】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0018】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDである。
【0019】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下または5個以下がDである。
【0020】
ある実施形態では、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0021】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のすべてがDであり、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0022】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個がDである。
【0023】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下または9個以下がDである。
【0024】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである。
【0025】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0026】
ある実施形態では、R1およびR5のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0027】
ある実施形態では、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0028】
ある実施形態では、R12、R13およびR14のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0029】
ある実施形態では、R12、R13およびR14のうちの1個以下、2個以下または3個以下がDである。
【0030】
ある実施形態では、R12およびR13のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R14がDである。
【0031】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0032】
ある実施形態では、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0033】
ある実施形態では、R16、R17およびR18のうちの1個以下、2個以下または3個以下がDである。
【0034】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0035】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個がDである。
【0036】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R16、R17およびR18のうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下または12個以下がDである。
【0037】
ある実施形態では、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0038】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0039】
ある実施形態では、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0040】
別の態様において、本開示は、式(Ia)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0041】
【0042】
(式中、R6’、R7’、R8’およびR9’は互いに独立してHまたはDであり、R6’、R7’、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個はDである。)
【0043】
ある実施形態では、R6’、R7’、R8’およびR9’のうちの1個以下、2個以下、3個以下または4個以下がDである。
【0044】
ある実施形態では、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0045】
ある実施形態では、R6’およびR7’のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0046】
ある実施形態では、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R6’およびR7’の両方がHである。
【0047】
ある実施形態では、R8’およびR9’の両方がDである場合、R6’およびR7’の両方がHである。
【0048】
ある実施形態では、R6’およびR7’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R8’およびR9’の両方がHである。
【0049】
別の態様において、本開示は、下記から選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0050】
【0051】
ある実施形態では、重水素濃縮が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である。
【0052】
ある実施形態では、重水素濃縮が99.9%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下または90%以下である。
【0053】
別の態様において、本開示は、本明細書で提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩、ならびに薬学的に許容可能な担体および/またはアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0054】
別の態様において、本開示は、PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法における使用のための、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストであって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストを提供する。
【0055】
別の態様において、本開示は、対象におけるPPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法であって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストを前記対象に投与することを含み、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、方法を提供する。
【0056】
別の態様において、本開示は、PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/予防のための医薬の製造におけるPPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストの使用であって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、使用を提供する。
【0057】
ある実施形態では、疾患が糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、または糖尿病性ネフロパシーである。
【0058】
ある実施形態では、疾患が腎損傷である。
【0059】
ある実施形態では、腎損傷が尿管閉塞により引き起こされる。
【0060】
ある実施形態では、腎損傷が片側尿管閉塞により引き起こされる。
【0061】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化アレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0062】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが本明細書で提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0063】
別の態様において、本開示は、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を調節する方法であって、アゴニストを重水素化することを含む、方法を提供する。
【0064】
別の態様において、本開示は、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を改善する方法であって、アゴニストを重水素化することを含む、方法を提供する。
【0065】
ある実施形態では、アゴニストのPPARαの特異的アゴニスト活性が改善される。
【0066】
ある実施形態では、アゴニストのPPARγの特異的アゴニスト活性が改善される。
【0067】
ある実施形態では、アゴニストのHのうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個が重水素化される。
【0068】
ある実施形態では、アゴニストのHのうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下が重水素化される。
【0069】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストがアレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0070】
下記の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することにより、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1Aは、それぞれの群の血清TGの変化を示す。データは平均±SDとして示された;Prism GraphPadによるOne way ANOVA;n=6。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.001、*P<0.05対ビヒクル。
図1Bは、それぞれの群の血清NEFAの変化を示す。データは平均±SDとして示された;Prism GraphPadによるOne way ANOVA;n=6。****P<0.0001対ビヒクル。
【
図2】
図2Aは、0日目と比べたそれぞれの群の動物の体重増加の変化を示す。
図2Bは、それぞれの群の動物とビヒクル群との間の体重増加の差の変化を示す。(*:ビヒクル群の平均体重増加を差し引いた処置群の体重増加。)
【
図3】
図3は、db/db動物の体重の変化に対する化合物の効果を示す図である。データは平均±SEMとして示された;Prism GraphPadによるTwo way ANOVA、続いてダネット検定;n=6~9。
【
図4】
図4Aは、6日目のdb/db動物の血清TGレベルに対する化合物の効果を示す。データは平均±SEMとして示された;Prism GraphPadによるOne way ANOVA、続いてダネット検定;n=6~9。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001対モデル。
図4Bは、12日目のdb/db動物の血清TGレベルに対する化合物の効果を示す。データは平均±SEMとして示された;Prism GraphPadによるOne way ANOVA、続いてダネット検定;n=6~9。****P<0.0001対モデル。
【
図5】
図5は、db/db動物のランダムな血液グルコースに対する化合物の効果を示す図である。データは平均±SEMとして示され、n=6~9。
【
図6】
図6Aは、db/db動物の経口耐糖能に対する化合物の効果を示す。データは平均±SEMとして示された;n=6~9。
図6Bは、db/db動物の経口耐糖能に対する化合物の効果を示す。データは平均±SEMとして示された;Prism GraphPadによるOne way ANOVA、続いてダネット検定;n=6~9。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001対モデル群。
【
図7】
図7は、尿中アルブミン排せつに対する化合物2の効果を示す図である。
【
図8】
図8A~8Dは、糸球体および尿細管の損傷に対する化合物2の効果を示す。
【
図9】
図9は、片側尿管閉塞のラットモデルにおける腎損傷の改善に対する化合物2の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示の以下の説明は、本開示の様々な実施形態を解説することを単に意図されるものではない。従って、議論される特定の改良は、本開示の範囲を限定するものと解釈されない。様々な同等のもの、変化および改良が本開示の範囲から逸脱することなくなされうることが当業者にとって明らかであり、そのような同等の実施形態が本明細書に含まれることが理解される。刊行物、特許および特許出願を含む本明細書に記載されるすべての参考文献は、それらの全体において参照することにより本明細書に援用される。
【0073】
定義
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの〔a〕」、「1つの〔an〕」および「その〔the〕」は、明確に別段の言及がない限り、複数のものに言及しうる。
【0074】
本明細書で用いられる場合、用語「約〔about〕」または「おおよそ〔approximately〕」は、2つの端点の絶対値により規定された範囲を開示するものと見なされるべきである。用語「約」または「おおよそ」はまた、その値がどのように測定または決定されるかにある程度依存する、特定の値の許容可能な誤差を意味する。ある実施形態では、「約」は1またはそれ以上の標準偏差を意味しうる。例えば、「約2~約4」という表現はまた、「2~4」の範囲を開示する。単独の数字を修飾するために用いられる場合、用語「約」は、示された数字のプラスまたはマイナス10%に言及しうるものであり、その示された数字を含む。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を、「約1」は0.9~1.1の範囲を示しうる。
【0075】
治療化合物
本開示は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0076】
【0077】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23は互いに独立してHまたはDであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個または23個はDである。)
【0078】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの1個から23個の間、1個から22個の間、1個から21個の間、1個から20個の間、1個から19個の間、1個から18個の間、1個から17個の間、1個から16個の間、1個から15個の間、1個から14個の間、1個から13個の間、1個から12個の間、1個から11個の間、1個から10個の間、1個から9個の間、1個から8個の間、1個から7個の間、1個から6個の間、1個から5個の間、1個から4個の間、1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0079】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの1個から6個の間の範囲がDである。
【0080】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの1個から4個の間の範囲がDである。
【0081】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のうちの1個または2個がDである。
【0082】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである。
【0083】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの1個から4個の間、1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0084】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの4個がDである。
【0085】
ある実施形態では、R6、R7、R8およびR9のうちの2個がDである。
【0086】
ある実施形態では、R6またはR7のうちの1個または2個がDである。
【0087】
ある実施形態では、R6またはR7のうちの1個がDである。
【0088】
ある実施形態では、R6またはR7が両方ともDである。
【0089】
ある実施形態では、R8またはR9のうちの1個または2個がDである。
【0090】
ある実施形態では、R8またはR9のうちの1個がDである。
【0091】
ある実施形態では、R8またはR9が両方ともDである。
【0092】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0093】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0094】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0095】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDである。
【0096】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの1個から5個の間、1個から4個の間、1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0097】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5がすべてDである。
【0098】
ある実施形態では、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0099】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のすべてがDであり、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0100】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個がDである。
【0101】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9のうちの1個から9個の間、1個から8個の間、1個から7個の間、1個から6個の間、1個から5個の間、1個から4個の間、1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0102】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R6、R7、R8およびR9のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個がDである。
【0103】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0104】
ある実施形態では、R1およびR5のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0105】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9がすべてDである。
【0106】
ある実施形態では、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0107】
ある実施形態では、R12、R13およびR14のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0108】
ある実施形態では、R12、R13およびR14のうちの1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0109】
ある実施形態では、R12、R13およびR14のうちの1個がDである。
【0110】
ある実施形態では、R12およびR13のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R14がDである。
【0111】
ある実施形態では、R12およびR14が両方ともDである。ある実施形態では、R13およびR14が両方ともDである。ある実施形態では、R12、R13およびR14がすべてDである。
【0112】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0113】
ある実施形態では、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0114】
ある実施形態では、R16、R17およびR18のうちの1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0115】
ある実施形態では、R16、R17およびR18のうちの1個がDである。
【0116】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0117】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個がDである。
【0118】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R16、R17およびR18のうちの1個から12個の間、1個から11個の間、1個から10個の間、1個から9個の間、1個から8個の間、1個から7個の間、1個から6個の間、1個から5個の間、1個から4個の間、1個から3個の間または1個から2個の間の範囲がDである。
【0119】
ある実施形態では、R8およびR9のうちの少なくとも1個または2個がDであり、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0120】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個または5個がDであり、R16、R17およびR18のうちの少なくとも1個、2個または3個がDである。
【0121】
ある実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R16、R17およびR18がすべてDである。
【0122】
ある実施形態では、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R19、R20、R21、R22およびR23のすべてがHである。
【0123】
別の態様において、本発明は、式(Ia)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0124】
【0125】
(式中、R6’、R7’、R8’およびR9’は互いに独立してHまたはDであり、R6’、R7’、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個、2個、3個または4個はDである。)
【0126】
ある実施形態では、R6’、R7’、R8’およびR9’のうちの1個以下、2個以下、3個以下または4個以下がDである。
【0127】
ある実施形態では、R6’、R7’、R8’およびR9’のうちの1個から4個の間、1個から3個の間、または1個から2個の間の範囲がDである。
【0128】
ある実施形態では、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0129】
ある実施形態では、R8’およびR9’が両方ともDである。
【0130】
ある実施形態では、R6’およびR7’のうちの少なくとも1個または2個がDである。
【0131】
ある実施形態では、R8’およびR9’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R6’およびR7’の両方がHである。
【0132】
ある実施形態では、R8’およびR9’の両方がDである場合、R6’およびR7’の両方がHである。
【0133】
ある実施形態では、R6’およびR7’の両方がHであり、R8’およびR9’の両方がDである。
【0134】
ある実施形態では、R6’およびR7’のうちの少なくとも1個または2個がDである場合、R8’およびR9’の両方がHである。
【0135】
ある実施形態では、R8’およびR9’の両方がHであり、R6’およびR7’の両方がDである。
【0136】
別の態様において、本発明は、下記から選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0137】
【0138】
ある実施形態では、化合物が下記またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0139】
【0140】
用語「化合物」は、本発明の化合物について言う場合、分子の構成原子のなかに同位体変化がありうることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集まりを言う。従って、示された重水素原子を含む特定の化学構造により表される化合物はまた、その構造の指定された重水素位置の1つまたは複数に水素原子を有する、より少ない量の同位体分子種を含むことが当業者にとって明らかである。本発明の化合物におけるそのような同位体分子種の相対量は、化合物を作るのに用いられる重水素化試薬の同位体純度、および化合物を調製するのに用いられる様々な合成工程における重水素の組み込み効率を含む、多数の因子に依存する。
【0141】
用語「重水素/Dである」は、分子または分子構造の図面における所定の位置を説明するのに用いられる場合、特定された位置が重水素であるか、または特定された位置が重水素の天然に存在する配分よりも重水素で濃縮されていることを意味する。
【0142】
重水素(2HまたはD)は、水素の最も一般的な同位体であるプロチウム(1H)の約2倍の質量を有する、安定で非放射性の水素の同位体である。
【0143】
本発明の化合物では、特定の同位体として具体的に指定されていないあらゆる原子は、その原子のいずれかの安定な同位体を示すことが意図される。別段の言及がない限り、ある位置が具体的に「H」または「水素」として指定される場合、その位置は、その天然に存在する同位体組成で水素を有すると理解される。また、別段の言及がない限り、ある位置が具体的に「D」または「重水素」として指定される場合、その位置は、0.015%という重水素の天然存在度よりも少なくとも3340倍大きい存在度で重水素を有すると理解される(即ち、少なくとも50.1%の重水素の組み込み)。
【0144】
ある実施形態では、本明細書で提供される化合物の重水素濃縮が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である。
【0145】
ある実施形態では、本明細書で提供される化合物の重水素濃縮が99.9%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下または90%以下である。
【0146】
ある実施形態では、本明細書で提供される化合物の重水素濃縮が、例えば50%から99.9%の間、50%から99%の間、50%から98%の間、50%から97%の間、50%から96%の間、50%から95%の間、50%から90%の間、60%から99.9%の間、60%から99%の間、60%から98%の間、60%から97%の間、60%から96%の間、60%から95%の間、60%から90%の間、70%から99.9%の間、70%から99%の間、70%から98%の間、70%から97%の間、70%から96%の間、70%から95%の間、70%から90%の間、80%から99.9%の間、80%から99%の間、80%から98%の間、80%から97%の間、80%から96%の間、80%から95%の間、80%から90%の間、90%から99.9%の間、90%から99%の間、90%から98%の間、90%から97%の間、90%から96%の間、90%から95%の間、95%から99.9%の間、95%から99%の間、95%から98%の間、95%から97%の間、95%から96%の間、96%から99.9%の間、96%から99%の間、96%から98%の間、96%から97%の間、97%から99.9%の間、97%から99%の間、97%から98%の間、98%から99.9%の間、98%から99%の間または99%から99.9%の間の範囲である。
【0147】
ある実施形態では、本明細書で提供される化合物の重水素濃縮が90%から99.9%の間、好ましくは95%から99.9%の間、好ましくは97%から99%の間、好ましくは98%から99%の間、特に98.5%である。本開示の化合物の全体的な重水素濃縮は、当該分野で知られている方法に従って質量分析を用いて決定することができる。
【0148】
本明細書で用いられる場合、用語「重水素濃縮」は、水素の場所における所定の位置での重水素の組み込みのパーセンテージを言う。例えば、所定の位置での1%の重水素濃縮は、所定の試料における分子の1%が特定された位置に重水素を含むことを意味する。天然に存在する重水素の配分は約0.0156%であることから、濃縮されていない出発物質を用いて合成された化合物のあらゆる位置での重水素濃縮は約0.0156%である。重水素濃縮は、従来の分析法、例えば質量分析および核磁気共鳴分光学を用いて決定することができる。
【0149】
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0150】
本発明の化合物の塩は、酸と化合物の塩基性基、例えばアミノ官能基との間、または塩基と化合物の酸性基、例えばカルボキシル官能基との間に形成される。
【0151】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、別段の言及がない限り、特定の化合物の遊離の酸および塩基の生物学的有効性を保ち、生物学的にまたは別の方法で望ましくないものではない塩を含む。考えられる薬学的に許容可能な塩形態は、これらに限定されないが、モノ、ビス、トリス、テトラキス等を含む。薬学的に許容可能な塩は、それらが投与される量および濃度で毒性のないものである。そのような塩を調製することは、その生理学的効果を発揮させないようにすることなく化合物の物理的特性を変えることにより、薬理学的な使用を容易にすることができる。物理的特性の有益な変更は、経粘膜投与を容易にする融点の低下、およびより高濃度の薬物の投与を容易にする溶解度の上昇を含む。
【0152】
薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩、例えば硫酸塩、塩化物、塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩およびキナ酸塩を含むものを含む。薬学的に許容可能な塩は、酸、例えば塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、フマル酸およびキナ酸から得ることができる。
【0153】
薬学的に許容可能な塩はまた、酸性官能基、例えばカルボン酸またはフェノールが存在する場合、塩基付加塩、例えばベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミンおよび亜鉛を含むものを含む。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19thed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,Vol.2,p.1457,1995;“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”by Stahl and Wermuth,Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002を参照のこと。そのような塩は、適切な対応する塩基を用いて調製することができる。
【0154】
薬学的に許容可能な塩は、標準的な手法により調製することができる。例えば、遊離塩基形態の化合物を適切な溶剤、例えば適切な酸を含む水溶液または水-アルコール溶液に溶解させ、次いで、溶液を蒸発させることにより単離することができる。従って、特定の化合物が塩基である場合、望ましい薬学的に許容可能な塩は、当該分野で利用可能なあらゆる適切な方法、例えば、遊離塩基の無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等による、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸〔pyranosidyl acid〕、例えばグルクロン酸もしくはガラクツロン酸、α-ヒドロキシ酸、例えばクエン酸もしくは酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸もしくは桂皮酸、スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸等による処理により、調製することができる。
【0155】
同様に、特定の化合物が酸である場合、望ましい薬学的に許容可能な塩は、あらゆる適切な方法、例えば、遊離酸の無機塩基または有機塩基、例えばアミン(第一級、第二級もしくは第三級)、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物等との処理により、調製することができる。適切な塩の理解を助ける例は、アミノ酸、例えばL-グリシン、L-リシンおよびL-アルギニン、アンモニア、第一級、第二級および第三級アミン、および環状アミン、例えばヒドロキシエチルピロリジン、ピペリジン、モルホリンまたはピペラジンに由来する有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムに由来する無機塩を含む。
【0156】
本開示の化合物が非溶媒和形態、溶媒和形態(例えば水和形態)、および固形物形態(例えば結晶または多形形態)で存在することができ、本開示はそれらの形態のすべてを包含することを意図されることもまた理解される。
【0157】
本明細書で用いられる場合、用語「溶媒和物」または「溶媒和形態」は、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶剤を含む、溶剤が付加した形態を言う。いくつかの化合物は、結晶性固形物状態の固定されたモル比の溶剤分子を捕捉する傾向があり、従って、溶媒和物を形成する。溶剤が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶剤がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1つまたは複数の水分子と、水がH2Oとしてのその分子状態を保つ物質の1つの分子が合わさることにより形成される。溶媒和を形成する溶剤の例は、これらに限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンを含む。
【0158】
本明細書で用いられる場合、用語「結晶形態」、「結晶性形態」、「多形形態」および「多形体」は変換可能に用いることができ、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶パッキング配列で結晶化することができ、そのすべてが同じ元素組成を有する結晶構造を意味する。異なる結晶形態は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形、光学特性および電気特性、安定性ならびに溶解度を有する。再結晶溶剤、結晶化速度、保管温度、および他の因子が、優位な1つの結晶形態をもたらしうる。化合物の結晶多形は、異なる条件下での結晶化により調製することができる。
【0159】
当業者は、本開示の化合物が異なる互変異性形態で存在できることを理解し、すべてのそのような形態は本開示の範囲に包含される。用語「互変異性体」または「互変異性形態」は、低いエネルギー障壁により相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を言う。異性体の存在および濃度は、化合物が見出される環境に依存し、例えば、化合物が固体であるかまたは有機溶液もしくは水溶液中にあるかに応じて異なりうる。例として、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)は、プロトンの移動による相互変換、例えば、ケト-エノール、アミド-イミド酸、ラクタム-ラクチム、イミン-エナミンの異性化、およびプロトンが複素環系の2つ以上の位置を占めることができる環状形成を含む。原子価互変異性体は、結合電子のうちのいくつかの再編成による相互変換を含む。互変異性体は、適切な置換により、平衡であることもでき、1つの形態に立体的に固定されることもできる。1つの特定の互変異性形態としての名称または構造により同定される本開示の化合物は、別段の規定がない限り、他の互変異性形態を含むことが意図される。
【0160】
その薬学的に許容可能な塩を含む、本明細書で提供される化合物の合成は、実施例の合成スキームにおいて解説される。本明細書で提供される化合物は、あらゆる既知の有機合成手法を用いて調製することができ、多数の可能性のある合成経路のうちのいずれかに従って合成することができ、従って、これらのスキームは理解を助けるものにすぎず、本明細書で提供される化合物の調製に用いることのできる他の可能性のある方法を限定することを意図されない。更に、スキームにおける工程は、より良い解説のためのものであり、必要に応じて変えることができる。実施例の化合物の実施形態は、研究および規制機関への提出の可能性のために合成された。
【0161】
本開示の化合物を調製するための反応は、有機合成の当業者が容易に選択することのできる適切な溶剤中で行うことができる。適切な溶剤は、反応が行われる温度、例えば、溶剤の凝固温度から溶剤の沸騰温度に及びうる温度で、出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性でありうる。所定の反応は、1つの溶剤中または1つより多い溶剤の混合物中で行われうる。特定の反応工程に応じて、特定の反応工程のための適切な溶剤を当業者により選択することができる。
【0162】
本開示の化合物の調製は、様々な化学基の保護および脱保護を含みうる。保護および脱保護の必要性、ならびに適切な保護基の選択は、当業者により容易に決定することができる。保護基の化学は、例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,Wiley&Sons,Inc.,New York(1999),in P.Kocienski,Protecting Groups,Georg Thieme Verlag,2003,and in Peter G.M.Wuts,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,5th Edition,Wiley,2014に見出すことができ、そのすべてがその全体において参照することにより本明細書に援用される。
【0163】
反応は、当該分野で知られているあらゆる適切な方法に従って観察することができる。例えば、生成物の形成は、分光学的方法、例えば核磁気共鳴分光学(例えば1Hまたは13C)、赤外線分光学、分光測光法(例えばUV-可視)、質量分析により、またはクロマトグラフ法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフ-質量分析(LCMS)、または薄層クロマトグラフィー(TLC)により観察することができる。化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(“Preparative LC-MS Purification:Improved Compound Specific Method Optimization”Karl F.Blom,Brian Glass,Richard Sparks,Andrew P.Combs J.Combi.Chem.2004,6(6),874-883、その全体において参照することにより本明細書に援用される)および通常の相のシリカクロマトグラフィーを含む様々な方法により、当業者によって精製することができる。
【0164】
実施例の化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)により特徴付けられた。NMRスペクトルは、1Hについてそれぞれ400MHzおよび300MHzで行う、Bruker AVANCE III HD 400およびBruker AVANCE NEO 300の核磁気共鳴分光計で得られた。1H NMRスペクトルは、内部標準として残存量のCHCl3(7.26ppm)およびDMSO(2.50ppm)を用いて、CHCl3-dおよび(CH3)2SO-d6中、400MHzおよび300MHzで記録された。
【0165】
LCMSは、Agilent Technology 1260-6125(ESI)で行われた。
【0166】
HPLCスペクトルは、Agilent TechnologyのDAD検出器を備えた1260装置およびDAD検出器を備えた1290装置で行われた。
【0167】
本開示の既知の出発物質は、当該分野における既知の方法を用いるかもしくはそれに従って合成することができ、または商業用の供給元から購入することができる。別段の言及がない限り、分析等級の溶剤および市販の試薬を更に精製することなく用いた。
【0168】
別段の特定がない限り、本開示の反応は、窒素もしくはアルゴンの陽圧下または無水溶剤中にて乾燥管ですべて行われ、反応フラスコは、典型的には、シリンジによる基質および試薬の導入のためにゴム隔膜が取り付けられた。ガラス製品はオーブン乾燥および/または加熱乾燥された。
【0169】
例示のために、下記の実施例欄は、本開示の化合物を調製するための合成経路および重要な中間体を示す。当業者は、本発明の化合物を合成するために他の合成経路を用いることができることを理解する。特定の出発物質および試薬が示されるが、様々な誘導体および/または反応条件を提供するために、他の出発物質および試薬で容易に置換することができる。更に、下記に記載された方法により調製された化合物の多くは、当業者によく知られた従来の化学を用い、本開示に照らして更に改良することができる。
【0170】
組成物
本発明はまた、有効量の式Iおよび/または式Ia(例えば、本明細書における式のいずれかを含む)の化合物、またはその化合物の薬学的に許容可能な塩、ならびに薬学的に許容可能な担体および/またはアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0171】
本明細書で用いられる場合、用語「医薬組成物」は、対象への投与に適切な形態の本開示の分子または化合物を含む組成物を言う。
【0172】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容可能な」とは、物質または組成物が、製剤を含む他の成分および/またはそれにより処置される対象に、化学的におよび/または毒性学的に適合することを示す。
【0173】
本発明の医薬組成物に用いることのできる薬学的に許容可能な担体、アジュバントおよびビヒクルは、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含む。
【0174】
本明細書で提供される医薬組成物は、組成物を、ヒトを含むがこれらに限定されない対象に投与されるようにするあらゆる形態でありえ、意図された投与経路に適合するように処方することができる。
【0175】
本明細書で提供される医薬組成物については様々な経路が考えられ、従って、本明細書で提供される医薬組成物は、意図される投与経路に応じて、バルクで供給されてもよく、単位投与形態で供給されてもよい。例えば、経口、頬、および舌下投与では、散剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル、ジェルキャップ、およびカプレットが固形物投与形態として、エマルション、シロップ、エリキシル、懸濁剤、および溶液が液体投与形態として受け入れ可能でありうる。注射投与では、エマルションおよび懸濁剤が液体投与形態として、適切な溶液との再構成用の適切な散剤が固形物投与形態として受け入れ可能でありうる。吸入投与では、溶液、スプレー、乾燥粉末、およびエアロゾルが、受け入れ可能な投与形態でありうる。(頬および舌下を含む)局所投与または経皮投与では、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、およびパッチが、受け入れ可能な投与形態でありうる。膣内投与では、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、およびスプレーが、受け入れ可能な投与形態でありうる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が経口投与用製剤の形態でありうる。
【0177】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が錠剤の形態でありうる。錠剤のための適切な薬学的に許容可能な賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えばラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム、造粒剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸〔algenic acid〕、結合剤、例えばデンプン、平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク、防腐剤、例えばエチルp-ヒドロキシベンゾエートまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、および抗酸化物質、例えばアスコルビン酸を含む。錠剤は被覆されていなくてもよく、それらの崩壊およびその後の消化管での活性成分の吸収を改良するため、またはそれらの安定性および/もしくは外観を改善するためのいずれかのために、いずれの場合にも当該分野でよく知られた従来の被覆剤および手順を用いて、被覆されていてもよい。
【0178】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル、または活性成分が水もしくは油、例えばピーナッツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルの形態でありうる。
【0179】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が、細かく粉末にされた形態の活性成分を、1つまたは複数の、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴム、分散剤もしくは湿潤剤、例えばレシチン、もしくはアルキレンオキシドと脂肪酸(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)との縮合物、もしくはエチレンオキシドと長鎖脂肪アルコール、例えばヘプタデカエチレンオキシエタノールとの縮合物、もしくはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、もしくはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートとともに一般的に含む、水性懸濁剤の形態でありうる。水性懸濁剤はまた、1つまたは複数の防腐剤(例えばエチルp-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、抗酸化物質(例えばアルコルビン酸)、着色剤、香味剤、および/または甘味剤(例えばショ糖、サッカリンもしくはアスパルテーム)を含むことができる。
【0180】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が、一般的に植物油(例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油)または鉱油(例えば流動パラフィン)中に懸濁した活性成分を含む、油性懸濁剤の形態でありうる。油性懸濁剤はまた、増粘剤、例えば蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含むことができる。甘味剤、例えば上述したもの、および香味剤を、口に合う経口剤を提供するために添加することができる。これらの組成物は、抗酸化物質、例えばアスコルビン酸の添加により保存することができる。
【0181】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が水中油型エマルションの形態でありうる。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらのいずれかの混合物でありうる。適切な乳化剤は、例えば、天然に存在するゴム、例えばアカシアゴムもしくはトラガカントゴム、天然に存在するリン脂質、例えば大豆、レシチン、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルもしくは部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)およびその部分エステルのエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでありうる。エマルションはまた、甘味剤、香味剤および防腐剤を含むことができる。
【0182】
ある実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物が、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテームもしくはショ糖、鎮痛剤、防腐剤、香味剤および/または着色剤を含むことのできるシロップおよびエリキシルの形態でありうる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が注射投与用製剤の形態でありうる。
【0184】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が滅菌注射製剤、例えば滅菌注射水性懸濁剤または滅菌注射油性懸濁剤の形態でありうる。この懸濁剤は、上述したそれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、既知の技術に従って処方することができる。滅菌注射製剤はまた、毒性のない非経口で受け入れ可能な希釈剤もしくは溶剤中の滅菌注射溶液または滅菌注射懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であるか、または凍結乾燥粉末として調製することができる。用いることのできる許容可能なビヒクルおよび溶剤のなかでも、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。更に、滅菌固定油を溶剤または懸濁化剤として従来から用いることができる。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含むあらゆる無菌固定油を用いることができる。更に、脂肪酸、例えばオレイン酸も同様に注射剤の調製に用いることができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が吸入投与用製剤の形態でありうる。
【0186】
ある実施形態では、本開示の医薬組成物が、いずれかの適切な溶剤ならびに任意に他の化合物、例えばこれらに限定されないが、安定化剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組み合わせを含む、(例えばフッ化炭素プロペラント中の)水性エアロゾルまたは非水性エアロゾルの形態でありうる。担体および安定化剤は、特定の化合物の求めるものにより変わるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、もしくはポリエチレングリコール)、無毒のタンパク質、例えば血清アルブミン、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、アミノ酸、例えばグリシン、緩衝物質、塩、糖または糖アルコールを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が局所投与用または経皮投与用製剤の形態でありうる。
【0188】
ある実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物が、通常、活性成分を従来の局所的に受け入れ可能な賦形剤、例えば動物性および植物性の脂、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物とともに処方することにより得ることのできる、クリーム、軟膏、ゲルおよび水性または油性の溶液または懸濁液の形態でありうる。
【0189】
ある実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、当業者によく知られた経皮的な皮膚パッチの形態で処方することができる。
【0190】
上述したそれらの代表的な投与形態に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤および担体が、通常、当業者に知られており、従って、本開示に含まれる。そのような賦形剤および担体は、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences”Mack Pub.Co.,New Jersey(1991),in “Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Ed.University of the Sciences in Philadelphia,21st Edition,LWW(2005)に記載され、これらは参照することにより本明細書に援用される。
【0191】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、単一投与形態として処方することができる。単一投与形態における本明細書で提供される化合物の量は、処置される対象および投与の特定の様式に依存して変化する。
【0192】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、短時間作用型、速放出型、長時間作用、および持続放出型として処方することができる。従って、本開示の医薬組成物はまた、制御放出または持続放出のために処方することができる。
【0193】
別の実施形態では、本発明の組成物が第2の治療薬を更に含む。第2の治療薬は、本発明の化合物と同じ作用メカニズムを有する化合物とともに投与された場合に有益な特性を有することが知られているかまたはそれを実証するあらゆる化合物または治療薬から選択することができる。
【0194】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物および第2の治療薬のいずれかの1つまたは複数の分離投与形態を提供し、ここでは化合物および第2の治療薬が互いに関連している。本明細書で用いられる場合、用語「互いに関連している」とは、分離投与形態が(互いに24時間未満のうちに、連続的にまたは同時に)一緒に販売されて投与されることが意図されていることがすぐに分かるように、分離投与形態が一緒に包装されるか、または別の方法では互いにつながっていることを意味する。
【0195】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬が(1)コレステロール吸収阻害剤、(2)HMG-CoA還元酵素阻害剤、(3)胆汁酸捕捉剤、(4)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはそれらの塩、(5)フェノール系酸化防止剤、(6)ACAT阻害剤、および(7)CTEP阻害剤を含むことができる。
【0196】
本発明の医薬組成物では、本発明の化合物が有効量で存在する。本明細書で用いられる場合、用語「有効量」は、適切な投与計画で投与される場合に標的の障害を処置するのに十分な量を言う。
【0197】
(体表の平方メートル当たりのミリグラムに基づく)動物およびヒトへ投与量の相互関係が、Freireich et al.,Cancer Chemother.Rep,1966,50:219に記載されている。体表面積は、対象の身長および体重からおおまかに決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照のこと。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の有効量が、1日当たり約0.5μg~1日当たり約90mg、1日当たり約1μg~1日当たり約50mg、1日当たり2μg~1日当たり約10mg、1日当たり3μg~1日当たり約1mg、1日当たり5μg~1日当たり約800μg、1日当たり5μg~1日当たり約600μg、1日当たり5μg~1日当たり約500μg、1日当たり10μg~1日当たり約500μg、1日当たり12μg~1日当たり約500μg、1日当たり15μg~1日当たり約500μg、1日当たり20μg~1日当たり約500μg、1日当たり25μg~1日当たり約500μgに及びうる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の有効量が、1日当たり約25μg~1日当たり約300μgに及びうる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の有効量が、1日当たり約50μg~1日当たり約150μgに及びうる。
【0199】
有効量はまた、当業者に認識されているように、処置される疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性別、年齢および一般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療処置との併用の可能性、例えば他の物質の使用、ならびに処置する医師の判断に依存して変化する。例えば、有効量を選択するための助言は、アレグリタザールの処方情報を参照することにより決定することができる。
【0200】
第2の治療薬を含む医薬組成物について、第2の治療薬の有効量は、その物質のみを用いる単独治療計画において通常用いられる投与量の約20%から100%の間である。好ましくは、有効量は、通常の単独治療用量の約70%から100%の間である。これらの第2の治療薬の通常の単独治療投与量は当業者によく知られている。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照のこと、これらの参考文献それぞれは、それらの全体において参照することにより本明細書に援用される。
【0201】
第2の治療薬のうちのいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用することが予測される。このことが起こる場合、第2の治療薬および/または本発明の化合物の有効量を、単独治療で必要とされるよりも少なくすることが可能となる。このことは、第2の治療薬もしくは本発明の化合物のいずれかの有毒な副作用の最小化、有効性の相乗的な改善、投与もしくは使用のしやすさの改善、および/または化合物の調製もしくは処方の全体的な費用の低減という利点を有する。
【0202】
処置方法
別の態様において、本開示は、PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法における使用のための、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストであって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストを提供する。
【0203】
別の態様において、本開示は、対象におけるPPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/または予防のための方法であって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストを前記対象に投与することを含み、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、方法を提供する。
【0204】
別の態様において、本開示は、PPARαおよび/またはPPARγのアゴニストにより調節される疾患の処置および/予防のための医薬の製造におけるPPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストの使用であって、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化されている、使用を提供する。
【0205】
用語「対象」は、霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ゴリラ等)、げっ歯動物(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、フェレット等)、ウサギ目の動物、イノシシ属の動物(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物等を含むがこれらに限定されない動物を言う。用語「対象」および「患者」は、例えば、哺乳動物の対象、例えばヒトの患者に関して、本明細書において変換可能に用いられる。
【0206】
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、障害を改善、予防、軽減もしくは破棄すること、または障害に関連する症状の1つもしくは複数を軽減、予防もしくは破棄すること、および/または障害そのものの原因を予防、軽減もしくは根絶すること、即ち、疾患にかかりやすいがまだ疾患の症状を感じていないかもしくは示していない哺乳動物において、臨床症状を大きく進行させないようにすることを含むことが意図される。これは、日常生活動作を行い、家庭の仕事を行い、資金を管理し、および/もしくは仕事を行う対象の能力を改善すること、または対象に必要とされるケアのレベルを下げることを含みうる。処置する、処置することまたは処置は、少なくとも20%、30%、50%、80%、90%、または100%の症状の改善を含みうる。特定の障害に関連する症状は、目の前の特定の障害に依存する。
【0207】
用語「投与すること」は、本発明の化合物もしくは組成物を直接投与すること、または体内で同等な量の活性な化合物もしくは物質を形成するプロドラッグ、誘導体もしくは類縁体を投与することのいずれかを意味する。
【0208】
用語「疾患」は、細胞、組織、または器官の正常な機能を損なうかまたは妨げる、あらゆる状態または障害を意味する。
【0209】
ある実施形態では、疾患が糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、または糖尿病性ネフロパシーである。
【0210】
ある実施形態では、疾患がインスリン非依存性糖尿病、または糖尿病性ネフロパシーである。
【0211】
ある実施形態では、疾患が糖尿病性ネフロパシーである。
【0212】
本明細書で用いられる場合、用語「糖尿病」は、インスリンの作用に対して適切に応答する能力を部分的に失うことにより、患者の血中のグルコースレベルを制御する能力が損なわれている疾患を意味する。
【0213】
本明細書で用いられる場合、用語「インスリン非依存性糖尿病」はまた、II型糖尿病(T2D)とも呼ばれ、先進国におけるすべての糖尿病患者の80~90%を悩ましており、膵臓のランゲルハンス島はまだインスリンを生成している。しかしながら、標的器官、主に筋肉、肝臓および脂肪組織がインスリン刺激に対する深刻な耐性を示し、身体は、非生理学的に高いレベルのインスリンを生成することにより釣り合いを取る。しかしながら、疾患の後期には、膵臓の疲労によりインスリン分泌は低下する。
【0214】
本明細書で用いられる場合、用語「アテローム性動脈硬化症」は、動脈硬化性血管疾患またはASVDとしても知られており、白血球(泡沫細胞)の浸潤および蓄積、ならびにアテローム性(線維脂肪性)プラークを生じる内膜平滑筋細胞の増殖の結果として動脈壁が厚くなる、動脈硬化の特定の形態である。
【0215】
本明細書で用いられる場合、用語「メタボリックシンドローム」は、同時に生じて心臓疾患、脳卒中および2型糖尿病のリスクを高める一群の状態を意味する。これらの状態は、高血圧、高血糖、胴回りの過度な体脂肪、および異常なコレステロール値またはトリグリセリド値を含む。
【0216】
本明細書で用いられる場合、用語「糖尿病性ネフロパシー」は、腎不全の第一の原因である糖尿病に起因する腎臓疾患を意味する。糖尿病の人のほぼ3分の1で糖尿病性ネフロパシーが進行する。初期の糖尿病性ネフロパシーでは症状が見られないことが多い。腎機能が悪化すると、症状は、手、足および顔の腫れ、睡眠障害および集中できない、食欲不振、吐き気、虚弱、かゆみ(末期腎不全)および過度の皮膚乾燥、眠気(末期腎不全)、血中カリウムの上昇による心拍の正常リズムの異常、ならびに筋肉のけいれんを含みうる。
【0217】
ある実施形態では、疾患が腎損傷である。ある実施形態では、腎損傷が尿管閉塞により引き起こされる。ある実施形態では、腎損傷が片側尿管閉塞により引き起こされる。
【0218】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが重水素化アレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0219】
本明細書で用いられる場合、用語「アレグリタザール」は、RG-1439またはRO-0728804としても知られており、インスリン感作作用およびグルコース低下作用ならびに脂質プロファイルへの好ましい影響を有するペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α/γ(PPARα/γ)のデュアルアゴニストである。それは、II型糖尿病の患者に使用して患者の心血管系の死亡および罹患のリスクを低減するために研究されている。「アレグリタザール」は下記の構造を有する。
【0220】
【0221】
本明細書で用いられる場合、用語「PPARα/γデュアルアゴニスト」は、顕著なPPARαアゴニズムおよびPPARγアゴニズムの両方を示す化合物を言う。いくつかの実施形態では、PPARα/γデュアルアゴニストは、顕著なPPARαアゴニズムおよび/またはPPARγアゴニズムを示し、ここでhPPARγの活性化のための最大半量濃度効力(EC50)およびhPPARαの活性化のためのEC50は、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、または3倍より少ない差がある。いくつかの実施形態では、PPARα/γデュアルアゴニストは、顕著なPPARαアゴニズムおよび/またはPPARγアゴニズムを示し、ここでhPPARγの活性化のための最大半量濃度効力(EC50)およびhPPARαの活性化のためのEC50は、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍、5倍、または3倍より大きい差がある。
【0222】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストが本明細書で提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0223】
別の態様において、本開示は、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を調節する方法であって、アゴニストを重水素化することを含む、方法を提供する。
【0224】
別の態様において、本開示は、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストのPPARαまたはPPARγの特異的アゴニスト活性を改善する方法であって、アゴニストを重水素化することを含む、方法を提供する。
【0225】
ある実施形態では、アゴニストのPPARαの特異的アゴニスト活性が改善される。
【0226】
ある実施形態では、アゴニストのPPARγの特異的アゴニスト活性が改善される。
【0227】
ある実施形態では、アゴニストのHのうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個が重水素化される。
【0228】
ある実施形態では、アゴニストのHのうちの1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下が重水素化される。
【0229】
ある実施形態では、PPARαおよびPPARγのデュアルアゴニストがアレグリタザールまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0230】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方が、単に例示および解説のためのものであり、請求された発明を限定するものではないことが理解される。本出願では、「または」の使用は、別段の言及がない限り、「および/または」を意味する。更に、用語「含んでいる」ならびに他の形態、例えば「含む」および「含まれる」の使用は、限定的なものではない。少なくとも、かつ特許請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲および数値パラメーターは近似値であるが、特定の実施例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、あらゆる数値は、それらそれぞれの試験測定に見られる標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を本質的に含む。
【0231】
下記の実施例は、請求された発明をより良く解説するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。以下に記載されるすべての特定の組成、材料、および方法は、全体的にまたはある程度、本発明の範囲内にある。これらの特定の組成、材料、および方法は本発明を限定することを意図されず、単に、本発明の範囲内にある特定の実施形態を解説する。当業者は、発明能力を用いることなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成、材料、および方法をもたらすことができる。本明細書に記載された手順において多くのバリエーションをなすことができるが、なお本発明の範囲内にあることが理解される。そのようなバリエーションが本発明の範囲内に含まれることが発明者の意図するところである。
【実施例】
【0232】
[実施例1]化合物1の合成
反応スキーム
【0233】
【0234】
プロセス説明
300mLの水素化反応器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(2.3g、5.3mmol)、(S)-フェニルエチルアミン(230mg、1.9mmol)、CD3OD(24mL)、THF(16mL)およびRu-cat(CAS:261948-85-0、46mg)を投入した。反応混合物を1日、30barのD2下にて70℃で撹拌した。加圧滅菌器を開けた後、黄色溶液を回転蒸発乾固させた(45℃)。粗生成物をEtOAc(200mL)に溶解させ、1N HCl(60mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させた。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させて0℃まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ取し、酢酸イソプロピル(50mL)で洗浄し、乾燥させて淡黄色固体(940mg、約60%ee)を得て、これをMeOH中、0.1%HCOOHで溶出するキラルHPLC(OJ-H(OJH0CD-WB010))で分離し、更に分取HPLC(CH3CNおよび水中、0.1%FA)で精製し、白色固体として化合物1(610mg、収率26.2%)を得た。
【0235】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.97 (dd, J = 6.4, 2.4 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.43-7.41 (m, 3H), 7.32 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.35 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.34 (s, 3H), 3.19 (s, 1H), 3.06 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0236】
LC-MS (ESI+): m/z = 440.2 ([M+H]+).
【0237】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.99%ee。
【0238】
[実施例2]化合物2の合成
【0239】
【0240】
THF(40mL)中のLiAlD4(1.9g、45.4mmol)の懸濁液に、THF(60mL)中のメチル2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセテート(7.0g、30.3mmol)をN2下にて0℃で加えた。反応物を2時間、0℃で撹拌し、次いで、水(3mL)でクエンチした。得られた固体をろ取した。ろ過ケーキをEtOAc(500mL)、DCM/MeOH(10/1、500mL)で洗浄した。ろ液を真空下で濃縮し、黄色固体として2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(5.0g、収率80.6%)を得た。
【0241】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.05-7.87 (m, 1H), 7.50-7.33 (m, 2H), 2.71 (s, 2H), 2.34 (s, 3H).
【0242】
LC-MS (ESI+): m/z = 206.2 ([M+H]+).
【0243】
DCM(100mL)中の2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(5.0g、24.4mmol)の溶液に、Et3N(5.4g、53.7mmol)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却し、N2下でMsCl(5.6g、48.8mmol)を加えた。反応物を2時間、0℃で撹拌し、次いで、水中に注いだ。1N HCl(40mL)を加え、混合物をDCM(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc=20:1~10:1)で精製し、白色固体として2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(5.0g、収率72.5%)を得た。
【0244】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.97 (dd, J = 7.4, 2.2 Hz, 2H), 7.53-7.34 (m, 3H), 3.04-2.90 (m, 5H), 2.36 (s, 3H).
【0245】
LC-MS (ESI+): m/z = 284.0 ([M+H]+).
【0246】
DMF(30mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(3.2g、17.7mmol)の溶液に、K2CO3(2.9g、21.2mmol)を加えた。反応混合物をN2下で85℃まで加熱した。DMF(15mL)中の2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(5.0g、17.7mmol)をこの温度で滴下した。反応物を5時間、85℃で撹拌し、次いで、室温まで冷却し、水中に注いでEtOAc(300mL×2)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。残留物を石油エーテル/EtOAc=5/1で粉砕し、褐色固体として4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(5.7g、収率88.2%)を得た。
【0247】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 10.05 (s, 1H), 8.07 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.00-7.86 (m, 2H), 7.82 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.62-7.38 (m, 4H), 7.23 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 3.06 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0248】
LC-MS (ESI+): m/z = 366.0 ([M+H]+).
【0249】
THF(40mL)中のメチル2-メトキシアセテート(5.9g、57.2mmol)の溶液に、アルゴン下にて0℃でTiCl4(10.8g、57.2mmol)を加えた。黄色溶液を15分間、0℃で撹拌し、DIEA(7.9g、61.6mmol)を加えた。黒色溶液を更に15分間撹拌し、DCM(60mL)中の4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(4.0g、11.0mmol)を滴下した。反応物を1時間、0℃で撹拌し、一晩室温まで温めた。次いで、0℃まで冷却し、水でクエンチしてDCM(200mL×2)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、粗製メチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(7.7g)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0250】
LC-MS (ESI+): m/z = 470.2 ([M+H]+).
【0251】
DMF(40mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(7.7g、粗製)の溶液に、大気温度で濃H2SO4(10mL)を滴下した。反応物を一晩、100℃で撹拌し、次いで、EtOH(40mL)で希釈し、1時間、0℃で撹拌した。固体をろ過し、EtOH(10mL)および水(50mL)で洗浄した。湿ったケーキを乾燥させ、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(2.3g、2工程の収率46.4%)を得た。
【0252】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.09 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.99 (dd, J = 7.6, 1.8 Hz, 2H), 7.53-7.37 (m, 4H), 7.34 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.08 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0253】
LC-MS (ESI+): m/z = 452.2 ([M+H]+).
【0254】
MeOH(50mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(2.3g、5.1mmol)の溶液に、室温でH2O(5mL)中のKOH(1.7g、30.6mmol)を加えた。反応物を2時間、80℃で撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、H2O(50mL)で希釈し、6N HClでpH=3に調整した。混合物を0℃まで冷却し、固体をろ過した。ろ過ケーキを1時間、80℃でEtOH(40mL)に懸濁させ、0℃まで冷却して1時間撹拌した。固体をろ過して乾燥させ、褐色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(1.5g、収率68.2%)を得た。
【0255】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.09 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 7.6, 1.9 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.48-7.39 (m, 3H), 7.35 (t, J = 2.7 Hz, 2H), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.10 (s, 2H), 2.41 (s, 3H).
【0256】
LC-MS (ESI+): m/z = 438.2 ([M+H]+).
【0257】
300mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(1.5g、3.4mmol)、(S)-フェニルエチルアミン(82mg、0.68mmol)、MeOH(18mL)、THF(12mL)およびIr-cat([(S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、9.3mg、0.001当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を16時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。LCMSが出発物質の約半分が残っていることを示し、Ir-cat(10.3mg)を加え、反応物を更に1日撹拌した。加圧滅菌器を開けた後、黄色溶液を回転蒸発乾固させた(45℃)。粗生成物をEtOAc(150mL)に溶解させ、1N HCl(40mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させた。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させて0℃まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ取し、酢酸イソプロピル(50mL)で洗浄し、乾燥させて淡黄色固体(920mg)を得て、これを更に分取HPLC(CH3CNおよび水中、0.1%FA)で精製し、白色固体として化合物2(518mg、収率34.5%)を得た。
【0258】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99 (dd, J = 6.4, 2.4 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.43 - 7.41 (m, 3H), 7.32 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.20 (dd, J = 7.9, 4.7 Hz, 1H), 3.39-3.28 (m, 4H), 3.23-3.18 (m, 1H), 3.05 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0259】
LC-MS (ESI+): m/z = 440.2 ([M+H]+).
【0260】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.57%ee。
【0261】
[実施例3]化合物3の合成
【0262】
【0263】
プロセス説明
DMF(230mL)中の2-(2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(22.7g、120.0mmol、1.0当量)の溶液に、イミダゾール(24.5g、360.0mmol、3.0当量)およびt-ブチルジメチルシリルクロリド(27.1g、180.0mmol、1.5当量)を少しずつ加えた。混合物を1時間、室温で撹拌した。反応終了後、反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、H2O(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=30:1により溶出)で精製し、無色オイルとして4-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-2-フェニルオキサゾール(30.0g、収率82.3%)を得た。
【0264】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.03-8.01 (m, 2H), 7.50 (s, 1H), 7.47-7.42 (m, 3H), 3.92 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.83-2.80 (m, 2H), 0.88 (s, 9H), 0.03 (s, 6H).
【0265】
LC-MS (ESI+):304.1 ([M+H]+).
【0266】
アルゴン下、THF(300mL)中の4-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-2-フェニルオキサゾール(30.0g、99.0mmol、1.0当量)の溶液を-78℃まで冷却し、次いで、t-BuLi(1M、114mL、148.0mmol、1.5当量)を滴下した。混合物を-40℃まで温め、1時間撹拌した。混合物を再び-78℃まで冷却した後、CD3I(28.7g、198.0mmol、2.0当量)を滴下した。反応混合物を1時間、この温度で撹拌し、次いで、-40℃まで温め、更に1時間撹拌した。反応物を飽和NH4Cl水(300mL)でクエンチし、EtOAc(300mL×2)で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗残留物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=50:1により溶出)で精製し、黄色オイルとして4-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール(11.0g、収率35.6%)を得た。
【0267】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 2H), 7.44-7.39 (m, 3H), 3.89 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.71 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 0.87 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0268】
LC-MS (ESI+): 321.2 ([M+H]+).
【0269】
アルゴン下、THF(100mL)中の4-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール(10.0g、31.1mmol、1.0当量)の溶液に、0℃でTBAF(THF中、1M、62.2mL、62.2mmol、2.0当量)を滴下し、次いで、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和NH4Cl(100mL×2)および塩水(100mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=2:1により溶出)で精製し、無色オイルとして2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(5.7g、収率88.7%)を得た。
【0270】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.00-7.97 (m, 2H), 7.46-7.41 (m, 3H), 3.93 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.90 (brs, 1H), 2.73 (t, J = 6.0 Hz, 2H).
【0271】
LC-MS (ESI+): 207.1 ([M+H]+).
【0272】
ジクロロメタン(32.5mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(3.5g、16.9mmol、1.0当量)の溶液に、トリエチルアミン(3.8g、37.2mmol、2.2当量)を室温で加えた。混合物を0℃まで冷却し、メタンスルホニルクロリド(3.9g、33.8mmol、2.0当量)を10分間かけて滴下した。反応物を2時間、5℃で撹拌した。反応混合物を1N HCl(10mL)でクエンチし、ジクロロメタン(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層をNaHCO3水(20mL×2)および塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して真空下で濃縮し、黄色固体として2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(4.5g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0273】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99 (dd, J = 7.6, 2.7 Hz, 2H), 7.46-7.44 (m, 3H), 4.54 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.99-2.96 (m, 5H).
【0274】
LC-MS (ESI+): 285.2 ([M+H]+).
【0275】
アルゴン下、N,N-ジメチルホルムアミド(35mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.8g、15.7mmol、1.0当量)の溶液に、室温でK2CO3(2.6g、18.8mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を85℃まで加熱し、次いで、DMF(20mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(4.5g、15.7mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を5時間撹拌した。次いで、反応混合物を水(150mL)中に注いでEtOAc(150mL×2)で抽出した。有機層を水(100mL×2)、塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで洗浄し、白色固体として4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(4.1g、収率71.1%)を得た。粗生成物を更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0276】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 8.00-7.97 (m, 2H), 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.56 (s, 2H), 7.46-7.40 (m, 3H), 6.95 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.53 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.13 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0277】
LC-MS (ESI+): 367.0 ([M+H]+).
【0278】
アルゴン下、THF(65mL)中のメチル2-メトキシアセテート(5.9g、57.0mmol、5.2当量)の溶液に、0℃でTiCl4(10.7g、57.0mmol、5.2当量)を滴下した。黄色溶液を15分間撹拌した後、DIEA(7.86g、61mmol、5.6当量)を加えた。溶液を15分間撹拌し、ジクロロメタン(65mL)中の4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(4.1g、11mmol、1.0当量)の溶液を滴下した。60分間撹拌した後、反応混合物を20℃まで温め、一晩撹拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、冷水(150mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をDCM(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させ、橙色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(粗製、6.2g)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0279】
LC-MS (ESI+): 471.2 ([M+H]+).
【0280】
DMF(100mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(粗製、6.2g)の溶液に濃H2SO4(25mL)を加えた。得られた暗褐色溶液を一晩、100℃で撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、冷水(100mL)中に注いでEtOAc(100ml×2)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層を濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、オイルとしてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.5g、2工程の収率30.1%)を得た。
【0281】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.03 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.92-7.89 (m, 2H), 7.70 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.52-7.46 (m, 3H), 7.43 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.00 (s, 1H), 4.43 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.72 (s, 3H), 3.04 (t, J = 6.4Hz, 2H).
【0282】
LC-MS (ESI+): 453.2 ([M+H]+).
【0283】
MeOH(30mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.5g、3.4mmol、1.0当量)の溶液に、水(3mL)中のKOH(1.14g、20.2mmol、6.0当量)の溶液を加えた。懸濁液を60℃で1.5時間撹拌した。形成した黄色反応溶液を室温まで冷却し、1N HClでpHを3~4に調整し、EtOAc(30mL×2)で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕してろ過し、白色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(1.1g、収率73.8%)を得た。
【0284】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.00-7.98 (m, 2H), 7.47 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.46-7.41 (m, 3H), 7.36-7.34 (m, 2H), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.47 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.11 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0285】
LC-MS (ESI+): 439.0 ([M+H]+).
【0286】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(300.0mg、0.68mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(16.6mg、0.14mmol、0.2当量)、MeOH(3.6mL)、THF(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、2.4mg、0.002当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これを分取HPLCで精製し、白色固体として化合物3(200mg、収率66.1%)を得た。
【0287】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.97 (dd, J = 8.0, 2.8 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.44-7.40 (m, 3H), 7.31 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.34 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.21-4.18 (m, 1H), 3.36-3.32 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.06 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0288】
LC-MS (ESI+): 441.1 ([M+H]+).
【0289】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.0%ee。
【0290】
[実施例4]化合物4の合成
【0291】
【0292】
プロセス説明
トルエン(150mL)中のベンズアミド-2,3,4,5,6-d5(9.6g、76.2mmol、1.0当量)の溶液に、メチル4-ブロモ-3-オキソペンタノエート(23.9g、114.3mmol、1.5当量)を加えた。10時間、110℃で撹拌後、メチル4-ブロモ-3-オキソペンタノエート(23.9g、114.3mmol、1.5当量)の別のバッチを加え、混合物を更に20時間、110℃で撹拌し続けた。次いで、反応混合物を濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=15:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(9.8g、収率54.4%)を得た。
【0293】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.73 (s, 3H), 3.57 (s, 2H), 2.36 (s, 3H).
【0294】
LC-MS (ESI+): 237.2 ([M+H]+).
【0295】
Et2O(100mL)中の水素化アルミニウムリチウム(2.4g、62.2mmol、1.5当量)の氷冷した溶液に、Et2O(100mL)中のメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(9.8g、41.5mmol、1.0当量)の溶液を滴下した。次いで、反応混合物を室温まで温め、15分間撹拌した。反応混合物を0℃で水(2.4mL)およびNaOH水(15%、2.4mL)でクエンチした。次いで、水(7.2mL)を反応混合物に加え、15分間室温で撹拌した。Na2SO4(12g)を混合物に加えた。混合物をろ過して濃縮し、白色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(7.0g、収率81.0%)を得た。
【0296】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.93 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.72 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H).
【0297】
LC-MS (ESI+): 209.0 ([M+H]+).
【0298】
ジクロロメタン(45mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(4.4g、21.3mmol、1.0当量)の溶液に、トリエチルアミン(4.3g、42.6mmol、2.0当量)を室温で加えた。混合物を0℃まで冷却し、メタンスルホニルクロリド(3.7g、32.0mmol、1.5当量)を10分間かけて滴下した。反応物を2時間、5℃で維持し、次いで、1N HCl(10mL)でクエンチし、ジクロロメタン(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水(20mL×2)、塩水(20mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して真空下で濃縮し、黄色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(6.1g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0299】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.52 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 6.6Hz, 5H), 2.36 (s, 3H).
【0300】
LC-MS (ESI+): 287.2 ([M+H]+).
【0301】
アルゴン下、N,N-ジメチルホルムアミド(40mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(3.8g、21.3mmol、1.0当量)の溶液に、室温でK2CO3(3.5g、25.6mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を86℃まで加熱し、次いで、DMF(20mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(6.1g、21.3mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を3時間、86℃で撹拌し、次いで、冷却し、水(150mL)中に注ぎ、EtOAc(150mL×2)で抽出して水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで洗浄し、黄色固体として4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(5.3g、収率67.9%)を得た。粗生成物を更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0302】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.05 (s, 1H), 7.80 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.53 (s, 2H), 6.94 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.53 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.12 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0303】
LC-MS (ESI+): 368.9 ([M+H]+).
【0304】
アルゴン下、テトラヒドロフラン(100mL)中のメチル2-メトキシアセテート(7.8g、74.9mmol、5.2当量)の溶液に、0℃でTiCl4(14.2g、74.9mmol、5.2当量)を滴下した。黄色溶液を15分間撹拌し、ジイソプロピルエチルアミン(10.4g、80.6mmol、5.6当量)を加えた。溶液を15分間撹拌し、DCM(100mL)中の4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(5.3g、14.4mmol、1.0当量)の溶液を滴下した。60分間撹拌した後、反応混合物を20℃まで温め、一晩撹拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、冷水(150mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させ、赤色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(7.0g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0305】
LC-MS (ESI+): 472.9([M+H]+).
【0306】
ジメチルホルムアミド(120mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(粗製、6.5g)の溶液に濃H2SO4(30mL)を加えた。得られた暗褐色溶液を一晩、100℃で撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、冷水(100mL)中に注いだ。反応物をEtOAc(100ml×2)で抽出し、合わせた有機層を水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層を濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、オイルとしてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.9g、2工程の収率30.6%)を得た。
【0307】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.47 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H) , 3.10 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.41 (s, 3H).
【0308】
LC-MS (ESI+): 455.1([M+H]+).
【0309】
メタノール(42mL)およびテトラヒドロフラン(14mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.75g、3.9mmol、1.0当量)の溶液に、水(4.2mL)中のKOH(1.3g、23.4mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を2時間、65℃で撹拌した。次いで、反応混合物を水(50mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をジクロロメタン/メタノール=10:1(150mL)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、白色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(1.1g、収率72.8%)を得た。
【0310】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J =5.2 Hz, 1H), 7.38-7.34 (m, 2H), 6.88 (d, J =8.4 Hz, 1H), 4.47 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.12 (t, J =6.6 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0311】
LC-MS (ESI+): 440.9 ([M+H]+).
【0312】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(350.0mg、0.79mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(19.3mg、0.16mmol、0.2当量)、メタノール(3.6mL)、テトラヒドロフラン(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、2.8mg、0.002当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これを分取HPLCで精製し、白色固体として化合物4(205mg、収率58.6%)を得た。
【0313】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.32 (d, J =5.6 Hz, 1H), 7.15 (d, J =8.0 Hz, 1H), 3.34 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.19 (dd, J = 7.6, 4.8 Hz, 1H), 3.36-3.32 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.06 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0314】
LC-MS (ESI+): 443.1 ([M+H]+).
【0315】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.3%ee。
【0316】
[実施例5]化合物5の合成
【0317】
【0318】
プロセス説明
ジエチルエーテル(25mL)中のLiAlD4(1.0g、24.1mmol、1.5当量)の氷冷した溶液に、ジエチルエーテル(15mL)中のメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(3.8g、16.1mmol、1.0当量)の溶液を滴下し、15分間室温で撹拌した。反応混合物を0℃で水(1.0mL)およびNaOH水(15%、1.0mL)でクエンチした。次いで、水(3.0mL)を加えた。混合物を15分間室温で撹拌した。Na2SO4を加え、混合物をろ過して濃縮し、白色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.6g、収率78.2%)を得た。
【0319】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.71 (s, 2H), 2.33 (s, 3H).
【0320】
LC-MS (ESI+): 211.0 ([M+H]+).
【0321】
DCM(45mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.5g、11.9mmol、1.0当量)の溶液に、TEA(2.4g、23.8mmol、2.0当量)およびMsCl(2.0g、17.9mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、水(20mL)でクエンチしてDCM(50mL)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過して濃縮し黄色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(3.3g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0322】
LC-MS (ESI+):288.9 ([M+H]+).
【0323】
アルゴン下、DMF(30mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.7g、9.5mmol、0.9当量)の溶液に、室温でK2CO3(1.7g、12.4mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を86℃まで加熱し、次いで、DMF(20mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(3.0g、10.6mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、86℃で撹拌し、次いで、水(150mL)中に注いでEtOAc(150mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。残留物をEtOAcで粉砕し、黄色固体として4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.2g、収率56.0%)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0324】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 7.81 (d, J = 8.0Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 6.94 (d, J = 8.0Hz, 1H), 3.11(s, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0325】
LC-MS (ESI+): 370.9 ([M+H]+).
【0326】
THF(22mL)中のメチル2-メトキシアセテート(3.2g、30.9mmol、5.2当量)の溶液に、0℃でTiCl4(5.9g、30.9mmol、5.2当量)を滴下し、次いで、DIEA(4.3g、33.0mmol、5.6当量)を加えた。15分後、DCM(22mL)中の4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.0g、5.9mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、0℃で撹拌し、次いで、0℃の水(40mL)でクエンチし、DCM(40mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.7g、収率60.7%)を得た。
【0327】
LC-MS (ESI+): 474.8([M+H]+).
【0328】
DMF(15mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.3g、2.7mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(274mg、2.7mmol、1.0当量)を滴下した。反応混合物を5時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(45mL)でクエンチしてDCM(60mL×2)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(680mg、収率47.2%)を得た。
【0329】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H) , 3.08 (s, 2H), 2.41 (s, 3H).
【0330】
LC-MS (ESI+): 457.0([M+H]+).
【0331】
MeOH/THF=3:1(20mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(680mg、1.5mmol、1.0当量)の溶液に、水(1.2mL)中のKOH(501mg、8.9mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1時間、65℃で撹拌し、次いで、水(20mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH=10:1(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(600mg、収率91.0%)を得た。
【0332】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J =5.2 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.10(s, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0333】
LC-MS (ESI+): 442.7([M+H]+).
【0334】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(300.0mg、0.7mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(16.5mg、0.14mmol、0.2当量)、MeOH(3.6mL)、THF(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、4.8mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ過し、乾燥させて、白色固体として化合物5(150mg、収率48.2%)を得た。
【0335】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.46 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.21-4.17 (m, 1H), 3.36-3.31 (m, 4H), 3.23-3.18 (m, 1H), 3.07 (s, 2H), 2.41 (s, 3H).
【0336】
LC-MS (ESI+): 445.1 ([M+H]+).
【0337】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.46%ee。
【0338】
[実施例6]化合物6の合成
【0339】
【0340】
プロセス説明
THF(1.0L)中のNaH(60%、28.8g、717.6mmol、1.3当量)の溶液に、アルゴン下、0℃でメチル3-オキソブタノエート(64.2g、552.0mmol、1.0当量)を加え、10分間撹拌した。次いで、n-BuLi(2.4M、300mL、717.6mmol、1.3当量)を-20℃で滴下し、5分間撹拌した。CD3I(100.0g、690.0mmol、1.25当量)を滴下した。反応混合物を4時間、室温で撹拌し、次いで、飽和NH4Cl(500mL)でクエンチしてEtOAc(1000mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色オイルとしてメチル3-オキソペンタノエート-5,5,5-d3(80.0g、粗製)を得た。
【0341】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.72 (s, 3H), 3.45 (s, 2H), 2.54 (s, 2H).
【0342】
CHCl3(500.0mL)中のメチル3-オキソペンタノエート-5,5,5-d3(73.5g、552.0mmol、1.0当量)の溶液に、0℃で30分間かけてCHCl3(200mL)中のBr2(101.1g、635.0mmol、1.15当量)の溶液を滴下した。反応混合物を2時間、室温で撹拌し、次いで、飽和NaHCO3水(300mL)でクエンチし、DCM(500mL)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=100:1により溶出)で精製し、黄色オイルとして4-ブロモ-3-オキソペンタノエート-5,5,5-d3(57.0g、収率48.7%)を得た。
【0343】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.60 (s, 1H), 3.88-3.65 (m, 5H).
【0344】
トルエン(75mL)中のベンズアミド(4.0g、32.7mmol、1.0当量)の溶液に、メチル4-ブロモ-3-オキソペンタノエート-5,5,5-d3(10.4g、49.0mmol、1.5当量)を室温で加えた。混合物を12時間、110℃で撹拌し続け、次いで、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=20:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセテート(3.6g、収率30.1%)を得た。
【0345】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99-7.97 (m, 2H), 7.44-7.40 (m, 3H), 3.73 (s, 3H), 3.58 (s, 2H)
【0346】
LC-MS (ESI+): 235.0 ([M+H]+)
【0347】
Et2O(36mL)中のメチル2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセテート(3.6g、15.4mmol、1.0当量)の溶液に、LiAlD4(968mg、23mol、1.5当量)を0℃で少しずつ加えた。混合物を2時間、5℃で撹拌し、次いで、Et2O(50mL)で希釈した。混合物を0℃で水(1mL)および水(1mL)中のNaOH(0.15g)でクエンチした。次いで、水(3mL)を加え、15分間室温で撹拌した。Na2SO4を加えた後、混合物をろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとして2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.2g、収率68.6%)を得た。
【0348】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99-7.97 (m, 2H), 7.46-7.41 (m, 3H), 2.72 (s, 2H).
【0349】
LC-MS (ESI+): 209.0 ([M+H]+).
【0350】
DCM(35mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.2g、10.6mmol、1.0当量)の溶液に、TEA(2.1g、21.1mmol、2.0当量)を加えた。混合物を0℃まで冷却し、メタンスルホニルクロリド(1.82g、15.8mmol、1.5当量)を滴下した。反応物を1時間、5℃で撹拌した。得られた反応物を1N HClでpH=7に調整し、DCM(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水(50mL×2)および塩水(50mL×2)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して真空下で濃縮し、黄色固体として2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(3.0g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0351】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98-7.95 (m, 2H), 7.46-7.41 (m, 3H), 3.13 (s, 3H), 2.94 (d, J = 6.4 Hz, 2H).
【0352】
LC-MS (ESI+): 287.0 ([M+H]+).
【0353】
DMF(20mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.7g、9.6mmol、0.9当量)の溶液にK2CO3(1.76g、12.7mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で86℃まで加熱し、DMF(10mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(3.0g、粗製、10.6mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、86℃で撹拌し、次いで、水(50mL)中に注ぎ、EtOAc(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×2)および塩水(50mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕してろ過し、黄色固体として4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.4g、2工程の収率61.4%)を得た。
【0354】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.99-7.97 (m, 2H), 7.81 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 2.4, 2H), 7.43-7.39 (m, 3H), 6.94 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 1H) ), 3.11 (s, 2H).
【0355】
LC-MS (ESI+): 369.2 ([M+H]+).
【0356】
THF(24mL)中のメチル2-メトキシアセテート(3.5g、33.9mmol、5.2当量)の溶液に、アルゴン下、0℃でTiCl4(6.4g、33.9mmol、5.2当量)を滴下した。黄色溶液を15分間撹拌後、DIEA(4.7g、36.5mmol、5.6当量)を加えた。溶液を15分間撹拌した。DCM(24mL)中の4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.4g、6.5mmol、1.0当量)の溶液を滴下した。反応混合物を20℃まで温め、一晩撹拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、冷水(100mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をDCM(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×3)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させた。粗生成物をシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色固体としてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.9g、収率61.9%)を得た。
【0357】
LC-MS (ESI+): 473.2 ([M+H]+).
【0358】
DMF(20mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.7g、3.6mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(540mg、7.2mmol、2.0当量)を滴下した。反応混合物を16時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(100mL)でクエンチしてDCM(50mL×3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をEtOAcで粉砕してろ過し、オフホワイト色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.0g、収率61.1%)を得た。
【0359】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.00-7.98 (m, 2H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.44-7.42 (m, 3H), 7.34 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.08 (s, 2H).
【0360】
LC-MS (ESI+): 455.2 ([M+H]+).
【0361】
MeOH/THF(3:1、32mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.0g、2.4mmol、1.0当量)の溶液に、水(2mL)中のKOH(792mg、14.1mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1.5時間、65℃で撹拌し、次いで、水(50mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH(10:1、50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、オフホワイト色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(770mg、収率72.8%)を得た。
【0362】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.12 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.01-7.98 (m, 2H), 7.49 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.46-7.41 (m, 3H), 7.36-7.34 (m, 2H), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.10 (s, 2H).
【0363】
LC-MS (ESI+): 441.2 ([M+H]+).
【0364】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(300.0mg、0.7mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(16.5mg、0.14mmol、0.2当量)、MeOH(3.6mL)、THF(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、4.8mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ過し、乾燥させて、白色固体として化合物6(134mg、収率44.5%)を得た。
【0365】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.97 (dd, J = 8.0, 2.8 Hz, 1H), 7.48-7.40 (m, 4H), 7.31 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.21-4.18 (m, 1H), 3.33-3.31 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.05 (s, 2H).
【0366】
LC-MS (ESI+): 443.2 ([M+H]+).
【0367】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.51%ee。
【0368】
[実施例7]化合物7の合成
【0369】
【0370】
プロセス説明
トルエン(90.0mL)中の((4-ブロモ-3-オキソペンタノイル-5,5,5-d3)オキシ)メチリウム(9.0g、70.8mmol、1.0当量)の溶液に、2つのバッチ中のベンズアミド-2,3,4,5,6-d5(44.8g、212.3mmol、3.0当量)を10時間かけて加えた。混合物を20時間、110℃で撹拌し続けた。次いで、反応混合物を濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=15:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(7.3g、収率43.2%)を得た。
【0371】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.72 (s, 3H), 3.58 (s, 2H).
【0372】
LC-MS (ESI+): 240.2 ([M+H]+).
【0373】
ジエチルエーテル(25mL)中のLAH(832.8mg、21.9mmol、1.5当量)の氷冷した溶液にジエチルエーテル(25mL)中のメチル2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(3.5g、14.6mmol、1.0当量)の溶液を滴下し、15分間室温で撹拌した。反応混合物を0℃で水(1.0mL)およびNaOH水(15%、1.0mL)でクエンチした。水(3.0mL)を加え、15分間室温で撹拌した。Na2SO4を加えた後、混合物をろ過して濃縮し、白色固体として2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(2.8g、収率87.7%)を得た。
【0374】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.91 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.71 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.35 (brs, 1H).
【0375】
LC-MS (ESI+): 212.1 ([M+H]+).
【0376】
DCM(45mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(2.8g、13.4mmol、1.0当量)の溶液に、TEA(2.7g、26.7mmol、2.0当量)およびメタンスルホニルクロリド(2.3g、20.0mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、水(20mL)でクエンチしてDCM(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色固体として2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(3.8g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0377】
LC-MS (ESI+): 290.1 ([M+H]+).
【0378】
アルゴン下、DMF(30mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.1g、13.1mmol、0.9当量)の溶液に、室温でK2CO3(2.17g、15.7mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を85℃まで加熱し、次いで、DMF(20mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(3.8g、13.1mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、85℃で撹拌し、次いで、水(150mL)中に注いでEtOAc(150mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、オフホワイト色固体として4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.7g、収率55.5%)を得た。
【0379】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 6.94 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.53 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.71 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0380】
LC-MS (ESI+): 372.1 ([M+H]+).
【0381】
THF(30mL)中のメチル2-メトキシアセテート(3.9g、37.8mmol、5.2当量)の溶液に、0℃でTiCl4(7.2g、37.8mmol、5.2当量)およびDIEA(5.3g、40.7mmol、5.6当量)を滴下した。15分後、DCM(30mL)中の4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.7g、7.3mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、0℃で撹拌し、次いで、0℃の水(40mL)でクエンチしてDCM(40mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.7g、収率49.2%)を得た。
【0382】
LC-MS (ESI+): 476.1 ([M+H]+).
【0383】
DMF(15mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.7g、3.6mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(536mg、5.4mmol、1.5当量)を滴下した。反応混合物を5時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(45mL)でクエンチしてDCM(60mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗残留物を得て、これをEtOAcで粉砕し、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(840mg、収率51.4%)を得た。
【0384】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.10 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0385】
LC-MS (ESI+): 458.0 ([M+H]+).
【0386】
MeOH/THF(3:1、32mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(840.0mg、1.8mmol、1.0当量)の溶液に、水(2.0mL)中のKOH(618.0mg、11.0mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1時間、65℃で撹拌し、次いで、水(20mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH(10:1、50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、オフホワイト色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(700mg、収率85.7%)を得た。
【0387】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 6.87 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.11 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0388】
LC-MS (ESI+): 444.1([M+H]+).
【0389】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(300.0mg、0.7mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(16.5mg、0.14mmol、0.2当量)、MeOH(3.6mL)、THF(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、4.8mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ過し、乾燥させて、白色固体として化合物7(130mg、収率41.7%)を得た。
【0390】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.46 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.34 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.21-4.18 (m, 1H), 3.36-3.31 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.08 (t, J = 6.4 Hz, 2H).
【0391】
LC-MS (ESI+): 446.1 ([M+H]+).
【0392】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):98.68%ee。
【0393】
[実施例8]化合物8の合成
【0394】
【0395】
プロセス説明
Et2O(70mL)中のメチル2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)アセテート(3.8g、15.9mmol、1.0当量)の溶液に、LiAlD4(976mg、23.8mol、1.5当量)を0℃で少しずつ加えた。混合物を2時間、5℃で撹拌し、次いで、Et2O(50mL)で希釈した。反応物を0℃で水(1mL)および水(1mL)中のNaOH(0.15g)の溶液でクエンチした。水(3mL)を加え、混合物を15分間撹拌した。Na2SO4を加えた後、混合物をろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとして2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.9g、収率83.1%)を得た。
【0396】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.19 (brs, 1H), 2.73 (s, 2H).
【0397】
LC-MS (ESI+): 214.0 ([M+H]+).
【0398】
DCM(45mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(2.9g、13.22mmol、1.0当量)の溶液に、TEA(2.7g、26.5mmol、2.0当量)を加えた。混合物を0℃まで冷却し、メタンスルホニルクロリド(2.3g、19.8mmol、1.5当量)を滴下した。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、水(20mL)でクエンチし、DCM(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色固体として2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(4.0g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0399】
LC-MS (ESI+): 292.2 ([M+H]+).
【0400】
DMF(30mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.12g、11.9mmol、0.9当量)の溶液にK2CO3(2.19g、15.86mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で85℃まで加熱し、DMF(10mL)中の2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(3.85g、粗製、13.22mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、85℃で撹拌し、次いで、水(50mL)中に注ぎ、EtOAc(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×2)および塩水(50mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、オフホワイト色固体として4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.4g、2工程の収率50.2%)を得た。
【0401】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 7.81 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.53 (s, 2H), 6.94 (d, J = 8 Hz, 1H) ), 3.11 (s, 2H).
【0402】
LC-MS (ESI+): 374.2 ([M+H]+).
【0403】
THF(24mL)中のメチル2-メトキシアセテート(3.48g、33.4mmol、5.2当量)の溶液に、アルゴン下、0℃でTiCl4(6.34g、33.4mmol、5.2当量)を滴下した。黄色溶液を15分間撹拌後、DIEA(4.65g、36mmol、5.6当量)を加えた。溶液を15分間撹拌した。DCM(24mL)中の4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(2.4g、6.4mmol、1.0当量)の溶液を滴下し、60分間撹拌した。反応混合物を20℃まで温め、一晩撹拌した。次いで、反応物を0℃まで冷却し、冷水(100mL)でクエンチした。有機層を分離し、水層をDCM(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(50mL×3)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発乾固させた。粗生成物をシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色固体としてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.85g、収率60.9%)を得た。
【0404】
LC-MS (ESI+): 478.2 ([M+H]+).
【0405】
DMF(20mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.85g、3.9mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(582mg、5.8mmol、1.5当量)を滴下した。反応混合物を16時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(100mL)でクエンチしてDCM(50mL×3)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して粗残留物を得て、これをEtOAcで粉砕してろ過し、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.4g、収率78.2%)を得た。
【0406】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.08 (s, 2H).
【0407】
LC-MS (ESI+): 460.2 ([M+H]+).
【0408】
MeOH/THF(3:1、44mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.4g、3.05mmol、1.0当量)の溶液に、水(2mL)中のKOH(1.03g、18.3mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1.5時間、65℃で撹拌し、次いで、水(50mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH(10:1、50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(1.1g、収率81.0%)を得た。
【0409】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.15 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.90 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.13 (s, 2H).
【0410】
LC-MS (ESI+): 446.0 ([M+H]+).
【0411】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-(メチル-d3)-2-(フェニル-d5)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(300.0mg、0.7mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(16.5mg、0.14mmol、0.2当量)、MeOH(3.6mL)、THF(2.4mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、4.8mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(20mL)に溶解させ、1N HCl(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ過し、乾燥させて、白色固体として化合物8(145mg、収率54.1%)を得た。
【0412】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.45 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.21-4.18 (m, 1H), 3.35-3.31 (m, 4H), 3.23-3.20 (m, 1H), 3.07 (s, 2H).
【0413】
LC-MS (ESI+): 448.2 ([M+H]+).
【0414】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.79%ee。
【0415】
[実施例9]化合物9の合成
【0416】
【0417】
プロセス説明
DCM(300mL)中のキノリン-8-アミン(30.0g、208.1mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下、室温でTEA(25.3g、249.7mmol、1.2当量)を加えた。塩化ベンゾイル(35.1g、249.7mmol、1.2当量)を0℃で滴下した。反応混合物を14時間、室温で撹拌し、次いで飽和NaHCO3でクエンチし、DCM(300mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=15:1により溶出)で精製し、黄色固体としてN-(キノリン-8-イル)ベンズアミド(45.0g、収率87.1%)を得た。
【0418】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.76 (s, 1H), 8.95 (dd, J = 7.5 Hz, 1H), 8.86 (dd, J = 4.2 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 8.3 Hz, 1H), 8.11 - 8.08 (m, 2H), 7.63 - 7.53 (m, 5H), 7.49 (dd, J = 8.3, 4.2 Hz, 1H).
【0419】
LC-MS (ESI+): 280.1 ([M+Na]+).
【0420】
300mLのステンレス製加圧滅菌器にN-(キノリン-8-イル)ベンズアミド(5.0g、20.1mmol、1.0当量)、Pd(OAc)2(904mg、4.1mmol、0.2当量)およびD2O(100mL)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、36時間、140℃で撹拌した。次いで、反応混合物を水(100mL)で希釈し、DCM(500mL)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=10:1により溶出)で精製し、白色固体としてN-(キノリン-8-イル)ベンズアミド-2,6-d2(2.5g、収率49.6%)を得た。
【0421】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.75 (s, 1H), 8.95 (dd, J = 7.5 Hz, 1H), 8.86 (dd, J = 4.2 Hz, 1H), 8.19 (dd, J = 8.3 1H), 7.63 - 7.54 (m, 5H), 7.48 (dd, J = 8.3 Hz, 1H).
【0422】
LC-MS (ESI+): 250.1 ([M+H]+).
【0423】
N-(キノリン-8-イル)ベンズアミド-2,6-d2(4.0g、16.0mmol、1.0当量)およびH2SO4水(40%、100mL)の混合物を14時間、120℃で撹拌した。次いで、反応混合物を水(150mL)中に注いでEtOAc(200mL)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、白色固体としてベンゾイック-2,6-d2アシッド(1.8g、収率92.3%)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた(HNMRに基づき>98%D)。
【0424】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ:7.63 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 7.6 Hz, 2H).
【0425】
LC-MS (ESI+): 122.8 ([M-H]-).
【0426】
DCM(15mL)中のベンゾイック-2,6-d2アシッド(1.5g、12.1mmol、1.0当量)の溶液に、塩化オキサリル(2.3g、18.1mmol、1.5当量)およびDMF(数滴)を加えた。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、濃縮してTHF(15mL)に再び溶解させた。NH3.H2O(25%、15mL)を0℃で滴下した。得られた混合物を15分間室温で撹拌し、次いで、DCM/MeOH=10:1(200mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、白色固体としてベンズアミド-2,6-d2(1.2g、収率76.9%)を得た。
【0427】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 7.93 (brs, 1H), 7.50-7.46 (m, 1H), 7.41 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.31 (brs, 1H).
【0428】
LC-MS (ESI+): 124.2 ([M+H]+).
【0429】
トルエン(30mL)中のベンズアミド-2,6-d2(1.2g、9.7mmol、1.0当量)の溶液に、メチル4-ブロモ-3-オキソペンタノエート(3.05g、14.7mmol、1.5当量)を加えた。10時間後、メチル4-ブロモ-3-オキソペンタノエート(3.05g、14.7mmol、1.5当量)の別のバッチを加えた。混合物を20時間、110℃で撹拌し、次いで、濃縮して残留物を得た。粗生成物をシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=15:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)アセテート(1.3g、収率57.5%)を得た。
【0430】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.41 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 3.73 (s, 1H), 3.58 (s, 2H), 2.36 (s, 3H).
【0431】
LC-MS (ESI+): 233.9 ([M+H]+).
【0432】
ジエチルエーテル(10mL)中のLiAH4(313.0mg、8.3mmol、1.5当量)の氷冷した溶液に、ジエチルエーテル(10mL)中のメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)アセテート(1.3g、5.5mmol、1.0当量)の溶液を滴下した。反応混合物を15分間室温で撹拌し、次いで、0℃で水(0.3mL)およびNaOH水(15%、0.3mL)でクエンチした。水(1.0mL)を加え、15分間室温で撹拌した。Na2SO4を加えた後、混合物をろ過して濃縮し、白色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(1.0g、収率88.5%)を得た。
【0433】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.43 (t, J = 8.4 Hz, 3H), 3.93 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.73 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H).
【0434】
LC-MS (ESI+): 206.2 ([M+H]+).
【0435】
DCM(15mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エタン-1-オール(1.0g、4.9mmol、1.0当量)の溶液に、TEA(986.0mg、9.7mmol、2.0当量)およびメタンスルホニルクロリド(837mg、7.31mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、水(20mL)でクエンチしてDCM(50mL)で抽出した。有機層を乾燥(Na2SO4)させて濃縮し、黄色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(1.2g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0436】
LC-MS (ESI+): 284.1 ([M+H]+).
【0437】
アルゴン下、DMF(10mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(679.0mg、3.8mmol、0.9当量)の溶液に、室温でK2CO3(697.0mg、5.0mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を86℃まで加熱し、次いで、DMF(10mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エチルメタンスルホネート(1.2g、4.2mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を5時間、86℃で撹拌し、次いで、水(100mL)中に注いでEtOAc(150mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×2)および塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物をEtOAcで粉砕し、黄色固体として4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(960mg、収率62.7%)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0438】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 7.81 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.53 (s, 2H), 7.43 (q, J = 3.7 Hz, 3H), 6.95 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.54 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.13 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0439】
LC-MS (ESI+): 365.9 ([M+H]+).
【0440】
THF(10mL)中のメチル2-メトキシアセテート(1.4g、13.7mmol、5.2当量)の溶液に、TiCl4(2.6g、13.7mmol、5.2当量)を加え、0℃でDIEA(1.9g、14.7mmol5.6当量)を滴下した。15分後、DCM(10mL)中の4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(960.0mg、2.63mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、0℃で撹拌し、次いで、0℃の水(40mL)でクエンチしてDCM(40mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(740.0mg、収率60.0%)を得た。
【0441】
LC-MS (ESI+): 470.1 ([M+H]+).
【0442】
DMF(10mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(740mg、1.6mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(235.0mg、2.3mmol、1.5当量)を滴下した。反応混合物を14時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(30mL)でクエンチしてDCM(60mL×2)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(340.0mg、収率47.2%)を得た。
【0443】
1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.43-7.40 (m, 3H), 7.34 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.45 (t, J = 8.8 Hz, 2H) 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.09 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 2.41 (s, 3H).
【0444】
LC-MS (ESI+): 452.2([M+H]+).
【0445】
MeOH/THF=3:1(16mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(340.0mg、0.8mmol、1.0当量)の溶液に、水(1.1mL)中のKOH(254.0mg、4.5mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1時間、65℃で撹拌し、次いで、水(20mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH=10:1(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、黄色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(200.0mg、収率61.0%)を得た。
【0446】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.43 (q, J = 4.1 Hz, 3H), 7.35 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.48 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.12 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0447】
LC-MS (ESI+): 438.0 ([M+H]+).
【0448】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(350.0mg、0.8mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(19.4mg、0.16mmol、0.2当量)、MeOH(4.2mL)、THF(2.8mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、7.0mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(40mL)に溶解させ、1N HCl(20mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ取し、白色固体として化合物9(142.7mg、収率40.6%)を得た。
【0449】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.49-4.47 (m, 1H), 7.43-7.41 (m, 3H), 7.32 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.34 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.20-4.18 (m, 1H), 3.37-3.32 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.06 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0450】
LC-MS (ESI+): 440.1 ([M+H]+).
【0451】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.37%ee。
【0452】
[実施例10]化合物10の合成
【0453】
【0454】
プロセス説明
ジエチルエーテル(25mL)中のLiAlD4(530.0mg、14.0mmol、1.5当量)の氷冷した溶液に、ジエチルエーテル(15mL)中のメチル2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)アセテート(2.2g、9.3mmol、1.0当量)の溶液を滴下し、15分間室温で撹拌した。反応混合物を0℃で水(0.5mL)およびNaOH水(15%、0.5mL)でクエンチした。次いで、水(1.5mL)を加え、15分間室温で撹拌した。Na2SO4を加えた後、混合物をろ過して濃縮し、白色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(1.7g、収率88.5%)を得た。
【0455】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.45-7.41 (m, 3H), 2.71 (s, 2H), 2.34 (s, 3H).
【0456】
LC-MS (ESI+): 208.1 ([M+H]+).
【0457】
DCM(30.0mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エタン-1,1-d2-1-オール(1.7g、8.2mmol、1.0当量)の溶液に、トリエチルアミン(1.7g、16.4mmol、2.0当量)およびメタンスルホニルクロリド(1.4g、12.4mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。反応混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、水(30mL)でクエンチし、DCM(50mL)で抽出した。有機層を(Na2SO4で)乾燥させて濃縮し、黄色固体として2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(2.2g、粗製)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0458】
LC-MS (ESI+): 286.0 ([M+H]+).
【0459】
アルゴン下、DMF(20mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.2g、6.9mmol、0.9当量)の溶液に、室温でK2CO3(1.3g、9.2mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を86℃まで加熱し、次いで、DMF(10mL)中の2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エチル-1,1-d2メタンスルホネート(2.2g、7.7mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を5時間、86℃で撹拌し、次いで、水(150mL)中に注いでEtOAc(150mL×2)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL×2)、塩水(100mL×2)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物をEtOAcで粉砕し、黄色固体として4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.9g、収率66.4%)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0460】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.06 (s, 1H), 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.45-7.41 (m, 3H), 6.94 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.11(s, 2H), 2.42 (s, 3H).
【0461】
LC-MS (ESI+): 368.0 ([M+H]+).
【0462】
THF(20mL)中のメチル2-メトキシアセテート(2.8g、26.6mmol、5.2当量)の溶液に、TiCl4(5.1g、26.6mmol、5.2当量)およびジイソプロピルエチルアミン(3.7g、28.7mmol、5.6当量)を0℃で滴下した。15分後、DCM(20mL)中の4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.9g、5.1mmol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を4時間、0℃で撹拌し、次いで、0℃の水(50mL)でクエンチしてDCM(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラム(石油エーテル/EtOAc=3:1により溶出)で精製し、黄色オイルとしてメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.4g、収率58.0%)を得た。
【0463】
LC-MS (ESI+): 472.0 ([M+H]+).
【0464】
DMF(15mL)中のメチル3-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(1.4g、2.9mmol、1.0当量)の溶液に、室温で濃H2SO4(440.0mg、4.4mmol、1.5当量)を滴下した。反応混合物を14時間、100℃で撹拌し、次いで、冷水(45mL)でクエンチしてDCM(60mL×2)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して粗生成物を得て、これをEtOAcで粉砕し、黄色固体としてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(600.0mg、収率45.6%)を得た。
【0465】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.43 - 7.40 (m, 3H), 7.34 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 3.07 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0466】
LC-MS (ESI+): 454.0([M+H]+).
【0467】
MeOH/THF=3:1(20mL)中のメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(600.0mg、1.3mmol、1.0当量)の溶液に、水(1.5mL)中のKOH(445.0mg、7.9mmol、6.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を1時間、65℃で撹拌し、次いで、水(30mL)で希釈し、濃縮して1N HClでpH=3に調整した。混合物をDCM/MeOH=10:1(50mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮し、黄色固体として(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(550.0mg、収率94.8%)を得て、これを更に精製することなく次の工程に直接用いた。
【0468】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.09 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.44 - 7.41 (m, 3H), 7.34 - 7.32 (m, 2H), 6.85 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.08 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0469】
LC-MS (ESI+): 440.0([M+H]+).
【0470】
30mLのステンレス製加圧滅菌器に(Z)-2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-(フェニル-2,6-d2)オキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリル酸(550.0mg、1.0mmol、1.0当量)、(S)-フェニルエチルアミン(26.0mg、0.2mmol、0.2当量)、MeOH(4.8mL)、THF(3.2mL)およびIr-cat([((S)-DTBSIPHOX)Ir(COD)]BArF、8.0mg、0.004当量)を投入した。加圧滅菌器を密閉し、水素化を36時間、30barの水素下にて70℃で生じさせた。反応溶液を蒸発乾固させた。粗生成物をDCM(40mL)に溶解させ、1N HCl(20mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物を還流した酢酸イソプロピルに溶解させてろ過した。ろ液を室温まで冷却し、それにより結晶化が開始した。形成した結晶をろ過し、乾燥させて、白色固体として化合物10(250.0mg、収率45.0%)を得た。
【0471】
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.48-4.47 (m, 1H), 7.43-7.42 (m, 3H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.21-4.18 (m, 1H), 3.34-3.33 (m, 4H), 3.24-3.18 (m, 1H), 3.04 (s, 2H), 2.40 (s, 3H).
【0472】
LC-MS (ESI+): 442.1 ([M+H]+).
【0473】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):99.81%ee。
【0474】
[実施例11]化合物11の合成
【0475】
【0476】
プロセス説明
メチル2,2-ジメトキシアクリレート(50g、372.77mmol、1.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃で30分間、PCl5(77.63g、372.77mmol、1.00当量)を少しずつ加えた。得られた溶液を350mLの密閉管に移し、140℃で1.5時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した。粗生成物を油ポンプによる減圧下(10Torr)での蒸留により精製し、留分を55℃で回収した。これにより無色オイルとしてメチル2-クロロ-2-メトキシアセテート(43.0g、83.2%)を得た。
【0477】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.76 (s, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.63 (s, 3H)
【0478】
ジクロロメタン(100mL)中のメチル2-クロロ-2-メトキシアセテート(20.0g、144.35mmol、1.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、室温でトリフェニルホスフィン(37.86g、144.35mmol、1.00当量)を少しずつ加えた。得られた混合物を一晩撹拌し、次いで、減圧下で濃縮してEt2O(3×100mL)で洗浄した。これにより淡黄色固体として(1,2-ジメトキシ-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(45g、77.77%)を得た。
【0479】
ジクロロメタン(40mL)中の4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(4.0g、22.44mmol、1.00当量)およびジイソプロピルエチルアミン(11.60g、89.78mmol、4.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でブロモ(メトキシ)メタン(4.21g、33.66mmol、1.50当量)を滴下した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、次いで、0℃にてH2O(50mL)でクエンチしてろ過した。ろ過ケーキをジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。合わせた有機層をNaCl水(1×50mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を石油エーテル/酢酸エチル(10:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色オイルとして4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.5g、30.07%)を得た。
【0480】
LC-MS (ESI+): 223 ([M+H]+).
【0481】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 10.10 (s, 1H), 8.10 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.53 (s, 2H), 3.47 (s, 3H).
【0482】
テトラヒドロフラン(30mL)およびCHCl3(30mL)中の4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-カルバルデヒド(1.5g、6.74mmol、1.00当量)および(1,2-ジメトキシ-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(21.64g、53.99mmol、8.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、室温で1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(8.22g、53.99mmol、8.00当量)を加えた。得られた溶液を60℃で2時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した。残留物を石油エーテル/酢酸エチル(10:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色オイルとしてメチル(E)-2-メトキシ-3-(4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.43g、68.7%)および無色オイルとしてメチル(Z)-2-メトキシ-3-(4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(0.30g、14.4%)を得た。
【0483】
LC-MS (ESI+): 309 ([M+H]+).
【0484】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.04 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.03 (s, 1H), 5.42 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.45 (s, 3H).
【0485】
250mLの圧力反応器中、メタノール(140mL)中のメチル(E)-2-メトキシ-3-(4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)アクリレート(1.4g、4.54mmol、1.00当量)の溶液に、窒素雰囲気下、Pd(OH)2(炭素に対して20wt%、0.14g)を加えた。混合物を、40atmの水素雰囲気下、40時間、室温で水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロエタン(28mL)に溶解させ、二酸化マンガン(7.89g、90.80mmol、20当量)を加えた。混合物をN2雰囲気下、80℃で6時間撹拌した。混合物を室温まで冷却してろ過した。ろ過ケーキをジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を石油エーテル/酢酸エチル(10:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色オイルとしてメチルメチル2-メトキシ-3-(4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(750.0mg、53.2%)を得た。
【0486】
LC-MS (ESI+): 328 ([M+NH4]+).
【0487】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 7.69 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.34 (s, 2H), 4.21 (dd, J = 7.9, 5.1 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 3.23 (s, 3H), 3.20 - 3.03 (m, 2H).
【0488】
ジオキサン(7.5mL)中のメチル2-メトキシ-3-(4-(メトキシメトキシ)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(750mg、1当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、室温で1,4-ジオキサン(4M、7.5mL)中のHClを加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮した。これにより淡褐色オイルとしてメチル3-(4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-2-メトキシプロパノエート(600.0mg、93.2%)を得た。
【0489】
LC-MS (ESI+): 289 ([M+Na]+).
【0490】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 9.29 (s, 1H), 8.03 - 7.99 (m, 1H), 7.97 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.69 - 4.59 (m, 1H), 4.14 (d, J = 1.4 Hz, 3H), 3.74 (d, J = 1.4 Hz, 3H), 3.61 (qd, J = 14.4, 6.7 Hz, 2H).
【0491】
CD3OD(5mL、112.293mmol、51.94当量)およびD2O(5mL、274.621mmol、127.01当量)中のメチル2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセテート(500.0mg、2.16mmol、1.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、室温でCs2CO3(2113.4mg、6.48mmol、3.00当量)を加えた。得られた混合物を室温で16時間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮した。残留物を新たなCD3OD(5mL)およびD2O(5mL)に溶解させ、室温で24時間撹拌した。より長い時間撹拌しても重水素の値は上昇しなかった。得られた混合物をH2O(50mL)で希釈し、メチルtert-ブチルエーテル(1×30mL)で抽出し、水層を合わせた。合わせた水層を1N HCl(aq)でpH=3まで酸性化した。得られた混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をNaCl水(1×30mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮した。これにより白色固体として2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセティック-2,2-d2アシッド(420mg、88.60%)を得た。
【0492】
LC-MS (ESI+): 220 ([M+H]+).
【0493】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:92.46%。
【0494】
テトラヒドロフラン(8.5mL)中のLiAlH4(58.8mg、1.55mmol、2.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でテトラヒドロフラン(1.5mL)中の2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセティック-2,2-d2アシッド(170.0mg、0.77mmol、1.00当量)の溶液を滴下した。得られた混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで、テトラヒドロフラン(20mL)で希釈し、0℃のNa2SO4・10H2Oでクエンチした。得られた混合物をろ過し、ろ過ケーキをテトラヒドロフラン(2×20mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮した。これにより淡黄色固体として2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-2,2-d2-1-オール(155mg、97.39%)を得た。
【0495】
LC-MS (ESI+): 206 ([M+H]+).
【0496】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:92.12%。
【0497】
テトラヒドロフラン(6mL)中の2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-2,2-d2-1-オール(60.0mg、0.29mmol、1.00当量)、メチル3-(4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-2-メトキシプロパノエート(51.3mg、0.19mmol、0.66当量)およびPPh3(153.3mg、0.58mmol、2.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でテトラヒドロフラン(0.5mL)中のジエチルアゾジカルボキシレート(101.8mg、0.58mmol、2.00当量)を滴下した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで、H2O(20mL)でクエンチした。得られた混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNaCl水(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を分取TLC(石油エーテル/酢酸エチル、4:1)で精製し、淡黄色固体としてメチル2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-2,2-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(20.0mg、15.0%)を得た。
【0498】
LC-MS (ESI+): 454 ([M+H]+).
【0499】
テトラヒドロフラン(4mL)およびH2O(2mL)中のメチル2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-2,2-d2)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(20.0mg、0.044mmol、1.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でLiOH(4.2mg、0.17mmol、4.00当量)を加えた。室温で1時間撹拌した後、得られた混合物をH2O(10mL)で希釈し、1N HCl(aq)でpH=4まで酸性化した。混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNaCl水(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物(18mg)を以下の条件(カラム:CHIRALPAK IG、2*25cm、5μm;移動相A:HEX:MTBE=1:1(0.2%FA)-HPLC、移動相B:IPA--HPLC;流量:20mL/分;勾配:15.5分で6%B~6%B;波長:220/254nm;RT1(分):11.8;RT2(分):14.1;試料溶剤:EtOH--HPLC;注入体積:0.3mL;実行回数:7)の分取キラルHPLCで精製し、白色固体として初期の画分(3.2mg、16.5%)および白色固体として後期の画分(3.1mg、15.9%)を得た。
【0500】
LC-MS (ESI+): 440 ([M+H]+).
【0501】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:92.17%。
【0502】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):>99.99%ee。
【0503】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 8.38 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.68 - 7.58 (m, 3H), 7.40 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.23 (m, 1H), 7.15 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.58 (s, 2H), 4.18 (dd, J = 8.1, 4.3 Hz, 1H), 3.35 (dd, J = 14.6, 4.2 Hz, 1H), 3.32 (s, 3H), 3.18 (dd, J = 14.7, 8.1 Hz, 1H), 2.53 (s, 3H).
【0504】
[実施例12]化合物12の合成
【0505】
【0506】
プロセス説明
THF(2.5mL)中のLiAlD4(53.9mg、1.28mmol、2当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でメチル2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)アセテート-d2(150.0mg、0.64mmol、1.00当量)を滴下した。得られた溶液を0℃で1時間撹拌し、次いで、THF(20mL)で希釈し、0℃のNa2SO4・10H2Oでクエンチした。得られた溶液をNa2SO4で乾燥させてろ過した。ろ過ケーキをTHF(2×20mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮した。これにより淡黄色固体として2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1,2,2-d4-1-オール(140mg、105.04%、粗製)を得た。
【0507】
LC-MS (ESI+): 208 ([M+H]+).
【0508】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:95.59%。
【0509】
THF(3mL)中の2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エタン-1,1,2,2-d4-1-オール(60.0mg、0.28mmol、1.00当量)、メチル3-(4-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-7-イル)-2-メトキシプロパノエート(50.8mg、0.19mmol、0.66当量)およびPPh3(151.8mg、0.57mmol、2当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でTHF(0.5mL)中のジエチルアゾジカルボキシレート(100.83mg、0.578mmol、2当量)を滴下した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、次いで、H2O(10mL)でクエンチし、EtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNaCl水(1×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ過ケーキを減圧下で濃縮した。残留物を分取TLC(石油エーテル/酢酸エチル、4:1)で精製し、淡黄色固体としてメチル2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1,2,2-d4)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(28mg、21.23%)を得た。
【0510】
LC-MS (ESI+): 456 ([M+H]+).
【0511】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:95.41%。
【0512】
テトラヒドロフラン(4mL)およびH2O(2mL)中のメチル2-メトキシ-3-(4-(2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ-1,1,2,2-d4)ベンゾ[b]チオフェン-7-イル)プロパノエート(28mg、0.061mmol、1.00当量)の撹拌した溶液に、N2雰囲気下、0℃でLiOH(5.8mg、0.244mmol、4.00当量)を加えた。室温で2時間撹拌した後、得られた混合物をH2O(10mL)で希釈し、1N HCl(aq)でpHを4まで酸性化した。得られた混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNaCl水(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物(22mg)を以下の条件(カラム:CHIRALPAK IG、2*25cm、5μm;移動相A:HEX:MtBE=1:1(0.2%FA)-HPLC、移動相B:IPA--HPLC;流量:20mL/分;勾配:16分で6%B~6%B;波長:220/254nm;RT1(分):11.7;RT2(分):14.3;試料溶剤:EtOH--HPLC;注入体積:0.3mL;実行回数:7)の分取キラルHPLCで精製し、白色固体として初期の画分(8.7mg、32.06%)および白色固体として後期の画分(7.3mg、26.90%)を得た。
【0513】
LC-MS (ESI+): 442 ([M+H]+).
【0514】
LC-MS(ESI+)によるD/H比:95.57%。
【0515】
キラルHPLC(Chiralpak AD-3 4.6mm*250mm 3μm、90%ヘキサン/9.99%EtOH/0.01%TFA、210nm):>99.99%ee。
【0516】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.06 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 7.53 - 7.44 (m, 4H), 7.35 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.22 (dd, J = 8.0, 4.4 Hz, 1H), 3.43 - 3.35 (m, 1H), 3.36 (s, 3H), 3.22 (dd, J = 14.7, 8.0 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H).
【0517】
[実施例13]ルシフェラーゼリポーターシステムによるPPARα/PPARγ活性に対する化合物の評価
HEK293T細胞の培養は、ATCCの培養指針に従った。細胞が増殖の対数期にあるときに実験を行った。合計6×106の細胞を60mmの細胞培養ディッシュにまき、37℃、5%CO2にて一晩培養した。Lipofectamine(登録商標)3000とのトランスフェクション試薬を、プラスミドの組み合わせ(pGL4.35[luc2P/9XGAL4 UAS/Hygro]、pBIND-RXRα、およびpBIND-PPPARαの混合物、またはpGL4.35[luc2P/9XGAL4 UAS/Hygro]、pBIND-RXRα、およびpBIND-PPPARγの混合物)と混合し、次いで、ディッシュに加えた。37℃、5%CO2にて5時間培養した後、細胞をトリプシン処理し、384-ウェルのアッセイプレートにまき、その後、37℃、5%CO2にて一晩、一連の濃度で試験化合物と培養した。次の日、細胞を溶解し、Steady-GloTM Luciferase Assay Systemによりルシフェラーゼを活性化した。ルシフェラーゼアッセイからの発光シグナルをEnvision HTS/2105により測定した。ペルオキシソーム増殖剤活性化転写がルシフェラーゼの発現を制御することから、試験化合物のアゴニスト活性を発光強度により定量化することができる。試験化合物のEC50値を、Graphpad 8.0を用いてPPARα/γアゴニスト効力について計算し、結果を表1に示した。PPARαまたはPPARγに対する化合物の選択性をPPARγ EC50/PPARα EC50として表した。
【0518】
【0519】
[実施例14]高コレステロール食により誘発される脂質異常症のラットモデルに対する本明細書で提供される化合物の効果
14.1 実験材料
6~8週齢の42匹のSprague-Dawleyラット;供給源:SPF(Beijing)Biotechnology Co.,Ltd.;動物証明書番号:110324201104469613。
【0520】
14.2 実験方法
14.2.1 高コレステロール食(ASHF4)を用い、SDラットにおいて脂質異常症の動物モデルを誘導した。
【0521】
14.2.2 雄のSDラットに、14日間、高コレステロール食(ASHF4、Dyet、China)を与えた。投与開始の前日(0日目)、動物を体重および血清指標に基づいて7つの群に分け、高コレステロール食を与え続けた。処置群には、合計1週間、高コレステロール食を続けながら、化合物またはビヒクルのいずれかを経口投与した。動物は処置前に毎日体重を測定し、その日の体重に基づいて朝9:00~9:30に化合物を与えた。特定の群分けおよび投与計画を表2に示した。
【0522】
【0523】
製剤。製剤を週に2回調製した。1.ビヒクル:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム。5gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを900mlのddH2Oに加え、完全に溶解するまで撹拌し、次いで、ddH2Oで1000mlまで満たした。2.0.6mg/kg投与のための作用溶液:0.12mg/mlの作用溶液。12mgの化合物を100mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムに加え、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。3.0.2mg/kg投与のための作用溶液:0.04mg/mlの作用溶液。30mlの0.12mg/mlの化合物溶液を、60mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。
【0524】
14.2.3 処置の前日および実験の最終日の終わりに、動物の血液を回収し、血清脂質指標の分析のために血清を分離した。
【0525】
14.2.4 トリグリセリド(TG)および遊離脂肪酸(NEFA)の血清指標を自動血液生化学分析装置により決定した。
【0526】
14.3 結果
血清脂質分析は、処置の7日後(8日目)、ビヒクル群と比べて、アレグリタザール、化合物2、および化合物4がすべて、0.2mg/kgおよび0.6mg/kgの両方の投与レベルで、血清TGレベルおよび血清NEFAレベルを有意に低減できることを示した。動物の血清のTGおよびNEFAを
図1Aおよび1Bに示し、それらの数値を表3および4にそれぞれ示した。実験の間、異常な臨床観察はなかった。比較目的で、GraphPad 8.0ソフトウェアパッケージを用いて、0.2mg/kgの投与量のそれぞれの化合物の結果についてT検定の統計分析を行った。0.2mg/kgの投与レベルで、アレグリタザールと比べて、化合物2はTGおよびNEFAを有意に低減することができ(P<0.05)、化合物4はNEFAを有意に低減することができた(P<0.05)。
【0527】
【0528】
【0529】
[実施例15]ICRマウスの体重に対する7日連続の経口強制投与の効果
15.1 実験材料
6~8週齢の70匹の雄のICRマウス;供給源:Laboratory Animal Business Department、Shanghai Institute of Planned Parenthood Research。
【0530】
15.2 方法
順化の3日後、ICRマウスを体重に従って群分けした。群分けの日を0日目として指定した。群分けの後、1日当たり1回の7日連続の経口強制投与により、ビヒクルまたは化合物のいずれかを投与した。投与量および群分けを表5に示した。動物の体重を毎日測定して記録した。
【0531】
【0532】
製剤。製剤を週に2回調製した。1.ビヒクル:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム。2.5gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを量り、500mlのddH2Oと混合し、完全に溶解するまで撹拌した。2.1mg/kg投与のための作用溶液:0.1mg/mlの作用溶液。3mgの化合物を30mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムに加え、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。3.0.2mg/kg投与のための作用溶液:0.02mg/mlの作用溶液。6mlの0.1mg/mlの化合物溶液を、24mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。
【0533】
15.3 結果
ICRマウスの体重変化に対する化合物の効果を表6および
図2Aに示した。実験の間、動物の体重は時間とともに徐々に増加した。0.2mg/kg(4日目および5日目)および1mg/kg(6日目)の投与量でのアレグリタザール群の毎日の平均体重増加は、ビヒクル群よりも有意に大きかった。ビヒクル群と比べて、0.2mg/kgの低い投与量での化合物2群の毎日の体重増加は、研究を通して有意な差はなかった。1mg/kgの高い投与量での(4日目および5日目)化合物2群の毎日の平均体重増加は、ビヒクル群よりも有意に大きかった。1mg/kgの投与量での化合物4および10の体重増加は、それぞれ、4日目~7日目にビヒクル群よりも有意に大きかった。完全なデータを表6に示した。比較目的で、それぞれの治療群からビヒクル群の平均体重増加を差し引くことで得られる、処置の正味の体重増加を計算し、
図2Bに示した。
【0534】
【0535】
[実施例16]db/db II型糖尿病モデルに対する本明細書で提供される化合物の薬力学的研究
16.1 実験材料
【0536】
【0537】
16.2 実験方法
16.2.1 実験における群分け:6匹のWildマウスを対照群として用いた(群1)。45匹のDb/dbマウスを、体重、血清トリグリセリド(TG)レベル、およびランダム血液グルコースレベルに基づいて処置の開始前に5群に均等に分けた。
【0538】
16.2.2 製剤。製剤を週に2回調製した。1.ビヒクル:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム。2.5gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを量り、完全に溶解するまで500mlのddH2Oと混合した。2.1mg/kg投与のための作用溶液:0.1mg/mlの作用溶液。3mgの化合物を30mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムに加え、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。3.0.2mg/kg投与のための作用溶液:0.02mg/mlの作用溶液。6mlの0.1mg/mlの化合物溶液を、24mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。4.0.05mg/kg投与のための作用溶液:0.005mg/mlの作用溶液。6mlの0.02mg/mlの化合物溶液を、18mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。
【0539】
16.2.3 投与:動物を群分けに従い経口投与した:ビヒクル(群2)、0.2mg/kgの投与レベルでのアレグリタザール(群3)、および0.05mg/kg(群4)、0.2mg/kg(群5)または1mg/kg(群6)のいずれかの投与レベルでの化合物2。すべての動物の体重をそれぞれの投与前に毎日測定し、14日連続して毎日処置した。
【0540】
16.2.4 研究結果は、研究を通しての毎日の体重;研究の6日目および12日目の投与前の血清TGレベル;研究の7日目および14日目の投与前のランダム血液グルコースレベル;ならびに研究の14日目に行われた経口耐糖能試験(OGTT)からの結果を含む。
【0541】
16.3 データ分析
すべてのデータをExcelファイルに取り込み、平均±SEMとして示した。One-wayまたはTwo-way ANOVAによるデータの統計分析のためにGraphpad Prism 7.0ソフトウェアを用い、P<0.05を有意差の基準とした。
【0542】
16.4 実験結果
アレグリタザールおよび化合物2のすべての群の両方が、ビヒクル群と比べた場合、脂質、遊離脂肪酸および血液グルコースのレベルを有意に低下させ、体重を有意に増加させた。
【0543】
16.4.1 動物の体重
アレグリタザールおよび異なる投与量の化合物2で処置されたdb/dbモデル動物の体重変化を
図3に示す。
図3に示すように、アレグリタザールの投与群(0.2mg/kg)および化合物2の投与群(0.05mg/kg、0.2mg/kg、1mg/kg)の動物の体重は、実験の間、時間とともに徐々に増加し、毎日の平均体重(10日目~15日目)はすべてビヒクル群よりも有意に大きかった。
【0544】
16.4.2 動物の血液の生化学的指標
動物の血液の生化学的指標であるTGを6日目および12日目に測定し、結果を
図4Aおよび4Bに示した。
図4Aおよび4Bに示すように、アレグリタザールまたは異なる投与量での化合物2のいずれかで処置された群の血清TGレベルは、6日目および12日目のビヒクル群よりも有意に低く、最大の効果は群6で観察された(化合物2、1mg/kg)。
【0545】
16.4.3 ランダム血液グルコース
実験期間のdb/dbモデル動物のランダム血液グルコースに対するアレグリタザールおよび異なる投与量の化合物2の効果を、
図5に示した。ビヒクル群と比べて、アレグリタザールまたは異なる投与量の化合物2のいずれかにより処置された動物のランダム血液グルコースレベルは、7日目に低下した。そのような低下は、群3(アレグリタザール、0.2mg/kg)および群6(化合物2、1mg/kg)で統計的有意性に達したが、群4および5(化合物2、0.05mg/kgおよび0.2mg/kg)では達しなかった。14日目に、血液グルコース低下のより顕著な効果が、7日目と比べて群2(ビヒクル)に対して群6(化合物2、1mg/kg)で観察されたが、群3および5(アレグリタザール、0.2mg/kg、および化合物2、0.2mg/kg)は同様の効果を示した。一方、群3(化合物2、0.05mg/kg)のそのような効果は、やはり統計的有意性に達しなかった。従って、化合物2は、アレグリタザールと比べた場合、血液グルコースの低下に対してわずかに弱い効果を有した(表7)。
【0546】
【0547】
16.4.4 動物における耐糖能試験
実験の終わりに、異なる化合物で処置されたdb/db動物に対して経口耐糖能試験を行った。試験後120分以内で、それぞれの時点での血液グルコース値および血液グルコース-時間曲線下の面積を
図6Aおよび6Bに示した。ビヒクル群と比べて、アレグリタザールおよび異なる投与量の化合物2の両方の血液グルコースレベルが、それぞれの時点で有意に低下した。なかでも、試験品アレグリタザール(0.2mg/kg、P<0.001)および化合物2(0.2mg/kg、P<0.01および1mg/kg、P<0.0001)のAUC
0-120分が、ビヒクル群よりも有意に低かった。更に、アレグリタザールと比べた場合、同じ投与レベル(0.2mg/kg)の化合物2のAUC
0-120分がより高く、より低いPPARγ活性を示した。更に、群4(化合物2、0.05mg/kg)の結果は減少傾向を示したが、ビヒクル群と比べた場合、すべての時点で統計的有意性に達しなかった。
【0548】
【0549】
16.5 考察
本開示において、我々は、より良いα/γ活性を有する新規化合物、即ち化合物2を得た。
【0550】
インビトロ転写活性実験は、PPARαおよびPPARγ経路を活性化する化合物のEC50がナノモルレベルであり、化合物2が良好なインビトロ生物活性を有することを示した。アレグリタザールと比べて、化合物2は優れたPPARαアゴニスト活性およびより弱いPPARγアゴニスト能を示した。
【0551】
脂質異常症ラットモデル実験は、化合物2および化合物4が動物において血中脂質レベルを効果的かつ有意に低減できたことを示した。更に、低用量レベルでの化合物2および化合物4は、対応する濃度のアレグリタザールよりも良好な血中脂質低減効果を有していた。従って、結果は、化合物2および化合物4が低用量レベルでより良好なPPARα活性を有し、より良好な脂質低減効果をもたらすことを示した。
【0552】
ICRマウス体重実験は、低用量レベルの化合物2による処置後、動物の体重が、有意な変化のない対照群に匹敵したことを示した。これに対し、同じ用量レベルのアレグリタザールは体重の有意な増加をもたらした。体重増加はPPARγのよく知られた副作用であることから、このことは、低用量レベルで化合物のPPARγ活性がアレグリタザールよりも弱かったことを示した。
【0553】
db/dbマウスの研究は、化合物2がII型糖尿病マウスにおいて血液グルコースレベルおよびトリグリセリド含有量を効果的に低減できたことを示した。このことは、化合物2がPPARγのインビトロ生物学的効果を示し、血液グルコースを制御できることを示した。更に、同じ用量レベルの化合物2は、アレグリタザールと同様の血液グルコース低下効果を得ることができる。従って、化合物2のPPARγ経路に対するアゴニスト作用は、グルコースホメオスタシスの制御を得るのに十分である。
【0554】
[実施例17]糖尿病性ネフロパシーの薬力学的モデル
17.1 実験方法
17.1.1 動物:5週齢の野生型マウスおよびdb/db:BLKS雄マウスをJiangsu GemPharmatech,Co.,Ltdから購入した。動物を12時間の明/暗サイクルにてSPF環境で飼育した。飼育温度を22~26℃に、湿度を40%~60%に維持した。マウスを自由に食事および水が取れるようにした。6週齢で、db/dbマウスを2.5%イソペンタンで麻酔し、右側腎臓を除去する一側腎摘出術に供した。術後にブプレノルフィンを適用した。
【0555】
17.1.2 手順。術後2週間で、db/dbマウスを無作為に5群に割り当てた。野生型マウスを対照動物として用いた。ここで合計5つの動物群をこの研究に含めた:群1、ビヒクルを投与する6匹の動物の対照群;群2、ビヒクルを投与する10匹の動物のビヒクル群;群3、0.1mg/kgの化合物2を投与する10匹の動物の化合物-低群;群4、0.3mg/kgの化合物2を経口投与する10匹の動物の化合物-中程度群;および群5、1mg/kgの化合物2を投与する10匹の動物の化合物-高群。化合物は10週間、1日当たり1回経口投与した。
【0556】
17.1.3 製剤。製剤を週に2回調製した。1.ビヒクル:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム。2.5gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを量り、完全に溶解するまで500mlのddH2Oと混合した。2.1mg/kg投与のための作用溶液:0.2mg/mlの作用溶液。6mgの化合物を30mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムに加え、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。3.0.3mg/kg投与のための作用溶液:0.06mg/mlの作用溶液。6mlの0.1mg/mlの化合物溶液を、14mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。4.0.1mg/kg投与のための作用溶液:0.02mg/mlの作用溶液。2mlの0.2mg/mlの化合物溶液を、18mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。
【0557】
化合物投与後の第5週および第9週に、マウスを採尿のために代謝ケージに入れた。アルブミンレベルを24時間アルブミン排せつの計算のために測定した。処置後の第10週に、動物を腎臓の解剖のために屠殺した。腎臓を10%中性緩衝ホルマリンに固定し、次いで、病理組織学的分析のためにパラフィン包埋した。糸球体基底膜、メサンギウム拡大、結節性硬化症および糸球体硬化症を評価することにより、糸球体硬化症を判定した。重症度を以下のように格付けした;0:正常;1:糸球体基底膜の肥厚:光学顕微鏡検査による単離した糸球体基底膜の肥厚および軽度の非特異的な変化;2:軽度(IIa)または重度(IIb)のメサンギウム拡大:軽度または重度のメサンギウム拡大があるが、結節性硬化症または糸球体の50%を超える広範囲の糸球体硬化症はない糸球体;3:結節性硬化症:メサンギウム基質に結節性増大のある少なくとも1つの糸球体;4:進行した糖尿病性糸球体硬化症:硬化が糖尿病性ネフロパシーに起因するという他の臨床的または病理組織学的な証拠のある50%を超える広範囲の糸球体硬化症。尿細管損傷を以下のように採点した:0:明らかな病変なし;1:25%までの尿細管病変の関与;2:尿細管の25%~50%の病変;3:50%~75%の尿細管病変および4級:>75%の尿細管病変。
【0558】
17.1.4 データは平均±SEMで示した。統計的分析にGraphpad 8.0ソフトウェアを用いた。値間の差はone-way ANOVAにより分析した。病理組織学的スコア間の差はKruskal-Wallisノンパラメトリック検定により分析した。すべての値を群2と比較した。
【0559】
17.2 結果。1.24時間尿中アルブミン。ビヒクルで処置した一側腎摘出術を施していないdb/dbマウスでは、24時間尿中アルブミンが対照と比べて10倍を超えて増加した。化合物2は、化合物投与後の第5週および第9週に24時間尿中アルブミンを有意に低減した。尿中アルブミンの50%を超える低減が化合物2の処置で得られた(
図7)。2.糸球体硬化症。
図8Aに示すように、対照動物は正常な糸球体外観および糸球体体積を有する。しかしながら、ビヒクルで処置したdb/db動物においてはメサンギウム拡大、糸球体基底膜の肥厚および結節性硬化症が観察された。化合物2は、糸球体損傷を抑制し、糸球体肥大を改善した。動物が高用量の化合物2を与えられた後、病理組織学的スコアおよび糸球体体積の両方が統計的に有意に低下した(
図8Bおよび8C)。3.尿細管損傷。病理組織学的分析は、対照動物は正常な尿細管構造を有するが、ビヒクルで処置した動物は尿細管拡張、基底膜の肥厚/尿細管委縮および尿細管円柱が進行したことを示した。すべての投与量レベルの化合物2がある程度尿細管損傷を改善した(
図8D)。
【0560】
[実施例18]片側尿管閉塞のラットモデルにおける腎損傷の改善に対する化合物2の効果
18.1 実験方法
18.1.1 240~260gの体重の雄SDラットを12時間の明/暗サイクルにてSPF環境で飼育した。飼育温度を22~26℃に、湿度を40%~60%に維持した。ラットに標準的な食事を与え、自由に食事および水が取れるようにした。
【0561】
18.1.2 製剤。製剤を週に2回調製した。1.ビヒクル:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムを、17.1.3に記載のように調製した。2.化合物2およびアレグリタザールのいずれかの0.2mg/mlの溶液。6mgの化合物を30mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムに加え、次いで、十分に懸濁するまでボルテックスした。3.0.2mg/kgの投与のための化合物2およびアレグリタザールのいずれかの0.02mg/mlの溶液。2mlの0.2mg/mlの溶液を、18mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、次いで、十分に懸濁するまで撹拌した。
【0562】
18.1.3 手順。順化後、動物を無作為に以下の群に割り当てた:10ml/kgのビヒクルを投与する8匹のラットの対照群;10ml/kgのビヒクルを投与する10匹のラットのモデル群、0.2mg/kgのアレグリタザールを投与する10匹の動物の参照群;および0.2mg/kgの化合物2を投与する10匹の動物の化合物群。ビヒクルまたは化合物を毎日、経口強制投与した。化合物処置の2日目に片側尿管閉塞を行った。化合物投与後1時間に、モデル群、参照群および化合物群の動物に、イソフルラン麻酔下で尿道結紮を行った。側腹切開を行って左側尿管を露出させ、4-0外科縫合糸を用い、2箇所の結紮を行って尿管閉塞を得た。2箇所の結紮点の間で尿管を切断した。対照群の動物を、結紮および切断を除いて同じ外科処置に供した。外科処置後、それぞれの群の動物に、12日以上、合計で14処置日の間、ビヒクルまたは化合物を与え続けた。
【0563】
14日の化合物処置後、ラットを屠殺した。閉塞した腎を量り、組織学のために回収した。組織試料をホルマリンで固定し、次いで、パラフィン包埋した。包埋した組織を薄片にしてヘマトキシリンおよびエオシンならびにマッソントリクロームで染色し、腎構造および線維症を判定した。局所性病変は亀裂、尿細管拡張、尿細管閉塞および壊死を含み、生検の病変領域のパーセンテージとしてそれぞれ0から4の間のスコアを与えた(スコア0:No,1:<25%;2:25%~50%、3:50%~75%、4:>75%)。腎損傷の重症度を病変の合計スコアにより評価した。腎線維症をマッソントリクロームで染色された領域のパーセンテージに基づいて0~4として格付けした(スコア0:No,1:<25%;2:25%~50%、3:50%~75%、4:>75%)。
【0564】
18.1.4 データは平均±SEMで示した。多重比較をKruskal-Wallisノンパラメトリック検定により分析した。モデル群との差を比較するためにダネット検定を用いた。p値<0.05を統計的に有意であると見なした。
【0565】
18.1.5 結果。ビヒクルを投与したモデル群と比べた場合、0.2mg/kgの化合物2は、腎臓局所性病変、被覆亀裂、尿細管拡張、尿細管閉塞、線維症、および壊死からなる合計スコアを有意に改善した(
図9)。一方、参照化合物であるアレグリタザールは、0.2mg/kgの同じ用量の合計スコアにおいて統計的に有意な改善は得られなかった。従って、化合物2は、片側尿管閉塞により引き起こされる腎損傷の予防および軽減においてアレグリタザールよりも優れている。
【0566】
本明細書で開示および請求されたすべての組成物および方法は、本開示に照らして過度の実験をすることなく作り上げ、行うことができる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態の観点から記載されているが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法に対して、および方法における工程または一連の工程において、バリエーションが適用されうることが当業者には明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある物質が、同じかまたは同様の結果が得られながら本明細書に記載された物質を置換しうることが明らかである。すべてのそのような同様の置換および改良は当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲により規定された本発明の趣旨、範囲および概念内にあると見なされる。
【国際調査報告】