(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】流体収容空間を有する全筋疑似肉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240903BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240903BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240903BHJP
【FI】
A23J3/00 504
A23L13/00 Z
A23L5/00 A
A23L5/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515814
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 IL2022050989
(87)【国際公開番号】W WO2023037376
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522181522
【氏名又は名称】リデファイン ミート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルビ、オデッド
(72)【発明者】
【氏名】ディコブスキー、ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE05
4B035LG15
4B035LP31
4B035LT11
4B042AC10
4B042AD36
4B042AE03
4B042AK10
4B042AP21
4B042AP30
4B042AT10
(57)【要約】
本開示は、(i)タンパク質鎖を含むタンパク質塊と、(ii)タンパク質塊内の複数の流体収容空間であって、長さ及び当該長さに対して垂直な断面寸法を有し、当該流体収容空間の少なくとも一部が第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間である、複数の流体収容空間と、を含む、全筋疑似肉製品及びその製造方法を提供し、流体収容細長空間の長さは、少なくとも2mmであり、かつ、当該断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、当該細長空間の少なくとも40%は、当該全筋疑似肉製品内で互いに対して本質的に同じ見かけの方向を有し、流体収容空間内の当該流体は、気体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)タンパク質鎖を含むタンパク質塊と、(ii)前記タンパク質塊内の複数の流体収容空間であって、長さ及び前記長さに対して垂直な断面寸法を有する複数の流体収容空間と、を含む、全筋疑似肉製品であって、
前記流体収容空間の少なくとも一部が、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間であり、
前記流体収容細長空間の長さが、少なくとも2mmであり、かつ前記断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、
前記細長空間の少なくとも40%が、前記全筋疑似肉製品内で、互いに対して本質的に同じ見かけの方向を有し、
前記流体収容空間内の前記流体が、気体である、全筋疑似肉製品。
【請求項2】
前記タンパク質鎖が、互いに対して本質的に整列している、請求項1に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項3】
前記細長空間の少なくとも一部が、前記本質的に整列したタンパク質鎖の方向と本質的に同じ見かけの方向を有する、請求項2に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項4】
前記細長空間の前記第1の端部及び/又は前記第2の端部の少なくとも一部が、前記全筋疑似肉製品の外面に少なくとも部分的に露出している、請求項1~3のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項5】
前記流体収容空間の少なくとも一部が、非晶質の形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項6】
各流体収容細長空間が、仮想中心によって画定されており、その隣接する細長空間から、それらのそれぞれの仮想中心間の距離が0.5mm~10mmで離間されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項7】
前記複数の流体収容細長空間が、本質的に同じ長さ及び/又は断面寸法を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項8】
前記気体が、空気、酸素、窒素及び二酸化炭素並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項9】
前記気体が、空気である、請求項8に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項10】
前記流体収容空間の体積が、前記製品の総体積の少なくとも5%を構成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項11】
全スラブの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項12】
水平面を共に画定する長さ及び幅と、前記水平面に対して垂直な断面寸法とを有するステーキの形態であり、前記細長流体収容空間が、前記水平面に対して本質的に垂直である、請求項1~10のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項13】
マリネードによるマリネーションに適しており、前記マリネードが、前記流体収容空間の少なくとも一部において前記気体を置換する、請求項1~12のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項14】
前記タンパク質塊が、テクスチャードタンパク質を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品。
【請求項15】
マリネーションに適した全筋疑似肉製品を製造する方法であって、
タンパク質鎖を含むタンパク質塊の2つ以上の層を、別の層の上に配置して、多層タンパク質塊を形成することと、
前記多層タンパク質塊に、前記タンパク質塊内の複数の流体収容空間の配置を引き起こす制御された条件を適用することと、を含み、前記複数の流体収容空間が、長さ及び断面寸法によって画定されており、前記条件が、
(i)前記流体収容空間の少なくとも一部が、第1の端部と第2の端部との間に延在しており、
(ii)細長空間の長さが、少なくとも2mmであり、かつ前記断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、
(iii)前記細長空間の少なくとも40%が、前記全筋疑似肉製品内で、互いに対して本質的に整列している見かけの方向を有するように選択され、
前記流体収容空間内の前記流体が、気体であり、
前記流体収容空間が、液体を収容するのに適している、方法。
【請求項16】
タンパク質鎖が、互いに対して本質的に整列している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細長空間の少なくとも一部が、前記本質的に整列したタンパク質鎖の方向と本質的に同じ見かけの方向を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細長空間の少なくとも一部の前記第1の端部及び/又は前記第2の端部の少なくとも一部が、前記全筋疑似肉製品の外面に露出している、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記条件が、前記タンパク質鎖の少なくとも一部を、それらの間の距離を制御して配置することを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記条件が、前記タンパク質鎖の少なくとも一部の間に中間鎖の形態の犠牲材料を配置すること、及び前記多層タンパク質塊が形成されると、前記犠牲材料を除去するか又は除去を解発し、それによって複数の気体収容空間が形成されることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記条件が、前記複数の気体収容空間の前記形成をもたらす機械力を前記多層タンパク質塊に適用することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記機械力が、前記タンパク質塊を穿刺することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細長流体収容空間の位置及び寸法が、前記疑似肉の予め設計された3Dモデルによって決定される、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質鎖の前記2つ以上の層の前記配置が、付加製造技術による、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記多層タンパク質塊を前記中間鎖に対して圧縮することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記犠牲材料の除去が、前記多層タンパク質塊を熱、溶解媒体、pH、振動、真空のうちのいずれか1つ又は組み合わせに曝露することによる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記多層タンパク質塊を熱処理することを含む、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記液体が、マリネードである、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記流体収容空間が、前記全筋疑似肉製品の少なくとも一部が液体に浸漬されると、前記液体を収容するのに適している、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
マリネーションされた全筋疑似肉を製造する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の全筋疑似肉製品の少なくとも一部をマリネードに浸漬することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品産業に関し、より具体的には、肉代替産業に関する。
【0002】
関連文献
現在開示されている主題の背景として関連すると考えられる参考文献を、以下に列挙する。
-日本国特許第5025522(B2)号
-国際公開第2021032866号
-米国特許出願公開第2012237661号
-米国特許出願公開第20190373935号
-国際公開第20208104号
-国際公開第2020152689号
-国際公開第2021095034号
-米国特許出願公開第2017035076号
【0003】
本明細書における上記の参考文献の認識は、これらが本開示の主題の特許性に、何らかの形で関連していることを意味するものとして推論されるべきではない。
【背景技術】
【0004】
食品技術は、とりわけ、消費者のニーズ及び要求、並びに人口統計的に急速に成長している需要としてのニーズ及び要求を満たすことを目的とする、製品、プロセス及びサービスの創出を伴う。
【0005】
動物由来の肉の消費を低減しようとする意識が世界的に高まっており、疑似肉の開発が、より盛んになっている。これらの疑似肉は、とりわけ、植物タンパク質及び/又は細胞培養物をベースとする。
【0006】
かかる食品技術の1つの態様は、多孔性又は発泡性の食品を製造する方法に着目するものである。
【0007】
日本国特許第5025522号は、多孔性食品を製造する方法を記載している。方法は、粉砕した食材に砕氷を混合した後、凍結乾燥することを含む。
【0008】
国際公開第2021032866号は、タンパク質含有発泡性食品の製造方法を記載しており、方法は、タンパク質含有原料を押出しながら気体又は気体形成材料を導入し、それによってタンパク質含有発泡性食品を形成することを含む。
【0009】
米国特許出願公開第2012237661号は、多孔性の固体食用食品に発泡性食品生地を含浸させた含浸食品を記載している。
【0010】
米国特許出願公開第2019/0373935号は、食用食品のための真菌菌糸体を増殖させる方法を記載している。一例では、菌糸体を脱水した後、ソース及び香味料から構成されるマリネーションを行う。
【0011】
国際公開第20208104号は、互いに実質的に平行に配向された接続されたせん断された繊維のマクロ構造と、せん断された繊維間に位置する間隙とを含む、疑似肉を記載している。
【0012】
国際公開第2020152689号は、内部に別々に分布されたタンパク質ベースの成分及び脂肪ベースの成分を含む疑似肉を記載しており、そこでは、疑似肉は、脂肪ベースの成分から本質的に構成される少なくとも1つの他のセグメントとは化学的に異なるタンパク質ベースの成分から本質的に構成される少なくとも1つのセグメントを含み、そこでは、(i)疑似肉の立体試料が異方性の物理的特性を示すこと、並びに(ii)疑似肉がタンパク質ベースの成分及び脂肪ベースの成分の非均質な分布を含むこと、の少なくとも1つが満たされる。
【0013】
国際公開第2021095034号は、付加製造技術を使用した全筋肉代用品及びその製造方法を記載している。
【0014】
米国特許出願公開第2017035076号は、動物肉のものと同様の構造、テクスチャー、及び他の特性を有し、相当量の細胞壁材料を含む食品を記載している。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、制御された様式で、流体物質を保持するための空隙又はチャネルを含み、それによって、とりわけ、そのジューシーさなどの、製品のテクスチャー及び感覚刺激特性を改善するように設計された、全筋疑似肉製品(場合によっては、全カット疑似肉又は全筋肉カットとも呼ばれる)の開発に基づく。
【0016】
具体的には、マリネードに浸漬される前に処理される専用の気体収容チャネルを有する全カット肉製品を製造することが有益であることを見出した。その結果、最終製品は、テクスチャー及び口当たりに関して、本物の肉により似ていることを見出した。
【0017】
したがって、本開示の主題の第1の態様によれば、(i)タンパク質鎖を含むタンパク質塊と、(ii)タンパク質塊内の複数の流体収容空間であって、複数の流体収容空間の少なくとも一部が、長さ及び当該長さに対して垂直な断面寸法を有する、複数の流体収容空間と、を含む、全筋疑似肉製品が提供され、
当該流体収容空間の少なくとも一部は、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間であり、
流体収容空間の長さは、少なくとも2mmであり、かつ当該断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、
当該流体収容空間の少なくとも40%は、当該全筋疑似肉製品内で、互いに対して本質的に同じ見かけの方向を有し、
流体収容空間内の当該流体は、気体である。
【0018】
本開示の主題のいくつかの例では、気体は、酸素、空気、窒素ガス、二酸化炭素からなる群から選択される。本開示の主題のいくつかの例では、気体は、空気である。
【0019】
気体(例えば、空気)で充填された場合、全筋疑似肉製品は、場合によっては、後の段階で、例えば、製造業者の工場内で、食肉業者(食肉店又はその作業場)による、又は最終消費者によるマリネーションに適する中間製品とみなすことができる。
【0020】
また、本開示の主題の第2の態様によれば、全筋疑似肉製品を製造する方法が提供され、方法は、
タンパク質塊を含むタンパク質鎖の2つ以上の層を、別の層の上に配置して、多層タンパク質塊を形成することと、
多層タンパク質塊に、タンパク質塊内の複数の流体収容空間の配置を引き起こす制御された条件を適用することと、を含み、複数の流体収容空間が、長さ及び当該長さに対して垂直な断面寸法によって画定されており、条件が、
(i)流体収容空間の少なくとも一部が、第1の端部と第2の端部との間に延在しており、
(ii)流体収容空間の長さが、少なくとも2mmであり、かつ断面寸法の少なくとも2倍大きく、
(iii)流体収容空間の少なくとも一部(例えば、少なくとも40%)が、当該全筋疑似肉製品内で、互いに同じ見かけの方向を有するように、選択され、
流体収容空間内の流体は、気体であり、
当該流体収容空間は、液体を収容するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に開示されている主題をより良く理解し、実際にそれがどのように実行され得るかを例示するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、実施形態をここで説明する。
【
図1】デカルト座標系によって定義される、全肉カット(例えば、ステーキ)代替品の試料の概略図である。
【
図2】各流体収容空間の長手方向とタンパク質鎖の長手方向との逸脱度を示すグラフであり、ここで、流体収容空間の大部分は、z軸から、すなわち鎖の長手方向から5度以内に配向される。
【
図3】本開示の主題の第1の態様のいくつかの例による、3Dマトリックス内の流体収容空間の体積百分率を決定するための方法のブロック図である。
【
図4A】
図1に示されるようなYZ平面又はXZ平面に沿って(すなわち、タンパク質鎖の方向に対して平行に)切断された2つのステーキ疑似物試料の画像であり、第1の試料は、意図的に導入された細長空間(そのうちのいくつかを円で囲んでいる)を有して製造されており、(
図4A)、別の試料は、細長空間を有さずに製造されている(
図4B)。両方の画像は、試料を着色したマリネードに浸漬した後に撮影した。細長空間は、非限定的な実施例1A)に記載されているように、針床で形成された。
【
図4B】
図1に示されるようなYZ平面又はXZ平面に沿って(すなわち、タンパク質鎖の方向に対して平行に)切断された2つのステーキ疑似物試料の画像であり、第1の試料は、意図的に導入された細長空間(そのうちのいくつかを円で囲んでいる)を有して製造されており、(
図4A)、別の試料は、細長空間を有さずに製造されている(
図4B)。両方の画像は、試料を着色したマリネードに浸漬した後に撮影した。細長空間は、非限定的な実施例1A)に記載されているように、針床で形成された。
【
図5A】3D印刷モデルの3つの異なる非限定的な例であり、印刷された製品の断面を示し、2.5(
図5A)、3.8(
図5B)及び5mm(
図5C)の印刷された鎖間のx軸ピッチ(「x」とマークされている)を示す。
【
図5B】3D印刷モデルの3つの異なる非限定的な例であり、印刷された製品の断面を示し、2.5(
図5A)、3.8(
図5B)及び5mm(
図5C)の印刷された鎖間のx軸ピッチ(「x」とマークされている)を示す。
【
図5C】3D印刷モデルの3つの異なる非限定的な例であり、印刷された製品の断面を示し、2.5(
図5A)、3.8(
図5B)及び5mm(
図5C)の印刷された鎖間のx軸ピッチ(「x」とマークされている)を示す。
【
図6A】
図1のXY平面に沿って切断された2つのステーキ疑似物試料の画像であり、第1の試料は、それを通して導入された、設計及び制御された気体充填細長空間を含み(
図6A)、別の試料は、細長空間を有さずに製造されている(
図6B)。細長空間は、非限定的な実施例1Bに記載されるように、3D印刷中に形成された。
【
図6B】
図1のXY平面に沿って切断された2つのステーキ疑似物試料の画像であり、第1の試料は、それを通して導入された、設計及び制御された気体充填細長空間を含み(
図6A)、別の試料は、細長空間を有さずに製造されている(
図6B)。細長空間は、非限定的な実施例1Bに記載されるように、3D印刷中に形成された。
【
図7】本開示のいくつかの例による、全筋疑似肉製品内の細長空間の配向を決定する方法のブロック図である。
【
図8】3Dマトリックス内のボクセル(黒い立方体としてマークされている)の直近の環境の概略図であり、ボクセルは、26個のボクセル(中空の立方体として示される)によって囲まれている。
【
図9A】本明細書に開示される例示的な全筋疑似肉製品からのステーキカット「900」のXY平面に沿ったマイクロCT編集3D画像(
図9A)を示し、画像は、細長空間(「910」)及び非晶質空間(「920」)を示し、流体収容空間を表すより大きな空間、及び非晶質空間を表すより小さな空間、をより良く示すために、CT画像スライスのうちの1つが
図9Bにおいて拡大されている。
【
図9B】本明細書に開示される例示的な全筋疑似肉製品からのステーキカット「900」のXY平面に沿ったマイクロCT編集3D画像(
図9A)を示し、画像は、細長空間(「910」)及び非晶質空間(「920」)を示し、流体収容空間を表すより大きな空間、及び非晶質空間を表すより小さな空間、をより良く示すために、CT画像スライスのうちの1つが
図9Bにおいて拡大されている。
【
図10】試料の縁部を通して外部環境に曝露される、流体収容細長空隙/チャネル/空間の割合を決定する方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
全筋疑似肉を扱う場合、体感する感覚は、典型的には、全筋肉製品の異方性構造に起因する、製品の化学的及び物理的構造並びに特性に大きく依存する。
【0023】
さらに、本物の肉(全筋肉又は全カット又は全筋肉カット)は、筋肉細胞の収縮に起因する、水が細胞から外側に細胞外空間に向かって移動する死後硬直のプロセスを受ける。移動した水は「自由水」と考えられ、これは貯蔵中のドリップ損失現象、調理中の調理損失を形成し、肉の口腔でのプロセシング中に感知されるジューシーさの主な原因である。これに関連して、ジューシーさは、食品の口腔プロセシング中の数回の最初の噛み及び/又は咀嚼に起因して食品から放出される「自由水」の量によって決定される感覚刺激特性として定義され得る。
【0024】
本開示は、とりわけ、天然の死後硬直のプロセスの結果を模倣し、それによって、温度、圧力、せん断力などの外部刺激時に放出され得る流体、すなわち「自由水」の収容を可能にする構造的条件を提供することを目的とする。
【0025】
液体を含浸させる前に、タンパク質塊及び気体収容空間を含む製品を穏やかに熱処理し(例えば、真空調理(Sous-vide)又はコンビスチーマー)、その後にのみ、気体の大部分を液体で置き換えた場合に、疑似肉製品の官能特性を有意に改善することが可能であることを見出し、本明細書に開示するに至った。
【0026】
理論に束縛されるものではないが、穏やかな熱処理は、とりわけ、流体収容空間の壁を含むタンパク質塊の少なくとも部分的な変性を引き起こすと考えられる。これは、流体収容空間内の自由水(マリネーションなどに由来する自由水)の保留/保持を改善し、それによって、最終(すぐに消費できる)製品のジューシーさ及び他の官能特性を改善すると考えられる。
【0027】
したがって、本開示の主題の第1の態様は、タンパク質鎖の形態のタンパク質塊を含み、タンパク質塊内に、流体を収容するか、又は液体物質を収容するように構成された複数の流体収容空間を含む、全筋疑似肉製品を提供するものであり、流体収容空間は、長さ(すなわち、長手方向寸法)と、流体収容空間の長手方向に対して垂直な断面(すなわち、厚さ)とによって画定されており、
当該流体収容空間の少なくとも一部は、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間であり、
流体収容空間の長さは、少なくとも約2mmであり、かつ当該断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、
流体収容空間のかなりの部分(例えば、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%)は、一方が他方に対して本質的に整列された見かけの方向を有し、いくつかの例では、当該全筋疑似肉製品内のタンパク質鎖の見かけの方向と本質的に整列され、
流体収容空間内の当該流体は、気体である。
【0028】
流体収容空間を占める気体(例えば空気)を有する製品は、マリネーションに適しており、それによって気体の少なくとも一部がマリネード液で置換される。
【0029】
(マリネーション又は他の手段による)液体による気体の置換に言及する場合、液体による気体の置換は、気体が空間の全長に沿って特定の細長空間内で置換され(すなわち、気体が特定の細長空間内で液体と完全に置換され)、空間の一部に沿って置換され(すなわち、気体の数パーセントが細長空間内に依然として保持され)、及び/又はいくつかの細長空間が液体により全く置換されない(すなわち、液体への浸漬前の気体含有量を保持する)ものであり得ることが理解されるべきである。
【0030】
本開示の主題による製品は、最終的なマリネーションされた製品の官能特性に寄与する、少なくとも部分的に変性したタンパク質を、タンパク質塊中に含むと結論付けられた。
【0031】
流体収容空間への液体の効果的な導入を可能にするために、空間の少なくとも一部は、製品の周囲に対して外部に露出されることが好ましい。したがって、いくつかの例では、流体収容空間の少なくとも一部の第1の端部及び/又は第2の端部は、全筋疑似肉製品の外面に対して開放端の状態である。
【0032】
本開示の文脈において、全筋疑似肉製品又はその試料の「外表面」に言及する場合、それは、表面に近接する領域、又は言い換えれば、表面の縁部限界内の領域も包含すると理解されるべきである。いくつかの例では、縁部限界は、表面に対して垂直に測定したとき、製品の外面から最大0.25mmの距離を包含するものとして定義される。
【0033】
いくつかの他の例では、流体収容空間の少なくとも一部の第1の端部及び/又は第2の端部は、全筋疑似肉製品の外面に露出している。
【0034】
タンパク質塊は、タンパク質鎖を含む。本開示の主題の文脈において、全筋疑似肉製品内のタンパク質鎖という用語は、タンパク質塊内の繊維状の形態/形状のタンパク質物質の存在を指すと理解されるべきであり、繊維状の形態は、長さ及び断面寸法を有するものとして定義され、長さは、鎖の断面より少なくとも2倍大きく、繊維状の物質は、いかなる拡大手段も必要とせずに可視化することができる(すなわち、視覚のみによって識別することができる)。タンパク質鎖の断面寸法は、数マイクロメートル程度の小ささ、又は数十若しくは数百マイクロメートル程度の小ささ(例えば、0.1mm程度の小ささ)であり得るが、それに束縛されるものではない。いくつかの例では、タンパク質鎖は、規定された寸法のノズル、例えば付加製造技術で使用されるノズルを通って流れることによって、それらの形状を得る。
【0035】
さらに、本開示の主題の文脈において、「全筋疑似肉製品」という用語は、赤身肉(例えば、牛肉、馬肉、羊肉、鹿肉、猪肉(boar)、野兎(hare)肉)並びに白身肉(例えば、ウサギ(rabbit)、子牛肉(veal)、子羊肉、豚肉(pork))を含むがこれらに限定されない、様々な動物由来の肉に対する植物性代替物/疑似物を包含すると理解されるべきである。いくつかの例では、肉は赤身肉である。いくつかの他の例では、肉は豚肉である。いくつかの例では、疑似肉は家禽を含まない。いくつかの他の例では、疑似肉は魚を含まない。
【0036】
いくつかの例では、本開示の主題の全筋疑似肉製品は、全スラブの形態である。
【0037】
本開示の主題のいくつかの他の例では、全筋疑似肉製品はステーキの形態である。この例では、本開示のステーキ製品は、ステーキの水平面(
図1のXY平面)を共に画定する長さ及び幅と、水平面に対して垂直な断面寸法とを有することによって画定することができる(
図1)。本開示の文脈において、流体収容空間は、厚さ方向(
図1のz方向)に対して平行であり、すなわちステーキの水平面に対して垂直である。
【0038】
タンパク質塊は、流体収容空間を含む。本開示の主題の文脈において、「流体収容空間」に言及する場合(本明細書において「細長空間」又は「細長流体収容空間」と呼ばれることもある)、タンパク質塊の空間的不連続性を形成する食用タンパク質塊内の任意の体積を包含すると理解されるべきである。流体収容空間は、崩壊することなく気体及び/又は液体などの流体(例えば、かかる液体中へのタンパク質塊の含浸後)を保留するか、又は保留することができる、空隙である。空隙は、「閉鎖された空隙」若しくは「本質的に閉鎖された空隙」の形態であってもよく、固体タンパク質塊によって完全に若しくはほぼ完全に包まれていることを意味するか、又は「開放された空隙」の形態であってもよく、タンパク質塊内の他の空隙及び/若しくはタンパク質塊の外部環境と流体連通しているチャネルの形態であってもよい。
【0039】
タンパク質塊は、人間の使用又は消費に許容できかつ安全なものである、様々な供給源由来のものであり得る。
【0040】
本開示の主題のいくつかの例では、食肉代替物を構成するために、全筋疑似肉製品は、非動物由来タンパク質を含む。
【0041】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質は、植物由来(例えば、単離物又は濃縮物)であるか、又は植物由来の食用タンパク質及び/若しくはペプチド及び/若しくはアミノ酸を含む。
【0042】
タンパク質材料は、他の非タンパク質材料、例えば脂肪との組み合わせで1つ又は2つ以上のタンパク質を含むことができる。しかしながら、たとえ脂肪が含まれていても、タンパク質は、以下でさらに説明するように、タンパク質塊内で最も高い割合を有する成分を構成する。
【0043】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質の植物源は、限定されないが、ダイズ、コムギ、マメ科植物(マメ類(pulse)、マメ類(bean)、エンドウマメ、レンズマメ、堅果類)、植物種子及び穀粒(例えば、ヒマワリ、キャノーラ、イネ)、茎又は塊茎タンパク質(例えば、ジャガイモタンパク質)、ナタネ及びトウモロコシのいずれか1つ又は組み合わせとすることができる。
【0044】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質は、マメ科植物(legume)に由来する。マメ科植物/マメタンパク質の、特定の、ただし、非限定的な例には、ダイズタンパク質、エンドウマメタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ハウチワマメタンパク質、リョクトウタンパク質、インゲンマメタンパク質、クロマメタンパク質、アルファルファタンパク質が含まれる。
【0045】
本開示の主題のいくつかの例では、本明細書に開示される疑似肉に適するタンパク質は、ベータゴングリシニン、グリシニン、ビシリン、レグミン、アルブミン、グロブリン、グルテリン、グルテン、グリアジン、グルテニン、マイコプロテインである。
【0046】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質は、藻類、真菌(例えば、酵母)、細菌及び微生物一般などの、植物以外の供給源に由来し得る。
【0047】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質材料は、非哺乳動物供給源由来のものである。
【0048】
本開示の主題のさらにいくつかの他の例では、タンパク質材料の一部は、動物由来成分、例えば、牛肉筋肉、ニワトリ筋繊維、昆虫ベースのタンパク質粉末などを含有することができるか、又は細胞の供給源が動物由来である場合であっても、細胞培養によって達成することができる。
【0049】
本開示の主題のいくつかの例では、本明細書で使用されるタンパク質塊は、哺乳動物由来又は動物由来の成分(細胞培養から得られる成分を除く)を欠くものである。
【0050】
タンパク質塊は、純粋なタンパク質、タンパク質分離物、タンパク質濃縮物、タンパク質粉、テクスチャード植物性タンパク質(texturized vegetable protein、TVP)などのテクスチャードタンパク質の形態をとることができる。
【0051】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、テクスチャー加工植物性タンパク質(TVP)を含む。TVPは、ミートエキステンダー又はベジタリアンミートとして使用されることが当技術分野で知られており、通常、コムギ、エンドウマメなどの植物源から、高せん断、圧力及び熱を使用してタンパク質単離物又は濃縮物を押出すことによって作製される。TVPは、大きな塊から小さなフレークまで様々なサイズで市販されている。
【0052】
本開示の主題のいくつかの例では、TVPを含む場合、タンパク質塊は最大80%v/vのTVPを含み、すなわち、タンパク質塊は純粋なTVPではない。
【0053】
本開示の主題の文脈において、TVPは、乾燥形態のテクスチャー加工植物性タンパク質(膨張TVPとみなされることもある)だけでなく、高水分押出成形(high moisture extrusion、HME)又は高水分押出調理(high moisture extrusion cooking、HMEC)などの結果として当技術分野で知られている高水分形態の両方を示すために使用される。TVPはまた、TVP中の水分レベル及び/又はTVPの膨張度が、乾燥(膨張)形態及びHME(C)形態において典型的に見られるものの間の中間である、任意の「中間」形態のテクスチャー加工植物性タンパク質を意味し得る。
【0054】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、ダイズタンパク質を含む。
【0055】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、エンドウマメタンパク質を含む。
【0056】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、ヒヨコマメタンパク質を含む。
【0057】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、グルテンを含み、グルテンは、単純な水和によってその天然形態で繊維構造を形成することが知られている。
【0058】
理論に束縛されるものではないが、ダイズベース、エンドウマメベース、ヒヨコマメベース、及び/又はグルテンベースの繊維は、印刷ノズルを通して引っ張るか又は押すことによって特定の方向に整列させることができる。
【0059】
タンパク質塊は、単一のタイプのタンパク質又はタンパク質の組み合わせを含むことができる。
【0060】
上記のように、タンパク質塊は、タンパク質材料それ自体以外の物質を含むことができる。本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、少なくとも20%のタンパク質を含み、さらにいくつかの好ましい例では、タンパク質塊は、少なくとも25%のタンパク質、少なくとも30%のタンパク質、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、又はさらに少なくとも80%のタンパク質自体を含む。
【0061】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、脂質(例えば、脂肪及び/又は油)を含まない。
【0062】
本開示の主題のいくつかの他の例では、タンパク質塊は、例えばタンパク質鎖及び最終的な代替肉製品のレオロジー特性、例えば柔軟性を調節するために、及び/又は官能特性を改善するために、脂質を含有する。
【0063】
タンパク質塊は、食用添加物、例えば、これらに限定されないが、デンプン及び食餌栄養繊維(及び他の形態のセルロース系繊維、例えば、柑橘類源に由来する繊維)を含むがこれらに限定されない、タンパク質及び/又は炭水化物源のいずれかに由来する繊維、色素(例えば、アナットー抽出物、カラメル、エルダーベリー抽出物、リコペン、パプリカ、ウコン、スピルリナ抽出物、カロテノイド、クロロフィリン、アントシアニン、及びベタニン)、乳化剤、酸味料(例えば、酢、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びフマル酸)、香味剤又は香味増強剤(例えば、グルタミン酸一ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ローズマリー抽出物、アスパラチン、ケルセチン、及び種々のトコフェロール)、食餌性強化剤(例えば、アミノ酸、ビタミン、及びミネラル)、保存剤、安定剤、甘味料、ゲル化剤、及び増粘剤、を含むことができる。
【0064】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、本質的に軸方向に整列したタンパク質鎖を含む。タンパク質塊内のタンパク質鎖の整列は、様々な技術によって得ることができる。例えば、連続的に押すこと(例えば、押出しの間に行われるような)、連続的に引っ張ること(例えば、スピニングにおいて行われるような)、及びせん断すること(例えば、せん断クエットセルにおいて行われるような)のいずれかによって、流動タンパク質塊に対して特定の方向に一定の機械力を適用することによる。
【0065】
整列技術は、得られる鎖の異方性特性を増強するために、熱的作用(例えば、加熱又は冷却)、化学的及び/又は生物学的薬剤(例えば、凝固、酵素)などを利用し得る。
【0066】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊内のタンパク質鎖の本質的な整列は、熱間押出又は冷間押出などの押出によって得られる。したがって、タンパク質塊は、タンパク質押出物を含む。
【0067】
本開示の主題のいくつかの他の例では、タンパク質の本質的な整列は、例えば、電界紡糸装置を使用して行われる紡糸によって得られる。タンパク質をテクスチャードするためのタンパク質の紡糸には、様々なアプローチが存在し、限定されるものではないが、酵素的アプローチ(典型的にはゲル様構造を得る)、脱水アプローチ(典型的にはタンパク質材料を堅くする)、温度的アプローチ(タンパク質材料の流動性/溶解性に影響を与える)、アンチ希釈(anti-diluent)アプローチ(典型的には湿式紡糸と呼ばれる)、pH的アプローチ(典型的には、タンパク質塊の、例えば、弱酸性条件でより可溶性であるキトサンの溶解度にも影響を及ぼす)が挙げられる。
【0068】
本開示の主題のいくつかの例では、本質的に整列した鎖の形成を容易にするために、タンパク質塊はまた、1つ又は2つ以上の多糖を含むことができる。これらには、限定されるものではないが、水溶性である多糖類又は特定のpHで可溶性であるポリマーが含まれる。かかるポリマーとしては、グアムゴム、キサンタンゴム、k-カラギーナン、キトサン、セルロース、デンプン及びリグニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本開示の主題のいくつかの例では、細長流体収容空間は、タンパク質塊内のタンパク質鎖の方向と本質的に整列している(すなわち、本質的に同じ見かけの方向を有する)。
【0070】
本開示の主題の文脈において、「本質的に」又は「有意に」という用語は、定義されたパラメータからのある程度の偏差(例えば、1%、2%、3%、10%又はさらに最大約20%)も含むと理解されるべきである。
【0071】
本開示の主題の文脈で使用される「見かけの方向」という用語は、製品内のタンパク質鎖及び/又は細長流体収容空間の約40%を有意に超える、場合によっては、50%を超えるものが、約±15度未満、場合によっては、約±10度未満の偏差を有する方向を指し、場合によっては、タンパク質鎖又は空間をそれらの方向に対して垂直な任意の方向から見たとき、約±5度未満である(
図2)。「見かけの方向」という用語はまた、高倍率撮像を使用して見出されるような、鎖の方向又は細長流体収容空間の平均した方向を指し得る。
【0072】
本開示の主題のいくつかの例では、製品のセグメント内の流体収容空間の見かけの方向は、タンパク質鎖の少なくとも約80%、好ましくは95%、好ましくは99%について、製品内のタンパク質鎖の方向に対して概ね平行である。
【0073】
本開示の主題の文脈において、流体収容空間に言及する場合、細長い形状を有する、すなわち、タンパク質塊内の流体収容空間の少なくとも1つの他の寸法よりも少なくとも2倍長い/大きい1つの寸法を有する空隙(「閉鎖された空隙」又は「開放された空隙」のいずれか)を包含すると理解されるべきである。細長流体収容空間は、従来の拡大ツールによって、タンパク質塊内のチャネルとして見ることができ、これは、「細長空間」の定義内に入らないタンパク質塊内の他の流体収容空隙とはいくらか異なる。
【0074】
本開示の主題のいくつかの例では、細長空間の長さは、少なくとも2mm、場合によっては、少なくとも3mm、場合によっては、少なくとも4mm、場合によっては、少なくとも5mm、場合によっては、少なくとも6mm、場合によっては、少なくとも7mm、場合によっては、少なくとも8mm、場合によっては、少なくとも9mm、場合によっては、少なくとも10mm、場合によっては、少なくとも15mm、場合によっては、少なくとも20mm、場合によっては、少なくとも25mm、場合によっては、少なくとも30mm、場合によっては、少なくとも35mm、場合によっては、少なくとも40mm、場合によっては、少なくとも45mmである。
【0075】
本開示の主題のいくつかの例では、細長空間の少なくとも一部(例えば、少なくとも40%)は、疑似肉の1つの寸法に沿った長さの、少なくとも約1/8、場合によっては、約1/4、場合によっては、約1/2、場合によっては、約2/3、場合によっては、約3/5に本質的に相当する長さを有する。理論に束縛されるものではないが、製品の1つの寸法の長さの少なくとも1/2に沿って整列された専用の細長チャネルの導入は、専用の細長チャネルを能動的に形成することなく、同じタンパク質塊及びマリネーション前の同じ熱処理から製造された製品よりも優れた製品(例えばマリネーション後の感覚刺激特性に関して)を提供する。
【0076】
細長流体収容空間は、細長空間の長手方向(長さ)に対して垂直なそれらの断面寸法(場合によっては、厚さという用語でも呼ばれる)によって画定することができる。本開示の主題のいくつかの例では、細長空間の厚さ(断面寸法)は、少なくとも20μm、場合によっては、少なくとも50μm、場合によっては、少なくとも70μm、場合によっては、少なくとも100μm、場合によっては、少なくとも120μm、場合によっては、少なくとも150μm、場合によっては、少なくとも1700μm、場合によっては、少なくとも200μm、場合によっては、少なくとも220μm、場合によっては、少なくとも250μm、場合によっては、少なくとも270μm、場合によっては、少なくとも300μm、場合によっては、少なくとも320μm、場合によっては、少なくとも350μm、場合によっては、少なくとも370μm、場合によっては、少なくとも400μm、場合によっては、少なくとも420μm、場合によっては、少なくとも450μm、場合によっては、少なくとも470μm、場合によっては、少なくとも500μmである。いくつかの例では、細長空間は、(断面が最大で細長空間の長さの半分である限りにおいて)20μm~10mmの断面寸法を有する。
【0077】
本開示の主題のいくつかの例では、細長空間は、ロッド形状を有し、すなわち、本質的に直線のチャネルであり、チャネルの大部分(例えば、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は>80%)は、タンパク質鎖の長手方向に対して本質的に平行である。
【0078】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質塊は、形状が非晶質である流体収容空間を含み、すなわち、塊中に1つの他の寸法よりも少なくとも2倍大きい1つの寸法が存在しない。言い換えれば、タンパク質塊は、本明細書で定義される細長空間とは先験的に異なる空間も含み得る。
【0079】
本開示の主題のいくつかの例では、非晶質空間は、限定されないが、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの気体発生化合物を組み込むことによって形成される。これらの空間は、少なくとも1μmの断面寸法によって画定されており、非晶質空間は、上記で定義したように、閉鎖された空隙であっても開放された空隙であってもよい。
【0080】
本開示の主題のいくつかの例では、疑似肉製品は、本明細書で定義される流体収容空間の2つの集団を含み、少なくとも1つは細長空間であり、少なくとも他の1つは、本明細書で定義される形状が非晶質である。
【0081】
細長流体収容空間は、本質的に同一の形状及び/又は寸法を有することができるか、又は異なっていてもよい。いくつかの例では、少なくとも細長空間は、本質的に同じ断面寸法を有する。
【0082】
本開示の主題のいくつかの例では、少なくとも細長流体収容空間は、タンパク質塊(製品)全体にわたって本質的に同じ断面寸法を有する。
【0083】
流体収容空間は、タンパク質塊内に分布している。分布は、第1の流体収容空間とその隣接する流体収容空間との間の距離によって定義することができる。例えば、流体収容空間は、仮想中心によって画定されてもよく、その隣接する流体収容空間からのその距離は、それらのそれぞれの仮想中心間の距離によって画定され得る。
【0084】
本開示の主題のいくつかの例では、2つの隣接する流体収容空間の間の距離は、少なくとも0.5mm、場合によっては、少なくとも0.6mm、場合によっては、少なくとも0.7mm、場合によっては、少なくとも0.8mm、場合によっては、少なくとも0.9mm、場合によっては、少なくとも1.0mm、場合によっては、少なくとも1.1mm、場合によっては、少なくとも1.2mm、場合によっては、少なくとも1.3mm、場合によっては、少なくとも1.4mm、場合によっては、少なくとも1.5mm、場合によっては、少なくとも1.6mm、場合によっては、少なくとも1.7mm、場合によっては、少なくとも1.8mm、場合によっては、少なくとも1.9mm、場合によっては、少なくとも2.0mmである。
【0085】
本開示の主題のいくつかの例では、当該仮想中心間の距離は、最大で10mmである。いくつかの例では、距離は最大で9mm、場合によっては、最大で8mm、場合によっては、最大で7mm、場合によっては、最大で6mm、場合によっては、最大で5mm、場合によっては、最大で4mm、場合によっては、最大で3mm、場合によっては、最大で2mmである。
【0086】
本開示の主題のいくつかの例では、当該仮想中心間の距離は、約0.5mm~10mm、又は0.5mm~10mmの任意の範囲であり、そのような可能な範囲のそれぞれは、本開示の別個の独立した例を構成する。
【0087】
液体収容空間はまた、全筋疑似肉製品の総体積/重量のうち、液体収容空間が占める体積又は液体収容空間が構成する重量によって画定され得る。
【0088】
本開示の主題のいくつかの例では、流体収容空間は、製品の総体積のうちの1%~20%の体積を占有/構成するか、又は占有/構成するように設計される。
【0089】
いくつかの他の例では、流体収容空間は、製品の総重量のうちの10重量%~40重量%の量の流体を占有/構成するか、又は収容するように構成される。
【0090】
いくつかの他の例では、流体収容空間は、タンパク質塊による液体の吸収のための比較的高い表面積を提供し、例えば、マリネードへの浸漬後に、細長空隙/チャネル内に液体を保留/保持する。吸収され占有される全液体は、製品の総重量の10重量%~50重量%、場合によっては、15重量%~40重量%を構成し、製品は必ずしも流体収容空間内にのみ保持されるわけではない。
【0091】
流体収容空間の存在及び液体の能動的導入の前に製品に適用される処理(例えば、マリネードへの含浸による)は、理論に束縛されるものではないが、同じタンパク質質量を有するが、本明細書で定義される細長流体収容空間が存在しない同様の製品と比較して、より高い液体吸収及び細長空間内に残る高レベルの自由水を可能にすると考えられる。
【0092】
製品全体に対する流体収容空間の体積%又は重量%は、以下の手順のいずれかによって決定することができる:
体積の決定-流体収容空間の体積は、(製品の完全性を損なうことなく)最大になるまで製品に圧力を加える前後に製品の体積を測定し、体積の差を測定することによって決定することができる。代替として、体積は、マイクロCT、超音波(Ultrasound、US)、並びに当技術分野で公知の他の撮像技術を使用して決定することができる。体積は、限定されないが、
図3にも示される以下のマイクロCT画像解析手順を使用して決定されてもよい。具体的には、MATLABソフトウェアなどであるがこれに限定されない画像解析ツールを利用して、走査された試料の2D断面画像ファイル(画像スタックとしてのMicro-CT 2D出力、302)は、例えば、グレースケール母集団による閾値化(304)によって、好ましくは以下の閾値:最も可能性の高い非0及び非飽和グレーレベルの、グレーレベルの半分に従って、バイナリ画像(すなわち、白黒画素のみを含む306)に変換される。次に、2D画像がコンパイルされて(一定グリッドコンパイルによって、308)、バイナリ3Dマトリックスが形成される(310)(例えば、白黒ボクセルのみを含む)。空隙の総体積百分率を計算するために、試料内に位置する空隙を表すボクセルの合計を、3Dマトリックスを構成するボクセルの総数で除算して(312)、空隙体積百分率を求める(314)。言うまでもなく、当業者によって理解されるように、体積を測定するための他の技法も使用することができる。
【0093】
重量%の決定-流体収容空間に収容される流体の重量は、全ての流体が除去されるまで(製品の完全性を損なうことなく)製品に圧力を印加する前後に製品の重量を測定し、重量の差を測定することによって決定することができる。
【0094】
全筋疑似肉製品は、付加製造技術によって製造することができる。したがって、本開示の主題の第2の態様によれば、全筋疑似肉製品を製造する方法が提供される。本開示の方法は、少なくとも以下の工程:
-タンパク質鎖を含むタンパク質塊の2つ以上の層を別の層の上に配置して多層タンパク質塊を形成すること、
-多層タンパク質塊に、タンパク質塊内の複数の細長流体収容空間の配置を引き起こす制御された条件を適用することであって、複数の流体収容空間が、長さ及び断面寸法によって画定されており、条件が、
(i)流体収容空間の少なくとも一部が、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間であり、(ii)細長空間の長さが、少なくとも2mmであり、かつ、断面寸法よりも少なくとも2倍大きく、(iii)細長空間の少なくとも一部(例えば、少なくとも40%)が、見かけの方向を有し、すなわち、当該疑似肉製品内で互いに対して本質的に整列している、ように選択される、適用すること、を含み、流体収容空間内の流体は、気体であり、当該流体収容空間は、(例えば、全筋疑似肉製品の少なくとも一部が当該液体に浸漬されると)液体を収容するのに適している。
【0095】
本開示の方法の文脈において、「配置する」に言及する場合、それは、タンパク質塊の鎖を置換床上に配置することを可能にし、製品全体が製造されるまで、配置された塊の別の層の上に配置された鎖の1つの層を形成する、任意の技術を包含すると理解されるべきである。タンパク質塊は、流体、半流体、又は半固体の形態で配置することができる。本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、コンピュータ生成3D設計ファイルに従って規定された配列で鎖を配置することである。
【0096】
本開示の主題のいくつかの例では、用語「配置する」は、以下に記載される犠牲材料などのタンパク質鎖以外の添加剤又は材料などの製品の他の成分の適用に関しても使用することができる。そのような例では、粉末(固体)物質も配置できることを理解されたい。
【0097】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、タンパク質塊の一部を形成する水性液体以外の水性液体物質の導入を含まない。
【0098】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、3D印刷技術などの従来の付加製造技術に従う。
【0099】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、押出により行われる。
【0100】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質鎖の配置は、制御された条件下で行われる/実施される。
【0101】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、タンパク質鎖間の本質的な整列を提供する様式でなされる。
【0102】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、タンパク質鎖の一部と細長空間との間の本質的な整列を提供する様式でなされる。
【0103】
本開示の主題のいくつかの例では、配置することは、細長空間の第1の端部及び/又は第2の端部の少なくとも一部分が、疑似肉製品の外面に少なくとも部分的に露出されるようになされる。
【0104】
「制御された条件」に言及するときは、とりわけ、配置速度、配置温度、配置方向、配置間隔/距離、配置湿度/雰囲気などに言及するものとして理解されるべきである。
【0105】
本開示の主題のいくつかの例では、タンパク質鎖の少なくとも一部は、それらの間の制御された所定の距離で配置される。配置された鎖間の制御された距離は、本明細書に開示される細長流体収容空間を形成する。したがって、細長流体収容空間の間の空間の寸法及び配置/位置決めは、配置されたタンパク質鎖間の距離によって決定される。
【0106】
本開示の主題のいくつかの例では、流体収容空間は、タンパク質鎖の少なくとも一部と並んで中間鎖の形態で犠牲材料を配置することによって、すなわち、犠牲材料の配置された鎖がタンパク質鎖に隣接することによって形成される。したがって、いくつかのタンパク質鎖は、中間鎖を含有するいくつかの犠牲材料と並置されるが、好ましくは、各中間鎖は、タンパク質鎖によって取り囲まれる(すなわち、2つの中間鎖は、並んで配置されない)。
【0107】
多層タンパク質塊が形成されると、後述するように犠牲材料が除去され、それによって複数の細長流体収容空間が形成される。
【0108】
中間鎖を形成する犠牲材料は、タンパク質塊内の細長空間の所望の形状に成形することができ、必要に応じて除去することができる任意の材料とすることができる。
【0109】
いくつかの例では、犠牲材料は、タンパク質堆積ステップ中に配置される。
【0110】
いくつかの例では、犠牲材料の除去は、(i)固体から液体又は液体から気体又は固体から気体などの犠牲材料の相転移、(ii)水及び/若しくは油などの液体媒体への溶解、並びに/又は(iii)タンパク質塊からのその除去を可能にする他の化合物との反応のいずれか1つを可能にする化学的及び/又は物理的プロセスによって行われる。
【0111】
本開示の主題のいくつかの例では、犠牲材料の除去は、製品を湿度、熱、振動、pH制御環境、真空のうちのいずれか1つ又は組み合わせに曝露することによって行うことができる。
【0112】
例えば、犠牲材料の除去は、水中での犠牲材料の溶解度を増加させることによって、例えば、pHを変化させることによって、及び/又は含水量を上昇させることによって犠牲材料を溶解させることによって、及び/又は熱及び/又は振動の形態でシステムに運動エネルギーを導入することによって材料の溶解度を増加させることによって、行うことができる。別の例は、犠牲材料の溶融又は温度の上昇によるゾル-ゲル転移の誘導を含むことができる。犠牲材料が液体の形態になったら、それをタンパク質塊から排出して、所望の空間を残すことができる。
【0113】
本開示の主題による、犠牲材料の除去のための別の例は、犠牲材料の気体への相変化を誘導することとすることができ、これは次にタンパク質塊から排出される。例えば、真空及び低温下での氷の昇華である。
【0114】
本開示の主題のいくつかの例では、犠牲材料は、多糖又は温度感受性/影響を受けた多糖の組み合わせであり、したがって、全筋疑似肉製品の温度を制御する(それによって多糖を液化する)ことによって制御可能に除去することができる。影響を受ける温度の非限定的なリストは、寒天及び/又はグアーガムである。多糖は、粉末又はゲルなどの様々な構成で堆積させることができ、その後、水に溶解させるか、又はより高温で溶融させることによって液化することができる。次いで、液化された多糖を、タンパク質塊から滴下することによって除去することができる。
【0115】
さらに、例えば、犠牲材料は、溶解によって除去される塩又は塩の組み合わせであってもよい。例えば、NaCl、CaCl2、及び/又はKClの堆積、及びその後の、塩の溶解をもたらす水への浸漬による除去である。
【0116】
本開示の主題のいくつかの例では、本方法は、犠牲材料が除去される前に、中間鎖を含有する犠牲材料に対して多層タンパク質塊を圧縮することを含む。
【0117】
本開示の主題のいくつかの例では、細長流体収容空間は、当該複数の空間の形成をもたらす機械的な力を多層タンパク質塊に加えることによって形成される。
【0118】
本開示の主題のいくつかの例では、細長流体収容空間を形成するための機械力は、制御された予め設計された方法でタンパク質塊を穿孔することを含む。例えば、機械的穿刺は、針床、スパイク床、穿孔手段などを使用することによる。
【0119】
細長流体収容空間が形成された後、多層タンパク質塊は、1つ又は2つ以上の追加の製造ステップを受けることができる。
【0120】
本開示の主題のいくつかの例では、追加の製造ステップは、流体収容空間を含む多層タンパク質塊の熱処理を含み、流体は気体である。熱処理は、これに限定されるものではないが、約75℃の真空調理又は約99℃のコンビ-スチーマー処理を含み得る。温度範囲は、50~100℃の範囲であり得る。
【0121】
熱処理後、製品を包装して貯蔵することができ、又は追加の製造工程に供して、すぐに消費できる製品を提供することができる。
【0122】
本開示の主題のいくつかの例では、追加の製造ステップは、複数の開放空間に液体を導入することを含む。液体の導入は、多層タンパク質塊を液体内に浸すか、浸漬するか、又は他の方法でマリネーションすることによって行うことができる。この目的のために、流体収容空間は、全筋疑似肉製品の少なくとも一部が当該液体に浸漬されると、液体を収容するのに適している。
【0123】
いくつかの例では、液体は水含有液体である。水含有液体は、香味剤、着色剤、アミノ酸、炭化水素、脂肪酸、塩、pH調節剤、ビタミンなどの食用添加物を含む水溶液とすることができる。
【0124】
いくつかの例では、液体は、油相及び/又は水相中に香料、着色剤、アミノ酸、炭化水素、脂肪酸、塩、pH調節剤、ビタミン、乳化剤などの添加剤を有する、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、ダブルエマルジョンなどのエマルジョンである。エマルジョンの油は、ヒマワリ油、ナタネ油、オリーブ油などの任意の食用油であり得る。
【0125】
いくつかの例では、液体は、当技術分野で公知のものなどのマリネードである。
【0126】
いくつかの他の例では、液体は、血液レプリカ、すなわち、多層タンパク質塊に血のような外観及び風味を提供する風味剤及び着色剤を含む組成物である。
【0127】
流体収容空間、特に細長空間における液体の存在は、製品製造後に、とりわけX線を利用して対象の内部をスライスごとに見るマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)などの3D撮像技術によって決定することができる。本開示による製品内の細長空間の存在を決定する非限定的な例が、実施例2に提供される。代替として、流体収容空間は、磁気共鳴撮像(magnetic resonance imaging、MRI)を使用して、並びに超音波(ultrasound、US)を使用することによって、検出及び分析することができる。これは、最終的な液体充填製品だけでなく、気体充填製品に対しても行うことができる。
【0128】
本明細書で使用される場合、原語における「a」(1つの)、「an」(1つの)、及び「the」(前記、該)の記載形式は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形及び複数形を含む。例えば、「タンパク質」(a protein)という用語は、例えばタンパク質塊中の、1つ又は2つ以上のタイプのタンパク質を含む。
【0129】
さらに、本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物が、列挙された成分、例えばタンパク質塊及び流体収容空間を含むが、脂質、塩、水などの他の要素を除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」という用語は、例えば、記載された要素を含む製品が、全筋疑似肉製品の特性に本質的な重要性を有し得る他の要素を除外する製品を定義するために使用される。したがって、「からなる」とは、微量の要素を超える他の要素を除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0130】
さらに、全ての数値は、例えば、全筋疑似肉製品を構成する要素の量又は範囲について言及する場合、表示した値の(+)又は(-)にて最大20%、場合によっては、最大10%変動する近似値である。明示的に述べられていない場合でも、全ての数値指定の前に「約」という用語が付いていると理解するものとする。
【0131】
ここで、本発明は、本発明に従って実施された実験の以下の説明において例示される。これらの例は、限定ではなく、例解の性質で意図されていると理解されたい。上記の教示を鑑み、これらの例には多くの修正及び変形が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、以下に具体的に説明されるよりも、無数の可能な方法で、別様に実施され得ることが理解されるべきである。
【0132】
非限定的な例の詳細な説明
一般に、全筋疑似肉製品は、様々な製造方法によって製造されてもよく、それらの中には、付加製造技術があり、特に、タンパク質鎖のテクスチャードされた集合体の積み重ねられた層を印刷する3Dプリンタを使用する。
【0133】
実施例1-全筋疑似肉製品の調製
以下の非限定的な実施例は、本明細書に開示される全筋疑似肉製品を調製するための3つの異なる代替的手順を提供する。
【0134】
実施例1A-針床を使用した全筋疑似肉製品の製造
この非限定的な例によれば、配向的に画定された開放空間は、製造の完了時又は製造段階中(例えば、付加製造)のいずれかにおいて、全筋疑似肉製品を機械的に打ち抜くことによって形成される。機械的穿刺プロセスは、スパイク又は針を使用して達成される。
【0135】
図4A及び
図4Bは、同じ全筋疑似肉製品から切断されたが、全筋疑似肉製品(ステーキを半分に切断する前)を着色マリネードに浸漬した後のステーキ試料の画像である。
図4A及び
図4Bは、
図4A中のより暗い線によって示されるように、マリネードなどの液体がスラブ全体の内部空間に浸透することを可能にするための細長空間の重要性を実証する。
【0136】
実施例1B-3Dコンピュータモデルを使用した疑似肉の製造
本開示の全筋疑似肉製品を得るためにタンパク質塊内に整列した細長流体収容空間を組み込むために、選択されたタンパク質鎖間に規定され制御された間隙を維持することによって、全筋疑似肉製品の付加製造(例えば、3D印刷)段階におけるタンパク質鎖の印刷中に細長空隙/チャネルが形成される。細長空隙/チャネルの位置及び配向は、3Dプリンタを使用して実装される設計された3Dコンピュータモデルに従って画定される。3Dプリントされた鎖の製品の充填密度及び配向は、特定の配向を有する細長チャネルを製造するように調整される。これに関連して、チャネル(細長空間)の形成を可能にしながら、印刷のための3つの可能な3Dモデルを示す
図5A~
図5Cを参照する。
【0137】
図6A~
図6Bは、(3D印刷によって)細長空間を有して製造されたステーキ試料の画像(
図6A)、及び細長空間を有さずに製造されたステーキ試料の画像(
図6B)である。これに関連して、細長空間を示す
図4Aも参照されたい。
【0138】
図6A及び
図6Bは、
図6Bにおいて本質的に欠如している、白丸によってマークされたものなどの、十分に可視化された空隙の存在によって明確に区別される。
図6Bは、その中に液体を保持するために使用することができる、小さい、あまり目立たない空隙、さらに細長チャネルを含む。
【0139】
実施例1C-犠牲材料を使用した全筋疑似肉中の細長空間の製造
この非限定的な例によれば、専用の犠牲材料が、印刷製品の個々の層の付加製造中にタンパク質鎖間に組み込まれる。規定量の全筋疑似肉製品が完成した後、犠牲材料が除去される。例えば、犠牲材料は寒天-寒天水ベースのゲルであり、その除去は熱処理による。熱は、粘性ゲルを水溶液に変え/流動化し、それが試料から流れ出ることを可能にし、細長空隙を残す。
【0140】
実施例2 細長気体充填空間の存在を決定するためのマイクロCT画像解析
マイクロCTなどの撮像技術を使用して取得された画像を処理することによって、製品を犠牲にする必要なく、完成した3D全筋疑似肉製品内の細長空間の存在を識別することが可能である。この手順を
図7のブロック図に概略的に示す。分析手順の前に、2cm
*2cm
*ステーキ厚さ[XZ
*YZ
*XY]の寸法を有する全筋疑似肉からのステーキ試料を用いてマイクロCT撮像を行い、マイクロCT 2D出力(700)を提供する。
【0141】
具体的には、
図7に示されるように、マイクロCT 2D出力(700)を分析することは、閾値処理ステップ(702)を適用することを含み、マイクロCTデータ出力画像スタック(BMP、JPEG等)は、グレースケール閾値処理を通して、バイナリ画像スタック(704)に変換される。
【0142】
バイナリ画像はコンパイル(706)され、マイクロCTピクセル(x,y=42ミクロン)及びスライシング(50ミクロン)解像度に従って設定されたボクセル寸法を有する3Dマトリックス(708)を形成する。
【0143】
ステップ710において、3Dマトリックスを含むボクセルは、次に、オープンスペースボリュームの誤った表現を防止するために、1ピクセルだけ反転され、拡張される。相互接続された画素は、次に、各オープンスペースボリュームを表すクラスタリスト(712)を形成するために結合される。
【0144】
この目的のために、クラスタは、
図8に概略的に示されるように、それらの26個の最も近いボクセル近傍のうちの少なくとも1つによって相互接続される全てのボクセルのセットであり、中心ボクセル(ブラックボックスとして示される)は、近傍ボクセル1-26によって取り囲まれる。この例では、中心ボクセルが特定のクラスタに関連付けられた空隙である場合、位置1~26の空隙は同じクラスタに関連付けられる。
【0145】
クラスタリストからの各クラスタについて、特徴抽出(714)が行われる。特徴は、長さ(z方向に沿ったスパンとして定義される)、厚さ(x及びy寸法に沿った結合スパン)、アスペクト比(長さ及び厚さの比)を含み得る。
【0146】
最後に、ステップ716において、各クラスタの配向は、例えば、層の垂直位置に対して各層内の空隙の重心を線形に適合させることによって決定される。配向は、垂直軸に対する角度(度)として表される。
【0147】
図9Aは、マイクロCT画像スライスのスタックから作成された全筋疑似肉製品の試料(900)の3-D画像であり、異なるサイズの空隙を示す(より大きいものは910、より小さいものは920)。分析は、細長空隙/チャネル(910)である空隙を識別し、それらの特性を計算する。
【0148】
【0149】
実施例3 試料の縁部を通して外部環境に露出された細長空間の割合を決定するためのマイクロCT画像解析
試料の縁部限界(本明細書では外面とも呼ばれる)は、垂直軸に対して垂直に測定したとき、試料のいずれかの縁部から0.25mm以下の距離で定義された。換言すれば、試料の縁部は、3D画像に基づいて、試料の境界における0.25mm厚の「シェル」として定義される。縁部限界に達するように計算された細長空隙は、試料の周りの環境に対して開いているものとして分類される。
【0150】
実施例2に示したのと同じ方法で計算されたクラスタに基づいて、各クラスタについて、その画素のいずれかが定義された縁部限界内にあるかどうかが判定される。次いで、試料の縁部に達する細長空隙の割合を計算する(
図10)。
【0151】
具体的には、
図10に示されるように、画像スタック(1000)として受信されるマイクロCT 2D出力を分析することは、マイクロCTデータ出力画像スタック(BMP、JPEG等)がグレースケール閾値化を通してバイナリ画像スタック(1004)に変換される、閾値化(1002)のステップを適用することを含む。
【0152】
次いで、バイナリ画像は、マイクロCTピクセル(x,y=42ミクロン)及びスライシング(50ミクロン)解像度に従って設定されたボクセル寸法を用いて、3Dマトリックス(1008)を形成するように、一定グリッドコンパイルによってコンパイル(1006)される。
【0153】
ステップ1010において、3Dマトリックスを含むボクセルは、次に、オープンスペースボリュームの誤った表現を防止するために、1ピクセルだけ反転され、拡張される。相互接続された画素は、次に、各オープンスペースボリュームを表すクラスタリスト(1012)を形成するために結合される。
【0154】
ステップ1014において、試料の縁部限界(1016)は、試料の外側境界から0.25mm以下の距離として定義される。その後、試料の定義された縁部限界内にあるボクセルを含むクラスタが識別(1018)され、細長空隙/チャネルの総数のうち、試料の縁部に達する細長い空隙を含むクラスタの割合が計算(1020)される。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)タンパク質鎖を含むタンパク質塊と、(ii)前記タンパク質塊内の複数の流体収容空間であって、長さ及び前記長さに対して垂直な断面寸法を有する複数の流体収容空
間、を
含み、以下を充足する全筋疑似肉製品;
前記流体収容空間の少なくとも一部は、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長空間であり、
前記流体収容細長空間の長さ
は、少なくとも2mmであり、かつ前記断面寸法
より少なくとも2倍
長く、
前記タンパク質鎖
は、互いに対して本質的に整列しており、
前記流体収容細長空間の少なくとも60%は、前記タンパク質鎖の長手方向に対して本質的に平行であり、
前記流体収容空間内の前記流体
は、気体である
全筋疑似肉製品。
【請求項2】
細長空間の前記第1の端部及び/又は前記第2の端部の少なくとも一部が、
全筋疑似肉製品の外面に少なくとも部分的に露出している、請求項1に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項3】
流体収容空間の少なくとも一部が、非晶質の形状である、請求項1又は2に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項4】
各流体収容細長空間が、仮想中心によって画定されており、その隣接する細長空間から、それらのそれぞれの仮想中心間の距離が0.5mm~10mmで
離隔されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項5】
複数の流体収容細長空間が、本質的に同じ長さ及び/又は同じ断面寸法を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項6】
気体が、空気、酸素、窒素及び二酸化炭素並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項7】
気体が、空気である、請求項6に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項8】
流体収容空間の体積が、
製品の総体積の少なくとも5%を構成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項9】
全スラブの形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項10】
ステーキの形態であり、
長さ及び幅により水平面が画定され、
断面寸法が前記水平面に垂直であり、細長流体収容空間が、前記水平面に対して本質的に垂直である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項11】
マリネードによるマリネーションに適しており、前記マリネードが、
流体収容空間の少なくとも一部において前記気体を置換する、請求項1~10のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項12】
タンパク質塊が、テクスチャー
ドタンパク質を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品。
【請求項13】
以下を含む、マリネーションに適した
全筋疑似肉製品を製造する方法
;
タンパク質鎖を含むタンパク質塊の2つ以上の層を、別の層の上に配置して、多層タンパク質塊を形成する
こと、
多層タンパク質塊に、
タンパク質塊内の複数の流体収容細長空間の配置を引き起こす制御された条件を適用する
こと、ただし、複数の流体収容細長空間
は、ある長さ及びある断面寸法によって画定されており、
前記条件
は、
(i)
流体収容細長空間の少なくとも
一部は、第1の端部と第2の端部との間に延在しており、
(ii)
流体収容細長空間の
長さは、少なくとも2mmであり、
断面寸法
より少なくとも2倍大きく、
(iii)
流体収容細長空間の少なくとも
60%は、タンパク質鎖の長手方向に対して本質的に平行であり、
タンパク質鎖が互いに対して本質的に整列するように選択され、
流体収容空間内の前記
流体は、気体であり、
流体収容空間
は、液体を収容するのに適している。
【請求項14】
流体収容細長空間の少なくとも
一部の第1の端部及び/又は
第2の端部の少なくとも一部が、
全筋疑似肉製品の外面に露出している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
条件が、タンパク質鎖の少なくとも一部を、それらの間の距離を制御して配置することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
条件が、タンパク質鎖の少なくとも一部の間に中間鎖の形態の犠牲材料を配置する
こと、及び多層タンパク質塊が形成されると、
犠牲材料を除去するか又は除去
を解発し、それによって前記複数の流体収容細長空間が形成される
こと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
条件が、複数の流体収容細長空間
の形成をもたらす
機械力を多層タンパク質塊に適用することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
機械力が、タンパク質塊を穿刺することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
流体収容細長空間の位置及び寸法が、
予め設計された疑似肉の3Dモデルによって決定され
ている、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質鎖の前記2つ以上の層の
配置が、付加製造技術に
よって行われる、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
多層タンパク質塊を前記中間鎖に対して圧縮することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
犠牲材料の除去が、
多層タンパク質塊を熱、溶解媒体、pH、振動、真空のうちのいずれか1つ又は組み合わせに曝露することによ
って行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
多層タンパク質塊を熱処理することを含む、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
液体が、マリネードである、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
流体収容細長空間が、
全筋疑似肉製品の少なくとも一部が液体に浸漬されると、前記液体を収容するのに適している、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
マリネーションされた
全筋疑似肉を製造する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の
全筋疑似肉製品の少なくとも一部をマリネードに浸漬することを含む、方法。
【国際調査報告】