(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電気モータ用ロータのワンショットオーバーモールディング
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240905BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240905BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/02 K
H02K15/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513364
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022074511
(87)【国際公開番号】W WO2023031429
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】メイル ティム
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS13
5H615SS44
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
本発明は、電気モータのロータ及びその製造方法に関する。ロータは、シャフト、ロータコア、複数の磁石(4)、及び磁石(4)をロータコア内で固定するのに用いられる樹脂を有する。本発明によれば、ロータコア内で複数のキャビティにオーバーラップ面領域を設けるためにロータコアの前面のマニホールド(3G)が用いられる。有利なことにツール内のゲート(5B-G)の数が著しく減少する。有利な実施態様では、油冷式ロータ用のインペラ(3B)をさらに有するマニホールド(3G)のキャビティへの充填によってロータコアの前面に複数のブレードが形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ用のロータであって、
シャフトとロータコアとを有し、さらに、前記ロータコアが、隣接する前面と、前記ロータコアのボディに沿って出る複数の開口及び/またはキャビティと、複数の磁石(4)と、前記ロータコア内に前記磁石を固定するための樹脂(3)とを備え、
好ましくは隣接する前記ロータコアの前面に樹脂(3)のマニホールド(3G)が形成され、前記マニホールド(3G)が少なくとも1つの開口及び/または少なくとも1つのキャビティと少なくとも部分的にオーバーラップし、
前記マニホールド(3G)が前記樹脂(3)によって前記ロータコアの前面に接着及び/または拘束されることを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記マニホールド(3G)が、複数の開口及び/またはキャビティと少なくとも部分的にオーバーラップすることを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータにおいて、
前記マニホールド(3G)が、互いに間隔をあけて配置され且つ一緒にロータの第1/第2インペラを形成する複数のブレードを有することを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロータにおいて、
前記マニホールドが、第1スタック及び/またはロータコアの前面から突出する複数のブレードを有し、
マニホールドの後壁が、インペラまたはファンを形成する凹形状であり、
ブレードが互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とするロータ。
【請求項5】
シャフト、ロータコア、複数の磁石(4)、及び樹脂(3)を有し、前記ロータコアが、さらに、複数の開口及び/またはキャビティを有する隣接する前面を有する電気モータ用のロータであって特に請求項1から4のいずれか1項に記載のロータを製造する方法において、
前記ロータコアに前記磁石(4)を固定するために、溶融樹脂(3)を前記ロータコアの開口及び/またはキャビティに注入する工程を有し、
前記樹脂(3)を注入するためのダイ及び/またはツールが、前記ロータコアの前面に閉じたキャビティを設けることによって前記ロータコアを包囲する空間を形成するために使用され、
前記溶融樹脂(3)を注入する工程は、前記樹脂(3)が前記ロータコアの開口及び/またはキャビティに導入される前に、前記ロータコアの前面のマニホールド(3G)のキャビティ内に前記溶融樹脂(3)を分配する工程を有し、前記溶融樹脂(3)は、前記ロータコアの前面でオーバーラップする開口及び/またはキャビティに、ツールで包囲されたキャビティが樹脂(3)で満たされるまで、圧力分布にしたがってマニホールド(3G)内に分配されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記マニホールド(3G)内に樹脂(3)を分配する工程は、前記ツールのダイ内でマニホールド(3G)のキャビティに樹脂(3)を充填することにより、ファン及び/またはインペラのブレードを製造する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法において、
前記ロータコアの少なくとも一側の前記マニホールド(3G)は、第1のロータスタックの全ての対象の開口に樹脂(3)を注入するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法において、
前記樹脂(3)は、オーバーモールディング工程の利用のために用いられるツールの一部としての前記ダイから注入されて、複数のゲートを介してマニホールド(3G)に供給され、好ましくはゲートの数が1と30の間の範囲であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記ゲートの数が前記ロータの極数と等しいことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載の方法において、
前記マニホールド(3G)がオフセット距離を有し、少なくともオーバーモールド工程中に、オーバーモールドに用いられるツールの一部であるダイによってクランプ力が加えられ、そのクランプ力は好ましくは樹脂(3)が固化し少なくとも部分的に硬化するまで加えられることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項5から10のいずれか1項に記載の方法において、
前記マニホールド(3G)は、オーバーモールディングに使用されるツールのダイ内の対応する支持構造によって形成される付加的な開口または溝を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主な対象は、電気自動車のトラクションドライブ用電気モータのロータを製造するための方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気モータ用ロータコアのスロットに磁石をオーバーモールドで固定する方法がよく知られている。特許文献1には、磁石を固定する方法が開示されており、これによれば、磁石が取り付けられるロータコアのスロットに、ロータコアの対象の受け入れスロットの位置にそれぞれが適合する複数のシリンダを有するダイを介して溶融樹脂が注入され、したがって、樹脂が、各シリンダとロータコアのスロットとの間の連通領域(つまりゲート)を介して個々のスロットに注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の解決手段において、樹脂は、ダイ(つまりオーバーモールドに使用されるツール)の複数のゲートを通じてロータコアのスロットに注入され、各ゲートは、樹脂を充填する対象スロットの領域と少なくとも部分的に重なる。したがって、多量の材料が無駄になる樹脂を注入するために、ツール内の複雑なランナーシステムが必要とされる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、前述の方法を改良した実施態様または少なくともそれに変わる実施態様を提案し、前述の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は独立請求項1の主題によって達成される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、電気モータの強制油冷のためのインペラのようなロータの追加の機能部(形状部、特徴部)を利用するという概念に基づいており、ロータのオーバーモールドによって製造されるインペラのボリュームを、ロータの少なくとも片側でオーバーモールドに使用されるツール(金型)のランナーシステムの機能にも利用して、オーバーモールディング工程中に樹脂を注入するためのゲートの数を最小にし、それによって使用済みの材料の利用を促進してロータ完成品の費用を低減するものである。
【0008】
本発明では、説明を簡略化するために「第1/第2」という複合語を用いる。本発明に関しては、複合語「第1/第2」の個々の用語「第1」及び「第2」は、常に「及び/または」で結び付けられる。したがって、ロータには「第1」要素及び/または「第2」要素が存在し得る。この場合、それぞれの「第1」要素は、ロータの更なる「第1」要素またはロータの第1軸方向端部にのみ関連し、それぞれの「第2」要素は、ロータの更なる「第2」要素またはロータの第2軸方向端部にのみ関連する。複合語「第1/第2」に個々の用語「第1」及び「第2」が使用されていない場合、この用法に従って理解すべきである。さらに、本発明では、「軸方向」及び「径方向」という用語は常に回転軸に関するものである。
【0009】
電気モータのロータは、シャフトとロータコアとを有する。シャフトは、一旦組み立てられると、所定位置にロータコアを受け入れるように構成される中実または中空の鋼の棒状のもの及び/または管であってもよい。
【0010】
有利な実施形態のシャフトは、ロータコアを所定位置に受け入れるメイン部と、支持部とを有し、組み立てられると、メイン部は支持部とともにロータの中空シャフトを形成する。ロータコアは、ロータコアの第1側の近接する前面と、ロータコアの第2(反対)側の近接する前面のそれぞれを有する円筒体を含む。さらに、ロータコアは、複数の永久磁石と複数の積層シート(以下、シート)とを有し、シートは円形形状であり、電磁鋼板で形成される。各シートは、さらに、ロータの電磁構造及び機械構造に応じた中間開口と複数の切り欠きを有し、スタック及び/またはコア内のすべてのシートが同じである必要はない。シートは、ひいてはロータコアのスタックも、磁石を所定位置で受けるために、ロータコアの重さを減らすために、そしてロータスタック及び/またはロータコア内の磁束を制限するために、複数の円形及び/または特有の形状の切り欠き及び/または溝を有する。シートは互いに積層され、円筒形状で且つシャフトを所定の位置に受けるために中心軸に沿った中心開口を有するスタックになる。組み立てられたスタックは、対象のスロットに挿入される複数の磁石を有する。ロータコアは、1つまたは複数のスタックを有し、ロータコア内の複数のスタックは同軸であり、直線状に、らせん状に、または個々のスタックが種々のパターンで中心軸の周りにスキューを施されてずれた位置に配置される。ステータコアを準備するために、ロータコアが2つ以上のずれたスタックを有する場合、より正確にはロータの中心軸の周りで回されて中心軸に沿って移動した2つ以上のスタックを有する場合、第1スタックと第2スタックのオーバーラップ(重なり)領域、より正確には第1スタックのスロットと第2スタックの対応するスロットのオーバーラップ面領域は、ロータのオーバーモールディングに使用するための樹脂内部のフィラーの最大サイズよりも少なくとも3倍大きいが、0,03mm2より小さくはない。これにより、有利なことに、ロータコア内のスタックの分割とスキューとが可能になり、電磁性能に明確な効果が得られる。
【0011】
したがって、現在の技術の高性能ロータスタック及び/またはロータコアは、複数のキャビティ及び/またはスロットを有するので、ロータのオーバーモールディングに使用されるダイのゲートの数はもはや実用的ではなく、オーバーモールディングに使用される材料(以下、樹脂)の著しい量が無駄になる。
【0012】
本発明は、ランナーシステムの一部として用いられるマニホールドを提案するものであり、第1スタックの前面の限られた領域、少なくともロータコアの第1の側に、樹脂が導入されて原則的には分配される。同様に、ロータコアの第1スタックにおける他方の側の前面も、同様または同一のマニホールド構造を有し、樹脂が、マニホールドの製造に用いられるダイのキャビティ内で圧力分布に従って分配されるため、ロータコア内のオーバーモーディング構造内に空隙の生じるおそれが大幅に低減される。有利には、ロータコアの少なくとも一方の側のマニホールドは、第1のロータスタックの全ての対象スロット内に樹脂を注入するために使用され、樹脂は、オーバーモールディング工程の利用に用いられるツールの一部としてダイから注入されてゲートを介してマニホールドに供給され、有利な実施態様ではゲートの数は1と30の間の範囲であり、ゲートの数は好ましくはロータ極数に等しい。有利には、マニホールドは、樹脂をロータコアに導入するためのバッファとして用いられ、したがって、ゲートの位置、及びダイ内のゲートと対象の構成要素(すなわち、スロット内の磁石)との間の距離が、もはや重要ではなくなり、樹脂の流れが単一のワンショットオーバーモールディング工程によってロータコア内のすべてのスタックを貫通し、ゲートの数が無理のない範囲で少なく維持される。
【0013】
第1スタックの前面及び/またはロータコアの第1スタックにおける他方の側の前面のマニホールドは、基本的にリング状(環状)の円筒体として形成され、マニホールドのサイズ及び形状はオーバーモールドすべき対象領域の制限に一致し、少なくとも第1スタックの全ての対象スロットはマニホールドのサイズ及び形状に少なくとも部分的に重なり(オーバーラップし)、第1スタックのマニホールドとそれに対応する対象スロット及び/またはキャビティ及び/または開口との間の個々のオーバーラップ面の面積は、ロータのオーバーモールディングに用いるための樹脂の内部のフィラーの最大サイズよりも少なくとも3倍大きいが、0,03mm2より小さくはない。同様に、マニホールドの厚さは、ロータのオーバーモールディングに用いるための樹脂の内部のフィラーの最大サイズよりも少なくとも3倍大きく、好ましくは0,05mmと50mmの範囲内である。
【0014】
さらに他の有利な実施形態では、マニホールドは、第1スタック及び/またはロータコアの前面から離れて突出する複数のブレードを有し、マニホールドの後壁がインペラまたはファンを設ける目的で持ち上げられて凹形状に変形され、複数のブレードが互いに間隔をあけられて共にロータの第1/第2のインペラを形成する。これにより、有利なことに、電気モータのロータが、空気、誘電性流体(すなわちオイル)、または空気と誘電流体の混合物である冷却剤を、電気モータの冷却システムを通じて送り出すファンとして及び/またはポンプとして動作することが可能になる。
【0015】
複数のシートを有するロータコアのオーバーモールディングのために、オーバーモールディング工程の利用中に樹脂の漏れを防止する目的で、ロータコアの1つのロータスタック及び/または複数のロータスタックのシートが軸方向にクランプされることが不可欠であり、0,001mmと0,05mmの間のレベル、好ましくは0,02mm以下のレベルの材料の圧延シート内の不規則性及び不完全性が存在するロータスタックのシート間の隙間(ギャップ)により、ツール内の閉じたキャビティのガス抜きが実現されることが好ましい。あるいは、クランプ面及び/またはオーバーモールディングに使用されるツールは、ツールの過加圧を回避する目的で、オーバーモールディング工程中にツールの通気をするための少なくとも1つまたは複数のガス抜き開口を有する。したがって、マニホールドの有利な実施形態は、シート外径及びシート内径に対してオフセット距離を有し、オーバーモールディングに用いられるツールの一部であるダイによって少なくともオーバーモールディング工程中にクランプ力が加えられ、このクランプ力は、樹脂が固化せずに少なくとも部分的に硬化するまで加えられる。有利な実施形態では、マニホールドは、必要に応じて、オーバーモールディングに用いられるツールにおけるダイの対応する支持構造によって形成される付加的な開口または溝を有する。有利なことに、ロータコアの第1スタックにおける第1側の前面及び/またはロータコアの第1スタックにおける第2側の前面のクランプ領域が、樹脂の漏れを回避するためにより広い範囲に分布し、オーバーモールディング工程中のシート及び/またはロータコアの永久的な変形のおそれが少なくなる。
【0016】
オーバーモールディングの利用のために、有利な実施形態は、オーバーモールディング利用の工程内でマニホールドを形成するために少なくとも1つのダイが用いられるツールを有する。金型は、マニホールドのネガティブボリュームの形状のキャビティを有し、ダイはさらに、オーバーモールディング工程の利用に使用される目標温度まで原料の温度を上昇させることによって樹脂が軟化した状態で導入される、中心軸の周りの環状の少なくとも1つのシリンダを有する。有利には、マニホールドを形成するためのキャビティの領域にあるダイは、ロータコアを有するツールのキャビティに溶融状態の樹脂を注入するためのツール内のゲートとみなされる連絡通路により、樹脂を導入するためのシリンダと通じる。樹脂をマニホールド内に、有利にはロータコア内のすべての対象スロット及びキャビティ内に注入するため、ツールの対応するプランジャによって供給される圧力を加えることによって、樹脂はシリンダ内で溶融して液体状態になる。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の特徴を示し、最良の態様の実施形態におけるロータのオーバーモールディングの方法は以下のステップを有する。
【0018】
1.複数のシートを積層して少なくとも1つのスタックにするステップ。各スタックは、磁石を挿入するための複数の対象スロットと、ロータコア内の磁束を制限するためのスロットとを有する。ロータコアの呼び高さは、個々のスタック高さの呼び高さを規定することで得られ、シートを追加することまたは個々のスタックのシートを除去することにより、スタックの目標高さ及び/またはロータコアの呼び高さを得るように調整及び適合がなされる。積層工程において、有利な実施形態における個々のスタックのシートを、少なくとも、磁石を挿入するためのスロットの必要公差を満たすように位置合わせする。
【0019】
2.磁石を個々のスタックの対象スロットに挿入するステップ。有利な実施形態において磁石は磁化された状態である。あるいは、磁石はオーバーモールディング工程の終了後に磁化される。
【0020】
3.スタック内のシートを位置合わせするステップ。シートは、シートの少なくとも1つの基準形状部(基準機能部)であって好ましくはシートの外側及び/または内側の輪郭に位置する基準形状部(すなわち溝)によって、スタックの中間開口に対して位置合わせされる。
【0021】
4.スタックの第1端と第2端にクランプ力を与えることにより、シートをスタック内でクランプするステップ。クランプ力は10kNと500kNの間の範囲内であり、好ましくは150kNである。有利なことに、ブレードを切断するためのスタンピング工程の結果としてシートの欠陥が最小限になる。
【0022】
5.クランプされた状況及び/またはクランプされた状態のスタックを、すきま嵌め、中間嵌め、または締まり嵌め結合によってシャフトに取り付けるステップ。有利な実施形態では、圧入結合が用いられ、スタック及び/またはロータコアのシートはシャフト上の位置で固定される。しかしながら、少なくともロータのオーバーモールディング工程中に、シート間の樹脂の漏れを防止する目的で、スタック及び/またはロータコアに作用するクランプ力が、オーバーモールドに使用されるツールによって再開され、スタック内のシートは、シャフト上に配置されるとシャフトとの締まり嵌めによって拘束されるため、クランプ力が一旦加えられると基本的に中心軸に沿ってのみ移動可能になる。オーバーモールディングツール内でのクランプ力による圧縮中のスタック高さの圧縮及び/または減少は、全スタック高さの0,1%と10%の間の範囲であり、有利には全スタック高さの5%より小さい。
【0023】
6.ロータコアを予熱するステップ。有利な実施形態では、ロータコアはシャフトに取り付けられた状態で予熱される。
【0024】
7.ロータのオーバーモールディング利用のために、ロータコアを所定位置で受けるツールを予熱するステップ。
【0025】
8.樹脂を予熱するステップ。
【0026】
9.ロータコアをオーバーモールディング用ツールに取り付けるステップ。
【0027】
10.ロータコアをオーバーモールディングツールに対して位置合わせするステップ。有利な実施態様では、軸受を所定位置に取り付けるための高精度で機械加工された(すなわち研削された)シートを有するシャフトの部分が、ロータコアに対してツールを位置合わせするために用いられ、すきま嵌めまたは中間嵌めが成立する。有利な実施形態では、径方向の干渉(締めしろ)が0,005mmと0,015mmの間の範囲、好ましくは0,0075mmである中間嵌めが用いられる。
【0028】
11.目標クランプ力を10kNから500kNの範囲、好ましくは100kNで加えることにより、オーバーモールディングに使用されるツールでロータコアを圧縮するステップ。
【0029】
12.ツールのシリンダ内に樹脂を導入するステップ。シリンダのキャビティは、ツールによって得られ且つ/または形成される少なくとも1つのマニホールドのキャビティと、ロータコアの第1スタックにおける第1側の前面及び/またはロータコアの第1スタックにおける第2側の前面とに、少なくとも1つのゲートを介して連通する。
【0030】
13.溶融状態及び/または流動化状態の樹脂を、ツールと、ロータコアの第1スタックにおける第1側の前面及び/またはロータコアの第1スタックにおける第2側の前面とで得られ且つ及び/または形成される少なくとも1つのマニホールドにシングルショット(1回の射出)で注入するステップ。シリンダ内の樹脂は、樹脂が入れられたツールシリンダに対応するプランジャをさらに有するツールの軸方向移動によって得られる圧力により、溶融及び/または流動化される。マニホールド内の樹脂は、オーバーラップする開口及び/またはキャビティに、キャビティ全体が樹脂で充填されるまで、圧力分布にしたがって再分配されることに留意されたい。
【0031】
14.樹脂をマニホールド内に射出し、したがってロータコア内のすべての対象スロットとキャビティにも射出して、樹脂が少なくとも部分的に固化して硬化するまで、クランプ力とオーバーモールディング条件を保持するステップ。
【0032】
15.ツールを開くステップ。オーバーモールディングに使用されるツールは、ツールの軸方向移動によって開かれる。
【0033】
16.オーバーモールドされたロータを、オーバーモールディングに使用されるツールから排出するステップ。有利には、ワンショットオーバーモールディングのためにマニホールドを使用することにより、樹脂の無駄が最小限に抑えられる。
【0034】
本発明の他の重要な特徴及び効果は、従属請求項、図面、及び添付図面に基づく図の説明から明らかである。
【0035】
前記の特徴及び以下に説明する特徴が、それぞれに示された組み合わせで用いるだけでなく、他の組み合わせで、または単独で、本発明の範囲から逸脱することなく使用できることを理解されたい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を図面に示し、以下においてより詳細に説明するが、同一の参照符号は、同一もしくは類似、または機能的に同一の構成要素を示す。
【0037】
各図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの詳細断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの他の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの詳細断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の別実施形態に係る電気モータ用ロータの斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の別実施形態に係る電気モータ用ロータの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の別実施形態に係る電気モータ用ロータの斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の別実施形態に係る電気モータ用ロータの平面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る電気モータ用ロータの斜視図であり、説明のためにロータのいくつかの要素を省いている。
【
図12】
図12は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用のオーバーモールドされたロータの斜視図である。ロータは、シャフトと、ロータコアと、対応する中心軸CAとを有する。
図1には、本発明で提案される、樹脂3で形成されたマニホールド3Gが示され、最良の実施形態におけるマニホールド3Gは、さらにインペラ3Bの要素を有する。
【0040】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータの側面図であり、断面A-Aに対応する面と、断面C-Cに対応する面とが示されている。有利な実施形態におけるシャフトは、2分割の中空シャフトであってシャフトコア1Aを有し、伝動用のスプライン領域と、ロータコアが所定の位置に取り付けられる管状のメインシャフト部とを有する。さらに、シャフトは、シャフトコアに圧入接続で取り付けられる支持ボディ1Bを有し、メインコア1A及び支持ボディ1Bは、軸受用の座を有する追加の機能部(形状部、特徴部)を有し、この座は、旋盤加工及び/または研磨によって厳密な公差で製造される。ロータコアは、複数の磁石4(
図2には図示せず、
図6参照)と、複数の、より詳細には5つのスタック2とを有する。スタック2は、電磁鋼板で形成された複数の積層シートを有し、各シートは、スタック2内に複数のキャビティを設けるための複数の切り抜きを有する。キャビティは、スタック2内で所定位置に磁石4を挿入するための磁石スロット24の群(
図2には図示せず、
図6参照)と、スタック2内で磁束を制限するため及び/またはロータスタック2の重量を軽減するための固着スロット23の群とを含む。ロータコアのスタックは、シャフトコア1A上で中心軸CAに沿って直線状に配置され、スタック2は、所望の電磁気構造のために中心軸CAの周りで一方向にスキューが施されている。
【0041】
図3は、本発明の第1実施形態に係る電気モータ用ロータのA-A断面図であり、領域Bの詳細図を示す。ロータコアは、第1スタック2におけるシャフトコア1A側の前面と、第1スタック2における支持ボディ1B側の前面とを有する。
【0042】
典型的な最良の実施形態では、第1スタック2におけるシャフトコア1A側の前面は、ロータスタック2の外周縁領域に位置する第1の外側クランプ面2A-COと、ロータスタック2の内周縁の領域に位置する第1の内側クランプ面2A-CIを有する。同様に、第1スタック2におけるシャフト支持ボディ1Aの側の前面は、ロータスタック2の外周縁領域に位置する第1の外側クランプ面2B-COと、ロータスタック2の内周縁の領域に位置する第1の内側クランプ面2B-CIを有する。したがって、マニホールド3Gの領域は、スタック2の前面及び/またはシャフトの機能部の対応するクランプ領域によって径方向に制限される。
【0043】
より具体的には、
図5及び
図6に示すように、スタックの前面のマニホールド3のサイズ及び/または位置は、スタック2またはシャフト表面で軸方向及び/または径方向に得られる必要なクランプ領域により制限される。したがって、
図5及び
図6に示すように、第1スタック2の前面に関するマニホールド3Gの表面領域は、マニホールドの外郭3G-OCを示す破線の円、従ってマニホールド外径3G-OD及びマニホールド内径3G-IDをそれぞれ表す破線の円で示され、磁石スロット24を有するマニホールド3Gの領域と、ワンショットオーバーモールド用の固着スロット23とのオーバーラップが効果的であることが明確に表されている。しかしながら、オーバーモールドされるスタック2内のキャビティの大部分では、対象領域及び/または輪郭の最小のオーバーラップは維持が容易であり、いくつかの小さなキャビティ、特にスタック2の外周縁に極めて近い小さなキャビティについては、対象の輪郭の少なくとも一部がオーバーラップしなければならないため、最小オーバーラップ面の面積3-OLmは0,03mm2から3mm2の範囲であり、正確な値は樹脂3内のフィラーのサイズに左右される。さらに、ロータコアの外周縁のクランプ面は、スタックの外径2-ODによって制限される。高性能ロータコア用シートの外郭は、
図1~
図13に示されるように、複数の溝及び/または切り欠きを有する。このため、有利な実施形態でのクランプ面の領域は、オーバーモールディング利用に用いられるツール(金型)の複雑さひいては製造コストを低減するために、円形状に一致するように簡素化され、外側オフセット距離2B-COdは、0,2mmと50mmとの間の範囲、好ましくは1mmである。これに対し、別実施形態では、スタック2の前面にクランプ力を付与し且つ作用させるために使用されるダイの外郭を、第1スタックの周縁のオフセット輪郭と一致させることができ、最小オフセット距離2B-COdmが、外側オフセット距離2B-COdと等しい範囲にあることが好ましい。クランプ面は、マニホールド3Gの領域により中心軸CAに向かって径方向にも制限され、クランプ領域は、スタック2の内径によって、及び/またはシャフトの機能部の外径によって、より正確には上部支持ボディ1B-ODの外径によって制限される。別実施形態では、クランプ面がシャフトの機能部(つまり支持ボディ1Bの冷却剤出口開口)によって制限されない場合、クランプ面をシャフトの表面に設けることもでき、内側オフセット距離2B-CIdは0,2mmと50mmの間の範囲、好ましくは2mmである。
【0044】
図7~
図10にはマニホールド3Gの別実施形態が示されている。
【0045】
図7では、マニホールド3Gは、他の別施形態とは異なり、第1スタック2の前面に刻まれた単純なリング形状の平坦なキャビティを有し、
図4に示すマニホールドのベース構造体3GTの厚さは0.2mm~50mmの範囲内である。図示された別実施形態では、第1スタック2の前面のクランプ面は、複数の外側溝2B-COG、及び/または中間孔2B-CM、及び/または内側溝2B-CIGを含む付加的な領域を有する。
【0046】
図1~4、
図8~10、
図12及び
図13では、ロータ、より正確には第1スタック2の支持ボディ1B側は、樹脂3をロータコアに注入するためのマニホールド3Gのキャビティの一部としてインペラ3Bのキャビティを有することが示されている。ロータ、より正確には第1スタック2のシャフトコア1A側は、同様に第2のインペラ3Aを有し、インペラ3Bのキャビティ内の樹脂と第2のインペラ3Bのキャビティ内の樹脂は、
図3、
図4及び
図9に示されるように、そして本発明によって効果的に提案されるように、ロータコアのキャビティ内の樹脂3と繋がっている。
【0047】
図12及び
図13は、典型的なツール内に設置されたロータの断面図であり、ツール内に取り付けられたロータコアにクランプ荷重を与えるための第1のクランププレート5Aと第2のクランププレートを示し、ロータは、ツール内で、シャフトのベアリングの座の領域に中間嵌めで位置合わせされる。
図12は、マニホールド3Gとロータコアのキャビティに樹脂3が注入される前の状態を示している。
図13は、マニホールド3G及びロータコアキャビティに樹脂3が注入された後の状態を示し、明確にするために、プランジャ51の軸方向移動によって樹脂3をマニホールド3Gに注入するためのゲート5B-G、第1のマニホールドツールキャビティ5A3G、第1のインペラツールキャビティ5A3B、第2のマニホールドツールキャビティ5B3G、及び第2のインペラツールキャビティ5B3Bのそれぞれが示されている。さらに、理解を容易にするために、ゲート内及びシリンダ内の樹脂3’の残量を示している。
【0048】
この実施形態では、ロータとツールのすべての部品、特にマニホールド3Gの機能をするインペラが、最良の形態で示され且つ説明されている。しかしながら、異なる形状/サイズ/配置も可能である。
【国際調査報告】