(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】B細胞受容体に特異的なキメラ抗原受容体のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240903BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240903BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240903BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240903BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240903BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/02
A61P35/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P9/00
A61P7/04
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510275
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022075140
(87)【国際公開番号】W WO2023023596
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】524062227
【氏名又は名称】インスティテュート オブ アプライド バイオサイエンス (アイエヌエービー)/センター フォー リサーチ アンド テクノロジー ヘラス (シーイーアールティーエイチ)
(71)【出願人】
【識別番号】524062238
【氏名又は名称】アスペダーレ サン ラッファエーレ エス.アール.エル. (オーエスアール)
(71)【出願人】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ルエッラ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュースター スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スタマトプロス コスタス
(72)【発明者】
【氏名】プロスペロ ギア パオロ
(72)【発明者】
【氏名】サンス イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】コーエン イヴァン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA53
4C087ZA68
4C087ZB05
4C087ZB08
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗BCR CARを用いて哺乳動物の血液がんまたは自己免疫疾患を処置または予防するための組成物および方法に関する。1つの局面は、養子細胞療法のための、および富化されたステレオタイプBCRを含むB細胞に関連するがんまたは自己免疫疾患を処置するための、改変されたT細胞と改変された細胞を含む薬学的組成物とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、該抗原結合ドメインが、疾患特異的なまたは富化されたステレオタイプB細胞受容体(BCR)に特異的に結合する、前記キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが抗体またはその抗原結合断片である、請求項1記載のCAR。
【請求項3】
前記抗原結合断片が、単鎖可変断片(scFv)、抗原結合性断片(Fab)、または単一ドメイン抗体である、請求項1または2記載のCAR。
【請求項4】
前記抗原結合断片がscFvである、請求項1~3のいずれか一項記載のCAR。
【請求項5】
前記富化されたステレオタイプBCRが、B細胞または形質細胞上の膜結合タンパク質である、請求項1~4のいずれか一項記載のCAR。
【請求項6】
前記富化されたステレオタイプBCRが、SEQ ID NO: 13~17、18~20、および21~24のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 13~17、18~20、および21~24のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のCAR。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO: 25~30、31~32、35~36、39~42、64、66、68、および69のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 25~30、31~32、35~36、39~42、64、66、68、69、76、78、80、および81のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項記載のCAR。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインがCD8膜貫通ドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項記載のCAR。
【請求項9】
前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO: 51のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 51に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項記載のCAR。
【請求項10】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~9のいずれか一項記載のCAR。
【請求項11】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO: 56のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 56に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項記載のCAR。
【請求項12】
共刺激分子の細胞内ドメインをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載のCAR。
【請求項13】
前記共刺激分子が4-1BBである、請求項12記載のCAR。
【請求項14】
前記細胞内ドメインが、SEQ ID NO: 59のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 59に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12または13記載のCAR。
【請求項15】
CD8アルファヒンジをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項記載のCAR。
【請求項16】
前記CD8アルファヒンジが、SEQ ID NO: 54のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 54に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項15記載のCAR。
【請求項17】
CD8シグナルペプチドをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載のCAR。
【請求項18】
前記CD8シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 63のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 63に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項17記載のCAR。
【請求項19】
SEQ ID NO: 47~50のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 47~50および72~75のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項記載のCAR。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項記載のCARをコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項21】
請求項20記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項記載のCARを含む、遺伝子改変された細胞。
【請求項23】
前記細胞がヒトT細胞である、請求項22記載の遺伝子改変された細胞。
【請求項24】
請求項1~19のいずれか一項記載のCAR、請求項20記載の核酸分子、請求項21記載のベクター、または請求項22もしくは23記載の遺伝子改変された細胞と、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
その必要がある対象において富化されたステレオタイプB細胞を特異的に排除するための方法であって、請求項23または23記載の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項26】
その必要がある対象において血液がんを処置または予防するための方法であって、請求項22または23記載の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項27】
前記血液がんが白血病である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記血液がんが、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、または慢性リンパ性白血病である、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
その必要がある対象において自己免疫疾患を処置または予防するための方法であって、請求項22または23記載の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項30】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病(CD)、ベーチェット病(BD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ANCA関連血管炎(AAV)、IgA血管炎(IgAV)、またはIgA血管炎(IgAV)である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記対象がヒトである、請求項25~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
その必要がある対象における血液がんまたは自己免疫疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項22または23記載の遺伝子改変された細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2021年8月18日に出願された米国特許仮出願第63/234,514号に対して優先権を主張する。
【0002】
電子配列表の参照
電子配列表(046483-7330WO1-02992 Sequence Listing.xml;サイズ:108,648バイト;および作成日:2022年8月17日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
リンパ腫、白血病、骨髄腫、または他の血液がんにおける悪性または病原性のB細胞クローンは、B細胞悪性腫瘍の病因に関与し得る特異的な、繰り返し出現する、または富化されたステレオタイプB細胞受容体(BCR)の発現を根拠として、特定することができる。さらに、いくつかの自己免疫障害は、自己免疫疾患の病因に関係すると考えられている特異的B細胞受容体の富化を特徴とする。がんまたは自己免疫疾患に関連するB細胞を標的とする既存の治療法は、病原性クローンを特異的に標的とすることができず、むしろB細胞区画全体を枯渇させるため、欠点を有する。例えば、CD19を対象とするキメラ抗原受容体(CAR)は、すべての患者B細胞を標的とし、多くの場合、B細胞形成不全をもたらし、患者は、再発性感染症を予防するために長期のIgG注入を必要とする。さらに、B細胞がないと、患者はワクチンに十分に応答しない。
【0004】
血液がんまたは自己免疫疾患に関連する病原性B細胞クローンを標的とし、かつ正常なB細胞または形質細胞を温存する有効な治療法に対するニーズが満たされておらず依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の好ましい態様についての以下の詳細な説明は、添付図面と共に読むと、さらに良く理解されるであろう。本発明を例示する目的で、現在好ましい態様が、図面において示される。しかし、本発明は、図面で示される態様と寸分違わない配置および手段に限定されないことを理解すべきである。
【0007】
本発明の前述および他の特徴および利点は、添付図面と共に挙げられる例示的な態様についての以下の詳細な説明から、より十分に理解されるであろう。
【0008】
【
図1】
図1は、免疫グロブリン重領域(IGHV)4-34を含むB細胞受容体を有する、様々な血液悪性腫瘍患者のパーセンテージを示す。原発性硝子体網膜リンパ腫(PVRL)に罹患した患者では、これらの患者の60%超がこの特異的BCRを有するのに対し、原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)、活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、およびヘアリー細胞白血病バリアント(HCLv)では、患者の約30~40%が、悪性腫瘍細胞中にこの特異的BCRを有する。対照的に、IGHV4-34を含むBCRは、ごく少数の正常に健康なB細胞中に見出される(<5%)(Belhouaci et al, Blood Advances, 2020)。PVRL:原発性硝子体網膜リンパ腫;PCNSL:原発性中枢神経系リンパ腫;DLBCL-ABC:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫-活性化B細胞様;DLBCL-GCB:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫-胚中心様;BL:バーキットリンパ腫;CLL:慢性リンパ性白血病;MCL:マントル細胞リンパ腫;SMZL:脾辺縁帯リンパ腫;OAMZL:眼付属器辺縁帯リンパ腫;CBL-MZ:辺縁帯由来のクローンB細胞リンパ球増多症;HCLc:ヘアリー細胞白血病-古典的;HCLv:ヘアリー細胞白血病-バリアント。
【
図2A】
図2Aは、慢性リンパ性白血病(CLL)患者の大きなコホートにおける、特異的IGHVの富化を示す。赤色の棒は、それぞれCLL患者の5~12%における以下のIGHV領域の富化を示す: IGHV1-69、IGHV3-23、IGHV4-34。
【
図2B】
図2Bは、別のCLLコホートの患者の約17~18%が、R110部位に変異を含むIGLV3-21 BCRを有することを示す(Maity et al, PNAS 2020; Muggen et al, Immunity & Ageing 2019)。
【
図3】
図3は、富化されたステレオタイプBCRを標的とするためのCARの開発を示す概略図である。富化されたステレオタイプBCRに対するキメラ抗原受容体T細胞は、正常B細胞を温存する一方、腫瘍クローンを特異的に死滅させる;したがって、B細胞形成不全がなくなり、生存のための静脈内(IV)免疫グロブリンの必要がなくなり、日和見感染が減少すると考えられる。さらに、BCRの下流のシグナル伝達は、腫瘍細胞の生存および増殖を推進することが公知である。したがって、腫瘍B細胞の生存および増殖に必要とされないCD19を標的とすることとは異なり、富化されたステレオタイプBCRを標的とすることは、白血病/リンパ腫細胞(L/L)の「アキレス腱」、すなわち、それらが生存するために必要とするBCRを標的とすることも意味する。したがって、この戦略は、抗原陰性逃避(例えばCD19陰性再発)を減少させる可能性があり得る。IV:静脈内;L/L:白血病/リンパ腫細胞;StBCR:ステレオタイプの/富化されたBCR。
【
図4】
図4は、腫瘍B細胞クローンを特異的に標的とするためのCAR T細胞の開発を示す概略図である。本明細書において開示されるこの戦略は、CD19を対象とするCAR T細胞療法と比較して、以下を含むいくつかの利点を有する:(i)CD19を対象とするCAR T細胞療法は、すべての成熟B細胞の死滅(B細胞形成不全)をもたらすが、疾患特異的な「ステレオタイプの」または「富化された」BCRを有するB細胞のみを標的とすることにより、多様なBCRを有する他のすべてのポリクローナルB細胞が温存される一方腫瘍B細胞クローンが排除される。その場合、これらのポリクローナルB細胞は、抗BCR CAR T細胞注入後に患者において活発に増殖し、生命を脅かす日和見感染から患者を保護することができる、という利点; および(ii)CD19を対象とするCAR T細胞療法は、CD19を有する腫瘍B細胞を最初は死滅させるが、CD19は腫瘍B細胞の生存または増殖に必要な分子ではないため、CD19を対象とするCAR T細胞の存在下であってもCD19陰性腫瘍細胞は発育することが一般的である。対照的に、B細胞のシグナル伝達、生存、および増殖の促進におけるBCRの重大な役割を考慮すれば、BCR陰性腫瘍B細胞はそれほど多く存在しないと考えられる、という利点。BCR:B細胞受容体。
【
図5-1】
図5は、CAR構築物の例示的な態様を示す概略図である。本明細書において開示されるCARは、特異的な免疫グロブリン重領域(IGHV)を認識する抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)を含む。CARのこの部分は、特異的BCRを発現する病原性B細胞へとCAR T細胞を向かわせる役割を果たす。各構築物を、軽鎖から重鎖(L2H)の配置および重鎖から軽鎖(H2L)の配置の両方の抗原結合ドメイン(scFv)と共に、クローニングした。特異的BCRを認識する様々なscFvを、抗CD19 CARにおいてこれまで使用されてきた41BB-CD3z細胞内シグナル伝達ドメインとペアにした。scFv: 単鎖可変断片。41BB:41BBの細胞内ドメイン。
【
図6-1】
図6は、ステレオタイプBCRを発現する腫瘍B細胞株を開発するための本明細書において開示されるアプローチを示す、概略図である。最初の段階として、内因性免疫グロブリンの重鎖(IGH)および軽鎖(IGL)を、CRISPR/Cas9を用いてノックアウトし、その後、ステレオタイプのまたは富化されたBCRをコードする免疫グロブリンの重鎖および軽鎖(IGLV3-21 R110; IGHV1-69; IGHV4-34; IGHV3-23)を用いてレンチウイルス形質導入を行った。これらのBCRによってコードされる配列は、血液悪性腫瘍を有する患者に由来した。CRISPR:規則的な間隔を持ってクラスター化された短鎖反復回文配列;LV:レンチウイルス;IgM C:IgM定常領域;IgG1 C:IgG1定常領域。
【
図7A-1】
図7A~7Bは、ステレオタイプのまたは富化されたBCRを認識できる様々なCARを有するCAR T細胞についての抗BCR CART製造に関する。
図7Aは、(i)CD3/CD28で被覆された磁気ビーズによる刺激後の総T細胞数;刺激後のT細胞の細胞体積(これは、細胞サイズの初期の拡大およびそれに続く縮小期間を示す);ならびに刺激後のT細胞の集団倍加を示す。
図7Bは、刺激後の8日目に抗BCR CARの発現が成功していることを示す。AVA=抗3-21 IGLV; hG6.3=抗1-69 IGHV; 9G4=抗IGHV4-34; 3C9=抗3-23 IGLV。
【
図8A-1】
図8A~8Bは、抗BCR CAR T細胞の有効性についてのインビトロアッセイを示す。
図8Aは、CD19、VL3-21-R110、VH1-69、またはVH4-34のいずれかに特異的であるCAR T細胞と共に、WT BCRを有する腫瘍B細胞を、ステレオタイプBCRを有する腫瘍B細胞を、またはCD19が枯渇している腫瘍B細胞を培養することにより、予想される条件において、生存腫瘍細胞数の特異的減少が起こることを示す:CART19 T細胞は、CD19-KOであるものを除くすべての腫瘍B細胞の枯渇をもたらし;CART3-21は、Jeko1 VL3-21*の枯渇をもたらすが、他の腫瘍B細胞の枯渇をもたらさず;CART1-69は、Jeko1 VH1-69の枯渇をもたらすが、他の腫瘍B細胞の枯渇をもたらさず;CART4-34は、Jeko1 VH4-34の枯渇をもたらすが、他の腫瘍B細胞の枯渇をもたらさない。これらのデータは、本発明の抗BCR CAR T細胞の特異性をはっきりと実証する。
図8Bは、様々な腫瘍B細胞との6日間の培養後の、様々なCAR T細胞の増殖を示す。これらの結果は、CAR T細胞が、それらが発現するCARを介して認識できる抗原(CD19またはステレオタイプの/富化されたBCR)に遭遇した場合に、特異的に応答し増殖することを、実証する。
【
図9】
図9は、患者由来の腫瘍細胞に対する、本発明のCAR T細胞の特異的抗腫瘍効果を示す。この実験において、健常患者由来のB細胞、またはIGHV1-69+BCRを発現するCLL患者由来の腫瘍B細胞、またはIGHV4-34+BCRを発現するCLL患者由来の腫瘍B細胞は、CART19、またはCART1-69もしくはCART4-34と共培養された。このデータは、予想されるように、健常B細胞および両方の患者に由来する腫瘍B細胞を含むすべてのタイプのB細胞に対してCART19が強い細胞障害性を示すことを、示す。対照的に、CART1-69は、正常な健常B細胞を温存する一方、IGHV1-69+CLL腫瘍B細胞に対して特異的細胞障害性を示す。同様に、CART4-34は、正常な健常B細胞を温存する一方、IGHV4-34+CLL腫瘍B細胞に対して特異的細胞障害性を示す。ND580 B細胞:正常/健常ドナーB細胞。
【
図10】
図10は、IGHV3-23+BCRを発現するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株(OCI-Ly18)に対するCART3-23 CAR T細胞のインビトロ細胞障害性を示しているが、IGHV4-34+BCRを発現する別のDLBCL細胞株であるHBL1に対しては感知できる細胞障害性を示していない。これらの結果は、IGHV3-23+BCRを有するB細胞を特異的に標的とするCART3-23の特異的性質を示す。
【
図11-1】
図11は、インビボで腫瘍を制御するCART4-34の能力を示す。細胞株(Mec1、CLL)を、その内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を欠失させ、続いて、IGHV4-34領域を含むBCRを過剰発現させることによって、操作した。このIGHV4-34+細胞株を0日目にマウスに静脈内注射し、続いて、実験の13日目にCART19 T細胞またはCART4-34 T細胞を静脈内注射した(非形質導入(UTD)T細胞は陰性対照としての機能を果たした)。この図は、CART19およびCART4-34の両方が同様のレベルまで腫瘍増殖を抑制できることを示す。
【
図12】
図12は、自己免疫疾患におけるIGHV遺伝子頻度およびBCRサブタイプのヒートマップを示す。全身性エリテマトーデスではIGHV4-34 BCRが富化されており; ベーチェット病では、その代わりにIGHV1-69が富化されており;血栓性血小板減少性紫斑病ではIGHV1-69が富化されている。TTP:血栓性血小板減少性紫斑病;SLE:全身性エリテマトーデス;CD:クローン病;BD:ベーチェット病;EGPA:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症;TTP:血栓性血小板減少性紫斑病;AAV:ANCA関連血管炎;IgAV:IgA血管炎;IgAV:IgA血管炎。図は、Bashford-Rogers, R.J.M. et al., Nature, 574(7776):122-1261-29 (2019)のものを改変した。
【
図13】
図13は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の患者からの情報に基づく抗ADAMTS13 scFvのエピトープ特異性を示すマップである。図は、Ostertag, E.M. et al., Transfusion 56, 1763-1774 (2016)のものを再現した。
【
図14】
図14は、慢性リンパ性白血病(CLL)患者におけるステレオタイプBCRの特徴のいくつかを示す:B細胞受容体配列は、慢性リンパ性白血病患者間で共有されていること;CLL患者の41%は、ステレオタイプBCRを有する悪性B細胞を有すること;およびステレオタイプBCRを有するCLL患者のあるサブセットは予後不良を示すこと。CLLサブセット2:IGHV3-21およびIGLV3-21; 独特のHCDR3配列;IGLV3-21を有するBCRに伴う予後不良。Maity, P. C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 117:4320-4327 (2020)、Stamatopoulos, B. et al., Clin Cancer Res, 24:5048-5057 (2018)、およびAgathangelidis, A. et al. Blood 119, 4467-4475 (2012)の図を再現した。
【
図15】
図15は、VL 3-21、VH 4-34、およびVH 1-69にそれぞれ対応するサブセット2、4、および6におけるステレオタイプBCRの配列ロゴが、慢性リンパ性白血病(CLL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)において富化されていることを示す。Agathangelidis, A. et al. Blood 119, 4467-4475 (2012)の図を再現した。
【
図16】
図16は、ステレオタイプBCRを標的とするためのCARの開発を示す概略図である。ステレオタイプBCRに対するキメラ抗原受容体T細胞は、正常B細胞を温存する一方、腫瘍クローンを特異的に死滅させる;したがって、B細胞形成不全がなくなり、生存のためのIV免疫グロブリンの必要がなくなり、日和見感染が減少すると考えられる。さらに、ステレオタイプBCRを標的とすることはまた、CLL細胞の「アキレス腱」、すなわち、(CD19とは異なり)それらが生存するために必要とするBCRを標的とすることも意味する; したがって、この戦略は、抗原陰性逃避(例えばCD19陰性再発)を減少させることが、本明細書において企図される。「R110 BCR」は、R110変異を有するIGLV3-21である。
【
図17-1】
図17は、CARの1つの態様に従う、pTRPE AVA L2H CARのベクターマップおよび該CARの対応する配列(SEQ ID NO: 47)の概略図(例)である。
【
図18】
図18は、インビトロ死滅実験:VL 3-21の特異的死滅を示すグラフである。凡例:UTD-非形質導入T細胞;CART19-抗CD19 CAR T細胞;3.21*CAR-抗IGLV3-21 R110 BCR CAR T細胞;および1.69 CAR-抗IGHV1-69 BCR CAR T細胞。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように形質導入された細胞(例えば免疫細胞、例としてT細胞)の養子細胞移入という戦略に関する。CARは、標的抗原に対する抗原結合ドメインに基づく特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特異的な抗標的細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する、分子である。いくつかの局面において、本発明は、T細胞が、ステレオタイプB細胞受容体に対するCAR(例えば、VH4-34 BCR、VL3-21 BCR、VH3-23 BCR、またはVH1-69 BCRに対するCAR)を発現するように遺伝子改変され、その必要があるレシピエントに該CAR T細胞が注入され得る、あるタイプの細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエント中の富化された/ステレオタイプのB細胞を標的とし、それによって、レシピエントの正常なB細胞を保護しつつ、例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫、他の血液悪性腫瘍、または自己免疫疾患などにおける、悪性または病原性のB細胞クローンなどを標的とすることができる。
【0010】
定義
他に規定されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書において説明されるものと同様または等価な任意の方法および材料を、本発明を検証するための実践において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書において説明する。本発明を説明し請求するにあたって、以下の専門用語を使用する。
【0011】
また、本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することだけを目的とし、限定することを意図しないことも理解すべきである。
【0012】
さらに、本明細書において説明される実験は、別段の定めがない限り、当業者の技能の範囲内である従来の分子生物学的技術および細胞生物学的技術ならびに免疫学的技術を使用する。このような技術は、当業者に周知であり、文献において十分に説明されている。例えば、Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008)(すべての補遺を含む)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition) by MR Green and J.Sambrook、およびHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照されたい。
【0013】
キメラ抗原受容体を有するT細胞(CAR T細胞)を用いる方法および技術は、例えば、Ruella, M. et al., Dual CD19 and CD123 targeting prevents antigen-loss relapses after CD19-directed immunotherapies. J. Clin. Invest., 126(10):3814-3826 (2016)およびKalos, M. et al., T Cells with Chimeric Antigen Receptors Have Potent Antitumor Effects and Can Establish Memory in Patients with Advanced Leukemia, Science Translational Medicine, 3 (95), 95ra73:1-11 (2011)において説明されており、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0014】
他に規定されない限り、本明細書において使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。潜在的な曖昧さがある場合には、本明細書において提供される定義が、辞書または本明細書以外での任意の定義よりも優先される。文脈において特に指示がない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、かつ複数形の用語は単数形を含むものとする。別段の記載がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。「含んでいる(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0015】
一般に、本明細書において説明される、細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される用語は、当技術分野において周知であり、一般に使用される。本明細書において提供される方法および技術は、一般に、当技術分野において周知である従来の方法に従って、かつ別段の定めがない限り、本明細書の全体にわたって引用および考察される様々な一般的参照文献およびより具体的な参照文献において説明されているようにして、実施される。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、当技術分野において一般に遂行されているように、または本明細書において説明されるようにして、実施される。本明細書において説明される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して使用される用語、ならびにそれらの実験室での手順および技術は、当技術分野において周知であり、かつ一般に使用されるものである。標準的な技術が、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤化、および送達、ならびに患者の処置のために使用される。
【0016】
本開示をより容易に理解できるようにするために、選択した用語を下記に定義する。
【0017】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書において、該冠詞の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の文法上の対象物に言及するために使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0018】
量および時間的期間などの測定可能な値に言及する際に本明細書において使用される場合、「約」という用語は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、およびさらに一層好ましくは±0.1%の変動を包含することを意図しており、そのような変動は、開示される方法を実施するのに適切である。
【0019】
「活性化」とは、本明細書において使用される場合、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分な刺激を施されたT細胞の状態を意味する。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、特に、細胞分裂を行っているT細胞を意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、「アダプター分子」という用語は、2つまたはそれより多い分子との相互作用を可能にし、特定の態様においては、細胞障害性細胞の活性化または不活性化を促進する配列を有する、ポリペプチドを意味する。
【0021】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来するインタクトな免疫グロブリンであることができ、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに単鎖抗体(scFv)およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0022】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部分を意味し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を意味する。抗体断片の例には、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、およびFv断片、直鎖状抗体、scFv抗体、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0023】
「抗体重鎖」とは、本明細書において使用される場合、天然の立体構造の抗体分子すべてに存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち、大きい方を意味する。
【0024】
「抗体軽鎖」とは、本明細書において使用される場合、天然の立体構造の抗体分子すべてに存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち、小さい方を意味する。κ軽鎖およびλ軽鎖は、2つの主な抗体軽鎖アイソタイプを意味する。
【0025】
「合成抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組換えDNA技術を用いて作製される抗体、例えば、本明細書において説明されるようにバクテリオファージによって発現させた抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子(DNA分子は、抗体タンパク質を発現する)または抗体を指定するアミノ酸配列の合成によって作製された抗体も意味すると解釈されるべきであり、このDNA配列またはアミノ酸配列は、当技術分野において利用可能かつ周知である合成DNA技術または合成アミノ酸配列技術を用いて取得された。
【0026】
「抗がん効果」という用語は、本明細書において使用される場合、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の延長、および/またはがん性病態(例えば血液がん)に関連する様々な生理学的症状の改善によって明らかになり得る生物学的効果を意味する。「抗がん効果」はまた、何よりまず、がんの発生の予防における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、および/またはCARの能力によっても明らかになり得る。
【0027】
「自己免疫疾患」という用語は、本明細書において使用される場合、自己免疫応答に起因する障害と定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切または過剰な応答の結果である。自己免疫疾患の例には、特に、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病(CD)、ベーチェット病(BD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ANCA関連血管炎(AAV)、IgA血管炎(IgAV)、IgA血管炎(IgAV)、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0028】
本明細書において使用される場合、「自己由来の」という用語は、後で個体に再導入される予定である、その同じ個体に由来する任意の材料を意味することが意図される。
【0029】
「同種異系」とは、同じ種の異なる生物に由来する移植片を意味する。
【0030】
「異種」とは、異なる種の生物に由来する移植片を意味する。
【0031】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫エフェクター細胞上で発現され、抗原に特異的に結合するように操作された、人工T細胞受容体を意味する。CARは、養子細胞移入による治療薬として使用され得る。T細胞は、患者から取り出され、特定の形態の抗原に特異的な受容体を発現するように改変される。CARはまた、細胞内活性化ドメイン、膜貫通ドメイン、および腫瘍関連抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含み得る。いくつかの局面において、CARは、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合された、モノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)の融合物を含む。
【0032】
「キメラ細胞内シグナル伝達分子」という用語は、1つまたは複数の共刺激分子の1つまたは複数の細胞内ドメインを含む、組換え受容体を意味する。キメラ細胞内シグナル伝達分子は、細胞外ドメインを実質的に欠く。いくつかの態様において、キメラ細胞内シグナル伝達分子は、膜貫通ドメイン、検出可能なタグ、およびスペーサードメインなどの付加的なドメインを含む。
【0033】
本明細書において使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特徴に有意に影響を及ぼすこともそれを変更することもない、アミノ酸改変を意味すると意図される。このような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCRによる変異誘発などの当技術分野において公知である標準的技術によって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基が置換される、アミノ酸置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、例えば、抗体またはその抗原結合断片の相補性決定領域(CDR)内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基で置換することができ、かつ変更された抗体を、本明細書において説明される機能アッセイを用いて、抗原結合能力に関して試験することができる。
【0034】
「細胞障害性の」または「細胞障害性」という用語は、細胞を死滅させるまたは損傷させることを意味する。1つの態様において、改変された細胞の細胞障害性は向上し、例えば、T細胞の細胞溶解活性が上昇する。
【0035】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持することができず、かつその疾患が軽快しない場合には該動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物の「障害」とは、動物が恒常性を維持することはできるが、その障害がない場合に予想されるよりも該動物の健康状態が好ましくない、健康状態である。処置せずに放置した場合、障害は、必ずしも動物の健康状態をさらに悪化させるわけではない。
【0036】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において同義的に使用され、特定の生物学的結果を達成するかまたは治療的もしくは予防的な利益を提供するのに有効な、本明細書に記載の化合物、製剤、材料、または組成物の量を意味する。このような結果には、当技術分野において適切な任意の方法によって測定される抗がん活性が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0037】
「コードする」とは、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の性質であって、定められたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または定められたアミノ酸配列のいずれかおよびそれらに起因する生物学的特性を有する、生物学的プロセス中の他のポリマーおよび高分子を合成するための鋳型として働く、固有の性質を意味する。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって、細胞または他の生物系において、あるタンパク質が産生される場合、その遺伝子はそのタンパク質をコードしている。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表において提供される、コード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖のどちらも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると表現することができる。
【0038】
本明細書において使用される場合、「内因性」とは、生物、細胞、組織、もしくは系に由来するか、またはそれらの内部で産生される、任意の物質を意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される、任意の物質を意味する。
【0040】
「拡大増殖する(expand)」という用語は、本明細書において使用される場合、T細胞の数の増加のように、数が増加することを意味する。1つの態様において、エクスビボで拡大増殖させられるT細胞は、培養物中に最初に存在する数と比較して、数が増加する。別の態様において、エクスビボで拡大増殖させられるT細胞は、培養物中の他の細胞型と比較して、数が増加する。「エキソビボ」という用語は、本明細書において使用される場合、ある生物(例えばヒト)から取り出され、該生物の外側で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクター中で)繁殖させられた細胞を意味する。
【0041】
「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0042】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含む、ベクターを意味する。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によってまたはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、当技術分野において公知のあらゆるベクター、例えば、組換えポリヌクレオチドを組み入れるコスミド、プラスミド(例えば、裸のものまたはリポソーム中に含まれるもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が含まれる。
【0043】
「相同」とは、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例として2つのDNA分子間もしくは2つのRNA分子間の、または2つのポリペプチド分子間の、サブユニット配列同一性を意味する。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が、同じ単量体サブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置がアデニンによって占められている場合、これらのDNA分子は、その位置において相同である。2つの配列間の相同性は、一致しているまたは相同な位置の数の直接的関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、サブユニット10個の長さのポリマー中の5つの位置)が相同である場合、これら2つの配列は50%相同である;90%の位置(例えば、10個のうちの9個)が一致または相同である場合、これら2つの配列は、90%相同である。核酸またはタンパク質に適用される場合、本明細書において使用される「相同な」は、約50%の配列同一性を有する配列を意味する。より好ましくは、相同配列は、約75%の配列同一性を有し、さらにより好ましくは、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。
【0044】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、キメラの免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)である。大半は、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)(例えば、相補性決定領域1(CDR1)および/または相補性決定領域2(CDR2)および/または相補性決定領域3(CDR3))に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有しているマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも移入されるCDR配列またはフレームワーク配列中にも見出されない残基を含むこともできる。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良し最適化するために施される。一般に、ヒト化抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、すべてまたは実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むと考えられる。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)についての少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。さらに詳細な内容については、Jones et al., Nature, 321: 522-525, 1986; Reichmann et al., Nature, 332: 323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596, 1992を参照されたい。
【0045】
「完全ヒト」とは、抗体またはその抗原結合断片などの免疫グロブリンであって、分子全体がヒト由来であるか、またはヒト型の該抗体もしくはその抗原結合断片と同一のアミノ酸配列からなる、該免疫グロブリンを意味する。
【0046】
「同一性」とは、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間の、サブユニット配列同一性を意味する。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれにおけるある位置がアルギニンによって占められている場合、それらのアミノ酸配列は、その位置において同一である。同一性、または2つのアミノ酸配列がアラインメント中の同じ位置において同じ残基を有する程度は、パーセンテージとして表されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致しているまたは同一の位置の数の直接的関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマー中の5つの位置)が同一である場合、これら2つの配列は50%同一であり;90%の位置(例えば、10個のうちの9個)が一致または同一である場合、これら2つのアミノ酸配列は、90%同一である。
【0047】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載される核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチド分子または核酸分子を意味する。好ましくは、このような配列は、比較のために使用される配列に対して、アミノ酸レベルまたは核酸レベルで、少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、およびより好ましくは90%、95%、またはさらに高く99%同一である。
【0048】
典型的には、配列同一性は、配列解析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705の配列解析ソフトウェアパッケージ、BLASTプログラム、BESTFITプログラム、GAPプログラム、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。このようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、および/または他の改変に対して相同性の程度を割り当てることによって、同一配列または類似配列をマッチさせる。典型的には、保存的置換には、次のグループ内の置換が含まれる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度の測定への例示的なアプローチにおいて、BLASTプログラムが使用されてよく、その際、e-3~e-100の確率スコアは、密接に関連した配列を示す。
【0049】
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体として機能するタンパク質のクラスと定義される。B細胞によって発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と呼ばれることがある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌物、ならびに気道および尿生殖路の粘液分泌物などの身体分泌物中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの対象において一次免疫応答において産生される、主な免疫グロブリンである。これは、凝集、補体結合、および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。IgDは、公知の抗体機能を有さないが抗原受容体の役割を果たし得る、免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンに曝露すると肥満細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって即時型過敏反応をもたらす、免疫グロブリンである。
【0050】
「免疫応答」という用語は、本明細書において使用される場合、リンパ球が抗原性分子を異物と特定し、抗体の形成を誘導し、かつ/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する際に起こる、抗原に対する細胞応答であると定義される。
【0051】
本明細書において使用される場合、「説明資料」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる、刊行物、記録物、図、または他の任意の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含む容器に添付されてよく、または核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷されてもよい。あるいは、説明資料は、受領者が説明資料および化合物を協同的に使用することを意図して、容器とは別に出荷されてもよい。
【0052】
「単離された」とは、天然の状態から変更または取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物中に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然の状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在できるか、または非天然環境、例えば宿主細胞中に存在できる。
【0053】
「レンチウイルス」は、本明細書において使用される場合、レトロウイルス科の属を意味する。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点で、レトロウイルスの中でも独特である; レンチウイルスは、宿主細胞のDNA中にかなりの量の遺伝情報を送達でき、したがって、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法のうちの1つである。HIV、SIV、およびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、有意なレベルの遺伝子移入をインビボで達成する手段を提供する。
【0054】
「改変された」という用語は、本明細書において使用される場合、本発明の分子または細胞の状態または構造が変えられていることを意味する。分子は、化学的、構造的、および機能的を含む、多くの方法で、改変され得る。細胞は、核酸の導入を介して改変され得る。
【0055】
「調整する」という用語は、本明細書において使用される場合、処置もしくは化合物の非存在下での対象における応答レベルと比較して、および/または他の点では同一であるが未処置の対象における応答レベルと比較して、対象における応答レベルの検出可能な上昇または低下をもたらすことを意味する。この用語は、本来のシグナルもしくは応答を混乱させ、かつ/またはそれに影響を及ぼし、それによって対象、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を実現することを包含する。
【0056】
本発明において、一般的に存在する核酸塩基についての以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを意味し、「C」はシトシンを意味し、「G」はグアノシンを意味し、「T」はチミジンを意味し、「U」はウリジンを意味する。
【0057】
別段の定めがない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列はイントロンをある種の型において含み得るので、イントロンも含み得る。
【0058】
「機能的に連結される」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、調節配列と該異種核酸配列との機能的連結を意味する。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関係する状態で配置されている場合、該第1の核酸配列は該第2の核酸配列に機能的に連結されている。例えば、あるプロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、該プロモーターは該コード配列に機能的に連結されている。通常、機能的に連結されたDNA配列は、隣接しており、かつ2つのタンパク質コード領域を結合するために必要である場合は、同じリーディングフレーム中にある。
【0059】
組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)注射、静脈内(i.v.)注射、筋肉内(i.m.)注射、胸骨内注射、または注入技術が含まれる。
【0060】
「単鎖抗体」とは、組換えDNA技術によって形成される抗体を意味し、その際、免疫グロブリンの重鎖断片および軽鎖断片は、アミノ酸からなる操作されたつなぎ部分を介してFv領域に連結される。単鎖抗体を作製する様々な方法が公知であり、米国特許第4,694,778号; Bird (1988) Science 242:423-442; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Ward et al. (1989) Nature 334:54454; Skerra et al. (1988) Science 242:1038-1041において説明されているものが含まれる。
【0061】
「特異的に結合する」という用語は、抗体またはその抗原結合断片に関して本明細書において使用される場合、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識もせずそれらに結合もしない、抗体またはその抗原結合断片を意味する。例えば、1つの種に由来する抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数の種に由来する該抗原にも結合し得る。しかし、そのような異種間反応性それ自体によって、抗体またはその抗原結合断片が特異的であると分類されることが変わるわけではない。別の例において、ある抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、該抗原の種々の対立遺伝子形態にも結合し得る。しかし、そのような交差反応性それ自体によって、抗体またはその抗原結合断片が特異的であると分類されることが変わるわけではない。いくつかの例において、「特異的結合」または「に特異的に結合する」という用語は、抗体もしくはその抗原結合断片、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して使用されて、その相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味し得る;例えば、抗体またはその抗原結合断片は、通常、タンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、標識された「A」および抗体またはその抗原結合断片を含む反応物中に、エピトープA(または遊離の標識されていないA)を含む分子が存在すると、該抗体またはその抗原結合断片に結合される標識されたAの量は減少する。
【0062】
「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る生物(例えば哺乳動物)を含むことが意図される。「対象」または「患者」は、その中で使用される場合、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であってよい。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウス哺乳動物などの家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0063】
本明細書において使用される場合、「実質的に精製された」細胞は、他の細胞型を本質的に含まない細胞である。実質的に精製された細胞とはまた、その天然状態において普通なら混在している他の細胞型から分離された細胞を意味する。いくつかの例において、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の同一種の集団を意味する。他の例において、この用語は、単に、その天然状態において普通なら混在している細胞から分離された細胞を意味する。いくつかの態様において、これらの細胞はインビトロで培養される。他の態様において、これらの細胞はインビトロで培養されない。
【0064】
「治療的」という用語は、本明細書において使用される場合、処置および/または予防を意味する。治療的効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって取得される。
【0065】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書において使用される場合、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを意味する。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクト、形質転換、または形質導入された細胞である。該細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0066】
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書において使用される場合、対象が経験する疾患または障害(例えば、がん、自己免疫疾患)の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減させることを意味する。
【0067】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、かつ該単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る、組成物である。限定されるわけではないが、直鎖ポリヌクレオチド、イオン性化合物または両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含む、多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミド化合物および非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物およびリポソームなど、も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0068】
範囲:本開示の全体を通して、本発明の様々な局面は、範囲形式で示すことができる。範囲形式での説明は、便宜および簡潔さのためにすぎず、本発明の範囲に対する融通の利かない制限と解釈されるべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、存在し得る部分範囲すべてならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示したとみなされるべきである。このことは、範囲の広さに関わらず、当てはまる。
【0069】
説明
本発明は、B細胞がん(リンパ腫、骨髄腫、白血病を非限定的に含む)および/またはB細胞媒介性自己免疫疾患の処置または予防のための組成物および方法を含む。本発明によれば、T細胞(ナチュラルキラーT(NKT)細胞およびγδT細胞を非限定的に含む)、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびマクロファージを非限定的に含む免疫細胞を、細胞(例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)患者のがん性B細胞)によって発現される疾患特異的B細胞受容体またはステレオタイプB細胞受容体を特異的に認識および結合する抗原結合ドメインを含むCARを発現させることによって、養子細胞(例えばT細胞)療法のために改変する。本発明の改変された細胞(例えば改変されたT細胞)は、疾患関連B細胞受容体またはステレオタイプB細胞受容体に特異的であり、ステレオタイプB細胞受容体を有するB細胞に対して、向上した細胞障害性および有効性を有する。
【0070】
例えば、多くのB細胞非ホジキンリンパ腫は、それらのB細胞受容体(BCR)内で、限定されたまたは「ステレオタイプの」免疫グロブリン可変重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を発現する。CLL患者の3分の1は、ステレオタイプ受容体を発現し、ステレオタイプ受容体は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の33.9%、マントル細胞リンパ腫(MCL)患者の46.3%、および脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)患者の45.8%を含む、他のB細胞非ホジキンリンパ腫患者のかなりの割合で見出される。理論に拘泥するものではないが、これらの知見は、新生物性クローンの選択および拡大増殖において抗原が何らかの役割を果たす可能性があることを示唆する。例えば、VL 3.21(R110変異を有するVL 3.21を含む)、VH 1.69、VH 4.34、およびVH3.23などは、これらの疾患において著しく富化されている。これらの保存された抗原は、CAR療法のための新規かつ腫瘍選択的な抗原の役割を果たす。そのような抗原を標的とする本発明のCARは、すべての成熟B細胞を標的とし、その結果、感染を予防するために生涯にわたるIgG注入を患者が必要とするようになる、例えば、CD19を対象とするCARよりも、腫瘍選択的な細胞療法となる。いくつかの態様において、本発明のこれらのBCRアイソフォームCARは、B細胞集団の一部を標的とし、したがって、腫瘍外毒性が低減されているであろう。
【0071】
他の態様において、本発明のCAR T細胞はまた、自己免疫B細胞クローンを特異的に除去するために使用することもできる。理論に縛られたくはないが、いくつかの自己免疫障害は、該疾患の病因に関係すると考えられている特異的BCRの富化を特徴とする。具体的には、VH 1.69抗体が、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)およびベーチェット病において富化されており、VH 4.34が、全身性エリテマトーデス(SLE)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、およびクローン病(CD)において富化されている。したがって、いくつかの態様において、本発明のCAR T細胞は、そのような自己免疫疾患の病因に関与している抗体を発現および産生するB細胞および形質細胞を特異的に枯渇させることができる。
【0072】
B細胞悪性腫瘍におけるCD19 CAR T細胞療法、CD20 CAR T細胞療法、およびCD22 CAR T細胞療法のそれぞれから報告されたデータから、この種類の治療物質に対する耐性が、抗原逃避、すなわち、標的抗原が減少または下方制御された腫瘍の出現に起因し得ることが示唆される。
【0073】
したがって、さらに別の態様において、本発明のCAR細胞(例えば、CAR T細胞)は、B細胞白血病およびリンパ腫の存続に必須のタンパク質、すなわち、BCRを標的とすることによってB細胞がん(例えば、CLL患者のがん性B細胞)による抗原逃避を低減または排除するために、単独でまたは他の処置と組み合わせて使用することができる。
【0074】
キメラ抗原受容体(CAR)
1つの局面において、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供し、ここで、抗原結合ドメインは、富化されたステレオタイプB細胞受容体(BCR)に特異的に結合する。
【0075】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物、および糖脂質を含む特定の標的抗原に結合するための、CARの細胞外領域である。抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびそれらの任意の断片が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0076】
いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合断片(Fab)、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。
【0077】
本明細書において使用される場合、「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合した、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接連結されるか、またはVHのN末端をVLのC末端と、もしくはVHのC末端をVLのN末端と接続する、ペプチドをコードするリンカーによって連結されるかのいずれかである。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に向かってVH-リンカー-VLの立体配置を有するscFvを含む。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に向かってVL-リンカー-VHの立体配置を有するscFvを含む。当業者は、本発明で使用するための適切な立体配置を選択することができるであろう。
【0078】
いくつかの態様において、リンカーは、屈曲性のためにグリシンが豊富であり、可溶性のためにセリンまたはトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)およびWO 2014/087010において開示されており、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。様々なリンカー配列が当技術分野において公知であり、グリシンセリン(GS)リンカー、例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO: 1)、(GGGS)
n(SEQ ID NO: 2)、および(GGGGS)
n(SEQ ID NO: 3)(nは、少なくとも1の整数を表す)が、非限定的に含まれる。例示的なリンカー配列は、
などを非限定的に含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明で使用するための適切なリンカー配列を選択することができるであろう。1つの態様において、本発明の抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、該VHおよび該VLは、SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列を有するリンカー配列によって隔てられており、該アミノ酸配列は、核酸配列
によってコードされ得る。
【0079】
単鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonらによって説明されているように(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)、VHコード配列およびVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニストscFvが説明されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51; Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61; Brocks et al.,Immunotechnology 1997 3(3):173-84; Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニストscFvが説明されている(例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7; Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71; Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55; Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
【0080】
本明細書において使用される場合、「Fab」は、抗原に結合するが一価でありFc部分を有さない抗体構造の断片を意味し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFab断片および1つのFc断片(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)を生じる。
【0081】
本明細書において使用される場合、「F(ab')2」は、全長IgG抗体のペプシン消化によって生じる抗体断片を意味し、ここで、この断片は、2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、2つの別個のアミノ酸鎖(抗原に結合するための、S-S結合によって連結された、H鎖の一部および軽(L)鎖)を含み、残りのH鎖部分は互いに連結されている。「F(ab')2」断片は、2つの個々のFab'断片に分割することができる。
【0082】
他の態様において、抗原結合ドメインは、例えば、人工アンキリンリピートタンパク質(DARPin)、アフィボディ、アドネクチン、またはアンチカリンなどの、抗体模倣タンパク質を含む。特異的結合親和性を有する構築物は、例えばSeeger, M.A. et al., Design, construction, and characterization of a second generation DARPin library with reduced hydrophobicity, Protein Sci., 22:1239-1257 (2013)で説明されているように、DARPinライブラリーを用いて作製することができる。
【0083】
いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される種と同じ種に由来し得る。例えば、ヒトでの使用の場合、CARの抗原結合ドメインは、本明細書の別の箇所で説明されるヒト抗体またはその断片を含み得る。
【0084】
「富化されたステレオタイプ」BCR、またはBCRに関する「富化されたステレオタイプ(stereotypy)」とは、H鎖およびL鎖中の著しく類似したIg V領域によって定まる類似した一次構造(例えば、長さ、アミノ酸組成、および組換え結合部の独特なアミノ酸残基)を有し、いくつかの態様においては、異なるH CDR3立体配置およびL CDR3立体配置を有する、BCRを意味する。これらの富化されたステレオタイプBCRは、富化されたステレオタイプBCRの種々のサブセットにグループ分けすることができ、それぞれ、慣例的に、連続番号(例えば、サブセット2、4、または6)で表され、本発明のCARの抗原結合ドメインに対する抗原性標的を含む。これらの富化されたステレオタイプBCRは、B細胞にシグナル伝達しそれを活性化する固有の能力を有するので、病因に直接関与している。例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられるStamatopoulos, B. et al., Clin. Cancer Res., 24:5048-5057 (2018)、Rovida et al., Clin. Cancer Res., 27(3):729-739 (2021)、Hacken, E.T. et al., Leukemia, 33(2):287-298 (2019)、Messmer, B.T. et al., J. Exp. Med., 200(4): 519-525 (2004)、およびRossi, D. & Gaidano, G., Haematologica, 95(12):1992-1995 (2010)は、富化されたステレオタイプ受容体の複数の異なるセットを説明している。
【0085】
1つの態様において、サブセット1のBCRは、IGHV1-5-7、IGHD6-19、IGHJ4、および/またはIGKV1-39の使用を特徴とすることができ;サブセット2のBCRは、IGHV3-21、IGHJ6、および/またはIGLV3-21の使用を特徴とすることができ;サブセット4のBCRは、IGHV4-34、IGHD5-5もしくはD4-17、IGHJ6、および/またはIGKV3-30の使用を特徴とすることができ;サブセット5のBCRは、IGHV1-69、IGHD3-10、IGHJ6、および/またはIGKV1-33もしくはIGLV3-21の使用を特徴とすることができ;サブセット6のBCRは、IGHV1-69、IGHD3-16、IGHJ3、および/またはIGLV3-20の使用を特徴とすることができ;ならびにサブセット8のBCRは、IGHV4-39、IGHD6-13、IGHJ5、および/またはIGKV1-39の使用を特徴とすることができる。
【0086】
いくつかの態様において、富化されたステレオタイプBCRは、サブセット1、2、4、5、6、または8の、富化されたステレオタイプBCRである。1つの態様において、本発明のCARの抗原結合ドメインは、サブセット1、2、4、5、6、または8の富化されたステレオタイプBCRに特異的に結合する。
【0087】
他の態様において、富化されたステレオタイプBCRは、サブセット2、4、または6の、富化されたステレオタイプBCRである。別の態様において、本発明のCARの抗原結合ドメインは、サブセット2、4、または6の富化されたステレオタイプBCRに特異的に結合する。
【0088】
いくつかの態様において、富化されたステレオタイプBCRは、自律的に活性なBCRとして特徴付けられる。
【0089】
1つの態様において、自律的に活性なBCRは、例えば、別のBCRの内部エピトープにHCDR3を介して結合することにより、自律的BCRシグナル伝達によって駆動されて、BCR-BCR結合、凝集、および/または活性化をもたらし得る(例えばDuhren-von Minden, M. et al., Nature, 489(7415):309-12 (2012)を参照されたい;また、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2020/0199225号も参照されたい)。
【0090】
例えば、米国特許出願公開第2020/0199225号は、受容体の自律的に活性な機能性に関連するCLL B細胞受容体サブセット2バリアントの領域は、軽鎖のアミノ酸配列KLTVLRQPKA(SEQ ID NO: 13)およびVAPGKTAR(SEQ ID NO: 14)を特徴とし、受容体の自律的に活性な機能性に関連するサブセット4の領域は、重鎖の可変部分のアミノ酸配列
によって定められることを、説明している。
【0091】
他の態様において、富化されたステレオタイプBCRは、
のアミノ酸配列を含む。
【0092】
別の態様において、本発明のCARの抗原結合ドメインは、KLTVLRQPKA (SEQ ID NO: 13)および/またはVAPGKTAR (SEQ ID NO: 14)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む富化されたステレオタイプBCRに、特異的に結合する。
【0093】
別の態様において、CARの抗原結合ドメインは、
のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む富化されたステレオタイプBCRに、特異的に結合する。
【0094】
別の態様において、抗原結合ドメインは、
の配列を含む富化されたステレオタイプBCRに、特異的に結合する。
【0095】
別の態様において、抗原結合ドメインは、
の配列を含む富化されたステレオタイプBCRに、特異的に結合する。
【0096】
いくつかの態様において、本発明のCARの抗原結合ドメインは、VHおよびVLを含む、富化されたステレオタイプBCRに特異的な結合ドメインである。
【0097】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHを含み、ここで、CDR1はGFSLTSYG(SEQ ID NO: 25)の配列を含み、CDR2はIWRGGGT(SEQ ID NO: 26)の配列を含み、CDR3はARSRYDEEESMNY(SEQ ID NO: 27)の配列を含む。
【0098】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLを含み、ここで、CDR1はGNIHSY(SEQ ID NO: 28)の配列を含み、CDR2はNAKT(SEQ ID NO: 29)の配列を含み、CDR3はQHFWNTPPT(SEQ ID NO: 30)の配列を含む。
【0099】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、
の配列を含むVHを含む。
【0100】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、
を含む配列によってコードされるVHを含む。
【0101】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、
の配列を含むVLを含む。
【0102】
1つの態様において、抗原結合ドメインは、
を含む配列によってコードされるVLを含む。
【0103】
いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に向かってVH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHの立体配置を有するscFvを含み、ここで、該リンカーは、SEQ ID NO: 11の配列を含む。
【0104】
さらに別の態様において、scFvは、
のアミノ酸配列を含む。
【0105】
さらなる態様において、scFvは、
を含む核酸配列によってコードされる。
【0106】
富化されたステレオタイプBCRへの特異的結合を維持している、抗原結合ドメインの許容される変種は、当業者に公知である。例えば、いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 25~30、31~32、35~36、39~42、64、66、68、69、80、および81に示されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0107】
他の態様において、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 33~34、37~38、43~46、65、67、70、71、82、および83に示される核酸配列のいずれか1つに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0108】
抗原結合ドメインは、CARの別のドメイン、例えば、どちらも本明細書の別の箇所で説明される膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインに、機能的に連結されてよい。1つの態様において、抗原結合ドメインをコードする核酸は、膜貫通ドメインをコードする核酸および細胞内ドメインをコードする核酸に、機能的に連結されている。
【0109】
本明細書において説明される抗原結合ドメイン、例えば、富化されたステレオタイプBCRに特異的に結合する抗体またはその断片は、本明細書において説明される膜貫通ドメインのいずれか、本明細書において説明される細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれか、またはCARに含まれ得る本明細書において説明される他のドメインのいずれかと、組み合わせることができる。
【0110】
例えば、いくつかの態様において、CARは、
の配列を含む。
【0111】
いくつかの態様において、CARは、SEQ ID NO: 47~50および72~75に示されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
他の態様において、CARは、
を含む核酸配列によってコードされる。
【0113】
いくつかの態様において、CARは、SEQ ID NO: 84~91に示される配列のいずれか1つに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる。
【0114】
膜貫通ドメイン
いくつかの態様において、CARは、細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。1つの態様において、CARは、該CARのドメインのうちの1つと天然に結合している膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を回避するように選択されるかまたはアミノ酸置換によって改変される。
【0115】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合型または膜貫通型のタンパク質に由来し得る。1つの態様において、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含むと考えられる。1つの局面において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンからなる三つ組が、合成膜貫通ドメインの各末端に存在する。任意で、2~10アミノ酸長の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの連結部を形成してよい。グリシン-セリン(GS)の二つ組は、特に適切なリンカーになる。
【0116】
他の態様において、CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に、スペーサードメインが組み込まれる場合がある。本明細書において使用される場合、「スペーサードメイン」という用語は、通常、ポリペプチド鎖中の細胞外ドメインまたは細胞質ドメインのいずれかに膜貫通ドメインを連結するように機能する、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、および最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含んでよい。
【0117】
いくつかの態様において、CD8もしくはヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジまたはグリシン-セリンリンカーを含む、膜貫通ドメインの前のスペーサードメインが、使用され得る。1つの態様において、膜貫通ドメインに対してN末端側にあるヒンジ(例えばCD8アルファヒンジ)が、CARにおいて、CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、例えば、CARの抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間に、含まれる。
【0118】
ヒンジおよび/または膜貫通ドメインの例には、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIR、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(タクタイル)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、および/またはNKG2Cのヒンジおよび/または膜貫通ドメインが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0119】
1つの態様において、CARは、膜貫通ドメイン、例えば、限定されるわけではないが、
の配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCD8アルファ膜貫通ドメインを含む。
【0120】
いくつかの態様において、CD8アルファ膜貫通ドメインは、
を含む配列またはSEQ ID NO: 60もしくは61に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0121】
いくつかの態様において、CARは、
の配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCD8アルファヒンジを含む。
【0122】
いくつかの態様において、CD8アルファヒンジ領域は、
を含む配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0123】
細胞質ドメイン
本発明のCARの細胞質ドメインまたはそうでなければ細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置された免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つを活性化する役割を担っている。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を意味する。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊な機能を果たすように細胞に指示する、タンパク質についての部分を意味する。細胞内シグナル伝達ドメインの全体を使用できることが通常であるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインのトランケートされた部分が使用される場合、そのようなトランケートされた部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達することを条件として、インタクトな鎖の代わりに使用されてよい。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分である、細胞内シグナル伝達ドメインについての任意のトランケートされた部分を含むことが意図されている。
【0124】
本発明のCARにおいて使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例には、抗原受容体の結合後に協力して働いてシグナル伝達を開始するT細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の派生物またはバリアントおよび同じ機能的能力を有する任意の合成配列が含まれる。
【0125】
TCRを介して生成されるシグナルのみでは、T細胞を完全に活性化するには不十分であること、および二次シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要であることが公知である。したがって、T細胞活性化は、以下の2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介されるということができる:TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原に非依存的に作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルをもたらすもの(二次細胞質シグナル伝達配列)。
【0126】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激する方式または阻害する方式のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激する様式で働く一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0127】
本発明において特に有用である、ITAMを含む一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれる。いくつかの態様において、本発明のCAR中の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータ(CD3ζ)に由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0128】
1つの態様において、CD3ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列は、
のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0129】
別の態様において、CD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、
の配列、もしくはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列;または
、もしくはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0130】
別の態様において、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを、単独でまたは本発明のCARとの関連で有用な他の任意の所望の細胞質ドメインと組み合わせて、含む。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含む、CARの一部分を意味する。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされる、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが含まれる。したがって、本発明は、共刺激シグナル伝達エレメントとして主に4-1BBを用いて例示されるが、他の共刺激エレメントも、本発明の範囲に含まれる。
【0131】
1つの態様において、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインは、
のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0132】
別の態様において、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、
の配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0133】
本発明のCARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムな順序または特定の順序で互いに連結されていてよい。任意で、好ましくは2~10アミノ酸長の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、連結部を形成してよい。グリシン-セリンの二つ組は、特に適切なリンカーになる。
【0134】
1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。別の態様において、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含む。
【0135】
1つの態様において、CD28のシグナル伝達ドメインは、
のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0136】
別の態様において、CD28のシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、
の配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0137】
さらに別の態様において、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインならびに4-1BBおよびCD28の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0138】
1つの態様において、本発明のCAR中の細胞質ドメインは、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含み、ここで、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含み、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含む。
【0139】
他のドメイン
いくつかの態様において、CARは、シグナルペプチド(例えばCD8シグナルペプチド)を含む。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、受容体をT細胞表面へ移動させる役割を担っている。
【0140】
いくつかの態様において、シグナルペプチドは、
のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、CD8シグナルペプチドである。
【0141】
核酸/ベクター
他の局面において、本発明は、富化されたステレオタイプBCRに特異的に結合する抗原結合ドメインを有する本発明のCARをコードする配列を含む、組換え核酸分子を提供する。
【0142】
所望の分子をコードする核酸配列は、当技術分野において公知の組換え方法を用いて、例えば、標準的な技術を用いて、当該遺伝子を発現する細胞に由来するライブラリーをスクリーニングすることによって、当該遺伝子を含むことが公知であるベクターからそれを得ることによって、病原性標的(例えばADAMTS13)に対してスクリーニングすることによって、または当該遺伝子を含む細胞および組織から直接的に単離することによって、得ることができる。あるいは、関心対象の遺伝子は、クローニングするのではなく、合成によって作製することもできる。
【0143】
本発明はまた、いくつかの態様において、本発明のDNAが挿入されているベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期かつ安定な組込みおよび娘細胞へのその伝達を可能にするので、長期の遺伝子移入を達成するための適切なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖性細胞に形質導入できるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターよりも、付加的な利点を有する。これらはまた、低い免疫原性という付加的な利点も有する。他の態様において、CARは、例えば、トランスポゾン系(例えばPiggyBac(商標))、リポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子、またはmRNAを用いて、細胞(例えばT細胞)に導入される。さらに他の態様において、本発明のCARは、インビボで細胞(例えばT細胞)に導入される。
【0144】
簡単に要約すると、CARをコードする天然核酸または合成核酸の発現は、典型的には、CARポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸をプロモーターに機能的に連結し、その構築物を発現ベクターに組み込むことによって、達成される。これらのベクターは、真核生物における複製および組込みに好適であることができる。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の調節に有用な、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、開始配列、ならびにプロモーターを含む。
【0145】
本発明の発現構築物はまた、標準的な遺伝子送達プロトコールを用いて、核酸免疫化および遺伝子治療のためにも使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当技術分野において公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照されたい。別の態様において、本発明は、遺伝子冶療ベクターを提供する。
【0146】
核酸を、いくつかのタイプベクター中にクローニングすることができる。例えば、核酸を、プラスミド、ファージミド、ファージ派生物、動物ウイルス、およびコスミドを非限定的に含むベクター中に、クローニングすることができる。特に関心が持たれるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列決定ベクターが含まれる。
【0147】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、ならびに他のウイルス学および分子生物学の手引書に記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含む(例えば、WO 01/96584; WO 01/29058; および米国特許第6,326,193号)。
【0148】
いくつかのウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子を、当技術分野において公知の技術を用いて、ベクターに挿入し、レトロウイルス粒子中に入れることができる。次いで、この組換えウイルスを単離し、インビボまたはエキソビボのいずれかで、対象の細胞に送達することができる。いくつかのレトロウイルス系が、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが、当技術分野において公知である。1つの態様において、レンチウイルスベクターが使用される。
【0149】
付加的なプロモーターエレメント、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置しているが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも同様に機能的エレメントを含むことが最近示された。プロモーターエレメント間の間隔は融通が利くことが多く、その結果、プロモーター機能は、エレメントの位置が逆にされた場合または相対的に移動された場合にも、維持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は、50bp離れるまで広げることができ、それ以降は、活性が低下し始める。プロモーターによって、個々のエレメントが協同的または別々に機能して転写を活性化できるようである。
【0150】
適切なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに機能的に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる、強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長因子-1α(EF-1α)である。しかし、他の構成的プロモーター配列もまた使用されてよく、これには、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuL Vプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、非限定的に、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチニンキナーゼプロモーターが含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターを使用することにより、それが機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が所望される場合にオンにするかまたは発現が所望されない場合に発現をオフにすることができる、分子スイッチが、実現する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニンプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0151】
CARポリペプチドまたはその一部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染させようとする細胞の集団から、発現している細胞を特定および選択することを容易にするために、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはその両方を含むこともできる。他の局面において、選択可能マーカーは、DNAの別個の断片上に有され、同時トランスフェクション手順において使用され得る。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方が、宿主細胞における発現を可能にするための適切な調節配列に隣接されてよい。有用な選択マーカーには、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0152】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性がある細胞を特定するため、および調節配列の機能性を評価するために、使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物またはレシピエント組織中に存在もせず、それらによって発現されもせず、かつその発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の適切な時間に評価される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。適切な発現系は周知であり、公知の技術を用いて調製され得るか、または商業的に取得され得る。通常、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す、最小限の5'隣接領域を有する構築物が、プロモーターであると特定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーターによって駆動される転写を調整する能力について作用物質を評価するために使用され得る。
【0153】
遺伝子を細胞に導入し発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターとの関連で、当技術分野の任意の方法によって、ベクターを宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターを、物理的、化学的、または生物学的な手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0154】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、およびエレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0155】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来することができる。例えば、米国特許第5,350,674号および同第5,585,362号を参照されたい。他の態様において、CARは、例えば、トランスポゾン系(例えばPiggyBac(商標))、リポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子、またはmRNAを用いて、細胞(例えばT細胞)に導入される。さらに他の態様において、本発明のCARは、インビボで細胞(例えばT細胞)に導入される。
【0156】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば人工膜小胞)である。
【0157】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、(インビトロ、エキソビボ、またはインビボでの)宿主細胞への核酸の導入のために企図される。別の局面において、核酸は脂質と結び付けられてよい。脂質と結び付けられた核酸は、リポソームの水溶性内部に封入されるか、リポソームの脂質二重層内に散在するか、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方に結合した連結分子を介してリポソームに結合されるか、リポソーム中に閉じ込められるか、リポソームと複合体を形成するか、脂質を含む溶液中に分散されるか、脂質と混合されるか、脂質と組み合わされるか、脂質中に懸濁物として含まれるか、ミセルと共に含まれるかもしくはミセルと複合体を形成するか、または別の方法で脂質と結び付けられてよい。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターが結び付けられた組成物は、溶解状態において、いかなる特定の構造にも限定されない。例えば、これらは、ミセルとしての、または「折り畳まれた」構造を有する、二重層構造中に存在してもよい。これらは単に溶液中に散在して、ことによると、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成していてもよい。脂質は、天然脂質または合成脂質であってよい、脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪性液滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドを含む化合物のクラスが含まれる。
【0158】
使用に適した脂質は、商業的供給業者から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(St. Louis, MO)から入手することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質原液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムの方がメタノールより容易に蒸発するため、クロロホルムが唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、囲われた脂質の二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単層および多重層の脂質運搬体を包含する、一般的用語である。リポソームは、リン脂質二重膜および内側の水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。多重層リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰な水溶液中に懸濁された場合に自然発生的に形成する。脂質成分は、閉じた構造体を形成する前に自己再配列を起こして、脂質二重層の間に水および溶解された溶質を閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかし、通常の小胞構造とは異なる構造を溶液中で有する組成物もまた、包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を呈してもよく、または脂質分子の不均一な凝集体として存在するだけでもよい。リポフェクタミン-核酸複合体もまた、企図される。
【0159】
外因性核酸を宿主細胞に導入するためにまたはそうでなければ細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイが実施され得る。このようなアッセイには、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCR、ならびにPCRなど当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ; 例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によって、または本発明の範囲内にある、作用物質を特定するための本明細書において説明されるアッセイによって、特定のペプチドの存在または非存在を検出するなどの「生化学的」アッセイが含まれる。
【0160】
T細胞の供給源
本発明のT細胞の拡大増殖および遺伝子改変に先立って、T細胞の供給源が対象から取得される。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、胎盤組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍を含むいくつかの供給源から、および人工多能性幹細胞(iPSC)または他の幹細胞供給源からのT細胞の分化を通して、得ることができる。本発明の特定の態様において、当技術分野において利用可能な任意の数のT細胞株が、使用され得る。本発明の特定の態様において、T細胞は、当業者に公知である任意の数の技術、例えばFicoll(商標)分離を用いて、対象から採取されたひとまとまりの血液から取得することが可能である。1つの好ましい態様において、個体の循環血液に由来する細胞は、アフェレーシスによって取得される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む、リンパ球を含む。1つの態様において、アフェレーシスによって採取された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、後続の処理工程のために適切な緩衝液または媒体中に細胞を加えてよい。本発明の1つの態様において、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替の態様において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠いてもよく、またはすべてではないが多くの二価陽イオンを欠いてよい。やはりまた、驚くべきことに、カルシウムの非存在下で最初の活性化工程を行うと、強まった活性化が起こる。当業者が容易に理解するように、洗浄工程は、当業者に公知の方法によって、例えば、製造業者の取扱い説明書に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991セルプロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を用いることによって、達成され得る。洗浄後に、細胞は、例えば、Ca2+不含Mg2+不含PBS、PlasmaLyte A、または緩衝剤を含むもしくは含まない他の生理食塩水などの様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地に直接的に再懸濁してもよい。
【0161】
別の態様において、T細胞は、例えば、PERCOLL(商標)勾配を用いる遠心分離によってまたは向流遠心溶出法によって、赤血球を溶解し単球を枯渇させることによって、抹消血リンパ球から単離される。T細胞の特定の亜集団、例えば、CD3+ T細胞、CD28+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD45RA+ T細胞、およびCD45RO+T細胞を、ポジティブ選択技術またはネガティブ選択技術によってさらに単離することができる。例えば、1つの態様において、T細胞は、抗CD3/抗CD28(すなわち3×28)コンジュゲート型ビーズ、例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tとともに、所望のT細胞のポジティブ選択に十分な期間、インキュベーションすることによって、単離される。1つの態様において、期間は約30分である。さらなる態様において、期間は、30分~36時間またはそれより長い時間およびその間のすべての整数値の範囲である。さらなる態様において、期間は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または6時間である。さらに別の好ましい態様において、期間は10~24時間であり、14日まで延びることができる。1つの好ましい態様において、インキュベーション期間は24時間である。白血病患者からT細胞を単離するために、より長いインキュベーション時間、例えば24時間を使用することにより、細胞収量を増加させることができる。より長いインキュベーション時間は、腫瘍組織からまたは免疫力が低下した個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する場合など、他の細胞型と比べてT細胞がほとんど存在しない任意の状況においてT細胞を単離するために使用され得る。さらに、より長いインキュベーション時間を使用することにより、CD8+T細胞の捕捉効率を高めることができる。したがって、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を単に短縮もしくは延長することによって、および/または(本明細書でさらに説明するように)T細胞に対するビーズの比を大きくもしくは小さくすることによって、T細胞の亜集団を、培養開始時またはこのプロセス中の他の時点で、優先的に選択するかまたは除外することができる。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3抗体および/または抗CD28抗体の比を大きくまたは小さくすることによって、T細胞の亜集団を、培養開始時または他の所望の時点で、優先的に選択するかまたは除外することもできる。当業者は、複数回の選択もまた本発明において使用され得ることを認識する。特定の態様において、選択手順を実施し、活性化および拡大増殖のプロセスにおいて「選択されていない」細胞を使用することが望ましい場合がある。「選択されていない」細胞もまた、さらに別の回の選択に供することができる。
【0162】
ネガティブ選択によるT細胞集団の富化は、ネガティブ選択される細胞に特有の表面マーカーを対象とする抗体の組合せを用いて達成することができる。1つの方法は、ネガティブ選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーを対象とするモノクローナル抗体のカクテルを使用する、ネガティブ磁気免疫接着またはネガティブフローサイトメトリーを介した細胞選別および/または細胞選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞を富化する場合、モノクローナル抗体カクテルは、典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。特定の態様において、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を典型的に発現する調節性T細胞を富化するかまたはポジティブに選択することが、望ましい場合がある。あるいは、特定の態様において、調節性T細胞は、抗CD25コンジュゲート型ビーズまたは他の類似の選択方法によって、枯渇させられる。
【0163】
ポジティブ選択またはネガティブ選択によって所望の細胞集団を単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。特定の態様において、ビーズおよび細胞が混合される体積を有意に減少させて(すなわち、細胞濃度を高めて)、細胞およびビーズの最大限の接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、1つの態様において、20億個の細胞/mlの濃度が使用される。1つの態様において、10億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる態様において、1億超個の細胞/mlが使用される。さらなる態様において、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらに別の態様において、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様において、1億2500万個または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高濃度を使用することにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞拡大増殖が増大し得る。さらに、高い細胞濃度を使用することにより、関心対象の標的抗原を弱く発現する可能性がある細胞、例えばCD28陰性T細胞を、多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血液、腫瘍組織など)から、より効率的に捕捉することが可能になる。このような細胞集団は、治療的価値を有する可能性があり、これらを得ることが望ましい。例えば、高濃度の細胞を使用することにより、通常はCD28発現が弱めであるCD8+ T細胞を、より効率的に選択することが可能になる。
【0164】
関連する態様において、低濃度の細胞を使用することが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えば、ビーズなどの粒子)との混合物を著しく希釈することによって、粒子と細胞との相互作用が最小限に抑えられる。これにより、粒子に結合する所望の抗原を大量に発現する細胞が、選択される。例えば、CD4+ T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希釈した濃度において、CD8+ T細胞よりも効率的に捕捉される。1つの態様において、使用される細胞濃度は、5×106/mlである。他の態様において、使用される濃度は、約1×105/ml~1×106/ml、およびその間の任意の整数値であることができる。
【0165】
他の態様において、細胞は、2~10℃または室温のいずれかで、様々な長さの時間、様々な速度で、ローテーター上でインキュベートされ得る。
【0166】
刺激のためのT細胞はまた、洗浄工程後に凍結することもできる。理論に拘泥するものではないが、凍結および後続の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球およびある程度は単球を除去することによって、より均一な生産物をもたらす。血漿および血小板を除去する洗浄工程の後、細胞は、凍結溶液中に懸濁されてよい。多くの凍結溶液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、このような状況において有用であるが、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含むPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOもしくは31.25%PlasmaLyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOを含む培養培地、あるいは例えばHespanおよびPlasmaLyte Aを含む他の適切な細胞凍結媒体を使用することを含み、次いで、細胞は、1分あたり1℃の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中に貯蔵される。制御された凍結の他の方法、ならびに-20℃でまたは液体窒素中で直ちに行われる制御されていない凍結が、使用されてよい。
【0167】
特定の態様において、凍結保存された細胞は、本明細書において説明されるように解凍および洗浄され、本発明の方法を用いる活性化の前に、室温で1時間静置される。
【0168】
また、本明細書において説明される拡大増殖させた細胞が必要とされ得る時期より前の期間に、対象から血液試料またはアフェレーシス産物を採取することも、本発明において企図される。したがって、拡大増殖させる細胞の供給源を、必要な任意の時点で採取することができ、T細胞などの所望の細胞を、単離し、本明細書において説明されるものなどのT細胞療法の恩恵を受けると思われる任意の数の疾患または病態に対するT細胞療法において後で使用するために凍結することができる。1つの態様において、血液試料またはアフェレーシス試料は、全体的に健康な対象から採取される。特定の態様において、血液試料またはアフェレーシス試料は、疾患を発症するリスクがあるが疾患をまだ発症していない全体的に健康な対象から採取され、関心対象の細胞が単離され、後で使用するために凍結される。特定の態様において、T細胞を拡大増殖させ、凍結し、後で使用することができる。特定の態様において、試料は、本明細書において説明される特定の疾患の診断のすぐ後であるが任意の処置の前に、患者から採取される。さらなる態様において、細胞は、任意の数の関連する処置様式の前に、対象に由来する血液試料またはアフェレーシス試料から単離され、該処置様式には、剤、例えば、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノラート、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および照射を用いる処置が含まれるが、それらに限定されない。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。さらなる態様において、細胞は、患者のために単離され、骨髄移植または幹細胞移植;フルダラビンなどの化学療法剤、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法と併用して(例えば、前、同時、または後)、後で使用するために、凍結される。別の態様において、細胞は、CD20と反応する剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法の前に単離され、それに続く処置のために後で使用するために凍結することができる。
【0169】
本発明のさらなる態様において、T細胞は、処置の直後に患者から取得される。この点に関して、特定のがん処置、特に、免疫系に損傷を与える薬物での処置に続いて、患者が普通は処置から回復中であると思われる期間中の処置直後に、取得されるT細胞の質が、エキソビボで拡大増殖する能力について最適であるかまたは向上している場合があることが観察されている。同様に、本明細書において説明される方法を用いるエキソビボでの操作の後、これらの細胞は、生着およびインビボでの拡大増殖の促進にとって好ましい状態であり得る。したがって、T細胞、樹状細胞、または造血系統の他の細胞を含む血液細胞を、この回復期の間に採取することが、本発明において企図される。さらに、特定の態様において、動員(例えば、GM-CSFによる動員)およびコンディショニングレジメンを使用して、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生、および/または拡大増殖に好都合である状態を、特に治療後の定められた時間枠の間に対象において作り出すことができる。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞、および免疫系の他の細胞が含まれる。
【0170】
T細胞の活性化および拡大増殖
望ましいCARを発現させるためのT細胞の遺伝子改変の前であろうと後であろうと、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を通常は用いて、活性化および拡大増殖させることができる。
【0171】
通常、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞の表面にある共刺激分子を刺激するリガンドが結合されている表面と接触させることによって、拡大増殖させる。特に、T細胞集団は、例えば、表面に固定された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと組み合わせたプロテインキナーゼC活性化因子(例えばブリオスタチン)との接触によって、本明細書において説明されるように刺激され得る。T細胞の表面のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で、T細胞の集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)が含まれ、当技術分野において一般に公知である他の方法が使用され得るように使用され得る(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998; Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999; Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0172】
特定の態様において、T細胞に対する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、様々なプロトコールによって提供され得る。例えば、各シグナルを提供する作用物質は、溶液中に存在してもよく、または表面に結合されていてもよい。表面に結合される場合、作用物質は、同じ表面に(すなわち、「シス」形態で)または別々の表面に(すなわち、「トランス」形態で)結合され得る。あるいは、一方の作用物質を表面に結合させ、他方の作用物質を溶液中に存在させてもよい。1つの態様において、共刺激シグナルを提供する作用物質は、細胞表面に結合され、一次活性化シグナルを提供する作用物質は、溶液中に存在するかまたは表面に結合される。特定の態様において、両方の作用物質が溶液中に存在することができる。別の態様において、これらの作用物質は、可溶型であり、次いで、表面、例えば、これらの作用物質に結合すると考えられるFc受容体または抗体もしくは他の結合物質を発現する細胞に架橋されてよい。この点に関して、本発明においてT細胞を活性化し拡大増殖させる際に使用するために企図される人工抗原提示細胞(aAPC)については、例えば、米国特許出願公開第20040101519号および同第20060034810号を参照されたい。
【0173】
1つの態様において、2種の作用物質は、同じビーズ、すなわち「シス」、または別々のビーズ、すなわち「トランス」、のいずれかで、ビーズ上に固定される。例として、一次活性化シグナルを提供する作用物質は、抗CD3抗体またはその抗原結合断片であり、共刺激シグナルを提供する作用物質は、抗CD28抗体またはその抗原結合断片であり;両方の作用物質は、同等の分子の量で、同じビーズに共に固定される。1つの態様において、CD4+ T細胞拡大増殖およびT細胞増殖のためにビーズに結合される各抗体について、1: 1の比が使用される。本発明の特定の局面において、ビーズに結合される抗CD3抗体と抗CD28抗体の比は、1:1の比を用いた場合に観察される拡大増殖と比べてT細胞拡大増殖の増加が観察されるように、使用される。1つの特定の態様において、1: 1の比を用いた場合に観察される拡大増殖と比べて、約1~約3倍の増加が観察される。1つの態様において、ビーズに結合されたCD3抗体とCD28抗体の比は、100:1~1:100およびその間のすべての値の範囲にわたる。本発明の1つの局面において、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合されており、すなわち、CD28に対するCD3の比は1未満である。本発明の特定の態様において、ビーズに結合される抗CD28抗体と抗CD3抗体の比は、2:1より大きい。1つの特定の態様において、ビーズに結合される抗体について1:100のCD3:CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合される抗体について1:75のCD3:CD28比が使用される。さらなる態様において、ビーズに結合される抗体について1:50のCD3:CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合される抗体について1:30のCD3:CD28比が使用される。1つの好ましい態様において、ビーズに結合される抗体について1:10のCD3:CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合される抗体について1:3のCD3:CD28比が使用される。さらに別の態様において、ビーズに結合される抗体について3:1のCD3:CD28比が使用される。
【0174】
1: 500~500: 1およびその間の任意の値の、粒子と細胞の比が、T細胞または他の標的細胞を刺激するために使用され得る。当業者が容易に理解できるように、粒子と細胞の比は、標的細胞と比べた粒子サイズに応じて変わり得る。例えば、小さなサイズのビーズは数個の細胞にしか結合できないが、より大きなビーズは多くの細胞に結合できる。特定の態様において、細胞と粒子の比は、1:100~100:1およびその間の任意の整数値の範囲にわたり、さらなる態様において、比は、1:9~9:1およびその間の任意の整数値を含み、T細胞を刺激するためにも使用され得る。T細胞刺激をもたらす、抗CD3結合粒子および抗CD28結合粒子とT細胞との比は、上記のように変動し得るが、特定の好ましい値には、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、および15:1が含まれ、1つの好ましい比は、T細胞1個につき少なくとも1個の粒子という比である。1つの好ましい態様において、1:1またはそれ未満の、粒子と細胞の比が、使用される。1つの特定の態様において、好ましい粒子と細胞との比は1:5である。さらなる態様において、粒子と細胞の比は、刺激を与える日によって、変化させることができる。例えば、1つの態様において、粒子と細胞の比は1日目に1:1~10:1であり、その後、最長で10日間、追加の粒子が毎日または1日おきに細胞に添加され、最終的な比は1:1~1:10である(添加を行う日の細胞数に基づく)。1つの特定の態様において、粒子と細胞の比は、刺激の1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調整される。別の態様において、粒子は、最終的な比が、刺激の1日目に1:1、ならびに3日目および5日目に1:5になるように、毎日または1日おきに添加される。別の態様において、粒子と細胞の比は、刺激の1日目に2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調整される。別の態様において、粒子は、最終的な比が、刺激の1日目に1:1、ならびに3日目および5日目に1:10になるように、毎日または1日おきに添加される。種々の他の比が、本発明における使用に適切であり得ることを、当業者は理解する。具体的には、比は、粒子サイズならびに細胞のサイズおよび型に応じて変化する。
【0175】
本発明のさらなる態様において、T細胞などの細胞は、作用物質でコーティングされたビーズと混合され、その後、ビーズおよび細胞が分離され、次いで、細胞が培養される。代替の態様において、培養の前に、作用物質でコーティングされたビーズおよび細胞は分離されず、一緒に培養される。さらなる態様において、ビーズおよび細胞は、最初に、磁力などの力の適用によって濃縮され、その結果、細胞表面マーカーの連結が増大し、それによって細胞刺激が誘導される。
【0176】
例として、抗CD3および抗CD28が結合された常磁性ビーズ(3×28ビーズ)をT細胞と接触させることによって、細胞表面タンパク質を連結してよい。1つの態様において、細胞(例えば、104~109個のT細胞)およびビーズ(例えば、1: 1の比のDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)を、緩衝液、好ましくはPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価陽イオンを含まない)中で混合する。この場合もやはり、当業者は、任意の細胞濃度が使用され得ることを容易に理解することができる。例えば、標的細胞は、試料中で非常に希少であり試料の0.01%のみを構成してもよく、または試料全体(すなわち100%)が、関心対象の標的細胞を構成してもよい。したがって、任意の細胞数が、本発明の範囲内である。特定の態様において、粒子および細胞が混合される体積を有意に減少させて(すなわち、細胞濃度を高めて)、細胞および粒子の最大限の接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、1つの態様において、約20億個の細胞/mlの濃度が使用される。別の態様において、1億超個の細胞/mlが使用される。さらなる態様において、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらに別の態様において、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様において、1億2500万個または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高濃度を使用することにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞拡大増殖が増大し得る。さらに、高い細胞濃度を使用することにより、関心対象の標的抗原を弱く発現する可能性がある細胞、例えばCD28陰性T細胞を、より効率的に捕捉することが可能になる。このような細胞集団は、治療的価値を有する可能性があり、特定の態様において、これらを得ることが望ましい。例えば、高濃度の細胞を使用することにより、通常はCD28発現が弱めであるCD8+ T細胞を、より効率的に選択することが可能になる。
【0177】
本発明の1つの態様において、混合物は、数時間(約3時間)~約14日間、またはその間の任意の1時間ごとの整数値の期間、培養されてよい。別の態様において、混合物は、21日間培養されてよい。本発明の1つの態様において、ビーズおよびT細胞は、約8日間、一緒に培養される。別の態様において、ビーズおよびT細胞は、2~3日間、一緒に培養される。T細胞の培養期間が60日または60日超であることができるように、数サイクルの刺激もまた、所望される場合がある。T細胞培養に適した条件には、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、およびTNF-α、または当業者に公知である細胞増殖のための他の任意の添加物を含む、増殖および生存能力に必要な因子を含み得る適切な培地(例えば、最小必須培地もしくはRPMI培地1640またはX-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。培地には、RPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(もしくは血漿)もしくは所定のセットのホルモンならびに/もしくはT細胞の増殖および拡大増殖に十分な量のサイトカインが追加されるかのいずれかである。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物中にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物中には含まれない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)下で、維持される。
【0178】
非活性化T細胞または種々の刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を示し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスされた抹消血単核細胞製品は、細胞障害性T細胞集団またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)よりも多いヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有する。CD3受容体およびCD28受容体を刺激することによるT細胞のエクスビボ拡大増殖は、約8~9日目より前には主にTH細胞からなるT細胞集団をもたらし、一方、約8~9日目より後には、T細胞集団は、次第に大きくなるTC細胞集団を含む。したがって、処置の目的に応じて、主にTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが、有利であり得る。同様に、TC細胞の抗原特異的サブセットが単離された場合、このサブセットをより大きな程度まで拡大増殖させることが有益であり得る。
【0179】
さらに、CD4マーカーおよびCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーも、細胞拡大増殖プロセスの過程で、顕著に、しかし大部分は再現可能に、変化する。したがって、このような再現性があることにより、特定の目的のために活性化T細胞製品を適応させる能力を使えるようになる。
【0180】
治療的適用
他の局面において、本発明は、レンチウイルスベクター(LV)または他の適切なベクターによって形質導入された細胞(例えばT細胞)を包含する。例えば、いくつかの態様において、LVは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む本発明のCARをコードし、ここで、該抗原結合ドメインは、富化されたステレオタイプBCRに特異的に結合する。したがって、他の態様において、形質導入されたT細胞は、例えば、リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患における特定の悪性および/または病原性のB細胞クローンに対するCAR媒介性T細胞応答を誘発することができる。
【0181】
本発明は、免疫細胞(例えば初代T細胞)の特異性を、富化されたステレオタイプBCR上に存在する抗原に向け直すための、CARの使用を提供する。したがって、本発明はまた、本発明のCARを発現するT細胞を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において標的B細胞集団に対するT細胞媒介性免疫応答を刺激するための方法を、提供する。
【0182】
1つの態様において、本発明は、免疫細胞(例えばT細胞)がCAR(例えば、VL3-21、VH3-23、およびVH1-69 VH4-34に対するCAR)を発現するように遺伝子改変され、その必要があるレシピエントにCAR免疫細胞(例えばCAR T細胞)が注入される、あるタイプの細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエント中の富化されたステレオタイプB細胞を標的として、例えば、正常なB細胞を保護しつつ、例えば、リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患における悪性または病原性のB細胞クローンを標的とすることが、できる。いくつかの態様において、抗体療法とは異なり、CAR免疫細胞(例えばCAR T細胞)は、インビボで複製し、その結果、長期に存続することができ、これにより、持続的な腫瘍制御をもたらすことができる。
【0183】
1つの態様において、本発明のCAR T細胞は、活発なインビボT細胞拡大増殖を経ることができ、長期間にわたって持続することができる。別の態様において、本発明のCAR T細胞は、任意の新たな腫瘍形成または腫瘍増殖を阻害するように再活性化され得る特異的メモリーT細胞に進化する。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、CAR T細胞は、代理抗原を発現する標的細胞に遭遇し、続いてそれらを排除すると、インビボでセントラルメモリー様状態に分化することができる。
【0184】
処置または予防され得るがんには、血液または骨髄のがんなどの血液がんが含まれる。血液学的(または血行性の)がんの例には、急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病)を非限定的に含む白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩慢型および高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、ならびに骨髄異形成症が含まれる。いくつかの態様において、がんは、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、または脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)である。
【0185】
他の態様において、本発明のCAR細胞(例えばCAR T細胞)は、病原性B細胞(例えば、CLL患者のがん性B細胞)による抗原逃避を低減または排除するために、単独でまたは他の処置と組み合わせて使用される。したがって、1つの態様において、本発明は、その必要がある対象におけるB細胞がんによる抗原逃避を低減または排除するための方法であって、有効量の本明細書において開示される遺伝子改変細胞を対象に投与する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、B細胞がんは、CD19陰性がんである。他の態様において、B細胞がんは、CD19陰性がんである。
【0186】
いくつかの特定のBCR(例えば、VH4-34、VH1-69など)はまた、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、クローン病、ベーチェット病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、および血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)においても、富化されている。例えば、その全体が参照により本明細書にそれぞれ組み入れられる、Bashford-Rogers, R. J. M. et al., Nature, 574(7776):122-1261-29 (2019)およびOstertag, E. M. et al., Transfusion 56:1763-1774 (2016)を参照されたい。いくつかの態様において、CAR T細胞は、B細胞媒介性自己免疫疾患の患者のために開発され得る。他の態様において、自己免疫疾患(例えばCAART)のための他のアプローチと比較した場合のこのアプローチの利点は、本アプローチが、Ab標的タンパク質ではなく、抗原結合ドメイン(例えばscFv)を含むCARを使用するということである。
【0187】
いくつかの態様において、処置または予防され得る自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病(CD)、ベーチェット病(BD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ANCA関連血管炎(AAV)、IgA血管炎(IgAV)、およびIgA血管炎(IgAV)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0188】
本発明のCAR改変T細胞は、単独で、または希釈剤および/もしくは他の構成成分、例えばIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団、と組み合わせた薬学的組成物として、投与されてよい。簡単に説明すると、本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書において説明される標的細胞集団を含み得る。このような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);ならびに保存剤を含んでよい。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与用に製剤化される。
【0189】
本発明の薬学的組成物は、処置(または予防)されるべき疾患に適切な様式で、投与され得る。投与の量および頻度は、患者の病態、ならびに患者の疾患のタイプおよび重症度などの因子に基づいて決定されるが、適切な投薬量は、臨床試験によって決定され得る。
【0190】
「抗がん有効量」、「がん阻害有効量」、または「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、伝染または転移の程度、および病態の個々の差異を考慮して、医師が決定することができる。本明細書において説明されるT細胞を含む薬学的組成物は、104~109個の細胞/kg体重、好ましくは105~106個の細胞/kg体重(これらの範囲内のすべての整数値を含む)の投薬量で投与してよいと、一般に述べることができる。T細胞組成物はまた、これらの投薬量で複数回投与されてもよい。これらの細胞は、免疫療法において一般に公知である注入技術を用いることによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。特定の患者のための最適な投薬量および処置レジメンは、疾患の徴候について患者をモニタリングし、それに応じて処置を調整することによって、医学の当業者が容易に決定することができる。
【0191】
特定の態様において、活性化されたT細胞を対象に投与し、その後に続いて、血液を再採血し(またはアフェレーシスを実施し)、本発明に従って、それに由来するT細胞を活性化し、これらの活性化され拡大増殖させられたT細胞を患者に再注入することが、望ましい場合がある。この手順は、数週間ごとに複数回実施することができる。特定の態様において、T細胞は、10cc~400ccの採取血液から活性化され得る。特定の態様において、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採取血液から活性化される。理論に拘泥するものではないが、この複数回採血/複数回再注入プロトコールを使用することは、T細胞の特定の集団を選択するのに役立ち得る。
【0192】
本発明の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、埋め込み、または移植を含む、任意の簡便な様式で実施され得る。本明細書において説明される組成物は、患者に対して、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、または腹腔内に、投与され得る。1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、皮内注射または皮下注射によって患者に投与される。別の態様において、本発明のT細胞組成物は、好ましくはi.v.注射によって投与される。
【0193】
本発明の特定の態様において、本明細書において説明される方法またはT細胞を治療レベルまで拡大増殖させる当技術分野において公知の他の方法を用いて活性化され拡大増殖させられた細胞が、任意の数の関連する処置様式と併用して(例えば、前、同時、または後に)、患者に投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、プラズマフェレーシス、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノラート、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体もしくは他の抗体治療薬、サイトキシン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および放射線照射と組み合わせて使用され得る。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを使用するT細胞除去療法と併用して(例えば、前、同時、または後に)、患者に投与される。別の態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法の後に投与される。例えば、1つの態様において、対象は、高用量化学療法とそれに続く末梢血幹細胞移植による、標準的な処置を受けてよい。特定の態様において、移植後、対象は、本発明の拡大増殖させた免疫細胞の注入を受ける。付加的な態様において、拡大増殖させた細胞は、手術の前または後に投与される。
【0194】
患者に投与される上記の処置薬の投薬量は、処置される病態の正確な性質および処置のレシピエントによって変わる。ヒト投与のための投薬量のスケーリングは、当技術分野で受け入れられている慣例に従って実施することができる。
【0195】
本明細書において言及または引用される論文、特許、および特許出願、ならびに他のすべての文書および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の各刊行物が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示される場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。出願者は、任意のそのような論文、特許、特許出願、または他の物理的文書および電子的文書に由来するありとあらゆる資料および情報を、本出願に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0196】
本発明を、その特定の態様に関連して説明したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、かつ均等物は代用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。本明細書において開示される態様の範囲から逸脱することなく、適切な均等物を用いて、本明細書において説明される方法の他の適切な修正および改変が行われ得ることは、当業者に容易に明らかになると考えられる。さらに、個々の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの1つまたは複数の段階を本発明の目的、精神、および範囲に適応させるために、多くの修正が施されてもよい。このような修正はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲内にあることが意図される。ここまで、特定の態様を詳細に説明したが、以下の実施例を参照することにより、同じことがより明確に理解されるであろう。実施例は、例証のためにのみ含まれ、限定することを意図していない。
【実施例】
【0197】
実験例
以下の実験例を参照することによって、本発明を詳細にさらに説明する。これらの実施例は、例証のために提供されるにすぎず、別段の定めがない限り、限定することを意図していない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されると解釈されるべきでは決してなく、正しくは、本明細書において提供される教示の結果として明らかになる任意およびすべての変形例を包含すると解釈されるべきである。
【0198】
さらなる説明がなくても、当業者は、前述の説明および以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製および利用し、特許請求の範囲の方法を実践することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい態様を具体的に示し、開示の残りの部分を何らかの方法で限定するものとして解釈されるべきではない。
【0199】
実施例1
抗IGLV3-21 R110 BCR CAR T細胞、抗IGHV1-69 BCR CAR T細胞、および抗IGHV4-34 BCR CAR T細胞は、それぞれ、VL3-21 R110 BCR、VH1-69 BCR、およびVH4-34 BCRを発現するリンパ腫細胞を特異的に死滅させる
内因性BCRを枯渇させたJeko1細胞を作製し、適切なベクターを用いてこれらに形質導入して、以下の個々の富化されたステレオタイプBCRを発現させた:VL3-21 R110 BCR(「Jeko1 VL3-21*」)、VH1-69(「Jeko1 VH1-69」)、またはVH4-34(「Jeko1 VH4-34」)。内在性BCRを有するJeko1細胞(「Jeko1 WT BCR」)およびCD19ノックアウト細胞(「Jeko1 CD19KO」)を、対照とした。
【0200】
抗IGLV3-21 R110 BCR CAR T細胞(「CART3-21*」)は、VL3-21 R110に特異的に結合するscFv(SEQ ID NO: 35)、CD8ヒンジ(SEQ ID NO: 54)、CD8膜貫通ドメイン(SEQ ID NO: 51)、共刺激分子4-1 BBの細胞内ドメイン(SEQ ID NO: 59)、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO: 56)を含む、SEQ ID NO: 47のアミノ酸配列を含むCAR抗IGLV3-21 R110 BCR CAR-T細胞を発現させるために、
図5に示されるpTRPE AVA L2H CARベクターによってT細胞に形質導入することによって、調製した。
【0201】
抗IGHV1-69 BCR CAR T細胞(「CART1-69」)を調製しようとする場合は、ベクターpTRPE AVA L2H CARのCARをコードする配列を、SEQ ID NO: 50のCARをコードする配列で置き換え、T細胞に形質導入して、抗IGHV1-69 BCR CAR-T細胞(「CART1-69」)を得た。
【0202】
抗IGHV4-34 BCR CAR T細胞(「CART4-34」)を調製しようとする場合は、ベクターpTRPE AVA L2H CARのCARをコードする配列を、SEQ ID NO: XのCARをコードする配列で置き換え、T細胞に形質導入して、抗IGHV4-34 BCR CAR-T細胞(「CART4-34」)を得た。
【0203】
抗IGHV3-23 BCR CAR T細胞(「CART3-23」)を調製しようとする場合は、ベクターpTRPE AVA L2H CARのCARをコードする配列を、SEQ ID NO: XのCARをコードする配列で置き換え、T細胞に形質導入して、抗IGHV3-23 BCR CAR-T細胞(「CART3-23」)を得た。抗CD19 CAR T細胞(「CART19」)および非形質導入T細胞(「UTD」)を、それぞれ、陽性対照および陰性対照とした。
【0204】
各Jeko1細胞(Jeko1 WT BCR、Jeko1 VL3-21*、Jeko1 VH1-69、Jeko1 VH4-34、Jeko1 CD19KO)の細胞障害性を、細胞を形質導入T細胞または非形質導入T細胞と共培養した後に測定した。これを
図6に示している。抗IGLV3-21 R110 BCR CAR-T細胞を形質導入したT細胞(「CART3-21*」)は、他の細胞は温存する一方、VL3-21 R110 BCRを発現するJeko1 VL3-21*細胞を特異的に死滅させ、(
図6、上のグラフ)、CART3-21* T細胞は、Jeko1 VL3-21細胞に特異的に応答して、時間とともに増殖する(
図6、下のグラフ)。抗IGHV1-69 BCR CAR T細胞を形質導入したT細胞(CART1-69)は、他の細胞は温存する一方、VH1-69 BCRを発現するJeko1 VH1-69細胞を特異的に死滅させ、CART1-69 T細胞は、Jeko1 VH1-69細胞に特異的に応答して、時間とともに増殖する。抗IGHV4-34 BCR CAR T細胞を形質導入したT細胞は、他の細胞は温存する一方、VH4-34 BCRを発現するJeko1 VH4-34細胞を特異的に死滅させ、CART4-34 T細胞は、Jeko1 VH4-34細胞に特異的に応答して、時間とともに増殖する。
【0205】
列挙された態様
下記に列挙される態様を提供するが、これらの番号は、重要度を示すものとして解釈されるべきではない。
【0206】
態様1は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、該抗原結合ドメインが、B細胞受容体(BCR)に特異的に結合する、前記キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
態様2は、前記抗原結合ドメインが抗体またはその抗原結合断片である、態様1のCARを提供する。
態様3は、前記抗原結合断片が、単鎖可変断片(scFv)、抗原結合性断片(Fab)、または単一ドメイン抗体である、態様1または2のCARを提供する。
態様4は、前記抗原結合断片がscFvである、態様1~3のいずれか一つのCARを提供する。
態様5は、前記富化されたステレオタイプBCRが、B細胞または形質細胞上の膜結合タンパク質である、態様1~4のいずれか一つのCARを提供する。
態様6は、前記富化されたステレオタイプBCRが、SEQ ID NO: 13~17、18~20、および21~24のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 13~17、18~20、および21~24のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~5のいずれか一つのCARを提供する。
態様7は、前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO: 25~30、31~33、37~39、および43~48のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 25~30、31~32、35~36、39~42、64、66、68、69、76、78、80、および81のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~6のいずれか一つのCARを提供する。
態様8は、前記膜貫通ドメインがCD8膜貫通ドメインを含む、態様1~7のいずれか一つのCARを提供する。
態様9は、前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO: 51のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 51に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~8のいずれか一つのCARを提供する。
態様10は、前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、態様1~9のいずれか一つのCARを提供する。
態様11は、前記細胞内シグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO: 56のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 56に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~10のいずれか一つのCARを提供する。
態様12は、共刺激分子の細胞内ドメインをさらに含む、態様1~11のいずれか一つのCARを提供する。
態様13は、前記共刺激分子が4-1BBである、態様12のCARを提供する。
態様14は、前記細胞内ドメインが、SEQ ID NO: 59のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 59に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様12または13のCARを提供する。
態様15は、CD8アルファヒンジをさらに含む、態様1~14のいずれか一つのCARを提供する。
態様16は、前記CD8アルファヒンジが、SEQ ID NO: 54のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 54に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様15のCARを提供する。
態様17は、CD8シグナルペプチドをさらに含む、態様1~16のいずれか一つのCARを提供する。
態様18は、前記CD8シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 63のアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 63に示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様17のCARを提供する。
態様19は、SEQ ID NO: 47~50のいずれか1つに示されるアミノ酸配列;またはSEQ ID NO: 47~50および72~75のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~14のいずれか一つのCARを提供する。
態様20は、態様1~19のいずれか一つのCARをコードする核酸配列を含む、核酸分子を提供する。
態様21は、態様20の核酸を含む、ベクターを提供する。
態様22は、態様1~21のいずれか一つのCARを含む、遺伝子改変された細胞を提供する。
態様23は、前記細胞がヒトT細胞である、態様22の遺伝子改変された細胞を提供する。
態様24は、態様1~19のいずれか一つのCAR、態様20の核酸分子、態様21のベクター、または態様22もしくは23の遺伝子改変された細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。
態様25は、その必要がある対象において富化されたステレオタイプB細胞を特異的に排除するための方法であって、態様23または23の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法を提供する。
態様26は、その必要がある対象において血液がんを処置または予防するための方法であって、態様22または23の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法を提供する。
態様27は、前記血液がんが白血病である、態様26の方法を提供する。
態様28は、前記血液がんが、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、または慢性リンパ性白血病である、態様26または27の方法を提供する。
態様29は、その必要がある対象において自己免疫疾患を処置または予防するための方法であって、態様22または23の遺伝子改変された細胞の有効量を該対象に投与する段階を含む、前記方法を提供する。
態様30は、前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病(CD)、ベーチェット病(BD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ANCA関連血管炎(AAV)、IgA血管炎(IgAV)、またはIgA血管炎(IgAV)である、態様29の方法を提供する。
態様31は、前記対象がヒトである、態様25~30のいずれか一つの方法を提供する。
態様32は、その必要がある対象における血液がんまたは自己免疫疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、態様22または23の遺伝子改変された細胞の使用を提供する。
【0207】
本明細書において言及または引用される論文、特許、および特許出願、ならびに他のすべての文書および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の各刊行物が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示される場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。出願者は、任意のそのような論文、特許、特許出願、または他の物理的文書および電子的文書に由来するありとあらゆる資料および情報を、本出願に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0208】
特定の態様を参照して本発明を開示したが、本発明の他の態様および変形が、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような態様および等価な変形すべてを含むと解釈されるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】