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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エアロゾル生成装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/51 20200101AFI20240905BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
A24F40/51
A24F40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504869
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022076176
(87)【国際公開番号】W WO2023057206
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21200724.9
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーフィギル, レイス スリマン
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC01
4B162AC12
4B162AD20
4B162AD27
(57)【要約】
エアロゾル生成装置(1)は、エアロゾル生成物品(10)が装置(1)の加熱チャンバ(12)に挿入されるか又は加熱チャンバ(12)から引き抜かれる時点を検知するための感知手段を含む。ローラー(26)は、所定の挿入経路に沿って移動する物品(10)がローラー(26)の表面に係合してローラー(26)を回転させるようにローラー軸(28)回りを回転するために設置されている。感知手段はローラー(26)の回転方向を判定する。感知手段はローラー(26)の半径又は磁場等のプロパティに応答し得る。プロパティは、ローラー(26)に隣接して配置された1つ以上のセンサ(34)により検知可能な1つ以上の指標(54)を画定するために、ローラー軸(28)回りの角度に応じて変化し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の挿入経路(20)に沿って加熱チャンバ(12)に挿入され得るか又は同一の前記挿入経路(20)に沿って前記加熱チャンバ(12)から引き抜かれ得るエアロゾル生成物品(10)を受容する、加熱チャンバ(12)と、
前記挿入経路(20)に沿って移動するエアロゾル生成物品(10)がローラー(26)の表面に係合することにより前記ローラー(26)を回転させるように、前記挿入経路(20)にほぼ垂直なローラー軸(28)回りに回転するために設置された、ローラー(26)と、
前記ローラー(26)の回転方向を判定するための感知手段(34)と、
を含むエアロゾル生成装置(1)。
【請求項2】
前記ローラー(26)が、前記ローラー軸(28)回りの角度に応じて変化するプロパティを含み、
前記感知手段が少なくとも1つのセンサ(34)を含み、前記センサ(34)が、前記ローラー(26)が回転して前記センサ(34)を通過するときに前記プロパティの前記変化を測定して前記ローラー(26)の回転方向を判定することができる、
請求項1に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項3】
前記ローラー軸(28)回りの角度に応じた前記ローラー(26)の前記プロパティの前記変化が、前記ローラー(26)上の指標角度位置で指標(54)を画定し、
前記感知手段が、前記ローラー軸(28)回りの第1のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を検知可能な第1のセンサ(34)と、前記ローラー軸(28)回りの第2のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を検知可能な第2のセンサ(34)とを含み、
前記第1と第2センサとの角度位置間の角度が180°未満である、
請求項2に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項4】
前記感知手段が更に、
前記ローラー(26)が回転すると、
前記第1のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第1のセンサ(34)が検知する時点から、前記第2のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第2のセンサ(34)が検知する時点までの第1の時間間隔と、
前記第2のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第2のセンサ(34)が検知する時点から、前記第1のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を戦記第1のセンサ(34)が検知する時点までの第2の時間間隔とを測定する、タイマーと、
前記第1の間隔と前記第2の間隔とを比較して前記ローラー(26)の回転方向を判定する、比較器と、
を含む、請求項3に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項5】
前記感知手段が更に、
前記ローラー軸(28)回りの第3のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を検知可能な、第3のセンサ(34)と、
前記ローラー(26)が回転すると、
前記第1のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第1のセンサ(34)が検知する第1の時点と、
前記第2のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第2のセンサ(34)が検知する第2の時点と、
前記第3のセンサ角度位置を通過した前記指標(54)の移動を前記第3のセンサ(34)が検知する第3の時点とを測定する、タイマーと、
前記第1の時点、前記第2の時点、及び前記第3の時点が生じた順序から前記ローラー(26)の回転方向を判定する比較器と、
を含む、請求項3に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項6】
前記ローラー(26)の前記プロパティが、前記ローラー軸(28)回りの角度に応じて鏡面非対称なパターンで変化する、
請求項2に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項7】
前記ローラー軸(28)回りの角度に応じた前記ローラー(26)の前記プロパティの前記変化により、前記ローラー(26)上の第1の指標角度位置における第1の指標(54)と、前記ローラー(26)上の第2の指標角度位置における第2の指標(55)とが画定され、
前記センサ(34)が前記第1及び第2の指標(54、55)を区別可能であり、
前記第1及び第2の指標の角度位置の間隔が180°未満である、
請求項6に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項8】
前記ローラー軸(28)回りの角度に応じた前記ローラー(26)の前記プロパティの前記変化が、第1、第2及び第3の指標(54)を各々前記ローラー(26)上の第1、第2及び第3の指標角度位置で画定し、
前記第1、第2及び第3の指標角度位置間の角度が全て異なる、
請求項6に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項9】
前記ローラー軸(28)回りの角度に応じて変化する前記プロパティが磁気プロパティであり、
前記センサ(34)又は各センサ(34)が、前記ローラー(26)が回転して前記センサ(34)を通過するとき磁場の変化を検知することができる、
請求項2~8のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項10】
前記ローラー(26)が、前記ローラー軸(28)回りの角度に応じて変化する前記磁気プロパティを生成するために配置された1つ以上の永久磁石(38)を含む、請求項9に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項11】
前記ローラー軸(28)回りの角度に応じて変化する前記プロパティが前記ローラー(26)の半径であり、
前記センサ(34)又は各センサ(34)が、前記ローラー(26)が回転して前記センサ(34)を通過するとき前記ローラー(26)の半径の変化を検知することができる、請求項2~8のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項12】
前記センサ(34)又は各センサ(34)が、前記ローラー(26)の表面に係合して、前記ローラーが回転するときの前記ローラー(26)の半径の変化に応じて前記ローラー軸(28)に近づく及び離れる方向に移動するセンサ素子(45)を含む、請求項11に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項13】
前記センサ(34)又は各センサ(34)が更に、前記センサ素子(45)が前記ローラー軸(28)に近づく及び離れる方向に移動するとON状態とOFF状態との間で切り換えられる電気スイッチを含む、請求項12に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項14】
前記加熱チャンバ(12)に受容されたエアロゾル生成物品(10)を加熱する加熱器(8)と、
前記ローラー(26)の回転数を数えるカウンタと、
前記カウンタが所定の回転数を数えたときに前記加熱器(8)を作動させるコントローラ(6)と、
を更に含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置(1)。
【請求項15】
エアロゾル生成物品(10)がエアロゾル生成装置(1)の加熱チャンバ(12)に挿入されるか又は前記加熱チャンバ(12)から引き抜かれる時点を判定する方法であって、
前記エアロゾル生成物品(10)を、前記加熱チャンバ(12)へ、又は前記加熱チャンバ(12)から所定の挿入経路(20)に沿って移動させるステップと、
前記挿入経路(20)にほぼ垂直なローラー軸(28)回りに回転するために設置されたローラー(26)の表面に前記エアロゾル生成物品(10)を係合させることにより、前記ローラー(26)を回転させるステップと、
前記ローラー(26)の回転方向を判定するために感知手段を使用するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、エアロゾル生成装置の使用者が吸入するエアロゾルを生成するためにエアロゾル生成基材を加熱するためのエアロゾル生成装置に関する。本開示は特に、可搬(携帯)エアロゾル生成装置に適用可能である。このような装置は、使用者が吸入するエアロゾルを生成するために、エアロゾル生成基材、例えばタバコ又は他の適当な材料を燃焼させるのではなく、伝導、対流、及び/又は放射により加熱する。
【背景技術】
【0002】
リスク低減又はリスク修正装置(エアロゾル生成装置又は蒸気生成装置としても知られる)は、従来のタバコ製品の使用に代わるものとして近年人気及び使用が急速に高まっている。使用者が吸入するエアロゾルを生成するためにエアロゾル生成物質を加熱又は加温する様々な装置及びシステムが利用可能である。
【0003】
一般に入手可能なリスク低減又はリスク修正装置は、基材加熱式エアロゾル発生装置又はいわゆる加熱非燃焼式装置である。この種の装置は、エアロゾル生成基材を典型的に150℃~300℃の範囲の温度に加熱することによりエアロゾル又は蒸気を生成する。エアロゾル生成基材を燃焼させることなく、範囲内の温度にエアロゾル生成基材を加熱することで蒸気が生成され、蒸気は典型的に、冷却され、凝縮されて、装置の使用者が吸入するエアロゾルを形成する。
【0004】
一般論として、蒸気は、臨界温度よりも低い温度で気相である物質であり、これは、温度を低下させることなく圧力を増加させることにより、蒸気を液体に凝縮できることを意味する。一方、エアロゾルは、空気中又は別のガス中に微細な固体粒子又は液滴が浮遊しているものである。しかし、本明細書では「エアロゾル」及び「蒸気」という用語を、特に使用者が吸入するために生成される吸入可能な媒体の形式に関して互換的に使用され得ることに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在入手可能なエアロゾル生成装置は、エアロゾル生成基材に熱を供給するために、多くの異なるアプローチのうちの1つを使用することができる。そのようなアプローチの1つは、誘導加熱システムを採用するものである。このような装置において、誘導コイルが装置内に設けられ、誘導加熱可能なサセプタがエアロゾル生成基材を加熱するために設けられる。ユーザが装置を作動させると、電気エネルギーが誘導コイルに供給され、次いでこれにより交流電磁場が発生する。サセプタは電磁場と結合して熱を生成し、その熱は例えば伝導によりエアロゾル生成基材に伝達され、エアロゾル生成基材が加熱されるとエアロゾルが生成される。別のアプローチは、電流を加熱素子に直接供給する抵抗加熱システムを採用するものである。加熱素子は熱を生成し、熱は、例えば伝導によってエアロゾル生成基材に伝達される。サセプタ又は加熱素子は、エアロゾル生成基材を囲んでエアロゾル生成基材の外面に熱を伝達することができる。代替的に、サセプタ又は加熱素子は、エアロゾル生成基材がエアロゾル生成装置に挿入されるときにエアロゾル生成基材に埋め込まれるブレードの形式であり得る。
【0006】
エアロゾル生成基材は、エアロゾル生成装置に取り外し可能に受容される消耗品の一部を形成する。典型的に、エアロゾル生成基材を含む消耗品の遠位端は、エアロゾル生成装置の加熱チャンバ内に受容されるのに対し、消耗品の近位端は、使用者の口に挟み得るようにエアロゾル生成装置から突出している。装置の特定の機能が適切な仕方で有効化又は無効化されるように、消耗品が装置に挿入されるか又は装置から引き抜かれる時点をエアロゾル生成装置が検知できることは有益である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
所定の挿入経路に沿って加熱チャンバに挿入され得るか又は同一の前記挿入経路に沿って加熱チャンバから引き抜かれ得る細長いエアロゾル生成物品を受容する、加熱チャンバと、
挿入経路に沿って移動するエアロゾル生成物品がローラーの表面に係合することによりローラーを回転させるように、挿入経路にほぼ垂直なローラー軸回りに回転するために設置された、ローラーと、
ローラーの回転方向を判定するための感知手段と、
を含むエアロゾル生成装置を提供する。
【0008】
ローラーの使用は、消耗品が挿入又は取り外されるときの直線運動を、多くの代替的な方法を使用して検知することができる回転運動に変換する、便利且つ機械的に簡単な仕方を提供する。ローラーの回転運動はコンパクトな空間内で行われるため、感知手段を携帯式エアロゾル生成装置の限られた容積内に設置できる。ローラーの回転方向を検知することにより、装置は消耗品が挿入されているか又は取り外されているかを判定することができ、これは装置を適切な仕方で制御するために重要である。移動の方向を判定せずに移動を検知する場合、挿入と除去を区別できるのは消耗品の前の状態が既知の場合だけである。換言すれば、消耗品が存在することが以前に知られていた場合、移動は、消耗品が現在取り外されていることを示していなくてはならず、消耗品が存在しないことが以前に知られている場合、移動は、消耗品が現在挿入されていることを示していなくてはならない。本発明により、消耗品の状態を記憶する必要も、又は代替的に消耗品の有無の検知に別のセンサを使用する必要もない。
【0009】
好適には、ローラーは、ローラー軸回りの角度に応じて変化するプロパティを有し、感知手段は少なくとも1つのセンサを含み、センサは、ローラーが回転してセンサを通過するときにプロパティの変化を測定してローラーの回転方向を判定することができる。プロパティは、センサにより測定することができる任意の物理的特性であり得る。測定値は連続値である必要がなく、存在するか又は存在しないプロパティを検知してセンサから2状態(ON/OFF)の出力信号を与えるステップを含む。プロパティは、例えば磁気プロパティのようなローラー内部のプロパティ、明度又は色等の表面プロパティ、又は半径等の外部プロパティ等であり得る。
【0010】
好適には、ローラー軸回りの角度に応じたローラーのプロパティの変化が、ローラー上の指標角度位置で指標を画定し、感知手段は、ローラー軸回りの第1のセンサ角度位置を通過した指標の移動を検知可能な第1のセンサと、ローラー軸回りの第2のセンサ角度位置を通過した指標の移動を検知可能な第2のセンサとを含み、第1と第2のセンサ角度位置間の角度は180°未満である。指標は、センサにより測定可能であって、センサを通過して回転するローラー上の角度位置の特定に利用可能な、プロパティの任意の特徴である。指標は、センサ又は感知手段の他の角度(aspect)との関係でのみ良好に画定できる。指標は、必ずしもローラーの全周にわたり一意である角度位置を特定しなくてもよい。指標は、周長回りの特定可能なパターン(繰り返しパターンを含む)の一部を形成する場合、ローラーの回転方向の判定に依然として有用な場合がある。第1及び第2のセンサを180°未満の角度間隔で配置することにより、2つのセンサが指標の通過を検知する順序がローラーの回転方向に応じて変化し、それにより、方向の判定が可能になる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、感知手段は更にタイマーと比較器とを含む。ローラーが回転すると、タイマーは、第1のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第1のセンサが検知する時点から、第2のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第2のセンサが検知する時点までの第1の時間間隔と、第2のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第2のセンサが検知する時点から、第1のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第1のセンサが検知する時点までの第2の時間間隔とを測定する。比較器は、次いで、第1の間隔と第2の間隔とを比較してローラーの回転方向を判定する。
【0012】
本発明の他の実施形態において、感知手段は更に、タイマーと、比較器と、ローラー軸回りの第3のセンサ角度位置を通過した指標の移動を検知可能な第3のセンサとを含む。ローラーが回転すると、タイマーは、第1のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第1のセンサが検知する第1の時点、第2のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第2のセンサが検知する第2の時点、及び第3のセンサ角度位置を通過した指標の移動を第3のセンサが検知する第3の時点を測定する。比較器は、第1の時点、第2の時点、第3の時点が生じた順序からローラーの回転方向を判定できる。本実施形態において、判定は時間間隔の測定及び比較に依存しないため、センサを追加する対価として、ローラーの回転速度に生じ得る変化の影響を受け難くなる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、ローラーの測定されたプロパティは、好適にはローラー軸回りの角度に応じて鏡面非対称なパターンで変化する。これは単一のセンサだけ、又はより簡単なセンサの配置を使用してローラーの回転方向を判定することができるという利点を有する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、ローラー軸回りの角度に応じたローラーのプロパティの非対称な変化により、センサが特定可能な第1及び第2の指標がローラー上で画定され、第1と第2の指標の角度位置の間隔は180°未満である。従って、センサが自身を通過した各々の指標の移動を検知する順序がローラーの回転方向に応じて変化するため、方向を判定できるようになる。
【0015】
本発明の他の実施形態において、ローラー軸回りの角度に応じたローラーのプロパティの非対称な変化は、第1、第2及び第3の指標を各々ローラー上の第1、第2及び第3の指標角度位置で画定し、第1、第2及び第3の指標角度位置間の角度はすべて異なる。ローラーがほぼ一定の速度で回転する場合、各々の指標の角度間隔が異なるため、センサが通過して移動する指標を検知する異なる時間間隔のパターンが生じる。感知手段は従って、異なる時間間隔が生じた順序からローラーの回転方向を判定できる。本実施形態には、センサが異なる種類の指標を区別する必要がないという利点がある。例えば指標の有無のみを判定できればよい。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、ローラー軸の角度に応じて変化するプロパティは磁気プロパティであり、そのセンサ又は各センサは、ローラーが回転してセンサを通過するとき磁場の変化を検知することができる。磁場センサは、動く機械部分を必要とせず、容易に微小電子回路に組み込めるため、エアロゾル生成装置の設計及び製造を簡素化できる。磁場センサは、例えば、ホール効果センサであり得る。ローラーは、ローラー軸回りの角度に応じて変化する磁気プロパティを生成するために配置された1つ以上の永久磁石を含み得る。
【0017】
本発明の他の実施形態において、ローラー軸回りの角度に応じて変化するプロパティはローラーの半径であり、そのセンサ又は各センサは、ローラーが回転してセンサを通過するときローラーの半径の変化を検知することができる。半径が変化するローラーは製造が簡単であり、例えば、永久磁石は互いに引き付けるか又は反発し、金属粒子を引き付ける傾向があるため、製造環境における永久磁石の使用から生じ得る問題を回避できる。
【0018】
ローラーの変化する半径は、ローラーの表面に接触する、又は接触しない様々な方法で測定することができる。例えば、そのセンサ又は各センサは、ローラーの表面に係合して、ローラーが回転するときのローラーの半径の変化に応じてローラー軸に近づく及び離れる方向に移動するセンサ素子を含み得る。このようなセンサは、半径の変化を連続変数として測定することができるか、又はセンサ素子がローラー軸に近づく及び離れる方向に移動するとONとOFF状態との間で切り替えられる電気スイッチを更に含み得る。従って、センサが出力する測定信号は必然的にアナログ又はデジタルである。
【0019】
エアロゾル生成装置は更に、加熱チャンバに受容されたエアロゾル生成物品を加熱する加熱器と、ローラーの回転数を数えるカウンタと、カウンタが所定の回転数を数えたときに加熱器を作動させるコントローラとを含み得る。エアロゾル生成物品が所定の挿入経路に沿って挿入されるときにローラーの回転数を数えることにより、装置は、物品が移動した距離を測定して、物品が加熱チャンバに完全に挿入された時点を判定することができる。これにより、高温にさらされる恐れがある加熱チャンバの遠位端にセンサを更に設置する必要がなくなる。
【0020】
本発明は更に、エアロゾル生成物品がエアロゾル生成装置の加熱チャンバに挿入されるか又は加熱チャンバから引き抜かれる時点を判定する方法を提供し、本方法は、
エアロゾル生成物品を、加熱チャンバへ、又は加熱チャンバから所定の挿入経路に沿って移動させるステップと、
挿入経路にほぼ垂直なローラー軸回りに回転するために設置されたローラーの表面にエアロゾル生成物品を係合させることにより、ローラーを回転させるステップと、
ローラーの回転方向を判定するために感知手段を使用するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるエアロゾル生成装置の模式的立面図である。
図2図1の線A-Aで切った模式的平面図である。
図3-6】本発明による、異なる種類のローラープロパティ及びそれらの測定に用いられ得るセンサを模式的に示す。
図7-12】本発明による指標とセンサの可能な配置のいくつかの例、及びそれらをローラーの回転方向の導出に使用する仕方を示す。番号が付与された各図面は、ローラーに関連付けた指標とセンサの配置を模式的に示す図Aと、センサが出力した信号を時間に対してプロットした図Bとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、筐体2内で組み立てられた携帯式エアロゾル生成装置1を示す。筐体2は電池4及び制御回路6を含むが詳細には図示しない。電池4は従来型であり得、装置1の電源として機能する。制御回路6は電池4から電力を受け取り、電池4から消耗品10を加熱する加熱器8への電力供給を含む装置1の動作を制御する。制御回路6は、以下に例を挙げる1つ以上のセンサから受信する信号に応答して装置1の動作を変化させることができる。装置1はまた、使用者インターフェース(図示せず)を含み得、例えば光、音又はディスプレイ画面を介して使用者に情報を伝達するか、又は例えばボタン又はタッチ画面を介して使用者から指示を受け取るために用いられる。本装置は更に、遠隔装置に情報を送信する、及び/又は遠隔装置から情報を受信する送信器/受信器(図示せず)を含み得る。送信器/受信器は、任意の適当な通信技術、好適にはBluetooth(登録商標)又はWiFi等の無線技術を使用することができる。遠隔装置は、使用者のスマートフォンであり得、使用者に情報を提供する、使用者から指示を受け取る、又は制御回路6向けにデータ処理を実行するために使用することができる。遠隔装置は代替的に、例えば装置1の製造業者が運用する中央コンピュータであり得、装置1の使用状況に関するデータを収集及び保存する、装置1の制御回路6のデータ処理を実行する、又は装置1にデータを提供するため、例えばソフトウェアのアップグレードに使用することができる。
【0023】
筐体2は、一端が閉じた加熱チャンバ12を含む。加熱チャンバ12の他端は筐体2の開口部14を介して装置の外部に開いている。装置1の不使用時に開口部14を横断移動して閉鎖できるスライド式カバー16が設けられ得る。加熱チャンバ12は、消耗品10の近位端19が開口部14を通って装置1から突出し、喫煙セッション中の使用者の口内に受容できるように、消耗品10の遠位端18を受容するサイズ及び形状を有する。例えば、加熱チャンバ12は、典型的な円筒形の消耗品10を受容するためにほぼ円形の断面を有し得る。他の形状の消耗品10も知られており、例えば平坦なカードの形状の場合、加熱チャンバ12は断面がほぼ矩形のスロットの形式であり得る。加熱チャンバ12の内部寸法は、使用者が消耗品10の近位端19を吸引すると、空気が開口部14から流れて遠位端18に引き込まれるための空間が外側の周りに生じるように、消耗品10の外部寸法よりも僅かに大きくてよい。
【0024】
消耗品10は、開口部14を通して加熱チャンバ12に挿入され、矢印21で示すように、所定の挿入経路20に沿って加熱チャンバ12に完全に挿入されると所望の位置に到達する。開口部14の断面は、使用者が消耗品10を開口部14に挿入し易くするために、加熱チャンバ12の断面よりも若干大きくてよい。開口部14と加熱チャンバ12の間に喉部22が設けられていてよく、喉部22の断面は、消耗品10を挿入経路20に沿って所望の位置に向けて誘導するために開口部14から内側に向かって先細にされている。喉部22は(図示するように)加熱チャンバ12の壁と一体的に形成され得るか、又は加熱チャンバ12内の高温に耐える必要のない材料で形成された別個の要素であり得る。喉部22はローラー26の回転取り付け場所を提供する。消耗品10を所望の位置で支持するために突起23が加熱チャンバ12の内部に設けられ得る。消耗品10が、その後、同一の挿入経路20に沿って反対方向に加熱チャンバ12から引き抜かれ得ることが理解されよう。
【0025】
消耗品10は、自身の遠位端18又はその近傍にエアロゾル生成基材24を含む。エアロゾル生成基材24の温度が上昇すると、エアロゾル生成基材は、消耗品の近位端19を介して使用者の口及び肺に吸入され得る蒸気又はエアロゾルを生成する。エアロゾルは、ニコチン等の活性成分及び香料等の追加的成分を含み得る。エアロゾル生成基材24と近位端19との間隙により、エアロゾルが吸入される前に適切な温度まで冷却する機会が与えられる。この間隙はフィルター(図示せず)も含み得る。
【0026】
加熱器8は、加熱チャンバ12の内部を加熱して、加熱チャンバ12内に受容された消耗品10のエアロゾル生成基材24の温度を上昇させるために構成されている。例えば、加熱器8は、加熱チャンバ12内のサセプタ(図示せず)に熱を誘導するために起動可能な誘導コイルを加熱チャンバ12の周囲に含み得る。他の実施形態において、加熱器8は抵抗加熱を使用し得る。加熱器8は、消耗品10に直接接触してその内部に熱を伝導するブレード又は他の素子(図示せず)を含み得る。追加的又は代替的に、加熱器8は、消耗品10の遠位端18に流れ込む前の空気を予熱するために設計され得る。エネルギーを節約し、且つエアロゾル生成物質の温度が過度に上昇するのを防止するために、装置1は、加熱チャンバ12を通る空気の動きを検知できる圧力センサ又は流量センサ(図示せず)を含み得、これにより制御回路6は、使用者が消耗品10を吸引していると判定した場合のみ加熱器8を起動する。
【0027】
本発明によれば、ローラー26が(図2に見られるように)挿入経路20の線にほぼ垂直な軸28回りに回転するためにエアロゾル生成装置1に設置されている。ローラー26の周面30が、挿入経路20に置かれた消耗品10の表面に接触するために加熱チャンバ12又は喉部22の内部へ僅かに伸長している。消耗品10が(矢印21で示す)挿入経路20に沿って加熱チャンバ内に挿入されるに伴い、消耗品10の表面とローラー26との摩擦により、ローラー26が一方向(図1に矢印32で示す反時計回り)に回転する。消耗品10が挿入経路20に沿って反対方向に加熱チャンバから引き抜かれたならば、消耗品10の表面とローラー26との摩擦により、ローラー26が反対方向(図1の時計回り)に回転する。ローラー26の表面30と消耗品10の表面との摩擦接触は、ローラー表面30をテクスチャ化するか、又はゴム等の弾性材料又は高摩擦材料から形成することにより強化され得る。ローラー26は、好適には、消耗品10が開口部14に入った直後に消耗品10挿入が検知されるように、開口部14の比較的近くに設置されている。ローラー26の直径及び位置は、好ましくは、消耗品10がローラー26との最初の接触から加熱チャンバ12に完全に挿入されるまで移動するのに従って、ローラー26を少なくとも1回全回転させるために駆動するようであるべきである。
【0028】
ローラー26の全てのプロパティがローラー軸28回りに完全に円対称であるわけではなく、軸28回りの角度に応じて変化する少なくとも1つのプロパティ(後述)がある。ローラー26に隣接して1つ以上のセンサ34が配置されており、ローラー26が回転するとプロパティの変化を測定することができる。1つ以上のセンサ34は、単独で、又は制御回路6が提供する論理と組み合わせてローラー26の回転方向を検知する感知手段を形成する。回転方向から、制御回路6は、消耗品10が挿入される又は引き抜かれる時点を認識して、適切な仕方でエアロゾル生成装置1を動作させることにより応答することができる。例えば、消耗品10が挿入されるときに装置1を起動するか、又は起動する前に、消耗品10が装置1での使用に適していることを認証する及び/又は使用者を装置1の認可された使用者として認証するステップを実行し得る。消耗品10が引き抜かれると、制御回路6は装置1を停止し、終了した直後の喫煙セッションの詳細内容の記録又は送信等、他のステップを行うことができる。
【0029】
センサ34は、ローラー軸28回りの角度に応じて変化するローラー26のプロパティを測定することができるので、測定はローラー26の各回転と共に周期的に繰り返される。従って、感知手段が回転数を数えて、ローラー26の既知の周長から、消耗品10が装置内にどの程度挿入されたか(又は装置から引き抜かれたか)を判定することは容易である。これは特に、消耗品10が加熱チャンバ12に完全に挿入されていないためエアロゾル生成基材24が加熱器8による加熱に最適な位置に存在しない場合に、制御回路6がエアロゾル生成装置1の起動を阻止できるようにする。この状況において、制御回路6は、好適には、消耗品10が正しく挿入されていない旨の警告を使用者に発する。
【0030】
図2図1の線A-Aで切った模式的平面図である。同図は円筒状の消耗品10の軸にほぼ垂直なローラー軸28回りに回転するために設置されたローラー26を示している。好適には、ローラー26の両端はベアリング(図示せず)に設置されているが、ローラーのボア孔を通る軸回りに回転することもできる。図2に、センサ34が、消耗品10に接触する表面30からローラーの軸方向にどの程度ずれ得るかを示している。これにより、センサ34により検知されるローラー26の指標部分36を接触面30から分離することができる。特に、センサ34により測定されるローラー26の変化するプロパティがローラー26の半径である場合、消耗品10との良好な接触を維持するために、接触面30の半径が均一なまま指標部分36の半径を自由に変化させることができる。代替的に、接触面30が消耗品10と高摩擦係合するために設計されているのに対し、センサ34は指標部分36と摺動接触するために設計され得る。
【0031】
図2に、消耗品の他の部分よりも半径が僅かに大きいローラー26の接触面30を示す。余分な半径は、消耗品10の包装紙を窪ませることができる浅い歯(図示せず)、又は消耗品10がローラー26を通過して移動すると変形して表面を掴むことができるゴム等の弾性材料のスリーブにより占有され得る。他の実施形態において、ローラー26の接触面30と指標部分36とは、互いに軸方向に整列し得、1つ以上のセンサ34も同様に消耗品10の通過を妨げないローラー軸28の角度位置に整列している。更に他の実施形態において、ローラー26の測定可能なプロパティは、明確な指標部分36が存在しないように、ローラー26の軸方向の全長にわたり存在し得る。
【0032】
本明細書において、用語「指標」は、ローラー軸28回りを角度に応じて変化するローラー26のプロパティに関連して、センサ34により測定可能であって、センサ34を通過して回転するローラー26の角度位置の特定に使用可能なプロパティの任意の特徴を意味するために用いられる。指標は、使用する感知手段との関連でのみ良好に画定でき、例えば、連続的に変化するプロパティの測定値が所定の閾値を超える角度位置であり得る。これを念頭に、感知手段が指標を検知するか否かもローラー26の回転方向に依存する場合があり、本発明の所定の実施形態において、プロパティの測定値が閾値を超えて上昇したならば指標が検知されたならば、ローラー26が反対方向に回転している場合、ローラー26の同一角度位置において、値は逆に閾値を下回る可能性が高い。更に、指標は必ずしもローラー26の全周回りで一意な角度位置を特定する必要はなく、指標は、周長回りで特定可能なパターン(繰り返しパターンを含む)の一部を形成する場合も依然として役立ち得る。
【0033】
図3~6に、ローラー26の指標部分36の異なる種類のプロパティ、及びそれらを測定するためにセンサ34の可能な使用方法を模式的に示す。
【0034】
図3において、変化するプロパティは磁場である。永久磁石38がローラー26の中央に設置されており、磁石38の南北軸はローラー軸28にほぼ垂直であるため、磁石38のN極はローラー26の一方の半円筒内に、磁石38のS極は他方の半円筒内にある。センサ34は、ローラー26の指標部分36の表面の近傍に配置されたホール効果センサ等の磁場センサ40であり、ローラー26の回転に伴い永久磁石38に起因する磁場の変化を検知できる。指標は、例えば、測定された磁場が負から正(又は南から北)に変化するローラー26の角度位置として画定できる。永久磁石38がローラー26の中央に設置されることは必須でない。ローラー26がバランスを失うのを防ぐ適切なカウンタウェイトを使用して単一の磁石を中心から外して設置され得るか、又は各々が回転してセンサ34を通過する際に指標を画定する複数の磁石をローラー26の周長回りに配置され得る。
【0035】
磁石を使用して回転方向を検知する他の方法も容易に想到される。例えば、図3に示すような永久磁石により生じる回転磁場は、ダイナモとして機能してコイルに電流を誘導できる。このような電流は検知可能であって、その方向がローラー26の回転方向を示す場合がある。
【0036】
図4においても、変化するプロパティは同様に磁場であり、センサ34は同様にホール効果センサ等の磁場センサ40である。しかし、この場合磁場はローラー26の外部の固定磁石41により提供され、磁石は永久磁石であっても、又はエアロゾル生成装置1の使用中の場合のみ動作する電磁石であってもよい。この場合、ローラー軸28回りの角度に応じて変化するローラー26のプロパティは磁化率又は磁化性である。図4に、鉄等の比較的磁化率が高い材料から形成されている円筒形ローラー26の一方の半円筒42を示す一方、ローラー26の他方の半円筒は比較的磁化率の低い材料から形成されている。ローラー26の回転に伴い、固定磁石41からの磁力線はローラー26の材料を通して様々な程度に逸らされ、磁場センサ40は自身の固定位置で異なる磁場強度を測定し、そこから1つ以上の指標を判定してローラー26の角度位置を特定できる。
【0037】
ローラー26が、磁化率が比較的高い材料と低い材料との間で丁度半分に分割されることは必須ではない。例えば、1回又は複数回挿入された高磁化率材料を本来は均一なローラー材料に埋め込んでローラー26の周長回りに配置された位置に1つ以上の指標を形成してもよい。
【0038】
図5に、ローラー軸28回りの角度に応じて変化するプロパティがローラーの半径であるローラー26を示す。本例において、ローラーの指標部分36は、周長の大部分でほぼ均一な半径を有している。しかし、狭い範囲の角度では、半径が増大して半径方向の突起44が形成される。ローラー26の半径を測定可能なセンサ34を、ローラー26の回転に伴いローラー26の表面上を摺動するピン45として模式的に示している。ピン45は、ピン45を半径方向内側に押し付けるばね46の力によりローラー表面と接触し続ける。ピン45は、少なくともローラー軸28に垂直な面において、半径方向突起44がセンサ34を通過して移動したならばピン45が上に跨ってピン45をばね46の力に抗して半径方向外側に向けてずらすために先端が丸く形成されている。手段(図示せず)がピン45の半径方向の移動に応答して、ローラー26の変化する半径を表す信号を生成する。ピン45の半径方向の移動は単に、スイッチ(図示せず)を動作させてON又はOFFのいずれかの信号を生成してよく、これによりローラー26の周長回りに配置された複数のこのような突起44を使用してデジタルコードを信号内に生成できることが理解されよう。
【0039】
ローラー軸28周りの指標位置を、半径方向突起44ではなく、図5に破線で示すように半径方向凹部48により画定することもできる。このような凹部48が回転してセンサ34の角度位置を通過するとき、ピン45は外側ではなく半径方向内側に向かって移動する。凹部48は、少なくともピン45の幅を収容するのに充分な広さが必要なため、突起44よりも大きな角度にわたり伸長している状態で示されている。突起44と凹部48を組み合わせての使用は排除されておらず、その結果、センサは3つの可能な状態、例えばゼロ、正又は負を有する信号を生成する。
【0040】
図5に示された突起44及び凹部48は、本質的に「正方形」であり、すなわちそれらの角度方向の長さにわたり、各々の半径がほぼ均一に増減することにより形成されている。これは、特徴44,48の始点又は終点でピン45が回転してセンサを通過する際に比較的急速に移動することにつながる。(ピン45の先端が丸みを帯びていてローラー26の滑らかな回転を保証するため、センサ34により生成される信号は、突起44又は凹部48と全く同一の正方形プロファイルを有することはない)。このような形状の突起44又は凹部48は、2状態(ON/OFF)の出力信号が望まれる場合に適している。図6に、角度に応じて半径がより緩やかに変化する半径方向突起50の場合の代替的な可能性を示す。これによりローラー26の回転に対する抵抗が少なくなり、センサ34が、ピン45の位置をON又はOFF信号ではなく連続的な変数として測定する場合により適している。図6の半径方向突起50は、依然として本来均一な半径からの離散的な突起として示されているが、半径はローラー26の全周にわたり滑らかに変化するので、「既定の」半径を指定することが全く不可能であることが理解されよう。
【0041】
図示するもの以外の種類のセンサが、本発明による装置に採用され得る。例えば、図5に示すような半径方向突起44は、ローラー軸28に平行に照射される光ビームを遮ることにより検知され得る。その場合、半径方向突起44は、軸方向に大きい広がりを有していない薄い円板の一部として形成され得、携帯式エアロゾル生成装置1の限られた空間では利点となろう。ローラー軸28回りの角度に応じて変化し得るプロパティの他の例、及びそれらを測定するセンサの他の例が読者には明らかであろう。
【0042】
上述の例のいくつかにおいて、指標及びセンサの位置を交換することが原理的に可能であり、それにより1つ以上のセンサがローラーと共に回転し、センサは、ローラーを通過して移動するときに、ローラーの周囲の固定角度位置に配置された指標を検知することに留意されたい。実際には、センサに電力を供給してセンサから測定信号を受信することができる電気回路の一部を形成するために回転するローラーに設置されたセンサに電気的に接続することはより困難である。
【0043】
図7~12に、本発明による指標及びセンサの可能な配置のいくつかの例、並びにローラー26の回転方向を導出するためにそれらを使用する方法を示す。各々の場合において一対の図面があり、それらのうち図Aは指標及びセンサの配置を模式的に示し、図Bはセンサが出力する信号を時間に対してプロットしたものである。図Bが時間に関して鏡面非対称であることが分かり、これは、図示する信号のパターンを使用してローラー26の回転方向を判定することができることを意味する。
【0044】
図7Aに、永久磁石(図7Aに示さず)が、自身の2つの半部分が磁場のN極とS極として機能するようにローラー26に設置されている図3と同様のローラー26を示す。s及びsとラベル付けされた2つの磁場センサ34がローラー26に隣接する固定角度位置に配置されている。センサ34は180°未満の角度間隔で配置されている。本例では、これらは約90°の角度間隔を空けている。ローラー26は2つの別個の極に分かれているように示されているが、実際には、各センサ34が測定する磁場は、ローラー26が回転して通過するのに伴い、滑らかに変化するであろう。ローラー26が回転すると、各センサ34は、図7Bの各々の出力信号61、62により示すように、ほぼ正弦波として変化する磁場を測定することができる。センサs、sは異なる角度位置にあるため、2つの波61、62は位相がずれており、本例では、センサsからの信号61は、センサsからの信号62よりも約90°だけ先行している。
【0045】
ローラー26の指標は、各信号61、62の周期的曲線上の一貫した特定可能な指標点65、例えば信号が負値から正値に遷移する点65により特定することができる。これは実際には、ローラー26がS極からN極に遷移するローラー26の周長上の角度位置に対応し得るが、2つのセンサ34により一貫して特定することができれば、指標の物理的解釈は重要ではない。感知手段は、制御回路6の一部として、又は自身の専用回路(図示せず)に実装されてもよく、各々の信号における指標65のタイミングを比較してローラー26の回転方向を判定する。
【0046】
感知手段は、第1のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の動きを検知してから、第2のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の動きを検知するまでの第1の時間間隔Δt12を判定する。感知手段はまた、第2のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点から、第1のセンサsが再び自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点までの第2の時間間隔Δt21を判定する。ローラー26の初期位置は未知であるため、2つの時間間隔はどちらの順序で生成してもよい。第1の時間間隔Δt12は必ずしも最初に検知されなくてもよい。図7Bから第1の時間間隔Δt12が第2の時間間隔Δt21よりも短いことが分かり、この場合、ローラー26が時計回りに回転していることを示している。センサsからの信号61の位相がセンサsからの信号62より進んでいるのではなく遅れている場合、第1の時間間隔Δt12は第2の時間間隔Δt21よりも長くなり、ローラー26が反時計回りに移動していることを示す。このことから、第1と第2のセンサs、sの位置間の角度が180°になり得ない理由が理解されよう。その場合、2つの波の位相は180°となり、パターンは時間に関して鏡面対称となる。換言すれば、ローラー26が反対方向に回転している場合も同一のように見え、この配置を用いてローラー26の回転方向を判定することはできないであろう。
【0047】
図7A及び図7Bに示す実施形態は、ローラー26が全回転する間の2つの時間間隔Δt12とΔt21の比較に依存するため、これら2つの時間間隔が測定される間、ローラー26がほぼ一定の速度で回転すること、すなわち、消耗品10がほぼ一定の速度で挿入又は引き抜かれることに依存する。センサsとsの角度間隔が180°に近過ぎない場合、これは合理的な仮定である。例えば、図7Bに示す実施形態において、ローラー26が一定速度で回転するとき、第2の時間間隔Δt21は、第1の時間間隔Δt12よりも3倍長い。これにより、使用者は、2つの時間間隔の長さを等しくするために、ローラー26が1回転する間に消耗品10の移動速度を極端に変化させる必要があり、その結果回転方向の誤検知が生じるおそれがある。挿入又は引き抜きの速度の変化は移動の開始又は終了付近で生じる可能性が最も高いため、これが懸念される場合、感知手段は、例えば回転方向を判定する前にローラー26の最初の検知された回転を無視することにより、速度変化を許容するために構成され得る。
【0048】
図8Aに、引き伸ばした三角形52により模式的に示すローラー26の測定されたプロパティが、鏡面非対称なパターンでローラー軸回りの角度に応じて変化するローラー26を示す。例えば、測定されたプロパティがローラー26の半径であれば、少なくともある範囲の角度にわたり、半径は徐々に増大して滑らかなランプを形成することができ、傾斜は急峻な段差で終了して初期値に戻る。プロパティが非対称なパターンで変化するため、ローラーが回転してsとラベル付けされた単一のセンサ34を通過して移動するのに伴いプロパティの変化を測定することにより、ローラー26の回転方向を判定することができる。
【0049】
図8Bに、直前に述べたパターンで変化するローラー26の半径を測定するセンサ34からの信号61の一例を示す。ローラー26の周長上で半径が変化するランプ状のパターンが、信号61のランプ状の三角波パターンに反映される。(本例において、センサ34は、ON又はOFFの2状態だけでなく、ある範囲のプロパティ値を測定できることが必要である。)信号が高い値から自身の元の値に戻るまで急激に低下する「ランプ」の終点における曲線上の点65により、指標を特定することができる。ローラー26が反対方向に回転している場合、このような急降下はなく、ローラー26の同一角度位置で値が急上昇するであろう。従って、感知手段は信号61を使用してローラー26の回転方向を判定することができる。
【0050】
ローラー軸28に関して鏡面非対称であるプロパティの任意の変化パターンを上述のように使用して、回転方向を判定できることが理解されよう。パターンはランプ状である必要がない。パターンは、図8Aに見られるように、ローラー26の全周にわたり伸長し得、又は周長の一部だけにわたり伸長し得る。パターンは、ローラー26が完全に1回転する前に回転方向を判定できるように周長上で繰り返され得る。
【0051】
図9A~12Aにおいて、三角形を使用してローラー26上の指標位置を模式的に示しているが、記述する原理は、これらの指標が物理的に実装される仕方、例えば、回転軸28回りの角度に応じて変化するローラー26のプロパティには依存しない。これらの図において、指標及びセンサ34の配置だけが重要である。
【0052】
図9B~12Bにおいて、センサ34が測定した信号61、62、63は、指標の検知を時間軸上の点65、66として模式的に示している。上述の原理は、センサが出力する信号における指標の特定の現れ方に依存しないが、例には、立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジ、ゼロ又は別の閾値の交差(いずれかの方向)、ピーク又は谷等が含まれる。これらの図面では信号61、62、63内で検知される指標65、66の相対タイミングだけが重要である。
【0053】
図9Aに、指標54がローラー26上の個別の角度位置として示されていること以外は図7Aと同様の配置を示す。これは例えば、図7Aに示す磁石のN極とS極の間の遷移、又はローラー26の角度変化プロパティにおける他の任意の特定可能な特徴に対応し得る。再び、s及びsとラベル付けされた2つのセンサ34がローラー26に隣接する固定角度位置に配置されている。(ローラー26の半径等、角度的に変化するいくつかのプロパティの測定については、センサ34はローラー26の表面に接触し得ることが理解されよう。)センサ34は、180°未満、例えば約90°の間隔で配置されている。
【0054】
図9Bに、ローラー26が回転するときに第1のセンサs1及び第2のセンサs2からの測定において検知される指標のタイミングを各々表す、2つの信号61、62を示す。ローラー26が一定速度で回転する場合、各々の時間軸61、62に沿った指標の位置は、ローラー軸28回りの(任意のゼロ位置に相対的な)2つのセンサ34の角度位置に対応する。図7Bと同様に、感知手段は、第1のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点から、第2のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点までの第1の時間間隔Δt12を判定する。感知手段はまた、第2のセンサsが、自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点から、第1のセンサsが再び自身の角度位置を通過した指標の移動を検知する時点までの第2の時間間隔Δt21を判定する。図9Bにおいて、第1の時間間隔Δt12は第2の時間間隔Δt21よりも短く、この場合、ローラー26が時計回りに回転していることを示す。第1の時間間隔Δt12が第2の時間間隔Δt21よりも長ければローラー26が反時計回りに動いていることを示す。
【0055】
図10Aに、ローラー軸28回りの異なる角度位置でローラー26に隣接して配置され、s、s、sとラベル付けされた3つのセンサ34を有する本発明の実施形態を模式的に示す。これらを120°のほぼ等しい角度間隔で示しているが、それは必須ではない。
【0056】
図10Bに、ローラー26が回転するときに第1、第2及び第3のセンサs、s及びsからの測定値で検知される指標65のタイミングを各々表す、3つの信号61、62、63を示す。 この場合、指標65のタイミングではなく、指標65が生じる順序が重要である。図示する例において、指標65はs、s、sの順序(どれが最初でもよい)で周期的に検知され、この場合ローラー26が時計回りに回転していることを示している。指標65が逆の順序s、s、sで周期的に検知された場合、ローラー26が反時計回りに移動していることを示す。指標65が3つのセンサ34により検知される順序は、たとえローラーの回転速度が極端に変化しても(測定中に方向が反転しない限り)同じままであるので、消耗品10の不均一な挿入又は引き抜きが予想される場合には、3つのセンサ34を有する配置の方がより堅牢である。
【0057】
図11Aに、ローラー26に隣接する角度位置にsとラベル付けされた単一のセンサ34が配置されている本発明の一実施形態を模式的に示す。ローラー26は、センサ34が識別可能な2つの指標54、55を備える。例えば、指標54、55は各々、図5の放射状突起44及び凹部48、又は図8Aに関連して記述するランプ状突起の始点及び終点、又は磁場が立ち上がり及び立ち下がり方向で閾値を超えた時点の信号を表し得る。指標54、55は、ローラー26上のローラー軸28回りの180°未満の角度位置に配置される。2つの測定状態しか有していないセンサ34(例:ON及びOFF位置を有するスイッチ)は2種類の指標54、55を識別できる可能性は低いことに留意されたい。
【0058】
図11Bに、ローラー26が回転するときのセンサsからの測定信号における第1の指標54の検知65と第2の指標55の検知66とのタイミングを表す信号61を示す。感知手段は、センサsが、自身の角度位置を通過した第1の指標54の移動を検知する時点から、センサsが、自身の角度位置を通過した第2の指標55の移動を検知するまでの第1の時間間隔Δt12を判定する。感知手段はまた、センサsが、自身の角度位置を通過した第2の指標55の移動を検知する時点から、センサsが再び自身の角度位置を通過した第1の指標54の移動を検知する時点までの第2の時間間隔Δt21を判定する。図11Bにおいて、第1の時間間隔Δt12は第2の時間間隔Δt21よりも短く、この場合、ローラー26が時計回りに回転していることを示している。第1の時間間隔Δt12が第2の時間間隔Δt21よりも長い場合、それはローラー26が反時計回りに移動していることを示すであろう。
【0059】
図12Aに、sとラベル付けされた単一のセンサ34がローラー26に隣接する角度位置に配置されている、本発明の別の実施形態を模式的に示す。本実施形態において、ローラー26は3つの指標54を含み、これらは、センサ34が区別できないという意味で同一であり得る(従って、簡単なON/OFFセンサが使用され得る)。指標54は、隣接する指標のペア同士の3つの角度が全て異なるようにローラー軸28回りに分散された角度位置でローラー26上に配置されている。図示する実施形態において、隣接する指標のペア同士の各々の角度の比率はほぼ1:2:4であるが、これは必須ではない。
【0060】
図12Bに、ローラー26の回転によりセンサ34の角度位置を通過して指標54が搬送されるときのセンサsからの測定信号における指標の検知65のタイミングを表す、信号61を示す。各個別の検知65は、指標54の任意の1つを表し得るが、(測定中にローラー26の回転方向が逆転しないと仮定して)周期的に検知されなければならないことが知られている。感知手段は、センサsにより指標の4つの連続する検知65間の3つの時間間隔Δt、Δt、Δtを判定する。感知手段は、次いで、一連の時間間隔の持続時間を比較してローラー26の回転方向を判定する。図12Bにおいて、時間間隔Δt、Δt、Δtは、持続時間の昇順に周期的に生じ(それらのいずれも周期内中に最初に生成され得るが)、ローラー26が時計回りに回転していることを示している。時間間隔Δt、Δt、Δtが持続時間の降順に周期的に生じる場合、それは、ローラー26が反時計回りに移動していることを示すであろう。
【0061】
ローラーが回転するときのセンサ信号における指標の検知間の時間間隔の比較に依存する実施形態において、比較する時間間隔について異なる選択が可能であることに留意されたい。例えば、図7Bを参照するに、時間間隔Δt12とΔt21とを相互に比較するのではなく、それらの一方は、ローラーが完全に回転する際に測定される合計時間間隔ΔTと比較され得る。図9B、11B、12Bの実施形態についても同様の代替策が可能であり、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0062】
本発明の図示する実施形態は、ローラー26上の単一の指標54と、ローラー軸28回りに分散配置された複数のセンサ34との組み合わせた使用、又は、ローラー26の周囲に分散配置された複数の指標54、55と、ローラー26に隣接する固定角度位置に配置された単一のセンサ34との組み合わせた使用を開示する。複数のセンサ34と複数の指標54、55とを組み合わせることも可能であるが、生成される信号に曖昧さが生じないように注意する必要がある。例えば、図9Aを参照すると、図示の指標54から180°の角度位置にあるローラー26に第2の指標を設けることで、ローラー26が全回転ではなく半回転しか完了していない時点でローラー26の回転方向を判定できる利点が得られることが容易に想像できる。これが正しいのは、センサsとsの角度間隔が90°未満に縮小された場合に限られる。センサの間隔が90°且つ指標の間隔が180°である場合、各々のセンサs、sは、ローラー26がいずれかの方向に90°回転する都度、移動する指標を交互に検知することになり、従ってパターンは対称になり、回転方向を判定することはできないであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
【国際調査報告】