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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】リンパ球効力アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240905BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C07K16/28
C12N5/10
C07K16/46
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512040
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022076028
(87)【国際公開番号】W WO2023039410
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,768
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/291,655
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/391,118
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520352311
【氏名又は名称】ケーエスキュー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン, マイカ
(72)【発明者】
【氏名】シュラバック, マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, カリー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QR04
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR80
4B063QR90
4B063QS36
4B063QS38
4B063QX01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC50
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、リンパ球(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)の抗腫瘍効力の測定に有用な方法及び材料に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の効力を評価するための方法であって、
TIL及び不死化細胞を共培養することであって、前記不死化細胞がT細胞を活性化する分子を含む、前記共培養することと、
前記TILの効力を評価することとを含む、前記方法。
【請求項2】
前記分子がT細胞抗原に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TILがT細胞抗原を発現する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞抗原がCD3抗原である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記不死化細胞が前記分子を発現する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分子が抗体または抗体フラグメントである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体フラグメントが、単鎖可変フラグメント(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びFvフラグメントから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体フラグメントがscFvである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または前記抗体フラグメントが、それぞれOKT3抗体またはOKT3抗体フラグメントである、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記OKT3抗体フラグメントが膜結合型OKT3(mOKT3)scFvである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記mOKT3 scFvが低親和性mOKT3 scFvバリアントである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分子が、mOKT3 scFvのKDよりも高い解離定数(KD)でCD3に結合し、前記mOKT3 scFvのKDが約5×10-10Mである、請求項4~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55及びY57の変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55M及びY57Aの変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも250倍高いKDでCD3に結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tを有するアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、OKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍高いKDでCD3に結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分子が、細菌性スーパー抗原、任意選択でブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、フィトヘマグルチニン(PHA)、及びコンカナバリンA(ConA)から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記分子が膜繋留分子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記TILが操作TIL(eTIL)である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記eTILが編集eTILである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記編集eTILがゲノム修飾を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記不死化細胞が不死化細胞のクローン集団を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記不死化細胞が不死化ヒト細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記不死化細胞が操作がん細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記操作がん細胞が操作黒色腫細胞、操作大腸癌細胞、操作胆管癌細胞、及び操作乳癌細胞から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記共培養の前に、前記不死化細胞が超低接着表面にプレーティングされる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記共培養の前に、前記不死化細胞がマルチウェルプレートに、任意選択で6ウェル、24ウェル、または96ウェルプレートにプレーティングされる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記不死化細胞が約5,000~約10,000生細胞/培養物の密度でプレーティングされる、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記超低接着表面が、親水性の中性荷電ヒドロゲルコーティングを含む、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記不死化細胞が、三次元スフェロイドを生成するために、好ましくは約2~6日間、より好ましくは約4日間培養される、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記共培養の前に、前記TILが前記不死化細胞の培養物に約20:1~1:1のE:T比で加えられる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記共培養が約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約3日間、約4日間、または約5日間行われ、任意選択で、前記共培養が約1日~約5日間行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記効力を評価することが、前記不死化細胞からのサイトカイン放出、任意選択でIFN-γ、IL-2、TNFα、及び/またはIL-6放出、前記不死化細胞の細胞死及び/または生存率を測定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記効力を評価することが、前記不死化細胞の成長、細胞死、及び/または生存率を測定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記測定が、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レサズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の効力を評価するための方法であって、
TIL及び操作がん細胞のクローン集団を共培養することであって、前記操作がん細胞が抗CD3抗体または抗CD3抗体フラグメントを発現する、前記共培養することと、
前記操作がん細胞の死及び/または生存率を評価することとを含む、前記方法。
【請求項38】
前記TILがCD3抗原を発現する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記操作がん細胞が抗CD3抗体フラグメントを発現する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗CD3抗体フラグメントが抗CD3単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗CD3 scFvがmOKT3 scFvである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記mOKT3 scFvが低親和性mOKT3 scFvバリアントである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、mOKT3 scFvの解離定数(KD)よりも低いKDでCD3に結合し、前記mOKT3 scFvのKDが約5×10-10Mである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍低いKDでCD3に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tの変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗CD3抗体または前記抗CD3抗体フラグメントが、それぞれ膜繋留抗CD3抗体または膜繋留抗CD3抗体フラグメントである、請求項37~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記TILが操作TIL(eTIL)である、請求項37~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記eTILが編集eTILである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記編集eTILがゲノム修飾を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記操作がん細胞が、操作黒色腫細胞、操作大腸癌細胞、操作胆管癌細胞、及び操作乳癌細胞から選択される、請求項37~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記操作がん細胞が操作黒色腫細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記共培養が少なくとも24時間、任意選択で約24~72時間行われる、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記測定が、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レサズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む、請求項37~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の効力を評価するための方法であって、
TILと、不死化細胞と、T細胞を活性化し前記不死化細胞に結合する二重特異性分子とを共培養することと、
前記TILの効力を評価することとを含む、前記方法。
【請求項55】
前記TILがCD3抗原を発現する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記二重特異性分子がCD3に結合する分子を含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記TILが操作TIL(eTIL)である、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記eTILが編集eTILである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記編集eTILがゲノム修飾を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記不死化細胞が不死化細胞のクローン集団を含む、請求項54~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記不死化細胞がヒト細胞である、請求項54~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記不死化細胞ががん細胞である、請求項54~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記がん細胞が、黒色腫細胞、大腸癌細胞、胆管癌細胞、及び乳癌細胞から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記二重特異性分子がCD19に結合する分子を含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記二重特異性分子がCD19-CD3 BiTE(登録商標)である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記共培養が少なくとも24時間、任意選択で約24~72時間行われる、請求項54~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記測定が、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レザズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む、請求項54~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
ポリクローナルT細胞の効力を評価するための方法であって、
ポリクローナルT細胞及び不死化細胞を共培養することであって、前記不死化細胞がT細胞を活性化する分子を含む、前記共培養することと、
前記ポリクローナルT細胞の能力を評価することとを含む、前記方法。
【請求項69】
前記分子がT細胞抗原に結合する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ポリクローナルT細胞が前記T細胞抗原を発現する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記T細胞抗原がCD3抗原である、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記不死化細胞が前記分子を発現する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記分子が抗体または抗体フラグメントである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体フラグメントが、単鎖可変フラグメント(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びFvフラグメントから選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記抗体フラグメントがscFvである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記抗体または前記抗体フラグメントが、それぞれOKT3抗体またはOKT3抗体フラグメントである、請求項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記OKT3抗体フラグメントが膜結合型OKT3(mOKT3)scFvである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記mOKT3 scFvが低親和性mOKT3 scFvバリアントである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記分子が、mOKT3 scFvのKDよりも高い解離定数(KD)でCD3に結合し、前記mOKT3 scFvのKDが約5×10-10Mである、請求項71~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55及びY57の変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55M及びY57Aの変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも250倍高いKDでCD3に結合する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tを有するアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
前記低親和性mOKT3 scFvバリアントが、OKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍高いKDでCD3に結合する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記分子が、細菌性スーパー抗原、任意選択でブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、フィトヘマグルチニン(PHA)、及びコンカナバリンA(ConA)から選択される、請求項68~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記分子が膜繋留分子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記ポリクローナルT細胞がネオ抗原特異性T細胞を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項88】
前記ポリクローナルT細胞が末梢血に由来する、請求項68に記載の方法。
【請求項89】
前記ポリクローナルT細胞が骨髄に由来する、請求項68に記載の方法。
【請求項90】
前記不死化細胞が不死化細胞のクローン集団を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記不死化細胞が不死化ヒト細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記不死化細胞が操作がん細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記操作がん細胞が操作黒色腫細胞、操作大腸癌細胞、操作胆管癌細胞、及び操作乳癌細胞から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記共培養が少なくとも4時間行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記効力を評価することが、前記不死化細胞からのサイトカイン放出、任意選択でIFN-γ及び/またはIL-6放出、前記不死化細胞の細胞死及び/または生存率を測定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記効力を評価することが、前記不死化細胞の成長、細胞死、及び/または生存率を測定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記測定が、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レサズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
ポリクローナルT細胞の効力を評価するための方法であって、
ポリクローナルT細胞と、不死化細胞と、T細胞を活性化し前記不死化細胞に結合する二重特異性分子とを共培養することと、
前記ポリクローナルT細胞の能力を評価することとを含む、前記方法。
【請求項99】
前記ポリクローナルT細胞がCD3抗原を発現する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記二重特異性分子がCD3に結合する分子を含む、請求項98または99に記載の方法。
【請求項101】
前記ポリクローナルT細胞がネオ抗原特異性T細胞を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項102】
前記ポリクローナルT細胞が末梢血に由来する、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記ポリクローナルT細胞が骨髄に由来する、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
前記不死化細胞が不死化細胞のクローン集団を含む、請求項98~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記不死化細胞がヒト細胞である、請求項98~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記不死化細胞ががん細胞である、請求項98~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記がん細胞が、黒色腫細胞、大腸癌細胞、胆管癌細胞、及び乳癌細胞から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記二重特異性分子がCD19に結合する分子を含む、請求項106または107に記載の方法。
【請求項109】
前記二重特異性分子がCD19-CD3 BiTE(登録商標)である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記共培養が少なくとも24時間、任意選択で約24~72時間行われる、請求項98~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記測定が、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レサズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む、請求項98~110のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願第63/241,768号(2021年9月8日出願)、米国仮出願第63/291,655号(2021年12月20日出願)、及び米国仮出願第63/391,118号(2021年7月21日出願)の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、これらの各出願は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
電子配列表
電子配列表(K071370018WO00-SEQ-HJD.xml、サイズ:21,568バイト、作成日:2022年9月7日)の内容は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、リンパ球(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)の抗腫瘍効力の評価に有用な方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
リンパ球は、免疫系に不可欠な白血球である。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とは、血流を離れ腫瘍に向かって移動した白血球のことであり、T細胞及びB細胞がこれに含まれる。腫瘍内にリンパ球が存在することは、臨床転帰の改善と関連することが多く、実際に、TILなどのリンパ球が腫瘍細胞の殺滅に関与している。リンパ球は、ある特定のタイプのがんの治療に養子細胞療法(ACT)として普通に使用されている。例えば、TILの養子移入は、特に予後不良の患者においては、肥大した難治性がんの治療に対する強力なアプローチである。ACTでは細胞をex vivoで拡大しており、患者に再び注入する前にその効力を特性評価しなければならない。
【0005】
TIL効力アッセイは、TILに特異的に意義のある直接的または間接的な生物学的活性を測定するものであり、TIL/腫瘍特異性が患者間で広く不均一であることを考えると、このアッセイは、TILを使用するACTには特に重要である。さらに、TIL効力アッセイは、ACTに使用され得る個々のTIL製品の品質を保証するために、米国食品医薬品局(FDA)により義務付けられている。
【0006】
重要なことには、全てのTIL効力アッセイが、アッセイの生物学的文脈またはアッセイのエンドポイントによって生物学的に意義があるとみなされるとは限らない。規制ガイドラインの増加により、臨床的有効性に至るためには、TILの効力アッセイ値がin vivo機能(例えば、腫瘍認識及び細胞死)と相関することが要求される。アッセイは、非細胞ベースTIL刺激アプローチを使用し、細胞毒性の代用となるT細胞の性質に基づくこともあるが(例えば、TIL効力の評価にインターフェロン-γ(IFN-γ)放出アッセイを使用)、腫瘍細胞媒介性TIL活性化に基づくin vitro TIL効力アッセイはTIL効力をより正確に表現することができ、細胞毒性またはIFN-γ放出を含む代替的エンドポイントが使用される場合、このアッセイは、当技術分野では、最も臨床的有効性との相関が明らかであると考えられている(例えば、de Wolf et al. Cytotherapy 2018 May;20(5):601-622を参照)。現状、このような生物学的に意義のあるTIL効力アッセイは、この分野内では限られている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、臨床的に適切な抗腫瘍応答を生成するリンパ球の能力を評価するために使用できるリンパ球効力アッセイ(例えば、TIL効力アッセイ(本明細書ではTIL抗腫瘍効力アッセイとも称される))を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、リンパ球を活性化する分子(例えば、T細胞を活性化する分子(例えば、T細胞抗原に結合する分子))を含む不死化細胞(例えば、腫瘍細胞)を提供する。不死化細胞(例えば、腫瘍細胞)とリンパ球との間のこの相互作用を使用して、例えば、がんに対する抗腫瘍療法としてのリンパ球の効力を評価することができる。本明細書に記載のアッセイの前に、リンパ球(例えば、TIL)効力アッセイの大部分は、リンパ球活性の尺度としての非細胞ベースリンパ球活性化及びサイトカイン(例えば、IFN-γ)放出アッセイに基づき、細胞溶解機能を調べるための生理学的に無関係な刺激としてみなされ得るにとどまった。
【0008】
本開示は、膜関連抗CD3(OKT3)抗体を発現するように操作された腫瘍細胞(例えば、ヒト黒色腫A375細胞)が、例えば、TILの抗腫瘍機能の活性化に使用できることを示すデータを提供する。OKT3は、リンパ球の活性化に使用される活性化抗体であり、可溶性形態をとるか、またはビーズに結合し磁気ビーズに繋留されている。予想外なことに、TILに対する膜関連結合ドメインの親和性を低下させるOKT3抗体に変異を組み込むことによってTILに対するA375-pKSQ367細胞の親和性を減少させる方法は、例えば三次元in vitro腫瘍スフェロイド機能アッセイにおいて、TILの効力を評価するためのアッセイの有用性を改善する役割を果たす。
【0009】
また、本開示は、いくつかの実施形態では、二次元単層細胞培養物が、リンパ球の抗腫瘍活性の評価により良好に適している一方で、いくつかの実施形態では、三次元多層スフェロイド培養が、異なるリンパ球集団(例えば、編集TIL及び未編集TIL)の機能的特性の評価により良好に適していることを示すデータを提供する。本明細書に記載のスフェロイド設定により、TILの機能/生物学の複数の態様(細胞毒性、サイトカイン産生、増殖、及び表現型の変化を含む)の特定及び評価が可能になった。標的側では、スフェロイド寸法は、in vivoで発生するものにより近い、より高いレベルの細胞間接触及び相互作用を提供する。理論に束縛されるものではないが、本明細書で提供される効力アッセイは、形態学的特性及び他の細胞特性の変化を比較及び対照させるために用いる、洗練されていながら複雑な細胞微小環境を提供する。
【0010】
本開示の態様は、リンパ球(例えば、T細胞)の効力を評価するための方法であって、リンパ球(例えば、T細胞)及び不死化細胞を共培養することであって、不死化細胞がリンパ球(例えば、T細胞)を活性化する分子を含む、共培養することと、リンパ球の効力を評価することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、リンパ球は操作されていない(例えば、天然でないゲノム修飾を含まない)。
【0011】
本開示の他の態様は、TILの効力を評価するための方法であって、TIL及び操作腫瘍細胞を共培養することであって、操作腫瘍細胞がT細胞を活性化する分子を含む、共培養することと、TILの効力を評価することとを含む、方法を提供する。
【0012】
本開示のまた他の態様は、ポリクローナルT細胞の効力を評価するための方法であって、ポリクローナルT細胞及び不死化細胞を共培養することであって、不死化細胞がT細胞を活性化する分子を含む、共培養することと、ポリクローナルT細胞の効力を評価することとを含む、方法である。
【0013】
いくつかの実施形態において、分子はT細胞抗原に結合する。いくつかの実施形態において、TILはT細胞抗原を発現する。いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞はT細胞抗原を発現する。いくつかの実施形態において、T細胞抗原はCD3抗原である。いくつかの実施形態において、不死化細胞は分子を発現する。
【0014】
いくつかの実施形態において、分子は抗体または抗体フラグメントである。例えば、抗体フラグメントは単鎖可変フラグメント(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びFvフラグメントから選択され得る。いくつかの実施形態において、抗体フラグメントはscFvである。いくつかの実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、それぞれOKT3抗体またはOKT3抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、OKT3抗体フラグメントは膜結合型OKT3(mOKT3)scFvである。例えば、mOKT3 scFvは低親和性mOKT3 scFvバリアントであり得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、分子はmOKT3 scFvの解離定数(KD)よりも低いKDでCD3に結合し、ここで、mOKT3 scFvのKDは約5×10-10Mである。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55及びY57の変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55M及びY57Aの変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも250倍低いKDでCD3に結合する。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tの変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍低いKDでCD3に結合する。
【0016】
いくつかの実施形態において、分子は、フィトヘマグルチニン(PHA)及びコンカナバリンA(ConA)から選択される。いくつかの実施形態において、分子は細菌性スーパー抗原、例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)である。いくつかの実施形態において、分子は膜繋留分子である。
【0017】
いくつかの実施形態において、TILは操作TIL(eTIL)である。いくつかの実施形態において、eTILは編集eTILである。いくつかの実施形態において、編集eTILはゲノム修飾を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞はネオ抗原特異性T細胞を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞は末梢血に由来する。
【0020】
いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞は骨髄に由来する。
【0021】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は不死化細胞のクローン集団を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞は不死化ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、不死化細胞は操作(例えば、ヒト)がん細胞である。いくつかの実施形態において、操作がん細胞は、操作黒色腫細胞、操作大腸癌細胞、操作胆管癌細胞、及び操作乳癌細胞から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、共培養は少なくとも4時間(例えば、約4~6時間、約4~8時間、約4~12時間、約4~18時間、または約4~24時間)行われる。いくつかの実施形態において、共培養は少なくとも12時間行われる。いくつかの実施形態において、共培養は少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間行われる。いくつかの実施形態において、共培養は約1日間、約1~3日間、約1~4日間、約1~5日間、約1~6日間、または約1~7日間行われる。
【0023】
いくつかの実施形態において、効力の評価は、腫瘍に対するTIL反応性の代理マーカー(エフェクターサイトカイン(例えば、IFN-γ)の放出またはCD107aの発現を含む)を測定することを含む。いくつかの実施形態において、効力の評価は、不死化細胞の成長を測定することを含む。いくつかの実施形態において、効力の評価は、不死化細胞の細胞死及び/または生存率を測定することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、測定は、細胞生存率アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態において、測定は、細胞毒性アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態において、測定は、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レザズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む。
【0025】
本開示のさらなる態様は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の効力を評価するための方法であって、TIL及び操作がん細胞のクローン集団を共培養することであって、操作がん細胞が抗CD3抗体または抗CD3抗体フラグメントを発現する、共培養することと、操作がん細胞の死滅及び/または生存率を評価することとを含む、方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、TILはCD3抗原を発現する。
【0027】
本開示のさらに他の態様は、ポリクローナルT細胞の効力を評価するための方法であって、ポリクローナルT細胞及び操作がん細胞のクローン集団を共培養することであって、操作がん細胞が抗CD3抗体または抗CD3抗体フラグメントを発現する、共培養することと、操作がん細胞の死滅及び/または生存率を評価することとを含む、方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞はCD3抗原を発現する。
【0029】
いくつかの実施形態において、操作がん細胞は抗CD3抗体フラグメントを発現する。例えば、抗CD3抗体フラグメントは抗CD3単鎖可変フラグメント(scFv)であり得る。いくつかの実施形態において、抗CD3 scFvはmOKT3 scFvである。いくつかの実施形態において、mOKT3 scFvは低親和性mOKT3 scFvバリアントである。
【0030】
いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、mOKT3 scFvの解離定数(KD)よりも低いKDでCD3に結合し、ここで、mOKT3 scFvのKDは約5×10-10Mである。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍低いKDでCD3に結合する。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tの変異を有するアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、抗CD3抗体または抗CD3抗体フラグメントは、それぞれ膜繋留抗CD3抗体または膜繋留抗CD3抗体フラグメントである。
【0032】
いくつかの実施形態において、TILは操作TIL(eTIL)である。いくつかの実施形態において、eTILは編集eTILである。いくつかの実施形態において、編集eTILはゲノム修飾を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、操作がん細胞は、操作黒色腫細胞、操作大腸癌細胞、操作胆管癌細胞、及び操作乳癌細胞から選択される。いくつかの実施形態において、操作がん細胞は操作黒色腫細胞である。
【0034】
いくつかの実施形態において、共培養は少なくとも24時間、例えば、約24~72時間行われる。
【0035】
いくつかの実施形態において、測定は、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レザズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む。
【0036】
本開示のさらなる態様は、TILの効力を評価するための方法であって、TILと、不死化細胞と、T細胞を活性化し不死化細胞に結合する二重特異性分子とを共培養することと、TILの効力を評価することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、TILはCD3抗原を発現する。いくつかの実施形態において、二重特異性分子は、CD3に結合する分子を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、TILは操作TIL(eTIL)である。いくつかの実施形態において、eTILは編集eTILである。いくつかの実施形態において、編集eTILはゲノム修飾を含む。
【0038】
本開示の他の態様は、ポリクローナルT細胞の効力を評価するための方法であって、ポリクローナルT細胞と、不死化細胞と、T細胞を活性化し不死化細胞に結合する二重特異性分子とを共培養することと、ポリクローナルT細胞の効力を評価することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリクローナルT細胞はCD3抗原を発現する。いくつかの実施形態において、二重特異性分子は、CD3に結合する分子を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は不死化細胞のクローン集団を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、不死化細胞は(例えば、ヒト)がん細胞である。いくつかの実施形態において、がん細胞は、黒色腫細胞、大腸癌細胞、胆管癌細胞、及び乳癌細胞から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、二重特異性分子は、CD19に結合する分子を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性分子は、CD3に結合する分子を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性分子は、CD19及びCD3に結合する分子を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、二重特異性分子はCD19-CD3 BiTE(登録商標)である。
【0042】
いくつかの実施形態において、共培養は少なくとも24時間、例えば、約24~72時間行われる。
【0043】
いくつかの実施形態において、測定は、細胞生存率アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態において、測定は、細胞毒性アッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態において、測定は、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レザズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイから選択されるアッセイを実施することを含む。
【0044】
添付の図面と併せて行う以下の例示的な実施形態についての詳細な説明により、本開示の上記及び他の特徴及び利点がより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】0μL、25μL、50μL、100μL、200μL、400μL、または800μLのmOKT3をコードするpKSQ366またはpKSQ367レンチウイルスを形質導入したA375細胞をヒト汎CD3T細胞とともに一晩共培養したことを示している。翌日、CD69活性化をフローサイトメトリーにより評価した。様々な量のpKSQ366ウイルスを形質導入したA375細胞は、25μLのウイルスの場合以外は、同様のレベルのCD69活性化をもたらすことが分かった。pKSQ367を形質導入したA375細胞は、わずかにより高いレベルのCD69の活性化をもたらし、様々な量のウイルスを使用したところ同様のレベルの活性化が認められた。
図2】A375-pKSQ367及び非形質導入細胞をヤギ-抗マウス抗体で染色してmOKT3表面発現を確認したことを示している。99.2%のA375-pKSQ367がmOKT3を発現していることが分かった。
図3A】様々なエフェクター細胞:標的細胞の比(E:T)で3日間A375-pKSQ367と共培養したプレREP TILを示している。プレREP TILによるA375の殺滅は、10:1でD2777の場合以外では観察されない。全てのE:Tで、TILのA375-pKSQ367に対する認識及びそれに続く殺滅の増加が観察されている。
図3B】様々なエフェクター細胞:標的細胞の比(E:T)で3日間A375-pKSQ367と共培養したプレREP TILを示している。プレREP TILによるA375の殺滅は、10:1でD2777の場合以外では観察されない。全てのE:Tで、TILのA375-pKSQ367に対する認識及びそれに続く殺滅の増加が観察されている。
図3C】様々なエフェクター細胞:標的細胞の比(E:T)で3日間A375-pKSQ367と共培養したプレREP TILを示している。プレREP TILによるA375の殺滅は、10:1でD2777の場合以外では観察されない。全てのE:Tで、TILのA375-pKSQ367に対する認識及びそれに続く殺滅の増加が観察されている。
図4】様々な膜アンカー、シグナルペプチド、及びscFvリンカーを有するコンストラクトがいずれもT細胞をロバストに活性化することを示している。示されたコンストラクトを有するK562細胞を汎T細胞と共培養した。24時間後、T細胞のCD8及びCD69の表面発現を染色し、フローサイトメトリーにより測定した。CD69発現は、mOKT3を発現するK562細胞と共培養した後、K562細胞の細胞膜に繋留するアンカーとは無関係に高くなった。
図5】高親和性A375 pKSQ367が、それが由来するA375親細胞株と比較して高いmOKT3マーカー発現を示すことを示している。
図6】低親和性株A375 pKSQ397が高いmOKT3マーカー発現を示すことを示している。形質導入に使用するウイルスの量を増加させても、これらの細胞表面でのmOKT3の発現は増加しない。
図7】低親和性株A375 pKSQ398が中レベルのmOKT3マーカー発現を示すことを示している。形質導入に使用するウイルスの量を増加させても、これらの細胞表面でのmOKT3の発現は増加しない。
図8】汎T細胞が、A375 pKSQ367標的細胞と共培養した後に、細胞表面でCD69発現の増加を示すことを示している。これは、標的細胞(A375 pSKQ367)の認識及び汎T細胞の活性化を示すものである。これに対し、汎T細胞は、A375親細胞と共培養した後にはほとんどCD69発現を示さない。このことは、汎T細胞の認識が欠如しており、そのため活性化が増加しないことを実証している。対照として単独で培養した汎T細胞は、基礎的CD69発現の欠如を示している。
図9】汎T細胞が、A375 pKSQ396標的細胞と共培養した後に、細胞表面でCD69発現をあまり示さないことを示している。この発現レベルは、A375親細胞と共培養した汎T細胞と同等である(図8)。このことは、汎T細胞による標的細胞認識が欠如しており、そのため活性化が増加しないことを実証している。
図10】汎T細胞が、A375 pKSQ397標的細胞と共培養した後に、細胞表面でCD69の発現を示すことを示している。この発現レベルは、標的細胞(A375 pSKQ397)の認識及び汎T細胞の活性化を示している。より大量のウイルスを形質導入した標的細胞は、汎T細胞の活性化をわずかに増加させる能力を有するように思われる。
図11】汎T細胞が、A375 pKSQ398標的細胞と共培養した後に、細胞表面でCD69の発現を示すことを示している。この発現レベルは、標的細胞(A375 pSKQ398)の認識及び汎T細胞の活性化を示している。より大量のウイルスを形質導入した標的細胞は、汎T細胞の活性化をわずかに増加させる能力を有するように思われる。
図12】A375親細胞を単層として、TILドナー3239由来の遺伝子標的編集TIL(EPなし、OLFR、SOCS1、CBLB)と共培養したことを示している。mOKT3の表面発現が欠如しているため、標的A375細胞の成長の低減または差は観察されなかった。
図13】A375 pKSQ367細胞を単層として、TILドナー3239由来の遺伝子標的編集TIL(EPなし、OLFR、SOCS1、CBLB)と共培養したことを示している。以前に観察された高レベルのmOKT3表面発現により、標的A375 pKSQ367細胞の成長における大幅な低減が示された。
図14】A375 pKSQ398細胞を単層として、TILドナー3239由来の遺伝子標的編集TIL(EPなし、OLFR、SOCS1、CBLB)と共培養したことを示している。pKSQ398は、pKSQ367に比べてCD3に対する親和性が低減しているため、TILによる標的A375 pKSQ398細胞殺滅の動態が低減することが示された。全ての群がこの細胞株に対し同様の活性を有しており、このことからOKT3との親和性が低いとTILの殺滅が困難になることが示唆される。
図15】10,000個のA375-pKSQ367またはA375-pKSQ398を超低接着プレートにプレーティングし、スフェロイドの形態を観察するために10日にわたりイメージングしたことを示している。
図16】10,000個のA375-pKSQ367またはA375-pKSQ398を超低接着プレートにプレーティングしたことを示している。エレクトロポレーションなし(EPなし)及びSOCS1編集TILを4日後に様々なE:T比で加えた。イメージングをスフェロイド形成及び共培養の期間にわたって継続した。このような画像を、A375-pKSQ367については36時間後、A375-pKSQ398については72時間後に収集した。
図17】10,000個のA375-pKSQ367またはA375-pKSQ398を超低接着プレートにプレーティングしたことを示している。エレクトロポレーションなし(EPなし)及びSOCS1編集TILを4日後に様々なE:T比で加えた。イメージングをスフェロイド形成及び共培養の期間にわたって継続した。このような画像を共培養から72時間後に収集した。
図18】10,000個のA375-pKSQ367を超低接着プレートにプレーティングしたことを示している。エレクトロポレーションなし(EPなし)及びSOCS1編集TILを4日後に様々なE:T比で加えた。イメージングをスフェロイド形成及び共培養の期間にわたって継続した。このような画像を共培養から5日後に収集した。
図19】5,000個または10,000個のA375-pKSQ398を超低接着プレートにプレーティングしたことを示している。エレクトロポレーションなし(EPなし)及びSOCS1編集TILを4日後に様々なE:T比で加えた。イメージングをスフェロイド形成及び共培養の期間にわたって継続した。このような画像を共培養から5日後に収集した。
図20】72時間にわたる異なるエフェクター:標的(E:T)比におけるSOCS1編集TIL及び対照未編集TILのA375-OKT3ltスフェロイドに対する細胞毒性を示している。単層培養では、SOCS1編集細胞は、A375-pKSQA367細胞及びA375-pKSQ368細胞の殺滅において、未編集細胞と差がなかった(図13及び図14)。3Dスフェロイド設定では、SOCS1編集細胞は対照に比べて細胞毒性の増強が示された。このことから、スフェロイド設定ではアッセイが異なる感度を有することが示唆される。
図21】24時間及び異なるエフェクター:標的(E:T)比において、SOCS1編集TIL及び対照未編集TILがA375-OKT3ltスフェロイドに対し産生するIFNγを示している。
図22】24時間及び異なるエフェクター:標的(E:T)比において、SOCS1編集TIL及び対照未編集TILがA375-OKT3ltスフェロイドに対し産生するIL-6を示している。
図23】24時間のTIL-スフェロイド共培養後の上清中で検出された発光レベルを示している。
図24】24時間のTIL-スフェロイド共培養後の上清中の算出LDHレベルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、いくつかの態様において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗腫瘍効力の測定に有用な方法及び組成物を提供する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、例えば、TIL及び不死化細胞を共培養することと、TIL、不死化細胞、及び二重特異性分子を共培養することを含むアプローチを用いてTILの効力を評価することとを含む。
【0047】
現在T細胞機能のモニタリングに使用されている多くのTIL効力アッセイが、サイトカイン(例えば、IFN-γまたはIL-2)放出アッセイの使用に焦点を当てている。例えば、T細胞の活性化は、非細胞ベースのT細胞活性化試薬(抗CD3/抗CD28抗体コーティングビーズを含める)を用いた短い共培養期間の後のIFN-γ分泌を測定することにより、定量することができる。サイトカイン(例えば、IFN-γ)は標的細胞上のMHC I及びFasの発現を増強するため、サイトカイン分泌は、CD8T細胞の細胞溶解活性と相関している。例えば、TCR刺激時にインターフェロンガンマ(IFN-γ)放出が50pg/ml超、100pg/ml超、150pg/ml超、または200pg/ml超である場合、TILは強力であるとみなされ得る。
【0048】
しかし、TILが少なくとも標的細胞との相互作用と、グランザイムB及びパーフォリンを含む細胞溶解性顆粒の脱顆粒のような死誘導のためのメディエーターの産生/放出とが可能であることが要求される、標的腫瘍細胞による活性化及び直接の殺滅は、非細胞ベースTIL活性化法によって駆動される現在利用可能なサイトカイン放出アッセイでは測定されない、臨床効果において同様に重要な指標である。本明細書で提供されるTIL効力アッセイは、関連する腫瘍細胞ベースの相互作用を通じてTILを活性化することにより、既存のTIL効力アッセイ(例えば、サイトカイン放出アッセイ)を改善する。これにより、標的細胞(例えば、がん細胞などの不死化細胞)の細胞死及び/または生存率、または代理脱顆粒マーカー(例えば、CD107a)の測定、またはエフェクターサイトカイン/ケモカイン(例えば、炎症性サイトカイン/ケモカイン)(例えば、IFN-γ、IL-6、IL_2、及びTNFα)の産生を、より生理的に適切なTIL/腫瘍細胞共培養設定において、直接測定する機会がもたらされる。
【0049】
「TIL効力アッセイ」とは、TILの抗腫瘍活性(例えば、サイトカイン産生、TIL脱顆粒、腫瘍成長阻害)を特性評価(例えば、定量化)するために使用されるアッセイを指す。TIL効力アッセイは、TILの急速な拡大の前及び/または後、かつ養子細胞療法(ACT)などの臨床使用適用の前に、TILの抗腫瘍活性の評価に使用することができる。
【0050】
腫瘍浸潤リンパ球
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(操作TIL及び/または編集TILを含む)は、その抗腫瘍活性の効力(例えば、腫瘍細胞成長の阻害)に基づいて特性評価することができる。
【0051】
「腫瘍浸潤リンパ球」または「TIL」という表現は、対象の血流を離れて腫瘍内に移動したリンパ球集団を指す。TILとしては、限定されるものではないが、CD8+細胞毒性T細胞、CD4+T細胞(Th1及びTh17 CD4+T細胞を含む)、ナチュラルキラーT細胞、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。TILには、初代TIL及び二次TILが含まれる。「初代TIL」とは、本明細書で概説するように患者組織試料から得られたもの(「採取直後」と称されることもある)のことであり、「二次TIL」とは、拡大または増殖された任意のTIL細胞集団のことであり、限定されるものではないが、バルクTIL及び拡大TIL(「REP TIL」または「ポストREP TIL」)がこれに含まれる。いくつかの実施形態において、初代TILは、患者の末梢血から得られた腫瘍反応性T細胞を含む。TIL細胞集団は、遺伝子修飾されたまたは他の方法で操作されたTILを含むことができる。また、「TIL」は、対象の血流を離れ、腫瘍内に移動し、次いで再び離れて血流に入ったリンパ球集団も指す。
【0052】
本明細書で一般的に概説するように、TILは、一般的には患者試料から採取され、患者に移植する前にその数を拡大するように操作される。いくつかの実施形態において、TILは、以下で説明するように遺伝子的に操作することができる。概して、TILは、最初に患者の腫瘍試料から得られ(「初代TIL」)、次いで、本明細書に記載のように、さらなる操作のためにより大きな集団に拡大され、任意選択で凍結保存及び再刺激され、任意選択でTILの健康状態の指標として表現型及び代謝パラメーターについて評価される。
【0053】
「対象」及び「患者」という用語はヒトを指す。いくつかの実施形態において、このヒトは、患者自身のTILの拡大集団を伴う免疫療法を必要とする患者であり得る。他の実施形態において、このヒトは、別の患者自身のTILの拡大集団を伴う免疫療法を必要としている患者であり得る。
【0054】
概して、TILは、細胞表面マーカーを用いて生化学的に定義するか、または腫瘍に浸潤し治療をもたらす能力によって機能的に定義することができる。概して、TILは、以下のバイオマーカー:CD4、CD8、TCRαβ、TCRgd、CD27、CD28、CD56、CCR7、CD45RA、CD45RO、CD95、PD-1、及びCD25のうちの1つ以上を発現するものとして分類することができる。追加的及び代替的に、TILは、患者に再導入する際の固形腫瘍に浸潤する能力によって機能的に定義することができる。
【0055】
従来のTIL製造プロセスによりex vivoで培養されたTILを利用する養子細胞療法は、少なくとも2つのステップ、すなわち、プレREPステップと、それに続く少なくとも1つの急速拡大プロトコル(REP)ステップとを伴う。養子細胞療法は、黒色腫患者において好結果が得られる宿主免疫抑制後の療法となっている。現在の点滴許容パラメーターは、TILの組成(例えば、CD28、CD8、またはCD4陽性)の表示測定値、ならびにREP生成物の拡大及び生存率の数値的倍率に依存する。
【0056】
「細胞集団」または「TIL集団」という表現は、共通の形質を共有する複数の細胞またはTILを指す。概して、TIL集団の数は1×10~1×1010個の範囲であり、異なるTIL集団は異なる数を含む。例えば、初代TILをIL-2存在下で初期成長させると、およそ1×10細胞のバルクTIL集団が得られ得る。概して、REP拡大は、注入用の1.5×10~1.5×1010細胞の集団を提供するために行われる。いくつかの実施形態において、細胞集団はモノクローナルである。他の実施形態において、細胞集団はポリクローナルである。いくつかの実施形態において、細胞集団がポリクローナルである場合、細胞は依然として1つ以上の共通の形質を共有する。モノクローナルT細胞集団は、単一のTCR遺伝子再構成パターンが優勢となる。これに対し、ポリクローナルT細胞集団は多様なTCR遺伝子再構成パターンを有し、これにより、ある特定の状況ではより有効となり得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、TILは、追加の機能(限定されるものではないが、高親和性T細胞受容体(TCR)、例えば、腫瘍関連抗原(例えば、MAGE-1、HER2、もしくはNY-ESO-1)を標的とするTCR、または腫瘍関連細胞表面分子(例えば、メソセリン)もしくは系統制限細胞表面分子(例えば、EGFR、CD19、もしくはHER2)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含む)を含むように遺伝子操作される。
【0058】
「操作TIL」または「eTIL」という用語は、1つ以上の内在性標的遺伝子の発現及び/または機能の低減が得られる非天然の手段によってもたらされた1つ以上のゲノム修飾を含むTIL、ならびに1つ以上の内在性標的遺伝子の発現及び/または機能を低減可能な天然に存在しない遺伝子調節系を含むTILを包含する。「非修飾TIL」または「対照TIL」とは、ゲノムが天然に存在しない手段によって修飾されておらず、かつ天然に存在しない遺伝子調節系を含まない、または対照遺伝子調節系(例えば、空のベクター対照、非標的gRNA、スクランブルsiRNAなど)を含む、TILまたはTIL集団を指す。1つ以上の内在性遺伝子の発現及び/または機能が低減している天然に存在するTILは、非修飾TILまたは対照TILという用語に含まれる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法によって製造される操作TILは、内在性標的遺伝子のゲノムDNA配列内に、内在性遺伝子の発現及び/または機能の低減をもたらす1つ以上の修飾(例えば、1つ以上の核酸の挿入、欠失、または変異)を含む。いくつかの実施形態において、ゲノムDNA配列内の修飾は、mRNA転写を低減または阻害して、コードされたmRNA転写物及びタンパク質の発現レベルを低減する。いくつかの実施形態において、ゲノムDNA配列の修飾は、mRNAの翻訳を低減または阻害して、コードされたタンパク質の発現レベルを低減する。いくつかの実施形態において、ゲノムDNA配列内の修飾は、内在性タンパク質の非修飾(すなわち、野生型)バージョンと比較して、機能が低下または変化した修飾内在性タンパク質をコードする(例えば、後述するドミナントネガティブ変異体)。
【0060】
いくつかの実施形態において、標的細胞(例えば、修飾TILは、腫瘍細胞または抗原提示細胞(APC))が発現するタンパク質標的を認識する、操作抗原特異的受容体をさらに含む。「操作抗原受容体」という用語は、天然に存在しない抗原特異的受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR))を指す。いくつかの実施形態において、操作抗原受容体は、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介しシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと融合した細胞外抗原結合ドメインを含むCARである。いくつかの実施形態において、CAR細胞外ドメインは、標的細胞が発現する抗原にMHC非依存的に結合して、RE細胞の活性化及び増殖をもたらす。いくつかの実施形態において、CARの細胞外ドメインは、抗体またはその抗原結合フラグメントに融合したタグを認識する。このような実施形態において、CARの抗原特異性は標識抗体の抗原特異性に依存するため、ある抗体を別の抗体に置き換えることにより、単一のCARコンストラクトが複数の異なる抗原の標的化に使用され得る。いくつかの実施形態において、CARの細胞外ドメインは、抗体に由来する抗原結合フラグメントを含むことができる。本開示で有用な抗原結合ドメインとしては、例えば、scFv、抗体、抗体の抗原結合領域、重鎖/軽鎖の可変領域、及び単鎖抗体が挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、TCR複合体ゼータ鎖(例えば、CD3ξシグナル伝達ドメイン)、FcγRIII、FcεRI、またはリンパ球活性化ドメインに由来し得る。いくつかの実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン、例えば、4-1BB、CD28、CD40、MyD88、またはCD70ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激ドメイン、例えば、4-1BB、CD28、CD40、MyD88、またはCD70ドメインのうちのいずれか2つを含む。例示的なCAR構造及び細胞内シグナル伝達ドメインは当技術分野で知られている(例えば、WO2009/091826;US20130287748;WO2015/142675;WO2014/055657;及びWO2015/090229(参照により本明細書に援用される)を参照)。
【0062】
様々な腫瘍抗原に特異的なCARが当技術分野で知られており、例えば、CD171特異性CAR(Park et al.,Mol Ther(2007)15(4):825-833)、EGFRvIII特異性CAR(Morgan et al.,Hum Gene Ther(2012)23(10):1043-1053)、EGF-R特異性CAR(Kobold et al.,J Natl Cancer Inst(2014)107(1):364)、炭酸脱水酵素K特異性CAR(Lamers et al.,Biochem Soc Trans(2016)44(3):951-959)、FR-α特異性CAR(Kershaw et al.,Clin Cancer Res(2006)12(20):6106-6015)、HER2特異性CAR(Ahmed et al.,J Clin Oncol(2015)33(15)1688-1696;Nakazawa et al.,Mol Ther(2011)19(12):2133-2143;Ahmed et al.,Mol Ther(2009)17(10):1779-1787;Luo et al.,Cell Res(2016)26(7):850-853;Morgan et al.,Mol Ther(2010)18(4):843-851;Grada et al.,Mol Ther Nucleic Acids(2013)9(2):32)、CEA特異性CAR(Katz et al.,Clin Cancer Res(2015)21(14):3149-3159)、IL13Rα2特異性CAR(Brown et al.,Clin Cancer Res(2015)21(18):4062-4072)、GD2特異性CAR(Louis et al.,Blood(2011)118(23):6050-6056;Caruana et al.,Nat Med(2015)21(5):524-529)、ErbB2特異性CAR(Wilkie et al.,J Clin Immunol(2012)32(5):1059-1070)、VEGF-R特異性CAR(Chinnasamy et al.,Cancer Res(2016)22(2):436-447)、FAP特異性CAR(Wang et al.,Cancer Immunol Res(2014)2(2):154-166)、MSLN特異性CAR(Moon et al,Clin Cancer Res(2011)17(14):4719-30)、NKG2D特異性CAR(VanSeggelen et al.,Mol Ther(2015)23(10):1600-1610)、CD19-特異性CAR(アキシカブタゲンシロルユーセル(Yescarta(登録商標))及びチサゲンレクルユーセル(Kymriah(登録商標))が知られている。また、82/337 Li et al,J Hematol and Oncol(2018)11(22)(腫瘍特異的CARの臨床試験を概説)も参照。
【0063】
本明細書で一般的に概説するように、TILは、一般的には患者試料から採取され、患者に移植する前にその数を拡大するように操作される。いくつかの実施形態において、TILは、以下で説明するように遺伝子的に操作することができる。概して、TILは、最初に患者の腫瘍試料から得られ(「初代TIL」)、次いで、さらなる操作のためにより大きな集団に拡大され、任意選択で凍結保存及び再刺激され、任意選択でTILの健康状態の指標として表現型及び代謝パラメーターについて評価される。
【0064】
患者腫瘍試料は、当技術分野で知られている方法を用いて、概して外科的切除、針生検、または腫瘍及びTIL細胞の混合物を含む試料を得るための他の手段を介し、得ることができる。概して、腫瘍試料は、任意の固形腫瘍(原発性腫瘍、浸潤性腫瘍、または転移を含む)に由来することができる。腫瘍細胞は任意のがんタイプとすることができ、これには膀胱癌、脳腫瘍、乳癌(トリプルネガティブ乳癌を含む)、子宮頚癌、大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、口唇及び口腔癌、頭頚部癌(例えば、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を含む)、膠芽腫、多形膠芽腫、神経芽腫、肝臓癌、中皮腫、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌を含む)、皮膚癌(限定されるものではないが、扁平上皮癌、基底細胞癌、非黒色腫皮膚癌、及び黒色腫を含む)、卵巣癌、ぶどう膜癌、子宮体癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、ならびに甲状腺癌が含まれる。いくつかの実施形態において、有用なTILは悪性黒色腫腫瘍から得られる。これは、この腫瘍がとりわけ高レベルのTILを有することが報告されているためである。原発性肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、膀胱癌、子宮頚癌、黒色腫腫瘍、またはその転移を使用して、TILを得ることができる。
【0065】
ひとたび得た腫瘍試料は、概して鋭利な剥離を用いてフラグメント化して約1~約8mmまたは約0.5~約4mmの小片にする(約2~3mmが特に有用である)。TILは、酵素的腫瘍消化物を用いてこれらのフラグメントから培養される。このような腫瘍消化物は、酵素培地(例えば、Roswell Park Memorial Institute (RPMI)1640バッファー、2mMグルタミン酸、10μg/mlゲンタマイシン、30単位/mlのDNase、及び1.0mg/mlのコラゲナーゼ)中でインキュベートし、次に機械的分離(例えば、組織分離器を使用)を行うことにより、生成することができる。腫瘍消化物は、腫瘍を酵素培地に入れ、腫瘍をおよそ1分間機械的に分離し、次に5% CO中で、37℃で30分間インキュベートし、次に上記の条件下で、小さな組織片しか存在しなくなるまで機械的分離及びインキュベートのサイクルを繰り返すことにより、生成することができる。このプロセスの最後に、細胞浮遊液中に多数の赤血球または死細胞が含まれる場合は、FICOLL分岐親水性多糖を用いた密度勾配分離を実施してこれらの細胞を除去することができる。当技術分野で知られている代替方法(例えば、米国特許出願公開第2012/0244133A1号(この開示内容は参照により全体として本明細書に援用される))を使用してもよい。前述の方法はいずれも、TILを拡大する方法またはがんを治療する方法のための本明細書に記載の任意の実施形態に使用することができる。
【0066】
概して、採取した細胞浮遊液は「初代細胞集団」または「採取直後の」細胞集団と呼ばれる。いくつかの実施形態において、フラグメント化は物理的フラグメント化(例えば、切離及び消化)を含む。いくつかの実施形態において、フラグメント化は物理的フラグメント化である。いくつかの実施形態において、フラグメント化は切離である。いくつかの実施形態において、フラグメント化は消化による。いくつかの実施形態において、TILは、患者から得られる酵素的腫瘍消化物及び腫瘍フラグメントから最初に培養することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、TILは腫瘍消化物から得られる。いくつかの実施形態において、腫瘍消化物は、機械的に分離した腫瘍を酵素培地(例えば、限定されるものではないが、RPMI1640、2mM GlutaMAX、10mg/mlゲンタマイシン、30U/ml DNアーゼ、及び1.0mg/mlコラゲナーゼ)中でインキュベートし、次に機械的に分離する(GentleMACS,Miltenyi Biotec,Auburn,Calif.)ことによって作製される。いくつかの実施形態において、機械的に分離した腫瘍はおよそ1mmのフラグメントに分割される。腫瘍を酵素培地に入れた後、腫瘍をおよそ1分間機械的に分離することができる。次いで溶液を5% CO中37℃で30分間インキュベートし、次いで再び機械的破壊をおよそ1分間行うことができる。再び5% CO中、37℃で30分間インキュベートした後、腫瘍に3回目の機械的破壊をおよそ1分間行うことができる。いくつかの実施形態において、3回目の機械的分離後に、大きな組織片が存在する場合、さらに1回または2回の機械的分離を試料に適用することができ、5% CO中、37℃で30分間のインキュベートを伴っても伴わなくてもよい。いくつかの実施形態において、最終インキュベートの終わりに、細胞浮遊液が多数の赤血球または死細胞を含む場合、FICOLLを用いた密度勾配分離を実施してこれらの細胞を除去することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、細胞は、試料採取後、任意選択で凍結または凍結保存し、拡大段階に入る前に凍結保存することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、TILは、最初の腫瘍のフラグメント化または解離から最大で合計9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは合計9~25日間、9~21日間、または9~14日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計9日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計10日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計11日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計12日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計13日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計14日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計15日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計16日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計17日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計18日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計19日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計20日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計21日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計22日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計23日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計24日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計25日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計26日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計27日間拡大される。いくつかの実施形態において、TILは、最大で合計28日間拡大される。
【0070】
いくつかの実施形態において、拡大されたTILは、多数の表現型マーカー(本明細書に記載ものを含む)の発現について分析される。いくつかの実施形態において、マーカーはTCRα/β、CD57、CD28、CD4、CD27、CD56、CD8a、CD45RA、CD45RO、CD8a、CCR7、CD4、CD3、CD38、及びHLA-DRから選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の調節マーカー、すなわち、CD137、CD8a、Lag3、CD4、CD3、PD-1、TIM-3、CD69、CD8a、TIGIT、CD4、CD3、KLRG1、及びCD154の群からの1つ以上の調節マーカーの発現が測定される。
【0071】
いくつかの実施形態において、メモリーマーカーはCCR7またはCD62Lである。諸実施形態において、再刺激されたTILは、サイトカイン放出アッセイを用いてサイトカイン放出について評価される。いくつかの実施形態において、TILは、OKT3または自己腫瘍消化物との共培養のいずれかによる刺激に応答して、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)の分泌について評価される。いくつかの実施形態において、TILは、OKT3または自己腫瘍消化物との共培養のいずれかによる刺激に応答して、IL-6分泌について評価される。測定され得る追加のエフェクターサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、及び腫瘍壊死因子-α(TNFα)が挙げられる。CXCL10、CXCL13、CCL1、CCL3、CCL4、CCL5、CCL9/10、CCL17、CCL22、CCL23、XCL1などのケモカインも評価されることがある。
【0072】
TILは様々な調節マーカー(例えば、TCRα/β、CD56、CD27、CD28、CD57、CD45RA、CD45RO、CD25、CD127、CD95、IL-2R、CCR7、CD62L、KLRG1、及びCD122)について評価される。
【0073】
不死化細胞
不死化細胞とは、無限に増殖するように操作されており、そのため長期間にわたって培養することができる細胞のことである。典型的には、不死化細胞株は、継続的な分裂を可能にする染色体異常または変異を有する様々な供給源(例えば、腫瘍)から得られる。したがって、不死化細胞は「操作されている」とみなされる。不死化細胞集団は、異種の集団であってもよく、(クローン集団を形成するために)単一の不死化クローンに由来してもよい。いくつかの実施形態において、不死化細胞は異種の不死化細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞は不死化細胞のクローン集団を含む。
【0074】
不死化細胞は、様々な種及び/または起源に由来することができる。例えば、不死化細胞は、不死化動物細胞もしくは不死化ヒト細胞、またはこれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態において、不死化細胞は不死化ヒト細胞である。
【0075】
いくつかの実施形態において、不死化細胞はがん細胞である。例えば、がん細胞としては、限定されるものではないが、黒色腫細胞、大腸癌細胞、胆管癌細胞、及び乳がん細胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、がん細胞は、黒色腫細胞、大腸癌細胞、胆管癌細胞、及び乳癌細胞から選択される。
【0076】
本明細書に記載のTIL効力アッセイに使用するために操作され得る不死化細胞としては、限定されるものではないが、A375黒色腫細胞(例えば、ATCC(登録商標)CRL-1619(商標))、K562多分化能造血悪性細胞、初代細胞(例えば、ATCC(登録商標)CCL-243(商標))、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞(例えば、ATCC(登録商標)CRL-1573)、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、ATCC(登録商標)CCL-61(商標))が挙げられる。いくつかの実施形態において、不死化細胞はA375細胞、K562細胞、初代細胞、HEK293T細胞、及びCHO細胞から選択される。本明細書に記載のアッセイ及び方法に有用な不死化細胞は、前述の例に限定されないことを理解されたい。他の不死化細胞株も当技術分野で知られており、本開示に従って使用することができる。
【0077】
T細胞応答を抑制する免疫抑制マーカー(例えば、PD-L1、PD-L2)を発現する細胞株を使用して、TILが抑制シグナルに抵抗性であるかどうかを試験することも、本明細書では企図されている。いくつかの実施形態において、TIL効力アッセイに使用するために操作され得る不死化細胞は、T細胞応答を抑制する免疫抑制マーカー(例えば、PD-L1)を発現する細胞株を含む。
【0078】
T細胞応答を増強する共刺激マーカーを発現する細胞株(例えば、CD80/86、OX40L、及び/または41BBL)も、TIL効力アッセイに使用するために操作することができる。いくつかの実施形態において、TIL効力アッセイのために操作され得る不死化細胞は、T細胞応答を増強するための共刺激マーカー(例えば、CD80/86)を発現することができる細胞株を含む。
【0079】
「腫瘍細胞」または「がん細胞」という表現は、制御なしに分裂し、固形腫瘍を形成したり、血液を異常な細胞であふれさせたりする細胞を指す。健康な細胞は、これ以上の娘細胞の必要がなくなると分裂を停止するが、腫瘍細胞またはがん細胞は引き続きコピーを生成する。またこれらの細胞は、転移として知られるプロセスで、身体のある部位から別の部位に広がることができる。腫瘍細胞は、複数のがんタイプから単離することができ、これには膀胱癌、脳腫瘍、乳癌(トリプルネガティブ乳癌を含む)、子宮頚癌、大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、口唇及び口腔癌、頭頚部癌(例えば、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を含む)、膠芽腫、多形膠芽腫、神経芽腫、肝臓癌、中皮腫、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌を含む)、皮膚癌(限定されるものではないが、扁平上皮癌、基底細胞癌、非黒色腫皮膚癌、及び黒色腫を含む)、卵巣癌、ぶどう膜癌、子宮体癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、ならびに甲状腺癌が含まれる。いくつかの実施形態において、がん細胞はリンパ腫からも単離される。腫瘍細胞は、原発性腫瘍及び転移から単離することができる。
【0080】
不死化細胞は、TILとの共培養の関係で終始記述されているが、不死化細胞は、T細胞を活性化する(例えば、T細胞抗原に結合する)分子を発現する、または発現するように操作されている任意の腫瘍細胞(例えば、がん細胞)と置き換えてもよいことを理解されたい。
【0081】
リンパ球を活性化する分子
本開示の操作不死化細胞は、T細胞を活性化する分子を含むまたは発現することができる。
【0082】
「リンパ球を活性化する分子」及び「T細胞を活性化する分子」とは、細胞を活性化状態にする非内在性の刺激を指す。内在性のプロセスにおいて、例えばT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現するMHCクラスII分子にペプチド抗原を提示されると、活性化状態になる。ひとたび活性化されると、T細胞は急速に分裂し、免疫応答を調節または補助するサイトカインを分泌する。内在性T細胞の活性化プロセスは、少なくとも(a)CD3を伴うTCR複合体の活性化と、(b)APC表面のタンパク質によるCD28または4-1BBの共刺激とを伴う。当技術分野では、CD3、CD28、または4-1BBアゴニスト(例えば、抗体)によるT細胞の刺激により、T細胞の内在性活性化をシミュレートできることが知られている。このように、CD3、CD28、及び/または4-1BBはともにT細胞を活性化することができる。
【0083】
活性化T細胞は数を増加させ、または増殖し、免疫応答を高めるためにサイトカイン(活性化TIL)の産生を開始する。
【0084】
不死化細胞は、T細胞抗原に結合する(例えば、直接結合する)ことによりT細胞を活性化する分子を含む及び/または発現することができる。いくつかの実施形態において、TIL(例えば、操作TIL及び/または編集TIL)はT細胞抗原を発現する。T細胞抗原の非限定的な例としてはCD3、CD28、CD2、41BB、OX40、GITR、ICOS、CD4、CD8が挙げられる。いくつかの実施形態において、T細胞抗原はCD3である。いくつかの実施形態において、T細胞抗原はCD28である。いくつかの実施形態において、T細胞抗原はCD2である。
【0085】
「CD3」という用語は、細胞毒性T細胞(CD8+ナイーブT細胞)及びTヘルパー細胞(CD4+ナイーブT細胞)の両方の活性化を助けるCD3(分化抗原群3)T細胞共受容体を指す。CD3は、6つの異なるポリペプチド鎖(2つのCD3ゼータ鎖、2つのCD3イプシロン鎖、1つのCD3eガンマ鎖、及び1つのCD3デルタ鎖)から構成されるタンパク質複合体である。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖(またはガンマ鎖及びデルタ鎖)と会合して、Tリンパ球内で活性化シグナルを生成する。TCRアルファ鎖及びベータ鎖(またはガンマ鎖及びデルタ鎖)ならびにCD3分子は、ともにTCR複合体を構成する。ヒトCD3E遺伝子は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)遺伝子ID 916により特定される。ヒトCD3E遺伝子の例示的な塩基配列はNCBI参照配列:NG_007383.1である。
【0086】
「CD28」という用語は分化抗原群28を指し、これはT細胞上に発現し、T細胞の活性化及び生存に必要とされる共刺激シグナルを提供するタンパク質の1つである。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28を通じてのT細胞刺激により、様々なサイトカイン(例えば、インターロイキン)産生のための強力なシグナルがもたらされ得る。CD28は、CD80及びCD86タンパク質の受容体である。Toll様受容体リガンドによって活性化されると、抗原提示細胞(APC)内でCD80発現が上方調節される。ヒトCD28遺伝子は、NCBI遺伝子ID 940により特定される。ヒトCD28遺伝子の例示的な塩基配列はNCBI参照配列:NG_029618.1である。例示的なヒトCD28ポリペプチドのアミノ酸配列は、
MLRLLLALNLFPSIQVTGNKILVKQSPMLVAYDNAVNLSCKYSYNLFSREFRASLHKGLDSAVEVCVVYGNYSQQLQVYSKTGFNCDGKLGNESVTFYLQNLYVNQTDIYFCKIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号19)である。
【0087】
「CD2」という用語は分化抗原群2(Cluster of differentiation 2)を指し、これは、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の表面に見られる細胞接着分子である。CD2は、他の接着分子と相互作用してT細胞及びNK細胞の共刺激分子として機能する。ヒトCD2遺伝子は、NCBI遺伝子ID 914により特定される。ヒトCD2遺伝子の例示的な塩基配列はNCBI参照配列:NG_050908.1である。例示的なヒトCD2ポリペプチドのアミノ酸配列は、
MSFPCKFVASFLLIFNVSSKGAVSKEITNALETWGALGQDINLDIPSFQMSDDIDDIKWEKTSDKKKIAQFRKEKETFKEKDTYKLFKNGTLKIKHLKTDDQDIYKVSIYDTKGKNVLEKIFDLKIQERVSKPKISWTCINTTLTCEVMNGTDPELNLYQDGKHLKLSQRVITHKWTTSLSAKFKCTAGNKVSKESSVEPVSCPEKGLDIYLIIGICGGGSLLMVFVALLVFYITKRKKQRSRRNDEELETRAHRVATEERGRKPHQIPASTPQNPATSQHPPPPPGHRSQAPSHRPPPPGHRVQHQPQKRPPAPSGTQVHQQKGPPLPRPRVQPKPPHGAAENSLSPSSN(配列番号20)である。
【0088】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は、T細胞抗原に結合する(例えば、特異的に結合する)ことによりT細胞を活性化する分子を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞はCD3抗原に結合することによりT細胞を活性化する分子を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞はCD28抗原に結合することによりT細胞を活性化する分子を含む。いくつかの実施形態において、不死化細胞はCD2抗原に結合することによりT細胞を活性化する分子を含む。
【0089】
「特異的に結合する」という表現は、分子(例えば、抗体)が、特定の抗原(例えば、T細胞抗原)と、当該複合体が会合する上で親和性がより低い他の抗原に比べて高い特異性で相互作用することを指す。特異的結合相互作用は、イオン結合、水素結合、または他のタイプの化学的もしくは物理的結合によって媒介され得る。いくつかの実施形態において、分子は、タンパク質及び/または高分子の複雑な混合物中で標的抗原を認識すると、特定の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子はおよそ10-5M未満、例えば、約10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、またはさらにそれより低い親和性(KD)でT細胞抗原に結合する。
【0090】
いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子はT細胞アゴニストである。「アゴニスト」という用語は、細胞表面にまたは可溶性形態で標的に結合する化学物質、分子、巨大分子、分子の複合体、または巨大分子の複合体を指す。ある特定の実施形態において、アゴニストが細胞表面の標的に結合すると、アゴニストは標的を活性化して生物学的応答をもたらす。アゴニストとしては、ホルモン、神経伝達物質、抗体、及び抗体のフラグメントが挙げられる。
【0091】
T細胞を活性化する分子の非限定的な例としては、限定されるものではないが、抗体(例えば、全抗体及び/または抗体フラグメント)、NANOBODY(登録商標)バインダー、AFFIMER(登録商標)バインダー、ならびに他の分子バインダー(例えば、リガンド及び受容体)が挙げられる。
【0092】
「抗体」という用語は、概して4つのポリペプチド鎖(2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子のエピトープ結合機能を保持するその機能的フラグメント、変異体、バリアント、もしくは誘導体を指す。このようなフラグメント、変異体、バリアント、または誘導体抗体形式は当技術分野で知られている。完全長抗体の1つの実施形態において、各重鎖は重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖可変領域(ドメイン)は、本開示ではVDHとも呼ばれる。CHは、3つのドメイン:CH1、CH2、及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。CLは単一のCLドメインから構成される。軽鎖可変領域(ドメイン)は、本開示ではVDLとも呼ばれる。VH及びVLは、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに再分割することができ、この領域の間に保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と称される)が分散して存在する。概して、各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4に並んでいる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスであり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は抗体フラグメントである分子を発現する。いくつかの実施形態において、抗体フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びFvフラグメントから選択される。
【0094】
アゴニストまたは抗体に関連して使用される「フラグメント」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持するアゴニストまたは抗体のフラグメントを指す。抗体のフラグメントの例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)単一の可変ドメインを含むdAbフラグメント、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え法を用いて、合成リンカーによって連結することができる。この合成リンカーにより、これらのドメインは、VL領域及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(別名単鎖Fv(scFv))として作製することが可能になる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるように意図されている。他の形態の単鎖抗体(例えば、ダイアボディ)も包含される。さらに、単鎖抗体には、一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線状抗体」も含まれ、これらは相補的な軽鎖ポリペプチドとともに一対の抗原結合領域を形成する。
【0095】
「KD」という用語は、特定のアゴニスト-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。典型的には、本明細書に記載のアゴニストは、例えば、アゴニストをリガンド、標的を分析物として用いて、Biacore装置で表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて定量した場合に、mOKT3 scFvのKD(約1×10-9Mまたは1×10-10M)よりも高い解離平衡定数(KD)で標的に結合する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のアゴニスト(例えば、低親和性mOKT3 scFvバリアント)は、5×10-10Mより高いKDに対応する親和性で標的タンパク質(例えば、CD3)に結合する。
【0096】
「koff」(sec-1)という用語は、特定のアゴニスト-抗原相互作用の解離速度定数を指す。当該値はkd値とも称される。
【0097】
「kon」(M-1×sec-1)という用語は、特定のアゴニスト-抗原相互作用の会合速度定数を指す。
【0098】
「KD」(M)という用語は、特定のアゴニスト-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0099】
「KA」(M-1)という用語は、特定のアゴニスト-抗原相互作用の会合平衡定数を指し、konをkoffで割ることによって得られる。
【0100】
「抗CD28抗体」という表現は、抗体またはそのバリアント(例えば、モノクローナル抗体)を指し、成熟T細胞のT細胞抗原受容体内のCD28受容体に向けられるヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはマウス抗体を含む。
【0101】
「抗CD2抗体」という表現は、抗体またはそのバリアント(例えば、モノクローナル抗体)を指し、成熟T細胞のT細胞抗原受容体内のCD2受容体に向けられるヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはマウス抗体を含む。
【0102】
「抗CD3抗体」という表現は、抗体またはそのバリアント(例えば、モノクローナル抗体)を指し、成熟T細胞のT細胞抗原受容体内のCD3受容体に向けられるヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはマウス抗体を含む(例えば、国際公開第WO2013186613A1号(参照により本明細書に援用される)を参照)。抗CD3抗体にはOKT3(別名ムロモナブ)が含まれる。また、抗CD3抗体にはUCHT1クローン(別名T3及びCD3c)も含まれる。他の抗CD3抗体としては、例えば、オテリキシズマブ、テプリズマブ、及びビシリズマブが挙げられる。
ムロモナブ-CD3軽鎖
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPAHFRGSGSGTSYSLTISGMEAEDAATYYCQQWSSNPFTFGSGTKLEINRADTAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号17)
ムロモナブ-CD3重鎖
QVQLQQSGAELARPGASVKMSCKASGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSSAKTTAPSVYPLAPVCGGTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号18)
【0103】
「OKT3」という用語は、Miltenyi Biotech,Inc.(San Diego,Calif.,USA)により生産された抗CD3抗体、またはそのバイオシミラーもしくはバリアント(例えば、ヒト化、キメラ、または親和性成熟バリアント)を指す。OKT3を産生可能なハイブリドーマはAmerican Type Culture Collectionで入手可能であり、ATCCアクセッション番号CRL8001が割り当てられている。OKT3を産生可能なハイブリドーマは、European Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)で入手可能であり、カタログ番号86022706が割り当てられている。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗体フラグメントはOKT3抗体(例えば、OKT3抗体フラグメント)である。いくつかの実施形態において、OKT3抗体フラグメントは膜結合型OKT3(mOKT3)scFvフラグメントである。
【0105】
膜貫通ドメインを利用して、mOKT3 scFvを不死化細胞の細胞表面に固定することができる。例えば、ヒトCD8膜貫通ドメインを利用して、mOKT3 scFvを不死化細胞の細胞表面に固定することができる。本明細書では、mOKT3 scFvを不死化細胞の細胞表面に固定するために、例えばマウス(pKSQ366)のような他の種由来のCD8膜貫通ドメイン、またはCD14もしくはCD28のような他の膜貫通タンパク質を使用することも企図される。いくつかの実施形態において、mOKT3 scFvは、不死化細胞の細胞表面に繋留されて発現する。いくつかの実施形態において、ヒトCD8膜貫通ドメインを利用して、mOKT3 scFvを不死化細胞の細胞表面に固定する。
【0106】
多くのT細胞は、mOKT3の非常に強力な刺激に応答する。親和性がより低いT細胞受容体結合を使用することにより、細胞間のばらつきに起因するT細胞受容体シグナル伝達閾値のわずかな違いを分離することができ、また患者に注入する前のT細胞療法製品に対し、より高い感受性で品質を判定することができる。mOKT3フラグメントの低親和性バリアントを、部位変異誘発を介し、天然T細胞受容体の認識抗原に対する親和性をより緊密にモデル化するように作製することができる。天然T細胞受容体の公表された親和性はμM KDの範囲内にある。
【0107】
いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントが使用される。いくつかの実施形態において、分子は、mOKT3 scFvの解離定数(KD)よりも低いKDでCD3に結合し、ここで、mOKT scFvのKDは、約1×10-9~約1×10-11、例えば、約5×10-10Mである。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55の変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しY57の変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55及びY57の変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55M及びY57Aの変異を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対しR55L及びY57Tの変異を有するアミノ酸配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、約1×10-6~約5×10-8の解離定数(KD)でCD3に結合する。例えば、低親和性mOKT3 scFvバリアントはCD3に約1×10-6、1×10-7、または1×10-8のKDで結合する。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントはCD3に約5×10-7のKDで結合する。
【0109】
いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントはCD3に、mOKT3 scFvのKDより少なくとも10倍低い、少なくとも20倍低い、少なくとも30倍低い、少なくとも40倍低い、少なくとも50倍低い、少なくとも60倍低い、少なくとも70倍低い、少なくとも80倍低い、少なくとも90倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも110倍低い、少なくとも120倍低い、少なくとも130倍低い、少なくとも140倍低い、少なくとも150倍低い、少なくとも160倍低い、少なくとも170倍低い、少なくとも180倍低い、少なくとも190倍低い、少なくとも200倍低い、少なくとも210倍低い、少なくとも220倍低い、少なくとも230倍低い、少なくとも240倍低い、少なくとも250倍低い、少なくとも275倍低い、少なくとも300倍、少なくとも400倍、少なくとも500倍、少なくとも600倍、少なくとも700倍、少なくとも800倍、少なくとも900倍、少なくとも1000倍、少なくとも1100倍、少なくとも1200倍低いKDで結合する。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、mOKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも250倍低いKDでCD3に結合する。いくつかの実施形態において、低親和性mOKT3 scFvバリアントは、OKT3 scFvの解離定数KDよりも少なくとも1000倍低いKDでCD3に結合する。
【0110】
いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子は膜繋留分子である。他の分子、例えば、T細胞受容体CD3に結合しこれをクラスター化してT細胞を活性化する細菌性スーパー抗原(例えば、SEB)、フィトヘマグルチニン(PHA)、またはコンカナバリンA(ConA)は、不死化細胞の細胞表面に繋留したmOKT3 scFvと同様に働くことが企図されている。いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子はフィトヘマグルチニン(PHA)である。いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子はコンカナバリンA(ConA)である。T細胞受容体/CD3成分に結合する他のモノクローナル抗体scFvフラグメント、例えば、抗CD3抗体クローンBC3も、不死化細胞の細胞表面に繋留したmOKT3 scFvと同様に働くことが企図されている。いくつかの実施形態において、T細胞を活性化する分子は抗CD3抗体クローンBC3である。
【0111】
いくつかの実施形態において、不死化細胞はFc受容体を発現する。このような実施形態において、Fc受容体及びT細胞抗原(例えば、CD3)の両方に結合するモノクローナル抗CD3抗体などの抗体を使用して、TILの効力を評価することができる。
【0112】
他の実施形態において、T細胞を活性化する分子は不死化細胞では発現しない。むしろ、この分子は不死化細胞にもT細胞にも結合できる二重特異性分子であり得る。二重特異性T細胞エンゲージャー(例えば、ブリナツモマブ)は、不死化細胞によって発現するCD19と、T細胞によって発現するCD3とに結合する分子の1つの非限定的な例である。
【0113】
共培養条件
本明細書で提供される方法は、いくつかの態様において、リンパ球(例えば、TIL)及び不死化細胞を共培養することを含む。
【0114】
不死化細胞は、二次元単層細胞としても、多層三次元スフェロイドとしても培養することができる。スフェロイドとは、平坦な表面への接着が妨げられる環境下で形成する、自己組織化する多細胞凝集体のことである。
【0115】
二次元培養とは、細胞が単層として、例えば、接着表面を有する培養フラスコ、皿、またはマルチウェルプレートで成長する接着培養のことである。比較として、三次元スフェロイド培養は、非接着性あるいは低接着性の培養系であり、細胞は多層スフェロイドとして、例えば、非接着性プレート上、濃縮培地もしくはゲル様物質中、または足場上での浮遊培養下で成長する。
【0116】
いくつかの実施形態において、三次元系の不死化細胞が超低接着(ULA)表面で培養される。超低接着表面とは、特異的及び非特異的な固定化を阻害する物質を含む表面のことであり、強制的に細胞を浮遊状態にして三次元スフェロイドの形成を可能にする。いくつかの実施形態において、超低接着表面は、親水性の中性荷電コーティングを含む。いくつかの実施形態において、親水性の中性荷電ヒドロゲルコーティングは表面に共有結合している。いくつかの実施形態において、表面はポリスチレンを含む。したがって、いくつかの実施形態において、超低接着表面は、親水性の中性荷電コーティングが共有結合しているポリスチレン表面である。当技術分野で知られているように、超低接着表面は、概して安定性、無細胞毒性、生物学的に不活性、及び非分解性である。
【0117】
いくつかの実施形態において、三次元系の不死化細胞が超低接着マルチウェルプレート(例えば、Corning(登録商標))で培養される。いくつかの実施形態において、マルチウェルプレート(例えば、マルチウェルポリスチレンプレート)の超低接着表面は、親水性の中性荷電共有結合ヒドロゲル層である。様々なマルチウェル形式が利用可能であり、例えば、6、24、または96ウェル形式が利用可能である。
【0118】
以下に示す培養条件は、二次元共培養にも三次元共培養にも使用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、不死化細胞の共培養物は25,000~200,000個の不死化細胞を含む。例えば、不死化細胞の共培養物は50,000~100,000個の不死化細胞を含むことができる。いくつかの実施形態において、不死化細胞の共培養物は25000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、または10000個の不死化細胞を含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は、例えば、培地(例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM))(血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS))及び抗生物質(例えば、Pen/Strep)を含む)が入ったマルチウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)にプレーティングされる。
【0121】
いくつかの実施形態において、不死化細胞は、TILを加える前に、(例えば、ULA表面を有するマルチウェルプレート内で、または接着マルチウェルプレート内で)培地中で約48時間~約96時間(例えば、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、または約96時間)培養して三次元スフェロイドを形成する。
【0122】
例えば、TIL(例えば、プレREP TIL)を作製するために、共培養の前に、いくつかの実施形態において、腫瘍消化試料(例えば、黒色腫腫瘍消化試料)が解凍され、IL-2の存在下でREP前培地にプレーティング(例えば、1.5e6細胞/mL)される。IL-2の再プレーティング及びフィーディングは、いくつかの実施形態では、例えば、2日後に成長が1.5倍未満に鈍化するまで、1~3日ごとに繰り返される。
【0123】
共培養開始の前日に、いくつかの実施形態では、プレREP TILが解凍され、REP培地(例えば、RPMI、AIM-V、5%ヒトAB血清、及びIL-2)中で一晩静置される。
【0124】
いくつかの実施形態において、汎T細胞は末梢血単核細胞(PBMC)から単離され、不死化細胞と共培養される。
【0125】
いくつかの実施形態において、共培養は、2:1のエフェクター(T細胞):標的(不死化細胞)比(E:Tと略記される)で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は1:1のE:T比で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は1:2のE:T比で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は3:1、2:1、または1:1のE:T比で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は5:1のE:T比で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は10:1のE:T比で実施される。いくつかの実施形態において、共培養は20:1のE:T比で実施される。
【0126】
共培養の期間は様々であり得る。いくつかの実施形態において、TIL及び不死化細胞は少なくとも2時間、少なくとも3時間、または少なくとも4時間共培養される。例えば、TIL及び不死化細胞は2~72時間、2~48時間、2~36時間、2~24時間、2~12時間、4~72時間、4~48時間、4~36時間、4~24時間、4~12時間、12~72時間、8~72時間、8~48時間、8~36時間、8~24時間、8~12時間、12~72時間、12~48時間、12~36時間、12~24時間、24~72時間、24~48時間、または24~36時間共培養され得る。いくつかの実施形態において、TIL及び不死化細胞は約2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、または72時間共培養される。いくつかの実施形態において、TIL及び不死化細胞は少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも36時間、または少なくとも72時間共培養される。
【0127】
いくつかの実施形態において、TIL及び不死化細胞の共培養物は、インターロイキン-2(IL-2)、IL-15、またはこれらの組合せを、例えば、約5,000U/ml~約8,000U/ml(例えば、5,000U/ml、5,500U/ml、6,000U/ml、6,500U/ml、7,000U/ml、7,500U/ml、または8,000U/ml)の最終濃度で含む。
【0128】
IL-2はインターロイキンであり、免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の1つのタイプである。これは、免疫に関与する白血球(白血球、多くの場合リンパ球)の活動を調節する15.5~16kDaのタンパク質である。IL-2は、微生物感染に対する身体の自然応答の一部である。IL-2は、リンパ球により発現するIL-2受容体に結合することにより、その作用を媒介する。IL-2の主な供給源は活性化CD4+T細胞及び活性化CD8+T細胞である。
【0129】
IL-2は、主にT細胞に対するその直接的な作用を介して、免疫系の重要な機能である寛容及び免疫において不可欠な役割を有する。T細胞が成熟する胸腺内では、ある特定の未熟T細胞が調節性T細胞(体内の正常な健康細胞を攻撃するように別段に刺激された他のT細胞を抑制する)に分化するように促進することにより、自己免疫疾患が防止される。IL-2は活性化誘導性細胞死(AICD)を促進する。また、IL-2は、T細胞がエフェクターT細胞に分化し、また最初のT細胞が抗原による刺激も受けた場合にはメモリーT細胞に分化するように促進して、身体が感染症を撃退するのを助ける。IL-2は、他の極性化サイトカインとともに、ナイーブCD4+T細胞がTh1及びTh2リンパ球に分化するように刺激し、その一方でTh17及び濾胞性Thリンパ球に分化するのを妨害する。その発現及び分泌は緊密に調節されており、免疫応答の増幅及び減衰における一過性の正及び負の両方のフィードバックループの一部として機能する。IL-2は、T細胞免疫学的記憶(抗原選択されたT細胞クローンの数及び機能の拡大に依存)の発生における役割を通じて、細胞媒介性免疫を持続させる役割を担う。
【0130】
IL-15は、ヒトにおいて染色体4q31の34kb領域によりコードされる14~15kDaの糖タンパク質である。IL-15は、IL-2と構造的に類似するサイトカインである。IL-2のように、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)及び共通のガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)から構成される複合体に結合し、それを通じてシグナルを伝達する。IL-15は、多くの細胞種及び組織(単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、及び神経細胞を含む)によって構成的に発現する。IL-15は、多面発現性サイトカインとして、自然免疫及び適応免疫において重要な役割を果たしている。IL-15は、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化及び増殖を調節する。抗原の不在下でメモリーT細胞を維持する生存シグナルは、IL-15によってもたらされる。このサイトカインはNK細胞の発生にも関与する。
【0131】
リンパ球抗腫瘍効力の評価
リンパ球(例えば、TIL)及び不死化細胞の共培養後、リンパ球の抗腫瘍効力は、例えば、脱顆粒(例えば、CD107a発現)、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ)、及び/または細胞死、及び/または一定期間にわたる不死化細胞の生存率を測定することによって評価することができる。例えば、効力を評価するための期間は12~72時間とすることができる。いくつかの実施形態において、リンパ球(例えば、TIL)の抗腫瘍効力は12~48時間、12~36時間、12~24時間、24~72時間、24~48時間、または24~36時間評価される。いくつかの実施形態において、リンパ球(例えば、TIL)の抗腫瘍効力は12時間、24時間、36時間、48時間、または72時間評価される。いくつかの実施形態において、リンパ球(例えば、TIL)の抗腫瘍効力は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも36時間、または少なくとも72時間評価される。
【0132】
脱顆粒を測定するための方法としては、限定されるものではないが、CD107aまたはCD107bなどのリソソーム関連膜糖タンパク質(LAMP)の細胞表面染色、フローサイトメトリー表示測定値の使用が挙げられる。LAMPは細胞溶解顆粒の脂質二重層に見出され、TILによる殺滅の媒介のために放出されると、TILの表面と融合して、脱顆粒及び直接的な細胞毒性のマーカーとして機能する。
【0133】
サイトカイン産物を測定するための方法としては、限定されるものではないが、TILを含むmOKT3-A375細胞株の共培養後の細胞培養上清のELISA、Luminex、もしくはMSDアッセイ、またはmOTK3-A375共培養後のTILにおけるサイトカイン転写物のqRT-PCR分析が挙げられる。
【0134】
効力を評価するために細胞死及び/または生存率を測定するための方法としては、限定されるものではないが、リアルタイム細胞生存率アッセイ、ATP細胞生存率アッセイ、生細胞プロテアーゼ生存率アッセイ、テトラゾリウム還元細胞生存率アッセイ、レサズリン還元細胞生存率アッセイ、死細胞プロテアーゼ放出細胞毒性アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ放出細胞毒性アッセイ、及びDNA色素細胞毒性アッセイが挙げられる。当技術分野で知られている、細胞の健康状態、細胞死、及び/または細胞生存率を測定するための他のアッセイも本明細書で企図されている。このようなアッセイの非限定的な例を以下に示す。
【0135】
細胞生存率アッセイでは、代謝的に活性な(生きている)細胞の指標として様々なマーカーを使用する。一般的に使用されるマーカーの例としては、ATPレベルの測定、基質還元能力の測定、及び生細胞に特有の酵素/プロテアーゼ活性の検出が挙げられる。
【0136】
RealTime-Glo(商標)MT細胞生存率アッセイ(Promega;カタログ番号G9711)はリアルタイムで細胞生存率を測定する。このアッセイでは、操作ルシフェラーゼ及びプロ基質(ルシフェラーゼの基質ではない)を直接培養基に加える。プロ基質は、細胞膜を透過し細胞内に進入することができる。ただし、代謝が活発な生細胞のみが、プロ基質をルシフェラーゼの基質に還元することができる。次いで基質は細胞から出て、検出試薬中のルシフェラーゼにより、発光シグナルの生成に使用される。同じウェルを3日間繰り返し測定することができる。この方法の主な利点は、少ないプレート及び細胞を用いて、用量応答を定量するための動態モニタリングが簡便にできる点である。また、この方法は細胞溶解が不要であるため、同じ細胞をさらなる細胞ベースアッセイまたは下流用途に使用することができる。
【0137】
生細胞のみがATPを合成できることから、ATPは細胞生存率の測定に使用することができる。ATPは、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega;カタログ番号G7570)を洗浄剤、安定化ルシフェラーゼ、及びルシフェリン基質を含む試薬とともに使用して測定することができる。洗浄剤は生存細胞を溶解し、ATPを培地中に放出する。ATPの存在下で、ルシフェラーゼはルシフェリンを使用して発光を生成し、ルミノメーターを用いて10分以内にこれを検出することができる。CellTiter-Glo(登録商標)2.0アッセイ(Promega;カタログ番号G9241)は単一の溶液として提供され、容易に実施できるように試薬調製時間が低減され、室温保存の利便性がもたらされる。これらのATPアッセイは、基質を着色した生成物に変換するのに長いインキュベート時間を必要としない。また、優れた感度及び幅広い直線性を有するため、少数の細胞が使用される高処理用途への適合性が高い。また、他の方法に比べてアーチファクトも生じにくい。
【0138】
生細胞プロテアーゼ活性は細胞死の後に急速に消失するため、生細胞の有用なマーカーである。CellTiter-Fluor(商標)細胞生存率アッセイ(Promega;カタログ番号G6080)を用いて、生細胞プロテアーゼ活性を、細胞透過性蛍光プロテアーゼ基質(GF-AFC)を用いて測定することができる。基質は生細胞に入り、そこで生細胞プロテアーゼにより切断されて、生細胞の数に比例した蛍光シグナルを生成する。この方法におけるインキュベート時間は0.5~1時間で、これはテトラゾリウムアッセイ(1~4時間)より短い。この方法は細胞を溶解しないため、同じ試料ウェルで多くの他のアッセイ(生物発光レポーター細胞ベースアッセイを含む)と多重化することができる。
【0139】
生細胞の検出に使用されるテトラゾリウム化合物は、2つの基本的なカテゴリーに分類される。
【0140】
生細胞を容易に透過する正荷電化合物(MTT):
代謝が活発な生細胞は、MTTを紫色のホルマザン生成物に変換することができる。したがって、色形成は生細胞の有用なマーカーであり得る。CellTiter 96(登録商標)非放射性細胞増殖アッセイ(MTT)(Promega;カタログ番号G4000)はこの化学作用を使用する。ただし、この方法におけるインキュベート時間は長い(通常は4時間)。また、ホルマザン生成物は不溶性であるため、吸光度の表示値を記録する前に可溶化試薬を加えなければならない。
【0141】
細胞を透過しない負荷電化合物(MTS、XTT、WST-1):
CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(MTS)(Promega;カタログ番号G3582)を使用する場合、負荷電化合物は、中間電子カップリング試薬と結合しなければならない。それにより細胞に進入し、還元され、次いで細胞を出てテトラゾリウムを可溶性ホルマザン生成物に変換することができる。この方法におけるインキュベート時間は1~4時間である。得られたホルマザンは可溶性であるため可溶化試薬を加える必要がなく、便利なものとなる。
【0142】
レサズリンは、弱い内部蛍光を有する濃青色の細胞透過性指示色素である。CellTiter-Blue(登録商標)細胞生存率アッセイ(Promega;カタログ番号G8080)は、レサズリンを使用して細胞生存率を測定する。代謝が活発な生存細胞のみが、レサズリンをピンク色で蛍光性のレゾルフィンに還元することができる。1~4時間のインキュベート後、マイクロプレート分光光度計または蛍光光度計を用いてシグナルを定量化する。この方法は比較的安価であり、テトラゾリウムアッセイよりも感受性が高い。ただし、検査中の化合物からの蛍光がレゾルフィンの表示値に干渉することがある。
【0143】
全てのテトラゾリウムまたはレザズリン還元アッセイの難点は、それらが経時的な着色または蛍光生成物の蓄積に依存することである。シグナルは経時的に徐々に増加するため、この長いインキュベート中の細胞生存率の減少は検出することができない。
【0144】
細胞が死滅し膜の完全性を喪失すると、死細胞プロテアーゼが放出される。次いで発光性基質(CytoTox-Glo(商標)細胞毒性アッセイ;Promega;カタログ番号G9290)または蛍光発生基質(CytoTox-Fluor(商標)細胞毒性アッセイ;Promega;カタログ番号G9260)を使用して死細胞プロテアーゼ活性を測定することができる。この基質は細胞を透過しないため、この基質からのシグナルは、インタクトな生細胞からは本質的に生成されない。さらに、このアッセイは非溶解性であるため、他の適合性のアッセイ化学作用と多重化することができる。
【0145】
膜の完全性を失った死細胞は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を放出する。これは乳酸からピルビン酸への変換を触媒し、同時にNADHを産生する。放出されたLDH活性は、過剰な基質(乳酸及びNAD+)を提供してNADHを産生させることにより、測定することができる。このNADHは、種々のアッセイ化学作用を用いて測定することができる。
【0146】
1.LDH-Glo(商標)細胞毒性アッセイ:LDH-Glo(商標)細胞毒性アッセイ(カタログ番号J2380)において、レダクターゼは、NADH及びレダクターゼ基質(プロルシフェリン)を使用してルシフェリンを生成する。ルシフェリンは独自のルシフェラーゼを用いて測定し、光シグナルはルミノメーターにより測定されるLDHの量に比例する。
【0147】
2. CytoTox-ONE(商標)均質膜完全性アッセイ:CytoTox-ONE(商標)均質膜完全性アッセイ(Promega;カタログ番号G7890):レザズリンから蛍光性レゾルフィン生成物への変換(蛍光光度計を用いて測定)。
【0148】
3.CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ:CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega;カタログ番号G1780)は、テトラゾリウム塩(INT)から赤色ホルマザン生成物への変換を検出し、色吸光度により測定される。
【0149】
一部のDNA結合色素は生細胞から排除されるものの、透過性の死細胞のDNAに進入し染色することができる。トリパンブルーのような従来の染料は、血球計を用いて手作業で染色細胞をカウントする必要がある場合が多く、手間がかかり容易にスケーラブルではない。従来の色素の別の難点は、細胞に毒性の場合があり、エンドポイント測定にしか使用できないことである。
【0150】
CellTox(商標)緑色色素などの比較的新しい色素は、DNAに結合すると蛍光シグナルを生成し、これは蛍光光度計を用いて容易に測定される。この色素は培養基で希釈し、播種する際または試験化合物で処理する際に直接細胞に送達することができ、リアルタイムの動態測定が可能である。CellTox(商標)緑色細胞毒性アッセイ(Promega;カタログ番号G8741)は無毒で光安定性が高く、容易にスケーラブルである。
【0151】
本明細書で開示する全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用されている主題に関し、参照により本明細書に援用され、場合によってはそれが文書全体を包含することもある。
【0152】
明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「a」及び「an」という不定冠詞は、反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0153】
また、明確に反対のことが示されない限り、本明細書で特許請求される2つ以上のステップまたは行為を含む任意の方法において、当該方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも当該方法のステップまたは行為が記載されている順序に限定されるとは限らない。
【0154】
特許請求の範囲及び上記の明細書において、全ての移行句、例えば、「含む(comprising)」「含む(including)」「保有する(carrying)」「有する(having)」「含む(containing)」「伴う(involving)」「保持する(holding)」「~から構成される(composed of)」などは制限がないこと、すなわち後に続くものを含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる」「~から本質的になる」という移行句のみが、米国特許商標庁審査基準の2111.03節に記載のように、それぞれクローズドまたはセミクローズドな移行句であるものとする。
【0155】
数値の手前にある「約」及び「実質的に」という用語は、記載された数値の±10%を意味する。
【0156】
値の範囲が示される場合、範囲の上端から下端の間及び両端を含む各値は、本明細書において具体的に企図され記載されるものである。
【実施例
【0157】
実施例1:汎用T細胞アゴニストタンパク質mOKT3及びその低親和性バリアントの作製
以下のアミノ酸配列を融合することにより、汎用T細胞アゴニスト(本明細書では膜OKT3(mOKT3)またはpKSQ367と称される)を作製した。
マウスIgG重鎖由来シグナルペプチド:MERHWIFLLLLSVTAGVHS(配列番号1);
マウスモノクローナル抗CD3e抗体クローンOKT3に由来するscFv:QVQLQQSGAELARPGASVKMSCKASGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPAHFRGSGSGTSYSLTISGMEAEDAATYYCQQWSSNPFTFGSGTKLEIN(配列番号2);及び
ヒトCD8に由来する膜貫通ドメイン:SHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPRPVVKSGDKPSLSARYV(配列番号12)
【0158】
mOKT3タンパク質をコードするコドン最適化cDNAを、EF1Aプロモーターを含むレンチウイルスベクタープラスミド内でクローニングし、次にT2A自己切断ペプチド(EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号15))及びブラストサイジン耐性遺伝子(MAKPLSQEESTLIERATATINSIPISEDYSVASAALSSDGRIFTGVNVYHFTGGPCAELVVLGTAAAAAAGNLTCIVAIGNENRGILSPCGRCRQVLLDLHPGIKAIVKDSDGQPTAVGIRELLPSGYVWEG*(配列番号16))をクローニングした。EF1Aプロモーターによって発現したOKT3-CD8タンパク質を含む最終コンストラクトは、本明細書ではpKSQ367とも称される。
【0159】
mOKT3タンパク質の低親和性バリアントを、pKSQ367レンチウイルスコンストラクトの部位特異的変異誘発により構築した。Chen et al.doi.org/10.3389/fimmu.2017.00793に記載されているように、scFvのR55位及びY57位をそれぞれR55M及びY57Aに(別名mOKT3ma/pKSQ397)、またはそれぞれR55L及びY57Tに(別名mOKT3lt/pKSQ398)に変異させた。これらのscFvバリアントの公表されている親和性は、親OKT3クローン(公表されている親和性のKD:5×10-10M(Law et al、Reinhertz et al.))よりも250倍低い(OKT3ma)または1000倍低い(OKT3lt)。mOKT3の低親和性バリアントは、天然のT細胞受容体(TCR)とその認識抗原との親和性(公表されている親和性はμM KDの範囲)に対しより密接にモデル化されている。多くのT細胞は非常に強力なmOKT3の刺激に応答し、一方で低親和性TCR結合により、細胞ごとにTCRシグナル伝達閾値のわずかな違いを分離することができ、患者に注入する前に、T細胞治療製品間の品質をより高い感受性で判定することが可能となり得る。
【0160】
293T細胞にpCMV-VSV-G及びpsPax2レンチウイルスパッケージングプラスミドを同時形質移入することにより、レンチウイルスコンストラクトをパッケージングした。ウイルス上清をA375細胞に移し、形質導入から48時間後に培地をブラスチジンを含む培地に切り替えて、首尾よく形質導入したmOKT3コンストラクトを有する細胞を選択した。首尾よく形質導入した選択A375細胞をA375-pKSQ367と称する(A375-mOKT3とも称する)。
【0161】
実施例2:mOKT3-A375細胞の作製及び当該細胞がT細胞を活性化することの実証。
【0162】
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)、及び抗生物質が入った96ウェルプレートに、ウェル当たり50,000個または100,000個のA375-pKSQ367細胞をプレーティングした。汎T細胞を末梢血単核球(PBMC)から単離し、先にプレーティングしたA375-pKSQ367と共培養した。共培養を2:1のエフェクター:標的比(E:Tと略記する)で実施した。先にプレーティングしたA375-pKSQ367から培地を除去し、IL-2を含む造血無血清培地中の100,000個または200,000個のT細胞を、それぞれ50,000個または100,000個のA375-pKSQ367を含むウェルに加えた。上清をプレートから除去し、細胞を抗CD3及び抗CD69抗体で染色した。フローサイトメトリーを実施し、CD69発現を測定した。CD69活性化が全ての形質導入試料で観察された(図1)。
【0163】
mOKT3の表面発現を検証するため、A375-pKSQ367細胞を細胞染色バッファー中でヤギ血清とインキュベートし、その後に細胞を細胞染色バッファーで洗浄し、次いで1:100ヤギ-抗マウス抗体とインキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを実施して発現を評価した。OKT3発現が、形質導入細胞の99.2%で観察された(図2)。
【0164】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)によるmOKT3-A375細胞の殺滅
プレREP TILを作製するため、黒色腫腫瘍消化試料を解凍し、1.5e6細胞/mLでプレREP培地(熱不活性化ヒトAB血清、Pen/Step、HEPESバッファー、Glutamax、β-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、IL-2、及びDNase(D277及びD3291培養にのみ添加)を含む)にプレーティングした。その後、IL-2を細胞に加えた。細胞をカウントし、1e6細胞/mLで、IL-2(D277及びD3291)を含むプレREP培地、または1:1のプレREP TIL培地:造血無血清培養基及びIL-2(D5746)に再プレーティングした。IL-2の再プレーティング及びフィーディングを、2日後に成長が1.5倍以下に減速するまで繰り返した。D277、D3291、及びD5746を培養期間後に凍結した。
【0165】
共培養を開始する前日に、3例のドナーに由来するプレREP TILを解凍し、IL-2を含むREP培地中で一晩静置した。共培養を開始する前日に、6,000個のA375-pKSQ367を、IL-2及びカスパーゼ3/7色素を含むREP培地が入った96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、96ウェルプレートから培地を除去し、TILを、前日にプレーティングしたA375-pKSQ367に10:1、3:1、1:1、または0.3:1のE:Tで加えた。IncuCyteにより、プレートを2時間ごとに3日間イメージングした。試験した全てのE:Tにわたり、TILによるA375-pKSQ367細胞の認識及び殺滅が観察された(図3A~3C)。
【0166】
代替的OKT3膜アンカーの実施例:
この実験の目的は、様々なシグナルペプチド及び膜アンカーを使用して、mOTK3を細胞表面に発現できること、そしてA375細胞に加えて他の細胞タイプによってもmOKT3を発現できることを示すことであった。200万個のK562細胞に、様々なシグナルペプチド(例えば、マウスIgG、ヒトCSF2R、及びヒトCD5)と融合したOKT3 scFvと、膜アンカータンパク質(マウスCD8a、ヒトCD8a、ヒトCD28、及びヒトCD14を含む)とを含むpKSQ328、pKSQ377、pKSQ378、pKSQ368、及びpKSQ369コンストラクトをコードするレンチウイルスを形質導入した。形質導入から48時間後、形質導入したK562細胞を、プラスチジン耐性マーカー(存在する場合)について選択した。形質導入から8日後に、IL-2含有培地中で、ドナーPBMCから単離した100,000個の汎T細胞の存在下、K562安定細胞株を100,00細胞/ウェルでプレーティングした。プレーティングから24時間後、細胞を抗CD8抗体及び抗CD69抗体で染色した。フローサイトメトリーを実施し、CD8+T細胞におけるCD69(T細胞活性化のマーカー)の表面発現を、非刺激対照との比較で定量化した。mOKT3コンストラクトの構築に使用した複数のシグナルペプチドと膜アンカーとの組合せがT細胞の活性化を駆動することが観察された(図4)。
【0167】
実施例3:特性評価:mOKT3の発現、汎T細胞との共培養、及びCD69誘導
A375親細胞(NucLightRed(赤色蛍光核レポーター)を含む)にpKSQ367、pKSQ396、pKSQ397、またはpKSQ398を形質導入した。「低親和性」コンストラクトであるpKSQ396、pKSQ397、及びpKSQ398に、形質導入を確実にするために3つの異なるウイルスを形質導入した。
【0168】
形質導入及びコンストラクトの有効性を評価するため、いくつかのアッセイを実施した。
1.細胞表面でのmOKT3発現。
2.A375形質導入標的細胞との共培養後にCD69を発現した汎T細胞の活性化。
3.患者由来黒色腫TILとの共培養後におけるA375形質導入細胞の成長の低減(TILによる認識の指標)。
【0169】
A375細胞(A375親株及び形質導入株の両方)を1.5e6/mLで細胞培養基に再浮遊させ、0.75e5/50μL/ウェルで96ウェルV底プレートにプレーティングし、一晩インキュベートした。翌日、プレーティングした細胞を細胞染色バッファー中のヤギ血清でブロックし、暗所でインキュベートした。続いて、細胞を細胞染色バッファー中の(1:100)ヤギ抗マウスIgG2aポリクローナル、Alexa647で染色し、インキュベートした。洗浄後、細胞を細胞染色バッファーに再懸濁し、BD Fortessaで取得した(図5~7)。
【0170】
A375細胞(A375親株及び形質導入株の両方)を1.5e6/mLで細胞培養基に再浮遊させ、0.75e5/50μL/ウェルで96ウェルV底プレートにプレーティングし、一晩インキュベートした。翌日、PBMC(ドナー番号148192)を解凍し、製造業者のプロトコルに従って汎T細胞を単離した。単離した汎T細胞をカウントし、1.5e6/mLで再浮遊させた。0.75e5の単離した汎T細胞を、プレーティングしたA375標的細胞に加え(ウェル当たり50μL)、一晩インキュベートした。プレーティングした細胞を細胞染色バッファーにより洗浄し、抗CD69 Ab BV785を細胞染色バッファー中で染色し、インキュベートした。洗浄後、細胞を細胞染色バッファーに再懸濁し、BD Fortessaで取得した(図8~11)。
【0171】
実施例4:二次元A375-pKSQ367共培養モデル
A375細胞(A375親株及び形質導入株の両方)を1.2e5/mLで細胞培養基に再浮遊させ、6e3/50μL/ウェルで96ウェル平底プレートにプレーティングし、一晩インキュベートした。翌日、REP培地(AIMV、RPMI、ヒトAB血清)中の各TIL条件の6e3/50μL/ウェルを、プレーティングしたA375標的細胞の上に加えた。IL-2を含む1つのREP培地を各共培養ウェルに加えた。共培養プレートを室温でインキュベートし、その後IncuCyteに移動した。共培養プレートをIncuCyte内でさらなる期間の間インキュベートし、その後画像収集を開始した。画像を2時間ごとに合計72時間取得した(10x対物レンズで読取りフェーズ及び赤色)。IncuCyteの画像を、各ウェルで検出した赤色蛍光の総面積で定量化し、次いで0時間に戻して正規化して、経時的な標的細胞の拡大/低減の変化を特定した(図12~14)。
【0172】
図13及び14では、A375 pKSQ367及びA375 pKSQ398細胞を各々単層として培養している。未編集TIL及び遺伝子編集TILを培養物に加え、イメージングを通じてTIL細胞毒性を腫瘍細胞面積の変化により測定した。A375 pKSQ367を腫瘍標的として用いた場合、SOCS1遺伝子編集TILもCBLB遺伝子編集TILも、未編集TILより良好な腫瘍の制御は示さなかった(図13)。A375 pKSQ398を腫瘍標的として用いた場合、いずれのTILも、腫瘍成長を制御することができなかった(図14)。このように、腫瘍標的を単層として培養する設定では、未編集TILと編集TILとで有効性を区別することはできない。
【0173】
実施例5:三次元A375-pKSQ367スフェロイド共培養モデル
3D腫瘍スフェロイドは、標的細胞の単層よりも困難な標的及び複雑な微小環境を提供することができるため、A375-pKSQ367スフェロイドを共培養アッセイの標的細胞として使用することを検討した。これにより、編集及び未編集TIL間のわずかな効力の違いを確認できる可能性がある。
【0174】
単一クローンから作製した高親和性(pKSQ367)及び低親和性(pKSQ398)A375株をスフェロイドベース共培養に使用した。
【0175】
A375-pKSQ367の高親和性及び低親和性クローンを、DMEM(熱不活性化FBS及び抗生物質を補充)中で維持した。A375-pKSQ367高親和性単細胞クローン20を高親和性スフェロイド共培養アッセイに使用し、A375-pKSQ367低親和性単細胞クローン6を低親和性スフェロイド共培養アッセイに使用した。
【0176】
A375-pKSQ367スフェロイド共培養については、共通のプロトコルに従った。
●-4日目:A375-pKSQ367を、FBS及び抗生物質を補充したRPMI中で継代し、5,000~10,000生細胞/ウェルの密度でプレーティングした。プレートを37℃の5% COインキュベーター内のIncucyteイメージングシステムに移し、インキュベートしてスフェロイド形成を促進した。画像を数時間ごとに1回、フェーズ及び赤色チャネルにおいて4倍倍率で撮像した。
●-1日目:4例のドナー(ドナー1:D4267、NSCLC、ドナー2:D4397、NSCLC、ドナー3:D6164、黒色腫、ドナー4:D6481、黒色腫)由来の凍結保存TILを解凍、洗浄、計数し、3e^6生細胞/mLでTIL培地(RPMI1640、AIM V、ヒトAB血清を補充)に再浮遊させた。IL-2を加えた。細胞を適切なサイズのフラスコに入れ、37℃の5%COインキュベーター内で一晩静置した。
●0日目:TILをセルストレーナーで濾過して適切なサイズのコニカルチューブに入れ、遠心分離し、カウントした。A375-pKSQ367スフェロイドが入ったプレートをIncucyteから取り出した。TILをA375-pKSQ367スフェロイドに10:1~0.625:1のエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比で加えた。E:T比は、0日目の生TIL(エフェクター)カウント及びA375-pKSQ367(標的)の初期播種密度に基づいて算出した。一部のウェルにはTILを加えず、成長対照として用いた。プレートを37℃の5% COインキュベーター内のIncucyteイメージングシステムに移し、イメージングを4日目のように継続した。
●6日目:イメージングを中止し、Incucyteによって収集した画像の目視評価により、解析を行った。
【0177】
この場合において、解析は、画像を白黒に変換し、所与の時点でウェルに残存するスフェロイド(黒色)の面積を比較することにより行った。このデータは、スフェロイドの蛍光強度を評価することによっても解析した。蛍光レベルの低減をスフェロイド死滅の指標として使用した。このアッセイは、クロム放出またはカスパーゼ3発現によって読み取ることにより、標的細胞アポトーシスを評価するように設計することもできる。
【0178】
A375-pKSQ367スフェロイドの形態を、TILを加えなかったウェルで評価した。高及び低親和性スフェロイドの形態の違いが観察された。具体的には、同じプレーティング密度(10,000細胞/ウェル)において、高親和性株(図面では「A375-pKSQ367」と表示)は、低親和性株(図面では「A375-OKT3lt」と表示)よりもはるかに「大きい」/「緩い」スフェロイドを形成した。形態の違いは、スフェロイド共培養の期間中(A375-OKT3播種から4~10日後)に観察可能であった。同じ系統のクローン間にも形態の違いが存在する可能性があり、このような形態の違いが、T細胞間のわずかな違いを解明する別の機会をもたらす可能性がある(図15)。
【0179】
TILのA375-pKSQ367スフェロイドに対する細胞毒性を、同じ時点でE:T比を増加させた場合の効果を比較することにより評価した。TIL及びA375-pKSQ367スフェロイドを共培養したところ、高親和性スフェロイド(図面では「A375-OKT3」と表示)(ドナー1及び2)及び低親和性スフェロイド(図面では「A375-OKT3lt」と表示)(ドナー1、2、3、及び4)の両方に対し、EPなし及びSOCS1編集TILの両方による用量依存的殺滅が観察された(図16)。
【0180】
A375-pKSQ367の高親和性スフェロイド(図面では「A375-pKSQ367」と表示)及び低親和性スフェロイド(図面では「A375-pKSQ367A375-pKSQ398」と表示)に対するTILの細胞毒性動態の違いを、同じ時点で残存する高親和性及び低親和性スフェロイドのサイズを比較することにより評価した。高親和性スフェロイドは、ドナー1及び2による低親和性スフェロイドよりも迅速に死滅することが観察された(図17)。
【0181】
図17において、A375 pKSQ367(A375-OKT3)腫瘍細胞をTILを加える前に4日間、3D腫瘍スフェロイドとして成長させた場合、SOCS1編集TILは、未編集対照(EPなし)よりも高い腫瘍殺滅能力を示し、1.25:1の比ではSOCS1編集TILによる完全な腫瘍のクリアランスが示された。一方、未編集対照のウェルでは残存する腫瘍が認められた。SOCS1編集TILの有効性の増強は、A375 pKSQ398(A375-OKT3lt)細胞を3D腫瘍スフェロイドとして成長させた場合にも観察されたが、この違いはE:T比がより高い場合(5:1)に観察されている。
【0182】
SOCS1編集TILが、同じE:Tで高親和性A375-pKSQ367スフェロイドの殺滅を増加させたかどうかについて評価した。SOCS1編集TILによる高親和性A375-pKSQ367スフェロイドに対する細胞毒性の増加が、ドナー2の場合に観察された。これらの画像は共培養から5日後に取得したものであり、これは、A375-pKSQ367が異なる抗腫瘍力のTILを区別できることを示すものである(図18)。
【0183】
SOCS1編集TILが低親和性A375-pKSQ367スフェロイドの殺滅を増加させたかどうかについて評価した。ドナー2、3、4については、SOCS1編集TILからのA375-pKSQ367低親和性スフェロイドに対する効力の増加が観察された。これらの結果は、A375-pKSQ367低親和性スフェロイドが、異なる効力のTIL集団を区別する感度を増加させることを示すものである(図19)。
【0184】
SOCS1編集TILが低親和性A375-pKSQ367スフェロイドの殺滅を増加させたかどうかを、スフェロイド蛍光により評価した。A375-OKT3lt細胞を96ウェル超低接着プレートにプレーティングし、4日間培養してスフェロイドを形成させた。4日目に、SOCS1編集TILまたは対照(例えば、未編集)TILを解凍し、様々なエフェクター:標的(E:T)比でスフェロイド培養物に加えた。SOCS1編集TILまたは対照(例えば、未編集)TILによるスフェロイドの細胞毒性を、スフェロイド蛍光レベルの変化の関数としてInCucyteでモニターした。SOCS1編集TILは、E:T比の増加に伴って、低親和性A375-pKSQ367スフェロイドの殺滅が増加することを示した(図20)。
【0185】
実施例6:IFN-γ及び/またはIL-6サイトカイン放出に基づくTIL効力を評価するためのA375-pKSQ367モデルの使用
TIL効力は、細胞毒性及び/またはサイトカイン放出に基づいて上清から測定することもできる。低親和性A375-pKSQ367細胞三次元(3D)スフェロイドを共培養アッセイにおける標的細胞として用いて、細胞毒性及びエフェクターサイトカイン放出を評価した。単一クローンから作製した高(pKSQ367)株も、後述のように使用することができた。
【0186】
A375-pKSQ367の高親和性クローン及び低親和性クローンを、単細胞浮遊液及び3Dスフェロイド共培養アッセイ用にDMEM(熱不活性化FBS及び抗生物質を補充)中で維持した。
【0187】
A375-pKSQ367の3Dスフェロイド共培養についても、同様のプロトコルに従った。
●-4日目(3Dスフェロイド共培養のみ):A375-pKSQ367をRPMI(FBS及び抗生物質を補充)中で継代し、5,000~10,000生細胞/ウェルの密度でプレーティングした。プレートを37℃の5%COインキュベーター内のIncucyteイメージングシステムに移し、インキュベートしてスフェロイド形成を促進した。画像を数時間ごとに1回、フェーズ及び赤色チャネルにおいて4倍倍率で撮像する。
●-1日目:凍結保存したTILを解凍し、1回洗浄し、カウントし、3e6生細胞/mLでTIL培地(RPMI1640及びAIM Vの1:1混合、ヒトAB血清を補充)に再浮遊させた。IL-2を加える。細胞を適切なサイズのフラスコに入れ、37℃の5%COインキュベーター内で一晩静置した。単細胞浮遊液アッセイについては、A375-pKSQ367細胞を5,000~10,000個/ウェルの生細胞密度でプレーティングした。TILを加える前に、プレートを37℃の5%COインキュベーター内に一晩移した。
●0日目:TILをセルストレーナーで濾過して適切なサイズのコニカルチューブに入れ、遠心分離し、カウントした。A375-pKSQ367スフェロイド及び/またはA375-pKSQ367単細胞浮遊液が入ったプレートをインキュベーターから取り出す。TILを20:1~0.625:1のエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比で加えた。E:T比は、0日目の生TIL(エフェクター)カウント及びA375-pKSQ367(標的)の初期播種密度に基づいて算出した。一部のウェルにはTILを加えず、成長対照として用いた。プレートを37℃の5%COインキュベーターに、またはアッセイに適切な37℃の5%COインキュベーター内のIncucyteイメージングシステムに移し、イメージングを継続した。
●3Dスフェロイドアッセイ:TIL添加後1~2日目の間、イメージングを中止し、Incucyteによって収集された画像の目視評価によって解析を行った。TILのA375-pKSQ367スフェロイドに対する細胞毒性を、この時点におけるE:T比の増加の効果を、並行して採取した上清と比較することにより評価した。IFNγ及び/またはIL-6産生ならびに他のサイトカインの存在が、上清で直接検出された。TIL細胞毒性を評価する代替的なアプローチとして、標的細胞の溶解時に上清中に速やかに放出される乳酸デヒドロゲナーゼのレベルも、LDH-Glo(商標)細胞毒性アッセイ(Promega)を用いて上清中で測定した。
【0188】
効力が増加したTILは、単細胞浮遊またはスフェロイド共培養アッセイで、ELISA、MSD、またはLuminexアッセイによる評価において、より多量のIFNγ及びIL-6サイトカイン産生をもたらすこと、及び/または、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼの測定値の増加に反映されるように、より高い細胞毒性を示すことが予測された。
【0189】
低親和性A375-pKSQ367スフェロイドとの共培養で成長させたSOCS1編集TILのIFNγ及び/またはIL-6の効力が増加したかどうかを評価した。低親和性A375-pKSQ367スフェロイドと共培養したSOCS1編集TILのE:T比を増加させたところ、IFNγ(図21)及びIL-6(図22)の両方の分泌増加が示された。SOCS1編集TILは、全てのE:T比において、両方のサイトカインをより高いレベルで産生した。
【0190】
SOCS1編集TIL及び低親和性A375-pKSQ367の共培養物からの上清は、対照TILとの共培養物の場合よりも高いレベルの乳酸デヒドロゲナーゼも示しており、これは、細胞毒性の増強が、より大量のA375-KSQ367の細胞死及び乳酸デヒドロゲナーゼの放出をもたらすことと整合する(図23及び図24)。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
図1
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図3A
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図24
【配列表】
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【国際調査報告】