(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態の決定
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20240903BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G1/04 555Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510496
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 GR2022000043
(87)【国際公開番号】W WO2023021307
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515134368
【氏名又は名称】オカド・イノベーション・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロポウロス、クリサントス
(72)【発明者】
【氏名】トリポディ、エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】ライモンディ・コミネシ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュン、トーマス
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022EE05
3F022FF00
3F022JJ11
3F022MM01
3F522AA02
3F522CC01
3F522FF05
3F522FF12
3F522FF16
3F522FF38
3F522GG02
3F522LL63
(57)【要約】
保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法。荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データが、車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得される。車輪状態データに基づいて、及び訓練されたモデルを使用して、荷役デバイスのクリープ値が決定される。クリープ値に基づいて、荷役デバイスの運動学的状態が決定され、荷役デバイスの運動学的状態を表す運動学的データが出力される。荷役デバイスのための方法を用いるポジショニングシステムも提供される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法であって、
前記荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データを、前記車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得することと、
前記車輪状態データに基づいて、及び訓練されたモデルを使用して、前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値に基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定することと、
前記荷役デバイスの前記運動学的状態を表す運動学的データを出力することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記運動学的状態は、前記荷役デバイスの位置、速度、加速度、ジャーク、又は向きのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記訓練されたモデルは、前記保管システム内で所定の動きを実行するように構成された複数の訓練用荷役デバイス上に取り付けられた位置センサを使用して記録された車輪速度データから決定されたクリープデータに基づいて訓練される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられた公称トルクを表すトルクデータを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪にかかる公称垂直荷重を表す荷重データを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記訓練されたモデルは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクトルネットワーク、又はパラメータ化されたモデルのうちの少なくとも1つを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練されたモデルは、前記パラメータ化されたモデルを備え、前記クリープ値を決定することは、
前記パラメータ化されたモデルを訓練することから決定されたタイヤ係数値を取得することと、
前記タイヤ係数値を、前記取得された車輪状態データと共に前記パラメータ化されたモデルに入力することと、
を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータ化されたモデルは、次式によって表現可能であり、
【数1】
ここで、σは前記クリープ値であり、αは、前記荷役デバイスの車輪の前記タイヤ係数値であり、Tは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられる公称トルクであり、rは、前記車輪の半径であり、Nは、前記車輪にかかる公称垂直荷重である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの軌道段階に対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記軌道段階は、加速段階、減速段階、及び巡航段階のうちの1つを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの積載モードに対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記積載モードは、部分荷重モード、完全荷重モード、及び無荷重モードのうちの1つを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の訓練されたモデルは、それぞれのモデルを訓練することから決定されたそれぞれのタイヤ係数値を有する同じパラメータ化されたモデルを備える、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記保管システムは、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている前記荷役デバイスと、
を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記荷役デバイス上に取り付けられており、前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を精緻化することを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記運動学的データに基づいて、前記荷役デバイスのためのターゲット位置までの軌道を生成することを更に備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記車輪についての総トルク要求を決定するために、前記運動学的データに基づいて、前記車輪に対するトルク要求を表すフィードフォワード信号を補償することを更に備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を行うように適応/構成されたプロセッサを備えるデータ処理装置。
【請求項19】
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項20】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
保管システムにおける荷役デバイスのためのポジショニングシステムであって、
前記荷役デバイスの複数の車輪のための1つ又は複数のエンコーダと、
前記荷役デバイスの所与の車輪にかかる所与の垂直荷重に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定するための訓練されたモデルを記憶する記憶装置と、
処理ユニットと、
を備え、前記処理ユニットは、
前記荷役デバイスの車輪の垂直荷重値を取得することと、
前記訓練されたモデルの少なくとも1つの係数値を取得することと、ここで、前記係数値は、複数の訓練用荷役デバイスの記録されたクリープデータに基づいて前記訓練されたモデルを訓練することによって取得されており、
前記記憶装置に記憶された前記訓練されたモデルを使用して、前記垂直荷重値及び前記少なくとも1つの係数値に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値と、前記1つ又は複数のエンコーダから取得されたエンコーダデータとに基づいて、前記荷役デバイスの運動学的状態を決定することと、
を行う、ポジショニングシステム。
【請求項22】
前記運動学的状態は、前記保管システムに対する前記荷役デバイスの位置を含む、請求項21に記載のポジショニングシステム。
【請求項23】
前記1つ又は複数のエンコーダは、前記荷役デバイス内に備えられている、請求項21又は22に記載のポジショニングシステム。
【請求項24】
前記処理ユニット及び前記記憶装置は、前記荷役デバイス内に位置付けられている、請求項21~23のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
【請求項25】
前記ポジショニングシステムは、前記処理ユニット及び前記記憶装置を備えるサーバを備え、前記サーバは、前記エンコーダデータを受信し、前記決定されたクリープ値及び前記荷役デバイスの決定された位置の一方又は両方を送るために、前記荷役デバイスと通信するように構成されている、請求項21~23のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
【請求項26】
前記荷役デバイスのそれぞれの車輪のための1つ又は複数の力センサを備え、前記処理ユニットは、前記1つ又は複数の力センサのうちの対応する力センサから前記荷役デバイスの前記車輪の前記垂直荷重値を取得するように構成されている、請求項21~25のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
【請求項27】
請求項21~26のいずれか一項に記載のポジショニングシステムを備える保管システムであって、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている荷役デバイスと、
を備える、保管システム。
【請求項28】
少なくとも1つの前記荷役デバイスは、1つのグリッド空間を占有する所与の荷役デバイスが、隣接するグリッド空間を占有又は横断する別の荷役デバイスを妨害しないように、前記保管システム内の単一のグリッド空間のみを占有するフットプリントを有する、請求項27に記載の保管システム。
【請求項29】
前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグを備え、前記処理ユニットは、前記荷役デバイス上に取り付けられており、かつ前記1つ又は複数のAIDCタグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定するように構成されている、請求項27又は28に記載の保管システム。
【請求項30】
前記荷役デバイスの前記車輪は、それぞれの車輪ハブモータを備える、請求項27~29のいずれか一項に記載の保管システム。
【請求項31】
保管システムにおける荷役デバイスであって、前記荷役デバイスは、トラック上でX方向及び/又はY方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されており、
複数の車輪と、
前記荷役デバイスのスリップを管理するように配置されたスリップ制御マネジャと、
を備える、荷役デバイス。
【請求項32】
前記スリップ制御マネジャは、前記複数の車輪のうちの各々の回転スピードを前記荷役デバイスの運動学的状態と比較することによって前記スリップを管理するように配置されている、請求項31に記載の荷役デバイス。
【請求項33】
前記スリップ制御マネジャは、
前記複数の車輪のうちの車輪についてスリップ事象が発生したかどうかを決定することと、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすことと、
を行うように配置されている、請求項32に記載の荷役デバイス。
【請求項34】
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすように更に配置されている、
請求項33に記載の荷役デバイス。
【請求項35】
スリップしていると決定された前記車輪と、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の前記車輪とに適用されるトルク要求の前記低減は同じである、請求項34に記載の荷役デバイス。
【請求項36】
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と異なる仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の増加を引き起こすように更に配置されている、
請求項34又は35に記載の荷役デバイス。
【請求項37】
異なる仮想車軸上の前記車輪に適用されるトルク要求の増加は、スリップしていると決定された前記車輪から除去されたトルク要求に比例する、請求項36に記載の荷役デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、容器又はコンテナのスタックがグリッドフレームワーク構造内に配置された保管又はフルフィルメントシステムの分野に関し、より具体的には、保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
オンライン食料雑貨店及びスーパーマーケットなどの複数の製品ラインを販売するオンライン小売業は、何万又は何十万もの異なる製品ラインを保管することができるシステムを必要とする。そのような場合に単一製品のスタックを使用すると、必要なスタックすべてを収容するために広大な床面積が必要となるので、実用的でない可能性がある。更に、生鮮食品又は注文頻度の低い物品などの一部のアイテムを少量保管することが望ましいこともあり、単一製品のスタックが非効率的な解決手段となる。
【0003】
参照によりその内容が本明細書に組み込まれる国際特許出願WO98/049075A(Autostore)は、コンテナの複数製品のスタックが、フレーム構造内に配置されているシステムを説明している。
【0004】
PCT公開WO2015/185628A(Ocado)は、コンテナのスタックがグリッドフレームワーク構造内に配置されている、更なる既知の保管及びフルフィルメントシステムを説明している。コンテナは、グリッドフレームワーク構造の最上部に位置するトラック上で動作する、別名「ボット」として知られる1つ又は複数の荷役デバイスによってアクセスされる。このタイプのシステムは、添付図面の
図1~
図3に概略的に例示されている。
【0005】
図1及び
図2に示すように、「容器」又は「トート」としても知られている積み重ね可能コンテナ10が、互いの上に積み重ねられてスタック12を形成する。スタック12は、例えば、倉庫又は製造環境における、グリッドフレームワーク構造14に配置される。グリッドフレームワーク構造14は、複数の保管列又はグリッド列で構成されている。グリッドフレームワーク構造の各グリッドは、コンテナのスタックを保管するための少なくとも1つのグリッド列を有する。
図1は、グリッドフレームワーク構造14の概略的な斜視図であり、
図2は、フレームワーク構造14内に配置された容器10のスタック12を示す概略的な上面図である。各容器10は、典型的には、複数の製品アイテム(図示せず)を保持している。容器10内の製品アイテムは、用途に応じて、同一の製品タイプ又は異なる製品タイプであってもよい。
【0006】
グリッドフレームワーク構造14は、水平部材18、20を支持する複数の直立部材16を備える。平行な水平グリッド部材18の第1のセットが、グリッドパターンにおいて平行な水平部材20の第2のセットに対して直角に配置されて、直立部材16によって支持される水平グリッド構造15を形成する。部材16、18、20は、典型的には金属から製造されている。容器10はグリッドフレームワーク構造14の部材16、18、20間に積み重ねられ、それにより、グリッドフレームワーク構造14は、容器10のスタック12の水平移動を防ぎ、容器10の垂直移動をガイドする。
【0007】
グリッドフレームワーク構造14の最上レベルは、スタック12の最上部にわたってグリッドパターンで配置されたレール22を含むグリッド又はグリッド構造15を備える。
図3を参照すると、レール又はトラック22は、複数の荷役デバイス30をガイドする。平行レール22の第1のセット22aが、グリッドフレームワーク構造14の最上部を横切る第1の方向(例えば、X方向)へのロボット式荷役デバイス30の移動をガイドする。第1のセット22aに対して直角に配置された平行レール22の第2のセット22bが、第1の方向に対して直角の第2の方向(例えば、Y方向)への荷役デバイス30の移動をガイドする。このようにして、レール22は、ロボット式荷役デバイス30が水平X-Y平面の2次元で横方向に移動することを可能にする。荷役デバイス30は、いずれのスタック12より上の位置につくことができる。
【0008】
図4、
図5A、及び
図5Bに示す既知の形態の荷役デバイス30は、参照により本明細書に組み込まれるPCT特許公開第WO2015/019055号(Ocado)に記載されており、各荷役デバイス30は、グリッドフレームワーク構造14の単一のグリッド空間17をカバーする。この配置により、荷役ハンドラがより高密度になり、したがって所与のサイズのシステムのための処理量がより高くなることが可能になる。
【0009】
荷役デバイス30は、フレーム構造14のレール22上を進むように配置された車両32を備える。車両32の前方にある一対の車輪34と車両32の後方にある一対の車輪34とからなる第1のセットの車輪34は、レール22の第1のセット22aの2つの隣接するレールと係合するよう配置される。同様に、車両32の各側方にある一対の車輪36からなる第2のセットの車輪36は、レール22の第2のセット22bの2つの隣接するレールと係合するよう配置される。車輪34、36の各セットは、第1のセットの車輪34又は第2のセットの車輪36のいずれかが、それぞれのセットのレール22a、22bと常に係合しているように、持ち上げられたり下降されたりすることができる。例えば、第1のセットの車輪34が第1のセットのレール22aと係合し、第2のセットの車輪36がレール22から離れて持ち上げられているとき、第1のセットの車輪34は、車両32内に収められている駆動機構(図示せず)によって駆動されて、荷役デバイス30をX方向に移動させることができる。Y方向への移動を達成するためには、第1のセットの車輪34がレール22から離れて持ち上げられ、第2のセットの車輪36がレール22の第2のセット22bと係合するように下降される。次いで駆動機構が第2のセットの車輪36を駆動するために使用されて、荷役デバイス30をY方向に移動させることができる。
【0010】
荷役デバイス30には、上方から保管コンテナを持ち上げるための持ち上げデバイス、例えばクレーン機構が装備されている。持ち上げデバイスは、スプール又はリール(図示せず)に巻かれたウインチテザー又はケーブル38と、グリッパデバイス39とを備える。
図4に示す持ち上げデバイスは、垂直方向に延びる4本の持ち上げテザー38のセットを備える。テザー38は、保管コンテナ10に解放可能に接続するために、グリッパデバイス39、例えば持ち上げフレームのそれぞれの4つの角部に、又はその近くに接続される。例えば、それぞれのテザー38は、持ち上げフレームの4つの角部の各々に、又はその近くに配置される。グリッパデバイス39は、保管コンテナ10の最上部を解放可能に把持して、それを
図1及び
図2に示すタイプの保管システム内のコンテナのスタックから持ち上げるように構成される。例えば、持ち上げフレーム39は、容器10の上面を形成するリムの対応する穴(図示せず)と嵌合するピン(図示せず)と、容器10を把持するためにリムと係合可能な摺動クリップ(図示せず)とを含み得る。持ち上げフレーム39内に収められており、ケーブル38自体又は別個の制御ケーブル(図示せず)を介して運ばれる信号によって電力供給及び制御される好適な駆動機構によって、クリップは容器10と係合するように駆動される。
【0011】
スタック12の最上部から容器10を取り外すために、荷役デバイス30は最初に、グリッパデバイス39をスタック12の上方に位置付けるようにX及びY方向に移動される。次いでグリッパデバイス39は、
図4及び
図5Bに示すように、Z方向に垂直に下降されて、スタック12の最上部にある容器10と係合する。グリッパデバイス39は、容器10を把持し、次いで、容器10が取り付けられた状態でケーブル38によって上方に引っ張られる。その垂直進行の最上部で、容器10は、車両本体32内に収容されてレール22の上方に保持される。このようにして、荷役デバイス30は、容器10を共に運搬してX-Y平面の異なる位置に移動されて、容器10を別のロケーションに搬送することができる。ターゲットロケーション(例えば、別のスタック12、保管システム内のアクセスポイント、又はコンベヤベルト)に到達すると、容器又はコンテナ10は、コンテナ受容部分から下降され、グラバデバイス39から解放され得る。ケーブル38は、荷役デバイス30が、例えば床面高さを含むスタック12の任意の高さから容器を取り出して置くことを可能にするのに十分な長さである。
【0012】
図3に示すように、複数の同一の荷役デバイス30が設けられ、それにより、各荷役デバイス30が、同時に動作してシステムの処理量を増加させることができる。
図4に例示するシステムは、容器10がそこでシステムの中又は外に移送され得る、ポートとして知られる特定のロケーションを含み得る。追加のコンベヤシステム(図示せず)が各ポートに関連付けられており、それにより、荷役デバイス30によってポートに搬送された容器10は、コンベヤシステムによって別のロケーション、例えばピッキングステーション(図示せず)に移送され得る。同様に、容器10は、コンベヤシステムによって、外部のロケーションからポートに、例えば容器充填ステーション(図示せず)に移動され、荷役デバイス30によってスタック12に搬送されて、システム内の在庫を補充することができる。
【0013】
各荷役デバイス30は、一度に1つの容器10を持ち上げて移動させることができる。荷役デバイス30は、その下部にコンテナ受容キャビティ又は凹部40を有する。凹部40は、
図5A及び
図5Bに示すように、持ち上げ機構によって持ち上げられたときにコンテナ10を収容するようなサイズにされている。凹部にあるとき、コンテナ10は、下にあるレール22から離れて持ち上げられており、それにより、車両32は、異なるグリッドロケーションまで横方向に移動することができる。
【0014】
スタック12の最上部に位置していない容器10b(「ターゲット容器」)を取り出す必要がある場合、ターゲット容器10bへのアクセスを可能にするために、上にある容器10a(「非ターゲット容器」)を最初に移動させなければならない。これは、以下「掘り出し(digging)」と呼ばれる動作によって達成される。
図3を参照すると、掘り出し動作中、荷役デバイス30のうちの1つは、ターゲット容器10bを含んでいるスタック12から各非ターゲット容器10aを順次持ち上げ、それを別のスタック12内の空き位置に置く。次いで、ターゲット容器10bは、荷役デバイス30によってアクセスされ、更なる搬送のためにポートに移動され得る。
【0015】
設けられた荷役デバイス30の各々は、中央コンピュータの制御下で遠隔動作可能である。またシステム内の個々の各容器10も追跡され、それにより、適切な容器10を、必要に応じて、取り出し、搬送、および置き換えすることができる。例えば、掘り出し動作中に、各非ターゲット容器のロケーションがログ記録され、それにより、非ターゲット容器10aを追跡することができる。
【0016】
マスタコントローラから、例えば1つ又は複数の基地局を介し、グリッド構造上で動作する1つ又は複数の荷役デバイスへの通信インフラストラクチャを提供するために、ワイヤレス通信及びネットワークが使用され得る。マスタコントローラからの命令を受信することに応答して、荷役デバイス内のコントローラは、荷役デバイスの移動を制御するために様々な駆動機構を制御するように構成される。例えば、荷役デバイスは、グリッド構造上の特定のロケーションにあるターゲット保管列からコンテナを取り出すように命令され得る。命令は、グリッド構造15のX-Y平面での様々な移動を含むことができる。前述したように、ターゲット保管列にくると、持ち上げ機構は、保管コンテナ10を把持して持ち上げるように動作することができる。コンテナ10は、荷役デバイス30のコンテナ受容空間40に収容されると、その後、グリッド構造15上の別のロケーション、例えば「ドロップオフポート」に搬送される。ドロップオフポートでは、コンテナ10は、保管コンテナ内の任意のアイテムの取り出しを可能にする好適なピックステーションまで下降される。グリッド構造15上の荷役デバイス30の移動は、荷役デバイス30が、通常はグリッド構造15の周囲に位置する充電ステーションに移動するように命令されることも伴うことができる。
【0017】
グリッド構造15上で荷役デバイス30を操縦するために、荷役デバイス30の各々には、車輪34、36を駆動するためのモータが装備されている。車輪34、36は、車輪に接続された1つ又は複数のベルトを介して駆動されてもよいし、又は車輪に一体化されたモータによって個々に駆動されてもよい。単一セルの荷役デバイスの場合(荷役デバイス30のフットプリントが単一のグリッドセル17を占有する場合)、車両本体内の空間の利用可能性が限られていることに起因して、車輪を駆動するためのモータは車輪に一体化され得る。例えば、単一セルの荷役デバイスの車輪は、それぞれのハブモータによって駆動される。各ハブモータは、インナーステータを形成するコイルを備える車輪ハブの周りを回転するように配置された複数の永久磁石を有するアウターロータを備える。
【0018】
図1~
図4を参照して説明したシステムは、多くの利点を有し、広範囲の保管及び取り出し動作に好適である。特に、製品の非常に高密度な保管を可能にし、容器10に広範囲の異なるアイテムを保管する非常に経済的な方法を提供するとともに、ピッキングのために必要なときにすべての容器10へのかなり経済的なアクセスも可能にする。
【0019】
しかしながら、本開示の目的は、保管システム内で遠隔で動作される荷役デバイスの正しいロケーションを確実に決定するための方法及びシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0020】
保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法が提供され、本方法は、
荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データを、車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得することと、
車輪状態データに基づいて、及び訓練されたモデルを使用して、荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
クリープ値に基づいて、荷役デバイスの運動学的状態を決定することと、
荷役デバイスの運動学的状態を表す運動学的データを出力することと、を備える。
【0021】
本方法を行うように構成されたプロセッサを備えるデータ処理装置も提供される。またプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本方法を実施させる命令を備えるコンピュータプログラムも提供される。同様に、コンピュータによって実行されると、コンピュータに本方法を実施させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0022】
更に保管システムにおける荷役デバイスのためのポジショニングシステムが提供され、本ポジショニングシステムは、
荷役デバイスの複数の車輪のための1つ又は複数のエンコーダと、
荷役デバイスの所与の車輪にかかる所与の垂直荷重に少なくとも基づいて荷役デバイスのクリープ値を決定するための訓練されたモデルを記憶するための記憶装置と、
処理ユニットと、を備え、処理ユニットは、
荷役デバイスの車輪の垂直荷重値を取得することと、
訓練されたモデルの少なくとも1つの係数値を取得することと、ここで、係数値は、複数の訓練用荷役デバイスの記録されたクリープデータに基づいて訓練されたモデルを訓練することによって取得されており、
記憶装置に記憶された訓練されたモデルを使用して、垂直荷重値及び少なくとも1つの係数値に少なくとも基づいて荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
クリープ値と、1つ又は複数のエンコーダから取得されたエンコーダデータとに基づいて、荷役デバイスの運動学的状態を決定することと、を行う。
【0023】
保管システムにおける荷役デバイスも提供され、本荷役デバイスは、トラック上でX方向及び/又はY方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されており、本荷役デバイスは、
複数の車輪と、
荷役デバイスのスリップを管理するように配置されたスリップ制御マネジャと、を備える。
【0024】
概していえば、本説明は、牽引車輪機構において既に利用可能なエンコーダカウントを活用し、任意選択で、グリッド上に位置付けされたグリッドセンサの起動も活用することによって、グリッド型保管システム上のボットの相対位置を推定するためのシステム及び方法を紹介する。
【0025】
次に実施形態について、添付図面を参照して単に例として説明し、同様の参照番号は、同じ又は対応する部分を指定している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】既知のシステムに係るグリッドフレームワーク構造の概略図である。
【
図2】
図1のフレームワーク構造内に配置された容器のスタックを示す上面図の概略図である。
【
図3】グリッドフレームワーク構造上で動作する荷役デバイスを示す既知の保管システムの概略図である。
【
図4】上方からコンテナを把持する持ち上げデバイスを示す荷役デバイスの概略斜視図である。
【
図5A-5B】
図4の荷役デバイスの概略的な斜視破断図であり、荷役デバイスのコンテナ受容空間と、使用中にコンテナをどのように収容するかとを示す。
【
図6】既知の荷役デバイスの概略斜視図であり、荷役デバイス上に取り付けられた「第5の」車輪の形態のX方向及びY方向の位置センサを示す。
【
図7】一実施形態に係る、グリッド構造の一部分上にある荷役デバイスの概略斜視図である。
【
図8A-8B】一実施形態に係る、回転中心軸を中心として荷役デバイスの車輪を駆動するために使用可能なハブモータの分解図である。
【
図9】一実施形態に係る車輪アセンブリ制御及びインターフェースアーキテクチャの概略図である。
【
図10】一実施形態に係る、ネットワークを介した荷役デバイスとマスタコントローラとの間の通信の概略図である。
【
図11】一実施形態に係る運動制御システムの概略ブロック図である。
【
図12】一実施形態に係る位置コントローラの入力及び出力を示す概略ブロック図である。
【
図13】一実施形態に係る荷役デバイスのためのポジショニングシステムの概略ブロック図を示す。
【
図14】一実施形態に係る、保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~
図3に示すタイプの保管システムでは、グリッド構造15上で動作する所与の荷役デバイス30の正確な位置を決定することが有用である。各荷役デバイス30は、グリッド構造上の1つのロケーションから別のロケーションに所定の経路に沿って移動するために、例えば、運動制御プロファイルの形態の制御信号が送られる。例えば、所与の荷役デバイス30は、特定のロケーションにあるコンテナのスタックからターゲットコンテナを持ち上げるために、グリッド構造15内の特定のロケーションに移動するように命令され得る。複数のそのようなデバイス30がグリッド構造15上のそれぞれの軌道に沿って移動するので、例えばグリッド構造15に対する所与の各荷役デバイス30の正確な位置を知り、所定の軌道を対応する荷役デバイス30の「実際の」位置と突き合せてリアルタイムで監視することができるようにすることは有用である。例えば、1つ又は複数の軌道が調整されてもよいし、及び/又は対応する軌道を辿るようにデバイス30に送るための制御信号が調整されてもよく、それにより、デバイス30は、十分正確にターゲットロケーションに到達し、及び/又は他のデバイス30がそれらのそれぞれの軌道を辿ることを防止する。
【0028】
図6は、グリッド構造15に対する荷役デバイスの位置を測定するための1つ又は複数の位置センサ98a、98bを有する荷役デバイス30の既知の実施形態を示す。この特定の実施形態では、位置センサ98a、bの各々は、いわゆる「第5の」車輪を備え、これは、グリッド構造上の第1の方向及び第2の方向における荷役デバイスの位置をそれぞれ監視するための第1及び第2のセットの車輪の各々の中に追加の第5の車輪が存在するという意味である。
【0029】
図6に示すように、第1の「第5の」車輪98aは、第1のセットの車輪34のうちの1つに隣接して取り付けられ、第2の「第5の」車輪98bは、第2のセットの車輪36のうちの1つに隣接して取り付けられている。第1の位置センサに対応する第1の「第5の」車輪98aは、荷役デバイス30が第1の方向に進んでいるときにレール(又は「トラック」)22と係合するように構成されており、それにより、第1の「第5の」車輪の回転が、時間に対する荷役デバイス30の位置及び進行方向の指標となる。同様に、第2の位置センサに対応する第2の「第5の」車輪98bは、荷役デバイス30が第2の方向に進んでいるときにトラック22と係合するように構成されており、それにより、第2の「第5の」車輪の回転が、時間に対する荷役デバイス30の位置及び第2の方向への進行方向の指標となる。第1の方向及び第2の方向はそれぞれ、説明したように、トラック22に沿ったX方向及びY方向とすることができる。
【0030】
図6の既知の実施形態では、1つ又は複数の位置センサ98a、bの各々は、それぞれの「第5の」車輪が回転したときにパルスを生成する回転電気機械デバイスを備えるインクリメンタルエンコーダを備える。例えば、「第5の」車輪の所定量の角回転についてパルスが生成される。したがって、パルスは、「第5の」車輪98a、98bの位置及び回転方向を示し、これは、グリッド構造15に対する荷役デバイス30の変位に変換され得る。「第5の」車輪は、アーム上に取り付けられており、下方に付勢されてグリッド構造15のトラック22と係合する。
【0031】
1つ又は複数の位置センサ98a、98bを使用して、荷役デバイスの位置を独立して監視することには、いくつかの欠点がある。例えば、固有の部品コストがあり、これは、グリッド構造15上の少なくとも1つの方向における荷役デバイスの運動学的基準の損失を引き起こす、センサ98a、98bのうちの少なくとも一方の故障によって悪化する。また、例えば、トラック22の障害又は不完全性によって引き起こされる、センサ98a、98bからの測定値の精度に関する問題もあり得る。
【0032】
図7は、本発明のポジショニングシステムを組み込んだ荷役デバイスの実施例を示しており、いわゆる「第5の」車輪は必要ないため存在しない。
図3~
図6を参照して説明した例示的な荷役デバイス30にしたがって他の特徴が組み込まれており、ここで、それらのそれぞれの参照番号は100ずつ増分されており、対応する説明が適用される。例えば、本実施例の荷役デバイス130は、
図1及び
図3を参照して説明したタイプの保管システム内のコンテナのスタックからコンテナを持ち上げるための持ち上げ機構(図示せず)が装備された車両本体132を含む。
【0033】
車両本体132は、上部及び下部を備える。下部は、そのような保管システムのグリッドフレームワーク115構造上を走行する2セットの車輪134、136を備える車輪アセンブリを備える。説明のために、2セットの車輪は、第1のセットの車輪134と第2のセットの車輪136として区別されている。第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136は、荷役デバイス130の周囲に配置される。本実施例の車輪は、車両本体132の外側に配置されているが、他の実施例では、車両本体132内に収められていてもよい。
図7に描かれた特定の実施例は、車両本体の両側に取り付けられた複数の車輪対を示しているが、本発明は、車両本体の両側の車輪対に取り付けられた荷役デバイスに限定されず、例えば、車輪対ではなく、車両本体132の両側に取り付けられた、例えば互いに対角線上に対向して配置された少なくとも1つの車輪によって、荷役デバイスの安定性を達成することができる。したがって、第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136の各々は、車両本体の両側に取り付けられた少なくとも1つの車輪を備える。それらは、この代替の配置では、互いに対角線上に対向している。
【0034】
図7の実施例では、荷役デバイスは、例えば、WO2015/019055(Ocado Innovation Limited)に記載されているように、車両本体132内に配置されたコンテナ受容空間を有する。しかしながら、他の実施例では、車両本体132は、例えば、WO2019/238702号(Autostore Technology AS)に教示されているようなカンチレバーを備え、この場合、コンテナ受容空間は、荷役デバイス130のカンチレバーの下方に位置する。このような実施形態では、グリッパデバイスは、カンチレバーによって吊り上げられる。グリッパデバイスは、コンテナに係合し、それをスタックからカンチレバーの下方のコンテナ受容空間へと持ち上げることができる。
【0035】
車両本体132の上部は、
図7に示す荷役デバイス130の嵩高な構成要素の大部分を収め得る。典型的には、車両の上部は、持ち上げ機構を駆動するための駆動機構と、該駆動機構及び持ち上げ機構に電力を供給するための搭載型再充電可能電源とを収めている。再充電可能電源は、これに限定されないがリチウムバッテリ又はキャパシタなどの任意の適切なバッテリであり得る。
【0036】
図7に示す本実施例の荷役デバイス130は、グリッド構造115の単一のグリッドセルを占有するフットプリント(設置面積)を有する。したがって、複数のそのような荷役デバイス130がグリッド構造115上で動作する場合、例えば
図10に示す実施例において、1つのグリッド空間を占有する所与の荷役デバイスは、隣接するグリッド空間を占有又は横断する別の荷役デバイスを妨害しない。
【0037】
グリッド構造115上で直交方向を変更するために、車輪セットのうちの少なくとも1つは、X方向及びY方向の車輪セットのうちのどちらがトラックと係合するかを変更するために垂直に移動するように構成される。例えば、X方向車輪セットが固定され、Y方向車輪セットは、X方向車輪セットをトラックと接触させるために持ち上げられるか、又はX方向車輪セットをトラックから持ち上げるために下ろされるように構成される。代替として、Y方向車輪セットが固定され、X方向車輪セットがどの車輪セットがトラックと係合するかを変更するために上下に移動する。
【0038】
いくつかの実施例では、車両本体132に取り付けられた第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136の各々は、垂直に移動してそれらのそれぞれのトラック又はレールから離れて持ち上がるように配置される。例えば、グリッド構造115上で方向を(例えば、X方向に)変更するために、第1のセットの車輪134は、第1のセットのグリッド部材又はトラック122aから離れて持ち上げられ、第2のセットの車輪136は、第2のセットのグリッド部材又はトラック122bと係合する。モータなどの駆動機構(図示せず)は、第1のセットの車輪134又は第2のセットの車輪136のいずれかをグリッド構造115上でX方向又はY方向に駆動する。
図7の特定の実施例では、第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136の各車輪は、グリッド構造115上の荷役デバイス130の四輪駆動能力を提供するために、ハブモータによって個々に駆動される。換言すれば、第1及び第2のセットの車輪のすべての車輪は、個々のハブモータによって駆動される。これにより、セット134、136の車輪のいずれか1つがレール又はトラック上でスリップした場合に、荷役デバイス130がグリッド構造115上のレール又はトラック122a、122bに沿って進むことが可能になる。
【0039】
より詳細には、
図8A及び
図8Bに示すハブモータ160は、アウターロータ162を備える。アウターロータ162は、グリッド構造(例えば、トラック)と係合するように配置された外面を有する。リング形状の永久磁石164を備える内面は、ハブモータ160のステータを備える車輪ハブ(又は「内側ハブ」166)の周りを回転するように配置される。典型的には、ステータは、ハブモータのコイル(「巻線」としても知られている)を備える。第1又は第2のセットの車輪の各車輪150を駆動し、したがって、グリッド構造上で荷役デバイスを移動させるために、ハブモータ160のアウターロータ162は、それぞれの車輪の中心軸に対応する回転軸A-Aを中心として回転するように配置される。ロータ162の外面は、トラック又はレールと係合するためのタイヤ168を備え得る。
図8Bに示す実施例では、アウターロータ162は、軸受(図示せず)上でその回転軸を中心として回転し、その内面に接着された永久磁石164を有する。アウターロータ162が車輪ハブ166に対して回転することが可能になるように、ハブモータのステータを備える内側ハブ166を車両本体132に結合することによって、車輪150の各々は、荷役デバイス130の車両本体132に結合される。このタイプのハブモータは、典型的には、アウターロータ型ハブモータとして知られている。
【0040】
インナーロータ型モータ又は軸方向磁束モータなどの他のタイプのハブモータが、車輪150のためのハブモータ160として使用可能である。インナーロータ型モータは、その外側シェルにステータ巻線を有し、ロータは、ステータの内側にあり、シャフトに接続する。スポークが、典型的には車輪をロータシャフトに接続する。内側回転モータは、典型的には、外側回転モータよりも、磁石の体積が小さいが、銅のステータ巻線の体積が大きい。対照的に、軸方向磁束モータは、典型的には、非半径方向配置で磁石のセット間に挟まれたステータ巻線を有し、ロータとステータとの間の間隙、したがって、2つの間の磁束の方向は、半径方向ではなくむしろ、回転軸と平行に整列される。
【0041】
前述の実施例における各車輪150の駆動機構はハブモータを備えるが、他の実施例では、車輪を駆動するための他の手段が適用可能である。例えば、荷役デバイスの両側の前後にある一対の車輪が、好適なプーリー又はギア機構に接続された1つ又は複数のモータによって駆動されてもよい。他の実施例では、車輪150の駆動機構は、ベルト駆動機構を備える。
【0042】
図9に示す車輪アセンブリのブロック図において、第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136の各車輪対は、制御モジュール(又は「コントローラ」170)によって、それらのそれぞれの回転軸を中心として回転するように命令される。この実施例では、制御モジュール170は、1つ又は複数のプロセッサと、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサに、第1のセットの車輪又は第2のセットの車輪に、それらのそれぞれの回転軸を中心として回転するように命令させる命令を記憶するメモリと、を有するコンピュータシステムを備える。メモリは、当技術分野で一般的に知られている任意の記憶デバイス、例えば、RAM、コンピュータ可読媒体、磁気記憶媒体、光学記憶媒体、又はデータを記憶するために使用することができる別の電子記憶媒体であり得る。1つ又は複数の処理デバイスは、当該技術分野で既知の任意の処理デバイス、例えばマイクロプロセッサであり得る。第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136の各車輪の駆動機構及び車輪ポジショニングは、任意の好適な通信インターフェースユニット172、例えば、当技術分野で既知の任意のワイヤード又はワイヤレス通信インターフェースを介して、制御モジュール170に通信可能に結合される。
【0043】
コントローラ170は、制御命令を駆動機構に送り、駆動機構は、制御命令を、グリッド構造115のトラック122a、122b上の荷役デバイス130の制御された移動を容易にする、車輪モータへの好適な駆動出力信号に変換する。制御信号は、車輪モータに直接提供されてもよいし、又は車輪モータに送出される電力を変化させることによって車輪モータのスピード及び方向を制御する中間モータドライブに提供されてもよい。
【0044】
駆動機構が荷役デバイス130をその現在位置から新しい位置に移動させるべき、又はその速度を変更すべきとコントローラ170が決定すると、コントローラ170は、軌道(別名「運動制御プロファイル」として知られる)を生成し、これは駆動機構によって好適な制御信号に変換される。新しい位置は、例えば、ターゲット位置又はコマンドされた停止位置であり得る。運動制御プロファイルは、荷役デバイス130がその現在の状態からターゲット位置まで移動するときのその経時的な速度、加速度、ジャーク、及び/又は位置などの荷役デバイス130の運動学的状態を定義する。ジャーク(又は「ジョルト」)は、荷役デバイスの加速度が時間に対して変化する比率、すなわち加速度の一次時間導関数である。現在位置は、グリッド構造115上の停止又は休止からであってよく、この場合、荷役デバイス130の初期速度及び加速度の両方が、実質的にゼロである。代替として、荷役デバイス130は、現在位置で運動中であってもよく、この場合、荷役デバイス130は、ゼロよりも大きい初期速度を有する。
【0045】
実施例では、ターゲット位置は、例えば、保管コンテナを取り出すか又は置くための、グリッド構造115上の所望の保管ロケーション又はグリッドセルである。他の実施例では、ターゲット位置は、例えば、荷役デバイス130が再充電可能電源を再充電するように命令されたときの、充電地点の近くのグリッド構造115上の位置又はグリッドセルである。典型的には、そのような充電地点は、グリッド構造115の周囲に位置する。
【0046】
運動制御プロファイルが生成されると、コントローラは、運動制御プロファイルを、運動制御プロファイルによって定義された軌道を通って荷役デバイスを移動させるための適切な制御信号に変換する。運動制御プロファイルの複数のセグメント(又は「ステージ」)が、例えば、1つ又は複数の所定の制約に基づいて計算され得る。そのような制約は、例えば、駆動機構の機械的限界に対応し得る。1つ又は複数の所定の制約は、これらに限定されないが、最大速度、最大加速度、及び最大減速度を含む。例えば、荷役デバイス130は、最大4メートル毎秒(m/s)のスピードで進み、2メートル毎秒毎秒(m/s2)で加速することが予想される。これらの制約及びコマンドされたターゲット位置が与えられると、コントローラは、所望の動き(move)を実施するための運動制御プロファイルを計算する。所望の動きは、例えば所望の保管列に対応するターゲットロケーションに荷役デバイスが到達するための、例えば混合された又は順次実行される、グリッド構造115上のX方向及びY方向の複数の位置を含み得る。複数の位置の各々は、例えば、グリッド構造上のX方向又はY方向のいずれかへの単一の動きを備える。本明細書では、「コマンドされた速度」及び「速度制約」という用語は、「コマンドされた加速度」及び「加速度制約」という用語と同様に、交換可能に使用される。
【0047】
本説明におけるいわゆる「ポイントツーポイント」移動は、開始位置からターゲット位置への移動を指す。最終加速度及び速度は、荷役デバイスがプログラムされた目的地又はターゲット位置に到着したときにゼロになると考えられる。
【0048】
実施例では、コントローラ170への入力は、マスタコントローラ174を介して受信される。コントローラは、
図10に示すように、ネットワーク176を介してマスタコントローラ174に通信可能にリンクされ得る。
図10の実施例におけるコントローラは、荷役デバイス130に組み込まれている。ネットワーク176は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、インターネット、又はイントラネットを含む様々なタイプの任意のものである。1つ又は複数の基地局(図示せず)が、入力情報をコントローラに送信し得る。本発明の特定の実施形態では、入力は、1つ又は複数の制約及びグリッド構造上のコマンドされた位置又はターゲット位置を含むことができる。コントローラへの複数の入力の送信は、独立して行われ得る。例えば、マスタコントローラ174は、コマンドされた位置及び1つ又は複数の制約を別個に、例えば、荷役デバイス130のコントローラ内に格納された軌道生成器に通信し得る。
【0049】
運動制御プロファイルは、例えば、受信された1つ又は複数の制約及びグリッド構造上の所望の位置に対応するコマンドされた位置に基づいて、(例えば、コントローラによって自動的に)生成又は計算される。実施例では、運動制御プロファイル(又は「軌道」)は、位置、スピード、加速度、及び/又はジャーク信号の集合を含む。軌道は、例えば、コマンドされた位置が達成され、残りの信号(スピード、加速度、ジャーク)がゼロになると、終了する(又はその終点に到達する)。
【0050】
図11は、一例に係る位置コントローラの入力及び出力を例示するブロック図を示す。軌道生成によって生成された運動制御プロファイルデータは、位置コントローラ184に通信され、そこで、車輪アセンブリの車輪を駆動するための制御信号に変換される。運動制御プロファイルにしたがって、位置コントローラ184は、駆動機構への電力を変化させて、グリッド構造115に対する荷役デバイス130のスピードを変化させる。運動制御生成器のように、位置コントローラ184は、コントローラ170と共に存在する機能構成要素であってもよいし、又は代替として、それ自体の制御システムを有する運動制御生成器182とは別個の構成要素であってもよい。例えば、車輪アセンブリの車輪対は、ローカルコントローラに接続され、運動制御生成器からの運動制御信号を変換するように構成され得る。運動制御信号の変換は、これに限定されないが、運動制御データを車輪のそれぞれの駆動機構又はモータを駆動するための適切なトルク制御信号にコンバートすることを含む。
【0051】
上述のように、運動制御プロファイルは、ある時間期間にわたるグリッド構造115に対する荷役デバイス130のポイントツーポイントの動きの軌道を、例えば、位置基準、速度基準、加速度基準、及びジャーク基準のうちの1つ又は複数に関して定義する。これらの基準は、駆動機構のそれぞれの運動属性が所与のポイントツーポイントの動きについての時間の関数としてどのように制御されるかを定義する軌道生成器による関数計算を表す。基準は、時間に対する導関数として互いに数学的に関連付けられている。運動制御プロファイルにしたがって所望のポイントツーポイントの動きを行うように荷役デバイス130に命令する制御信号に運動制御プロファイルを変換することは、位置コントローラ184が、例えば、運動制御プロファイルから導出された加速度基準に基づいて、運動制御プロファイルからフィードフォワード信号を生成することを伴う。位置基準、速度基準、加速度基準、及びジャーク基準のうちの1つ又は複数は、所与の時間期間にわたる荷役デバイス30のポイントツーポイントの動きを表す走行距離基準又は運動学的基準と呼ばれ得る。
【0052】
図12は、軌道生成器182から荷役デバイスの駆動機構への信号を変換するための位置コントローラ184の例示的なアーキテクチャを示す。荷役デバイスの質量を所定値、例えば推定値とした場合、フィードフォワード信号210は、例えば運動制御プロファイルから導出された加速度基準に比例する、より具体的には速度基準の時間導関数に比例する、計算されたトルク要求を表す。ペイロードを有する荷役デバイスの質量は、例えば、アイテムのペイロードを含んでいるトートを吊り上げるために使用された持ち上げデバイスのコントローラ又はドライバからの電流フィードバックを使用して推定され得る。これは、例えばケーブル38及びグリッパデバイス39を有する持ち上げデバイスを含む荷役デバイスの初期質量と統合されて、ペイロードを有する荷役デバイスの推定総質量をもたらすことができる。
【0053】
フィードフォワード信号210は、車輪アセンブリの車輪を駆動するための適切な信号に変換され得る。しかしながら、グリッド構造上の荷役デバイスのポイントツーポイントの動きが、運動制御プロファイルの軌道セグメントと揃うことを確実にするために、計算されたフィードフォワード信号210は、グリッド構造に対する荷役デバイスの実際の運動学的状態を示すフィードバック信号212によって補償される。グリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態は、これらに限定されないが、グリッド構造に対する荷役デバイスの位置及び速度を含むことができる。荷役デバイスの速度は、例えば、時間に対するその位置の一次導関数から導出され得る。
【0054】
フィードバック信号212に基づいて、位置コントローラ184は、軌道生成器182からの運動プロファイル194に基づいて決定された制御信号を調整又は補償して、荷役デバイスが可能な限り厳密に運動制御プロファイルにしたがって移動することを確実にすることができる。
【0055】
本システムでは、フィードバック信号212は、荷役デバイス上の1つ又は複数の位置センサではなく運動学的モデル198を使用して生成される(これは、グリッド構造に対する荷役デバイスの「真の」状態を反映するために位置コントローラにフィードバックされる)。上述のように、1つ又は複数の位置センサの代わりにそのような運動学的モデル198を使用することにより、荷役デバイス上に取り付けられた物理センサの使用に関連する欠点なしに、荷役デバイスの運動学的状態のフィードバック基準が、生成された軌道にしたがったポジショニングを制御することを助けることが可能になる。例えば1つ又は複数の位置センサの代わりにそのような運動学的モデル198を使用して荷役デバイスの運動学的状態を決定することについて、以下で更に説明する。
【0056】
運動学的モデル198からデータ信号を受信することに応答して、位置コントローラ184は、荷役デバイスがグリッド構造上のそのコマンドされたターゲット位置に到着することを確実にするために、例えば、1つ又は複数の操作変数を変化させることによって、運動制御プロファイル194の1つ又は複数の軌道セグメントを再生成するように命令され得る。
【0057】
実施例では、運動学的モデル198からのフィードバック信号212は、フィードフォワード信号210と組み合わされて、車輪(又は車輪を駆動する駆動機構)についての総トルク要求が生成される。運動制御プロファイルから導出された軌道位置と、運動学的モデル198から決定された位置とで比較が行われる。この比較は、位置誤差、すなわち、時間の関数としての軌道位置基準とモデル化された位置との間の差を表す。位置誤差は、PID(比例、積分、及び微分)コントローラ(又はPIコントローラ)214に供給され、これは、運動制御プロファイルによって表された設定点に位置を補正する。PID又はPIコントローラ214からの補正は、フィードフォワード信号210と組み合わされて、総トルク要求が生成される。
【0058】
図12の通信経路に示すように、「加速度フィードフォワード」信号と「速度フィードフォワード」信号の両方が、フィードフォワード計算において組み合わされる。それらはルックアップテーブルに記憶され得る。実際には、加速度フィードフォワード及び速度フィードフォワードは、固定値である比例定数、例えばゼロ次トルク要求と共に合計される(その符号は軌道速度の符号である)。加速度フィードフォワードトルク要求及び速度フィードフォワードトルク要求の大きさは、生成された運動制御プロファイル又は軌道から決定される。
【0059】
1つの実施例では、フィードフォワードトルク要求は、以下のように計算される。
総トルク要求=フィードフォワードトルク要求+フィードバックトルク要求
ここで、
フィードフォワードトルク要求=加速度フィードフォワードトルク要求+速度フィードフォワードトルク要求+ゼロ次トルク要求値
ここで、
加速度フィードフォワードトルク要求=軌道加速度×加速度フィードフォワード利得、
速度フィードフォワードトルク要求=軌道速度×速度フィードフォワード利得、
ゼロ次FFトルク要求=符号(軌道速度)×ゼロ次トルク要求値、
ここで、以下の変数の値は経験的に決定される。
【0060】
加速度フィードフォワード利得は、コンテナ及びその内容物を含む、荷役デバイスの推定総質量に依存する値であり、荷役デバイスがより重いコンテナを運搬しているとき、より高い利得値を有するようになる。
【0061】
速度フィードフォワード利得もまた、荷役デバイスの推定総質量に依存する。
【0062】
ゼロ次トルク要求値は、荷役デバイスを一定のほぼゼロの速度で移動させ続けるために必要とされる総トルク要求の値であり、すなわち、比例因子である。
【0063】
これらの3つの成分、加速度フィードフォワード、速度フィードフォワード、及びゼロ次トルク要求値は、フィードフォワードトルク要求を構成するために共に合計され、ルックアップテーブルに記憶される。計算されたフィードフォワードトルク要求をフィードバックトルク信号で補償するとき、コントローラは、フィードフォワードトルク要求をルックアップテーブルから取り出して、フィードバックトルク測定値と組み合わせる。
【0064】
上述のように、計算された総要求は、車輪を駆動するための適切な制御信号に変換される。実施例では、総トルク要求は、第1及び第2のセットの車輪のどちらがグリッド構造と係合するかに依存して、第1又は第2のセットの車輪間で共有される。これも実施例で説明したように、第1及び第2のセットの車輪のうちの各車輪は、ハブモータ220によって個々に駆動され得る。第1のセットの車輪は、本体の前方にある車輪対と、本体の後方にある車輪対とを備える。同様の車輪対が第2のセットの車輪に存在し、すなわち、第1及び第2の車輪対が、荷役デバイスの本体のいずれの側方にも存在する。動作時には、車輪対は、例えば「仮想」又は「想像上」の車軸にあるかのように、同期して駆動される。例えば、前方対の車輪は、同じ車軸上で駆動されているかのように同期して駆動され、後方対の車輪も同様に、同じ車軸上で駆動されているかのように同期して駆動される。同じ原理が第2のセットの車輪に適用されるが、個々のハブモータがそれらを駆動する。同様に適用可能に、第1のセットの車輪の4つの車輪すべては同期して駆動されてよく、同様に、第2のセットの車輪の4つの車輪すべてが同期して駆動されてよい。ハブモータによって車輪アセンブリの車輪を個々に駆動する利点は、車輪に加えられるトルクを異なる量で車輪に分配することができることであり、これは、いずれかの車輪のスリップ中に役立つことができる。
【0065】
実施例では、モータ制御プロファイルから導出されたトルク要求又は補償された総トルク要求は、付勢機構216によって車輪アセンブリの車輪間で分配される。付勢機構216は、グリッド構造上の荷役デバイスの任意の重量移動(weight transfer)を考慮するために、前輪対と後輪対間で、例えば「車軸」間で総トルク要求を分割する。例えば、荷役デバイスがグリッド構造上で加速しているとき、前「車軸」のほうに大きい割合の計算された総トルク要求が伝達され得る。逆に、荷役デバイスがグリッド構造上で減速するとき、総トルク要求は、後「車軸」のほうに多く伝達され得る。したがって、付勢機構は、グリッド構造上で加速又は減速するときに、第1の後「車軸」へのトルクの量を変化させて、それに応じて荷役デバイスの重量を荷役デバイスの前部分と後部分との間で移動させることができる。
【0066】
実施例では、付勢機構216は、運動制御プロファイルの軌道加速度基準にしたがって、車輪に、より具体的には車輪を駆動するモータに、差動トルク要求を適用する。運動制御プロファイルの軌道加速度基準及び/又は軌道速度基準は、荷役デバイスがグリッド構造上で加速しているか減速しているかに関する指標又は基準点を提供する。換言すれば、車輪に加えられる差動トルクは、運動制御プロファイルの軌道加速度基準に従うものであり、すなわち、車輪へのトルクの分配と運動制御プロファイルの軌道加速度基準との間に比例関係がある。荷役デバイスが加速すべきことを示す運動制御プロファイル生成器からの信号に応答して、付勢機構216は、計算された総トルク要求を後車軸よりも前車軸に多く選択的に伝達する。逆に、減速するように命令されると、総トルク要求は後車軸にシフトされるか、又は総トルク要求が低減されて「制動」力を提供する。同様に、グリッド構造上を巡航するとき、総トルク要求は、前「車軸」と後「車軸」との間で実質的に等しく分割され得る。
【0067】
前輪及び後輪の「車軸」に加えられる差動トルクと同様に、車輪モータに通信されるトルク要求は、荷役デバイスの本体のいずれの側方でも制御されて、例えば、グリッド構造上の荷役デバイスのヨーイング又は旋回を制御することができる。例えば、グリッド構造上の荷役デバイスの進行方向に依存して、左のセット又は右のセットの車輪へのスピードを制御するためにトルク要求が使用されて、それによって、グリッド構造上の荷役デバイスのヨーイング又は旋回角度を制御することができる。いくつかの実施例では、グリッド部材の配置が横断(X-Y)方向に延在するので、左車輪及び右車輪に加えられる差動トルクは、荷役デバイスがトラック上でヨーイング又は旋回することを防止するように、すなわち、実質的に直線で進むように制御される。
【0068】
駆動機構を駆動するための制御信号に運動制御プロファイルを変換することに加えて、付勢機構216はまた、トラック上の車輪のスリップを制御するとともに、(荷役デバイスに取り付けられた1つ又は複数の位置センサの代わりの)運動学的モデル及び/又は1つ又は複数の位置追跡センサから位置信号を受信することに応答して運動制御プロファイルを周期的に補償するようにも構成され得る。
【0069】
1つ又は複数の位置センサの代わりに、運動学的モデルは、トラック上の第1及び第2のセットの車輪のうちのいずれか一方のスリップを決定することもできる。これは、
図12において、位置コントローラ184内の別個のスリップ構成要素218として示されている。
【0070】
任意の車輪の回転スピードが、グリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態の速度成分よりも大きいときに、車輪のスリップが発生する可能性がある。グリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態は、運動学的モデル198を使用して決定される。位置センサ98a、98bを有する荷役デバイス30の場合、運動学的状態の速度成分は、時間の関数として1つ又は複数の位置センサによって決定される運動学的状態の位置成分の一次導関数、例えば、荷役デバイスが第1の方向に進んでいるか又は第2の方向に進んでいるかに依存する第1又は第2の「第5の」車輪の回転スピードから導出可能である。
【0071】
実施例では、第1及び第2のセットの車輪の各車輪の個々の回転スピードは、各車輪に隣接して配設された1つ又は複数の車輪エンコーダによって決定される。1つ又は複数の車輪エンコーダは、車輪の回転スピードを示すパルスを生成する回転電気機械デバイスを備えるインクリメンタルエンコーダであり得る。例示的な車輪エンコーダは、磁界の強度を測定することができる磁気センサ、例えばホール効果センサと、モータシャフトに取り付けられたリング磁石とを備える。モータが車輪を回転させるときにリング磁石も回転させる。リングの近くに位置付けられた磁気センサは、リング磁石が回転するときの磁界の変化を検出する。センサは、何回モータが回転したかをインクリメントにカウントすることができる。リング磁石が完全な1回転を完了すると、磁気センサは、リング磁石の各磁極がセンサを通過したときの磁界の設定数の変化(例えば、パルス又は「ティック」)を検出する。4対の磁極を有するリング磁石の場合、磁気センサは、例えば、完全な1回転中に4つのパルスをカウントする。モータの各回転はまた、所与の角回転、例えば、ある角度数だけ車輪を旋回させる。この情報、例えばモータと車輪のギア比を用いて、車輪の1回りを表す、車輪エンコーダによってカウントされるパルス数を計算することができる。パルス又は回転当たりの予想される進行距離も、車輪円周を使用して決定され得る。
【0072】
回転車輪エンコーダの別の実施例は、光学エンコーダである。透明エリアと不透明エリアとを有するディスクがモータシャフトに取り付けられ、光源と、任意の所与の時間におけるディスクの角度位置から生じる光学パターンを読み取る光検出器アレイとの間に配置される。更なる実施例は、非対称形状のディスクが2つの電極間のエンコーダ内で回転される静電容量型回転エンコーダである。電極間の静電容量の変化を測定し、角度値を決定するために使用することができる。
【0073】
実施例では、スリップ制御マネジャが、第1又は第2の「第5の」車輪の代わりの運動学的モデルから決定されたグリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態と車輪の回転スピードを個々に比較することによって、車輪アセンブリの各車輪のスリップを管理する。
図12の概略ブロック図に示す例では、スリップ制御マネジャは位置コントローラ内に存在する。所与の車輪の回転スピードが、グリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態の速度成分よりも大きいと想定する。その場合、スリップ制御マネジャは、車輪の回転スピードが荷役デバイスの運動学的状態に追いつくまで、その車輪に対するトルク要求の付勢を制御することによって、その車輪に対するトルクを除去するか、又は少なくとも低減する。例えば、付勢機構を介して、位置コントローラは、スリップしている車輪の回転スピードを低減するために、スリップしている車輪に対するトルク要求を変更することができ、すなわち、車輪に対するトルク要求を低減するか又は更には除去することができる。このような場合、車輪の回転はより受動的になり得る。代替として、スリップ制御マネジャは、グリッド構造上の荷役デバイスの運動学的状態に一致するように車輪アセンブリの車輪のスピードを平衡させるために、スリップしている車輪からのトルクを他の車輪に再分配することができる。
【0074】
代替として、上述のスリップ制御マネジャは、第1又は第2の「第5の」車輪と併せて使用してもよいことを理解されたい。このようにすると、車輪の回転スピードは、「第5の」車輪の出力によって直接決定され得る。
【0075】
「第5の」車輪の有無にかかわらず、いずれの場合でも、スリップ制御マネジャは、スリップを受けている車輪にかかるトルクを低減するように配置され得る。例えば、第1の車輪がスリップを受けていると検出されると、スリップ制御マネジャは、その特定の車輪についてのトルク要求をゼロトルクに低減し得る。利用されているがスリップを受けていない他の車輪すべては、それらのトルクレベルが維持される(すなわち、調整されない)。この実施例では、スリップしている車輪はゼロトルクが加えられるが、他の値が使用されてもよく、例えば、スリップしている車輪についてのトルク要求を、元の値の20%に低減してもよい。このスリップ制御方法の欠点の1つには、荷役デバイスにかかる望ましくないトルクが誘発され、その軌道が一方側又は他方側に曲がることがある。スリップ事象が低頻度で短く持続する場合、荷役デバイスが受ける望ましくないトルクが最小であると考慮すると、望ましくないトルクを効果的に無視することができる。
【0076】
しかしながら、より長く持続するスリップ事象の場合、荷役デバイスが受ける望ましくないトルクが問題となる恐れがある。そのために、スリップ制御マネジャは、代わりに、トルクを仮想前車軸と仮想後車軸との間で付勢することに関して前述したものと同様に、「仮想」又は「想像上」の車軸ベースのスリップ制御を適用するように配置され得る。特に、1つの特定の車輪のスリップが検出されたとき(「第5の車輪」を使用しているか否かにかかわらず)、スリップ制御マネジャは、仮想車軸上の両方の車輪についてのトルク要求を低減するように配置される。例えば、荷役デバイスの右後輪がスリップ事象を受ける場合、右後輪及び左後輪(左後輪は右後輪と同じ仮想車軸にある)の両方についてのトルク要求が低減される。好ましくは、仮想車軸上の車輪に対するトルク要求の低減は同一である。このようにして、トルク低減が荷役デバイスの両側で等しいので、荷役デバイスは、これまでのスリップ制御方法の望ましくないトルクをもはや受けなくなる。1つの実施例では、右後輪がスリップ事象を受ける場合、仮想後車軸に対するトルク要求は、ゼロに低減され得る。しかしながら、荷役デバイスに対するトルクのそのような劇的な低減は、荷役デバイスの突然のスピード低下を引き起こす場合がある。代替として、右後輪がスリップ事象を受ける場合、仮想後車軸に対するトルク要求を、その元の値の20%に低減してもよい。したがって、右後輪及び左後輪の両方が、それらの元の値の20%へのトルク要求の低減を受ける。このようにすると、スピードの低下が劇的でなく、荷役デバイスはその移動計画に留まることができる。
【0077】
更に、スリップ制御マネジャは、スリップ事象を受けていない仮想車軸に損失したトルクを加えるように更に配置され得る。例えば、右後輪がスリップ事象を受ける場合、仮想後車軸に対するトルク要求を、その元の値の20%に低減し得る。換言すれば、仮想後車軸上の個々の車輪に対するトルク要求は、それらの元の値の20%に低減される。しかしながら、この仮想車軸から除去されたトルク要求(その元の値の80%)は、前車軸に追加されてよく、換言すれば、左前輪及び右前輪の各々は、それらのトルク要求を、仮想後車軸から除去されたトルク要求の割合だけ増加させている。したがって、仮想後車軸はその元の値の20%に低減されるが、仮想前車軸は、仮想後車軸から除去されたトルク要求だけ増加したトルク要求を有する。このようにして、荷役デバイス全体としてのスピード低下が緩和される。
【0078】
図12に示すアーキテクチャは、一例であることを意図しているにすぎず、位置コントローラ184の構成要素の他の配置が本発明の範囲内であることを理解されたい。例えば、位置コントローラ184は、別個のコントローラであるのはなく、運動制御プロファイル又は軌道を生成するためのコントローラ182に一体化されてもよい。
【0079】
図13は、実施例に係る荷役デバイスのためのポジショニングシステムの概略図を示す。ポジショニングシステム300は、前述した荷役デバイスの複数の車輪のための1つ又は複数のエンコーダ310を含む。1つ又は複数のエンコーダは、この実施例では、荷役デバイス内にある。
図13では、グリッド構造115上でX方向に荷役デバイス130を移動させるための一対の車輪134のみが示されている。しかしながら、X方向及びY方向の各々のための車輪の完全セット、例えば、先の実施例で説明した第1のセットの車輪134及び第2のセットの車輪136を含むことができる。
【0080】
ポジショニングシステム300は、実施例では、荷役デバイスのそれぞれの車輪134のための1つ又は複数の力センサも含む。1つ又は複数の力センサは、例えば、対応する車輪にかかる荷重を検出するように構成される。1つ又は複数の力センサは、力感知抵抗器を使用した車輪アセンブリ構造の移動の測定により、加えられた力、例えば、車輪にかけられた重量を線形電気信号にコンバートする力トランスデューサを備え得る。
【0081】
他の実施例では、ポジショニングシステム300は、対応する車輪にかかる荷重を推定するように構成された1つ又は複数の力推定器を含む。例えば、対応する車輪にかかる荷重は、当業者によって知られている方法を使用して、例えば、荷役デバイスによって運搬されるときのトート及びそのペイロードの推定質量を含む荷役デバイスの質量に基づく、加速及び減速中の重量移動を考慮に入れて推定され得る。例えば、前輪対及び後輪対のための仮想前車軸及び仮想後車軸を考慮すると、前車軸にかかる垂直荷重Z1及び後車軸にかかる垂直荷重Z2は、以下のように決定され得る。
Z1=Z1,0+Z1,a+ΔZ
Z2=Z2,0+Z2,a+ΔZ
【0082】
前車軸にかかる初期荷重Z
1,0は、例えば、運搬されている任意のトート質量及びペイロードを含む荷役デバイスの質量mと、後車軸と荷役デバイスの質量中心との間の距離a
2と、軸距lとに基づいて決定可能であり、Z
1,0=mg・a
2/lである。同様に、後車軸にかかる初期荷重Z
2,0は、後車軸と荷役デバイスの質量中心との間の距離a
1を代わりに使用して決定可能であり、Z
2,0=mg・a
1/lである。車軸荷重方程式の中間項は、空力抵抗力Z
1,a=-Z
2,aを表し、これは、例えば、数式
【数1】
によって決定することができ、ここで、ρは、流体(空気)密度であり、vは、荷役デバイスの速度であり、Sは、荷役デバイスの面の基準エリアであり、Cは、例えば荷役デバイスの矩形断面の形状係数である。最後に、縦荷重伝達ΔZは、荷役デバイスの加速度a及び質量中心の高さhに基づいて決定可能であり、ΔZ=-ma・h/lのようになる。
【0083】
ポジショニングシステム300は、荷役デバイスの所与の車輪にかかる所与の垂直荷重に少なくとも基づいて荷役デバイスのクリープ値を決定するための訓練されたモデルを記憶する記憶装置330を含む。記憶装置330は、DDR-SDRAM(ダブルデータレート同期ダイナミックランダムアクセスメモリ)などのランダムアクセスメモリ(RAM)であり得る。他の実施例では、記憶装置330は、読取り専用メモリ(ROM)などの不揮発性メモリ、又はフラッシュメモリなどのソリッドステートドライブ(SSD)を含み得る。記憶装置330は、場合によっては、他の記憶媒体、例えば、磁気、光若しくはテープ媒体、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は他のデータ記憶媒体を含む。記憶装置330は、ポジショニングシステム300から取り外し可能であってもよいし、又は取り外し不可能であってもよい。
【0084】
レール上を移動する車輪のコンテキストでは、クリープは、車輪の回転スピードとその線形スピードとの間の差に関連する。例えば、車輪とレールとの間の接触エリアは、典型的には楕円形であり、スティック(スリップのない)領域とスリップ領域とに分割され得る。縦クリープ(又は「マイクロスリップ」)及び接線(牽引)力が、接触パッチの後縁領域で生じるスリップに起因して生じる。牽引力が増加すると、スリップ領域が増加、スティック領域が減少し、転がり及び滑り接触を生じさせる。クリープ力は、接触パッチの平面内に作用し、車輪とレールとの間の摩擦に関連する。車輪及びレールの歪みは小さく、局所的であるが、生じる力は大きい可能性がある。重量に起因する歪みに加えて、制動力及び加速力が加えられたとき、及び車両が横力を受けたときに、車輪及びレールの両方が歪む。
【0085】
クリープ力を発生させるためには、ある量の(マイクロ)スリップが必要である。いくつかの実施例では、接線力は、常用荷重、摩擦状態、及び接触面間の相対運動に依存する。これらの接線力は、スリップの領域が後に続く、最初に接触する領域を歪ませる。最終結果は、(a)牽引中に、車輪は転がり接触から予想されるほどには前進せず、(b)制動中に、車輪は更に前進する、というものである。この弾性歪みと局所的なスリップの混合したものが、「クリープ」として知られている(一定荷重下での材料のクリープとは別個である)。このコンテキストでのクリープは、変位に関して、ξ=(x-s)/s=Δs/sによって与えられ、ここで、xは、車両の実際の変位であり、sは、転がり変位である。
【0086】
同様に、速度に関して、自由転動車輪の場合、角速度ω(rad/s)に基づく予想線速度(m/s)が、乗算r・ωによって与えられ、ここで、rは車輪半径(m)である。正の接線力に対して正の速度デルタが存在するはずであり、すなわち、Δv=(r・ω)-vである。この速度差と線速度との間の関係は、速度クリープσ=Δv/vによっても与えられ、これは無次元である。したがって、速度(又は「縦」)クリープは、比率σ∈[0,1]として表すことができ、これは次式によって与えられる。
【数2】
ここで、r
eは、トラックとの接触点における車輪の有効半径を表す。車輪の中心の線形スピードvは、荷役デバイスのスピードと同等である。
【0087】
車両132の車輪セット動力学に関与する接触力は、クリープに線形従属するものとして扱うことができる(ヨースト・ジャック・カルカーの線形理論参照、小さいクリーページに対して有効)。同様に、車両132の方向安定性、推進、及び制動をもたらす力も、クリープにリンクされ得る。それは、単一の車輪セットに存在し、著しいスリップを引き起こすことなく、車輪セットを結合することによって導入されるわずかな運動学的非互換性に対応することができる。したがって、利用可能な最大摩擦係数を使用するために、荷役デバイス130のすべての駆動車輪134、136は、車両132が実際に移動しているよりも速く旋回しなければならない(クリープ制御として知られている)。車輪がクリープしているときに、最大の利用可能な摩擦が生じる。「全スティック」無トルク状態から「全スリップ」状態への移行中、車輪は、クリープ及びクリーページとしても知られるスリップの漸増を有する。
【0088】
いくつかの命名法では、「スリップ」は、車輪が有する追加のスピードであり、「クリープ」は、上記で概説したように、ロコモティブスピードで割ったスリップのレベルである。これらのパラメータは、物理センサ、例えば位置センサ又はスピードセンサを使用して測定可能である。測定されたデータは、スリップレベル及びクリープレベルに基づいて車輪セットのそれぞれの駆動機構を制御するためにクリープコントローラ218に入ることができる。しかしながら、本実施例では、クリープコントローラ218は、位置センサデータに基づく測定されたクリープ値ではなくむしろ、荷役デバイスのモデル化されたクリープ値を取得する。
【0089】
より具体的には、本ポジショニングシステム300の処理ユニット340は、訓練された運動学的モデルについての少なくとも1つの係数値を取得し、記憶装置に記憶された運動学的モデルを使用してクリープ値を決定するように構成される。実施例では、例えば、対応する力センサから取得されるか又は重量移動と任意のトート質量及びペイロードとを考慮して推定される車輪の垂直荷重値も、運動学的モデルを使用してクリープ値を決定するための、プロセッサ340への入力である。
【0090】
少なくとも1つの係数値は、複数の訓練用荷役デバイスについての記録されたクリープデータを使用したモデルの訓練によって取得される。例えば、1つの実施形態では、運動学的モデルは、車輪のクリープのパラメータ化されたモデル、例えば、車輪半径及び1つ又は複数の係数などのパラメータに関するクリープの数学的モデルを備える。クリープを計算するときに使用される係数値(単数又は複数)は、既知のパラメータ値を有する記録されたクリープデータを使用してモデルを訓練することによって決定される。例えば、
図6に示すものなどの訓練用荷役デバイス30は、運動学的状態基準、例えば、グリッド構造15上で動いている間の荷役デバイス30の速度又は位置基準を提供するための位置センサ98a、98bを有する。したがって、クリープ値は、運動学的状態基準を使用して決定され、例えば、車輪半径及び車輪荷重などのパラメータ値と共にモデルに入力され得る。対応するパラメータ値を有するそのような記録されたクリープ値のデータセットを構築することは、モデル化された、すなわち計算されたクリープ値と経験的に決定されたクリープ値との間の対応を所定の閾値、例えば「最良適合」内で与えるように、運動学的モデルの1つ又は複数の係数が調節され得ることを意味する。所定の閾値は、例えば、モデルのターゲット精度に対応し得る。調節されたモデル係数値(単数又は複数)は、次いで、プロセッサ340によるアクセスのために、例えば、運動学的モデルと共に記憶装置に記憶されて、該係数値を有する運動学的モデルと、車輪の測定された荷重などの「ライブ」パラメータとを使用して、グリッド115上を転がる所与の車輪の「ライブ」クリープ値を計算することができる。
【0091】
実施例では、プロセッサ340は、荷役デバイスの車輪又は車輪セットにわたってクリープ値を平均することによって、それぞれの該車輪又は車輪セットに対するモデル化されたクリープ値に基づいて、荷役デバイスの運動学的状態を決定する。例えば、上記実施例で説明したように、異なる車輪セットが、異なる荷重条件下にある場合があり、これは、モデルにおいて(例えば、パラメータ化されたモデルの実施例における荷重パラメータ値を使用して)考慮される。決定されたクリープ値を車輪セットにわたって平均することは、クリープデータ及び荷役デバイスの結果として生じる運動学的データにおけるノイズレベルを低減するのに役立ち得る。
【0092】
以下の式は、例示的なパラメータ化されたモデルを与える。
【数3】
ここで、σは、荷役デバイスの所与の車輪又は車輪セットのクリープ値であり、αは係数値であり、Tは、車輪又は車輪セットに加えられる公称トルクであり、rは、車輪(単数又は複数)の半径であり、Nは、車輪又は車輪セットにかかる公称垂直荷重である。トルクは、例えば、動力トルク(motive torque)と累積抵抗トルクとの間の差T
M-T
Rである。
【0093】
上記の例示的なパラメータ化されたモデルは、トルクバランスを考慮することから導出することができ、以下のように記載することができる。
T
M-T
R-rF=Jω
・
ここで、T
Mは、動力トルクであり、T
Rは、累積抵抗トルクであり、Fは、牽引力(すなわち、車輪と地面との間の摩擦)であり、Jは、車輪慣性であり、ω
・は、車輪の回転加速度である。次いで、駆動する場合を考慮し、回転車輪についての先の数式を活用すると、クリープを次のように記載することが可能である。
【数4】
ここで、摩擦係数とクリープとの間の線形関係μ=σ/αが使用され、符号Nはやはり、車輪にかかる垂直荷重を表す。線形関係μ=σ/αは、クリープが車輪とトラックとの間の最大牽引における最大クリープσ
Mよりも小さい、すなわちσ<σ
Mである安定領域におけるσに対するμの曲線の妥当な近似であることが分かっている。係数αは、タイヤ又は車輪の剛性に関連する架空の定数であり得る。項Jω
・がごくわずかなものであると仮定してトルクバランスを代入すると、すなわち、rF=T
M-T
Rとすると、上記で表された例示的なパラメータ化されたモデルに到達する。
【0094】
この例示的なモデルの場合、単一の係数値αは、パラメータ化されたモデルの訓練中に決定され、グリッド構造115を移動して回る荷役デバイス130の車輪134、136の将来のクリープ値を計算するためにモデルと共に記憶される。
【0095】
速度スリップを考慮する係数を組み込んだ車両(又は「ボット」)速度の別の例示的なパラメータ化されたモデルは、次式によって与えられる。
【数5】
ここで、v
wは、所与の車輪又は車輪セットの速度であり、βは係数値であり、τは、車輪又は車輪セットに加えられるトルクであり、Nは、車輪又は車輪セットにかかる重量移動、例えば垂直荷重である。この例示的なモデルの場合、単一の係数値βは、パラメータ化されたモデルの訓練中に決定され、グリッド構造115を移動して回る荷役デバイス130の将来の速度値を計算するためにモデルと共に記憶される。
【0096】
他の実施形態では、運動学的モデルは、人工ニューラルネットワーク(又は単に「ニューラルネットワーク」)モデルを備える。一般に、ニューラルネットワークシステムは、「訓練段階」と呼ばれるものを経る。ニューラルネットワークは、特定の目的のため、この場合、測定されたパラメータに基づいて荷役デバイスの車輪のクリープ値を決定するために訓練される。ニューラルネットワークは、典型的には、グラフの頂点(ニューロンに対応する)又はエッジ(接続部に対応する)が重みに関連付けられる重み付き有向グラフを形成するいくつかの相互接続されたニューロンを含む。重みは、訓練全体を通して調整されてよく、個々のニューロン及びニューラルネットワーク全体としての出力を変更する。したがって、運動学的モデルのための1つ又は複数の係数値は、ニューラルネットワークに入力された入力データに適用される重みを表す重みデータに対応し得る。入力データは、例えば、車輪又は車輪セットの荷重、車輪又は車輪セットに加えられた公称トルク、及び車輪半径などの測定された車輪状態データを備える。訓練段階後、ニューラルネットワーク(訓練されたニューラルネットワークと呼ぶ場合があり、訓練された運動学的モデルに対応する)は、新しい車輪状態データに基づいてクリープ値を決定することができる。
【0097】
ニューラルネットワークを利用するいくつかの実施例では、「構造化」ネットワークが、一般にこのタイプの分析問題に対して「非構造化」ネットワークよりも有用である場合があるので使用される。構造化ニューラルネットワークでは、伝達関数が階層的に積み重ねられて、多数の隠れ層を有するネットワークが作成され得る。隠れ層の各々は、一連の非線形性における次の層として見ることができ、算出は、層出力が後続層の出力を算出するための入力として使用される反復プロセスである。したがって、構造化ニューラルネットワークは、教師あり学習又は教師なし学習を使用して訓練され得る。逆に、非構造化ニューラルネットワークは、階層的な編成を有さず、単に、線形の静的な全結合ニューロンのセットである。したがって、非構造化ニューラルネットワークは、入力ニューロン及び出力ニューロンを定義する機構がないので、教師なしの方法でのみ訓練することができる。
【0098】
他の実施形態では、運動学的モデルは、測定された車輪状態データと車両の対応する運動学的データとから計算されたクリープ値の訓練データセットを使用して、測定された車輪状態データに基づいて車輪のクリープを予測するためのサポートベクトルネットワーク、ベイジアンネットワーク、又は別の好適な数学的モデルを備える。例えば、クリープ値を決定するために非線形モデルが使用される場合、モデル内の係数値を推定するためにカルマンフィルタが実装され得る。
【0099】
力の項を伴う運動学的モデル、例えばトルク及び法線力を伴う上記のパラメータ化されたモデルの例は、代わりに「動的モデル」と呼ばれる場合がある。
【0100】
実施例では、記憶装置330は、複数の訓練されたモデルを記憶する。例えば、各訓練されたモデルは、加速段階、減速段階、及び巡航段階などの、荷役デバイスの軌道段階に対応する。したがって、荷役デバイスの現在の軌道段階、例えば、それが加速しているか、減速しているか、それとも実質的にゼロの加速度で巡航しているかに依存して、所与のモデルが複数の訓練されたモデルから選択され得る。したがって、それぞれのモデルの1つ又は複数の係数は、例えば、対応する軌道段階中の記録されたデータに基づいて訓練される。
【0101】
実施例では、荷役デバイスのそれぞれの積載モード(loading mode)に対応する複数の訓練されたモデルが記憶される。例えば、積載モードは、コンテナを搬送していないときなど、荷役デバイスが積載物を有していない無荷重モードであり得る。同様に、積載モードは、アイテムのコンテナを搬送しているときなど、荷役デバイスが何らかの積載物を有する荷重モード(loaded mode)であり得る。別の可能な積載モードは、例えば、荷役デバイスが最大荷重閾値に実質的に等しい積載物を有する場合、完全荷重モードである。更に、荷重が実質的にゼロ(例えば、無荷重)と最大荷重閾値(例えば、完全荷重)を下回る中間荷重閾値との間にある場合、1つ又は複数の部分荷重モードがあり得る。
【0102】
複数の訓練されたモデルは、同じモデル又はモデルタイプであってよく、それぞれの係数値は、それぞれのモデルを訓練することから決定される。例えば、各軌道段階に対して同じパラメータ化されたモデルが使用されてもよいが、対応する軌道段階についての訓練によって決定された異なる係数値(例えば、上記の例示的なパラメータ化されたモデルにおけるαの値)を有する。同様に、各軌道段階及び/又は積載モードに対して1つずつ、使用される複数のニューラルネットワークがあってもよく、ここで、ネットワーク重みは、該軌道段階及び/又は積載モードに対応する異なる訓練データに基づいて異なって決定される。
【0103】
実施例では、プロセッサ340は、モデル化されたクリープ値と共に、1つ又は複数の車輪エンコーダから取得されたエンコーダデータに基づいて、荷役デバイスの運動学的状態を決定する。上述のように、各車輪の個々の回転スピードは、エンコーダ内部の回転デバイスが車輪の回転スピードを示すパルスを生成する1つ又は複数の車輪エンコーダによって捕捉されたエンコーダデータから決定可能である。
【0104】
処理ユニット340は、本明細書に記載の機能を実行するように設計された、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは別のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート若しくはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェア構成要素、又はそれらの任意の好適な組合せなどの汎用プロセッサであり得る。
【0105】
図7~
図13を参照して説明した実施例では、処理ユニット340及び記憶装置330は、荷役デバイス130内に位置する。代替として、所与の荷役デバイスの運動学的状態を決定するための処理ユニット340が、運動学的モデルを記憶する記憶装置330と共に、サーバ内、例えば
図10に示すマスタコントローラ174内に位置する、サーバ-クライアントネットワークモデルが使用されてもよい。サーバは、例えばネットワーク176を介して、荷役デバイスと通信して、モデルに入力するための測定されたデータ、エンコーダデータなどを受信し、荷役デバイスの決定されたクリープ値及び決定された運動学的状態の一方又は両方を送るように構成される。
【0106】
実施例では、
図11に戻って参照すると、例えば処理ユニット340によって運動学的モデル198を使用して決定されたモデル化された運動学的状態は、マスタコントローラ174において定義されたグリッド構造115上の所望のターゲット位置と共に動きマネジャ192に通信され、そこで、運動制御プロファイルの生成を行う運動制御生成器182に通信される前に、動きマネジャ192によってグリッド構造115に関連する位置単位に変換される。例えば、動きマネジャ192は、荷役デバイス130がグリッド構造115上で移動するように命令されるグリッドセルの数として表された、マスタコントローラ174からのコマンドされた位置を、コントローラ又は運動制御生成器が理解する「位置単位」に変換する。次いで、コントローラ又は運動制御生成器182は、マスタコントローラからのリクエストされたターゲット位置を、モデル化された運動学的状態の位置成分又は運動制御プロファイルによって提供された位置基準のいずれかと相関させることができる。運動制御プロファイルが生成されると、位置コントローラ184は、運動制御プロファイル194に関連付けられたデータを制御信号に変換し、制御信号は、駆動機構186に直接送られて、荷役デバイスをターゲット位置に移行させ得る。上述のように、位置コントローラ184は、荷役デバイスのコントローラ又は制御システム170の一部を形成することができる。コントローラ又は制御システムは、軌道生成器182及び位置コントローラ184に関連する機能構成要素を備える。
【0107】
実施例では、例えば
図1及び
図3を参照して前述したような、説明したポジショニングシステムを用いるグリッド型保管システムは、グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC:automatic identification and data capture)タグも含む。そのようなAIDCタグは、無線周波数識別(RFID)タグ、QRコード(登録商標)、バーコード、又は磁気ストライプなどを備え得る。AIDCは、一般に「自動識別」、「自動ID」、及び「自動データ捕捉」とも呼ばれ、一般に、オブジェクトを自動的に識別し、それらについてのデータを収集し、それらを自動的に、すなわち人間の関与なしに、コンピュータシステムに直接入力する方法を指す。
【0108】
そのようなAIDCタグを用いると、荷役デバイスの各々に1つ又は複数のAIDCタグリーダ又はスキャナを設けることによって、グリッド構造に対する所与の荷役デバイスの位置を特定することが可能である。AIDCタグは、グリッド構造上の一連の基準点を提供するためにグリッド構造に対して固定されていてよい。所与の荷役デバイスがグリッド構造にわたって移動するとき、荷役デバイスのそれぞれのAIDCタグリーダは、グリッド構造上の様々なロケーションに固定されたAIDCタグの1つ又は複数から信号を読み取る。典型的には、AIDCタグは、各グリッドセルにおけるトラックの交差点又は交差路に固定されている。各AIDCタグ(又は「ラベル」)は、例えば、グリッドセルに関する座標データなどの、グリッド構造内のタグのロケーションに対応する符号化データを含んでいる。
【0109】
AIDC手段が保管システムにおいて用いられるそのような実施例では、ポジショニングシステムの処理ユニット340は更に、荷役デバイス上に取り付けられたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、荷役デバイスの運動学的状態を決定するように構成され得る。AIDC機械リーダ自体は、1つ又は複数のAIDCタグから符号化データを読み取るように構成される。例えば、訓練されたモデルを使用して決定された荷役デバイスの運動学的状態は、グリッド構造内のスキャンされたタグからの捕捉された自動識別データに基づいて精緻化される。AIDC機械リーダ(又は他の「グリッドセンサ」)の読み取り(又は「起動」)は、より低い解像度で、荷役デバイスのための位置情報の独立したソース、例えば、グリッド構造上の荷役デバイスの位置の真実のソースを提供する。したがって、グリッドセンサの起動は、実施例では適応型である、運動学的モデルにおける1つ又は複数の係数を精緻化するために使用され得る。例えば、荷役デバイスがグリッドセル境界を越えると、1つ又は複数の係数がそれに応じて更新される。
【0110】
速度クリープ値(又は「スリップ比」)σについての上記の例示的なパラメータ化されたモデルに戻り、車両(又は「ボット」)速度に関してモデルを表すと、以下がもたらされる。
【数6】
【0111】
これらの式において、vw=rωは車輪速度であり、ここで、rは車輪半径パラメータであり、ωは車輪の角速度であり、vbはボット速度である。ボット位置の推定値は、例えば、以下でより詳細に述べる時間に対するボット速度の積分によって、ボット速度のための上記式に基づいて導出され得る。
【0112】
実施例では、車輪半径r及びモデル係数パラメータ、例えばαは、定数であると仮定される。各サンプリング時間において、各車輪の荷重力Nの推定は、ボット物理学(bot physics)の内部モデルに基づいて行われ得る。追加又は代替として、各車輪の荷重力Nの推定は、アルゴリズムにおいてボットの本当の加速度の近似として扱われ得る、例えばコントローラによって作り出された、ターゲット加速度値に基づいて行われてもよい。抵抗トルク値も、例えば、ボット物理学の内部モデル及びボットスピードの最新の推定に基づいて、各サンプリング時間において算出される。車輪速度及び動力トルクの値は、構成要素、例えばモータ220によってデータとして公開され得る。ボット速度のための上記式は、ボットを駆動する車輪の各々について計算されて、ボット速度の複数の対応する推定値を作り出し得る。異なる推定値が、例えば、摂動の影響を低減するために平均される。次いで、結果として得られるボット速度推定値は、上述したように、ボット位置の推定値を取得するために時間に対して積分される。
【0113】
例えば、2つの時間インスタンスt
1とt
2との間のボット速度について上記式を積分すると、以下がもたらされる。
【数7】
ここで、結果として生じるトルクの代入、T=T
M-T
Rが、完全を期すために行われている。グリッドセンサの2つの連続した起動に対応する2つの時間インスタンスを選ぶことによって、左側の項は、この時間中に車輪が進んだ距離、すなわちグリッドセルの長さを表すことができ、これは以下の既知のパラメータである。
【数8】
ここで、時間インスタンスe
k-1及びe
kは、2つの隣接するグリッドセルk-1及びkでの起動に対応するように選ばれたものである。結果の式において、a及びbはそれぞれの時間積分の結果値を表すパラメータである。したがって、s
cellに対して、既知のセル長値、すなわち、グリッド構造115内の単一のグリッドセルの長さを使用して、最小二乗法がこの式の形式に適用され得る。これにより、グリッドセンサ起動情報を使用して、パラメータα及びrを精緻化する、例えば、連続的に更新することが可能になる。最小二乗法は、ある特定の場合には、ベイズの再帰的最小二乗アルゴリズムである。
【0114】
更なる実施例では、トラック長の推定値y^は、以下によって与えられる。
【数9】
ここで、Hは、2つの時間積分によって定義される2×1ベクトルを表し、θ^は、車輪半径r
e及びαパラメータの推定された2×1ベクトルであり、d~(0,R)は、セル長の物理的不確実性を表す、ゼロの期待値及び分散Rを有する確率的ノイズパラメータである。ここでは、法線力F
N及び車輪半径r
eに対して代替表記が使用される。列ベクトルH又はθ^のうちの1つの転置が、それらを共に乗算するために使用され得る。
【0115】
実施例では、モデルパラメータ、例えばα及びreの初期推定値は、例えば古典的な最小二乗法を使用して、パラメータ値の各々についての良好適合を見つけるために、記録されたデータに対して運動学的モデルを、例えば「オフライン」で実行することによって決定される。例えば、保管システム内で動作する複数の荷役デバイスから記録されたログデータは、速度、トルク、及びトート質量についてのデータを備え、これらは、例えば古典的な最小二乗アルゴリズムによって未知のモデルパラメータを推定するために、運動学的モデルに入力され得る。上述のように、次いで、モデルパラメータは、例えば、速度、トルク、及びトート質量についてのライブデータを使用して、運動学的モデルを「オンライン」で実行するときに精緻化され得る。例えば、ベイズの再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズムなどのRLS法が、後者の精緻化段階に実施される。
【0116】
モデルパラメータ、例えばα及びr
eを精緻化する方法は、共分散行列
【数10】
を定義することを伴ってよく、ここで、
【数11】
及びλ
ααは、対応するパラメータのそれぞれの分散を表す。分散は、例えば、ログデータから取得されたサンプル分散値又は初期推定値のいずれかであり得る。
【0117】
そして本方法は、3つの主なステップを備え得る。
1.利得Kを次のように算出する。
K=P
aH
T(HP
aH
T+R)
-1
2.算出された利得値に基づいて共分散行列を更新する。
P=(I-KH)P
a
3.算出された利得値に基づいて、推定されたパラメータ値を更新する。
【数12】
ここで、表記X
aは、所与の変数Xの現在の値を、その変数が本方法のそのステップで仮定している新しい精緻化された値と区別するために使用されている。
【0118】
したがって、本方法は、各グリッドセンサ起動時にモデルパラメータを精緻化(又は「再調節」)することを可能にする。セル長の推定値y^は、公称(既知の)値の近くに維持され得る。モデルを使用してボット速度を算出する際の誤差もまた、チェックされ続け得る。
【0119】
図14は、保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法400を示す。荷役デバイスは、
図7~
図13を参照して説明した例示的な荷役デバイス130のうちの1つであり得る。保管システムは、全体を通して説明され、
図1~
図3に示されるタイプのものであり得る。方法400は、前述のポジショニングシステム300の1つ又は複数の構成要素によって行われ得る。
【0120】
401において、荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データが、車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得される。実施例では、車輪状態データは、荷役デバイスの車輪に加えられた公称トルクを表すトルクデータを備える。車輪状態データは、追加又は代替として、荷役デバイスの車輪にかかる公称垂直荷重を表す荷重データを含んでもよい。いくつかの実施例では、車輪状態データは、あるセットの車輪(車輪セット)の状態、例えば、車輪セットに加えられた公称トルク及び/又は車輪セットにかかる公称垂直荷重を表す。したがって、1つ又は複数のセンサは、対応するタイプの車輪状態データを測定するためのセンサである。例えば、センサは、対応する車輪にかかる荷重を検出するように構成された1つ又は複数の力センサを含む。
【0121】
402において、訓練されたモデルを使用して、車輪状態データに基づいて、荷役デバイスのクリープ値が決定される。前の実施例で説明したように、訓練されたモデルは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクトルネットワーク、又はパラメータ化されたモデルのうちの少なくとも1つを含み得る。対応する説明が適用される。パラメータ化されたモデルの実施例では、方法400は、パラメータ化されたモデルを訓練することから決定されたタイヤ係数値を取得することと、取得された車輪状態データと共にタイヤ係数値をパラメータ化されたモデルに入力することとも含み得る。タイヤ係数α及びβの例が、例示的なパラメータ化されたモデルにおいて挙げられている。そのようなタイヤ係数は、新しいクリープ値及び/又はボット速度値を計算するために、アクセスされ、パラメータ化されたモデルに入力されるように記憶装置に記憶され得る。ニューラルネットワークモデルの実施例では、係数は、訓練段階中に取得され、かつ新しいクリープ値及び/又はボット速度値を計算するように適用するためにニューラルネットワークモデルの一部として記憶されたニューラルネットワークの重みに対応し得る。
【0122】
先の実施例で説明したように、複数の訓練されたモデルがあってよく、それから所与のモデルが、荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法400の一部として選択される。例えば、所与のモデルの選択は、現在の軌道段階及び/又は荷役デバイスの積載モードに依存する。例えば、軌道段階は、荷役デバイスが加速しているか、減速しているか、それとも巡航しているかに対応する。したがって、それぞれのモデルの1つ又は複数の係数は、例えば、対応する軌道段階中の記録されたデータに基づいて訓練される。積載モードは、無荷重モード、荷役デバイスが最大荷重閾値に実質的に等しい積載物を有する完全荷重モード、又は積載物が実質的にゼロと最大荷重閾値との間にある1つ又は複数の部分荷重モードであり得る。
【0123】
403において、モデル化されたクリープ値に基づいて、荷役デバイスの運動学的状態が決定される。例えば、運動学的状態は、荷役デバイスの位置、速度、加速度、ジャーク、又は向きのうちの少なくとも1つを含む。運動学的状態の位置、速度、加速度、及びジャーク成分は、時間に対する積分又は微分により互いに評価され得る。したがって、回転車輪速度に基づいて評価された推定ボット速度にデルタ補正を適用するために、モデル化された速度クリープが使用され得る。補正されたボット速度の積分は、車輪のクリープ(又は「マイクロスリップ」)を考慮した補正されたボット位置を与えることができ、これは、前述した車輪の牽引力学の特徴である。
【0124】
404において、荷役デバイスの運動学的状態を表す運動学的データが出力される。出力された運動学的データは、例えば
図11及び
図12を参照して説明した実施例にしたがって、荷役デバイスのためのターゲット位置を生成するために使用され得る。例えば、「第5の」車輪位置センサを使用して荷役デバイスの運動学的状態の基準を提供するのではなく、訓練されたモデルを使用して運動学的状態がモデル化されて、積載デバイスの計画軌道を(再)生成するための基準位置、速度、及び/又は加速度を提供する。同様に、車輪に対するトルク要求を表すフィードフォワード信号が、出力された運動学的データに基づいて補償されて、車輪についての総トルク要求が決定され得る。したがって、別途推定された位置及び結果として生じるトルク要求を補償するために荷役デバイスの運動学的状態を監視することは、荷役デバイスの追加の構成要素として固有の欠点を有する物理的運動学的センサを使用することなく行われ得る。
【0125】
上述のように、荷役デバイスの決定された運動学的状態は、荷役デバイス上に取り付けられた自動識別及びデータ捕捉(AIDC)機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて精緻化されてよく、AIDC機械リーダは、グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数のAIDCタグ、例えばRFIDタグから符号化データを読み取るように構成される。
【0126】
荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法400は、1つ又は複数のプロセッサ、例えば
図13を参照して説明したポジショニングシステム300の処理ユニット340によって実施され得る。1つ又は複数のプロセッサは、
図13を参照して説明したポジショニングシステム300内の記憶装置330などのコンピュータ可読記憶媒体上に記憶された命令、例えばコンピュータプログラムコードにしたがって方法を実施し得る。
【0127】
上記実施例は、例示的な実施例として理解されたい。更なる実施例が想定される。例えば、上述の実施例では、クリープ推定値σ=αμが、荷役デバイスの3つの運動段階、例えば加速、減速、及び巡航の各々について使用されるが、モデル係数は、各段階について独立して決定され得る(及び、ある特定の実施例では動的に精緻化され得る)。クリープとボット速度との間の異なる関係が荷役デバイスの運動段階の少なくとも1つに使用される実施例が想定される。例えば、巡航段階に対して、単純化した関係を使用してもよい。巡航しているとき、荷役デバイスは、実質的に一定のスピードで移動しており、これは、車輪が比較的低い摩擦係数値μで働いている状態で、実質的に一定のスピードを維持するように牽引力が抵抗力を相殺する必要があるだけであることを意味する。したがって、他の運動段階の少なくとも1つに使用される線形関係と比較して、クリープと摩擦係数との間の異なる関係が、巡航段階には適切であり得る。場合によっては、ボット速度は非線形方程式によって表現可能である。上記実施例で説明したように、非線形動的モデルに対して、例えば、カルマンフィルタを実装するなど、異なる手法が実装されてもよい。
【0128】
有効車輪半径が一定であると仮定されることも単一の変数としてパラメータ化されることもなく、むしろ公称半径及び垂直荷重の線形関数、例えば、re=r(1-γFN)として表される実施例も想定され、ここで、rは公称車輪半径であり、reは荷重下の有効車輪半径である。したがって、更なるパラメータ、例えばγがモデルに導入され、これは、荷役デバイスの3つの運動段階すべてにおいて一定であると考慮され得る。これらの実施例では、運動段階の各々について異なるモデルパラメータを維持する必要性が、モデルの推定されたパラメータの変動を低減しようとするそのような有効車輪半径のパラメータ化によってなくなり得る。
【0129】
更に、クリープ値、及びそれに基づく荷役デバイスの運動学的状態を決定するために訓練されたモデルが使用される説明した方法に加えて、荷役デバイスのポジショニングシステムを較正するためのモデルを訓練する方法の実施例が想定される。例えば、そのような方法は、例えば、所定の動きを実行するように構成された複数の訓練用荷役デバイス上に取り付けられた位置センサを使用して記録された車輪速度データに基づいて、複数の訓練用荷役デバイスについて決定された計算されたクリープ値及び/又は対応する運動学的状態の訓練データセットを構築することを含む。訓練データセット(単に「訓練データ」とも呼ばれる)は、クリープ値及び/又は荷役デバイスの対応する運動学的状態の予測を行うために、明示的にそうするようにプログラムされることなく、訓練データに基づいて運動学的モデルを構築するための機械学習アルゴリズムに入力される。例えば、人工ニューラルネットワークは、訓練データに基づいて運動学的モデルを展開するための機械学習アルゴリズムとして使用されてよく、「訓練された」ニューラルネットワークは、運動学的モデルに対応する。次いで、訓練されたモデルは、新しいデータをニューラルネットワークに入力することによって荷役デバイスのポジショニングシステムを較正するために使用されてよく、ニューラルネットワークは、予測クリープ値及び/又はそれに基づく荷役デバイスの運動学的状態を出力する。例えば、荷役デバイスの運動学的状態を決定することは、車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから車輪状態データを取得することと、車輪状態データに基づいて、及び機械学習アルゴリズム(例えば、ニューラルネットワーク)を備える訓練された運動学的モデルを使用して、荷役デバイスの運動学的状態を決定することとを伴い得る。次いで、荷役デバイスの運動学的状態を表す運動学的データが同じ方法で出力され得る。
【0130】
一例として、(構造化)ニューラルネットワークは、
図15に示す、2つの並列サブネットワーク(A及びB)を備えてよく、ここで、xは、荷役デバイスの運動学的状態であり、uは、入力(又は「制御」)ベクトル(例えば、トルク、荷重、角速度値を備える)である。
【0131】
サブネットワークAのアーキテクチャは、任意の数の層及びパラメータによって定義されてよいが、最終層が、状態空間の次元数Nに一致する数Nのパラメータを有するという唯一の制約がある。同じように、サブネットワークBのアーキテクチャは、任意の数の層及びパラメータによって定義されてよいが、最終層が、制御空間の次元数Mに一致する数Mのパラメータを有するという制約がある。
【0132】
そのような定義されたニューラルネットワークは、形式x・=A(x,u)x+B(x,u)uのモデルを提供し、ここで、x・は、運動学的状態ベクトルxの時間導関数である。この運動学的モデルの式は、物理システムの状態の動力学を表す。動的システムが線形かつ時間不変である場合、A及びBは一定である。この場合、式中の積分の項は、各動きで変化し、したがって、A及びBは、時間変化するが、依然として(少なくとも現在の作業点の周りで)線形である(すなわち、現在の状態で線形化される)。これは、A及びBが入力uの関数であるが、一般に現在の状態xの関数でもあり得ることを意味する。連続時間システムでは、所与の時間tにおける出力は、時間tにおける状態に依存し得る。これはモデルの厳密な要件ではなく、一般的な可能性であり、例えば、A及びBは、荷役デバイスが減速しているときと比較して、加速している場合に異なる場合がある。代替として、このシステムの離散時間の実装形態では、モデルは、形式xk+1=A~(xk,uk)xk+B~(xk,uk)ukであってもよく、ここで、システムのサブネットワークを表す行列A~及びB~は、連続時間の実装形態(A及びB)のものとは異なる。
【0133】
これらの実施例では、ニューラルネットワークは、例えば、古典的な勾配ベースのオプティマイザを使用して訓練され、次いで、例えば、荷役デバイスに搭載されたプロセッサによって、離散時間様式で実装され得る。
【0134】
また、任意の1つの実施例に関連して説明された任意の特徴が、単独で又は説明された他の特徴と組み合わせて使用されてよく、また任意の他の実施例の1つ又は複数の特徴又は任意の他の実施例の任意の組合せと組み合わせて使用され得ることも理解されたい。更に、上述していない均等物及び修正物も、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく用いられ得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法であって、
前記荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データを、前記車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得することと、
前記車輪状態データに基づいて、及び訓練されたモデルを使用して、前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値に基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定することと、
前記荷役デバイスの前記運動学的状態を表す運動学的データを出力することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記運動学的状態は、前記荷役デバイスの位置、速度、加速度、ジャーク、又は向きのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記訓練されたモデルは、前記保管システム内で所定の動きを実行するように構成された複数の訓練用荷役デバイス上に取り付けられた位置センサを使用して記録された車輪速度データから決定されたクリープデータに基づいて訓練される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられた公称トルクを表すトルクデータを備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪にかかる公称垂直荷重を表す荷重データを備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記訓練されたモデルは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクトルネットワーク、又はパラメータ化されたモデルのうちの少なくとも1つを備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練されたモデルは、前記パラメータ化されたモデルを備え、前記クリープ値を決定することは、
前記パラメータ化されたモデルを訓練することから決定されたタイヤ係数値を取得することと、
前記タイヤ係数値を、前記取得された車輪状態データと共に前記パラメータ化されたモデルに入力することと、
を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータ化されたモデルは、次式によって表現可能であり、
【数1】
ここで、σは前記クリープ値であり、αは、前記荷役デバイスの車輪の前記タイヤ係数値であり、Tは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられる公称トルクであり、rは、前記車輪の半径であり、Nは、前記車輪にかかる公称垂直荷重である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの軌道段階に対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記軌道段階は、加速段階、減速段階、及び巡航段階のうちの1つを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの積載モードに対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記積載モードは、部分荷重モード、完全荷重モード、及び無荷重モードのうちの1つを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の訓練されたモデルは、それぞれのモデルを訓練することから決定されたそれぞれのタイヤ係数値を有する同じパラメータ化されたモデルを備える、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記保管システムは、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている前記荷役デバイスと、
を備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記荷役デバイス上に取り付けられており、前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を精緻化することを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記運動学的データに基づいて、前記荷役デバイスのためのターゲット位置までの軌道を生成することを更に備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項17】
前記車輪についての総トルク要求を決定するために、前記運動学的データに基づいて、前記車輪に対するトルク要求を表すフィードフォワード信号を補償することを更に備える、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項18】
請求項1
又は2に記載の方法を行うように適応/構成されたプロセッサを備えるデータ処理装置。
【請求項19】
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1
又は2に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項20】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1
又は2に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
保管システムにおける荷役デバイスのためのポジショニングシステムであって、
前記荷役デバイスの複数の車輪のための1つ又は複数のエンコーダと、
前記荷役デバイスの所与の車輪にかかる所与の垂直荷重に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定するための訓練されたモデルを記憶する記憶装置と、
処理ユニットと、
を備え、前記処理ユニットは、
前記荷役デバイスの車輪の垂直荷重値を取得することと、
前記訓練されたモデルの少なくとも1つの係数値を取得することと、ここで、前記係数値は、複数の訓練用荷役デバイスの記録されたクリープデータに基づいて前記訓練されたモデルを訓練することによって取得されており、
前記記憶装置に記憶された前記訓練されたモデルを使用して、前記垂直荷重値及び前記少なくとも1つの係数値に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値と、前記1つ又は複数のエンコーダから取得されたエンコーダデータとに基づいて、前記荷役デバイスの運動学的状態を決定することと、
を行う、ポジショニングシステム。
【請求項22】
前記運動学的状態は、前記保管システムに対する前記荷役デバイスの位置を含む、請求項21に記載のポジショニングシステム。
【請求項23】
前記1つ又は複数のエンコーダは、前記荷役デバイス内に備えられている、請求項21又は22に記載のポジショニングシステム。
【請求項24】
前記処理ユニット及び前記記憶装置は、前記荷役デバイス内に位置付けられている、請求項21
又は22に記載のポジショニングシステム。
【請求項25】
前記ポジショニングシステムは、前記処理ユニット及び前記記憶装置を備えるサーバを備え、前記サーバは、前記エンコーダデータを受信し、前記決定されたクリープ値及び前記荷役デバイスの決定された位置の一方又は両方を送るために、前記荷役デバイスと通信するように構成されている、請求項21
又は22に記載のポジショニングシステム。
【請求項26】
前記荷役デバイスのそれぞれの車輪のための1つ又は複数の力センサを備え、前記処理ユニットは、前記1つ又は複数の力センサのうちの対応する力センサから前記荷役デバイスの前記車輪の前記垂直荷重値を取得するように構成されている、請求項21
又は22に記載のポジショニングシステム。
【請求項27】
請求項21
又は22に記載のポジショニングシステムを備える保管システムであって、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている荷役デバイスと、
を備える、保管システム。
【請求項28】
少なくとも1つの前記荷役デバイスは、1つのグリッド空間を占有する所与の荷役デバイスが、隣接するグリッド空間を占有又は横断する別の荷役デバイスを妨害しないように、前記保管システム内の単一のグリッド空間のみを占有するフットプリントを有する、請求項27に記載の保管システム。
【請求項29】
前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグを備え、前記処理ユニットは、前記荷役デバイス上に取り付けられており、かつ前記1つ又は複数のAIDCタグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定するように構成されている、請求項2
7に記載の保管システム。
【請求項30】
前記荷役デバイスの前記車輪は、それぞれの車輪ハブモータを備える、請求項2
7に記載の保管システム。
【請求項31】
保管システムにおける荷役デバイスであって、前記荷役デバイスは、トラック上でX方向及び/又はY方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されており、
複数の車輪と、
前記荷役デバイスのスリップを管理するように配置されたスリップ制御マネジャと、
を備える、荷役デバイス。
【請求項32】
前記スリップ制御マネジャは、前記複数の車輪のうちの各々の回転スピードを前記荷役デバイスの運動学的状態と比較することによって前記スリップを管理するように配置されている、請求項31に記載の荷役デバイス。
【請求項33】
前記スリップ制御マネジャは、
前記複数の車輪のうちの車輪についてスリップ事象が発生したかどうかを決定することと、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすことと、
を行うように配置されている、請求項32に記載の荷役デバイス。
【請求項34】
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすように更に配置されている、
請求項33に記載の荷役デバイス。
【請求項35】
スリップしていると決定された前記車輪と、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の前記車輪とに適用されるトルク要求の前記低減は同じである、請求項34に記載の荷役デバイス。
【請求項36】
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と異なる仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の増加を引き起こすように更に配置されている、
請求項34又は35に記載の荷役デバイス。
【請求項37】
異なる仮想車軸上の前記車輪に適用されるトルク要求の増加は、スリップしていると決定された前記車輪から除去されたトルク要求に比例する、請求項36に記載の荷役デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
また、任意の1つの実施例に関連して説明された任意の特徴が、単独で又は説明された他の特徴と組み合わせて使用されてよく、また任意の他の実施例の1つ又は複数の特徴又は任意の他の実施例の任意の組合せと組み合わせて使用され得ることも理解されたい。更に、上述していない均等物及び修正物も、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく用いられ得る。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
保管システムにおける荷役デバイスの運動学的状態を決定する方法であって、
前記荷役デバイスの車輪の状態を表す車輪状態データを、前記車輪に通信可能に結合された1つ又は複数のセンサから取得することと、
前記車輪状態データに基づいて、及び訓練されたモデルを使用して、前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値に基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定することと、
前記荷役デバイスの前記運動学的状態を表す運動学的データを出力することと、
を備える、方法。
[C2]
前記運動学的状態は、前記荷役デバイスの位置、速度、加速度、ジャーク、又は向きのうちの少なくとも1つを備える、C1に記載の方法。
[C3]
前記訓練されたモデルは、前記保管システム内で所定の動きを実行するように構成された複数の訓練用荷役デバイス上に取り付けられた位置センサを使用して記録された車輪速度データから決定されたクリープデータに基づいて訓練される、C1又は2に記載の方法。
[C4]
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられた公称トルクを表すトルクデータを備える、C1~3のいずれか一項に記載の方法。
[C5]
前記車輪状態データは、前記荷役デバイスの前記車輪にかかる公称垂直荷重を表す荷重データを備える、C1~4のいずれか一項に記載の方法。
[C6]
前記訓練されたモデルは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクトルネットワーク、又はパラメータ化されたモデルのうちの少なくとも1つを備える、C1~5のいずれか一項に記載の方法。
[C7]
前記訓練されたモデルは、前記パラメータ化されたモデルを備え、前記クリープ値を決定することは、
前記パラメータ化されたモデルを訓練することから決定されたタイヤ係数値を取得することと、
前記タイヤ係数値を、前記取得された車輪状態データと共に前記パラメータ化されたモデルに入力することと、
を備える、C6に記載の方法。
[C8]
前記パラメータ化されたモデルは、次式によって表現可能であり、
【数13】
ここで、σは前記クリープ値であり、αは、前記荷役デバイスの車輪の前記タイヤ係数値であり、Tは、前記荷役デバイスの前記車輪に加えられる公称トルクであり、rは、前記車輪の半径であり、Nは、前記車輪にかかる公称垂直荷重である、C7に記載の方法。
[C9]
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの軌道段階に対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、C1~8のいずれか一項に記載の方法。
[C10]
前記軌道段階は、加速段階、減速段階、及び巡航段階のうちの1つを備える、C9に記載の方法。
[C11]
前記訓練されたモデルは、前記荷役デバイスの積載モードに対応するように、複数の訓練されたモデルから選択される、C1~10のいずれか一項に記載の方法。
[C12]
前記積載モードは、部分荷重モード、完全荷重モード、及び無荷重モードのうちの1つを備える、C11に記載の方法。
[C13]
前記複数の訓練されたモデルは、それぞれのモデルを訓練することから決定されたそれぞれのタイヤ係数値を有する同じパラメータ化されたモデルを備える、C9~12のいずれか一項に記載の方法。
[C14]
前記保管システムは、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている前記荷役デバイスと、
を備える、C1~13のいずれか一項に記載の方法。
[C15]
前記荷役デバイス上に取り付けられており、前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を精緻化することを備える、C14に記載の方法。
[C16]
前記運動学的データに基づいて、前記荷役デバイスのためのターゲット位置までの軌道を生成することを更に備える、C1~15のいずれか一項に記載の方法。
[C17]
前記車輪についての総トルク要求を決定するために、前記運動学的データに基づいて、前記車輪に対するトルク要求を表すフィードフォワード信号を補償することを更に備える、C1~16のいずれか一項に記載の方法。
[C18]
C1~17のいずれか一項に記載の方法を行うように適応/構成されたプロセッサを備えるデータ処理装置。
[C19]
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、C1~17のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータプログラム。
[C20]
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、C1~17のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
[C21]
保管システムにおける荷役デバイスのためのポジショニングシステムであって、
前記荷役デバイスの複数の車輪のための1つ又は複数のエンコーダと、
前記荷役デバイスの所与の車輪にかかる所与の垂直荷重に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定するための訓練されたモデルを記憶する記憶装置と、
処理ユニットと、
を備え、前記処理ユニットは、
前記荷役デバイスの車輪の垂直荷重値を取得することと、
前記訓練されたモデルの少なくとも1つの係数値を取得することと、ここで、前記係数値は、複数の訓練用荷役デバイスの記録されたクリープデータに基づいて前記訓練されたモデルを訓練することによって取得されており、
前記記憶装置に記憶された前記訓練されたモデルを使用して、前記垂直荷重値及び前記少なくとも1つの係数値に少なくとも基づいて前記荷役デバイスのクリープ値を決定することと、
前記クリープ値と、前記1つ又は複数のエンコーダから取得されたエンコーダデータとに基づいて、前記荷役デバイスの運動学的状態を決定することと、
を行う、ポジショニングシステム。
[C22]
前記運動学的状態は、前記保管システムに対する前記荷役デバイスの位置を含む、C21に記載のポジショニングシステム。
[C23]
前記1つ又は複数のエンコーダは、前記荷役デバイス内に備えられている、C21又は22に記載のポジショニングシステム。
[C24]
前記処理ユニット及び前記記憶装置は、前記荷役デバイス内に位置付けられている、C21~23のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
[C25]
前記ポジショニングシステムは、前記処理ユニット及び前記記憶装置を備えるサーバを備え、前記サーバは、前記エンコーダデータを受信し、前記決定されたクリープ値及び前記荷役デバイスの決定された位置の一方又は両方を送るために、前記荷役デバイスと通信するように構成されている、C21~23のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
[C26]
前記荷役デバイスのそれぞれの車輪のための1つ又は複数の力センサを備え、前記処理ユニットは、前記1つ又は複数の力センサのうちの対応する力センサから前記荷役デバイスの前記車輪の前記垂直荷重値を取得するように構成されている、C21~25のいずれか一項に記載のポジショニングシステム。
[C27]
C21~26のいずれか一項に記載のポジショニングシステムを備える保管システムであって、
複数のグリッド空間を備えるグリッドパターンを形成するように、実質的に水平な平面において、X方向に延在する第1のセットの平行なトラック及び前記第1のセットを横断するY方向に延在する第2のセットの平行なトラックと、
前記トラックの下に位置し、各スタックが単一のグリッド空間のフットプリント内に位置するように配置されたコンテナの複数のスタックと、
前記トラック上で前記X方向及び/又は前記Y方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されている荷役デバイスと、
を備える、保管システム。
[C28]
少なくとも1つの前記荷役デバイスは、1つのグリッド空間を占有する所与の荷役デバイスが、隣接するグリッド空間を占有又は横断する別の荷役デバイスを妨害しないように、前記保管システム内の単一のグリッド空間のみを占有するフットプリントを有する、C27に記載の保管システム。
[C29]
前記グリッドパターンにおける所定の地点に位置する1つ又は複数の自動識別及びデータ捕捉(AIDC)タグを備え、前記処理ユニットは、前記荷役デバイス上に取り付けられており、かつ前記1つ又は複数のAIDCタグから符号化データを読み取るように構成されたAIDC機械リーダによって捕捉された自動識別データに基づいて、前記荷役デバイスの前記運動学的状態を決定するように構成されている、C27又は28に記載の保管システム。
[C30]
前記荷役デバイスの前記車輪は、それぞれの車輪ハブモータを備える、C27~29のいずれか一項に記載の保管システム。
[C31]
保管システムにおける荷役デバイスであって、前記荷役デバイスは、トラック上でX方向及び/又はY方向の少なくとも一方に選択的に移動し、かつコンテナを取り扱うように配置されており、
複数の車輪と、
前記荷役デバイスのスリップを管理するように配置されたスリップ制御マネジャと、
を備える、荷役デバイス。
[C32]
前記スリップ制御マネジャは、前記複数の車輪のうちの各々の回転スピードを前記荷役デバイスの運動学的状態と比較することによって前記スリップを管理するように配置されている、C31に記載の荷役デバイス。
[C33]
前記スリップ制御マネジャは、
前記複数の車輪のうちの車輪についてスリップ事象が発生したかどうかを決定することと、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすことと、
を行うように配置されている、C32に記載の荷役デバイス。
[C34]
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の低減を引き起こすように更に配置されている、
C33に記載の荷役デバイス。
[C35]
スリップしていると決定された前記車輪と、スリップしていると決定された前記車輪と同じ仮想車軸上の前記車輪とに適用されるトルク要求の前記低減は同じである、C34に記載の荷役デバイス。
[C36]
前記スリップ制御マネジャは、
スリップ事象が決定されたときに、スリップしていると決定された前記車輪と異なる仮想車軸上の車輪に適用されるトルク要求の増加を引き起こすように更に配置されている、
C34又は35に記載の荷役デバイス。
[C37]
異なる仮想車軸上の前記車輪に適用されるトルク要求の増加は、スリップしていると決定された前記車輪から除去されたトルク要求に比例する、C36に記載の荷役デバイス。
【国際調査報告】