IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロメコン・プロセス・メジャーメント・コントロール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2024-532929冶金溶解炉とヘテロ分子から成るガスの量を決定するための方法
<>
  • 特表-冶金溶解炉とヘテロ分子から成るガスの量を決定するための方法 図1
  • 特表-冶金溶解炉とヘテロ分子から成るガスの量を決定するための方法 図2
  • 特表-冶金溶解炉とヘテロ分子から成るガスの量を決定するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】冶金溶解炉とヘテロ分子から成るガスの量を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240903BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20240903BHJP
   G01J 5/0802 20220101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01J5/00 101A
G01J5/0802
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515342
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 DE2022000097
(87)【国際公開番号】W WO2023036352
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021004593.9
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519155147
【氏名又は名称】プロメコン・プロセス・メジャーメント・コントロール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】コンラーツ・ハンス・ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】メーデ・マティアス
【テーマコード(参考)】
2G059
2G066
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC04
2G059EE06
2G059JJ02
2G066AC01
2G066AC11
2G066BA23
(57)【要約】
本発明は、炉容器と、炉容器に配置された排気ガス流を排出するための排気ガス排出装置と、空気を排気ガス流に供給するための給気開口を有する冶金溶解炉に関する。
排気ガス排出装置には、給気開口の下流に、測定開口が、測定開口に対して離間して配置されている。こうして、高温の分子によって排気ガス排出装置の内部に発生した電磁放射線が、検出され、統計的に評価される。本発明は、ヘテロ分子ガスの量を決定するための方法と、ガスの温度を決定するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス流を排出するための排気ガス排出装置(9)を配置した、金属を溶解するための炉容器(3)を備える冶金溶解炉(1)であって、排気ガス排出装置(9)に、排気ガス流に新鮮空気を供給するための給気開口(11)が形成されている冶金溶解炉(1)において、
排気ガス排出装置(9)が、給気開口(11)の下流に、少なくとも1つの測定開口(13)を備えること、及び、測定開口(13)を経て漏れ出る、排気ガス排出装置(9)の内部に発生した電磁放射線(19)が、少なくとも部分的にフォトダイオード(12)によって検出可能であるように、特定の波長範囲(21)の電磁放射線を分離するためのスペクトルフィルタ(20)を有するフォトダイオード(12)が、排気ガス排出装置(9)の外側で測定開口(13)に対して離間して配置されかつ形成されていること、を特徴とする冶金溶解炉(1)。
【請求項2】
溶解炉が、溶湯プール(2)内の金属を溶解するための加熱装置(5)を備えること、を特徴とする請求項1に記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項3】
溶解炉が、アークを発生させるための複数の電気操作式の電極(5)を有する加熱装置(5)を備えること、を特徴とする請求項1に記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項4】
測定開口(13)が、透明な材料によって閉鎖されていること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項5】
フォトダイオード(12)が、測定開口(13)を通過する電磁放射線の視軸内に配置されていること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項6】
フォトダイオード(12)によって生成された電気信号を増幅するために、測定増幅器(22)がフォトダイオード(12)に配置されていること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項7】
排気ガス排出装置(9)に、少なくとも2つの測定開口(13)が、測定開口から離間して配置された少なくとも2つのフォトダイオード(12)と共に配置されていること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項8】
フォトダイオード(12)又は測定増幅器(22)が、生成された電気信号を処理するために評価ユニット(23)と接続されていること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の冶金溶解炉(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の冶金溶解炉(1)によって冶金溶解炉(1)内に生じるヘテロ分子ガスを決定するための方法であって、
a)ある割合のヘテロ分子ガスを備えるガスを排気ガス排出装置(9)を経て導くステップと、
b)冷気を排気ガス流に供給するステップと、
c)ガスによって放出された特定の波長範囲(21)の電磁放射線をフォトダイオード(12)によって検出するステップと、
d)ヘテロ分子ガスの割合を評価ユニット(23)によって決定するステップ
を有すること、を特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも2つのフォトダイオード(12)と少なくとも2つの異なるスペクトルフィルタ(20)を備える請求項8に記載の冶金溶解炉(1)によってヘテロ分子ガスを含むガスの温度を決定するための方法であって、
a)ある割合のヘテロ分子ガスを備えるガスを排気ガス排出装置(9)を経て導くステップと、
b)冷気を排気ガス流に供給するステップと、
c)ガスによって放出された少なくとも2つの特定の波長範囲(21)の電磁放射線をフォトダイオード(12)によって検出するステップと、
d)温度に依存したガスの放出特性との比較によってガスの温度を決定するステップ
を有すること、を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉容器と、炉容器に配置された排気ガス流を排出するための排気ガス排出装置と、排気ガス流に空気を供給するための給気開口を有する冶金溶解炉と、ヘテロ分子ガスの量を決定するための方法と、ガスの温度を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冶金溶解炉の操作中、冶金溶解炉内で進行するプロセスに基づいて、異なる、しばしば有害なガスが生じる。冶金溶解炉内で進行するプロセスを最適化し、有害なガスの割合を低減するため、生じるガスを、特に互いの比で、正確に知ることは、個々のプロセスパラメータの効率的な制御のための重要な全体条件である。多くの可能な測定方法に対する主な障害は、プロセス中に生じる、1000℃超の範囲内にある極端に高い温度である。
【0003】
従来技術から、冶金溶解炉内のガス分子の割合がどのように決定され得るかに関して、種々のアプローチが知られている。
【0004】
独国特許出願公開第102008009923号明細書には、光学的なセンサによってアーク炉内の可燃性の排気ガス成分を決定するための方法が開示されている。局所的なCO濃度を測定するため、個々の酸素インジェクタの下の領域の光が光学的に検出されるように、光導体が配置される。次いで、排気ガス成分の量が評価され、アーク炉への酸素供給を調整するために利用される。ここでの利点は、アーク炉内の不均一な分布が相応に検出され、個々の酸素インジェクタが別々に制御され得ることである。しかしながら、炉における光導体は、高い温度に基づいて大問題を生じさせ得る。特に、ここでは、レーザを使用する分光法が利用され、これが、そのような測定構造を非常に複雑にし、従って高価にする。
【0005】
欧州特許第1776576号明細書には、冶金ユニットでのFTIR分光器による非接触の排気ガス測定が記載されている。転炉の近傍に、FTIR分光器が配置され、このFTIR分光器の測定ビームは、排気ダクト内の好適な開口において排気ガス内に向けられる。FTIR分光器によって決定されたスペクトルは、排気ガス温度及び数学的モデルを考慮に入れて、時間的遅延なしに排気ガス組成を計算するために使用される。欠点であるのは、この方法も非常に複雑であり、多くのメンテナンスを要することである。
【0006】
独国特許発明第2857795号明細書には、センサ要素と、その上流に配置された、二酸化炭素共鳴放射の範囲内で透過性のスペクトルフィルタを備える火炎検出器用の放射線検出器が開示されている。
【0007】
独国特許出願公開第19509704号明細書には、燃焼プロセスの監視及び調整をするための方法並びに装置が開示されている。オイルバーナ又はガスバーナにおいて、放射線測定が評価され、火炎の2つの異なるスペクトル領域がセンサ装置によって検出される。選択的に増幅された信号は、燃焼プロセスを調整及び監視のためのアルゴリズムによって利用される。そのようなプロセスは、コントロールされた燃焼プロセスでの火炎によって放出される放射線を評価し、これは、行われる反応の種類用の指標である。但し、このプロセスによって、ガスの量又はガス組成の直接的な測定を行なうことはできない。
【0008】
火炎の監視の別の選択肢が、米国特許第3903014号明細書に記載されているが、この選択肢は、特に、鋼を溶解するためのプロセスのコントロール時に適用することができる。ここでも、ガス量の直接的な測定は実行されない。
【0009】
米国特許出願公開第2009102103号明細書には、分光器及び赤外線センサによって工業炉内の放射線を検出する方法が説明される。このため、分光装置は、排気ガスへの給気も保証する窓開口部に配置される。但し、分光器の使用は、不利なことに複雑かつ高価である。
【0010】
独国特許出願公開第102006005823号明細書には、バーナー燃焼炉を調整するための方法が開示される。ガス流の成分が検出され、ガス流から放出される放射線の少なくとも一部が検出される。ここで、1つのスペクトル線が評価されるだけでなく、成分の放出がスペクトルの大部分にわたって検出される。即ち、放出されたスペクトルの広帯域的な記録が行なわれる。異なる波長で検出された放出から、和信号が構成され、この和信号は、その後、時間の経過後に2回導出される。このようにして決定された信号の時間経過は、ガス流内の成分の割合に関する定性的な陳述を提供する。こうして、求められた成分の量について定性的な陳述を行なうことができる。ここでは、不利なことに、定量的な陳述を行ない得るために、従来の測定による較正が必要である。この方法によれば、較正によってのみ、ガス流の成分の絶対量を決定することができる。更に、冶金溶解炉の炉容器でのこのような測定の設定は複雑である。
【0011】
独国特許出願公開第4231777号明細書に記載された方法でも、火炎又はその排気ガスの放出スペクトルが評価される。しかしながら、そのようなセンサを冶金溶解炉への取付けは、多くの問題をはらんでいる。
【0012】
従来技術による装置及び方法の主な問題は、溶解炉で生じる非常に高い温度であり、これが、測定機器の炉容器への取付けが非常に複雑で費用を要する理由である。しばしば、非常に複雑で、従って高価な、レーザを使用した吸収測定が利用される。従って、プロセス中に発生したガス成分を正確に知ることを提供する、冶金溶解炉での複雑でない測定の選択肢が所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008009923号明細書
【特許文献2】欧州特許第1776576号明細書
【特許文献3】独国特許発明第2857795号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19509704号明細書
【特許文献5】米国特許第3903014号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009102103号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102006005823号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第4231777号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の根底にある課題は、冶金溶解炉内に発生したガスの絶対濃度を決定するための簡単で安価な選択肢を提供することである。
【0015】
絶対濃度とは、本発明の意味では、排気ガスの単位体積当たり、例えば立方センチメートル当たりのヘテロ分子的ガス分子の数であると理解する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題は、独立請求項に記載の特徴を有する対象によって解決される。発展形は、従属請求項に記載されている。
【0017】
課題は、特に、排気ガス流を排出するための排気ガス排出装置を配置した、金属を溶解するための炉容器を備える冶金溶解炉によって解決される。排気ガス排出装置に、排気ガス流に新鮮空気を供給するための給気開口が形成されている。本発明によれば、排気ガス排出装置が、給気開口の下流に、少なくとも1つの測定開口を備え、測定開口を経て漏れ出る、排気ガス排出装置の内部に発生した電磁放射線が、少なくとも部分的にフォトダイオードによって検出可能であるように、特定の波長範囲の電磁放射線を分離するための少なくとも1つのスペクトルフィルタを有するフォトダイオードが、排気ガス排出装置の外側で測定開口に対して離間して配置されかつ形成されている。この場合、分子が典型的なエネルギーレベルを備え、これら分子の電子が状態遷移時に光子を放出することが利用される。状態遷移は、本発明の意味では、エネルギー的に高いレベルからエネルギー的に低いレベルへの遷移時に、光子、即ち電磁放射を放出する電子のエネルギーレベルの変化である。
【0018】
特定の波長範囲の電磁放射線は、本発明の意味では、予め設定された所定の領域の波長を有する電磁放射線である。この領域は、大抵は、1つ又は複数のスペクトルフィルタによって設定される。特定の波長範囲は、スペクトルフィルタの特性曲線に対応し、異なる波長は、スペクトルフィルタの特性に応じて異なる度合いでスペクトルフィルタを透過される。
【0019】
スペクトルフィルタは、フォトダイオードと測定開口の間に配置され、電磁放射線がフォトダイオードに当たる前に電磁放射線をフィルタリングする。これにより、スペクトルフィルタの特性に対応する特定の波長範囲の電磁放射線だけがフォトダイオードに到達し、検出される。
【0020】
好ましくは、スペクトルフィルタは、分子固有の透過特性を備える。
【0021】
排気ガス排出装置は、管状に形成することができる。
【0022】
給気開口の下流とは、本発明の意味では、排気ガス流の流れ方向で給気開口の下流に配置されることを意味する。この場合、給気開口の下流とは、特に、測定開口が、給気開口から見て炉容器とは反対の側に配置されていることを意味する。
【0023】
好ましくは、給気開口は、給気リングとして形成されている。
【0024】
このような測定開口と、測定開口から離間して配置された給気開口の下流のフォトダイオードの配置は、流入する空気が排気ガス排出装置内の混合物の組成の変化を生じさせるので、顕著である。別のCO及びOが給気開口を経て流入し、排気ガス排出装置内のCOもしくはCO、又はHO、CH、NO、SOのような他のヘテロ分子ガスの量を変化させるが、それは、流入する空気中の酸素によって高温の排気ガス中のヘテロ分子との反応を生じさせるからである。驚くべきことに、排気ガス排出装置における絶対濃度を決定するための測定装置は、給気開口の下流に配置されてもよいが、別のCO及びOが給気開口を経て流入し、排気ガス排出装置内のCOもしくはCO、又は他のヘテロ分子ガスの量を変化させる。その理由は、一方で、これらの分子によって放出される光子の数が測定に影響を与えないために十分に少ないように低い温度を流入する空気が備え、他方で、COからCOへの再燃焼又は他のヘテロ分子ガスとの反応が、流入する空気と排気ガス流との混合の過程で初めて行なわれるからである。COが反応してCOを形成する更なる反応、並びに未だ行なわれる他の反応プロセスは、実質的に、更なる過程で、即ち、排気ガス流の流れ方向で測定開口の下流で初めて行なわれる。これにより、高温のガス流は、流入する冷気を通して測定することができる。流入する冷気は、ガスカーテンの形式で高温のガス又は排気ガスの周りに位置し、高温のガス又は排気ガスの状態遷移は、高い温度に基づいて検出閾値を超えており、決定可能である。これにより、有利には、炉容器との間隔と流入する空気とによってあまり高い温度にさらされない場所で、高温の排気ガスのガス組成を決定することができる。特に、リングの形態の給気開口の好ましい形成の場合、排気ガス排出装置の中断は、排気ガス排出装置のある程度の熱的分離および機械的分離を生じさせ、これにより、特に好適である。
【0025】
測定開口は、好適な実施形態によれば、好ましくは保護ガラスの形態の透明な材料によって閉鎖されている。
【0026】
有利なバリエーションは、排気ガス排出装置に、少なくとも2つの測定開口が、測定開口から離間して配置された少なくとも2つのフォトダイオードと共に配置されている。好ましくは、3つ又は4つの測定開口が、少なくとも3つ又は4つのフォトダイオードと共に排気ガス排出装置に配置されている。選択的に、2つ以上のフォトダイオードを測定開口に対して離間して配置することもできる。重要であるのは、全ての測定開口が、測定開口に対して離間して配置されたフォトダイオードと共に、給気開口の下流に配置されていることである。好ましくは、各フォトダイオードが、異なるスペクトルフィルタを備えるので、異なる波長範囲が、個々のフォトダイオードによって検出可能である。
【0027】
各フォトダイオードは、測定開口を通過する電磁放射線の視軸内に配置されている。
【0028】
好ましくは、測定開口からフォトダイオードまで測定チャネルが延在する。測定チャネルは、透明に形成されておらず、これにより、例えば外乱放射線のようなマイナスの外部影響から測定を保護する。即ち、測定チャネルは、測定開口とフォトダイオードの間に形成されている。
【0029】
冶金溶解炉の有利な形成は、溶解炉が、溶湯プール内の金属を溶解するための加熱装置を備えること、を企図する。好ましくは、加熱装置には、アークを発生させるための複数の電気操作式の電極が配置されている。このような冶金溶解炉は、アーク炉とも呼ばれる。
【0030】
好ましくは、フォトダイオードによって生成された電気信号を増幅するために、測定増幅器がフォトダイオードに配置されている。有利な形成によれば、スペクトルフィルタも、フォトダイオード及び測定増幅器も、1つのハウジング内に配置されている。
【0031】
好ましくは、フォトダイオード又は測定増幅器のいずれかが、生成された電気信号を処理するために評価ユニットと接続されている。よって、フォトダイオードによって検出された電磁放射線に基づいて、評価ユニットは、個々のガス成分の量を決定することができる。
【0032】
高温のガス内のヘテロ分子ガスの絶対濃度、即ちヘテロ分子ガスの割合を決定し得るため、所定の温度Tと、常用圧力の範囲内の、即ち±10%の偏差を有する所定の圧力とを有する高温のガスが、光子を放出する熱的に励起されたヘテロ分子を含むことが利用される。フォトダイオードが光子を検出し得るレベルに、放出された光子の数が達するように、必要な温度は、T>400Kである。
【0033】
好ましくは、所定の温度でのガス混合物における密度及び分子距離の計算は、理想気体方程式を介して行なわれ、構成要素の幾何学的形状、即ちここでは特に排気ガス排出装置の幾何学的形状並びに測定開口及びフォトダイオードの設置条件に関する情報と関連付けて、励起された分子の数を決定することができる。
【0034】
フォトダイオードは、好ましくは、赤外線の範囲内で検出するために、例えばInAsSbから形成されている。選択的な材料は、InSb、InAs、PbS又はPbSeである。フォトダイオードの正確な特性曲線、特にその温度依存性挙動、並びにフォトダイオードの物理的及び電気技術的特性、並びにフォトダイオードの正確な面積が、評価時に利用される。
【0035】
ガス成分の細分化された検出のため、可能なバリエーションによれば、所望の分子ごとに、1つのスペクトルフィルタが、又は選択的に、スペクトル範囲が定義された複数のスペクトルフィルタの組合せが、使用される。
【0036】
このようなフィルタ又はこのような複数のフィルタの組合せは、分子特異性フィルタと呼ばれる。これらの分子特異性スペクトルフィルタは、所望のヘテロ分子のIR帯域とも呼ばれる赤外線帯域からの光子の選択を決定し得るために使用される。IR帯域は、本発明の意味では、同一の最大値を有する放出された電磁放射線の典型的なスペクトル曲線であり、これらスペクトル曲線は、分子特異的に異なるように表現され得る。IR帯域から、分子特異的な最大値の波長並びにその典型的な強度比を決定することができる。スペクトルフィルタの特性曲線の正確な知識は、量子力学的及び統計的評価の基礎として必要であるよって、特性曲線から、どのIR遷移がどの程度測定に寄与するかを決定することができる。全IR帯域からの適切な分子特異的部分が分析される。
【0037】
課題は、評価ユニットを有する本発明による溶解炉によって溶解炉内に生じるヘテロ分子ガスを決定するための方法であって、
a)ある割合のヘテロ分子ガスを備えるガスを排気ガス排出装置を経て導くステップと、
b)冷気を排気ガス流に供給するステップと、
c)ガスによって放出された特定の波長の電磁放射線をスペクトルフィルタを有するフォトダイオードによって検出するステップと、
d)ヘテロ分子ガスの割合を評価ユニットによって決定するステップ
を有すること、を特徴とする方法によって解決される。
【0038】
遷移レート、即ち、分子ごとに放出される光子の数は、温度が既知である場合、各分子に対する特徴的な放出スペクトルを生じさせる。これから、本発明による冶金溶解炉の幾何学形状を考慮して、スペクトルフィルタ及びフォトダイオードの特性曲線並びに測定増幅器の特性を考慮して、異なる分子濃度用の濃度特性曲線を作成することができる。評価ユニットには、好ましくは、異なる濃度特性曲線を記憶することができるので、測定増幅器の出力電流は、冶金溶解炉の所定の構成のために、ガスの濃度に関する情報を提供する。これから、温度が既知である場合は、放射する分子の量、即ち分子の絶対濃度を、直接的に決定することができる。
【0039】
課題は、評価ユニットを有する本発明による装置によって冶金溶解炉内に生じるヘテロ分子ガスの量を決定するための方法であって、
a)ある割合のヘテロ分子ガスを備えるガスを排気ガス排出装置を経て導くステップと、
b)冷気を排気ガス流に供給するステップと、
c)ガスによって放出された特定の波長の電磁放射線をスペクトルフィルタを有するフォトダイオードによって検出するステップと、
d)温度を決定し、温度を評価ユニットに転送するステップと、
d)ヘテロ分子ガスの量を評価ユニットによって決定するステップ
を有すること、を特徴とする方法によっても解決される。
【0040】
好ましくは、放出された放射線をフィルタリングするスペクトルフィルタは、分子特異的フィルタである。
【0041】
本発明の別の態様は、少なくとも2つのフォトダイオードと少なくとも2つの異なるスペクトルフィルタを有する本発明による装置によって少なくとも部分的にヘテロ分子ガスを含むガスの温度を決定するための方法であって、
a)ある割合のヘテロ分子ガスを備えるガスを排気ガス排出装置を経て導くステップと、
b)冷気を排気ガス流に供給するステップと、
b)ガスによって放出された少なくとも2つの特定の波長又は2つのIR帯域の電磁放射線をフォトダイオードによって検出するステップと、
c)温度に依存したガスの放出特性との比較によってガスの温度を決定するステップ
を有すること、を特徴とする方法に関する。
【0042】
ここで、評価原理は、所定の分子において、IR帯域、即ち、特定の分子に関する状態遷移の放出された光子の数及び波長が、温度だけに依存することに基づく。従って、IR帯域の評価後、即ち分子組成が既知である場合、所定の温度で分子から放出される光子の数を決定することができる。ここで、決定された両IR帯域、即ち、両フォトダイオード電流の高さを互いに比較すると、ガス温度だけに依存し、かつ、この分子の濃度と、冶金溶解炉の幾何学形状と、測定開口及びフォトダイオードの配置には依存しない特性曲線が得られる。従って、温度に依存したガスの放出特性との比較によるステップd)に応じたガスの温度の決定は、好ましくは、まず、評価ユニットによるヘテロ分子ガスの割合を決定するステップを含む。
【0043】
2つの異なる波長範囲内の電磁放射線の強度を決定するため、2つのフィルタ-フォトダイオードの組合せが使用される。スペクトルフィルタ及びダイオードの幾何学形状は、それらが互いに異なる場合にだけ重要である。2つの同一のスペクトルフィルタ-フォトダイオードの組合せの場合、考慮は必要でないが、そうでない場合、これを数学的に考慮及び修正することができる。
【0044】
両スペクトルフィルタは、異なるスペクトル範囲をカバーしなければならないが、オーバーラップは可能である。検出が可能であるように、そのスペクトルを利用する分子の濃度が十分であることが重要である。測定は、温度特性曲線の飽和範囲以下で実行する必要がある。一義的に温度を決定するため、単調な特性曲線が必要である。これは、評価される分子を選択するときに考慮すべきである。できるだけ狭い帯域のフィルタリング-即ち、狭い波長範囲だけを透過させるフィルタの使用下での-が、測定結果に対する他の分子のできるだけ低い影響を保証する。好ましくは、スペクトルフィルタは、透過範囲、即ち、放射線を少なくとも50%まで、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも85%まで透過させる範囲を備え、この範囲は、最大10μm、好ましくは最大9μm、好適には最大4nmの幅を有する。方法の有利なバリエーションは、実質的に1種類の分子を放出する、即ち最大値を備える波長又は波長範囲が評価されること、を企図する。
【0045】
1つの可能な構成によれば、2つのスペクトル範囲が考慮され、これにより、相互の補正が可能である。加えて、1つのバリエーションは、選択的な方法によって決定されたガス温度がコントロール及び/又は補正のために利用されること、を企図する。
【0046】
好ましくは、スペクトルフィルタは、特に、例えば、二酸化チタン(TiO)、二酸化ハフニウム(HfO)、五酸化タンタル(Ta)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化イットリウム(Y)のような酸化物、及び/又は、例えば、フッ化マグネシウム(MgF)又はフッ化バリウム(BaF)又はYFのようなフッ化物、及び/又は、例えば硫化亜鉛(ZnS)のような硫化物、及び/又は、例えばセレン化亜鉛(ZnSe)のようなセレン化物のグループから選択される誘電体材料からなる層を備える。層厚は、構造的および破壊的干渉に基づいて所定の透過特性が達成され得るように選択される。
【0047】
可能な形成によれば、1つ又は複数のスペクトルフィルタが、半導体フィルタとして形成されている。これらは、特に、吸収端とみなされる所定の波長未満の電磁放射に対する吸収フィルタとして作用する。バンドギャップに基づいて、電磁放射線は、吸収端の上では高い割合で透過させることができる。
【0048】
半導体フィルタは、長波透過特性を有し、しばしば保護のためにホルダに取り付けられた、コーティングされた光学的に研磨された半導体ディスクから成る。ストップバンドでのその非常に高い吸収のために、半導体フィルタは、IR格子モノクロメータ、即ち、赤外線の狭い範囲内での透過のためのスペクトルフィルタにおいて、より高次のスペクトルを排除するために特に有用である。半導体フィルタの使用は、高温源が使用される場合は、より高次の、即ちより短い波長及び高いエネルギーのスペクトルが特に障害となるので、特に有利である。
【0049】
1つの有利な形成によれば、スペクトルフィルタ、特に誘電体材料又は半導体フィルタから成るスペクトルフィルタは、一方の側、好ましくは照射された電磁放射線に向けて配置される放射線入力側に、又は、放射線入力側及び、即ちフォトダイオードに向けて配置される放射線出力側に、反射防止コーティングを備える。これにより、スペクトルフィルタを通過する電磁放射線の透過率が高められる。有利には、このような反射防止コーティングを有しないスペクトルフィルタに比して60%までの改善を達成することができる。即ち、スペクトルフィルタをフォトダイオードの前に配置すると、関連する波長の最大60%多くの放射線がフォトダイオードに到達し、こうしてフォトダイオードによって検出することができる。
【0050】
スペクトルフィルタは、好ましくは、赤外線スペクトルの少なくとも1つの部分範囲内で少なくとも部分透過性である。好ましくは、このようなスペクトルフィルタの反射防止コーティングは、3~12μm、好ましくは3~5μm又は5~8μm又は8~12μmの波長範囲に対して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも50%の透過率を備える。
【0051】
好ましくは、反射防止コーティングは、単層または多層コーティングとして形成されている。単層は、容易かつ安価に製造することができるとの利点を有する。
【0052】
多層コーティングも、有利には、複数の入射角及び複数の波長範囲に対して最適及び適合することができる。多層コーティングのための好ましい基材材料はゲルマニウムである。有利には、個々の波長範囲内で95%超の透過率を達成することができる。
【0053】
単層から構成された反射防止層用の好ましい基材材料は、ゲルマニウム、シリコン、サファイア、セレン化亜鉛又はヒ化ガリウムである。
【0054】
好ましくは、スペクトルフィルタは、狭帯域パスフィルタとして形成されている。
したがって、ピーク値-このピーク値で、即ち、透過率が最大である-の最大6%、好ましくは最大5%の狭い範囲の波長だけが透過される。透過範囲外の減衰値は高いので、範囲外の放射線の透過率は、最大10%、好ましくは最大1%、特に好ましくは最大0.1%である。
【0055】
1つの可能な構成によれば、2つのスペクトル範囲が考慮され、これにより、相互の補正が可能である。加えて、1つのバリエーションは、選択的な方法によって決定されたガス温度がコントロール及び/又は補正のために利用されること、を企図する。
【0056】
好ましくは、温度特性曲線を生じさせる、フィルタによって設定されたスペクトル範囲内にある全ての遷移レベルが考慮されるので、冶金溶解炉の幾何学的形状は重要でない。方法の特に好ましいバリエーションは、まず温度の決定を行ない、その後温度を考慮して濃度の決定を行なう。
【0057】
記憶された特性曲線は、有利には、理論的に決定することができるので、較正又は再較正又は測定は必要ない。
【0058】
本発明の実施形態の更なる詳細、特徴及び利点は、関連する図面を参照した実施例の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】アーク炉
図2】測定技術的構成の原理図
図3】フォトダイオードを有する測定装置の原理図
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1には、アーク炉1aとして形成された金属を溶解するための冶金溶解炉1が図示されている。金属溶湯プール2は、炉容器3内に配置されている。炉容器3内に、加熱装置4が突出し、この加熱装置は、三相交流電流を供給するために形成された3つの電極5を備える。アーク6の電気エネルギーによって生成された熱は、溶湯プール2内の金属を溶解するために利用される。更に、炉容器3には、ガスバーナ7と、酸素ランス8aとして形成された酸素供給要素8が配置されている。
【0061】
炉容器3内に発生した排気ガスは、排気開口を通って排気ガス排出装置9に導かれる。炉容器3と排気ガス排出装置9の間には、排気マニホールド10と、給気リング11aとして形成された給気開口11が配置されている。給気開口11を経て、冷気が排気ガス排出装置9に流入する。給気開口11は、炉容器3と排気ガス排出装置9の間に配置されている。排気ガス排出装置9内で、再燃焼が行なわれ、特に、流入する酸素を伴う反応が行なわれる。
【0062】
排気ガス排出装置9には、更に、2つのフォトダイオード12が、排気ガス流れ方向Rで給気開口11の下流に、排気ガス排出装置9から離間して配置されている。排気ガス排出装置9の内部からの電磁放射線を検出し得るために、排気ガス排出装置9に2つの測定開口13が存在し、これらの開口を経て、電磁放射線が、測定チャネル14に、次いでフォトダイオード12に到達することができる。測定開口13は、関連する電磁放射線に対して透明な材料によって閉鎖することができる。これが、排気ガス排出装置9内を流れる排気ガスの漏出を防止する。
【0063】
排気ガス排出装置9には、更なる過程で給気開口11の下流に、排気ガス流を冷却するためのクーラ15と、排気ガスから固体粒子を分離するためのフィルタ16が配置されている。その後、排気ガスは、誘引ドラフト17を経て煙突18に導入される。
【0064】
図2には、冶金溶解炉1、特にアーク炉1aの排気ガス排出装置9で使用するための測定技術的構成の原理図が図示されている。全波長19の電磁放射線がスペクトルフィルタ20に当たるので、スペクトルフィルタ20の下流では、特定の波長範囲21の電磁放射線だけが、フォトダイオード12に転送される。その後フォトダイオード12によって生成された電気信号は、測定増幅器22によって増幅され、評価ユニット23によって処理される。次いで、測定値出力24によって出力された値は、ここに図示してないアーク炉のコントロールを最適化するために利用することができる。
【0065】
少なくとも1つのフォトダイオード12と1つの測定チャネル14を有する測定装置の原理図が、図3に図示されている。測定装置は、取付けフランジ25によって、ここに図示してない排気ガス排出装置の外側に固定されている。フォトダイオード12は、スペクトルフィルタ20と共に、測定チャネル14に直接的に隣接して配置されている。
【0066】
測定チャネル14と排気ガス排出装置9の内部との間には、排気ガス排出装置9の内部からの電磁放射線がフォトダイオード12の方向に測定チャネル14を通過することを可能にするため、排気ガス排出装置9の壁に個々に図示してない測定開口が形成されている。測定チャネル14の端部8-この端部は、取付け状態で排気ガス排出装置の方向に向いている-には、透明な保護ガラス26が配置されている。保護窓26とも呼ばれるこの保護ガラス26により、排気ガス排出装置の内部に発生した電磁放射線は、測定チャネル14に到達することができ、同時に、測定チャネル14への排気ガスの侵入が防止される。
【符号の説明】
【0067】
1 冶金溶解炉
1a アーク炉
2 金属溶湯プール、溶湯プール
3 炉容器
4 加熱装置
5 電極、加熱装置
6 アーク
7 ガスバーナ
8 酸素供給要素
8a 酸素ランス
9 排気ガス排出装置
10 排気マニホールド
11 給気開口
11a 給気リング
12 フォトダイオード
13 測定開口
14 測定チャネル、スリーブチューブ
15 クーラ
16 フィルタ
17 誘引ドラフト
18 煙突
19 全波長の電磁放射線
20 スペクトルフィルタ
21 特定の波長範囲の電磁放射線
22 測定増幅器
23 評価ユニット
24 測定値出力
25 取付けフランジ
26 保護ガラス、保護窓
R 排気ガス流れ方向
図1
図2
図3
【国際調査報告】