(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】挿着端子、挿着構造および自動車
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20240903BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01R13/11 D
H01R13/03 A
H01R13/03 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509438
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2022110786
(87)【国際公開番号】W WO2023020312
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110944154.6
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388383
【氏名又は名称】長春捷翼汽車科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Changchun JETTY Automotive Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 957, Shunda Road, High-tech Development Zone, Chaoyang District Changchun City, Jilin Province, 130000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(57)【要約】
本発明は、挿着端子、挿着構造および自動車を提供し、該挿着端子は、接続アームを少なくとも2つ含む端子積層シートを含み、前記接続アームは、オーバーハング端と固定端とを含み、前記接続アームの固定端がお互いに固着され、隣接する2つの前記接続アームの間に挿着溝が設けられ、前記オーバーハング端には、導電接触部が設けられている。本発明により、挟持端子が外力を受けたり、長時間にわたって接合して振動したりする場合、電気的接続が無効になることが発生しやすいという技術的課題を緩和する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続アームを少なくとも2つ含む端子積層シートを含み、前記接続アームは、オーバーハング端と固定端とを含み、前記接続アームの固定端がお互いに固着され、隣接する2つの前記接続アームの間に挿着溝が設けられ、前記オーバーハング端には、導電接触部が設けられている、
挿着端子。
【請求項2】
前記導電接触部は、前記挿着溝の内部に設けられている、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項3】
前記導電接触部は、前記挿着溝の内部の両側に設けられている、
請求項2に記載の挿着端子。
【請求項4】
前記導電接触部は、前記挿着溝の内部の両側に対称に設けられている、
請求項3に記載の挿着端子。
【請求項5】
前記端子積層シートを複数含み、複数の前記端子積層シートが積層して設けられている、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項6】
前記端子積層シートは、板材をプレスまたは切断して形成されている、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項7】
前記端子積層シートは端子固定部を含み、各前記接続アームの固定端がいずれも前記端子固定部に固着されている、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項8】
隣接する2つの前記端子積層シートの端子固定部は、圧着、溶接、螺着、かしめまたは繋ぎ合せにより接続されている、
請求項7に記載の挿着端子。
【請求項9】
隣接する2つの前記端子積層シートの接続アーム同士が接触して係合している、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項10】
前記オーバーハング端には、掻き落とし部が設けられ、前記掻き落とし部と前記導電接触部とは、前記オーバーハング端から前記固定端に向かう方向に沿って順に分布する、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項11】
前記掻き落とし部は、前記端子積層シートの厚さ方向に沿って延設され、断面が三角形状を呈する、
請求項10に記載の挿着端子。
【請求項12】
前記掻き落とし部の前記オーバーハング端に対する最高点は、前記導電接触部の前記オーバーハング端に対する最高点よりも高くない、
請求項10に記載の挿着端子。
【請求項13】
前記掻き落とし部は、前記オーバーハング端から前記固定端に向かう方向における長さが、前記オーバーハング端の長さの3%~55%を占める、
請求項10に記載の挿着端子。
【請求項14】
前記導電接触部は、前記端子積層シートの厚さ方向に沿って延設され、前記導電接触部の断面が円弧状、台形状または波形状を呈する、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項15】
前記端子固定部は、平面内または非平面内に設けられた折り曲げ延長部を有し、折り曲げ角度が0°~180°内である、
請求項7に記載の挿着端子。
【請求項16】
前記端子積層シートの本体材質は、テルル銅合金である、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項17】
前記端子積層シートの本体材質におけるテルルの含有量は0.1%~5%である、
請求項16に記載の挿着端子。
【請求項18】
前記端子積層シートの本体材質にはベリリウムが含まれる、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項19】
前記端子積層シートの本体材質におけるベリリウムの含有量は0.05%~5%である、
請求項18に記載の挿着端子。
【請求項20】
前記端子積層シートの本体材質におけるベリリウムの含有量は0.1%~3.5%である、
請求項19に記載の挿着端子。
【請求項21】
前記端子積層シートの少なくとも一部の表面にめっき層が設けられ、
前記導電接触部に前記めっき層が設けられ、前記導電接触部の表面の前記めっき層は、第1のめっき層である、
請求項10に記載の挿着端子。
【請求項22】
前記掻き落とし部の表面に前記めっき層が設けられ、前記掻き落とし部の表面の前記めっき層は、第2のめっき層である、
請求項21に記載の挿着端子。
【請求項23】
前記接続アームにおける前記導電接触部および前記掻き落とし部以外の表面に前記めっき層が設けられ、前記接続アームにおける前記導電接触部および前記掻き落とし部以外の表面の前記めっき層は、第3のめっき層である、
請求項22に記載の挿着端子。
【請求項24】
前記端子固定部の表面に前記めっき層が設けられ、前記端子固定部の表面の前記めっき層は、第4のめっき層である、
請求項23に記載の挿着端子。
【請求項25】
前記第1のめっき層の材質と、前記第2のめっき層の材質と、前記第3のめっき層の材質と、前記第4のめっき層の材質と、は、異なる、
請求項24に記載の挿着端子。
【請求項26】
前記第1のめっき層の厚さと、前記第2のめっき層の厚さと、前記第3のめっき層の厚さと、前記第4のめっき層の厚さと、は、異なる、
請求項24に記載の挿着端子。
【請求項27】
前記第3のめっき層の材質と前記第4のめっき層の材質とは、同じであり、前記第1のめっき層の材質または前記第2のめっき層の材質と、前記第3のめっき層の材質と、は、異なる、
請求項25に記載の挿着端子。
【請求項28】
前記第3のめっき層の厚さと前記第4のめっき層の厚さとは、同じであり、前記第1のめっき層の厚さまたは前記第2のめっき層の厚さと、前記第3のめっき層の厚さと、は、異なる、
請求項26に記載の挿着端子。
【請求項29】
前記めっき層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、亜鉛、スズ鉛合金、銀アンチモン合金、パラジウム、パラジウムニッケル合金、グラファイト銀、グラフェン銀および銀金ジルコニウム合金のうちの1種または複数種を含む、
請求項21に記載の挿着端子。
【請求項30】
前記めっき層は、下地層と表層とを含む、
請求項21に記載の挿着端子。
【請求項31】
前記めっき層は、電気めっき、無電解めっき、マグネトロンスパッタリングまたは真空めっきによって前記端子積層シートに設けられることができる、
請求項21に記載の挿着端子。
【請求項32】
前記下地層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、スズ鉛合金および亜鉛のうちの1種または複数種を含み、前記表層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、亜鉛、スズ鉛合金、銀アンチモン合金、パラジウム、パラジウムニッケル合金、グラファイト銀、グラフェン銀または銀金ジルコニウム合金のうちの1種または複数種を含む、
請求項30に記載の挿着端子。
【請求項33】
前記下地層の厚さは0.01μm~12μmである、
請求項30に記載の挿着端子。
【請求項34】
前記下地層の厚さは0.1μm~9μmである、
請求項30に記載の挿着端子。
【請求項35】
前記表層の厚さは0.5μm~50μmである、
請求項30に記載の挿着端子。
【請求項36】
前記表層の厚さは1μm~35μmである、
請求項30に記載の挿着端子。
【請求項37】
前記接続アームの最小幅と前記接続アームの厚さとの比は0.5~10である、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項38】
隣接する2つの前記端子積層シートの前記接続アーム間の隙間は0.2mm未満である、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項39】
前記接続アームは、少なくとも一部の材質が記憶合金である、
請求項1に記載の挿着端子。
【請求項40】
前記記憶合金の変態温度は40℃~70℃であり、前記接続アームの温度が該変態温度よりも低い状態で、複数の前記接続アームは拡張状態にあり、前記接続アームの温度が該変態温度より高い状態で、複数の前記接続アームはクランプ状態にある、
請求項39に記載の挿着端子。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の挿着端子を含み、前記挿着端子と挿着される相手端子をさらに含む、
挿着構造。
【請求項42】
前記挿着端子と前記相手端子との間の挿着力は3N~150Nの範囲にある、
請求項41に記載の挿着構造。
【請求項43】
前記挿着端子と前記相手端子との間の挿着力は10N~95Nの範囲にある、
請求項42に記載の挿着構造。
【請求項44】
前記挿着端子と前記相手端子との間の接触抵抗は、9mΩ未満である、
請求項41に記載の挿着構造。
【請求項45】
請求項1~40のいずれか一項に記載の挿着端子を含む自動車。
【請求項46】
請求項41~44のいずれか一項に記載の挿着構造を含む自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、特許出願番号が202110944154.6であり、出願日が2021年08月17日であり、発明名称が「挿着端子、挿着構造および自動車」である中国発明特許の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、電気接続部品の技術分野に関し、特に挿着端子、挿着構造および自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
シート状端子と挟持端子は、接合作用を果たす一般的な導電部品である。挟持端子は、金属板の弾性を利用して挟持し、外力を受けたり長時間にわたって接合して振動したりすると、金属板が変形しやすくなったり、弾性が弱まったりして、電気的な接続が無効になり、電気的な機能が実現できなくなる。
【0004】
したがって、電気接続部品の技術分野では、接続が安定し、挟持端子が外力を受けたり長時間にわたって接合して振動したりした場合であっても、電気的接続が無効にならない挿着端子が切に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、挿着端子、挿着構造および自動車を提供することを目的とし、挟持端子が外力を受けたり、長時間にわたって接合して振動したりする場合、電気的接続が無効になることが発生しやすいという技術的課題を緩和する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の技術方案によって実現されることができる。
【0007】
本発明は、接続アームを少なくとも2つ含む端子積層シートを含み、前記接続アームは、オーバーハング端と固定端とを含み、前記接続アームの固定端がお互いに固着され、隣接する2つの前記接続アームの間に挿着溝が設けられ、前記オーバーハング端には、導電接触部が設けられた挿着端子を提供する。
【0008】
本発明は、上記の挿着端子を含み、前記挿着端子と挿着される相手端子をさらに含む挿着構造を提供する。
【0009】
本発明は、上記の挿着端子を含む自動車を提供する。
【0010】
本発明は、上記の挿着構造を含む自動車を提供する。
【0011】
本発明の特徴および利点は以下の通りである。
【0012】
相手端子は、該挿着端子に挿着して嵌合することができ、該挿着端子において、複数の端子積層シートの接続アームは、積層して分布し、相手端子は、挿着溝に挿着されることができるとともに、接続アーム構造によって、金属板が厚過ぎることに起因する変形や弾性減衰の問題を抑止する。導電接触部は、接続アームと接触して係合しながら電気的に接続され、接続アームによって相手端子をクランプし、相手端子を該挿着端子に対して固定するとともに、両者の間に大きな接触面積を持たせ、接続の信頼性と導電効果を確保する。該挿着端子は、挟持構造の安定性を確保し、変形を減少させ、接続アームの強度を増加させることができる。
【0013】
以下の図面は、本発明を模式的に説明や解釈することを意図するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明により提供される挿着端子と相手端子の一実施形態の挿着概略図である。
【
図2】本発明により提供される挿着端子の正面図である。
【
図3】本発明により提供される挿着端子における端子積層シートの構造概略図である。
【
図4】本発明により提供される挿着端子における端子積層シートの構造概略図である。
【
図5】本発明により提供される挿着端子における端子積層シートの構造概略図である。
【
図6】本発明により提供される挿着端子と相手端子との別の実施形態の挿着概略図である。
【
図7】本発明により提供される挿着端子と相手端子との別の実施形態の挿着概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の技術的特徴、目的および効果をより明確に理解するために、ここに、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明する。本発明の説明において、別段説明されない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
[方案一]
【0016】
本発明は、挿着端子を提供し、
図1~
図2に示すように、該挿着端子は、接続アーム20を少なくとも2つ含む端子積層シート10を含み、接続アーム20は、オーバーハング端21と固定端22とを含み、各接続アーム20の固定端22がお互いに固着され、隣接する2つの接続アーム20の間に挿着溝23が設けられ、接続アーム20には、導電接触部31が設けられている。
【0017】
一実施形態において、導電接触部31は、挿着溝23の内部に設けられ、相手端子50は、該挿着端子と挿着して嵌合することができ、相手端子50は、挿着溝23に挿着可能であり、挿入されると同時に、導電接触部31は相手端子50と接触して電気的接続を実現し、接続の信頼性と導電効果を確保することができる。
【0018】
好ましくは、導電接触部31は、挿着溝23の内部の両側に設けられ、相手端子50の2つの側面にそれぞれ接触して電気的接続を実現することができ、接触面積を増大させてより良い導電効果を実現することができる。
【0019】
好ましくは、導電接触部31は、挿着溝23の内部の両側に対称に設けられ、導電接触部31により相手端子50をよりよく挟持するように、挿着溝23の内部において対向する導電接触部31は、対称に設けられ、これによって、応力を対応させ、よりよい挟持効果を実現することができる。
【0020】
一実施形態において、相手端子50は、該挿着端子と挿着して嵌合することができ、該挿着端子において、挿着端子は、端子積層シート10を複数含み、複数の端子積層シート10が積層して設けられている。相手端子50は挿着溝23に挿着可能であり、導電接触部31は接続アーム20と接触して係合して電気的に接続され、接続アーム20によって相手端子をクランプし、相手端子50と該挿着端子とを一体に固定するとともに、両者の間に大きな接触面積を持たせ、接続の信頼性と導電効果を確保する。該挿着端子は、挟持構造の安定性を確保し、変形を減少させ、接続アーム20の強度を増加させることができる。
【0021】
一実施形態において、端子積層シート10は、板材をプレスまたは切断して形成され、端子積層シート10は、シート状であり、該挿着端子における端子積層シート10は積層して分布し、これによって、該挿着端子が高い機械的接続性能を有するとともに、該挿着端子と相手端子50との導電接続性能を確保する。板材プレスまたは切断の加工方式が簡単で、プロセスが成熟し、大量の端子積層シート10を迅速に加工することができ、加工コストを節約し、生産効率を向上させることができる。
【0022】
該挿着端子と嵌合する相手端子50は、シート状または板状であってもよい。接続アーム20の幅または端子積層シート10の数を調整することによって、クランプ力の大きさを制御し、相手端子50とマッチングすることを容易にし、様々な接合要求を満たす。異なる寸法の接続アーム20によって、様々な形状の相手端子50に適応することができる。
【0023】
図2に示すように、端子積層シート10は、2つの接続アーム20を含み、2つの接続アーム20の間に1つの挿着溝23が形成され、相手端子50は、挿着溝23に挿着可能である。端子積層シート10における接続アーム20の数は、2つ以上であってもよく、端子積層シート10は、複数の挿着溝23を含み、複数の相手端子50は、同時に該挿着端子に挿着して嵌合する。
【0024】
一実施形態において、端子積層シート10は端子固定部40を含み、各接続アーム20の固定端22がいずれも端子固定部40に固着され、接続アーム20は、端子固定部40を介してケーブルに接続され、電気的接続の安定性を確保する。
【0025】
一実施形態において、隣接する2つの端子積層シート10の端子固定部40は、圧着、溶接、螺着またはかしめにより接続される。
【0026】
圧着とは、隣接する端子固定部40を組み立てた後、圧着機を用いて両者を一体に打ち抜く生産プロセスである。圧着の利点は、量産性であり、自動圧着機を採用することで安定した品質の製品を大量で迅速に製造することができる。
【0027】
溶接とは、摩擦溶接、抵抗溶接、超音波溶接、アーク溶接、圧力溶接、レーザ溶接、爆発溶接などの方式を採用し、隣接する端子固定部40を金属溶接点で一体に溶接することであるから、接続が強固で、接点抵抗が小さい。
【0028】
ねじ接続とは、隣接する端子固定部40がそれぞれねじ構造を有し、互いに螺合され、または別体のスタッドとナットを用いて接続されることである。ねじ接続の利点は、取り外し可能であり、組み立てと取り外しを繰り返すことができ、よく取り外す必要があるシーンに適用される。
【0029】
かしめとは、リベットを用いて、隣接する端子固定部40をかしめることであり、かしめの利点は、接続が強固で、加工方法が簡単で、操作しやすいことである。
【0030】
端子固定部40の構造は一種に限定されない。形態1は、端子固定部40が一体成形構造であり、各接続アーム20の固定端22がそれぞれ端子固定部40に固着される。形態2は、端子固定部40が接続アーム20の一部であり、各接続アーム20において、端子固定部40と接続アーム20とが一体構造であるとともに、挿着端子における複数の端子固定部40が積層して設けられている。
【0031】
一実施形態において、隣接する2つの端子積層シート10の接続アーム20同士が接触して係合し、各端子積層シート10の接続アーム20同士が相対的に摺動することができ、これによって、各端子積層シート10が自身のクランプ力を保持するとともに、挿着端子の表面が平坦でない特徴を利用することができ、接続の安定性を向上させている。
【0032】
相手端子50が挿着溝23に挿着されると、接続アーム20は弾性変形し、弾性力で相手端子50をクランプすることができる。さらに、接続アーム20は、変形部33を含み、導電接触部31と変形部33とは、オーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿って順に分布する。変形部33の内壁は、オーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿って内側に傾斜することによって、接続アーム20の変形に有利であり、相手端子50の挿抜を容易にし、相手端子50に対するクランプ強度を向上させる。相手端子50が挿着して嵌合することを容易にするために、接続アーム20のオーバーハング端21には、面取りまたは丸みが設けられている。
【0033】
一実施形態において、接続アーム20には、掻き落とし部32が設けられ、
図2に示すように、掻き落とし部32と導電接触部31とは、オーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿って順に分布し、相手端子50を挿着溝23に挿入する過程において、掻き落とし部32は、相手端子50の表面の異物または酸化物を掻き落とすことができ、相手端子50の導電表面を露出させ、電気性能を向上させている。
【0034】
さらに、掻き落とし部32は、端子積層シート10の厚さ方向100に沿って延設され、相手端子50を挿着溝23に挿入する過程において、相手端子50の運動方向は、掻き落とし部32の延在方向に垂直となり、掻き落とし部32が相手端子50を掻き落とすことに有利である。掻き落とし部32の断面は、三角形状を呈し、掻き落とし効果を強めている。
【0035】
一実施形態において、掻き落とし部32のオーバーハング端21に対する最高点は、導電接触部31のオーバーハング端21に対する最高点よりも高くなく、相手端子50が挿着溝23に挿着されると、掻き落とし部32と導電接触部31とはオーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿って順に分布しているため、先に、掻き落とし部32が相手端子50に接触し、次に導電接触部31が相手端子50に接触し、掻き落とし部32のオーバーハング端21に対する最高点が導電接触部31のオーバーハング端21に対する最高点よりも高いと、オーバーハング端21における最高点が掻き落とし部32の最高点となり、導電接触部31が相手端子50に接触できなくなるため、電流を導通する作用を果たすことができなくなり、掻き落とし部32と相手端子50との接触面積が導電接触部31と相手端子50との接触面積よりも遥かに小さいため、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗が急激に高くなり、導通電流が増大し、接触点の温度が高くなり、深刻な場合に挿着構造の焼損を引き起こし、深刻な結果をもたらす。したがって、掻き落とし部32のオーバーハング端21に対する最高点は、導電接触部31のオーバーハング端21に対する最高点よりも高くない。
【0036】
一実施形態において、掻き落とし部32は、オーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿った長さがオーバーハング端21の長さの3%~55%を占め、掻き落とし部32は、相手端子50の表面の異物または酸化物を掻き落とすことができるが、主に電流を導通させる役割を果たすことができず、主に電流を流す役割を果たすのは導電接触部31であり、掻き落とし部32の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が大きいほど、導電接触部31の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が小さくなり、良好な電流導通の効果を奏することができない。一方、掻き落とし部32の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が小さすぎると、掻き落とし部32の受力部が小さいため、複数回接合した後、掻き落とし部32は、挿着力と摩擦力の影響により変形し、相手端子50の表面の異物または酸化物を除去する作用を果たすことができなくなる。
【0037】
掻き落とし部32のオーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿った長さがオーバーハング端21の長さを占める割合による挿着構造の導電率と変形回数への影響を検証するために、発明者は、同じ相手端子50を選択し、掻き落とし部32の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が異なる挿着端子を採用し、相手端子50と挿着端子を接合した後、該挿着構造に通電した後、対応する接合箇所の導電率を検出し、相手端子50を挿着端子に対して接合試験を1000回行い、10回毎に掻き落とし部32の変形状況を観察し、掻き落とし部32が変形すると試験を停止し、その時の回数を記録し、テスト結果は表1に示されている。
【0038】
本実施例において、99%より大きい導電率を理想値とした。掻き落とし部32が変形したときの挿着回数が800回未満であるものを不合格とした。
【0039】
【0040】
上記の表から分かるように、掻き落とし部32の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が3%未満である場合、挿着構造の導電率が合格であったが、掻き落とし部32が変形したときの挿着回数が合格値より少ない。一方、掻き落とし部32の長さのオーバーハング端21の長さを占める割合が55%より大きい場合、導電接触部31の占める割合が小さいため、挿着構造の導電率が合格値より小さい。このため、まとめて考慮した結果、発明者は、掻き落とし部32のオーバーハング端21から固定端22に向かう方向に沿った長さがオーバーハング端21の長さの3%~55%を占めるように設定した。
【0041】
一実施形態において、
図2に示すように、導電接触部31は、端子積層シート10の厚さ方向100に沿って延設され、断面が円弧状、台形状または波形状を呈することによって、導電接触部31と相手端子50とがより緊密に接続され、導電性能を向上させた。
【0042】
図2に示すように、同一の挿着溝23の両側の接続アーム20には、導電接触部31がそれぞれ設けられている。一実施形態において、同一の挿着溝23において、両側の導電接触部31は、対向して設けられ、相手端子50と該挿着端子との接続をより緊密にする。別の実施形態において、同一の挿着溝23において、両側の導電接触部31は、ずらして設けられ、相手端子50と該挿着端子との接触面積を増大させることに有利である。
【0043】
さらに、端子固定部40は、平面内または非平面内に設けられた折り曲げ延長部41を有し、折り曲げ角度が0°~180°内にあり、異なる結線方向の要求に適応しやすい。
図3~
図7に示すように、端子固定部40は、本体部と折り曲げ延長部41とを含み、端子固定部40は、プレスまたは切断の方式を採用し、本体部と折り曲げ延長部41との間を様々な角度に成形することができる。
図3に示すように、折り曲げ延長部41と本体部とは、同一平面内にあり、両者の延在方向の間の折り曲げ角度が90°であることが好ましい。
図4および
図5~
図7に示すように、折り曲げ延長部41と本体部とは、同一平面内になく、折り曲げ延長部41は、非平面内で折り曲げて延長し、両者の延在方向の折り曲げ角度が90°であることが好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態において、端子積層シート10の材質にテルルが含まれ、端子積層シート10の本体材質は、テルル銅合金であり、これにより、端子が良好な導電性能と切削容易性を有し、電気的性能を確保しながら、加工性も向上させることができる。
【0045】
さらに、端子積層シート10の材質におけるテルルの含有量は0.1%~5%であり、導電性能を確保しながら、テルル銅合金の弾性も優れている。好ましくは、テルル銅合金におけるテルルの含有量は0.2%~1.2%である。
【0046】
発明者は、同じ形状の端子積層シート10を10個選択してテストを行い、各端子積層シート10の寸法は、同じであり、挿着端子における端子積層シート10の数は、等しく、端子積層シート10の本体材質は、いずれもテルル銅合金であり、そのうち、テルルの含有量の割合はそれぞれ0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、0.8%、1.2%、2%、3%、5%、6%、7%である。相手端子と挿着端子とを接合した後、該挿着構造に通電した後、対応する接合箇所での導電率を検出し、テスト結果は表2に示されている。
【0047】
本実施例において、99%より大きい導電率を理想値とした。
【0048】
【0049】
表2から分かるように、テルルの含有量の割合が0.1%未満、または5%より大きい場合、導電率が著しく低下し、導電率の理想値の要求を満たすことができない。テルルの含有量の割合が0.2%以上1.2%以下である場合、導電性能が最もよく、テルルの含有量の割合が1.2%より大きく5%以下である場合、導電率が理想値の要求を満たすが、徐々に低下する傾向であり、導電性能も低下する。従って、発明者は、テルルの含有量が0.1%~5%であるテルル銅合金を選択した。最も理想的には、テルル含有量が0.2%~1.2%であるテルル銅合金を選択する。
【0050】
いくつかの実施例において、端子積層シート10の本体材質にベリリウムが含まれる。端子積層シート10の材質は、ベリリウム銅合金であり、これによって、端子積層シート10は、非常に高い硬度、弾性限界、疲労限界および耐摩耗性を有し、さらに良好な耐食性、熱伝導性および導電性を有し、且つ衝撃を受けた時に火花が発生しない。
【0051】
さらに、端子積層シート10の本体材質におけるベリリウムの含有量は0.05%~5%である。
【0052】
さらに、端子積層シート10の本体材質におけるベリリウムの含有量は0.1%~3.5%である。
【0053】
ベリリウム含有量による端子の導電率への影響をテストするために、発明者は、形状が同じ、膨張収縮スリット幅が同じ端子積層シート10を10個選択して検証を行い、各端子はいずれもベリリウムを含み、そのうち、ベリリウムの含有量の割合はそれぞれ0.03%、0.05%、0.1%、0.2%、1%、1.2%、1.8%、3%、3.5%、5%、6%である。テスト結果は表3に示されている。
【0054】
【0055】
表3から分かるように、ベリリウムの含有量の割合が0.05%未満、または5%より大きい場合、導電率が著しく低下し、実際の要求を満たすことができない。ベリリウムの含有量の割合が0.1%以上3.5%以下である場合、導電性能が最もよいため、発明者は、ベリリウムの含有量が0.05%~5%である端子積層シート10を選択した。最も理想的な場合、ベリリウム含有量が0.1%~3.5%である端子積層シート10を選択することが好ましい。
【0056】
いくつかの実施形態において、端子積層シート10の少なくとも一部の表面にめっき層を設けることによって、耐食性を向上させ、導電性能を向上させ、挿着回数を増加させ、該挿着構造の使用寿命をよりよく延ばすことができる。一実施形態において、導電接触部31にめっき層が設けられ、導電接触部31の表面のめっき層は、第1のめっき層である。
【0057】
一実施形態において、掻き落とし部32の表面にめっき層が設けられ、掻き落とし部32の表面のめっき層は、第2のめっき層である。
【0058】
一実施形態において、接続アーム20における導電接触部31および掻き落とし部32以外の表面にめっき層が設けられ、接続アーム20における導電接触部31および掻き落とし部32以外の表面のめっき層は、第3のめっき層である。
【0059】
一実施形態において、端子固定部40の表面にめっき層が設けられ、端子固定部40の表面のめっき層は、第4のめっき層である。
【0060】
さらに、第1のめっき層の材質と、第2のめっき層の材質と、第3のめっき層の材質と、第4のめっき層の材質と、は、異なり、すなわち、第1のめっき層、第2のめっき層、第3のめっき層および第4のめっき層のうち、少なくとも1つの材質は、他の材質と異なる。
第1のめっき層の材質は、他の3つのめっき層の材質と異なり、他の3つのめっき層の材質は同じであり、または、
第2のめっき層の材質は、他の3つのめっき層の材質と異なり、他の3つのめっき層の材質は同じであり、または、
第3のめっき層の材質は、他の3つのめっき層の材質と異なり、他の3つのめっき層の材質は同じであり、または、
第4のめっき層の材質は、他の3つのめっき層の材質と異なり、他の3つのめっき層の材質は同じである。もしくは、
第1のめっき層の材質と第2のめっき層の材質とは、同じであり、第3のめっき層の材質と第4のめっき層の材質とは、同じであり、第1のめっき層の材質と第3のめっき層の材質とは、異なり、または、
第1のめっき層の材質と第3のめっき層の材質とは、同じであり、第2のめっき層の材質と第4のめっき層の材質とは、同じであり、第1のめっき層の材質と第2のめっき層の材質とは、異なり、または、
第1のめっき層の材質と第4のめっき層の材質とは、同じであり、第2のめっき層の材質と第3のめっき層の材質とは、同じであり、第1のめっき層の材質と第2のめっき層の材質とは、異なる。
【0061】
さらに、第1のめっき層の厚さと、第2のめっき層の厚さと、第3のめっき層の厚さと、第4のめっき層の厚さと、は、異なり、すなわち、第1のめっき層、第2のめっき層、第3のめっき層および第4のめっき層のうち、少なくとも1つの厚さは、他の厚さと異なる。
第1のめっき層の厚さは、他の3つのめっき層の厚さと異なり、他の3つのめっき層の厚さは同じであり、または、
第2のめっき層の厚さは、他の3つのめっき層の厚さと異なり、他の3つのめっき層の厚さは同じであり、または、
第3のめっき層の厚さは、他の3つのめっき層の厚さと異なり、他の3つのめっき層の厚さは同じであり、または、
第4のめっき層の厚さは、他の3つのめっき層の厚さと異なり、他の3つのめっき層の厚さは同じである。もしくは、
第1のめっき層の厚さと第2のめっき層の厚さとは、同じであり、第3のめっき層の厚さと第4のめっき層の厚さとは、同じであり、第1のめっき層の厚さと第3のめっき層の厚さとは、異なり、または、
第1のめっき層の厚さと第3のめっき層の厚さとは、同じであり、第2のめっき層の厚さと第4のめっき層の厚さとは、同じであり、第1のめっき層の厚さと第2のめっき層の厚さとは、異なり、または、
第1のめっき層の厚さと第4のめっき層の厚さは、同じであり、第2のめっき層の厚さと第3のめっき層の厚さは、同じであり、第1のめっき層の厚さと第2のめっき層の厚さとは、異なる。
【0062】
さらに、第3のめっき層の材質と第4のめっき層の材質とは、同じであり、第1のめっき層の材質または第2のめっき層の材質は、第3のめっき層の材質と異なり、すなわち、第1のめっき層の材質と第3のめっき層の材質とは、異なり、または第2のめっき層の材質と第3のめっき層の材質とは、異なる。
【0063】
さらに、第3のめっき層の厚さと第4のめっき層の厚さとは、同じであり、第1のめっき層の厚さまたは第2のめっき層の厚さは、第3のめっき層の厚さと異なり、すなわち、第1のめっき層の厚さと第3のめっき層の厚さとは、異なり、または第2のめっき層の厚さと第3のめっき層の厚さとは、異なる。
【0064】
なお、異なる金属材質のめっき層によって得られた導電効果および耐食状況は異なり、価格が高い金属材質のめっき層に対応する導電効果および耐食状況はよりよく、より多くの挿抜を行うことができ、より複雑な環境で使用され、より長い使用寿命を得ることができるが、価格が高いため、これらの金属材質のめっき層の使用は制限されている。このため、発明者は、挿抜回数が多いまたは使用環境に曝される位置において、金、銀、銀アンチモン合金、グラファイト銀、グラフェン銀、パラジウムニッケル合金、スズ鉛合金または銀金ジルコニウム合金といった性能が優れるが高価な金属材質をめっき材料として使用し、逆に挿抜回数が少なく曝されにくい箇所では安価な材質をめっき材料として選択する。例えば、導電接触部31に導電効果と耐食状況がよいが、比較的高価な金属をめっき層の材質として設け、端子固定部40に比較的安価な材質をめっき層の材料として設ける。
【0065】
なお、端子積層シート10の一部の領域の挿抜回数が多く、使用環境に曝されるため、めっき層がスクラブおよび外部環境の腐食を受け、めっき層の厚さが薄いと、使用過程において容易に破壊または腐食されるため、発明者は、これらの位置、例えば、導電接触部31と掻き落とし部32とに厚さがより大きいめっき層を設けることによって、挿着端のスクラブおよび腐食に対する耐性を向上させる。また、例えば、端子固定部40などの他の領域では、スクラブが生じることがなく、使用環境に曝されることもないため、厚さの小さいめっき層を用いてもよく、これによって、コストを低減することができる。
【0066】
一実施形態において、めっき層は、電気めっき、無電解めっき、マグネトロンスパッタリングまたは真空めっきなどの方法を用いて端子積層シート10に設けられることができる。電気めっき方法は、電解原理を利用して金属表面に薄層の他の金属または合金をめっきするプロセスである。無電解めっき方法は、金属の触媒作用下で、制御可能な酸化還元反応により金属を析出させる堆積プロセスである。マグネトロンスパッタリング方法は、磁場と電場との交互作用を利用して、電子をターゲット表面付近で螺旋状に運動させることによって、電子がアルゴンガスに衝突してイオンを発生させる確率を増大させることであり、発生したイオンは、電界の作用でターゲット面に衝突してターゲットをスパッタする。真空めっき方法は、真空条件下で、蒸留またはスパッタリングなどの方式により部品の表面に様々な金属および非金属の薄膜を堆積する。
【0067】
一実施形態において、めっき層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、亜鉛、スズ鉛合金、銀アンチモン合金、パラジウム、パラジウムニッケル合金、グラファイト銀、グラフェン銀および銀金ジルコニウム合金のうちの1種または複数種を含む。銅は、活性金属として、使用過程において酸素および水と酸化反応する。よって、挿着端子の使用寿命を延ばすために、めっき層として1種または複数種の不活性金属が必要である。さらに、常に挿抜する必要がある金属接点に対しても、良好な耐摩耗性金属をめっき層とする必要があり、接点の使用寿命を大幅に増加させることができる。さらに、接点には良好な導電性能が必要であり、上記金属の導電性および安定性は、いずれも銅または銅合金よりも優れ、これにより、挿着端子は、より良い電気的性能およびより長い使用寿命を得ることができる。
【0068】
各種のめっき層の材質による端子全体の性能への影響を検証するために、発明者は、規格、材質が同じで、めっき層材料が異なる挿着端子サンプルを採用し、同じ規格のアルミ平帯で一連の挿抜回数および耐食性時間でのテストを行い、選択材料と他の常用の電気めっき材料とのメリット・デメリットを証明するために、発明者は、スズ、ニッケル、亜鉛をも検証のめっき層の材質として選択した。検証結果は表4に示されている。
【0069】
表4における挿抜回数は、挿着端子をそれぞれ実験台に固定し、機械装置によりアルミ平帯を模擬的に挿抜させ、100回の挿抜を経るたびに、その挿抜を停止して挿着端子の表面のめっき層の破壊状況を観察し、端子の表面のめっき層に傷が発生して端子自体の材質が露出すると、試験を停止し、その時の挿抜回数を記録した。本実施例において、挿抜回数が8000回未満であるものを不合格とした。
【0070】
表4における耐食性時間に関するテストは、挿着端子を塩水噴霧試験箱内に入れ、挿着端子の各位置に塩霧を噴出し、20時間ごとに取り出して洗浄して表面腐食状況を観察し、すなわち20時間は1サイクルであり、挿着端子の表面腐食面積が総面積の10%を超えると、テストを停止し、その時のサイクル数を記録した。本実施例において、サイクル数が80回未満であるものを不合格とした。
【0071】
表4から分かるように、めっき層の材質が常用の金属であるスズ、ニッケル、亜鉛を含む場合の試験結果よりも、他の金属が選択された試験結果のほうがよりよく、ニッケルめっき層は、挿抜回数の試験に合格したが、大きく上回るものではなく、塩霧試験にも全て合格した。他の金属が選択された場合の試験結果は、標準値を大幅に超え、性能が安定している。したがって、発明者は、めっき層の材質が、金、銀、ニッケル、スズ、亜鉛、スズ鉛合金、銀アンチモン合金、パラジウム、パラジウムニッケル合金、グラファイト銀、グラフェン銀および銀金ジルコニウム合金のうちの1種または複数種を含むように選択した。
【0072】
【0073】
いくつかの実施形態において、めっき層は、下地層と表層とを含み、めっき層は、多層めっきの方法を採用する。端子積層シート10が加工された後、実際にその表面の微視的な界面には、依然として多くの隙間および穴が存在し、これらの隙間と穴は、端子積層シート10の使用過程における摩耗と腐食の最大の原因である。本実施形態において、端子積層シート10の表面には、まず1層の下地層をめっきし、表面の隙間と穴を埋め、端子積層シート10の表面を平坦で穴がないようにして、次に、表層をめっきすると、結合がより強固になり、より平らになり、めっき層の表面に隙間と穴がなくなり、挿着端子の耐摩耗性能、耐腐食性能、電気的性能をより一層にし、挿着端子の使用寿命を大幅に延ばした。
【0074】
別の実施形態において、下地層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、スズ鉛合金および亜鉛のうちの1種または複数種を含み、表層の材質は、金、銀、ニッケル、スズ、亜鉛、スズ鉛合金、銀アンチモン合金、パラジウム、パラジウムニッケル合金、グラファイト銀、グラフェン銀および銀金ジルコニウム合金のうちの1種または複数種を含む。
【0075】
別の実施形態において、下地層の厚さは、0.01μm~12μmである。好ましくは、下地層の厚さは、0.1μm~9μmである。
【0076】
別の実施形態においては、表層の厚さは、0.5μm~50μmである。好ましくは、表層の厚さは、1μm~35μmである。
【0077】
下地層めっき層の厚さの変化による挿着端子全体の性能への影響を検証するために、発明者は、規格、材質が同じ、ニッケルめっき下地層の厚さが異なり、銀めっき表層の厚さが同じである挿着端子を採用し、同じ規格の相手端子50を利用して一連の温度上昇と耐食性時間のテストを行い、試験結果は表5に示されている。
【0078】
表5における温度上昇テストは、該挿着構造に同じ電流を流し、閉塞された環境で通電前と温度が安定した後の挿着端子の同じ位置の温度を検出するとともに、差を取って絶対値にした。本実施例において、温度上昇が50Kより大きいものを不合格とした。
【0079】
【0080】
表5における耐食性時間に関するテストは、該挿着端子を塩水噴霧試験箱内に入れ、挿着端子の各位置に塩霧を噴出し、20時間ごとに取り出して洗浄して表面腐食状況を観察し、すなわち20時間は1サイクルであり、端子の表面腐食面積が総面積の10%を超えるとテストを停止し、その時のサイクル数を記録した。本実施例において、サイクル数が80回未満であるものを不合格とした。
【0081】
表5から分かるように、下地層ニッケルめっき層の厚さが0.01μm未満である場合、該挿着構造の温度上昇は、合格であったが、めっき層が薄すぎるため、挿着端子の耐食性サイクル数が80未満であり、端子の性能要求を満たさない。該挿着構造の全体性能および寿命に大きな影響を与え、深刻な場合に製品寿命の激減、ひいては失効して燃焼事故を引き起こす。下地層ニッケルめっき層の厚さが12μmより大きい場合、下地層めっき層が厚いため、該挿着構造から発生した熱が放熱できず、該挿着構造の温度上昇が不合格となり、また、めっき層が厚いため、かえって端子積層シート10の表面から脱落しやすく、耐食性サイクル数が低下する。したがって、発明者は、下地層めっき層の厚さを0.01μm~12μmとして選択した。
【0082】
好ましくは、発明者は、下地層めっき層の厚さが0.1μm~9μmである場合、該挿着構造の温度上昇と耐食性の総合的な効果がよりよいことを発見したため、製品自体の安全性、信頼性および実用性をさらに向上させるように、下地層めっき層の厚さは0.1μm~9μmであることが好ましい。
【0083】
表層めっき層の厚さの変化による該挿着構造全体の性能への影響を検証するために、発明者は、規格、材質が同じ、ニッケルめっき下地層の厚さが同じ、銀めっき表層の厚さが異なる挿着端子サンプルを採用し、同じ規格の相手端子を利用して一連の温度上昇と耐食性時間のテストを行い、試験方法は、上記試験方法と同じであり、試験結果は表6に示されている。
【0084】
【0085】
表6から分かるように、表層銀めっき層の厚さが0.5μm未満である場合、該挿着構造の温度上昇が合格であったが、めっき層が薄すぎるため、挿着端子の耐食性サイクル数が80未満であり、端子の性能要求を満たさない。該挿着構造の全体性能と寿命に大きな影響を与え、深刻な場合に製品寿命の激減、ひいては失効して燃焼事故を引き起こす。表層銀めっき層の厚さが50μmを超えると、表層めっき層が厚いため、端子から発生した熱が放熱できず、温度上昇が不合格となり、また、めっき層が厚くてかえって端子表面から脱落しやすくなり、耐食性サイクル数が低下する。また、表層めっき層金属は、高価であるため、厚いめっき層を用いても性能が上がらず、使用価値がない。したがって、発明者は、表層銀めっき層の厚さを0.5μm~50μmとして選択した。好ましくは、発明者は、表層めっき層の厚さが1μm~35μmである場合、端子の温度上昇と耐食性の総合的な効果がより良いことを発見したため、製品自体の安全性、信頼性および実用性をさらに向上させるために、好ましくは、表層めっき層の厚さは、1μm~35μmである。
【0086】
いくつかの好ましい実施例において、オーバーハング端21上のめっき層と固定端22上のめっき層とは、材質が異なる。以上の説明から分かるように、異なる金属材質のめっき層によって、異なる導電効果と耐食状況が得られ、価格が高い金属材質のめっき層に対応する導電効果と耐食状況は比較的よいため、より多くの挿抜を行うことができ、より複雑な環境で使用することができ、より長い使用寿命を得ることができるが、価格が高いため、これらの金属材質のめっき層の使用は制限されている。このため、発明者は、オーバーハング端21のような挿抜回数が多く、使用環境に曝される位置において、金、銀、銀アンチモン合金、グラファイト銀、グラフェン銀、パラジウムニッケル合金、スズ鉛合金または銀金ジルコニウム合金といった性能が優れるが価格が高い金属材質をめっき材料として使用し、一方、固定端22は導線が接続される箇所であり、導線と接続された後、相対的な変位がほとんどなく、固定端22は一般的にプラスチックケースの内部に保護され、使用環境に曝されないため、発明者は、接続構造のコストを低減するように、常用の金属スズ、ニッケル、亜鉛を固定端22のめっき材質として使用する。
【0087】
好ましい実施例において、接続アーム20の最小幅と接続アーム20の厚さとの比は、0.5~10である。端子積層シート10は、弾性を有してはじめて相手端子50が挿着されることができ、端子積層シート10の接続アーム20の幅と厚さとの比が一定の範囲を超えない場合に限って、実際の使用価値を有する。これは、この比が大き過ぎる、すなわち厚さが小さ過ぎると、端子積層シート10の全体的な強度が小さ過ぎ、実際の要求を満たすために、より多くの端子積層シート10が同時に必要であり、つまり、より多くの作業時間が必要であるからである。比が大き過ぎる場合、すなわち、厚さが大き過ぎる場合、端子積層シート10は、変形し難く相手端子50の挿着に影響を与える。
【0088】
発明者は、接続アーム20の最小幅と接続アーム20の厚さとの比による端子の使用状況への影響を検証するために、テストを行った。テスト方法は、以下の通りであり、発明者は、同じ相手端子50、異なる端子積層シート10を選択して使用し、各端子積層シート10は、幅が同じで厚さが異なる接続アーム20を有する。異なる端子積層シート10を使用して相手端子50に対して挿着テストを行い、接続アーム20が厚過ぎることにより挿着不可能になったり、接続アーム20が薄過ぎることにより回復できない変形を招いたりするものを不合格とし、その他は合格とする。結果は表7に示されている。
【0089】
表7から分かるように、接続アーム20の最小幅と厚さとの比が0.5未満である場合、接続アーム20が挿着過程において変形し、端子積層シート10が廃棄されてしまう。接続アーム20の最小幅と厚さとの比が10より大きい場合、挿着不能になる。このため、発明者は、接続アーム20の最小幅と接続アーム20の厚さとの比は、0.5~10であることが好ましい。
【0090】
【0091】
いくつかの好ましい態様において、隣接する2つの端子積層シート10の接続アーム間の隙間は、0.2mm未満である。端子積層シート10の間に隙間を設けることについて、一つの目的は、隣接する接続アーム20に空気が流通することで、相手端子50と挿着端子との間の温度上昇を低減し、めっき層を保護し、挿着構造の使用寿命を延ばすことができることであり、もう一つの目的は、接続アーム20自体の弾性を解放させることで、対向する接続アーム20の間の挟持力を確保すると、挿着力も確保することである。しかし、隣接する接続アーム20の隙間は、大きければ大きいほどよいものではなく、隣接する2つの端子積層シートの接続アーム20の間の隙間が0.2mmより大きい場合、その放熱性能を増加させることなく、かえって同じ接触面積の接続アーム20がより大きい幅を占め、使用スペースを無駄にした。さらに、端子固定部が互いに密着して接続されているため、同じ接触面積の接続アーム20は、相手端子50に対してより多くの体積を消費し、端子の使用量を増加させ、挿着構造のコストを増加させてしまう。
【0092】
いくつかの実施形態において、接続アーム20は、少なくとも一部の材質が記憶合金である。記憶合金は、記憶力を有するスマート金属であり、そのミクロ構造は相対的に安定した状態を2種有し、高温でこのような合金は任意の所望の形状に変えられ、低い温度の場合、該合金は引っ張られることができるが、これを改めて加熱すると、その元の形状を思い出して回復する。記憶合金は、その変態温度以上と変態温度以下での結晶構造が異なるが、温度が変態温度の上下で変化すると、記憶合金は、収縮または膨張し、その形態を変化させる。
【0093】
いくつかの実施形態において、記憶合金の変態温度は40℃~70℃であり、接続アーム20の温度が該変態温度より低い状態では、複数の接続アーム20は拡張状態にあり、接続アーム20の温度が該変態温度より高い状態では、複数の接続アームはクランプ状態にある。
【0094】
一般的に、変態温度が40℃~70℃の間に選択され、変態温度が40℃より低い場合、導通電流がなくても、挿着端子の環境温度が40℃に近くなり、この時、複数の接続アーム20がクランプ状態にあり、挿着端子の挿着溝が小さくなり、アルミ平帯を挿着溝に挿入できず、アルミ平帯と端子との挿着構造が挿着できなくなり、作動もできなくなるためである。
【0095】
室温において、挿着端子と相手端子50とは、接合されてから導電し始め、接合された直後、複数の接続アーム20が拡張状態にあるため、接続挿入端子と相手端子50との接触面積が小さく、電流が大きいため、挿着された接続アーム20が温度上昇し始める。変態温度が70℃を超えると、端子の温度上昇時間が長くなり、挿着端子と相手端子50との挿着構造が長時間にわたって大電流状態にあり、電気的な劣化を引き起こしやすく、深刻な場合に過負荷が発生して破損し、不必要な損失を引き起こす。
【0096】
したがって、記憶合金の変態温度は40℃~70℃の間に設定されることが一般的である。
[方案二]
【0097】
本発明は、上記のような挿着端子を含み、挿着端子と挿着される相手端子50をさらに含む挿着構造をさらに提供する。
【0098】
さらに、挿着端子と相手端子50との間の挿着力は3N~150Nの間である。
【0099】
さらに、挿着端子と相手端子50との間の挿着力は10N~95Nの間である。
【0100】
挿着端子と相手端子50との間の挿着力による挿着端子と相手端子50との接触抵抗および挿着状況への影響を検証するために、発明者は、同じ形状、寸法の挿着端子と相手端子50を選択するとともに、挿着端子と相手端子50との間の挿着力を異なる挿着力に設計して、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗および複数回に接合した後の状況を観測した。
【0101】
接触抵抗の検出方式は、マイクロオームメータを用いて、挿着端子と相手端子50との接触位置で抵抗を測定するとともに、マイクロオームメータ上の数値を読み取るものであり、本実施例において、接触抵抗が50μΩ未満であることを理想値とした。
【0102】
挿着端子と相手端子50の接合状況のテスト方式は、挿着端子と相手端子50とを50回接合し、挿抜後の落下回数と挿抜不能回数を観察し、挿抜後の落下回数は3回未満であること、挿抜不能回数は5回未満であることを要求される。
【0103】
【0104】
表8から分かるように、挿着端子と相手端子50との間の挿着力が3Nより小さい場合、結合力が小さ過ぎるため、両者間の接触抵抗が理想値よりも高くなり、そして、挿抜後の落下回数も3回以上を超え、不合格状態である。挿着端子と相手端子50との間の挿着力が150Nより大きい場合、挿着端子と相手端子50との間の挿抜不能回数が5回以上となり、不合格状態でもあるため、発明者は、挿着端子と相手端子50との間の挿着力を3N~150Nの間に設定した。
【0105】
表8から分かるように、挿着端子と相手端子50との間の挿着力が10N~95Nの間にある場合、挿抜後に落下することもなく、挿抜不能になることもなく、接触抵抗値も理想値範囲内にあるため、好ましくは、発明者は、挿着端子と相手端子50との間の挿着力を10N~95Nの間に設定した。
【0106】
いくつかの実施形態において、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗は9mΩ未満である。一般的には、大電流を導通する必要があり、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗が9mΩを超えると、接触位置において大きな温度上昇が発生し、且つ時間の増加に伴い、温度がますます高くなり、挿着端子と相手端子50とは、材質が異なり熱膨張率が異なるため、機械的変形が同期せず内部応力を発生してしまい、深刻な場合めっき層の脱落を引き起こし、保護作用を実現できない。また、挿着端子と相手端子50との過度に高い温度が、それらに接続された導線の絶縁層に伝導したりすることによって、対応する絶縁層が溶融し、絶縁保護の役割を果たすことができなくなり、深刻な場合、回線の短絡による接続構造の損傷、ひいては燃焼などの安全事故を引き起こす。このため、発明者は、相手端子と相手端子50との間の接触抵抗を9mΩ未満に設定した。
【0107】
挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗による挿着構造の温度上昇と導電率への影響を検証するために、発明者は、同じ相手端子50と、接触抵抗が異なる挿着端子とを選択して使用し、導電率と温度上昇をテストした。
【0108】
導電率テストは、相手端子50と挿着端子を接合した後、該挿着構造に通電した後、対応する接合箇所の導電率を検出することであり、本実施例において、99%より大きい導電率を理想値とする。
【0109】
温度上昇テストは、該挿着構造に同じ電流を流し、閉塞された環境で通電前と温度が安定した後の挿着端子の同じ位置の温度を検出するとともに、差を取って絶対値にした。本実施例において、温度上昇が50Kより大きいものを不合格とした。
【0110】
【0111】
表9から分かるように、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗が9mΩより大きい場合、挿着構造の温度上昇が50Kを超えるとともに、挿着構造の導電率も99%よりも小さく、標準の要求を満たさない。このため、発明者は、挿着端子と相手端子50との間の接触抵抗を9mΩ未満に設定した。
[方案三]
【0112】
本発明は、上記の挿着端子を含む自動車をさらに提供する。
[方案四]
【0113】
本発明は、上記挿着構造を含む自動車をさらに提供する。
【0114】
以上は、本発明の例示された具体的な実施形態に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の思想および原則から逸脱することなく行われる同等の変形および補正は、いずれも本発明の権利保護範囲に属すべきである。
【符号の説明】
【0115】
10 端子積層シート、20 接続アーム、21 オーバーハング端、22 固定端、23 挿着溝、31 導電接触部、32 掻き落とし部、40 端子固定部、41 折り曲げ延長部、50 相手端子
【国際調査報告】