(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20240905BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H03F1/30
H03F3/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505107
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022075737
(87)【国際公開番号】W WO2023049615
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310009199
【氏名又は名称】メイコム テクノロジー ソリューションズ ホールディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ドゥイ
(72)【発明者】
【氏名】モロニー、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ダゴスティーノ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チョン
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC02
5J500AC03
5J500AC04
5J500AC81
5J500AF17
5J500AH02
5J500AH07
5J500AH09
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK02
5J500AK11
5J500AK42
5J500AM13
5J500AS13
5J500AT01
5J500NF10
5J500NH17
(57)【要約】
バイアス安定化を備えた増幅器の態様が説明される。一例では、増幅器は、入力端子を有する出力増幅段と、入力端子に結合されたバイアスノードを有するバイアスレッグと、出力増幅段の入力端子とバイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークとを含む。バイアスフィードバックネットワークは、一例では、差動増幅器、バイパス段、および基準電圧生成器を含むことができる。差動増幅器は、出力増幅段のベース端子におけるバイアス電圧と基準電圧生成器によって生成された電圧基準との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成することができる。バイアスフィードバックネットワークは、バイアス制御信号を生成し、フィードバックに基づいてバイアス電圧を制御して、安定した性能のために、プロセス変動、温度変動、利得変動、および他の変動にわたってバイアス電圧およびバイアス電流を一定に維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス安定化を備えた増幅器であって、
入力端子を含む出力増幅段と、
前記出力増幅段の前記入力端子に結合されたバイアスノードを含むバイアスレッグと、
前記出力増幅段の前記入力端子と前記バイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークと、を備える増幅器。
【請求項2】
前記バイアスレッグは、第1のバイアストランジスタおよび第2のバイアストランジスタを含む、請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記第1のバイアストランジスタは、電源電圧に結合されたコレクタと、前記第2のバイアストランジスタに結合されたエミッタと、前記増幅器の入力に結合されたベースとを含んでおり、
前記第2のバイアストランジスタは、前記第1のバイアストランジスタに結合されたコレクタと、接地に結合されたエミッタと、前記バイアスフィードバックネットワークからのバイアス制御信号に結合されたベースとを含んでいる、請求項2に記載の増幅器。
【請求項4】
前記バイアスレッグは、前記第1のバイアストランジスタの前記エミッタと前記第2のバイアストランジスタの前記コレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器をさらに含んでいる、請求項3に記載の増幅器。
【請求項5】
前記バイアスレッグの前記バイアスノードは、前記電圧降下抵抗器と前記第2のバイアストランジスタの前記コレクタとの間に配置されている、請求項4に記載の増幅器。
【請求項6】
前記バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器と、バイパス段と、基準電圧生成器とを含んでいる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項7】
前記差動増幅器の第1の入力は、前記出力増幅段の前記入力端子に結合されており、
前記差動増幅器の第2の入力は、前記基準電圧生成器の出力に結合されており、
前記差動増幅器は、前記差動増幅器の前記第1の入力と前記第2の入力との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成する、請求項6に記載の増幅器。
【請求項8】
前記バイアス制御信号は、前記バイアスレッグへの入力として結合される、請求項7に記載の増幅器。
【請求項9】
前記バイアス制御信号は、前記出力増幅段の前記入力端子に結合された、前記バイアスレッグの前記バイアスノードにおける電位を制御する、請求項7に記載の増幅器。
【請求項10】
前記差動増幅器の動作帯域幅は、前記出力増幅段の動作帯域幅よりも小さい、請求項7に記載の増幅器。
【請求項11】
前記出力増幅段は、バイポーラ接合トランジスタを含んでいる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項12】
前記出力増幅段は、ベースバイアス型のバイポーラ接合トランジスタを含んでいる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項13】
バイアス安定化を備えた増幅器であって、
シングルエンド出力トランジスタ段であって、前記シングルエンド出力トランジスタ段のベースにある入力端子を含んでおり、前記シングルエンド出力トランジスタ段は、ベースバイアス型である、前記シングルエンド出力トランジスタ段と、
前記増幅器のための入力、および前記シングルエンド出力トランジスタ段の前記入力端子に結合されたバイアスノードを含むバイアスレッグと、
前記シングルエンド出力トランジスタ段の前記入力端子と前記バイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークと、を備える増幅器。
【請求項14】
前記バイアスレッグは、コレクタ接地入力トランジスタおよびエミッタ接地バイアストランジスタを含んでいる、請求項13に記載の増幅器。
【請求項15】
前記バイアスレッグは、前記コレクタ接地入力トランジスタのエミッタと前記エミッタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器をさらに含んでいる、請求項14に記載の増幅器。
【請求項16】
前記バイアスレッグの前記バイアスノードは、前記電圧降下抵抗器と前記エミッタ接地バイアストランジスタの前記コレクタとの間に配置されている、請求項15に記載の増幅器。
【請求項17】
前記バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器および基準電圧生成器を含んでおり、
前記差動増幅器は、前記シングルエンド出力トランジスタ段の前記入力端子と前記基準電圧生成器との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成し、
前記バイアス制御信号は、前記バイアスレッグの前記バイアスノードに結合される、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の増幅器。
【請求項18】
バイアス安定化を備えた増幅器であって、
シングルエンド出力トランジスタ段と、
前記増幅器のための入力と、前記シングルエンド出力トランジスタ段の入力端子に結合されたバイアスノードとを含むバイアスレッグと、
前記シングルエンド出力トランジスタ段の前記入力端子と前記バイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークと、を備える増幅器。
【請求項19】
前記バイアスレッグは、
エミッタ接地入力トランジスタおよびコレクタ接地バイアストランジスタと、
前記エミッタ接地入力トランジスタのエミッタと前記コレクタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器と、を備え、前記バイアスレッグの前記バイアスノードが、前記電圧降下抵抗器と前記コレクタ接地バイアストランジスタの前記コレクタとの間に配置されている、請求項18に記載の増幅器。
【請求項20】
前記バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器および基準電圧生成器を含んでおり、
前記差動増幅器は、前記シングルエンド出力トランジスタ段の前記入力端子と前記基準電圧生成器との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成し、
前記バイアス制御信号は、前記バイアスレッグの前記バイアスノードに結合される、請求項18および19のいずれか一項に記載の増幅器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
増幅器は、入力信号の電力レベルを増加させるように設計された電子回路またはデバイスである。増幅器は、通常、少なくとも特定の周波数範囲または帯域幅にわたって線形利得を有するように設計されている。増幅器は、他の特性の中でも特に、入力に対する出力の特性に従って定義することができる。一例として、利得は、増幅器の出力信号と入力信号の大きさの間の比として定義することができ、利得は単位がなく、デシベルで表すことができる。増幅器は、典型的に、特定の動作周波数範囲または帯域幅にわたって線形利得を有するように設計されるが、増幅器はまた、用途に応じて、ある範囲の異なる性能特性を達成するように設計されることもできる。増幅器の他の特性は、他の入力および出力特性、小信号パラメータ、散乱パラメータ、および他の動作特性に従って定義することができる。
【0002】
トランジスタは、一般的に、増幅器として、または増幅器回路の一部として使用される。バイポーラ接合トランジスタ(BJT)などのトランジスタは、トランジスタのどの端子がトランジスタの入力と出力の両方に共通であるかに基づいて、特定のタイプまたはクラスの増幅器として構成され得る。バイポーラ接合トランジスタの場合、増幅器クラスは、エミッタ接地(common emitter)、ベース接地(common base)、およびコレクタ接地(common collector)を含む。電界効果トランジスタ(FET)の場合、増幅器クラスは、ソース接地、ゲート接地、およびドレイン接地を含む。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、バイアス安定化を備えた増幅器について説明する。一例では、増幅器は、入力端子を有する出力増幅段と、入力端子に結合されたバイアスノードを有するバイアスレッグと、出力増幅段の入力端子とバイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークとを含む。バイアスフィードバックネットワークは、一例では、差動増幅器、バイパス段、および基準電圧生成器を含むことができる。差動増幅器は、出力増幅段のベース端子におけるバイアス電圧と基準電圧生成器によって生成された電圧基準との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成することができる。バイアスフィードバックネットワークは、バイアス制御信号を生成し、フィードバックに基づいてバイアス電圧を制御して、増幅器の安定した性能のために、プロセス変動、温度変動、利得変動、および他の変動にわたってバイアス電圧を一定に維持する。
【0004】
実施形態の一態様では、バイアスレッグは、第1のバイアストランジスタおよび第2のバイアストランジスタを含む。第1のバイアストランジスタは、電源電圧に結合されたコレクタと、第2のバイアストランジスタに結合されたエミッタと、増幅器の入力に結合されたベースとを含む。第2のバイアストランジスタは、第1のバイアストランジスタに結合されたコレクタと、接地に結合されたエミッタと、バイアスフィードバックネットワークからのバイアス制御信号に結合されたベースとを含む。他の態様では、バイアスレッグは、第1のバイアストランジスタのエミッタと第2のバイアストランジスタのコレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器をさらに含む。バイアスレッグのバイアスノードは、電圧降下抵抗器と第2のバイアストランジスタのコレクタとの間に配置されている。
【0005】
実施形態の他の態様では、バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器、バイパス段、および基準電圧生成器を含む。差動増幅器の第1の入力は出力増幅段の入力端子に結合され、差動増幅器の第2の入力は基準電圧生成器の出力に結合されている。差動増幅器は、差動増幅器の第1の入力と第2の入力との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成する。バイアス制御信号は、バイアスレッグへの入力として結合される。バイアス制御信号は、出力増幅段の入力端子に結合された、バイアスレッグのバイアスノードにおける電位を制御する。
【0006】
他の態様では、差動増幅器の動作帯域幅は、出力増幅段の動作帯域幅よりも小さい。出力増幅段は、バイポーラ接合トランジスタとして具現化され得る。出力増幅段は、ベースバイアス型のバイポーラ接合トランジスタとして具現化され得る。ベースバイアス型のバイポーラ接合トランジスタは、一例では、シリコンゲルマニウム(SiGe)バイポーラ接合トランジスタとして具現化され得るが、他のタイプのトランジスタ増幅器が出力増幅段のために用いられ得る。
【0007】
別の例では、バイアス安定化を備えた増幅器は、シングルエンド出力トランジスタ段であって、シングルエンド出力トランジスタ段のベースにある入力端子を有しており、シングルエンド出力トランジスタ段は、ベースバイアス型である、シングルエンド出力トランジスタ段を含む。増幅器はまた、増幅器のための入力と、出力トランジスタ段の入力端子に結合されたバイアスノードとを有するバイアスレッグを含む。増幅器はまた、シングルエンド出力トランジスタ段の入力端子とバイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークを含む。
【0008】
実施形態の一態様では、バイアスレッグは、コレクタ接地入力トランジスタおよびエミッタ接地バイアストランジスタを含む。バイアスレッグはまた、コレクタ接地入力トランジスタのエミッタとエミッタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器を含む。バイアスレッグのバイアスノードは、電圧降下抵抗器とエミッタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に配置されている。
【0009】
実施形態の他の態様では、バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器および基準電圧生成器を含む。差動増幅器は、シングルエンド出力トランジスタ段の入力端子と基準電圧生成器との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成し、バイアス制御信号は、バイアスレッグのバイアスノードに結合される。
【0010】
別の例では、バイアス安定化を備えた増幅器は、シングルエンド出力トランジスタ段と、増幅器のための入力およびシングルエンド出力トランジスタ段の入力端子に結合されたバイアスノードを含むバイアスレッグと、出力トランジスタ段の入力端子とバイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークとを含む。バイアスレッグは、エミッタ接地入力トランジスタおよびコレクタ接地バイアストランジスタと、エミッタ接地入力トランジスタのエミッタとコレクタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に直列に結合された電圧降下抵抗器とを含む。バイアスレッグのバイアスノードは、電圧降下抵抗器とコレクタ接地バイアストランジスタのコレクタとの間に配置されている。
【0011】
実施形態の態様では、バイアスフィードバックネットワークは、差動増幅器および基準電圧生成器を備え、差動増幅器は、シングルエンド出力トランジスタ段の入力端子と基準電圧生成器との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成し、バイアス制御信号は、バイアスレッグのバイアスノードに結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の態様については、以下の図面を参照してより良く理解することができる。図面中の要素は、必ずしも一定の縮尺ではなく、その代わりに、事例の原理を図示することに重点が置かれていることに留意されたい。図面では、類似の参照番号は、いくつかの図を通して、類似の又は対応する要素であるが、必ずしも同じではない要素を示す。
【
図1】本明細書で説明する様々な例による差動増幅器を示す図である。
【
図2】本明細書で説明する実施形態の様々な態様による、バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器のブロック図である。
【
図3】本明細書で説明する実施形態の様々な態様による、バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述したように、トランジスタは一般に増幅器として使用される。トランジスタは、トランジスタのどの端子が入力と出力回路の両方に共通であるかに基づいて、特定のタイプまたはクラスの増幅器として構成され得る。シングルバイポーラ接合トランジスタの場合、増幅器クラスは、エミッタ接地、ベース接地、およびコレクタ接地を含む。シングル電界効果トランジスタの場合、増幅器クラスは、ソース接地、ゲート接地、およびドレイン接地を含む。いくつかのトランジスタを互いに結合して、1つまたは複数の増幅段を含む、より大きくかつより複雑な増幅器回路を形成することもできる。そのような増幅器回路の例は、差動増幅器、分布増幅器、専用前置増幅段、低雑音段、出力段、および他の段を含む増幅器を含む。
【0014】
増幅器の設計は、増幅器バイアス、利得、動作帯域幅、入出力特性、小信号パラメータ、安定性、および他の動作特性など、増幅器のいくつかの動作特性の評価を含む。増幅器の安定性は、1つの動作特性として、タイプ(例えば、半導体構造および材料)、バイアス、電力、温度、帯域幅、ならびに増幅器および用途に関連する他の要因に依存する可能性があり、各増幅器設計について安定化特性を評価するとともに、安定化手法を精緻化することが重要である。様々な目的のために増幅器を安定化させるために、いくつかの手法が用いられ得る。一例として、ゲート接地トランジスタを周波数範囲にわたって安定化させるために、シャント接続型ゲートコンデンサ、シャント接続型抵抗器-コンデンサゲートネットワーク、ドレイン-ゲート抵抗器-コンデンサネットワーク、それらの組合せ、および抵抗器およびコンデンサの他のゲート接続ネットワークが用いられ得る。適切な増幅器バイアスはまた、増幅器の安定性にとって重要であり、増幅器バイアスでは、他の考慮事項の中でも特に、増幅器の動作入力バイアスおよび出力範囲を考慮する必要がある。1つの用途に対して1つのタイプの増幅器を安定化させるために用いられる手法は、別の用途に対して別のタイプの増幅器を安定化させるのに適していない場合がある。
【0015】
シングルエンド増幅器は、他の増幅器トポロジに一般的に必要とされる出力インピーダンス平衡が不要で、設計および実装がシンプルであるなどのいくつかの利点を提供する。トランジスタバイアスは、シングルエンド増幅器のいくつかの構成において特に懸念され得る。例えば、バイポーラトランジスタ出力増幅段は、プロセス、電圧、および温度範囲にわたって特に敏感であるそのベース端子で動作するようにバイアスされ得る。このような出力増幅段のコレクタにおける電流出力の指標は、トランジスタのベースにおける電位の指数関数である。出力増幅段のベースに供給されるバイアス電圧のわずかな変化であっても、コレクタ電流の大幅な変動が生じて、増幅器の性能が変化または劣化する可能性がある。
【0016】
上記で概説した状況において、本明細書では、バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器の態様について説明する。一例では、シングルエンド増幅器は、入力端子を有する出力増幅段と、入力端子に結合されたバイアスノードを有するバイアスレッグと、出力増幅段の入力端子とバイアスレッグとの間に結合されたバイアスフィードバックネットワークとを含む。バイアスフィードバックネットワークは、一例では、差動増幅器、バイパス段、および基準電圧生成器を含むことができる。差動増幅器は、出力増幅段のベース端子におけるバイアス電圧と基準電圧生成器によって生成された電圧基準との間の差に基づいてバイアス制御信号を生成することができる。バイアスフィードバックネットワークは、バイアス制御信号を生成し、フィードバックに基づいてバイアス電圧を制御して、増幅器の安定した性能のために、プロセス変動、温度変動、利得変動、および他の変動にわたってバイアス電圧を一定に保持する。
【0017】
図面を参照すると、
図1は、本明細書で説明される様々な例による差動増幅器10を示す。差動増幅器10は、ディスクリート部品を使用して、1つまたは複数の基板上に形成された集積回路デバイスとして、または個別部品と集積デバイスとの組合せとしてなど、様々な態様で具現化することができる。差動増幅器10は、従来の差動増幅器の代表例として提供され、
図2および
図3を参照して以下に説明されるシングルエンド増幅器およびバイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器と対比される。
【0018】
差動増幅器10は、電源電圧(または電位)V+とシンク電圧(または電位)V-との間でそれぞれ動作する。差動増幅器10は、トランジスタQ1,Q2と、抵抗器R1、R2と、電流源I2と、を含む。トランジスタQ1およびQ2のエミッタは電流源12に電気的に結合され、電流源12は、トランジスタQ1およびQ2のエミッタとシンク電圧V-との間に結合されている。電流源12は、差動増幅器10の動作のための定電流バイアスを供給する。電流源12は、一例では電流ミラーとして具現化することができるが、他のタイプの電流源を用いることもできる。トランジスタQ1およびQ2は、図示の例ではバイポーラ接合トランジスタとして具現化することができる。しかしながら、本明細書で説明される概念は、他のタイプのトランジスタおよび能動デバイスに適用可能であるため、任意の特定のタイプのトランジスタに限定されない。
【0019】
抵抗器R1およびR2は、電源電圧V+とトランジスタQ1およびQ2のコレクタとの間にそれぞれ接続されている。トランジスタQ1のベースは、差動増幅器10の非反転入力In+として機能する。トランジスタQ2のベースは、差動増幅器10の反転入力In-として機能する。トランジスタQ1のコレクタは、差動増幅器10の反転出力Out-として機能し、トランジスタQ2のコレクタは、差動増幅器10の非反転出力Out+として機能する。
【0020】
電源電圧V+は、差動増幅器10の用途に応じて任意の適切な電圧とすることができ、シンク電圧V-は、電源電圧V+よりも低い任意の適切な電圧または電位(例えば、場合によっては接地電位)とすることができる。電源電圧V+とシンク電圧V-との間の電位差は、例えば50V~3Vの範囲の電位差などの任意の適切な電位差であり得るが、より大きい電位差、またはより小さい電位差を用いることもできる。
【0021】
差動増幅器10および差動増幅器10の変形例は、広範囲の用途において有用である。例として、差動増幅器10は、シングル入力構成およびデュアル入力構成、平衡出力構成および不平衡出力構成、ならびに他の構成で使用することができる。しかしながら、差動増幅器10は全ての目的に対して理想的なものではない。一例として、差動増幅器10の出力がOut+出力で取り出される場合、差動増幅器10が平衡出力インピーダンスを経験するように、Out-出力を接地に対して整合されたインピーダンスで終端することが有用であり、時には必要であり得る。この終端は、整合されたインピーダンスがインピーダンスマッチングのためにのみ用いられるため、電力の損失または浪費をもたらし得る。
【0022】
シングルエンド増幅器は、場合によっては、差動増幅器10を含む差動増幅器と比較して利点を提供する。しかしながら、シングルエンド増幅器のいくつかの構成によっては、トランジスタのバイアスが特に問題となることがある。例えば、バイポーラトランジスタ出力増幅段は、プロセス、電圧、および温度範囲にわたって特に敏感であるベース端子で動作するようにバイアスされ得る。ベースバイアス型の出力増幅段のコレクタにおける電流は、トランジスタのベースにおける電位の指数関数である。従って、出力増幅段のベースに供給されるバイアス電圧のわずかな変化であっても、コレクタ電流の大幅な変動が生じて、増幅器の性能が変化または劣化する可能性がある。シングルエンド増幅器のためのバイアス安定化および関連する技法について、
図2および
図3を参照しつつ以下に説明する。概念は、例としてバイポーラトランジスタに関連して説明されるが、概念は、FETを含む他のタイプのトランジスタに拡張することができる。従って、バイポーラトランジスタのベースへの言及は、FETのゲートにも適用される。バイポーラトランジスタのエミッタへの言及はFETのソースにも適用され、バイポーラトランジスタのコレクタへの言及はFETのドレインにも適用される。
【0023】
図2は、本明細書で説明する実施形態の様々な態様による、バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器100を示す。増幅器100は、光通信、無線周波数(RF)通信、または他の目的のためのドライバ増幅器として使用することができるが、これらに限定されない。増幅器100は、以下でさらに詳細に説明されるように、バイアス安定化のための回路を組み込んでおり、増幅器100は、本明細書で説明されるバイアス安定化の概念を組み込む増幅器の一例として提供される。他のタイプおよび構成の増幅器も、バイアス安定化の概念を組み込むことができる。
【0024】
可能性のある他の構成要素の中でも特に、増幅器100は、入力110、出力112、バイアスレッグ120、バイアスフィードバックネットワーク130、基準生成器132、および出力増幅段Q10を含む。出力増幅段Q10は、
図2におけるバイポーラ接合トランジスタとして示されている。出力増幅段Q10は、ベース端子、コレクタ端子、およびエミッタ端子を含む。出力増幅段Q10のコレクタは、増幅器100のための上側レール電圧または他の電圧(または電源)に結合され、出力増幅段Q10のコレクタは、増幅器100のための下側レール電圧(または接地)に結合される。場合によっては、抵抗器(または抵抗器ネットワーク)が、Q10のコレクタと上側レール電圧との間に結合され得る。同様に、抵抗器(または抵抗器ネットワーク)が、場合によっては、Q10のエミッタと下側レール電圧(または接地)との間に結合され得る。
【0025】
出力増幅段Q10は、増幅器100のための上側レール電圧(または他の電圧または電源)と下側レール電圧との間でベースがバイアスされる。出力増幅段Q10のベース端子は、
図2のノードAに電気的に結合されている。以下でさらに詳細に説明するように、出力増幅段Q10は、バイアスレッグ120およびバイアスフィードバックネットワーク130の動作に基づいて、ノードAにおいてバイアスされる。
【0026】
出力増幅段Q10は、一例では、シリコンゲルマニウム(SiGe)バイポーラ接合トランジスタとして具現化され得るが、他のタイプのトランジスタとしても具現化することができ、本明細書で説明する概念は、任意の特定のタイプのトランジスタとともに使用することに限定されるものではない。SiGeバイポーラトランジスタは、シリコンバイポーラトランジスタよりも高い順方向利得および低い逆方向利得を有することができる。従って、SiGeバイポーラトランジスタは、より良好な低電流性能および高周波性能を有することができる。ヘテロ接合SiGeバイポーラトランジスタはまた、調整可能なバンドギャップを有することができ、これは、シリコンバイポーラトランジスタよりも柔軟なバンドギャップ調整を提供する。しかしながら、SiGeトランジスタの動作特性は、プロセス変動、電圧変動、および温度変動に特に敏感であり、バイアス安定化は、SiGeおよび他の高利得トランジスタにとって特に重要であり得る。
【0027】
出力増幅段Q10のコレクタを流れる電流は、ベース(即ち、ノードA)に印加される電圧の指数関数である。従って、ノードAに印加される電圧のわずかな変化であっても、動作中に出力増幅段Q10を流れる電流の著しい変動が生じる可能性がある。さらに、SiGeトランジスタの動作特性は、他のタイプのトランジスタと同様に、プロセス変動、電圧変動、および温度変動に特に敏感である。例として、出力増幅段Q10のアルファα、ベータβ、および他の特性は、プロセス変動、電圧変動、および温度変動に敏感である。従って、出力増幅段Q10の直流(DC)バイアス(即ち、特にDCベース-エミッタ電圧Vbe)は、広範囲の動作条件にわたって増幅器100の適切な動作のために、厳密な制御下で安定化されかつ維持されるべきである。これに関連して、バイアスフィードバックネットワーク130は、バイアスレッグ120の動作を制御して、増幅器100のノードAにおいて正確で制御可能なバイアス電圧(動作中に時間とともに変動し得る)を供給するように設計されている。
【0028】
バイアスレッグ120は、いくつかのトランジスタ、抵抗器、および他の構成要素を含む。バイアスレッグ120は、上側電圧V+と下側電圧V-(または接地電位)との間に結合される。V+およびV-電位は、出力増幅段Q10が間に結合される上側レール電圧(または電位)および下側レール電圧(または電位)と同じであっても、異なっていてもよい。増幅器100の入力110はバイアスレッグ120に結合されており、RF入力信号などの任意の入力信号が増幅器100による増幅のために入力110に印加され得る。
【0029】
バイアスレッグ120は、バイアスされた入力信号111を出力増幅段Q10に供給するように構成されている。バイアスレッグ120は、入力110において供給される入力信号と、バイアスフィードバックネットワーク130から供給されるバイアス制御信号131とに基づいて、バイアスされた入力信号111を生成する。バイアスされた入力信号111は、出力増幅段Q10による増幅のための信号成分とともに、出力増幅段Q10のためのバイアス成分(Vbiasとも呼ばれる)を含む。
【0030】
バイアスレッグ120は、バイアスフィードバックネットワーク130から供給されるバイアス制御信号131に少なくとも部分的に基づいて、バイアスされた入力信号111のバイアス成分DC(バイアス電位であり得る)を設定する。従って、バイアスされた入力信号111のバイアス成分は、ベースバイアス型の出力増幅段Q10のベースにバイアス電位を設定する。バイアス成分は、バイアスレッグ120内の特定のノードで取り出された、バイアスレッグ120内の上側電圧V+と下側電圧V-との間の電圧降下に基づいて設定され得る。一例として、バイアスレッグ120を流れる電流の量は、バイアス制御信号131によって制御され、バイアスされた入力信号111は、バイアスレッグ120内の特定のノードと結合され得る。増幅のためのRF信号成分であり得るバイアスされた入力信号111の信号成分は、バイアスされた入力信号111が取り出される同じノード上に存在する、出力増幅段Q10および増幅器100によって増幅された信号である。バイアスレッグ120のより具体的な例は、
図3を参照して以下に説明される。
【0031】
バイアスフィードバックネットワーク130は、他の構成要素の中でも特に、差動増幅器として具現化することができ、場合によってはRFバイパス段を含み得る。RFバイパス段は、増幅器100のためのバイアス制御に集中するために、増幅器100によって増幅されている信号の成分をバイパスする(bypass)ことができる。バイアスフィードバックネットワーク130は、バイアスレッグ120のための入力としてバイアス制御信号131を生成するように構成され得る。例えば、バイアスフィードバックネットワーク130内の差動増幅器は、基準生成器132によって供給される基準電圧Vrefと、ノードAにおけるバイアスされた入力信号111のバイアス成分Vbiasとを比較し、VrefとVbiasとの差または比較に基づいてバイアス制御信号131を生成することができる。従って、バイアス制御信号131は、基準電圧Vrefとバイアス成分Vbiasとの間の差を表す。バイアスフィードバックネットワーク130によって提供される制御ループは、出力増幅段Q10に関する所望のバイアスまたは目標バイアスに基づいて、VrefとVbiasとの間の差を最小化または低減するように機能する。バイアスフィードバックネットワーク130のより具体的な例は、
図3を参照して以下に説明される。
【0032】
基準生成器132は、電流ミラー、抵抗器、および好ましくは異なる動作電圧、温度範囲などにわたって適切な精度で基準電圧Vrefを生成することができる他の回路部品を使用して具現化することができる。場合によっては、基準生成器132は、1つまたは複数の異なる基準電圧を経時的に、またはある範囲の複数の基準電圧を経時的に生成するように、プログラム可能または制御可能であり得る。上記で説明したように、バイアスレッグ120およびバイアスフィードバックネットワーク130の動作に基づいて、ノードAにおけるバイアスされた入力信号111のバイアス成分Vbiasは、基準電圧Vrefに追従することになる。従って、ノードAにおける出力増幅段Q10のためのバイアス電位は、基準生成器132によって生成された基準電圧Vrefに基づいて設定され得る。
【0033】
バイアスレッグ120およびバイアスフィードバックネットワーク130は、バイアスフィードバックネットワーク130を含むフィードバック制御ループに基づいて、増幅器100の動作中、VbiasをノードAにおいて維持する。従って、動作中の増幅器100の電圧変動および温度変動に加えて、出力増幅段(例えば、Q10などを含む)のプロセス変動の範囲にわたっても、Vbiasは、出力増幅段Q10に対して維持され得る。
【0034】
より具体的な例を参照すると、
図3は、本明細書で説明する実施形態の様々な態様による、バイアス安定化を備えたシングルエンド増幅器200の詳細図を示す。増幅器200は、光通信用のドライバ増幅器として、RF通信用の増幅器として、または他の目的のために使用することができるが、これらに限定されない。増幅器200は、以下でさらに詳細に説明されるように、バイアス安定化のための回路を組み込んでおり、増幅器200は、本明細書で説明されるようなバイアス安定化の概念を組み込むことができる増幅器の一例として提供される。増幅器の他のタイプおよび構成もまた、本明細書で説明されるバイアス安定化の概念を組み込むことができる。
【0035】
増幅器200は、可能性のある他の構成要素の中でも特に、入力210、出力212、バイアスレッグ220、バイアスフィードバックネットワーク230、および出力増幅段Q10を含む。
図3の増幅器200の図は網羅的なものではなく、増幅器200は、場合によっては、図示されていない追加の構成要素を含むことができる。他の場合には、図示された構成要素のうちの1つまたは複数を省略することができる。増幅器200は、半導体基板上に形成された集積回路デバイス、個別部品、又は個別部品と集積回路との組み合わせを含む様々な態様で実施することができる。
【0036】
図2の増幅器100と同様に、出力増幅段Q10は、ベース端子、コレクタ端子、およびエミッタ端子を含む。出力増幅段Q10のコレクタは、増幅器100のための上側レール電圧(または他の電源)に結合され、出力増幅段Q10のコレクタは、増幅器100のための下側レール電圧(または接地)に結合される。場合によっては、抵抗器(または抵抗器ネットワーク)が、Q10のコレクタと上側レール電圧(または電源)との間に結合され得る。同様に、抵抗器(または抵抗器ネットワーク)が、場合によっては、Q10のエミッタと下側レール電圧(または接地)との間に結合され得る。
【0037】
出力増幅段Q10は、増幅器100に関する上側レール電圧(または他の電源)と下側レール電圧との間でベースがバイアスされる。出力増幅段Q10のベース端子は、
図3においてノードAとして識別される。以下でさらに詳細に説明するように、出力増幅段Q10は、バイアスレッグ220およびバイアスフィードバックネットワーク230の動作に基づいて、入力端子Aにおいてバイアスされる。出力増幅段Q10は、一例ではSiGeバイポーラ接合トランジスタとして具現化することができるが、他のタイプのトランジスタとして具現化することもできる。上述したように、SiGeトランジスタの動作特性は、プロセス変動、電圧変動、および温度変動に特に敏感であり、バイアス安定化は、SiGeおよび他の高利得トランジスタにとって特に重要であり得る。Q10は、SiGeバイポーラ接合トランジスタとして具現化することができるが、この概念は、FETを含む他のタイプのトランジスタに拡張することができる。従って、以下に説明するように、Q10のベースへの言及は、Q10がFETとして具現化される場合、FETのゲートにも適用される。エミッタへの言及はFETのソースにも適用され、バイポーラトランジスタのコレクタへの言及はFETのドレインにも適用される。
【0038】
バイアスレッグ220は、上側電圧V+と下側電圧V-(または接地)電位との間に結合される。V+およびV-電位は、出力増幅段Q10が間に結合される上側下側レール電圧(または電位)および下側レール電圧(または電位)と同じであっても、異なっていてもよい。増幅器200用の入力210は、バイアスレッグ220に結合されており、RF信号などの任意の入力信号が増幅器200による増幅のために入力210に印加され得る。
【0039】
図示の例では、バイアスレッグ220は、可能性のある他の構成要素の中でも特に、トランジスタQ11およびQ12ならびに抵抗器R11およびR12を含む。出力増幅段Q10と同様に、トランジスタQ11およびQ12もSiGeバイポーラ接合トランジスタとして具現化することができるが、他のタイプのトランジスタを用いることもできる。トランジスタQ11はバイアスレッグ220においてコレクタ接地として結合され、トランジスタQ12はバイアスレッグ220においてエミッタ接地として結合される。トランジスタQ11のコレクタは電源電圧V+に結合され、増幅器200の入力210はトランジスタQ11のベースに結合され、トランジスタQ11のエミッタは抵抗器R12の第1の端子に結合されている。R12およびR11の個々の抵抗値は、以下に説明するように、バイアスレッグ120内のバイアスノードBにおけるバイアス電圧の範囲を、バイアスレッグ120に流れる電流Iaに基づいて許容するために選択され得る。R12の抵抗値は、ノードBにおけるバイアス電圧の範囲を許容するために、一例では、抵抗器R11よりも大きくすることができる。
【0040】
トランジスタQ12のコレクタは、ノードBにおいて抵抗器R12の第2の端子に結合されている。トランジスタQ12のベースは、バイアスフィードバックネットワーク230によって生成されるバイアス制御信号241に結合され、トランジスタQ12のエミッタは、抵抗器R13の第1の端子に結合されている。R13の第2の端子は、図示の例では接地されている。図示のように、抵抗器R12およびR13は、バイアスレッグ220内のトランジスタQ11およびQ12と直列に結合されている。
【0041】
電源電圧V+から抵抗器R12(およびトランジスタQ11)を横断する電圧の降下がノードBにおける電圧を決定または設定するため、抵抗器R12は電圧降下抵抗器とも呼ばれる。即ち、電源電圧V+から開始して、ノードBにおける電圧は、トランジスタQ11および抵抗器R12を横断する電圧の降下によって決定され、この電圧降下は、バイアスレッグ220を流れる電流Iaに依存する。バイアスレッグ220を流れる電流Iaは、トランジスタQ12のベースに供給されるバイアスフィードバックネットワーク230から供給されるバイアス制御信号231によって制御することができる。
【0042】
増幅器200は、出力増幅段Q10のベースにおいて、ノードBとノードAとの間に結合された抵抗器R11をも含む。増幅器200は、トランジスタQ11のエミッタとノードAとの間に結合されたコンデンサC11を含む。抵抗器R11は、出力増幅段Q10のベースに流れ込む電流を制限するインピーダンスを有する。R11は、ベース電流を制限するために比較的高いインピーダンスとすることができる。コンデンサC11は、トランジスタQ11のエミッタと出力増幅段Q10のベースとの間のRF信号に関する直接結合(即ち、短絡回路に類似する)を提示する。C11の容量は、適切な動作のために増幅器200の動作周波数範囲に基づいて選択され得る。
【0043】
入力210に供給される入力信号は、トランジスタQ11によって部分的に増幅されるとともに、トランジスタQ11のエミッタにおいて出力として提供される。次に、コンデンサC11は、出力増幅段Q10による増幅のために、トランジスタQ11のエミッタからのこの信号のRF成分を出力増幅段Q10のノードAに結合する。増幅器200の出力212は、例えば、
図3に示されるように、出力増幅段Q10のコレクタにおいて取り出されるか、または場合によっては、出力増幅段Q10のエミッタにおいて取り出され得る。
【0044】
バイアスレッグ220は、バイアスされた入力信号211を出力増幅段Q10に供給するように構成される。バイアスレッグ220は、入力110において供給される入力信号と、バイアスフィードバックネットワーク130から供給されるバイアス制御信号231とに基づいて、バイアスされた入力信号211を生成する。バイアスされた入力信号211は、出力増幅段Q10による増幅のための信号成分とともに、Vbiasとも呼ばれる出力増幅段Q10のためのバイアス成分を含む。
【0045】
バイアスレッグ220は、バイアスフィードバックネットワーク230から供給されるバイアス制御信号231に基づいて、DCバイアス電位であり得るバイアスされた入力信号211のバイアス成分を設定する。従って、バイアスされた入力信号211のバイアス成分は、ベースバイアス型の出力増幅段Q10のベースにおけるバイアス電位を設定する。バイアス成分は、バイアスレッグ120に沿ったノードBで取り出される、上側電圧V+と下側電圧V-との間の電圧降下に基づいて設定され得る。図示される例では、バイアスレッグ220を流れるIa電流は、Q12に印加されるバイアス制御信号231によって制御され、これは、最終的に、上述したようにノードBにおける電圧を確立する。出力増幅段Q10に対するバイアスされた入力信号211は、バイアスレッグ120に沿ったノードBにおいて取り出される。バイアスされた入力信号211の信号成分は、入力210に供給された入力信号に基づいて、Q11のエミッタに供給されるとともに、コンデンサC11を介してノードAに結合される。
【0046】
バイアスフィードバックネットワーク230は、差動増幅器234、RFバイパス段236、基準電圧生成器232、および抵抗器R12を含む。差動増幅器234は、一例として、反転入力及び非反転入力を有する高利得演算増幅器又は同様の増幅器として具現化することができる。
図3に示すように、差動増幅器234の非反転(即ち、+)入力は、抵抗器R15を介して、出力増幅段Q10のベースにおけるノードAに結合されている。差動増幅器234の反転(即ち、-)入力は、基準電圧生成器238によって生成される基準電圧Vrefに結合されている。実施形態の一態様では、差動増幅器234の動作帯域幅(例えば、差動増幅器234が信号を増幅することができる周波数限界間の差)は、増幅器200全体の動作帯域幅よりも比較的小さい(特に、出力増幅段Q10の動作帯域幅よりも小さい)ため、差動増幅器234は、入力210において印加されるとともに、ノードAにおいて結合される高周波信号に高利得を提供しないか、または提示しない。このため、差動増幅器234は、入力210に印加される高周波信号成分をフィルタリング除去し、増幅しない(または、それほど増幅しない)。
【0047】
基準電圧生成器232は、電流ミラー、抵抗器、および好ましくは異なる動作電圧、温度範囲などにわたって適切な精度で基準電圧Vrefを生成することができる他の回路部品を使用して具現化することができる。場合によっては、基準電圧生成器232は、1つまたは複数の異なる基準電圧を経時的に、またはある範囲の基準電圧を経時的に生成するように、プログラム可能であるか、または制御可能であり得る。
【0048】
差動増幅器234は、バイアス制御信号(またはバイアス制御電圧)231を出力する。バイアス制御信号231は、差動増幅器234の反転入力と非反転入力との間の電圧差を表し、これは、基準電圧生成器232からのVrefとノードAにおけるVbiasとの間の差である。バイアス制御信号231は、コンデンサC12および抵抗器R14を含むRFバイパス段236に供給される。コンデンサC12は、バイアス制御信号242上の高周波成分に対して接地へのRF短絡を提供する。C12の容量は、増幅器200の動作周波数範囲に基づいて選択され得る。抵抗器R14は、バイアスレッグ120内のトランジスタQ12のベースに流れ込む電流を制限するインピーダンスを有する。R14は、ベース電流を制限するために比較的高いインピーダンスとすることができる。
【0049】
動作時、差動増幅器234は、トランジスタQ12に供給されるバイアス制御信号231を制御することによって、VrefとVbiasとの間の差を最小化または低減しようとする。バイアス制御信号231の増加した電圧は、Q12のベースに印加されると、バイアスレッグ220を流れる増加したIa電流を生じさせる。増加したIaは、Q11およびR12を横断する(および主にR12を横断する)電圧のより大きい降下に基づいて、ノードBにおけるより低い電圧または電位(例えば、V-により近い電圧)を生じさせる。バイアス制御信号231の減少した電圧は、Q12に印加されると、バイアスレッグ220を流れる減少したIa電流を生じさせる。減少したIaは、Q11およびR12を横断する(および主にR12を横断する)電圧のより小さい降下に基づいて、ノードBにおけるより高い電圧または電位を生じさせる。
【0050】
従って、ノードBにおける電圧およびノードAにおけるバイアス電圧Vbiasは、差動増幅器234によって生成されるバイアス制御信号231によって制御され得る。差動増幅器234は、基準電圧生成器232からのVrefとノードAにおけるVbiasとの間の差である、差動増幅器134の反転入力と非反転入力との間の電圧の差に基づいてバイアス制御信号231を出力する。従って、バイアスフィードバックネットワーク230は、出力増幅段Q10のベース端子を適切にバイアスするために、VrefとVbiasとの間の差を最小化するように構成される。
【0051】
集積デバイスとして具現化される場合、増幅器100および200は、任意の適切な1つまたは複数の半導体製造プロセスを使用して形成され得る。個別部品と集積デバイスとの組合せとして具現化される場合、増幅器100および200は、任意の適切な1つまたは複数の製造プロセスを使用して形成された集積デバイスを含むことができる。他の実施形態では、増幅器100および200は、1つまたは複数の回路シミュレータ、半導体デバイスモデリング、半導体プロセスシミュレーション、または関連する技術コンピュータ支援設計(TCAD:Technology Computer Aided Design)ソフトウェアツールを使用して、1つまたは複数のコンピューティングデバイス上でシミュレートすることができる。例えば、増幅器100および200を形成するための製造プロセスのドーパント分布、応力分布、デバイス幾何形状、および他の態様など、半導体製造プロセスの1つまたは複数の態様をシミュレートすることができる。他の例として、増幅器100および200の電圧バイアスおよび電流バイアスなどの動作特性をシミュレートすることができる。増幅器100および200の半導体デバイス(例えば、トランジスタ)および他の要素(例えば、抵抗器、インダクタ、コンデンサなど)の特性および性能をモデル化するために、シミュレーションが用いられ得る。
【0052】
本明細書で説明される増幅器100および200は、本明細書で説明される概念と一致する他のものの中でも特に、ハードウェアにおいて具現化され得るか、またはソフトウェアにおいていくつかの回路要素としてシミュレートされ得る。ソフトウェアを使用してシミュレートされる場合、各回路要素は、要素をシミュレートするための特定のパラメータに関連付けられたモジュールまたはコードのリストとして具現化され得る。回路要素をシミュレートするソフトウェアは、例えば、プログラミング言語で記述された人間可読ステートメントを含むソースコード、またはコンピュータシステムもしくは他のシステム内のプロセッサ等の適切な実行システムによって認識可能な機械命令を含む機械コードの形態で具現化されたプログラム命令を含むことができる。ハードウェアで具現化される場合、各要素は、1つの回路または電気的に相互接続された複数の回路を表すことができる。
【0053】
1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、ソフトウェアを実行して、他のものの中でも特に、本明細書で説明される増幅器を形成する回路要素をシミュレートすることができる。コンピューティングデバイスは、少なくとも1つの処理回路を含み得る。そのような処理回路は、例えば、ローカルインタフェースに結合された1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージ(またはメモリデバイス)を含むことができる。ローカルインタフェースは、例えば、アドレスバス/制御バスまたは任意の他の適切なバス構造を有するデータバスを含み得る。
【0054】
ストレージまたはメモリデバイスは、処理回路のプロセッサによって実行可能なデータまたはコンポーネントを保管することができる。例えば、分散型増幅器の1つまたは複数の回路要素に関連するデータは、1つまたは複数のストレージデバイスに保管され、コンピューティングデバイス内の1つまたは複数のプロセッサによる処理のために参照され得る。同様に、回路要素および/または他の構成要素をシミュレートするためのソフトウェアは、1つまたは複数のストレージデバイスに保管されるとともに、コンピューティングデバイス内の1つまたは複数のプロセッサによって実行可能であり得る。
【0055】
本明細書に記載のトランジスタは、いくつかの様々な半導体材料および半導体製造プロセスを使用して形成することができる。半導体材料の例としては、シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)を含むIV族元素半導体材料、その化合物、ならびにアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、およびインジウム(In)を含むIII族元素半導体材料、およびその化合物が挙げられる。
【0056】
増幅器における最適化は、SiGe半導体材料に形成されたトランジスタおよび増幅器、III族窒化物(アルミニウム(Al)-、ガリウム(Ga)-、インジウム(In)-、およびそれらの合金(例えば、AlGaIn))半導体材料、ならびにGaAs、InP、InGaP、AlGaAs、および関連する半導体材料に形成された増幅器などの能動半導体デバイスに適用することができる。原理および概念は、他の半導体材料から形成されたトランジスタおよび他の能動デバイスにも適用することができる。
【0057】
本明細書で説明される実施形態はまた、他のタイプのトランジスタの中でも特に、GaN-on-Siトランジスタを含む増幅器とともに使用するために適用可能であるが、実施形態はまた、GaN-on-炭化ケイ素(SiC:Silicon Carbide)トランジスタ、ならびに他のタイプのトランジスタにも適用可能である。本明細書で使用する「窒化ガリウム材料」又はGaN半導体材料という表現は、中でも特に、アルミニウムガリウム窒化物(AlxGa(1-x)N)、インジウムガリウム窒化物(InyGa(1-y)N)、アルミニウムインジウムガリウム窒化物(AlxInyGa(1-x-y)N)、リン化ガリウムヒ素窒化物(GaAsaPbN(1-a-b))、リン化アルミニウムインジウムガリウムヒ素窒化物(AlxInyGa(1-x-y)AsaPbN(1-a-b))などの、ガリウム窒化物及びその合金を意味する。通常、ヒ素及び/又はリンは、存在する場合には低濃度(例えば、5重量パーセント未満)で存在する。「窒化ガリウム」又はGaN半導体という用語は、ガリウム窒化物を直接意味し、その合金を含まない。
【0058】
任意の好適な方式で、上記で説明した特徴、構造、又は部品を1つ又は複数の実施形態に組み合わせることができ、様々な実施形態において述べた特徴は、技術的に適切な場合、入れ替えることができる。前述の説明では、本開示の実施形態を完全に理解するために、数多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者であれば、本開示の技術的解決策が、これらの具体的な詳細のうちの1つ又は複数を伴わずに実施され得るか、或いは他の方法、構成部品、及び材料なども用いられ得ることを理解するであろう。その他の事例では、本開示の態様を曖昧にしないように、周知の構造、材料又は動作については詳細に図示又は説明していない。
【0059】
「上(on)」、「下(below)」、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「右(right)」、および「左(left)」などの相対的な用語は、特定の構造的特徴の相対的な空間的関係を説明するために使用される場合があるが、これらの用語は、便宜上、例における方向としてのみ使用されている。デバイスが上下逆になった場合、「上側」構成要素は「下側」構成要素になることを理解されたい。ある構造または特徴が、別の構造または特徴の「上に」ある(またはその上に形成される)と説明されている場合、その構造は、他の構造または特徴がそれらの間に介在してもしなくても、他の構造の上に配置され得る。2つの構成要素が互いに「接続される」または「結合される」と記載されている場合、構成要素は、他の構成要素が電気的に結合され、かつそれらの間に介在していてもしていなくても、互いに電気的に接続または結合され得る。2つの構成要素が互いに「直接接続されている」または「直接結合されている」と記載されるとき、それらの構成要素は、他の構成要素がそれらの間に電気的に結合されていなくても、互いに電気的に接続または結合され得る。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「前記(said)」などの用語は、1つまたは複数の要素および構成要素の存在を示すために使用される。用語「備える(comprise)」、「含む(include)」、「有する(have)」、「含有する(contain)」、およびそれらの変形は、オープンエンドであるために使用され、別段の指定がない限り、列挙された要素、構成要素などに加えて、追加の要素、構成要素などを含むか、または包含し得る。
【0060】
本明細書において実施形態を詳細に説明してきたが、本説明は例示のためのものである。本明細書で説明した実施形態は、代表的なものであり、代替的な実施形態では、ある特定の特徴及び要素を追加又は省略することができる。加えて、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定められた本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明した実施形態の態様に対する修正を行うことができ、その範囲は修正及び同等の構造を包含するように最も広い解釈が認められるべきである。
【国際調査報告】