(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】プラズマ触媒化学変換のための等温反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
B01J19/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514358
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 IB2022058410
(87)【国際公開番号】W WO2023037258
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524080232
【氏名又は名称】エネルゴ
【氏名又は名称原語表記】ENERGO
【住所又は居所原語表記】121 rue de Chanzy,59260 HELLEMES-LILLE France
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ピエピオラ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA45
4G075BA08
4G075BA10
4G075BD10
4G075CA02
4G075CA47
4G075CA54
4G075DA02
4G075EA06
4G075EB41
4G075EC21
4G075FC11
4G075FC15
(57)【要約】
本発明は、誘電体バリア放電プラズマ触媒作用のための反応器であって、このハウジング内部に取り外し可能に取り付けられた複数のDBDセル(C1,C2,C3...)を受け入れることができる反応器ハウジング(B)を備える反応器に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定支持素子(31,33;67,69)と、前記支持素子(31,33;67,69)上にこれらの支持素子を分解することなく設置するのに適した複数のDBDセル(C1,C2,C3...)と、を備える、特にプラズマ触媒作用による誘電体バリア放電(DBD)反応器のためのハウジング。
【請求項2】
試薬流体用の入口(45)と、生成物流体用の出口(47)と、熱伝達流体用の入口(49)および出口(51)と、を備え、前記支持手段が、前記DBDセル(C1,C2,C3...)を取り外し可能に受け入れることができるボア(35,37)を備える2つのプレート(31,33)を備える、請求項1に記載のハウジング(B)。
【請求項3】
前記入口(45,49)および前記出口(47,51)が、前記試薬/生成物流体および前記熱伝達流体が前記DBDセル(C1,C2,C3...)の軸に実質的に並びにそれぞれ平行および垂直な方向(Fr,Fc)に流れることを可能にするように、配置される、請求項2に記載のハウジング(B)。
【請求項4】
前記ハウジング(B)が、前記熱伝達流体循環区画内に、前記DBDセル(C1,C2,C3...)を互いに隔てる距離と実質的に等しい距離だけ前記DBDセル(C1,C2,C3...)から隔てるように配置されたバッフル(57)を備える、請求項2または3のいずれか一項に記載のハウジング(B)。
【請求項5】
試薬流体入口フィーダ(67)と、生成物流体出口フィーダ(69)と、を備え、これらのフィーダが、前記DBDセル(C1,C2,C3...)に接続するための手段を備え、これらのフィーダ(67,69)が、前記DBDセルを支持するための手段を形成し、前記DBDセルを電気的に加熱するための手段(75)を備える、請求項1に記載のハウジング(B)。
【請求項6】
前記電気加熱手段が、各DBDセル(C1,C2,C3...)を取り囲む加熱スリーブ(75)を備える、請求項5に記載のハウジング(B)。
【請求項7】
前記支持手段(31,33;67,69)が、前記DBDセル(C1,C2,C3...)のための電力供給グランドを形成する、請求項2~6のいずれか一項に記載のハウジング(B)。
【請求項8】
・電気および熱伝導性管(15)と、
・絶縁誘電材料で作られた上側プラグ(9)によって前記管(15)の内部に保持された導電性素子(1)と、
・前記導電性素子(1)に電気的に接続されたプラズマ発生電極(5)と、
・前記管(15)の他端を閉鎖する下側プラグ(11)と、
・試薬流体および生成物流体を循環させるためのチャネル(17,23)であって、前記セルの上部および下部にそれぞれ開口するチャネルと、
・前記導電性素子(1)および前記プラズマ発生電極(5)の周りに、および/または前記電気および熱伝導性管(15)の内壁に対して配置された、誘電材料(7,27)で作られた少なくとも1つの管状素子と、
を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のハウジング用の取り外し可能なDBDセル(C)。
【請求項9】
前記DBDセル(C1,C2,C3...)のための前記電力供給グランドを形成する前記支持手段(31,33;67,69)と取り外し可能な方法で協働することができる、導電性支持体(13)と、前記電気および熱伝導性管(15)に接続された下側プラグ(11)とを備える、請求項7に記載のハウジングのための請求項8に記載のDBDセル(C)。
【請求項10】
前記プラズマ発生電極(5)が、前記導電性素子(1)の直径よりも大きい直径を有し、シリンダ、ワイヤブラシ、ばね、誘電材料(7)で作られた前記少なくとも1つの管状素子の内側に堆積された金属導電層を含む群から選択される、請求項8または9のいずれか一項に記載のDBDセル(C)。
【請求項11】
前記プラズマ発生電極(5)に対向して、前記電気および熱伝導性管(15)内部に配置された触媒(21)が装填され、前記上側プラグ(9)と前記下側プラグ(11)との間に配置された誘電体保持材料(19,25)の2つの部分によってこの管の内部の適切な場所に保持され、前記触媒(21)および前記誘電材料が、処理される試薬流体が循環することを可能にする孔またはダクトを有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の取り外し可能なDBDセル(C)。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の取り外し可能なDBDセル(C1,C2,C3...)が取り付けられた、請求項2~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのハウジング(B)を備える反応器。
【請求項13】
前記取り外し可能なDBDセル(C1,C2,C3...)が、プラズマ発生電力供給(38)によって相互接続されている、請求項12に記載の反応器。
【請求項14】
以下を含む群から選択される化学反応を実施するための、請求項12または13のいずれか一項に記載の反応器の使用:
【表3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学変換の分野に関し、より具体的には、誘電体バリア放電(DBD)プラズマ技術を使用して、気体形態の分子試薬を気体または液体形態の分子生成物に化学変換するための等温反応器に関し、必要に応じて触媒を使用し、プラズマ触媒作用による化学変換を可能にすることができる。
【背景技術】
【0002】
工業用気体化学合成技術は、熱不均一触媒作用を使用する。これらの技術は、触媒活性化を促進し、熱力学的平衡をシフトさせ、魅力的な転化率を保証するために高い気体圧および温度を必要とする。これらの技術に関与する触媒体積は大きく、処理量対触媒体積比は1時間当たり数千であり、大きな反応器を必要とする。発熱反応または吸熱反応の場合、これらの反応器の温度制御は決定的であり、これにより、そのような反応器の制御がより複雑になり、その製造コストが増加する。更に、不均一触媒作用には良好な気体品質が必要であり、これは、反応器の上流に精製装置が必要であることを意味する。この装置を使用することは、高い製造コストを伴う。
【0003】
上述の温度の問題を解消する低温プラズマ化学合成技術を開発するために、いくつかのプロジェクトが実施されてきた。これらの技術の中で、特に不均一触媒(プラズマ触媒作用)の存在と組み合わせた誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge、DBD)が特に有望であることが判明している。
【0004】
様々な実験用反応器が試験されてきたが、それらの使用の容易さは工業的使用に適合しないことが証明されている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、特に、工業規模でDBDプラズマ触媒作用を実施するための解決策を提案することである。
【0006】
本発明のこの目的は、固定支持素子と、前記支持素子上にこれらの支持素子を分解することなく設置するのに適した複数のDBDセルと、を備える、特にプラズマ触媒作用による誘電体バリア放電反応器のためのハウジングによって達成される。
【0007】
したがって、これらの取り外し可能なセルは、最小限の労力でハウジングに設置することができ、これは、それらがハウジングの外側で調製され、次いで反応器内での化学合成に使用される場合にハウジングに簡単に設置され得ることを意味する。
【0008】
メンテナンスが必要な場合、セルはハウジングから簡単に取り外され、複雑な解体作業を行うことなくセルのそれぞれに対して作業することが容易になる。
【0009】
したがって、このハウジングは、工業的状況における反応器での使用に完全に適合する。
【0010】
本発明の他の任意選択の特徴によれば、単独または組み合わせて考慮すると、以下のとおりである:
【0011】
・前記ハウジングは、前記DBDセルを受け入れることができるボアを備える2つのプレートと、試薬流体用の入口と、生成物流体用の出口と、熱伝達流体用の入口および出口と、を備え、前記支持手段は、前記DBDセルを取り外し可能に受け入れることができるボアを備える2つのプレートを備え、反応器のこの非常に単純な設計は、反応器の動作に関与する様々な流体が自由に流れることを可能にする;
【0012】
・前記入口および出口は、前記試薬/生成物流体および前記熱伝達流体が前記DBDセルの軸に実質的に平行および垂直な方向に流れることを可能にするように配置され、この配置は、化学反応が発熱性(DBDセルから熱伝達流体への熱伝達)であろうと吸熱性(熱伝達流体からDBDセルへの熱伝達)であろうと、DBDセルと熱伝達流体との間の最適な熱交換を可能にする;
【0013】
・前記ハウジングは、前記熱伝達流体循環区画内に、前記DBDセルを互いに隔てる距離に実質的に等しい距離だけ前記セルDBDから隔てるように配置されたバッフルを備え、そのような配置は、熱伝達流体の速度および圧力場が反応器内に実質的に均一に分配されることを確実にする;
【0014】
・前記ハウジングは、試薬流体入口フィーダ、生成物流体出口フィーダを備え、これらのフィーダには、前記DBDセルに接続するための手段も備え、これらのフィーダは、前記DBDセルを支持するための前記手段を形成し、前記DBDセルを電気的に加熱するための手段も備え、電気的加熱を伴うこの実施形態は、吸熱化学反応、すなわち入熱を必要とするものに適している;
【0015】
・前記電気加熱手段は、各DBDセルを取り囲む加熱スリーブを備える;
【0016】
・前記支持手段は、前記DBDセルの電源グランドを形成し、このようにして、DBDセルは、任意の電気配線なしで、セルを支持手段内に配置するだけでハウジングの電気グランドに接続することができる。
【0017】
本発明はまた、上記によるハウジング用の取り外し可能なDBDセルに関し、以下:
・電気および熱伝導性管と、
・絶縁誘電材料で作られた上側プラグによって前記管の内部に保持された導電性素子と、
・前記導電性素子に電気的に接続されたプラズマ発生電極と、
・前記管の他端を閉鎖する下側プラグと、
・前記セルの上部および下部にそれぞれ開口する、試薬流体および生成物流体を循環させるためのチャネルと、
・前記導電性素子および前記プラズマ発生電極の周りに、および/または前記電気および熱伝導性管の内壁に対して配置された、誘電材料で作られた少なくとも1つの管状素子と、
を含む。
【0018】
これらの特徴は、特に単純な設計のDBDセルをもたらし、これは前述のハウジングに容易に設置および取り外しすることができる。
【0019】
この反応性セルの他の任意選択の特徴によれば、単独または組み合わせて考慮すると、以下のとおりである:
【0020】
・このセルは、前記DBDセル用の電源グランドを形成する支持手段と取り外し可能に協働することができる、導電性支持体と、前記電気および熱伝導性管に接続された下側プラグとを備える;
【0021】
・前記プラズマ発生電極は、前記導電性素子の直径よりも大きい直径を有し、シリンダ、ワイヤブラシ、ばね、誘電材料で作られた前記少なくとも1つの管状素子の内側に堆積された金属導電層を含む群から選択され、したがって、そのようなプラズマ発生電極は、一般に利用可能な素子を用いて非常に容易かつ低コストで製造することができる;
【0022】
・このセルには、前記プラズマ発生電極に対向して前記電気および熱伝導性管の内部に配置された触媒が装填され、前記上側プラグと前記下側プラグとの間に配置された誘電体保持材料の2つの部分によってこの管の内部の適所に保持され、前記触媒および前記誘電材料は、試薬流体が処理されることを可能にする孔またはダクトを有し、そのような配置は、触媒を電気および熱伝導性管の内部に保持し、それを交換することを非常に容易にする。
【0023】
本発明はまた、上記による取り外し可能なDBDセルが取り付けられた少なくとも1つのハウジングを備える上記による反応器に関し、DBDセルが並列に設置されたこのような反応器は、大量の試薬流体の流れを処理することを可能にし、これにより、工業的状況での使用に特に適したものになる。
【0024】
この反応器の取り外し可能なDBDセルは、好ましくは、共通のプラズマ発生電源によって相互接続される。
【0025】
本発明はまた、以下を含む群から選択される化学反応を実施するためのそのような反応器の使用に関する。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、純粋に例示的かつ非限定的であり、添付の図面を参照して読まれるべきである以下の説明から明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、電気および熱伝導性管と、電極のプラズマ放電ゾーン上の単一の内部誘電材料とを備える、本発明の一実施形態による取り外し可能なDBDセルを軸方向断面で概略的に示す。
【
図2】
図2は、電気および熱伝導性管と、電極のプラズマ放電ゾーンおよび管の内部にそれぞれ配置された2つの誘電材料とを備える、本発明の別の実施形態による取り外し可能なDBDセルを軸方向断面で概略的に示す。
【
図3】
図3は、電気および熱伝導性管と、管の内部に単一の誘電材料とを備える、本発明の更に別の実施形態による取り外し可能なDBDセルを軸方向断面で概略的に示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による、熱伝達流体の循環を伴う反応器のハウジングの2つのプレートの間に固定された取り外し可能なDBDセルを軸方向断面で概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による、DBDセルの軸方向断面において、空きスペースを有する反応器ハウジングの2つのプレート、挿入されている取り外し可能なDBDセル、および固定された取り外し可能なDBDセルを、概略的に示す。
【
図6】
図6は、DBDセルの軸方向断面において、高電圧コネクタネットワークによって相互接続された電極を有する反応器ハウジングのプレートに固定された3つの取り外し可能なDBDセルを概略的に示す。
【
図7】
図7は、本発明による取り外し可能なDBDセルを斜視図および透明効果で概略的に示す。
【
図8】
図8は、本発明による反応器ハウジングを概略的に斜視図で示しており、プレート上の取り外し可能なDBDセルの固定点の配置を観察するために、上側カバおよび下側カバが取り外されている。
【
図9】
図9は、本発明による反応器ハウジングを概略的に斜視図で示し、その上側カバおよび下側カバは、試薬/生成物および熱伝達流体用の入口ダクトおよび出口ダクトの一実施形態を観察するために設置されている。
【
図10】
図10は、動作中の本発明による反応器アセンブリの、反応物/生成物流体の入口ダクトおよび出口ダクトの軸線に沿った、垂直断面を概略的に示しており、流速の変動、したがって試薬流体の入口ダクトから出口ダクトを介した生成物流体の出口までの取り外し可能なDBDセルを通る反応物および生成物流体の各DBDセル間の正確な分配を示している。
【
図11】
図11は、
図10のものと同様の垂直断面を概略的に示しており、取り外し可能なDBDセルを通って試薬流体用の入口ダクトから出口ダクトを介して生成物流体用の出口に流れるときの試薬流体の圧力の変化を示している。
【
図12】
図12は、取り外し可能なDBDセルの長手方向チャネルネットワーク間の熱伝達流体の正確な分配を可能にする内部バッフルの配置を観察するために上側プレートが取り外された、本発明による反応器ハウジングの上面図、すなわち
図9に示す方向Frである。
【
図13】
図13は、動作中の反応器の上面図であり、流速の変動、したがって熱伝達流体用の入口ダクトから熱伝達流体用の出口ダクトへの取り外し可能なDBDセルの周りの熱伝達流体の正確な分配を示す。
【
図14】
図14は、
図13と同様に、熱伝達流体用の入口ダクトから熱伝達流体用の出口ダクトまでの取り外し可能なDBDセルの周りの熱伝達流体の温度の変化を示す。
【
図15】
図15は、
図13および
図14と同様に、熱伝達流体用の入口ダクトから熱伝達流体用の出口ダクトまでの取り外し可能なDBDセルの周りの熱伝達流体の圧力の変化を示す。
【
図16】
図16は、吸熱化学反応に適しており、DBDセルを電気的に加熱するための手段が取り付けられている、本発明の反応器ハウジングの別の実施形態の断面図を示す。
【0027】
明確にするために、同一または類似の要素は、すべての図において同一または類似の参照番号を有する。
【0028】
「上側」および「下側」という用語は以下で使用される。これらの用語は、これらの図が示されているページの上端および下端に対する図の向きに関連してのみ理解されるべきである。
【0029】
定義
【0030】
本発明において、「DBD-誘電体バリア放電」という用語は、1つまたは複数の誘電素子によって分離された2つの電気的導電性素子の間に生成される放電を表す。
【0031】
本発明において、「DBDセル」という用語は、反応器のプレートに固定される取り外し可能なセルに組み立てられた、電極、カソード、誘電材料、電気コネクタ、固定プラグの完全なアセンブリを表し、必ずしもそうである必要はないが、好ましくは1つまたは複数の触媒および1つまたは複数の触媒保持材料を有する。
【0032】
本発明において、「試薬流体」という用語は、反応器のDBDセルを通過する際に、特にプラズマ触媒作用によって化学反応を受ける分子を表す。
【0033】
本発明において、「生成物流体」という用語は、取り外し可能なDBDセル内部の特にプラズマ触媒作用から生じる分子を表す。
【0034】
本発明において、「熱伝達流体」という用語は、2つの温度源の間で熱を輸送するのに適した流体を表す。
【0035】
本発明において、「バッフル」という用語は、DBDセルの周りに熱伝達流体を均一に分配するために使用される壁を表す。
【0036】
本発明において、「誘電体」という用語は、電極に関連する高電圧ネットワークと、反応器を介してグランドに接続された電気および熱伝導性管との間の電気絶縁を提供する電気絶縁材料を表す。この種の電気絶縁材料は、電極とグランドとの間の電荷の蓄積を絶縁破壊電圧まで促進してプラズマを得ることにより、誘電体バリア放電(DBD)によってプラズマを発生させるために、DBDセルの内部でも使用される。
【0037】
本発明において、「触媒」という用語は、試薬流体の化学反応を促進する物質を表す。
【0038】
本発明において、「電極」という用語は、DBDセルに挿入され、DBDセルを高電圧発生器のソースに一緒にリンクする高電圧ネットワークに接続された導電性材料で作られた素子を表す。
【0039】
本発明において、「触媒保持材料」という用語は、DBDセルに挿入された誘電材料で作られた素子を表し、DBDセルは、プラズマ放電ゾーン内に触媒を含み、同時に試薬流体がそこを通って流れることを可能にする。
【0040】
もちろん、本発明は、例として上述されている。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な代替実施形態を作成することができることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
取り外し可能なDBDセル
【0042】
図1は、単一の誘電素子を有するDBDプラズマ触媒作用を介して化学変換を行うことを可能にする取り外し可能なDBDセルCを概略的に示す。このセルは、セルを反応器の高電圧ネットワークに接続するための高電圧コネクタ3と、高電圧コネクタ3をプラズマ発生電極5に接続して保持するための導電性支持体4とを備える導電性素子1を備える。
【0043】
導電性素子1は、DBDセルの軸方向を示す。
【0044】
直径が導電性支持体4よりも大きいプラズマ発生電極5は、この電極5に沿って位置するゾーンにDBD放電を集中させるために使用される。
【0045】
このプラズマ発生電極5は、ブラシまたはパイプブラシのような金属剛毛を含むことができる。或いは、金属ばねまたは金属シリンダの形態であってもよい。
【0046】
導電性素子1は、プラズマ発生電極5がその内壁に対して支持され、DBDが発生することを可能にする、誘電材料7で作られた管状素子の内部に配置される。この誘電素子7は、例えば、ガラス、セラミック、アルミナ等で構成することができる。
【0047】
或いは、おそらくより好ましくは、誘電材料は、燃焼機関用のスパークプラグのように、導電性素子1およびプラズマ発生電極5の全体にわたって成形され、この誘電材料は、寄生プラズマ現象の出現を回避するように、すべての空きスペースを充填することが提供され得る。
【0048】
1つの可能な代替案によれば、プラズマ発生電極は、誘電材料7からなる管状素子の内側に堆積された導電性金属層によって形成することができる。
【0049】
導電性素子1は、上側プラグ9と下側プラグ11との間に保持されている。
上側プラグ9は、ガラスやセラミック等の絶縁誘電材料からなり、導電性素子1(高電圧コネクタ3を含む)を保持してセンタリングするために用いられる。下側プラグ11は、金属もしくは金属合金、またはセラミック等の材料からなる。セラミックよりも機械加工が容易な金属合金の場合、316Lステンレス鋼を使用することができる。
【0050】
上側プラグ9は、上側金属支持体13に固定され、それ自体は電気および熱伝導性管15に固定され、好ましくは金属または金属合金で作られた取り外し可能なDBDセルの円筒状外壁を画定する。
【0051】
上側プラグ9は、試薬流体が循環することを可能にする1つまたは複数の有孔チャネル17または別の多孔質構造を通って試薬流体が循環することを可能にする。上側プラグ9はまた、管15の上部に配置された材料を保持する触媒21の上部19を収容するために使用される。
【0052】
下側プラグ11は、試薬流体が1つまたは複数の有孔チャネル23または試薬流体が循環することを可能にする別の多孔質構造を通って循環することを可能にする。下側プラグ11はまた、管15の下部に配置された触媒保持材料21の下部25を収容するために使用される。
【0053】
材料を保持する触媒21の上部19および材料を保持する触媒21の下部25は、プラズマ発生電極5に対向するDBDプラズマ放電ゾーン内に触媒21を保持する。
【0054】
触媒保持材料の上部19および下部25並びに触媒21は、それらの透過性のおかげで試薬流体が通過することを可能にする。それらは、電気および熱伝導性管15の内部に収容され、上側プラグ9および下側プラグ11によって保持される。
【0055】
触媒保持材料は、典型的には、ガラスもしくは石英もしくはセラミックビーズ、または焼結ガラス材料を含むことができ、その直径は、触媒粒子がビーズ間空間に逃げるのを防ぐように選択される。例の壁により、0.5mmの直径を有する触媒粒子の場合、1mmの直径を有する保持材料のビーズが選択される。
【0056】
プラズマ発生電極5の反対側のDBDプラズマ放電ゾーンに位置する触媒21は、試薬流体の化学変換を行うことを可能にする。
【0057】
例として、これに限られるわけではないが、電気および熱伝導性管15は、3cm、好ましくは2cmの導電性素子1のプラズマ発生電極5の直径を超えない直径を有することができる。この管15の長さは、更に典型的には30cm未満である。
【0058】
図2は、本発明による取り外し可能なDBDセルの別の実施形態を示す。
【0059】
この実施形態は、保持材料および触媒21の2つの部分19、25を含む第二の管状誘電素子27が、電気および熱伝導性管15の内壁に対して配置されている点で、先の実施形態とは異なる。
【0060】
したがって、この実施形態は、2つの誘電素子7、27を用いたDBDプラズマ触媒作用によって化学変換を行うことを可能にする。
【0061】
図3は、本発明による取り外し可能なDBDセルの更に別の実施形態を示す。
【0062】
この実施形態は、導電性素子1がもはや管状誘電素子7の内部に配置されていないという点で先の実施形態とは異なる。
導電性支持体4のみが誘電材料で被覆されており、プラズマ発生電極5と下側プラグ11との間には誘電材料からなるセンタリング素子29が介在している。
ただし、本実施形態では、プラズマ発生電極5の周囲に誘電素子は、存在しない。
【0063】
プラズマ発生電極5がむき出しである
図3に示される実施形態は、破壊電圧を低下させ、プラズマ発生電極5と触媒セルの外側との間の熱交換を促進し、一体化され得る触媒21の量を増加させ、全ての寸法は等しい。
【0064】
図1~
図3に示す実施形態では、管15の内部に配置された触媒21があったが、本発明はまた、DBDが触媒なしで実施される特定の用途にも関する。
【0065】
図4は、本発明による反応器ハウジングの上側プレート31および下側プレート33に固定された、例えば上記の第一の実施形態による取り外し可能なDBDセルCを概略的に示す。
【0066】
固定支持素子を形成するプレート31および33は、例えば、316Lグレードのステンレス鋼で作ることができ、複数のDBDセルCが互いに平行に取り外し可能に配置されることを可能にするために複数の場所に穿孔される。試薬流体は、
図4の矢印Frによって示されるように、取り外し可能なDBDセルCを通って上から下へと流れ、一方で熱伝達流体は、矢印Fcによって示されるように、DBDセルの電気および熱伝導性管15の周りを、2つのプレート31および33の間を流れる。熱伝達流体の循環は、等温反応器が動作することを可能にする。
【0067】
取り外し可能なDBDセルは、熱伝達流体が排出されるときに反応器のハウジングのプレート31、33上に設置される。
図5は、反応器のハウジングの上側プレート31と下側プレート33との間のDBDセルC1、C2の設置を概略的に示す。
図5の左側には空きスペースがあり、このスペースは、反応器のハウジングの上側プレート31および下側プレート33にそれぞれ形成された2つのボア35、37によって形成されている。
図5の中央では、取り外し可能なDBDセルC1が空きスペースに挿入されている。
図5の右側には、取り外し可能なDBDセルC2が固定されており、各セルCの金属支持体13は、上側プレート31の対応するボア35内に保持され、各セルCの下側プラグ11は、下側プレート33の対応するボア37内に保持される。
【0068】
図6は、導電性素子1の電気的相互接続を概略的に示す。すべての取り外し可能なDBDセルC1、C2、C3...が2つのプレート31と33との間に設置されると、それらの導電性素子1は、電気ケーブル38のネットワークを介して高電圧ネットワークに接続される。
【0069】
上記の説明を読むことから理解され得るように、取り外し可能なDBDセルCは、移動される前に、プレート31、33を分解することなく、DBD反応器のハウジング内に容易に設置される前に、専用の場所で調製および組み立てられ得る。
それらはまた、容易に維持および交換することができる。電気および熱伝導性管15は、等温反応器の熱流を交換することを可能にする。
【0070】
各取り外し可能なDBDセルCの導電性素子1は、これらのセルのアノードを構成し、カソードは、上側金属支持体13を介して反応器のハウジングBのグランドに電気的に接続されたこれらのセルの電気および熱伝導性管15と、それ自体がDBDセルの電源グランドを形成するプレート31および33に電気的に接続された下側電気および熱伝導性プラグ11とで構成される。
【0071】
等温プラズマ触媒反応変換反応器
【0072】
その1つが
図7に斜視図で示されている取り外し可能なDBDセルCは、
図8に概略的に示されているように等温反応器ハウジングB内で使用される。
DBDセルCは、上側プレート31のボア35およびハウジングBの下側プレートの対応するボア(
図8には図示せず)に設置されることによって並列化される。
【0073】
電気ケーブル38のネットワークに密封式に接続された高電圧ソケット(図示せず)は、反応器内で実施される反応の作用に応じて、所望の電圧、周波数、および電力の信号を取り外し可能なDBDセルに供給するために使用される。
【0074】
ハウジングBの上側フランジ41および下側フランジ43にねじ込まれたカバ39、40によって密封されると、反応器が得られ、以下を可能にする:
・一方では、ハウジング内に配置されたDBDセル内の試薬流体が、
図9~
図11に示す主方向Frに、試薬流体用の入口45と生成物流体用の出口47との間を通過し(別の可能な代替形態によれば、入口45および出口47は、ハウジングBの側面に置かれ得る)、
・一方、
図9および
図12~
図15に示す主方向Fcにおいて、試薬流体と接触することのないDBDセルの周りの熱伝達流体の通過は、反応器ハウジングの上側プレート31と下側プレート33との間、熱伝達流体用の入口49と出口51との間に位置する空間内で行われる。
【0075】
試薬流体の分配
【0076】
本発明による反応器は、互いに平行に配置された1つまたは複数のDBDセルの使用を可能にし、主に取り外し可能なDBDセルの様々な素子を通る試薬流体の通過によって誘発される圧力降下のおかげで、試薬流体がセル間で均等に分配されることを保証する。圧力降下は、流体の運動エネルギに起因して入口ダクト45内の流体の初期速度によって決定される優先経路を回避することを可能にし、代わりにすべてのセルに流体を分配することを可能にし、各セル内の均一な流れは、各セル内の流量と圧力降下との間のバランスによって確立される。
【0077】
言い換えれば、試薬流体の流れ専用の反応器の区画は、流体が反応器の出口に流れるDBDセルのネットワークを含み、触媒の存在によって誘発される各セルの圧力降下により、流体流量と関連する圧力降下との間の平衡現象のために、並列に配置された各セル内の試薬流体の均一な分配が可能になる。
【0078】
図10は、本発明による反応器の垂直断面、すなわち
図9に示す平面P1に沿った断面を概略的に示しており、速度53、およびそれぞれの圧力降下によるすべてのDBDセルCの入口45と出口47との間の試薬流体の均一な分配を示している。
【0079】
図11は、それぞれの圧力降下のおかげで、すべてのDBDセルCにおける入口45と出口47との間のアイソバー55および試薬流体の均一な分配を示す。
【0080】
多数のDBDセルを使用するときの共振現象を回避するために、試薬流体の均一な分配に影響を及ぼすことなく、反応器の片側により多くのセルでセルの非対称ネットワークを設定することができる。
【0081】
熱伝達流体の分配
【0082】
本発明による反応器は、互いに平行に配置された1つまたは複数のDBDセルの使用を可能にする。
【0083】
熱伝達流体の流れ専用の反応器の区画は、熱伝達流体が全てのセルにわたって均等に分配されることを確実にする壁の配置を含む。より具体的には、熱伝達流体が並列セルのネットワークを通過することを確実にするためにバッフルが設けられる。
【0084】
バッフルは、理想的には、DBDセルを互いに隔てる距離と同等のDBDセルからの距離に位置する。バッフルはまた、任意の優先経路を回避するためにセルネットワークの形状を再現する。
【0085】
図12は、理想的にはDBDセルCのネットワークに沿って位置するバッフル57が存在する反応器ハウジングBの上面図を概略的に示す。熱伝達流体は、DBDセルCのネットワークを通って入口49と出口51との間、およびハウジングBの側壁59とプレート31、33との間を流れる。
【0086】
DBDセルCおよびバッフル57は、好ましくは、
図12に示すように、ほぼ六角形の形状を有する熱伝達流体を循環させるためのチャネルのネットワークを画定するように配置され、これらのチャネルは、DBDセルCの軸に実質的に垂直な方向に延びる。
【0087】
図13は、入口49と、出口51と、バッフル57との間のすべてのセルCのネットワークにおける熱伝達流体の速度61を示しており、この図に示すように、この速度は、反応器のハウジングBによって画定される容積内に実質的に均一に分配されている。
【0088】
図14は、入口49と、出口51と、バッフル57との間のすべてのセルCのネットワークにおける熱伝達流体の温度勾配62を示す。
【0089】
図15は、入口49、出口51、およびバッフル57の間のすべてのセルCのネットワークにおける熱伝達流体の圧力勾配63を示す。
【0090】
試薬および生成物流体並びに熱伝達流体の流れは、反応器の入口および出口の配置によって影響されず、むしろ熱伝達流体のためのバッフルの配置および試薬および生成物流体のための圧力降下によって影響を受ける(均一な分配を可能にする)。
【0091】
電気的加熱の実施形態
【0092】
吸熱化学反応の場合、DBDセルは、典型的には数百セ氏温度まで加熱される必要があり、この場合、油などの熱伝達流体の使用は適切ではない。
【0093】
したがって、DBDセルを電気的に加熱するための解決策が考えられ、添付の
図16~
図18に示されている。
【0094】
これらの図に示すように、ハウジングBは、試薬流体供給フィーダ67と、生成物流体出口フィーダ69と、を備え、これらのフィーダは導電性である。
【0095】
これらのフィーダ67、69は、各セルの上側支持体13および下側プラグ11にそれぞれ配置された導電性入口71および出口73ダクトによって、DBDセルC1、C2、C3...の各々にそれぞれ接続される。
【0096】
SwagelokまたはFitokの商標名で販売されているコネクタなどの接続手段を使用して、各DBDセルC1、C2、C3...の入口71および出口73ダクトをそれぞれ供給フィーダ67および出口69フィーダに取り外し可能に接続する。
【0097】
熱絶縁された電気加熱スリーブ75は、各DBDセルを取り囲み、電気ケーブル77によって電力供給される。これらの加熱スリーブ75の温度を制御するために、熱調節器および熱電対が使用される。
【0098】
この実施形態では、供給フィーダ67および出口フィーダ69は、DBDセルC1、C2、C3...の支持素子を形成する。
【0099】
これらの導電性支持素子は、各セルの導電性入口71および出口73ダクトを介してそれらに接続されると、これらのDBDセルの電源グランドを形成し、それ自体は各セルの電気および熱伝導性管15に電気的に接続される。
【0100】
この実施形態は、試薬流体がDBDセル全体に均一に分配されることを保証し、個々の加熱スリーブおよびハウジング内の換気空気による温度調整のおかげで正確な温度制御を提供する。
【0101】
DBDセルは、供給フィーダおよび出口フィーダを分解する必要なく設置することが非常に容易であり、接続システムにより、各DBDセルの入口ダクトおよび出口ダクトを、これらの供給フィーダおよび出口フィーダに簡単に接続することにより、これらのDBDセルがこれらのフィーダに電気的および流体的に接続されることが保証される。
【0102】
実施例
【0103】
説明した取り外し可能なDBDセルを有する反応器は、以下の反応に非常に有用かつ効果的に使用することができる。
【表2】
【国際調査報告】