(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/208 20060101AFI20240903BHJP
H01P 7/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01P1/208 Z
H01P7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517563
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2022112564
(87)【国際公開番号】W WO2023045621
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111130983.7
(32)【優先日】2021-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】喬龍
(72)【発明者】
【氏名】卜偉
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼紅偉
(72)【発明者】
【氏名】武増強
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HC01
5J006JA01
5J006JA09
5J006JA11
5J006LA03
5J006LA21
5J006ND01
5J006ND02
(57)【要約】
本願は、誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタを開示し、誘電体フィルタユニットは、第1の誘電体共振空洞と、第2の誘電体共振空洞とを含む。第1の誘電体共振空洞は、上端面又は下端面に第1の周波数孔が設けられている。第2の誘電体共振空洞は、第1の誘電体共振空洞と連結され、上端面又は下端面には第2の周波数孔が設けられ、第1の誘電体共振空洞と第2の誘電体共振空洞との連結部には結合スロットが設けられ、第1の誘電体共振空洞と第2の誘電体共振空洞との連結部には第3の周波数孔がさらに設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面又は下端面に第1の周波数孔が設けられた第1の誘電体共振空洞と、
前記第1の誘電体共振空洞と連結され、上端面又は下端面に第2の周波数孔が設けられた第2の誘電体共振空洞であって、前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部には結合スロットが設けられ、前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部には第3の周波数孔がさらに設けられている第2の誘電体共振空洞と、
を含む誘電体フィルタユニット。
【請求項2】
前記第3の周波数孔の開口は、前記誘電体フィルタユニットの上端面、前記誘電体フィルタユニットの側面、前記誘電体フィルタユニットの下端面、前記誘電体フィルタユニットの上端面と側面との接続部、又は前記誘電体フィルタユニットの側面と下端面との接続部を向いている
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項3】
前記結合スロットは、前記誘電体フィルタユニットの上端面と下端面とを貫通する貫通スロット又は貫通しないブラインドスロットである
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項4】
前記結合スロットは、前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部の内部又は前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部の縁部に位置する
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項5】
前記結合スロットが2つ以上設けられている
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項6】
前記第1の周波数孔と前記第2の周波数孔とは、前記誘電体フィルタユニットの同じ端面に位置する
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項7】
前記第1の周波数孔と前記第2の周波数孔とは、前記誘電体フィルタユニットの異なる端面に位置する
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項8】
前記第1の誘電体共振空洞の、前記第1の周波数孔が位置する端面と反対するもう1つの端面には第4の周波数孔が設けられるか、又は前記第2の誘電体共振空洞の、前記第2の周波数孔が位置する端面と反対するもう1つの端面には第4の周波数孔が設けられている
請求項7に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項9】
前記第1の周波数孔、前記第2の周波数孔及び前記第3の周波数孔はいずれもめくら穴である
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項10】
前記第3の周波数孔の中心線が前記誘電体フィルタユニットの側面と垂直であるか、又は前記第3の周波数孔の中心線が前記誘電体フィルタユニットの側面と鋭角の角度をなす
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項11】
前記第3の周波数孔の水平方向の投影領域は、前記結合スロットの水平方向の投影領域と完全に又は部分的に重なる
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項12】
前記第3の周波数孔が2つ以上設けられている
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項13】
各前記第3の周波数孔の水平方向の投影領域は、前記結合スロットの水平方向の投影領域と完全に又は部分的に重なる
請求項12に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項14】
前記第1の周波数孔、前記第2の周波数孔、前記第3の周波数孔、前記結合スロットの横断面形状は、円形、長方形、正多角形、又は不規則な多角形である
請求項1に記載の誘電体フィルタユニット。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の誘電体フィルタユニットを2つ以上含む
誘電体フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は出願番号が202111130983.7で、出願日が2021年9月26日である中国特許出願に基づいて提出され、その中国特許出願の優先権を主張し、その中国特許出願の全ての内容を参考として本願に援用する。
【0002】
本願は通信機器の分野に関し、特に誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
高誘電率物質中を伝搬させるときに電磁波の波長を短くすることができる理論を用いれば、従来の金属材料に代えて誘電体材料を用いて、同じ指標の下で、フィルタの体積を小さくすることができる。誘電体フィルタに対する研究は従来通信業界で注目されている。フィルタは無線通信製品の重要な部品であり、誘電体フィルタは通信製品の小型化にとって特に重要な意味を持っている。
【0004】
誘電体フィルタは通常、複数の共振空洞により構成され、共振空洞の数が多いほど、フィルタの次数が高くなるため、抑制性能が良くなるが、多くの場合、誘電体フィルタの体積も大きくなってしまう。従来の一般的な誘電体フィルタは体積、多重共振モード及び抑制性能などの多方面の要求を同時に満足することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の目的は、先行技術に存在する技術課題の少なくとも一つを解決し、誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本願の実施例は誘電体フィルタユニットを提供し、前記誘電体フィルタユニットは、
上端面又は下端面に第1の周波数孔が設けられた第1の誘電体共振空洞と、
前記第1の誘電体共振空洞と連結され、上端面又は下端面に第2の周波数孔が設けられた第2の誘電体共振空洞であって、前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部には結合スロットが設けられ、前記第1の誘電体共振空洞と前記第2の誘電体共振空洞との連結部には第3の周波数孔がさらに設けられている第2の誘電体共振空洞と、を含む。
【0007】
第2の態様において、本願の実施例は上記の第1の態様の実施例に記載の誘電体フィルタユニットを2つ以上含む誘電体フィルタを提供する。
【0008】
本願の他の特徴及び利点は、後の明細書において説明され、明細書から部分的に明らかになるか、又は本願を実施することによって理解される。本願の目的及び他の利点は、明細書、特許請求の範囲及び図面において特別に指摘される構成によって達成し、得ることができる。
添付図面は、本願の技術案の更なる理解を提供するものであり、明細書の一部を構成し、本願の実施例と共に本願の技術案を解釈するために使用され、本願の技術案に対する制限を構成するものではない。
以下では、図面と実施例を組み合わせて本願をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願の第1の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの斜視図である。
【
図2】本願の第1の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの平面図である。
【
図3】本願の第1の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの正面図である。
【
図4】本願の第2の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの正面図である。
【
図5】本願の第3の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの平面図である。
【
図6】本願の第4の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの斜視図である。
【
図7】本願の第5の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの平面図である。
【
図8】本願の第5の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの正面図である。
【
図9】本願の実施例により提供される誘電体フィルタの斜視図である。
【
図10】本願の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの第3の周波数孔400と結合スロット300との協働を示す模式図である。
【
図11】3つの空洞より構成される一般的なCT三極子構造の模式図である。
【
図12】3つの空洞より構成される一般的なCT三極子構造の、伝送零点が通過帯域の高周波側に位置する模式図である。
【
図13】3つの空洞より構成される一般的なCT三極子構造の、伝送零点が通過帯域の低周波側に位置する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本セクションは、本願の具体的な実施例について詳細に説明し、添付図面には本願の好ましい実施例が示され、図面の役割は、明細書の文字部分の記載を図形で補足することで、本願の各技術的特徴及び全体的な技術的解決手段を直感的かつ具体的に理解することを可能にすることであるが、本願の保護範囲への制限であると理解すべきではない。
【0011】
本願の説明において、「いくつか」は一つ又は複数を意味し、「複数」は2つ以上を意味し、「~より大きい」、「~より小さい」、「~を超える」などは基準となる数を含まないと理解し、「以上」、「以下」、「以内」などは基準となる数を含むと理解すべきである。「第一」、「第二」と言及した場合、技術的特徴を区分するためだけであって、相対的重要性を提示又は暗示する、或いは提示される技術的特徴の数を暗示的に指定する、或いは技術的特徴の前後関係を暗示的に指定するように理解すべきではない。
【0012】
本願の説明において、別途明確な限定がない限り、「設置」、「取付」、「接続」等の用語は、広義に理解されるべきである。当業者は、技術手段の具体的な内容と合わせて、本願における上記の用語の具体的な意味合いを合理的に確定することができる。
【0013】
高誘電率物質中を伝搬させるときに電磁波の波長を短くすることができる理論を用いれば、従来の金属材料に代えて誘電体材料を用いて、同じ指標の下で、フィルタの体積を小さくすることができる。誘電体フィルタに対する研究は従来通信業界で注目されている。フィルタは無線通信製品の重要な部品であり、誘電体フィルタは通信製品の小型化にとって特に重要な意味を持っている。
【0014】
交差結合は、電磁波が異なる結合経路を通過すると位相及び極性が反転するため、フィルタの帯域外に無限小のノッチ点、すなわち伝送零点が生じることに意義がある。これにより、空洞数を増やすことなく、フィルタの帯域外抑制の能力を向上させることができる。
【0015】
帯域外零点は、フィルタの動作通過帯域の高低周波側の両側又は片側に発生する。帯域外零点がそれぞれフィルタ通過帯域の両側にある場合、その強さ、すなわち通過帯域との周波数的距離が異なる。上述した特性は、具体的な帯域外抑制指標要件に応じて、設計が柔軟に調整できることが求められる。
【0016】
誘電体フィルタは通常、複数の共振空洞により構成され、共振空洞の数が多いほど、フィルタの次数が高くなるため、抑制性能が良くなるが、多くの場合、誘電体フィルタの体積も大きくなってしまう。従来の一般的な誘電体フィルタは体積、多重共振モード及び抑制性能などの多方面の要求を同時に満足することができない。
【0017】
本発明の実施形態は、小型化、多重共振モード化及び帯域外伝送零点の生成を同時に実現することができる誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタを提供する。
【0018】
以下、添付の図面に関連して、本願の実施例についてさらに説明する。
【0019】
図1~
図3を参照し、
図1は、本願の第1の態様の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの斜視図であり、
図2は本願の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの平面図であり、
図3は本願の実施例により提供される誘電体フィルタユニットの正面図である。本願の実施例により提供される誘電体フィルタユニットは、第1の誘電体共振空洞100と、第2の誘電体共振空洞200とを含む。
【0020】
第1の誘電体共振空洞100は、上端面又は下端面に第1の周波数孔110が設けられている。
【0021】
第2の誘電体共振空洞200は第1の誘電体共振空洞100と連結している。第2の誘電体共振空洞200は、上端面又は下端面に第2の周波数孔210が設けられている。第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との連結部には結合スロット300が設けられている。第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との連結部には第3の周波数孔400がさらに設けられている。
【0022】
誘電体フィルタユニットは、第1の誘電体共振空洞100と、第2の誘電体共振空洞200とを含む。第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との間には結合スロット300が設けられているため、2つの共振空洞の間に一定の量の結合が発生する。また、第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との連結部には第3の周波数孔400が設けられている。第3の周波数孔400と結合スロット300との間に協働があるため、二重空洞の構造内で第3の共振モードが励起される。それにより、誘電体フィルタは、2つの空洞の物理的形態及び体積寸法のみを利用して、3つの伝送モードを実現するため、3次フィルタの性能を達成すると同時に、帯域外伝送零点を発生させることができ、高いデバッグ可能性及び生産性を有する。
【0023】
図1~
図3に示す実施例において、第3の周波数孔400の開口が誘電体フィルタユニットの側面を向いていることが分かる。なお、第3の周波数孔400の開口は、誘電体フィルタユニットの上端面又は下端面を向いていてもよく、誘電体フィルタユニットの上端面と側面との接続部を向いていてもよく、又は誘電体フィルタユニットの側面と下端面との接続部を向いていてもよい。第3の周波数孔400と結合スロット300との間に協働が存在することを保証して、二重空洞の構造内で第3の共振モードを励起できれば、第3の周波数孔400の開口は、異なる位置を向いていてもよい。
【0024】
なお、第1の誘電体共振空洞100及び第2の誘電体共振空洞200の形状は、多角形又は不規則な形状の立方体であってもよい。本実施例における第1の誘電体共振空洞100及び第2の誘電体共振空洞200は、いずれも長方体とされる。
【0025】
図1に示すように、第1の周波数孔110は、第1の誘電体共振空洞100の上端面から内部へ凹んで形成された周波数めくら穴であり、同様に、第2の周波数孔210は、第2の誘電体共振空洞200の上端面から内部へ凹んで形成された周波数めくら穴である。第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との間には結合スロット300があり、結合スロット300は、2つの共振空洞間に一定の量の結合が発生するように結合窓を形成するように機能する。また、誘電体フィルタユニットの側面から内部へ凹んで第3の周波数孔400が形成され、第3の周波数孔400は2つの空洞の間に位置し、誘電体フィルタユニット全体の外面の平面、孔及びスロットを含む表面が全てメタライズ処理されている。デバッグ時に一部領域のメタライズを除去してもよい。
【0026】
第1の周波数孔110と第2の周波数孔210とは、誘電体フィルタユニットの同じ端面、例えば、いずれも誘電体フィルタユニットの上端面又は下端面に位置する。
図1~
図3の実施例のように、第1の周波数孔110及び第2の周波数孔210は、いずれも誘電体フィルタユニットの上端面に位置し、すなわち、第1の周波数孔110は、第1の誘電体共振空洞100の上端面に位置し、第2の周波数孔210は、第2の誘電体共振空洞200の上端面に位置している。第1の周波数孔110及び第2の周波数孔210はいずれも表面から内部へ凹んで形成されためくら穴であり、共振空洞の周波数を発生及びチューニングするのに用いられる。
【0027】
なお、第1の周波数孔110及び第2の周波数孔210は、誘電体フィルタユニットの異なる端面に位置してもよく、すなわち、第1の周波数孔110と第2の周波数孔210は、誘電体フィルタユニットの上端面と下端面にそれぞれ位置してもよい。例えば、
図4を参照し、第1の周波数孔110が第1の誘電体共振空洞100の上端面に位置し、第2の周波数孔210が第2の誘電体共振空洞200の下端面に位置することにより、伝送位相を反転させるように機能して、伝送零点をフィルタ通過帯域の高周波側と低周波側との間で切り替える。
【0028】
なお、第1の周波数孔110と第2の周波数孔210とが誘電体フィルタユニットの異なる端面に位置する場合、誘電体フィルタユニットには第4の周波数孔がさらに設けられてもよい。第4の周波数孔は、第1の誘電体共振空洞の、第1の周波数孔が位置する端面と反対するもう1つの端面、又は第2の誘電体共振空洞の、第2の周波数孔が位置する端面と反対するもう1つの端面に設けられる。
図4に示す実施例において、第2の誘電体共振空洞200の上端面にはさらに、第4の周波数孔220が設けられている。第4の周波数孔220を追加することにより、デバッグの容易さを向上させることができる。
【0029】
第1の周波数孔110、第2の周波数孔210及び第4の周波数孔220はいずれもめくら穴であり、それらの横断面形状は、円形、長方形、正多角形、不規則な多角形であってもよい。
【0030】
なお、結合スロット300は、2つの誘電体共振空洞の間の領域に位置しており、結合スロット300は、誘電体フィルタユニットの上端面と下端面とを貫通する貫通スロットであってもよく、貫通しないブラインドスロットであってもよい。また、1つの誘電体フィルタユニットにおける結合スロット300の数は、1つだけであってもよく、2つ以上であってもよく、
図1~
図3に示す実施例では、結合スロット300が1つ設けられ、
図5に示す実施例では、結合スロット300が2つ設けられている。
【0031】
さらに、結合スロット300は、誘電体フィルタユニットに対して、縁部が局所的に開放する形態であってもよく、誘電体フィルタユニット内に完全に埋め込まれた形態であってもよく、
図6に示す実施例には、結合スロット300が誘電体フィルタユニット内に埋め込まれた形態が示され、すなわち、結合スロット300が第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との連結部の内部に位置する。一方、
図1に示す実施例には、結合スロット300の縁部が局所的に開放する形態が示され、すなわち、結合スロット300が第1の誘電体共振空洞100と第2の誘電体共振空洞200との連結部の縁部に位置する。ここで、結合スロット300の横断面形状は、円形、長方形、正多角形、不規則な多角形であってもよい。
【0032】
図1及び
図6を参照し、第3の周波数孔400は、誘電体フィルタユニットの側面から内部へ凹んで形成されためくら穴である。第3の周波数孔400の横断面形状は、円形、長方形、正多角形、不規則な多角形であってもよい。なお、第3の周波数孔400の中心線が誘電体フィルタユニットの側面と垂直であってもよく、誘電体フィルタユニットの側面と垂直でなくてもよい。第3の周波数孔400の中心線が誘電体フィルタユニットの側面と垂直でない場合、第3の周波数孔400の中心線が誘電体フィルタユニットの側面と鋭角の角度をなす。
図7と
図8はそれぞれ、第3の周波数孔400の中心線が誘電体フィルタユニットの側面と垂直でない場合の誘電体フィルタユニットの平面図と正面図であり、図面から分かるように、第3の周波数孔400の水平方向の投影領域は、結合スロット300の水平方向の投影領域と完全に又は部分的に重なることが分かる。ここで、
図7及び
図8の結合窓310は、結合スロット300の水平方向の誘電体フィルタユニット上での投影領域であり、第3の周波数孔400は結合窓310上に位置し、すなわち、第3の周波数孔400は結合窓310と完全に又は部分的に重なる領域410を有する。
【0033】
結合スロット300の数が1よりも多い場合、結合窓310とは、全ての結合スロット300の投影領域の和を指す。また、任意の2つの結合スロット300の投影領域同士に重ならない領域が生じた場合、結合窓310は、投影領域同士の重ならない領域も含む。
【0034】
なお、誘電体フィルタユニット内の第3の周波数孔400の数は、
図1に示すように、1つだけであってもよい。誘電体フィルタユニット内の第3の周波数孔400の数は、1つより多くてもよく、すなわち、第3の周波数孔400が2つ以上設けられてもよい。なお、第3の周波数孔400が2つ以上設けられている場合、各第3の周波数孔400の水平方向の投影領域は、結合スロット300の水平方向の投影領域と完全に又は部分的に重なる。
【0035】
図3を参照し、第3の周波数孔400は誘電体フィルタユニットの側面にあり、図中のDは、第3の周波数孔400の横断面の中心点と誘電体フィルタユニットの上端面との距離であり、誘電体フィルタユニットは、該距離Dを調節することにより、伝送零点の調節を実行することができる。
図2を参照し、図中のBは結合スロット300の水平方向の深さであり、誘電体フィルタユニットは、結合スロット300の深さBを調節することにより、伝送零点の位置を柔軟に調節することができる。なお、
図2中のCは、第3の周波数孔400の底部と結合スロット300との距離であり、誘電体フィルタユニットは、該距離Cを調節することにより、第3のモードの周波数を柔軟に調節することができる。
【0036】
なお、誘電体フィルタユニットの誘電体とは、例えば誘電率が20、40、60等のセラミックなど、一定の誘電率を有する材料である。誘電体フィルタユニットの誘電体は、1つの材料を用いてもよく、異なる誘電率の材料を混合して用いてもよい。
【0037】
なお、本願の第2の態様にかかる実施例は上記の第1の態様の実施例の誘電体フィルタユニットを2つ以上含む誘電体フィルタを提供する。
図9に示すように、
図9は、上述した第1の態様の実施例の誘電体フィルタユニットを2つ含む誘電体フィルタの設計例を示している。これは、本願の誘電体フィルタユニットを用いて実現される誘電体フィルタ製品全体のうちの1つを示すだけであり、複数のこのような誘電体フィルタユニットをカスケード接続することにより、異なる次数、異なるトポロジ、異なるモード及び異なる材料のフィルタを構成してもよい。
【0038】
誘電体フィルタの伝送零点の発生は、非隣接空洞の交差結合経路を、主結合経路の信号と逆位相の重ね合わせをさせることにより、通過帯域外の特定の周波数において信号を遮断し、理論的に無限小のノッチ点、すなわち伝送零点を発生させることである。
【0039】
図11を参照し、
図11には、一般的な3つの空洞により構成されるCT三極子構造が示されており、信号の伝送経路は、それぞれ1→2→3及び1→3の2つである。2つの経路の反対する位相が重ね合わせられて零点が発生し、符号+は正の結合(誘導結合)を表し、符号-は負の結合(容量結合)を表す。信号伝送経路1→3間の正の結合により、
図12に示すように、フィルタ伝送零点が通過帯域の高周波側に位置することが決まり、信号伝送経路1→3間の負の結合により、
図13に示すように、フィルタ伝送零点が通過帯域の低周波側に位置することが決まる。
【0040】
物理的な構造の実現においては、
図10に示すように、本実施例により提供される誘電体フィルタユニット内の第3の周波数孔400と結合スロット300との間に協働が存在し、二重空洞の構造内で第3の動作モード、すなわち図において2と示されるモードが励起される。3つのモードは、この特定の構造の下で、上記
図11に示すCT三極子の結合構造を完成させた。
【0041】
本願の実施例により提供される誘電体フィルタユニットによれば、体積を増やすことなく、第3の共振モードを発生させ、すなわち、共振空洞を1段追加することにより、フィルタの伝送応答の帯域外抑制性能を向上させる。あるいは、空洞数を維持したまま、体積を大幅に縮小する。誘電体フィルタユニットは伝送零点を発生させるため、フィルタの伝送応答の帯域外抑制性能がさらに向上する。誘電体フィルタユニットの第3の共振モードは独立して調整可能であり、発生する伝送零点も独立して調整可能であるため、生産性が非常に高い。誘電体フィルタユニットの品質係数Q値は、第3の共振モードの発生により低下することはない。誘電体フィルタユニットの加工・成形が容易であり、同じ次数について、材料のコストがより低く、より軽量である。
【0042】
本願の実施例は、誘電体フィルタユニット及び誘電体フィルタを含む。本願の実施例により提供される案によれば、誘電体フィルタユニットは、第1の誘電体共振空洞と、第2の誘電体共振空洞とを含む。第1の誘電体共振空洞と第2の誘電体共振空洞との間には結合スロットが設けられているため、2つの共振空洞の間に一定の量の結合が発生する。また、第1の誘電体共振空洞と第2の誘電体共振空洞との連結部には第3の周波数孔が設けられている。第3の周波数孔と結合スロットとの間に協働があるため、二重空洞の構造内で第3の共振モードが励起される。それにより、誘電体フィルタは、2つの空洞の物理的形態及び体積寸法のみを利用して、3つの伝送モードを実現するため、3次フィルタの性能を達成すると同時に、帯域外伝送零点を発生させることができ、高いデバッグ可能性及び生産性を有する。小型化、多重共振モード化及び帯域外伝送零点の生成を同時に実現することができる。
【0043】
以上、添付図面を組み合わせて本願の実施例について詳細に説明したが、本願は上記実施例に限定されるものではなく、当業者が有する知識の範囲内で、本願の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。
【国際調査報告】