(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】低融点高信頼性はんだ粒子、これを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B23K 35/30 20060101AFI20240903BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240903BHJP
B23K 35/363 20060101ALI20240903BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20240903BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240903BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20240903BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
B23K35/30 310B
B22F1/00 K
B22F1/00 R
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
B23K35/26 310D
B22F1/052
B22F1/17
C22C13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516803
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2022013392
(87)【国際公開番号】W WO2023043114
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122580
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524098237
【氏名又は名称】マイクロ コンポジット インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICRO-COMPOSITE INC.
【住所又は居所原語表記】(Seonggok-dong)2floor, 50 Cheomdan-ro 245beon-gil, Danwon-gu, Ansan-si, Gyeonggi-do 15606 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ドンチュル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚史
(72)【発明者】
【氏名】新田 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜樹子
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジンサプ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA01
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC22
4K018BD04
4K018BD10
4K018KA32
(57)【要約】
低融点高信頼性はんだ粒子であって、融点が200℃以下の低融点合金粒子と;前記低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子と;を含み、前記複数の銀(Ag)粒子は、複数の低融点高信頼性はんだ粒子を使用したソルダリング過程において、隣接する低融点高信頼性はんだ粒子間の溶融合体を妨げないように相互間を一定距離の範囲に離隔させて分布される、低融点高信頼性はんだ粒子を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低融点高信頼性はんだ粒子であって、
融点が200℃以下の低融点合金粒子と;
前記低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子と;を含み、
前記複数の銀(Ag)粒子は、複数の低融点高信頼性はんだ粒子を使用したソルダリング過程において、隣接する低融点高信頼性はんだ粒子間の溶融合体を妨げないように相互間一定距離の範囲に離隔させて分布される、低融点高信頼性はんだ粒子。
【請求項2】
前記複数の銀(Ag)粒子は、複数の前記低融点高信頼性はんだ粒子を使用したソルダリング過程において、銀(Ag)合金ネットワークを形成するように分布される、請求項1に記載の低融点高信頼性はんだ粒子。
【請求項3】
最近接位置する前記複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の平均値(z)は、前記複数の銀(Ag)粒子の平均直径(D)に比べて0.5倍以上3.0倍以下である、請求項1に記載の低融点高信頼性はんだ粒子。
【請求項4】
前記銀(Ag)粒子の平均直径(D)は、前記低融点合金粒子の平均大きさの1/15以下である、請求項1に記載の低融点高信頼性はんだ粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された低融点高信頼性はんだ粒子を含む液状または固相の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載された樹脂組成物を使用して電気的接点を形成した、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点高信頼性はんだ粒子およびこれを含む樹脂組成物に関するもので、より具体的には、低融点合金粒子の表面に複数の微細銀(Ag)粒子を相互間一定距離の範囲の離隔された状態で付着製造して低融点はんだの挙動を維持しながら、高温高湿の条件下で電気伝導度の劣化を抑制し、融点上昇を通じて信頼性を改善した低融点高信頼性はんだ粒子、これを含む樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低融点合金粒子は、Sn、Bi、In金属を1つ以上含む合金であり、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-In合金が代表的である。
【0003】
このような低融点合金素材は、200℃以下の低い温度で溶融して電気的接点を形成するという長所があるので、低温ソルダリング材料として広く活用されており、その一例として特許文献1には錫(Sn)を含み、Ag、Cu、Bi、Zn、InおよびPbからなるグループの中から選択された1つ以上の物質をさらに含むSn合金、特にSn-Ag-Cu合金およびSn-Bi合金などが例示されている。
【0004】
しかし、このような錫(Sn)を含む低融点合金の場合、一般的に電気伝導度が低く、大気中の水分によって容易に酸化されるため、これらの素材のみで電気的接点を形成する場合、高温高湿の長期信頼性の条件において電気的抵抗が大きく高まり、機械的付着力に問題が発生するので、還元性フラックス、バインダー樹脂のみで信頼性を改善するのに限界がある。
【0005】
したがって、低融点合金と高信頼性金属が共存するネットワークを形成することにより、低い温度で溶融して電気的接点を形成しながら同時に初期伝導度に比べて長期信頼性に優れたはんだ粒子の開発が必要な状況である。
【0006】
このために従来技術では、特許文献2のように、低融点合金粒子と、銅(Cu)粉末、銀(Ag)粉末、または銀(Ag)がコーティングされた銅粉末などの高伝導性粒子を混合するか、あるいは特許文献3のように銀(Ag)のような高伝導性金属を低融点金属とともに溶融して合金化した粒子をソルダペーストに使用する方案が提示されている。しかし、低融点合金粒子と高伝導性銀(Ag)粒子を物理的に混合する場合、銀(Ag)粒子が均一に分散されずに偏って存在することにより伴う電気伝導性、信頼性、機械的付着力の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10-0977163号
【特許文献2】大韓民国登録特許公報第10-1814084号
【特許文献3】大韓民国登録特許公報第10-1773733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記したとおりの従来技術上の問題点を解決するために案出されたものであり、低融点合金粒子の表面に一定距離の範囲に相互間離隔配置されるようにした複数の微細な銀(Ag)粒子を付着することにより、ソルダリングによって低融点合金粒子の相互間の溶融合体によるネットワークと銀(Ag)合金ネットワークが同時に形成されるものと判断される低融点高信頼性はんだ粒子を提供することを目的とする。
【0009】
これを通じて本発明は、200℃以下の低い温度でソルダリング粒子の相互間の溶融合体が円滑であり、高温高湿の条件下で電気伝導度の信頼性を改善することができる低融点高信頼性はんだ粒子を含む樹脂組成物、およびこれを使用して電気的接点が形成される電子機器を提供することをまた別の目的とする。また、電気的接点形成段階でソルダリングし、常温に冷却した後には、接合ソルダ部位の融点が30℃以上上昇する効果を有し、信頼性を高めることができる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した技術的課題により制限されず、言及されないまた別の技術的課題は、下の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に明確に理解され得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明の一態様に係る低融点高信頼性はんだ粒子は、融点が200℃以下の低融点合金粒子と;前記低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子と;を含み、前記複数の銀(Ag)粒子は、複数の低融点高信頼性はんだ粒子を使用したソルダリング過程において、隣接する低融点高信頼性はんだ粒子間の溶融合体を妨げないように相互間一定距離の範囲に離隔させて分布される。
【0012】
前記態様において、前記複数の銀(Ag)粒子は、複数の前記低融点高信頼性はんだ粒子を使用したソルダリング過程において、銀(Ag)合金ネットワークを形成するように分布されることが好ましい。
【0013】
また、前記態様において、最近接位置する前記複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の平均値(z)は、前記複数の銀(Ag)粒子の平均直径(D)に比べて0.5倍以上3.0倍以下であることが好ましい。
【0014】
また、前記態様において、前記銀(Ag)粒子の平均直径(D)は、前記低融点合金粒子の平均大きさの1/15以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の一態様に係る液状または固相の樹脂組成物は、前記低融点高信頼性はんだ粒子を含む。
【0016】
また、本発明の他の一態様に係る電子機器は、前記樹脂組成物を使用して電気的接点を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、低融点合金粒子の表面に一定距離の範囲に相互間離隔配置されるように複数の銀(Ag)粒子を付着した低融点高信頼性はんだ粒子を提供することにより、このはんだ粒子を使用してソルダリングする場合、低融点合金粒子の相互間の溶融合体によるネットワークと銀(Ag)合金高信頼性ネットワークの同時具現が可能になる。
【0018】
これによりソルダリング電気的接合において低い温度で溶融される低融点特性と長時間高温高湿の環境に露出される場合でも、初期伝導度が大きく劣化しない信頼性を同時に充足させ得る低融点高信頼性はんだ粒子を含む樹脂組成物およびこれを使用して電気的接点が形成される電子機器を提供できるようになる。また、電気的接点形成段階においてソルダリングし、常温に冷却した後は、接合ソルダ部位の融点が30℃以上上昇する効果を有し、さらに信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、複数の銀(Ag)粒子が低融点コア粒子の表面全体に緻密な密度でコーティングされた場合、隣接する低融点合金粒子の相互間の溶融合体されない現象を説明したものである。
【
図2】
図2は、低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の計算方法を示したものである。
【
図3】
図3は、実施例1、実施例2、比較例2、比較例3に明記された方法で製造されたはんだ粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、実施例1、実施例2、比較例2、比較例3に明記された方法で製造されたはんだ粒子に対して低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離を測定した電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、伝導度測定に使用された試料に対する構成図である。
【
図6】
図6は、銀粒子の離隔距離の平均値(z)範囲に応じたはんだ粒子溶融合体および初期伝導度、信頼性伝導度を定性的に整理した説明図である。
【
図7】
図7、
図8、
図9は、低融点合金ネットワークと高信頼性銀合金ネットワークが同時に具現されるメカニズムをモデリングした図であり、
図7は、ソルダリング過程において銀粒子1個と低融点合金粒子1個が相互間接触した界面において発生する現象をモデリングしたものである。
【
図8】
図8は、ソルダリング過程において低融点合金粒子2個の間に接触した銀粒子が界面において溶融しながら拡大する挙動をモデリングしたものである。
【
図9】
図9は、ソルダリング過程において低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀粒子がその付着界面において溶融して面状に銀合金ネットワークを形成するメカニズムをモデリングしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では本発明が実施され得る特定実施形態を例示として詳細に説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施し得るのに充分なように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は互いに異なるが、相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造および特性は、一実施形態に関連して本発明の技術的思想および範囲から逸脱することなく他の実施形態として具現され得る。したがって、後述する詳細な説明は、限定的な意味として取ろうとするものではなく、本発明の範囲は、適切に説明されるならば、その請求項が主張するものと均等な全ての範囲に加えて添付された請求項によってのみ限定される。
【0021】
錫(Sn)など低融点金属を含む低融点合金からなるはんだ粒子を高温高湿の環境において長時間使用することにより電気伝導度が大きく低下する問題を解決するために相対的に信頼性に優れた銀(Ag)粒子を低融点コア合金の表面にコーティングしてはんだ粒子を製造する方案を考慮することができる。
【0022】
しかし、銀(Ag)粒子が低融点合金コア粒子の表面を緻密な密度で全て覆うようになると、
図1に示したようにソルダリング加熱過程において溶融された低融点合金粒子が銀(Ag)コーティング層により閉じ込められるようになって周辺に位置した低融点合金粒子の相互間の溶融合体が円滑でなくなってソルダリングが円滑に起こらず、ソルダリングされても電気的接点間の機械的付着力が非常に脆弱になる問題が発生する。
【0023】
したがって、本発明者らは、低融点合金粒子の表面に銀(Ag)粒子を相互間一定距離の範囲に離隔させてコーティングすることにより、ソルダリング過程において低融点合金粒子の溶融合体を阻害せずに高信頼性金属のネットワークを構成し得るメカニズムに対して研究を進行した。
【0024】
まず、
図7に示したように、ソルダリング過程において低融点合金コアの表面に付着した銀(Ag)粒子は、その付着界面において溶融工程反応により銀(Ag)原子が拡散されて銀‐低融点合金層が形成されながら低融点合金コアの表面に沿って面状に拡大され得る。すなわち、銀(Ag)粒子と低融点合金コア粒子が接触した界面領域が多元系工程反応に(eutectic)よってより低い融点を有するので、界面領域が低融点合金コア粒子とともに溶融して銀(Ag)原子が速やかに拡散されて高信頼性銀-低融点合金領域が拡大されるようになる。
【0025】
このようなメカニズムを考慮すると、
図9に示したように、低融点合金粒子の表面に微細な銀(Ag)粒子が相互間一定距離の範囲に離隔された状態で付着されて存在するようにはんだ粒子を製造するならば、ソルダリング過程が進行されながら低融点粒子の表面に存在する銀(Ag)粒子がその接触界面から工程反応により溶融され、その溶融層が低融点合金コアの表面に沿って拡大されながら高信頼性銀合金のネットワークが形成され得る。銀原子の速やかな拡散を通じて、ソルダリング過程において銀粒子の大きさよりも拡大された銀合金(銀と低融点合金との合金)領域が形成され、周辺に位置する銀合金領域が相互間連結されながら銀合金ネットワークが形成され得る。銀合金ネットワーク領域は、相対的に高い耐酸化性と水分耐性を有するので、内部の低融点合金領域を保護することができ、高温高湿の条件においてソルダリング接合領域の伝導度の劣化度を大きく抑制するものと判断される。
【0026】
重要なのは、先で説明したように低融点合金コア粒子の表面を銀(Ag)粒子が一定離隔距離以内にコーティングされると、ソルダリング時に低融点合金コア粒子の相互間の溶融合体が円滑に進まないという点である。したがって、隣接した低融点合金コア粒子の溶融による合体が円滑になされ得る離隔距離範囲内において、すなわち一定範囲の離隔距離を維持した状態で多数の銀(Ag)粒子が付着された低融点はんだ粒子が準備されなければならないということである。
【0027】
これと関連して研究を重ねた結果、低融点合金粒子に付着される銀(Ag)粒子の平均直径(D)を基準に、近接位置する銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の平均値の範囲を適切に設定することにより、低融点合金粒子の相互間の溶融合体される低融点特性と、高信頼性銀合金層のネットワークとが同時に具現され得るという点を発見し、本発明者らは上記のような技術思想に着眼して本発明に至るようになったのである。
【0028】
図2は、低融点合金コア粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離を測定して計算する説明図である。銀(Ag)粒子の平均直径(D)と周辺部に最近接に位置する4個の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の平均値(x)と関連して
図2に図示された例を通じて具体的に説明する。低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀(Ag)粒子のうちの1つの銀(Ag)粒子を基準にする時、その周辺に最近接位置する銀(Ag)粒子4個を選定し、前記基準銀(Ag)粒子と最近接銀(Ag)粒子4個の相互間の離隔距離の平均値(x)を求め、この方法を同一の低融点合金粒子に対してその表面に存在する10個の銀粒子に適用してその平均値(y)を求める。この方法を低融点合金粒子10個に対して適用して再び平均した値(z)を低融点合金粒子の表面に付着される複数の銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の最終的な平均値として定義することができる。すなわち、最終的な平均値(z)が、銀粒子の相互間の離隔距離を代表する値に該当する。
【0029】
低融点合金粒子の表面に銀(Ag)粒子を付着するにあたり、離隔距離の平均値(z)が、銀(Ag)粒子の平均直径(D)基準に0.5倍以上3.0倍以下の範囲内で平均的に分布することが好ましい。前記離隔距離の平均値(z)が、銀(Ag)粒子の平均直径(D)基準に0.5倍未満であれば、低融点合金粒子の相互間の融融合体を妨げてソルダリング電気的接点の具現が円滑ではなく、平均直径(D)基準に3.0倍超過であれば、初期電気伝導度に比べて高温高湿の環境において高い信頼性を示せないためである。このような理由以外に離隔距離範囲は、低融点コア粒子の大きさと銀粒子の大きさに相対的に依存する傾向がある。また、低融点合金はんだ粒子の表面に多数の銀粒子を適正な離隔距離範囲で付着して電気伝導度の信頼性を改善した効果を得るにあたり、離隔距離範囲は、低融点合金コア粒子の成分および大きさ、コア粒子の表面状態により多少の差異を見せるようになり、上記で説明した挙動を複合的に考慮する時、多数の実験を通じて確認したように離隔距離の平均値(z)範囲は0.5~3.0Dに選定することが好ましい。
【0030】
また、低融点合金粒子の表面に付着された銀(Ag)粒子の平均大きさが、低融点合金粒子の平均大きさに比べて1/15以下に小さくなければならない。それ以上になると、複数の銀(Ag)粒子が上記で限定したような低融点合金のネットワークと高信頼性銀(Ag)合金のネットワークの具現が難しいためである。
【0031】
このような低融点合金粒子とここにコーティングされた複数の銀粒子の相互間の離隔距離(z)関係によるソルダリング品質と電気的特性の信頼性挙動を概念的かつ定性的に整理すると、
図6のとおりである。ソルダ合体特性および60℃90%の相対湿度において500時間経過後、電気伝導度数値が0.5D≦z≦3.0D区間に該当する時、最も優れているものと示される。
【0032】
また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上記のように製造された低融点高信頼性はんだ粒子、フラックス、バインダー樹脂を含む複合体の一種であって、ペーストまたはインクタイプの液状型複合体であるか、またはフィルム、シート、または接着剤タイプの固相型複合体であり得る。このようなはんだ粒子を含むように樹脂組成物は構成することは、本技術分野の通常の技術者にとって広く知られているので、これについての詳細な説明は省略する。
【0033】
また、本発明の一実施形態に係る電子機器は、前記樹脂組成物を使用して電気的接点を形成したことを特徴とする。電気的接点の形成が必要な回路基板、電極部品などの多様な各構成要素の間に前記樹脂組成物を使用して電気的接点が形成されることができ、これにより高温高湿の条件下で電気伝導度の信頼性を大きく改善できるようになる。
【0034】
以下では、本発明の一実施形態に係る低融点高信頼性はんだ粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
まず、低融点合金粒子を準備する。前記低融点合金粒子は、Sn、Bi、In金属を1つ以上含む合金で、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-In合金を代表的に使用することができる。前記低融点合金粒子の平均大きさは1~30μmであることが好ましい。
【0036】
次に、前記低融点合金粒子の表面に複数の銀粒子を均一にコーティングするために酸化被膜除去の前処理を実施する。
【0037】
その後、銀イオンと還元剤相互間の酸化還元反応により前記低融点合金粒子の表面に複数の銀粒子を一定距離の範囲を有するように相互間離隔されるように合成して付着する。
【0038】
上記のような本発明の一実施形態に係る低融点高信頼性はんだ粒子の製造方法は、次のような具体的な実施例およびこれと対比される比較例を通じてより明確に理解されるであろう。
【0039】
低融点合金粒子の表面に付着された複数の銀粒子の平均直径(D)に比べて銀粒子の相互間の離隔距離の平均値(z)の相対的比率によるソルダリングの外観品質、電気伝導度の初期値、高温高湿下の電気伝導度の信頼性挙動を比較説明する。
【0040】
(実施例1)zが0.9Dである場合
【0041】
Sn-Bi-In(重量比基準Sn55%、Bi30%、In15%)合金で構成されたType7(2~11μm)低融点合金粒子を準備する。耐酸化被膜を除去し、銀還元反応を制御して銀粒子が均一にコーティングされるようにするための前処理として、水10gに前記低融点合金粒子300g、アミン系錯化剤5gを入れて常温で30分間撹拌する。この後、還元性雰囲気を作って酸化を防止する目的でグルコース粉末を2g投入し、さらに30分間撹拌する。次に15gの銀が含有された銀イオン水溶液を10分間点滴した後、pH調節のために水酸化ナトリウム2gが溶解された塩基性水溶液を点滴し、1時間反応させて低融点高信頼性粒子を製造する。前記の順序を通じて銀粒子相互間の一定距離に離隔してコーティングされた低融点高信頼性粒子が得られる。この製造粉末105g、レジン100g、フラックス粉末15g、粘度調節用有機溶媒の適正量を混合したスラリーをペーストミキサーで5回均質化分散して(1回当たり2000rpmにおいて10分分散)ソルダペーストを製造する。
【0042】
(実施例2)zが1.74Dである場合
【0043】
前記と同一の重量比のSn-Bi-In合金で構成されたType7(2~11μm)低融点合金粒子を準備する。水10gに前記低融点合金粒子300g、アミン系錯化剤5gを入れて30分撹拌する。この後、グルコース粉末を2g投入し、さらに30分間撹拌する。次に5gの銀が含有された銀イオン水溶液を10分間点滴した後、pH調節剤である水酸化ナトリウム2gが溶解された塩基性水溶液を点滴し、1時間反応させて低融点高信頼性粒子を製造する。実施例1と同一の方法でソルダペーストを製造する。
【0044】
(比較例1)銀コーティングを適用しない場合
【0045】
前記と同一の重量比のSn-Bi-In合金で構成されたType7(2~11μm)低融点合金粒子を準備する。実施例1と共通の方法でソルダペーストを製造する。
【0046】
(比較例2)zが3.58Dである場合
【0047】
前記と同一の重量比のSn-Bi-In合金で構成されたType7(2~11μm)低融点合金(はんだ)粒子を準備する。水10gに前記低融点合金粒子300g、アミン系錯化剤5gを入れて30分撹拌する。この後、グルコース粉末を2g投入し、さらに30分間撹拌する。次に2gの銀が含有された銀イオン水溶液を10分間点滴した後、pH調節剤である水酸化ナトリウム2gが溶解された塩基性水溶液を点滴し、1時間反応させて高信頼性低融点粒子を製造する。実施例1と共通の方法でソルダペーストを製造する。
【0048】
(比較例3)zが0.26Dである場合
【0049】
前記と同一の重量比のSn-Bi-In合金で構成されたType7(2~11μm)低融点合金粒子を準備する。水10gに前記低融点合金粒子300g、アミン系錯化剤5gを入れて30分撹拌する。この後、グルコース粉末を2g投入し、さらに30分間撹拌する。次に30gの銀が含有された銀イオン水溶液を10分間点滴した後、pH調節剤である水酸化ナトリウム2gが溶解された塩基性水溶液を点滴し、1時間反応させて高信頼性低融点粒子を製造する。実施例1と共通の方法でソルダペーストを製造する。
【0050】
(比較例4)粉末混合
【0051】
前記と同一の重量比のSn-Bi-In合金粉末100g(Type7)、銀(Ag)粉末5g(平均大きさ60~70nm)、レジン100g、フラックス粉末15g、粘度調節用有機溶媒の適正量を混合したスラリーをペーストミキサーで5回均質化分散して(1回当たり2000rpmにおいて10分分散)ソルダペーストを製造する。
【0052】
図3、
図4は、実施例1、2および比較例2、3の製造方法で製造されたはんだ粒子の電子顕微鏡写真であり、
図4は、それぞれに対して低融点コア粒子1個を選定してx、y値を測定した結果である。ここで、実施例1、2および比較例2、3それぞれの場合、銀粒子の直径は、それぞれ100~180nm、30~100nm、30~100nm、90~180nmの範囲に測定され、その中心値を平均直径(D)に選定した。
【0053】
表1は、実施例1、実施例2、比較例2、比較例3に明記された方法で製造されたはんだ粒子に対して銀粒子離隔距離の平均値を測定した結果である。銀粒子の平均直径は、同一の銀コーティング工程を適用しても低融点合金粒子の表面の化学的状態により多少の差異を示す。y値基準に実施例1は0.8、実施例2は1.7、比較例2は3.5、比較例3は0.3が測定された。各実施例1、2および比較例2、3に対して低融点コア粒子10個を無作為選定してz値を測定した結果を表1に示した。
【0054】
【0055】
表2は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4に明記された方法で製造されたソルダペーストに対してソルダリング工程後の初期伝導度、高温高湿信頼性条件の伝導度の測定結果を示す。
図5に概略的に図示したように、ソルダペーストを下部電極(電極A)銅基板上に印刷した後、上部電極(電極B)基板を整列した状態で覆った後、一定圧力で密着し、170℃で2分加熱して上部-下部電極端子間のソルダリング電気的接点を形成した。次に上部電極端子と下部電極端子を電気的に連結して伝導度を測定し、5回測定の平均値を使用した。
【0056】
【0057】
初期伝導度は、ソルダリング直後に測定された値であり、信頼性伝導度は、温湿度60℃90%の条件で300時間および500時間維持した後、測定した伝導度値である。伝導度測定値の誤差は±5%範囲である。はんだ溶融合体であるか否かは、基板電極上に印刷されたソルダペーストパターンが170℃2分の加熱過程において溶融してソルダリング合体が発生するか否かを示す。
【0058】
銀(Ag)粒子の相互間の離隔距離の平均値(z)は、実施例1は0.9D、実施例2は1.74D、比較例2は3.58D、比較例3は0.26Dと測定された。銀粒子の表面コーティング密度は離隔距離に反比例するので、比較例1、比較例2、実施例2、実施例1、比較例3の順に高くなる。
【0059】
上記のような試験評価を通じて離隔距離の平均値(z)の範囲が0.5D≦z≦3.0Dである時、(実施例1、実施例2)はんだ粒子間の溶融合体性が保存されながら、初期伝導度に比べて高温高湿の条件の信頼性伝導度が大きく劣化しないものと示された。
【0060】
実施例1、実施例2は、銀粒子の離隔距離の平均値が0.5D≦z≦3.0Dの一定範囲内に存在するので、ソルダリング過程において溶融合体された低融点合金のネットワークと高信頼性銀合金(Ag-Sn-Bi-In)のネットワークが同時に形成されることによりソルダリング電気的接合において低融点特性と高信頼性特性を同時に充足させると判断する。この範囲よりも小さければ、比較例3の場合のように、はんだの溶融合体が円滑ではなく、むしろ信頼性伝導度が非常に大きく劣化する現象が現れるので、低融点はんだとして動作しない。この範囲よりも高ければ、比較例2の場合のように、初期伝導度に比べて信頼性伝導度が大きく劣化して銀粒子コーティングの効果が微々となる。これは、高温高湿の条件で酸化に脆弱な低融点合金(Sn-Bi-In)領域が高伝導性と耐酸化特徴を有する銀合金層(低融点合金と銀相互間の合金、Ag-Sn-Bi-In)により十分に保護されていないためと判断される。
【0061】
実施例2と同一の銀含量を有する比較例4は、初期伝導度に比べて信頼性伝導度が大きく劣化したものと示された。この場合、混合時に投入したAg粒子がはんだ全般にわたって均一に分散され得ず高温高湿の信頼性条件において劣化度が改善されないものと判断する。
【0062】
一方、実施例1、実施例2の場合、170℃2分のソルダリング工程において溶融合体が発生し、同一の接点部位を常温に冷却し、再び加熱すると200℃でも溶融されない現象を現した。これを通じて本発明の低融点高信頼性はんだ粒子は、30℃以上の融点上昇効果を有するので、信頼性をさらに改善するものと判断される。
【国際調査報告】