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特表2024-532901ホットスタンプ構造部品を製造するプレスシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ホットスタンプ構造部品を製造するプレスシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20240903BHJP
   B21D 37/16 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B21D22/20 H
B21D37/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513711
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2022058201
(87)【国際公開番号】W WO2023031838
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202131039596
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518201418
【氏名又は名称】タタ スチール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジー,マニカンダン
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ,ダス ヴァンカット
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ,ラフル クマー
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ,アビシェーク
【テーマコード(参考)】
4E050
4E137
【Fターム(参考)】
4E050GA04
4E137AA11
4E137AA30
4E137BA01
4E137BA05
4E137BA06
4E137BA07
4E137BB01
4E137BC07
4E137CA09
4E137CA26
4E137DA03
4E137DA05
4E137DA10
4E137EA01
4E137EA23
4E137EA27
4E137EA29
4E137EA36
4E137FA10
4E137FA15
4E137FA25
4E137GA03
(57)【要約】
プレスシステム内でシートブランクからホットスタンプ構造部品を製造するプレスシステム及び方法が提供される。プレスシステムは、制御雰囲気システム及びプレスツール装置を備える。プレスツール装置は、下部本体部材と、上部本体部材と、上部ダイ部材と、下部ダイ部材と、シートブランクを加熱するように構成された加熱デバイスと、を備える。上部ダイ部材及び下部ダイ部材は、制御雰囲気システムによって制御された雰囲気内で、加熱されたシートブランクにスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、ホットスタンプ構造部品を形成するように構成されている。ホットスタンプ構造部品の形成中に雰囲気を制御することによって、酸化物の薄片の発生を抑制する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御雰囲気システム(170)と、
ホットスタンプ構造部品(111)を製造するためのプレスツール装置(100)と、を備え、
前記プレスツール装置(100)は、
下部本体部材(106)と、
前記下部本体部材(106)に対応する上部本体部材(104)と、を備え、
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、相互に対して移動するように構成され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されたプレスツールチャンバ(118)と、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された上部ダイ部材(120)と下部ダイ部材(122)と、を備え、
前記上部ダイ部材(120)は、前記上部本体部材(104)に結合され、
前記下部ダイ部材(122)は、前記下部本体部材(106)に結合され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された加熱デバイス(102)を備え、
前記加熱デバイス(102)は、シートブランク(110)を加熱するように構成され、
前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)は、前記制御雰囲気システム(170)によって制御された前記雰囲気内で前記加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、前記ホットスタンプ構造部品(111)を形成するように構成されている、
プレスシステム(200)。
【請求項2】
前記ホットスタンプ構造部品(111)の形成中に前記雰囲気を制御することで、前記ホットスタンプ構造部品(111)上の酸化物の薄片の発生を抑制する、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項3】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記プレスツール装置(100)を収容している、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項4】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されている、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項5】
前記制御雰囲気システム(170)は、少なくとも1つのドア(174)を有する筐体(172)と雰囲気制御手段(176)とを備える、請求項1から4に記載のプレスシステム(200)。
【請求項6】
前記筐体(172)は、前記プレスツール装置(100)を収容し、
前記雰囲気制御手段(176)は、前記筐体(172)内の前記雰囲気を制御する、請求項3及び5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項7】
前記筐体(172)は、部屋である、請求項6に記載のプレスシステム(200)。
【請求項8】
前記雰囲気制御手段(176)は、前記空気流量を制御することによって前記雰囲気を制御するように構成されている、請求項5から7に記載のプレスシステム(200)。
【請求項9】
前記雰囲気制御手段(176)は、酸素含有量を低減させる任意の媒質を充填することによって前記雰囲気を制御するように構成され、
前記媒質は、固体媒質、液体媒質、又は気体媒質のうちいずれか1つである、請求項5から7に記載のプレスシステム(200)。
【請求項10】
前記雰囲気制御手段(176)は、窒素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスのうちいずれか1つから選択された不活性ガスを充填することによって、前記雰囲気を制御するように構成されている、請求項5から7に記載のプレスシステム(200)。
【請求項11】
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、機械的機構又は水圧式機構のいずれか1つによって相互に対して移動される、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項12】
前記筐体(172)は、前記プレスツールチャンバ(118)を収容し、
前記雰囲気制御手段(176)は、前記プレスツールチャンバ(118)内の前記雰囲気を制御する、請求項4及び5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項13】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記周りの雰囲気から前記プレスツールチャンバ(118)を隔離するように構成されている、請求項12に記載のプレスシステム(200)。
【請求項14】
前記プレスシステム(200)は、シートブランク原材料ユニット(202)及び最終生成物収集ユニット(204)を備える、請求項3から13に記載のプレスシステム(200)。
【請求項15】
前記制御雰囲気システム(170)は、一方側に前記シートブランク原材料ユニット(202)が、他方側に前記最終生成物収集ユニット(204)が備えられ、
前記シートブランク原材料ユニット(202)は、前記プレスツール装置(100)にシートブランク(110)を提供するように構成され、
前記最終生成物収集ユニット(204)は、前記プレスツール装置(100)から前記ホットスタンプ構造部品(111)を受け取るように構成されている、請求項3、4、及び14に記載のプレスシステム(200)。
【請求項16】
前記加熱デバイス(102)は、ジュール加熱原理を用いた抵抗加熱デバイスである、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項17】
前記加熱デバイス(102)は、電源(116)及び複数の電極(114)を備え、
前記複数の電極(114)は、第1の電極(114a)、第2の電極(114b)、第3の電極(114c)、及び第4の電極(114d)を含む、請求項16に記載のプレスシステム(200)。
【請求項18】
前記プレスツール装置(100)は、前記複数の電極(114)のうち少なくとも1つを選択的に係合又は解放するように構成された少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を備える、請求項1及び17に記載のプレスシステム(200)。
【請求項19】
前記プレスツール装置(100)は、第1の空気圧シリンダ(130a)及び第2の空気圧シリンダ(130b)を含む2つのクランピングデバイス(130)を備え、
前記第1の空気圧シリンダ(130a)は、前記第1の電極(114a)に対して前記第3の電極(114c)を選択的に係合又は解放するように構成され、
前記第2の空気圧シリンダ(130b)は、前記第2の電極(114b)に対して前記第4の電極(114d)を選択的に係合又は解放するように構成されている、請求項18に記載のプレスシステム(200)。
【請求項20】
前記複数の電極(114)は、銅電極である、請求項19に記載のプレスシステム(200)。
【請求項21】
前記シートブランク(110)は、コーティングされていないボロン鋼シートブランクである、請求項1から20に記載のプレスシステム(200)。
【請求項22】
前記シートブランク(110)は、厚さが0.6mm~3.0mmの範囲である、請求項1から21に記載のプレスシステム(200)。
【請求項23】
前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)は、所定の温度で動作するように構成されている、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項24】
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、前記水圧式機構によって相互に対して移動される、請求項11に記載のプレスシステム(200)。
【請求項25】
前記加熱デバイス(102)は、誘導加熱デバイスである、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項26】
前記プレスシステム(200)は、制御システム(251)及び閉ループフィードバックシステム(252)を備え、
前記閉ループフィードバックシステム(252)は、前記制御雰囲気システム(170)及び前記プレスツール装置(100)に関する前記情報を監視し、前記情報を、前記プレスシステム(200)を制御するように構成された前記制御システム(251)に伝達するように構成されている、請求項1から25に記載のプレスシステム(200)。
【請求項27】
プレスシステム(200)内でシートブランク(110)からホットスタンプ構造部品(111)を製造する方法(300)であって、
前記プレスシステム(200)は、
少なくとも1つのドア(174)を有する筐体(172)と雰囲気制御手段(176)とを含む制御雰囲気システム(170)と、
プレスツール装置(100)と、を備え、
前記プレスツール装置(100)は、
下部本体部材(106)と、
前記下部本体部材(106)に対応する上部本体部材(104)と、を備え、
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、相互に対して移動するように構成され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されたプレスツールチャンバ(118)と、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された上部ダイ部材(120)と下部ダイ部材(122)と、を備え、
前記上部ダイ部材(120)は、前記上部本体部材(104)に結合され、
前記下部ダイ部材(122)は、前記下部本体部材(106)に結合され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された加熱デバイス(102)を備え、
前記加熱デバイス(102)は、電源(116)に結合された複数の電極(114)を備え、
前記方法(300)は、
前記シートブランク(110)を前記複数の電極(114)上に移動させることと、
前記筐体(172)の前記少なくとも1つのドア(174)を閉じて、前記雰囲気制御手段(176)によって前記筐体(172)内の前記雰囲気を制御することと、
前記少なくとも1つのクランピングデバイス(130)によって前記複数の電極(114)間に前記シートブランク(110)をクランプすることと、
前記電源(116)から前記複数の電極(114)に電力を供給することによって、前記シートブランク(110)を第1の所定の温度に加熱することと、
前記少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を後退させることによって、前記加熱されたシートブランク(110)のクランプを解除することと、
前記下部本体部材(106)に対して前記上部本体部材(104)を移動させることと、
制御された雰囲気内で、前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)により、前記加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、前記ホットスタンプ構造部品(111)を形成することと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記第1の所定の温度は、約350℃~950℃の範囲である、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項29】
前記第1の所定の温度は、約750℃~950℃の範囲である、請求項28に記載の方法(300)。
【請求項30】
前記第1の所定の温度は、900℃である、請求項29に記載の方法(300)。
【請求項31】
前記ホットスタンプ構造部品(111)の形成中に前記雰囲気を制御することで、前記ホットスタンプ構造部品(111)上の酸化物の薄片の発生を抑制し、酸化物の薄片の抑制はツール汚染及びツール摩耗を低減する、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項32】
前記プレスシステム(200)は、前記シートブランク(110)の前記温度を検出するため非接触パイロメータ(253)を備える、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項33】
前記プレスシステム(200)は、制御システム(251)及び閉ループフィードバックシステム(252)を備え、
前記閉ループフィードバックシステム(252)は、前記制御雰囲気システム(170)及び前記プレスツール装置(100)に関する前記情報を監視し、前記情報を、前記プレスシステム(200)を制御するように構成された前記制御システム(251)に伝達するように構成されている、請求27及び32に記載の方法(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明はプレスシステムに関し、より具体的には、プレスシステム内で制御された雰囲気下でシートブランクからホットスタンプ構造部品を製造するプレスシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 世界的なエネルギ危機の高まりと環境問題のため、自動車製造業者は車両の燃費を向上させる軽量化技術に焦点を当てている。軽量化と安全性向上のために、高強度鋼を使用することが必然的な傾向になっている。ホットスタンピングのようなプレス成形は、そのような高強度鋼部品の製造に用いられる製造プロセスの1つである。従来のホットスタンピングプロセスでは、従来の炉内でワークピース(ボロン鋼シートブランク等)をオーステナイト変態温度より高い温度に加熱し、数分間保持して、その体積全体でオーステナイト相を達成する。次いで、ワークピースを約10秒以内で迅速に炉からスタンピングツールへ移動させ、主にマルテンサイト相の最終生成物を生成するため急速に焼き入れしながら、必要な形状に急速に変形させる。従来の電気炉では、ワークピースは放射によって加熱される。
【0003】
[0003] しかしながら、これらの従来の炉は、ワークピース(ボロン鋼)をオーステナイト温度まで加熱するために多くのエネルギを必要とすると共に多くの時間を費やす。エネルギだけでなく、炉は、設置のために大きなスペースを必要とし、生産性が低下する。更に、炉内での加熱時間(約3分)及び炉からホットスタンピングプレスへの移動時間(約10秒)の間、コーティングされていないボロン鋼のような鋼シートブランクは雰囲気空気と反応して鋼表面が酸化し、鋼シートブランクの表面上に酸化物の薄片が発生する。鋼板上に酸化物の薄片が存在する場合、自動車向け用途ではこれを許容できない可能性がある。鋼は高温で雰囲気と反応すると酸化する。また、酸化速度は鋼温度と反応時間に依存する。従って、表面酸化のための反応時間を短縮するワークピースの加熱及びスタンピング技法を有するプレスシステムを開発することが望ましい。
【発明の目的】
【0004】
[0004] 本発明の目的は、従来技術の問題を解決し、生産性を向上させる新規の加熱及びスタンピング技法を備えるプレスシステムを提供することである。
【0005】
[0005] 本発明の別の目的は、表面酸化のための反応時間を短縮し、これにより表面上の酸化物の薄片を低減する、制御雰囲気システムを有するプレスシステムを開発することである。
【0006】
[0006] 本発明の更に別の目的は、成形段階中に雰囲気制御を行って酸化物の薄片の発生を抑制するプレスシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
[0007] この概要は、プレスシステム内でシートブランクからホットスタンプ構造部品を製造するプレスシステム及び方法に関する概念を紹介するために提供される。この概念は、以下で、発明を実施するための形態において更に記載される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は不可欠な特徴を識別することは意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0008】
[0008] 本発明の一態様において、プレスシステムが提供される。プレスシステムは、制御雰囲気システムと、ホットスタンプ構造部品を製造するためのプレスツール装置と、を備える。プレスツール装置は、下部本体部材と、下部本体部材に対応する上部本体部材と、を備える。上部本体部材と下部本体部材は、相互に対して移動するように構成されている。また、プレスツール装置は、下部本体部材と上部本体部材との間に規定されたプレスツールチャンバも備える。プレスツール装置は更に、プレスツールチャンバ内に配置された上部ダイ部材と下部ダイ部材とを備える。上部ダイ部材は上部本体部材に結合され、下部ダイ部材は下部本体部材に結合されている。プレスツール装置は、プレスツールチャンバ内に配置された加熱デバイスを備える。加熱デバイスは、シートブランクを加熱するように構成されている。上部ダイ部材及び下部ダイ部材は、制御雰囲気システムによって制御された雰囲気内で、加熱されたシートブランクにスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、ホットスタンプ構造部品を形成するように構成されている。
【0009】
[0009] 一実施形態では、ホットスタンプ構造部品の形成中に雰囲気を制御することで、ホットスタンプ構造部品上の酸化物の薄片の発生を抑制する。
【0010】
[0010] 一実施形態において、制御雰囲気システムはプレスツール装置を収容している。
【0011】
[0011] 一実施形態において、制御雰囲気システムは下部本体部材と上部本体部材との間に配置されている。
【0012】
[0012] 一実施形態において、制御雰囲気システムは、少なくとも1つのドアを有する筐体と雰囲気制御手段とを備える。
【0013】
[0013] 一実施形態において、筐体はプレスツール装置を収容し、雰囲気制御手段は筐体内の雰囲気を制御する。一実施形態において、筐体は部屋である。
【0014】
[0014] 一実施形態において、雰囲気制御手段は、空気流量を制御することによって雰囲気を制御するように構成されている。
【0015】
[0015] 一実施形態において、雰囲気制御手段は、酸素含有量を低減させる(還元雰囲気)任意の媒質を充填することによって雰囲気を制御するように構成され、媒質は、固体媒質、液体媒質、又は気体媒質のうちいずれか1つである。
【0016】
[0016] 一実施形態において、雰囲気制御手段は、窒素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスのうちいずれか1つから選択された不活性ガスを充填することによって、雰囲気を制御するように構成されている。
【0017】
[0017] 一実施形態において、筐体及び少なくとも1つのドアは、プラスチック、樹脂、木材、金属、合金、又は複合材料のうちいずれか1つから選択された材料から製造される。
【0018】
[0018] 一実施形態において、筐体はプレスツールチャンバを収容し、雰囲気制御手段はプレスツールチャンバ内の雰囲気を制御する。
【0019】
[0019] 一実施形態において、制御雰囲気システムは、周りの雰囲気からプレスツールチャンバを完全に隔離するように構成されている。
【0020】
[0020] 一実施形態において、プレスシステムはシートブランク原材料ユニット及び最終生成物収集ユニットを備える。
【0021】
[0021] 一実施形態において、制御雰囲気システムは、一方側にシートブランク原材料ユニットが、他方側に最終生成物収集ユニットが備えられている。シートブランク原材料ユニットは、プレスツール装置にシートブランクを提供するように構成され、最終生成物収集ユニットは、プレスツール装置からホットスタンプ構造部品を受け取るように構成されている。
【0022】
[0022] 一実施形態において、加熱デバイスはジュール加熱原理を用いた抵抗加熱デバイスである。
【0023】
[0023] 一実施形態において、加熱デバイスは電源及び複数の電極を備え、複数の電極は、第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極を含む。
【0024】
[0024] 一実施形態において、プレスツール装置は、複数の電極のうち少なくとも1つを選択的に係合又は解放するように構成された少なくとも1つのクランピングデバイスを備える。
【0025】
[0025] 一実施形態において、プレスツール装置は、第1の空気圧シリンダ及び第2の空気圧シリンダを含む2つのクランピングデバイスを備える。第1の空気圧シリンダは、第1の電極に対して第3の電極を選択的に係合又は解放するように構成され、第2の空気圧シリンダは、第2の電極に対して第4の電極を選択的に係合又は解放するように構成されている。
【0026】
[0026] 一実施形態において、複数の電極は銅電極である。一実施形態において、シートブランクは、コーティングされていないボロン鋼シートブランクである。
【0027】
[0027] 一実施形態において、シートブランクは厚さが0.6mm~2.0mmの範囲である。
【0028】
[0028] 一実施形態において、上部ダイ部材及び下部ダイ部材は所定の温度で動作するように構成されている。
【0029】
[0029] 一実施形態において、上部本体部材及び下部本体部材は、機械的機構又は水圧式機構のいずれか1つによって相互に対して移動される。
【0030】
[0030] 一実施形態において、加熱デバイスは誘導加熱デバイスである。
【0031】
[0031] 一実施形態において、プレスシステムは、制御システム及び閉ループフィードバックシステムを備える。閉ループフィードバックシステムは、制御雰囲気システム及びプレスツール装置に関する情報を監視し、この情報を、プレスシステムを制御するように構成された制御システムに伝達するように構成されている。
【0032】
[0032] 本発明の別の態様において、プレスシステム内でシートブランクからホットスタンプ構造部品を製造する方法が提供される。プレスシステムは、少なくとも1つのドアを有する筐体と雰囲気制御手段とを含む制御雰囲気システムを備える。プレスシステムはプレスツール装置も備える。プレスツール装置は、下部本体部材と、下部本体部材に対応する上部本体部材と、を備える。上部本体部材及び下部本体部材は相互に対して移動するように構成されている。プレスツール装置は更に、下部本体部材と上部本体部材との間に配置されたプレスツールチャンバを備える。プレスツール装置は、プレスツールチャンバ内に配置された上部ダイ部材と下部ダイ部材とを備える。上部ダイ部材は上部本体部材に結合され、下部ダイ部材は下部本体部材に結合されている。プレスツール装置は、プレスツールチャンバ内に配置された加熱デバイスを備える。加熱デバイスは、電源に結合された複数の電極を備える。方法は、シートブランクを複数の電極上に移動させることを含む。方法は、筐体の少なくとも1つのドアを閉じて、雰囲気制御手段によって筐体内の雰囲気を制御することも含む。方法は更に、少なくとも1つのクランピングデバイスによって複数の電極間にシートブランクをクランプすることを含む。方法は、電源から複数の電極に電力を供給することによって、シートブランクを第1の所定の温度に加熱することを含む。方法は、少なくとも1つのクランピングデバイスを後退させることによって、加熱されたシートブランクのクランプを解除することも含む。方法は更に、下部本体部材に対して上部本体部材を移動させることを含む。方法は、制御された雰囲気内で、上部ダイ部材及び下部ダイ部材により、加熱されたシートブランクにスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、ホットスタンプ構造部品を形成することを含む。
【0033】
[0033] 一実施形態において、第1の所定の温度は約350℃~950℃の範囲である。一実施形態において、第1の所定の温度は約750℃~950℃の範囲である。一実施形態において、第1の所定の温度は900℃である。
【0034】
[0034] 一実施形態では、ホットスタンプ構造部品の形成中に雰囲気を制御することで、ホットスタンプ構造部品上の酸化物の薄片の発生を抑制する。
【0035】
[0035] 一実施形態において、プレスシステムは、シートブランクの温度を検出するため非接触パイロメータを備える。
【0036】
[0036] 一実施形態において、プレスシステムは、制御システム及び閉ループフィードバックシステムを備え、閉ループフィードバックシステムは、制御雰囲気システム及びプレスツール装置に関する情報を監視し、この情報を、プレスシステムを制御するように構成された制御システムに伝達するように構成されている。
【0037】
[0037] 以下の記載及び添付図面から、本開示の他の特徴及び態様が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】[0038] 本発明の一実施形態に従った例示的なプレスシステムの概略図を示す。
図2】[0039] 本発明の一実施形態に従ったプレスシステムのプレスツール装置の概略図を示す。
図3】[0040] 本発明の一実施形態に従ったプレスツール装置の異なる図を示す。
図4】[0040] 本発明の一実施形態に従ったプレスツール装置の異なる図を示す。
図5】[0041] 本発明の一実施形態に従ったプレスシステムの制御雰囲気システムの異なる図を示す。
図6】[0041] 本発明の一実施形態に従ったプレスシステムの制御雰囲気システムの異なる図を示す。
図7】[0042] 本発明の一実施形態に従った、プレスシステム内でシートブランクからホットスタンプ構造部品を製造する方法のフローチャートを示す。
図8】[0043] 従来のシステム及び方法を用いて製造された従来技術のホットスタンプ構造部品の画像を示す。
図9】[0044] 本発明のプレスシステムを用いて製造されたホットスタンプ構造部品の画像を示す。
図10】[0045] 従来技術のホットスタンプ構造部品及び本発明のプレスシステムを用いて製造されたホットスタンプ構造部品の応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
【0039】
[0046] 本記載で参照される図面は、特に言及する場合を除いて、一定の縮尺通りに描かれていると理解するべきではなく、そのような図面は性質上、単に例示のためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[0047] 本開示の種々の例示的な実施形態の詳細な説明は、本明細書において添付図面を参照して記載される。実施形態は、本開示を明らかに伝える詳細さで本明細書に記載されることに留意するべきである。しかしながら、本明細書で与えられる詳細さの量は、実施形態の予想される変形を限定することは意図しておらず、それどころか、添付の特許請求の範囲が規定する本開示の精神及び範囲内に該当する全ての変更、均等物、及び代替物を包含することが意図される。
【0041】
[0048] また、本明細書で明示的に記載又は図示されないが、本開示の原理を具現化する様々な機構が考案され得ることは理解されよう。更に、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びに具体例を述べる本明細書における全ての記述は、その均等物を包含することが意図される。
【0042】
[0049] 本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、例示的な実施形態を限定することは意図していない。本明細書で用いられる際、単数形「a(1つの)」「an(1つの)」及び「the(その)」は、文脈上明らかに別の意味を示す場合を除いて、複数形も含むことが意図される。更に、「comprises(備える)」、「comprising(備えている)」、「includes(含む)」、及び/又は「including(含んでいる)」という用語は、本明細書で用いられる場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は部品の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品、及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しないことは理解されよう。
【0043】
[0050] また、いくつかの代替的な実施例において、記載された機能/行為は、図に示したものとは異なる順序で生じ得ることに留意するべきである。例えば、連続して示されている2つの図は、関連する機能性/行為に応じて、実際には同時に実行されることがあり、又は、時には逆の順序で実行されることがある。
【0044】
[0051] 別段の規定がない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的用語と科学的用語を含む)は、例示的な実施形態が属する技術の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。更に、例えば一般的に用いられる辞書で定義される用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈するべきであり、本明細書でそのように明示的に規定される場合を除いて、理想的な意味又は過度に形式的な意味に解釈されないことは理解されよう。
【0045】
[0052] 図1を参照すると、本発明の一実施形態に従った例示的なプレスシステム(200)が示されている。プレスシステム(200)は、シートブランク(110)からホットスタンプ構造部品(111)を形成することを可能とする。プレスシステム(200)は、シートブランク原材料ユニット(202)と、制御雰囲気システム(170)と、プレスツール装置(100)と、最終生成物収集ユニット(204)と、を備える。シートブランク原材料ユニット(202)は、シートブランク(110)を保管するように構成されている。最終生成物収集ユニット(204)は、ホットスタンプ構造部品(111)を保管するように構成されている。ホットスタンプ構造部品(111)は、センターピラー、ルーフレール、バンパー、及び/又はインパクトビーム等の部品とすることができる。
【0046】
[0053] 説明されている例では、シートブランク(110)は、コーティングされていないボロン鋼シートブランクである。あるいはシートブランク(110)は、限定なしで、任意の鋼、又は、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の合金としてもよい。説明されている例では、シートブランク(110)は、厚さが0.6mm~2.0mmの範囲である。あるいはシートブランク(110)は、本発明の範囲を限定することなく任意の厚さとしてもよい。
【0047】
[0054] 図2図3、及び図4を参照すると、プレスツール装置(100)は、ホットスタンプ構造部品(111)を製造するように構成されたホットスタンピングプレスを具現化する。本発明のプレスツール装置(100)は、シートブランク(110)の加熱を実行し、その後、加熱したシートブランク(110)の成形とダイクエンチを同時に実行しながらブランキング(トリミング)を行う。
【0048】
[0055] プレスツール装置(100)は、加熱デバイス(102)を備える。加熱デバイス(102)は、シートブランク(110)を加熱するように構成されている。説明されている例では、加熱デバイス(102)は、ジュール加熱原理を用いた抵抗加熱デバイスである。加熱デバイス(102)は、ジュール加熱原理を用いてシートブランク(110)を加熱する。別の例では、加熱デバイス(102)は誘導加熱デバイスである。シートブランク(110)は、加熱デバイスによって所定の温度まで所定の時間量、加熱することができる。
【0049】
[0056] 加熱デバイス(102)は、電源(116)(図4に示されている)及び複数の電極(114)を備える。複数の電極(114)は、第1の電極(114a)、第2の電極(114b)、第3の電極(114c)、及び第4の電極(114d)を含む。説明されている例では、複数の電極(114)は銅電極である。あるいは複数の電極(114)は、限定なしで、ステンレス鋼のような任意の導電性材料で作製することができる。説明されている例では、電源(116)は低電圧高電流DC電力供給である。プレスシステム(200)は、シートブランク(110)の温度を検出するため非接触パイロメータ(253)を備える。
【0050】
[0057] プレスツール装置(100)は、複数の電極(114)のうち少なくとも1つを選択的に係合又は解放するように構成された少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を備える。プレスツール装置(100)は、第1の空気圧シリンダ(130a)及び第2の空気圧シリンダ(130b)を含む2つのクランピングデバイス(130)を備える。説明されている例では、クランピングデバイス(130)は空気圧シリンダとして説明される。あるいはクランピングデバイス(130)は、限定なしで、機械的又は水圧式クランピングデバイスとしてもよい。第2の電極(114b)は第1の空気圧シリンダ(130a)によって支持され、第4の電極(114d)は第2の空気圧シリンダ(130b)によって支持されている。第1の空気圧シリンダ(130a)は、第1の電極(114a)に対して第3の電極(114c)を選択的に係合又は解放するように構成され、第2の空気圧シリンダ(130b)は、第2の電極(114b)に対して第4の電極(114d)を選択的に係合又は解放するように構成されている。
【0051】
[0058] プレスツール装置(100)は、下部本体部材(106)と、下部本体部材(106)に対応する上部本体部材(104)と、を備える。上部本体部材(104)と下部本体部材(106)は、相互に対して移動するように構成されている。上部本体部材(104)と下部本体部材(106)は、機械的機構又は水圧式機構のうちいずれか1つによって相互に対して移動するように構成されている。説明されている例では、上部本体部材(104)を、水圧式機構(図示せず)によって下部本体部材(106)に対して移動させる。別の例では、限定なしで、下部本体部材(104)を上部本体部材(104)に対して移動させることができる。下部本体部材(106)及び上部本体部材(104)は、プレスツールチャンバ(118)(図3に示されている)を規定する。説明されている例では、プレスツールチャンバ(118)内に加熱デバイス(102)が配置されている。第1の電極(114a)及び第3の電極(114c)は、下部本体部材(106)から延出している複数の直立部材(117)によって支持されている。
【0052】
[0059] プレスツール装置(100)は、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)を備える。説明されている例では、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)はプレスツールチャンバ(118)内に配置されている。上部ダイ部材(120)は上部本体部材(104)に結合され、下部ダイ部材(122)は下部本体部材(106)に結合されている。ダイ部材を本体部材に結合するため、追加のベース部材(番号を付けずに図示されている)及び締結部材(図示せず)を用いてもよい。
【0053】
[0060] 説明されている例では、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)に、シートブランク(110)のブランキング/トリミングを行うためのブランキングツール(図示せず)が設けられている。限定なしで、シートブランク(110)に様々なブランキング動作を実行するため、当技術分野において既知である様々なタイプのブランキングツールを使用できる。別の例では、限定なしで、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)のうち一方のみにブランキングツールが設けられる。上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)は、所定の温度で動作するように構成されている。上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)内に設けられたパイプライン等の循環部材を介して冷却水又はドライアイス冷却剤等の冷却剤を循環させる冷却ユニット(図示せず)によって、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)を所定の温度で動作させることが可能となる。
【0054】
[0061] 上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)は、加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行するように構成されている。プレスツール装置(100)の上部ダイ部材(120)とプレスツール装置(100)の下部ダイ部材(122)の相互作用により、シートブランク(110)のプロファイリングが行われる。
【0055】
[0062] 図1を参照すると、プレスシステム(200)は、制御システム(251)及び閉ループフィードバックシステム(252)を備える。閉ループフィードバックシステム(252)は、シートブランク原材料ユニット(202)、最終生成物収集ユニット(204)、非接触パイロメータ(253)、制御雰囲気システム(170)、及びプレスツール装置(100)に関する情報を監視し、この情報を、プレスシステム(200)を制御するように構成された制御システム(251)に伝達するように構成されている。
【0056】
[0063] 図1及び図5を参照すると、プレスシステム(200)は、雰囲気を制御するように構成された制御雰囲気システム(170)を備える。制御雰囲気システム(170)は、少なくとも1つのドア(174)を有する筐体(172)と雰囲気制御手段(176)とを備える。一例において、雰囲気制御手段(176)は、空気流量を制御することによって雰囲気を制御するように構成されている。別の例において、雰囲気制御手段(176)は、酸素含有量を低減させる任意の媒質を充填することによって雰囲気を制御するように構成されている。この媒質は、第1鉄酸化物ボール等の固体媒質、液体窒素等の液体媒質、又は気体媒質のうちいずれか1つである。更に別の例において、雰囲気制御手段(176)は、窒素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガス、又はそれらの任意の組み合わせのうちいずれか1つから選択された不活性ガスを充填することによって、雰囲気を制御するように構成されている。
【0057】
[0064] 制御雰囲気システム(170)は、一方側にシートブランク原材料ユニット(202)が、他方側に最終生成物収集ユニット(204)が備えられている。シートブランク原材料ユニット(202)は、プレスツール装置(100)にシートブランク(110)を提供するように構成され、最終生成物収集ユニット(204)は、プレスツール装置(100)からホットスタンプ構造部品(111)を受け取るように構成されている。
【0058】
[0065] 説明されている例において、制御雰囲気システム(170)はプレスツール装置(100)を収容している。筐体(172)はプレスツール装置(100)を収容し、雰囲気制御手段(176)は筐体(172)内の雰囲気を制御する。プレスツール装置(100)を収容している制御雰囲気システム(170)は、周りの雰囲気からプレスツール装置(100)を実質的に隔離する。別の例では、筐体(172)は部屋である。
【0059】
[0066] 別の例(図示せず)では、プレスツールチャンバ(118)を取り囲む下部本体部材(106)と上部本体部材(104)との間に制御雰囲気システム(170)を配置してもよい。制御雰囲気システム(170)は、周りの雰囲気からプレスツールチャンバ(118)を隔離するように構成されている。
【0060】
[0067] 双方の例において、筐体(172)及び少なくとも1つのドア(174)は、プラスチック、樹脂、木材、金属、合金、又は複合材料のうちいずれか1つから選択された材料から製造される。
【0061】
[0068] 説明されている例において、制御雰囲気システム(170)は、1つのドア(174)を有する筐体(172)を備える。あるいは、制御雰囲気システム(170)の筐体(172)は、限定なしで、2つ以上のドア(174)を有し得る。筐体(172)は少なくとも1つのスロット(175)を備える。説明されている例では、筐体(172)は2つのスロット(175)を備え、これらのスロット(175)のうち1つ(図6に示されている)はシートブランク(110)の挿入を容易にし、他のスロット(175)(図示せず)はホットスタンプ構造部品(111)の取り出しを容易にする。少なくとも1つのスロット(175)は、一度シートブランク(110)が挿入されたら又はホットスタンプ構造部品(111)が取り出されたらスロットを閉じるように手作業で又は自動的に制御される閉鎖要素(図示せず)が設けられている。説明されている例では、制御雰囲気システム(170)内に非接触パイロメータ(253)が配置されている。より具体的には、非接触パイロメータ(253)は、シートブランク(110)にアクセスできるように筐体(172)内の任意の場所に配置されている。
【0062】
[0069] 動作中、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)が、加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行する際、制御雰囲気システム(170)は筐体(172)内の雰囲気を制御する。ホットスタンプ構造部品(111)の成形中に雰囲気を制御することで、ホットスタンプ構造部品(111)上の酸化物の薄片の発生を抑制する。
【0063】
[0070] 複数のマニピュレータ(図示せず)を用いて、シートブランク(110)をシートブランク原材料ユニット(202)からプレスツール装置(100)へ移動させると共に、ホットスタンプ構造部品(111)をプレスツール装置(100)から最終生成物収集ユニット(204)へ移動させることができる。
【0064】
[0071] 図6を参照すると、シートブランク(110)からホットスタンプ構造部品(111)を製造する方法(300)が図示されている。ステップ(301)では、シートブランク原材料ユニット(202)からのシートブランク(110)を、筐体(172)に設けられたスロット(175)を介して、プレスツール装置(100)内の複数の電極(114)上へ移動させる。
【0065】
[0072] ステップ(302)では、制御雰囲気システム(170)の少なくとも1つのドア(174)を閉じて、雰囲気制御手段(176)によって筐体(172)内の雰囲気を制御する。
【0066】
[0073] ステップ(303)では、複数の電極(114)間に配置されたシートブランク(110)を、少なくとも1つのクランピングデバイス(130)によってクランプする。第1の空気圧シリンダ(130a)は、第3の電極(114c)を第1の電極(114a)に係合し、第2の空気圧シリンダ(130b)は、第4の電極(114d)を第2の電極(114b)に係合して、複数の電極(114)間にシートブランク(110)をクランプする。
【0067】
[0074] ステップ(304)では、電源(116)から複数の電極(114)に電力を供給することによって、シートブランク(110)を第1の所定の温度に加熱する。第1の所定の温度は、選択されたシートブランク(110)の材料に基づいて、約350℃~950℃の範囲である。説明されている例では、第1の所定の温度は約750℃~950℃の範囲である。より具体的には、第1の所定の温度はオーステナイト形成の温度範囲内である。説明されている例では、第1の所定の温度は900℃である。非接触パイロメータは、シートブランク(110)の表面温度を検出/監視し、この情報を、閉ループフィードバックシステム(252)を介して制御システム(251)に送信するように構成されている。
【0068】
[0075] ステップ(305)では、少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を後退させることにより、加熱されたシートブランク(110)のクランプを解除する。第1の空気圧シリンダ(130a)は、第1の電極(114a)に対して第3の電極(114c)を解放し、第2の空気圧シリンダ(130b)は、第2の電極(114b)に対して第4の電極(114d)を解放する。加熱されたシートブランク(110)は下部ダイ部材(122)上に載置されている。
【0069】
[0076] ステップ(306)では、プレスツール装置(100)の上部本体部材(104)を下部本体部材(106)に対して移動させる。ステップ(307)では、制御された雰囲気で、上部ダイ部材(120)及び下部ダイ部材(122)により、加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、ホットスタンプ構造部品(111)を形成する。
【0070】
[0077] 図8に、従来のプロセス(及びシステム)を用いて製造された従来技術のホットスタンプ構造部品が示され、図9に、開示されているプレスシステム(200)を用いて製造されたホットスタンプ構造部品(111)が示されている。双方の図から分かるように、制御雰囲気システム(170)を備えるプレスシステム(200)を用いて製造されたホットスタンプ構造部品(111)上では、酸化物の薄片は最小限に抑えられている/無くなっている。
【0071】
【表1】
【0072】
[0078] 図10に、従来技術のホットスタンプ構造部品及びホットスタンプ構造部品(111)の様々な部分の応力ひずみ曲線が示されている。これらの曲線から、開示されているプレスシステム(200)内で形成されたホットスタンプ構造部品(111)が、従来のプロセスで形成されたホットスタンプ構造部品と等しいか又はそれよりも良好な機械的特性及び微細構造的特性を有することが推測できる。
【0073】
[0079] 本発明は、利用する空間と投資が少なく、エネルギ効率が高いプレスシステム(200)に関する。開示されているプレスシステム(200)は、シートブランク(110)の迅速な加熱を行う加熱デバイス(102)を備える。制御雰囲気システム(170)を備えるプレスシステム(200)は、プレスツール装置(200)を取り囲む雰囲気を制御することにより、従来のプロセスに比べて酸化物の薄片を著しく低減させる。プレスツールチャンバ(118)内の迅速な加熱及び制御された雰囲気内でのホットスタンピングは、酸化物の薄片を減少させる/排除する。酸化物の薄片の減少はツール汚染を低減し、ツール汚染が最小限に抑えられる/無くなるので、各ストローク後にツールをクリーニングする必要が軽減し、これによって生産性が高くなる。更に、開示されているプレスシステム(200)内で形成されたホットスタンプ構造部品(111)は、従来のプロセスで形成された部品と等しいか又はそれよりも良好な機械的特性及び微細構造的特性を有する。酸化物の薄片が減少又は排除されるので、従来のプロセスで酸化物の薄片を除去するために必要であったショットブラスティング等の追加プロセスを除去することができる。
【0074】
[0080] 更に、本明細書で用いられる用語は、実施形態を記述することのみを目的としており、本開示を限定することは意図していない。上記に開示された特徴及び機能並びに他の特徴及び機能又はそれらの代替物のいくつかを、他のシステム又は用途に組み合わせてもよいことは認められよう。以下の特許請求の範囲によって包含される本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって、現時点では予期又は予想されない様々な代替物、変更、変形、又は改良を後に実施してもよい。
【0075】
[0081] 最初に提示された、また補正され得る特許請求項は、現在は予期又は予想されないもの、及び、例えば出願人/特許権所有者及び他の者から生じ得るものを含めて、本明細書に開示された実施形態及び教示の変形、代替物、変更、改良、均等物、及び実質的な均等物を包含する。
【0076】
[0082] 前述の記載は本発明の様々な実施形態を記載しているが、本発明の基本的範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態及び別の実施形態を考案できる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。本発明は、当業者に利用可能な情報及び知識と組み合わせた場合に当業者が本発明を作製及び使用することを可能とするために含まれる、記載されている実施形態、バージョン、又は例に限定されない。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御雰囲気システム(170)と、
ホットスタンプ構造部品(111)を製造するためのプレスツール装置(100)と、を備え、
前記プレスツール装置(100)は、
下部本体部材(106)と、
前記下部本体部材(106)に対応する上部本体部材(104)と、を備え、
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、相互に対して移動するように構成され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されたプレスツールチャンバ(118)と、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された上部ダイ部材(120)と下部ダイ部材(122)と、を備え、
前記上部ダイ部材(120)は、前記上部本体部材(104)に結合され、
前記下部ダイ部材(122)は、前記下部本体部材(106)に結合され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された加熱デバイス(102)を備え、
前記加熱デバイス(102)は、シートブランク(110)を加熱するように構成され、
前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)は、前記制御雰囲気システム(170)によって制御された前記雰囲気内で前記加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、前記ホットスタンプ構造部品(111)を形成するように構成されている、
プレスシステム(200)。
【請求項2】
前記ホットスタンプ構造部品(111)の形成中に前記雰囲気を制御することで、前記ホットスタンプ構造部品(111)上の酸化物の薄片の発生を抑制する、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項3】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記プレスツール装置(100)を収容している、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項4】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されている、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項5】
前記制御雰囲気システム(170)は、少なくとも1つのドア(174)を有する筐体(172)と雰囲気制御手段(176)とを備える、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項6】
前記筐体(172)は、前記プレスツール装置(100)を収容し、
前記雰囲気制御手段(176)は、前記筐体(172)内の前記雰囲気を制御する、請求項3又は5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項7】
前記筐体(172)は、部屋である、請求項6に記載のプレスシステム(200)。
【請求項8】
前記雰囲気制御手段(176)は、前記空気流量を制御することによって前記雰囲気を制御するように構成されている、請求項5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項9】
前記雰囲気制御手段(176)は、酸素含有量を低減させる任意の媒質を充填することによって前記雰囲気を制御するように構成され、
前記媒質は、固体媒質、液体媒質、又は気体媒質のうちいずれか1つである、請求項5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項10】
前記雰囲気制御手段(176)は、窒素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスのうちいずれか1つから選択された不活性ガスを充填することによって、前記雰囲気を制御するように構成されている、請求項5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項11】
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、機械的機構又は水圧式機構のいずれか1つによって相互に対して移動される、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項12】
前記筐体(172)は、前記プレスツールチャンバ(118)を収容し、
前記雰囲気制御手段(176)は、前記プレスツールチャンバ(118)内の前記雰囲気を制御する、請求項4又は5に記載のプレスシステム(200)。
【請求項13】
前記制御雰囲気システム(170)は、前記周りの雰囲気から前記プレスツールチャンバ(118)を隔離するように構成されている、請求項12に記載のプレスシステム(200)。
【請求項14】
前記プレスシステム(200)は、シートブランク原材料ユニット(202)及び最終生成物収集ユニット(204)を備える、請求項3に記載のプレスシステム(200)。
【請求項15】
前記制御雰囲気システム(170)は、一方側に前記シートブランク原材料ユニット(202)が、他方側に前記最終生成物収集ユニット(204)が備えられ、
前記シートブランク原材料ユニット(202)は、前記プレスツール装置(100)にシートブランク(110)を提供するように構成され、
前記最終生成物収集ユニット(204)は、前記プレスツール装置(100)から前記ホットスタンプ構造部品(111)を受け取るように構成されている、請求項3に記載のプレスシステム(200)。
【請求項16】
前記加熱デバイス(102)は、ジュール加熱原理を用いた抵抗加熱デバイスである、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項17】
前記加熱デバイス(102)は、電源(116)及び複数の電極(114)を備え、
前記複数の電極(114)は、第1の電極(114a)、第2の電極(114b)、第3の電極(114c)、及び第4の電極(114d)を含む、請求項16に記載のプレスシステム(200)。
【請求項18】
前記プレスツール装置(100)は、前記複数の電極(114)のうち少なくとも1つを選択的に係合又は解放するように構成された少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を備える、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項19】
前記プレスツール装置(100)は、第1の空気圧シリンダ(130a)及び第2の空気圧シリンダ(130b)を含む2つのクランピングデバイス(130)を備え、
前記第1の空気圧シリンダ(130a)は、前記第1の電極(114a)に対して前記第3の電極(114c)を選択的に係合又は解放するように構成され、
前記第2の空気圧シリンダ(130b)は、前記第2の電極(114b)に対して前記第4の電極(114d)を選択的に係合又は解放するように構成されている、請求項18に記載のプレスシステム(200)。
【請求項20】
前記複数の電極(114)は、銅電極である、請求項19に記載のプレスシステム(200)。
【請求項21】
前記シートブランク(110)は、コーティングされていないボロン鋼シートブランクである、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項22】
前記シートブランク(110)は、厚さが0.6mm~3.0mmの範囲である、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項23】
前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)は、所定の温度で動作するように構成されている、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項24】
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、前記水圧式機構によって相互に対して移動される、請求項11に記載のプレスシステム(200)。
【請求項25】
前記加熱デバイス(102)は、誘導加熱デバイスである、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項26】
前記プレスシステム(200)は、制御システム(251)及び閉ループフィードバックシステム(252)を備え、
前記閉ループフィードバックシステム(252)は、前記制御雰囲気システム(170)及び前記プレスツール装置(100)に関する前記情報を監視し、前記情報を、前記プレスシステム(200)を制御するように構成された前記制御システム(251)に伝達するように構成されている、請求項1に記載のプレスシステム(200)。
【請求項27】
プレスシステム(200)内でシートブランク(110)からホットスタンプ構造部品(111)を製造する方法(300)であって、
前記プレスシステム(200)は、
少なくとも1つのドア(174)を有する筐体(172)と雰囲気制御手段(176)とを含む制御雰囲気システム(170)と、
プレスツール装置(100)と、を備え、
前記プレスツール装置(100)は、
下部本体部材(106)と、
前記下部本体部材(106)に対応する上部本体部材(104)と、を備え、
前記上部本体部材(104)及び前記下部本体部材(106)は、相互に対して移動するように構成され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記下部本体部材(106)と前記上部本体部材(104)との間に配置されたプレスツールチャンバ(118)と、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された上部ダイ部材(120)と下部ダイ部材(122)と、を備え、
前記上部ダイ部材(120)は、前記上部本体部材(104)に結合され、
前記下部ダイ部材(122)は、前記下部本体部材(106)に結合され、
前記プレスツール装置(100)は更に、
前記プレスツールチャンバ(118)内に配置された加熱デバイス(102)を備え、
前記加熱デバイス(102)は、電源(116)に結合された複数の電極(114)を備え、
前記方法(300)は、
前記シートブランク(110)を前記複数の電極(114)上に移動させることと、
前記筐体(172)の前記少なくとも1つのドア(174)を閉じて、前記雰囲気制御手段(176)によって前記筐体(172)内の前記雰囲気を制御することと、
前記少なくとも1つのクランピングデバイス(130)によって前記複数の電極(114)間に前記シートブランク(110)をクランプすることと、
前記電源(116)から前記複数の電極(114)に電力を供給することによって、前記シートブランク(110)を第1の所定の温度に加熱することと、
前記少なくとも1つのクランピングデバイス(130)を後退させることによって、前記加熱されたシートブランク(110)のクランプを解除することと、
前記下部本体部材(106)に対して前記上部本体部材(104)を移動させることと、
制御された雰囲気内で、前記上部ダイ部材(120)及び前記下部ダイ部材(122)により、前記加熱されたシートブランク(110)にスタンピング及びダイクエンチによるホットブランキングを実行して、前記ホットスタンプ構造部品(111)を形成することと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記第1の所定の温度は、約350℃~950℃の範囲である、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項29】
前記第1の所定の温度は、約750℃~950℃の範囲である、請求項28に記載の方法(300)。
【請求項30】
前記第1の所定の温度は、900℃である、請求項29に記載の方法(300)。
【請求項31】
前記ホットスタンプ構造部品(111)の形成中に前記雰囲気を制御することで、前記ホットスタンプ構造部品(111)上の酸化物の薄片の発生を抑制し、酸化物の薄片の抑制はツール汚染及びツール摩耗を低減する、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項32】
前記プレスシステム(200)は、前記シートブランク(110)の前記温度を検出するため非接触パイロメータ(253)を備える、請求項27に記載の方法(300)。
【請求項33】
前記プレスシステム(200)は、制御システム(251)及び閉ループフィードバックシステム(252)を備え、
前記閉ループフィードバックシステム(252)は、前記制御雰囲気システム(170)及び前記プレスツール装置(100)に関する前記情報を監視し、前記情報を、前記プレスシステム(200)を制御するように構成された前記制御システム(251)に伝達するように構成されている、請求27に記載の方法(300)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】追加
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】