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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20240905BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
A24D1/20
A24F40/465
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510348
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022077037
(87)【国際公開番号】W WO2023052463
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21200046.7
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】ローガン,アンドリュー・ロバート・ジョン
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045AA21
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC01
4B162AC22
(57)【要約】
エアロゾル発生物品を開示する。物品は、ハウジングと、ハウジング内に配置された基材であって、加熱されるとエアロゾルを発生させるように構成された基材と、ハウジング内に基材と近接して配置された少なくとも1つの加熱素子と、を含み、各加熱素子は、サセプタと絶縁体とを含み、絶縁体は、サセプタの少なくとも一部分を取り囲んでおり、サセプタ及び絶縁体は、使用時にエアロゾル発生装置によって電磁場が印加されると、加熱素子が、物品のハウジングを損傷することなく、近接する基材を加熱するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された基材であって、加熱されるとエアロゾルを発生させるように構成された基材と、
前記ハウジング内に前記基材と近接して配置された少なくとも1つの加熱素子と、
を含み、
各加熱素子は、
サセプタと、
絶縁体であって、中実絶縁体材料を含む絶縁体と、
を含み、
前記絶縁体は、前記サセプタの少なくとも一部分を取り囲んでおり、且つ前記サセプタと接触しており、前記サセプタ及び前記絶縁体は、使用時にエアロゾル発生装置によって電磁場が印加されると、前記加熱素子が前記物品の前記ハウジングを損傷することなく前記近接する基材を加熱するように構成されている、
エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記物品は、前記物品の、長手方向で対向している2つの端部の間で物品軸が定義されている細長形状である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記サセプタは第1の端部及び第2の端部を含み、前記加熱素子は、前記第1の端部と前記第2の端部とが前記物品軸に沿って軸方向に並ぶように、前記ハウジング内に配置されている、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記絶縁体は、前記サセプタの前記第1の端部及び前記第2の端部が前記絶縁体から露出しているように前記サセプタを取り囲んでいる、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記絶縁体が前記サセプタを完全にカプセル化している、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記サセプタは円筒チューブ形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記チューブ壁の厚さが50μm~150μmである、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記絶縁体は、前記サセプタとほぼ同じ形状である、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記絶縁体は、前記加熱素子から延びる、絶縁体材料の複数の突起を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記複数の突起は前記加熱素子から、前記物品の長手軸に垂直に延びている、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記加熱素子の外径は5mm~8mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記加熱素子の長さは6mm以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記少なくとも1つの加熱素子は複数の加熱素子を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
前記複数の加熱素子は、前記物品の長手軸に軸方向に並んでおり、前記物品の長さ方向に順次配列されており、前記基材は、隣接する加熱素子同士の間に配置されている、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
エアロゾル発生システムであって、
請求項1~14のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品と、
加熱チャンバ及び少なくとも1つの誘導コイルを含むエアロゾル発生装置と、
を含み、
前記装置は、使用時には、前記誘導コイルが前記サセプタと並ぶように、前記物品を前記加熱チャンバに収容するように構成されている、
エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアロゾル発生装置及びエアロゾル発生装置用の消耗物品に関し、特に誘導加熱可能な物品に関する。物品は、燃焼ではなく加熱されて吸入用エアロゾルを発生させるタバコ又は他の好適なエアロゾル基材材料を含みうる。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、葉巻、シガリロ、巻きタバコ等の従来型タバコ製品の喫煙をやめたい常習的喫煙者を支援するための補助として、(気化器とも呼ばれる)リスク低減装置又はリスク修正装置の人気及び使用がここ数年で急成長している。従来型タバコ製品においてタバコを燃焼させるのとは異なる、エアロゾル化可能物質を加熱又は加温する様々な装置及びシステムが利用可能である。
【0003】
一般に利用可能なリスク低減装置又はリスク修正装置は、基材加熱型エアロゾル発生装置又は非燃焼加熱式装置である。このタイプの装置は、湿った葉タバコ又は他の好適なエアロゾル化可能材料を典型的には含むエアロゾル基材を典型的には150℃~350℃の範囲の温度に加熱することによって、エアロゾル又は蒸気を発生させる。エアロゾル基材を燃焼させたり燃やしたりせずに加熱することにより、ユーザが求める成分を含むが、毒性及び発癌性のある、燃焼及び燃やすことの副生成物を含まないエアロゾルが放出される。更に、タバコ又は他のエアロゾル化可能材料を加熱することにより生成されるエアロゾルは、ユーザにとって不快になりうる、燃焼及び燃やすことに起因する焦げた味又は苦味を典型的には含まず、そのため、基材は、煙及び/又は蒸気をユーザにとってより口当たりのよいものにするためにそのような材料に典型的に添加される糖及び他の添加物を必要としない。
【0004】
そのような、エアロゾル基材の加熱方法の1つは、誘導加熱システムを用いる方法であり、その方法では、(インダクタとも呼ばれる)誘導コイルが装置に設けられ、エアロゾル基材又はその近くにサセプタが設けられる。ユーザが装置を作動させるとインダクタに電気エネルギが供給され、それによって電磁場が生成される。サセプタはその電磁場と結合して熱を発生させ、その熱が基材に伝達されて、基材からエアロゾルを発生させる。
【0005】
しかしながら、エアロゾル発生システムにおいて誘導加熱システムを使用することには様々な問題が伴う。サセプタの領域に厳密な熱プロファイルを発生させることは困難であり、結果として、消耗品又はエアロゾル発生装置の他の領域を燃やすことなくエアロゾル基材を迅速且つ効率的に加熱することは容易にはできない。安全且つ効率的な熱プロファイルを発生させる既存の試みを既存の高速生産機械に組み込むことは容易にはできず、従って生産も容易にはできない。
【0006】
本発明は、上記の問題のうちの少なくとも幾つかを解決しようとするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル発生物品が提供され、これは、ハウジングと、ハウジング内に配置された基材であって、加熱されるとエアロゾルを発生させるように構成された基材と、ハウジング内に基材と近接して配置された少なくとも1つの加熱素子と、を含み、各加熱素子は、サセプタと絶縁体とを含み、絶縁体は、サセプタの少なくとも一部分を取り囲んでおり、サセプタ及び絶縁体は、使用時にエアロゾル発生装置によって電磁場が印加されると、加熱素子が、物品のハウジングを損傷することなく、近接する基材を加熱するように構成されている。
【0008】
絶縁体は、サセプタとハウジングとの間に配置されており、それによって、サセプタは更なる高温まで加熱されることが可能であり、それによって、物品のハウジングを燃焼又は他の形で損傷することなく、より迅速に基材を加熱してエアロゾルを発生させることが可能である。このように、絶縁体がサセプタの少なくとも一部分を取り囲んでいるため、加熱素子のサセプタは、物品を損傷することなく、特に物品のハウジングを損傷することなく、より高い温度まで誘導加熱されることが可能である。物品の使用中のそれらの利点に加えて、サセプタ及び絶縁体が、個別の、少なくとも一部分が絶縁された加熱素子をこのように形成することは、これらの加熱素子を含むエアロゾル発生物品を製造する際に特に有利である。このように構成された加熱素子は、線型結合工程等の高速工程を有利に含み、更にそれによって製造コストを節約する、エアロゾル発生物品の既存の製造工程にシンプルに組み込まれることが可能である。
【0009】
好ましくは、絶縁体は、絶縁体材料の中実構成要素である。このように、絶縁体は、上述の有利な効果を提供することに加えて、物品の強度、特に物品の構造強度を高める。絶縁体材料はまた、エアロゾル発生装置の通常の動作温度では、燃焼又は加熱の損傷に対する耐性がなければならない。中実絶縁体材料として、酸化アルミニウムや二酸化ケイ素のようなセラミック、或いは酸化カルシウムやPEEKがあってよい。
【0010】
好ましくは、絶縁体はサセプタに直接接触している。より好ましくは、絶縁体はサセプタに直接接触しており、絶縁体はサセプタを取り囲んでいる。この構成により、物品の強度及び絶縁の有効性の両方が更に高まり、同時にエアロゾル発生物品の製造工程への組み込みが直接的になる。
【0011】
好ましくは、物品は、物品の、長手方向で対向している2つの端部の間で物品軸が定義されている細長形状である。
【0012】
好ましくは、サセプタは第1の端部及び第2の端部を含み、加熱素子は、第1の端部と第2の端部とが物品軸に沿って軸方向に並ぶように、ハウジング内に配置されている。
【0013】
このように、加熱素子は、製造工程中の物品への容易な組み込みが可能である。更に、サセプタの第1の端部及び第2の端部は、物品軸と並んでいるため、物品のハウジングから離れて位置していて、加熱でハウジングを損傷する可能性が低い。
【0014】
任意選択で、絶縁体は、サセプタの第1の端部及び第2の端部が絶縁体から露出しているようにサセプタを取り囲んでいる。任意選択で、絶縁体は、サセプタの、対向している端部以外の全てを取り囲んでおり、サセプタの第1の端部及び第2の端部は絶縁体で覆われていない。サセプタの第1の端部及び第2の端部は、ハウジングを損傷する可能性が低いため、絶縁体で覆われる必要はない。このように、加熱素子で使用される絶縁体材料が少なくなり、それによって、コストが節約され、加熱素子が占める体積が小さくなる。
【0015】
任意選択で、絶縁体はサセプタを完全にカプセル化している。即ち、絶縁体は、サセプタの外側表面を完全に取り囲んでいる。このように、加熱素子が基材を加熱することを可能にしたままで、物品のハウジングは熱に関して最大限に保護される。
【0016】
任意選択で、サセプタは円筒チューブ形状である。この円筒形状は、典型的なエアロゾル発生物品の形状と合致するため、そのような物品に加熱素子を容易に組み込むことが可能であり、且つ基材を均一に加熱することが可能である。更に、チューブ形状により、誘導により発生した渦電流が連続的に流れることが可能であり、一方では、表面近くを流れる渦電流によって抵抗加熱されないサセプタ材料の量が減るため、電磁場が印加されたときにサセプタが所望の温度まで加熱される速度が高まる。
【0017】
好ましくは、チューブ壁の厚さが50μm~150μmである。そのような厚さであれば、最適な加熱プロファイルと製造しやすさとの望ましいバランスが得られることが分かっている。
【0018】
任意選択で、サセプタは平板形状である。任意選択で、サセプタは中空の立方体形状である。任意選択で、サセプタは、サセプタ材料の複数のストランドを含む。好ましくは、サセプタの一部分の最小厚さは、50μm~150μmである。
【0019】
任意選択で、絶縁体は、サセプタとほぼ同じ形状である。例えば、サセプタが円筒形状であれば、絶縁体も円筒形状であってよい。特に、サセプタの少なくとも一部分を取り囲むためには、より大きい円筒形状であってよい。絶縁体がサセプタとほぼ同じ形状である場合、(例えば、加熱素子の長手軸に沿った)絶縁体の長さは、実質的に(典型的には同じ軸に沿って測定された)サセプタの長さ以上である。
【0020】
任意選択で、絶縁体は、加熱素子から延びる、絶縁体材料の複数の突起を含む。このように、突起は、絶縁体の体積対表面積比を増やすことによって、ハウジングから離れたサセプタからの熱放散の効率を高める。突起は、空気が物品内を流れるためのチャネル又はギャップを(例えば、隣接する突起間に)画定するように配列されてよい。
【0021】
好ましくは、複数の突起は加熱素子から、物品の長手軸に垂直に延びている。物品が細長形状の場合、物品のこの長手軸は上述の物品軸である。
【0022】
好ましくは、加熱素子の外径は、ハウジングの内径にほぼ等しい。即ち、絶縁体がサセプタの少なくとも一部分を取り囲んでいるため、絶縁体はハウジングの内側に直接接触している。このように、基材を均一に加熱する物品をより容易に製造することが可能である。
【0023】
好ましくは、加熱素子の外径は5mm~8mmである。
【0024】
好ましくは、加熱素子の長さは6mm以上である。このように、加熱素子は、効率的な基材加熱のためのスペースを物品内に備えながら、製造並びに既存のエアロゾル発生物品製造工程への組み込みが、長さのより短い加熱素子より容易でありうる。加熱素子の長さは、加熱素子の第1の端部から加熱素子の第2の端部まで測定され、加熱素子が物品内に配置されたときに、加熱素子の第1の端部及び第2の端部は、物品の長手軸に軸方向に並ぶ。任意選択で、加熱素子の長さは、6mm以上、8mm未満であり、これは、加熱素子の近くの基材をより効率的に加熱するためである。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの加熱素子は複数の加熱素子を含む。このように、物品内の基材の各部分が、より均一且つ効率的に加熱されることが可能である。
【0026】
好ましくは、複数の加熱素子は、物品の長手軸に軸方向に並んでおり、物品の長さ方向に順次配列されており、基材は、隣接する加熱素子同士の間に配置されている。このように、基材の各部分は、物品の長さに沿って基材の各部分と加熱素子とが交互になるように、加熱素子によって順次分割されている。これにより、基材の効率的且つ均一な加熱が行われる。物品が細長形状の場合、物品のこの長手軸は上述の物品軸である。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、エアロゾル発生システムが提供され、これは、第1の態様のエアロゾル発生物品と、加熱チャンバ及び少なくとも1つの誘導コイルを含むエアロゾル発生装置と、を含み、装置は、使用時には、誘導コイルがサセプタと並ぶように、物品を加熱チャンバに収容するように構成されている。
【0028】
このように、物品が装置に収容されて、ユーザが装置を操作すると、誘導コイルが、時間的に変化する交番電磁場を発生させ、この電磁場が物品のサセプタと結合することによってサセプタが発熱して、近接する基材を加熱する。装置は、加熱チャンバの長さの少なくとも大部分に沿って延びるように構成された単一の誘導コイルを含んでよく、或いは代替として、収容された物品の少なくとも1つのサセプタと並ぶようにそれぞれが配置された複数の誘導コイルを含んでよい。
【0029】
以下では本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明していく。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明によるエアロゾル発生物品の概略断面図である。
図2】本発明による、エアロゾル発生装置及びエアロゾル発生物品を含むエアロゾル発生システムの概略断面図であり、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置に導入されつつある様子を示す図である。
図3図3Aは、本発明によるエアロゾル発生物品の加熱素子の概略図であり、図3Bは、その加熱素子の概略断面図である。
図4図4A-4Dは、本発明によるエアロゾル発生物品のサセプタの概略図である。
図5図5Aは、本発明によるエアロゾル発生物品の絶縁体の概略図であり、図5B及び5Cは、本発明によるエアロゾル発生物品の絶縁体の概略断面図である。
図6図6Aおよび6Bは、本発明によるエアロゾル発生物品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で説明するように、蒸気は、臨界温度よりも低い温度で気相である物質を指すと一般に理解されており、これは、温度を低下させずに圧力を高めることにより、蒸気を液体に凝縮させうることを意味し、一方、エアロゾルは、空気又は別の気体中に微細な固体粒子又は液滴が浮遊しているものである。しかしながら、本明細書では、特に、ユーザの吸入のために発生させる吸入可能媒体の形態に関しては、用語の「エアロゾル」と「蒸気」が区別なく使用されうることに留意されたい。
【0032】
図1は、本発明によるエアロゾル発生物品1(物品)の概略断面図である。
【0033】
図1では、エアロゾル発生物品1は、物品1の様々な構成要素を収容するハウジング10(例えば、紙製ラッパー)を含む。図示の実施形態では、物品1は、物品1の、長手方向で対向している2つの端部の間で物品1によって物品軸2が定義されている細長形状である。物品1の好ましい形状は細長円筒形状であるが、当業者であれば理解されるように、物品1は、本明細書に記載の様々な実施形態で説明される構成要素に適合するように、且つ、物品1が、対応するエアロゾル発生装置100に収容されることを可能にするようにサイズ決定された任意の形状で形成されてよい。例えば、物品1は立方体状の形状であってよい。
【0034】
エアロゾル発生物品1は、ハウジング10内に配置された、タバコ等のエアロゾル基材20(基材)を含む。物品はまた、ハウジング10内に並べられ、基材20に近接配置されている複数の加熱素子4を含む。加熱素子4は、使用時には、ユーザの吸入のためのエアロゾルを形成するために、基材20を燃焼させずに加熱するように構成されている。
【0035】
図1、3A、3B、6A、及び6Bに示した加熱素子4は実質的に短い円筒として成形されているが、加熱素子4の特性を変えて、実現される加熱効果、従って、発生するエアロゾルを調整するために、他のサイズ及び形状が用いられてもよい。同様に、物品1内の加熱素子4の個数及び配置も、発生するエアロゾルを調整するために適合されてよい。例えば、物品1は、物品1の比較的大きな部分に沿って延びるように成形された加熱素子4を1つだけ含んでよく、これは、そのように基材を均一に加熱するためである。サイズがより小さい物品1は、典型的には、より大きな物品ほど多くの基材20を含まず、従って、所望のエアロゾルを発生させるのに必要な加熱素子4を使用することが想定される。更に、多数の比較的小さいサイズの加熱素子4を物品1の全体にわたって均等な間隔で配置して使用すれば、少ない数の比較的大きいサイズの加熱素子4よりも均一な熱分布を実現しうるが、このように大きな加熱素子を使用する物品1のほうが製造しやすい。
【0036】
各加熱素子4は、サセプタ30及び絶縁体40を含み、各加熱素子4の少なくとも一部分が絶縁された加熱素子4であるように、絶縁体40がサセプタ30の少なくとも一部分を取り囲んでいる。サセプタ30は、導電体であり、軟鋼、ステンレス綱、アルミニウム、鉄等のサセプタ材料を含む。絶縁体40は断熱体であり、従って、使用中に加熱素子4が過熱してハウジング10を損傷するのを防ぐ。絶縁体40は、絶縁体材料を含み、酸化アルミニウムや二酸化ケイ素のようなセラミックが好ましく、他の絶縁体材料として酸化カルシウムやPEEKがある。絶縁体40は、サセプタ30を完全に取り囲んでカプセル化してよく、又はサセプタ30の一部分だけを取り囲んでよい。図3A及び3Bに更に詳細に示されている、図1の例では、サセプタ30は円筒形状のチューブであり、チューブの外面だけが絶縁体40で覆われており、一方、サセプタ30の端部31、32は絶縁体40が切れてむき出しになっており、そのように絶縁体40は、サセプタ30を取り巻く、別のより大きな円筒チューブを形成している。好ましくは、加熱素子4は、サセプタ30の第1の端部31とサセプタの第2の端部32とが物品軸2に沿って軸方向に並ぶことによって、より均一な加熱を実現するように、物品1内に配置されている。好ましくは、サセプタ30の一部分だけが絶縁体40で取り囲まれる場合は、絶縁体40がサセプタ30よりもハウジング10に近くなるように加熱素子4が配置される。即ち、サセプタ30の、ハウジング10に最も近い側面は、絶縁体40で取り囲まれている側面である。
【0037】
使用中は、電磁場がサセプタ30に印加され、それによって、サセプタ30内に渦電流及び/又は磁気ヒステリシス損失が発生してサセプタ30が発熱する。そしてこの熱がサセプタ30から基材20に(例えば、伝導、対流、又は放射によって)伝達され、それによって、基材20が加熱されて吸入用エアロゾルを発生させる。この過程では、絶縁体40の断熱特性によって、過剰な熱が物品1のハウジング10に伝達されない(例えば、伝導しない)ようになっている。
【0038】
物品1は更に、発生したエアロゾルの特性を変化させてユーザ体験を高めるフィルタ3を物品1の端部に含む。図示の物品1では、フィルタ3は、発生したエアロゾルをユーザがマウスピースから直接吸入できるそのマウスピースとしても動作するが、物品1の別の例では、マウスピースとフィルタ3は別々の要素である。追加として、更に別の例では、物品1は、フィルタ3を含んでマウスピースを含まなくてよく、又はマウスピースを含んでフィルタ3を含まなくてよく、又はフィルタ3もマウスピースも含まなくてよい。それでも物品1とともに使用されるエアロゾル発生システムで使用される場合には、これらの要素は、物品1とは別個に用意されてもよく、例えば、マウスピースがエアロゾル発生装置100内に含まれてもよい。
【0039】
エアロゾル発生物品1は、エアロゾル発生装置100と結合されるように構成されている。図2は、エアロゾル発生物品1及びエアロゾル発生装置100を含むエアロゾル発生システムの一例を示しており、物品1が装置100の加熱チャンバ110に導入されつつあるところを示している。加熱チャンバ110は、装置が収容するように構成されている物品1とほぼ同じ形状の内部空間を画定しており、これらの構成要素同士が確実に嵌合するようになっている。例えば、物品1が細長円筒形状の場合には、加熱チャンバ110の内部空間も、物品1とほぼ同じ(又は物品1より少しだけ大きい)直径の細長円筒形状でなければならない。
【0040】
装置100はまた、加熱チャンバ110の周囲に並べられて電磁場発生器として動作する複数の誘導コイル120を含む。使用中は、コイル120に高周波交流電流が印加され、それによって、時間的に変化する交番電磁場がコイル120から発生し、この電磁場が、加熱チャンバ110に収容されている物品1のサセプタ30と結合して、上述のようにサセプタ30が発熱する。
【0041】
図2の例に示した装置100では、装置100は、収容されている物品1のサセプタ30と並ぶようにサイズ及び位置を決められた複数の個別コイル120を含む。これにより、コイルから発生する電磁場のサイズが制限されながらも必要な加熱は行われるため、エネルギ及び電力が効率的に使用されることになる。しかしながら、これは必須ではなく、別の例の装置100では、加熱チャンバ110のより大きな部分に沿って延びる単一のコイル120(又はより大きな複数のコイル120)であってもよく、それによって、同じ装置100が、多様な構成の加熱素子4を有する多様な物品1との組み合わせで使用されても効果的であるような電磁場を発生させることが可能である。
【0042】
加熱素子4、サセプタ30、及び絶縁体40は、様々な形態であってよい。好ましくは、サセプタ30は薄く、又は、より大きな形状を形成するのであれば薄い壁を有し、厚さは50μm~150μmである。50μm前後の厚さを有するサセプタ30は、300kHz~500kHz近辺の周波数で交番する電磁場との組み合わせで最適な加熱効果を発揮することが見出されている。そのような薄いサセプタ30は、発生した渦電流の高い割合がサセプタ30の最も表面近くに見られるという表皮効果のおかげで効果的である。より厚いサセプタ30、或いは、より厚い壁を有するサセプタ30であっても、基材20を加熱してエアロゾルを発生させるが、所望の温度まで加熱するのにより長い時間がかかる。しかしながら、サセプタ30の幾つかの形状(例えば、中空構造)を50μmの壁厚で製造するのは困難であることが分かっており、そこで、これらのサセプタ30は、加熱特性と製造の容易さ及びコストとのバランスをとるために、より厚い壁(例えば、120μm)で使用されてもよい。
【0043】
図4A、4B、4C、及び4Dは、本発明によるサセプタの幾つかの異なる例30A~Dを示す。サセプタ30Aは、中空の円形チューブ形状である。このチューブ形状は、渦電流が表面近くを流れるせいで抵抗加熱されないサセプタ材料の量を少なくしながら、発生した電流が連続的に流れることを可能にする。サセプタ30Bは平板形状である。サセプタ30Cは、サセプタ材料の複数の個別ストランドを含む。サセプタ30Cは立方体形状であり、これは、中空の立方体形状であってもよく、空洞がない中実構造であってもよい。
【0044】
好ましくは、加熱素子4の絶縁体40の形状は、サセプタ30の形状、又は、物品1の、物品軸2に垂直な断面の形状とほぼ一致する。例えば、図5Aは、円筒形状サセプタ30と組み合わせて使用される円筒形状絶縁体40の斜視図を示す。図5Bは、同じ絶縁体40の上面図を示す。
【0045】
加熱素子4の絶縁体40は絶縁体30を取り囲んでいるため、絶縁体の寸法は、加熱素子4の寸法とほぼ一致する。好ましくは、絶縁体40の長さ(即ち、物品1の内側に嵌め込まれたときの、物品軸2の方向の長さ)は6mm以上である。好ましくは、絶縁体40の外径(又は、絶縁体40の形状によっては外側の幅)は、最大径の場所ではハウジング10の内径とほぼ同じである。このことは、加熱素子4が物品1内の定位置にとどまって、ハウジング10を損傷することなく、基材20の均一且つ効率的な加熱を確実に行うことに役立つ。例えば、絶縁体40、従って、加熱素子4の外径は5mm~8mmである。別の例では、サセプタ30の外径は5mm~7mmであり、絶縁体40の厚さ(即ち、サセプタ30の外径と絶縁体40の外径との間の距離)は0.1mm~3mmである。
【0046】
本発明の幾つかの例では、絶縁体40は、加熱素子4から延びる絶縁体材料のフィンのような突起41を含む。そのような加熱素子4の一例を図5Cに示す。絶縁体の突起41は、絶縁体40の体積対表面積比を増やすことによって、ハウジング10を過熱したり損傷したりすることなく、(例えば、絶縁体30によって行われてきた)サセプタ30からの熱の放散を更に支援する。突起41は、物品1内に正しく配置されると、物品1のハウジング10に向かって延びるように構成されている。絶縁体の突起41は、ハウジング10の内部と接触してよく、又は、ハウジング10には接触せずにハウジング10に向かって延びてよい。絶縁体の突起41がハウジング10の内部と接触していれば、物品1が補強されて、ユーザによる物品1の偶発的損傷が減ることに役立つ。これらの突起41は、サセプタ30から直接延びてよく、又は、絶縁体40のうちの、サセプタ30(の少なくとも一部分)を取り囲んでいる部分から延びてもよい。突起41はまた、物品1内を通る空気流のためのギャップを形成してエアロゾル吸入体験を制御することにも使用されてよい。
【0047】
当業者であれば明らかなように、加熱素子4は、様々な構成で物品1に含まれてよい。例えば、図1は、円筒チューブ形状の複数の加熱素子4を含むエアロゾル発生物品1の概略断面図を示している。中空サセプタ30内のキャビティは、加熱する基材20を収容してよく、或いは代替として、キャビティは、実質的に空であって、隣接する加熱素子4によって隔てられた基材20の部分間の空隙を提供してよい。図6Aでは、加熱素子4のサセプタ30は、キャビティがない中実円筒形状である。サセプタ30を通してエアロゾルを引き込むことができず、加熱素子4はハウジング10の両面にまたがって延びているため、絶縁体40は、物品1内を通る空気流路を画定するために、加熱素子4からハウジング10の内側エッジに向かって延びる、絶縁体材料の個別突起41を含む。図6Bは別の例を示しており、この例では、加熱素子4のサセプタ30は、キャビティがない中実円筒形状であり、絶縁体40は、サセプタ30の外径を取り囲んでいるが、物品ハウジング10までは延びておらず、それによって、加熱によるハウジング10の損傷リスクが更に低くなる。
【0048】
加熱素子4のこの構成により、加熱素子4をエアロゾル発生物品1とは別個に製造して、物品1の既存の製造工程に容易に組み込むことが可能である。これは、線型結合工程等の、物品1の高速製造工程を含む。
【0049】
加熱素子4の厳密な製造方法は、それらの意図された構成によって異なる。例えば、サセプタ材料の長いチューブが絶縁体材料でコーティング又はオーバモールドされてから個々の加熱素子4に切り分けられてよく、その場合、サセプタ30の外径は絶縁体40で覆われているが、サセプタ30の第1の端部31及び第2の端部32は、覆われずに露出したままである。類似の一代替例では、サセプタ材料の同じ長いチューブが個々のサセプタ30構成要素に切り分けられてから、絶縁体材料がコーティング又はオーバモールドされて加熱素子4が形成される。この技法は、絶縁体40がサセプタ30を完全にカプセル化する加熱素子4が必要な場合に好ましい。
【0050】
本発明によるエアロゾル発生物品1を製造する工程の一例では、未包装状態のハウジング10の連続的なウェブ上に基材20がフィードされる。完成した物品1が他の構成要素(例えば、フィルタ3やマウスピース)を含むことを意図されている場合には、それらもハウジング10のウェブ上にフィードされる。基材20がウェブ上に配置された後、加熱素子4がハウジング10のウェブ上に挿入されて、基材10の部分同士を隔てる。好ましくは、加熱素子4が挿入される空間を画定するために基材20内にキャビティが作成される。物品1の全ての内部構成要素がハウジング10のウェブ上に配置されたら、それらの内部構成要素がハウジング10のウェブに包まれて、それらの内部構成要素がハウジング10内に確実に封入されて、連続的なロッドが形成される。この連続的なロッドが個々のロッドに切り分けられる。幾つかの例では、その個々のロッドがエアロゾル発生物品1の完成品であってよく、別の例では、その個々のロッドが更に加工される(例えば、個々のロッドのフィルタに別の包装が適用されたり、レーザ穿孔が適用されたりする)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【国際調査報告】