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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ジョンソン周囲熱エネルギー変換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20240905BHJP
   F02B 51/04 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALI20240905BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240905BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
H01M8/1004
F02B51/04
H01M14/00 Z
H01M8/1016
H01M8/2475
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513087
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022041194
(87)【国際公開番号】W WO2023028043
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,015
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524068388
【氏名又は名称】ロニー・ジー・ジョンソン
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・ジー・ジョンソン
【テーマコード(参考)】
5H032
5H126
【Fターム(参考)】
5H032AA08
5H032AS11
5H032AS12
5H126AA02
5H126AA03
5H126AA28
5H126BB06
5H126FF10
5H126GG02
(57)【要約】
周囲熱エネルギー変換器は、カソードとして機能する第1の正の蒸発電極と、膜セパレータと、多孔質障壁膜と、アノードとして機能する第2の負の凝縮電極とを含む。電極は多孔質であり、水素-酸素反応を容易にしてそれぞれ水を電気分解し還元する。多孔質障壁膜は、水およびプロトンを通過させるが、凝縮電極の吸湿性の酸または塩基イオンを通過させないようにし、水およびプロトンのみが通過できる。作動中、膜セパレータの、液体の水に対する高い親和性は、凝縮電極から多孔質障壁膜を通して液体の水を引き出す張力を維持する。障壁膜は、凝縮電極の吸湿性材料を含む水以外のイオンを通過させない。逆に、凝縮電極の吸湿性は、反対方向で水の張力を維持する。ハウジングは、電極を取り囲みかつ自由に流れる経路を生み出している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相および液相にある作動流体を用いて作動させるための熱-電気エネルギー変換器であって、
第1の作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性である第1の電極、
該第1の電極の吸収ポテンシャルとは異なる作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性であり、それによって2つの電極間に電圧電位が存在する、第2の電極、
第1の電極および第2の電極の間に連結され、第1の電極および第2の電極の間で作動流体の少なくとも1種のイオン種を伝導する、電気化学障壁
を含み、第1および第2の電極は、作動流体の少なくとも1種の構成成分を含む気体に曝露されかつ該気体によって互いに連結されている、
前記熱-電気エネルギー変換器。
【請求項2】
電気化学障壁は水素に対して透過性である金属と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料と、を含む、請求項1に記載の熱-電気変換器。
【請求項3】
電気化学障壁は、作動流体透過膜と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料と、を含む、請求項1に記載の熱-電気変換器。
【請求項4】
作動流体透過膜は、作動流体を実質的に排他的に透過可能である、請求項3に記載の熱-電気変換器。
【請求項5】
変換器は、ハウジング構造をさらに含む、請求項1に記載の熱-電気変換器。
【請求項6】
ハウジング内で複数の膜電極アセンブリセルが直列に積層されて、より高い全出力電圧を生成する請求項2に記載の熱-電気変換器。
【請求項7】
作動流体を用いて作動可能な熱-電気エネルギー変換器であって、
凝縮電極、蒸発電極、ならびに第1の電極および第2の電極の間に挟まれた電気化学障壁を含む、膜電極アセンブリを含み、
障壁は、第1の電極および第2の電極の間に連結され、第1の電極と第2の電極との間で作動流体の単一イオン種を伝導し、
第1および第2の電極は、作動流体の少なくとも1種の構成成分を含む気体に曝露されかつ該気体によって互いに連結され、電極は、互いに対して作動流体気相吸収平衡を維持し、
該変換器は、作動流体の気体が蒸発電極から凝縮電極へと通るときに作動流体イオンが電気化学障壁を経て伝導するにつれ、凝縮電極から蒸発電極への酸化還元反応を介した作動流体の擬似流を通して、2つの電極間での負荷回路との接続によりDC電流を生成する、前記熱-電気エネルギー変換器。
【請求項8】
イオン伝導膜電極は、第1の電極、第2の電極、該第1の電極および該第2の電極の間に位置決めされたイオン伝導部材を有し、ここで該イオン伝導部材はプロトン伝導部材である、請求項1に記載の周囲熱変換器。
【請求項9】
イオン伝導部材は、分子状の水の拡散に対して高い障壁特性を有するプロトン伝導部材である、請求項1に記載の周囲熱変換器。
【請求項10】
電気化学障壁は、イオン伝導材料でコーティングされた水素透過性金属を含む、請求項2に記載の周囲エネルギー変換器。
【請求項11】
電気化学障壁は、作動流体透過膜と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料とを含み、作動流体透過膜は、作動流体を実質的に排他的に透過可能である、請求項7に記載の熱-電気変換器。
【請求項12】
凝縮電極は、第1の液体作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性であり、蒸発電極は、第1の電極と比較して異なる液体作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性である、請求項7に記載の熱-電気変換器。
【請求項13】
凝縮吸湿性電極は、多孔質導電層と、イオン伝導性の実質的に非多孔性の層とを含む、請求項7に記載の熱-電気変換器。
【請求項14】
凝縮吸湿性電極は、多孔質導電層と、イオン伝導性の実質的に非多孔性の層とを含む、請求項1に記載の熱-電気変換器。
【請求項15】
気相および液相にある作動流体を用いて作動可能な熱-電気エネルギー変換器であって、
ハウジングと、
第1の作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性である第1の電極と、
該第1の電極の吸収ポテンシャルとは異なる作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性であり、それによって2つの電極の間に電圧電位が存在する、第2の電極と、
第1の電極および第2の電極の間で連結され、第1の電極および第2の電極の間で作動流体の少なくとも1種のイオン種を伝導する、電気化学障壁と
を含み、
ハウジングは、気体および蒸発した形態の作動流体が第1の電極と第2の電極との間を自由に流れることができるように、第1の電極、第2の電極、および電気化学障壁を収容し、
第1の電極および第2の電極は、第1の電極から第2の電極への作動流体の気体構成成分の通過のために電気化学障壁を通して互いに連結される、前記熱-電気エネルギー変換器。
【請求項16】
電気化学障壁は、水素に対して透過性である金属と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料と、を含む、請求項15に記載の熱-電気変換器。
【請求項17】
電気化学障壁は、作動流体透過膜と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料とを含む、請求項15に記載の熱-電気変換器。
【請求項18】
気相および液相にある水を用いて作動可能な熱-電気エネルギー変換器であって、
ハウジングと、
水素プロトンが酸素と組み合わされて、水蒸発電極から出ていく水の気体を形成する、水蒸発電極と、
水の蒸気が液体の水に凝縮されて、水蒸発電極と水凝縮電極との間に電圧電位をもたらす、水凝縮電極と、
水蒸発電極と水凝縮電極との間に位置決めされ、水凝縮電極と水蒸発電極との間で水素プロトンを伝導する、電気化学障壁と
を含み、
ハウジングは、水蒸発電極、水凝縮電極、および電気化学障壁を収容し、ハウジングは、電気化学障壁とは反対側に配置された水蒸発電極の外面と、電気化学障壁とは反対側に配置された水凝縮電極の外面との間に水蒸気および酸素ガスが自由に流れる経路も生み出している、前記熱-電気エネルギー変換器。
【請求項19】
電気化学障壁は、水素に対して透過性である金属と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料と、を含む、請求項18に記載の熱-電気変換器。
【請求項20】
電気化学障壁は、作動流体透過膜と、液相の水に関するその吸収ポテンシャルと比較して気相の水には異なる吸収親和性を有するプロトン伝導材料とを含む、請求項18に記載の熱-電気変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2021年8月23日に出願しかつ「Johnson Ambient Heat Energy Converter」という名称の、参照によって本明細書に組み入れる米国仮特許出願第63/236,015号の利益を主張するものである。これは2020年5月18日に出願しかつ「Johnson Power Generator」という名称の米国特許出願第16/876,212号の一部継続出願であり、参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、一般に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
周囲環境で自由に入手可能な熱エネルギーを収集することができるエンジンを開発することは、長い間の目標であった。従来の熱電気変換器および熱力学的サイクルで作動する従来のデバイスでは、熱源、およびヒートシンクが同時に用いられ、存在する。それらは作動するのに同時温度差を必要とする。必要な温度差を課すために断熱材料およびヒートシンクを利用する試みがなされてきた。変換器の1つのセクションは、その環境での温度変化に対してその温度の変化を遅延させるように、環境から断熱されおよび/または高い熱容量材料に連結される。環境に曝露され熱的に連結されたセクションに対する温度変化の遅れは、熱電気変換器を作動させるのに要する、必要とされる温度差を生み出す。しかしながら熱容量材料および断熱を含む必要性は、そのような変換器の実用性を制限する。さらに変換の有効性は、デバイスのサイズが低減されたときにデバイスの構造を通した寄生熱伝導がさらになお過剰になるにつれて、低下する。
【0004】
本発明者は、イオン伝導膜電極を通りかつ吸湿性溶液と接触するイオン化水または水蒸気の通過を可能にするように、ハウジングに連結されたイオン伝導膜電極アセンブリに流体連絡するハウジング内に、多量の吸湿性材料を収容する周囲エネルギー変換器を開示した。既に開示された変換器は、温度および湿度の変化によって推進される電力を発生させ、それにより周囲空気からの水分は、膜電極アセンブリを通して吸湿性液体の内部および外に移行して、吸湿性材料が周囲蒸気圧および温度と熱力学的平衡を維持するときに電力を発生させる。従来の変換器は、湿度および/または温度の変化がある環境では作動が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、温度または湿度の過渡事象なしに、環境から熱を抽出することによって電気を発生させることができる周囲エネルギー変換器が、依然として求められている。本発明は、この必要性を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
気相および液相にある作動流体を用いて作動させるための熱-電気エネルギー変換器は、第1の作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性である第1の電極、第1の電極の吸収ポテンシャルとは異なる作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性であり、それによって2つの電極間に電圧電位が存在する第2の電極、第1の電極および第2の電極の間に連結され、第1の電極および第2の電極の間で作動流体の少なくとも1種のイオン種を伝導する電気化学障壁を含み、第1および第2の電極は、作動流体の少なくとも1種の構成成分を含む気体に曝露されかつその気体によって互いに連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】水、いくつかのプロトン伝導膜配合物、および60%臭化リチウム溶液に関する、水蒸気圧対温度を示すチャートである。
図2】本発明を表す電気変換器への周囲熱の機能図である。
図3】いくつかの選択された金属の水素透過率を示すグラフである。
図4】固体金属水素透過吸湿性溶液障壁を使用する、熱-電気変換器を示す、機能図である。
図5】ケーシング内で直列に電気的および電気化学的に連結されたセルの積層体を示す図である。
図6】薄膜金属水素透過性水障壁を有する、本発明の好ましい形態の周囲エネルギー変換器の概略的断面図である。
図7】低インピーダンス用の複数の薄膜層を有する、本発明の好ましい形態の周囲エネルギー変換器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の作動原理は熱ガルバニ効果に基づくもので、熱が電気化学セル内で電気に変換され、その電圧には、反応物相およびプロトン伝導膜を横断する濃度差が直接作用する。Nafionは、本発明の作動に適切なある範囲の材料を表す膜材料として本明細書に開示される。ウィキペディアにより記述されるように、Nafionは、DuPont社のWalther Grotにより1960年代後半に発見されたスルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー-コポリマーのブランド名である。Nafionは、Chemours社のブランドである。これはアイオノマーと呼ばれる、イオンの性質を持つ合成ポリマーの種類で最初のものである。Nafion独自のイオン特性は、末端にスルホネート基があるパーフルオロビニルエーテル基をテトラフルオロエチレン(PTFE)主鎖に組み込んだ結果である。Nafionには、その優れた熱および機械的安定性によりプロトン交換膜(PEM)燃料セル用のプロトン伝導体として、かなりの量の関心が払われてきた。Nafionは、非常に吸湿性がある。
【0009】
図1は、水和したNafionプロトン伝導膜材料および60重量%濃度の臭化リチウム(Li/Br)/水溶液の、水蒸気圧を示す。LiBr溶液の蒸気圧は、全ての温度で水和Nafionの水蒸気圧よりも常に低いことに、留意すべきである。事実、30℃および40℃の温度範囲では、Nafion中の水の蒸気圧は飽和水の場合に非常に近い。一方、液体の水に対するNafionの親和性は非常に異なる。したがって、本明細書の作動流体は水である。
【0010】
Nafionは、飽和水蒸気に接触する場合よりも、液体の水と接触して著しく多くの水を取り込む、古典的な例のある特定の材料である。変換器の作動原理は、周知であるが完全には理解されていない現象であるシュレーダーのパラドックスに基づく。パラドックスは、多くのポリマーおよびゲルに存在する。本質的に、ポリマー中の溶媒の取込みは、境界層との相互作用に依存する。参照によってその全体を本明細書に組み入れるHydration of Ionomers and Schroeder’s Paradox in Nafion、Viatcheslav Freger,J.Phys.Chem.B 2009、113、24~36を参照されたい。
【0011】
現象は、界面が水の取込み(バルク膜であっても)を制御するので生じる。さらに固体材料との相互作用は、親水性であるか疎水性であるかに応じて水の取込みに対して類似の影響を示す。水蒸気に対する液体の水のNafion膜の親和性の非対称特性は、ダイオードのような分極効果を生み出すことができる。観察内容は、Rhokyun Kwak J.Phys.Chem.Lett.2018、9、2991~2999による、Nafionでコーティングされた電極での半電池イオン濃度分極と矛盾がない。Kwakは、参照によってその全体を本明細書に組み入れる、Nafionでコーティングされた電極による独自のダイオードのような電流整流を観察した。
【0012】
25℃で、Nafion内でスルホン酸基当たりの吸収される水分子の数は、液体の水に接触する22個であり、それに対して飽和水蒸気に曝露されたときは僅か14個である:参照によってその全体を本明細書に組み入れるGi Suk Hwang、「Understanding Water Uptake and Transport in Nafion Using X-ray Microtomography」、pubs.acs.org/macrolettersを参照されたい。
【0013】
図2は、好ましい基本的な形態の周囲熱変換器を示す。熱エネルギー変換器は、カソードとして機能する第1の正の蒸発電極12、膜セパレータ8、多孔質障壁膜9、およびアノードとして機能する第2の負の凝縮電極6を含み、全ては層状構造にある。電極6および12は多孔質であり、それぞれ水を電気分解し還元する水素-酸素反応を容易にする。膜セパレータ8は、Nafionなどの吸湿性プロトン伝導材料で作製される。障壁膜9は、水の逆または正浸透精製で使用されるような多孔質水選択性膜である。多孔質凝縮電極6は吸湿性であり、それに対して蒸発電極12は疎水性である。多孔質障壁膜9は、水およびプロトンを通過させるが、凝縮電極6における吸湿性の酸または塩基イオンを通過させないようにし、水およびプロトンのみを通すことができる。
【0014】
凝縮電極6は、酸溶液、好ましくはリン酸、または塩基性溶液、好ましくは水、および臭化リチウムなどの吸湿性溶液を含むことによって、吸湿性にすることができる。蒸発電極12の疎水性は、水素酸素反応中に発生するときに素早く蒸発されるために水用に設計された従来の燃料電池カソードの場合に類似する。作動中、液体の水に対する膜セパレータ8の高い親和性は、方向矢印26によって示されるように、凝縮電極6から多孔質障壁膜9を通して液体の水を引き出す張力を維持する。障壁膜9は、凝縮電極6に吸湿性材料を含む水以外のイオンを通過させない。逆に、凝縮電極6の吸湿性は、方向矢印27により示されるように反対方向で水の張力を維持する。
【0015】
セルの両端間での塩基性水素/酸素/水反応は、参照によってその全体を本明細書に組み入れるIwahara(Sintered Oxides And Its Application To Steam Electrolysis For Hydrogen Production;H.Iwahara、Solid State Ionics 3/4(1981)359~363)により記述された。彼は、水蒸気濃度反応に関するネルンスト電圧を実証する、プロトン伝導実験の直列のSrCe0.95Yb0.05O3-αおよびSrCe0.95Mg0.05O3-αを使用する、反応1で例示される反応に関するネルンスト電圧を実証した。
【0016】
【化1】
【0017】
固体酸化物プロトン伝導材料は水障壁として機能し、それによって圧力が、セルを横断する気体流により直接均等化されるのを防止した。
【0018】
【化2】
【0019】
Kimは、参照によってその全体を本明細書に組み入れる、反応2(Unprecedented Room-Temperature Electrical Power Generation Using Nanoscale Fluorite-Structured Oxide Electrolytes; Sangtae Kim,et.al.;Advanced Materials;DOI:10.1002/adma.200700715)によって例示されるように、相変化による水素/酸素/水反応を実証した。Kimは、ナノ構造イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)およびナノ構造サマリアドープ型セリア(SDC)を、プロトン伝導障壁として使用した。セルの両側が乾燥空気に曝露されたとき、電圧はほぼゼロであった。空気(PH2O約1.3×10-2bar)が片側に導入されると共に他方の側が乾燥空気に曝露されたままであったとき、電圧は、YSZセルに関して約-15mVに上昇し、SDCセルに関して約-33mVに上昇した。この場合、湿潤空気側がアノードであり、乾燥空気側がカソードであった。セルの乾燥側を、次に純(脱イオン化)水に浸漬し、それと共にセルの他方の側を湿潤空気に曝露したままにした。この条件下、空気側での水の活性は水側よりも低くなるので、電解質を横断する水活性勾配は反転した(したがって、セルの極性)。電圧は、YSZおよびSDCセルのそれぞれに関して約+180mVおよび約+400mVに到達するように上昇した。Kimにより使用されるナノ構造化電解質は、材料内の粒界に沿って水を含有するので、開回路電圧の変動は、電解質自体との反応電位によって、およびそれらの水の透過性によって説明することができた。Kimは、彼の実験で約200nA/cm2の電流を実現することができただけである。
【0020】
本発明の作動は、その環境から変換器によって抽出された蒸発熱によって推進される。これは膜セパレータ8の、液体の水に対するその親和性に対してさらに低い水蒸気に対する親和性を使用する。水は、蒸発電極12を通して膜セパレータ8から優先的に蒸発することになり、それは膜セパレータ8が、方向矢印26に示されるように、障壁膜9とのその界面で高い水の張力を維持するからである。凝縮電極6の吸湿性は、方向矢印27により示されるように、障壁膜9を通して反対方向に水を引き出す傾向がある。熱が、方向矢印17により示されるように水を蒸発電極12から蒸発させるにつれ、膜セパレータ8は、蒸発電極12の界面で水が不足するようになる。この蒸発は、膜セパレータ8の図面のドットパターンにより示されるような、濃度勾配をもたらす。濃度勾配により、膜セパレータ8は、凝縮電極6を枯渇させるようにするさらに大きな力で、矢印26の方向に、凝縮電極6から障壁膜9を通して水を引き出す。空気界面に対して凝縮電極6で蒸気圧平衡を維持するため、水蒸気は、矢印15により示されるように周囲空気から凝縮電極6内へと凝縮する。セルの作動は、蒸発熱がセルの外部環境により供給されるので、継続する。
【0021】
このように、セルの外部環境からの熱は水を蒸発電極12から蒸発させるので、Nafionが、その透水性障壁膜9との界面から液体の水を引き出すにつれて、一方向の流れが実現される。水は、蒸発電極12で還元されて酸素を消費し蒸発するのに対し、水は凝縮電極6で凝縮して酸素を放出する。作動は、方向矢印17、19、および15により示されるように水蒸気が蒸発電極12から凝縮電極6に循環し、それと共に方向矢印16、21、および14により示されるように酸素が凝縮電極6から蒸発電極12に循環するので継続する。したがって水蒸気および酸素ガスは、1つの電極から他方の電極に自由に流れる。自由に流れるという用語は、気体または蒸気がこの経路上で膜セパレータを通過しなくてよいことを意味する。したがって、セルの成分のそれぞれにおける水の量の、比較的定常状態の条件を、実現することができる。
【0022】
電圧電位は、膜セパレータ8のイオン伝導性および障壁膜9内の水のイオン伝導性により電極6および12の間で維持され、セルを横断してイオン伝導性の継続が提供される。
【0023】
セルの電極内の触媒活性および電気化学電圧電位の下、凝縮電極6で水を電気分解して酸素を周囲ハウジング3内の空気に放出する。得られたプロトンは、水により、障壁膜9を通しておよび膜セパレータ8上を経て、蒸発電極12へと伝導するが、このとき電子は、回路/端子22に接続された外部回路を経て通る。プロトンおよび電子は、蒸発電極12で酸素と反応して、水を再生する。プロセスは、熱が蒸発電極12から水を蒸発させかつ水蒸気が凝縮電極6内で凝縮されるにつれ、両方の電極がセル内の空気と水蒸気圧平衡を維持するので、継続する。凝縮電極6で水を電気分解するのに必要とされる1.2ボルトは、蒸発電極12での水の還元により発生した1.2ボルトに打ち消される。端子22でのセルの正味220mVの代表的電圧は、凝縮電極6と蒸発電極12との間の水蒸気濃度差によって決定され、加えて凝縮電極6に進入する水の凝縮エネルギーが変換される。
【0024】
固体障壁材料は、本発明の代替構成で用いることができる。図3は、パラジウム、タンタル、イットリウム、およびニオブの水素透過率を示す。パラジウムは、水素分離で使用される典型的な材料であり、それに対してタンタル、イットリウム、およびニオブは、脆化に起因してそれらの機械的性質を水素環境で失うのでほとんど使用されない。本発明は、気体としての水素の使用を含まず;したがって、タンタル、イットリウム、およびニオブなどのより高い拡散性材料を潜在的に使用することができる。
【0025】
次に図4を参照すると、変換器1がハウジングまたはケーシング7内に包封されている、自立型変換器システム5が示されている。水素透過性固体障壁または障壁層10が、プロトン伝導材料または膜セパレータ8と吸湿性凝縮電極6との間に挟まれている。デバイスの作動は、障壁膜9が水素透過性固体障壁層10により置き換えられたこと以外、既に記述した通りである。障壁層10は、パラジウム、タンタル、イットリウム、ニオブ、またはプロトンを通過させるという正味の効果を発揮するが水ではないその他の適切な障壁材料で作製することができる。あるいは障壁10は、セラミックイットリウムドープ型ジルコン酸亜鉛(YBaZrO)または二酸化チタン(TiO)などのプロトン伝導材料とすることができ:参照によってその全体を本明細書に組み入れる「Review:Recent Progress in Low-temperature Proton-conducting Ceramics」、Yuqing Meng1,J Mater Sci(2019)54:9291~9312を参照されたい。これらの材料の輸送特性を前提とすると、プロトンは、セルの電気化学電位の下、凝縮電極6から蒸発電極12に移動することができる。
【0026】
外部熱源(熱)20により供給された蒸発熱は、セルの電気化学電位の下、電力に変換される。セルの電圧は、凝縮電極6と蒸発電極12との間の水蒸気濃度差によって、加えて凝縮電極6内で凝縮する水の凝縮エネルギーによって、定められる。水は、凝縮電極6による水蒸気との誘引よりも、さらに低い水蒸気に対するその誘引に起因して、蒸発電極12から優先的に蒸発する。蒸発電極12から凝縮電極6への水蒸気の移行は、膜セパレータ8を横断する濃度勾配を生み出す。凝縮電極6は蒸発電極12から水蒸気を引き出すので、凝縮電極6から酸素を放出し蒸発電極12で酸素を消費する水素透過性固体障壁層10を経たプロトンの伝導によって比較的定常状態が維持される。正味の効果は、凝縮電極6から元の蒸発電極12への水の移動に等しい。プロセスは、次に蒸発電極12によって供給される、矢印15により示されるように、空気との蒸気平衡を維持するために凝縮電極6内の水の濃度低下によって水を誘引し凝縮させるので継続し、ハウジング7内の蒸気圧は、凝縮電極6に関し、蒸発電極12の場合のように同じである。
【0027】
この現象は、膜セパレータ8と固体障壁層10との間の界面での液体の水の吸収ポテンシャルが、シュレーダーのパラドックスと矛盾することなく、膜セパレータ8と蒸発電極12との間の界面での水蒸気吸収ポテンシャルよりも高いので、生じるように見える。それに対して吸湿性凝縮電極6は、蒸発電極12から水蒸気を引き付けることができ、障壁界面での、液体の水に対するNafionのより高い親和性が、電気エネルギーに変換される蒸発電極12に供給される蒸発熱によって連続プロセスを維持する。
【0028】
図5は、ハウジングまたはケーシング3内のセル「1」から「n」までの積層体を示す。セルは、電気的および電気化学的に直列に連結される。直列電気接続は、累積全体電圧出力を実現する。1つのセルの蒸発電極12、カソードから放出される水蒸気11は、その隣接するセルの凝縮電極6、アノードにより吸収される。逆に、矢印13により示される酸素は、凝縮電極6、アノードにより放出され、水がその内部で電気分解されるにつれ、直列で隣接する蒸発電極12、カソードによって吸収されて、水を生成する。セル間で電極からの水の移行を引き起こす酸化還元反応は、当然ながら任意の所与の水分子内の水素および酸素原子の組合せが必ずしも同じ原子である必要はないので、酸化還元反応を介した水の連続擬似循環になる。セルに供給された熱20は、セルの正極(カソード)からの水の蒸発によって消費され、水が負極6(アノード)内に凝縮されるときに電力に変換される。既に記述した単一セルの機能と同様に、水蒸気および酸素はハウジング内を循環する。水は、矢印17によって示されるように、積層体内の最終セルの(カソード)蒸発電極12から蒸発し、矢印19によって示されるように積層体内を循環し、方向矢印15によって示されるように積層体内の第1のセルの(アノード)凝縮電極6内に凝縮する。酸素は、方向矢印16によって示されるように積層体内の第1のセルのアノード6で水から電気分解され、方向矢印21によって示されるように積層体内を循環し、方向矢印14によって示されるように積層体内の最終セルの(カソード)蒸発電極12に進入し、水に還元されて引き続き蒸発する。
【0029】
図6は、セルインピーダンスを低下させるように薄膜形態をとる水素透過性固体障壁層10を備えた本発明の実施形態を示す。水素透過性固体障壁10は、多孔質基材19上にコーティングされる。セルの電力出力は、電極内の電気化学反応動態と、セルの層を横断するプロトン伝導インピーダンスとの組合せによって決定される。障壁10のインピーダンスは、30ナノメートルから10マイクロメートルの厚さを有する薄いコーティングとして実現することによって低減する。より高い電力密度は、(基材)膜セパレータ19の細孔内に、イオン伝導性の液体または固体材料を含むことによって実現される。イオン伝導(基材)膜セパレータ19と薄膜障壁10との組合せは、より低い全体セルインピーダンスをもたらす。低インピーダンス構造は、より高い電力密度を可能にする。
【0030】
図7は、増大した電力密度の薄膜構造としてのアセンブリに適切な、本発明の実施形態を示す。負の凝縮電極36は、多孔質黒鉛などの固体導電性透水材料とすることができる。これは2.5umから100umの厚さであってもさらに厚くてもよい。負の凝縮電極36は、吸湿性セラミック電解質の薄層または電解質層34でコーティングされる。電解質34は、30nmから10umの厚さであってもよく、スパッタ堆積によって付着させることができる。電解質層34は、TiO2などの材料、またはその他のプロトン伝導性多結晶質もしくはナノ結晶質セラミック材料とすることができる。TiO2は、結晶粒界に沿って含有される水がプロトン伝導のメカニズムをもたらす、吸湿性材料である。Nafion層(膜セパレータ8)は、既に記述したように機能する。これは液体溶媒系前駆体を使用して、薄いコーティングとして付着することができる。層(膜セパレータ8)は、1から25umの厚さにすることができる。蒸発電極12の疎水性の電気およびイオン伝導性コーティングは、Nafionの表面に付着される。これは蒸発溶媒系前駆体を使用する、噴霧コーティング用のスラリーによって付着することができる。膜セパレータ8を横断する所望の水の張力勾配は、片側に疎水性の水蒸気蒸発電極12を有し、他方の側に固体の水含有吸湿性セラミック電解質34を有することによって生み出される。セルの作動は、セルの電気化学電位の下、凝縮電極6で電気分解されかつ蒸発電極12で還元される水で既に記述された通りである。
【0031】
特に図示しないが、全ての実施形態は、電極アセンブリを取り囲むハウジングを含むことができる。
【0032】
したがって、気相および液相にある作動流体を用いて作動させるための熱-電気エネルギー変換器は、第1の作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性である第1の電極、第1の電極の吸収ポテンシャルとは異なる作動流体吸収ポテンシャルで吸湿性であり、それによって2つの電極間に電圧電位が存在する第2の電極、第1の電極および第2の電極の間に連結され、第1の電極および第2の電極の間で作動流体の少なくとも1種のイオン種を伝導する電気化学障壁を含み、第1および第2の電極は、作動流体の少なくとも1種の構成成分を含む気体に曝露されかつその気体によって互いに連結されている。
【0033】
したがって、従来技術のシステムに関連した問題を克服する周囲エネルギー変換器が、ここで提供されることがわかる。本発明を、その好ましい実施形態を特に参照しながら詳細に記述してきたが、それらの明確に列挙されたものに加えて、本発明の精神および範囲から離れることなく多くの修正、付加、および削除をそこに行うことができることを、理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】