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特表2024-532850がん及びがん療法に関連する自己免疫を含む、自己免疫を処置するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】がん及びがん療法に関連する自己免疫を含む、自己免疫を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240903BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P37/02
A61P11/06
A61P37/08
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P13/12
A61P3/10
A61P17/06
A61P17/00
A61P19/08
A61P37/06
A61P35/00
A61K38/10
A61P37/04
A61K45/00
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510263
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 AU2022050932
(87)【国際公開番号】W WO2023019323
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2021902626
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520448360
【氏名又は名称】インテルク ペプチド セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アグレズ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA24
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB09
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZC35
(57)【要約】
本発明は、自己免疫障害を処置するために、対象において、低レベルのIL-2を含む、IL-2恒常性を維持するための方法及び組成物に関する。好ましい実施形態では、組成物は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2ADod)-NH、または全残基がD-アミノ酸と置換され、2つもしくは4つの2Adodにコンジュゲートされている同じ配列を有するペプチドから選択される2-アミノ-ドデカン酸(2Adod)-コンジュゲートペプチドを含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における自己免疫障害を処置または予防する方法であって、前記方法が、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記自己免疫障害が、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自己免疫障害が、IL-2媒介性障害である、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
前記自己免疫疾患が、調節不全のIL-2及び/またはIL-2Rアルファ(CD25)産生と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、IL-2及びIL-2Rアルファ(CD25)産生が欠損している、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記自己免疫障害が、アレルギー性喘息、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス及び他のループス障害、1型インスリン依存性糖尿病(IDDM)、乾癬、強皮症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、ならびにGVHDからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記対象におけるIL-2及び/またはIL-2Rアルファ(CD25)のレベルを決定することによって、処置のための対象を選択することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記対象におけるIFNg及び/またはIL-12p40のレベルを決定することによって、処置のための対象を選択することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、がんを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、がん療法を受けている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、チェックポイント阻害剤療法を受けている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、Lckの活性及び/またはG-タンパク質シグナル伝達を調節して、前記対象におけるIL-2の恒常性レベルを維持する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記IL-2の恒常性レベルが、B細胞、T細胞、及び樹状細胞からなる群から選択される細胞によって産生される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、IFNg及び/またはIL-12p40を誘導しない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、経口的及び/または局所的に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドが、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドからなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
対象における自己免疫障害を処置または予防する方法における、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
【請求項18】
対象における自己免疫障害を処置するための薬品の製造における、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
【請求項19】
対象における自己免疫障害の処置のための、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、経口用量形態
【請求項20】
前記ペプチドが、経口的にまたは局所的に投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドが、注射によって投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、関節への注射によって投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが、薬学的組成物の形態で投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記薬学的組成物が、がん免疫療法と同時にまたは連続して前記対象に投与される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫障害を処置するために、対象において、低レベルのIL-2を含む、IL-2恒常性を維持するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、組織破壊をもたらす自己抗原の産生に向けられた機能不全T細胞、B細胞、及び樹状細胞の作用によって誘導され得る。非受容体Srcファミリーキナーゼ(SFK)メンバーは、JAK/STATの活性化及びIFNgの産生を介して自己免疫に寄与し得る炎症促進性シグナル伝達経路の重要なメディエーターである。T細胞受容体(TCR)活性化及びシグナル伝達は、インターロイキン-2(IL-2)産生をもたらし、TCR関連リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ、Lckは、自己免疫またはアネルギーのいずれかを回避するために、IL-2産生の微調整において重要な役割を果たす。
【0003】
自己免疫疾患に利益をもたらすレベルでのIL-2の維持を提供するIL-2恒常性の調節因子が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置または予防する方法であって、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH,RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを、対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害である、本明細書に記載される方法を提供する。
【0006】
更なる実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、IL-2媒介性障害である、本明細書に記載される方法を提供する。
【0007】
更なる実施形態では、本発明は、自己免疫疾患が、調節不全のIL-2及び/またはIL-2Rアルファ(CD25)産生に関連する、本明細書に記載される方法を提供する。
【0008】
更なる実施形態では、本発明は、対象が、IL-2及びIL-2Rアルファ(CD25)産生が欠損している、本明細書に記載される方法を提供する。
【0009】
更なる実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、アレルギー性喘息、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス及び他のループス障害、1型インスリン依存性糖尿病(IDDM)、乾癬、強皮症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、ならびにGVHDからなる群から選択される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0010】
更なる実施形態では、本発明は、対象が、がんを有する、本明細書に記載される方法を提供する。
【0011】
更なる実施形態では、本発明は、対象が、がん療法を受けている、本明細書に記載される方法を提供する。
【0012】
更なる実施形態では、本発明は、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、Lckの活性及び/またはG-タンパク質シグナル伝達を調節して、対象におけるIL-2の恒常性レベルを維持する、本明細書に記載される方法を提供する。
【0013】
更なる実施形態では、本発明は、IL-2の恒常性レベルが、B細胞、T細胞、及び樹状細胞からなる群から選択される細胞によって産生される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0014】
更なる実施形態では、本発明は、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、IFNg及び/またはIL-12p40を誘導しない、本明細書に記載される方法を提供する。
【0015】
更なる実施形態では、本発明は、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH,RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、経口的及び/または局所的に投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0016】
更なる実施形態では、本発明は、ペプチドが、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、本明細書に記載される方法を提供する。
【0017】
更なる実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置または予防する方法における、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ペプチドの使用を提供する。
【0018】
更なる実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置するための薬品の製造における、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ペプチドの使用を提供する。
【0019】
更なる実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害の処置のための、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、経口用量形態を提供する。
【0020】
更なる実施形態では、本発明は、ペプチドが、経口的または局所的に投与される、本明細書に記載される使用を提供する。
【0021】
更なる実施形態では、本発明は、ペプチドが、注射によって投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0022】
更なる実施形態では、本発明は、ペプチドが、薬学的組成物の形態で投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0023】
更なる実施形態では、本発明は、薬学的組成物が、がん免疫療法と同時にまたは連続して対象に投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】Srcファミリーキナーゼの選択的標的化。アッセイを、実施例1に記載されるように実施した。
図2】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHを使用したIL-2恒常性の維持。(a)(b):PBMCを、ビヒクル対照(0.13%HO)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに24時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激した。24時間後、細胞を回収し、CD69について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。データを、CD8T細胞内のCD69発現(%及び平均蛍光強度、MFI)+SEM、n=4内として提示した。IK14004(0.31及び0.63μM)の存在下で処置した培養物をn=3として表す。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による混合効果分析を使用して決定される、*p<0.05、**p<0.01であった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、平均非刺激対照群値を表す。(c)PBMCを、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに24時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激した。24時間後、上清を収集し、IL-2濃度(pg/mL)についてELISAによって評価した。データは、IL-2濃度(pg/mL)+/-SEM、n=4として示した。試験ペプチドをビヒクル対照群と比較したダネットの事後検定による反復測定(RM)二元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、非刺激対照値を表す。IL-2産生は、72時間の時点で検出レベルを下回った。(d)、(e):刺激したPBMCからのCD4及びCD8陽性細胞におけるCD25発現。新たに単離したPBMCを、指示濃度(μM)の試験ペプチドIK14004の存在下で、抗CD3(1μg/mL)で24時間刺激した。データを、4人のドナーからの平均+/-SEMとして提示する。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001であり、ダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して、各ペプチドの濃度をビヒクル(0)と比較した。(f)CD14+単球を新たなPBMCから単離し、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、細胞をCD25発現についてフローサイトメトリーによって評価した。提示されたデータは、ペプチド処置後の陽性細胞の平均パーセンテージ、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、****p<0.0001であった。(g)単離したT細胞(CD3+)を、抗CD3抗CD28 Dynabeads(商標)で刺激し、ペプチドIK14004とともに5濃度範囲+ビヒクル対照(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、上清を収集し、IL-2についてELISAによって評価した。提示されたデータは、平均IL-2pg/mL+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001であった。(h)12ウェルプレートを、PBS中で作製した抗CD3(5μg/ml)の溶液(総体積250μl/ウェル)でコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。コーティング溶液を吸引し、コーティングされたウェルをPBS(2回、1ml、5分)で穏やかに洗浄した。JCaM1.6細胞を「抗CD3コーティングされたウェル」に(1×10細胞/ウェル)で播種し、その後、抗CD28(5μg/ml)で刺激し、また、様々な濃度のペプチドIK14004(0、0.625、1.25、及び2.5μM)で処置した。次いで、細胞を37℃で48時間インキュベートした。細胞懸濁液を顕微鏡下で確認し、次いで2mlの標識チューブに移し、30,000gで10分間遠心分離した。上清及びペレットを各試料について分離し、上清(100μl、n=3)をIL-2含有量についてELISAを使用して分析した。(i)CD3+T細胞を、阻害剤A-770041(100nM)の存在下で、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)もしくはIK14004(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3抗CD28刺激ビーズ(細胞対ビーズ比率4:1)で刺激した。72時間後、細胞を回収し、GNA11について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。GNA11発現を、PEコンジュゲートロバF(ab’2)抗ウサギIgG H&L抗体を使用して検出した。データを、CD4T細胞内のGNA11発現(平均蛍光強度、MFI)+/-SEM、n=4として提示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による反復測定(RM)二元ANOVAを使用して決定される、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001であった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、平均非刺激対照群値を表す。(j)CD3T細胞を、ビヒクル対照(0.1%DMSO)、小分子阻害剤A-770041(100nM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3抗CD28刺激ビーズ(細胞対ビーズ比率4:1)で72時間刺激した。72時間後、上清を収集し、IL-2濃度(pg/mL)についてELISAによって評価した。データを、IL-2(pg/mL)+/-SEM、n=12として示した。A-770041を0.13%水ビヒクル対照と比較した対応のないt検定を使用して決定される、****p<0.0001であった。
図3】RSKAKNPLYR-(2Adod4)による炎症促進性サイトカインの抑制。(a)PBMCを、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激した。72時間後、細胞を回収し、フローサイトメトリーによって評価された生存率について染色した。データを、生存細胞%+/-SEM、n=4として提示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による反復測定(RM)二元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、平均非刺激対照群値を表す。(b)CD3+T細胞を、ビヒクル対照または試験ペプチド(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、細胞対Dynabeads比率4:1の抗CD3抗CD28 Dynabeadsで刺激した。72時間後、細胞を回収し、フローサイトメトリーを使用して評価した生存率について染色した。データを、生存細胞%+/-SEM、n=4として提示し、ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。赤い点線は、刺激のみを示し、青い点線は、非刺激対照を示す。(c)未成熟単球由来のDC(iMoDC)は、Mo-DC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球に由来した。iMoDCを、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、細胞を、フローサイトメトリーによって生存率について評価した。提示されたデータは、ペプチド処置後の生存細胞の平均パーセンテージ、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001であった。(d)未成熟単球由来のDC(iMoDC)は、Mo-DC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球に由来した。iMoDCを、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、細胞を、フローサイトメトリーによって細胞内Ki67の発現について評価した。提示されたデータは、ペプチド処置後のKI67の幾何平均MFI、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、***p<0.001、****p<0.0001であった。(e)、(f)未成熟単球由来のDC(iMoDC)は、Mo-DC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球に由来した。iMoDCを、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、上清を収集し、IL-12p40レベルについてELISAによって評価した。提示されたデータは、ビヒクル対照に対して正規化された平均pg/mL値及び倍率変化、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析するか、または最低試験ペプチド用量に対して正規化される場合、**p<0.01、****p<0.0001であった。(g)、(h)刺激したPBMCを、ペプチドIK14004とともに5濃度範囲+ビヒクル対照(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、上清を収集し、IL-12p40についてELISAによって評価した。提示されたデータは、平均pg/mL値及び倍率変化データ(ビヒクル対照に対して正規化されている)、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析するか、またはデータが正規化される場合、ペプチド濃度を最低試験ペプチド濃度と比較し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001であった。点線は、正規化されたデータの平均ビヒクル対照を示す。(i)刺激PBMCアッセイ(24時間)における、IL-12p70産生に対するペプチドの効果。PBMCを、抗CD3(1μg/ml)刺激及びInter Kペプチドとともに5濃度範囲(0~1.25μM)について24時間培養し、その後、上清を収集し、IL-12p70についてELISAによって分析した。提示されたデータは、ペプチド処置に応答する平均サイトカイン産生(pg/mL)、+/-SEM、n=4を示す。ダネットの事後検定による二元ANOVAによって決定される統計的有意性はなかった。(j)、(k)刺激したPBMCからのCD4+及びCD8+T細胞におけるIFN-γ発現。新たに単離したPBMCを、指示濃度(μM)の試験ペプチドIK14004の存在下で、(-aCD3)抗CD3(1μg/mL)で24時間刺激した。データを、4人のドナーからの平均+/-SEMとして提示する。**p<0.01、****p<0.0001であり、ダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して、各ペプチドの濃度をビヒクル(0)と比較した。(l)刺激したPBMCを、ペプチドIK14004とともに5濃度範囲+ビヒクル対照(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、上清を収集し、IFN-γについてELISAによって評価した。提示されたデータは、平均pg/mL値、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、**p<0.01、****p<0.0001であった。(m)PBMCからの単離したCD3+T細胞を、T細胞対ビーズ比率4:1の抗CD3/CD28活性化ビーズの存在下で、MQ水またはビヒクル対照中に配合された試験ペプチド(0.08~1.25μM)とともに培養した。72時間後、上清を収集し、IFN-γについてELISAによって評価した。データを、pg/mL+/-SEM、n=4として提示し、ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。(n)未成熟単球由来のDC(iMoDC)は、Mo-DC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球に由来した。iMoDCを、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、細胞をフローサイトメトリーによってCD14及びCD11cの発現について評価して、DC細胞表現型を決定した。提示されたデータは、ペプチド処置に応答するCD11c陽性集団内のそれぞれの平均CD14陽性または陰性細胞集団(%)、+/-SEM、n=4を示す。データを、各ペプチド濃度をビヒクルと比較したダネットの事後検定によるRM二元ANOVAによって分析し、*p<0.05、****p<0.0001であった。(o)PBMCを、ビヒクル対照または試験ペプチド(0.08~1.25μM)とともに24時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激した。24時間後、上清を収集し、IL-10濃度についてELISAによって評価した。データを、pg/mLサイトカイン濃度+/-SEM、n=4として提示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による一元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。赤い点線は、刺激培地対照のみを示し、青い点線は、非刺激対照を示す。
図4】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHによるJAK/STATシグナル伝達経路の選択的標的化。(a)ヒトPBMC(n=4、正常な健康なボランティアから採取)を、密度勾配分離を使用して軟膜から調製した。CD3+全T細胞集団を、免疫磁気分離によって単離した(StemCell、カタログ番号19051、ロット番号19E102876A)。細胞を、RPMI-10(10%熱不活性化FBS、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン、及び50μMのβ-メルカプトエタノールを補充したRPMI-1640)中に0.5×10/mLで再懸濁し、1ウェル当たり0.5×10の密度(100μL)で96ウェルの平底培養プレートにプレートした。細胞培養物を、細胞対ビーズ比率4:1の抗CD3/抗CD28コーティングされたDynabeads(ThermoFisher、カタログ番号11131D、ロット番号00984668)で刺激し、ペプチドの存在下で72時間培養した。培養の終わりに、細胞を回収し、BD Phosflow(商標)Fix緩衝液I(BD Bioscience、カタログ番号557870)を使用して固定し、BD Phosflow(商標)Perm緩衝液III(BD Bioscience、カタログ番号558050)を使用して細胞内染色を可能にするように透過化した。次いで、細胞を、ホスホ-STAT1タンパク質を検出する蛍光色素コンジュゲート抗体で染色した(PE Mouse Anti-Stat1(pY701)番号562069(BD Bioscience、ロット番号0170543))。ホスホ-STAT1細胞内発現を、個々のT細胞集団内でフローサイトメトリーによって決定した。(a)PBMCを使用してCD3+T細胞を単離し、単離したT細胞をビヒクル対照または試験ペプチド(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、細胞対ビーズ比率4:1の抗CD3/抗CD28 Dynabeads(商標)で刺激するか、または非刺激のままにした。72時間後、細胞を回収し、CD3、CD4、CD8、及びpSTAT1について染色し、フローサイトメトリーを使用して発現を評価した。データを、CD4T細胞%(A)、CD4T細胞集団内のpSTAT1発現%(B)、及びpSTAT1 MFI(C)、+/-SEM、n=4として示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して決定される、*p<0.05であった。赤色の点線は、刺激のみを示し、青色の点線は、非刺激対照を示す。pSTAT1-PEのアイソタイプ対照値:345.25 MFI。(c)軟膜試料(n=4)から回収したPBMCを使用して、免疫磁気分離によってCD3+、CD4+T細胞集団を単離した(StemCell、それぞれカタログ19051C、17852C、17953C)。細胞をRPMI-10中に0.5×106/mLで再懸濁し、1ウェル当たり0.5×105の密度(100μL)で96ウェルの平底培養プレートに播種した。細胞を、細胞対ビーズ比率4:1の抗CD3/抗CD28 Dynabeads(ThermoFisher、カタログ00788901)で刺激し、MQ水(ロット2152901)中に配合された試験ペプチドIK14004の存在下で72時間培養した。72時間後、細胞を、単離したCD3+T細胞培養物から回収し、CD4+T細胞画分内の細胞内ホスホSTAT6発現についてフローサイトメトリーによって評価した。データを、平均蛍光強度(MFI)+/-SEM、n=4として提示し、Inter-Kペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による二元ANOVAを使用して決定される、**p<0.01、***p<0.0001であった。(e)単離したCD3T細胞を、ビヒクル対照(0.13%HO)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3抗CD28刺激ビーズ(細胞対ビーズ比率4:1)で刺激した。72時間後、細胞を回収し、pSTAT3について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。データは、pSTAT3発現(平均蛍光強度、MFI)CD4+T細胞+/-SEM、n=4を提示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による反復測定(RM)二元ANOVAを使用して決定される統計的有意性はなかった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、平均非刺激対照群値を表す。(f)、(g)PBMCを、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激した。72時間後、細胞を回収し、IL-6R(CD126)について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。データを、CD4+T細胞及びCD8+T細胞内でのCD126発現(平均蛍光強度、MFI)+/-SEM、n=4として提示した。ペプチドをビヒクル対照と比較したダネットの事後検定による反復測定(RM)二元ANOVAを使用して決定される、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001であった。赤い点線は、平均刺激培地のみの対照値を表し、青い点線は、平均非刺激対照群値を表す。
図5】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHと同様に、Lckを活性化し、c-Srcを阻害する。
図6】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、MAP4K1キナーゼ活性を阻害する。
図7】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、T細胞上のCD28レベルを増加させる。PBMCを、抗CD3(1μg/ml)刺激及びIK14004とともに5濃度範囲(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、細胞をCD28の発現についてフローサイトメトリーによって評価した。提示されたデータは、ペプチド処置に応答するCD4+T細胞集団におけるそれぞれの平均発現、+/-SEM、n=4を示した。データを、ダネットの事後検定による二元ANOVAによって分析し、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001であった。***は、線の下の全ての棒グラフがビヒクルと比較して有意であることを示す。赤色の点線は、非刺激PBMC発現を示す。
図8】Dアミノ酸を含むrskaknplyr-(2Adod)-NH(RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、再刺激時に疲弊したCD4+細胞上でIL-2発現を増加させる。上清を72時間後に培養物において収集し、多重イムノアッセイによって測定されたIL-2サイトカイン産生を評価した。データを、ビヒクル対照(0)に対して正規化された4つの生物学的複製物からの平均±SEMとして提示した。**P<0.01であり、ダン事後検定によるノンパラメトリック一元ANOVA(フリードマン)を使用して、各用量レベルでの群を最低レベル(0.08μM)と比較した。
図9】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、Foxp3を発現するCD25+細胞の割合を増加させる。
図10】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、CD4+細胞に対するTregの比率を増加させる。Foxp3を発現するCD25+細胞の増加した割合は、より高い濃度のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHでのCD4/Treg比率に反映される。
図11】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、Foxp3を発現するCD25+細胞の割合の増加を誘導し、Foxp3発現レベルの統計的に有意な増加とは関連しない。
図12】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)の腹腔内投与が、ルイス肺癌(LCC)転移モデルにおいて肺の腫瘍面積を低減させることを示す。RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHを2週間にわたって週2回腹腔内投与し(400μg)、その後、H&E切片を腫瘍浸潤の証拠について評価し、腫瘍塊を健康な肺組織のパーセンテージとして計算した。データ点は、試料当たりの肺内の腫瘍塊の平均面積を示す。n=16、**p<0.01、対のない両側t検定である。
図13】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、ルイス肺癌(LLC)異種移植モデルにおいて異種移植腫瘍体積及び腫瘍細胞生存率を低減させることを示す。
図14】a)RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、B16F10黒色腫細胞増殖を阻害しないこと、b)RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、ルイス肺癌細胞増殖を阻害しないことを示す。
図15】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、転移性肺癌モデルにおいて肺結節を低減させることを示す。
図16】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、NK細胞上のIL-12受容体発現を増強することを示す。
図17】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、NK細胞上のIL-12受容体発現を増強することを示す。
図18】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、NK細胞上のNKp44発現を増強することを示す。
図19】RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のNKG2D受容体発現を増強することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
非受容体Srcキナーゼファミリー(SKF)のメンバーは、哺乳動物において、Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、Lck、及びBlkの8つのキナーゼを含む。
【0026】
本発明は、部分的に、c-Scr及びLckの活性に対して相反する効果を有し、これによりIL-2の恒常性レベルの維持が可能になる、合成ペプチドの開発に基づく。
【0027】
具体的には、本発明者らは、実施例1において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH及びRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、c-Srcを阻害し、Lckを活性化することを実証する。
【0028】
したがって、一実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置または予防する方法であって、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0029】
本明細書で使用される場合、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、互換的にIK14001またはRSKAKNPLYR-(2Adod1)と称される。本明細書で使用される場合、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、互換的にIK14002またはRSKAKNPLYR-(2Adod2)と称される。本明細書で使用される場合、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、互換的にIK14003またはRSKAKNPLYR-(2Adod3)と称される。本明細書で使用される場合、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、互換的にRSKAKNPLYR-(2Adod4)またはIK14004と称される。
【0030】
実施例1のデータは、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、Csk及びSFKメンバーに対するその効果を考慮して、ある程度の選択性を発揮することを示唆している。本発明者らはまた、図5において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHと同様に、c-Srcを阻害し、Lckを活性化すること、ならびにRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、1及び3uMで、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHと同様に挙動することを実証し、実証した。(データ図示せず)。
【0031】
この結果は、驚くべきことに、部分的には、Srcキナーゼファミリーメンバーが同様の構造を共有する非受容体チロシンキナーゼであることに起因し、これは、保存されたチロシンを介した活性化及び不活性化がSFK間で共有される特徴である可能性が高いため、課題を提示する。したがって、これまでに報告された全てのLck活性化因子が、他のSFKメンバーを活性化することが示されている。更に、免疫細胞において発現される複数のSFKの存在とともにSFK阻害剤の非選択性を考慮すると、SFKファミリーの任意の所与のメンバーを特定のシグナル伝達経路に関与させて、例えば、所望のシグナル伝達経路の調節を可能にすることは依然として困難である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「活性化すること」という用語は、一般に、少なくとも1つの標的タンパク質の活性を増加させることを指す。キナーゼの特定の文脈では、この活性化は、少なくとも1つの標的基質または部位のリン酸化の増加をもたらす。この活性化は、タンパク質キナーゼとタンパク質キナーゼの結合パートナーとの間に複合体が形成される確率を増加させること、またはその標的に結合されるとキナーゼの活性を増加させることを含む(これらに限定されない)、任意の手段によって引き起こされ得る。そのような活性化は、インビボまたはインビトロのいずれかで行われ得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「阻害すること」という用語は、一般に、少なくとも1つの標的タンパク質の活性を減少させることを指す。この阻害は、タンパク質キナーゼとタンパク質キナーゼの結合パートナーとの間に複合体が形成される確率を低下させること、またはその標的に結合されるとキナーゼの活性を減少させることを含む(これらに限定されない)、任意の手段によって引き起こされ得る。そのような阻害は、インビボまたはインビトロのいずれかで行われ得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「処置すること」という用語は、治療的処置ならびに予防的処置(個体において、障害もしくは障害の症状の発症を完全に予防すること、または障害の症状の発症、もしくは前臨床的に明らかな障害の段階を遅延させることのいずれか)を含む。
【0035】
「予防すること」という用語は、個体において、障害もしくは障害の症状の発症を完全に予防すること、または障害もしくは障害の症状の発症、あるいは障害の前臨床的に明らかな障害の段階を遅延させることのいずれかを含む。これには、例えば、自己免疫疾患などの疾患を発症するリスクのある者の予防的処置が含まれる。「予防(prophylaxis)」は、予防(prevention)の別の用語である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト対象を含む。好ましくは、対象は、哺乳動物である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「自己免疫障害」は、通常、体内に存在する物質及び組織に対する身体の過活動免疫応答、例えば炎症状態から生じる疾患を指す。自己免疫疾患及び自己免疫障害という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0038】
本明細書で使用される「有効量」(例えば、「治療有効量」または「薬学的有効量」)は、所望の分子応答または細胞応答、例えば、IL-2恒常性をもたらす、本明細書に記載されるペプチドの量を指す。当該「有効量」は、個体の年齢及び全身状態に応じて、また、処置または予防される特定の自己免疫状態、処置の期間、過去の処置、ならびに自己免疫状態の性質及び既存の期間などの要因に応じて、対象によって変動する。有効量のペプチドは、合理的な利益/リスク比に見合った、過剰または非許容毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに対象に投与され得る量であるが、本明細書全体を通して開示されるものなどの適切な技術によって評価される所望の効果を提供するのに十分な量を含む。したがって、正確な有効量を指定することは不可能であるが、当業者であれば、慣用的な実験及び背景一般知識を使用して、任意の個々の場合において適切な「有効」量を決定することができるであろう。本文脈における治療的結果は、症状の根絶または軽減を含む。治療的結果は、状態の完全な改善(すなわち、治癒)である必要はない。
【0039】
本明細書に記載されるペプチドは、本発明の方法に従って哺乳動物に投与され得るか、または細胞は、インビトロでペプチドと接触し得る。同様に、本発明は、細胞が、対象に細胞を戻す前、対象への細胞の投与前、または対象への細胞の移植前に、対象の外部においてペプチドで処置される、エクスビボ処置を提供する。
【0040】
本明細書に記載されるペプチドは、意図される対象への投与のための、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を含む、薬学的組成物において提供され得る。ペプチドは、経口的に、鼻腔内に、吸入を介して(例えば、エアゾールスプレーによって)、静脈内に、非経口的に、直腸内に、皮下に、注入によって、局所的に、筋肉内に、腹腔内に、髄腔内に、眼内に、または対象の関節への投与を含む適切とみなされる任意の他の経路を介して投与され得る。
【0041】
好ましくは、ペプチドは、経口的及び/または局所的に投与される。
【0042】
一実施形態では、局所投与は、関節への投与を伴う。
【0043】
薬学的組成物は、例えば、液体、懸濁液、乳濁液、シロップ、クリーム、摂取可能な錠剤、カプセル、丸薬、座薬、粉末、トローチ、エリキシル、または選択された投与経路に適切な他の形態であり得る。
【0044】
本発明による方法で有用な薬学的組成物には、水性薬学的溶液が含まれる。注射可能な組成物は、注射可能性が存在する程度まで流体であり、典型的には、製造後の保管を提供するために、通常、所定の期間安定である。更に、薬学的に許容される担体は、任意の好適な従来知られている溶媒、分散媒、水、生理食塩水、及び等張調製物または溶液、界面活性剤を含み得、任意の好適な薬学的に許容される担体(例えば、経口的または局所的に許容される担体)が利用され得る。好適な分散媒は、例えば、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含有し得る。具体的には、本明細書に記載されるLck調節因子または核酸は、例えば、不活性希釈剤、同化可能な食用担体と製剤化され得、及び/または硬質もしくは軟質のシェルゼラチンカプセルに封入され得る。
【0045】
本明細書に記載される薬学的組成物はまた、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールなどのインビボ及び/または局所投与に好適な1つ以上の保存剤を組み込み得る。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させるための薬剤を組成物中で使用することによって、組成物の長期吸収がもたらされ得る。本明細書に記載されるペプチドを含有する錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどはまた、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、もしくはゼラチンなどの結合剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、もしくはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味剤;ならびに香味剤のうちの1つ以上を含有し得る。
【0046】
薬学的組成物における上述の成分及び媒体の使用は周知である。任意の従来の媒体または成分が本明細書に記載されるLck調節因子と適合しない場合を除き、本明細書に記載される治療的及び予防的薬学的組成物におけるそれらの使用が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「併用療法」とは、本発明によるペプチドを、同じまたは異なる製剤で、同じまたは異なる経路によって他の薬物(複数可)に、事前、同時、または連続的に投与することを意味し、それによって、Lck調節因子(複数可)及び/または核酸(複数可)は、重複する治療域においてにそれらの効果(複数可)を発揮する。
【0048】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を投与量単位形態に製剤化することが特に好ましい。本明細書で使用される投与量単位形態は、処置される対象のために単位的な投与量として適した物理的に別個の単位を意味すると解釈されるべきであり、各単位が、使用される関連の担体及び/または賦形剤と関連して所望の治療的または予防的効果をもたらすように計算された本発明による所定の量の少なくとも1つのLck調節因子または核酸を含有する。投与量単位形態が、例えば、カプセル、錠剤、または丸薬である場合、様々な成分をコーティング(例えば、セラック、糖、またはその両方)として使用して、投与量単位の物理的形態を修正するか、または対象への投与を容易にし得る。
【0049】
薬学的組成物は、一般に、少なくとも約1重量%の本明細書に記載されるペプチドを含有する。このパーセンテージは、変動し得、便宜的には、組成物または調製物の約5%~約80%w/wであり得る。この場合も、本発明によるペプチドの量は、提案された投与経路を考慮して、好適な有効投与量が対象に送達されるようなものである。好ましい経口薬学的組成物は、約0.1μg~15gのペプチドを含有する。
【0050】
本発明によるLck調節因子または核酸の投与量は、ペプチドが予防的または治療的使用のために投与されるかどうか、薬剤の投与が意図される疾患、状態、または目的、疾患または状態の重症度、対象の年齢、ならびに対象の体重及び一般的な健康状態を含む関連因子を含む、認められている原則に従って医師または随伴者によって決定され得る多くの因子に依存する。例えば、最初に低投与量が与えられ得、これはその後、対象の応答の評価後に各投与時に増加される。同様に、投与頻度は、同じように、すなわち、各投与間の対象の応答を連続的にモニタリングし、必要に応じて、投与頻度を増加させるか、または代替的に投与頻度を低減させることによって決定され得る。
【0051】
典型的には、本明細書に記載されるペプチドは、最大約100mg/kg個体体重、より通常は最大約50mg/kg体重の範囲、及び最も通常は約5mg/kg~40mg/kg体重の範囲のペプチドの投与量を提供するように、本発明によって具体化される方法に従って投与される。少なくともいくつかの実施形態では、ペプチドは、約5~25mg/kg体重の範囲、通常は約5mg/kg~約20mg/kgの範囲、及びより通常は10mg/kg~約20mg/kgの範囲のペプチドの投与量を提供するように投与される。経口的に投与する場合、1日当たり最大約20gのペプチドが投与され得る(例えば、1日当たり4回の経口用量、各用量は5gのペプチドを含む)。
【0052】
静脈内経路に関して、特に好適な経路は、処置される組織または特定の臓器(複数可)に供給する血管へのペプチドの全身分布のための注射を介したものである。更に、ペプチドは、任意の好適な注入または灌流技術によって送達され得る。ペプチドはまた、例えば、胸膜腔もしくは腹膜腔などの空洞内に送達され得るか、または処置される組織に直接注射され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、配列は、単離または精製配列である。
【0054】
天然または組換え技術によって産生される配列の「単離」及び「精製」の方法は、当該技術分野、例えば、C-H Lee,A Simple Outline of Methods for Protein Isolation and Purification,Endocrinology and Metabolism;2017,March;32(1):18において既知である。更に、「単離された」または「精製された」という用語は、合成された配列及び他の人工的に産生された配列を含む。配列を合成するための方法は、当該技術分野において既知である。一般に、配列は、一方のアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基との縮合反応によって化学的に合成される。配列の化学的合成は、溶液相技術または固相技術を使用して実行され得る。合成技術は、非天然アミノ酸配列を組み込む配列の産生、骨格修飾、及びD-異性体の合成を可能にし得る。
【0055】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、本明細書に記載されるLck調節ポリペプチドが、LまたはDアミノ酸を含み、例えば、低レベルのIL-2の誘導において生物学的活性を有し得ることを特定した。当該技術分野において既知であるように、アルファアミノ酸は、アルファ位置にキラル炭素を含む。その結果として、グリシンを除く全てのアルファアミノ酸は、L-またはD-異性体である2つの鏡像異性体のいずれかに存在し得る。一般に、L-アミノ酸のみが哺乳動物細胞において製造され、タンパク質に組み込まれる。D-アミノ酸は、人工的に合成され得るか、または細菌タンパク質中に見出され得る。L及びD規則は、アミノ酸の立体化学を直接指すために使用されるのではなく、むしろ、アミノ酸構成を参照して使用され、アミノ酸自体の光学活性を指すのではなく、むしろ、そのアミノ酸が合成され得るグリセルアルデヒドの異性体の光学活性を指す(D-グリセルアルデヒドは右旋性であり、L-グリセルアルデヒドは左旋性である)。
【0056】
本明細書で使用される場合、小文字は、右旋性(「デキストロ」)アミノ酸を示し、したがって、ペプチドrskaknplyr-(2Adod)-NHは、Dアミノ酸を含む。
【0057】
一実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列rskaknplyr-(2Adod)-NHまたはrskaknplyr-(2Adod)-NHを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の配列は、修飾される。いくつかの実施形態では、修飾は、配列の薬理学的特性を変化させる修飾であり得る。いくつかの実施形態では、修飾は、本発明の組成物または配列の半減期を増加させる。いくつかの実施形態では、修飾は、配列(及び/または本発明の組成物)の生物活性を増加させ得る。いくつかの実施形態では、修飾は、本発明の配列または組成物の選択性を増加させる修飾であり得る。
【0059】
一実施形態では、修飾は、保護基の付加である。保護基は、N末端保護基、C末端保護基、または側鎖保護基であり得る。本発明の配列は、これらの保護基のうちの1つ以上を有し得る。当業者は、アミノ酸をこれらの保護基と反応させるための好適な技術を認識している。これらの基は、当該技術分野において既知である調製方法によって付加され得る。基は、配列上に残り得るか、または使用もしくは投与の前に除去され得る。保護基は、合成中に付加され得る。
【0060】
本発明者らは、Lck活性化ペプチドをアミド化することが、Lck活性のレベルを驚くほど増加させることを実証した。したがって、一実施形態では、本発明は、最遠位脂肪酸がアミド化されている、本明細書に記載されるペプチドを提供する。
【0061】
ポリペプチド配列の文脈において本明細書で使用される場合、「NH」は、ポリペプチドが、アミド化されていることを示す。
【0062】
いくつかの実施形態では、配列は、そのC末端でアミド化されている。アミド化は、連続的なエンド及びエキソタンパク質分解によるグリシン伸長基質のN-酸化的開裂のプロセスを指す。酵素アミド化、組換え的に産生された配列及びタンパク質のC末端の化学的修飾、固相配列合成におけるアミド樹脂の使用、アンモニアの存在下でのカルボキシペプチダーゼの使用、ならびに配列のC末端のメチルエステルへの変換及び低温でのアンモニアの添加などの、インビトロでのアミド化配列を産生するための方法が、当該技術分野において既知である。好適な技術の開示の例としては、DJ Merkler,C-terminal amidated sequences:production by the in vitro enzymatic amidation of glycine-extended sequences and the importance of the amide to bioactivity;Enzyme Microbial technology,1994,June;16(6):450-6、及びV Cerovsky and M-R Kula C-Terminal sequences Amidation Catalyzed by Orange Flavedo sequences Amidase;Angewandte Chemie,1998,August;37(13-14):1885)が挙げられる。
【0063】
C末端のアミド化は、C末端が無電荷であることをもたらすため、修飾配列は、天然タンパク質をより密接に模倣する。これは、細胞に入る配列の増強された能力;インビボでの配列の代謝安定性の改善;アミノペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、及びシンテターゼによる配列のインビボ酵素分解の減少;ならびに配列の貯蔵寿命の改善を含む、一連の利点を有し得る。
【0064】
ポリペプチド配列の文脈において本明細書で使用される場合、Adodという用語は、アミノドデカン酸を指し、「2Adod」は、2-アミノドデカン酸を指す。2つ以上の脂肪酸がカップリングされる場合、カップリングされた脂肪酸の数は、下付き文字によって示される。例えば、「(2Adod)」は、2つの2-アミノドデカン酸を示す。したがって、本明細書に記載されるポリアミド部分の単一の単位は、1つの2-アミノドデカン酸残基(本明細書では「(2Adod)」とも称される)に対応する。本明細書に記載されるポリアミド部分の2つの単位は、2つの2-アミノドデカン酸残基(本明細書では「(2Adod)」とも称される)に対応する。本明細書に記載されるポリアミド部分の3つの単位は、3つの2-アミノドデカン酸残基「(2Adod)」に対応する。本明細書に記載されるポリアミド部分の4つの単位は、4つの2-アミノドデカン酸残基「(2Adod)」に対応する。
【0065】
本発明者らは、実施例1において、ペプチドRSKAKNPLYRへの2つまたは4つの脂肪酸のカップリングが、c-Srcを阻害しなかったペプチドRSKAKNPLYRへの1つまたは3つの脂肪酸のカップリングとは対照的に、Lck活性も活性化しながらc-Src活性を阻害する能力の増加をペプチドに付与することを実証した。
【0066】
Lckキナーゼの阻害は、自己免疫及びがんの両方に対する処置として提案されているが(Bommhardt U et al,Int J Mol Sci,2019,20(14):3500)いくつかの固形癌におけるLckの役割は依然として議論の余地がある。例えば、LckはNSCLC細胞株において過剰発現されるが(Ripniewska E et al,Oncotarget,2018,9:27346-27362)、肺癌患者の腫瘍浸潤におけるその発現は、良好な予後に関連している(D’Andrilli A et al,Interactive Cardiovascular & Thoracic Surgery,2012,15:148-151)。更に、黒色腫のゲノム分析は、Lck発現が生存期間の有意な改善に関連していることを示している(Cancer Genomic Atlas Network,Cell,2015,161:1681-96)。本明細書に提示されるデータに基づいて、本発明者らは、固形癌におけるLckの主な役割が、固有のがん細胞Lck異常ではなく、適切な免疫応答によって誘導される正の治療転帰を導くことであることを提案する(Creeden JF et al,Int J Mol Sci,2020,21:8823)。更に、本明細書に記載されるNK細胞によって媒介される抗腫瘍活性は、多くの場合、Lckを伴うサイトカイン受容体シグナル伝達経路によって調節される。例えば、NK細胞のIL-2媒介性活性化は、NKG2DなどのNK免疫グロブリン様受容体の活性化をもたらし(Konjevic G et al,Melanoma Res,2010,20(6):459-67、Le Bert N et al,Immunol Cell Biol,2014,92:230-6、Hu W et al,Front Immunol,2019,doi.org/10.3389/fimmu.2019.01205、Skak K et al,Immunology,2008,123(4):575-583)、Lckは、増強された細胞傷害性に関連するNKG2Dからの下流シグナル伝達の中心である((Rajasekaran R et al,Front Immunol,2016,doi.org/10.3389/fimmu.2016.00176)。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、2つまたは4つの結合脂肪酸部分を含む。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明は、RSKAKNPLYR-(2Adod)及びRSKAKNPLYR-(2Adod)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0069】
別の好ましい実施形態では、本発明は、RSKAKNPLYR-(2Adod)及びRSKAKNPLYR-(2Adod)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0070】
カップリングした2Adodは、1つの脂肪酸鎖のアミノ基置換基と次の脂肪酸の末端カルボキシル基との間にそれぞれのアミド結合を連続的に形成することによって脂肪酸を一緒にカップリングし、それによってカップリングした脂肪酸を提供することによって提供され得る。
【0071】
したがって、脂肪酸のαまたはβ炭素上にアミノ基(NH)置換基を有する脂肪酸は、カップリングに特に好適である。
【0072】
別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるLckを活性化するためのペプチドを提供し、最遠位脂肪酸は、アミド化されている。
【0073】
本発明者らは、実施例2において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHがIL-2産生を活性化すること、及び実施例5において、rskaknplyr-(2Adod)-NHがIL-2産生を活性化することを実証した。
【0074】
重要なことに、IL-2レベルにおける低レベルの増加の維持が観察され、高レベルのIL-2が回避される。
【0075】
したがって、一実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害である、本明細書に記載される方法を提供する。
【0076】
免疫系の恒常性及び活性化の間のIL-2の主な役割は、十分認識されている。定常状態条件下では、低レベルのIL-2は、主に活性化CD4+T細胞によって維持され、二次リンパ器官では、IL-2は、免疫抑制性T調節性細胞集団(Treg)によって同じ部位で消費される。IL-2はまた、樹状細胞(DC)によって産生され、活性化されたDCは、隣接するエフェクター細胞にトランスで提示されるT細胞由来またはDC由来のいずれかのIL-2に結合するために、それらの細胞表面上でCD25を発現する。したがって、免疫応答中、活性化CD4+及びCD8+T細胞によって産生されたIL-2は、抗原特異的CD8+T細胞集団の拡大を制御するIL-2シグナルによりDC、Treg、及びCD25+エフェクターCD4+/CD8+細胞によって消費される。
【0077】
重要なことに、Tregが生存のためにIL-2に絶妙に依存していることを考慮すると、慢性自己免疫状態に対抗する免疫抑制性T細胞集団を維持するために、低IL-2レベルのみが必要である。更に、IL-2及び高親和性IL-2Rアルファ受容体鎖(CD25)が欠損したヒトは、CD4+/CD25+免疫抑制性Tregの産生障害、ならびにSLE、移植片対宿主疾患、及びI型糖尿病に対する低用量IL-2療法に起因して、全身的自己免疫を発症する。SLEを有する患者における低用量IL-2の皮下注射は、SLE疾患活性指数(SLEDAI)の低下をもたらすが、IL-2の非常に短い半減期は、依然として課題である。
【0078】
本明細書に記載されるTh1歪曲サイトカインの抑制と組み合わせた、IK14004によるLck活性の選択的増強及びIL-2産生の微調整(例えば、IL-2の治療域内)は、自己免疫障害の処置及び/または予防に関連する。免疫系の恒常性の間のIL-2の役割は十分に認識されており、免疫抑制性T調節性(Treg)細胞は、免疫寛容を維持する上で重要である。マウスにおけるTregの標的化された欠失は、重度の自己免疫をもたらし、Tregの産生は、抗CD3/CD28抗体によるTCR活性化によって増強される。定常状態条件下では、低レベルのIL-2は、主に活性化CD4+T細胞によって維持され、Tregによって二次リンパ器官で消費される。自己免疫を予防するための低用量IL-2の使用は(細胞傷害性リンパ球集団を拡大するための高用量IL-2の使用とは対照的に)、IL-2及びCD25が欠損したヒトが全身的自己免疫を発症し、SLE、移植片対宿主疾患に対する低用量IL-2療法が有望な結果をもたらす限り、臨床的証拠と一致する。
【0079】
IK14004がIFNg産生を阻害するという本明細書における実証にもかかわらず、過剰なIL-2産生を回避することは、IL-2応答性細胞によって産生されるIFNgなどの免疫調節因子の下流カスケードからの大きなリスクを最小限に抑え、次いで、細胞溶解メカニズムを刺激する。例えば、過剰なIFNgシグナル伝達は、マウス及びヒトにおける自己炎症性疾患に関連しており、多発性硬化症におけるIFNgのレベルの上昇は、IL-12の効果に起因すると考えられる。
【0080】
本発明者らが提案する理論に拘束されることを望まないが、低用量IL-2免疫療法は、Treg集団を維持し、自己免疫/慢性炎症性状態/組織移植片拒絶を処置するために提案されているが、高用量のIL-2投与は、細胞傷害性リンパ球集団を拡大するために使用され、自己免疫障害の処置のために回避される。
【0081】
本発明者らはまた、実施例1において、Lynが阻害されないことを実証した。Lynチロシンキナーゼは、B細胞及び骨髄細胞における阻害シグナル伝達を調節し、Lynの喪失は、高活性B細胞及び骨髄増殖によるループス様自己免疫疾患をもたらし、Lynを維持することは自己免疫を回避する。
【0082】
本発明者らは、実施例1において、Hckが阻害されることを更に実証した。Hck阻害剤は、様々な悪性腫瘍及び自己免疫疾患におけるそれらの調節役割についても周知である。
【0083】
重要なことに、実施例2は、ペプチドがLck非依存性シグナル伝達経路も刺激し得ることを実証する。
【0084】
標準的なLck調節TCRシグナル伝達経路に加えて、免疫応答はまた、サイトカイン応答の転写活性化におけるGタンパク質の負の調節役割を介して近位TCRシグナルを微調整することにより、Lck非依存性及びLck依存性の両方の方式でグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を介して媒介される。
【0085】
実施例3は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが正常なヒトT細胞上のGNA11の発現を増強することを実証する。
【0086】
一実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害である、本明細書に記載される方法を提供する。一実施形態では、調節不全のIL-2恒常性は、炎症である。
【0087】
本明細書で使用される場合、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害は、対象における調節不全のIL-2恒常性に起因する障害を含む。理論に拘束されることを望まないが、IL-2シグナルは、胸腺tregの分化、treg細胞の恒常性及び機能において主要な役割を果たし、低用量のIL-2がtreg細胞の拡大を介して疾患を処置することができることが実証されている。本発明者らは、本明細書に記載されるペプチドが、低用量のIL-2を誘導し、高レベルのIL-2を誘導することを回避し得ることを実証した。高用量IL-2は、重度の副作用及び効能制限に関連する。
【0088】
一実施形態では、調節不全のIL-2恒常性に関連する障害は、低用量のIL-2産生及びtreg細胞の拡大から利益を受け得る障害である。例えば、造血幹細胞移植(HSCT)、HCV誘導性血管炎、1型糖尿病、移植片対宿主疾患(GVHD)、円形脱毛症、及び全身性エリテマトーデス(SLE)であり、これらは、低用量のIL-2産生及びtreg細胞の拡大から利益を得るであろう。
【0089】
多くの自己免疫疾患は、Tregの機能または頻度の低下を特徴とし、適切な炎症促進性「低Treg」慢性疾患とみなされ得る。対照的に、進行がんは、抗炎症性の「高Treg」疾患である。これらの理由から、自己免疫疾患及び進行がんは、免疫学的に正反対のものと考えられ得る。
【0090】
本発明者らは、実施例6において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、IK14004の存在下で、増加したFoxp3も発現したCD25発現細胞の割合を増加させ(図9)、これが、より高いIK14004濃度でのCD4/Treg比率に反映されたことを実証した(図10)。しかしながら、これは、Foxp3発現レベルの統計的に有意な増加とは関連しなかった(図11)。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、本明細書に記載されるペプチドを使用して、免疫療法を含むがん療法を受けている対象を含む、がんを有する対象における自己免疫を処置及び/または予防する対象におけるTregのレベルを促進し得ることを提案する。
【0091】
好ましい実施形態では、Treg細胞は、Foxp3陽性細胞である。
【0092】
別の実施形態では、Treg細胞は、CD25+Foxp3+細胞である。
【0093】
一実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、IL-2媒介性障害である、本明細書に記載される方法を提供する。
【0094】
本明細書で使用される場合、IL-2媒介性障害は、IL-2の投与が、単独でまたは他の介入(例えば、化学療法、免疫療法、移植など)と組み合わせて、誠実な処置選択肢及び/または治験処置選択肢である障害を含むが、障害には、限定されないが、がん、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、ベーチェット病、ウェゲナー肉芽腫症、高安病、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫肝炎、硬化性胆管炎、グジェロー-シェグレン症候群、円形脱毛症、臓器(例えば、肝臓、腎臓など)または組織(例えば、骨髄)移植を必要とする障害、移植片対宿主疾患(GVHD)及び幹細胞移植(SCT)で処置可能な障害(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、同種SCTを必要とする非悪性疾患などを含む)、HIV感染、ウィスコット-アルドリッチ症候群(WAS)、X連鎖血小板減少症、ネフローゼ症候群、1型糖尿病、マクロファージ活性化症候群、多発性硬化症(再発寛解を含む)、筋萎縮性側索硬化症などが含まれる。
【0095】
別の態様では、本発明は、IL-2媒介性障害を処置する必要がある対象においてIL-2媒介性障害を処置する方法を提供し、方法は、本明細書に記載されるペプチドを含む組成物または本明細書に記載される薬学的組成物を、他の介入(例えば、免疫療法)と同時にまたは連続して投与することを含む。
【0096】
一実施形態では、本発明は、自己免疫疾患が、調節不全のIL-2及び/またはIL-2Rアルファ(CD25)産生に関連する、本明細書に記載される方法を提供する。
【0097】
IL-2及び高親和性IL-2Rアルファ受容体鎖(CD25)が欠損したヒトは、CD4+/CD25+免疫抑制性Tregの産生障害ならびにSLE、移植片対宿主疾患、及びI型糖尿病に対する低用量IL-2療法に起因して、全身的自己免疫を発症する。
【0098】
したがって、一実施形態では、本発明は、対象が、IL-2及び/またはIL-2Rアルファ(CD25)産生が欠損している、本明細書に記載される方法を提供する。
【0099】
低用量IL-2免疫療法は、Treg集団を維持し、自己免疫/慢性炎症性状態/組織移植片拒絶を処置するために提案されているが、高用量のIL-2投与は、細胞傷害性リンパ球集団を拡大するために使用される。
【0100】
別の実施形態では、本発明は、自己免疫障害が、アレルギー性喘息、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス及び他のループス障害、1型インスリン依存性糖尿病(IDDM)、乾癬、強皮症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、ならびにGVHDからなる群から選択される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0101】
重要なことに、NFAT1のLck媒介性リン酸化を維持することによって、TCR-pMHC関与時の過剰なTh1サイトカイン発現の予防におけるIK14004の調節役割と一致して、ペプチドはまた、非細胞ベースのキナーゼプロファイリングで評価されるCaMKIVの活性を阻害する。
【0102】
活性化Lckは、NFAT1をリン酸化し、これは、NFAT1をサイトゾルに保持し、したがって、IL-2及びIFNgの産生を予防するのに役立つ。本発明者らは、実施例4において、IL-12p40産生及びIFNg産生が、刺激したPBMC及び単離したCD3+T細胞培養物から阻害されたことを実証する。
【0103】
IL-2は、がんを含むいくつかのヒト疾患を処置するために臨床的に使用されるが、IL-2の標的外効果は、限られた臨床療法を有する。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、がん療法中のがん患者の自己免疫効果を含むがん患者における自己免疫障害が、本明細書に記載されるペプチドを使用して処置され得ることを提案する。したがって、一実施形態では、本発明は、対象が、がんを有する、本明細書に記載される方法を提供する。一実施形態では、本発明は、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH及び/またはRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHを含むペプチドが、Lck及び/またはG-タンパク質シグナル伝達の活性を調節して、対象におけるIL-2の恒常性レベルを維持する、本明細書に記載される方法を提供する。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)抗がん療法に二次的な腫瘍進行及び免疫関連有害事象(irAE)の予防は、反対の免疫応答に依存する。自己免疫疾患を有する患者は、がんのリスクの増加を有し(Valencia JC et al,J Interferon Cytokine Res,2019,39(1):72-84)、両方の状態は、一般的には共存する(Ma Q et al,BMC Cancer 18,Article number.145(2018)。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の導入により、がんからの転帰に有意な改善が生じているが、自己免疫が、がん療法の宿敵として浮上している(Kumar P et al,Autoimmunity,2018,95:77-99、Bakacs T et al,Scandinavian J Immunology,2019,doi.org/10.1111/sji.12821、Lim SY et al,Clin Cancer Res,2019,doi:10.1158/1078-0432.CCR-18-2795、Walsh SR et al,J Clin Invest,2018,doi.org/101172/JCI121004)。
【0104】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、IK14004の独自性は、この脂質ペプチドが、2つの異なるリンパ球集団において免疫応答を誘導することであり、これは、ヘルスケアにおける2つの対照的な満たされていない必要性に対処する可能性を有し、一方で、自己免疫を予防するために必要な免疫応答を依然として維持しながら、がんの発症及び進行を予防することを提案している。本発明者らは、これが、T細胞対ナチュラルキラー(NK)細胞に対するIK14004の異なる効果に起因して生じることを提案する。具体的には、IK14004は、自己免疫の抑制、すなわち、T細胞及び樹状細胞(DC)によってそれぞれ産生されるIFN-g及びIL-12などの炎症促進性サイトカインの産生を同時に抑制しながら、Tregを維持するために必要とされるT細胞によるIL-2の低いが重要なことには高レベルではない分泌の誘導と組み合わせた免疫抑制性T調節性(Treg)CD4+/CD25+/Foxp3+細胞集団(例えば、図9)の増強に向けられた同時誘導免疫応答の独自の特性を実証する。一方、IK14004の抗がん効果(例えば、図12~15を参照)は、NK細胞による抗腫瘍細胞傷害性に必要なNK細胞上の受容体発現のその増強、すなわち、NK細胞によるIFN-g産生を推進するがん細胞によって産生されるIL-12に応答し得る増強されたIL-12受容体発現、ならびに天然細胞傷害性受容体の増強された発現を介して媒介されることが提案されている。
【0105】
例えば、図16及び17は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のIL-12受容体発現を増強することを実証する。
【0106】
IL-2は、毒性副作用にもかかわらず、がんに対する有効性を示し(Sun Z et al,Nat Communications 10,Article number:3874(2019)NK細胞のその既知の活性と一致し(Sun Z et al,上記、Hu W et al,Front Immunol,2019,doi.org/10.3389/fimmu.2019.01205)腫瘍成長を抑制するのに役立つ(Spolski R et al,Nat Rev Immunol,2018,18:648-659、Liao W et al,Immunity,2013,38(1):13-25)。IL-2の重要な役割は、がん細胞を標的とするNKp44及びNKG2DなどのNK細胞上の細胞傷害性受容体の活性化である。例えば、IL-2によるNK細胞の活性化は、休止NK細胞上で発現されない天然細胞傷害性受容体、NKp44の発現を誘導し(Vitale M et al,JEM,1998,187:2065-2072)、NKp44は、腫瘍成長因子を認識する最初の活性化NK細胞受容体である(Barrow Ad et al,Cell,2018,172(3):534-548)。更に、免疫細胞上でNKG2D発現を最大化することは、IK14004の使用によって達成可能であり得るがん免疫療法において依然として目標である(Duan S et al,Molecular Cancer,2019,doi.org/10.1186/s12943-019-0956-8、(Frederiksen KS et al,Cancer Immunol Immunother,2008,57(10:1439-49、Takaki R et al,J Immunol,2005,175(4):2167-73)。図18は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のNKp44発現を増強することを実証する。図19は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のNKG2D受容体発現を増強することを実証する。
【0107】
一実施形態では、対象は、がんを有する対象であり、がん療法中の自己免疫障害を処置及び/または予防するための処置のために選択される。
【0108】
一実施形態では、がんを有する対象は、がん療法を受けており、がん療法中の自己免疫障害を処置及び/または予防するための処置のために選択される。
【0109】
別の実施形態では、対象は、がん療法を受けており、免疫関連有害事象を低減するために、本明細書に記載されるペプチドまたは組成物による処置のために選択される。
【0110】
好ましい実施形態では、対象は、チェックポイント阻害剤療法を受けている。
【0111】
本明細書で使用される場合、IL-2の恒常性レベルは、自己免疫疾患の処置に有効であるが、自己免疫疾患及び/または炎症性疾患(例えば、IL-2の治療域)を悪化させるのに十分高くはないIL-2のレベルを指す。高用量のIL-2は、様々な自己免疫疾患及び炎症性疾患を悪化させ得ることが知られている。
【0112】
一実施形態では、本発明は、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、Lckの活性及び/またはGタンパク質シグナル伝達を調節し、自己免疫疾患及び/または炎症性疾患を悪化させない対象におけるIL-2のレベルを維持する、本明細書に記載される方法を提供する。
【0113】
Lckの活性化は、異なるLckプールを介したIL-2産生の正及び負の調節の両方に必要であり、炎症性サイトカイン、すなわち、IL-12p40及びIFNg(図3c~f及びi~l)のIK14004媒介性阻害と組み合わせたIK14004の存在下で、活性化T細胞によって産生される比較的低レベルのIL-2は、自己免疫性炎症応答を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0114】
本発明者らは、本明細書において、例えば、IK14004によるLck活性化が、予想外に、IL-2レベルにおける相応の増加をもたらさないことを実証した。これは、IL-2が回避される場合、高レベルをもたらす本明細書に記載されるペプチドの二次効果があることを示唆している。
【0115】
Lck欠損細胞におけるIK14004増強IL-2産生の発見(図2h)と併せて、本発明者らは、理論に拘束されることを望まないが、GNA11を介したIK14004媒介性シグナル伝達が、Gタンパク質誘導サイトカイン産生を調節することを提案する。例えば、スーパー抗原によるPBMC及び単離した単球の刺激は、IL-2、IL-12p40、及びIFNgの産生の増加をもたらすことが示されているが、IK14004は、IL-12p40及びIFNgの産生を阻害しながら、活性化T細胞からのIL-2のわずかな増加のみを誘導する。
【0116】
原形質膜における活性Lckのレベルと比較した内部Lckプール内の活性化Lckの優位性を考慮すると、本発明者らは、IK14004が、Lck依存性及び非依存性の両方の方式で免疫応答を調節することによって、恒常性の維持に寄与することを提案する。理論に拘束されることを望まないが、内部Lckプール内のLck活性の増強は、サイトゾル内にリン酸化NFAT1を保持し、IL-2遺伝子誘導を予防するのに役立つであろう。CaMKIV活性の阻害は、TCR活性化時及びカルシウム貯蔵の動員時に同じ目的を達成するであろう。
【0117】
Lckが、スーパー抗原誘導T細胞活性化時のT細胞活性化及びサイトカイン産生の下方調節に寄与することが示されており(Criado G & Madrenas J,J Immunol,2004,172(1):222-230)、IK14004は、Ga11を伴う負の調節経路を介して、この下方調節効果を更に増強し得る。CaMKIV活性に対する阻害効果(図2k)は、Lck調節因子、例えば、IK14004と比較した、例えば、Lck阻害剤、例えば、A770041の存在下で観察されたIL-2産生の10倍の増加(図2i、j)と組み合わせて、IK14004誘導Lck活性が、休止細胞及び刺激T細胞におけるIL-2の過剰産生を制限し得ることを示唆する。
【0118】
上に示すように、IL-2レベルの相応の増加をもたらすことが予想されたLck活性の観察された増加は、IL-2の過剰な産生をもたらさなかった。代わりに、IL-2レベルにおける低レベルの増加の維持が観察され、これは、治療域におけるIL-2レベルの維持を可能にする。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、IL-2産生をもたらすGタンパク質を介した、またはTCRを介したLckシグナル伝達が、図2に示されるCamKIVに対するペプチドの阻害効果によって緩和されることを提案する。
【0119】
したがって、本発明者らは、IK14004が、T細胞活性化時にIL-2恒常性を維持するためのレオスタットとして作用し得ることを提案する。
【0120】
一実施形態では、本発明は、IL-2産生細胞が、B細胞、T細胞、または樹状細胞からなる群から選択される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0121】
本発明者らは、実施例5において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、JAK/STATシグナル伝達を阻害することを実証した。JAKファミリーメンバーTyk2は、IL-23受容体シグナル伝達及びSTAT3活性化の媒介において重要な役割を果たし、Tyk2阻害剤は、脊椎関節炎のための有用な治療薬であるため、本明細書に記載されるペプチドは、脊椎関節炎の処置における使用に好適である。
【0122】
「機能獲得」STAT1及びSTAT3疾患の自己免疫症状の処置は、Jakinib、すなわち、リウマチ性関節炎、乾癬、及び炎症性腸疾患などの状態のためのJAK阻害剤の使用によって改善されている(Forbes LR et al,J Allergy & Clinical Immunology,2018,142(5):P1665-P1669)。STAT1及びSTAT3の活性化は、IFNgの下流に生じ、この活性化は、SLEに見られるように、IL-6が自己抗体の観点から関与するIL-6-STAT3軸を含む正のフィードバックループによって増強される炎症において中心的な役割を果たす(Hirano上記参照、Ogata A & Tanaka T,Int J Rheumatol,2012,doi.org/10.1155/2012/946048)。しかしながら、Jakinibは、とりわけ、潜伏結核の活性化(Maiga M et al,J Infect Dis,2012,205(11):1705-1708)、帯状疱疹などのウイルス感染のリスクの増加、及び貧血などの副作用がないわけではない(Gilhar A et al,The Lancet,2019,393(10169):P318-P319、Schwartz DM et al,Nat Rev Drug Discov,2017,doi:10.1038/nrd.2017.267)。その結果として、IK14004による、c-Src、IFNg、c-Src、STAT1(小さい程度)、及びJAK1の阻害(図1c、e、図3j~m、図4a、b)は、IFNgがc-SrcとSTAT1との間の会合を増強すること(Chang Y-J et al,Mol Pharmacol,2004,65(3):589-98、Hwang S-J,et al,Toxicology Letters,2013,220(2):109-117)及びJAK1がSrc形質転換細胞において構成的に活性化されること(Campbell GS et al,JBC,1997,272(5):2591-4)を考慮すると、代替案を提供し得る。更に、JAK2活性に対する阻害効果の非存在は、造血成長因子がJAK2を介してシグナル伝達するため、貧血の発症に関して利点を証明することができるだろう(Schwartz et al、上記参照)。
【0123】
本発明者らは、実施例5において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、MAP4K1(HPK1)キナーゼ活性を阻害することを実証した。
【0124】
MAP4K1(HPK1)キナーゼ活性は、IL-2遺伝子発現をもたらすTCR誘導AP-1応答経路の負の調節因子であるため、本発明者らは、HPK-1の阻害により、AP-1転写が核内で妨げられることなく進行することが可能になり、IL-2が治療域に維持される一方で、NFAT1媒介性IFNg誘導が抑制されることを提案する。
【0125】
例えば、CD4+T細胞アネルギーは、自己免疫を予防し、調節性T細胞前駆体を生成する(Kalekar LA et al,Nat Immunol,2016,17(3):304-314)。転写因子AP-1は、IL-2プロモーターにおける複数の調節エレメントに結合することによって、IL-2遺伝子のトランス活性化において重要な役割を果たす(Liou J et al,Immunity,2000,12(4):399-408)。MAPキナーゼ、例えばERKの活性化は、AP-1を活性化し、ERKの活性化は、TCRでのCD28関与によって増強され、Lck及びCD28の両方は、このプロセスに不可欠である(Carey KD et al,Molecular & Cellular Biology,2020,doi.org/10.1128/MCB.20.22.8409-8419.2000)。したがって、MAPキナーゼの完全な活性化は、TCR共受容体CD28の存在を必要とし(Tuosto L & Acuto O,Eur J Immuol,1998,28(7):2131-42)、タンパク質キナーゼC-Rafシグナル伝達軸またはカルシウム-カルモジュリン経路のいずれかを介したERK1/2のG-タンパク質(G-アルファq/11)活性化は、細胞型依存性であるようである(Goldsmith ZG & Dhanasekaran DN,Oncogene,2007,26:3122-2142)。これと一致して、本発明者らは、実施例5において、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、CD4+T細胞上のCD28レベルを増加させたことを実証した。
【0126】
更に、カルシニューリン阻害剤は、Ras-Raf-MAPキナーゼ経路を活性化する(Datta D et al,Cancer Res,2009,doi:10.1158/0008-5472.CAN-09-1404)。特に、末端中心キナーゼHPK1は、IL-2遺伝子誘導をもたらすTCR誘導AP-1応答経路の負の調節因子であり(Liou et al、上記参照)、AP-1の減少が乾癬及びSLEで観察されていることを考慮すると(Trop-Steinberg S & Azar Y,Am J Med Sci,2017,353(3):474-483)、IK14004によるHPK1及びカルシニューリンの両方の阻害(CamKIVの阻害を介して)は、TCRでのCD4+T細胞におけるCD28発現の増強と組み合わせて、IL-2調節恒常性を達成するのに役立ち得る。総合すると、IK14004は、NFAT1-及びAP-1誘導遺伝子誘導に間接的に影響を及ぼし、TCR及び/またはGタンパク質受容体でのシグナル伝達事象の調節を介して、特に、スーパー抗原またはエンドトキシンの存在下でIFNgを阻害しながら産生される、低量のIL-2をもたらし得る。
【0127】
細菌性LPSは、自己抗原特異的T細胞が関与するいくつかの疾患において役割を果たす(Yoshino S et al,Immunology;2000,99(4):607-614、Granholm NA & Cavallo T,Lupus,1994,doi.org/10.1177/096120339400300614)。LPSは、単球においてIL-12p40を誘導するが、IL-12p70は誘導せず(Isler P et al,Amer J Resp Cell & Mol Biol,1998,doi.org/10.1165/ajrcmb.20.2.3313)、GVHD及び乾癬におけるIL-12p40の刺激的役割は、十分に認識されている(Toichi E et al,J Immunol,2006,177:4917-4926、Cooper AM & Khader SA,Tends Immunol,2007,28(1):33-8、Wu Y et al,Biol Blood Marrow Transplant,2015,21(7):1195-1204)。SLEの発症におけるIFNgの役割(Liu W et al,BioMed Research International,2020,doi.org/10.1155/2020/7176515)を考慮して、ドミナントネガティブNFAT分子がLPS及びIFNg活性化内因性IL-12p40 mRNA発現を減衰させるという報告された観察と併せて(Zhu C et al,JBC,2003,278(41):39372-39382)、本発明者らは、DCにおけるIL-12p40のIK14004媒介性阻害が、IFNg産生の阻害に二次的であり、及び/またはDCの不安定化(図3n)が、ペプチドの存在下で、IL-12p40の分泌の減少において役割を果たし得ることを提案する。
【0128】
一実施形態では、本発明は、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが、IFNg及び/またはIL-12p40を誘導しない、本明細書に記載される方法を提供する。
【0129】
一実施形態では、本発明は、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが経口的及び/または局所的に投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0130】
一実施形態では、本発明は、ペプチドが、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、本明細書に記載される方法を提供する。一実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置または予防する方法において、治療有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用を提供する。
【0131】
一実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害を処置するための薬品の製造における、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用を提供する。
【0132】
一実施形態では、本発明は、対象における自己免疫障害の処置のための、有効量のRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH、rskaknplyr-(2Adod)-NH、及びrskaknplyr-(2Adod)-NHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、経口用量形態を提供する。
【0133】
一実施形態では、本発明は、ペプチドが、経口的または局所的に投与される、本明細書に記載される方法を提供する。
【実施例
【0134】
実施例1:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、c-Srcを阻害し、Lckを活性化する。
材料及び方法
図1a、b、c、e、f、gについて、図5
Blk、Lynを、50mMのトリス(pH7.5)、0.1mMのEGTA、0.1mMのNa3VO4、0.1%のβ-メルカプトエタノール、0.1mg/mLのポリ(Glu、Tyr)4:1、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をFiltermatA上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0135】
c-Src、Fyn、Hckを、8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、250μMのKVEKIGEGTYGVVYK(Cdc2ペプチド)、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0136】
Fgr、Yesを、8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、0.1mg/mLのポリ(Glu、Tyr)4:1、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をFiltermatA上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0137】
Lckを50mMのトリス(pH7.5)、0.1mMのEGTA、0.1mMのNa3VO4、250μMのKVEKIGEGTYGVVYK(Cdc2ペプチド)、10mMの酢酸マグネシウム、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。Mg/ATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、0.5%の濃度までのリン酸の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、0.425%リン酸中で4分間4回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0138】
CaMKIVを、40mMのHEPES(pH7.4)、5mMのCaCl2、30μg/mLのカルモジュリン、30μMのKKLNRTLSVA、10mMのMgAcetate、及び[γ-33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0139】
JAK1を、20mMのトリス/HCl(pH7.5)、0.2mMのEDTA、500μMのGEEPLYWSFPAKKK、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0140】
JAK2を、8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、100μMのKTFCGTPEYLAPEVRREPRILSEEEQEMFRDFDYIADWC、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0141】
JAK3を、8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、500μMのGGEEEEYFELVKKKK、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0142】
TYK2を、8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、250μMのGGMEDIYFEFMGGKKK、10mMのMgAcetate、及び[γ33P-ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)でインキュベートする。MgATP混合物の添加によって、反応を開始する。室温で40分間インキュベートした後、3%リン酸溶液の添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応物をP30フィルターマット上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、及びメタノール中で1回洗浄してから、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0143】
図1dについて、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)コンジュゲートペプチドをAuspepから入手し、10mg/mLの脱イオン水中で再構成し、更に精製せずに使用した。ペプチドを、0.1M(pH5.5)酢酸アンモニウム緩衝液において1000倍過剰なペプチドで64Cuとともに37℃で45分間インキュベートした。各溶液の1μLの試料を採取し、50mMのEDTAと1:1で混合した。EDTAでインキュベートした試料またはニート溶液をTLC紙(シリカゲルを含浸させたAgilent iTLC-SGガラスマイクロファイバークロマトグラフィー紙)上でスポットし、50:50のH2O:エタノールで実行した。次いで、放射性同位体蛍光体スクリーンを使用して、BrukerインビボMS FX Pro画像化システム上で画像化することによって、放射性標識種の移動の検出を達成した。品質管理のために遊離64Cu及びEDTAに結合した64Cuの溶出プロファイルをモニタリングするために、対照実験を行った。全ての試料は、100%の放射性標識純度を示した。次いで、標識されたペプチドを、投与前に脱イオン水中で希釈して、必要な比活性を達成した。
【0144】
全体にわたって全ての注射及び画像化手順について、マウスを、O中の2%のイソフルオランを使用して麻酔をかけた。雌のC57マウス(約8週齢)に、放射性標識ペプチドを腹腔内注射した(29G針、50μL水溶液、3.5MBq[64Cu]NOTA-ペプチド)。
【0145】
PET-CT画像化は、呼吸プローブ(BioVet(商標)システム、m2m Imaging、Australia)を使用して達成された生理学的モニタリングを備えたSiemens Inveon PET-CTスキャナーを利用した。動的PET-CT画像を、ペプチド投与の5分後から45分間入手した。次いで、静止画像を、投与後8及び24時間後(各30分)に入手した。各PET入手後、解剖学的相互位置合わせのためにマイクロCTスキャンを入手した。電圧が80kVに設定され、電流が500μAに設定されたX線源を介してマウスのCT画像を入手した。スキャンは、低倍率及びビニング係数が4である120の回転工程で360°回転を使用して実施した。曝露時間は240msであり、有効画素サイズは106μmであった。全体のCTスキャンプロセスに約15分かかった。CT画像は、Feldkamp再構築ソフトウェア(Siemens)を使用して再構築した。
【0146】
PET画像を、順序付き部分集合期待値最大化(OSEM2D)アルゴリズムを使用して再構築し、CT及びPET画像の融合及び関心領域(ROI)の定義を可能にするInveon Research Workplaceソフトウェア(IRW4.1)(Siemens)を使用して分析した。動的トレーサー取り込みプロファイルを、データセットを5分間のフレームに再構築することによって得た。各個々の動物のCT及びPETデータセットを、IRWソフトウェア(Siemens)を使用して整合し、目的とする臓器の良好な重複を確実にした。3次元ROIを、形態学的CT情報を使用して全身、ならびに心臓、腎臓、肺、膀胱、肝臓、脾臓、及び腫瘍などの目的となる全ての臓器内に配置して、臓器を描写した。ボクセル当たりの活性を、PETスキャナーの効率を考慮するために64Cuの既知の活性で充填された円筒形のファントムをスキャンすることによって得られた変換係数を使用してnci/ccに変換した。次いで、活性濃度を、組織1cm当たりの崩壊補正された注射活性のパーセントとして表し、これは、注射用量/g(ID/g%)のパーセンテージと近似のものであり得る。図1hについて、野生型Lckタンパク質の発現のためのプラスミドは、NSW大学のカタリーナ・ガウス教授の研究室によって好意的に提供された。プラスミドは、C末端mCherryレポーターによるLck野生型タンパク質の哺乳動物細胞発現についてコードした。ツインストレップタグを、精製のためにLck-WTのN末端に組み込み、c-mycエピトープタグを、タンパク質発現の検出のためにmCherryの後、C末端に配置した。プラスミドのmidiprep DNA調製を、Macharey-Nagal midiキットを製造業者の指示に従って使用して実施した。一過性トランスフェクションのために、プラスミドDNAを、300万細胞mL-1の濃度で2μgのDNAmL-1細胞を使用してCHO-S細胞にトランスフェクトした。DNAを、Opti-Pro無血清培地(Life Technologies)中のポリエチレンイミン-Pro(PolyPlus)と、DNA(μg)対PEI(μL)比率1:4(w:v)で15分間複合体化した後、懸濁液適応CHO細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、化学的に定義されたCHO培地(CD-CHO、Life Technologies)において、37℃、7.5%のCO、70%の湿度で、130rpmで6時間振盪させながら培養した後、7.5%のCD CHO Efficient Feed A(Life Technologies)、7.5%のCD-CHO Efficient Feed B(Life Technologies)、及び0.4%の抗凝集剤(Gibco)を供給し、32℃、7.5%のCO、70%の湿度で、130rpmで2日間振盪させながら培養を継続した。トランスフェクション後、細胞を、5250gで30分間遠心分離することによってペレット化した。細胞を、Vibra Cell VC505ソニケーター(Sonics)を使用して、30秒のオン/オフの2つのパルスで短時間超音波処理した。細胞を5250gで10分間遠心分離し、上清を収集し、0.22μm膜(Sartorius)を介して濾過した。Lck-WTタンパク質を、5mLのStrep-Trapカラム(GE)を使用して、清澄化した上清から精製した。タンパク質を、デスティオビオチンを使用して溶出した。
【0147】
LCK-ペプチド結合ELISA。ペプチドIK14004を1mg/mLでPBSに再構成した。各ペプチドストックをPBS中で10μg/mLに希釈し、100μLをmaxisorpプレート(Nunc)のウェルに添加した。ウェルを40℃で20時間コーティングした。異なる濃度の精製Lck-WTタンパク質の結合のために3つのウェルを使用した。コーティング後、ウェルを200μLの2%Milk-PBST(PBS中、0.05%のTween20)で1時間ブロッキングした。次いで、ブロック剤をデカントし、PBS中で希釈した100μLのLck-WTを添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをPBST(1ウェル/1回洗浄当たり200μL)で4回洗浄し、ブロック溶液中で1/5000に希釈された100μLのHRP anti-myc(Miltenyi Biotech)を室温で1時間添加した。次いで、ウェルをPBSTで4回洗浄し、1ウェル当たり100μLのTMB(Sigma)を10分間添加した。2Mの硫酸100μLを添加して反応を停止させ、450nmの波長でSpectramax(Molecular Devices)を使用して吸光度値を記録した。
【0148】
本発明者らは、飽和ドデカン酸に基づく単一の脂質ペプチド残基、すなわち、炭素2位(2Adod1)(IK00011と称される)で超分岐した単一の脂質ペプチド残基と、直線配列で一緒に連結された3つの残基(2Adod3)(IK00031と称される)を含む脂質ペプチドとの効果を、c-Src活性の阻害に対するRSKAKNPLYR(IK14000と称される)の既知の効果と比較しようとした(Agrez et al)。期待に反して、単一の残基(IK00011)も3つの連結した残基(IK00031)も、c-Srcを阻害するRSKAKNPLYR(IK14000と称される)(図1a)と比較して、c-Src活性を増強しなかった。
【0149】
したがって、10merのRSKAKNPLYRを、それぞれ、IK00011及びIK00031にコンジュゲートし、RSKAKNPLYR-(2Adod3)(IK14003と称される)は、1uMを超えるc-Src活性を刺激したが、RSKAKNPLYR-(2Adod1)(IK14001と称される)は刺激しなかった(図1b)。脂質ペプチドの数の増加で観察されたこのc-Src活性化傾向を確認するために、4つの残基を10mer、すなわちRSKAKNPLYR-(2Adod4)(IK14004と称される)にコンジュゲートし、更なる残基は、不溶性のため、付加することができなかった。1uMを超える濃度のRSKAKNPLYR-(2Adod3)(IK14003と称される)の存在下でのc-Src活性化とは対照的に、IK14004は、IK14003にも見られるように、c-Src活性を誘導した4つの残基を含む非コンジュゲート脂質ペプチド(IK00041)と比較して、これらの濃度でc-Src活性を効果的に阻害した(図1b)。
【0150】
これらのIK14004の阻害性インビトロ濃度がインビボで達成可能であるかどうかを決定するために、Cu64標識NOTA-IK14004の肺内での取り込みを、倫理的承認後に、補足注釈書に詳述されている方法に従って、様々な投与経路後の血中濃度と比較した。それぞれ、皮下(SC)、腹腔内(IP)、及び経口強制(OG)、すなわち、200ugのSC/IP及び1mgのOGによって与えられたIK14004の良好な耐容用量は、キナーゼプロファイリングアッセイにおけるIK14004の低いc-Src阻害濃度(0.3uM~3M)が、IK14004の単回用量の24時間後のインビボで相応の組織レベルで達成可能であることを示した(図1d)(以下のキナーゼ活性グラフの灰色の陰影ゾーンによって示されるように)。次いで、SFKメンバーについてのキナーゼ活性に対するIK14004の効果を決定し、驚くべきことに、IK14004は、Lckのみの活性化を誘導した(図1e-表)。Lck活性は、2つの調節チロシンキナーゼ、Tyr394、及び阻害性残基Tyr505のリン酸化及び脱リン酸化に主に依存する立体配座変化によって厳密に制御され、c末端Srcキナーゼ(Csk)がTyr505残基をリン酸化すると、Lckを不活性または「閉鎖」立体配座でロックする分子内配置をもたらす(Rossy J et al,Front Immunol,2012,10.3389/fimmu.2012.00167)。Lck活性化とは対照的に、IK14004は、Csk活性に対するわずかな用量依存性阻害効果を誘導し(図1f)、これは、IK14004がLckを活性状態に維持するように作用することを示唆した。更に、コンジュゲートペプチドIK14004は、10merのRSKAKNPLYR(IK14000と称される)も4つの脂質ペプチド残基(IK00041と称される)もLckを活性化しなかったため、相乗的にLck活性を増強した(図1g)。IK14004媒介性Lck活性化のメカニズムは決定されなかったが、Lckに対するIK14004の直接活性化効果は、RSKAKNPLYR(IK14000)とは対照的に、IK14004のLckへの濃度依存性結合を示した結合アッセイによって示唆された(図1h)。
【0151】
これらのデータは、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHがc-Srcを阻害し、Lckを活性化することを示す。
【0152】
図5は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHと同様に、c-Srcを阻害し、Lckを活性化することを実証する。本発明者らはまた、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、1及び3uMでRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHと同様に挙動することを実証した(データ図示せず)。
【0153】
実施例2:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、CD69及びCD25の発現、ならびにLck非依存性IL-2産生を誘導する。
本発明者らは、健康なボランティアから得た軟膜から単離した末梢血単核細胞(PBMC)の抗CD3抗体活性化後に、IK14004がT細胞上で活性化マーカーの発現を誘導したかどうかを決定しようとした。
【0154】
簡潔に述べると、PBMCを、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに24時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激するか、または非刺激のままにした。24時間後、細胞を回収し、CD69について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。
【0155】
IK14004は、フローサイトメトリーによって評価されたCD69及びCD25の発現の用量依存性増加を誘導した(図2a、b、d、e)。
【0156】
IK14004がIL-2産生を誘導するかどうかを決定するために、24時間及び72時間後に、刺激された抗CD3刺激PBMC培養物から得られた上清をELISAによって評価した。
【0157】
簡潔に述べると、PBMCを、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに24時間及び72時間培養し、可溶性抗CD3(1μg/mL)で刺激するか、または非刺激のままにした。24時間及び72時間後、上清を収集し、IL-2濃度(pg/mL及び倍率変化)についてELISAによって評価した。IL-2産生における倍率変化は、刺激培地のみの対照に対する正規化によって決定した。
【0158】
72時間後にペプチドの非存在下でIL-2は検出されず(データ図示せず)、24時間後に検出可能なIL-2分泌はIK14004の存在下で増強されなかった(図2c)。
【0159】
これが、混合したPBMC集団内の様々な細胞サブセット上で発現した高親和性IL-2受容体アルファ鎖(CD25)によるIL-2の結合及び取り込みを反映した可能性があることを考慮して、CD4+/CD8+T細胞及び単球上でのCD25発現を調査した。
【0160】
簡潔に述べると、新たに単離したPBMCを、指示濃度(μM)の試験ペプチドIK14004の存在下で、(-aCD3)抗CD3(1μg/mL)を用いてまたは用いずに24時間刺激した。CD14+単球を新たなPBMCから単離し、試験ペプチドの存在下で、5点濃度曲線+ビヒクル(0~1.25μM)及び抗CD3(1μg/mL)について72時間培養した。72時間後、細胞をCD25、Ki67、IL-12Rβ1、及びIL-12Rβ2発現についてフローサイトメトリーによって評価した。
【0161】
CD25発現をPBMC培養物においてCD4+/CD8+T細胞及び単球(図2d、e、f)について確認した。
【0162】
IL-2分泌を調査するために、単離したT細胞(CD3+)を、抗CD3抗CD28 Dynabeads(商標)で刺激し、ペプチドIK14004とともに5濃度範囲+ビヒクル対照(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、上清を収集し、IL-2についてELISAによって評価した。72時間後のPBMC培養物からの上清中のIL-2の非存在とは対照的に、IK14004は、単離した抗CD3/抗CD28刺激CD3+T細胞によってIL-2産生を有意に増強した(図2g)。
【0163】
TCRを介したT細胞活性化の従来のパラダイムは、Lckがこのシグナル伝達プロセスにおいて重要な役割を果たすと述べている(Criado G & Madrenas J,J Immunol,2004,172(1):222-230)。歴史的に、これは、機能的Lckチロシンキナーゼ、すなわち、Jurkat CaM1.6細胞の発現に欠陥を有する体細胞変異型白血病T細胞株において確認されており、JCaM1.6におけるLck cDNAの発現は、TCRを介した正常なシグナル伝達にLckが必要であることを示すTCR刺激に応答する細胞株の能力を回復させる(Straus DB & Weiss A,Cell,1992,70(4):585-93)。プレート結合抗CD3及び可溶性抗CD28で活性化されたJ.CaM1.6細胞を使用して、IK14004への曝露がIL-2産生を増強しないことを確認した。
【0164】
簡潔に述べると、12ウェルプレートを、PBS中で作製した抗CD3(5μg/ml)の溶液(総体積250μl/ウェル)でコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。コーティング溶液を吸引し、コーティングされたウェルをPBS(2回、1ml、5分)で穏やかに洗浄した。JCaM1.6細胞を「抗CD3コーティングされたウェル」に(1×106細胞/ウェル)で播種し、その後、抗CD28(5μg/ml)で刺激し、また、様々な濃度のペプチドIK14004(0、0.625、1.25、及び2.5μM)で処置した。次いで、細胞を37℃で48時間インキュベートした。細胞懸濁液を顕微鏡下で確認し、次いで2mlの標識チューブに移し、30,000gで10分間遠心分離した。上清及びペレットを各試料について分離し、上清(100μl、n=3)をIL-2含有量についてELISAを使用して分析した。
【0165】
予想外に、IK14004は、ペプチドがLck非依存性シグナル伝達経路も刺激し得ることを示す用量依存性様式でIL-2産生を増強した(図2h)。
【0166】
実施例3:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、正常なヒトT細胞上のGNA11の発現を増強し、IL-2レベルを治療域内に維持する。
Gタンパク質は、免疫細胞上に遍在して発現され、Lck欠損Jurkat細胞株は、スーパー抗原の存在下で、Gタンパク質媒介性IL-2産生に関与するGタンパク質受容体GNA11を発現することが知られている(Bueno C et al,Immunity,2006,25:67-78)。
【0167】
本発明者らは、IK14004が正常なヒトT細胞上のGNA11の発現を増強するかどうかを決定しようとした。
【0168】
簡潔に述べると、CD3+T細胞を、阻害剤A-770041(100nM)の存在下で、ビヒクル対照(0.13%H2O)またはIK14004(0.08~1.25μM)またはIK14004(0.08~1.25μM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3抗CD28刺激ビーズ(細胞対ビーズ比率4:1)で刺激した。72時間後、細胞を回収し、GNA11について染色し、フローサイトメトリーによって発現を評価した。GNA11発現を、PEコンジュゲートロバF(ab’2)抗ウサギIgG H&L抗体を使用して検出した。
【0169】
GNA11発現における用量依存性増加が、72時間後に、刺激された単離CD3+T細胞培養物内のCD4+T細胞上で観察された(図2i)。これは、スーパー抗原及びLck阻害剤の存在下で見られるように、T細胞活性化の負の調節経路を発揮することが知られている活性Lckの内部プールに対するIK14004媒介性Lck非依存性効果の可能性を高めた(Criado G & Madrenas J,J Immunol,2004,172(1):222-230、Baer A et al,PLOS One,2017,doi.org/10.1371/journal.pone.0187123)。重要なことに、内部Lckプールは、TCRよりも多くの活性化Lckを含有する(Wei Q et al,PNAS,2020,117(27):15809-15817)。
【0170】
休止T細胞及びTCR活性化細胞内の活性化Lckの異なるプールの反対の役割(膜結合Lckの正の調節プールに対する内部の負の調節Lckプール)を考慮して、本発明者らは、単離したCD3+T細胞培養物におけるIL-2産生に対するLck阻害剤、A-770041の効果を調査した。
【0171】
簡潔に述べると、CD3+T細胞を、ビヒクル対照(0.1%DMSO)、小分子阻害剤A-770041(100nM)とともに72時間培養し、可溶性抗CD3抗CD28刺激ビーズ(細胞対ビーズ比率4:1)で72時間刺激した。72時間後、上清を収集し、IL-2濃度(pg/mL)についてELISAによって評価した。
【0172】
IK14004によって誘導されるIL-2分泌の30%の増加(図2g)と比較して、Lck阻害剤は、ビヒクル対照値を上回る300%の増加を誘導した(図2j)。特に、活性化されたLckは、GNA11発現のIK14004媒介性増強がA-770041の存在下ではそれほど顕著ではないことを考慮すると(図2i)、Gタンパク質発現に寄与するように見えた。
【0173】
活性Lckの内部の負の調節プールは、活性化T細胞、NFATの核因子の転写因子を介して、IL-2、IFNg、及びTNFアルファなどの様々な誘導性遺伝子を間接的に制御する(Kiani A et al,Blood,2000,98(5):1480-8、Teixeira LK et al,J Immunol,2005,175(9):5931-9)。活性化Lckは、NFAT1をリン酸化し、これは、NFAT1をサイトゾルに保持し、したがって、IL-2及びIFNgの産生を予防するのに役立つ(Baer A et al、上記参照)。一方、TCR媒介性シグナル伝達は、カルシウムカルモジュリンキナーゼ(CaMKIV)を介したカルシニューリンの活性化をもたらし(Liu JO,Immunol Rev,2009,228(1):184-198)、NFAT1を脱リン酸化して核へのその転座をもたらす。したがって、本発明者らは、IK14004がCaMKIV活性に影響を及ぼすかどうかを決定しようとした。NFAT1のLck媒介性リン酸化を維持することによって、TCR-pMHC関与時の過剰なTh1サイトカイン発現の予防におけるIK14004の調節役割と一致して、ペプチドはまた、非細胞ベースのキナーゼプロファイリングで評価されるCaMKIVの活性を阻害する(図2k)。
【0174】
これらの結果は、IL-2産生をもたらすGタンパク質を介した、またはTCRを介したLckシグナル伝達が、CamKIVに対するペプチドの阻害効果によって緩和され、IL-2の低レベルの増加をもたらし、高レベルのIL-2を回避することを示唆している。
【0175】
実施例4:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、IL-12p40及びIFNgを阻害する。
本発明者らは、IK14004が、単離したDC(図3d)の増殖の増強を含む、培養したPBMC、単離したCD3+T細胞、及び単離した未成熟単球由来樹状細胞(DC)(図3a、b、c)の生存率に影響を及ぼさないことを確認した。
【0176】
自己免疫疾患における治療標的としてのIL-12及びIFNgサイトカインの役割は、最近、より明確になっており(Sun L et al,Cytokine,2015,75(2):249-55、Liu W et al,BioMed Research international,2020,Article ID 7176515、Schurich A et al,Rheumatology,2018,57(2):246-254、Adorini L et al,Cellular & Mol Life Sciences CMLS,1999,55:1610-1625)、現在、IL-12p70の代わりにIL-12p40が、自己免疫疾患に関連する病理学の背後にある主要な推進力であることが提案されている(Khader SA & ThirunavukkarasuS,J Immunol,2019,202(3):629-630)。したがって、自己免疫疾患に関してIL-12及びTヘルパー細胞分化に起因する特徴は、p40サブユニットに依存しているようである(Kreymborg K et al,Exp Opin Ther Targets,2005,9(6):1123-1136)。したがって、本発明者らは、単離した単球及び抗CD刺激PBMC培養物のIL-12産生に対するIK14004の効果を比較しようとしたが、IL-12p40は阻害され(図3e、f、g、h)、IL-12p70の産生は影響を受けなかった(図3i)。
【0177】
IL-12は、T細胞によるIFNg産生の強力な誘導因子として作用し(Ma X et al,J Exp Med,1996,183:147-157、Tugues S et al,Cell Death & Differentiation,2015,22:237-246)、IFNgは、正のフィードバックループで作用して、転写レベルでIL-12を誘導する(Ma et al、上記参照、Bhat P et al,Cell Death Dis,2017,8(6):e2836)。
【0178】
したがって、本発明者らは、IFNg産生に対するIK14004の効果を評価し、IL-12p40と同様に、刺激したPBMC及び単離したCD3+T細胞培養物からIFNg産生の用量依存性阻害を観察した(図3j、k、l、m)。
【0179】
IL-12とは対照的に、IL-10の主な役割は、恒常性状態を維持することである(Ma X et al,F1000Res,2015,doi:10.12688/f1000research.7010.1)。IL-10は、主に病原体活性化抗原提示細胞によって産生され、炎症性及び自己免疫性病理の予防において重要な役割を果たす(Iyer SS & Cheng G,Crit Rev Immunol,2013,32(1):23-63)。加えて、DCが寛容原性応答または炎症性応答のいずれかを誘導する可能性は、十分に認識されている(Li H & Shi B,cellular & Molecular Immunology,2014,12:24-30)。寛容原性の未成熟DCは、より低い表面レベルのMHCクラスII及び共刺激分子を特徴とする(Wakkach A et al,Immunity,2003,18(5):605-617、Li H & Shi B,Cellular & Molecular Immunology,2014,12:24030)。
【0180】
これらの抗炎症経路のいずれかが関与し得るかどうかを決定するために、本発明者らは、DC表現型(CD14+発現)及びIL-10産生に対するIK14004の効果を調査した。興味深いことに、生存単球集団は、生存DC集団(CD14-/CD11c+)を犠牲にして増加した(CD14+/CD11+)(図3n)。更に、IL-10の産生は、ペプチドの存在下では影響を受けず(図3o)、DC集団の抑制が、IL-12の産生の阻害に関してより関連し得ることを示唆した。
【0181】
実施例5:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、JAK/STATシグナル伝達を阻害する。
IFNg産生に対するIK14004の効果の観点から、本発明者らは、STAT1のIFNg誘発リン酸化が、JAK1-JAK2及びJAK1/2-STAT1の相互作用を促進し、JAKによるSTAT1のリン酸化をもたらすことを考慮して、JAK/STAT経路に対するペプチドの効果を評価しようとした(Igarashi K et al,JBC,1994,269(20):P14333-P14336、Horvath CM,Sci STKE,2004,doi:10.1126/stke.2602004tr8、Wei J et al,J Immunol,2015,doi:10.4049/jimmunol.1501111)。
【0182】
IK14004媒介性IFNy抑制が、JAK/STAT経路における標的外効果と関連していないことを確認するために、STAT1リン酸化及びJAKのキナーゼ活性を、それぞれ、単離したCD3+T細胞培養物及びキナーゼプロファイリングアッセイにおいて評価した。IK14004は、pSTAT1のわずかな阻害を誘導し(図4a)、3つのJAKキナーゼのうち、最大の活性阻害がJAK1について観察された(図4b)。STAT6の喪失が自己免疫疾患を促進することを考慮して(Lau M et al,J Autoimmunity,2012,39(4):、388-97)STAT活性化に対する可能な標的外効果を更に探求するために、STAT6リン酸化に対するペプチドの効果を調査した。STAT1とは対照的に、IK14004は、用量依存性様式でCD4+T細胞におけるSTAT6リン酸化を増強した(図4c)。
【0183】
JAKファミリーメンバーの中で、Tyk2は、IL-23受容体シグナル伝達及びSTAT3活性化の媒介において重要な役割を果たし、Tyk2阻害剤は、脊椎関節炎のための次の超大型治療薬として提案されている(Hromadova D et al,Front Genet.2021,doi.org:10.3389/fgene.2021.685280)。Tyk2抑制は、その生物学的活性が、IL-23のp40サブユニットを介して媒介されるように見えることを考慮して、関連性を有する(Hamza T et al,Int J Mol Sci,2010,11(3):789-806)。非細胞ベースのアッセイ及び単離したCD3+T細胞培養物におけるTyk2キナーゼ活性及びSTAT3活性に対するIK14004の効果をそれぞれ調査した。IK14004へのTyk2の曝露は、1uMのIC50を明らかにし(図4d)、STAT3リン酸化に対して、統計的に有意ではないにもかかわらず、わずかな阻害傾向を誘導した(図4e)。更に、インターロイキン-6(IL-6)媒介性CD4+T細胞STAT3活性化はまた、リウマチ性関節炎における疾患活性に関連している(Anderson AE et al,Ann Rheum,2016,75(2):466-73)。したがって、本発明者らは、IL-6受容体発現に対するペプチドの効果を調査しようとし、STAT3活性化に対する効果の欠如と一致して、IK14004は、CD4+/CD8+T細胞におけるIL-6受容体発現を阻害した(図4f、g)。
【0184】
図6は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHがMAP4K1(HPK1)キナーゼ活性を阻害することを実証する。HPK1、ヒト造血前駆キナーゼは、JNK/SAPKキナーゼカスケードを活性化する。
【0185】
MAP4K1(HPK1)キナーゼ活性は、IL-2遺伝子発現をもたらすTCR誘導AP-1応答経路の負の調節因子であるため、本発明者らは、HPK-1の阻害により、AP-1転写が核内で妨げられることなく進行し、IL-2が治療域に維持される一方で、NFAT1媒介性IFNg誘導が抑制されることを提案する。
【0186】
MAPキナーゼの完全な活性化は、TCR共受容体の存在を必要とするため、本発明者らは、T細胞上のCD28の発現を調査しようとした。簡潔に述べると、PBMCを、抗CD3(1μg/ml)刺激及びIK14004とともに5濃度範囲(0~1.25μM)について72時間培養し、その後、細胞をCD28の発現についてフローサイトメトリーによって評価した。図7は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHがCD4+T細胞上のCD28レベルを増加させたことを実証する。
【0187】
Dアミノ酸を含むペプチドの能力が低レベルのIL-2を誘導することを調査するために、再刺激時に疲弊したCD4+細胞におけるIL-2発現を調査した。簡潔に述べると、実験ごとに単一の脾臓をMBP-Trackerマウスから除去し、処理して、脾細胞の単一細胞懸濁液を生成した。細胞を、3x10/mLで再懸濁し、WT-MBP(対照、非疲弊細胞)またはAPL-MBP(疲弊細胞を生成する)で刺激した。細胞を72時間刺激した。刺激後、T細胞をフィコール密度勾配によって精製し、その後、20U/mLのIL-2中で2×10/mLで4日間再プレートした。4日後、細胞を収集し、再懸濁し(4x10/mL、ウェル当たり最終2×10)、照射APC(B10PLxC57BL/6マウスから、4×10/mL、ウェル当たり最終2×10)、単回投与のAPL-MBPペプチドを使用して、試験もしくは参照物質または適切な対照とともに、72時間再刺激した。培養後、上清を収集し、製造業者の指示に従って実行したProcartaPlexカスタムマウス4 Plexアッセイ(ロット番号141554000、有効期限2017年6月30日)を使用した多重化イムノアッセイによるIL-2サイトカイン産生上清のその後の評価のために凍結保管した(-20℃)。
【0188】
図8は、rskaknplyr-(2Adod)-NH(Dアミノ酸を含むRSKAKNPLYR-(2Adod)-NH)が再刺激時に疲弊したCD4+細胞上でIL-2発現を増加させることを実証する。
【0189】
実施例6:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、Foxp3も発現したCD25発現細胞の割合を増加させる。
IFN-γは、Treg脆弱性を推進することが知られている。
【0190】
IFNg産生に対するIK14004の効果の観点から、本発明者らは、72時間後に刺激したPBMC培養物内のTregに対するIK14004の効果を評価しようとした。
【0191】
固定及び透過化(Foxp3転写因子固定緩衝液;ThermoFisher)後、CD4+/CD127/CD25+T細胞内で抗Foxp3(PEコンジュゲート、BioLegend)を使用して、T調節(Treg)細胞の染色を実施した。
【0192】
Foxp3も発現したCD25発現細胞の割合は、IK14004の存在下で増加し(図9)、これは、より高いIK14004濃度でのCD4/Treg比率に反映された(図10)。しかしながら、これは、Foxp3発現のレベルの統計的に有意な増加とは関連しなかった(図11)。
【0193】
このデータは、含むRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHがTreg細胞の割合を増加させることを実証する。
【0194】
実施例7:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、肺癌における腫瘍面積及び腫瘍体積を低減させる。
ルイス肺癌(LLC)マウスにおける異種移植腫瘍を調節するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0195】
試料を24時間ブワン溶液中に入れ、次いで、70%エタノール中に入れた後に、FFPEブロックに処理した。ブロックを4μmの厚さで切片化し、次いで、Superfrost Plusスライド上に取り付けた後に、60℃で一晩乾燥させた。切片をキシレン中で脱ろうし、段階的なアルコールを通して再水和し、次いで、以下のプロトコルを使用して染色した。
1.ヘマトキシリンを6分間、
2.酸アルコール簡易洗浄、
3.スコット水道水代替物を1分間、
4.水性エオシンYを20秒間。
【0196】
次いで、スライドを段階的なアルコール及びキシレンを介して脱水し、次いで、Zeiss Axioscan Z1スライドスキャナーを使用してスキャンした(スライド全体)。
【0197】
各々に8匹のマウスを含む2つの処置群が存在した。ビヒクル(水100μL、腹腔内注射、週2回;及びIK14004(100μL水中400μg、腹腔内注射、週2回)。
【0198】
各データポイントは、マウス当たりの6つのセクションからの肺面積の平均パーセンテージを示す。パーセンテージ面積は、ImageJを使用して腫瘍数を決定するために周囲に描かれた領域から各腫瘍の総面積を推定することによって決定した。データは、両側対応のないt検定**p<0.01によって決定されるように、2つの群間の統計的差異を示す。
【0199】
ルイス肺癌細胞株を約70%コンフルエンスまで培養した後、細胞を収集し、計数し、滅菌HBSS中で5×106/mLで再懸濁した。マウスの右脇腹に5×105個の細胞(100μl)を皮下注射した。マウスを、腫瘍細胞移植の5日後に、平均腫瘍サイズが2つの群間でほぼ等しいように、処置群に無作為に割り当てた。試験物質IK14004(400μg/200mL)、またはビヒクル滅菌水200μL)を、腫瘍細胞移植後5日目から、ビヒクル処置群で腫瘍の直径が平均10mmに達するまで、腹腔内(i.p)注射を介して毎週2回(月曜日及び木曜日)投与した。腫瘍を、処置群に盲検化された科学者によって、デジタルキャリパーを使用して毎週3回(月曜日、水曜日、及び金曜日)測定した。ビヒクル群の平均腫瘍サイズが直径10mmに達すると、マウスを頸椎脱臼によって屠殺し、腫瘍及び脾臓を収集した。
【0200】
腫瘍体積を、以下の0.5×腫瘍長×幅×幅の計算を使用して推定した。データは、群平均+/-SEM、n=8を有する個々のデータポイントとして提示される。群を、シダックの多重比較による二元ANOVAによって比較した、****p<0.0001。
【0201】
図12及び13は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、ルイス肺癌(LLC)異種移植モデルにおける異種移植腫瘍体積及び腫瘍細胞生存率を低下させることを示す。
【0202】
このデータは、自己免疫疾患の処置のためにIL-2の恒常性レベルを維持することに加えて、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが異種移植腫瘍体積及び腫瘍細胞生存率を低下させることを示す。
【0203】
RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHががん細胞を直接標的とするかどうかを決定するために、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHのB16-F10黒色腫細胞及びルイス肺癌細胞に対する効果を調査した。
【0204】
細胞(またはルイス肺LL/2)を、完全細胞培養培地中の96ウェルプレート(1000細胞/ウェル)に播種し、24時間付着させた(37℃、空気中5%CO)。次に、等体積の細胞培養培地のみ、または細胞培養培地中に溶解した薬物の2倍の濃度のいずれかを、5つの複製ウェル(技術的複製物)の各々に添加して、細胞を0、0.31、0.63、1.25、及び2.5μMの濃度に曝露した。加えて、2.5μMのドキソルビシンを、陽性対照として、5つの複製ウェルで試験した。細胞を、薬物または対照の存在下で更に72時間培養した後、細胞培養培地を除去し、付着した細胞を氷冷トリクロロ酢酸に固定した。固定した細胞をスルフォロダミンB(SRB)で染色し、次いで1%の酢酸で洗浄して、非結合染料を除去した。保持された染料を10mMのトリス塩基溶液中で可溶化し、550nmでの吸光度を測定し、ベースライン(細胞を含まない培地のみ)を差し引き、最大増殖(100%、薬物を含まない細胞)と開始細胞密度(薬物を添加する前の0%の細胞)との間でデータを正規化した。各実験を2つの独立した機会(生物学的複製)に実施し、log(阻害剤)対応答の非線形適合を使用して、GraphPad Prism 9においてデータを分析した。
【0205】
図14は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが細胞増殖の減少を引き起こさなかったことを実証し、図12及び13に実証されたRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHの効果が、腫瘍細胞に対するペプチドの直接的な効果によって引き起こされないことを示す。
【0206】
RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが免疫調節によって作用するかどうかを決定するために、転移性肺癌モデルにおける肺結節に対するRSKAKNPLYR-(2Adod)-NHの効果を調査した。
【0207】
簡潔に述べると、ペプチドを、ガラスバイアル中の予め計量された試料として供給し、使用するまで-20℃で保管した。バイアル(9.8mg)を2.45mLのH2Oに再懸濁して、4mg/mlの溶液(400μgの用量レベル)を得た。この保管物を40μgの用量レベルのためにH2O中で1/10に希釈した。次いで、溶液を使用するまで4℃で保管した。
【0208】
24匹の雌のC57Bl/6マウス(WEHI、8週齢)に、2017年8月5日(1日目)に、PBS中の1×105個のB16F10細胞を静脈内接種させた。
【0209】
マウスを8匹のマウスの3つの群に無作為化した後、0.1mlのH20またはIK-14004(40μgまたは400μg/マウス)をIP注射した。処置を行い、マウスの一般的な健康状態を週に2回、2週間にわたってモニタリングした。15日目にマウスを安楽死させ、肺を除去し、PBSで洗浄した後に、フェケテの溶液に固定した。次いで、肺腫瘍結節の存在について肺を計数した。データは、ダネットの事後検定に従う一元ANOVAを使用して、GraphPad Prismで分析した。
【0210】
図15は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)が、免疫調節の結果として、転移性肺癌モデルにおいて、肺結節を低減させることを実証する。
【0211】
これらのデータは、IK14004が、薬物動態データ(図示せず)に基づいて、C57BL/6マウスにIK14004を投与した24時間後に、肺または血中のいずれかでIK14004の濃度を超える2.5uMのインビトロ濃度において、いずれのがん細胞株の増殖に対しても阻害効果をもたらさないことを示す。特に、陽性対照であるドキソルビシンは、両方の細胞株に対してインビトロで100%殺傷を誘導した。ヒト免疫細胞で試験した場合、インビトロで中ナノモル濃度のIK14004に見られた免疫調節効果と併せて、マウスモデルにおけるIK14004媒介性腫瘍成長抑制は、免疫系に対するその効果に起因するものであり、がん細胞自体に対する直接的な効果に起因するものではないと仮定される。
【0212】
実施例8:RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHは、NK細胞による抗腫瘍細胞傷害性に必要な受容体の発現を増強する。
免疫調節を介したIK14004の抗がん効果を調査するために、NK細胞上の受容体発現を調査した。
【0213】
図16及び17は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のIL-12受容体発現を増強することを実証する。
【0214】
したがって、IK14004の抗がん効果(例えば、図12~15を参照)は、NK細胞による抗腫瘍細胞傷害性に必要なNK細胞上の受容体発現のその増強、すなわち、NK細胞によるIFN-g産生を推進するがん細胞によって産生されるIL-12に応答し得る増強されたIL-12受容体発現を介して媒介されることが提案されている。
【0215】
NK細胞による抗腫瘍細胞傷害性に必要なNK細胞上の受容体発現の増強を調査するために、NK細胞上の受容体発現を更に調査した。
【0216】
IL-2の重要な役割は、がん細胞を標的とするNKp44及びNKG2DなどのNK細胞上の細胞傷害性受容体の活性化である。例えば、IL-2によるNK細胞の活性化は、休止NK細胞上で発現されない天然細胞傷害性受容体、NKp44の発現を誘導し、NKp44は、腫瘍成長因子を認識する最初の活性化NK細胞受容体である。
【0217】
図18は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のNKp44発現を増強することを実証する。図19は、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NH(「IK14004」)がNK細胞上のNKG2D受容体発現を増強することを実証する。
【0218】
これらのデータは、RSKAKNPLYR-(2Adod)-NHが、NK細胞による抗腫瘍細胞傷害性に必要な受容体の発現を増強することを示す。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図2j
図2k
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図3i
図3j
図3k
図3l
図3m
図3n
図3o
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】