(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体及びTGF-βRを含む融合タンパク質、並びにその医薬組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240903BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240903BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240903BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240903BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240903BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240903BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240903BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/62 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C07K16/30
C07K14/715
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P37/04
A61K47/68
A61K39/395 U
A61K38/17
A61K45/00
A61K31/4709
A61K31/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509425
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2022113882
(87)【国際公開番号】W WO2023020625
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110961038.5
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ワン チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ポン
(72)【発明者】
【氏名】リー パイヨン
(72)【発明者】
【氏名】シア ユイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
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4C084ZB021
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4C085BB41
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4C085DD63
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4C085GG06
4C086AA01
4C086BC28
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA14
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4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
抗TIGIT抗体及びTGF-βRを含む融合タンパク質、並びにその医薬組成物及び使用。具体的には、TIGITを標的とする第1タンパク質機能領域;及びTGF-β結合活性を有する第2タンパク質機能領域;を含む融合タンパク質であって、前記第1タンパク質機能領域が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり;前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号3~5のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号8~10のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;融合タンパク質が開示される。融合タンパク質は、TIGITの阻害及びTGF-β濃度の減少を同時に可能にし、抗腫瘍薬の調製に対して優れた潜在能力を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIGITを標的とする第1タンパク質機能領域;及び
TGF-β結合活性を有する第2タンパク質機能領域;
を含む融合タンパク質であって、
前記第1タンパク質機能領域が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号3~5のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号8~10のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;
融合タンパク質。
【請求項2】
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号15、及び配列番号17から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記抗TIGIT抗体の軽鎖可変領域が、配列番号6、配列番号19、配列番号21、配列番号23、及び配列番号25から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質であって、
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号19のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号19のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号21のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号21のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号25のアミノ酸配列を含む;又は、
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号25のアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びダイアボディ(diabody)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記抗TIGIT抗体が、マウス以外の種に由来する、例えばヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記抗TIGIT抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01857等)又はIgガンマ-4鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01861.1等)であり、前記抗TIGIT抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01834等)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
リガンドCD155-hFc-ビオチンに対する結合能が対照抗体RG6058(hG4)よりも高い、請求項1~6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記融合タンパク質が、TIGIT-mFcに対し、0.08nM未満又は0.10nM未満のEC
50で結合し;好ましくは前記EC
50が間接ELISAによって測定される;請求項1~7のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質が、TGF-β1、TGF-β2、又はTGF-β3に対し、0.3nM未満、0.4nM未満、0.5nM未満、又は0.6nM未満のEC
50で結合し、好ましくは前記EC
50が間接ELISAによって測定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記抗TIGIT抗体が、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)においてCCTCC番号C2020208で寄託されているハイブリドーマ細胞株LT019によって製造される抗体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗TIGIT抗体の重鎖定常領域が、EU番号方式に基づき、次の変異の組み合わせ:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は、
L234A、L235A、及びG237A;
の1つを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記第2タンパク質機能領域が、TGF-β受容体、その細胞外領域、又はTGF-β受容体機能を有するTGF-β受容体細胞外領域の短縮断片であり;
好ましくは、前記TGF-β受容体が、TGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIであるか、TGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIの細胞外領域であるか、又はTGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIの細胞外領域の短縮断片であり;
好ましくは、前記第2タンパク質機能領域が、配列番号33~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含む;
請求項1~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記抗TIGIT抗体の重鎖が配列番号27又は配列番号31のアミノ酸配列を含み、軽鎖が配列番号29のアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記第1タンパク質機能領域と前記第2タンパク質機能領域とが直接又はリンカー断片を介して連結している、請求項1~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記リンカー断片が(GGGGS)n又は(GGGGS)nGであり、nが正の整数であり、好ましくはnが1、2、3、4、5、又は6である、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域の数が、それぞれ独立に1個、2個、又はそれよりも多い個数である、請求項1~15のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記TGF-β受容体又はその細胞外断片が、前記抗TIGIT抗体の重鎖のC末端に連結している、請求項1~16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
TIGITを標的とする第1タンパク質機能領域;及び
TGF-β結合活性を有する第2タンパク質機能領域;
を含む融合タンパク質であって、
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり、前記第2タンパク質機能領域が、TGF-β受容体、その細胞外領域、又はTGF-β受容体機能を有するTGF-β受容体細胞外領域の短縮断片であり;
前記抗TIGIT抗体の重鎖が、配列番号27又は配列番号31のアミノ酸配列を含み、軽鎖が配列番号29のアミノ酸配列を含み;
前記第2タンパク質機能領域が、配列番号33のアミノ酸配列を含み;
前記第2タンパク質機能領域が、前記抗TIGIT抗体の重鎖のC末端にリンカー断片を介して連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が配列番号44のアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする、単離核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の単離核酸分子を含む、ベクター。
【請求項21】
請求項19に記載の単離核酸分子又は請求項20に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項22】
融合タンパク質部分及び結合物部分(conjugated moiety)を含む複合体であって、前記融合タンパク質部分が請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質であり、前記結合物部分が検出可能な標識であり、好ましくは前記結合物部分が放射性同位体、蛍光物質、発光物質、着色物質、又は酵素である、複合体。
【請求項23】
試料中のTIGIT及び/又はTGF-βの存在又は濃度を検出するためのキットの調製における、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は請求項22に記載の複合体の使用。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は請求項22に記載の複合体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項25】
1つ又は複数の抗腫瘍化学療法薬をさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物であって、好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬がチロシンキナーゼ阻害剤であり、より好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬がアンロチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(塩酸塩等)、又はレンバチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(メシル酸塩等)である、医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物の単位用量が、前記融合タンパク質の質量ベースで100mg~1500mg、200mg~1000mg、200mg~800mg、300mg~600mg、400mg~500mg、又は450mgである、請求項24又は25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
別個のパッケージ内の第1製品及び第2製品を含む組合せ製品であって、
前記第1製品が、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項22に記載の複合体、又は請求項24~26のいずれか1項に記載の医薬組成物を含み;
前記第2製品が、1つ又は複数の抗腫瘍化学療法薬を含み、好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬が、チロシンキナーゼ阻害剤であり、より好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬が、アンロチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(塩酸塩等)、又はレンバチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(メシル酸塩等)であり;
好ましくは、前記第1製品及び前記第2製品が、独立に、1つ又は複数の薬理学的に許容される副原料をさらに含み;
好ましくは、前記組合せ製品がさらに添付文書を含む;
組合せ製品。
【請求項28】
前記第1製品の単位用量が、前記融合タンパク質の質量ベースで100mg~1500mg、200mg~1000mg、200mg~800mg、300mg~600mg、400mg~500mg、又は450mgである、請求項27に記載の組合せ製品。
【請求項29】
前記第2製品の単位用量が、活性成分の質量ベースで0.1mg~100mg、0.5mg~50mg、1mg~20mg、2mg~15mg、4mg~12mg又は8mg~12mgである、請求項27又は28に記載の組合せ製品。
【請求項30】
腫瘍の治療及び/又は予防のための薬剤の調製における、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は請求項22に記載の複合体の使用であって、
好ましくは、前記腫瘍が、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんが進行性非小細胞肺がんである;
使用。
【請求項31】
腫瘍の治療及び/又は予防における使用のための、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は請求項22に記載の複合体であって、
好ましくは、前記腫瘍が、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんが進行性非小細胞肺がんである;
融合タンパク質又は複合体。
【請求項32】
腫瘍を治療及び/又は予防するための方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は請求項22に記載の複合体の有効量を、前記治療及び/又は予防を必要とする対象に投与する工程を含み;
好ましくは、前記腫瘍が、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんが進行性非小細胞肺がんである;
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に属し、抗TIGIT抗体及びTGF-βRを含む融合タンパク質、並びにその医薬組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
TIGIT(T細胞Ig及びITIMドメイン;WUCAM、Vstm3、又はVSIG9としても知られる)は、ポリオウイルス受容体(PVR)/ネクチンファミリーのメンバーである。TIGITは、細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)ドメイン、I型膜貫通ドメイン、並びに、古典的な免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)及び免疫グロブリンテールチロシン(ITT)モチーフを有する細胞内ドメインからなる。TIGITは、リンパ球において、特に、エフェクター及び制御CD4+ T細胞(Treg細胞)、濾胞ヘルパーCD4+ T細胞、エフェクターCD8+ T細胞や、ナチュラルキラー(NK)細胞において、特に高度に発現している(Yu X, Harden K, Gonzalez L C, et al., The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells.[J]. Nature immunology, 2009, 10(1):48)。
【0003】
CD155(PVR、Necl5、又はTage4としても知られる)、CD112(PVRL2/ネクチン2としても知られる)、及びCD113(PVRL3としても知られる)は、TIGITが結合するリガンドであり(Martinet L, Smyth M J., Balancing natural killer cell activation through paired receptors.[J]. Nature Reviews Immunology, 2015, 15(4):243-254)、これらのうちCD155はTIGITに対する高親和性のリガンドである。NK細胞では、TIGITがリガンドCD155及びCD112へ結合すると、CD155及びCD112高発現細胞に対するNK細胞の殺傷効果が阻害される(Stanietsky N, Simic H, Arapovic J, et al., The interaction of TIGIT with PVR and PVRL2 inhibits human NK cell cytotoxicity.[J]. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2009, 106(42):17858-17863)。CD8+ T細胞の殺傷効果は、PD-1及びTIGITが同時にブロックされた場合に増強されることが報告されている(Johnston R J, Comps-Agrar L, Hackney J, et al., The immunoreceptor TIGIT regulates antitumor and antiviral CD8+ T cell effector function.[J]. Cancer cell, 2014, 26(6):923-937)。近年の研究では、NK細胞の免疫チェックポイントとしてのTIGITが、腫瘍増殖過程においてNK細胞の消耗をもたらしうることが明らかになっている。また、抗TIGITモノクローナル抗体によってNK細胞の消耗を逆転させることが可能であり、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、及び形質細胞腫などの各種腫瘍の免疫療法にそれら抗体を利用できることが示されている(Zhang Q, Bi J, Zheng X, et al., Blockade of the checkpoint receptor TIGIT prevents NK cell exhaustion and elicits potent anti-tumor immunity.[J]. Nature immunology, 2018, 19(7):723-732)。
【0004】
さらに、TIGITブロッカーは単独で、又はそれをPD-1ブロッカー及びCD96ブロッカーと組み合わせることで、野生型及びCD155-/-マウスモデルのB16メラノーマの増殖を有意に減少させうることが報告された(Li X-Y, Das I, Lepletier A, et al., CD155 loss enhances tumor suppression via combined host and tumor-intrinsic mechanisms. J Clin Invest, 2018, 128:2613-25)。CD112Rブロッカーは単独で、又はそれにTIGITブロッカー及び/又はPD-1ブロッカーを組み合わせることで、卵巣がん、子宮内膜がん、及び肺腫瘍におけるTILのサイトカイン産生能を高めることができた(Whelan S, Ophir E, Kotturi MF, et al., PVRIG and PVRL2 Are Induced in Cancer and Inhibit CD8+ T-cell function. Cancer Immunol Res, 2019, 7:257-68)。
【0005】
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは機能的に多様なサイトカインのクラスであり、さらにTGF-β、アクチビン、インヒビン、増殖分化因子(GDF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、Nodal、Lefty、及び抗Mullerianホルモンなどのサブファミリーに分けられる(表A)。TGF-βサブファミリーには3種のタンパク質、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3がそれぞれ知られており、中でもTGF-β1が最も高発現のサブタイプである。TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3が受容体に結合すると、Smad及び非Smadシグナル伝達経路を介して多様な生物学的応答が媒介される。その例として、上皮間葉移行(EMT)、組織線維化促進(pro-tissue fibrosis)、血管新生促進(pro-angiogenesis)、腫瘍促進性免疫回避、並びに、がん阻害及び促進二重作用(cancer inhibition and promotion dual action)が挙げられる(J Massague. TGFbeta in Cancer.[J]. Cell, 2008, 134(2):215-230)。
【0006】
TGF-β受容体(TGF-βR)は、ヒトの正常及び腫瘍細胞表面上に広範に分布し、3種の受容体スーパーファミリーを含む。これらのうち、古典的なTGF-β受容体ファミリーI型はALK1~7を含み、TGF-βRI(TβRIとも呼ばれる)はALK5としても知られており;古典的なTGF-β受容体ファミリーII型はTGF-βRII(TβRIIとも記される)、ActRII、ActRIIB、AMHRII、及びBMPRIIを含み;TGF-β受容体スーパーファミリーIII型はベータグリカン(TGF-βRIIIとしても知られる)及びエンドグリンを含み;TGF-βRI、TGF-βRII、及びTGF-βRIIIはそれぞれ、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3に結合することができる(Pawlak John B, Blobe Gerard C, TGF-β superfamily co-receptors in cancer. DevDyn, 2021)。TGF-βファミリー及び受容体を表Aに示す(Carl-Henrik Heldin1 and Aristidis Moustakas. Cold Spring Harb Perspect Biol. 2016に基づく総説による要約)。TGF-βRI及びTGF-βRIIは、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ受容体である。TGF-βRIIは、TGF-βシグナル伝達経路におけるシグナル伝達の鍵となる分子として、高い親和性でTGF-βに結合して、TGF-βRI二量体とヘテロ四量体受容体を形成することができ、その後、自己リン酸化によってリン酸化されてTGF-βRIを活性化する。活性化されたTGF-βRIは、下流のSmad経路関連タンパク質をリン酸化し、下流標的遺伝子の転写と翻訳を調節し、さらに、疾患と関連した生物学的応答を引き起こす。TGF-βRI及びTGF-βRIIと比較して、TGF-βRIIIはTGF-βに対する親和性が弱く、また、細胞内セグメントを有しない。そのため、下流シグナル伝達経路へと接続されない。TGF-βRIIIの機能は、TGF-βを捕捉し、TGF-βRIIに対して提示することである。他のTGF-β受容体もTGF-βに結合することができる(Sang Xiaohong et al., Advances in researches on small molecule inhibitors targeting TGF-β and receptors.[J]. Journal of Pharmacy, 2019(9))。
【表1-1】
【表1-2】
【0007】
腫瘍の進行中には、腫瘍細胞、間葉線維芽細胞、及び他の細胞が、多量のTGF-βを腫瘍微小環境(TME)中に分泌し、免疫抑制を媒介する。TGF-βは、ナイーブT細胞が、抗腫瘍活性を媒介するTh1へと分化するのを阻害し、TGF-βRII欠失T細胞は増強されたTh1応答を有する(Eduard, Batlle, Joan, et al., Transforming Growth Factor-β Signaling in Immunity and Cancer.[J]. Immunity, 2019)。腫瘍殺傷活性を有するエフェクターT細胞のグランザイムA、グランザイムB、パーフォリン、γ-インターフェロン(IFN-γ)、及びFasLは、TGF-βの活性下で発現量が減少し、その結果、腫瘍細胞の免疫回避が生ずる。Tregは、腫瘍微小環境(TME)による腫瘍免疫抑制を媒介する鍵となる細胞であり、腫瘍殺傷活性を有するエフェクターT細胞の機能を阻害することができる。腫瘍細胞によって産生されたTGF-βは、多量のTregをTME中に生じさせ、腫瘍抗原に対する寛容性を高め、腫瘍免疫回避の生成を促進する(Chen Dan, Ran Yan. Advance in researches on the regulation and control of tumor cells and tumor-associated immune cells by TGF-β.[J]. Modern Medicine & Health, 2020, 36(09):1354-1358)。現在臨床試験中の、TGF-β分子を標的とする、研究中の抗体医薬は、黒色腫、腎細胞がん、乳がん、子宮頸がん、進行性非小細胞肺がん、前立腺がん、膵管腺がん、進行性固形腫瘍、及び転移性固形腫瘍を適応症とする。
【0008】
Fc受容体は、特定の免疫細胞の表面上で発現する免疫グロブリンファミリーに属し、抗体Fc領域を認識して免疫応答を媒介する。Fab領域が抗原を認識すると、抗体のFc領域が免疫細胞(キラー細胞など)上のFc受容体に結合して、その免疫細胞の応答機能、例えば食作用やADCCなどを開始させる。
【0009】
Fc受容体が認識する抗体の種類、及び発現細胞の種類により、Fc受容体は主にFcγR、FcαR、及びFcεRの3種に分類される。FcγRはさらに、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、及びFcRn(新生児Fc受容体)の4つのサブタイプに分類することができる。これらのうち、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIは、ADCC効果と密接に関連している。FcγRIIIはADCCを媒介する最も優勢な分子であり、異なる細胞型において、高度に相同な2つのサブタイプ、FcγRIIIa及びFcγRIIIbがある。FcγRIIIa集団には、高親和性のFcγRIIIa_V158、及び低親和性のFcγRIIIa_F158という、一塩基多型(SNP)の部位で区別される2つのサブタイプが存在する。FcγRIはIgGのFc領域に対して高い親和性を有し、ADCCプロセスに関与する。FcγRIIはFcγRIIa、FcγRIIb、及びFcγRIIc(それぞれCD32a、CD32b、及びCD32cとも称される)という3つのサブタイプを含み、これらのうちFcγRIIaはADCC活性を有する。FcγRIIaについては、一塩基変異により、FcγRIIa_H131及びFcγRIIa_R131という2つのサブタイプがヒトに存在する。FcγRIIbは抑制性受容体であり、近傍のITAM経路を阻害する典型的な抑制性FcγRである。例えば、BCRへの免疫複合体の結合後、Fc断片は同じ細胞上のFcγRIIbへ結合し、B細胞活性化を負に調節し、抗体及びサイトカインの分泌を減少させる(Hogarth PM, Pietersz GA., 2012, NATURE REVIEWS DRUG DISCOVERY, 11(4):311-331)。
【0010】
現在、TIGIT及びTGF-βシグナル伝達経路の両者を阻害する薬物の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本願発明者らは鋭意研究を重ね、創造的な努力を行うことによって、抗TIGIT抗体及びTGF-βRを含む融合タンパク質を作製し、驚くべきことに、この融合タンパク質が、TIGIT及びTGF-βに効果的に同時に結合可能であり、抗腫瘍薬の調製におけるポテンシャルを有することを見出した。本発明を以下に詳細に説明する。
【0012】
本発明の一態様は、
TIGITを標的とする第1タンパク質機能領域;及び
TGF-β結合活性を有する第2タンパク質機能領域;
を含む融合タンパク質であって、
前記第1タンパク質機能領域が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号3~5のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号8~10のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;
融合タンパク質に関する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号1、配列番号11、配列番号13、配列番号15、及び配列番号17から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記抗TIGIT抗体の軽鎖可変領域が、配列番号6、配列番号19、配列番号21、配列番号23、及び配列番号25から選択されるアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号19のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号19のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号21のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号21のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号25のアミノ酸配列を含む;又は、
前記抗TIGIT抗体の重鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号25のアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖抗体(a single chain antibody)、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びダイアボディ(diabody)から選択される、融合タンパク質が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体が、マウス以外の種に由来する、例えばヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、融合タンパク質が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01857等)又はIgガンマ-4鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01861.1等)であり、軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(NCBIアクセッション番号P01834等)である、融合タンパク質が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、リガンドCD155-hFc-ビオチンに対する結合能が対照抗体RG6058(hG4)よりも高い融合タンパク質が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質が、TIGIT-mFcに対し、0.08nM未満又は0.10nM未満のEC50で結合し、好ましくは前記EC50が間接ELISAによって測定される、融合タンパク質が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質が、TGF-β1、TGF-β2、及び/又はTGF-β3に対し、0.3nM未満、0.4nM未満、0.5nM未満、又は0.6nM未満のEC50で結合し、好ましくは前記EC50が間接ELISAによって測定される、融合タンパク質が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体が、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)においてCCTCC番号C2020208で寄託されているハイブリドーマ細胞株LT019によって製造される抗体である、融合タンパク質が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体の重鎖定常領域が、EU番号方式に基づき、次の変異の組み合わせ:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は、
L234A、L235A、及びG237A;
の1つを有する、融合タンパク質が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記第2タンパク質機能領域が、TGF-β受容体、その細胞外領域、又はTGF-β受容体機能を有するTGF-β受容体細胞外領域の短縮断片であり;
好ましくは、前記TGF-β受容体が、TGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIであるか、TGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIの細胞外領域であるか、又はTGF-βRI、TGF-βRII、もしくはTGF-βRIIIの細胞外領域の短縮断片(a truncated fragment)であり;
好ましくは、前記第2タンパク質機能領域が、配列番号33~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗TIGIT抗体の重鎖が配列番号27又は配列番号31のアミノ酸配列を含み、軽鎖が配列番号29のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1タンパク質機能領域と前記第2タンパク質機能領域とが直接又はリンカー断片を介して連結している、融合タンパク質が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、前記リンカー断片が(GGGGS)n又は(GGGGS)nGであり、nが正の整数であり、好ましくはnが1、2、3、4、5、又は6である、融合タンパク質が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域の数が、それぞれ独立に1個、2個、又はそれよりも多い個数である、融合タンパク質が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、前記TGF-β受容体又はその細胞外断片が、前記抗TIGIT抗体の重鎖のC末端に連結している、融合タンパク質が提供される。
【0029】
本発明は、
TIGITを標的とする第1タンパク質機能領域;及び
TGF-β結合活性を有する第2タンパク質機能領域;
を含む融合タンパク質であって、
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片であり、前記第2タンパク質機能領域が、TGF-β受容体、その細胞外領域、又はTGF-β受容体機能を有するTGF-β受容体細胞外領域の短縮断片であり;
前記抗TIGIT抗体の重鎖が配列番号27又は配列番号31のアミノ酸配列を含み、軽鎖が配列番号29のアミノ酸配列を含み;
前記第2タンパク質機能領域が、配列番号33のアミノ酸配列を含み;
前記第2タンパク質機能領域が、前記抗TIGIT抗体の重鎖のC末端にリンカー断片を介して連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が配列番号44のアミノ酸配列を含む;
融合タンパク質に関する。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は腫瘍の治療及び/又は予防のために使用され、
好ましくは、前記腫瘍は、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんは進行性非小細胞肺がんである。
【0031】
広義には、本発明の融合タンパク質を抗体と称してよい。
【0032】
本発明の他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質をコードする、単離核酸分子に関する。
【0033】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0034】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子又は本発明のベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0035】
本発明のさらなる他の一態様は、融合タンパク質部分及び結合物部分(conjugated moiety)を含む複合体であって、前記融合タンパク質部分が本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質であり、前記結合物部分が検出可能な標識であり、好ましくは前記結合物部分が放射性同位体、蛍光物質、発光物質、着色物質、又は酵素である、複合体に関する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、前記複合体は腫瘍の治療及び/又は予防のために使用され、
好ましくは、前記腫瘍は、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんは進行性非小細胞肺がんである。
【0037】
本発明のさらなる他の一態様は、試料中のTIGIT及び/又はTGF-βの存在又は濃度を検出するためのキットの調製(preparation)における、本発明の融合タンパク質又は本発明の複合体の使用に関する。
【0038】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質又は本発明の複合体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物に関する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は1つ又は複数の抗腫瘍化学療法薬をさらに含み、好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬はチロシンキナーゼ阻害剤であり、より好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬はアンロチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(塩酸塩等)、又はレンバチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(メシル酸塩等)である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物の単位用量が、前記融合タンパク質の質量ベースで100mg~1500mg、200mg~1000mg、200mg~800mg、300mg~600mg、400mg~500mg、又は450mgである、医薬組成物が提供される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は注射剤である。
【0042】
本発明のさらなる他の一態様は、
別個のパッケージ内の第1製品及び第2製品を含む組合せ製品であって、
前記第1製品が、本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質、本発明の複合体、又は本発明のいずれかの実施形態の医薬組成物を含み;
前記第2製品が、1つ又は複数の抗腫瘍化学療法薬を含み、好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬がチロシンキナーゼ阻害剤であり、より好ましくは、前記抗腫瘍化学療法薬がアンロチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(塩酸塩等)、又はレンバチニブもしくはその薬理学的に許容される塩(メシル酸塩等)であり;
好ましくは、前記第1製品及び前記第2製品が、独立に、1つ又は複数の薬理学的に許容される副原料(auxiliary materials)をさらに含み;
好ましくは、前記組合せ製品がさらに添付文書を含む;
組合せ製品に関する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1製品の単位用量が、前記融合タンパク質の質量ベースで100mg~1500mg、200mg~1000mg、200mg~800mg、300mg~600mg、400mg~500mg、又は450mgである、組合せ製品が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第2製品の単位用量が、活性成分の質量ベースで0.1mg~100mg、0.5mg~50mg、1mg~20mg、2mg~15mg、4mg~12mg又は8mg~12mgである、組合せ製品が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1製品及び前記第2製品が独立に注射剤である、治療用組合せ(therapeutic combination)が提供される。
【0046】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍の治療及び/又は予防のための薬剤の調製における、本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質又は本発明の複合体の使用であって、
好ましくは、前記腫瘍が、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんが進行性非小細胞肺がんである;
使用に関する。
【0047】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍を治療及び/又は予防するための方法であって、本発明のいずれかの実施形態の融合タンパク質又は本発明の複合体の有効量を、前記治療及び/又は予防を必要とする対象に投与する工程を含み;
好ましくは、前記腫瘍が、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、黒色腫、膵臓がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、形質細胞腫、腎細胞がん、前立腺がん、及び膵管腺がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記非小細胞肺がんが進行性非小細胞肺がんである;
方法に関する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のいずれかの実施形態の医薬組成物の有効量を、外科的治療の前もしくは後、及び/又は放射線治療の前もしくは後に、その投与を必要とする対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、
本発明の融合タンパク質の単位用量が、体重1kgあたり0.1~100mg、好ましくは1~10mgであり、又は、前記融合タンパク質の単位用量が、各対象において10~1000mg、好ましくは50~500mg、100~400mg、150~300mg、150~250mg、もしくは200mgであり;
好ましくは前記用量が3日、4日、5日、6日、10日、1週間、2週間、又は3週間ごとに1回投与され;
好ましくは投与経路が点滴静注又は静脈注射である;
方法が提供される。
【0050】
軽鎖及び重鎖の可変領域が抗原の結合を決定する。各鎖の可変領域は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域を含んでおり、重鎖(H)のCDRはHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を、軽鎖(L)のCDRはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。本発明において、CDRはIMGT番号付けシステムによって定義される(Ehrenmann F, Kaas Q, and Lefranc M P., IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.[J]. Nucleic acids research, 2009; 38(suppl_1):D301-D307を参照)。
【0051】
以下のモノクローナル抗体のCDRのアミノ酸配列は、当業者に周知の技術的手段によって、例えばIMGT定義に従って、分析される。結果は以下の通りである:
マウスTIGITモノクローナル抗体のHCDR及びLCDR
HCDR1:GHSFTSDYA(配列番号3)
HCDR2:ISYSDST(配列番号4)
HCDR3:ARLDYGNYGGAMDY(配列番号5)
LCDR1:QHVSTA(配列番号8)
LCDR2:SAS(配列番号9)
LCDR3:QQHYITPWT(配列番号10)
【0052】
ヒト化TIGITモノクローナル抗体の3個のHCDRと3個のLCDRは、マウスTIGITモノクローナル抗体のものと同一である。
【0053】
本発明において、他に定義されない限り、本明細書内で使用される科学及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学の実験室操作は、対応する分野で広く使用されるルーチン手順である。一方、本発明の理解を促すために、関連のある語の定義及び説明を以下に提供する。
【0054】
本明細書で使用されるEC50という語は、最大効果の50%に対する濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こしうる濃度のことを指す。
【0055】
本明細書で使用される「抗体」という語は、一般に2対のポリペプチド鎖からなる(それぞれの対が1本の「軽」(L)鎖と1本の「重」(H)鎖を有する)免疫グロブリン分子のことを指す。抗体軽鎖はκ及びλ軽鎖へと分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、又はεへと分類される。抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖において、可変領域と定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結しており、重鎖はさらに、約3以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織又は因子への結合を、例えば免疫系の各種細胞(エフェクター細胞など)の、古典的な補体系の第1成分(C1q)への結合を、媒介することができる。VH及びVL領域は、超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細かく分けることができ、超可変領域間にはフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存的な領域が分布している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて次の順番で並んだ、3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VH及びVL)は、抗原結合部位を形成する。領域又はドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Bethesda M.d., Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, (1987 and 1991))もしくはChothia & Lesk J. Mol. Biol., 1987; 196:901-917;Chothia et al., Nature, 1989; 342:878-883、又は、IMGT番号付けシステムの定義(Ehrenmann F, Kaas Q, Lefranc M P., IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.[J]. Nucleic acids research, 2009; 38(suppl_1):D301-D307における定義を参照)に基づいて行われる。
【0056】
「抗体」という語は、抗体を製造するためのいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、抗体には、組み換え抗体、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、IgG(例えばサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgMなどの、各種アイソタイプの抗体であってよい。
【0057】
本明細書で使用される「mAb」又は「モノクローナル抗体」という語は、高度に相同な抗体分子のグループに由来する、すなわち、自然に生じうる天然の変異を例外として同一の抗体分子のグループに由来する、抗体又は抗体の断片のことを指す。モノクローナル抗体は、ある抗原上の単一のエピトープに対して高度に特異的である。モノクローナル抗体と異なり、ポリクローナル抗体は、通常、ある抗原上の異なるエピトープを一般に認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は一般に、Kohler et al.(Kohler G, Milstein C., Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.[J]. Nature, 1975; 256(5517):495)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術を用いて取得することができるが、組み換えDNA技術を用いても取得することができる(米国特許第4816567号明細書などを参照)。
【0058】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という語は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDRの全体又は部分を非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDRで置き換えた場合に得られる抗体又は抗体断片のことを指し、ドナー抗体は、期待される特異性、親和性、又は反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラット、もしくはウサギ)抗体であってよい。さらに、レセプター抗体のフレームワーク領域(FR)におけるいくつかのアミノ酸残基も、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基又は他の抗体のアミノ酸残基に置換し、抗体の性能をさらに改善又は最適化することができる。ヒト化抗体のさらなる詳細については、例えばJones et al., Nature, 1986; 321:522-525、Reichmann et al., Nature, 1988; 332:323-329、Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2:593-596、及びClark, Immunol. Today, 2000; 21:397-402を参照のこと。いくつかのケースでは、抗体の抗原結合性断片はダイアボディであり、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現する。しかし、使用されるリンカーは短いため、同一鎖上の2つのドメインのペアリングは起こりえない。そのため、ドメインは他の鎖上の相補ドメインとペアリングすることとなり、2個の抗原結合部位が生成する(例えばHolliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993; 90:6444-6448及びPoljak R.J. et al., Structure, 1994; 2:1121-1123を参照)。
【0059】
本明細書に記載する融合タンパク質は、DNA組み換えによって2個の遺伝子を同時発現させたタンパク質産物である。抗体及び抗原結合性断片を製造及び精製するための方法は当該分野で周知であり、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressの第5~8章及び15章に記載されている。
【0060】
本明細書で使用される「単鎖可変領域断片(ScFv)」という語は、抗体重鎖可変領域(VH)及び抗体軽鎖可変領域(VL)がリンカーによって連結した分子のことを指す。VL及びVHドメインはペアを成し、それらドメインが単一ポリペプチド鎖を生成することを可能にするリンカーによって一価の分子が形成される(例えば、Bird et al., Science, 1988; 242:423-426及びHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1988; 85:5879-5883を参照)。このようなscFv分子は次の一般構造を有していてよい:NH2-VL-リンカー断片-VH-COOH、又はNH2-VH-リンカー断片-VL-COOH。従来技術の適切なリンカーは、GGGGSアミノ酸配列の反復、又はそのバリアントからなる。例えば、(GGGGS)4のアミノ酸配列を有するリンカーを用いてもよく、そのバリアントを用いてもよい(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993; 90:6444-6448)。本発明において使用できる他のリンカーが、Alfthan et al., Protein Eng., 1995; 8:725-731、Choi et al., Eur. J. Immunol., 2001; 31:94-106、Hu et al., Cancer Res., 1996; 56:3055-3061、Kipriyanov et al., J. Mol. Biol., 1999; 293:41-56、及びRoovers et al., Cancer Immunology, Immunotherapy, 2001, 50(1):51-59.に記載されている。
【0061】
本明細書で使用される「単離される」という語は、天然状態から人為手段によって取得されることを指す。特定の「単離される」物質又は成分が天然に存在する場合に、その天然環境において変化が生ずることであってもよく、天然環境から単離されることであってもよく、その両者であってもよい。例えば、単離されていない特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドが特定の動物生体中に天然に存在し、このような天然状態から高純度の同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドが単離された場合、それを単離ポリヌクレオチド又はポリペプチドと呼ぶ。「単離される」という語は、前記物質の活性に影響を及ぼさない、人工もしくは合成物質、又は他の不純物の存在を除外するものではない。
【0062】
本明細書で使用される「ベクター」という語は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルのことを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントが宿主細胞で発現できるように、形質転換、形質導入、又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができる。ベクターは当業者に周知であり、例として、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体;λファージ又はM13ファージなどのファージ;及び、動物ウイルス;などが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターとして使用しうる動物ウイルスとしては、レトロウイルス(レンチウイルスなど)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例えばSV40)などが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、発現を調節するための各種エレメントを含んでいてよく、それらの例として、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。
【0063】
本明細書で使用される「宿主細胞」という語は、そこにベクターを導入できる細胞のことを指し、例として、E. coliもしくはBacillus subtilisなどの原核細胞;酵母細胞もしくはAspergillusなどの真菌細胞;S2 Drosophila細胞もしくはSf9などの昆虫細胞;又は、線維芽細胞、CHO細胞、GS細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、もしくはヒト細胞などの動物細胞;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明において、「ADCP」という語は、抗体依存性細胞食作用のことを指す。細胞表面抗原に結合する抗体のFc断片は、マクロファージなどの食作用活性細胞のFc受容体に結合し、その結果、食細胞による、抗体が結合した細胞に対する食作用が媒介される。
【0065】
本発明において、「ADCC」という語は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害のことを指す。抗体のFab断片がウイルス感染細胞又は腫瘍細胞のエピトープに結合し、その抗体のFc断片がキラー細胞(NK細胞及びマクロファージなど)表面上のFc受容体(FcR)に結合して、キラー細胞による標的細胞の直接殺傷を媒介する。
【0066】
本発明において、「CDC」という語は、補体依存性細胞傷害のことを指す。抗体が、細胞膜表面上の対応する抗原に特異的に結合すると、複合体が形成され、補体系が活性化される。その後、MACが標的細胞表面上に形成され、続いて標的細胞の溶解がおこる結果となる。補体は各種細菌及び他の病原性生物の溶解を引き起こす場合があり、病原性生物の感染に対する重要な防御メカニズムである。
【0067】
本明細書で使用される「特異的に結合する」という語は、2つの分子間の非無作為的な結合反応、例えば抗体とその標的となる抗原との間の反応などのことを指す。いくつかの実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(又は、ある抗原に対して特異的な抗体)とは、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、又は10-10M未満の親和性(KD)で抗原に結合することを意味する。
【0068】
本明細書で使用される「KD」という語は、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数のことを指し、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。解離平衡定数が小さいことは、抗体-抗原結合が強く、抗体と抗原との間の親和性が高いことを表す。一般に、抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、又は10-10M未満の解離平衡定数(KD)で抗原(TIGITタンパク質など)に結合する。KDは、例えばFortebioシステムの使用など、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。
【0069】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という語と「mAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。「ポリクローナル抗体」という語と「pAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。また、本明細書において、アミノ酸は通常、当該分野で公知の1文字又は3文字略号を使用して表される。例えば、アラニンはA又はAlaで表すことができる。
【0070】
本明細書で使用される「薬理学的に許容される副原料」という語は、対象及び活性成分に薬理学的及び/又は生理学的に適合した、当該分野で周知の担体及び/又は賦形剤(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)のことを指し、例として、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤の限定されない例として、リン酸緩衝液が挙げられ、界面活性剤の限定されない例として、陽イオン、陰イオン、又は非イオン界面活性剤、例えばTween-80が挙げられ、イオン強度増強剤の限定されない例として、塩化ナトリウムが挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「有効量」という語は、所望の効果を得るのに、又は少なくとも部分的に得るのに、充分な量のことを指す。例えば、疾患(腫瘍など)に対する予防的有効量とは、その疾患(腫瘍など)の発症を予防、抑止、又は遅延するのに充分な量のことを指し、治療有効量とは、その疾患に罹患している患者において、疾患又はその合併症を治癒又は少なくとも部分的に抑止するのに充分な量のことを指す。そのような有効量を決定することは、疑いもなく当業者の能力の範囲内である。例えば、治療目的における有効量は、治療しようとする疾患の重症度;患者自身の免疫系の全体的な状態;年齢、体重、及び性別などの患者の一般的な条件;投与経路;並びに同時に行われる他の治療;などによって決まる。
【0072】
本発明において、「第1」(例えば、第1タンパク質機能領域又は第1製品)及び「第2」(例えば、第2タンパク質機能領域又は第2製品)という語は、特に断りのない限り、表現上の区別又は明瞭性のために用いられ、典型的な順序の意味は有しない。
【0073】
本発明の有益な効果
本発明は以下の技術的効果(1)~(9)のいずれか1つ以上を達成する。
(1)本発明の融合タンパク質(例えばTF01又はTF02)が、TIGITの阻害及びTGF-β濃度の減少を同時に可能にする。
(2)本発明の融合タンパク質(例えばTF01又はTF02)が、TIGITに極めて特異的に結合することができ、TIGITのCD155への結合を極めて効果的にブロックすることができ、生物におけるTIGITの免疫抑制を特異的に緩和することができる。
(3)本発明の融合タンパク質(例えばTF01又はTF02)が、TGF-βに極めて特異的に結合することができ、TGF-βのTGF-β受容体への結合を極めて効果的にブロックすることができ、生物におけるTGF-βによる免疫抑制を特異的に緩和し、免疫応答を活性化することができる。
(4)本発明の融合タンパク質が抗腫瘍薬の調製に対して高いポテンシャルを有する。
(5)本発明の融合タンパク質の第1タンパク質機能領域及び第2タンパク質機能領域が相乗効果を有し、その効果が、いずれかのタンパク質機能領域を単独で使用した融合タンパク質と比べて優れている。
(6)本発明の融合タンパク質、特にTF01が、Fc受容体FcγRI、FcγRIIb、FcγRIIa_H131、及び/もしくはFcγRIIa_R131、FcγRIIIa_V158、及び/もしくはFcγRIIIa_F158に対する結合活性を完全に取り除いたものであり、且つ、ADCC活性又はADCP活性を取り除いたものである。
(7)本発明の融合タンパク質、特にTF01が、補体C1qに対する結合活性を完全に取り除いたものであり、且つ、CDC活性を完全に取り除いたものである。
(8)本発明の融合タンパク質、特にTF01及びTF02の両者が、TIGITによって誘導された免疫細胞の免疫抑制を効果的にブロックすることができ、且つ、細胞のIL-2分泌を誘導することができる。
(9)本発明の融合タンパク質、特にTF01が、TGF-βによって誘導された免疫細胞の免疫抑制を効果的にブロックすることができ、且つ、細胞のINF-γ分泌を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)の、抗原TIGIT-mFcへの結合活性の分析である。
【
図2】
図2は、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの、TGF-β1への結合活性の分析である。
【
図3】
図3は、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの、TGF-β2への結合活性の分析である。
【
図4】
図4は、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの、TGF-β3への結合活性の分析である。
【
図5】
図5は、ヒトTGF-β1への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の活性の分析である。
【
図6】
図6は、ヒトTGF-β3への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の活性の分析である。
【
図7】
図7は、ヒトTIGIT-mFCへの結合に関してヒトCD155-hFc-ビオチンと競合する、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の活性の分析である。
【
図8】
図8は、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の、293T-TIGIT膜表面上のTIGITへの結合活性の分析である。
【
図9】
図9は、細胞膜表面上の抗原TIGITへの結合に関してCD155と競合する、TF01の分析である。
【
図10】
図10は、細胞膜表面上の抗原TIGITへの結合に関してCD112と競合する、TF01の分析である。
【
図11】
図11は、FcγRIに対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図12】
図12は、FcγRIに対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図13】
図13は、FcγRIIIa_V158に対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図14】
図14は、FcγRIIIa_V158に対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図15】
図15は、FcγRIIIa_F158に対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図16】
図16は、FcγRIIIa_F158に対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図17】
図17は、FcγRIIa_H131に対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図18】
図18は、FcγRIIa_H131に対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図19】
図19は、FcγRIIa_R131に対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図20】
図20は、FcγRIIa_R131に対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図21】
図21は、FcγRIIbに対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図22】
図22は、FcγRIIbに対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図23】
図23は、C1qに対する、TF01の親和性定数の分析である。
【
図24】
図24は、C1qに対する、26B12H2L2(hG1WT)の親和性定数の分析である。
【
図25】
図25は、RG6058(hG1WT)、RG6058(hG4WT)、26B12H2L2(hG1WT)、及びTF01の、ADCP効果の分析である。
【
図26】
図26は、Jurkat-TIGIT及びTHP-1細胞同時培養系でのIL-2分泌に対するCD112阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価である。
【
図27】
図27は、Jurkat-TIGIT及びTHP-1細胞同時培養系でのIL-2分泌に対するCD155阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価である。
【
図28】
図28は、Jurkat-TIGIT及びHT1080-aCD3scFv細胞同時培養系でのIL-2分泌の促進における、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の生物活性の評価である。
【
図29】
図29は、CMV抗原へのPBMC二次免疫応答の過程における、IFN-γ分泌に対するTGF-β1阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価である。
【
図30】
図30は、Scid BeigeマウスモデルにおけるMDA-MB-231異種移植腫瘍の治療に対する、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の有効性を示す。結果は平均±標準誤差で示し、2元配置分散分析(ボンフェローニ検定)を行った。
*p<0.05、
**p<0.01、及び
***p<0.001;アイソタイプ対照との比較。
【
図31】
図31は、MDA-MB-231異種移植腫瘍を有するScid Beigeマウスモデルの体重に対する、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
寄託された生物材料:
ハイブリドーマ細胞株LT019(TIGIT-26B12)を、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に、CCTCC番号C2020208のもと、2020年10月23日付けで寄託した。寄託機関のアドレスは、郵便番号430072 中華人民共和国 武漢 武漢大学である。
【0076】
本発明は、次の配列1~48に関する。
1. 26B12VHのアミノ酸配列
EVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCTVTGHSFTSDYAWNWIRQFPGNRLEWMGYISYSDSTNYNPSLKSRISITRDTSKNQFFLQMNSVTTEDTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号1)
2. 26B12VHのヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGACCTGGCCTGGTGAAACCCTCTCAGTCTCTGTCCCTCACCTGCACTGTCACTGGCCACTCATTCACCAGTGATTATGCCTGGAACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAAACAGACTGGAGTGGATGGGCTACATAAGCTACAGTGATAGCACTAACTACAACCCATCTCTCAAAAGTCGAATCTCTATCACTCGAGACACATCCAAGAACCAGTTCTTCTTGCAGATGAATTCTGTGACTACTGAGGACACAGCCACATATTACTGTGCAAGATTGGACTATGGTAACTACGGTGGGGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGGACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号2)
3. HCDR1:
GHSFTSDYA(配列番号3)
4. HCDR2:
ISYSDST(配列番号4)
5. HCDR3:
ARLDYGNYGGAMDY(配列番号5)
6. 26B12VLのアミノ酸配列
DIVLTQSHEFMSTSLRDRVSITCKSSQHVSTAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASYRYTGVPDRFTGSGSGTDFTFTISSVKAEDLAVYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK(配列番号6)
7. 26B12VLのヌクレオチド配列
GATATTGTGCTAACTCAGTCTCACGAATTCATGTCCACCTCATTACGAGACAGGGTCAGCATCACCTGCAAATCCAGTCAACATGTGAGTACTGCTGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGACAATCTCCTAAACTACTGATTTACTCGGCATCCTACCGGTACACTGGAGTCCCTGATCGCTTCACTGGCAGTGGATCTGGGACGGATTTCACTTTCACCATCAGCAGTGTGAAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGCAACATTATATTACTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATAAAA(配列番号7)
8. LCDR1:
QHVSTA(配列番号8)
9. LCDR2:
SAS(配列番号9)
10. LCDR3:
QQHYITPWT(配列番号10)
11. 26B12H1VHのアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWNWIRQFPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRITISRDTSKNQFFLQLNSVTAADTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号11)
12. 26B12H1VHのヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTTCCCAGACCCTGTCTCTGACCTGTACAGTGTCTGGCCACAGCTTCACATCCGACTACGCCTGGAACTGGATCAGGCAGTTTCCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGATCGGCTACATCTCTTATAGCGACTCCACCAACTATAATCCCTCTCTGAAGAGCCGGATCACCATCAGCAGAGATACATCCAAGAACCAGTTCTTTCTGCAGCTGAACAGCGTGACAGCCGCCGACACCGCCACATACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCTCCGTGACAGTGAGCTCC(配列番号12)
13. 26B12H2VHのアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号13)
14. 26B12H2VHのヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGGCAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTCGGGTGACCATCTCTAGAGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGC(配列番号14)
15. 26B12H3VHのアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号15)
16. 26B12H3VHのヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGACAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTAGAGTGACCATCTCTGTGGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGC(配列番号16)
17. 26B12H4VHのアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWNWIRQFPGKGLEWMGYISYSDSTNYNPSLKSRITISRDTSKNQFFLQLNSVTAADTATYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号17)
18. 26B12H4VHのヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTTCCCAGACCCTGTCTCTGACCTGTACAGTGTCTGGCCACAGCTTCACATCCGACTACGCCTGGAACTGGATCAGGCAGTTTCCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTACATCTCTTATAGCGACTCCACCAACTATAATCCCTCTCTGAAGAGCCGGATCACCATCAGCAGAGATACATCCAAGAACCAGTTCTTTCTGCAGCTGAACAGCGTGACAGCCGCCGACACCGCCACATACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCTCCGTGACAGTGAGCTCC(配列番号18)
19. 26B12L1VLのアミノ酸配列
DIQMTQSPKSLSTSVGDRVTITCRSSQHVSTAVAWYQQKPGKSPKLLIYSASYRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSVQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK(配列番号19)
20. 26B12L1VLのヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAAGTCCCTGTCTACAAGCGTGGGCGATCGGGTGACCATCACATGTAGAAGCTCCCAGCACGTGTCTACCGCAGTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTATTCCGCCTCTTACAGGTATTCCGGAGTGCCAGACCGGTTTAGCGGCTCCGGCTCTGGCACCGATTTCACCTTTACAATCTCTAGCGTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACAAAGCTGGAGATCAAG(配列番号20)
21. 26B12L2VLのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQHVSTALAWYQQKPGKSPKLLIYSASSRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK(配列番号21)
22. 26B12L2VLのヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAGCTCCCTGTCTGCCAGCGTGGGCGATAGGGTGACCATCACATGTAGATCTAGCCAGCACGTGTCTACAGCCCTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTACTCCGCCTCCTCTAGGTATTCTGGAGTGCCAGACCGGTTTTCCGGCTCTGGCAGCGGCACCGATTTCACCTTTACAATCAGCTCCCTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTATATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG(配列番号22)
23. 26B12L3VLのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQHVSTALAWYQQKPGKAPKLLIYSASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK(配列番号23)
24. 26B12L3VLのヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAGCTCCCTGAGCGCCTCCGTGGGCGATAGGGTGACCATCACATGTAGAGCCTCTCAGCACGTGAGCACAGCCCTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTATAGCGCCTCTAGCCTGCAGTCCGGAGTGCCATCTCGGTTCTCTGGCAGCGGCTCCGGAACCGACTTTACCCTGACAATCTCCTCTCTGCAGCCAGAGGATTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG(配列番号24)
25. 26B12L4VLのアミノ酸配列
DIQMTQSPKSMSTSVGDRVTITCRSSQHVSTAVAWYQQKPGKSPKLLIYSASYRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSVQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIK(配列番号25)
26. 26B12L4VLのヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAAGTCCATGTCTACAAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACATGTAGAAGCTCCCAGCACGTGTCTACCGCAGTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTATTCCGCCTCTTACAGGTATTCCGGAGTGCCAGACCGGTTTAGCGGCTCCGGCTCTGGCACCGATTTCACCTTTACAATCTCTAGCGTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTACATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACAAAGCTGGAGATCAAG(配列番号26)
27. 26B12H2L2(hG4DM)の重鎖のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号27)
28. 26B12H2L2(hG4DM)の重鎖のヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGGCAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTCGGGTGACCATCTCTAGAGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGCGCCTCCACAAAGGGGCCCTCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTACACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCATGCCCAGCACCTGAGGCCGCTGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGT(配列番号28)
29. 26B12H2L2(hG4DM)の軽鎖のアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQHVSTALAWYQQKPGKSPKLLIYSASSRYSGVPDRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDFATYYCQQHYITPWTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号29)
30. 26B12H2L2(hG4DM)の軽鎖のヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCCCCTAGCTCCCTGTCTGCCAGCGTGGGCGATAGGGTGACCATCACATGTAGATCTAGCCAGCACGTGTCTACAGCCCTGGCATGGTACCAGCAGAAGCCAGGCAAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTACTCCGCCTCCTCTAGGTATTCTGGAGTGCCAGACCGGTTTTCCGGCTCTGGCAGCGGCACCGATTTCACCTTTACAATCAGCTCCCTGCAGCCAGAGGACTTCGCCACATACTATTGCCAGCAGCACTATATCACCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCAGCCCCATCTGTCTTCATTTTTCCCCCTAGTGACGAGCAGCTGAAATCCGGAACAGCCTCTGTGGTCTGTCTGCTGAACAATTTCTACCCTCGCGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAAGTCGATAACGCTCTGCAGAGTGGCAATTCACAGGAGAGCGTGACTGAACAGGACTCCAAGGATTCTACCTATAGTCTGAGCTCCACTCTGACCCTGTCCAAAGCAGATTACGAAAAGCACAAAGTGTATGCCTGTGAGGTCACCCACCAGGGGCTGAGTTCTCCAGTCACCAAATCCTTCAACAGAGGCGAATGT(配列番号30)
31. 26B12H2L2(hG1DM)の重鎖のアミノ酸配列
DVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGHSFTSDYAWSWIRQPPGKGLEWIGYISYSDSTNYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDYGNYGGAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号31)
32. 26B12H2L2(hG1DM)の重鎖のヌクレオチド配列
GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCAGGACTGGTGAAGCCAAGCCAGACCCTGTCCCTGACCTGTACAGTGTCCGGCCACTCTTTTACAAGCGACTACGCCTGGTCTTGGATCAGGCAGCCCCCTGGCAAGGGACTGGAGTGGATCGGCTACATCTCCTATTCTGACAGCACCAACTATAATCCCTCCCTGAAGTCTCGGGTGACCATCTCTAGAGATACAAGCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCCGTGACCGCAGCAGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCCGGCTGGACTACGGCAATTATGGCGGAGCCATGGATTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACAGTGTCTAGCGCCTCTACCAAGGGGCCCAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAAGCTGCTGGAGGCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAAAGCAGGTGGCAGCAGGGAAACGTGTTCTCCTGCAGCGTGATGCACGAAGCCCTCCACAACCACTACACCCAGAAAAGCCTGTCCCTGAGCCCCGGCAAA(配列番号32)
33. TGF-βRII細胞外領域の短縮断片のアミノ酸配列
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号33)
34. TGF-βRIのアミノ酸配列:(下線部は細胞外領域の配列)
MEAAVAAPRPRLLLLVLAAAAAAAAALLPGATALQCFCHLCTKDNFTCVTDGLCFVSVTETTDKVIHNSMCIAEIDLIPRDRPFVCAPSSKTGSVTTTYCCNQDHCNKIELPTTVKSSPGLGPVELAAVIAGPVCFVCISLMLMVYICHNRTVIHHRVPNEEDPSLDRPFISEGTTLKDLIYDMTTSGSGSGLPLLVQRTIARTIVLQESIGKGRFGEVWRGKWRGEEVAVKIFSSREERSWFREAEIYQTVMLRHENILGFIAADNKDNGTWTQLWLVSDYHEHGSLFDYLNRYTVTVEGMIKLALSTASGLAHLHMEIVGTQGKPAIAHRDLKSKNILVKKNGTCCIADLGLAVRHDSATDTIDIAPNHRVGTKRYMAPEVLDDSINMKHFESFKRADIYAMGLVFWEIARRCSIGGIHEDYQLPYYDLVPSDPSVEEMRKVVCEQKLRPNIPNRWQSCEALRVMAKIMRECWYANGAARLTALRIKKTLSQLSQQEGIKM(配列番号34)
35. TGF-βRI細胞外領域のアミノ酸配列
LQCFCHLCTKDNFTCVTDGLCFVSVTETTDKVIHNSMCIAEIDLIPRDRPFVCAPSSKTGSVTTTYCCNQDHCNKIELPTTVKSSPGLGPVEL(配列番号35)
36. TGF-βRIIのアミノ酸配列:(下線部は細胞外領域の配列)
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQVTGISLLPPLGVAISVIIIFYCYRVNRQQKLSSTWETGKTRKLMEFSEHCAIILEDDRSDISSTCANNINHNTELLPIELDTLVGKGRFAEVYKAKLKQNTSEQFETVAVKIFPYEEYASWKTEKDIFSDINLKHENILQFLTAEERKTELGKQYWLITAFHAKGNLQEYLTRHVISWEDLRKLGSSLARGIAHLHSDHTPCGRPKMPIVHRDLKSSNILVKNDLTCCLCDFGLSLRLDPTLSVDDLANSGQVGTARYMAPEVLESRMNLENVESFKQTDVYSMALVLWEMTSRCNAVGEVKDYEPPFGSKVREHPCVESMKDNVLRDRGRPEIPSFWLNHQGIQMVCETLTECWDHDPEARLTAQCVAERFSELEHLDRLSGRSCSEEKIPEDGSLNTTK(配列番号36)
37. TGF-βRII細胞外領域のアミノ酸配列
TIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ(配列番号37)
38. TGF-βRIIIのアミノ酸配列:(下線部は細胞外領域の配列)
MTSHYVIAIFALMSSCLATAGPEPGALCELSPVSASHPVQALMESFTVLSGCASRGTTGLPQEVHVLNLRTAGQGPGQLQREVTLHLNPISSVHIHHKSVVFLLNSPHPLVWHLKTERLATGVSRLFLVSEGSVVQFSSANFSLTAETEERNFPHGNEHLLNWARKEYGAVTSFTELKIARNIYIKVGEDQVFPPKCNIGKNFLSLNYLAEYLQPKAAEGCVMSSQPQNEEVHIIELITPNSNPYSAFQVDITIDIRPSQEDLEVVKNLILILKCKKSVNWVIKSFDVKGSLKIIAPNSIGFGKESERSMTMTKSIRDDIPSTQGNLVKWALDNGYSPITSYTMAPVANRFHLRLENNAEEMGDEEVHTIPPELRILLDPGALPALQNPPIRGGEGQNGGLPFPFPDISRRVWNEEGEDGLPRPKDPVIPSIQLFPGLREPEEVQGSVDIALSVKCDNEKMIVAVEKDSFQASGYSGMDVTLLDPTCKAKMNGTHFVLESPLNGCGTRPRWSALDGVVYYNSIVIQVPALGDSSGWPDGYEDLESGDNGFPGDMDEGDASLFTRPEIVVFNCSLQQVRNPSSFQEQPHGNITFNMELYNTDLFLVPSQGVFSVPENGHVYVEVSVTKAEQELGFAIQTCFISPYSNPDRMSHYTIIENICPKDESVKFYSPKRVHFPIPQADMDKKRFSFVFKPVFNTSLLFLQCELTLCTKMEKHPQKLPKCVPPDEACTSLDASIIWAMMQNKKTFTKPLAVIHHEAESKEKGPSMKEPNPISPPIFHGLDTLTVMGIAFAAFVIGALLTGALWYIYSHTGETAGRQQVPTSPPASENSSAAHSIGSTQSTPCSSSSTA(配列番号38)
39. TGF-βRIII細胞外領域のアミノ酸配列
GPEPGALCELSPVSASHPVQALMESFTVLSGCASRGTTGLPQEVHVLNLRTAGQGPGQLQREVTLHLNPISSVHIHHKSVVFLLNSPHPLVWHLKTERLATGVSRLFLVSEGSVVQFSSANFSLTAETEERNFPHGNEHLLNWARKEYGAVTSFTELKIARNIYIKVGEDQVFPPKCNIGKNFLSLNYLAEYLQPKAAEGCVMSSQPQNEEVHIIELITPNSNPYSAFQVDITIDIRPSQEDLEVVKNLILILKCKKSVNWVIKSFDVKGSLKIIAPNSIGFGKESERSMTMTKSIRDDIPSTQGNLVKWALDNGYSPITSYTMAPVANRFHLRLENNAEEMGDEEVHTIPPELRILLDPGALPALQNPPIRGGEGQNGGLPFPFPDISRRVWNEEGEDGLPRPKDPVIPSIQLFPGLREPEEVQGSVDIALSVKCDNEKMIVAVEKDSFQASGYSGMDVTLLDPTCKAKMNGTHFVLESPLNGCGTRPRWSALDGVVYYNSIVIQVPALGDSSGWPDGYEDLESGDNGFPGDMDEGDASLFTRPEIVVFNCSLQQVRNPSSFQEQPHGNITFNMELYNTDLFLVPSQGVFSVPENGHVYVEVSVTKAEQELGFAIQTCFISPYSNPDRMSHYTIIENICPKDESVKFYSPKRVHFPIPQADMDKKRFSFVFKPVFNTSLLFLQCELTLCTKMEKHPQKLPKCVPPDEACTSLDASIIWAMMQNKKTFTKPLAVIHHEAESKEKGPSMKEPNPISPPIFHGLDTLTV(配列番号39)
40. チラゴルマブの重鎖のアミノ酸配列
EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号40)
41. チラゴルマブの軽鎖のアミノ酸配列
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号41)
42. RG6058(hG4)の重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSS(配列番号42)
43. RG6058(hG4)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIK(配列番号43)
44. リンカー断片のアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号44)
45. 抗HEL&TGFβ抗体の重鎖のアミノ酸配列
EVQLEQSGAELMKPGASVKISCKATGYTFTTYWIEWIKQRPGHSLEWIGEILPGSDSTYYNEKVKGKVTFTADASSNTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARGDGFYVYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD(配列番号45)
46. 抗HEL&TGFβ抗体の軽鎖のアミノ酸配列
DIELTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYTSQSMSGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGVYFCQQSGSWPRTFGGGTKLDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号46)
47. RG6058(G1DM)の重鎖のアミノ酸配列
EVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGKTYYRFKWYSDYAVSVKGRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVFYCTRESTTYDLLAGPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号47)
48. RG6058(G1DM)の軽鎖のアミノ酸配列
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTVLYSSNNKKYLAWYQQKPGQPPNLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPFTFGPGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号48)
【0077】
詳細な説明
本発明の実施形態を、実施例を参照しながら以下に説明するが、当業者は、以下の実施例が本発明の単なる例証であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないと理解するであろう。実施例中、指定された条件のない実験手順については、従来の条件又は製造業者によって推奨される条件に従って行われる。使用される試薬又は機器について、製造業者の指定のないものは、全て市販の従来の製品である。
【0078】
BALB/cマウスはGuangdong Medical Laboratory Animal Centerより購入した。
【0079】
C57マウスはLaboratory Animal Center of Guangzhou University of Chinese Medicineより購入した。
【0080】
MDA-MB-231細胞及びU87-MG細胞はATCCより購入した。
【0081】
陽性対照抗体であるチラゴルマブは、WHO. Proposed INN: List 117. WHO Drug Information, 31(2): p104, 2017に記載される抗体に由来し、配列番号40~41のアミノ酸配列とそれぞれ同一の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含む。
【0082】
本発明において、チラゴルマブとRG6058(hG1WT)は同一の抗体である。
【0083】
陽性対照抗体RG6058(hG4)は、中国特許出願公開第CN108290946(A)号明細書に記載の抗体に由来する配列を含み、配列番号42~43のアミノ酸配列とそれぞれ同一の、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。
【0084】
陽性対照抗体RG6058(hG1DM)を、Akeso Biopharma社の研究室において、ロット番号20180816にて調製した。その重鎖のアミノ酸配列を配列番号47に示し、軽鎖の配列番号を配列番号48に示す。
【0085】
本発明の実施例におけるアイソタイプ対照抗体であるヒト抗鶏卵リゾチームIgG(抗HEL、又はヒトIgG;hIgGと略記)の可変領域配列は、Acierno et al.“Affinity maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodies”(Acierno et al., J Mol Biol., 2007; 374(1):130-46)に由来する。実施例で使用されたhIgG1DM及びhIgG4WTは、hG1DM及びhG4WT定常領域配列をそれぞれ有する、抗HELを有したアイソタイプ対照抗体であり、Akeso Biopharma社の研究室において調製されたものである。
【0086】
kサブタイプの抗HEL抗体(ヒトhG4DM)の重鎖のC末端にTGFβRIIを融合することにより、抗HEL&TGFβ抗体を構築した。調製はAkeso Biopharma社の研究室で行った。その重鎖のアミノ酸配列を配列番号45に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号46に示す。
【0087】
TIGIT-mFcタンパク質(ロット番号20171110)、TGF-βRII-mFc(ロット番号20200528)、CD155-hFc-ビオチン(ロット番号20170721)、CD155-mFc(ロット番号20190726)、及びCD112-mFc(ロット番号20190726)は、全て、公知の配列に従い、Akeso Biopharma社によって製造された。mFcはマウスIgGのFcタンパク質断片を表し、hFcはヒトIgGのFcタンパク質断片を表す。
【0088】
TGF-β1タンパク質は、Sino Biologcal社より、カタログ番号LC13DE3108にて購入した。
【0089】
TGF-β2タンパク質は、PeproTech社より、カタログ番号0420345 E0620にて購入した。
【0090】
TGF-β3タンパク質は、PeproTech社より、カタログ番号0713410 A0219にて購入した。
【0091】
本発明の以下の実施例において、使用した細胞株293T-TIGITは、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株293T-TIGITは、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11):8463-8471を参照)を用いて、HEK293T細胞(武漢大学)のウイルス感染により調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-TIGITFL-BSDであった(TIGITはGenebank ID:NP_776160.2であり;ベクターplenti6.3/V5 TOPOはInvitrogen社よりカタログ番号K531520にて購入した)。
【0092】
本発明の以下の実施例において、使用した細胞株CHO-K1-TIGITは、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株CHO-K1-TIGITは、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11):8463-8471を参照)を用いて、CHO-K1細胞(Cell Resource Center, Institute of Basic Medical Sciences, Chinese Academy of Medical Sciences)のウイルス感染により調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-TIGITFL-BSDであった(TIGITはGenebank ID:NP_776160.2であり、ベクターplenti6.3/V5 TOPOはInvitrogen社よりカタログ番号K531520にて購入した)。
【0093】
本発明の以下の実施例において、使用した細胞株Jurkat-TIGITは、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Jurkat-TIGITは、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11):8463-8471を参照)を用いて、Jurkat細胞(Cell Center, Chinese Academy of Sciences)のウイルス感染により調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-TIGITFL-BSDであった(TIGITはGenebank ID:NP_776160.2であり;ベクターplenti6.3/V5 TOPOはInvitrogen社よりカタログ番号K531520にて購入した)。
【0094】
本発明の以下の実施例において、使用した細胞株HT1080-aCD3scFvは、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株HT1080-aCD3scFvは、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11):8463-8471を参照)を用いて、HT-1080細胞(Cell Resource Center, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences)のウイルス感染により調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-aCD3scFv-Puroであった(抗CD3scFvの配列は抗ヒトCD3 Mus musculus OKT3ハイブリドーマ抗体から得た;ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-PuroはYoubio社よりカタログ番号VT1480にて購入した)。
【0095】
実施例1:抗TIGIT抗体の調製
1. ハイブリドーマ細胞株LT019の調製
抗TIGIT抗体の調製に用いた抗原は、ヒトTIGIT-mFcであった(TIGITはGenBank ID:NP_776160.2であった)。免疫されたマウスの脾細胞をマウスのミエローマ細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を調製した。ヒトTIGIT-hFcを抗原として、間接ELISAによってハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、TIGITに特異的に結合する抗体を分泌することができるハイブリドーマ細胞を得た。スクリーニングによって得られたハイブリドーマ細胞に対して限界希釈法を行い、安定ハイブリドーマ細胞株を得た。上記ハイブリドーマ細胞株をハイブリドーマ細胞株LT019と名付け、この細胞株から分泌されるモノクローナル抗体を26B12と名付けた。
【0096】
ハイブリドーマ細胞株LT019(TIGIT-26B12としても知られる)を、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に、CCTCC番号C2020208のもと、2020年10月23日付けで寄託した。寄託機関のアドレスは、郵便番号430072 中華人民共和国 武漢 武漢大学である。
【0097】
2. 抗TIGIT抗体26B12の調製
上記で調製した細胞株LT019を、化学的に定義された培地(CD培地、1%ペニシリン-ストレプトマイシン含有)を用いて37℃/5%CO2で培養した。7日後、細胞培養上清を回収し、高速遠心分離、及び精密濾過膜による真空濾過を行い、HiTrap protein A HP カラムを用いた精製によって抗体26B12を得た。
【0098】
実施例2:抗TIGIT抗体26B12の配列分析
細胞/細菌全RNA抽出キット(Tiangen社、カタログ番号DP430)の使用説明書に記載の方法に従い、実施例1で培養した細胞株LT019からmRNAを抽出した。
【0099】
Invitrogen SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRの使用説明書に従ってcDNAを合成し、PCRによって増幅した。
【0100】
pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen社、CT101)の使用説明書に従い、PCR増幅産物から直接TAクローニングを行った。
【0101】
TAクローニング産物を直接シーケンシングした。シーケンシングの結果は以下の通りである。
【0102】
重鎖可変領域のヌクレオチド配列を、363bpの長さで配列番号2に示す。コードされるアミノ酸配列を、121アミノ酸の長さで配列番号1に示す。重鎖HCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列を、配列番号3、4、及び5にそれぞれ示す。
【0103】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を、321bpの長さで配列番号7に示す。コードされるアミノ酸配列を、107アミノ酸の長さで配列番号6に示す。軽鎖LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列を、配列番号8、9、及び10にそれぞれ示す。
【0104】
実施例3:抗ヒトTIGITヒト化抗体及び変異抗体の設計及び調製
1. 抗ヒトTIGITヒト化抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4、及び26B12H4L4の軽鎖及び重鎖の設計
ヒトTIGITタンパク質の三次元結晶構造、及び実施例2で得られた抗体26B12の配列に基づき、抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4、及び26B12H4L4(NCBIデータベースからの抗体定常領域配列:重鎖定常領域はIgガンマ-1鎖C領域、アクセッション番号P01857であり;軽鎖定常領域はIgカッパ鎖C領域、アクセッション番号P01834である)の可変領域配列を設計した。
【0105】
設計された可変領域配列を以下の表1に示す。
【表2】
【0106】
上記8種抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4、及び26B12H4L4に関して、重鎖可変領域のヌクレオチド配列の長さは363bpであり、コードされるアミノ酸配列の長さは121aaであり;軽鎖可変領域のヌクレオチド配列の長さは321bpであり、コードされるアミノ酸配列の長さは107aaであった。
【0107】
また、上記8種抗体は同一のHCDR1~HCDR3及びLCDR1~LCDR3を有していた。HCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列を配列番号3、4、及び5にそれぞれ示し、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列を配列番号8、9、及び10にそれぞれ示す。
【0108】
2. ヒト化抗体26B12H1L1、26B12H4L1、26B12H2L2、26B12H3L2、26B12H2L3、26B12H3L3、26B12H1L4、及び26B12H4L4の調製
重鎖定常領域は全てIgガンマ-1鎖C領域、アクセッション番号P01857であり、軽鎖定常領域は全てIgカッパ鎖C領域、アクセッション番号P01834であった。
【0109】
26B12H1L1の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H4L1の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H2L2の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H3L2の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H2L3の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H3L3の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H1L4の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、26B12H2L4の重鎖cDNA及び軽鎖cDNA、及び26B12H4L4の重鎖cDNA及び軽鎖cDNAを、別々にpUC57simple(GenScript社により提供)ベクターにクローニングし、
pUC57simple-26B12H1、pUC57simple-26B12L1;
pUC57simple-26B12H4、pUC57simple-26B12L1;
pUC57simple-26B12H2、pUC57simple-26B12L2;
pUC57simple-26B12H3、pUC57simple-26B12L2;
pUC57simple-26B12H2、pUC57simple-26B12L3;
pUC57simple-26B12H3、pUC57simple-26B12L3;
pUC57simple-26B12H1、pUC57simple-26B12L4;及び
pUC57simple-26B12H4、pUC57simple-26B12L4;
を得た。
【0110】
Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Second Edition)に記載の標準的な技術を参照し、EcoRI及びHindIII消化によって合成された重鎖及び軽鎖全長遺伝子を、制限酵素EcoRI及びHindIIIによる消化によって発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、発現プラスミドpcDNA3.1-26B12H1、pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H4、pcDNA3.1-126B12H2、pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H3、pcDNA3.1-26B12L3、及びpcDNA3.1-26B12L4を得て、組換え発現プラスミドの重鎖/軽鎖遺伝子をさらにシーケンシングした。その後、対応する軽鎖及び重鎖組換えプラスミド(pcDNA3.1-26B12H1/pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H4/pcDNA3.1-26B12L1、pcDNA3.1-26B12H2/pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H3/pcDNA3.1-26B12L2、pcDNA3.1-26B12H2/pcDNA3.1-26B12L3、pcDNA3.1-26B12H3/pcDNA3.1-26B12L3、pcDNA3.1-26B12H1/pcDNA3.1-26B12L4、及びpcDNA3.1-26B12H4/pcDNA3.1-26B12L4)を含む、設計した遺伝子の組み合わせを、別々に293F細胞にコトランスフェクトし、培養物を回収及び精製した。配列を確認した後、エンドトキシンフリーの発現プラスミドを調製し、抗体発現のためにHEK293細胞に対して一過性トランスフェクションを行った。培養7日後に細胞培養物を回収し、Protein Aカラム上で親和性精製を行い、ヒト化抗体を得た。
【0111】
ヒト化抗体26B12H2L2を、本明細書において26B12H2L2(hG1WT)とも呼ぶ。
【0112】
3. ヒト化抗体26B12H2L2(hG1DM)及び26B12H2L2(hG4DM)の設計
発明者は、26B12H2L2の重鎖定常領域において、234位にロイシンからアラニンへの点変異(L234A)を(EU番号付けシステムによる;以下同様)、また、235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)を導入することにより、変異定常領域を有するヒト化抗体26B12H2L2(hG1DM)を得た。26B12H2L2(hG1DM)の重鎖26B12H2(hG1DM)のアミノ酸配列を配列番号31に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
【0113】
発明者は、Igガンマ-4鎖C領域(アクセッション:P01861.1)を重鎖定常領域として用い、26B12H2L2の重鎖定常領域において、234位にロイシンからアラニンへの点変異(L234A)を、また、235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)を導入し、一方で抗体可変領域を一定とすることにより、変異定常領域を有するヒト化抗体26B12H2L2(hG4DM)を得た。26B12H2L2(hG4DM)の重鎖26B12H2(hG4DM)のアミノ酸配列を配列番号27に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
【0114】
ヒト化抗体26B12H2L2(hG1DM)及び26B12H2L2(hG4DM)は、上記工程2に記載の方法によって調製した。
【0115】
実施例4:抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の配列設計及び調製
1. 配列設計
抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の構成を、次の表2に示す。
【表3】
【0116】
TGF-β受容体部分は2個のペプチド鎖を有し、それぞれがIgG部分の重鎖C末端にリンカー断片を介して連結する。
【0117】
2.抗体の発現及び精製
TF01及びTF02の重鎖cDNA配列及び軽鎖cDNA配列を、ベクターpUC57simple(Genscript社により提供)に別々にクローニングし、プラスミドpUC57simple-TF01H及びpUC57simple-TF02H、又は、pUC57simple-TF01L及びpUC57simple-TF02Lをそれぞれ得た。
【0118】
プラスミドpUC57simple-TF01H/pUC57simple TF01L、及びpUC57simple-TF02H/pUC57simple TF02Lをそれぞれ消化(HindIII及びEcoRI)し、電気泳動で単離した重鎖及び軽鎖を別々にベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培養物を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。その結果、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質、TF01及びTF02が調製された。
【0119】
実施例5:TF01及びTF02の、抗原又はTGF-βへの結合活性のELISA分析
1. TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)の、抗原TIGIT-mFcへの結合活性の間接ELISA分析
【0120】
方法は次の通りである。
マイクロプレートを2μg/mLのヤギ抗マウスIgG Fc(Jackson社、カタログ番号115-005-071)でコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、マイクロプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1%BSAを含むPBS溶液を用いて37℃で2時間ブロッキングした。ブロッキング後、マイクロプレートをPBSTで3回洗浄した。その後、1μg/mLのTIGIT-mFcを加え、マイクロプレートを37℃で30分間インキュベートし、次いでPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体(抗体の希釈勾配を表3に示す)を加えた。試験抗体を含むマイクロプレートを37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-098)の二次抗体ワーキング溶液を加え、次いでマイクロプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いで、TMB(Neogen、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。マイクロプレートを直ちにマイクロプレートリーダーに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0121】
【0122】
図より、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)が、用量依存的に、抗原TIGIT-mFcに効果的に結合できたことが分かる。全用量に対するEC50値を表3に示す。結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティングによって得られた結果によれば、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)(対照)の結合効率EC50値は、それぞれ0.067nM、0.091nM、0.046nM、及び0.055nMであった。
【0123】
上記実験結果は、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)が、TIGIT-mFcに効果的に結合する活性を有していたことを示している。
【0124】
2. TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3に対するの結合活性の間接ELISA分析
【0125】
方法は次の通りである。
3枚のマイクロプレートを、それぞれ1μg/mL、2μg/mL、及び1μg/mLの、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3でコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗原でコートされたマイクロプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1%BSAを含むPBS溶液を用いて37℃で2時間ブロッキングした。ブロッキング後、マイクロプレートをPBSTで3回洗浄した。その後、PBST溶液で段階希釈した抗体、及びTGF-βRII-mFcを加えた。試験抗体及びTGF-βRII-mFcを含むマイクロプレートを、37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-098)及びHRP標識ヤギ抗マウスIgG Fc(Jackson社、カタログ番号115-035-071)の二次抗体ワーキング溶液を加え、次いでマイクロプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いで、TMB(Neogen、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。マイクロプレートを直ちにマイクロプレートリーダーに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0126】
結果を、表4、5、及び6、並びに
図2、3、及び4に示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0127】
結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティングによって得られた結果によれば、TF01のTGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3への結合効率EC50値は、それぞれ0.207nM、0.477nM、及び0.215nMであり、TF02のTGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3への結合効率EC50値は、それぞれ0.224nM、0.594nM、及び0.234nMであり、TGF-βR2-mFc(陽性対照)のTGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3への結合効率EC50値は、それぞれ0.356nM、1.029nM、及び0.402nMであった。
【0128】
結果は、TF01及びTF02が、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3に、用量依存的に、効果的に結合する活性を有することを示す。結果はさらに、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcのそれぞれが、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3にそれぞれ効果的に結合でき、また、TF01及びTF02は、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3への結合能がTGF-βRII-mFcよりも高いことを示す。
【0129】
実施例6:ヒトTGF-β1及びTGF-β3への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する、TF01及びTF02の活性のELISA分析
実験工程:2枚のマイクロプレートを、2μg/mLのTGF-β1及びTGF-β3でそれぞれコートし、4℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、抗原でコートされたマイクロプレートをPBSTで1回リンスし、ブロッキング溶液として1%BSAを含むPBS溶液を用いて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、マイクロプレートをPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体、及びTGF-βRII-mFcをマイクロプレートに加えた。TGF-β1のマイクロプレートについては、室温で60分間インキュベート後、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで0.01μg/mLのTGF-βRII-His-ビオチンを加えて室温で10分間インキュベートした。TGF-β3のマイクロプレートについては、37℃で30分間インキュベート後、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで0.01μg/mLのTGF-βRII-His-ビオチンを加えて37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:4000の割合で希釈したSA-HRPワーキング溶液を加え、マイクロプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いで、TMB(Neogen、308177)を暗所で加えて4分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。マイクロプレートを直ちにマイクロプレートリーダーに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0130】
TGF-β1及びTGF-β3への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する抗体の結果を表7及び8、並びに
図5及び6に示す。吸光度vs.抗体濃度の曲線をフィッティングし、TGF-β1及びTGF-β3への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する抗体のEC
50値を算出した。結果を以下の表7及び8に示す。
【表8】
【表9】
【0131】
結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティングによって得られた結果によれば、TGF-β1への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの結合効率EC50値は、それぞれ5.579nM、7.469nM、及び6.475nであり、TGF-β3への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する、TF01、TF02、及びTGF-βRII-mFcの結合効率EC50値は、それぞれ3.569nM、3.879nM、及び2.808nMであった。
【0132】
結果は、TF01及びTF02が、TGF-β1及びTGF-β3に、用量依存的に、効果的に結合できることを示す。また、TF01は、TGF-β1に対する結合能がTGF-βRII-His-ビオチンよりも高い。TF01は、TGF-β1への結合に関してTGF-βRII-His-ビオチンと競合する能力がTGF-βRII-mFcよりも高かった。
【0133】
実施例7:ヒトTIGIT-mFcへの結合に関してCD155-hFc-ビオチンと競合する、TF01及びTF02の活性のELISA分析
マイクロプレートを2μg/mLのヒトTIGIT-mFc(TIGIT GenBank ID:NP-776160.2)でコートし、4℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、マイクロプレートを、1%BSAを含むPBS溶液で37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、プレートを3回洗浄し、乾燥した。抗体を、20.18nM(最終濃度10.09nM)を開始濃度として、希釈プレート上で、1:3の勾配率にて7種の濃度に段階希釈し、また、ブランク対照を設定した。その後、4μg/mL(最終濃度2μg/mL)のヒトCD155-hFc-ビオチン溶液を等量加え、系をよく混合した。その後、混合物を室温で20分間インキュベートした。その後、コートしたマイクロプレートに反応後の混合物を加え、マイクロプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで3回洗浄し、乾燥した。SA-HRP(KPL、14-30-00)ワーキング溶液を加え、プレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートを4回洗浄し、乾燥した。次いで、TMB(Neogen、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。マイクロプレートを直ちにマイクロプレートリーダーに入れ、マイクロプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0134】
結果を
図7に示す。全用量に対するOD値を表9に示す。結合した抗体の吸光度(absorbance intensity)の定量分析に基づき、カーブフィッティングによって抗体の結合効率EC
50値を得た(表9)。
【表10】
【0135】
TIGIT-mFcが、そのリガンドCD155-hFc-ビオチンへ結合するのをブロックするための、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)(対照)のEC50値は、それぞれ、1.463nM、1.963nM、1.423nM、及び1.675nMであった。
【0136】
結果は、抗原であるヒトCD155-hFc-ビオチンがその受容体であるヒトTIGIT-mFcに結合するのを、TF01、TF02、26B12H2L2(hG4DM)、及びRG6058(hG4)(対照)が用量依存的に、効果的にブロックできることを示す。TF01は、TIGIT-mFcがそのリガンドCD155-hFc-ビオチンへ結合するのをブロックする能力が、対照抗体RG6058(hG4)よりも高かった。
【0137】
実施例8:293T-TIGIT膜表面上のTIGITへの、TF01の結合活性のFACS分析
対数増殖期の293T-TIGIT細胞を採取し、透明なV底96ウェルプレートに3×105細胞/ウェルで移した。350gの1%PBSAを加え、混合物を5分間遠心分離して、上清を除去した。1%PBSAで希釈した抗体100μL(それぞれ、100nM、33.33nM、11.11nM、3.7nM、1.23nM、0.41nM、0.041nM、0.0041nM、及び0.00041nMの最終濃度)を、それぞれ加えた。系を穏やかに均一に混合し、混合物を氷上で1時間インキュベートした。その後、350gの1%PBSAを加え、混合物を5分間遠心分離して、上清を除去した。350倍希釈したFITC標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson社、カタログ番号109-095-098)を加え、再懸濁して均一に混合し、混合物を暗所にて氷上で0.5時間インキュベートした。350gの1%PBSAを加え、混合物を5分間遠心分離して、上清を除去した。そして、400μLのPBSAを加えて細胞沈殿物を再懸濁し、得られた混合物をFACS Calibur分析のためのフローチューブ(flow tube)に移した。
【0138】
実験結果を表10及び
図8に示す。TF01及びRG6058(hG4)(対照抗体)は、どちらも293T-TIGIT膜表面上のTIGITに特異的に結合することができた。
【表11】
【0139】
293T-TIGIT細胞に結合するTF01及びRG6058(hG4)のEC50値は、同一実験条件下で、それぞれ1.540nM及び1.612nMであった。
【0140】
結果は、TF01が、293T-TIGIT膜表面上のTIGITに対して用量依存的に、効果的に結合する活性を有し、対照抗体RG6058(hG4)よりも高い結合能を有することを示した。
【0141】
実施例9:細胞膜表面上の抗原TIGITへの結合に関してCD155又はCD112と競合するTF01の、競合フローサイトメトリーによる分析
293T-TIGIT細胞を従来法で消化し、各ウェルが300,000細胞となるようにいくつかの試料に分割して、その後、遠心分離と洗浄を行った。次いで、勾配希釈された対応する抗体を各ウェルに100μL加え、混合物を氷上で30分間インキュベートした。その後、100μLのCD155/CD112-mFc(Akeso Biopharma社による調製;ロット番号20190726/20190726)を各ウェルに加え、系を良く混合して、最終濃度10nM/30nMにした。その後、混合物を氷上で1時間インキュベートした。次いで、350gの1%PBSAを加え、混合物を5分間遠心分離して、上清を除去した。1:300の割合で希釈したAPCヤギ抗マウスIgG抗体(Biolegend社、カタログ番号405308)を各ウェルに100μL加え、1%PBSAをブランク試料に100μL加えて、系をよく混合した。その後、混合物を暗所にて氷上で30分間インキュベートし、次いで遠心分離、洗浄、及び再懸濁を行った後、フローサイトメトリーチューブに移して試験を行った。
【0142】
結果を
図9及び10に示し、EC
50値を表11に示す。蛍光定量分析及びカーブフィッティングにより、抗原への結合に関して競合するTF01のEC
50値は、それぞれ1.2720nM及び0.7445nMと算出された。
【表12】
【0143】
結果は、293T-TIGIT宿主細胞表面上のTIGITへのCD155及び/又はCD112の結合を、TF01抗体が用量依存的に、効果的にブロックできることを示す。
【0144】
実施例10:Fc受容体FcγRIに対する、TF01の親和性の分析
Fc受容体FcγRI(CD64としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に関与している。Fc受容体への治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。実験において、FcγRIに対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0145】
FcγRIに対する対応する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。1μg/mLのFcγRI溶液(Sinobio社より購入)をHIS1Kセンサーに加え、センサー表面上にFcγRIを50秒間固定した。FcγRIへの抗体の結合及び解離定数の両者を、3.12~50nM(2倍段階希釈)の抗体濃度の緩衝液中で測定した。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度(frequency)は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0146】
TF01に対するFcγRIの親和性定数に関する結果を表12及び
図11~12に示す。
【表13】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0147】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcγRIに6.51E-09Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcγRIに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0148】
結果は、FcγRIに対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0149】
実施例11:Fc受容体FcγRIIIa及びそのサブタイプに対する、TF01の親和性の分析
(1)TF01に対する、FcγRIIIa_V158の親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIIa_V158(CD16a_V158としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、ADCC効果を媒介する。実験において、FcγRIIIa_V158に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0150】
対応する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。5μg/mLのFcγRIIIa_V158を、HIS1Kセンサー上に60秒間固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIIa_V158の、31.25~500nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0151】
TF01に対するFcγRIIIa_V158の親和性定数に関する結果を、表13及び
図13~14に示す。
【表14】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0152】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcγRIIIa_V158に5.54E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcγRIIIa_V158に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0153】
結果は、FcγRIIIa_V158に対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0154】
(2)TF01に対する、FcγRIIIa_F158の親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIIa_F158(CD16a_F158としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、ADCC効果を媒介する。実験において、FcγRIIIa_F158に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0155】
FcγRIIIa_F158に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。5μg/mLのFcγRIIIa_V158を、HIS1Kセンサー上に120秒間固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIIa_V158の、31.25~500nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0156】
TF01に対するFcγRIIIa_F158の親和性定数に関する結果を、表14及び
図15~16に示す。
【表15】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0157】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcFcγRIIIa_F158に9.97E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcFcγRIIIa_F158に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0158】
結果は、FcγRIIIa_F158に対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0159】
実施例12:Fc受容体FcγRIIa及びそのサブタイプに対する、TF01の親和性の分析
(1)TF01に対する、FcγRIIa_H131の親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIa_H131(CD32a_H131としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に関与している。Fc受容体への治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。実験において、FcγRIIa_H131に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、Fc受容体に対する試験抗体の結合能を評価した。
【0160】
FcγRIIa_H131に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。5μg/mLのFcγRIIa_H131を、NTAセンサー上に約1.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIa_H131の、12.5~200nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0161】
TF01に対するFcγRIIa_H131の親和性定数に関する結果を、表15及び
図17~18に示す。
【表16】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0162】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcγRIIa_H131に3.90E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcγRIIa_H131に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0163】
結果は、FcγRIIa_H131に対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0164】
(2)TF01に対する、FcγRIIa_R131の親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIa_R131(CD32a_R131としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に関与している。Fc受容体への治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。実験において、FcγRIIa_R131に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、Fc受容体に対する試験抗体の結合能を評価した。
【0165】
FcγRIIa_R131に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。5μg/mLのFcγRIIa_R131を、NTAセンサー上に約1.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIa_R131の、12.5~200nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。抗体を緩衝液中で60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0166】
TF01に対するFcγRIIa_R131の親和性定数に関する結果を、表16及び
図19~20に示す。
【表17】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0167】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcγRIIa_H131に3.22E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcγRIIa_R131に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0168】
結果は、FcγRIIa_R131に対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0169】
実施例13:TF01に対する、FcγRIIbの親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIb(CD32bとしても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができる。実験において、FcγRIIbに対する試験抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、Fc受容体に対するTF01の結合能を評価した。
【0170】
FcγRIIbに対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。5μg/mLのFcγRIIbを、NTAセンサー上に約1.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化hFCGR2B-hisの、12.5~200nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。抗体を緩衝液中で60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。
【0171】
TF01に対するFcγRIIbの親和性定数に関する結果を、表17及び
図21~22に示す。
【表18】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0172】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がFcγRIIbに4.12E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはFcγRIIbに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0173】
結果は、FcγRIIbに対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0174】
実施例14:C1qに対する、TF01の親和性の分析
血清補体C1qは、IgG抗体のFc断片に結合することができ、CDC効果を媒介する。C1qに対する治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。実験において、C1qに対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のCDC活性を評価した。
【0175】
C1qに対する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定する方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、PBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSA(pH7.4)であった。50μg/mLの抗体を、FAB2Gセンサー上に約2.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化抗体の、0.625~10nM(2倍段階希釈)の濃度の抗原C1qに対する結合を60秒間測定した。抗原-抗体を緩衝液中で60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、頻度は5.0Hzであった。データを1:1モデルでフィッティング及び分析することにより、親和性定数を得た。データ取得ソフトウェアはFortebio Data Acquisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアはFortebio Data Analysis 7.0であった。
【0176】
C1qに対するTF01の親和性定数に関する結果を、表18及び
図23~24に示す。
【表19】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は、抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0177】
結果は、26B12H2L2(hG1WT)がC1qに1.28E-09Mの親和性定数で結合できたこと、そして、TF01についてはC1qに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0178】
結果は、C1qに対するTF01の結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0179】
実施例15:CHO-K1-TIGITに対する、TF01の抗体依存性細胞食作用活性
抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を検出するため、エフェクター細胞としてマウスマクロファージを用い、標的細胞としてTIGITを過剰発現する細胞株を用いた。細胞に媒介されるADCP効果を試験した。
【0180】
凍結保存したマウス骨髄由来マクロファージ(MBMM)(C57マウス由来)を取り出し、DMEM+10% FBS+100ng/mL M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子、PeproTech社、カタログ番号315-02)を加えて、混合物を1200×gで5分間遠心分離した。細胞を回収し、DMEM+10% FBS+100ng/mL M-CSF培地を加え、細胞を一晩融解させた。
【0181】
標的細胞(CHO-K1-TIGIT)を回収し、170×gで5分間遠心分離し、PBSで1回洗浄した。トリパンブルーを加えて計数を行った。5(6)-カルボキシフルオレセイン N-スクシンイミジルエステル(CFSE、Biolegend社、カタログ番号423801)をPBSで2.5μMに希釈し、細胞を再懸濁した(染色密度:10,000,000細胞/mL)。適量の細胞を細胞インキュベーター内で20分間インキュベートした。6mLのDMEM完全培地(10%FBSを含む)を加えて染色を停止させた。混合物を170×gで5分間遠心分離して、上清を除去した。1mLのDMEM完全培地を加え、細胞をインキュベーター中で10分間インキュベートした。抗体を、DMEM完全培地で所望の濃度まで希釈し、アイソタイプ対照抗体を設計した。標的細胞(150,000細胞/ウェル)を96ウェルV底プレートに加えた後、抗体(100μL)を加え、系をよく混合した。混合物を氷上で40分間インキュベートし、170×gで5分間遠心分離し、2回洗浄した。マクロファージ(MBMM)を回収し、750×gで5分間遠心分離して、上清を除去した。細胞を計数し、DMEM完全培地に再懸濁して、マクロファージの濃度を調整した(50,000細胞/100μL)。その後、標的細胞を含む96ウェルV底プレートに前記細胞を加え、再懸濁及び混合を行った。混合物をインキュベーター中で37℃にて2時間インキュベートした。室温の100μLの1%PBSAを各ウェルに加えた。混合物を750×gで5分間遠心分離して、上清を除去した。細胞を200μLのPBSAで1回洗浄した。APC抗マウス/ヒトCD11b抗体(Biolegend社、カタログ番号101212)(PBSAで500倍希釈)を、対応する試料に100μL/ウェルで加え、系をよく混合した。その後、混合物を氷上で40分間インキュベートした。各ウェルに100μLの1%PBSAを加えた。混合物を750×gで5分間遠心分離して、上清を除去した。細胞を、各ウェルにつき200μLのPBSAで1回洗浄した。各ウェルに200μLの1%PBSAを加えて再懸濁し、試験を行った。系内のマクロファージはAPC陽性であり、食作用に関与するマクロファージはAPC及びCFSE二重陽性であった。食作用率を、APC陽性細胞の数に対する二重陽性細胞の数の割合として決定し、それによりADCP活性を評価した。各群のADCP活性をP%で表し、それを次の式で算出した。
【数1】
【0182】
【0183】
結果は、同一濃度においてRG6058(hG1WT)、RG6058(hG4)、及び26B12H2L2(hG1WT)がADCP効果を有すること、そして、同一濃度においてTF01の食作用率がアイソタイプ対照抗体群と同程度であることを示し、TF01がADCP効果を有しないことが示された。
【0184】
結果は、TF01によって導入されたアミノ酸変異がADCP効果を効果的に排除できたことを示す。
【0185】
実施例16:同時培養系でのIL-2分泌に対するCD112/CD155阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価
1. Jurkat-TIGIT及びTHP-1細胞同時培養系でのIL-2分泌に対するCD112阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価
96ウェルプレート(Corning社、モデル番号3599)を、2μg/mLの抗ヒトCD3抗体(Akeso Biopharma社による調製;ロット番号20170830)で、37℃にて2時間コートした。その後、コーティング溶液を除去し、予冷したPBS(300μL)でプレートを1回洗浄した。Jurkat-TIGIT細胞(Akeso Biopharma社による構築)を計数し、96ウェルプレートに50,000細胞/ウェルにて加えた。抗体を実験設計に従って加え、プレートを37℃で30分間インキュベートした。CD112-hFc(Akeso Biopharma社による調製;ロット番号20180209)を実験設計に従って加えた。THP-1細胞(Chinese Academy of Sciencesから購入、カタログ番号3131C0001000700057)を計数し、96ウェルプレートに50,000細胞/ウェルにて加えた。プレートをインキュベーター内で48時間インキュベートした。培養上清を回収し、IL-2 ELISAキット(Dakewe社、カタログ番号1110202)を用いてIL-2含量を試験した。
【0186】
結果を
図26に示す。結果は、CD112がIL-2分泌に対して有意な阻害効果を有することを示す。抗体26B12H2L2(hG4DM)、TF01、TF02、RG6058(hG1DM)、及びRG6058(hG4)は、系内のIL-2分泌に対するCD112阻害を効果的にブロックすることができ、TF01及びTF02は、陽性対照抗体RG6058(hG1DM)及びRG6058(hG4)よりも強い活性を有していた。
【0187】
2. Jurkat-TIGIT及びTHP-1細胞同時培養系でのIL-2分泌に対するCD155阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価
96ウェルプレート(Corning社、モデル番号3599)を、2μg/mLの抗ヒトCD3抗体(Akeso Biopharma社による調製;ロット番号20170830)で、37℃にて2時間コートした。その後、コーティング溶液を除去し、予冷したPBS(300μL)でプレートを1回洗浄した。Jurkat-TIGIT細胞(Akeso Biopharma社による構築)を計数し、96ウェルプレートに50,000細胞/ウェルにて加えた。実験デザインに従って抗体を加え、プレートを37℃で30分間インキュベートした。CD155-hFc(Akeso Biopharma社による調製;ロット番号20180209)を実験設計に従って加えた。THP-1細胞(Chinese Academy of Sciencesから購入、カタログ番号3131C0001000700057)を計数し、96ウェルプレートに50,000細胞/ウェルにて加えた。プレートをインキュベーター内で48時間インキュベートした。培養上清を回収し、IL-2 ELISAキット(Dakewe社、カタログ番号1110202)を用いてIL-2含量を試験した。
【0188】
結果を
図27に示す。結果は、CD155がIL-2分泌に対して有意な阻害効果を有することを示す。抗体TF01及びRG6058(hG1DM)は、系内のIL-2分泌に対するCD155阻害を効果的にブロックすることができ、同程度の活性を有していた。
【0189】
実施例17:Jurkat-TIGIT及びHT1080-aCD3scFv細胞同時培養系でのIL-2分泌の促進における、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の生物活性の評価
対数増殖期のJurkat-TIGIT及びHT1080-aCD3scFv細胞(Akeso Biopharma社による構築)を採取及び計数し、各ウェルが50,000個のJurkat-TIGIT細胞、及び各ウェルが10,000個のHT1080-aCD3scFv細胞となるようにした。希釈した抗体(抗体勾配:3nM、30nM、300nM)を加えた。可溶性抗ヒトCD28抗体(3μg/mL)(R&D社、カタログ番号MAB342-500)を加えた。混合物をインキュベーターで48時間インキュベートした。培養上清を回収し、IL-2 ELISAキット(Dakewe社、カタログ番号1110202)を用いてIL-2含量を試験した。
【0190】
【0191】
結果は、抗体TF01、TF02、及びRG6058(hG4)が、Jurkat-TIGIT及びHT1080-scFv細胞同時培養系でのIL-2分泌を効果的に促進でき、同程度の活性を有することを示す。
【0192】
実施例18:CMV抗原へのPBMC二次免疫応答の過程における、IFN-γ分泌に対するTGF-β1阻害への、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質のブロッキング活性の評価
PBMC(健常ドナー由来)を融解し、完全培地(RPMI1640+10% FBS)上に播種して、インキュベーター中で一晩インキュベートした。翌日、細胞を採取及び計数して細胞生存率を決定し、丸底96ウェルプレート(Corning社、カタログ番号3799)上に200,000細胞/ウェルで播種した。一方、勾配希釈した抗体、CMV(最終濃度0.02μg/mL、Mabtech社、カタログ番号3619-1)、及びTGF-β1(最終濃度3ng/mL、Genscript社、カタログ番号Z03411)を実験設計に従って加え、最終容量200μLとした。(TGF-β1及び抗体は37℃で10分間インキュベートした。)混合物をインキュベーター内で4日間インキュベートした。4日後、細胞培養上清を回収し、IFN-γ ELISAキット(Dakewe社、カタログ番号1110002)を用いてIFN-γ含量を試験した。
【0193】
結果を
図29に示す。結果は、CMV抗原が、PBMC二次免疫応答によるIFN-γの分泌を引き起こすことができ、系内のIFN-γ分泌に対してTGF-β1が有意な阻害効果を有することを示す。抗体TF01、抗HEL&TGFβ、及び抗HEL&TGFβ+26B12H2L2(hG1DM)の併用により、系内のIFN-γ分泌に対するTGF-β1阻害を効果的にブロックすることができ、この効果は26B12H2L2(hG1DM)を単独で用いた場合には達成されなかった。TF01のブロッキング活性は、対照抗体抗HEL&TGFβのものよりも優れており、抗HEL&TGFβ+26B12H2L2(hG1DM)と同程度であった。
【0194】
実施例19:マウス腫瘍細胞皮下異種移植モデルにおける、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の薬力学的評価
抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質の抗腫瘍活性をin vivoで測定するため、まず、MDA-MB-231細胞(ATCCより購入)を、6.71~9.57週齢の雌のScid Beigeマウス(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology社から購入)の乳房脂肪体に皮下接種した。接種の17日後、マウスを腫瘍容積によりランダムに8個体ずつの3群に分けた。各マウスにヒト末梢血単核球(hPBMC)を腹腔内注射し、投与を行って、グループ分けの日をD0と定義した。投与経路は腹腔内注射であり、週1回の注射を6週間行った。hPBMCの腹腔内注射をグループ分けの8日後に行った。モデリングと具体的なレジメンを表19に示す。投与後、各群の腫瘍の長さ及び幅を測定し、腫瘍容積を算出した。
【表20】
【0195】
結果を
図30に示す。結果は、アイソタイプ対照抗体と比べ、抗TIGIT抗体とTGF-βRの融合タンパク質TF01が、マウスにおける腫瘍の成長を効果的に阻害できたことを示す。
【0196】
また、
図31に示すように、担がんマウスは試験薬剤TF01に対して耐性が高く、各群の担がんマウスの体重への影響は無かった。
【0197】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載したが、当業者は、開示されたあらゆる教示に従い、それらの詳細に対して各種改変及び置換を行いうることを理解するであろう。これらの変更は全て本発明の保護範囲内に含まれる。本発明の完全な範囲が、添付の請求の範囲及びその任意の等価物によって提供される。
【配列表】
【国際調査報告】