(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】患者における敗血症検出及び管理のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240903BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532363
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022039290
(87)【国際公開番号】W WO2023014802
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524049996
【氏名又は名称】ディープル・ダイアグノスティクス・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】DEEPULL DIAGNOSTICS S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】カレラ ファブラ,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ブル ヒベルト,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アイビー,リチャード マックス
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
敗血症検出システムは、患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、患者における病原体の抗菌剤耐性(AMR)を検出するように構成された第4のサブシステムと、処理デバイスとを備える。第1、第2、第3及び第4のサブシステム、及び処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合されている。処理デバイスは、患者における感染の存在と、調節不全の宿主応答の存在と、臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、患者における敗血症の存在を判定するように構成される。サブシステムは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理、ラマン分光法、臨床データ、電子健康記録(EHR)データ、及び抗菌剤感受性試験(AST)のうちの少なくとも1つを利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、
前記患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、
処理デバイスと
を備え、
前記第1のサブシステム、前記第2のサブシステム、前記第3のサブシステム、及び前記処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合され、
前記処理デバイスは、前記患者における前記感染の存在と、前記調節不全の宿主応答の存在と、前記臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、前記患者における敗血症の存在を判定するように構成される、システム。
【請求項2】
前記第1のサブシステムは、
前記患者における前記感染を検出するように構成され、
前記患者の第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記産物核酸から直接病原体を同定するように構成された同定モジュールと
を備える、請求項1に記載のシステム。
前記第1のサブシステムは、
前記患者における前記感染を検出するように構成され、
第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記患者における前記感染を示す、RNAを含むトランスクリプトーム産物を同定するように構成された同定モジュールと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のサブシステムにおける前記感染の存在は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記感染の存在は、前記患者において前記感染を引き起こす病原体から測定されたデータの分析によって判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記感染の存在は、前記患者の免疫応答に関連するデータの分析によって判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のサブシステムにおける前記調節不全の宿主応答の存在は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2のサブシステムは、
前記患者の第1の試料のラマンスペクトルデータを取得するように構成されたラマン分光計と、
前記患者における前記調節不全の宿主応答を示す1又は複数の信号を特定するために前記ラマンスペクトルデータを分析するように構成されたプロセッサと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のサブシステムは、
前記患者の第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記患者における前記調節不全の宿主応答を示す、RNAを含むトランスクリプトーム産物を同定するように構成された同定モジュールと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3のサブシステムは、前記患者の電子健康記録及び1又は複数のデータベースのうちの少なくとも1つから前記患者における前記臓器機能障害を示す前記臨床データを収集するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記患者における前記臓器機能障害を示す前記臨床データは、逐次臓器不全評価(SOFA)、クイックSOFA、全国早期警告スコア(NEWS)、前記患者のバイタルサイン、及び前記患者のバイオマーカのうちの少なくとも1つと関連付けられた1又は複数のスコアを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項11】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、前記臨床データと、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データとの組合せを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、逐次臓器不全評価(SOFA)スコアを使用して判定され、前記SOFAスコアの少なくとも1又は複数の変数は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、
前記患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、
試料からの前記患者における病原体の抗菌剤耐性(AMR)を検出するように構成された第4のサブシステムと、
処理デバイスと
を備え、
前記第1のサブシステム、前記第2のサブシステム、前記第3のサブシステム、前記第4のサブシステム、及び前記処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合され、
前記処理デバイスは、前記患者における前記感染の存在と、前記調節不全の宿主応答の存在と、前記臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、前記患者における敗血症の存在を判定するように構成される、システム。
【請求項15】
前記病原体の前記AMRは、前記病原体の1又は複数の耐性遺伝子を標的とするPCRから取得された遺伝子型情報によって判定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項16】
前記病原体の前記AMRは、前記患者における前記病原体の抗菌剤感受性試験(AST)アッセイを行うように構成されたASTモジュールによって取得された表現型情報によって判定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ASTモジュールは、前記病原体の1又は複数の画像を取得するように構成された顕微鏡を備え、前記病原体が単一細胞微生物を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のサブシステムは、前記試料から前記患者における前記病原体を同定するように構成された同定モジュールを備え、
前記処理デバイスは、
前記同定モジュールからの前記病原体に関するデータ及び前記ASTモジュールからの前記ASTアッセイの結果を受信し、
前記病原体の疫学情報又は抗生物質耐性情報についての1又は複数のデータベースにアクセスし、
前記ASTアッセイの前記結果と、前記1又は複数のデータベースからの前記病原体についての疫学情報又は抗生物質耐性情報とに基づいて、前記患者の治療についての推奨を生成する
ようにさらに構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記処理デバイスは、
前記患者の免疫プロファイルを特定するために前記患者の電子健康記録(EHR)にアクセスし、
前記患者の前記免疫プロファイルにさらに基づいて前記患者の治療についての前記推奨を生成する
ようにさらに構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項20】
前記患者の第1の試料を受け取るように構成された第1のサブシステムと、
前記第1の試料から前記患者のラマンスペクトルデータを取得するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者の電子健康記録(EHR)データから1又は複数の患者変数を取得し、
前記第2のサブシステムから前記患者の前記ラマンスペクトルデータを受信し、
前記EHRデータ及び前記ラマンスペクトルデータの少なくとも一方に訓練された学習アルゴリズムを適用することによって、前記患者を免疫プロファイル群に分類する
ように構成された処理デバイスと、
を備える、システム。
【請求項21】
前記1又は複数の患者変数は、体温、心拍数、収縮期血圧、呼吸数、白血球数、血小板数、動脈酸素分圧対吸気酸素分画との比率(PaO2/FiO2)、ビリルビン値、グラスゴー・コーマ・スケール・スコア、心血管平均動脈圧、クレアチニン値、乳酸値、C反応性タンパク質値、及びプロカルシトニン値のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項22】
前記処理デバイスは、
前記患者の前記EHRデータ、前記ラマンスペクトルデータ、及び前記1又は複数の患者変数に関するデータのうちの少なくとも1つに、前記訓練された学習アルゴリズムを適用することに基づいて、前記患者における感染及び/又は敗血症の尤度を特定し、
前記特定の結果を示す通知を生成する
ようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記特定の前記結果は、前記患者における感染及び/又は敗血症の低い尤度を示し、前記尤度の値が所定の閾値未満である、請求項23に記載のシステム。
【請求項24】
前記特定の前記結果は、前記患者における感染及び/又は敗血症の高い尤度を示し、前記尤度の値が所定の閾値以上である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記処理デバイスは、前記特定の前記結果に基づいて前記患者の治療についての推奨を生成するようにさらに構成され、前記治療についての前記推奨は、前記患者の試料の抗生物質感受性試験(AST)に基づくものである、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラマン分光法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、単一細胞顕微鏡法、及び人工知能(AI)技法のうちの1又は複数を利用することによる早期敗血症認識、検出、及び管理のためのシステム、方法、及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能障害として定義される。敗血症を経験する、又は起こす患者は、患者の免疫系からの身体の炎症がオーバードライブ状態になる、肺炎などの局所感染から始まり得る。炎症は、未処置のままだと、最終的には、臓器不全及び患者の死につながり得る。敗血症は毎年1100万人の死亡を引き起こし、これらの症例の多くは早期診断及び適切な臨床管理によって防ぐことができる。敗血症を、まだ効率的に処置することができる早期に検出することが、患者転帰を改善し、罹患率及び死亡率を低下させるために不可欠である。
【0003】
場合によっては、敗血症検出のための単一の特異的なバイオマーカが欠如しているために敗血症を特定することは困難である。プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)など、様々な時点で患者に存在する敗血症のいくつかの異なるバイオマーカ又は指標が存在し得る。さらに、敗血症の早期認識及び診断のためのそのようなバイオマーカには、症状が現れる前に敗血症を検出するのに十分な感受性及び特異性がない可能性もある。それらの陽性的中率は、多くの場合、制限因子であり得る。よって、患者における敗血症応答の複雑さ及び急速な進行のために敗血症検出に必要な1つの特定の基準を指し示すことは困難である。
【0004】
敗血症診断は、感染を同定するための血液試料を培養するために臨床検査を行うことによって行われる。現在の検査時間は、敗血症を引き起こす細菌の血液培養物を取得し、処理して、処置のための有効な抗菌剤に対する細菌の感受性を最終的に判定するのに必要な時間の結果として、検査室から結果を取得するために数日を要する場合がある。しかしながら、敗血症は、適切に同定され、間に合うように治療されなければ数時間以内に敗血症性ショック及び死につながり得るので、敗血症検出は病院の患者にとって時間的制約がある。さらに、血液培養試験は、時間がかかり、特に抗生物質治療を既に受けている患者に対して、敗血症を有すると臨床的に疑われる患者における細菌又は真菌の検出の信頼できる結果を一貫して提供しない可能性もある。患者の陽性血液培養物を取得するための収率は低いことが多く、陽性血液培養物の同定がなくても患者は敗血症を経験している可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、疾患カスケードにおいてはるかに早期に敗血症を検出し、病原体及び抗菌剤感受性を同定し、より良好な患者転帰のために患者における適切な治療を管理するための改善された診断方法、システム及びデバイスのための費用効果の高い解決策を提供する。
【0006】
本明細書で説明するのは、訓練学習アルゴリズム、ラマン分光法、臨床データ、電子健康記録(EHR)データ、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用することによる早期敗血症認識、検出、及び管理のためのシステム、方法、及びデバイスである。本開示は、血液試料から、又は尿、無菌体液などといった他の試料から直接の、迅速な免疫(宿主)応答検出(又は特性評価)、病原体同定、及び抗菌剤感受性試験(AST)のためのシステム、方法、及びデバイスを提供する。いくつかの実施形態は、患者のEHRデータを監視するための早期警告機能を、血液試料を走査して感染症を有する、又は敗血症もしくは敗血症性ショックを発症する可能性が高い患者を同定するラマン分光デバイスと共に提供する。
【0007】
いくつかの実施形態はまた、マルチプレックスPCRアプローチを使用して培養ステップなしで病原体を同定し、分析時間を大幅に短縮する。いくつかの実施形態はまた、PCR技法を利用して、病原体の遺伝子型耐性情報を検出し得る。病原体の表現型感受性を同定し、迅速かつ有効な抗菌剤治療のための診断経路をもたらすために、単一細胞顕微鏡法が活用されてもよい。
【0008】
システム及び方法は、臨床データ、免疫応答データ、及び感染データを含む、利用可能な情報のいくつかの要素の問い合わせに基づいた敗血症の状態及びその重症度の予測を含む。このデータは、利用可能な異なる情報に基づく患者の層別化にも使用され得る。
【0009】
一実施形態では、例示的なシステムが説明される。システムは、患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、処理デバイスとを含む。第1のサブシステム、第2のサブシステム、第3のサブシステム、及び処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合される。処理デバイスは、患者における感染の存在と、調節不全の宿主応答の存在と、臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、患者における敗血症の存在を判定するように構成される。
【0010】
別の実施形態では、例示的なシステムが説明される。システムは、患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、試料からの患者における病原体の感受性などの抗菌剤耐性(AMR)を検出するように構成された第4のサブシステムと、処理デバイスとを含む。第1のサブシステム、第2のサブシステム、第3のサブシステム、第4のサブシステム、及び処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合される。処理デバイスは、患者における感染の存在と、調節不全の宿主応答の存在と、臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、患者における敗血症の存在を判定するように構成される。
【0011】
さらに別の実施形態では、例示的なシステムが説明される。システムは、患者の第1の試料を受け取るように構成された第1のサブシステムと、第1の試料から患者のラマンスペクトルデータを取得するように構成された第2のサブシステムと、処理デバイスとを含む。処理デバイスは、患者の電子健康記録(EHR)データから1又は複数の患者変数を取得し、第2のサブシステムから患者のラマンスペクトルデータを受信し、訓練された学習アルゴリズムをEHRデータ及びラマンスペクトルデータの少なくとも一方に適用することによって患者を免疫プロファイル群に分類するように構成される。
【0012】
さらなる特徴及び利点、並びに様々な実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照して以下で詳細に説明する。本明細書で説明される特定の実施形態は、限定されることを意図しない。そのような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に提示されている。当業者には、本明細書に含まれる教示に基づくさらなる実施形態が明らかであろう。
【0013】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示の実施形態を例示し、説明と相まって、本開示の原理を説明し、当業者が本開示を作成及び使用することを可能にするのにさらに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本開示の実施形態による、敗血症検出ワークフローの例示的な図を示す。
【
図1B】本開示の実施形態による、敗血症検出システムの例示的な図を示す。
【
図2】本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおけるラマン分光デバイスの例示的な図を示す。
【
図3】本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおける処理デバイスの例示的な図を示す。
【
図4】本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおける分析器の例示的な図を示す。
【
図5】本開示の実施形態による、患者における敗血症を特定するための学習アルゴリズムを訓練するための方法の例示的なフローチャート図を示す。
【
図6】本開示の実施形態による、患者における敗血症の尤度を判定するための方法の例示的なフローチャート図を示す。
【
図7】本開示の実施形態による、コンピュータシステムの例示的な構成要素のブロック図を示す。
【0015】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定の構成及び配置が論じられているが、これは例示のみを目的として行われることを理解されたい。当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成及び配置を使用できることを認識するであろう。本開示が様々な他の用途にも使用できることは、当業者には明らかであろう。
【0017】
なお、本明細書における「ある実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載の実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、あらゆる実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、又は特性を含むとは限らないことを示す。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が一実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性を達成することは当業者の知識の範囲内である。
【0018】
序論:
敗血症は、感染に対する調節不全の免疫(宿主)応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能障害として定義される。敗血症は、典型的には、細菌感染によって引き起こされることがあるが、真菌及びウイルスによっても引き起こされ得る。敗血症カスケードは、感染から始まり、続いて感染に対する制御されない又は調節不全の免疫応答が起こる可能性があり、最終的には臓器機能障害、臓器不全、及び/又は死をもたらす。いくつかの実施形態では、敗血症を起こす患者は、全身性炎症反応症候群(SIRS)の症状を呈する可能性があり、これは敗血症、敗血症性ショック、多臓器機能障害(MOD)に進行し得、最終的には死に至ることがある。敗血症が悪化するにつれて、それは異常な血液凝固を引き起こす可能性があり、組織を損傷又は破壊する小さな血餅又は血管の破裂をもたらす。これは、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器への血流に影響を及ぼし、臓器機能障害及び損傷をもたらす。病院環境では、敗血症の危険にさらされている患者を同定し、これらの患者のケアを適切に管理する緊急の必要性がある。正確な診断及び適切な治療がなければ、患者の罹患及び死亡の尤度は、1時間ごとに時間刻みに劇的に増加する。
【0019】
迅速な敗血症検出方法は、現在、限られている。敗血症を検出するための標準治療は血液培養に依拠しており、その検出までの平均時間は約13時間である。血液培養試験は、病原体の同定(ID)なしで生物体を提供し、続いてペトリ皿上に陽性をプレーティングする。従来の血液培養プロセスでは、成人患者ごとに2つの血液培養セットが採取され、各セットは好気性ビン及び嫌気性ビンからなり、培養イベント中に敗血症原因細菌の全範囲が確実に捕捉されることを保証する。一般に、各培養物は、別個の静脈穿刺(例えば、患者の左腕と右腕)から取得される。これは、下流の試験(例えば、IDやAST)のために細菌が「回収」されるように、細菌排出イベントが培養物によって捕捉されることを保証するためである。培養後、好気性ビン及び嫌気性ビンは血液培養機器内でインキュベートされ、そこでそれらのビンは増殖についてリアルタイムで監視される。好気性ビン及び嫌気性ビンは、任意の細菌が電子的に検出されるLag-Log増殖転移を経ることができるまでインキュベートされ、撹拌される。次いで、検査室作業者は、患者に陽性培養物が存在することを警告される。典型的には、血液培養物は、ほとんどの細菌について平均約13時間で陽性になるが、一部の酵母菌及び真菌は、はるかに長時間(例えば、最大5日間)を要する場合がある。しかしながら、多くの培養物は、採血誤り、採血中に採取された血液量の不足、検査室への輸送遅延、不十分な感度などに起因して陰性である。
【0020】
敗血症の緊急性のために、陽性の後、検査室は、直ちに精密検査を開始して細菌グラム染色(例えば、グラム陽性又はグラム陰性)を同定し、有意な生物体又は汚染物質、単一微生物又は多微生物性の感染を判定し、中間情報を介護者に報告する。さらに、検査室は、分子診断システムなどの迅速な方法を使用して細菌を同定するための即時の措置を講じてもよく、これは結果を提供するのに1.5時間を要し得る。これらのシステムは、これらのプロファイルを呈する特定の細菌の遺伝的薬物耐性情報に関する限られた分子情報を提供し得る。あるいは、検査室は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析システムで陽性血液培養物(PBC)のアリコートを処理して、約1時間でIDを報告してもよい。IDを使用して、介護者は、予防的に患者に投与された可能性がある抗生物質を確認するか、又は潜在的に調整し得る。しかしながら、細菌が同定されるまでに、患者が最初に培養されてから(良くても)最大20~24時間が既に経過している可能性がある。
【0021】
同定された病原体の取得及び報告と並行して、病原体の抗生物質感受性プロファイルを判定するために抗菌剤感受性試験(AST)も行われ得る。場合によっては、ASTは、マイクロブロス希釈法又は培養ベースのアッセイを含む手作業の方法(例えば、ディスク拡散抗生物質感受性試験やプレーティングされたペトリ皿培地の使用)を使用して、単離された細菌性病原体に対してインビトロで行われ得る。他の場合には、ASTは、抗菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)又は薬物耐性について試験するために、抗菌剤耐性パネルを備えた自動化デバイスを使用して実施され得る。
【0022】
しかしながら、これらのシステムは、単離された細菌コロニーを必要とすることがある。例えば、ASTのための現在の方法は、適切に動作するためにかなりの生物量の清浄な細菌を必要とする。陽性血液培養物からの継代培養物は、最初に、プレート培地ペトリ皿上で増殖させなければならない。このプロセスは、24時間稼働の検査室では6~12時間を要し得るが、夜間閉じられる検査室では最大24時間かかる場合がある。次いで、ASTシステムに接種される前に、培養物は均一性のために調整する必要があり得る(例えば、投入のために1万個の細胞が採取される)。装填に続いて、AST分析は、すべての生物クラスについて抗菌剤感受性又は耐性情報を報告するために8~16時間を要する可能性がある。さらに、ASTは、患者の入院の少なくとも2日目まで開始しない可能性がある。言い換えれば、AST分析の結果(例えば、細菌が特定の抗生物質に対して感受性、中間、又は耐性(SIR)であるかどうか、MIC、又は耐性情報を含む)は、患者から元の血液培養物試料を最初に採取した約2.5~3日後に介護者に報告される。
【0023】
全体プロセスは、敗血症患者の重要な抗生物質情報を報告するのに数日を要し得る。例えば、感染が疑われる場合、血液、尿、痰などの試料が患者から採取され、感染因子が存在するかどうかを最初に判定するために臨床検査室に提供される。これは、ほとんどの病原性細菌種が十分に増殖するために18~24時間(例えば、1日目)を必要とし得る。細菌が単離された場合、分離菌を培養するためにさらに18~24時間(例えば、2日目)を必要とし、細菌分離株を同定し、ASTを行うためにさらに2~48時間(例えば、3日以上)を必要とする。従来の及び自動化されたAST法は、生物体の増殖のための長期間(例えば、6~24時間)のインキュベーションと共に、細菌分離株の「純粋培養物」を必要とする。従来のシステムは、増殖ベースであり、時間がかかり、高価であり、手作業の操作を必要とし、統合されていないため、制限され得る。敗血症検出のための改善された解決策がなければ、感染についての1又は複数の原因因子(例えば、病原体)に関する検査室からのより実施可能な情報を待つ間に医師が経験的抗生物質で処置するために、患者は引き続き苦しむ可能性があり、しばしば悪化する。
【0024】
現在の技術は、宿主応答検出、病原体同定、及び抗菌剤又は抗生物質感受性試験(AST)のワークフロー全体のための統合された包括的な解決策を提供していない。場合によっては、いくつかのシステムは、宿主応答の検出や病原体の検出など、敗血症カスケードの単一の局面を特定することのみに焦点を合わせている。例えば、システムは、(遺伝子発現を検出するための逆転写(RT)-PCRを介して)分子白血球RNAマーカを検出することによって敗血症の早期徴候に対する宿主応答を調べる場合があるが、病原体同定又は感受性に対する回答を提供しない。免疫応答の結果は、患者が敗血症カスケードに入りつつあるか、又は敗血症カスケードに入ったこと、及び不可逆的罹患のさらなる可能性を妨げるための処置又は介入が緊急に必要であることを介護者に警告し得る。介護者は、従来の方法を使用して感染部位及び感染因子を探すことによって、例えば、感染部位から血液培養物を取得して感染因子を同定することによって直ちに反応し得る。
【0025】
病原体検出側では、現在の技術は、血液試料からのPCRを使用し、続いて核磁気共鳴(NMR)分光検出を行う、血液から直接の検出及び同定法を提供し得る。しかしながら、そのようなシステムは、高価であり、メニュー選択肢が制限されており、迅速なAST結果のための解決策を提供することなくサービスすることが困難な可能性があり、代わりに限られた分子遺伝学的耐性パネルを提供する。他のシステムは、病原体同定のために血液から直接の病原体のrRNA RT-PCRを利用し得るが、やはり、限られたメニュー(例えば、15個以下の標的)によって制約され得る。最終的に、現在の技術は、自動化された血液から直接の迅速なAST解決策を提供せず、代わりに、実施可能なものを報告するために13~20時間を要し得る試験用の陽性血液培養物に依拠している。例えば、いくつかのシステムは、陽性血液培養物(PBC)ビンからアリコートを取得してもよく、よって、PBCビンから細菌分離株を増殖させるのに必要な時間(例えば、6~24時間)を節約する。しかしながら、これらのシステムは、報告することができる薬物及び生物体の数が制限されており、よって、医療提供者にとっての有用性が限られている。罹患率及び死亡率を大幅に低下させるために、単一細胞又は低コピー数レベルで感染性の敗血症を引き起こす細菌に対する抗生物質感受性及び抗生物質耐性を迅速に判定するための新しい敗血症診断方法、デバイス及びシステムが必要であり、これは、標準治療法によって現在必要とされている複数の培養ステップ(例えば、生物学的増幅)に必要とされる著しい時間遅延なしに血液試料から直接検出される。
【0026】
敗血症性状態は、しばしば患者において検出されず、生命を脅かす状態に急速に進行する可能性があるため、宿主免疫応答に関する迅速かつ関連性のある情報を取得し、原因病原体を同定し、命を救い、抗菌剤耐性(AMR)を低下させるために適切な抗菌剤に関するガイダンスを提供するための新規かつ包括的なシステム、デバイス、及び方法が明確に必要とされ、要求されている。本明細書で説明されるシステム、デバイス、及び方法は、患者における敗血症及びその重症度を同定及び管理し、同定された病原体に対する抗生物質感受性及び耐性を判定し、患者にとって有効かつ適切な治療を推奨するためのホリスティックかつ体系的なアプローチを提供する。
【0027】
敗血症検出の概要:
図1Aは、本開示の実施形態による、敗血症検出ワークフロー100の例示的な図を示している。ワークフロー100によって示されるように、敗血症は、患者において発生する3つの段階、すなわち、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び感染を同定することによって検出されてもよい。
【0028】
臓器機能障害は、1又は複数の臓器が期待される機能を果たすことができない患者の状態を表す。いくつかの実施形態では、臓器機能障害は臓器不全につながる可能性があり、臓器不全では、敗血症及び敗血症性ショックの結果として、身体の異なる系の臓器が機能しなくなる可能性がある(例えば、多臓器機能障害症候群(MODS))。いくつかの実施形態では、患者の介護者は、患者が臓器機能障害及び/又は臓器不全の徴候を呈するまで、発生している敗血症を特定しない場合もある。例えば、臓器機能障害又は臓器不全の徴候には、発熱、不規則又は速い心拍数(頻脈)、異常に速い呼吸(頻呼吸)、尿量の減少などが含まれ得る。患者における敗血症カスケードの急速な進行のために、この段階での敗血症の同定は、患者の悪化を防止するには遅すぎる場合がある。介護者が患者の罹患及び死亡を防ぐために適切なケア及び処置を患者に迅速に提供することは困難であり得る。
【0029】
臓器機能障害は、最終的には調節不全の宿主応答に起因し得る。いくつかの実施形態では、調節不全の宿主応答は、本明細書において調節不全の免疫応答と呼ばれる場合がある。調節不全の宿主応答は、身体が健康な免疫応答過程に従わない感染又は傷害に対する身体の制御されない応答であり得る。調節不全の宿主応答には、炎症、免疫抑制並びに神経内分泌、凝固及び代謝反応が含まれる。全身性炎症状態は、宿主における過剰かつ調節不全の応答を引き起こす、病原性微生物と宿主の防御系との間の相互作用から生じ得る。
【0030】
患者において発生している調節不全の宿主応答の特定は、患者における感染の存在の検出を可能にする。特に、患者における調節不全の宿主応答は、感染によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、患者における感染は、病原体によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、病原体は、本明細書において細菌(bacterium又はbacteria)、生物体、微生物(microorganism)、単一細胞又は単一微生物、微生物(microbe)、ウイルスなどと呼ばれる場合がある。感染は体内のどこでも始まる可能性があり、適切に処置されないと全体に拡散し得る。例えば、患者における感染は、調節不全の宿主応答につながる可能性があり、最終的に臓器機能障害を引き起こし得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、患者における敗血症の存在は、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び感染のうちの少なくとも1つを検出することによって判定される。いくつかの実施形態では、敗血症の3つの段階又は局面は、任意の順序で、本明細書にさらに説明するような様々な技術を使用して検出される。
【0032】
いくつかの実施形態では、患者における臓器機能障害は、訓練された学習アルゴリズムと共に、臨床データ/EHRデータ、SOFAスコア、及び患者試料のラマン分光データのうちの少なくとも1つに基づいて判定される。いくつかの実施形態では、患者における調節不全の宿主応答は、訓練された学習アルゴリズムと共に、患者試料のラマン分光データ及びEHRデータのうちの少なくとも一方によって検出される。いくつかの実施形態では、患者における感染の存在は、患者の試料に対してPCRを行うこと、及び患者の免疫応答に関連するデータを分析することのうちの少なくとも一方によって判定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び感染は、それぞれ、臨床スコア、免疫スコア、及び感染スコアによって表される。いくつかの実施形態では、3つの異なるスコアは、敗血症検出のための敗血症スコアの計算への入力であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び感染は、本明細書でさらに説明するように、異なるモジュール、コンピューティングデバイスもしくはシステム、及び/又は技術を含む様々なサブシステム及びシステムによって検出される。
【0035】
システム概要:
図1Bは、本開示の実施形態による、敗血症検出システム101の例示的な図を示している。いくつかの実施形態では、敗血症検出システム101は、本明細書においてシステム101と呼ばれる場合がある。システム101は、ラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、処理デバイス106、分析器108、及びネットワーク112を介して通信可能に結合された複数のデータベース110を含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるように、システム101の構成要素のうちの1又は複数の様々な組合せが、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び患者の感染を検出することを含む、敗血症の検出及び敗血症の進行の同定のために一緒に、かつ/又は別々に利用される。
【0037】
システム101は、患者の試料を走査するように構成されたラマン分光デバイス102を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102は、本明細書においてラマンリーダ又はラマンスキャナと呼ばれる場合がある。ラマン分光デバイス102は、緊急治療室(ER)を介して入院する可能性があるか、又は入院患者である敗血症の疑いのある患者の試料の免疫応答スクリーニング又はトリアージを行うためのラマンスペクトルデータを取得するために使用される。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で保存された患者の血漿試料を走査してもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102は、病院内又は病院外の検査室内に存在してもよく、患者の血漿試料を読み取るための試料採取管を使用してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102によって患者の試料から取得されたラマンスペクトルデータは、患者の「敗血症状態」の敗血症尤度又は確率スコアの迅速な指示を提供して、介護者に敗血症治療をエスカレートさせ、尤度値に基づいて完全な診断プロトコルに従うように通知するために使用される。特に、ラマン分光デバイス102は、血漿試料の小部分に対してラマン分光法を行って、試料の宿主応答シグネチャを表す1又は複数のピークを含むラマンスペクトルを取得し得る。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102は、敗血症検出システム101内の処理デバイス106と通信して、取得したラマンスペクトルデータを機械学習アルゴリズム及び/又は他の判断ツールパラメータと共に使用して、敗血症を迅速に検出し、かつ/又は敗血症尤度値もしくはスコアを提供する。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102はラマンスペクトルデータを処理デバイス106に送信してもよく、処理デバイス106は、ラマンスペクトルデータを使用して感染又は将来の患者における敗血症の尤度を特定するために深層学習アルゴリズムを訓練する。最終的に、ラマンスペクトルデータは、それらのラマン宿主応答シグネチャに基づいて敗血症患者を非敗血症患者と区別するために使用される。
【0039】
ラマン分光デバイス102に加えて、システム101はEHRシステム104をさらに含む。EHRシステム104は、患者の医療情報を電子的に記憶するように構成された任意の数のサーバ、コンピュータ、及び/又はデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、EHRシステム104は、病院、臨床ケア施設、研究所、放射線提供者、及び薬局などの様々な医療サービス及び医療提供者からのデータを集約し得る。
図1Bには、参照のためにただ1つのEHRシステム104が例示されているが、任意の数のEHRシステム104が存在してもよく、各EHRシステム104は、1又は複数の病院又は他の医療サービスセンタと関連付けられている。
【0040】
いくつかの実施形態では、EHRシステム104は、患者データ並びに患者の健康及び治療に関する病歴データを記憶する1又は複数のEHRデータベース(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、EHRシステム104に記憶されたデータは、本明細書においてEHRデータと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、EHRシステム104内の1又は複数のEHRデータベースは、人口統計、病歴、投薬及びアレルギー、免疫状況、臨床検査結果、放射線画像、バイタルサイン、年齢及び体重などの個人統計、並びに患者ごとの請求情報を含む、患者ごとの記録を記憶し得る。EHRシステム104内の記録は、観察データ、医療面接、検査結果、処方、メッセージ(例えば、患者の提供者らから患者に送信されたメッセージ)、並びに名前、住所、生年月日などといった患者に関する人物情報の記録を含んでもよい。いくつかの実施形態では、EHRシステム104はまた、患者ごとの既存の病気、長期にわたる併存症、投薬、介入などに関するデータも記憶し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、システム101内の複数のデータベース110のうちの1又は複数が、EHRシステム104内に統合されてもよい。例えば、複数のデータベース110は、患者情報を検索、取得、及び/又は監視するために処理デバイス106によってアクセスされ得る1又は複数のEHRデータベースを含んでもよい。他の実施形態では、複数のデータベース110は、EHRシステム104とは別個であってもよい。いくつかの実施形態では、複数のデータベース110は、任意の数のデータベースを表してもよく、臨床パラメータデータ、複数の病原体についての疫学情報又は抗生物質耐性情報、臓器機能障害データ、ラマンスペクトルデータなどを記憶する様々なデータベースを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のデータベース110は、複数の患者の臓器機能障害データを記憶してもよく、臓器機能障害データは、逐次臓器不全評価(SOFA)、クイックSOFA、ロジスティック臓器機能障害システム(LODS)、全国早期警告スコア(NEWS)、及び/又は修正早期警告スコア(MEWS)のうちの少なくとも1つと関連付けられた1又は複数のスコアを含む。いくつかの実施形態では、複数のデータベース110は、検証済み敗血症検体のラマンスペクトルデータを記憶した臨床データベースを含んでもよい。例えば、臨床データベースは、敗血症患者に対応する複数の試料の敗血症性宿主応答シグネチャを表すピークを示す敗血症患者からのラマンスペクトルデータを含んでもよい。いくつかの実施形態では、臨床データベース又はラマンスペクトルデータベース内のデータは、処理デバイス106によってラマン分光デバイス102及び/又はEHRシステム104から収集及びコンパイルされ、本明細書で説明される1又は複数の機械学習アルゴリズムを使用して更新され得る。いくつかの実施形態では、臨床データベースは、敗血症患者からの既知の試料のラマンスペクトルデータのラマンスペクトルライブラリを記憶し得る。
【0042】
処理デバイス106は、ラマン分光デバイス102、EHRシステム104、分析器108、及び複数のデータベース110から取得したデータの通信、計算、及び処理を調整し得る。いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、EHRシステム104及び/又はデータベース110からEHRデータ及び実験室情報システム(LIS)パラメータと関連付けられたデータを取得し得る。いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、EHRデータを監視し、複数の患者のEHRデータから1又は複数の患者変数の患者データを取得し得る。いくつかの実施形態では、患者変数は、体温、心拍数、収縮期血圧、呼吸数、白血球数、血小板数、動脈酸素分圧対吸気酸素分画との比率(PaO2/FiO2)、ビリルビン値、グラスゴー・コーマ・スケール・スコア、心血管平均動脈圧、クレアチニン値、尿量、乳酸値、C反応性タンパク質値、及びプロカルシトニン値のうちの少なくとも1つを含んでもよい。処理デバイス106は、EHRデータを監視し、監視に基づいて患者の状態の変化を示す1又は複数の患者変数を特定し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、処理デバイス106はまた、ラマン分光デバイス102から複数の患者についてのラマンスペクトルデータを収集及び/又は受信する。いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、ラマンスペクトルデータ又はEHRデータを別々に使用して、学習アルゴリズムを訓練し、訓練学習アルゴリズムをラマンデータ又はEHRデータに適用することによって患者の敗血症の存在を判定する。追加又は代替の実施形態では、処理デバイス106は、取得したEHRデータをラマン分光デバイス102から取得したラマンスペクトルデータと統合して、患者が敗血症の可能性を有するか否かの予測を改善し得る。いくつかの実施形態では、EHRデータとラマンスペクトルデータとの統合は、検査されている患者が敗血症を有する高い確率又は尤度を有するか否かの敗血症予測モデル(例えば、学習アルゴリズム)の確実性を高めるのに役立ち得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、敗血症の予測又は同定の尤度の結果を示す1又は複数の通知をさらに生成してもよく、処理デバイス106は、その1又は複数の通知を、医療提供者と関連付けられたコンピューティングデバイス又は分析器108の少なくとも一方に送信してもよい。いくつかの実施形態では、敗血症の予測又は同定の結果は、患者における感染及び/又は敗血症の低い尤度を示してもよく、尤度の値は所定の閾値未満であり得る。他の実施形態では、敗血症の予測又は同定の結果は、患者における感染及び/又は敗血症の高い尤度を示してもよく、尤度の値は所定の閾値以上であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、決定論的モデリングを用いて、それに対して学習アルゴリズムが訓練されていない可能性のある他の状態で病気にかかっている可能性のある患者又は非敗血症患者における全身性炎症反応症候群(SIRS)に由来する偽陽性及び不必要な「ノイズ」を低減し得る。さらに、処理デバイス106は、血漿試料のラマンスペクトルデータ(例えば、ラマン散乱データ)及び臨床データベースからのラマンスペクトルデータを使用した患者の早期警告スクリーニングのための判断モデルを含んでもよく、これは、検証済み敗血症検体で定期的に更新され得る。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102、EHRシステム104、及び/又は処理デバイス106は、患者の敗血症の早期警告検出を提供するために一緒に利用され得る。処理デバイス106は、ラマンスペクトルデータ及び/又はEHRデータに基づいて患者をスクリーニングし、どの患者が早期敗血症の徴候を呈しているかを特定するのを助けてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、EHRシステム104内の複数の患者のEHRデータを監視し、監視に基づいて、複数の患者の中の患者ごとに、1又は複数の患者変数が患者の状態の変化を示しているかどうかを判定する。1又は複数の患者変数の値が患者の所定の閾値を上回る場合には、処理デバイス106は、ラマン分光デバイス102にコマンドを送信して、同定された患者についてのラマンスペクトルデータを取得し得る。次いで、処理デバイス106は、収集されたラマンスペクトルデータ及び/又はEHRデータを使用して、収集されたラマンスペクトルデータ及び/又はEHRデータに訓練されたアルゴリズムを適用することなどによって、患者における感染及び/又は敗血症の尤度を特定し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、処理デバイス106によって実装されるこの早期警告スクリーニングは、敗血症の危険にさらされている患者を同定し、同定された患者に関する警報を介護者に送信し、(例えば、病院の内部又は外部の)検査室のコンピューティングデバイスに、分析器108を使用した診断のために患者から追加の検体を取得するために通知を送信してもよい。処理デバイス106はまた、敗血症検出システム101内のラマン分光デバイス102、EHRシステム104、分析器108、及び複数のデータベース110のうちの1又は複数から情報が受信されると、患者の免疫状況に関する迅速な結果、病原体の同定、及び抗菌剤感受性試験(AST)結果を介護者に提供し得る。さらに、多くの敗血症患者は退院してから数か月後に再入院することが多いので、処理デバイス106は、敗血症患者のメトリックに関する履歴情報を収集、処理、及び/又は比較して、以前の敗血症イベントの結果として再発する感染又は他の合併症を治療するための改善された治療計画を特定するように構成されてもよい。
【0048】
ラマン分光デバイス102、EHRシステム104、及び/又は処理デバイス106を使用して患者の試料における敗血症の可能性を検出すると、患者の試料(又は患者から採取された別の試料)は、その後、迅速な血液から直接の同定及びASTのために分析器108による直接試験にかけられ得る。
【0049】
分析器108は、試料採取、病原体同定、及び感受性試験のための1又は複数のモジュールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、分析器108は、血液試料中の病原体の迅速な同定のための改良型ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、特異性を保証しながら感受性を(血液培養物検出レベルに関して)高度に競合的なレベルまで押し上げ得る。いくつかの実施形態では、分析器108は、介護者をウイルス感染対細菌感染又は同時感染について案内するために、PCR技術を使用して一連のウイルス標的又は汎ウイルス標的を試験し得る。いくつかの実施形態では、分析器108は、PCR技術を使用して一連の真菌標的又は汎真菌標的を試験し得る。試料にPCRを適用することにより、分析器108は、血液培養又は増殖ステップを必要とせずに、臨床レベルでの低細菌量の検出に高い感受性を提供し得る。いくつかの実施形態では、分析器108はまた、病原体同定に加えて、迅速な耐性検出のためのPCR技術も組み込み得る。
【0050】
さらに、分析器108は、患者において感染を引き起こす病原体の感受性試験を行うように構成されてもよい。抗生物質感受性試験は、細菌感染症又は他の微生物感染症を有する患者を治療するための治療選択肢を臨床医に提供し得る。いくつかの実施形態では、分析器108は、複数の抗生物質又は抗菌剤について感受性試験を行って、病原体がどの抗生物質又は抗菌剤に対して感受性又は耐性であるかを判定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、分析器108は、病原体の増殖を阻害する抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)を判定する。ASTの結果は、分析器108及び/又は処理デバイス106によって、患者における感染症の治療にどの抗菌剤を推奨するかを判定するために使用され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、分析器108は、患者の試料を収容した試料容器又は消耗品を受け取るように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、患者の試料は、分析器108のユーザによって消耗品に直接ピペットで分注されるか、又は移され得る。いくつかの実施形態では、消耗品は、ユーザによって分析器108に挿入され得る。いくつかの実施形態では、消耗品は、単回使用後に使い捨てできてもよいし、又は追加の試料の試験のために再使用できてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、分析器108は、病原体同定及びASTアッセイの結果を処理デバイス106に送信することができる。処理デバイス106は、結果に基づいて患者の治療のための抗菌剤の推奨を生成し得る。いくつかの実施形態では、分析器108は、病原体同定及びASTアッセイの結果を処理デバイス106に送信してもよく、処理デバイス106は、結果に基づいて患者の治療のための抗菌剤の推奨を生成し得る。いくつかの実施形態では、処理デバイス106は、同定された病原体ついての疫学情報又は抗生物質耐性情報を求めて1又は複数のデータベース110にアクセスし、ASTアッセイの結果及び病原体についての疫学情報又は抗生物質耐性情報に基づいて患者の治療についての推奨を生成し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、処理デバイス106、分析器108、及び/又は複数のデータベース110は、医師、医師の助手、ナースプラクティショナ、看護師、臨床薬剤師、専門家などといった医療提供者と関連付けられた1又は複数のコンピューティングデバイス(図示せず)にさらに結合され得る。医療提供者と関連付けられた1又は複数のコンピューティングデバイスは、携帯情報端末、デスクトップワークステーション、ラップトップ又はノートブックコンピュータ、ネットブック、タブレット、スマートフォン、携帯電話、スマートウォッチもしくは他のウェアラブル、又はそれらの任意の組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、医療提供者は、1又は複数のコンピューティングデバイスを使用して、本明細書で説明される敗血症検出方法のいずれかからの結果にアクセスし得る。いくつかの実施形態では、医療提供者と関連付けられた1又は複数のコンピューティングデバイスは、ラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、処理デバイス106、分析器108、及び/又は複数のデータベース110からデータを求める要求を送信してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、医療提供者と関連付けられた1又は複数のコンピューティングデバイスは、ラマン分光デバイス102、処理デバイス106、及び/又は分析器108によって行われた検出方法に基づいて患者の敗血症状況に関するデータを受信する。いくつかの実施形態では、医療提供者と関連付けられた1又は複数のコンピューティングデバイスは、ラマン分光デバイス102、処理デバイス106、及び分析器108のうちの少なくとも1つからの感受性試験結果に基づいて、患者における同定された病原体に関する通知及び/又は1又は複数の抗生物質を使用した患者の治療についての推奨を受信する。
【0055】
いくつかの実施形態では、敗血症検出システム101は、EHRシステム104を使用して患者のEHRデータを監視し、処理デバイス106を使用してEHRデータ及び患者の状態の変化を示す1又は複数の患者変数に関するデータのうちの少なくとも一方に訓練された学習アルゴリズムを適用することに基づいて患者における感染又は敗血症の尤度を特定するように構成されてもよい。敗血症検出システム101は、患者の試料中の病原体を同定し、分析器108を使用した病原体の同定に基づいて患者のために抗生物質感受性及び/又は抗菌剤耐性を特定するようにさらに構成されてもよい。いくつかの実施形態では、敗血症検出システム101は、1又は複数のデータベース110から患者の臓器機能障害データを受信してもよく、臓器機能障害データは、逐次臓器不全評価(SOFA)、クイックSOFA、又はNEWSのうちの少なくとも1つと関連付けられた1又は複数のスコアを含む。敗血症検出システム101は、臓器機能障害データを、患者における感染及び/又は敗血症の尤度の特定に使用し得る。最終的に、敗血症検出システム101は、患者のケア及び転帰を改善するために医療提供者に迅速な結果を送達するために、敗血症の予測又は検出、病原体同定、及び感受性試験のためのエンドツーエンド統合システムを提供し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、敗血症検出システム101内の構成要素はネットワーク112を介して通信可能に結合され得る。特に、ネットワーク112は、ラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、処理デバイス106、分析器108、及び/又は複数のデータベース110の間の情報の伝送及び通信を可能にし得る。ネットワーク112は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、電話網、無線ネットワーク、ポイントツーポイントネットワーク、スターネットワーク、トークンリングネットワーク、ハブネットワーク、又は他の適切な構成のいずれか1つ又は任意の組合せであってもよい。ネットワークは、電気電子技術者協会(IEEE)プロトコル、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))プロトコル、第4世代無線プロトコル(4G)(例えば、ロングタームエボリューション(LTE)規格、LTEアドバンスト、LTEアドバンストプロ)、第5世代無線プロトコル(5G)、並びに/又は同様の有線及び/もしくは無線プロトコルを含む1又は複数のネットワークプロトコルに準拠してもよく、ラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、処理デバイス106、分析器108、及び/又は複数のデータベース110の間でデータをルーティングするための1又は複数の中間デバイスを含んでもよい。
【0057】
ラマン分光デバイス:
図2は、本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおけるラマン分光デバイス200の例示的な図を示している。ラマン分光デバイス200は、
図1Bのラマン分光デバイス102の例示的な実施形態を表す。ラマン分光デバイス200は、光源210と、ラマン分光計220と、プローブ225とを含む。
図2のラマン分光デバイス200は参照用に3つの構成要素のみを示しているが、ラマン分光デバイス200には、ラマン分光法を実施するための任意の数の追加の構成要素が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、レンズ、フィルタ、ミラー、格子、検出器、対物レンズなどといった追加の構成要素及び/又は光学素子を含んでもよい。
図2には参照用に1つの光源210のみが例示されているが、ラマン分光デバイス200には任意の数の光源210が存在してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、光源210は、単一の波長のみで放射ビームを出力するように設計されてもよいし、又は掃引光源であって、異なる波長の範囲を出力するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、光源210は、レーザー又はレーザーダイオードを含んでもよい。レーザーは、約780nmもしくは約532nm又は780nmもしくは532nmに近い波長でレーザーエネルギーの放射ビームを発するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200には2つの光源210が使用されてもよく、2つの光源210は、それぞれ、780nm及び532nmの放射ビームを発するように構成されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、放射ビームは、光源210によって発生し、プローブ225を通って試料管230内の試料に伝送され得る。試料管230は、患者における敗血症の可能性を検出するためにプローブ225によって問い合わされる患者の血漿試料を収容し得る。いくつかの実施形態では、プローブ225は、放射ビームを試料に伝送するように構成された光ファイバプローブを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プローブ225は、伝送放射ビームで試料を問い合わせ、試料からラマン散乱放射を受け取ることによって、試料管230内の試料と相互作用するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、プローブ225は、問い合わせる放射ビームが試料と相互作用した後に試料管230から戻りビームを収集し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、プローブ225は、収集された放射線をラマン分光計220にルーティングするように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、収集された放射線は、収集された放射線をプローブ225からラマン分光計220に伝送する間に、1又は複数の光学素子によって処理又はフィルタリングされ得る。いくつかの実施形態では、ラマン分光計220は、プローブ225から収集された放射ビーム(例えば、ラマン散乱放射)を受け取るように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光計220は、収集された放射ビームからラマン信号を取得するように構成された検出器(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、検出器は、ラマン信号の検出感度が高い電荷結合デバイス(CCD)又は光電子増倍管(PMT)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、検出器は、透過型又は反射型の回折格子を含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、ラマン分光計220からラマン信号を受信し、ラマン信号の処理を行って試料のラマンスペクトルデータを生成するように構成され得るプロセッサ(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ラマンスペクトルデータは、試料の宿主応答シグネチャを表す1又は複数のピークを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ラマンスペクトルデータは、患者の免疫学的プロファイルのベースラインパラメータに関する情報、並びに感染の指標としてプロカルシトニン(PCT)及びC反応性タンパク質(CRP)を同定すること、調節不全の宿主応答の指標としてサイトカインストームを同定すること、並びに臓器不全の指標としてビリルビン及びクレアチニンを同定することを含む、敗血症カスケードに直接関連した特定のパラメータに関する情報を提供し得る。
【0062】
ラマン分光計220のプロセッサは、試料のラマンスペクトルデータを取得し、その読取り値を既知の敗血症患者からの試料の以前のラマンスペクトルデータと比較して、患者の敗血症状況(例えば、敗血症前又は敗血症の様々な重症度レベルでの)を特定し得る。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200内のプロセッサは、ラマン分光デバイス200内のメモリ又は敗血症検出システム101内の1つもしくは複数のデータベース110に記憶され得るラマンスペクトルライブラリにアクセスし得る。ラマン分光デバイス200内のプロセッサは、ラマンスペクトルライブラリからのデータを使用して、現在のラマンスペクトルデータをラマンスペクトルライブラリに記憶されたラマンデータ履歴と比較することによって、患者における敗血症の尤度を判定する。
【0063】
追加又は代替の実施形態では、ラマン分光デバイス200は、ラマン分光計220からラマン信号を受信し、ラマン信号の処理を行って試料のラマンスペクトルデータを生成するように構成されたプロセッサを含む別個のコンピューティングデバイスに通信可能に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、別個のコンピューティングデバイスは、ラマン分光デバイス200とは別個であってもよく、有線又は無線接続を介してラマン分光デバイス200に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200に結合された別個のコンピューティングデバイスは、敗血症検出システム101内の処理デバイス106と同じであっても異なっていてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、患者の液体血漿試料に対して非接触ラマン分光法読取りを行うように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、試験に使用される血漿は、試料調製ステップを伴わない場合もある。いくつかの実施形態では、プローブ225は、遠心分離による患者試料の血漿分離が行われる一次管(例えば、試料管230)の内部でラマン読取りを行うように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、血漿は、高くつくラマンを含まない信号基質を回避するためにラマン信号読取りに影響を及ぼさないサイズ及び寸法を有するキュベット又は管(例えば、試料管230)に収容され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、敗血症の危険にさらされている可能性がある患者をトリアージするための患者試料の敗血症検出及び管理のための独立型デバイスとして使用され得る。他の実施形態では、ラマン分光デバイス200は、敗血症診断デバイスと組み合わせて使用され得るか、又は敗血症診断デバイスに統合され得る。例えば、ラマン分光デバイス200は、分析器108内に統合されて、試料のラマン分光法読取りを行い、その後それぞれの構成要素を介して病原体同定及び感受性試験を行うように構成された診断装置を形成してもよい。
【0066】
敗血症症例の約90%が患者の入院時に存在する。よって、いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、ラマンスペクトルデータを、(例えば、病院の緊急治療室(ER)で)患者から収集された複数の診断パラメータと組み合わせて使用して、患者における敗血症検出の精度をさらに改善し得る。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、EHRシステム104からERで試験された患者の診断パラメータデータを受信する。いくつかの実施形態では、EHRシステムから取得される診断パラメータは、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血小板数、ヘモグロビン、及びヘマトクリットに関するデータを含む測定された血液像データ、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、及びフィブリノーゲンを含む凝固データ、並びに尿素、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)又はグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、アラニンアミノ基転移酵素及び総ビリルビンに関するデータを含む生化学データを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ラマン分光デバイス200は、ラマンスペクトルデータを他の診断試験からの結果(例えば、バイオマーカの測定値)又は患者の健康記録で利用可能な追加情報と組み合わせて、結果を絞り、異なる表現型で患者層別化を実行し得る。
【0067】
処理デバイス:
図3は、本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおける処理デバイス300の例示的な図を示している。処理デバイス300は、
図1Bの処理デバイス106の例示的な実施形態を表す。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、本明細書において敗血症検出処理デバイス300と呼ばれる場合がある。
【0068】
いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、任意の数の方法で具現化することができる1又は複数のコンピューティングデバイスを含む。例えば、モジュール、他の機能コンポーネント、及びデータは、単一のコンピューティングデバイス、コンピューティングデバイスのクラスタ、サーバファーム又はデータセンタ、クラウドホスト型コンピューティングサービスなどに実装することができるが、他のコンピュータアーキテクチャを追加的又は代替的に使用することもできる。
【0069】
さらに、図は、処理デバイス300の構成要素及びデータを単一の場所に存在するものとして例示しているが、これらの構成要素及びデータは、代替的に、任意の方法で異なるコンピューティングデバイス及び異なる場所にわたって分散されてもよい。ゆえに、機能は、1又は複数のコンピューティングデバイスによって実装される場合があり、上述の様々な機能は、様々なコンピューティングデバイスにわたって様々な方法で分散される。
【0070】
図示の例では、処理デバイス300は、1又は複数のプロセッサ302と、1又は複数のコンピュータ可読媒体304と、1又は複数の通信インタフェース306とを含む。各プロセッサ302は、単一の処理ユニット又はいくつかの処理ユニットであり、単一もしくは複数のコンピューティングユニット又は複数の処理コアを含んでもよい。(1又は複数の)プロセッサ302は、1又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、状態機械、論理回路、及び/又は動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装することができる。例えば、(1又は複数の)プロセッサ302は、本明細書で説明されるアルゴリズム及びプロセスを実行するように特にプログラム又は構成された任意の適切な種類の1又は複数のハードウェアプロセッサ及び/又は論理回路であってもよい。(1又は複数の)プロセッサ302は、コンピュータ可読媒体304に記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行するように構成することができ、コンピュータ可読命令は、本明細書で説明される機能を果たすように(1又は複数の)プロセッサ302をプログラムすることができる。
【0071】
コンピュータ可読媒体304は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の種類の技術で実装された揮発性及び不揮発性のメモリ並びに/又はリムーバブル及び非リムーバブル媒体を含む。そのようなコンピュータ可読媒体304は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、光記憶装置、固体記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、ネットワーク接続記憶装置、ストレージエリアネットワーク、クラウドストレージ、又は所望の情報を記憶するために使用することができ、コンピューティングデバイスによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない。処理デバイス300の構成に応じて、コンピュータ可読媒体304は、コンピュータ可読記憶媒体の一種であってもよく、かつ/又は、言及される場合、非一時的コンピュータ可読媒体が、エネルギー、搬送波信号、電磁波、及び信号自体などの媒体を除外する限りにおいて、有形の非一時的媒体であってもよい。
【0072】
コンピュータ可読媒体304は、プロセッサ302によって実行可能な任意の数の機能コンポーネントを記憶するために使用される。多くの実装形態において、これらの機能コンポーネントは、プロセッサによって実行可能であり、実行されると、上記の処理デバイス300に起因する動作を行うように1又は複数のプロセッサ302を特に構成する命令又はプログラムを含む。加えて、コンピュータ可読媒体304は、本明細書で説明される動作を行うために使用されるデータを記憶し得る。
【0073】
図示の例では、コンピュータ可読媒体304は、EHRモジュール308、ラマンモジュール310、学習エンジン312、同定モジュール316、及びASTモジュール318をさらに含む。いくつかの実施形態では、処理デバイス300内の様々なモジュールは、患者における感染、調節不全の宿主応答、又は臓器機能障害もしくは臓器不全の特定に基づいて患者の治療判断を判定するための改善された判断支援ツールを臨床医、医療提供者、及び/又は介護者に提供し得る。
【0074】
EHRモジュール308は、EHRシステム104と通信及びインタフェースして、処理デバイス300、ラマン分光デバイス102、及び/又は分析器108に、患者データ及び病歴データを含む複数の患者のEHRデータへのアクセスを提供し得る。いくつかの実施形態では、処理デバイス300内のEHRモジュール308は、EHRシステム104内の電子健康記録からのEHRデータを受信及び/又はアクセスし得る。いくつかの実施形態では、EHRモジュール308でEHRシステム104から受信される患者データは暗号化されてもよく、EHRモジュール308による受信時に解読されてもよい。いくつかの実施形態では、EHRモジュール308は、複数の患者のEHRデータからの1又は複数の患者変数についての患者データを監視し得る。いくつかの実施形態では、EHRデータを監視することにより、EHRモジュール308は、患者における敗血症の可能性の早期警告検出を提供し得る。いくつかの実施形態では、EHRモジュール308は、複数の患者のEHRデータを所定の期間にわたって又は所定の時間間隔で定期的に監視して、EHRデータ内の患者変数のいずれかが複数の患者のうちのいずれかの患者の状態の変化を示すかどうかを検出し得る。いくつかの実施形態では、患者の状態の変化は、患者変数の所定の変化によって表されてもよく、変化は、患者における臓器機能障害を示し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、EHRモジュール308は、1又は複数の患者変数が患者の状態の変化を示す1又は複数の所定の閾値以上であることを検出すると、敗血症検出プロセスを開始し得る。いくつかの実施形態では、EHRモジュール308は、1又は複数の患者変数が1又は複数の所定の閾値以上であることを検出すると、ラマンモジュール310、同定モジュール316、及びASTモジュール318のうちの少なくとも1つに、患者の状態の変化が検出されたことを示す通知を送信してもよい。EHRモジュール308によって送信された通知は、ラマンモジュール310、同定モジュール316、及び/又はASTモジュール318のうちの少なくとも1つをトリガして、敗血症検出プロセスの1又は複数のステップを行わせ得る。いくつかの実施形態では、EHRモジュール308はまた、SOFAスコアなどの臨床パラメータデータ及び臓器機能障害データを検索するために、1又は複数のデータベース110と通信し得る。1又は複数のデータベース110から検索されたデータはまた、EHRモジュール308及び/又はラマンモジュール310によって患者における敗血症の可能性を検出するために考慮に入れられ得る。
【0076】
ラマンモジュール310は、患者の試料から取得されたラマンスペクトルデータの処理及び分析のためにラマン分光デバイス200と通信し得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、ラマン分光デバイス200から患者試料のラマンスペクトルデータを受信し、ラマンスペクトルデータを処理及び分析し、ラマンスペクトルデータに基づいて迅速な敗血症検出を行い得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、ラマンスペクトルデータを処理及び分析して、患者の試料のラマンシグネチャを表す1又は複数のピークを特定し得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、ラマンスペクトルデータの分析を行って、病原体のラマン指紋又はシグネチャ、並びに患者における感染及び調節不全の宿主応答を示す1又は複数のバイオマーカを同定し得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、試料のラマン指紋又はシグネチャを試料の宿主応答シグネチャに相関させてもよい。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、試料の宿主応答シグネチャに基づいて、患者が感染症を有する尤度、患者が菌血症を有する尤度(例えば、患者の血流中の細菌の存在)、及び/又は患者が敗血症を発症する尤度を予測し得る。ラマンモジュール310によるラマンスペクトルデータの使用は、処理デバイス300が患者における迅速な敗血症検出及び予測のための安価で高精度の結果を提供することを可能にし得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、処理デバイス300内のラマンモジュール310は、ラマン分光デバイス200から取得したラマンスペクトルデータを使用して、臓器不全又は臓器機能障害を示す1又は複数のバイオマーカを同定し得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、ラマン分光デバイス200から取得した患者の試料の分光データを使用してSOFAスコアの1又は複数の変数を判定する。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、(例えば、ラマン分光データに基づいて計算された)SOFAスコアを使用して、臓器機能障害を判定する。
【0078】
ラマンモジュール310は、(例えば、臓器機能障害、調節不全の宿主応答、及び/又は感染を検出するための)敗血症検出を行うために、学習アルゴリズム314を含む学習エンジン312と通信し得る。いくつかの実施形態では、学習エンジン312は、複数の患者のうちの各患者に対応するラマンスペクトルデータ、EHRデータ、及び敗血症状況を使用して学習アルゴリズム314を訓練するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、学習エンジン312は、EHRモジュール308を介してEHRシステム104から複数のEHR患者についての複数のEHRデータを受信する。学習エンジン312はまた、ラマンモジュール310を介してラマン分光デバイス102、200によって生成された複数のラマンスペクトルデータも受信する。EHRデータ及びラマンデータに加えて、学習エンジン312はまた、EHRモジュール308を介してEHRシステム104から複数の敗血症状況判定を受信してもよく、各敗血症状況判定は複数の患者のうちの対応する患者に対応する。いくつかの実施形態では、学習エンジン312は、複数のEHRデータ、複数のラマンスペクトルデータ、及び複数の敗血症状況判定を使用して学習アルゴリズム314を訓練してもよく、学習アルゴリズム314は、各EHRデータ及び各ラマンスペクトルデータの分類に基づいて将来の患者における感染又は敗血症の尤度を特定するように訓練される。
【0079】
いくつかの実施形態では、EHRモジュール308及び/又はラマンモジュール310は、学習エンジン312と通信して学習アルゴリズム314を訓練し、訓練された学習アルゴリズム314に基づいて将来の患者における敗血症を特定するためにEHRデータ及び/又はラマンスペクトルデータに機械学習技術を適用し得る。いくつかの実施形態では、学習アルゴリズム314は、各EHRデータ及び各ラマンスペクトルデータの分類に基づいて将来の患者における感染又は敗血症の尤度を特定するように訓練され得る。いくつかの実施形態では、学習アルゴリズム314は、本明細書において学習モデル及び/又は敗血症予測モデルと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、学習アルゴリズム314は、ベイジアンネットワーク、ニューラルネットワーク、深層機械学習アルゴリズムなどといった任意の学習アルゴリズムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310及び/又はEHRモジュール308は、患者に対応するラマンスペクトルデータ及び/又はEHRデータに基づいて敗血症又は非敗血症の分類を患者に割り当てるために学習アルゴリズム314を実装し得る。いくつかの実施形態では、ラマンモジュール310は、患者のEHRデータから(例えば、EHRモジュール308及び/又はEHRシステム108から)1又は複数の患者変数を取得し、(例えば、ラマン分光デバイス102、200から)患者の試料のラマンスペクトルデータを受信し、取得したEHRデータ及びラマンスペクトルデータの少なくとも一方に訓練された学習アルゴリズム314を適用することによって患者を免疫プロファイル群に分類し得る。
【0080】
処理デバイス300は、患者をその敗血症状況によって層別化するためにラマンモジュール310及び/又はEHRモジュール308を使用することに加えて、分析器108による患者試料のPCR試験及びAST試験を管理するための同定モジュール316及びASTモジュール318をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、同定モジュール316は、分析器108と通信して、患者試料中の病原体を同定するためのPCRアッセイを開始し得る。いくつかの実施形態では、同定モジュール316は、分析器108内の対応するモジュール(例えば、
図4のPCRモジュール420)に通知を送信してもよく、通知は、分析器108をトリガして、対応するモジュールを使用して病原体同定のためのPCRを開始させ得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、同定モジュール316は、ラマンモジュール310及び/又はEHRモジュール308から患者における敗血症の高い尤度の判定に関するデータを受信した後に、PCRを行うために分析器108に通知を送信してもよい。いくつかの実施形態では、同定モジュール316は、ラマンモジュール310及び/又はEHRモジュール308によって判定された患者における敗血症の尤度が所定の閾値以上又は所定の範囲内でない限り、PCRを行うための通知を分析器108に送信しない場合がある。いくつかの実施形態では、同定モジュール316は、分析器108から患者における同定された病原体に関する結果を受信してもよく、同定モジュール316はASTモジュール318と通信し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、ASTモジュール318は、同定モジュール316から同定された病原体に関するデータを受信してもよく、ASTモジュール318は、同定された病原体の感受性試験を行うために分析器108と通信し得る。ASTモジュール318は、分析器108内の対応するモジュール(例えば、
図4のASTモジュール424)に通知を送信してもよく、通知は、分析器108をトリガして、対応するモジュールを使用して同定された病原体の感受性試験を開始させ得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール318は、分析器108から感受性試験の結果を受信してもよく、結果は、同定された病原体が1又は複数の抗菌剤及び/又は抗生物質に対して感受性であったか、耐性であったかを示し得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、ASTモジュール318は、病原体の疫学情報又は抗生物質耐性情報についての1又は複数のデータベース110にアクセスし、病原体の感受性試験の結果及び疫学情報又は抗生物質耐性情報のうちの少なくとも1つに基づいて患者の治療についての推奨を生成し得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール318はまた、EHRモジュール308と通信して、患者の免疫プロファイルデータ又はEHRシステム104からのEHRデータを感受性試験の結果と結合して、どの抗菌剤が患者にとって最も有効であり得るかを判定する。いくつかの実施形態では、様々な抗菌剤は、他の患者集団と比較して、特定の患者集団に対して効果が低い場合がある。よって、ASTモジュール318は、治療の推奨を生成するときに患者のEHRデータを考慮に入れてもよい。言い換えれば、ASTモジュール318は、患者のEHRデータ、(例えば、EHRモジュール308及び/又はラマンモジュール310によって判定された)患者における感染及び/又は敗血症の尤度の特定、(例えば、同定モジュール316及び分析器108から受信された)同定された病原体、並びに分析器108からの抗生物質感受性及び/又は抗菌剤耐性結果のうちの少なくとも1つに基づいて、患者の治療についての推奨を生成し得る。
【0084】
コンピュータ可読媒体304に記憶された追加の機能コンポーネントは、処理デバイス300の様々な機能を制御及び管理するためのオペレーティングシステム330を含む。処理デバイス300はまた、プログラム、ドライバなどを含む他のモジュール及びデータなどの他の機能コンポーネント及びデータ、並びに機能コンポーネントによって使用又は生成されたデータを含むか又は維持する。さらに、処理デバイス300は、多くの他の論理的、プログラム的、及び物理的構成要素を含み、そのうちの上述したものは、本明細書の考察に関連する単なる例である。
【0085】
(1又は複数の)通信インタフェース306は、ネットワーク112を介したラマン分光デバイス102、電子健康記録(EHR)システム104、分析器108、及び複数のデータベース110を含む様々な他のデバイスとの通信を可能にするための1又は複数のインタフェース及びハードウェアコンポーネントを含む。例えば、(1又は複数の)通信インタフェース206は、インターネット、ケーブルネットワーク、セルラーネットワーク、無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi、セルラー)、及び有線ネットワークのうちの1又は複数を介した通信を容易にする。いくつかの例として、処理デバイス300と他のデバイスとは、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、セルラー又は無線通信プロトコルなどといった適切な通信プロトコル及びネットワーキングプロトコルの任意の組合せを使用して互いに通信及び対話する。(1又は複数の)通信インタフェースの例には、モデム、ネットワークインタフェース(イーサネットカードなど)、通信ポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロット及びカードなどが含まれる。
【0086】
分析デバイス:
図4は、本開示の実施形態による、敗血症検出システムにおける分析器400の例示的な図を示している。分析器400は、
図1Bの分析器108の例示的な実施形態を表す。いくつかの実施形態では、分析器400は、本明細書において分析デバイス又は装置と呼ばれる場合がある。分析器400は、試料ハンドリングユニット410、PCRモジュール420、ASTモジュール424、1又は複数のプロセッサ426、メモリ428、ネットワークインタフェース430、及び入出力(I/O)デバイス432を含んでもよい。
【0087】
試料ハンドリングユニット410は、PCRモジュール420及びASTモジュール424による試験のために試料を取り扱い、かつ/又は処理するように構成された構成要素を含んでもよい。試料ハンドリングユニット410は、試料容器412と、遠心分離機414と、グリッパ416と、廃棄物容器418とを含む。試料容器412は、患者の試料(例えば、全血又は血漿)を保持するために使用され得る。いくつかの実施形態では、分析器400のユーザは、患者試料の少なくとも一部分を(例えば、ピペッティングによって)試料容器412に装填してもよく、ユーザは、試料容器412を試験のために分析器400に挿入し得る。いくつかの実施形態では、試料容器412は、本明細書において消耗品又はカートリッジと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、試料容器412は、複数の試料又は複数の抗生物質を同時に試験することを可能にする複数のウェルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料容器412内の複数のウェルは、それぞれ、PCRモジュール420及びASTモジュール424によるPCR及びAST試験のための異なるウェル内の試料の分離を可能にするように特に設計されている。いくつかの実施形態では、試料容器412は、試料容器412が分析器400に挿入されたときに試料と相互作用する1又は複数の試薬を含んでもよい。他の実施形態では、分析器400内の試料ハンドリングユニット410は、試料容器412内の試料に添加することができる試薬を保存した試薬容器を含む。いくつかの実施形態では、試薬容器は、試料容器412とは別個であってもよく、PCR及び/又はASTに使用される物質(例えば、試薬、緩衝液など)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料容器412は、採血管、管内に真空シールを備えた採血管などの試験管であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、調製プロセスの開始時に二次容器に移されてもよく、試薬容器に保存された試薬は、試料調製プロセス中に添加又は除去される。
【0088】
いくつかの実施形態では、試料容器412内の複数のウェルのうちの各ウェルは、PCRを使用した試料中の核酸の増幅及び検出のための空間を可能にする複数の反応室のうちの対応する反応チャンバに接続され得る。いくつかの実施形態では、試料容器412は、複数のリザーバ、溶出液回収のための1又は複数の溝、濾過のためのスピンカラム、及び/又は必要な液体移送のための隔壁を備えて製造され得る。いくつかの実施形態では、試料容器412はまた、試料の抽出及び濾過のための回転調製要素、並びに試料容器412内のウェル及び反応室の開閉を可能にするために熱可塑性エラストマー(TPE)から形成された成形蓋を含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料容器412のいくつかのウェルは、細胞溶解用のビーズ、又は核酸を抽出するための磁気ビーズを含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、試料ハンドリングユニット410は、分析器400内に組み込み式遠心分離機414を含んでもよい。遠心分離機414は、試料を処理するために、又は検出用の核酸を単離するために、試料容器412内の1又は複数の試料の分離を可能にし得る。試料ハンドリングユニット410はまた、遠心分離機414に加えて、試料容器412と分析器400内の構成要素との間の多機能相互作用を可能にするピペッティングシステム(図示せず)も含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料ハンドリングユニット410のピペッティングシステムは、それぞれ、PCRモジュール420及びASTモジュール424によるPCRベースの病原体同定及び増殖ベースのASTのためのステップを支援し得る。
【0090】
試料ハンドリングユニット410は、グリッパ416をさらに含んでもよい。グリッパ416は、PCRモジュール420とASTモジュールとの間の試料容器412の移動を含む、試料ハンドリングユニット410内の異なる構成要素間の試料容器412の移動を可能にし得る。いくつかの実施形態では、グリッパ416は、試料容器412の滑りを防止し、試料容器412を分析器400の異なる構成要素内の所定の位置に保持するためのしっかりしたグリップを提供し得る。試料ハンドリングユニット410は、グリッパ416に加えて、試料容器412が試験のためにPCRモジュール420及びASTモジュール424と相互作用し得るように、試料容器412が分析器400内の自動化プロセスによって移動されることを可能にする他の構成要素を含んでもよい。
【0091】
試料ハンドリングユニット412はまた、廃棄物容器418を含んでもよい。廃棄物容器418は、試料のPCR反応及び感受性試験から生じる任意の廃液又は未反応物を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、試料容器412、遠心分離機414、グリッパ418、及び廃棄物容器418は、PCRモジュール420及びASTモジュール424と係合するように試料を適切に取り扱うために互いに結合され得る。いくつかの実施形態では、試料ハンドリングユニット412は、試料容器412を使用して患者の試料を受け取るように構成されてもよく、試料の少なくとも一部分は、遠心分離機414及び廃棄物容器418の少なくとも一方を使用して処理され得る。試料容器412は、グリッパ418を使用して取り扱われ得る。いくつかの実施形態では、遠心分離機414、グリッパ418、及び試料ハンドリングユニット410内の任意の他の構成要素の動作は、分析器400内の1又は複数のプロセッサ426によって制御され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、分析器400は、清浄かつ高感度なPCRのための病原性細胞の分離、又は細胞レベルでの血液から直接の迅速なASTを可能にする全血採取及び試料処理デバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、分析器400の試料処理デバイスは、抗菌剤中和技術を利用して、血液試料中の病原性細菌が患者の血流中にあった可能性のある抗生物質によって影響されないことを保証し、分析器400からの結果に対する悪影響を防止し得る。いくつかの実施形態では、PCRモジュール420及びASTモジュール424は、試料ハンドリングユニット410に通信可能に結合されてもよく、病原体検出及び感受性試験のために同じ試料容器412を利用し得る。いくつかの実施形態では、試料容器412は、多機能で、PCR及び増殖ベースの微生物学ASTの両方の調製を支援する管を含んでもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、PCRモジュール420は、患者の血液試料から直接病原体同定のために患者試料のリアルタイムPCRを行い得る。いくつかの実施形態では、PCRモジュール420は、PCR中の温度を制御するように構成されたサーマルサイクラ、試料容器412内の複数のウェルからデータを収集するための光学系、反応モジュールなどを含む、PCRを行うために使用される1又は複数の構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PCRモジュール420は、試料ハンドリングユニット410から試料容器412内の患者の試料を受け取るように構成されてもよい。PCRモジュール420は、PCRプロセスを使用して患者の試料内の核酸を増幅し、増幅された核酸(例えば、産物核酸)を検出し、検出された増幅された核酸に基づいて患者の試料中に存在する病原体を同定し得る。いくつかの実施形態では、PCRモジュール420は、産物核酸を検出し、産物核酸から直接病原体を同定し得る。追加又は代替の実施形態では、PCRモジュール420は、産物核酸を検出し、患者における感染を示するトランスクリプトーム産物を同定してもよく、トランスクリプトーム産物はRNAを含む。追加又は代替の実施形態では、PCRモジュール420は、異なるサイクリング条件にさらされる異なる領域を含んでもよく、これにより、いくつかの反応を異なるサイクリング条件で並行して行うことができる。
【0094】
病原体同定後、PCRモジュール420は、ASTアッセイを行うためのコマンド又は指示を送信することなどによって、ASTモジュール424と通信し得る。ASTモジュール424は、同定された病原体の感受性試験を行うように構成されてもよい。(例えば、分析器400内のPCRモジュール420による、かつ/又は処理デバイス106による)病原体同定後、ASTモジュール424は、同定された病原体に対して異なる感受性試験を行うために、様々な濃度の異なる抗生物質又は抗菌剤を収容した複数のウェルを有する試料容器412を受け取り得る。ASTモジュール424は、病原体の試料を各ウェル内の異なる抗生物質又は抗菌剤に曝露し得る。
【0095】
次いで、ASTモジュール424は、試料容器412からの結果を処理し、どの抗生物質又は抗菌剤に対して病原体(例えば、患者における感染)が感受性、中間、又は耐性(S/I/R)であるかを判定する。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424は、ASTアッセイを行う前に、病原体を含有する試料の濃縮ステップを行い得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424は、細菌又は病原体の増殖を阻害する抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)を特定し得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424は、単一細胞顕微鏡法及び特殊染色を使用して迅速な血液からの直接の抗菌剤感受性試験を行い得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424は、病原体を有する患者の試料を濃縮し、濃縮された試料のアリコートを試料容器412内の複数のウェルに分配し、患者における病原体の単一細胞顕微鏡ASTアッセイを行うことによって、病原体の抗菌剤感受性試験を行い得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、ASTモジュール424は、試料容器412内の試料の単一細胞顕微鏡法を行うように構成された顕微鏡を含んでもよい。いくつかの実施形態では、単一細胞顕微鏡法を使用することによって、ASTモジュール424は、フィラメントや鎖などの増殖した微生物によって作り出されたパターンを監視することによって、より速い結果を提供するか、又は耐性メカニズムを検出する能力を強化し得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424内の顕微鏡は、単一の微生物の画像を取得し、取得した画像に基づいて微生物(例えば、病原体)の抗菌剤表現型耐性を特定してもよく、治療のための診断経路につながる。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424はまた、PCR技法を利用して病原体の遺伝子型耐性情報を検出し得る。いくつかの実施形態では、ASTモジュール424のASTワークフローは、様々な濃度の単離された病原体及び/又は様々な濃度の異なる抗生物質もしくは抗菌剤を調製すること、試料の濃縮及び清浄化、表現型抗生物質感受性試験の実行、病原体を抗生物質と接触させること、並びに増殖を監視することを含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、PCRモジュール420及びASTモジュール424は、病原体同定及びASTを行うために単一の試料容器412又は異なる試料容器412を使用し得る。いくつかの実施形態では、試料容器412は、迅速な血液から直接の同定のための効率的な清浄化、濃度分離、細胞調製、細胞片除去などを、迅速なASTのための濃縮及び病原体生存率維持と共に提供するように製造され、設計され得る。
【0098】
分析器400は、1又は複数のプロセッサ426をさらに含む。各プロセッサ426は、単一の処理ユニット又はいくつかの処理ユニットであり、単一もしくは複数のコンピューティングユニット又は複数の処理コアを含んでもよい。(1又は複数の)プロセッサ426は、1又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、状態機械、論理回路、及び/又は動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装することができる。例えば、(1又は複数の)プロセッサ426は、本明細書で説明されるアルゴリズム及びプロセスを実行するように特にプログラム又は構成された任意の適切な種類の1又は複数のハードウェアプロセッサ及び/又は論理回路であってもよい。(1又は複数の)プロセッサ426は、メモリ428に記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行するように構成することができ、コンピュータ可読命令は、本明細書で説明される機能を果たすように(1又は複数の)プロセッサ426をプログラムすることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、メモリ428は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の種類の技術で実装された揮発性及び不揮発性のメモリ並びに/又はリムーバブル及び非リムーバブル媒体を含み得るコンピュータ可読媒体を表し得る。そのようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、光記憶装置、固体記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、ネットワーク接続記憶装置、ストレージエリアネットワーク、クラウドストレージ、又は所望の情報を記憶するために使用することができ、コンピューティングデバイスによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない。分析器400の構成に応じて、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体の一種であってもよく、かつ/又は、言及される場合、非一時的コンピュータ可読媒体が、エネルギー、搬送波信号、電磁波、及び信号自体などの媒体を除外する限りにおいて、有形の非一時的媒体であってもよい。
【0100】
コンピュータ可読媒体は、プロセッサ426によって実行可能な任意の数の機能コンポーネントを記憶するために使用され得る。多くの実装形態において、これらの機能コンポーネントは、プロセッサによって実行可能であり、実行されると、本明細書で説明される動作を行うように1又は複数のプロセッサ426を特に構成する命令又はプログラムを含む。加えて、コンピュータ可読媒体は、本明細書において以下で説明される動作を行うために使用されるデータを記憶し得る。
【0101】
ネットワークインタフェース430は、ネットワーク112を介したラマン分光デバイス102もしくは200、EHRシステム104、処理デバイス106もしくは300、及び/又は複数のデータベース110などの、敗血症検出システム101内の様々な他のデバイスとの通信を可能にするための1又は複数のインタフェース及びハードウェアコンポーネントを含む。例えば、ネットワークインタフェース430は、インターネット、ケーブルネットワーク、セルラーネットワーク、無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi、セルラー)、及び有線ネットワークのうちの1又は複数を介した通信を容易にする。いくつかの実施形態では、分析器400と処理デバイス106又は300とは、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、セルラー又は無線通信プロトコルなどといった適切な通信プロトコル及びネットワーキングプロトコルの任意の組合せを使用して互いに通信及び対話する。(1又は複数の)通信インタフェースの例には、モデム、ネットワークインタフェース(イーサネットカードなど)、通信ポート、PCMCIAスロット及びカードなどが含まれる。
【0102】
分析器400は、様々な入出力(I/O)デバイス432を装備し得る。そのようなI/Oデバイス432は、ボタン、ジョイスティック、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチスクリーンなどといった様々なユーザインタフェースコントロール、接続ポートなどを含んでもよい。さらに、分析器400は、図示されていない様々な他の構成要素を含んでもよく、その例には、リムーバブルストレージ、バッテリや電源制御ユニットなどの電源などが含まれる。分析器400はまた、プログラム、ドライバなどを含む他のモジュール及びデータなどの他の機能コンポーネント及びデータ、並びに機能コンポーネントによって使用又は生成されたデータを含むか又は維持してもよい。さらに、分析器400は、多くの他の論理的、プログラム的、及び物理的構成要素を含んでもよく、そのうちの上述したものは、本明細書の考察に関連する単なる例である。
【0103】
例示的な動作方法:
図5は、本開示の実施形態による、患者における敗血症を特定するための学習アルゴリズムを訓練するための方法500の例示的なフローチャート図を示している。方法500のステップは、敗血症検出システム101内の処理デバイス106又は300によって行われ得る。
【0104】
図5の方法500はステップ502から始まる。ステップ502では、EHRシステムからの複数の患者の複数の電子健康記録(EHR)データが受信される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、EHRシステム104から患者のEHRデータを受信する。ステップ504において、ラマン分光計から複数のラマンスペクトルデータが受信される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、ラマン分光デバイス102又は200からラマンスペクトルデータを受信する。いくつかの実施形態では、各ラマンスペクトルデータは、複数の患者のうちの対応する患者の血液試料に対応する。
【0105】
ステップ506において、複数の敗血症状況判定が受信される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、1又は複数のデータベース110、EHRシステム104、又はラマン分光デバイス102、200のうちの少なくとも1つから敗血症状況判定に関するデータを受信する。いくつかの実施形態では、各敗血症状況判定は、複数の患者のうちの対応する患者に対応する。
【0106】
ステップ508では、複数のEHRデータ、複数のラマンスペクトルデータ、及び複数の敗血症状況判定を使用して深層学習アルゴリズムが訓練される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300内の学習エンジン312は、各EHRデータ及び各ラマンスペクトルデータの分類に基づいて、将来の患者における感染又は敗血症の尤度を特定するように学習アルゴリズム314を訓練してもよい。
【0107】
図6は、本開示の実施形態による、患者における敗血症の尤度を判定するための方法600の例示的なフローチャート図を示している。方法600のステップは、敗血症検出システム101内の処理デバイス106又は300によって行われ得る。
【0108】
図6の方法600はステップ602から始まる。ステップ602では、EHRシステムからの患者の電子健康記録(EHR)データが監視される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、EHRシステム104からの患者のEHRデータを監視及び/又は取得する。ステップ604では、監視に基づいて、患者の状態の変化を示す1又は複数の患者変数が判定される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、監視に基づいて患者の変化を示す1又は複数の患者変数を判定する。
【0109】
ステップ606では、ラマン分光計から患者の試料のラマンスペクトルデータが受信される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、ラマン分光デバイス102又は200から患者の試料のラマンスペクトルデータを受信する。ステップ608において、収集されたEHRデータ、ラマンデータ、及び/又は患者変数データに訓練された学習アルゴリズムを適用することに基づいて、患者における感染及び/又は敗血症の尤度が特定される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、患者のEHRデータ、ラマンスペクトルデータ、及び1又は複数の患者変数に関するデータのうちの少なくとも1つに(例えば、学習エンジン312による訓練後に)訓練された学習アルゴリズム314を適用することに基づいて、患者における感染及び/又は敗血症の尤度を特定してもよい。
【0110】
ステップ610において、特定の結果を示す通知が生成される。いくつかの実施形態では、処理デバイス300は、特定の結果を示す通知を生成し、通知を患者の介護者又は医療提供者と関連付けられたデバイスに送信してもよい。
【0111】
例示的なコンピュータシステム:
図7は、コンピュータシステム700の例示的な構成要素のブロック図である。例えば、本明細書で論じた実施形態のいずれか、並びにそれらの組合せ及び部分的組合せを実装するために、1又は複数のコンピュータシステム700が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるように、1又は複数のコンピュータシステム700が、
図5及び
図6にそれぞれ示される方法500及び方法600、
図1B及び
図2~
図4に示される処理デバイス106、300、分析器108、400、ラマン分光デバイス102、200、及びEHRシステム104を実装するために使用されてもよい。コンピュータシステム700は、プロセッサ704などの1又は複数のプロセッサ(中央処理装置又はCPUとも呼ばれる)を含んでもよい。プロセッサ704は、通信インフラストラクチャ又はバス706に接続される。
【0112】
コンピュータシステム700はまた、(1又は複数の)ユーザ入出力デバイス703を介して通信インフラストラクチャ706と通信し得る、モニタ、キーボード、ポインティングデバイスなどといった、(1又は複数の)ユーザ入出力インタフェース702を含んでもよい。
【0113】
プロセッサ704のうちの1又は複数は、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)であってもよい。一実施形態では、GPUは、数学的に集中的なアプリケーションを処理するように設計された専用の電子回路であるプロセッサであってもよい。GPUは、コンピュータグラフィックスアプリケーション、画像、ビデオなどに共通の数学的に集中的なデータなど、データの大きなブロックの並列処理に効率的な並列構造を有してもよい。
【0114】
コンピュータシステム700はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ又は一次メモリ708を含んでもよい。メインメモリ708は、1又は複数のレベルのキャッシュを含んでもよい。メインメモリ708は、制御論理(すなわち、コンピュータソフトウェア)及び/又はデータを記憶していてもよい。いくつかの実施形態では、メインメモリ708は、敗血症検出、敗血症尤度予測、病原体同定、及び感受性試験を行い、それに応じて患者の治療についての推奨を生成するように構成された光論理を含んでもよい。
【0115】
コンピュータシステム700はまた、1又は複数の二次記憶デバイス又はメモリ710を含んでもよい。二次メモリ710は、例えば、ハードディスクドライブ712及び/又はリムーバブル記憶ドライブ714を含んでもよい。
【0116】
リムーバブル記憶ドライブ714は、リムーバブル記憶ユニット718と対話し得る。リムーバブル記憶ユニット718は、コンピュータソフトウェア(制御論理)及び/又はデータを記憶しているコンピュータ使用可能又は可読記憶デバイスを含んでもよい。リムーバブル記憶ユニット718は、(例えばビデオゲームデバイスに見られる)プログラムカートリッジ及びカートリッジインタフェース、リムーバブルメモリチップ(EPROMやPROMなど)及び関連付けられたソケット、メモリスティック及びUSBポート、メモリカード及び関連付けられたメモリカードスロット、並びに/又は任意の他のリムーバブル記憶ユニット及び関連付けられたインタフェースであってもよい。リムーバブル記憶ドライブ714は、リムーバブル記憶ユニット718の読出し及び/又は書込みを行う。
【0117】
二次メモリ710は、コンピュータプログラム及び/又は他の命令及び/又はデータがコンピュータシステム700によってアクセスされることを可能にするための他の手段、デバイス、構成要素、方便又は他のアプローチを含んでもよい。そのような手段、デバイス、構成要素、方便又は他のアプローチは、例えばリムーバブル記憶ユニット722やインタフェース720を含んでもよい。リムーバブル記憶ユニット722及びインタフェース720の例には、(例えばビデオゲームデバイスに見られる)プログラムカートリッジ及びカートリッジインタフェース、リムーバブルメモリチップ(EPROMやPROMなど)及び関連付けられたソケット、メモリスティック及びUSBポート、メモリカード及び関連付けられたメモリカードスロット、並びに/又は任意の他のリムーバブル記憶ユニット及び関連付けられたインタフェースが含まれてもよい。
【0118】
コンピュータシステム700は、通信又はネットワークインタフェース724をさらに含んでもよい。通信インタフェース724は、コンピュータシステム700が、外部デバイス、外部ネットワーク、外部エンティティなど(個別及びまとめて参照番号728で参照される)の任意の組合せと通信し、対話することを可能にし得る。例えば、通信インタフェース724は、コンピュータシステム700が、有線及び/又は無線(又はそれらの組合せ)であり得、LAN、WAN、インターネットなどの任意の組合せを含む通信経路726を介して外部又はリモートデバイス728と通信することを可能にし得る。制御論理及び/又はデータは、通信経路726を介してコンピュータシステム700との間で送信されてもよい。
【0119】
コンピュータシステム700はまた、いくつかの非限定的な例を挙げると、携帯情報端末(PDA)、デスクトップワークステーション、ラップトップもしくはノートブックコンピュータ、ネットブック、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチもしくは他のウェアラブル、電気器具、モノのインターネットの一部、及び/又は組み込みシステム、又はそれらの任意の組合せのいずれかであってもよい。
【0120】
コンピュータシステム700は、リモートもしくは分散型クラウドコンピューティングソリューション;ローカルもしくはオンプレミスソフトウェア(「オンプレミス」クラウドベースのソリューション);「サービスとしての」モデル(例えば、サービスとしてのコンテンツ(CaaS)、サービスとしてのデジタルコンテンツ(DCaaS)、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、サービスとしての管理されたソフトウェア(MSaaS)、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、サービスとしてのデスクトップ(DaaS)、サービスとしてのフレームワーク(FaaS)、サービスとしてのバックエンド(BaaS)、サービスとしてのモバイルバックエンド(MBaaS)、サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)など)、及び/又は前述の例もしくは他のサービスもしくは配信パラダイムの任意の組合せを含むハイブリッドモデルを含むがこれらに限定されない任意の配信パラダイムを介して任意のアプリケーション及び/又はデータをアクセス又はホストするクライアント又はサーバであってもよい。
【0121】
コンピュータシステム700内の任意の適用可能なデータ構造、ファイルフォーマット、及びスキーマは、これらに限定されないが、JavaScript Object Notation(JSON)、Extensible Markup Language(XML)、Yet Another Markup Language(YAML)、Extensible Hypertext Markup Language(XHTML)、Wireless Markup Language(WML)、MessagePack、XML User Interface Language(XUL)、又は任意の他の機能的に同様の表現を単独で又は組み合わせて含む規格から導出され得る。あるいは、独自のデータ構造、フォーマット、又はスキーマが、排他的に、又は公知もしくはオープン規格と組み合わせて使用されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、制御論理(ソフトウェア)が記憶された有形の非一時的なコンピュータ使用可能又は可読の媒体を含む有形の非一時的な装置又は製品は、本明細書においてコンピュータプログラム製品又はプログラム記憶デバイスと呼ばれる場合がある。これには、コンピュータシステム700、メインメモリ708、二次メモリ710、並びにリムーバブル記憶ユニット718及び722、並びにこれらの任意の組合せを具現化する有形の製品が含まれるが、これらに限定されない。そのような制御論理は、(コンピュータシステム700などの)1又は複数のデータ処理デバイスによって実行されると、そのようなデータ処理デバイスを本明細書で説明されるように動作させ得る。
【0123】
本開示に含まれる教示に基づいて、
図7に示されたもの以外のデータ処理デバイス、コンピュータシステム及び/又はコンピュータアーキテクチャを使用して本開示の実施形態を作成及び使用する方法は、当業者には明らかであろう。特に、実施形態は、本明細書で説明されたもの以外のソフトウェア、ハードウェア、及び/又はオペレーティングシステム実装形態で動作することができる。
【0124】
発明の概要及び要約のセクションではなく、発明を実施するための形態のセクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていることを理解されたい。発明の概要及び要約のセクションは、発明者(ら)によって企図される本開示のすべてではないが1又は複数の例示的な実施形態を記載していてもよく、よって、本開示及び添付の特許請求の範囲をいかなる点でも限定することは意図されていない。
【0125】
本開示の実施形態は、指定された機能及びそれらの関係の実装を例示する機能的ビルディングブロックを用いて上述されている。これらの機能的ビルディングブロックの境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。指定された機能及びそれらの関係が適切に行われる限り、代替の境界を定義することができる。
【0126】
特定の実施形態の前述の説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにするので、他者は、当分野の技術の範囲内の知識を適用することによって、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなく、そのような特定の実施形態を様々な用途のために容易に修正及び/又は適合させることができる。したがって、そのような適合例及び修正例は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図されている。本明細書の表現又は用語は、本明細書の用語又は表現が教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明を目的とするものであることを理解されたい。
【0127】
本開示の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、
前記患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、
処理デバイスと
を備え、
前記第1のサブシステム、前記第2のサブシステム、前記第3のサブシステム、及び前記処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合され、
前記処理デバイスは、前記患者における前記感染の存在と、前記調節不全の宿主応答の存在と、前記臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、前記患者における敗血症の存在を判定するように構成される、システム。
【請求項2】
前記第1のサブシステムは、
前記患者における前記感染を検出するように構成され、
前記患者の第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記産物核酸から直接病原体を同定するように構成された同定モジュールと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のサブシステムは、
前記患者における前記感染を検出するように構成され、
第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記患者における前記感染を示す、RNAを含むトランスクリプトーム産物を同定するように構成された同定モジュールと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のサブシステムにおける前記感染の存在は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記感染の存在は、前記患者において前記感染を引き起こす病原体から測定されたデータの分析によって判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記感染の存在は、前記患者の免疫応答に関連するデータの分析によって判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2のサブシステムにおける前記調節不全の宿主応答の存在は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のサブシステムは、
前記患者の第1の試料のラマンスペクトルデータを取得するように構成されたラマン分光計と、
前記患者における前記調節不全の宿主応答を示す1又は複数の信号を特定するために前記ラマンスペクトルデータを分析するように構成されたプロセッサと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のサブシステムは、
前記患者の第1の試料のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)処理を行い、産物核酸を検出するように構成されたPCRモジュールと、
前記患者における前記調節不全の宿主応答を示す、RNAを含むトランスクリプトーム産物を同定するように構成された同定モジュールと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第3のサブシステムは、前記患者の電子健康記録及び1又は複数のデータベースのうちの少なくとも1つから前記患者における前記臓器機能障害を示す前記臨床データを収集するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記患者における前記臓器機能障害を示す前記臨床データは、逐次臓器不全評価(SOFA)、クイックSOFA、全国早期警告スコア(NEWS)、前記患者のバイタルサイン、及び前記患者のバイオマーカのうちの少なくとも1つと関連付けられた1又は複数のスコアを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、前記臨床データと、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データとの組合せを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第3のサブシステムにおける前記臓器機能障害は、逐次臓器不全評価(SOFA)スコアを使用して判定され、前記SOFAスコアの少なくとも1又は複数の変数は、ラマン分光計から取得された前記患者の第1の試料の分光データを使用して判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
患者における感染の存在を検出するように構成された第1のサブシステムと、
前記患者における調節不全の宿主応答の存在を検出するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者における臓器機能障害を検出するように構成された第3のサブシステムと、
試料からの前記患者における病原体の抗菌剤耐性(AMR)を検出するように構成された第4のサブシステムと、
処理デバイスと
を備え、
前記第1のサブシステム、前記第2のサブシステム、前記第3のサブシステム、前記第4のサブシステム、及び前記処理デバイスは、ネットワークを介して互いに通信可能に結合され、
前記処理デバイスは、前記患者における前記感染の存在と、前記調節不全の宿主応答の存在と、前記臓器機能障害を示す臨床データとに基づいて、前記患者における敗血症の存在を判定するように構成される、システム。
【請求項16】
前記病原体の前記AMRは、前記病原体の1又は複数の耐性遺伝子を標的とするPCRから取得された遺伝子型情報によって判定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記病原体の前記AMRは、前記患者における前記病原体の抗菌剤感受性試験(AST)アッセイを行うように構成されたASTモジュールによって取得された表現型情報によって判定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記ASTモジュールは、前記病原体の1又は複数の画像を取得するように構成された顕微鏡を備え、前記病原体が単一細胞微生物を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のサブシステムは、前記試料から前記患者における前記病原体を同定するように構成された同定モジュールを備え、
前記処理デバイスは、
前記同定モジュールからの前記病原体に関するデータ及び前記ASTモジュールからの前記ASTアッセイの結果を受信し、
前記病原体の疫学情報又は抗生物質耐性情報についての1又は複数のデータベースにアクセスし、
前記ASTアッセイの前記結果と、前記1又は複数のデータベースからの前記病原体についての疫学情報又は抗生物質耐性情報とに基づいて、前記患者の治療についての推奨を生成する
ようにさらに構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記処理デバイスは、
前記患者の免疫プロファイルを特定するために前記患者の電子健康記録(EHR)にアクセスし、
前記患者の前記免疫プロファイルにさらに基づいて前記患者の治療についての前記推奨を生成する
ようにさらに構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
患者の第1の試料を受け取るように構成された第1のサブシステムと、
前記第1の試料から前記患者のラマンスペクトルデータを取得するように構成された第2のサブシステムと、
前記患者の電子健康記録(EHR)データから1又は複数の患者変数を取得し、
前記第2のサブシステムから前記患者の前記ラマンスペクトルデータを受信し、
前記EHRデータ及び前記ラマンスペクトルデータの少なくとも一方に訓練された学習アルゴリズムを適用することによって、前記患者を免疫プロファイル群に分類する
ように構成された処理デバイスと、
を備える、システム。
【請求項22】
前記1又は複数の患者変数は、体温、心拍数、収縮期血圧、呼吸数、白血球数、血小板数、動脈酸素分圧対吸気酸素分画との比率(PaO2/FiO2)、ビリルビン値、グラスゴー・コーマ・スケール・スコア、心血管平均動脈圧、クレアチニン値、乳酸値、C反応性タンパク質値、及びプロカルシトニン値のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記処理デバイスは、
前記患者の前記EHRデータ、前記ラマンスペクトルデータ、及び前記1又は複数の患者変数に関するデータのうちの少なくとも1つに、前記訓練された学習アルゴリズムを適用することに基づいて、前記患者における感染及び/又は敗血症の尤度を特定し、
前記特定の結果を示す通知を生成する
ようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記特定の前記結果は、前記患者における感染及び/又は敗血症の低い尤度を示し、前記尤度の値が所定の閾値未満である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記特定の前記結果は、前記患者における感染及び/又は敗血症の高い尤度を示し、前記尤度の値が所定の閾値以上である、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記処理デバイスは、前記特定の前記結果に基づいて前記患者の治療についての推奨を生成するようにさらに構成され、前記治療についての前記推奨は、前記患者の試料の抗生物質感受性試験(AST)に基づくものである、請求項23に記載のシステム。
【国際調査報告】