(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】炭素捕捉のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240903BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240903BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240903BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240903BHJP
F01N 3/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B01D53/62
B01D53/78 ZAB
B01D53/96
B01D53/14 210
B01D53/14 220
F01N3/04 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510530
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CA2022000044
(87)【国際公開番号】W WO2023023837
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524064575
【氏名又は名称】エントロピー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イデム、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】スパプ、ティーラデット
(72)【発明者】
【氏名】ナーク - テッテー、ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ムチャン、パイリン
(72)【発明者】
【氏名】ナテウォン、パウエースダ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3G091AB15
3G091BA13
3G091HB01
4D002AA09
4D002AC01
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4D002DA35
4D002EA08
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4D020AA03
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4D020BC01
4D020CB01
4D020DA03
4D020DB07
4D020DB20
(57)【要約】
炭素捕捉のための溶媒組成物が提供される。好ましい実施形態によれば、炭素捕捉に使用される溶媒は、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)のうちの少なくとも2つを含む。本明細書に記載の炭素捕捉溶媒組成物を使用して炭素捕捉を実行する方法も提供される。本明細書に記載の炭素捕捉組成物及び/又は本明細書に記載の炭素捕捉方法を使用して炭素捕捉を実行するための装置も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及び水を含む、溶媒。
【請求項2】
ポリエチレンイミン(PEI)をさらに含む、請求項1に記載の溶媒。
【請求項3】
以下:DEAEが2.0M~4.0Mの範囲のモル濃度で存在する、HMDAが0.1M~1.0Mの範囲のモル濃度で存在する、又はPEIが0.001M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在する、のうちのいずれか1つ以上が存在する請求項1又は2に記載の溶媒。
【請求項4】
前記溶媒の総モル濃度が2.10M~5.5Mの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の溶媒。
【請求項5】
ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ポリエチレンイミン(PEI)及び水から本質的になる、請求項1から4のいずれか一項に記載の溶媒。
【請求項6】
DEAEが3.6Mのモル濃度で存在し、HMDAが0.4Mのモル濃度で存在し、PEIが0.01Mのモル濃度で存在する、請求項5に記載の溶媒。
【請求項7】
以下の特性:160kJ/mol CO
2未満の熱負荷、
【数1】
より大きい初期吸収速度、
【数2】
より大きい初期脱着速度、
【数3】
より大きいサイクル容量、110℃で0のリーン負荷、30℃で10mPa・s未満の粘度、及び室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度、のうちのいずれか1つ以上を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の溶媒。
【請求項8】
以下の特性:138.9kJ/mol CO
2未満の熱負荷、
【数4】
より大きい初期吸収速度、
【数5】
より大きい初期脱着速度、
【数6】
より大きいサイクル容量、110℃で0のリーン負荷、30℃で10mPa・s未満の粘度、及び室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度のうちのいずれか1つ以上を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の溶媒。
【請求項9】
ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)を含み、DEAEが3.6M~4.5Mの範囲のモル濃度で存在し、HMDAが0.15M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在する、溶媒。
【請求項10】
DEAEが3.3M~3.9Mの範囲のモル濃度で存在し、HMDAが0.3M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在し、PEIが0.005M~0.015Mの範囲のモル濃度で存在する、請求項9に記載の溶媒。
【請求項11】
PEIが0.01Mのモル濃度で存在する、請求項9又は10に記載の溶媒。
【請求項12】
ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、
(a)化学式(R
1)(R
2)N(C
nH
2n-OH)(式中、R
1及びR
2は独立して、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、nは1~6の整数である)を有する第三級アミンである、2.0M~4.0Mの範囲のモル濃度の化合物Iと、
(b)化学式NH
2-(C
mH
2m)-NH
2(式中、mは2~10の整数である)を有する2つの第一級アミノ基を含む、0.1M~1.0Mの範囲のモル濃度の化合物IIと、
(c)0.001M~0.5Mの範囲のモル濃度のポリエチレンイミン(PEI)と、
(d)水と
を含む、溶媒。
【請求項13】
化合物Iが、化学式(R
1)(R
2)N(C
nH
2n-OH)(式中、R
1及びR
2は独立して、2~4の炭素数を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である)を有する第三級アミンである、請求項12に記載の溶媒。
【請求項14】
化合物Iが、化学式(R
1)(R
2)N(C
nH
2n-OH)(式中、R
1及びR
2は独立して、1~6の炭素数を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、nは2~4の整数である)を有する第三級アミンである、請求項12又は13に記載の溶媒。
【請求項15】
化合物IIが、化学式NH
2-(C
mH
2m)-NH
2(式中、mは4~8の整数である)を有する2つの第一級アミノ基を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の溶媒。
【請求項16】
炭素捕捉を行う方法であって、
(a)煙道ガス排出源から二酸化炭素を含む煙道ガスを収集するステップと、
(b)前記収集された煙道ガスを、前記煙道ガス中に存在する前記二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、請求項1から15のいずれか一項に記載の溶媒に曝露するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
煙道ガス排出源から二酸化炭素を含む煙道ガスを収集し、前記収集された煙道ガスを、前記煙道ガス中に存在する前記二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、前記溶媒に曝露することによって炭素捕捉を実行するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の溶媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、炭素捕捉のための方法及び組成物に関し、より具体的には、炭素捕捉に使用される様々な溶媒及びそのような溶媒を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
化学反応を伴うアミン水溶液を使用する炭素捕捉は、工業プロセスから放出される希薄かつ低圧の煙道ガスを処理するために適合されている。しかしながら、現在のアミン系の炭素捕捉プロセスにはいくつかの欠点がある。1つの欠点は、CO2の高い吸収及び脱着速度を提供することができないことである。別の欠点は、非常に小さい熱負荷を消費しながら高いCO2捕捉能力を達成することができないことである。他の欠点は、使用されるアミンの種類に特有である。
【0003】
例えば、モノエタノールアミン(MEA)などの第一級アミンは、その破壊プロセスにおいて高い再生エネルギーを必要とするCO2と非常に安定なカルバマートを形成する。別の例として、ジエタノールアミン(DEA)などの第二級アミンは、化石燃料燃焼煙道ガス中の一般的な不純物であるNOXと直接反応し、オフガスと共に潜在的に有毒なニトロソアミンを排出することがある。メチルジエタノールアミンなどの第三級アミンは、他のアミンと比較して再生に必要な熱が少ないが、依然としてCO2との反応速度が遅いため、速度論に関して捕捉性能に影響を及ぼす。ピペラジン(PZ)などのポリアミンは、ニトロソアミン排出物を形成し得る第二級アミンであるため、脅威をもたらす。これらの欠点は全て、炭素捕捉プロセスを妨げる可能性がある。
【0004】
さらに、劣化によるアミン損失、オフガス排出、アミン揮発、アミン腐食、及びアミン発泡などの問題は、しばしば炭素捕捉プロセスの課題となる。これらの動作上の問題は、捕捉プラントが元の設計条件及び性能目標を達成するのを妨げる可能性がある。分解生成物の排出は、予定外の停止時間の可能性を生じさせたり、プラントが動作を継続するには毒性が強すぎるためにプラントを不必要に停止させたりすることによって、アミンベースのCO2捕捉プラント自体を危険にさらす可能性がある。
【0005】
したがって、特に工業プロセスから放出される希薄かつ低圧の煙道ガスを処理するための、炭素捕捉におけるアミン及び/又はアミン系溶液の使用に関連する効率を改善する必要がある。特に、以下の望ましいCO2捕捉特性:高吸収、高サイクル容量、高速反応速度論、低腐食、低分解、及び溶媒再生のための満足できる熱負荷要件のうちの1つ以上を有する新しいアミン溶媒を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、炭素捕捉のための方法及び組成物が記載される。いくつかの実施形態では、方法及び組成物は、炭化水素燃焼エミッタの排気流から二酸化炭素を捕捉するために適用され得る。
【0007】
本発明の一態様によれば、ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及び水を含む溶媒が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、DEAE、HMDA、及びポリエチレンイミン(PEI)を含む溶媒が提供される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、DEAEは、2.0M~4.0Mの範囲のモル濃度で存在する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、HMDAは、0.1M~1.0Mの範囲のモル濃度で存在する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、PEIは、0.001M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒の総モル濃度は、2.10M~5.5Mの範囲である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、及び水から本質的になる。
【0014】
最も好ましくは、本発明において、DEAEは3.6Mのモル濃度で存在し、HMDAは0.4Mのモル濃度で存在し、PEIは0.01Mのモル濃度で存在する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、160kJ/mol CO2未満の熱負荷を有する。
【0016】
より好ましくは、本発明において、溶媒は、138.9kJ/mol CO2未満の熱負荷を有する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、
【数1】
より大きい初期吸収速度を有する。
【0018】
より好ましくは、本発明において、溶媒は、
【数2】
より大きい初期吸収速度を有する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、
【数3】
より大きい初期脱着速度を有する。
【0020】
より好ましくは、本発明において、溶媒は、
【数4】
より大きい初期脱着速度を有する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、
【数5】
より大きいサイクル容量を有する。
【0022】
より好ましくは、本発明において、溶媒は、
【数6】
より大きいサイクル容量を有する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、110℃で0のリーン負荷(lean loading)を有する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、30℃で10mPa・s未満の粘度を有する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度を有する。
【0026】
本発明の一態様によれば、ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、DEAE、HMDA、及びPEIを含み、DEAEが3.6M~4.5Mの範囲のモル濃度で存在し、HMDAが0.15M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在する、溶媒が提供される。
【0027】
より好ましくは、本発明において、DEAEは3.3M~3.9Mの範囲のモル濃度で存在し、HMDAは0.3M~0.5Mの範囲のモル濃度で存在し、PEIは0.005M~0.015Mの範囲のモル濃度で存在する。
【0028】
最も好ましくは、本発明では、PEIは0.01Mのモル濃度で存在する。
【0029】
本発明の一態様によれば、炭素捕捉を実行する方法であって、煙道ガス排出源から二酸化炭素を含む煙道ガスを収集するステップと、収集された煙道ガスを、当該煙道ガス中に存在する当該二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、本発明の好ましい実施形態による溶媒に曝露するステップとを含む、方法が提供される。
【0030】
本発明の一態様によれば、炭素捕捉を実行する方法を実行するように構成された構成要素を含む炭素捕捉を実行するための装置であって、煙道ガス排出源からの二酸化炭素を含む煙道ガスを収集するステップと、収集された煙道ガスを、当該煙道ガス中に存在する当該二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、本発明の好ましい実施形態による溶媒に曝露するステップとを含む装置が提供される。
【0031】
本発明の一態様によれば、炭素捕捉を実行する方法を実行するように構成された構成要素を含む炭素捕捉を実行するためのシステムであって、煙道ガス排出源から二酸化炭素を含む煙道ガスを収集するステップと、収集された煙道ガスを、当該煙道ガス中に存在する当該二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、本発明の好ましい実施形態による溶媒に曝露するステップとを含む、システムが提供される。
【0032】
本発明の一態様によれば、炭素捕捉を実行するための本発明の好ましい実施形態による溶媒の使用が提供される。
【0033】
本発明の一態様によれば、ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するための溶媒であって、
(a)化学式(R1)(R2)N(CnH2n-OH)(式中、R1及びR2は独立して、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、nは1~6の整数である)を有する第三級アミンである、2.0M~4.0Mの範囲のモル濃度の化合物Iと、
(b)化学式NH2-(CmH2m)-NH2(式中、mは2~10の整数である)を有する2つの第一級アミノ基を含む、0.1M~1.0Mの範囲のモル濃度の化合物IIと、
(c)0.001M~0.5Mの範囲のモル濃度のポリエチレンイミン(PEI)と、
(d)水と
を含む、溶媒が提供される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物Iは、化学式(R1)(R2)N(CnH2n-OH)(式中、R1及びR2は独立して、2~4の炭素数を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である)を有する第三級アミンである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物Iは、化学式(R1)(R2)N(CnH2n-OH)(式中、R1及びR2は独立して、1~6の炭素数を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、nは2~4の整数である)を有する第三級アミンである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物IIは、化学式NH2-(CmH2m)-NH2(式中、mは4~8の整数である)を有する2つの第一級アミノ基を含む。
【0037】
本発明の一態様によれば、ガス状混合物から二酸化炭素を抽出するために使用することができる溶媒が提供される。本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、及び水の1つ以上を含む。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、DEAEのモル濃度は2.0M~4.0Mの範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、HMDAのモル濃度は0.1M~1.0Mの範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、PEIのモル濃度は0.001M~0.5Mの範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、溶媒の総モル濃度は、2.101M~5.5Mの範囲である。当業者が理解するように、溶媒の総モル濃度は、水を除いて溶媒を形成する化合物の濃度を指す。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、溶媒は、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、及び水から本質的になる。いくつかの好ましい実施形態では、DEAEのモル濃度は3.6Mであり、HMDAのモル濃度は0.4Mであり、PEIのモル濃度は0.01Mである。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、PEIは分岐鎖PEIである。本発明の好ましい実施形態によれば、PEIのモル質量は、400g/mol~1200g/molの範囲である。好ましくは、PEIのモル質量は、600g/mol~1000g/molの範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、PEIのモル質量は約800g/molである。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、PEIは、CAS登録番号CAS#25987-06-8を有する。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、溶媒は、30℃で10mPa・s未満の粘度を有する。いくつかの好ましい実施形態では、溶媒は、室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度を有する。
【0043】
有利には、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、MEAの熱負荷よりも約3.85倍低い熱負荷を有し得る。例えば、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、約160kJ/mol CO2(例えば、約138.9kJ/mol CO2未満)未満の熱負荷を有し得る。これにより、溶媒を使用する炭素捕捉方法、システム及び/又は装置のエネルギー投入コスト及び運転コストを大幅に削減することができる。
【0044】
有利には、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、MEAの初期吸収速度よりも約37%高い初期吸収速度を有し得る。例えば、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、
【数7】
より大きい初期吸収速度を有し得る。これにより、溶媒を使用する炭素捕捉システム及び/又は装置のサイズ及び/又はコストを低減することができる。
【0045】
有利には、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、MEAの初期脱着速度よりも約3.85倍大きい初期脱着速度を有し得る。例えば、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、
【数8】
より大きい初期脱着速度を有し得る。これにより、溶媒を使用する炭素捕捉システム及び/又は装置のサイズ及び/又はコストを低減することができる。
【0046】
有利には、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、MEAのサイクル容量よりも85%高いサイクル容量を有し得る。例えば、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、
【数9】
より大きいサイクル容量を有し得る。これにより、炭素捕捉プロセスに必要な溶媒の体積を減少させ、溶媒を使用する炭素捕捉システム及び/又は装置のサイズ及び/又はコストを減少させることができる。
【0047】
有利には、溶媒のいくつかの好ましい実施形態は、110℃で約0のリーン負荷を有し得る。これは、より低い相対温度で捕捉されたCO2のほぼ完全な放出を達成するのに役立つことができ、これは、溶媒を使用するエネルギー要求システム及び/又は装置をさらに低減することが予想される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、以下の特性:160kJ/mol CO
2未満の熱負荷、
【数10】
より大きい初期吸収速度、
【数11】
より大きい初期脱着速度、
【数12】
より大きいサイクル容量、110℃で0のリーン負荷、30℃で10mPa・s未満の粘度、及び室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度、のうちのいずれか1つ以上を有し得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、以下の特性:138.9kJ/mol CO
2未満の熱負荷、
【数13】
より大きい初期吸収速度、
【数14】
より大きい初期脱着速度、
【数15】
より大きいサイクル容量、110℃で0のリーン負荷、30℃で10mPa・s未満の粘度、及び室温で9.5~11.0pKaの範囲のアルカリ度、のうちのいずれか1つ以上を有し得る。
【0050】
本発明の別の態様は、炭素捕捉を実行する方法に関する。この方法は、煙道ガス排出源から煙道ガスを収集することと、収集された煙道ガスを本明細書に記載の溶媒と反応させることとを含む。
【0051】
本発明の他の態様は、炭素捕捉を実行するためのシステムに関する。好ましくは、そのようなシステムは、本明細書に記載の溶媒を使用して炭素捕捉を実行する方法を実行するように構成された構成要素を含む。本発明の他の態様は、炭素捕捉を実行するための装置に関する。好ましくは、そのような装置は、本明細書に記載の溶媒を使用して炭素捕捉を実行する方法を実行するように構成された構成要素を含む。
【0052】
本発明の別の態様は、煙道ガス排出源から二酸化炭素を含む煙道ガスを収集し、収集された煙道ガスを、当該煙道ガス中に存在する当該二酸化炭素ガスの少なくとも一部を除去するのに十分な期間、当該溶媒に曝露することによって炭素捕捉を実行するための、本発明の好ましい実施形態による溶媒の使用に関する。
【0053】
本発明のさらなる態様は、以下の説明を考慮すると明らかになるであろう。
本発明の実施形態の特徴及び利点は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による炭素捕捉の方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の様々な例示的な溶媒の吸収及び脱着特性を測定するために本発明者らによって使用される実験設定を示す図である。
【
図3A】
図2の実験設定を用いて本発明者らが実行した実験によって生成された5M MEA溶媒の吸収プロファイルを示す図である。
【
図3B】
図2の実験設定を用いて本発明者らが実行した実験によって生成された5M MEA溶媒の脱着プロファイルを示す図である。
【
図3C】
図2の実験設定を用いて本発明者らが実行した実験によって生成された3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の吸収プロファイルを示す図である。
【
図3D】
図2の実験設定を使用して本発明者らが実行した実験によって生成された3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の脱着プロファイルを示す図である。
【
図4】ベースラインMEA溶媒と比較した、本発明の様々な例示的溶媒の吸収性能及び脱着性能のプロットである。
【
図5】本発明の様々な例示的溶媒のアミン分解及びNH
3排出を評価するために使用される実験設定を示す図である。
【
図6】本発明の様々な例示的溶媒の実験的に測定されたNH
3排出プロファイルを示す図である。
【
図7】180時間分解後の様々な溶媒の時間平均NH
3排出量を示す図である。
【
図8】本発明の様々な例示的溶媒の実験的に測定された分解対時間プロファイルを示す図である。
【
図9】本発明の様々な例示的溶媒の分解速度を比較する棒グラフである。
【
図10A】110℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEA溶媒の温度プロファイルの比較を示すグラフである。
【
図10B】120℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEA溶媒の温度プロファイルの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下の説明及びそこに記載される実施形態は、本発明の原理の特定の実施形態の例(複数可)の例示として提供される。本発明の以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、限定ではなく説明の目的で、多数の例が提供され、特定の詳細が記載される。当業者は、周知の方法、手順及び/又は構成要素が、問題の発明に焦点を合わせて説明されないことを容易に理解するであろう。したがって、場合によっては、本発明を不明瞭にしないために、特定の構造及び技術は詳細に記載又は示されていない。
【0056】
炭素捕捉プロセスにおけるアミンの性能(例えば、アミン分解に対する耐性及びその結果生じる排出)は、アミンの官能基及びそれらがアミン構造中にどのように配置されるかに大きく依存し得ることが判明した。異なるアミン中の異なる官能基の化学構造的位置及びCO2吸収及び脱着速度、CO2サイクル容量、熱負荷、アミン分解、オフガス排出(具体的にはNH3)、腐食及び発泡に対するそれらの効果を記録し、評価した。所与の溶媒中の成分の相互作用は、溶媒の全体的な性能に影響を及ぼし得ることに留意されたい。炭素捕捉に使用される既知の溶媒よりも優れた新規溶媒系を開発するために、可能性のある相互作用に基づく所与の炭素捕捉溶媒の様々な成分の慎重な選択を試みた。
【0057】
上記の知識に照らして、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、本発明者らは、炭素捕捉用途で使用される従来の溶媒(例えば5M MEA)よりも実質的に優れた溶媒組成物を実行するために、配合し、減量した。文脈がそうでないことを指示しない限り、そのような溶媒組成物は、本明細書において溶媒と称され得る。本明細書で使用される場合、溶媒という用語は、化合物、又は複数の化合物のブレンドもしくは混合物(すなわち、「溶媒ブレンド」もしくは「溶媒混合物」)であり得る。本明細書に記載の炭素捕捉溶媒は、典型的には、本明細書で「化合物I」と呼ばれ得る第1の化合物及び/又は本明細書で「化合物II」と呼ばれ得る第2の化合物を含む。当業者はまた、溶媒が液体、より好ましくは均質な液体を指すことを意味することを理解するであろう。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物Iは、化学式(R1)(R2)N(CnH2n-OH)(式中、R1及びR2は独立して、1~6、好ましくは2~4の炭素数を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、nは1~6、好ましくは2~4の整数である)を有する第三級アミンである。本発明の好ましい実施形態によれば、化合物Iは、例えば、ジエチルアミノエタノールであり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ジエチルアミノエタノール」又は「DEAE」という用語は、そのアミノ窒素が2個のエチル基及び1個のエチル-アミノ基に結合している第三級アミンを指す。具体的には、2つのエチル置換基は、分子のアミノ窒素に追加の電子密度を提供する電子供与特性を有する。アミノ基反応中心上の電子が豊富であると、CO2及びアミンの反応性を高めることができる。したがって、DEAEのアミノ窒素に供給される追加の電子は、CO2とのその反応吸収速度を増加させる。有利には、DEAEの吸収速度は、分子がより弱い電子供与性メチル置換基のみを含有するMDEAなどの従来の第三級アミンの吸収速度よりも速い。
【0060】
有利には、DEAEはまた、速いCO2脱着速度を有する。速い脱着速度はまた、アミン構造上の2つのエチル置換基に起因し得る。DEAEは第三級アミンであるため、ビカルボナート(HCO3
-)及びカルボナート(CO3
2-)は吸収反応からのみ形成される。2つのアニオン性生成物の負電荷のために、それらはまた、溶液中でも生成されたプロトン化アミンにも引き付けられる。このような引力は、アミンの脱着能力を決定し、帯電した化学種間の静電引力が弱いほど、脱着速度が良好かつ速くなる。DEAEの場合、電子供与特性を有する2つのエチル置換基の存在は、イオン引力を弱める。2つのエチル置換基によってプロトン化アミンの窒素に供給された電子は、HCO3
-及びCO3
2を反発させる。反発は、2つのイオン種の分子破壊をもたらし、その後CO2を放出する。対照的に、MDEAなどの従来の第三級アミンは、そのプロトン化構成成分と2つのカルボナートとの間の引力を弱める同じ能力を有さない(すなわち、メチル基が窒素に同じ電子密度をあまり効率的に提供することができないために、脱着プロセスはあまり効果的でない)。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物IIは、化学式NH2-(CmH2m)-NH2(式中、mは2~10、好ましくは4~8の整数である)を含有する2つの第一級アミノ基を含有する。本発明の好ましい実施形態によれば、化合物IIは、例えば、ヘキサメチレンジアミンであり得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ヘキサメチレンジアミン」又は「HMDA」という用語は、その分子が6個の炭素によって互いに接続された2つの第一級アミノ基を含むジアミンを指す。HMDA構造中の両方の第一級アミノ基は、CO2吸収反応が起こるための最大2つの活性部位を提供することができる。これはまた、1分子のHMDAが最大2分子のCO2をとることができることを意味する。MEAなどの従来の第一級アミンと比較して、MEA分子上の反応の反応部位の数へのCO2アクセスは1つに制限され、したがって吸収反応は1分子のCO2あたり1分子のMEAベースでのみ起こる。したがって、HMDAは、MEAから得られたものからサイクルあたりのCO2吸収量を増加させるのに役立つ。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に記載の炭素捕捉溶媒はまた、上記の化合物I及び/又は化合物IIに加えて1つ以上の追加の化合物を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の炭素捕捉溶媒は、ポリエチレンイミンを含み得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレンイミン」又は「PEI」という用語は、その構造が(a)分岐鎖ポリマー構造に包まれた第一級、第二級及び第三級アミンの複数の基、(b)分岐鎖ポリマー構造に包まれた第一級及び第三級アミンの複数の基、又は(c)直鎖ポリマー構造中の第二級アミンの複数の基を含有するポリマーアミンを指す。本発明のいくつかの実施形態では、第一級、第二級、第三級アミノ基の全てを有する分岐鎖ポリエチレンイミンが好ましい。PEIの吸収特性は、その第一級及び第二級アミノ基から利益を得るが、第二級及び第三級アミノ基はCO2の脱着を促進する。本発明の好ましい実施形態によれば、PEIは、吸収反応においてCO2に対して親和性を有する最大15個の活性アミノ基を有する。これは、PEIのアミン1分子当たりに捕捉されるCO2量が、CO2容量がそれぞれ0.5及び1に制限されることが知られているMEA及びMDEAのような従来のアミンのCO2量をはるかに超えることができることを意味する。したがって、PEIのCO2捕捉能力は、単一アミンのCO2捕捉能力よりも数倍大きくなり得る。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、炭素捕捉溶媒は、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)のうちの1つ以上を含む。例えば、炭素捕捉溶媒ブレンドは、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)のうちの1つ以上を含む水溶液であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、溶媒は、2.0M~4.0M(例えば、2.0M、2.05M、2.10M、2.15M、2.20M、2.25M、2.30M、2.35M、2.40M、2.45M、2.50M、2.55M、2.60M、2.65M、2.70M、2.75M、2.80M、2.85M、2.90M、2.95M、3.00M、3.05M、3.10M、3.15M、3.20M、3.25M、3.30M、3.35M、3.40M、3.45M、3.50M、3.55M、3.60M、3.65M、3.70M、3.75M、3.80M、3.85M、3.90M、3.95M、4.00M、又はそれらの間の任意の値)の範囲のモル濃度のDEAEを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、溶媒は、0.10M~1.00M(例えば、0.10M、0.15M、0.20M、0.25M、0.30M、0.35M、0.40M、0.45M、0.50M、0.55M、0.60M、0.65M、0.70M、0.75M、0.80M、0.85M、0.90M、0.95M、1.00M、又はそれらの間の任意の値)の範囲のモル濃度のHMDAを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、溶媒は、0.005M~0.50M(例えば、0.005M、0.01M、0.015M、0.02M、0.025M、0.03M、0.035M、0.04M、0.045M、0.05M、0.10M、0.15M、0.20M、0.25M、0.30M、0.35M、0.40M、0.45M、0.50M、又はそれらの間の任意の値)の範囲のモル濃度のPEIを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、溶媒は、約750Da~約850Da(例えば、800Da)の分子量を有するPEIを含む。いくつかの実施形態では、溶媒中のPEIの繰り返し単位の数は、約1.5である。場合によっては、PEIのモル質量が高すぎると、溶媒が粘性になりすぎ、場合によっては炭素捕捉用途に最適でなくなる可能性がある。
【0070】
いくつかの実施形態では、溶媒は、5.5M以下の総モル濃度を有する(すなわち、それを超えると沈殿の問題及び相分離の問題が発生する可能性がある)。いくつかの実施形態では、溶媒は、約4.0M(例えば、±0.01M以内)の総モル濃度を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、3.6M DEAE、0.4M HMDA、及び0.01M PEI(例えば、DEAE、HMDA及びPEIの各々について±0.001M以内)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、溶媒は、110℃で約0のリーン負荷を有する(すなわち、0に近いリーン負荷を達成しながら、溶媒を比較的低い温度で使用できることを意味する)。
【0072】
いくつかの実施形態では、溶媒は、30℃で10mPa・s未満(例えば、30℃で9.5mPa・s、9.0mPa・s、8.5mPa・s、8.0mPa・s、7.5mPa・s、7.0mPa・s、6.5mPa・s、6.0mPa・s、5.5mPa・s、5.0mPa・s、4.5mPa・s、4.0mPa・s、3.5mPa・s、3.0mPa・s、2.5mPa・s、2.0mPa・s、1.5mPa・s、1.0mPa・s、又はそれらの間の任意の値)の粘度を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、溶媒は、室温で9.5~11.0pKaの範囲(例えば、室温で9.55pKa、9.60pKa、9.65pKa、9.70pKa、9.75pKa、9.80pKa、9.85pKa、9.90pKa、9.95pKa、10.00pKa、10.05pKa、10.10pKa、10.15pKa、10.20pKa、10.25pKa、10.30pKa、10.35pKa、10.40pKa、10.45pKa、10.50pKa、10.55pKa、10.60pKa、10.65pKa、10.70pKa、10.75pKa、10.80pKa、10.85pKa、10.90pKa、10.95pKa、又はそれらの間の任意の値)のアルカリ度を有する。
【0074】
窒素反応部位の周りの電子密度を増加させる官能基は、CO2吸収速度を増加させることができることに留意されたい。場合によっては、利用可能な窒素反応部位の数が増加したため、複数のアミン基を有するアミンもCO2吸収速度を増加させることが認められた。さらに、アミノ基の数が多いと、アミンのCO2吸収能力が増加することが認められた。この知識に基づいて、溶媒ブレンド中にHMDAなどのジアミンを含めると、速いCO2吸収速度論の利点を提供することができると評価された。
【0075】
驚くべきことに、予想外にも、複数のアミンポリマーであるPEIが、溶媒ブレンドに含まれる場合、炭素捕捉及び隔離に使用するための溶媒品質を実質的に改善することが発見された。本発明の好ましい実施形態によれば、約15個のアミン基を有する分岐鎖PEIは、溶媒ブレンドのCO2吸収速度論及びCO2担持能力を増加させた。PEIは非常に粘性の高いアミンであり、好ましくは約0.3M以下の濃度で使用することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒ブレンドの脱着態様に取り組むために、脱着能力が高い成分を溶媒に組み込んだ。一般的に高い脱着性能を有することが知られている第三級アミンは、中心窒素原子上に水素原子が存在しないため、吸収性能が低いことが認められた。これを考慮して、その構造が従来の第三級アミンよりも速くCO2を吸収することを可能にすることができる第三級アミンを溶媒に組み込んだ。中心窒素原子上に置換された2つのエチル基の存在は、その電子密度、したがってCO2に対するその反応性を増加させることが判明した。これを達成するために、非常に高い剥離能力及び適切な構造を有する化合物であるDEAEを溶媒ブレンドの一部として組み込んだ。一つにはその比較的粘性が低い性質のために、DEAEを比較的高濃度で使用して、その固有の特性に基づいて混合物全体に相乗的利益を提供することができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に記載の溶媒は、炭素捕捉プロセスで使用される従来の溶媒よりも改善された性能を提供する。例えば、本明細書に記載のいくつかの溶媒ブレンドは、従来のMEA溶媒よりも最大約37%高い初期CO2吸収速度を提供する(例えば、以下に記載される溶媒23は、5M MEAよりも高い初期CO2吸収速度を有した)。別の例として、本明細書に記載のいくつかの溶媒ブレンドは、従来のMEA溶媒の初期CO2脱着速度よりも最大約3.85倍高い初期CO2脱着速度を提供する。別の例として、本明細書に記載のいくつかの溶媒ブレンドは、従来のMEA溶媒よりも最大約85%高いサイクル容量を提供する。別の例として、本明細書に記載のいくつかの溶媒ブレンドは、従来のMEA溶媒よりもはるかに低いNH3排出速度を有する。
【0078】
本明細書に記載の好ましい溶媒によって提供される他の追加の非限定的な利点は、他の既知の組成物の特定の特性を参照して以下により詳細に記載される。
・HMDAがその混合物において遭遇する溶解度の問題を解決し、それによってPZがより多くのCO2を吸収するためのモル濃度を広げるのに役立つHMDA-PZ溶媒と比較して、本明細書に記載の溶媒は、促進剤としてHMDAを使用し、それによって吸収速度を増加させる。
・DEAEを促進剤として使用した他の溶媒配合物と比較して、DEAEを本明細書に記載の溶媒ブレンドの主成分として使用して、CO2取り込み容量を増加させ、脱着性能を高めて、低温で0に近いリーン負荷を達成した。
・DEAEが果たす役割が明確に定義されていない他の溶媒配合物と比較して、本明細書に記載の溶媒中のDEAEの役割は、CO2取り込み容量を増加させ、粘度低下剤として作用し、優れた脱着性能を提供して、低温で0に近いリーン負荷を達成する役割を果たす。
・吸収プロセスが1bar以上で提供されること、及び/又は脱着プロセスが0.01bar以上で提供されることを必要とする他の溶媒配合物(すなわち、他の溶媒配合物は、加圧CO2捕捉システムを必要とし得る)と比較して、本明細書に記載の溶媒は、大気圧及び加圧CO2吸収システムの両方で使用することができる。
・CO2取り込み速度を増加させるための促進剤としてDEAEを使用した他の溶媒配合物(例えば、DEAE、PZ又はその誘導体、及びアルカリ塩を含む溶媒組成物)と比較して、本明細書に記載の溶媒は、それらの固有の特性に基づいて混合物全体に相乗的利益を提供するHMDA及び/又はPEIを含み得る(すなわち、従来の溶媒混合物に対するDEAEの寄与、ならびに他の成分、PZ及び/又はアルカリ塩とのその相互作用は、従来使用されているものとは全く異なる2つの溶媒を含有する本明細書に記載の溶媒混合物におけるものとは異なる)。
【0079】
HMDAは炭素捕捉に関連する用途での使用が提案されているが、既存の技術は、固体吸着剤と組み合わせてHMDAを使用すること、二相洗浄液中でHMDAを使用すること、及びHMDAをクラスタ安定剤(cluster stabilizer)として使用することに限定されている。
【0080】
PEIは、炭素捕捉に関連する用途での使用が提案されているが、既存の技術は、CO2吸着のためのアミン固体吸着剤におけるPEIの使用に限定されている(例えば、炭素捕捉層の一部としてPEIを使用し、アミンが酸化グラフェン又は非多孔質炭素などの固体材料に官能化される)。
【0081】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の溶媒を使用する炭素捕捉の方法を提供する。
図1は、好ましい実施形態による炭素捕捉を実行する方法100を示すフローチャートである。方法100は、ステップ1000で開始し、そこで煙道ガスが1つ以上のCO
2源(例えば、産業施設、プラント、機械、エンジンなど)から収集される。煙道ガスは、ステップ1000において任意の適切な方法を使用して収集することができる。ステップ1000で煙道ガスを収集した後、方法100はステップ1100に進む。ステップ1100において、溶媒を収集された煙道ガスと反応させて、CO
2を煙道ガスの残りから分離する。溶媒は、本発明による好ましい溶媒のいずれか1つであると理解される。いくつかの実施形態では、ステップ1100は、収集された煙道ガスを、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)のうちの1つ以上を含む溶媒ブレンドと反応させることを含む。いくつかの実施形態では、ステップ1100は、収集された煙道ガスを、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)を含む溶媒ブレンドと反応させることを含む。いくつかの実施形態では、ステップ1100は、収集された煙道ガスを、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及びポリエチレンイミン(PEI)を含む水溶液と反応させることを含む。ステップ1100は、収集された煙道ガスを、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、及び/又はポリエチレンイミン(PEI)を含む溶媒と反応させることを含むことができ、各化合物は任意の適切な濃度(例えば、本明細書に記載の任意の濃度)を有することができる。
【0082】
ステップ1100で収集された煙道ガスを溶媒と反応させた後、方法100は、いくつかの実施形態では、以下の任意選択のステップ(図示せず):捕捉されたCO2をリッチ溶媒から剥離除去することによって溶媒ブレンドを再生するステップ、清浄な煙道ガスを大気中に放出するステップ、剥離されたCO2を地層に注入するステップなどのうちの1つ以上に進むことができる。
【0083】
本発明の他の態様は、上述の種類の炭素捕捉方法を実施するように構成され得るシステム及び/又は装置を含む。
【0084】
上記の例示的な態様に加えて、本発明を以下の例でさらに説明するが、これらは本発明の理解を助けるために記載され、その後の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を決して限定すると解釈されるべきではない。
【0085】
例
炭素捕捉プロセスで使用するための異なる溶媒の実行可能性を評価した。実験では、所定質量のアミン/アミン類を脱イオン水と混合することによって、様々なアミン水溶液を所望の条件に調製した。アミン/アミン類は、以下の化合物:2-ジエチルアミノエタノール(DEAE)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ポリエチレンイミン(PEI、分岐鎖)、2-ジメチルアミノエタノール(DMAE)、及びモノエタノールアミン(MEA)の1つ以上を含んでいた。
【0086】
実験では、1M塩酸(HCl、Fisher Chemical)をメチルオレンジを指示薬として滴定に使用して、アミン溶液の濃度及び溶液のCO2負荷を確認した。実験では、硫酸(H2SO4、>67%、Fisher Chemical)を使用して、アミン分解反応から放出されたオフガス中のNH3を収集するためのインピンジャー溶液を調製した。100% CO2、100% O2、空気、及び100% N2の研究グレードは全て工業グレードであり、Linde(Regina、Saskatchewan、カナダ)から供給された。実験で使用された所望の供給ガス濃度は、質量流量計(Cole-Parmer、カナダ)によって調整及び制御された、そのような実験に必要な個々のガスの所定の体積流量を混合することによって本発明者らによって得られた。混合ガス流中の全ての成分の最終濃度は、赤外線ベースのマルチガス分析器(Nova Analytical Systems、カナダ)を使用して本発明者らによって確認された。
【0087】
実験で使用した溶媒の組成を以下の表1に示す:
【表1】
【0088】
例1-吸収実験
溶媒のCO
2吸収速度を評価し、表1に列挙した。
図2に示す装置を用いて実験を行い、CO
2吸収速度を評価した。装置は、中央首部に設置された凝縮器、アミン溶液温度測定のための一方の首部の温度計、及びガスを供給するための他方の首部のガス分散管を備えた3つ口丸底フラスコを有する。
【0089】
各吸収実験の開始時に、アミン溶液が40±℃の温度に達するように、フラスコに含有される150mlの調製アミン溶液を油浴に完全に浸漬した。次いで、ガス(4% CO2及び96% N2)を、300ml/分(±2の精度)の一定流量でガス分散管を通して溶液にバブリングした。次いで、試料を最初の1時間は10分の一定間隔で採取し、次いで9時間の最後まで30分間隔で採取した。9時間目に記録された最終負荷をリッチ負荷(rich loading)とした。試料を、各期間におけるCO2負荷を得るためにChittick装置を使用して分析し、CO2負荷対時間のプロットをデータに基づいて生成した。
【0090】
吸収プロファイルの線形部分の勾配を使用して初期吸収速度(mol CO
2/溶液のL)を確立し、これは本質的に勾配に総アミン濃度を乗算したものである。初期吸収速度は、勾配にアミン濃度を乗算することにより計算される。例えば、5M MEAの吸収プロファイルを
図3Aに示し、そのような溶液の初期吸収速度を以下の式(1)に示すように計算する。
【数16】
【0091】
様々な異なる溶媒のCO2吸収速度及びリッチ負荷を以下の表2に列挙する。
【0092】
例2-脱着実験
溶媒のCO
2脱着速度も評価し、表1に列挙した。脱着実験では、吸収実験から得られたリッチアミン溶液から既知の体積(76ml)を測定した。吸収実験に使用したのと同じ設定をこの実験に使用した。しかし、この実験では、
図1に示すガス分散管を取り外し、首部を密封した。脱着実験の開始時に、フラスコを予熱した油浴に完全に浸漬し、110±2℃の脱着温度に到達させた。加熱時間は約5分であった。約4、5、7、9、12及び20分でフラスコから試料を採取した。その後、110℃で平衡に達するまで10分間隔で試料を採取し、リーン負荷を得た。
【0093】
除去可能なCO
2の大部分がその部分内で除去されたため、脱着の線形部分の勾配を決定することによって初期脱着速度を計算した。例えば、5M MEAの脱着プロファイルを
図3Bに示し、初期脱着速度を、勾配に下記式(2)に示されるアミン濃度を乗算することによって計算した:
【数17】
【0094】
様々な異なる溶媒のCO2脱着速度を以下の表2に列挙する。
【0095】
例3-熱負荷決定
表1に列挙した様々な溶媒のそれぞれについて、加熱速度及びCO
2脱着速度に基づく溶媒の熱負荷を決定した。5分間にわたる脱着中に除去されたCO
2の量に対する定常状態熱伝達の比(すなわち、脱着速度論プロファイルの線形部分)を決定することによって、熱負荷を計算した。フーリエの分子熱輸送方程式(Fourier’s equation of molecular heat transport)を使用して、式(3)に示すように油浴から供給される熱を計算する。
【数18】
(式中、qは定常状態での熱伝達速度(J/s)、kはフラスコ材料に使用されるパイレックス(登録商標)ガラスの熱伝導速度(W/m K)、Aは熱流の方向に垂直な断面積(m
2)、dT/dxは温度勾配(K
-1m
-1)である)温度差dTをフラスコの油温と内壁温度との差とし、dxをガラス壁厚とした。次いで、式(4)を使用して熱負荷を計算した。
【数19】
【0096】
例えば、ベースライン5M MEAの熱負荷は以下のように計算される。
【数20】
【0097】
様々な異なる溶媒の熱負荷を以下の表2に列挙する。
【0098】
例4-サイクル容量決定
表1に記載の各溶媒について、リッチ負荷、リーン負荷及びアミンのモル濃度に基づく溶媒のサイクル容量を決定した。サイクル容量とは、サイクル中にCO
2がどれだけ除去されたかを指す。サイクル容量は、式(5)を使用して計算される。
【数21】
【0099】
例えば、5M MEAのサイクル容量は以下のように計算される。
【数22】
【0100】
様々な異なる溶媒ブレンドのサイクル容量を以下の表2に列挙する。
【表2】
【0101】
これらの実験で使用される主要な性能指標は、初期吸収速度、サイクル容量、初期脱着速度及び熱負荷である。試験の過程で、2つの他の因子、すなわちCO2を負荷した後のアミン溶液の沈殿及び相分離を添加した。これらの2つの追加の因子は、それぞれがCO2捕捉プロセス中に配管の詰まり、機器の付着物、及びポンプ電力要件の増加などの動作上の問題を引き起こす可能性があるため、非常に重要である。
【0102】
実験から、溶媒1、3及び4は、ベースラインMEAよりも高い吸収性能(吸収速度及びリッチ負荷)、ならびに高い脱着速度及び低い熱負荷を有することが観察された。全体として、これらの溶媒は、ベースラインMEAよりも良好な性能を有する。しかし、CO2を負荷し、1日静置した後、溶媒1、3及び4が沈殿した。
【0103】
溶媒10、11、12、14及び15は、全ての態様においてベースラインMEAよりも優れていたことも観察された。表2に示すように、これらの溶媒は、MEAと比較して、より高い吸収速度、より高いリッチ負荷、より高い脱着速度、より高いサイクル容量及びより低い熱負荷を有していた。これらの溶媒は良好な性能を有していたが、吸収実験の終了後にリッチ負荷溶液の相分離が観察された。
【0104】
溶媒2、5、6、7及び8について、このカテゴリーの溶媒の吸収速度は、本発明者らによって、MEAの吸収速度より低いか又は同様であることが観察された。溶媒6を除いて、これらの溶媒のリッチ負荷はMEAのリッチ負荷と同様又はそれより高かった。これらの溶媒の脱着速度、サイクル容量及び熱負荷は、MEAよりも高い脱着速度及びサイクル容量ならびに低い熱負荷を有する溶媒5を除いて、全てMEAよりも低かった(例えば、表2を参照されたい)。このカテゴリーの溶媒は、沸点が133℃であるDMAEを含有した。この実験に使用される脱着温度ならびに典型的な脱着の動作温度範囲(110℃~120℃)を考慮すると、DMAEの使用は、その沸点に起因して高いアミン損失をもたらし得ると仮定された。
【0105】
溶媒9は、MEAよりも比較的低い性能を有することが観察された。一方、溶媒13は、表2に示すように、ベースラインMEAよりも良好な性能を有することが観察された。この群の溶媒は、2M~3Mの範囲の総濃度を有していた。低アミン濃度を使用すると、より高い溶媒循環速度が必要となる。
【0106】
MEAよりも低いリッチ負荷を有することとは別に、溶媒20及び21は、MEAよりも著しく高い脱着速度、サイクル容量及び著しく低い熱負荷を有することが観察された(例えば、表2を参照されたい)。アミンがかなりの量のCO2を容易に脱着することができる場合、高いリッチ負荷が有用になる。この群の溶媒がMEAよりも低いリッチ負荷を有していたとしても、それらの高い剥離能力に起因して、除去されるCO2の量は、リッチ負荷が高いがCO2脱着速度/剥離能力が低いMEAよりも多いことは言及する価値がある。
【0107】
溶媒16は、MEAよりも低いリッチ負荷を有することが観察された。しかし、他の性能指標に関しては、この溶媒はMEAよりも優れていた。吸収速度に関して、溶媒16は、MEAよりも37%高い吸収速度を有した。サイクル容量については、溶媒16はMEAより66%高かった。脱着速度に関して、溶媒16はMEAの約3.7倍であったが、この溶媒の熱負荷はMEAより約3.7倍低かった(例えば、表2を参照されたい。)。この溶媒について得られたリーン負荷は、MEAの場合とは異なり、ゼロに非常に近い。
【0108】
溶媒17は、吸収速度を高めるために、配合物中のHMDAの寄与を増加させるように調整した。PEIを添加して、吸収容量及び吸収速度を増加させた。結果は、この溶媒の吸収速度がMEAよりも14%高いことを示している。しかし、そのリッチ負荷はMEAよりも低かった。脱着に関して、その脱着速度はMEAの脱着速度の約3.8倍であった。熱負荷に関して、その熱負荷はMEAの熱負荷より約3.8倍低かった。リーン負荷がほぼ0である場合、そのサイクル容量はMEAのサイクル容量よりも76%高かった(例えば、表2を参照されたい)。HMDA及びPEIの寄与は、主に濃度がより高く、それによって物質移動制限も増加するという事実のために、明確には目立たなかった。しかしながら、配合物中のDEAEの濃度を増加させると、脱着速度ならびにサイクル容量が向上した。
【0109】
溶媒18を、5Mの総濃度及び9のDEAE/HMDA比を維持しながら、PEIの濃度を増加させるように調整した。この調整は吸収を助けず、溶媒17と比較して脱着性能を低下させたことに留意した。この溶媒の結果は、ベースライン溶媒MEAよりも依然として高い性能を示す。吸収速度に関して、溶媒18はMEAより14%高く、脱着速度はMEAの約3.5倍であり、その熱負荷はMEAより約3.5倍低く、そのサイクル容量はMEAより76%高い(例えば、表2を参照されたい)。
【0110】
溶媒19を、5Mの総濃度及び9のDEAE/HMDA比を維持しながら、PEIの濃度をさらに増加させるように調整した。この調整は吸収を助けず、溶媒17と比較して脱着性能を低下させたことに留意した。この溶媒の結果は、ベースライン溶媒MEAよりも依然として高い性能を示す。一方、サイクル容量は、溶媒18と比較してわずかに増加した。吸収速度に関して、溶媒19はMEAより14%高く、脱着速度はMEAの約3.6倍であり、その熱負荷はMEAより約3.6倍低く、そのサイクル容量はMEAより85%高い(例えば、表2を参照されたい)。
【0111】
溶媒22は、3.85M DEAE、0.15M HMDA及び0.015M PEIを含んでいた。有意な改善はなかった。結果は、溶媒22の吸収速度がMEAより14%高く、脱着速度がMEAの約3.6倍であり、熱負荷がMEAの約3.6倍低く、サイクル容量がMEAより66%高いことを示している(例えば、表2を参照されたい)。
【0112】
溶媒23は、3.6M DEAE、0.4M HMDA及び0.01M PEIを含んでいた。この溶媒中で確立されたDEAE/HMDA比は、溶媒17、18及び19中の比と同様である。物質移動制限を減らし、ブレンド中の成分の相乗的な利益を認めることができるように、濃度を4Mに下げた。結果は、溶媒23が、全ての他の溶媒ならびにベースラインMEAと比較して、全ての態様において最高の性能を有したことを示している。溶媒23は、初期吸収速度がMEAより37%高く、初期脱着速度がMEAの約3.85倍であり、サイクル容量がMEAより85%高く、熱負荷がMEAより約3.85倍低かった(例えば、表2を参照されたい)。
【0113】
溶媒24は、3.6M DEAE、0.4M HMDA及び0.015M PEIを含んでいた。ブレンド中のPEIの濃度は、溶媒23と比較して0.01Mから0.015Mに増加した。結果は、PEIの濃度を増加させても性能は改善されなかったことを示している。溶媒24は、初期吸収速度がMEAより37%高く、初期脱着速度がMEAの約3.64倍であり、サイクル容量がMEAより85%高く、熱負荷がMEAより約3.64倍低かった(例えば、表2を参照されたい)。
【0114】
溶媒25は、3.6M DEAE及び0.4M HMDAを含んでいた。溶媒25は、初期吸収速度がMEAより26%高く、初期脱着速度はMEAの約3.77倍であり、サイクル容量はMEAより85%高く、熱負荷はMEAより約3.77倍低かった(例えば、表2を参照されたい)。
【0115】
様々な溶媒の性能を測定する方法を開発した。この方法は、様々な性能基準を、吸収性能ならびに脱着性能を説明することができる吸収パラメータ及び脱着パラメータに組み合わせることを含んでいた。吸収パラメータを吸収速度(10
-2mol CO
2/L.soltn)と定義した。脱着パラメータは、式(6)に示すように、脱着速度、サイクル容量、及び熱負荷の組み合わせとして定義した。
【数23】
【0116】
図4は、表1に列挙された溶媒についての脱着性能に対して(すなわち、吸収パラメータ及び脱着パラメータに基づいて)プロットされた吸収性能を示す。右上隅の溶媒は、高い吸収性能と高い脱着性能の両方を有する溶媒である。チャートは、試験した全てのアミンの吸収及び脱着性能を要約したものである。チャートから、溶媒23は最も高い吸収及び脱着性能を有する。これら2つのパラメータに基づいて、この溶媒を、実用的なCO
2捕捉条件下でのパイロットプラントにおけるさらなる分解及び排出試験のために選択した。
【0117】
例5-アミン分解及びアンモニア(NH
3)排出試験
表1に列挙したいくつかの溶媒のアンモニア排出量を評価するために実験を行った。
図5は、アミン分解及びNH
3排出を評価するための実験設定を示す概略図である。
図5に示す実験設定を使用して行われた実験では、所望の濃度及びCO
2負荷の250mLの所望のアミン溶液を、所望のアミン成分の所定の質量を脱イオン水と混合することによって調製した。所望のCO
2負荷(各アミン溶液の所望のCO
2負荷は、リッチ及びリーンCO
2負荷の平均であった)が得られるまで、CO
2ガスをアミン溶液にバブリングした。アミンのCO
2負荷値の確認を、1kmol/m
3 HClの標準溶液に対する滴定によって行い、CO
2を遊離させ、NACl/NAHCO
3/メチルオレンジ混合物の置換によってその量を測定した。負荷は、アミン1mol当たりのmol CO
2に基づいて計算した。250mLのアミン溶液を反応フラスコに入れ、制御された温度の水浴中で60±2℃まで加温した。その出口の温度を入口供給ガスの温度に等しくなるように制御するように設計された凝縮器を反応フラスコ開口部の1つに接続した。これは、アミン/水が蒸発及び供給ガスのキャリーオーバによって失われるのを防ぐのに役立った。溶液が設定温度に達したら、ロータメータ(AaLBORG、モデルGFC-17、0~500ml/分±1.5%の誤差の範囲を有する)により流量200±2mL/分に設定された10% O2(残りはN
2)を含有するように予備混合した供給ガスを水飽和器に順次バブリングし、最後にガス拡散器を介して反応フラスコ内の溶液をバブリングした。反応を4週間継続して行い、分解したアミン試料を毎日収集し、GC/MS及びHPLC(両方ともAgilent Technologies、カナダから購入)によるアミン濃度分析に送って、分解について試験した。
【0118】
アミンのオフガス排出量を評価するために、反応から発生するガス状NH3も、起こり得る分解反応から生成されたオフガスから収集した。反応フラスコに直接取り付けられた凝縮器の出口を、50mLの0.05M H2SO4を充填したインピンジャー瓶の入口に接続して、アミン分解反応から形成されたNH3を捕捉した。放出された全てのNH3を確実にインピンジ溶液中に完全に収集するために、インピンジャー瓶をサンプリング中ずっと氷浴中に保った。インピンジャーの出口もロータメータに接続し、次いで真空ポンプを供給ガス流量の設定と同様に200±2mL/分に設定した。NH3がアンダーサンプリング/オーバーサンプリングされるのを防ぐために、2つの流量の一致が必要であった。サンプリングを1時間継続し、その後、インピンジャーを凝縮器出口から完全に切り離した。次いで、インピンジャー溶液を100mLメスフラスコに移した。新鮮な0.05M H2SO4溶液も使用してインピンジャー瓶をすすぎ、次いでこれを100mLフラスコに注ぎ戻した。最後に、フラスコにH2SO4を100mLの印までつぎ足した。NH3を、1時間から開始し、3時間、5時間、24時間及び27時間の異なる時間間隔で収集し、その後、収集を14日間にわたって1日に1回行った。収集した試料を冷蔵庫に入れてから、アンモニア/硝酸塩分析計(Timberline モデルTL-2800)を用いた分析に送った。
【0119】
図6は、以下の溶媒ブレンド:5mol/L MEA、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.01mol/L PEI、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.015mol/L PEI、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA、1mol/L HMDA、及び1mol/L DEAEのNH
3排出プロファイルを示す。
【0120】
図6は、O
2分解の結果として、最大排出量のNH
3がMEA溶液からであったことを示す。
図6に基づくと、MEAは、溶液がO
2によって720時間(30日間)分解された後、112~360ppmvの範囲でNH
3を排出した。3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.01mol/L PEI混合溶媒(溶媒23)の分解反応に由来するNH
3排出量も
図6に示した。混合溶媒(溶媒23)は、720時間の間に8~22ppmvの範囲のNH
3を排出した。混合溶媒(溶媒23)の排出量は、MEAの排出量よりも少なくとも1桁少なかったことは明らかである。これは、溶媒が良好な分解耐性を有し、及び/又は液相中の酸化分解から生成されたNH
3を維持することができることを示している。3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.015mol/L PEI混合溶媒は、
図6にも示す溶媒23混合物(0.01mol/L PEIを含む)と同様の範囲のNH
3排出を示した。
【0121】
3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDAのみを含有する混合物は、4~22ppmvのNH
3を排出し、これもこの実験で試験したブレンドされたアミンと同じであった。1mol/L HMDA及び1mol/L DEAEを含む単一アミンも試験し、それらのNH
3排出プロファイルを
図6に含めた。2つの単一アミンの排出範囲は、それぞれ13~134ppmv及び2~10ppmvであった。
【0122】
図7は、
図6の溶媒ブレンドの時間平均NH
3排出量を示す。ブレンドされたアミンの場合、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.010mol/L PEI、及び3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.05mol/L PEIの排出量は同じであり、平均排出量はそれぞれ10、12、及び11ppmvである。全てのブレンドされたアミンは、1時間当たりに排出される平均NH
3が233ppmvである5mol/L MEAよりも低い排出量を有していた。1mol/L HMDA及び1mol/L DEAEも試験し、それらのNH
3排出プロファイルを
図7に含めた。
図7にも含まれる1mol/L HMDA及び1mol/L DEAEの平均排出量は、それぞれ73ppmv及び4ppmvであった。
【0123】
図8は、5M MEA、1M HMDA、1M DEAE、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.010mol/L PEI、及び3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.05mol/L PEIである、試験した全ての溶媒の分解-時間プロファイルを示す。
図8に基づくと、グラフの勾配は、MEAが最も速い速度で分解され、その濃度が720時間の分解時間内に5Mから約3.4Mに減少することを示す。3.6mol/L DEAE+0.4mol/L、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.010mol/L PEI、及び3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.05mol/L PEIの全てのブレンドされたアミンは、分解-時間プロファイル勾配がそれほど急でないことから明らかに分かるように、はるかに遅い速度で分解した。1M DEAEはブレンドの速度と同様の速度で分解したが、1M HMDAはこの研究で試験した全てのアミンと比較して最も遅い速度で分解した。
【0124】
図9は、O
2ガスと720時間接触させた後の全ての溶媒の全体的な分解速度を比較している。ブレンドされた溶媒は、全てがMEAの速度よりも60~75%遅い速度で分解したため、基準MEAよりも優れていたことは明らかである。
図9に基づくと、MEA、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L、3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.010mol/L PEI、及び3.6mol/L DEAE+0.4mol/L HMDA+0.05mol/L PEIの分解速度は、それぞれ0.0032、0.0008、0.0013、及び0.0011M/hである。1M HMDA及び1M DEAEの分解速度も比較のために同じ図に含める。1M HMDA及び1M DEAEの速度は、それぞれ0.0002及び0.0013M/hである。
【0125】
例6-粘度、密度、熱伝導率、熱容量
粘度、密度、熱伝導率及び熱容量は、以下の表3~5に示すように、30℃~50℃の温度範囲で、無負荷、負荷及び中負荷試料について、異なる溶媒(すなわち、高性能溶媒)について測定した。
【0126】
Digital Anton Paarマイクロ粘度計モデル(Lovis-2000 M/ME)を使用して、mPasで粘度を測定した。このマイクロ粘度計は、ボールが液体充填毛細管を通って移動するのにかかる時間を測定するために3つの誘導センサを使用する、転がるボールの原理を使用することによって機能する。高品質の脱イオン水を使用して、各運転後に機器を較正した。各測定の前に、設定温度が平衡条件に達するまで、試料を粘度計の内部に保った。精度は、粘度については0.5%以内、温度については±0.02℃以内であった。
【0127】
密度は、Anton Paar製のDMA 4500Mを使用して、密度については0.00001 g/cm3、温度については0.01℃の精度で測定した。測定に装置を使用する前に、装置を検証及び較正するために、空気及び水のチェックを行った。高品質の脱イオン水を使用して、各運転後に機器を較正した。各測定の前に、設定温度が平衡条件に達するまで、試料を粘度計の内部に保った。
【0128】
薄い白金線をアミン試料に浸漬し、線材の耐熱プロファイルを時間に対して測定した。アミン試料の温度-時間プロファイルを生成した。これらのプロットを使用して、熱伝導率、熱拡散率、及び熱容量を決定した。熱伝導率及び拡散率は、特に温度が安定になった最初に測定し、次に熱拡散率と熱容量との相関(D=K/(ρ Cp))を使用して、熱容量を異なる時間間隔で計算する。熱容量の測定は、ソフトウェアが異なる温度での熱容量の後の計算のために密度-温度プロファイルをプロットできるように、3~4種の温度での試料の所定の密度値の入力を必要としたことに留意されたい。これらは、密度測定から得られた密度データを使用して提供された。熱特性の少なくとも3回の反復測定を各試料について行い、それらの平均値を使用し、報告した。
【0129】
以下の表3は、30℃、40℃及び50℃での様々なアミン溶媒の密度を示す。
【表3】
【0130】
表4は、30℃、40℃及び50℃での様々なアミン溶媒の粘度を示す。
【表4】
【0131】
表5は、30℃、40℃及び50℃での様々な溶媒の熱伝導率、拡散率及び熱容量を示す。
【表5】
【0132】
例7-物質移動係数
パイロットプラント試験は、一般的に使用される溶媒MEAに対する本発明の好ましい実施形態による溶媒の性能を評価することができるように実施された。溶媒23(3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI)及びMEAをパイロットプラントでフルサイクルで実行し、実際の条件に近いものを模倣した。
【0133】
フル吸脱着サイクルパイロットプラントから得られた3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒のCO2捕捉性能の結果。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒についての実行を110℃及び120℃で行い、同様に3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒について使用したのと同じパイロットプラント及び条件を使用して実行した5MEA溶媒と比較した。MEAのこの試験は、その性能を同じ温度で3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒と比較するために使用できるように行った。
【0134】
各運転の開始時に、所望の濃度及び流量のアミン溶液が貯蔵タンクから可変速ギヤポンプを介して吸収器の頂部に圧送される。一方、ヒータがオンにされ、脱着器に入る前に吸収器からのリッチアミンを加熱するために使用される所望の設定点温度に設定される。アミン溶媒循環が設定されると、次いで、選択されたCO2分圧及び濃度のCO2、N2及び空気ガスの混合物が、ガス流量計を介して吸収器カラムの底部に導入され、ガス流量を個別に制御する。
【0135】
これにより、ガスは、下方に流れる液体アミンと逆流して接触することができる。処理されたガスはカラムの頂部から出、一方、リッチアミン溶媒は吸収器の底部から出て、CO2の脱着のために脱着器に再び入る前に(脱着器の底部から来る)高温のリーンなアミン流によって予熱される。CO2は、ヒータ(リボイラ)から供給される熱により、脱着器内のリッチアミンから脱着する。ここで脱着器の底部を出るリーンアミンは、リーン-リッチ熱交換器及び冷却器によって冷却され、サイクルを継続するために吸収器カラムに供給される。
【0136】
脱着器の頂部のCO2生成ガスは、凝縮器によって冷却されて同伴する水/アミンを除去し、乾燥してから空気に排出される。系が定常状態に達したら、滴定及びCO2置換技術を用いたCO2負荷分析のために、リッチなアミン試料とリーンなアミン試料の両方を採取する。温度プロファイル読み取り値はまた、カラムの高さに沿って設置されたJ型熱電対を使用して吸収器カラムの高さに沿って取得される。実行で使用される溶媒の性能は、CO2生成速度、吸収効率、熱負荷、ガス及び液体の物質移動係数に関して示される。
【0137】
プラントは、15% CO2を含有する供給ガスの25SLPMの流量用に設計された。アミンの液体流量を50mL/分に設定した。両方の実行温度に使用した条件は、供給ガス流量25SLPM及び液体アミン流量50mL/分であった。煙道ガス中のCO2濃度は4%であり、これはプラントを設計するために使用されたCO2濃度の4分の1であった。これは、利用可能なアミンの体積が、カラムの高さに基づいて4%で全てのCO2を吸収することができることを意味する。そのため、いくつかの基準では、MEAと3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の性能を明確に分けることは容易ではない場合がある(オフガス濃度などのほとんどの気相パラメータ及び吸収効率が影響を受ける)。設定及び熱媒体などの様々な制限を考慮するために、実験を、110℃の脱着温度で実行するときに脱着器内で5psiの圧力で、120℃で実行するときに脱着器内で10psiの圧力で行った。2つの再生温度の動作圧力が異なるため、加えられた追加のパラメータである圧力に起因して、各溶媒の性能に対する温度の真の効果を比較することは不適切である。より高い脱着圧力で動作すると、脱着プロセスが制限され、その結果、この効果は、110℃と比較した場合、120℃でのより高い圧力での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAの両方で観察される全体的に低い性能をもたらす。したがって、この作業範囲内で、比較は、同じ温度での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒とMEAとの間の比較に限定された。表6は、試験に使用した運転条件を示す。
【0138】
表6は、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEA溶媒の実行条件の要約を示す。
【表6】
【0139】
表7は、110℃で3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEA溶媒を比較するために使用した性能実行パラメータを要約したものである。この温度での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の値は、2回の繰り返し実行からの平均値であったが、MEAの値は1回の試験から得た。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒についての120℃での結果も表8に示す。
【0140】
各試験は24時間を超えて行った。これは、測定を行う前に実行が安定して平衡に達することを確実にするためであった。この条件は、両方の溶媒について保証された。表7及び8はそれぞれ、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEA溶媒についての110℃及び120℃の性能実行パラメータを要約したものである。
【0141】
表7は、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEAについての110℃での性能実行パラメータの要約を示す。
【表7】
【0142】
表8は、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEAについての120℃での性能実行パラメータの要約を示す。
【表8】
【0143】
吸収効率は、ガス及び液体の両方の測定値に基づいて正確に計算することができる。ガス側効率は、吸収器に出入りするCO
2の量のパーセント差によって示される。一方、液体側効率は、吸収器に入る供給ガスからの総CO
2量と比較した、アミン溶媒から吸収及び放出されたCO
2の量(リッチ及びリーンCO
2負荷)に基づいて決定される。2つの計算方法を使用することができたが、110℃及び120℃での全ての3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAの実行の吸収効率は、正確であった液体側測定からのみ得られた。吸収器から出るCO
2の量を得るために使用されるオフガスCO
2濃度のデータポイントが計算に不十分であるため、両溶媒のガス側効率からの直接測定は含めなかった。そのようなデータを使用して吸収効率を決定した場合、得られた値に非常に高い不確実性があった。したがって、直接ガス測定に基づいて決定された吸収効率は使用しなかった。式(7)を用いて吸収効率を計算した。
【数24】
(式中、
∝
r、リッチ負荷、mol CO
2/molアミン
∝
l、リーン負荷、mol CO
2/molアミン
[アミン]、アミン濃度、molアミン/L.soltn
アミン、アミン循環/流量、L/分
【数25】
、
CO
2濃度、%
G、供給ガス流量、L/分)
表7に基づくと、110℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEAの吸収効率は93.90%及び83.71%である。これは、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒をMEA溶媒と比較した場合の吸収効率の12%の増加を表す。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒について得られたより高い吸収効率は、MEAよりも短い吸収体を使用する大きな機会を有することを意味する。表8から、120℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAの吸収効率は86.32%及び76.11%である。これは、MEA溶媒と比較して、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒を使用した場合の吸収効率の13%の増加を表す。
【0144】
物質移動係数は、液相及び気相の両方に基づいて計算した。気相物質移動係数(KGav)計算は、吸収器カラムに入る(供給ガス濃度からの)及び吸収器カラムから出る(吸収器オフガスからの)CO2の2つのCO2濃度データポイントに基づいて行われる。他方、液相物質移動係数(KLav)は、アミン溶媒から吸収及び脱着されたCO2の量に基づいて(リッチ及びリーンCO2負荷から)決定される。前述のように、吸収器オフガスCO2濃度データは、KGavを直接正確に計算できるほど十分に高くはなかった。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAの両方のKGav値を正確に計算するために、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEAについてそれぞれ決定された液相吸収効率を最初に使用して、両方の溶媒の吸収オフガス中の対応する平均CO2濃度を得た。次いで、オフガスCO2濃度を、試験から直接測定された他の全てのデータと共にさらに使用して、KGavの値を計算した。
【0145】
表7に見られるように、液体側効率に基づいて決定された3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEA溶媒のKGavは、110℃でそれぞれ0.79及び0.47kmol/時間.m3.kPaである。これは、MEAと比較して、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の68%の向上を示す。表8から、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAのKGavは、120℃でそれぞれ0.55及び0.38kmol/時間.m3.kPaである。これは、MEAと比較して、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の45%の向上を表す。ミニプラント試験からの向上はまた、(以前の報告で与えられた)スクリーニング試験においてMEAに対して3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒を評価するために以前に使用された吸収パラメータの向上と一致する。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒のKGavがMEAのKGavよりも高いことは、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒のCO2をより効果的かつ迅速に除去する能力を示す。これはまた、吸収塔の所与の高さに対して、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒は、MEAよりも迅速により多くのCO2を除去することができるはずであることを意味する。これはまた、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒は、MEAがより長い吸収器カラムで行うのと同じ量のCO2を除去するために、より短い吸収器カラムを必要とすることを示唆している。
【0146】
一方、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒のK
Lavは、MEAより圧倒的に大きく、その値は、表7及び8から分かるように、110℃で2.72時間及び0.52時間、ならびに2.33時間及び0.49時間である。MEAに対して3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒から得られたK
Lav向上は著しく高く、110℃及び120℃でそれぞれ426%及び325%である。K
Gavと同様に、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒によって生じた同じ程度のK
Lav向上もスクリーニング試験から観察された。これは、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の優れたCO
2吸収及び脱着能力を明らかに示しており、MEAは同程度のものを有していない。この結果は、CO
2プラントが、MEA系について1つの脱着器あたり4つの吸収器で設計されている場合、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒を用いると、同じ1つの脱着器が、MEAが処理した4倍の数の吸収器を処理できることを示唆しており、同じ1単位の脱着器を用いた3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒が、代わりに16個の吸収器を処理できることを示唆している。K
Gav及びK
Lavに用いた式を以下の式(8)及び式(9)に示す。
【数26】
(式中、G
1はモル不活性ガス流量(kmol/時間)であり、
Pはカラム圧力(kPa)であり、
yCO
2、バルクガス中のCO
2のモル分率
y*CO
2、液体バルクと平衡状態にあるバルクガス中のCO
2のモル分率
YCO
2in、CO
2inのモル比
YCO
2out、CO
2outのモル比
【数27】
(式中、
【数28】
は平均液体モル流束(kmol/m
2時間)であり、
x
AL_Tは、脱着器頂部に入る液体バルク中のCO
2のモル分率であり、
x
AL_Bは、脱着器底部を出る液体バルク中のCO
2のモル分率であり、
Zは、カラム高さmであり、
C
AL、液体バルク中の平均CO
2濃度、kmol/m
3
x
ALは、液体バルク中のCO
2の平均モル分率であり、
C
A*、バルクガスと平衡状態にある液体中のCO
2濃度)
【0147】
CO2生成は、ガス及び液体の測定に基づいて計算することができる。ガス側の計算は、通常、供給ガスと吸収器オフガスのCO2濃度差、及びガスの流量に基づいて計算される。吸収効率及びガス側物質移動分析と同様に、ガス側での直接測定は十分なデータを有していなかった。したがって、液体側効率を使用して、吸収器オフガス中の平均CO2濃度を最初に取得し、次いでこれをCO2生成計算に使用した。液体側のCO2生成の計算は、単純明快であり、リッチ及びリーンCO2負荷の間の差、及びアミン流量を使用して決定される。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI及びMEA溶媒のガス側及び液体側からのCO2生成は、110℃でそれぞれ131g/時間及び117g/時間であり、120℃で112.5g/時間及び99.4g/時間であり、12%の向上を表す。これもまた、脱着プロセス中に溶媒がほぼ完全にCO2を放出することを可能にする3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の脱着能力によるものである。注目すべきことに、110℃の温度でさえ、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒はほぼゼロに近いリーン負荷を有した。より高い温度、120℃での動作は、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒のリーン負荷に何ら影響を及ぼさなかった。したがって、110℃で動作することが推奨され、エネルギーの節約を示唆している。
【0148】
リボイラ負荷は、リボイラに出入りするシリコーン油温の差、熱容量(CP)、及び流量から決定した。2つの溶媒の実行に基づくと、それらのリボイラ負荷はほぼ同じであり、したがって、平均を取って両溶媒の熱負荷計算に使用した。表7及び8において熱負荷(液体側に基づく)として報告された熱損失のない熱負荷は、リボイラ負荷を液体分析から得られた供給ガスから除去された各アミンのCO2量(リッチ及びリーンCO2負荷)で割ったものに基づいて計算した。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEAの熱負荷は、110℃でそれぞれ15.1及び16.93GJ/トンCO2であり、120℃で20.41及び18.03GJ/トンCO2である。これらの値は、MEAの代わりに3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒を使用した場合の熱負荷の11%~12%の減少(2つの温度について)に相当する。ガス側の熱負荷(直接測定に基づく)は、前述のCO2オフガス濃度データが不十分であるため報告されなかった。
【0149】
実験中の熱損失を測定する試みは、各アミンが実際の商業的捕捉プロセスにおいて実際に提供することができる実際の熱負荷値に値がより近く反映されるように、前述の熱負荷を調整することができるように行われた。しかし、試験のこの段階では、リボイラ周辺の熱損失のみを許容可能な精度で推定することができた。熱損失の他の領域は実施されなかった。表7及び表8からも分かるように、リボイラに関連する熱損失は、110℃及び120℃でそれぞれ1079kJ/時間及び2111kJ/時間と推定された。次いで、熱損失を使用して、3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEA溶媒の熱負荷要件を適宜調整した。他の領域からの熱損失も熱負荷計算に含まれた場合、2つのアミンの熱負荷はさらに小さくなり、実際の値に近くなるであろう。リボイラ負荷及び熱負荷は、以下の式、式(10)及び式(11)に基づいて計算した。
リボイラ負荷、kJ/時間=m*Cp*(T
oil in-T
oil out)、 (10)
(式中、
mは油の質量流量、kg/時間であり、
Cpは、油の熱容量、kJ/kg℃であり、
T
oil inは、オイル入口温度、℃であり、
T
oil inはオイル入口温度、℃である)
熱負荷、
【数29】
【0150】
図10Aは、110℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒及びMEA溶媒の温度プロファイルの比較を示す。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒プロファイルは、2回の繰り返し実行の平均に基づいて得られたが、MEAのものは1回の実行から得られた。両方の溶媒の温度上昇によって示されるように、反応は主にカラムの下半分で起こったことは明らかである。3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒とMEAとの間には反応温度にわずかな差しかなく、後者の方が数度高いことが認められた。これは、MEAの反応熱が3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒よりも高いためである可能性がある。
【0151】
図10Bは、120℃での3.6M DEAE+0.4M HMDA+0.01M PEI溶媒の温度プロファイルを示す。110℃での実行と同様に、主にカラムの後ろ半分で依然として反応が起こったことが注目に値する。しかしながら、温度上昇の最高点が約38~39℃に現れるという差があり、これは110℃の実行で観察されたものよりも低い。
【0152】
本明細書で使用される例及び対応する図は、例示のみを目的としている。平衡解離定数の決定を参照して本明細書で説明される原理は、他のシステム及び装置で実施することができる。本明細書で表現される原理から逸脱することなく、異なる構成及び用語を使用することができる。例えば、ステップ、機器、構成要素、及びモジュールは、これらの原理から逸脱することなく、追加、削除、修正、又は再配置することができる。
【0153】
文脈上明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む、」、「を含み、」などは、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味で解釈されるべきである。「ここで、」、「上記」、「以下、」、及び同様の意味の単語は、本明細書を説明するために使用される場合、本明細書全体を参照するものとし、本明細書の特定の部分を参照しないものとする。2つ以上の項目の列挙に関連する「又は」は、単語の以下の解釈の全て、すなわち、列挙内の項目のいずれか、列挙内の項目の全て、及び列挙内の項目の任意の組み合わせを網羅する。単数形「a」、「an」、及び「the」は、任意の適切な複数形の意味も含む。
【0154】
構成要素が上記で言及される場合、別段の指示がない限り、その構成要素への言及は、その構成要素の等価物として、記載された構成要素の機能を実行する任意の構成要素を含む(すなわち、機能的に等価である)と解釈されるべきであり、本発明の図示された例示的な実装形態において機能を実行する開示された構造又は組成物と構造的又は組成的に同等ではない構成要素を含む。
【0155】
組成物、システム、方法及び装置の具体例は、例示の目的で本明細書に記載されている。これらは単なる例である。本発明の実施において、多くの変更、修正、追加、省略及び置換が可能である。本発明は、特徴、要素及び/又は化学化合物を同等の特徴、要素及び/又は化学化合物で置き換えること;異なる例からの特徴、要素及び/又は化合物を混合及びマッチングすること;本明細書に記載の例からの特徴、要素及び/又は化学化合物を他の技術の特徴、要素及び/又は化学化合物と組み合わせること;記載された例からの特徴、要素及び/又は化学化合物を省略及び/又は組み合わせることによって得られる変形を含む、当業者には明らかであろう記載された組成物の変形を含む。
【0156】
したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以下に導入される特許請求の範囲は、合理的に推測され得るような全てのそのような修正、置換、追加、省略及び部分的組み合わせを含むと解釈されることが意図される。特許請求の範囲は、例に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体として明細書と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】