(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】脱衣開口を伴う防護スーツ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/02 20060101AFI20240905BHJP
A62B 17/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A41D13/02
A62B17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024511963
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051585
(87)【国際公開番号】W WO2023026006
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507030070
【氏名又は名称】エレクトリシテ ド フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】モニエル,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】スパッツォラ,ヴィクター
【テーマコード(参考)】
2E185
3B211
【Fターム(参考)】
2E185AA10
2E185CC53
3B211AA04
3B211AB01
3B211AB02
3B211AC08
3B211AC22
3B211AC26
(57)【要約】
【要約】
人のための防護スーツ(100)は、
主要部分と、
完全に取り外し可能であり、スーツのカラー(17)から、スーツの左脚部と右脚部(19)との下端へ延びる所定の外形を有するバンド(36)とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人のための防護スーツであって、
主要部分と、
防護スーツのカラーから防護スーツの左脚部と右脚部との下端へ延びる所定の外形を有し、完全に除去可能であるバンドとを備え、
防護スーツは、前記カラーから脚部の前記下端へ続いて前記バンドを引っ張る作用の下で、前記バンドが前記主要部分から外れるように構成されている、防護スーツ。
【請求項2】
さらに、前記バンドに締結され、タブを引っ張ることが前記バンドを引っ張ることを生じさせるように構成されている少なくとも1つのタブを備えている、請求項1記載の防護スーツ。
【請求項3】
前記バンドは、前記左脚部の前記下端から前記右脚部の前記下端へ延びる縁部を有し、前記縁部は、前記カラーから前記バンドを引っ張る作用の下で、防護スーツの股部から開くように構成されている、請求項1記載の防護スーツ。
【請求項4】
前記縁部は、前記股部に分裂点を有する締結装置によって防護スーツの他の部分に締結されている、請求項3記載の防護スーツ。
【請求項5】
前記締結装置は、複数のシリーズの歯を含み、前記複数のシリーズのうち少なくとも1つのシリーズでは、1つの歯が欠落している、請求項4記載の防護スーツ。
【請求項6】
さらに、前記バンドを区切る締結装置を備えている、請求項1記載の防護スーツ。
【請求項7】
前記締結装置のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記締結装置のそれぞれが、前記締結装置に沿って連続して配置されている歯を含む、請求項6記載の防護スーツ。
【請求項8】
前記締結装置のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記締結装置のそれぞれが、前記締結装置の長手方向にプロファイルされているレリーフを含む、請求項6又は7記載の防護スーツ。
【請求項9】
前記締結装置のうちの少なくとも1つは、スライダが欠落している、請求項6又は7記載の防護スーツ。
【請求項10】
さらに、前記バンドの少なくとも1つの縁部について、好ましくは前記バンドのそれぞれの縁部について、前記縁部の一層大きな長さにわたって前記縁部を覆うフラップを備えている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の防護スーツ。
【請求項11】
前記フラップは、前記バンドに締結されている、請求項10記載の防護スーツ。
【請求項12】
さらに、前記バンドの少なくとも1つの縁部の少なくとも1つの端領域にあり、好ましくは、それぞれの前記縁部のそれぞれの端領域にあり、前記縁部の開口をブロックする破砕性要素を備えている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の防護スーツ。
【請求項13】
さらに、それぞれの脚部に、
前記縁部のうちの1つの下端領域にある末端破砕性要素と、
前記縁部のうちの他の1つの下端領域にある末端破砕性要素と、
前記縁部のうちの1つの下端領域にある中間破砕性要素とを備え、
2つの前記末端破砕性要素は、脚部の1つの端から同じ距離だけ延び、前記中間破砕性要素と前記端との間に介在する、請求項12記載の防護スーツ。
【請求項14】
前記バンドは、
前記カラーから前記左脚部の前記下端へ延びる第1縁部と、
前記カラーから前記右脚部の前記下端へ延びる第2縁部と、
前記左脚部の前記下端から前記右脚部の前記下端へ延びる第3縁部とに区切られている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の防護スーツ。
【請求項15】
さらに、前記バンドを前記主要部分から少なくとも部分的に外すことなく、着衣開口を通して人にとって防護スーツが着用可能であるように配置されている着衣開口を備えている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の防護スーツ。
【請求項16】
前記着衣開口は、全体的に前記バンドの中で延びる、請求項15記載の防護スーツ。
【請求項17】
人が着用している防護スーツを脱衣する方法であって、
前記防護スーツのバンドを、前記防護スーツのカラーから前記防護スーツの左脚部と右脚部との下端へ、完全に外すステップと、
その後、前記防護スーツの主要部分を、前記人から脱衣するステップとを備えている方法。
【請求項18】
前記バンドは、前記バンドに単に1回以上の引っ張りを与えることにより外される、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れた、危険な、又は汚染される可能性のある環境、特に、放射性、又はその他の性質の粒子、例えば化学的、生物学的、薬学的な起源を有する粒子、これらの粒子が表面に堆積している、又は周囲の気体、例えば空気中に浮遊している環境での、作業者の防護に関する。
【0002】
「汚染された」又は「汚染物質」とは、例えば、設備で作業する人員と、接触する可能性のある放射性粒子が飛散する環境を意味する。さらに、本発明は、職員が汚れから身を守りたい汚れた環境や、ウイルスなどの健康リスクを有する物質が飛散する環境に適用される。
【0003】
従って、本発明は個人用防護スーツ及び防護方法に関する。以下では、スーツをさらに、オーバースーツと称する。
【背景技術】
【0004】
原子力発電所では、さまざまな機器の制御やメンテナンスがスケジュールに組まれている。特定の構内では、オペレータが電離放射線にさらされる可能性がある。これらの区域は、管理区域と称する。それらはリスクの性質によって分類され、オペレータを防護するために厳しい規則を満たす。このリスクの1つが汚染である。これは、回路が開いた場合に、空気中と、部屋のフロアとに、拡散する可能性のある放射性物質である。オペレータがこれらの放射性粒子を摂取したり吸い込んだりしないよう、あらゆる対策が講じられている。各部屋で測定された表面放射能(汚染率指標)に応じて、オペレータは着衣と脱衣(除去)との規則を尊重しなければならない。
【0005】
運転者の通常の作業服は、作業オーバーオールのような個人的な衣服であってよく、又はTシャツ、一足の靴下、スーツ、一双の綿手袋、帽子、ヘルメット、一足の靴のような義務的なユニバーサルウェアであってよい。
【0006】
汚染区域を含む管理区域での介入作業では、作業服の上に、不織材料製の紙製スーツやオーバースーツ、例えばタイベック(登録商標)製などのものを着用しなければならない。現在のオーバースーツは、あらゆる職種や環境の発電所の施設で、普遍的に使用されている。これらは主に、汚染された領域での活動中に、汚染に対する不浸透性を確実にする。
【0007】
一般的に言って、オペレータが汚染区域で介入作業を行う必要がある場合に、まず作業服の上にオーバースーツ、手袋を着用し、現場によっては、作業靴の上での可撓性のオーバーブーツ、又は、主に足を覆うオーバーシューズのいずれかを着用する。
【0008】
一般的な実施内容は、以下のことを含む。即ち、
・4Bq/cm2未満の表面汚染に対して、ユニバーサルウェアで管理区域に立ち入ること。
・表面汚染が4ないし400Bq/cm2の範囲にある場合に、オーバースーツを着用することで、ユニバーサルウェアで管理区域に立ち入ること。
【0009】
特に最近、原子力発電所で広まりつつある実施内容は、以下のことを含む。即ち、
・例えば0.4Bq/cm2未満といった表面汚染限度を設定する必要があるような、管理区域の外で着用した作業服で管理区域に立ち入ること、
・表面汚染が例えば0.4ないし400Bq/cm2の範囲にある場合に、オーバースーツを着用することにより、管理区域の外で着用した作業服を保持したまま、又は保持せずに管理区域に立ち入ること。
【0010】
400Bq/cm2以上では、一般的又は特殊な実施内容のいずれであるかにかかわらず、オペレータは、通気性のあるヘルメット、例えば頭全体から首の基部までを覆う防護具を着用するか、オーバースーツの上に通気性のある防水服、例えば体全体を覆う防護具を着用しなければならない。
【0011】
オペレータが脱衣中に汚染されないように、着衣段階と脱衣段階とのプロセスが規定される。しかし、脱衣段階に関する物理的、また健康的安全性の問題が、特定されてきている。実際には、オペレータが汚染区域を出て、汚染されていない区域に行こうとする場合に、下に着ている自分の衣服を汚染することなく、スーツ、手袋、オーバーブーツを脱がなければならない。その際、汚染されていない区域に立ち入るために、例えばイーゼルで示された境界線を継続的に通過しなければならない。
【0012】
放射線防護の面では実証済みであるが、この通過はオペレータにとって必ずしも容易ではなく、不便を強いられることがある。実際には、この脱衣段階では、汚染を封じ込めるためにスーツをまくり上げ、片足立ちと前かがみを交互に繰り返しながらズボンの脚部を脱衣するという一連の技術的動作を行う必要がある。フランス電力社(EDF)で実施された試験では、脱衣作業を継続する平均継続時間55秒の間に、オペレータは8回片足立ちになり、アンバランスな姿勢になることが観察された。また、脚部に対して45度に傾いた状態で40秒だけ留まることが観察された。これは、労力を考慮すれば非常に限定的な姿勢であると考えられる。しかし、オペレータがこのプロセスを実行するように訓練されていても、特に、領域をジャンプすることのスペースが小さい場合には、逸脱(脚部を自由にするために、スーツをめくり上げないことや、スーツを股部から割ること)が観察される。このプロセスを守らないことは、最終的に従来の予防リスク(転倒など)を生じさせるだけでなく、汚染(着衣のひび割れによって汚染された粒子の再浮遊、着衣が巻き取られていない場合のフロアの汚染)の移転リスクを生じさせる。さらに、オペレータが汚染区域への出入りを繰り返す必要がある、特定の作業の実施に関連する時間的な切迫を、考慮することも重要である。最適な安全性の文脈での脱衣時間もまた、考慮すべき重要な要素である。
【0013】
原子力施設で実施されている、上述の方法のようなスーツを開ける解決策(タイベック(登録商標)などの「紙製」と呼ばれる衣服)が存在する。これは、カラーの上部から始まり、股部で終わる、ただ1つのスライドファスナを有する。このスライドファスナは、スーツを開け、閉めることの両方に使用される。このスライドファスナは、2つのバンドを含み、それぞれが歯のシリーズを含み、それぞれの歯は、反対側のバンドの歯の間のスペースと協働する。協働は、強制的に歯を相互に組ませるスライダの作用によって引き起こされる。
【発明の概要】
【0014】
このようなスーツの欠点は、主に脱衣段階にある。その設計上、汚染を避けるために複数の技術的手順が必要となる。しかし、非常に制限された姿勢と比較的長い脱衣時間が組み合わされるため、従来の安全分野でのリスク(脱衣する際のアンバランスによる転倒、過度の労力の点での制限姿勢など)が生じる。実際には、実施された工程が汚染されないことを目的としたとしても、特に従来の安全性リスクが誘発されるため、汚染される可能性がある。
【0015】
従って、本発明の目的は、従来のリスク(転倒など)と汚染のリスクとの両方を誘発する制限的な位置を回避し、従来のリスクと放射線のリスクとに対する最適な保護を維持しながら、脱衣時間を短縮することである。
【0016】
この目的のために、本発明によれば、人のための防護スーツが提供され、
・主要部分と、
・防護スーツのカラーから防護スーツの左脚部と右脚部との下端へ延びる所定の外形を有し、完全に除去可能であるバンドとを備え、
防護スーツは、カラーから脚部の下端へ続いてバンドを引っ張る作用の下で、バンドが主要部分から外れて、本体部分に開口ができるように構成されている。
【0017】
従って、スーツを脱衣するには、バンドを主要部分から完全に切り離し、バンドによって開放された大きな開口を通して、スーツの残りの部分を人から脱衣する。これらの作業は、オペレータ自身が容易に行うことができる。本発明により、脱衣の全段階の中で両足で作業することができ、これにより、拘束された姿勢(片足で作業し、脱衣時間の約4分の3はかがみ続ける)が回避される。さらに本発明は、非常に短時間での脱衣を可能にする。このため、脱衣時間は平均10秒に短縮できる。これは現在原子力施設で観測されている55秒よりもはるかに短い。本発明は、オペレータ自身による汚染や、第三者のオペレータや施設の汚染を、脱衣中に回避するのに特に効果的である。
【0018】
そのため、脱衣は特に容易に行われるのであり、そのためのジェスチャーは自然で自発的である。
【0019】
有利なこととして、防護スーツはさらに、バンドに締結され、タブを引っ張ることがバンドを引っ張ることを生じさせるように構成されている少なくとも1つのタブを備えている。
【0020】
そのため、カラーの上部に触れることなく、目で見ずに、オペレータはタブをつかむことができ、ありそうな汚染を回避することができる。
【0021】
バンドは、左脚部の下端から右脚部の下端へ延びる縁部を有し、縁部は、カラーからバンドを引っ張る作用の下で、防護スーツの股部から開くように構成されている。
【0022】
一実施形態では、縁部は、股部に分裂点を有する締結装置によって防護スーツの他の部分に締結されている。
【0023】
例えば、締結装置は、複数のシリーズの歯を含み、複数のシリーズのうち少なくとも1つのシリーズでは、1つの歯が欠落している。
【0024】
防護スーツは、バンドを区切る締結装置を備えているように提供されてよい。
【0025】
一実施形態では、締結装置のうちの少なくとも1つ、好ましくは締結装置のそれぞれが、締結装置に沿って連続して配置されている歯を含む。
【0026】
別の実施形態では、締結装置のうちの少なくとも1つ、好ましくは締結装置のそれぞれが、締結装置の長手方向にプロファイルされているレリーフを含む。
【0027】
締結装置のうちの少なくとも1つは、スライダが欠落しているように提供されてよい。
【0028】
有利なこととして、防護スーツはさらに、バンドの少なくとも1つの縁部について、好ましくはバンドのそれぞれの縁部について、縁部の一層大きな長さにわたって縁部を覆うフラップを備えている。
【0029】
実際には、このようなフラップがない場合に、汚染粒子が締結装置の中に堆積し、脱衣時に機械的効果によって再浮遊され、作業服を汚染する可能性がある。フラップに起因して、固定装置の中に粒子が堆積することはできない。
【0030】
好ましくは、フラップは、バンドに締結されている。
【0031】
従って、これと同時に除去される。汚染された粒子が含まれている場合は、このようにテープと一緒に優先的に除去され、排除される。
【0032】
防護スーツは、さらに、バンドの少なくとも1つの縁部の少なくとも1つの端領域にあり、好ましくは、それぞれの縁部のそれぞれの端領域にあり、縁部の開口をブロック(閉塞、ロック)する破砕性要素を備えていると考えてよい。
【0033】
従って、この要素により、介入作業中に締結装置が誤って開いてしまうことを避けることができる。しかし、オペレータがバンドを取り外す際に、容易に破断される。
【0034】
一実施形態では、防護スーツは、さらに、それぞれの脚部に、
・縁部のうちの1つの下端領域にある末端破砕性要素と、
・縁部のうちの他の1つの下端領域にある末端破砕性要素と、
・縁部のうちの1つの下端領域にある中間破砕性要素とを備え、
2つの末端破砕性要素は、脚部の1つの端から同じ距離だけ延び、中間破砕性要素と端との間に介在する。
【0035】
従って、締結装置を分離する際、まず中間要素が破断し、次に他の2つの要素が破断するため、ありそうな汚染の再浮遊を避けることができる。逆に、中間要素がない場合に、2つの末端要素が同時に破れ、環境中に粒子が放出されることを促すリスクがある。
【0036】
一実施形態では、バンドは以下のように、即ち、
・カラーから左脚部の下端へ延びる第1縁部と、
・カラーから右脚部の下端へ延びる第2縁部と、
・左脚部の下端から右脚部の下端へ延びる第3縁部とに区切られている。
【0037】
防護スーツはさらに、バンドを主要部分から少なくとも部分的に外すことなく、着衣開口を通して人にとって防護スーツが着用可能であるように配置されている着衣開口を備えてよい。
【0038】
従って、バンドを部分的にも取り外すことが必要なく、スーツの着用を可能にすることが課題である。これにより、一方ではバンド、他方では着衣開口が、それぞれの機能を最大限に発揮できるように構成することが可能である。
【0039】
例えば、着衣開口は、全体的にバンドの中で延びる。
【0040】
本発明によれば、さらに、人が着用している防護スーツを脱衣する方法が提供され、
防護スーツのバンドを、防護スーツのカラーから防護スーツの左脚部と右脚部との下端へ、完全に外すステップと、
その後、防護スーツの主要部分を、人から脱衣するステップとを備えている。
【0041】
例えば、バンドは、バンドに単に1回以上の引っ張りを与えることにより外される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を、下記の図面を援用した非限定的な例によって示す。
【0043】
【
図1】本発明の第1実施形態によるスーツの正面図である。
【
図2】
図1のスーツに使用されているタイプのスライドファスナの図である。
【
図4】スーツの第3開口の固定装置の中間部分の図である。
【
図6】スーツの第1開口の固定装置の上部の図である。
【
図7】スーツの脚部のうちの1つの下部を示す図である。
【
図8】後者から切り離されたスーツのバンドの図である。
【
図10】スーツを着用したオペレータが脱衣する連続したステップを示す図である。
【
図11】スーツを着用したオペレータが脱衣する連続したステップを示す図である。
【
図12】本発明の別の実施形態を示す
図8と同様の図である。
【
図13】本発明の別の実施形態での固定装置の1つを示す図である。
【
図14】本発明の別の実施形態での固定装置の1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一回使用の個人用防護スーツ、又はオーバースーツのさまざまな実施形態が、図面を基礎として提示される。これは、例えば、放射性粒子に対する防護スーツである。
【0045】
[第1実施形態]
図1ないし11を参照すると、スーツ100は主に、これを延長するズボン部分3に下部(裾)で固定された胴体部2(身頃2)を含む。ユーザの腕のための左右の袖4が、胴体部2の上部に設けられ、それに固定されている。カラー17(COL 17)が、胴体部2の上部にある。カラー17は、図示しないフードによって後方に延長されてよい。
【0046】
胴体部2と、ズボン3と、袖4とは、主要部分6を形成し、それぞれ、以下の記載で壁と称する、1つ以上の織物又は不織材料部分を含む。これらの可撓性の壁は、放射性粒子が外側から内側へスーツを通過することを防止するように構成されている。一般的に言えば、スーツ100の異なる部分、特に壁の示す密封性は、防塵性であり、さらに、外側から内側への水密性、及び/又は外側から内側への水蒸気気密性であってよい。さらに、スーツ100の1つ以上の部分、特に壁は、通気性であってよい。即ち、内部から外部への水蒸気の通過を可能にしてよい。壁は、例えば、胴体部2からズボン3まで連続してよい。この可撓性の壁は、例えばポリエステルなどの不織材料で作ってよい。
【0047】
スーツ及び/又は壁は、例えば、以下の特性の1つ以上を有してよい(示された規格は、2015年12月22日に有効な規格である):
【0048】
・40ないし70g/m2の範囲にある、NF EN ISO 3801規格による表面質量。
・NF EN 13034規格、NF EN 1073-2規格(NF EN 530規格による試験)、NF EN ISO 13982-1規格による耐摩耗性:クラス2/6(>100回の研磨サイクル)。
・NF EN ISO 13982-1規格により、曲げによる耐亀裂性(NF EN ISO 7854の方法Bによる試験):クラス6/6(>100,000回のサイクル)。
・NF EN 1073-2規格による耐穿孔性(EN863規格による試験):クラス2/4(>10N)。
・NF EN 13034規格、及びNF EN ISO 13982-1規格(EN 863規格による試験)による耐穿孔性:クラス2/6(>10N)。
・NF EN 13034規格、及びNF EN ISO 13982-1規格(試験方法:EN ISO 9073-4規格)に基づく台形引裂強さ:クラス2/6(>20N)。
・NF EN 1073-2規格による引裂強さ(EN ISO 9073-4規格による試験方法):クラス3/6(>20N)。
・NF EN 13034規格、及びNF EN ISO 13982-1規格(EN ISO 13935-2規格による試験方法)による縫目強さ、接合部及び組立部:クラス3/6(>75N)。
・NF EN 1073-2による縫目強さ(EN ISO 13935-2による試験方法):クラス3/5(>75N)。
・NF EN 13034規格による引張強さ(EN ISO 13934-1規格又はEN 29073-3規格による試験方法):クラス2/6(>60N)。
・液体化学製品の浸透に抗する特性(抗浸透性):NF EN 13034規格によるタイプ6分類による。長時間の接触(軽い接触であって引き延ばされない接触)や、軽度の飛沫による液体放射能汚染に対する防護スーツの仕様は、タイプ6の衣服の仕様と同化している。従って、NF EN 13034規格(タイプ6)の要求事項と、関連する試験方法とが、本製品に適用される。しかし、着用時の快適性は維持されている。液体をはじくレベル:クラス3/3(H2SO4、NaOH、o-キシレン、ブタン-1-オールなどの規格化された製品に対して、少なくとも95%を超える撥液指数)。化学製品の浸透に対する防護レベル:クラス3/3(H2SO4、NaOH、o-キシレン、ブタン-1-オールなどの規格化された製品に対する浸透指数は少なくとも1%未満)。軽いスプレー状の液体の浸透に対する防護レベル(ミストテスト):NF EN 13034規格の要件による。
・粒子の浸透に抗する特性(抗浸透性):衣服はNF EN ISO 13982-1規格によるタイプ5分類に従い、NF EN 1073-2規格による。NF EN ISO 13982-1規格(NF EN ISO 13982-2規格による試験)による内側への漏れ:IL82/90≦30%、TILS8/10≦15%という最低要件による。NF EN 1073-2規格(NF EN ISO 13982-2規格に従った試験)による全内部漏れ:クラス1/3。
・帯電防止特性:表面抵抗率は、規格NF EN 1149-1に記載された試験方法により評価される。均質な材料は、表面抵抗率が5×1010Ω以下でなければならない。
・炎に対する防護:構成素材(任意選択のフード及び半透明の窓を含む)は、さらに高レベルの防護で基本的な衣服の上に着用することを本装置が意図している程度で、NF EN ISO 14116規格によりレベル1に分類されている。
・製品は有害化学物質(Pb,B,Ni,Cr,As,Sb,Se,Cd,Hg,Be,CN,アスベスト)を含まない。
【0049】
スーツ100は、その前壁、胴体部2に、着衣開口12を有する。着衣開口12は、下記に提示する他の開口を使用せずに、オペレータがスーツを着用することを可能にする。
【0050】
この開口12は、胴体部の上方領域から、この開口の下端が位置するスーツの股部21へ延びる。従って、この例では、この開口12は、胴体部の前面を、首から股部に至る2つの対称部分に分割する直線的な垂直線を形成している。しかし、着衣開口の他の位置や他の構成も可能である。
【0051】
この場合に、開口12は、
図2のタイプのスライドファスナ13が設けられている。このスライドファスナ13は、開口の2つの対向する縁部に沿って連続して配置された2つのシリーズ(SERIES,SUCCESSIONS)の歯15を含み、スライダ14が歯を第1方向に移動させる場合に、スライダ14の通過の影響下で相互に係合するように配置されている。スライダが方向に横切って移動すると、歯が互いに分離して、開口を解放する。歯15は、スーツの壁に垂直な方向にプロファイル形状を有してよい。
【0052】
スライドファスナ13は、特に
図11に示すように、カラー17の上縁部から離れた位置に上端を有する。実際には、本装置のスライダ14は、カラーの上端ではなく、カラーの基部で停止することが好ましい。
【0053】
また、スーツには3つの脱衣開口16a,16b,16cがあり、着衣開口12を開いたり、スーツを破ったりせずに、オペレータは単独でスーツを脱衣することができる。
【0054】
2つの脱衣開口16a,16bのうちの2つは、カラー17から、ズボンの2つのそれぞれの脚部19の下端へ延びる。さらに正確には、左の脱衣開口16aはカラーから始まり、胴体部の左側に沿って、ここでは実質的に一直線に、左脚部の下端へ下がる。左右の位置は、ここでは
図1を参照して定義され、オペレータや衣服を参照して定義されない。同様に、右の脱衣開口16bは、カラーから始まり、胴体部2の右側を通り、右脚部の下端へ一直線に下がる。着衣開口12は、2つの脱衣開口16a,16bの間で延びる。ここでのカラー17は士官タイプ(TYPE OFFICIER,立ち襟)であり、首の全体をよく覆う。第1及び第2開口のそれぞれの端部は、カラーの基部から始まるので、スーツを開くことを容易にし、このレベルでのありそうな汚染を避けるのに役立つ。
【0055】
第3脱衣開口16cは、脚部19(ズボン3)の一方の下端から脚部に沿って股部21へ延び、再び他方の脚部に沿って股部21の下端へ下がる。この開口は、他の2つの脱衣開口と同様、スーツの前側にあるが、それらから退避して位置する。
【0056】
着衣開口と脱衣開口との4つの開口はそれぞれ異なり、連続せず、相互に独立している。全て水密性がある。
【0057】
スーツは、第1、第2及び第3開口16aないし16cによって区切られたバンド36を備えている。これらの開口は、バンドの縁部を構成する。
【0058】
脱衣開口16a,16b,16cのそれぞれに、締結装置25が設けられている。締結装置25は、ここでは、着衣開口12のものと同じタイプのスライドファスナによって形成されている。しかし、これらのスライドファスナには、今度はスライダ(CURSEUR)が欠落している。
【0059】
第1及び第2開口16a,16bのそれぞれについて、スーツは、対応する締結装置25を固定装置の一層大きな長さにわたって覆うフラップ24を備えている。この場合に、フラップ24はバンド36にのみ固定されている。これは、
図3に示すように、締結装置25の歯を外部から覆うように縫製された布製のバンドである。実際には、フラップがない場合に、汚染粒子が歯15の上や間に留まり、機械的効果により、脱衣の際に再浮遊し、作業服を汚染する可能性がある。この方法では、粒子が歯15の上や間に堆積することはない。
【0060】
スーツ100は、バンド36を引っ張ると3つの締結装置25が開くように構成されている。この場合スーツは、この目的のために、
図3に示すように、カラー17から離れた位置でバンドに縫製された2つのタブ又はプルタブ26から構成され、スーツの着用者がタブを前方及び/又は下方に引っ張ると、バンド36に同様の引っ張りが生じるように配置される。ここで、各タブ26は、第1及び第2開口16a,16bのそれぞれの上端付近に配置されている。これらは、カラー17で、固定装置から歯15の分離を開始させることを可能にする。タブは肩の方向に向き、その寸法は、目で見ずに、カラーの上部に触れることなく、オペレータが把握可能なものであるため、ありそうな汚染を回避する。
【0061】
第3開口16Cの締結装置25は、スーツの股部21のところに分裂点(POINT DE RUPTURE)を有する。この目的のために、
図4に示すように、少なくとも1つのシリーズの複数の歯15の中に、1つの歯が欠落している。この分裂点は、バンド36を上から下へ切り離す際に、歯の分離を容易にする。
図5に示すように、分裂点が位置する股部には、スーツの締め付けとその堅固さ(歯の接続の維持)を確実にするために、アンダーブリッジを形成するスクリーン又はタブ28がスーツの内側に固定されている。これは、欠落した歯の全領域を覆う。これは、バンド36を切り離すことを防止しないように、締結装置25とアンダーブリッジ28との1つのサイドのみに縫い目30によって縫製されている。
【0062】
さらに、各開口16aないし16cの各端領域で、スーツは、破砕性要素32(ELEMENT FRANGIBLE 32)を備えている。破砕性要素32は、この場合外部にあり、閉位置で締結装置25をブロックする。
【0063】
このような要素32は、
図6に示すように、第1及び第2脱衣開口16a,16bのそれぞれの上端に設けられている。この例では、開口16a,16bの両側で開口をまたぐように、スーツに縫い付けられた、容易に破断可能なタブである。タブ32は、介入作業の間に各開口が誤って開かないことを確実にする。しかし、バンドを切り離す動作中に、オペレータが破断することによって容易に破られる。
【0064】
図7を参照すると、スーツ100は、各脚部に、
・第1開口又は第2開口の下端領域にある末端破砕性要素32b2と、
・第3開口16cの下端領域にある末端破砕性要素32b1と、
・開口のうちの1つの下端領域にある中間破砕性要素32aと
を備えている。
【0065】
2つの末端要素32b1及び32b2は、脚部の端縁部34(下端34、裾)から同じ距離だけ延び、中間要素32aと端縁部34との間に介在する。
【0066】
実際には、ズボンの下部には、脚部のうちの1つに2つの開口端、他方の脚部に2つの開口端が、並んで配置されている。汚染物の再浮遊が生じるリスクをなくして、スライドファスナ13の分離を容易にするために、これら3つの破断可能な要素は縫製されている。
【0067】
例えば、左脚部では、第1破断可能要素32aは、ズボンの下部に対して第1開口16aに対して約1.5cm後退している(
図7)。2つの破断可能要素32b1及び32b2は、単一の部品を形成し、ズボンの下方の端縁部34で第1及び第3開口16a,16cを覆う。
【0068】
しかし、開口が、第1開口16aを覆う破砕性要素32a及び32b2の間の接合部に残る可能性がある。このため、アンダーブリッジを形成する内部タブ38が、スーツ内部への汚染の浸透を防止するために、スーツの内側部分に縫製されている。このタブは、ここでは三角形であり、開口を塞がないように、開口のうちの1つのただ1つのサイドのみで、スーツに縫製されている。
【0069】
従って、固定装置を分離した場合に、中間要素32aが最初に破断し、次に続く2つの要素32b1及び32b2が破断するため、ありそうな汚染の再浮遊を回避する。
【0070】
図12及び
図13を参照すると、汚染される可能性の高い環境の中でオペレータを防護するために、スーツは以下のように使用される。
【0071】
初期状態では、全ての脱衣開口16a,16b,16cが閉じた状態にある。ここでは、着衣開口12が閉じていると仮定する。
【0072】
オペレータは着衣開口12を開く。着衣開口12だけである。
【0073】
オペレータは、いつもの仕事着の上に、着衣開口12からスーツ100を着用する。特に、腕を袖4に、脚部をズボンに入れる。全身をスーツに入れ、頭、手、足だけが出るようにしてから、スライドファスナのスライダ14を股部からカラーまで持ち上げて、着衣開口12を閉じる。
【0074】
そしてオペレータは、自分が介入作業しなければならない環境に行く。介入作業を終了させた場合に、オペレータはその環境から離れる。
【0075】
スーツ100を脱衣するには、タブ26によってバンド36を前方及び下方に牽引する力を働かせることにより、カラー17で、バンド36をスーツの他の部分から完全に切り離す。
【0076】
さらに正確には、
図10及び
図11を参照すると、オペレータはそれぞれのタブ26をつかみ、同時に、前方への動きでそこを引っ張る。こうして、布の破砕性要素32は、容易に破断され、開口16a及び16bの固定装置25の歯15は、分離される。オペレータは、中央バンド36を持って腰へ引っ張るだけでよい。従って、中央バンド36は、上端から股部21へ、スーツの他の部分から徐々に分離する。分裂点に起因して、この位置から、さらに第3開口16cを開くことによって分離が続く。オペレータは、スーツの下部に向けて、股部と脚部とを解放するために引っ張り続ける。これにより、
図9に示すように、バンドが完全に解除される。従って、胴体部と両脚部とが開かれる。バンド36は、スーツの他の部分から完全に切り離される。
図8と
図9はそれぞれ、バンド36と、バンドが除去された後のスーツの主要部分6とを示す。主要部分6は、一体に作られている。
【0077】
オペレータは、その目的のために設けられたゴミ箱に、バンド36を排出する。
【0078】
スーツの前部のバンドによって残された隙間によって、オペレータはようやくスーツの残りの部分を脱ぐことが可能にされる。そして、スーツの肩と残りの部分とを、容易に回収することができる。そして、汚染されないように、内側の縫い目に色、例えば緑色などがあるかを探しながら、外側に巻く。最後にゴミ箱に捨てる。
【0079】
着衣開口12と、股部からカラーへだけ開くスライドファスナとによってのみ、着用することが行われることが分かる。そして、脱衣することは脱衣開口16a,16b,16cによってのみ行われ、着衣開口12は閉じたままであり、スーツは破断されない。
【0080】
このシステムは、オペレータが股部からズボンの下部へ、スーツを破断することを防止する。それをすると、汚染を再浮遊させる可能性があるからである。ズボンを突然移動させることなく、スーツを開く動作を伴うことができる。
【0081】
[他の実施形態]
下記の特徴を除いて上記のものと同一の他の実施形態を、以下に示す。
【0082】
図12に示す一実施形態では、第3脱衣開口16cはさらに、保護フラップ24が設けられている。実際には、脱衣段階の中で固定装置の歯に及ぼされる最大の引っ張りは、主に第1及び第2開口16a及び16bの引っ張りに関する。これが、最終的にスーツの下に位置する作業服の汚染を避けるために、保護フラップ24がそれぞれの開口に固定されている理由である。汚染をシミュレートした粉末を使用して実施された試験の結果は、このことを裏付ける。しかし、汚染に対する最大限の保護を確実にするために、このような保護フラップ又は折り目を、他の2つと同じように第3脱衣開口16cの締結装置25に固定してよい。フラップはここでも、スーツの他の部分から分けるバンド36に縫製される。
【0083】
図13ないし15に示される別の実施形態では、締結装置25の少なくとも1つ、好ましくはそのそれぞれは、形状相補性によって脱衣開口を閉じた状態に保つように、歯を含むのではなく、開口の長手方向にプロファイルされたレリーフ20(凹凸パターン20)を含む。これらのレリーフは、例えば、開位置及び閉位置でそれぞれ
図13及び
図14に示された構成を有する。
【0084】
レリーフ20は、例えば「横にされた3」又は「w」断面のプロファイルを形成する。この断面は3つのリップ22を含み、そのうちの2つのリップは自由端が湾曲し、他の1つのプロファイルのリップと協働し、開口の閉鎖を確実にするために、2つのプロファイルを相互に係合状態に維持するようになっている。2つの空洞が、2つのリップの間に設けられている。一方のプロファイルのリップの2つは、他方のプロファイルの空洞に嵌合する。しかし、他の形状が、プロファイル断面に与えられてよい。
【0085】
これらの固定装置はさらに、カラーからバンド36を引っ張る作用によって、開かれる。この場合に、第3開口16cの股部に分裂点を設けることも可能である。このためには、単にこの位置でプロファイルの一方を分割すれば十分である。
【0086】
もちろん、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更を加えてよい。
【0087】
特に、着衣開口と脱衣開口との形状、数、配置を変更してよい。
【0088】
本発明は、放射性物質による汚染リスクを伴う環境での使用に限定されない。実際には、このタイプのスーツはさらに、他の活動分野(環境サンプリング、建設、また化学、生物学、薬学研究所など)で使用されてよい。これらの分野では、脱衣(除去)の困難さという点で、その有益さのために、スーツが注目される可能性がある。
【0089】
バンド36は、締結装置25ではなく、プレカットによって区切られていると考えてよい。バンドをスーツの残りの部分から切り離す際、プレカットに続いて切断が生じる。
【国際調査報告】