(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】綾巻パッケージを製造する繊維機械の作業ステーション用糸継ぎ装置
(51)【国際特許分類】
B65H 69/06 20060101AFI20240905BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B65H69/06
D01H15/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513367
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022074264
(87)【国際公開番号】W WO2023041329
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124152.9
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アッペル、ラース
(72)【発明者】
【氏名】リュルシュ、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】シャットン、ジークフリード
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュノヴスキ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ、ミヒャエラ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056CB09
(57)【要約】
本発明は、綾巻パッケージを製造する繊維機械(1)の作業ステーション(2)用糸継ぎ装置(10)に関し、この装置は、圧縮空気を吹き付けることのできる糸継ぎチャネル(20)を備える糸継ぎ角柱体(19)と、糸継ぎチャネルの両側にそれぞれ配置された糸ガイドプレート(22、23)とを有し、かつ糸ロック装置(11A、17A)が装備されている。太糸を処理する場合に、糸継ぎ装置(10)によって作成される糸継ぎ接合の外観および強度を改善するため、糸ガイドプレート(22、23)と糸ロック装置(11A、17A)との間の領域において、糸継ぎ角柱体(19)の両側でそれぞれ少なくとも1つの干渉要素(30)を位置決めして、糸継ぎする糸端部が糸継ぎプロセス中に干渉要素と接触するように設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻パッケージを製造する繊維機械(1)の作業ステーション(2)用糸継ぎ装置(10)であって、圧縮空気を吹き付けることのできる糸継ぎチャネル(20)を備える糸継ぎ角柱体(19)と、前記糸継ぎチャネル(20)の両側にそれぞれ配置された糸ガイドプレート(22、23)とを有し、かつ糸ロック装置(11A、17A)が
装備されている
糸継ぎ装置(10)において、
前記糸ガイドプレート(22、23)と前記糸ロック装置(11A、17A)との間の領域において、前記糸継ぎ角柱体(19)の両側にそれぞれ少なくとも1つの干渉要素(30)を位置決めして、糸継ぎする糸端部が糸継ぎプロセス中に前記干渉要素(30)と接触するように設けることを特徴とする糸継ぎ装置(10)。
【請求項2】
前記干渉要素(30)は、前記2つの糸ガイドプレート(22、23)のうち前記大きい方の糸ガイドプレート(23)上にそれぞれ配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項3】
前記干渉要素(30)の糸当り面(36)が前記糸継ぎ角柱体(19)の側壁(27)に対して直角に延びるように、前記干渉要素(30)が構成され、かつ配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項4】
前記干渉要素(30)が、前記糸当り面(36)を備える壁部(41)を有しており、前記壁部(41)は、前記糸継ぎ角柱体(19)の前記側壁(27)に対してある角度αをなして配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項5】
前記干渉要素(30)は、それぞれ糸当り面(36)を備えている多数の壁部(41)を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項6】
前記干渉要素(30)は、耐摩耗性材料から製造されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項7】
前記干渉要素(30)は、セラミック材料から製造されていることを特徴とする、請求項6に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項8】
前記干渉要素(30)は、高強度金属材料から製造されていることを特徴とする、請求項6に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項9】
前記干渉要素(30)は、交換可能に前記糸継ぎ角柱体(19)に固定されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項10】
前記干渉要素(30)は、ネジ接合(39)によって前記糸継ぎ角柱体(19)に固定されていることを特徴とする、請求項9に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項11】
前記干渉要素(30)は、接着接合によって前記糸継ぎ角柱体(19)に固定されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項12】
前記干渉要素(30)の前記糸当り面(36)は、糸端部が当たる領域が直線状であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項13】
前記干渉要素(30)の前記糸当り面(36)は、糸端部が当たる領域が湾曲部(38)を有していることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項14】
前記糸継ぎ装置(10)は、前記干渉要素(30)を備えた前記糸継ぎ角柱体(19)の他に、例えばロック手段を備えたカバープレート、ロック手段を備えたトッププレート、または糸制動要素などのさらなる装置を有していることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻パッケージを製造する繊維機械の作業ステーション用糸継ぎ装置に関し、この装置は、圧縮空気を吹き付けることのできる糸継ぎチャネルを備える糸継ぎ角柱体(Spleiβprisma)と、糸継ぎチャネルの両側にそれぞれ配置された糸ガイドプレートとを有し、かつ糸ロック装置が装備されている。
【0002】
このように構成された、2つの糸端部を圧縮空気で接合するための糸継ぎ装置は、綾巻パッケージを製造する繊維機械、例えば自動綾巻機の作業ステーションとの関連においてかなり以前から公知であり、多数の特許文献の中で詳細に説明されている。
【0003】
いわゆる空気分配ブロック上に配置され、かつ糸ガイドプレートが装備されている糸継ぎ角柱体に加え、そのような糸継ぎ装置は、通常、糸ロック・切断装置、ならびに糸継ぎする糸端部を準備するための保持・解撚管を備えている。
【0004】
この種の糸継ぎ装置を使って、例えば糸切れによって、または制御されたクリアラによってできた2本の糸端部は、ほぼ糸に等しい接合箇所ができるように圧縮空気で接合することができる。
【0005】
糸切れの後、例えば綾巻パッケージの表面に巻き取られた上糸は、吸引ノズルによって取り上げられ、糸継ぎ装置の糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの中に挿入される。ほぼ同時に、下糸は巻き戻し位置に位置決めされた巻き戻しパッケージからグリッパチューブによってピックアップされ、同じく糸継ぎチャネルの中に挿入され、そこで上糸と下糸は圧縮空気で交絡される。
【0006】
しかしながら、そのような糸継ぎ部がほぼ糸に等しい外観を有し、似たような糸強度を備えるためには、さまざまな前提条件を満たす必要がある。接合する2本の糸端部は、例えば、まず正確に切り詰められ、糸継ぎプロセスのために慎重に準備され、続いて糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの中に正確に位置決めされなければならない。
【0007】
この目的のため、公知の糸継ぎ装置は、上述したように、例えば糸ロック・切断装置、保持・解撚管、ならびに糸送り機など、さまざまな装置を有している。
【0008】
実際には、2本の糸端部は吸引ノズルまたはグリッパチューブを介して糸継ぎ装置の領域に運ばれ、そこで特に糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの終端にそれぞれ配置されている糸ガイドプレートによってガイドされながら糸継ぎチャネルの中に通される。糸継ぎチャネルの中に糸を通す間、糸端部は、さらに関連する糸ロック装置ならびに糸切断装置にも位置決めされる。
【0009】
糸切断装置によって正確に切り詰められ、糸ロック装置によって固定された糸端部は、続いて、保持・解撚管の中に吸引され、そこで圧縮空気によって準備される。
【0010】
すなわち、糸端部は、まず糸撚りが十分に解されてから、続いて糸送り機によって糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの中に引き込まれ、それにより、糸端部は糸継ぎチャネル内でほぼ同じ高さで互いに平行になっているが、互いに逆向きに整列する。自由な糸端部は、例えばその長さは糸素材および/または糸直径に応じて異なり、このとき、好ましくは糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの両側からそれぞれ突き出している。
【0011】
次に、糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルに合流する1つまたは複数の入口穴を介して、圧縮空気パルスが糸継ぎチャネルの中に導入され、この圧縮空気パルスは、糸継ぎチャネル内で最初は実質的に平行に並んでいる2本の糸端部の繊維を交絡させ、その結果、耐久性のある糸接合を発生させる。
【0012】
さらに、これらの公知の糸継ぎ装置の場合、糸継ぎチャネルの終端に配置されている糸ガイドプレートは、糸継ぎする糸端部が糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの中に問題なく通れるようにするため、また糸継ぎプロセス中に糸端部が糸継ぎチャネルから吹き出ないようにするために用いられる。
【0013】
説明したような糸継ぎ装置は、特に、糸がある程度の糸厚さを超えなければ、実際に非常に定評ある装置であった。しかしながら、太糸を加工する場合、すなわち比較的大きな糸径を有する糸端部を糸継ぎする場合には、状況はより困難となる。
【0014】
その種の太糸の糸端部を糸継ぎする場合、糸継ぎプロセス中に糸ガイドプレートと糸ロック装置との間の領域でしばしば大きな糸振動が生じ、その結果、作成された糸継ぎ接合は、その強度に関しても、またその外観に関しても所定の品質要件を満たすことができなくなってしまう。
【0015】
この種の太糸を適切に糸継ぎできるようにするために、糸継ぎ装置をどのように変更したらよいか、すでにこれまでさまざまな提案が示されてきたが、公知の提案は満足できるものではなかった。
【0016】
例えば、糸切断装置によって糸を切り詰めた後、保持・解撚管の領域に糸端部を固定する追加のロック手段を配置することが提案された。これらのロック手段は、切り詰められた糸端部が縮れすぎて適切に準備できなかったり、糸継ぎプロセス中に全部または部分的に糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルから吹き出たりするのを防止するためのものである。
【0017】
ギザギザのあるプレートの形をしたこのような追加的な糸ロック手段は、糸継ぎ装置の保持・解撚管の高さに配置され、例えば、EP1118570A2で説明されている。
【0018】
同等の糸継ぎ装置は、DE10124832A1でも説明されており、この装置では、切り詰められた糸端部のための追加のロック手段も同様に保持・解撚管の高さに配置されている。ここでは、ロック手段が、負圧をかけることのできるスクリーンとして構成されており、これらのスクリーンは、糸継ぎプロセス中に、切り詰められた糸端部を圧縮空気で固定するために使用される。
【0019】
しかしながら、DE10124832A1で説明されているような糸継ぎ装置は、比較的複雑なため費用がかかるばかりでなく、メンテナンスの必要性も比較的高いという欠点を有している。
【0020】
さらに、例えばDE-AS1535828またはDE4226025C2によって公知である糸継ぎ装置の場合、糸継ぎプロセス中に糸端部を固定する保持手段が糸継ぎチャネルの領域に直接配置されている。
【0021】
DE-AS1535828による糸継ぎ装置では、このとき、糸端部が糸継ぎプロセス中に、例えば間隔を置いて配置された2つのクランプによって固定され、一方、DE4226025C2による糸継ぎ装置では、糸端部の固定が中央に配置されているクッション形の空気透過性要素によって行われる。
【0022】
全体として、太糸の加工、特に適切な糸継ぎ接合の作成に関係する公知の糸継ぎ装置は、納得のいくものではなく、完全に改善の余地があるものであった。
【0023】
前述した種類の糸継ぎ装置から出発して、本発明は、特に太糸において高い信頼性で適切な糸継ぎ接合を確実に作成できる糸継ぎ装置を開発するという課題に基づいている。
【0024】
この課題は、本発明に基づき、糸ガイドプレートと糸ロック装置との間の領域において、糸継ぎ角柱体の両側にそれぞれ少なくとも1つの干渉要素を位置決めして、糸継ぎする糸端部が糸継ぎプロセス中に干渉要素と接触するように設けることによって解決される。
【0025】
本発明に基づく糸継ぎ装置の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0026】
本発明に基づく実施形態は、特に、糸継ぎプロセス中に、関連領域において過度の糸振動が発生する可能性を、糸端部に接触する干渉要素によって確実に防止するという利点を有している。従って、干渉要素は、強度と外観の両方に関して、糸端部の接合にポジティブな影響を及ぼす。
【0027】
これにより、干渉要素は、糸継ぎプロセス中に糸継ぎ角柱体の糸継ぎチャネルの出力側に配置された糸ガイドプレートと、間隔を置いて配置されている糸ロック装置との間の領域において糸端部を確実に安定させることができる。このことは、周知のように、糸継ぎの強度と外観の両方に悪影響を及ぼすと思われる大きな糸振動の発生が防止されることを意味する。
【0028】
有利な実施形態では、さらに、干渉要素が、2つの糸ガイドプレートのうち大きい方の糸ガイドプレート上にそれぞれ配置されるようになっている。
【0029】
干渉要素を大きい方の糸ガイドプレートに取り付けることにより、糸継ぎする糸端部を圧縮空気で干渉要素に当てることが可能になる。つまり、小さな糸ガイドプレートは、圧縮空気を吹き付けられている糸継ぎチャネルの出口開口部が部分的に覆われるように糸継ぎ角柱体に接続されているので、出口開口部の領域において、大きな方の糸ガイドプレートの方向、従って干渉要素の方向に作用する空気流が発生し、この空気流によって糸端部が干渉要素に当たる。
【0030】
本発明によれば、この場合、干渉要素はさまざまな形に設計されていてよい。例えば、第1の実施形態では、干渉要素の糸当り面または糸当り面が糸継ぎ角柱体の側壁に対して直角に延びるように、干渉要素が構成され、かつ配置されるようになっている。そのような干渉要素の場合、干渉要素の糸当り面は、大きな糸ガイドプレートの領域の比較的近くに位置決めされている。第2の実施形態では、干渉要素が、糸当り面を備える壁部を有しており、この壁部は、糸継ぎ角柱体の側壁に対してある角度をなして配置されている。そのような構成の場合、干渉要素の糸当り面は大きな糸ガイドプレートに対してさらに間隔を置いて配置されており、結果的に、糸端部の糸振動に対して干渉要素が影響を及ぼすことのできる干渉係数は非常に有効である。
【0031】
しかしながら、さらに、干渉要素が、それぞれ糸当り面を備えている多数の壁部を有していることも可能である。壁部および壁部に配置されている糸当り面は、この場合、糸継ぎ角柱体の側壁に対して直角に配置されていてよく、かつ/または糸継ぎ角柱体の側壁に対してある角度をなしていてもよい。多数の糸当り面を備えるそのような干渉要素は、糸振動抑制に関して非常に有効である。
【0032】
好ましくは、糸継ぎ装置の干渉要素は、耐摩耗性材料、例えばセラミック材料または高強度金属材料から製造されている。そのような耐摩耗性材料の使用により、干渉要素は、比較的負荷が強い場合でも、長い耐用年数を有することが保証される。この場合、干渉要素は、例えばネジ接合によって簡単に、かつ交換可能に糸継ぎ角柱体に取り付けられていてよく、または例えば確実に固定できるが取外しは比較的難しい接着接合によって糸継ぎ角柱体に固定しされていてもよい。
【0033】
干渉要素の壁部の糸当り面に関しても、さまざまな実施形態が設けられている。第1の実施形態では、糸端部が当たる領域の壁部に配置されている干渉要素の糸当り面の大部分が直線で構成されている。しかし、糸端部が当たる領域に配置されている干渉要素の糸当り面は、切欠きを有していてもよい。そのような切欠きによって、糸端部が当り面の領域でセンタリングされ、その結果、糸端部の糸振動が妨げられて、糸振動は比較的強く抑制されることになる。
【0034】
しかしながら、自動綾巻機の作業ステーション用糸継ぎ装置は、その他の有利な装置を装備していてもよい。この種の糸継ぎ装置は、干渉要素を備えた、圧縮空気式の糸継ぎ角柱体の他に、例えばロック手段を備えたカバープレート、ロック手段を備えたトッププレート、または特殊な糸制動要素などのさらなる装置を有することもできる。そのように装備された糸継ぎ装置により、太糸を加工する場合でも、作成された糸継ぎ接合は常に適切であること、すなわち糸継ぎ接合は糸強度を有し、また糸に等しい外観を有することが常に保証される。
【0035】
本発明のさらなる詳細が、図に示されている実施例を用いて以下に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に基づいて構成された糸継ぎ装置を備える自動綾巻機の作業ステーションの側面図である。
【
図2】糸継ぎ装置の平面図であり、その糸継ぎ角柱体は本発明に基づく干渉要素を備え、接続する糸端部の挿入中である。
【
図3】糸継ぎプロセス中の、
図2による糸継ぎ装置の図である。
【
図4】糸継ぎプロセス中の、先行技術による糸継ぎ装置の図である。
【
図5】糸当り面領域に切欠きを備える、本発明に基づく干渉要素の第1の実施形態の図である。
【
図6】直線状の糸当り面を備える、本発明に基づく干渉要素の第2の実施形態の図である。
【
図7】本発明に基づく干渉要素の第3の実施形態の図であり、糸継ぎ角柱体の側壁に対してある角度をなして配置されている壁部が糸当り面を有している。
【
図8】本発明に基づく干渉要素のさらなる実施形態の図であり、多数の壁部がそれぞれ1つの糸当り面を有している。
【0037】
図1には、綾巻パッケージを製造する繊維機械、この実施例では、いわゆる自動綾巻機1の側面概要図が示されている。この種の自動綾巻機1は、通常、直列に並べて配置されている複数の同様の作業ステーション2、この場合はいわゆる巻取りステーションを有しており、これらのステーション上では、公知のように(従って詳細には説明しない)、リング紡績機で製造された、比較的少ない糸材料を有する紡績コップ9が、大容量の綾巻パッケージ15に巻き取られる。製造後、これらの綾巻パッケージ15は、例えば自動的に作動するサービスユニット(図示されていない)、好ましくは綾巻パッケージ交換機によって、機械長さの綾巻パッケージ搬送装置21に引き渡され、機械終端側に配置されたパッケージ装填ステーション等に搬送される。
【0038】
そのような自動綾巻機1は、その他に、パッケージ・スリーブ搬送システム3の形で物流装置を有しており、このシステムでは、搬送ディスク8上で紡績コップ9または巻き出された空スリーブが回転する。そのようなパッケージ・スリーブ搬送システム3のうち、
図1には、コップ供給部4、可逆的に駆動可能な収納部5、巻取りステーション2に通じる横搬送部6の1つ、ならびにスリーブ戻り部7のみが示されている。
【0039】
さらに、そのような自動綾巻機1は、通常、中央コントロールユニット18を備えており、この中央コントロールユニット18は、機械バス35を介して個々の作業ステーション2の個別の作業ステーションコンピュータ29と接続され、またサービスユニットの制御装置(図示されていない)とも接続されている。
【0040】
パッケージ・スリーブ搬送システム3によって送られた紡績コップ9は、作業ステーション2の横搬送部6の領域にある巻戻し位置ASで大容量の綾巻パッケージ15に巻き取られる。
【0041】
周知のように、個々の作業ステーション2は、この目的のために、これらの作業ステーション2の適切な稼動を保証するさまざまな装置を備えている。これらの装置は、例えば上糸31を取り扱うための吸引ノズル12と、下糸32を取り扱うためのグリッパチューブ25と、圧縮空気式糸継ぎ装置10として構成されている糸継ぎ装置などである。吸引ノズル12とグリッパチューブ25は、それぞれ吸引空気接続部を介して機械長さの吸引空気チャネル37に接続されている。このとき、吸引ノズル12は回転軸16を中心として、およびグリッパチューブ25は回転軸26を中心として限られた範囲で回転可能に支持されている。
【0042】
自動綾巻機1のそのような作業ステーション2のさらなる装置(図示されていない)は、例えば糸張り機、糸クリアラ、パラフィン装置、糸切断装置、糸引張力センサ、下糸センサなどである。
【0043】
圧縮空気式糸継ぎ装置10は、一般的な巻取り動作中、通常の糸経路に関して、僅かに後方に配置されている。すなわち、糸継ぎ装置10は、一般的な巻取り動作中に走行する糸の影響を受けない。
【0044】
そのような作業ステーション2は、さらに、綾巻パッケージ15の巻取りのための巻取り装置24を装備している。巻取り装置24は、特に、旋回軸13を中心に可動支承され、かつ綾巻パッケージ・スリーブを回転可能に保持するための装置を有する巻取りフレーム28を有している。この実施例において、巻取りフレーム28内に回転自在に保持されている綾巻パッケージ15は、その表面が従動溝付きドラム14上に載っており、巻取り動作中に摩擦接合によりこの溝付きドライムによって動かされる。このとき、綾巻パッケージ15に巻かれる糸は、横搬送部6の領域において巻き戻し位置ASに位置決めされている紡績コップ9から供給される。
【0045】
図2は、本発明に基づいて構成された干渉要素30を備えた糸継ぎ装置10の平面図であり、糸継ぎする糸端部の挿入中である。図から分かるように、糸継ぎ装置10の上部と下部には糸ロック・切断装置11、17が配置されている。つまり、上部にある糸ロック・切断装置11は、綾巻パッケージ15に接続された、吸引ノズル12を通って供給されるいわゆる上糸31を固定するための糸ロック装置11Aと、供給紡績コップ9に接続された、グリッパチューブ25を通って供給されるいわゆる下糸32を切り詰めるための糸切断装置11Bとを備えている。
【0046】
これに対応して、下部にある糸ロック・切断装置17は、供給紡績コップ9に接続された、グリッパチューブ25を通って供給される下糸32を固定するための糸ロック装置17Aと、吸引ノズル12によって供給される上糸31を切り詰めるための糸切断装置17Bとを有する。見やすさの理由から、および本発明の理解に絶対必要というわけではないことから、糸継ぎ装置10の領域に同様に配置されている公知の糸送り機は省略された。
【0047】
図2から分かるように、糸継ぎ装置10はいわゆる保持・解撚管34が埋め込まれた空気分配ブロック33を有している。空気分配ブロック33上には、糸継ぎ角柱体19が配置されており、これは、圧縮空気を吹き付けることのできる糸継ぎチャネル20を有している。
【0048】
糸継ぎ角柱体19は、例えばネジ接合39によって、交換可能に空気分配ブロック33に固定されている。
【0049】
糸継ぎ角柱体19を取り付けた状態において、糸継ぎチャネル20に合流する吹き込み口は、空気分配ブロック33の圧縮空気穴に接続され、この空気分配ブロック33は、例えば電磁弁が連結された該当するラインを介して圧縮空気源に接続されている。
【0050】
例えば
図2、3、4から分かるように、糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20の出口開口部領域には、それぞれいわゆる糸ガイドプレート22、23が配置されており、このとき糸ガイドプレート22および23は異なった形で構成されている。つまり、小さい方の糸ガイドプレート22は、平坦に構成されており、取り付けた状態では糸継ぎ角柱体19の側壁27に対して平行に取り付けられている。小さい糸ガイドプレート22の配置は、この場合、好ましくはさらに、糸ガイドプレート22の前方に位置する前縁が、それぞれ糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20のほぼ中心の高さになるように選択されている。糸継ぎチャネル20の出口開口部のそれぞれ対向する側に配置されている関連する大きな方の糸ガイドプレート23は、糸継ぎ角柱体19の側壁27に関して、それぞれ角度のある部分を有している。
【0051】
図2および
図3で示されているように、大きな糸ガイドプレート23上には、さらに、本発明に基づくいわゆる干渉要素30がそれぞれ配置されている。これらの本発明に基づく干渉要素30は、その機能について
図3および
図4を参照して後述するが、さまざまな実施形態を有することができ、またさまざまな形で糸継ぎ角柱体19に接続することができる。干渉要素30は、例えば、容易に取外し可能で交換可能であるように、ネジ接合39によって糸継ぎ角柱体19に接続することができ、または例えば接着剤によって糸継ぎ角柱体19に強固に接続することができる。
【0052】
図5~8は、本発明に基づく干渉要素30のいくつかの可能な実施形態を示している。
【0053】
図5および6は、例えば本発明に基づく干渉要素30を示しており、壁部41は取付け状態においてそれぞれ糸継ぎ角柱体19の側壁に対して平行に配置されているが、糸当り面36はさまざまに構成されている。例えば、
図6による干渉要素30は、実質的に直線状の連続的な糸当り面36を有し、一方、
図5に示されている干渉要素30は、その糸当り面36の領域に湾曲部38が設けられている。そのような湾曲部38は、糸継ぎプロセス中に糸継ぎする糸端部をセンタリングするのに有利である。
【0054】
図7に示されている干渉要素30は、糸当り面36が装備されている壁部41を有しており、この壁部41は干渉要素30の取り付け状態において、糸継ぎ角柱体19の関連する側壁27に対して角度αで配置されている。
【0055】
図8に示されている干渉要素30は、2つの壁部41を有しており、これらにはそれぞれ糸当り面36が装備されている。干渉要素30の取付け状態において、第1の壁部41は、糸継ぎ角柱体19の関連する側壁27に対して平行に配置され、一方、第2の壁部41は、糸継ぎ角柱体19の側壁27に対して角度αで配置されている。
【0056】
前述の干渉要素30は、さらに、例えば固定穴40を有しており、従って、ネジ接合によって糸継ぎ角柱体19に問題なく固定することができ、必要に応じて簡単に取り外すことができる。
【0057】
本発明は、明示的に干渉要素30の前述した実施形態にのみ制限されるべきではない。干渉要素30は、例えば、糸当り面36を備えた2つよりも多くの壁部41を有することもできる。同様に、壁部41は、部分的に糸当り面36が装備されており、少なくとも部分的にくり抜かれていることも考えられる。すなわち、壁部41は、例えば糸当り面36として構成されている狭い縁部を有し、一方、糸当り面36の領域で壁部41がくり抜かれている。さらに、糸当り面36の構造も、異なった、例えば波形の形状を有していてもよいだろう。
【0058】
本発明に基づいて構成された糸継ぎ装置の機能:
例えば通常のクリアラによる切断または糸張り機上部の糸切れにより、巻取りが中断した場合、下糸32は作業ステーション2の糸張り機内に保持された状態で留まっている。なぜなら、糸クリアラが、動的糸信号の欠如により糸張り機の糸固定機能を作動させたからである。続いて、糸張り機内に保持された下糸32は、グリッパチューブ25によってピックアップされ、このグリッパチューブ25はこの目的のために最初に糸張り機の領域内に旋回し、そこで下糸32を吸引する。糸張り機は、同時に下糸32を解放する。
【0059】
下糸32の収納に成功したことは、例えばグリッパチューブ25内に配置されているセンサ(図示されていない)などによって記録され、グリッパチューブ25は
図2に示されている上部位置に旋回する。このとき、下糸32は、糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20の中に挿入され、上部または下部の糸ロック・切断装置11、17の糸ロック要素17Aと糸切断要素11Bの中に挿入される。
【0060】
ほぼ同時に、綾巻パッケージ15上に巻き取られた上糸31は、吸引ノズル12によって取り上げられ、同様に糸継ぎ装置10の糸継ぎチャネル20の中に挿入される。このとき、吸引ノズル12は、
図2に示されているように、上糸31を糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20の中に通し、上部糸ロック・切断装置11の糸ロック要素11Aの中に通し、また下部糸ロック・切断装置17の糸切断要素17Bの中に通す。続いて、糸切断装置11Bおよび17Bが作動し、その際、下糸ならびに上糸31または32は所定の長さに切断される。切断された上糸および下糸31、32の自由な糸端部は、グリッパチューブ25または吸引ノズル12を介して廃棄される。
【0061】
糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20から突き出ている上糸31および下糸32の糸端部は、それぞれ、負圧をかけることのできる保持・解撚管34の中に吸引され、そこで、好ましくは圧縮空気を用いて、少なくとも部分的にそれらの糸のねじれから解放される。
【0062】
続いて、準備された上糸31と下糸32の糸端部は、いわゆる糸送り機(図示されていない)によって糸継ぎチャネル20の中に引き戻され、それによって糸端部は、糸継ぎチャネル20内で所定の重なり部分をもって並んで配置される。すなわち、上糸31と下糸32の糸端部は、それぞれ糸継ぎチャネル20からわずかに突き出すように配置されている。続いて、例えば電磁弁の該当する制御により、吹き込み口を介して糸継ぎ空気が糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20の中に吹き込まれ、このとき、糸継ぎチャネル20内にある上糸31と下糸32の糸端部の繊維が互いに絡み合う。
【0063】
この糸継ぎプロセス中、先行技術を用いた
図4で示されているように、さらに糸継ぎ空気が、糸継ぎチャネル20の出口開口部を介して螺旋状方向に糸継ぎチャネル20から流出し、その結果、特別な措置を用いないと、糸ガイドプレート22、23と糸ロック要素11Aまたは17Aとの間の空間に比較的制御不能な糸の動きが生じる。
【0064】
そのような制御不能な糸の動きは、特に太糸の場合、作成する糸継ぎに非常に悪い影響を及ぼす。すなわち、
図4に示されている公知の糸継ぎ装置10では、太糸は正常に糸継ぎできないことが多い。
【0065】
太糸の場合でも正常な糸継ぎの作成が保証されるように、糸継ぎ装置10は本発明に基づく干渉要素30によって変更される。
【0066】
つまり、糸継ぎ角柱体19の糸継ぎチャネル20の出力側にそれぞれ配置された2つの糸ガイドプレート23のうち大きい方に、糸当り面36を備える少なくとも1つの壁部41を有する干渉要素30がそれぞれ1つ固定される。
【0067】
干渉要素30の糸当り面36は、
図3に示されているように、それぞれ糸ガイドプレート22、23と糸ロック要素11Aまたは17Aとの間の空間に突き出しており、それにより、糸継ぎする糸端部は、糸継ぎプロセス中、干渉要素30の糸当り面36に当たる。
【0068】
干渉要素30に糸端部が当たることにより、糸端部が非常に安定し、その結果、太糸を加工する場合も、耐久性のある、ほとんど糸に等しい糸接合が生じる。
【符号の説明】
【0069】
1 自動綾巻機
2 作業ステーション
3 パッケージ・スリーブ搬送システム
4 コップ供給部
5 収納部
6 横搬送部
7 スリーブ戻り部
8 搬送ディスク
9 紡績コップ
10 糸継ぎ装置
11 糸ロック・切断装置
12 吸引ノズル
13 28の旋回軸
14 溝付きドラム
15 綾巻パッケージ
16 12の旋回軸
17 糸ロック・切断装置
18 中央コントロールユニット
19 糸継ぎ角柱体
20 糸継ぎチャネル
21 綾巻パッケージ搬送装置
22 糸ガイドプレート
23 糸ガイドプレート
24 巻取り装置
25 グリッパチューブ
26 25の旋回軸
27 19の側壁
28 巻取りフレーム
29 作業ステーションコンピュータ
30 干渉要素
31 上糸
32 下糸
33 空気分配ブロック
34 保持・解撚管
35 機械バス
36 糸当り面
37 吸引空気チャネル
38 湾曲部
39 ネジ接合
40 固定穴
41 壁部
AS 巻き戻し位置
【国際調査報告】