(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】治療用パピローマウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/37 20060101AFI20240903BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/025 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240903BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240903BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240903BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240903BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240903BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240903BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240903BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240903BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240903BHJP
A61K 39/39 20060101ALN20240903BHJP
A61K 47/46 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C12N15/37 ZNA
C12N15/86 Z
C07K14/025
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
A61P31/20
A61P35/00
A61P15/08
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K48/00
A61K45/00
A61K33/243
A61K35/761
A61K35/76
A61K39/12
A61K35/17
A61P11/02
A61K39/39
A61K47/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510296
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073016
(87)【国際公開番号】W WO2023021116
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513165908
【氏名又は名称】シリオン・バイオテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】521129303
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート レーゲンスブルク
(71)【出願人】
【識別番号】524062375
【氏名又は名称】インプロセア・アンパーツセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】InProTher Aps
(71)【出願人】
【識別番号】524062386
【氏名又は名称】プロバイオジェン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ProBioGen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ティリオン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペルトゥル,コルドゥラ
(72)【発明者】
【氏名】カルラス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ザンディヒ,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト,ペーター ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ラーベク ボイレセン,ディッテ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ネッカーマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アスバッハ,ベネディクト
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB25
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC07
4B065CA44
4B065CA45
4C076BB11
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE57
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA341
4C084ZA811
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB331
4C084ZC751
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4C085FF11
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4C086NA05
4C086ZA34
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4C086ZB33
4C086ZC75
4C087AA01
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4C087BC83
4C087CA12
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4C087ZA34
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4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、パピローマウイルスタンパク質E1、E6、およびE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸分子が、単一のポリタンパク質をコードする、核酸に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パピローマウイルスタンパク質E1、E6、およびE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸分子が、単一のポリタンパク質をコードする、核酸。
【請求項2】
パピローマウイルスタンパク質E2をコードする核酸配列をさらに含むか、またはさらにそれからなる、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記タンパク質をコードする核酸の順序が、5’から3’へと、
(a)E2が存在する範囲で、
(i)E1、E2、E6、E7;もしくは
(ii)E1、E6、E7、E2;
または
(b)E1、E6、E7
である、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
パピローマウイルスタンパク質E6および/またはE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸配列が、点突然変異および/または欠失によって、野生型対応物と比較して改変されており、前記点突然変異および/または欠失が、
(i)軟寒天アッセイにおいて形成されるコロニーを消失させ;かつ
(ii)前記改変タンパク質E6およびE7が、それぞれの野生型タンパク質の予測エピトープの少なくとも70%の予測高親和性エピトープ(IC50<50nM)、および少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも58%の予測低親和性エピトープ(50nM<IC50<5μM)を維持する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
前記パピローマウイルスが、霊長類パピローマウイルス、好ましくは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、例えば、HPV16、HPV18、HPV45、HPV31、HPV33、HPV35、HPV52、HPV58、HPV6およびHPV11、より好ましくは、HPV16もしくはHPV18、またはマカクパピローマウイルス、好ましくは、MfPV3である、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
コードされるタンパク質中に野生型と比較して以下の改変のみが存在し:
(iii)E6において:野生型E6に含まれるPDZドメインによって媒介される相互作用を低減または消失させる改変;および
a.HPV16 E6において:L117X
1;
b.HPV18 E6において:L112X
1;
c.MfPV3 E6において:L110X
1;
ならびに
(iv)E7において:
a.HPV16 E7において:C24X
2、L67X
3、およびC91X
4;
b.HPV18 E7において:C27X
2、L74X
3、およびC98X
4;
c.MfPV3 E7において:C24X
2、L71X
3、およびC95X
4;
ここで、X
1~X
4は、独立して、それらが置換するそれぞれのアミノ酸とは異なるタンパク質原性アミノ酸である、
請求項4または5に記載の核酸。
【請求項7】
前記核酸が、HPV16 E7におけるD21X
5およびC58X
6、HPV18 E7におけるD24X
5およびC65X
6、ならびにMfPV3 E7におけるD21X
5およびC62X
6をコードする一方または両方の突然変異をさらに含み、ここで、X
5およびX
6は、独立して、それらが置換するそれぞれのアミノ酸とは異なるタンパク質原性アミノ酸である、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
(i)X
1が、Q、Y、およびNから選択され、好ましくは、Qであり;
(ii)X
2が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;
(iii)X
3が、R、K、およびHから選択され、好ましくは、Rであり;
(iv)X
4が、A、G、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Aであり;
(v)X
5が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;
(vi)X
6が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;ならびに/あるいは
(vii)PDZドメインによって媒介される相互作用を低減もしくは消失させる前記改変が、1~10のC末端アミノ酸の欠失、好ましくは、C末端からカウントされる1~10のC末端アミノ酸の欠失、より好ましくは、HPV16 E6におけるΔETQL、HPV18 E6におけるΔETQV、およびMfPV3 E6におけるΔETEVであるか;または前記改変が、10個、好ましくは、4個のC末端アミノ酸を伴う1個、2個、3個もしくは4個の点突然変異である、請求項6または7に記載の核酸。
【請求項9】
前記ポリタンパク質におけるCys残基の総数が、偶数である、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項10】
前記数が、その他偶数ではない場合、
(ii)a.C300X
7突然変異を有するHPV16 E2;
b.C301X
7突然変異を有するHPV18 E2;もしくは
c.C297X
7突然変異を有するMfPV3 E2
をコードする配列が、
E2をコードする配列として前記核酸に含まれ、ここで、X
7は、C以外のタンパク質原性アミノ酸であり、好ましくは、A、S、G、M、T、Y、Q、N、V、L、I、F、W、H、K、R、Q、N、およびPから選択され、より好ましくは、Aであり;
または(iii)Cysをコードするコドンが、前記核酸に挿入される、
請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
前記核酸が、遺伝子アジュバント、好ましくは、T細胞アジュバントMHC-II会合不変鎖をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記不変鎖が、
(i)1回存在し、第1のEタンパク質をコードする配列に先行するか;または
(ii)2回存在し、1つのコピーが、第1のEタンパク質をコードする配列に先行し、第2のコピーが、E6をコードする配列、もしくは存在する範囲で、E2をコードする配列に先行する、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記核酸が、
(i)DNA;
(ii)プラスミド;または
(iii)RNA、好ましくは、mRNA
である、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記核酸が、Tetオペレーターを含む非翻訳5’末端を含む、請求項13(i)に記載の核酸。
【請求項15】
前記核酸が、自己切断ペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、自己切断ペプチドをコードする前記核酸配列が、
(i)遺伝子アジュバントをコードする少なくとも1つの核酸配列に先行するか;または
(ii)パピローマウイルスタンパク質をコードする2つの核酸配列間にかつそれに近接して位置する、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
隣接している核酸配列が、10個以下のアミノ酸長、例えば、2、3、4、または5個のアミノ酸である可撓性リンカーをコードする配列によって、1つ、複数、またはすべての場合において接続され、ここで、GSおよびGCSが、好ましいリンカーである、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸を含むウイルスベクター。
【請求項18】
前記ベクターが、DNAウイルスベクター、好ましくは、
(i)アデノウイルスベクター、好ましくは、アデノウイルスE1およびE3コード配列に関して欠損しているアデノウイルスベクターであって、前記ベクターが、より好ましくは、Ad19a/64、Ad5、線維置換を有するAd5、例えば、Ad5F35、Ad26、Chimp63、もしくはchAdOx1である、アデノウイルスベクター;または
(ii)ポックスウイルスベクター、好ましくは、MVA、MVA-CR19、SCV、ワクシニア、もしくはFowlpox
である、請求項17に記載のウイルスベクター。
【請求項19】
先行する請求項のいずれかに記載の核酸もしくはベクターによってコードされるポリタンパク質、またはそれに由来する切断産物。
【請求項20】
(i)請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸;
(ii)請求項17もしくは18に記載のベクター;
(iii)請求項19に記載のポリタンパク質もしくはその切断産物;または
(iv)(i)の核酸もしくは(ii)のベクターで形質導入された細胞であって、好ましくは、前記細胞が、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)の細胞および/もしくは樹状細胞、または単球である、細胞
を含むか、またはそれからなる医薬組成物、好ましくは、ワクチン。
【請求項21】
前記ベクター、前記核酸、前記ポリタンパク質または前記細胞が、薬学的に活性な作用物質のみである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、2つ以上の薬学的に活性な作用物質を含み、第2の薬学的に活性な作用物質が、
(i)請求項1~16のいずれか一項に記載の第2の核酸;
(ii)請求項17または18に記載の第2のベクター;
(iii)請求項19に記載の第2のポリタンパク質または切断産物;
(iv)請求項20(iv)に定義される第2の細胞;
(v)タンパク質ベースワクチン、好ましくは、パピローマウイルスに対するタンパク質ベースワクチン;および
(vi)化学療法薬、好ましくは、シスプラチン
から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が、
(i)請求項18(i)に定義されるアデノウイルスベクター;および
(ii)請求項18(ii)に定義されるポックスウイルスベクター
である2つの薬学的に活性な作用物質を含み、
前記2つの薬学的に活性な作用物質が、好ましくは、任意の順序でまたは同時に、好ましくは、前記アデノウイルスベクターを含む前記医薬組成物後、好ましくは、少なくとも4週間経過した後に、前記ポックスウイルスベクターを含む医薬組成物が投与され得る2つの医薬組成物として調合される、請求項22(ii)に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬における使用のための、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸、ベクター、ポリタンパク質または細胞。
【請求項25】
前記ワクチンが、治療用ワクチンである、請求項20に記載のワクチン。
【請求項26】
パピローマウイルス感染、低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)、高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)、鼻ポリープ、またはパピローマウイルス関連悪性状態、例えば、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、および口腔咽頭扁平上皮細胞癌(OPSCC)を処置または予防する方法における使用のための、先行する請求項のいずれかに記載の核酸、ベクター、ポリタンパク質、細胞またはワクチン。
【請求項27】
T細胞を刺激および/または拡大増殖するインビトロまたはエクスビボの方法であって、前記方法が、インビトロまたはエクスビボで、T細胞を、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸、ベクター、またはポリタンパク質と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パピローマウイルスタンパク質E1、E6、およびE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸分子が、単一のポリタンパク質をコードする、核酸に関する。
【0002】
本明細書において、特許出願および製造業者のマニュアルを含む多くの文献が引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連すると考えられないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、すべての言及される文献は、それぞれ個々の文献が、参照により組み込まれることが具体的および個々に示されたかのような同じ程度まで、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
子宮頸部病変のための効果的な予防用ワクチンおよびスクリーニングする可能性にもかかわらず、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染は、今もなお、2020年に世界中で340,000超の子宮頸がん関連死の原因であった[Sung, H. et al., Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries, CA: A Cancer Journal for Clinicians, 71(3), 209-249, 2001]。
【0004】
これらの症例の85%超は、中および低所得国で起こった(Haghshenas, M. et al. Prevalence and type distribution of high-risk human papillomavirus in patients with cervical cancer: a population-based study. Infect. Agent. Cancer 8, 20, 2013)。現在、ワクチンが標的にするHPV型に対するほぼ完全な保護を提供する3つの承認された予防用ワクチンが存在するが、それにもかかわらず、ワクチン接種は、不完全である(Brotherton, J. M. L., Zuber, P. L. F. & Bloem, P. J. N. Primary Prevention of HPV through Vaccination: Update on the Current Global Status. Curr. Obstet. Gynecol. Rep. 5, 210-224, 2016)。また、これらのワクチンは、それらが、感染した基底層細胞および子宮頸がん細胞において発現されない主要カプシドタンパク質L1を標的にするので、以前に感染した細胞の根絶をもたらさない(Lehtinen, M. et al. Overall efficacy of HPV-16/18 AS04-adjuvanted vaccine against grade 3 or greater cervical intraepithelial neoplasia: 4-year end-of-study analysis of the randomised, double-blind PATRICIA trial. Lancet. Oncol. 13, 89-99, 2012;Hildesheim, A. et al. Effect of human papillomavirus 16/18 L1 viruslike particle vaccine among young women with preexisting infection: a randomized trial. JAMA 298, 743-753, 2007;Schiller, J. T., Castellsague, X. & Garland, S. M. A review of clinical trials of human papillomavirus prophylactic vaccines. Vaccine 30 Suppl 5, F123-38; 2012;Hung, C.-F., Ma, B., Monie, A., Tsen, S.-W. & Wu, T.-C. Therapeutic human papillomavirus vaccines: current clinical trials and future directions. Expert Opin. Biol. Ther. 8, 421-439, 2008)。そのため、治療用ワクチンなどの新規介入が所望されている。
【0005】
ほとんどのHPV感染は、数か月以内に自然に排除されるが、一部は数年間持続する(Ho, G. Y., Bierman, R., Beardsley, L., Chang, C. J. & Burk, R. D. Natural history of cervicovaginal papillomavirus infection in young women. N. Engl. J. Med. 338, 423-428, 1998)。これらは、低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)に進行し得、これは、さらに、高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)および子宮頸がんに進行し得る。ウイルスタンパク質の発現パターンは、SILの進行の間に変化する:LSILにおいて、主に、初期タンパク質E1/E2が発現されるが、HSILおよび形質転換細胞において、E6/E7が高度に発現され、E2発現は低いまたは存在しない(Xue, Y. et al. HPV16 E2 is an immediate early marker of viral infection, preceding E7 expression in precursor structures of cervical carcinoma. Cancer Res. 70, 5316-5325, 2010;Chang, L., He, X., Yu, G. & Wu, Y. Effectiveness of HPV 16 viral load and the E2/E6 ratio for the prediction of cervical cancer risk among Chinese women. J. Med. Virol. 85, 646-654, 2013)。
【0006】
SILの多くの症例において、しかしながら、自然退縮が、CD4+およびCD8+ T細胞浸潤の結果として起こる(Hibma, M. H. The Immune Response to Papillomavirus During Infection Persistence and Regression. The Open Virology Journal vol. 6, 2012)。CD4+ T細胞が、LSILの間質において見出されるCD4:CD8比の増加による病変退縮において主要な役割を果たすことが示されている(Monnier-Benoit, S. et al. Immunohistochemical analysis of CD4+ and CD8+ T-cell subsets in high risk human papillomavirus-associated pre-malignant and malignant lesions of the uterine cervix. Gynecol. Oncol. 102, 22-31, 2006)。遺伝学的研究は、慢性感染およびがんについての抵抗性および感受性の遺伝子座が、MHC II領域においてクラスター化することを示している。さらにまた、HPV16+子宮頸がん患者は、E2およびE6に対するメモリーCD4+ Tヘルパー応答を損なっており、これは、進行の予防および病変の排除におけるT細胞応答の重要な役割を強調する(Brotherton et al, 2016;Lehtinen et al, 2012;Hildesheim et al, 2007;Schiller et al, 2012;Hung et al, 2008;Ho et al, 1998;Xue et al, 2010;Chang et al, 2013;Hibma, 2012;Monnier-Benoit et al, 2006;de Jong, A. et al. Human Papillomavirus Type 16-Positive Cervical Cancer Is Associated with Impaired CD4+ T-Cell Immunity against Early Antigens E2 and E6. Cancer Res. 64, 5449 LP - 5455; 2004;Woo, Y. L. et al. A prospective study on the natural course of low-grade squamous intraepithelial lesions and the presence of HPV16 E2-, E6- and E7-specific T-cell responses. Int. J. cancer 126, 133-141, 2010;Ragonnaud, E., Pedersen, A. G. & Holst, P. J. Breadth of T Cell Responses After Immunization with Adenovirus Vectors Encoding Ancestral Antigens or Polyvalent Papillomavirus Antigens. Scand. J. Immunol. 85, 182-190, 2017;Dillon, S. et al. Resolution of cervical dysplasia is associated with T-cell proliferative responses to human papillomavirus type 16 E2. J. Gen. Virol. 88, 803-813, 2007)。HPVに曝露された小児が、感染の排除後にE2特異的T細胞応答を有することも報告された[Koskimaa, H. M. et al. Human papillomavirus 16-specific cell-mediated immunity in children born to mothers with incident cervical intraepithelial neoplasia (CIN) and to those constantly HPV negative. J. Transl. Med. 13, 1-11, 2015]。それにもかかわらず、治療用HPVワクチンに対する現在の研究は、疾患のHSILおよびがん段階に主に集中し、癌遺伝子ウイルスタンパク質E6およびE7に向けられている(Hung et al, 2008)。しかしながら、発癌前の感染を標的にすることは、がん処置に関連する罹患率および苦痛を低減する観点から有利であり、達成がより容易である可能性がある。そのため、前がん性感染を標的にするために、他の初期タンパク質が、抗原として含まれていなければならない。
【0007】
前臨床状況における持続性HPV感染を研究するための好適な動物モデルは存在しないが、カニクイザル(Macaca fascicularis)パピローマウイルス3型(MfPV3)は、HPV16と系統発生的および表現型的に密接な関係がある(Ragonnaud et al, 2017; Chen, Z. et al. Non-human Primate Papillomaviruses Share Similar Evolutionary Histories and Niche Adaptation as the Human Counterparts. Front. Microbiol. 10, 2093, 2019)。このウイルスによる自然に起こる感染は、長期間の持続、および繁殖中の雌カニクイザルの子宮頸部における少なくともLSIL様病変に関連し、それらを理想的な非ヒト霊長類(NHP)動物モデルにする[Chen, Z. et al. Genomic diversity and interspecies host infection of alpha12 Macaca fascicularis papillomaviruses (MfPVs). Virology 393, 304-310, 2009;Wood, C. E., Chen, Z., Cline, J. M., Miller, B. E. & Burk, R. D. Characterization and Experimental Transmission of an Oncogenic Papillomavirus in Female Macaques. J. Virol. 81, 6339-6345 (2007)]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術不足の観点から、本発明の根底にある技術的課題は、パピローマウイルスの根絶、ならびにパピローマウイルス関連障害の予防および治療のための改善された手段および方法の提供において見ることができる。この技術的課題は、含まれる特許請求の範囲の主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、パピローマウイルスタンパク質E1、E6、およびE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸分子が、単一のポリタンパク質をコードする、核酸を提供する。
【0010】
第1の態様に従う核酸は、3つのパピローマウイルスタンパク質をコードする配列の存在を必要とする。正確に3つまたは正確に4つのいずれかのパピローマウイルスタンパク質がコードされることが好ましい。第4のタンパク質がコードされる範囲で、パピローマウイルスタンパク質のEファミリーのさらなるタンパク質、特に、E2が好ましい。好ましいパピローマウイルス種および株は、下記にさらに開示される。ヒトパピローマウイルス16(HPV16)が特に好ましい。
【0011】
本発明に従って、対応する全長または実質的に全長タンパク質をコードするコード配列が用いられる。3つまたは4つの全長タンパク質をコードする配列の共存は、第1の態様の核酸または前記核酸を含むベクターもしくはプラスミドでワクチン接種された生物における多数の免疫原性エピトープの提示を提供する。本明細書において使用される「実質的に全長」という用語は、最大で20個、最大で15個、最大で10個、または最大で9、8、7、6、5、4、3個、または最大で2個、または1個のアミノ酸の適宜の非存在を指す。好ましくは、これらの欠失は、C末端、N末端、および/または欠失が、免疫原性エピトープを除去しないか、もしくは、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の他の部分に存在するエピトープの免疫原性に影響を及ぼさない領域にある。前記欠失が、パピローマウイルスタンパク質の発癌可能性を低減することが特に好ましい。後者の好ましい実施形態は、下記にさらに詳述する(E6のC末端改変)。さらにまた、「実質的に全長」が、E6のみに適用されるが、E1、E7、および存在する範囲でE2は、全長であることが好ましい。
【0012】
免疫応答、例えば、3つ以上、好ましくは、4つの異なる全長タンパク質に対するT細胞は、パピローマウイルス感染およびそれらに関連する障害に対する相乗的活性を現す。特に、E1/E2特異的細胞免疫の成功裏の刺激は、LSIL段階における感染を主に排除するが、E6/E7特異的応答は、HSILおよびがん段階を主に標的にする。
【0013】
本発明のさらなる利点には、パピローマウイルス感染を完全に根絶する驚くべき能力、ならびに予防的だけではなく、治療的な目的のための前記核酸の有用性が含まれる。これは、パピローマウイルスの発癌可能性の観点から、特に有利である。
【0014】
注目すべきは、これは、優れた性能を提供する、本発明のワクチンにおける3つ、好ましくは、4つの全長抗原の共存だけではなく、特にベクターにおけるそれらの特定の順序である。驚くべきことに、本発明の順序から逸脱した順序は、4つすべての抗原の適したエピトープ提示を保証しない。言い換えれば、本発明は、抗原の数を拡大することに関するだけでなく、特に、本明細書に定義されるそれらの順序に関する。
【0015】
全長コード配列を使用するアプローチは、全長タンパク質とは対照的に、断片のみをコードする配列を用いる先行技術のワクチンよりも優れている。特に、3つまたは4つの全長ウイルスタンパク質の同時発現から生じる相乗効果は、とりわけ提供される多数の免疫原性エピトープのせいで、複数のタンパク質の断片のみの併用よりも優れている。他方で、多くの場合における免疫化のための全長タンパク質の使用は、発癌可能性を有するタンパク質が前記タンパク質中にある範囲で、さらなる尺度を必要とするであろう。そのような尺度は、下記にさらに開示されるある特定の実施形態の対象である。
【0016】
予想外の優れた性能は、本明細書に含まれる実施例によって証拠付けられる。
図17に示され、実施例4において論じられるように、本発明に従うコンストラクト(抗原の数およびそれらの順序の両方によって特徴付けられる)は、2つの抗原のみを含むコンストラクトよりも顕著に優れている。
図17Aは、腫瘍容量の低減の劇的な改善を示し、
図17Bは、生存の観点からの大きな改善を示す。
【0017】
またさらに、持続性HPV感染の事例において、T細胞の消耗が起こり得ることが公知である。そのような状況下で、T細胞応答は低減する。実施例3に示されるように、本発明のコンストラクトは、持続性HPV感染およびT細胞消耗を患っている非ヒト霊長類における免疫応答を引き起こすことができる。これは、本発明のコンストラクトが、ワクチンおよび治療用ワクチンとして有用であり、優れていることを示す、さらなる驚くべき知見である。
【0018】
本発明のパピローマウイルス抗原、すなわち、E1、E6、E7、および存在する範囲でE2は、単一のポリタンパク質として、本発明の核酸によってコードされる。言い換えれば、それらについてのコード配列は、単一のオープンリーディングフレームの部分である。「ポリタンパク質」という用語は、前記抗原の融合物、より具体的には、それぞれのタンパク質の配列間の介在アミノ酸なしの直接融合物を含む。「ポリタンパク質」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸が、2つの隣接しているタンパク質の配列間に挿入されるか、またはほとんどのN末端Eタンパク質のN末端に置かれるか、またはほとんどのC末端Eタンパク質のC末端に置かれる、タンパク質も包含する。そのような挿入配列の好ましい実行は、下記に示され、特定の機能、例えば、アジュバント機能もしくは自己切断機能を提供するように、および/または近接するタンパク質間の構造的干渉を回避するように働き得る。後者の論点は、抗原をコードする核酸配列間に位置する短い可撓性リンカーをコードする配列によって対処され得る。
【0019】
本発明の核酸によってコードされる単一のポリタンパク質の概念は、そのようなポリタンパク質が、翻訳の間または翻訳完了したら、1超のタンパク質分子を生じることを排除するものではない。後者は、特に、前記パピローマウイルスタンパク質に加えて、自己切断ペプチドがコードされる、本発明の核酸の実施形態に適用される。
【0020】
「核酸」という用語は、ヌクレオチドの重縮合体を指す。ポリメラーゼおよび/またはリボソームによって認識およびプロセシングされる核酸が好ましい。好ましい実行は、DNAおよびRNAであり、詳細について、下記をさらに参照されたい。あまり好ましくないが、「核酸」という用語は、1つまたは複数の改変ヌクレオチドを含む重縮合体にも拡張される。ヌクレオチド中の改変の部位は、当技術分野において周知の部位、すなわち、糖、リン酸および塩基である。それに関する好ましい改変は、2’改変、例えば、2’OMeを含む2’O-アルキル、および2’Fなどの2’ハロゲン置換である。好ましいリン酸改変は、チオリン酸を含む。好ましい改変塩基は、シュードウリジンであり、例えば、Nance and Meier, ACS Cent Sci. 2021 May 26; 7(5): 748-756を参照されたい。改変塩基、糖および/またはリン酸改変は、RNAワクチン、すなわち、本発明の核酸が、RNAとして実行される文脈において特に好ましい。
【0021】
パピローマウイルスタンパク質のEファミリーは、ウイルスのライフサイクルにおいて「初期」と称されるタンパク質である。機能的な用語では、E1は、酵素機能を有し、これは、ATP依存性ヘリカーゼであり、例えば、Bergvall et al., Virology 2013 Oct;445(1-2):35-56を参照されたい。E6は、静止している細胞において細胞分裂を誘導することができる。これは、アポトーシスおよび免疫応答を阻害し、例えば、Vande Pol and Klingelhutz, Virology 2013 Oct;445(1-2):115-37を参照されたい。E7と一緒に、これは、形質転換効果を有する。E7は、ウイルスゲノム(例えば、Roman and Munger, Virology 2013 445: 138-68を参照されたい)、およびE6と一緒に、形質転換細胞の複製に関与する。
図9は、野生型Eタンパク質の本発明の好ましいEタンパク質との複数の配列アライメントを示す。
【0022】
好ましい実施形態において、前記核酸は、パピローマウイルスタンパク質E2をコードする核酸配列をさらに含むか、またはそれからさらになる。
【0023】
E2は、多機能性であり、ゲノムの複製および転写に主に関与し、例えば、McBride, Virology. 2013 Oct;445(1-2):57-79を参照されたい。
【0024】
「からさらになる」という用語は、先行する態様または実施形態のクローズドの列挙を指し、例示的に挙げられた特徴の追加によって、前記クローズドの列挙の拡張を提供し、ここで、列挙は、クローズドのままであり、前記の明示的に挙げられた追加の特徴によって拡大される前記先行する態様または実施形態の特徴に限られる。
【0025】
注目すべきは、さらなる抗原としてE2を加えることにより、免疫応答は損なわれず、例えば、実施例4および
図10を参照されたい。
【0026】
本発明に従う抗原配列は、以下の配列表に示される:
【0027】
MfPV3のE1、E2、E6およびE7のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、4、6、および8に示される。
【0028】
HPV16のE1、E2、E6およびE7のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号10、12、14、および16に示される。
【0029】
HPV18のE1、E2、E6およびE7のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号18、20、22、および24に示される。
【0030】
これらのタンパク質についてのコード核酸は、同じ順序で、それぞれ、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、および23に示される。
【0031】
前記好ましい実施形態に従って、本発明の核酸は、ポリタンパク質として、4つのタンパク質E1、E2、E6およびE7をコードし、ここで、好ましくは、パピローマウイルス起源のさらなるタンパク質は、前記核酸によってコードされない。
【0032】
さらなる好ましい実施形態において、前記タンパク質をコードする核酸の順序は、5’から3’へと、(a)E2が存在する範囲で、(i)E1、E2、E6、E7、もしくは(ii)E1、E6、E7、E2;または(b)E1、E6、E7である。好ましくは、これらの列挙のいずれかは、クローズドであり、すなわち、パピローマウイルス起源のさらなるタンパク質をコードするさらなる配列は存在しない。他方で、実施形態は、さらなるアミノ酸配列、好ましくは、機能的アミノ酸配列が存在する実行に拡張される(詳細について、下記をさらに参照されたい)。
【0033】
4つのタンパク質E1、E2、E6およびE7をコードする配列が、示された順序で(5’から3’へと)存在することが最も好ましい。また、異なる順序を有する本発明のコンストラクトが十分に機能する一方で、これは、例えば、
図3Bにおいて、最も好ましいコンストラクトにおける順序が、E2応答の観点から、さらに良好な性能を保証することが見られ得る。
【0034】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様の前記核酸は、パピローマウイルスタンパク質E6および/またはE7をコードする核酸配列を含み、ここで、前記核酸配列は、点突然変異および/または欠失によって、野生型対応物と比較して改変されており、前記点突然変異および/または欠失は、(i)少なくともバックグラウンドレベルまで、軟寒天アッセイにおいて形成されるコロニーを消失させ;かつ(ii)前記改変タンパク質E6およびE7が、好ましくはそれぞれ、各HLAについての75%のヒトHLA多様性を一緒に含む、好ましくは最も高頻度のHLA-A、-B、および-C対立遺伝子への(予測)結合の観点から、それぞれの野生型タンパク質の予測エピトープの少なくとも70%の予測高親和性エピトープ(IC50≦50nM)、および少なくとも50%、少なくとも55%または少なくとも58%の予測低親和性エピトープ(50nM<IC50≦5μM)を維持する。この好ましい実施形態は、さらなるパピローマウイルスタンパク質、E1、および適宜この文脈において好ましいE2の存在を可能にする。
【0035】
前記最も高頻度の対立遺伝子は以下の通りである:
HLA-A*01:01
HLA-A*02:01
HLA-A*02:02
HLA-A*02:03
HLA-A*02:05
HLA-A*02:06
HLA-A*02:07
HLA-A*02:11
HLA-A*02:12
HLA-A*02:16
HLA-A*02:17
HLA-A*02:19
HLA-A*02:50
HLA-A*03:01
HLA-A*11:01
HLA-A*24:02
HLA-A*24:03
HLA-A*30:01
HLA-A*30:02
HLA-A*33:01
HLA-B*07:02
HLA-B*08:01
HLA-B*08:02
HLA-B*08:03
HLA-B*15:01
HLA-B*15:02
HLA-B*15:03
HLA-B*15:09
HLA-B*15:17
HLA-B*18:01
HLA-B*27:05
HLA-B*27:20
HLA-B*35:01
HLA-B*35:03
HLA-B*39:01
HLA-B*40:01
HLA-B*40:02
HLA-B*40:13
HLA-B*44:02
HLA-B*44:03
HLA-B*51:01
HLA-B*58:01
HLA-B*58:02
HLA-C*03:03
HLA-C*04:01
HLA-C*06:02
HLA-C*07:01
HLA-C*07:02
HLA-C*08:02
【0036】
特に好ましい実施形態において、前記改変E6タンパク質は、好ましくは、上記で規定されたようにして決定される、野生型E6の予測エピトープの、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の予測高親和性エピトープ(IC50≦50nM)、および少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも93%の予測低親和性エピトープ(50nM<IC50≦5μM)を維持する。
【0037】
それに関連して、別々の態様において、本発明は、パピローマウイルスタンパク質E6および/またはE7をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸であって、前記核酸配列が、点突然変異および/または欠失によって、野生型対応物と比較して改変されており、前記点突然変異および/または欠失が、(i)軟寒天アッセイにおいて形成されるコロニーを消失させ;かつ(ii)前記改変タンパク質E6およびE7が、好ましくはそれぞれ、各HLAについての75%のヒトHLA多様性を一緒に含む、好ましくは最も高頻度のHLA-A、-B、および-C対立遺伝子への結合の観点から、それぞれの野生型タンパク質の予測エピトープの少なくとも70%の予測高親和性エピトープ(IC50≦50nM)、および少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも58%の予測低親和性エピトープ(50nM<IC50≦5μM)を維持する、核酸配列を提供する。前記別々の態様の好ましい実施形態において、前記改変E6タンパク質は、好ましくは、上記で規定されたようにして決定される、野生型E6の予測エピトープの、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の予測高親和性エピトープ(IC50≦50nM)および少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも93%の予測低親和性エピトープ(50nM<IC50≦5μM)を維持する。この態様は、存在するパピローマウイルスタンパク質をコードする任意のさらなる核酸配列を必要としない。
【0038】
上記で述べたように、タンパク質E6およびE7は、宿主細胞の挙動を制御および改変する際に役割を果たし、発癌または形質転換の可能性を現し得る。結果として、これらのタンパク質を免疫原として使用することは、特に、パピローマウイルス関連悪性障害の制御、根絶、予防、緩和、または処置に関する場合に、望ましく、魅力的である。他方で、それらの発癌可能性は、ワクチンまたはワクチンの構成成分としてのそれらの使用に関連する対応するリスクを引き起こす。これらの考察と合致して、上記の好ましい実施形態は、前記発癌可能性を緩和または消失させるための尺度を提供する。この文脈において、免疫原性が保持されながら発癌性が制御されるという点で、前記実施形態によってバランスがとられる。好ましくは、前記点突然変異および欠失は、最小の数である。
【0039】
発癌可能性の尺度として、軟寒天アッセイである当技術分野で確立された標準が使用され、含まれる実施例も参照されたい。
【0040】
免疫原性の尺度として、免疫原性エピトープの免疫原性および/または数を予測するインシリコ(in silico)の方法が使用される。そのような方法には、MHC I分子に結合するT細胞エピトープを予測するコンピューターアルゴリズムが含まれる。これに関する好ましいインシリコの方法は、IEDB分析リソースANN(NetMHCとしても公知)、バージョン4.0[Nielsen et al., Protein Sci 12: 1007 (2003);Lundegaard et al., Nucl Acids Res 36, W509 (2008);Andreatta et al., Bioinformatics 32, 511 (2016)]である。少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはすべての免疫原性エピトープが、それらが対応する野生型タンパク質に存在する場合、改変E6および/またはE7に保持されることも好ましい。
【0041】
以下で明らかになるように、本発明は、好ましい実施形態において、対応する野生型配列と比較して、最小の改変を提供し、ここで、前記最小は、軟寒天アッセイにおける必要な性能、および対応する野生型配列の免疫原性エピトープの高パーセンテージを保持する観点の両方を達成する。
【0042】
したがって、特に好ましい実施形態において、コードされるタンパク質中に野生型と比較して以下の改変のみが存在し:
(i)E6において:野生型E6に含まれるPDZドメインによって媒介される相互作用を低減または消失させる改変;および
a.HPV16 E6において:L117X1;
b.HPV18 E6において:L112X1;
c.MfPV3 E6において:L110X1;
ならびに
(ii)E7において:
a.HPV16 E7において:C24X2、L67X3、およびC91X4;
b.HPV18 E7において:C27X2、L74X3、およびC98X4;
c.MfPV3 E7において:C24X2、L71X3、およびC95X4;
ここで、X1からX4は、独立して、それらが置換するそれぞれのアミノ酸とは異なるタンパク質原性アミノ酸である。
【0043】
一般的に言えば、所与の第2のパピローマウイルス種由来のそれぞれE2、E6またはE7タンパク質中の位置に対応する所与の第1のパピローマウイルス種由来のE2、E6またはE7タンパク質中の位置は、
図9に示される複数の配列アライメントを使用して決定することができる。対応する位置は、他のものの上にあるものである。言い換えれば、対応する位置の決定は、特に、任意のさらなるパピローマウイルス株由来の配列がさらなる面倒なく追加することができる前記複数の配列アライメントを使用して、異なるHPV株にわたる高度の保存を考慮して容易である。そのようなアライメントは、当業者に周知のコンピュータープログラムを用いて、好ましくは、デフォルト設定(非常に正確;ギャップオープンコスト10.0;ギャップ拡張コスト1.0、エンドキャップコスト:任意の他のもの通り)を使用するCLC Main Workbenchバージョン8.0.1(QIAGEN、Aarhus、デンマーク)を用いて、調製することができる。
【0044】
好ましくは、必須ではないが、前記核酸は、HPV16 E7におけるD21X5およびC58X6、HPV18 E7におけるD24X5およびC65X6、ならびにMfPV3 E7におけるD21X5およびC62X6をコードする一方または両方の突然変異をさらに含み、ここで、X5およびX6は、独立して、それらが置換するそれぞれのアミノ酸とは異なるタンパク質原性アミノ酸である。
【0045】
具体的な改変の観点から、(i)X1が、Q、Y、およびNから選択され、好ましくは、Qであり;(ii)X2が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;(iii)X3が、R、K、およびHから選択され、好ましくは、Rであり;(iv)X4が、A、G、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Aであり;(v)X5が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;(vi)X6が、G、A、V、L、およびIから選択され、好ましくは、Gであり;ならびに/あるいは(vii)PDZドメインによって媒介される相互作用を低減もしくは消失させる前記改変が、1~10のC末端アミノ酸の欠失、好ましくは、C末端からカウントされる1~10のC末端アミノ酸の欠失、より好ましくは、HPV16 E6におけるΔETQL、HPV18 E6におけるΔETQV、およびMfPV3 E6におけるΔETEVであるか;または前記改変が、10個、好ましくは、4個のC末端アミノ酸を伴う1個、2個、3個もしくは4個の点突然変異であることが好ましい。
【0046】
「Δ」という表記は、当技術分野で確立されており、この実施形態の文脈において、4個の示されたC末端残基の欠失を指す。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、前記ポリタンパク質におけるCys残基の総数は、偶数である。これをどのように達成するかは特に限定されない。1つまたは複数の免疫原性エピトープの喪失を引き起こさない実行が好ましい。特定の理論によって拘束されることを望まないが、偶数のCys残基が、抗原の収量を増加させると想定される。さらに説明するために、抗原は、不変鎖(不変鎖に関する詳細について、下記をさらに参照されたい)に融合される場合、分泌経路に方向付けられる。小胞体(ER)において、シャペロン(遊離システインに結合するタンパク質-ジスルフィド-イソメラーゼなど)は、遊離Cysを検出することができ、これは、次に、ER-ストレス応答をもたらす可能性があり、次いで、タンパク質合成の減少または停止に至り、このようにして、抗原の発現を制限する。
【0048】
特に好ましい実施形態において、前記Cys残基の総数が、その他偶数ではない場合、
(i)a.C300X7突然変異を有するHPV16 E2;
b.C301X7突然変異を有するHPV18 E2;もしくは
c.C297X7突然変異を有するMfPV3 E2
をコードする配列は、
E2をコードする配列として前記核酸に含まれ、ここで、X7は、C以外のタンパク質原性アミノ酸であり、好ましくは、A、S、G、M、T、Y、Q、N、V、L、I、F、W、H、K、R、Q、N、およびPから選択され、より好ましくは、Aであり;
または(iii)Cysをコードするコドンは、前記核酸に挿入される。
【0049】
さらに好ましい実施形態において、前記核酸は、遺伝子アジュバント、好ましくは、T細胞アジュバントMHC-II会合不変鎖をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。前記不変鎖はまた、以下において「li」と略される。T細胞アジュバントMHC-II会合不変鎖は、いくつかの文脈において、遺伝子アジュバント(すなわち、核酸によってコードされるアジュバントであって、前記核酸は、免疫応答を上昇させるものに対する抗原をコードする核酸配列も含んでいてもよい)として成功裏に使用されており、例えば、公開された国際特許出願WO2007/062656、WO2010/057501およびWO 2018/172259を参照されたい。前記不変鎖が起源とする種の観点から、硬骨類不変鎖(例えば、WO2020/079234を参照されたい)、サメ不変鎖(例えば、WO 2015/082922を参照されたい)および哺乳類、好ましくは、ヒト不変鎖を含む脊椎動物が好ましく、上記で引用した3つのWO文献を参照されたい。ヒト不変鎖が特に好ましい。
【0050】
さらに、本開示に従って使用され得る遺伝子アジュバントは、熱ショックタンパク質のカルレティキュリンおよびC4bである。
【0051】
前記不変鎖の存在は、相乗効果のおかげで予想外の性能を引き起こす。特に、癌遺伝子タンパク質E6およびE7とIiとの上記に開示した改変の組合せは、予想外の程度まで発癌性を低減する。特定の理論によって拘束されることを望まないが、これは、liによって提供される技術的効果の結果:例えば、核に優先的に局在する融合されたliの非存在下で、発癌可能性が、現れ得ないか、またはより低い程度のみであり得る細胞質への、E6およびE7の排出であると考えられる。
【0052】
特に好ましい実施形態において、前記不変鎖は、(i)1回存在し、第1のEタンパク質をコードする配列に先行するか;または(ii)2回存在し、1つのコピーが、第1のEタンパク質をコードする配列に先行し、第2のコピーが、E6をコードする配列、もしくは存在する範囲で、E2をコードする配列に先行する。この実施形態は、例示的なまたは好ましいコンストラクトに関し、ここで、本発明の核酸内の前記不変鎖の特定の配置に適用される。そのような例示的な実施形態は、実施するために低減されたが(本明細書に含まれる実施例を参照されたい)、本発明は、そのように限定されない。「第1のEタンパク質」という用語は、本発明の核酸によってコードされる融合タンパク質中の、E1、E6およびE7、ならびに存在する場合E2から選択されるほとんどのN末端タンパク質を指す。E1が第1のEタンパク質であることが好ましい。
【0053】
前記遺伝子アジュバントの代替として、またはそれに加えて、当技術分野において公知のアジュバントが使用されてもよい。そのようなアジュバントには、サイトカイン、接着分子、ケモカイン、CCR1/5アゴニスト、MIP-1アルファ、危険シグナル、LPSおよびその誘導体、例えば、リピドAおよびリピドA誘導体、ならびにTLRアゴニストが含まれる。
【0054】
さらに好ましい実施形態において、前記核酸は、(i)DNA;(ii)プラスミド;または(iii)RNA、好ましくは、mRNAである。mRNAワクチンが開発中であり、Biontech/PfizerのComirnatyおよびModerna TherapeuticsのmRNA-1273などのいくつかは、販売承認を受けている。その固有の不安定性を考慮して、RNAは、それらの安定性を増強するために、化学的に改変されていてもよく、例えば、Hu et al., Signal Transduction and Targeted Therapy 2020, 5:101におけるsiRNAについて記載される改変、および上記でさらに本明細書に開示される改変を参照されたい。mRNAワクチンは、一般に、翻訳開始点にコザック配列、オープンリーディングフレームの最後に翻訳終止コドン、および3’-非翻訳領域にポリアデニル化部位を含む。
【0055】
好ましい実施形態において、前記DNAおよび前記プラスミドは、プロモーター、好ましくは、真核細胞において活性なプロモーターを含む。そのようなプロモーターには、CMVプロモーター、好ましくは、HTLV-1エンハンサーエレメントを有するCMVプロモーター、UbCプロモーター、EF1アルファプロモーターおよびSV40プロモーターが含まれる。
【0056】
好ましい実施形態において、前記プラスミドは、細菌の複製起点、例えば、pUC oriを含み、より好ましくは、選択マーカー、例えば、カナマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子も含む。
【0057】
さらに好ましい実施形態において、前記核酸、特に前記DNAは、Tetオペレーターを含む非翻訳5’末端を含む。公知のTet-OffおよびTet-Onシステムのうち、オフスイッチが産生細胞の構成要素であり、ウイルス産物の構成要素ではないことを考えると、Tet-Offが好ましい。好ましいTetオペレーター部位は、配列番号105に示される。本発明によって用いられるTetシステムは、T-RExシステムとして公知のシステムである。
【0058】
T-RExシステムにおいて、目的の遺伝子は、上流のCMVプロモーターおよびテトラサイクリンオペレーター 2(TetO2)部位の2つのコピーにフランキングしている。目的の遺伝子の発現は、テトラサイクリンの非存在下で、各TetO2配列へのTetRホモ二量体の高親和性結合によって抑制される。本発明において、産生細胞株は、Tet抑制因子TetRを発現するように改変された。テトラサイクリンの導入は、各TetRホモ二量体における1つのテトラサイクリンの結合と、それに続くTetO2からのTetRホモ二量体の放出をもたらす。TetO2からのTetRホモ二量体を開放することにより、目的の遺伝子の抑制解除をもたらす。例えば、Hillen W. and Berens. Mechanisms underlying expression of Tn10 encoded tetracycline resistance, Annu Rev Microbiol. 1994;48:345-69;W Hillen, C Gatz, L Altschmied, K Schollmeier, I Meier. Control of expression of the Tn10-encoded tetracycline resistance genes. Equilibrium and kinetic investigation of the regulatory reactions, J Mol Biol. 1983 Sep 25;169(3):707-21;Kathleen Postle, Toai T. Nguyen, Kevin P. Bertrand. Nucleotide sequence of the repressor gene of the TN10 tetracycline resistance determinant. Nucleic Acids Research, Volume 12, Issue 12, 25 June 1984, Pages 4849-4863;およびFeng Yao, Tor Svensjoe, Thomas Winkler, Michael Lu, Carl Eriksson, and Elof Eriksson. Tetracycline Repressor, tetR, rather than the tetR-Mammalian Cell Transcription Factor Fusion Derivatives, Regulates Inducible Gene Expression in Mammalian Cells, Human Gene Therapy. Sep 1998.1939-1950を参照されたい。
【0059】
好ましい実施形態において、前記核酸は、自己切断ペプチド、または翻訳を継続しながらリボソームにペプチド結合を形成させないペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、前記ペプチドをコードする前記核酸配列は、好ましくは、(i)遺伝子アジュバントをコードする少なくとも1つの核酸配列に先行するか;または(ii)パピローマウイルスタンパク質をコードする2つの核酸配列間にかつそれに近接して位置する。
【0060】
最大数の免疫原性エピトープが存在することと考えると、自己切断ペプチドをコードする前記核酸配列を、本発明の抗原の1つをコードする核酸配列に挿入することは好ましくない。
【0061】
好ましいペプチド配列は、本明細書において「p2a」と称される。
【0062】
本発明に従う特に好ましい核酸は、以下のポリタンパク質をコードするものである:
li-E1E2E6E7
li-E1E2-p2a-li-E6E7
E1E2E6E7
li-E1E6E7-p2a-li-E2
li-E1E6E7
【0063】
コードされるタンパク質が、MfPV3タンパク質であるか、それに基づく、これらのコンストラクトをコードする核酸の配列は、同じ順序:配列番号25、27、29、31および33であり、対応するポリタンパク質配列は、それぞれ、配列番号26、28、30、32および34に示される。
【0064】
コードされるタンパク質が、HPV16タンパク質であるか、それに基づく、これらのコンストラクトをコードする核酸の配列は、同じ順序:配列番号35、37、39、41および43であり、対応するポリタンパク質配列は、それぞれ、配列番号36、38、40、42および44に示される。
【0065】
コードされるタンパク質が、HPV18タンパク質であるか、それに基づく、これらのコンストラクトをコードする核酸の配列は、同じ順序:配列番号45、47、49、51および53であり、対応するポリタンパク質配列は、それぞれ、配列番号46、48、50、52および54に示される。
【0066】
配列番号100~104はすべて、HPV18 li-E1E6E7、より具体的には、以下:HPV18 li-E1E6E7核酸配列(配列番号100)、HPV18 li-E1E6E7タンパク質配列(配列番号101)、さまざまなウイルスベクターに挿入されるHPV18 li-E1E6E7ペイロード(配列番号102~104)に関する。
【0067】
注目すべきは、E抗原がアジュバントである範囲で、それらは、好ましくは、短い可撓性リンカー、好ましくは、GSによって分離される(下記も参照されたい)。liと近接する抗原との間のリンカーは、必要ではないが、排除されない。抗原またはliである近接する配列のいずれかにp2aを接続するリンカーは、必要ではないが、排除されない。
【0068】
さらに好ましい実施形態において、前記パピローマウイルスは、霊長類パピローマウイルス、好ましくは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、例えば、HPV16、HPV18、HPV45、HPV31、HPV33、HPV35、HPV52、HPV58、HPV6およびHPV11、より好ましくは、HPV16もしくはHPV18、またはマカクパピローマウイルス、好ましくは、MfPV3である。HPV16が特に好ましい。HPV16についての実験的証拠は、実施例4に見ることができる。
【0069】
さらに好ましい実施形態において、隣接している核酸配列は、Cys残基を含んでいてもよい、10個以下のアミノ酸長、例えば、2、3、4、または5個のアミノ酸長である可撓性リンカーをコードする配列によって、1つ、複数、またはすべての場合において接続され、ここで、GSおよびGCSは、好ましいリンカーである。好ましくは、そのようなリンカーは、隣接する抗原間にのみ存在し、上記に示す本発明の最も好ましい核酸の議論も参照されたい。
【0070】
Cys残基を含むリンカー、例えば、GCSは、好ましくは、本発明のポリタンパク質において偶数のCys残基を必要とする上記に開示される好ましい実施形態の文脈において検討されるべきである。言い換えれば、Cys含有リンカー、例えば、GCSは、一般に有用であるが、特に、本発明の核酸によってコードされるポリタンパク質が、その他奇数のCys残基を有する事例において、それを用いることが考慮される。例えば、使用は、例えば、配列番号100~104における、E1およびE6を接続するためのGCSリンカーから構成されていてもよい。
【0071】
第2の態様において、本発明は、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸を含むウイルスベクターを提供する。
【0072】
好ましい実施形態において、前記ベクターは、DNAウイルスベクター、好ましくは、(i)アデノウイルスベクター、好ましくは、アデノウイルスE1およびE3コード配列に関して欠損しているアデノウイルスベクターであって、前記ベクターが、より好ましくは、クラスC、DもしくはEに属するか、および/またはAd19a/64、Ad5、線維置換を有するAd5、例えば、Ad5F35、Ad26、Chimp63、もしくはchAdOx1である、アデノウイルスベクター;または(ii)ポックスウイルスベクター、好ましくは、MVA、MVA CR19、SCV、ワクシニア、もしくはFowlpoxである。
【0073】
Ad5は、Schiedner G, Hertel S, Kochanek S. Hum Gene Ther. 2000 Oct 10;11(15):2105-16. doi: 10.1089/104303400750001417. PMID: 11044912に記載されている。
【0074】
Ad19aは、Ad64としても公知であり、例えば、Zhou X., Robinson C.M., Rajaiya J., Dehghan S., Seto D., Jones M.S., Dyer D.W., Chodosh J. Analysis of human adenovirus type 19 associated with epidemic keratoconjunctivitis and its reclassification as adenovirus type 64, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci, 53 (2012), pp. 2804-2811を参照されたい。Ad19aはまた、Ruzsics Z, Wagner M, Osterlehner A, Cook J, Koszinowski U, Burgert HG. J Virol. 2006 Aug;80(16):8100-13. doi: 10.1128/JVI.00687-06. PMID: 16873266に記載されている。
【0075】
線維置換を有するアデノウイルスは、例えば、Shayakhmetov, D. M.; Papayannopoulou, T.; Stamatoyannopoulos, G.; Lieber, A. Efficient Gene Transfer into Human CD34+ Cells by a Retargeted Adenovirus Vector. J. Virol. 2000に記載されている。
【0076】
Ad5F35は、具体的には、Flickinger Jr JC, Singh J, Carlson R, et al. Chimeric Ad5.F35 vector evades anti-adenovirus serotype 5 neutralization opposing GUCY2C-targeted antitumor immunity, Journal for ImmunoTherapy of Cancer. 2020に記載されている。ここで、Ad5およびAd5F35が、ナイーブマウスにおいて同等の免疫応答および腫瘍制御を誘導すること、ならびにAd5F35が、Ad5感染に事前曝露されたマウスにおいてAd5よりも良好な応答を誘導することが示されている。さらに、数人の患者が、Ad5と比較して、Ad5F35に対する中和抗体を有することが示された。そのため、その優れた性能を考慮して、Ad5F35が特に好ましい。
【0077】
さまざまなウイルスベクターのための本発明に従う特に好ましいDNAペイロード(挿入物;抗原コード配列を含む配列)は、配列番号55~99および102~104に示される。それぞれのベクターの具体的な特徴に関するさらなる情報について、配列表におけるそれぞれの注釈を参照されたい。
【0078】
挿入物を有するアデノウイルスベクターを生成するための手順は、当技術分野において公知であり、例えば、Ruzsics Z, Lemnitzer F, Thirion C. Methods Mol Biol. 2014;1089:143-58. doi: 10.1007/978-1-62703-679-5_11. PMID: 24132484に記載されている。
【0079】
MVAベクターの配列は、以下の配列データベースに見ることができる:
MVA配列:GenBank(リリース244.0)アクセッション番号:U94848、バージョン番号:U94848.1、リリース日2003年4月14日、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/U94848.1;
MVA.CR19配列:GenBank(リリース244.0)アクセッション番号:KY633487、バージョン番号KY633487.1、リリース日2017年3月28日、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/KY633487.1。前記ベクターを生成または増殖させる目的のために、細胞株、好ましくは、真核細胞株が用いられ得、ここで、前記細胞株は前記ベクターを含む。好適な真核細胞株には、HEK293、PerC6、AGE1.CR.pIX(Jordan I, Vos A, Beilfuss S, Neubert A, Breul S, & Sandig V, 2009. An avian cell line designed for production of highly attenuated viruses. Vaccine 27, 748-756. https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2008.11.066. PMID 19071186)、HEK293 T-RExおよびAGE1.CR.pIX-T-REx(それぞれ、HEK293およびAGE1.CR.pIXに由来する、既にTetRを発現する)、A549、ならびに操作されたアデノウイルスE1過剰発現を有するA549が含まれる。上記で述べたように、既に存在しない範囲で、前記細胞株は、好ましいが、必ずしもTetRを発現するように改変されていない。
【0080】
MVAは、トリ細胞における複製に適合される。MVAの生成のために、したがって、初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)またはアヒル網膜細胞に由来するAGE1.CR.pIXなどの宿主が好ましい。初代細胞とは対照的に、不死化(または連続)細胞株、例えば、AGE1.CR.pIXは、いくつかの利点を有し、細胞物質は、局所的に貯蔵された凍結培養物から回収することができ、そのため、供給の制約への回復力に富む。さらにまた、不死化細胞株は、実際の生産プロセスにはるかに先立って、細胞バンクのレベルで外来性作用物質に対して特性評価することができる。さらにまた、AGE1.CR.pIX細胞株(初代材料とは対照的に)は、動物由来構成成分を含まない培地中の懸濁液において増殖する。この性質は、異なる属のポックスウイルスのための非常に効率的でスケーラブルなフェドバッチ生産プロセスを可能にする(Jordan I, Northoff S, Thiele M, Hartmann S, Horn D, Hoewing K, Bernhardt H, Oehmke S, von Horsten H, Rebeski D, Hinrichsen L, Zelnik V, Mueller W, & Sandig V, 2011. A chemically defined production process for highly attenuated poxviruses. Biologicals 39, 50-58. https://doi.org/10.1016/j.biologicals.2010.11.005. PMID 21237672)。
【0081】
ワクシニアウイルスは、出芽についての必要性なく、1つまたは3つの膜を有する感染性粒子に成熟する。この複雑な感染サイクルの1つの結果は、野生型ビリオンの大部分が、産生細胞と会合したままであること、および感染活性の小さな割合が、培養上清において測定され得ることである。新規株MVA-CR19の開発は、この観察によって誘導された[Jordan I, Horn D, John K, & Sandig V, 2013. A genotype of modified vaccinia Ankara (MVA) that facilitates replication in suspension cultures in chemically defined medium. Viruses 5, 321-339. https://doi.org/10.3390/v5010321. PMID 23337383]。MVA-CR19は、固有の遺伝子型を有するMVAの株である[Jordan I, Horn D, Thiele K, Haag L, Fiddeke K, & Sandig V, 2019. A Deleted Deletion Site in a New Vector Strain and Exceptional Genomic Stability of Plaque-Purified Modified Vaccinia Ankara (MVA). Virol Sin. https://doi.org/10.1007/s12250-019-00176-3. PMID 31833037]。構造遺伝子における点突然変異および線状ゲノムDNAの左側における逆位末端反復配列(ITR)の大部分の組換えは、MVA-CR19の表現型に対する広範囲の効果を有する。例えば、野生型と比較して、MVA-CR19は、より多くの数の感染性粒子を培養上清に放出し、より高い感染力価まで複製する。宿主の免疫応答および感染サイクルに影響を及ぼすウイルス因子は、ITRにおいてコードされる。MVA-CR19における組換え事象は、ワクチンベクターとしての有効性および安定性に対する正の影響を伴って、これらの因子の発現パターンを変化させた(一部は欠失され、他について、遺伝子量が重複している)。
【0082】
宿主細胞からのMVA-CR19の潜在的に増強された放出はまた、接着細胞におけるCPEにおいて見ることもできるが、野生型MVAは、細胞融合および十分に限局性のプラークとの合胞体を誘導する傾向があり、MVA-CR19による感染は、主なプラークからより離れたところで散在するかまたはコメット内に局在する孤立した感染細胞によって囲まれた、大きいがゆるくパッキングされた(融合していない)プラークから構成されるパターンをもたらす。
【0083】
組換えMVAの作成および単離は、ウイルスゲノムの大きなサイズ(178 kb)に起因して複雑である。最も一般的に使用される技法は、目的の遺伝子を含有するシャトルプラスミドによる感染宿主細胞における相同組換えに依拠する。組換えウイルスは、挿入物なしの親ウイルスが混入した膨大な基礎環境から単離および精製されなければならない。MVA-CR19は、生産およびワクチン有効性について有利であるが、これは、複製の特質の制限が少ないことに起因して、精製がより複雑であり得る。さらにまた、野生型およびMVA-CR19の両方について、新規配列が感染サイクルを損なう場合に、導入遺伝子の発現および維持に対する選択が生じ得る。
【0084】
そのような事例において、TetRを構成的に発現する細胞株、およびtetOのコピーを含有する発現ユニットを利用して、ウイルス作成および生産の間に、導入遺伝子の発現を最小化することできる。
【0085】
第3の態様において、本発明は、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターによってコードされるポリタンパク質、またはそれに由来する切断産物を提供する。
【0086】
参照が切断産物に対して行われる範囲で、好ましくは、上記に開示される好ましい実施形態に従って、本発明の核酸によってコードされるポリタンパク質中に存在し得る自己切断配列の活性から生じる切断産物が存在する。切断が、本発明の核酸によってコードされるタンパク質によって提示されるエピトープの数に影響を及ぼさないことが理解される。そのため、コードされるポリタンパク質における切断部位は、好ましくは、抗原の配列間に位置する。
【0087】
第4の態様において、本発明は、(i)第1の態様の核酸;(ii)第2の態様のベクター;(iii)第3の態様のポリタンパク質もしくはその切断産物;および/または(iv)(i)の核酸もしくは(ii)のベクターで形質導入された細胞であって、好ましくは、前記細胞が、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)の細胞および/もしくは樹状細胞、または単球である、細胞を含むか、またはそれからなる医薬組成物、好ましくは、ワクチンを提供する。
【0088】
項目(iv)に関して、細胞が、抗原をコードするコンストラクトで形質転換され、それによって、前記抗原に関連する障害に対する予防的または治療的性質を有する細胞の集団が得られ得ることは当技術分野において公知である。がんの分野における例は、Maeng et al., Journal of Clinical Oncology 37, no. 15_suppl (May 20, 2019) 2639-2639である。好ましくは、前記細胞は、処置される個体由来の自己細胞である。項目(iv)について、ベクターが使用される範囲で、Ad19a/64が特に好ましい。
【0089】
投与の経路に関して、筋肉内、皮下、皮内、経膣、直腸、および/または生殖管の粘膜を含む粘膜投与が想定される。
【0090】
製剤には、ゲル剤、特に、粘膜、好ましくは、膣内投与のためのゲル剤が含まれる。
【0091】
賦形剤、希釈剤および保存剤は、当業者に周知である。
【0092】
投薬量に関して、109~1011感染単位が、アデノウイルスベクターについて好ましく、5×106~5×108感染単位が、ポックスウイルスベクターについて好ましい。一般的に言えば、好適な投薬量は、本開示、おそらくは臨床研究を考慮し、必要な場合、ワクチン接種を受ける個体の体重、年齢、性別などのようなパラメーターを考慮に入れて、さらなる面倒なく、臨床医または製造業者によって決定され得る。とはいえ、経験から、ワクチンの分野において、一般に、1つですべてに対応する投薬量または投薬レジメンが存在する。
【0093】
好ましい実施形態において、前記ベクター、前記核酸、前記ポリタンパク質または前記細胞は、唯一の薬学的に活性な作用物質である。
【0094】
代替の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、2つ以上の薬学的に活性な作用物質を含み、第2の薬学的に活性な作用物質は、(i)第1の態様の第2の核酸;(ii)第2の態様の第2のベクター;(iii)第3の態様の第2のポリタンパク質または切断産物;(iv)上記に定義される第2の細胞;(v)タンパク質ベースワクチン、好ましくは、パピローマウイルスに対するタンパク質ベースワクチン;および(vi)化学療法薬、好ましくは、シスプラチンから選択される。実施例は、本発明によるワクチンがシスプラチンと一緒に与えられた場合の相乗効果を実証する。
【0095】
タンパク質であるか、またはタンパク質に基づく、公知のパピローマウイルスワクチンが存在する。上記の項目(v)に従って、そのような公知のワクチンは、本発明に従うワクチンと組み合わされてもよい。注目すべきは、本発明はまた、あまり好ましくないが、タンパク質ベースワクチンとして実行されてもよく、上記の項目(iii)を参照されたい。
【0096】
本発明のコンストラクト(核酸、ベクター、ポリタンパク質、細胞)と一緒の併用療法のためのさらなる作用物質には、抗体、好ましくは、免疫チェックポイントを標的にするモノクローナル抗体が含まれ、そのようなチェックポイントは、好ましくは、PD-1、PD-L1およびCTLA-4である。
【0097】
一般的に言えば、併用療法の構成成分は、おそらく異なる投薬レジメンに従って、一緒にまたは任意の順序で別々に投与され得る。
【0098】
特に好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、(i)上記に定義されるアデノウイルスベクター;および上記に定義されるポックスウイルスベクターである2つの薬学的に活性な作用物質を含み、前記2つの薬学的に活性な作用物質は、好ましくは、任意の順序でまたは同時に、好ましくは、前記アデノウイルスベクターを含む前記医薬組成物後、好ましくは、少なくとも4週間経過した後に、前記ポックスウイルスベクターを含む医薬組成物が投与され得る2つの医薬組成物として調合される。
【0099】
この好ましい実施形態は、本発明に従って、好ましいプライム/ブーストスキームを定義する。そのため、前記2つの別個のベクターが、2回の投与間で時間が経過するのを可能にする様式で投与されることが好ましい。好ましい期間は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間または少なくとも8週間である。前記期間についての好ましい上限は、6週間、7週間、8週間、3か月、4か月、5か月または6か月である。
【0100】
第5の態様において、本発明は、医薬における使用のための、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸、ベクター、ポリタンパク質または細胞を提供する。
【0101】
好ましくは、前記ワクチンは、治療用ワクチンである。注目すべきは、本発明に従う全長抗原の組合せは、ウイルスの根絶のために提供する。そのため、前記ワクチンは、予防的適用だけを有するのでなく、治療剤でもある。
【0102】
第6の態様において、本発明は、パピローマウイルス感染、またはパピローマウイルス誘導障害、例えば、疣贅、悪性細胞変化もしくはがんを処置、軽減または予防する方法における使用のための、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸、ベクター、ポリタンパク質、細胞、またはワクチンを提供する。感染および関連障害は、各種の部位、例えば、鼻腔-口腔、皮膚、生殖器(内部および外部)で起こり得る。最も公知のパピローマウイルス関連悪性腫瘍およびがんの一部は、低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)、高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)、鼻ポリープ、またはパピローマウイルス関連悪性状態、例えば、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、および口腔咽頭扁平上皮細胞癌(OPSCC)である。
【0103】
一般的に言えば、これらの障害が、パピローマウイルス関連であることが理解される。原因因子として頻繁に関与するパピローマウイルス株は、当技術分野において公知であり、HPV16、HPV18、HPV45、HPV31、HPV33、HPV35、HPV52、HPV58、HPV6およびHPV11が含まれる。例を示すと、鼻ポリープは、HPV6またはHPV11による感染から生じ得る。
【0104】
下記の表1は、いくつかの悪性および非悪性障害に関連するHPV株の概略を提供する。
【0105】
【0106】
第7の態様において、本発明は、T細胞を刺激および/または拡大増殖するインビトロまたはエクスビボの方法であって、前記方法が、インビトロまたはエクスビボで、T細胞を、本発明の先行する態様のいずれか1つの核酸、ベクター、またはポリタンパク質と接触させることを含む、方法を提供する。
【0107】
好ましい実施形態において、前記接触は、抗原提示細胞の存在下で達成される。そのような抗原提示細胞は、好ましくは、樹状細胞、単球、マクロファージ、またはBリンパ球である。抗原提示細胞の提示は、MHC拘束性である拡大増殖されたT細胞を提供する。
【0108】
前記T細胞は、エクスビボであること、すなわち、個体または患者から得られることが好ましい。前記T細胞は、それらが拡大増殖されると、同じ患者または個体に戻すことが想定される。拡大増殖されたT細胞のそのような再導入は、養子免疫療法として当技術分野において公知である。
【0109】
それらに関連して、本発明は、さらなる態様において、T細胞、好ましくは、第7の態様の方法によって得られるMHC拘束性T細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】着想されたMfPV3抗原変異体の略図。 MfPV3抗原は、E1、E2、E6およびE7のすべて、またはp2aペプチドによって連結されたE1とE2およびE6とE7融合タンパク質のいずれかを含み、それぞれ、MHC-II不変鎖(Ii)に融合された、融合タンパク質として設計された。参照のために、E1、E2、E6、およびE7は、Iiコード配列なしで、単一のオープンリーディングフレームとして融合された。理論分子量(kDa)をアミノ酸配列から計算した。略語:Ii:MHC-II会合不変鎖、GS:グリシン-セリンリンカー、2a:共翻訳的分離のためのp2aペプチド、Myc:抗体検出のためのmycタグ配列、kDa:キロダルトン。
【
図2】MfPV3抗原の発現分析。 A.さまざまなMfPV3抗原を発現する等量のpURVac DNAワクチンによるトランスフェクション48時間後のHEK293T細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗myc(上側パネル)および抗p2aペプチド(中央パネル)抗体を用いて検出した。チューブリンレベルを、ローディング対照(下側パネル)として抗チューブリン抗体を使用してモニターした。B.pURVac DNAワクチンによるトランスフェクション48時間後のHEK293T細胞のフローサイトメトリー分析。細胞内染色を、抗myc抗体を用いて行った。3回の独立した実験の平均の平均蛍光強度(MFI)が表される。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。C.それぞれ、H2Kb単独またはpURVac E1-SIINFEKLもしくはIi-E1-SIINFEKLと一緒とのHEK293T細胞の共トランスフェクション、およびSIINFEKL-H2Kb複合体を認識する抗体を使用するフローサイトメトリーによる48時間後の細胞表面におけるSIINFEKL-H2Kbの分析。6回の独立した実験の平均のH2Kb-SIINFEKL陽性細胞のパーセンテージが表される。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。明灰色のバーは、それぞれ、陰性対照および陽性対照である。
【
図3】非近交系CD1マウスにおけるE1、E2、E6およびE7をコードするさまざまなpURVac DNAワクチンによって誘導されるT細胞応答。 CD1マウス(群あたり5匹)を、示されるMfPV3初期抗原をコードするpURVac DNAの0.5μgのDNAを用いて、1週間間隔で4回、免疫した。マウスを最後の免疫の7日後に屠殺し、脾臓を回収し、E1(A)およびE2(B)に対するCD8(上パネル)およびCD4(下パネル)T細胞免疫応答を、ICSおよびフローサイトメトリーを使用して測定した。陰性対照群は、インビトロ再刺激のために使用されるペプチドプールにカバーされない抗原をコードするpURVac DNAワクチンで免疫されたすべてのマウスからなる。群間のアスタリスクは、バックグラウンド応答の減算後の応答レベルにおける有意差を示す。各記号は1匹のマウスを表し、水平のバーは中央値を表す。参照試料(それぞれ、Iiに連結された個々の抗原のみを含有するpURVac DNAワクチンでワクチン接種されたマウス)は、統計分析(多重比較調整)に含めない。
【
図4】rAdシャトル化MfPV3抗原コンストラクトの発現分析。 A.MfPV3抗原変異体Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2およびIi-E1E6E7の略図。MfPV3抗原は、それぞれ、MHC-II不変鎖(Ii)およびE2に融合されていてもよい、両E1、E6およびE7のすべてを含み、融合タンパク質として設計された。理論分子量(kDa)をアミノ酸配列から計算した。B.30のMOIで、rAdsによる形質導入48時間後のA549細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗myc(上側パネル)および抗p2aペプチド(中央パネル)抗体を用いて検出した。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(下側パネル)。C.30のMOIで、さまざまなMfPV3抗原を発現するrAdsによる形質導入48時間後のA549細胞のフローサイトメトリー分析。細胞内染色を、抗myc抗体を用いて行った。細胞を、非感染細胞においてゲーティングした。3回の独立した実験の平均の平均蛍光強度(MFI)が表される。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。
【
図5】アデノウイルスベクターによるマウスの免疫化は、強力な細胞免疫応答を誘導する。 CD1マウス(AおよびB)、またはOF1マウス(CおよびD)を、示された通り、さまざまなMfPV3初期抗原をコードするrAdワクチン(2×10
7IFU)で免疫した。マウスを14日目に屠殺し、脾臓を回収し、E1、E2、E6、およびE7に対するCD8およびCD4 T細胞免疫応答を、ICSおよびフローサイトメトリーを使用して測定した。陰性対照群は、インビトロ再刺激のために使用されるペプチドプールにカバーされない抗原をコードするrAdで免疫されたすべてのマウスからなる。各記号は1匹のマウスを表し、水平のバーは中央値を表す。陽性対照試料(Iiに連結された関連抗原のみを含有するrAdでワクチン接種されたマウス)は、統計分析(多重比較調整)に含めない。
【
図6】ユビキチン化および分解に対するIiの影響。 A~C.pURVac Ii-E1E2E6E7、pURVac E1E2E6E7または空プラスミドを、HEK293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞を、MG132、または対照としてDMSOで、6時間処理した。Mycタグ付けタンパク質を、免疫沈降し、抗ユビキチン抗体(A)および抗myc抗体(B)を使用するウエスタンブロットによって分析した。チューブリンレベルを、ローディング対照(C)として抗チューブリン抗体を使用してモニターした。D~E.pURVac Ii-E1-SIINFEKL、pURVac E1-SIINFEKLまたは空プラスミドを、HEK293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞を、MG132またはDMSOで、6時間処理した。試料を、抗myc抗体(D)および抗チューブリン抗体(E)を使用するウエスタンブロットによって分析した。
【
図7】近交系マウスにおける免疫応答およびインビボ(in vivo)細胞傷害性。 Balb/Cマウスを、示されるMfPV3初期抗原をコードするrAdベクター化ワクチンで免疫した。ワクチン接種14日後、免疫応答を、E1ペプチドでパルスされた細胞(B)の特異的死滅に関して、ICS(A)またはインビボ細胞傷害性によって分析した。各記号は1匹のマウスを表す。2匹の非ワクチン接種マウスを、陰性対照として含めた。(C)インビボ細胞傷害性の代表的プロット。
【
図8】足場依存性成長の特性評価。A.抗E2、抗E6、および抗E7抗体を用いるウエスタンブロット分析によるポリクローナルNIH-3T3細胞株の導入遺伝子発現の分析。抗チューブリンパネルは、均一なローディングを確認する。B.軟寒天形質転換アッセイにおける足場依存性コロニー成長。アッセイにおけるコロニー形成単位(CFU)の数を、各NIH-3T3細胞株について示す。3回の独立した実験からの3回の技術的反復の平均とSEMが表される。個々の群を、両側のパラメーター化された対応のないT検定を使用して比較した。
【
図9】好ましい種由来のE2、E6およびE7タンパク質のアミノ酸配列アライメント。アライメントは、本発明に従った好ましい改変を持つ本明細書に開示される抗原配列(「wt」という修飾語句なし)と整列された好ましいパピローマウイルス種の野生型(wt)アミノ酸配列を示す。好ましい改変は、ボックスを用いて強調する。
【
図10】上パネル:MfPV3 Ii-E1E2E6E7によるAd19a/64プライムは、ELISpotによって測定される、プライム後14日後のNHPにおいて、IFN産生MfPV特異的T細胞を誘導した。下パネル:MfPV3 Ii-E1E2E6E7によるAd19a/64プライム、MVAブーストワクチン接種は、ICSおよびフローサイトメトリーによって測定される、ブーストの日(プライム6週間後)およびブースト14日後のNHPにおいて、IFN産生MfPV特異的T細胞を誘導した。
【
図11】ワクチン接種されたMfPV3感染雌マカクを、それらが公知の持続性感染を有していた(赤色)または有していなかった(青色)かどうかによって階層化した。持続性感染は、
図1および表1に示されるように、スクリーニング、再スクリーニング、および確認試験の両方でMfPV3陽性である動物によって定義した。ワクチン試験に登録する前に1回、子宮頸部MfPV3の存在についてのみ試験された動物を、不明な持続性段階として分類し、ワクチン試験における非感染対照群を含めることが優先されていなかったので、比較群として選択した。動物を、
図3Aに示されるようにして免疫した。各ドットは、個々の動物を表す。プロットの右側の「ns」は、それらのMfPV3感染持続状態に応じた動物の比較を指す。プロットの上のアスタリスクは、それらのMfPV3感染持続状態に関わりなく、特定の時点(AおよびB)での、または特定の抗原に対する(C)すべてのワクチン接種された動物のT細胞応答の比較を指す。A:免疫化前およびプライム免疫化14日後のペプチド刺激18~20時間後のELISpotによって測定されたIFN-γ産生PBMCの誘導。B:ブースト免疫化前およびブースト免疫化14日後のペプチド刺激12~16時間後のICSおよびフローサイトメトリーによって測定されたIFN-γ産生CD8+ T細胞。C:CD8+ T細胞の機能性を、IFN-γシグナルの幾何平均蛍光強度(MFI)によって測定した。バーは、それらのMfPV3感染持続状態に関わりなく、すべてのワクチン接種動物の幾何平均を表す。
【
図12】経時的なNHPの子宮頸部におけるMfPV3ウイルス量。MfPV3 Ii-E1E2E6E7によるAd19a/64プライム、MVAブーストワクチン接種は、PBS注射された陰性対照NHPの6匹のうちの3匹における自発的クリアランスと比較した、すべてのワクチン接種動物における感染を排除した。
【
図13】CD1マウス(A~E)、示される異なる非近交系マウス(F~I)またはC57BL/6マウス(J~P)を、示されるように、さまざまなHPV16初期抗原をコードするAdワクチン(2×10
7IFU)で免疫した。マウスを示された時点で屠殺し、脾臓を回収し、E1、E2、E6、およびE7に対するCD8+およびCD4+ T細胞免疫応答を、細胞内染色およびフローサイトメトリーを使用して測定した。各記号は1匹のマウスを表し、バーは幾何平均を表す。2匹のE7レスポンダーマウス(E)について、CD44+IFN-γ+集団、ならびにTNF-α+およびIFN-γ+ CD8+CD44+細胞の集団を示す。
【
図14】1×10
6個のC3細胞を、C57BL/6マウスの脇腹にs.c.注射し、マウスは、それぞれ2日目および20日目に、腫瘍と同じ側に、i.m.でAd19a/64-およびAd5-ベクター化ワクチンを受けた。腫瘍成長(AおよびB)および生存(C)。丸を伴うピンク色曲線は、治療用ワクチン群を表す。四角を伴う灰色線は、陰性対照ワクチン接種マウスを表す。緑色の矢印は、ワクチン接種の時を示す。
【
図15】1×10
6個のC3細胞を、C57BL/6マウスの脇腹にs.c.注射し、マウスは、それぞれ10日目および24日目に、腫瘍と同じ側に、i.m.でAd19a/64-およびAd5-ベクター化ワクチンを受けた。平均腫瘍成長とSEM(A)、個々のマウスについての腫瘍成長(B)および生存(C)を評価した。
図D~Fにおいて、すべてのマウスは、10、17および24日目に、シスプラチンで追加的に処置された(緑色の菱形)。 治療用ワクチンまたは陰性対照ワクチン単独を受けているマウスの腫瘍を、腫瘍が1000mm
3を超えたか、または試験の最後(42日目)のいずれかで回収し、CD8+細胞を免疫組織化学的検査によって検出した。G:腫瘍1mm
2あたりのCD8+スポットの総数。H:腫瘍のコア対周縁における腫瘍1mm
2あたりのCD8+スポットの比。I:ワクチン接種マウス(左)または陰性対照ワクチン接種マウス(右)のいずれかからの腫瘍の免疫組織化学的染色の代表画像。写真は、周縁(写真の左下側)およびコアの小片(写真の右上側)を示す。J:マウスを示された時点で屠殺し、腫瘍を回収し、腫瘍のミックスの得られた単一細胞懸濁液および免疫細胞を、追加のHPV16ペプチドの存在なしで、5時間インキュベートした。IFN-γ産生CD8+ T細胞を、細胞内染色およびフローサイトメトリーによって検出した。K:マウスを示された時点で屠殺し、脾臓を回収し、E1およびE7ペプチド刺激後のCD8+ T細胞免疫応答を、細胞内染色およびフローサイトメトリーを使用して測定した。LおよびM:シスプラチンで処置され、陰性対照ワクチンの治療用ワクチンでワクチン接種されたマウスについて、IFN-γの平均蛍光強度(L)、および全CD8+CD44+IFN-γ+脾細胞のうちのTNF-α+のパーセンテージ。N:腫瘍を示された時に回収し、単一細胞懸濁液を調製し、DCの割合(CD11c+F4/80-CD8-CD4-CD45.2+TER119-生)を、表面染色およびフローサイトメトリーによって評価した。 ピンク色の丸は、治療用ワクチン群を表す。灰色の四角は、陰性対照ワクチン接種マウスを表す。緑色の矢印は、ワクチン接種の時を示す。緑色の菱形は、シスプラチン注射の時点を示す。G~N:黒色バーは、幾何平均を示す。
図A~Fは、2回の独立した実験からプールされたデータを示す。
【
図16】T1×106個のC3細胞を、C57BL/6マウスの脇腹にs.c.注射し、マウスは、それぞれ10日目および24日目に、腫瘍と同じ側に、i.m.でAd19a/64-およびAd5-ベクター化ワクチンを受けた。シスプラチン処置を、10、17および24日目にi.p.で与えた。A:20、23および26日目に、CD4枯渇(緑色の破線、菱形)もしくはCD8枯渇(青色、白丸)、またはアイソタイプ対照抗体(ピンク色、丸)でi.p.処置されたマウスの平均腫瘍成長とSEM。灰色の曲線は、比較のための陰性対照ワクチン接種マウスを示す(これは、
図4Dに表されたものと同じデータであり、2回の独立した実験からプールされたものであることに留意されたい)。緑色の矢印は、ワクチン接種の時を示す。緑色の菱形は、シスプラチン注射の時点を示す。B:シスプラチンとの共処置ありまたはなしの、マウスIi-E1E2E6E7(ピンク色の丸)または陰性対照(灰色の四角)ワクチン接種における腫瘍浸潤性CD4+CD8-CD45.2+TER119生細胞におけるFoxP3発現。腫瘍浸潤細胞を、細胞内染色およびフローサイトメトリーによって、24日目(併用処置群)または30日目(ワクチン接種単独)に分析した。
【
図17】1×106個のC3細胞を、C57BL/6マウスの脇腹にs.c.注射し、マウスは、10日目および24日目に、腫瘍と同じ側に、i.m.でAd19a/64-およびAd5-ベクター化ワクチン、または逆の脇腹にs.c.でペプチドベースワクチンを受けた。シスプラチン処置を、10、17および24日目にi.p.で与えた。AおよびB:ペプチドワクチン(青色、菱形)、Ii-E1E2E6E7
*(ピンク色、丸)または陰性対照
*(灰色、四角)の平均腫瘍成長とSEM(A)および生存曲線(B)。
*これは、
図15Dに表されたものと同じデータであり、2回の独立した実験からプールされたものであることに留意されたい。緑色の矢印は、ワクチン接種の時を示す。緑色の菱形は、シスプラチン注射の時点を示す。CおよびD:細胞内染色およびフローサイトメトリーを使用する、22日目にIi-E1E2E6E7(ピンク色の丸)またはペプチド(青色の菱形)ワクチン接種マウスの血液において測定されたE1(C)およびE7(D)に対するCD8+ T細胞応答(IFN-γ+CD44+CD8+CD4-B220-生細胞)。
【
図18】C57BL/6マウスを、HPV16 Ii-E1E2E6E7をコードするrAd5またはAd5F35で下肢において免疫した。両ワクチンは、類似の大きさおよび質のE1およびE7に対するCD8+ T細胞応答を誘導し、Ad5F35が、ワクチン特異的T細胞応答の誘導に等しく有効であることを示す。
【
図19】rAdシャトル化HPV16およびHPV18抗原コンストラクトの発現分析。 A.100のMOIで、rAdsによる形質導入48時間後のA549細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗HPV16-E2(左上側パネル)および抗HPV16-E6(左下側パネル)、抗HPV16-E7(右上側パネル)抗体を用いて検出した。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(右下側パネル)。B.100のMOIで、rAdsによる形質導入48時間後のA549細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗HPV18-E2(左上側パネル)および抗HPV18-E6(左下側パネル)、抗HPV18-E7(右上側パネル)抗体を用いて検出した。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(右下側パネル)。
【
図20】MVAシャトル化MfPV3、HPV16およびHPV18抗原コンストラクトの発現分析。 A.10のMOIで、DelIII遺伝子座またはTK遺伝子座におけるMfPV3抗原を含有する組換えMVAまたはMVA-CR19による形質導入24時間後のHEK293T細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗myc抗体を用いて検出した(上側パネル)。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(下側パネル)。B.1のMOIで、DelIII遺伝子座におけるHPV16 Ii-E1E2E6E7を含有するMVA-CR19による形質導入24時間後のAGE1.CR-pIX細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗HPV16-E2(左上側パネル)および抗HPV16-E6(左下側パネル)、抗HPV16-E7(右上側パネル)抗体を用いて検出した。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(右下側パネル)。C.1のMOIで、DelIII遺伝子座におけるHPV18 Ii-E1E2E6E7を含有するMVA-CR19による形質導入24時間後のAGE1.CR-pIX細胞溶解物のウエスタンブロット分析。抗原を、抗HPV18-E2(左上側パネル)および抗HPV18-E6(左下側パネル)、抗HPV18-E7(右上側パネル)抗体を用いて検出した。ローディング対照として、チューブリンレベルを、抗チューブリン抗体を使用してモニターした(右下側パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0111】
実施例は、本発明を説明する。
【実施例】
【0112】
[実施例1]
本発明のコンストラクトおよびそれらの性能
方法
抗原配列
抗原の部分を、Geneart/Thermo Fisher(Regensburg、ドイツ)で合成した。gene optimizerアルゴリズムを使用して、配列相同性を最小化し、ヒトコドン使用頻度に配列を適合させた。すべてのコンストラクトを、標準的な分子生物学の方法を使用してクローニングした。簡潔には、抗原を、製造業者の指示に従って、融合PCR、II型エキソカッター部位(BsaI-HF v2、New England Biolabs、Ipswich、米国)またはNEBuilder HIFI DNAアセンブリーキット(New England Biolabs、Ipswich、米国)を用いてアセンブルした。コンストラクトを、AgeI-HFおよびNotI-HF(New England Biolabs、Ipswich、米国)を使用して、異なるプラスミド骨格にクローニングした。配列の正確さを、サンガーシークエンシングによって検証した。プラスミドを、量に応じて、アルカリ溶解、または製造業者の指示に従って市販キット(Plasmid Midi plus、EndoFree Plasmid Megaキット、Qiagen、Hilden、ドイツ)を用いて、調製した。抗原Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7(
図1)の配列を、Ii(NM_004355.3)のアミノ酸配列をMfPV3(EF558839.2)のE1、E2、E6、およびE7と接続することによって、アセンブルした。E2の後に、ブタテッショウウイルス1の2A配列(Liu, Z. et al. Systematic comparison of 2A peptides for cloning multi-genes in a polycistronic vector. Sci. Rep. 7, 2017)を挿入し、第2のIi配列に続いた。E1をE2に、およびE6をE7に、それぞれ、GSリンカーを介して連結した。突然変異を、E6およびE7に導入して、発癌可能性:E6におけるL110QおよびC末端ETEVの欠失;D24G、L71R、C95Aを不活性化し、C297Aを、E2に導入して、DNA結合を不活性化した。この融合タンパク質をコードする配列を、最適化し、GeneOptimizerアルゴリズム(Raab, D., Graf, M., Notka, F., Schoedl, T. & Wagner, R. The GeneOptimizer Algorithm: using a sliding window approach to cope with the vast sequence space in multiparameter DNA sequence optimization. Syst. Synth. Biol. 4, 215-225, 2010)によってヒトコドン使用頻度に適合させ、GeneArt/ThermoFisher(Regensburg、ドイツ)によって合成し、pDONR221にクローニングした。他のコンストラクト(
図1)を、テンプレートとして上記のコンストラクトを使用する標準的な分子クローニング技法を使用することによって構築し、所望のプラスミド骨格にクローニングした。ワクチン接種目的のためのDNAを、製造業者の指示に従ってEndoFree Plasmid Megaキット(Qiagen、Hilden、ドイツ)を使用して生成した。
【0113】
細胞株、トランスフェクションおよびウイルス感染
HEK293T細胞およびA549細胞を、10%のウシ胎仔血清(FCS)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)が補充されたダルベッコMEM(DMEM)中で維持し、成長させた。9E10 myclハイブリドーマ細胞を、10%のFCS、1%のPen/Strepおよび2mMのグルタミン(Pan)が補充されたRPMI中で培養した。すべての細胞株を、非加湿インキュベーターにおいて、37℃および5%のCO2で維持した。
【0114】
HEK293T細胞を、ポリエチレンイミド(PEI)法(Boussif, O. et al. A versatile vector for gene and oligonucleotide transfer into cells in culture and in vivo: polyethylenimine. Proc. Natl. Acad. Sci. 92, 7297 LP - 7301, 1995)を使用してトランスフェクトした。PEIトランスフェクションのために、4×105個の細胞を、トランスフェクションの前の日に6ウェルプレートに播種した。細胞を、任意の補充なしのDMEM中の2.5μgのプラスミド(等量、空ベクターで満たした)および7.5μgのPEIを用いてトランスフェクトした。6時間のインキュベーション後、培地を、10%のFCSおよび1%のPen/Strepを有するDMEMに交換した。
【0115】
サブコンフルエントなA549細胞に、任意の補充なしのDMEM中、30のMOIでAd19a/64ベクターを感染させた。感染2時間後、培地を、10%のFCSおよび1%のPen/Strepを有するDMEMに交換した。
【0116】
アデノウイルスベクターの作成
血清型Ad19a/64のE1/E3欠損アデノウイルスベクターを、以前に記載されたようにして作成した[Ruzsics, Z., Lemnitzer, F. & Thirion, C. Engineering Adenovirus Genome by Bacterial Artificial Chromosome (BAC) Technology BT - Adenovirus: Methods and Protocols. in (eds. Chillon, M. & Bosch, A.) 143-158 (Humana Press, 2014). doi:10.1007/978-1-62703-679-5_11]。簡潔には、目的の遺伝子(GOI)-(
図1)を、CMVプロモーターの制御下のシャトルベクターpO6-19a-HCMV-MCSにクローニングした。次いで、CMV-GOI-SV40-pAを、大腸菌(E.coli)におけるFlp組換えを介して、E1/E3遺伝子が欠失した複製欠損Ad系ベクターのゲノムを含有するBACベクター(Ruzsics, Z. et al, 2014)に移入した。組換えウイルスDNAを、PacIによる制限消化によって、精製BAC-DNAから放出させた。得られた線状DNAを、ウイルス繁殖のために、上記に開示された産生細胞株にトランスフェクトした。組換えウイルスを、デオキシコール酸ナトリウム処理を介して、細胞から放出させた。残った遊離DNAを、DNase Iによって消化した。その後、ベクターを、CsCl勾配超遠心分離法、それに続いてPD10カラム(GE Healthcare、Chicago、米国)を介した10mMのHepes pH8.0、2mMのMgCl
2および4%のスクロースへの緩衝液交換によって精製した。タイトレーションを、抗ヘキソン抗体[Novus、アデノウイルス抗体(8C4)]による免疫組織化学的染色を介した感染した産生細胞の検出によるRapidTiter法を使用して行った。挿入物の完全性を、精製されたベクターから抽出されたDNA中のGOIのPCR増幅によって確認した。
【0117】
抗体および抗体精製
myc(9E10)に対する抗体を、ハイブリドーマ細胞上清から得た。9E10 myclハイブリドーマ細胞を、1%のFCS、1%のPen/Strepおよび2mMのグルタミンが補充されたRPMI中、1mlあたり5×105個細胞で播種した。上清を、播種5日後に回収し、抗体を、HiTrap Protein Gカラム(GE Healthcare、Chicago、米国)を介して精製した。カラムをPBSで洗浄した後、抗体を、0.1Mのグリシン/HCl(pH3.2)を用いて溶出させ、0.025容量の1MのTris/HCl(pH9)で中和し、PBSに対して透析した。
【0118】
使用された他の抗体は以下であった:マウス抗p2aペプチド(3H4、1:2000、Merck、Darmstadt、ドイツ)、マウス抗チューブリン(DM1α、1:1000、Santa Cruz、Heidelberg、ドイツ)、マウス抗ユビキチン-ビオチン(eBioP4D1、1:1000、Invitrogen、Carlsbad、米国)、ヤギ抗マウス-HRP(115-036-003、1:5000、Jackson、West Grove、米国)、ヤギ抗ウサギ-HRP(P0448、1:2000、Dako、Santa Clara、米国)、ストレプトアビジン-HRP(11089153001、1:5000、Roche、Basel、スイス)、ラット抗マウス-PE(A85-1、1:100、BD、Franklin Lakes、米国)。
【0119】
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析を、以前に記載されたようにして行った(Kiener, R. et al. Vaccine vectors based on Adenovirus 19a/64 exhibit broad cellular tropism and potently restimulate HCMV-specific T cell responses ex vivo. Sci. Rep. 8, 1474, 2018)。簡潔には、目的の細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、Roche、Basel、スイス)が補充されたTDLB緩衝液(50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.1%のSDS、1%のNonident P-40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム)に溶解した。上清の総タンパク質濃度を、Bradford法(タンパク質アッセイ、BioRad、Feldkirchen、ドイツ)によって測定した。タンパク質を、還元条件下、SDS-PAGE上で分離し、ウエスタンブロット分析のために、ニトロセルロース膜上でブロッティングした。標的を、上記に列挙した一次抗体および二次抗体を用いて検出した。HRP標識二次抗体および増強された化学発光基質またはFemto ECL(Thermo Fisher、Waltham、米国)を、Chemilux Proデバイス(Intas、Goettingen、ドイツ)において、検出のために使用した。ローディング対照のために、膜を、チューブリンに対する抗体で再検出した。
【0120】
細胞株のフローサイトメトリー分析
抗原の細胞内染色を、標準的な方法(Kiener et al., 2018)を使用して行った。細胞を、固定し、Cytofix/Cytoperm緩衝液(4%のPFA、1%のサポニン、PBS中)を用いて透過処理した。すべての洗浄工程は、Perm/Wash緩衝液(0.1%のサポニンを含有するPBS)を用いて行った。細胞を、それぞれ30分間、抗myc抗体(5μg/ml、Perm/Wash緩衝液に希釈)およびラット抗マウス-PE(Perm/Wash-緩衝液に1:100希釈)を用いて染色した。
【0121】
フローサイトメトリーアッセイを、488nmの励起フィルターおよび574/26nmの発光フィルターを用いるAttune NxTデバイス(Thermo Fisher、Waltham、米国)を使用して行った。細胞を、染色されたモックトランスフェクト細胞に対してゲーティングした。データの評価を、Attune NxTソフトウェアを使用して行った。
【0122】
ユビキチン化の分析
ユビキチン化タンパク質を分析するために、トランスフェクション24時間後、細胞を、10μMのMG132プロテアソーム阻害剤で6時間処理した。その後、細胞を、PBS中で回収し、2回洗浄した。脱ユビキチン化酵素の不活性化のために、新たに調製されたストック溶液からの20mMのN-エチルマレイミドを、TDLB溶解緩衝液に添加した。溶解物を、上記に記載されたようにして作成した。免疫沈降の前に、プロテインGダイナビーズ(Thermo Fisher、Waltham、米国)を、10μgのプルダウン抗体とともにロードした。これらのビーズを使用して、標的タンパク質を、ゆっくりとした回転下、4℃で終夜、500μgの細胞溶解物から免疫沈降した。ビーズをPBSで4回洗浄した後、SDS-PAGE緩衝液を、95℃で10分間加熱する前に、ビーズに添加した。試料を、上記に記載されたようにして、ウエスタンブロット分析のために使用した。
【0123】
動物および免疫化
Balb/CおよびCD1雌マウスをEnvigo(Horst、オランダ)から、OF1マウスをCharles River(フランス)から入手した。すべての動物を、Panum Institute、University of Copenhagenにおいて飼育した。すべての実験は、マウスを少なくとも1週間気候順化させた後に開始した。実験は、National Animal Experiments Inspectorate(Dyreforsogstilsynet、ライセンス番号2016-15-0201-01131)によって承認され、国のガイドラインに従って行った。
【0124】
DNA免疫化を、Helios Genegunシステム(BioRad、Feldkirchen、ドイツ)を使用して、1.6μmの金マイクロキャリア(BioRad、Feldkirchen、ドイツ)上にコーティングされた0.5gのDNAを用いて、皮内(i.d.)で行った。マウスは、それぞれ1週間の間隔で、4回のDNA免疫化を受けた。1つの群は、1部位に、4つのプラスミドの混合物をそれぞれ0.5μg受けた。
【0125】
アデノウイルスベクターによる免疫化を、50μLのPBSに希釈された2×107IFUのAd19a/64を用いて、筋肉内(i.m.)で行った。マウスは、Ad19a/64注射の前に、イソフルランで麻酔した。1つの群は、1部位に、4つのAd19a/64の混合物をそれぞれ2×107IFU受けた。
【0126】
脾細胞のフローサイトメトリー
脾細胞の単一細胞懸濁液を、HANKsにおける器官回収によって得て、それに続いて70μmの細胞ストレーナーを通した。細胞を、1μg/mLの関連ペプチドありまたはなしで、3μMのモネンシン中、5時間インキュベートした。細胞を表面マーカー:APC-Cy7またはBV421 CD8(53-6.7、1:200、BioLegend、San Diego、米国)、PE-Cy7 CD4(RM4-5、1:800、BD)、FITC CD44(IM7、1:100、BioLegend、San Diego、米国)およびPerCP-Cy5.5 B220(RA3-6B2、1:200、BioLegend、San Diego、米国)に対して染色した。表面染色後、細胞を、1%のPFA中で固定し、0.5%のサポニン中で透過処理し、APC IFN-γ(XMG1.2、1:100、BioLegend、San Diego、米国)およびPE TNF-α(MP6-XT22、1:100、BioLegend、San Diego、米国)抗体を使用して細胞内染色した。
【0127】
使用されたペプチドは、Ii-E1E2E6E7抗原全体をカバーする11アミノ酸が重複する16-merであった。ペプチドを、それぞれ、Ii、E1、E2、E6およびE7ペプチドを含有する5つの別々のプールにプールした。ペプチドは、KareBay、Town、中国から入手した。
【0128】
フローサイトメトリーをFortessa 3(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて行い、データ分析をFlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。エピトープ特異的CD8+ T細胞応答を、B220-、CD8+またはCD4+、CD44+、IFN-γ+細胞として測定し、器官あたりの細胞の総数で表した。IFN-γ+応答の質を、IFN-γのMFI、およびIFN-γ+ CD8+またはCD4+集団における二重陽性細胞(IFN-γおよびTNFの両方を発現する)の割合によって評価した。
【0129】
インビボ細胞傷害性
アッセイを、以前に記載されたものと同様に行った(Nielsen, K. N., Steffensen, M. A., Christensen, J. P. & Thomsen, A. R. Priming of CD8 T cells by adenoviral vectors is critically dependent on B7 and dendritic cells but only partially dependent on CD28 ligation on CD8 T cells. J. Immunol. 193, 1223-1232, 2014)。簡潔には、ナイーブBalb/Cマウス由来の脾細胞を、MfPV3 E1、E2、E6もしくはE7ペプチドプールとともに、またはペプチドなしで、30分間、37℃、5% CO2、2.5μgの各ペプチド/mLでインキュベートし、その後、0.4または5μMのCellTrace CFSE、ならびに0.2および2.5μMのCellTraceViolet(CTV; ThermoFisher、Waltham、米国)の組合せにより、10分間、37℃、5% CO2で染色した。パルスおよび染色された脾細胞を、1:1:1:1:1の比で混合し、合計で2.5×107個の細胞を、Ad19a/64ワクチン接種レシピエントBalb/Cマウスに静脈内注射した。5時間後、脾臓を回収し、標的細胞を、CFSE/CTV染色によって、Fortessa 3(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて同定した。死滅のパーセンテージを、以下の式を使用して計算した。
【0130】
【0131】
MHC-IにおけるE1(SIINFEKL)提示の分析
HEK293T細胞を、PEIトランスフェクションを使用して、2.5~3.5μgのDNAでトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、細胞を、PE抗H2KB-SIINFEKL(25-D1.16、1:160、Invitrogen、Carlsbad、米国)で染色し、細胞表面におけるSIINFEKL-H2Kb提示の存在を、E1提示についての代理として、LSRIIまたはFortessa 3(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて検出した。すべての試料は、生物学的に6反復で実行し、実験は、少なくとも2回繰り返した。
【0132】
エクスビボ免疫原性データのグラフ表示および統計分析
非刺激試料をバックグラウンド対照として使用し、それらの応答値を、対応する動物のペプチド刺激試料から減算した後、統計分析およびグラフ表示を行った。
【0133】
統計分析は、GraphPad Prism 8ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、米国)を使用して行った。バックグラウンド減算された値を使用して、多重比較のために、ボンフェローニ補正を用いるマンホイットニー検定を使用して個々の群を比較した。陽性対照群は、多重比較分析に含めなかった。
【0134】
結果の視覚的表示を支援するために、我々は、非刺激バックグラウンド試料に対するB220-、CD8+、CD44+、IFN-γ+カウントの平均数に基づく応答についての閾値を適用した。バックグラウンド試料の平均+2×SDよりも低いカウントを有するすべての試料を、応答なしと見なし、したがって、それらを、グラフ表示のために、100の値に手作業で調整した。すべての統計分析は、非調整値において行った。
【0135】
二重陽性の割合の分析(すべてのIFN-γ+のうちのTNF+ IFN-γ+%)およびIFN-γ+のMFIを、レスポンダー(IFN-γ+カウント>非刺激試料の平均+2×SD)においてのみ行った。
【0136】
各記号は1匹のマウスを表す。バーは中央値を示す。有意性レベルは、*(p<0.05)、**(p<0.01)、***(p<0.005)によってマークする。
【0137】
結果
抗原の設計
非ヒト霊長類における既存のパピローマウイルス感染を排除することができる治療用ワクチンの作成を目的として、内因性T細胞アジュバントIiに連結されたMfPV3のE1、E2、E6、およびE7を含む抗原コンストラクトを設計した。8つの異なる構成を着想して(
図1)、さらなる開発のための最も強力で広範な応答を誘発するものを選択した。第1の複合抗原において、順序はIi-E1E2E6E7であったが、E1/E2およびE6/E7の順序は、(i)抗原の順序の影響を試験するため、および(ii)導入遺伝子発現のレベルに対して、Iiに対する位置の影響を決定するために、Ii_E6E7E1E2において逆転させた。両事例において、すべてのタンパク質は、人工融合ポリペプチドとして発現されたが、個々のタンパク質は、短い可撓性GSリンカーによって分離されて、融合タンパク質の安定性および蓄積を促進し(Chen, X., Zaro, J. L. & Shen, W.-C. Fusion protein linkers: property, design and functionality. Adv. Drug Deliv. Rev. 65, 1357-1369, 2013)、Iiは、T細胞アジュバントとしてN末端に融合された(Holst, P. J. et al. MHC Class II-Associated Invariant Chain Linkage of Antigen Dramatically Improves Cell-Mediated Immunity Induced by Adenovirus Vaccines. J. Immunol. 180, 3339-3346, 2008)。IiのT細胞アジュバント効果を評価するための参照として、Iiなしの変異体E1E2E6E7を設計した。Iiアジュバント効果が、より短い抗原に融合された場合に、より顕著であったかを調べるために、E1E2を、Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7においてp2aペプチドによってE6E7から分離した(Kim, J. H. et al. High cleavage efficiency of a 2A peptide derived from porcine teschovirus-1 in human cell lines, zebrafish and mice. PLoS One 6, 2011)。2つの不変鎖間のヌクレオチド配列相同性を、相同組換えを妨げる多様なコドンを使用することによって最小化した。加えて、4つのウイルスタンパク質のそれぞれを、ベンチマークおよび参照として機能するIi融合物としてそれら自身上で作成した。MfPV3初期タンパク質に対する抗体の欠如を理由として、すべてのコンストラクトを、C末端mycタグを含有するように改変した。
【0138】
E6およびE7は、非常に強力な腫瘍性タンパク質であるので、形質転換欠損変異体のみが、安全性を確実にするために、ワクチンの状況において使用されなければならない。HPV16に対する相同性に基づいて、腫瘍性タンパク質E6を、L110Q置換を導入して、E6のE6BPへの結合、したがって腫瘍抑制因子p53の結合および分解を防止することによって不活性化した(Liu, Y. et al. Multiple Functions of Human Papillomavirus Type 16 E6 Contribute to the Immortalization of Mammary Epithelial Cells. 73, 7297-7307, 1999)。加えて、C末端PDZドメインを欠失させて(ΔETEV)、テロメラーゼおよび他のLxxLLタンパク質の結合を消失させた(Wieking, B. G. et al. A Non-oncogenic HPV 16 E6/E7 Vaccine Enhances Treatment of HPV Expressing Tumors. Cancer Gene Ther. 19, 667-674, 2013)。E7を、それぞれ、中央LxCxEモチーフを不活性化して、形質転換活性およびpRB結合を低減し、Mi2β結合を低減し、二量化を阻害する、置換C24G、L71R、およびC95Aを導入することによって不活性化した(Wieking, 2013; Edmonds, C. & Vousden, K. H. A Point Mutational Analysis of Human Papillomavirus Type 16 E7 Protein. 63, 2650-2656, 1989)。E2の保存されたDNA結合ドメインを、C297Aによって改変して、偶数のシステインを有するポリタンパク質を作成し、DNA結合を低減させた。
【0139】
初期の生化学的および免疫学的特性評価のために、コンストラクトを、抗原がヒトT細胞白血病ウイルス-1(HTLV-1)調節エレメント(Barouch, D. H. et al. A human T-cell leukemia virus type 1 regulatory element enhances the immunogenicity of human immunodeficiency virus type 1 DNA vaccines in mice and nonhuman primates. J. Virol. 79, 8828-8834, 2005)と組み合わされたヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリAターミネーターの制御下にある、さまざまなNHPおよび臨床試験における証明された成績を有するDNAワクチンベクターの誘導体であるpURVacにクローニングした[Asbach, B. et al. Priming with a Potent HIV-1 DNA Vaccine Frames the Quality of Immune Responses prior to a Poxvirus and Protein Boost. J. Virol. 93, 2019;Sarwar, U. N. et al. Safety and immunogenicity of DNA vaccines encoding Ebolavirus and Marburgvirus wild-type glycoproteins in a phase I clinical trial. J. Infect. Dis. 211, 549-557, 2015;Joseph, S. et al. A Comparative Phase I Study of Combination, Homologous Subtype-C DNA, MVA, and Env gp140 Protein/Adjuvant HIV Vaccines in Two Immunization Regimes. Front. Immunol. 8, 149, 2017;Pantaleo, G. et al. Safety and immunogenicity of a multivalent HIV vaccine comprising envelope protein with either DNA or NYVAC vectors (HVTN 096): a phase 1b, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet HIV 6, e737-e749, 2019]。
【0140】
MfPV3抗原の生化学的および細胞生物学的特性評価
最初に、抗原コンストラクトの発現の性質を評価した。抗myc抗体を使用するウエスタンブロット分析によって検出される予想サイズのバンドを有するすべての抗原を、HEK293T細胞において発現させた(
図2A;
図1)。分離されていないIi-E1E2-p2a-Ii-E6E7に対するより高い分子量のバンドは、C末端断片を検出する抗mycウエスタンブロットにおいても、N末端断片が検出される抗p2aウエスタンブロットにおいても検出できなかった。これは、ポリタンパク質がp2a部位で完全に分離されたという証拠を提供する。一部の事例において、特に高いシグナル強度を有するタンパク質について、計算値と比較してより高いまたはより低い分子量のバンドが観察できた。それらのサイズに基づいて、より高い分子量のバンドは、不完全に還元されたタンパク質と似ていることがあり、これは、Iiがシステイン連結三量体を形成すると思われるので、完全に驚くべきことではない(Fougeroux, C., Turner, L., Bojesen, A. M., Lavstsen, T. & Holst, P. J. Modified MHC Class II-Associated Invariant Chain Induces Increased Antibody Responses against Plasmodium falciparum Antigens after Adenoviral Vaccination . J. Immunol. 202, 2320-2331, 2019)。より低い分子量のバンドは、推定上、断片サイズに基づいて、Ii内で最も切断されそうなN末端分解産物と似ている。Iiが、その連結されたカーゴの一部をエンドソームコンパートメントに輸送し、そこでタンパク質分解が起こるので、部分的分解が予想される。
【0141】
異なるサイズのタンパク質が異なるブロッティング条件を示すので、ウエスタンブロット分析は、定量的であると仮定できず、そのため、シグナル強度は、実際の発現レベルを反映しないことがある。したがって、タンパク質レベルを、抗myc抗体による細胞内染色後、フローサイトメトリーによって定量化した(
図2B)。異なるMfPV3抗原の発現レベルは、Ii-E7を除いて、わずかにのみ異なり、これは、すべての他の抗原と比較して、2~3倍高いMFI値を示した。
【0142】
MHCクラスI拘束SIINFEKLエピトープは、E1融合タンパク質からプロセシングされ、インビトロでMHC-I分子上に豊富に存在する
ウシパピローマウイルス1 E1型が、それ自身、パピローマウイルス感染細胞内でユビキチン化され、迅速に分解される不安定なタンパク質であることが報告されている[Malcles, M.-H., Cueille, N., Mechali, F., Coux, O. & Bonne-Andrea, C. Regulation of bovine papillomavirus replicative helicase e1 by the ubiquitin-proteasome pathway. J. Virol. 76, 11350-11358, 2002;Mechali, F., Hsu, C.-Y., Castro, A., Lorca, T. & Bonne-Andrea, C. Bovine papillomavirus replicative helicase E1 is a target of the ubiquitin ligase APC. J. Virol. 78, 2615-2619 (2004)]。構造的分解は、我々が、HPV感染細胞および組織におけるタンパク質レベルでのE1発現の検出を報告するどんな研究も見出すことができなかった理由、ならびにE1が抗体に関して免疫原性が乏しい理由を説明する可能性がある(Ewaisha, R., Panicker, G., Maranian, P., Unger, E. R. & Anderson, K. S. Serum Immune Profiling for Early Detection of Cervical Disease. Theranostics 7, 3814-3823, 2017)。しかしながら、自然HPV感染における乏しい免疫原性にもかかわらず、治療用ワクチンによって標的化可能であるための要件である、E1由来ペプチドが、感染細胞においてMHC-I上に提示されることが確認されなければならない。E1由来ペプチドの提示を検出するために、我々は、最小H2-kb拘束性OVAエピトープSIINFEKLを有する配列においてMfPV3をコードするDNAコンストラクトを設計した[Dersh, D., Yewdell, J. W. & Wei, J. A SIINFEKL-Based System to Measure MHC Class I Antigen Presentation Efficiency and Kinetics. Methods Mol. Biol. 1988, 109-122 (2019)]。E1-SIINFEKLコンストラクトのトランスフェクション後、MHC-Iにおける導入遺伝子の提示を、H2-Kb-SIINFEKL特異的抗体を使用して評価した(
図2C)。プロセシングされ、提示されたSIINFEKLペプチドは、Iiに連結された場合および単独で送達された場合の両方で、細胞表面上のMHC-Iにおいて検出できた。これは、E1由来ペプチドが、感染細胞の表面で提示されると予想され得るので、治療用ワクチンに含まれる関連抗原としてのE1の選択をサポートする。
【0143】
抗原コンストラクトのDNAワクチン接種は、MfPV3初期抗原に対するCD4
+およびCD8
+ T細胞応答を誘導する
非近交系CD1マウスの皮内(i.d.)DNA免疫化は、E1および/またはE2をコードするすべてのpURVac DNAワクチンが、ICSおよびフローサイトメトリー分析によって測定されるE1およびE2特異的IFN-γ
+ CD8
+およびCD4
+ T細胞を誘導したことを確認した(
図3)。より詳細には、すべてのDNAワクチン候補は、陽性対照と同程度のE1応答を提供したが、Ii-E2陽性対照についてより高い応答の傾向があった。ワクチンは、これらの2つの抗原についての陽性対照を含む、このマウスの非近交系系統においてE6またはE7に対する応答を誘導した。重要なことには、ポリタンパク質として4つの抗原すべてをコードするすべてのワクチンは、個々の抗原(Ii-E1、Ii-E2、Ii-E6、Ii-E7)をコードする4つのワクチンのミックスによって誘導される応答と同等の応答を生じた。これは、総合的に、免疫原性が、単一pURVac DNAワクチンから、ポリタンパク質としてMfPV3初期抗原を送達することによって失われなかったことを示唆する。まとめると、4つの異なるポリタンパク質をコードするDNAワクチンは、T細胞応答を誘導し、これは、E1およびE2特異的IFN-γ
+ CD8
+およびCD4
+ T細胞の頻度に関して統計学的な差を示さなかった。これは、(i)IiがE1E2E6E7に融合されるかどうか、(ii)ポリタンパク質における初期抗原の順序、および(iii)Ii-E6E7からIi-E1E2を分離するためのp2a部位の使用に関する事例である。T細胞応答の質は、すべてのワクチンにわたって同等であり、IFN-γのMFIおよびIFN-γ
+ T細胞のTNF産生によって評価された。予想されるように、Iiは、ヒトIiがマウスにおいてアロジェニックであるので、ほとんどのマウスにおいてCD8応答、および一部のマウスにおいてCD4応答を生じさせる。
【0144】
2つのp2aが分離したIi連結抗原配列(Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7)およびIi-E6E7E1E2を有するワクチンは、有意な応答および陰性対照群に対する有意差によって示される、E1に対するわずかに良好なCD4応答を誘発すると思われた(
図3A)。
【0145】
アデノウイルスベクターの特性評価
抗原に対する細胞免疫応答を増加させるために、ウイルスベクターを、その後、抗原デリバリーのために使用した。血清型19a/64(rAd)由来のアデノウイルスベクターは、カニクイザルにおける高いCD8
+ T細胞応答を誘導することができたMfPV3抗原のデリバリーのための好適なベクターであることが示されている(Ragonnaud, E. et al. Replication deficient human adenovirus vector serotype 19a/64: Immunogenicity in mice and female cynomolgus macaques. Vaccine 36, 6212-6222, 2018)。組換えMfPV3抗原の改変セットを含むrAdベクターの精密パネルを作成した。Ii-E6E7E1E2は、それが他のポリペプチドよりも優れていなかったので、除いた。単独で投与された場合のE2に対するより高い応答の傾向は、我々に、E2を個々にIiに連結させ、別々のドメインとして発現させることが有利であるかどうかを推測させた。それ故に、参照としてE2なしのE1、E6およびE7に連結されたN末端Iiをコードするワクチン(Ii-E1E6E7)、およびIi-E1E6E7抗原が自己分離p2aペプチドを介したIi-E2融合によって拡張されたバージョン(Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2)を設計した。コードされる抗原の適した発現を確認するために、ウエスタンブロット分析を、アデノウイルスで形質導入されたA549細胞を用いて行った。すべてのベクターは、予想される位置で検出されるそれぞれの融合タンパク質に似ているバンドを有する抗原を容易に発現した(
図4A、
図1および2)。Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7に関しては、より高い分子量断片は、Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2について検出できず、p2a部位での完全な分離が、アデノウイルスベクターが送達する抗原の状況においても働くことが明らかになった。フローサイトメトリーを使用するA549細胞におけるアデノウイルスで送達される抗原の定量的比較は、Ii-E7融合タンパク質のより高い発現を除いて、異なるMfPV3抗原コンストラクトの類似の発現レベルを確認した(
図4B)。全体像は、HEK293T細胞におけるpURVac DNAワクチンベクターのデリバリー後、観察された発現とかなり類似していた。
【0146】
アデノウイルスデリバリーは、非近交系マウスにおけるHPV初期抗原に対する強力な細胞免疫応答を誘導する
非近交系CD1マウスの筋肉内免疫化は、ワクチンのAd19a/64製剤が、E1およびE2抗原に対するCD8
+およびCD4
+ T細胞応答の両方を誘導したことを確認した(
図5AおよびB)。とりわけ、Iiを含むワクチンは、Iiをコードしないワクチンよりも非常に大きな応答の傾向を示した(
図5AおよびB:E1E2E6E7を他のワクチンと比較した)。応答のIi媒介増強の傾向が、一部のワクチン構成について、CD4およびCD8 T細胞応答の両方について観察されたが、差は、E1E2E6E7と比較して、Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7によって誘導されるE2特異的CD8応答についてのみ有意であった(
図5B、上側パネル)。これは、アデノウイルスワクチンデリバリーの文脈においてT細胞応答をブーストするIiの能力を強調した。Ii-E1E2E6E7抗原が、Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7抗原よりも高いE1応答の傾向を追加的に示したので、以後の実験を行ったが、しかしながら、コンストラクト間の抗原免疫原性階層における一貫した差を実証することができなかった(データは示さない)。IFN-γおよびTNFの両方を分泌することができる二重陽性T細胞の割合、ならびにIFN-γのMFI値によって評価される、T細胞応答の質の差は検出されなかった。
【0147】
E1およびE2に対する活発なT細胞応答(
図5CおよびD)以外に、我々は、実際に、E6に対する確かなCD4
+ T細胞応答を理解した(
図5D)。数匹のマウスも、E6に対して反応するCD8
+ T細胞を有しており、我々のワクチンコンストラクトのプロセシングおよび免疫原性を確認した。数匹のマウスのみがCD8
+ T細胞応答を有しており、これらの応答が低かったので、真の応答が存在したか、または単に高いバックグラウンドに起因したかどうか疑問視した。
図5Cに表される代表的なマウスは、真の応答の様に挙動するCD44
+ IFN-γ
+集団を示す。さらにまた、IFN-γ
+細胞の大部分は、同様にTNFを産生し、活性化表現型を確認した。
【0148】
全体として、ワクチンのAd19a/64デリバリーは、試験された4つのMfPV3ポリタンパク質抗原すべてに対してT細胞を効果的に誘導し、抗原の免疫原性は、Iiの包含によって増強された。
【0149】
Ii融合は、ユビキチン化およびプロテアソーム分解を増強した
IiのT細胞アジュバント効果の基本メカニズムは、まだ完全に明らかではないが(Fougeroux et al, 2019)、示唆される作用メカニズムの1つは、連結された抗原のプロテアソーム分解、およびそれによって、増強されたMHC-I提示をもたらす、Iiのユビキチン化である[Esposito, I. et al. MHC class II invariant chain-adjuvanted viral vectored vaccines enhances T cell responses in humans. Sci. Transl. Med. 12, (2020)]。このメカニズムもIi連結MfPV3抗原に対するCD8
+ T細胞応答の増強の主な原因であるかを調べるために、Ii-E1E2E6E7およびE1E2E6E7トランスフェクト細胞を、プロテアソーム阻害剤MG132の非存在下または存在下で培養した。免疫沈降mycタグ付けポリペプチドの抗ユビキチンウエスタンブロット分析は、IiなしのE1E2E6E7と比較して、Ii-E1E2E6E7についてのより高いユビキチン依存性シグナル強度を明らかにした(
図6A)。この効果は、MG132が存在した場合に、さらにより顕著であった。Myc特異的シグナルは、免疫沈降(IP)手順の忠実度を確認し、抗チューブリンウエスタンブロットによるIP上清の分析は、同等の量の細胞溶解物がIP手順において使用されたことを明らかにした(
図6BおよびC)。より高いレベルのユビキチン化は、一般に、より速い分解に関連する。これは、それぞれ、MG132の非存在下または存在下で、C末端SIINFEKLペプチドと融合したIi-E1およびE1を一過性に発現させることによって例示的に実証できた(
図6DおよびE)。MG132なしで、Ii-E1-SIINFEKLは、検出が困難であったが、顕著なシグナルは、MG132が添加された場合に視覚化できた。より低い分子量のシグナルは、分解産物を示す。この効果は、IiなしのE1について観察されず、これは、Iiがプロテアソーム分解の加速を誘導したことを示唆した。
【0150】
アデノウイルスデリバリーは、インビボで標的細胞の特異的死滅を誘導する
rAd送達抗原によって誘導される細胞応答が細胞傷害能を有していたことを保証するために、我々は、近交系Balb/Cマウスを免疫し、14日後、これらのマウスを、ペプチドパルスした事前染色同系標的細胞でチャレンジした。ワクチンは、E1に対するCD8
+応答を誘導したが(
図7A)、Balb/Cマウスにおいて他の抗原に対して誘導しなかった(データは示さない)一方で、CD4応答が、E1、E2およびE6に対して生じた。Iiなしのワクチンが、この近交系マウスモデルにおいて任意の検出可能なE1特異的CD8
+応答を生じなかったので、Iiは、再び、アジュバントとしてのその関連性を証明した(
図7A)。インビボ細胞傷害性アッセイは、E1標識細胞の特異的死滅を示し(
図7BおよびC)、特異的死滅能の階層は、IFN-γ
+ CD8
+ E1特異的T細胞の数に対応する。我々は、設計されたrAdワクチンが、強力な細胞傷害性応答を誘導し、このワクチン設計が既存のMfPV3感染を除去することができるという我々の仮説をサポートすると結論付けることができる。
【0151】
[実施例2]
本発明に従って改変されたE6およびE7の発癌性の評価
材料および方法
細胞株
NIH-3T3細胞およびHEK293T細胞を、10%のウシ胎仔血清(FCS)および1%のPen/Strep(PS)が補充されたDMEM中、5%のCO2で37℃で培養した。NIH-3T3細胞を、10%~70%のコンフルエンスで維持して、成熟および分化を防止した。
【0152】
VSV-G偽型レンチウイルスベクターの生成
AgeI-HFおよびNotI-HF(NEB、Ipswich、米国)制限酵素を使用することによって、それぞれ、HPV16抗原およびHPV16 E6wtを、pLV-MCS-IRES-Puroにクローニングし、HPV16 E7wtおよびGFPを、pLV-MCS-IRES-Neoにクローニングした。両pLVベクターは、CMVプロモーターと、それに続くMCS、配列内リボソーム進入部位(IRES)およびピューロマイシンまたはネオマイシンのいずれかに対する抗生物質耐性遺伝子を含有する。
【0153】
3.9×106個のHEK293T細胞を、T75フラスコに播種した。播種24時間後、培地を、添加物なしのDMEMに交換し、細胞を、9mlの最終容量中、PEI法[Boussif, O., Lezoualc'h, F., Zanta, M. A., Mergny, M. D., Scherman, D., Demeneix, B., & Behr, J. P. (1995). A versatile vector for gene and oligonucleotide transfer into cells in culture and in vivo: polyethylenimine. Proceedings of the National Academy of Sciences, 92(16), 7297 LP - 7301. https://doi.org/10.1073/pnas.92.16.7297]を使用して、3.75μgの抗原を含有するpLVおよび3.75μgのレンチウイルスパッケージングミックス(1:1:1;pMDL-Gag:pVSV-G:pREV)でトランスフェクトした。トランスフェクション5時間後、10%のFCSおよび1%のPSを含有する4mlのDMEMを、フラスコに添加した。レンチウイルスベクターを、1000×gで5分間の遠心分離によって、トランスフェクション48時間後に回収し、上清を、0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過し、アリコートで、-80℃で貯蔵した。
【0154】
NIH-3T3細胞の形質導入および抗生物質選択
1×105個のNIH-3T3細胞を、T25フラスコに播種した。播種24時間後、培地を吸引し、細胞を、10μg/mlのポリブレン(TR-1003-G、Sigma Aldrich、St.Louis、米国)の存在下、2mlのそれぞれのレンチウイルスベクターを含有する各上清で形質導入した。6時間後、4mlの10%のFCSおよび1%のPSを含有するDMEMを添加した。72時間後、形質導入された細胞を、形質導入のために使用されたレンチウイルスベクターに応じて、1mg/mlのG418(CP11.3、Roth、Karlsruhe、ドイツ)および/または2μg/mlのピューロマイシン(ant-pr-1、InVivoGen、San Diego、米国)を介して選択した。細胞を、すべての形質導入されていない細胞が死亡するまで、抗生物質選択下に少なくとも2週間おいた。
【0155】
抗体
以下の抗体を使用した:抗E2(TVG-271、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗E6(GTX132686、1:2000、Biozol、Eching、ドイツ)、抗E7(NM2、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗チューブリン(DM1α、1:1000、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、ヤギ抗マウス-HRP(115-036-003、1:5000、Jackson、West Grove、米国)およびヤギ抗ウサギ-HRP(P0448、1:2000、Dako、Santa Clara、米国)。
【0156】
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析を、以前に記載されたようにして行った[Kiener, R., Fleischmann, M., Schwegler, C., Ruzsics, Z., Thirion, C., Schroedel, S., Asbach, B., & Wagner, R. (2018). Vaccine vectors based on Adenovirus 19a/64 exhibit broad cellular tropism and potently restimulate HCMV-specific T cell responses ex vivo. Scientific Reports, 8(1), 1474. https://doi.org/10.1038/s41598-018-19874-1]。簡潔には、目的の細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、Roche、Basel、スイス)が補充されたTDLB緩衝液(50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.1%のSDS、1%のNonidet P-40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム)に溶解した。上清の総タンパク質濃度を、Bradford法(タンパク質アッセイ、BioRad、Feldkirchen、ドイツ)によって測定した。タンパク質を、還元条件下、SDS-PAGE上で分離し、ウエスタンブロット分析のために、ニトロセルロース膜上でブロッティングした。標的を、上記に列挙した一次抗体および二次抗体を用いて検出した。HRP標識二次抗体および増強された化学発光基質またはFemto ECL(Thermo Fisher、Waltham、米国)を、Chemilux Proデバイス(Intas、Goettingen、ドイツ)において、検出のために使用した。ローディング対照のために、膜を、剥がし[ストリッピング緩衝液(62.5mMのTris、2%のSDS、0.1Mのβ-メルカプトエタノール、pH6.6)、50℃で30分間]、チューブリンに対する抗体で再検出した。
【0157】
軟寒天形質転換アッセイ
軟寒天形質転換アッセイを、以下のマイナーな改変を用いて、以前に記載されたようにして行った[Borowicz, S., Van Scoyk, M., Avasarala, S., Karuppusamy Rathinam, M. K., Tauler, J., Bikkavilli, R. K., & Winn, R. A. (2014). The Soft Agar Colony Formation Assay. JoVE, 92, e51998. https://doi.org/doi:10.3791/51998]。6ウェルプレートを、それぞれ、10%のFCS、1%のPS、3.7g/lのNaHCO3、3.8g/lのD-グルコース、0.5%の低融点アガロース(6351.2、Roth、Karlsruhe、ドイツ)、1mg/mlのG418および/または2μg/mlのピューロマイシンを含有する、2mlのDMEM(フェノールレッドなし、低グルコース)(D2902、Sigma Aldrich、St.Louis、米国)で満たし、培地が固化するまで、室温でインキュベートした。5×103個のレンチウイルスで形質導入されたポリクローナルNIH-3T3細胞を、事前処理された6ウェルプレートにおいて、37℃に事前に温められた、それぞれ、10%のFCS、1%のPS、3.7g/lのNaHCO3、3.8g/lのD-グルコース、0.35%の低融点アガロース、1mg/mlのG418および/または2μg/mlのピューロマイシンを含有するDMEMに播種し、培地が固化するまで、室温でインキュベートした。プレートを、37℃および5%のCO2で、21日間インキュベートした。この期間内に、細胞に、週に2回、10%のFCSおよび1%のPSが補充された200μlのDMEMを供給した。21日後、各ウェルを、100μlの4%のPFAで固定し、10%のメタノール中の0.005%のクリスタルバイオレット(v/v)を用いて、室温で1時間染色した。写真を、5.6の絞り値、および2.88の焦点で、alphaimager HP(Proteinsimple、San Jose、米国)において撮った。コロニーを、ImageJを用いてカウントした[Schindelin, J., Arganda-Carreras, I., Frise, E., Kaynig, V., Longair, M., Pietzsch, T., Preibisch, S., Rueden, C., Saalfeld, S., Schmid, B., Tinevez, J.-Y., White, D. J., Hartenstein, V., Eliceiri, K., Tomancak, P., & Cardona, A. (2012). Fiji: an open-source platform for biological-image analysis. Nature Methods, 9(7), 676-682. https://doi.org/10.1038/nmeth.2019]。統計分析は、GraphPad Prism 8ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、米国)を使用して行った。個々の群を、両側のパラメーター化された対応のないT検定を使用して比較した。各記号は1反復を表し、バーは平均と平均の標準誤差(SEM)を示す。有意性レベルは、*(p<0.05)、**(p<0.005)、ns(有意でない)によってマークする。
【0158】
結果
抗原発現は、足場依存性成長を引き起こさない
足場依存性成長は、形質転換細胞が固相への付着とは無関係に成長することが可能なので、発癌の顕著な特徴である(Borowicz et al., 2014)。形質転換についての最もストリンジェントな試験の1つは、軟寒天形質転換アッセイであり、これは、軟寒天における固相依存性成長を特性評価する。このために、NIH-3T3細胞を、それぞれ、以下のHPV16抗原:Ii-E1E2E6E7、Ii-E1E2-p2a-Ii-E6E7、E1E2E6E7、Ii-E2、Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2、Ii-E1E6E7、E6wt、およびE7wtをコードするVSV-G偽型レンチウイルスベクターで形質導入した(
図1A)。対照の目的で、NIH-3T3細胞を、それぞれ、GFPをコードするVSV-G偽型レンチウイルスベクターおよび導入遺伝子を欠くレンチウイルスベクターで形質導入した。加えて、1つのポリクローナルNIH-3T3細胞株を、HPV16-E6wtおよびHPV16-E7wtをコードするレンチウイルスベクターの両方による形質導入によって作成した。
【0159】
抗生物質選択後、ポリクローナルNIH-3T3細胞株の導入遺伝子発現を、ウエスタンブロット分析によって検証した。すべての細胞株について、正確なサイズでの予想バンドを、Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2を除いて、検出した(
図8A)。この細胞株の作成は、3回試行して失敗したので、Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2を、さらなる分析から除いた。5×10
3個の細胞を、方法セクションに記載されたようにして、軟寒天に播種した。播種3週間後、プレートを染色し、コロニーをImageJを用いてカウントした。軟寒天において多数のコロニーを容易に形成したE7wtおよびE6wt+E7wtで形質導入された細胞を除いて(
図8B)、陰性対照(GFPおよび空ベクターで形質導入されたNIH-3T3細胞)と比較してコロニーの数に差はなかった。総合すれば、これは、HPV16抗原の形質転換の潜在力の機能的不活性化を確認し、したがって、抗原は安全であると考えることができる。
【0160】
[実施例3]
アカゲザルにおけるMfPV3 Ii-E1E2E6E7の免疫原性
材料および方法
細胞株、トランスフェクションおよびウイルス感染
懸濁液中で成長させたAGE1.CR.pIXおよびAGE1.CR.pIX-T-REx細胞を、2mMのL-グルタミン(Sigma)および組換えインスリン様成長因子(LONG-R3 IGF、50ng/mLの最終濃度、Sigma)が補充された化学的に定義されたCD-U6培地(ProBioGen AG)中で維持し、オービタルシェーカー(Multitron Pro,Infors HT)において、8%のCO2で、180rpmの振とう速度でインキュベートした。接着成長のために、AGE1.CR.pIXおよびAGE1.CR.pIX-T-REx細胞を、5%のウシ胎仔血清(FCS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地DMEM/F12中で培養した。接着細胞株を、加湿インキュベーターにおいて、37℃および8%のCO2で維持した。
【0161】
組換えMVAベクターの作成
組換えMVAベクターを、以前に記載されたようにして作成した[Jordan, I., Horn, D., Thiele, K., Haag, L., Fiddeke, K., Sandig, V., Virol Sin. 2020 Apr; 35(2): 212-226. doi: 10.1007/s12250-019-00176-3.]。簡潔には、目的の遺伝子(GOI)-(
図1)を、MVA E/Lプロモーターの制御下のMVAの欠失部位IIIへのGOIの組み込みに好適なシャトルベクターSP-CR19III-tetOにクローニングした。異なるGOIをコードする組換えMVAを、Tetシステム(上記を参照されたい)の利点を取ることによって、組換えMVAの作成および繁殖の間のGOIの望ましくない発現を防止する接着AGE1.CR.pIX-T-REx細胞における相同組換えによって作成した。したがって、6ウェルプレートに播種された培養単層に、0.05のMOIで、MVAまたはMVA-CR19を感染させ、製造業者の指示に従ってEffecteneトランスフェクション試薬(Qiagen、ドイツ)を使用して、2μgの個々のシャトルベクターでトランスフェクトした。感染/トランスフェクトされた培養物を、感染/トランスフェクション2~3日後に回収し、超音波処理し、6ウェルプレートフォーマットにおける細胞単層の感染のために使用した。得られたプラークをPCRによって検証し、反復プラーク精製手順を、正確なGOI発現カセットなしのMVAがもはや存在しなくなるまで(通常、5~8ラウンド以内のプラーク精製)、開始した。
【0162】
プラーク精製MVAの繁殖のために、細胞回収材料を、Vial Tweeter(20秒の100%のサイクルおよび90%の振幅に設定、Hielscher、ドイツ)を使用して超音波処理し、AGE1.CR.pIX-T-REx[CD-U4およびCD-VP4(Merck-Millipore)の1:1混合物中、1mlあたり2×106個細胞の懸濁液中で成長]に、0.05のMOIで、個々の組換えMVAベクターを接種した。最後に、MVAを、感染48時間~72時間後に回収し、TCID50力価を決定した。
【0163】
動物
カニクイザルの使用のための倫理審査による承認は、Bogor Agricultural University IACUCにおける霊長類研究センター(動物のケアおよび使用委員会)によって登録された。6~10歳の3~5kgの体重の雌カニクイザルを、結核、サルT細胞白血病ウイルスおよびサルレトロウイルスについて陰性、ならびにMfPV3について子宮頸部の陽性に基づいて、この研究における使用のために選択した。選択された動物を、ワクチン接種前1か月間気候順化させた。動物を、群に収容し、1日2回、monkey chow(Charoen Pokpand、タイ)を与えた。
【0164】
すべての手順は、高度に訓練された獣医師、動物技術者および世話人によって行った。ワクチン接種および採血、子宮頸部スワブなどのすべての手順の前に、動物を、ケタミン(10~15mg/kg)およびキシラジン(0.5~1mg/kg)により麻酔した。手順の前後に、マカクを、痛み、苦痛、体温および体重についてモニターした。採血は、実験の期間にわたって許容される最大容量に制限した。実験は依然として進行中であるが、すべての動物は、他の実験または採血プログラムにおける使用のために、研究の最後に共同体に戻した。
【0165】
子宮頸部スワブからのDNA精製およびqPCRによるMfPV3検出
簡潔には、子宮頸部試料を、小さい子宮頸部サイトブラシ(cytobrush)を使用して得、TEN緩衝液(10mMのTris HCl pH7.5;5mMのEDTA、50mMのNaCl)と呼ばれる保存液に入れた。DNAを、製造業者の手順に従って、DNA抽出キット(QIAmp DNA血液ミニキット、Qiagen、Hilden、ドイツ)を用いて子宮頸部試料から抽出し、100mL中に溶出した。
【0166】
MfPV3陽性カニクイザルの選択、および治療用ワクチン接種試験の間のMfPV3感染レベルの決定は、以下のプライマーおよびプローブのセット:5’FAM-aaatggtgcagtgggcatacgacc-3’BHQ1、gggaaccacctgaatggataおよびggcgcaatccttcacatattを用いる定量的PCR(qPCR)によって、Bogor University(Indonesia)において行った。
【0167】
ワクチン接種
動物に、0日目にPBSまたはAd19a/64ベクター化MfPV3 Ii-E1E2E6E7のいずれかで、および42日目にMVAベクター化MfPV3 Ii-E1E2E6E7でワクチン接種した。ワクチンは、各経路で、両方ともi.m.、i.rec.およびi.vag、2×108IFU(Ad19a/64)またはTCID50(MVA)を与えた。
【0168】
ELISpot
各々のワクチン接種されたカニクイザルからの末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque(Sigma)によって、血液から精製した。新たに精製されたPMBCからのワクチン抗原特異的T細胞を、2mg/mLの関連ペプチドプールの存在下、37℃および5%のCO2での18~20時間のインキュベーション後、サルIFN-γ ELISPOTplusキット(MABTECH、番号3421M-4HST-2)を使用して、IFN-γ産生によって測定した。スポット形成単位(SFU)を、IRIS機器において読み取り、ELISpot Big強調アルゴリズムを使用してカウントした。非刺激試料からのバックグラウンド応答を、グラフ表示の前に減算した。
【0169】
NHP PBMCのフローサイトメトリー
各々のワクチン接種されたカニクイザルからの末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque(Sigma)によって、血液から精製した。細胞を、2μg/mLの関連ペプチドありまたはなしで、20ug/uLのブレフェルジンA中、5時間インキュベートした。細胞を、表面マーカー:APC-CD3(クローンSP34-2、BD biosciences)、PerCP/Cy5.5-CD4(クローンL200、BD biosciences)、PE-CD8(クローンRPA-T8、BD biosciences)および固定可能生存色素eFlour780(Thermofisher)に対して染色した。表面染色後、細胞を、固定し、BDcytofix/Cytoperm中で透過処理し、FITC-IFN-γ(クローンMD-1、UCy-Tech)およびPE/Cy7-TNF-α(クローンmAb11、BD biosciences)抗体を使用して、細胞内染色した。
【0170】
使用されたペプチドは、Ii-E1E2E6E7抗原全体をカバーする11アミノ酸が重複する16-merであった。ペプチドを、それぞれ、Ii、E1、E2、E6およびE7ペプチドを含有する5つの別々のプールにプールした。ペプチドは、KareBay、Town、中国から入手した。
【0171】
フローサイトメトリーをFACS CANTOフローサイトメーターにおいて行い、データ分析をFlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。エピトープ特異的CD8+ T細胞応答を、生存CD3+、CD8+またはCD4+、IFN-γ+細胞として測定した。バックグラウンド(非刺激試料から)を、プロットおよび分析の前に減算した。0.01%を下回るすべての応答を、検出限界未満と見なし、最適な視覚化表示のために手作業で0.01に調整した。
【0172】
結果
ELISpotによって測定されたプライムワクチン接種後の応答
すべてのワクチン接種動物は、PBS(偽/陰性対照)ワクチン接種動物と比較して、E1ペプチドプールに対して強く応答する(
図10)。E1よりも低い頻度であるが、すべてのワクチン接種動物においてE2応答が存在し、E6/E7応答は、2匹のワクチン接種動物において見られる。
【0173】
これは、Ii-E1E2E6E7 Ad19a/64ワクチンが、サルにおいて免疫原性であるという証拠を提供する。
【0174】
細胞内染色およびフローサイトメトリーによって測定されるブーストワクチン接種後の応答
非常に低いT細胞応答が、ブースト前に検出されたが(
図10、中央パネル)、MVAブースト9日後に、T細胞応答は、再増幅された。すべてのワクチン接種サルは、PBS対照とは対照的に、少なくとも1つのワクチン抗原(E1を含む)に対する強いCD8およびCD4応答を示し、E2およびE7に対するCD8応答は、同様に多くのワクチン接種動物において検出される(
図10、下パネル)。
【0175】
ウイルスベクター化MfPV3 Ii-E1E2E6E7ワクチンが、MfPV3感染サルにおいて免疫原性であることを確認する以外に、これは、ワクチンが、NHPにおける既存のMfPV3感染を治癒することができる強い兆候も提供する。
【0176】
すべてのワクチン接種動物における56日目でのMfPV3感染のクリアランス
図12に見られるように、2匹のワクチン接種動物のみが、42日目(プライム後6週間)に検出可能なMfPV3ワクチン接種を有しており、すべてのワクチン接種動物は、PBSが注射された陰性対照動物の6匹のうち3匹のみと比較して、56日目(ブースト後2週間)で感染が排除された。ワクチン群における1匹の動物および陰性対照群の1匹の動物が、0日目に検出可能なMfPV3を有していなかったことに留意されたい(各記号は1匹の動物を表す)。しかしながら、0日目に検出可能な感染を有していない陰性対照動物は、42日目に検出可能なウイルス血症を有しており、したがって、感染と見なされ、クリアランス速度が、それぞれ、ワクチン群およびPBS群について、5/5および3/6であり、p値=0.18(フィッシャーの正確確率検定)をもたらす。
【0177】
ワクチン誘導T細胞応答は持続性MfPV3感染を有する動物において機能的であると思われる
HPV特異的T細胞の消耗は、持続性HPV感染を有する人々において起こり得、機能消失によって、および最終的に抗原特異的T細胞の排除によって特徴付けられる。そのため、治療用ワクチンが、感染の持続的な存在の状況で抗原特異的免疫応答を誘導し得ることは重要である。
【0178】
hAd19a/64 Ii-E1E2E6E7によるプライム免疫化は、実際に、すべてのワクチン接種動物において、ワクチン抗原に対するIFN-γ産生T細胞を誘導した(
図11A)。とりわけ、持続性MfPV3感染を有するワクチン接種動物とHPV感染の期間が知られていなかった動物との間の観察された差は存在しなかった。
【0179】
MVAベクター化Ii-E1E2E6E7による42日目の免疫化は、E1およびE2に対するCD8+ T細胞応答をブーストしたが、E6およびE7に対するCD8+ T細胞応答は、ブースティングによって増強されるように見えなかった(
図11B)。
【0180】
高レベルのエフェクターサイトカインを産生する能力は、高い機能性および消耗の非存在のマーカーである。平均IFN-γ産生CD8+ T細胞の評価は、E1特異的CD8+ T細胞が、E7と比較して、有意に高いレベルのIFN-γを有していたことを明らかにした(
図11C)。これは、消耗が、E1特異的T細胞集団と比較して、E7特異的T細胞集団においてより蔓延し得ることを示す。
【0181】
[実施例4]
HPV16 E1、E2、E6およびE7抗原を用いる異なるコンストラクト設計の性質、ならびにHPV16 Ii-E1E2E6E7の腫瘍保護有効性
材料および方法
動物、免疫化、シスプラチン注射および腫瘍チャレンジ
C57BL/6およびCD1マウスをEnvigo(Horst、The Netherlands)から、OF1マウスをCharles River(フランス)から、HSd-OlaマウスをEnvigo(英国)から入手した。すべての動物は、6~8週齢の雌であり、Panum Institute、University of Copenhagenにおいて飼育した。すべての実験は、マウスを少なくとも1週間気候順化させた後に開始した。実験は、National Animal Experiments Inspectorate(Dyreforsogstilsynet、ライセンス番号2016-15-0201-01131)によって承認され、国のガイドラインに従って行った。
【0182】
腫瘍細胞株C3を、HPV16ゲノムおよび活性化ras癌遺伝子によるマウス胚細胞のトランスフェクションによって発展させた(Feltkamp et al, Eur J Immunol 1993)。細胞株のデータ確認を、HPV16 E7の存在のフローサイトメトリー検出によって行った。インビボでの抗腫瘍有効性を評価するために、200uLのPBS+0.2%のBSA中の1E+06個のC3腫瘍細胞を、C57BL/6マウスの脇腹に、 皮下(s.c.)注射した。腫瘍サイズは、週に3回、長さおよび幅を測定し、腫瘍容量を、長さ×幅2×0.5236として計算した(Janik et al, Cancer Res 1975)。動物を、腫瘍が1000mm3を超えたか、または示された時点で、頸椎脱臼によって屠殺した。
【0183】
確立された腫瘍の処置のために(d10免疫化)、マウスを、処置直前のそれらの腫瘍サイズに基づいて処置群に割り当てて、処置の開始時でのすべての処置群についての等しい平均腫瘍サイズを確保した。
【0184】
マウスが、下肢において免疫化された場合に、30μLのPBS中の2×10
7IFUのAd5またはAd5F35で全身と皮膚の混合経路の
図18を除いて、アデノウイルスベクターによる免疫化を、50μLのPBSに希釈された2×10
7IFUのrAdを腫瘍注射と同じ部位の大腿部の筋肉内(i.m.)で行った。SLPワクチン(HPV16 E743-77およびHPV16 E641-65、Schafer)による免疫化を、50ugの各ペプチドで、腫瘍注射の逆の脇腹において、s.c.で行った。SLPワクチンは、凍結乾燥ペプチドをDMSO中100mg/mLに溶解すること、およびPBS中0.5mg/mLへのさらなる希釈によって調製した。これを、1:1の比で、フロイント完全アジュバント(Sigma-Aldrich)を用いて、0.25mg/mLの最終濃度に乳化し、200uLの総容量を、マウスごとに注射した。
【0185】
シスプラチン(Sigma-Aldrich)を、0.9%のNaCl2溶液中1mg/mLに溶解し、3mg/kgマウス体重を、週に1回、3回、腹腔内注射した。
【0186】
マウスを、腫瘍が1000mm3を超えた、壊死性創傷の出現、またはマウスの移動性が著しく低減した場合に、安楽死させた。
【0187】
脾臓、リンパ節、血液および腫瘍内免疫細胞の細胞内染色およびフローサイトメトリー分析
脾細胞およびリンパ節の単一細胞懸濁液を、HANKsにおける器官回収によって得て、それに続いて70μmの細胞ストレーナーを通した。腫瘍組織を、回収後に重量測定し、製造業者のプロトコールを使用して、Miltenyiマウス腫瘍解離キット(カタログ番号130-096-730)およびGentleMACS解離剤を使用して処理した。血液をEDTA Microvette管(Sarstedt)に回収し、赤血球を、ACK溶解緩衝液(Gibco)を使用して溶解した。
【0188】
細胞を、1μg/mLの関連ペプチド(JPT HPV16 pepmix)ありまたはなしで、3μMのモネンシン中、5時間インキュベートした。細胞を、表面マーカー(すべての抗体は、注記されない限り、BioLegend、San Diego、米国製であった):APC-Cy7またはBV421 CD8(53-6.7、1:200、BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)、PE-Cy7 CD4(RM4-5、1:800、BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)、FITC CD44(IM7、1:100)、PerCP-Cy5.5 B220(RA3-6B2、1:200)、固定可能生存色素eFluor(商標)780(eBioscience)およびBV510 PD-1(29F.1A12、1:100)に対して染色した。表面染色後、細胞を、1%のPFA中で固定し、0.5%のサポニン中で透過処理し、APC IFN-γ(XMG1.2、1:100)およびPE TNF-α(MP6-XT22、1:100)抗体を使用して細胞内染色した。
【0189】
フローサイトメトリーをFortessa 3またはFortessa X20(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて行い、データ分析をFlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。HPV16特異的CD8+ T細胞応答を、B220-、CD8+またはCD4+、CD44+、IFN-γ+細胞として測定し、脾臓あたりの細胞の総数、血液1mLあたりの細胞の総数、腫瘍1gあたりの細胞の総数、またはそれぞれの図に記載される集団の割合として表した。IFN-γ+応答の質を、IFN-γのMFI、およびIFN-γ+ CD8+またはCD4+集団における二重陽性細胞(IFN-γおよびTNF-αの両方を発現する)の割合によって評価した。
【0190】
腫瘍内免疫細胞の系統染色およびフローサイトメトリー分析
腫瘍組織を、回収後に重量測定し、製造業者のプロトコールを使用して、Miltenyiマウス腫瘍解離キット(カタログ番号130-096-730)およびGentleMACS解離剤を使用して処理し、表面マーカー(注記されない限り、すべて1:100、BD Biosciences、Franklin Lakes、米国):BV650 CD8(53-6.7)、PerCP/Cy5.5 CD4(RM4-5)、PE/Cy7 CD45.2(104)、APC F4/80(BM8、BioLegend、San Diego、米国)、AF488 CD11c(N418、BioLegend、San Diego、米国)、BV421 PD-L1(10F.9G2、BioLegend、San Diego、米国)、BV510 PD1(29F.1A12、BioLegend、San Diego、米国)、AF700 TER119(TER-119)および固定可能生存色素eFluor(商標)780(1:1000、eBioscience)に対して染色した。表面染色後、細胞を、固定し、eBioscience(商標)Foxp3/転写因子染色緩衝液セットを使用して透過処理し、PE FoxP3(FJK-16s、1:100、Invitrogen)を使用して細胞内染色した。
【0191】
フローサイトメトリーをFortessa 5(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて行い、データ分析をFlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。
【0192】
免疫細胞枯渇
CD4+およびCD8+ T細胞枯渇を、100uLのPBS中のマウスあたり0.25mgの抗マウスCD4(GK1.5;番号BE0003-1;BioXCell)、0.1mgの抗マウスCD8(2.43;番号BE0061;BioXCell)または0.1mgのラットIgG2bアイソタイプ対照(LTF-2;番号BE0090;BioXCell)のi.p.注射によって行った。枯渇抗体を、C3腫瘍チャレンジ後、20、23および26日目に与えた。枯渇を、28日目に、BV421 CD8(53-6.7、1:200、BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)、PerCP/Cy5.5 CD4(RM4-5、1:100、BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)、PE/Cy7 CD45.2(104、1:100 BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)および固定可能生存色素eFluor(商標)780(1:1000、eBioscience)を使用して、血液試料における表面染色およびフローサイトメトリーによって検証した。フローサイトメトリーをFortessa 3(BD Biosciences、Franklin Lakes、米国)フローサイトメーターにおいて行い、データ分析をFlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。
【0193】
腫瘍組織の免疫組織化学的染色
腫瘍組織を、屠殺時に注意深く回収し、4%の冷PFA(Alfa Aesar)中で固定した。固定液を、およそ24時間後に、70%のエタノールで交換した。固定された組織をパラフィンに包埋し、スライドをPEおよびCD8αについてのDAB(D4W2Z、1:600、pH=9、Cell signaling)で染色した。
【0194】
組織を、Axio Scan.Z1(Zeiss)を使用してスキャンし、Zen 3.4ソフトウェアを使用して分析した(カットオフ面積:10~180um2。カットオフ真円度:0.5~1.0)。
【0195】
結果
Ad19a/64ベクター化ワクチン接種は、Ad5によってブーストされ得る非近交系マウスおよび近交系マウスの両方において、頑強なCD8+およびCD4+ T細胞応答を誘導する。
Ad19a/64ベクター化ワクチンの単回用量による非近交系CD1マウスの筋肉内免疫化は、CD8+ T細胞応答がE1に対して検出され(
図13A)、かつCD4+応答がE1(
図13B)およびE2(
図13C)に対して測定されたので、インビボでの異なる抗原コンストラクトの免疫原性を確認した。
【0196】
免疫応答をさらに増強するために、ブースターワクチンとしてヒトAd5をコードするIi-E1E2E6E7を送達する異種プライム-ブースト免疫化を適用した。これは、E1に対するCD8+ T細胞応答を増加させ(
図13Aと比較した
図13D)、同様にE7に対する一部の応答を誘導した(
図13E)。CD4+ T細胞応答は、E1およびE2に対して一貫して検出され、E6およびE7に対して散発的に検出された(データは示さない)。我々は、CD1マウスにおいてE2またはE6に対するCD8+ T細胞応答を検出せず、これは、むしろ少数の樹立マウスに起因して、推定で非近交系CD1マウスモデルにおける限定的なMHC多様性を潜在的に反映した(Yalcin et al. 2010)。したがって、我々は、CD1とは独立して由来する選択された他の非近交系マウス系統(OF1およびHsd-Ola)において、Ad19a/64-Ad5プライムブーストレジメンにおけるIi-E1E2E6E7ワクチンを評価するために選択した(Yalcin et al. 2010)。ここで、我々は、少なくとも1つのマウス系統において4つの抗原すべてに対するワクチン誘導CD8+応答(
図13F~I)、ならびにE1、E2およびE7に対するCD4+応答(データは示さない)を検出した。
【0197】
最後に、我々は、HPV16治療用ワクチンの分野において標準的なマウスモデルであるC57BL/6において、免疫原性を確認しようとした。我々は、すべての抗原設計についてE1に対してCD8+ T細胞が応答することを見出し(
図13J)、同様にE7特異的CD8+ T細胞(
図13K)、およびE1に対するCD4+応答(データは示さない)を検出した。Ii-E1E2E6E7は、Ii-E1E6E7-p2a-Ii-E2ワクチンよりも有意に強いE7応答を与え、Ii-E1E2E6E7も、Iiをコードしないワクチンよりも強いE7応答を与えるように見えた(p=0.077)。Ii-E1E2E6E7のこの利点は、誘導されたT細胞応答の大きさおよび質と組み合わせて、IFN-γ陽性細胞の統合平均蛍光強度(iMFI)を見る場合に、さらにサポートされた(Shoostari et al. 2010)。この分析において、Ii-E1E2E6E7は、Iiをコードしないワクチンおよびp2a-Iiに直接連結されたE7をコードするワクチンと比較して、E7に対する応答を有意に増強した(
図13M)。さらにまた、E1応答は、同様に、非Iiワクチンと比較して、Ii-E1E2E6E7についてより高い傾向であった(
図13L、p=0.06)。我々は、以前に報告されたE6エピトープ(aa48-57、EVYDFAFRDL)(Peng et al. 2004)にもかかわらず、任意のE2またはE6特異的CD8+ T細胞応答を検出しなかった。E6エピトープに対する応答が、E6単独をコードするワクチンについてのみ以前に記載されており、E6エピトープが、優位なE7エピトープ(aa49-57、RAHYNIVTF)(Feltkamp et al. 1993)よりも免疫原性が低いと報告されているので、これは、免疫優性に起因し得る。
【0198】
C57BL/6マウスにおける優れたCD8+ T細胞応答、ならびに非近交系マウスモデルにおける劣性の欠如および陽性傾向に基づいて、我々は、Ii-E1E2E6E7抗原設計を前進させると決定した。
【0199】
最後に、我々は、Ad19a/64プライミング後の異種Ad5-ベクター化ブースティングが、Ad19a/64プライミング単独と比較して、リコールワクチン特異的応答を誘導したが、Ad19a/64による同種ブースティングは誘導しなかったことを確認した(
図13N~P)。Ad19a/64および抗原を含有しないAd5ベクターの陰性対照群は、応答がワクチン特異的であったことを確認するために含めた。
【0200】
腫瘍接種直後のAdベクターワクチン接種は、単一薬剤腫瘍制御および生存の増加を提供する
我々のHPVワクチンの治療効果を調べるために、C57BL/6マウスに、同系C3腫瘍細胞を注射した。C3細胞株を、HPV16ゲノムおよび活性化ras癌遺伝子によるマウス胚細胞のトランスフェクションによって確立し(Feltkamp et al. 1993)、腫瘍は、HPV16 E6およびE7のみを含有する通常使用されるTC-1腫瘍モデル(Lin et al. 1996)とは対照的に、すべてのHPV16抗原を発現することができる(Schmitt and Pawlita et al. 2011)。C3腫瘍細胞株が、Sluis et al. 2015(それらの捕捉
図1を参照)によって示されるように、一般に、TC-1モデルよりも成長が遅く、処置耐性がより高く、C3モデルにおいてそれが治療効果を示すことをより困難にすることを言及する価値がある。
【0201】
最初の実験において、マウスを、腫瘍チャレンジ2日後に、Ii-E1E2E6E7または無関係の抗原(陰性対照)をコードするA19a/64ベクターで処置した。20日目に、同じ抗原を含有するAd5ベクターによる別の処置を行って、応答をブーストした。Ii-E1E2E6E7処置は、腫瘍成長を有意に低減し(
図14A)、10匹のマウスのうち3匹で腫瘍を完全に除去し(
図14B)、生存を有意に増加させ(
図14C、41日目に3/10対10/10の死亡)、処置が、小さな腫瘍に対して有効であることを示した。
【0202】
Adベクター化ワクチン接種は、確立された腫瘍の単一薬剤制御を提供し、シスプラチン共処置と相乗的に働く
治療用ワクチンによるC3腫瘍の早期処置が、ワクチンレジメン単剤療法のように良好な効果を有していたことを確認して、我々は、確立された腫瘍に対する効力の調査に進んだ。明白な腫瘍が存在したら(10日目)、マウスを、治療用ワクチンで処置し、これは、一部の動物における腫瘍成長の低減(
図15AおよびB)、有意に増加した生存(
図15C)を示した。シスプラチンは、臨床におけるHPV+がんの標準的な処置であり、HPV標的化治療用ワクチンとの相乗作用を以前に示している(Sluis et al. 2015)。Nejad et al. 2016によって以前に記載されたように、治療用ワクチンを3回の週に1回のシスプラチン注射と組み合わせることで、シスプラチン処置および対照ワクチン接種と比較して、ならびに治療用ワクチン単独と比較して(データは示さない)、腫瘍制御(
図15DおよびE)および生存(
図15F)は劇的に増加した。
【0203】
腫瘍組織の免疫組織化学的染色は、治療用ワクチンが、CD8+ T細胞の数(
図15Gおよび15I)、さらにより重要なことには、腫瘍実質の中心へのこれらのCD8+ T細胞の浸潤のレベル(
図15Hおよび15I)を有意に増加させたことを明らかにした。シスプラチンとの共処置は、免疫組織化学的検査によって視覚化されたCD8+ T細胞の浸潤に対して任意の明らかな効果を有するように見えなかった(データは示さない)。
【0204】
観察された治療効果の原因をさらに調べるために、我々は、それぞれの処置の組合せについて、治療効果が始動し始めた時点で腫瘍およびリンパ器官を回収した。器官回収を、ワクチンおよびシスプラチンを組み合わせて処置されたマウスについて24日目に(
図15D)、およびワクチン単独で処置されたマウスについて30日目に(
図15A)行った。腫瘍浸潤性CD8+ T細胞の分析は、ワクチン接種マウスが、両方の時点で、エクスビボで腫瘍細胞とインキュベートされた場合にIFN-γを産生するより多くの腫瘍反応性CD8+ T細胞を有していたことを示した(
図15J)。脾臓応答を見ると、ワクチンは、これらの腫瘍保持マウスにおいてE1およびE7特異的CD8+ T細胞応答を特異的に誘導し(
図15K)、以前に分析された非腫瘍チャレンジマウスに対応した(
図13)。シスプラチン処置単独(陰性対照+シスプラチン、d24、
図15K)は、主にE7に対する、および一部のマウスにおいてE1への、一部の抗HPV応答性CD8+ T細胞を誘導するように見えたが、細胞あたりのIFN-γのレベル(
図15L)、およびTNFも産生することができるIFN-γ産生CD8+ T細胞の量は、Ii-E1E2E6E7処置マウスと比較して、明らかに劣っていた(
図15M)。
【0205】
表面染色分析は、シスプラチン処置が、免疫組織化学的検査の知見をサポートする腫瘍におけるCD8+ T細胞の量に対する効果を有するように思われなかったが(データは示さない)、治療用ワクチンが、24日目および30日目の両方で、腫瘍における抗原提示CD11c陽性細胞の割合を有意に増加させた(
図15N)ことを明らかにした。我々はまた、Nejad et al. 2016によって報告されたものと同様に、シスプラチン処置を受けたマウスの腫瘍におけるより高いレベルの樹状細胞(DC)の傾向を理解したが、この差は、分析が、それぞれ、24日目および30日目に行われたという事実にも起因し得る。
【0206】
腫瘍制御はCD8+ T細胞によって媒介される
CD8+ T細胞が、治療用ワクチンおよび腫瘍治療効果に関連するように見えたので、我々は、CD8+ T細胞が、実際に、主要なエフェクター細胞型であったかどうかを確認しようとした。明白な腫瘍を有するマウス(10日目)を、治療用ワクチンおよびシスプラチンで処置し、その後、抗腫瘍応答のエフェクター段階に主に対処するために、20日目から抗体-細胞枯渇抗体で処置した。我々は、CD8枯渇が、治療用ワクチンの抗腫瘍効果を完全に消失させたことを理解した(
図16A)。対照的に、我々は、腫瘍微小環境におけるCD4+ T細胞の免疫抑制表現型を潜在的に示す、腫瘍制御の増加をもたらすCD4+ T細胞枯渇の傾向(
図16A)を理解した。実際に、我々は、腫瘍浸潤性CD4+集団が、調節性T細胞(Treg)の持続的存在を示す、ほぼFoxP3+サブタイプであり、これが治療用ワクチンによって増加したことを見出した(シスプラチン共処置状況においてのみ有意であった)(
図16B)。
【0207】
Adベクター化Ii-E1E2E6E7ワクチンは、シスプラチンと組み合わせて、2つのE6/E7合成長鎖参照ペプチドと比較して、増強された生存を提供する
以前の研究は、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で製剤化されたE7ペプチド、E743~77による免疫化によって、C3腫瘍に対する有効性を示した(Sluis et al. 2015;Nejad et al. 2016;Sluis et al. 2015;Zwaveling et al. 2002)。このペプチドは、C57BL/6マウスにおいて免疫優性である十分に確立されたE7エピトープを含む(Feltkamp et al. 1993)。別のエピトープは、E634においても報告されているが、これは、優位性が低い。HPV+ C3腫瘍に対するペプチドワクチンにおける以前に公開された研究は、E743~77ペプチドのみを含むが、我々は、同様に、我々のワクチン接種比較において、E641~65ペプチドを含むように選択した。2つのペプチドはまた、HPV16 E6およびE7全体をカバーする13ペプチドからなる複雑な合成長鎖ペプチドワクチン(臨床開発下の名称ISA101)の一部でもあり(Melief et al. 2020)、(i)近交系マウス系統とのそれらの適合性に起因して、および(ii)参照目的のために、選択した(Sluis et al. 2015;Nejad et al. 2016;Sluis et al. 2015;Zwaveling et al. 2002)。
【0208】
マウスを、明白な腫瘍が存在したら(10日目)、シスプラチン、およびIFA中で製剤化された2つのペプチドまたは我々のAdベクター化Ii-E1E2E6E7のいずれかによる治療用ワクチンで処置した。Ii-E1E2E6E7ワクチンは、ペプチドワクチンよりも高い程度まで腫瘍成長を低減し(
図17A)、有意に良好な生存をもたらした(
図17B)。E1に対するCD8+ T細胞応答を、Ii-E1E2E6E7によるワクチン接種後に検出し、予想通り、2つのE6/E7ペプチドによるワクチン接種後には検出しなかった(
図17C)。両ワクチンは、同様のレベルのE7特異的CD8+ T細胞を誘導し(
図17D)、検出可能なCD4+ T細胞応答を誘導しなかった(データは示さない)。
【0209】
Ad5F35ベクター化HPV16 Ii-E1E2E6E7によるワクチン接種は、マウスにおいてAd5と同様の大きさおよび質のCD8+ T細胞を誘導する
Ad5F35が、ブースターベクターとしてAd5に対する有用な代替であることを確認するために、近交系C57BL/6マウスを、2×107IFUのHPV16 Ii-E1E2E6E7をコードするAd5またはAd5F35ベクターのいずれかで免疫した。HPV16 E1およびE7に対する脾臓CD8+ T細胞応答を、細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリーによって、免疫14日後に分析した。
【0210】
図18に示されるように、Ad5F35は、E1およびE7反応性CD8+ T細胞を作成することができ、IFN-γシグナルの強度によって評価される(
図18EおよびF)大きさ(
図18AおよびB)および質、ならびにTNF-αおよびIFN-γの両方を産生する能力(
図18CおよびD)は、Ad5ベクター化ワクチンによって誘導される応答と類似していた。これは、Ad5F35が、治療効果に影響を及ぼすことなく、治療用プライム-ブースト免疫化レジメンにおいてAd5を置き換えることができるという証拠を提供する。
【0211】
[実施例5]
本発明の追加のウイルスベクターおよびそれらの発現制御
材料および方法
細胞株
HEK293T細胞およびA549細胞を、10%のウシ胎仔血清(FCS)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)が補充されたダルベッコMEM(DMEM)中で維持し、成長させた。9E10 myclハイブリドーマ細胞を、10%のFCS、1%のPen/Strepおよび2mMのグルタミン(Pan)が補充されたRPMI中で培養した。これらの細胞株を、非加湿インキュベーターにおいて、37℃および5%のCO2で維持した。
【0212】
接着AGE1.CR.pIX細胞を、5%のウシ胎仔血清(FCS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地DMEM/F12中で培養し、非加湿インキュベーターにおいて、37℃および8%のCO2で維持した。
【0213】
サブコンフルエントなA549細胞に、任意の補充なしのDMEM中、100のMOIでAd19a/64ベクターを感染させた。感染2時間後、培地を、10%のFCSおよび1%のPen/Strepを有するDMEMに交換した。
【0214】
サブコンフルエントなHEK293T細胞に、任意の補充なしのDMEM中、10のMOIでMVAおよびMVA-CR19ベクターを感染させた。感染2時間後、培地を、10%のFCSおよび1%のPen/Strepを有するDMEMに交換した。
【0215】
サブコンフルエントなAGE1.CR.pIX細胞に、任意の補充なしのDMEM中、1のMOIでMVAおよびMVA-CR19ベクターを感染させた。感染2時間後、培地を、5%のFCSが補充されたDMEM/F12を用いて、DMEMに交換した。
【0216】
アデノウイルスベクターの作成
血清型Ad19a/64のE1/E3欠損アデノウイルスベクターを、以前に記載されたようにして作成した[Ruzsics, Z., Lemnitzer, F. & Thirion, C. Engineering Adenovirus Genome by Bacterial Artificial Chromosome (BAC) Technology BT - Adenovirus: Methods and Protocols. in (eds. Chillon, M. & Bosch, A.) 143-158 (Humana Press, 2014). doi:10.1007/978-1-62703-679-5_11]。簡潔には、目的の遺伝子(GOI)-(
図1)を、CMVプロモーターの制御下のシャトルベクターpO6-19a-HCMV-MCSにクローニングした。次いで、CMV-GOI-SV40-pAを、大腸菌(E.coli)におけるFlp組換えを介して、E1/E3遺伝子が欠失した複製欠損Ad系ベクターのゲノムを含有するBACベクター(Ruzsics, Z. et al, 2014)に移入した。組換えウイルスDNAを、PacIによる制限消化によって、精製BAC-DNAから放出させた。得られた線状DNAを、ウイルス繁殖のために、上記に開示された産生細胞株にトランスフェクトした。組換えウイルスを、デオキシコール酸ナトリウム処理を介して、細胞から放出させた。残った遊離DNAを、DNase Iによって消化した。その後、ベクターを、CsCl勾配超遠心分離法、それに続いてPD10カラム(GE Healthcare、Chicago、米国)を介した10mMのHepes pH8.0、2mMのMgCl
2および4%のスクロースへの緩衝液交換によって精製した。タイトレーションを、抗ヘキソン抗体[Novus、アデノウイルス抗体(8C4)]による免疫組織化学的染色を介した感染した産生細胞の検出によるRapidTiter法を使用して行った。挿入物の完全性を、精製されたベクターから抽出されたDNA中のGOIのPCR増幅によって確認した。
【0217】
組換えMVAベクターの作成
組換えMVAベクターを、以前に記載されたようにして作成した[Jordan, I., Horn, D., Thiele, K., Haag, L., Fiddeke, K., Sandig, V., Virol Sin. 2020 Apr; 35(2): 212-226. doi: 10.1007/s12250-019-00176-3.]。簡潔には、目的の遺伝子(GOI)-(
図1)を、MVA E/Lプロモーターの制御下のMVAの欠失部位III(DelIII)へのGOIの組み込みに好適なシャトルベクターSP-CR19III-tetOにクローニングしたか、またはMVA SSPプロモーターの制御下のMVAのチミジンキナーゼ遺伝子座(TK)へのGOIの組み込みに好適なシャトルベクターLZAW1-tetOにクローニングした。異なるGOIをコードする組換えMVAを、Tetシステム(上記を参照されたい)の利点を取ることによって、組換えMVAの作成および繁殖の間のGOIの望ましくない発現を防止する接着AGE1.CR.pIX-T-REx細胞における相同組換えによって作成した。したがって、6ウェルプレートに播種された培養単層に、0.05のMOIで、MVAまたはMVA-CR19を感染させ、製造業者の指示に従ってEffecteneトランスフェクション試薬(Qiagen、ドイツ)を使用して、2μgの個々のシャトルベクターでトランスフェクトした。感染/トランスフェクトされた培養物を、感染/トランスフェクション2~3日後に回収し、超音波処理し、6ウェルプレートフォーマットにおける細胞単層の感染のために使用した。得られたプラークをPCRによって検証し、反復プラーク精製手順を、正確なGOI発現カセットなしのMVAがもはや存在しなくなるまで(通常、5~8ラウンド以内のプラーク精製)、開始した。
【0218】
プラーク精製MVAの繁殖のために、細胞回収材料を、Vial Tweeter(20秒の100%のサイクルおよび90%の振幅に設定、Hielscher、ドイツ)を使用して超音波処理し、AGE1.CR.pIX-T-REx[CD-U4およびCD-VP4(Merck-Millipore)の1:1混合物中、1mlあたり2×106個細胞の懸濁液中で成長]に、0.05のMOIで、個々の組換えMVAベクターを接種した。最後に、MVAを、感染48時間~72時間後に回収し、TCID50力価を決定した。
【0219】
抗体および抗体精製
myc(9E10)に対する抗体を、ハイブリドーマ細胞上清から得た。9E10 myclハイブリドーマ細胞を、1%のFCS、1%のPen/Strepおよび2mMのグルタミンが補充されたRPMI中、1mlあたり5×105個細胞で播種した。上清を、播種5日後に回収し、抗体を、HiTrap Protein Gカラム(GE Healthcare、Chicago、米国)を介して精製した。カラムをPBSで洗浄した後、抗体を、0.1Mのグリシン/HCl(pH3.2)を用いて溶出させ、0.025容量の1MのTris/HCl(pH9)で中和し、PBSに対して透析した。
【0220】
使用された他の抗体は以下であった:抗HPV16-E2(TVG-271、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗HPV16-E6(GTX132686、1:2000、Biozol、Eching、ドイツ)、抗HPV16-E7(NM2、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗HPV18-E2(2E7、1:1000、Abcam、Cambridge、イングランド)、抗HPV18-E6(C1P5、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗HPV18-E7(F-7、1:200、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、抗チューブリン(DM1α、1:1000、Santa Cruz Biotechnology、Heidelberg、ドイツ)、ヤギ抗マウス-HRP(115-036-003、1:5000、Jackson、West Grove、米国)およびヤギ抗ウサギ-HRP(P0448、1:2000、Dako、Santa Clara、米国)。
【0221】
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析を、以前に記載されたようにして行った(Kiener, R. et al. Vaccine vectors based on Adenovirus 19a/64 exhibit broad cellular tropism and potently restimulate HCMV-specific T cell responses ex vivo. Sci. Rep. 8, 1474, 2018)。簡潔には、目的の細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、Roche、Basel、スイス)が補充されたTDLB緩衝液(50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.1%のSDS、1%のNonident P-40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム)に溶解した。上清の総タンパク質濃度を、Bradford法(タンパク質アッセイ、BioRad、Feldkirchen、ドイツ)によって測定した。タンパク質を、還元条件下、SDS-PAGE上で分離し、ウエスタンブロット分析のために、ニトロセルロース膜上でブロッティングした。標的を、上記に列挙した一次抗体および二次抗体を用いて検出した。HRP標識二次抗体および増強された化学発光基質またはFemto ECL(Thermo Fisher、Waltham、米国)を、Chemilux Proデバイス(Intas、Goettingen、ドイツ)において、検出のために使用した。ローディング対照のために、膜を、チューブリンに対する抗体で再検出した。
【0222】
結果
MfPV3抗原の最初の結果に基づいて、組換えHPV16およびHPV18抗原のセットを含むrAdベクターの精密パネルを作成した。コードされる抗原の適した発現を確認するために、ウエスタンブロット分析を、アデノウイルスで形質導入されたA549細胞を用いて行った。すべてのベクターは、予想される位置でE2、E6およびE7に対する抗体を用いて検出されるそれぞれの融合タンパク質に似ているバンドを有する抗原を容易に発現した(HPV16抗原
図19A、HPV18抗原
図19B)。特に、HPV16抗原について、より低い分子量バンドによって示される分解産物が観察できた。
【0223】
MfPV3(Ii-E1E2E6E7、E1E2E6E7)、HPV16およびHPV18(両方ともIi-E1E2E6E7)の選択された抗原を、それぞれ、MVAまたはMVA-CR19のDelIII遺伝子座またはTK遺伝子座への組み込みのために、 シャトルベクターにクローニングした。組換えポックスウイルスベクターを、相同組換えによって作成し、コードされる抗原の適した発現を、ウエスタンブロット分析によって検証した(
図20)。すべてのベクターは、予想される位置で、mycに対する抗体(MfPV3、
図20A)、または型特異的なE2、E6およびE7に対する抗体を用いて検出されるそれぞれの融合タンパク質に似ているバンドを有する抗原を容易に発現した(HPV16抗原
図20B、HPV18抗原
図20C)。特に、HPV16およびHPV18抗原について、より低い分子量バンドによって示される分解産物が観察できた。
【配列表】
【国際調査報告】