(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】1型糖尿病患者膵臓組織からインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を増殖させるための組成物および方法およびその治療的使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240905BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240905BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
A61P1/18
A61P3/10
A61K35/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532710
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022044024
(87)【国際公開番号】W WO2023049079
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519160901
【氏名又は名称】イマジン ファーマ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】タイ、ゴック
(72)【発明者】
【氏名】ポレット、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ボティーノ、リタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZC35
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 本明細書で開示されるのは、1型糖尿病を含む膵臓障害の治療に有用な細胞ベースの治療薬を含む組成物および組成物を生成するための方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型糖尿病ドナー膵臓、膵炎ドナー膵臓、またはそれらの組み合わせから針生検を介して採取した非インスリン分泌膵臓細胞から生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の少なくとも約50%が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物において、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の約50%~約100%が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する(仕様:例えば約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%など、その間のすべての値を含み、培地細胞集団の合計としてのパーセントを特定する)、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、ヒトレシピエントの体重1kgあたり約1.2×10
6細胞~約25×10
6細胞を含む(仕様:例えば、約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24と、その間のすべての値を含み、典型的なヒトのレシピエント(例えば、小児(例えば:4~60kg)および成人(60~225kg))の質量(kg単位)を特定する、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、針生検を介して採取した前記非インスリン分泌膵臓細胞が、1型糖尿病患者のドナー膵臓から得られる、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、針生検を介して採取した前記非インスリン分泌膵臓細胞が、膵炎ドナー膵臓から得られる、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物において、前記非インスリン分泌膵臓細胞が、同質遺伝子型、異質遺伝子型、またはそれらの組み合わせである、組成物。
【請求項8】
膵臓障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項1の組成物を投与する工程を含み、ここで、前記膵臓障害は、1型糖尿病、膵炎、またはそれらの組合わせを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記投与する工程が、注射、注入、卵巣、または腹膜パウチ、外科的移植のうちの1つまたはそれ以上を介して、もしくは装置の一部としての前記組成物のパッケージングを介して、前記治療上有効な量の請求項1に記載の組成物を前記対象の標的部位に送達する工程を含む、方法。
【請求項10】
インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む組成物を調製する方法であって、
ベース培地と、配列ID番号:1または2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列ID番号:1、配列ID番号:1の活性断片、配列ID番号:2、配列ID番号:2の活性断片、またはそれらの組み合わせを含むポリペプチドの有効量と、を有する膵島細胞培養培地で非インスリン分泌タイプ1糖尿病膵細胞集団をインビトロで治療する工程を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌型細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の少なくとも約50%の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の約50%~約100%の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団がヒトレシピエントの体重1kgあたり約3×10
6細胞~約25×10
6細胞を含む、方法。
【請求項15】
ドナーから前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を抽出する工程をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、針生検を介してドナーから非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を抽出する工程をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法において、前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を、同質遺伝子型のドナー、および異質遺伝子型のドナー、またはそれらの組み合わせから抽出する工程をさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、前記膵島細胞培養培地が、約3μg/mL~約20μg/mLの範囲の量のポリペプチドを含む、方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法において、前記治療する工程が、前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させ、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させて治療上有効量の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を得る工程をさらに含み、前記方法が、前記治療上有効量の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団をそれを必要とする対象に投与する工程をさらに含む、方法。
【請求項20】
1型糖尿病ドナー膵臓から針生検を介して採取した非インスリン分泌膵臓細胞から生成したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む、1型糖尿病、膵炎、またはそれらの組み合わせの前記治療に使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月22日に出願された米国仮特許出願番号63/247,252および2022年5月1日に出願された63/337,137の優先権を主張し、その内容全体が参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞ベース療法は、既存の治療法では十分に対処できない1型糖尿病(T1D)などの膵臓疾患の治療や経過を変えることが期待されているが、細胞ベース療法には、主に安全性と有効性、製造の拡張性に関わる無数の問題がある。細胞ベース療法に関連する問題の多くは、Bashor,C.J.,et al.,Nat Rev Drug Discov(2022)(https://doi.org/10.1038/s41573-022-00476-6のオンラインで利用可能)によるEngineering the next generation of cell-based therapeuticsに記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるのは、1型糖尿病を含む膵臓障害の治療に有用な細胞ベースの治療薬を含む組成物および組成物を生成する方法である。一実施形態では、本明細書に開示されるような組成物は、1型糖尿病ドナー膵臓から針生検で採取した非インスリン分泌膵臓細胞から生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、慢性膵炎を患う患者またはドナーから針生検により採取された膵臓細胞から生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む。一実施形態では、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞は、インビトロで、ベース培地と、配列ID1または2に記載のアミノ酸配列によるポリペプチドの有効量とを含む膵島細胞培養液で処理され、その処理した細胞は、刺激に応答してインスリンとグルカゴン両方を分泌しCD133ポジティブである膵島の前駆細胞集団に分化および増殖する。得られたインスリンおよびグルカゴン分泌前駆細胞は、その後の移植または注射での使用、および1型糖尿病または慢性膵炎の細胞ベース治療薬としての使用のために、望ましい細胞数まで増殖させることができる。有効量のインスリンおよびグルカゴン分泌前駆細胞集団を含む細胞組成物は、刺激に応答してインスリンおよびグルカゴンの分泌を回復させる方法として、注入、注射、移植、門内投与、または医療機器を用いるなど他の適切な送達手段によって被験者に投与され得る。
【0004】
本明細書に開示された組成物および方法は、細胞ベース療法および細胞移植、すなわち1型糖尿病または慢性膵炎の治療のための自家移植または同種移植に有用なインスリンおよびグルカゴン分泌膵臓細胞を大量に生産するための意味を有する。
【0005】
また、本明細書において開示される方法は、1型糖尿病または膵炎などの膵臓障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、インスリンおよびグルカゴン分泌膵臓細胞集団を含む組成物の治療有効量を投与する工程を含み、ここで、インスリンおよびグルカゴン分泌膵臓細胞集団は、針生検を介するなどして疾患膵臓組織(例えば、1型糖尿病被験者または慢性膵炎を患うもの)から採取した膵臓細胞を、ベース培地と配列ID1または2にかかるアミノ酸配列を含むペプチドとを含む膵島細胞培養液で処理することにより生成される。本組成物は、それを必要とする対象に投与されると、前記対象の標的部位への健常膵臓前駆細胞の送達を提供し、前記健常膵臓前駆細胞は、刺激に応答してインスリンおよびグルカゴンを生産することができる。
【0006】
本明細書に開示された方法により生成された治療有効量のインスリンおよびグルカゴン分泌前駆細胞を含む組成物は、1型糖尿病、または重度のインスリン欠乏を特徴とする他の疾患を有する対象において、インスリン産生の喪失を補うため、またはインスリン産生の代わりに、自家または同種の膵島移植を伴うまたは伴わない全膵切除後または部分的な膵臓切除後など、自家または同種細胞に基づく治療として使用できる。
【0007】
一実施形態では、組成物は、投与前にレシピエントからのヒト血清アルブミンおよび/またはヒト血清で組成物を補充することによって、移植のために調製され得る。
【0008】
別の実施形態では、1型糖尿病患者膵臓組織由来の膵臓細胞からのインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の成長、増殖および分化を刺激するのに有用な膵島細胞培養液は、ベース培地および有効量のポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、配列ID番号:1~2(表1に記載)の1またはそれ以上によるアミノ酸配列、またはその活性断片を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列ID番号:01に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ポリペプチドは、配列ID番号:1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有している。あるいは、ポリペプチドは、配列ID番号:2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、別の実施形態では、ポリペプチドは、配列ID番号:2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%配列同一性を有する。
【0009】
さらに別の実施形態において、細胞組成物は、単離された1型糖尿病性膵臓組織を、ベース培地と、有効量の配列ID番号:1または2によるポリペプチドまたはその活性断片とを含む膵島細胞培養培地で処理することによって生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の集団を含み、グルコースに対する細胞の応答を測定することをさらに含み、細胞組成物が、適切な刺激に応答してインスリンおよびグルカゴンを分泌できる細胞の集団を含む。
【0010】
別の実施形態において、細胞組成物の製造方法は、インビトロで、ベース培地と有効量の配列ID番号:1または2、またはその活性断片を、1型糖尿病患者から収集したヒト膵臓組織に適用する工程と、細胞を膵島細胞培養液中で培養する工程と、培養した細胞を、CD133およびインスリンに対して選択的な1以上の細胞マーカーについてスクリーニングする工程と、およびスクリーニングによってCD133およびインスリン陽性と配列された細胞を培養細胞集団から収集する工程と、所望の量の細胞が増殖するまで培養細胞の増殖を継続する工程と、を含む。
【0011】
さらに別の実施形態では、T1D膵臓組織由来のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物は、インビボ治療のために哺乳類に投与または移植するために、特にインスリン産生および分泌を回復するためにパッケージ化またはカプセル化される。細胞組成物は、送達溶液として、または送達ビヒクル中にパッケージ化され、投与が全身性、局所性、または標的部位への指向性のいずれであっても、移植、注射または注入によって投与され得る。
【0012】
さらに別の実施形態では、膵臓障害を治療する方法であって、前記膵臓障害がインスリンの不十分な産生によって特徴付けられ、哺乳動物において、インビトロで、1型糖尿病ドナー膵臓から採取した膵臓組織からのインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の集団を、ベース培地および有効量の配列ID番号:1または2に記載のポリペプチドもしくはその活性断片を含む膵島胞培養培地で培養する工程を含み、それによってCD133陽性、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞の集団が生成され、さらに、集団を単離および拡大し、優勢(少なくとも60%以上)のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の集団を生成する工程を含み、および、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を収集し、収集した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはハンクス平衡塩溶液(HBSS)等の生理的緩衝液に懸濁し、生理的緩衝液に懸濁したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物を哺乳動物に移植または注入する工程をさらに含む。一実施形態では、組成物は、水溶液、懸濁液、カプセル化、マイクロカプセル化、および/またはカプセル化、もしくは半固形製剤として送達され得、ここで、組成物は、1つまたは注射、注入、卵巣または腹膜パウチ、外科的移植、または装置の一部として組成物をパッケージングすることにより、哺乳動物の標的部位に投与することのより多くである。
【0013】
別の実施形態では、細胞組成物は、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、緩衝液、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される添加剤、抗生物質または他の医薬品のうちの1つ又はそれ以上をさらに含むことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に開示される組成物および方法は、添付の図によってさらに説明される。用語「IPC」は、本明細書に記載され請求されるインスリン産生細胞(IPC)を指すために図において使用される。
【
図1】本明細書の方法に従って増殖させたT1D由来のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞が、CD133、インスリン、およびグルカゴンに対して50%より大きい三重陽性であることを示す。
【
図2】配列ID番号:1または2に従うペプチドを含む膵島細胞培養液で培養したT1D膵臓組織が、高グルコース条件下でのインスリン分泌と非刺激条件下での基礎分泌との比である刺激指数によって示されるように、グルコース刺激に応答してインスリンを分泌する細胞を作り出すことを示す。2より大きい値は、細胞におけるグルコース応答性を表す。サンプル1は、本明細書の方法に従って正常膵臓組織から増殖された細胞集団であり、サンプル2~4は、本明細書の方法に従ってT1D膵臓組織から増殖させた細胞集団である。
【
図3】単一のT1D生検由来細胞調製物における膵臓機能に関連する遺伝子(ファミリー)のダウンレギュレーションとアップレギュレーションを、ネイティブ膵臓組織と比較して示す。各遺伝子ファミリーは、5~13個の遺伝子を含む。図が示すように、本明細書の方法に従って生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞からなる細胞集団は、成熟膵島細胞、β細胞成熟、GSIS、インスリン顆粒、および細胞周期に必須の遺伝子ファミリーのアップレギュレーションを示す。
【
図4】本明細書の方法に従って増殖させたインスリンおよびグルカゴンを含む細胞組成物をストレプトゾトシン(STZ、膵島に不可逆的な損傷を誘導し糖尿病を誘発するβ細胞特異的毒素)処理マウスに移植した後の血清インスリンレベルを示す。細胞組成物は、インビボでヒトインスリンの分泌を促進することが示され、これは、本明細書に開示される細胞組成物で処理したSTZマウスの血清中に100日間まで存在した。
【
図5】本明細書の方法に従って増殖させた1型糖尿病(T1D)細胞から生成したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞が、STZ糖尿病マウスモデルで注射すると血糖値を正常化できることを示す。M1~4は、STZマウスサンプル番号、すなわち、マウス-1、マウス-2、マウス-3、マウス-4を指す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の用語は、異なる実施形態を説明するために本開示で使用される。これらの用語は、説明のためにのみ使用され、本明細書で請求される主題のいかなる態様についても範囲を限定することを意図しない。
【0016】
本明細書で使用する「配列ID番号:1または2」は、配列ID番号:1または2(表1参照)に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質、ポリペプチド、ペプチド断片、またはそれらのアナログ、およびそれらの任意の改変体を指す。また、配列ID番号:1および2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチド断片、またはそのアナログ、およびその任意の改変体を含むことが企図される。配列ID番号:1および配列ID番号:2に記載のポリペプチドを用いたインビトロ研究により、細胞培養液に添加した配列ID番号:1または配列ID番号:2によるポリペプチドで細胞(ケラチノサイト、腸細胞、膵島細胞、内皮細胞および肺細胞)を処理すると刺激と細胞成長の増加が起こることが実証されている、CD133陽性細胞の割合とMTT細胞増殖アッセイ(Sigma Aldrich Cell Proliferation Kit)で測定されるように、生存可能な前駆細胞をもたらす。これらの前駆細胞は、数十億単位で再生および増殖させることができる。
【0017】
本明細書で使用する場合、「インスリンおよびグルカゴン分泌細胞」または「インスリンおよびグルカゴン分泌膵島細胞」または「インスリンおよびグルカゴン分泌前駆細胞」という用語は、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞および/または細胞集団(複数)を含む細胞組成物を指すために互換的に使用され、本明細書に記載の方法に従って非インスリン分泌T1D膵細胞から発生し、細胞マーカー:CD133、インスリン、グルカゴンに対して陽性であり、および刺激に応答してインスリンおよびグルカゴンを産生し、細胞マーカーPDX-1、SST、IIAP、Pax4、Pax6、Nkx2、Nkx6、NeuroD1、MafA、MafBによりさらに特徴付けられる。
【0018】
「増殖」とは、細胞分裂の結果、培養物中に存在する細胞数が増加することを指す。
【0019】
本明細書で使用する「培養(culture)」、「培養された(cultured)」、または「培養する(culturing)」は、環境(宿主哺乳動物内など)からの細胞の除去または分離、およびその後の良好な人工環境でのインビトロでのそれらの成長を指す。「培養細胞」は、細胞を新鮮な成長培地とともに新しい容器に移し、継続的な成長、分化および/または増殖のためのより広い空間を提供することによって、継代培養(すなわち、継代される)を含むことが意図される。「膵臓細胞」への言及は、哺乳類の膵臓に通常見られる細胞を含み、膵島細胞、例えば、グルカゴン合成α細胞、インスリン産生β細胞、およびそれらの任意の組合わせを含む。
【0020】
本明細書で使用する「標的部位」という用語は、治療または補充を必要とするレシピエント宿主(哺乳動物、好ましくはヒト)内の領域を指す。標的部位は、特定の器官内の単一の領域であり得るか、または宿主内の複数の領域であり得る。いくつかの実施形態において、補充または置換は、膵臓を標的とするか否かにかかわらず、膵臓組織などの正常組織と同じ生理的応答をもたらす。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」、および他の文法的同等物は、疾患または状態の症状の緩和、軽減または改善、追加の症状の予防、症状の根本的な代謝原因の改善または予防、疾患または状態の阻害、例えば、疾患または状態の発症を阻止する、疾患または状態を緩和する、疾患または状態の退行を引き起こす、疾患または状態によって引き起こされる状態を緩和する、または疾患または状態の症状を停止する、および予防を含む。用語はさらに、治療的利益および/または予防的利益を達成することを含む。治療的利益とは、治療される基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療的利益は、患者が依然として基礎疾患に悩まされている可能性があるにもかかわらず、患者において改善が観察されるような、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つまたはそれ以上の根絶または改善で達成される。
【0022】
本明細書で使用する場合、「有効量」とは、記載された効果を達成するのに十分な量をいう。状態を治療するための治療上有効な量は、患者または患者集団において臨床的に関連するエンドポイントを達成することができる量である。非限定的な例として、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む組成物の有効量の投与は、血糖値を約100~125mg/dl(5.6~6.9mmol/L)、または250mg/dl未満まで低下させるのに十分なインスリンを生成するための、約1.2~約2.5×106細胞/kg、または200×106細胞より大きな量となる。他の範囲としては、1kgの体重あたり約3×106細胞~約25×106細胞、または体重1kgあたり約5×106~約10×106百万細胞を含む。組成物の適切な用量は、注射または注入または移植などの投与経路により、治療される対象だけでなく、治療される状態の重症度にもよる。アロメトリックスケーリングなどのスケーリング法を用いて、本明細書に開示されるような組成物を成人ヒトに投与するための適切かつ例示的な投与量範囲を予測することが可能である。用量スケーリングは、経験的アプローチであり、当技術分野で十分に特徴付けられ理解されている。このアプローチは、種間の解剖学的、生理学的、および生化学的プロセスに関するいくつかの固有の特性があると仮定し、薬物動態学/生理学的時間における可能な差は、そのようなものとして、スケーリングによって説明されるものとする。一例として、限定するつもりはないが、文献に基づくと、ヒトの膵臓には6×105から約2×106の膵島があり、したがって、正常なヒトには約600×106の膵島細胞が存在し、その半分はβ細胞である。正常血糖を維持するには膵島の質量が30%で十分であることを考慮すると、本明細書に開示したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の1.2×106の用量は、非疾患ヒト膵臓のインスリン生産能力を十分に代替すると期待される。
【0023】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」という用語は、配列間の同一性または類似性で表される2つまたはそれ以上のアミノ酸配列間の同一性を指す。配列同一性は、同一性パーセントの観点から測定することができ、パーセントが高いほど、配列がより同一であることを意味する。同一性の割合は、配列の全長にわたって計算される。アミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法で配列した場合、比較的高い配列同一性を所有する。この相同性は、オルソログタンパク質が、より近縁な種(例えば、ヒトとマウスの配列)に由来する場合、より遠縁な種(例えば、ヒトと線虫の配列)と比較して、より顕著である。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野でよく知られている。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムは、以下に記載されている:Smith & Waterman;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Nat.Acad Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:23744,1988;Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Carpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90、1988;Huang et al.、Computer Appls.in the Biosciences 8、155-65、1992;およびPearson et al.、Meth Mol.Bio.24:307-31,1994.Altschul et al.、J.Mol.Biol.215:403-10,1990は、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示する。配列同一性のレベルは、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990)を用いて決定することができ、これは、以下から入手可能である。National Center for Biological Information(NCBI,National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,Md.20894,US)やインターネットなど、複数の情報源がある。
【0024】
数値は、ある量の実験的誤差と関連付けられる可能性があることが理解されよう。したがって、数値誤差の前に修飾語「約」(または「約」)を復唱することは、復唱された数値に関連し得る実験誤差を具現化することを意味する。実験的に得られた数値が「約」(または「約」)という表現に先行しない程度では、その数値がある量の実験的誤差と関連しないことを意味しない。
【0025】
本明細書で特徴付けられるインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の代表的な培養物は、2022年9月7日にATCCに寄託されている[アクセッション番号 ブダペスト条約に基づく]。培養細胞、増殖細胞、単離細胞などは、例えば紫外線などの外部からの変異原性刺激から保護することができる。
【0026】
本明細書に開示された方法を用いると、T1D膵臓組織の分離から30日後には、1つの膵臓からインスリンおよびグルカゴン分泌(膵島)細胞770億個、60日目には2兆個が生成され、治療を必要とする100~150人の患者(重症度や使用量によって異なる)、または将来の拡張と再注入のためのバンク(冷凍保存)細胞を注入できると決定される。
【表1】
【0027】
活性剤のアミノ酸残基は、翻訳後に修飾されたり、他の機能的または非機能的な分子基と共役したりすることができる。例えば、Guo et al.Mol.Biosyst.7(7):2286-2295,2011、ヒトリボソームタンパク質S2(例えば、配列ID番号:1)の概ね拮抗するシトルリン化およびメチル化について記載されている。当然ながら、そのような修飾アミノ酸残基は、アミノ酸配列に含まれ、本明細書に記載の活性薬剤の範囲内にある。
【0028】
例えば配列ID番号:1および2に記載のポリペプチドおよび/またはポリペプチドフラグメントは、タンパク質生産のための当該技術分野で既知の条件下で、例えば細菌、酵母での生産、または合成手段による生産、または米国特許出願第15/811,060号に記載されているように生産することができる。
【0029】
一実施形態では、細胞組成物は、送達溶液として、または医療機器を構成する送達ビヒクル内にパッケージ化されてもよく、投与が非経口的、全身的、局所的、または標的部位に向けられるかどうかにかかわらず、移植、注射、または注入によって投与され得る。一実施形態において、インビトロで生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌膵島細胞のカプセル化および哺乳動物への移植は、当技術分野において以前に特徴付けられた(例えば、Altman,et al.,1984,Trans.Am.Soc.Art.Organs 30:382-386、および米国特許第6,703,017B1号、参照により本明細書に組み込まれる)、および本明細書に開示される方法に従って生成されるインスリンおよびグルカゴン分泌細胞に好適だろう。好ましくは、そのカプセル化剤は、低アレルギー性で、標的組織内に容易に安定に位置し、移植された細胞組成物に保護機能を付加し、移植された細胞の破壊から保護および防止することができる。
【0030】
ヒトにおける適切な移植量は、ヒトにおける生体外膵島移植に関連する既存の情報、さらなるインビトロおよび動物実験、ならびにヒト臨床試験から決定することができる。ヒトにおける生体外膵島移植に関するデータから、患者1kgあたり約8,000~12,000個の膵島が必要となる可能性があると予想される。移植後のインプラントの長期生存を仮定すると、天然に存在する膵島の数(正常なヒト成人膵臓では約200万個)よりも少なく、あるいは生体外膵島移植で使用する量よりも少ない可能性さえある。
【0031】
一実施形態において、細胞組成物は、哺乳動物において、膵臓障害を治療するための治療的利益を有し、ここで膵臓障害は高血糖、1型糖尿病、または慢性膵炎であり、これは、治療有効量のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を投与し、それによって膵臓障害の治療法を提供することを含む。
【0032】
一実施形態では、治療有効量のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む組成物は、水溶液、懸濁液、カプセル化、マイクロカプセル化、および/またはカプセル化、または半固形製剤として処方され得、ここで組成物は、注射、注入、軟骨または腹膜パウチ、ポート、外科的移植、または装置の一部として組成物をパッケージ化して哺乳動物の標的部位に送達の1またはそれ以上を介して必要とする患者へ送達されてよい。
【0033】
一実施形態では、組成物は、インスリンおよびグルカゴン分泌前駆細胞集団を含み、さらに薬学的に許容される賦形剤、および/または薬学的に許容される添加剤および/または医薬品の1つまたはそれ以上を含む。適切な賦形剤および添加剤としては、これらに限定されるわけではないが、PBS、またはHBSSなどの緩衝剤、アミノ酸、安定剤または増量剤、界面活性剤、抗菌/防腐剤、抗真菌剤、金属イオン/キレーター、ポリマー、ポリアニオン、塩、糖、シクロデキストリン系賦形剤、リオプロテクト、可溶化剤、抗酸化剤、複合化剤、抗付着剤、分散剤、血清添加剤などがある。
【0034】
別の実施形態では、本開示は、1型糖尿病または重症膵炎を患う、または発症する危険性のある哺乳類、好ましくはヒトを治療する方法を提供し、哺乳動物から膵臓組織を切除する工程と、切除された膵臓組織をインビトロで培養して、インスリンおよびグルカゴン分泌膵島細胞集団を増殖させる工程と、およびインスリンおよびグルカゴン分泌膵島細胞の集団を、単独または医療デバイスもしくは送達デバイスとともに、哺乳動物に移植、移植、注入、または他の方法で挿入する工程とを含む。
【0035】
実施例
以下の実施例は、本明細書で請求される主題に関して、例示のために提供され、制限のために提供されるものではない。
【0036】
実施例で行った細胞培養は、標準的なCO(5%)条件下で37℃でインキュベートし、培養(細胞のプレーティング、分割)は、垂直層流フード内で標準的な無菌技術と条件を用いて行った。特に断らない限り、細胞(対照を含む)は膵島細胞培養培地で培養した表2および表3に記載される。細胞は、培養して約70~80%のコンフルエントに達した時点で分割した。
【0037】
一実施形態では、分割技術は、培養プレートから上清を除去することを含んでいた(上清は保存されていた)。次に、プレートを2~5mlのPBSで洗浄した(洗浄液は保存された)。約3~5mlのトリプシン(Sigma-Aldrichから入手可能)を用いて、細胞が剥離するまで37℃で約3~5分間、トリプシンの存在下で細胞をインキュベートすることにより、細胞を剥離した。その後、プレートをPBSで2回目洗浄した。トリプシン処理した細胞、保存したPBS洗浄液、回収した細胞培養上清を、300gで7分間、4℃で遠心分離した。
【0038】
一実施形態では、得られた上清をデカンテーションし、ペレットを2mlのPBSに再懸濁し、再遠心分離した。次いで、上清を除去し、ペレットを配列ID番号:1または2を含む培養液に再懸濁し、~1000細胞/cm
2の細胞密度で再プレートした。実施例は、細胞培養プレートを参照することがあるが、細胞培養フラスコがプレートの許容可能な代替物であることが理解されるだろう。
【表2】
【実施例1】
【0039】
1型糖尿病患者ドナーから針生検により採取した非インスリン産生膵臓組織からインスリンおよびグルカゴン分泌膵臓細胞集団を生成する方法。
1型糖尿病(T1D)ドナー患者(58歳女性、糖尿病歴53年)から針生検によりヒト膵臓組織を採取した。市販の溶液(Viaspan、Belzer UW、Bel-GenまたはStoreProtecなどの名称で販売されている)で氷上保存したドナー膵臓(臓器回復教育センターから調達)から1×1mm3の生検を得た。
【0040】
次に、採取したT1D組織を、L-グルタミン(2mmol)、シプロフロキサシン(2mg/L)、アンフォテリシンB(0.1mg/L)、ペニシリン(100,000単位/L)、およびストレプトマイシン(100,000マイクログラム/L)、ならびに配列ID番号:1または2に記載のポリペプチド(3~20μg/mlの範囲、特に10μg/ml)、および胎児子牛血清(FCS)(10%)とヒト血清(10%)で添加したCMRL(フェノールレッドを含まないMediatech #99-663-CV Transplant Medium(CMRL 1066)等)を含む膵島細胞培養液(表2参照)中で培養を行った。対照培地は、L-グルタミン(2mmol)、シプロフロキサシン(2mg/L)、アンフォテリシンB(0.1mg/L)、ペニシリン(100,000単位/L)、およびストレプトマイシン(100,000マイクログラム/L)を添加したCMRLおよび子牛胎児血清(FCS)からなる培地であり(10%)およびヒト血清(10%)(配列ID番号:1または2に従うポリペプチドの添加なし)を使用した。標準的な組織/細胞培養条件(37℃、5%CO2)を使用した。
【0041】
組織は、I型コラーゲン(ラット尾部由来コラーゲン、Sigma-Aldrich C3867)と内皮細胞付着因子(ECAF、Sigma-Aldrich E9765)を含む付着因子混合物(AFM)でコーティングされたプレートまたはフラスコ内で培養される。ECAFとコラーゲンの様々な比率を使用することができ、コラーゲンとECAFの50/50の比率を含むが、これに限定されない。簡単に言うと、プレート(またはフラスコ)を、AFMの薄い層(3~10mlの間)をプレートに適用することによって調製し、30分間セットした後、過剰なAFMを除去した。プレートは、フード内で45分間乾燥させた。使用前に、プレートはPBSで洗浄し、潜在的な汚染物質を除去した。採取した組織を、配列ID番号:1または2に記載のポリペプチドを補充した膵島細胞培養培地中のAFM処理プレート上で細胞が動員され増殖し始めるまで(約10~20日)インキュベートした。
【0042】
培養12~15日後、生検由来の細胞は動員され、ディッシュに付着して増殖し始めた。その後、4~6週間の間、付着した細胞は増殖を続け、コンフルエントになり、3日ごとに倍増するように増殖し続けた。培養中の生検由来細胞は、2021年7月8日に公開されたUS2021/0205371で以前に特徴付けられた、非糖尿病ドナーから生成されたインスリン分泌細胞からなる細胞組成物と形態的類似性を示した。同様に、この細胞は、ランゲルハンス膵島のサイズと一致するサイズを有する膵島状の細胞クラスターを形成し、グルコースでの刺激に応答してインスリンを分泌することが示された。
【0043】
また、得られたT1D膵臓生検組織由来の細胞培養物を、フローサイトメトリー装置(Becton Dickinson FACS Aria cell sorter)を用いた蛍光活性化セルソーティング(FACS)により、CD133の発現、ならびに細胞内インスリンおよびグルカゴン発現についてアッセイした。培養細胞は、最初にCD133の発現を標識した後、製造者の指示に従って、FOXP3固定透過処理バッファーで固定および透過処理し、グルカゴンおよび細胞内インスリンについてそれぞれ共役の蛍光抗体で染色した。FACS解析は、FOXP3固定透過処理と共役蛍光抗体による染色に続いて行われた。配列ID番号:1または2に記載のペプチドを含む膵島細胞培養液で培養したT1D膵臓生検由来細胞は、CD133、グルカゴンおよびインスリンに対して陽性(本明細書では「トリプルポジティブ」と呼ぶ)であり、具体的には、インスリン、グルカゴンおよびCD133に対して48~73%のトリプルポジティブ、グルカゴンおよびCD133に対して26~42%のダブルポジティブ、インスリン、グルカゴンおよびCD133に対して14~18%のトリプルネガティブ、グルカゴンに対して9~23%のシングルポジティブ、およびCD133に対して0~7%のシングルポジティブ、インスリンとグルカゴンに対してネガティブ、インスリンとCD133に対してネガティブ、及びインスリンに対してネガティブであることが判明した。全体として、培養細胞集団はインスリン、CD133、グルカゴンに対して65%以上のポジティブ(トリプルポジティブ)であると判断された。(
図1参照)
【実施例2】
【0044】
1型糖尿病のドナーから針生検で採取したインスリン産生能を持たない膵臓組織から作製したインスリンおよびグルカゴン分泌膵臓細胞集団は、インビトロでグルコース刺激に応答してインスリンを分泌する。
【0045】
T1D生検組織から増殖させたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞(実施例1参照)のグルコース反応性を調べるため、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞をグルコース刺激インスリン分泌アッセイに供した。約1×10
6細胞/ウェルを6ウェルディッシュにプレーティングし、インスリン分泌を評価するために2つの刺激条件を経た。1)膵島細胞培養液(表2参照)、または(2)より高いグルコース濃度(最終濃度16.7mM、インスリン分泌の刺激として)を添加した膵島細胞培養液のいずれかと30分インキュベートした。インキュベーション後、上清はインスリン定量化のための標準的なELISAアッセイを受けるまで-20℃で保存された。より高いグルコース濃度を添加した膵島細胞培養液で培養した細胞は、標準膵島細胞培養液で処理した細胞(刺激していない対照)よりも高いインスリン量を分泌することが示された。グルコース刺激後のインスリン分泌は、未刺激の対照と比較して相対的に増加し、より具体的には、標準膵島細胞培養液で処理した細胞(32+/-7pMol/L「未刺激の対照」)と比較して、刺激培養ではより高いインスリン量(95+/-11pMol/L)が見られた。
図2を参照すると、高グルコースを添加した膵島細胞培養液で処理した細胞の刺激指数(高グルコースによるインスリン分泌と基礎分泌との比の指標)を、刺激していない対照と比較して示した。
【実施例3】
【0046】
T1Dドナー組織由来のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の特性およびmRNA解析。
RNA配列決定法を用いて、死亡したドナーからの膵臓組織、本明細書に記載の方法で作製したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞、同じ死亡したドナーからのデノボ疑似膵島など、いくつかの細胞集団の特徴を決定した。様々な細胞タイプの特性は、Illumina(登録商標)NovaSeq(商標)プラットフォームを使用して評価した。評価されたマーカーは、インスリン、グルカゴン、PDX-1、SST、IIAP、Pax4、Pax-6、NKx2、Nkx6、NeuroD1、MafA、およびMafBであった。また、T1D由来の膵臓組織から作製したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物は、本来の膵臓で発現する外分泌機能のマーカー(AMYおよびCTRC)が大幅に減少することが判明した。同時に、増殖マーカーであるPCNAとCCND1(サイクリンファミリー)の発現が増加し、運動性増殖細胞への脱分化を示す可能性があり、インビトロでの細胞増殖の観察とも一致する。T1Dドナーから針生検で採取した膵臓組織から作製したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞は、より長期間(~20日以上)培養すると、形態的な再配列が起こり、自発的にde novo-疑似膵島を生成した。これらの膵島様構造は、インスリン、グルカゴン、PDX-1、SST、IIAP、Pax4、Pax-6、NKx2、Nkx6、NeuroD1、MafA、MafBを含む内分泌前駆細胞と膵島のシグネチャーマーカーの発現が著しく増加し、細胞増殖経路がダウンレギュレートしていることが特徴であった。さらに、β細胞再生マーカーであるIGFBP1は、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物と比較して、疑似膵島でより高いレベルで発現した。一方、幹細胞マーカーであるLY6EおよびPROM1は、細胞組成物においてより高い発現を示しており、α、β、およびδ細胞の生成を約束する、より分化した内分泌前駆細胞集団に成熟したことを示唆した。
【0047】
この細胞のマイクロアレイmRNAプロファイルは、膵内分泌膵島細胞集団に適合する遺伝子プロファイルを確認し、インスリン、グルカゴンを発現していることがわかった。さらに、これらのT1D由来細胞集団はまた、膵臓転写因子PDX1、Nkx6、ngn3、NeuroD、およびMafAとMafB、膵島新生因子ネスティン、グルコース輸送体Glut-2、β細胞の分泌物IAPP、膵島δ細胞が分泌するソマトスタチンも発現した。これらのことから、T1D由来の細胞集団は、膵島新生に必要なすべての因子を保有していることを示唆した。
図3を参照すると、T1D膵臓組織由来のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞における遺伝子ファミリーのアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションの概要を示す。
【実施例4】
【0048】
インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物を宿主動物に移植を介し、インスリン分泌をインビボで増加させる方法。
T1D由来のインスリンおよびグルカゴン分泌細胞の治療および移植方法としての有効性を検証するため、4匹のSTZ投与マウス(NOD-SCID、5~6週齢;Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)に、約2.5×106T1D由来の生検由来インスリンおよびグルカゴン分泌細胞(細胞はNeubauer Chamberを用いて数えられた)を1週間間隔で2回(計2回の投与)注入した。フォローアップは30日間とした。初回投与後14日目以降とフォローアップ終了時に尾静脈から血液を採取した。血清は、ELISA法(それぞれAbcamとAlpco)によるヒトインスリンおよびヒトCペプチド濃度の測定に使用するまで-20℃で保存した。
【0049】
T1D由来のインスリン及びグルカゴン分泌細胞は、例えば、配列ID番号:1または2に従うポリペプチドを3~20μg/mlの範囲の濃度で含む培養液中でT1D膵臓組織を培養することにより、本明細書に記載の方法を用いて生成した。膵島細胞培養液の一例は、以下のように記載される(そして、表2および実施例1に示される):L-グルタミン(2mmol)、シプロフロキサシン(2mg/L)、アンフォテリシンB(0.1mg/L)ペニシリン(100,000単位/L)およびストレプトマイシン(100,000マイクログラム/L)、ならびに配列ID番号:1または2によるポリペプチド(10μg/mlで、)および胎仔血清(FCS)(10%)、ヒト血清(10%)で補充したCMRL。対照培養液は、表3に記載される。
【0050】
移植前、細胞は約50~60日間培養された。移植時に、トリプシン(ギブコ社から入手可能)を用いて細胞をプレート/フラスコの底部から剥離した。40μmの滅菌メッシュで濾過した後、単一細胞をリン酸緩衝液(カルシウムとマグネシウムを含まない)、ハンクス平衡塩溶液でもよい(いずれもSigma Aldrichから入手可能)、スピン(180g~300g、約10分間)して数え、約200μlの滅菌PBS(またはHBSS)に1.25x106/100μlの量で再懸濁し、尾静脈から麻酔をかけたマウスに注入した。注射は1分かけて行った。
【0051】
ヒトインスリンは、初回注射後14日目と30日目にすべてのマウスで検出された(濃度範囲は12.5~33pmol/Lと測定された)。ヒトCペプチドは、30日目に測定したところ、ポジティブな結果が確認された(10pmolまでのレベルで)。
【0052】
静脈内注射の代わりに、細胞を20~50μlの濃度でPBSに懸濁し、シリンジに接続したPE-50チューブを用いて腎臓の被膜下腔(約1cm2の領域を占める)に挿入することもできる(Bertera et al,Journal of Transplantationに記載の方法)。
【0053】
Volume2012 Article ID856386,9pages doi:10.1155/2012/856386).この方法を用いると、一度に大量の細胞を投与することができる(例えば、約5-10×106細胞)。対照的に、ヒト細胞の静脈注射は、2.5×106細胞より高い用量は、それほど耐容性が高くないかもしれない。
【0054】
非糖尿病患者のヒト血清中のインスリンの正常範囲は約35.9~143.5pmol/lであり、ヒトと比較したマウスにおけるヒトインスリンのクリアランスの差に由来する限界を考慮すると、ヒトレシピエントに3.0~25×106細胞/kg体重を投与すれば、グルコース調整に影響を与える可能性を持つ量のインスリンが供給できると期待することは妥当である。投与は、必要に応じて1回、または3~6ヶ月ごと、あるいは年単位で繰り返す複数回の投与が可能である。投与量は、重症度、性別、体重、年齢など多くの要因に依存する。
【実施例5】
【0055】
インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物を宿主動物に移植することにより、インスリン分泌をインビボで増加させる方法。
本明細書に記載の膵島細胞培養液を用い、マウス膵島から増殖させたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物は、マウスなどの動物に腎臓カプセルを介して安全に注射および/または移植できることが決定された。
【0056】
一実施例では、マウスの腎臓カプセルの下にインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を移植した後のヒトインスリン分泌が、少なくとも100日の期間にわたって検出された(
図4参照)。
【0057】
増殖したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を回収し、次いで、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)またはリン酸緩衝塩水(PBS)(Sigma Aldrichから入手可能)を含む溶液などに懸濁して細胞組成物を形成した。本実施例では、ハンクス平衡塩溶液に懸濁したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞からなる細胞組成物を、Bertera et al 2012に記載のアプローチなどの既知の方法を用いて、ストレプトゾトシン糖尿病(STZ)ヌードマウス(5~6週齢;Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)の腎臓カプセルの下に転写された。
【0058】
簡単に説明すると、移植前にマウスにストレプトゾトシン(240mg/kg IP)を注射し、高血糖(2回連続測定で非空腹時血糖値>350mg/dl)を確認した。
【0059】
移植当日、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞をトリプシンなどで培養から剥離し、遠心分離(300g)して剥離細胞をカウントすることにより、細胞組成物を作製する。約4×106の細胞;をHBSSを含む溶液に懸濁し、PE50チューブのようなチューブまたはカテーテルに装填する。次に、細胞組成物を含むカテーテルまたはチューブを、左脇腹の小切開を介して、完全に麻酔したSTZマウスの腎臓カプセルの下に置き、腎臓の露出に従うことによって、細胞組成物をSTZマウスに移植する。
【0060】
移植後14日目、56日目、および100日目に、細胞組成物を受けたSTZマウスの尾静脈から血液を採取し、血漿を分離および保存した。インスリンレベルは、ヒトインスリンに特異的なELISAキット(ALPCO Diagnostics,Salem,NH,USA)を用いて測定した。
図4を参照すると、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む組成物で、移植を介して、処置されたストレプトゾトシン糖尿病マウスのインスリンレベルを示す。
【実施例6】
【0061】
インスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物を宿主動物に移植することにより、高血糖および糖尿病を治療する方法。
非1型糖尿病膵臓組織(ヒトおよびマウス由来)を、基質培地と配列ID番号:1または2に従うポリペプチドを含む膵島細胞培養培地で処理することにより生成したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物は、血糖値を下げるのに十分なレベルでグルコース刺激によりインスリンを分泌することがわかっている。約4×106の細胞を含むこれらの細胞組成物は、静脈注射すると、インスリンやグルカゴンを分泌するだけでなく、膵臓に帰巣および生着する。インスリンとグルカゴンを分泌する細胞を含む細胞組成物は、糖尿病や高血糖を含む膵臓疾患の治療のために、細胞移植によって提供することができる。
【0062】
幹細胞マーカーCD133の発現は、細胞の長期生着能力に相関し、これらの細胞は、傷害部位に移動して帰巣する生得的能力を有する。本明細書に開示されるような細胞組成物は、STZ糖尿病マウスに注入されると、膵臓に移動し、治療後の血糖値の対応する低下により高血糖を正常化することが示されることが決定された。例えば、6(6)4匹のSTZ処置マウスに、マウス膵臓組織から単離された(およそ)20×10
6個の細胞を含む細胞組成物を注射し、配列ID番号:1または2に記載のポリペプチドを含む膵島細胞培養培地で処置した。結果は、10日目までに全てのマウスが血糖値の低下を示し、注射後22日目までに4匹中2匹が200mg/dlより低い空腹時血糖値を示した。すべてのレシピエント動物は、血中グルコースレベルの減少を有し、2匹の動物-は250mg/dlに近い血中グルコースレベルを維持し、1匹の動物は実験の85日目に180mg/dlという低いレベルを有した。
図5参照。
【0063】
正常な膵臓組織からの細胞は、T1D膵臓サンプルから生成された細胞と非常に類似した特性、すなわち、CD133、グルカゴン、およびインスリンのトリプルポジティブを示すので、配列ID番号:1または2に記載のポリペプチドを含む膵島細胞培養培地で処理したT1D膵臓組織試料から生成したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物は、インビボにおいて血糖レベルの測定可能な低下をもたらすことを予想することが妥当である。さらに、インスリン分泌細胞およびグルカゴン分泌細胞を含む細胞組成物の移植は、非発癌性であることが示されており、移植(注射、注入、生着のいずれかによる)による膵臓疾患の治療のための望ましい選択肢となる。
【実施例7】
【0064】
インスリンおよびグルカゴン分泌膵島細胞の培養、生存率試験および凍結保存方法。
一実施形態では、膵島細胞培養培地は、CMRL-1066(Mediatech、#99-663-CV;フェノールレッドなしの移植培地(CMRL1066)):10%熱不活性化子牛胎児血清(Gibco,#16140071)、10%ヒト血清(Gemini,#100512)、L-グルタミン(2mM,Gibco,#25030081)、シプロフロキサシン(2ml/L,Biworld,#403100313)、アンホテリシンB(0.1mg/L、Gibco、#15290026)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100,000U/L-100,000μg/L、Gibco、#10378016)、および配列ID1または2に記載のペプチド(3~20μg/mlの範囲、例えば、3μg/ml、5μg/ml、または10.0μg/ml)を含む。別の実施形態では、凍結保存のための細胞培養培地は、凍結保護剤培地(Gibco#12648010)を含む。別の実施形態では、生存率試験は、フルオロセインジアセテート(FDA)(Sigma Aldrich#F7378)及びヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma Aldrich #P4170)を利用する工程を含む方法を用いて実施された。
【0065】
一実施形態では、ヒト膵臓組織を、1型糖尿病または重症膵炎に罹患したヒトドナーから針生検により収集し、10%ウシ胎児血清、10%ヒト血清、2mmol/L-グルタミン、抗生物質、および配列ID1番号:1または2に記載のペプチドを3μg/ml~20μg/ml、例えば100μg/mLとなる濃度範囲で、、コラーゲンタイプIと内皮細胞付着因子(ECAF)を含む付着因子混合物(AFM)でコーティングされたプレート(またはフラスコ)上で、補充されたCMRL1066を含む膵細胞培養培地でインビトロ培養した。ECAFとコラーゲンの比率は、コラーゲンとECAFの50/50の比率を含む様々な比率を使用した。AFMの薄い層(3~10mlの間)を適用し、30分間セットした後、余分なAFMを除去し、プレートをフード内で45分間乾燥させた。その後、プレートをリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、潜在的な汚染物質を除去した。採取した膵臓組織を、膵島細胞培養液中でAFM処理したフラスコ/プレート上で細胞が動員され増殖し始めるまで10~20日間インキュベートした。培養細胞は、垂直層流フード内で標準的な無菌技術を使用して、約70~80%の培養コンフルエントに達した時に分割される。分割技術では、培養プレートから上清を除去した(上清は保存)。次に、プレートを2~5mlのPBSで洗浄した(洗浄液は保存された)。培養細胞は、約3~5mlのトリプシン(25%溶液)を用いて、細胞が剥離するまで37℃で約3~5分間トリプシンの存在下でインキュベートすることにより剥離された。その後、プレートをPBSで2回目洗浄した。トリプシン処理した細胞、保存したPBS洗浄液および回収した細胞培養上清を、次に1000rpmで4℃、7分間遠心分離した。得られた上清をデカントし、ペレットを2mlのPBSに再懸濁し、遠心分離を行った。その後、上清を除去し、ペレットを配列ID1または2を含む膵島細胞培養培地に再懸濁し、~1000細胞/cm2の細胞密度で再プレートした。複製に使用しなかった培養細胞は、凍結保存培地に最大濃度1x106/mlで再懸濁させた。培養細胞を4℃で遠心分離した(1000rpm、7分)。上清を吸引し、新鮮な凍結保存培地と交換し、細胞を凍結容器Mr.Frosty(Thermo-Fisher#5100-0036)に一晩移した後、気相液体窒素中に移し、保存した。
【0066】
細胞は、凍結保存の前に生存率アッセイを行った。凍結保存に受け入れられる最小限の生存率=95%(したがって、分析した全細胞の95%が生存蛍光色素であるFDAで染色された)。
【0067】
約200個の細胞の2つのアリコートを、エッペンドルフチューブに入れたFDAとPIを含む400μlの溶液(FDAは0.46μM、PIは14.34μMの濃度)に約50μlの容量で移した。細胞を遠心分離(1000rpm、7分間)し、上清の約95%を吸引し、マイクロピペットを用いて顕微鏡スライドに残った液に細胞を移した。蛍光顕微鏡(Olympus model CKX3)で緑/赤のフィルターセットを用いて細胞を分析した。生存細胞は緑色(FDA)、死細胞は赤色(PI)で染色される。生存細胞の割合を、2人のオペレーターがそれぞれ独立に判定した(パーセントで表示)。
【0068】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示および実施例によってある程度詳細に説明されているが、添付の請求項の範囲内で特定の変更および修正が実践され得ることは明らかだろう。上述した態様および様々な実施形態のいずれかに関連して説明された特徴は、異なる実施形態間で交換可能に適用できることは、当業者にとって明らかだろう。
【0069】
態様
態様1.1型糖尿病ドナー膵臓、膵炎ドナー膵臓、またはそれらの組み合わせから針生検を介して採取した非インスリン分泌膵臓細胞から生成されたインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む、組成物。
態様2.態様1に記載の組成物において、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の少なくとも約50%が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、組成物。
態様3.態様1に記載の組成物において、インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の約50%~約100%が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する(仕様:例えば約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%など、その間のすべての値を含み、培地細胞集団の合計としてのパーセントを特定する)組成物。
態様4.態様1に記載の組成物において、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、ヒトレシピエントの体重1kgあたり約1.2×106細胞~約25×106細胞を含む(仕様:例えば、約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24と、その間のすべての値を含み、典型的なヒトのレシピエント(例:小児(例えば:4~60kg)、成人(60~225kg))の質量(kg単位)を特定する、組成物。
態様5.態様1に記載の組成物において、針生検を介して採取した前記非インスリン分泌膵臓細胞が、1型糖尿病患者のドナー膵臓から得られる、組成物。
態様6.態様1に記載の組成物において、針生検を介して採取した前記非インスリン分泌膵臓細胞が、膵炎ドナー膵臓から得られる、組成物。
態様7.態様1に記載の組成物において、前記非インスリン分泌膵臓細胞が、同質遺伝子型、異質遺伝子型、またはそれらの組み合わせである、組成物。
態様8.膵臓障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の態様1の組成物を投与する工程を含み、ここで、前記膵臓障害は、1型糖尿病、膵炎、またはそれらの組合わせを含む、方法。
態様9.態様8に記載の方法において、前記投与する工程が、注射、注入、卵巣または腹膜パウチ、外科的移植、若しくは装置の一部としての前記組成物のパッケージングのうちの1つまたはそれ以上を介して、前記治療上有効な量の態様1に記載の組成物を前記対象の標的部位に送達する工程を含む、方法。
態様10.インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む組成物を調製する方法であって、
ベース培地と、配列ID番号:1または2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列ID番号:1、配列ID番号:1の活性断片、配列ID番号:2、配列ID番号:2の活性断片、またはそれらの組み合わせを含むポリペプチドの有効量と、を有する膵島細胞培養培地で非インスリン分泌タイプ1糖尿病膵細胞集団をインビトロで治療する工程を含む、方法。
態様11.態様10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌型細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含む、方法。
態様12.態様10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の少なくとも約50%の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、方法。
態様13.態様10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団の約50%~約100%の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団が、CD133、グルカゴン、およびインスリンを発現する、方法。
態様14.態様10に記載の方法において、前記治療する工程が、非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させる工程と、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させる工程と、をさらに含み、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団がヒトレシピエントの体重1kgあたり約3×106細胞~約25×106細胞を含む、方法。
態様15.ドナーから前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を抽出する工程をさらに含む、方法。
態様16.態様10に記載の方法において、針生検を介してドナーから非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を抽出する工程をさらに含む、方法。
態様17.態様10に記載の方法において、前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を、同質遺伝子型のドナー、異質遺伝子型のドナー、またはそれらの組み合わせから抽出する工程をさらに含む、方法。
態様18.態様10に記載の方法において、前記膵島細胞培養培地が、約3μg/mL~約20μg/mLの範囲の量のポリペプチドを含む、方法。
態様19.態様10に記載の方法において、前記治療する工程が、前記非インスリン分泌型1型糖尿病膵臓細胞集団を分化させ、前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を増殖させて治療上有効量の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を得る工程をさらに含み、前記方法が、前記治療上有効量の前記インスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団をそれを必要とする対象に投与する工程をさらに含む、方法。
態様20.1型糖尿病ドナー膵臓から針生検を介して採取した非インスリン分泌膵臓細胞から生成したインスリンおよびグルカゴン分泌細胞集団を含む、1型糖尿病、膵炎、またはそれらの組み合わせの前記治療に使用するための組成物。
【0070】
前述の情報は、理解を明確にする目的で、図示および例として本明細書に開示された態様を強調しているが、特定の変更および修正が、本明細書で主張する主題の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。上述した態様および様々な実施形態のいずれかに関連して説明される特徴は、異なる実施形態間で交換可能に適用できることは、当業者にとって明らかだろう。
【0071】
上述した態様および実施形態は、本明細書で請求する主題の様々な特徴を説明するための例である。本明細書に開示されたすべての刊行物および特許出願は、本開示および特許請求の範囲の主題が関係する当業者のレベルを示すものである。
【0072】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、「comprise」および「contain」という語およびそれらの変形は、「含むが限定されない」を意味し、他の部位、添加物、成分、またはステップを除外することを意図しない(および除外しない)。
【0073】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、文脈上そうでない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数だけでなく複数を企図するものとして理解されるものとする。
【0074】
特定の態様、実施形態、または例と関連して記載された特徴、特性、化合物、化学部分、または基は、それと互換性がない限り、本明細書に記載された他の態様、実施形態、または例に適用できると理解されるものとする。本明細書(添付の請求項、要約および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップのすべては、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書で請求される主題は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本明細書で主張する主題は、本明細書(添付の請求項、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0075】
すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれる場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる特定の特許出願には、例えば、2017年11月13日に出願された米国特許出願第15/811,060号(およびUS2018/0133280A1として公開);および2019年6月20日に出願された国際特許出願PCT/US2019/038305号(およびWO2020/005721A1として公開)。用語および/または表現の範囲内において本書で開示された条件および表現と、本書で組み込まれた条件および表現が矛盾する場合は、本書で開示された情報が優先される。
【配列表】
【国際調査報告】