(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】歯合せセンサーを較正する較正装置を有する工作機械
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20240905BHJP
B23F 23/00 20060101ALI20240905BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240905BHJP
G05B 19/401 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B23F23/12
B23F23/00
B23Q17/20 A
G05B19/401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513076
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022073814
(87)【国際公開番号】W WO2023036630
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】CH070259/2021
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼンハウザー,エアヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】バッヒル,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー,ローレンツ
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C025HH01
3C025HH04
3C025HH08
3C029BB02
3C269AB06
3C269BB03
3C269JJ16
3C269JJ19
3C269MN16
(57)【要約】
プレ歯付きワークを加工する工作機械は、ワークキャリア20と、ワークスピンドルハウジング211及びワークスピンドル軸A周りに回転可能なワークスピンドルシャフト212を有するワークスピンドル21とを有する。さらに、本工作機械は、ワークスピンドル軸A周りに回転するワーク23の歯の位相位置を確定するように設計された歯合せセンサー1と、ワークスピンドル21に対して規定の較正場所CMに位置する較正ピース10と、センサーコントローラーとを有し、該センサーコントローラーは、以下の方法:歯合せセンサー1を、ワークスピンドル21に対して、歯合せセンサー1が較正ピース10に位置する較正位置に移動させることと、センサーコントローラー3が、歯合せセンサー1を較正ピース10に対して移動させ、同時に歯合せセンサー1からセンサー較正信号を受信することによって、歯合せセンサー1の応答挙動を確定することと、歯合せセンサー1を、歯合せセンサー1がワークに位置するワーク測定位置PWに移動させることであって、ワーク測定位置は、確定された応答挙動に依存することとを実施するように設計されている。
【選択図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレ歯付きワークを加工する工作機械であって、
ワークキャリア(20)と、
前記ワークキャリア(20)上に配置され、ワークスピンドル軸(A)を規定するワークスピンドル(21)であって、前記ワークスピンドル(21)は、ワークスピンドルハウジング(211)と、加工されるプレ歯付きワーク(23)を回転駆動するための、前記ワークスピンドル軸(A)周りに前記ワークスピンドルハウジング(211)内で回転可能なワークスピンドルシャフト(212)とを有する、ワークスピンドル(21)と、
前記ワーク(23)が前記ワークスピンドル軸(A)周りに回転するときに、前記ワーク(23)の歯の位相位置を検出するように構成された、歯合せセンサー(1)と、
を備え、
前記工作機械(2)は、
前記ワークスピンドル(21)に対して規定された較正点(C
M)に位置する較正ピース(10)と、
センサーコントローラー(3)であって、以下の方法:
前記歯合せセンサー(1)を、前記ワークスピンドル(21)に対して、前記歯合せセンサー(1)が前記較正ピース(10)に位置する較正位置(P
C)に移動させることと、
前記センサーコントローラー(3)が、前記歯合せセンサー(1)のセンサー較正信号を受信する間、前記歯合せセンサー(1)を前記較正ピース(10)に対して移動させることによって、前記歯合せセンサー(1)の応答挙動を確定することと、
前記歯合せセンサー(1)を、前記歯合せセンサー(1)が前記ワーク(23)に位置するワーク測定位置(P
W)に移動させることであって、前記ワーク測定位置(P
W)は、前記確定された応答挙動に依存することと、
を実行するように構成された、センサーコントローラー(3)と、
を更に備えることを特徴とする、前記工作機械。
【請求項2】
前記歯合せセンサー(1)を前記較正ピース(10)に対して移動させることは、前記ワークスピンドル(21)に対する軸方向及び/又は径方向及び/又は接線方向の移動を含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記較正ピース(10)は、前記ワークキャリア(20)に配設されている、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記較正ピース(10)は、前記ワークスピンドル(21)の静止部分に、特に前記ワークスピンドルハウジング(211)に配設されている、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記較正ピース(10)は、前記ワークスピンドル(21)の回転可能な部分に配置されている、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工具スピンドル(21)は、前記ワークスピンドルシャフト(212)上にワーク(23)をクランプするクランプ手段(22)を有し、前記較正ピース(10)は、前記クランプ手段(22)に配設されている、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項7】
前記較正ピース(10)は、前記クランプ手段(22)に着脱可能に固定することができるように構成されている、請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記較正ピース(10)は、自動ワーク装填装置によって前記クランプ手段(22)に取り付け可能かつ前記クランプ手段(22)から取り外し可能となるように構成されている、請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記較正ピース(10)は、実質的に直方体の基体を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記較正ピースの前記基体は、好ましくは長方形又は台形の断面を有する第1の溝(11)を有する、請求項9に記載の工作機械。
【請求項11】
前記較正ピース(10)は、前記較正ピース(10)の前記基体における前記第1の溝(11)が前記ワークスピンドル軸(A)に垂直に延びるように、前記工作機械内に配設される、請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記較正ピースの前記基体は、好ましくは長方形又は台形の断面を有する第2の溝(12)を有し、前記第2の溝(12)は、前記第1の溝(11)に対して角度をなして、好ましくは垂直に延び、前記第1の溝(11)へと開いている、請求項10又は11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記較正ピース(10)は、前記ワークスピンドル(21)の一部の表面から径方向に延設された直方体の突出部(14)を有し、
前記直方体の突出部(14)は、2つの配向エリア(15)によって挟まれており、隣接する前記配向エリア(15)は、接線方向に関して前記突出部(14)の両側に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項14】
前記較正ピース(10)は、円筒形の基体を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項15】
前記較正ピース(10)は、球状の基体又はドーム形状の基体を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項16】
前記較正ピース(10)はディスク形状であり、少なくとも1つの歯構造、特に較正歯(13)を有する外側プロファイルを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項17】
前記較正ピース(10)は、加工されるワークである、請求項16に記載の工作機械。
【請求項18】
前記工作機械(2)は、触覚センサー(30)を備え、
前記触覚センサー(30)は、前記較正ピース(10)を測定して、規定の較正点(C
M)を得るように適合されている、
請求項1~17のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項19】
前記工作機械は、工具キャリア(24)を有し、前記工具キャリア(24)上に、加工工具(27)を回転駆動する工具スピンドル(241)が配設され、前記歯合せセンサー(1)は、前記工具キャリア(24)に配設されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項20】
前記センサーコントローラー(3)は、前記ワークスピンドル(21)に対する前記工具キャリア(24)の移動によって、前記ワークスピンドル(21)に対する前記歯合せセンサー(1)の前記移動を引き起こすように構成されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項21】
前記工作機械(2)は、前記歯合せセンサー(1)を位置決めするセンサー位置決め装置(25)を備え、前記センサー位置決め装置は、前記工具キャリア(24)に配設され、前記ワークスピンドル(21)に対して前記工具キャリア(24)と共に移動可能であり、前記センサー位置決め装置(25)は、前記歯合せセンサー(1)を前記工具キャリア(24)に対して移動させるように構成され、前記センサーコントローラー(3)は、前記ワークスピンドル(21)に対する前記工具キャリア(24)の移動によって、及び/又は、前記工具キャリア(24)に対する前記センサー位置決め装置(25)の移動によって、前記ワークスピンドル(21)に対する前記歯合せセンサー(1)の前記移動を行うように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項22】
前記センサー位置決め装置(25)は、前記工具キャリア(24)に対して移動可能な、特に直線的に変位可能な、センサー位置決めアーム(251)を備える、請求項21に記載の工作機械。
【請求項23】
前記センサー位置決め装置(25)は、センサーキャリア(27)を受容するセンサー保持部(26)を備え、
前記センサーキャリア(27)は、止め要素(271)を備え、
前記歯合せセンサー(1)は、歯合せセンサー面(O)を有し、前記歯合せセンサー(1)は、前記歯合せセンサー面(O)が前記止め要素(271)から規定の距離(e)にあるように、前記センサーキャリア(27)に取り付けられる、
請求項21又は22に記載の工作機械。
【請求項24】
前記歯合せセンサー(1)は、誘導式歯合せセンサーであり、
前記較正ピース(10)は、導電性材料、特に鋼若しくは鋳鋼又はアルミニウムからなり、及び/又は導電性表面を有する、
請求項1~23のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項25】
前記歯合せセンサー(1)は、容量式歯合せセンサーであり、
前記較正ピース(10)は、誘電体材料からなり、及び/又は誘電体材料製の表面を有する、
請求項1~23のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項26】
前記歯合せセンサー(1)は、スイッチング信号を出力するように構成され、
前記歯合せセンサー(1)は、センサー固有のスイッチング領域(B)を有し、
前記センサー固有のスイッチング領域(B)は、仮想センサー軸(A
S)を規定する、
請求項1~25のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項27】
前記ワークキャリア(2)の座標系(K
M)における前記較正ピース(10)の前記較正点(C
M)は既知であり、
前記センサーコントローラー(3)は、前記較正ピース(10)上の前記歯合せセンサー(1)の前記応答挙動を確定することによって、前記仮想センサー軸(A
S)を確定するように構成され、
前記センサーコントローラー(3)は、前記較正ピース(10)の前記既知の較正点(C
M)、予め規定された測定軸(A
M)及び前記確定された仮想センサー軸(A
S)から、前記ワーク測定位置(P
W)を算出するように更に構成されたものであって、前記歯合せセンサー(1)が前記算出されたワーク測定位置(P
W)にあるときは、前記確定された仮想センサー軸(A
S)が前記予め規定された測定軸(A
M)と一致するように構成された、
請求項26に記載の工作機械。
【請求項28】
前記歯合せセンサー(1)の前記応答挙動を確定する前記センサーコントローラー(3)は、前記歯合せセンサー(1)を前記較正ピース(10)の端面(F)に向かって法線方向に移動させることによって、前記ワークキャリア(2)の座標系(K
M)における前記スイッチング領域(B)のピークスイッチング点(S)を確定するように構成されている、請求項26又は27に記載の工作機械。
【請求項29】
前記較正ピース(10)の前記較正点(C
M)及び前記予め規定された測定軸(A
M)は、前記センサーコントローラー(3)のメモリ(31)に記憶され、前記方法は自動的に実行される、請求項27又は28に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレ歯付きワークを加工する工作機械であって、工作機械の歯合せセンサーを較正するように構成された較正装置を有する、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
プレ歯付きワークを精密加工する場合、各加工動作の開始前に、工具がワークの歯溝に衝突することなく入ることができるように、工具と加工されるワークとが互いに位置合わせする必要がある。この手順は、本分野において「歯合せ」として知られている。
【0003】
かかる歯合せは、特に連続的に動作する転動加工工程に必要とされる。かかる加工工程においては、加工されるワークがウォーム形状の工具に係合させられ、工具と転動結合しながら加工される。現代の数値制御された(NC制御された)歯切盤においては、ワークは、この目的のためにNC制御された転回駆動ワークスピンドルにクランプされる。工具は、同様にNC制御された回転駆動工具スピンドルにクランプされる。このとき、工具スピンドルとワークスピンドルとの間の転動結合は、NC制御によって電子的に確立される。転動加工以外の工程、例えば成形研削については、加工されるワークの歯溝の位置の正確な情報も必要とされる。
【0004】
通常、歯合せのためには非接触式の歯合せセンサーが使用され、かかるセンサーは誘導式又は容量式で動作し、ワークが回転している間に歯面の位置を確定する。転動結合の角度は、かかる非接触測定に基づいて電子的に確定される。
【0005】
かかる非接触歯合せ方法は、例えば特許文献1から知られている。この方法においては、加工されるワークが回転するようにセットされ、ワークの歯が固設された歯合せセンサーを通過するときに生成される信号によって位相位置が確定される。この位相位置は、既知の向きの歯車を用いた基準測定において確定された位相位置と比較される。ワークと工具との間の転動結合の角度は、これらの位相位置間の差に応じて設定される。
【0006】
また、ワークの回転の間の全ての歯の信号の位相位置に基づいて、他のチェックを実行することもできる。例えば、加工前誤差及び同心度偏差についてのチェックを行うことができ、歯溝の幅を用いて既存の取り代を推定することができる。
【0007】
歯合せセンサーによって確定される位相位置は、一般的に、ワークに対する歯合せセンサーの位置に依存する。例えば、歯車に対する歯合せセンサーの位置が、基準測定と加工されるワークに対する測定との間で、歯車の回転軸に対して接線方向に変化した場合、確定される位相位置は、もはや歯の実際の位置に対応しなくなる。このことは、後続する加工の間、右側の歯面から必要よりも多い材料が除去され、左側の歯面から必要よりも少ない材料しか除去されなくなること、又はその逆に帰着する。極端な場合、歯面の一部からは材料が全く除去されない。はすば歯車の場合、確定される位相位置は歯車の回転軸に沿った歯合せセンサーの軸方向位置にも依存する。回転の軸に対する歯合せセンサーの径方向位置に関する逸脱は、歯溝の幅又は既存の取り代が過大に推定されるか又は過小に推定されることにつながり得る。
【0008】
それゆえ、歯合せセンサーが適切に機能するためには、ワークスピンドルに対する歯合せセンサーの空間的位置が、測定毎に常に同じであることが重要である。しかしながら、これを確実にすることは常に容易であるわけではない。例えば、歯合せセンサーの位置は、歯切盤の動作の間、熱膨張によって変化し得る。このことは、機械の設計により、歯合せが機械上のワークスピンドルのすぐ近傍に装着されていない場合に、特に当てはまる。歯合せセンサーの再現可能な位置決めは、歯合せセンサーがワークスピンドルに対して移動可能である場合に、特に困難になる。例えば、歯合せセンサーは、機械の工具キャリア上に配置され得、ワークスピンドルに対して工具と共に移動可能であり得る。それゆえ、ワークスピンドルに対して歯合せセンサーを再現性高く位置決めすることを可能とするためには、ワークスピンドルに対する歯合せセンサーの正確な空間的位置を確定できることが望ましい。
【0009】
これに加えて、歯合せセンサーは、例えば欠陥のある歯合せセンサーを交換するためなど、交換する必要があることがよくある。しかしながら、歯合せセンサーは、常に全く同じ応答挙動を有するわけではない。例えば、歯合せセンサーがスイッチング領域を有する歯合せセンサーであり、スイッチング領域内の材料の存在が歯合せセンサーから出力される出力信号の変化によって示される場合、歯合せセンサー面に対するスイッチング領域の正確な形状及び場所は、歯合せセンサー毎に異なることとなり得る。それゆえ、歯合せセンサーを較正するために、歯合せセンサーの応答挙動を確定することが可能であること、及びそれに応じて、ワークスピンドルに対して歯合せセンサーを位置決めする際に、応答挙動を考慮に入れることが可能であることが望ましい。
【0010】
特許文献2においては、歯面又は成形面における有効な取り代を確定するために、触覚センサー又は非接触測定素子が使用される。これに加えて、触覚センサー又は非接触測定素子と歯合せセンサーを組み合わせて、更に最適化された工程シーケンスを実現するために、スイッチング信号を出力する誘導式歯合せセンサーの使用が提案されている。触覚センサー又は非接触測定素子の位置決めは、好ましくは研削盤の直線軸を介して実行される。この文献は、既知の幾何学的形状の基準体(例えば既知の直径の球)による触覚センサーの較正の後、直線軸によって触覚センサーを必要な位置に具体的に移動させることができることを開示している。触覚センサー又は非接触測定素子の測定値は、機械コントローラーによって記録され、歯切り又は成形加工に関して、研削工具に対するワークの最適な中心位置を見出すために、それ自体既知の態様で処理される。しかしながら、誘導式のスイッチング歯合せセンサーの較正は、この文献においては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許第3615365号
【特許文献2】独国特許出願公開第102019104812号
【発明の概要】
【0012】
それゆえ、本発明の目的は、工作機械において使用される歯合せセンサーの空間的位置を較正するのに適した較正装置を有する、プレ歯付きワークを加工する工作機械を提供することにある。
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する工作機械によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項において与えられる。
【0014】
したがって、プレ歯付きワークを加工する工作機械が提供される。この工作機械は、
ワークキャリアと、
ワークキャリア上に配置され、ワークスピンドル軸を規定するワークスピンドルであって、ワークスピンドルは、ワークスピンドルハウジングと、加工されるプレ歯付きワークを回転駆動するための、ワークスピンドル軸周りにワークスピンドルハウジング内で回転可能なワークスピンドルシャフトとを有する、ワークスピンドルと、
ワークがワークスピンドル軸周りに回転するときに、ワークの歯の位相位置を検出するように構成された、歯合せセンサーと、
を備える。
工作機械は、
ワークスピンドルに対して規定された較正点に位置する較正ピースと、センサーコントローラーであって、以下の方法:
歯合せセンサーを、ワークスピンドルに対して、歯合せセンサーが較正ピースに位置する較正位置に移動させることと、
センサーコントローラーにより、歯合せセンサーからセンサー較正信号を受信する間、歯合せセンサーを較正ピースに対して移動させることによって、歯合せセンサーの応答挙動を確定することと、
歯合せセンサーを、歯合せセンサーがワークに位置するワーク測定位置に移動させることであって、ワーク測定位置は、確定された応答挙動に依存することと、
を実行するように構成された、センサーコントローラーと、
を更に備える。
【0015】
歯合せセンサーを較正ピースに対して移動させることは、ワークスピンドルに対する軸方向及び/又は径方向及び/又は接線方向の移動を含むことができる。
【0016】
工作機械内での配置に依存して、較正ピースは種々の形状及び構造を有し得る。本発明の較正ピースの全ての実施形態は、センサーの応答挙動の確定を可能にする点で共通している。歯合せセンサーが、較正方法の間に、較正ピースに沿って、例えばワークスピンドルに対して接線方向、軸方向又は径方向に移動させられる場合、較正ピースは好ましくは、歯合せセンサーの出力信号の変化として検出することが可能な、例えば縁部又は段部等の、当該方向に沿った少なくとも1つの構造を有する。
【0017】
最適な較正のために、センサーは、較正方法の間に、歯合せセンサーが移動し得る、較正ピースに沿った全ての方向に移動させられる。
【0018】
工作機械に較正ピースを配設するいくつかの可能性が想到可能である。好ましくは、加工工具が工作機械内に既にクランプされている場合であっても、歯合せセンサーが衝突することなく較正位置からワーク測定位置に(及びその逆に)移動させることができるように、較正ピースが工作機械内に配設される。
【0019】
較正ピースは、例えば、ワークキャリアに配設されてもよい。ワークキャリアは、ワークスピンドルが位置する可動スライドであってもよい。較正ピースはこのとき、ワークキャリアと共に移動させることができ、ワークキャリアに対して常に規定された位置にある。好ましくは、較正ピースは、加工工具及び/又はワークをクランプするために任意選択で使用される把持アームの妨げにならないように配設される。
【0020】
特に、較正ピースは、ワークスピンドルの静止部分に、特にワークスピンドルハウジングに、配設されてもよい。
【0021】
しかしながら、その代わりに、較正ピースは、ワークスピンドルの回転可能な部分に配設されてもよい。
【0022】
較正ピースをワークスピンドルの静止部分又は回転可能な部分に配設することによって、加工されるワークの近くに較正ピースが位置することとなり、較正の不正確さを低減するという利点がある。
【0023】
工具スピンドルは、ワークスピンドルシャフト上にワークをクランプするクランプ手段を有してもよい。かかる場合においては、較正ピースは、クランプ手段に配設されてもよい。較正ピースは、クランプ手段に着脱可能に固定することができるように設計されてもよい。
【0024】
較正ピースは、自動ワーク装填装置によって、クランプ装置に取り付けることができるように、及びクランプ装置から取り外すことができるように、更に構成されてもよい。
【0025】
クランプ手段に固定されるのに特に適しているものは、好ましくは、例えば較正歯又は較正歯溝等の少なくとも1つの歯構造を有する外側プロファイルを有する、ディスク形状の較正ピースである。例えば、較正ピースは、ワークスピンドルへとクランプすることができる基準ワークであってもよい。較正ピースはまた、加工されるワークであってもよいし、又は加工されたばかりのワークであってもよい。
【0026】
較正ピースがワークスピンドルにクランプされる配置は、ワーク測定位置と較正位置との間の距離を最小化し、このことは、歯合せセンサーが較正のために短い距離しか移動させられる必要がないことを意味し、精密な位置決め機構の使用を可能にする。一方、ワークが加工される前に較正ピースがクランプ手段に挿入され、歯合せセンサーの較正の後に再び取り外す必要があり、永続的に設置されている(例えば工具キャリアに又は工具スピンドルの固設部分に)較正ピースを用いた較正よりも時間がかかる。これに加えて、歯合せセンサーを較正することができるようになる前に、ワークスピンドル軸周りの較正ピースの角度位置を最初に確定することが必須となり得る。較正ピースが加工されるワークである場合、別個の較正ピースを挿入し取り外すために必要とされる追加的な時間はなくなるが、かかる場合であっても、少なくともワークの角度位置は、通常は最初に、追加的な測定を使用して確定されなければならない。
【0027】
較正ピースの位置を確定するために、及び/又は較正ピースの位置を測定するために、本工作機械は触覚センサーを有してもよい。当該触覚センサーは、特に、ディスク形状の較正ピース、例えばワークの少なくとも1つの歯構造の位置を確定するように構成されてもよい。
【0028】
較正ピースは、例えば、実質的に直方体の基体を有してもよい。
【0029】
較正ピースの基体は、好ましくは長方形又は台形の断面を有する、第1の溝を有してもよい。このことは、較正ピースが異なる空間的方向に延在する異なる縁部を有することを意味し、応答挙動を確定する目的のための歯合せセンサーによる較正ピースの非接触の走査に適している。
【0030】
好ましくは、較正ピースは、較正ピースの基体における第1の溝がワークスピンドル軸に垂直に延びるように、工作機械内に配設される。
【0031】
較正ピースの基体はまた、好ましくは長方形又は台形の断面を有する、第2の溝を有してもよく、該第2の溝は、第1の溝に対して角度をなして、特に垂直に延び、第1の溝へと開いている。この第2の溝は、ワークの歯溝の形状を形づくる窪みを形成し、それゆえ歯合せセンサーを較正するのに特に適した形状である。
【0032】
較正ピースが以上に説明されたような第2の溝を有し、その溝によって歯溝様の窪みが形成される場合、較正ピースの基体における第2の溝がワークスピンドル軸と平行に延びるように、工作機械内に較正ピースを配設すると、それにより、較正ピースの歯溝様の窪みは、工作機械の座標系において、直歯付きワークの歯溝と同様の向きを有するため、有利である。
【0033】
較正ピースは、ワークスピンドルの一部の表面から径方向に延在する直方体の突出部を有してもよく、直方体の突出部は、2つの配向エリアによって挟まれており、隣接する配向エリアは、接線方向に関して突出部の両側に配置される。歯合せセンサーの応答は、好ましくは、かかる較正ピースにおける直方体の突出部に基づいて確定される。配向エリアは、較正ピースの規定された配向を得るため、工作機械内の基準エリアに対してワークスピンドルを位置合わせするのに役立ち得る。
【0034】
代替としては、較正ピースは、円筒形の基体を有してもよく、円筒形の基体は、好ましくはワークスピンドル軸に垂直に延びる円筒軸を有する。かかる円筒形の基体を有する較正ピースは、はすば歯付きワークが工作機械内で加工される場合に特に有利であるが、なぜなら、かかる場合においては、歯合せセンサーを、応答挙動を確定するために、はすば歯付きワークの歯面に垂直な方向に、較正ピースに対して移動させられ得るからである。
【0035】
更なる代替としては、較正ピースはまた、球状の基体又はドーム形状の基体を有してもよい。球状又はドーム形状の基体は、加工されるワークの圧力角及びねじれ角を形づくるのに特に適しているものであり得る。
【0036】
工作機械は、加工工具を回転駆動する工具スピンドルが配設され、工具キャリアに歯合せセンサーが配設された工具キャリアを有してもよい。
【0037】
センサーコントローラーは、機械制御部と一体化されたものであってもよい。該センサーコントローラーは、ワークスピンドルに対する工具キャリアの移動によって、ワークスピンドルに対する歯合せセンサーの移動を引き起こすように構成されてもよい。
【0038】
工作機械は、歯合せセンサーを位置決めするセンサー位置決め装置を更に備えることができ、センサー位置決め装置は、工具キャリアに配設され、ワークスピンドルに対して工具キャリアと共に移動可能であり、センサー位置決め装置は、歯合せセンサーを工具キャリアに対して移動させるように構成され、センサーコントローラーは、ワークスピンドルに対する工具キャリアの移動によって、及び/又は、工具キャリアに対するセンサー位置決め装置の移動によって、ワークスピンドルに対する歯合せセンサーの移動を行うように構成する。
【0039】
また、センサー位置決め装置は、工具キャリアに対して移動可能な、特に直線的に変位可能な、センサー位置決めアームを有することができる。
【0040】
加えて、センサー位置決め装置は、センサーキャリアを受容するセンサー保持部を備えることができ、センサーキャリアは、止め要素を備え、歯合せセンサーは、歯合せセンサー面を有し、歯合せセンサーは、歯合せセンサー面が止め要素から規定の距離にあるように、センサーキャリアに取り付けられる。
【0041】
かかるセンサーキャリアは、種々のサイズの歯合せセンサーに対して、センサー保持部への均一なインターフェースを形成する。歯合せセンサーを交換する必要がある場合、該歯合せセンサーはセンサーキャリアとともにセンサー保持部から取り外すことができる。次いで、新たな歯合せセンサーが、歯合せセンサー面も止め要素から同じ規定の距離にあることとなるようにセンサーキャリアに設置され、これは、センサーキャリアがセンサー保持部に再設置される前に、適切な測定装置によってチェックすることができる。
【0042】
歯合せセンサーは好ましくは、非接触の誘導式センサー又は容量式センサーである。しかしながら、光学的な測定原理に基づく歯合せセンサーも想到可能である。誘導式センサーが使用される場合、較正ピースは好ましくは導電性材料、特に鋼又はアルミニウムからなり、及び/又は導電性表面を有する。一方、容量式センサーが使用される場合、較正ピースは好ましくは誘電体材料からなり、及び/又は誘電体材料製の表面を有する。
【0043】
歯合せセンサーは、スイッチング信号を出力するように構成されてもよく、このとき、歯合せセンサーは、センサー固有のスイッチング領域を有し、センサー固有のスイッチング領域は、仮想センサー軸を規定する。材料がスイッチング領域に入ると、スイッチング信号が変化する。スイッチング信号は、アナログでもあってもよいし、又はデジタルであってもよい。特に、スイッチング信号は、材料がスイッチング領域内に存在するか否かを示す二値スイッチング信号であってもよく、存在する場合、二値スイッチング信号は好ましくは論理値1である第1の値をとり、存在しない場合、二値スイッチング信号は好ましくは論理値0である第2の値をとることができる。
【0044】
較正ピースの較正点は、好ましくは、ワークキャリアの座標系において既知である。センサーコントローラーは好ましくは、較正ピースの歯合せセンサーの応答挙動を確定することによって、仮想センサー軸の位置を確定するように構成されている。
【0045】
第1のステップにおいて、歯合せセンサーのスイッチング領域のピークスイッチング点が、歯合せセンサーを較正ピースの端面に向かって法線方向に移動させることによって確定されてもよく、端面は、好ましくは、ワークスピンドル軸に平行に配設される。ワークキャリアの座標系における歯合せセンサーの理論的位置が、例えば、機械における幾何学的測定によって確定されており、センサーコントローラーに記憶されているために、既知である場合、歯合せセンサーの既知の理論的位置が、歯合せセンサーが予め規定された較正位置に直接に移動させられることを可能にするため、ピークスイッチング点の確定を省略することもできる。しかしながら、例えば機械が理論的位置の確定のときとは異なる温度状態にある場合、歯合せセンサーは理論的位置から逸脱した瞬間位置にあり得る。同様に、歯合せセンサーの設置誤差がある場合、歯合せセンサーの瞬間位置は理論的位置から逸脱し得る。かかる設置誤差は、ワークキャリアの座標系においてピークスイッチング点を確定することによって検出することができる。
【0046】
ピークスイッチング点が(明示的な確定によって、又はセンサーコントローラーに蓄積したものから)既知である場合、歯合せセンサーの歯合せセンサー面が較正ピースの端面から第1の測定距離を径方向に離隔されるように、歯合せセンサーが位置決めされてもよい。好ましくは、この第1の測定距離は、歯合せセンサーがワーク測定位置にあるときに、歯合せセンサー面とワークの歯先円との間にも生じる予め規定された測定距離に対応する。ここで、歯合せセンサーは、接触なしで較正ピースを走査するために、較正ピースに対して軸方向及び/又は接線方向に移動させられてもよい。一方、歯合せセンサーは好ましくは、センサー較正信号を出力し、該信号から、スイッチング領域を画定するスイッチングインターフェース上に位置する歯面スイッチング点を確定することができる。これらの歯面スイッチング点から、仮想センサー軸が通るように置かれ得る中心点を確定することができ、仮想センサー軸は、好ましくは、ワークスピンドル軸に垂直に配置され、中心点を通って較正ピースの面に垂直である。
【0047】
代替としては、歯面スイッチング点が更なる測定距離で確定されてもよく、それによって、更なる仮想センサー軸が通るように置かれ得る更なる中心点が確定されてもよい。また、3つ以上の測定距離で歯面スイッチング点が確定され、それによってスイッチングインターフェース全体が仮想的に再構築され得るようにすることも想到可能である。
【0048】
センサーコントローラーは、好ましくは、較正ピースの既知の較正点、予め規定された測定軸及び確定された仮想センサー軸から、ワーク測定位置を算出するように更に構成され、これは、歯合せセンサーが算出されたワーク測定位置にあるときは、確定された仮想センサー軸が予め規定された測定軸と一致するように構成され、ここで好ましくは、確定された中心点のうちの1つが、測定軸とワークの歯先円との交点上にあるように構成される。
【0049】
確定された仮想センサー軸が測定軸上にあるようになるという事実は、ワーク上で後に測定される位相位置が、理想的には加工されるワークの特性のみに依存し、測定軸に対する歯合せセンサーの仮想センサー軸の望ましくないオフセットによって変動を受けないことを確実にする。
【0050】
較正ピースの較正点及び予め規定された測定軸は、センサーコントローラーのメモリに記憶されてもよく、このことは本方法が自動的に実行されることを可能にする。
【0051】
ワークキャリアの座標系は、X方向、Y方向及びZ方向を有する直交座標系であってもよい。代替としては、ワークキャリアの座標系は、球座標系若しくは円筒座標系であってもよいし、又は空間中の点の位置が一義的に表されることを可能とする他の座標系であってもよい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照しながら以下に説明されるが、図面は本発明の現在の好ましい実施形態を説明する目的のためのものであって、本発明を限定する目的のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1a】
図1aは、本発明によるプレ歯付きワークを加工するための工作機械の一実施形態を示す斜視図である。
【
図1b】
図1bは、本発明によるプレ歯付きワークを加工するための工作機械の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2a】
図2a~
図2dは、本発明による較正ピースの5つの異なる実施形態を示す斜視図である。
【
図2b】
図2a~
図2dは、本発明による較正ピースの5つの異なる実施形態を示す斜視図である。
【
図2c】
図2a~
図2dは、本発明による較正ピースの5つの異なる実施形態を示す斜視図である。
【
図2d】
図2a~
図2dは、本発明による較正ピースの5つの異なる実施形態を示す斜視図である。
【
図2e】
図2eは、較正ピースの第6の実施形態を有する本発明による工作機械を示す斜視図である。
【
図2f】
図2fは、
図2eの較正ピースの第6の実施形態を示す拡大斜視図である。
【
図2g】
図2gは、較正ピースの第7の実施形態を有する本発明による工作機械を示す側面図である。
【
図2h】
図2hは、
図2gの較正ピースの第7の実施形態を示す拡大側面図である。
【
図3a】
図3aは、本発明による工作機械における較正ピースの好ましい配置を示す図である。
【
図3b】
図3bは、本発明による工作機械における較正ピースの好ましい配置を示す図である。
【
図3c】
図3cは、歯合せセンサーを保持するためのセンサー保持部を示す図である。
【
図4a】
図4a~
図4dは、本発明による歯合せセンサーを較正する方法を概略的な(定縮尺ではない)態様で示す図である。
【
図4b】
図4a~
図4dは、本発明による歯合せセンサーを較正する方法を概略的な(定縮尺ではない)態様で示す図である。
【
図4c】
図4a~
図4dは、本発明による歯合せセンサーを較正する方法を概略的な(定縮尺ではない)態様で示す図である。
【
図4d】
図4a~
図4dは、本発明による歯合せセンサーを較正する方法を概略的な(定縮尺ではない)態様で示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施形態による方法を説明するフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1a及び
図1bは、プレ歯付きワークを加工するための工作機械2の一実施形態の斜視図を示し、
図1bは、
図1aにおいて枠で囲まれた部分Eの拡大図を示す。特に、ここに示される実施形態は、溝形状のプロファイルを有する回転部品の転動加工のための工作機械である。かかる工作機械は、国際公開第2021008915号の文献に記載されており、その開示内容は全体を参照により本明細書に援用する。工作機械2は、ワークキャリア20と、ワークキャリア20上に配置されるとともにワークスピンドル軸Aを規定するワークスピンドル21と、加工されるワークを受容するように構成されているクランプ手段22とを有する。ワークスピンドル21は、ワークスピンドルハウジング211と、加工されるプレ歯付きワークを回転駆動するための、ワークスピンドル軸A周りにワークスピンドルハウジング211内で回転可能なワークスピンドルシャフト212とを有する。X
M方向、Y
M方向及びZ
M方向を有するワークキャリア20を基準とする直交座標系K
Mが、ここではワークスピンドル軸A上に原点を有する例として、
図1bに描かれている。ここで示される実施形態例においては、ワークキャリア20は、Y
M方向に移動させることができるワークスライドである。ここで示される工作機械2はまた、センサー位置決め装置25を有し、該センサー位置決め装置は、工具キャリア24に配設されており、工具キャリア24には、加工工具を回転駆動するための工具スピンドル241が配設されている。センサー位置決め装置25は、工具キャリア24とともにX
M方向に及びZ
M方向に移動可能であり、Y
M/Z
M平面において直線的に変位可能であるセンサー位置決めアーム251を有し、該アーム中に歯合せセンサー1が配置される。ここでは、歯合せセンサー1は、Y
M方向に対して逆平行に位置合わせされている。
図1a及び
図1bにおいては、較正ピース10の異なる実施形態が、説明の目的のために同じ工作機械2中に配設されている。しかしながら、実際には、工作機械が較正ピース10のこれらの実施形態のうちの1つしか有していなくても、通常は十分である。
図1bから分かるように、様々な実施形態は、歯合せセンサー1の応答挙動を確定するために、センサー位置決め装置25によって歯合せセンサー1が較正ピース10に沿って移動し得るように工作機械内に配設することができ、これにより、歯合せセンサーは、ここでの移動1の間、常にY
M方向に対して逆平行に位置合わせされたままとなる。さらに、歯合せセンサー1に対する較正ピース10のY
M方向における移動を実現するために、ワークキャリア20もまた、ここで示される工作機械2中で移動させることができる。また、工具キャリア24に配設された走査手段30も示されており、該走査手段は、工作機械2の座標系K
Mにおける較正ピース10の較正点C
Mを確定するために使用することができる。
【0055】
図2a~
図2dは、
図1a及び
図1bに示される較正ピース10の拡大されたバージョンを示す。
【0056】
図2aに示される
図1bの画像部分D
1では、較正ピース10の2つの実施形態を見ることができる。いずれの実施形態も、ワークスピンドルハウジング211上に配設されている。画像詳細の前方に示された第1の実施形態は、直方体の基体を有し、基体は、長方形の断面を有する第1の溝11を有し、第1の溝11は、X
M方向に延在している。画像詳細の後方に示された第2の実施形態は、ワークスピンドルハウジング211の傾斜面から突出しており、また、X
M方向に延在する長方形の断面を有する第1の溝11を有する。
図1bに見られるように、これらの実施形態はいずれも、溝11がワークスピンドル21に対して接線方向に延在するように、ワークスピンドルハウジングに配設されている。歯合せセンサー1の応答挙動を確定するために、溝11を有する較正ピース10の側の歯合せセンサー1を、溝11に沿って接線方向に及び/又はZ
M方向(ワークスピンドル21に対して軸方向に対応する)に及び/又はY
M方向(ワークスピンドル21に対して径方向に対応する)に移動させることができる。
【0057】
図2bに示される
図1bの画像部分D
2では、較正ピース10の第3の実施形態を見ることができ、該較正ピースはワークキャリア20に配設されている。
図2bに示される第3の実施形態は、直方体の基体を有し、基体は、長方形の断面を有する第1の溝11を有する。較正ピース10のこの第3の実施形態の基体は、第1の溝11に垂直に延在し第1の溝11へと開いている第2の溝12を更に含み、当該第2の溝12は、台形の断面を有する。較正ピース10の溝11を有する側とは反対側において、較正ピース10は、溝11と平行に延びる更なる溝11´を有する。溝11´に垂直に、長方形の断面を有する更なる溝12´が延びており、該更なる溝は溝11´へと開いている。
図1bから分かるように、較正ピース10のこの第3の実施形態は、第2の溝12がワークスピンドル軸Aと平行に延びるようにワークスライドに配設され、かくして、加工されるワークの歯溝の形状及び配向を形どる。歯合せセンサー1の応答挙動を確定するために、歯合せセンサー1を、溝11及び溝12を有する較正ピース10の側で、溝11に沿って接線方向に及び/又はZ
M方向(ワークスピンドル21に対して軸方向に対応する)に及び/又はY
M方向(ワークスピンドル21に対して径方向に対応する)に移動させることができる。
図1bに示されるように、較正ピースのこの実施形態は、180°回転させたワークキャリア20に取り付けることもでき、これにより、長方形の断面を有する溝12´が、較正方法の間、歯合せセンサー1の方に配向される。
【0058】
図2cに示される
図1bの画像部分D
3では、較正ピース10の第4の実施形態を見ることができ、該較正ピースはクランプ手段22に着脱可能に配設されている。較正ピース10のこの第4の実施形態は、ディスク形状であり、較正歯13、13´を有する外側プロファイルを有する。この実施形態においては、2つの較正歯13、13´が互いに径方向反対側に位置し、第1の較正歯13は長方形の形状を有し、第2の較正歯13は台形の形状を有する。較正歯13、13´は、Y
M方向に位置合わせされている。歯合せセンサー1の応答挙動を確定するために、該歯合せセンサーをワークスピンドルに対して接線方向(X
M方向)に移動させることができ、これにより、Y
M方向に対して逆平行に位置合わせされた歯合せセンサー1は、接触なしで、2つの較正歯のうちの一方(ここでは長方形の形状を有するもの13)を走査することができる。較正歯13´(台形の形状)の走査が好ましい場合は、較正ピースが180°回転させられて配置されてもよい。
【0059】
図2dに示される
図1bの画像部分D
4では、較正ピース10の第5の実施形態を見ることができ、該較正ピースはクランプ手段22に配設されている。較正ピース10の第5の実施形態は、クランプ手段21の表面から径方向に延設されたの直方体突出部14を有し、直方体の突出部14は、クランプ手段の表面へと突出する2つの配向エリア15によって挟まれている。ここで示される実施形態例においては、突出部はY
M方向を向いており、隣接する配向エリア15は、配向エリア15がX
M/Z
M平面内に位置するように、接線方向に関して突出部14の両側に配置されている。
【0060】
図2eは、較正ピースの第6の実施形態を有する工作機械2の斜視図を示し、該較正ピースは、ワークスピンドルハウジング211に配設されている。
図2fの画像部分D
5の拡大図に見られるように、較正ピースのこの第6の実施形態は、直方体のキャリア17に配設された円筒形の基体を有する。円筒形の基体は円筒軸16を有し、該円筒軸はこの場合においてはY
M軸に平行に延びている。
【0061】
図2gは、較正ピースの第7の実施形態を有する工作機械2の側面図を示し、該較正ピースはワークスピンドルハウジング211に配設されている。
図2hの画像部分D
6の拡大図に見られるように、較正ピースのこの第7の実施形態は、直方体のキャリア17に配設されたドーム形状の基体を有し、該ドーム形状の基体はY
M方向を向いている。
【0062】
図3a及び
図3bは、工作機械2における、
図2aにおける第1の実施形態に対応する較正ピース10の好ましい配置を示し、
図3bは、
図3aにおいて枠で囲まれた部分Fの拡大図を示す。センサー位置決めアーム251は、センサー保持部26を有し、該センサー保持部は、センサーキャリア27のためのメカニカルレセプタクルを形成する。
図3cに見られるように、センサーキャリア27は、センサー保持部26にセンサーキャリア27を取り付けるするための位置決め補助として機能する、止め要素271を有する。歯合せセンサー1は、歯合せセンサー面Oを有し、歯合せセンサー面Oが止め要素271から規定の距離eにあるようにセンサーキャリア27に取り付けられる。かかるセンサーキャリア27は、種々のサイズの歯合せセンサー1にとって、センサー保持部26に対して均一なインターフェースを形成する。歯合せセンサー1を交換する必要がある場合、該歯合せセンサーはセンサーキャリア27とともにセンサー保持部26から取り外すことができる。次いで、新たな歯合せセンサーが、その歯合せセンサー面も止め要素271から同じ規定の距離eにあるようにセンサーキャリア27に設置され、このことは、センサーキャリア27がセンサー保持部26に再設置される前に、適切な測定手段によってチェックすることができる。
図3a及び
図3bに見られるように、センサー保持部26に歯合せセンサー1を有するセンサー位置決め装置25は、歯合せセンサー1がY
M方向に対して逆平行に位置合わせされた状態で、接触なしでX
M、Y
M及びZ
M方向に沿って較正ピース10を走査するために、工具保持部24に配設された加工工具28にかかわらず、較正ピース10に対し衝突なしで移動させられ得る。
【0063】
図4a~
図4dは、本発明によるスイッチング信号を出力する非接触歯合せセンサー1を較正する方法を概略的な(定縮尺ではない)態様で示す。本実施形態に示される歯合せセンサーは、歯合せセンサー面Oからここでは破線で示されたスイッチングインターフェースGまで延在するスイッチング領域Bを有し、仮想センサー軸A
Sを規定する。材料がスイッチング領域Bに入ると、歯合せセンサー1によって出力されるスイッチング信号が変化する。歯先円Kを有するプレ歯付きワーク23の歯の位相位置を信頼性高く確定することを可能とするために、ワーク測定位置P
Wは、歯合せセンサー1の応答挙動が可能な限り対称となるように、算出されるべきである。かかる対称的な応答動作は、仮想センサー軸A
Sが所定の測定軸A
M(ここではZ
M方向において所定の高さでY
M方向に平行)と一致する場合、及び、歯先円Kがスイッチング領域Bを横切るように歯合せセンサー面Oが所定の測定距離dだけ歯先円Kから離隔されている場合(
図4a参照)に、実現される。
【0064】
本発明によれば、歯合せセンサー1の仮想センサー軸ASは、較正ピース10に基づいて確定され、較正ピース10は、既知の幾何学的形状を有し、ワークキャリアの座標系KMにおいて既知の較正点CMに配置される。この目的のために、歯合せセンサー1は、較正ピースの近傍に動かされる。
【0065】
較正手順のとり得るステップが、
図4b~
図4dに示される。この例においては、まず第1のステップ(
図4b)において、ここではX
M-Z
M平面内にある端面である、較正ピース10の端面Fに接近することによって、スイッチング領域のピークスイッチング点Sが確定される。ワークキャリアの座標系K
Mにおける歯合せセンサー1の理論的位置が、例えば、機械における幾何学的測定によって確定されており、センサーコントローラーに記憶されていることにより、すでにわかっている場合、歯合せセンサー1の既知の理論的位置が、歯合せセンサー1が予め規定された較正位置P
Cに直接に移動させられることを可能にするため、ピークスイッチング点Sの確定を省略することもできる。しかしながら、例えば機械が理論的位置の確定のときとは異なる温度状態にある場合、歯合せセンサーは理論的位置から逸脱した瞬間位置にあり得る。同様に、歯合せセンサーの瞬間位置は、設置誤差がある場合、例えば、歯合せセンサー面Oが
図3cに示される止め要素から意図した距離eを有していない場合、又はセンサーキャリア27の止め要素271がセンサー保持部26に対して面一に取り付けられていない場合、理論的位置から逸脱し得る。ワークキャリアの座標系K
Mにおけるピークスイッチング点Sを確定することによって、かかる設置誤差を検出することができる。
【0066】
第2のステップ(
図4c及び
図4d)においては、歯合せセンサー1が、Y
M方向に対して逆平行に、較正ピース10に近づくように移動させられ、理想的には、歯合せセンサー1(
図4aに示されるように)がワーク測定位置P
Wにあるときに、歯合せセンサー面Oとワーク23の歯先円Kとの間にも生じる予め規定された測定距離dを歯合せセンサー面Oが端面Fから離隔するようにされる。
【0067】
第3のステップにおいては、X
M方向及びZ
M方向において、歯合せセンサーのスイッチング領域BのスイッチングインターフェースGに位置する歯面スイッチング点が確定される。較正方法の単純な実施形態においては、この第3のステップは、Y
M方向において単一の測定距離dで実行され、X
M方向において及びZ
M方向において、2つの歯面スイッチング点がそれぞれ確定されるのが好ましい。
図4cは、一例として、第1の歯面スイッチング点S
F1を確定するために、どのように歯合せセンサーをX
M方向に平行に較正ピースの第1の歯面k
1を越えて移動させるかを示し、
図4dは、第2の歯面スイッチング点S
F2を確定するために、どのように歯合せセンサーをX
M方向に対して逆平行に較正ピースの第2の歯面k
2を越えて移動させるかを示す。Z
M方向に沿って歯合せセンサー1を移動させることによって、2つの更なる歯面スイッチング点を同様に確定することができる。確定された歯面スイッチング点は、センサーコントローラー3のメモリ31に記憶される。次いで、記憶された歯面スイッチング点から、スイッチング領域Bの理論的な中心点S
Zを確定することができる。この理論的な中心点S
Zを通るように仮想軸A
Sが置かれ、これにより、この仮想軸A
SはX
M/Z
M平面に垂直となる。
【0068】
ワークの測定のために、歯合せセンサーは次いで、この仮想センサー軸A
Sが所望の測定軸A
M上に位置するように、理想的には、
図4aに示されるように、中心点S
Zが測定軸A
Mと歯先円Kとの交点上に位置するように、ワーク測定位置P
Wへと動かされ、かくして、可能な限り対称的な歯合せセンサー1の応答挙動を実現する。
【0069】
図5は、プレ歯付きワークを加工するための工作機械2における歯合せセンサー1の較正方法であって、該方法の実行のために工作機械が本発明の1つの実施形態に従って設計される、先に説明された例を示す。最初に、工具キャリアの座標系K
Mにおいて、測定軸A
M及び測定距離dが規定され(101)、較正ピース10が配置される較正点C
Mが確定される(102)。続いて、歯合せセンサー1が較正ピースの端面Fに向かって移動させられ(200)、スイッチング領域Bのピークスイッチング点Sが確定される(201)。次いで、歯合せセンサー面Oが較正ピース10の端面から測定距離dに離隔されるように、歯合せセンサー1が位置決めされる(202)。ここで、歯合せセンサー1が較正ピース10に沿って移動させられて、該較正ピースを接触なしで走査する(203)。一方、歯合せセンサー1はスイッチング信号を出力し、該スイッチング信号から歯面スイッチング点が確定される(204)。次いで、これらの歯面スイッチング点から、仮想センサー軸A
Sが確定される(205)。最終ステップ(206)において、歯合せセンサー1は、確定された仮想センサー軸A
Sが測定軸A
Mと一致する、センサーコントローラー3によって算出されたワーク測定位置P
Wへと、歯合せセンサー1が動かされる。
【符号の説明】
【0070】
1 歯合せセンサー
2 工作機械
3 センサーコントローラー
10 較正ピース
11、11´ 第1の溝
12、12´ 第2の溝
13、13´ 較正歯
14 突出部
15 配向エリア
16 円筒軸
17 直方体のキャリア
20 ワークキャリア
21 ワークスピンドル
211 ワークスピンドルハウジング
212 ワークスピンドルシャフト
22 クランプ手段
23 ワーク
24 工具キャリア
241 工具スピンドル
25 センサー位置決め装置
251 センサー位置決めアーム
26 センサー保持部
27 センサーキャリア
271 止め要素
28 加工工具
30 触覚センサー
31 メモリ
KM ワークキャリアの座標系
CM 較正点
PW ワーク測定位置
PC 較正位置
A ワークスピンドル軸
AM 測定軸
AS 仮想センサー軸
B スイッチング領域
d 測定距離
F 端面
O 歯合せセンサー面
G スイッチングインターフェース
S ピークスイッチング点
SZ 中心点
SF1、SF2 歯面スイッチング点
k1、k2 歯面
【国際調査報告】