(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】触媒中間体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B01J23/63 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506690
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2022052314
(87)【国際公開番号】W WO2023052741
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】デプッチオ、ダニエル ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー、オースティン グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ストーンハウス、ピーター チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】トラックル、イヴォン アリソン
(72)【発明者】
【氏名】トゥリナ、アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BC02A
4G169BC03A
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4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC52A
4G169BC52B
4G169BC54A
4G169BC59A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD02A
4G169BD02B
(57)【要約】
触媒中間体を製造する方法が提供される。本方法は、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させて、PGM含有スラリーを提供することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒中間体を製造する方法であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、
前記含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させて、PGM含有スラリーを提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記PGM含有スラリーを加熱することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含水酸化物を含むスラリーをPGMイオンと接触させる前に、前記含水酸化物を含むスラリーを加熱する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記含水酸化物を含むスラリー及び/又は前記PGM含有スラリーのpHを7~14に調整することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記含水酸化物を含むスラリー及び/又は前記PGM含有スラリーのpHを9~13に調整することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒中間体が、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物において使用するためのものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒物品が、三元触媒作用のためのものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記含水酸化物が、焼成されていない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PGMイオンが、白金イオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PGMイオンが、ロジウムイオンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記含水酸化物が、セリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記含水酸化物が、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ドーパントが、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%の量で、前記含水酸化物中に存在する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
含水酸化物を含むスラリーを提供することが、アルミニウムイオン、セリウムイオン、及びジルコニウムイオンのうちの1つ以上を含む水溶液を、塩基性水溶液と接触させることを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PGM含有スラリーを加熱すること及び/又は前記含水酸化物を含むスラリーを加熱することが、20~250℃の温度で実施される、請求項2及び/又は3に従属する場合の請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって製造される触媒中間体。
【請求項18】
触媒中間体であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含む含水酸化物ネットワークであって、その中に封入されたPGMイオンを含む、含水酸化物ネットワークを含む、触媒中間体。
【請求項19】
前記触媒中間体が、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物において使用するためのものである、請求項18に記載の触媒中間体。
【請求項20】
前記触媒物品が、三元触媒作用のためのものである、請求項19に記載の触媒中間体。
【請求項21】
前記含水酸化物ネットワークが、焼成されていない、請求項18~20のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項22】
前記PGMイオンが、白金イオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項23】
前記PGMイオンが、ロジウムイオンを含む、請求項22に記載の触媒中間体。
【請求項24】
前記含水酸化物ネットワークが、セリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項25】
前記含水酸化物が、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項26】
前記ドーパントが、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上である、請求項25に記載の触媒中間体。
【請求項27】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%の量で、前記含水酸化物中に存在する、請求項25又は26に記載の触媒中間体。
【請求項28】
排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物であって、請求項16~26のいずれか一項に記載の触媒中間体を含むウォッシュコート配合物。
【請求項29】
触媒物品を製造する方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒中間体を製造するか、又は請求項17~27のいずれか一項に記載の触媒中間体を提供することと、
前記触媒中間体を含むスラリーを提供することと、
前記触媒中間体を含む前記スラリーを基材に適用することと、
前記スラリーを加熱することと、を含む、方法。
【請求項30】
触媒物品を製造する方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒中間体を製造するか、又は請求項17~27のいずれか一項に記載の触媒中間体を提供することと、
前記触媒中間体を焼成して、触媒組成物を形成することと、
前記触媒組成物を含むスラリーを提供することと、
前記触媒組成物を含む前記スラリーを基材に適用することと、
前記スラリーを加熱することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記触媒物品が、三元触媒作用のためのものである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記触媒中間体を含む前記スラリー又は前記触媒組成物を含む前記スラリーを結合剤と接触させることを更に含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記結合剤が、アルミナ、好ましくは、ガンマアルミナを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アルミナが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ドーパントが、前記アルミナ中に、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.01重量%~18重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、最も好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記触媒中間体を含む前記スラリー又は前記触媒組成物を含む前記スラリーの粘度を、前記スラリーを基材に適用する前に、調整することを更に含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
促進剤塩、酸又は塩基、及び増粘剤のうちの1つ以上を、前記触媒中間体を含む前記スラリー又は前記触媒組成物を含む前記スラリーに導入することを更に含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記触媒中間体を含む前記スラリー又は前記触媒組成物を含む前記スラリーを基材に適用することが、前記スラリーを前記基材と接触させることを含み、任意選択的に、
真空を前記基材に適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間生じる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項29~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態にある、請求項29~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記スラリーを加熱することが、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間実施される、請求項29~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記スラリーを加熱することが、焼成することを含む、請求項29~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項29~43のいずれか一項に記載の方法によって製造される触媒物品。
【請求項45】
三元触媒作用のための、請求項44に記載の触媒物品。
【請求項46】
中間体であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含み、前記含水酸化物が、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、中間体。
【請求項47】
前記含水酸化物が、セリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む、請求項46に記載の中間体。
【請求項48】
前記含水酸化物が、2~20μmol/gのヒドロキシル含有量を有する、請求項46又は47に記載の中間体。
【請求項49】
前記含水酸化物が、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の中間体。
【請求項50】
前記ドーパントが、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上である、請求項49に記載の中間体。
【請求項51】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%の量で、前記含水酸化物中に存在する、請求項49又は50に記載の中間体。
【請求項52】
中間体を製造する方法であって、
(1)アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、
(2a)(1)の前記スラリーを加熱すること、及び/又は
(2b)(1)の前記スラリーのpHを7~14に調整することと、を含む、方法。
【請求項53】
前記中間体が、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記スラリーのpHを9~13に調整することを更に含む、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記含水酸化物が、セリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記含水酸化物が、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ドーパントが、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%の量で、前記含水酸化物中に存在する、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
含水酸化物を含むスラリーを提供することが、アルミニウムイオン、セリウムイオン、及びジルコニウムイオンのうちの1つ以上を含む水溶液を、塩基性水溶液と接触させることを含む、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記含水酸化物を含むスラリーを加熱することが、20~250℃の温度で実施される、請求項52~59のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物において使用するための触媒中間体を製造する新しい方法に関し、具体的には、触媒中間体を製造する方法、触媒中間体、ウォッシュコート配合物、触媒物品を製造する方法、及び触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び窒素酸化物(「nitrogen oxide、NOx」)を含む、様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(three way catalyst、三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割:(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOxの還元が果たされる。
【0003】
そのようなTWCは、典型的には、基材と、それに適用された1つ以上の触媒層又は領域と、を含む。したがって、そのようなTWCを製造する典型的な方法は、触媒活性粒子を含むウォッシュコート(例えば、スラリー)を基材に適用することと、スラリー内の粒子を基材上で焼成することと、を含み得る。ウォッシュコートは、典型的には、担体材料上に担持された1つ以上の白金族金属(platinum group metal、PGM)を含む。担体材料は、例えば、セリア、アルミナ、ジルコニア、又はそれらの混合酸化物などの無機酸化物を含み得る。
【0004】
しかしながら、TWC、又は排気ガスを処理するための他の触媒物品を製造するそのような典型的な方法に関連する問題には、PGMを担体材料上に効率的に担持させることの難しさが含まれる。これは、例えば、無機酸化物担体材料上へのPGMの不十分な取り込みに起因し得る。その上、そのような担持された担体材料の表面上に形成され得る比較的大きいPGM粒子は、製造の焼成工程中及び/又は排気システムにおける使用中に焼結する可能性が高い。そのような焼結は、所望されるよりも大きいPGM粒子が最終触媒物品(例えば、TWC)上に存在し得るか、又は使用中に増加し得ることを意味し、これは、触媒物品のより低い触媒活性をもたらし得る。より大きい粒子を有する結果としてのそのような触媒活性の低減は既知であり、焼結を受けていないより小さいPGM粒子と比較して低減された総PGM表面積を有する結果であり得る。
【0005】
したがって、製造中の焼成、及び/又は内燃機関、特にガソリンエンジン用の排気システムにおける過酷なエージング条件の結果として、触媒物品(例えば、TWC)中のPGM粒子、特にロジウム粒子の焼結の可能性を低減することに対する要求が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、触媒中間体を製造する方法であって、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させて、PGM含有スラリーを提供することと、を含む、方法を対象とする。
【0007】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒中間体を製造する方法により製造される触媒中間体を対象とする。
【0008】
本開示の別の態様は、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含む含水酸化物ネットワークであって、その中に封入されたPGMイオンを含む、含水酸化物ネットワークを含む、触媒中間体を対象とする。
【0009】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物であって、本明細書に記載される触媒中間体を含むウォッシュコート配合物を対象とする。
【0010】
本開示の別の態様は、触媒物品を製造する方法であって、本明細書に記載の方法によって触媒中間体を製造するか、又は本明細書に記載の触媒中間体を提供することと、触媒中間体を含むスラリーを提供することと、触媒中間体を含むスラリーを基材に適用することと、スラリーを加熱することと、を含む、方法を対象とする。
【0011】
本開示の別の態様は、触媒物品を製造する方法であって、本明細書に記載の方法によって触媒中間体を製造するか、又は本明細書に記載の触媒中間体を提供することと、触媒中間体を焼成して、触媒組成物を形成することと、触媒組成物を含むスラリーを提供することと、触媒組成物を含むスラリーを基材に適用することと、スラリーを加熱することと、を含む、方法を対象とする。
【0012】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を製造する方法により製造される触媒物品を対象とする。
【0013】
本開示の別の態様は、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含み、含水酸化物は、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、中間体を対象とする。
【0014】
本開示の別の態様は、中間体を製造する方法であって、(1)アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、(2a)(1)のスラリーを加熱すること、及び/又は(2b)(1)のスラリーのpHを7~14に調整することと、を含む、方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例1及び触媒1についてのNO変換率を示す。
【
図2】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例1及び触媒1についてのCO変換率を示す。
【
図3】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例1及び触媒1についてのTHC変換率を示す。
【
図4】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例2及び触媒2についてのNO変換率を示す。
【
図5】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例2及び触媒2についてのCO変換率を示す。
【
図6】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例2及び触媒2についてのTHC変換率を示す。
【
図7】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例3及び触媒3についてのNO変換率を示す。
【
図8】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例3及び触媒3についてのCO変換率を示す。
【
図9】粉末触媒TWCライトオフ試験中の参考例3及び触媒3についてのTHC変換率を示す。
【
図10】同等の金属組成物の固体酸化物粉末及び含水酸化物粉末についてのヒドロキシル含有量を示す(実施例2)。
【
図11】同等の金属組成物の固体酸化物粉末及び含水酸化物粉末についての様々なRh担持量でのRh取り込み値を示す(実施例2)。
【
図12】触媒コアTWCライトオフ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのNO変換率を示す。
【
図13】触媒コアTWCライトオフ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのCO変換率を示す。
【
図14】触媒コアTWCライトオフ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのTHC変換率を示す。
【
図15】触媒コアラムダスイープ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのNO変換率を示す。
【
図16】触媒コアラムダスイープ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのCO変換率を示す。
【
図17】触媒コアラムダスイープ試験中の参考例5、触媒5、及び触媒6についてのTHC変換率を示す。
【
図18】エンジンベンチ動力計でのRDE試験中の参考例7及び触媒7についての累積NO
x排出量を示す。
【
図19】エンジンベンチ動力計でのRDE試験中の参考例7及び触媒7の累積CO排出量を示す。
【
図20】エンジンベンチ動力計でのRDE試験中の参考例7及び触媒7の累積THC排出量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0017】
第1の態様では、本発明は、触媒中間体を製造する方法であって、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させて、PGM含有スラリーを提供することと、を含む、方法を提供する。
【0018】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わされ得る。
【0019】
驚くべきことに、排気処理システムにおいて使用される場合、触媒ウォッシュコートの調製において本発明によって製造された触媒中間体を使用することによって製造された触媒物品は、例えば、以下の有利な特性(触媒物品の増加した熱耐久性、高温での加速エージング後のより低いライトオフ温度[全炭化水素(total hydrocarbon、THC)、CO、及びNOxについて])、高温での優れた/増加した変換率(THC、CO、及びNOxの)、並びに広範囲の空燃比にわたってのより高い変換率)のうちの1つ以上を呈し得る。その上、上記の有利な特性、特に増加した活性に部分的に起因して、そのような触媒物品は、ロジウムなどのPGMが減らす(すなわち、同等又はより高いレベルの触媒活性を維持しながら、その担持量を低減する)機会を提供し得る。
【0020】
典型的には、産業において、PGMのための混合酸化物担体材料は、それらの焼成形態で、すなわち、固体混合酸化物担体材料として供給業者から提供される。次いで、混合酸化物担体材料は、PGMを担体材料上に担持する前に、粉砕によってより小さい粒子に低減される場合又はされない場合がある。しかしながら、この標準的な慣行とは対照的に、本発明の発明者らは、ウォッシュコート配合物を調製する際に使用するための触媒中間体を製造する方法であって、例えば、担体材料の含水酸化物形態から出発する、すなわち、固体酸化物形態を得るための担体材料の焼成前に出発する方法を考案した。したがって、そのような方法は、有利に、含水酸化物形態の興味深い表面化学及び焼成前のPGMイオンとのその相互作用を利用することができ得る。
【0021】
例えば、理論に束縛されることを望むものではないが、PGMイオンは、静電相互作用を介してスラリー中の含水酸化物上のヒドロキシル官能基と強く相互作用すると仮定される。実際に、PGM取り込みは、PGMの容易な固定を可能にし得る含水酸化物の表面電荷と直接相関し得る。したがって、この強い相互作用は、含水酸化物全体にわたって高度に均一に分散される強く固定されたPGMイオンをもたらし得る。スラリー中では、含水酸化物が少なくとも部分的にネットワーク、例えば、多孔質ネットワークを形成し、これが高分散PGMをその中に封入し得ると仮定される。次いで、含水酸化物の焼成は、その中に封入されたPGM粒子を含む(混合)酸化物担体材料をもたらし得る。上述の方法及び高分散PGMの結果として、例えば、プロセス中にPGMイオン/粒子を離しておく強い相互作用のために、非常に小さいPGM粒径が混合酸化物内に形成され得る。その上、多孔質ネットワーク内へのPGM粒子の封入は、得られる触媒物品の使用中又は焼成プロセス自体の間のPGM粒子焼結の可能性を低減する物理的バリアを提供し得る。
【0022】
少なくともこれらの理由により、上述の有利な特性が実現されると仮定される。例えば、理論に束縛されることを望むものではないが、これは、(i)担体材料内に封入されたPGM粒子の粒径が小さく保たれる(すなわち、PGM表面積対体積比を増加させる)こと、並びに(ii)PGM粒子が、焼成中及び/又は排気システムにおけるそのような触媒物品の使用中の高温などの過酷な条件下で焼結する可能性が低く、それによって触媒の不活性化をもたらす可能性があるためであり得ると仮定される。
【0023】
したがって、ウォッシュコートの調製のためのこの新規な開始位置は、産業における標準的な慣行(例えば、供給業者から焼成(混合)酸化物担体材料を単に入手し、その上にPGMを担持する)に反するものであり、驚くべきことにかつ予想外に、触媒中間体を調製するためのそのような技術を使用して調製された最終触媒物品の改善された触媒特性を達成する。
【0024】
本明細書で使用される「触媒中間体」という用語は、例えば、特に内燃機関、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガスの処理に使用するための、触媒活性を呈する触媒組成物のための前駆体を包含し得る。本明細書で使用される「前駆体」という用語は、更なる目標組成物を提供するために使用される前に形成される組成物を包含し得る。言い換えれば、「中間体」という用語は、例えば、化学の分野におけるその通常の意味の範囲内で使用される。したがって、触媒中間体は、COの酸化、未燃HCの酸化、及びNOxの還元のうちの1つ以上に対して触媒活性を実証することができる触媒組成物の前駆体であり得る。
【0025】
本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)典型的には水を含む、溶媒又は液体、(2)可溶分、及び(3)不溶分を含み得る。
【0026】
本明細書で使用される「含水酸化物」という用語は、金属、水酸化物、及び弱く結合した水の無機化合物を包含し得る。言い換えれば、「含水酸化物」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味の範囲内で使用される。
【0027】
含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させることは、典型的には、例えば、PGMイオンを含む溶液を、含水酸化物を含むスラリーと混合することを含み得る。代替的に、水溶性PGM塩などのPGM前駆体が、含水酸化物を含むスラリーに添加され得る。含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させる方法は、特に限定されない。PGMイオンは、典型的には、例えば、硝酸塩、硫酸塩、又は塩化物などの好適なPGM塩の形態で提供される。
【0028】
PGM含有スラリーは、好ましくは、その中に封入されたPGMイオンを含む含水酸化物ネットワークを含む。本明細書で使用される「含水酸化物ネットワーク」という用語は、含水酸化物によって形成されるマトリックス又は格子構造を包含し得る。本明細書で使用される「封入された」という用語は、PGMイオンが含水酸化物ネットワークと会合している構造、特に、PGMイオンが、例えば、ネットワーク又は格子構造の細孔内に位置する構造を包含し得る。PGMイオンは、典型的には、含水酸化物ネットワーク上のヒドロキシル基と会合しているか、又は配位している。
【0029】
中に封入されたPGMイオンを含む含水酸化物ネットワークの形成を促進するために、本方法は、好ましくは、PGM含有スラリーを加熱することを更に含む。PGM含有スラリーの加熱は、好ましくは20~250℃、より好ましくは50℃以下の温度で実施される。理論に束縛されることを望むものではないが、PGM含有スラリーの加熱は、ネットワークの形成速度を増加させ得ると考えられる。加熱はまた、含水酸化物とのPGMイオン会合の速度を増加させ得る。好ましくは、加熱工程は、含水酸化物の焼成をもたらさない。
【0030】
含水酸化物を含むスラリーはまた、スラリーをPGMイオンと接触させる前に、含水酸化物ネットワークを少なくとも部分的に含み得る。本方法のこの段階での含水酸化物ネットワークの形成を促進するために、本方法は、好ましくは、含水酸化物を含むスラリーをPGMイオンと接触させる前に、含水酸化物を含むスラリーを加熱する工程を更に含む。含水酸化物ネットワークを含むスラリーを加熱することは、好ましくは20~250℃、より好ましくは50~200℃、最も好ましくは100~175℃の温度で実施される。理論に束縛されることを望むものではないが、含水酸化物を含むスラリーの加熱は、ネットワークの形成速度を増加させ得ると考えられる。PGMイオンと含水酸化物のヒドロキシル基との所望の相互作用が実現され得るように、方法のこの段階(すなわち、PGMイオンの添加前)での加熱は、含水酸化物の実質的な焼成を引き起こさないことが必須である。
【0031】
PGMイオンの添加前のこの追加の加熱工程によって本発明の目的を達成することは依然として可能であるが、PGMイオンが含水酸化物ネットワーク内にできるだけ均一に分散されるのを助けるために、すなわち、含水酸化物ネットワークの任意の実質的な形成前にPGMイオンを添加することによって、この工程を除外することが好ましい場合がある。代替的に、いくつかの実施形態では、含水酸化物を含むスラリーをPGMイオンと接触させる前に、加熱工程を含むことが好ましい場合がある。これは、例えば、どの含水酸化物が使用されているかに依存して、より良好な性能をもたらし得る。
【0032】
加熱工程のいずれかは、好ましくは熱水処理を含む。熱水処理は、7超にpHを上昇させること、室温(約20℃)を上回って温度を上昇させること、及びスラリーを撹拌/混合することを含み得る。理論に束縛されることを望むものではないが、pHを増加させることは、ネットワーク形成を触媒し得、温度を増加させることは、ネットワーク形成の速度を増加させ得、撹拌/混合は、ネットワーク形成の速度を増加させ得、より均質なネットワークをもたらし得ると考えられる。
【0033】
好ましくは、本方法は、含水酸化物を含むスラリー及び/又はPGM含有スラリーのpHを7~14に調整することを更に含む。好ましくは、pHは、8~13、より好ましくは9~12、更により好ましくは10~11に調整される。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような高いpHは、例えば、ネットワークの形成をもたらし得るヒドロキシル基の間の反応を触媒することによるなど、プロセスを触媒することによって、含水酸化物ネットワークの形成を容易にし、かつ/又はその速度を増加させるのに役立ち得ると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、本プロセスは、例えば、いくつかのヒドロキシルがPGMイオンに結合したままであることを可能にしながら、ヒドロキシル基を消費してネットワークを形成することの間のバランスであると考えることができる。pHは、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの任意の好適な塩基、及び/又は水酸化アンモニウム、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機塩基を使用して調整することができる。塩基の選択は特に限定されないが、その物質が、例えば、本方法に負に干渉しないことを条件とする。その上、理論に束縛されることを望むものではないが、含水酸化物内のヒドロキシル基の数を増加させることは、利用可能な静電相互作用の数の増加に起因して、PGMイオンの取り込みの増加をもたらし得ると考えられる。しかしながら、含水酸化物内のヒドロキシル基の数の増加はまた、スラリーの粘度の増加をもたらし得る。したがって、用途に応じて、記載されたPGM取り込みとスラリーの粘度との間のバランスを見出す必要があり得る。
【0034】
好ましくは、触媒中間体は、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物において使用するためのものである。より好ましくは、触媒物品は、三元触媒作用のためのものである。
【0035】
好ましくは、含水酸化物は、焼成されていない。含水酸化物の焼成は、金属の固体無機酸化物を形成し得、すなわち、PGMイオンが相互作用するためのヒドロキシル官能基を実質的に有さず、水酸化物のネットワークを形成する能力も実質的に有さない。したがって、含水酸化物の焼結は、含水酸化物の使用と焼結された無機酸化物の使用との間の差異に関して、上述の利点を実現させない可能性がある。
【0036】
本明細書で使用される「白金族金属(PGM)」という用語は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金という金属を指す。PGMイオンは、好ましくは、白金イオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、又はそれらの組み合わせ、より好ましくは、ロジウムイオンを含む。例えば、PGMイオンは、好ましくはロジウムイオンからなる。このようなPGMは、TWCの形成に使用するのに特に適しており、本発明の方法に特に適合し得る。いくつかの実施形態では、PGM担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.02~20重量%である。更なる実施形態では、PGM担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.1~10重量%である。ある特定の実施形態では、PGM(例えば、Rh)担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.02~5重量%である。更なる実施形態では、PGM(例えば、Rh)担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.1~4重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、又は0.1~1重量%である。本明細書で使用される場合、PGM担持量は、元素PGM金属(例えば、Rh)に基づいて計算される。
【0037】
含水酸化物は、好ましくはセリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む。焼成時に、このような混合含水酸化物の使用は、セリア/ジルコニア混合酸化物をもたらし、これは、例えば、TWCにおける使用のためのPGMのための特に有益な担体材料であり得る。これは、そのような担体材料が高い酸素貯蔵容量を呈し得るからである。このような特性は、TWCでの使用に有利であることが既知である。含水酸化物は、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上、より好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む。そのようなドープされた含水酸化物は、焼成されると、ドープされた酸化物をもたらし、これは、担体材料として特に効果的であり得る。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%、より好ましくは1重量%~17重量%、更により好ましくは2重量%~16重量%の量で、含水酸化物中に存在する。
【0038】
本明細書で使用される「混合酸化物」という用語は、一般に、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。
【0039】
含水酸化物を含むスラリーを提供することは、好ましくは、アルミニウムイオン、セリウムイオン、及びジルコニウムイオンのうちの1つ以上を含む水溶液を、塩基性水溶液と接触させることを含む。アルミニウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンは、例えば、硝酸塩、硫酸塩、又は塩化物などの好適な金属塩の形態で提供され得る。このような含水酸化物を作製する好適な方法は、当該技術分野において既知であり得る。ドーパントが存在する場合、水溶液は、ドーパントのイオンを更に含み得る。
【0040】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法により製造された触媒中間体を提供する。
【0041】
更なる態様では、本発明は、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含む含水酸化物ネットワークであって、その中に封入されたPGMイオンを含む、含水酸化物ネットワークを含む、触媒中間体を提供する。
【0042】
触媒中間体は、好ましくは、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物において使用するためのものであり、より好ましくは、触媒物品は、三元触媒作用のためのものである。
【0043】
好ましくは、含水酸化物ネットワークは、焼成されていない。
【0044】
PGMイオンは、好ましくは、白金イオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、又はこれらの組み合わせを含み、より好ましくは、PGMイオンはロジウムイオンを含む。例えば、PGMイオンは、好ましくはロジウムイオンからなる。いくつかの実施形態では、PGM担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.02~20重量%である。更なる実施形態では、PGM担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.1~10重量%である。ある特定の実施形態では、PGM(例えば、Rh)担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.02~5重量%である。更なる実施形態では、PGM(例えば、Rh)担持量は、含水酸化物の重量に基づいて、0.1~4重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、又は0.1~1重量%である。本明細書で使用される場合、PGM担持量は、元素PGM金属(例えば、Rh)に基づいて計算される。
【0045】
含水酸化物は、好ましくはセリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む。含水酸化物は、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上、より好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%、より好ましくは1重量%~17重量%、更により好ましくは2重量%~16重量%の量で、含水酸化物中に存在する。
【0046】
含水酸化物は、好ましくは、1μmol/g超、より好ましくは、少なくとも2μmol/g、最も好ましくは、少なくとも3μmol/gのヒドロキシル含有量(実施例2に記載の方法を使用して測定される場合)を有することができる。代替的に、含水酸化物は、好ましくは2~20μmol/g、より好ましくは、3~18μmol/g、最も好ましくは、4~16μmol/gのヒドロキシル含有量を有することができる。
【0047】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理するための触媒物品の調製のためのウォッシュコート配合物であって、本明細書に記載される触媒中間体を含むウォッシュコート配合物を提供する。好ましくは、触媒物品は、TWCであり、及び/又は排気ガスは、ガソリンエンジンからのものである。ウォッシュコート配合物は、典型的には、スラリーの形態にある。
【0048】
更なる態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法であって、本明細書に記載の方法によって触媒中間体を製造するか、又は本明細書に記載の触媒中間体を提供することと、触媒中間体を含むスラリーを提供することと、触媒中間体を含むスラリーを基材に適用することと、スラリーを加熱することと、を含む、方法を提供する。
【0049】
更なる態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法であって、本明細書に記載の方法によって触媒中間体を製造するか、又は本明細書に記載の触媒中間体を提供することと、触媒中間体を焼成して、触媒組成物を形成することと、触媒組成物を含むスラリーを提供することと、触媒組成物を含むスラリーを基材に適用することと、スラリーを加熱することと、を含む、方法を提供する。
【0050】
換言すれば、本発明は、触媒中間体又はその焼成生成物を基材に適用する前に触媒中間体を焼成することを伴う場合又は伴わない場合がある触媒物品を製造する方法を包含する。触媒中間体が基材に適用される前に焼成されない場合、触媒中間体は、スラリーを加熱する工程中に更に焼成され得る。
【0051】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、好ましくは、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、好ましくはウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態を採り得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムでの使用のためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用での使用のためのものであり得る。言い換えれば、触媒物品はTWCであり得る。
【0052】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えば、好ましくは、ウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含み得る。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なり得る。好適な基材は、当該技術分野において既知である。
【0053】
触媒中間体を含むスラリーを提供することは、本明細書に記載されるPGM含有スラリーを提供することを含み得る。代替的に、触媒中間体がPGM含有スラリーから分離される場合、触媒中間体を含むスラリーを提供することは、分離された触媒中間体を液体、好ましくは水と接触させて、スラリーを提供することを含み得る。
【0054】
触媒中間体を焼成して、触媒組成物を形成することは、典型的には、触媒中間体を400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は10分間~360分間、好ましくは35分間~120分間加熱することを含む。しかしながら、焼成は、当該技術分野で既知の任意の焼成技術によって実行され得る。焼成プロセスは、含水酸化物(ネットワーク)を担体材料の固体酸化物形態に変換し得る。本明細書で使用される「焼成」又は「焼成する」という用語は、好ましくは、物質に化学的及び/若しくは物理的変化を引き起こす目的で、並びに/又は不純物を除去する目的で、物質を熱処理するプロセスを包含し得る。本明細書で使用される「焼成」又は「焼成する」という用語は、空気中で物質を熱処理することを包含し得る。
【0055】
本明細書で使用される「触媒組成物」という用語は、特に、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガスの処理に使用するための、触媒活性を呈する組成物を包含し得る。換言すれば、触媒組成物は、COの酸化、未燃HCの酸化、及びNOxの還元のうちの1つ以上に対して触媒活性を実証し得る。好ましくは、触媒組成物は、三元触媒作用のためのものである。言い換えれば、触媒組成物は、三元触媒であり得る。したがって、本発明において、触媒組成物は、無機酸化物上及び/又は無機酸化物中に担持された1つ以上のPGMであり得、無機酸化物は、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、又はそれらの混合物の酸化物を含む。
【0056】
触媒組成物を含むスラリーを提供することは、典型的には、触媒組成物を液体、好ましくは水と接触させて、スラリーを提供することを含む。
【0057】
触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーを基材に適用することは、当該技術分野で既知の技術を使用して実施することができる。典型的には、スラリーは、所定の量で特定の成形ツールを使用して基材の入口又は出口に注入され、それによって、触媒中間体又は触媒組成物が基材上に配置され得る。代替的に又は追加的に、基材は、スラリー中に少なくとも部分的に浸漬され得る。その後の真空、エアナイフ及び乾燥工程が、適用工程中に用いられ得る。例えば、スラリーが入口又は出口に注入されると、又は基材がスラリーに浸漬されると、真空及び/又はエアナイフを入口及び/又は出口に適用して、基材全体にスラリーを分散させ、かつ/又は過剰なスラリーを基材から除去することができる。担体がフィルタブロックである場合、触媒中間体又は触媒組成物は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0058】
スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒転化中の圧力降下を最小化するために、特に効果的である。基材上に配置される前に、スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間撹拌される。
【0059】
触媒物品は、好ましくは、三元触媒作用のためのものである。
【0060】
好ましくは、本方法は、触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーを、結合剤、好ましくは、結合剤を含むスラリーと接触させることを更に含む。結合剤は、好ましくは、アルミナ、好ましくはガンマアルミナを含む。アルミナは、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、より好ましくは、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている。ドーパントは、好ましくは、アルミナ中に、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.01重量%~18重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、最も好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。スラリー/ウォッシュコート配合物のためのそのような追加成分は、例えば、TWCの製造に典型的である。
【0061】
本方法は、触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーのpHを8以下に調整することを更に含み得る。これは、ウォッシュコーティング手順中の典型的な工程であり、主に、スラリーのレオロジ(例えば、粘度)を調整して、基材上により容易にコーティングすることができるようにするためのものであり得る。しかしながら、本発明の方法において、特に、触媒中間体が基材に適用される前に焼成されない態様において、pHを低下させるそのような工程は必要とされない場合がある。レオロジ(例えば、粘度)は、他の方式で調整され得る。
【0062】
好ましくは、本方法は、触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーの粘度を、上記スラリーを基材に適用する前に、調整することを更に含む。スラリーの粘度を調整するための好適な技術は、当該技術分野において既知であり、標準的なコーティング技術を使用して基材をコーティングするための適切な粘度になるように、温度の調整、pH調整、及び増粘剤の添加のうちの1つ以上を含み得る。
【0063】
好ましくは、本方法は、促進剤塩、酸又は塩基、及び増粘剤のうちの1つ以上を、触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーに導入することを更に含む。
【0064】
促進剤としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ若しくはアルカリ土類族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。促進剤は、そのような元素の塩であり得る。特に好ましい促進剤は、バリウムであり、その特に好ましい塩は、酢酸バリウム、クエン酸バリウム、及び硫酸バリウム、又はこれらの組み合わせであり、より好ましくはクエン酸バリウムである。
【0065】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。増粘剤は、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的を果たす。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート焼成中に焼き取られる。ウォッシュコートのための具体的な増粘剤/レオロジ調整剤の例としては、グラクトマナガム(glactomanna gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0066】
触媒中間体を含むスラリー又は触媒組成物を含むスラリーを基材に適用することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口及び/若しくは出口に注入すること、並びに/又は基材をスラリーに少なくとも部分的に浸漬すること)、並びに任意選択的に、基材に真空を適用すること、及び/又は基材上のスラリーを乾燥させることを含む。これは、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布をもたらすことができる。好ましくは、乾燥は、60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は10~360分間、好ましくは15~60分間生じる。
【0067】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に担持された1つ以上のウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0068】
基材は、好ましくは、コーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に好適である。
【0069】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態にある。
【0070】
スラリーを加熱することは、好ましくは、400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は10~360分間、好ましくは35~120分間実施される。スラリーを加熱することは、好ましくは焼成することを含む。
【0071】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を製造する方法により製造された触媒物品を提供する。好ましくは、触媒物品は、三元触媒作用のためのものである。
【0072】
更なる態様では、本開示は、アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含み、含水酸化物は、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、中間体を対象とする。
【0073】
含水酸化物は、好ましくはセリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む。含水酸化物は、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上、より好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%、より好ましくは1重量%~17重量%、更により好ましくは2重量%~16重量%の量で、含水酸化物中に存在する。
【0074】
含水酸化物は、好ましくは、1μmol/g超、より好ましくは、少なくとも2μmol/g、最も好ましくは、少なくとも3μmol/gのヒドロキシル含有量(実施例2に記載の方法を使用して測定される場合)を有することができる。代替的に、含水酸化物は、好ましくは2~20μmol/g、より好ましくは、3~18μmol/g、最も好ましくは、4~16μmol/gのヒドロキシル含有量を有することができる。いくつかの実施形態では、含水酸化物は、2~14μmol/g、3~12μmol/g、又は4~10μmol/gのヒドロキシル含有量を有することができる。
【0075】
別の態様では、本発明は、中間体を製造する方法であって、(1)アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、(2a)(1)のスラリーを加熱すること、及び/又は(2b)(1)のスラリーのpHを7~14に調整することと、を含む、方法を提供する。
【0076】
(1)においてスラリーを加熱することは、好ましくは20~250℃、より好ましくは50~200℃、最も好ましくは100~175℃の温度で実施される。
【0077】
加熱工程は、好ましくは熱水処理を含む。熱水処理は、7超にpHを上昇させること、室温(約20℃)を上回って温度を上昇させること、及びスラリーを撹拌/混合することを含み得る。
【0078】
好ましくは、本方法は、含水酸化物を含むスラリーのpHを8~13、より好ましくは9~12、更により好ましくは10~11に調整することを更に含む。pHは、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの任意の好適な塩基、及び/又は水酸化アンモニウム、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機塩基を使用して調整することができる。塩基の選択は特に限定されないが、その物質が、例えば、本方法に負に干渉しないことを条件とする。
【0079】
好ましくは、中間体は、1μmol/g超、より好ましくは、少なくとも2μmol/g、最も好ましくは、少なくとも3μmol/gのヒドロキシル含有量(実施例2に記載の方法を使用して測定される場合)を有することができる。代替的に、中間体は、好ましくは、2~20μmol/g、より好ましくは、3~18μmol/g、最も好ましくは、4~16μmol/gのヒドロキシル含有量を有することができる。いくつかの実施形態では、中間体は、2~14μmol/g、3~12μmol/g、又は4~10μmol/gのヒドロキシル含有量を有することができる。
【0080】
含水酸化物は、好ましくはセリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む。焼成時に、このような混合含水酸化物の使用は、セリア/ジルコニア混合酸化物をもたらし、これは、例えば、TWCにおける使用のためのPGMのための特に有益な担体材料であり得る。これは、そのような担体材料が高い酸素貯蔵容量を呈し得るからである。このような特性は、TWCでの使用に有利であることが既知である。含水酸化物は、好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上、より好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む。そのようなドープされた含水酸化物は、焼成されると、ドープされた酸化物をもたらし、これは、担体材料として特に効果的であり得る。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~18重量%、より好ましくは1重量%~17重量%、更により好ましくは2重量%~16重量%の量で、含水酸化物中に存在する。
【0081】
含水酸化物を含むスラリーを提供することは、好ましくは、アルミニウムイオン、セリウムイオン、及びジルコニウムイオンのうちの1つ以上を含む水溶液を、塩基性水溶液と接触させることを含む。アルミニウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンは、例えば、硝酸塩、硫酸塩、又は塩化物などの好適な金属塩の形態で提供され得る。このような含水酸化物を作製する好適な方法は、当該技術分野において既知であり得る。ドーパントが存在する場合、水溶液は、ドーパントのイオンを更に含み得る。
【0082】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0083】
含水酸化物の一般的な調製
以下の金属塩溶液(6.3kgの硝酸セリウム(IV)(19.1重量%CeO2)、0.3kgの硝酸ランタン(III)(29.4重量%のLa2O3)、0.7kgの硝酸ネオジム(III)(29.1重量%Nd2O3)、及び12.5kgのオキシ硝酸ジルコニウム(IV)(19.7重量%のZrO2、0.43重量%のHfO2))を60kgの脱イオン(deionized、DI)水に混合することによって金属イオンの溶液を調製した。金属塩溶液を70℃の温度まで加熱し、機械的に撹拌した。金属イオン溶液に、水酸化アンモニウム溶液を45分かけて添加して、最終pH約8を達成した。混合物を70℃で更に4時間撹拌した。次いで、溶液を50℃未満まで冷却した。次いで、含水酸化物沈殿物をフィルタプレス中で濾過し、出てくる溶液が<5mSの導電率を有すると測定されるまでDI水で洗浄した。少量の最終含水酸化物沈殿物を酸性媒体に溶解し、その重量組成を誘導結合プラズマ発光分光分析法(inductively coupled plasma optical emission spectroscopy、ICP-OES)によって測定したところ、62.5%のZrO2、30.0%のCeO2、4.8%のNd2O3、1.5%のLa2O3、及び1.2%のHfO2であった。
【0084】
参考例の粉末触媒の調製
100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物をHastelloyオートクレーブ中に密封し、150℃まで加熱し、2時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。次いで、含水酸化物を90℃で16時間乾燥させ、粉砕して粉末にし、更に120℃で2時間乾燥させた。乾燥後、含水酸化物を空気中500℃で焼成して、ヒドロキシルを除去し、含水酸化物を固体酸化物に変換した。
【0085】
参考例1:10gの焼成固体酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウム溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.04gのRhを硝酸ロジウム(III)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、参考例1を形成した。
【0086】
参考例2:10gの焼成固体酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.3gのPdを硝酸パラジウム(II)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化テトラエチルアンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、参考例2を形成した。
【0087】
参考例3:10gの焼成固体酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.3gのPdを硝酸白金(II)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化テトラエチルアンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、参考例3を形成した。
【0088】
本発明の粉末触媒の調製
100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物をHastelloyオートクレーブ中に密封し、150℃まで加熱し、2時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。
【0089】
触媒1:10gの含水酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウム溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.04gのRhを硝酸ロジウム(III)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、触媒1を形成した。
【0090】
触媒2:10gの含水酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.3gのPdを硝酸パラジウム(II)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化テトラエチルアンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、触媒2を形成した。
【0091】
触媒3:10gの含水酸化物(乾燥ベース)を90gのDI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の添加により、溶液のpHは約10~11に上昇した。次いで、0.3gのPdを硝酸白金(II)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化テトラエチルアンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーをるつぼに移し、90℃で少なくとも16時間乾燥させた。乾燥粉末を乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕した粉末を500℃で焼成して、触媒3を形成した。
【0092】
実施例1:反応器中の粉末触媒の加速エージング及び三元触媒作用(TWC)ライトオフ試験
参考例1~3及び触媒1~3の粉末触媒を高温レドックス条件に供して、車両での長期運転をシミュレートした。粉末を管状炉に入れ、5L/分で流れる1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2からなる化学量論的ガス混合物下、10℃/分の速度で1050℃まで加熱した。次いで、温度を1050℃で40時間保持し、その間、流れるガス混合物を以下に列挙する順序で5分毎に変えた。
1.化学量論:1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
2.リーン:1.2%CO、0.4%H2、1.6%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
3.化学量論:1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
4.リッチ:2.4%CO、0.8%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
【0093】
40時間後、コーティングされたコアをリッチガス混合物下で1050℃~400℃未満まで冷却し、次いで、N2のみ下で400℃から室温まで冷却した。
【0094】
上記の加速エージング条件に供した後、参考例1及び触媒1の触媒をTWCライトオフ試験に供した。この試験では、0.25gの粉砕コーディエライトと混合した0.05gの粉末触媒を、ガソリン排気条件をシミュレートするように設計されたガス混合物を加熱して流すことができる反応器装置に担持した。500cm
3/分で流れるガス混合物下で、温度を5℃/分の速度で150℃~600℃まで上昇させた。ガスの体積組成は、1%のCO、1500ppmのC
3H
6(プロペン)、400ppmのNO、0.65%のO
2、6%のH
2O、残部はN
2であった。温度の関数としてのNO、CO、及び全炭化水素(THC、C
3H
6から構成される)の変換率を、それぞれ、
図1~
図3に報告する。
【0095】
ライトオフ試験中の触媒の性能を定量化するための有用な測定基準は、T50値であり、これは、本明細書において、50%変換率が達成される最低温度として定義される。より低いT50温度は、向上した触媒活性を実証する触媒を示す。各汚染物質(NO、CO、及びTHC)の場合、触媒活性は、各触媒によって達成されたT50値によって明示されるように、参考例1よりも触媒1の方が大きかった。触媒1は、参考例1よりもそれぞれ、8℃、11℃、及び20℃低い、NO、CO、及びTHC変換率のT50値を達成した。これらの結果は、本発明のRh含有触媒1が、参考例1と比較して向上した触媒活性を呈し、ガソリン車両排出システムにおける触媒として好適であることを実証する。
【0096】
上記の加速エージング条件に供した後、参考例2及び触媒2の触媒をTWCライトオフ試験に供した。温度の関数としてのNO、CO、及び全炭化水素(THC、C
3H
6から構成される)の変換率を、それぞれ、
図4~
図6に報告する。
【0097】
各汚染物質(NO、CO、及びTHC)の場合、触媒活性は、各触媒によって達成されたT50値によって明示されるように、参考例2よりも触媒2の方が大きかった。触媒2は、参考例2よりもそれぞれ、33℃、51℃、及び40℃低い、NO、CO、及びTHC変換率のT50値を達成した。これらの結果は、本発明のPd含有触媒2が、参考例2と比較して向上した触媒活性を呈し、ガソリン車両排出システムにおける触媒として好適であることを実証する。
【0098】
上記の加速エージング条件に供した後、参考例3及び触媒3の触媒をTWCライトオフ試験に供した。温度の関数としてのNO、CO、及び全炭化水素(THC、C
3H
6から構成される)の変換率を、それぞれ、
図7~
図9に報告する。
【0099】
各汚染物質(NO、CO、及びTHC)の場合、触媒活性は、各触媒によって達成されたT50値によって明示されるように、参考例3よりも触媒3の方が大きかった。触媒3は、参考例3よりもそれぞれ、21℃、20℃、及び21℃低い、NO、CO、及びTHC変換率のT50値を達成した。これらの結果は、本発明のPt含有触媒3が、参考例3と比較して向上した触媒活性を呈し、ガソリン車両排出システムにおける触媒として好適であることを実証する。
【0100】
実施例2:ヒドロキシル含有量測定及びRh取り込み試験
参考例4:100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物をHastelloyオートクレーブ中に密封し、150℃まで加熱し、2時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。次いで、含水酸化物を90℃で16時間乾燥させ、粉砕して粉末にし、更に120℃で2時間乾燥させた。乾燥後、含水酸化物を空気中500℃で焼成して、ヒドロキシルを除去し、含水酸化物を固体酸化物に変換した。
【0101】
プレ触媒4:100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物をHastelloyオートクレーブ中に密封し、150℃まで加熱し、2時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。
【0102】
次いで、参考例4及びプレ触媒4を、熱重量分析(thermogravimetric analysis、TGA)を介してヒドロキシル含有量について分析した。粉末を窒素流下で室温から120℃まで加熱した。次いで、粉末を120℃で2時間等温的に保持して、弱く吸着した水を脱着させた。次いで、試料を窒素流下で120℃~500℃まで加熱し、各試料の重量損失を測定した。重量損失は、以下に示されるように、固体酸化物及び含水酸化物粉末に含まれる2つのペンダントヒドロキシルの間の縮合反応に起因した。
【0103】
【数1】
式中、Mは、固体又は含水酸化物内の金属原子を表す。次いで、以下の式を使用して、ヒドロキシル含有量をTGAから計算した。
【0104】
【数2】
式中、[OH]は、粉末1グラム当たりのヒドロキシル含有量(mmol OH)である。
【0105】
図10は、参考例4及びプレ触媒4のヒドロキシル含有量を描写する。約1.0μmol/gのヒドロキシルしか含有しなかった参考例4と比較して、プレ触媒4は、約6.7μmol/gのヒドロキシルを含有した。これらの結果は、プレ触媒4が参考例4よりも有意に多い量のヒドロキシルを含有していたことを実証している。
【0106】
参考例4及びプレ触媒粉末試料もまた、以下の手順を使用してRh取り込み試験に供した。10g(乾燥ベース)の固体酸化物粉末又は含水酸化物粉末を、90gのDI水中に、室温で2時間の機械的混合によって分散させた。硝酸ロジウム(III)を、固体酸化物(それぞれ0.6重量%、1.7重量%、及び3.1重量%)又は含水酸化物担体(それぞれ、0.5重量%、1.4重量%、及び3.1重量%)上の様々なRh担持量を目標として、溶液に添加した。次いで、溶液を遠心分離し、デカントして、固体材料の大部分を除去した。最後に、0.1μmフィルタシリンジを使用して溶液を濾過した。遠心分離及び濾過された溶液をICP-OESによって分析して、溶液中に残っている遊離Rhの量を判定した。固体酸化物及び含水酸化物のRh取り込みは、以下の式を使用して判定した。
【0107】
【0108】
Rh取り込み実験の結果を
図11に要約する。全てのRh担持量において、参考例4と同じ金属組成のプレ触媒4は、Rh取り込み値によって証明されるように、溶液中での単純な混合からはるかに多くのRh量を吸着することができることが観察された。3重量%の目標Rh担持量では、プレ触媒4の含水酸化物は、Rhの90%超を吸着することができたが、参考例4の焼成固体酸化物は、約22%しか吸着しなかった。理論に束縛されることを望むものではないが、含水酸化f物のこのより高いRh取り込みは、暫定的に、Rhイオンと含水酸化物上に存在するより高いヒドロキシル含有量との間の好ましい静電相互作用に起因する。Rhイオンと含水酸化物との間の相互作用のための強い駆動力は、単離されたRh原子及び/又は小さいRh粒子の安定化を可能にした。
【0109】
触媒コーティング基材コアの調製
参考例5:100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物を75℃まで加熱し、4時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。次いで、含水酸化物を90℃で16時間乾燥させ、粉砕して粉末にし、更に120℃で2時間乾燥させた。乾燥後、含水酸化物を空気中500℃で焼成して、ヒドロキシルを除去し、含水酸化物を固体酸化物に変換した。
【0110】
焼成固体酸化物(0.5g/in3)を、DI水中に機械的に混合しながら分散させて、スラリーを形成した。次いで、スラリーを機械的に撹拌しながら75℃の温度まで加熱した。Rh(3.5g/ft3)を硝酸ロジウム(III)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約7~8に再調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、スラリーを40℃未満まで冷却した。アルミナ結合剤(0.5g/in3)をスラリーに添加した。次いで、スラリーを、円筒形セラミック基材(400セル/平方インチ角、正方形チャネル、W/D=4.16インチ、H=3.0インチ)上に、1.0g/in3のウォッシュコート担持量でコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成した。1インチ×3インチの寸法のコアをセラミック基材から切断して、参考例5を形成した。
【0111】
触媒5:含水酸化物(0.5g/in3)をDI水中に分散させて、スラリーを形成した。次いで、スラリーを機械的に撹拌しながら75℃の温度まで加熱した。次いで、Rh(3.5g/ft3)を硝酸ロジウム(III)溶液の形態でスラリーに添加した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約7~8に調整し、スラリーを30分間混合した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に再調整し、スラリーを4時間混合した。次いで、スラリーを40℃未満まで冷却した。アルミナ結合剤(0.5g/in3)をスラリーに添加した。次いで、スラリーを、円筒形セラミック基材(400セル/平方インチ角、正方形チャネル、W/D=4.16インチ、H=3.0インチ)上に、1.0g/in3のウォッシュコート担持量でコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成した。1インチ×3インチの寸法のコアをセラミック基材から切断して、触媒5を形成した。
【0112】
触媒6:含水酸化物(0.5g/in3)をDI水中に分散させて、スラリーを形成した。次いで、スラリーを機械的に撹拌しながら75℃の温度まで加熱した。次いで、水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加してpHを約10~11に調整し、スラリーを2時間混合した。次いで、Rh(3.5g/ft3)を硝酸ロジウム(III)溶液の形態でスラリーに添加した。スラリーを高温で追加の2.5時間混合した。次いで、スラリーを40℃未満まで冷却した。アルミナ結合剤(0.5g/in3)をスラリーに添加した。次いで、スラリーを、円筒形セラミック基材(400セル/平方インチ角、正方形チャネル、W/D=4.16インチ、H=3.0インチ)上に、1.0g/in3のウォッシュコート担持量でコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成した。1インチ×3インチの寸法のコアをセラミック基材から切断して、触媒6を形成した。
【0113】
実施例3:反応器中の触媒コアの加速エージング及び三元触媒作用(TWC)ライトオフ試験
参考例5、触媒5、及び触媒6を高温エージングに供して、車両での長期運転をシミュレートした。コアを管状炉に入れ、5L/分で流れる1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2からなる化学量論的ガス混合物下、10℃/分の速度で1050℃まで加熱した。次いで、温度を1050℃で40時間保持し、その間、流れるガス混合物を以下に列挙する順序で5分毎に変えた。
1.化学量論:1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
2.リーン:1.2%CO、0.4%H2、1.6%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
3.化学量論:1.2%CO、0.4%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
4.リッチ:2.4%CO、0.8%H2、0.8%O2、10%H2O、10%CO2、残部N2
【0114】
40時間後、コーティングされたコアをリッチガス混合物下で1050℃~400℃まで冷却し、次いで、N2のみ下で400℃から室温まで冷却した。
【0115】
上記のエージング条件に供した後、参考例5、触媒5、及び触媒6の触媒物品の1インチ×3インチコアを、シミュレートされたガソリン排気条件下で典型的なTWCライトオフ試験に供した。この試験では、GHSV=200000時間
-1でのガソリン車両の排気をシミュレートするように設計された流動ガス混合物下で、温度を50℃/分の速度で150℃~600℃まで上昇させた。ガス組成物は、以下の組成:1)1080ppmのプロペン、120ppmのイソペンタン、2.28%のCO、0.17%のH
2、500ppmのNO、0.49%のO
2、14%のCO
2、10%のH
2O、及び2)1080ppmのプロペン、120ppmのイソペンタン、0.5%のCO、0.17%のH
2、500ppmのNO、1.28%のO
2、14%のCO
2、10%のH
2Oの間で1Hzの周波数で摂動させた。それぞれ、NO、CO、及び全炭化水素(THC、プロペン及びイソペンタンから構成される)変換率についてのライトオフ試験結果を
図12~
図14に示す。
【0116】
触媒の性能を定量化するための有用な測定基準は、T
20値であり、これは、本明細書において、20%変換率が達成される最低温度として定義される。より低いT
20温度は、向上した触媒活性を実証する触媒を示す。各場合において、触媒活性は、各触媒によって達成されたT
20値によって明示されるように、参考例5よりも触媒5及び触媒6の方が大きかった。
図12~
図14に示されるように、触媒5は、参考例5よりもそれぞれ、37℃、50℃、及び46℃低い、NO、CO、及びTHC変換率のT
20値を達成した。触媒6は、参考例5よりもそれぞれ、45℃、60℃、及び61℃低い、NO、CO、及びTHC変換率のT
20値を達成した。
【0117】
触媒性能を定量化するための別の有用な測定基準は、各触媒が最大温度(この試験では600℃)で達成することができる最終変換値である。
図12~
図14に示すように、最大温度で、触媒5は、参考例5によって達成された変換率よりもそれぞれ、38%、40%、及び25%高いNO、CO、及びTHCの変換率を達成した。最大温度で、触媒6は、参考例5によって達成された変換率よりもそれぞれ、48%、47%、及び31%高いNO、CO、及びTHCの変換率を達成した。したがって、典型的なTWCライトオフ試験から判定された測定基準は、触媒5及び触媒6において調製された触媒が、参考例5と比較して、ガソリン車両排出触媒として優れた性能を呈することを実証する。
【0118】
実施例4:触媒コアラムダスイープ試験
ガソリン車両の動作中、空燃比は、実際の運転条件中のユーザ入力の変動性に起因して、常に流量内にある。有害排出量(NO、CO、THC)を変換するための最適な空燃比は、化学量論点として既知である。理想的な化学量論的点からの空燃比の変動性は、多くの場合、ラムダ(λ)として既知である係数を使用して計算される。したがって、車両上の実世界条件における触媒の挙動を理解するために、広範囲の変動するλ値の下で触媒の性能を測定することは有用かつ有意義である。
【0119】
係数λは、化学量論的空燃比に対する実際の空燃比の比として本明細書で定義され、次式で表される。
【0120】
【数4】
式中、
[X]=体積パーセントでのガス濃度
H
CV,i=炭化水素分子i中の炭素に対する水素の原子比
O
CV,i=炭化水素分子i中の炭素に対する酸素の原子比
C
因子,i=炭化水素分子iの炭素原子数
【0121】
実施例3に記載のエージング条件に供した後、参考例5、触媒5、及び触媒6の触媒物品の1インチ×3インチコアを、シミュレートされたガソリン排気条件下でラムダスイープ試験に供した。この試験では、GHSV=100,000時間-1でのガソリン車両の排気をシミュレートするように設計された流動ガス混合物下で、温度を500℃で等温的に保持した。45分間にわたって、1Hzの周波数及び0.05の振幅で振動させながらO2濃度を変化させることによって、λを1.04の平均値から0.98の平均値まで規則的な間隔(1秒毎)でステップダウンさせた。試験開始時(λ=1.04)の平均ガス組成は、600ppmのプロペン、600ppmのプロパン、1.0%のCO、0.33%のH2、2000ppmのNO、1.5%のO2、14%のCO2、10%のH2Oであった。試験終了時(λ=0.98)の平均ガス組成は、600ppmのプロペン、600ppmのプロパン、1.0%のCO、0.33%のH2、2000ppmのNO、0.375%のO2、14%のCO2、10%のH2Oであった。
【0122】
それぞれ、NO、CO、及びTHC(プロペン及びイソペンタンから構成される)変換率についてのラムダスイープ試験結果を
図15~
図17に示す。触媒5及び触媒6は両方とも、全ラムダ操作ウィンドウ(1.04≦λ≦0.98)にわたって、参考例5よりも3つ全ての排出量(NO、CO、及びTHC)についてより高い変換率を達成することができた。いわゆる「リーン」条件(λ>1)下で、触媒5は、参考例5によって達成可能なものよりも6%、31%、及び14%高いNO、CO、及びTHC変換率を達成することができた。いわゆる「リッチ」条件(λ<1)下で、触媒5は、参考例5によって達成可能なものよりも36%、20%、及び22%高いNO、CO、及びTHC変換率を達成することができた。いわゆる「リーン」条件(λ>1)下で、触媒6は、参考例5によって達成可能なものよりも9%、39%、及び20%高いNO、CO、及びTHC変換率を達成することができた。いわゆる「リッチ」条件(λ<1)下で、触媒6は、参考例5によって達成可能なものよりも42%、30%、及び29%高いNO、CO、及びTHC変換率を達成することができた。したがって、触媒5及び触媒6は両方とも、参考例5と比較して、実世界で変動する排気ガス条件下で優れた性能を呈した。
【0123】
完全配合触媒コーティング基材の調製
参考例6(下層触媒ウォッシュコートを含有するセラミック基材):ウォッシュコートの参考例下層は、硝酸Pd(II)の形態のPd、希土類ドープセリア-ジルコニア混合酸化物、Ba(II)水酸化物の形態のBa、及びガンマアルミナのスラリーを形成することによって調製した。このウォッシュコートを、円筒形セラミック基材(750セル/平方インチ角、六角形チャネル、W/D=4.66インチ、H=2.93インチ)上に、2.1g/in3のウォッシュコート担持量でコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成した。次いで、このプレコーティングされたセラミック基材を、参考例7及び触媒7の調製において使用した。
【0124】
プレ触媒7:100gの含水酸化物(乾燥ベース)を900gのDI水中に分散させて、スラリーを形成した。水酸化アンモニウムの溶液をスラリーに添加して、pHを約10~11に調整した。次いで、混合物をHastelloyオートクレーブ中に密封し、150℃まで加熱し、2時間機械的に撹拌した。冷却後、処理された含水酸化物を濾過し、出てくる濾液が中性pH約7に達するまでDI水で洗浄した。以下、この材料をプレ触媒7と称する。
【0125】
参考例7:プレ触媒7を90℃で16時間乾燥させ、粉砕して粉末にし、更に120℃で2時間乾燥させた。乾燥後、含水酸化物を空気中500℃で焼成して、ヒドロキシルを除去し、含水酸化物を固体酸化物に変換した。
【0126】
焼成固体酸化物(1.0g/in3)を、DI水中に機械的に撹拌しながら分散させて、スラリーを形成した。スラリーのpHは、硝酸アンモニウム水溶液を使用して約10~11に上昇させた。Rh(4g/ft3)を硝酸Rh(III)溶液の形態でスラリーに添加し、溶液を30分間混合した。次いで、γ-アルミナ(0.3g/in3)をスラリーに添加した。このウォッシュコートを、1.3g/in3のウォッシュコート担持量で参考例6上にコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成して、参考例7を形成した。
【0127】
触媒7:プレ触媒7(1.0g/in3)を、DI水中に機械的に撹拌しながら分散させて、スラリーを形成した。スラリーのpHは、硝酸アンモニウム水溶液を使用して約10~11に上昇させた。Rh(4g/ft3)を硝酸Rh(III)溶液の形態でスラリーに添加し、溶液を30分間混合した。次いで、γ-アルミナ(0.3g/in3)をスラリーに添加した。このウォッシュコートを、1.3g/in3のウォッシュコート担持量で参考例6上にコーティングした。コーティングされたセラミック基材を500℃で焼成して、触媒7を形成した。
【0128】
実施例5:エンジン上の触媒コーティング基材についての実世界駆動排出量(Real-World Driving Emission、RDE)試験
参考例7及び触媒7をエンジンベンチ上で高温エージングに供して、車両上での長期運転をシミュレートした。全ての触媒を、875℃の入口触媒温度を目標とする40秒化学量論/6秒リッチ/14秒リーン排気ガス条件のサイクルに供しながら、150時間にわたってエンジンベンチエージングした。
【0129】
エンジンエージング後、参考例7及び触媒7を、2.0Lのエンジンベンチ動力計を使用して試験し、寒い都市、高速道路、及び暑い都市の速度段階を表す加速及び燃料遮断条件を含む、特注の相手先商標製品製造業者が設計した実世界駆動排出量(RDE)サイクルを行った。サイクル長は、周囲浸漬条件から2700秒であり、約700℃のピーク触媒床温度及び250kg/時の質量空気流量に達した。触媒後位置でのNOx、CO、及びTHC排出量を測定し、各化学種の累積質量をサイクル全体にわたって計算した。
【0130】
参考例7及び触媒7についてのNO
x、CO、及びTHCの累積排出量を、それぞれ、
図18~
図20に示す。エンジン排気排出量をより有害でない生成物により効果的に変換することができる触媒は、より少ない総排出量を排出する。
図18~
図20に示されるように、触媒7は、参考例7よりも22%低いNO
x、26%低いCO、及び16%低いTHC排出量を排出した。これらの結果は、本発明の触媒7が、参考例7と比較して向上した触媒活性を呈し、ガソリン車両排出システムにおける触媒として好適であることを実証する。
【0131】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に例示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、依然として添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒中間体を製造する方法であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、
前記含水酸化物を含むスラリーを白金族金属(PGM)イオンと接触させて、PGM含有スラリーを提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記PGM含有スラリーを加熱することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含水酸化物を含むスラリーをPGMイオンと接触させる前に、前記含水酸化物を含むスラリーを加熱する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記含水酸化物を含むスラリー及び/又は前記PGM含有スラリーのpHを7~14に調整することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記含水酸化物が、焼成されていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
含水酸化物を含むスラリーを提供することが、アルミニウムイオン、セリウムイオン、及びジルコニウムイオンのうちの1つ以上を含む水溶液を、塩基性水溶液と接触させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒中間体であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含む含水酸化物ネットワークであって、その中に封入されたPGMイオンを含む、含水酸化物ネットワークを含む、触媒中間体。
【請求項8】
前記含水酸化物ネットワークが、焼成されていない、請求項7に記載の触媒中間体。
【請求項9】
触媒物品を製造する方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒中間体を製造するか、又は請求項7若しくは8に記載の触媒中間体を提供することと、
前記触媒中間体を含むスラリーを提供することと、
前記触媒中間体を含む前記スラリーを基材に適用することと、
前記スラリーを加熱することと、を含む、方法。
【請求項10】
触媒物品を製造する方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒中間体を製造するか、又は請求項7若しくは8に記載の触媒中間体を提供することと、
前記触媒中間体を焼成して、触媒組成物を形成することと、
前記触媒組成物を含むスラリーを提供することと、
前記触媒組成物を含む前記スラリーを基材に適用することと、
前記スラリーを加熱することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記触媒物品が、三元触媒作用のためのものである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
中間体であって、
アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含み、前記含水酸化物が、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、中間体。
【請求項13】
前記含水酸化物が、セリウム及びジルコニウムの混合含水酸化物を含む、請求項12に記載の中間体。
【請求項14】
前記含水酸化物が、2~20μmol/gのヒドロキシル含有量を有する、請求項12又は13に記載の中間体。
【請求項15】
前記含水酸化物が、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上からなる群から選択されるドーパントを更に含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の中間体。
【請求項16】
中間体を製造する方法であって、
(1)アルミニウム、セリウム、及びジルコニウムのうちの1つ以上の含水酸化物を含むスラリーを提供することと、
(2a)(1)の前記スラリーを加熱すること、及び/又は
(2b)(1)の前記スラリーのpHを7~14に調整することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記中間体が、1μmol/g超のヒドロキシル含有量を有する、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】