(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】脱髄性の疾患および病状の処置のためのフェンフルラミン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20240905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/00
A61P15/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501691
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022041502
(87)【国際公開番号】W WO2023034115
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515314845
【氏名又は名称】ゾゲニクス インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】チャ ジョン チャン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】リーダー サディアス クロムウェル
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA81
(57)【要約】
脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する神経変性の疾患または病状の疾患進行を改変する方法も本明細書に記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置方法において使用するためのフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩であって、
前記方法が、
脱髄障害と診断された対象に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含む、
前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記脱髄障害が多発性硬化症(MS)である、請求項1記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記脱髄障害がてんかん性脳症である、請求項1記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記脱髄障害が、不十分なミエリン化である、請求項1記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記脱髄障害が髄鞘の形成不全(underdevelopment)である、請求項1記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、請求項1~5のいずれか一項記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記投与が、1日2回、1日1回、週2回、および週1回からなる群より選択される間隔での投与である、請求項1~6のいずれか一項記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記対象が、磁気共鳴画像(MRI)、筋電図(EMG)、神経伝導検査(NCV)、誘発電位検査、腰椎穿刺(LP)、痛みの病歴、吐き気の病歴、嘔吐の病歴、発熱の病歴、筋力、神経感覚、運動協調性、歩行能力、眼検査、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるデータに基づき診断される、請求項1~7のいずれか一項記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
処置方法において使用するためのフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩であって、
前記方法が、
脱髄に関連する病状と診断された患者に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含む、
前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記脱髄に関連する病状が、多発性硬化症、白質ジストロフィー、白質脳症、突発性炎症性脱髄性疾患、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、請求項9記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記脱髄に関連する病状が多発性硬化症である、請求項9記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記脱髄に関連する病状が、橋中心髄鞘崩壊症、急性散在性脳脊髄炎、バロー同心円硬化症、マーブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症、びまん性脊髄破砕性硬化症(diffuse myelinoclastic sclerosis)、急性出血性白質脳症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、レーベル遺伝性視神経症、多巣性運動ニューロパチー、異常蛋白性脱髄性多発ニューロパチー(paraproteinemic demyelinating polyneuropathy)、熱帯性痙性対麻痺、ギラン・バレー症候群、乳児レフサム病、1型成人レフサム病、2型成人レフサム病、ツェルウェガー症候群、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、カナバン病、アレキサンダー病、ビンスワンガー病、腓骨筋委縮、脳腱黄色腫症、白質消失をともなう白質脳症、毒性白質脳症(toxic leukoencephalopathy)、ファンデルナップ病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、および横断性脊髄炎からなる群より選択される、請求項9記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記対象が、磁気共鳴画像(MRI)、筋電図(EMG)、神経伝導検査(NCV)、誘発電位検査、腰椎穿刺(LP)、痛みの病歴、吐き気の病歴、嘔吐の病歴、発熱の病歴、筋力、神経感覚、運動協調性、歩行能力、眼検査、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるデータに基づき診断される、請求項9~12のいずれか一項記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、請求項9~13のいずれか一項記載のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
処置方法において使用するためのフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩であって、
前記方法が、
疾患の症状を有すると診断された患者に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含み、
前記疾患の症状が、括約筋支配の欠如、勃起障害、対麻痺、失調症、副腎皮質不全、進行性ニューロパチー、感覚異常、ディサースリア、嚥下障害、クローヌス、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、
前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、様々な病理学的機序による脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全(underdevelopment)に関連する疾患または病状の処置に関する。より詳細に、本発明は、そのような疾患および病状の処置のためのフェンフルラミンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
オリゴデンドロサイト(OL)は、中枢神経系(CNS)においてミエリンを生成し維持している。発達中に、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)はOLに分化する。しかし、ダメージを受けたまたは傷ついた白質はしばしば再ミエリン化せず、現時点で利用可能な脱髄性疾患の処置はそれらの効果が限定的である。一部の脱髄性疾患では、利用可能な処置が知られていない。したがって、再ミエリン化を促進するまたは脱髄を遅らせるもしくは止めることができる治療剤が、満たされていない医学的要望となっている。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示は、脱髄を減少させミエリン化を促進することができる量でのCNS作用薬フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の使用を特徴とする。フェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、多発性硬化症(MS)、てんかん性脳症、および脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する他の疾患または病状などの障害において脱髄を予防するおよび好転させるための有効な処置を提供する。フェンフルラミンは、かつては肥満を処置するための食欲抑制薬として広く処方されていたアンフェタミン誘導体薬である。フェンフルラミンには、D-アンフェタミンの精神運動刺激性および乱用性がなく、特定の5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン、5-HT)受容体およびセロトニントランスポーターと相互作用してニューロンから5-HTを放出させる。低用量フェンフルラミンは、どちらも稀で悪性のてんかん性症候群である、以前は乳児の重症ミオクロニーてんかんまたはSMEIとして知られていたドラベ症候群、およびレノックス・ガストー症候群の処置において抗けいれん活性を提供することが示されている。フェンフルラミンは、米国および欧州共同体の一部においてFintepla(登録商標)の商品名でドラベ症候群の処置における使用に関して承認されている。その再導入の約40年前、フェンフルラミンは肥満の処置における使用に関して承認され、その目的でしばしばフェンテルミンと組み合わされ、その組み合わせは、フェン・フェン(fen-phen)と呼ばれる文化的現象となっていた。フェンフルラミンは、それが一部の患者において心臓弁異常または肺高血圧を誘導することが見いだされたため、世界中の市場から撤去された。
【0004】
フェンフルラミンは、3-トリフルオロメチル-N-エチルアンフェタミンとも称され、構造:
を有する。
【0005】
ラセミ体フェンフルラミンの体系名は(RS)-N-エチル-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン-2-アミンである。
【0006】
本発明者らは、フェンフルラミンがRNF43と相互作用することを発見した。
【0007】
RINGフィンガータンパク質43(RNF-43)は、Wntシグナル伝達を下方調節する膜結合受容体である。Wntシグナル伝達に関しては複数のシグナル伝達経路があり、その中で3つの最も特徴づけられているシグナル伝達経路はカノニカルWnt経路、非カノニカル平面細胞極性経路、および非カノニカルWnt/カルシウム経路である。これらのカテゴリー間の違いは、カノニカル経路がタンパク質β-カテニンが関与するのに対して非カノニカル経路はそれに依存せず作動することである。Wnt-β-カテニンシグナル伝達経路はユビキチン化により複数のレベルで厳密に制御され、これらの経路の調節異常は腫瘍形成を促進する。RNF43は、もともと幹細胞において見いだされたユビキチンリガーゼであり、FrizzledファミリーのWnt受容体と相互作用することによってWntシグナル伝達を阻害することが提唱されている[Loregger A, et al., Sci Signal. 2015 Sep 8;8(393):ra90. doi: 10.1126/scisignal.aac6757]。RNF43の変異は、多くのがん、特に結腸悪生物において観察され、強いWntシグナル伝達のトーン(tone)によって促進される。機能性のRNF43は、個別の機構によりWnt/β-カテニンシグナル伝達および非カノニカルWntシグナル伝達の両方を抑制する。Wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制は、frizzledの細胞外プロテアーゼ結合(PA)ドメインおよびシステインリッチドメイン(CRD)とRNF43の細胞内RINGフィンガードメイン(N末端ドメイン)の間の相互作用を必要とする。これに対して、RNF43のこれらのN末端ドメインは、非カノニカルWntシグナル伝達の阻害に必要とされず、このタイプの抑制にはRNF43のC末端細胞質領域とdishevelledのPDZドメインの間の相互作用が必須となる。
【0008】
ミエリンは、脳および脊髄の両方を含む神経細胞の軸索の周囲に形成される絶縁層または鞘であり、タンパク質および脂肪物質で構成される。ミエリンを形成するプロセスは、オリゴデンドロサイトにより実行される。髄鞘は、電気的インパルスが神経細胞に沿って迅速かつ効率的に伝導できるようにする。ミエリンがダメージを受けると、これらのインパルスが減速または減退する。オリゴデンドロサイトは、多発性硬化症に関連する自己免疫傷害および脳性麻痺を引き起こし得る発生障害または疾患である低酸素症による新生児白質傷害を含むがこれらに限定されない多様な機構による傷害の細胞的要因である。Stephen Fancy研究室(UCSF)からの研究は、新生児脳傷害と結腸癌において類似する状況の病理学的Wntシグナル伝達を報告し、RNF-43は正常なミエリン化には必要とされないが白質ダメージ(低酸素症)後のミエリン修復に必要とされることを示した[Fancy, SPJ et al., Nat Neurosci. 2014 Apr; 17(4): 506-512]。
【0009】
白質オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)に対する低酸素虚血傷害後に、β-カテニンを通じたTCF(T細胞因子)依存的な転写が増加し、その負の調節因子である腺腫様ポリポーシスコリ(adenomatous polyposis coli)(APC)タンパク質の発現が低下することが示された。この傷ついた細胞は、それらが別セットのWntにより調整される転写標的遺伝子の上方調節を共有しているという点で、APC欠損結腸癌において見られる調節異常化Wnt/βカテニンシグナル伝達と類似する。これらの遺伝子の調節異常性過剰発現の、トーン的に上方調節される「フィードフォワード」性は、OPCが最終オリゴデンドロサイト分化を起こし難くし、代わりにそれらがその前駆体状態を持続しやすくする。この機構は再ミエリン化の抑制をもたらす。
【0010】
APC変異またはAPC欠損結腸癌において見られる新生物増殖と異なり、傷害後のOPCにおいて見られる持続的なWnt/βカテニンシグナル伝達活性化および減少したAPC発現は、細胞分裂または腫瘍形成の促進ではなく、OPCの成熟制止に関連し、これは調節異常化Wntシグナル伝達の細胞的結果に対する表現型および局所組織背景の影響を強く示している[Goldman, S. et al., Nat Neurosci. 2014 Apr; 17(4): 483-485]。
【0011】
本発明者らは、抗体染色技術を用いてミエリンダメージおよび除去の指標であるそれぞれミエリン塩基性タンパク質のダメージおよびいくつかのCD11b+ミクログリア(CNS実質のマクロファージ)の減少を示すことにより、フェンフルラミンがミエリンダメージを減少させることを実証した。フェンフルラミンはRNF43に結合し、OPCに対する高いWntシグナル伝達の効果、特にダメージを受けた/脱髄化した白質におけるそれらを下方調節するRNF43の能力を増強し得る。それらの研究は、ドラベ症候群のマウスモデルを提供するSCN1A遺伝子変異を有する処置されたおよび未処置のマウスにおいて行った。最新の神経画像化技術を用いて、様々なてんかんが白質異常を示し、これが反復的発作の発生におけるてんかん誘発性プロセスの一部であり得ることが示された[Hatton SN, Huynh KH, Bonilha L, et al. Brain. 2020;143(8):2454-2473]。実験動物へのフェンフルラミンの投与に加えて、本発明者らは、ドラベマウス集団の他のメンバーに、急性発作の減少に効果的であることが知られているベンゾジアゼピンであるジアゼパムを投与した。データは、ジアゼパムがミエリンデブリまたはCD11b+ミクログリアの減少に関して治療的に有用でないようであることを示している。特定の学説に束縛されるわけではないが、RNF-43に結合するフェンフルラミンは、脱髄および低ミエリン化に関連する疾患状態においてフェンフルラミンの特異的なミエリン修復活性を提供すると考えられる。
【0012】
脱髄、不十分なミエリン化、もしくは髄鞘の形成不全に関連する神経変性の疾患もしくは病状を有するまたはそれを発症する危険のある対象を処置する方法が本明細書に記載される。
【0013】
脱髄、不十分なミエリン化、もしくは髄鞘の形成不全に関連する神経変性の疾患もしくは病状の疾患進行を改変する方法も本明細書に記載される。
【0014】
これらの方法は、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与を含む。
【0015】
本発明の方法は、脱髄障害と診断された対象に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む処置を含む。
【0016】
本発明の方法は、脱髄障害が多発性硬化症(MS)である、処置を含む。
【0017】
本発明の別の方法は、脱髄障害がてんかん性脳症である、処置を含む。
【0018】
本発明の別の方法は、脱髄障害が、不十分なミエリン化である、処置を含む。
【0019】
本発明の別の方法は、脱髄障害が髄鞘の形成不全である、処置を含む。
【0020】
本発明の方法は、
脱髄に関連する病状を有すると患者を診断すること、
前記患者に治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与すること
を含む処置を含む。
【0021】
本発明の別の方法は、脱髄に関連する病状が、多発性硬化症、白質ジストロフィー、白質脳症、突発性炎症性脱髄性疾患、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、処置を含む。
【0022】
本発明の別の方法は、脱髄に関連する病状が、再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症、および進行再発型多発性硬化症からなる群より選択されるタイプの多発性硬化症である、処置を含む。
【0023】
本発明の別の方法は、脱髄に関連する病状が、橋中心髄鞘崩壊症、急性散在性脳脊髄炎、バロー同心円硬化症、マーブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症、びまん性脊髄破砕性硬化症(diffuse myelinoclastic sclerosis)、急性出血性白質脳症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、レーベル遺伝性視神経症、多巣性運動ニューロパチー、異常蛋白性脱髄性多発ニューロパチー(paraproteinemic demyelinating polyneuropathy)、熱帯性痙性対麻痺、ギラン・バレー症候群、乳児レフサム病、1型成人レフサム病、2型成人レフサム病、ツェルウェガー症候群、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、カナバン病、アレキサンダー病、ビンスワンガー病、腓骨筋委縮、脳腱黄色腫症、白質消失をともなう白質脳症、毒性白質脳症(toxic leukoencephalopathy)、ファンデルナップ病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、および横断性脊髄炎からなる群より選択される、処置を含む。
【0024】
本発明の方法は、
疾患の症状を有すると患者を診断すること、
前記患者に治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与すること
を含む処置を含み、
ここで、症状は、括約筋支配の欠如、勃起障害、対麻痺、失調症、副腎皮質不全、進行性ニューロパチー、感覚異常、ディサースリア、嚥下障害、クローヌス、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0025】
本発明の方法は、経口、非経口、および局所からなる群より選択される経路を通じて投与することを含む処置を含む。
【0026】
本発明の方法は、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、処置を含む。
【0027】
本発明の方法は、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.1 mg/kg/日~約2 mg/kg/日の用量で投与される、処置を含む。
【0028】
本発明の方法は、投与が、群から選択される間隔での投与である、方法を含む。
【0029】
「処置方法」は、本開示全体を通じて、意図された目的での組成物、化合物、もしくは製剤の任意の「使用」または意図された目的での任意の「使用のための製造」を表し、かつそれらを包含する。
【0030】
本明細書における「処置方法」または「インビボ診断」に対する任意の参照は、治療によるヒトもしくは動物の身体の処置方法において使用するためまたはインビボ診断のための本発明の化合物、薬学的組成物および医薬、ならびに/または治療によるヒトもしくは動物の身体の処置方法において使用するためのまたはインビボ診断のための本発明の化合物、薬学的組成物および医薬の製造に対する参照であると解釈されるべきである。
【0031】
本発明の上記の局面、態様、および利点は、添付図面を参照しつつ進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】4つの個別のパネル(1マイクロモル、5マイクロモル濃度でアプライされたフェンフルラミン、フェンフルラミンなしの対照、およびタンパク質の種別の凡例)からなり、フェンフルラミンとRNF43タンパク質の間の結合を示している。
【
図2】フェンフルラミンが、p=0.01の両側不等分散t検定有意性で、ビヒクル(生理食塩水プラセボ)処置と比較してP35~P37 SCN1a+/-マウス(ドラベ症候群のモデル)の海馬(hipp)および皮質(ctx)においてミエリンデブリ(D-MBP)スコアを有意に低下させたことを示す箱ひげ図である。D-MBP染色のレベルについて、ビヒクル処置されたP35~P37非変異(SCN1a+/+、野生型)マウスをフェンフルラミン処置、ビヒクル処置(プラセボ)、およびジアゼパム処置されたP35~P37 SCN1a+/-(ドラベ)マウスと比較した。フェンフルラミンは、同じSCN1a+/-ヘテロ接合型(ドラベ)マウスのジアゼパム処置集団と比較して、一貫してD-MBP染色スコアを低下させた。このグラフは、フェンフルラミンがダメージを受けたミエリンのレベルを低下させることを示している。n=数字によって示される各集団のP35~P37 SCN1A+/+(野生型)およびSCN1A+/-(ドラベ)マウスの皮質および海馬におけるD-MBP平均スコア。
** = フェンフルラミン対生理食塩水(p=0.01)。ジアゼパム対生理食塩水 p=有意でない。実施例2も参照のこと。
【
図3A】
図3は、3A、3B、および3Cからなり、3Aは、P37~P40非変異(SCN1a+/+、野生型)とP37~P40 SCN1a+/-ヘテロ接合型(ドラベ)マウスの間のD-MBP結合およびスコアの差を示す棒グラフである(実施例2も参照のこと)。ドラベマウスは、p=0.003の両側不等分散t検定有意性で、P37~P40において野生型マウスと比較して増加した分解ミエリンデブリを有する。各実験集団の動物数がn=数字により示されている。このグラフは、ドラベ変異(SCN1a+/-)を有するマウスが増加したレベルのダメージを受けたミエリンを有することを示している。P37~P40 SCN1A+/+(野生型)およびSCN1A+/-(ドラベ)マウスにおけるD-MBP平均スコア。皮質および海馬の個々のスコアの和を平均してD-MBP平均スコアを得ている。野生型とドラベグループの間のP値はp=0.003である。3Bは、P37~P40 SCN1a+/-(ドラベ)マウスの脳組織におけるミエリン染色の組織学画像であり、3Cは、野生型(WT)P37~P40マウスの脳組織におけるミエリン染色の組織学画像である。濃紺/黒色の領域は、分解ミエリン塩基性タンパク質の領域を示している。
【
図4】ビヒクル処置されたP35~P37非変異(SCN1a+/+、野生型)マウスと、フェンフルラミン処置、ビヒクル(生理食塩水プラセボ)処置、およびジアゼパム処置グループのP35~P37 SCN1a+/-(ドラベ)マウスの脳梁および海馬における活性化CD11b+ミクログリアの等級数の差を示す箱ひげ図である。このプロットは、脳梁の膝部および海馬の貫通線維(p.path)のスコアの和を示している。フェンフルラミンは、p=0.05の両側不等分散t検定有意性で、ビヒクル(生理食塩水)と比較してドラベマウスにおいて活性化ミクログリアを減少させた。CD11b+ミクログリアのレベルに対するジアゼパムの効果は、ビヒクル処置グループと比較して有意でなかった。このグラフは、ダメージを受けたミエリンの除去に関与する活性化ミクログリアのレベルをフェンフルラミンが低下させることを示しており、ダメージを受けたミエリンについてのD-MBPマーカーのレベルをフェンフルラミンが低下させたことを示すデータと符合し、ダメージを受けたミエリンについてのD-MBPマーカーのレベルをフェンフルラミンが低下させたことを示すデータと符合する。P35~P37 SCN1A+/+(野生型)およびSCN1A+/-(ドラベ)マウスの膝部および貫通線維におけるCD11b+活性化ミクログリア平均スコア。各集団のマウス数がn=数字により示されている。
** = フェンフルラミン対生理食塩水(p=0.05)。ジアゼパム対生理食塩水 p=有意でない。
【
図5】P37~P40野生型とP37~P40 SCN1a+/-(ドラベ)マウスの間の脳梁および海馬の領域におけるCD11b+活性化ミクログリアの差を示す箱ひげ図である。ドラベマウスは、p=0.002の両側不等分散t検定有意性で、P37~P40において野生型マウスと比較して増加したCD11b+活性化ミクログリアを有する。各実験集団の動物数がn=数字により示されている。このグラフは、ドラベ変異(SCN1a+/-)を有するマウスが増加したレベルのダメージを受けたミエリンを有するという観察を支持している。P37~P40 SCN1A+/+(野生型)およびSCN1A+/-(ドラベ)マウスにおけるCD11b平均スコア。膝部および貫通線維の個々のスコアの和を平均してCD11b平均スコアを得ている。野生型とドラベグループの間のP値はp=0.002である。
【
図6】フェンフルラミン(FFA)処置が、プラセボおよびジアゼパム処置の両方と比較して、SCN1a+/-(het)においてP1~P40の期間にわたって生存率を高めることを示すカプランマイヤー推定のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は記載されている具体的態様に限定されず、態様は様々であり得ることを理解されたい。本明細書で使用されている用語は具体的態様を説明するためのものにすぎず、限定を意図しておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0034】
ある範囲の値が提供される場合、文脈がそれ以外のことを明確に示していない限り、その範囲の上限値と下限値の間の、その下限値の単位の10分の1までの、中間の値の各々も具体的に開示されていると理解されたい。言及されている範囲内の任意の言及されている値または中間値とその言及されている範囲内の任意の他の言及されているまたは中間値の間のより小さな範囲の各々も、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立して、その範囲に含まれる場合も含まれない場合もあり、そのより小さな範囲にいずれかの限度値が含まれる、いずれの限度値も含まれない、または両方の限度値が含まれる各範囲もまた、言及されている範囲において任意の限度値が個別に除外されることを前提に、本発明に包含される。言及されている範囲がその限度値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に包含される。
【0035】
それ以外の定義がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載されているのと同様または同等の任意の方法および材料を使用することができるが、ここではいくつかの可能性のあるかつ例示的な方法および材料が記載され得る。本明細書で言及される任意かつすべての刊行物は、その刊行物が引用される理由となった方法および/または材料を開示および記載するよう、参照により本明細書に組み入れられる。相反する場合、組み入れられた刊行物のあらゆる開示よりも本開示が優先されることを理解されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合および添付の特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈がそれ以外のことを明確に示していない限り、複数の参照を包含することに留意されなければならない。したがって、例えば、「小滴(a droplet)」の参照は複数のそのような小滴を包含し、「別の物(a discrete entity)」の参照は1つまたは複数の別の物を包含する、等である。さらに、請求項は任意の要素、例えば任意のオプション要素を除外するよう記述され得ることに留意されたい。そのため、この宣言は、請求項要素の列挙に関連する「もっぱら」、「のみ」等の排他的用語の使用、または「負の」限定の使用に関する先行する根拠として扱われることが意図されている。
【0037】
本明細書で議論される刊行物は、もっぱら、本願出願日前のそれらの開示のために、提供される。さらに、提供される公開日は、実際の公開日と相違する場合があり、それらは個別に確認される必要があり得る。本明細書の任意の用語の定義または用法が、参照により本明細書に組み入れられる出願または参考文献における用語の定義または用法と相反する場合、本願が優先されるべきである。
【0038】
本願を読んだ当業者に明らかであろうが、本明細書に記載され例示される個々の態様は各々、本発明の範囲または精神から逸脱することなくそれらから容易に分離され得るまたは他の様々な態様のいずれかの特徴と組み合わされ得る個別の要素および特徴を有している。任意の言及されている方法は、言及されているイベントの順にまたは論理的に可能な任意の他の順に実施され得る。
【0039】
I. 略語
ADEM 急性散在性脳脊髄炎
AIDP 急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
CIDP 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
CNS 中枢神経系
DMBP(またはD-MBP)分解ミエリン塩基性タンパク質
FFA フェンフルラミン塩酸塩
IIDD 突発性炎症性脱髄性疾患
i.p. 腹腔内
MOG ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質
MS 多発性硬化症
NMO 視神経脊髄炎
OL オリゴデンドロサイト
OPC オリゴデンドロサイト前駆細胞
PML 進行性多巣性白質脳症
SCN1a+/- NaV1.1ナトリウムチャネルのナトリウムチャネル1アルファサブユニットに関して1つのヌル対立遺伝子および1つの機能性対立遺伝子を有する生物
T3 トリヨードチロニン
X-ALD X連鎖性副腎白質ジストロフィー
【0040】
II. 用語
それ以外のことが示されていない限り、技術用語は従来的な用法にしたがい使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Press発行, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (編), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.発行, 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.発行, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見出され得る。
【0041】
本開示の様々な態様のレビューを容易にするため、以下の特定の用語の説明を提供する。
【0042】
急性散在性脳脊髄炎(ADEM):中枢神経系の免疫媒介脱髄性疾患。ADEMは通常ウイルス感染後に起こるが、ワクチン接種後または細菌もしくは寄生虫感染後にも生じ得る。いくつかの例において、ADEMは自然発症する。この疾患は多発性硬化症に似た自己免疫性脱髄をともない、したがって多発性硬化症ボーダーライン疾患とみなされる。ADEMは、脳および脊髄において、特に白質において、複数の炎症性病変を発生させる。これらの病変は典型的に、両大脳半球、小脳、脳幹、および脊髄の皮質下および中心部の白質ならびに皮質灰白質接合部において見出されるが、皮質、視床、および大脳基底核の脳室周囲白質および灰白質も病変し得る。患者が2つ以上の脱髄性エピソードを患っている場合、その疾患は再発性散在性脳脊髄炎または多相性散在性脳脊髄炎と称される。
【0043】
急性出血性白質脳症(AHLまたはAHLE):ADEMの超急性かつしばしば致命的な形態。この疾患は、急性壊死性脳症(ANE)、急性出血性脳脊髄炎(AHEM)、急性壊死性出血性白質脳症(ANHLE)、ウェストン・ハースト症候群(Weston-Hurst syndrome)、またはハースト病としても公知である。
【0044】
投与:対象に作用物質、例えば治療用物質(例えば、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩)を任意の有効な経路により提供することまたは与えること。例示的な投与経路は本明細書の以下に記載される。
【0045】
成人レフサム病:細胞および組織におけるフィタン酸の過剰蓄積に関連する常染色体劣性の神経学的疾患。成人レフサム病は、1型成人レフサム病および2型成人レフサム病の亜型に分類される。レフサム病を有する個体は、神経学的ダメージ、小脳変性、および末梢性ニューロパチーを示す。発症は最も一般的には児童/青年期であり、停滞および寛解期間があるものの進行的経過をたどる。症状には、失調症、うろこ状の皮膚(魚鱗癬)、難聴、ならびに白内障および夜盲症を含む眼の問題も含まれる。
【0046】
アレキサンダー病:非常に稀な、先天性の脱髄性疾患。この疾患は主として乳児および児童に影響し、発育遅延および身体的特徴の変化を引き起こす。アレキサンダー病は白質ジストロフィーの一種である。
【0047】
アルツハイマー病:最も一般的な形態の認知症。アルツハイマー病の症状には、記憶消失、錯乱、易怒性、攻撃性、気分変動、および言語障害が含まれる。この疾患は、大脳皮質および特定の皮質下領域におけるニューロンおよびシナプスの消失により特徴づけられる。この消失は、側頭葉、ならびに前頭葉および帯状回の一部における変性を含む、影響を受けた領域の全体的委縮を引き起こす。この疾患に罹患した者の脳では顕微鏡により老人斑および神経原線維変化が確認できる。アルツハイマー病の原因は未知であるが、この疾患が脳における加齢関連ミエリン分解により引き起こされるというものを含む、様々な仮説が存在する[Bartzokis, G. Neurobiology of Aging Volume 25, Issue 1, January 2004, Pages 5-18]。
【0048】
バロー同心円硬化症:標準的な多発性硬化症と似ているが、脱髄組織が同心円の層を形成する特徴を有する脱髄性疾患。この疾患を有する患者は、生存することができるおよび/または自然寛解し得る。典型的に、臨床経過は主として進行性であるが、再発寛解性の経過も報告されている。
【0049】
カナバン病:脳において進行性の神経細胞ダメージを引き起こす常染色体劣性変性障害。カナバン病は白質ジストロフィーであり、乳児の最も一般的な変性脳疾患の1つである。この疾患は、カナバン・ヴァン・ボガート・ベルトラン病、アスパラトアシラーゼ欠損症、およびアミノアシラーゼ2欠損症とも呼ばれる。
【0050】
橋中心髄鞘崩壊症(CPM):脳幹、より正確には橋(pon)と呼ばれる領域の神経細胞の髄鞘の重度のダメージにより引き起こされる神経学的疾患。最も一般的な原因は、低い血中ナトリウムレベル(低ナトリウム血症)の急速な補正である。この障害においてしばしば観察される症状は、突発的な対麻痺または四肢不全麻痺、嚥下障害、ディサースリア、複視、および意識消失である。患者は、認知機能は元のままであるものの、瞬きを除いてすべての筋肉が麻痺する閉じ込め症状を経験し得る。
【0051】
脳性麻痺:身体障害を引き起こす恒久的、非進行性の運動障害のグループに使用される用語。脳性麻痺は、発達中の脳の運動制御中枢のダメージにより引き起こされ、妊娠中、分娩中、または生後最大約3歳までに起こり得る。脳性麻痺患者は髄鞘のダメージを示す。
【0052】
脳腱黄色腫症:脳および他の組織におけるコレステロールの一形態(コレスタノール)の蓄積および正常な総コレステロールレベルであるが上昇した血漿中コレステロールレベルに関連する遺伝障害。それは、思春期以降に始まる進行性小脳性失調症により、ならびに若年性白内障、若年性または乳児発症性慢性下痢、児童期の神経学的欠損、および健または結節性黄色腫により特徴づけられる。この障害は、常染色体劣性形態の黄色腫症である。それは白質ジストロフィーと呼ばれる遺伝障害のグループに含まれる。
【0053】
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP):末梢神経系の獲得免疫媒介炎症障害。この障害はときどき慢性再発性多発ニューロパチー(CRP)または慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(神経根に関連するため)と呼ばれる。CIDPはギラン・バレー症候群と関係が近く、その急性疾患の慢性版とみなされている。その症状は進行性炎症性ニューロパチーにも類似する。CIDPの非対称性亜種はルイス・サムナー症候群として公知である。この疾患の病理学的特徴は髄鞘の消失である。
【0054】
脱髄性疾患:ミエリンがダメージを受けるもしくは消失する、または髄鞘の成長もしくは発生が損なわれる神経系の任意の疾患が含まれる。脱髄は、影響を受けた神経におけるシグナルの伝導を妨げ、感覚、運動、認識、または神経が関与する他の機能を損なわせる。脱髄性疾患は、多くの異なる原因を有し、遺伝性または獲得性であり得る。いくつかの例において、脱髄性疾患は感染因子、自己免疫反応、毒性因子、または外傷により引き起こされる。他の例において、脱髄性疾患の原因は未知である(「突発性」)または複数要因の組み合わせから生じる。
【0055】
デビック症候群:人の免疫系が視神経および脊髄を攻撃し、視神経(視神経炎)および脊髄(脊髄炎)の炎症を引き起こす自己免疫性の炎症性障害。脊髄の病変は、足もしくは腕の様々な程度の衰弱もしくは麻痺、感覚消失、ならびに/または膀胱および腸の機能障害を引き起こす。炎症は脳にも影響し得るが、その病変はMSにおいて観察されるものと相違する。デビック病は、身体の免疫系が神経細胞周囲のミエリンを攻撃する点でMSに類似する。標準的なMSと異なり、この攻撃は免疫系のT細胞によって媒介されるのではなく、NMO-IgGと呼ばれる抗体によって媒介されると考えられている。これらの抗体は、細胞膜を通じた水の輸送のためのチャネルとして作用するアストロサイトの細胞膜のアクアポリン4と呼ばれるタンパク質を標的とする。デビック症候群は、デビック病または視神経脊髄炎(NMO)としても公知である。
【0056】
びまん性脊髄破砕性硬化症:臨床的には偽腫瘍性の脱髄性病変として表れる一般的でない神経変性疾患。それは通常児童期に始まり、5~14歳の児童に影響するが、成人期でも起こり得る。この疾患は、MSのボーダーライン形態の1つとみなされ、ときどきシルダー病と称される。
【0057】
てんかん性脳症:この障害グループには、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、ウェスト症候群、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波(CSWS)を示すてんかん性脳症、ランドウ・クレフナー症候群(LKS)、ならびにCDKL5欠損障害、レット症候群、およびドーゼ症候群を含む、このグループに含めるかどうかについて評価がなされている他の障害が含まれる。「てんかん性脳症」という用語は、絶え間ないまたは難治性のてんかん活動が、その根底にある病態単独から予想され得るものを超える重度の認知および行動障害を引き起こす障害のグループを表し、脳症は時間と共に悪化し進行性の脳機能障害をもたらし得る[Jain, Puneet et al. Epilepsy research and treatment vol. 2013 (2013): 501981. doi:10.1155/2013/501981]。これらの障害のいくつかは起源が単一遺伝子性である。例えば、ドラベ症候群は80%超の症例でSCN1A遺伝子の変異に関連し、レット症候群はMECP2における変異に関連し、以前はレットの亜種と考えられていたCDKL5欠損障害はCDKL5における変異に関連する。これらの障害のその他、例えばレノックス・ガストー症候群およびウェスト症候群において、病因は十分に理解されていない。ドラベ患者は、画像化により[Perez, A., et al. Epilepsy Res. 2014 Oct;108(8):1326-34] および死亡患者由来の脳組織の組織病理学により [Catarino, C., et al. Brain 2011. 134 2982-3010]認められる白質の消失を示す。ヒトFCD、非遺伝子性てんかん、OGD、およびTSC患者由来のミエリンに関して本発明者らが試験したすべての摘出されたてんかん原性病変において、低ミエリン化および脱髄を含むミエリン病態が見られた。脱髄はてんかん障害の結果および原因の両方である。
【0058】
結節性硬化症(TSC)は、ハマルチンおよびチュベリンというタンパク質をコードするそれぞれTSC1またはTSC2遺伝子における変異により引き起こされる。これらの変異は多くの組織に影響し、患者は心臓、腎臓、および皮膚の病変ならびに、これが最も問題となるのであるが、神経学的問題を示す。TSCの診断的特徴の1つは、発育遅延および知的障害を引き起こす神経発生障害であるTSCから生じる皮質腫瘍と呼ばれる奇形物である。患者の90%は1つまたは複数のTSC関連精神神経障害(TAND)を有し、これらには行動的、精神的、神経心理学的、および社会的/感情処理的問題が含まれる。TSC患者の相当比率(約50%)が自閉症スペクトラム障害と診断される。患者の推定80%が、発作および脳波(EEG)により測定される神経過興奮、ならびにヘッドボビング(head-bobbing)動作を引き起こす同時に起こる躯幹の緊張の消失および突然の緊張の増加により特徴づけられる小さな攣縮として現れる、乳児において頻繁にみられる攣縮を有する。過興奮はまた、TSC患者における限局性発作として現れる。実験的に、放射状グリアにおけるTSC1遺伝子欠失およびマウスの放射状グリア欠失子孫は、発作と共に層形成異常(mis-lamination)、巨頭症、巨細胞腫、低ミエリン化、および反応性神経膠症を引き起こし、マウスにおけるhGFAP-CREによるTSC2欠失もまた、巨細胞腫、低ミエリン化、反応性神経膠症および発作を示す巨頭症マウスを生じる。
【0059】
脳脊髄炎:脳および脊髄の炎症。
【0060】
ギラン・バレー症候群:末梢神経系に影響する障害である、急性多発ニューロパチー。足および手で始まり胴に向かって移行する衰弱である上行性麻痺が最も典型的な症状であり、いくつかの亜型は知覚または痛みの変化および自律神経系の機能障害を引き起こす。それは、特に呼吸筋が影響を受ける場合または自律神経系が冒される場合に、生命を脅かす合併症を引き起こし得る。この疾患は通常、感染により誘発される。急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)がこの疾患のもっとも一般的な亜型である。ギラン・バレー症候群の他の亜型には、ミラー・フィッシャー症候群、急性運動軸索ニューロパチー(中国麻痺性症候群)、急性運動感覚軸索ニューロパチー、急性汎自律神経ニューロパチー、およびビッカースタッフ脳幹脳炎が含まれる。
【0061】
出血:出血性脳卒中または動脈瘤破裂を含む、血管からの血液の放出または漏出。
【0062】
低酸素症:正常レベルを下回る身体の組織への酸素供給の欠乏。低酸素症は、溺水、煙吸入、絞首、出血、または虚血性脳卒中、喘息、長期間の発作、てんかん性発作を含む多くの異なる要因により引き起こされ得る。低酸素脳症は、十分な酸素を受け取っていないまたは処理することができない脳を表す。早産児はしばしば、出生後数日または数週の間、低酸素脳症に苦しみ、しばしば持続的な運動(脳性麻痺を含む)、感覚、および認識の障害をともなう。突発性炎症性脱髄性疾患(IIDD):通常臨床的、画像的、実験的、および病理学的知見に基づき区別され得る広範囲の中枢神経系障害。突発性炎症性脱髄性疾患はときどき多発性硬化症のボーダーライン形態として知られる。IIDDは一般に、視神経脊髄MS、デビック病、ADEM、急性出血性白質脳症、バロー同心円硬化症、シルダー病、マーブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症、および孤発性硬化症(solitary sclerosis)を含むがこれらに限定されない多発性硬化症の亜種疾患の集合を表す。
【0063】
乳児レフサム病:超長鎖脂肪酸および分枝鎖脂肪酸(例えば、フィタン酸)の異化ならびにプラズマローゲン生物合成の欠陥に関連するペルオキシソーム生合成障害。乳児レフサム病は稀な常染色体劣性先天性障害であり、ペルオキシソーム生合成障害のツェルウェガースペクトラムに属する3つのペルオキシソーム生合成障害の1つである。
【0064】
傷害:細胞、組織、または身体の任意のタイプの物理的ダメージを表す。いくつかの例において、神経系(例えば、CNSまたはPNS)の傷害は、脱髄および/または脱髄性疾患を引き起こす。
【0065】
虚血:身体の器官、組織、または部分への血液供給の減少が、例えば1つまたは複数の血管の収縮または閉塞によって引き起こされる血管現象。虚血は、ときどき血管収縮、血栓症、または塞栓症から引き起こされる。虚血は、直接的な虚血傷害、減少した酸素供給により引き起こされる細胞死に起因する組織ダメージをもたらし得る。いくつかの例において、虚血は脱髄を引き起こし得る。
【0066】
クラッベ病:神経系の髄鞘に影響する稀で、しばしば致命的な変性障害。それは、スフィンゴ脂質の代謝機能障害に関連するため、スフィンゴリピドーシスの一形態である。この病状は、常染色体劣性パターンで遺伝する。クラッベ病は、グロボイド細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシスとしても公知である。
【0067】
レーベル遺伝性視神経症:中心視力の急性的または亜急性的消失を引き起こす網膜神経節細胞(RGC)およびそれらの軸索のミトコンドリア遺伝性(母から子へと伝達される)の変性;これは主に若い成人男性に影響する。
【0068】
白質ジストロフィー:髄鞘の成長または発生に影響する疾患グループを表す。
【0069】
白質脳症:脳の白質に影響する疾患グループのいずれか;詳細に、例えば「白質消失をともなう白質脳症」、「毒性白質脳症」を含む様々な疾患を表し得る。白質脳症は、白質ジストロフィー様疾患である。
【0070】
マーブルグ多発性硬化症:中枢神経系が、標準的な多発性硬化症のそれらからみて非典型的な特徴を有する多発性の脱髄性病変を有する病状。この疾患は、多発性硬化症のボーダーライン形態であり、腫瘤様多発性硬化症または劇症型多発性硬化症としても公知である。それは、その病変が「腫瘍様」であり、それらが臨床的、放射線学的、およびときどき病理学的に腫瘍を模倣することから、腫瘤様と呼ばれる。
【0071】
マルキアファーヴァ・ビニャミ病:脳梁の脱髄および壊死ならびにその後の萎縮により特徴づけられる進行性の神経学的疾患。それは古典的には慢性アルコール中毒に関連する。
【0072】
異染性白質ジストロフィー(MLD):一般的に白質ジストロフィーのファミリーにおよびそれがスフィンゴ脂質の代謝に影響することからスフィンゴリピドーシスに分類されるリソソーム蓄積病。MLDは直接的には酵素アリールスルファターゼAの欠損により引き起こされる。
【0073】
多巣性運動ニューロパチー(MMN):四肢の筋肉が徐々に衰弱する進行的に悪化する病状。この障害、運動ニューロパチー症候群は、特に筋肉の筋線維束性攣縮が存在するかどうかについての臨床像の類似性のために、ときどき筋萎縮性側索硬化症(ALS)と間違われる。MMNは通常非対称性であり、自己免疫性であると考えられている。
【0074】
多発性硬化症(MS):多種多様な神経学的症状および兆候を示す、脳および脊髄における散在性の脱髄斑により特徴づけられる、ゆっくりと進行する、通常は寛解と増悪がある、CNS疾患である。MSの原因は未知であるが、免疫学的異常が疑われている。高い家族罹患率は易遺伝性を示唆し、女性は男性よりも影響を受けることがやや多い。MSの症状には、衰弱、協調性の欠如、錯感覚、言語障害、および視力障害、最も一般的には複視が含まれる。より具体的な兆候および症状は、病変の部位ならびに炎症および硬化プロセスの重篤度および破壊度に依存する。再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は、明確に定義される急性的攻撃と完全または部分的な回復、および攻撃間の疾患非進行により特徴づけられる臨床経過のMSである。二次性進行型多発性硬化症(SPMS)は、当初は再発寛解型であり、その後に、ときおり再発と小さな寛解がみられることもあるが、様々な速度で進行性となる臨床経過のMSである。一次性進行型多発性硬化症(PPMS)は、当初は進行性の形態で現れる。臨床的に孤立した症候群は、CNSの1つまたは複数の部位における炎症/脱髄により引き起こされる最初の神経学的エピソードである。進行再発型多発性硬化症(PRMS)は、発症から着実に悪化する疾患状態と、急激な再発があるが寛解はないことにより特徴づけられるMSの稀な形態(約5%)である。
【0075】
ミエリン:特定の神経線維の軸索の周囲に鞘(髄鞘として公知である)を形成する脂質物質。ミエリンは、神経線維における神経インパルスの伝導を速める役割を果たす電気的絶縁体である。「ミエリン化(myelination)」(またはミエリン化(myelinization))は、神経線維(軸索)周囲での髄鞘の発生または形成を表す。同様に、「再ミエリン化(remyelination)(または再ミエリン化(remyelinization))は、例えば傷害、毒性因子への曝露、もしくは炎症反応後、または脱髄性疾患の過程での、髄鞘の修復または再形成を表す。
【0076】
神経変性疾患:神経系の進行性の悪化により特徴づけられる任意のタイプの疾患を表す。
【0077】
ニューロパチー:末梢神経系における機能的障害または病理学的変化。軸索ニューロパチーは、軸索の正常な機能を妨げる障害を表す。
【0078】
異常蛋白性脱髄性多発ニューロパチー:ミエリン関連糖タンパク質(MAG)に対する自己抗体により特徴づけられる末梢性ニューロパチーの一タイプ。抗MAG抗体はミエリンの産生を阻害し、それによってニューロパチーを引き起こす。
【0079】
ペリツェウス・メルツバッハー病(PMD):協調性、運動能力、および知的機能が様々な程度に遅延する稀な中枢神経系障害。この疾患は、集合的に白質ジストロフィーとして公知の遺伝障害のグループの一つである。
【0080】
腓骨筋委縮症(PMA):身体の様々な部分にわたる筋組織および感触の進行性の消失により特徴づけられる、遺伝子的および臨床的に多様な末梢神経系の遺伝障害のグループ。この疾患は、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、シャルコー・マリー・トゥースニューロパチー、および遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)としても公知である。
【0081】
薬学的組成物:薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化され、哺乳動物における疾患の処置のための治療レジメンの一部として政府の規制当局に承認されて製造または販売される、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む、組成物。薬学的組成物は、例えば、経口投与用に単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、もしくはシロップ)またはフレキシブル投与の経口溶液に;局所投与用に(例えば、クリーム、ジェル、ローション、もしくは軟膏として);静脈内投与用に(例えば、粒状の塞栓物を含まない滅菌溶液としてまたは静脈内使用に適した溶媒系に);または本明細書に記載される任意の他の製剤に製剤化され得る。
【0082】
薬学的に許容される塩:妥当な医学的判断の範囲で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を生じることなくヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、かつかつ合理的な利益/危険比に見合う、フェンフルラミンの塩。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al., J. Pharmaceutical Sciences 66:1-19, 1977およびPharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, (Eds. P. H. Stahl and C. G. Wermuth), Wiley-VCH, 2008に記載されている。塩は、フェンフルラミンの最終単離精製中にインサイチューでまたは別途そのアミン基を適切な酸と反応させる等により調製され得る。例えば、米国特許第10351509号は、フェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩の合成を記載している。
【0083】
薬学的に許容される賦形剤(薬学的に許容される担体):患者において非毒性かつ非炎症性であるという特性を有する、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することができるビヒクル)。賦形剤には、例えば、粘着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、染料剤(色)、保湿剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、フレーバー剤、芳香剤、流動促進剤(流動性増強剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、溶媒、懸濁もしくは分散剤、甘味物質、または水和用の水が含まれ得る。例示的な賦形剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラク、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
疾患の予防、処置、または改善:「予防」は、予防的処置または本明細書に記載される疾患、障害、もしくは病状の1つもしくは複数の症状もしくは病状を予防する処置を表す。フェンフルラミン、もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの薬学的組成物の投与を含む予防処置は、急性的、短期的、または慢性的なものであり得る。投与される用量は、予防処置の過程で変更され得る。「処置」は、有益または所望の結果、例えば臨床的結果を得るためのアプローチを表す。有益または所望の結果には、検出可能か検出不可能かによらず、1つまたは複数の症状の軽減または改善;疾患または病状の程度の減少;疾患、障害、または病状の安定化された(すなわち、悪化しない)状態;疾患または病状の拡散の予防;疾患または病状の進行の遅延または鈍化;疾患または病状の改善または緩和;および寛解(部分的か完全かによらず)が含まれ得る。疾患または病状の「軽減(緩和)」は、処置の非存在下での程度またはタイムコースと比較して、疾患、障害、または病状の程度および/または望ましくない臨床的発現が減ることおよび/またはその進行のタイムコースが鈍化または長期化することを意味する。
【0085】
進行性多巣性白質脳症(PML):脳の複数の部位における白質の進行性のダメージまたは炎症により特徴づけられる稀であり通常致命的であるウイルス疾患。PMLはほぼ排他的に、重度の免疫不全を有する人々において起こる。PMLの原因はJCウイルスと呼ばれるポリオーマウイルスの一タイプである。このウイルスは広く生きわたっており、一般集団の86%が抗体を示すが、それは通常潜伏性を維持し、免疫系が重度に弱体化したときにのみ疾患を引き起こす。PMLは、神経細胞の軸索を覆う髄鞘を徐々に破壊し、神経インパルスの伝導を損なわせる脱髄性疾患である。この疾患は、重度の免疫不全を有する対象(例えば、ヒト)、例えば、免疫抑制療法下にある移植患者または特定種の薬物を投与されている者において発症し得る。例えば、PMLはリツキシマブの投与(多発性硬化症の処置における適応外使用)に関連する。それは、大部分が脳の最外部(皮質)からの軸索で構成される白質に影響する。症状には、衰弱または麻痺、視力低下、発話障害、および認知障害が含まれる。
【0086】
対象:動物(例えば、哺乳動物、例えばヒト)。本明細書に記載される方法にしたがい処置される対象は、脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する神経変性疾患を有すると診断された者、例えば、多発性硬化症もしくは脳性麻痺と診断された対象、またはその病状を発症する危険がある者、であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法または技術により行われ得る。当業者は、本開示にしたがい処置される対象が、標準的な検査に供された者であり得ること、または試験なしに、この疾患もしくは病状に関連する1つもしくは複数の危険因子の存在が原因で危険があると判断された者であることを理解するであろう。
【0087】
治療有効量:フェンフルラミンで処置される対象においてまたは細胞において所望の効果を達成するのに十分なフェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩の量。フェンフルラミンの有効量は、処置される対象または細胞および治療組成物の投与様式を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。いくつかの態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩の「治療有効量」は、対象においてミエリン化を促進するのに十分な量である。他の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩の「治療有効量」は、対象において脱髄を阻害するのに十分な量である。
【0088】
横断性脊髄炎:脊髄の灰白質および白質の炎症プロセスにより引き起こされ、軸索の脱髄にいたる神経学的障害。脱髄は、感染もしくはワクチン接種後に突発的に、または多発性硬化症に起因して起こる。症状には、四肢の衰弱および無感覚、ならびに運動、感覚、および括約筋の欠陥が含まれる。一部の患者では、この疾患の発症時に重度の腰痛が起こり得る。
【0089】
熱帯性痙性対麻痺(TSP):対麻痺、足の衰弱を引き起こす、ヒトTリンパ好性ウイルスによる脊髄の感染。TSPはHTLV関連ミエロパチーまたは慢性進行性ミエロパチーとしても公知である。その名が示唆する通り、この疾患は、カリブおよびアフリカを含む熱帯地域で最も一般的である。
【0090】
ファンデルナップ病:遺伝性CNS脱髄性疾患の一形態。この疾患は、白質ジストロフィーの一タイプであり、皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症(MLC)としても公知である。
【0091】
X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD、ALD、またはX連鎖ALD):進行性の脳のダメージ、精神耗弱、副腎不全、筋攣縮、失明、および最終的には死にいたる稀な遺伝性代謝障害。ALDは、白質ジストロフィーと呼ばれる遺伝障害のグループの1つの疾患である。副腎白質ジストロフィーは、進行的にミエリンにダメージを与える。X連鎖ALD男性患者は、7つの表現型に分類され得る:小児大脳型(植物状態にいたる進行性神経変性性の衰退)、思春期型(小児大脳型と似ているが進行がより遅い)、副腎脊髄ニューロパチー型(進行性ニューロパチー、対麻痺、脳病変に進行し得る)、成人大脳型(認知症、小児大脳型と似た進行)、オリーブ橋小脳型(大脳および脳幹の病変)、アジソン病型(副腎不全)、無症候型(臨床的発露なし、準臨床的副腎不全、またはAMN表現型)。X連鎖ALD女性患者は、5つの表現型に分類され得る:無症候型(神経学的または副腎病変なし)、軽度ミエロパチー型、中等度~重度ミエロパチー型(男性AMN表現型と似ている)、大脳型(進行性の認知症および衰退)、ならびに副腎型(原発性副腎不全)。X連鎖ALD患者は、彼らの生涯の中で1つの表現型から別の表現型に進行し得る。ALDは、アジソン・シルダー病またはジーマーリング・クロイツフェルト病(Siemerling-Creutzfeldt disease)としても公知である。
【0092】
ツェルヴェガー症候群:個体の細胞における機能性ペルオキシソームの減少または非存在により特徴づけられる稀な先天性障害。この疾患は白質ジストロフィーに分類され、ペルオキシソーム生合成障害のツェルヴェガースペクトラムに属する3つのペルオキシソーム生合成障害の1つである。
【0093】
それ以外の説明がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈がそれ以外のことを明確に示していない限り、複数の参照を包含する。「AまたはBを含む」は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。さらに、核酸またはポリペプチドに関して使用されるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は近似値であり、説明のために提供されるものであることを理解されたい。本開示の実施または試験においては、本明細書に記載されているのと同様または同等の任意の方法および材料を使用することができるが、以下では適切な方法および材料について記載されている場合がある。相反する場合、用語の説明を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図していない。
【0094】
III. 様々な態様の概要
フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する疾患または病状において脱髄を鈍化させるまたは停止させるためおよびミエリン化を促進するための処置を提供する。
【0095】
本開示は、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することにより、X連鎖副腎白質ジストロフィーを有するまたはその発症の危険がある対象を処置する方法を特徴とする。本開示はまた、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩をニューロンと接触させることにより、X連鎖副腎白質ジストロフィーを有するまたはその発症の危険がある患者の細胞において超長鎖脂肪酸の蓄積を阻害する方法を特徴とする。
【0096】
いくつかの態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、小児大脳型、思春期型、副腎脊髄ニューロパチー、成人大脳型、オリーブ橋小脳型、アジソン病型、または無症候型である。他の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、無症候型、軽度ミエロパチー型、中等度~重度ミエロパチー型(例えば、副腎脊髄ニューロパチー)、大脳型、および副腎型である。特定の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、大脳型である。他の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、ミエロパチー型(例えば、中等度~重度ミエロパチー型)である。特定の他の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、無症候型である。さらに他の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、アジソン病型である。特定の態様において、X連鎖副腎白質ジストロフィーの表現型は、オリーブ橋小脳型である。
【0097】
本開示は、脱髄、不十分なミエリン化、もしくは髄鞘の形成不全に関連する疾患もしくは病状を有するまたはそれらを発症する危険がある対象を処置する方法を特徴とする。この方法は、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与を含む。
【0098】
本開示は、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩をニューロンと接触させることにより、脱髄、不十分なミエリン化、もしくは髄鞘の形成不全に関連する疾患もしくは病状を有するまたはそれらを発症する危険がある患者においてニューロンの脱髄を阻害する方法を特徴とする。
【0099】
本開示はまた、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩をニューロンと接触させることにより、脱髄、不十分なミエリン化、もしくは髄鞘の形成不全に関連する疾患もしくは病状を有するまたはそれらを発症する危険がある患者においてニューロンのミエリン化を促進する方法を特徴とする。
【0100】
処置される疾患または病状は、脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する任意の疾患または病状であり得る。いくつかの態様において、疾患または病状は、多発性硬化症、白質ジストロフィー、白質脳症、突発性炎症性脱髄性疾患、またはアルツハイマー病である。疾患または病状が多発性硬化症であるいくつかの例において、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症、または進行再発型多発性硬化症である。
【0101】
いくつかの態様において、疾患または病状は、橋中心髄鞘崩壊症、急性散在性脳脊髄炎、バロー同心円硬化症、マーブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症、びまん性脊髄破砕性硬化症、急性出血性白質脳症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、レーベル遺伝性視神経症、多巣性運動ニューロパチー、異常蛋白性脱髄性多発ニューロパチー、熱帯性痙性対麻痺、ギラン・バレー症候群、乳児レフサム病、1型成人レフサム病、2型成人レフサム病、ツェルウェガー症候群、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、カナバン病、アレキサンダー病、ビンスワンガー病、腓骨筋委縮、脳腱黄色腫症、白質消失をともなう白質脳症、毒性白質脳症、ファンデルナップ病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、または横断性脊髄炎である。
【0102】
いくつかの例において、ギラン・バレー症候群は、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチーである。
【0103】
いくつかの例において、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーは、多巣性獲得性脱髄性感覚運動ニューロパチーである。いくつかの例において、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーは、HIV感染により誘導される。
【0104】
いくつかの態様において、疾患または病状は、慢性軸索ニューロパチーである。
【0105】
いくつかの態様において、疾患または病状は、脳室内出血、新生児低酸素症、または急性低酸素血症性呼吸不全に起因する。
【0106】
いくつかの態様において、疾患または病状は脳性麻痺である。
【0107】
本開示の方法のいくつかの態様において、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、疾患または病状の少なくとも1つの症状を予防または軽減する。いくつかの例において、症状は、括約筋支配の欠如、勃起障害、対麻痺、運動失調、副腎皮質不全、進行性ニューロパチー、感覚異常、ディサースリア、嚥下障害、クローヌス、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0108】
いくつかの態様において、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、中枢神経系ミエリン、末梢神経系ミエリン、副腎皮質、精巣ライディッヒ細胞、またはそれらの任意の組み合わせのダメージを予防または軽減する。
【0109】
特定の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、経口、非経口、または局所的に投与される。特定の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、経口的に投与される。特定の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、経腸的に投与される。いくつかの態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、頬側、舌下、唇下的に、または吸入により投与される。他の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、舌下的に投与される。さらに他の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、非経口的に投与される。特定の態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、動脈内、静脈内、脳室内、筋内、皮下、脊髄内、眼窩内、頭蓋内、または髄腔内的に投与される。
【0110】
いくつかの態様において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される。いくつかの例において、フェンフルラミン、またはその薬学的に許容される塩は、最大30 mg/日、0.2 mg/kg/日~0.8 mg/kg/日の範囲の量の、患者へのフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の経口用量で投与される。いくつかの態様において、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩は毎日投与される。
【0111】
特定の態様において、化合物は、1日1回、1日2回、1日3回、2日に1回、週1回、週2回、週3回、2週に1回、月1回、または2月に1回対象に投与される。特定の態様において、化合物は、1日1回対象に投与される。他の態様において、患者へのフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の経口投与の有効量は、最大30 mg/日、0.2 mg/kg/日~0.8 mg/kg/日の範囲の量である。
【0112】
いくつかの態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、最大30 mg/日、0.2 mg/kg/日~0.8 mg/kg/日の範囲の量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。いくつかの態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。他の態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。特定の態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。さらに他の態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。なおさらに他の態様において、本開示の方法は、1日1回、2回、または3回の、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含む単位剤形の投与を含む。
【0113】
本開示はまた、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することにより、多発性硬化症を有するまたはその発症の危険がある患者を処置する方法を特徴とする。1つの例において、1 mg/kg患者体重/日のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、患者に投与する工程を含む、多発性硬化症を有するまたはその発症の危険がある患者を処置する方法が提供される。
【0114】
フェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩の投与は、以下の節でさらに議論される。
【0115】
IV. フェンフルラミンまたはその薬学的組成物の投与
フェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、脱髄、不十分なミエリン化、または髄鞘の形成不全に関連する疾患または病状の処置のために、任意の適切な投与経路により投与され得る。例えば、標準的な投与経路には、経口、非経口、または局所的な投与経路が含まれる。特に、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の投与経路は、経口的(例えば、経腸、頬側、舌下、唇下的、または吸入による)であり得る。フェンフルラミン、またはその薬学的組成物の非経口的な投与経路は、例えば、動脈内、静脈内、脳室内、筋内、皮下、脊髄内、眼窩内、または頭蓋内的であり得る。局所的な投与経路は、例えば、皮膚、鼻内、または眼的であり得る。
【0116】
フェンフルラミンを含む薬学的組成物は、当技術分野で報告されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,883,294号を参照のこと)。
【0117】
経口的に投与されるフェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、液体、例えばシロップ、懸濁物もしくは乳化物として、または錠剤、カプセルもしくはロゼンジとして製剤化され得る。
【0118】
液体組成物には一般に、懸濁剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、フレーバー剤または着色剤を含む適切な液体担体、例えばエタノール、グリセリン、ソルビトール、非水性溶媒、例えばポリエチレングリコール、油または水中のフェンフルラミンまたは薬学的に許容される塩の懸濁物または溶液が含まれると考えられる。あるいは、液体製剤は、再構成可能な粉末から調製され得る、すなわち、粉末に水を添加することによって再構成された液体である。
【0119】
いくつかの例において、活性化合物、懸濁剤、スクロースおよび甘味物質を含む粉末は、懸濁物を形成するよう水で再構成され得、シロップは、活性成分、スクロース、および甘味物質を含む粉末から調製され得る。
【0120】
錠剤の形態の組成物は、固形組成物を調製するために従来的に使用されている任意の適切な薬学的担体を用いて調製され得る。そのような担体の例には、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロース、および結合剤、例えばポリビニルピロリドンが含まれる。錠剤はまた、有色のフィルムコーティング、または担体の一部として含まれる色とともに提供され得る。加えて、活性化合物は、親水性または疎水性マトリクスを含む錠剤として制御放出剤形で製剤化され得る。
【0121】
カプセルの形態の組成物は、従来的なカプセル化手順を用いて、例えば硬質ゼラチンカプセルへの活性化合物および賦形剤の封入により調製され得る。あるいは、活性化合物および高分子量ポリエチレングリコールの半固体マトリクスが調製され、硬質ゼラチンカプセル内に充填され得る、またはポリエチレングリコール中の活性化合物の溶液もしくは食用油、例えば液体パラフィンもしくは分留ココナツ油中の懸濁物が調製され、軟質ゼラチンカプセル内に充填され得る。非経口的に投与されるフェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、例えば、筋内または静脈内投与のために製剤化され得る。
【0122】
いくつかの例において、筋内投与用の組成物は、油、例えば落花生油またはゴマ油中の活性成分の懸濁物または溶液を含む。静脈内投与用の組成物は、例えば、活性成分、デキストロース、塩化ナトリウム、共溶媒、例えば、ポリエチレングリコールならびに、任意で、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸および抗酸化剤、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウムを含む滅菌性等張性水性溶液を含み得る。あるいは、溶液は、凍結乾燥され、投与直前に適切な溶媒を用いて再構成され得る。
【0123】
直腸投与用のフェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、坐剤として製剤化され得る。典型的な坐剤製剤は一般に、結合および/または滑沢剤、例えば、ゼラチンもしくはココアバターまたは他の低融点の植物性もしくは合成性ワックスもしくは油脂と共に活性成分を含むと考えられる。
【0124】
局所的に投与されるフェンフルラミンおよびその薬学的に許容される塩は、経皮組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、例えば、裏張り、活性化合物貯蔵部、制御膜、ライナーおよびコンタクト接着部を含む。
【0125】
頬側、舌下、および/または唇下投与用の製剤の非限定的な例は、米国特許付与前公報番号2012/0058962、米国特許付与前公報番号2013/0225626、米国特許付与前公報番号2009/0117054、および米国特許第8,252,329号で見いだされ得、これら各々の開示を参照により本明細書に組み入れる。
【0126】
頬側、舌下、または唇下投与のために、組成物は、経口用剤形に関して記載されたように、従来的な様式で製剤化された錠剤、ロゼンジ等の形態をとり得る。いくつかの態様において、頬側、舌下、または唇下投与用の製剤は、味覚マスキング剤、増強剤、錯化剤、ならびに他の上記の薬学的に許容される賦形剤および担体の1つまたは複数を含む。
【0127】
味覚マスキング剤には、例えば、味覚受容体ブロッカー、活性化合物の白亜質のような、砂のような、乾いた、および/または渋い味覚特性をマスクする化合物、喉のつっかかりを減少させる化合物、ならびに風味を加える化合物が含まれる。本開示の製剤において使用される味覚受容体ブロッカーには、Kyron T-134、ミラクルフルーツ(synsepalum dulcifcum)という植物の果実由来のミラクリンと呼ばれる糖タンパク質エキス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギニン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ガストデューシン(gustducin)ブロッカーおよびそれらの混合物が含まれ得る。活性化合物の白亜質のような、砂のような、乾いた、および/または渋い味覚特性をマスクする化合物には、天然または合成脂肪タイプのそれらまたは他のフレーバー物質、例えばカカオ、チョコレート(例えば、ミントチョコレート)、ココアバター、乳成分(milk fraction)、バニリンバター脂肪、卵または卵白、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、スペアミント油、および同様の油が含まれる。喉のつっかかりを減少させる化合物には、高および低溶解性の酸の組み合わせが含まれる。例えば、本願での使用に適した高溶解性の酸には、アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン等)、グルタル酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、酢酸、クエン酸およびそれらの混合物が含まれる。本願での使用に適した低溶解性の酸には、オレイン酸、ステアリン酸およびアスパラギン酸に加えて特定のアミノ酸、例えば、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびフマル酸が含まれる。使用される実際の量は、使用される活性物質によって示される喉のつっかかりまたは痛みの量に依存して異なり得るが、一般的には1~40%の範囲であると考えられる。フレーバー剤には、甘味物質およびフレーバーが含まれる。適切な甘味物質およびフレーバーの例には、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、スクロース、グリチルリチン酸アンモニウム、マンゴーアロマ、ブラックチェリーアロマ、クエン酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、スクラロース;グルコン酸亜鉛;エチルマルチトール;グリシン;アセスルファムK;アスパルテーム;サッカリン;アセスルファンK、ネオヘスペリジンDC、ソーマチン、ステビオシド、フルクトース;キシリトール;ハチミツ;ハチミツエキス;トウモロコシシロップ、ゴールデンシロップ、ミスリ(misri)、噴霧乾燥カンゾウ根;グリチルリチン;デキストロース;グルコン酸ナトリウム;ステビア粉末;グルコノ デルタ-ラクトン;エチルバニリン;バニリン;標準および強化甘味物質もしくはシロップ、またはそれらの塩およびそれらの混合物が含まれる。適切なフレーバー剤の他の例には、コーヒーエキス、ミント;シソ(lamiacea)エキス;柑橘類エキス;アーモンド油;ババス油;ボラージ油;ブラックカラント種子油;ナタネ油;ヒマシ油;ココナツ油;トウモロコシ油;綿実油;イブニングプリムローズ油;ブドウ種子油;落花生油;マスタードシード油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナツ油;グレープシードオイル;ヒマワリ油;ゴマ油;鮫肝油;ダイズ油;水添ヒマシ油;水添ココナツ油;水添パーム油;水添ダイズ油;水添植物油;水添綿実油およびヒマシ油;部分水添ダイズ油;ダイズ油;トリカプロン酸グリセリル;トリカプリル酸グリセリル;トリカプリン酸グリセリル;トリウンデカン酸グリセリル;トリラウリン酸グリセリル;トリオレイン酸グリセリル;トリリノール酸グリセリル;トリリノレン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル;飽和ポリグリコール化グリセリド;リノール酸グリセリド;カプリル酸/カプリン酸グリセリド;修飾トリグリセリド;分取トリグリセリド;サフロール、クエン酸、d-リモネン、リンゴ酸、およびリン酸、またはそれらの塩および/もしくは混合物が含まれる。
【0128】
増強剤は、特定の活性化合物の膜透過性を増大させるおよび/または溶解度を増大させる剤である。両方の事項とも製剤の特性にとって重要であり得る。増強剤は、キレート剤、界面活性剤、膜破壊化合物、脂肪酸または他の酸;非界面活性剤、例えば不飽和環状尿素であり得る。キレート剤は、例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸ナトリウム、またはメトキシサリチレートであり得る。界面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン、POE-9-ラウリルエーテル、POE-20-セチルエーテル、塩化ベンザルコニウム、23-ラウリルエーテル、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、または両性もしくはカチオン性界面活性剤であり得る。膜破壊化合物は、例えば、粉末アルコール(例えば、メントール)または親油性増強剤として使用される化合物であり得る。脂肪酸および他の酸には、例えば、オレイン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ラウリン酸/プロピレングリコール、オレイン酸メチル、リゾホスファチジルコリン、およびホスファチジルコリンが含まれる。本開示の頬側、舌下、および唇下用製剤において使用され得る他の増強剤には、例えば、リザルビン酸(lysalbinic acid)、グリコサミノグリカン、アプロチニン、アゾン(azone)、シクロデキストリン、硫酸デキストラン、クルクミン、メントール、ポリソルベート80、スルホキシド、様々なアルキルグリコシド、キトサン-4-チオブチルアミド、キトサン-4-チオブチルアミド/GSH、キトサン-システイン、キトサン-(85% N-デアセチル化)、ポリ(アクリル酸)-ホモシステイン、ポリカルボフィル-システイン、ポリカルボフィル-システイン/GSH、キトサン-4-チオエチルアミド/GSH、キトサン-4-チオグリコール酸、ヒアルロン酸、塩酸プロパノロール(propanolol hydrochloride)、胆汁酸塩、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、およびタウロデオキシコール酸ナトリウムが含まれる。
【0129】
緩衝物質は、活性化合物の溶解度を増大させるためおよび吸収を高めるための両方のために使用され得る。適切な緩衝物質または本願での使用に適した制酸剤の例は、食品および薬物投与に許容される任意の比較的水溶性の制酸剤、例えば炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム(または水酸化アルミニウム-ヘキシトール安定化ポリマー、水酸化アルミニウム-水酸化マグネシウム共乾燥ゲル、水酸化アルミニウム-三ケイ酸マグネシウム共乾燥ゲル、水酸化アルミニウム-スクロース粉末水和物)、リン酸アルミニウム、アルミニウムヒドロキシルカーボネート、ジヒドロキシアルミニウムナトリウムカーボネート、アルミニウムマグネシウムグリシネート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、ジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸(dihydroxyaluminum aminoacetic acid)、アルミン酸ビスマス、炭酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、水和アルミン酸マグネシウム活性化サルフェート(hydrated magnesium aluminate activated sulfate)、アルミン酸マグネシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、および三ケイ酸マグネシウム、ならびに/またはそれらの混合物を含む。好ましい緩衝物質または制酸剤には、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびそれらの混合物、ならびに水酸化マグネシウムが含まれる。これらの化合物の多くは、喉のつっかかりに対処する上で特に有用な味覚マスキング剤でもあるという利点を有する。
【0130】
他の賦形剤、例えば透過性増強剤、崩壊剤、マスキング剤、結合剤、フレーバー、甘味物質および味覚マスキング剤の選択は、予め決定される薬物動態プロフィールおよび/または感覚受容的結果に依存して活性物質に個別に適応される。
【0131】
ネブライザーおよび液体噴霧デバイスならびに電気流体力学的(EHD)エアゾールデバイスと共に使用するのに適した液体薬物製剤は典型的に、薬学的に許容される担体と共にフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を含むと考えられる。好ましくは、薬学的に許容される担体は、液体、例えば、アルコール、水、ポリエチレングリコール、またはパーフルオロカーボンである。任意で、その溶液または懸濁物のエアゾール特性を変更するために別の物質が添加され得る。望ましくは、この物質は液体、例えば、アルコール、グリコール、ポリグリコール、または脂肪酸である。エアゾールデバイスにおける使用に適した液体薬物溶液または懸濁物を製剤化する他の方法は当業者に公知である(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,112,598号および米国特許第5,556,611号を参照のこと)。
【0132】
フェンフルラミン(またはその薬学的に許容される塩)の投与のための用量および投薬スケジュールは様々であり得、それは一部、疾患の重篤度、ならびに患者の年齢、体重および全般的健康により決定される。いくつかの態様において、組成物は毎日投与される。他の態様において、組成物は1日1回より多く、例えば、1日2回、1日3回、または1日4回投与される。さらに他の態様において、組成物は、1日1回より少なく、例えば、2日ごとに、3日ごとに、または週1回投与される。
【0133】
いくつかの方法の態様において、フェンフルラミン(もしくはその薬学的に許容される塩)の用量は、約0.1 mg/kg/日~約3 mg/kg/日(例えば、1日2回、1日1回、週2回、もしくは週1回)であり得る、またはフェンフルラミン(もしくはその薬学的に許容される塩)の用量は約0.1 mg/kg/日~約2 mg/kg/日(例えば、1日2回、1日1回、週2回、もしくは週1回)であり得る。いくつかの態様において、フェンフルラミン(またはその薬学的に許容される塩)の用量は、60 mg/日以下に制限される。特定の例において、フェンフルラミン(またはその薬学的に許容される塩)の用量は、約(例えば、1日2回、1日1回、週2回、または週1回)である。
【0134】
V. 診断
上記のように、脱髄障害と診断された対象に治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む処置方法が提供される。脱髄に関連する病状を有すると診断された対象への投与を含む方法も提供される。
【0135】
いくつかの例において、この方法は、脱髄障害または脱髄に関連する病状を有すると対象を診断する工程を含む。いくつかの例において、対象は、当該方法以前にすでに診断されている。
【0136】
いくつかの態様において、対象は、磁気共鳴画像(MRI)、筋電図(EMG)、神経伝導検査(NCV)、誘発電位検査、腰椎穿刺(LP)、痛みの病歴、吐き気の病歴、嘔吐の病歴、発熱の病歴、筋力、神経感覚、運動協調性、歩行能力、眼検査、またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるデータに基づき診断される。例えば、そのような検査および得られるデータが、脱髄障害を有すると患者を診断するために使用され得る。
【0137】
磁気共鳴画像(MRI)は、脳または脊椎の特徴、例えばそのような器官の二次元または三次元画像を示すことができる。脱髄の領域は、MRI上で観察され得、脱髄のタイプを決定するためにも使用され得る。例えば、Mikiは、MRIを用いて脱髄疾患を診断する方法を報告しており(doi:10.111/cen3.12501)、これを参照により本明細書に組み入れる。Mikiは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)脳脊髄炎を含む異なるタイプの脱髄性疾患を区別し、診断するためにMRIを使用することができると述べている。
【0138】
筋電図(EMG)は、皮膚を通じて筋肉に細針電極を挿入し、運動時および休止状態時の筋肉の活動を測定することを含み得る。そのような電気的読み取りは、障害を診断するために使用され得る。神経伝導検査(NCV)は、例えば皮膚内にそして神経へと挿入された電極を用いて神経を電気的に刺激することにより、神経が電気的シグナルを伝導する速度を測定する。誘発電位検査は、特定の刺激に対する脳の反応、例えば視覚的入力に対する脳の反応を測定する。腰椎穿刺(LP)は、スパイナルタップとも称され、例えば腰部の脊髄付近から、脳脊髄液(CSF)を取り出すことを含む。そのような体液は、潜在的な感染または炎症状態を決定するために分析され得る。
【0139】
診断を行う上で患者の病歴が考慮され得る。例えば、患者の痛み、吐き気、嘔吐、および発熱の病歴が、診断を行うために使用され得る。患者の生物学的家族におけるそのような状態の病歴も考慮され得る。
【0140】
診断は、患者の筋強度、例えば彼らが発揮することができる最大の力を評価することを含み得る。いくつかの例において、神経感覚、すなわち神経が刺激を検出する能力。例示的な刺激には、圧、低温、高温、および痛みが含まれる。そのような神経感覚検査は、いくつかの例において、対象の皮膚上で実施され得る。いくつかの態様において、診断は、複数の身体部分を協同的様式で動作させる能力である対象の運動協調性を評価することを含む。そのような共同動作は、いくつかの例において、歩くこと、走ること、起つこと、座ること、または物体を手で掴むことであり得る。いくつかの態様において、診断は、対象の眼検査を行うことを含む。いくつかの例において、脱髄または他の要因により引き起こされ得る視神経の炎症(すなわち、視神経炎)が、眼検査の間に観察され得る。
【0141】
以下の実施例は、特定の具体的特徴および/または態様を例示するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載される具体的特徴または態様に制限するものとみなされるべきでない。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は、本発明を製造および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、本発明者らが自分たちの発明であるとみなしているものの範囲を限定することは意図されておらず、以下の実験が実施されたすべてまたは唯一の実験であると表明することも意図されていない。使用されている数値(例えば、量、温度等)に関しては正確性を確保するよう努めたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。それ以外のことが示されていない限り、部(part)は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧は大気圧または大気圧付近である。標準的な略語、例えば、bp、塩基対;kb、キロ塩基;pl、ピコリットル;sまたはsec、秒;min、分;hまたはhr、時間;aa、アミノ酸;nt、ヌクレオチド等、が使用され得る。
【0143】
実施例1 - フェンフルラミンはRNF43に結合する
簡潔に説明すると、全長ヒト細胞膜および結合している分泌タンパク質をコードする発現ベクターのアレイを、コーティングされたスライド上にスポットし、ついでそれらのスポット上でHEK293細胞を成長させ、個々のスライド位置でそれぞれのタンパク質の各々の細胞表面発現を達成するリバーストランスフェクションを行った。トリチウム標識フェンフルラミンをアプライし、ホスホイメージング(phosphorimaging)技術を用いて比結合を分析および確認した。一次スクリーンにおいてRNF43およびシグマ-1の相互作用を同定した。この研究を、HEK293細胞がスライド上でリバーストランスフェクトされる前記スライド上にスポットされたRNF43およびシグマ-1受容体タンパク質をコードするベクターを用いて反復することによって、確認がなされた。同一のスライドを、細胞固定化の前または後に、1マイクロモルもしくは5マイクロモルの3H-フェンフルラミン、20ナノモルの3H-ナロキソン、または化合物なしで処理した(1処理あたりn=2スライド)。結果を
図1に示す。このスクリーンにおける試験化合物との低強度の相互作用は、特に細胞表面に優先的に局在化しない受容体に関して、必ずしも低親和性の相互作用を示すものではない。
【0144】
てんかんは白質の病態およびダメージの疾患であると認識されつつある、Hatton, S.N. et al [Epilepsy Currents 2021 21:27-29]を参照のこと。フェンフルラミンがミエリンに対する病態およびダメージを減少させるかどうかを試験するため、ドラベ症候群のマウスモデルを使用した。ドラベのマウスモデルは、ミエリン病態およびダメージを有することが示されている、例えば、Richards, K. et al [Brain Research 2021 January; 1751:147157]を参照のこと。ヒトドラベ患者もまた、ミエリンの病態およびダメージを有することが示されている、例えば、Perez, A. et al. [Epilepsy Res. 2014 108:1326-1334]。実施例2および3で報告される研究において使用したヘテロ接合型ドラベ動物は、Miller, A.R. et al. [Genes Brain Behav. 2014 February; 13(2): 163-172]に記載されるようにして作製したScn1atm1Kea 50% C57BL/6J、50% 129S6/SvEvTac背景のマウスである。簡潔に説明すると、TL1 ES細胞(129S6/SvEvTac)における第1コードエクソンの標的欠失により、ヘテロ接合型Scn1a+/-ヌル対立遺伝子を作製した。これらのマウスを、129S6/SvEvTac (129)背景の類似遺伝子型系統として樹立および維持した。129.Scn1a+/-マウスをB6系統と交配することにより、自然発生的な発作および50%のマウスが1ヶ月齢までに死亡するという早期致死性を示す(B6x129)F1.Scn1a+/- (F1.Scn1a+/-)子孫を得た。例えばP35~P37として言及される、P範囲は、実験動物の出生後日数を示す。すべてのマウスにおいて正常な軸索樹状突起、軸索体細胞および軸索軸索シナプス刈り込みが起こり、生後P21日にピークに達する。実験動物の出生後年齢は、高い自然脱髄およびミクログリア活性の期間を避けるよう選択した。
【0145】
実施例2
脱髄の処置のためのフェンフルラミンの使用
フェンフルラミンはドラベ症候群のマウスモデルにおいて脱髄を減少させた
フェンフルラミンのミエリン化活性がその発作減少特性から独立したものであることを示すために、ヒトにおけるドラベ症候群の処置において効果を示すことが知られている化合物であるフェンフルラミン、およびこれも発作の抑制において活性を示すことが知られている化合物であるジアゼパムの効果の研究を比較した。ヘテロ接合型動物において、薬物処置または生理食塩水による偽処置を、インスリンシリンジを通じて注射した薬物または生理食塩水の皮下投与により、P7齢(すなわち、生後7日)から開始した。
【0146】
第7日に、各々の同腹の全7匹の仔に対して、各々体重に基づく注射ボリュームである、1)15 mg/kgのフェンフルラミン;2)10 mg/kgのジアゼパム;または3)ビヒクル(0.9%生理食塩水溶液)、を含む10μg/g体重の注射ボリュームを1日1回投与した。
【0147】
各介入の投与をP35~P37齢まで毎日続け、このP35~P37齢の時点で動物を屠殺し、28~30日間の1日1回投与の総計と見積もられる血液および脳組織を得た。
【0148】
投薬期間の最後にマウスをイソフルラン麻酔し、その後のかん流用固定のために心臓にも血管にも穴をあけずに、心室穿刺を通じて血液を抜き取った。血液を血漿用に処理し、-80℃で保管した。かん流液を出口地点に誘導するよう肝循環内に切開を設けた後、心臓の左心室を通じて6 mLの氷冷リン酸緩衝生理食塩水によりマウスから残留血液を洗い流した。ついで追加の6 mLの氷冷4%パラホルムアルデヒドを用いてマウスをかん流固定した後、注意深く右脳を10%中性緩衝化ホルマリンに24時間収集し、その後に抗微生物保存剤としての0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水に移した。ついで右脳をパラフィンブロックに包埋し、ガラススライド上でホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)5 um厚の矢状切片として処理した。これらのFFPE組織を分解ミエリンおよび炎症性ミクログリアについて免疫染色し、処理し、画像化した。
【0149】
抗原賦活を行わずにDMBP抗体(「分解」ミエリン塩基性タンパク質、抗ミエリン塩基性タンパク質、Milipore Sigma抗体、以前はSigma AB5864)を1:1000の希釈率でアプライした。この抗体は、ヒトサンプル中のミエリン分解のデブリを優先的に検出し、正常なミエリンと交差反応しない。二次検出工程において、Vector ImPRESS-APアルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgG(Vector Laboratories)を、色原体としてのVector Blue AP基質とともにアプライした。脱水、洗浄、およびカバースリップマウント工程の前に、非特異的組織対比染色としてNuclear Fast Redをアプライした。仕上げ処理したスライドにおいてVector Blueシグナルを、20倍対物レンズ下でEcho Revolve蛍光顕微鏡のDAPI(UV)励起/発光チャネルを用いて可視化した。重ねられたDMBPシグナルに対する解剖学的背景を提供するため、非特異的なNuclear Fast Red染色をTexas Red励起/発光チャネル下で可視化した。P35~P37野生型およびフェンフルラミン/ジアゼパム/生理食塩水比較研究からのヘテロ接合型動物の右脳の正中線からおよそ300um内のかん流固定された矢状の5マイクロメートル(「um」)FFPE脳切片を、スフェロイド状および点状ミエリンデブリのDMBP染色により示されるミエリンダメージに関して試験した。
【0150】
海馬および皮質のスコア付けに、0~5の昇順病理学者スケールを適用した。0:スフェロイド状ミエリンデブリ(SMD)なし。1:SMDが少数ながら存在。2:顕著に増加したSMD。3:中間数のSMD。4:多数のSMD。5:非常に多数のSMD。各動物で海馬および皮質のスコアを合算し、その可能性のある最大スコアを10とした。
【0151】
ラットCNS組織において、DMBP抗体は、正常ミエリンに対する中程度の交差反応を示しつつ、明白なスフェロイド状および点状のミエリン分解のデブリを検出する。マウスCNS組織において、DMBP抗体は、ヒトCNS組織におけるその性能と比較して増大した正常ミエリンに対する反応性を示しつつ、明白なスフェロイド状および点状のミエリン分解のデブリを検出する。スフェロイド状および孤立した点状デブリは、病理学的プロセス、例えば髄鞘生成の欠陥、軸索変性症、炎症性脱髄、ならびに軸索樹状細胞、軸索体細胞および軸索軸索のシナプス前ミエリン化軸索の生理学的刈り込みまたは病理学的破壊により生成されたデブリを表す。
【0152】
DMBP抗体により検出されるスフェロイド状および点状デブリを、病理学的シグナルとしてデータに組み込む。げっ歯類組織においてDMBP抗体により交差検出された正常な軸索上の外見上インタクトな線状ミエリンは、ランク付けスケールにおいて病理学的であるとみなさなかった。表1は、上記のように0~5のスケールでの皮質および海馬からの平均スコア(ctx=皮質;hipp=海馬)ならびに2つの脳組織からの平均スコアの和を示している。Scn1a+/-ドラベ変異を有するマウスは「Het」で示され、当該ドラベ変異を有さない(Scn1a+/+)動物は「WT」により示されている。フェンフルラミン処置された動物は「FFA」と略称されている。P値は、不等分散ありの両側t検定を用いて計算した。これらのデータが
図2においてグラフ表示されている。これらのデータは、フェンフルラミンの投与が、ミエリンダメージを有することが知られているヒト疾患のマウスモデルの背景でミエリン病態およびダメージのレベルを低下させることを示している。
【0153】
(表1)DMBPスコア付けおよび標準偏差
DMBP P値:合算したHippおよびCtx Het FFA対Hetビヒクルでp=0.01
DMBP P値:海馬のみ p=0.00015 Het FFA対Hetビヒクル
【0154】
実施例3
フェンフルラミンはドラベ症候群のマウスモデルにおいて活性化ミクログリアを減少させる
実施例2における組織画像化およびミエリンデブリの計数と同様に、ミクログリア活性化に対するフェンフルラミンの効果を示すために別の実験を行った。pH9熱誘導抗原賦活を行ったCD11b抗体(Abcam ab133357)を1:12000の希釈率でアプライした。二次検出工程において、Vector ImPRESS-APアルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgG(Vector Laboratories)を、色原体としてのVector Blue AP基質とともにアプライした。脱水、洗浄、およびカバースリップマウント工程の前に、非特異的組織対比染色としてNuclear Fast Redをアプライした。仕上げ処理したスライドにおいてVector Blueシグナルを、20倍対物レンズ下でEcho Revolve蛍光顕微鏡のDAPI(UV)励起/発光チャネルを用いて可視化した。重ねられたCD11bシグナルに対する解剖学的背景を提供するため、非特異的なNuclear Fast Red染色をTexas Red励起/発光チャネル下で可視化した。P35~P37野生型およびフィンテプラ/ジアゼパム/生理食塩水比較研究からのSCN1Aヘテロ接合型50% B6/50% 129S6マウスの右脳の正中線からおよそ300um内のかん流固定された矢状の5um FFPE脳切片を、CD11b+ミクログリアに関して試験した。
【0155】
海馬裂以降の海馬の貫通線維および脳梁(CC)の前方ノブである「膝部」におけるマウス白質におけるCD11b+ミクログリアのスコア付けに、0~5の昇順病理学者スケールを適用した。CCは、2~8億個の水平方向に相互接続する皮質領域から構成される細長の正中構造体である。成熟CCは、ミエリン化線維および非ミエリン化線維の両方ならびにグリア細胞(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)、ならびにニューロンを含む。ヒトCCは、前方から後方に向かって、吻部、膝部、しばしば前方、中央、および後方の体部に細分される体部または幹部、峡部、および膨大部を含む、5つの解剖学的領域に分割される。脳梁線維内の大部分のニューロンは興奮性アミノ酸(グルタミン酸またはアスパラギン酸)を放出するが、哺乳動物においては少ない比率のGABA作動性ニューロンが同定されている。
【0156】
スコアは、0:活性化ミクログリアなし--1:少数の活性化ミクログリア--2:顕著に増加した活性化ミクログリア--3:中間数の活性化ミクログリア--4:多数の活性化ミクログリア--5:非常に多数の活性化ミクログリアと割り当てた。各動物で膝部および貫通線維のスコアを合算し、その可能性のある最大スコアを10とした。この抗体は、ヒト、ラット、およびマウス種の間で、監視、静止状態のミクログリアよりも活性化ミクログリアを優先的に検出する。正常、健常なマウスは、正常なヒトCNSと比較してCNSにおいてより高い基準ミクログリア活性化度を示す。活性化は、ミクログリアの体サイズ、分枝の太さ、活性化がロッド形状のミクログリアを形成する場合は長さ、ミクログリアから延びる明らかなファゴソーム、または「アメーバ様」と呼ばれるマクロファージ表現型への変化の明白な増加として観察される。
【0157】
(表2)CD11b+スコア付けおよび標準偏差
表2は、上記のような0~5のスケールでの、および2つの脳組織からの平均スコアの和としての、膝部および貫通線維(PP=貫通線維)からの平均スコアを示している。Scn1a+/-ドラベ変異を有するマウスは「Het」で示され、当該ドラベ変異を有さない(Scn1a+/+)動物は「WT」により示されている。フェンフルラミン処置された動物は「FFA」と略称されている。P値は、不等分散ありの両側t検定を用いて計算した。これらのデータが
図4においてグラフ表示されている。これらのデータは、フェンフルラミンの投与が、ミエリンダメージを有することが知られているヒト疾患のマウスモデルの背景で、ミエリン病態およびダメージに応答することが知られているミクログリアのレベルを低下させることを示している。
CD11b P値:合算したPPおよび膝部 p=0.05 Het FFA対Hetビヒクル
【0158】
実施例4:新生児低酸素症の動物モデルにおけるフェンフルラミン
慢性新生児低酸素症は、乏しい肺発生に起因する不十分なガス交換により引き起こされる未成熟脳傷害の臨床的に関連するモデルである。この低酸素症状態は、早産乳児において一般的であるびまん性白質傷害(DWMI)への大きな寄与因子である。慢性低酸素症は、ミエリン化異常を引き起こし得る。慢性低酸素症のマウスモデルは、以前に報告されている[Scafidi et al., Nature volume 506, pages 230-234 (2014)]。このモデルを、低酸素症後のオリゴデンドロサイト再生および再ミエリン化に対するフェンフルラミンの効果を評価するために使用することができる。
【0159】
マウスを、低酸素飼育を行うために、または正常酸素対照として扱うよう、無作為に選択する。低酸素マウスを、以前に記載されたようにN2置換により10.5%のO2濃度を維持する密閉チャンバー内に入れる(Raymond et al., J Neurosci 31:17864-17871, 2011; Bi et al., J Neurosci 31:9205-9221, 2011; Jablonska et al., J Neurosci 32:14775-14793, 2012)。低酸素を出生後(P)第3日から始め、P11まで8日間続ける。げっ歯類白質オリゴデンドロサイト発生におけるこのタイムフレームは、23~40週間の懐胎中にヒト脳において起こる変化を再現する(Back et al., J Neurosci 21:1302-1312, 2001)。年齢一致および系統一致マウスを正常酸素対照として用いる。
【0160】
低酸素マウスおよび正常酸素対照マウスを、フェンフルラミン(1 mg/kg/日)またはビヒクルの毎日の注射を受けるよう無作為化する。一部の例では、フェンフルラミン(またはビヒクル)の投与をP11に開始する。他の例では、P3において、またはP3からP11の間の任意の時点で、処置を開始する。複数回の1日用量のフェンフルラミン(およびビヒクル)を投与することができる。所望の処置過程の後、マウスを屠殺し、脳切片を調製し、記載されたようにミエリンの厚さおよび白質におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の数を評価するよう処理する(Scafidi et al., Nature doi: 10.1038/nature12880 [Epub ahead of print], Dec. 25, 2013)。
【0161】
添付の請求項とは別に、本開示は以下の項目によっても定義される。
項目1 脱髄障害と診断された対象に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含む、処置方法。
項目2 前記脱髄障害が多発性硬化症(MS)である、項目1の方法。
項目3 前記脱髄障害がてんかん性脳症である、項目1の方法。
項目4 前記脱髄障害が、不十分なミエリン化である、項目1の方法。
項目5 前記脱髄障害が髄鞘の形成不全である、項目1の方法。
項目6 前記投与が、経口、非経口、および局所からなる群より選択される経路による投与である、項目1~5のいずれか1つの方法。
項目7 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、項目1~6のいずれか1つの方法。
項目8 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.1 mg/kg/日~約2 mg/kg/日の用量で投与される、項目1~7のいずれか1つの方法。
項目9 前記投与が、1日2回、1日1回、週2回、および週1回からなる群より選択される間隔での投与である、項目1~8のいずれか1つの方法。
項目10 前記対象が、磁気共鳴画像(MRI)、筋電図(EMG)、神経伝導検査(NCV)、誘発電位検査、腰椎穿刺(LP)、痛みの病歴、吐き気の病歴、嘔吐の病歴、発熱の病歴、筋力、神経感覚、運動協調性、歩行能力、眼検査、またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるデータに基づき診断される、項目1~9のいずれか1つの方法。
項目11 脱髄に関連する病状と診断された患者に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含む、処置方法。
項目12 前記脱髄に関連する病状が、多発性硬化症、白質ジストロフィー、白質脳症、突発性炎症性脱髄性疾患、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、項目11の方法。
項目13 前記脱髄に関連する病状が多発性硬化症である、項目12の方法。
項目14 前記多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症、および進行再発型多発性硬化症からなる群より選択される、項目13の方法。
項目15 前記脱髄に関連する病状が、橋中心髄鞘崩壊症、急性散在性脳脊髄炎、バロー同心円硬化症、マーブルグ多発性硬化症、腫瘤様多発性硬化症、びまん性脊髄破砕性硬化症、急性出血性白質脳症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、レーベル遺伝性視神経症、多巣性運動ニューロパチー、異常蛋白性脱髄性多発ニューロパチー、熱帯性痙性対麻痺、ギラン・バレー症候群、乳児レフサム病、1型成人レフサム病、2型成人レフサム病、ツェルウェガー症候群、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、カナバン病、アレキサンダー病、ビンスワンガー病、腓骨筋委縮、脳腱黄色腫症、白質消失をともなう白質脳症、毒性白質脳症、ファンデルナップ病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、および横断性脊髄炎からなる群より選択される、項目11の方法。
項目16 前記投与が、経口、非経口、および局所からなる群より選択される経路による投与である、項目11~15のいずれか1つの方法。
項目17 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、項目11~16のいずれか1つの方法。
項目18 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.1 mg/kg/日~約2 mg/kg/日の用量で投与される、項目11~17のいずれか1つの方法。
項目19 前記投与が、1日2回、1日1回、週2回、および週1回からなる群より選択される間隔での投与である、項目11~18のいずれか1つの方法。
項目20 脱髄に関連する病状を有すると前記対象を診断する工程をさらに含む、項目11~19のいずれか1つの方法。
項目21 前記対象が、磁気共鳴画像(MRI)、筋電図(EMG)、神経伝導検査(NCV)、誘発電位検査、腰椎穿刺(LP)、痛みの病歴、吐き気の病歴、嘔吐の病歴、発熱の病歴、筋力、神経感覚、運動協調性、歩行能力、眼検査、またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるデータに基づき診断される、項目11~20のいずれか1つの方法。
項目22 疾患の症状を有すると診断された患者に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程
を含み、
前記疾患の症状が、括約筋支配の欠如、勃起障害、対麻痺、失調症、副腎皮質不全、進行性ニューロパチー、感覚異常、ディサースリア、嚥下障害、クローヌス、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
処置方法。
項目23 前記投与が、経口、非経口、および局所からなる群より選択される経路による投与である、項目22の方法。
項目24 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.5 mg/kg/日~約5 mg/kg/日の用量で投与される、項目22~23のいずれかの方法。
項目25 前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が約0.1 mg/kg/日~約2 mg/kg/日の用量で投与される、項目22~24のいずれかの方法。
項目26 前記投与が、1日2回、1日1回、週2回、および週1回からなる群より選択される間隔で行われる投与である、項目22~25のいずれかの方法。
項目27 疾患の症状を有すると前記対象を診断する工程をさらに含む、項目22~26のいずれか1つの方法。
【0162】
本明細書の中で言及されているすべての公報、特許、および特許出願が、参照により本明細書に組み入れられる。出願人は、本明細書で引用されている任意のそのような参考文献、特許、および特許公報が先行技術を構成することを承認しない。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、記載されるデバイスおよび本発明の使用方法の様々な改変物およびバリエーションが当業者に明らかになるであろう。本発明は具体的な態様に関連して記載されているが、請求項に記載の発明はそのような具体的態様に過度に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際、当業者に明らかな本発明を実施するための記載される様式の様々な改変物が本発明の範囲に包含されることが意図されている。
【国際調査報告】