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特表2024-532856フッ素フリーの超疎水性表面、その製造方法、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】フッ素フリーの超疎水性表面、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20240903BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240903BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C08J7/00 306
C08J7/00 CES
C08J7/00 CFH
C08J7/00 301
B32B3/30
B05D7/24 302Y
C09K3/18 104
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510356
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CA2022051249
(87)【国際公開番号】W WO2023019356
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/260,371
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508155077
【氏名又は名称】マクマスター・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】MCMASTER UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1280 MAIN STREET WEST,HAMILTON,ONTARIO L8S 4L8,CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディダール、トヒド エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ソレイマニ、レイラ
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥスール、リアン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F073
4F100
4H020
【Fターム(参考)】
4D075BB07X
4D075BB44X
4D075BB49X
4D075CA07
4D075CA36
4D075CA45
4D075CB21
4D075DB31
4D075DB36
4D075DB37
4D075EB42
4F073AA01
4F073AA06
4F073BA06
4F073BB01
4F073CA01
4F073CA62
4F073GA01
4F100AK01A
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DD07
4F100DD07B
4F100EJ12A
4F100EJ38A
4F100EJ52
4F100EJ52A
4F100EJ58A
4F100EJ58B
4F100JA03A
4F100JB06B
4F100JC00
4F100JC00B
4F100JL06B
4H020BA32
(57)【要約】
本開示は、収縮性ポリマー基材と少なくとも1つのポリシロキサン層とを備える超疎水性材料及び/又は表面に関し、前記材料及び/又は表面は、階層構造を形成するマイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを備える。その製造方法及び使用も、本明細書において開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮性ポリマー基材と、前記基材の表面層上の少なくとも1つのポリシロキサン層とを備えた材料であって、前記材料は、前記材料の表面上に階層構造を形成するマイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを備え、並びに前記材料は、超疎水性を呈する、材料。
【請求項2】
前記収縮性ポリマー基材が、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の収縮性ポリマー、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記収縮性ポリマー基材が、ポリオレフィンである、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記収縮性ポリマー基材が、二軸延伸されている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記ナノスケールのフィーチャが、フィラメント形状及び/又は棒形状の構造を備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、前記ナノスケールのフィーチャを形成する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、シランを用いて形成される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、式IIの1種又は複数種の化合物を用いて形成される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の材料。
【化1】

〔式中、R、R、及びRは、各々独立して、加水分解性基であり、Rは、C1~6アルキルである。〕
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、フルオロシランを用いては形成されない、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の材料。
【請求項11】
約150°~約165°の静的水接触角を有する、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の材料。
【請求項12】
約1°未満の水滑落角を有する、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の材料。
【請求項13】
抗菌性又は抗ファウリング性を有する、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の材料。
【請求項14】
生物学的流体に対する付着防止性を呈する、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の材料。
【請求項15】
血液に対する付着防止性を呈する、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の材料。
【請求項16】
生物種を含む液体に対する付着防止性を呈する、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の材料。
【請求項17】
細菌及びバイオフィルム形成に対する付着防止性を呈する、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の材料。
【請求項18】
請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の材料を備えたデバイス又は物品。
【請求項19】
前記材料が、前記デバイス又は物品の表面上にある、請求項18に記載のデバイス又は物品。
【請求項20】
階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法であって、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材を酸化によって活性化すること、
b)実質的に一定の相対湿度で、前記収縮性ポリマー基材上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
c)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する、方法。
【請求項21】
前記基材の前記表面層を活性化することが、前記基材中又は前記基材上にヒドロキシル基を導入することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基材の前記表面層を活性化することが、プラズマ処理を含む、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プラズマ処理が、約30秒間~約10分間、又は約2分間~約7分間、又は約3分間~約5分間の時間にわたる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程a)において提供される前記収縮性ポリマー基材が、二軸延伸されており、任意選択で、前記方法が、前記活性化の前に前記基材を二軸延伸することをさらに含む、請求項20~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記収縮性ポリマー基材が、ポリオレフィンである、請求項20~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記相対湿度が、約45%及び約65%、又は約50%~約60%、又は約55%に維持される、請求項20~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記相対湿度が、約4時間~約30時間、又は約5時間~約24時間、又は約6時間にわたって維持される、請求項20~請求項26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される、請求項20~請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロスケールのしわが、前記材料を熱収縮させることによって形成される、請求項20~請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月18日に出願された米国仮特許出願第63/260,371号の優先権の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、表面工学に関し、詳細には、フッ素フリーの超疎水性表面、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
表面汚染は、病原体の伝播及び伝染において主要な役割を果たしている。医療、フードサプライチェーン、又はパブリックスペースにかかわらず、病原体が媒介物を通して伝播するリスクは広く実証されてきた。医療システムにおいては、医療関連感染(HAI)が主要なリスクである。例えば、ほとんどすべての抗生物質に対して耐性を有する病原体のファミリーであるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)によって、深刻な脅威がもたらされる。感染した患者との直接的な接触を通した、又は患者エリアの汚染された表面に触れることによる間接的な、医療従事者による病原体の伝染は、HAIの20~40%を占めると推定されている。このことから、汚染又はバイオファウリングに抵抗する付着防止性表面を設計することの重要性が強調される。この問題に取り組むために多くの努力が成されてきたが、提案されている解決策は、非常に高コストな製造方法、環境にやさしくない材料、又は高頻度接触用途との不適合性を含む数多くの制限に直面している。
【0004】
付着防止性を実現するために、研究者らの目標は、接触角>150度及び滑落角<10度を特徴とする超疎水性表面を作り出すことである。製造のための戦略は、ハスの葉及びチョウの羽に見られるマルチスケールテクスチャから着想を得た粗さを付与するための物理的改質など、多くの場合生体模倣である。この粗さの増加は、カッシー・バクスター(Cassie-Baxter)又はウェンゼル(Wenzel)の濡れ状態のための基礎を提供する。粗さを実現するための従来の技術は、エッチング、電気化学堆積、テンプレート、スプレーコーティング、金又はシリカなどのナノ粒子の適用、及びゾル-ゲルプロセスを含む。ロータス効果を忠実に再現するために、研究者らは一般に、一連のこれらの改質を用いて階層的な構造を導入する1~3。多工程の手法を実行することで、マイクロスケール及びナノスケールの両方のフィーチャが表面に確立され、これは、バイオ付着防止性(biorepellency)のために用いることができる1,4,5。これらの技術が成功することは実証されているが、製造上の制約及び関与する試薬の非常に高いコストに起因して、これらの表面を大スケールで製造することは多くの場合困難である。
【0005】
別の選択肢として、化学蒸着(CVD)、液相堆積(LPD)、プラズマ、自己組織化、及び溶液浸漬などの技術を用いることによる、製造された表面の表面自由エネルギー(SFE)を低下させるための化学的改質が用いられ得る。これらの手法は、SFEを低下させる単層又は多層コーティングを形成するためにシラン分子を多くの場合利用し、超疎水性を示すために物理的改質と組み合わされ得る。用いられるシラン分子は、塩素などの反応性官能基を有し、それが表面開始縮合反応による自己組織化コーティングを促進し、製造の容易さ及び制御を可能とする。多くの場合、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(TPFS)及び1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン(PFDTS)に含まれるものなどのフルオロカーボンが、これらの化学物質の骨格を構成する。しかし、これらの化学物質は、潜在的に深刻な環境リスクを伴う。長期的な研究により、長鎖(C~C20)フルオロカーボン及びその前駆体による哺乳類における毒性作用、さらには、これらの及びより短鎖であるフルオロカーボンが環境中に残留して、植物、動物、及びヒトにおける生物蓄積に繋がることも実証されている。このため、研究は、より環境にやさしい改質戦略へと方向転換してきた。
【0006】
超疎水性をもたらすポリシロキサンナノ構造の成長は、2006年にArtus et al.によって初めて研究され、より環境にやさしい手法を提供した。短い、1又は2炭素鎖を有し、フッ素基を有しないトリクロロシラン分子を利用することにより、CVD及びLPDの両方を通してコーティングが実現された7~9。これらの構造は、表面粗さを誘導するための有望な経路を示し、超疎水性及びセルフクリーニング性に繋がり、これは、より最近になって、3炭素鎖のトリクロロシランでも同様に確立された10,11。これらの表面における病原体付着防止性についての報告はほとんどないが、これは、相反する結果が見られていることに起因する可能性がある。例えば、ガラス上にコーティングされた場合、ポリシロキサンのナノフィラメント及びロッド構造は、試験した細菌の種類に基づいて、静的条件対動的条件において異なる挙動を呈した12。効果は、コーティングの構造によっても異なり、湿度レベル、温度、及び基材に依存することが研究で実証されている。
【0007】
ポリシロキサン構造化表面が直面する病原体付着防止性の課題に対処するために、潤滑剤が用いられてきた。袋葉植物の滑りやすい特性を模倣するためにシリコーンオイル潤滑剤層と組み合わせた場合、ポリシロキサンナノフィラメントは、カテーテル及びスプリントなどの医学用デバイス上で、細菌の付着を防止し、血栓症を抑制することが示された。滑りやすい液体注入表面(LIS)は、セルフクリーニング性を備えた卓越した改変表面改質法である。潤滑剤は、潤滑剤層を保持するように設計されている化学的又は構造的に改質された表面に添加される。LISは、細菌、ウイルス、及び複雑な生体液を用いた、閉鎖空間又は流動下での多くの用途での生物付着防止性を実証してきた。しかし、液体注入という性質上、表面への直接接触が残留潤滑剤を移行させることになるため、高頻度接触表面で使用できないことから、これらの表面には制限がある。加えて、用いられる潤滑剤の多くは非常に揮発性であるため、屋外表面での実行は現実的ではない。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、収縮性ポリマー基材と前記基材の表層上の少なくとも1つのポリシロキサン層とを備えた材料を提供し、前記材料は、前記材料の表面上に階層構造を形成するマイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャ(features)を備え、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記材料は、前記基材の複数の表面の各々の上に少なくとも1つのポリシロキサン層を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の収縮性ポリマー、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリオレフィンである。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、二軸延伸されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ナノスケールのフィーチャは、フィラメント形状及び/又は棒形状の構造を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、前記ナノスケールのフィーチャを形成する。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、シランを用いて形成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、式IIの1種又は複数種の化合物を用いて形成される。
【化1】

〔式中、R、R、及びRは、各々独立して、加水分解性基であり、Rは、C1~6アルキルである。〕
【0017】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、フルオロシランを用いては形成されない。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記材料は、約150°、約151°、約152°、約153°、約155°、約165°、約170°、又は約175°を超える静的水接触角を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記材料は、約5°未満の水滑落角を有する。いくつかの実施形態では、前記材料は、約1°未満の水滑落角を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記材料は、抗菌性又は抗ファウリング性を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記材料は、生物学的流体に対する付着防止性を呈する。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記材料は、血液に対する付着防止性を呈する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記材料は、生物種を含む液体に対する付着防止性を呈する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記材料は、細菌及びバイオフィルム形成に対する付着防止性を呈する。
【0026】
本開示はまた、本明細書に開示される材料を備えたデバイス又は物品も提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記材料は、前記デバイス又は物品の表面上に存在する。いくつかの実施形態では、前記材料は、前記デバイス又は物品の表面を形成する。
【0028】
本開示はまた、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法も提供し、前記方法は:
a)収縮性ポリマー基材を提供すること、
b)前記基材の表面層を酸化によって活性化すること、
c)実質的に一定の相対湿度で、前記活性化表面層上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
d)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0029】
本開示はまた、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法も提供し、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材の表面層を酸化によって活性化すること、
b)実質的に一定の相対湿度で、前記活性化表面層上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
c)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0030】
本開示の別の態様によると、本明細書において、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法が提供され、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材を酸化によって活性化すること、
b)実質的に一定の相対湿度で、前記収縮性ポリマー基材上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
c)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記基材の表面層を活性化することは、前記基材中又は前記基材上にヒドロキシル基を導入することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記基材の表面層を活性化することは、プラズマ処理を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記プラズマ処理は、約30秒間~約10分間、又は約2分間~約7分間、又は約3分間~約5分間の時間にわたる。
【0034】
いくつかの実施形態では、工程a)で提供される前記収縮性ポリマー基材は、二軸延伸されている。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記収縮性ポリマー基材を二軸延伸させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材の前記二軸延伸は、前記活性化の前である。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の収縮性ポリマー、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリオレフィンである。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、約45%及び約65%、又は約50%~約60%、又は約55%に実質的に維持される。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、約4時間~約30時間、又は約5時間~約24時間、又は約6時間にわたって実質的に維持される。いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、前記少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させる時間にわたって実質的に維持される。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャは、前記基材を熱収縮させることによって形成される。
【0039】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な記述から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な記述及び具体例は、本開示の実施形態を示すものではあるが、単に例示のために与えられるものであり、特許請求の範囲は、これらの実施形態によって限定されるべきではなく、本明細書全体と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることは理解されるべきである。
【0040】
次に、本開示のある特定の実施形態を、添付図面を参照してより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態における、階層構造化された超疎水性n-PTCS表面を示す:a)カスタマイズされた恒湿槽を用いた製造プロセス;b)理想的なインキュベーション時間である6時間での平面サンプル及び階層サンプルのSEM画像(スケールバーは、左の画像では40μm、右の画像では100μm、両挿入画像では4μmを表す);c)b)に示した階層表面の側面SEM画像 - 45°に傾けたスタブ及びスタブの45°傾斜を用いてサンプルの未処理端部を撮像して、側面画像を得た(スケールバーは100μmを表す)。
図2図2は、本開示の例示的な実施形態における3分間及び5分間のプラズマ処理での接触角及び滑落角の比較を示す(エラーバーは接触角に対する標準偏差を示す)。
図3図3は、本開示の例示的な実施形態における階層PO表面の特性評価及び最適化を示す:a)接触角及び滑落角のデータを用いて特性評価されたn-PTCSとのインキュベーションの最適化 - 特に断りのない限り、接触角測定は2μLの液滴を用い、一方滑落角測定は5μLの液滴を用いて行った(エラーバーは、最低3回の反復測定にわたって計算された標準偏差を表す);b)階層表面上でバウンドする水滴のコマ送り画像 - 5μLの水滴は、約10mmの高さから滴下した場合、高さが減少しながら2回のバウンドを示す;c)-20℃及び37℃で24時間保存した階層n-PTCS表面の温度安定性試験であり、接触角及び滑落角の測定を保存の前後で行って性能評価した;d)100%エタノール中に1.5時間浸漬した階層n-PTCSのエタノール中安定性であり、接触角の測定をインキュベーションの前後で行った;e)エタノール中で一連の超音波処理を施した階層表面における、接触角データを用いたエタノール中での超音波処理安定性試験;f)ペトリ皿中で室温保存した表面の長期安定性を、製造から3、4、及び5ヵ月後に試験したところ、接触角及び滑落角に変化は見られなかった。
図4図4は、本開示の例示的な実施形態における、様々なインキュベーション時間での平面サンプル及び収縮サンプルのSEM画像を示す(スケールバーは、大画像では10μm、挿入画像では1μmである)。
図5図5は、本開示の例示的な実施形態における、様々な密度のシリコーンオイルを用いた平面サンプル及び収縮サンプルの接触角及び滑落角の特性評価を示す。
図6図6は、本開示の例示的な実施形態における階層n-PTCS表面の血液付着防止性の評価を示す:a)水及び血液に対する接触角及び滑落角測定の比較のまとめ;b)示された時間にわたって前記表面に導入したクエン酸塩添加ヒト全血液滴の5μL液滴によって残された残渣の光学画像;c)積分濃度値を得るためにImageJを用いて評価したb)に示したサンプルの画像の血液滴染色の定量的評価 - 有意な減少を二元配置ANOVA検定を用いて計算し、複数の群にわたって実証し、ここでは**(P=0.01)、***(P=0.001)、及び****(P=0.0001)で示した。エラーバーは標準偏差を表す;d)コントロール条件の平面POに対して標準化した全血染色からの相対的吸光度値 - プロット上の各条件の上にサンプル表面の光学画像を示す。有意性を一元配置ANOVAで検定し、ここでは**(P=0.01)、***(P=0.001)、及び****(P=0.0001)で示す。
図7図7は、本開示の例示的な実施形態における階層n-PTCS表面の細菌付着防止性の評価を示す:a)緑色蛍光タンパク質でタグ付けした大腸菌K-12をスタンプした表面を用い、Amersham Typhoonイメージングシステムを用いて撮像した、カンテンスタンプから細菌移行後の表面の蛍光画像;b)強度/面積を用いた蛍光画像の定量的評価(値はImageJソフトウェアを用いて算出した);c)各条件からの細菌サンプルを播種し、一晩インキュベートして増殖させることからの、カンテンスタンプから移行した細菌の直接定量(プロットは対数スケールを使用) - エラーバーは平均の標準誤差を表す。一元配置ANOVA検定を用いて有意性を評価し、ここでは**(P=0.01)及び***(P=0.001)を用いて示した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
I.定義
特に断りのない限り、この及び他のセクションに記載される定義及び実施形態は、当業者であれば理解されるように、それらが適切である本明細書に記載の本開示のすべての実施形態及び態様に適用可能であることを意図している。また、本明細書で用いられる用語は、単に特定の態様を記載する目的のものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0043】
本開示の範囲を理解する上で、「含む(comprising)」の用語及びその派生語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を規定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を除外するものではない、非限定的な用語であることを意図している。上記はまた、「含む(including)」、「有する(having)」の用語、及びそれらの派生語などの類似の意味を有する語にも適用される。「からなる(consisting)」の用語及びその派生語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を規定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を除外する限定的な用語であることを意図している。「本質的にからなる(consisting essentially of)」の用語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在、さらには特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の基本的かつ新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えない要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を規定することを意図している。
【0044】
「実質的に」、「約」、及び「およそ」などの度合いの用語は、本明細書で用いられる場合、最終的な結果が有意に変化しないような、修飾された用語の合理的な量の逸脱を意味する。これらの度合いの用語は、この逸脱が、それが修飾する語の意味を否定しない場合、修飾された用語の少なくとも±5%の逸脱を含むと解釈されるべきである。加えて、本明細書で与えられるすべての範囲は、明示されているか否かにかかわらず、範囲の終点及び範囲のいずれの中間点も含む。
【0045】
本開示で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確に他を指示しない限り、複数形の参照を含む。
【0046】
「追加の」又は「第2の」構成要素を含む実施形態において、第2の構成要素は、本明細書で用いられる場合、他の構成要素又は第1の構成要素とは化学的に異なる。「第3の」構成要素は、他の構成要素、第1の構成要素、及び第2の構成要素とは異なり、さらに列挙された構成要素又は「追加の」構成要素も同様に異なる。
【0047】
「及び/又は」の用語は、本明細書で用いられる場合、列挙された項目が、個々に若しくは組み合わせて存在すること又は用いられることを意味する。実際、この用語は、列挙された項目の「少なくとも1つ」又は「1又は複数」が用いられること又は存在することを意味する。
【0048】
「例:」の略語は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書において限定されない例を示すために用いられる。したがって、「例:」の略語は、「例えば」の用語と同義である。「又は」の語は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、「及び」を包含することを意図している。
【0049】
「室温」の用語は、本明細書で用いられる場合、約20℃~約25℃の範囲内の温度を意味する。
【0050】
「しわ加工」の用語は、本明細書で用いられる場合、材料にしわを形成するための任意のプロセスをも意味する。
【0051】
「しわ」の用語は、本明細書で用いられる場合、マイクロスケールからナノスケールのひだを意味する。
【0052】
「階層構造」の用語は、本明細書で用いられる場合、マイクロスケール及びナノスケールの構造的フィーチャの両方を意味する。例えば、材料表面上の階層構造とは、前記材料表面上のマイクロスケール及びナノスケールの構造的フィーチャを意味する。
【0053】
「超疎水性」の用語は、本明細書で材料に関して用いられる場合、非常に疎水性の(水及び他の極性液体に対する低い濡れ性)特性を呈する材料を意味する。150°超などの非常に高い水接触角を有するような超疎水性材料は、極性の汚染物質が典型的には玉状になって表面から転がり落ちることから、多くの場合「セルフクリーニング」材料と見なされる。
【0054】
「形状記憶ポリマー」、「収縮性ポリマー」、及び「熱収縮性ポリマー」の用語は、本明細書で用いられる場合、予め延伸したポリマー材料を意味する。
【0055】
「アルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、それが単独で用いられる場合であっても又は別の基の一部として用いられる場合であっても、直鎖状又は分岐鎖状の飽和アルキル基、すなわち、その末端の1つに置換基を含む飽和炭素鎖を意味する。参照されるアルキル基において可能な炭素原子の数は、数値接頭辞である「Cn1~n2」によって示される。例えば、C1~6アルキルの用語は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0056】
「ハロ」の用語は、本明細書で用いられる場合、ハロゲン原子を意味し、F、Cl、Br、及びIを含む。
【0057】
「ヒドロキシル」の用語は、本明細書で用いられる場合、官能基OHを意味する。
【0058】
「適切な」の用語は、本明細書で用いられる場合、特定の化合物又は条件の選択が、実施される具体的な合成操作、及び変換される分子(複数可)の種類に依存することになるが、前記選択は充分に当業者の技能の範囲内であることを意味する。本明細書に記載のプロセス/方法工程はすべて、示された生成物を提供するのに充分な程度まで反応を進行させる条件下で実施されるべきである。当業者であれば、例えば反応溶媒、反応時間、反応温度、反応圧力、反応物比、及び反応を無水又は不活性雰囲気下で行うべきか否かを含むすべての反応条件を、所望される生成物の収率を最適化するために変化させることができ、そうすることは当業者の技能の範囲内であることが理解されるであろう。
【0059】
本明細書において含まれるとして定められるいかなる構成要素も、本明細書において暗示的又は明示的に定められるか否かにかかわらず、いずれかの特定の化合物又は方法工程など、条件付きで又は否定的限定によって、明示的に除外される場合があることは理解される。
【0060】
II.本開示の組成物及び方法
本明細書において、フッ素又は潤滑剤を含まない可撓性階層表面コーティングが開示される。この表面は、簡便で安価なフッ素フリーの方法を用いて超疎水性の生物付着防止性表面を製造することによって作製され、潤滑剤注入表面と同等の性能を実現する、しわ加工したトポグラフィーを備える。これは、ポリシロキサンのナノ構造化及び熱可塑性ポリマーのしわ加工を組み合わせることによって階層状の安定した表面を得ることによって実現された。
【0061】
本明細書において、実施形態では、これらの階層表面は、ポリオレフィン(PO)などの形状記憶ポリマー基材などの薄い熱可塑性材料上に、CVD処理を介してのn-プロピルトリクロロシラン(n-PTCS)を用いたナノ構造などのポリシロキサンのナノスケールフィーチャを成長させ、次いで熱収縮させて前記硬いn-PTCSナノ構造層にしわ加工を施し、一体化されたn-PTCSナノ構造を備えたマイクロスケールのしわを生成することによって製造した。
【0062】
前記開発された表面及び/又はコーティングは、液体及び病原体の付着防止性を実現する超疎水性を実証し、さらには潤滑剤を用いずに抗バイオファウリング性も実証した。これらの階層表面は、細菌の伝染を大きく低減することを実証して、感染性疾患の伝播を軽減するための抗菌コーティングとしてのその可能性を示し、並びにヒト全血とのインキュベーション後における血液染色を大きく低減することを実証し、高頻度接触及び屋外の環境で使用可能とするための潤滑剤フリーであるという利点を備える。したがって、最終製品は、細菌及びヒト全血などの複雑な生体液をはじく実証された能力を備えたフッ素フリー、可撓性、超疎水性である生物付着防止表面である。
【0063】
この簡便で低コストかつ環境上安全である製造方法の利点を用いることで、本明細書では、病原体に対する付着防止性及びエタノールなどの洗浄剤中での安定性に基づき、高頻度接触、屋外の環境全般において、さらには医療及び食品産業において用いられ得る強い付着防止性を備えた可撓性である超疎水性階層表面が製造される。カテーテル及びインプラント、並びに細胞培養プラットフォームとしてなど、より長期的な生物医学的用途でのこれらの表面の適用も可能である。
【0064】
したがって、本明細書では、収縮性ポリマー基材と少なくとも1つのポリシロキサン層とを備えた材料が提供され、前記材料は、階層構造を形成するマイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを備え、及び前記材料は、超疎水性を呈する。
【0065】
また、本明細書では、収縮性ポリマー基材と、前記基材の表面層上の少なくとも1つのポリシロキサン層とを備えた材料が提供され、前記材料は、前記材料の表面上に階層構造を形成するマイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを備え、並びに前記材料は、超疎水性を呈する。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記材料は、前記基材の複数の表面の各々の上に少なくとも1つのポリシロキサン層を備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の収縮性ポリマー、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリオレフィンである。いくつかの実施形態では、前記基材は、ポリオレフィンの薄い可撓性フィルムである。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、二軸延伸されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記マイクロスケールのしわは、前記収縮性ポリマー基材の前記表面層のしわ加工から作製される。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記ナノスケールのフィーチャは、フィラメント形状及び/又は棒形状の構造を備える。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層が、前記ナノスケールのフィーチャを形成する。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、シランを用いて形成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、式IIの1種又は複数種の化合物を用いて形成される。
【化2】

〔式中、R、R、及びRは、各々独立して、加水分解性基であり、Xは、単結合であり、Rは、C1~6アルキルである。〕
【0074】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、式IIの1種又は複数種の化合物を用いて形成される。
【化3】

〔式中、R、R、及びRは、各々独立して、加水分解性基であり、Rは、C1~6アルキルである。〕
【0075】
前記加水分解性基は、任意の適切な加水分解性基であり、その選択は、当業者によって行われ得る。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、独立してハロである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、すべてClである。
【0076】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~3アルキルである。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、シランを用いて形成される。前記シランの適切な例としては、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(エチル)シラン、及び/又はn-プロピルトリクロロシランが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、フルオロシランを用いては形成されない。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記材料は、約150°、約150°、約151°、約152°、約153°、約155°、約165°、約170°、又は約175°を超える静的水接触角を有する。いくつかの実施形態では、前記材料は、約150°~約165°の静的水接触角を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記材料は、約5°未満、約4°未満、約3°未満、約2°未満、又は約1°未満の水滑落角を有する。いくつかの実施形態では、前記材料は、約1°未満の水滑落角を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、階層表面を備えたこれらの材料を血液又は細菌汚染物質と接触させると、その超疎水性を、より優れた抗バイオファウリング性に変換可能であることが観察された。いくつかの実施形態では、前記材料は、抗菌性又は抗ファウリング性を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記材料は、水に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、前記材料は、生物学的流体に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、前記生物学的流体は、全血、血漿、血清、汗、糞便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉滲出液、羊水、眼内液、脳脊髄液、精液、喀痰、腹水、膿汁、鼻咽頭液(nasopharengal fluid)、創傷滲出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹膜液、胸水、皮脂、嘔吐物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記材料は、血液に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、血液付着は、約93%減少する。いくつかの実施形態では、血液付着は、材料を血液中で約20分間インキュベートし、次いで前記材料を脱イオン水に入れ、水中で前記材料を約30分間振とうすることによって表面に付着した血液を水中へと混合させ、その後、前記水から前記材料を取り出し、水の吸光度値を測定して、各表面上に存在する血液(例:ヘモグロビン)の量の変化を特定することによって求められる。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記材料は、生物種を含む液体に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、生物種としては、細菌、真菌、ウイルス又は異常細胞、寄生された細胞、癌細胞、外来細胞、幹細胞、及び感染細胞などの微生物が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物種はまた、細胞小器官、細胞断片、タンパク質、核酸 小胞、ナノ粒子、バイオフィルム、及びバイオフィルム構成要素などの生物種構成要素も含んでいた。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記材料は、細菌及びバイオフィルム形成に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、前記表面は、細菌及びバイオフィルム形成に対する付着防止性を呈する。いくつかの実施形態では、前記細菌は、グラム陰性細菌又はグラム陽性細菌の1種又は複数種から選択される。いくつかの実施形態では、前記細菌は、大腸菌、ストレプトコッカス種(Streptococcus species)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クロストリジウム種(Clostridium species)、及び髄膜炎菌の1種又は複数種から選択される。いくつかの実施形態では、前記細菌は、大腸菌、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、ヘリコバクター・ピロリ、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aerugenosa)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、クレブシエラ・エロゲネス(Klebsiella aerogenes)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)、ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)、モラクセラ・オスロエンシス(Moraxella osloensis)、アシネトバクター・ルオフィ(Acinetobacter lwoffi)、及びセラチア・フォンチコラ(Serratia fonticola)の1種又は複数種から選択されるグラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、前記細菌は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)、ストレプトマイセス・ヴィオラセオルベル(Streptomyces violaceoruber)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、及びノカルジア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)の1種又は複数種から選択されるグラム陽性細菌である。いくつかの実施形態では、前記細菌は、大腸菌である。いくつかの実施形態では、細菌付着は、約97.5%減少する。
【0086】
別の態様によると、本明細書に記載の材料を備えたデバイス又は物品が提供される。いくつかの実施形態では、前記デバイス又は物品は、任意の医療及び実験用デバイス、個人保護具、並びに医学用デバイスから選択される。いくつかの実施形態では、前記デバイス又は物品は、カニューレ、コネクタ、カテーテル、カテーテル、クランプ、スキンフック、カフ、開創器、シャント、針、毛細管チューブ、気管内チューブ、人工呼吸器、人工呼吸器チューブ、薬物送達担体、シリンジ、顕微鏡スライド、プレート、フィルム、実験作業面、ウェル、ウェルプレート、ペトリ皿、タイル、ジャー、フラスコ、ビーカー、バイアル、試験管、チューブコネクタ、カラム、容器、キュベット、ボトル、ドラム、バット、タンク、歯科用具、歯科用インプラント、バイオセンサー、生体電極、内視鏡、メッシュ、創傷被覆材、人工血管、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、前記デバイス又は物品は、病院環境における高リスク表面を備えたいずれかの物品(例:外科用及び医学用機器)、食品包装材(例:食肉、農産物などの包装材)、公共の場所における高頻度接触表面(例:ドアノブ、エレベーターのボタンなど)、又はウェアラブル物品(例:手袋、腕時計など)から選択される。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、カテーテル又はインプラントである。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、細胞培養のために用いられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記材料は、前記デバイス又は物品の表面上に存在する。いくつかの実施形態では、前記材料は、上記で挙げたいずれのデバイス又は物品も含むがこれらに限定されない予め形成されたデバイス又は物品などのデバイス又は物品の表面を改質するために用いられる。いくつかの実施形態では、前記材料は、前記デバイス又は物品の表面を形成する。
【0088】
本開示の別の態様によると、本明細書において、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法が提供され、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材を得ること、
b)前記基材を表面層の酸化によって活性化すること、
c)実質的に一定の相対湿度で、少なくとも1つの少なくとも1つのポリシロキサン層を前記表面上に堆積させること、及び
d)前記材料を処理してマイクロスケールのしわを形成すること、
を含み、得られた表面は、超疎水性を呈する。
【0089】
本開示の別の態様によると、本明細書において、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法が提供され、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材を酸化によって活性化すること、
b)実質的に一定の相対湿度で、前記収縮性ポリマー基材上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
c)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0090】
本開示の別の態様によると、本明細書において、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法が提供され、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材を提供すること、
b)前記基材の表面層を酸化によって活性化すること、
c)実質的に一定の相対湿度で、前記活性化表面層上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
d)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0091】
本開示の別の態様によると、本明細書において、階層構造を備えた表面を有する材料の製造方法が提供され、前記方法は、
a)収縮性ポリマー基材の表面層を酸化によって活性化すること、
b)実質的に一定の相対湿度で、前記活性化表面層上に少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させること、及び
c)マイクロスケールのしわ及びナノスケールのフィーチャを形成する条件下で前記基材を処理して、前記材料を得ること、
を含み、前記材料は、超疎水性を呈する。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記基材を活性化することは、前記基材中又は前記基材上にヒドロキシル基を導入することを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記基材を活性化することは、プラズマ処理を含む。いくつかの実施形態では、前記基材を活性化することは、酸素プラズマ処理を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記プラズマ処理は、約30秒間~約10分間、又は約2分間~約7分間、又は約3分間~約5分間の時間にわたる。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、二軸延伸されている。いくつかの実施形態では、前記方法は、活性化前に前記収縮性ポリマー基材を二軸延伸させることをさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び他の収縮性ポリマー、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む。収縮性ポリマーとしては、ポリスチレン又はポリオレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「形状記憶ポリマー」、「収縮性ポリマー」、及び「熱収縮性ポリマー」の用語は、前記ポリマーをそのガラス転移温度を超える温度に掛けることによって収縮するポリマーを意味し得る。いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせ及びコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記収縮性ポリマー基材は、ポリオレフィンである。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、約45%及び約65%、又は約50%~約60%、又は約55%に実質的に維持される。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、約4時間~約30時間、又は約5時間~約24時間、又は約6時間にわたって実質的に維持される。いくつかの実施形態では、前記相対湿度は、前記少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させる時間にわたって実質的に維持される。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのポリシロキサン層は、n-プロピルトリクロロシランを用いて形成される。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記しわは、本技術分野で公知の適切なしわ加工プロセスを用いて形成される。いくつかの実施形態では、前記しわ加工プロセスは、前記材料にマイクロ構造を作り出す任意のプロセスである。いくつかの実施形態では、前記しわ加工プロセスは、硬いスキン層で改質された変形性基材(compliant substrate)を面内圧縮ひずみに曝露すること、又は前記基材が引張ひずみの除去に供される場合、を含む。前記硬い層と前記変形性基材との弾性率の不適合の結果として、しわが形成される。いくつかの実施形態では、前記マイクロスケールのしわは、前記材料を熱収縮させることによって形成される。いくつかの実施形態では、熱収縮は、約100℃~約200℃、約120℃~約160℃、又は約140℃~約150℃、又は約145℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、前記熱収縮は、約1分間~約15分間、又は約5分間~約12分間、又は約10分間にわたって行われる。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記方法は、上記で挙げたいずれのデバイス又は物品も含むがこれらに限定されない予め形成されたデバイス又は物品などのデバイス又は物品の表面を改質するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、前記デバイス又は物品は、前記収縮性ポリマー基材を備える。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記活性化表面層上に前記少なくとも1つのポリシロキサン層を堆積させた後、前記基材をデバイス又は物品の表面上に適用することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記基材は、工程c)の後に、前記デバイス又は物品の少なくとも一部分上に巻き付けられる。いくつかの実施形態では、工程d)は、前記デバイス又は物品と前記材料との間にシールを形成するために、巻き付け後に行われる。
【0103】
いくつかの実施形態では、前記材料は、病院環境における高リスク表面(例:外科用及び医学用機器)、食品包装材(例:食肉、農産物などの包装材)、公共の場所における高頻度接触表面(例:ドアノブ、エレベーターのボタンなど)、又はウェアラブル物品(例:手袋、腕時計など)などの広く様々な表面上に配置される。
【実施例
【0104】
以下の非限定的な例は、本出願を例示するものである。
【0105】
方法
【0106】
試薬。n-プロピルトリクロロシラン(98%)は、Thermo Fisher Scientific(Whitby,Ontario,Canada)から購入した。臭化ナトリウム(99%)及び様々な粘度(10、20、50、100、350、及び1000cSt)のシリコーンオイルは、Sigma-Aldrich(Oakville,Ontario,Canada)から購入した。エタノール(無水)は、Greenfield(Brampton,Ontario,Canada)から購入した。溶液の調製には脱イオン水を用いた。pUA66-GadB緑色蛍光タンパク質でトランスフェクトした大腸菌K-12 MG1655は、Dr.Eric Brownのご厚意によりご提供いただいた。LBブロス粉末は、ThermoFisher Scientific(Whitby,ON)から購入した。カンテンは、Bio-Radから購入した。カナマイシンは、Sigma-Aldrich(Oakville,ON)から購入した。ヒト静脈全血は、健康なドナーからクエン酸ナトリウム含有チューブに、資格を持ったフレボトミストが採取した。すべてのドナーは、献血前に同意書を提出した。すべての手順は、McMaster University Research Ethics Boardの承認を得た。
【0107】
基材の調製。ポリオレフィン(Cryovac D-955)を所望される基材サイズ及び形状に切断した。各基材を脱イオン水及びエタノールで洗浄し、続いて窒素ガスで乾燥させた。3分間又は5分間の酸素プラズマ処理(Plasma Etch PE-100 Benchtop Plasma Etching System,Carson City,Nevada)を用いて、各基材の表面をヒドロキシル基で活性化した。
【0108】
ナノ構造の成長。プラズマ処理後、基材をn-PTCSナノ構造でコーティングした。まず、サンプルを、2時間の湿度安定化時間にわたって密閉槽の内部に置いた。相対湿度は、前記槽の底に収容した過飽和臭化ナトリウム溶液を用いて制御した。所望されるRH(約55%)が得られた後、密閉ゴム栓を通してn-PTCSを前記槽に添加した。表面開始重合は、室温で様々な時間(6時間、12時間、18時間、及び24時間)にわたって進行させた。
【0109】
階層表面。コーティングの後、いくつかのサンプルを、熱処理を用いてさらに改質した。基材を、145℃に予熱したオーブン内のシリコンウェハー上に10分間置いてしわを誘発し、その結果、階層表面を得た。
【0110】
潤滑剤処理表面。潤滑剤処理状態の試験では、n-PTCSナノ構造で既にコーティングされた基材を、一部は熱収縮し、一部は熱収縮せず、これらをさらに、様々な粘度のシリコーンオイル(10、20、50、100、350、及び100cSt)で処理した。潤滑剤を前記基材に添加して2時間インキュベートし、続いて前記基材を24時間垂直に保持して過剰のオイルを除去した。潤滑剤のさらなる喪失を最小限に抑えるために、この状態の表面を、調製後すぐに試験した。
【0111】
滑落角及び接触角の測定。各サンプルの予備段階での特性を、前記表面の濡れ性を調べるために、水の接触角及び滑落角の測定を用いて分析した。サンプルの接触角測定は、液滴形状分析器(Kruss DSA30S,Matthews,North Carolina)を用いて行った。針から2μLの水滴を吐出し、装置ソフトウェアを用いて静滴接触角を測定した。滑落角の測定は、校正済みデジタル角度計水準器(ROK,Exeter,UK)を用いて行った。5μLの液滴を前記サンプル上にピペッティングし、前記液滴が動き始めるまで前記水準器をゆっくりと傾けた。高性能表面の場合、液滴は前記表面を滑って移動することが多く、動かすために傾ける必要はまったくなかった。このようなサンプルには、滑落角1°を割り当てた。90°以上で液滴が動かなかった場合は、滑落角90°を割り当てた。接触角及び滑落角の両方について、前記表面全体にわたって最低3回の測定を繰り返し、平均値±標準偏差を報告した。
【0112】
走査型電子顕微鏡(SEM)。前記表面に形成された前記ナノ構造を可視化するためには、電子顕微鏡(JEOL JSM-7000F,FEI Magellan 400)を用いる必要があった。サンプルを上記のようにして調製し、サイズに合わせて切断した後、カーボンテープとニッケルペーストを用いてスタブに載せ、続いてスパッタコーター(Polaron model E1500,Polaron Equipment Ltd.,Watford,Hertfordshire)を用いて10nmの白金でコーティングした。SEM画像は、45°傾けたスタブを用いて、上からの視野で収集し、さらには一部のサンプルについては側面からも収集した。
【0113】
安定性試験。階層n-PTCS表面に対して、いくつかの安定性試験を行った。温度の影響を評価するために、表面を、-20℃及び37℃で24時間保存した。接触角及び滑落角の測定を、インキュベーションの前後に行った。表面のエタノール耐性能力を、前記表面を100%エタノール中で1.5時間インキュベートすることによって試験し、接触角を用いて性能を評価した。エタノール洗浄による表面の安定性を確認するために、階層表面を、超音波を用いたエタノール中での一連の洗浄に供した。15mLのファルコンチューブに7mLのエタノールを加え、階層表面を浸漬した。超音波処理を5分間、10分間、及び15分間にわたって行った後、接触角及び滑落角の測定を行った。ASTMスクラッチ試験を、Elcometer 1542クロスハッチ接着性試験機を用いて行った。表面に、カッターホイールを用いて2回、互いに90°の角度で切り込みを入れ、破片を払い落とした後、粘着テープを前記表面に貼り付け、表面から180°で剥がした。性能は、標準文書との比較によって評価した。経時安定性を評価するために、表面をペトリ皿に入れて室温で保存し、接触角及び滑落角の測定を、3ヶ月後、4ヶ月後、及び5ヶ月後に行った。
【0114】
全血液滴実験。大きいサンプルから小正方形(約5mm×5mm)を切り出し、ペトリ皿に入れ、DI水で湿らせたKimwipeを用いて加湿した。各サンプルの表面に、クエン酸塩添加全血の5μLの液滴を置いた。1分間、5分間、10分間、及び15分間の時間間隔で、Kimwipe(登録商標)を用いて前記表面から前記液滴を静かに吸い取った。前記表面全体に液体を塗り拡げないように注意した。一定の照明及びサンプルからの距離を用いて、表面の光学画像を撮影した。これらの画像における強度の積分濃度を、ImageJソフトウェアを用いて定量した。画像をまず、同等な対象領域を確保するようにトリミングした。前記画像からバックグラウンドを差し引き、続いて8ビットに変換し、最後に閾値を0~227に設定した。次にソフトウェアによって、これらの画像の積分濃度を計算した。標準偏差を、各条件について最低3回の反復実験から計算したこれらの値の平均値と共に報告する。二元配置ANOVAを行って、有意性を判定した。
【0115】
全血染色アッセイ。サンプルを1cm×1cmの正方形に切断し、両面テープを用いて24ウェルプレートの底に固定した。500μLのクエン酸塩添加全血を各ウェルにピペッティングし、20分間インキュベートした。インキュベーション後、表面を前記ウェルから注意深く取り出し、テープが取り外され、前記サンプルの未処理面に血液がまったくないことを確認した。サンプルを光学撮像し、続いて700μLのDI水を入れたウェルを有する新しいウェルプレートに入れた。ウェルを、シェーカー(VWR Incubating Mini Shaker,Troemner,LLC,Thorofare,NJ)を用いて100RPMで30分間振とうし、前記表面に付着していた血液をすべて分離させた。続いて、表面を取り出し、溶液の200μLを新しい96ウェルプレートにピペッティングした。プレートリーダー(Synergy Neo2、BioTek,Winooski,Vermont)を用いて450nmで吸光度値を読み取った。相対吸光度値は、コントロールサンプルである平面POを基準として計算した。値は、最低3回の反復実験を用いて得た標準偏差付き平均値として報告した。一元配置ANOVAを用いて有意性を判定した。
【0116】
細菌付着実験。表面をサイズを合わせて切断し(直径約15mm)、使用前に70%エタノールで洗浄した。250mLのLBブロスを125μLのカナマイシンと混合して、50μg/mLのLB-Kan培地を作製した。ピペットチップを用いて単一の細菌コロニーを取り上げ、前記液体培地に植菌し、前記培養物を、220RPMで振とうしながら37℃で一晩インキュベートした。一晩後の培養物を、50mLの4つの反復サンプルに分け、4×gで10分間遠心分離した。続いて、上清を廃棄し、ペレットを1mLの新しいLB-Kan培地に再懸濁し、実験に用いるための濃縮細胞懸濁液を作製した。カンテンプラグは、カンテン9gに水300mLを添加して3%カンテン混合物を調製し、これをオートクレーブ処理後、ポリスチレン製ペトリ皿に注ぎ入れて固化させることによって作製した。カンテンプレートは、使用するまで4℃で保存した。実験手順を開始する前に、カンテンプラグを、前記試験表面に合うサイズに切断した(直径約15mm)。20μLの細胞懸濁液を添加することによって前記プラグに細菌を導入し、続いてピペットチップを用いて前記カンテン全体に静かに広げ、5分間インキュベートした。試験表面をこれらのプラグでスタンプし、2枚のガラスプレートの間に置いた。表面を、Amersham Typhoonイメージングシステム(GE)を用いて撮像した。未スタンプ表面は、バックグラウンド蛍光のためのコントロールとして用いた。画像は、ImageJソフトウェアを用いて分析し、蛍光強度を用いて前記表面への細菌の移行を測定した。平均の標準誤差を、各条件について5回の反復実験を用いて、これらのサンプルについて計算した。一元配置ANOVAを用いて有意性の計算を行った。
【0117】
前記表面に移行した細菌数を直接定量するために、上記のプロトコルを若干変更した。一晩増殖させた細菌培養物を、およそ5.7×10CFU/mLに希釈し、濃縮細胞懸濁液の代わりに用いた。前記表面を、上記で説明したようにスタンプ処理し、続いて5mLのLB-Kan培地に入れて混合した。スタンプ処理した各サンプルからの培地を様々な希釈率で播種することによって、前記表面への細菌の移行を測定した。この場合、96ウェルプレート中、前記サンプルからの培地20μLを180μLのPBSと混合し、サンプルあたり2つの反復実験ウェルとした。各サンプルについて10-5までの希釈液を作製した。100μLのサンプルを、セルスプレッダーを用いて三連で播種し、一晩インキュベートした(37℃)。Blot/UV/Stain-Free Sample Tray及びFluorescein設定によるChemiDoc MP(BioRad)イメージングシステムを用いてプレートを撮像した。画像は、ImageJソフトウェアのセルカウンタープラグインを用いて分析した。これらのサンプルについて平均の標準誤差を計算し、一元配置ANOVAを用いて有意性を判定した。
【0118】
結果と考察
【0119】
ポリシロキサン階層表面の製造及び特性評価。前記階層n-PTCS表面は、3工程の方法を用いて製造した。まず、平面PO基材(所望されるサイズ及び形状に切断)を、3分間にわたる酸素プラズマ処理によって活性化した。次に、前記PO表面上にn-PTCSナノ構造を成長させるために(6~24時間にわたって化学蒸着を用いる)、カスタマイズされた恒湿槽を用いた。まず基材をカスタマイズされた恒湿槽に2時間入れて、湿度を約55%の相対湿度(RH)に安定させ、続いてゴム栓を通してn-PTCSを添加する。最後に、コーティングした表面を、145℃で10分間の熱処理に供することでしわ加工を行う(図1)。基材としては、スケーラビリティを確保するために、広く入手可能な熱収縮性ポリマーフィルムである二軸延伸ポリオレフィンを選択した。図2は、縮合反応を促進するための3分間の活性化時間の最適化を示す。n-PTCSの成長時間を変化させて、付着防止性が最大となるように前記階層コーティングの構造を最適化した(図3)。
【0120】
各タイプの表面を、接触角及び滑落角を測定することによって特性評価し(図3a)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化した(図1b、図1c)。n-PTCS処理表面は、平面及び階層条件の両方で>150°の水接触角を示し、一方、水滑落角は、平面表面では大きく変動したが、収縮表面では一貫して<15°と測定された。これらの結果に基づいて、6時間のインキュベーション後の階層表面を、最も短い成長期間で、最も高性能な表面(接触角:153°及び滑落角:<1°)として選択した。これらの測定の過程で、平面n-PTCS表面は、階層n-PTCSと同様の性能を示したが、表面耐久性は、構造的階層によって大きく改善された。平面n-PTCSの表面に軽い圧力を用いて触れると、多くの場合前記表面から著しい残渣が移行する結果となった。加えて、コーティング厚さの僅かな差によって、滑落角測定中に水滴が前記平面n-PTCS表面に留まる結果となった。これらの欠点はいずれも、階層n-PTCSでは見られなかった。階層n-PTCS表面では、5μLの水滴が前記表面をバウンドする又は滑って移動することが観察され、これは超疎水性を実証するものである(図3b)。この現象のスローモーション記録を用いると、液滴は前記表面で2回バウンドし、1回目のバウンドは約0.5cmの高さに達することが見られた。n-PTCSナノ構造は、熱処理前に顕微鏡を用いて前記表面上で視認可能であり、前記熱収縮プロセス後には、しわと一体化した状態となる(図1b、図1c)。平面表面上では、ナノ構造の密度にばらつきが観察されたが、収縮サンプルは、すべての時間点で前記表面全体にわたってしわを示している(図4)。前記n-PTCSナノ構造は、火山に似ている場合もあるフィラメント状構造及び棒状構造の両方を含む13。PO上のn-PTCSナノ構造は、数百ナノメートルから、稀な場合では1μm超までの範囲内の直径で観察される。このばらつきは、個々の表面にわたってある程度見られ、さらには成長時間の違いにわたっても見られる。24時間成長させた前記構造は、直径が約200nmのよりフィラメント状に見えるが、前記構造を6時間成長させると、直径が最大1μmのより棒状の構造が得られる結果となっている(図4)。収縮によって作り出された二方向のマイクロスケールのしわにも、成長時間にわたってある程度のばらつきが見られたが、6時間の成長で作り出されたしわを含むすべてのしわは、マイクロメートルのスケールであった(図4)。
【0121】
これらの表面の安定性を試験するために、環境及び物理試験も行った。-20℃又は37℃の環境に24時間置いた階層n-PTCS表面は、接触角及び滑落角の測定値に変化を示さなかった(図3c)。また、100%エタノール中での1.5時間のインキュベーションも行った。ここでも、これらの表面は安定した超疎水性を維持し、接触角又は滑落角に大きな変化はなかった(図3d)。また、表面を、100%エタノール中、継続時間を15分まで増加させながら超音波処理したが、超疎水性の特性が大きく低下することはなかった(図3e)。ASTM国際規格スクラッチ試験を前記階層n-PTCS表面に対して行ったが、これは、接着強度を0から5Bに分類するものであり、5Bは理想的な接着を示す。階層n-PTCSに対して、4Bの分類が測定され、このことは、n-PTCSコーティングの許容される接着性が実現されたことを示している。最後に、長期安定性試験を階層n-PTCSに対して行ったが、3ヶ月後、4ヶ月後、及び5ヶ月後において、接触角及び滑落角の性能低下は見られなかった(図3f)。これらの結果はすべて、これらの階層n-PTCS表面を高頻度接触及び可変の環境での用途に用いることを支持するものである。
【0122】
バイオファウリング防止のための血液付着低減。複雑な生体液の存在下での階層n-PTCS表面の性能を評価するために、クエン酸塩添加全血を用いた予備段階での特性評価を行って、血液が前記表面に付着するかどうかを評価した。この実験では、潤滑剤フリーの手法による性能を、非常に優れた付着防止性及び抗バイオファウリング性を有することが知られている液体注入表面の性能と比較するために、潤滑剤処理した階層n-PTCS表面もコントロールとして含めた。これまでの研究によって、ナノフィラメントコーティングのための潤滑剤としてシリコーンオイルが有効であることが実証されていることから、階層表面の適切な比較の準備のために、これらの表面のための潤滑剤として10cSt、20cSt、50cSt、100cSt、350cSt、及び1000cStのシリコーンオイルについて調べた。100cStのシリコーンオイルを、平面及び収縮の両サンプルにおける滑落角に基づいて理想的な粘度として選択し、階層n-PTCSに添加した場合に、5°の水滑落角及び104°の水接触角を示した(図5)。
【0123】
階層n-PTCS表面上でのクエン酸塩添加全血による接触角(140°)は、平面又は収縮PO表面の場合の接触角より有意に高かった(図6a)。これは、潤滑剤処理表面で測定した血液接触角を大きく超えると同時に、平面n-PTCS表面の接触角と同等である。また、前記表面を恒湿槽内で15分間インキュベートすることによって、液滴染色試験も行った。前記階層n-PTCS表面は、前記染色試験後も、特に平面及び収縮POのコントロール群と比較して、目に見えて清浄に維持されていた(図6b)。これらの結果を定量化するために、各表面の画像における強度の積分濃度を測定した。強度測定の傾向は、視覚的評価と一致しており、階層n-PTCS表面がすべての時間点においてコントロール条件を有意に上回る性能であったことを示している(図6c)。平面n-PTCS表面は、血液との5分間のインキュベーション後であっても視認可能な染色を保持しており、バイオ付着防止性における構造的階層の利点が強調される。潤滑剤フリーの階層n-PTCS表面の性能は、平面及び階層の両潤滑剤処理表面と同等であり、この階層による手法が、これらの表面と同程度の性能であることにより、潤滑剤の必要性を排除することに成功したことを実証するものである。
【0124】
さらなる染色試験も行った。この試験では、前記表面をクエン酸塩添加全血中で20分間インキュベートし、続いて静かに取り出し、サンプルの未処理面を拭いてきれいにした。続いて、表面をDI水で満たしたウェルに入れ、30分間振とうして、前記表面に付着していた血液を除去した。これらのウェルの相対吸光度の測定から、平面又は収縮POと階層n-PTCS表面との間での有意な減少によって、前記階層表面の染色に対する耐性が再度示される(図6d)。前記液滴実験と同様に、前記階層n-PTCSの性能は、潤滑剤処理表面と同等であり、平面又は階層潤滑剤処理n-PTCSとの間に有意な差は見られなかった。このように表面の染色低減に成功したことは、視覚的な清浄性を超えた高い性能を示すものである。バイオフィルムは、血液による表面汚染によって沈着したフィブリノーゲンによって促進されることが知られていることから、血液付着の低減は、細菌種によるバイオフィルム形成の可能性を最小限に抑える。この特徴は、定期的に血液で汚染された状態となり、同時に病原菌曝露のリスクもある医療施設に置かれた表面の場合に特に重要である。
【0125】
高頻度接触表面への病原体移行の防止。これらの表面の病原体付着防止性を評価するために、高頻度接触表面への病原体移行を模倣する実験をデザインした。緑色蛍光タンパク質をトランスフェクトした細菌である大腸菌K-12を用いて、前記表面の細菌付着防止性を調べた。大腸菌は、強く、広く入手可能なグラム陰性細菌であり、K-12などの実験室で維持されている菌株は、接着変異(adherent mutations)に起因して表面上に残留することが記録されている。まず、前記表面に、大腸菌で汚染されたカンテンプラグでスタンプし、続いて、前記表面上の蛍光強度を測定することによって、細菌付着を定量した(図7a)。前記n-PTCS階層表面は、平面POと比較して、細菌負荷の1.6対数(97.5%)減少を示し、これらの表面が細菌の移行に抵抗する能力が実証された(図7b)。前記潤滑剤フリー表面とそれらの対応する潤滑剤処理表面との性能を比較するために、血液付着試験で用いたものと同じ一連のサンプルを作製し、評価した。複雑な生体液中での性能と同様に、潤滑剤処理条件と階層n-PTCSとの間に有意な差は示されなかった。汚染されたスタンプによって前記表面に移行した生存増殖細菌の量を調べるためのさらなる実験を行った。この場合、図7cに示すように、階層n-PTCS表面は、コントロール群と比較して1.2対数減少(93%)を呈した。平面POと階層n-PTCSとの間では、87%の減少が示され、一方潤滑剤処理平面n-PTCS又は潤滑剤処理階層n-PTCSと本発明者らの理想的な階層n-PTCSとの間では、有意な差は示されていない。合わせて考えると、これらの結果は、開発した潤滑剤フリー及びフッ素フリーの階層表面を用いることによる、表面汚染に対する著しい耐性を示している。これだけではなく、この結果はまた、前記階層n-PTCS表面とその潤滑剤処理した階層類似物との間に有意な差がないことも示している。図7bに見られるように、前記階層n-PTCS表面は、この接触アッセイにおいて、前記潤滑剤処理平面n-PTCS表面(平面n-PTCS+潤滑剤)を上回る性能であった。この性能は、同じ実験デザインを用いて蛍光シグナルの20倍減少を示したが、フルオロシランコーティングを用いて製造されたものである、熱収縮性表面で製造されたこれまでの階層表面と一致している。加えて、これらの表面は、n-PTCSでコーティングし、シリコーンオイル潤滑剤を浸透させたスライドグラスへの細菌付着の有意な減少を示したポリシロキサンナノ構造を用いたこれまでの研究と一致した性能を示す11
【0126】
本開示を、実施例を参照して記載してきたが、特許請求の範囲は、実施例に記載された実施形態によって限定されるべきではなく、全体として本明細書と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることは理解されたい。
【0127】
すべての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、又は特許出願が参照によりその全体が援用されると具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。本開示中のある用語が、参照により本明細書に援用される文書において異なって定義されていることが判明した場合は、本明細書で提供される定義が、前記用語の定義として用いられるものとする。
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】