(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】GDF15融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240903BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240903BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240903BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240903BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240903BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/18
C07K14/46
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
A61K47/68
A61K38/02
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/06
A61P13/12
A61P1/16
C12P21/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512156
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022114096
(87)【国際公開番号】W WO2023025120
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110977378.7
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアンユ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロンボ・カオ
(72)【発明者】
【氏名】リン・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンナン・ゼン
(72)【発明者】
【氏名】リメイ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】シリン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオフェン・リ
(72)【発明者】
【氏名】チンウェイ・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】シングオ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ダンシア・フアン
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジア・リ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC41
4C076CC42
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA41
4C084BA42
4C084NA13
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZC33
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
GDF15融合タンパク質及びその使用が提供される。融合タンパク質は、Fcバリアント及びGDF15活性ドメインを含み、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcの356位及び/又は439位にアミノ酸置換を有し、ホモダイマーを形成する能力を依然として有する。FcバリアントをGDF15活性ドメインと融合させることにより、Fc-GDF15融合タンパク質は、顕著に改善された物理化学的特性及び組換え発現レベルを有し、天然のGDF15分子と同等の又はこれより良好なin vitro活性を有し、顕著に延長されたin vivo循環半減期を有し、このことは、2週ごとに1回又は更に1ヶ月に1回の投与頻度を支持しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GDF15活性ドメイン及びFcバリアントを含む融合タンパク質であって、FcバリアントのC末端が、GDF15活性ドメインのN末端に、直接又はペプチドリンカーを介して連結しており、Fcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの356位及び/又は439位にアミノ酸置換を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
Fcバリアントがホモダイマーを形成する能力を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
Fcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの356位に、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)及びシステイン(C)以外のアミノ酸によるアミノ酸置換を含み、かつ/又はFcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの439位に、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リジン(K)及びシステイン(C)以外のアミノ酸によるアミノ酸置換を含み、
好ましくは、Fcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの356位に、グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、スレオニン(T)、バリン(V)、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)、プロリン(P)、メチオニン(M)、リジン(K)及びアルギニン(R)のうちの1つによるアミノ酸置換を含み、かつ/又はFcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの439位に、グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、スレオニン(T)、バリン(V)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)及びメチオニン(M)のうちの1つによるアミノ酸置換を含み、
より好ましくは、Fcバリアントが、以下の変異:E356R、E356Q、E356A、E356Nのうちの1つ、及び/又はK439D、K439E、K439Q、K439A、K439Nのうちの1つを含む、
請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
Fcバリアントが、以下の変異:K439D、K439E、K439Q、K439A、K439Nのうちの1つを含み、
好ましくは、Fcバリアントが、以下の変異:K439D、K439E、K439Qのうちの1つを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
Fcバリアントが、以下の変異:E356R、E356Q、E356A、E356Nのうちの1つを含み、
好ましくは、FcバリアントがE356R変異を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
Fcバリアントが、以下の変異:EU付番によるIgG Fcの234位及び235位にアラニン(AA)によるアミノ酸置換、並びに/又はIgG Fcの447位でのアミノ酸欠失を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Fcバリアントが、以下の群:配列番号1~22、配列番号27、配列番号29~45のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも85%、90%、95%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
GDF15活性ドメインが、全長成熟GDF15タンパク質、N末端切断型GDF15タンパク質、又はGDF15の生物活性を保持する任意のバリアントである、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
GDF15活性ドメインが、以下の群:
配列番号46、
配列番号46のN末端での1~14アミノ酸切断、及び/又は配列番号46中の1~3アミノ酸置換
のうちの1つから選択されるか、又はそれに対し少なくとも85%、90%、95%若しくは99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む、
請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
GDF15活性ドメインが、以下の群:
配列番号46、
配列番号46のN末端での1~14アミノ酸切断、及び/又は配列番号46中の1~3アミノ酸置換
のうちの1つから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号46中のアミノ酸置換の位置が、以下の群:5位、6位、21位、26位、30位、47位、54位、55位、57位、67位、69位、81位、94位、107位のうちの1つ、2つ又は3つから選択され、
好ましくは、配列番号46中のアミノ酸置換が、様々な位置:D5E、H6D、H6E、R21Q、R21H、D26E、A30S、A47D、A54S、A55E、M57T、R67Q、K69R、A81S、T94E、K107Qのうちの1つ、任意の2つ、又は任意の3つから選択される、
請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号46のN末端が、3、4又は14アミノ酸分切断されている、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
GDF15活性ドメインが、以下の群:配列番号46~66のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも85%、90%、95%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
GDF15活性ドメインが、以下の群:配列番号46~66のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、GDF15活性ドメインが、以下の群:配列番号46~66のうちの1つのアミノ酸配列を含む、
請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
以下の群:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも85%、90%、95%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
以下の群:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、以下の群:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つのアミノ酸配列を含む、
請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、ホモダイマー融合タンパク質。
【請求項18】
以下の(i)、(ii)、(iii):
(i)請求項1から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、
(ii)(i)の核酸を含むベクター、
(iii)(i)の核酸及び/又は(ii)のベクターを含有する宿主細胞
のうちのいずれか1つである、生体物質。
【請求項19】
活性成分として請求項13に記載のホモダイマー融合タンパク質を含む医薬組成物であって、ホモダイマー融合タンパク質が、治療有効量で存在し、
好ましくは、薬学的に許容される担体を更に含む、医薬組成物。
【請求項20】
以下の(iv)及び(v):
(iv)代謝疾患を治療するための医薬の製造;好ましくは、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患を含む、
(v)対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させるための医薬の製造
のうちのいずれか1つにおける、請求項1から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項17に記載のホモダイマー融合タンパク質、又は請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
対象における以下の(iv)及び(v):
(iv)代謝疾患を治療すること;好ましくは、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患を含む、
(v)対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させること
のうちのいずれか1つの方法であって、治療有効量の、請求項1から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項17に記載のホモダイマー融合タンパク質、又は請求項19に記載の医薬組成物を、対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
対象における以下の(iv)及び(v):
(iv)代謝疾患を治療すること;好ましくは、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患を含む、
(v)対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させること
のうちのいずれか1つにおける使用のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項17に記載のホモダイマー融合タンパク質、又は請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、その全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる、中国国家知識産権局に2021年8月24日に申請された中国特許出願第202110977378.7号に対する優先権及び利益を主張する。
【0002】
本発明は、生物医学の技術分野、特にGDF15融合タンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
増殖分化因子15(GDF15)は、マクロファージ抑制性サイトカイン-1(MIC-1)、胎盤トランスフォーミング増殖因子-β(PTGF-β)、胎盤骨形成因子(PLAB)、前立腺由来因子(PDF)、非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子(NAG-1)としても知られ、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)スーパーファミリーの遠いメンバーである。成熟GDF15ポリペプチドが112個のアミノ酸を含有する一方、in vivoで循環する生物学的に活性なGDF15は、鎖間ジスルフィド結合を介して2つのポリペプチドにより形成されるホモダイマータンパク質(24.5kD)である。
【0004】
GDF15の循環レベルの上昇が、進行がんの患者における食物摂取の低減及び体重減少に関連することが報告されてきた(Johnen Hら、Nat Med、2007)。更に、GDF15の高発現を有するトランスジェニックマウス及び組換えGDF15を投与されたマウスはともに、体重及び食物摂取の低減を呈し、耐糖能の改善を有し(Xiong Yら、Sci Transl Med、2017)、このことは、GDF15が、肥満、II型糖尿病(T2D)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等の疾患を治療する可能性を有することを示す。
【0005】
in vivoでの天然のGDF15ダイマーの循環半減期(t1/2)はわずか約2~3時間と短く、このことが、その臨床治療上の適用を大幅に制限する。バイオ医薬品の循環半減期を延長するための従来方法は、活性分子を免疫グロブリンG(IgG)のFc断片と融合させることを含む。しかし、GDF15ダイマー及びFc断片ダイマー分子の三次元構造の特徴により、GDF15及びFc断片の直接融合は、融合分子の全体的な安定性及び組換え発現の収量に大幅に影響を及ぼす。
【0006】
ゆえに、肥満、T2D、NASH等の代謝関連疾患の治療のための、より長期の半減期及び最良の創薬可能性を有する安定な治療用GDF15分子を開発することが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Johnen Hら、Nat Med、2007
【非特許文献2】Xiong Yら、Sci Transl Med、2017
【非特許文献3】Edelmanら、The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、1969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、GDF15融合タンパク質及びその使用を提供することである。GDF15融合タンパク質は、最良の物理化学的特性、長期のin vivo半減期及び有効性の持続期間、単純な製造工程等の利点を有し、肥満、II型糖尿病、NASH、脂質異常症等の代謝関連疾患の治療に使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、第1の態様において、本発明は、GDF15活性ドメイン及びFcバリアントを含む融合タンパク質であって、FcバリアントのC末端が、GDF15活性ドメインのN末端に、直接又はペプチドリンカーを介して連結しており、
Fcバリアントが、EU付番によるIgG Fcの356位及び/又は439位にアミノ酸置換を含む、
融合タンパク質を提供する。
【0011】
一部の実施形態において、Fcバリアントは、ホモダイマーを形成する能力を保持する。
【0012】
一部の実施形態において、IgG Fcは、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc及びIgG4 Fcのうちの1つから選択される。
【0013】
一部の実施形態において、IgG FcはヒトIgG1 Fcである。一部の実施形態において、IgG FcはヒトIgG4 Fcである。
【0014】
更に、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcの356位に、D、E及びC以外のアミノ酸によるアミノ酸置換を含む。例えば、IgG Fcの356位のアミノ酸は、以下の群:G、S、A、T、V、N、L、I、Q、Y、F、H、P、M、K、Rのうちの1つにより置換されている。更に、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcの439位に、R、H、K及びC以外のアミノ酸によるアミノ酸置換を含む。例えば、IgG Fcの439位のアミノ酸は、以下の群:G、S、A、T、V、D、N、L、I、E、Q、Y、F、P、Mのうちの1つにより置換されている。
【0015】
一部の実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:E356G、E356S、E356A、E356T、E356V、E356N、E356L、E356I、E356Q、E356Y、E356F、E356H、E356P、E356M、E356K、E356Rのうちの1つ、及び/又はK439G、K439S、K439A、K439T、K439V、K439D、K439N、K439L、K439I、K439E、K439Q、K439Y、K439F、K439H、K439P、K439Mのうちの1つを含む。
【0016】
好ましい実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:E356R、E356Q、E356A、E356Nのうちの1つ、及び/又はK439D、K439E、K439Q、K439A、K439Nのうちの1つを含む。
【0017】
一部の実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:K439D、K439E、K439Q、K439A、K439Nのうちの1つを含む。好ましい実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:K439D、K439E、K439Qのうちの1つを含む。
【0018】
一部の実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:E356R、E356Q、E356A、E356Nのうちの1つを含む。好ましい実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下の変異:E356Rを含む。
【0019】
一部の実施形態において、Fcバリアントは、以下の変異:EU付番によるIgG Fcの234位及び235位でのAAへのアミノ酸置換、並びに/又は447位でのアミノ酸欠失を更に含む。例えば、IgG1 Fcについては、以下の変異:L234A及びL235A、並びに/又は447位でのアミノ酸欠失も含まれ、IgG4 Fcについては、以下の変異:F234A及びL235A、並びに/又は447位でのアミノ酸欠失も含まれる。
【0020】
ある特定の実施形態において、Fcバリアントは、EU付番によるIgG Fcにおける以下のアミノ酸置換のうちの1つのみを有する:
EU付番による356位でのアミノ酸置換、
EU付番による439位でのアミノ酸置換、
EU付番による356位及び439位でのアミノ酸置換、
EU付番による356位、234位及び235位でのアミノ酸置換、
EU付番による439位、234位及び235位でのアミノ酸置換、
EU付番による356位、439位、234位及び235位でのアミノ酸置換、
各位置に記載されるアミノ酸置換は、本発明に記載される意味を有する。
【0021】
ある特定の実施形態において、Fcバリアントのアミノ酸配列は、以下の配列のうちの1つを含む:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
別の実施形態において、Fcバリアントは、以下の配列:配列番号1~22、配列番号27、配列番号29~45のうちの1つに対し、少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
更に、GDF15活性ドメインは、全長成熟GDF15タンパク質、N末端切断型GDF15タンパク質、又はGDF15の生物活性を保持する任意のバリアントである。
【0028】
別の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の群:
配列番号46;
配列番号46のN末端での1~14アミノ酸切断、及び/又は配列番号46中の1~3アミノ酸置換
のうちの1つから選択されるか、又はそれに対し少なくとも85%、90%、95%若しくは99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む。
【0029】
別の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の群:
配列番号46;
配列番号46のN末端での1~14アミノ酸切断、及び/又は配列番号46中の1~3アミノ酸置換
のうちの1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0030】
更に、配列番号46のN末端でのアミノ酸切断の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14である。
【0031】
更に、配列番号46中のアミノ酸置換の位置は、以下の群:5位、6位、21位、26位、30位、47位、54位、55位、57位、67位、69位、81位、94位、107位のうちの1つ、2つ又は3つから選択される。
【0032】
更に、配列番号46中のアミノ酸置換は、様々な位置:D5E、H6D、H6E、R21Q、R21H、D26E、A30S、A47D、A54S、A55E、M57T、R67Q、K69R、A81S、T94E、K107Qのうちの1つ、任意の2つ、又は任意の3つから選択される。
【0033】
一部の実施形態において、GDF15活性ドメインは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
他の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号46のN末端で1~14アミノ酸分切断されたアミノ酸配列を含む。
【0035】
更に他の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号46中に1~3アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、配列番号46中のアミノ酸置換は、本発明に記載される意味を有する。
【0036】
更に他の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号46のN末端に1~14アミノ酸切断、及び配列番号46中に1~3アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、配列番号46中のアミノ酸置換は、本発明に記載される意味を有する。
【0037】
ある特定の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の配列: 配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66のうちの1つを含む。
【0038】
【0039】
【0040】
別の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の群:配列番号46~66のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、GDF15活性ドメインは、以下の群:配列番号46~66のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0041】
別の実施形態において、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号46~66のうちの1つに対し、少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
一部の実施形態において、FcバリアントのC末端は、ペプチドリンカーを介してGDF15活性ドメインのN末端に連結しており、ペプチドリンカーは、柔軟なペプチドリンカー、剛直なペプチドリンカーのうちの1つ又はこれらの組み合わせから選択される。任意の好適なリンカーが、本発明の実施形態の融合タンパク質に使用可能である。本明細書では、用語「リンカー」は、ペプチドリンカーを含有する連結部分を指す。好ましくは、リンカーは、適当なフォールディングを確実にし、立体障害を最小限にするための一助となり、かつ融合タンパク質内の各機能性成分の構造を顕著には妨げない。より好ましくは、より大きいタンパク質発現収量を得るため、剛直なペプチドリンカー及び剛直/柔軟ハイブリッドペプチドリンカーを本発明に使用した。
【0043】
一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、(G4X)n、(X'P)m、(EAAAK)p及びGqのうちの1つ又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせを含み、n、m、p、qの各々は、整数1~10、又は整数11~20から独立に選択される。Xはセリン(S)又はアラニン(A)であり、X'はアラニン(A)、リジン(K)又はグルタミン酸(E)である。
【0044】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、(G4X)n及び(X'P)mの組み合わせを含み、n、m、X、X'は本発明に記載される意味を有する。
【0045】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4X)n1-(X'P)m-(G4X)n2を含み、n1、m、n2の各々は、整数1~10、又は整数11~20から独立に選択される。XはS又はAであり、X'はA、K又はEである。
【0046】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4X)n1-(X'P)m-(G4X)n2を含み、n1は2であり、mは10であり、n2は2である。
【0047】
別の実施形態において、ペプチドリンカーは、Gq及び(X'P)mの組み合わせを含み、q、m、X'は本明細書で記載される意味を有する。
【0048】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーはGq1-(X'P)m-Gq2を含み、q1、m及びq2の各々は、整数1~10、又は整数11~20から独立に選択され、X'は、A、K又はEである。
【0049】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーはGq1-(X'P)m-Gq2を含み、q1は4であり、mは10であり、q2は4である。
【0050】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、(G4X)n、(X'P)m及びGqの組み合わせを含み、n、m、q、X、X'は本発明に記載される意味を有する。
【0051】
一部の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4X)n1-Gq1-(X'P)m-(G4X)n2-Gq2を含み、n1、q1、m、n2、q2の各々は、整数1~10、又は整数11~20から独立に選択される。XはS又はAであり、X'は、A、K又はEである。
【0052】
一部の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4X)n1-Gq1-(X'P)m-(G4X)n2-Gq2を含み、n1は1であり、q1は4であり、mは10であり、n2は1であり、q2は4である。
【0053】
一部の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4S)5(配列番号123)を含む。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4S)8(配列番号124)を含む。本発明の一部の実施形態において、ペプチドリンカーはG4(AP)10G4(配列番号125)を含む。本発明の他の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4S)2(AP)10(G4S)2(配列番号126)を含む。本発明の更に他の実施形態において、ペプチドリンカーは(G4S)2(EP)10(G4S)2(配列番号127)を含む。
【0054】
一部の実施形態において、融合タンパク質は、以下の群のうちの1つから選択されるアミノ酸配列を含む:配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118。
【0055】
【0056】
【0057】
別の実施形態において、融合タンパク質は、以下の配列:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つに対し、少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、以下の群:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つのアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、融合タンパク質は、以下の群:配列番号67~78、配列番号80~102、配列番号105~118のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0058】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載される融合タンパク質を含むホモダイマー融合タンパク質を提供する。
【0059】
第3の態様において、本発明は、(i)、(ii)、及び(iii):
(i)本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、
(ii)(i)の核酸を含むベクター、
(iii)(i)の核酸及び/又は(ii)のベクターを含有する宿主細胞
のうちのいずれか1つである、生体物質を提供する。
【0060】
第4の態様において、本発明は、活性成分として本発明のホモダイマー融合タンパク質を含む医薬組成物であって、ホモダイマー融合タンパク質が、治療有効量で存在する、医薬組成物を提供する。
【0061】
更に、医薬組成物は薬学的に許容される担体も含む。
【0062】
第5の態様において、本発明は、代謝疾患を治療するための医薬の製造における、融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0063】
更に、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患等を含む。
【0064】
他の態様において、本発明は、対象における代謝疾患を治療する方法であって、治療有効量の融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0065】
更に、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患等を含む。
【0066】
他の態様において、本発明は、対象における代謝疾患を治療することにおける使用のための、融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物を提供する。
【0067】
更に、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患等を含む。
【0068】
第6の態様において、本発明は、対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させるための医薬の製造における、融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0069】
他の態様において、本発明は、対象における対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させる方法であって、治療有効量の融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0070】
他の態様において、本発明は、対象における対象の食物摂取、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル又はグルコースレベルを低減させることにおける使用のための、融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物を提供する。
【0071】
第7の態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む、代謝疾患を治療する方法を提供する。
【0072】
更に、代謝疾患は本発明に記載される意味を有する。
【0073】
先行技術と比較して、本発明は以下の進歩を有する:未変異又はモノマー又はヘテロダイマーIgG Fc及びGDF15活性ドメインの融合タンパク質と比較して、本発明により提供されるFcバリアントを、生物活性を維持する任意のGDF15ドメイン(成熟GDF15、切断型GDF15、又はそれらのバリアント)と融合させることにより、Fc-GDF15融合タンパク質は、顕著に改善された物理化学的特性及び組換え発現レベルを有し、天然のGDF15分子と同等の又はこれより良好なin vitro活性を有し、顕著に延長されたin vivo循環半減期を有し、このことは、2週ごとに1回又は更に1ヶ月に1回の投与頻度を支持しうる。それに加えて、本発明のFc-GDF15融合タンパク質は、先行技術においてヘテロダイマーにより形成される融合タンパク質より単純な製造工程及びより小さい生成コストを有する。
【0074】
以下の、好ましい実施形態について詳述される記述を読めば、各種他の利点及び利益が当業者には明らかとなるはずである。図は、好ましい実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものと考えられるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】Fc-GDF15融合タンパク質により形成されるホモダイマーの概略図である。
【
図2】正常マウスの体重に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(14日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図3】正常マウスの食物摂取に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(14日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図4】正常マウスの体重に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(30日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図5】正常マウスの食物摂取に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(30日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図6】正常マウスの体重に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(56日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図7】正常マウスの食物摂取に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果(56日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図8】食餌誘発性肥満マウスの体重に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の反復用量投与の効果(42日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図9】Fc-GDF15融合タンパク質の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおける糖負荷試験の結果を示すグラフである。
【
図10】食餌誘発性肥満マウスの体重に対する、様々な用量レベルのM39構築物の反復用量投与の効果(49日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図11】様々な用量のM39構築物の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおける空腹時血液グルコースレベル(46日目)を示すグラフである。
【
図12a】様々な用量レベルのM39構築物の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおける糖負荷試験の結果(46日目)を示すグラフである。
【
図12b】糖負荷試験曲線下面積の統計を示すグラフである(媒体に対し**-p<0.01、***-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図13】様々な用量のM39構築物の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおける脂肪指標を示すグラフである(媒体に対し**-p<0.01、***-p<0.001、#-p<0.05、##-p<0.01、###-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図14】様々な用量のM39構築物の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおけるアラニントランスアミナーゼレベルを示すグラフである(媒体に対し***-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図15】様々な用量のM39構築物の反復用量投与後の、食餌誘発性肥満マウスにおけるアスパラギン酸トランスアミナーゼレベルを示すグラフである(媒体に対し***-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図16a】ob/ob肥満マウスの体重に対する、様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与の効果(52日間モニタリング)を示すグラフである。ベースラインに対する体重変化。
【
図16b】ob/ob肥満マウスの体重に対する、様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与の効果(52日間モニタリング)を示すグラフである。媒体対照に対する体重変化。
【
図17】ob/ob肥満マウスの食物摂取に対する、様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与の効果(52日間モニタリング)を示すグラフである。
【
図18】様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与後の、ob/ob肥満マウスにおける肝臓指数を示すグラフである(媒体に対し***-p<0.001、セマグルチドに対し###-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図19】様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与後の、ob/ob肥満マウスにおけるアラニントランスアミナーゼレベルを示すグラフである(媒体に対し***-p<0.001、セマグルチドに対し##-p<0.01。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図20】様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与後の、ob/ob肥満マウスにおけるアスパラギン酸トランスアミナーゼレベルを示すグラフである(媒体に対し*-p<0.05、**-p<0.01、***-p<0.001、セマグルチドに対し#-p<0.05。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【
図21】様々な用量のM6及びM39構築物の反復用量投与後の、ob/ob肥満マウスにおける肝臓病理の改善を示すグラフである(媒体に対し***-p<0.001、セマグルチドに対し###-p<0.001。統計分析方法:一元配置ANOVA、その後ダネット)。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0076】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図を参照して、以下でより詳細に記載される。本開示の例示的な実施形態が図において示されるが、本開示が各種形態として具体化されてよく、本明細書に示される実施形態により限定されるべきでないことが理解されるべきである。反対に、これらの実施形態は、本開示がより十分に理解され、当業者に本開示の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0077】
別途定義されない限り、本発明において使用される技術及び科学用語は全て、当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。実施形態において使用される特定の方法、機器及び材料に加えて、当業者による先行技術の技能及び本発明の記載に従って、本発明の実施形態に記載される方法、機器及び材料と類似又は同等の、先行技術における任意の方法、機器及び材料が、本発明を実施するのに使用されてもよい。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「天然の」、「野生型」又は「WT」は、遺伝子改変された変異を含有せず、天然に存在するか又は環境から単離可能なタンパク質又はポリペプチドを指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、アミノ酸「置換」又は「置き換え」は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸の、別のアミノ酸による置き換えを指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、アミノ酸置換は、1つ目の文字、その後の数字、その後の2つ目の文字により示される。1つ目の文字は野生型タンパク質中のアミノ酸を指し、数字はそれが置換されたアミノ酸位置を指し、2つ目の文字は野生型アミノ酸を置き換えるのに使用されるアミノ酸を指す。
【0081】
本明細書では、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端での欠失は、ΔN、その後の数字により示され、数字は、アミノ末端で欠失したアミノ酸の数を表す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「IgG」又は「IgG抗体」は、天然に存在する免疫グロブリンG分子の構造を有する抗体を指す。IgG抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、IgG4 Fcはそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFc又はFc領域を表す。本明細書の融合タンパク質におけるIgG Fcは、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、IgG4 Fc、好ましくはIgG1 Fc、IgG4 Fcであってよい。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を繋ぎ合わせる単一のアミノ酸又はポリペプチド配列を指す。ペプチドリンカーの長さは、例えば反復アラニン、グリシン、及びセリンを含む、例えば約1~40アミノ酸であってよい。一般的なペプチドリンカーは、以下のものを含む:柔軟なペプチドリンカー、例えば、グリシン及びセリンの組み合わせ、例えば(GGGGS)n、これはペプチドリンカー中の反復単位の数により、連結されたタンパク質間の距離を調節することが可能である;グリシンのみから構成されるペプチドリンカー、例えばGn、一般的なものはG6、G8等を含む;剛直なペプチドリンカー、例えば、(EAAAK)n配列を有するα-ヘリックスペプチドリンカー;プロリンリッチな(XP)nを有するペプチドリンカー、ここでXは任意のアミノ酸を指定することができ、一般的なアミノ酸はアラニン、リジン、又はグルタミン酸を含み、(XP)n配列はヘリックス構造を有さず、ペプチドリンカー中のプロリンの存在により、骨格の剛性を増大させ、ドメインを有効に分離することが可能となる。プロリンリッチな配列を有する構造は体内に広く分布しており、骨格筋タンパク質のN末端の(AP)7構造等がある。ペプチドリンカーの選択は、例えば、柔軟なペプチドリンカーのみを使用して、剛直なペプチドリンカーのみを使用して、柔軟なペプチドリンカー及び剛直なペプチドリンカーの組み合わせ、及び同様のものを使用して、通常の実験に基づき当業者により決定可能である。
【0084】
本明細書では、「Fc」又は「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部を含有する、抗体の重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域又はバリアントFc領域であってよい。当業者は、Fc領域が概して2つの定常ドメイン:CH2及びCH3を含むこと、並びにFc領域の範囲が変動しうることを知っている。この文脈では、Fc領域のC末端は抗体の重鎖のC末端であるが、Fc領域のN末端は変動してよい。一部の実施形態において、Fc領域のN末端は、例えば、231位(EU付番)、又は233位(EU付番)、又は236位(EU付番)、又は237位(EU付番)から始まってよく、他の実施形態において、本発明のFc領域のN末端はヒンジ領域を含まず、更に他の実施形態において、本発明のFc領域のN末端はヒンジ領域を含む。本明細書では、Fc領域中のアミノ酸残基の付番は、Edelmanら、The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、1969に記載されるように、EU指標としても知られるEU付番系に従う。
【0085】
GDF15ポリペプチドは、その活性を及ぼすためにダイマーを形成する必要がある。本発明の研究過程の間、IgG Fcはダイマーを天然に形成しうるが、IgG Fcダイマー中の2つのモノマーFcのカルボキシル末端間の空間距離が、GDF15モノマーのアミノ末端間の空間距離とは顕著に異なり、柔軟な又は剛直なペプチドリンカーが使用されたとしても、IgG FcのC末端及びGDF15のN末端により形成される融合タンパク質は、構築中の不安定性及び低い発現収量等の問題を依然として有することが判明した。本発明により提供されるFcバリアントは、特定のFc部位、例えば439位又は356位に変異を導入することにより、Fc-GDF15分子の安定性を顕著に改善し、Fc-GDF15融合タンパク質の効率的な構築を実現し、発現収量を増大させる。製造工程は単純であり、融合タンパク質はホモダイマーを形成する能力を保持する。それに加えて、本発明のFcバリアントは、本発明のFcバリアントと融合タンパク質を形成し役割を果たすことが可能な、成熟GDF15タンパク質であれ、その切断型GDF15であれ、又はそれらの任意のバリアントであれ、GDF15タンパク質又は生物活性を維持するそれらのバリアント全てに適用可能である。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ダイマー」は、2つのタンパク質ポリペプチドから構成され、タンパク質の四次構造であるタンパク質ダイマーを指す。ダイマーを構成する2つのタンパク質ポリペプチドは、ダイマーのモノマー分子又はモノマータンパク質と呼ばれることがある。ダイマーは「ホモダイマー」及び「ヘテロダイマー」の両方を含んでいてよく、ホモダイマーは2つの同一のモノマー分子の組み合わせにより形成され、ヘテロダイマーは2つの異なるモノマー分子の組み合わせにより形成される。ペプチド1つのみがコードされる必要があるため、ホモダイマーはヘテロダイマーよりも調製するのが単純であると概して考えられる。本発明において、本発明により提供されるFcバリアントはホモダイマーを形成する能力を有し、本発明により提供されるFcバリアント及びGDF15活性ドメインの融合タンパク質も、ホモダイマーを形成する能力を有する。
図1を参照すると、融合タンパク質により形成されたホモダイマーにおいて、2つのモノマーFcバリアント間及び2つのモノマーGDF15活性ドメイン間にそれぞれ、ホモダイマー形成が存在する。
【0087】
本明細書では、「増殖分化因子15」、「GDF15」又は「GDF15活性ドメイン」は、一部の実施形態では天然の成熟ヒトGDF15又はそのドメインであり、他の実施形態ではGDF15の変異体又はそのドメインを指す。成熟GDF15は、合計308アミノ酸中(UniProtq99988)、シグナルペプチド及びリーダーペプチドを除くアミノ酸197(a)~308(I)(GDF15(197~308)(配列番号46))、又はGDF15の独自の活性及び構造を維持する範囲内のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、及び99%の配列同一性を有するポリペプチドから構成される。変異体は、切断、及び/又は1つ若しくは複数のアミノ酸変異を含む。一部の実施形態において、切断型GDF15は、N末端欠失バリアント、例えばN末端で1~14アミノ酸が切断された配列、又は切断型アミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、及び99%の配列同一性を有するポリペプチドであってよく、一部の実施形態において、GDF15バリアントは、成熟GDF15又は切断型GDF15と比較して、少なくとも1つのアミノ酸部位の置換、挿入又は欠失を指す。GDF15バリアントが、GDF15タンパク質の生物活性のうちの少なくとも1つ、例えば、食物摂取、血液グルコースレベル、インスリン抵抗性及び体重等に対するその効果を維持する限り、これは本発明の保護の範囲内である。
【0088】
GDF15バリアントは、GDF15ポリペプチドの特定の位置で、保存的若しくは非保存的な1つ若しくは複数のアミノ酸置換を導入し、天然に存在する若しくは天然に存在しないアミノ酸を使用すること、又は特定の残基若しくはそのセグメントを欠失させることによっても生成されうる。
【0089】
本出願において、用語「保存的アミノ酸置換」は、その位置のアミノ酸残基の極性又は電荷に対しほとんど又は全く効果がないような、天然のアミノ酸残基(すなわち、野生型GDF15ポリペプチド配列の所与の位置にみられる残基)の、非天然の残基(すなわち、野生型GDF15ポリペプチド配列のその同じ位置にみられない残基)による置換を伴っていてよい。保存的アミノ酸置換は、一般的には生物系における合成ではなく化学的ペプチド合成により組み込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基も包含する。これらは、ペプチドミメティック、及び他の反転又は逆位の形態のアミノ酸部分を含む。
【0090】
天然に存在するアミノ酸残基は、一般的な側鎖特性に基づき以下のクラスにグループ分けされうる:
(1)疎水性残基:M、A、V、L、I、
(2)中性親水性残基:C、S、T、N、Q、
(3)酸残基:D、E、
(4)アルカリ性残基:H、K、R、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:G、P、及び
(6)芳香族残基:W、Y、F。
【0091】
保存的置換は、同じカテゴリーの別のメンバーに交換された、これらのカテゴリーのあるメンバーを含んでいてよい。
【0092】
一部の保存的アミノ酸置換が以下の表に示される:
【0093】
【0094】
保存的置換は、これらのカテゴリーのうちの1つのメンバーの、同じカテゴリーの別のメンバーとの交換を伴っていてよい。非保存的置換は、これらのカテゴリーのうちの1つのメンバーの、別のカテゴリーのメンバーとの交換を伴っていてよい。
【0095】
本明細書で使用される場合、「同一性」又は「相同性」は概して、2つのペプチド若しくはタンパク質間、又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。パーセント「同一性」又は「相同性」は、比較される分子における、アミノ酸又はヌクレオチド間の同一の残基のパーセンテージを指し、比較される分子のうちの最小のもののサイズに基づき算出される。
【0096】
本発明のFcバリアント、及び天然の成熟ヒトGDF15又はそのバリアントにより形成される融合タンパク質は、本発明の目的を達成することが可能である。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、自己複製する核酸構造であるベクター、及び導入先の宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む、連結先の別の核酸を増殖させることが可能な核酸分子を指す。ある特定のベクターは、作動可能に連結した核酸の発現を誘導することが可能であり、そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、外来性の核酸が導入された細胞を、そのような細胞の子孫を含めて指す。宿主細胞は、初めに形質転換された細胞、及びそこから生じた子孫(継代数に関わらず)を含む。子孫は、核酸の内容において親細胞と同一でなくてもよく、変異を含有していてもよい。元の形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫は、本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の融合タンパク質を生成するのに使用可能な、任意の種類の細胞系である。宿主細胞は、哺乳動物の培養細胞、例えばCHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)、昆虫細胞及び植物細胞等を含み、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養植物又は動物組織に含有される細胞も含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、そこに含有される活性成分の生物活性が有効となり、かつその医薬組成物が投与される対象に対し許容不能なほど毒性である更なる成分不含となることが可能な形態の配合物を指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、例えば、疾患の有害作用を排除すること、低減させること、遅延させること、最小限にすること又は予防することを含む、所望の治療上又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、対象に対し毒性でない、医薬組成物中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤又は保存料を含むがこれらに限定されない。
【0102】
本明細書で使用される場合、「治療」は、治療される個体における疾患の自然経過を変化させようとする試みを指し、予防又は臨床病理の経過中に実施される臨床介入のためのものであってよい。治療の所望の効果は、疾患の発生又は再発を予防すること、症状を軽減すること、疾患の任意の直接的又は間接的病理学的結果を低減させること、疾患進行の速度を遅らせること、病状を改善又は排除すること、及び予後を逆行させること又は改善することを含むがこれらに限定されない。
【0103】
本明細書で使用される場合、「個体」又は「対象」は哺乳動物である。哺乳動物は、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)又は他の哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、並びにげっ歯類、例えばマウス及びラット)を含むがこれらに限定されない。特に、個体又は対象はヒトである。
【0104】
本明細書では、天然のアミノ酸について、従来の1文字又は3文字記号が使用される:
【0105】
【0106】
(実施例1)
Fcバリアントの設計
本実施例では、Fcの構造上の特性に対する、様々な変異を導入することの効果が試験され、一部の変異体についての試験結果がTable 4(表6)に示される。試験工程は以下を含む。
【0107】
分子クローニング法を使用してFc核酸配列を哺乳動物細胞発現ベクターに挿入し、CHO-S細胞での一過性トランスフェクション及び発現にExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)を使用し、プロテインAカラムによる精製後、標的タンパク質を得、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC)により標的タンパク質を分析した。
【0108】
SEC分析の主な原理は、分析物(例えばタンパク質)の分子量及び三次元構造に基づく。概して、より大きい分子量を有する分析物はクロマトグラフィーカラムをより迅速に通過し、ゆえにより短いカラム保持時間を有する。反対に、より小さい分子量を有する分析物は、より長い保持時間を有する。ゆえにSECは、タンパク質分子の凝集/オリゴマー形成(例えばダイマー形成)を分析するのに使用可能である。
【0109】
天然の免疫グロブリンFc断片は、ホモダイマー構造を天然に形成する。融合タンパク質の安定性を改善するため、Fc分子は変異導入される必要があり、そのことがFcホモダイマーの構造を破壊するおそれがある。しかし、本発明者らは驚くべきことに、439位での変異の導入後のFc分子(K439D又はK439E)が、SEC分析において、変異を有しないFc分子と同じ保持時間を有し、導入された変異がFcダイマーの形成を妨害しないことを示すことを見出した。対照として、本実施例は、配列番号24のアミノ酸配列を有するFc分子(F405Q/Y407E変異を含む)も試験した。以前の特許文書WO2019195091によれば、F405Q/Y407E変異は、Fcダイマーを破壊してモノマーFc分子を形成しうる。本実験では、この変異が、顕著に延長された保持時間を有し、Fc分子がモノマー形態として存在することを示すことが判明した。
【0110】
【0111】
(実施例2)
Fc-GDF15構築物の調製
発現ベクターの構築:Table 3(表3)に示されるFc-GDF15分子を、哺乳動物細胞ベクターpXC17.4のポリクローナル制限部位にそれぞれ挿入して、Table 3(表3)に示されるFc-GDF15を発現する発現ベクターを構築し、Fc-GDF15発現ベクターを、細胞トランスフェクションのため、エンドトキシン枯渇プラスミド抽出キット(OMEGA社)により抽出した。
【0112】
細胞トランスフェクション及び培養:CHO-S細胞を回復させ継代培養し、細胞を、細胞トランスフェクションのため、密度が約6×106細胞/mLに到達すると収集した。ExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)を使用して細胞をトランスフェクトし、そこでのFc-GDF15発現ベクターの最終濃度は1μg/mlであった。トランスフェクションから約20時間後、ExpiCHO Fectamine CHO Enhancer及びExpiCHO Feedを添加して、トランスフェクトされた細胞の増殖を維持した。細胞生存率が約80%に減少すると、細胞培養培地を回収した。
【0113】
タンパク質精製:細胞培養培地を遠心処理した後、上清を収集し、0.22μmフィルターで濾過して細胞培養上清を得た。2段階クロマトグラフィー法を使用して細胞培養上清を精製した。クロマトグラフィーの第1段階:細胞培養上清を、リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で平衡化されたAT Protein A Diamondカラム(BestChrom社)にアプライした。標的タンパク質が結合した後、混合物を3CV(カラム体積)超の平衡化溶液で洗浄して、未結合の不純物を除去し、100mM酢酸-酢酸ナトリウム(pH3.0)緩衝液で溶出した。標的タンパク質を収集し、次いで、収集された試料のpHを、1.0M Tris-HCl(pH8.0)溶液で7.2~7.6に迅速に調整し、pH調整された試料を、その伝導性値が5ms/cmより小さくなるまで精製水で希釈して、第1の試料を得た。クロマトグラフィーの第2段階:プロテインAにより得られた第1の試料を、20mM Tris-HCl緩衝液で平衡化されたBestarose Q HPカラムを使用して更に精製した。第1の試料をローディングし、3CVの20mM Tris-HCl緩衝液及び3CV超の20mM PB緩衝液で洗浄して、緩衝液系を置き換え、最後にPBSで溶出した。溶出画分を収集して、標的タンパク質試料を得た。標的タンパク質試料の性質及び純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及び質量分析により評価した。標的タンパク質試料を、マイクロ核酸タンパク質分析装置(NanoDrop2000/2000c分光光度計)により定量化した。
【0114】
(実施例3)
Fc-GDF15融合タンパク質の発現収量に対するFcバリアントの効果
Table 3(表3)に記載されるFc-GDF15融合タンパク質を、実施例2に記載される方法により発現させ、様々なFcバリアントを適用することの、Fc-GDF15融合タンパク質の発現収量に対する効果を比較した。試験の結果がTable 5(表7)に示される。
【0115】
試験結果によれば、FcのK439(EU付番)又はE356(EU付番)で変異していないFc-GDF15融合タンパク質、例えばM1(配列番号119の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M14(配列番号79の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)が、より小さい発現収量を有する一方で、FcのK439及び/又はE356で変異導入されたFc-GDF15融合タンパク質、例えばM2(配列番号67の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M3(配列番号68の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M4(配列番号69の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M5(配列番号70の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M6(配列番号71の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M7(配列番号72の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M8(配列番号73の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M9(配列番号74の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M10(配列番号75の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M11(配列番号76の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M15(配列番号80の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M39(配列番号105の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M50(配列番号116の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)は、改善された融合タンパク質発現収量を有し、356(EU付番)又は439(EU付番)位でのアミノ酸の変異が、Fc-GDF15融合タンパク質の組織化された発現にとってより有利であることを示すことが判明した。
【0116】
【0117】
(実施例4)
Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性
タンパク質分子の物理化学的特性、例えばそれらの、凝集及び分解する傾向は、分子の創薬可能性に影響を及ぼし、ゆえに理想的な薬物分子は、安定な単一の成分を有する、すなわち、凝集及び分解が発生しにくい必要がある。
【0118】
Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性を試験するため、Fc-GDF15融合タンパク質を、実施例2に記載される方法により発現させ、精製し、次いで融合タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。具体的に、Waters社Xbridge BEH 200A、3.5μm(7.8×300mm)クロマトグラフィーカラムをSEC分析に使用し、移動相は150mMリン酸緩衝液/アセトニトリル(9:1、pH6.5)であり、流速は0.5ml/minであった。試験結果において、高分子量(HMW)成分の割合は凝集の割合を表し、低分子量(LMW)成分の割合は分解の割合を表す。試験結果がTable 6(表8)に示される。
【0119】
【0120】
【0121】
Table 6(表8)における結果は、FcのK439(EU付番)又はE356(EU付番)での変異なしのFc-GDF15融合タンパク質、例えばM1及びM14が、50.2%及び67.6%の高分子量(HMW)凝集をそれぞれ有した一方で、FcのK439(EU付番)及び/又はE356(EU付番)で変異導入されたFc-GDF15融合タンパク質が全て、顕著に低減したポリマー凝集比を有し、大部分の融合タンパク質が5%未満のポリマー凝集を有したことを示し、K439(EU付番)又はE356(EU付番)でのFcの変異が、Fc-GDF15融合タンパク質のより良好な創薬可能性をもたらす可能性があることを示した。
【0122】
(実施例5)
Fc-GDF15融合タンパク質のin vitro活性
以前の研究が、in vivoでのGDF15の機能には、その特異的な受容体GFRAL及び共受容体RETを介したシグナル伝達が必要であることを示している。細胞表面でのその受容体とのGDF15の結合は、下流のシグナル伝達経路を活性化することができ、そのうちの1つはERK1/2リン酸化である。ゆえに、GDF15のin vitro活性及び効力は、細胞におけるERK1/2のリン酸化レベルを検出することにより評価可能である。
【0123】
ヒトGFRAL(UniProtKB-Q6UXV0)及びヒトRET(UniProtKB-P07949)の遺伝子配列を、IRES配列により連結させ、CMVプロモーターの下流に配置し、次いでHEK293T細胞(ATCC)にトランスフェクトした。ピューロマイシン(Gibco社)を添加して、略して受容体発現細胞と呼ばれる、2つの受容体を安定に発現する陽性細胞をスクリーニングし、これらをin vitro GDF15活性分析に使用した。製造業者の説明書きに従って、Advanced phospho-ERK1/2(Thr202/Tyr204)HTRF(均一系時間分解蛍光)キット(Cisbio社)を使用して、細胞におけるERK1/2のリン酸化レベルを検出した。
【0124】
簡潔に言えば、受容体発現細胞を、密度16,000細胞/ウェルで384ウェルプレートに播種した。飢餓状態にした後、Fc-GDF15融合タンパク質又は天然のGDF15(ACROBiosystems社、GD5-H5149)で細胞を刺激した。刺激した後、細胞を溶解させ、標識化された抗体(アッセイキットとともに供給される)とともに室温で一晩インキュベートした。励起波長337nmによる665nm及び620nmでの蛍光値を検出するのに、多機能マイクロプレートリーダー(SpectraMaxi3X、Molecular devices社)を使用した。シグナル強度は665nm及び620nmでの蛍光値の比により算出され、式は以下の通りである。
【0125】
【0126】
これらの中で:A665は665nm波長で検出された蛍光値であり、A620は620nm波長で検出された蛍光値である。応答値の強度は、細胞におけるERK1/2のリン酸化強度に対応する。
【0127】
各構築物についてのEC50は、GraphPad Prismにおいて、4変数ロジスティック回帰を用いる可変勾配シグモイド用量応答曲線を使用して決定される。相対活性比(天然のGDF15 EC50:Fc-GDF15構築物EC50)を算出した。結果がTable 7(表9)に示される。
【0128】
【0129】
【0130】
結果は、顕著に低減したin vitro活性を有したM35を除いて、残りのFc-GDF15融合タンパク質が全て、天然のGDF15に匹敵するか又はこれより良好なin vitro活性を有したことを示す。
【0131】
(実施例6)
Fc-GDF15融合タンパク質の熱安定性
本実施例では、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、様々なFc-GDF15融合タンパク質の熱安定性を試験した。DSCスペクトルの吸熱転移曲線は、タンパク質分子の変性及びアンフォールディング過程を表し、タンパク質熱安定性は、熱転移中間点(Tm)値によって特徴付けられうる。具体的には、試料を加熱速度120℃/時間で30℃から110℃まで加熱し、様々なFc-GDF15融合タンパク質のTm値を決定した。結果がTable 8(表10)に示される。実験結果は、Fc-GDF15融合タンパク質が良好な熱安定性を有し、薬物開発に好適であることを示す。
【0132】
【0133】
(実施例7)
正常マウスにおけるFc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与のin vivo有効性
GDF15は、食物摂取を阻害し体重を低減させることができ、肥満及び他の関連する代謝疾患を治療する可能性を有する。しかし、天然のGDF15分子は血清半減期約3時間しか有さず、このことがその直接的な治療上の適用を大幅に限定していた。本発明により提供されるFc-GDF15融合タンパク質は、薬物分子の半減期を延長させることが可能である。本実施例では、正常マウスの食物摂取及び体重に対する、様々なFc-GDF15融合タンパク質の単回用量投与の効果を試験して、様々なFc-GDF15融合タンパク質のin vivo有効性及びその作用の持続期間を評価した。
【0134】
具体的には、8~9週齢C57BL/6マウス(Hunan SJA Laboratory Animal社)を0日目に秤量し、単回皮下用量の試験されるFc-GDF15融合タンパク質又は媒体(PBS)を投与し、投与後に食物摂取及び体重を継続的にモニタリングした。体重変化パーセンテージの算出方法は:体重変化(%)=(測定された体重-初期体重)/初期体重×100%である。
【0135】
単回用量により14日間処理された正常マウスの食物摂取及び体重についての結果が、Table 9(表11)、
図2及び
図3に示される。
【0136】
【0137】
結果は、正常マウスにおける用量3nmol/kgのFc-GDF15融合タンパク質の単回投与が、8日目及び14日目に、媒体と比較して、食物摂取を抑制し体重を有意に減少させたことを示す。これらの中で、モノマーFc(特許第WO2019195091号で開示される「化合物2」、モノマーは配列番号104の配列を有し、Fcは配列番号18の配列を有し、F405Q、Y407Eである)を含有するGDF15融合タンパク質モノFc-GDF15が、8日目に最良の有効性に到達し、驚くべきことに、FcのK439で変異導入されたFc-GDF15融合タンパク質、例えばM3(配列番号68の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)及びM15(配列番号80の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、並びにGDF15の様々なアミノ酸部位での変異を更に含むFc-GDF15融合タンパク質、例えばM20(配列番号85の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M23(配列番号88の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M24(配列番号89の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)及びM35(配列番号100の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)が、投与後14日目に、マウスの体重の減少傾向を更に示し、体重減少はモノFc-GDF15融合タンパク質の効果より有意に大きかった。
【0138】
単回用量により30日間処理された正常マウスの食物摂取及び体重についての結果が、Table 10(表12)、
図4及び
図5に示される。
【0139】
【0140】
結果は、正常マウスにおける用量1nmol/kgのFc-GDF15融合タンパク質の単回投与が、マウスの体重を有意に低減させることができたことを示す。これらの中で、モノマーFcを含有するGDF15融合タンパク質モノFc-GDF15はより弱い体重低減効果を有し、マウスは14日目に初期体重に回復した。しかし驚くべきことに、FcのK439位に様々なアミノ酸変異を含有するFc-GDF15構築物、例えばM3(配列番号68の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M6(配列番号71の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M7(配列番号72の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M16(配列番号81の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)及びM51(配列番号117の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)は、有意により強い体重低減効果を有し、マウスの体重を最長28日まで継続的に低減させることができ、有意に延長された薬物効果維持時間を示唆した。
【0141】
単回用量により56日間処理された正常マウスの食物摂取及び体重についての結果が、Table 11(表13)、
図6及び
図7に示される。
【0142】
【0143】
結果は、1nmol/kgのM9(配列番号74の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M18(配列番号83の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M22(配列番号87の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)又はM35(配列番号100の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)の単回用量処理が、正常マウスにおいて食物摂取を阻害し体重を有意に低減させることができたことを示す。更に、マウスの体重はリバウンド前におよそ21日目まで減少し続け、およそ56日目にベースラインに戻り、FcK439又はE356で変異導入されたFc-GDF15融合タンパク質、例えばM9及びM18、更にGDF15の様々なアミノ酸部位での変異を更に含有する融合タンパク質、例えばM22及びM35が全て、有効性の超長期の持続期間を有することを示した。体重を低下させる有効性は、単回用量の投与後約1ヶ月間維持可能であった。同時に、本発明者らは驚くべきことに、構築物M35は有意に低減したin vitro活性を有するが、他の構築物と同様のin vivo有効性を依然として維持していることを見出した。
【0144】
(実施例8)
食餌誘発性肥満(DIO)マウスにおける、Fc-GDF15融合タンパク質の反復用量投与のin vivo有効性
本実施例は、DIOマウスにおける食欲抑制、体重低減、及び各種代謝指標の改善に対する、Fc-GDF15融合タンパク質の反復用量投与の効果を試験する。高脂肪食による4ヶ月の誘導後、C57BL/6マウスを体重に従って無作為にグループ分けし、次いで媒体(PBS、2週ごとに1回)、様々なFc-GDF15融合タンパク質(1nmol/kg、2週ごとに1回)又はセマグルチド(3nmol/kg、1日1回)を49日間皮下投与した。マウスの体重及び食物摂取の変化を、実験中継続的にモニタリングした。腹腔内糖負荷試験(IPGTT)を初回投与後45日目に実施し、49日目にマウスを屠殺し、脂肪含有量及び各種血清生化学的変数を分析した。
【0145】
マウスの体重変化及び食物摂取についての結果がTable 12(表14)に示され、体重変化曲線が
図8に示され、IPGTTデータが
図9に示され、変数である耐糖能曲線下面積、脂肪指標、血清総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及び低密度リポタンパク質(LDL)がTable 13(表15)に示される。
【0146】
【0147】
【0148】
結果は、2週間ごとの、用量1nmol/kgのFc-GDF15融合タンパク質M4(配列番号69の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M5(配列番号70の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)又はM9(配列番号74の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)の投与が、マウスの体重を正常レベルに到達させることができた3nmol/kgセマグルチド毎日投与に匹敵する有効性で、DIOマウスの食物摂取を阻害し体重を有意に低減させることができ、M4及びM5が、DIOマウスの耐糖能レベルも有意に改善することができ、M4、M5及びM9が、脂肪含有量、並びに総コレステロール、トリグリセリド及び低密度リポタンパク質を含む血液脂質を有意に低減させることができ、M4、M5及びM9が、肝臓機能を改善すること、例えばALT及びASTレベルを有意に低減させることもできたことを示す。本発明のFc-GDF15構築物が、肥満、糖尿病、高脂血症又は脂肪肝/脂肪性肝炎の治療に適用可能であることが示される。
【0149】
別の実験では、DIOマウスにおける食欲を抑制すること、体重を低減させること、及び各種代謝変数を改善することに対する、様々な用量の構築物M39の反復用量投与の効果を試験した。DIOマウスを群に無作為に分け(1群あたり10~12マウス)、媒体(PBS、週1回)、様々な用量のM39(0.03nmol/kg、0.1nmol/kg及び1nmol/kg、週1回;3nmol/kg、2週ごとに1回)又はセマグルチド(3nmol/kg、1日1回)を皮下投与した。マウスの体重及び食物摂取の変化を継続的にモニタリングした。空腹時血液グルコース及び耐糖能を初回投与後46日目に測定し、マウスを49日目に屠殺し、脂肪含有量及び各種血清生化学的指標を分析した。
【0150】
処理終了時のマウスの体重変化がTable 14(表16)に示され、体重変化曲線、空腹時血液グルコースレベル、IPGTT(46日目)及び曲線下面積、脂肪指標、及びトランスアミナーゼレベルが
図10~
図15にそれぞれ示される。
【0151】
【0152】
上記の結果は、週1回又は2週ごとに1回のM39の皮下注射が、DIOマウスの体重を用量依存的に低減させることができ、週1回の1nmol/kgの体重減少効果が、3nmol/kgセマグルチド毎日投与より有意に強かったことを示す。同時に、M39は、マウスの脂肪含有量を有意に低減させ、マウスにおける空腹時血液グルコースレベル、耐糖能、及び肝機能バイオマーカーを改善することもできた。
【0153】
(実施例9)
ob/ob肥満マウスモデルにおける、Fc-GDF15融合タンパク質のin vivo有効性
本実施例は、ob/ob肥満マウスモデルにおける食欲を抑制すること、体重を低減させること、及び各種代謝指標を改善することに対する、構築物M6及びM39の効果を試験する。順化後、6~7週齢のob/obマウス(GemPharmatech社)を体重に従って群に無作為に分け、媒体(PBS)、様々な用量のM6又はM39(0.1nmol/kg、0日目及び24日目に投薬;1nmol/kg、10nmol/kg、0日目及び36日目に投薬)又はセマグルチド(3nmol/kg、1日1回)を皮下投与した。マウスの体重及び食物摂取の変化を継続的にモニタリングした。マウスを52日目に屠殺し、各種血清生化学的指標及び肝臓病理を分析した。
【0154】
処理終了時のマウスの体重変化がTable 15(表17)に示され、体重変化曲線、累積食物摂取、肝臓指標、トランスアミナーゼレベル、及び肝臓病理の結果が
図16~
図21にそれぞれ示される。
【0155】
【0156】
上記の結果は、本発明により設計されたFc-GDF15構築物が、薬物有効性の超長期の持続期間を有していたことを示す。低用量で0日目及び24日目に1回、中及び高用量で0日目及び36日目に1回投与されたM6及びM39は、ob/obマウスにおいて食物摂取を有意に低減させることができた。体重の改善は毎日投与されたセマグルチドより有意に強く、M6及びM39は、ob/obマウスにおける肝機能及び脂肪肝を有意に改善することもでき、効果はこちらもセマグルチドより有意に良好であった。
【0157】
(実施例10)
マウスにおけるFc-GDF15融合タンパク質の薬物動態
本実施例は、マウスにおける構築物M38(配列番号103の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M3(配列番号68の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)、M15(配列番号80の配列を有するモノマーを有するホモダイマー)の薬物動態性質を試験した。上記の融合タンパク質を10mM PBSで0.05mg/mlに希釈し、次いでC57BL/6マウスに、1用量群あたり3マウスで用量0.25mg/kgを皮下注射した。それぞれ投与前、並びに投与から2h、7h、24h、48h、96h、168h、356h、504h、及び672h後に血液を各動物から収集し、サンドイッチELISAにより血漿Fc-GDF15濃度を決定した。具体的には、マウス抗ヒトGDF15モノクローナル抗体(Sino Biological Inc.社)を使用してプレートをコーティングし、マウス抗ヒトIgG4 Fc-HRPを使用して標的タンパク質を検出し、次いで薬物動態データを算出した。結果がTable 16(表18)に示される。
【0158】
【0159】
結果は、モノマーFcを含有する融合タンパク質M38が、マウスにおいて半減期58hを有したことを示し、驚くべきことに、マウスにおける、Fcバリアントを有するFc-GDF15融合タンパク質M15及びM3の半減期が、マウスにおける従来のFc融合タンパク質の半減期よりはるかに長い、244h及び306hに到達したことが判明した。
【0160】
(実施例11)
カニクイザルにおけるFc-GDF15融合タンパク質の薬物動態
本実施例は、カニクイザルにおける、構築物M39の薬物動態変数を試験した。M39を、カニクイザルに、それぞれ用量1mg/kg及び2mg/kgで、各性別につき動物3匹で皮下投与した。投与前、並びに投与から0.5h、2h、6h、48h、168h、356h、504h、及び672h後に血液を各動物から収集し、サンドイッチELISAにより血漿Fc-GDF15濃度を決定した。具体的には、マウス抗ヒトGDF15モノクローナル抗体(Sino Biological Inc.社)を使用してプレートをコーティングし、マウス抗ヒトIgG4 Fc-HRPを使用して標的タンパク質を検出し、次いで薬物動態データを算出した。結果がTable 17(表19)に示される。
【0161】
【0162】
本発明者らは、構築物M39も、カニクイザルにおいて超長期の半減期を示し、約100時間であった、カニクイザルにおける従来の非抗体Fc融合タンパク質の半減期よりはるかに長い、200~300時間に到達したことを見出して驚いた。
【0163】
上記の記載は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本発明により開示される技術範囲内で当業者により容易に考え出されうるあらゆる変更又は置換が、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。ゆえに、本発明の保護範囲は、請求項の保護範囲に基づくべきである。
【配列表】
【国際調査報告】