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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】吸引ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20240903BHJP
   A61F 2/97 20130101ALI20240903BHJP
【FI】
A61F2/04
A61F2/97
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516375
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2021075097
(87)【国際公開番号】W WO2023036445
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524094664
【氏名又は名称】ファオアーツェー ステント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハイス,コンスタンティン
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA14
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC20
4C267CC23
4C267HH08
4C267HH20
(57)【要約】
本発明は、例えば局所的な吻合不全の治療のために、中空器官内の特定の解剖学的領域への漏出の真空による密閉を提供するために使用され得る、ヒトまたは動物の患者の中空器官の中に、特に胃腸管の中に導入するためのステントに関する。したがって、ヒトまたは動物の身体の中空器官の中に、好ましくは胃腸管の中に、特に腸の中に導入するためのステント(10)が提案され、これは本体(12)の一つの端部から本体(12)の長手方向に対向する端までの内部の流体通路(18)を画定する壁(32)を有する、半径方向に拡張可能な本体(12)と、液密で可撓性を有する第1層(20)であって、前記壁(32)の表面(34、36)を、その全周に沿って、および前記本体(12)の長手方向に第1所定領域に沿って覆う、第1層(20)と、弾性を有し多孔質の第2層(22)であって、前記壁(32)の外面(36)を、その全周に沿って、および前記本体(12)の長手方向に第2所定領域に沿って覆い、ならびに第1層(20)を少なくとも部分的に覆う、第2層(22)と、を備える。さらに、第1層(20)は、前記壁面(34、36)に配置され、少なくとも部分的に前記壁(32)を通って半径方向に延在する、および/または、第2層(22)は、本体(12)に機械的に固定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の身体の中空器官の中に、好ましくは胃腸管の中に、特に腸の中に導入するためのステント(10)であって、
半径方向に拡張可能な本体(12)であって、前記本体(12)の一つの端部から、前記本体(12)の長手方向に対向する端部まで、内側の流体通路(18)を画定する壁(32)を有する、本体(12)と、
液密で可撓性を有する第1層(20)であって、前記壁(32)の表面(34、36)を、その全周に沿って、および前記本体(12)の長手方向に第1所定領域に沿って覆う、第1層(20)と、
弾性を有し多孔質の第2層(22)であって、前記壁(32)の外面(36)を、その全周に沿って、および前記本体(12)の長手方向に第2所定領域に沿って覆い、ならびに前記第1層(20)を少なくとも部分的に覆う、第2層(22)と、を備え、
前記第1層(20)は、前記壁面(34、36)に配置され、少なくとも部分的に前記壁(32)を通って半径方向に延在する、および/または、第2層(22)は、本体(12)に機械的に固定される、ステント(10)。
【請求項2】
前記第1層(20)は、前記壁(32)の内面(34)および外面(36)を覆う、請求項1に記載のステント(10)。
【請求項3】
前記第1所定領域および/または前記第2所定領域は、本質的に連続した断面領域を有する前記本体(12)の領域に対応する、請求項1または2に記載のステント(10)。
【請求項4】
前記第1所定領域および/または前記第2所定領域は、前記本体の少なくとも1つの端部領域(14、16)によって長手方向に画定され、
前記少なくとも1つの端部領域(14、16)は、拡大された半径方向の延在部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項5】
前記本体(12)の長手方向断面において、前記少なくとも1つの端部領域は、マッシュルーム形状、ドーム形状、トロイダル形状、またはドーナツ形状を有する、および/または、前記本体(12)は、バーベル形状を有する、請求項4に記載のステント(10)。
【請求項6】
前記第1所定領域および前記第2所定領域の両方は、前記対向する端部領域(14、16)の両方によって画定される、請求項4または5に記載のステント(10)。
【請求項7】
前記第2層(22)は、長手方向において、前記対向する端部領域(14、16)によって形状が適合する様に機械的に固定される、請求項6に記載のステント(10)。
【請求項8】
前記第2層(22)は、
第1糸部分(24)が、前記第2層(22)の外面に少なくとも1つの小穴(24)を設けるように前記第2層(22)の中に配置され、第2糸部分(28)が、前記第2層(22)によって覆われていない前記本体(12)の隣り合う端部領域(14、16)において、前記少なくとも1つの小穴(24)を対応する接続点(26)に接続して、少なくとも1つの糸によって前記本体(12)に機械的に取り付けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項9】
少なくとも2つの小穴(24)は、前記第1糸部分(24)によって設けられ、
前記小穴(24)は、円周方向に離間している、請求項8に記載のステント(10)。
【請求項10】
前記小穴(24)は、円周に沿って等間隔で配置される、および/または、3~6または4つの小穴(24)は、前記第1糸部分(24)によって設けられる、請求項9に記載のステント(10)。
【請求項11】
前記第2糸部分(28)は、互いに隣接する接続点(26)と小穴(24)との間で互い違いになっている、および/または、それぞれの接続点(26)は、前記第2糸部分(28)によって、隣接する2つの隣り合う小穴(24)に接続される、請求項9または10に記載のステント(10)。
【請求項12】
各接続点(26)は、隣接する2つの隣り合う小穴(24)に対して本質的に等距離に配置される、請求項9~11のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項13】
前記第1糸部分(24)は、隣接する小穴(24)間の前記第2層(22)の材料内に配置される、請求項8~12のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項14】
前記第1糸部分(24)および前記第2糸部分(28)は、単一の糸から形成される、請求項8~13のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項15】
前記隣接する端部領域(14、16)は、カニューレ(30)を収容するように構成される、請求項8~14のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項16】
前記第2層(22)と前記第1層(20)との間に配置され、本質的に前記本体(12)の外側に収容されるカニューレ(30)をさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のステント(10)。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のステント(10)を圧縮状態で有するカテーテル(40)を含む、ステント(10)を標的解剖学的領域に送達および展開するための送達システム。
【請求項18】
前記カテーテル(40)は、可撓性材料で作製された遠位の端部キャップ(42)を備え、
前記端部キャップ(42)は、内部空洞(46)を画定し、長手方向に凸状の丸みを帯びた端面(44)を有し、
前記端面は、円周方向に等間隔に配置された、その外面から前記内部空洞(46)に向かって、少なくとも3つ、好ましくは4つのスリット(48)を有する、請求項17に記載の送達システム。
【請求項19】
2つの円周方向に隣接するスリット(48)によって画定される前記端面の形状は、その自由端において切頭されている、請求項18に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ヒトまたは動物の患者の中空器官の中に、特に胃腸管の中に導入するためのステントに関する。そのようなステントは特に、例えば局所的な吻合不全の治療のために、中空器官内の特定の解剖学的領域への漏出の真空による密閉を提供するために使用され得る。
【0002】
〔背景技術〕
胃腸管における外科的縫合(吻合)における漏出は最も危険であり、それゆえに腹部領域における手術後の最も重大な合併症の1つを構成する。漏出が生じた場合、胃または腸の内容物は腹腔に入り、したがって、今日でも症例の約20%において依然として致命的である腹膜炎をもたらす。このような漏出を治療することは、腸の漏出した内容物のために既に起こっている正確な位置および損傷に依存する。最良の場合には、縫合の治癒が遅延され、手術の機能的結果、例えば排せつ抑制能力が損なわれる。しかしながら、しばしば、患者の生命を危険にさらさないために、腸管の連続性の除去および人工肛門の取り付けを伴う再手術などの、かなり侵襲的な方法が必要とされる。人工肛門を取り付けるプロセスは、少数の症例においてのみ元に戻すことができる。
【0003】
例えば、内視鏡で配置された管腔内覆い付きステントまたは他の従来のステントを使用して、吻合不全を密閉する試みは、中空器官における縫合を適切に密閉する場合にしばしば成功しないことが見出されている。この不十分さは、一般に、適用されたステントと、不規則な形状の腸壁との不一致に起因し得る。高い復元力を有する自己拡張型ステントは、縫合のさらなる損傷または破裂さえももたらし得るので、漏出している縫合の領域における完全な密閉を達成するために使用することができない。
【0004】
さらに、例外的な場合において欠損の完全な密閉が実際に達成されたとしても、縫合の領域に入った中空器官からの内容物、例えば腸の内容物を排出することはできない。したがって、縫合における膿瘍の形成は、特に胃腸管において実質的に不可避的に起こり、それによって、局所的な病理学的状態および患者の医学的状態のさらなる悪化をもたらす。
【0005】
中空器官、例えば腸の壁面の密閉を改善するために、多孔質発泡材の実装が提案されている。多孔質発泡材は、ステント本体の外側に配置され得、ステント本体によって加えられる半径方向外向きの圧力によって適所に保持され得る。さらに、対応する中空器官からの有害な内容物の排出は、ステント本体の外側、例えば多孔質材料内にカニューレを設けることによって達成し得る。これはさらに、真空を適用することによって、縫合の改善された密閉をもたらし得るか、または病変が治癒するまで、その病変を閉鎖するために縫合を適用する必要性さえも置き換え得る。
【0006】
しかしながら、ステントの長期間の使用後、局所組織の内部成長が起こり得ることが見出された。特に、多孔質材料および典型的にはメッシュ状のステント本体は、最も影響を受けやすいように見える。(漏出している)縫合の治癒プロセスの促進、それゆえにステントの適用の好ましくは一時的な性質のために、ステントの抜去または引き戻しは、周辺組織への損傷を回避する際のさらなる課題を構成し得る。
【0007】
したがって、ステントの適用中および適用後の両方における、患者の安全性および治療効果の観点から、現在のステントをさらに改善する必要性が存在する。
【0008】
〔発明の概要〕
したがって、公知の先行技術から出発して、本発明の目的は、局所的な欠損、例えば漏出している外科的手術の縫合を効果的に密閉し、同時に長期間使用した後の抜去を容易にするステントを提供することである。好ましくは、そのようなステントはまた、ヒトまたは動物の身体の中空器官において、そのような欠損における流体のあらゆる蓄積を効果的に除去することを可能にする。
【0009】
この目的は、独立請求項に係る本発明のステントによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、明細書および図面に示されている。
【0010】
したがって、ヒトまたは動物の身体の中空器官の中に、好ましくは胃腸管の中に、特に腸の中に導入するためのステントが提案される。ステントは、本体の一つの端部から、本体の長手方向に対向する端部まで、内側の流体通路を画定する壁を有する、半径方向に拡張可能な本体を備える。さらに、ステントは、液密で可撓性を有する第1層と、弾性を有し多孔質の第2層とを備える。第1層は、前記壁の表面を、その全周に沿って、および前記本体の長手方向に第1所定領域に沿って覆う。第2層は、前記壁の外面を、その全周に沿って、および前記本体の長手方向に第2所定領域に沿って覆い、ならびに第1層を少なくとも部分的に覆う。第1層は、前記壁面に配置され、少なくとも部分的に前記壁を通って半径方向に延在する、および/または、第2層は、本体に機械的に固定される。
【0011】
壁を通る第1層の半径方向の延在部によって、壁に存在する任意の孔または空洞が充填され得、その結果、壁が少なくとも部分的に第1層に埋め込まれる。それによって、ステントの展開中に壁との直接的な接触が確実にされ、かつ維持され、その結果、流体通路に対するおよび外部に対する第1層の密閉機能が改善される。さらに、壁を通る半径方向の延在部は、第1層の厚さを部分的に増加させることだけでなく、第1層を半径方向、長手方向および円周方向に壁に固定することによっても、第1層の機械的安定性をもたらす。
【0012】
さらに、壁から突出すること、または、壁を貫通することによって、局所組織の内部成長が減ぜられる。例えば、ステント本体は、メッシュ形状であってもよく、すなわちワイヤ構造を有していてもよく、その結果、第1層の半径方向の延在部が前記メッシュ形状を埋める。それによって、局所組織は本質的に、ステント本体のメッシュ形状の構造を通って、または、それと交絡して成長することができない。これは、例えば、多孔質構造または(連続)孔パターンを有する他の種類のステント本体にも同様に当てはまる。したがって、ステントの抜去が容易になり、抜去時に潜在的な組織の損傷が低減され得る一方で、第1層の改善された機械的または構造的安定性のために、ステントの適用中の密閉機能が確実にされる。
【0013】
また、第2層を本体に機械的に固定することは、多孔質構造を貫いて限定的な局所組織の内部成長が起こっても、ステントを安全に抜去し得うること、および、ステントの引き戻し時に第2層が患者内に遺残しないことも確実にする。適用中、第2層の機械的固定は、周辺組織の移動または収縮中でさえも、病変または縫合の部位における中空器官の内壁に対する密閉が改善され、維持されるように、第2層の適切な位置決めを確実にする。
【0014】
よって、壁を貫いて半径方向に延在する第1層の構成、および、ステント本体への第2層の固定の両方が、局所組織の欠損の有効な密閉を達成し、長期使用後のステントの抜去を容易にする。これらの機構は、代替たる技術的解決策として使用され得る。その一方で、これらの機構は、本発明によるステントが、その代替のいずれかを含み得、好ましくは第1層の有益な構成および第2層の有益な構成の両方を含んでいるように、ステントの適用時および抜去時の安全性を相乗的に改善する。
【0015】
本体またはステント本体(本発明全体を通して同様に参照される)の流体通路は、対向する開口部を有する貫通経路または内部空洞として理解され得る。よって、本体は、管腔を有し長手方向に開いている中空本体を形成しており、流体は一方の端部を通って通路に入り得、対向する端部を通って通路から出得る。本体は、好ましくは本質的に円筒状または管状の形状であるが、少なくとも本体の1つ以上の領域において、楕円状の形状などの他の断面形状を備えてもよい。本体は好ましくは本質的に連続した長手方向の延在部を有する細長い本体であるが、1つ以上の湾曲が存在してもよく、これは例えば、それぞれの適用に対応して特定の解剖学的構造へのステントの適合を可能にし得る。
【0016】
好ましくは半径方向に拡張可能な本体がメッシュ形状であり、これはステントの拡張および圧縮を容易にし、適用領域、例えば、腸壁の解剖学的構造に対する適合性の程度をもたらす。本体は形状記憶合金、例えばニチノールから形成されてもよく、これは送達システムおよびカテーテルを介して標的病変または縫合に送達するためにステントを折り畳むことをさらに容易にする。本体はまた、自己拡張型であるように構成されてもよく、これは、そのような形状記憶合金または他の金属を使用することによって促進されてもよい。そのような材料はさらに、本体の弾性をもたらし、それによって、適用部位における局所的な解剖学的構造への適合性をもたらすとともに、ステント本体の寸法によっては、半径方向および/または長手方向に力を及ぼすことによってステントが適所に保持されることを達成する。形状記憶合金は構造的安定性のために好ましいかもしれないが、代替的に、ステント本体は自己拡張可能なプラスチック材料から形成されてもよい。
【0017】
本発明に係るステント、すなわち半径方向に拡張可能な本体の管腔直径は、好ましくは約10~50mm、好ましくは15~35mm、特に15~30mmの範囲であり、最も特に好ましくは約28mm(例えば結腸領域での適用)または約21mm(例えば食道での使用)である。いずれの場合も、ステントの直径は、適用領域に応じて、対応する物質がそれぞれの中空器官を通過すること(腸管の場合には食物の通過)が妨げられないように選択される。上記の寸法は拡張可能な本体の全体に適用され得る一方で、対向する端部または端部領域のうちの少なくとも1つはより大きな半径方向の延在部を有し得るか、または、前記寸法は対向する端部または端部部分によって満たされ得、前記対向する端部の間の部分がより小さい寸法であり得る。
【0018】
液密で可撓性を有する第1層はまた、弾性および/または圧縮可能または折り畳み可能であってもよく、その結果、第1層の材料の完全性は折り畳まれた状態において悪影響を受けず、材料は、好ましくは本質的に均質な様式で第1層の拡張を促進し、好ましくは本体の拡張も促進するか少なくとも本体の拡張を損なわない。液密な第1層は、ステント本体の外側の液体が流体通路に入り得ないこと、および、その逆もまた同様であることを確実にし、その結果、中空器官の体液は周辺器官に意図せず侵入したり、血液循環に入ったりし得ない。
【0019】
好ましくは、第1層は液密または気密である。ステントが第1層の外部に配置されたカニューレなどのドレナージ手段を備える場合、これは、第1層と中空器官の内壁との間に真空が適用され得ることをもたらす。よって、この中間空間に漏出するいかなる内容物も、負圧または吸気圧によって効果的に排出され得、(小さい)真空は病変または縫合の密閉をさらに容易にし得、それによって治癒過程を促進する。
【0020】
第1層は、好ましくはポリウレタン、ラテックスおよびシリコーンを含む群から選択される、プラスチックまたはポリマー材料から形成されてもよく、もしくは、それを含んでもよい。好ましくは、第1層はケイ素系である。
【0021】
弾性を有し多孔質の第2層は、好ましくは成形可能および/または圧縮可能である一方で、圧縮力の非存在下でその元の非圧縮状態に戻る。第2層は、ステント本体を囲んでもよく、例えば、ステント本体および第1層を収容する中央貫通孔を有する管状であってもよい。第2層は、閉細孔材料、すなわち発泡体の形態、または、開細孔材料、すなわちスポンジの形態で形成されてもよい。この目的のために好ましい材料は、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、またはそのようなプラスチック材料の混合物を含むか、もしくは、それらからなるプラスチック材料発泡体である。
【0022】
第2層は、約5mm~約20mm、好ましくは約5mm~約10mmの厚さを好ましくは有し、正確な寸法は、適用部位における解剖学的寸法と、例えば、必要とされる弾性およびステント本体と中空器官の内壁との間の必要な架橋を考慮した物理的要件とに依存する。
【0023】
本発明に係るステントの全体の構造は、好ましくは完全に拡張可能であり、従来の適用手段によって、器官、特に胃腸管、好ましくは食道、腸、主に直腸、S字結腸、下行結腸または横行結腸の適用部位に移動させることができる。
【0024】
第1層は、内壁面または外壁面に配置され、ステント本体を第1層に埋め込んで機械的に固定するために、少なくとも前記面の間の空間を満たすように半径方向に延在してもよい。好ましくは、第1層は、少なくともステント本体の外壁面に配置される。より好ましくは、第1層は、前記壁の内面および外面を覆う。それによって、ステント本体、すなわちステント本体の壁は、第1層によって完全に埋め込まれる。液密フォイルを用いた実装とは対照的に、そのような構成は、より厚い材料層をもたらし、漏出および不均一性を効果的に低減し、第1層が好ましくはメッシュ形状であってもよいステント本体に完全に固定されることを確実にする。さらに、そのような埋め込まれた構成および対応する構造的連結は、第1層の折り畳みを回避し得、より均質な外形を備え、適用中の摩耗の潜在的な発生を低減する。
【0025】
好ましくは、第1所定領域および/または第2所定領域は、本質的に連続した断面領域を有する本体の領域に対応する。そのような本質的に連続した断面領域は、対向する端部間の領域全体に備えられ得、例えば、管状、円形、または楕円形であり得る。しかしながら、例えば、機械的安定性を確実にするために、または解剖学的構造への適合をもたらすために、中間の狭窄が存在し得る。断面領域は、壁、通路、またはその両方に関してでもよい。連続的な断面領域に対するそれぞれの所定領域の整合は、製造を容易にし、さらに、ステントの拡張および/または適用中のそれぞれの層の膨らみ、折り畳み、またはしわ形成を回避し得る。
【0026】
よって、第1所定領域および第2所定領域は、本質的に互いに対応し得る。あるいは、第1層はまた、ステント本体のそれぞれの端部または端部領域において、第2層を越えて長手方向に延在してもよい。例えば、ステントは、ステント本体に沿って収容されるが、それぞれの端部領域でステント本体を通って案内され得る、例えばカニューレの形態のドレナージ手段を備えてもよい。ドレナージ手段が対応する壁面を通って延在するのと同時に、ステント本体の流体通路がこの対応する端部領域で液密であることを確実にするために、第1層は前記端部領域に適用されなくてもよく、液密構成を維持するための他の手段が前記端部領域に備えられていてもよい。本明細書において以下に詳述されるように、例えば、液密で好ましくは流体密なフォイルが、前記端部領域の内壁面に備えられていて第1層と連続していてもよい。ドレナージ手段またはカニューレは、フォイルの外部に、および、少なくとも部分的に前記端部領域において壁とフォイルとの間に、配置される。
【0027】
第1所定領域および/または第2所定領域は、本体の少なくとも1つの端部領域によって長手方向に画定されてもよい。その少なくとも1つの端部領域は、拡大された半径方向の延在部を有する。
【0028】
少なくとも1つの端部領域、好ましくは両方の対向する端部領域は、例えば、変化する断面領域または形状を有し、および/もしくは、本質的に連続した断面領域を有するステント本体の領域に直接隣接して半径方向の増加を示してもよい。端部領域のうちの1つがドレナージ手段またはカニューレを受容するように構成されている場合、第1層は前記端部領域によって画定され得、代わりに、フォイル、例えば管状フォイルが、上記で説明されるように、内壁面に配置され得る。そのようなフォイルは好ましくは流体密、すなわち、気密および水密であり、例えば、ポリウレタン、ラテックスおよび/もしくはシリコーンまたはケイ素系の材料から形成され得る。均質で構造的に安定な密閉構造を形成するために、フォイルは、シリコーン、親水コロイド、またはリオゲルなどの密閉剤、特にヒドロゲルによって第1層に固定され得る。
【0029】
第2層は、第2層の全体的な半径方向の延在部が本質的に一定である限り、それぞれの端部領域を少なくとも部分的に覆い得る。例えば、端部領域がその半径方向の延在部を徐々に増加させる場合、第2層の厚さを、それに応じて、ゼロに達するまで減少させ得る。これは、(外側の)第2層と半径方向に突出する端部領域との間のより滑らかな移行をもたらす。
【0030】
それぞれの端部領域は、本体の長手方向断面において、マッシュルーム形状、ドーム形状、トロイダル形状、またはドーナツ形状を有してもよい。したがって、本体全体はバーベル形状を有してもよい。
【0031】
それらの特定の形状は、鋭い縁部を有さない丸みを帯びた表面を備え、それによって、例えば、ステント本体の展開または移動時に、隣接する組織の損傷のリスクを低減する。さらに、丸みを帯びた形状は、適用部位の局所的な解剖学的構造への改善された適合を備え、すなわち、適用部位においてステントを所定の位置に確実に保持する弾性を示しながら、中空器官の内壁により良好に適合する。
【0032】
この点に関して、両方の対向する端部領域における拡大された半径方向の延在部はまた、病変または縫合がそれぞれの端部領域の間に配置され、それによって端部領域がこの特定の位置における真空または排出の標的化された適用を促進または改善するように、ステントが配置され得ることを可能にする。
【0033】
第1所定領域および第2所定領域の両方は、対向する端部領域の両方によってさらに画定されてもよい。よって、第1所定領域および第2所定領域は、本質的に同じ長手方向の延在部を含み得る。しかしながら、上記のように、第2層は、その厚さが適宜低減される限り、それぞれの端部領域を少なくとも部分的に覆ってもよい。さらに、それぞれの端部領域はドレナージ手段を受容し収容するように構成されてもよく、第1層の代わりに、液密フォイルが、流体通路内に、または内壁面の下方に、または内壁面に実装されてもよい。しかしながら、そのようなドレナージ手段を受容していない対向する端部領域は、任意に、少なくとも部分的に第1層で覆われ埋め込まれてもよい。
【0034】
対向する端部領域の両方による第2層の画定は、第2層が長手方向において対向する端部領域によって形状が適合する様に機械的に固定されることを、さらに規定し得る。第2層の寸法および材料の種類によっては、例えば第2層に作用する半径方向または長手方向の力が依然として対応するずれをもたらし得るように、緩い形状の適合が備えられてもよい。しかしながら、境界は、少なくともステントの展開中に、第2層が対向する端部領域の間で付勢されて、標的部位へのステントの適切な適用を確実にすることを規定する。
【0035】
第2層の寸法および使用される材料によっては、第2層は、例えば回転方向および/または長手方向に、摩擦嵌めまたは圧入によって、ある程度ステント本体(または第1層)に固定されてもよい。
【0036】
ステント本体への第2層の改善された固定を備えるために、第2層は、少なくとも1本の糸によって本体に機械的に取り付けられてもよく、第1糸部分は、前記第2層の外面に少なくとも1つの小穴を設けるように第2層に配置され、第2糸部分は、その少なくとも1つの小穴を、第2層によって覆われていない隣り合う本体の端部領域におけるそれぞれの接続点に接続する。
【0037】
その隣り合う端部領域は、ドレナージ手段を受容して収容しているときのように、好ましくは第1層によっても覆われない。それによって、好ましくは近位および/または最も近い端部領域である対応する端部領域に第2糸部分を接続することが容易になり得る。第2層の構造的安定性を改善するために、その少なくとも1つの小穴は、対応する端部領域に対応する第2層の端面から長手方向に、好ましくは離間している。好ましくは、その少なくとも1つの小穴は、対応する端面から約5mm~約20mmの間、好ましくは8mm~15mmの間または約10mmに配置され得る。
【0038】
糸は、生体適合性であるが生分解性でない材料、例えば縫合糸材料から形成され得る。好ましくは、糸は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成される。接続点との接続は、接続点において、例えばメッシュ形状の本体の交差するストラットにおいて、対応する結び目を備えてよく、または、糸を通した固定を備えるようにループを介して設けられてよい。その接続によって、第2層は、半径方向および長手方向の両方向に固定される。
【0039】
好ましくは、少なくとも2つの小穴は、第1糸部分によって設けられ、前記小穴は円周方向に離間される。このようにして、第2層の一部分の、すなわち長手方向および/または半径方向への潜在的な動きが低減され得る。第2糸部分は、各小穴をそれぞれの接続点に個別に接続し得、または、例えば対応するループおよび糸を通す技術を使用して1つ以上の接続点を介して、小穴を互いに接続し得る。
【0040】
好ましくは、小穴が円周に沿って等間隔で配置され、および/もしくは、3つから6つの間、または、4つの小穴が第1糸部分によって設けられる。小穴の、等間隔であることおよび複数あることの両方が、機械的取り付けに起因して第2層に作用するストレスが低減され得、狭窄が効果的に回避され得ることを規定する。例えば、円周方向に沿って約90°の変位で4つの小穴を設けることにより、機械的取り付けが過度に面倒になることなく、第2層がステント本体に向かって均等に分配された態様で引っ張られることが可能になる。しかしながら、ステントの要件および使用される第2層の構成によっては、さらなる小穴が設けられてもよい。
【0041】
ループおよび/または結び目を複数の接続点および小穴に使用し得るような、様々な接続方法が備えられてもよい。好ましくは、第2糸部分が互いに隣接する接続点と小穴との間を互い違いにし、および/または、それぞれの接続点が第2糸部分によって隣接する2つの隣り合う小穴に接続される。
【0042】
よって、各小穴は、2つの隣接する接続点に接続されてもよい。互い違いのパターンは、本質的に、例えば、接続点によって形成される円周線と、小穴によって形成される円周線との間のジグザグパターンとして理解されたい。それぞれの接続は結び目によってまたはループによって、例えば、小穴に第2糸部分を通すことによって、および、例えば接続点の周りで第2の貫通部分を案内することによって形成されてもよい。それゆえ、接続点がステント本体のワイヤードメッシュ形状の接続ストラットの交点によって形成される場合、第2糸部分は、端部領域における隣接ストラットまたはストラットの交点の周りの対応する小穴から案内され得、さらなる隣接する小穴に向かってさらに案内され得、それによって、接続点を介して前記小穴間にループを形成する。接続点はまた、そのような目的のために、ステント本体の外面に、例えば、保持要素、切り溝またはスリットを有するまたは画定する丸みを帯びた突起、ならびに対応する小穴の形態で、特に形成されてもよい。
【0043】
上記のように、端部領域は、より大きな半径方向の延在部を有してもよく、例えば、マッシュルーム形状であり、本質的に連続した断面領域を有するステント本体の管状領域を越えて半径方向に延在してもよい。そのような構成では、第2層(および潜在的にステント本体および/または第1層)を狭窄させる危険性を低減し、接続点がより容易にアクセス可能であり得ることをもたらすので、接続が容易にされ得る。好ましくは、半径方向の延在部が有益であり得るが、接続点は第2糸部分の半径方向の延在部を最小限に抑えるように選択または配置される。これは、ステントの展開および機能を容易にし、埋め込まれた状態における周辺組織の構造に対するあらゆる潜在的な悪影響を低減する。
【0044】
力の分配をさらに改善し、ステント本体への第2層のより均一で均質な取り付けを備えるために、各接続点は、隣接する2つの隣り合う小穴に対して本質的に等距離に配置されてもよい。よって、接続点は好ましくはステント本体の円周に沿っても等間隔に配置され、隣接する2つの隣り合う小穴の間の本質的に中間に配置されるが、長手方向のずれを有する。接続点の等距離配置は、個々の小穴(それゆえに第2層)が特定の接続点に向かって付勢されることを回避する。
【0045】
隣接する小穴の間で、第1糸部分は、第2層の材料内に配置され得る。よって、第1糸部分は、第2層を通って案内され得、第1糸によって形成された小穴のみが第2層から突出するようにその中に埋め込まれ得る。そのような構成は、ステントの折り畳まれたまたは圧縮された状態と、拡張された状態との両方に適合された小穴間のより大きな第1糸部分が第2層に保持され、それゆえに例えば適用部位の解剖学的構造またはステントの他の構成要素と潜在的に相互作用することによって、ステントの適切な拡張および機能性を損なう可能性があるループ、曲げ、または他の折り畳みを意図せず形成しないという利点を有する。さらに、内部の第1糸部分は周辺組織と接触する糸部分の量を低減し、その結果、組織に対する摩擦または切開を低減することができる。さらに、第1糸部分の周りの組織浸潤または内部成長の潜在性も低減される。
【0046】
第1糸部分および第2糸部分は、別個の糸として形成されてもよいが、第1糸部分および第2糸部分は、単一の糸から形成されることが好ましい。言い換えれば、第1糸部分は、それぞれの1つ以上の小穴を設け、前記小穴をそれぞれの接続点に接続する第2糸部分として続くように、第2層におよび/または第2層の中に配置され得る。例えば、第1糸部分は、第2層を通って案内されてもよく、ここで前端のみが第2層から突出して、例えば外側ループを形成することによって、それぞれの小穴を形成し、後端は、後端における第1糸部分との1つ以上の結束によって、最初の小穴を形成する。最後の小穴の後、第1糸の前端は次いで、第2糸部分として続き、例えば、交互のジグザグパターンで、1つ以上の接続点を介してそれぞれの小穴を接続する。
【0047】
1つの同じ糸、すなわち単一の糸の使用は、より少ない結び目が必要とされ得ることを可能にし得る。これは、第2層および/またはステント本体の付勢の発生が低減され得、より滑らかなステントの外面をもたらすようにより少ない結び目が存在し得るので、生理学的に有益であり得る。さらに、単一の糸の使用は、糸の全体的な構造的安定性のために有益であり得る。
【0048】
第2層の取り付けは、ステント本体のいずれかの端部領域に設けられてもよいが、隣接する端部領域は好ましくはカニューレを収容するように構成される。よって、隣接する端部領域は、ステントの近位端領域に対応し得る。これはステントの抜去および引き戻し時に特に有益であり、その理由は、摩擦力および/または張力がこの端部で特に起き、よって、第2層は潜在的なてこ作用、もしくは、遠位端に向かう第2層の長手方向のシフトまたは折り畳みを低減するために、前記端部に直接取り付けられるからである。
【0049】
したがって、ステントは、第2層と第1層との間に配置され、本質的に本体の外側に収容されるカニューレをさらに備えてもよい。カニューレまたはドレナージ手段は、概して、第2層および/またはステント本体に接続されて、ステント内、すなわち、対向する端部または端部領域の間のカニューレの適切な位置決めを確実にすることができる。カニューレは、例えば、埋め込まれ、展開された状態で、第1層と中空器官の内壁との間に真空をもたらすために、真空または負圧源に結合可能であってもよい。しかしながら、例えば生理食塩水または他の生物学的に適合性のある流体によって、例えば適用部位のすすぎまたは洗い流しを可能にすることによって、または、病変もしくは漏出している縫合の治癒を促進するために液体またはゲル様の組織の密閉剤を適用することによって、他の機能は任意に、好ましくは追加で、カニューレを使用してもたらされ得る。
【0050】
カニューレは、ステントおよび通路の半径方向寸法を最小限に抑えるように、流体通路よりも大きい半径方向の延在部を有する端部領域を介して受容されてもよい。例えば、端部領域は、端部領域の間でステント本体の外側に沿って受容され収容されるように、カニューレが通路を介して導入され前記端部領域の壁を通って延在するような、マッシュルーム形状またはドーム形状であってもよい。
【0051】
本発明のさらなる態様によれば、本発明によるステントを圧縮状態で有するカテーテルを含む、標的解剖学的領域にステントを送達および展開するための送達システムが提案される。好ましくは、送達システムは、患者の胃腸管、好ましくは食道、腸、主に直腸、S字結腸、下行結腸または横行結腸における適用部位へのステントの誘導および送達を可能にするように構成され、寸法決めされ、適合される。
【0052】
好ましくは、カテーテルは、可撓性材料で作製された遠位端の端部キャップを備え、端部キャップは、内部空洞を画定し、長手方向に凸状の丸みを帯びた端面を有する。端面は、その外面から内部空洞に向かう、円周方向に等間隔に配置された少なくとも3つ、好ましくは4つのスリットを有する。
【0053】
それによって、小さな開口部がガイドワイヤのために形成され得、対応する誘導または端部ビードは直径が縮小され得、これは患者にとって、および、好ましい低侵襲方法の観点から有益である。スリットによって、対応する個数のフラップが端面に形成され、これは、可撓性材料のために、開放位置または半径方向および長手方向外向き位置に向かって付勢され得、圧縮されたおよび/または折り畳まれたステントのための連続的な貫通孔を設けることができる。この点に関して、4つのスリットを有する構成は、より一層の可撓性を備え、カテーテルからのステントの展開および案内に対抗する力を低減する。
【0054】
例えば、内部空洞に向かう限定された端面の開口部を備え、それゆえにより大きなスリットおよび端面を必要とする単一スリットの構成と比較して、3つ以上のスリットを有する端部キャップは、よって、より小さい寸法であり得る。これは、端部キャップにおける閉鎖部が実際の開口部の半径方向の延在部を越えて開放される必要があり、それゆえにより大きな寸法を必要とする、枢動可能な構成と比較しても当てはまる。
【0055】
そのような構成と比較して、本発明による端部キャップは、また、スリットがカテーテルからのステントの前進に容易に応答し、さらなる作動を必要としないので、送達システムの操作を著しく容易にする。
【0056】
2つの円周方向に隣接するスリットによって画定される端面のそれぞれの形状は、その自由端においてさらに切頭されてもよい。言い換えれば、上記のように、スリットは、互いに隣接して円周方向に配置され、単にそのスリットによって分離されたフラップを画定してもよい。本質的に三角形の形状を有し得るこれらのフラップは、フラップの一端のみにおいて端面に取り付けられ、対応する自由端がスリットの交差部に配置される。内部空洞に向かう(小さい)開口部を備えるように、そのような交差部においてフラップ端部が切頭または丸みを帯びていてもよい。これは、カテーテルの前進をさらに容易にし、自由端における摩擦をさらに低減する。したがって、開放位置に対するより信頼性の高い付勢、および、内部空洞に向かう端部キャップのより信頼性の高い閉鎖が達成され得る。
【0057】
〔図面の簡単な説明〕
本開示は添付の図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されるのであろう:
図1は、本発明に係るステントの長手方向断面における模式図である。
図2は、遠位端領域から近位端領域までの、図1によるステントの縮小された模式図である。
図3は、第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図4は、代替の第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図5は、図1に係る第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図6は、長手方向断面における遠位端に端部キャップを有するカテーテルの模式的な端部断面図である。
図7は、遠位端から長手方向に見た、図6に係る実施形態の図である。
【0058】
〔発明を実施するための好ましい形態〕
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。なお、図面において、同一の要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明は重複を避けるために省略され得る。
【0059】
図1において、本発明に係るステント10の模式図が、長手方向断面で示されている。ステント10は完全に拡張可能であり、従来の適用手段によって、中空器官、特に胃腸管、好ましくは食道、腸、主に直腸、S字結腸、下行結腸または横行結腸における適用部位に移動されるように適合される。ステント10は、本体12を備え、本体は、非限定的な本実施形態によれば、形状記憶可能体、好ましくはニチノールから形成され、本質的に連続的なワイヤードメッシュ形状(ステント10の様々な特徴の明瞭性を改善するために図1には示されていない)を備える。よって、本体12は弾性、圧縮可能、および折り畳み可能な材料から形成され、自己拡張可能であってもよいが、機械的拡張を可能にする他の構成も備えられてもよい。
【0060】
本体12は、本質的に管状の形状を有し、本体12の最大部分について本質的に連続した断面領域を備え、近位端14から遠位端16に向かって長手方向に延在する。近位および遠位という用語は、適用部位に向かってステント10を送達するための外科的処置中に、それぞれ、挿入部位に最も近い、適用部位に最も近いというように理解されたい。連続的な断面領域は近位端領域14および遠位端領域16によって画定され、近位端領域14および遠位端領域16は様々な直径および半径方向の延在部を備え、最大部分については本体12の連続的な断面領域の半径方向の延在部を超える半径方向の延在部を有する。より大きな半径方向の延在部は、中空器官内での展開中にステント10を固定することを容易にし、さらに、例えば、病変または縫合が、前記近位端14と遠位端16との間に配置されることを規定し得る。それによって、病変または縫合を効果的に隔離し得る。近位端14および遠位端16の両方はトロイダル形状またはマッシュルーム形状を有し、トロイダル形状またはマッシュルーム形状は、丸みを帯びた、または、凸状の表面を有し、ステント10が適所に適切に固定されることを確実にするのに十分な半径方向の延在部を伴って、適用部位における周辺組織への適合性の程度をもたらす。
【0061】
近位端14から遠位端16まで、本体12またはその壁は、連続的な流体通路18をさらに画定する。前記通路18は、液密であり、例えばケイ素系の材料から形成され得る第1層20によって、適用部位の中空器官の内壁に向かって密閉される。第1層20は、潜在的な高リスクの医学的合併症が効果的に回避され得るように、隔離された病変または漏出している縫合が、中空器官、例えば腸の内容物でもはや汚染されにくく、逆もまた同様であることを確実にする。中空器官の内壁への密閉はさらに、第2層22によって促進される。第2層22は、第1層20を囲み、適用部位における局所組織および解剖学的構造に十分な成形性および適合性を備えるように、生体適合性発泡体またはスポンジ材料から形成され得る。それによって、そのような材料はまた、所望の適用部位でステント10を機械的に固定することを助け得る。連続的な断面領域は、好ましくは第1層20の第1所定領域と、第2層22の第2所定領域と、を画定する。
【0062】
通路18、ならびに、第1層20および第2層22に加えて端部領域14、16によってもたらされる改善された密閉によって、中空器官の正常な機能が確立され得る一方で、病変または漏出している縫合の治癒、例えば、吻合が促進される。
【0063】
本実施形態では、本体12または連続的な断面領域を有する本体12の領域が、第1層20に完全に埋め込まれる。本体12のメッシュ形状構造は、第1層の材料が、図3図5に関してさらに詳細に後述されるように、本体12の壁の一方の側から前記壁の反対側まで、例えば内壁から外壁面まで、半径方向に延在し得ることを可能にする。埋め込まれた構成によって、第1層20は、本体12に機械的に固定され、第1層20の構造的安定性が改善され得る。したがって、ステント10の適切な機能、および、病変または縫合の液密な隔離は、長期の適用時間または複雑な組織構造での展開の後でさえ、確実にされ得る。さらに、埋め込みは、メッシュ形状の本体12に向かう、または、その周りの、組織の内部成長が効果的に回避され得るか、または少なくとも低減され得ることを確立する。
【0064】
第2層22の適切な位置決めおよび機能はさらに、対応する第1糸部分によって形成され、第2層22の外周に沿って等間隔に配置された複数の小穴24によって確実にされる。小穴24は例えば、PP、PE、またはPTFEなどの縫合材料によって形成されてもよく、編組材料として形成されてもよい。各小穴24はさらに、第2糸部分28を使用してそれぞれの接続点26を介して本体12に接続されており、第1糸部分24および第2糸部分28は、好ましくは単一の連続する糸から形成される。接続点26は、近位端領域14に、好ましくは小穴24における半径方向の延在部よりも大きい半径方向の延在部を有するそれぞれの点に配置される。
【0065】
機械的固定は、適用が終了されるときに、ステント10の他の構成要素と共に第2層22が安全に除去され得ることをもたらし、潜在的な組織の内部成長に起因して第2層22が中空器官内に遺残し得ることを回避する。さらに、機械的固定は、ステント10の展開中の第2層22の適切な位置決めを容易にする。
【0066】
図1にはまた、近位端領域14で受容され、近位端領域14と遠位端領域16との間で本体12に沿って収容されるように本体12の壁を介して導入されるカニューレ30が示されている。近位端14には、カニューレ30の導入およびステント10全体の製造を容易にするために、第1層20または第2層22が設けられていない。しかしながら、液密フォイル(図示せず)はこの領域において第1層20に接続されてもよく、例えば管状または円錐形状を有することによって、この領域においても適切な密閉し、それによって、トロイダル形状の近位端領域14(内)周全体を覆うことを確実にしてもよい。
【0067】
図2には、第2糸部分28が小穴24と接続点26との間で互い違いになり、ジグザグパターンを形成し得ることが示されている。図では簡略化のために、異なる階層が縮小されている(ならびに、第1層20およびステント本体10は概観を改善するために明示的に示されていない)が、接続点26は、徐々に増大する半径方向の延在部を有する近位端領域14の湾曲部に配置されていることを理解されたい。さらに、本体12は好ましくはメッシュ形状の本体12として形成され、その結果、接続点26は交差するワイヤまたはストラットによって形成されてもよく、第2糸部分28は前記交差部に結び付けられるか、または結束されるか、もしくは、前記交差部の周りに案内されるか、または糸を通されてもよく、2つの隣接する小穴24の間にループを形成する。
【0068】
この実施例では4つの小穴24が設けられており、小穴24は第2層22の円周に沿って等間隔に配置されている。小穴24は、前記小穴24間の第2層22内に配置される、対応する第1糸部分24の突出したループとして形成されてもよい。接続点26も、近位端領域14において本体12の対応する円周に沿って等間隔に配置され、各接続点26は、長手方向のずれを伴って2つの隣接する隣り合う小穴24の間の中間に位置している。本実施形態は、第2層22または本体12の狭窄を設けることなく、有益な均等な力の分配および均等な機械的固定を提供するが、ステント10および適用部位の要件によっては、他の接続パターンが設けられてもよく、他の小穴24および/または接続点26の構成が設けられてもよいことを理解されたい。
【0069】
図3図5では、第1層20の代替構成が、本体12の壁32に関して示されている。したがって、前記壁は、通路18に関して内壁面34および外壁面36を備え、例えば本体12のメッシュ形状構成によって形成され得る、複数の(連続的な)開口部38を備える。
【0070】
全ての実施形態において、本体12またはその壁32は、第1層20によって埋め込まれている。図3の実施形態によれば、第1層20の材料は主に外壁面36に配置されているが、第1層20が壁32に機械的に固定されるように、開口部38の中へ突出している。しかし、通路18は、本質的にいかなる第1層20も含み得ない。それによって、通路18の直径は、第1層20によって影響されず、第1層20の(部分的な)緩みの場合でさえ、通路18の閉塞は本質的に回避される。
【0071】
代替構成が図4に示されており、第1層20の材料は、主に内壁面34に配置されている。これは、液密フォイルが近位端領域14に実装されているときに、第2層22の半径方向の延在部が例えば、増加され得るか、または有益であり得ることを可能にする。
【0072】
図5は、壁32全体、すなわち外壁面36および内壁面34が第1層20の材料によって埋め込まれている構成を示し、これは図1に係る実施形態にも模式的に示されている。
【0073】
図6には、遠位端に端部キャップ42を有するカテーテル40の端部が、長手方向断面で模式的に示されている。カテーテル40および端部キャップ42は、ステント10を標的解剖学的領域に送達および展開するための送達システムの一部であってもよく、そのようなステント10(図示せず)は、適用部位に向かって送達および誘導中に、圧縮された状態、および好ましくは折り畳まれた状態でカテーテル40内に保持される。
【0074】
端部キャップ42は、可撓性、および、好ましくは弾性または伸縮性材料で形成され、ステント10の展開中にカテーテル40の一部を受容するための内部空洞46を画定する。よって、内部空洞46は、カテーテル40が適切な位置にあるときに、カテーテル40が端部キャップ42を通って前進され得ることを確実にする。端部キャップ42の外へのカテーテル40の前進は、図7にさらに詳細に示されるように、複数のスリット48、好ましくは4つのスリット48を備える、端部キャップ42の遠位端における外向きに凸状の表面44によってさらに促進される。
【0075】
したがって、端部キャップ42の4つのスリット48は互いに等しく円周方向に間隔を置いて配置され、本質的に十字形状を形成してよく、スリットは、端部キャップ42の半径方向の中心点において互いに交差するか、または相互に接触する。スリット48は三角形状である4つの等形状のフラップ50を形成し、これらは、前記形状の一方の側でのみ接続され、フラップ50の交点に自由端を有する。交点において、フラップ50は、内部空洞46に向かって(小さい)開口部を備えるように丸くし得る切頭領域を備える。それによって、端部キャップ42の閉鎖および開口の間の適切な付勢が促進され得、端部キャップ42を通っての、および外への、カテーテル40の初期の前進が小さい開口部によって支持され得、材料の弾性によりフラップ50の初期抵抗が減少する。
【0076】
凸形状および複数のスリットを備えることは、ステント10の誘導および展開を容易にし、さらに、ガイドワイヤの遠位端においてより小さいビードを使用することを可能にする。さらに、端部キャップ42は、適用部位における周辺組織が端部キャップ42によって悪影響を受けず、寸法決めがステント10の寸法決めに完全に適合され得るように、従来の解決策と比較してより小さい寸法にし得る。
【0077】
これらの実施形態および項目は、複数の可能性の例を示しているに過ぎないことは当業者にとって明らかであろう。よって、本明細書に示される実施形態は、これらの特徴および構成の限定を形成すると理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組み合わせおよび構成は、本発明の範囲に従って選択することができる。
【0078】
〔符号の説明〕
10 ステント
12 本体
14 近位端領域
16 遠位端領域
18 通路
20 第1層
22 第2層
24 小穴または第1糸部分
26 接続点
28 第2糸部分
30 カニューレ
32 壁
34 内壁面
36 外壁面
38 開口部
40 カテーテル
42 端部キャップ
44 凸状の表面
46 内部空洞
48 スリット
50 フラップ
52 切頭領域
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明に係るステントの長手方向断面における模式図である。
図2】遠位端領域から近位端領域までの、図1によるステントの縮小された模式図である。
図3】第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図4】代替の第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図5図1に係る第1層の構成を有するステント本体の壁の引き延ばし図である。
図6】長手方向断面における遠位端に端部キャップを有するカテーテルの模式的な端部断面図である。
図7】遠位端から長手方向に見た、図6に係る実施形態の図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】