(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】改変AAVカプシドおよびベクター
(51)【国際特許分類】
C07K 14/015 20060101AFI20240903BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07K14/015 ZNA
C12N15/35
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513133
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 AU2022051006
(87)【国際公開番号】W WO2023023779
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522336937
【氏名又は名称】チルドレンズ・メディカル・リサーチ・インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Research Institute
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】カバネス クレウス,マルティ
(72)【発明者】
【氏名】リソフスキー,レシェク
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065BD15
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
本開示は、一般的に、改変アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドポリペプチドおよびそれをコードする核酸分子に関する。本開示はまた、カプシドポリペプチドを含むAAVベクター、およびコードする核酸分子を含む核酸ベクター(例えば、プラスミド)、ならびにベクターを含む宿主細胞にも関する。本開示はまた、ポリペプチド、コードする核酸分子、ベクターおよび宿主細胞の方法および使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって:
バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み;
カプシドポリペプチドが:(i)配列番号2に示される配列;(ii)配列番号2の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号2の位置203~736のアミノ酸の配列に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチド。
【請求項2】
バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって:
バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み;
カプシドポリペプチドが(i)配列番号4に示される配列;(ii)配列番号4の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号4の位置204~735のアミノ酸の配列に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチド。
【請求項3】
バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって:
バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み;
カプシドポリペプチドが:(i)配列番号340に示される配列;(ii)配列番号340の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号4の位置204~735のアミノ酸の配列に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチド。
【請求項4】
バリアントVR-Iが、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、2074、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプシドポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のカプシドポリペプチドを含む、AAVベクター。
【請求項6】
異種コード配列をさらに含む、請求項5に記載のAAVベクター。
【請求項7】
異種コード配列がペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドをコードする、請求項6に記載のAAVベクター。
【請求項8】
ペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが治療用ペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドである、請求項7に記載のAAVベクター。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
プラスミド、コスミド、ファージ、およびトランスポゾンの中から選択される、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項5~8のいずれか一項に記載のAAVベクター、請求項9に記載の核酸分子、または請求項10もしくは請求項11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞を請求項5~8のいずれか一項に記載のAAVベクターと接触させることを含む、異種コード配列を宿主細胞に導入するための方法。
【請求項14】
宿主細胞が肝細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
宿主細胞をAAVベクターと接触させることが、対象にAAVベクターを投与することを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
インビトロまたはエクスビボである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
AAVベクターを産生するための方法であって、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子、AAVrep遺伝子、AAV逆方向末端反復が隣接する異種コード配列、および増殖性AAV感染を生成するためのヘルパー機能を含む宿主細胞を、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプシドポリペプチドを含むカプシドを含むAAVベクターのアセンブリを促進するのに適した条件下で培養することを含み、カプシドが異種コード配列をカプシド化する、方法。
【請求項18】
宿主細胞が肝細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒト肝細胞において増強された形質導入効率を示す改変AAVベクターを産生するための方法であって:
a)インビボでヒト肝細胞を形質導入するための参照カプシドポリペプチドを同定することと;
b)配列番号5に対するナンバリングで、位置262~271に配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む参照カプシドポリペプチドの配列を、配列番号5に対するナンバリングで、位置262、263、264、265、266、267、268、269、270および271のうちの1つ以上で改変することと;
c)改変カプシドポリペプチドをベクター化し、それによって改変AAVベクターを産生することと
を含む、方法。
【請求項20】
参照カプシドポリペプチドが、配列番号2、4または340に示される配列に対して、少なくとももしくは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
改変AAVベクターの形質導入効率を、ヒト肝細胞を使用するインビボ系で評価することをさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
インビボ系が、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を有する小動物(例えば、マウス)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
インビボ系がhFRGマウスを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、改変アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドポリペプチドおよびコード核酸分子に関する。本開示はまた、カプシドポリペプチドを含むAAVベクター、およびコードする核酸分子を含む核酸ベクター(例えば、プラスミド)、ならびにベクターを含む宿主細胞にも関する。本開示はまた、ポリペプチド、コードする核酸分子、ベクターおよび宿主細胞の方法および使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、ウイルスベクターを用いて最も一般的に研究され、達成されてきており、最近の注目すべき進歩は、アデノ随伴ウイルスベクターに基づくものである。アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムの長さは約4.7kbである。AAVゲノムには、分子の両端に逆方向末端反復配列(ITR)が含まれており、repおよびcapという2種のオープンリーディングフレームに隣接している。cap遺伝子は、VP1、VP2、およびVP3という3つの構造カプシドタンパク質をコードする。3つのカプシドタンパク質は通常、1:1:8~10の比率でアセンブルして、AAVカプシドを形成するが、VP3、またはVP1およびVP3、またはVP2およびVP3のみを含むAAVカプシドが生成されている。cap遺伝子は、別のオープンリーディングフレーム由来のアセンブリ活性化タンパク質(AAP)もコードする。AAPは、カプシドアセンブリを促進し、カプシドタンパク質を核小体に向けてカプシド形成を促進するように作用する。rep遺伝子は、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40という4つの既知の調節タンパク質をコードしている。これらのRepタンパク質は、AAVゲノムの複製、パッケージング、ゲノム統合、およびその他のプロセスに関与している。最近では、AAV2ゲノムの3’末端にX遺伝子が同定された(Cao et al. PLoS One, 2014, 9: e104596)。コードされたXタンパク質は、DNA複製を含むAAVのライフサイクルに関与しているようである。
【0003】
ITRは、いくつかの機能、特にAAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組み込み、ならびにゲノムの複製およびパッケージングに関与している。AAVが宿主細胞に感染すると、ウイルスゲノムが宿主の染色体DNAに組み込まれ、細胞の潜伏感染が起こる。したがって、AAVは、異種配列を細胞に導入するために活用され得る。自然界では、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)は、感染細胞でのAAVウイルスの複製および新しいビリオンのパッケージングを可能にするタンパク質因子を提供する。アデノウイルスの場合、遺伝子E1A、E1B、E2A、E4、およびVAがヘルパー機能を提供する。ヘルパーウイルスに感染すると、AAVプロウイルスがレスキューおよび増幅され、AAVおよびヘルパーウイルスの両方が生成される。
【0004】
天然のAAVゲノムの一部、大部分、または全てを欠き、代わりにITRが隣接する1つ以上の異種配列を含むゲノムを含むAAVベクター(組換えAAV、rAAVとも呼ばれる)は、遺伝子治療設定において首尾よく使用されてきた。これらのAAVベクターは、治療目的で対象の細胞に異種核酸を送達するために広く使用され、多くの場合、治療効果を与えるのは異種核酸の発現である。現在、いくつかのAAVベクターが臨床で使用されているが、治療用途に異種核酸の適切な発現を促進するために必要な初代ヒト細胞/組織のインビボ(in vivo)形質導入効率を示す数は限られている。したがって、インビボでの宿主細胞の効率的な形質導入を促進するカプシドタンパク質を含む代替AAVベクターを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、改善された形質導入効率に関連するAAVカプシド可変領域(VR)-I配列の生成および同定を部分的に前提としている。特定の実施形態では、本明細書に記載のバリアントVR-I配列を含む本開示のカプシドポリペプチドは、AAVベクターに含まれる場合、ヒト細胞(ヒト肝細胞など)の効率的な形質導入を促進する。典型的には、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクターのインビボ形質導入は、他のAAVカプシドポリペプチド(例えば、配列番号5に示されるプロトタイプのAAV2カプシド)を含むAAVベクターと比較して改善される。したがって、本開示のカプシドポリペプチドは、AAVベクター、特に遺伝子治療用のAAVベクターを調製するのに特に有用である。同様に、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクター(すなわち、本開示のカプシドポリペプチドを含むか、またはそれからなるカプシドを有する)は、遺伝子治療用途、例えば、様々な疾患および状態の治療のための異種核酸の送達に特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって、バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み、カプシドポリペプチドが:(i)配列番号2に示される配列;(ii)配列番号2の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号2の位置203~736のアミノ酸の配列に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチドを提供する。
【0007】
特定の実施形態では、バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって、バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み、カプシドポリペプチドが;(i)配列番号4に示される配列(ii)配列番号4の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号4の位置204~735のアミノ酸の配列に対して少なくとも、または約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチドを提供する。
【0009】
特定の実施形態では、バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、バリアントVR-Iを含むカプシドポリペプチドであって、バリアントVR-Iが、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含み、カプシドポリペプチドが:(i)配列番号340に示される配列;(ii)配列番号340の位置138~735のアミノ酸の配列;または(iii)配列番号340の位置204~735のアミノ酸の配列に対して少なくとも、または約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む、カプシドポリペプチドを提供する。
【0011】
特定の実施形態では、バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含む。
【0012】
また、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクターも提供される。いくつかの例では、AAVベクターは、ペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、治療用ペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)をコードする異種コード配列などの異種コード配列を含む。
【0013】
また、本開示のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子が提供される。別の態様では、前述の核酸分子を含むベクターが提供される。いくつかの例では、ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージおよびトランスポゾンの中から選択される。
【0014】
別の態様では、本開示のAAVベクター、核酸分子またはベクターを含む、宿主細胞が提供される。
【0015】
本開示のAAVベクターと宿主細胞を接触させることを含む、異種コード配列を宿主細胞に導入するための方法もまた提供される。いくつかの例では、宿主細胞は肝細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞をAAVベクターと接触させることは、対象にAAVベクターを投与することを含む。他の実施形態では、この方法はインビトロ(in vitro)またはエクスビボ(ex vivo)である。
【0016】
別の態様では、AAVベクターを産生する方法であって、本開示のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子、AAV rep遺伝子、AAV逆方向末端反復が隣接する異種コード配列、および増殖性AAV感染を生成するためのヘルパー機能を含む宿主細胞を、本開示のカプシドポリペプチドを含むカプシドを含むAAVベクターのアセンブリを促進するのに適した条件下で培養することを含み、カプシドが異種コード配列をカプシド化する、方法が提供される。いくつかの例では、宿主細胞は肝細胞である。
【0017】
また、ヒト肝細胞において増強された形質導入効率を示す改変AAVベクターを産生するための方法であって、a)インビボでヒト肝細胞を形質導入するための参照カプシドポリペプチドを同定することと;b)配列番号5に対するナンバリングで、位置262~271に配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む、参照カプシドポリペプチドの配列を、配列番号5に対するナンバリングで、位置262、263、264、265、266、267、268、269、270および271のうちの1つ以上で改変することと;c)改変カプシドポリペプチドをベクター化し、それによって改変AAVベクターを産生することとを含む、方法が提供される。いくつかの例では、参照カプシドポリペプチドは、配列番号2、4または340に示される配列に対して、少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、ヒト肝細胞を利用するインビボ系において改変AAVベクターの形質導入効率を評価することを含む。一例では、インビボ系は、hFRGマウスなどのヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を有する小動物(例えばマウス)を含む。
【0019】
本開示の実施形態は、以下の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】種々のAAV血清型のカプシドVR-Iのアラインメントである。アラインメントの最初のアラニンはAAV2のA248に対応する。VR-IはAAV2カプシドの位置262~271にまたがっている。AAV2のS262はAAV1とAAV3bのS262、AAV9のN262、AAV7のS263、AAV8とAAV10のN263に対応する。したがって、VR-Iは、AAV3bカプシドの位置262~271、AAV1カプシドの位置262~272、AAV9カプシドの位置262~273、AAV7カプシドの位置263~273、およびAAV8およびAAV10カプシドの位置263~274にまたがっている。
【
図2】AAV2、AAVC11.11およびAAV-LK03-REDHからのカプシド配列のアラインメントである。網掛けした太字のテキストは、本開示の目的のために定義したVR-Iを表す。
【
図3】実施例4に記載した二次ライブラリーからのバリアントのインビボ性能を示す(IVIg前免疫化なし)。(A)ヒト肝細胞におけるDNA取り込み、および(B)ヒト肝細胞におけるcDNA発現(機能的形質導入))。n=3 FRGマウス、カプシド当たり2 BC。バリアントは表14、16および19に示す通りである。
【
図4】実施例4(IVIg前免疫化)に記載した二次ライブラリーからのバリアントのインビボ性能を示す。(A)ヒト肝細胞におけるDNA取り込み、および(B)ヒト肝細胞におけるcDNA発現(機能的形質導入))。n=3 FRGマウス、カプシド当たり2BC。バリアントは表14、16および19に示す通りである。
【
図5】実施例4(IVIg前免疫化なし)に記載の二次ライブラリーからのバリアントのインビボ性能を示す。(A)ヒト肝細胞におけるDNA取り込み、および(B)ヒト肝細胞におけるcDNA発現(機能的形質導入))。n=3 FRGマウス、カプシド当たり2BC。バリアントは表15、17、18および20に示す通りである。
【
図6】実施例4(IVIg前免疫化)に記載された二次ライブラリーからのバリアントのインビボ性能を示す。(A)ヒト肝細胞におけるDNA取り込み、および(B)ヒト肝細胞におけるcDNA発現(機能的形質導入))。n=3 FRGマウス、カプシド当たり2 BC。バリアントは表15、17、18および20に示す通りである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。特に断りのない限り、開示全体を通じて参照される全ての特許、特許出願、公開された出願および出版物、データベース、ウェブサイト、ならびにその他の公開された資料は、参照によりその全体が組み込まれる。用語の定義が複数ある場合は、このセクションの定義が優先される。URLまたはその他のそのような識別子もしくはアドレスを参照する場合、そのような識別子は変更されてもよく、インターネット上の特定の情報は行き来してもよいが、インターネットを検索することで同等の情報を見つけることができることが理解される。識別子への言及は、そのような情報の入手可能性および一般への普及を証明する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つの、ある(不定冠詞:a)」、「1つの、ある(不定冠詞:an)」および「この、その(定冠詞:the)」はまた、文脈が明確に指示しない限り、複数の態様(すなわち、少なくとも1つ以上)を含む。したがって、例えば、「ポリペプチド」への言及は、単一のポリペプチド、ならびに2種以上のポリペプチドを含む。
【0023】
本明細書の文脈において、「約」という用語は、当業者が同じ機能または結果を達成する文脈において列挙された値と等価であると考える数の範囲を指すと理解される。
【0024】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の要求がない限り、「含む」という語、ならびに「含む」および「含んでいる」などの変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを含むが、任意の他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを除外するものではないことを意味すると理解される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ベクター」とは、ベクター内に含まれる導入遺伝子を宿主細胞に各々が送達し得る、ポリヌクレオチドベクターおよびウイルスベクターの両方への言及を含む。ベクターは、エピソームであり、すなわち、宿主細胞のゲノムに組み込まれないか、または宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。ベクターはまた、複製可能であってもまたは複製欠損であってもよい。例示的なポリヌクレオチドベクターとしては、限定するものではないが、プラスミド、コスミド、およびトランスポゾンが挙げられる。例示的なウイルスベクターとしては、例えば、AAV、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよび肝炎ウイルスベクターが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アデノ随伴ウイルスベクター」または「AAVベクター」とは、カプシドがアデノ随伴ウイルスに由来するベクターを指し、これには限定するものではないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12またはAAV13、他のクレードもしくは分離株由来のAAVが挙げられ、またはキメラカプシドタンパク質を含む、合成、生物工学的または改変されたAAVカプシドタンパク質に由来する。特定の実施形態では、AAVベクターは、本開示のカプシドポリペプチドを含むカプシドを有する。AAVベクターを参照する場合、ゲノムの供給源とカプシドの供給源の両方を特定し得、ここで、ゲノムのソースは指定された最初の数であり、カプシドの供給源は指定された2番目の数である。したがって、例えば、カプシドとゲノムの両方がAAV2に由来するベクターは、より正確にはAAV2/2と呼ばれる。AAV6由来のカプシドとAAV2由来のゲノムを有するベクターは、最も正確にはAAV2/6と呼ばれる。生物工学によるDJカプシドおよびAAV2由来のゲノムを有するベクターは、最も正確にはAAV2/DJと呼ばれる。簡単にするために、またほとんどのベクターがAAV2由来のゲノムを使用するので、AAV6ベクターへの言及は一般にAAV2/6ベクターを指し、AAV2ベクターへの言及は一般にAAV2/2ベクターを指す、などが理解される。AAVベクターはまた、本明細書において「組換えAAV」、「rAAV」、「組換えAAVビリオン」、「rAAVビリオン」、「AAVバリアント」、「組換えAAVバリアント」、および「rAAVバリアント」という用語で呼ばれることがあり、これらは交換可能に使用され、AAVゲノムをカプシド化するAAVカプシドシェルを含む複製欠損ウイルスを指す。AAVベクターゲノム(ベクターゲノム、組換えAAVゲノムまたはrAAVゲノムとも呼ばれる)は、機能的AAV ITRが両側に隣接する導入遺伝子を含む。典型的には、野生型AAV遺伝子の1つ以上は、ゲノムから全体または一部が、好ましくはrepおよび/またはcap遺伝子が欠失している。ベクターゲノムのレスキュー、複製、およびrAAVビリオンへのパッケージングには、機能的なITR配列が必要である。
【0027】
「ITR」という用語は、AAVゲノムのいずれかの末端における逆方向末端反復を指す。この配列はヘアピン構造を形成し得、原核生物のプラスミド由来のAAV DNAの複製およびレスキューまたは切除に関与している。本開示で使用するためのITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列がrAAVの機能的レスキュー、複製およびパッケージングを提供する限り、例えばヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、カプシドポリペプチドに関して「機能的」とは、ポリペプチドが自己アセンブルするか、または異なるカプシドポリペプチドとアセンブルして、AAVビリオンのタンパク質性シェル(カプシド)を生成し得ることを意味する。所与の宿主細胞内の全てのカプシドポリペプチドがAAVカプシドにアセンブルするわけではないことを理解すべきである。好ましくは、全AAVカプシドポリペプチド分子の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%がAAVカプシドにアセンブルする。この生物学的活性を測定するための適切なアッセイは、例えば、Smith-Arica and Bartlett(2001), Curr Cardiol Rep 3(1): 43-49に記載されている。
【0029】
「AAVヘルパー機能」または「ヘルパー機能」とは、AAVが宿主細胞によって複製およびパッケージ化されることを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、限定するものではないが、ヘルパーウイルスとして、またはAAVの複製およびパッケージングを助けるヘルパーウイルス遺伝子として、任意の多数の形態で提供され得る。ヘルパーウイルス遺伝子としては、限定するものではないが、E1A、E1B、E2A、E4、およびVAなどのアデノウイルスヘルパー遺伝子が挙げられる。ヘルパーウイルスとしては、限定するものではないが、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、例えば、ワクシニア、およびバキュロウイルスが挙げられる。アデノウイルスには多くの異なるサブグループが含まれるが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用されている。ヒト、ヒト以外の哺乳動物、および鳥類起源の多数のアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ATCCなどの寄託機関からも入手できるヘルペス科のウイルスには、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。寄託機関から入手可能なバキュロウイルスとしては、Autographa californica 核多角体病ウイルスが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する「形質導入」という用語は、1つ以上の特定の細胞型へのAAVベクターの侵入、およびAAVベクター内に含まれるDNAの細胞への移動を指す。形質導入は、細胞または細胞集団においてAAV DNAから発現されたAAV DNAもしくはRNAの量を測定することによって、および/またはDNAから発現されたAAV DNAもしくはRNAを含む集団中の細胞の数を評価することによって評価され得る。RNAの存在または量が評価される場合、評価される形質導入のタイプは、本明細書では「機能的形質導入」、すなわちAAVがDNAを細胞に移し、そのDNAを発現させる能力と呼ばれる。「形質導入効率」という用語およびその文法上の変形は、AAVベクターが宿主細胞に形質導入する能力、より具体的にはAAVベクターが宿主細胞に形質導入する効率を指す。特定の実施形態では、形質導入効率は、インビボ形質導入効率であり、対象へのベクターの投与後に、AAVベクターがインビボで宿主細胞に形質導入する能力を指す。形質導入効率は、所定の数のベクター粒子への曝露またはその投与後に形質導入された宿主細胞の数(例えば、顕微鏡またはフローサイトメトリー技術を使用したGFPまたはeGFPなどのベクターゲノムからのレポーター遺伝子の発現によって評価されるように);所定の数のベクター粒子への曝露後の宿主細胞の集団におけるベクターDNAの量(例えば、ベクターゲノムの数);所定の数のベクター粒子への曝露後の宿主細胞集団中のベクターRNAの量;ならびに所定の数のベクター粒子への曝露またはその投与後の宿主細胞集団におけるベクターゲノム中のレポーター遺伝子(例えば、GFPまたはeGFP)由来のタンパク質発現レベルを評価することを含む、当業者に公知である多くの方法で評価され得る。宿主細胞の集団は、特定の数の宿主細胞、組織の体積もしくは重量、または器官全体(例えば、肝臓)を表し得る。インビボ形質導入効率は、AAVベクターが肝臓の肝細胞などの宿主細胞にアクセスする能力;AAVベクターが宿主細胞に侵入する能力;および/または宿主細胞侵入時のベクターゲノムに含まれる異種コード配列の発現を反映し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「対応するヌクレオチド」、「対応するアミノ酸残基」または「対応する位置」とは、整列された遺伝子座で生じるヌクレオチド、アミノ酸または位置を指す。関連またはバリアントのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列は、当業者に公知の任意の方法によって整列される。そのような方法は、典型的には一致を最大化し(例えば、位置における同一のヌクレオチドまたはアミノ酸)、手動アラインメントの使用および利用可能な多数のアラインメントプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、ClustlW、ClustlW2、EMBOSS、LALIGN、Kalign、等)および当業者に公知の他のものを用いることによる方法を含む。ポリヌクレオチドの配列を整列させることにより、当業者は、対応するヌクレオチドを同定し得る。2つのAAVカプシドポリペプチドを整列(例えば
図2に示すように)させることにより、当技術分野の当業者は、他方のAAVポリペプチド内の様々な領域または残基に対応する、一方のAAVポリペプチド内の領域またはアミノ酸残基を同定することができる。例えば、配列番号5に記載されるAAV2カプシドポリペプチドの位置262のセリンは、配列番号4に記載されるAAVC11.11カプシドポリペプチドの位置263のセリンに対応するアミノ酸である、または対応する(
図2のアラインメントに示されているように)。別の例では、また
図2を参照すると、AAVC11.11カプシドポリペプチドの位置734は、AAV-LK03-REDHカプシドポリペプチドの位置735と整列するか、またはそれに対応し、AAV2カプシドポリペプチドの位置734のアスパラギンは、AAV-LK03-REDHカプシドポリペプチドの位置735のプロリンに対応するか、またはそれに対応するアミノ酸である。さらなる例では、AAV2カプシドのVR-Iを構成するAAV2カプシドポリペプチドの位置262~271の残基は、AAV7カプシドポリペプチドの残基263~273(すなわちAAV7カプシドのVR-I)およびAAVC11.11カプシドポリペプチドの残基263~272(すなわちAAVC11.11カプシドポリペプチドのVR-I)に対応する。したがって、アミノ酸残基または位置が特定のカプシドポリペプチドに関して本明細書で言及される場合、適切な場合、別のカプシドポリペプチドにおける対応するアミノ酸残基または位置にもその言及がなされていることが理解される。例えば、「配列SQSGASNDNH(配列番号12)を含むVR-I」を含むカプシドポリペプチドへの言及は、本明細書で定義されるように、任意のAAVカプシドポリペプチドのVR-Iは、配列番号5に記載されるAAV2カプシドの位置262~271に対応する残基を含むという理解で、それぞれ配列番号5および4に記載され、位置262~271に配列SQSGASNDNH(配列番号12)を有するVR-Iを有するAAV2およびAAVC11.11カプシドポリペプチドだけでなく、例えば配列番号2に記載されるAAV-LK03-REDHカプシドポリペプチド(ここで、配列SQSGASNDNHを含むVR-Iは位置263~272にある)配列番号5の位置262~271に対応する位置に配列SQSGASNDNHを含むVR-Iを有する他のカプシドポリペプチドも包含する。別の例では、「配列NRTGGGATNDNA(配列番号23)を含むVR-I」を含むカプシドポリペプチドへの言及は、配列番号5の位置262~271に対応する位置に配列NRTGGGATNDNA(配列番号23)を有するカプシドポリペプチドを包含する。理解されるように、配列NRTGGGATNDNA(配列番号23)は12個のアミノ酸を含むため、残基の実際の位置は異なるであろう。例えば、カプシド骨格が配列番号5に記載のAAV2カプシドである場合、カプシドポリペプチドは位置262~273(これは配列番号5に記載のAAV2カプシドの位置262~271に対応する)に配列NRTGGGATNDNA(配列番号23)を含む。
【0032】
本明細書で使用される「異種コード配列」とは、ポリヌクレオチド、ベクター、もしくは宿主細胞に存在する核酸配列であって、そのポリヌクレオチド、ベクターもしくは宿主細胞に天然には見出されないか、またはそのポリヌクレオチド、ベクター、もしくは宿主細胞に存在する位置に天然には見出されない、すなわち非天然である、核酸配列を指す。「異種コード配列」とは、ペプチドもしくはポリペプチド、またはそれ自体が機能もしくは活性を有するポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスまたは阻害オリゴヌクレオチド、例としては、アンチセンスDNAおよびRNA(例えば、miRNA、siRNA、およびshRNA)をコードし得る。いくつかの例では、異種コード配列は、動物のゲノムDNA内の核酸のストレッチと本質的に相同な核酸のストレッチであり、その結果、異種コード配列が動物の細胞に導入されると、異種配列とゲノムDNAとの間で相同組換えが起こり得る。一例では、異種コード配列は、欠陥/変異コピーを有する細胞への導入のための遺伝子の機能的コピーである。
【0033】
本明細書において、プロモーターおよびコード配列に関して「作動可能に連結された」という用語は、コード配列の転写がプロモーターの制御下にあるか、またはプロモーターによって駆動されることを意味する。
【0034】
「宿主細胞」という用語は、ベクターまたは他のポリヌクレオチドなどの外因性DNAが導入された哺乳動物細胞などの細胞を指す。この用語は、外因性DNAが導入された元の細胞の子孫を含む。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」とは、一般に、外因性DNAでトランスフェクトまたは形質導入された細胞を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して「単離された」とは、そのポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドが由来する細胞由来の細胞物質も他の夾雑タンパク質も実質的に含まないこと、または科学的に合成された場合、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含まないことを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「対象」という用語は、本発明から利益を得ることができる動物、特に哺乳動物、より具体的には下等霊長類を含む霊長類、さらにより具体的にはヒトを指す。対象は、ヒトまたはヒト以外の動物または胚に関係なく、個体、対象、動物、患者、宿主、またはレシピエントと呼ばれてもよい。本開示は、ヒトおよび獣医学の両方の用途を有する。便宜上、「動物」には、特に牛、馬、羊、豚、ラクダ、ヤギ、およびロバなどの家畜、ならびに犬および猫などの家庭内動物が含まれる。馬に関しては、これらとしては競馬産業で使用される馬だけでなく、レクリエーションまたは畜産業で使用される馬も含まれる。実験動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびハムスターが挙げられる。ウサギおよびげっ歯類、例えば、ラットおよびマウスは、霊長類および下等霊長類と同様に、便利な試験系または動物モデルを提供する。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「保存的配列改変」または「保存的置換」という用語は、アミノ酸配列を含むベクターの特徴に有意な影響を及ぼさず、変化もさせないアミノ酸改変を指す。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野で公知の標準的な技術によって、様々な実施形態に適合するベクターに導入され得る。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、カプシド内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリー由来の他のアミノ酸残基で置き換えてもよく、変更されたカプシドは、本明細書に記載の機能アッセイを使用して指向性および/またはペイロードを送達する能力について試験され得る。
【0038】
【0039】
上記の用語および関連する定義は、説明のみを目的として使用され、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0040】
カプシドポリペプチド
本開示は、AAVベクターに改善された形質導入特性を付与するバリアントカプシドVR-I配列の同定を部分的に前提としている。したがって、本明細書において、バリアントVR-I配列を含む、単離されたカプシドポリペプチドを含むカプシドポリペプチドが提供される。本開示の目的上、VR-Iは、配列番号5に記載のプロトタイプAAV2カプシドポリペプチドの位置262~271に対応する位置の残基を含むものとして定義される。
図1に示すように、この領域は、AAV3bカプシドの位置262~271、AAV1カプシドの位置262~272、AAV9カプシドの位置262~273、AAV7カプシドの位置263~273、およびAAV8およびAAV10カプシドの位置263~274の残基を含む。
図2に示すように、VR-Iは、配列番号4に記載のAAVC11.11カプシドの位置263~272、配列番号2に記載のAAV-LK03-REDHカプシドの位置262~271、および配列番号340に記載のAAVC11.12カプシドの位置263~272の残基を含む。
【0041】
典型的には、カプシドポリペプチドは、AAVベクターのカプシドに存在する場合、ヒト細胞(ヒト肝細胞など)の効率的な形質導入を促進する。バリアントVR-Iを含むカプシドを有するAAVベクターによる細胞のインビボ形質導入は、一般的に、参照AAVカプシドポリペプチド(例えば、配列番号5に記載のプロトタイプAAV2カプシド、またはそれぞれ配列番号2もしくは4に記載のLK03-REDHカプシドもしくはAAVC11.11カプシド)を含むAAVベクターと比較して増加または増強される。AAVベクターの形質導入または形質導入効率は、少なくとももしくは約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれ以上増加し得、例えば、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクターは、参照AAVカプシドポリペプチドと比較してインビボでの形質導入細胞で少なくとももしくは約1.2×、1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、11×、12×、13×、14×、15×、16×、17×、18×、19×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×またはそれ以上の効率であり得る。特定の例では、ヒト肝臓組織またはヒト肝細胞において、形質導入または形質導入効率の増加が観察される。
【0042】
したがって、本開示のカプシドポリペプチドは、AAVベクター、特に遺伝子治療用のAAVベクターを調製するのに特に有用である。例示的な実施形態では、本開示のカプシドポリペプチドは、肝細胞、特にヒト肝細胞を形質導入するAAVベクターを調製するのに特に有用であり、したがって肝臓を標的とする遺伝子治療用途に有用である。
【0043】
本開示のカプシドポリペプチドは、X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12で表される配列を含むバリアントVR-Iを含み、ここで、X1は、SまたはNであり;X2は、Q、S、A、G、E、D、H、K、N、P、TまたはRであり;X3は、SまたはTであり;X4は、A、SまたはTまたはアミノ酸なしであり;X5はGまたはアミノ酸なし;X6はGであり;X7はAまたはSであり;X8はSまたはTであり;X9はNであり;X10はDであり;X11はNであり;およびX12はT、AまたはHであるか、またはX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12で表される配列の1、2または3個の保存的アミノ酸置換を有する配列である。特定の例では、バリアントVR-Iは、配列番号21~336(表2参照)のいずれか1つに示される配列、またはその1、2もしくは3個の保存的アミノ酸置換を有する配列を含む。特定の例では、バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164もしくは32のいずれか1つに示される配列、またはその1、2もしくは3個の保存的アミノ酸置換を有する配列を含む。理解されるように、バリアントVR-Iはカプシドポリペプチドにおいて、配列番号5に記載のプロトタイプAAV2カプシドポリペプチドの位置262~271に対応する位置に存在する(すなわち、配列番号5に記載のプロトタイプAAV2カプシドポリペプチドに対するナンバリングでカプシドポリペプチドの位置262~271)。
【0044】
【0045】
カプシドポリペプチドの骨格(すなわち、VR-I領域以外の残基)は、NP40、NP59またはLK03などの任意の改変AAVカプシドポリペプチドを含む、任意のAAVカプシドポリペプチド由来であり得る(例えば、Paulk et al, 2018, Mol Ther. 26(1):289-303;およびLisowski et al, 2014, Nature 506:382-386を参照のこと)、またはAAVC11.12などの国際特許出願第PCT/AU2021/050158号に記載される任意の改変カプシドポリペプチド由来であり得る。カプシドポリペプチドは、全長VP1(すなわち、配列番号5に示されるAAV2カプシドの位置1~735に対応する)、またはVP2(すなわち、配列番号5に示されるAAV2カプシドの位置138~735に対応する)もしくはVP3(すなわち、配列番号5に示されるAAV2カプシドの位置203~735に対応する)のようなそのフラグメントを含み得る。
【0046】
一例において、本開示のカプシドポリペプチドは、C11.11骨格中の配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む(すなわち、カプシドポリペプチドは、配列番号4に示されるC11.11ポリペプチド、またはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~262および273~735が隣接するバリアントVR-Iを含む)、または、配列番号4に示されるC11.11ポリペプチド、またはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~262および273~735によって表されるC11.11骨格と少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する骨格を有する。したがって、いくつかの例では、カプシドポリペプチドは、配列番号4に示されるVP1タンパク質、配列番号4の位置138~735に記載されるVP2タンパク質、または配列番号4の位置204~735に記載されるVP3タンパク質と少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し、ここで、カプシドポリペプチドは、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む(すなわち、配列番号4に示されるC11.11ポリペプチドに対するナンバリングで、位置262~272において配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む)。
【0047】
バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含んでもよい。
【0048】
別の例では、本開示のカプシドポリペプチドは、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを、LK03-REDH骨格中に含む(すなわち、カプシドポリペプチドは、配列番号2に示されるLK03-REDHポリペプチドまたはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~261および272~736が隣接するバリアントVR-Iを含む)か、または配列番号2に示されるLK03-REDHポリペプチド、またはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~261および272~736によって表されるLK03-REDH骨格に対して、少なくとも、または約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する骨格中に含む。したがって、いくつかの例では、カプシドポリペプチドは、配列番号4に示されるVP1タンパク質、配列番号2の位置138~736に記載されるVP2タンパク質、または配列番号2の位置203~736に記載されるVP3タンパク質と少なくとも、または約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し、ここで、カプシドポリペプチドは、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む(すなわち、配列番号2に示されるLK03-REDHポリペプチドに対するナンバリングで、位置262~271において配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む)。
【0049】
バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含んでもよい。
【0050】
別の例では、本開示のカプシドポリペプチドは、C11.12骨格中の配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む(すなわち、カプシドポリペプチドは、配列番号340に示されるC11.12ポリペプチド、またはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~262および273~735が隣接するバリアントVR-Iを含む)、または配列番号340に示されるC11.12ポリペプチド、またはそのVP2もしくはVP3フラグメントの残基1~262および273~735表されるC11.12骨格に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する骨格を有する。したがって、いくつかの例では、カプシドポリペプチドは、配列番号340に示されるC11.12ポリペプチド、配列番号340の位置138~735に示されるVP2タンパク質、または配列番号340の位置204~735に示されるVP3タンパク質と少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有し、ここで、カプシドポリペプチドは、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む(すなわち、配列番号340に示されるC11.12ポリペプチドに対するナンバリングで、位置262~272において配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む)。
【0051】
バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含んでもよい。
【0052】
また、本明細書に記載のカプシドポリペプチドをコードする、単離された核酸分子を含む核酸分子も提供される。したがって、例えば、本明細書で提供される核酸分子の中には、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含む、本明細書に記載のカプシドポリペプチドのいずれか1つのVP1、VP2および/またはVP3をコードするものがある。
【0053】
ベクター
本開示はまた、本明細書に記載のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクター、および本明細書に記載のカプシドポリペプチドを含むベクターを提供する。ベクターとしては、本明細書に記載のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子を含む核酸ベクター、および本明細書に記載のカプシドポリペプチドを含むカプシドを有するAAVベクターが挙げられる。
【0054】
核酸ベクター
本開示のベクターとしては、本明細書に記載のカプシドポリペプチドの全てもしくは一部をコードする、ポリヌクレオチドを含む核酸ベクターが挙げられる。このベクターは、エピソームベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムに組み込まれない)であってもよいし、または宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターであってもよい。カプシドポリペプチドをコードする核酸分子を含む例示的なベクターとしては、限定するものではないが、プラスミド、コスミド、トランスポゾン、および人工染色体が挙げられる。特定の例では、ベクターはプラスミドである。
【0055】
細菌、昆虫、および哺乳動物細胞での使用に適したプラスミドなどのベクターは、広く記載されており、当該技術分野で周知である。当業者は、本開示のベクターが、原核細胞および/または真核細胞におけるベクターの複製、ベクターの選択、ならびに様々な宿主細胞における異種配列の発現に有用な追加の配列およびエレメントも含み得ることを理解するであろう。例えば、本開示のベクターは、原核レプリコン(すなわち、細菌宿主細胞などの原核宿主細胞において染色体外でベクターの自律複製および維持を指向する能力を有する配列)を含んでもよい。このようなレプリコンは当該分野で周知である。いくつかの実施形態では、ベクターは、ベクターを原核生物および真核生物の両方における複製および組み込みに適したものにするシャトルエレメントを含み得る。さらに、ベクターは、その発現が検出可能なマーカー、例えば、宿主細胞の選択および維持を可能にする薬剤耐性遺伝子を付与する遺伝子も含んでもよい。ベクターはまた、蛍光または他の検出可能なタンパク質をコードする遺伝子などの報告可能なマーカーを有してもよい。核酸ベクターは、以下に記載されるベクターのうちのいずれか1つ以上を含む、他のエレメントも含む可能性が高い。最も典型的には、ベクターは、カプシドタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。
【0056】
本開示の核酸ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、DNAのインビトロまたは化学合成、およびDNA配列決定の標準的な技術を含むがこれらに限定されない公知の技術を使用して構築され得る。本開示のベクターは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して宿主細胞に導入され得る。したがって、本開示は、本明細書に記載のベクターまたは核酸を含む宿主細胞にも関する。
【0057】
AAVベクター
本明細書において、本明細書に記載のカプシドポリペプチドを含むAAVベクター、例えば、配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むバリアントVR-Iを含むAAVカプシドの全部または一部を含むポリペプチドが提供される。バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含んでもよい。
【0058】
カプシドタンパク質をベクター化する方法は当該技術分野で周知であり、本開示の目的のために任意の適切な方法を使用してもよい。例えば、cap遺伝子を回収し(例えば、PCRまたはcapの上流および下流を切断する酵素で消化することによって)、repを含むパッケージングコンストラクトにクローニングしてもよい。例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12またはAAV13およびそれらの任意のバリアントに由来するrep遺伝子を含む、任意のAAVrep遺伝子を使用してもよい。通常、cap遺伝子は、repの下流にクローニングされるため、rep p40プロモーターがcap発現を駆動し得る。このコンストラクトにはITRを含まない。次いで、このコンストラクトは、典型的には異種コード配列に隣接するITRを含む第2のコンストラクトと共にパッケージング細胞系に導入される。ヘルパー機能またはヘルパーウイルスも導入され、cap遺伝子から発現されたカプシドタンパク質から生成されたカプシドを含み、かつITRが隣接する導入遺伝子を含むゲノムをカプシド化する組換えAAVが、パッケージング細胞株の上清から回収される。パッケージング細胞株として、様々なタイプの細胞を使用してもよい。例えば、使用され得るパッケージング細胞株としては、限定するものではないが、例えば米国特許出願公開第20110201088号に開示されているように、HEK293細胞、HeLa細胞、およびVero細胞が挙げられる。ヘルパー機能は、アデノウイルスヘルパー遺伝子を含む1つ以上のヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルスによって提供され得る。アデノウイルスヘルパー遺伝子の非限定的な例としては、AAVパッケージングにヘルパー機能を提供し得るE1A、E1B、E2A、E4、およびVAが挙げられる。AAVのヘルパーウイルスは、当該技術分野で公知であり、例えば、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科に由来するウイルスが挙げられる。AAVのヘルパーウイルスの例としては、限定するものではないが、米国特許出願公開第20110201088号に記載のSAdV-13ヘルパーウイルスおよびSAdV-13様ヘルパーウイルス、ヘルパーベクターpHELP(Applied Viromics)が挙げられる。当業者は、AAVに適切なヘルパー機能を提供し得るAAVの任意のヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドが本明細書で使用され得ることを理解するであろう。
【0059】
場合によっては、rAAVビリオンは、AAVビリオン産生に必要な成分のいくつかを安定して発現する細胞株を使用して産生される。例えば、本明細書に記載のように同定されたcap遺伝子およびrep遺伝子を含む核酸、ならびにネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)を、細胞のゲノムに組み込んでもよい(パッケージング細胞)。次いで、このパッケージング細胞株は、AAVベクターおよびヘルパープラスミドでトランスフェクトするか、またはAAVベクターでトランスフェクトし、ヘルパーウイルス(例えば、ヘルパー機能を提供するアデノウイルス)で同時感染してもよい。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、組換えAAVの大規模生産に適していることである。別の非限定的な例として、プラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを使用して、カプシドポリペプチドをコードする核酸、およびrep遺伝子をパッケージング細胞に導入してもよい。さらに別の非限定的な例として、AAVベクターはプロデューサー細胞のDNAにも安定に組み込まれ、ヘルパー機能が、野生型アデノウイルスによって提供されて組換えAAVを生成し得る。
【0060】
さらなる例では、AAVベクターは、AAVカプシドタンパク質を合成し、インビトロでカプシドをアセンブルしてパッケージングすることによって、合成的に生成される。
【0061】
通常、本開示のAAVベクターは、異種コード配列も含む。異種コード配列は、配列の発現を促進するためにプロモーターに作動可能に連結され得る。異種コード配列は、治療用ペプチドまたはポリペプチドなどのペプチドもしくはポリペプチドをコードしてもよいし、またはアンチセンスDNAおよびRNA(例えば、miRNA、siRNA、およびshRNA)を含む、アンチセンスまたは阻害性のオリゴヌクレオチドなどの機能または活性を有するポリヌクレオチドまたはその転写物自体をコードしてもよい。いくつかの例では、異種コード配列は、動物のゲノムDNA内の核酸のストレッチと本質的に相同な核酸のストレッチであり、その結果、この異種コード配列が動物の細胞に導入されると、異種コード配列とゲノムDNAとの間の相同組換えが起こり得る。理解されるように、異種コード配列の性質は、本開示にとって必須ではない。特定の実施形態では、異種コード配列を含むベクターは、遺伝子治療に使用される。
【0062】
特定の例では、異種コード配列は、例えば、疾患または障害の治療のためなど、その発現が治療用途であるペプチドまたはポリペプチドまたはポリヌクレオチドをコードする。例えば、治療用ペプチドまたはポリペプチドの発現は、欠陥のあるペプチドまたはポリペプチドの内因性形態の機能を回復または置換するのに役立ち得る(すなわち、遺伝子置換療法)。他の例では、異種配列由来の治療用ペプチドもしくはポリペプチド、またはポリヌクレオチドの発現は、宿主細胞における1つ以上の他のペプチド、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドのレベルおよび/または活性を変化させるのに役立つ。したがって、特定の実施形態によれば、本明細書に記載のベクターによって宿主細胞に導入された異種コード配列の発現を使用して、疾患または障害の症状を改善する治療量のペプチド、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供することができる。他の例では、異種コード配列は、動物のゲノムDNA内の核酸のストレッチと本質的に相同な核酸のストレッチであり、その結果、この異種配列が動物の細胞に導入されると、異種コード配列とゲノムDNAとの間の相同組換えが発生する場合がある。したがって、本明細書に記載のAAVベクターによる異種配列の宿主細胞への導入は、ゲノムDNAの突然変異を修正するために使用され得、これは次に疾患または障害の症状を改善し得る。
【0063】
非限定的な例において、異種コード配列は、対象、特に対象の肝臓に送達されると、肝臓関連の疾患または状態を処置する発現産物をコードする。例示的な実施形態では、肝臓関連の疾患または状態は、尿素サイクル障害(UCD;N-アセチルグルタミン酸シンターゼ欠損症(NAGSD)、カルバミルリン酸シンテターゼ1欠損症(CPS1D)、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)、アルギニノコハク酸シンテターゼ欠損症(ASSD)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASLD)、アルギナーゼ1欠損症(ARG1D)、シトリンまたはアスパラギン酸/グルタミン酸キャリア欠損症、および高オルニチン血症-高アンモニア血症-ホモシトルリン尿症症候群(HHH症候群)を引き起こすミトコンドリアオルニチントランスポーター1欠損症)、有機酸症(または有機アカデミア、例としては、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、およびメープルシロップ尿症)、アミノアシドパシー、グリコーゲン症(I、III、およびIV型)、ウィルソン病、進行性家族性肝内胆汁うっ滞、原発性高シュウ酸尿症、補体障害(complementopathy)、凝固障害(例えば、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病(VWD))、クリグラー・ナジャー症候群、家族性高コレステロール血症、α-1アンチトリプシン欠乏症、ミトコンドリア呼吸鎖肝障害、およびシトリン欠乏症の中から選択される。当業者は、そのような疾患を治療するのに有用な適切な異種コード配列を容易に選択することができるであろう。いくつかの例では、異種コード配列は、表3に示す遺伝子の全てもしくは一部など、疾患に関連する遺伝子の全てもしくは一部を含む。肝臓へのそのような配列の導入は、例えば、CRISPR-Cas9を使用する、遺伝子置換または遺伝子編集/修正に使用され得る。特定の例では、異種コード配列は、表3に示される遺伝子などの疾患に関連する遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする。
【0064】
【0065】
AAVベクターの異種コード配列は、3’および5’AAV ITRが隣接している。本開示のベクターで使用されるAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって改変され得る。さらに、AAV ITRは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12またはAAV13を含むいくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。そのようなITRは、当該技術分野で周知である。
【0066】
当業者には理解されるように、AAVを精製するのに適した任意の方法を、本明細書に記載の実施形態で使用してAAVベクターを精製してもよく、そのような方法は当該技術分野で周知である。例えば、AAVベクターは、パッケージング細胞および/またはパッケージング細胞の上清から単離および精製してもよい。いくつかの実施形態では、AAVは、CsClまたはイオジキサノール勾配遠心分離を使用する分離方法によって精製される。他の実施形態では、AAV付着を媒介する人工受容体または受容体様分子が固定化されたマトリックスを含む固体支持体を使用して、米国特許出願公開第20020136710号に記載のようにAAVを精製する。
【0067】
ベクターの追加のエレメント
本開示のベクターはプロモーターを含んでもよい。ベクターがカプシドポリペプチドをコードする核酸を含む核酸ベクターである場合、プロモーターは、カプシドポリペプチドをコードする核酸の発現を促進し得る。ベクターがAAVベクターである場合、プロモーターは、上記のように、異種コード配列の発現を促進し得る。
【0068】
いくつかの例では、プロモーターは、p5、p19またはp40プロモーターなどのAAVプロモーターである。他の例では、プロモーターは他の供給源に由来する。構成的プロモーターの例としては、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(適宜RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(適宜CMVエンハンサーを伴う)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給された化合物、温度などの環境要因、または特定の生理学的状態、例えば、急性期、細胞の特定の分化状態の存在、または細胞の複製のみによって調節され得る。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの非限定的な例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系;エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、テトラサイクリン誘導系、RU486誘導系、およびラパマイシン誘導系が挙げられる。この文脈において有用であり得るさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態、または細胞の複製のみによって調節されるものである。いくつかの実施形態では、組織特異的プロモーターが使用される。そのようなプロモーターの非限定的な例としては、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、心筋トロポニンT(cTnT)プロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、およびB型肝炎ウイルスコアプロモーターが挙げられる。適切なプロモーターの選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0069】
ベクターはまた、転写エンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含んでもよい。転写終結シグナルの例としては、限定するものではないが、ポリアデニル化シグナル配列、例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)、SV40後期ポリ(A)、ウサギベータグロビン(RBG)ポリ(A)、チミジンキナーゼ(TK)ポリ(A)配列、およびその任意のバリアントが挙げられる。いくつかの実施形態では、転写終結領域は、転写後調節エレメントの下流に位置する。いくつかの実施形態では、転写終結領域は、ポリアデニル化シグナル配列である。
【0070】
ベクターは、様々な転写後調節エレメントを含んでもよい。いくつかの実施形態では、転写後調節エレメントは、ウイルスの転写後調節エレメントであってもよい。ウイルス転写後調節エレメントの非限定的な例としては、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HBVPRE)、RNA輸送エレメント、およびそれらの任意のバリアントが挙げられる。RTEは、rev応答エレメント(RRE)、例えばレンチウイルスRREであり得る。非限定的な例は、ウシ免疫不全ウイルスrev応答エレメント(RRE)である。いくつかの実施形態では、RTEは、構成的輸送エレメント(CTE)である。CTEの例としては、限定するものではないが、メイソン・ファイザー・モンキー・ウイルスCTEおよびトリ白血病ウイルスCTEが挙げられる。
【0071】
哺乳動物細胞由来のポリペプチドの分泌を提供するために、シグナルペプチド配列をベクターに含めてもよい。シグナルペプチドの例としては、限定するものではないが、HGHの内因性シグナルペプチドおよびそのバリアント;I型、II型、およびIII型インターフェロンのシグナルペプチドならびにそのバリアントを含む、インターフェロンおよびそのバリアントのための内因性シグナルペプチド;ならびに公知のサイトカインおよびそのバリアントの内因性シグナルペプチド、例えば、エリスロポエチン(EPO)、インスリン、TGF-β1、TNF、IL1-α、およびIL1-βのシグナルペプチド、ならびにそれらのバリアントが挙げられる。典型的には、シグナルペプチドのヌクレオチド配列は、ベクター中の異種配列のすぐ上流に位置する(例えば、目的のタンパク質のコード領域の5’で融合)。
【0072】
さらなる例では、ベクターは、例えば、単一のmRNA由来の複数のタンパク質の翻訳を可能にする調節配列を含み得る。そのような調節配列の非限定的な例としては、内部リボソーム侵入部位(IRES)および口蹄疫ウイルス由来の2Aペプチド部位(F2A配列)などの2A自己プロセシング配列が挙げられる。
【0073】
宿主細胞
また、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も本明細書に提供される。場合によっては、宿主細胞を使用して、ポリヌクレオチドまたはベクターを増幅、複製、パッケージング、および/または精製してもよい。他の例では、宿主細胞は、AAVベクター内にパッケージされた配列のような異種配列を発現するために使用される。例示的な宿主細胞としては、原核細胞および真核細胞が挙げられる。場合によっては、宿主細胞は哺乳動物宿主細胞である。本開示のポリヌクレオチド、ベクターまたはrAAVビリオンの発現、増幅、複製、パッケージングおよび/または精製のために適切な宿主細胞を選択することは、十分に当業者の技術の範囲内である。例示的な哺乳動物宿主細胞としては、限定するものではないが、HEK293細胞、HeLa細胞、Vero細胞、HuH-7細胞、およびHepG2細胞が挙げられる。特定の例では、宿主細胞は、肝細胞または肝細胞由来の細胞株である。
【0074】
組成物
本開示の核酸分子、ポリペプチドおよび/またはベクターを含む組成物もまた提供される。特定の例では、本明細書に開示されるAAVベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。この組成物は、希釈剤、安定剤、賦形剤、およびアジュバントなどの追加の成分も含んでもよい。
【0075】
担体、希釈剤およびアジュバントとしては、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸などの抗酸化物質;低分子量ポリペプチド(例えば、約10残基未満);血清aAAVC.umin、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/あるいはTween(商標)、Pluronics(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。
【0076】
方法
本開示のAAVベクター、およびAAVベクターを含有する組成物は、宿主細胞への異種コード配列の導入のための方法において使用され得る。そのような方法は、宿主細胞をAAVベクターと接触させることを含む。これは、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで行ってもよい。特定の実施形態では、宿主細胞は、肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)である。
【0077】
この方法がエクスビボまたはインビボで実施される場合、典型的には宿主細胞への異種配列の導入は治療目的のためであり、この異種配列の発現は疾患または状態の治療をもたらす。したがって、本明細書に開示されるAAVベクターは、本明細書に記載される異種配列によってコードされるタンパク質、ペプチド、またはポリヌクレオチドによる治療に修正可能な疾患または状態を有する対象など、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与され得る。
【0078】
インビボで使用される場合、対象に投与されるAAVベクターの力価は、例えば、特定の組換えウイルス、治療される疾患または障害、投与様式、治療目標、処置される個体、および目標とされている細胞型に応じて変化し、当業者に周知の方法によって決定され得る。正確な投与量は個々に決定されるが、ほとんどの場合、典型的には、本開示の組換えウイルスは、組換えウイルスが、対象の1kg当たり1×1010から1kg当たり1×1014の間のゲノムコピーという用量で対象に投与され得る。他の例では、1×1010未満のゲノムコピーが治療効果に十分であり得る。他の例では、治療効果のために1×1014を超えるゲノムコピーが必要になる場合がある。
【0079】
投与経路は特に限定されない。例えば、治療有効量のAAVベクターは、例えば、筋肉内、膣内、静脈内、腹腔内、皮下、表皮、皮内、直腸、眼内、肺、頭蓋内、骨内、経口、口腔内、または経鼻のルートで対象に投与してもよい。AAVベクターは、単回投与または複数回投与として、様々な間隔で投与され得る。
【0080】
また、上記および本明細書に記載のAAVベクター、すなわち、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクターを産生する方法も提供される。そのような方法は、本開示のカプシドポリペプチドをコードする核酸分子、AAVrep遺伝子、AAV逆方向末端反復が隣接する異種コード配列、および増殖性AAV感染を生成するためのヘルパー機能を含む宿主細胞を、本開示のカプシドポリペプチドを含むAAVベクターのアセンブリを容易にするのに適した条件下で培養することを含み、このカプシドが異種コード配列をカプシド化する。
【0081】
さらなる態様では、改変VR-Iが配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含むように参照カプシドポリペプチドのVR-Iを改変することにより、AAVベクターのインビボヒト肝細胞形質導入効率を高める方法が提供される。バリアントVR-Iは、配列番号253、251、196、274、319、288、194、231、193、266、207、273、243、286、209、256、310、220、198、283、275、223、212、328、254、67、157、129、64、117、166、45、35、164または32のいずれか1つに示される配列を含んでもよい。
【0082】
したがって、増強した形質導入効率を示す改変AAVベクターを産生する方法であって、配列番号5に対するナンバリングで、位置262、263、264、265、266、267、268、269、270および271のうちの1つ以上の位置で参照カプシドポリペプチドの配列を改変する(すなわち、1つ以上のアミノ酸を置換および/または挿入することによって、配列番号5に対するナンバリングで位置262~271に配列番号21~336のいずれか1つに示される配列を含む改変カプシドポリペプチドを産生するステップを含む、方法が提供される。
【0083】
任意の改変または改変の組合せ、例えば、アミノ酸の置き換えまたは置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸挿入は、参照カプシドポリペプチドと比較して改変カプシドポリペプチドのアミノ酸の配列の変化をもたらすことが理解される。したがって、例えば、改変への言及には、その範囲内に、1つのアミノ酸残基が同じアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換も、アミノ酸欠失がその欠失アミノ酸の挿入も伴う場合は、改変も含まず、その結果、参照カプシドポリペプチド配列と比較して改変カプシドポリペプチドのアミノ酸配列に違いはなく、すなわち、改変カプシドポリペプチドのアミノ酸配列は、参照カプシドポリペプチド配列のアミノ酸配列と同じであってはならない(または異なっていなければならない)。
【0084】
典型的には、この本方法は、インビボでヒト肝細胞を形質導入するための参照カプシドポリペプチドを最初に同定する最初のステップを含む。参照カプシドポリペプチドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12もしくはAAV13カプシドポリペプチド、または合成もしくはキメラカプシドポリペプチドなどの任意のAAVポリペプチドであってもよい。例示的な実施形態では、参照ポリペプチドは、配列番号2または4に示される配列に対して、少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含む。参照カプシドポリペプチドには、VP1タンパク質、VP2タンパク質またはVP3タンパク質の全てもしくは一部を含むポリペプチドが含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、参照カプシドポリペプチドは、配列番号2または4に示される配列に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVP1タンパク質の全部または一部:配列番号2のアミノ酸138~736または配列番号4のアミノ酸138~735として示されるVP2タンパク質に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVP2タンパク質の全部または一部:および配列番号2のアミノ酸203~736または配列番号4のアミノ酸204~735として示されるVP3タンパク質に対して少なくともまたは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVP3タンパク質の全部または一部を含む。
【0085】
参照カプシドポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列を改変して、改変カプシドポリペプチドまたはポリヌクレオチドを生成するための方法は当該技術分野で周知であり、本開示の方法を実施するために任意のそのような方法を利用してもよい。例えば、改変カプシドポリヌクレオチドを生成するための参照カプシドポリヌクレオチドの配列の改変は、インシリコ(in silico)および/またはインビトロで(部分的または全体的に)実施される組換えおよび合成法を含む、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して実施してもよい。特定の例で、配列の改変はインシリコで行われ、続いて、改変された配列を有する改変カプシドポリヌクレオチドのデノボ合成が行われる(例えば、重複オリゴヌクレオチドの化学合成、その後の遺伝子アセンブリを含むものなどの遺伝子合成法による)。
【0086】
改変カプシドポリヌクレオチドは、その後の発現、複製、増幅および/または操作のために、プラスミドなどの核酸ベクターに含まれ得る。細菌、昆虫、および哺乳動物細胞での使用に適したベクターは、広く記載されており、当該技術分野で周知である。当業者は、このベクターが、原核細胞および/または真核細胞におけるベクターの複製、ベクターの選択、および様々な宿主細胞における異種配列の発現に有用な追加の配列およびエレメントも含み得ることを理解するであろう。例えば、ベクターは、細菌宿主細胞などの原核宿主細胞において染色体外で自律複製およびベクターの維持を指示する能力を有する配列である原核レプリコンを含み得る。そのようなレプリコンは、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、ベクターは、ベクターを原核生物および真核生物の両方における複製および組み込みに適したものにするシャトルエレメントを含んでもよい。さらに、ベクターはまた、その発現が、宿主細胞の選択および維持を可能にする薬剤耐性遺伝子などの検出可能なマーカーを付与する遺伝子を含み得る。ベクターはまた、蛍光または他の検出可能なタンパク質をコードする遺伝子などの報告可能なマーカーを有し得る。核酸ベクターは、以下に記載するエレメントのいずれか1つ以上を含む、他のエレメントも含む可能性が高い。最も典型的には、ベクターは、カプシドタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。
【0087】
核酸ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、DNAのインビトロまたは化学合成、およびDNA配列決定の標準技術を含むがこれらに限定されない公知の技術を使用して構築してもよい。改変カプシドポリヌクレオチドを含むベクターは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して宿主細胞に導入してもよい。
【0088】
改変後、改変カプシドは次にベクター化される。カプシドポリペプチドをベクター化する方法は当該技術分野で周知であり、非限定的な例は上記に記載されている。
【0089】
これらの方法によって産生されるAAVベクターは、典型的には、参照カプシドポリペプチドを含むカプシドを有する参照AAVベクターと比較して増強された形質導入効率を有する。形質導入効率のレベルは、少なくとも、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれ以上増強することができ、例えばAAVベクターの形質導入効率は、インビボでの未改変AAVベクター(すなわち、参照カプシドを含むAAVベクター)からの形質導入効率と比較して、少なくとも、または約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上であり得る。いくつかの例では、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を有する小動物(例えばマウス)(例えばhFRGマウス)のような、ヒト肝細胞を利用するインビボ系で評価される。
【0090】
したがって、本開示の方法によって産生されるAAVベクターも提供される。
【0091】
本発明が容易に理解され、実際に効果を発揮できるようにするために、特定の好ましい実施形態を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0092】
本明細書における先行刊行物(またはそれから派生した情報)、または知られている任意の事項への言及は、その先行刊行物(またはそこから派生した情報)または既知の事項は、本明細書が関係する努力傾注分野における共通の一般知識の一部を形成するという示唆の確認としても承認としてもなんらの形態としても解釈されるべきではない。
【実施例】
【0093】
[実施例1]
【0094】
ライブラリーの生成-一般的方法
DNAおよびRNAの単離およびcDNA合成
DNAおよびRNAの単離ならびにcDNA合成は、改変することなく、以前(Cabanes-Creus, 2020, Sci Transl Med 12)に詳細に記載したように行った。簡単に述べると、DNAは標準的なフェノール:クロロホルムプロトコルを用いて抽出し、RNAはDirect-Zolキット(Zymogen Cat#R2062)を用いて抽出した。
【0095】
AAVベクターのパッケージングおよびウイルス産生
AAV構築物は、HEK293細胞およびヘルパーウイルスフリーの系を用いて、先に記載したようにAAVカプシドにパッケージングした(Xiao et al., 1998,J Virol 72,2224-2232)。ゲノムは、AAV2のrep遺伝子と特定のキャップを保有するパッケージングプラスミド構築物を用いてカプシドバリアントにパッケージングした。全てのベクターは、先に記載したようにヨウジキサノール勾配超遠心法を用いて精製した(Khan et al., 2011, Nat Protoc 6, 482-501)。
【0096】
マウス試験
全ての動物実験手順およびケアは、合同Children’s Medical Research Institute(CMRI)およびThe Children’s Hospital at Westmead Animal Care and Ethics Committeeにより承認された。Fah-/-Rag2-/-Il2rg-/-(FRG)マウス(Azuma et al.,2007,Nat Biotechnol 25,903-910)は、最近記載された(Cabanes-Creuset al., 2020, Mol Ther Methods Clin Dev 17,1139-1154)ように繁殖させ、飼育し、生着させ、モニターした。ヒト細胞の生着レベルは、ヒトアルブミンELISA定量キット(Bethyl Laboratories、カタログ番号E80-129)を用いて、末梢血中のヒトアルブミンの存在を測定することにより推定した。AAV形質導入能を評価するため、マウスを10% NTBCに置き、採取までこの状態に維持した。マウスを無作為に実験に割り付け、指示されたベクター用量で静脈注射(側尾静脈)により形質導入した。場合によっては、マウスはまず5mgの可溶性IVIgの注射で受動免疫された。マウスは形質導入の1週間後にCO2吸入により安楽死させた。異種移植したマウス肝臓からマウスおよびヒトの単一細胞懸濁液を得るために、最近記載されたのと同じコラゲナーゼ灌流手順に従った(Cabanes-Creus et al.,2020,Sci Transl Med 12)。全ての実験において、細胞はフィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗ヒト-HLA-ABC(クローンW6/32、Invitrogen 12-9983-42;1:20)、ビオチンコンジュゲート抗マウス-H-2Kb(クローンAF6-88.5、BD Pharmigen 553568;1:100)、およびアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート-ストレプトアビジン(eBioscience 17-4317-82;1:500)で標識した。GFP陽性標識サンプルは、BD Influx Cell sorterを用いて最小95%の純度にソーティングした。フローサイトメトリーは、Westmead Institute for Medical Research (WIMR)、Westmead、NSW、AustraliaのFlow Cytometry Facilityで行った。データはFlowJo 7.6.1(FlowJo LLC)を用いて分析した。
【0097】
肝臓摘出
肝臓摘出物は、常温肝灌流および解剖学的分割を用いて調製した。灌流系は、市販の肝臓灌流装置(Liver assist、Organ Assist、Groningen、Netherlands)を改造した。透析膜、2台の長期酸素供給器、およびガスブレンダーが、臓器の生存性を確保するために系に加えられている。灌流液は赤血球、2単位の新鮮凍結血漿、およびアルブミンを含み、36℃に維持されている。移植片にはタウロコール酸(7.7mg/時間)、メチルプレドニゾロン(50mg/24時間)、非経口栄養(20mL/時間)、および滴定インスリンおよびグルカゴンが注入される。生存率の要求が全て満たされる場合、灌流から20時間後、肝臓全体が解剖学的に分割された。これらは、乳酸<2.5mmol/L、ならびに胆汁産生、動脈pH>7.3、グルコース代謝の証拠、均一な灌流、および胆汁pH>7.4のうち2つ以上であった。AAVライブラリーは左葉の門脈に注入された。注入2日後にコア生検を行い、AAV単離のためにDNAおよびRNAを抽出した。
【0098】
配列決定
同義コドンバーコードおよびVR-Iライブラリーを囲む領域を、表22に以下に示すNGS-FおよびNGS-Rプライマーを用いて次世代シーケンシングで分析した。NGS分析は、プラスミドライブラリー、ベクターライブラリー、および形質導入肝細胞(DNAおよびcDNA)に対して行った。NGSライブラリーの調製および2×150ペアエンド構成を用いた配列決定は、Illumina MiSeq装置を用いてGenewiz(Suzhou、China)が行った。ワークフローをSnakemake(5.6)(Koster et al.,2018,Bioinformatics 34, 3600)で記述し、リードの処理およびバーコードのカウントを行った。ペアリードは、BBMergeを使用してマージし、次にBBDuk(いずれもBBTools 38.68(https://sourceforge.net/projects/bbmap/)からの2回目のパスで予想される長さのリードをフィルターした。マージされ、フィルターされたfastqファイルは、AAVバリアントに対応するバーコードを同定するPython(3.7)スクリプトに渡された。DNAおよびcDNA集団からのNGSリードは、前注入混合物からのリードに対して正規化された。
【0099】
hFRGマウスにおけるライブラリーのバリアントの分析
VR-IライブラリーをhFRGマウスに注入した後のバリアントの性能を評価するために、バリアントが肝細胞に入る能力(DNAの分析;「物理的形質導入」)、および入った後に発現する能力(cDNAの分析;「機能的形質導入」)を反映する一連の計算を行った。
【0100】
各バリアントについて、以下のスコアを3連で計算した:
侵入インデックス=log2 [DNAにおける%リード]/[ウイルスライブラリーにおける%リード]
発現インデックス=log2[cDNAにおける%リード]/[ウイルスライブラリーにおける%リード]
【0101】
バリアントをランク付けするために、一貫した性能(すなわち、同義コドンとは独立した3つ組にわたる所与のバリアントの性能の類似性)を最大にすることを目的とした戦略が利用された。そのために適合性スコアが作成された:
侵入適合性=侵入インデックス01+侵入インデックス02+侵入インデックス03
発現適合性=発現インデックス01+発現インデックス02+発現インデックス03
【0102】
同様に、異なる同義コドンで異なる性能を示すバリアントはペナルティを受けた。これを行うために、侵入と発現インデックスの両方の標準偏差を決定し、高い標準偏差を持つバリアントにペナルティを与える補正式を適用した:
補正適合性=適合性(0.5×偏差2)。
【0103】
次に、合計スコアを、補正された侵入適合性と補正された発現適合性との合計として計算した。
[実施例2]
【0104】
VR-Iライブラリーの生成
VR-Iライブラリーを、LK03-R594E+D598Hカプシド骨格(LK03-REDHとも称する;配列番号1(nt)および配列番号2(aa)に示されるカプシド配列)上およびC11.11カプシド骨格(配列番号3(nt)および配列番号4(aa)に示されるカプシド配列)上に構築した。LK03-REDHは、LK03(それ自体がAAV3B様カプシドポリペプチドである)に基づくカプシドであるが、R594EおよびD598H変異をさらに含む。VR-I周辺の相同性を考えると、異なるライブラリーをクローニングするプロセスは同じであった。
【0105】
AAV1、AAV2、AAV3b、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10カプシドのVR-Iの配列を整列させた(
図1)。AAV2の位置262は、AAV1、AAV3b、およびAAV9カプシド(およびLK03-REDH)の位置262に対応し、AAV7、AAV8、およびAAV10カプシド(およびC11.11)の位置263に対応する。AAV2カプシドと比較すると、AAV1およびAAV7カプシドはVR-I内に1つのアミノ酸挿入を有し、AAV8、AAV9およびAAV10カプシドは、VR-I内に2つのアミノ酸挿入を有する。位置262~271(配列番号5に示されるAAV2カプシドに対するナンバリングで)のそれぞれについて、表4に示されるように、いずれかのAAVに存在するアミノ酸がリストアップされた。したがって、ライブラリーのバリアントは、表4(AAV2カプシドに対するナンバリングで最上段に示す)に示す残基(または欠失)の任意の組合せで、この領域に10、11、または12個のアミノ酸のいずれかを含むように構築された。
【0106】
【0107】
各位置について、「AA-Calculator」ツール(http://guinevere.otago.ac.nz/cgi-bin/aef/AA-Calculator.pl)(Firth, 2008)を使用して、選択したアミノ酸をコードする最適コドンを検索した。縮退コドンを選択する基準は以下の通りである:1)ストップコドンを避ける;2)AAVに天然に存在するアミノ酸を全て含む;3)コードされたコドンの数が少ない。遺伝暗号の制限により#2が不可能な場合は、次のような縮退コドンが選ばれた:4)コードされたアミノ酸の数が少ない、および5)コードされたコドンの数が少ない。例えば、位置262の場合、天然に存在するアミノ酸はAsn(N)およびSer(S)である。トリヌクレオチドARTまたはARCは、ARYより先に選択されるが、これは後者が4つのコドンをコードすることからコドンレベルでのライブラリーの複雑さが増加するためである。いくつかの例では、例えば位置263については、Q、S、A、G、Eのみをコードする縮退コドンを見つけることができなかった。したがって、以下に例示するように、選択された野生型バリアントには存在しない他のアミノ酸が含まれた。トリヌクレオチドVVWが選ばれたのは、ストップコドンをコードせず、アミノ酸の数を12に、コドンの数を18に最小化したためである。表5は、各位置で選択された縮退コドン(イタリック体)と、それらの縮退コドンがコードするアミノ酸(AA)を要約したものである。選択した野生型AAVのいずれにも存在しないが、ライブラリーに含まれるアミノ酸も(括弧内に)示した。
【0108】
【0109】
VR-I周辺の領域がC11.11とLK03-REDHのカプシド間で共通であることから、それぞれについて同じクローニング戦略を用いた。カプシドインサートを囲むSwa-IおよびNsi-I制限部位を用いてカプシド領域をトリメトプリム耐性のクローニングプラスミドにクローニングした。ストップコドンをQ263(配列番号2に示されるLK03-REDHカプシドに対するナンバリング)にクローニングし、バックグラウンドプラスミドコードのパッケージングを減少させた。次いで、PCRベースの戦略をクローニングに利用し、VR-I領域の下流のカプシド領域に整列する共通領域を有する3つのフォワードプライマーと、上記の表に一致する縮退コドンとを用いた。各フォワードプライマー(Fwd 10aa、Fwd 11aa、およびFwd 12aa)を共通のリバースプライマー(Rev common 1)と共に、異なるPCR反応で使用した(配列は表22参照)。各フォワードプライマーはQ263_Stop-コドンを「固定」している。さらに、直鎖PCR産物はギブソンアセンブリに適合する相補的な末端を持ち、したがって自己アニールして機能的プラスミドを生成することができる。PCRを個別に行い、産物を別々に精製、維持して個々のバリアント間の分子の違いを最小限にした。11aa/12aaのPCR産物は10aa産物の6倍のバリアントを含む。これらの違いを考慮し、ギブソンアセンブリを行う前にPCR産物を1:6:6のモル比(10/11/12 aa)で混合した。反応は製造者の指示に従い、合計1pmolを混合して行った。
【0110】
ライブラリー選択に伴うノイズを減少させるために、動物内複製を生成する新規な戦略を開発した。その目的で、上記と全く同じプロトコルに従って、リバースプライマーのみを変更することにより、各カプシド骨格についてさらに2つの独立したVR-Iライブラリーをクローニングした。Rev common 2およびRev common 3(表22参照)を生成した。アミノ酸TYNNはLK03-REDHおよびC11.11の位置250~253に存在する。TYNNを維持するがDNAレベルでの「バーコード化」を可能にする同義コドンは、この領域をカバーするRev common 2およびRev common 3で利用された。
【0111】
その後、3つのライブラリーをパッケージングステップで混合し、同義コドンバーコードとライブラリー自体の両方を取り囲むPCRプライマーを用いて、単一フラグメントの150-PEIllumina次世代シーケンシングによって分析した。
【0112】
ライブラリーは、表4に存在する全ての可能なアミノ酸の組合せからなる14976のバリアントを含む。AAV2/3bからの10aaのVR-I領域を含むC11.11およびLK03-REDHカプシドと比較して、ライブラリー中のいくつかのバリアントは、位置264の後に1アミノ酸または2アミノ酸の挿入を含む(AAV2カプシドに対するナンバリングで)。その結果、ライブラリーは10、11または12アミノ酸のVR-Iを有するバリアントからなる。
【0113】
ライブラリーは、以前に記載されたように、機能的形質導入プラットフォーム(肝臓特異的プロモーター(LSP)を保有する)にクローニングされ、パッケージングされた(Cabanes-Creus et al., 2020,Methods Clin Dev, 17:1139-1154;第PCT/AU2019/051133号も参照されたい、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
[実施例3]
【0114】
改善された形質導入を有するバリアントの同定
ライブラリーを、高度に生着したhFRGマウスに注入した(実施例1)。具体的には、AAV-LK03-REDHおよびAAVC11.11ライブラリーを、2匹の高度にヒト化されたFRGマウス、およびAAV注射の24時間前に5mgのIVIgで受動免疫された1匹の高度にヒト化されたFRGマウスで個別にスクリーニングした。DNAおよびcDNAは、注射の1週間後に選別したヒト肝細胞から抽出した。
【0115】
ライブラリーはまた、灌流系中のヒト肝臓摘出片の左葉において共同でスクリーニングされた(実施例1を参照)。DNAとcDNAは、ライブラリー注入の2日後に回収した。AAV-LK03-REDHとAAVC11.11を区別するために、ヒト摘出物に入ったライブラリーは、I240でさらに以下のようにバーコード化した(LK03-REDHのナンバリング):
【0116】
【0117】
肝臓摘出物からのNGS用プライマーは、それぞれ配列番号337および配列番号20のフォワードおよびリバースプライマー配列であった;表22参照)。
【0118】
肝臓から単離したヒト肝細胞中のベクターDNAおよびRNA(cDNA)レベルをNGSにより評価し(それぞれ配列番号19および20のフォワードおよびリバースプライマー配列を使用;表22を参照のこと)、種々の侵入スコアおよび発現スコア、ならびに合計スコアを、上記のように計算した。次いで、バリアントを、それらの合計スコアに基づいて1から14976までランク付けした。
【0119】
表6は、IVIgを用いないhFRGマウスでスクリーニングした、AAV-LK03-REDH骨格に基づくライブラリーからの上位40のバリアントを提供する。興味深いことに、AAV-LK03-REDHからの野生型VR-I(SQSGASNDNH;配列番号12)を含むベクターは1932位にランクされた。重要なことに、このベクターでは発現スコアよりも比較的高い侵入スコアが観察され、これはAAV-LK03-REDHで観察されたことと一致している。表7は、IVIgなしの別々のhFRGマウスでスクリーニングしたこのライブラリーの上位40バリアントを示し;表8は、IVIgありのhFRGマウスでスクリーニングしたこのライブラリーの上位40バリアントを示し;表9は、肝臓摘出物でスクリーニングしたこのライブラリーの上位40バリアントを示す。表10~13は、2つの別々のhFRGマウス(IVIGなし)およびIVIgを用いたhFRGマウス、ならびに肝臓摘出物でそれぞれスクリーニングした、AAVC11.11骨格に基づくライブラリーからの上位40バリアントを示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
二次(2y)ライブラリーの生成
AAV-LK03-REDHカプシド骨格上とAAVC11.11骨格骨格上の2つのセカンダリー(2y)ライブラリーを構築した。
【0129】
AAV-LK03-REDH 2yライブラリーは、AAV-LK03-REDH VR-Iライブラリーについて表6~9に記載された上位40のバリアントを含むように構築されたが、バリアント「STTSGASNDNA」は例外であり、これは、hFRGマウス(IVIgなし)の複製2(表7)でスクリーニングしたAAV-LK03-REDH VR-Iライブラリーの上位40バリアントの中にあり、hFRGマウス(IVIgあり)でスクリーニングしたAAV-LK03-REDH VR-Iライブラリーの上位40バリアントの中にあった(表8)。
【0130】
AAVC11.11 2yライブラリーは、AAVC11.11 VR-Iライブラリーについて表10~13に記載された上位40バリアントを含むように構築された。したがって、AAV-LK03-REDH 2yライブラリーは159の選択されたバリアントを含み、AAVC11.11 2yライブラリーは160の選択されたバリアントを含んでいた。
【0131】
同義コドンに従った戦略と同様に、2yライブラリーの各バリアントは、2つの複製(バリアント当たり2オリゴヌクレオチド)として注文された。それらを複製物として使用できるように、2つのオリゴヌクレオチドのうちの最初のものは、ヒトで最も頻繁に使用されるコドンで構築され、2つのオリゴヌクレオチドのうちの2番目のものは、ヒトで2番目に頻繁に使用されるコドンで構築された。一例として、野生型VR-I(SQSGASNDNH;配列番号12)に対して最も頻繁に使用されるコドンを有する第1のオリゴヌクレオチドの配列は、AGCCAGAGCGGCGCCAGCAACGACAACCAC(配列番号341)であり、野生型VR-I(SQSGASNDNH;配列番号12)に対して2番目に頻繁に使用されるコドンを有する第2のオリゴヌクレオチドの配列は、TCCCAATCCGGAGCTTCCAATGATAATCAT(配列番号342)である。
【0132】
2yライブラリーはいずれもオリゴヌクレオチドとして合成されたので、各ライブラリーについて、野生型VR-I配列「SQSGASNDNH」(配列番号12)、以前の4つの選択(hFRG(IVIgなし)複製1、hFRG(IVIgなし)複製2、hFRG+IVIg、および肝臓摘出物)のそれぞれについて2つの陰性VR-I対照(未選択バリアント)、野生型AAV1、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10のVR-Iアミノ酸領域、ならびにストップコドンのみを保有するバリアントに対応する対照のセットが含まれた。合成されたオリゴヌクレオチドは、VR-I領域の上流(5’-ACAACCATCTCTACAAGCAAATCTCC;配列番号338)と下流(5’-TACTTTGGCTACAGCACCCCTTGG;配列番号339)の2つの相同性領域も保有していた。各2yライブラリーをギブソンアセンブリでそれぞれのバックグランドカプシドにクローニングした。
【0133】
共同で注入されるAAV-LK03-REDHとAAVC11.11 2yライブラリーを区別するために、各ライブラリーをI240で以下のようにさらにバーコード化した(LK03-REDHのナンバリング):
【0134】
【0135】
両方の2yライブラリーを個別にパッケージングし、1:1で混合し、そして4つの異なるマウスモデルに注入した:1)肝臓摘出物;2)hFRG(IVIgなし);3)hFRG+実施例3に示すIVIg;および4)PxB(IVIgなし)。FRGと同様に、PxBマウスもヒト化肝臓を有するキメラマウスである。(PhoenixBio)DNAおよびcDNAは、注射後1カ月のFRGおよびPXBマウスから、および注射後2、4、6および8日目の肝臓摘出物から回収した。
【0136】
DNA(侵入)レベルでの肝臓摘出モデルからのAAVC11.11 2yライブラリーの上位にランク付けされたバリアントは、以下の基準に基づいて決定された:1)同義コドンの複製物が両方とも上位100バリアントの中にあった;および2)同義コドンの複製物が両方とも4日のうち少なくとも3日に存在した。侵入ランクに基づく上位バリアントを表14に示す。バリアントはLB11 2y1~LB11 2y8と命名した(野生型はwt_LB11と命名)。これらのバリアントはまたAAVC11.12カプシド骨格にクローニングされた(そして対応してLB12 2y1-LB12 2y8と命名された)。
【0137】
【0138】
肝臓摘出モデルからの発現cDNAリードからは、2つのトップカプシドバリアントのみを得た。発現レベルでの同等のランクを表15に示す。バリアントをLB11 2y9~LB11 2y10と命名した。これらのバリアントはAAVC11.12カプシド骨格にもクローニングされた(そして対応してLB12 2y9-LB12 2y10と命名された)。
【0139】
【0140】
hFRG(IVIgなし)(表16)、hFRG+IVIg(表17)およびPxB(IVIgなし)(表18)モデルからのAAVC11.11 2yライブラリーの上位バリアントもまた、それらの侵入および発現ランクに基づいて選択した。これらのバリアントもAAVC11.12カプシド骨格にクローニングした。バリアントLB11 2y 11~LB11 2y 14(表16)を、その発現ランクに基づいて選択した。バリアントLB11 2y 3、7~9、およびLB11 2y 15~17(表17)は、その発現ランクに基づいて選択され、バリアントLB11 2y 1、12、および18~20(表17)は、その侵入ランクに基づいて選択された。バリアントLB11 2y 21~LB11 2y 24(表18)はその発現ランクに基づいて選択され、バリアントLB11 2y 25(表18)はその侵入ランクに基づいて選択された。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
hFRG(IVIgなし)(表19)、hFRG+IVIg(表20)およびPxB(IVIgなし)(表21)モデルからのAAV-LK03-REDH 2yライブラリーのためのいくつかの上位バリアントも、その侵入および発現ランクに基づいて選択された。これらのバリアントはAAVC11.12カプシド骨格にはクローニングされなかった。バリアントREDH 2y 1~REDH 2y 4(表19)はその発現ランクに基づいて選択された。バリアントREDH 2y 5および6(表20)は、その発現ランクに基づいて選択された。バリアントREDH 2y 7~REDH 2y 9(表21)はその発現ランクに基づいて選択され、バリアントREDH 2y 10(表21)はその侵入ランクに基づいて選択された。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
AAVC11.11 2yライブラリーおよびAAV-LK03-REDH 2yライブラリーのために選択/生成されたバリアント、およびAAVC11.12カプシド骨格上にクローンニングされたバリアント、合計60を全て、2つのバーコード化ITR2-LSP1-eGFP-バーコード化-WPRE-ITR2導入遺伝子でベクター化した。AAVC11.11、AAVC11.12、AAV-LK03およびAAV-LK03-REDHを対照として用いた。
【0149】
選択/生成された60のカプシドバリアントは、hFRGマウスにおける検証のために2つの群に分けられた。群1(34バリアント)には、AAVC11.11 2yおよびAAV-LK03-REDH 2yライブラリーの両方について、肝臓摘出物およびhFRG + IVIgモデルから上位にランク付けされたバリアントと、対応するAAVC11.12 2yバリアントが含まれた。群2(26バリアント)には、AAVC11.11 2yおよびAAV-LK03-REDH 2yライブラリーの両方について、hFRG(IVIgなし)およびPxBモデルから上位にランク付けされたバリアント、ならびに対応するAAVC11.12 2yバリアントが含まれた。
【0150】
2つの選択/生成されたカプシドバリアント群の各々を、IVIgの有無にかかわらずhFRGマウスのいずれかに注射し(群当たりn=3、カプシドバリアント群当たり合計6匹のhFRGマウス)、AAVC11.11、AAVC11.12、AAV-LK03およびAAV-LK03-REDH対照と比較した。肝臓から単離したヒト肝細胞のベクターDNAおよびRNA(cDNA)レベルをNGSで評価し、注入前混合物に対して正規化し、次にAAV-C11.12の性能に対して正規化し、以下のように計算してデータを提示した:(カプシドi DNA%/カプシド i 前混合物%)/(カプシドC11.C12 DNA%/カプシド C11.C12前混合物%)。結果を
図3~
図6に示す。C11.C12は1として表示され、残りのカプシドは、各条件につきn=3のFRGについてC11.C12と比較した場合の平均倍数変化を示す。
【0151】
【0152】
【配列表】
【国際調査報告】